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1973-04-25 第71回国会 衆議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月二十五日(水曜日)     午後二時二十九分開議  出席委員    委員長 藤井 勝志君    理事 石井  一君 理事 小坂徳三郎君    理事 西銘 順治君 理事 福永 一臣君    理事 岡田 春夫君 理事 堂森 芳夫君    理事 金子 満広君       石原慎太郎君    稻葉  修君       加藤 紘一君    木村 俊夫君       小林 正巳君    竹内 黎一君       深谷 隆司君    石野 久男君       川崎 寛治君    河上 民雄君       三宅 正一君    渡部 一郎君       竹本 孫一君    瀬長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省中近東ア         フリカ局長   田中 秀穂君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省条約局外         務参事官    松永 信雄君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君  委員外出席者         防衛庁経理局会         計課長     吉野  実君         外務大臣官房領         事移住部長   穂崎  巧君         大蔵省国際金融         局投資第一課長 瀬川 治久君         文化庁長官官房         国際文化課長  角井  宏君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 小島 康平君         水産庁漁政部水         産課長     平井 清士君         水産庁生産部海         洋第二課長   恩田 幸雄君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     植木庚子郎君   小林 正巳君     松澤 雄藏君   深谷 隆司君     水田三喜男君 同日  辞任         補欠選任   植木庚子郎君     加藤 紘一君   松澤 雄藏君     小林 正巳君   水田三喜男君     深谷 隆司君 同月二十五日  辞任         補欠選任   永末 英一君     竹本 孫一君 同日  辞任         補欠選任   竹本 孫一君     永末 英一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  千九百七十一年十二月二十日に国際連合総会決  議第二千八百四十七号(XX VI)によつて採  択された国際連合憲章改正批准について承  認を求めるの件(条約第一号)  アフリカ開発基金を設立する協定締結につい  て承認を求めるの件(条約第二号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 藤井勝志

    藤井委員長 これより会議を開きます。  千九百七十一年十二月二十日に国際連合総会決議第二千八百四十七号(XX VI)によって採択された国際連合憲章改正批准について承認を求めるの件、アフリカ開発基金を設立する協定締結について承認を求めるの件、以上両件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 先般の委員会で私はドル払いの問題について外務大蔵あるいは防衛庁関係資料の提出を要求いたしました。いま手元に私は先般防衛庁から出された資料のほかに、民間から買い入れる武器、車両購入あるいは航空機購入等についてのドル払い外貨のうち特にドル払いに相当するものの資料をいただいたのですが、一応これについて防衛庁のほうからの説明をお願いいたします。
  4. 長吉野実

    吉野説明員 御説明をいたします。  先般防衛庁から出しました資料は、防衛庁が直接に外国政府からユニットとして完成しているものを輸入するという場合と、それから日本商社を相手にしまして輸入を依頼する場合、こういうものの金額予算上幾らであるかということで、たしか二百十億という数字を提出いたしました。それ以後、防衛庁装備品調達につきましては、直接に政府が、あるいは商社を通して輸入するもののほかに、民間会社生産を委託するものの中で、生産する会社部品等外国から輸入する部分があるのではないか、こういうことでございます。これは非常に膨大な部品のアイテムがありますので、数字をはじくのに時間がかかったわけでございますが、お手元に示しましたように、八十九億という数字になるわけでございます。ただ、この計算をいたしました八十九億の中には、一応予算計算上、こういうものは生産会社外国から輸入するという見積もりになっておるものがございまして、生産の途中において、あるいは国産に切りかえるというようなことも起こるようなものであります。  なお、この数字は、四十七年度に予算に従いまして契約をいたしまして、それに基づいて四十八年度予算支払いが回ってくる分があります。その中で外貨払い分がどのくらいになるかということと、それから四十八年度に新たに予算に基づいて外国から輸入することを予定されている部品等金額を合計したものでございまして、四十六年度以前に契約をいたしまして四十八年度に支払いが回ってくる部分予算上ありますけれども、生産会社が実際に外国から物を輸入する場合には、部品等でございますので、四十六年度の調達でありますと、もうすでに外貨の手当てをしてしまっているわけでございまして、四十八年度の歳出金額の中には外貨調達の対象とするような金額はほとんどないということで、この数字には含まれておらないわけでございます。
  5. 石野久男

    石野委員 私、予算でこまかく調べるようなそういう質問のしかたはいたしませんけれども、先般来、外務省大蔵省防衛庁関係ドル払いのものをいろいろ聞きましたその資料によりますと、外務省関係で、米ドル払いになるものが百七十億円くらいございます。それから、大蔵省関係で見ても、産投会計を含めれば約五百二十六億というような数字になり、それから防衛庁関係だけでいきましても、約三百億円という計算が出てまいります。この合計をいたしますと約九百九十六億円でございます。そして、アフリカ基金計算単位との関係米ドルの問題がどういう位置づけになるかということが先般来問題になっておりましたが、この米ドルの三百八円計算が現在二百六十五円四十銭ということになって、約一四%方、円高になっておりますから、その計算でいきますと、私の計算では、これだけのものに対する差額金が約九十四億円くらいになる予定でございます。きょうは大蔵大臣が見えておりませんからあれですが、これだけの差額がもうすでに予算編成の時期においてはっきりしておったのに、いま予算の中に組み込まれておる。そして、それはいわゆる財政法二十一条の規定で処理ができるんだからということで、一応是認しようとしておるわけです。しかし、国民の立場からすれば、すでにこれだけの差益といいますか余剰金ドル関係だけで百億円近く出ておるということはたいへんな問題であると思うのです。こういう問題は予算編成上当然対処すべきであり、当然のこととして予算は組みかえをされなければならなかったものであるというふうに私は思っております。本委員会外務でございますから、この問題について多くは言いませんけれども、私のこうしたものの考え方について大蔵当局はどういうふうにお考えになっておるか、ひとつ所見だけを聞いておきたい。
  6. 瀬川治久

    瀬川説明員 国際金融局の投資第一課長瀬川でございます。担当が違いますので、私から御説明申し上げることは実際上は筋違いかと存じます。ただ、実際問題として、三百八円という相場変動制相場に移りまして——変動制相場と申しますと、一年を通じてその相場見通しがどういうふうになるかわからないという形の相場でございますので、現在の相場でこれだけの差額が出るというふうなことを実際の予算編成にあたって見込むということは非常に困難なことだと考えております。  以上でございます。
  7. 石野久男

    石野委員 大蔵大臣は来ていないし、いまの課長答弁は十分納得できるものじゃありませんので、外務大臣にお尋ねします。これは予算の問題で、外務大臣担当ではないかもしれませんが、前外務大臣でもあり、政府の重要ななんでございますし、役割りを持っておりますからね。予算編成上、こういうような差額が明確に出てくる——これはどちらかといえば不用な金額なんですよね。これが予算の上に計上されておるということはたいへんな問題であると思うのです。それについての大臣所見だけをちょっと聞いておきたいと思います。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 四十八年度の予算は、スミソニアンレートといわれる三百八円ベース編成されており、したがって、それがその後、ドルの切り下げ、円の変動相場制移行に伴いまして大幅の対ドル円高になっておりますことは御指摘のとおりでございます。したがって、ことしの予算に、いま御指摘のように初めから予定された不用額が計上されておることは、石野先生指摘のとおりと心得ます。しからば、なぜその時点で予算の組みかえをやらなかったかということでございますが、予算歳出もございますけれども、歳入もあるわけでございまして、変動相場制に移行いたしまして、今後一年間の展望に立ってどのように歳入を見積もってまいるかという作業を始めますことはたいへん大きな仕事になるわけでございます。その展望もさだかにつかめないわけでございますので、そういう理由もありまして、組み替えは御遠慮いただく。遠慮させていただくけれども、しかし現実国庫金支出にあたりましては変動相場制で出ました相場に従いまして日銀が対外支払いをやるわけでございまして、その差額国庫に的確に回収される措置が講じられるわけでございますので、次善の策といたしまして、こういう既定予算案そのままでお願いせざるを得なかった事情につきましては、御理解をいただければしあわせと思います。
  9. 石野久男

    石野委員 この問題については、まだ予算編成上の問題として非常に重要な課題を残しておりますが、一応質問はこれでおきます。  条約の問題についてひとつお尋ねしておきますが、五十七条の「参加」の項目の読みと、それから附属書Aの1との関係でございますが、五十七条の「参加」の項目によるところの参加国は、必ずしも所定の予定された国々だけで規定されているのじゃなくて、ほかにもまだ参加のできる可能性を含んでいると思いますけれども、附属書A原参加者ということになると、1項では、もうここに書かれた各国で限定されたものになってしまうように見受けられますけれども、この関係はどういうふうになっておりますか。
  10. 松永信雄

    松永政府委員 御質問趣旨、必ずしも私はっきり把握できませんけれども、附属書Aの1項で原参加者範囲を定めているわけでございます。したがいまして、ここに掲げてあります国以外は原参加者になることはないということであろうと思います。この五十七条の参加規定、特に第2項で「原参加者でない国は、」云々という規定がございますけれども、附属書Aの1に掲げている国が万一原参加国にならないという場合には、この規定参加国になるということは可能だろうと思います。
  11. 石野久男

    石野委員 この場合、一つだけお聞きしておきますが、ここに附属書Aの1項で原参加国になる国とそれから第二の当初出資国として出されたこの関係から見まして、その他の国々で、主としてここではやはり共産圏の国はユーゴスラビアを除いてはないわけです。こういう共産圏関係、たとえばソ連とか中国とか、そういう非常に大国と称せられる国があるわけですね。これらの国々が、いまのこの基金ができる段階での予備交渉と申しますか、前段において参加するような見通しについてはいかがなものでありましょうか、一応お聞きします。
  12. 松永信雄

    松永政府委員 私が承知しております範囲では、この協定の協議が行なわれました際に、アフリカ開発銀行のほうから、いま御指摘がありました社会主義諸国にもいろいろと働きかけと申しますか、話があったようでございます。そのうちで、実際にこれに参加したのがユーゴスラビアだけだったと思います。ここに掲げられます国以外のそういう社会主義国参加する場合には、先ほど申しましたように、原参加者でない参加規定に従って参加することになると思います。ただ、この協定上、それじゃ実質的に原参加者とそうでない参加国との間でどういう相違があるかと申しますと、実は実質的にはほとんど差はないのでございます。同じような資格で参加国になるというふうに私ども了解しております。
  13. 石野久男

    石野委員 まだ問題がありますが、ちょっと留保いたしまして、渡部委員から質問があるそうですから、あとでまた質問させていただきます。
  14. 藤井勝志

  15. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私はアフリカ開発基金設立に関するこの協定に対して、わが党の近江巳記夫議員が克明に議論を展開し、また、同僚の議員の皆さんがたいへん議論をされているところでありますので、細目についてお伺いするつもりはございませんが、経済協力に関する基礎的な考え方について外務大臣の御意見をこの際明らかにしていただきたい、こう思っておるわけであります。  戦後日本経済発展は申すに及ばぬことでございますが、日本は要するにいまドルをため込んで、ほかの国に対して冷たい国である、自分だけもうけている国だというようなムードといいますか、印象というものを持たれているわけであります。そのときにあたって、日本がどういう経済協力に関する原則を立てていくか。それはもはや単なる一つ一つ協定とかあるいは話し合いのつどに話を決定するというのでなくて、ある程度の筋の通った態度というものが必要な段階になったと思われるのであります。したがって周恩来の八カ条をまねるわけではありませんけれども、日本政府というものは一体どんな考えなのかということが、御答弁趣旨をずっと見てまいりますと、きわめて明瞭ではない。たとえて言いますと、私は今回で一番大事なことは、多国間協定を重視していくのか、二国間協定を重視していくのか、まずこれは一つ原則になろうかと思うのであります。政務次官のお話をここでこの答弁の中から拝見していますと、その辺は明瞭でないわけであります。多国間でできないところは二国間でやれるのだというぐらいの返事であります。つまり、両方を併用するというような返事で終わっているわけであります。これはわが国経済協力方針としては、きわめて安直かつ場当たり的という声がこういうことでは出ざるを得ない。私は二国間協定よりも多国間協定多国間援助というものに対して前進をしていくことが正しいと思うわけであります。したがってこういうことをどういうふうに考えておられるのか、それをまず明らかにしていただきたい。  次に私が第二の提案として申し上げるのは、ひもつき援助ひもなし援助といわれている問題であります。たくさんの援助をするにあたって条件をつける、そうして条件をつけてお金は上げるあるいは貸すが、その見返りとしてわが国のものを買ってもらいたいというようなやり方、それが日本経済発展ということばでいえるかどうかわかりませんが、日本東南アジア諸国に対する大きな輸出となってはね返ってきたことは事実であります。そうしてそれがタイ国などにおいては反日運動の大きなねらいとなっていることもまた事実でありましょう。そうすると、ひもつき援助ひもというものをだんだんはずしていくという方向わが国が向かう姿勢というものが明らかにされなければいけない、私はそう思うわけであります。この第二の提案に対してどう考えられるかどうか。  それから第三番目の私が申し上げなければならないことがある。それは、ベトナムに対するアメリカ援助その他を見てももう明らかなとおり、援助というものが植民地支配、あるいは、植民地支配といわないまでも、現地政権あるいは現地民衆に対する間接的な統治、間接的な支配、間接的な搾取、こうしたものを生む場所がきわめて濃厚であります。そういうものを避けるために十分の配慮というものが行なわれなければならないと思うわけであります。つまり、被援助国自主独立、被援助国の自治、被援助国みずからがみずからの手で自分支配するということ、自分の将来の経済政策を確立するということ、こうしたことはきわめて重要な問題点であると私は思うわけであります。こういうことは当然のことだと思うのですけれども、こういう原則日本外交の中に確立されなければならないと私は思っているわけでありますが、まずこの点についてどういうお考えかを聞かしていただきたい。それから次の議論をしたいと思うのです。お願いいたします。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 援助方式といたしまして多国間方式、二国間方式について日本としてどう考えるかということが第一の御質問でございました。現に日本両方方式を併用いたしておるわけでございまして、御指摘のようにこの場合は多国間方式でいく、この場合は二国間方式でいくという定まった原則が確立されているわけではございません。アフリカ基金でございますとか、南米の開発基金でございますとか、アジア開銀でございますとか、世銀でございますとか、そういったものにつきましては応分のおつき合いをいたしておりますが、同時に、そういうパイプを通じて援助を受けられる、融資を受けられる国々に対しましても、日本はまた二国間方式で御相談に応じておるわけでございまして、正直にいって確たる原則が立っておるわけではございません。それはおそらく他の各国もそうではなかろうかと私は想像するのでありまして、ただ根本は、受益国側立場計画、自主的な意欲というものをベースにして、なるべくそれに沿うように考えてまいらなければならぬ。二国間の場合も多国間の場合も、それを尊重してやるということであらねばならぬと思います。それからまた、条件につきましても、二国間、多国間を問わず、できるだけソフトな条件になるようにしてまいらなければならぬということでございます。そういった点につきましては、総理の施政方針演説、私の外交演説の中にも基本考え方は申し上げておいたつもりでございます。  第二のひもつき云々の問題でございますが、渡部委員仰せのように、できるだけアンタイイング援助に持っていくということは、政府基本方針といたしておるわけでございます。いま国際的にそういった原則が確立しているわけではございませんで、OECDにおきましても、いろいろ論議がありましたけれども、まだ一般的にアンタイイング援助に踏み切るというところまで先進国もなっていないのであります。けれども、われわれといたしましては、あなたの御主張されるとおり、全体として、世界全体がアンタイイングにならないといけないという主張を続けておるわけでございます。また国際的にそれが確立しない前におきましても、われわれといたしましては、できるだけ日本としては自主的にアンタイイング援助に持っていくように努力をいたしておるわけでございます。去年の十二月、総選挙直後開かれました東南アジア開発閣僚会議におきまして、私はとりあえず東南アジア域内アンタイイングを主張いたしまして、実行に移したわけでございます。しかし、これも一般的なアンタイイングに持っていくように鋭意努力中でございます。また、そういうことをやるだけの力が日本にできたように私は思っております。  第三の問題といたしまして、援助が政治的に誤って利用される心配がないようにしなければならぬじゃないかという御趣旨のことの御指摘がございました。私もそのとおりに考えておるわけでございます。援助を通じて何がしか他の目的を果たすというようなことのないようにしてまいらなければならぬことは、援助基本にかかわる問題と心得ておるわけでございます。その国がみずから立てた自立意欲、それから自立計画、そういうものを基本にいたしまして、それにお手伝いをするという意味の援助が望ましいと思うのでございまして、日本もそういう援助を実行していくというようにしなければならぬと考えております。われわれは決して援助を押し売りするものではございませんけれども、しかし、それぞれの国から御相談があった場合に、そういう趣旨のものとして日本援助を生かしたいと考えております。
  17. 渡部一郎

