○渡部(一)
委員 私は、
朝鮮問題につき、
外務大臣にお伺いしたいと存じます。
現在WHOにおける北
朝鮮政府の加盟という歴史的な決議がされまして、
日本の韓国に対する態度というものは、大きく反省しなければならぬ時期に到達している、こう思うわけであります。日韓
条約において
——この日韓
条約の成立自体に問題があるわけでありますけれども、日韓
条約において、
日本政府は、当時第三条において、「大韓民国
政府は、
国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの
朝鮮にある唯一の合法的な
政府であることが確認される。」と述べております。このことは、国連総会決議百九十五号(III)というものに乗っかって、
朝鮮における合法
政府というものは何かという問題をすりかえた議論でありまして、この問題については当時もたいへん議論があったわけであります。ところが今日、国連総会の決議の百九十五号(III)というのは、国連における北
朝鮮政府の参加という問題を目前に控えまして、もうその理論的な
根拠というものがくずれ始めておる、そういう時期に差しかかったように思うのであります。特に最近に至りまして、従来韓国
政府を
承認しておる
政府が、北鮮との間に続々と、フィンランドをはじめとして
国交正常化をなし遂げているわけでありまして、こういう風潮を見ますときに、
朝鮮問題における従来の
日本の政策、韓国
政府にのみ肩入れをしている政策というものは、根本的な反省時期に到来したのではないかと思うわけであります。そして、それと同時に、こうした
日本の戦後の
外交方針の中で、
一つの大きな時代の区切りが来たのではないか。つまり日米安保
条約を基礎として、冷戦構造の一方に加担することによって維持されてきた
日本の
外交方針というものを変えるべきときが来たのではないか、こう
考えられるわけであります。つまり、ニクソン・ドクトリン以後、米ソ間の協調方針というものが新しい
意味の
世界支配というもの、
世界秩序というものを達成する
方向に向かって進み出したときに、
日本の韓国政策、
朝鮮政策というものがいままでと同じような古いタイプの
朝鮮政策でいいかどうか、これについては大きな疑問があるわけであります。疑問があるばかりではない、今度の国連総会でどういうような議論をしていいかという方針さえも、これは困った問題になると私は思うわけであります。
私は時間がありませんから、言い分を先にどんどん申し上げますが、
大平外務大臣がその点お答えになりまして、すでにこの問題については慎重に
考えられた
——慎重に
考えるということは、
考えていないという場合にも言えることばでありますし、十分
考えているが腹のうちを言うわけにいかぬという政治用語でもありますので、事実上それは御
答弁をなさらなかったということであると私は理解しておるわけであります。そこで、そろそろこの辺で、
朝鮮政策の基礎的な問題について御意見を表明されるチャンスではなかろうか、私はそう思うわけであります。
私としては、まず韓国
政府及び北
朝鮮政府に対して等距離政策に一歩を踏み出すべきである、その等距離政策を踏み出した上で、
日本の
朝鮮政策に対する自主性というものを回復することがなければ、これは隣国との
外交問題について大きなマイナスを生ずるのではなかろうか、こう思うわけであります。
外務大臣はWHOへの北鮮の加盟に対して、今度の問題と秋の国連総会の問題は別個のものである、しかし秋までに情勢も変わるだろう、総会までには
政府として慎重に対処したい、こう言われているそうであります。これは私が想像いたしますところ、WHOのときはこういう態度をとったけれども、国連総会ではまた別の態度をとるぞ、しかし秋までにはいいタイミングがあるだろうから、そのときにうまく
お話をしたいという意思のようにも見えるわけであります。この辺非常に不明確であり、そしてこの韓国政策の問題を
方向変換するにあたって、十分な検討と同時に、従来の行きがかりを堅持することによるマイナスというものも考慮していただかなければならぬと私は
考えておるわけであります。
したがって、私は、きょうは
朝鮮政策に対する法理論的な積み上げを申し上げているのではなくて、いままでの政策を変えるべきときに来たのであって、変えるべきであると主張しているわけでありますが、これに対する
外務大臣、外務当局の御
答弁をお願いしたいと思っておるわけであります。