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1973-04-18 第71回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月十八日(水曜日)     午後二時八分開議  出席委員    委員長 藤井 勝志君    理事 石井  一君 理事 小坂徳三郎君    理事 西銘 順治君 理事 福永 一臣君    理事 岡田 春夫君 理事 堂森 芳夫君    理事 金子 満広君       加藤 紘一君    深谷 隆司君       宮澤 喜一君    石野 久男君       河上 民雄君    三宅 正一君       柴田 睦夫君    瀬長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務大臣官房会         計課長     梁井 新一君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   田中 秀穂君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省条約局外         務参事官    松永 信雄君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         運輸省航空局次         長       寺井 久美君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      前田多良夫君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 四月十七日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     石田 博英君   小林 正巳君     田村  元君   竹内 黎一君     小山 長規君   深谷 隆司君     阿部 喜元君   山田 久就君     丹羽 兵助君 同日  辞任         補欠選任   阿部 喜元君     深谷 隆司君   石田 博英君     加藤 紘一君   小山 長規君     竹内 黎一君   田村  元君     小林 正巳君   丹羽 兵助君     山田 久就君     ————————————— 本日の会議に付した案件  千九百七十一年十二月二十日に国際連合総会決  議第二千八百四十七号(XX VI)によつて  採択された国際連合憲章改正批准について  承認を求めるの件(条約第一号)  アフリカ開発基金を設立する協定締結につい  て承認を求めるの件(条約第二号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 藤井勝志

    藤井委員長 これより会議を開きます。  千九百七十一年十二月二十日に国際連合総会決議第二千八百四十七号(XXVI)によって採択された国際連合憲章改正批准について承認を求めるの件、アフリカ開発基金を設立する協定締結について承認を求めるの件、以上両件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 この前の質問で、いろいろと問題が残っております。資料の提出を要求したこともございますし、それから私の疑問に思っている点について、まだ御検討の上御返事をいただくという案件もございます。  まず資料の点につきましてお出しいただけますでしょうか。
  4. 梁井新一

    梁井政府委員 外務省予算中、外貨対象額は、お手元に差し上げました資料に書いてございますとおり約二百六十六億円でございます。そのうちの国際分担金拠出金が百三十億円でございますが、うち百十四億円が米ドルで払う金額でございます。それから在外公館経費につきましては、現在、在外公館が百四十公館ございまして、種々の通貨で送っております。ただ、従来の例から申し上げますと、百四十公館に送っております経費のうちの約四〇%が米ドル建てになっております。  したがいまして、本日の米ドル・円のレートは二百六十五円四十五銭でございますから、このレートで換算いたしますと、この三百八円との差額、三百八円でこの金額を送金した場合と二百六十五円四十五銭のレートで送った場合の差額は、国際分担金につきまして約十五億八千万円、それから在外公館経費その他につきまして七億五千五百万円、合計二十三億三千万円でございます。
  5. 前田多良夫

    前田説明員 ただいまの資料大蔵省の欄でございますが、第一には、沖繩返還協定に書かれております五千五百万ドル分は百六十九億四千万円に相当いたすわけでございます。その他の国際分担金、これは関税協力理事会等に対する分担金でございますが、これが三十一億七千七百万円組まれておりまして、合計いたしまして二百一億一千七百万円でございます。そのうち米ドル支払い分が約二百億円ございます。これを、交換レートを二百六十五円四十五銭といたしますと、約百七十三億円という支払いでございますので、二百億円から百七十三億円を差し引きますと、二十七億円の差額になるわけでございます。  その他、大蔵省所管特別会計には産業投資特別会計がございまして、ここにはガリオア、エロアがございまして、これが三百二十六億円という数字が載っておるわけでございます。これは特別会計でございますので、この欄の外になるわけでございます。
  6. 石野久男

    石野委員 特別会計でございますので欄の外になりますけれども米ドル支払いをすることについては変わりはないのですね。
  7. 前田多良夫

    前田説明員 変わりはございません。したがいまして、同様の計算方式をとりまして、いまちょっと正確な計算はしておりませんのですが、これが大体四十億円見当の差額が出るというふうになります。
  8. 石野久男

    石野委員 いま一つ聞きますが、ドル建て対外支出費目になっているのは、いま大蔵省外務省お話のありましたほかには、費目としてはございませんか。
  9. 前田多良夫

    前田説明員 外務省大蔵省所管分はこれで全部でございますが、そのほかの省の所管の中に、たとえば厚生省所管WHO、これは約十五億円ぐらいございます。しかし、いろいろとその他検討して洗ってまいりますれば、まだあると存じます。
  10. 石野久男

    石野委員 これはいま厚生省あたりWHOの問題があるとか言っておりましたが、その他にもまだございますね。総理府関係防衛庁支払いをする額などがあるわけじゃないのですか。
  11. 前田多良夫

    前田説明員 あるものと思われます。
  12. 石野久男

    石野委員 あると思われますと、あることは間違いないので、それはどの程度になりますか。
  13. 前田多良夫

    前田説明員 防衛庁分においては、ただいまちょっと調査数字がございません。
  14. 石野久男

    石野委員 それは、いまなければ、あとで調べてもらうことにしますが、防衛庁関係支払いをするものの中で特に問題になりますのは、ロイアルティーの問題がございますね。そういうものについてもひとつ、この次資料を出されるときに計算を出していただきたい。よろしゅうございますか。
  15. 前田多良夫

    前田説明員 ただいまの点につきましては、帰りましてよく検討いたしまして、処置いたしたいと思います。
  16. 石野久男

    石野委員 それでは、この資料はまだ、ここにいただきましたけれどもやはり十分じゃございませんので、あと資料もひとつ出していただきたいと思います。  あとでまたそのときに、この基金設定の問題、特に計算単位の問題と米ドルとの関係でこれは出てきた問題でございますが、そういう問題についての意見は述べたいと思いますが、いまここで出されたきょう現在における米ドルの対日換算二百六十五円四十五銭の差額計算しただけでも、差額はかれこれ九十億近くございます。これはやはりいろいろと、基金設定の上からいきましても問題の残ることでございますし、いずれ、防衛庁関係なんかの問題とも含めて、意見はまたあとでひとつ述べさしてもらいたい、こう思うところです。
  17. 前田多良夫

    前田説明員 これは三百八円で予算が組まれておりますが、これは一ドル三百八円で日銀に支出されるわけでございます。そこで、かりにいまのような差益が出た場合には、それは別途国の収入として国庫歳入に入るわけでございますので、そういう意味におきます国損というものは生じないようになっておるわけでございます。
  18. 石野久男

    石野委員 三百八円で計算されていることはわかっているのですよ。したがって政府としては、それを支払うにあたっては、この予算に計上された額を日銀に預けてそして日銀支払いをする、その差額国庫に返納するということもよくわかっておるのですよ。だけれども、この問題についてはやはり予算設定の上からいきまして非常に問題が多いと思うので、別途にひとつ論議をしたいと思います。ここでは少なくともアフリカ基金を設立するにあたって米ドルの問題が出てまいりましたから、その米ドルの問題に関連してせっかく第一条の規定でいわゆる計算単位なるものが算出されておるのに、附属書の中のAの第一項というもので千五百万アメリカ合衆国ドル以上というこの金が出てきたから、そこで私はこの問題をこのままではいけないのではないかということを申し上げておるのです。この附属書Aアメリカドルの問題については、私はできることなら削除したほうがいいんじゃないか、こういうことをこの前も申しました。そしてよくよく調べてみると、第二項には「当初出資」ということで、ずうっと一銀行とそれから十五カ国、全部当初出資というのが出ておりました。アメリカ合衆国だけがここに出ていないわけですね。したがって、第一項はやはりアメリカ合衆国に大体該当する条項だろうと私は思います。その他の国名は不必要なんですね。あえて言えば、一九七三年十二月三十一日までにいわゆる出資ができなかった場合の救済規定になっておるわけでございますから、いまの話し合いの中からいくと、これは不必要だともいえるものなんです。どうしても必要だというのはアメリカ合衆国、だからそのアメリカ合衆国に対して千五百万アメリカ合衆国ドルというものをここへ出してきた。そしてこの意味は、他の諸国についてはもし期限内に、本年年末までに出資ができなかったものに対してはかりに予定されるたとえばスイスが三百万計算単位出資すべきところを年末までにできなければ千五百万アメリカドルを出しなさいと、こういうふうに罰金規定というか罰則規定にも該当するものだということも理解しているわけなんです。  そういうように思いますが、しかし合衆国ドルでなぜこういう掲示をせなければならぬかというところを私は指摘している。本文の中には合衆国ドルなんというのはどこにも出てないのに附属書でなぜこんなものを出してきておるか。これを条約あるいは協定批准するにあたって国会立場から見るとどうもふに落ちないからこれを何とかしなさいということを私この前申し上げた。ひとつ外務省意見を聞きたい。
  19. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 石野先生指摘のとおり、協定附属書Aの一項におきましてのみアメリカ合衆国ドルが用いられております。このことは先生指摘のとおりのような効果を生むものというふうに解されます。したがいまして、このアメリカ合衆国ドルが用いられまして、なおかつまた先般のドルの一〇%切り下げということがございました結果、文面から見ますと米国——これは米国だけに主として目標が向けられておることも確かでございますので、米国は千五百万計算単位よりも少ない金額出資することによって原参加国となることができるようになるわけでございます。したがって、また御指摘のとおりアメリカ合衆国ドルかわり計算単位という字を用いたほうがより適当であったという考え方は私どもも十分に理解するところでございます。そこでこの合衆国ドルという字をあるいは計算単位という字に改めておいたほうがいいんじゃないかというような御主張も十分に検討に値するものであるというふうに考えておりますが、現在までのところ私どもの承知しております限りでは、ほかの関係各国はいずれもこの点についてあまり問題としておらないようでございますし、また他方におきまして、アフリカ諸国はこのような基金が一日も早く発足することを強く熱望しておるという次第でございますので、わが国といたしましても、そういった熱望にこたえまして、この基金がすみやかに成立するよう協力することを強く念願いたしておるわけでございます。したがって、政府といたしましては、協定参加いたしました上、国際通貨情勢等にかんがみて、先生の御指摘のような問題点を十分頭におきまして、この協定が作成されました当時のほんとうの意思が生かされるように、そのときの情勢に応じて最も適切でかつまた実際的であると思われる措置を講じていくように努力いたしていきたいというふうに考えておりますので、このような事情を御了承いただきまして、すみやかに御承認をいただくようにお願いをするわけでございます。
  20. 石野久男

    石野委員 私はまだ承認しないとかなんとかということを言っているわけじゃない。できる限り承認する方向へ持っていきたいという希望を持っています。だけれども、やはり理解ができないままで立法府として見のがすわけにはいかない。疑義がある以上は疑義をたださなければ国民に対してこたえることもできないと思うのです。いま局長の答えたお話によると、各国が非常に熱望しておるという話です。いまもうすでにこの条約に対して批准を与えたりなんかしている国はどことどこなんですか。
  21. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 現在までのところ実際的に批准書とか承諾書とか、具体的な手続をとった国はございませんが、情報によりますと、カナダはすでに国内的な手続を終わっておるというふうに承知しております。
  22. 石野久男

    石野委員 これはこの前も私申しましたが、カナダ日本とが入らなければこの条約効力双生はないのです。だけれどもカナダがもう明確な加盟の線が出ておれば、日本は少しおくれたってかまわないのです、こんなことを率直に言うとよくないけれども。しかし、第五十六条によるところの効力の発生というところからいけば、五千五百万計算単位、八カ国ということになると、カナダが入ってさえおれば、あるいはまた日本が入ってさえおればこれは成立するのです。日本カナダが入っていなければ成立しない。だからカナダがそういう方向が出ておれば、日本はもっと慎重審議をすればいいのであって、別に外務省が言うように、そんなにばたばたしなければならぬことはない。私はそう思うのですよ。だからむしろこの問題についても納得がいくような説明が必要であると思います。
  23. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘のとおりカナダ日本とが最高額拠出を約束しておりまして、この二国を加えて八カ国で五千五百万単位ということになるのが一番やりやすい方法でございますので、日本といたしましても、極力審議をお願いいたしまして、できるだけことしじゅうに批准書を寄託するということに努力をしたいというのが私どもの念願しているところでございます。
  24. 石野久男

