運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-09-12 第71回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年九月十二日(水曜日)     午後一時二十三分開議  出席委員    委員長 石野 久男君    理事 木野 晴夫君 理事 藤波 孝生君    理事 藤本 孝雄君 理事 嶋崎  譲君    理事 原   茂君 理事 瀬崎 博義君       稲村 利幸君    松永  光君       渡辺美智雄君    堂森 芳夫君       近江巳記夫君    北側 義一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     牟田口道夫君         科学技術庁研究         調整局長    千葉  博君         科学技術庁原子         力局長     田宮 茂文君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    杉岡  浩君         文部省大学学術         局審議官    笠木 三郎君         気象庁観測部長 木村 耕三君         国土地理院参事         官       檀原  毅君         参  考  人         (民主団体災害         対策会議技術専         門委員)    大屋 鍾吾君         参  考  人         (東京総務局         災害対策部長) 鮏川 光義君         参  考  人         (気象庁観測部         地震課技術専門         官)      清野 政明君         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     萩原 尊礼君         参  考  人         (地震学会会         員)      和田 忠夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件(地震予知に関す  る問題等)      ――――◇―――――
  2. 石野久男

    石野委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  まず、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  地震予知に関する問題調査のため、本日、民主団体災害対策会議技術専門委員大屋鍾吾君東京総務局災害対策部長鮏川光義君、気象庁観測部地震課技術専門官清野政明君、東京大学名誉教授萩原尊礼君及び地震学会会員和田忠夫君、以上五名の方々を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 石野久男

    石野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  この際、参考人各位に一言あいさつ申し上げます。  本日は、御多用のところを本委員会に御出席くださいましてありがとうございます。どうかそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。  なお、御意見の聴取は質疑応答の形で行ないますので、さよう御了承願います。     ―――――――――――――
  4. 石野久男

    石野委員長 質疑申し出がありますので、順次これを許します。原茂君。
  5. 原茂

    ○原(茂)委員 参考人先生方にはどうもお忙しいところをありがとうございました。  私ども委員の各仲間から思い思いの先生方の御出席をいただきましたので、一々参考人皆さんに名ざしで質問をしない場合がございますが、忌憚のない御意見を、関係するものに関してはひとつお教えをいただきたいと思います。場合によりましては名ざしでまたお伺いをすることがございます。  きょう私はあまり時間がありませんが、国会も終わりに近づいておりますので、今国会のうちに地震特に予知などを中心にいたしまして、最終的に、ある意味では総括的に、気になっております問題の四、五点についてお伺いをしていきながら、さきに東京都で九月一日に防災訓練を毎年の記念行事ようにやりました。これを中心にお伺いをすることと、それから同時に、いま予算概算要求がまとまったようでございますが、この中に、地震予知中心に、あるいは防災中心にした予算が、要求された皆さんの思うようなものが予算としてとれそうなのかどうかをお伺いをしたいというふうに考えます。  最初に、非常にざっぱくな問題かもしれませんが、この十四日に、アメリカスカイラブ首都圏観測を行なうのにつれてわが国も、軍部ではありませんが、陸海空の方面から共同観測をするということが報道されているのですが、御存じのように、アーツ一号の写真を判定しまして、当時非常に大きな活断層が発見されたというふうにいわれましたけれども、これが活断層ではないという説がその後に出てまいりまして、確かにそうだということにいま一応なっているようでございます。  これは萩原先生がよろしいのかもしれませんが、あるいは科学技術庁のほうからのお答えもいただけたらいただいたほうがいいのかもしれませんが、この活断層でないという断定をしたいままでの研究機関その他の総合した判断があったに違いないのでありますが、せっかくのこういう機会ですから、やはりスカイラブ中心にしたこの十四日朝の調査のときに、何かこの断層に関する、まことにこれは古い筋なんだ、活断層ではないんだ、この二筋とも心配はないというようなことになっているそのことを、この機会にもう一度科学的に確認をするようなことができないんだろうか、そういう利用のしかたはありませんか、こういうことを実はお伺いしたいのです。  きょうたいへん締めくくりみたいにいろいろなことをお伺いしたいと思いますので、私もできるだけずばりお伺いをしますが、お答えいただく皆さんからも、できるだけ要点だけ簡潔にお答えをいただくようにお願いしたい。これは萩原先生千葉さんでよろしいのかどうか。
  6. 千葉博

    千葉政府委員 地震につきまして、先生から従来たびたび、特に地震予知中心にいたしまして、当庁あるいはそれに関係いたします国土地理院気象庁それから大学広範囲にわたります研究開発につきまして、いろいろ御激励あるいは叱咤勉励等いただきまして、実は私ども関係者予知中心にいたしまして、地震の問題につきまして鋭意具体的な進め方を検討いたしてまいったわけでございます。  まず先生のいまの御質問の第一点につきまして、つまり地震予知具体化の問題でございます。これにつきまして、端的に予算はどの程度だ、来年度どのぐらい考えているのかという点について、まず第一にお答え申し上げたいと思います。  実は、御案内のとおり、従来、この四年ほどかけまして約二十億程度お金を使いまして、それで予知研究を、どちらかといいますと学問的なステータスだというようなことで進めておったわけでございます。実はこれをさらに、先生指摘のとおり、これはもういわゆる実現に向かっての行政的な面からの開発研究を進めようということで、関係各省、四十九年度の概算要求につきまして、できるだけ重点的に進めるようにということで、その内容は、全体で約二十一億程度は見込まれておるわけでございまして、本年度に比べますと約二・七倍の予算になっておるわけでございます。  先般、萩原博士から、大体百五十億程度、毎年約三十億程度五年間お金をかければ相当なところまでいくはずだ、こういうような御発言があったわけでございます。そういった線は、測地学審議会においていろいろ検討されまして、その結果が出ておりますので、その線に沿って政府としてもその実現へ踏み出そうということで、約二十一億程度でございますが、画期的な予算が組まれておるわけでございます。  この内容は、国土地理院あるいは気象庁中心になりまして、そのほか海上保安庁の水路部、通産省の地質調査所、国立防災科学技術センター、さらに大学も大きな役割りを演ずるというよう予算が組まれておるわけでございます。まずそういった点が第一点でございます。  それから第二点に、それでは地震予知関係体制の問題につきまして一体どうなっているのかという点でございますが、この点につきましては、先般御報告申し上げましたように、総理府のいわゆる中央防災会議におきまして、地震予知推進のための体制を明確にしろということで、それを受けまして、科学技術庁中心となりまして、関係各省寄り集まりまして、地震予知関係省庁会議を設置いたしまして、具体的にこれをどういった形の地震予知推進、さらにその判断を下す機関をどういった形のものにするかという会議を設けまして、いま検討中でございまして、総理府あるいは科学技術庁あたり中心に、具体的にそういった機関を持とうということで、鋭意検討を進めておる次第でございます。  予知中心研究開発につきましての御質問、以上お答えいたします。
  7. 萩原尊礼

    萩原参考人 私から、例のアーツ一号の写真に出ました関東地方の線形が活断層ではないかということでいろいろ社会の反響を呼びましたことについて述べます。  あの線は非常に明確な線でございまして、しかもそれが東京の北のほうをかすめているということで、もしそれが活断層であるとしますと、非常な大事件ということになるわけでございますが、それにつきましていろいろな研究者、特に活断層専門家であります地震研究所松田時彦君その他が、あの線につきまして非常に詳しく調べたのでございますが、いろいろ地質学的あるいは地球物理学的にあの線が活断層であるという証拠は何もあがってこなかったのでございます。もしあれがほんとう活断層としますと、これまでも地質学的あるいは地球物理学的の何か痕跡があらわれてよかったのだと思いますが、従来また今回もそういうことが出てまいりませんでした。  あの線を非常に詳しく調べてみますと、いろいろなものが線となってあらわれている。線といっても幅は一キロぐらいなんだそうでございますが、あるところではそれは住宅の密集地帯であり、あるところではまたゴルフ場だとか、今度はそういう建物や何かがない広場であったり、またあるところでは森林か密集しているところであったり、いろいろなものが集まってあの線を形づくっているようでございます。  ただ、ではどうしてそういう線ができたのかということは、いまのところ全く不明でございますか、とにかくあれが活断層であるという材料は、いまのところあがってきておりませんので、何かの原因でああいう線が出ているのじゃないかということになっておりますが、では何によるかということは全くいまのところまだ不明でございます。  なお、ああいう従来知られている活断層、これは日本にいろいろなところにございますが、こういうものがアーツ写真によりましては非常に明確に出ているということで、これはこの関東地方にあらわれた線が活断層ではないといたしましても、アーツによります写真というものは、日本活断層研究にはこれまでも大いに役に立つものだと思っております。
  8. 千葉博

    千葉政府委員 原先生いま御質問スカイラブ活断層関係、これにつきましてお答え申し上げます。  実はスカイラブから写す写真、特に東京の上で写して差し上げる、これをいろいろ研究に使ってくれというような話は、NASAから外交ルートを通じまして、私が窓口になっておりますので私のところに来たわけでございます。それで実は十三日、あしたこの上空で写すから、それについて従来アーツ研究をすることにしておる環境の問題と気象の問題、この二点に利用してくれということで、この写真を送るということになっているわけでございます。実は、いま出がけに突然電報が入りまして、天気が悪いのであしたはあぶない、それで十七、八日中ころに延ばしたいということを言ってきておるわけでございます。それがもしも十七、八日がぐあいが悪くなりますと、いつになるかちょっといま見当がつかないのでございます。それで、もしもとれれば、先生指摘の、いわゆるいま申し上げました二つ研究以外に、活断層研究あたり中心にこれを使ってやったらどうかということでございます。  実は私の研究調整局長のところにこの研究検討会がございます。これは丸安博士中心にやっておりますが、これはアーツ中心にやっております。この場でスカイラブにつきましても検討していただこうといま思っておりますので、それで写真活断層の発見に役に立つかどうかというようなことも、その写真を見まして、それを専門の方に見ていただく。それでこれが使えるということでしたら、そういった研究をその写真中心にやっていただこうというようにいま考えているわけでございます。天気さえよければまあ相当期待できるような、写真が来るということになっております。期待しておるわけであります。
  9. 原茂

    ○原(茂)委員 いま萩原先生もおっしゃったように、じゃ一体何でこんな線ができたんだろうということが究明されない限り、私はしろうとだから安心できないといったって問題になりませんが、ああいう問題が起きた以上、なぜこういう断層ができたのかということが解明されない限り、問題がはっきりしたことになっていないわけです。  そういう意味でやはりスカイラブなどの今回の機会は絶好の機会だ。わが国のほうからアメリカに対して、こういった角度から、こういった面からというような、何かこの断層に関する資料として使える写真にするためのオーダーがあるならオーダーを出してまで、この機会にやはりなぜというものを解明するための手段にこれを使ったらどうだろうか。こういうつもりで申し上げたのです。いまの千葉さんのお話を聞いて参考になるだろうと私も思ったわけですが、やはり参考になさるというおつもりでございますから、たいへんけっこうだと思います。  それから、ついでにお伺いしておきたいのは、これは萩原先生かもしれませんが、力武先生のところにショルツさんから、五月ですか、南関東における異常隆起が続くようだったら、一緒に日米で共同研究ようじゃないかという提案か、私信のよう手紙でではあるけれども来たということが公表されている。こういう問題に関して何か正式に、予知連絡会あるいは学会として、力武先生の個人の問題というのではなくて、ショルツ博士申し出に関して日米共同調査でも始めようとか始めたとかいうようなことを何かお考えになったり、やったりしているのですか。そのままになっているのですか。
  10. 萩原尊礼

    萩原参考人 ショルツ博士から力武さんのところに、日本に来て研究したいというよう手紙が参りました。その後、房総半島隆起につきまして、国土地理院水準測量が再三行なわれたのでございますが、その結果、当初考えましたように、房総半島全体が広範囲にわたって隆起を続けるというような簡単な変動でなく、異常は異常でありますが、非常に複雑した上がり下がりを、測量のたびに示しておりまして、ショルツさんが考えているようないわゆる隆起とは違うので、例のダイラタンシーモデルを当てはめられるような、そういった土地の隆起ではないということがわかってまいりまして、そのことも、その測量資料も、ショルツさんのところに国土地理院のほうから送っている次第でございます。  なお、八月の中旬に、日米科学協力に基づきます日米地震予知研究会議アメリカのデンバーでございまして、日本から九名ばかり出席いたしまして、私も参りました。力武さんも参りまして、ショルツさんとも会っていろいろお話ししたわけでございます。  そういうようなわけで、お互いに行き来をして、協力して研究をすることは非常に大切なことでありますが、現在そういうよう状態で、いますぐそう急がないで、とにかくゆっくりお互い研究協力というものを考えていこうというよう話し合いが、力武教授、それから東北大学鈴木教授の間で行なわれていたようでございまして、いずれはこちらからも向こうへ行って研究する、ショルツさんその他のああいうダイラタンシーモデルを非常に研究している方にも来てもらって、お互いに共同してやる、いずれ実現するものと思いますが、ゆっくり時間をかけてやりましょうというようなことで話し合いがついたようでございます。
  11. 原茂

    ○原(茂)委員 それならそれでけっこうだと思うのですが、私はああいうようなときに、五月にそういう書簡が来たようなときに、八月に日米地震予知会議がある。これは非公式の会議ですね。国家間で取りきめたという会議じゃないんですね。
  12. 萩原尊礼

    萩原参考人 公式でございます。
  13. 原茂

    ○原(茂)委員 名前は何というのですか。
  14. 萩原尊礼

    萩原参考人 公式な名前は、日米科学協力に基づく地震予知及び地震のコントロールに関するセミナー、公式な名前はそうであります。略称は日米地震予知会議と呼んでおります。
  15. 原茂

    ○原(茂)委員 これは国と国との間で正式に取りきめをした会議だとおっしゃるのですね。そうすると、こういうものの公式記録というのはわれわれの手にも入りますね。――わかりました。これはあとで見せていただくことを要求いたします。  それで、少し横道にそれたのですが、ああいったような問題があったときに、その会議があるからというのじゃなくて、三カ月も置かないで、直ちにショルツさんの意見が直接日本学会との間に交換されるような、非常に拙速でいいから早さというものがもうちょっとないと、地震をこれほど国民的に気にしているときに、何が原因か知りませんけれども、少しのんびりし過ぎている。いまごろ私がこれを聞いてからいまのようなこともわかるんですね。お聞きしなければわからないというようなことは、何かちょっとわれわれの側から言うともの足りないのです。もっと早くぴしっぴしっと、これは特に地震予知に関する限りは、国際的な協力というのは絶対に必要なわけですから、そういう意味ではなおさらそういった問題に関する反応のしかたを、もうちょっと早くしていただけるようなことを自今考えていただかないといけないんじゃないか。いろんな事情があるでしょうが、もしあったらあとで、こういう事情があるのだということをお聞かせいただきたいのです。そのことは私から希望しておきます。  ついでに、ショルツ理論についてお伺いしておきたいのですが、たとえば房総半島隆起にしましても、いうところの異常隆起というものが四年ぐらい前からだんだんと消滅していって、いまおっしゃったような違った形の変化というものが出ている。したがって、ショルツ理論を当てはめようにも当てはめようがないというようなこととか、まだほかにもいろいろ例があるのですが、もっと端的に言うと、日本地震の深部でもって起きる地震ではなかなか当てはめにくいとかいろんなことがあるでしょう。浅いところならわりあいに当てはまるかもしれない。過去の地震をずっと調べてみると、確かにショルツ理論ぴったり当てはまるものもずいぶんある。しかし、現在起きている異常をつかまえてショルツ理論とぴったり一致しそうだというのが一カ所ありますね。琵琶湖かなんかの危険だといわれているものがありますが、とにかくショルツ理論そのものはなかなかぴったりはいかない。これも何でもかんでも当てはまるものじゃない、地震の様相によってずいぶん違うんだ、こういうこともあるでしょうが、私は日本の場合でも、ショルツ理論というものを専門的に突き詰めていくということを、専門的にですよ、そういうことを逆に積極的にやるということが必要だろう。その一環としては、ああいうショルツさんの申し出のあったようなときには、やはり積極的に遅滞なく接触をしていくというようなことをするためにも、思想性としてやはりああいった一つの学説が出てきたら、これはもうどんどんこっちから積極的に突き詰めてやる。ある意味ではその意見というもの、論旨というものは、いいにつけ悪いにつけ協力して国際的な意味でも大成をさしていくというようなことも、これは日本地震学会地球物理学会としては、ぜひ持たなければいけない態度だろうと思うんですね。  そういう意味ショルツ理論というのはどうなんでしょう。端的に言って、いま私がいろいろ申し上げたのですが、過去と現在、将来、日本地震に当てはめようとするときに、まだたいへんな問題があるので検討を要するのだというようなことになるんじゃないかと思いますが、その点も端的にお伺いしたいのと、もう一つは、この間ペルーのリマ会議が持たれましたね。非常に大きな会議が持たれたのですが、この会議を持たれたときに、ショルツ理論に対して、世界の学者の中から何か相当の異論が出たり、あるいはショルツ理論中心検討をした各国の貴重な意見が出たりというようなことがあったんでしょうか。ショルツ理論に対しては、別にこのリマ会議においては何にも触れられなかったのでしょうか。その点二つ
  16. 萩原尊礼

    萩原参考人 ショルツ理論と申しますか、例のダイラタンシーモデルに関します説は、これは少なくもマグニチュード六より小さい地震地殻の中の非常に浅いところで起こる地震には日本でもよく当てはまるのではないかと思います。したがって、従来日本でいろいろ地殻変動の測定その他地震観測マグニチュードの大きいもの、マグニチュード七以上のものについて何とかそれを実用できるようにという努力をしてまいったのでございますが、マグニチュード程度のしばしば陸の中で起こる小粒の被害地震、これに対してはとりこぼしが――将来そういうマグニチュード七以上のものについてある程度の長期的な予報ができるようになっても、そういう小さいものに対してはとりこぼしもあるかもしれないといわれておりましたのが、このショルツ理論によって相当のところまでいくのじゃないかというふうに考えておりまして、現在学界におきましても、いろいろの人が日本地震とこのショルツ理論という問題について取り組みつつある状態でございます。  それから、リマ会議には私は出席いたしておりませんですが、やはりダイラタンシーモデルに対する話はアメリカ学者が発表しておりました。  なお、さきほど申し上げました八月の日米地震予知会議出席いたしまして感じましたことは、このショルツ理論というのは、ショルツだけでなしに非常にたくさんの学者がこれに取り組んでいる。それで向こうではダイラタンシーモデルと称しておりまして、といいますのは、これはつまりショルツ一人だけがこの理論をつくり上げたわけではございませんで、非常にたくさんの研究者の力によってでき上がったもので、一番最後の仕上げと、それから房総半島と結びつけたということでショルツ名前が有名になったわけでございますが、そういうわけで非常にたくさんの人がこの問題に取り組んでおりまして、日本でももっとこのことをやらないか、日本ではどうなのかという質問最後に受けたような次第でございまして、このダイラタンシーモデルは、アメリカだけでなくて、これはそもそもの事の起こりがソ連で、ソ連の中央アジアでございますが、ソ連も非常に熱心にこのことをやっております。先ほど原先生から、もっと迅速に外国との研究協力交流ができないかというお話がございましたが、このダイラタンシーモデルにつきましても、米ソ間は非常に交流が激しく行なわれて、ほんとうに文字どおりの研究協力か行なわれておりまして、日本がどうもそこからちょっとはずれるような感じを受けます。との問題につきましては、アメリカとは限らず、ソ連も含めましてもっと研究交流がたやすく行なわれるように、私どももこれから努力いたしたいと思っておる次第でございます。
  17. 原茂

