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1973-03-27 第71回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月二十七日(火曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 藤井 勝志君    理事 石井  一君 理事 小坂徳三郎君    理事 西銘 順治君 理事 福永 一臣君    理事 岡田 春夫君 理事 堂森 芳夫君    理事 金子 満広君       加藤 紘一君    深谷 隆司君       山田 久就君    石野 久男君       勝間田清一君    河上 民雄君       近江巳記夫君    永末 英一君       瀬長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務政務次官  水野  清君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省中近東ア         フリカ局長   田中 秀穂君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省条約局外         務参事官    松永 信雄君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      前田多良夫君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 三月二十六日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     長谷川四郎君   竹内 黎一君     木村 武雄君 同日  辞任         補欠選任   木村 武雄君     竹内 黎一君   長谷川四郎君     加藤 紘一君 同月二十七日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     近江巳記夫君     ————————————— 三月十九日  物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関  条約ATA条約)の締結について承認を求め  るの件(条約第七号)  職業用具の一時輸入に関する通関条約締結に  ついて承認を求めるの件(条約第八号)  展覧会、見本市、会議その他これらに類する催  しにおいて展示され又は使用される物品輸入  に対する便益に関する通関条約締結について  承認を求めるの件(条約第九号)  航空業務に関する日本国ギリシャ王国との間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第一〇号)  千九百七十二年の国際ココア協定締結につい  て承認を求めるの件(条約第一一号)(予) 同月二十六日  横須賀の核空母母港化反対等に関する請願(石  母田達君紹介)(第一七二四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  千九百七十一年十二月二十日に国際連合総会決  議第二千八百四十七号(XX VI)によって  採択された国際連合憲章改正批准について  承認を求めるの件(条約第一号)  アフリカ開発基金を設立する協定締結につい  て承認を求めるの件(条約第二号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 藤井勝志

    藤井委員長 これより会議を開きます。  千九百七十一年十二月二十日に国際連合総会決議第二千八百四十七号(XX VI)によって採択された国際連合憲章改正批准について承認を求めるの件、アフリカ開発基金を設立する協定締結について承認を求めるの件、以上両件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤紘一君。
  3. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 ただいま議題として提出されました国連憲章改正と、アフリカ基金条約批准について、若干お尋ねしたいと思います。  まず最初に、今回のアフリカ基金に対する日本融資参加の件は、私はその経緯等から見て、日本経済協力観点から非常におもしろい一つのケースではないかと思われます。と申しますのは、御承知のように、アフリカというものは、われわれにとって地理的にも政治的にも非常に遠い国であり、また、われわれ日本人の心理としてはかなり関係のない国と思われているような側面が非常に強いわけですけれども、それにも反して、今回アフリカ基金に関する条約署名会議アビジャンというところで行なわれたそうですけれども、そこの会議の際には、わがほうの稲田大使が非常に積極的な役割りを果たされ、またその稲田大使参加国の中で一番最古同額である一千五百万計算単位というものの日本側のドネーションを発言、また決定したときには、非常に大きな拍手をもって迎えられたということがいわれております。と申しますのは、それほど遠い国でありながら、なおかつ今回のアフリカ基金日本が非常に積極的であったということ、これ自体日本経済協力理念というものを今回あらためてお尋ねするのに非常にいい機会ではないかと思います。  特にアフリカ基金の場合には、マルチの場における経済協力でありますし、またいわゆるODAの、政府援助の非常にきれいな形のものではないかと思います。しかし逆に、振り返ってみますと、御承知のように日本国内には経済協力をなぜ日本がやらなければならないのかというような疑念というものは、非常に古典的ではありますけれども、非常に根強く残っているように私は思われます。同時にサンチャゴのUNCTAD会議なんかで、日本は将来ODAを非常に高めるとかあるいは一九七〇年代末までに実施するのを言ったの言わないのの議論はありますけれども、とにかくODAを非常に強めていく。そうすると財政当局との間にいろいろな意見の食い違い等があるのだと言われております。そこでODAをこれから強めるという、比率を高めていくという意味からも、ここで日本がなぜ経済協力をするのか、しなければならないのかという理念というものを、もうひとつここではっきり確認しておく必要があるのではないかと思われます。  特にUNCTADとかDACのいろいろな世界の動きを見てみますと、これからGNPの〇・七%をODAとして出すということになりますと、これは日本政府一般会計予算の中に占める比重も非常に強いものになってくるおそれがあり、ある意味ではかつて田中総理参議院だったか衆議院の本会議でも言われましたように、防衛費比率にも匹敵するほどの額になってくるわけです。たまたま現在の経済協力というのはまだ額が非常に少ないものですから、日本国民全体に、直接自分らに関係のないようなものとして、専門家だけの問題として取り扱われておりますけれどもほんとうに〇・七%まで高められるという事態になりましたら、非常な議論を呼ぶ分野ではないかと思います。国内社会保障が全然充実してない、ただ制度が発足しただけにすぎない、そういう日本なのに、なぜ外にそれだけ経済援助をしなければならないのかという一般国民の素朴な議論というものが、あと数年以内に非常に強い形になってあらわれてくるように思います。そういうようなことも考えて、これから経済協力が非常に多くなっていく、その一つの転換期にあたって、なぜ日本経済協力をするのか、そういう理念というものについて、もう一回ここで政府当局考え方というものを確認しておきたいように思います。
  4. 水野清

    水野政府委員 加藤先生の御提案の問題につきましてはごもっともでございまして、私ども国内の、要するに外交に関心のない層の方々にお目にかかって話をいたしますと、そういうときによく出る話は、日本国内でもまだやるべきことがあるのに、何で対外援助日本がしなければいけないのかというような話があることは、先生お話のようなことでございますが、御承知のように日本国——日本の国といいますより、世界独立国の中で、主として北半球の国と南半球の国と比較をしてみますと、先進国であるヨーロッパであるとかアメリカであるとか日本のような先進国に富が偏在をしまして、どうしても発展途上国とかさらに後発国のほうに貧困が累積をしている、こういうことは御存じのとおりでございます。この問題を解決していきませんと、先進国の中ではいまいろいろな形で問題が、それぞれ国内問題として進んでおりますけれども社会保障の問題であるとか人口問題であるとか、こういうことが保障されておりますけれども世界全体としてはなかなか解決がしていきにくい。たとえば世界の人口の急増という問題も起こってまいりましょうし、こうなりますと、やはり食糧問題が出てくる。あるいは医療関係の問題にしましても、先進国だけで解決のつく問題でもないわけでございます。どうしても世界じゅうの国が連携してこういう問題を解決していかなければならない。その前提として、発展途上国あるいは後発途上国国々にもそれぞれ力をつけていただいてやっていかなければ、地球上の問題というものは解決がついていかないんじゃないか。これが御承知のように、南北問題としていろいろな国際会議で提案されていることは御承知のとおりでございますけれども、そういう観点から、あるいは経済的な問題を取り上げましても、わが国からの物の輸出だけで問題が済むわけではございませんので、相手側支払い能力がなければ、ただ、物を輸出しましても支払いもしてもらえない。ただ相手から取り上げるというのではなくて、相手に力をつけてもらって、こっちでその力の中から支払いをしていく、こういうことでございます。こういうことからしましても、日本発展のために、あるいは地球全体の平和と繁栄のために後進国——後進国ということはこのごろ言わないわけですが、発展途上国並びに後発途上国国々援助をしていく、こういう理念のもとでやっているわけでございます。
  5. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 この外務委員会というのは、御承知のように、衆議院参議院先生方からあまり歓迎されない、出席率も低い、また委員にもなりにくい委員会だということをよくいわれておりまして、この問題については鯨岡先生も、たしか本国会最初のこの委員会でいろいろ問題にされたと思うのですけれども一般国民としては、確かに外交だとか国際平和だとかということは大切だとは思うんだけれども、また相手の国を助けるということも必要なんだと思うんだけれども、それよりも自分の日常のことが大切だという感覚が非常に強いように思われます。ですから、日本経済協力理念という場合においても、これからは国際主義的ないろいろな意味での説得、国民に対するPR活動というものがこれから必要だと思われますし、それと同時に、国際経済協力というものが、後進国援助というものが、自分らの、日本のわれわれの生活にもはね返ってくるんだ、そういう意味でのPRというのをかなり強力にやらない限り、国際平和だとかかっこうのいいことばもけっこうだけれども、または相手の国を助けるという人道的立場というのもけっこうであるけれども、われわれの問題も考えてくれという、国際経協理念に関する古典的なものはいつまでも抜けないように思われます。もちろん政府当局もその辺十分御承知で、これからPRをなさってくださると思いますけれども、その点については、ほんとう国民に、経済協力にさく資金が非常に多くなった段階でも説得できるようなPR活動というものをこれからお願いしたいように思います。これは要望ですけれども……。  続いて、理念の中で最近よく言われることばの中に、日本はドル過剰だ、百何十億ドルたまったからその分だけ国際協力に回せばいいじゃないかというような議論がよく行なわれております。しかし、私はこれはけっこうな話なんですけれども外貨がたまったから経済協力をする、開発途上国に対する援助をやるということは、私はある意味で非常に危険な発想ではないかと思います。日本経済協力をするのは、経済発展力がありGNPが非常に高くなっていきつつある国だから、その分の技術または経済力をもってお助けしましょうという、そういう基準が本来であるべきであって、外貨がたまったから云々というのはプラスアルファでなければならないというような感じがいたします。  その一つの具体的な例は、今度のアフリカ基金についても言えることでありまして、アビジャン署名会議では——たしか署名会議以前ですか、アメリカなんかも構想自体に非常に協力的であった。しかし、いざそのことが始まってみると、同時にアメリカ国際収支も非常に悪くなってきたということで、今回まだ出資というものを正確にきめてないわけです。だから国際収支がいいときには非常に積極的であって、そして悪くなるとちょっと待ってくれということになる。これは先般の一九七〇年ですか、DAC上級会議が東京で行なわれた際、アメリカがいわゆるアンタイイングの問題について非常に前向きであって、アンタイイング・スキームという問題も一生懸命検討しようということで先頭に立ってくれた国であったけれども、しかし国際収支が悪くなると、理念としてはそれに賛成なんだけれども、非常にうしろ向きになってしまっているという事態があるわけです。ですから、日本はその辺はっきりしないと、外貨がたまり過ぎの処置のために援助をするということになりますと、外貨事情が悪くなったらもうあと戻りせざるを得ない。またあと戻りをしたら国際的に非常に非難を受ける、世界全体の後進国開発援助という問題のスキームを狂わせてしまうということになりかねないという危険性があるように思います。その意味で、国際収支のドルの過剰の問題と経済協力というものをあまり結びつけることは非常に危険な発想ではないか。最近マスコミ等では非常に強くいわれていますけれども、私は危険な考え方ではないかと思うのですけれども、その辺いかがお考えなのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  6. 水野清