    石野委員 だから、私はこの前も言ったんですよ。こういう附属書Aの千五百万ドルというのは、どうもふに落ちないのだから、だからこれを各国日本政府がやはり呼びかけて、これの内容計算単位に書きかえなさい。そうすれば文句はないというのです。米ドルは日に日に悪い方向に向いていってもいい方向には戻ってきてないのでしょう。しかも、この協定の中にある一計算単位というのは、日本計算から言えば三百八円の計算なんですよ。いわゆるドル計算で言えば、一オンス三十八ドル計算でできている単位ですよ。いま四十二ドル計算になってきて、すでに差が出ておるのに、実勢から言えばもっともっと悪くなっているのだから、そういう不安定要素協定条文の中に書き込むということについて、日本の国が、はしたないといっては悪いけれども、もしこの十五カ国のうちの最低の出資国ぐらいならたいしたこと言いません。だけれども、この協定最大出資国で、すべてのイニシアチブをとるべき位置にある日本が、こういう不安定要素協定にどうして同意することができるか。そしておそらくどなたもこれを見ればわかるように、アフリカ開発について、ユーゴスラビアを除けばここへほとんど社会主義国家というものは入っていないのですよ、ソ連もあるいは中国も。しかもこれだけじゃないのです。ここにはもうフランスも入っていませんし、おも立ったそういう国は入っていないでしょう。いろいろな意味でそういうまた別途な問題もあるわけなんですから、もうそれは私はここでは言いませんが、あえて計算単位ドルだけの関係からいえば、実勢においてほとんど力のない米ドルを何でこんなところへ持ち込んできたか、その意図何ぞやということを私は聞いているのですよ。この協定でなぜアメリカをこんなふうな守り方をせなければならぬのかということを私は言うわけです。しかもそれは日本の責任においてやらなければならぬということになってしまいますから、あえて言うならば、附属書Aのこれを書きかえるか削除するかどちらかをすることが一番よろしいのではないかという提案をしておるのですから、外務大臣どうですか。
  25. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘のとおりの事情もございますが、懸念される点は、先ほども申し上げましたとおり、ここに「アメリカ合衆国ドル」という字が入りましたために、アメリカが加入いたします際に、予定されたよりも少ない金額を支払って入るというような結果になりはしないかという点が一番大きな点かと存じますが、その点につきましては前にも申し上げましたとおり、今後の国際通貨情勢等にもかんがみまして、先生指摘問題点は、これを十分に頭に置きまして、協定作成の際の意図が十分に生かされるような措置を、日本がこの協定参加いたしましたあとでとっていきたいというのが私ども考えておるところでございます。
  26. 石野久男

    石野委員 これをつくるのは、任意な文書を交換するのと違って協定するんですからね。しかも国は批准するのですよ。批准するのだから、やはり国会においてはそれを納得しなければいけない。われわれは納得しなければ国民に対して責務を果たすことはできない。この協定の中で日本の占めている位置というのは非常に大きいのですよ、実をいうと。予想される面からいえば、アメリカ最大投資国にする予定でこれはつくられたものだけれども、その意図さえもここでは達成されなくなってきているのですね、実勢からいえば。発起人になっておられる各国は、どういう意図があろうとも、もう今日の段階でこれだけのものでいけば、アメリカ合衆国は、もちろん「以上」ということばはありますけれども、千五百万米ドルでは最大出資国にはなりません、現状では。ですから、そういうように当初の意図もここには達成されない内容だし、しかもわれわれのほうからすれば、日本国立場からすれば、非常にこれは不安定要素としては大きいものなんだから、これを除きなさいと、こう言うのですよ。除くのがしかるべきじゃないかと言うのです。大臣、どうですか。
  27. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘のとおり、協定附属書におきましてアメリカ合衆国ドルが用いられたために、先般のドル平価切り下げの結果、アメリカは千五百万計算単位よりも少ない額を出資することによって原参加国となることができるわけでございます。したがって、アメリカ合衆国ドルかわり計算単位を用いたほうがより適切ではなかったかという御指摘は私も十分理解できます。したがって合衆国ドル計算単位に改むべきであるという石野さんの御主張検討に値する考えであるとは思いますが、アフリカ諸国立場に立ってみますと、一日も早く本件基金が発足することを希望いたしております。わが国としても予ての要望にこたえて、基金早期成立に協力いたしたいと念願しておるわけでございます。先ほど御巫局長からも申し上げましたとおり、石野さんの御主張、よく理解されるわけでございますので、協定作成当時の意図が生かされるような実際的な適切な措置というものを、今後われわれが国際通貨情勢推移等にかんがみまして講じてまいっていくという道を探求していくことによって、できるだけ協定作成当時の意図が生かされるように配慮していくべきであると私は考えるのであります。  問題は、この基金日本参加をとりあえずしない中途半ぱな姿において発足するということになると、アフリカ諸国はたいへんディスカレージするのじゃないかと思いますので、何とかここで一応御了承いただいて御承認をちょうだいしておいて、石野さんの言われる御趣旨を今後実態的に実現してまいるような方途を考えさしていただくわけにいかぬだろうかと私は思うのであります。いまこの協定改正案日本側から取り上げていくことになりますと、この発足が非常におくれてきて、アフリカ諸国の御期待にこたえられぬのじゃないかというような心配もありますので、その点ひとついかがなものか、お考え直しを願えますまいかと、こう思います。
  28. 石野久男

    石野委員 それは大臣、せっかくの何とかならぬかというお話だけれども協定というのは各国間の、やはり国会批准を経て行なわれる約束ごとですよ。ですから、ここできめられたことは守らなければならぬし、またその中から日本でいえばやはり諸外国に対して便益を与えることも大事です。同時に日本自身も利益をしなくちゃいけないと思うのです。それが協定の本質でなければいかぬと思います。そういうたてまえからすると、まだほかにいろいろありますよ。あるけれども米ドルをこういう形で入れておくということは、これを問題にするということはアフリカ諸国に対してディスカレージするという大臣お話ですが、そういうことは私は考えられないと思うのですよ。むしろこのままでいけばアフリカ諸国だって損しちゃうんですよ。損するでしょう。実際に千五百万アメリカ合衆国ドルというものを、ここに書いてあるとおりにアメリカが出してくれば、計算単位でいってこれだけの計算単位金額にならないのだから、結局アフリカ諸国が損するのですよ。このことは、アフリカ開発銀行所期目的をみずからの力でなし遂げられなかったからこの基金設定をせざるを得なくなったのでしょう。そういうことを考えますと、われわれはできるだけその意図に沿うようにするためにも——これは条約上からいえば一つの瑕疵ですよ。この瑕疵を認めたままで私はこの協定を成立させることはよくないと思います。だからやはりこういうものは直すべきです。気がつかないまま過ぎたなら何でもありませんよ。それはあとで直せばいい。しかし、こういうふうにしてちゃんとわかっておるのだから。しかもこのことは、一ドル三百八円で計算してもいろいろな差額は出ますが、実勢から言えばもう一ドル二百六十五円、しかし金の相場自体からいえば、すでにオンス九十一ドルをこえているような相場ですよ、実際問題言えば。だからそういうようなことがはっきりしているのに、これをこのままで通すということはよくないと思うのです。まだ批准国はそれだけそろっているわけじゃないし、いまからでも幾らでもやれるのだから、特にイニシアをとっているのは日本カナダじゃないですか。幾らでもできますよ。それはやるべきですよ。
  29. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 石野先生指摘でございますが、附属書Aの1項の書き方は、「千五百万アメリカ合衆国ドル以上」ということでございまして、そのまま千五百万ドルだけであれば、御指摘のように減るということでございますが、私どもがこれに参加いたしまして、アメリカはいまこの協定に入るための検討にやや時間がかかるということを申しておるわけでございますから、そのあとから入ってきますアメリカに対しまして、その「以上」という字を生かして、当初の期待にそむかないようなことを実現させるように誠心誠意努力をしたいというふうに申し上げておる次第でございます。
  30. 石野久男

    石野委員 これを計算単位と読むなら、これは問題ないけれども、このままにしておいて、所期目的の達成されるように努力していくつもりであるというだけでは、協定締結するにあたっては不十分ですよ。もしそういうことをやるとするならば、この協定が成立するときに、やはり何ら  かのだめ押しをしなくちゃいけないと思うのです。政府はこれについて何らかのだめ押しをしますか。あえて言えば、たとえばこれをやるについては、千五百万米ドルというのは千五百万計算単位と解釈するということを日本がちゃんとこの協定の中に、いわゆる解釈保留をするという決意がありますか。
  31. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 私どもといたしましては、現在のところどういう手段が最も適切であるかという点について結論を得ておりませんが、今後の情勢の変化に応じまして、最も適切な措置をとって、実質的効果があがるように努力を続けていきたいということでございます。
  32. 石野久男

    石野委員 協定を成立させるにあたっては、それは何の意味もないですよ。あなた方の願望だけなんですよ。何の役にも立ちませんよ。協定を成立させるなら、この協定条文の中にわれわれがいま疑問に思っておる点を明確にしなければいけません。だから、たとえばここで「以上」ということばがあるからといって、「以上」というのは何にもなりゃしないでしょう。「以上」というのは、たとえば千五百万一ドルでも以上ですよ。だからそういうものは何の役にも立たない。この協定の中で確実にそのことが、われわれの危惧する点が保障されるようにするには、少なくともその「千五百万アメリカ合衆国ドル」というものは千五百万計算単位と読む、われわれはそのように読む、そういうように考えるということですね。解釈するということをやはり明確にこの協定の中に書き込む必要があります。だからそういうことをすれば、私は別に文句を言いませんよ。そうすれば、これはいわゆる時価相場でどうなろうと、計算単位として読むのだからそれでいいでしょう。それ、できるはずですね。それをやりますか。
  33. 大平正芳

    大平国務大臣 まあ、ざっくばらんに言いまして、アフリカ諸国はこの協定の成立を望んでおるわけなんです、受けるほうは、ですね。それからアメリカも、税金を払うのでないので、自発的に拠金していこうということなんでございまして、石野さんの御趣旨を体して私どもアフリカ受益国側の立場に立って、これは計算単位として読みかえなければならぬというようなことを申すことによって、自発的に出そうとするような国に対して、それをディスカレッジするような働きをすることも、また日本として本意でないわけでございますね。(石野委員「どうしてですか」と呼ぶ)つまり日本が千五百万計算単位を出すということが問題なんでございまして、これは日本としてはきれいさっぱり出しましょうということなんでございまして、問題は基金アメリカとの関係なんでございまして、そこへ日本が介入していって、これをどうしても計算単位でなければならぬぞということを日本が言い出すべきかどうかということについて、多少私は配慮すべき点があるのじゃないかという感じがするのでございます。  いま、協定自体からいうと、「千五百万米国ドル以上」とあるから、その「以上」を生かして、その協定の文言を生かして、実際上協定成立当時の状況をつくり出すようにわれわれもひとついろいろくふうをしてみようということまでは申し上げておるわけなんでございまして、そのあたりで御理解いただけませんかね。
  34. 石野久男

