○大平国務
大臣 ILOは、ひとり消極的に
労働条件を保障するというだけにとどまらず、積極的に
労働者の
福祉増進あるいは技能力の増進というような点について機能していただく必要があるのではないかと思うのでありまして、
日本政府といたしましても、消極面ばかりでなく積極面につきましても、これまで若干のことはいたしてきたつもりでございますけれ
ども、一そうそういう面に対する活動の
範囲を拡大強化していかなければならぬのではないかということを第一に感じております。
それから第二に、いまそれとの関連におきまして、
わが国の経済の海外進出のあり方について
お話しでございまして、確かに御
指摘のように、
わが国が自立経済を達成する上におきまして、生産第一主義、輸出第一主義に偏向いたしまして、なりふりかまわずに海外進出にかられておった時代が確かにあったと思うのでございまして、私はそのことを包み隠そうとは思わないのであります。しかし、一面
考えていただきたいのは、
日本の経済進出はそういうことばかりではないのでありまして、相手国側からの要請に基づきまして企業の進出をやっておるケースもありまするし、また、相手方の経済の自立に
日本との提携ということが役立っていないとは言えない面も確かにあると思うのであります。したがって、一がいにこれをそう理解することはできないわけでございますけれ
ども、各方面から御
指摘がありますように、
わが国のこういうレベルの海外経済の進出につきましての批判にあたりまして、これまでの
わが国のあり方につきましては、確かに反省しなければいけないことが私はあると思うのであります。
そこで
政府といたしましては、御案内のように
国内経済政策の基軸、重点を変えなければならぬということを申し上げて、去年の補正予算、ことしの本予算を通じまして、そういう意欲を予算面に出したつもりであるわけでございまして、
わが国といたしまして、
わが国の力にふさわしい国民
生活の質を取り戻さなければならない、
生活あるいは
福祉というものを重点にした経済政策をやらなければならぬということを提唱し、そしてそれに応じた財政政策をとってまいっておりますことは御案内のとおりでありまして、このことはひとり
国内経済の問題ばかりでなく、国際経済の面におきまして、
わが国の対外経済のバランスを維持する上におきまして、私は大きな力になってきたし、今後なっていくものと期待をいたしております。
それからさらに、
わが国は経済の自立を達成いたしました。おかげさまで経済力をたくわえることができたわけでございますので、これからの海外の経済協力につきまして、以下のことを逐次実行に移していきつつあるわけでございます。
第一は、援助の条件、協力の条件というものをソフトにしなければならぬという
方向を指向して、努力をいたしております。
それから第二は、
政府援助の額をふやさなければならぬ。これは欧米の先進国と比べまして、
政府援助、とりわけ技術協力が非常に弱かったわけでございまして、非常にシェアが乏しいわけでございまして、これは確かに大幅に改善せねばいかぬ。OECDからも
加盟国の間におきましても、
平均の水準をはるかに下に回っておるわけでございますので、それを改善していこうとかかっておるわけでございます。
第三は、
わが国の援助は
わが国の輸出と結びつくようなひもつき、タイドローンというようなものはやめていく
方向に行こうではないか。それは一地域のアンタイイングを実行するということはすでに
発表いたしましたけれ
ども、
日本といたしましては、もうゼネラルアンタイイング、地域の差別なくアンタイイングをしていいという決意をしておるわけでございまして、OECDにおきましては国際的なコンセンサスがまだないわけでございますけれ
ども、われわれはそういうことに対して非常に積極的な姿勢をもっていま対処をいたしておるわけでございます。
いずれにいたしましても、そういう
方向で努力してまいりましたならば、
関係国の理解もだんだん深まってくるのではないかと思っておるわけでございますので、われわれも一生懸命にやるつもりでございますが、今後一そう御鞭撻を願いたいと思います。