    渡部(一)委員 外務大臣は、ほぼ的確に私はお答えになったように思うわけでありますが、最初申し述べられた多国間、二国間援助については、その両者多国間援助という形になっていくことが私は望ましいと思います。それは第二項のひもつき援助というものを廃止する立場からいって、当然の帰結になるからであります。その両者原則がないと述べられました状況をすみやかに改善されて、そしてもちろん外交問題であり、現実の生きた問題でありますから、原則原則として押し通せない場合もあることは十分了解しているわけでありますが、それと同時に、少なくとも多国間援助に向かう、そしてひもなし援助に向かう日本姿勢というものが諸外国に明示されることが、一つの大きな信用になると思うのでございます。その点いかがでございますか。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せの御趣旨は私も同感でございます。そういう方向に極力持っていかなければならぬと思います。
  19. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そこで私は本協定の問題に触れていかなければならぬと思うわけでありますが、もう短いことばで的確に申し上げたいのでありますが、ここに西銘議員がおられるわけであります。西銘議員沖繩におられて、そしてわが国に返還される直前にたいへん御苦労なさったわけでありますが、そのときにこの西銘議員が味わわれた経済援助に関する日本政府の冷たさ、わがままなやり口、それがそのまま東南アジア諸国に対しての大きな打撃になっておると私は思うわけであります。それは日本にとってよい経験であったと思うわけであります。つまり沖繩に対する経験、そして明治以来日本が味わってきた、あるときは植民地的な立場からの抑圧、あるときは逆に植民地国に対する抑圧、今度は加害者被害者の入れかわった経験を持つ国家であります。この日本経済援助に関してアフリカ諸国の心というものを一番理解でき得る立場にあるのではないかということなのであります。そうすると、いま私たちが何をしなければならぬかということを、もう一つ原点にさかのぼって考え直さなければならぬと思うのであります。つまりここにおいてアフリカ開発基金にあげられているお金金額というものを出した、そのもう一つ基礎的な考え方をいいますと、アフリカは困っているのだ、経済的に自立できないのだ、マスコミでいう絶対的貧乏である、そういう状況にあるところには、要するに金を出せばよいのだ、金を出せば問題は解決するのだという簡単な問題からは解決しない。むしろ言うならば、このアフリカ開発基金金額というものが、アフリカの現状に対してはあまりにも少な過ぎる。仕事をするにはちょっと考えられないほどの少額ではなかろうかと私は思うのですけれども、いかがでありましょうか。そして私は、その少な過ぎる金額をこういう形でアフリカ開発基金などという大げさな名前をつけて出してくること自体、これはもう先ほど大臣が言われたまさにおつき合いの感覚なのであります。わが日本が少なくとも国際場裏で主張すべきことは、おつき合いだから賛成だというのでない立場が必要なのではないかと私は考えるわけであります。率直にいえば、先ほども外務省のある方が私の部屋に来られて言っておられましたけれども、バングラデシュという北海道の二倍くらいしかない地域に七千万の人間が住んでおる。十年たてば人口は二倍になり、三十年たてば三倍になるだろうと言っておられる。それはまあ一つの例でありましょうけれども、こういう急激な人口増加、そして驚くほどの経済自立政策に対する欠如というものがこの地域にあるわけであります。そうするとわれわれは、そういう地域にお金を上げるということが何を意味するか考えなければいけないわけであります。  私はインドネシアに行きましたときに、インドネシアの首都の郊外に日本から与えられた輸送船が二十隻も港につながれたまま、それが赤さびを帯びて、そして上甲板から下まで腐りかかっているのを見ました。動かす人がない。そして日本は堂々と経済援助をやったのです。ですからお金を上げ、物を上げたら問題が解決するかというと問題は解決しない。つまりアフリカ開発基金のもう一つ前に、このお金が有効に使われるだけの考え方と、それを事実われわれの問題として考え考え方がないと、金を出した、確かにおつき合いでは出した、お葬式の花輪みたいになってしまう。出しただけで何の意味もなくなってしまう。次の日は雨に打たれて地面に落ちるようなタイプのお金になるのではないかと私は思うわけであります。したがって私は、これだけのおつき合いをするなら、おつき合いをするもう一つの観点が必要である、考えが必要である。つまりそのお金を生かす考え方が必要である、こう思うのですけれども、どうでしょうか。大臣にその辺をお答えをいただきたい。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへんむずかしい問題でございますが、私ども各国とのおつき合いをしておりまして感じますことは、一番大事なことは日本が秩序正しい国として、平和と正義を重んずる国として高い信頼と尊敬をかちうることがまず第一だと思うのでございます。過去の日本はいろいろなあやまちもおかしましたが、しかしまた、日本人の活力によりまして無からこれだけのものをつくり上げたバイタリティを示したわけでございまして、そのこと自体が後発開発国に対しまして一つの道標をつくり上げておると思うのであります。したがって、まず援助国自体がみずからの運命をみずからが打開するという気概が生まれなければならぬわけでございまして、そういう意味で教育とか衛生とか行政とか、そういった能力をみずからがつけてまいるように努力されること、そしてそれに対してわれわれもまた御協力を申し上げるということ、つまり金あるいは物、そういったものだけでなくて、そういう人的能力の開発というような点、一緒に苦労をして差し上げる必要があると思うのであります。  それから経済援助あるいは技術援助の面におきましても、先ほど申しましたように、その国が立てられた計画、もくろみ、そういったものをできるだけ尊重して、それにミートするようなこまかい配慮がやはり必要であろうと思うのでありまして、それをあなたのおっしゃるように、生かされなければならぬわけでございまして、差し上げた者が高慢になってはいけないわけでございまして、もっと謙虚な気持ちでお手伝いをするという心情で対処していかなければならぬと思います。
  21. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、そこまで御理解がいったようでありますから、今度は具体的な問題を実際にどうやるかということをお考えをいただかなければならぬわけであります。私は率直に申しますけれども、そこまで考えられた以上は、その実行の段階でそれに対する手を打たなければ、このアフリカ開発基金というのは意味がない。アフリカ開発基金を生かすも殺すも、それからの行政がどうやるかという問題にもかかっているわけであります。そういうことは法律できめられてないのだからわれわれとしては知らぬというふうな態度であれば、この開発基金はもう何の意味もなくなってしまうのじゃないか、私は率直に思うわけであります。したがって、この点政府が、いままでの経済協力というのはお金を出すまでで終わり、考えるまでで終わり、その金の出し方の原則がない。考え原則は実行しない。そしてあとは、金をくれてやったら野となれ山となれというやり方でいく、それが資金的な日本経済援助であったと私は思います。その意味で、東南アジア諸国における黄色いアメリカ人という評判は必ずしも当を得ないものではない。むしろ的確にアメリカの放漫なドル支配のあとを受けて日本がやっている経済協力政策の本質を示しているものではなかろうかと私は思うのであります。その点今後十分の配慮と施策をお願いしたいと思うのですが、いかがでございますか。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 たとえばアフリカ基金に千五百万ドル計算単位を出資するということになりますと、その金はアフリカ基金が主体的に運用されるものだと思うのでございまして、一々日本から注文をつける性質のものではないと思うのであります。しかしこれはアフリカ基金を通じましてしょっちゅう成果をレビューしながら、また新たなくふうを加えて改善に改善を加えていくべき性質のものと思うのでありまして、そういったフォローアップにつきましては、政府といたしましても一度金を出しておけば終わりだということでなくて、終始深い関心を持って今後の運営が適正にいくように、そしてそれがさらに改善の方向をほぼ歩むことができるように配慮していかなければならぬと心得ます。
  23. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、あまり時間もないことでありますから、ドル表示の問題について一言申し上げておきたい。それは、私は、この計算単位の表示がドル表示という部分が残っていて条約上の不統一であったというふうに、交渉された外交官の外交的エラーといいますか、条約を煮詰めるときの事務上のエラーというふうにもし外務大臣が認められるならば、それは交渉の責任者の失敗ということで、そしてそういう幼稚な官僚を前線に出したという責任を追うという形で、またそういう指揮しか局長ができなかったという形で問題は解決するだろうと思います。しかし私は、問題はそうではなかったのじゃないかという疑問がまだ晴れぬのであります。つまりドル表示を残した。ドル建て表示、計算単位表示という二つをわざわざ残したという配慮の陰には、このアフリカ基金に対するアメリカ側の政府資金の出資というものに対する大きな配慮があったのではないか。そしてそれはアメリカ側が最後にどかんとお金を出すときの用意のためにわざわざそういう表示を残したのではないか。またそういうやり方で、評判の悪いアメリカ政府が最初にアフリカ諸国に対してある経済的なコミットメントをしておいて、そしてこの条約上の表面には出てこないでおいて、そしてアメリカのちょうどあやつり人形のように扱われた国家群が最初にこういうお話し合いと約束をして、最後にどかんとアメリカがいきなり顔を出してきて、お金を出して、そしてアフリカ側に対する支配をがっちりとやる。こういう話はまるで夢のような話でありましょうか。私は、これに対して政府がどうお考えであるのか、なぜこんな計算単位ドル建て単位とでこだわるのか、なぜこんなにがんばられるのか、なぜあやまらないのか、そしてなぜ、なぜという質問が無数に出てくるのを感ずるわけであります。まことにふしぎな話です。もし事務上の手続のエラーならば、あっさりあやまっているはずだろうと思います。ところがそうでないとするならば、それを説明する説明の筋立てがなくてはならないと思います。それは明らかに不十分であります。私が請暇をいただきましてアメリカに一月留守させていただきました間じゅうこの問題について一カ月強烈な議論が続いておったようであります。なぜ一月もかかってこの議論が延々と続けられたのか、そして同僚の石野議員がこのように長い間かかってこの問題を詰めてこられたのか、私は率直にいってわからないのであります。ことばの解釈はことばとしてはわかります。しかし裏にある背景がわからないのであります。したがってきょうは、局長課長が御説明になるのではなくて、大臣から率直な御意見を伺いたいと私は思っております。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 本委員会で御指摘をいただきましたドル表示の問題でございますが、アフリカ基金を充実させたいという善意から出た問題点の御指摘であったと私も了解いたしておるわけでございます。しかしこういう規定がなぜ置かれたか、その背景はどうかというお尋ねでございますが、不敏にいたしましてその紙面の奥に隠された深いその背景がどうかという点を洞察することは私にできないのでありますが、ただ本委員会を通じて示されました問題点の御指摘、そしていま渡部委員が提言されました経済援助基本的な姿勢というものを十分体しまして、本件ばかりでなく経済援助問題全体につきまして周到な配慮のもとにその実行に当たっていかなければならぬと考えております。
  25. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この問題に対しては原則的な立場についての御説明は私はわかるわけでありますが、計算単位の問題でこうまで外務省ががんばられた理由については依然として不明瞭であります。それは石野議員がまだ質問の御中途でありますから、石野議員の御質問におまかせをしたいと私は思うわけであります。そして私は、このアフリカ開発基金のような一つの交渉、一つ協定あるいはこういう附属書の審議を通じて得るものがなければならないと思うわけでありまして、今後のこういう経済協力に関する基本的態度というものを、少なくとも外務大臣原則がないと率直におっしゃったその率直さは買うといたしましても、そういうことが二度と行なわれないような御答弁であっていただきたいし、そういうのを積み重ねることが国際信用を増す道であるということを最後に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘の点につきましては、先ほども申し上げましたとおり周到な配慮をもちましてあらゆる案件の目的が的実に達成できますように、そして日本援助が正当に生かされるように、外務省といたしましても最善を尽くしてまいりたいと思います。
  27. 石野久男

    石野委員 いろいろ問題点がございますが、先般来問題になっているもののほかに、私が先ほど条約参加の問題で質問しましたそのとき、第五十七条の「参加」の項で、第2項「原参加者でない国は、第三条3の規定に従って参加者となることができる。」ということが書かれておって、第三条の3項というのは、「全会一致の決議により総務会が決定するものに従って」参加者になることができる、こういうように書かれております。そこで先ほど、原参加国参加国との間には別に資格とか性格の上で相違はないんだという答弁がございましたが、しかし附属書Aの1項によりますと、おのずからここに原参加国範囲がきまっておるわけです。それから第三条3項の規定によりますと、総務会が全会一致で決定しなければ参加できないということにもなっております。そこで先ほどの質問で申しましたように、社会主義諸国の中で非常に大国と思われるような国々がこの項目の中に入っておりませんが、日本立場からしまして、これは大臣にお尋ねしますけれども、アフリカ基金を充実させるという意味では、むしろこうした社会主義諸国の非常に大きな国々がこれに参加することを排除すべきじゃないし、むしろ積極的に呼び込むようにしなければならないというように私は思います。そういうことについての日本考え方政府考え方はどういうことであるのか、そしてまた早急にそういう社会主義の国々を入れるように働きかける意図があるのかどうなのか、その点を先にひとつ聞かしていただきたい。
  28. 松永信雄

    松永政府委員 条約上の御説明だけ私から先に申し上げさせていただきます。  第三条3項で「原参加者でない国は、この協定に反しない条件であって、参加者の全投票権数の賛成票によって採択された全会一致の決議により総務会が決定するものに従って」とございます。ここで書いております「協定に反しない条件」というのは何かというのは、具体的にはこの協定が発足してからでないとわかってまいりませんが、協定上予想されておりますその条件というのは、第六条の3項に「原参加者以外の参加国の当初出資も、計算単位で表示され、また、自由交換可能通貨で払い込まれる。当該出資の額及び払込みの条件は、基金が第三条3の規定に従って決定する。」とございます。したがいまして、この協定上は主としてここで「条件」というのは出資の額及び払い込みの条件ということであろうかと思います。
  29. 石野久男