    石野委員 大臣、いまの答弁の中でも、ほんとうに協定の成立を考えるなり、実情というものを読み取っていないと思うのですよ。主客転倒していますよ。大体アメリカアフリカ基金との間の問題に日本が介入するなどということばを使うことはもってのほかですよ。この協定のどこにアメリカということばが出ているのです。協定本文の中にはアメリカなんて出てないのですよ。アメリカが出てきたのは、附属書のここにアメリカ合衆国というのと、アメリカ合衆国ドル、この二つが何か出ているだけですよ。むしろこの協定の中にアメリカが介入してきたのですよ。介入してきて、この協定を混乱させるのですよ。だからこんな介入してきたものは排除すればいいと言うのですよ。こういうものは、私はこの附属書Aというのは全然不必要だと言いませんよ、アメリカ協定に入れるためには。だけれども、これはなくてもいいものなんです。まさに盲腸的存在なんですよ、附属書Aは。切り取ったほうが、あとあと病気が出なくていいのですよ。このまま置いておくと必ず急性盲腸とかなんとか命とりになっちゃう。まずいですよ。やっぱりこれは大臣、取り除く方向に持っていくか、さもなければ私が言うように「アメリカ合衆国ドル」というものを計算単位と書きかえるか、それでもだめならばやはりわが国は「千五百万アメリカ合衆国ドル」というものは千五百万計算単位と解釈するという解釈留保をとると協定の中につけるべきです。これは前例は幾らでもあるのだからつけたらいいでしょう。
  35. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 附属書Aの1項が入りましたのは、アメリカがこのアフリカ開発基金に当初から非常に熱心な態度を示して、初めは日本カナダと同じような程度のお金を払って入るということでございましたが、しかしながらいろいろな事情からアメリカの加入には時間がかかる、その時間がかかるアメリカ立場もくみ取って、こういう規定を残したというわけでございまして、盲腸的な存在になるというふうには私ども考えておらないわけでございまして、それを読みかえるというような形で入りますことも、いまここでそういうことを申し上げるのもいささかいかがかと思われますので、とにかく私どもといたしましてはその当時の情勢に応じて適切な最も有効な措置を講じて、当初の協定成立当時の意図が十分に実現されるように努力を続けていきたいということを申し上げておるわけでございます。
  36. 石野久男

    石野委員 いまの答弁でも、これは何も私の質問に答えていない。同じことばかりしか言っていない。それじゃ私は納得しません。特にその解釈留保をつけろということについて、これは国益にもあるいはまたアフリカ基金そのものの健全性のためにもいいことなんだから、悪いことなら私は言いませんけれども、いいことなんだから、そのことは大臣が言うよりももっとアフリカ諸国は望むと思います。大臣がおっしゃるよりもアフリカ諸国はより以上にそのことを望むはずです。だから、これはひとつ検討してください。これが検討されなければ、私は納得できない。私はまだこれで納得しませんから、もう一ぺんひとつ検討の上御返事をいただきたい。  それからいま一つ、時間がないのでもう一つ聞いておきますが、この前のお話によりますと、この問題については四十八年度予算の中には全然やはり予算費目としては計上もされてないし、何もこの費目のなには出てないということでございました。そのとおりでございますね。
  37. 前田多良夫

    前田説明員 これは出資の際は国債で出資することになっておりますので、現金予算の中には組んでおりません。
  38. 石野久男

    石野委員 そうすると、国債の中にはそれはちゃんと予定されておりますか。
  39. 前田多良夫

    前田説明員 国債の償還財源としては考えております。
  40. 石野久男

    石野委員 私はことしの予算の国債費の費目をずっと見ておるのですが、その中にはどうも出ているように思われないのですよ。もしどうしてもあるというのならこまかいぼくらにわかるような資料をひとつ出してもらいたい。
  41. 前田多良夫

    前田説明員 国債整理基金の中におきまして、五百万計算単位分十五億四千万円を見込んでおります。御承知のようにこの国債の償還は、銀行が必要とするつど日本に請求する、そういうことでございまして、一応見込みとして五百万計算単位でございます。
  42. 石野久男

    石野委員 第一、これは五百万計算単位では、出資額にも満たないわけですし、今年度、年末までの出資には間に合わない。  それからもう一つは、そういうようなことを何を基準にして予算に組んだか。その点もひとつ聞かしてもらいたい。
  43. 前田多良夫

    前田説明員 千五百万単位に満たないという御質問でございますが、これは、この国債が現実にアフリカ開銀が現金を必要とするつど日本にそれを現金化してほしいという請求がくるわけでございます。その請求がきたつど国債整理基金のほうから現金化して払う。四十八年度中に幾らくらいその現金化の請求がくるかというのを一応五百万計算単位として見込んだわけでございまして、全額くるということは実際上あり得ないことである、こう見ておるわけでございます。
  44. 石野久男

    石野委員 時間がありませんが、効力の発生という問題については年限の指定があるわけですよ。この出資は、どこにも半額出資とかなんとかと書いてないのですね。われわれはこれは全額出資というふうに見ているのです。当初出資という形でちゃんと計算が出ているの、だから、だからそういうことはちょっと了解できない。
  45. 前田多良夫

    前田説明員 お答えいたします。  第六条の第二項には三年間に支払う。「払込みは、次のとおり三回の均等年賦で行なう。」こういうふうになっているわけでございます。
  46. 石野久男

    石野委員 この読み方はいろいろあると思うのです。六条にはそういうことが書いてあるけれども、付属書のAにはより現実的に必要なものを書いてあると思うのです。これは当初出資額としてちゃんとこのように規定しているわけですね。ですからこれは扱いの問題でしょうけれども、しかし先ほどから大臣がしばしば言っているように、アフリカ諸国がこの基金の成立を首を長くして待っているのだということならば、それは当然のこととしてそこに出てくる基金の全額出資、こういうようなものがなければ仕事は進まないはずですよ。こんな額でアフリカの全諸国三十数カ国にわたって均てんされるような仕事が十分なされる金額でもないわけなんだ。だからそれを最大出資国である日本が三分の一の出資で間に合わすつもりで——それじゃそういうつもりでおるのですか。そこのところをはっきりさせてもらいます。——それじゃそれは時間がないそうですから、私は質問を留保いたします。この次の機会に答弁いただきます。      ————◇—————
  47. 藤井勝志

    藤井委員長 条約の審査はこの程度にとどめ、次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  48. 石井一

    ○石井委員 外務大臣、きょうは私日中問題で質問をいたす予定でございますが、その前に非常にホットな問題で、何かバングラデシュがきょうのニューヨークにおける国連経済社会理事会でエカフェの加盟の承認を得たということを仄聞いたしましたが、これは事実でございますか。
  49. 影井梅夫

    ○影井政府委員 本日のお昼直前に、私どもニューヨークの日本の国連代表部から得ました報告によりますと、ただいま石井先生指摘のとおり、現地時間で十七日から始まりました国連の経済社会理事会におきましてバングラデシュをエカフェのメンバーとして認めるという決議が通ったということで、あと手続問題といたしまして、これがニューヨークの経済社会理事会からエカフェの事務局に正式に通告されまして、その通告を得ました後に、バングラデシュがエカフェの正式のメンバーとしてこれに参加するということになるわけでございますが、三十分ほど前に、エカフェ、いま東京で行なわれておりますエカフェの事務局に確かめましたところ、まだニューヨークからの正式の通告は受けていないということでございます。しかしこれは手続的な時間の問題でございまして、この通告を得次第、バングラデシュはエカフェのメンバーとしてこれに参加する、こういうことになるだろうと考えております。
  50. 石井一

    ○石井委員 バングラデシュが東京で開かれておりますエカフェの会議にそういう希望を提出せずに、ニューヨークでこういう手続をしなければならなかったのはなぜか。これが成規の手続なのかどうか。
  51. 影井梅夫

    ○影井政府委員 手続的に御説明申し上げますと、エカフェのメンバーとなるためには、エカスェの付託条項と呼んでおりますが、国連の経済社会理事会の決議、これを形式的に一部改正をいたしまして、その国名を挿入するという手続をとるわけでございます。  そこで実際問題として慣行としてどういうふうな手続がとられておるか。慣行といたしましては二つあるかと思います。  一つは、まずエカフェの場におきまして、エカフェのメンバーとしてこういう国を新たにメンバーに迎え入れたいという趣旨の一種の勧告でございますが、これを行ないまして、これをニューヨークの国連経済社会理事会に送る、この経済社会理事会におきまして、ただいま申し上げましたエカフェ付託条項の一部改正という形でエカフェの加盟を実現する。  それからもう一つは、今度バングラデシュがとりました手続がそれでございますが、直接に国連の経済社会理事会に加盟の申し出をいたしまして、経済社会理事会の場において加盟を実現する。この二つの方法があるわけでございます。
  52. 石井一

    ○石井委員 今回の加盟の際に中国が反対したということを耳にしておりますが、こういう事実があったかどうか。
  53. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ニューヨークのわがほうの国連代表部から得ましたただいまの電信によりますと、中国は原則としてバングラデシュがエカフェに加入すること、これには異議はない。ただバングラデシュにつきましては、御承知のとおり一昨年の十二月にああいう問題がございまして、当時国連の安全保障理事会におきまして、バングラデシュが捕えましたパキスタンの捕虜の早期釈放という希望を表明しておりますが、これが実現されるのを待って、それから認めるのが順序であろうという立場からいたしまして、今回中国がこれに反対したというふうに報告を受けております。
  54. 石井一

    ○石井委員 外務大臣日本はおそらく賛成されたんだろうと思いますが、日本政府としてはバングラデシュのエカフェ加盟というものを歓迎されますか。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国は歓迎しかつ賛成票を投じました。
  56. 石井一

    ○石井委員 それじゃ次に話題を変えまして、廖承志代表団が訪日いたしておりますが、けさ最初の会談を外務大臣はお持ちになったということでありますが、会談の内容について、何か特別に当委員会に御報告さるべきようなことがありましたかどうか、その成果について御所見を伺いたいと思います。
  57. 大平正芳

    大平国務大臣 会談ということになるかならぬかわかりませんけれども、民間の多くの団体の御招待で来日された廖承志氏と今朝約四十五分間お目にかかりました。話の内容は一般的な日中関係についてお話しをいたしたわけでございまして、日本と中国のこれまでの日中関係の推移に廖承志氏も私も満足しておるということ、そして両国の一そうの理解と信頼を深めるように努力しようということをお互いに確認し合ったわけでございます。
  58. 石井一

    ○石井委員 廖使節団、訪日団が滞在しております間に、これからいろいろの大きな問題が、航空協定をはじめたくさん日中の間にあるわけでございますが、けさの最初のいわゆるコーテシーコールでは非常に親善な中でただいま会見が終わったという御報告がございましたが、滞在中に非公式ながら政治的な会談を数回お持ちになる御予定がおありになるのかどうか、この点をお伺いいたします。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 外交関係案件は外交ルートを通じまして処理してまいる筋合いのものでございます。ただ同氏がせっかく御来日されておるわけでございますから、意思の疎通を一そう深めてまいることは当然政府、私の任務であろうと思うわけでございまして、御在日中にお互いの時間が差し繰りがつくならばまた話し合いましょうということでお別れしたわけです。
  60. 石井一

    ○石井委員 大臣、もしそういう機会がありましたら、私の立場からしても二、三ぜひお願いしていただきたいという問題がございます。  政治問題については後ほど時間があればだんだんと触れていくわけでございますが、一つはいまでも中国に残っておるという日本人がかなりございます。一説によれば四千人という数もございますけれども、特に日本婦人の自由な里帰りを日中両国の友好促進をする意味でも実現をしていただきたい、そういうことについてもひとつ話をつけていただきたいという希望であります。  それから日中間の遺骨の引き取り、収集ということについては話し合いが進んでおりますが、あと一歩の詰めというものを聞いておりませんけれども、この点についてもひとつ万全を期していただきたい、これが第二点。  それから第三点は、いわゆる国交の樹立によりまして、門戸が開かれてきておるわけで、今度のミッションもあらゆる各層の人々が、もう作家から画家からあらゆる人々がこのミッションの中に含まれておる、こういうことでございますけれども、従来から日本人が中国へ行くということになりますと、どうしても古い友人をたよっていくというか、一つの既成化されたルートでどうしても行かなければならぬ、こういう面があります。私はこの際やはりこんなに大きなミッションを引き受けておるわけですから、もう少し新しいルートというものを確立するためにも、外務大臣はひとつ忌憚のない話し合いを廖承志さんとしていただきたいという感じがしてなりません。どうかそういうふうな意味で、これは非常に至純な国民の願いとして、この三点について政府は前向きの考え方を持っておられるのかどうか、ひとつおっしゃっていただきたいと思います。
  61. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 ただいまの三点のうち最初の二点、技術的な面がございますので私からお答えいたしますが、未帰還者のことに関しましては、現在外交ルートですでに先方と接触しておる次第でございますが、なお重ねてあらゆる機会をとらえてこれを促進するということは非常にけっこうなことであろうとは思う次第でございます。  第二の遺骨の問題に関しましては、現在かなりこまかいところまでいま煮詰めておりまして、早急に遺骨の送還を完了したい、かように考えております。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 日中間の交流につきましては古い友人、新しい友人分け隔てなく幅広く各層にわたりましての交流について配慮をしてまいりたいと思います。
  63. 石井一