    水野政府委員 いまの加藤先生の、国際収支黒字解消策としての対外援助の量の増大というような発想は非常に危険だというお話がございまして、もっともでございます。  御承知のように、昨年のチリにおける第三回の国連貿易開発会議におきましても、政府開発援助の量というものは国際収支の困難を理由に削減されてはならないというような決議も行なわれております。しかしまた、これがいま加藤先生の御指摘のように、超大国であるアメリカのような国でも、やはり国際収支赤字になってまいりますと、理念理念として掲げながら、実質的には行動においてはかなり後退をしておられる。あるいはアンタイドの問題にしましても、逆にバイアメリカンであるとか、そういった形で別な方向をたどっているというようなことも事実でございます。日本としましては、いま加藤先生の御指摘のように、国際収支赤字黒字ということを別にしても、一ぺん掲げた海外援助というものの目標については懸命な努力をしていかなければいけないわけでございますけれども、同時に日本国内においても、やはり国内問題としまして、現在は非常に外貨ポジションがいいわけですから問題ございませんけれども、将来もし非常に悪くなるというような事態が起こった際に、これは国内議論としてはかなり出てくる問題であると私は思います。そういう際に、政府としてはきちっとした態度で方針を貫いていきたい、こう思っておる次第でございます。
  7. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 アフリカ基金そのもの自体には、私は非常に将来の開発援助理念からいってきれいな形で入っている構想だと思いますし、日本がこれに参加することには毛頭異論もありません。ただここでひとつアフリカに対する開発援助という観点から二、三お聞きしたいと思います。  一つは、御承知のように、アフリカに対してはソ連だとか中国とかが一九六〇年代の最初からかなりの形の開発援助をやっております。特に中国の場合には例のタンザン鉄道、タンザニアとザンビアの鉄道に対する強力な援助もありますし、また同時に経済協力に関するたしかあれは八原則だったと思いますけれども、そういう原則に基づいて一つの大きな運動を行なっている。もちろんその背後には、国連における中国代表権の問題をみずからに有利に解決したいという気持もあったのだと思いますけれども、非常に理念としてはまたコミッタルベースとしては前向きの運動を行なっているわけです。それと同時に、今回アフリカ基金というものが、アフリカ全体をカバーするものとして、特に後発開発途上国が非常に多いアフリカに対する一つ構想としてはなばなしく登場してきたと思うのですけれども、これはアフリカ基金はもちろん共産圏諸国社会主義諸圏にもオープンにされていると思いますけれども、それらの国が参加する可能性があるのかということと、それから同時にもし参加しないならば、それらの諸国が、社会主義諸圏が行なっているアフリカに対するマルチ開発援助構想というものと、何かコンフリクトを起こす可能性がないかというような点について、専門経協局でも、欧亜局のほうからでもお聞きできればありがたいと思います。
  8. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 お答え申し上げます。  加藤先生指摘のように、ソ連中国等の国は、それぞれ従来からアフリカに対する援助の力を入れてきておるわけでございまして、しかしながら、傾向でございますが、そういう国々は従来二国間の援助ということに力を入れておりまして、アフリカ開発基金がそれらの国が入ってくる道をとざしているわけではございませんが、そういう国々が、こういうマルチの機構に入ってきて一緒にやっていこうという意図を有するかどうかは現在のところまだ必ずしもはっきりしておりませんので、入ってくるとすれば十分に入ってくる道はできておりますが、おそらくはかれらは独自の二国間のやり方で進んでいくだろうというふうに現在のところでは予想しておる次第でございます。
  9. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 私のお聞きしたがったのは、たとえばタンザン鉄道とかそういう開発構想というものは、私、アフリカについてよく知りませんけれども、かなりアフリカ全体の開発にも影響を及ぼしそうなものです。それが一方社会主義諸圏援助によって行なわれている。それで今度アフリカ基金の場合には、アフリカ外銀なんかよりも非常に条件よく、どちらかというとインフラのほうに力点を置いてやっていくという構想のように伺っておりますけれども、そういう両者が本来ならば両方合わせてやっていけば非常にうまく行くものを、アフリカ基金に入ってくる可能性オープンにされているとはいえ、いまのところ入ってきそうもない見通しだとぼくは思うのですけれども、その辺が将来日本としてコーディネートしていくような、そういう側面で働くようなことは考えられないかということ、それは無理にしても、とにかく何かコンフェクトする可能性がないかというあたりをちょっとお聞きしたのです。
  10. 水野清

    水野政府委員 いま加藤先生の御質問の、中国ソビエトのいままでのアフリカ援助というのは、御承知のように、そもそもの最初がかなりイデオロギーが前に出た援助をしようとしたわけでございます。しかしこれはアフリカ諸国が非常にこういうものに対して拒絶反応を示したために、最近は中国ソビエトイデオロギーというものをあまり全面に出さないで、ともかく後進国に対して好意から援助をするのだというやり方でやっていることは御承知のとおりであります。さらに御承知のように、旧植民地時代宗主国であるたとえばフランスなんかの場合も、やはりフランスフランス独自の援助方式をこれまでどおり続けていきたいという感情を持って現在も続けていることも御承知のとおりであります。ですからいずれも、中国ソ連フランスも現在のアフリカ基金には参加をしておりません。しかしこのアフリカ基金の精神というものは、そういう個別で、バイラテラルでやっている援助というものではやはり資金的にも足りないし、またいろいろフリクションも起こってくる。だから各国で寄り集まって金を出し合っていこうじゃないか。しかもこのアフリカ基金の運営については、御承知だと思いますが、それぞれのアフリカ諸国の自主的な発言権というものを認めて、自分たち先進国から出した金のファンドを利用してやっていく、こういう方向をたどろうとしているわけであります。ですからこれに将来中ソあるいはフランスのような旧宗主国が入ってくるかどうかということは、これに力をつけてやることが先であって、また現在までのファンドの量からいいましてもきわめて少ないわけでありますから、将来これに力がついていけば、結局従っていかざるを得ないであろう、私はこう思う次第でございます。
  11. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 わかりました。  それから今回のアフリカ基金に出資するということ、アフリカ基金関係してたとえば日本経済協力は将来どういった地域に重点をとっていくのか。いまアジア重点が置かれ過ぎているというような国際的な非難もあるし、そういう点はどう考えていらっしゃるかということとか、それからアフリカそのものに対しては、いまおっしゃった日本としてはバイというものを重点に置いていくのか、それともマルチでやっていくのか、その辺の比重は将来どうお考えになるのかとか、いろいろお聞きしたいこともあるのですけれども最後一つだけお伺いしたいのは、日本経済協力を実施するために一つの具体的な基準というものを考えていかなければならないのじゃないかという点について、ちょっとお伺いしたいように思います。  つまりこの経済協力開発援助の問題、この委員会でもこれから何回か長い間にわたって基本的な問題についてお伺いしていきたいように思いますし、別にきょう御答弁いただかなくてもけっこうですけれども、たとえばどこどこの国に幾ら円借を与えるとか等々の問題が、いまの段階ではかなり恣意的にきまっていく可能性がないかというおそれがあるわけです。たとえば、たまたまある国に駐在していた大使というものが、経済協力というものに対してかなり前向きの考えを持っている、そして現地の政府も非常にやり手の開発相大臣なんかがいて、そこがうまく合って、日本からの開発援助の流れが非常に強くなっていくとか、それから、たまたまある日本の代議士が東南アジアのどこかの国に行かれて、これはたいへんだ、こんなみじめな状態にしておけないということで、日本に帰られて国内をいろいろ説得されて、そしてある国に対する経済協力というものが非常に前面に出て実施されていくというのが、私はよくわかりませんけれども現状ではないかというような気がするのです。それも一つの方法であり、その時々に応じた非常に弾力的な運用ができるという意味での利点はあると思いますけれども、しかしやはり世界全体の開発援助という構想の中で、日本日本独自性としてこういう八原則とか十原則でやっていくのだというような基準というものを、これからつくっていくように努力すべきではないかというように思います。  私は国会に出てきて初めてなんでよくわかりませんけれども、かって大平大臣経済協力に関する三原則とか八原則について、非常な抽象的な形ではあるけれども何か持ち出されたそうですが、それをもう一度お聞きしたいということと、それをより深めてもっと具体的なものにつくり上げていかれるお考えがないかどうか、それを最後にお聞きしたいと思います。
  12. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、援助が恣意的に流れずに、計画的に実施すべきであるという点はまことにごもっともでございます。私どももそのような方向で今後も努力を続けたいと思っておりますが、そのもとになるべき基準ということにつきまして、これは大臣が申されたわけではございませんが、ことしの初めごろの新聞等で三つの理念というようなことが書き上げられましたけれども、これすらもまだ日本政府内部で統一された一つ基準となっておるものでもございませんで、私どもの一応の考え方をあらわしておるものというふうに、私どもと申しますのは外務省考え方をあらわしているだけのものであるというふうに御理解いただければありがたいと思っております。今後もこういったような基準を極力つくり上げて、それに基づいて恣意的に流れないように十分な配慮を持った援助を続けていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  13. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 それでは最後に、アフリカ基金条約批准可能性というものと各国の批准状況、それから今回日本が一千五百万単位を拠出するということになっておりますけれども、これは一単位は、何か資料によりますと金の何グラムに相当するとかというお話ですけれども、それがドルの切り下げとか金との交換比率の変更、最近の動きでいろいろ技術的に変わることはないのでしょうか、その辺ちょっと最後にお聞きしたいと思います。
  14. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 本協定に署名を済ましております国はすでに十三カ国でございまして、そのほかに、さらにスペイン、アメリカ、ユーゴ等の国が参加の意向を表明しておる、これらの国々はいずれもことしの秋ごろまでにはそれぞれ批准の手続を終わるであろうというふうに予測されております。  それから第二点の単位の問題でございますが、これはむしろ金の重さを表示することによって通貨変動等に左右されないということを意図しているものかと考えております。
  15. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 次に、国連憲章改正の問題について若干お尋ねしたいと思います。  国連憲章改正となるとこれはたいへんな重大な問題だと思いますけれども、今回のは単に経社理の理事国の増加ということで、それほど私は問題のある改正ではないように思います。ただ私ちょっとお伺いしたいのは、いわゆるエコソク、経済社会理事会というもの、これは国連についての紹介という、いわゆる教科書的なものによりますと常に顔を出してくるたいへんな重大な理事会ということになっておりますけれども、われわれとかく国連を見ますと、いわゆる政治的側面、安保理というものに重点を置いて見がちであり、経社理が一体どういう活動をして国連の中においてどのような機能を持っているかというところは見過ごしがちなように思います。たしかちょっと外務省の方にお伺いしたら、国連財政の中に占めているものの中で、エコソク関係がほとんど九〇%くらいその活動費で占めているともお伺いしたことがありますけれども、まあエコソクの国連の中での活動の比重というのは、これからますますふえていくように思われます。それで特に平和と安全の機能を果たすべき安全保障理事会がいわゆる拒否権等の動きによってある程度限定されているとすれば、その機能というものはだんだん重大になってくると思うのですけれども、まあしろうとにわかりやすく、そのエコソクというのはどういう活動をして、それの比重役割りを今後重大なものにしつつあるのかどうか、その辺についてちょっと初歩的な解説をお願いしたいように思います。
  16. 影井梅夫