    石野委員 だから私は聞くのです。附属書Aの1項、これでいきました場合、アメリカドルがここへ出てまいりますが、先ほど同僚の渡部委員からも質問がありましたように、この「アメリカ合衆国ドル」というものを、アメリカということだけで考えるというと、附属書Aの1項ではこれはアメリカだけになるのです。だけれども、いまの「参加」という関係に関連して、そして第六条3項の「自由交換可能通貨」というものの中に米ドルが入ってまいりますと、これは附属書Aの第1項のこの金額であれば、制限なくやれば、かりにアメリカドルの実勢が三分の一になったといたしました場合、このままでいきまするならば千五百万アメリカドルというものは予定される出資額の計算単位の三分の一になっちまう、そういうことになります。したがって、この附属書A第1項の米ドルというものの書き方というものは非常に今後に問題を残すことになりますから、私はこういうことを残さないようにすることがどうしても協定成立をさせるために必要な要件であろう、こう思うのです。したがって、私は先般来いろいろと政府に対してとるべき手続の問題について要請をしてまいりました。政府はやはりこういう問題をお考えになれば必ずやその処置をせにゃならないだろうと私は思うのです。そうでありませんと、第六条3項規定でいわゆる「参加国」になる国々附属書Aの1項を適用する形で出資をしてまいりました場合、私が心配するような問題が出てくるわけです。附属書Aは限定された国しか書いてありませんけれども、第六条3項というのはここには国の限定はないわけでございますから、それを今度は規定するものは第三条の項になるわけですね。第三条の「総務会」の決定にかかわってきますから、そういうことでこの附属書Aの1項というものは単にここに明記されたところの国々の問題だけではなく、やはり第三条規定にまでもかかわってくるし、六条3項にもかかわってくるというふうに思いまするので、この米ドルというものの読み方については第一条規定のいわゆる「計算単位」の趣旨を生かすようにすることがどうしても必要である、こういうふうに私は考えます。外務大臣はどういうふうにお考えになるか所見をひとつ聞いておきたい。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 この基金をできるだけ充実さして本来の目的の達成をはからなければならぬという御趣旨と拝聴するわけでございまして、そういった御趣旨に沿うように私どももその御趣旨を体して処置してまいらなければいかぬと思います。
  31. 石野久男

    石野委員 私はあまりくどいことを申しませんけれども、これは単に政府に対するいやがらせをやるとかなんとかじゃないのです。先ほども同僚の渡部委員からもお話がありましたように、政府援助に対する心がまえの問題が一つあります。それからもう一つは設定されるべき基金が実際に効果をあらわすために、やはりあらかじめ予測される不備な問題点というものは排除しておかなければいけない。これは条約をつくったりあるいは協定をつくる場合に当然国がなさなければならぬ問題であろうし、またこの条約批准する議会としてもわれわれはなさなければならぬ問題でございます。だからこの問題については政府は実効果をあらしめるように努力するということだけはぜひひとつ確認をとっておきたいと思うのです。  それで、私は委員長にお願いしたい。この質問は社会党の石野という者が一人やっている問題じゃない、外務委員会全体が、日本の国会が問題にしておる、そのことは与党の皆さんも認められた、こう思います。したがって外務委員会としてはこのことを強く政府に要求しなければいけないと思います。そして先般来私が申し上げ、質問しているような内容を充実させるためにやはり国会はその保証を取りつけることがこれを承認するにあたりまして必要であると思うのです。ひとつ委員長所見を聞かしていただきたい。
  32. 藤井勝志

    藤井委員長 それでは、この際、委員長から政府に一言申し上げます。アフリカ開発基金設立協定における附属書Aの1に規定されている「千五百万アメリカ合衆国ドル」について、本委員会において種々の角度から質疑が行なわれまして、「アメリカ合衆国ドル」のかわりに「計算単位」を用いたほうがより適当であったとの考え方は十分理解し得るところであります。  よって、政府は、受諾書寄託に際して、「千五百万アメリカ合衆国ドル協定作成時においては千五百万計算単位にひとしかったことにかんがみ、附層書Aの1「千五百万アメリカ合衆国ドル以上」との規定に従ってなされる出資が千五百万計算単位となるよう基金が所要の措置をとるべきこと」をアフリカ開発銀行に対し文書をもって申し入れるとともに、関係諸国に対しても文書により同様な趣旨の働きかけを行なうよう政府努力すべきであることを強く要望いたします。
  33. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま委員長の御発言にありました御要望につきましては、政府といたしましては、その御趣旨を体しまして処置してまいりたいと存じます。
  34. 石野久男

    石野委員 委員長から要望があり、外務大臣所見の表明もありました。私はやはり本件は非常に重要であると思いまするし、国会がこの問題について国民に対してこたえるためにもいまの政府の御答弁は確実に実行されるものと思いまして、一応私の質問はこれで終わります。
  35. 藤井勝志

    藤井委員長 これにて両件に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  36. 藤井勝志

    藤井委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件、電離放射線からの労働者の保護に関する条約(第百十五号)の締結について承認を求めるの件、機械の防護に関する条約(第百十九号)の締結について承認を求めるの件、以上各件の審査に資するため参考人の出頭を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 藤井勝志

    藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお参考人の人選、出頭日時及びその手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 藤井勝志

    藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  39. 藤井勝志

    藤井委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堂森芳夫君。
  40. 堂森芳夫

    堂森委員 私に与えられました時間を利用しまして、数点について現下の外交問題等について外務大臣にお尋ねをいたしたい、こう思うのであります。  数点にわたってその問題点は異なりますが、しかし、いずれもわが国が独立国家として進められておる外交政策が、はたしてほんとうに独立国家としてのあるべき外交の姿であるかどうかということについて、重要な関連性がある問題でございますので、外務大臣にお尋ねをしよう、私はこう思うのであります。  第一の問題は、先般天皇、皇后の訪米のうわさがいろいろございました。ところが、大平外務大臣の公式な発表等もありまして、今秋中は訪米をされることがないということがきめられた。そしてアメリカの駐日大使にもその旨を伝えた、こういうことでございますが、そのとおりでございましょうか。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 そのとおりでございます。
  42. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで新聞等の報道しておるところをいろいろ読んでおりますと、今秋天皇がアメリカを訪問されることがないということになって、そのために日米間の外交関係が何か円滑でなくなるようなおそれがあるので、大平外務大臣が釈明のためにアメリカを訪問するのではないかという報道がなされておりますが、そういう計画はあるのでございますか、これも承っておきたいと思います。
  43. 大平正芳

    大平国務大臣 陛下の本年中の御訪米を宮中行事等で延ばさざるを得ない事情は、御指摘のようにアメリカ側に伝えたわけでございます。そのことのために日米友好関係に特別の支障があるとは私は判断いたしません。ただ外交をあずかる者といたしまして、事そういう事情に立ち至ったことにつきましては、誤解のないように手を尽くしておく必要がありはしないかというように考えて、目下検討中でございますが、私自身の日程、国会の審議のスケジュール、その他ございますので、いろいろそういったこととの関連でいま検討いたしておるところでございまして、まだきめたわけではございません。
  44. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣は、二十八日にヨーロッパにお立ちになって、ユーゴスラビアを訪問される、そしてチトー大統領をはじめ首脳部とお会いになる、それからフランスへもおいでになる、その後ブラッセルに行って、ECの首脳部にもお会いになる、こういうふうに新聞は報道をしております。これはおきめになったのでございますか。
  45. 大平正芳

    大平国務大臣 それはきめさせていただきました。
  46. 堂森芳夫

    堂森委員 そして新聞の報道しているところではその帰路、大西洋を渡れば簡単なわけですから、アメリカへ立ち寄って、アメリカ政府の首脳と会って、そして天皇の訪米が延びたことについて釈明をするんではないか、こういうようにも新聞が報道しておるのです。いまもまだきまっていないというお話でありますが、行こうとされる方向で検討中でございますか、行かれぬのですか、承っておきたいと思います。
  47. 大平正芳

    大平国務大臣 まだきめていません。
  48. 堂森芳夫

    堂森委員 それはそんなずるい答弁はないですよ。行くなら行くで理由を示されればいいと思うのです。私はこの問題について掘り下げて、なぜ行かれるのかとかどうだということを聞いているのではないのです。天皇が宮中の事情で向こうに行かれなくなった。そういうことがどうして日米——あなたはたいして外交関係にということはないという御答弁でございますけれども、いろいろな報道、またうわさを聞いておりますと、政府は非常に苦慮しておる。そうすると、日米関係に何かそうした暗いというか、おもしろからざる事情も起きてくるということは、政府外交的なルートでオーバーコミットするとか何かいろいろなことがあったということを想像せざるを得ないのですが、そういうことはないのでしょうか。やり過ぎたからおわびに行くんだということじゃないのですか。いかがでございますか。
  49. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことではございませんで、日米間の日常の外交の礼儀といたしまして、そういうことをできればやるべきではなかろうかというようなことについていま検討しておるということにすぎないわけでございます。
  50. 堂森芳夫

    堂森委員 大平外務大臣、ちょっとおかしいのじゃないですか。行くなら行くのだとおっしゃればいいんじゃないでしょうかね。しかし行くとすれば私は大いにかみつきたいほど文句があるわけですよ。わからぬとおっしゃると、これはまことに不可解ですな。またある新聞なんかは、元首と元首がお互いに交換訪問をすることが何か政治的ないろいろな意図があるようなことも報道しておる。日本の天皇を、ある報道機関が元首という表現を使っておるのですが、憲法には天皇を元首と書いてないですね。よもや大平外務大臣は天皇を元首だとは思われぬでしょうが、たいへん失礼な質問ですが、承っておきたいと思います。
  51. 大平正芳

    大平国務大臣 日本の憲法上、天皇は元首の地位を持たれておるとは思わぬのでございまして、新聞が元首と書いたことについて私は責任を負うわけにはまいりません。
  52. 堂森芳夫

    堂森委員 あなたの責任を追及しておるわけではないのです。新聞はそういう報道をしておりまから、非常に何か政治的に意図があるような、そうならこそおわびにも行かんならぬというようなことになるんじゃないかと私は思うのでありますが、まだ行くか行かぬかきめてない、こういうことでございますから、もうこれ以上追及してもしかたがないでありましょう。私は、堂々たる独立国家のわが国外務大臣がそのようなことで向こうに行って釈明されるというような態度については、問題が大いにあると思うのであります。それは警告しておきたい、こう思います。  そこで次の問題でありますが、最近になって北ベトナムの上空をアメリカの偵察機が飛ぶ。二万数千メートル上空を飛んで、非常に性能の高いといわれておるSR71ですか、この偵察機がパリ協定違反となるような行動である北ベトナムの上空を偵察しておる、こういうことが新聞等に報道されておるわけでありますが、そういう事実を外務大臣は御承知でございましょうか。局長からでもいいです。
  53. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 そういう報道がございますが、これがパリ協定とどういうふうになるのか、私たちとしてはどうも有権的な解釈ができる立場にない次第でございます。
  54. 堂森芳夫

    堂森委員 局長は、これは協定違反でないと言えますか。外務大臣、どうお思いになりますか。私は、これはなぜ聞くかというと、沖繩にこの偵察機がおるのですよ。そして、これがかつて沖繩の返還協定の四十六年十一月ですか、沖繩特別国会のときに、外務大臣の福田赳夫さんは一何べんもいろいろな答弁をしておるのですよ。私は特別委員をしておったからよく知っておるのです。それで聞いておるのです。どうですか、パリ協定違反にならないのですか。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 パリ協定を尊重いたしまして、それを踏まえた上で、わが国のインドシナ政策というものは考えてまいりますということを申し上げておるわけでございます。それで、いまのアジア局長が御答弁申し上げたのは、そのパリ協定についてケース・バイ・ケース、これが十分の事実も踏まえないでわれわれはこう解釈するというようなことを申し上げるのは、いささか行き過ぎじゃないかということを申し上げたにすぎないのでありまして、協定について尊重の意思は毛頭変わっておりません。
  56. 堂森芳夫

    堂森委員 いや、そのような偵察飛行を続けておるアメリカ側のやり方はパリ協定違反だと考えませんかというのですよ。守るように努力すべきこと、そんなものはあたりまえですが、その行為はパリ協定違反にならぬですか、どうお考えですか、こう聞いておるのですよ。
  57. 大平正芳

    大平国務大臣 いま堂森さんからそういうお話を初めて伺ったわけでございますので、事実をよく確認した上で私どもの答えを申し上げます。
  58. 堂森芳夫

    堂森委員 あなた、それはおかしいですよ。アメリカ局長、あなたはどうですか、知りませんか。
  59. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 御指摘のSR71が北ベトナムの上空を飛行したという新聞記事を私も見たことがありますけれども、この事実関係について私ども承知いたしておりません。先ほどアジア局長が御答弁申し上げましたのは、ただいま大臣が申し上げましたとおりに、かりにそれが事実であるとして、和平協定との関係はどうなるかということについて、日本側は和平協定規定に照らしてそれがどういう意味を持つかということについて、意見を言う立場にないということであると思いますが、いずれにしましても事実関係を承知しておらないということでございます。ただ、沖繩には嘉手納の飛行場にSR71が駐機しておるということは、そのとおりでございます。
  60. 堂森芳夫

    堂森委員 では外務大臣、お尋ねしますが、沖繩にSR71がおる、そして、これが偵察飛行をやる。福田元外務大臣は、SR71はおるが、これはあくまでも国際法に違反しない範囲しか行動を許しません、厳重に政府アメリカと話し合ってそうしたきちんとした約束を取りつけて、国際法違反をやらぬように、責任をもってこれは今後も見守っていきます、こう答弁しているのですよ。何べんもやっておるのです。そうしますと、北ベトナムの上空にも、もう平和になろう、そしてパリ協定を守ろうとしているときに、SR71が飛んでおるということで、沖繩にもおる。そういう場合に、日本外務大臣が、そんなことはおれは知らぬ——アメリカ局長は知っておってもああいうことを言うのですが、しかし、そんなことは私は知りませんということで、外務大臣、それでいいのでしょうか。いかがでしょうか。それで責任を果たせるでしょうか。外務大臣いかがでしょうか。
  61. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 沖繩返還交渉当時、沖繩に駐機いたしておりまするSR71の行動につきまして、種々御議論がございました。その当時から政府として米側に確かめましたところで、米側としましては、SR71が国際法に違反して第三国の領空、領海を侵犯するようなことはしておらないし、しないということを確言しているわけでございまして、政府といたしましては、米側のこの確言を信頼しているわけでございます。
  62. 堂森芳夫

    堂森委員 では大平外務大臣にお尋ねしますが、法律論とか条約論とか、そういうことは別にしまして、日本外務大臣として、そういう事実があるということは、アメリカ局長も報道として知っていますという話です。それをアメリカ政府は否定してないのですから。やっているということを言っていますよ。もちろんアメリカのほうは理由はあるのです。北ベトナムのほうが協定違反をやるからこちらもやるのだ、これによっていわば勧告しておるのだ、早く和平協定を順守する態度に戻れという勧告——勧告というか、忠告という意味でやっておるのだというようなことを言っているのですよ。外務大臣、そんなことを知らぬのはおかしいですよ。とぼけるのはおかしいと思う。政治的に一体こういう事実をどうお考えでございますか、アメリカがやっておる行為について。政治家としてどういうふうにお考えになるか、それはひとつ御答弁願いたいと思う。
  63. 大平正芳

    大平国務大臣 私は私の立場で国会において答弁いたす場合におきましては、よく事実も確かめ、アメリカ側の言い分もよく承った上で、十分検討させていただいた上で、御答弁させていただきたいと思うのでございまして、卒然と御質問がございましてすぐ御答弁申し上げるのはいかがかと思いまして、この問題につきまして、いま御指摘がございましたから、よく調べさせていただきます。
  64. 堂森芳夫

    堂森委員 突然聞いておるというが、外務省の人がきのうから、何を質問するかと言うから、そういうことを聞くとよく言うてあるはずですよ。だから、きょうになって初めてというのは、それは私がここでしゃべるのは初めてかもしれぬけれども、外務省政府委員室には、聞きに来られたから、電話でも言うてあるはずでございますよ。そんな、初めて聞いたって、外務大臣が見解を述べることができぬというのはおかしいと思うのですがね。それから、アメリカ局長、アジア局長、お聞きしますが、そういう事実が報道としてあるとすると、あなた方はアメリカ政府に対してそういう事実を照会することもできないのですか。しないのですか、できないのですか。その点も聞いておきたいと思います。
  65. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほど外務大臣から御答弁がございましたように、その事実関係をとにかく確かめてみたいと考えております。
  66. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると、いままで確かめたことはないということですね。もう一ぺん聞いておきましょう。
  67. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 SR71が北ベトナムの上空を飛行したかどうか、その事実についてまだ米側から情報を得ておらないわけでございまして、あらためて確かめてみたいという御答弁を申し上げております。
  68. 堂森芳夫