    ○石井委員 私が申しておりますのは、いまの御答弁で十分なのでございますけれども、非公式のこういう会談を通してこういうものを実現していただきたい。特にわれわれは国際交流基金などというふうな制度も持っておりますし、これは当然中国との交流もこういう基金からどんどん進めていくべきである。また文化協定どもつくって広範な範囲に広げていくべきであるという感じがしてなりません。従来のルートといえばやはり国貿促であるとか日中友好協会であるとかいうふうに非常に範囲が狭められておる、こういうふうな感じがしてなりません。  私は本年の一月に北京へ行ってまいりましたが、今度中国からやってきておりますミッションは日本のあらゆるところへ出かけていって、いわゆるはだで触れた交流をやろうとしておる。われわれの場合は、行きますと、どうしてもかごの鳥なんて言いますと、これは語弊があるかもわかりませんけれども、行動範囲というようなものは非常に制約されておる。私はそういう面でもひとつ外相レベルの話し合いの中で、こういうふうなものは実際の意味での平等の立場に立った交流というふうに、やはり日本側からもう少し積極的な要求というものを出していくべきであろう、私はこういうふうに感じるわけでございます。先ほど里帰りのことについても御要望したわけでございますが、外交ルートでやっておるという御答弁でございましたけれども大臣としてもこういう問題について非公式の会談の中で積極的に推進されていこうという御意思があるのかどうか、何か御所見がありましたら、これも含めて大臣からの御答弁をひとつお願いしたいと思います。
  64. 大平正芳

    大平国務大臣 石井さんのお話のとおりでございまして、分け隔てなく自由な交流が望ましいわけでございます。またそのために努力しなければならぬと思います。ただ、双方の制度、慣行が相当違っておりますので、われわれが希望するとおりなかなかいかない場合もございますけれども、極力自由な各層の交流が可能になるような道を漸次開拓してまいらなければいけない。そういう外交的努力を続けてまいりたいと思います。  里帰りの件についてのお尋ねでございますが、われわれの外交ルートを通じまして御趣旨に沿うように努力を重ねてまいりたいと思います。
  65. 石井一

    ○石井委員 小川大使が着任いたしましたときに、外務大臣の書簡を持っていかれて、姫外務大臣の訪日招請をなさったようでございます。それから田中首相から周恩来首相に当てた書簡の中で、いわゆる日中定期閣僚会議のようなものを御提案になったというふうに私、聞いておるわけでございますが、姫外務大臣の訪日というのが本年中に比較的早い時期にされるのではないか、また日中間にもいろいろな大きな問題がたくさん横たわっておる、こういう感じを持っておるわけでございますが、外務大臣はこれに対してどういう感じを持っておられるか、姫外務大臣の訪日の件でございますが、いかがですか。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 私から正式に御招待を申し上げたのでありまして、先方もその希望は持っておられるようでございますけれども、いつ来日が可能になるかということについて、まだ確たる展望をお持ちでないようでございまして、私どもといたしましてはできるだけ早い機会に御来日されることを希望いたしております。
  67. 石井一

    ○石井委員 姫外務大臣が訪日されだとすると、いわゆる田中書簡に盛られておった日中定期閣僚会議の第一回が開かれる、こういうことにもなるのじゃないかと思うのでございますが、いわゆる閣僚会議なるものはわが国はたくさんの国と持っております。しかし中国との閣僚会議の必要性というものも十分認めますから、できれば本年中に第一回のこういう会合を持たれるべきである、私はこういう考え方を持っておるわけでございますが、もし日中閣僚会議なるものを姫外相の来日したときに持たれるというふうな場合には外相対外相のようなレベルの会議になるのか、経済的あるいはそのほかのいろいろな面でのもう少し幅の広い、文化、科学というふうなものも含めようという気持ちを外務大臣個人としてはお持ちになっておるのか。この辺の会議の中身について外務大臣の構想をひとつ明らかにしていただきたい、こう思うわけでございます。
  68. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国といたしましては、アメリカカナダ、韓国、豪州、この四カ国との間には定期的な閣僚レベルの合同委員会というような形での会合を持っておるわけでございます。ソ連、英、独、仏等との間には外相定期協議、外務大臣だけの協議、そういう形の接触のしかたをいたしておるわけでございます。今度新しく開きました日中の間にどういうような姿で相互の協議が進められるのが望ましいかという問題は、双方の一つの検討の題目としてお互いに研究してみようじゃないかというのがいまこちら側の御提案の趣旨でございまして、先方も検討してみようということでございまして、これをどういう姿にするかということまでまだ固まっていないわけでございます。先方にもいろいろな御都合がございましょうから、これがいつどういう姿で実現するというようなことを私がいまここで申し上げられるはずのものでもないと思うのでございまして、先方もとくとひとつ考えてみようということのようでございます。
  69. 石井一

    ○石井委員 相手があることですから、外務大臣が一方的に申されませんが、しかしいまの御答弁を聞いておりますと、できれば多くの閣僚も参加したいわゆる四国のような形の閣僚会議にまで持っていきたいが、姫外相が本年度中に訪日された場合には、少なくとも外務大臣外務大臣のこういう閣僚会議には持っていきたい、そういう希望を外務大臣としては持っておられる、そういうふうに私、理解したわけでございますが、それでよろしゅうございますか。
  70. 大平正芳

    大平国務大臣 相互の意思の疎通のチャンネルといたしましては、できるだけ充実したものを持ちたいものだと私は考えております。
  71. 石井一

    ○石井委員 日中航空協定の交渉の第一ラウンドが終わっておるわけですが、ミッションが帰ってまいりましてからかれこれ一月たっておるのに、事態の進展が全然ないというわけで、これはやはり一つの大きな問題じゃないかという感じを私は持っておるわけでございます。いろいろの発言、一連の動きを見ておりますと、結局は台湾との相互乗り入れをやっておる、これが一番の問題になっておるというふうに考えるのですけれども、その後北京にも東京にも大使館ができておる。交渉はおそらく持続されておるというふうに考えるわけでございますが、この一カ月何らかの進展があったのかどうか、交渉の経過がどうなっておるのか、この点についてひとつお答えをいただきたい。
  72. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 この前の予備折衝で、主として協定文の文案に関する日中双方の見解の調整、意見交換を行なったわけでございますが、その点に関しまして技術的な問題を検討を進めておりました。  なお、御指摘のように、外交チャンネルを通じまして、その後も引き続きこまかい課税とか送金とかそういった技術的な問題をも相互に詰め合っておるわけでございまして、協定文といたしましてはこの間かなり作業が進んでおるというふうに御了承いただきたいと思います。  なお、それ以外の政策的、政治的な問題に関しましては、現在関係各省との間であらゆる角度から資料を慎重に検討しておるという段階でございます。
  73. 石井一

    ○石井委員 むだに時間を過ごされたというわけではございませんけれども、肝心のことが解決しておらぬから問題が詰まってないというふうに私は考えざるを得ない客観情勢がある。この辺で政府は明確な態度を台湾問題についてある程度示さざるを得ない時期が来ておるのではないか。もしまだそういう決断がなされておらないのであれば、これはひとつ外務大臣がなさるべきそういう時期が到来しておるのではないかというふうなことを考えるわけです。特に日中共同声明の精神などからいいましても、やはり国際信義という面からしても、向こうは急いでおるわけですから、結局この問題が解決しないということは、いまの御答弁の中では技術的な問題も大体解決してきた、だいぶ詰めるところまで詰めて進展してきておるということですから、最後の一つのかなめだということであると思いますから、外務大臣、この点いかがですか。
  74. 大平正芳

    大平国務大臣 予備交渉を終えて、いま双方が航空協定に関連した末梢問題を内部的に検討しておる段階でございますが、問題は本交渉をいつ持つかということだと思うのでございます。石井さんのおっしゃるように、私どももこれを遷延してまいるつもりはないのでありまして、遠からず本交渉を持つべく、せっかくいま準備をいたしておるわけでございます。
  75. 石井一

    ○石井委員 大臣、これは政治的な問題ですから非常にお答えにくいのだろうと思うのでございますけれども、もう少し、これは国際的信用という立場からも、この辺で外務大臣が日中正常化に決断されたような決断がこの問題にとっては必要な時期が来ておると私は思うのです。  お答えにくいと思いますので、具体的にちょっと尋ねますが、この問題は一つは台湾に乗り入れておる日本の航空企業の問題、それから第二の問題は発着空港の問題、それから第三はいわゆる便数を幾つにするかという、この三つの問題だと思うのですね。そこで第一番目からできるだけひとつ前向きに政府のお考えを聞かしていただきたいと思うのですが、中国側は一つの中国という原則にのっとって、中国と台湾との二つの飛行機が同じ飛行場におるということは漫画だというふうな発言をしたのもありましたが、それはともかくといたしまして、日本の航空企業を別々に、台湾に飛ばす飛行機会社とそれから中国のほうに飛ばす飛行機会社ということをお考えになりませんか。この点はいかがですか。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 せっかくの御質問でございますけれども、いま申し上げましたように遠からず本交渉に入らなければならぬわけでございまして、外交交渉というものはその過程におきましては一応政府におまかせをちょうだいいたしたいと思うのでございます。  しかし、それだけ申し上げておるとまた木で鼻をくくったようなあいさつになりまして、おしかりをちょうだいすることになるわけでございますので、私がこの段階で申し上げられることは、日中航空協定であるということでございます。したがって、日中間が相互主義の原則を踏まえていま御指摘のような問題についてひとつルールをつくっていくということなんでございますので、それをどの空港をどうする、どの航空会社をどうするという具体的なことになりますと事柄はたいへんやっかいになってまいりますので、交渉の道程におきましてはそういった具体的な問題に触れることはひとつごかんべんをいただきたいと思うのでございますが、先ほど申しましたような原則を踏まえてまいるということが一つでございます。  それから第二番目の問題は、あなたも御心配いただいておる日台航路の問題なんでございます。この問題は、協定自体からいうと協定の中に入らない問題なんです。協定のどこにも出てこない問題なんでございます。現に日台間には政府間の航空協定はないわけでございまして、会社関係、航空会社の契約に基づいて運営がされておるわけでございまして、この問題は今後もこういう形のものになるわけで、それ以外に道はないわけでございまして、協定に書き込めるという性質のものではないわけでございまして、事実上の問題としてどのように配慮していくかという課題であろうと心得ておるわけでございます。したがって、私どもといたしましては日中間の理解と信頼、そういうものをそこなわないようにしなければなりませんが、同時に、日台間に現にあるところの輸送需要というものをできるだけ果たすようなくふうも同時にしなければならない、この二つの考慮の中でいろいろ検討を進めておるわけでございます。日本の空の事情も御案内のように相当ふくそうをいたしておりますだけに、航空技術的な検討ということが非常に大事なわけでございますので、専門家の御参加をいただいて、そういった点に遺漏のない検討をいま続けておるということで御承知を願いたいと思います。
  77. 石井一

