運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-06-01 第71回国会 衆議院 外務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月一日(金曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 藤井 勝志君    理事 石井  一君 理事 小坂徳三郎君    理事 西銘 順治君 理事 福永 一臣君    理事 岡田 春夫君 理事 堂森 芳夫君       加藤 紘一君    木村 俊夫君       小林 正巳君    深谷 隆司君       山田 久就君    石野 久男君       川崎 寛治君    河上 民雄君       柴田 睦夫君    沖本 泰幸君       渡部 一郎君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         労 働 大 臣 加藤常太郎君  出席政府委員         外務政務次官  水野  清君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省条約局外         務参事官    松永 信雄君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君         外務省情報文化         局長      和田  力君         労働大臣官房長 藤繩 正勝君         労働省労働基準         局安全衛生部長 北川 俊夫君         消防庁長官   宮澤  弘君  委員外出席者         防衛施設庁労務         部労務企画課長 多田 欣二君         通商産業省貿易         振興局経済協力         部長      小山  実君         労働大臣官房国         際労働課長   森川 幹夫君         労働省職業訓練         局訓練政策課長 橋爪  達君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 六月一日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     沖本 泰幸君 同日  辞任         補欠選任   沖本 泰幸君     大久保直彦君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際労働機関憲章改正に関する文書締結に  ついて承認求めるの件(条約第四号)  電離放射線からの労働者保護に関する条約  (第百十五号)の締結について承認求めるの  件(条約第五号)  機械防護に関する条約(第百十九号)の締結  について承認求めるの件(条約第六号)  物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関  条約ATA条約)の締結について承認求め  るの件(条約第七号)  職業用具の一時輸入に関する通関条約締結に  ついて承認求めるの件(条約第八号)  展覧会、見本市、会議その他これらに類する催  しにおいて展示され又は使用される物品輸入  に対する便益に関する通関条約締結について  承認求めるの件(条約第九号)      ————◇—————
  2. 藤井勝志

    藤井委員長 これより会議を開きます。  国際労働機関憲章改正に関する文書締結について承認求めるの件、電離放射線からの労働者保護に関する条約(第百十五号)の締結について承認求めるの件、機械防護に関する条約(第百十九号)の締結について承認求めるの件、以上各件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田春夫君。
  3. 岡田春夫

    岡田(春)委員 きょうは労働大臣中心にして若干質問をいたしてまいりますが、現在提出をされている条約は三件であります。  最初に質問いたしてまいりますのは国際労働機関憲章改正に関する文書、これを中心質問いたしてまいりますが、ILO憲章にも書いてありますように、ILO加盟国というのは、労働条件を向上することによって人権を擁護するということを基本の点として加盟国は守っていかなければならない点であることは憲章の前文にも書いてあるわけです。  そこでわが国の場合には主要産業国としてILO加盟が認められているわけですが、この主要産業国としての労使関係というものがどういうものでなければならないのか。ILO加盟国主要産業国としてのわが国労使関係についての労働大臣としてのお考えをまずお伺いいたしたいと思います。
  4. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 ILO憲章の問題の基本問題についてお尋ねがありましたが、ILOの問題は労使基本的な問題でありますので、憲章趣旨を体しまして、わが政府においてもよく注意してその意見を大いに国内のあらゆる問題に取り入れたいと思います。
  5. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ILO関係条約批准の数の上では、この間実は参考人に来ていただいていろいろお話を伺ったのですが、加盟国が百二十三ある。その中で日本の国は六十二番目である。たいへん下のほうになっているわけですね。しかも主要産業国というのは十カ国、この中に日本の国が入っているのに、批准数では六十二番目ということでは、私はたいへん遺憾な点が多いと思うのですが、これについて大臣はどういうようなお考えをお持ちですか。
  6. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 わが国ILO主要メンバーである常任理事国でもありますし、ILOのいろいろな問題に対しましても大いに善処いたさなくちゃならぬのは当然であります。いままでの条約批准は二十九でありますが、今回の二つを御承認願えれば三十一。三十一というのが平均でありますけれども、しかし決してそれで満足いたしておりません。今後いろいろ労使関係について、また労働者の地位の向上、福祉の問題について、労働基準法改正と相まって——基準法改正研究会で鋭意検討いたしております。御承知のようにILO批准だけしても、国内法がこれに沿わなくちゃならぬといういろいろな難点もありますので、岡田議員の御注意のとおり、今後大いにILO批准問題も促進し、そして主要理事国として憲章に従って大いに推進したい、こういう所存においては政府は何ら異存はありません。
  7. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ILO条約あるいは勧告採択をする場合、これは三分の二で採択をする。しかも政労使各国から四名出ている。しかもいわゆる後進国といいますか、わりあいに新興国家の国々も入っているから、百二十三もいる。こういう状態でありますと、ここで採択をされた条約というものは、国際的水準から見て最低のものをきめたということになってくるのだと思うのです。私は、いまリーディングメンバーであるところの日本の国として、主要産業国常任理事国としての日本としては、この条約あるいは勧告というのは国際的な最低基準であるという意味で、この条約勧告はぜひとも守られていかなければならないし、それ以上のことが実行されなければならない、こういうように思うのです。こういう点は国際的な日本の義務といってもいいのじゃないかと思うのですが、そういう点についてはいかがお考えになりますか。
  8. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 岡田議員のおっしゃるとおり、主要産業国常任理事国として今後とも御趣旨のような点に沿って、政府といたしましても条約批准勧告の実行というような問題につきましても、その線に沿って善処いたします。
  9. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは担当局長でもけっこうですが、ILO五十周年にあたって、主要条約というのが十七条約、ぜひともこれはできるだけ批准をしてもらいたい、こういう勧告があったわけです。この十七の条約というのは、基本的人権に関する条約であって、そのうちでわが国七つ条約批准いたしております。今度の場合には機械防護電離放射線防護の問題に関する条約が出ているわけですが、こういう条約批准ももちろんけっこうですけれども、しかし、十七のうちの七つだけ批准して、残った十に対して一体どうされるのか。この十の条約の中で、どれを急いで批准をおやりになろうとお考えになっているのか。これは大臣でなくて担当局長でもけっこうです。
  10. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 岡田議員からの御質問のように、四年前のILOの五十周年に、加盟各国に対して、せめてILO基本の問題の十七項目、これはぜひひとつ促進せよというので、いろいろわれわれに対しましても、資料提出とか、今後の方針についてお問い合わせがありましたことはそのとおりで、わが国といたしましても、十七のうちで七、あとの十のうちで、一項目植民地についてのものがありますが、九項目については、今後わが国もこれに対して憲章趣旨に沿ってこれら条約批准に進んでいくことは当然であります。しかし、諸外国の事情と違いまして、やはり国内法との関連で、条約批准したいからといっても、国内法と相違する場合には、これはなかなか困難な場合もありますので、いろいろの抵触する問題も、現在基準問題は基準研究会で、研究して、残りの問題に対しましても何とか対処したい、こういう方針政府はやっておりますが、残った十のうちで九つの問題につきましては、政府委員からいろいろ今後の方針について御説明を申し上げたいと思います。
  11. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 基本的な方針につきましてはただいま大臣からお答えいたしましたとおりでございますが、具体的に十七のうち、批准をしておる七を除きまして、どういう条約があるかということを簡単に申し上げますと、その十のうち、ただいま大臣も申し上げましたように、社会政策条約百十七号というのがございまして、これは非本土地域関係条約、いわゆる植民地関係条約で、わが国関係がございませんので、実質的には九つでございます。その中で、たとえば農業における最低賃金決定制度条約九十九号というようなものがございますが、これなどは、一昨年に最低賃金決定制度条約二十六号を批准いたしましたときに、当然批准したいと私ども考えたわけでございますが、たとえば労働協約で別段の定めをしても最低賃金の一部についてしか現物給与を認めていない、基準法はその一部についてという限定がないというような、いってみますればそういった技術的なわずかな理由で批准ができない。あるいは最低年齢条約をとりましても、基準法では同居の親族を除いておるが条約は除いておらないというような、ごくわずかな技術的な基準法との抵触の問題で批准できないというのが、最低年齢あるいは賃金保護条約最低賃金決定条約等々でございます。それから、母性保護条約あるいは強制労働廃止条約等々は、それぞれ法律と抵触するという問題がございますが、との残っております九つのうちでも、いま直ちに批准しようと思えばできますものは社会保障条約百二号でございます。先生承知のように、この条約は九部門のうち三部門条約基準を満たしておれば批准ができるので、わが国ではすでに四部門を満たしておりますのでできるんでございますけれども、厚生省のほうのお考えもございますので、今日まで批准をいたしておりませんが、御承知のように、先般厚生大臣衆参両院予算委員会でその点に触れられまして、来年を目途にぜひやりたいという趣旨答弁をなさっておりますので、私どもとしては、少なくとも社会保障条約というのは近い将来批准のお願いができるんじゃないかというふうに思っておるところでございます。
  12. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いま百二号の問題を伺おうと思ったのですが、御答弁がありましたので、それでは次に伺います。  百五号、強制労働廃止に関する条約、これはこの間の参考人にいろいろ意見を伺った際にも、五人のうちで三人の方までがはっきりと百五号条約を急ぐべきだ、こういう御意見が実はあったわけです。この百五号の批准については、政府はどういうようにお考えになりますか。これは政府委員でけっこうです。
  13. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 強制労働廃止条約、百五号でございますが、内容は政治的な圧制等手段としての、または政治的な見解の抱懐もしくは発表に対する制裁としての強制労働、それから労働規律手段としての強制労働同盟罷業に参加したことに対する制裁としての強制労働、そういうすべての種類の強制労働を禁止しまして、これらの強制労働の即時かつ完全な廃止のための措置をとることを規定する、こういう条約でございます。これにつきましては、禁止される強制労働の具体的な範囲につきまして解釈疑義がございまして、今日まで批准ができないわけでございます。政治的見解を抱いたことに対する制裁労働規律手段及び同盟罷業に参加したことに対する制裁としての強制労働ということで、問題点といたしましては、主として公務員法関係の罷業あるいは政治的見解発表等々に関する刑罰規定抵触するというふうに考えられておるわけでございます。
  14. 岡田春夫

    岡田(春)委員 条約解釈疑義があるから、これはいま検討しているというようなお話ですが、疑義がある点についてはILOでどういうような疑義の解明についての御努力をされておるのでありますか。
  15. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 問題は、わが国国公法等における刑罰としての懲役刑、これがここで言っておる強制労働に含まれるかどうかという点について厳密な解釈いかんということで、実はILO事務当局などにも意見を聴取しておるわけでございますが、先生も御承知かと思いますが、ILO条約の公的な解釈ILOとして明らかにするということはないようでありまして、やや個人的に向こうの専門家意見を述べるというようなことはございます。そういう意味意見を聞いたこともございますけれども、はたしてはっきりその点が確信が持てるかということになりますとどうも疑義があるということで、私どもはなおその点を明確にしなければ批准ができないというふうに考えておるわけであります。
  16. 岡田春夫

    岡田(春)委員 条約の中で、労働時間、休日、休暇に関する条約は全部で十四あります。この条約の中で日本批准しているのはありますか、どうですか。
  17. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 労働時間関係条約については批准したものはまだございません。
  18. 岡田春夫

    岡田(春)委員 大臣お聞きのように、労働時間、休日、休暇に関しては十四もあるのに全然まだ批准していない。特に伺っておきたいのは第一号条約です。第一号条約というのは五十三年前に実は条約採択をされております。五十三年前のこの条約がいまだに日本の場合には批准されていないというのは、きわめて私は残念なことだと思います。なぜこういう点が批准されておらないのか。私は時間がありませんから、特に内容に入ってまで申し上げますけれども、第一号条約の第九条には「本条約日本国に対する適用に付ては、左の変更及条件を加へらるべし。」と、日本に対して具体的な個別的な規定まで実は書いてあるのです。この点は五十三年前から今日まで、いかに日本労働条件が劣悪であったかということについても、こういう点が条文上まで明らかになっている。こういう点からいいまして、考え方によりますとまさに屈辱的な条約が今日までそのまま批准されないで残っているということは、これはまことに残念なことだと思うのですが、まず第一点として、第一号条約はなぜ批准されないか、そうしてこれに対して一体どういうようにされるのか、こういう点を伺いたいと思います。
  19. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この労働時間の問題はイの一番の問題で、国際的に見ましてもこれは当然やらなくてはならぬ問題であります。一日八時間とか一週四十八時間、これは国内のほうも、また条約的にも抵触しないのでありますが、超過勤務の問題が国内基準法と相違しておるので、いまさっそくやる段階ではありませんけれども、これは段階でないからといっていつまでも放任することは主要産業国として恥でありますし、基準法研究会でもこの問題を特に注視して研究さしておりますので、何とか御趣旨に沿うような検討の結果この問題に手をつけたい方針ではありますけれども、詳細については政府委員から説明させます。
  20. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいま大臣からお答えしました点の具体的な問題点を申し上げますと、一つはただいまお話しの時間外労働でありまして、条約は災害、不可抗力等の場合以外は一切時間外労働を認めておりませんが、現行労働基準法ではいわゆる三六協定を結ぶことによって時間外労働ができるという点が非常に違っております。それからもう一点は変形労働時間制でございまして、条約は一日の延長一時間の範囲内だけで一週単位の変形四十八時間、こういう考え方をとっておりますが、現行労働基準法では四週平均の四十八時間の変形労働時間制をとっておることは御承知のとおりでありまして、趣旨は一号条約におおむねマッチしておると思いますけれども、そういった点につきましてそれぞれ触れるところがあるというようなことで、いま批准していないわけであります。
  21. 岡田春夫

    岡田(春)委員 大臣非常に前向きの御答弁をされたわけですが、しかし超過勤務の問題にしても、いまの日本における労働賃金の実態からいいますと、超過勤務をもらわなければ生活ができないというような状態になっている産業は少なくないわけですね。こういう点からいうと、やはり労働時間の問題はただ超過勤務を切ってしまえばそれでいいという問題ではなくて、やはり最低生活が保障されるような方向でいきませんと、これは決してこの条約批准したからといって労働条件が向上したということにはならないわけですね。こういう点で複雑な点がいろいろあろうと思うのですが、私はやはりここでぜひ労働大臣にお考えいただきたいことは、最近国際的にもエコノミックアニマルなどといわれて、ただもうければいいのだということで、一方においてはソシアルダンピングの問題も出ているわけです。そういう点からいいましても、第一号条約はすみやかに批准するということはこれはぜひとも大切なことでございますし、それに伴って国内法の整備というのは当然必要になってくるわけです。そういう点ではいま週休二日制の問題なども出ているわけですし、こういう点では労働条件が改悪されないで批准しようという方向でこれはひとつ急いでいただきたいと思うわけです。こういう点について大臣任期中にぜひこの一号条約批准するとお約束いただけますかどうですか、ひとつお答えをいただきたい。
  22. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 私の任期がいつまでかわかりませんので、日本政府方針としてはやはり批准だけしたらいい、国内のほうはあと回し、こういうふうなやり方でなく、国内法——今回の二つ条約の問題も国内法が、昨年安全衛生法ができた。これで判然として批准いたしたのでありますが、この問題は私も申し上げたかったのでありますが、昔から働くことが美徳だというような観念がまだ一部使用者の中に働いておりますが、日本賃金はだいぶ向上いたしておりますが、労働時間の問題、福祉の問題、かような問題は大いに主要産業国家として日本のメンツからいっても御趣旨のとおりで、私の任期中と言われますと、これも七月かもわからぬし、いつかもわからない。私の権限でもありませんので、できるだけ岡田委員の御趣旨に沿うように、先ほど言ったように、私としては政治的な立場から大所高所に立ってこの問題に対しては前向きで善処いたしたいという所存で、研究会などにもこの問題を特に私要望いたしておりますので、御趣旨に沿うようにできるだけ善処いたします。
  23. 岡田春夫

    岡田(春)委員 大臣、たいへん熱意のあるところをわれわれ多とするのですが、ついでにひとつ、第三号、第四号、これは婦人労働に関する問題、これもちょっと外国に対して恥ずかしい条約なんです。と申しますのは、出産休暇の問題。出産休暇の問題も重要ですが、もっと重要なのは婦人の深夜業業務の制限の問題。こういう問題について三号、四号が規定しているのに、これがまずきまっておらないのです。この三号、四号についてはどういうようにされますか。
  24. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 大臣からお答えする前に三号、四号の内容につきまして簡単に申し上げますが、ただ三号を御指摘でございますが、三号は産前産後なんでございます。この問題はそのあとで百三号という条約ができまして、これが新しい産前産後条約として問題になっておる。私どもとしては百三号の批准問題というふうにとらえておりまして、それで当然三号は入る。それから四号も夜業禁止条約でございます。これも新しく八十九号という条約ができておりまして、その問題につきましても私ども考えておりまして、いずれにいたしましても現行基準法と若干食い違います点で批准ができないことは残念でございますが、そういう新しい条約ができておりますことを御説明申し上げます。
  25. 岡田春夫

    岡田(春)委員 政府側にお願いしておきますが、実は時間がたいへん制限されておりますので、簡単にひとつ御答弁いただきたい。大体私も要点は知っておりますから。  実は昭和四十六年の十月にジェンクス事務局長が参りました際に、当時労働大臣田村労働大臣ジェンクス事務局長は百十一号条約批准をぜひやってもらいたい、こういうことを言いましたら、当時の労働大臣である田村労働大臣はこれを承諾したといわれている。ところが、労働省内で反対があったためにいまだに手続が行なわれていないということがいわれておりますが、これは真相はどうでございますか。
  26. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいま先生の御質問は四十六年、一昨年の秋の問題でございまして、当時は原労働大臣でございました。  おっしゃるとおりILO事務局長が来られまして大臣と会見をしまして、いろいろ意見を交換し、そのときに条約批准の話が出まして、特にその百十一号の批准を要請をされたわけでございます。これに対して原労働大臣ILO条約についてはことしも最低賃金関係条約批准したということで、今後も大いに検討したい、こういっておるわけでございまして、私どもとしましてはその趣旨に沿って今回も条約批准をさらに進めておるわけでございます。ただ百十一号につきましては、条約趣旨わが国でも大体満たされておりますけれども、なお若干現行法との間に抵触する問題がありますので、なお検討する必要があるというふうに私ども考えておるわけでございます。
  27. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いま御答弁のあったように、私、田村労働大臣と言いましたが、これは間違いました。原労働大臣だったと思います。  最近ILO理事会からの条約勧告適用専門家委員会から意見書が来ているはずですが、その意見書内容はどういう内容が重点になっておりますか、時間もありませんので、要点だけひとつ意見書内容お話しいただきたいと思います。
  28. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 簡単に申し上げますと、ILOは六月六日から開催されます今回の総会におきまして、条約勧告適用委員会が設けられます。それに提出されるべき資料といたしまして、条約勧告適用専門家委員会報告がきまったわけでございます。その報告の中身は、いわゆる八十七号条約及び九十八号条約わが国における実施状況に関連したものでございまして、主として公務員職員団体登録制度及び消防職員団結権団結禁止、この二点につきまして八十七号条約との抵触可能性指摘をしておりまして、その他若干の点につきましても制度の運用について意見を述べておるわけでございます。
  29. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そこでお伺いしたいのは消防職員団結権の問題、これは昨年総評の市川議長中心とするILOに対する団の派遣の場合にも、この問題がずいぶん議論になっております。国際的に見ましても消防職員団結権というのはこれはどこも大体認めていることなんです。そうすると、日本においてはいま意見書が来ているように、条約抵触する危険があるという意見まで来ているくらいでございますので、日本の場合においても消防職員団結権を与えるということは当然だと私は思うのですが、これは労働大臣いかがでございますか。
  30. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これは先ほどの一号と違って、私も前向きに答弁いたしたいのでありますが、まだなかなか困難な問題があって外国消防日本消防とは性格、行動、これが少し違いますので、政府においては、これに団結権を認める、こういうところまで意見が各官庁においてもまだきまっておりません。そういう意味で、適用専門家委員会でも、政府としては政府立場を大いに開陳いたしまして、今回は理事会でございますが、総会は少し岡田議員の御意見と違うような方向で説明するかもわかりませんが、いま政府として、大臣として、そのとおりだと、こう申し上げかねる点があります。もう少しILOの推移を見て、御趣旨も尊重したいが、日本の現状、ほかの消防と違いまして多少この点がまだ御趣旨に沿えないような政府見解でありますので、しかし最終的に総会でそういうふうに希望するという意見が出た場合には、これは大いにこれに対して慎重に対処いたすのでありますが、いまさっそく大臣がよろしいと、こう前向きの答弁ができないことを……。
  31. 岡田春夫

    岡田(春)委員 まさか日本の特殊性というお話で警察官の補助機関であるなどというお考えはお持ちにならないだろうと思うけれども、また、そういうことを他の役所でいわれていることに対して労働省がそれはやむを得ないというようなお考えではないだろうと思うけれども、やはり消防職員団結権の問題についてはできるだけひとつ善処をしていただくことを強く要望いたします。  それからもう一つ、意見書の中で、先ほど御答弁には内容として時間がなかったからお話がないと思うのですが、教職員の関係ですね。八十七号条約になると思いますが、その関係で日教組の登録団体としての問題。これは都道府県の教組は登録団体なんですね。ところが日教組だけは登録団体になっておらない。そういう問題が指摘をされたのだと思うのですが、こういう点についてはどういうように意見書に沿って改められるか、こういう点についてひとつ御意見を伺いたいと思うのです。
  32. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先ほど公務員関係職員団体登録制度と申し上げましたのは、先生指摘の教員をもちろん含んでおるわけでございまして、ILO八十七号条約は、労働者の利益を増進しかつ擁護することを目的とする労働者団体に対し、設立の自由それから代表者の選出その他運営についての自由を保障するというところであります。ところで職員団体登録制度というのは、登録職員団体に対し若干の付加的な利便を提供することによって職員団体の自主性、民主性の確保をはかろうとしておるものでございまして、非登録団体が登録団体と違って本来の交渉能力というような点で制限をされるというようなことはないというふうに考えておるわけでございまして、いずれにしましても、先ほどの問題も含めまして、いま出ております条約勧告適用専門家委員会意見と申しますのは、総会で、条約勧告適用委員会でこれから議論がなされます。そういった点については政府としてもいろいろ意見がございますので、関係各省を含めまして代表をただいまジュネーブに派遣をいたしております。そこで十分議論をいたしまして、その推移を見た上で私どもとしていろいろ考えていかなければならぬ。先ほど大臣からお答えしたとおりでございます。
  33. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは外務省の関係になるのですが、ことしの春アメリカの有力労働組合の代表を外務省が招請をしているはずなんです。これはたしか情文局がしているはずですが、どういう団体を招請しているのか。そういう点について、外務省から情文局長、来ていればひとつお答えいただきたい。
  34. 和田力

