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1973-05-30 第71回国会 衆議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年五月三十日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 藤井 勝志君    理事 石井  一君 理事 西銘 順治君    理事 福永 一臣君 理事 岡田 春夫君    理事 堂森 芳夫君 理事 金子 満広君       加藤 紘一君    小林 正巳君       深谷 隆司君    山田 久就君       石野 久男君    川崎 寛治君       河上 民雄君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務政務次官  水野  清君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省中近東ア         フリカ局長   田中 秀穂君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君  委員外出席者         外務省アメリカ         局外務参事官  角谷  清君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十九日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     倉石 忠雄君 同日  辞任         補欠選任   倉石 忠雄君     加藤 紘一君     ――――――――――――― 五月十七日  米航空母艦横須賀母港化反対及び日米安全保  障条約廃棄に関する請願石母田達紹介)(  第四四七九号) 同月二十四日  米航空母艦横須賀母港化反対及び日米安全保  障条約廃棄に関する請願石母田達紹介)(  第五〇二五号) 同月二十九日  米軍弾薬輸送即時中止等に関する請願(中路  雅弘紹介)(第五六〇〇号)  同外九件(伏木和雄紹介)(第五六〇一号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第五七七一号)  米航空母艦横須賀母港化反対及び日米安全保  障条約廃棄に関する請願石母田達紹介)(  第五六〇二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月二十八日  日ソ平和条約締結促進に関する陳情書  (第三六七号)  日朝国交正常化促進に関する陳情書  (第三六八号)  ベトナム民主共和国との国交正常化に関する陳  情書(第三六九  号)  米国押収資料の返還及び公開に関する陳情書  (  第三八四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 藤井勝志

    藤井委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田春夫君。
  3. 岡田春夫

    岡田(春)委員 若干御質問をいたしますが、今月の十五日にドイツ民主共和国との外交関係設定が行なわれたわけでございます。この交換公文を拝見いたしますと、外交関係設定について、「千九百六十一年四月十八日の外交関係に関するウィーン条約規定日本国ドイツ民主共和国との間の外交関係を規律するものであることを確認します。」云々、こうなっているわけです。こういう形での外交関係設定は、実はいままでにどうもないような感じがするのですが、こういう先例がありますか、どうなんですか。
  4. 高島益郎

    高島政府委員 日本政府といたしまして、ウィーン条約を、外交関係設定にあたりまして、引用した先例はないと思います。ただ、ほかの国の関係では、最近そういう例はございます。そういう点を考慮いたしまして、これを採用した次第であります。
  5. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、こういうような間接的な表現を行ないました理由はどういうわけでございますか。  たとえば日中共同声明の場合においても、直截に、外交関係設定する、大使交換を行なうという意味文章上の表現がはっきりしているわけですけれども、ドイツ民主共和国の場合に対しては、こういう間接的な表現を行なったという理由は、どういうところにあるのですか。  もう一つ、こういう提案日本のほうからこういう文章提案をされたのですか。あるいはドイツ側からこういう提案をされたのですか。  この二つの点も含めて、御答弁を願いたいと思います。
  6. 高島益郎

    高島政府委員 たいへん申しわけありませんが、主管の局長、ちょっと出ておりませんので、私、経緯を詳しく存じませんので、いまの御質問、お答えいたしかねます。
  7. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし、あれじゃありませんか、こういう提案をしたのは日本側ドイツ側かというようなことは、おわかりになるはずだと思うのですが、その点はいかがですか。
  8. 高島益郎

    高島政府委員 私の記憶に誤りなければ、この点につきましては日本のほうの提案でございます。
  9. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは日本のほうの提案であるとするならば、なぜこういう表現をしたかということは、課長が来ないとわからない、こういうわけですね。
  10. 高島益郎

    高島政府委員 最近東独西欧諸国との間の外交関係設定交渉がかなりひんぴんと行なわれまして、その交渉先例等を参照してこういうことになったのであろうと私考えておりますが、私自身この交渉に直接参与しておりませんので、どういう理由でそういうことを日本のほうから提唱したかという点につきましての詳しい経緯はちょっと存じかねます。
  11. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この点はひとつ関係の人をぜひこちらに早急に呼んでいただいて、経緯を御答弁いただきたいと思います。  ときにそれに関連をして、外交関係に関するウィーン条約を見ますと、第二条がこの点に該当するのだと思うのですが、これは第二条の場合に「諸国間の外交関係開設及び常駐の使節団設置は、相互同意によつて行なう。」こういうふうになっておりますが、この場合でも、これは同意をするということですから、この第二条に基づいて外交関係開設同意したという意味の何らかの表現がありませんと、これによると「外交関係を規律するものであることを確認します。」というような、きわめて抽象的なあいまいな表現になっている点が私はどうも解せないのですが、こういう点を含めて御答弁をいただきたいと思います。
  12. 高島益郎

    高島政府委員 ただいま先生御指摘外交関係ウィーン条約第二条は、これは従来から国際慣習法といたしまして世界的に確立した一つ国際社会における原則でございまして、外交関係開設するにあたっては相互の国の合意がなければできない、そういう合意に基づいて外交関係設定したわけでございまして、その合意はまさに五月十五日に日・東独両国政府代表間の交換公文の署名がすなわち合意でございまして、そのことにつきまして一々外交関係条約第二条を引用しなければならないという関係にはないと思います。外交関係ウィーン条約を引用しましたゆえんのものは、私の解釈では、単にこの第二条のみならず各条にわたりまして、外交関係についての原則を詳しくうたっておりますので、このような原則に従ってこれからきちんと日本東独との間の外交関係設定していくのであるということでございまして、第二条そのものは、これはもう規定をまつまでもない国際間の一つ慣習法であるというふうに考えております。
  13. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いまの御答弁を伺うと、なおさら、なぜそれじゃこの条約を引用しなければならなかったかという根拠が、ことさらドイツに関しては厳密にこのような条約を適用しなければならない、そういう理由があるのかどうなのかという点に関連をしてくるのだと思いますので、これはあとで参りました場合にひとつ御答弁をいただきたいと思います。  そこで話を進めてまいりますが、この交換公文設定に基づいて黙示上の外交関係承認という形での外交関係樹立ということになるわけですか、どうですか。
  14. 高島益郎

    高島政府委員 今般五月十五日に日・東独間の外交関係樹立についての交換公文に署名したわけでございますが、この時点をもってわが国東ドイツ国家として黙示的に承認したというふうに考えております。外交関係そのものは、この黙示的承認と同時に、この交換公文によりまして正式に設定したわけでございまして、黙示でも何でもないわけでございます。国家としての承認黙示的に行なったことになるということでございます。
  15. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは大平さんに伺っておきたいのですが、ドイツ民主共和国という国家黙示的に承認をしたということになりますと、当然これは国境の問題、特にドイツの場合においてはベルリンの問題が非常に重要な問題ですが、国境の問題などはどういうことになるのですか。大平さん、ひとつお答えをいただきたい。
  16. 高島益郎

    高島政府委員 たいへん申しわけありませんが、ちょっと私先にお答えさせていただきます。  ドイツの場合に限りませんですけれども、一般的に国家承認するという場合に、その相手承認する国の国境その他について明確な合意がなければならないということは国際慣行上ございませんので、私ども一般的に国家承認するあるいは政府承認するという際に、国境については特別に合意をしないのがむしろ慣例でございますので、わがほうといたしまして西独あるいは東独間の国際的に定められた一つ合意を尊重するという基礎の上に立って東ドイツ国家として承認するということでございまして、特にこの外交関係設定にあたりまして東ドイツ国境線日本政府として確認するとか合意するとかいうことはいたしておりません。
  17. 岡田春夫

    岡田(春)委員 国境について合意をしなかったというお話はわかりますけれども、しかし日本側としてはドイツ民主共和国はどこからどこまでだという国境を観念として持たなければこれは交渉にならないだろうと思うのだが、合意の問題はともあれ、この点はどういうようにお考えですか。
  18. 高島益郎

    高島政府委員 わが国といたしましては、東ドイツにつきましては、西ドイツ東ドイツとの間の基本関係条約、これを尊重する上に立って東ドイツ国家として承認するということでございますので、国際的にすでに画定しております国境線を当然東ドイツ国境線というふうに考えるということでございます。
  19. 岡田春夫

    岡田(春)委員 具体的には……。
  20. 大和田渉

    大和田政府委員 いま条約局長がお答え申し上げましたように、すでに国際的に認められたその国境ということでございますが、いま具体的という御質問でございますけれども、具体的にはオーデル・ナイセの左側と申しますか、西側のあの線が国境になっているというふうにわれわれ了解しております。
  21. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それからベルリンの問題はどうなんですか。
  22. 大和田渉

    大和田政府委員 ベルリン地位の問題につきましては、いわゆる四カ国の管理機構というものがございますのですが、したがいましてベルリンについての国境ということじゃなくて、ベルリン自身が特殊な地位にあるということを東西ドイツが認め合っているというふうに了解しております。
  23. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、しかし国境というのはその場合にどこになるのですか。ベルリンそれ自体の特殊な地位を認め合っているのはわかります。そこら辺はそうすると国境はないということですか。
  24. 大和田渉

    大和田政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、東西ドイツベルリンの特殊な地位というものを認め合っているというわけでございますので、したがいましてその場合に国境を求めますれば、ベルリンを除いた線ということになると思います。
  25. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうするとベルリンという町を東のほうも西のほうも、東独西独もこれを除いてそしてそこへ国境線をつくる、こういう意味ですか。
  26. 大和田渉

    大和田政府委員 この国境線が必ずしも最終的でないということはいわざるを得ないと思いますけれども、現状において両ドイツが認め合っておりますのはベルリンを除いたその線ということになると思います。
  27. 岡田春夫

    岡田(春)委員 先ほどあなたいらっしゃらなかったのですが、この交換公文でなぜウィーン条約というものを引用されたか。これは日本側提案をした、こういうお話条約局長から伺ったのですが、日本側はなぜこういう提案をされたか、その理由をお伺いしたいと思います。
  28. 大和田渉

    大和田政府委員 ドイツ民主共和国がまだウィーン条約加盟国でないわけでございます。その場合、またわれわれとしては、近くドイツ民主共和国ウィーン条約に加入する手続をとるということは承知しておりますけれども、現状におきましては、両国間を律する外交関係条約というものはないわけなんでございます。したがいまして、あの条約にあるようなお互いのつき合いをしようということをうたったわけでございます。
  29. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ちょっとわからないな。それは、ウィーン条約東ドイツ東独がそれに加盟しておらない。しかしそのことは何も東独だけの問題ではありませんでしょう。中華人民共和国の場合、どうですか。中華人民共和国共同声明の中には、こういうことをことさら書いておりませんね。中国との場合においてはそれは書かないで、直截に外交関係設定すると書いてある。ところがこれについてはこういう形をとっているのは一体どういうわけかということなんです。
  30. 大和田渉

    大和田政府委員 あの共同声明にうたった趣旨は、いま申し上げたとおりでございます。ただ、いま御指摘のように、中華人民共和国国交を正常化したときにはそういう項目はなかったということは、それは事実でございます。ただ東ドイツとの場合には、近く東ドイツがそういうアプリケーションを出すということも聞いておりますが、同時に、東ドイツと最近国交を結んだ幾つかの国が同じような条項を設けておりますので、それをわれわれとしては参照いたしたわけであります。
  31. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その以外の国というのは、たとえばどういう国ですか。
  32. 大和田渉

    大和田政府委員 まことに申しわけありませんですが、いまここに資料ございませんので、後ほど調べてお知らせ申し上げるようにいたしたいと思います。
  33. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃその場合における交換公文その他の条文も含めてあとでお出しをいただきたいと思います。  そこで、第二次世界戦争後における、まあこれは一つの悲劇なんですけれども、一つ国家の中に二つ政府ができるというような形が、これはドイツの場合にもそういう形ができ上がった。そういう中でこの条約が結ばれたんですが、こういう経過を考えました場合に、たとえばベトナムの場合、南北ベトナムにそれぞれの政府がある。こういう先例として、この事実を東ドイツの場合に考えていくことができるんじゃないかと思うのですが、あるいはまた朝鮮の場合も同様な考え方ができるのではないかと思うのだが、これについては、これは多分に政治的な問題ですから、外務大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへん政治的な答弁になって恐縮ですけれども、戦後の世界に、いま仰せになりましたような奇形的な状態といいますか、そういうものが生み落とされたということは、遺憾ながら事実でございます。そして、しかしながらわれわれといたしましては、平和的手段によりまして秩序ある諸民族の間の——民族と申しますと、ことばが正確でございませんけれども、政府政府との間の秩序ある関係が打ち立てられて世界の緊張の緩和が定着してまいることは望ましいことと思うのであります。その場合、理想といたしましては、長続きのする関係が、そして国際法的に見まして問題のない関係ができ上がることが望ましいわけでございますけれども、現実の問題といたしましては暫定的と申しますか、終局的ではないけれども、とりあえずの姿において秩序ある交流、交際ができるような姿になることが望ましいと思うのであります。そういう意味で、東独西独の場合におきましても基本関係条約というようなものができ上がりまして、それが大かたの国々から承認を受けるというような姿になってきておるわけでございまして、このことが直ちにベトナムの場合、朝鮮の場合にそのまま当てはまる——それぞれ条件が多少違っておりますので、そのまま当てはまるものとは思いませんけれども、しかしそういう基本的な考え方は、このベトナムの場合におきましても朝鮮の場合におきましても、全然無関係であると考えるわけには私はいけないんじゃないかと思いまして、問題は、東独西独の場合、基本関係条約というような姿において両当事者合意を見てそういう関係設定されて、それを第三国がそれぞれそれを踏まえた上で東独との間に外交関係を持つようになってきたわけでございますが、いずれにいたしましても、ベトナムの場合におきましても、北越南越合意をした上で、それでそういうはっきりとした基本条約というようなものになるかならぬか存じませんけれども、両当事者の間にやはりちゃんとした了解がありまして、そして第三国がそれを踏まえた上で外交関係設定していくような姿になっていくのではないかと考えておるわけでございまして、終局的な姿でないにいたしましても、暫定的にそういう分別を持って異常な国際関係に対処してまいることは、やっぱり人類の知恵じゃなかろうかと考えております。
  35. 岡田春夫