    ○石井委員 もうこれくらいでほかの問題に移るべきなんですが、もう一言だけ続けさしていただきたいと思いますのは、いまの御説明を聞いておりますと、日台間の航路はいわゆる日台条約に基づいた交換公文でなくて、いわゆる国内法の航空法から許可しておる民間のものである。しかし片一方のほうは完全に正常化を打ち立てた、正規の国交を持っておる国との正規の航路がなくて、片一方のほうは民間のほうが優先しておるのかどうか知りませんけれども、そういうことは非常に変則的である。私は昨晩、過去の新聞をだいぶ拾い読みしたのですが、大使が赴任すれば直ちにやるのが航空協定締結だということが一月ほど前の新聞に出ております。廖承志ミッションが来る前にこれはきまるのだということが出ておるにもかかわらず、この一月間こういう形のまま、しかもほとんど日本側サイドの理由によって遅延しておるということは、もう技術的な問題じゃない、私はここに非常に大きな政治的な問題と決断の時期が来ておるという感じがしてなりません。  私はこの三つの問題についてもかなり調べてまいったわけでありますが、たとえば台湾との航路は中華航空二十一便、日航三十七便、これは週でありますけれども、おそらく北京からの飛行機は週に一便か二便だということでありますから——これはもっと多いかもわかりませんけれども、数の上、空の過密という問題ではそう問題ではないし、話し合いによっては、空港の問題は、この日は中国から来るのだということにすれば解決がつくだろうと私は思います。それから台数の制限という問題も、話をしてみないとわからぬわけでありますけれども、まず正常化をしておる国に対してある程度のそういう具体的なものを示してみぬ限り話がつかないのではないか。かえって私は勇敢にこういう問題について一つ一つ詰めていかれればこの航空協定は即時できる時期が来ておるのではないか、そういう感じがしてなりません。その便の問題にしたところで、航空会社をかえることによって解決するのではないか、私はこういうふうに思うわけでございまして、この点、どうかひとつ外務大臣の御勇断を御要望したい。私がただいま申しましたことについて何か御所見がございましたらひとつお伺いをいたしまして、次の問題に移りたいと思います。
  78. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへん航空交渉が遅延しているんじゃないかという御印象でございますけれども、私はそう思っていないのです。十一月に当方の案を出して、二月に先方の対案を受けて三月に予備交渉をいたしたわけでございまして、決してこの事の運び方がたいへん渋滞しておるとは思っていないわけでございます。  それから日台航路の問題は、先ほど申しましたように、政府間の協定上の航路でないということを私申し上げておるわけでございます。協定自体に乗らない性質のものであって、台湾の置かれた立場の特異性にかんがみまして、こういう事実上の民間レベルの運航という姿をとらざるを得ないわけでございまして、非常に変則的でございますけれども、このたいへん変則的な事態に処しての処理のしかたは変則的にならざるを得ないわけなんでございまして、これをすっぱりやるというような道はないわけなんでございます。政府間の協定上の航路にするという道はないわけでございます。  それから第三の問題といたしまして、しかし問題は具体的に決断をしなければならぬことは私もよく心得ておるつもりでございまして、そういうことにつきましては、先ほど申しましたように、技術的な検討をくまなくやり遂げまして一つの仕上げをいたしたいということで、せっかくいま検討を進めておるわけでございますので、しばらく時間をかしていただきたい。決してこれを遷延させるつもりは毛頭ないわけでございます。
  79. 石井一

    ○石井委員 簡単でけっこうですが、これ以外に友好通商条約、漁業協定、海運協定、その他いろいろの協定があるし、もっと大きいのは共同声明にうたわれたいわゆる平和友好条約ということでございますが、こういう作業についてその後何らかの進展があるかどうか。
  80. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 当面日中間に予想されますのは海運協定、それから六月二十二日に失効いたします漁業民間協定、これにかわる何らかの政府協定、それから貿易協定、こういったものは鋭意現在検討して準備を進めております。日中友好条約に関しましては先方となお話し合っていかなければならない幾つかの問題があるかということでございますが、なるべく早く取りかかりたい、かように考えております。
  81. 石井一

    ○石井委員 大臣の基本的な姿勢ということをちょっとお伺いする意味で、あと二点ほど中国問題から離れてお伺いいたしますが、一つはいまエカフェの総会が東京で開かれておるわけでございますけれども、いわゆるアジア安保という問題に関して中国とソ連との応酬というものも報道されております。近く総理がソ連を訪問し、シベリアの開発その他領土問題をいろいろと話し合う場合に、当然アジア安保という構想が話題になると私は思うのでありますが、外務大臣はアジア安保に対してどういうお考えをお持ちでありますか。
  82. 大平正芳

    大平国務大臣 アジア安保構想というのはソ連で打ち上げられた構想でございますけれども、私どもまだその中身につきまして詳しく承知いたしていないわけでございますので、これについて意見を申し述べるにはまだ材料が乏しいわけでございますので、ごかんべんをいただきたいと思うのであります。しかしアジアの安全保障という問題は、常にわれわれが追求していかなければならない問題でございまして、どの国も、それからその国々のどの政党におかれましても、それぞれこの問題については関心を持ち、あるいは検討をされることと思うのであります。  いま日本政府がそれではアジア安保構想というようなものを持っておるかというと、遺憾ながらまだそういう壮大な構想を身につけるまでには至っていないのでありますが、日本としてアジアの安全保障に取り組む場合にどういう足場を固めておかなければならぬかというふうな問題は、われわれといたしましてのさしあたっての関心事でございまして、そういう点には不断に勉強を重ねていかなければならぬと考えております。
  83. 石井一

    ○石井委員 これは最後の質問でございますが、答えにくい問題ではございますけれども、やはりこのエカフェの総会で、いわゆる中国の代表からアジア開発銀行から台湾を追放すべきだ、こういう提案がなされたようでございます。アジア開銀設立協定の三条には、いわゆる加盟の規定というものがあるわけでございますが、私この三条を読んでみますと、これは近い将来にやはり入れかわらざるを得ない情勢が来るのではないかという感じがするわけで、そういう提案がなされた場合には、外務大臣としてはどういう御指示をされるだろうか、この点たいへん興味がありますので、感触だけでけっこうでございます、何も条約論をやるわけではございませんから、どうかひとつお答えいただきたいと思います。
  84. 影井梅夫

    ○影井政府委員 昨日のエカフェ総会におきまして、中国の代表からアジア開発銀行につきまして、アジア開発銀行に台湾が入っているのは不適当である、そしてエカフェといたしましてこれを何とかすべきであるという発言がございました。その直後に事務局長のほうから、確かにアジア開発銀行はエカフェが母体となってできたものであるけれども、現在はエカフェから独立した機関である、したがってこの問題はアジア開発銀行において議論されるべき問題であって、エカフェにおいてこれをどうこうすべき問題ではないという発言がございました。  それからまた先ほど受けました報告では、その趣旨をけさまた重ねて確認をいたしまして、中国の代表からはそれ以上何らの発表、要求がなかったというふうに承知しております。
  85. 石井一

    ○石井委員 ありがとうございました。
  86. 藤井勝志

    藤井委員長 河上民雄君。
  87. 河上民雄

    ○河上委員 先日私はエカフェにおいて、もしある国が、たとえば中国のような国が、朝鮮民主主義人民共和国を招き入れてみてはどうか、招待すべきであるというような発言をした場合に、大平外務大臣としては、日本政府としてはどういうふうに対処するかという質問をいたしました。外務大臣が北ベトナムをエカフェ総会に招くべきであると言われましたのに関連いたしまして御質問したのですが、そのときはまだ現実にそういうことは起こっておらず、仮定の問題として御質問したような形になったのですけれども、その直後、いま東京で行なわれておるエカフェ総会で、私が予想したような事態の発展になりまして、あらためてこの北朝鮮いわゆる朝鮮民主主義人民共和国のエカフェ加盟の問題につきまして、日本政府としてどのようにお考えになるか、このような新しい事態の発展を背景に入れながらどういうふうにお考えになるか、お答えいただきたいと思います。
  88. 大平正芳

    大平国務大臣 先般の工カフェの私の演説で私は、インドシナのすべての国がエカフェへ参加することが望ましいという趣旨の発言をいたしたのでございます。したがって当然、北越がエカフェに入るということは望ましいことであると考えております。  北鮮についてどうかという御質問でございますが、朝鮮半島におきましては、御承知のように南北の間で政治会談が行なわれておるわけでございまして、自主的な、平和的な統一を目ざしての接触が行なわれておるわけでございまして、本院におきましても、私は、朝鮮半島の問題を処理するにあたりましては、この南北の対話というものの進展ぶりを十分踏まえた上で対処しなければならぬという趣旨のことをたびたび申し上げておるわけでございます。したがって北鮮がWHOあるいはエカフェというような国際機関に加盟する、参加されるというような問題がこの南北の政治会談というものにどういう影響を及ぼすかというような観点から検討を重ねる必要があるのではないかということを私どもは申し上げておるわけでございまして、南北会談に全然影響がないものと判断するというようなぐあいにはいかないんじゃないかといま考えておりますので、いましばらくこの推移を見させていただきたいということを繰り返し申し上げているのはそういう趣旨なんでございます。
  89. 河上民雄

    ○河上委員 この五月七日ですか、WHOがジュネーブで開かれる際に朝鮮の共和国からWHOに加盟の申請が出されております。もしここでWHOに加盟が認められたという事態が現実に起こりました場合に、当然、国連機関でございますから、そのメンバーに対してはたしていままでと同じような態度でいっていいのかどうかという問題が起こってくると思うのです。いま大臣が言われたような態度で朝鮮民主主義人民共和国にゼネラルな問題として対処するとしても、WHO自体に対してはまた違った問題が出てくるんじゃないかと思うのです。もし加盟が実現する——私はこの前から仮定のお話を伺っておるわけですけれども、私の仮定は一週間もしないうちに現実になりますので、ひとつその点を重ねてお伺いをしたいと思います。
  90. 影井梅夫

    ○影井政府委員 かりにWHOに北鮮が加盟を認められたならば、その後の国連ないし国連関係のいろいろな機関の場においてどういうふうな影響が起こるであろうかという御質問でありますが、これは一つには、かりに北鮮が加盟を認められるそのときにどういう態様で、具体的に申し上げますと、どのぐらいの票数の差で認めらるれかということによってもその後の影響はいろいろ違うかと思います。したがいまして一概に申し上げるのは非常に困難かと思いますけれども、もしWHOに北鮮が加盟を認められるということになりました場合には、一般的に申し上げまして、北鮮の国際的な地位が、いろいろ程度の差はあると思いますけれども向上したというふうに認められる。まあ、仮定の問題でございますのでお答え申し上げにくいのでございますが、大体その程度のことを申し上げられるのが限度かと考えております。
  91. 河上民雄

    ○河上委員 そういう限度が先に出てしまうとお尋ねにくいのでございますけれども、そういう場合に今度は、従来朝鮮民主主義人民共和国とは人的交流の分野で文化的あるいはスポーツのような領域の人々については入国がかなり自由に認められておりますけれども、事政治的な目的になりますと全面的な拒否に近いわけでございます。WHOの北朝鮮の代表の人が日本に入国を求めるような場合は当然出てくると思うのでありますが、そういう場合に政府としてはどういうふうにされるつもりですか。
  92. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 未承認国からのわが国に対する入国に関しましては、法務省のほうでこれを決定されるわけで、私たちのほうは意見を求められたときに協議にあずかるわけでございます。ただいまの御質問は仮定の問題でございますので、そういう申請の態様がありましたときに、法務省はケース・バイ・ケースに外務省のほうの意見を求めてくると思いますが、その段階で答えを出すことになろう、かように考えます。
  93. 河上民雄

    ○河上委員 どうもこの前からケース・バイ・ケースということでございますが、先ほど来言うように仮定の問題ですからこの程度でやめておきますが、きょうの新聞、いやもうすでにこの委員会におきましても大臣からお答えがございましたけれども、東ドイツの承認が非常に近いということになっております。これはもうかなり具体的に、日にちまできまっておるんでございましょうか。
  94. 大平正芳

    大平国務大臣 実体的な問題はほとんどないと私は承知いたしておりますが、具体的な日取りまではまだきまっておりません。
  95. 河上民雄

    ○河上委員 ドイツの場合も分裂国家でございまして、日本にとって非常に関係のあります分裂国家の中ではドイツと朝鮮が一番状態が似ていると思うんでございます。その意味でちょっとお尋ねいたしますが、政府はすでに西ドイツを承認しておる、その上で今度は東ドイツを承認する、こういうことになるわけです。並行承認ということになりますが、東ドイツを承認する場合の理論的な根拠というのはどういうふうになりましょうか。
  96. 高島益郎

    ○高島政府委員 これから日本政府が東ドイツと外交関係設定するという段取りになりまするけれども、国際法上の関係を申しますと、これは日本と東ドイツとの国家間の関係が生ずる、つまり新国家として承認するということでございます。
  97. 河上民雄