    ○和田(力)政府委員 外務省情報文化局といたしましてアメリカの労働組合の方を招待いたしております。実はリスト等を持ってまいりませんでしたので、こまかい人名等を記憶いたしておりませんわけですが、これは私どものほうの事業といたしまして、アメリカにおける日本理解を増進するというたてまえで、労働界のみならず、婦人団体等の方々も招待しております。労働関係では自動車のUA——ユナイテッドオートモビルですか、オートアソシェーションですかの副会長等も入ってきておられまして、できるだけ労働省のほうとも御相談申し上げまして、労働界並びに産業界を十分に視察していただいたつもりでおります。
  35. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そのとき来られたのは、消防組合——これは消防職員ですよ。消防組合の委員長ウイリアム・マッククレマン、それから郵政の組合の委員長、それからテレビ、ラジオのタレントの組合、それから国際機械航空ですか、それからUAW第一D地域委員長、五人の人を招待しているようですが、労働省に事前連絡がなかったのでしょう。労働省のほうは御存じなかったのじゃないですか。
  36. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 今回の招待につきましては御連絡がございました。
  37. 岡田春夫

    岡田(春)委員 連絡はあったのですか。
  38. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 はい。
  39. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかしこれは外務省でも御注意願いたいのですが、私らの聞いているのでは、労働省にも直前になって連絡があったのかどうか知らないが、あまり十分な話し合いがあって連絡になっておったとは聞いておりません。特に労働組合の関係についてもほとんど連絡がありません。総評関係も、この問題は日本に来てから知ったというような状態ですね。これはやはり日本の実情を理解するためにと、こういう目的であったかもしれないけれども、やはり労働組合の関係が来るならば、先に労働省なりあるいは関係労働組合に対して事前に連絡をし合って、そういう中でスムーズにひとつ運べるようにしませんと、経営者のほうとの懇談会はおやりになったようですが、労働組合との懇談会はおやりになったでしょうか、どうでしょうか。
  40. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 政府部内の連絡のことでまことに恐縮ですが、実はちょっといきさつがございまして、昨年も一ぺん外務省がお呼びになったわけでございます。第一回、このときは連絡がなくてすったもんだがございまして、今度は連絡してくれということで連絡をしていただいたわけですが、私どもとしましても、先生お述べになったような御趣旨から、外務省になるたけ余裕を持って十分御相談を願いたいということを申し上げまして、外務省のほうでもよくわかっていただきまして、今後はよく連絡をとってやろう、こういうことになっておりますので、今後十分連絡を密にいたしたいと思っております。
  41. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総評の関係などとの懇談会はおやりになりましたか。
  42. 森川幹夫

    ○森川説明員 今回の労組交流につきましては、外務省とも相談をいたしまして、労働省が窓口になりまして四団体の方々とは最初にお話し合いをいたしております。ただ、いま先生も御指摘になりましたように、ちょうど春闘の時期でございまして、総評の国際担当の方とは、電話連絡等ございましたが、当日やむを得ない用事で、ということで、十分当初の打ち合わせがしてなかったこともございます。したがいまして、総評さんとの御連絡がややおくれた点がございまして、一応御訪問はしておりますが、何と申しますか、十分に懇談するチャンスはなかったのではないかと思います。
  43. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私十一時半まででありますのでこれ以上質問できません。そういう点で役所の中の連絡の不十分という点は、特に先ほど官房長の言われたように昨年までは全然連絡がない、そこの点を若干改善されたということですが、しかし今後の問題もありますから、十分ひとつ外務省としても連絡をとり合ってやっていただきたい。  それ以外に大平外務大臣に対する質問があります。それから、きょうは機械防護に関する条約質問もあったのですが、時間がなくなってしまいましたので、その二つは留保いたします。とりあえず労働大臣に関する質問はこれで終わります。あとは留保しておきます。
  44. 藤井勝志

    藤井委員長 永末英一君。
  45. 永末英一

    ○永末委員 労働大臣に伺います。  四月二十七日の政府と総評春闘委との間の七項目合意文書の第三項に次のようにうたわれております。「ILO勧告、結社の自由委員会等の報告については理解し、慎重に対処する。」というのですが、「理解し」というのはどういうことですか。
  46. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 ちょっといま聞き漏らしたのでありますが、七項目の問題でありますか。——合意書のとおりで、公正に理解するというので、「理解」ということはもう文字のとおりで、大いに理解する、こういう意味でありまして、どうも的確に、「理解」はどうだというと理解するでありまして、これはちょっとなかなか国語学者でありませんので明快な答弁ができぬことをおわびいたします。
  47. 永末英一

    ○永末委員 国語学を聞いてはおりません。あなたは政府の一方の代表でございますし、ILOという機関に関係した項目でございますから。政府としては、なぜこんなところにILOを出したのでしょうか。その趣旨を聞きたい。
  48. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 政府といたしましては、七項目の合意の問題は、ILOの問題はあまり進んで出したという経緯ではありませんけれども、やはり春闘共闘委員会との政治的な折衝でありますので、先方からもいろいろな御要求があって、「ILO勧告、結社の自由委員会等の報告については理解し、慎重に対処する。」という文章、やはりこういう問題は双方からいろいろ意見が出されて、これだけはひとつ置いてくれというようないろいろな経緯がありまして、この問題には直接関係がないことがここに「報告については理解し、慎重に対処する。」という文章に落ちついたのであります。政府のほうからここに持ってきたというような経緯ではないことはあの当時の新聞の報道のとおりであります。
  49. 永末英一

    ○永末委員 新聞の報道を伺っているのじゃございません。政府見解を伺っているのでございます。いま妙なことを言われましたが、あまり関係のないことを——何が関係がないのかわかりませんが、理解といったっていろいろなやり方があるのです。この文書ではわれわれにはわからない。何を理解されたのか。「ILO勧告、結社の自由委員会等の報告」というものはあります。たくさんあるわけですね。長いものですが、この中でこの文書に書かなくてはならぬところとしてはどのような点を理解しておられるのか。
  50. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この三項のILOの問題は、いろいろ交渉の過程においてこういうような御要求がありまして、これをどういうように理解するか、どういうように対処するかというような詳細な話し合いも取りきめも、この文書のとおりでありまして、内容には立ち至っておりません。そういう意味で「理解し、慎重に対処する。」この文句のとおりでございまして、内容がどうだこうだ、政府はこう思って先方はこう思っておるというような中には、実際に、内実ともに立ち至っておらぬのであります。でき得べくんばというようないろいろな御意見政府部内にありましたが、こういう場合にはいろいろな政治的な配慮によってこの文章がここに出てきたと解釈するわけで、内容に至っては何ら触れておりません。
  51. 永末英一

    ○永末委員 いまお話を伺いますと、内実ともに立ち至っていないということであります。この簡単な文言でありますけれども、いかようにも解釈してよろしいということですか、それとも一義的にこれは受け取られるべきものなのですか、いずれですか。
  52. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 政府と共闘委員会との合意の七項目でありますから、これをどう解釈するかということについてはいろいろ意見がありますけれども、実際にどう解釈してもいいという意味でなく、この文章のとおりで、これ以上この問題——勧告の問題、条約の問題、技術教育の問題とか、ILOの場合には問題が伏在いたしておりますが、この文章のとおりで、あの当時両者においても何らこれに対して触れておらないのであります。そういう意味からいってこの文章のとおりうのみにする、こういう意味で、ことによったらそれはいろいろな解釈のしかたもありましょうが、この字句を大いによく玩味して対処する、こういう政府方針であります。
  53. 永末英一

    ○永末委員 ILOがここへ出る前に、労働問題というのは、ああいう官公労の場合には政府とその相手方の労働組合との直接の問題ですね。そこへILOが出てくる。その感覚の中にILOという機関と、政府労働行政を行なうにあたっての身がまえとをはかってみますと、私はちょっとずれておるのじゃないかと思うのです。そこで理解の度合いを伺いましたが、理解は理解であって内容がないというお話でございますから、この合意文書についての質問はその程度にしておきますが、そういう角度から、労働大臣は、あなたがわが国労働行政を進められるにあたって、ILOというものはどういうものだと理解しておられるのですか。あるいはそこで出てくる勧告、いま条約三権が書かれておりますが、条約というものは、日本政府との間でどういう関係に立つものか、あるいはあなたの所管の中で基準としていられる各種の労働法規がございますね、それとの関係を頭に思い浮かべつつ、一ぺんILOというのはどういうことなのか、どういうものだと承知しておられるか、理解をしておられるかを伺いたいと思います。
  54. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 ILOの問題は、五十周年以上にもなりますので、世界の正義、平和、労使のいろいろの問題の基準について、ILOが世界人類のために示すという高邁な精神でありますけれども、やはり日本には日本国内法がある。そういう意味で、国内法抵触しないものは条約批准をやっていく。またILO日本といたしましては、誠心誠意をもって大いに勧告にも会議にも参加して、いろいろ討議はいたしますが、これはやはりILOの御意見も大いに参考とし、これに理解を示すのも当然でありますが、日本労使関係労働問題が全部ILOの指示によって動くという広義の解釈もなかなか困難な点がありますので、先ほどから申し上げましたようにILOと協力して日本労使のあらゆる問題、福祉の問題の改善にこれを大いに活用したい、こういう方針であります。
  55. 永末英一

    ○永末委員 政府ILO会議に参加をしてある条約に調印をしてきますね、当事者の一人ですから。政府が調印をしたものを批准をしない。代表として調印をする、そういう調印をしたものを批准しない。批准しない理由は先ほどから伺っておりますと、国内法規がまだILO条約内容に合致していない、こういうことですね。そうしますと、調印した段階においては一体国内法規を改正するつもりでやったのか、それとも調印だけして改正はしないつもりでやったのか、この辺の考え方はどっちですか。
  56. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 国際労働条約採択するにあたりましては、各国政府としてそれぞれ態度を明らかにするわけでございますが、条約は非常に広い一般的、抽象的基準を定めるわけでございまして、そして大体においておおむねILOの目的からいたしまして趣旨が適正なものが多いわけでございます。そこでわが国の代表といたしましても方向としてはもとより賛同したい。ただし国内法との関連でいろいろ問題がある、抵触するところがあるというような場合には、それぞれ条項ごとに留保をつけて基本的には賛成という態度をとったりあるいは全体としては棄権という態度をとったりいろいろな態度をとるわけでございまして、したがって採択の場において賛成したからといって一がいにはわが国で直ちに批准するということにならないわけでございます。ただ先生指摘のようにできるだけそういう差のないように、条約の検討にあたっても原案をできるだけそごのないように直してもらう努力を最大限にいたしてまいりましたし、今後ともそういう態度でできるだけ批准をスムーズならしめることができるようにいたしたいというふうに考えます。
  57. 永末英一

    ○永末委員 さしあたって批准したいと思っておられる条約の名前と号数だけでけっこうです。それらについて調印のときに一体政府はどうしたのですか、それをあわせて説明してください。
  58. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいま御提案申し上げております百十五号、百十九号につきましては、いずれも採択の際に日本政府は賛成をいたしております。
  59. 永末英一

    ○永末委員 先ほどから少し問題になりましたようなたとえば二十六号、五十九号、九十五号、九十九号、百二号、百三号、百五号、百十一号、百十七号、百十八号、百二十二号、以上十一条の条約について政府はどういう態度をとられましたか、伺います。
  60. 森川幹夫

    ○森川説明員 百二十二号でございますが、政府は賛成をいたしております。それから百十八号につきましては棄権をいたしております。百十七号は賛成をいたしております。それから百五号につきましては棄権でございます。百二号につきましては賛成でございます。それから十七号につきましては棄権でございます。それから二十七号につきましては賛成でございます。残りましたのが……。
  61. 永末英一

    ○永末委員 もう一ぺん申しましょうか。二十六号、五十九号、九十五号、九十九号、百三号、百十一号。
  62. 森川幹夫

    ○森川説明員 百三号賛成でございます。五十八号賛成でございます。五十六号棄権でございます。  以上でございます。
  63. 永末英一

    ○永末委員 もう一ぺん言いますけれども、二十六号それから五十九号、九十五号、九十九号それから百十一号、この五つについて伺います。
  64. 森川幹夫

    ○森川説明員 六十三号から百号に至るものは、日本はちょうど何と申しますかILOに参加をいたしておりませんので他意はございません。  百十一号につきましては賛成でございます。
  65. 永末英一

    ○永末委員 いま賛成をされましたものについては、労働法規の改正を待っておるという態度ですか。
  66. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ILO条約批准につきましては条約国内法との関連が問題になりまして、そこでわが国政府としては二十八年に閣議決定を行ないまして、ILO条約批准に関連をして立法を要する場合は批准前に立法措置を講じ、これにつき国会の議決を求めることという閣議決定をいたしております。したがいまして、そういったものについて批准を行ないます場合にも立法措置が要るわけでございます。そこで逐次やってまいりました批准、たとえば一昨年にございました最低賃金決定条約批准、今回の労働安全関係批准、それぞれ法律改正を行なっては批准をしてきているわけでございます。そういう意味で、先ほど来問題になっております幾つかの条約につきましても労働基準法研究会等で検討を進めておると申し上げておるのもそういう意味でございまして、立法措置ができれば批准をしたいというわけでございます。
  67. 永末英一

    ○永末委員 二十八年にすでに閣議決定があったわけでございますから、その後のILO条約に賛成の態度を政府発表する場合には、これは立法措置を講じようということが前提にならなければ賛成になりませんね。したがって賛成したものについては、おおよその考えをすでに賛成の態度を出したときにきめておると思うのですが、それがあまり時間がかかり過ぎるのはなぜですか。
  68. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ものによりましてはたいへん時間がかかっておるというものもあるわけでございますが、要するに先ほど申し上げましたように、条約採択の場合は若干の留保をしても趣旨に賛成という意味で賛成投票している例がたくさんございますけれども、いざ具体的に国内で立法しようといたしますと、諸般の事情でなかなかそういった立法が進まないというような事情がございます。したがいまして、ものによっては先ほど申し上げましたように、逐次改正を進めて批准をお願いをしているものもございますけれども、ものによっては関係各省との合意その他なかなかできないというような事情もありまして改正が進まないというのがあるという点は御了承いただきたいと思います。
  69. 永末英一

    ○永末委員 労働大臣、あなた国際会議へ行くでしょう。それから日本政府側が賛成をして、そうして条約をちゃんと成立するために寄与して帰って、そしてよたよたとどうするかわからぬというので、国内法規の改正をしないで、そうして批准をしない、こういうことは国際的に見てどう見られると思いますか。日本政府というのは一体何をしているのか、そういうことが、たとえばわれわれの貿易努力が実を結んで、われわれの商品が外へ行きましても、そのためではないか、労働行政がゆがんでおるんだ、それがおかしいから条約に対して賛成をしておるけれども批准をしないんだ、批准日本の議会に求めないんだ、こう疑われていると思うのです。大臣どう思われますか。
  70. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 批准すれば当然国内法との関係もこれは整備されるのでありますが、ときには趣旨は大いにILOで賛成いたしましても国内法との関係で整備する必要がある、こういうので御注意のように、向こうでやや賛成してこっちに帰ってからごたごたするのでは信用を失墜するというのは当然であります。そういう意味でかような問題に対しましては関係政府の連中にも督励いたしまして御趣旨に沿うようにいたしますけれども、多少の時間がかかるのは、日本のやり方は、大体国内法批准とが合致したい、こういうような方針で、いままで批准した限りは必ず実行する。ほかの国のことはいろいろ申し上げたくないのでありますけれども批准してもいろいろな問題があることも聞いておりますが、日本主要メンバーとしてさようなトラブルがないように慎重に対処する関係上、御指摘のような矛盾撞着がありますけれども、これはなるべく御趣旨に沿うように善処いたしたいと思います。
  71. 永末英一

    ○永末委員 矛盾撞着をお認めになったので反省の色がおありだと私は思います。これは国際問題でございますから、やはり慎重にではなくて、賛成の意向を政府が固めるときには、これこれはやらなければならぬ、国内的にいろいろ問題はありましょうともちゃんとやっていくんだ、そして多少時間ではなくて大いに時間をかけ過ぎておるところに問題がありますから、急速にやっていただきたいと思います。
  72. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 御質問の御趣旨のとおり、これはだれから見ても常識の点でありますから、なるべく従来のように時間をかけるということのないように督励いたしまして対処いたします。
  73. 永末英一

    ○永末委員 いまはILO条約なり勧告なりの形で出します国際厚生労働基準等、国内法規との関係を伺いましたが、ILOの任務はそれだけでしょうか。私はほかにもう一つあると思いますが、労働大臣はどう理解しておられますか。
  74. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ILOの機能には、国際的な労働基準の設定というのが重要な機能でございます。もう一つは、特に最近になりまして技術援助、技術協力という側面が非常に出てまいっておるわけでございます。
  75. 永末英一

    ○永末委員 技術援助といいますと外務省関係のこともあるわけでございますが、いま官房長が申しましたようなILOがもう一つの任務としている発展途上国に対する技術援助というものについて、労働大臣はどういうことをやらねばならぬとお考えですか。
  76. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 いま政府委員から答弁いたしましたように、ILO条約勧告採択が従来は主でありましたが、戦後加盟国が相当多数になった、そうして実質的に技術協力、こういう問題がクローズアップされましたが、わが国もこの方針に従って、後進地域なり東南アジアの方面に対しましても今後は技術協力、この点はILO趣旨に沿ってウエートが条約勧告の問題が技術協力に転移いたしつつありますので、わが国ILOと同様、大いに関係諸国の技術協力に対しましては現在それが推進に邁進いたしております。技術協力と申しましてもまだ予算面とかいろいろな経費の面もありますので、本年度は大蔵省と相当折衝いたしましたが、今後はこの問題に相当なウエートを置いて善処いたす所存でおります。
  77. 永末英一

    ○永末委員 労働大臣の意気込みはなかなかけっこうでございまして、大いに推進に邁進しておると言われて、最後に大蔵省と折衝しまして予算面でむにゃむにゃということでございましたが、いま何をやっておられますか。
  78. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 いま話題になっているILOの技術協力の問題は二つございまして、ILO自身がやります技術協力活動、職業訓練とか労使関係産業安全、労働衛生、労働者教育、さらには失業、不完全就業というものにつきまして、ILOが東南アジアその他でいろいろな事業をやります。それにILOからも参加をする、わが国も協力するという側面がございます。  それともう一つ、ただいま大臣から申し上げましたように、わが国といたしましてもできるだけ国際協力の意味で努力をしなければならぬわけでございますが、現在やっております関係は、国際技能開発ということで例の技能オリンピック等に参加をする、あるいは青年技能者を海外に派遣する、あるいは労働組合の国際交流をやる、あるいは人的能力の開発調査をやるというようなことで、約六千七百万ばかりの予算でいろいろそういうものを現在はやっておるわけでございます。
  79. 永末英一

    ○永末委員 ことばは大きいのですが、六千七百万ということになりますときわめて規模が小さいですね。労働大臣、これはもっと大きくせねばならぬと思われますか。
  80. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 十四兆円以上の予算の中で六千何ぼでは少な過ぎるというのはそのとおりでありまして、方針としてはわが国自体の技術協力を各方面にしたい、こういうような方針労働省としてはその趣旨に従って今後やる所存でありますけれども、まだなかなかその方針のとおり予算的な裏づけがないということを遺憾といたしておりますが、今後は先ほど申し上げましたように大いにこの点に力をいたしたい所存でおります。
  81. 永末英一

    ○永末委員 大臣、意気込みはわかるのですが、それであなたのほうは昭和四十五年に国際技能開発計画なるものを出して相当な予算でやっていくんだといってわが国労働組合の諸君にも申されて、結局ことしはどうなったかというと、アジア労働情報センターなんということをいって、あなたのほうが所管しているかと思うとジェトロに所管させて、予算が二千六百万だ。これは意気込みはよろしいけれども、なぜちゃんと労働省はやらぬのですか。
  82. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 本年もこの問題について就任当時から関係当局に対して大いにやったのでありますが、いままで突破口を開いておりませんので、不満ながらと言ったら語弊がありますが、本年は御指摘のようにジェトロのほうで不満ながらしんぼうし、今後大いにやる所存であります。八月から予算編成の下準備もありますから、御趣旨を大いに尊重し、労働省もその方針でありますから大いにがんばりたいと思います。
  83. 永末英一

    ○永末委員 大臣ILOの精神に基づいて、労働省が後進国開発のためにこのような国際労働技術の面について新分野を開くというのはいいことだと思うのです。なぜいいことかと言えば、ILOの精神を一応日本政府部内で受け継いでやるのはあなたのところだからであります。しかし、それは外務省のいままでやっておる技術協力とけんかする必要はさらさらないのですが、しかしジェトロというのは全然別の目的で結成せられた公的機関ですね。そこへ、予算のやり繰りかどうか知りませんが、それをまかしてしまうというのは、羊頭を掲げて狗肉を売るどころじゃなくて毒を売っているようなものです、外国から見ると。こんなものは来年度からぴしゃっと改めて、このこと自体はすでにILO方針に合致した政府の措置と見なされないと私は思います。そこのところをちょっと……。
  84. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 もう御指摘のとおりでありまして、先ほど言ったように、本年突破口を開くためにとりあえずここの程度まではというので、これは政府内の意見と相違のようなことではありませんけれども、技術協力の問題がジェトロの片すみに置かれるというようなことは、これはもう不本意千万でございまして、本年は何とか御趣旨に沿うような線でやります。任期とかいろいろな問題、先ほども質問がありましたが、それまではがんばれると思いますので、御趣旨の線に沿って本年は、微力ではありますけれども全力をふるって御趣旨に沿うようにやります。
  85. 永末英一

    ○永末委員 大臣、日々これ好日でございますから、一日一日全力投球を願いたい。  さてその場合に、ILOそのものが三者構成ですね。したがって国外におけるそういう行政をしていただく場合、労働組合は労働組合として各国の労働組合とも交流を持っていることは御存じのとおりでございますから、やはり労働組合の参加ということをぜひ入れて行政をお進め願いたい。お答え願いたい。
  86. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先生指摘のとおりでございまして、わが国では特にいまの技術協力の関係につきましては、ILOの精神にのっとりまして政労使三者構成のILO技術協力推進連絡会議というものを持っておりまして、そこへいろいろ御相談をしながら職業訓練、あるいはただいまお話の出ましたようなインフォーメーションの問題、その他も御相談しながら進めてまいっております。今後ともますますその点を活用さしていただきたいというふうに思っております。
  87. 永末英一

    ○永末委員 大臣もその点について確認をしておいてください。
  88. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 政府委員から御答弁申し上げたとおりであります。今後大いに御趣旨のとおり努力とそして熱意を持ってやります。
  89. 永末英一