    ○原(茂)委員 先ほどの日米専門家協力会議ようセミナーが公式に持たれている、こういうようなものが日ソ間にありますか。
  18. 萩原尊礼

    萩原参考人 地震予知に関してはございません。ただ例のアッパーマントル・プロジェクトに関連いたしまして、シベリア大陸から日本海を通って日本列島をよぎって太平洋までの地殻構造をきめる、この、いろいろ地震探査その他の地球物理学的な方法でこれを地殻構造をきめるというのが日ソ間にございます。
  19. 原茂

    ○原(茂)委員 やはり日米間と同じように、日ソ間にも正式に、もっと公式な協力のできる会議の持てる機関というものが必要だと思いますので、これは千葉さんが中心に考えるのかどうか知りませんが、萩原先生もお考えになって、地震では日本の場合はやはり米ソとの提携が最も中心的に必要だろうと思いますが、ソビエトに関してもひとつお考えになっていただくようにこちらから持ちかけていただくということが必要なんです。もっと進んでは、ちょうど世界気象機構というのですか、WMOというああいったよう地震機構というものが、国連なら国連の中にできていかなければ、ほんとう意味の国際的な協力というのはむずかしいんじゃないかと思うのですが、そういったものはできているのですか。あるいはできていなければこれからつくるような意向があるのかどうかですね。
  20. 萩原尊礼

    萩原参考人 地球物理学の国際的な学会といたしまして、測地学及び地球物理学連合というのがございます。その中に地震部会というのがございます。地球物理学連合は四年に一回総会が持たれます。その四年の間に地震部会というのをどこかで開くということになっておりまして、その地震部会の中に地震予知委員会がございます。したがって、総会のときと部会のとき、大体二年に一回の割りで国際的な地震予知学会が開かれておりまして、これには日米ソのほかすべての国が出席いたします。
  21. 原茂

    ○原(茂)委員 私の頭の中にあるのは、世界気象機構と同じように世界地震機構という専門家会議を国連の下に常設されますと、それが地球の地殻変動その他を常に監視しながら、間髪を入れずアクションを起こしていく。必要な関係する国に対してすぐに会議を持たせる。四年に一ぺん何かがあって、その後委員会が二年に一ぺんあって、また一年に一ぺん何とかなんという受け身じゃいけないんだ。やはり気象機構と同じよう地震機構というものが、国連の正式機関としてあって、それが常にアクションを起こしていくんだというようなことが、地球全体を考えたときに絶対必要な時期が来た。この間ニクソンとブレジネフが会ったときに、これはあとで聞いたのですが、たしか地震予知などに関する学術的な問題まで、あのニクソン・ブレジネフ会談の中では一項あげて取りきめを行なったと聞いています。  こういうとこをお伺いしていいかどうか知りませんが、田中さんが今度またあっちに行くのですけれども、これは前田長官、日本だって地震国ですよね。したがって、ブレジネフに会ったとき、あるいはだれに会ったときに、領土もいいでしょうけれども、行くときについてもいま的確な時期でもないと私ども思うんです。そういう問題も大事なんでしょうが、そのほかにチュメニだなんだという開発も確かに大事なんですが、その意味でもっと大事にしなければいけないのは、やはりこういう地震予知なら地震予知というものを日ソ間で正式にどういう協力をするか、そのためには、日ソ間の正式な学者の連絡会議というものを持とうじゃないかというようなことくらい、田中さんが提唱してきめてくるくらいなことを、前田長官からひとつ話してもらって、同時に、外務大臣に対しては、いま私が申し上げたような、世界地震機構のような、常にアクションを起こしていくような機構というものを国連の中に設けるというくらいなことを、この愛する地球をどうするんだという問題ですから、地球全体の問題としては相当強く大平外務大臣にも考えてもらう必要があるというようなことを、これはお願いしておきます。  ついでに、小さいことを一つばかりお伺いしてみたいと思うのですが、ソビエトが、大きなダムの建設をやりますと、そのダムの周辺にいままでなかった地震が非常に起きるようになったということを、三カ所で調べてみたら事実そうなったというようなことを発表しているわけですね。これは日本学会でも調べてみて、わが国にそれが当てはまるかどうかを過去にさかのぼって調べたことがあるでしょうか、それが一つ。  もう一つ、末広博士が発表した、大きな地震の来るときには小さい地震の日数が非常に減ってくる、うんと減ってきたなあと思うと大きな地震があるんだ、こういうことを言ったのを、これは日本じゃなくてソビエトの学会で、そういうことを実際におれたちのほうでは経験してみてあった、こういって裏づけたような発表をしているんですね。日本でも実際に末広博士の言われたことを、なるほどそういうことがあるということになっているのでしょうか、その二つをお伺いいたします。
  22. 萩原尊礼

    萩原参考人 高いダムをつくって貯水いたしますと地震が起こるということは、これはもう世界的に周知なことでございまして、アメリカソ連、それからヨーロッパ、アフリカにおいてもその例がございます。ただ、すべてのダムではございませんで、非常にたくさんあるダムのうちの何かある条件をそろえますと非常に地震を誘発するようでございます。ただ、非常に小さい地震までを含めて倍率の高い地震計で観測いたしますと、従来関係がなかったと思われた多くの場合に、やはりダムの貯水と小地震の発生ということと関係があるようでございます。先ほどのお話の、ソ連におきますそういうダムと地震との関係、これは非常に微小地震観測によって関係が出たもののようでございます。日本におきましては、例の黒四におきまして、あそこは微小地震計を据えてずっと観測を続けております。これによりますと、はっきり微小地震の活動とダムの水位の高さと非常に明瞭な相関が出ております。  末広さんの例の大きい地震が起こる前に小さい地震の起こる割合が減ってくるという、これは現在では非常に世界的に有名になりまして、方々の国で研究をしております。末広さんは、松代群発地震の起こる前に、松代の観測所の観測からこういうことを言い出したのでございまして、日本でもいろいろな人がそういう関係の有無につきまして研究をいたしておりますが、こういうのは地域性があると申しますか、適当に、大きい地震が起こる前に小さい地震が起こっていないといけないということもございまして、まだ研究段階でございます。
  23. 原茂

    ○原(茂)委員 そうはいっても、日本地震学、地球物理学はずいぶんよくやっているほうだそうですね。私もしろうとなりにいろいろ調べてみると、確かに先生方はよく勉強されて、あんな少ない予算でよくやったなあと、実はほんとうに敬意を表しているわけですが、いまのようなお答えもやむを得ないと思うのですが、あとでまた次の機会にもうちょっとほかのことでお伺いしたいのです。  もう一つこの機会にお伺いしておきたいのは、アメリカのカリフォルニア大学か何かの海底探査船が四国沖にもぐって――六千メーターぐらいもぐったのですかね、もぐって調べたところ、例の海洋底拡大説というのが裏づけられた。確かにそうだ、こうなっているんだということだ。一カ所だけ見たのですが、ああいうことを見ますと、早くあと二カ所、三カ所と観測点を何カ所でもふやして探査してもらいたいものだなあという気になるのですが、このチャレンジャー号の海底探査をやった結果というものはお聞きになっているのでしょうね。お聞きになっているんだろうと思うのですが、これをお聞きになっているかどうかお答え願うと同時に、日本が独自で、単なる海底観測を無人でやっているんだなんということは――これから予算が通ってやるんだろうと思うのですが、何カ所もやるということだけでなくて、ああ  いったやぐらを組んだ大きな船が日本にもできて、それで四千メーターなり六千メーターの海底に対する探査というものが行なわれるようなところまで――そんなものはことし要求する予算の中に入っていないのですかね。  萩原先生が前に三十億とおっしゃったものが、いま千葉さん自慢して二・七倍になったなんて言っているんですかね。なったって二十一億ですよ。予算のことを一生懸命お伺いようと思って調べてきたのですけれども、調べているうちにいやになってしまいましてね。そんなばかな、二十一億なんというものであんな三千五百メーターの深井戸を何本掘れるかなという感じですよね。こんなもので、国家的な課題であるこの地震の問題と取り組んでいく先生方もたいへんですが、われわれの側からいっても、私が総理大臣かなんかだったら、ほんとうに戦車なんかやめちゃって、十台分、二十台分あればこんなものすぐできるんですから、やりたいなあと思うくらいなんです。ああいった海底探査船みたいなものをつくって、日本が独自に三カ所なり四カ所なりを探査してみようという計画はないんですか。そんなものは全然予算に入っていないのでしょうか。あの中に入っているのでしょうかね、そんなでかい、六千二百八十トンくらいの船が。
  24. 萩原尊礼

    萩原参考人 私、最近ちょっとからだをこわしましてうちに二週間ばかり引っ込んでおりましたので、皆さんと接触していないので、最近の情報は詳しく知っておりません。  なお、例の地震予知の計画にはチャレンジャーのものは含まれておりません。実はアメリカもこのごろはだいぶお金に困ってきまして、日本お金持ちになってきたから、日本の近所をやるようなときには、チャレンジャーの仕事の分け前を少し日本で持ってくれないかというような話があるようでございます。チャレンジャーを日本でつくる、おそらく現在の日本ではその能力があるかもしれませんが、まずその前に、チャレンジャーの運転資金の分け前を日本も少し持つというぐらいのことはしてやってもいいんじゃないか。また、するべきじゃないかと思うのでございますが、こういうことは実現がなかなかむずかしいのでございます。
  25. 原茂

    ○原(茂)委員 千葉さん、いまの先生お話聞いてどうですか。分け前を持つなんということは当然だし、先ほど冒頭に局長がお話しになりましたが、いままで私ども国会でずっとお願いをしたり質問をしたりしたことを中心にした地震予知地震対策の推進についての定期的な会合を持つ、それから項目別に、あれはこうする、これはこうするということをお聞きしました。確かにあれではまだ不十分ですが、いいと思います。これは別途に、これ専門にお伺いしますので、きょうはそれには触れないですけれども、どうですかね、私はああいうチャレンジャー号みたいなものをチャーターしてでも、ここで思い切ってやる必要があるんじゃないかと思うのですが、いまの先生お話でも、五カ年計画にも入っていない。こんなことで、ああいう海洋底拡大説なんというものが中心に論議をされている現段階で、そこへ手がつかないよう地震予知なんということは、しろうとの側からいうと不満足きわまりないのですね。  われわれの立っているところの下だとか、内陸部だとか、あるいは動いたとか動かないとか、地殻変動があったとかないとかいうことも大事なんですが、その前に、この海洋底の探査というものはどうしてもやらなければいけない緊急の課題なんですよね。おそらく萩原先生にしても、こういう問題に手をつけたくてしょうがないんだけれども、できたら一番先にその船に乗っかって、ひとつ下にもぐってやろうと、きっと御老体でも思っているだろうと思うのですよ。これはもうほんとう学者先生方が渇望しているんじゃないか。萩原先生なんかも、なぜそのくらいのことを堂々と要求しないんだと言ったのに対して、いや、そんなこと言ったって、大蔵省が二五%増しだとかなんとか言っているものだから、あれだけにするのが精一ぱいだったんだというようなことになるのかもしれませんけれども、そんなよけいなしんしゃくをなさいますなと、この前先生方においでいただいたときに言ったんですがね。やはり百五十億というのを見てみると、遠慮のかたまりみたいで、何にも大事なところまで気が届いていないというふうに思うのですが、あれをチャーターするぐらいのことを予備費か何かでできませんか。そのくらいのことをやらないとだめだと思うのですよ。分け前なんて言わないで、チャレンジャー号なんかチャーターしたらいい。どうでしょう。
  26. 千葉博

    千葉政府委員 先生から叱咤激励を受けまして非常に心強く感ずるものでございます。実は、先ほど申し上げましたように、今度の四十九年度からの地震予知関係予算の基本は、測地学審議会の答申、これの三次計画実施をベースにしております。それで、優先順位がございまして、気象庁あたりといろいろ相談いたしまして、また国土地理院と相談いたしましても、とにかく、とりあえず、たとえば気象庁は、いま先生のおっしゃる、チャレンジャー号で日本海溝の下の地質の状態を調べろというよりも、海底に地震計を設置する、これさえもできてないので、まずこの辺をやることが先決なんだ、こういうような意思でございます。それでございますので、こういった点、まず急ぐべきものをやりまして、それから順を経まして、先生の御指摘のああいった海底の地質構造、そういったものをどうしても緊急に調べないと、地震予知の実用化の第一段階にいかないんだということなら、私のほうもこれを強力に推進したいというように私自身はいま考えておりますけれども、とりあえず、とにかくこの五カ年計画をやれば予知の実用化へ踏み出せるんだという点は取り急ぎ進めたいというように考えておる次第であります。
  27. 原茂

    ○原(茂)委員 たぶん地震は、その五年たつまでないでしょうからね。そういう前提だからそれでいいんでしょうけれども、あったらお互いにたいへんですよね。これはえらいことになるんですよ。ですから、先ほどもちょっと中段で申し上げたのですが、われわれが刺激を受けたら、その刺激をこっちのものにしながら――予算がどうの、各省と打ち合わせしてこういうふうになりましたなんというのはわかっているけれども、そのほかに、ああいう海底探査なんという必要なことだけはどんなふうにしてでもやろうじゃないかということが、国の政治の大きな道義として出てくるようでないと、これは前田長官、何か紙に書いたプランが出てきたら、それをずっとやっていって、五カ年たったら、百五十億と火山噴火で十五億使って、百六十五億使えば何か予知ができるんだそうだというようなことを言っている間に、どんどんどんどん必要な最小限度の手段というものが国際的に生まれているわけですね。それを、一度こういうような計画をきめたからというので、新しい必要な手段が前から考えられてはいる、どこかの国でやっていたことではあっても、それが日本へ来て、四国の沖をアメリカの加州大学先生が来て、しかも日本からも四人、一緒に乗り組んでいるのです。そうして調べたというようなことがあっても、われわれの大事な国土がアメリカ大学の船で調べられて、どうも拡大説の証拠が見つかったぞなんて言われて、ああそうでございますかといって、地震日本が何らその手段そのものを自分の中に取り入れようとしないなんということは、およそ政治はないと言ってもいいくらいなんです。  政治というのはやはり生きていなければいけないんで、こういうようなことがあって刺激が与えられたら、その刺激をこっちのものにするんだというような問題が地震なんです。私はこれをそのままほうっておいていく問題じゃないと思う。ただニュースとして聞いているような他人ごとじゃない。てめえの住んでいる家の土台が、おまえのところ、ここが少し下がまくれかかっちゃっていて柱が曲がっているぞと言われて、そうでございますか、じゃてめえで調べてみようと言わないで、とにかく五年たったら、また予算でもできたらそういうほうへ手をつけていく。順序からいっても、目に見えている柱のほうをシロアリがどれぐらい食っているかを調べているんだ、底のほうのことなんか、土台が幾らひっくり返ろうがとても手が届かない。その前に、柱の上のほう、見えているところへシロアリが食い込んでいるやつを、一匹一匹調べているんだ。こんな調子ですよ。そうでしょう。私はチャレンジャー号のことを聞いただけで、これはチャンスだ、何といったって日本の手段というものに置きかえなければいけないというふうに、ほんとうに真剣に考えているのです。  これは長官、そういう予備費を使うか何か知りませんが、何かチャーターしてもやろうという交渉をやってみる気はありませんか。
  28. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 実は私、全国知事会議出席をいたしておりまして、この委員会出席がおくれたことをおわびを申し上げたいと思います。  ただいまの地震予知についての原先生の御質疑でございますが、実は四月二十六日の当委員会における原先生からの相当きびしい御指摘もございましたので、実は、おそらく先刻千葉局長からお答えしたと思いますが、四十九年度の地震予知関係概算要求は、二十億ちょっとこえるような、二十一億近い、七億程度からそうなったということは、実は前の委員会におきまして先生方の御指摘相当あったからでございまして、これは決して自慢するわけじゃありませんけれども、それだけ委員会の空気というものが反映してこれだけの概算要求になったんだろうと思います。そうじゃなければもっと少なかったであろうと思うのであります。  しかし、これも足らない、ことに、ただいま御指摘のチャレンジャー号のチャーターの問題とか、そういう問題等、実はこのうちには入っていないわけでございます。確かに地震は、われわれがこうしてのんびりと予知研究ばかりをやっておる間に、いつ何どき襲撃してくるかわからぬわけでございまして、その点、立ってもいてもたまらぬというふうな気持ちになるわけでございます。  その意味におきまして、いろいろな方法、あれもこれもと実はやりたいのでございますけれども、この点につきましては、関係の省庁が集まりまして相談をいたしました結果、この五カ年間で百五十億というふうな、そういう計画に相なったわけでございますが、ただいま先生のチャレンジャー号の問題は、実はそのとき別に問題になっておりませんでした。しかし、このチャレンジャー号のどういうふうに使うかというふうな問題等につきましても、われわれしょっちゅうこういう会議をやっておりますから、その席において、こういう原先生の御提案もあったしということで、われわれの関係省庁の打ち合わせ会議のときにこれを取り上げて、よく検討いたしたいというふうに考えております。
  29. 原茂

    ○原(茂)委員 ありがとうございます。検討してもらうだけでもけっこうです。ぜひそのくらいの地震に対するぴりっとした神経の使い方を、やはり大臣が率先して見せていただくようにお願いしたいと思うのです。  それから、きょうは実は盛りだくさんにいろいろと持っていたのですが、時間がありませんから、もう一つついでにお伺いしたいのは、この間山梨大学の浜野教授が、甲府盆地の真下に活断層があって、これがいろいろな現象からいって近く大きな地震を起こす危険がある、こういうことを言っているのですが、どうなんでしょうかね、予知連絡会には正式にまだ発表もないのかどうか。来年の四月の学会で浜野先生は発表するのだなんというのんびりしたことを言っているのですが、ところが、浜野教授に言わせると、とにかくうっかりすると例の関東大震災の相模構造線ですね、あれが途中で消えてなくなっちゃったのだけれども、山塊の中であとは先がわからないのだけれども、たぶんそれとつながっている危険があるというふうな判断をするのだというようなことをたしかおっしゃっていると思うんですよ。  ここで問題になるのは、関東大震災のいわゆる相模構造線というのは、一体どこからどこをずっと行ったのかも的確にまだ調査が済んでいないのじゃないかということが一つですね。これは大至急に調査――大至急どころじゃない、関東大震災後五十年たっているのですね。それで地震関係する先生方が何をおいてもやらなければいけないのは、やっぱりあの関東大震災の的確な震源の通った道あとというものをつかむ必要がある。それがほんとうに的確につかめていないというところに、今度は甲府盆地の下に活断層があるのだ、そうして本栖湖と八ケ岳山麓の間に、あるいは芦川-小松の間にこういうような異常があるというようなことから、とにかく危険だというようなことをついこの間発表しているわけですね。ということになりますと、関東大震災の前後に、あの当時にあの地方に起きた異常というものを、また過去にさかのぼって浜野先生がこう調べたわけでしょう。調べると、確かになるほどそのつながった線だろうということがわかるような異常というものが出てきた。あれもそうだ、こうやっているわけですね。ということを考えますと、どうも一番大事なことは、やはり相模構造線というものの関東大震災における関連というものは、もっと的確にぴしっとこうだということが明確に出てこないということが、もう一つ研究の上での欠陥だ。これを大至急に出すべきではないかと思うのですが、出ているかどうか。いまのをいつごろ出せるかが一つと、甲府盆地を中心活断層と浜野先生の断定したものが、やはりそのおそれがあるとお思いになるかどうか。この二点について……。
  30. 萩原尊礼