    岡田(春)委員 たいへん政治的な御答弁で、何を言われたかわからないです。  問題はそうすると——一つ一つ伺いましょう。いわゆる北ベトナムとの関係は、これは国交正常化方向に進まれるというお考えなんでしょう。そうするとこれが一つ先例といいますか、一つの形として、東ドイツ西ドイツの問題についても、基本条約の問題があるとはおっしゃるけれども条約上の関係からいうならば、パリ協定だって二つ政府の間の調印も行なわれているわけですから、基本条約という名前を使うか使わないかは別として、両国関係の、両国政府関係関係というものがすでにパリ協定に基づいて明らかにされているということになると、いわゆる北ベトナム日本との国交回復は、こういう東ドイツの例が出てきたことによって非常にやりやすくなったし、まあ大平外務大臣としては北ベトナムとの間の国交正常化に踏み切られるという御意思なんだろうと思うが、こういう点から見て、北ベトナムとの正常化問題についての御意見をもう一度伺っておきたいと思います。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 一番基本は、ベトナムにおきまして日本関係を結んでおりまする南越側におきまして、日本北越との間で外交関係を持つということに対して別段異存はない状態になっておるわけでございます。われわれといたしましては、したがって北越との間に外交関係樹立を目標といたしまして打診を続けてきておるわけでございます。そういう状況の中で、ドイツにおきましてああいう姿において両独関係設定されて、第三国もまたそれを踏まえて多彩な外交関係をいま繰り広げつつありますことは、ベトナムの場合におきましてその形がそのまま先例になるとは思いませんけれども、たいへんエンカレジングな条件一つになるのではないかと思っております。
  37. 岡田春夫

    岡田(春)委員 北ベトナムではエンカレッジされる条件になるというのですが、朝鮮の場合、どうですか。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 朝鮮の場合、南北の間で対話が進んでおりまして、われわれの見るところ、まだ実質的な進展がそう見られていないようでございますけれども、この対話を通じまして、両当事者の間におきましてどういう了解が今後出てまいりますか、これを十分踏まえた上で私ども考えていかなければならぬと思うのでありまして、いまの段階におきましては、たびたび私も御答弁申し上げておりますとおり、南北対話というものが着実に進んでまいるように祈念するし、またそれをそこなうことのないように、われわれとしても十分に配慮していかなければならないのではないかというのがただいまの心境でございます。
  39. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは両国関係についてのあなたの期待をお話しになったのですが、日本朝鮮民主主義人民共和国との関係正常化の問題はどうなんですかということを伺っているのです。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 それに間接的にお答え申し上げたつもりでございますが、南北の間に対話が進んでおるわけでございまして、それを見守っておる、そしてその進展を期待いたしておるということでございまして、それをわれわれは踏まえた上で北朝鮮との関係という問題を考えていくべきじゃないかと思っております。
  41. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この前、私も質問をして、そのときに外務大臣からも答弁をいただいておるのですが、アルバニアとの国交正常化の問題、外交関係設定の問題、これについては遠からず具体化いたします、すみやかにやります、こういう御答弁がこの間外務大臣からあったのです。これについてはすみやかに具体的な方向を進めるというお話だったのですが、これはいまどういう形で進めておりますか。
  42. 大和田渉

    大和田政府委員 先般外務大臣が御答弁になりましたように、われわれはウィーン交渉を開くということを現地大使に訓令いたしまして、現地大使ウィーンに駐在しているアルバニア大使と接触を持ちまして、日本側意向先方に伝えたわけでございます。先方はそれをすぐ本国に知らせるということを言ったままになっております。ただ、中間的に、五月の初めになりまして先方から、日本側の開こうという意向をいま本国政府は検討中である。いましばらく待ってくれという返事があって、そのままの状況になっております。
  43. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは大臣にぜひ伺っておきたいのですが、そのときに政府側から、国連加盟国の中ではアルバニア南イエメン人民共和国、この二つが実はまだ外交関係設定されておらない、しかし南イエメンに関してはいま交渉中であって、交換公文お互い交換する時期は間もなくである、そういうことの答弁まであったわけです。この答弁が行なわれましたのは四月六日のこの委員会であります。ところが、四月十日になって、なるほど答弁のとおりに、交換公文お互いにかわされまして、国交といいますか外交関係樹立が行なわれたわけですが、これについて、外交関係樹立の事実を明らかにしなかった、新聞に発表もしなかった、そのままの形で今日に至っているというような事態があったわけです。外務委員会でそこまでお話しになって、その四日後において文書交換が行なわれて、それに対して外交関係設定されたのに、これが公表されておらないということについて、一体外務大臣はどのようにお考えになりますか。この点は、見ようによっては相手国をたいへん侮辱した態度である、こういわざるを得ないと私は思うのですが、外務大臣から責任のある御答弁をいただきたいと思います。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 いま仰せのとおり、四月十日に駐エジプトのわがほう大使と同地に駐在する南イエメン大使との間で書簡交換されまして、両国大使館レベルでの外交関係開設して、早期に外交使節交換することを確認いたしたのであります。しかし、御指摘がございましたように、かかる書簡交換新聞等に発表しなかったわけでございますが、これは引き続き行なわれる予定の大使の発令を待ちまして行なうことが慣例になっておると私は聞いておりますので、そういうものかなと私は承知いたしております。
  45. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いまの御答弁では私は納得できないのです。たとえば東ドイツの場合においては、文書交換が行なわれたときには公表されているのですから、南イエメンの場合だけ公表しなかったという理由については、何らかの根拠がなければならない。これは慣例になっておるというような御答弁では私は納得いたしません。特に南イエメンとの間には一九六七年から国家としての承認があり、しかもそのあとで、大使館設置についてもすでにきまっているのです。大使館設置は、御承知のように外務省設置法の改正ですね。これは日本の国の法律に基づいて設置まではすでにきめられている。それなのに、六七年から七三年ですからもう六年たっているわけなんですが、何でこういうようにいわゆる外交関係設定を延ばしておったのか、こういう点についても私はたいへんふしぎに思う。しかも外交関係設定された場合においてこれを公表しない、こういうことになってまいりますと、何か南イエメンに対し一定の考え方があるためにこれを公表しなかったのではないか。しかも、この七年間何のために外交関係設定をおくらしておったのか。考えようによっては、日本の国会に対しては大使館交換の法律までこれを承認をとっておいて、そうしておいてあるということになると、国会に対しても侮辱しておると思うのです。こういう点について、私は、先ほど向こうから発言を求めておられますけれども、これは政治的にきわめて重大ですから、外務大臣からこれは御答弁をいただきたいと思う。
  46. 大平正芳

    大平国務大臣 岡田先生おっしゃるように、南イエメン国に対しまして特別な感じを持っているわけでは決してございませんし、また国会を軽視するような意図はみじんもございません。仰せのように、南イエメン国との関係におきましては、昭和四十二年の十二月十二日にこれは承認いたしまして、十二月十五日に官報で告示し、外務省でもこれを発表いたしておるわけでございます。ただ、その後隣国サウジアラビアとの国境紛争が発生する等の事態がありまして、わがほうといたしましては、暫時事態の平静化を待っておったわけでございまして、ようやく南イエメンをめぐる内外の情勢も比較的安定を取り戻したように考えられますので、先方と協議いたしまして今回の公文交換という手はずにいたしたわけでございます。その間、何ら特別の意図をもってやったというものでは決してございませんので、その点は御了解をいただきたいと思います。
  47. 岡田春夫

    岡田(春)委員 イエメンで国境問題の紛争があったという事実も私は知っております。しかし、その問題と国交の問題とは別個の問題です。先ほどもあなたは、東ドイツの問題では個々の未確定の問題があるのだけれども話をつけたのだ、こう言っているくらいですから、しかも、政権上に何らの移動もなかったわけなんです。それなのに七年間もおいでおいで——それほどの複雑な問題であるならば、外交問題が樹立された場合に当然これは公表するのがあたりまえじゃないですか、それほどの問題になっているなら。それを公表しないで、これは慣例上の問題ですなどと言って外務大臣がそういうような態度をおとりになることは私は納得できない。一言で言うと、この発表しなかったというのは、うっかり忘れたらしいのだけれども、外務省はたるんでいるのじゃないかと私は言いたいのですよ。少し外務省の役人の関係の人は、国会のほうもなめているし、国際関係においても少したるんで、まあアメリカとだけ話をしていればそれで全部済みなんというような考え方でお考えなんじゃないかという感じがしてしようがないのですよ。外務大臣も、下から書いて持ってきたメモを見て、慣例上であったらしいというようなことでは、しかも、この内閣の二本柱といわれている大平さんですから、ひとつしゃんと外務省の官僚をかちんと、たるんでいる状態を押えるぐらいでないと困るので、私はこの点は強く外務大臣に要望いたしますし、この点について重ねて、慣例上の問題なんということでは、私は納得いたしません。忘れたのです。これは、忘れたなら忘れたと、今後外務大臣としてはこういう点を厳重にひとつ監督してたるまないようにいたしますというぐらいの答弁があっていいと思うのですが、もう一度伺っておきたいと思います。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 私が見るところ、外務省の諸君も、非常に複雑な国際関係の中でむずかしいわが国外交について日夜鋭意研究もし、努力もしていただいておるわけでございまして、そのことにつきまして私は多といたしております。たるんだものとは思っておりません。しかし、人間のことでございますから、御指摘のように、弛緩したという事実がないという保証はなかなかないわけでございますので、私といたしましても一そう注意をいたしまして、さようなことのないように心がけてまいりたいと思います。
  49. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは実は朝鮮問題も少し伺いたかったのだけれども、時間があと十分しかありませんのでほかの問題を伺ってまいりますが、一つは、田中総理がこの夏から秋にかけて各国を訪問される。その場合、特にソ連を訪問されるということなんですが、この場合において北方領土の問題についての交渉をおやりになるお考えなのかどうなのか、政府としてのお考えをひとつ伺っておきたいと思う。
  50. 大平正芳

    大平国務大臣 北方領土の交渉というのはいわゆる平和条約締結交渉と私は承知いたしております。平和条約締結交渉は、去年の十月私の訪ソをもって第一回の交渉をやりまして、ことしモスコーにおきまして第二回の交渉をやろうということで双方合意を見ておるわけでございまして、したがってこの交渉につきましては、外務大臣相互の間で平和条約締結交渉という姿において今後やってまいるつもりでおります。しかしながら、総理大臣が訪ソされるということになります場合、この問題が話題になることは当然と心得ておるわけでございます。
  51. 岡田春夫

    岡田(春)委員 平和条約交渉をするというお話になると、当然これは領土問題に関連をしてくるわけで、また、それ以外の日ソ間の関係、規律の問題も当然出てくるわけなんですが、たとえばここに私ございますが、インドとソビエトとの平和友好条約が結ばれた。これは数年前に結ばれていますね。この平和友好条約の第九条に両国間の平和関係について——九条だけではありません。第八条、第九条、第十条、両国間の平和共存の関係についての規律がこの中にうたわれている。そういう中で特に私は第九条がきわめて重要だと思うのだが、このことが領土問題に関連をしてソ連側から提案をされる可能性があると思うのだが、この点については、大臣としてどういうようにお考えになりますか。  第九条を私読んでみます。「各締約国は、互いに他方の国との間に武力紛争を行なう第三国に対し、いかなる援助をも与えないことを約束する。両国のうち、一方の国が攻撃され、あるいは攻撃の脅威を受けた場合、各締約国はこの脅威を除き、かつ両国の平和と安全を確保するのに適切かつ有効な措置をとるため、直ちに相互に協議を開始する。」こういう条項が実はソ連とインドとの間においては平和友好条約の中にうたわれているのです。私はこの条文はたいへん重大な条文であって、こういう条文がうたわれることになりますと、日ソ関係でこういう条文がもし使われるということになると、共同防衛というような形になってくるのじゃないか。こういう条約提案された場合に私は日本の国は受けるべきではないと思うのだが、こういう点については外務大臣としてどのようにお考えになるか。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 岡田先生おっしゃったように私も考えています。
  53. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、よくわかりません。私の意見に賛成ですか、どうなんですか。
  54. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたの意見に賛成です。
  55. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃこれはおとりにならないというように理解してよろしゅうございますか。——いや、首だけではわかりませんね。首を振られても速記に残りませんから。
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 第一そういう提案をまだ受けておりませんし、また、そういう提案があるように私は予想いたしませんけれども、考え方といたしましてあなたの御意見に賛成です。
  57. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もう一つ、これは領土問題で伺っておきたいのですが、これはレーニンの生きているときに、たしか一九一七年の十月二十六日だと思いますが、「講和についての報告」という中で、領土問題については絶対に拡張の政策をとらない、「平和についての布告」という条項がございます。したがって北方領土の問題では、むしろ日本の側からレーニンがこういっているじゃないか。日本としてはこの原則に基づいて北方領土の問題を解決してもらいたいというたてまえを根拠に置かれるほうが、ソ連側に対しての交渉として非常にやりやすいと私は思うのです。こういうレーニンのいっていることばなんかをお使いになって、ひとつ思い切って大平外務大臣が北方領土の解決のために努力をされることが必要だと思うんだが、このレーニンの「平和についての布告」、この問題についてどういう見解をお持ちになっていらっしゃるか、こういう点についてもひとつ大平さんから伺っておきたいと思います。
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたの御意見十分拝聴しておきます。
  59. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、拝聴されたんでは、私長々と言ってもね。これは有効にお使いいただくお考えがあるのですか、どうなんですか。
  60. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもとして十分テークノートをしておきたいと思います。
  61. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私もう時間がないので、朝鮮問題を一問だけ伺って、まだあといろいろあるのですが、留保しておきたいと思うのです。  この間のWHOの問題で、この委員会においても長い間いろいろ議論が出ました。特に、最終的には自民党からもWHOについて相当強い問題提起をしておられる。それをあえてあなたのほうは押し切って、一時たな上げというようなああいう形の提案をされてみごとに破れた。国際情勢の転換ということがこれによってあなたははっきりおわかりになったはずです。あなたの時代ではないけれども前の内閣の時代に、国連においていわゆる台湾問題で日本政府はみごとに破れた。こういう過去の例を考えた場合に、今度の国連において朝鮮の問題を一体どういうようにおやりになるお考えなのか。重ねて時代錯誤なことをおやりになるとは私は思いたくない。大平さんが将来のある人であればあるほど時代錯誤なことをおやりになるとは考えたくない。ここで思い切って政策の転換をおやりになる考えがあるのかどうか、信念のほどをひとつはっきりお聞かせいただきたい。これは大平さんの将来に関係する問題です。大平さん個人の問題ではない、日本の将来に関係する問題だ。これは、外務委員会で自民党まで含めてWHO問題について疑問を提起しているのに、あえて外務省の方針に従われて外務大臣がその方向をとられて失敗したその経験にかんがみて、国連総会における態度、決意のほどをひとつここでお述べいただきたいと思います。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 WHOに対する北鮮の加盟問題が本委員会で論議になりました際に私が申し上げておきましたことは、WHO、世界保健機構はできるだけ普遍性をもって、たくさんの加盟国があることが望ましいと考えておる、ただ、WHOという専門機関において政治的なインパクトを伴う措置をおとりになることはいかがかと思うんだ、それはまた別な場があるじゃないか、そういう趣旨で私どもは審議の一年延期の共同提案国になったわけでございますが、しかしながら、これは何も北鮮を敵視する意味では毛頭ないんでございますということ、そしてこの表決がどのようになるかということを計算してやっておることでもないんでございますというような趣旨のことは与野党の委員の方々からの御質疑に私は答えておいたつもりでございます。しかしこのことは私どもの意見がいれられないで、御指摘のようにWHOにおきましてこの議案が取り上げられて、北鮮が加盟することになりましたのでございます。で、こうなった以上、北鮮が加盟国といたしまして、建設的な役割りを世界保健機構で行使されますことを期待するという趣旨の談話を政府としていたしておいたのでございます。  しかしながらこういうことは、いま岡田さんのおっしゃる国連の場を控えまして無関係ではないと私は考えておりまして、そういう成り行きを十分踏まえた上で、今秋の国連における朝鮮問題に対する態度というものをわれわれとしては手落ちなく検討して対処しなきゃならぬと考えておるわけでございますが、いまの段階におきましてどうするこうすると申し上げるのはまだ時期尚早でございまするし、私どもも目下鋭意検討中でございますので、さような状況でありますことを御了承をいただきたいと思います。
  63. 岡田春夫