    ○影井政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの加藤先生指摘のとおりに、最近の国際関係と申しますかは、従来のように国際の安全と平和の維持ということの重要性、これはもちろん変わっておりませんけれども、そのほかに国際的ないろいろな交通、通信手段の発達ということを通じまして、世界諸国関係というものが非常に密接になってきている、その面から特に経済面それから社会面におきましてますます緊密の度を加えているということが言えるかと思います。こうした国際的な経済面、社会面の関係がますます密接になってくるということは、反面におきましてその間のいろいろ調整が必要になってくることも同時に伴っているわけでございます。ただいま先生指摘のとおりに国連関係におきまして、これは国際連合自体と、それから国際連合のいわゆる専門機関、この経費の面から見ましても、出費の面から見ましても、御指摘のとおりに大体その九割方の金額は国際的な経済、社会面の調整と申しますか、あるいは発展途上国開発のために使われているという現状でございます。  私ども国際連合を見ておりまして、その国際連合の本来の任務と申しますか基本的な任務は、依然として国際の平和と安全の維持にある、これは変わらないと思います。ただ、この目的のために国際社会における経済面、社会面の重要性というものが非常に増してきておるというのが現状であろうかと思います。その意味におきまして、国連が持っております三つの理事会のうちの一つ、この経済社会理事会の重要性がそれに伴いまして非常に増してきておるということであろうかと思います。たとえて申し上げますると、各国の間の貿易の重要性はもちろんのことでございますが、われわれ人類に残されております最後のフロンティアと呼んでおります海洋問題、あるいは宇宙空間の問題、さらには環境の問題、こういった問題すべてを取り上げておりますのは経済社会理事会でございまして、いよいよその重要度を増しております。そしてこの経済社会理事会の活動を通じまして、最初に申し上げました国際社会の経済、社会面の調整機能ということが果たされる。これはすなわち、国連の本来の目的である国際的な平和と安全の維持、これに寄与するゆえんである。私ども国連の経済社会理事会の活動、その重要性というものを大体そういうふうな見方で見ておる次第でございます。
  17. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 本件憲章改正条約について、これは単に理事国の数を増すということなんですけれども、イギリスやフランスなんかが反対しておりますね。その反対の理由と、それからこれらの諸国が採択に反対しているようですけれども、それらが反対した場合には当然のことながら条約の成立、改正は不可能ということになりますが、その辺の見通しはいかがですか。
  18. 影井梅夫

    ○影井政府委員 憲章の改正の採択にあたりまして反対いたしましたのは、ただいま御指摘のとおりにイギリス及びフランスの二国でございます。ソ連それからソ連圏の諸国は棄権をしておるという状況でございます。  そこで、憲章の改正が効力を発生いたしますための要件でございますが、これは御承知のとおりに、安全保障理事会の常任理事国である五カ国すべてを含みまして加盟国の三分の二以上がこれに批准するということが要件でございまして、現在加盟国の数が百三十二カ国でございますので、ただいま申し上げました安全保障理事会の常任理事国五カ国を含みまして八十八カ国がこれに批准することが要件になるわけでございます。現在までに私どものわかっておりますところでは、これは三月二十日現在でございますが、六十カ国が批准をしております。ただしその六十カ国のうち、安全保障理事会の常任理事国といたしましては中国批准を済ましているだけでございまして、あとの四カ国はまだ批准を済ましておりません。  そこで、イギリスそれからフランスが憲章の改正、経済社会理事会の理事国の数をふやすことに反対いたしました理由は、確かに経済社会理事会の活動の重要性というものは認めておりますが、経済社会理事会の活動を真に有効ならしめるためにはむしろ理事国の数が少ないほうがいいんである、少ない数の国によって有効に活動を促進すべきであるということでございました。ただしフランスにつきましては、これは昨年の七月の経済社会理事会であったと記憶いたしますが、フランスは採択にあたりましては反対いたしましたけれども、その後フランス国民議会は、この憲章改正によりまして経済社会理事会の理事国の数をふやすということに賛成であるということでこの問題を取り上げまして、批准する用意があるという言明があった事実がございます。したがいまして現在、反対のままその後の態度がはっきりしないのは、イギリスが残るわけでございます。  なお、中国は憲章改正の採択の際にこの会議参加いたしておりませんけれども、ただいま申し上げましたようにすでに批准を済ましておるということからいたしまして、中国がこれに賛成であるということは非常に明らかでございます。
  19. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 それでは、時間も経過しましたので最後に一点だけ。  まあ素朴な疑問として、国連憲章改正であるすれば、われわれ日本人としてはまず第一に憲章の中の敵国条項というものを廃止してもらうように努力すべきなんであって、今回の改正もけっこうですけれども、敵国条項の件についてもがんばっていただきたいという当然の気持ちが出てくると思います。その辺の敵国条項の撤廃に関する最近の動きというか現状を最後にお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  20. 影井梅夫

    ○影井政府委員 国連憲章の百七条に出てまいります敵国条項でございますが、確かに御指摘のとおりに、もしこれを撤廃できるものであれば撤廃すべきであろうと考えております。また日本につきましては、御承知のとおり一九五六年に日本国連に加盟を認められたということは、憲章四条に規定しております平和愛好国という立場を認められたので国連への加盟が認められた。したがって理論的には、この敵国条項というものは日本に対しては適用がないということは明らかであるかと思います。しかしながら、今日のような国際情勢におきましてこのような敵国条項がいつまでも残っておることが適当でないということは、これはもう御指摘のとおりでございます。  ただ、国連憲章改正につきましては、ただいま御審議を願っております経済社会理事会の理事国の数をふやすという問題と、それからただいまの敵国条項の撤廃という問題はやや性質を異にいたしまして、もしこの百七条の敵国条項の撤廃という目的のために国連憲章改正をはかるということであれば、ほかにも憲章の改正をはかるべき個所が残っておるという問題を誘発するという意味におきまして、国連の加盟国の間におきましては、確かにこの条項を残すことにあまり意味はないということは認められておりますけれども、ただ、もしこれを大々的に取り上げますと憲章の他の個所についてもいろいろ改正を要する、あるいはそれの審議を要することになるという意味におきまして、常に問題意識は持たれておりますけれども、この敵国条項の撤廃のために積極的に憲章の改正をすべきであるという動きは、現在のところは活発ではないというのが現状かと考えております。
  21. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 それでは私の質問はこれで終わります。
  22. 藤井勝志

    藤井委員長 堂森芳夫君。
  23. 堂森芳夫

    堂森委員 国連憲章改正批准を求める条約につきまして二、三の点をお尋ねしたい、こう思うのです。  関連しまして、先般ワルトハイム国連事務総長が二月でございますか、日本を訪問されました。そのときに総理、外務大臣と会談をされまして、国連の財政的な危機というものに対してわが国に応分の寄付を願いたい、こういう申し入れがあったといわれておるのであります。これに対して総理は、できる限りの協力を惜しまないというふうな話し合いをしたとか、あるいはまた大平外務大臣日本が安保常任理事国に格上げといいますか、ステータスの問題としてもっと重要な国連のメンバーになるように協力をしてもらいたいという申し入れをしたというふうに当時報道されております。きょうは大臣はおられませんが、私は大臣にいろいろ聞こうと思ったのですが、政務次官もおられますし、国連局長もおられますから、次官から御答弁を、どういうふうな話し合いであったか、政府はどういう気持ちでおるのか、承っておきたいと思います。
  24. 水野清

    水野政府委員 先般ワルトハイム事務総長が日本に来られましたときに、国連赤字解消の問題について日本政府に協力を要請されたということは堂森先生からの御指摘のとおりでございます。その際田中総理及び大平外相から協力要請に応じるという御回答を申し上げました。一千万ドルの拠金もするというような話し合いをしております。ただ、御承知のように、日本だけがまっ先にやるということについては、各国も、御承知のように国連の分担金についてちゃんと支払いをしていない先進国も中にはございますから、そういうところなどの督促もやっていただいて、同時に日本も払うべきものは払うという以上に御協力をする、こういう話し合いをしております。
  25. 堂森芳夫

    堂森委員 国連の財政が非常な危機に来ておる、いま八千七百万ドルくらいですか、負債になっておるそうですが、この大きな原因は国連のスエズへの国連警察軍の負担金、それからコンゴ国連軍の軍事行動に使った費用等については、たとえばソ連だとかあるいは東ヨーロッパ諸国が負担を拒否しておる、あるいはフランスもそうでないでしょうか、コンゴの国連軍の軍事行動に対する費用負担は拒否する、こういう態度に出てきておるのが一番大きな原因でないかというふうに私は聞いておるのですが、それで間違いないですか。
  26. 影井梅夫

    ○影井政府委員 御指摘のとおりに、現在の国連の財政赤字が出ました大きな原因、これはソ連等の一部の諸国がかつての、ただいま先生指摘のとおりに、スエズ及びコンゴにおきます国連の平和維持活動、これに対する分担金の支払いを拒絶しているということ、これが一つの大きな要因になっております。  そこで国連の財政赤字、これはいわゆる国連の分担金という形以外に、御指摘の約八千六百万ドルの財政赤字を生じた、その責任を有する国、具体的に申し上げますと、私ども念頭に置いておりますのは安全保障理事会の常任理事国、これが本来責任を負うべき額だと考えておりますけれども、しかしながら、単にその責任を追及するということだけでは国連自体の持っております活動というものを阻害する。したがいまして、その責任論ということはもちろんあるわけでございますけれども、他方、現実に国連にもっと有効な活動をしてもらうためには国連の財政赤字を解消することが重要である、そういう意味におきまして、日本は責任はないけれども国連の活動に非常に大きな期待を持っており、日本もこれに応分の寄与をしたいというのが日本の立場でございます。
  27. 堂森芳夫

    堂森委員 約八千六百万ドルか七百万ドルの累積赤字があって、それから台湾政府の滞納金も二千万ドルくらいあるようであります。とにかく八千数百万ドルの大きな赤字があって、日本政府に向かってワルトハイム事務総長から一千万ドルの寄付をしてもらえないかという要請があった、政府はこれに協力しましょう、こういう返事をしたのでありますか。私ちょっとさっきの御答弁で……。
  28. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいま申し上げましたとおりに、国連のこの財政赤字、これにつきまして日本は責任はないということは明らかでございます。しかしながら、国連の活動を十分に期待するという意味におきまして、責任論を一応度外視と申しますか、別の問題といたしまして協力をする。これにつきまして、国連事務総長が先月日本に参りました際に、日本にひとつ一千万ドルの拠金をお願いできないかという申し出がありまして、これを受けまして日本といたしましてもこれを考慮いたしましょう、ただし、先ほど政務次官からお答えがありましたとおりに、この累積赤字の責任、これは五大国、安全保障理事会の常任理事国がまず責任を負うべき問題でございますので、この五大国の出方を見まして——必ずしも五大国すべてがこれに応ずるというところまで現実にはいっておりませんけれども、しかしながら、まず第一義的に責任を有するこの五大国の出方を見まして、それに応じまして日本も応分の拠金をしたいという答えをしておるわけでございます。
  29. 堂森芳夫

    堂森委員 局長の御答弁は五大国が協力する体制になったときに、日本も応分の協力をしていこう、こういう返答をしたということでございますね。
  30. 影井梅夫

    ○影井政府委員 これはただいま政務次官からお答えがありましたとおりに、まず責任を有している五大国、この出方を見たいということでございます。ただその意味合いは、五大国がすべて一定の額を拠出するとかそういう非常に厳密な条件は考えておりませんけれども、しかしながら日本がとにかく第一義的な責任を有しないという立場を明らかにする意味におきましても、まず五大国の出方を見てからという条件がついているわけでございます。
  31. 堂森芳夫

    堂森委員 よくわかりました。  しかし、原則的には協力をしましょう、こういう返答をした、こういうことだと解釈していいと私は思うのです。そうですね、違いますか。
  32. 影井梅夫