    ○河上委員 東西両ドイツの交渉の過程で、西ドイツは一民族における二つの国家、ツー・ステイツ・ワン・ネーションという理論を立てておる。一方東ドイツは、純然たる国際法上の国家ということを主張しておったように聞いております。東西両ドイツがそれぞれどういうようなその間の煮詰めをしたか、また日本政府は、いまおっしゃったような御答弁でありました場合にはどちらの理論に近いのか、そのことをお伺いします。
  98. 高島益郎

    ○高島政府委員 正確に私覚えておりませんけれども、西ドイツと東ドイツとの間の基本関係条約の中におきまして、西ドイツは、将来におけるドイツ民族の統一という願望は捨てておりませんで、そういう趣旨の留保を何らかのかっこうで文書に明らかにしておるように覚えております。一方東ドイツは、これに対しまして、全く新しい国家としての関係を西ドイツとの間に結ぶということでございまして、西ドイツ政府と東ドイツ政府とは、必ずしも完全に同じ意見ではないように覚えております。  それにもかかわらず、形の上では、ここに新しい国家としての東ドイツが西ドイツとの間に関係を結び、これがまたそれぞれ各国際社会と関係を結ぶということになりまして、ドイツには、もちろん民族的には一つの民族ではありましょうけれども、二つの新しい国家がここに戦後できる結果になるということでございます。
  99. 河上民雄

    ○河上委員 それではもう一度確認しますけれども、東ドイツについては、全く新しい国家としてこれを承認する、こういうふうに了解してよろしいわけですね。
  100. 高島益郎

    ○高島政府委員 そのとおりでございます。
  101. 河上民雄

    ○河上委員 大平外務大臣にお尋ねいたしますけれども、ドイツについてはいまおっしゃったようなことでありますが、隣の朝鮮につきましては、今後こういう問題について、東ドイツ、西ドイツの間の交渉でいろいろ問題になりましたそうした国家の承認につきまして、朝鮮の場合にこれを当てはめて、政府としてはどういう方向に持っていきたいと考えておるのか、それとも、これは全く朝鮮の南北両国政府意見が一致したところに日本も従おうということなのか、その辺のところを伺いたいと思います。
  102. 大平正芳

    大平国務大臣 いま申し上げられますことは、南北でせっかく平和的、自主的統一の話し合いが始まっておる、その進展を見ながら日本として対処すべきであると心得ておると言う以外に答えようがないわけでございます。  朝鮮半島がワン・ネーション・ワン・ステートになるのか、ツー・ステート・ワン・ネーションになるのか、どういうようなことになるのかということは、いまわれわれ全然見当がつかないわけでございまして、さればこそ、南北の間の接触が持たれて、しかもそれは自主的にやりたい、平和的にやりたいとまで言っておるわけでございますので、その進展を見させていただくよりほかに道はなかろうと考えております。
  103. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、先般朝鮮民主主義共和国におきまして、最高機関である人民最高会議が開かれておるのでございますが、そこでこうした問題について何か重要なことがきまったというような報告は、政府においては受け取っておられますかどうか。
  104. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 詳細な情報につきましては、確認されたものは私たちは承知しておりません。
  105. 河上民雄

    ○河上委員 それでは伺いますけれども、その人民最高会議におきまして、各国政府並びに議会に一つの書簡を送ることが決議された。それは、国連で朝鮮統一問題を取り上げてほしいということ、それから無条件で国連総会のオブザーバーとして招くべきである、こういう二点につきまして書簡を世界各国政府並びに議会に送るというようなことが決議されたと伝えられておるのでありますけれども、こういう正式の文書が日本政府に来ているかどうか、またそういうものが正式に到着した場合にこれをどのように取り上げるか、その点を伺いたいと思います。
  106. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 そういう書簡はまだ受け取っておりません。受け取った場合というのは仮定の話になりますが、来るのか来ないのかもわかりませんけれども、いわゆる政府間の外交交渉のある状況ではございませんので、どういうふうに措置するかは今後検討してみたい、かように考えます。
  107. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、昨年国際連合総会において、朝鮮問題の討議のたな上げに日本政府努力したというふうに報ぜられておりますし、私どももそのように承知しておるのでありますが、その結果、この問題は一九七三年秋の総会まで延期されたのでございます。いわば宿題になって残っておるわけですが、ことしの国連総会におきましても、先ほど大平外相が言われたような理由からたな上げすべきだと考えておられるのかどうか。また、との秋までには情勢がいろいろ変わってくることを考えて、まだ検討中であるというのか。それとも、そろそろこの問題を取り上げるべき時期に達したというように判断しておるのかどうか。その辺のことは大臣、いかがでございますか。
  108. 大平正芳

    大平国務大臣 その問題はいま検討中でございます。
  109. 河上民雄

    ○河上委員 確認いたしますけれども、それは必ずしもたな上げに動かないということでございますか。
  110. 大平正芳

    大平国務大臣 まあ秋の総会までずいぶん時間もあることでございますし、各国考え方もよく承知しなければなりませんので、いまの段階では検討中であると申し上げるよりほかに道はないと思います。
  111. 河上民雄

    ○河上委員 先ほど来大臣の御答弁の中で、しばしば各国の動きもにらみ合わせながらということで、日本政府としてどうするかという、むしろ日本政府の決意によって国際情勢を動かしていくというよりも、まわりを見てからきめるというようなお考えが非常に強いようなんでありますが、何といっても朝鮮は隣の国でございますので、もう少し何か自分としてはこうあるべきだということがそろそろ出ないと、気がついてみたら日本だけがまだ何にもきめていなかったということになりはせぬか、そういうことを私は心配いたします。  そこで、いままでの政府の朝鮮民主主義共和国に対する態度、先般もこの委員会で論ぜられたところでありますけれども、もう一度確認をさせていただきたいと思うのでありますが、昭和四十年の例の日韓協定審議の際に示された日本政府の態度は、いまだに変わっていないということですか。
  112. 高島益郎

    ○高島政府委員 河上先生の御質疑の趣旨が私、必ずしもよくわかりませんけれども、日韓基本関係条約審議の際におきまして、政府側から北朝鮮につきましての考え方を述べたことについて変わりはないかという趣旨かと思いますが、その点でございましたら、全く同じでございます。
  113. 河上民雄

    ○河上委員 先般、政府委員の方が柴田委員の質問に答えまして次のように言われているのでありますが、柴田委員が「そうしますと、法的にも朝鮮南部だけを代表している政府、これが韓国政府である、このように解釈していいわけですか。」と質問されましたのに対して、松永政府委員は「そのとおりでございます。」と答えておりますけれども、そういうことで大平外務大臣よろしいわけでございますか。
  114. 高島益郎

    ○高島政府委員 日韓国会におきましてこの基本関係条約第三条の解釈についていろいろ論議がかわされました。特にこの中に言及されておりますところの国際連合総会決議第百九十五号の解釈につきましていろいろ御議論があったように記憶しております。この決議にあるとおりの、朝鮮にある唯一の合法的な政府であるというのが政府考え方であるという説明をいたしまして、この意味は要するに、休戦ラインの南のほうにおいて管轄権を持っておる、そういう意味の、朝鮮にある唯一の合法的な政府であるというのが政府考え方であるという趣旨で御答弁を一貫してやってまいっておるというふうに考えております。したがいまして、当時からも説明しておりますとおり北朝鮮の部分につきましては、日本政府考え方は法的には白紙であるという立場でございます。
  115. 河上民雄

    ○河上委員 もう一つ、政府は繰り返し言っておるように思うのでありますけれども、分裂国家において一方の国を承認した場合他のほうと外交関係を樹立しないのは外交的慣例である、日本もそれに従うんだというような意味のことをあの論戦の中で言っておる。たとえば佐藤総理大臣が民社党の春日委員の質問に答えて次のように言っておりますが、「いままでの外交的慣例から申しますと、こういう場合に片一方の国を承認した国は、他のほうと外交関係を樹立しない、これが今日までの外交慣例でございます。したがいまして、今日南の韓国を承認しておる国が七十二、外交関係を持っておるのが七十二ございますが、これは北の国とは外交関係を持っておらない。また二十三カ国が北を承認し、これと外交関係を持っておりますが、これらの国々も南の韓国とは外交関係を持たない。これが大体今日の外交上の慣例でございます。」こういうような説明をいたしまして、したがって、韓国を承認している以上北とは外交関係を持てないというような、そういうような御趣旨でございますが、こういう点は今日も変わっていないのでございますか。
  116. 高島益郎

    ○高島政府委員 一般に分裂国家におきまして、一方の政府承認している場合に他方の政府承認することは国際慣例上できないという御答弁があったというお話でございますけれども、その意味は、たとえばドイツにおきまして西ドイツ政府承認している国が東ドイツ政府承認するということは西ドイツ政府が許さなかった。つまり、いわゆるハルシュタイン・ドクトリンというのがございまして、もしそういう国があった場合にはその国との国交を断絶するということでございまして、実際上非常に外交関係が円滑にいかなくなるということでございましたので、その当時の情勢においてはそういうことは国際慣行であったというふうに考えます。しかし、その後の情勢の変化によりまして、先生も御承知のとおり現に東ドイツと西ドイツとの話がつきまして、それぞれ新しい一つの独立国家として国際社会と関係を結ぶということになりましたし、またベトナムにおきましてもサイゴン政府あるいはハノイ政府ともにそれぞれが国際社会との関係を結ぶことについて相互に異議を申し立てないという関係になってまいっております。こういう分裂国家のそれぞれの両国家がそういう態度をとるに従って、国際社会もこれに対応して措置をとることができるというふうに考えますので、そういうことを称して国際慣例と申しますか、国際慣行というふうに考えて差しつかえないのではなかろうかと思います。  朝鮮につきましては、先ほど大臣からもお話がありましたとおり、現に南北間が統一へ向かっての話し合いが進行しているわけでございまして、現在ベトナムにおけるごとき情勢は出ておらないというふうにわれわれは考えております。
  117. 河上民雄

    ○河上委員 それではいまの御答弁で、かつて佐藤総理が七年前に言われたことは、少なくとも事実関係としては変わってきたというふうにお認めになりますね。
  118. 高島益郎

    ○高島政府委員 私が申しましたような意味におきまして、ドイツにおける現状あるいはベトナムにおける現在の情勢等考えますと、情勢は変わってきているというふうに考えます。
  119. 河上民雄

    ○河上委員 それでは伺いますけれども、朝鮮につきまして朝鮮民主主義人民共和国に承認を与えている、外交関係を結んでいる国が幾つあるか、また大韓民国に対して外交関係を結んでいる国が幾つあるか、そうしてそのうち双方を承認して、両方とも仲よく外交関係を結んでいる国が幾つあるか、正確な数字を、この四月現在でよろしゅうございますが、教えていただきたい。
  120. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国承認国八十六、北朝鮮承認国が五十、双方を承認するもの十七でございます。
  121. 河上民雄

    ○河上委員 大平外務大臣はいま南北朝鮮統一が進んでいる際に北を承認することは支障があるとは言われませんけれども、そういうのを勘案しながらといいますか、十分にらみ合わせていかなければならないというふうに言われたのでありますけれども、現実にもう十七国が両方承認しておりますね。特に最近は北欧五カ国が大体その方向に進んでおりますし、特にスウェーデンは両方の大使を兼任さしておると聞いております。つまり韓国に派遣した大使をもって朝鮮民主主義人民共和国に対する大使と兼任させておると聞いております。これはもし事実であるといたしますと、先ほど来皆さんが言っておられる根拠というものはあまりかちっとした理由ではなくなってきているのじゃないか、どんどん動きつつあるのじゃないか。私はスウェーデンがかつてベトナム問題につきましてパルメ首相みずから先頭に立ってアメリカの政策に対し非常に批判的な態度をとって今日のベトナム和平に非常に貢献されたのでありますけれども、そのスウェーデンがいま両方の国を同時に承認し、同時というか、あとから承認し、またフィンランドの場合は、これはたしか同時承認だと思いますが、しかもスウェーデンの場合は大使まで兼任させておるという状況であります。そういう点から見まして、どうも政府のこの問題に対する態度はよく言えば慎重かもしれませんけれども、あまりにも慎重過ぎて歴史の、世界の流れにだんだんおくれていくのじゃないかということを心配するのですけれども大平大臣、この点はいかがでございますか。朝鮮の二つの国を同時に承認しているような状態というものを日本政府としては可能性の一つとしていま胸の中に描いておられるかどうか、その点大平外務大臣に伺いたい。
  122. 大平正芳