    岡田(春)委員 まだ朝鮮問題でいろいろありますけれども、私の時間が参りましたので、この点は留保いたします。
  64. 藤井勝志

    藤井委員長 河上民雄君。
  65. 河上民雄

    ○河上委員 外務大臣にお尋ねいたしますが、いま岡田委員よりWHOに対する朝鮮民主主義人民共和国の加盟の問題について御質問がありました。私もこれに引き続き大臣のお考えを承りたいと思うのであります。  実を申しますとこの問題につきましては、私もこの委員会で数回お尋ねをいたしまして、日本の外務省、日本政府がかりに反対されても朝鮮民主主義人民共和国は必ずWHOに加盟されるだろう、もしそうなったらどうするんだということまで私は伺ったわけでございます。それに対して大臣は、まあ仮定の問題には答えられないというようなことまで言われたのでございますが、いまこういうような事態を迎えまして、大臣としてどういうような御感想をお持ちになっておられるか伺いたいと思うのでございます。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 やっぱり世界保健機構というような機構はできるだけ普遍性を持つべきであるという考え方が多くの加盟国によって支持されたものだと私は思うのでありまして、そういう考え方は私ども、別に初めから否定していないわけでございまして、それはけっこうなことだと。ただそこで、こういう議案の取り扱い方がいかがかという技術問題を私どもは問題にいたしておったわけでございますので、この結果について格別驚いておるわけではございません。
  67. 河上民雄

    ○河上委員 国連の問題というのを技術的な問題という形でとらえるのも、国連中心主義で立っている政府としていかがかと思うのでありますが、先ほど大臣は、私どもは大臣とは違った立場に立ちますけれども、こういう問題を取り上げるには別の場があるのではないかという考え方が技術的にたな上げ提案国になった主たる理由であると、こういうふうに言われたのです。一体大臣考えられておる別の場というのは、どういう場を想定しておられるのですか。
  68. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいま大臣が御答弁になりました別の場とおっしゃいましたのは、具体的に申し上げますと、国連そのものの場においてという意味でございます。
  69. 河上民雄

    ○河上委員 大平外務大臣もいまの局長答弁を確認されますか。
  70. 大平正芳

    大平国務大臣 前の御審議の場合も御説明申し上げましたように、東独の例なんかも引用して申し上げたつもりでございますが、何回か審議延期になっておりまして、東独が国連に加盟するということが明らかになってきた段階におきまして満場の祝福を受けてWHOに入ったというケースもございますので、私どもといたしましては、そういう姿が望ましいんでないか。つまり国連の場におきまして政治的な問題というのは取り上げられるべきであって、専門機関で政治的なインパクトを伴うような措置は必ずしも適切ではないじゃないかという考え方が主になりまして私どもがとった態度に結晶してまいったわけでございます。そういう意味でございます。
  71. 河上民雄

    ○河上委員 そうしますと大臣は、WHOの場ではこういう問題は討議すべきでない、たとえば国連の総会とかそういうところで取り上げられるべきである、こういうお考えだというように理解してよいと思いますが、いかがでございますか。
  72. 大平正芳

    大平国務大臣 国連の総会ではどういう姿になりますか、つまり北鮮が国連の本体におきましての足場を持たれて、そしてWHOに文句なくお入りになるというような手順が望ましかったと私は思います。
  73. 河上民雄

    ○河上委員 大臣のお考えはともかくといたしまして、世界の潮流はどちらの方向を向いておるかは今回のWHOの北鮮加盟の票数の中にはっきりあらわれていると思うのであります。影井局長は、前回の私の質問に対しましてこういうようなことを言っておられるのですけれども、「かりにWHOに北鮮が加盟を認められたならば、その後の国連ないし国連関係のいろいろな機関の場においてどういうふうな影響が起こるであろうかという御質問でありますが、これは一つには、かりに北鮮が加盟を認められるそのときにどういう態様で、具体的に申し上げますと、どのぐらいの票数の差で認められるかということによってもその後の影響はいろいろ違うかと思います。」というようなことを局長は言っておられるのであります。今回の票数の差というものはこういう文脈の中で、この時点の解釈からいってどういうように受け取られるか、またその解釈、受け取り方に基づいて今後どういうふうに政府としては対処せられるのか。
  74. 影井梅夫

    ○影井政府委員 最初に審議延期案につきましての票数でございますが、これが賛成五十二、反対五十九という票数でございました。この結果審議延期案が通りませんで、したがいまして北鮮の加盟そのものが表決に付された、その票数は賛成六十六票、反対四十一であったかと思います。この票数をどのように評価するか、なかなかいろいろな要素をいれなければならないかと思いますけれども、私ども当初から予想しておりました考え方といたしまして、かりに審議延期案が敗れました場合には、その後の北鮮の加盟そのものの表決においては相当に大きな差が出るであろうということは予想しておりました。そこで、ただいま申し上げました六十六対四十一をどういうふうに評価するか。また今回この表決がいずれも秘密投票で行なわれましたので、どういう国がそれぞれ賛成し、どういう国が反対し、また棄権したかということは明らかにし得ませんけれども、それを大体見当つけまして、これをいかように評価するか、今後これをどのように考えていくかということを目下私ども検討中でございます。
  75. 河上民雄

    ○河上委員 外務省は今回のこういうWHOの加盟問題につきまして、あらかじめ日本提案が敗れるという予想のもとで提案を出されたのか、それとも、これはうまくやれば通るのじゃないか、こういう期待に基づいて出されたのか、その辺ここで明らかにしていただく必要があろうかと思いますがいかがでしょうか。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 これは本委員会でも、たしか石井さんの御質疑だったと思いますけれども、私は、表決の結果、これは勝つであろうとか負けるであろうとかいうことにかかわらず、こういう考え方でこういう措置をとるのでございますという趣旨のことを述べたつもりでございます。それから、これがどういう表決になるであろうかということにつきまして、楽観的に見た場合、悲観的に見た場合の見当はつけておったわけでございますが、現実に票を開いてみたらどうなるであろうかという点は、正直に申しまして、採決の結果を聞くまで全く予断を許さないという状況に終始いたしたわけでございます。
  77. 河上民雄

    ○河上委員 前回の中国における国連加盟の場合も、そういうことが非常に問題になったと思うのでありますけれども、いまの外務大臣の御答弁一つの記録として残しておく価値があると私は思うのであります。  私は、WHOが開始される前に、列国議会同盟の北鮮加盟の表決から見ても、WHOにおける北鮮加盟は必ず認められるのじゃないか、そういうことを申しまして、私の言うことは必ず十日後に現実になるとまで申したわけでございます。いまの御答弁でございますと、うまくやれば通るかもしらぬというような気持ちで出されておったような印象も受けますし、先ほどの局長お話では、負けても——あるいは大臣の前半の御答弁では、まあ負けてもこの際出すべきだと考えて出したようにも受け取られるし、非常にあいまいでございますけれども、いまの御答弁は記録として私はとっておきたいと思うのであります。  ただ、そういう形で、非常にあいまいな見通しのもとに今後こういう問題を国連の場で行なうということは、日本外交の権威というものを傷つける場合が非常に多いと思うのでありまして、そういう点から見まして、今回のWHOの北鮮加盟阻止の失敗に対して、その点深刻に反省していただきたいと私は思うのであります。やはりもう少し世界の潮流というものをはっきり見きわめて、一つの問題に対処していただきたい。このことを特に私はこの際お願いしたい。大臣、いかがでございましょう。
  78. 大平正芳

    大平国務大臣 河上先生、たいへん先見の明があって、私が非常に暗かったということでございますが、そういう判定はそのまま私も受け取っておきます。問題は、これを失敗と見るかどうかという問題につきましては、私は若干抵抗を感じるのであります。このことが日本外交の信頼度を失うようなことになりはしないか、世界の潮流に逆行を——よく言われることばでございますけれども、逆行したものではないかとかいう非常に直線的な評価があるようでございますけれども、票が多いほうにうまくついていくのだというようなことでは、日本外交は私は逆に信用を失うじゃないかと思うのでありまして、問題は、どういう考え方でやるかということが世界に理解されるような外交であって、よし負けても、日本といたしましてはちゃんとした筋道を踏まえておったということが私は望ましいのじゃないかと思っておるのでございます。しかし、それが負けることを望むわけでは決してないわけでございまして、それが多数を制することはなお望ましいことでございますけれども、根本はやはり考え方基本というものをちゃんと踏まえていくべきじゃないか。そういう点について非常によこしまな間違った考え方がありとすれば、それは御指摘をいただかなければならぬと思いますけれども、私どもとしてはそんなふらちな考え方でやっているつもりではないのでございます。
  79. 河上民雄

    ○河上委員 私も外交問題については直線的な判断というものは慎むべきだと思いますが、いまの大臣のおことばは、非常に味わうべきことばというか、よく検討すべきことばだと思います。おそらく韓国に対する配慮とかそういうようなものも含んでではないかと思うのでございますが、先般、この問題については自分は薄氷を踏むような思いでやっていきたい、やっているんだというような御答弁がありましたけれども、しかしもうすでにWHOに北鮮は加盟をいたしました。そしておそらくこれは国連事務総長の判断一つで国連総会にオブザーバーとして出る資格を持ったと私は思いますが、そういう事態を前に踏まえまして、今後朝鮮民主主義人民共和国に対し公式、非公式、いろいろな分野で取り扱い方をあるいは対処のしかたを変えていかなければならない段階に入ったと私は思うのであります。  先般私はちょっと質問をいたしましたけれども、朝鮮民主主義人民共和国の最高会議の決定に基づく、「世界各国の国会と政府に送る手紙」というのが出されておりますが、外務省においてはこれをどのように受け取ったか、いつ受け取ったか、その後の経過はどうなっているか、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
  80. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 ただいま御質問文書につきましては、私のほうは直接受け取っておりませんので詳しく承知しておりませんけれども、新聞報道によりますと、南北対話の前提条件として在韓国連軍ないし在韓米軍の撤退と国連の朝鮮統一復興委員会、いわゆるUNCURKと呼ばれております組織の解体を強く各国の国会と政府に訴えることを内容としていたものというふうに了解されております。  この経緯につきましては、五月八日に在日朝総連の副議長李季白が衆参両院議長を訪問して、ただいまの最高人民会議が第五期第二回大会で採決したと言われております世界各国の国会と政府に送る手紙というものが手交されたというふうに了解いたしております。
  81. 河上民雄

    ○河上委員 それは国会には伝達をされたけれども政府にはまだ伝達されてない、そういうことでございますか。
  82. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 そのとおりでございます。
  83. 河上民雄

    ○河上委員 北鮮問題は今後、WHOに北鮮加盟が認められた時点からことしの秋の国連総会に向けての時期、この短い期間に予想以上の展開をするのではないかと思いますので、大平外務大臣に特にお願いしたいのでありますけれども、一年たってみて、二年たってみて、ああいう醜態をやったということが反省せられるような結果にならないように、十分に意欲的に取り組んでいただきたいということを希望いたしまして、北鮮問題につきましてはなお伺いたいこと、たとえば国連軍の性格などについて伺いたいことがございますが、時間も残されたところが少ないので、ひとつ私が前に御質問いたしましていまひとつ納得できない問題、ミクロネシア協定に関連する私の質問に対する御答弁について、残されました時間を充てて再確認をさしていただきたいと思います。  前に私がお尋ねをいたしましたとき、ミクロネシア協定、昭和四十四年承認されたものでありますが、そこで日本は十八億円、当時の米ドルでは五百万ドルをアメリカと同額出し合ってミクロネシアの民衆の戦争中の被害に対して報いる、償いをするという内容でございますが、その場合の十八億円が今日ではアメリカ合衆国ドル、七百万ドルぐらいに当たるわけであります。そうなりますと本来の趣旨が違ってくるんではないかということを私は何度も質問しましたが、大河原アメリカ局長は協定文の読み方としては、日本側は十八億円を円建てで出すことを約束した以上十八億円出すのはいたし方ないということでございました。この点につきましてもう一度政府の態度を伺いたいと思います。
  84. 大平正芳

    大平国務大臣 河上先生御指摘の点は、われわれも事柄自体としてはよく理解できるわけでございますが、その前にもお答え申しましたとおり、四十四年に本協定を国会の承認を求めた際、政府の説明といたしまして同地域の住民の福祉のために日米両国がそれぞれ十八億円及び五百万ドルの自発的拠出を行なう旨を明らかにしてまいったわけでございまして、いま協定が実施の段階に入ろうとするのでございますから、結論から先に申し上げますと、この協定をいまの段階で変更することは考えておりません。  ただ、日米間のバランスという点についての御指摘でございますけれども、アメリカ側は一九七一年ミクロネシア請求権法によりまして、ミクロネシア協定上の五百万ドルの自発的拠出を行ない、米軍による各島占領後一九五一年七月までの間のミクロネシア住民の対米請求権、いわゆるポスト・セキュア・クレームにつきまして二千万ドル支出の権限が与えられております。これに基づく議会に対する具体的な歳出要求は、今後行なわれるだろうと思いますけれども、協定上の米側支出と本件のポスト・セキュア・クレームの米側支出とをあわせて考えてまいりますならば、実質的なバランスという点につきましては、アメリカ側は相当の負担を本協定以外に持っておるというような事情もあわせて御考慮を願いたいものだと考えております。
  85. 河上民雄