    ○永末委員 終わります。
  90. 藤井勝志

    藤井委員長 河上民雄君。
  91. 河上民雄

    ○河上委員 先ほど来しばしば論議になっておりますが、先日、わが国政府に対して、ILO専門家委員会より八十七号、九十八号条約国内における適用状況についての意見が出されましたけれども、この意見に対するコメントをまず初めに大臣にお伺いしたいと思います。特にここで日本に触れて強調されておりますことは、一つは公務員労働基本権の問題、これは再三前から国際的に問題になっているのですけれども、この点について政府はどのようにお考えになるか、今回の専門家委員会の意見書が出された段階でもう一度これを真剣に考えなければならぬと思うのですけれども、その点いかがでございますか。
  92. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先ほどからお答えいたしましたように、ILO条約勧告適用専門家委員会から意見が参っておるわけでございまして、これにつきましては、先ほども申し上げましたようにこの総会の条約勧告適用委員会で実質審議が行なわれるわけでございまして、その審議の資料としてこの報告が出されておるというふうに承知をいたしております。そこで、わが国としては関係国内法労働条約抵触するということはないというふうに信じておりますので、それらの点を今回の総会の委員会で十分説明をして、関係者の理解を得たいというふうに考えているわけであります。いずれにしましても公務員あるいは公共企業体の職員の労働関係基本に関する事項につきましては、御承知公務員制度審議会の審議にかかっておる問題でございますので、そういう審議の過程で今回の意見というものについても注意が払われるであろうということは考えられるところでございます。
  93. 河上民雄

    ○河上委員 それじゃ、いわゆる公制審でございますが、政府はいままでしばしば公制審で慎重に審議中であるという答弁をされておるのでございますけれどもILO意見書が出されました以上は、この審議を促進せしめることがILOに対する誠意のあかしといいますか当然とるべき責任だと思いますが、この点については大臣いかがお考えになっておりますか。
  94. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 適用専門家委員会で、いま理事会でありますが、これが総会に移って希望なり意見が出た場合に、この問題に対してよく注意して、この問題のILOの御趣旨を慎重に善処することは、これはもう公制審も当然そういうような方向でいくことは考えられますので、やはり公制審は国内の独自の機関でやっておりますが、ILOの動向いかんも大いに参考といたしまして、意見になりましたような方向にいくことは当然と思います。
  95. 河上民雄

    ○河上委員 先ほど岡田委員からも御質問がありました点でありますけれども、今回の意見書の中に特に消防職員の問題が言及されております。「本委員会は、消防職員の職務が軍隊および警察に関する本条約第九条に基づいてこの種の労働者を除外することを正当化するような性質のものであるとは考えない。」こうなっておるのでございますけれども、先ほどの御答弁では消防職員を依然として適用から除外するような意向を示されておるのですが、一体この勧告といいますかこの意見書をどういうふうに考えられるおつもりですか。
  96. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 消防職員団結権につきましては政府は従前からただいまお示しのILO八十七号条約第九条の警察の概念に含まれる、こういうふうに理解をして進めてまいりましたし、またILOの結社の自由委員会におきましても、二度にわたってそのような政府見解を支持をしてきたという事実もあるわけでございます。政府がそのような理解をしてまいりましたのは、おそらく、その理由としては三つほどの理由があげられるだろうと思うのでございます。  第一番目は、わが国消防昭和二十三年に警察から分離をいたしましたけれども、沿革的に警察組織の中に含まれてきていたというその沿革ということが一つであろうと思います。  それから第二番目に、消防の営みます法制上の権能と申しますかたてまえから申しまして、なるほど消防職員は警察職員のように市民を逮捕をするというような権限はございませんけれども、あるいは道路の優先通行権でございますとかあるいは交通の遮断の権限というようなものは警察職員と同じように与えられておりますし、また、他人の土地、建物に立ち入る権限でございますとか、あるいは非常の場合には家屋を破壊をする権限、警察職員にはないような権限も与えられております。そういうようなことで、警察と同じように公共の秩序を維持するという強制的な権限を与えられているということが第二番目の理由であろうと思います。  第三番目には、運営の実態と申しますか、そういう点でございまして、消防職員は、御承知のように厳格な規律のもとに部隊活動をいたすわけでございます。そういう点が団結権というものとなじまないという考え方であろうと思うのでございます。  そういうような考え方から、従来から、消防職員ILO八十七号条約の第九条に申します警察というような概念に入るという考え方をいたしていたわけでございますし、現在においてもそういう考え方をいたしております。  ただ、先ほど労働大臣の御答弁もございましたけれども、この問題につきまして、ILOの総会そのほかの委員会で今後議論が行なわれるわけでございますし、また公務員制度審議会におきましても、政府関係の機関としてそれについての議論が行なわれるわけでございます。私どもといたしましては、その方面の議論なども見ながら慎重に対処をしていきたいと思っております。
  97. 河上民雄

    ○河上委員 いま消防の責任者の方から御答弁ありましたけれども、確かに日本では、警察から分離して現在の消防ができたという過去の経緯はあると思います。しかし、このILOというものの精神は、それぞれの国の過去のいろいろな経緯にもかかわらず、やはり労働者の権利というものを保護して拡充するために一つの基準を設けていく、そしてそれに各国が従って順応していくというところにあるわけで、いままでなじまないということを理由に変えていかないと、ILOというものは実際基本的に成り立たないと思うのです。したがって、今回こういう意見書が出たということを、もしいまの御答弁を本気で考えられているとすればなおのこと、重大に受け取らなければいけないんじゃないか、私はそう思うのですが、大臣いかがでございますか。
  98. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 消防職員といっても労働者でありまして、基本的三権のことも当然でありますけれども、国民的立場とか国家全体の国民の利益というような見地から見まして、今回のILOの希望も、入国管理官、海上保安庁は認めないけれども消防職員は、というような希望が出ておるのでありますが、しかし、日本消防職員の職務は、決して警察官と同様であるとは私は考えておりません。しかし、いま長官からるる話があったように、なかなか困難な事情もありますので、いま理事会でありますから、総会の結論を待って、そして、これは労働者でありますから労働省がこれの指針を与えるという議論もありますけれども、やはり各関係と、また公制審のほうの関係もありますので、先ほど岡田委員からの御質問に、前向きでよっしゃと言いにくいという御答弁を申し上げましたが、なかなか微妙な点がありますので、この際まだ結論的な見解を私から申し上げかねる点を、なかなか御了解しにくい点もありましょうが、ひとつ御了解を願って、今後推移を見て善処し、よく協議して慎重に対処いたしたい所存であります。
  99. 河上民雄

    ○河上委員 加藤労働大臣はたいへんすっきりした御答弁をされる方と思っておるわけでございますので、ひとつ第一号条約のようにすっきりした答弁をあらゆる条約についてしていただくように希望したいと思うのです。  いまの消防庁長官お話ですと、消防という活動は、一体治安活動なのか地方自治体のサービス活動なのか、その点がまだ非常にあいまいなような気がするのです。私はやはりこれは地方自治体のサービスの一環として消防というものは行なわれるべきではないかと思うのですが、その点がどうも非常にあいまいであるような気がするのですが、その辺をもう少しはっきりしていただいた上で、いま起こっておる過去の経緯というようなものを解消していくように努力されないと、警察の補助機関という観念を残しながらILO基準と合わせようといっても非常に無理じゃないでしょうか。その点いかがですか。
  100. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 もちろん警察の補助機関ではございませんで、警察組織と消防組織は独立をいたしているわけでございます。しかし消防関係の法令を見ましても、やはり消防の任務といたしましては公共の秩序を維持するということが最終の目的でございますし、また消防組織法でも警察と消防とは相互に協力をして職務を進めなければならない、こういう規定があるわけでございます。もちろん、消防の職務といたしまして、それが治安活動かサービス活動か、私はどうも学問的にそう詳しく御答弁を申し上げる能力もございませんけれども、サービス活動の面もあれば、公共の秩序を維持するというような治安を維持するという面も持っているわけでございますので、一がいに消防の営みます機能がすべてサービス活動であるとか、あるいはすべて治安活動であるということにはなかなか割り切れないのではないか、こういうふうに考えております。
  101. 河上民雄

    ○河上委員 いま長官、そう言われましたけれども、これは諸外国はどういうふうになっておりますか。ことにさっき岡田委員からも御質問がありまして、外務省の情報文化局がアメリカの労働団体の委員長というか、そういう役員の方を呼ばれたということでそのリストが披露されたのですけれども、先ほどのお話によりますと、外務省と労働省と連絡が悪いということでしたが、しかしあの中に消防労働組合の委員長が入っているのですね。これは日本政府が、消防の署員というのは労働者である、それは労働組合をつくる権利があるというふうな前提に立ってないと、こういうことはできないと思うのです。特にわずか五人しかいない中に消防労働組合の委員長を呼んでおられるのですね。外務省と労働省あるいは自治省の見解はだいぶ違うようなんですけれども、こういうことは、ことにILOというような国際的なレベルでの問題を取り扱う場合に非常にまずいのじゃないかと思うのです。私はやはり、政府はもうすでに、消防署の署員というものは労働者である、労働組合をつくる権利があるんだという考え方にもう片足くらい入れている証拠じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  102. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいまお話のありましたアメリカの組合の招待の件でございますが、これにつきましては向こうのAFL・CIOに一括推薦方をお願いいたしまして出してまいったものを受け入れたわけでございまして、別にわが国のほうでしかるべき予断があって産業別にこれこれの人ということを申し上げたわけではないので、その点は誤解のないようにお願いしたい。
  103. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 ただいまのアメリカのお話は、労働省の官房長から答弁がございましたけれども、私ども実は承知をいたしておりませんでしたので、それにつきましてはこれ以上御答弁を申し上げられないと思います。  それから、諸外国消防職員団結権の問題でございますが、消防の組織につきまして多くの国がわが国と同じように自治体消防というたてまえをとっておりますけれども、中にはたとえばフランスのパリやマルセイユのように、軍隊が消防の機能を営んでいるところもございますし、あるいは警察の機能の中に入っているところもございます。そういうことで、必ずしも私ども統一的な資料を手元に持っておりませんけれども、いま持っております資料でその辺のことを御説明を申し上げますと、一つは公務員制度審議会が海外調査をいたしましてそのときのレポートがございますが、これによりますと西ドイツ、フランス、イギリス等の諸国は消防職員団結権を与えております。それから、ILOで八十七号条約加盟国から報告とってまとめたものがございます。これも必ずしも全部の国が回答を寄せているわけではないようでございますけれども消防につきましては完全な明文の規定によりまして団結権を認めておりませんのは日本を含めて三カ国でございます。
  104. 河上民雄

    ○河上委員 その三カ国というのは日本のほかあとどことどこでございますか。
  105. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 この報告によりますと、日本とキプロスとナイジェリアということになっております。
  106. 河上民雄

    ○河上委員 そうするとそれ以外は大体認めているというふうに判断してよろしいわけですか。今回のこのILO憲章改正が出ておりますね。それによりますと憲章改正には十大主要産業国意見というものが非常に大きく取り扱われることになっているのですね。主要産業国の中でこれを認めてない国というのはどこだけですか。
  107. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 ただいまの憲章改正で十大主要産業国——どうもその辺につきまして私全く知識が乏しいものでございますので、お答えすることができませんのは残念に思いますが、しかしただいまの資料から申しますならば、おそらく主要な国々においては消防団結権を認めている、こういうふうに推定すべきだろうと思います。
  108. 河上民雄

    ○河上委員 労働大臣お聞きになったと思うのですけれども、これはやはり日本ILOに対して相当重要な役割りを果たそうという先ほど来の御熱意でございますが、こういう消防一つを取り上げてみましても、ILOをささえるべき十大主要産業国、議決の上でも特権を与えられているような国、その中で消防の署員の団結権を認めていないのは日本だけである、こういう事実をもう少し、大臣重視せられる必要があろうと思うのです。そういうことを考えてみますと、今回の、先ほど私が読み上げました専門家委員会の意見書というものはかなり重大な意味を持っていると思うのです。大臣、いかがでございますか。
  109. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 適用専門家委員会意見、希望これは十分わかっております。これは私がいま拒否したいというような意思でもありませんし、ただ、日本消防と各国の消防との任務の、また行動のいろいろの相違の点もありますし、いま理事会でありますから、これが総会にかかって、ここで政府なり各関係労働者側のほうの意見も開陳して、そこで大いに検討して、これが相当な結論めいた意見が出てくると思いますが、その意見が出た段階において、よく労働省としてもひとつ腹を固めたい。いまのところで明快にこの希望どおり進みますということができない点を遺憾といたしますけれども、いまは途中の段階でありますから、政府部内の意見が不統一になっても困りますので、いま私からもかような点も申し上げておりますが、ただ外国が、相当主要産業メンバーがやっておるからだけでも断ぜられない。日本の特殊性の消防の任務の立場もありますので、もう少しILOの審議の進行過程、結果を見ましてからこれに対するいろいろな私の意見も申し上げたい。いまのところは、きょうはこの程度でひとつごしんぼうを特にお願いいたします。
  110. 河上民雄

    ○河上委員 加藤労働大臣のしんぼうしてくれということでございますけれども、横井さんじゃないですけれども、恥ずかしながら主要国でただ一つというこの状況を、やはり大臣も胸にこたえておられように私は思うのですが、これはきょうの質疑はいわばしんぼうできても、状態はしんぼうできないわけですが、これはもっと真剣に考えていただかないと、これは一消防の問題だけでなく、ILOに対する日本の態度そのものが諸外国から非常に疑われることになるのではないかと思うのであります。日本ILOに対する誠意を示す一つのテストケースとして、この問題に真剣に当たっていただくことを強く望みたいのです。大臣消防の任務が違うと言いますけれども、火事の性質はあまり違わないのではないかと思うのです。日本もアメリカも任務はそう変りないと思うので、その点を十分考えていただきたいと思うのです。  先ほど来同じようなお答えでございますので、ちょっと話題を変えますけれどもILO、今度は三案件を審議しているわけですが、労働大臣としてはILO全体の性格というものについてどういうようにお考えになっているか。一九一九年に創立された当時のILOというのは、いわゆるヨーロッパを中心としたものだったと思うのでありますけれども、その後いわゆる共産圏といいますか、社会主義諸国、それから発展途上国というようなオリジナルメンバーからすれば異質の加盟国がだんだん増加しているわけです。この段階ILOの任務というものをもう一度再検討といいますか、新しい観点で見直す必要もあるのではないかという気もするのでございます。もちろんILOがきめた、要求しております基準日本ができるだけ早く到達するということも必要でありまして、それをおろそかにしてはならないのですけれども、同時に、いま新しい時代、一九七〇年代に立って、今後ILOというものはどういう働きをするだろうか、またすべきであろうかというようなことについて、やや哲学的かもしれませんけれども大臣のお考えを伺いたいと思うのです。
  111. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 ILOの任務は、もう御承知のとおり、私から申し上げなくても、国際正義と平和の高邁な精神でやっておるのでありまして、これは先ほどもお答えいたしたとおり、条約批准勧告採択、国際労働基準の制定、これが主要な任務で、日本もその趣旨に従って——先ほどから各議員からの、もう少し日本ILO意見を尊重して、批准もやれ、技術もやれ、協力もやれ、こういう御趣旨は、日本の国際的地位の立場から考えても、主要メンバーでありますから、今後憲章趣旨に従って大いに前進いたしますことは、これはもうやぶさかではありません。ただ、いろいろ日本国内法その他の整備の関係で、批准したことは必ず実行するという日本の主義からいっても、ちょっと足らぬじゃないかという御指摘の点もありますが、これに対しまして、ただ検討でなく、ILOの精神に沿うように鋭意対処いたしたい所存であります。
  112. 河上民雄

    ○河上委員 先ほど大臣は、日本人はいままで働き過ぎるというようなことばを述べられたのでありますけれども労働の観念というものについてどう考えたらいいのか、日本としてもいま一つの曲がりかどに来ていると思うのです。また、ILOのように資本主義国と社会主義国、あるいは発展途上国というようなものが同居している組織の中で、労働という問題を共通の立場で取り扱うわけですけれども、それだけにまた労働の観念というのは、日本としてもこの際明らかにしておく必要があろうと思うのです。働くということをどう考えるかということですね。大臣、ちょっと伺いたいと思います。
  113. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 まあ昔のわれわれの時代の観念と最近の労働の観念というものは、相当な変革というか、進歩いたしたことは間違いありません。そういう意味で、これは質問外のことでありますが、日本賃金関係は相当向上いたしておりますが、福祉の問題、労働条件の問題、また勤務時間の問題、かような問題は、やはり従来の労働行政の立場労働というものの貴重な精神からいきまして、働くことも大事でありますが、やはり本来の人間としての生活、こういうような両面が最近日本の一つの定説でありますので、ただ黙々として生産向上のために働け、国のために働け、こう言うばかりでは、私は今後の労働行政は間違っておると思います。やはり大いに働くが、大いに人間としてのいろいろな要求を享受する、こういうような立場で、勤労の精神も相当定義が変革を来たしておることは当然であります。
  114. 河上民雄

    ○河上委員 そういう意味では、週休二日制についてはどういうようにお考えですか。
  115. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 先ほど御説明申し上げましたように、まだ週休二日制については全国民、各企業、中小企業とも全部が真の理解は得ておりませんが、さような精神、世界の趨勢から見ましても、やはりこれはもう実行の段階に移っていっておる。労働省といたしましても、法律というわけにはいきませんが、週休二日制は目玉商品として実行していきたい、かような意味で各方面に対する行政措置を講じております。さような意味で、大企業では相当これが進行いたしまして、全従業員の関係から見ますと相当な——ここ一カ月くらいの統計が出ておりませんけれども、三〇%以上の、ことによったら三五%以上の進行が現実の姿となってあらわれております。  ただ、週休二日制については、一律にこれを行なうということは、中小企業、零細企業、販売業、国民の生活に密着いたしております。労働者も大事であるが、国民全体も大事である。やはり国民も考えなくてはならぬ。また特に零細企業においては脆弱でありますから、いまさっそくその方針のとおり実行せい、こうなった場合にもいろいろな難問題がありますから、さような中小企業、零細企業、国民の立場ということを考えまして、先ほど閣議で決定いたしました雇用対策基本計画に基づいて、当面五年間で大体これが実施に移していく方針であります。
  116. 河上民雄

    ○河上委員 いま大臣からそういうお答えがありましたけれども消防庁長官にもお伺いしたいのですが、いま消防署の職員の勤務の形態は一日交代ですか、何交代制になっておりますか。
  117. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 消防職員の勤務形態でございますが、大部分の消防職員は、ただいまおっしゃいましたように一日交代と申しますか、二十四時間勤務いたしまして、それから翌日休息日と申しますか、そういう勤務をいたしております。ただ、東京消防庁等の都市消防のうちのごくわずかでございますが、これは三部制というような勤務形態をとっております。
  118. 河上民雄

    ○河上委員 現場の消防署の職員から聞きますと、非常にへんぴなところは別としまして、都市の消防署においてはかなりきついような声も非常に強いわけです。いま週休二日制について労働大臣お話もありましたけれども、こういうことについて、もうすでに東京の一部では三部制というようなお話でございますが、こういうことをもう少し、まず都市消防、それから全国的に広げていくお考えはありませんか。
  119. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 おっしゃいますように、ただいま週休二日制を実施いたしますと、ただいまの政府考え方も、人間をふやさないで週休二日に移るようにというのが基本考え方のようでございます。警察もそうでございますが、ことに消防職員につきましては御承知のような勤務態様でございますので、週休二日制を実施いたしますと、かなり増員を考えていかないと実現がむずかしゅうございます。増員を考えなければサービスが落ちるということになるわけでございまして、ただいまでも必ずしも消防の機能を果たすという点においては十分でもございませんので、そういう点から申しますと、週休二日制を実施いたしますためにはかなりの増員を考えていかなければならない。それにつきましては、現在私どもも研究をいたしておりますし、全国消防長の会議等とも連絡をとりながら、はたしてこの問題をどう受け入れていったらいいかという研究をいたしておるわけでございます。その一つの過程といたしまして、ただいまおっしゃいましたような、特に都市部等につきましてはいわゆる三部制をとっていくというようなことも重要な問題であると思いまして、そのことも検討事項の中に加えているわけでございます。
  120. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 ちょっと落としました。中小企業と零細企業のことを、ちょっと質問外のことを申し上げましたが、公務員、公共企業体職員、これは国民に奉仕するという立場、それから定員の問題などで、消防職員だけに週休二日制をやるというところまでいま進んでおりません。公務員の問題、消防も同様でありますが、関係閣僚でこのことに関しましてはいま研究中でありまして、まだこれをすぐに実施というところまでもいっておりませんので、消防職員だけを切り離して週休二日制をやれというのも現段階においてはなかなか困難な立場もあります。方針はそうでありますが、公務員なり消防、その他警察もまた同様でありますが、実質的に国民によく奉仕する立場、予算の関係、その他の関係から考慮いたしまして、まだ何カ月、何年先にやるという段階に至っておりませんので、消防職員だけを爼上に乗せるということも——できるだけその方針でいく所存でありますけれども、まだ実施段階にはなっておらない。いま連絡会議で鋭意研究中でありますので、ひとつ御了承願いたいと思います。
  121. 河上民雄

    ○河上委員 消防のことを申し上げましたのは、一つは、消防の場合警察から分かれたという過去の経緯から、労働者の権利が非常に制約されておるにもかかわらず勤務形態は非常にきつい。ある意味では警察よりもきついというような場合もあるわけでして、そういう矛盾ですね、権利と実態の谷間にあるのが消防ではないかという気がするわけでございます。そういう問題を中小企業、大企業はもとよりでありますが、公務員労働者の権利という問題の一つに考えていただきたいのが私の願いでございます。  きょうは消防そのものをテーマにしておるわけではございませんのでこの程度でやめておきますけれども、先ほど来申し上げましたように、ILOには一九七〇年代に入りましてから、従来の自由主義先進諸国圏だけではなくて、いわゆる社会主義諸国、それから発展途上国がますます入ってくるわけですが、日本としては南北問題に対し特にILOの舞台で貢献すべき点が多いと思うのです。先ほどここで他の委員によって論議せられましたが、実態は労働大臣の熱意にもかかわらず、緒についたというか、まだまだほとんどとるに足らない状態ですけれども、今後どういうふうにされていくか。つまり、開発途上国の人々に生産的な雇用と訓練の機会を与えるような、そういうような面で日本が奉仕する道ということについて大臣はどういうようにお考えになっているか。またILO全体としてこの問題をどう取り扱ったらいいか。その目的をさらに推進するためにILO自体の機構、組織の改革なども必要ではないかと思うのですが、そういうようなことについて日本政府としてお考えになっているところがありましたら聞かしていただきたいと思います。
  122. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 南北問題がたいへん重要になってまいっておることは御指摘のとおりでございまして、このたび批准をお願いしております憲章改正どもそういう意味で、多数の開発途上国の人もできるだけ理事になれるように理事の数をふやすというようなところにねらいがあるというふうに伺っているわけでございます。ILO自身も、先ほどお答えしましたように、条約勧告採択と並びまして、まさに技術協力というものを重視するというふうになってきておるわけでございまして、職業訓練、労使関係産業安全、労働衛生、労働者教育というようなことをずっとやっておりますが、特に最近では発展途上国における失業及び不完全就業の緩和という観点から、人的資源開発、雇用促進関連分野というものに重点を置いて考えているわけでございまして、特に東南アジア地区につきましては労働力開発計画というようなものも行なわれておりまして、わが国としても積極的にそういうものに参加をしてやってまいっております。したがいまして、ILOの事業としてそれに対してわれわれが協力をする。同時に、先ほど申し上げましたように、わが国独自の立場からもそういった面をできるだけ今後伸ばしていかなければならないというふうに考えているわけでございます。
  123. 河上民雄