    萩原参考人 最近活断層研究が進みまして、非常にたくさんの方がそういう調査研究に当たられております。ために、次から次とそういう活断層ではないかというところが見つかってきております。  なお、御指摘ように、これは相模トラフの延長上、そういったものは、関東地震調査という、実態を明らかにするという点で非常に大事なはずでありまして、二、三の学者によって研究は進められておりますが、活断層と申しましても、非常に条件のいいところはすぐ見つかりますけれども、いろいろ家が建ったり木が一ぱいはえていたり、上にやわらかい堆積物がたまったりしておりますと、なかなかそう歩いたからといってすぐ見つかるわけのものではありませんで、やはり調査には相当な時間と人手が要ると思います。それだからといって、相模トラフの延長の断層調査がまだ十分でないということの言いわけにはならないと思いますが、私どもとしてもできるだけ早くその調査をはっきりさせたいと思っております。
  31. 原茂

    ○原(茂)委員 私事を言うようですが、八ケ岳、甲府盆地、あのところに活断層があって危険だというのですが、私はすぐそばに住んでいるんです。八ケ岳の向こう側の諏訪に住んでいるんです。はあ、来るかなと思っているのですがね。そういうことを一浜野教授が発表したというときにも、先ほどのショルツ理論ではありませんが、全国的には数多くあるのでしょうが、それに対する対応がぴしっと予知連絡会萩原先生中心相当日本の頭脳あるいは技術力がそこに集中されるということが実は望ましいのです。  そういう点もまた予算関係してくるのかもしれませんが、とにかくそういうことをやろうというのに、こういう点が足らないのだ、人的にこういう頭脳が足らない、施設がない、金がないということがおありなら、前にも申し上げたのですが、及ばずながらこの国会としては、長官以下政府要路にどんどんお願いするチャンスもあるわけですから、やりたいと思いますので、そういう場合にそこへきちっと総合的な力を集中できる、それに対応して間髪を入れず、新聞なんかに出たんだけれども実はこうなんだ、こういう調査をしているから、いつになったらこういうことがわかる予定だということだけでも発表する習慣、訓練――地震に関する限りは、新聞に一つ出ました、それがそのままにずっといないで、直ちに――直ちにといったって時間的なあれがあるでしょうが、いま少し、こういう力を集中してこういうことをやっているのだということだけでも発表できて、その結果はまた一カ月、二カ月後に、一応こういうふうに見通せるという、権威ある予知連絡会なりから発表されるようなことを訓練しなければいけない時期が来ていると思うのです。  昔と全く同じように、何か発表するとそうかなあという調子で、琵琶湖だ、山形、酒田地方だ、何だ、その後一体どうなっているんだろう、新聞に出たつきり。こういうことに対して集中的に力をそこにつぎ込んでいってやる。そうして、それに対して国民に、こうなんだよ、いまわれわれが知る範囲ではこうなんだ、どのくらいたてばこういうことがわかるとかいうようなことが言えるようなそういう機能を、前から私何センターだか知りませんが、やはりぴしっと集約できるような国家的な機関というものがどうしても必要だ、こう言っているのですが、それがどうしてもなくて、今度、あとでまた後日にお伺いしますけれども、だいぶ一元化される前提みたいな形に、考えだけはこうしようなんということを二本柱で考えているようです。千葉さん、少しは得意になってこんなものつくったのかもしれませんが、まだこんなものじゃ、とても私が考えているような――私がじゃなく、当然しなければいかぬ機関としては不十分だというようなことを考えると、どうも私どももうちょっと何とかならないだろうかという考え方がしてならないので、甲府盆地のことも実はお伺いしているわけです。  きょうは時間がなくてそういう点あまり質問できないのですが、ついでにもう一つ、きょうの新聞に「火山島誕生 硫黄列島の北端 大地震の前兆」、こうありますね。これは何か情報はお聞きになっているんでしょうけれども、どういうのでしょうか。これはやはり相当地震の前ぶれの一つなんだと考えるのでしょうか。
  32. 萩原尊礼

    萩原参考人 あまり詳しい情報は聞いておりませんが、ああいう硫黄島方面、あの辺の海底噴火というのはときどきある現象でございまして、特にそれが起こったからそれがどこの大地震と結びつくというものではないと思います。
  33. 原茂

    ○原(茂)委員 西之島といい、この硫黄列島といい、特にそれが地震関係があるものではないと先生が思う、それはこういう調査によってこう言えるのだというようなことを、もうちょっとお伺いをしたいと思っていたんですが、これはまた後日に譲らしていただきます。  そこで、いままでのことをお聞きしていながら、きょうわざわざおいでいただきました参考人皆さんに、これからわずかな時間ずつお伺いするのですが、和田先生にお伺いしたいと思います。  われわれがいま萩原先生中心にいろいろ、こう論議をしています。それは、学説的に言うなら地殻変動説という立場かもしれません。こういう立場とは違った立場で少しこれに批判的な地震体積説、あるいは例の坪井忠二先生などの考えておられるような考え方もあるし、いずれにしてもこの地殻変動説一本やりで地震というものを考え、それを予知をしていこうと考えるところに、実際にわれわれが正しいか正しくないかは別なんですが、それだけでいいんだろうかということをたまたま考えることがあるんです。これはわからないからですが……。  そこで、和田先生のいままで研究された立場から、忌憚なくずばりと、こういう問題に対して違ったお考えがあるなら、それをきょう実はお聞きしたいなと思いまして、おいでいただいたわけですが、時間もあまりありませんが、要所要所をひとつずばりとお話を聞かしていただきたい。
  34. 和田忠夫

    和田参考人 松代地震以来、ことしの春まで地震学会で一年に一回以上、私独自の地震に対する原理をアプローチしてまいりました。ことしの秋からは地震予知に関するアプローチをいたすつもりでございますが、松代地震の場合に多少、災害地震ような場合に予知能力を持つことができたということ、それから地震域が大豊作になるというようなことも、室町三丁目の長野県の東京事務所、それから長野市役所の場合には、時間がなくて言わなかったかもわかりませんけれども、とにかく長野市に行って松代地方でも私がそういうことを申したものですから、その年の、一九六六年でございますけれども、三月はとても寒かったために、リンゴの花の咲き方がおそかった、施肥とか手入れが地震のために悪くて、とても大豊作などということは信じられない状況のもとで、私がそのようなことを言ったものですから、だいぶ笑われましたけれども、後ほど申し上げる機会があるかと思いますが、地震エネルギーが超音波エネルギー、超音波現象にそっくり置きかえてみることができるという私の原理から見ますと、超音波エネルギーは作用の一つにたん白質の変性という作用を持っております。それと松代地震が群発地震になるゆえんは、新潟地震であるとか、福井地震であるとか、その他の地震でもってあの地域の地下の岩石がひび割れを生じていたのではないか。この超音波の伝わる伝わらないという点からそういうふうに見られたわけでございます。  それから見ますと、いまの日本地震学、関東大震災の五十周年でもありましたから、最近はジャーナリストの方たちも大々的に報道されておりますけれども地震について地殻変動説でほとんど一本にしぼられている。私はこれほどきれいに地殻変動説一本にしぼられていることに対して、根底からのおそれを持っているものであります。実は、東大の名誉教授であります坪井忠二先生は、地震体積説を提出されまして、いまだに撤回なさっておりません。撤回なさっておりませんということばはとても失礼でございまして、提出なさっております。一週間ほど前にも、NHKのラジオの第一放送でもって地殻変動説に対する一つの矛盾点をあげておられました。活断層地震を起こすものなれば、地震の前に起きる前震は活断層に沿った地域で起きなければアブノーマルである。御承知のように、地震が起きる前の前震は、断層から離れたところで起きることのほうが多いのでございます。  それから、私から申し上げますと、結局地震観測地震研究は、重力場を根底理念として、原理として日本で始められて、ことしが百一年目に当たりますが、地殻変動説、すなわち重力場また万有引力の概念というものは、私の見るところ、どうも自然現象とは矛盾している。御承知のとおり、万有引力の概念でまいりますと、新月の場合は引力の作用は、太陽、月の引力が合成された形になりますので、潮位はマキシマムの方角になるはずです。それから満月の場合は、満月時は月と太陽の引力が双方に割れますので、新月時に対してはミニマムの方向にならなければいけない。しかしこれは「海辺の気象暦」、日本気象協会発行のものですが、東京、川崎、横浜、すべてのところが一年のうち六カ月は矛盾現象を示しております。満月時のほうが値が大きい。満月、新月時を前後を含みまして三日ずつ集計したものを比べてみましても、やはり一月、二月、九、十、十一、十二という六カ月は満月時のほうが値が大きい。その後、私一人の調べですからたいした調べもできませんですけれども、海流の変化だとか、それから温度の変化というようなもので、そういうものがアブノーマルさを示すということが立証されるかどうかということを、少しですが調べてみましたけれども、その月に対してそういう確実な立証はできないという状態でございます。  それから、地殻変動説は、結局万有引力を基本概念にしておりますから、地震を力学的に見ておるということでございます。私、後に申し上げる機会があると思いますが、超音波現象に置きかえてみるという地震のメカニズム、プロセスの根底となるものは物理現象になってまいります。プレート・テクトニクスととても結ばれやすかったという点もあると思いますけれども地殻変動、すなわち一方的な力に対して地震変動は四象限の変動を示します。ですから、力が逆方向に向いたときには一方的な力に向かった方向に変動のベクトルが向く。こういうことがサイクル的に繰り返されるということはやはりなかなかむずかしいんではないか。松代地震そのほかいままでの地震を調べましても、地震の震源が帯状であったことは一度もない。活断層地震原因ならば、震源は当然帯状であってしかるべきだと思います。  つい最近発行されました「諸君」の十月号にも、「日本地震学は間違っている」森本良平、間違っているというタイトルでもって、東大地震研の森本教授は、日本地震学が根底にやはり素朴地震の発光現象をファクターの重要なものとして入れなければいけないのじゃないかというふうに書かれておりますが、これは磁性消失という現象も日本で安政地震の際にもはっきり認められておりますし、中国では、一八〇〇年近くになりますか、後漢の時代にもう張衡という人がそれを利用したものをつくっている。利用したものをつくるほどでございますから、もうそれまでに現象として何度も見られている。私は古文書や古記録の現象に対しては、そういう見方をいままでとってまいりました。それから、西欧においてもその現象は見られている。  発光現象にしましても、東大地震研の嘱託でおられました武者金吉氏が、教育者を中心に二千七百七十二の現象を集めておられる。しかも福井大学地震学会の総会がございましたときに、松代地震に関する発光現象を、カラー写真も交えて、栗林享さんという歯医者さんが、患者さんをそっちのけにするほどの熱心さでもって昼夜写真をとり続けて、六十八枚ほど実際に報告されておる。えびの地震の発光現象も、白庄司正雄さんという方が福井大学に出かけて報告されている。西欧におきましても、イタリアの学者が数千というものを集めておられる。また、私が地方を回って素朴実在論的に聞きましても、日本の老人には、電灯など全然なかった時代の人が、私が回った二十代、三十代にはまだずいぶんおられました。そういう人は、発光現象が、電線のスパークなど電線がないところに起きるはずはないという、こういう素朴実在論的な話は地方に多々ございます。  それから、松代地震の際にも、長野県のきこりさんの山本佐一さんという人は、ヘビやミミズが地震の前には反対方向に向かって逃げる。関東大震災の前にも、千葉県の木更津の浜べには畳九枚を重ねただけ浜に小イワシのシコが上陸して逃げている。深海魚も浮いている。深海魚が浮くということも、東大のその方面の先生がおっしゃっておられる。こういう現象を、過去の地震学は、西欧の力学的な重力場という見方でもって、迷信説としてみんな捨ててくるような立場に立ってしまった。いま公害現象などにおいて、もう一回自然との新しい対話を始めなければいけない、そういった哲学的なファクターを入れなくても、こういう世界的な規模で磁性消失、退潮現象、発光現象、回折現象、そういうものがもうはっきりと数多く見られています。  退潮現象なども日本海側で見られているという。鰺ケ沢地震でありますとか、佐渡の地震でありますとか、浜田地震ようなことがございますけれども、はっきりともう複数でもって地震に関して現象としてとらえられている。その線でいきますと、関東地震の場合にも、地震学のほうでは、国会図書館などで見ましても、油壷の観潮所では変動がなかったというふうに書かれております。しかし、私が個人的に調べたところでは、房総の突端の白浜付近の人たちは、地震が起きる少し前からもう退潮現象があったというふうに聞いています。  こういった点から見ますと、全く力学的に見て縦横のゆれをファクターにした地震学というものは、根底に何か将来に向かっての地震学ではないような気がするわけでございます。しかし、計測そのものは現象面のことに関するものですから、地震地殻変動説そのものとはまた私は見方を変えております。現象からあるパターンをつかむということであれば、これはまた地震原理とは全く違うわけですけれども、しかし、私がこの秋提出します超音波現象に置きかえてみることのできるという、この原理によりますと、レーダー測量が幾ら緻密であっても、地震が起きる前には、磁性工学のほうで磁化曲線がございますけれども、その中で静かな磁石、静磁現象の中に回転磁化範囲というのがございます。ベクトルが回転するということであるわけです。御承知のように、地震前に土地が隆起するだけではございません。沈下する場所もあります。変動を示さないところもございます。これと対応したように、井戸水がふえるところがあれば減るところがある。その差をあらわさないところもあります。こういった点から見ますと、浜田地震の場合にも退潮現象が一部にはっきりあらわれながら、その南西部には全然あらわれなかったということ、四象限ブロックの境目に当たるようなところを想像される現象があるわけでございます。  こういった点から見ますと、いまの地殻変動説または地殻変動説に連なる計測一本やりで進むということに対しては、根底から危惧を持っているものでございますし、それも決して否定するものでございませんけれども、一本にしぼらないで、われわれのような無名の研究をもひとつ真剣に検討していただいて実際に生かしていただきたい。  私は、ことし一月から退職いたしまして、秋にアプローチするためにこの私の原理をまとめにかかりました。過去松代地震の場合にも、地震に夢中になり過ぎたというか、若いときから、何の因果か、やめようと思えば思うほど地震に深く首を突っ込んでしまった男でございますけれども、そういった点で、もう一言はっきり言わせてもらうとすれば、地震学会そのもののあり方が少しアブノーマルなんではないかと私は考えるわけです。  私がここで憎まれ役を買って出ない限り、この私の原理と同じようなレーダーの発明は、一市民の方が発明されて、しかもアメリカで実用化され、その返礼として兵器になって第二次大戦に日本に返ってきています。私は、若い時分にある弱電メーカーの技術課に籍をよごしたことがございますが、その技術課におられた江崎さんは、エサキダイオードを発明されて、そのエサキダイオードは四年数カ月無視され続けた。いな、研究の目が純粋度を求める方向に向かっているときに逆方向であったというために、四年数カ月無視されたということがございます。世界で一番地震の多い日本において、多数決的な一つの実験だけを推し進めるということに対しては、先ほど原理にまつわるアブノーマルさを感じているものだけに、この際皆さんに率直に幅広い体制をとることをお願いする次第であります。
  35. 原茂

    ○原(茂)委員 たいへん貴重な御意見を聞いて、お伺いしたいことがずいぶんあるのですが、実は時間がもう終わってしまいましたので、あとは個人的にか、また次の委員会にでも譲りたいと思いますが、東京都の災害対策部長の鮏川先生のほう、まことに申しわけありません。きょうはこの間の九月一日を中心に労をねぎらいながらも、また貴重な御意見を十二、三お伺いようと思って準備してまいったのですが、これは後日に譲らざるを得ませんので、またの機会に譲ることをお許しいただきたいと思います。  これで終わります。
  36. 石野久男

    石野委員長 私から前田長官に一言お聞きしたいのですが、実は原子力の問題に関してです。公聴会問題ですが、先般の委員会におきましても、公聴会の開催を延期すべきでないかという意見が各党の委員からありました。原子力委員会が、地元利害関係者として意見陳述希望者に対する考え方を変えましたのが先月の八月の二十四日だと聞いております。で、締め切りが二十五日になっておりまして、そういうことから、この公聴会開催要領やあるいは開催の実施細則等との見合いからいっても、実質的には意見陳述をすることのでき得ない人がたくさん出てまいりました。そのよう事情を踏まえて、公聴会の開催の延期をするのが至当じゃないかというふうに、各党の委員の諸君もそのように言っておりますし、委員長としての私もそのように実は考えているところでありますが、この件につきまして、原子力委員会はどのようにお考えになっていられるか、この際、長官にひとつ御意見をお聞きしておきたい。
  37. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 お答えいたします。  ただいまの点につきましては、先般石野委員長はじめ、皆さん科学技術庁にもおいでになり、また委員会の席においても、ただいまのような御質疑があったように私は記憶いたしております。  この原子力委員会の開催いたしまする公聴会につきまして、その地元というものの解釈につきまして食い違いがあったんじゃないかという点につきましても、その点は、私、先生方の御指摘がございましたので、たしか石野先生をはじめ皆さん方が御来庁いただきましたその日に、私は担当の田宮局長並びに関係の課長等を集めましてその点を詰めたのでございますけれども、その点は別に食い違いはないということでございまして、特に地元ということの解釈によりまして、作為的に御希望の人を締め出そうというふうな意図は全然持っておりませんし、また、そういうこともいたしておりません。その意味におきまして、私たちは、この十八、十九日の私たちが考えておりまする公聴会は、延期する考え方はないわけでございます。
  38. 石野久男