    大平国務大臣 日本にとりまして朝鮮半島の問題というのは、申し上げるまでもなくたいへん重大な問題だと思っております。  で、日本政府がこの朝鮮半島に対してどういう施策をするか、どういう姿勢をとるかということは世界も注目いたしておりまするし、朝鮮半島自体の内部の事態の進展につきましても相当大きなインパクトを持っておるものと考えるわけでございます。  したがって、ほかの国々で双方の政府承認しておる国、外交関係を樹立した国もあるようでございますけれども、私どもといたしましては、日本政府立場というのは、そういう意味でたいへん大事だと思っておりますので、慎重の上にも慎重にやらせていただきたいと考えております。
  123. 河上民雄

    ○河上委員 大平外務大臣は、田中内閣における外務大臣として、中国承認問題についてみずからその苦労をなめられた方でございますから、世界の情勢の流れというものは、一たん動きだしたらいかに予想を越えて早く動くかということは、十分御承知だと私は思うのであります。それははだをもって感じられたと思うのでありまして、慎重の上にも慎重という大平さんらしい表現でございますけれども、この問題はすでに北欧五カ国がその方向に進んでおりますだけに、へたをすると日本だけが一番最後になるような心配さえ起きてくるのですが、そんなことないようにひとつしていただきたいと思うのです。  承認問題がもしできないといたしましても、このような情勢の中で、当然人的の交流というものについては進めていかなければいかぬと思うのでありますが、そろそろいままでほとんど否定的であった政治上の目的で往来するということについても、もう少し弾力的に当たっていただく必要があるのじゃないかと私は思うのであります。  たとえば、日本から北の朝鮮に自民党の代議士ですら行くことができるかもしれないのでありますけれども、たとえば在日朝鮮人の指導的な人たちが北へ行く、あるいは北の朝鮮の指導者が日本へ来るというようなことについて、いままではほとんど否定的なわけであります。その入国、再入国の問題についてもう少し弾力的な姿勢をとるお考えはないかどうか、その点をひとつ伺いたいと思います。
  124. 大平正芳

    大平国務大臣 これは法務省のほうからお答えするのが妥当かと思いますけれども、私どもも協議を受ける立場におるわけでございます。われわれとしては、前々から申し上げておるとおり、御協議を受けた場合に、南北の話し合い等の進展を見ながら、こういうかげんでどうだろうかというようなことで、一応の、文化だとか学術だとかスポーツだとか経済だとかいうような意味の交流は漸次拡大していこうというような心組みで協議に応じてきたわけでございまして、いま先生のおっしゃる政治的な交流というところまでまだ踏み切るには至っていないのがただいまの姿勢でございます。
  125. 河上民雄

    ○河上委員 やはり冬から春になるにも、芽が出てくる、積雪が溶けるというような時期というのは必要なわけでありまして、ここらでひとつ踏み切っていただきたい、そのことをお願いをいたしまして、あと二問ほど、少し違った問題について伺いたいと思います。  最近新聞でわれわれも承知いたしておるわけで、また非常に憂えているわけでありますけれども、カンボジアの情勢がたいへん悪化しております。先般邦人の引き揚げを外務省では指示したようでございますが、またきょうの新聞などを見ましても、カンボジアの内閣が総辞職するというように、たいへん情勢は悪くなっておりますが、ここで私、今後の情勢が発展した場合に、日本政府の態度というものを伺っておきたいという意味で、二点ほど質問したいと思うのです。  第一は、この前のヘイグ准将が四月九日から十一日まで、タイ、ラオス、カンボジア、南ベトナムを歴訪しておりますけれども、その目的はどういうものであるかということが第一点。  それから第二は、いまアメリカが爆撃を再開いたしました、その根拠は何か。特にベトナム和平協定というものができておるわけですけれども、その中で、これはどういう根拠に基づいてやっているのか。  その二つを伺いたいと思います。
  126. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 ヘイグ准将の旅行は、現地の情勢が緊迫している点もありまして、状況視察であったというふうに了解いたしております。  第二の、米軍のカンボジア爆撃の法的根拠に関しましては、米政府はまだ正式に明らかにいたしておりません。日本政府といたしましては、カンボジアの紛争の当事国でもなく、またパリ協定の起草にも関与したわけでもございませんので、米軍によるこのカンボジア爆撃の法的正当性ないし法的根拠につき有権的な説明ないし解釈を行ない得る立場にはございません。
  127. 河上民雄

    ○河上委員 外務大臣、いま局長さんはそういうような答弁をされましたけれども、もしこれが拡大をしますとどうなんでございますか。日本の基地からアメリカの軍隊ないし武器、弾薬あるいはその他の輸送を必要とするものが出ていくというような問題が起きやしないか。その場合に日本政府が日米安保条約のしがらみで何とかせざるを得ないというような、またそういう答弁をされるのじゃないかと思うのですが、したがって、いまアメリカがカンボジアの爆撃をするというようなことにつきましても、これは自分の国に関係ないからということで価値判断を避けるというのは、非常に困るのじゃないですか。いかがでございましょうか。
  128. 大平正芳

    大平国務大臣 わかっておって、ことさら避けておるわけじゃないのです。私どもとしてはそういう立場にないというだけのことを申し上げておるわけで、私どもとしてはカンボジアの事態、あれはたいへん憂慮いたしておるわけでございまして、一日も早く事態が鎮静してまいりますことを希求いたしております。
  129. 河上民雄

    ○河上委員 新聞によりますと、カンボジア爆撃の正当性の根拠につきまして、アメリカ側はベトナム和平協定の第二十条をあげているというような記事も出ております。一体この二十条というのはそういうようなことを許すものだとお考えでしょうか。局長、いかがですか。
  130. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 パリ協定の二十条は、諸外国のラオス、カンボジアにおける軍事活動の禁止等を規定しておるわけでございますが、本条の解釈に関しましては、これは私たち当事者でございませんし、交渉いたしたわけでございませんから、詳細ははっきりしないのでございますが、カンボジアにおいては停戦協定が成立するまでは軍事活動をなし得るという旨の了解があるやにも非公式に聞いておる次第でございます。その辺は、しかし、確認する立場にはないわけでございます。
  131. 河上民雄

    ○河上委員 第二十条は、「ヴィエトナムに関するパリ会議参加当事者は、相互の及び他国の主権及び安全を侵害するためにカンボディア及びラオスの領土を使用することは慎しむことを約束する。」こうなっておるのですが、これだけで何か協定違反、現に北ないしは解放戦線側の兵員なりがカンボジアにあの時点では相当たくさん残っておるというようなことも聞いておるわけです。したがって、どっちの方向に見通しているのかというのは別といたしまして、そういうものが残るということは、ある程度この慎むという表現の中に許容範囲として認めているのじゃないかと思うのです。その点はいかがですか。
  132. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 ただいま申し上げましたように、このパリ協定は、非常に複雑な様相のもとに、当事国が和平を念願して、長い交渉の末でき上がったものでございますが、その交渉の過程において一つ一つの条項の解釈とかその許容範囲という問題については相当の了解があったものと私たち局外者は推察するわけでございますが、正確にどこまでがどういう了解で、どういう許容範囲であるかということは、確認できないという立場にあるわけでございます。
  133. 河上民雄

    ○河上委員 それでは理論的にちょっと伺いますけれども、パリ協定というものは、講和条約的な性格のものと考えるのか、それとも休戦協定という性格のものと考えるのか、その点、他国のことだから、参加してないからということでなしに、理論的にどっちと考えるのか。
  134. 高島益郎

    ○高島政府委員 パリ協定は、朝鮮の休戦協定とは少し性格を異にしておりまして、休戦協定がもちろん主体でございまするけれども、これと、加えまして、政治的な問題に関する諸決定も含まれております。そういう意味で非常に独特なものでございまして、単純な休戦協定というわけにはまいりません。そういう性格にかんがみまして、その後パリで開かれましたパリ協定の保証のための会議で、各国に対しまして、そういう趣旨から、ベトナム人民の基本的民族的諸権利及び領土保全を厳格に尊重するということを要請しておる次第でございまして、こういう点にかなりパリ協定の特色と申しますか重点があろうかと思います。
  135. 河上民雄

    ○河上委員 それじゃ最後に、これで終わりますけれども、もしアメリカが再介入した場合、いまの協定の性格から見て、これはアメリカ協定違反に対する報復行動として行動したというふうに考えるのか、それとも一応あの時点でベトナム戦争は終結したのであって、また新たな事態が発生したというふうに考えるのか、またそうした新しい状況、これはなるべくそういうことがないことを希望するわけでございますけれどもアメリカ軍が日本に、日米安保条約に基づいておる限り、抜きにして考えられないのでありますけれども、そういう再介入というようなことが起きたら、日本政府としてはどうするか、あるいは起きないようにするためにはどうするか、その点は私どもとしては、こういう再介入がもしかりに起きても、日本政府としては今度はいままでとは違って、北爆に賛成したようなことに絶対にならないという保証をこの時点でぜひいただきたいと考えるものです。
  136. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことが起きないことを希望いたしております。
  137. 河上民雄

    ○河上委員 それじゃそういう前提に基づいてでありますけれども局長に伺いますが、いまのカンボジアの爆撃が非常に危険な様相をはらんでおりますけれども、そういうことがもし拡大してきた場合、ベトナム和平協定の違反というか、どっちが違反したかは別といたしまして、それのほころびから生まれた事態であると考えるのか、それとも全く新しい事態と考えるのか、その点を伺っておきたいと思うのです。
  138. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 カンボジアの状況につきましては、パリ協定の第二十条で触れておるだけでございますが、どういう態様でどういう事態が起こってくるのか、これは全く予測がつきませんので、私たちも仮定の問題としてちょっとコメントできないような状況でございます。いましばらく、事態は非常に憂慮しているわけでございますが、和平が実現されていくことを念願して、事態を見守っていくよりしようがない、こういうような立場でございます。
  139. 河上民雄

    ○河上委員 それではすでに時間が参りましたので、これで終わりますけれども、先ほど大平外務大臣が言われましたように、そういう事態がないように全国民願っておりますし、ベトナム戦争で日本政府が加担したような結果、非常にみんな心を痛めるような苦い経験をなめているわけでございます。そういうことが二度と起きないように切望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  140. 藤井勝志