    ○河上委員 ILOの機構を、今度の憲章改正で機構改革というわけじゃありませんが、一部の修正が行なわれるわけですけれども、何といいますか、ILOの財政の負担のシステムといいますか原則というのはどういうふうになっておりますか。そのことを最後に伺っておきたいと思うのです。  たとえば国連の場合は、財政の分担率というのはいろいろ原則がありますけれども、その国連の専門機関でありますILOが全く同じであるか。違う点もあると思うのですけれども、違う場合はどういうことになっておるか。特に今度発展途上国の代表をそういう理事といいますか、理事国にするというような配慮をしているわけでございますけれども、発展途上国の権利義務の立場から見て、そういう点に重点を置いてちょっと御説明いただければ幸いに思うのです。
  124. 森川幹夫

    ○森川説明員 お答え申し上げます。  ILOの財政でございますが、これはほかの国際機関と同じように、政府が負担するわけでございます。政府の負担のしかたでございますが、ILOも他の国際機関と同じように、国連の決議にのっとりまして、まず国際連合できまっております分担率に近づける、こういう方向で処置をしているわけでございます。と申しますのは、国際連合の加盟国数とILO加盟国数は違います。たとえばスイスなどはILOには加入しておりますが、国際連合には加入しないという関係がございますので、国連の分担率との若干の乖離がございます。これをそもそも近づける方向で各国協力をするわけでございます。特に発展途上国などにつきましては、財政負担が困難でございますので、最低の分担率、もちろん先ほど申し上げました国連の分担率等を見ながら、最低の分担率を国際連合に近づけて、少し下げていく、こういう方向でやっておるわけでございます。
  125. 河上民雄

    ○河上委員 私がお尋ねいたしましたのは、ILOの分担率が国連の場合と若干違って、国連の場合は、まあ金のある、資金の多い、財力のある国はたくさん出す。そうでない国は少なくて済むというのに対しまして、ILOの場合はかなり平均、平等に近い形で出すように聞いておる。平等でないかもしれませんが、そういう形で出すやに聞いておるわけです。そういうことが発展途上国にとっては非常に負担になるではないかというおそれがあるわけでございます。これはどちらがいいのかは非常にむずかしい問題でございますけれども、しかし現実の財政負担能力というものを考えました場合に、発展途上国の一そう活発な活動を期待する意味で、こういう問題をどうしたらいいかというようなことをお考えになっていますか。従来そうなっているのだからしようがないということになっておるのか。政府として少しそういう点も、非常に実務的なことですけれども考えるべきじゃないかと私は思うのでございまして、御質問したわけでございます。
  126. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 まさにそういうことが問題でございまして、したがいまして、いま担当課長から申し上げましたように、分担率を次第に国連並みに直しておるわけでございまして、わが国の場合で申し上げますと、昭和三十九年には、日本の分担率は二%でございましたが、四十八年度は三・九三%まで上がっておるわけでございます。国連の分担率が五・〇五でございますので、何年かかけて、そこへ追いつこうということになっておるわけでありまして、私どものほうも財政当局にも極力説明をいたしまして、そういう方針にのっとりまして措置してまいるという方針でいるわけでございます。
  127. 河上民雄

    ○河上委員 よくわかりました。  たとえば発展途上国など、ひとつ代表的な例を、さっき消防団結権を認めてない国にキプロス、ナイジェリアなど出しましたけれども、その辺はどのくらい受け持っておるのですか。
  128. 森川幹夫

    ○森川説明員 いまの全加盟国の分担率でございますが、恐縮でございますが、手元に百二十三カ国の分担率を持っておりませんので、後ほど調べてお答えいたしたいと思います。
  129. 河上民雄

    ○河上委員 それはあと資料をいただきたいと思いますけれども日本はそういう財政分担率を上げるように努力されるとともに、やはり肝心のILO条約批准率のほうも上げる必要があろうと思うのです。ひとつそのように希望いたしまして、労働大臣に対する質問をこの辺で終わりたいと思います。
  130. 藤井勝志

    藤井委員長 柴田睦夫君。
  131. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ILO条約に対する政府の態度について、最初にお尋ねしたいと思います。  今回のILO憲章改正は、理事の増員をするということにあるわけですが、こうした中で日本が世界的な産業国家として、それは同時にまたILO常任理事国として、今後日本がどういう役割りを果たしていくつもりであるか、そのために日本労働者保護の問題などについてどういう態度をとっていくか、基本的なことを、労働大臣に最初に伺いたいと思います。
  132. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 御質問の御趣旨はよくわかりますが、今後やはりILOというものが国連の一部の機関として国際労働協約の制定、そして人類の平和、そしてまたひとしく人間平等の権利を享有するというような、第二次大戦以後の世界の趨勢に、高邁な精神に日本も共鳴いたしまして、一時は脱退いたしましたが、喜んで参加いたしまして、今後条約なり勧告なり、また技術協力なり、かような問題に対しましては、主要メンバーとして、今後ILOでその憲章趣旨を体して労働者立場、いろいろなことを向上するようにしていく所存であります。
  133. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 いまの御答弁を前提といたしまして、いま審議されております百十五号条約、これがILO総会で採択されたのは十三年前、もう一つの百十九号条約は十年前に採択されたものですが、これらが十年、また十年以上たったいま、国会に批准求められている。この間の経過について、あとお尋ねしたいのですが、まずこれらの条約が総会において採択されるとき、政府の態度は先ほどお伺いいたしましたけれども日本の政労使がどういう態度をとったか、このことからお尋ねいたします。
  134. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 今回批准をお願いをしております百十五号条約及び百十九号条約採択の際には、日本政府、それから使用者労働者、各代表とも賛成をいたしております。
  135. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 日本の政労使とも賛成した条約が、十年以上経た後に批准されるということにつきまして、今日に至るまで、すなわち批准に至るまで、政府のとった処置、この十年、また十三年間へどういう対策を講じてきたか、この経過の要点をお伺いしたいと思います。
  136. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 この条約採択されまして以降、この条約批准につきましていろいろの実現のための努力をしてまいりましたけれども、御案内のように、たとえば百十九号条約について申しますと、単にユーザーの段階、すなわち事業主の工場で使う段階でなくて、それをつくりますメーカーの段階で、特定の危険な機械につきましては、譲渡、賃貸あるいは展示を禁止しておる。私たち労働行政の範囲で言いますと、労働行政の範囲以上のことをこの条約では要請をいたしておるわけでございます。  もちろん本質安全といいますか、安全を全うするためにはこういう趣旨が必要でございまして、われわれこの実現につとめてまいったわけでございますが、従来の基準法のたてまえからは労使関係以上につきまして規制をすることがきわめて困難である、こういうところがございまして、昨年ようやく、最近におきます人間尊重といいますか、そういう時代の要請あるいは労使の御理解も得まして、単に事業場内の安全衛生だけではございませんで、メーカーの段階でやはり危険な機械をつくらない、そういうものを譲渡しない、売らない、こういうところまで規制をすべきではないか、こういう意向が出てまいりました。その趣旨に沿いましてようやく昨年労働安全衛生法を制定しまして、危険機械につきまして譲渡、展示の段階で規制をすることができました。その間十年近く日時がたちましてたいへん遷延をいたしたわけでございますけれども、そのような特殊な事情もございますので御了承をいただきたいと思います。
  137. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 十年以上という期間は非常に長いと考えるわけなんですけれども、一つは日本の憲法が確立された国際法規を順守する、また日本が国際社会の一員として名誉ある地位を占める、こういう宣言をしておりますし、しかも現実には日本の生産力は世界の第二位、第三位、こういわれておりますし、この日本が国際社会において占める地位と責任からいっても、こうした労働者保護条約について十年以上という長い期間の後に批准される。しかも電離放射線問題にいたしましてもそれらの事故が過去にたびたび起こっておりますし、そういう中で十年以上たった今日批准されるわけなんですけれども、この点について私はやはり政府の積極性に欠ける面がある、こう思うのですが、大臣見解はいかがですか。
  138. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この百十五号並びに百十九号はもう少し早く批准いたしたかったのでありますが、この機械防護に関する問題、これも機械にいろいろ巻き込まれるとかというような事故があるとか、こういうような点がまだ日本国内法では昨年新安全衛生法ができるまではなかったのであります。また、この販売とかこれを他に流用するということの禁止規定もなかった。こういうような点で、安全衛生法ができましてからもうこれは当然やってもいい。御指摘のように少しおそきに失した感が私もあると思います。また、電離放射線というのでありますが、これも新しい分野でありまして、今後婦人のいろいろの母体の保護とか、また医学その他科学が進歩するにつれてこれも人命尊重の立場からいくと重大だ。こういう意味で今回これが国会の御承認求めたのでありまして、今後労働者の健康の管理その他に対しましても、これを契機にいたしまして相当改善されることを期待いたしまして、皆さんの御協力を得てできるだけすみやかに御決定願うことを心からお願いいたしまして、今後ほかのあらゆる問題に対しましても鋭意前向きで批准の問題も検討いたしたいと思います。
  139. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 戦後日本ILOに復帰したわけですけれども、戦後つくられた労働関係の法律、たとえば労働基準法を見てみましても、労働基準法がつくられるときに、これは戦前に採択されておりました国際労働条約内容をこの国内法に織り込む、こういう説明がされております。しかし、日本国内法は非常にただし書きや例外条項が多過ぎる、こういう批判があるわけです。労働安全諸法規の問題を見てみましても、やはり同じようにただし書き、また例外条項が非常に多いわけで、そういうことから見ますと、日本労働基準法などはILOの表面的なものは取り入れているけれども、ほんとうにILO条約内容を結晶化するというには至っていない。このことはまたILO条約に対する日本政府の態度と一体をなして、日本政府の態度が非常にILOに対しては消積的である、こういう批判が多くされておりますし、私もそう思う者の一人ですけれども、こういった批判についての政府の御見解をお伺いします。
  140. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 労働行政の全般で、基準法の問題が、ILOの見地から見ましてもこの労使関係でももう相当古くなったし、安全衛生法ができたけれども、まだ時間の問題その他いろいろの問題が山積いたしております。決して金科玉条で、現在のこの基準法を墨守していくという方針でありません。いま学識経験者、各方面の方を網羅いたしまして研究会をつくって、何とか新時代に即応したような基準法のひとつ改正に進みたい、こういうつもりでこれがすなわちILO条約批准とかいろいろな問題にも重大な関係がありますので、研究会で大いに検討いたしておりますので、ただこれがよく役所仕事で、審議会とか研究会でやっておるという逃げ口上でなく、ほんとうに週二回やりまして、相当真剣にいま検討中でありますので、近い将来にこれが改正方向に進みたいという所存であります。
  141. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 いままでILO条約日本労働法との関係からいって、日本の国の特殊性だということをいわれておりましたけれども、この特殊性がやはり日本の政治の生産第一主義というこの高度成長政策、そういう中で劣悪な労働条件国際的水準から下回る労働条件がしいられてきたということが言えると思うわけです。ILO趣旨とするところが、国際経済社会、国際労働社会における公正取引の原則、労働力の適正な保護を通じて価格の公正な競争原理を打ち出し、国際社会の秩序ある経済、労働者基本的人権尊重の上での国際経済取引慣行を目的としていることから見ますと、日本政府があるいはILO会議日本使用者側が述べておりました日本の独自性、これを強調し過ぎるということは、国際的な立場から見て日本労働者国際的水準が要求する基本的人権を抑圧しますし、一方、国際社会においてもいわゆるエコノミックアニマルというような国際的非難が生じることにつながっていると私は考えるわけです。そして、先ほどから問題になっておりますILOの五十周年記念に強調されました十七の条約のうちに九つ条約批准が残っている。この九つ条約についての今後の批准の見通し、先ほど幾らかお話がありましたけれども、その見通しについて、もう一度お尋ねいたします。
  142. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先ほどもお答えをいたしましたとおり、十七のうち七つ批准しておりまして、一つ関係がございませんので九つでございますが、それにつきましては、先ほどもちょっと触れましたように、ごくわずかな点で現行労働基準法抵触をするというようなものがかなりあるわけでございます。たとえば最低年齢条約でありますとか、賃金保護条約でありますとか、最低賃金決定制度の農業に関係する条約でありますとか、そんなところは基準法が直れば批准ができるという性格のものでございます。そういう点はできるだけ、いま大臣からもお答えしておりますように、基準法というものを検討しておりますので、前向きで処理をいたしたいというふうに思っておりますし、それから、先ほど申し上げましたが、社会保障条約につきましては、厚生大臣も申されておりますので、ごく近い機会に私どもとしては批准ができるというふうに思っております。その他の条約についても、極力問題点の検討を進めてまいりたいというふうに思っています。
  143. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 労働基準法改正ができればできるということですけれども、そしてまた、先ほど労働大臣労働基準法改正について検討中である、実質的に検討しているんだ、こういうようなことを言われましたけれども労働基準法についての成案ができる見通し、大体あと何年ぐらいであれば、あるいは何カ月ぐらいあればこの労働基準法についての改正政府案を決定できるかどうか、その見通しについてお伺いしたいと思います。
  144. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 労働基準法研究会は、一昨年発足をいたしまして、とりあえずは安全衛生に重点を注いで問題を処理いたしまして、その成果が昨年の安全衛生法の制定として実ったわけでございます。そういう意味では効果をあげてきておるわけであります。残された問題で非常に大きい問題は労働時間の問題、それから婦人労働の問題等々がございます。先ほどちょっと触れました賃金の支払い形態とかそういったごく簡単な問題は、それほど本質的な問題ではないわけでございまして、改正の機会があれば、手直しをすれば条約批准が可能になるというものも幾つかあろうと思います。しかし今後の労働時間あるいは婦人労働の問題は、国民生活全般に関係がありますし、特に中小零細企業も多い現段階におきまして、いかに処理するかということはなかなかむずかしい問題でございまして、いま極力検討を急いでおりますが、いまここであとどのくらいというお尋ねをいただきましても、明確にはお答えできない。できるだけ急いで努力をいたしたいということで御了承願いたいと思います。
  145. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうしますと、公務員制度審議会が公務員にどういう権利を保障するかというこ  とで審議されていて九年間になっているわけですけれども、あるいはそういうおそれなしともしないわけなんですけれども、そうした実情から考えてみまして、ILO条約との関係を見てみますと、この前の委員会で参考人からいろいろ御意見を伺ったわけです。その中で吉村参考人使用者側の理事をやっていらっしゃるこの参考人以外の人たちは、政府ILO条約に対する態度につきまして、国内法を整備してから条約批准するというこのパターンについて、もちろんそうした一致させる努力を常に重ねられなければならないけれども条約批准して国内法改正をするようにという発想の転換といいますか、そういう政府の態度の転換が必要であるということが強調されていたと思うわけです。国内法の整備を先にするというやり方では、どうもいままでのやり方を見てみましても、たとえば政労使とも賛成するようなILO条約、それが十年、十三年かかるあるいはもっとかかりそうな場合もあるわけですが、このように実際の効果をあらしめるということが非常におくれてきているわけです。こういうことでは国際信義を守るという立場にもならないし、いつまでも国際社会からも相手にされない、そういう態度を示すことになると思うのです。ILO憲章の場合も、一年の猶予期間を置いておりまして、特にまた日本産業発展国家として、最近は政府のほうも福祉国家ということを盛んに言われる。そういったもろもろの事情を考えてみた場合に、いままでのILO条約批准のやり方、すなわち国内の法律を整備することを先行させる、こういうやり方をみんなが言われるように転換させる必要があるのではないか。まず賛成したILO条約についてはこれを批准し、そして賛成した段階から国内法の整備調整をとる、こういう方向にやって積極的に批准し、これを実行に移すという態度に方針を改めるべきであるというふうに考えておりますが、現在の考え方についてお伺いしたいと思います。
  146. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先般の参考人お話の中にもそういうお話がございまして、私どもも出席しておりましたので承知をいたしておりますが、ただわが国では昭和二十八年に閣議決定をいたしまして、ILO条約批准する前には所要の立法措置を講ずるということにいたしているわけでございます。それは何と申しましても条約でございますので、全世界的に妥当するためには、やや抽象的な一般的な原則、そういう書き方になる。ところが国内的にこれを有効に妥当せしめるということになりますと、非常に細目について問題が出てまいります。特にわが国では条約あるいは法律につきまして非常に厳格な検討というものをやる、これはけっこうなことでございますが、わが国ではそういう慣行ができ上がっておりますので、そういう意味におきましても、やはりまず所要の改正を行なった上で批准する、こういう現在の考え方がいいのではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。
  147. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 いままでの閣議決定の線をこれからも進んでいくということでありますけれども、ともかく批准に至るまでにこの発達した日本が非常な長期間を要するということは、国際的労働水準を上げる、そういう面で役割りを果たさなければならない日本として、これはやはり積極的に批准し、それを国内においても整備を急ぐという面から見て、重大な責任があると思うわけです。  時間があまりありませんので先に移りますが、一九七一年三月から四月にかけてILO公務員合同委員会が開かれて、ここで二つの決議が採択されております。その第一決議の採択にあたって、三つの国の政府、すなわち西ドイツと日本とイラン、この三国が保留の発言を行なった。特に日本政府代表は決議の内容全体にわたって五項目の保留を行なった、こういうように聞いております。その決議を見ますと、私から見れば、現在の労働水準から見て当然の内容が書かれていると思うのですけれども日本政府代表がここで保留をした理由、その要点を伺いたいと思います。
  148. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいまの点は公務員関係でございまして、政府部内では総理府人事局が所管をいたしております関係で、いま私どものほうの手元にはちょっと資料がないのでございます。
  149. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうすると、その点は、労働省のほうは出席していないということになるわけですか。
  150. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 代表団のキャップは人事局の次長が参っております。
  151. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 労働省側からはその代表団の中には入っていないということなんでしょうか。
  152. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 労働省と申しますか、外務省と申しますか、アタッシェで出ております、労働省にもとおりました者が外国に駐在しておりますが、それが随員としてついておりますけれども、団長としては人事局の次長が行ってやっておるわけでございます。
  153. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうすると、労働省のほうにはその報告はもちろん入っているわけでしょうか。
  154. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 連絡はいただいておるわけでございます。
  155. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 その連絡の結果についてはいま手元に資料がないということですか。——わかりました。  では、婦人労働の問題について質問いたしますが、前回の参考人意見陳述の中でも、婦人労働者の地位の向上をめぐる意見が数多く出されております。特に日本におきましては、労働人口に占める婦人労働者数は年々増加しておりますし、世界的にも婦人労働者が約四〇%ということになっておりますし、労働人口も一千万人以上、こういわれております。そういう中ですから、婦人労働者の問題が重要な社会問題になるというのは当然なんですけれども、この社会問題になる根本原因は、婦人の権利がきわめて狭められているということにあると考えるわけです。私は、こうした婦人労働者が全体の四〇%も占めている中で、日本政府婦人労働者の地位の向上という問題についてどのような考えを持っておられるのか、その基本をお伺いしたいと思います。
  156. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいまの御質問にお答えする前に、まことに恐縮でございますが、先ほどの答弁をちょっと訂正させていただきます。公務員関係会議について岡部が出ております。いま岡部は西ドイツの大使館におります者でございますが、当時は労働省の職員でございまして、そういう意味では労働省から随員としては参っておりました。その点は間違いましたので、訂正させていただきたいと思います。  それから婦人労働の問題でございますが、先生指摘のように、婦人労働者の数が全体として非常に多くなってまいりましたし、それから、往年のように非常に若い、紡績関係の女子労働中心とする夢パターンから、現在はかなりの年配の、しかもあらゆる産業にわたって女子労働が見られるというようなことで、往年と比べましてその重要性が比較にならないほど増してまいったと思います。労働省は、御承知のように婦人少年局という、特に婦人局長を置きました専管の局を置きまして、労働基準局と相ともども婦人労働者の保護に当たってまいったわけでございますけれども、今後とも特にその点は、御指摘のとおりでございますので、重要視して行政を進めてまいりたいというふうに思います。
  157. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 産前産後の労働基準に関する三号条約、そして新しい百三号条約、これは日本批准をしていないわけですけれども、この条約日本の現在の法律とが抵触するからいまの段階では批准できないのだということだと思いますけれども、最後の質問といたしまして、どういう点が抵触していると考えるのか、その抵触する分については今後どうする考えであるか、この点をお伺いして終わりたいと思います。
  158. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 どういう点が抵触するかという御質問でございますが、先ほどもお答えしましたように、三号条約はその後百三号条約によって置きかえられておると申しますか、より進んだ条約採択されておりますので、百三号条約との抵触の点を申し上げますと、まず出産休暇の期間でございます。条約は、少なくとも産前産後十二週間、かつ産後の強制的休暇期間を最低六週間含まなければならない。こうなっておるわけであります。わが国現行労働基準法では、産前六週間、産後六週間という点は同じなんでございますけれども、本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務につきましては、産後五週間を経過した女子の就業を認めているわけでございます。その点が抵触をいたすわけでございます。  第二点は、出産休暇中の金銭給付でございまして、条約は、社会保険で与えられる金銭給付は、従前の所得の三分の二を下回ってはならないとしております。ところが、わが国の場合は、これは健康保険法が該当するわけでございますが、出産手当金は標準報酬日額の六〇%になっておりますので、わずかでございますけれども水準に及ばないという点が食い違っております。  第三点は、育児時間中の賃金でございまして、条約は、保育のための労働時間の中断は労働時間として計算し、かつそれに応じて報酬を与えなければならない、こうなっております。わが国基準法では、有給としなければならぬという規定はないわけでございまして、その点が食い違っておるわけでございます。
  159. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そのILO条約との関係で、それらの問題について改正する方針であるかどうか、さきに含めて質問していたのですが。
  160. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 労働基準法全般につきましては、先ほど来たびたび御答弁申し上げておりますとおり、制定以来相当年数を経た関係上、現状にマッチしない点が多数あるということから、一昨年から労働基準法研究会というものを設けまして、そうしてまず安全衛生については、安全衛生法の制定という非常に大きな成果をあげたわけでございます。引き続きまして労働時間あるいは婦人労働の問題を鋭意検討を願っておるわけでございます。  そこで、こういった点につきましても条約抵触するという、抵触状態はいま御説明しましたようなことでございますが、しからばわが国においてどうするかという点につきましては、やはりそういった研究会の研究の成果、あるいはさらに直接基準法改正するとなれば、これは三者構成の労働基準審議会というものにも諮問をしなければなりません。そういった経過を経て進むわけでございますが、目下研究会にお願いをしておる段階でございますので、具体的に政府としてどうするということは申し上げかねる段階でございます。
  161. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 終わります。
  162. 藤井勝志