    石野委員長 再度お尋ねしますが、この公聴会要領あるいはまた細則に基づいて相当多数の人々がそれに該当しないというようなことで、結果的には排除されている形が出ておるわけです。それは、いま長官からのお話がありましたにもかかわらず、地方のいわゆる地方自治体としての福島県知事等が科学技術庁との話し合いの結果であるということで応答した中からそういう人々が排除されておるわけです。ところが、先般の科学技術特別委員会におきましての政府答弁によって、それらの者は排除しなくなったのだということがはっきりしたのが先月の二十九日の委員会だったと思います。その前に、二十四日に、そういう原子力委員会意見が変わったということが公表されている。二十五日の締め切りにはとうていこれは間に合うわけにいきません。ことに細則等によりますると、もうとても新たに意見陳述の申し出をする時間的余裕はないわけであります。  こういう事実が非常に多数に存在しているということは不合理でありまするし、また要綱、細則が、いわゆる安全審査をするにあたって、事前に民意を聞くという趣旨にも沿わないということから、先般の委員会においては、各委員が延期すべきであるということを申し出たと私は理解しております。また、私自身としましても、その各委員申し出科学技術庁なりあるいは原子力委員会がこたえることが、原子力の安全性に関する問題に対処する筋道であろうと思います。  特に、ただいまの長官の御答弁によりますと、委員会としては何ら間違いがないからこのままやるんだというような結論だそうでございますが、事実はそうではないという実在がございまするし、それから今後のやはり原子力安全審査についての一般、地元だけでなく、全国的に原子炉に対する安全性の問題の関心が高まっており、また他面では原子力施設における事故が頻発しておるのも実情であります。その上にアメリカにおけるAECは、すでに、日本の各原子力施設において使っておる、GE並びにウエスチングハウスの炉を使っておるわけでございますから、その発売元であるアメリカですでに出力低下の指示が行なわれているというような、言うなれば欠陥を持った炉をわが国においては施設として使うわけでありますから、不安を持つのは当然なんです。そういう不安を持っている地域住民が各地におり、そして現に第一回の公聴会においてそういう問題を解明するというその時点で、こういう理解のしかたのそごがある。それのみならず、原子力委員会が解釈上における解明をしたのが締め切りの一日前であるというようなことなどから見まするならば、当然のこととして、予定される福島公聴会というものは、これは延期すべきである、私はそのように思うのです。これは、私のみならず、先般の委員会の各委員意見でもあったと思います。この意見はやはり尊重されるべきだと私は思うのです。そういう意味において、原子力委員会がもし長官の言われるような処置をなさるとするならば、これは非常に私どもとして理解に苦しむところでございます。  私は、この際長官に、いま一度このような実在する矛盾というものを解明するための努力をすべきであろう。それでありませんと、地域におけるところのこの問題に対する不信感というものが一そう高まってくるということを私は憂えるわけです。こうした私の憂慮することが現実に公聴会開催の時点において地域住民によって起きるということになるならば、これは決して好ましいことではございません。私は、公聴会がそういうことにならないためにも、せっかく国会の内部においてこのことを憂えている各党の委員がおりますることですから、科学技術庁並びに原子力委員会は、もっと国会の中における意見を再検討してしかるべきでないか、こういうように思いますので、この機会に私は、長官に対して、もう一度原子力委員会でこの実情を理解した上で配慮していただくように希望いたしておきます。  もし長官から御意見がありましたら、意見を承っておきたいと思います。――ございませんか。長官から御意見がないようでございますから、ではこの点は、非常に重要でございますので、意見はないようでございますが、私は特にもう一度再考をお願いしておきます。  次に、近江巳記夫君。
  39. 近江巳記夫

    ○近江委員 参考人先生方につきましては、一部先生入れかわっておられますが、たしか本年の四月であったと思いますが、本委員会に御出席をいただきまして、いろいろ貴重な御意見を伺ったわけでございます。きょうは二度目のこうした委員会での先生方の御意見を聞かしていただく機会をとっていただいたわけでございます。  まず初めに、萩原先生にお聞きしたいと思いますが、北海道の根室沖の地震につきまして、予知連絡会は、すでに地震エネルギーを放出したということで、当面は心配はないということで結論をしておられるようでございますが、その辺の実態につきまして概略御説明をいただきたいと思うのです。
  40. 萩原尊礼

    萩原参考人 根室東方沖の地震につきましては、その地震が起こります前、あの付近の三角点の移動が大きかったということ、これは太平洋のほうから押されている、つまり東の方から押されて、日本列島、北海道が押されているような動きを示しておりましたこと、それから北海道の内陸部から根室半島の方向にかけまして土地が非常に大きな傾斜運動をしていたということ、これは水準測量によって明らかにされたものでありますが、その傾斜運動の速度が非常に大きかったということと、もう一つ根室東方沖に、ちょうど一九五二年の十勝沖地震の北東の部分、ここにマグニチュード六以上の地震でございますが、そういうものがときどきあの辺はひんぱんに起こるわけでございますが、そういうものが全く起こらない、ある非常にブランクな地域があったことから、そこはやがて大きなひずみが蓄積されているのではないか、こういうことから、根室方面を特別地域にいたしまして、測量等の方法を詳しくやることにいたしておりました。  そこに本年六月地震が起こったわけでございます。当初マグニチュードがそれほど大きくないようにいわれておりましたのと、それから余震の起こっておる区域が、例の地震活動の空白地帯の非常に北の部分であって、空白地帯の大部分はまだ依然として空白地帯であるやに見えるというよう状態でございまして、そのため地震予知連絡会といたしましては、国土地理院にお願いして、根室半島方面の水準測量をすぐ行なってもらう、そしてあの辺の地震に伴う上下変動を明らかにする、それが終わるのが八月二十日ごろであるということから、それまではっきりした結論は差し控えるという方針をとったのでございます。  その後、気象庁調査によりまして、余震地域の活動は意外に広い部分で、例の空白地帯と考えられている大部分を埋めているということ、それからマグニチュード地震直後とっさにきめました値に比べまして、その後詳しく決定し直しましたところが、かなり大きい値を示しまして、七・五でしたか六の値になった。それからまた、こういう大きい地震ですと、やはりいろいろ四方八方の観測が必要でございまして、外国のいろいろな資料を入れてきめ直しますとさらに大きい値になるということで、それからまた、国土地理院の行ないました水準測量の結果、これは地震によりましてこの傾動はさらに内陸部では進行したのでありますが、半島の突端においてはね返りが見える、総体的に上向きになっている、そういうことから海洋底拡大説によります巨大地震の発生と見ていいんじゃないかという考えになってまいったわけでございます。  ただ、あの地震によって従来進行してきた非常に大きな傾斜運動というものが全部回復してはいないという問題それから空白地帯の全部がまだ余震で埋められていないということで、つまり一〇〇%あの地域の地殻ひずみが解消したというふうには考えられない点があるわけでございますが、天体八〇%くらいは一応ひずみが解放されたんじゃないかというような結論になりました。  なおまた、あの辺の土地の傾斜運動でございますが、これは関東地方ような場合ですと、関東地震が起こる前、たとえば房総半島の南が毎年徐徐に沈んでいて、地震と同時にばっとはね上がるというのでございますが、過去の地質学的なあるいは地形学的な調査によりますと、どうもあの付近は、関東地方その他西南日本の場合のように、半島の先がはね上がると結果において長い地質時代には半島の先のほうが持ち上がるというような運動ではなくて、非常に先のほうがずっと下がりっぱなしというような運動であって、ちょっと関東及び西南日本の場合と違う。  これはなぜ違うかということは、これからの調査によらなければはっきりしないわけでございますが、とにかくそういう関東の地震ような場合と違うことも考えられるということから、多少まださっぱりしない点もあるわけでございますが、とにかく十中八、九エネルギーは解消されたと考えられるということで、さらに詳しい調査をしたい、しなければならないわけでございますが、これを格上げいたしまして観測強化あるいは集中というようなことにいたしますと、ただいたずらに社会不安を起こすということにもなりますので、とにかく現状のままで特定地域としての観測は依然として続けるが、あの地震によって、いわゆる従来空白地域と考えられていた部分のエネルギーが解消されたというふうに判断いたしたわけでございます。
  41. 近江巳記夫

    ○近江委員 当面一番心配なところとして遠州灘じゃないか、前からこのように伺っておるわけでございますが、実際はどうなのか。また、この地域において地震予知に対してどういうよう研究を進めておられるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  42. 萩原尊礼

    萩原参考人 遠州灘は、御前崎から内陸部にかけましての一等三角点が、やはり根室半島と同じように内陸部のほうに大きく動いていたということ、それから遠州灘では安政元年に非常に大きな地震が起こりまして、沼津から浜松辺にかけました東海地域が非常に大きな災害を受けておりますので、そういうものが再び起こるようなことがあってはたいへんであるというようなことから、同地域を特定地域といたしまして観測を詳しくするという方針をとったわけでございます。  その後いろいろと調査研究が進みますにつれて、昭和十九年の東南海地震、これは震央は熊野灘とされておりますが、マグニチュード八クラスの巨大地震でございまして、これはちょうど戦争の末期でございましたために、観測調査が十分でなくてはっきりしない点が多いのでございますが、このときにすでに地殻変動が御前崎方面にも及んだという報告が幾つかございます。そうしますと、その東南海地震によりまして御前崎方面のひずみがすでに解消されているということが考えられるわけであります。  それとまた最初非常に大きいと考えられた三角点の移動でございますが、その後いろいろ調査をされた方がございまして、それによりますと、観測誤差というものを考えに入れますと、必ずしもあんな大きい変動でなくて済む。つまり観測誤差の累積によってああいうものが見かけ上起こるとすることもできる、そういう研究も出てまいりました。  ところが、一方また、御前崎付近で進行しております傾斜運動、水準測量から検出されましたかなり大きな傾斜運動、こういうものをもとにいたしまして、力武教授ように非常にひずみの蓄積量が大きくて、近い将来大地震の発生に結びつくのではないかという考えを持つ人もございます。しかし、この傾斜運動も、必ずしもいわゆる巨大地震に直接結びついた傾斜運動ではなく、駿河湾が沈降していくというような運動に関連しているようにも見えるわけでございまして、そういういろいろな点を考慮いたしまして、あの付近はいろいろと社会的な問題になってまいりましたが、いますぐあそこを観測強化地域に格上げして、もっとさらに詳しく調査を行なうというような段階ではまだないと判断いたしまして、現在はまだ特定地域の状態でございますが、国土地理院が計画しております精密測地網の計画があの付近で行なわれるようになりますと、南関東で明らかになりましたような水平ひずみの進行状態が明らかになってまいりますと、地殻変動水準測量による上下変動とあわせまして地殻ひずみの状態が明らかになってまいりますと、もう少しはっきりした結論が出るんだろうと思います。また、いわゆる特定地域と申しましても、非常に重要な地域でありますから、今後観測は強化されていくと思いまして、地震活動の調査もこれからおいおいと進められていくものと思います。そういうものが実りますと、もっとはっきりした結論が出ると思いますが、現在のところ、まだ近い将来大地震が起こるであろうというはっきりした材料は出ていないわけでございます。
  43. 近江巳記夫

    ○近江委員 以前から地震予知のための観測網の整備ということにつきましては、当委員会におきましても私ども叫んできたわけですが、この現状なり、当面考えられております計画等につきましてお考えがあればお伺いしたいと思いますし、また、この予知が実用化するためにあとどの程度の人員なり機構なり予算なりが必要であるのか、お考えをひとつお伺いしたいと思うのです。萩原先生と、気象庁から来られております清野先生、お二人にお伺いしたいと思います。
  44. 萩原尊礼

    萩原参考人 地震予知予算につきましては、この前この委員会参考人としてお答えいたしましたように、年間三十億、五年間で百五十億によって大体のめどをつけることができるであろうと申し上げましたとおりでございます。人員につきましては、この計画のうちの非常に大きな目玉は、国土地理院の精密測地網でございますが、これは大体外注、つまり民間の大手測量会社に外注するということを考えておりますので、特に大幅の人員増は必要ないものと思います。  また、地震活動が、これはおもに気象庁と、それから微小地震大学関係になるわけでございます。気象庁は、これから観測資料がふえるに伴って非常に大幅な人員増が必要であろうと思います。大学は、これ以上大学としましては研究観測を拡張することがないので、大幅の人員増はありません。  以上でございます。
  45. 清野政明

    清野参考人 最初に、私は気象庁の津波を担当している専門官で、直接地震予知連絡会のメンバーとして連絡をいろいろ聞いているわけでありませんし、ただ同じ職場の中でいろいろ話を聞いたり、あるいは同じ地震の問題について調査をしたり研究をしているという、そういう立場で申し上げていきたいと思います。  まず、予算の全体のことにつきましては、萩原先生がおっしゃったとおりだと思うのですけれども気象庁の場合で申し上げますと、従来やはり予算が非常に少なかったということは大まかに言っていえるというふうに思います。それで最近は、ちょっと私、資料を持ち合わせてないのですけれども、たとえば藤井さんと村上さんという二人の方が書かれた「地震と都市防災」という本がございますけれども、それの資料の欄をごらんになるとわかるのですけれども地震関係予算は、出した要求の大体四五%くらいが通っているという内容なんですね。それは気象庁でも、もう少し比率としては高いのですけれども、しかし絶対量としてはかなり問題がある。ただはっきりいえることは、ことしの要求の内容は昨年と比べてかなり大幅になっている、あるいは一昨年と比べてかなり大幅になっている、これをぜひまっすぐに進めていただきたいということが一つ私の希望としてはあるわけです。  それと同時に、一番困っている問題として出しますと、これはやはり人員の問題になるというふうに思うのです。それで、先ほども予算のことが出ましたけれども、人員の問題につきまして言いますと、大体要求した値の二二%から二四%、そういうところが一つのむずかしさを持っているわけです。たとえば気象庁で小地震観測ということを担当しております。大、中、小の地震ですね。それで、マグニチュードにしますと、大体三・〇以上の地震気象庁できちんと整理をするという役割りを持っているわけですけれども、実情からいうと、それほどまでにいっていない。大体マグニチュード三・五前後以上、それの原因は、一つは機械的な問題で、都市開発が非常に進む中で、地震計を置く場所に非常に問題が起こってきている。そういう意味では地震計を置く場所をもっと抜本的に考えていかなければいけないという点がありますけれども、同時に、私の考えでいいますと、たとえば気象庁としてはいま年間約八百の地震の震源をきめているわけです。それで、かりにマグニチュード三という小地震を完ぺきにつかんでいくということになれば、約十倍の八千個に近い地震の震源をきめていく必要があるという問題があるわけです。  そういう点から言いますと、私がいままでいろいろ仕事をしてきた中で、たとえば私の働いているところでは、人手がなかなか足りなくて、熟練した地震の読み取りの問題についても非常勤の人にやってもらうというような状況もあるわけです。それを解決していくということをこれからやっていくというふうに思いますけれども、それと同時に、八百個から約八千個に近い数字のものを資料としてきちんとしてまとめ、同時に、その成果を新しい意味できちんと大切にまとめていくという仕事を考えますと、ほんとうにいまの人員のつき方で全く満足にできるのかどうかということが心配としてあるわけです。
  46. 近江巳記夫

    ○近江委員 萩原先生にざっと概略を御説明いただいて、いま気象庁清野先生から具体的にお伺いしたわけですが、いずれの点においても、実際に進めていく段階からいけば、予算の上においても、人員においても、とうていできないという指摘があったわけです。ですから、地震予知に関しましても、国土地理院あるいは気象庁、海上保安庁の水路部、通産省の地質調査所、国立防災科学技術センター大学等、各種関係機関があるわけですが、実際このようにいろいろお聞きしてみますと、ほんとうに充実していくという点からいきますと、いろいろそういう御意見なり御希望なりを第一線の皆さんはお持ちなんですね。ですから、皆さんのそういう御意見を反映して実際にそれを充実していただく、そしてあと連絡体制といいますか、そういうところを有機的に機能的に結合していく、こういうところでほんとう予知ができると思うのですね。  そういう点におきまして、連絡会等におきましても、各担当をなさっておられる方々の意見というものを、もっとどんどん出してもらって、そして予算の獲得なり機構の充実等に力を入れてもらわないと、ほんとうに充実したものはできないと思うんですね。この点について大臣はどう思いますか。
  47. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 地震予知の問題につきましては、国会においても、ほんとうにこれと真剣に取り組んでいただいておるのはこの委員会だけだと実は私思っております。その意味において、地震予知体制というものがもし完備した暁においては、この委員会は歴史的な大きな役割りをしていただいたと私はいつも思っておるようなわけでございます。  そういう大きいことはともかくといたしまして、四十九年度の概算要求にあたりましても、わずか二十億五千万というふうな額だとお考えになるかもしれませんけれども、四十八年はたしか七億六千万でございまして、これを全部とるようにとにかくベストを尽くしたいと実は思っておりますが、先般のたしか四月二十六日だったと思いますが、ここで近江先生をはじめ諸先生から非常に叱咤激励をお受けしたことを私よく覚えております。もしそういうことがなかりせば、とうてい二十一億近いものが予算要求にもならなかったであろうと思うわけでございます。  これは決して満足とはいえません。先ほども指摘ございましたが、いろいろの問題がございます。また、ハードウエアだけではいけません、ソフトウエアのほうも充実せよというようなただいまの参考人の御意見がございます。そういうふうな点もございますが、とにかくわれわれは、現在測地学審議会等において十分検討いたしまして、それをいろいろ予算要求の数字にしたわけでございますので、当面はこの獲得に全力を尽くしていきたいというふうに考えております。  この点は、閣議におきましても、これは全部それぞれの省庁に所属し、私のほうはただそれをまとめて推進しておるかっこうでありますので、担当の大臣等にもひとつ馬力を出してやってくれということを実は言っておる次第でございます。
  48. 近江巳記夫

    ○近江委員 中心科学技術庁長官推進していかれるわけでありますし、大体こういう概算要求を出しても、このまま通るというようなことはほとんどないわけですよ。みんなやはり削られるわけですね。ですけれども、関東大震災からちょうど五十年目がきておるわけでありますし、国民の皆さん地震に対するいろいろな御意見なり世論の高まり等を見ましても、これは最大に力を入れなければならぬ問題であると思うのです。ですから、この事態だけでも概算要求を、確かに七億六千万から二十億五千万ですか、これはいままでの政府のアップから比べると高いかもしらぬけれども地震予知という点からいけばこんなものは低過ぎますよ。ですから、これは当然閣議等におきましても、ひとつ大臣が責任をもって関係各大臣にどうしても出すように、特に大蔵省等にも、獲得できるように強く働いてもらいたいと思うのです。  それから、いま萩原先生は、関係のところをずっとおっしゃったわけでございますが、大学につきまして東大の地震研究所が三年間もストップしている。これは素朴に、国民の皆さんだれしもたよりにしているそういう研究所が、三年間もストップしておってどうなっておるのだ、これは少なくとも動いてもらわぬと困るわけですね。いろいろ複雑な事情があることはよくわかるわけですが、政府としてもその解決には努力してもらわないと、国民の皆さん全体に対してもほんとうに申しわけないと思うんですよ。この点について御意見がありましたら、どの先生でもけっこうでございますし、大臣からもひとつお答えいただきたいと思うのです。
  49. 千葉博

    千葉政府委員 いま先生指摘の東大地震研の問題でございますが、実は私どもも、その頭脳に対しまして大きな期待を持っているわけでございますが、残念ながら大学紛争の中心になっておりまして、三年間動いておらないのでございます。文部省から聞きますところによりますと、東大地震研の問題は、文部省からもその解決促進のためのいろいろな措置をとりまして、その結果かどうか私存じませんが、最近解決の方向に動きつつあるということをいま聞いております。私のほうから文部省に、先生からこれの解決を促進せよという御意向があったことをお伝えしたい、かように考えております。
  50. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 私実は、最近の東大地震研究所の紛争の実態が解決に向いておるというふうなことはそれとなく聞いております。しかし、ただいまここで近江先生にお答えするほど明確に事実を私は把握いたしておりませんので、お答えははっきりいたしませんけれども、とにもかくにもわれわれは、東京大学地震学というものに対して、その権威性に対して非常に期待をしております。したがいまして、できるだけすみやかにこれを解決してもらって、本来の機能を発揮して、世界に冠たる東京大学地震学の権威というものをつくっていただきたい、そして、国民のために役立つようにしてもらいたい、そういう希望を持って、文部大臣にもその点を、ただいまそういう御質問があったということも私はよくお伝えいたしたいと思います。  ただ、われわれがそういう紛争にどうこういって入るわけにもいきませんので、隔靴掻痒の感がございますけれども、その熱意というものを十分お伝えいたしたいと思います。
  51. 近江巳記夫