    ○影井政府委員 日本は、先ほど申し上げましたとおりに、国連の活動、これが財政赤字のために分できないという状況では困る、つまり国連の今後の活動に大きな期待をするという意味におきまして、原則的と申しますか、五大国の出方によりまして日本も協力をいたしましょうという態度を表明した次第でございます。
  33. 堂森芳夫

    堂森委員 もう一つ私政務次官にお尋ねしたと思うのです。安保常任理事国に日本がなるように事務総長に協力を要請した、こういうふうに報道されておると思うのですが、どういうことだったのでございますか。
  34. 水野清

    水野政府委員 ワルトハイム事務総長には、日本が安全保障理事会の常任理事国になぜなりたいかという客観的な説明、日本の希望というものは述べております。しかし、これとこのたびの事務総長からの要請によって約束をしました一千万ドルの拠金とは全く関係はない、別のものであるというふうに考えております。
  35. 堂森芳夫

    堂森委員 私、関係ある、こう言っているのじゃないのです。向こうから、ワルトハイムさんから、財政危機の突破のため、財政回復のために協力願いたいという申し入れがあった。日本からは、もちろんそれはいろいろな条件つきというか何というか、協力しましょう、こういう返答をされたと思うのですが、同時に、日本が安保常任理事国になれるように、事務総長いろいろ協力してくれ、新聞はそう書いている。そうすると、ワルトハイム事務総長は、これはなかなか重大なことなので、拒否権、反対の人があればもちろんできない、それからまた国連憲章改正しなければできぬことであるし、日本はできるならば安保常任理事国になろう、こういう意思をワルトハイムさんにはっきり申されたのか、ワルトハイムさんはどういう返答をしたのか、こういうことをお聞きしているのです。
  36. 影井梅夫

    ○影井政府委員 わが国が安全保障理事会の常任理事国になりたいという希望の表明、これは一九六九年の総会のときにきわめて間接的な形でございますが表明してございまして、その後、毎年の国連総会の機会にその意思は直接間接に表明している次第でございます。  今回の国連事務総長の来日にあたりましてわがほうから行ないましたことは、日本がなぜ安全保障理事会の常任理事国の地位を獲得したいということを願っているか、その理由を国連事務総長に対して説明したわけでございます。これはとかく日本の大国意識のあらわれというふうに誤解されがちでございますけれども日本がそれを願っております真意は、現在の安全保障理事会の常任理事国がいずれも核兵器国である。したがいまして、国際平和と安全の維持について第一義的な責任を有します安全保障理事会の中核をなす常任理事国がいずれも核兵器国であるということは適当ではあるまい。日本のように平和国家に徹するという態度に徹底している国、こういう国も当然安保理事国の常任理事国に入りまして、安全保障理事会の運営に大きな発言権を持つべきであると考えている、そういった趣旨の説明を国連事務総長にした次第でございます。  それからまた、ただいま先生指摘のとおりに、これが実現されますためには安全保障理事会の常任理事国五カ国を含む国連の加盟国がこれに賛成してくれるということが必要でございまして、事務総長を含みます国連の事務局がどうこうできる問題ではない。そういう意味におきまして、国連事務総長にこれを依頼したということではございませんで、日本の真意をよくわかってもらおう、そのためにその説明を行なったという次第でございます。
  37. 堂森芳夫

    堂森委員 これも大臣にいろいろ聞きたいと思うのですが、おらぬからやむを得ませんが、国際連合の第二十五回総会で当時の愛知外務大臣が演説しておりまして、私夕べこの演説を読んでおったのですが、これはいま局長おっしゃったように、かねてからわが国の政府は、核を持たないが、しかし潜在的核保有能力はあるが非核政策をとっておる日本のような国が安保理事国になるべきであるというような意味の演説もしておりますね。それからさっきも加藤議員の質問に対してお答えになった中に、敵国条項等は当然日本としては削除すべきである、こういう演説も当時の愛知外務大臣がしております。私その演説の一部を読みます。「私は憲章中のいくつかの条項が現実に適応しなくなっていることを指摘したいと思います。たとえば新しい時代の国際連合は、二十五年前の第二次大戦の残滓を払拭すべきであり、憲章第五十三条一項および第百七条のいわゆる旧敵国条項は、今日全くその存続の意味」はない、そういう意味の演説をしておる。日本政府国連憲章改正すべき点がある、こういうことを大臣が公式に、国際連合の総会に演説しておるということは、国連憲章の幾つかの点についてこれを改正すべきである、こういう考えがなければいかぬのですが、いま具体的に言いました旧敵国条項なんかは、あるいはまた安保常任理事国をふやすとか、ほかにもまだあるのでしょうが、日本側外務省としては、国連憲章について幾つかのいろいろな改正する点があるというお考えがあるからこういう演説をされたのですか。どういう点、どういう点について具体的に考えを持っておられるのか承っておきたいと思うのです。
  38. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいま御指摘がありましたとおりに敵国条項の削除、それから安全保障理事会の常任理事国の数をふやすということ、これもわれわれ念頭に置いております。また第二十五回の国連総会におきまして、当時の愛知外務大臣国連憲章改正の必要を述べられた。当時戦後二十五年を経まして、国際情勢に合わない個所あるいは国際情勢の現実、国連の運用の現実にそぐわなくなっている点もあるので、この際、国際連合憲章の各条項に当たりまして改正考えるべきではないかという提案をされたわけでございます。  そこで、具体的に考えておりました点といたしましては、ただいま先生指摘の敵国条項削除の問題、それから安全保障理事会の構成、特にその常任理事国の問題のほかに、国連が持っております重要な機能、平和維持活動、これに国連は大いにつとめておりますけれども必ずしも十分でない。したがいまして、この国連の平和維持活動、これがもっと円滑に、かつ実効的に遂行できるように国連の憲章を見直すべきではないか。それから同じ目的のために、たとえば国際紛争が起こりましたときにその事実調査機能、これがなかなか現状ではむずかしいのでございますが、いろいろな手続的な理由、実は手続的理由の背後にはもちろん政治的な理由があるわけでございますけれども、この事実調査機能、これが必ずしも十分でないので、その能力を強化するということ、これを念頭に置いておりました。またただいま御審議を願っております経済社会理事会の理事国の数をふやすということもその一環でございますけれども国連の経済社会的な分野の活動を強化する、このためにやはり国連憲章を見直すべきではないかということを念頭に置きましてあの演説が行なわれた次第でございます。
  39. 堂森芳夫

    堂森委員 たとえばでございますが、平和維持活動あるいは事実調査等の機能が非常に弱いので十分いかないとか、いろいろな点についてというお話がありましたが、今日の国際連合の機能は、やはり安保理事会、特に常任理事国の権限が非常に強くなっております。拒否権が発動されればほんとうの行動がとれない。そこで国際連合の総会と理事会と両方同じような機能を持っておる。それが弊害でもあった点はありますが、私が言いたいのは安保理事会で拒否権が発動される。そういうためにかつて、一九五〇年でしたか、国連の総会で平和のための統合決議というのが採択されて、そしてある国は拒否権を発動してもう安保理事会にも出てこない。   〔委員長退席、福永(一)委員長代理着席〕 そこで平和のための統合決議というものを総会でやって、そして安保理事会は何か機能を停止するようなかっこうで総会の決議で軍事行動を起こした、こういうことがあったですね。こういうことは結局国連憲章を実際にはこれは改定しておると見ていいんじゃないか。どう思われますか、局長
  40. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいまの先生の御質問の趣旨は、一九五〇年の平和統合決議、これは国連憲章に実質的に改正を加えているものではないか、国際の平和と安全の維持、これは本来安全保障理事会の固有の権限であって、その分野に総会が乗り出すというのは間違いではないかという御趣旨かと思いますけれども、確かに国際連合憲章におきましては、国際の平和及び安全の維持、その責任を第一義的に負っておりますのは御指摘のとおりに安全保障理事会でございます。しかしながら実際問題といたしまして、安全保障理事会がその機能を果たし得なくなる、特に拒否権の発動等によりましてその機能を十分に果たし得なくなる事態は現実問題として生ずるわけでございます。その場合に、それでは国連の総会はこの問題について何らの権限がないかと申しますと、これは国連憲章に規定されておりますとおりに、総会も国際の平和及び安全の維持について責任を持っているわけでございます。ただ第一義的にその問題は安全保障理事会の問題である。したがいまして、安全保障理事会がこれについて機能しなくなった場合には国連総会がこれにつきましていろいろな決議、勧告を行なうということは認められているわけでございます。  なおその場合に総会がどういうふうな勧告ないし決議を行なうか、それは場合によりましては軍事行動を考えている場合もございましょうし、非軍事的な行動を考えている場合もあろうかと思います。しかしながらこれはいずれも勧告でございまして、加盟国に対して法的な拘束力を与えるというものではございませんので、総会でそのような決議、勧告が行なわれましても、直ちにそれによりまして加盟国がすべて拘束されるわけではございませんで、加盟国それぞれの判断によりましていずれの手段で応じていくかということを判断していく余地が残っているわけでございます。
  41. 堂森芳夫

    堂森委員 説明がよくわからぬのですが、これは国連憲章の事実上の改定ではないのですか。何条でできるのでしょう。
  42. 影井梅夫

    ○影井政府委員 総会が国際の平和及び安全の維持に関して権限を有している、その憲章上の根拠と申しますか、国連憲章の第十条、これは総会の任務及び権限を規定いたしました条文でございますが「総会は、この憲章の範囲内にある問題若しくは事項又はこの憲章に規定する機関の権限及び任務に関する問題若しくは事項を討議し、並びに、第十二条に規定する場合を除く外、このような問題又は事項について国際連合加盟国若しくは安全保障理事会又はこの両者に対して勧告をすることができる。」という規定が第十条に設けられております。ただいま申し上げました第十二条は、安全保障理事会がその任務を遂行している間は、総会は安全保障理事会からの要請がない限りはいかなる勧告をしてもいけない。つまり第一義的に、この国際の平和及び安全に責任を有している安保理事会がその任務を遂行している間は、総会は口出しをしてはならない。しかしながら、そうでない限りは総会はこの憲章の範囲内にあるいずれの問題についても権限を有する、という第十条の規定に基づいて、先ほどの一九五〇年の平和に関する統合の決議というものが成立した、そのように考えておる次第でございます。
  43. 堂森芳夫

    堂森委員 局長、安保常任理事国が拒否権を発動するということは、これは権利でしょう。そうして、それにもかかわらず総会が、これはあなたがおっしゃるとおり十条でしたか、安保理事会が機能を発揮していないときは総会がやることができる、しかし安保理事会が実際に機能を遂行しているときはそれはできないということの説明のようですが、しかしそうすると、国連の安保常任理事国は拒否権発動しても、他の国で何でも思うことができる、こういう意味ですか。何でも拒否権を発動していない他の国々が一致すれば、それじゃ軍事行動をやろうということになると、やはりこれは改定になるんじゃないでしょうか、どうですか。
  44. 影井梅夫