    堂森委員 あなた、日本のいろんな新聞が書いておるのですよ。そして外務省はたくさんの陣容をもっていろんな問題を、情報を集めておるわけでしょう。そしてこのような日本の領土である沖繩にSR71がおるということは政府も認めておるし、また返還協定の審議の際にも、外務大臣は、おります、これからも残ります、こう言っておるのでしょう。そしてベトナムに停戦協定ができて、パリ協定ができて、そういうことはしないようにしようという約束ができてからそういう偵察飛行が行なわれているというときに、日本沖繩基地から行ったのではないかという考え方を持たれることは、これは外務省として責任上当然だと思うし、そういうことがいろいろ報道されておるのに、向こうから何もないからわからぬというようなことでそんなごまかしの答弁をされても私は納得できませんですよ。そんなおかしなことないですよ。そんなことで外務省、つとまるのですか。それで外務省としての責任、果たせるのでしょうか。外務大臣、もう一ぺん答弁してください。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 答弁しないと申し上げているわけでは決してないのであります。あなたに御答弁申し上げるにつきましては、事実を確かめた上でいたしますと申し上げておるわけでございますから、御了解いただきたいと思います。
  70. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると、いままでそういうことについてはこちらから積極的に照会して、どうかとかいうことは全然なかった、こういうことでございますね。局長、いかがですか。
  71. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 米側はかねてSR71の飛行について国際法に違反するような飛行活動は一切行なっておりませんということをたびたび申してきております。しかし、ただいま御指摘ございまして、あらためて米側に当たってみたい、こういうふうに考えているわけであります。
  72. 堂森芳夫

    堂森委員 もうすぐ連休が始まりますから、金曜日は条約審議の委員会がございますね。この金曜日までに答弁をしてもらえますか。してもらわなけりゃ困るのですね。連休後になったら、十日ごろになっちゃうともうぼけてしまいますから、それまでに答弁してもらえますか。これも約束してもらいましょう。いかがでしょう。
  73. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 至急米側に調査を申し入れますが、その返事が明後日までにくるかどうかについて必ずしも自信がございませんので、必ず御答弁申し上げるとは、ちょっと遠慮させていただきます。
  74. 堂森芳夫

    堂森委員 どうもそういうような無責任な答弁で困るですね。それではとにかく私は金曜日に答弁してもらうように要求しておきますのでお願いします。  そこで、もう時間がよけいないからまた問題を移りますが、このごろ、日本外交は多極化の外交を展開するのだ、外務大臣が言っておるというわけではありませんが、そういうことばがよくいわれておると思うのです。多極化外交というのは、イデオロギーの違う国等とも、もちろん共産国との間にもできる限り外交を平和的な関係を結んでいくようにこれを推進していくというような意味が大いにある、こう思うのです。そういう意味で、東ドイツとの外交関係ももう近くこれが開始されるという話し合いもついた、こういわれております。それからまた、あなたの部下である三宅南東アジア第一課長をハノイにやって、広範ないろいろな問題について話し合いをさして、帰ってきて、そしてあなたの談話と称する記事も新聞に書かれておる。北ベトナムとの間の外交関係の開始、国交の樹立についてはさしたる問題はないのではないか、むずかしい問題はないのではないか、こういうふうにいわれておるのです。  そこで、今度はヨーロッパではほんとうに緊張緩和の状況がずっと進んできておるということがいえると思うのです。たとえば東西両ドイツの基本的な条約——もう国交回復といいますか、両独の基本条約が成立してきたとか、あるいはまた全ヨーロッパの安保準備会議というものが発足しつつあるということ、あるいは東西両陣営の相互の兵力の削減の交渉が始められるようになってきた。いろいろな意味で、ヨーロッパにおいては、たくさんの要素が緊張緩和の方向に向かっておるということが言えると思うのです。そうすると、外務大臣は、いや、それはヨーロッパはそうだが、アジアではどうも同じには、そうはいかぬのではないかということをどっかで言っておられたのを——この委員会であったかもしれませんが、必ずしもアジアではそうはいかぬのだというふうな意味のことをあなたは言われておったのを私、聞いたことがあるのですが、しかし、それはやはり日本外交としては、アジアにこそ、ヨーロッパがそうであるならばアジアにもそういう状況を持ってこようとする努力を大いにされなければ私はいかぬと思う。そうしておるだろうと思うのです。  ところが、一つの問題をとらえて、私は一体日本外務省というのはおかしいのではないかという点が一つあるのです。それは五月の七日から世界保健機関、WHOの年次総会がジュネーブで開かれるのです。そしてこのジュネーブのWHOの年次総会で北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国ですか、その新規加盟が議題になる。そしてこれがWHOのことしの一つの大きな問題になるそうだ、こういわれておるのですね。ところが私の得ておる情報によりますと、どうも日本政府はこのWHOという人道的な、そしてこれはあくまでも政治というものと無関係のような意味での、やはり人道上の大きな世界機関、この機関に北朝鮮が入ることに何か賛成しかねるような、じゃまをするような態度に出そうだといわれておりますが、その点について外務大臣、いかがでございますか。もし、まだそこまでおれは知らぬとおっしゃるのなら、担当局長でけっこうです。
  75. 大平正芳

    大平国務大臣 堂森さんも平和をこいねがい、大平も平和をこいねがっておるわけでございます。ヨーロッパには、御指摘のように安全保障会議の準備会議が開かれておる、東西兵力の均衡、削減交渉というようなものについて話し合いが始まっておるということでございまして、ヨーロッパはまあそこまでいっておるということでございますが、アジアにおきましては討議すべき安全保障機構なんというものはないわけでございます。みんなばらばらな状態なんでございまして、デタントの段階から申しますと、ヨーロッパは相当進んだ状態にあり、アジアはいかにも私はおくれておると思うのでございます。そういうことは私が申し上げるまでもなくだれでもそう感じておるだろうと思うのでございます。事をやる場合におきまして、堂森さんの場合は、たとえば北鮮の場合端的にすっぱり割り切ったらどうだ、四の五のしないほうがいいんじゃないかという御意見であることは、私も前々からよく承知しておりますし、本委員会におきましてもそういう御意見の人たちが相当おられることも、過去の論議を通じまして、私もよく承知いたしておるのであります。私の心配しておりますのは、事をなす場合に、そのこと自体と、それがほかに及ぼす影響というものをよく考えながら、そういうことが新たな緊張を生むようなことがあってはいけない、やはり薄い氷の上を踏む場合に非常に用心深くやらなければいかぬと私は考えておるわけでございまして、いま北鮮との取り組み方の問題でございますけれども、南北の話し合いが始まっておりまして、微妙なバランスの上に乗った話し合いがいま持たれておるわけでございますが、まだそう実体的な進展があるようには聞いていないわけでございますが、この対話が始まったということはそれ自体評価していいし、私ども、この平和を目ざしての自主的対話が始まったということはそれ自体けっこうなことであると思っておりますし、それが成功することを祈っておるわけでございます。非常にこれはそういう微妙な段階にございますだけに、朝鮮半島に対する政策の段取りというものにつきましては、われわれとしては非常に用心深くあらねばならぬとだけ考えておるわけでございます。  いまWHOの問題でございますが、WHOそれ自体から申しますと、できるだけ加盟国が広くなりまして、活動が広範囲になり、かつ充実してまいることを私どもは願っておるわけでございまして、そのこと自体けっこうなことだと思うのでございますが、そういうことが、この秋の国連問題との関連におきまして、どういうインパクトを持つであろうかというような点を頭に置きながら、どういう態度で臨めばいいかというような点に実は非常に苦吟をいたしておるのがいまの状況なんでございます、正直に申しまして。私どもといたしまして、この問題を軽視しておるとか、あるいは忌避しておるとかいうようなことでは決してないのでありまして、いまの状況日本が取り組んでいくに一番適切な姿はどういう姿かというようなことをいま探求いたしておるわけでございますので、そういう手順の踏み方ですね、そういうことについて、私はあなたの御理解が得られればと思うわけです。
  76. 堂森芳夫

    堂森委員 どうも大平外務大臣答弁がよくわからぬのですが、何か苦悩しておるというお話はわかりましたけれども、あなたせんだっての中国の国連復帰のときの日本外務省のやったあの醜態を知っておられましょうが。やはり外交というものは先を見通すということが大事ですよ。しかも、WHOに北鮮が復帰するということは、それ自体何も政治的なトラブルもないはずです。影響するところが大きいというので、韓国は北鮮のWHOの新規加盟を阻止しようと必死になっておる、また日本外務省がそれに乗って、そしてまた、これはおそらく北朝鮮支持派が多くなっておるのじゃないか、そうじゃないでしょうか。そしてヨーロッパでは東ドイツ、西ドイツあわせて両方とも日本が国交を結んでいくというような、あるいは世界じゅうのいろいろな国がそういう状況になってきておるという時期に、賢明なる大平外務大臣は、中国の国連加盟のときのようなあんな醜態にならずに——醜態だけじゃなしに、私は、それは時代に逆行するところのやり方であって、非常な問題点があると思います。  あなたがいま苦悩しておるとおっしゃるのは、おそらく私が聞いておるような意味でたな上げ論に傾いておるという証拠ではないかと思いますが、そんなことがないように、私はひとつ厳重に警告をしておきたいと思うのです。時間がもうありません。もう一、二問聞かなければならぬから、あなたに、そういう苦悶なんかせずにはっきり割り切っていくように警告しておきます。  それで次に、これも新聞で報道されておったことでありますが、南ベトナムにいままでベトナム戦争中にアメリカ軍が枯れ葉剤をうんとばらまいておるのです。枯れ葉剤というのは葉っぱを枯れさす薬ですね。そしてこの枯れ葉剤は非常な汚染を全ベトナムの海域に及ぼしておるということがいわれておるのです。特にエビとかカニとか魚類には大きな影響があるといわれておるのですね。これはベトナムの世界的に有名な、名前は忘れましたが、何か偉い学者がおるのです。その人が厳重警告を発しておるのです。ベトナム近海の魚類、エビとかカニもまぜて、そういうものは非常に汚染をされておるだろう、こう言っておる。きょう水産庁の方来ておりますね。厚生省も来ておりますね。ところが、そういう地域について、去年でしたか、日本の船を向こうに持っていって、そして非常に完備した近代的な船で漁をして、大量にこの漁獲物を冷凍して日本に持ってくる。ところが、この船を日本から売って、向こうで合弁会社をつくるとか、あるいは向こうの企業が船を買って、日本にエビ等を持ってくるというようなことがいわれておったのですが、この問題に関連して、去年そういう話があったのがどうなっておるのか、これは御承知だと思います。まずこれから聞いておきたいと思うのです。
  77. 恩田幸雄

    ○恩田説明員 ただいまお話のありましたエビのトロール漁業につきまして、わが国の水産会社が現地と合弁事業をいたしております。四十六年十一月から操業を開始いたしておりまして、四十七年十一月までの一年間の総漁獲が百三十三トンでございます。漁船は日本で建造いたしまして、百三十五トンの船を二隻持っていっております。
  78. 堂森芳夫

    堂森委員 一年にどれくらいの何が輸入されておるのですか。内訳がわかったら知らせてください。何と何がどれくらいずっと。
  79. 平井清士

    ○平井説明員 お答え申し上げます。  現在ベトナムのほうから入っておりますものは、一番大きいものがエビでございまして、四十七年度実績といたしましては千二百四十・九トンでございます。それから、そのほかのものが若干ございますけれども、いずれも一トンないしは一トン以下のものでございまして、文字どおりエビが主体というかっこうでございます。
  80. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、千二百トンのエビが一年間に入っている、こういうことですね。日本のエビは、てんぷらのほとんどはここから来るんじゃないですか。そうでもないですか。千二百トンというのはどれくらいになるのですか。
  81. 平井清士

    ○平井説明員 お答えいたします。  現在わが国のエビの輸入の総数量は、四十七年について申し上げますと、八万八千百二十トンでございます。したがいまして、ただいま申し上げました千二百四十・九トンという数字は、全体として輸入の中に占める割合は一・四%でございます。なおそのほかにわが国の国内で、これは四十七年の統計がございませんけれども、四十六年で五万一千四百五十七トンという数字が、輸入とはほかにこのくらいございます。そういうことでございます。
  82. 堂森芳夫

    堂森委員 その輸入のエビの八万トンですか、どこから来ておるのですか。ちょっと関連して聞いておきます。
  83. 平井清士

    ○平井説明員 お答え申し上げます。  四十七年の実績で申し上げますと、インドネシアから一万三千八百二十四トン、それからインドから一万二千八百十二トン、タイ国から七千五百七トンというようなところで、そのほか五千トン台のものといたしましては、メキシコが五千四百トンで、あとは五千トン以下のところでございます。
  84. 堂森芳夫

    堂森委員 それではあれですか、ベトナムの近海におけるエビは千トンくらいで、輸入量から見れば、一・四%というのですから、多くないかもしれませんが、非常に毒性の強いものだ、汚染される薬剤が。そういわれておるのですが、これらに対してどういう検査を行なっておるのか、何もしてないのか、その点について、これはどっちですか。厚生省ですか。御答弁願いたいと思います。
  85. 小島康平

    ○小島説明員 先生御指摘のように、ダイオキシンと申しますのは非常に毒性の強いものでございまして、これは、ベトナムにおいて使われました農薬の中に不純物として含まれているものでございます。先生がいまおっしゃられましたように、先般新聞紙上でこれが報道されまして、そのもとになりましたのは、ハーバード大学の教授の報告でございますが、これについては、厚生省といたしまして、現在その詳細を入手すべく連絡中でございます。それから、こういったものがもし私どもの食品の中へ入ってまいりますと、健康上私どもとしても非常に不安でございますので、この報道に接しました以後でございますが、直ちに私どもとしては、ベトナムから輸入されます水産物につきまして、これは主としてエビでございますが、すべてこのダイオキシンに汚染されているかどうかという調査を行なって輸入したいということで、現在これに該当するものが横浜港で三件ございますので、これをとめまして、私どものほうで検査をした上で、その結果によって、もし入っていないというようなことが確認されれば輸入する、入っているということが確認されれば、当然これは廃棄処分等の措置をとるということで、現在とめているような状況でございます。
  86. 堂森芳夫

    堂森委員 それはもうどんどん入ってきているのですから、これからやる、こういうことでいいのですかね。いかがですか、水産庁も厚生省も、外から来るそういうエビ類——エビだけ見ても膨大な数量が輸入されておりますが、そういう調査はしておるのですか、全然やってないのですか。ベトナムもやってないですね。よそのもやってないのでございますか、その点承っておきたいと思うのです。
  87. 小島康平

    ○小島説明員 現在外国から輸入いたします食品につきましては、主要な輸入港に私どもの食品衛生監視員がおりまして、これらの食品のうち、必要と認められるものにつきましては検査を行なっておるわけでございます。しかしながら、このベトナムからのエビにつきましては、私どももベトナムの海の中から収穫されたものにそういうものが入っておるということは、実はこの報道に接するまで存じておりませんでしたので、正直なところ、この報道に接して直ちに措置をとるということになったわけでございまして、それ以前のものについては残念ながらダイオキシンについては検査をしておりません。しかしながら、エビでございましても、冷凍エビの場合にはその他いろいろ腐敗とか、いろいろな問題かございますので、従来もそういう点については十分に注意をいたしまして、検査等も行ないまして輸入を認めているといったような状況でございます。
  88. 堂森芳夫

    堂森委員 そうするとあれですか、エビだけではないですが、エビの場合も冷凍されたものを持ってくる、これを陸揚げするときは、一応全部検査はしておるのですか。腐敗しないかしているかというようなことをやっているのですか。いまやっているようなお話でしたが、もう一回答弁願いたい。
  89. 小島康平