    ○河上委員 いま大臣から新しい要素を加えて御答弁いただいたわけですが、その問題についてはまた別の機会をいただいてさらに質問させていただきたいと思いますけれども、その前段でございますけれども、円建てである限り円で出すものについてはそれがドルに換算した場合どういう変化があっても日本側としては約束を守るんだ、協定文がそうなってくる以上変えることはできないんだという、そういう変更の理由についてはもう動かしがたいというのが政府の態度でございましょうか。
  86. 大平正芳

    大平国務大臣 さようでございます。
  87. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、いま問題になっておりますのは円建てでありますけれども、もしこれが逆にドル建てで日本が約束している場合には約束したドルの額を払う、その後ドルの価値がどう変わろうともドルで払う、論理的に一貫すればそういう政府の態度にも解釈できると思うのですけれども、その点はいかがでございましょう。
  88. 大平正芳

    大平国務大臣 そのとおりです。
  89. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、たとえば日本は幾つかの国に対してドル建てで有償、無償の経済協力を約束をいたしております。たとえば大韓民国に対して韓国との請求権、経済協力協定の中で、第一条でドル建ての約束をしている典型的な例が出ているのでありますが、つまり「現在において千八十億円に換算される三億合衆国ドルに等しい円の価値を有する日本国の生産物及び日本人の役務を、この協定の効力発生の日から十年の期間にわたって無償で供与するものとする。」こうなっておりますが、この場合、ドルの価値がどんどん下がっているわけですから、したがって今度日本は少ない円で済ますことができるようにこの協定文からはどうしても読めてくるのですけれども、そういう点についても政府は同じ原則で臨まれると私は思うのですが、いかがでございましょう。
  90. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 お答え申し上げます。  韓国との財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する協定という中に御指摘のような文言がございまして、確かにドルの価値が下がってくるという点からこれを何とかしてほしいというような要望が出ておることも事実でございますが、政府といたしましては、国会の御承認を得ましたこの協定を変更することはないという態度で対処しております。
  91. 河上民雄

    ○河上委員 もう時間が参りましたので、最後に一言だけ大平外務大臣に伺いたいと思いますけれども、いま朝鮮問題がことし、一九七三年の世界的な、そうして特に日本にとって非常に大きな問題だと思いますが、現在のドル建ての経済協力あるいは返済の約束に関しましていまのような原則が示されましたが、その場合韓国について、韓国側からそのようなドルの価値が低下しているので、何とかこの円の額、協定文の再調整をかりに要請してきても断わるという方針につきまして変わりがないということをこの席で大臣からはっきりとおっしゃっていただくことができましょうか、大臣にお願いしたいと思うのです。
  92. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおり心得ております。
  93. 河上民雄

    ○河上委員 これは今後ドルの価値の変動に伴って非常にいろいろ問題が出てくると思いますけれども、ただいまの大臣の一言は非常に重要な意味を持ってくると思いますので承っておきたいと思います。時間も参りましたので、私の質問を終わります。
  94. 藤井勝志

    藤井委員長 小林正巳君。
  95. 小林正巳

    ○小林(正)委員 大臣にお尋ねをいたします。  まず二十八日に法眼次官が官房長官のところへ行かれて南ベトナム臨時革命政府の代表の入国について了承を求められて了承をされたという報道がされておりますが、それは事実ですか。
  96. 大平正芳

    大平国務大臣 本件は小林先生も御承知のとおり法務大臣が最終的に御決定になる案件でございまして、外交上の考慮で外務省に対して意見が求められましたので、二十八日に外務省の考え方を法務省にお伝え申し上げておきました。しかしながら本件は法務省において目下検討中でございますので、いまの段階で外務省の考えを公の席で明らかにするということは私は差し控えたいと思います。
  97. 小林正巳

    ○小林(正)委員 一般論として伺いたいのですが、今度の臨時革命政府の代表、いわば要人でございますけれども、そうした問題がこれからもまた北朝鮮についても続いて問題になるのではないかと思うのですが、外務省の考え方として、いわゆる未承認国の要人の入国問題について基本的にどのようなお考えを持っておられるか伺います。
  98. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 入国の最終的な決定の問題は、ただいま大臣から言われましたように法務省の主管の問題でございますが、私たちは外交上の考慮ということから未承認国からの入国者に対してどういうふうにするかという検討をやるわけでございます。現在でも未承認国からの入国者はその事案によりまして相当数認められておるわけでございます。これは具体的な案件に伴いましてそのもたらすべき外交関係外交的考慮というようなものを十分検討いたしまして決定していくということになるわけでございますので、一般的にどうするかというきまった具体的な形の方針としてはございません。そのときの外交情勢を十分踏まえて検討していく、こういうことに相なるかと思います。
  99. 小林正巳

    ○小林(正)委員 大体わかりました。ケース・バイ・ケースということなんでしょうけれども、今度の臨時革命政府の代表の場合は北ベトナムの旅券であり、同時に北ベトナムの要人と一緒に入国を希望しておられるというケースなわけです。これがかりにそういう北ベトナムの要人と一緒でないというふうなケースの場合、大ざっぱにいってそうした場合どういう扱いになるのか。もしお答えになれるのであったらお聞かせをいただきたいと思います。
  100. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 これはその入国者の入国目的が何であるのか、またどのくらいどういうふうな活動を日本でされるのか、そういった具体的な条件を勘案しなければならないわけでございます。また法令上のたてまえといたしましては、有効な旅券を持った人あるいはどの責任ある政府の発行しておる書類を持っておるかどうか、そういった面も勘案されるわけでございまして、別であるかどうかという問題とは直接かかわり合いがないのではなかろうか、かように考えます。
  101. 小林正巳

    ○小林(正)委員 次に、ニクソンアメリカ大統領のさきに発表されましたいわゆる外交教書と日米安保条約とのかかわりについて若干お尋ねいたしたいと思うのです。  せんだっての新聞報道によりますと、外務大臣が外務省部内の各部局に対して日本の多極外交における取り組みについて取りまとめるように指示をされたという記事が出ておりました。そういう事実はございますか。
  102. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへん広範な教書でございますことと、ちょうどあの教書にも書いてあるとおり大きな転換期でもあるわけでございますので、この教書につきましては重大な関心をわれわれ持っておりますので、克明にひとつ勉強してみるようにということを命じたことは事実でございますが、まだその結果は私のもとには参っておりません。いま検討中です。
  103. 小林正巳

    ○小林(正)委員 おそらく大臣が指示された案文といいますか、それは八月の田中・ニクソン会談のいわばテキストとして使われるものではないかと私は推察するわけですが、そうした場合に、ただ漫然と取りまとめるということではないのであって、おそらく何らかのやはり方向性を持ったものではないかと思うのですが、その点はいかがでございましょうか。
  104. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへん大きな教書でございますし、また日本に関しましても相当のページ数をさいておるようでございまして、したがって私どもとしては、日米首脳会談におきましても当然日本側でこれをどのように受けとめておるかということにつきましては十分な検討をしておく必要があると思いまして検討を命じたわけでございまして、そういう首脳会談に備える意味合いというものをはずしておるわけでは決してございません。
  105. 小林正巳

    ○小林(正)委員 私もニクソン教書の日本に関する部分をずっと読んだのでありますけれども、かなり膨大なものであります。で、率直な印象として非常にきびしい基調のものであると思うわけです。アメリカのいうこともわからぬでもない点もありますし、まあアメリカ自身が反省を書いておるというような印象もあります。  そこで、外務大臣は、羽田にお帰りになった際に、記者会見でアメリカはわが国との関係が密接でありながらそれほどわかっていないということを言っておられます。その場に居合わせたわけではありませんから、ただ要点を報道してあるものですからよくわかりませんが、そのあと貿易収支も改善されておるじゃないかというような趣旨のことを続けて言っておられる。アメリカは日本のことはわかっていると思っていたけれども、意外にわかっちゃいないなというふうな感じを持たれた点について具体的に、いろいろあると思うのですが、もう一度教書全般に対する大臣の印象をお聞かせいただきたいと思います。
  106. 大平正芳

    大平国務大臣 教書が対日関係でいわれていることにつきましては、十分理解できる節が多いわけでございます。しかし日米間の理解というのは、これはなるほどむずかしいことでございまして、国内におきましてもコミュニケーションギャップがあるほどでございますから、日米間にコミュニケーションギャップがないなんという事態は私は考えられないと思うのでありまして、問題は、あの教書にも書いてあるとおり、成熟社会におきましては意見が違うということは当然あり得ることだと先方も認めておるようでございまするし、またそれがいろいろな対案を立てていく場合におきまして役に立つことでございますので、そういうことを遺憾だと思っているわけでは決してないわけでございます。ただ、あの教書が用意されて印刷に回されたあと、ずいぶんタイムラグがあったと見えて、その後日米経済関係、とりわけ貿易収支は顕著な改善を見ておるわけでございます。実はそのために日本政府も国民もずいぶん努力をしてまいったわけでございますので、そういうことに対してこの教書は日本側の努力というもの、日本側がひとりエゴイズムによって立っておるのではなくて、日米関係はあの教書にも示されておるとおり、GNPで四〇%も占めておる両国でございますから、世界的な責任も十分わきまえて、日本経済の内外におけるあり方というものについて十分考えながら、非常にあぶら汗をかきながら努力しておるということに対してどれだけ御理解をいただいておるのかということに対して、私も一応あの教書を読んだ感じとして、まだ御理解が足らないのではないかという感じを率直に持ったわけでございます。しかし、それは教書を用意した時期と、先ほど申しましたように、出た時期との間にずいぶん時間的な格差がございますから、無理もなかったかなと考えておりますけれども、あの当時としての読後感を率直に言えといえぱ、そんな感じがいたしたわけです。
  107. 小林正巳

    ○小林(正)委員 ところで、あのニクソン教書の中で、私は非常に重要だと思うのは、第二条の経済条項に関するものだと思うのです。これは外務省アメリカ局北米一課が翻訳したものですが、いろいろ言ったあと、「この点日米安保条約が、両国は「その国際経済政策のくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する」としているのは偶然ではない。政治的意志をもち、意識的に努力して行かない限り、われわれの経済的いさかいはわれわれの盟邦関係の結びつき自体を断ち切ることになりかねない。」こういうくだりがあるわけでございます。つまり、そうなりますと、安保条約自体というものが、日米の経済関係の成り行きいかんによって質的にも変化し得るということになりはしないか。この教書の表現によりますと、そういうことをいっているように思われるわけです。日本政府の場合、従来安保御神体論といいますか、安保条約自体、日米友好関係の精神的な支柱という感覚でとらえてきておるように思いますが、アメリカの場合は必ずしもそうではない。その点、日本とアメリカ政府との立場の違いというふうなものが、ここに考え方の違い——それは今日になっての考え方の違いだと思うのですが、そういう感じがするわけです。その点について、外務大臣はどのようなお考えを持たれたか、お尋ねをいたします。
  108. 大平正芳

    大平国務大臣 安保条約は、タイトルが示しておるように、安全保障並びに相互協力を約束いたしたわけでございまして、第二条に、御指摘の「その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。」というくだりがあるわけでございまして、そういうものも含まれた全一体でございまして、安保条約はそういう内容を持ったものであるということは、隠れもない事実でございます。そしてそれは、安全保障面が重大であって経済協力、相互協力というものが重大でないかというと、そうではないので、それぞれの事柄に従いまして、同等の重要なものであると私は了解いたしておるわけでございます。したがって、日米間の「国際経済政策のくい違いを除くことに努め」というのは、それぞれの国民経済はそれぞれのシステムを持っておりますから、食い違いは当然出てくると思うのでございます。それは可能な限り取り除くようにつとめるという精神でございます。そして両国の間の経済的協力を促進してまいるという精神をあそこにうたっているわけでありまして、きわめてあたりまえのことだと思うのであります。しかし、現実に日米経済関係がこわれてくるというようなことになってくれば、両国の盟邦関係自体が危殆に瀕することになりやしないかという指摘でございますが、これはそのとおりだろう、別段問題にすべきものではないと思うのでございまして、日本は食い違いを除くことに可能な限りつとめておるわけでございますし、アメリカもまたそのように心がけておることでございましょうから、問題は相互の努力だと思うのでございまして、その努力に欠くるところがないかどうかというところが問題の焦点でございまして、私は両国で越えがたい経済的いさかい——あそこではディスピュートということばを使ってありますけれども、そういうものが生ずるなんて心配はいたしておりませんし、そういうことはゆめゆめ生じないように努力していくのが当然のことだと思って、このエクスプレッションに対しましては、私はそう抵抗なく読んだわけでございます。
  109. 小林正巳