    ○影井政府委員 安全保障理事会の機能が拒否権の発動によりまして機能しなくなることがある、その場合に一体どうするかという問題が残るわけでございます。  ただいま先生指摘の問題点は、安全保障理事会で常任理事国が拒否権を発動する、それによってもうそれ以上の行動は国連として何もとれなくなるのではないかという御趣旨かと思いますけれども、確かに安全保障理事会といたしましてはそのとおりでございますけれども、しかしながら国連総会、これが国際の平和と安全に関して全く権限がないというわけではございません。国連の本来の任務、これは国際の平和と安全の維持にあるわけでございます。したがいまして、安全保障理事会がいまのような理由によりまして全く機能し得なくなった、そのときには総会が乗り出しまして、総会としての意思決定ができるというのがこの憲章の趣旨であると考えておりますが、先生の御質問に対して、お答えしておりますかどうか……。
  45. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると、安保常任理事国は国連の最高の機関ですね。それは拒否権という権利を持っておる。そして拒否する。そうすると国連というものは動かなくなるから、総会でこれを決議すればやれるんだ、こういうことになるでしょうか。これは重大な問題ではないでしょうか。そういう解釈でいくと、国連憲章の存在そのものがたいへんな問題になるのじゃないでしょうか。どうですか。矛盾しておると思うのですよ。
  46. 影井梅夫

    ○影井政府委員 安全保障理事会が国際の平和につきまして持っております権限、その力と申しますか、これと、それから総会が同じ問題につきまして持っております力の強さ、この力の強さにつきましては確かに相違はございます。   〔福永(一)委員長代理退席、委員長着席〕 しかしながら、国際の平和及び安全に関しまして権能を持っておるのは安全保障理事会だけであって、総会は持ってないということではございませんと、そういう意味におきまして回答申し上げている次第でございます。
  47. 堂森芳夫

    堂森委員 法律論みたいになりますが、そうすると、拒否権を発動した国が出てくると、安保理事会は機能はもうそれで停止したということに同意義であるというふうにいえましょうか。問題あるんじゃないでしょうか。拒否権を発動した国が出たことは、もう安保理事会はこれで機能は何もないんだというふうに解釈することは、それでいいでしょうか。乱暴じゃないですか。
  48. 影井梅夫

    ○影井政府委員 安全保障理事会に問題が付託されまして、その審議の過程におきまして常任理事国のいずれかの国が拒否権を発動いたしまして、その付託された問題につきまして何らの勧告、決議等が行なわれないという状態になった、その場合には安全保障理事会の付託された問題に対するその機能がその時点で停止されたというふうに考えるべきではないかと思います。
  49. 堂森芳夫

    堂森委員 私どうも納得できないのです。これはどうしても私はあなたと意見が違うのですけれども……。  そこで、いろいろと愛知元外務大臣は、二十五回、二十六回の総会でも演説をして、あるいははっきりと、日本のような国が安保常任理事国になるべきであるという意思表示を、やはり演説をしておると思うのですね。  そこで今度は仮定論になりますが、安保理事国になったとき、日本の憲法上の関係で、たとえば国連警察軍をどこかへ軍事行動をとるということが安保理事会で決定される、そのときに日本は拒否権を発動するのですか。あるいは警察軍を海外に、どこかの国に派遣するときに、日本の自衛隊は入っていけるんですか。これはよくいままで議論された問題ですが、その間の政府考え方はどういう態度で安保理事国に日本はなるべきであるという意思表示をしておられるのですか、お尋ねしておきたいと思います。
  50. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいま先生の御質問の趣旨、これは国連憲章の第七章「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」、この第七章に基づきまして安全保障理事会が、たとえば仮定の問題といたしまして軍事行動をとるという場合に、一体日本の立場はどうなるかという御趣旨の質問かと考えますけれども、この第七章におきまして、その四十三条に一つの規定がございまして、そういった場合に備えるために特別協定締結することを四十三条の一項が規定しているわけでございます。しかしながら、この特別協定は現在までのところいずれの国とも締結されておりません。したがいまして、この第七章に予定しております兵力、援助及び便益を各加盟国から提供されるというための具体的なこの協定締結されてないというのが現状でございます。  それからただいま先生の御質問の中で、日本はそういった場合に拒否権を発動するのかという御質問がございましたけれども、これはもしかりにそういったことが必要な情勢が生ずる、日本もかりにでございますが、かりに国連といたしまして軍事行動をとらざるを得ないだろうという判断をいたしました場合には、必ずしもそれに反対する——かりに日本が常任理事国の地位を獲得しておりまして、そしてそういう事案に面しました場合に、これに反対する必要はないと考えております。その理由は、そういった取りきめにおきましては、安全保障理事会の常任理事国はすべて兵力を提供しなければならぬという規定を持ちました協定ができるというふうには私ども考えておりません。これは国連としてそういうことをひとつ認める、しかしながらこれに、たとえばその兵力の提供を行なう、これは各加盟国との間の合意に基づく事項でございますので、日本がそういうことをできる立場でないということであれば、これに応じないということで済ませる問題かと考えております。
  51. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると日本政府考え方は、安保常任理事国になっても国際的な軍事行動には加わることはない、こういうことですね。
  52. 影井梅夫

    ○影井政府委員 憲章上の義務といたしましてそれに応ずる義務はございません。したがいまして、日本はこれに応ずる意思はないということを明らかにし得るという意味を御答弁を申し上げたつもりでございます。
  53. 堂森芳夫

    堂森委員 時間があまりありませんので、きょうの議題になっておるこの批准を求められておる条約について二、三質問したいと思うのです。  さっき加藤議員からいろいろお尋ねがありましたが、最後まで反対をしてきたのはイギリスとフランスである、こういう御答弁でした。総会で反対したのは二国ですね。しかもこれは私が申し上げるまでもなく、安保常任理事国を含めて三分の二の賛成がなくてはいかぬ、こういうことですね。ところがいまもあなたの答弁を聞いておると、フランスは総会でも反対はしたけれども政府としてはこれを批准するように、すでにフランス批准を求めて、それが批准されるような確信を持っておるというような御答弁だったと思うのです。ところがイギリスはいまでもわからぬ、こういうふうな御答弁のようでした。そしてその理由は、そんなに経済社会理事国をふやしたところで、経済社会の発展進歩に必ずしもたいした効果、メリットがないんだ、こういうふうな主張を繰り返してきたという御答弁でしたね。そうするとイギリスが批准しなければ、われわれが幾らこんなものを国会で賛成しても何もならぬわけですね。だからもう少し、イギリスが批准するという確信をお持ちなんでしょうか、どうでしょうか。あかんのに幾らこんなものをやってもしかたがないじゃないですか。いかがでしょうか。
  54. 影井梅夫

    ○影井政府委員 先ほどイギリスの態度が不明であると申し上げましたが、これはフランスの場合のように、公式の場でその意向が表明されていないという意味におきまして不明であるというふうに申し上げましたが、やや不正確でございまして、実は英国は批准の方針を固めているというふうに私ども非公式に聞いております。ただこの採択のときに反対したという事情もございますので、批准の時期をいつに選ぶべきであるかということについてはやや慎重を期しているようでございますけれども方向としては批准方向に向かっているというふうに私ども判断しております。  その意味におきまして、現在のところ公式にも非公式にもよくわからないというのは実はソ連でございまして、ソ連は採択のときには棄権をしております。棄権をしておりますが、その後ソ連がこの経済社会理事会の理事国をふやすこの憲章改正に一体どういうふうな意向であるかということは、ソ連の場合につきましては公式、非公式を通じましてわからないというのが現状でございます。
  55. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますると、従来から外務省の他の案件についての見通しでもかなり甘くて、結果的には、たとえばフィリピンとの通商航海条約でしたか、そのときもそういう問題がかつてあったと思うのです。外務省の見通しは、ソ連はわからぬがイギリスはだいじょうぶだろうというようなことですが、そうすると政府としては、この国連憲章改正はだいじょうぶ三分の二以上にはなったにしても、安保常任理事国全部が必ず批准するという確信は、いまのところない、こういうことでございますか。   〔委員長退席、福永(一)委員長代理着席〕
  56. 影井梅夫

    ○影井政府委員 今回の経済社会理事会のメンバーをふやすその趣旨は、国連の加盟国の数が非常にふえまして、その大部分はいわゆる発展途上国である、この発展途上国の意向というものを経済社会理事会におきましてももっと反映すべきであるというのが今回の改正の趣旨でございます。  したがいまして、私どもの希望といたしましては、この立場はやがてソ連にも理解されまして、そしてソ連批准も得られるであろうという希望を抱いているというのが私どもの現在の立場でございます。
  57. 堂森芳夫

    堂森委員 では、ソ連が棄権した理由はどういうところにあったのですか。情報をちゃんとキャッチしておられると思うのですが。
  58. 影井梅夫

    ○影井政府委員 私ども承知しておりますところでは、ソ連といたしましては東欧圏の発言権と申しますか、東欧圏の代表ぶりにつきまして、もし、今回の改正は二倍になるわけでございますが、その場合に東欧圏の代表ぶり、これが均衡がくずれないのであれば必ずしも反対しないというふうな意向であったというふうに承知しておりますので、その意味におきましてはソ連の反対と申しますか、批准拒否ということはあまり考えられないのではないかというふうに考えております。  なおこの種の憲章改正、似たような例は一九六三年に安保理の理事国それから経済社会理事会の理事国の数をふやしました一九六三年の改正の例がございますが、これも改正が効力を発生いたしましたのは一九六五年でございまして、かなり年数がかかっております。したがいまして、今回の経社理の理事国の数を二十七カ国から五十四カ国にふやすこの改正につきましても、あるいはそのくらいの時間はかかるかと思いますけれども改正はおそらく成立するものというふうに見通しております。
  59. 堂森芳夫

    堂森委員 私、局長あなたにお尋ねするのですが、この国会批准を求めるようなこういう案件について、安保常任理事国というものはそうたくさんないのでしょう。そして大きな国の一つであるソ連がどういうわけで棄権したのかも相談されなければ答弁ができぬというのはちょっとおかしいのじゃないでしょうか。それぐらいは局長承知じゃなかったら、こんな条約国会で審議してくれというのは外務省として私はおかしいのじゃないでしょうか。私がこまかいことを、いま会議でどうとかこうとか、そんなことを聞くのならあれだけれどもソ連はどうなるだろう、フランスはどうなるだろう、イギリスはどうなるだろう、これはまあおっしゃいましたが、しかし、これはやはりそれくらいのことは局長としてこうなります、こういう事情でこうであったというようなことを私ははっきりと御自身ですぐぱっと答弁されるというぐらいのことは当然でないでしょうか。私はどうもふに落ちないのですが、そんなに急がぬものなら、この国会に出す必要もないように思うのでありますけれども、いかがですか。
  60. 影井梅夫

    ○影井政府委員 この憲章の政正につきましては、日本は共同提案国といたしまして参加しているわけでございます。その理由は先ほど申し上げましたとおり、国連の加盟国が非常にふえましてそれがみな発展途上国である。その声をこの経済社会理事会においても反映させるべきであるという意味におきまして共同提案国として提案しておるわけでございます。その日本の姿勢を示す意味におきましても、日本はこの批准を他国に先がけても行なうべきであろうという立場から御審議をお願いしておる次第でございます。
  61. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで私これのいろいろと経済社会委員会ですか、理事会ですかの議席の拡大について外務省からもらったいろいろな経過録を見ておると、どういうものか先進諸国は一般にこの理事国のメンバーをふやすことにどうも消極的である、賛成はしない、賛成よりは反対の意見が多い。たとえばイギリス、フランスのような国が強く最後まで反対した。そうしてわりに発展途上国は数をふやせと言う、そうしてこれを見ていると、今度は二十七であった理事国の数が五十四になるわけですね。そうしてアジア地域では五であるのが十一にふえる。それからアフリカは七が十四になる。ラテンアメリカは五が十になる。東ヨーロッパは三が六になる。西欧その他で七が十三になる。二十七が五十四になるのですから、大体倍になっておるのですが、   〔福永(一)委員長代理退席、委員長着席〕 どうも国際連合における経済社会理事会の議席拡大についていろいろと討議されておる経過を外務省からもらった文書をずっと読んでみても、どういうものか先進国はあまり賛成しかねるという意見が多く、そして途上国はそうじゃない、ふやせ、こういうふうになっておると思うのですが、これはどういう関係でそうなっておるとお考えでございましょうか、御答弁願いたい。
  62. 影井梅夫