    ○小島説明員 わが国に輸入されます食品の量は非常に膨大でございますので、港において完全に全品の検査というわけにはまいりませんが、私どものほうでは、経験で、この地区のエビについては細菌の数が非常に多いとか、あるいはこれはどうも荷口からいって腐敗の心配があるのじゃないか、こういうような点から判断いたしまして、港におります検査官がこれを検査いたします。必要な試験が非常にむずかしい場合には抜き取りをいたしまして、国立衛生試験所において試験をするというようなことをいたしまして、悪いものは積み戻し、廃棄、いいものだけを輸入する、こういうことをやっているわけでございます。私どもの食品衛生監視員のおります事務所の承認がなければ、食品というものは輸入できないという形に食品衛生上なっておる次第でございます。
  90. 堂森芳夫

    堂森委員 もう一ぺん要求しておきますが、ダイオキシンの検査はいつやるのですか。その結果はいつわかるのですか。わかり次第この委員会答弁願えるようにしたいと思うのです。
  91. 小島康平

    ○小島説明員 先ほど御説明いたしましたように、ベトナムからのエビにつきましては、私どもとしては現在すべてとめて検査をしております。現在とまっておりますのが横浜で約二十四トンございます。私どもとしては、この結果が得られるまでは、この品物はとめておきます。もし結果が白と出れば輸入できるわけでございますが、この結果につきましては、実はダイオキシンは非常に微量でございますので、検査法等の面で慎重に対処しなければなりませんので、いつごろできるかという点については私もちょっと自信がありませんが、少なくともそれがはっきりしなければ輸入等の措置を認めないということでございまして、結果が判明次第、これはいかがいたしましょうか、堂森先生のほうへ資料でもお届けするようなことでよろしゅうございますですか。
  92. 堂森芳夫

    堂森委員 委員長のところにお出しください。
  93. 小島康平

    ○小島説明員 さようでございますか。それではそういうことにさせていただきます。
  94. 堂森芳夫

    堂森委員 私、しろうとでよくわからぬのですが、このダイオキシンというのは非常に微量だそうですが、わりあいに検査方法は非常に的確な、正確に定量できるような方法が、ハーバード大学で何か発見といいますか、見出されてやっている、こういう話ですが、その点御承知ですか。
  95. 小島康平

    ○小島説明員 この定量法は、技術的に申しますと、現在よく使われておりますガスクロマトグラフィー等で比較的簡単に定量できると思うのでございますが、実はエビの中のダイオキシンというものの検査は、私どもとしてはまだ経験がございませんので、やはり種々の基礎データを積み重ねた上で慎重に結果を出してまいりたい、そういうふうに考えています。
  96. 堂森芳夫

    堂森委員 それじゃ、そのようにひとつお願いをしたいと思います。  もう時間がありませんので、終わらなければなりませんが、最後に外務大臣にお尋ねしておきたいのです。もう一点だけです。  総理がソ連を、七月ですか、何かわりあいに早い時期に訪問される、こういうことがきまったと新聞には報道されていますね。そして、総理が最近記者会見で、政治家の、まあ総理の外国訪問というものは、おみやげがあるという予想で旅行をする、他国を訪問するというような考えにとられてもらっては困るんだ、何かそんなことを新聞で言っているようですね。みやげは何もないで行くんだというようなことならあれですが、こういう意味の新聞報道、これは談話ですが、そこで、ソ連を訪問するということは、やはり国民としては長い間の懸案である講和条約というものがどうなるんだろうか、講和条約が話し合いになるとすれば、領土問題はどうなるんだろうかという気持ちが国民に当然起きてくることは、これはもう否定し得ないところでありますが、外務大臣がこれはもう総理の訪問は補佐しておられるのでありますが、主たる目的というもの、そしてどういう腹づもりでソ連を訪問されるのであるか、外務大臣御承知だと思うのでありますが、時間もありませんから簡単でようございます、答弁を願いたい、こう思います。
  97. 大平正芳

    大平国務大臣 前々から申し上げておりますとおり、いまの時代は、外交的には首脳外交と申しますか、最高首脳の接触を通じて展開されて成果を上げるという時代でございまして、私といたしましては、田中総理にできるだけ多くの国をおたずねいただいて、最高首脳との間に相知っていただく、理解を深めていただくことが必要だと考えて、そのように進言をいたしておったわけでございます。ソ連ばかりでなく、その他の国々にも行っていただくべくお願いをいたしておるわけでございまして、ソ連につきましては、先般、指示がありまして、日程について先方の都合を伺うようにということでございまして、目下先方の政府の御都合を伺っておる段階でございまして、まだ最終的にきまったわけではございません。問題は、平和条約の問題、これは当然、日本といたしましては、領土問題を回避して通れない課題でございます。そういったことが話題になることは当然でございまして、それをよけて通るというようなことは毛頭考えておりません。
  98. 藤井勝志

    藤井委員長 西銘順治君。
  99. 西銘順治

    西銘委員 去る十日、ニクソン大統領が米議会に対しまして、一九七三年通商改革法案を提出しております。この内容は、大別いたしまして三つの内容になると思うのでありますが、わが国にとりましては、通商改革法案は言うなれば、硬軟両刃の剣であり、明暗二つの顔を持っておりまして、きわめて複雑な性格のものになっておるのであります。  明るい面で申し上げますというと、今秋予定されておる次期国際ラウンドに備えまして関税を引き下げる、また非関税障壁を除去する、緩和するということで、フェアな自由な世界貿易をはかるための授権立法となっておるのであります。特に関税の引き下げにつきましては、六二年の拡大通商法が五〇%の引き下げ権限を要求しておったのに対しまして、これは向こう五カ年間のうちにゼロにするための権限を盛り込んでおりまして、その点一歩進んだきわめて明るい面であり、わが国にとりましても歓迎すべき条項だと思うのであります。  反面、ひるがえって、貿易規制の権限について申し上げますというと、これは通商拡大法と比較いたしまして、保護貿易にたいへん傾斜しておりまして、わが国にとりましては、きわめて警戒すべき内容のものとなっておるのであります。結論として言えることは、この法案のねらいは、アメリカの国際収支、貿易収支の不均衡を是正し、ドルの信認回復をはかるという点が大きなねらいでございまするけれども、ここで私たちは見のがしてならないことは、従来の世界自由貿易経済の繁栄をささえてまいりましたいわゆるガット、IMF体制に挑戦する強い修正をもって臨んでおるということであります。こういう内容を踏まえまして、次の点についてお聞きしたいのであります。  この法案が米国議会において審議されるのでございますが、その過程におきましてアメリカは海外諸国の意見や反響に虚心に耳を傾けるようにあらゆる機会に働きかけを強化していかなければならないと思うのであります。特に規制権限を恣意的に発動しないように、これはもう授権立法でございますので、発動するしないはこれは大統領の権限でございますが、かってにアメリカがこれを発動しないように、少なくとも国際的に承認されました規則や手続、これを米国が無視しないように今後強く働きかける必要があるのではないか、こう思うのであります。  次に、この法案が本格化することはここ数カ月でございますが、日米関係にとりましても非常に大切なこの数カ月だろうと思うのであります。わが国といたしましても資本の自由化、電算機などの輸入自由化に一段と努力を払って通商交渉の足場を固めると同時に、米国のこの保護主義に傾斜した傾向、これを是正するために保護主義を誘発しないように手を打つべきと思うのでありますが、これについての大臣の御所見を賜わりたいのであります。
  100. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカの新通商法案に対するわが国の対処につきましての御質疑でございます。この新通商法案は、御指摘のように基本的には次期国際ラウンドに対処しての交渉権限を大統領に求めようとするものでございます。その際われわれを勇気づける規定ももちろんございますけれども、半面また貿易制限措置も御指摘のように盛られておりますが、これは授権を求める場合におきまして生ずるおそれのあるもろもろの困難に対処して、あらかじめそういう予防措置をとっておこうというものであると思います。しかし、いずれにしてもこれはあくまでも授権でございまして、直ちに発動に結びつくものでないことは御承知のとおりでございます。  私どもといたしましてはアメリカが最大の経済国といたしまして、またガットの父として自由な無差別な貿易の拡大ということにつきまして正しいトラックを踏みはずすことのないように確信しますし、また期待いたしたいと考えております。日本といたしましては西銘さん御指摘のとおり、いま大事な時期でございまして、対米交渉を通じまして、世界貿易がより無差別になるように、より自由になるような趣旨でこの立法が行なわれ、そしてこれが実行されるように対米交渉を精力的にいたさなければならぬという御趣旨でございますが、私どもそのとおりいま精力的にやっておるわけでございまして、今後もこれを続けてまいりたいと考えております。  しかしアメリカにこれを求めるばかりでなく、やはり日本自体のためにも、また世界貿易の自由な拡大のためにも日本が正すべき姿勢は正さなければいかぬと思うわけでございまして、数次にわたりまして輸入の自由化もやったし、資本の自由化も進めてまいったわけでございまするけれども、まだアメリカはじめ各国から日本姿勢についてとかくの批判をいただいておるわけでございまして、これにつきましてわれわれも世界貿易の拡大という見地から、また日本の国益を守る上から申しましても、さらに勇気をもって自由化への措置を進めてまいらなければならぬと考えております。そしてそのことは遠からず閣議におきましても資本の自由化等を中心にいたしまして積極的な措置がとられることを私も期待いたしております。
  101. 西銘順治

    西銘委員 去る十六日大蔵省の発表によりますると、円フロートの影響と今後のわが国対米輸出を規制しようということで、輸出鈍化、輸入増加の傾向が出てきておるのであります。四十七年度の対米貿易収支じりは二十七億五千六百万ドルの黒字にとどまって、対米出超三十億ドル突破は避けられそうであります。このようにわが国といたしましてはアメリカの窮状に深い理解と協力を示しておるのでありますが、私はこの法案の内容からして、また従来の過去の貿易実績からいたしまして、アメリカは通貨だけでなく通商をからめまして対日攻勢を進めてくることになりはしないかと、かように推察しておるのであります。  なぜそういうことを申し上げますかというと、七二年のアメリカの貿易収支は六十三億ドルという巨額の赤字になっておりますが、これを主要貿易相手国別に振り分けてみますというと、赤字の原因が日本、カナダ、ECの地域に集中されておるのであります。このように見てきますというと、アメリカといたしましては対日、対カナダ、対EC、この貿易の赤字解消がそのまま貿易収支の均衡につながりますので、アメリカが必ずやこれらの三地域の貿易交渉にきびしい態度に出ることは当然だろう。こういうことで私はアメリカの対日態度というものをそう楽観はいたしていないのであります。そこで、大臣といたしましては、今後におけるアメリカの対日態度というものをどういうふうに観察されておられるのか、お聞きしたいのであります。
  102. 大平正芳

    大平国務大臣 去年夏のハワイ首脳会談におきましてアメリカ側から対日貿易収支の逆調問題が取り上げられまして、できるだけ早い機会にバランスの回復ということについて要請があったのであります。わがほうといたしましては、国内の経済を生産第一主義から福祉第一主義に基調を変えてまいって、輸入をふやすということ。したがって、輸出圧力を減殺させるというような方向で国内政策を進めておる。また自由化措置もとっておる。また国会には関税の引き下げ措置もお願いしておる。一連の措置を講じておるわけであるけれども、ことしじゅうに幾ら、来年じゅうに幾らというように減らしてまいるというようなことを計量的に約束するわけにまいらない。やはりこれは相当の時間がかかるわけでございます。と同時に、対米貿易の均衡ばかりではなくて、やはり均衡の回復はマルチラテラルなペースで見なければならぬと思う。ここ両三年の間にGNPの一%ぐらいのところに黒字幅を持っていくようなことを心組みといたしまして、鋭意内外の経済政策を調整中であるのだというような御返事をいたしたわけでございます。  その後、貿易収支の黒字幅は依然として大幅な黒字に終始しておりましたわけでございますけれども、最近になりまして、御指摘のようにややそれは縮小の傾向をとってまいっておるようでございます。われわれの予想した方向に収支じりが推移いたしておるわけでございまして、そのこと自体は日米経済関係の緊張をほぐしていくことに役立っておると私は思うのであります。しかし、自由化等一連の措置につきまして、アメリカの要請が決して弱まってまいったとは見ていないわけでございます。  しかし、この問題はひとり対米関係ばかりではなくて、日本経済政策全体の問題として、日本自身が自主的に考えてまいらなければならぬ問題でもございまして、われわれといたしましては、そういう方向に自由化の施策を進めてまいっておるわけでございますので、鋭意努力してまいって、事態の改善と相まちまして、日本に対するアメリカの理解というものは、私は漸次進んできておるのではないかと見ておるわけでございます。また今後の推移を予想するわけにまいりませんけれども、全体の趨勢といたしましては、収支がだんだん好転の方向に向いてまいることを私は期待いたしております。
  103. 西銘順治

    西銘委員 大臣は、去る十四日ですか、世界貿易センタークラブの昼食会の講演で、次のようなことを言っておられるのであります。世界経済をより自由で拡大する方向に導くために、わが国は、米国、ECとの協調のもとで、暫定的なドルの価値を取り戻すことに最大の努力を払うことを明らかにされておられるのであります。これは昨年九月のIMF総会におきまして、シュルツ財務長官が国際通貨制度改革に対するアメリカ側のきびしい態度を発表しておられるのでございますが、その姿勢をそのまま大臣としてはこれを受け入れられるということであるのかどうか、お聞きしたいのであります。
  104. 大平正芳

    大平国務大臣 戦後長い間、よかれあしかれドルという基軸通貨の価値が安定しておりまして、世界の経済がその上で飛躍的な拡大をかちえることができたことは幸いであったと思うのでありますが、しかしここ数年来ドル価値について不安の芽が出てまいりまして、ついにドルがゴールドオフしてしまうという事態になって、世界経済は一つの泥棒の道に入らざるを得なかったわけでございます。しかもそのドルに一番深くコミットしたのが日本の経済でございますので、日本といたしましても、ドルの価値の安定を取り戻していただかなければならぬと思います。しかし、既往のドルの債務、これから先ドルが、国際収支の推移というものに対して確たる保障がないわけでございますから、ドルが昔の光栄を完全に手にすることができるかどうかという点につきましては、そういう基盤がまだできていませんから、私がいま申し上げましたのは、暫定的な安定を積み重ねながらいかなければならない、それに対して日本としても応分の協力を惜しむべきでないという趣旨のことを述べたわけでございまして、これはシュルツさんがどうおっしゃったか、私よく存じませんけれども、日本の経済を考える場合におきまして、どなたが考えましてもそういうことが常識的な道行きではなかろうかと私は感じております。
  105. 西銘順治

    西銘委員 最後にお尋ねしたいのですが、国際通貨の問題にいたしましても、ドルの交換性がまだ回復されておりません。またスミソニアンにおける会議の取りきめ等につきましても、あれはまあ、体制というほどのものではなくて、あくまでも暫定的な協議であり、むしろ日本、ECが押し切られたようなかっこうになっているわけであります。したがって、従来の自由主義世界経済を支えてまいりましたガット体制、IMF体制というものがもうくずれかかっている。これは発展途上国からの圧力、また先進諸国にいたしましても、自国の利害や事情からいたしまして、あえて輸入制限をする。ガットに最もまっ向から対決するところの輸入制限あるいは十九条のセーフガード条項によって、外国からの製品に輸入制限をきびしくやろうとしているようなことになっているわけであります。したがって、もうこれまでのようないわゆるガット、IMF体制という形では、世界経済の新しい秩序というものは保てないのじゃないか。南からの圧力あるいはECのブロック化、ECの誕生というようなことで、ガット体制に吹くあらしというのですか、これは非常にすさまじいものがあって、そこに何か一つの新しい世界経済の秩序を求めていかなければならない、これが今度の七三年通商改革法に盛られたニクソンの一つ方向でもあろうと思う。これはアメリカドルの信認を回復して、さらに自分らが主導権をとって、新しい国際社会秩序をつくろうじゃないか、こういう考え方に立っておると思うのでありますが、これからの社会経済体制についてどういうあり方でなければならないかということだけをお聞きしたいのであります。
  106. 大平正芳