    ○近江委員 だから、確かにそういう困難なこともわかりますけれども、ところが、地震予知という問題からおきまして、こういう言うなら宝です。そういうところを眠らしておくというのは、だれが考えたっておかしいですよ。ですから、その解決に政府が本腰を入れて、また職員の人たちも納得できる形で、ほんとうに国民のためにその機能を発揮してもらいたいと思うのです。これは特に大臣にも申し上げておきます。  それから、たとえば現在の特定地域あるいは観測強化地域と指定された場所等につきまして、行政上のそういう対応というものはどういうものをなさっておるかという点で見てみますと、現状は何らないのじゃないか、そのように思うわけですけれども、この地震予知とそれに対応する行政というパターンというものをはっきりさせる必要があると思う。この点きょうは、そちらのほうの大屋先生などはその専門じゃないかと思うのですが、それから東京都の鮏川先生、お二人からお伺いしたいと思います。
  52. 大屋鍾吾

    大屋参考人 観測網に対する行政上の対応という問題については、私はむしろ都市防災についてやっておりますので、あまり詳しく知らないので、これはむしろほかの方にお答えいただきたいというふうに思います。
  53. 鮏川光義

    ○鮏川参考人 東京都におきましては、地震予知関係はいまやっておりません。これは国のほうの機関でやるということでございますので、東京都のほうはその準備はしておりません。
  54. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ国土地理院の……。
  55. 檀原毅

    檀原説明員 現在地震予知の連絡会がございまして、そこで学問的判断を出すわけでございますが、それを行政面といいますか、そういった防災面のほうにどのように反映さしていくか、これは非常に大きな問題でありまして、連絡会創立当時からその問題もいろいろ論議されたわけでございます。ただし発足当時におきましては、それほど実力はなかったし、また実績も積み上がっていないというようなこともございました。最近のように社会的関心が非常に高まってまいりますと、その問題と相当真剣に取り組まなければならない。国土地理院だけで考えるべき問題ではございませんが、現在、先ほど千葉研究調整局長からお話がありましたように、地震予知関係各省会議を開きまして、そこでそういった問題に応ずるよう体制を考えていこうということをいろいろ現在検討中でございます。
  56. 千葉博

    千葉政府委員 私のほうの名前が出ましたので、補足させていただきます。  実は、予知を実用化するという問題につきましては、これは先生から強く御指摘があったわけでございますが、この問題につきまして、各省庁と数回打ち合わせいたしまして、それで現在の行政の認識でございますね、一体予知はあくまでもまだ研究開発段階なのか、それともいろいろ新聞雑誌に述べられているように、もう実施段階なのか、その辺のところを数回にわたって議論したわけでございますが、要するに各省専門の連中の結論といたしましては、いままだやっと学問の段階から浮かび上がってきて、やっと行政的にも、これを進めれば五年後あたりに予知がある程度の幅でできるようなことになるのじゃないかというような段階、要するに研究開発の段階であるが、行政的に実施に向かってスタートする段階である、こういったような認識に思想統一されまして、それでそれをベースにいたしまして、実は地震予知関係省庁会議を設置して、それで実際の体制を――それを実施に持っていく研究推進し、そしてまた、総合的な地震予知判断を与えるために必要な体制をはっきり確立しようということで、いま鋭意打ち合わせをしております。と同時に、そういった会議検討会におきまして、今後の地震予知研究推進するためのいろいろな具体的な予算その他の検討もしようじゃないかというようなことで、いま検討を進めておる次第でございます。  その辺のことがはっきりいたしましたら、中央防災会議、これは先ほど申し上げました総理府にございます、総理が主宰しておるわけでございますが、そこに対しまして、われわれの結論を打ち出しまして、それで具体的な行政への反映を進めていこう、このようにいま考えておるわけでございますし、また、そういった方向に具体的に動いているわけでございます。
  57. 近江巳記夫

    ○近江委員 予知というものにつきましてまだそういう段階である。それであればなおさら力を入れなければならぬわけですね。いまだって、予知連絡会につきまして関係者の皆さんは一生懸命やってくださっておるわけですが、やはり国としてもっと背骨を入れる形でバックアップをしてあげなければ、関係者だけが寄ってあくせくしても――問題は国自体の取り組みの姿勢なんですよ、要するに。いまのよう予知連絡会関係者の皆さんが精一ぱいの努力をなさっていることはわかりますが、それだけの体制でいいのですか。もっと強力なものをつくるべきじゃないのですか。この点について専門機関を設置するとか、もっと太い柱をつくるべきじゃないですか。その点については政府はどう考えておりますか。局長と大臣にお伺いします。
  58. 千葉博

    千葉政府委員 いま私申し上げましたように、この予知連絡会議はあくまでも専門家の連中の集まりで、それで意見を交換する、ただそれだけの会議でございますので、それをさらに、いま先生指摘ように、行政的にはっきりした体制をつくって、そこで私が先ほど申し上げましたように、地震予知研究をこの五カ年間総合的に推進し、そして出てくる成果を、的確に総合的判断を加えて、それで中央防災会議あたりを通じて、そのいろいろな対策に使っていくというための体制を早急につくろうということで、いま検討をいたしておるわけでございます。前向きにこれをいま処理しておるわけであります。
  59. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 ただいま千葉君からお答えいたしましたように、地震予知の一元化の行政的な体制でございますが、それにつきましては近江先生ほんとうに一生懸命になって実はやっておりまして、先生からごらんになると、まだまだるっこいじゃないか、一分間もじっとしておれぬ、そういう気持ちが私もいたします。その意味におきまして、実はほんとうに馬力をかけまして、この暑き夏もずっと八月の二十日から何べんも会議を開きまして、いま一元的な体制を結論を得まするように、関係各省と一生懸命に打ち合わせいたしておる最中でございます。
  60. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは、一つは早くそういう体制をつくってほしいと思うんです。  それから、防災対策でありますけれども東京都は八月十四日に東京都震災予防計画を発表されておるわけですが、いろいろな問題点を残しておるように思うのです。たとえば震災対策は非常に広域的なものになっておりますし、国や他の地方自治体との緊密な協力が必要なわけでありますが、電気、ガス、鉄道等の公共施設その他民間施設等のものまでも計画の中に盛り込んでいかなければならないわけです。しかしながら、そういうことが不問に付されておる、こういうようなことで完全な震災予防計画ということがいえるかどうか。こういうことにつきまして、東京都の対策部長の鮏川先生、それからこういう計画について政府としてはどのように受けとめておるか、これにつきまして千葉局長からお伺いしたいと思います。
  61. 鮏川光義

    ○鮏川参考人 東京都の予防計画は、八月十四日に震災対策本部で決定したわけでございますが、これは東京都のなすべき範囲だけの領分の計画を決定いたしまして、これをもとにいたしまして十月の末か十一月になると思いますが、先ほどおっしゃった国の行政機関、それから地方公共機関含めまして防災計画の地震編がつくられるわけでございます。したがいまして、その範囲におきまして有機的関連がはかられるということになります。
  62. 千葉博

    千葉政府委員 近江先生いま御指摘の点は、当庁といたしましては、震災対策のほうの研究の開発の面だけでございます。本日中央防災会議のほうから来ておりますので、そちらのほうから答弁していただきたいと思います。
  63. 杉岡浩

    ○杉岡説明員 お答えいたします。  ただいま鮏川参考人のほうからお答えがございましたように、いま東京都の予防計画、八月末にできたわけでございますが、これが現在の段階では、都の段階だけでございますけれども、お聞きしたところによりますと、これをいわゆる十月か十一月ごろに都の地域防災計画に編集されまして、地域防災計画になりますと国のほうと協議をされるわけでございます。午前中にも衆議院の災害対策委員会がございまして、赤羽総務局長さんからもそのお話が出たわけでございますけれども、その段階におきまして相当、たとえば火災あるいは都市防災、そういった面の国との関係が非常に深うございます。こういった面について、関係省庁とも鋭意協議いたしまして、地域の防災計画をつくっていく。国といたしましてもこれに対しまして万全の協力体制をとる。これはもう東京の震災対策については、国と一つとしていかなければいけないということにおきまして、地域防災計画の段階において、関係省庁を通して都はいろいろと御相談されると思いますが、そういった面におきましても、関係省庁とも十分の協議、御協力をお願いいたす考えております。
  64. 近江巳記夫

    ○近江委員 問題は、こうした各地方自治体の震災予防計画につきまして、国がどのようにバックアップしていくかということじゃないかと思うのです。中央防災会議というのは確かにあるわけですけれども、実際的な手は何も打っていないと私は思うのですけれども、この点についてはどう反省しておりますか。
  65. 杉岡浩

    ○杉岡説明員 お答え申し上げます。  国といたしましては、四十六年の初めに大都市の震災対策推進要綱をつくりまして、それに基づきまして関係省庁、鋭意それぞれの部門におきまして震災対策を進めてきておるわけでございますが、特に、最近地震の問題につきまして、いろいろとさらに進めなければならないということもございまして、先般の七月六日でございますけれども、このときに中央防災会議を開催いたしまして、さっきの地震予知の問題、これの推進、それから都市防災、それから震災対策のうちのソフトの面といたしましての応急対策あるいは訓練、そういったソフト面のいわゆる防災対策の拡充という三点を申し合わせたわけでございます。特に、都市防災の問題につきましては、これを急遽やらなければならないということもございまして、四十九年度をめどといたしまして、関係省庁におきまして緊急計画を、各都府県の地域の防災計画をつくっていただきまして、それを受けとめながら、関係省庁がそれに基づいて施行していくというような方針を申し合わせて、関係省庁ともそれに向かっていまいろいろと検討を進めておるという段階でございます。
  66. 近江巳記夫

    ○近江委員 この中央防災会議の事務局で震災対策に当たっておるのはわずか三人ということを聞いておるわけですが、中央防災会議のこういう能力で、あなたのおっしゃるような機能が十分に発揮できるとお思いになるのか。まずこれが一つと、たとえば情報の連絡体制ということにつきましても、東京都の計画を見ますと、郵政省から超短波の四波を割り当ててもらい、都と区、市町村を無線で結んで、情報の収集や避難命令の伝達をする計画になっておるのです。ところがこの計画には、国との連絡については何も書いてないわけですね。あなたは今後国と緊密に連絡をとっていくということを言っておるわけですが、国との連絡はどういうふうにするかということは何も書いてない。国の中央防災会議との関係は一体どういうふうになっておるのか、また、国としてこの点について都と協議したことがあるかどうか。この二点についてお伺いしたいと思います。
  67. 杉岡浩

    ○杉岡説明員 お答えいたします。  中央防災会議の事務局でございますけれども中央防災会議は、内閣総理大臣を会長といたしまして関係の大臣によって構成されておりまして、その下に各省庁の局長クラスを局員という肩書きにして、それから課長クラスを主事ということで、関係省庁の職員でもって事務局を構成しておるわけでございます。そのうちわれわれ総理府のところにいわゆる中央防災会議の庶務を行なう事務局を設けておるわけでございます。  そこで、定員につきましては、現在のところ十一名でやっております。中央防災会議の事務局のあり方、これはたとえば風水害から火山対策あるいは地震対策、こういった災害対策があるわけでございますが、関係省庁の緊密な連絡のもとにこれを行なう。すべて災害対策を事務局に一元化するということと、災害対策というのは関係省庁のそれぞれの責任と権限でこれを十分に調整しながらやっていくということが必要であろう、こう思うわけでございまして、関係省庁の職員がそのまま事務局員ということになっておりますので、それを活用しながら処理していくのが現在の中央防災会議の事務局の体制でございます。  それから、都と国の関係でございますけれども、都の計画でございますが、これは都の内部で相互に無線連絡のことが書いてあるわけでございましょうが、やはりわれわれといたしましても、無線の通信網でございますが、これも電電公社の携帯無線の配分を、これは国も都も同様にそれぞれの防災無線等の携帯無線の配置を行なうわけでございまして、先日の九月一日の訓練におきましても、総理府に無線を置きまして、それから都にも、あるいは関係の県――関東の県でございますけれども、こういったところに無線を置きまして、それぞれの情報の伝達と訓練をいたしておる次第でございます。
  68. 近江巳記夫

    ○近江委員 いずれにしても、十一人で何もかも防災をやっているわけです。ですから、震災については三人だ、こういうことでは、名前だけ中央防災会議ということであっても、中身は、要するにこの方たちは一生懸命やっていると思うのですけれども、先ほどもお話ししましたように、政府がやはりもっと力を入れるべきですよ、こういうことは。このことについてはあとで大臣、まとめて答えてください。  それから、関東大震災のああいう災害を見ますと、その後のこうした東京の大都市化、いろいろな問題点があるわけですが、今後パイプラインの破断の発生率であるとか、コンビナート基地火災の問題であるとか、避難道路にしても、道路幅、途中の保安施設等、まだまだ科学的に煮詰められていない事柄が非常に多いわけです。  こういう点につきましても、先ほど局長は、科学技術庁はおのずとやっていくところに限度があるのだというようお話もありましたけれども、こういう科学的に詰めていかなければならないこともたくさんあるわけですね。ですから、そういう点もっと幅広くやっていかれることが大事じゃないかと思うのです。その点局長はどう思いますか。
  69. 千葉博

    千葉政府委員 御指摘のとおりで、実は先ほど杉岡参事官が答弁いたしましたその中にいわゆる大都市震災対策推進要綱というのを、昭和四十六年に中央防災会議できめまして、科学技術庁といたしましては、この震災対策に関する研究開発を総合的に進めるのだということを受けまして、いま鋭意この推進をはかっております。  いま先生指摘ように、確かに力不足で、その研究はまだまだ足らないのだという御指摘でございますが、当庁といたしましては、四十八年度に二億七、八千万、大体まあ二、三億の程度関係各省、特に建設省、それから自治省の中の消防庁、それから運輸省の中の気象庁、このあたりを中心に大体この研究開発の焦点を二次災害のところに当てまして、火災対策の総合的な研究、さらにその発生源となりますような構造物の崩壊、これに対する耐震性を持たせる、こういったよう研究中心にいま進めておるところでございます。四十六年以来進めております。  それで、たとえば耐震性の問題につきましては、科学技術庁防災センター、大型起震機がございますが、あそこで実物大のものをつくっていろいろ振動を与えまして、それで耐震性の設計の開発研究を鋭意進めたい、あるいは球形ガスタンクの耐震性をさらに総合的に研究を進めたい、あるいはガス管の埋設管の耐震性の向上の研究をはかったりいろいろやっておりますが、どうも非常にむずかしい点がいろいろ出ております。  たとえば非常に大きな火災が起きる。そうすると、あるところに、たとえば被服廠みたいなエリアがある、そういうところにたつまきが起きるか、起きないか、これはたいへんな問題でございまして、これがほんとうに起きるということになりますと、これは防災対策上あるいは都市づくり上いろいろ抜本的に考えなければならぬというような点なんでございますが、こういった点もいま研究をだいぶ進めまして、先般新聞にも発表いたしましたけれども、どうも消防庁の研究と建設省の研究がうまく合わない。片一方は、だいじょうだ、片一方は、いや、起きるのだ、こういうようなことがございますので、いろいろ研究は進めておりますけれども、三年かかってもなかなかそういったような重要なところがまだ解決を見ていないというようなことで、そういった点も解決をするように鋭意、じみでございますけれども研究を進めておるというのが現状でございます。
  70. 近江巳記夫

    ○近江委員 じみな研究を、いろいろな意味があろうかと思うのですけれども、じみであったら困るわけですよ。こういうことについては、一番の目玉として研究を進めていただく必要があると思うのです。ですから、これは長官、先ほど申し上げましたように、もっと力を入れてもらわないと、三年かかってもこういう状況ではどうしようもないと思います。だから、ひとつうんと長官も、国の施策として力を入れていただきたいと思うんです。  それから最後に、こういう地震災害の規模から見まして、今後思い切った国の対策が確立をされなければならぬと思うわけです。場合によっては特別立法も検討に値するのじゃないかと思うのですけれども国として、こういう震災の予防計画というものを早急に確立すべきじゃないか、このように思うのですが、最後にまとめて長官からひとつお伺いしたいと思います。
  71. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 特別立法を含めて震災対策を考えよという御指摘だと思いますが、現在のところ特別立法というものは考えておりません。しかし、地震というのはいつ何どきやってくるかわかりませんし、一たび襲撃をされますと非常に大きい被害がございます。その意味におきまして、地震予知並びに地震が発生した場合の被害をできるだけ少なくするような対策等につきましては、現在でも関係各省庁で一生懸命やっております。しかし、幾らやってもこれはやり過ぎるということはないわけでございまして、その点 生懸命にやらなければいけない。どうも役所の組織というものが、わりあい張り子のトラみたいに実際役に立たぬような組織だというふうに非難される場合もあるわけでございまして、そういうことにならないように、とにかく地震はいつ何どき来るかもわからぬ。臨機応変の体制をすぐにとり得るよう体制というものを、平素から十二分に用意しておく必要があろうと思いまするので、ただいま近江先生指摘の点を十分踏まえまして、閣内においてもそういう検討をいたしたいと思います。
  72. 近江巳記夫

    ○近江委員 最後に、申し上げておきたいと思いますけれども、それぞれ各関係省庁皆さん非常に一生懸命やっておられると私は思うんですよ。そういう点はよくわかっておるんです。しかし、いうならこれだけの巨大なものに立ち向かうのに、素手で向かえ、一生懸命やっています、というたって何にもならぬ場合もあるんですよ。そうでしょう。コンクリートの壁をこわすのに素手でたたいておったってつぶれやせぬわけでしょう。やはりコンクリートの壁をつぶすにふさわしい機械を持ってこなければだめなんです。ですから、そういうことについてもっと国がバックアップしなければだめだというのです。メンバーの人が乏しい予算の中で、またそういう機構の中であくせくして一生懸命やっているわけです。その人たちのことはようわかるわけですよ。それだけに、国がもっとバックアップして万全の体制をもってやってもらわなければ困ると思うんです。これは特に長官に要望しまして、時間が来ましたので終わりたいと思います。
  73. 石野久男

    石野委員長 次に、瀬崎博義君。
  74. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 参考人先生方御苦労さまでございます。私、他の委員会質問関係があって、最初から全部お話を拝聴しておりませんので、あるいはダブった質問になるかもわかりませんが、それはまたひとつその時点で御指摘をいただきまして、適宜御省略いただいてけっこうかと思います。  私は、国民といいますか住民の立場から見て、いま地震問題において緊急改善強化をはからなければならない点は一体何かというふうな点で、ひとつ先生方の御意見を聞きたいと思うのです。  まず最初の部分で地震予知研究の実際面について、後半、災害対策の実情などについて、現実の課題になっている問題をお尋ねしたいと思います。  そういう意味で、まず最初に清野先生から、地震予知研究の今日時点における評価の問題と、その実用化の展望について御意見をいただきたいと思います。
  75. 清野政明

