○
大平国務大臣 緊張緩和の徴候が確かに見えることも事実でございますけれ
ども、まだ至るところに不安定要因が伏在いたしておりますことも歴史的な現実であろうと思うわけでございます。私
どもの任務は、せっかく芽ばえかけました
緊張緩和の徴候というものをできるだけ定着させて、平和な姿に定着させてまいるということのために
日本はなすべきことをなし、なすべからざることをなさないということでありたいと思っております。
それで、ただ勝間田先生の
お話を聞いていてちょっと感じますのですけれ
ども、
緊張緩和の徴候が見えたからそういう方向に大胆に
外交政策の歩武を進めてまいるような方向に、あなたの
お話のアクセントがあるわけでございます。ところが
政府の
立場は過去を背負っておるわけでございまして、重い荷物を背負っておりまして、この荷物をあなたはかかえていないけれ
ども、私はかかえているわけでございます。ですから、このテンポがあなたが御期待されるようなテンポになかなかいかないわけでございますことは、勝間田先生も含めてひとつ御
理解をいただかなければならぬと思います。非常に隔靴掻痒の感があって、非常にもの足りないということは私もよくわかるわけでありますけれ
ども、それを
理解していないというわけではないのでございますけれ
ども、現実の
外交政策の展開にあたりましては、先輩各位がいままで営々として仕組んでまいりましたいろいろな過去を背負いながら、あなたの言われる方向にどうして一歩を踏み出せるかというぎりぎりのことを毎日
考えているわけでございますので、
政府の
立場につきましても、そういう
意味で御
理解をちょうだいいたしたいものと思うのであります。
ASPACにいたしましても、せっかく何カ国かが集まりましてこういう仕組みをつくったということでありまして、これはすでにそういう約束をいたしました国々との間に何とかコンセンサスが得られて、それでこの荷物の処理というものについて見当をつけたいと
考えておるわけでございますので、そういう
意味でひとつわれわれの
緊張緩和に対処する
外交につきまして、御不満な点がありましょうけれ
ども、
政府の
立場につきましても御
理解をいただきたいものと思うのでございます。
第二の、中ソ
関係の間に立って、この対立を利用して云々なんというような根性は毛頭持ちません。そういう大それた
考えは毛頭持たないわけでございます。そんな力はございませんし、そんなことをすべきでもございません。あくまでも
日本の国益を踏まえた上で、
中国に対しては
中国、ソ連に対してはソ連に対してやるべきことをやる、やらないことはやらぬという
立場は何としても堅持していかなければいけないと思っております。この点につきまして、あなたに私が御忠告をいただきましたように極力慎重にやれということでありまして、仰せのとおりひとつそういうつもりでやってまいりたいと思います。
それからソ連首脳との間の書簡の交換でございますが、去年の秋、福田
外務委員長に託した書簡を契機といたしまして、日ソ最高首脳の間で書簡の交換が行なわれる運びになりましたこと、これはまあ首脳
外交の時代でございますので、間断ない意思の疎通を最高首脳の間でやっていただくということは、私は
外交にとってはかりしれない効果をもたらすものであると
評価をいたしておるわけでございまして、今後もそういうことについて精力的にやってまいりたいと思っております。本日も、先般当方の
田中総理から送られました書簡に対しましての返信が、きょう十時半にブレジネフ氏から
田中総理に対する返書が届いているはずでございます。こういうことは、私は非常にありがたいことだと思っております。そして、すでに
田中総理に対する訪ソの
要請は前々から、福田さんが行かれた当時からあったわけでございまして、総理に対する訪ソの招待はずっとスタンディングというか、そういう招待を受けたままの状態にいまなおあるわけでございまして、おそらくは、きょう手交されます書簡の中にもそういうことが再確認されるのではないかと私は思っております。したがって、私の
立場から申しまするならば、首脳
外交時代でございまするし、日ソの間にはこういういろいろ重大な二国間の
関係を持っておりますので、総理に訪ソしていただいて、さらに直接
接触を最高首脳の間で持たれることを私は希望いたしております。したがって、そのようなことを総理にお願いしようと存じておりますけれ
ども、目下
国会開会中でございますので、
国会が終わりました段階で、総理の全体のことしの政治スケジュールの中でこの問題に特別な
配慮をちょうだいしたいものと、いま思っておる次第でございます。
それから日ソ
関係の今後の進め方でございますが、ブレジネフ書記長も申されておるとおり、二国間の懸案を
解決して安定した基礎の上に
両国の
関係を置きたいということを、先般の革命記念日にも言われておりまするし、
田中総理も同じように希望をされているわけでございます。そのためには平和条約を
締結しようということにつきましても、
両国は一致しているわけでございます。したがって、去年の一月のグロムイコ外相の訪日からそういう話が出てまいりまして、去年の十月に私が訪ソいたしまして第一回の交渉を行なったわけでございます。第二回の交渉をことしはまたモスクワでやろうということまで
合意をいたしておるわけでございます。この平和条約の
締結交渉につきましては、仰せのように、もう万々御承知のように
双方にとりまして解けがたい懸案をかかえておるわけでございますので、これには相当精力的な交渉がこれから要ると思うのでございますけれ
ども、すでに最高首脳同士の間で平和条約
締結交渉はやろうじゃないか。で、こういう平和条約の
締結を通じて日ソ
関係を将来の長きにわたって安定的な基礎の上に置こうじゃないかということで
合意を見ておるわけでございますから、それを唯一の頼みといたしまして、むずかしい
懸案事項につきましては、しんぼう強い交渉を通じまして何とか打開の糸口を発見したいものと思っておるわけでございまして、いま私に成算があるかというとございませんけれ
ども、一生懸命に対処しなければならないという
決意でおることだけを御報告申し上げさしていただきたいと思います。