  163. 沖本泰幸

    沖本委員 大臣は二時までということらしいので十分の御質問できかねるとは思いますけれども、できるだけ御質問してみたいと思います。  そこで、せんだって参考人を当委員会へお呼びいたしましていろいろ御意見の聴取をしたわけですが、そのときに、政府は何をすべきかという点について私参考人にいろいろ御質問いたしました。その結果、これは重複する点もありますけれども、吉村さんのほうからは、分担金をもっと出してほしいという点とか、日本の国際協力の一環として考えてもらいたい、あるいはGNPの一%の経済協力あるいは東南アジア発展途上国に対しての協力の問題、あるいは安養寺さんからは、批准すべき国内法をもっと高めて、高まっている中で、行政の中で、外務とか労働省は非常に熱心だけれども政府全体が、法律に抵触しておるかどうかという点について、国会も協力して、政治判断のできる、労使が協力する機関をつくってほしい、こういう要望、塩路さんからは、ILOの精神を、政府や財界がその機能を理解をして、それでILOの分野を広げていくことに対して真剣に考える、こういう点についてのいろいろ御意見が出たわけです。  労働省からはいろいろ関係の方々、それぞれ政府関係の方がお出になってこれはお聞きになったと思いますし、報告大臣がお受けになったと思うのですが、それぞれのこういう御注文に対しておこたえになることが、すなわちILOに対する政府の一つの姿勢ということになってくると考えるわけなんですが、ILOに対する政府の今後の姿勢ですね、こういうものを含めてお答え願いたいと思うのです。
  164. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 先ほどから各委員に御答弁申し上げましたとおり、ILO憲章を大いに尊重いたしまして、日本労働並びに国民全体の福祉の問題、その他国際機関のこのILO意見を大いに参考として、今後積極的にILOに協力いたしまして、参加して、大いに討議し、大いに意見を述べ、そして批准なり勧告採択して善処いたしますことはもう当然でございますので、今後積極的に対処いたします。
  165. 沖本泰幸

    沖本委員 大まかなお答えでばく然としているわけなんですけれども、とりあえず根拠となることは、この間の参考人の御意見だと思うのです。その御意見は十分御尊重されて、そしてそれぞれなりの要望に全部こたえるかどうかという点は今後にかかってくると思いますけれども、前向きにそういう問題をとらえて、どんどん姿勢を改めていくなり何なり、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  166. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先般の各参考人の御意見、私どももたいへん貴重な御意見として拝聴いたしました。私どもそれから外務省の関係官が伺ったわけですが、私の率直な感想を申し上げますと、もっと関係各省全部聞いていただければよかったのじゃないかと思ったくらいでございます。たいへんユニークな意見もございました。  中で、特にただいま先生もおあげになりました、労使がもっと協力できる体制という点は、私どもも常々そういうことを考えておりまして、先ほども答弁しましたように、たとえばILO技術協力会議というようなものをつくっておりまして、国内の有力な労使関係の代表者の出席を得まして、そのつど御相談をしておるというようなことでございます。そういう機関をさらに活用しまして、この間の御意見に出てまいりましたようないろいろな点につきまして、さらに前向きに取り組んでいきたいというふうに思います。
  167. 沖本泰幸

    沖本委員 そこで、そのときの参考人のお答えの中で、これは安養寺さんのお答えだったと思うのですが、批准した条約の活用、それからその労働者保護条約に対して違反する問題、あるいは法をくぐるような問題が非常に多いという御指摘があったわけですが、その具体例については伺わなかったと思うのですけれども、そういうものがあるのか。また、労働省のほうなり政府関係でそういう問題をつかんでいない、しかしそういう問題を指摘されれば十分改めるというお答えであるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  168. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先ほど来、ILO条約批准する前に立法措置をとるという日本政府の態度に対しまして、いや、まず批准をしてから立法するようにしたらいいじゃないかという御意見もあったわけでございますが、まさにいま先生がおあげになりましたような問題が国内で起こってはいけませんので、政府としてはやはり国内法の整備ということに非常に重点を置いて、そういう態度をとってきたわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、批准された条約について日本政府は全般的にこれを順守しておるという確信を持っておるわけでございます。ただ、ILO条約の各国における順守状況というものにつきましては、ILO条約勧告適用専門家委員会というのがありまして、それぞれ定期的にあるいはそれぞれの要望に応じて審査をいたしておりまして、今度も八十七号、九十八号条約についてその審査が行なわれたということでありまして、その結果、これからの総会でいろいろ議論がなされるわけでございます。政府としても、言うべきことは総会でも十分申し上げて、条約の違反というようなことのないように、解明すべきものは解明するという態度で進めてまいりたいというふうに思っておるわけであります。
  169. 沖本泰幸

    沖本委員 そこで、いまの条約の問題に触れるわけですけれども、新聞なんかの記事から伺ってみると、ILO総会に出席して、政府としてはいろいろな問題を説明して、十分その理解を得る、こういう姿勢でお答えになっていらっしゃいますけれども、結局それは、いわゆる消極的な姿勢を保つためにいろいろな説明をなさっていっている、こういうことになるのではないかというような解説がついたりしてきているわけです。そうしますと、ILOの問題に対して、先ほどお答えになりました、積極的にこの問題をとらえて、十分守っていく、こういうお答えとはニュアンスの違った新聞批判があるわけですけれども、それと同時に、だんだんと国際的に労働条件なり労働者の問題が高度に取り上げられていく国際情勢、こういうものがあるわけです。そういう中にあって、結局国際世論というものに対して、政府としては十分そういう点を受け取りながら、それに対応しておやりになるのかどうか、こういう点についてお伺いしたいと思います。
  170. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 条約抵触するおそれがあるという指摘は、いままでのところでは今回の八十七号、九十八号に関するオブザベーションというのが最初ではないかと思いますが、これにつきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、まだ専門家委員会の参考資料として出された段階でございます。そこで、総会の成規の委員会でこれからいろいろ議論のやりとりがあるわけでございますが、必ずしも消極的な説明ということではなくて、それらにつきまして、日本政府としての考えをやはりはっきり申し上げるべきところは申し上げる、そうして、総会でどういう結論が出るか、その結論については、先ほど大臣からもお答えしましたとおり、結論を見た上で考えていかなければならない、いずれにしましても、公務員制度審議会もございますことですから、そういった結果を見た上で対処いたしたいというわけでございます。
  171. 沖本泰幸

    沖本委員 大臣にお伺いしたいのでございますが、一昨年の朝日の江幡さんとジェンクスさんの対談の記事を拾ったわけですが、この中で江幡さんのおっしゃっているお話の中に、一平方キロ当たりの国民所得は、アメリカの十倍、西ドイツの二倍半、フランスの六倍という、一平方キロ当たりでは世界第一になってきている、日本の国が狭いために、こういう指摘もしていらっしゃるわけです。こういうところからいくと、GNPというものの考え方というものが全然違ってくるわけです。そして、こういうGNPがどんどん上がっていく条件の中で、GNPを上げていくところの労働者内容というものが、GNPが上がるとおりに上がっていっているかどうかという点については、すでに一般の世論がたくさん出ておるということであり、新聞批判も十分あるということになるわけですけれども、こういうふうな高まった生産力の中の労働者に対するこれからの条件を上げていくという点について、労働大臣はほんとうに真剣にこの問題をとらえて、GNPに合っただけの労働条件を備えていくだけのお考えがあるかどうか、そういうお考えでこれからの問題をいろいろおとらえになるかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  172. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 いまの論説委員の方がジェンクスに会ったときの話も私見たことがありますが、多少私の意見と食い違っている点は、GNPが上がった、日本は高度経済成長した、一部にはそれだけ労働者に回ってきておらぬではないか、これは、賃金関係は相当改善されまして、政府方針も本年度の仲裁裁定、また春闘のときにも、諸外国も驚嘆するように賃金関係が向上いたしておることは、これは少し一般の方々の御意見とも違う点があります。しかし、賃金問題以外の福祉の問題、労働条件の問題、時間短縮の問題、この点はもうあなたと同意見であります。今後労働者に対するいろいろなかような条件の改善については、労働省といたしましてはこれに対する改善の方針を大いに打ち立てて、いろいろ省内にも、見方によっては労働省これはちょっと行き過ぎるのじゃないかという意見があっても、当然政府は一致してその方向に進むように推進いたしていく所存であります。
  173. 沖本泰幸

    沖本委員 これは対談の中のほんの一口だけ取り上げたので、すべてをあげるということには当たらないわけなんですけれども、いろいろなとらえ方がありますけれども、いま言われておることは、いわゆる日本労働者の犠牲の上に立ったGNPであるということで、ある雑誌なんかでは、イギリスやヨーロッパの人は、日本人は働き過ぎている、そして一生懸命ため込み過ぎる、こういうふうな意見を述べている方もあるわけなんです。そういうふうにとらえられている。そこで、先ほど柴田さんおっしゃったようなエコノミックアニマルというような問題も出てきておる。それと労働者がとらえる現在の労働条件とは全然違うという感じがあるのです。それを十分いま大臣がおっしゃった方向で今後とらえていって、向上をはかっていただきたい、こういうことになるわけですが、時間がありませんので一足飛びに具体的な問題を御質問したいと思います。  今度のドルの問題でも、アメリカの多国籍企業という問題の動きというものが、国際経済を動かしているということは周知のとおりなんですけれども、その企業が世界的な規模で活動することによって、それぞれの国の民主的な統制や社会的責任からすり抜けて、そして巧妙に利潤をむさぼっているという考え方があるのです。そういうことで、多くは反労働組合政策をとって、外国の多国籍企業に働く人たちの労働条件をこわしてしまっている。わが国の場合でも、低い労働条件にこの多国籍企業に働く人たちは悩んでおる。団結権なり団交権あるいは争議権といった労働基本権にまで制限を加えてきているような実例がたくさんあるということがあるわけです。いわゆる多国籍企業のマル生ですね。こういうことに対しては、労働省は今後どういうふうな考えに立って行政指導をおやりになっていくか。今度の春闘なり何なりに関してもいろいろ問題が起きてきております。この多国籍企業とは違うけれども、アメリカ軍基地の労働者の問題にも同じような条件の問題が出てきている。それと並べて考えられる問題が日本の国に入ってきておる多国籍企業の中で起きておる、こういう問題に対して労働省はどうとらえているかという点なんですが……。
  174. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 御指摘のように、最近は非常に国際化の時代でございまして、多国籍企業の問題あるいは外資系企業の問題、非常に大きな問題になっております。ILOにおきましてもこの点を取り上げまして、多国籍企業の専門家会議というようなものをやりまして、わが国からも参加をしたようなわけでございます。特に、いま御指摘ございましたように、労使関係につきましてごたごたが起きやすいということでございますので、労働省としてもその実態把握のために調査をいたしておるわけでございます。特に、この外資系企業につきましては、わが国労働法規あるいは労働慣行を尊重するということを十分行政指導をしてまいりたいというふうに思っております。  それから逆にわが国の企業が海外に出てまいります場合に、進出先の国の労働法制、労働慣行が違っておる、そのために労務管理上のトラブルが多数生ずるというようなこともございますので、そういった海外の労働関係情報の収集というようなことにつきましても、関係者を海外に出すというようなことをやりまして、そういった情報の提供、出先企業の指導というようなことを積極的にやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  175. 沖本泰幸

    沖本委員 あとから伺おうと思っていたことを先にお答えにおなりになったような形になるのですが、この多国籍企業に対して、日本労働条件に対する法規なりあるいは慣行なりを十分尊重するようにという勧告はしておると、こういうことなんですが、その勧告で改められるようなものでしょうか、どうでしょうか。ただ労働省が政府関係として勧告をしていくということでとどめていらっしゃるか、具体的な内容を一々調査なさって、その具体例について一々いろんな点について、労働省が日本労働者の権利を守る立場からそれぞれの問題点を十分検討していただいて、これを改善していく方向に向かって努力をしていただくのか、ただ勧告にとどまるのか。  それから時間がありませんから、ついでに、海外に対する、日本が今度は同じことを外国で行ないつつあるということによって、日本商品のボイコットなり日本の企業のボイコット、日本人に対する非常な悪感情まで起こしてきている。そういうところから結局ひもつき産業はどうだこうだという議論も出てきておるわけです。そういう関係から、官房長がおっしゃった、いろいろな収集をやり、情報を提供してもらうなり何なりをしておるという段階をいま越えているんじゃないですか。すでにそういうことが行なわれてきておるから、これからの発展途上国の中で問題が起きて、外国の経済を撹乱してしまっておるから日本の経済に対しての悪感情が起き、それがもうすでに日本人に対し日本国に対するいろいろな感情問題にまで響いてきているということになってくると、そういう観点からとらえた日本外国に出ている企業に対する相当な考え方に立った労働問題に対する指導なり何なりというものが十分整えられなければ、今度はよその国の多国籍企業がやったことを日本がやり出して、もっとひどいそしりを受けるようなことになるわけです。十分な対応策を立てなければ重大問題が国際的に起こってくる、こういうことになり、このことがひいてはILO内容にまでかかわっていく。ただ批准をしたとか批准をしないとかいうことだけではなくて、まるきりその精神に反したことをやっておるというようなことになってくると、重大な国際問題にかかってくると思うのです。この点について労働省はどうお考えですか。
  176. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいま先生がお述べになった点は私どもも実は全く同感といいますか、痛感をしておるところでございまして、外資系企業の国内における労使紛争というのはなかなかやっかいでございまして、労働委員会等に行きましても、ことばの問題以上に労使慣行が——たとえばアメリカなんかは解雇というものを一向かまわないでやる。日本はなかなか解雇というのは大問題だというような慣行なんかの食い違いで非常に問題が起こりがちでございます。したがいまして、私どもとしてはできるだけ実態をつかまえるように調査、情勢の把握をやっておりますが、それ以上法的な根拠もございませんから、つとめて行政指導をするというにとどまるわけでございますが、先生お述べになりましたような問題は、実は労使の間で非常に問題意識が高うございまして、労働省に設けております産業労働懇話会という労使のトップクラスの会合がございますが、その席でも労働側からこの問題が提起されまして、そうして労働組合も最近はIMF・JCその他におきまして多国籍企業の問題を問題にしておりますし、日経連のほうにおきましても最近専門の部局を設けましてこの問題を取り上げようとしておるわけでございます。産業労働懇話会でも先般調査団を東南アジアに派遣をいたしまして、出先企業の実態というものを見てきておるわけでございます。  それからまた、先ほどは永末委員からジェトロの軒先を借りるのでは不十分ではないかというおしかりをちょうだいしましたが、私どもとしましては海外の労働情報をできるだけとらえて関係企業に提供するという意味で海外労働情報センターというものをつくろうといたしましたが、まあ次善の策としてジェトロの中にそういう部局を設けるということになったわけでございますけれども、いずれにしましても認識は同じでございまして、まだ不十分というおしかりは受けるかもしれませんが、あらゆる手段を尽くして今後とも努力を重ねたいというふうに思うわけでございます。
  177. 沖本泰幸

    沖本委員 あと何分も大臣に御質問する時間がないわけですけれども、これはただ労働省だけが問題をとらえているということだけでは済まないと思うんですね。テレビなんかで見てみると、相当中身のたいへんな問題が茶の間で十分国民の立場からうかがえるわけです。これはたいへんなことが起きているというぐらいにとらえて報道もされてきておるわけです。そういうことですから、この問題に対して、労働省だけでこの問題をとらえずに、外務省なりあるいは通産省なりと一緒になって検討を加えていただかなければ、これはもう大きな国際問題になってくる。そういう点から労働省自体がILO的な立場でものを考えなければならないような国際情勢が、いまこれだけ日本の経済が成長した中で起きてきておるし、これから先はもっとそれを広げて考えていかなければならないというのであれば、十分その対応策というものはできていかなければならないと思うのです。その点に対して大臣、どうお考えですか。
  178. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 いま政府委員から役所の立場でできるだけのことをやっておるというような答弁をいたしましたが、私は横で聞いて、これはもう不満であったのであります。いま沖本議員からの御指摘のように、これは労働省は法的根拠もありませんし、情報の提供、勧告程度で、なかなか実行が不可能であります。要は進出する商社並びにこれを監督する立場の通産省、外務省、またいろいろの関係政府全体、政府並びに経済界、金融界、あらゆるものが一体となって、かような非難がないような対処を本格的に取り組まなかったら、各国から批判もこうむるし、進出先の国からも相当なボイコットとかいろいろな問題が惹起しますから、これは労働省だけでなく、閣議の問題といたしましても取り組む所存でおりますので、御趣旨の線に沿って全力をあげて対処いたしますことをお約束いたします。
  179. 沖本泰幸

    沖本委員 あとあるのですが、通産省お呼びしておりますので、通産省にも御質問しておきたいのですが、この多国籍企業がわが国の生産と研究の流出について価格操作などを行なっているような点もあるわけでありますし、国際経済に対するいろいろな影響を、何らかのコントロールをすべきであると考えるわけです。そういう点についてもガイドラインを設ける必要がある、こう考えるわけですけれども、この問題を通産省はどういうふうにおとらえになっておりますか。
  180. 小山実

    ○小山説明員 日本の企業の海外進出に伴いまして、いろいろ現地との関係でまあ問題が起こっておるわけでございます。通産省といたしましては、進出企業がそれぞれの国情に応じて、そういう問題を回避するために守るべきガイドラインといいますか、そういうものが民間で自主的にできれば、それを側面的にバックアップしていきたい、こういうふうに考えております。  きょうの新聞によりますと、いま関係経済団体でもそういう方向でいろいろ検討しておられるというふうな記事も出ております。もしそういうものがまとまりましたら、通産省といたしましても側面的に大いに応援していきたい、こういうように考えております。
  181. 沖本泰幸

    沖本委員 すっきりしたお答えではないのですけれども、これは重要な、国際信用にもかかわってくる問題ですから、時間がありませんから要望だけにとめますけれども、検討を加えていただいて、早急な対策を立てていただきたいと思います。  以上で質問を終わります。
  182. 藤井勝志

    藤井委員長 午後三時再開することとし、これにて休憩いたします。    午後二時二分休憩      ————◇—————    午後三時八分開議
  183. 藤井勝志

    藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約ATA条約)の締結について承認求めるの件、職業用具の一時輸入に関する通関条約締結について承認求めるの件、展覧会、見本市、会議その他これらに類する催しにおいて展示され又は使用される物品輸入に対する便益に関する通関条約締結について承認求めるの件、以上各件を議題とし、順次提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣大平正芳君。
  184. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ただいま議題となりました物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約ATA条約)の締結について承認求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、関税協力理事会において一九六一年十二月六日に採択され、一九六三年七月三十日に効力を生じたものでありまして、この条約の目的は、一時輸入が認められる職業用具等の物品について通関手帳制度を採用することによりその通関手続を簡易化することにあります。  近時わが国に一時輸入される物品が増加し、この種物品に関するわが国通関手続の簡易化に対する諸外国の関心も強くなっていますところ、わが国がこの条約の締約国となりますことは、これらの物品を用いるわが国国民の国際的な活動を容易にし、また、関税制度の国際的な調和と統一をはかる上で望ましいことであると考えております。  よって、ここにこの条約締結について御承認求める次第であります。  次に、職業用具の一時輸入に関する通関条約締結について承認求めるの件につきまして提案の理由を御説明いたします。  この条約は、関税協力理事会において一九六一年六月八日に採択され、一九六二年七月一日に効力を生じたものでありまして、この条約の目的は、各種の職業的活動のため締約国に一時的に入国する者の職業用具について一時免税輸入等の便益を与えることにあります。  わが国は、従来より職業上必要とする用具について一時免税輸入を認めておりますが、この条約規定する職業用具範囲よりも狭いので、わが国がこの条約の締約国となりますことは、この範囲を広げて国際的な要請にこたえますとともに、わが国国民が他の締約国へその職業用具を輸出する場合の便益を拡大する上でも望ましいことと考えられます。  よって、ここにこの条約締結について御承認求める次第であります。  最後に、展覧会、見本市、会議その他これらに類する催しにおいて展示され又は使用される物品輸入に対する便益に関する通関条約締結について承認求めるの件につきまして提案の理由を御説明いたします。  この条約は、関税協力理事会において一九六一年六月八日に採択され、一九六二年七月十三日に効力を生じたものでありまして、この条約の目的は、展覧会、見本市、会議等の催しにおいて展示されまたは使用される物品について一時免税輸入等の便益を与えること等にあります。  わが国は、従来より国際的な催しに関して通関上の便益を与えておりますが、わが国がこの条約の締約国となりますことは、これらの催しの開催を一そう容易にし、ひいては経済、文化等の分野における国際交流を促進する上で望ましいことであると考えます。  よって、ここにこの条約締結について御承認求める次第であります。  以上三件につきまして、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  185. 藤井勝志

    藤井委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  各件に対する質疑は後日行なうことといたします。      ————◇—————
  186. 藤井勝志

    藤井委員長 国際労働機関憲章改正に関する文書締結について承認求めるの件、電離放射線からの労働者保護に関する条約(第百十五号)の締結について承認求めるの件、機械防護に関する条約(第百十九号)の締結について承認求めるの件、以上各件を議題とし、質疑を続行いたします。岡田春夫君。
  187. 岡田春夫

    岡田(春)委員 午前中に引き続いて外務省関係に、今度はILOの問題に関連をいたしまして質問をいたしたいと思います。  ILO関係のこの三つの案件に関連をいたしまして、一九六六年の国連総会で、ILO趣旨を国連総会の中においても側面的な観点からできるだけ発展、定着せしめるために三つの国際的な取りきめが実は採択をされております。その三つの国際的な取りきめとは、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、第二は市民的および政治的権利に関する国際規約、第三は市民的および政治的権利に関する国際規約についての選択議定書、この三つが実は一九六六年の第二十一回総会で採択をされているわけです。この規約によりますと、三十五カ国以上の国が批准書を寄託した場合において、三カ月でこれは効力を発生することになっておりますけれども、この二つの規約並びに議定書に対する批准の状況は一体どういうようになっているか、この点まず伺いたいと思います。
  188. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいまの規約及び議定書の批准状況でございますが、まず経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、この批准状況は二十一カ国が批准をいたしております。それから市民的および政治的権利に関する国際規約、これは現在までの批准国数十八カ国、それから三番目の人権規約に関する選択議定書の現在までの批准国数九カ国となっております。
  189. 岡田春夫