    ○影井政府委員 最初に今回の議席増加に伴いまして、地理的配分が単に各地域につきまして従来の議席がそのまま倍になっているという事情ではございませんで、多少の修正が加えられております。  これを具体的に申し上げますと、国連におきましては世界を五つの地域に分けて考えておりますが、たとえばいわゆるアジアの中には三十四カ国、常任理事国である中国を含めまして三十四カ国ございますが、従来はそれが五カ国であった。今回の改正によりましてアジアは十一カ国ということになっております。アフリカは四十一カ国ございますが、従来の七カ国、これが十四カ国で二倍、それからラテンアメリカ二十四カ国ございますが、従来の五カ国が十カ国ということで、アフリカ、ラ米はそのまま二倍、西欧その他、その他と申しますのはアメリカ、カナダ、豪州、ニュージーランドを含んでおりますので西欧その他と呼んでおりますが、二十三カ国、この中には常任理事国が三カ国、イギリス、フランスアメリカが入っているわけでございます。これが従来七カ国であったのを十三カ国ということにする。なお最後に東欧圏、これが十カ国ございますが、従来の議席が三議席、それが六議席ということでこれも単純に倍になっている。したがいまして、今回の改正を通じまして地理的配分の従来の不均衝というものの是正がはかられているわけでございます。  それから御質問の第二点、こういった理事国の数をふやすという場合に先進国はとかく消極的になりがちであるけれども、その理由はどういうことかというお尋ねでございますが、これは今回の改正につきまして、イギリス及びフランスが反対いたしました理由の中に端的にあらわれているかと思いますけれども、こういった理事国の数をふやすということが必ずしも能率的な運営に資するものではないというのがおそらく反対の理由であろうかと考えております。わが国の立場といたしましては、しかしながら、この加盟国の数が非常にふえてきておる、従来の代表ぶりでは発展途上国の声が十分に反映されてないという意味におきましては、日本発展途上国の声をもう少し広く反映させるべきであるという立場におきまして、この憲章改正に当初から賛成の立場をとっておるわけでございます。
  63. 堂森芳夫

    堂森委員 何か理事会が開かれるそうでありますから、私質問をすることを留保しておきまして、一応きょうのこの件に関する質問はこれで終わります。
  64. 藤井勝志

    藤井委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      ————◇—————    午後一時一分開議
  65. 藤井勝志

    藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君
  66. 石井一

    ○石井委員 一昨日、昨日と非常に問題になっておりますいわゆる参議院の予算委員会における田中法務大臣発言、さらに官房長官の否定的な発言、さらにその釈明、そうしてそれを追い打つように法眼事務次官の発言など、非常に政府見解が不統一だというような印象を与えております。特に国民の側から見ますと、常識的には、一番最初発言政府の非常に前向きな発言のように受けとめたと思いますし、その後の釈明、しかも昨日の法眼発言などはこれを完全に否定しておる、こういうような印象をも受けておるわけでございます。  そこで、きょうはもう非常に時間が限られておりますので、簡潔に外務大臣に、当面の最高責任者でございますから、この辺の経過などをも踏まえて結論的に政府の統一見解はどういうことなのか、この点を簡潔にお伺いしたいと思います。
  67. 大平正芳

    大平国務大臣 本月二十四日の参議院予算委員会におきまして、社会党の田委員から、南ベトナム臨時革命政府の方々の入国問題につきまして田中法務大臣にただされたのでありまして、その御発言の要旨につきましてはすでに御案内のことと思うのであります。石井委員が御指摘になりますように、田中さんの御発言は確かに前向きな御発言でございました。政府は、この田中発言が院の内外におきまして問題になってまいりましたので、田中法務大臣と官房長官と私で協議いたしまして、きのうの朝この見解、田中さんの御発言をお取り消しを願ったりあるいは御訂正を願う必要はなかろうということで意見の一致を見まして、その旨参議院の予算委員会理事会のほうに官房長官を通じて御通報いただいたわけでございます。そういった過程がございまして、きのう私のほうの法眠次官が、定例の記者会見がございまして、それについて法眠次官の見解を求められたわけでございまして、それが印象的にはやや田中発言と食い違うかのような印象を与えたようでございます。  私は昨夜法眼発言を取り寄せましていろいろ検討いたしたのでございますが、法眼発言田中発言を踏まえた上で、自分としてはこれをこのように受け取っておるという発言でございまして、ただその発言の一部に、法眼君の主観的推測というようなものも一部あったように思うのであります。  そこで、きょう午前中に参議院の予算委員会理事会が開かれまして、私が出てまいりまして、法眼発言田中発言を否認したものではありません、政府の従来の方針である田中発言をお取り消しをいただいたり御訂正をいただくつもりはありません、あの発言を是認する態度でまいりますという趣旨のことを釈明いたしまして、理事会の御了承をいただいたというのが真相でございます。
  68. 石井一

    ○石井委員 経過についてはよく理解いたしましたが、法眼発言についても、いわゆる行政府の事務の最高責任者が立法府の問題点について何かそれを否定的な意味のある発言をしておる、そういうふうなところに一つの問題があるのじゃなかろうかというふうな点、いろいろと問題がございますが、もう時間がありませんので端的に私お伺いをしたいと思うのでございますが、ただいまの大臣の御主張を伺っておりますと、要するに田中発言大平発言である、こういうことでございますから、そういうことから考えますと、ベトナムに存在するいわゆるサイゴン政府と同時にもう一つ存在しておる臨時革命政府というものに対しても、これは法的にもパリ会議その他にもついておる、存在を認められておる一つ政府であるので、今後積極的にこの政府との折衝を深めよう、こういう外務大臣のお考えでございますか。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 政府としてはたびたび国会を通じまして申し上げておりますとおり、これからのインドシナ政策を考える場合に、せっかくでき上がりましてすべての国が尊重しなければならないパリ協定というものをベースに踏まえて実行いたしたいと思いますということを申し述べておるわけでございます。たまたま問題になりましたものは入国問題でございまして、入国問題もベトナム政策の一環といえば一環なのでございまして、パリ協定によりまして南ベトナムにおけるサイゴン政府と臨時革命政府というものが和解をいたしまして、第三勢力を加えて和解評議会をつくって統一政府をつくっていくということが期待されておるわけでございますので、そういうパリ協定を両当事者とも順奉するというたてまえに相なっておるわけでございますので、これから入国問題ばかりでなく、いろいろな問題をやっていく場合におきまして、こういうパリ協定を踏まえてやるという方針を堅持いたしまして、誤りなきよう決していきたいというのが政府の本意でございまして、それはみじんも変わっていないわけでございます。
  70. 石井一

    ○石井委員 いわゆる現状を固定化して見ていくという外交方針、これは非常に私は間違っておるという感じがいたします。特にベトナムの場合は非常に大きく激動し、パリ会議などを通じて徐々に和平への道が進んでおるわけでございますので、災いを転じて福とするなんて言いますとこれは問題がありますけれども、この問題は与党としてもひとっこれを前向きに、臨時革命政府に対する接触というものも私は非公式ながら同時に進めていただくということは非常にけっこうだと思いますので、そういう点についての御要望を申し上げておきまして、時間がまいりましたので終わらせていただきます。
  71. 藤井勝志

    藤井委員長 堂森芳夫君。
  72. 堂森芳夫

    堂森委員 大平外務大臣に先刻の石井議員に対する御答弁等に関連しましてお尋ねをしておきたいと思うのです。  私は、本委員会でかつてインドシナのいろいろな点についてお尋ねいたしました。当時より非常に大平外務大臣の姿勢が前向きになってこられまして、私は非常にいいことだと、こう思います。そこで、田中法務大臣の答弁はあれでいいのだ、あれで正しいのだ、政府の見解としてはいいのだ、こういうことですが、ところが法眼事務次官の——新聞報道ですから、私は直接聞いたのではないが、いろんな新聞報道を聞いていると、また田中法務大臣の答弁とは非常に違うと言っていいくらいの発言ではないかと私は思うのです。端的にお尋ねしますが、しからばベトナムの南の臨時革命政府の方々が入国をしたい、あるいはわれわれが招きたい、こういう場合には原則としてそれは招くような態度でこれから政府はやっていくのだ、こういうことでございましょうか、お尋ねしておきたいと思います。
  73. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど石井委員の御質疑にも申し上げておりましたとおり、政府のこれからのベトナム政策というものは、パリ協定というものを道標としてやりますということを私もたびたび申し上げておるわけでございまして、パリ協定と一口にいいますけれども、いろいろなことが書かれてあるわけでございまして、南ベトナムにおきましては南ベトナム人民の自決権を尊重していくということ、そしてサイゴン政府も臨時革命政府もそれから第三勢力も含めて和解評議会というものをつくりまして、選挙をやって統一政府をつくっていくというブループリントがうたわれておるわけでございます。したがいまして、それを尊重してまいるというたてまえを基本にとっておりますので、いま御指摘のいろいろな問題、入国問題その他が出てきた場合に、そういうラインに沿ったものである。南ベトナムにおける二つの当事者の間が和解いたしまして、統一政府をつくろうというようなそういうことがうたわれておる協定の精神にのっとったものでございますならば、政府としては異存がないわけでございまして、これは田中発言があろうとなかろうと、基本の原則としてそういう大前提があるわけでございます。田中発言がそういう大前提について詳しく説明をしていただければ問題なかったわけでございますけれども国会のやりとり往々にして時間的な制約その他がございまして、簡単なやりとりに終わりまして、いろいろ誤解を生んだわけでございますけれども、そういう大前提についてそれが満たされる状況にあるかないか、一つ一つのケースにわたって考えながらやっていかなければならぬというところに力点を置いたのが法眼発言であって、いま前向きに処置するのでございますというて言われたのが田中発言であって、両方とも同じものを言っているわけでございますけれども、ニュアンスが、堂森さんおっしゃるとおり、何か食い違ったような印象を与えたと思うのでございますが、これはベトナムがそういう状況にあるということでございますので、ひとつ御理解をいただきたいと思うのでありまして、いま御質疑の点につきましては、そういう協定の精神に沿いまして、これが順守されるというようなことでございますならば、われわれは何も異存がないところでございます。
  74. 堂森芳夫

    堂森委員 私が外務大臣にお尋ねしておるのは、臨時革命政府の派、派というか、の人たちが日本へ招かれるとか、あるいは向こうから日本をたずねたい、こういう場合には、従来は必ずしもそうでなかった——私はいいことだからもう前のととは申しませんが、認めるという方針をパリ協定、パリ会議の精神にのっとって認めるという方針にいこうという考え方でございますかと、こうお尋ねしておるのです。
  75. 大平正芳