    ○小林(正)委員 私は、偶然ではないということを強調しておる点に若干ひっかかるわけです。確かに安保条約二条によりますと「締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。」とあるわけですが、アメリカが日本の安保条約のみならず、他の同種の結んだ条約の中に、たとえば米華相互防衛条約第三条、東南アジア集団防衛条約第三条、北大西洋条約第二条、いずれもそこに経済条項が入っております。いずれも同工異曲といいますか、似たようなものですから、かりに北大西洋条約について言いますと、「締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策における食違いを除くことに努め、また、いずれかの又はすべての締約国の間の経済的協力を促進する。」同じような文面がいずれも入っておるわけです。そうしますと、この種の条約の場合はアクセサリーというほどの形式的なものでないにしても、大体経済条項でそういった内容のものをうたうということが一つのきまり文句といいますか、パターンになっているんではないかという気がするわけです。事実、昭和三十五年安保の当時、衆議院で安保特別委員会の論議がざっと百五十時間近く行なわれておる。その中で二条に関する質疑というものはきわめて少なく、いわば軽く扱われてきておるわけです。当時の社会党の横山利秋氏外何人かのお尋ねに対して藤山外務大臣が答えられておるのを見ましても、第二条は両国が自由主義の基盤に立って経済の交流などを円滑にやっていくということであって、これによって特別の権利義務を生ずるものではないといったような答えなどもあり、非常に簡単にさらっと流しておるわけです。ところが突如として今般の教書で、その辺非常な大きなウエートを持って取り上げられてきておるように思います。当時は日米の経済関係というのは今日とは全く異なる状態であったわけです。今日はアメリカが非常に苦境に立っており、日米の貿易バランスがくずれておるというような中で、何かあとでとってつけてこの経済条項に意義づけをしたんじゃないかというふうな感じを受けるのですが、いかがなものでしょうか。
  110. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、安全保障上の取りきめ、それから経済協力上の取りきめに重要性の差異はない。あなたの言われるように、これはアクセサリーでないかというように解釈することに対しまして、必ずしも私は賛成できないのでありまして、事柄の性質上そう大きな論議にならなかったということは御指摘のとおりでございますけれども、だからこれが非常に軽いものであるということには直ちにつながらないのではないのかと私は考えております。先ほど申しましたように、このことがここで想起されて今度の教書でうたわれておることに対して特に抵抗を感じないわけでございますが、しいていえば、最近の二、三年たいへん経済関係が緊張が続いたわけでございまして、それは以前にそういうことを経験したことがないことが起こったわけでございまして、それに日米双方が対処して苦心をした苦い経験がございますだけに、このことがここで取り上げられたのではないかと思うのでありまして、事柄の軽重ということの判断からこれはアクセサリーであるということに必ずしも私は賛成いたしていないのでございます。
  111. 小林正巳

    ○小林(正)委員 その評価の問題は別としまして、ともかく教書は日本に対してかなり責任を果たすよう求めておるということでございますが、そうしますと、教書にいうアメリカのいろいろな日本に対する期待といいますか、要望といいますか、そうしたものを日本が受け入れるということが安保条約を忠実に履行をする、こういうことに論理的にはなると思うのですが、いかがなものでしょうか。
  112. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほども申しましたように、双方に意見の食い違いはあっていいわけでございまして、そういうことをできるだけ食い違いを取り除くような努力をしようということがうたわれておるわけでございます。したがって、アメリカがこう言っておるからそれにできるだけ沿うたことのように日本がしなければならぬというものではないと私は思うのでありまして、双方の意見の相違は相違として大いにフランクに戦わして、それで納得がいく道を双方の努力で発見していくのが安保条約の精神でないかと考えております。
  113. 小林正巳

    ○小林(正)委員 教書はアメリカの気持ちというものを非常に率直にぶつけておるように思うのです。私もそれはそれとして理解はできるわけですけれども、最後の部分に、日本の政治指導者が大所高所に立って決断すべきことを怠っておるという、日本の政治指導者の怠慢を責めるかのごときことばがあるわけです。日本を大国として遇しておるにしては、ちょっとそのことばづかいがぶしつけではないかという感じがするわけですが、また同時に、これは一種の外交的な威圧ではないかというふうな印象も持たれるわけです。その点について外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  114. 大平正芳

    大平国務大臣 政治的指導力の試金石、テスト・オブ・ステーツマンシップということば、これは官僚的な処理を越えたステーツマンシップの問題ではないかということでございまして、それはまさにここに指摘しておるとおりじゃないかと思うのでございます。日本のステーツマンがそれにたえているかどうかということは、日本の国内の方々が御評価いただくわけでございますので、われわれ衝にある者がいろいろ弁解すべきことではないと思います。
  115. 小林正巳

    ○小林(正)委員 もう時間がございませんので、最後に、この教書はアメリカが自分の国益を守るということに非常にきびしい態度をとっておるというふうに感じます。そこで、日本が自由化政策その他、米国から求められておるような国際的な役割りを果たしていく、あるいは常識的なアメリカ側の要請にこたえていっても、なおかつアメリカの政策的欠陥によって日米経済関係が必ずしもアメリカの思うようにならぬという場合もあり得るというふうに思うのです。それは、アメリカが自分に対する反省が欠けている面があるということと軌を一にするわけでありますが、そうした前提で、まあ、日米関係というものが経済関係によって変動し得るという不安定な要素を最近になって持ってきたというふうに思います。そこで、日米関係に対するわれわれの期待とか希望とかいうものを若干訂正せざるを得ないというように思うわけです。そうした点について大臣の御見解を承って質問を終わります。
  116. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、国内におきましても相互理解が非常にむずかしいわけでございますから、とりわけ国際関係においてむずかしいことはもう私はやむを得ないことだと思うのでございまして、それをどのようにできるだけ埋めていくように努力するかということがわれわれの課題であろうかと思います。また、事態がだんだん進んでまいりまして、新たな問題が次々に出てまいるわけでございますから、争点もまた次々と変わってくるわけでございますので、絶えざる努力ということがわれわれの任務であろうと思うのでありまして、日米間についても私はそう考えるわけでございまして、これだけの濃密な関係を持っておって問題が起こらないなんということがふしぎなのであって、問題が起こるのはあたりまえだと思います。今後も起こり得るだろうと思うわけでありまして、その場合、できるだけ争いを最小限度にしてまいるような努力をお互いが理解と信頼をもってやってまいらなければならぬと思います。私はそれはできるのじゃないかと思うし、またやらなければならぬことであると思うわけでございまして、ここで対米政策をひとつ考え直さにゃならぬというようには私は考えておりません。
  117. 藤井勝志

    藤井委員長 金子満広君。
  118. 金子満広

    ○金子(満)委員 時間がたいへんありませんから、ベトナム関係する問題について大臣質問したいと思います。  先ほども質問があったようでありますが、ベトナム人民支援日本委員会日本ベトナム友好協会の招待でベトナム民主共和国から二名、南ベトナムの臨時革命政府の統治下から二名、代表を日本に招待する、こういうことで法務省に申請がすでに出されてかなりの日が経過しております。こういう中で、報道されている点でいえば、二十八日に外務省の法眼次官が二階堂長官と協議して入国を許可する方針をきめた、こういうようにされているわけです。外務省の次官でありますから、外務省の一般的な考え方は私はそうであろうと思います。法眼次官の言っていること、また協議したといわれることは、これは放言ではないと私は思うのです。こういう点で、先ほど大臣は、意見を述べることは所管が違うので差し控えたいということを言われましたが、外務省の次官でございますから、その点については責任者である大臣が、報道されている内容については間違っているのか、間違っていないのか、その点についてお答えを願いたいと思うのです。
  119. 大平正芳

    大平国務大臣 外務次官は定期的に官房長官と事務打ち合わせをさせておるわけでございます。官房長官は内政ばかりでなく外交全般についてもお心得願わなければいけませんのでそういう機会をお願いしているわけでございますが、これはこの内閣ばかりでなく、ずっとそういう慣行になっておるわけでございます。そういう場合に、外務省が二十八日に法務省に外務省の見解をあなたの御指摘の問題につきまして固めてまいっておるのだということを御報告したと思うのです。それは間違いないことでございまして、そのあとは法務省がおきめになることでございますが、たまたま官房長官と外務次官との会談が先に新聞に出たようでございまして、あれは手順といたしましては適切でなかったと私は考えております。
  120. 金子満広

    ○金子(満)委員 あと先は別として、大臣考え方からいえば、法眼次官が協議して長官との間で一致したといわれる入国を許可する、この点については肯定されると私は思うのでありますが、さらにそういう中で、これも報道でありますから真偽はわかりませんけれども、何か条件をつける、たとえば政治活動をしないとか、あれこれという条件をつけるということは、これは非常に失礼な話で、やはり政治的な差別はしないということが当然だと思います。その点については私のほうから大臣にも要請しておきますし、日本政府としても当然他の外国の人たちと同じようなそういう取り扱いをすべきである、こういうことを申し上げておきたいと思うのです。  そこで、次に対ベトナム外交についての政府基本的な考え方を伺いたいわけですが、大平外務大臣は、ベトナム民主共和国との国交の正常化ということについては打診を続けているということを言われました。そこでまず政府として対ベトナム外交についてどういう基本的な考え方で臨まれるのか、また臨まれているのか。特にパリ協定が締結された以後の今日の状態の中でそのことを最初に承っておきたいと思うのです。
  121. 大平正芳

    大平国務大臣 アジアの国といたしましてインドシナ半島に一日も早く平和と秩序が回復いたしてまいることを祈念してまいったわけでございますが、不幸な長い陰湿な戦いがパリ協定によって終止符を打たれたことはたいへん歓迎いたしておるわけでございます。たびたび本委員会を通じて申し上げましたとおり、われわれのインドシナ政策というものは、せっかく大きな犠牲を払って達成されましたパリ協定を踏まえてやるべきことであると心得ておるということでございます。当事国にこれを順守していただくことを希望いたしますとともに、われわれがその当事国、当事者とのおつき合いにおきまして踏まえてまいらなければならない基盤は、あなたの御指摘のとおり、パリ協定であると心得ております。
  122. 金子満広

    ○金子(満)委員 いま大臣も言われるように、日本政府のインドシナ政策、特にそういう中でのべトナム政策ということについて私はここで言わしてもらえば、日本政府のインドシナまたベトナムに対する政策というものは、アメリカの立場を擁護し、アメリカの立場に協力し、それを支持してきたということだと思うのです。しかし、パリ協定というものが締結をされた。このパリ協定の中では、アメリカがベトナムに介入したということは四条で明白になっているわけですから、当然パリ協定を尊重する、このベースでやるということになれば、いままでのインドシナ、ベトナムに対する日本政府外交政策は当然変化しなければならぬし、変わらなければならぬ、こういうことはあたりまえのことだと思うのです。そういう中で、これはもう天下周知のように、この協定が締結された以後、外務省の三宅課長がベトナム民主共和国を訪問した。そして、内容は、私、知りませんけれども、ベトナム側と一定の接触を持った、これはもう知らない人がないほど報道されているわけですが、この中で、三宅課長は、ベトナム民主共和国のどのような機関の招待で行ったのか、これが一つ。それからまた訪越の目的は何であったのか。次にはどういう話し合いが行なわれたか。そして、いま日本ベトナム民主共和国との間にはどういう問題があるのか、この点についてお答えを願いたいと思います。
  123. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 三宅課長が北越を訪問いたしました資格でございますが、これは、まだ国交が正式に回復しておりませんので、双方の立場がありまして、先方は商業会議所の招待という形をとったわけでございます。これは昨年参りましたときもやはり同じような形をとってやったわけでございます。  会談の内容は、国交回復に関する基本的な考え方というようなものをはじめ、日本北越との間のいろいろな経済問題その他の人的交流の問題、往来の問題等を含めまして、率直な意見の交換を行なって、双方非常に益するところがあったと思っております。国交正常化の問題の内容につきましては、まだこれから交渉に入る段階の問題でございますので、ただいま詳細に入ることは差し控えたい、かように考えるわけでございます。
  124. 金子満広

    ○金子(満)委員 そこで、ベトナム側は、どういうメンバーが三宅課長にお会いしたかということが一つと、もう一つは、いま、これから交渉するんだからいろいろということで、内容に入らないわけですが、実は私の質問はその内容を知りたいわけです。この内容は——想像というのはだれだってするわけです。しかし、外務省として接触している以上、国民も、どういうことがやられたのか、こういう点もかなり疑問を持っておるし、そして聞きたいと思っておることは当然だと思うのです。その点で、私は、ぜひその内容について基本的なものだけでもここで公表していただきえい、こういうように思います。
  125. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 会談いたしました先方の要人のほうは、ホアン・バン・ティエンという外務次官、それからチャン・タインという外務省アジア第一局長代理、それからグエン・バン・タオという対外貿易省次官、それからティ・バン・チャムという商業会議所副会頭が中心でございまして、先方のかなり中枢部の人が率直にわれわれのほうと意見の交換を行なった、こういうことでございます。   〔委員長退席、稲永(一)委員長代理着席〕  国交正常化の点に関しましては、これは国交正常化ということを前提として技術的な両国間に問題になり得る問題を総ざらい議論したということでございまして、これは先生の御関心をお持ちになるのも当然でございますが、またそれに対するやりとり、われわれの考え方、その問題点のところをいまの段階で申し上げるのは少し微妙でございますので、やはり差し控えさしていただきたい、かようにお願い申し上げる次第でございます。
  126. 金子満広

    ○金子(満)委員 それから、これもまた報道なんですが、この夏にはパリで国交正常化の話し合いが始まるのではないかという形で報道されているわけですが、これはベトナム側と合意されているのか、あるいはそれとも日本の外務省の一方的な願望なのか、その点はどうなんですか。
  127. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 これは、先方との接触の過程におきましては、双方とも早くできるほうがいいのだという基本的な考え方は一致しておるわけでございます。ただ、その会する実際のタイミングとか場所についてはさらに今後連絡してきめましょうという友好的な形でつながっているわけでございまして、いつごろということはまだ具体的に提示しておりませんし、どこでということもまだ私たちとしてはきめておるわけではございませんが、大体両国間の接触を持てる候補地というのはしぼられてくると思うわけでございます。  時期につきましても、情勢を見てなるべく適当な早い時期にやりたいということで、ただいま特定の時期を御質問になりましたが、そういう形で先方と議論したことはまだございません。
  128. 金子満広

    ○金子(満)委員 それは聞いておきますけれども、大臣も言われるように、国交正常化は、パリ協定を尊重し、それを基礎にしてやるということであれば、当然問題になってくるのが南ベトナム臨時革命政府の問題だと思うのです。御承知のように、南ベトナムの臨時革命政府は、この六月六日で生まれて四周年の記念日を迎えるわけです。これはパリ協定の前文にも南ベトナム臨時革命政府という形で明記されておるわけです。そしてまた、これまでこの国会の中でいろいろの委員会でも議論されましたが、南に二つの勢力があるということではなくて、南に二つ政府がある。つまりサイゴン政権と臨時革命政府である。こういうことについては、認めたくあろうがなかろうが、現実の問題として二つ政府があるということについては、大臣もこれまで認めておったわけですから、そこは繰り返しませんけれども、そうなってくると、南ベトナム臨時革命政府に対して政府がどのような態度を今後とっていくか、これは非常に大きな問題だと思いますが、まずその点、大臣から伺いたいと思うのです。
  129. 大平正芳