    大平国務大臣 人間というものは、どちらかというと自由化への方向へ向くのは非常にむずかしいので、保護主義的な傾向に堕して傾斜することは比較的やさしい。ほんとうは自由な体制というのが非常にきびしいので、計画体制に移るということは実はある意味において非常にイージーゴーイングな行き方なんであります。したがって、いつも、より自由なより無差別な世界の経済交流を進めてまいらなければならぬということを鼓を鳴らして鼓吹しておることが、世界経済の後退を防ぐ道になるのじゃないかと思うのです。私どももそんなに楽天的ではないのです。自由化の方向を進めるといっても、それがそんなにやさしくできるとは思っておりませんけれども、世界全体がこの道標を失うようなことになるとまっ暗になってしまうと思うのでありまして、しがたってまずその道標を、より自由な、より無差別な経済の交流を促進しようじゃないかという共通の道標を失わぬようにしなければならぬと思うのでございます。  それから第二は、それはあくまでも各国の自重に待たなければならない。とりわけアメリカ日本もECも、大きな経済力を擁した国が十分節度を持ってやってまいらなければいかぬわけでございますので、この三大経済圏の責任は非常に大きいと思うのでございます。と同時に、この三大経済圏をケルンにした国際協力というものを非常に精力的に進めてまいる必要があると思うのでございまして、この国際協力を進めるにあたりまして、あなたの言われる経済を育成していく措置を政府が講じなければならぬ面が当然出てくるわけであろうと思うのでありまして、自由と計画との非常に緊張したバランスというような点をわれわれは追求していかなければならぬと思うのでありまして、一方の極に片寄ってしまうことは実際上できないし、それではほんとうの意味の効率的な世界経済に役立たないのじゃないか、そういう感じがいたすのであります。  しからば、どういうブループリントが考えられるかというと、これは私など能力が足らぬで、よくその点の見定めがつかぬのでありますけれども、これこそまた国際協力を通じまして皆さんの真剣な討議と実践の間で、われわれがそのデッサンをかいていかなければならぬのじゃないかというように私は考えております。
  107. 藤井勝志

    藤井委員長 金子満広君。
  108. 金子満広

    ○金子(満)委員 私は、まず最初に国連世界保健機構いわゆるWHOの問題について、朝鮮民主主義人民共和国の加盟の問題について質問したいと思います。  もうこれで三回の委員会を経てきているわけですが、返ってくることばはいつも慎重に検討するということばでした。もう慎重も、相当時間がたちましたし、回も重ねましたし、あと十二日たちますと総会になりますから、政府としても態度をきめなければならぬ。まだ慎重検討中であるのかどうなのか、その点を最初に大臣から伺っておきたいと思います。
  109. 大平正芳

    大平国務大臣 まだ検討中であります。
  110. 金子満広

    ○金子(満)委員 私は、国会の答弁に慎重ということばがなくなったら、相当審議が進むんじゃないかと思うんですが、とにかく一寸延ばし五分延ばしということで、国民にも国会にもわからないところで事態が進行している、そしてわれわれが知るのは結果だけである、よくとも悪くとも結果だけである。外交政府の専権事項だということで、こういうことになっているかどうか私は存じませんけれども、とにもかくにもあと十二日という中で、報道されているところによりますと、一年間審議延長説というようなものが出ておりますが、一年間審議を延長するということを外務省のどこかでおきめになったことがあるのですか、どうですか。
  111. 影井梅夫

    ○影井政府委員 本件に関しまする問題点、いろいろ洗っておりますけれども、ただいま御指摘のような方針を決定したということはございません。
  112. 金子満広

    ○金子(満)委員 それからこの問題について、いわゆる韓国とこちらから話し合ったか、向こうから来たかは別として、接触があったことは報道されておりますが、韓国以外の国とこの問題について接触または交渉した経過はございますか。
  113. 影井梅夫

    ○影井政府委員 このような多数国間の問題につきまして、日ごろ密接な関係のある国との間に接触、あるいはそれぞれが持っております情報の交換ということは行なわれております。本件もその例外ではございません。
  114. 金子満広

    ○金子(満)委員 それからこれは大臣でも国連局長でもけっこうですが、朝鮮民主主義人民共和国の加盟が実現する公算が大であるということがかなり報道されておりますが、その見通しなどについてもいまの答弁で多数国間云々でありますから、相当接触があるようにも考える。その見通しは現在どのようになっておりますか。
  115. 影井梅夫

    ○影井政府委員 何ともわからないというのが現状でございます。
  116. 金子満広

    ○金子(満)委員 やはり外交は、独立国として自主的に判断してやるべきが当然のことだと思うんです。みずからの態度をきめないで、左を見たり右を見たり、こういう形ではほんとうの自主的な外交にならぬ、これはもうはっきりしていることだと思うんです。大臣も先ほどの堂森委員質問に答えて、苦悩とか苦慮とかいうことばがありましたけれども、その内容はどうか存じませんが、前回十三日の委員会で国連局長はこういうことを言っているんですね。「このWHOの事業が全世界的に行なわれるのが望ましいということは言えるかと思います。」とにかくその限りでは望ましいんだ、あとがよくないんです。「しかし」——というのがつくと、大体これ否定してくるのでありますが、「しかしながら、問題は、」そこにとどまらない、「朝鮮半島のこの分裂国家の片方が国際機関の中に加盟国としての何らかの地位を占めるということは、国際政治上におきまして、北鮮にとりまして非常に有利と申しますか、優位な地位を占めることになる。」これは非常に私は重大だと思うんです。つまり朝鮮民主主義人民共和国がこのWHOに加盟をすることになると、それだけにとどまらなくて、この共和国の国際的な地位が上がる、優位になるから非常にまずいんだ。そして「国際政治上に非常に大きな影響を与えることになる。」ので「慎重に検討したい」。これは慎重という名前を使っているけれども腹は賛成できない、しかし賛成できないということを公の場で言うことができない、それが苦慮だ、こういうように私は日本語を使っているのだと思う。しかももっと突き詰めていえば、この国連局長の発言というのは非常に大きな意味を持っている。これは朝鮮民主主義人民共和国に対する敵視の政策、敵視した考え方だといわざるを得ないと思うのです。そういう結果があらわれてきておる。ですからこれは公式なものとして出ているわけです。仮想敵国を持たないとかあるいは大臣が先ほどの答弁の中で、これは堂森さんについてでありますが、尊敬と信頼をかちとることが外交としてはまず大事だ——大臣、どうですか。私は、この国連局長の十三日の発言というのは、ほんとうに国際的に尊敬と信頼をかちうるものになるかどうか、この点について大臣考えをお聞きしたいと思うのです。
  117. 大平正芳

    大平国務大臣 影井君の発言は私はこのように聞いたわけでございます。かねがね私も申し上げており、金子さんも御承知のとおり、南北朝鮮は統一を目ざしての対話が始まっておる、ようやく同じテーブルに着くような状況ができたわけでございまして、この対話をささえておる条件といたしましては、南北の間に微妙なバランスというようなものがあるのではなかろうかと考えられるのでありまして、このバランスという問題、その状況において対話が持たれて、それが進展していくということは、朝鮮問題を考える場合に非常に重要だと私ども考えておるわけでございまして、このバランスをくずすようになることには警戒的でなければならないのではないかというニュアンスを表明したような印象を私は受けたわけでございます。したがってこれは何も北朝鮮を敵視するとかいう趣旨のものでは決してないのでありまして、朝鮮問題をいまの時点で処理をしようとする場合、対処しようとする場合に、そういう呼吸でやらなければならないのではないかという意味のニュアンスを述べたように、私は、問われればそういう印象を受けました。
  118. 金子満広

    ○金子(満)委員 大平さん特有の表現でありますけれども、たとえば微妙なバランスがある、これをくずしたくない、じゃ微妙なといわれるくらい微妙なバランスなら、国連局長の、先ほど読み上げた、これは速記録でありますから正確なんです。これはもう公になっておる。これは非常に不都合なことばだと思うのですね。つまり国際政治において、北鮮にとりまして、入れば非常に有利と申しますか、優位な地位を占めることになるからということは微妙なバランスをくずさないというのじゃなくて、その微妙であっても何であっても、このバランスがえらいことになる。むしろその点について緊張を強めている発言、このように私は言わざるを得ないと思うのです。  そういうことで、時間がたくさんありませんから、苦慮されているということであり、まだ慎重に検討中だということですけれども、もうこれはシャッターがおりる時間に来ているわけですから、いつおきめになりますか、これが一つと、もう一つは、委員会で何回もこの問題は出ているわけですから、WHOの総会に臨む前に政府として、外務省としてこういう方針で臨むということを、この委員会または質問者に対して答えることができるか、またそういう方法をとられるかどうか、その点について伺いたいと思うのです。
  119. 影井梅夫

    ○影井政府委員 いつごろまでにこの方針を確定できるか、それから確定した方針をこの委員会で申し上げることができるか、このような非常に微妙な問題につきましては、それぞれの国の自主的な判断というものを下されるのが大体ぎりぎりになることが多い、これは日本だけではございません。日本の場合につきましても非常に重要な問題でございますので、その点はひとつ御了解願いたいと思います。したがいまして、何月何日までにということをお約束するということは、差し控えさせていただきたいと考えております。  なお、方針が確定されまして、それを委員会に報告申し上げる時期、これは総会におきまして、本件がいつ表決に付されるかということ、またそれをこの委員会の場で申し上げるということが、国際的に影響を与えることがあるかもしれないということも考慮されますので、これもいまここでお約束申し上げるということは差し控えさせていただきたいと思います。
  120. 金子満広

    ○金子(満)委員 日本外務省は、かつて中華人民共和国が国連で正当な地位を回復するときどういう態度をとったかということは、日本国民ならずとも全世界が知っています。あのときの日本政府外務省の分析なり見通し、それがどういう結果をもたらしたかということについても、いま知らない人はないのです。  私は、この朝鮮民主主義人民共和国がジュネーブにおいて五月七日以降加盟するというような情勢の中で、一年審議を延期するというようなこそくな手段で一寸延ばしをやっているような、そういう外交姿勢だったら、ほんとうのアジア外交はできない。社会体制の相違のいかんを問わず、平和五原則に基づいて外交関係を持つ、そうしてそれこそ大臣がよく言われるように、尊敬と信頼をかちうるということなら、当然この朝鮮民主主義人民共和国のWHOに対する加盟申請には賛成し、支持すべきであるということを最後に私は要求をします。そして次の質問に移らしていただきます。  安保運用協議会の問題です。一昨日、二十三日に安保運用協議会が開かれた。そして若干の報道がされています。この安保運用協議会の性格については、四月四日の外務委員会で共産党の東中委員質問をされておりますが、その中で大臣は、それは私がつくった、つまり私のほうから提案したのだ、その内容は基地の整理縮小のためである、こういうように答弁をされています。また大河原政府委員はこのことについて次のように述べています。「運用協議会におきましては施設、区域の整理統合のみを話し合うということではございませんので、先ほども御答弁申し上げましたけれども、たとえば安保条約第四条の随時協議を行なう有力な一つの場だというふうにも観念いたしておりますし、安保条約並びにそれに関連いたしまするもろもろの取りきめの運用をはかってまいりますにおきまして、日米双方において平生から十分な意思の疎通と相互の理解を固めておくということが望ましいというのが、この運用協議会設置のもともとの発想でございます。」こういうふうに言っておられる。大臣は基地の整理縮小のため、これが中心だというように答えておるわけですが、大河原さんのほうはそれをぐっと広げて、これでいきますと安保に関しては何をやっても協議ができるんだということになるのですが、これは安保運用協議会というものを一そう強化して、このことによって日米安保協議委員会、この機能を政治的にも組織的にも強めていく、こういうことになると思いますが、この点はいかがですか。
  121. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 一昨日開かれました安保運用協議会の性格につきましては、一月十九日に大平外務大臣とインガソル大使との間でこの協議会の設置について意見の一致を見た際に発表がございましたので、それを申し上げますと一番正確かと存じます。その際の発表によりますと、「一月十九日の会談において日米安保条約およびその関連取決めの円滑、かつ、効果的な運用について、日米両国政府間で一層密接な協議と調整を進めることが有益であるとの見地から、日米両政府外交、防衛当局者から構成される安保条約運用協議会という新らしい協議の場を設けて、随時必要に応じて会合させ、前述の目的の達成に資するようにすることとした。」これが一月十九日の発表でございまして、安保運用協議会がいかなる目的を持っていかなる性格のもとに運営されるか、開催されるかということにつきましてはここの発表で明確にされているわけでございます。
  122. 金子満広

    ○金子(満)委員 一月十九日の発表はいま紹介されたとおりだと思うのです。   〔委員長退席、西銘委員長代理着席〕  円滑かつ効果的な運用、そのためにできた。御承知のように安保に関係しては幾つもの委員会とか会合とか協議とかが一ぱいあるわけです。それではもう事足りない、つまり円滑かつ効果的な運用をやるためには違うものをつくらなければならない、こういう点で外務大臣が出席して日米双方で協議になった、それがいまの紹介された文章である、こういうことにいま言われたわけです。  そこでもう一つあるのは、三月二十八日にリチャードソン国防長官がアメリカの国防報告を行ないました。その国防報告の中には次のようなところがあります。「私は同盟国との協議、対話を期待し、総合戦力概念を自由世界同盟国の各国から出来るだけ強力な防衛寄与を得られるような形で実施したい。」こういうように報告をしておるし、アメリカ側もいままでと違って新しい観点でいまのアジア情勢にも対応してこういう方向を出してきているということです。  そこで、大臣は四月四日の外務委員会での答弁では基地の整理とか縮小が中心問題であると言われている。しかし大河原さんのいまの発言それからまたリチャードソンの言っていること、こういうところから見て決して基地を縮小して整理するんだという、そういうものではないというように見ざるを得ないのです。  この点について、防衛局長の久保さんにお伺いしたいのですが、去年、四十七年の六月六日、参議院の内閣委員会でこういうことを言われているわけです。これは安保条約の実施について具体的な問題でどうかという、そのことに触れてでありますが、「具体的な共同防衛の戦略あるいは指揮系統、指揮は別々になるにしましてもそれの連絡関係といったようなことが本来協議さるべき事柄であります。」同時に、「安保条約に関連して申し上げますと、四条と五条の関係、これについて実は協議すべきであろうと私は思うんですけれども、しかしそういった事態にない。」中間はちょっと飛ばしますが、そこで「外務省が入って四条、五条、六条というふうな委員会を設けるべきだろうと思います。」さらに久保さんは「四条、五条の問題も含めてやるべきであるという意見は実は制服部内にはございますけれども、それができておらない。むしろそういったことに若干制服のほうでは不満があると申してもよろしいと思いますけれども、その程度でありまして、そういうぐあいでありまして、したがって四条、五条を中心にした委員会が設けられておらないというのが現状であります。」と。ここで制服組の不満というのは一体どういうことなのか、その点を伺いたいと思います。
  123. 久保卓也

    ○久保政府委員 きわめて正直な答弁をしておりますが、内容は、安保条約があります、したがって有事の場合には米国はこれに対して協力をするということになっておるわけですが、そういう場合に、具体的に軍事的な側面で日米間がどういうふうにやるのかといったようなものについての、いわば安保条約関係の中の軍事的側面のみの軍事的な委員会、下部機構といったようなものがあるべきだというのが実は制服の発想であります。そういうことをそこで申し上げたわけで、従来もございませんでしたし、今日もございません。いまの安保運用協議会がそれにかわるものというふうには認識いたしておりません。その性格はいまアメリカ局長が述べられたとおりでありますので、私が昨年申し上げたものがいまの運用協議会であるということではございません。
  124. 金子満広