    大平国務大臣 南ベトナムにおきまして、サイゴン政府と臨時革命政府が和解いたしまして、一つ政府をつくろうじゃないかという相談がいま始まっておるわけでございまして、したがって、ベトナム政策を扱う場合におきまして、このパリ協定というものを踏まえて日本政府はやるのでございますということを申し上げておるわけでございます。具体的にそういう案件が出た場合に、そういう精神にのっとったものかどうかということをわれわれは判断いたしまして、のっとったものでございますれば、たいへんけっこうであると申し上げたわけでございます。
  76. 堂森芳夫

    堂森委員 田中法務大臣発言は違うと思うのですよ。大いに努力——そういう方向で受け入れるための方向で進みます、こういう意味じゃないですか、私直接聞いてないですが。  それから、パリ協定の精神で両政府の話し合いがどんどん今後進んでいったら来てもらっていい。じゃ進まぬときにはそうはいかないのだという御答弁のようにもとれるのですが、そうなんですか。非常にむずかしい問題ですからあれですが、お尋ねしておきたいと思います。
  77. 大平正芳

    大平国務大臣 本来入国問題という問題一般の問題といたしまして、臨時革命政府日本の未承認国でございますので、それの入国問題というのは非常に慎重に取り扱わなければいかぬ立場に政府はおるわけでございます。ただ、ベトナムの場合におきましては、いま申しましたような事情で、日本がすでに関係を結んでおる南ベトナム政府と臨時革命政府が和解をいたして、そして新しい南ベトナムの政権をつくり上げようという相談が始まっておるわけでございます。私どもといたしましては、そういう和解が熟してまいりまして、協定にうたわれたようなブループリントが実現をしていくことを非常に期待をし、希望をいたしておるわけでございまして、それをじゃましないようにしなければいかぬと思っておるわけでございまして、そういう具体的にケースが出てきた場合に、そういう状況であることを判断いたしまして、そういうことに寄与するものでございますならば異存はないということを申し上げておるわけでございます。
  78. 堂森芳夫

    堂森委員 どうも顧みて他を言うような御答弁で、私が申し上げるのは——じゃ、もっと別の角度から言いますと、私、先月でありますか、この委員会であなたにお尋ねしたのです。臨時革命政府に何らかの形で日本は積極的にアプローチしていくべきではないか。あなたのその答弁は非常に不満だったのですが、そんなことを蒸し返してどうということじゃないのですが、私は、やはり日本アジアの国の一員としてベトナムの、あるいはインドシナの平和というものを取り戻すために協力する、一生懸命やっていくという意味で、厳然とした、しかもパリ協定に加わっておる臨時革命政府の人たちが日本へ来るというときには当然——機が熟すとか、大平流のああいうものの言い方でなしに、もっと簡明直蔵に、日本へ来たい、招くというときにはそういう方向考えます、こういうふうに私は答弁してもらいたいと思うのですが、もう一ぺん、しつこいですがお尋ねしておきます。
  79. 大平正芳

    大平国務大臣 そうですね、簡明直截にということでございますが、南ベトナム臨時革命政府日本はおつき合いがないわけでございます。したがって、本来南ベトナム臨時革命政府日本政府と接触を積極的に持とうという意図はこちらにないわけでございます。ただ、いま申しましたように、ベトナムの状況というのは、南ベトナム臨時革命政府と、そして南ベトナム政府というものが和解をいたしまして、一つの政権をつくろうという話し合いが進んでおるのだということでございますので、そういう趣旨の線にのっとったものでございますならば私どもは異存はないんだということを言っておるわけでございます。
  80. 堂森芳夫

    堂森委員 私、まだ少し時間がありますけれども、河上委員が関連して質問されるそうですからやめますが、私あなたに申し上げたいのですが、法眼事務次官、あなたの部下というと——部下ですね、次官ですから。国会において国務大臣発言したことに対して、ああいう記者会見をして、まっこうから違うような印象をやはり国民は持っていると思うのです。私はちょっと用があって二、三日国会を留守にしておりました。新聞を見て、田中発言、ああこれはずいぶん政府はいい答弁する、こう思ったあくる日、新聞を見たらまた違う。二転、三転しておるわけですね。国民はみなそう思っていますですよ。私は、これは日本外務省日本外交というものに対する信用を失墜させるような、内閣全体として、国全体として大きな問題だと思うのであります。これはやはり次官等にも厳重な処置をされますように要望しておきまして私の質問を終わります。
  81. 藤井勝志

    藤井委員長 河上民雄君。
  82. 河上民雄

    ○河上委員 いま堂森委員より御質問いたしましたのに対しまして、外務大臣から御答弁がございましたパリ協定を尊重する、これが一つ。それからパリ協定の中でうたわれております南ベトナム・サイゴン政権と臨時革命政権との和解が進んでいくことを歓迎し、希望し、そしてその方向を妨害しないというふうな立場で処理していきたい、こういうように私は承ったわけでございますが、大体そのように判断してよろしいように大臣の御表情からわかるわけでございますが、そういう立場にのっとってやられるということであります。さらに第三点として、具体的にそういう決断を迫られる必要が起こったら、それにのっとって決断する、こういうようなことでございました。  先日来問題になっておりますのは復興援助に関する入国の問題だと思うのです。いわゆるケース・バイ・ケースというようなことばをよく大臣は使われるのですけれども、たとえば政治的な目的といいますか、非常にそのものずばりの問題で入国が希望せられる場合と、それからこれも政治問題と関連があるわけですけれども、復興援助に関してそれぞれの当事者が日本に入国を希望する、こういうような場合、それからもう一つ、たとえばスポーツなどでそれぞれ選手が入国を希望したい、あるいは日本のスポーツ団体がそうした選手を国際的な試合をやるために招きたいという希望があった場合に、大平外務大臣としてはどうされるか、日本政府としてはどうされるか。  実は一つ具体的に、来年四月に卓球大会が横浜で開かれるというように聞いております。またそれのプレオリンピックのような形での事前の交流試合も、この十一月に予定せられているやに聞いておるのでございますけれども、そういう場合に当然アジア各国の選手を招きたい、あるいはその試合に出たいという問題が起こってくると思うのです。私はこういう問題は、先ほど大臣の言われた二つの精神ですね、パリ協定を尊重するということ、それから南ベトナム・サイゴン政府と臨時革命政府の和解を妨害しないという立場から見て、こういう問題は当然田中法務大臣発言の中に見られたニュアンスで、つまり前向きの姿勢で処理すべきものだと思うのでありますけれども、こういう点について大平外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  83. 大平正芳

    大平国務大臣 一般的に、入国問題につきましては法務大臣が主管大臣でございまして、関係各庁の意見を徴されておきめになる問題でございます。それで、その際外務省の意見を求められるのが通例でございますけれども外務省といたしましては外交上の見地から判断する役目柄でございまして、河上委員が御指摘のように、インドシナ状況においてパリ協定というものを踏まえて処理していくということをわれわれは信条としていきたいと考えております。  そういうことで具体的なケースが出てきた場合にどう判断するかでございますが、いまあなたが最後に述べられたスポーツの国際競技でございますか、そういった問題、つまり国際的にそういう話し合いがついて一つの競技を日本においてやろうというような具体的なケースの場合、外交的な見地から考えますと、まず国際的なスポーツの催しであるという点は、これは重視しなければいかぬと思うのです。できたらそれを前向きに処理していくのが外交的な見地じゃないかと思いますが、これは一般論でございまして、具体的なケースがあった場合に吟味させていただきまして、先ほど申しましたような大精神に照らして処理してまいるべきものと私は思います。具体的なケースが起きないと——国会発言に注意しないと、またおしかりを受けますから、そういう意味で御了承いただきたいと思います。
  84. 河上民雄

    ○河上委員 まあたいへん大平流の発言、表現でございますけれども、やはりもう少し田中法務大臣的な要素も少し組み入れた御答弁をいただきたいと思うし、また答弁そのものよりも今後実質的にそういうことに取り組んでいただきたいと思うのです。ことにアジア卓球大会は、先年名古屋で開かれましたときに、これが契機になりまして、米中の関係改善に発展していったという歴史的な事実もございます。スポーツという問題だけでありますけれども、そういう歴史的な意義を持つことも十分考えて、大臣の明快なる決断を要望いたしまして、時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。
  85. 藤井勝志

    藤井委員長 金子満広君。
  86. 金子満広

    ○金子(満)委員 簡潔に質問いたします。  南ベトナムの臨時革命政府の要人、つまり南ベトナム臨時革命政府のパスポートを持参した人が日本国に入国を希望された場合、入国ビザを発行するかどうか、こういうことになろうと思いますが、きのう、おとといから、法務大臣、官房長官、外務次官、この意見が違った形で公の場所で発表された。これはニュアンスの違いではありません。これは根本的な違いだ。違いであるからこそ問題になり、大平さんも見解を発表しなければならぬ、こういうことに立ち至っているわけです。  そこで、一つの確認ですけれども田中法務大臣が答弁されたことについて、大平外務大臣は矛盾を持っていない、あの立場で政府は一致する、こういうように確認をしてよろしいですか。まずこの点を伺いたいと思います。
  87. 大平正芳

    大平国務大臣 言いかえれば、田中法務大臣の御発言を御訂正いただいたり、御撤回いただいたりするつもりはありません。
  88. 金子満広

    ○金子(満)委員 そうしますと、法務大臣発言は速記に出ておるわけですが、受け入れる用意がある、つまりここには時間的な限定はないわけであります。受け入れる用意があるということでありますから、これまで私は予算委員会の分科会でも大臣の見解を聞いてまいりましたが、パリ協定を尊重する、パリ協定をベースにしてやる、これは確認されています。南ベトナムに、サイゴン政権だけでなくて、臨時革命政府が存在している、二つの政権の存在も確認をされています。そこで当然パリ協定を尊重するわけでありますから、臨時革命政府と敵対関係にないことは言うまでもないことであると思うのです。敵対関係にない臨時革命政府、その発行するパスポートで日本国に入国を希望される場合には、当然これは入国ビザを出すべきだというのが理屈であるばかりでなくて、実際そうでなければいけないというように思うわけです。  そこで実は時間的な問題も田中法務大臣の答弁の中ではないわけですから、具体的な問題としてひとつ伺いたいのですが、実は日本民主青年同盟とグエン・バン・チョイ病院建設運動連絡会議、これが共同でベトナム民主共和国の青年の代表と、南ベトナムの臨時革命政府の統治下にある青年代表、つまり南ベトナム解放青年同盟の代表を招待し、その入国のためにビザの申請を行ないました。ところが二十四日に、ベトナム民主共和国の青年代表については入国ビザが出ましたけれども、南ベトナムの解放青年同盟に対しては、二十四日に不許可の通知が寄せられました。二十六日、民主青年同盟の代表とこのグエン・バン・チョイ病院建設運動連絡会議の代表が法務省を訪れて、考え直して入国を許可するように要請をいたしましたところ、入管局の審査課高橋一二課長補佐は、時期尚早である、これだけの理由で入国を許可しない。それ以外のことばはないわけでありますが、時期尚早ということになると、これは非常に問題があると思うのです。  もちろんこれは大平外務大臣の所管の外務省ではありませんから、何ですけれども、同じ政府の中で時期尚早であるというのは、これは私は非常に問題だと思うのです。この点について私は、当然臨時革命政府、そのもとにおける解放青年同盟代表の入国は許可すべきだ、これがパリ協定を尊重し、パリ協定をベースにしてやるという大平外務大臣のたび重なる言明に最も忠実な道であり、また田中法務大臣の答弁と矛盾しないという立場でもあろうと思いますが、この点はいかがですか。
  89. 大平正芳