    岡田(春)委員 先ほどの質問で私補足が必要ですが、最後の選択議定書の場合には、三十五カ国ではなくして十カ国で効力を発生することになっているわけですね。この点を追加して訂正をいたしておきますが、この三つの国際取りきめに対して日本はどういう批准の手続をおやりになったのか、この点についてはどうなっておりますか。
  190. 影井梅夫

    ○影井政府委員 この規約及び議定書、いずれもその趣旨といたしますところは非常にいい趣旨だと思います。しかしながらこれを実際に日本批准するにあたりましては、この規約及び議定書の規定のしかたがかなり広範囲にわたっておりまして、これを直ちに批准するにあたりましては、国内の法制をいろいろ整えなければならない部面が非常に多いということで、現在慎重にこれを検討中という段階でございます。
  191. 岡田春夫

    岡田(春)委員 国内の措置は当然必要だと思いますが、主としてどういう関係国内の法的措置が必要なんですか、もう少し具体的に御答弁を願いたいと思うのです。たとえば経済的、社会的、文化的権利に関する規約においては、男女の平等権、公共の福祉労働の権利、労働の条件、団結権、これらの点が規定されておりますし、また市民的、政治的権利に関する規約は、男女の平等権、奴隷及び強制労働の禁止、集会の自由及び結社の自由、法のもとの平等、無差別等々の規定があるわけなんで、主として国内法上どのような措置が必要であるか、そして所管の関係の役所はどういうように及んでいくのか、こういう点はどういうふうになっておりますか、もう少し詳しく伺いたいのです。
  192. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいま申し上げましたような理由で非常に広範であり、ただいま岡田先生指摘のような点につきまして、たとえば法務省との間に、この問題を提示いたしまして、これの検討を進めているという段階でございます。
  193. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もうだいぶ、七年前ですから、法務省に行っているのですか、法制局まで行っているのですか。どうなんですか。もう少し具体的に進んでいるという意味なんですか。法務省と相談中であるというような話では、たいへん抽象的なんで、国内の法制化の問題になると法制局との関係がなければならないと思うのですが、そこら辺はどうです。
  194. 影井梅夫

    ○影井政府委員 まだ法務省と相談中の段階でございまして、これを法制局に持ち込むという段階にまでは立ち至っておりません。
  195. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これについては、国連の第二十六回総会においてもこの批准勧誘を促進するための勧告決議案が出されております。それから今度の国連総会でも、これがおそらく批准を促進するための決議案が再度提出され、採択されるであろうといわれている。こういう状態でありますだけに、七年前のものであるからというだけで、法務省と相談をしているという程度ではなくて、もっとこれは進めていただかなくてはならないわけですが、今度の国連総会にこの決議案が出された場合において、日本としてはこれはどういうようにされますか。
  196. 影井梅夫

    ○影井政府委員 現在の段階におきまして、まだこれを詰めて考えておりませんので、今後至急この問題を検討していくつもりでおります。
  197. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは二十六回の総会では、この決議案の場合に、日本側はどういう態度をとられたのですか。
  198. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいま手元に正確な資料を持っておりませんので、すぐ調べましてお答え申し上げたいと思います。
  199. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これはすぐ調べていただきたいと思いますが、どうでしょう大臣、こういう、局長もたいへんいい趣旨の国際取りきめである、こういうことを言っておりますので、今度の決議案については、ぜひとも日本は賛成をして、国内的な法的ないろいろな措置は早急にこれをとっていただくことが必要だと思いますが、大臣としてはいかがでございますか。
  200. 大平正芳

    ○大平国務大臣 せっかく政府部内で検討を進めまして、日本としてどういう態度をとるべきかにつきまして固めてまいらなければならぬと考えておりまして、鋭意検討を進めてまいります。
  201. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これはぜひ急いでいただきたいと思います。  続いてまいりますけれども、一つこのILOに関連をいたしますが、国連の財政問題について若干聞きたいのです。  最近財政的危機に直面していることをワルトハイム事務総長も訴えておりますが、国連の財政危機というのはどういうところに原因があるのか、こういう点について、ひとつ大臣御存じでありましたらお答えをいただきたい。
  202. 影井梅夫

    ○影井政府委員 国連の財政の危機が生じました原因は、国連のとりました行動につきまして、一部の国が、これを認めないという理由によりまして、分担金の支払いを差し控えるということ、これが累積いたしまして生じた現象でございます。
  203. 岡田春夫

    岡田(春)委員 一部の国とは、具体的に伺いたい。
  204. 影井梅夫

    ○影井政府委員 たとえばコンゴの問題につきましてフランスがそれに関連する部分の分担金の支払いを拒否したというのが一例でございます。
  205. 岡田春夫

    岡田(春)委員 フランスの場合もあるけれども、最も多いのはどこですか。
  206. 影井梅夫

    ○影井政府委員 手元に現在正確な資料を持っておりませんので、私の記憶で申し上げますと、ソ連の未払い分、これが一番多かったように記憶しております。
  207. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ソ連の未払いというのはどういうことが理由でしょうか。
  208. 影井梅夫

    ○影井政府委員 一つは中近東問題に関連する経費の支払い、それからもう一つ記憶しておりますのは、朝鮮半島関係の経費の支払い、これを支払っていない、いま私記憶の中にありますのはそういうものでございます。
  209. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ここに数字も私持っておりますが、たとえば台湾政府、カッコつき政府ですね。台湾の場合の滞納というのも非常に多いですね。たとえば通常予算においては千九十三万ドル、それからスエズの国連の関係では五百二十七万ドル、コンゴの国連軍の経費は六百六十八万ドル、台湾の場合に、この間の御承知のような国連総会において中華人民共和国政府が正統の地位を回復したという場合に、この滞納分はどういう扱いになるのですか。ここら辺の見解を伺っておきたい。
  210. 影井梅夫

    ○影井政府委員 国連の財政問題につきまして、国連の中に財政問題関係委員会をつくりまして、ここでいろいろの対案を考えておる、まだ結論に達しておりませんけれども、従来の累積赤字、これをどう処理するか、また今後の対策をどうするかということはこの委員会において研究中でございます。
  211. 岡田春夫

    岡田(春)委員 たいへん抽象的な答弁なんだけれども、台湾はすでに滞納したままでその地位を失ったわけでしょう。その台湾が地位にあるときの分ですから、これについて支払ってもらうように督促するという形になるのかあるいはこれを継承されることになるのか、ここら辺については一体どういうことになるのですか。同時に日本の態度としてはこれはどうするのですか。
  212. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいまの台湾の未納分につきましては、これを継承いたしました中国が、台湾の未納分については責任を持たないという態度をはっきりしております。したがいまして中国にこれの継承を求めるということは不可能な状態でございます。それではこれをどうするかという問題、台湾の未納分につきましても、ただいま先ほど申し上げました委員会において検討中でございます。  この問題につきましては、国連といたしまして、いろいろ理由はあるであろうけれども、しかしながら最も実際的に解決するのにはどうしたらよろしいか、大体そういう方針で議論をしておりますので、日本もその方針に従っていろいろな対案を出すというようなことをやっております。
  213. 岡田春夫

    岡田(春)委員 どうもあまりはっきりした御答弁でないのですが、まあやむを得ません。時間の関係もありますから……。  局長にもう一つ伺っておきたいのですが、国連に加盟してない国ですね。たとえばスイスあるいは西ドイツ、韓国、南ベトナム、これらの国々が国連の分担金を拠出しているのですが、これは憲章上、何条の規定に基づいてこれをやっているのですか。
  214. 影井梅夫

    ○影井政府委員 これは国際連合の加盟国でないただいま御指摘になりましたような国で国際司法裁判所規程の当事国、あるいはほかに、国際連合の予算によりまして財政がまかなわれている条約機構、こういったものの当事国となっている国があるわけでございますが、これらの国は総会が決定いたします比率に従いまして、これらのたとえば国際司法裁判所であるとか、そういった機構の見積もり経費の分担金を支払うことになっております。  なお、その根拠でございますが、これは国連財政規程というのがございまして、その規程の中に定められております。
  215. 岡田春夫

    岡田(春)委員 財政規程はわかる。憲章上どうなるんですか。憲章との関係
  216. 影井梅夫

    ○影井政府委員 国連憲章そのものの規定でそれを明示的に規定したものは私はちょっと記憶がございません。
  217. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これはちょっとおかしいと思うのだな。憲章規定がないのに規約があって、規約の中で払える、これはちょっとおかしいと思うのだが、日本だって国連の加盟国として重要な国ですが、これに対して日本はどういう態度をとるのか、こういう点についてもひとつ伺っておきたいと思うのです。
  218. 影井梅夫

    ○影井政府委員 これは私、理論上の問題といたしまして、たとえば国際司法裁判所の場合には、裁判所規程にその趣旨規定があるのではないかと思いますけれども、なお調べさしていただきまして御回答申し上げます。
  219. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これはあなたのそういう答弁ではちょっと納得できないのです。御承知のように国際司法裁判所のそれは独自性はありますけれども、国連憲章との関係があるわけですから、これはいま直ちにILOの問題と直接関係はございませんから、ひとつお調べをいただいて適当な機会に必ず御答弁をいただきたい。これはお願いしておきます。
  220. 影井梅夫

    ○影井政府委員 さっそく調査をいたしまして結果を御報告申し上げるようにいたします。
  221. 岡田春夫

    岡田(春)委員 時間がないのでどんどん進めてまいりますが、ILO事務局の中に日本の職員がどれくらいおりますか。それからまた、これもいまなければあとで出していただきたいのですが、国連本部、世界銀行、WHO、主要な国際機関の中に、日本の職員がそれぞれ派遣されているはずですが、こういう点もいまおわかりにならなければ、資料で御提出をいただきたいと思います。よろしいですか。あとでもけっこうです。
  222. 影井梅夫

    ○影井政府委員 国際連合事務局そのものには、現在日本人職員は約六十名働いております。それからそのほかの専門機関につきまして、これも調査いたしまして結果を御報告申し上げます。
  223. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の調べているのでは、国連本部では四十六名、それからILOは十四名、その他いろいろありますけれども、これはあとで御調査をいただきまして、国際情勢のときにでもまたこの点に関連して質問をしたいと思います。いまの点は留保しておきますから、あと機械防護条約に関する点を若干逐条的に御質問をいたします。  この条約の中で一番問題なのは第六条だと思います。第六条の第一項のただし書きといいますか、後段の部分において「もつとも、その禁止は、これを完全に適用することにより機械の使用を妨げることとなる場合には、その機械の使用が可能な限度で適用する。」こういう規定をことさら設けてあるのですが、私から見ると、えらくこの条約全体で機械防護に関するいろんな取りきめがあるにもかかわらず、ここでこういう規定を設けることによって、この条約はざる法のようなものになってしまうんじゃないか。こういう点が、この条約を審議いたします場合において非常に気になった点であります。この点が、このただし書きの条項、「もつとも、」以下云々ですね。こういう点はどういうわけでこういう点をつけたのか。それから、これをつけることについてILOの総会でこれを採択する場合に、各国で相当これは議論があったはずだと思うのだが、このおもな議論はどういうような議論で、どの国から議論が出されているか。それから第三点としては、この条約採択するにあたって、この部分についてはわが国政府の代表はどういう態度をおとりになったのか。こういう点をまず伺いたいと思います。  それから、時間がありませんので続いて伺いますが、六条の第二項「機械は、産業安全及び労働衛生に関する国内の規則及び基準に違反しないように防護する。」これはおそらく国内においては、もっぱら機械メーカーにこういう措置をとらせなければならないんだと思うのですが、実際に今日メーカーの段階においては、こういう点についてどういうような形で機械の製造が行なわれているのか、こういう点が第六条としては問題になる点だと思います。そこで、第六条の点からまず質問をいたしてまいりまして、そのほか二、三伺ってまいりたいと思います。
  224. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 第六条の一項の「もつとも、」以下の条項につきまして、この条約採択される場合に各国代表あるいは日本代表がどういう発言をしたかにつきましては、現在手元に資料がございませんので、調べまして後刻御連絡をいたしたいと思います。  なお、六条の一項の趣旨は、前にございますように、この条約の二条の三項、四項で、いわゆる作動部分に突起物があるもの、それはメーカーの段階、製造者の段階で規制をする。六条は使用の規制をいたしておるわけでございます。したがいまして「もつとも、」以下につきましては、作業点を含んでおりますので、作業点を全くおおってしまった場合にその機械が使えないというような可能性があるということを予測しての規定かと思います。ただ、これに従いまして私の関係では、労働安全衛生法及び安全衛生規則で、この突起部分その他危険部分の防護についての規制をいたしておりますが、「もつとも、」以下のただし書きのような条項につきましては、わが国現行法では認めておりません。したがいまして、すべて危険部分、作業点を含みまして、接触予防のための措置をとることを要求いたしております。  それから第六条の二項の「機械は、」云々というところは、六条そのものの規定が使用の規定でございますので、メーカーの規定ではございませんが、御指摘のようにメーカー段階で配慮をすればさらによくなるということは当然考えられるわけでございます。これにつきましては、例で申しますと、グラインダーにカバーをつけます場合に、金属の粉等が作業者の目の中に入るようなことのないように、そういう配慮をおそらく予想しての規定だと思います。この点は先ほど申しました労働安全衛生法でユーザーの段階では規制をいたしておりますし、メーカーの段階につきましても、この条約批准及び労働安全衛生法施行に伴います打ち合わせの段階でメーカーに対する機械の有害性の除去、安全性の確保についていろいろ接触し、協議をいたします段階で要望いたしておるところでございます。
  225. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もう一つは、この条約の中で問題としてあるとすれば第九条だと思うのです。いわゆる適用除外の問題ですね。この適用除外は「三年をこえないもの」としてという条件はついておりますけれども、この点については、日本側としてはどういう措置をおとりになるおつもりなのか。それから国内法令の措置が必要であるし、また関係のある代表的な使用者団体と労働者団体の協議が必要である、こういうことになっておりますので、国内的な措置としては、これはどういうことになりますか、この点を伺っておきたいと思います。
  226. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 第九条は、第六条の適用除外をする場合の取りきめでございますが、わが国の場合はこの条約批准いたしましても、第六条、すなわち使用の段階での危険部分の防護を除外する考えはございません。全面適用をいたす考えでございます。
  227. 岡田春夫

    岡田(春)委員 したがって、それでは全面適用ならばそれに必要な関係団体との協議並びにそれに必要な法律ということも必要がないわけですか。
  228. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 第九条の第三項の規定は、御指摘のように必要がございません。
  229. 岡田春夫

    岡田(春)委員 次は第十条ですが、これはまたたいへん注目すべき点だと思うのですが、第一項で、「使用者は、機械防護に関する国内法令を労働者に周知させるための措置をとり、」云々として、「適宜労働者を指導する。」それから二項では、「作業環境を形成しかつ維持する。」これは具体的にどういう措置をおとりになりますか。
  230. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 第十条第一項の「国内法令を労働者に周知させるための措置」につきましては、労働安全衛生法に従いまして、機械防護に関するいろいろの規定がございますけれども労働安全衛生法そのものの中に労働安全衛生法及びそれに基づく法令につきましては、労働者に周知させるために事業場内に掲示その他必要な措置を講ずる、こういう規定がございます。したがいまして、この条約の条文とは適合をしておる。なお一項の後段のほうの「適宜労働者を指導する。」といいますのは、安全のための教育、こういう危険な機械を使う場合には、措置としてはどういう作業動作をすべきか、保護具はこういうものを使うべきである、そういうことを作業場に採用した場合、あるいは作業転換をした場合、これも労働安全衛生法で定めておりますので、この点も満たしておると思います。  二項の作業環境の形成は、この作業機械につきまして、危険部分につきまして、たとえ防護措置、カバー等をつけましても、機械の間隔が不十分である、あるいは作業をいたします場合に照明が十分でないというようなことでは災害が起こりやすうございますので、機械防護にあわせまして、そういう機械の適正な配置あるいは十分な照明の確保、そういう作業環境の形成、そういうことを使用者に要望をしておるわけでございまして、この点につきましても、わが国関係法令では十分な規制をいたしております。
  231. 岡田春夫

    岡田(春)委員 十分な規制はしているというけれども、事実、事故が再三起こっているわけですからね。そうすると、その事故については一体どういうように見たらいいのですか。
  232. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 御指摘のように、労働災害そのものの発生状況は漸次減少をいたしておりますけれども、まだ十分その防護が整っておるという段階ではございません。それにはいろいろの理由がございますけれども、やはり新しい機械あるいは新しい工法、そういうものが採用されるにあたりまして、防護措置が不十分である。機械設備についての安全化がまだまだ足りない。そういう点があろうかと思いますので、その点につきましてよりよき行政指導をいたしたいと思います。  なお災害そのものが、物の欠陥と人の不注意、いわゆる不安全行動、そういうものがございますので、物の整備につきまして、法律で定めた趣旨を十分業界に徹底するとともに、働く人の側にそういう十分な安全作業、そういうことが行なわれるような安全教育の徹底をもあわせて行ないたいと思っております。
  233. 岡田春夫

    岡田(春)委員 機械の問題とそれを使う労働者の問題、こういう御答弁ですが、もう一つ重大な問題があるのじゃないか。それは最近のように労働強化がどんどん行なわれている。そういうことによって機械による故障というのが起きている。この条約適用は、特に使用者団体のほうに強くこれを守ってもらうための措置が必要だと思う。こういう点について労働省としては特別な措置をおとりになっているのかどうか、こういう点を伺っておきたい。
  234. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 労働災害の防止に、機械の面、人の作業行動の面だけでなくて、労働条件、たとえば労働時間の短縮、そういうことが重要でないかという御指摘は、全くそのとおりでございます。  実は従来は、労働基準法の中で職場の安全衛生というものを規制をいたしておりまして、その意味では法体系の面でも実施の面でも労働条件と災害防止を一体的にやってきた。今回は労働安全衛生法基準法から分離しまして施行するにあたりまして、関係労働組合あるいは経営者の一部からも労働基準法、すなわち労働条件の確保とあわせてやるということの強い御指摘がございました。新しい法律の第一条の中にも、労働基準法と相まって労働安全衛生法の施行をやるということを規定いたしておりますのは、先生の御指摘趣旨に基づくものでございます。
  235. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それから、時間が若干こえてしまっておりますが、十六条ですね。「この条約を実施するための国内法令」、これは関係団体と協議をして作成する。この国内法というものはどういう法律ですか。そしてその目的とか概要を簡単でいいですから御説明をいただきたい。  それからもう一つ十七条ですね。この条約批准に際して適用範囲を限定することの宣言が必要である。これについては日本の場合どういうことになりますか。この二つの点を伺っておきたい。
  236. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 まず十六条の国内法令でございますが、関係国内法令としましては、民間の労働者関係の安全衛生を対象にいたします労働安全衛生法及びそれに基づくところの政省令、これが該当いたします。この法律は昨年の十月から実施をいたしておりますけれども、目的とするところは、職場の労働者の健康と安全を守るために、従来の労働基準法でやっております危害防止基準にプラス快適な職場環境の形成あるいは百十九号条約趣旨にございますように、単に事業場内の安全衛生でなくて、それを徹底するための製造、流通段階での危険機械というものの禁止、制約、こういうものを含んでおります。  それから十七条の適用範囲につきましては、わが国の場合、この条約について適用範囲の限定をいたす考えはございません。したがいまして、一項にございますように、経済活動のすべての部門について適用いたします。
  237. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これで質問は終わりますが、十七条一項の「経済活動のすべての部門」という規定がございますね。これはたとえば製造、販売、賃貸、修理、展示、こういうのは当然なんですが、それ以外何かありますか。  それからもう一つ最後に伺っておきたいのは、この条約批准するとすれば、当然ILO憲章二十二条の規定に基づいて日本としても年次報告をしなければならないわけですね。その年次報告はどういう内容のものを織り込むことになっているのか。この二つの点だけ伺っておきたいと思います。
  238. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 経済部門先生が御指摘のところで大体尽きておるのではないかと思います。
  239. 森川幹夫

    ○森川説明員 年次報告でございますが、ILOのほうから様式、形式を定めまして、内容はこれこれの状況について報告せよということが参ります。それに従いまして提出いたすわけでございます。
  240. 岡田春夫

    岡田(春)委員 質疑を終わります。
  241. 藤井勝志

    藤井委員長 河上民雄君。
  242. 河上民雄

    ○河上委員 先ほどは労働大臣に主としてお伺いいたしましたが、外務大臣がせっかくおいででございますので、ILO関係三件に関連してちょっとお伺いしたいと思います。  まず初めに、先ほども特に強調いたしましたが、一九七〇年代のILOの役割りを見通すということが今後非常に大事だと思うのですが、わが国と開発途上国との関係について考えますと、最近わが国で安い労働力を求めて企業が発展途上国へ進出するというのですか、移動する徴候がかなり顕著になっておるわけでございますが、これも資本主義の体制としては当然の法則といえばそれまででございますけれども、そういうことがまた国際的に日本立場を悪くするという可能性も非常に多いわけであります。私はこういう際、日本の外交を考える場合に、何らかの節度ある規制が必要ではないかと思うのであります。もちろん、その規制には法的な規制もありましょうし、もっと内的な規制もあろうかと思うのですけれども、これを放置しておきますと、どえらいことになりやしないかということを心配するのでありますが、外務大臣にこういう点をまずお尋ねしたいと思います。
  243. 大平正芳

    ○大平国務大臣 わが国の企業が比較的に安い労働力を求めて海外に事業をもくろむという事例につきまして、われわれも聞かないものではございません。これが将来どのような展開を見せてまいりますか、私どもも注目をいたしておるところでございます。ただ、政府の国際経済に対する基本の態度は、御案内のように、できるだけ自由な、そしてできるだけ無差別な経済の交流——投資につきましても同様でございますけれども、交流を保障するような方向考えてきておるわけでございます。しかし、これはともすれば、それぞれの国がそれぞれの国民経済のシステムを持っておりまして、ほうっておきますとだんだん世界経済が分割する方向に行くものでございますから、そういうことを防止するためにいろいろの努力をして、初めて後退しないような結果を生むことができるのではないかと私ども考えます。そしてそういう方向に推進いたしておるわけでございまして、そういう方向をひとつ考え直そうということには私はならぬと思います。ただ、いま御指摘の企業の海外進出が、むやみに安い労働力を求めていくということだけでは済まされない問題でございまして、まず相手国の経済の政策あるいは経済計画等との関連におきまして、そういったものがお役に立つようなものでなければなりませんし、わが国といたしましても、わが国のエゴイズムを充足するためにそういうことをやるのではなくて、まず先方の身になって親身に考えるという態度をとらなければならぬと思います。したがって、投資の条件等につきましても、十分配慮する態度をとらなければならないし、また、そういう態度をとり得るだけの余裕を日本の経済は身につけてきたように私は思いますので、そういった点につきましては、政府全体の政策的な態度を確立して臨みますと同時に、関係業界におかれましても、自治的にコード・オブ・ビヘービアというようなものをお考えいただいておるような向きもあるようでございますので、そういった民間の自主的な努力も期待しながら、海外において指弾を受けることのないように心がけてまいらなければならぬと思っております。
  244. 河上民雄