    ○金子(満)委員 去年の六月六日の答弁は今度できた運用協議会というものではない、こういうことですね。そうしますと私はこれは非常におかしな話になると思うのですね。これは久保さんでもいいし大臣でもけっこうです。両方してもらえばなおいいのですが。一体ばくとしてつかみどころがないわけですけれども、この安保運用協議会というのは、じゃ一体何をやるのだ。大臣はさっき言ったとおり、軍事基地について整理し縮小するためにこれがあるのだ。これがつまり国民向け、表向けであって、そうでない正直なほうは、大河原さんが言っているようにもろもろの問題、何でもこれでやれますということを言っておる。さらに久保さんは去年のことは非常に正直だと言われましたけれども、そのこととこの運用協議会が違うのだということ、どこが違うか、そこのところをこれは久保さんから聞きたいし、その他の問題については大臣と大河原さんから聞いておきたいと思うのです。
  125. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 安保条約の運用協議会というのは日米両国政府間で一そう密接な協議と調整を進めるための場でございます。したがいまして私が先般別の委員会で御答弁申し上げておりますように、日米間で安保条約並びにその関連取りきめの円滑かつ効果的な運用についていろんな問題を話し合う場ということでございます。その観点におきまして、当面日本におきます施設、区域の整理統合というのがきわめて大きなまた大事な課題でございますから、実際の運用の問題としましては施設、区域の整理統合というのがきわめて大きなウエートを持ってくる、こういうことになるわけでございまして、現に一昨日の第一回の会合におきましても、施設、区域の整理統合に関連する問題を討議いたしまして、今後この問題について具体的な作業についての話し合いを行なっていくわけであります。
  126. 久保卓也

    ○久保政府委員 私が頭の中に置いておりましたのは、NATOでも、このNATOというものは非常に広範な協議をするようになっておりますけれども、その中で軍事部門というものが抜き出されていろいろの協議が行なわれておるようであります。私が考えておりましたのは、つまりその答弁の中で申しておりますのは純軍事的な問題、たとえば有事の場合に日米の防衛分担がどうなるのか、米国はどういう支援をするのか、そういった純軍事的なことを協議する部門があるべきであろう。これはまあ私たちのサイドから申せばそういうことになるわけですけれども、しかしそういったことについての政治的妥当性が必ずしもないということで設けられておらないという趣旨のことを申し上げたわけであります。
  127. 金子満広

    ○金子(満)委員 そうしますと、あとのほうから、久保さんのあれでありますが、米国との、つまりアメリカと純軍事的な、いわば軍事技術上の問題、さらに去年発言されている内容から見ると、連絡とか指揮命令系統まで入っての共同作戦というものをこれはやるんではない。つまりこれは運用協議会ではないというようにいまおっしゃったと思うのです。しかし、私はそのことをも含めて、今度は大河原さんの言われているように、もっと安保条約全般の問題を協議し調整をする。そうしますと、いろいろあるわけですね。安保協議委員会、それから日米事務レベルの協議、あるいは日米軍事研究会同、これは専門家会同ともいわれております。それから日米合同委員会、その下準備をする施設分科委員会、さらにまた随時協議というのが外交ルートをもってもやられる。それではもう不都合で、それではもう間に合わない。円滑かつ効果的な運用をするためにはこれではもうだめなんだから今度これをつくりました、つまり運用協議会をつくった、こういうことにならざるを得ない。そういうようにしか理解できないわけですが、そこで問題は、まず聞きたいのですけれども、ここでいろいろ協議したものというのはどこへ持ち上げるのですか、その点をお聞きしたいと思うのです。
  128. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 協議をいたしまして、その結果一つ方向が出てまいりました場合に、たとえば施設、区域の整理統合に関する方向が出てまいりました場合には、合同委員会の場において正式な調整が行なわれる、こういうことになるわけであります。
  129. 金子満広

    ○金子(満)委員 ほかには出さないのですか。
  130. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 それから日米間の安保条約に関する正式の協議の場としては安保協議委員会大臣レベルの会合がございます。この会合は従来の事例にかんがみますと、おおむね一年に一度程度開かれておりまして、必ずしも一年に一度に限られるわけではありませんけれども、まあ一年二度程度ということで必ずしも頻度が多くないわけでありまして、日米間で安保条約に関連する協議を緊密にいたしておく場としては、若干頻度が離れ過ぎている、こういう観点から、随時機動的に会合できる運用協議会の場によって、一そう緊密な連絡、調整をはかっていきたい、こういう考え方に基づくわけであります。
  131. 金子満広

    ○金子(満)委員 非常に権限が重くなってきていると思います。これはちょっとつくったというものではもちろんない。合同委員会にも出す。それから協議委員会のほうは開催回数が少ない。だからその回数から回数までの間は、ここでかなり協議をしなければならぬ。そういう意味で非常に権限の重い性格を持ったことになるということで、時間がだいぶ迫ってまいりましたが、次の点をまとめてお伺いします。   〔西銘委員長代理退席、委員長着席〕  これはどなたでもけっこうですが、メンバーが固定しているのか、あるいは一定のワクを持っているのか、あるいは一定の水準の規定があるのか、この点が一つです。それから次は、協議と調整の場と言っているんだから、議事録をつくるのか、あるいはほかの文書を、メモとかなんとか、ほかの文書をつくり、これを残すのかどうなのか。  さらに、たとえば安保協議委員会などの下案をここでつくるのかどうなのか、こういう点です。  それから四番目には、いままでのいろいろの協議のところ、たとえば協議委員会とかあるいは合同委員会とかいうところに、私は全部詳しくは調査しておりませんけれども、制服組が随時参加をしておったと思うのです。しかし今度は日本側代表という中で制服組も正式にメンバーに入っておる。今後もこの制服組が正式なメンバーとして入ってやっていくということになると、これまでと違った形になってきていると言わざるを得ないと思うのです。その点についてお伺いしたいと思います。
  132. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 運用協議会の構成メンバーでございますが、一月十九日の発表にございますとおりに、日本側からは、外務省外務審議官とアメリカ局長、防衛施設庁長官、防衛庁防衛局長、統幕議長、これが日本側のメンバーであり、米側からは在日米大使館公使及び参事官、在日米軍司令官及び参謀長、これがメンバーでございます。したがいまして、正式のメンバーとしては、このいま申し上げましたメンバーが参加……(金子(満)委員「ずっとそれを通すわけですね」と呼ぶ)そういうことでございます。  それから議事録は、特にこういうものは設けません。随時機動的に会合して率直な意見の交換を行なう場にしていきたい、こういうことでございます。  また、安保協議委員会との関係でございますが、安保協議委員会の下部機関ということでは考えておりません。  また、制服が参加という問題につきましては、安保協議委員会が過去十四回開かれており、また事務レベル安保協議が過去七回開かれておりますが、これには従来いずれも統幕の議長が参加いたしております。もちろん安保協議委員会におきましては、正式のメンバーは、日本側が外務大臣並びに防衛庁長官でございますから、いわば防衛庁長官のアドバイザーというふうな形での参加になりますけれども、いずれにせよ各会合にいずれも出席いたしております。
  133. 金子満広

    ○金子(満)委員 最後のところでちょっと質問したいんですが、これまでのいろいろの委員会とか協議とか、事務レベル協議とか、そういうところに制服が正メンバーとして入ったことはあるのですか。正式のメンバーとして入ったことはありますか。
  134. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 安保協議委員会は、いま申し上げましたようなかっこうで参加しており、事務レベル協議には、七回開かれておりますけれども、統幕議長が統幕議長の資格において参加いたしております。日本側は、従来は大体は外務事務次官、防衛事務次官、こういう人たちが中心でございますが、統幕議長もそのつど会議参加いたしております。
  135. 金子満広

    ○金子(満)委員 それは出席しているということは、正式のメンバーとしてですか。あるいは外務省のほうが中心だけれども、何となく出席したというのか、あるいは外務省側が必要だからアドバイザーとして呼んだのか、その資格の問題です。正式なメンバーであったのかそうでないのか、この点なんです。
  136. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 安保事務レベル協議は、必ずしも正式にメンバーこれこれというふうに限定しているわけではございませんで、そのつど議題の性格に応じて日米双方関係者がしかるべきレベルにおいて参加するということでやってきておりますが、従来は日本側は外務事務次官並びに防衛事務次官が中心であり、統幕の議長はそのつど参加してきておるということでございまして、参加のメンバーは各回必ず同じ役柄の人が出るということでは従来はなかったわけであります。
  137. 金子満広

    ○金子(満)委員 その点はとにかく出席したということは事実として残るわけですけれども、正式のメンバーであるかどうかということは、いまの説明によりますと何となくみんな集まった、同じ資格のものが向こうからも出たということになりますと、制服が正式メンバーで出たのか出ないのかということについては回答にはなってないし、またそういう区分けもしてないということですか。
  138. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 この事務レベル協議を開始するにあたりまして、日米間で参加者はしかじかというふうな厳密な合意をしているわけではございませんで、各回その議題の必要に応じて適当な関係者が参加するということでありまして、統幕の議長は事実上毎回参加している、こういうことであります。
  139. 金子満広

    ○金子(満)委員 これは政治的には非常に大事な問題だ。この問題については時間がもう来てしまったので、残念だけれどもこれで質問をやめますけれども、この次にこの問題をさらに質問をしたいと思います。日米共同作戦体制、そういうものを政治的に強化していく、円滑かつ効果的な運用というものがこういう形になって出てきているということは、これは非常に重大な問題である、このように問題点指摘して質問をきょうのところは終わります。
  140. 藤井勝志

  141. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は海外における日本人の子弟の教育の問題についてきょうは御質問をいたしたいと存ずるわけであります。  きょうは遺憾ながらアメリカ局長がたいへん忙しいそうでありますので、アメリカの問題でありますが御質問が不可能でありますから、アメリカ局長にはこの次に御質問をしたいと存じます。御退席してくださってけっこうであります。  まずきょうは実情といいますか、そういったことについて、私は今回アメリカに参りました際、各地におきまして日本人の皆さんから一様に訴えられましたことは、日本語の教育あるいは日本の教育制度に通じるような教育をするために、在留邦人がさまざまなくふうをいたしているわけでありますけれども、たいへん問題が多くて困っているわけであります。  私のところに書類が幾つか参っておりますので、少々繁雑になるかと思いますが、多少読み上げてみたいと存じます。これは外務大臣のところに書類が出ているようであります。おそらく外務大臣はお読みになってないと私は確信しておりますので、ここで私はちゃんと読み上げてごらんに入れたいと思います。  これを出して来られた方はワシントンDC地域日本語補習学校管理運営委員会委員長は河村欣二という朝日新聞のアメリカ局長、副委員は小出豊日本航空ワシントン支店長、委員といたしましては、上田宗良日本開銀ワシントン首席駐在員、石丸和人毎日新聞ワシントン支局長、畑中正一NIH在勤、昆秀夫NIH在勤、山崎泰子、これは大使館と書いてあります。加舎逸子、四分一直、これは東京銀行ワシントン駐在員事務所長であります。この要望書にどういうことが書いてあるのかといいますとこう書いてあります。  「ワシントンDC地域では、現在初等、中等の子女百十名を対象に、現地雇用の講師六名により、週一回、毎土曜日の補習教育を実施しており、すでに講師謝金の一部について海外子女教育振興財団からの補助を受けております。  しかしながら、現状は、教育内容がきわめて貧弱で、専門の施設もなく、校務は大使館夫人の献身的無償奉仕に依存するという寺小屋的なまことに不十分な状況にあり、ワシントンに勤務する父兄の不安の種となっております。  今後はさらに児童数の増加が見込まれるのに伴い、新施設を借用して学級数、講師数をふやすとともに、内容を充実したい意向が父兄の間に圧倒的に強いのが現状であります。このようにワシントン地域の補習教育は、現在及び将来にわたって、深刻な危機に立っているといえます。  このため、当地では学校管理運営体制を強化するため、官、商工界、金融界、報道界、留学医学界など各界代表による管理運営委員会を組織し、同校の運営を検討しておりますが、各種のきびしい事情から、日本政府による財政援助の増加を要望せざるを得ないとの結論に達しました。  要望の具体的内容は別添のとおりであります。正式の予算措置としては昭和四十九年度からということになると思われますが、当地の窮状から見て、四十八年度においても暫定措置として実行可能な援助措置をとっていただくようお願いする次第であります。  右、政府当局並びに財団各位の格別の御配慮をワシントンDC地域の父兄の総意としてお願いいたします。」昭和四十八年三月二十六日、大平外務大臣殿、愛知大蔵大臣殿、奥野文部大臣殿、水沢海外子女教育振興財団会長殿、こうなっておるわけであります。これが一つ。  次に、私はプリンストンというところに参りました。このプリンストン大学にはノーベル賞級の学者がたくさんいらっしゃるのでも有名なところであります。ノーベル賞級の学者がたくさんおられまして、日本からも優秀な学者が何人も行かれておるわけであります。ところがこの日本の中の最高の優秀な頭脳の何人かの先生方と懇談するチャンスがございましたが、その子弟の教育にいずれもたいへん困っておられまして、ちょっとことばで表現できないような苦しみ方なのであります。ここでは、簡単に言いますと、日本の教科書を手に入れたいのでお手紙を差し上げたのだけれども、外務省から御返事がなかった、こういうことがまず一つ。それから二番目に、少人数のために教育をしていただく人を集めることが不可能である。つまり教師を雇うことが不可能である。そのためにたいへん困惑しておる。それから三番目に、今度は自分たちの子供を日本に連れていった場合に、日本の激しい大学入学試験というものにかかるとほとんどが落っこちてしまう。子供に対する期待が多いだけにたいへん困難である。またそれと逆にアメリカの教育制度の中に残そうとすると、お金がかかり過ぎて残すことができない、こういう問題を何とかしてもらえぬだろうかというような問題がございました。これが第二の例であります。  第三の例を申し上げます。  第三の例はまことにユニークなことでありますが、四十八年三月二十二日付、在ニューヨーク総領事館から私に陳情をいただいたのであります。私のほうに陳情書が来るということは、これはまことに外務省始まって以来のできごとであろうかと思いますけれども、これはもうたいへんに困っておられます。どういうことかというと、これは総領事館の総領事が御自分資料を整えられましたので資料としてはたいへん重厚な資料になっております。ここにあげられていることを概要して後ほど資料として差し上げてもけっこうでありますが、述べますと、アメリカにいる子弟、在米子弟というのは全アメリカで一万三千ないし四千おるが、そのうちの八分の一がニューヨークに集中しておる。そのため現在ニューヨークにおる子弟が約千三百人である。この膨大な子弟をかかえて経営能力、行政能力の上でもうパンク状態である。地域的に授業をする場所が六カ所に分かれておる。本年の秋には九カ所にしようとしておる。ここでは特にアメリカの公立学校に子供を入れておくと、風紀上の問題が起こる場合がある。それから麻薬の問題が起こる場合がある。男女関係が乱脈だとか麻薬の問題とかは日本ではちょっと考えられない問題でありますけれども、こういう問題がある。そこへもってきて日本語教育を補習として行なっておるわけでありますけれども、実際には収容でき得るものは、アメリカだけ考えても、三分の一以下、四分の一以下という状況であり、何とかこの辺を考えていただけないだろうかということであります。  こういう実情について、まず大臣がどういうふうにお考えであるのか、まず総論的に、大臣にお伺いする前に、担当官の方々が来られておりますから、文部省の方も来られておりますし、領事事務を預かっていらっしゃる方も来られておりますので、これに対して大臣に報告するつもりでここでお話をしていただきたい。  まず私の質問の第一は、海外子女教育の現状はどうか、それに対してどういう援護措置をとっているかということであります。各官の御回答を求めます。
  142. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 ただいま先生からいろいろ御指摘のありました問題はちょっとあとにおきまして、一番最後に御質問のございました子女教育の現状についてお答えいたします。  現在、子女教育として考えられます組織としましては、一つは全日制の学校がございます。それからもう一つは、いま御指摘のありましたように、ニューヨークなどにございます、われわれ補習校と称しておりますが、補習校がございます。それから第三番目は、通信教育というものがございます。  そこで、最初に申し上げました日本人学校は、現在は主として開発途上国、これは当初から現地の教育施設が非常に貧弱だということで、現地の日本人の要望もございまして、政府もこれに援助するということでつくられたものでございますが、これは現在三十校ございます。今年度予算で認められたものがさらに三校ございますので、全部で三十三校になろうかと思います。これに対しましては、政府といたしましては、日本から教員を派遣いたします。その教員の旅費それから俸給等、全部負担しております。それから校舎を借りておりますので、校舎の借料も負担しております。さらに教科書とか教材等の配付も政府予算で無償で行なっております。  そのほかに、海外子女教育振興財団というのがございまして、この振興財団がいろいろ財界等の援助も得まして、学校をもし建てます場合のいろいろな寄付金の募集とか、その他スクールバス等を寄付を得まして送るとか、そういうふうな援助もやっております。生徒の数は大体三千人でございまして、先生は約二百三十人でございます。  それから第二番目に問題になります補習校でございますが、これは現在二十八校ほどございますが、これは全部先進国と申しますか、欧州それから北米地域等にございます。これは現地の学校へ一応行きながら、日本へ帰ってきた場合の教育の関係考えまして、週に一回、大体土曜日でございますけれども、国語、算数等につきまして教育を受けるという施設でございまして、現在生徒数は約三千人でございまして、講師の数は百七十人。これに対しましては、政府は講師につきまして謝金の一部を補助しております。そのほかに教科書等の配付も行なっております。  それから第三番目は通信教育でございます。これは先ほども申し上げました海外子女教育財団が主体になりまして、有償ではございますが、全日制の学校にも補習校にも通えない約三千人ばかりでございますが、この者に対しまして、小学校の課程、国語、算数等の通信教育をやっております。  このような実情でございますが、先ほどお話のございました、ワシントンのほうでいろいろ困っているという事情につきましては、私のほうにもすでにワシントンの大使館から要請が参っております。われわれのほうといたしましては、補習校につきまして最近とみに要請が高まっておりますので、何とかこれを強化したい。要するに教育で一番大事なものは先生でございますから、まず先生のほうから、どのような措置が一番いいかということで、何らかの強化措置を考えたいと考えております。それから、場所によりましては非常に負担が重いというものにつきましては、いかにしたら負担が軽くなるかということも、あわせて考えていきたいと考えております。  それから、第二番目のプリンストン大学の先生のほうからは、われわれのほうにはまだ何も参っておりません。そのうちにあるいはそういう手紙が参るのかとも思いますが、この場合は、おそらくさっき申し上げましたような通信教育によるほかないのではなかろうかと考えますが、なお手紙をいただきまして十分検討してみたいと考えております。  それからニューヨークの実情も、後刻あるいはお話が出るかと思いますけれども、われわれのほうで調査団を派遣いたしまして、ニューヨークの現地の要請等もよく存じております。これにはいろいろな問題がございますので、専門家にいろいろ検討していただきまして、適当な措置を講じたいと考えております。
  143. 角井宏