    大平国務大臣 パリ協定では、南越二つ当事者がいるわけで、それが第三者、和解評議会も含めまして、新しい南越の政治体制というものをつくるというグルーピング等が書かれておるわけでございまして、私どもその限りにおきまして、そういう方向に行きまして南越がまず一つになるということを期待いたしておるわけでございます。しかし、そのことは直ちに、わが国と臨時革命政府外交関係を持たなければパリ協定の精神は生かされないぞということにはならぬと私は思うのでありまして、私どもは南越政府外交関係を持っておるわけでございまして、臨時革命政府外交関係を持つという考え方は持っていないのでありまして、そのことはパリ協定に照らして何ら矛盾はないと心得ておりまして、南越の問題は南越の三者におきまして、新しい一つになった政治体制をつくっていただくことを希求いたしております。
  130. 金子満広

    ○金子(満)委員 パリ協定では確かに南の二つ当事者、その二つ当事者とは、協定前文でその中の一つに南ベトナム臨時革命政府という形で明記されているのですから、これは政府であることは当然です。そこで、パリ協定は南ベトナムにおけるこの二つ政府に何らの差別をしていません。そうしてこれが一つになること、南ベトナム全国評議会をつくるということ、この点では協定に明記してある。いまそこに行きつく過程にあるわけです。その過程にあるときに日本政府はサイゴン政権と外交関係を持っている。これは従来から持っておるわけです。ここにいま新しい問題として、避けて通れない、いやおうなしにここで問題を明快にしなければならぬのが臨時革命政府の問題だと思うのです。いま大臣外交関係を持つ意思はないと言われた。その外交関係という意味の内容はどういうものなのか、この点を伺いたいのですが、臨時革命政府が存在しているということは明らかですから、その存在を承認する。そして外交関係とはいろいろ幅もあるだろうし内容もあると思うけれども、いずれにしても外交関係を持たなければならないし、それを持つことが日本の国益にもプラスするし、そしてまたパリ協定を厳正に実施していく上からも必要だし、ベトナムはもちろんのこと東南アジア、アジア全体についての平和にも貢献する道だ。この点で日本政府が今後どういうふうに考えてやっていこうとしているのか。その点少し詳しく大臣から承りたいと思うのです。
  131. 高島益郎

    高島政府委員 たいへんむずかしい問題でございますが、法律的に説明さしていただきますと、現在ベトナムには北のほうにベトナム民主共和国があり、南のほうにベトナム共和国というのがございまして、わが国はこの南のほうのベトナム共和国と正式な外交関係を結んでおります。したがいまして、このような現状のもとにおいて、先生の御指摘のように南ベトナムにございまする臨時革命政府というものとの間に、また別途に外交関係設定するということは、法的には不可能なことであろうというふうに考えます。ただ先生の御心配のようにパリ協定の実施にあたりまして、各外国の諸政府がこの南ベトナムにございます二つ当事者とそれぞれどういう関係を結ぶのが、パリ協定を実施する上で一番適当かという問題を提起されました次第でございますが、わが国といたしましては、そういう法律問題についてはただいま申しましたとおりでございますけれども、政治の問題といたしまして、南ベトナムにございまする臨時革命政府との間に外交関係を結ぶことはできない、しかし両当事者パリ協定に定められたような手続と原則に従いまして南ベトナム内における民族の自決を達成するように促進をするという点については、あらゆる努力をする必要があろうかと思います。その点についてどういう方法が一番適当かということは、これは法律上の問題ではございませんで、政治的問題であろうというふうに考えます。
  132. 金子満広

    ○金子(満)委員 いまの最後のところのことばですけれども、民族の自決を達成するよう促進をする、これはそのとおりで私も異議はないのです。ところがやり方がそうならない。つまり二つの勢力、二つ当事者民族の自決を達成するためにいま努力をしているわけだし、いろいろ障害があってもそれをやらなければならぬ、これが協定の立場だ。ところが日本政府の立場というのは、サイゴン政権とはこれまで外交関係がある。あるだけではなくて、これもまたいろいろ問題になったことでありますけれども、日本とアメリカとの関係において、日本の基地、そこから南ベトナムに武器の輸送が行なわれている。これはもう大臣もお認めになっているとおりです。そうしますと、対等で何ら差別なく二つ政府民族の自決の達成をというこの作業をしなければならないというときに、片方だけに協力し、片方だけに加担をしている、こういう結果は当然現実的にあらわれているわけですから、これは先ほど言われましたように民族の自決を達成する、それを促進するのだとことばではいうけれども、やっていることは違った方向にならざるを得ない、こういうように思うのです。その点について外交関係というものを臨時革命政府と全然持たない。考えてもいない。そういうことばを日本政府が、そして大臣がおっしゃるけれども、しかし世界中こう見て、南ベトナム臨時革命政府外交関係を持っている国はたくさんあります。いわんやその政府の発行するパスポートで旅行している、これを承認しているという国は非常に多いわけです。これをやらないというのは、たとえば日本がいままでまだケースがないわけです。アメリカもないでしょう。スペインもないと思う。ポルトガル、あとこう拾ってみても見当たらないくらい少数だ。こういう点で外交関係を何ら持たないということは、これはパリ協定を尊重したということにはならないと思うのです。これはあと質問と一緒に答えてもらいたいのですが、もう一つ質問は賠償の問題です。御承知のように一九五九年の五月にサイゴン政権との間で賠償協定が結ばれた。これはいまどういう状況で作用をしておるかということについての質問なんです。この賠償協定は当時から全ベトナムを対象にしているということがいわれたわけです。今度は現在ベトナム民主共和国との国交を正常化しようということを政府はいっておられるわけですが、ここで、賠償問題については、サイゴン政権に支払ったのだから、もう一切この問題は解決済みだ、こういうことを考えているかどうか、これは大臣に伺いたいと思うのです。
  133. 大平正芳

    大平国務大臣 第一のほうの御質問でございますけれども、臨時革命政府承認している国もたくさんございます。南越政府承認している国もたくさんございます。しかし、一方だけ承認すればパリ協定違反になるのではないかといったら、みんな違反しているわけでございまして、そんなことにはならないということは、私が先ほど申し上げたとおりでございます。武器輸送の点について云々がございましたけれども、これはパリ協定順守のフレームの中での入れかえということと私どもは承知しておるわけでございまして、その点もあわせて御理解をいただいておきたいと思います。すなわち、私どもはパリ協定を尊重して、それを踏まえた上でインドシナ政策をやっていくのだということをベースに、それから踏みはずさないようにつとめているつもりでございます。  それから、第二の賠償問題でございますが、先ほどアジア局長は、北越と三宅君との接触の中でどういう話があったかということについて、言明を避けたわけでございますが、私から申し上げられることは、三宅君を通じて、われわれ日本政府の意図として申し上げたのは、北越関係を結ぶ場合に、無条件でいたしたいものであるということは先方に言ってあるわけでございます。無条件であるという意味は、その中に一つあなたの言われる賠償問題があるわけでありまして、南越政府と結んだ賠償というものについて、先方がいろいろクレームをつけられるようなことのない姿で、無条件にひとつ話し合いをしようじゃないかという考え方を提示しておるわけでございますが、それに対しまして、先方は完全に承知したというところまではまだいっておりませんけれども、しかし、それに非常にこだわっておられるというようにも私どもは承知していないわけでございまして、法律上の問題はともかくといたしまして、政治的な問題といたしまして、この問題が、これからのインドシナ政策をやってまいる上におきまして、大きなつまずきの石になるというようには私ども考えていませんし、またそのようにしてはならないと考えています。
  134. 金子満広

    ○金子(満)委員 武器輸送は入れかえだということを大臣はおっしゃるけれども、これまでの予算委員会その他の場所でも、入れかえであるという確証はまだとってないわけです。そう思うということだと思うのです。こういう点については、もうきょうは時間がありませんから、別の機会に質問をしたいと思います。  それから、賠償の問題は、先方からクレーム云々ではなくて、われわれは日本の立場として、そして日本外交問題としてこの問題を考えていかなければならないという立場から私も質問しているのですが、これは、御承知のように、古い話ですけれども、五九年の、この賠償協定が国会で議論されているときにも、これが全ベトナムに対するものではない、そういうことをいうことは不当だという議論は大いにされたわけです。われわれもまた当時から、サイゴン政権と結ばれた賠償協定が、全ベトナムをというようなものではないし、日本政府のとっている態度は不当だということをいってきたわけですから、そういう観点で政府考え方を聞いたわけです。  いずれにしても、対ベトナム外交というものは、パリ協定が締結をされた今日の段階で、いままでの日本政府日本の外務省がとってきたそのことをそのまま伸ばしていこうということであれば、これは間違いが起こってくると思うのです。したがって、これはパリ協定を順守するということであるわけですから、ことばだけではなくて、実際にもそれをやっていかなければならぬ。南ベトナムの臨時革命政府に対して外交関係を持ちたくない、こういうことは大きな間違いであるし、その点については臨時革命政府承認する、そして外交関係を打ち立てていく、こういうことが必要であり、そうなければならないということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  135. 福永一臣

    ○福永(一)委員長代理 渡部一郎君。
  136. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、朝鮮問題につき、外務大臣にお伺いしたいと存じます。  現在WHOにおける北朝鮮政府の加盟という歴史的な決議がされまして、日本の韓国に対する態度というものは、大きく反省しなければならぬ時期に到達している、こう思うわけであります。日韓条約において——この日韓条約の成立自体に問題があるわけでありますけれども、日韓条約において、日本政府は、当時第三条において、「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」と述べております。このことは、国連総会決議百九十五号(III)というものに乗っかって、朝鮮における合法政府というものは何かという問題をすりかえた議論でありまして、この問題については当時もたいへん議論があったわけであります。ところが今日、国連総会の決議の百九十五号(III)というのは、国連における北朝鮮政府の参加という問題を目前に控えまして、もうその理論的な根拠というものがくずれ始めておる、そういう時期に差しかかったように思うのであります。特に最近に至りまして、従来韓国政府承認しておる政府が、北鮮との間に続々と、フィンランドをはじめとして国交正常化をなし遂げているわけでありまして、こういう風潮を見ますときに、朝鮮問題における従来の日本の政策、韓国政府にのみ肩入れをしている政策というものは、根本的な反省時期に到来したのではないかと思うわけであります。そして、それと同時に、こうした日本の戦後の外交方針の中で、一つの大きな時代の区切りが来たのではないか。つまり日米安保条約を基礎として、冷戦構造の一方に加担することによって維持されてきた日本外交方針というものを変えるべきときが来たのではないか、こう考えられるわけであります。つまり、ニクソン・ドクトリン以後、米ソ間の協調方針というものが新しい意味世界支配というもの、世界秩序というものを達成する方向に向かって進み出したときに、日本の韓国政策、朝鮮政策というものがいままでと同じような古いタイプの朝鮮政策でいいかどうか、これについては大きな疑問があるわけであります。疑問があるばかりではない、今度の国連総会でどういうような議論をしていいかという方針さえも、これは困った問題になると私は思うわけであります。  私は時間がありませんから、言い分を先にどんどん申し上げますが、大平外務大臣がその点お答えになりまして、すでにこの問題については慎重に考えられた——慎重に考えるということは、考えていないという場合にも言えることばでありますし、十分考えているが腹のうちを言うわけにいかぬという政治用語でもありますので、事実上それは御答弁をなさらなかったということであると私は理解しておるわけであります。そこで、そろそろこの辺で、朝鮮政策の基礎的な問題について御意見を表明されるチャンスではなかろうか、私はそう思うわけであります。  私としては、まず韓国政府及び北朝鮮政府に対して等距離政策に一歩を踏み出すべきである、その等距離政策を踏み出した上で、日本朝鮮政策に対する自主性というものを回復することがなければ、これは隣国との外交問題について大きなマイナスを生ずるのではなかろうか、こう思うわけであります。  外務大臣はWHOへの北鮮の加盟に対して、今度の問題と秋の国連総会の問題は別個のものである、しかし秋までに情勢も変わるだろう、総会までには政府として慎重に対処したい、こう言われているそうであります。これは私が想像いたしますところ、WHOのときはこういう態度をとったけれども、国連総会ではまた別の態度をとるぞ、しかし秋までにはいいタイミングがあるだろうから、そのときにうまくお話をしたいという意思のようにも見えるわけであります。この辺非常に不明確であり、そしてこの韓国政策の問題を方向変換するにあたって、十分な検討と同時に、従来の行きがかりを堅持することによるマイナスというものも考慮していただかなければならぬと私は考えておるわけであります。  したがって、私は、きょうは朝鮮政策に対する法理論的な積み上げを申し上げているのではなくて、いままでの政策を変えるべきときに来たのであって、変えるべきであると主張しているわけでありますが、これに対する外務大臣、外務当局の御答弁をお願いしたいと思っておるわけであります。
  137. 大平正芳