    ○河上委員 いま外務大臣からそういう御答弁をいただきましたが、これは実は非常に大事なことだと思うのですが、もうすでに今度は逆な意味で、日本国内でなかなか人手が集まらないような職種において、東北アジアあるいは東南アジアの日本に比較して安い労働力を引き入れるというようなことが現に、ある意味ではまだ散発的かもしれませんけれども、起こっているように、新聞など拝見しておりますと感ずるわけです。  これは労働省にお伺いいたしたいのですが、こういうような場合に雇用契約それから労働条件、そういうような問題について政府労働省としてはどういうふうに監督といいますか、指導しておられるか。たとえば韓国あたりから看護婦さんなどがかなり入ってきたりいたしております。お医者さまの場合はこれまた違うかもしれませんけれども、すでにそういう事例が、日本人以外の方に依存しなければならないというケースが僻地の医療の面ではかなりあるようなことを新聞でよく拝見いたします。そういう専門職ではなくて、もっと一般的な労働においてもあり得るんではないかと思うのですが、こういう点についてはどういうようになさっておりますか、伺いたいと思います。
  245. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 先生指摘わが国労働力不足に関連をいたしまして、外国労働者国内に入れるという問題でございますが、御承知のようにそういう要望はかなり国内でも高まっておりますけれども政府方針といたしましては従来から一貫して外国労働力を国内には入れないということで来ておるわけでございます。ただ、いま御指摘になりました准看護婦と技能研修という形で一部入国をしておるという事例があるわけでございますが、これは技能研修を受けるための入国希望者につきましては法務省から協議を労働省が受けまして、そして受け入れ企業の研修計画あるいは研修内容というようなものが適切であるかどうかを審査をして、労働省としては意見を述べる、こういうことになっておるわけでございます。その審査において、受け入れ企業について実地調査を行なうというようなことによりまして企業の実態を把握しまして、かりにも技能研修に名をかりた外国労働力の投入ということにならないように気をつけておるつもりでございます。また、入国後につきましては受け入れ企業に研修実施状況報告というものを定期的に出させることにいたしておりますし、場合によっては実地調査も行なうというようなことにいたしております。  なお、准看護婦につきましては厚生省の所管の技能研修ということになっておると思いますが、一般的に各省に関連のあるところはそれぞれの省で審査をいたしますが、それ以外の一般技能者につきましては私どものほうで審査をして、法務省と協議をするという形をとっておるわけでございます。
  246. 河上民雄

    ○河上委員 そういう方々の数字ですね。人数とか、そういうような状況はもう把握しておられますか。もしいますぐお答えいただけません場合には、あと資料として私たちにお配りいただきたいと思います。
  247. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ある程度実態の数字があると思いますけれども、ただいまたまたま関係の者が来ておりませんので、後ほど調べまして御報告さしていただきたいと思います。
  248. 河上民雄

    ○河上委員 私ちょっとそういうことを伺いましたのは、堤防がくずれるのもアリの穴からということもありますので、最近西ヨーロッパ諸国に行かれた方々の報告で非常に共通しておることは、西ヨーロッパ諸国は外国労働者が非常に多いということでして、これは季節労働者とはいえ、ほとんどヨーロッパの労働市場の一部にビルトインされているというか、肉化しているような状態であるというように聞いております。そういう人たちは一体、雇用契約はちゃんとしていると思うのですが、労働条件その他において、つまりILOで要求しておるような基準に合致してその人たちが働いておるのかどうか。これは外国のことではございますけれども、私ども非常に気になるところでございます。この話は印象だけですので、私のほうは多少誇張した点があるいはあるかもしれませんけれども、少し大げさに言えば、西ヨーロッパの諸国はその国の国民の中では非常に平等に社会保障も行き届いておるわけですけれども、あるいは労働条件も非常によくなっているわけですけれども、しかし、一番その国の国民がやりたがらないようなダーティージョッブについては外国労働者に依存する。ちょうどあたかも古代ギリシャのアテネとか、そういうような国々の、これはちょっと誇張した言い方ですが、奴隷制社会のように、市民の間は平等だけれども肉体労働は奴隷にやらしたのに近いようなことになりはしないかという心配が非常にあるわけですが、日本では、日本人の特性から見まして、非常に排外的な日本国民の国民性から見てなかなかそうはならぬと思いますけれども、そういう話を聞きますと、ILOというものがこれだけ厳格にもし行なわれるといたしましても、こういうヨーロッパでは外国労働者に対してILOの要求しているような労働条件というものはどのように適用されているか、非常に気になるわけなんですが、そういう点について労働省では正確な情報をつかんでおられますか、伺いたいと思います。
  249. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 何ぶんにも外国のことでございますので、詳しくは存じませんが、おっしゃるように、ヨーロッパではかなり外国労働力をそれぞれ入れておりまして、いわゆるダーティーワークにつけておる。そこでヨーロッパのドイツやフランスに参りますと、安定所にも紹介の窓口にそれぞれ国旗が書いてありまして、字も読めないようなところの人を使っておるということをまのあたりに見ることができますが、私ども聞いております限りでは、たとえば災害補償とか、そういうようなものについてはできるだけヨーロッパの中で協定を結んで、それでやっておるというように聞いております。ただ、職種がおっしゃるように一般的にいやがるような職種にどうしても集中しがちであるということから、いろいろ伝えられるような問題が起こるのではないかというふうに思っております。  そういうこともございまして、日本では特に単一民族でもありますので、人手が足りないからといって簡単に外国労働力を入れるということについては非常に問題があるということで、政府は先般きめました雇用基本計画におきましても、当面外国労働力は入れないということを重ねて確認をしたようなわけでございます。
  250. 河上民雄

    ○河上委員 これはおっしゃったように、私どもそう考えますが、日本人が単一民族であるといいますか、外国人をなかなか仲間に入れないという生活のあり方がいいか悪いか、非常に問題がありますけれども、現実にはそういうことでありますけれども、経済法則というのはしばしばわれわれの予想以上に力の強いものでありますので、念のため伺ったわけであります。  ちょっとまた話題を変えますが、一九六八年九月に東京でIOLのアジア地域会議が開かれたことも記憶しておるのですが、そこでアジア労働計画というものが採択されたように覚えておりますけれども、私も不勉強でその内容などあまりよく承知いたしておりませんけれども、先進国と発展途上国との経済的な格差を是正しようとする非常に野心的なプランだと思うのでありますが、その後のアジア労働計画についてどのような進展が見られたのか。また、日本政府としてはこれに対して、その推進についてどのように協力しておるのか。こういうようなことも今後一そう必要になると思われます。日本のアジアにおけるいわば一種の労働外交の一環として非常に重要なものだと思いますので伺いたいと思います。
  251. 森川幹夫

    ○森川説明員 先生の御質問のアジア労働力計画でございますが、これは一応三カ年間の計画で、すでにILOを実施主体といたしまして、日本を含めましてアジアの各国の賛同のもとに発足をいたしております。すでに発展途上国でありまするセイロンとかあるいはマレーシア等々に調査団を派遣し、それぞれ必要なサゼスチョンをするというようなことも行なっております。わが国といたしましては、これのアジアのマンパワープランにつきましては率先賛同いたしまして、わが国といたしましては拠出金もローカルポストの約三割を負担する等の積極的な協力をいたしております。ただ、このアジア・マンパワー・プラン、一応三カ年でございますが、発足がややおくれましたので、本来ならば一九七三年に終了する予定でございましたが若干ずれております。
  252. 河上民雄

    ○河上委員 これはかなり成果をあげているというふうに判断してよろしいのですか。それとも、実際にやってみて、こういう点が問題であるとか、そういうような反省すべき点も出てきているのじゃないかと思うのですけれども、そういうことについてはいかがでございますか。
  253. 森川幹夫

    ○森川説明員 ただいまの先生の御指摘のように、アジア・マンパワー・プランにつきまして全部一〇〇%成功であるということではないようでございます。やはり適切な専門家の確保あるいは受け入れ国側の状態等々が相まちまして、若干そごを来たしたことは事実でございまするが、そのためにプランの三年もちょっとずれ込んだという点があることは事実でございますが、これも近く、本年の秋ごろにはアジア・マンパワー・プランにつきましての計画の進捗状況等についての評価会を開くことになっております。
  254. 河上民雄

    ○河上委員 外務省に伺いますけれどもILO加盟国がいまどのくらいの数になっておるか。ことにいま問題になっております分裂国家の加盟の状況はどうなっておるか。最も近い機会に韓国あるいは朝鮮民主主義人民共和国のILO加盟申請というものはどういう形になるのか。  それから、もうすでに中国の場合は国連総会で中華人民共和国が唯一合法のメンバーとして加盟しているわけですが、それに伴ってILOに半ば自動的に入るわけでございますけれども、中国の加盟のプロセスですね、入ることは間違いないと思うのですけれども、どういう形でいくか、そういうちょっと技術的なことを含めまして見通しを伺いたいと思うのです。
  255. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ILO加盟国の数でございますが、現在百二十三カ国でございます。それから分裂国家のILOへの加盟の状況でございますが、ILOに現在加盟しておりますいわゆる分裂国家、ドイツは西独、それからベトナム、これは加盟しております。それから韓国、北鮮、これはいずれも加盟しておりません。それから北越、これも加盟しておりません。東独も加盟していないというのが現状でございます。  それから中国の問題でございますが、これは一昨年国連におきまして中国代表権の変更がございまして、これを受けまして十一月にILO理事会におきましてこの中国代表権が問題にされました。そのときの問題点は、中国の代表権の変更、これを理事会で決定するかあるいはこれを総会に持ち込むかという議論がございまして、結論は結局これは理事会で決定するということになりました。そこで理事会で行ないました決定は、中国の代表権を認めると申しますか、これを受け入れるということになっております。ただ、ILO側におきましてはそのように中国の代表権の変更ということを決定いたしましたが、現実問題といたしまして、中国はまだILOの活動に全然関係してないというのが現状でございます。
  256. 河上民雄

    ○河上委員 分裂国家の加盟の状況及び中国の加盟についていま伺いましたが、それで見ますと、分裂国家の場合は、大体東のほうはまだ入っていない、朝鮮の場合は南北ともに入ってない、そういうふうに理解できるのでありますけれども、韓国、朝鮮民主主義人民共和国のILO加盟条約と違うかもしれませんけれども、非常に近い問題だと思うのですが、今回の条約ではこういう問題意識はあまりないのでしょうか。そしてまたフォークリフトのような大きな機械だけではなくて、一般にビジネス街で使われております計算機ですね、電気の導入による新しい計算機が非常に使われておりますけれども、それに伴ってキーパンチャーのような、あれに類した職種に新たな別な形の労働災害が起こっているわけですが、こういうような問題について今回の条約は全く考えていないのか、それともこれはある程度適用できるものか、その辺を伺いたいと思います。
  257. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 百十九号条約で規制をいたしておりますのは、まずメーカー段階での規制は回転軸のセット・スクリュー、キーというような特定の部分を特定をいたしておりますので、先生の御指摘のような機械については適用がございません。ただ危険部門について使用の段階でいろいろの防護措置をしろということは作業点も含めておりますので、先ほどおっしゃった機械の中で一部それに含まれるものはございます。ただおそらく先生の一番御関心の深いのは、御指摘のようなスーパーマーケットのレジスターのチェッカーのいわゆる頸腕症候群、そういうような関係かと思いますけれども、そういう事務機械の合理化に伴いますいろいろの障害、特に職業病の問題につきましてはこの条約はいささか関係がないと思います。ただしかしながら、災害防止上は非常に重要な点でございますので、この前チェッカーにつきまして私たちが作業基準につきまして一応通達を出しました。それによって一時間以上働かない等々いろいろの基準を出しましたけれども、そういう基準を新しい機械に伴って職業病の発生するような、あるいは障害の発生するような作業については今後もどしどし基準を作成して障害の防止につとめたいと思います。
  258. 河上民雄

    ○河上委員 スーパーマーケットのチェッカーの職業病については、私も社会労働委員会に出向いて部長さんにもいろいろお願いいたしまして、労働省から作業基準を出していただいたのでよく承知いたしておりますが、先進諸国ではかなり事務機械というのは行き渡っていると思うのですけれどもILOではこういう新しい問題、つまり一日何時間、一日八時間、六日で四十八時間、そういうような押え方ではどうしようもないような、そういう労働の性質のものについて、労働者保護する基準を設けるべきであるというような論議がいままでまだないのか、もしないとすれば日本側からそういう問題を提起をする意思はないのかどうか、それを伺いたいと思います。
  259. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 いままでILOの場で正式議題としまして拘束労働時間以外の実作業時間の規制について話題になったことはございません。ただ、いまのキーパンチャーの作業のほか、最近、これは世界各国共通でございますけれども、森林作業者、いわゆる林業労働者がチェーンソーで働きます場合に、チェーンソーは能率があがりますけれども、その反面長時間継続して作業を行ないますと白ろう病という病気になります。したがいまして、それは振動限度を押えるとともに、作業時間についても規制をすべきではないか、そういう方面の専門家会議ILOはやっておりますけれども、まだ結論は出ておりません。ただ、このことはたいへん重要でございまして、実は先般労働省で労働安全衛生法を作成いたします場合にも、従来の拘束時間という観点と別に、作業時間の規制にかかる根拠条文を一条入れております。これは現在のところ適用いたしておりますのは海底作業、いわゆる深い潜水作業を行なうようなところで水深何メートルのところでは何分以上働いてはいけない、こういう規制をいたしておりますけれども、漸次たとえばキーパンチャー、それからチェッカーそれから振動障害の作業等につきましては、医学的研究をも相まちましてそういう規制が必要になってこようかと思いますので、日本立場からILOの場で、機会があればそういう旨の提言をいたしたい、あるいはいたすべきである、こう考えております。
  260. 河上民雄

    ○河上委員 いまのおっしゃった根拠条文は何条でございますか。
  261. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 労働安全衛生法の六十九条でございまして、見出しが「作業時間の制限」でございますが、「事業者は、潜水業務その他の健康障害を生ずるおそれのある業務で、労働省令で定めるものに従事させる労働者については、」「作業時間についての基準に反して、当該業務に従事させてはならない。」こういうふうに規定をいたしております。
  262. 河上民雄

    ○河上委員 あと一問だけ。もう一つの条約でございますが、電離放射線に関して技術的なことですけれども伺いたいと思います。  現在わが国で放射線業務を行なう事業所の数及び就業労働者数、それから実際に電離放射線による障害の発生状況、またこれに対する政府の措置、対策、それについて伺いたいと思います。
  263. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 現在放射線業務を行なっております事業場及び労働者の数でございますけれども、一応分類が三つできまして、工場・研究機関、工場は造船等で非破壊検査あるいは計測、これに放射線を使っております。それから研究機関、これを一組にいたしますとその事業場総数が約二千五百でございまして、労働者数が一万五千でございます。それから一番ポピュラーなのがエックス線その他医療機関で使っておりますが、医療機関は全体で一万四千、労働者数にしまして三万四千でございます。それから一番最近の企業としまして注目されますのは原子炉の運転でございますが、現在日本では事業場が十の、労働者数は約千七百、こういうことになっております。  なお、これらの事業場等で放射線を扱っておりまして労働者が休業する、休まざるを得ない、そういう程度の障害が起きましたのは、過去五年間で二十二名発生をいたしております。そのおもな職種としましては、機械器具の製造業、それから医療事業、そういうところで非破壊検査、エックス線、そういうものを扱っておっての障害でございまして、労働者の白血球の異常等の障害が認められております。われわれとしまして一番大きな障害として把握をいたしておりますのは、最近の時点では昭和四十六年の九月に三井造船の千葉造船所で線源のイリジウム一九二を使ってからあと始末を十分いたしませんで放置をいたしておきましたところ、下請の労働者が珍しがってそれをアパートに持って帰って、そうして同居の労働者三名を被曝をした、こういう事件がございます。  こういう事件に関連しましての政府の措置でございますけれども、先ほど岡田先生からも御指摘がございましたように、設備その他、たとえば、いまの場合に使用者としまして、使ったあとは必ず線源を点検する、こういう義務が課されておるにかかわらず十分そういうところの措置がされておらなかった、あるいはそういった作業を行なっておるところに関係者以外の労働者が立ち入ってはならない、そういう措置も不十分であったというようないろいろの問題点がございました。特に非破壊検査を行なっております事業所では、放射線業務によるところの危険というものが十分防護されておらないということで、本年の三月に全国の関係事業所の一斉立ち入り検査をいたしております。その結果につきましてはいま集計中で、まだ何とも言えませんが、それとあわせまして、電離放射線障害防止規則でいろいろの防護措置はきめておりますけれども、それをさらに徹底するために防護のための要綱といいますか、そういう指導要綱をつくりまして全国の基準局にその指示をいたしております。全国の基準局は関係の事業所に対して、その要綱に基づいて法律以上に丁寧な指導をいたしておるというのが現状でございます。
  264. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、もう時間がまいりましたから質問を終わりたいと思いますが、いま北川部長が言われました一斉立ち入り検査の結果というものを、できるだけ早い機会に本委員会におきましても御報告いただくことができればたいへん幸いと思います。最近、新聞などによりますと、東大病院あたりまでが放射性の廃液たれ流しを、知らずか何か知りませんが、非常にルーズに行なっておるということも報道せられておりますだけに、皆さん非常に関心がありますので、よろしくお願いしたいと思います。きょうはこれで終わります。
  265. 藤井勝志

    藤井委員長 柴田睦夫君。
  266. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 前回の委員会で瀬長委員質問いたしました駐留軍労務者の問題について、さらに質問をしたいと思います。  ここに在日米軍公報第七二−二号のコピーがありますが、この公報は「在日米軍の施設および区域内における従業員の行為」こういう表題になっておりまして、この中で日本人従業員に対して「在日米軍の施設および区域内では、労働組合その他の従業員団体の活動は禁じられています。禁じられている活動とは、労働者の集会、デモ、行事、政治的な団体または一般団体の会員の会合や集まり、その他のもので、公式または非公式に開催されるものです。のぼりや旗、プラカード、看板、マーク、その他のものを見えるように置いたり、バッジ、リボン、腕章、ハチマキその他のものでアメリカ合衆国または日本国政府の個人、団体、あるいは労働団体や政治団体の象徴となるもの、またはその記号や絵が記入されているものを着用することは、在日米軍の施設および区域内においては禁止されています。」こういう内容が書いてあります。この中にありますような行為を禁止する根拠は何かということをお伺いします。
  267. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいま御指摘ございましたものは在日米軍の内部規則であります。
  268. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 この米軍の内部規則が日本人を規律するということを言われるのだと思うのですけれども、この公報の中に「この政策は、日米間の安全保障条約、地位協定、基本労務契約、船員契約、諸機関労務協約などの規定による合意事項に従って決められたものです。」とこう書いてあります。それで、この合意事項というのは一体何か、またこの合意がどういう機関によって行なわれたか、このことをお伺いします。
  269. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定の規定に基づきまして、在日米軍に対して日本政府は、間接雇用の形式で労務の提供をいたしております。その労務の提供にあたりまして基本労務契約を締結いたしておりまして、その基本労務契約の内容に基づいて労務の実施が行なわれている、こういう形でございます。
  270. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 基本労務契約によって合意をしているということなんですけれども、それは合同委員会において合意をしたのか、またそれはいつのことであるか、その具体的な内容を明らかにしてもらいたいと思います。
  271. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 日本政府によって提供されました労務の管理その他につきまして契約の内容を定めましたのが基本労務契約でございまして、ただいま御指摘のございました日米間の合意と申しますのは、労務契約によりまして契約されている内容をさしているもの、こういうふうに考えております。
  272. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 このように労働者基本的人権である労働基本権まで奪われてしまう、そういう内容まで容認する趣旨日本も合意しているわけですか。
  273. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定十二条五項の規定にございますように、駐留軍の労務者に対しましても国内労働諸法令は適用されているわけでございまして、一般論として申し上げますならば、米軍の施設、区域で働いておりまする日本人の労務者に対しましては日本国内諸法令が適用されておりますし、労働基本権がその意味において保障されているわけでございますが、安保条約並びに地位協定に基づいて日本に駐留しております米軍といたしましては、軍隊の維持、基地の運営に必要な限度におきまして、施設、区域の中にあります事業場においてデモ等の規制を行なうことは許容される、こういうふうに政府としては考えております。
  274. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 いまの十二条第五項は、「相互間で別段の合意をする場合を除くほか、」「労働関係に関する労働者の権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない。」こういうように読めるわけです。この相互間の別段の合意ということによって労働者から労働権を奪ってしまうことになるわけですけれども、このように日本の憲法まで無視する合意をすることができると考えているのか、この点をお伺いします。
  275. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 いま御指摘ございました地位協定第十二条五項の次に、十二条六項といたしまして、「合衆国軍隊又は、適当な場合には、第十五条に定める機関により労働者が解職され、かつ、雇用契約が終了していない旨の日本国の裁判所又は労働委員会の決定が最終的のものとなった場合には、次の手続が適用される。」ということで、解雇の手続につきまして四項目規定がございます。十二条五項でうたっております別段の合意を云々と申しますのは、十二条六項のことをさしているもの、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  276. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 私が聞いているのは労働基本権の問題で、一番最初に読み上げましたように、すべての労働者の当然の行為が禁止されているということについて聞いているわけで、そのように全面的に労働者の権利以上に、人間のすべての権利が停止される、こういう合意が、日本国の法令で定めるところによらなければならないというのを原則としながら、そういうことがはたして許されるのかどうかということを聞いたわけなのです。それに対して、裁判所または労働委員会の決定が最終的なものとなった場合には次の手続が適用される、これは別の問題であるわけですから、最初の問題について答えていただきたいと思います。
  277. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほども答弁申し上げましたように、安保条約に基づいて、駐留している米軍が、軍隊の維持、基地の運営に必要な限度内において、施設、区域内の事業場において若干の規制を行なうことは、当然許容されるというのが政府考え方でございまして、一番最初に御指摘ございました米軍の内部規則によりまして若干の規制が行なわれておりますことは、米軍の施設、区域内という特殊な形態の事業場における業務規則を定めたものである、こういうふうに考えているわけでございます。
  278. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 事は部分的な規制という問題ではなくて、駐留軍労務者が一切の労働権を奪われているという全面的な問題だと思うわけです。労働問題についての日本の法令が適用されるということを地位協定にさえ書いてあるのに、これはあまりにも日本人をアメリカ人扱いにしてしまうということになるのではないか、こういうことを聞いておるわけです。
  279. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 軍隊の特殊性というものがあるわけでございますから、施設、区域内の事業場における組合活動につきましては、通常の民間企業の場合などとは異なって、合理的範囲内での規制が加えられることがあるだろうということを想定しているわけでございまして、もちろんこの規制というものが合理的範囲をこえるものであります場合には、また別の考え方が当然出てくると思います。
  280. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 日本人の基本的人権を奪っているわけで、しかも日本のお役所のほうがそれは当然だ、それからまた、新聞報道によれば、在沖米陸軍メープルズ司令官が屋良県知事に対して、基地内での集会、デモは在日米軍規則で禁止されているので、全軍労の闘争をやめさせるよう要請した、こういう報道がありますが、その報道とともに、同じ日に防衛施設庁の松崎労務部長もこれと同じ要請をした、こう報道されているわけです。こういう事実がはたしてあったか、また、あったとすれば、これは防衛庁自身が憲法を踏みにじった態度をとっているのではないか、このように思うのですが、お答えをお願いします。
  281. 多田欣二