    藤井委員長 柴田睦夫君。
  141. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 私はこの十六日にアメリカがラオスに対して爆撃をした、そのことについて質問するわけですが、まず政府は、このアメリカのラオス爆撃について、その実態をどのように把握しているか、このことを最初にお伺いしたいと思います。
  142. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 米国政府当局は、十六日爆撃再開にあたりまして、米爆撃機がラオス政府の要請に基づいて、共産勢力に占領されたラオスのジャール平原南部のタービェン村周辺の目標に爆撃を始めたという声明を出したということが伝えられておりますが、まだ私のほうは公電でこれを確認いたしておりません。
  143. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 いま言われた範囲はすでに新聞に出ておりますけれども、そしてまたそれ以上のことは確認していないということですけれども政府としてはこのことを、どのような実態であるか、これを調査するつもりはありますか。
  144. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 現地のほうの状況がなかなか複雑でございますし、また離れておりますので、直接私たちが調査するということも困難でございますが、いろいろ情報は入手して総合的に判断していきたい、かようには考えております。
  145. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 情報を入手して総合的に判断するということですけれども、それはいつごろまでにできるか、そしてまた、把握した状況については発表されるか、このことについてお伺いします。
  146. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 これはまだ非常に流動的でございますので、どういう日程で、いつまでにどういうふうにできるか、ちょっと見当がつきませんので、できるだけ努力してみるということでございます。
  147. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それでは次に、政府は、この国会におきまして、ベトナム和平協定すなわちベトナムにおける戦争終結と平和の回復に関する協定の調印を歓迎するということを言われました。そして、ラオスに関しましては、ラオスにおける平和回復と民族和合の達成に関する協定が、二月の二十一日に調印されております。このラオス協定についての政府考え方、所見を伺いたいと思います。
  148. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 わが国といたしましては、去る二月二十一日にラオス和平協定が成立いたしましたことは、まことに喜ばしいことと受け取っておるわけでございます。ただ、現状におきましては、暫定国民連合政府の形式等につきまして、ラオスの両当事者間の実質的な話し合いというものが、なかなか円滑に進んでおらないようにも見られ、依然、先ほどから問題になっておりますように、局地的には武力紛争が散発しておるというような事態であることは、たいへん残念に思っておる次第であります。
  149. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 このラオスの和平協定について、政府としてはこれを歓迎する、そしてまた、これは当然諸外国が尊重すべきものだと考えるのですけれども、これを尊重して、それに従うように国際的に働きかける、こういう気持ちはありますか。
  150. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 私たちは、ラオスにほんとうの和平が定着することを心から念願しておるものでありまして、そのために可能な方法があれば、できるだけのことをしていきたい、かようには考えております。
  151. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 今回のラオス爆撃、これは、ラオス協定第一条のラオスの独立、主権、民族自決権、領土保全の条項、それから第二条の軍事条項に違反していると考えます。特に協定は、諸外国は完全かつ永久にラオス全土におけるすべての爆撃を停止し、ラオスに対するすべての干渉と侵略行動を停止し、ラオスでのあらゆる軍事介入を終結する、これは、アメリカとタイに対してこの条項の尊重を求めていると見るわけです。また、ベトナムの和平協定にも、先ほどから問題のありました、諸外国はカンボジア及びラオスにおけるすべての軍事活動に終止符を打つことというふうに明記しているわけです。ですから、この協定から見ました場合にも、アメリカの爆撃はラオス協定に明らかに違反する、このように考えるのですけれども政府の所見をお伺いします。
  152. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 このラオス和平協定は、先ほど申しましたように、二月の二十一日に成立いたしましたが、これはラオス国内の両当事者間の合意によって成立したものでございまして、右協定はいわゆる国際取りきめというようなものではないという性格を持っておるわけでございます。したがいまして、アメリカは、この協定の当事者、締約国ではないという形になっております。  そこで、今回の爆撃の再開というものは、ラオス和平協定の一方の当事者である政府側の要請によってこれが始められたものであるというふうに私たちは聞いておるわけであります。このような爆撃がラオス和平協定に違反するものであるかどうかということは、日本政府としては有権的に判断する立場にはない次第でございます。
  153. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ラオスの国内において戦闘活動を停止し、そうして外国からの爆撃を終結させる、こういうことを言っているのに、アメリカがその国に対して爆撃するということは、これはラオス協定の求めていることにも違反し、そしてまたこれが協定の当事国でないということを言うならば、明らかな侵略行為だ、このように見なければならないと思うのですが、いかがですか。
  154. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 このラオスにおける状況はきわめて流動的で複雑でございまして、私たちのほうも、いずれの側にどういう経緯で、どういう状態において違反なり問題が発生しておるのか、正確に把握できないわけでございますから、これに対して違反がどうとか、いろいろな問題はなかなか判定しにくいわけでございます。私たちとしては、できるだけ当事者間で円満に和平が進められるように念願しておる、こういうことでございます。
  155. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうしますと、先ほど、一方の政権のほうからの要請があって爆撃を行なったというように言われましたけれども、実際はどうしてアメリカが爆撃するようになったのか、その理由、このことについては調査したりあるいは判断する状態にないわけですか。
  156. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 私たちは、先ほども申し上げましたように、米側の発表がそうなっておるということであり、またラオスの現政府の首脳が現地において戦闘が行なわれておる、これはラオス政府の判断によれば違反ではなかろうかということで、それを防止するために米側に爆撃の出動を要請したというふうな形になっているというふうなことは現在聞いておりますが、それがまさにこれを確認するという行為になりますと、ちょっと私たちの立場としてはなかなかむずかしい、こういう状況にあるわけでございます。
  157. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうしますと、そのアメリカの言い分は、まずこれは信用しているわけですか。それともまだあいまいな気持ちでいるわけですか。それからまた、ラオスの一方の政府の要請、この一方の政府の要請がはたしてあったかどうか。このことについては、アメリカはそう言っていますけれども、それがあったかどうかについては確認なり、あるいはそういうものがあったとアメリカの発表を信用しているのですか、どうでしょうか。
  158. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 信用とかなんとかいう評価の問題ではございませんので、私たちは、現時点においてはそういう情報が得られておるという話を聞いておるということを申し上げたわけでございまして、事態がきわめて流動的でございますし、今後これがどうなるのか、あるいはもうすぐ和平の状態に戻るのかもしれませんし、また私たちとしてはこれが一時的なもので和平の状態に戻ってくれることを心から念願しておるという状態でございます。
  159. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 今回の発表によりますとB52またF111戦闘機がこの爆撃に加わった、こういわれておりますけれども、これらの爆撃に加わった飛行機またそれに使われる軍事物資、これは在日米軍の基地とは関係があるかどうか、その点をお伺いします。
  160. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 私の承知しておる限りでは、直接日本とは関係がないように了解しております。
  161. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 日本とは関係がない、このように言われましたが、それではこの爆撃がどこの基地から飛び立ったのか、またそれに使われる爆弾はどこから補給されたものであるか、こういう点はわかっておりますか。
  162. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 実はたいへん申しわけない次第ですが、私たちその軍事行動の内容は、事柄の性質上どこの基地からどういうふうに行なわれているかちょっと確かめようがないわけでございまして、私が先ほど申し上げました直接関係ないものと了解しておるといいますのは、大体従来の形を見ておりますと、ベトナムでないほうの近辺の基地から爆撃隊が出ておるようでございますが、ではほんとうにそうかということは正直なところ確認いたしておりません。
  163. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それでは日本とは関係がない、日本の基地とは関係がないということは、これは断言できるわけですか。
  164. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 ただいま申しましたように爆弾が日本の基地からどこかへ回っていまた先に回っていったというようないろいろなケースがあるのかもしれませんけれども、現実に日本の基地が直接これに関係していたものではないのではないかというふうな了解を、私として承知しておる限りではそう考えておる、こういうことでございます。
  165. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 この点は最近沖繩の三軍港、那覇軍港、天願軍港、それからホワイトビーチの軍港で米軍の軍事物資の積み出しが非常にあわただしくなっている。そしてこれらの米軍艦船の中で南ベトナムやカンボジアに武器、弾薬、車両を輸送する船舶がふえておって、最近はカンボジア向けの輸送が非常に目立っているといわれております。これはアメリカのカンボジア介入が激化するということに伴って、沖繩基地がこれに即応する体制をとっているんだということを示していると思いますが、こういうことから見ましても、今度のラオスの爆撃もこうした日本の基地と無関係であるとは言い切れない。そういういままでの経過から見てみましてもそういう疑問が当然わいてくるわけですから、この点についてはラオスであるとかカンボジアに対する補給作戦行動などについて、日本政府として当然アメリカに問いただして明らかにすべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  166. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先般来国会で御議論がございましたように、日本の基地から米軍が弾薬類を南ベトナムへ輸送したというケースは私どもも承知いたしておりますけれども、沖繩なりあるいは本土から直接カンボジアに対して米軍が輸送しているという事実は承知いたしておりません。また先ほど申し上げました弾薬類の輸送につきましても、これはベトナムの和平協定に基づく規定に沿った措置であるということを米側は申しておるということにつきましても、これは国会で御答弁申しておるとおりでありまして、今回ただいま御指摘のラオスなりあるいはカンボジアにおける事態に対しまして米側がとっている行動の詳細について私どもは承知いたしておらないわけでございます。
  167. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 その承知していないというのは、アメリカの発表に従ってそういうことがないと考えているのであって、日本独自にそういったものについて調査をして国民の不安にこたえる、こういうことはやっていないんじゃないでしょうか。
  168. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先般国会委員会の場で共産党の星野議員から、横浜から出航した米軍の船が装甲車あるいはジープ等をカンボジアに輸送した事実があるのではないか、こういう御指摘がございまして、これを私ども調べてみますと、そういう事実は一切ないということを米側から確認いたしております。したがいまして、先ほどアジア局長が御答弁申し上げましたように、直接われわれがこれらを現場で確認というような手段を持ち合わしておるわけではありませんけれども、問題になります点につきましては、米側にそのつど確かめまして、事実の有無について確認しておるわけでございます。
  169. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 日本政府としては、カンボジアなりラオスなりに対しては、日本の基地から軍事物資の輸送をさせない、こういう考えでおられるわけですか。
  170. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 米軍が日本の施設、区域を使いまして補給活動を行ないますことが安保条約の趣旨に照らしまして差しつかえない場合において、日本側としてこれに対して何ら異議を差しはさむ立場にございません。
  171. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 その点につきましては、安保条約の極東の範囲などからいろいろ悪いほうに発展してきてどんどん広げられてきたと思うのですけれども、カンボジア、ラオスに対する行動についても、安保条約の範囲内の行動である、こういう見方が現在あるわけですか。
  172. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 安保条約規定に照らしまして、極東並びにその周辺の事態で極東の平和と安全に関係のある事態について、安保条約規定に基づく施設、区域の使用は差しつかえない、こういうことになるわけでございまして、もちろん戦闘作戦行動に直接関与ということになりますと、これは事前協議等の関係において別の観点の問題があるわけでございます。
  173. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 だから、カンボジア、ラオスなどについてもそういう範囲に入る場合があるのか、こういうことを聞いているわけです。
  174. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 私どもは米軍が日本の施設、区域を使ってラオス、カンボジアに対して何らかの行動を行なっているかいなか、その事実そのものについて承知しておらないわけであります。
  175. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 その承知していないということはわかりましたし、アメリカの言い分だけを聞いているということもわかりましたけれども日本立場から見た場合にこのカンボジアやラオスに対する作戦行動、こうしたものに日本の基地が安保条約のもとで使われてもいいものかどうか、こういうことを聞いているわけです。
  176. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 安保条約六条の規定考えまして、極東の平和と安全に関係のある事態につきまして日本にあります施設、区域が米軍によって使われるということは、安保条約の趣旨に照らしまして日本政府として何ら異議を差しはさまない、こういう立場にあるわけでありまして、当該事態が極東の平和と安全にいかなるかかわり合いを持つかという観点から考えられるべき問題だと考えております。
  177. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ラオスの平和協定がすでに二月にできたあと、そして現在、協定ができた直後にも爆撃がありましたけれども、その後アメリカが発表したものの範囲では、今度の爆撃の再開ということになるわけですけれども、今回のラオス爆撃が日本の平和と安全に関係するものかどうか、そしてこの今回のラオス爆撃に対して日本の基地が使われていいものかどうか、この点をお伺いします。
  178. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 この点につきましても、先ほどアジア局長から御答弁がありましたように、この地域ですみやかに静かな状態がもたらされることを日本政府として希望し、期待しているわけでありますけれども、現実にいま行なわれておると報道されておりまする米軍の行動に直接日本の施設、区域が使われているということはないというふうに考えております。
  179. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 今回のラオス爆撃の問題につきましては政府のほうではその実態を現在把握していないということですけれども、ともかくベトナム和平協定、またラオスの和平協定が外国からの爆撃などの停止を明らかにきめている場合に、それをアメリカが一つの政権からの要請であるということで爆撃を再開する、発表されたのはこれだけですけれども、いろいろこういった行動はあるわけです。そしてこれはアメリカがこの和平協定後もなおインドシナに対して自分の支配を維持しようとしてやっている行動だというように考えます。私は結局、この実態を正確にいまつかんでいないというのであればしかたがないですけれども、これは早くつかんで、このような、平和を破壊し、せっかく平和が回復されようとしているときにこういったアメリカの爆撃が行なわれるということに対して、日本政府としてはこういったものには協力しないし、そして二つの和平協定の厳格な実行を要求するということでなければならないと考えるわけです。このことを申し上げまして、私の質問を終わります。
  180. 藤井勝志

    藤井委員長 次回は、来たる二十日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十五分散会