    大平国務大臣 まず第一に、朝鮮半島の問題というのは日本にとって非常に重大だということでございまして、過去の歴史を顧みるまでもなく、わが国外交にとりまして最大の問題の一つであると私は思っております。  第二に、しからばその朝鮮半島というのはどういう姿においてあるのが望ましいかということでございますが、われわれの希望といたしましては、朝鮮半島が平和的に統一をされて、安定した政府を持っていただくことが望ましいと考えておるのでございますが、しかしこれをなし遂げるものは、やはりほかならぬ朝鮮民族であろうと思います。朝鮮民族がになっておる任務でございまして、第三者である私どもがやきもきいたしましてもとうてい事をなし得ないのでありまして、朝鮮半島の方々がこれをなし遂げられるということで初めて達成できることと思うのであります。そういう前提に立って、私どもといたしましては、そういうことをじゃましないように、できればそれをエンカレッジできるような姿勢が、いつも探求さるべきわれわれの任務であろうと考えておるのであります。  渡部さんが御指摘になりましたように、最近世界の構成が大きく変化をしてまいりまして、朝鮮半島もその圏外ではなかったと見えて、去年の七月には南北で話し合おうということになったわけでございます。それは、自主的にかつ平和的な統一を達成するために対話を持とうということになって、現在続けられておるわけでございます。見るべき進展がいままで達成されているようには思えませんけれども、せっかくそういう機会を南北朝鮮が持ってきたということは、たいへんわれわれに希望をつなぐステップであったと考えておるわけでございます。  そこで、いみじくも自主的な解決だということがいわれておるわけでございますから、あくまでも自主的な統一を目ざしてやるんだというこの精神を尊重しなければならぬと思うのであります。したがって、朝鮮半島におけるそういう対話の進捗状況というものをまず注意深く注視して、それの成熟の度合いをはかりながら、日本政府としてはなすべきこと、なしてならぬことを考えていかなければならぬと思うのでありまして、私どもが朝鮮政策なんかかってに考えるべきでないと思うのであります。したがって、今度の朝鮮政策も、そういう考え方にのっとりまして、自主的な解決の路線を切り開いていこうとするせっかくの努力が始まっておるわけでございますので、それの行くえを見ながら、何をなすべきか、何をなすべきでないかを考えてまいるというのが日本の立場であると思うのでありまして、私ども特別の鋳型を持って南北朝鮮に臨むというようなことは、たいへん非礼なことでございます。やはり自主的な解決というにしきの御旗をあくまでも尊重していくという基本の態度はくずしてはならぬと私は考えております。
  138. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これは少し抽象的にわたり過ぎる御答弁でありますから、それじゃもう少し具体的に伺いましょう。  そうしますとまず、民族の平和的統一をじゃましないこと、そして統一をエンカレッジすることが大事であるといま言われました。この両民族の統一を一番じゃましたのは旧大日本帝国であります。そして、その遺産というものが今日大きな傷になって残っておるわけであります。また、日韓条約それ自体の存在というものが、この両者の平和的統一に対する一つの政治的効力を持っておる、私をして率直に評価せしめればじゃまになっておると私は言いたいわけであります。したがって、日韓条約においてとり続けてきた路線を変更なさるおつもりがあるかどうかを私は問うておるのであります。  特に、今度の国連総会加盟の問題に関連してお伺いするわけでありますが、国連総会において、もし北朝鮮政府の国連加盟あるいは朝鮮における国連軍の撤退、UNCURKの現在施設されておるものの廃止というような決議が通過した場合においては、日本の、日韓条約において規定されている朝鮮を代表する唯一の政府という言い方は崩壊するわけであると私は思うわけでありますが、いかがですか。
  139. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、まず半島における自主的な解決をはかる努力というものを尊重せんならぬということを申し上げたわけでございまして、半島における両当事者お互いに国連で議席を持ち合おうじゃないかというようになるかならぬか、それは日本が言うことではなくて、まず第一にこれは朝鮮半島における両当事者がそう決意されることがぼくは非常に大事なことであると思うのでございます。それがないと何もできないわけでございますので、そういうことを両当事者は、どういう姿で一体自主的な統一の手順を考えられていくのか、経過的措置をどう考えられていくのかということは、彼ら自身が熱心に討議され、考究されておることと思うのでございますから、その進展をわれわれは見守っていかなければならぬと考えておるわけでございます。  しかし、それは基本でございますが、最近論議になりました北鮮のWHO加盟という事態は単なるテクニックの問題ではなくて、一つの政治的なインパクトを持った事件であると私は思います。で、それに対して韓国側がどのようにこれを受けとめておられるか、それから今後の国連政策の展開をどのようにまず韓国はお考えになるのか、そのあたり若干の徴候が見えておりますけれども、私はもう少し静かにこの行くえを見守っていくというのがいまのわれわれの態度でなければならぬのじゃないかと思うわけでございますので、慎重にということは逃げことばではないわけでございまして、慎重でない外交政策というのはないわけでございますからあらゆる場合慎重なんでございますが、この場合とりわけ慎重にいかなければいけないんじゃないかと思っております。
  140. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 慎重なのはけっこうでありますけれども、どのくらい慎重かを私は国民の前に聞かしていただきたいと思っているわけでありまして、それでは、もし——仮定をあげていま伺っているわけであります。国連総会において北鮮の加盟が承認されたとします。韓国政府が席をけ立てて出ていかなかったとします。そうしたら日本政府はどうなさいますか。
  141. 高島益郎

    高島政府委員 先生の御質問にちょっと誤解があるかと思いますので、私答弁させていただきますが、韓国は国連の加盟国ではございません。また韓国も北鮮もともに国連に席を占めようという傾向を全然示しておりません。むしろ両方とも二つ朝鮮として入りたくはないという態度のように伺っております。その逆に、両方とも話し合いによって統一を達成したいという希望のようでございます。ただ、朝鮮問題の討議に関連いたしまして、北鮮と韓国がそれぞれ対等な資格でもって国連のオブザーバーとして朝鮮問題の討議に参加するという問題がこの秋の総会における問題であろうかと思います。  その場合に、先生の仮定の問題といたしまして、そういう事態になった場合に、日韓基本条約の第三条に掲げられております国連総会の決議は、そのような国連における取り扱いのあるいはじゃまにならないのかという御質問でございまするが、これは日韓国会で政府側から再三再四御説明いたしましたとおり、この第三条の趣旨は、韓国というものは南半分に対して管轄権と支配権を持っているそういう合法的な政府であるということをただ日本政府として確認したものにすぎないということでございまして、北半分については、日本政府は依然として白紙の状態である。したがってそういう観点から申しますと、北との関係日本が将来設定するにあたって、第三条または日韓基本条約というものは何ら妨害にならないという態度を従来から一貫して述べております。したがいまして、国連でたとえそのようなことが行なわれましても、この日韓基本条約第三条というものは何らそういう北鮮との関係において障害にならないということは明らかであろうかと思います。
  142. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外務大臣、いまの条約局長の御答弁でよろしゅうございますね。
  143. 大平正芳

    大平国務大臣 信頼しておる条約局長答弁でございます。
  144. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そういたしますと、いますごいことを言われたわけでありますけれども、日本政府としては日韓基本条約が結ばれた当時から、朝鮮半島においては一つ政府、そして暗黙のうちにもう一つ政府が実際的に存在していて、そしてその存在している朝鮮政府を認める準備ができている、こういう意味でございますか。
  145. 高島益郎

    高島政府委員 日韓国会で政府が示しましたのは、そういう将来の日本政府の態度を示したものではなくて、北鮮との関係においては白紙である。したがいまして、日本政府としては北鮮との関係は白紙であるということを第三条の解釈として申し述べているわけであります。
  146. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、いま日本政府としては南の政府と北の政府とを、両方並行的に認めることが可能だとおっしゃったわけですね。
  147. 高島益郎

    高島政府委員 したがいまして、帰結といたしましては、法的には、北鮮と将来何らかの法的関係を結ぶことについて日韓基本条約は何ら障害にならないということを申しているわけであります。
  148. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 非常に重要な御発言だったと私も存じます。  そうすると、日本政府としてはそれを公式的に認められたわけでありますが、あと法律的にはそういうとびらがあいていることは明らかに——私たちはさんざんそう述べておりましたけれども、法律的にはそういう可能性があることをいま表示されたわけでありますから、今度は政治的な問題です。  そうすると、日本政府としては韓国政府とのおつき合いはある。今度は北朝鮮政府と窓口を開くという決断もでき得るということでございますね、くどいようですが。
  149. 高島益郎

    高島政府委員 もちろんこれは政治問題でございます。ですが、一般的に、ベトナムの場合も同じでございますけれども、要するに、二つ政府とそれぞれ外国が関係を結ぶことにつきまして、二つ政府相互に異存がないという状態、これが政治的に必要であろうかと思います。いわゆるハルシュタインドクトリンというようなことが行なわれない。たとえばわが国が北朝鮮と何らかの法的関係を持つことについて韓国が異を唱えないという状態が、韓国と北朝鮮との間に明示にしろ暗黙にしろできるということが必要であろうかと思います。ドイツの場合のように基本条約相互にできる、これはきわめて理想的な形態でございますけれども、そうでなくても、何らかのかっこうで両当事者の間にそういう関係をそれぞれ結ぶことについて何ら異存がないという状態ができることが必要であろうかというふうに思います。
  150. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、日本政府としては、北朝鮮政府との間に、韓国とほぼひとしい形の国交正常化を行なう場合、そういうことについて韓国政府日本に明示あるいは黙示承認を与えられることがあれば、北朝鮮政府ともおつき合いをするという御説明であったと思います。そうしますと、日本政府は韓国政府との間にそういうお話し合いは現に公式的にあるいは非公式的に続けられているものと見てよろしゅうございますか。
  151. 大平正芳

    大平国務大臣 政治的に申しますと、先ほど申しましたように、朝鮮半島の平和の安定が何より大事なわけでありまして、それはやはり朝鮮民族の手でやってまいらなければならぬ問題であると思うのでございます。そのために、いままで対話のない対立をいたしておりました両当事者の間で対話が始まったわけでございまして、いまからどういうように朝鮮半島の状態がなってまいりますかということにつきましては、まずその成り行きを私は十分見なければならぬと考えておるわけでございます。したがって、それを見守っていきたいということを申し上げておるわけでございます。
  152. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いま見守っているかどうかを伺っているのじゃなくて、そういう問題を含んで、朝鮮問題全般にわたって、私がお話ししたような問題について韓国政府お話し合いは当然されていると見てよろしいんでしょうねと伺っているわけです。
  153. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国政府との間で、朝鮮半島に対する日本の対処方針につきまして、いろいろ協議をしておるというようなことはございません。ただ、私どもが見守っておるというのは、南北対話が行なわれておる、それをじゃましない、できたらそれをエンカレッジしたい。じゃましないという範囲で何ができるかということにつきまして、北朝との間にも事実上の交流を用心深く拡大いたしておるわけでございまして、その熟成の度合いをはかりながらやってまいらなければいかぬわけでございます。そういう意味で、対話進展を見ておるのでございますと申し上げておるわけでございます。
  154. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、先ほど言われていた両朝鮮政府お話し合いをされている、その話し合いの成熟——いま熟成と言われたけれども、成熟の度合いというのは、その平和的統一という問題、あるいは両国政府日本を含めて各国との間の関係を正常化するにあたって相互が唯一代表政府であるということを名のるか名のらないかという問題についても話し合いがまとまってくるなら、北朝鮮政府との国交正常化考える、こういう意味でございますね。
  155. 大平正芳

    大平国務大臣 大体あなたの言われたような感じ方でございます。
  156. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もう三十分もやれば全部しゃべらせることが可能でありますけれども、時間がなくなりましたので、残念ながらきょうはこの辺でかんべんしなければいけないだろうと思います。この次はもう少ししゃべっていただくようにお願いいたします。  それでもう一つ伺っておきます。六月上旬にILO総会がございますね。この総会のときに、北朝鮮が加盟の申請をしてきた場合、これは成熟をじっくり見守るなどという時間的余裕はないですよ。そうしますと、WHO型でいくか成熟型でいくか、どっちなんですか。それとも出たとこ勝負型でいくか、その辺を明確にしていただきたい。
  157. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ILO総会は、来月の六日から開始される予定でございまして、私ども承知しております範囲におきましては、北鮮がこれに加盟の申請はされておりませんし、またそのような動きはないというふうに承知しております。かりにこの申請がされた場合にどうするかという御質問でございますけれども、先ほど来大臣からお答え申し上げておりますとおりに、そういう問題を討議する場所といたしましては、やはり専門機関であるILOは不適当な場所ではないかというふうに考えております。
  158. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、もしそういう問題が出てきたら、ILOの加盟問題については反対する、率直に言ってWHOと同じような態度をとる、WHO型の態度で日本政府としてはやる、こういう意味でございますか。
  159. 影井梅夫

    ○影井政府委員 これは今度の総会で審議されるということは不適当であろう。言いかえますと、国連自体におきまして何らかの決定がされる。それを待つべきであろうという意味におきまして審議延期という考え方でございます。これは申し上げるまでもなく、北鮮がいつまでもILOであるとかその他の専門機関等に入ることに反対であるといういわゆる敵視政策ということではございませんで、先ほど来大臣からお話し申し上げております考慮によるものでございます。
  160. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、ついでに伺うようで恐縮ですけれども、もう一つ、九月にITU、国際電気通信連合の話がまた出てきた場合、やはり議論するのは不適当ということでまた引き延ばすわけですか。WHO型で行くのですか。
  161. 影井梅夫

    ○影井政府委員 仰せのとおりでございます。
  162. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外務大臣いまわざわざ御自分でお答えになりませんでした。私はそれに政治的意味を感じておるのですけれども、もしILO、ITUの両方で、WHO型のように、別に反対はしておらぬけれども、いまの時期に論議することは不適当であるということで議論をうしろへ延ばしたとします。それは非常に敵意ある日本政府の態度というふうに見えまして、これは両者の自主的な平和統一の成熟を見守るなどという感じでは受け取れないのじゃないですか。これは明らかに韓国ベースといいますか、反北朝鮮政府型の感覚になりまして、日本外交としては非常にまずいやり方になる。従来の延長線上にあるやり方になると私言って差しつかえないのじゃないかと思う。これはちょっとお考えになったほうがよろしいのじゃないですかね。私きょうはかなり穏やかに発言しているつもりですけれども、いまのはちょっと慎重を欠く御答弁ではなかったかと私は思うのですが、どうでしょうか。
  163. 大平正芳

    大平国務大臣 例示されました二つの機関への加盟問題というのは、現にありませんし、そういう動きもないようでございますので、それについて渡部さんと私との間でホットな議論のやりとりをやるというようなこともあまり賢明でないと私は思います。ただ考え方は私からも申し上げ、国連局長からも申し上げたとおり、われわれがWHOにとりました態度というのはこういう筋道でと申し上げたわけでございます。その筋道をそんなに都合によって変えるというようなことをしておると日本の信用にかかわるのじゃないかという懸念を私は持つものでございますが、この問題につきましてはまだ現実の問題でございませんで、深く検討いたしたことはございませんけれども、問題の筋道のたどり方というのは、日本政府のたどり方というのは他意はないんだ、こういうことでございますということを申し上げておるわけでございます。
  164. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私いまかりにと申し上げて聞いたのが悪かったのかもしれません。そうしてこういうやりとりの中に巻き込んだのがまずかったのかもしれませんけれども、少なくとも慎重に考えているとおっしゃっているのですから、慎重に考えたにしては答えの出し方が少し乱暴だったと思うのです。これはもう少しこれらの国際関係諸機関に対する加盟問題というのはそれこそ慎重にお願いしなければならぬと私は思うのです。それと同時に、政府朝鮮政策全体が重要な変換期に到達しておるのですから、明らかに秋の国連総会をめどとして——最終めどにせざるを得ない状況にあるのですから、国連総会までの間に、確たる朝鮮政策というものを確立されるように臨みたいと思うのです。  少なくとも日本国民を代表してここで議論されているわけですから、慎重だけでなくて、もう少し国民にわかる発言を次回はひとつがっちりとお願いしたい、こう思いまして、私の質問といたします。
  165. 福永一臣

    ○福永(一)委員長代理 永末英一君。
  166. 永末英一

    ○永末委員 きのう、きょうと第八回安全保障に関する事務レベル会議というのが開かれているようですが、日本側はどういうことをこれで主張されておられますか。
  167. 大平正芳