    清野参考人 この問題につきましては、先ほど萩原先生のほうからおっしゃられたこと、大体それ以上のことはあまりつけ加える必要はありませんけれども、特に私は、この地震予知研究のための地震予知連絡会が設置されたということ、あるいはこういうための研究ということについては積極的に評価をしているわけです。それがやはり基本的な立場です。私は直接地震予知連絡会に携わっている者ではありませんけれども、しばしばその関係資料等をいろいろ集めたり、あるいは討論をしたりしているものでありますけれども、特に最近そういう点で顕著になっている点は、以前はともすると、地震の問題は地震地殻変動の問題は地殻変動、そういう点で各学会がありまして、それぞれの分野で話し合うということが非常に多かったわけです。それに比べまして今日は、地震予知という目標を中心にしまして、それのための基礎調査あるいは基礎資料を非常にたくさん集積してきているという点が非常に大きな点なんです。  それから同時に、先ほど言いましたように、その資料をもとにして各機関あるいは各分野の研究者が総合的に検討するようになってきているということです。  それからもう一つは、やはりそういう社会的な要望にこたえて一つ中心ができ、かつ研究も進みっつあるという点で非常に大きな力になっているというふうに思います。  ただ、今後の問題につきまして言いますと、一つは、地震予知の問題につきまして、たとえばある地域に地震のエネルギーがたまって地震が起こり得る可能性があるかどうか、そういうことが強いかどうかという一番初歩的な問題。二番目に、長期的予報というような形で言っておりますけれども、どの程度の時期、まあ一年あるいは五年もしくはそれ以上かどうか、いろいろの場合があると思いますけれども、そういう状態の中で地震が起こり得るかどうかということがいろいろ検討されるようになると思います。  それから同時に、最終的な目標というのは、やはりいつどこにどの程度地震が起こるかということが、短期予報として出てくるわけです。私は率直に現状を見まして、いままでの地震予知研究は、前兆あるいは地殻変動、それから地震の問題、そういういろいろな資料の集積、それを積み重ねて進んできておりますし、それは非常に大きな力になってくるわけでありますけれども、同時に、やはり確率論といいますか、一つの危険生の度合いを検討するということで進んでいくという方向にあるというふうに思います。その点は、実際上進める上で避けることのできない問題でして、経験的な法則、たとえば地殻変動地震の前にどのように異常を起こすか、あるいは前震はどういうふうになっているか、そういうふうな問題について、経験的にいろいろな例をつくりあげるわけです。  ただし、すべてそういう状態になったら地震が起こるということではありませんから、やはりある程度確率的にならざるを得ないという、そういう点もあるわけです。私はそういう意味では、ごくすぐに、率直に言って確実に地震予知ができるかどうかということについてはわかりませんけれども、しかし、いままでの地震予知研究の土台に基づいてさらに発展さしていく、そのことはやはり長足の進歩を見ることが可能じゃないかというふうに思っております。  それから同時に、それは突然に一足飛びに進歩するということではなくて、やはり基礎的な研究というものが非常に大切だと思います。それで、先ほど言いましたように、この確率論の問題と同時に、その基礎的な面を大切にするということ、これはともすると地震予知と直接関係のないような形になりかねない点があるわけですけれども、やはり地震が発生する機構あるいは過程そのものを追及してつかんでいくという、そういうことが大切じゃないかと思います。そういう意味じゃ、たとえばこの地震予知の問題というのはやはり地殻の破壊、あるいは地殻の性質の物理的な研究、そういうものが総合的に必要になってくるだろう。そういう点では一地震波動の研究あるいは地震学の研究だけでもないし、あるいは地殻変動研究だけでもないというふうに思っております。  それから、そういうことと同時に、これからの問題としてひとつ先ほど出ましたように、ダイラタンシーモデルという話が出ていたわけです。これは、直接にはソ連のタジク共和国のガルム地方で一九六四年に地震観測をしたという結果に基づきまして、地震が起こる前に地震波がその地帯でおそくなるという、そういう現象があるということをつかんできているわけです。そういうことから、実際にある地殻の中に破壊が起こるときに、その途中で岩石あるいは地殻の膨張が起こって、それが地震波の異常を来たす。それから同時に、地中にある水ですね、地下水あるいは土壌、岩石に含まれている水が、一度割れたときには割れ目の中は空白になっているわけですけれども、それが水に埋められると同時に地震が起こるという、そういう一つの仮説を立てたわけです。それがいろいろな、たとえば地殻変動の問題とか、それから地震の波の異常の問題とかと非常によく結びついているというふうにいわれております。私はこれはいま日本じゅうの研究者がいろいな形で検討しているわけですけれども、いろいろ不完全でありあるいは問題点があると思うのです。  たとえば、はたして巨大な地震までその話が通ずるかどうか、あるいはそういうことがすべての地域での地震について言えるかどうかということが疑問としてあると思うのです。しかし少なくともそういうタイプのものがあり得るということは、岩石実験からも確かめられたというふうには思います。  それと同時に、私は、この中で非常に大切な点は、この問題が地震予知ということで非常にクローズアップしていますけれども、基本的には地震の発生する機構そのものを仮定して、あるいは仮説として立てて、それにいろんな経験的な法則を回りから集めて、そして適合させていくという、そういう点があるわけです。私はそういうことで、たとえば短期予報に至る道をもしも考えるとすればそういう点を大切にする必要があるのではないか。  それで、そういうことの必要ということからどういうことが起こってくるかと言いますと、たとえばほんとうに基礎的な意味で過去の地震資料あるいは地震のじみちな観測、それからいろいろな他の現象の解明、それから、そういう意味で、たとえば岩石の破壊とかそういうものについての実験というものが非常に大切になってくる、基礎的な意味で大切になってくるというふうに思います。  大体そういうところがあるわけですけれども、実際に地殻が非常に複雑な構成をしていて、そういう点で、先ほど言いましたように、何としても総合的な研究者同士の連絡と見方でこの問題について当たっていく必要がありまして、決して地震予知ということで、危険だけで要するに研究を進めるという、そういうところだけではやはりまずいのではないかというふうに思っております。
  76. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間がないので十分にお聞きすることができないのですけれども、私どものしろうとの質問としてお聞きいただきたいのですが、そうしますと、地震予知という学問は、本質的に確率的な要素を持った分野なのか、それともいまお話しの、地震発生の機構など基礎的な面が解明されてくればきわめて的確な予知が可能になるという可能性を持った学問なのか、そういう点をひとつ清野先生にあらためて……。
  77. 清野政明

    清野参考人 いま私が話をした中心はその点でございまして、少なくともショルツ理論と通称いわれておりますけれども、実際は非常に多くの人がなさってきているわけですけれども、その問題で考えていく限り、ただ確率論として進めていくということと同時に、そういう点で経験的な問題を非常に大きく積み上げていくと同時に、地震発生の機構について、それを裏づける、あるいはそれを推論することができる、あるいはそれを事前に推察することができるような仮説、そういうものと組み合わせていく理論が大切になるのではないかというふうに思っております。それが一つの短期予報の道につながる大きな土台じゃないかというふうに思っております。
  78. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 和田先生、時間があまりないので、ひとつ極力簡単に御説明を願いたいと思います。
  79. 和田忠夫

    和田参考人 その点につきまして、地震予知という点で、ナマズの実験で、浅虫で実験したことがございますが、東北大学地震計が振れる数時間前にナマズが異常さを示す、それが約八〇%あった。その場合に一番特徴的なことは、入水口から排水口を大地に連絡をとっておかないとその特異現象をあらわさない。私の原理の点から見ますと、全くそういうことははっきりわかるわけであります。  実は、防災のことについてちょっと申し上げて予知のことについても申し上げたいと思いますが、二、三の地震をあげますと、島原地震、それから長野地震、関東大震災……(瀬崎委員「さえぎって恐縮なんですが、質問だけに答えてください」と呼ぶ)はい。地震現象の特異現象をあげますと、約十六ほどあげることができます。それから超音波現象の音響のルミネッセンスというような特異現象をあげていきますと、やはり十六ほどあげることができます。この両方の現象を、私の場合にはシミュレーション的に対応させて、その上で、いまの関東地震がある程度前兆的な警戒時間に入ったという観点の上から、二種類の実験をやってみました。  超音波エネルギーが作用していれば、水と油を通気性のもとで大地の中に満月、新月時に置いておけば、必ずエマルジョン現象を起こすはずだ、そういう点が一つございます。それから、水と微粉炭を墨汁のようにまぜ合わせて、それもやはり地下に入れておきますと、超音波エネルギーの作用によってコロイド現象を生じ、粒子と粒子がイオンでまかれますから、微細ではありますが、離れた状態をとるという現象がございます。この二種類のテストを七月半ばにやりまして、都立の工業技術センターの超音波の専門家の方々に私の原理のこまかい点、それからそのテストの点を実験で見ていただきました。そうしたところが、結局、結論を申しますと、この予知実験はやってみるべきだという結論が出たわけでございます。そのエマルジョン現象は七十ワット・パー・六十秒に近いエマルジョンの濁りを示しておりました。  それからいろいろ専門の方々を紹介していただきまして、またその上に御検討いただいた上で、あるメーカーに概算見積もりでございますけれども、見積もりをしていただきましたところ、直接の計測装置は一カ所について概算のところで五百万くらいだろう、三カ所した場合に一千五百万くらいじゃないか。先ほど申しました回転磁化範囲というようなベクトルが回転するというような観点から、三点は最低限度観測地を設けなければいけない。いま申しました金額は、観測地下室とかその維持費というものは全然含まれておりません。直接的な計測機械の金額でございます。  で、これでいきますと、鯵ヶ沢の地震の場合には、約八時間前に退潮現象を起こしております。それから江戸の安政地震の場合にも、深井戸の職人が高い音が耳について仕事にならないといって、安政地震は夜の十時過ぎにございましたが、その日の昼にはもう仕事を切り上げてやめております。時間的に見ますと約十時間前にそれをとらえることができる。私のほうではマグニチュード程度で約四時間あれば、交通機関をとめるなり安全な場所に退避する。しかもその場合に、震源に向かって河川、沼に面した側は被害が拡大されている。これは安政の大地震の被害をつぶさに見ましても、必ずそういう被害にあっている。沼、河川の震源の反対方向はうそのように被害がない。これは島原地震、長野地震、関東大震災の場合も、相模湾に面した側の被害に比べて、その反対側の横浜の海岸に沿ったところは被害が甚大である。海岸線に沿って地割れは激しかった。それから長野地震の場合でも、千曲川に沿った千曲川に至る間の村落はたいした被害がないにもかかわらず、千曲川に沿った村々だけが被害が拡大されている。島原地震の場合も、島原半島の震源の反対側の海岸線に噴砂の現象ですとかそういう地震災害エネルギーが拡大されたあとがはっきり残されております。  こういう点も、防災の点では、安政の地震などは東京都ではっきりまとめられておりますから、そういう点は十分勘案されていると思いますけれども、この際もう一度そういう点を再確認していただいて、被害が少しでも少なくなるように――それで私がこの秋発表いたしますけれども、これは何さま私一人の研究でございますので、多数決をとった場合には必ず否決になると思います。地殻変動説の計測装置の予算が足りないという現状に、私のような微々たる研究はなかなか実現はむずかしいと思いますが、これは一つ地震が起きたあとで、もしもやっておけばよかったということになると、悔いても悔い足りないようなことになるのじゃないか。そういう点で私はあえてこういうささいな研究でも真剣に取り上げていただきたいと思っております。
  80. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほど清野先生のおっしゃいました立場から見て、純粋に学問的な見地で研究する場合もいろいろあろうと思うのですが、それはさておき、社会的な側面から見て、地震予知の目的を達成していく上で、実際気象庁の中でお仕事をなさっていてお感じになっている、予算の面とか、人員の面とか、あるいは観測機械の面とか、ひとつそういう具体的な問題で指摘される面があればお願いしたいと思います。
  81. 清野政明

    清野参考人 予算的な問題で、全般的な問題については、私は先ほど萩原先生がおっしゃったそのことに尽きるというふうに思います。それで、実際に仕事に携わっている中でいろいろ問題が出てきている点について少し話をしたいと思います。  たとえば、金銭的にいいますと、私がいろいろ聞いている範囲内でいいますと、国土地理院などでは、たとえば今度の根室半島沖の地震について、一面では危険がないというような統一見解になってきているわけですけれども、しかしそれでは異常に隆起している、そういう地殻変動ほんとうに追跡調査をする必要がないのかどうか。ある意味でいえば、危険と思われるときには調査はするけれども、それが終わったという結論になるとそれがなされない。しかし、実際にこの地殻変動の問題を取り上げましても、地震と直接結びつく地殻変動であるのかそうでないのかということをきちんとつかむ以外に、この問題というのは結論を出すことはなかなかできない。そういう点でぜひそのあとの対策あるいは観測を十分やっていただきたいというふうに思います。  それからもう一つは、やはり大学関係で、予算関係の問題からいいますと、施設とかそういう面では不十分ながらも非常に大きく発展してきている点がありますが、いろいろ運営の面で苦しくなっている点が非常に多いわけです。たとえば東大の教授である浅田先生が、「地震」という本の一番最後のところでいっておりますけれども、微小地震観測所あるいは地殻変動観測所の経常費が非常に少ない。そのために、ここで働いている人たちは、観測所の運営だけで手一ぱいになり、研究に頭を使うひまがないという問題が出されているわけです。  そういう点では気象庁も同じような問題があるわけです。それは実際に観測の機械をつくり上げる場合、社会的にも早く要請されますし、技術的にもできるだけ高いレベルのものを要求されるわけです。したがってそこには、実際に運営しやすいということとか、あるいは恒久的、非常にこわれにくいとかということは、やはりある程度犠牲にならざるを得ないという問題があるわけです。その中で、従来の、たとえば機械的な地震計というようなものとははるかに比べものにならないくらい、経常的な運営のための費用がかかる、そういう問題があるわけです。  たとえて申し上げますと、気象庁でいいますと、ある新しい機械を購入しますと、それの維持のために約三%くらいの値のものだけが当たるというふうになるわけです。そうしますと、更新するための期間というのは実際上長いですから、それをやりくり算段をしていろいろやる。これは気象庁ばかりでなくて、大学関係の特に微小地震観測所なんかではそういうことが多いわけです。そのために、いろいろ資料をそろえる、あるいは考えるということがなかなかむずかしくなってきているという問題があります。  それから、そういう点で私は特に、このお金の問題からいいましたら、基本的には今年度予算要求として出されているものがほんとうにまっすぐ進んでいくようなことを希望すると同時に、そういう分野でも経常経費あるいは機械を維持していくための経費をもっと多くしていくような努力が払われていいんじゃないかというふうに思います。  それから最後に、人員の問題について述べたいと思うわけです。  先ほど申しましたように、人員の査定が特にきびしいという状況の中で、気象庁自体が、たとえマグニチュード三という地震を完全に観測できるようにしたとしても、たとえば三、四名とかそういう程度ででき上がるというふうにはとうてい考えられないわけです。そして、実際にことしも十二名程度の要求が出されておりますけれども、それは前進した前向きの方向になっておりまして、ぜひ進めていただきたいと思いますけれども、将来計画の問題としては、たとえばほんの微々たる形ではなかなか進まないというふうに思うのがあるわけです。  たとえば、気象庁で六千人いるわけですけれども、そのうちに地震専門に仕事をしている、研究をしているというわけじゃなくて専門に仕事をしているというふうに言えると思うのですけれども、約百に足らない数だというふうに思うわけです。百十四カ所の観測する場所があるわけですけれども、そこではおもに気温を観測するとかあるいは気圧を観測するとか、そういう仕事と同時にやっているということで、決して地震専門に仕事をしているという形にはなっていない。そういう点では、このような数というのが非常に問題があるというふうに思います。  それからもう一つ、実は人員の問題にからめて私のところで非常に問題になっている点は、最近総定員法をめぐって定員削減の問題が出ているわけです。これは気象庁でも六千名ぐらいの職員のうち約五百名が四十三年から四十八年、その間に人を減らしていくというような計画に基づいて進め、完了しようとしているわけです。  それで、先ほど言いましたような、地震関係の仕事は気象関係の仕事とも非常に密接につながっておりますから、気象関係全体の削減というのは、とりもなおさず地震の仕事を進めていく上で非常に苦しい問題を出しくるわけです。それから、私がいまいます気象庁地震課という問題を考えてみますと、たとえば昭和四十年に私たちの職場で働いている人たちが三十五名いたわけです。それが現在昭和四十八年には三十三名のわけです。その中には、昭和四十四年に新たに検測センターを設立するために認められた定員二名が入っての数のわけです。いわばその検測センターが確立されたにもかかわらず、実際の人数というのは二名減って三十二名という形になっているわけです。  私は職場でいろいろ地震の整理をしている中で、いままで定員削減をされても、何とか仕事の質を落とさないように、あるいは量的にも落とさないようにというくふうをして、職場の人たちがいろいろ努力をしているわけです。しかし、なかなかそうはいかないという問題もあるわけです。  それでごく最近、ことしの三月に、やはり最終的に一人減らされたわけです。それに伴って気象庁の中の私たちの仕事の中の震源速報、これは震源の場所を電子計算機にかけて、地震が起こってから約二カ月ぐらいあとにこれを出していくという仕事があるわけです。普通でいきますと、地震月報という雑誌を出しますと約六カ月ぐらいおくれてしまうわけですね。これを早く研究者にいろいろな形で知らせる、対外的にも知らせるという目的で、詳しい精密な震源を約二カ月後には送れるようにしていましたけれども、それがことしの定員一名削減と同時にそれをやめるという結果になったわけです。そういう意味では、仕事の内容がむしろ、検測センターとは別な場ですけれども、下がっているということになりかねないというふうに思います。  それで、実際に今度私は所用で北海道に行ってまいりましたけれども、北海道大学研究していられる方々に、根室半島沖の地震があった直後に、できるだけ早く震源の精密なものをもらって余震観測に役立てたいというふうに強く要望されていましたけれども、それが行なわれないために、結局十二月まで待たなければそういう雑誌が出ないという結論になってしまうわけです。そういう意味では、直接国民の中にその問題がいろいろな形で影響を受けるという形にはなりませんけれども研究者、特に大きな地震があった場合、そこでいろいろな調査をする研究者にとっては、非常に大きな痛手になっているという問題があるわけです。  そういう点で私は、気象庁あるいは地震関係について、せめて災害関係について、社会的に要望が強いこういう分野における定員を削減するようなことは、ぜひやめるように努力をしていただきたいと思います。  それと同時に、先ほど言いました人員削減について、決してゆとりのある人員を要求しているわけでなく、むしろ苦しい中で要求しているわけです。そういうものをぜひ要求のとおりに確保するようにしていただきたいと思います。これをやるのは、私、地震課にいる一職員の立場ではもちろんできませんし、あるいは地震課長といえども、そのことについてはできないわけですね。そういう意味で、ぜひこの場をかりて皆さんに御協力をお願いして、終わりにしたいと思います。
  82. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これはまとめてひとつ長官にお願いしたいと思うのです。  確かに、前にも萩原先生から、三十億めどの大きな要求がございました。大ワクをとっていくということも非常に重要だけれども、やはりその個々の内容についても、実際に研究している人の意見を聞いて、それが実現されるような方向が、いまのお話でわかるとおり必要なんですね。  非常に具体的に話が出まして、まず来年度の予算要求などをすんなり通してもらうことが当面の必要なことなんだということ。さらに、異常事態が起こっているときだけ観測して、平常状態になればほっておくというふうなやり方はまずいんだというふうな意味で、経常経費の必要性も説かれましたし、とりわけ、定員削減はしないようにしてほしい、むしろ要求した人員の確保を考えてほしいんだ、こういうことですね。ですから、長官の立場から、関係省庁の分もひっくるめて、ひとつ具体的にお答えをいただきたいと思います。
  83. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 ただいまの御指摘の点でございますが、いろいろ予算の問題もございました。予算問題等につきましては、われわれ四十九年度の概算要求に出しておりますテーマ並びに数字は、測地学審議会等におきまして検討したテーマにつきまして、これを概算要求にあらわしておるわけでございます。なお、個々の点についても、きょうのこの委員会の問題になりました点を、今後十分勘案していきたいと考えております。  また、経常費の問題を考えろという問題、これも注目すべき御見解だと思います。  また、定員の問題でございますが、実際瀬崎先生ほんとうにこの定員はむずかしいのです。実際われわれもこれは一生懸命にやっておりまして、自分の科学技術庁の定員をとるだけでも全力を尽くしてやっておるというかっこうでございます。しかし、行政組織において、いかに機構があって、いかに予算がついても、それを動かすソフトウエアと申しましょうか、人材ですね、これがほんとうにちゃんと整備されなければ意味がないという点は、もう全く御指摘のとおりなんです。その意味におきまして、われわれも、四十九年度の予算並びにそれに関連した定員の要求を精力的にやりたいと実は考えております。  きょう問題になりました地震関係は、実は各省に分かれておりますが、気象庁では運輸大臣、あるいは国土地理院では建設大臣、私両方の大臣にもよく話をいたしまして、私も応援しよう、おまえもしっかりやれという仕組みで、これは相当馬力をかけたいというふうに考えております。
  84. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 やはりそこのところが実際に実現されてこないと、地震問題について国民サイドから、ほんとう政府が力を入れているかどうかという評価にならないと思うのですね。その点では、これは六月六日ですか、学者の方々がおいでになって環境問題でお話があったときに、やはり若干この問題が出ておるのですね。  前田長官はそのときも、「大学の科学技術の研究費が少ないのではないかという御指摘で、私もそう考えます。」「研究公務員の処遇もよくないと思っております。」「私は特にこの点を、せめて研究公務員、大学先生を含めまして、その処遇をまず改善してほしいということを、人事院にもたびたび、担当の人事官も呼んで実は話しております。この問題もなかなか胸のすくように一ぺんにはいきません、」けれども、「力を入れて、この点強く取り組んでいきたいと考えます。」、こうなっているのですね。  ですから、いまのよう気象庁研究者の方の御指摘があれば、長官は否定はされないのです。その点、御理解はいいんです。大体の評価からいっても、答弁にけちをつけるわけじゃないんですが、前田長官はなかなかかっこうのいい答弁をされるけれども、どうも裏づけがない。ですから、ひとつ一ぺんここらで、かっこうのいい答弁にきっちりした裏づけをつけて実力を示していただきたいということなんです。そのことを私は強く要望して、予知問題でもっとお聞きしたいけれども、時間の都合で割愛して、次に災害対策のほうでお聞きしたいと思うのです。  この面も特に具体的な問題ですから、できれば実例等もできるだけあげていただきまして、必要な指摘をお願いしたいと思うわけであります。この面では非常に苦労しておられます大屋先生にお願いをしたいと思うのですが、私どもしろうとが考えましても、せっかく的確な予知体制ができ、正確度の高い地震予知が行なわれたといたしましても、それに見合った防災体制がなかったら、これはほんとうに釈迦に説法というんですか、役に立たないと思うのです。そういう点でひとつ教訓になるようお話があればまずお伺いしたいと思います。
  85. 大屋鍾吾