    ○多田説明員 防衛施設庁の松崎労務部長が全軍労に警告をしたということは事実でございます。私ども防衛施設庁の見解は、十二条の五項というものがございますけれども、一般の民間の場合におきましても事業場というものは使用者の管理に属するものでございまして、使用者と人格の違う労働組合の活動というようなものにつきましては、一般的に就業時間外に、あるいは施設の外でやるというのが原則であるというふうに了解をしております。したがいまして、事業場内で労働組合が運動するというような場合には、労務管理上あるいは施設の管理上合理的な理由がないのに、使用者がみだりにこれを禁止するという場合は特別でございますけれども、合理的な理由があって制限を課するということは、一般の場合でも当然許されるというふうに考えております。特に駐留軍従業員の場合には、その使用者条約に基づいて駐留する米国軍隊であるということ、職場が米軍の基地内であるという特殊な性格からいいまして、軍隊の安全と安定を保持することが不可欠でございまして、軍隊の安全、規律、秩序を維持し、保安上の危険を未然に防止する等の必要から、駐留軍がある種の規制を加えるということは許されるものだというふうに理解をして、そういう全軍労に対する警告というようなことをやった次第でございます。
  282. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 たとえば、日本国内の場合においては、職業安定所を通じて就職紹介する、こういう場合にその労働者労働基本権というのを、まかしたのだからということで、踏みにじられても奪われてもかまわないというわけにはいかないわけなんです。アメリカに対しては労務契約に基づいてその日本人の労働者が、その職場内において労働基本権すべてを奪われてしまう、基本的人権が侵害されてしまう、こういうことが容認され、しかも答弁を聞いておりますと、当然であるかのごとく言われるわけなんですけれども、これは、アメリカに対して非常に卑屈な態度だ、このように私は思うわけです。このことはILO条約において、労働者団結権というものが規定されておりますし、そして日本政府もこれを批准しているわけですけれども、このILO条約を持ち出すまでもなく、また日本の憲法、日本の法律に従ってこういうような不当な米軍の規則、こういうものを撤廃するように要求しなければならないと考えるのですが、最後に大臣見解をお伺いしたいと思います。
  283. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、軍隊という特殊性に基づいて施設区域内の事業場においてある種の規制が行なわれることがあり得るわけでございますが、これらの規制というものももちろん合理的な範囲を越えて行なわれるようなものであってはいけないこともまた確かにそのとおりであるわけでございまして、これらの問題はもし合理的な範囲を越えて行なわれますような場合にはその是正について当然米側に対してしかるべき申し入れをするということは考えられるわけでございまして、従来とも在日米軍に雇用されております日本人従業員の労働条件の問題等につきましては、必要に応じ合同委員会の場等におきまして米側に対し所要の申し入れを行なってきているというのが実情でございます。
  284. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ただいま外務省並びに防衛施設庁側から御答弁申し上げましたとおりでございまして、私といたしましても駐留軍労務者の労働条件基本的な労働権の保障ということにつきましては終始留意して間違いのないようにしてまいりたいと考えます。
  285. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 具体的に言いますと、この中で書いてあります「のぼりや旗、プラカード、看板、マーク」「バッジ、リボン、腕章、ハチマキ」「アメリカ合衆国または日本国政府の個人、団体、あるいは労働団体や政治団体の象徴となるもの、またはその記号や絵が記入されているものを着用する」バッジをつける、こういうことまで含まれているわけですけれども、これらのあるいはストライキを基地内でやられては困るということをいわれるのかもしれないけれども、こういったバッジをつけるというような問題についてまで制限されていることについて最後に聞いておきます。
  286. 多田欣二

    ○多田説明員 最近問題になっておりますのは施設内のはち巻き着用の問題と、あるいはデモでございます。赤旗を立て、はち巻を巻いて指導者の号令によって進退をする、施設内で団体行動をする、そういう問題でございます。実はバッジ、リボン等の問題は現実の問題となっていないわけでございますが、またこのバッジ、リボン等につきましてもその着用の態様等によって規制を受けるのが妥当かどうか、実態が変わってくると思います。具体的な問題が出ました段階で検討したいと思っております。
  287. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 労働省側の見解をちょっとお聞きしたいと思います。
  288. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 米軍基地内の労働法の適用の問題はただいまもるるお話がございましたように、地位協定で原則として日本国の法令の定めるところによるというふうにされておるわけでございまして、私どもとしては同様の権利が保障されてしかるべきものであるというふうに思っているわけでございます。ただ、これは何も米軍の基地に限らず事業場内というものは一応事業主の管理権のもとにあるわけでございますから、これはやはり合理的な範囲である程度の管理者の規制があり得るというふうに思うわけでございます。ただ具体的に、しからばいま事例をあげられましたようないろいろなそういう活動についてこれも時間内、時間外いろいろございましょうが、そういう場合にそれぞれどうかということになりますと、具体的、個別的な問題でございますし、それからまた特に米軍基地という特殊性というものもある程度は考えなければならぬと思っておりますが、労働省といたしましては、いずれにしましても、米軍基地内といえども地位協定の精神は一般労働者と変わりなく労働法の適用があるべきものというふうに思っているわけでございます。
  289. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 終わります。
  290. 藤井勝志

  291. 沖本泰幸

    沖本委員 時間が限られておりますので、いろいろお伺いいたしますが、端的にお答え願いたいと思います。  幸いに外務大臣がお越しでございますので、先ほどからの議論を通しながらまずお伺いしたいわけでございますが、先日ILO関係参考人をお呼びしまして意見聴取をやったわけですが、この前の御質問でも申し上げたんですが、政府は何をすべきであるかという点について御意見を述べていただいたわけですが、外務省からもその席に御同席なさっていらっしゃったという点から、要望は十分お聞きになったと思うのですが、その点について、大臣は御報告をお受けになっていらっしゃるかどうか。そういう点から、参考人意見をどういうふうに外務省のほうはお受けとめになっていらっしゃるか。その点と、それからどうもこの審議を進めながら、外務省のほうは条約批准内容、いわゆる活字のほうだけ受け持って、中身のほうは労働省が持っているような感じが非常に強いわけですね。そういう内容について外務省はどの程度中身を握られておるか、あるいはこれは政府の外交姿勢にまでいろいろ影響してくると思うわけでございます。先ほど河上先生の御質問にも出てきたわけですが、私も前の質問で、労働省通産省に御質問したのですが、日本国内に多国籍企業が入ってきて、その多国籍企業が日本労働条件に合わないような、いろいろな利潤を得るための手を加えておるという点は、最近マスコミが非常に取り上げてもきております。事実このたびの春闘あたりでもそういう傾向が非常に強かったわけでもあります。同じように河上先生の御質問にも出てきたわけですが、日本の企業が盛んに発展途上国へ出ていっておる。そういうところからあるいは日本の海外援助に伴う企業のひもつき、こういう問題については、通産大臣もそういう問題は今後はやらないというような答えを外国でしていらっしゃる、こういう内容考えていきますと、先ほどの答弁ですと少し食い違ったような内容もあるわけですけれども、外務省では外国に対してそれぞれの出先機関をお持ちでもありますし、実際に外国における日本の企業の動き方というものを一々キャッチもしていらっしゃると思いますし、また外国日本の企業なり何なりに持つ不信なり、あるいはいろんな疑心なり、あるいは悪感情、こういうようなものに対してもいろいろキャッチをしていらっしゃると思うわけです。ひいては、日本に対する大きな非難になってはね返ってくる、日本商品のボイコット、こういう形でも形が変わってくる、こういうことになれば、したがって、日本の外交の内容の中にまで問題が持ち込まれてくるような事態になってくるんではないか、この点は大臣もお考えにならざるを得ないような事態が起こっておるということになると思います。近いところではベトナムのボイコット運動、あるいはタイの日本商品のボイコット運動、こういう問題も大きな問題化してきておる、ヨーロッパでも同じような問題が起きておる、こういう関係。したがいまして、外国に出ていった日本企業が向こうの国で、日本で行なわれる外国の多国籍企業と同じようなやり方で労働者を圧迫していくような内容が出てくると、経済競争と相まって、日本に対する非常な悪感情を持ってくることになってきておることは事実ですが、こういう点に対して、大臣ILO批准とか、あるいはILOの機構、あるいはILOの精神、こういうものとかみ合わせながら、どういうふうに現在お考えになっており、これから後どう対処してお越しになるか、この点についてお答え願いたいと思います。
  292. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ILOは、ひとり消極的に労働条件を保障するというだけにとどまらず、積極的に労働者福祉増進あるいは技能力の増進というような点について機能していただく必要があるのではないかと思うのでありまして、日本政府といたしましても、消極面ばかりでなく積極面につきましても、これまで若干のことはいたしてきたつもりでございますけれども、一そうそういう面に対する活動の範囲を拡大強化していかなければならぬのではないかということを第一に感じております。  それから第二に、いまそれとの関連におきまして、わが国の経済の海外進出のあり方についてお話しでございまして、確かに御指摘のように、わが国が自立経済を達成する上におきまして、生産第一主義、輸出第一主義に偏向いたしまして、なりふりかまわずに海外進出にかられておった時代が確かにあったと思うのでございまして、私はそのことを包み隠そうとは思わないのであります。しかし、一面考えていただきたいのは、日本の経済進出はそういうことばかりではないのでありまして、相手国側からの要請に基づきまして企業の進出をやっておるケースもありまするし、また、相手方の経済の自立に日本との提携ということが役立っていないとは言えない面も確かにあると思うのであります。したがって、一がいにこれをそう理解することはできないわけでございますけれども、各方面から御指摘がありますように、わが国のこういうレベルの海外経済の進出につきましての批判にあたりまして、これまでのわが国のあり方につきましては、確かに反省しなければいけないことが私はあると思うのであります。  そこで政府といたしましては、御案内のように国内経済政策の基軸、重点を変えなければならぬということを申し上げて、去年の補正予算、ことしの本予算を通じまして、そういう意欲を予算面に出したつもりであるわけでございまして、わが国といたしまして、わが国の力にふさわしい国民生活の質を取り戻さなければならない、生活あるいは福祉というものを重点にした経済政策をやらなければならぬということを提唱し、そしてそれに応じた財政政策をとってまいっておりますことは御案内のとおりでありまして、このことはひとり国内経済の問題ばかりでなく、国際経済の面におきまして、わが国の対外経済のバランスを維持する上におきまして、私は大きな力になってきたし、今後なっていくものと期待をいたしております。  それからさらに、わが国は経済の自立を達成いたしました。おかげさまで経済力をたくわえることができたわけでございますので、これからの海外の経済協力につきまして、以下のことを逐次実行に移していきつつあるわけでございます。  第一は、援助の条件、協力の条件というものをソフトにしなければならぬという方向を指向して、努力をいたしております。  それから第二は、政府援助の額をふやさなければならぬ。これは欧米の先進国と比べまして、政府援助、とりわけ技術協力が非常に弱かったわけでございまして、非常にシェアが乏しいわけでございまして、これは確かに大幅に改善せねばいかぬ。OECDからも加盟国の間におきましても、平均の水準をはるかに下に回っておるわけでございますので、それを改善していこうとかかっておるわけでございます。  第三は、わが国の援助はわが国の輸出と結びつくようなひもつき、タイドローンというようなものはやめていく方向に行こうではないか。それは一地域のアンタイイングを実行するということはすでに発表いたしましたけれども日本といたしましては、もうゼネラルアンタイイング、地域の差別なくアンタイイングをしていいという決意をしておるわけでございまして、OECDにおきましては国際的なコンセンサスがまだないわけでございますけれども、われわれはそういうことに対して非常に積極的な姿勢をもっていま対処をいたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、そういう方向で努力してまいりましたならば、関係国の理解もだんだん深まってくるのではないかと思っておるわけでございますので、われわれも一生懸命にやるつもりでございますが、今後一そう御鞭撻を願いたいと思います。
  293. 沖本泰幸

    沖本委員 大臣は、最近それぞれの問題点をかかえて、各国と御折衝をなさった観点から、いろいろな問題もお耳に入れていらっしゃると踏まえて御質問をしておるわけで、そういう中からのお答えだとこう受け取ってはおりますけれども、大きい面の外交政策なり何なりに合わせて具体的な問題がそれぞれでき上がっていきませんと、ただ呼び声だけに終わってしまうようなきらいもなきにしもあらずということになっていくわけでもありますし、それぞれの立場から、いま申し上げたような事労働に関する問題、こういう問題は国内の問題とあわせて、国外で起きてくる問題を十分お受け取りいただいて、何かのことで日本人はもうけ過ぎているなど、こまかな面から出てくる日本に対するいろいろな感情の中に、一つ事が起きれば火を投ぜられるということもないことはないわけですから、その点も十分お考えいただいて、具体的な内容が消化されていくような問題をつくり上げていただきたいというふうにお願いしたいわけでございます。  時間があればいろいろ御質問もしたいわけですが、この問題はこの辺にしておきたいと思うのですが、先ほど河上先生からの御質問に対する労働省からのお答えで、韓国の准看護婦なりあるいはインドネシアあたりからのいわゆる技術研修なり実習なりの目的で入ってくる方々の問題について、それぞれの受け入れ機関の受け入れ内容を十分検討しておるというようなお答えがあったんですけれども基本政策としては外国労働者は入れないという点を確認しておるというお答えがあるわけですけれども、この間NHKのテレビなんか見ていますと、実際にテレビが実地に実態を調べようと思って事業所に行っても入れてくれない、どこで働いているのかさっぱりわからない、こういうような点、あるいは韓国の看護婦の実習生自体が、その後のニュースで、韓国ではそういうことはないという答えは出ておりますけれども、実習した資格をとって帰るようなことがあっても、帰って何の役にも立たない、こういう内容から考えてくると、単に労働力を名目を変えて入れているとしかとれないような、それを何とかうまく名目をつけて入れていることを政府は容認している、同じような角度で大目に見ているんじゃないかと、こう受け取れやすいような内容が非常に多いわけです。そうすると、いまおっしゃった基本的な確認とは具体的な内容において全然内容が違ってきているということになるわけですけれども、もっと具体的な実態を調査していただいて、これはいい面と悪い面とあると思うのです。いい面からは、非常に外国に向かって寄与する面も出てきて、喜んでもらえることもあるだろうけれども、今度は逆に、外国から低賃金の労務者を名目を変えて入れていると受け取られやすい面も出てくると思うのですが、そういう内容について、もっと突っ込んだ内容のことをやってもらいたいと思うのですが、先ほどのお答えと少し私踏み込んだことを聞いたわけですが、その点についていかがですか。  それからついでに、これは法務省のほうにも当たるわけですけれども、これは入国ということでいろいろな点で法務省との関係も出てくると思いますけれども、こういう方々の入国管理にあたりまして、外務省はどういうふうな扱いをしていらっしゃるわけですか、そして今後はどういう扱いをしていくか、外務省からもこの点についてお伺いしたいと思います。
  294. 橋爪達

    ○橋爪説明員 現在、労働省としましては、技能研修を受けるために入国を希望してまいります外国人の入国許可の申請が法務省にあるわけでございますが、法務省から労働省に協議をしていただくわけであります。その協議を受けますと労働省は、受け入れ企業の研修計画あるいは研修施設あるいはその内容等につきまして詳細な実地調査を行ないまして、その実態を把握して意見をいれておるということでございます。また、その入国後につきましても、アフターケアの意味で、受け入れ企業から随時報告をとりまして、あるいは適宜実地調査も行なっておりまして、そういうことで、先生のおっしゃるようなことのないようにいたしたい、こういうふうにやっているわけでございます。  なお、看護婦につきましては、これは厚生省の所管でございまして、法務省のほうから厚生省に協議して審査しておりますので、われわれのほうとしては、その実態につきましては残念ながら把握しておらないわけです。
  295. 沖本泰幸

    沖本委員 いまの問題につきましても、テレビを見ておった段階では、テレビが追跡調査をやっている具体的な面が出ているのですが、それでは全然事業所側は、どこで働いているかさっぱりわからない、つかめなかったというようなのが出ております。ですから、実地調査という点をおっしゃっておりますけれども、それがあとになって国際的な問題を引き起こさないように、またその方々の労働条件なり何なりというものがまるっきり、先ほど河上先生の御質問にあったとおり、海外で働く、ヨーロッパの労働条件、いろいろな点で出てくる悪い面が日本でまた起きないように、そういう点十分心得ていただきたい、これだけにとどめておきたいと思います。  それで、時間がありませんから、条約の点について二、三お伺いしたいわけですけれども、これはせんだっての参考人にもお伺いをしたわけですが、政府としての立場でお伺いをいたしますが、百十五号の第一条に権限ある機関と労使代表との協議、こういうようなことがうたわれておりますけれども、この労使代表というのはどの程度に限定したお考えを持っているのか、それについて政府のお考えを承ります。
  296. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 この条約は、先ほどから申し上げておりますように、国内法として適用します場合には労働安全衛生法の施行という形になるわけでございます。したがいまして、労働安全衛生法につきましては、労働基準審議会に諮問いたしまして制定をいたしております。労働基準審議会には、経営者団体は日経連あるいは商工会議所等の代表、それから労働代表としましては総評、同盟、中立労連、このおのおのの代表が参加をいたしております。それをこの条約でいう代表的な団体あるいは労働組合、こういうふうに考えております。
  297. 沖本泰幸

    沖本委員 それから第六条の第二項の中で、科学技術の急速な発展進歩を背景として許容量を絶えず検討するということがうたわれているわけですけれども、今度の安全衛生法ではそれがどの程度生かされるのかどうか、この点についてお答え願いたいと思います。
  298. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 第六条の第二項の「その時の知識に照らして、絶えず検討する。」とこうございますが、この条約を補足するものとしまして、ILOの百十四号勧告というのがございます。それによりますと、百十四号の第四項の中に、最大許容線量及び最大許容量はICRP——国際放射線防護委員会、そこの勧告に従う、こういうことが望ましい、こういうふうに書いてございます。今回制定をいたしました労働安全衛生法、それに基づきます電離放射線障害防止規則で定めております許容線量につきましては、このICRPの勧告に従って定めておるところでございます。
  299. 沖本泰幸

    沖本委員 百十九号の第一条の第二項に、今度は労使団体、代表ということでなく労使の団体ということになっているわけですけれども、この代表的関係労使団体と協議するという点にあるわけですけれども、この協議はどういう形で協議されていくか。政府が一方的にこの協議をきめてしまっていくというような形になると中身がくずれていくということもあるし、そういう例がイギリスで実際には起きておる実例があるわけですから、その点にならってどういうふうにおやりになるか、その点を伺いたいと思います。
  300. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 先ほど御質問のございました百十五号条約の一条に書いてございます「使用者及び労働者の代表者」という表現と、いま御指摘の百十九号条約の第一条の第二項にございます「代表的な使用者団体及び労働者団体」というのは同じ意味と、こういうふうに解しております。したがいまして、先ほど申しましたように、労働安全衛生に関しましてこの両条約適用いたします労働安全衛生法につきましては中央労働基準審議会でそれぞれの使用者団体、労働者団体の代表の方の御参加を得まして、その議を経て決定をしておる、こういうようなことでございます。
  301. 沖本泰幸

    沖本委員 それから同じ十七条に適用範囲が述べられておるわけですけれども適用範囲は全面適用か、限定適用になるのか。政府はどっちのほうをおきめになっていらっしゃるわけですか。
  302. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 百十九号条約の第十七条の第一項に定めておりますこの機械防護条約適用範囲は、先ほど岡田先生にもお答えを申し上げましたように、経済活動のすべての部門適用するというのが政府方針でございまして、限定適用考えておりません。
  303. 沖本泰幸

    沖本委員 それからもう一つ、最後になりますけれども、もう一度百十五号に返りまして、十二条、十三条で医学的検査という点があるわけですけれども、この点について有料であるか無料であるか明記がないわけですね。この勧告の二十二号では無料と、こう規定されているわけなんですが、この条約を補足するような内容のものをお考えになっていらっしゃるかどうか。  それからこれの附帯決議の中で、先ほど労働基準法を変える内容の中に婦人の問題をいろいろ考えなければならぬと、こういうふうな内容のお答えがあったわけですけれども、特に妊娠可能年齢者の保護、こういう点について放射能から関係してくる遺伝、こういう問題が出てくるわけですね。こういう点から、これはずいぶん考えなければならないわけですけれども、これからの時代というのは婦人労働力というものが大きな力になってこれからの労働界というものを形づくっていくと思うわけですから、そういう点を考えていきますと、こういう点が十分組み込まれあるいは十分配慮された内容のものができてこなければならないし、国内法もまたそうでもあるし、ILOのほうもそうなっていかなければならない、こう考えるわけでありますが、この点についてお答え願いたいと思います。
  304. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 御指摘の十二条、十三条で健康診断を受ける場合の費用の負担でございますが、これは電離放射線作業に使用者が従事をさせておりますと使用者義務として健康診断を義務づけておりますので、労働安全衛生法ではこれら健康診断の費用は使用者負担でございます。したがいまして労働者がこれに基づいて払うということは必要がないことでございます。  なお第二点目の女子の特別な保護につきましては、この電離放射線につきましてもICRPの勧告の中で女子につきましては一般の成年男子よりもきびしい制限がございます。具体的に申しますと、男子の場合には三カ月に三レムの許容濃度、こういうふうにきめておりますけれども、女子の場合には一・三レム、それから妊娠期間中は一レムというふうに限定をいたしておりますけれども、これは先ほど申しました電離放射線障害予防規則につきましてこのICRPの基準どおりの制約を女子についていたして女子の保護に特に留意をいたしておるところでございます。
  305. 沖本泰幸

    沖本委員 じゃ、以上で終わります。
  306. 藤井勝志

    藤井委員長 これにて各件に対する質疑は終了いたしました。  次回は、来たる六日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十六分散会