    大平国務大臣 これはたびたび日米間で定期的でなくて開かれておる事務レベルの打ち合わせ会議でございまして、日本側が特別に提案するというのでなくて、アジア情勢を主心に相互の意見を十分交換し合うという会議でございまして、特定の結論を期待するとかという性質のものではないわけでございます。
  168. 永末英一

    ○永末委員 いま大平大臣はたびたびと言われましたが、三年ぶりというぐあいに聞いております。いろいろの日米間のこの種の連絡ないしは協議の機関がございますが、この機関を三年ぶりに開かれたには何か特別の意味があるのではなかろうかと思います。ただ何となく会うのではなくて、やはり三年ぶりに開いてやるというからには、わがほうにわがほうとしての主張点があってしかるべきではないか。すなわち、アメリカのほうも、レアード国防長官がリチャードソン国防長官にかわり、それぞれのレポートを出しておりますし、またニクソン大統領の外交教書も発表されておる。そのあとでありますから、少しはわがほうも、何となく会っておるのではなくて、主張点があるのではないかと思いますが、いかがですか。
  169. 大平正芳

    大平国務大臣 それは仰せのようにその後世界の情勢も変わってまいりましたし、とりわけベトナムも戦火がやんだわけでございまして、ポストベトナムにおけるアメリカのアジアにおける軍事的プレゼンスというようなことについてアメリカがどのように考えておるかということは、もとよりわれわれが聞きたださなければならぬ重要な問題であると考えております。
  170. 永末英一

    ○永末委員 この種の会議が行なわれますと、きわめて簡単な報告みたいな声明みたいなのが出て終わりでございますが、終わりましたら、どういうことが議論されたのか、われわれはこれに対して重要な、大きな関心を持っておりますので、この委員会でひとつ御報告願えますか。
  171. 大平正芳

    大平国務大臣 ああいう国際的な会合の場合は、相手側との了解が必要でございますので、せっかくの御希望がございますので、そういった点アメリカ側とも相談して、その了解の線に沿いまして、お答えできる範囲におきましてお答えさせていただきます。
  172. 永末英一

    ○永末委員 これらの件に関係いたしまして、ニクソン大統領の外交教書の中に「日本は政治的関係により引続き保護されているが故に、経済的関係においてより大きな」レシプロシティ、相互性と訳しておりますが、「を示すことが必要となった。」、レシプロティは互恵主義とも考えられますが、これらについては大平大臣はどう考えておられるかということを二、三聞いておきたいのです。政治的関係により保護されているかどうかの点はあとにいたしまして、このニクソン大統領の日本関係する部分の教書は、きわめて何かわが国にオブリゲーション、責務を要求しているような個所が出てまいります。それも前提としてアメリカは日本を政治的に保護しているのだから、経済的には言い分を聞け、こういうのが基調であるように思われるのですが、この教書の基調は大臣は何だとお考えですか。
  173. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカの当面の外交政策の基調を述べたものだと評価します。ただ、これは考え方を示したものでございまして、具体的にこういうことをいつどこでやる、あるいは日本に対してこういうことを要請するというようなことは全然うたわれていないわけでございまして、そういった点が明らかにならぬとほんとうの意味の評価はできないわけでございます。それからことば自体が英語でできているわけでございまして、英語と日本語のニュアンスというのは非常に違いまして、一言でいうと、挑戦なんということばは、非常に日本は挑戦的というのは何かある種の特有な語感を持っていますけれども、チャレンジングというようなことばは、そういう日本人の受ける感じと少し違う点もありまして、私は、この問題はもとより一語一語十分検討せねばならぬと思っておりますけれども、一つ具体性を持っていないということ、それからことばの制約もあるというようなことも一応割り引いて考えなければならぬのじゃないかと思っております。もっとも全部いま検討中でございますので、自信をもってコメントするということはまだ時間を少しかしていただきたいと考えております。
  174. 永末英一

    ○永末委員 しかしこれらの考え方の上に、たとえばきのうきょうの安全保障に関する事務レベル会議が行なわれ、アメリカがそのアメリカ側の見解の上に臨んでおるわけです。こう思いますと、そう慎重に時間をかけて検討するのではなくて、早く検討して見解を固めなければ寄り切りということになりますよ。  そこで、このニクソン大統領の教書の中でこんなことが書いてあるのですが、これは大平大臣どう思われますか。日本の「貿易黒字は、時代遅れの通貨交換レート並びに日本国内の政府補助、複雑な価格政策、輸入及び外資導入制限というこみいった制度によるところが大である。」こう書いてあります。この見解に同意されますか。
  175. 大平正芳

    大平国務大臣 その点はまさに私はアメリカ側の理解が十分でないということを指摘したところでございます。その後為替市場がフロートしたということは明らかでございまするが、自由化につきましても、いまの日本の自由化というのは、先進諸国と比べましてそんなにおくれておるものと私ども考えておりません。  それからそこに言うところのいろいろな障壁、非関税障壁、それから行政上の制約その他はいずれの国もあるのです。われわれがどこの国の実例を検討いたしましても、それぞれ特有の非関税障壁というふうなものがあるわけでございますので、ややそこの表現日本に対する理解の不十分さを示した事例じゃないかと私は考えております。
  176. 永末英一

    ○永末委員 たとえばその「時代遅れの通貨交換レート」なんということばは、どういう意味かよくわかりませんが、同じこの教書の中には、三五%もこの二年間でわれわれは、アメリカのほうは、円とドルとの交換比率をうまいことやったというような旨のことが書いてある。そういう目で交換レートのことをながめておるとすれば、ぼくはゆゆしき重大な問題だと思うのですが、大臣どうお考えでしょう。
  177. 大平正芳

    大平国務大臣 その後アメリカの論調を見ておりますと、現在フロートした為替市場におけるこの交換比率というようなものについては、格別苦情も出ていないようでございますので、それはやや古い段階における、時期における認識じゃないかというように私は思います。
  178. 永末英一

    ○永末委員 田中総理もニクソン大統領に接触があったわけですから、その間違った見解を持たせぬように外務省はもっと努力すべきだと思います。  この教書の中に、こんなことが書いてあるのです。「日本政府日本世界的貿易及び経常収支の黒字を二〜三年のうちにGNPの一%まで縮小することを公約している。」パブリックリープレッジしている、こういうことですが、公約されたんですか。
  179. 大平正芳

    大平国務大臣 去年の夏のハワイ会談におきまして、アメリカ側はこんなに異常な黒字が日本に有利に対米貿易収支において蓄積されているというようなことは健全じゃない。したがって、どういう目安でもってこれを減らしてくれるのかという意味の要請があったことは事実でございます。これに対しまして田中総理としてお答えいたしましたのは、貿易というのは、われわれのほうは計画貿易でないので、自由な貿易で、しかもアメリカとだけやっているわけではなくて多角的な貿易をやっているのでございますから、多角的なベースで、自分の大体の目安としてはここ二、三年の間に、両三年の間にGNPの一%ぐらいの黒字に持っていくことを目標に内外の経済政策を検討しておるのであるという答えをしたことは事実でございます。われわれ自由経済をとっておるわけでございますから、いついつまでに黒字幅をここまでに持っていきますというような公約をしてみても、それはできない相談でございますが、大体の政策の目標というものはそういうところに目安を置いて、ことしは補正予算も組むし、来年度の予算は相当大型にして輸入もふやす、福祉重点の政策をやってまいることによって、国際的なバランスも回復の方向に持っていくのだ、こういうことをやってまいりますと二、三年の間にはGNPの一%——当時われわれのエスティメーミョンによると、大体二千億ドルくらいのGNPとすれば、二十億ドル内外くらいの貿易勘定の黒字くらいの目安を立てながら各種の政策を鋭意やっておるのであるということを申し上げたことは事実でございます。
  180. 永末英一

    ○永末委員 われわれの日本側がその責務、オブリゲーションを負っておるという表現をニクソン大統領は使っておるが、それは日本がこの現在の国際経済に対して、全体に対して存在しているのですから、責務はございますね。そういう責務と受け取っておるのではなくて、そういういまの田中総理のようなことばを念頭に置きつつアメリカに対するオブリゲーションを負っているんだという感覚でとっているかもしれませんが、大臣はどんな感覚ですか。
  181. 大平正芳

    大平国務大臣 それがまあことばの問題でありまして、それをどのように、どういうように理解したらいいか。事柄自体はいま申し上げたようなことを先方にも伝えておいたということでございますし、その後の経済の動き自体も、田中総理が言ったような方向にいっておるわけでありますので、そしてその後事態は非常に緩和してきておるわけでございます。だからその表現自体がどこまでのものであるかというようなことにつきましてはよく検討してみなければいかぬと思いますけれども、当然日本としては自主的になすべきことをなしていくことによって、国際的なバランスも回復できるのであるという自信をわれわれ自身が持っておるわけでございますので、その点について事態は順調に私は推移しておるというように考えておりまして、それに対して、もし先方がそうでないということであれば、それは意見の相違という、評価のしかた、見方の違いがあってもいいわけでございますから、それはそれとして議論してもいいと考えておりますけれども、もうそういう段階は私は過ぎたように考えております。
  182. 永末英一

    ○永末委員 先ほども言いましたようにニクソン大統領は、日本は政治的関係により引き続き保護されていると見ておるわけでございまして、やめましたレアード前国防長官がことしの一月八日にアメリカの下院に提出いたしましたリポートでは、アメリカの納税者だけが財政負担をした核防衛のたてというぜいたくを享受しながらアメリカの市場に気楽に近づき、強力かつ繁栄する経済をつくり出した国々は責任持てというようなことを言っているわけですね。そういう感覚が彼らにあるということは事実だと思うのですね。さて、大平さんは、政治的保護をわれわれはアメリカから受けておるとお考えですか。
  183. 大平正芳

    大平国務大臣 それをどのように考えるかでございますが、戦争をいたしまして敗れまして、数年間の占領政策を経験いたしまして、その後わが国が経済的に自立を達成する上におきまして多大の支援を受けたことは事実でございまして、これはもう事実が示すところでございます。そのことはわれわれも多といたしておるわけでございますが、そういうことの歴史的な事実をうたっておるのか。うたっている限りにおきましては、まあ確かに日本はアメリカの庇護を受けなかったというて力み返ってもそれは事実に反すると思うのであります。(永末委員「過去じゃなくて、現在から未来」と呼ぶ)これからの問題は、当然、その教書にもうたわれているとおり、わが国の出現、経済大国としての出現、そしてこれは世界政治経済秩序というものを変える大きな導因になっているほどの国になったわけでございますから、むしろわれわれはアメリカの庇護者でございますというようなことを言うたら、アメリカが失望するわけでございまして、われわれはそういうことでなく、自主的な判断で自主的な運命を切り開いていくという信念に変わりはありません。
  184. 永末英一

    ○永末委員 新しい国防長官になりましたリチャードソン国防長官は、最近出しました報告で、アメリカが同盟国との間の公約を維持するについては、タンデム方式、すなわち馬が二頭縦に並んで馬車を引っぱっていく、それでやるのだ、こういうことをいっています。  さて、その前のほうの馬は日米関係ではどっちだと思いますか。
  185. 大平正芳

    大平国務大臣 それはリチャードソンに聞いていただかなければ、私にはわかりません。
  186. 永末英一

    ○永末委員 それは大臣、リチャードソンに聞かなくても、公にした彼らの報告でやっているので、それはニクソン・ドクトリンと並び合わせれば、およその見当はつくと思うのですね。ニクソン・ドクトリンは、もう時間がございませんから繰り返しませんが、要するに、その地域で紛争が起こったものを、まずその国が対処せよということでしょう。アメリカはあとから応援するということでしょう。そうだとすると、縦に二頭並んでいく馬車の前の馬は日米関係では日本であって、うしろの馬がアメリカであろう、こう思いますが、いかがでしょう。
  187. 角谷清

    ○角谷説明員 先生いま仰せられました二頭の馬というところは、ちょっと私テキストの中ではわからないのでございますけれども、要するに、考え方といたしましては、これはリチャードソンの報告はもとより、ニクソン大統領の教書にもございますように、やはり国際情勢が従前とは変わってきた、米国の国際情勢における地位も変わった、与国の地位も変わったということでございまして、その変わったのに相応してそれぞれ責任を分担しようというのが基本的な考えでございます。
  188. 永末英一

    ○永末委員 アメリカの同盟政策に非常に変化がきておるし、それはやはりリチャードソン報告の中にもはっきり出ておる。その変化の中で、きょうは時間がございませんから、この次にまたお伺いいたそうと思いますが、アジアに対するアメリカの防衛方針は、やはりベトナム戦争の終結とともに変わってきておると思います。その象徴的な言い方がこのタンデム方式で出ておるのだと思いますが、そう見ました場合に、もし二頭立ての前の馬をアメリカの同盟国、日米関係では日本が引き受けてやるのだということをアメリカが期待しておるとするならば、先ほど引用いたしましたニクソン大統領の「日本は政治的関係により引続き保護されている」という見解は改めてもらわなくてはならないし、またそれは、見解だけの問題ではなくて、日本政府側の安全保障の問題に対する気がまえと準備とを変えなくてはならぬ問題である。この辺は、先ほどの大臣のお答えでは、ニクソン大統領の教書自体をまだ検討しているのだというのですが、早急にこの辺の彼らの見解を確かめて、われわれのほうも腹がまえをする必要がある、こう思いますが、それに対してのお答えを願いたい。
  189. 大平正芳

    大平国務大臣 リチャードソンの報告もアジアに対する部分は非常に簡潔でございまして、あれだけからは、永末さんが期待されるような答えは出てこないと思います。問題は日米間の協議もいろいろやっていることでございますので、できるだけポストベトナムにおけるアメリカのアジアにおける軍事的プレゼンスというような問題につきまして、十分われわれとしても聞きただしておかなければならぬと思いますし、同時に、われわれ自体は新憲法のもとで内政、外交をやってまいらなければいかぬわけでございますので、日本が経済力が充実したというだけで、直線的に防衛力につながる筋道のものでもないわけでございますので、そのあたりは十分検討をいたしまして、誤りなきを期さなければいけませんけれども、だんだん明らかになるに従いまして御報告を申し上げたいと思います。
  190. 永末英一

    ○永末委員 終わります。
  191. 福永一臣

    ○福永(一)委員長代理 次回は、来たる六月一日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後二時五分散会