    大屋参考人 最初に、一応地震予知研究とかそういう基本的な問題について、地震メカニズムそのものの研究ということは非常に重要であるということも私どもは考えておりますし、それはひとつ強調しておいて、それで防災のことに入りたいと思うのです。そうしないと、何かそれは無意味であって、防災だけやればいいというふうにすぐにとられますので、その点は一応お答えしておきます。  現実に予知が――現実はいま実用段階でないと言っておられますけれども、実用段階になってきても、これに対して災害対策がなければこれは役に立たない、いま瀬崎先生が言われたとおりで、私も痛切に感じているわけです。  この実例というのは台風なんかでしょっちゅうあるわけで、一番よく引用されるのは、伊勢湾台風のときに、コース等については非常に的確に予報が出た、担当官は防災担当の行政官を集めて説明もやった、しかしながら、災害としては、大台風でありましたけれども、室戸台風とか枕崎台風よりも小さかったが、世界的な大災害を起こしたということがいつも教訓に出されるわけです。  ということは、やはりもうすでにそのときは、名古屋を中心とした大都市が形成をされる、それが災害に対してほとんど無防備につくられてきたということがいわれているわけです。そういう点で、根本的には、基本的に安全な都市をつくっていくという姿勢と、それからいままでの災害現象についてやはり知っておく、それは単純に行政のせいだけでなくて、常にそれを繰り返しながらやっていくという姿勢がやはり大事であったのじゃないか。そういう防災の観点で常にやっていくことがまず最大の災害対策であり、そうすることによって、予知の精度が高まれば高まるほど効果が出てくるんだというふうに、私はその例を見ても考えております。
  86. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ただいまのに関連するわけなんですが、よく災害は繰り返されるといいますね。ですから、過去地震にしろ水害等にしろ、もうおそらく私たち自身も含め先祖も含めて、全然経験していない災害というものが当面起こるということは考えられないと思うのです。ですから、ほんとうにそういう過去の災害の教訓が生かされておれば、今日のように一定の地震予知ができる段階までくれば、それなりの防災体制が行なわれて、安心して暮らせる状態になっておっていいと思うのですが、どうもそうではないような、むしろ逆に危険が累積してくるような傾向を見受けるわけなんです。そういう点では、一体どこに問題があるんだろうか、過去のそういう教訓等をこういうふうに生かすべきではないかというふうな御意見があれば、ひとつ引き続いて大屋先生にお伺いしたいと思います。
  87. 大屋鍾吾

    大屋参考人 その問題については、まあ幾らでもあるわけなんですけれども、特徴的な問題について述べたいと思います。  まず、現実に東京がこう巨大都市になって、きわめて災害に対し得なくなったということは、すでに関東震災から大空襲から踏まえて、さきの伊勢湾台風も含めて、それが生きていないということの最大の証拠だろうと思うのです。そういう意味では瀬崎先生が言われました、もう東京においては、いままでもなかったような現象が起こるかもしれないと私は思っております。しかしながら、個々の現象についてはいろいろ出ているわけです。たとえばクイックサンドという問題が新潟地震のときにたいへん叫ばれたわけですが、南海東海道大地震、昭和十九年にはすでにそういう徴候はあったわけで、福井大震災においてもそれは報告されているわけです。それがあのように典型的にあらわれるまでは対策がなかった。現在は、東京都では、建設省土木研究所の福岡先生などに委託して調査をやっておられますけれども、まだそれに対する対策というものが具体的には立ってないのではないかというふうに思います。  そういう問題もありますし、また、現実に一つの問題としまして、伊勢湾台風のあとに、科学技術庁の中だと思いますけれども防災研究センターができたわけです。それによって、災害現象というものは、単に自然的なものじゃなくて、これは個別科学の問題で解決しないということがあのとき強調されまして、総合的にやっていくということで、われわれも大いに期待をしたわけですが、現実にはそれはあまりうまく機能していないのではないかというふうに思うわけです。  そこでの問題というのは、やはりいろいろな、私も外から見ているので不正確かもわかりませんけれども、先ほど言われましたような、たとえば、これは大きな問題ですけれども中央防災会議の問題にしても、研究はただ集めて調整すればそれでできるというようなものではないと思います。そういう点でのあれが依然として行なわれているということ。  それから、災害現象を学ばないという典型的な例としてあらわれたのが、一昨年の川崎で起こったがけくずれ実験の失敗だと思いますけれども、実際にがけくずれというのは、全国にものすごくたくさんあって、そういう具体的な実例は幾らでもあるということ、それから建設省なんかずいぶん知っておられると思いますし、自治体もずいぶん知っているわけです。そういうことの実態に立った上での研究というのを基本にしていくべきであると私は思うわけです。  あの研究自体については、無意味だとは思いませんけれども、全体のそれに対する取り組み方の問題として、非常に問題を私は感じている。あれはやはり問題は、水を含んだ土が震動にどういうふうに影響を受けるかというような点の実験室的なものを外へ持ち出したということだと思います。それはもちろん大事なことだと思いますけれども、それが全体に総合的に科学的な体系でもって取り組まれていたかというと、非常に問題を感じるわけです。ああいう形で一躍、防災センターというものは名前を売りましたけれども、国民の中にあまり期待していたほど関心はないと思います。そういう事態ではやはりだめなんではないかというふうに思うわけです。  それからまた、学ぶという問題で言いますと、研究の問題もそうですけれども、現実に実際の災害現象を調査をしても、実際に対策のときにそれが生きないという問題は、先ほどからも出ておりますけれども、やはり財政問題とか人員問題というものが根本的にあると思うのです。それで、たとえば十勝沖地震での建築物の破壊というのはたいへん問題になって、ずいぶん調査もされ、一昨年は建築の耐震性の基準も改正はされたわけですね。しかしながら、その中で建築物の倒壊問題で特にどこが問題になったかといいますと、あのとき公共建築物が多数やられた。たとえば三戸の剣吉小学校というところは、沢の出口に建てたために底が抜けたというような問題、それから函館大学は一階がつぶれちゃったという問題とかいろいろあらわれたわけです。それに対して、現実にいま東京では、今度の震災防止計画の中では、学校の問題というのは非常に重要視されているわけで、公共建物における安全性の問題は、まずこれは住民がそこへ避難するという問題があります。それから多数の人がいるという問題、そういう点で重点的に対策を進めようとしているわけですけれども、これは現実になかなか具体的にいまの状態ではならないのではないかといふうに思うわけです。  たとえば私なんかは、深川八中という江東区の学校、これは再三言われて見てきましたけれども、地盤沈下のために底が浮いている。詰めて一応したけれども、それは鉄筋の新しい建物です、依然として現在もそのままである。ガスがまだ四、五年たっても通っていなかったというのは、ガス管を通すと折れるという、それほど沈下するわけですね。そのためにプロパンでやっているんだということです。  最近は、ガス管の折れる不同沈下の場合にも対応する方法もあるわけで、前にそれをやってはどうかという話をしておったわけですけれども、最近は少しやられたということを聞いておりますけれども、そういう状態のままにある。しかし、それはまだまだましなほうであって、木造が圧倒的に多いという状態ですね。そういう中でそれをやり直していくというのはどうするかという問題があるわけです。学校建築の問題は、東京都は全額東京都が負担するそうですけれども、すでに横浜は出ておりますが、単価が安いために、国の補助率がたとえば三割あったとしても、中学校は五割ですかあったとしても、その評価が安いために建たないという問題が現に出ているわけです。そういう事態では実際にそういうことを考えてもできない。特に最近の資材植上がりがもうほとんどそういうことを不可能にしているという事態がある。そういういろいろな根本的問題を含んでいるということを私は感じたわけです。  それからもう一つついでに言いますと、いま東京で一番問題になっておりますガス管の問題、これは四十年の四月に大阪のガス爆発で大事故になったわけです。これは実際に地震も何もなかったわけですけれども、平生の状態で爆発をした。地震の際はこういうのが各所で発生するであろうということは、だれでも常識的にいわれているわけですが、その対策がどこまで進んでいるかという問題がありますけれども、実際の東京都のほうは、ガス事業については規制する権限を持っていないということですね。これはガス事業法で通産省に権限がある、こういう問題があるわけです。だから、なかなかそれが進まないということは、この前のわれわれのディスカッションの中でも、都から来た担当の人も言っておりましたし、事実これはたいへん困った問題であるわけです。大阪のガス爆発の経験がどういうふうに生きているのか。あの後政府のほうでは、基準も出されたし、いろいろ対策も出されました。しかしながら、あのときに私たちは東京の地下鉄の工事現場の中に入って調べたわけです。ぼくらは民間で調べましたけれども東京都は都として調べて報告書も出しておられますけれども、それにはいろいろなことが指摘されているわけです。  一つの例をあげますと、大阪瓦斯の場合は、炎上をしていつまでも消えなかったという問題があるわけです。すぐにガスがストップすれば被害は少なかっただろうに、四時間以上出っぱなしになっておった。しかも中圧管のふといやつが出ておった。それからたいへんなガスバーナーがあったわけですね。それに対して緊急の遮断装置が何もなかった。風船を入れてふくらましてとめるということをいろいろやってようやくとめたという、そういうふうな事態を続けておったということが問題になって、それに対して緊急の遮断装置をつけろということが問題になったわけです。それで、そのあと水道橋のときに見たのですけれども、まだそれはついていなかったわけですね。ついていない理由として、東京都は、その分は自分の工事だから予算は出す、しかしながら、ガス会社がやらないんだ、こういう理屈だったわけです。実際にあのときに、中圧管は二キロぐらいまでは何のバルブもないということが問題になりまして、そのときは国会でも論議されたと思うのですけれども、それがどこまで実行されてきたかということはぼくはたいへん疑わしいと思いますし、そういうことはやればできることです。ガス会社は大きいわけだから、国が指導を強めればできる、そういう問題がやはりある。そういうことをやっていくことが大事じゃないか。  それから、基本的な問題としましては、それだけの過去の震災、災害の経験、いまますます多発しておりますから積んでいるわけですから、ひとつ各工事ごとに徹底すれば、たとえば地下鉄工事、埋設物の埋めるときの工事などのときに、きちんとそれをやっていけば、その分だけは安全になっていくということが私はできると思うのです。建築物でも、年間に一兆円以上、一兆数千億円の投資がやられている。それがそういう観点でやっていけば、安全なところができ上がっていくのじゃないか。ところが、それが全体に徹底していないということ、これはたいへんむずかしい問題でしょうけれども、これはやらなければ、もう破壊するほうが大きいスピードでいっておる。それは、先ほど――私から見れば東京の人員問題もそこでひっかかってくるわけで、たとえばあの工事のときにいろいろ工事災害という問題になります。その場合に、それを監督する人がないわけですね。これは人をふやせという問題もありますけれども、工事量が多過ぎるという問題があるわけですよ。そのためにとてもついていけない状態が起こってきている。民間にすべて――まあ直営もやっていくとますますスピードが加速される。そういう事態を何とか考えなければ都市は安全にならないんではないか。それはやればできることであると私は思うわけです。これは人間がやっていることですから。そういう点で、せっかくの地震予知についていろいろ研究され苦労される成果が生きないということは、非常にぼくは残念に思っておりますし、そういう点は、特に私は、災害というものはやはりそういうふうなところで発生するということをここで述べたいと思います。  それからもう一点としましては、災害というのはやはり貧しい人が最も受けるという認識ですね。だから、社会的な力といいますか、ほんとうに住民がなかなか災害対策に理解かないといわれますけれども、一番住民――ここにいる方もそうですけれども、やはり被災者候補だと思うんですよ。被災者になる候補者がいま一ぱいいる。その人らに具体的にわかれば必ず行動を起こすんじゃないか。ところが実際はそうなっていない。わかればどういうふうに行動を起こすかということは、この前NHKが「七〇年代われらの世界」というところで、池上本門寺の避難場所の避難の問題でやっていましたけれども、最初は四〇%ぐらいは生き残れるというふうに言った人が半ばでは、具体的な問題をいろいろ出していく中で、七〇%はもうだめだというふうに言った。それだけやはり深刻に感じておる。やはりそういう危険なことを知らない問題がある。それと同時に、それに対する人々を守っていく、その人らがやはり守られることが、災害に対して非常に重要な役割りを果たすのではないか。関東大震災でも、本所、深川のああいうところが燃え上がったために、それが火種となって全体へ行ったということですね。これは、東京の耐震性とか防火だとかいいますけれども、この辺都心三区は、東京都の調べでは、大体建築面積の四〇%は耐震あるいは耐火性を持っているということになっているわけですね。ところが、東京二十三区に広げると一六%になっちゃう。ここでは人口が減っていって耐火性を持っているわけです。昼間人口は多いけれども、夜間は非常に少ない。ここから出ていった人はどこに住んでいるか。そうすると結局そういうふうな危険地帯にまた住んでいるのではないか。そういう事態を繰り返したのでは、やはり災害は根本的になくならないと思うし、その辺の観点から震災対策も進めていただきたいというふうに私はここで要望したいと思います。
  88. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ごく簡単に、いま非常に貴重な指摘があったので、政府のほうにお尋ねをしておきたいんですが、過去の災害から学ぶべき教訓はもうたくさんある。しかも一定のそういうことに対する研究も行なわれている。しかし、実際にはそれが、あるいは法律上、制度上の改正につながっていない。あるいは政府や地方自治体が行なういろいろな事業に反映されていない、こういうことは全く事実だと思うのです。文字どおり、そういうものが生かされて反映されておったら、ますますもってわれわれ、いまのことばによれば被害候補者ですか、ではなしに、安全になっていかなければいかぬわけです。ですから、ここらはやはり思い切った政策転換がこういう点では必要だと思いますし、それから住民にそういう過去の災害の教訓なり危険性というものを十分に知らせるべきだ。それをすれば、住民自身がもっともっとものを申して、いやでもおうでもこれは改めざるを得ないように政治を変えていくだろう、こういうお話なんですが、ひとつそういう点で、全部が全部科学技術庁の管轄になる問題ではないですけれども、しかし総括官庁として長官にお答えいただきたいですね。
  89. 前田佳都男