    大平国務大臣 その案件は私どもに御協議をいただいたわけでございまして、私どもの立場も、法務省で言われているように、時期尚早ではないかという判断でおるわけでございます。  と申しますのは、ちょうど先ほどもるる申し上げましたように、南ベトナムにおける両当事者、いま和解への話し合いが始まっておるわけでございまして、私どもそれの成功することを希望いたしておるわけでございまして、こういった状況の推移を見まして判断させていただきたいと思っておるわけでございまして、まだお話し合いが始まったばかりでございますので、いましばらく保留させていただきたいというわけでございます。
  90. 金子満広

    ○金子(満)委員 そうしますと、時期尚早というのは、南ベトナムに両当事者、これはパリ協定には両方ともフルネームで臨時革命政府というのが入っているわけですが、その両当事者によって全国評議会ができるまでは時期尚早、こういうお考え方ですか。
  91. 大平正芳

    大平国務大臣 パリ協定を尊重してそれをベースにしてインドシナ政策を考えていきたいという基本的な立場は、金子さんも御承知のようにたびたび申し上げているわけでございまして、そういう趣旨から申しまして、具体的なケースが出た場合に、それに沿うものであり、それをじゃましないものであるし、それを促進するものであるという限りにおいて、われわれは全然異存がないわけでございますので、そういう心証を私どもが得られるということが一番大事なことではないかと思っておるわけでございます。
  92. 金子満広

    ○金子(満)委員 時間がありませんから最後に申し上げたいのですが、心証という問題になってまいりますと、パリ協定ではどの政府も差別して見てないわけです。したがって、ベトナム民主共和国、これはもちろんのこと、臨時革命政府、サイゴン政権、これを対等に見ているわけです。日本政府の場合にはサイゴン政権との国交を持っており、そうして交流もしておる、こういう中で臨時革命政府及びその政府の発行するパスポート、これを持参した者が入国を申請したときにこれを不許可にするというのは、これはむしろ協定の立場に反する問題だ。私はそういう意味で南ベトナムの解放青年同盟の二名の代表については、法務省はもちろんのこと、外務省も、日本政府がそれこそ前向きで田中法務大臣発言そのもので入国を許可するよう強く要望して、発言を終わりたいと思います。質問を終わります。
  93. 藤井勝志

  94. 近江巳記夫

    ○近江委員 簡潔にお聞きしたいと思いますが、この法眼次官の発言というものは、大平外相の考え方と一致したものであるかどうかですね。  その次に、大臣の指示によってこの次官が発言をしたものかあるいはまた法眼次官の独自の考えであるかどうか。  また、こうした次官の発言について、不謹慎と思われるかどうか。以上の点についてお聞きしたいと思います。
  95. 大平正芳

    大平国務大臣 法眼次官は有能かつ忠実な次官でございまして、私は全幅の信頼を置いております。  彼は毎週、土曜日を除く以外は記者会見をいたしておるわけでございますが、一々の記者会見について事前に私の了解をとってやるということをいたしておりません。彼の責任においていたしておるわけでございますが、私は彼が私の外交政策のワク内において忠実にやっていることと信頼をいたしております。  きのうの発言が問題になったわけでございますので、私はさっそくきのう取り寄せまして検討いたしました結果、あれは田中発言を否認するのではない、田中発言に関連いたしまして、和平協定との関連等について法眼次官の見解を述べたものでございまして、大かたにおいて間違いはないのでございますけれども、一番最後の部分にやや主観的推測という部分が見られます。その点につきましては本月訂正を命じました。したがって、そういう点につきましては私自身が上官といたしまして厳重な注意を加えたところでございます。
  96. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府はこの入国の受け入れにつきまして、種々の条件がある、このように言っておるわけですが、田中法務大臣の答弁におきましては、南ベトナム臨時革命政府の要人が復興援助問題で入国申請をしてきた場合という限定されたものであるわけです。これを後退させ、種々の条件をつけて、実質的には入国を認めないのではないか、このように疑惑がわいてくるわけでありますけれども、そこでその種々の条件というのは一体どういうことなんですか。
  97. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど石井委員の御質疑に答えておきましたとおり、田中法務大臣の御発言はベトナム問題の取り扱いについての前提を詳しく言及されておりません。ただ、いろいろ検討すべき問題がありますがとかいうような表現で和平協定との関連等に言及された部分がございますけれども、非常に詳しく前提条件が述べられていないから多くの疑問が出たわけでございますけれども、その田中発言そのものは無条件に前向きの御発言をされたものとはどう見ても受け取れないわけでございます。  種々の条件というのは、先ほどからもるる申し上げておりますとおり、大前提として各当事者は、南ベトナムの当事者はもとよりでございますけれども日本政府もパリ協定というものを尊重、順守していくということを踏まえてベトナム政策をやらなければならぬということを言うておるわけでございまして、それにはあそこに書かれてあるようなもろもろのことが漸次実ってまいりまして成功してまいるように持っていかなければならぬわけでございまして、入国問題一つ扱うにつきましてもそういう心がけが要るという趣旨のものでございまして、そういう意味で御理解をいただきたいと思います。
  98. 近江巳記夫

    ○近江委員 グェン・バン・チェン氏の入国申請が出されたとき、政府はこれを認める意思があるかどうかですね、もう一度ここであらためてお聞きしておきたいと思います。
  99. 大平正芳

    大平国務大臣 パリ協定の定着化に寄与するという限りにおきましては、政府としては異存がないわけでございます。
  100. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間がありませんからあと一問で終わりますが、今回のこうした政府の答弁というのは二転三転しまして、非常にわが国の外交政策というものがぼやけておるという印象、また諸外国に対しても非常に信用を失ったと思うのでありますけれども、こういうことになったことに対して、外務大臣としてどういう反省をされ、今後どういう姿勢をもって進んでいかれるか、その点をお聞き一して、終わりたいと思います。
  101. 大平正芳

    大平国務大臣 おことばを返すようでございますが、二転三転したとは思っておりませんけれども政府発言国会内外を通じての発言が必ずしも完全なものでなくて物議をかもす事態を生じましたことにつきましては深く反省をいたしておるわけでございまして、今後、仰せのように外交政策は信用を基本とするものでございますので、戒めて、こういうことのないように注意してまいりたいと思います。
  102. 近江巳記夫

    ○近江委員 では、終わります。
  103. 藤井勝志

    藤井委員長 永末英一君。
  104. 永末英一

    ○永末委員 田中法務大臣参議院予算委員会発言がございましたその日に二階堂官房長官の発言がございました。その間、外務大臣ないしは外務省と官房長官との間にはその件で御協議がございましたか。
  105. 大平正芳

    大平国務大臣 私と官房長官との間にやりとりはございませんでした。
  106. 永末英一

    ○永末委員 入国の問題は主管省は法務省、しかし外務省はこの問題について拒否権を持っていますね。持っておりますね。
  107. 大平正芳

    大平国務大臣 政府は一体でございますので、法務大臣から私のほうに御協議をいただくのを例といたしておるわけでございます。
  108. 永末英一

    ○永末委員 だといたしますと、その同じ政府の国務大臣である、また内閣のスポークスマンとみなされておる官房長官が、いままでの内閣の慣例上入国問題については、外務省が所管省である法務省から協議を受けるのを例としておるということを知っておりながら、外務省とは無関係発言をするという、そのことはいかがでしょうね。
  109. 大平正芳

    大平国務大臣 その点につきまして官房長官のお考えを聞いたわけでございますが、官房長官といたしましては、突然記者会見で田中発言のことを聞かれた。だけども自分はその内容を速記録を見なければよくわからない。ただ従来政府は、入国問題については、未承認国の場合ケース・バイ・ケースで慎重にやっておるという従来の方針を述べたにとどまるということでございまして、当の田中発言について、その直後の会見におきまして官房長官がコメントを加えたという事実はないようでございます。
  110. 永末英一

    ○永末委員 官房長官が国会で行なわれているいろいろなことについて記者会見を求められて意見を申し述べるのは、これは当然のことであります。ただ、衆議院外務委員会委員として心配いたしますのは、事外交に関する問題の場合には、積極的に外務大臣のほうも、内閣の意見が不統一に外へ映らないように、きわめてシリアスな問題が起きた場合にはやはり求めて協議をする、こういう態度が望ましいと私は思います。  さて第二点の、法眼事務次官の発言でございますけれども、先ほど外務大臣と別に相談する慣例はないのだということでございました。しかし、すでに田中法務大臣発言があって日がたっておるのでございまして、その間、この件について外務省としては何らかの意味の会合を持たれ、意見の一致を見ることはやりましたか。
  111. 大平正芳

    大平国務大臣 やりました。
  112. 永末英一

    ○永末委員 そういたしますと、法眼事務次官のきのうの発言は、いわば外務省としての意見と受け取っていいわけですね。
  113. 大平正芳

    大平国務大臣 大筋において間違ったことではないと思っておりますが、最終の部分におきまして、やや主観的推測とも思われる部分がございますので、そういうことは誤解を招くおそれがございますので、本日訂正を命じておきました。
  114. 永末英一

    ○永末委員 その外務省の何らかの意味の会合というのは何ですか、それは。
  115. 大平正芳

    大平国務大臣 いや、それは部内におきまして必要の場合は私を中心にしょっちゅう打ち合わせ会をやっております。
  116. 永末英一

    ○永末委員 その場合に法務省とは相談しましたか。
  117. 大平正芳

    大平国務大臣 法務省の入管当局と私どものほうとはしょっちゅう打ち合わせをやっておるわけでございまして、もとより田中発言につきまして、法務省との間にわれわれの事務当局が打ち合わせを絶えずやっておるわけでございまして、本件におきましても打ち合わせをやったはずだと思います。ただ、私が直接入管当局に云々というようなことはございません。
  118. 永末英一

    ○永末委員 まあやったはずというお話でございましたが、あと外務省の方、来ておられますが、私は当然問題となっておるのでありますから、やって法務省と連絡をとり、そして外務省の見解をまとめ、その上に事務次官の発言がなされておるのが手順だと思うのですが、そうなっておりますか。
  119. 大平正芳

    大平国務大臣 次官の会見は、きのうはちょうど事務次官会議あとの会見でございまして、その会見が本体であったようでございまして、その会見が終わりましたころ、記者団のほうから、たまたまその問題が、次官の見解をただされたようでございます。つまりこの問題を本題として会見をやったわけじゃないのです。その場合法眼君が言われたことは、大筋においてわれわれが考えておる基本の線に背馳するものではないと私は判断いたしております。ただ、大筋において背馳はいたしておりませんけれども、やや表現上誤解を招くおそれがありはしないか、この点はやはり訂正さしておく必要があると思いますので、本日の午後、訂正を命じておいたわけでございます。
  120. 永末英一

    ○永末委員 過去においてこの外務事務次官という人の発言が、きわめてそれまでの政府のとっておる発言内容とは異なったように意味合いのとれる発言があって物議をかもす事例が多かったわけであります。したがって、なるほど記者会見、定例でございますが、記者団のほうはそれぞれの段階における政治問題を聞くわけでございますから、外務大臣としては慎重にやはり準備をして、外務事務次官の発言が政治問題化しておたおたしないように慎重に事を運ばれたい。要望しておきます。終わり。
  121. 藤井勝志

    藤井委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後一時五十五分散会