    ○角井説明員 ただいま穂崎部長から御説明をいたしましたことで大体尽きると思いますが、特に文部省ということで、文部省につきましての助成策について申し上げますと、アメリカ合衆国の問題のようでございますのでその地域に限定いたしますと、教科書の給付と通信教育の事業を文部省が担当しているわけでございます。
  144. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そこで大臣、目をさましていただきまして、世界全部で全日制の日本人の学校は開発途上国に三十二校でございます。補習校が先進諸国に対してつくられているのは三十校で、いま三十三にするというお話であります。世界に国が全部で幾つあるか、私はこまかい数はよくわからないのでありますけれども、百五、六十の国に対して六十校ぐらいでカバーできるかというのは、もう全然話にならぬわけであります。たとえば、アメリカ大陸でいえば、サンフランシスコとニューヨークにはあるが、ロサンゼルスまでの中間は全部ないわけであります。こういうふうな形で放置するとどういうしわ寄せがくるかといいますと、一つは、外務省の職員で外国でいま外務省員として一生懸命やっている人たちは、若い人たちですね。大使なんかにおなりになるような、子供さんがもう大きくなってしまった方、苦労は過去のこととしてにっこり振り返られるような人は別といたしまして、いま苦しんでいるのは、領事になるかならぬか、二等書記官とか書記官とか、そういう人たちの家族でありますが、これがみんな子供のことで困っておるわけであります。そして、日本商社あるいは会社かち派遣されている人たちは、非常に回転早く任地を次々とかわるわけでありますけれども、そういう人たちが連れていった子供を全部その地域で学校に通わせることができなくなって、いつの間にか日本語を忘れてしまう。そうかといって、英語の教育でその地域でトップになったなんという優秀な方もおられるわけでありますけれども、平均的には学力は大幅に下がってしまう、こういうことになるわけであります。ですから、もしおやりになるとすると、問題としては簡単でありまして、各国に対して、少なくとも日本人の相当いる地域に対しては、全日制の日本語とその現地語の学校をつくるとか、アメリカの例でいえば日英学校をつくる、全日制の日本人学校をつくる。三番目には補習学校をつくる。こういうような考え方というものをしなければいけないんじゃないか。  それから適切な教員を内地から送るということがやはり必要ではないか、小、中、高にわたって。  それから、この間から、文部省としてはたいへんたくさんの人々を、今期予算において三週間にわたって勉強に出すという形でたくさんのお金を組まれたわけでありますけれども、そういう、ただ勉強に行く、ただ見に行くというだけでなくて、そういう予算考えられることでありますから、今度は教育専門家を積極的に海外に出すということは当然考えられてもいいのではないかと思われるわけであります。  また逆に、ニューヨーク市のような場合には、日本から教師を連れてきて日本人の学校を建てたらどうだ、そうしてその場合はニューヨーク市として土地や何かを援助する、こう述べておるわけでありますが、これはどういうわけか知りませんけれども、これは拒否しておられるようでありまして、こういうわからない問題もまたあるわけであります。  また専任の事務局長みたいなものを置く必要があります。  また、講師の謝礼金でありますけれども、全世界で百数十人、百六十人でございましたか、そのメンバーがあるわけでございますけれども、その謝礼金が百六十人の講師のうち八十人にだけ、しかもその半額だけめんどう見るというような、きわめて不徹底なやり方の援助が行なわれております。これはもう少し援助をしなければならないことは当然でありますし、欧米先進諸国の場合は、これでは全く足りないのもうなずけるわけでありますし、採算的にもどうかと思われるのでありますので、講師謝礼金の与える幅をもう少し広げる、あるいは謝礼金をもう少し増強する、こうしたことをやるべきではなかろうか、こう考えるわけであります。  また、帰国された子供さんたちが中学校あるいは公立高校に編入する場合、編入拒否が行なわれております。すなわち、それは編入試験が一年間に一回とか二回しか行なわれませんので、編入させることができない、あるいは国語教育等で非常におくれておりますために、それを口実としてはじいてしまう、こうしたことがあるために、内地で学業を続ける場合に非常にマイナスになっております。ですから、こういう帰国した中学生、高校生の受け入れに対しては、特別教室を指定するとかなんとかいうような特別なやり方を行政指導する必要があるのではなかろうか、こう思うわけであります。  それから、アンダーグラジュエートの大学生たちが外国大学で修得した単位を日本国内において通用させることができないため、向こうの、アメリカの大学へ少し行くと、こちらへ帰ってきてまるっきり意味がなくなってしまうわけであります。ゼロになってしまう。もう一回大学の入学試験から受け直さなければならない。こうしたくだらないことが起こっておるのであります。つまり、日本が国際的な日本になるためにはこういう状況を乗り越えませんと、外国に行った日本人たちは落ちついて腰を据えて仕事することができない、そして安心して子供を連れていけない、こういう状況にあるわけであります。  私は、大平外務大臣が実力外務大臣でありますので、大平さんが外務大臣にいる間にその基礎的なデザインをかいていただきたい、実はこう思っているわけであります。私の大きな期待を裏切らぬように、ひとつ適切、勇敢な措置をとられるように私は希望したい。  私はきょうこれでもう時間がほとんどないわけであります。実をいいますと、これでは質問にならぬわけであります。ですから、私いま問題点をずっと並べ立てて申しました。きょうは総論だと思って聞いていただきたい。あと各論をぎゅうぎゅうと、少ない時間をこま切れに与えられる形になっていますのでしようがないので、この次の委員会でもまた申し上げます。しかしまず大臣に、これはもう外務省員の最大の関心事であって、外務省員がこういう陳情書を政治家に渡さなければならぬ、しかも、どちらかというと野党の議員に渡さなければならなかったなんということは、むしろ異常に属する。それほどせっぱ詰まっているという事情を了解してもらいたいと私は思うのです。したがって、海外子女教育の問題に関しては、もう日本外国へ行く人のみんなの大問題であると理解していただきたい。  ついでに申し上げますけれども、イギリスの国際的な世界に対する進出というものは、その可否、良否については私は異論のあるところでありますけれども、イギリスに行ってみますと、子女を海外に連れていく場合には的確な、本国と同じレベルの学校というものをつくるか、それでなかったら、自分の国に完全な全日制の寄宿舎のついた、しかも寄宿舎の中の教育も含むりっぱな学校というものができているわけであります。したがって、子供を残していっても安心、連れていっても安心というしかけになっているわけであります。こういうことは、急激なドルの経済力がついて国際化の進んできた日本国として考えるべきことではないか、私はそう思うわけであります。  そこで、これらの根本的、基本的な問題についてまず大臣の御見解をきょうは総論的に伺っておきたいと思います。
  145. 大平正芳

    大平国務大臣 在外の邦人の子弟の教育の実情につきましてつぶさにお話をいただき、深い御理解をいただいておりますことに対して感謝いたします。  この問題は、最近とみに在外邦人の間で問題性の認識が高まってまいりまして、政府も在外邦人の組織との間で御協議をいたしまして、逐次整備につとめておりますことは先ほど部長からお話し申し上げたとおりでございます。ことしの予算も十億を若干割る程度にまでまいりましたが、これとても去年に比べまして約五割の急増でございまして、財政当局からそれだけの理解を得たことはたいへん感謝いたしておるわけでございます。しかしそれでもなお、いま御指摘のようにずいぶんと菲薄な状態にあるわけでございまして、私ども一そう徹底した調査を踏まえまして、在外邦人の方々並びに文部省その他関係当局と十分協議さしていただきまして、もっと大胆な措置を、しかも早急にとってまいらなければいかぬと思うわけでございますので、一そう勉強してまいるつもりでございますけれども、先生におかれても層一そうの御鞭撻をお願いしたいと思うのであります。
  146. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、そういう総括的なお話がございましたので、今度は、この次から一つずつお話を詰めていきたいと思います。  まず、問題のひどい状況について御理解をいただいておきたいのですが、ワシントンの大使館においては、土曜日と日曜日、補習が行なわれておりますが、大使館の地下室がそれに当てられておるわけであります。そして、校舎を借りる借料がないものですから、あそこの大使館は英断をもって学校をかかえ込んでおるわけであります。土曜日になりますと子供が飛んだりはねたりをしているので、私も見てまいりましたが、ときどき上へかけ上がって叫んでいるわけであります。大使館で子供の勇ましい声が聞こえるなどということは、日本がいかに子供を大事にしているかというPRのためにいいのかもしれません。しかし、少なくともワシントンというような日本の最高の権威あるべき大使館、そこで借料がないためといって、子供を山ほどかかえ込んでおって、外交交渉のまっ最中に子供がかけ上がってくるという事態があらわれるとしたら、これは珍妙を通り越しておるわけであります。それほどまでにしなければならぬほどの状況なんだというふうに理解をしていただきたい。私は、この私の発言のあとに電報を打って、直ちに大使館の中にいる子供は全部追い出せ、何をやっておるかという公電が打たれたとすれば、それは私の本意ではないんで、それは逆なんで、そこまで大使ががんばっておられる御苦衷を察していただきたい。  またニューヨークにおいても総領事夫人が死にもの狂いに教育に当たっておられるのであって、御主人と一緒の外交的な諸案件のほかには、子供の教育に必死になっておられるわけです。こういうけなげな外交官一族の御奮闘ぶりというようなものにしわ寄せされてしまう状況になっているんだということを、ひとつ御理解を賜わりたいと私は思うわけであります。まず校舎が借りられない、先生が見つからない、給料が払えない、教育を求めている子供は山ほどいる、五割の増強というようなお話もございましたけれども、話のほかである。またこういうふうに私のところにタイプを打ってきたワシントンとか、こちらのように持ってきたニューヨークの日本クラブとか、こういう文書を持ってこられるようなところはまだ問題がそうない、私に言わせれば。これは悲鳴をあげる術を知っているから。ところがこんな文書も書けないで、困った困ったと言いながらみんながわあわあやっているところもある。私はそれはひとつ何とかしなければいけないのじゃないかと思うのです。逆に、私は帰りにハワイに寄ってまいりまして、ハワイの日本人学校、これは戦前において数百校あったんだそうでありまして、在留邦人が自分たちで寺子屋風のをこしらえまして、戦争中に破壊されたそうで、現在でも六、七十校日本人学校があるそうであります。この経営はみんな私立で行なわれておるわけであります。日本側が取り立てて援助をしているところはないわけでございますけれども、いずれもそれだけの経営規模を持っておるということは一つの大きな方向を示していると思います。こういうのをあわせ御検討いただいて、まず私はきょうは問題点を幾つか申し上げただけです。では、教科書の問題についてどうするか、校舎の問題についてどうするか、そして教員の問題についてどうするか、それから日本の教育と連動させるためにどうするか、こういう幾つかの問題があります。  もう一つは、どのくらい援助するかという財政に関する考え方があります。もう一つは、全日制学校をつくるか、補習学校をつくるか、通信教育をするか、どういうプリンシプルでするかという原則がこれまたないわけであります。でありますから、そういったことについてきょういきなりお話ししてもどうかと思いますので、早急に御討議いただいて、こういうやり方でやりたいのだということを、この次の委員会でこのお話を私がするときまでに、少し基礎的なデザインをしていただきたい、私はそう思っているわけであります。  この提案についてはいかがでありましょうか。
  147. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 いま御指摘の問題は、一般的に申しまして、アメリカの問題ばかりでなくて、世界全体にあります各国のわれわれ在外邦人の子弟教育の問題というふうに了解しておるわけでございますけれども、われわれとしましては現在各地の要請を受けまして、いろいろ検討しておる事項もございますから、そういうことも含めまして次回御質問がございますればいろいろお答えしたい、かように考えております。
  148. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは大臣、こういう状況でありますので、ぜひともこの問題について前向きにお計らいをいただきますように、この問題は一党一派がやるべき問題ではないと私思いますし、日本人全体としての問題でありますし、だれもが異存のあるような提案ではなかったと私は思います。ひとつこれは従来の予算のつけ方のような、何%上がったという考え方でなくて、一歩前進した考え方で御処理をいただきたい、こう要望いたしまして質問を終わりたいと思います。
  149. 藤井勝志

    藤井委員長 次回は、来たる二十七日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時五分散会