    ○前田国務大臣 瀬崎先生から、おまえはていさいいいことばかり言うて一向実行せぬというふうな御指摘でございますけれども、実は研究公務員の処遇の問題につきましては、先般私、人事院総裁のところに乗り込んでいきまして、人事院総裁も私の熱意を非常によくくんでくれまして、人事院勧告にある程度反映しておると考えております。これは決して自慢で言うておるわけじゃございません。  ただいまの防災体制の問題でございますが、ほんとうに私も御指摘のとおりだと思います。ただ、自分の所管だけのことを言うて恐縮でございますけれども防災センター、これはただいまも東京都の鮏川先生の御指摘がございまして、センターをつくったのはいい、しかしもうひとつあまりやってないじゃないかというふうな御指摘ようにも聞いたのでございますけれども、この点は、いま御指摘の球形タンクの振動実験であるとか、耐震実験であるとか、あるいは地下埋設物の実験であるとか、あるいはまた地震予知、相模湾で地震が発生した場合何秒間でどういうふうに予知ができる、そういうようなことなど、いろいろ実は勉強しておりまして、その点詳しいことは局長からもお答えしていいとは思いますが、そういうふうに一生懸命にやっております。しかし、まだまだ御期待に沿うような成果は得てないかもしれませんけれども相当一生懸命に所員もやっておるということも申し上げたいと思うのでございます。  なお、建築の問題でございますが、ただいま御指摘の江東地表ですか、どこの地区ですか、校舎を建てることができない。いつ何どき地震がやってくるかもわからぬというふうな問題、私もその御指摘の点はよく頭にしみ込んだわけでございますが、その問題をはじめとしてガス埋設管の問題であるとか、いろいろそういう御指摘の点、考えれば考えるほど、もう非常に急いで対策を立てなければいかぬという問題ばかりだと思います。その点につきましては、私いかに力んでみても、ここで何ともお答えできませんけれども、その点、中央防災会議のメンバーでありまするところの関係閣僚、といいますと、あるいは建設大臣だとかあるいは通産大臣だとか、そういう閣僚にもきょうの御指摘の点は――実はこの間九月一日にああいう大震災を予想しての演習もやったようでございますけれども、しかし演習をやっただけで安心しておったら何にもならぬわけでありまして、その点、きょうのこの委員会の空気ですね、こういう御指摘の点を私も十分伝えたいというふうに思っております。  それから瀬崎先生から御指摘の、災害があっちゃたいへんだぞというそういうふうな周知ですね。それは私が別に防災会議の座長とか事務局長をやっておる閣僚ではございませんから何ともお答えはできませんけれども、私は非常によい御示唆であるというように考えております。実はちょうど一月ほど前ですか、関東大震災という映画を私ちょっと拝見いたしました。あれを見てほんとうに寒けがするといいますか、これはたいへんだという気がしました。われわれもいろいろ地震のことを国会で問答しておりましても、そんなに自分で地震におうたこともありませんししますから、あんな災害にあったことありませんから、あるいはわからぬのだという点が、あの映画を見ることだけによって非常なショックを受ける。私は別に映画を見せてみんなに恐怖感を与えるというんじゃなくて、災害があっちゃたいへんだという意味において、みんなそれぞれ災害ということの心がまえを持ってもらいたいというふうな意味において、これは非常によい御指摘だと思いまするので、中央防災会議のほうは総務長官が実は責任担当でおられますので、この点も私よく話したいというふうに思っております。
  90. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 特に災害対策の面もやはり科学的な裏づけをもって政策提起をするということが、実際に前進をさせる原動力になるんじゃないかと思うのです。ですから、防災会議科学技術庁長官が入っていないということがいいのか悪いのか、これも一ぺんあらためて考えてもらいたい。ですから、そういう熱意が長官におありなら、長官のほうから進んでそういう会議への参加の道を考えていただいたらどうかなと私思います。  なお、私、残しております大きな質問としては、実際東京都などもおいでになっているのですが、地方自治体としていま具体的に指摘のあったような、学校を何とかしたいと思ってもできないという問題や、あるいは現行の法律、制度が逆に地方自治体の災害対策を妨げている点等についても、参考人としておいでいただいておるからお聞きしたがったのです。また災害対策を中心にして都市改造などは根本的にどうあるべきかということもお聞きしたがったのですが、時間の関係もありますので、またの機会に譲らしていただきますが、そういうことも私たちの心配の種があるということを御了解していただいて、終わらせていただきたいと思います。  どうも皆さんありがとうございました。
  91. 石野久男

    石野委員長 次に、原茂君。
  92. 原茂

    ○原(茂)委員 おそい時間まで申しわけありません。鮏川参考人においでいただきましたので、お伺いをしたいのです。  先ほどお聞きになっているように、萩原先生のおっしゃった私の質問に対するお答えの中に、高いところに大きなダムができますと、ちょいちょい地震が起きる。ほとんど定説のよう相当のデータがあるというお話だったのです。東京における例の江東地区の河川が相当高くて、人家がうんと低いところがありますね。ああいう河川というものは、やはりあの理論でいう高いところにダムができたというようなことから地震が頻発しているとか、そういう危険があるというふうにお考えになりますか。  これは、あとでよろしかったら萩原先生からも聞くのですが、それとは全然違うんだ、あれは流れていくんだから、たまっているのではないということなのか。東京都の防災関係から、そんなことは議論したり検討していますか。
  93. 鮏川光義

    ○鮏川参考人 私は新しいので、その点まで詳しく聞いておりませんが、また河川の専門家でもございませんので、東京都としましては、相当調査費をかけまして、あらゆるものを科学的な調査をして対応していきたいということで、相当調査費を計上しております。
  94. 原茂

    ○原(茂)委員 萩原さんどうでしょう。
  95. 萩原尊礼

    萩原参考人 ダムと地震関係につきましては、非常に詳しく調べられたものがあるわけでございますが、ダムが比較的大きい地震を誘発したという場合は、たいていダムの高さは百メートル以上であります。ダムの貯水量が大きい少ないではない。といいますと、水圧が関係しているということで、結局ダムの水がしみ込みまして、要するに岩石の間隙水圧が増すと非常に地震が起こりやすくなるという理論がございますが、こういった水圧がおそらく関係しているんだろうといわれております。もちろん、百メートルをこしたダムのすべてが比較的大きい地震を誘発しているわけでありませんで、これは世界じゅうの数多いダムの中で、ある特殊な地域だけのものが比較的大きい地震を誘発している。大きい地震と申しましても、大体マグニチュードにして七のものはございませんで、大体六・幾らという程度のものでございます。普通、河川のようなものの場合が地震に影響するということは、現在のところ考えられておりません。
  96. 原茂

    ○原(茂)委員 萩原先生にお願いするのですが、私のようなしろうとが考えますと、確かに、川でも、大きな川で常時相当な流量があれば、水圧というものは相当なものがあるでしょうね。それが、高さ百メートル以上の場合が多いといっても、やはり地下のある一点をとれば、百メートルにも百五十メートルにもなるわけですから、そういう意味では水圧の関係によるだろうとおっしゃるそのことが、河川に及ばないのだということがいえるかどうかも、地震予知連絡会中心に技術的な検討をしてみる必要があるのではないかと思うのですが、その点をひとつお願いしておきたいと思うのです。  これも東京都にお伺いしたいのですが、あれは気象研の相馬博士が実際に実験をずっと長いことやりまして、例の火炎たつまきといいますか、いわゆる空地というものがおそるべき死を呼んだ。本所の被服廠あとの事例が好個の例だということから、実験をやってみたら、あき地があってそこに逃げればいいのだということにならなくなってしまったわけです。  この間、九月一日に防災訓練をなさいましたね。そのときに、いまの防災空地といいますか、そういう避難場所、公園などを中心に八十四カ所あってみたり、あるいは今後の計画として、耐火建築をずっとつくって百メートル以上の幅を持たして、そこのところは空地にして避難場所にしようとかいうことが、この間の震災防止計画なんかにもあるわけですね。ああいうものをつくるのでしたら、あの前提として、九月一日に訓練をなさったときに、科学的に見て、現在の八十四カ所のああいう防災空地にしても、火災を呼び込むような空地ではない、そういったって、火災の広さとその広さとの関係とか、あるいは風速の関係とか、いろいろあるでしょう。あるのですが、そのことは三・五メートルの前提でせっかく訓練をやったのですから、ということになれば、この空地はだいじょうぶだろうか、この避難場所はどうだろうかということを目標を設定して、八十四カ所全部はできないでしょうが、ある程度ペーパープランで検討した上で、二、三カ所ぐらいはそういう検討をやはり想定のもとにすべきだったと思うのですが、そういうことをおやりになりましたか。
  97. 鮏川光義

    ○鮏川参考人 実は東京都が指定しました避難場所は、現在のオープンスペースから考えまして、所要の十万平米の場所は現在あれしかないということで急遽指定しまして、これを確保したいということが主でございましたので、先般新聞に載っておりました相馬先生研究は、これはこれからその問題も含めて考えていかなければならないと思っております。
  98. 原茂

    ○原(茂)委員 それはこの間のときが一つのチャンスで、一、二カ所は設定しておやりになったのかと思ったからお聞きしたのですが、これはぜひ研究をなさいませんと、空地があれば安心だとわれわれしろうとは考えていまして、東京都の避難場所が、おまえはここだよというのは、私は世田谷に住んでいますから、いま宿舎にいますが、そうすると、とんでもないところまで歩くのです。あそこに行くまでにくたくたになってだめになっちゃうと思います。とにかくとんでもない遠いところが指定になっている。ところがそこも、私は場所を知っているのですが、はてな、これでいいのかなと思うような場所なんです。ですから、一度指定したらこれでいいんだとお考えにならずにああいう防災計画をおつくりになる以上は、もう少し突っ込んだ検討をして、退避する空地に対しての安全性というもの、特に火災に対して火炎を呼び込む心配があるかないかということだけは大至急に検討していただきませんと、とにかくあそこにみな逃げますよ。逃げておいて被服廠みたいになったらえらいことですから。とにかく、私なんかしろうとでわかりませんが、現在の八十四カ所というのを大体二十カ所ぐらい知っていますが、十五カ所ぐらいは不適当ですね。どうもあぶないと思うのです。これはしろうとだからほんとうに乱暴な言い方で恐縮ですが、原のこんな意見もあるんだということを頭にこびりつかしていただいて、ああいう重要な場所は、一往も二往も指定されて住民に周知された以上は、責任を持っていただくように、特に火災に関しては――関東大震災だって、あの大きな人災が起きた九〇%は火ですから、したがって火災というものに関しては必要以上に神経を使って、ああいう空地に対する科学的な検討を大至急おやりなる必要があるのではないかと考えます。これをお願いしておきます。  それから次に、この間の九月一日に訓練をされたあと、金丸建設大臣が、その訓練をずっと見て歩きまして、二つのことを言っているのです。  その一つは、防災拠点のモデルケースとして、白鬚地区の拠点を五十三年までに完成させるんだ、こういうことを記者会見で言われた。これは東京都にその計画はおありなんですか。もしあるとすればその白鬚地区は何を中心にモデル地区をつくろうとしているのか、それが一つ。  それからもう一つは、ああいう災害が起きますと、道路は、とてもじゃないが交通遮断になりますね。火災が至るところに起きて脱出ができないだろうというので、東京都に非常に広大なモノレールをずっとつくるんだ、こういうことを金丸建設大臣が記者会見で言っているわけですが、これも東京都にそういう計画がありますか。モノレールを東京じゅうに張りめぐらして、そうしてああいう災害のときに車にたよらずにばっと脱出できるようにする。これは一つの思いつきですが。私はそのことも大事だが、それならもっとということを、時間があったら東京都に申し上げたいこともある。しかし建設大臣はそういうことを言っているわけですから、東京都としては検討されたことがあるか、お考えになったことがあるか、建設大臣がかってに思いつきで言ったのか、そういうことをちょっと二点だけ。
  99. 鮏川光義

    ○鮏川参考人 白髪の防災地区は、現在ございます高速道路に沿った空地がございますが、その部分が東地区、それから川を越しまして西地区、それを一帯としまして白髪の防災拠点をつくろうとしております。  それからモノレールにつきましては、個々の問題としてモノレールの研究はございますが、いまおっしゃったような部分は、まだちょっと確認しておらなかったわけでございます。
  100. 原茂

    ○原(茂)委員 わかりました。これはまた別のときに金丸さんにお伺いすることにいたします。  それから、先ほどもちょっとお話参考人先生からも出ましたが、東京都の人口増というものに対して、これは防災という観点から言ったら非常な問題だと思うのですね。これが無制限にどんどん膨張していったら、とてもじゃないが防災計画に追いつきっこない。だから、脱東京なんということを大胆に書かれる学者先生もおいでになる。本来おれは三代江戸っ子だというような人は東京にいてもいい、故郷のあるやつはみんな東京を逃げるべきだ、こんなことを言われる人があるほど、現在の八月調査で一千六百万という東京都の人口というものはたいへんだと思うんですね。これがまだまだどんどんふえる傾向にあるわけです。減ったりふえたりしながら、去年は減ってまたことしふえているというような傾向にありますが、全体的にはやはり膨張していく。これは当然自然増からいっても膨張するのはあたりまえです。ということになってきますと、人口増に対して何か基本的に東京都として考える時期が来ている。これをほうっておいて、現段階だけで防災計画をおつくりになるといっても、ちょっとこれは何かそこに矛盾があるんじゃないか、ことによったら違った意味で飛躍があるのではないかというような気がするのです。この人口増というものを、この間防災計画をおつくりになったときの考え方からいって、それから九月一日の実際の訓練をおやりになってみて、人間がとにかくこれだけ一千百万いるんだという前提で計画をつくってみるときに、人口増に対してどう対処するかというようなことが、きわめてきびしい現実の問題として防災対策上出てこないといけないと思うのですが、こういう検討はおやりになっておりますか。
  101. 鮏川光義

    ○鮏川参考人 その点でございますが、実は現在つくっております震災予防計画は暫定的なものでございまして、現在学者の方にお願いしてございます地域危険度、これは地域の火災発生、それから地盤の問題とか人口密度の条件も入れまして、各地区を大体五百メートルメッシュになりましょうか、そういうことで、東京都内全体を、こういう状態であぶないんだと、あぶないランクをあらわしまして、それと同時に、被害想定は、これだけの被害が出るんだというのを四十八年度中に調査を終えまして、四十九年度にそれによりまして危険地域を指定します。したがいまして、四十九年度に指定しました時点で、住民といろいろ相談しながら、技術的に危険な度合いがわかりますから、そこで五十年度からそれをどうやって改造していくか、人口増の問題のお答えになるかどうか知りませんが、震災予防計画の関係としましては、そういうことによって皆さんが現実の危険を考えられて、自分のいる場所はどうかということを考えながら本格的な都市計画に持っていきたいというふうに考えております。
  102. 原茂

    ○原(茂)委員 時間がないからはしょって申しわけありませんが、そういう点でも被害想定があと一年もかかってできてそれからというのですが、その検討の中にもすでに人口増というものを加えて検討しなければ、被害想定自体が架空のものになっちゃうだろうというくらいに考えていますので、人口問題というものは、やはり東京都の防災計画では十分にお考えいただきたい。  それから次に、いまたとえば隅田川にかかっている主要な橋梁がありますね。ああいう橋梁のほか、数にしてずいぶんある橋のおもなものだけでも東京都で検討されているんだろうと思うのですが、いわゆる耐震性からいってすでにこれはだめだというのがあの主要な隅田川の橋梁のほとんどですよ。あれは耐震的にだいじょうぶなんだというようなことがぴしっと言えるかどうかというと、なかなか言えないと思うんですよ。これに対しては、相当の金がかかるに違いないのですけれども、別途に橋梁を中心にした耐震性というものを再検討して、ほとんどこれに合っていない橋梁を何年度にどうしたらやれる。予算は幾らかかるというようなことが、都民というよりは国民的なコンセンサスが得られるようにしませんと、東京都がいかに膨大な予算をつくりましても、計画をつくっても、とにかく橋が落っこっちゃった日には、みんな逃げられないから死んでしまうのですからね。この橋というやつは、いまおまえたちの目の前にあるりっぱな橋が、実は耐震性から言ったらこうなんだ、ABCで言えばCランクだ、話にならないんだ。しかしこいつを直すにはこれだけ金がかかる、これだけ時間がかかるというPRというものを、徹頭徹尾、常時おやりになるようなことが防災対策の基本的な――橋は一つの例ですが、単に東京都民――国民的にもそうなんですが、都民には特に防災計画上何とも重要だと思う、ランクをつけたときに、こういうものがこういう状態にいまあるんだということが徹底されて、こいつをよくしようとするためにはこれだけの予算がかかる、これだけの税金が要るんだというようなことがPRされるのが、避難場所はここだよと言うのと同じくらいに知られていくようにしないといけないと思うのですね。というのは、あまりに橋梁なんか不完全なものが多過ぎるという意味です。  そういう点はひとつ十分に検討したりPRという点を重要視していただきたいということと関連して、この間九月一日に訓練をなさいましたね。その訓練をした九月一日のあと関係した自衛隊長もあるでしょう、あるいは組長みたいな人もあるでしょう、あるいは東京都の知事を中心にした幹部もおいでになる。この関係者が全部いろいろと、どうだ、こうだとあと言うだろうと思うのですね。いなかにいるといろいろな会合なんかやりますね。「なおらい」なんというのをやりますよ。というようなことで、お祭り的な行事で終わらないで、実は九月一日のやつはお祭り的なものであってもかまわない、とは言わないが、しかたがないとしても、あれに参加した八千人なり一万人なりの都民が、その地区その地区に全部少数で集まりまして、そうして実際に訓練をした中でこういうことが必要だと思うとか、こういうところはこうなっていなければ困ると思うとか、われわれいま袋をデパートで買えというから買って、こいつをかついで飛び出してみたけれどもほんとうに震災があったとして考えてみたら、中身はこうだああだとか、とにかく実際に参加して汗水を流した、動員された下部、といっては悪いが、大衆を小さいグループに分けて、十分にものを言わしたやつの記録が、いわゆる防災計画の中に生かされるようにしてこないと、私は何か机上の空論というようなものになりがちだと思うのです。  あれに参加した私の親戚の者が二人いるのですけれども、これから直に聞きますと、とてもじゃないが新聞に書かれたり皆さんがお考えになっているようなものじゃない。非常に幼稚なものもあるかわりに、なるほどなあというようなものがずいぶんあります。したがって真剣に、参加された八千なら八千の人々を小さいグループに分けて十分にものを言わして、何が希望か、どこがいけないのか、どこがこうあってほしいのかを、ほんとうに言わした記録を私などもほしいし、皆さんもぜひ貴重な資料として集めるべきではないか。これは時間をかけてもじっくりやって、その中から、ああそうかというものを百のうち一つでもつまみ上げていくことが、いわゆる大衆のための防災計画、人民のための防災計画になるだろう。こういう観点をひとつ真剣にとらえて、九月一日をそのまま捨てないで――九月一日は一日だけなんですが、そのあと八千人の意見を十分に吸い取るというところに半年でもかける、金もかけるということをおやりになることが必要ではないか。要するに、こういう震災対策なんというものは、何といってもどうしたらいいかということを学者先生がお考えになる、鮏川先生がお考えになることも非常に大事なんですが、やはり国民そのものがこれに参加して、十分な意見を事前に言うということがないと、ほんとう防災計画というものは成り立っていかない、骨がないというふうに思いますので、いま言ったことを事例として申し上げるわけなんです。  それから、計画そのものについてちょっとお伺いしたいのですが、いろいろたくさん準備はしたんですけれども、先ほどもちょっと話に出ましたような、国が管理する建物ですとか民間の建物ですとかというようなものに対しては、近江先生も言っておられたけれども、素通りせざるを得ない。これはわれわれの管轄じゃないのだ、あるいは先ほど参考人先生が言われたように、東京都という自治体が管理するものに関してだけという、きわめて狭い範囲で防災計画をおつくりになっておられる。しかし、地域防災会議というようなものを持たれたときには、何か参事官も一言っておられたけれども、また防災会議、国の立場での意見もそこへ入るんだという説明もございました。ですから、それはそれでいいように思うんですが、日本の官庁の機構はいやというほど鮏川先生御存じなんですから、あえて私申し上げたいのですが、実際に東京都という自治体の中にある建物に関しては、国であろうと何であろうと、何が管理している河川であろうと何であろうと、橋梁であろうと、とにかく東京都というものが、事実自分のいわゆる自治体の区域の中に持っているのですから、予算や管理はどこであるというセクションのことを考える前に、東京都が防災という立場で考えたときには、これはこうあってほしい、これはこうすべきだ、こういう手当てをしてもらいたいんだということが、ずばり東京都からぴしっと一つの要望として出てくるようなことを、防災計画と添えてそれが出てくるようなところまで、同じおやりになるのならもう一度突っ込んで、まだこれから完成するわけですから、被害想定をつくった上で完成なさるわけですが、そのときには、これは国なんだ、これは民間なんだ、これは管理は国家なんだというようなことでほうっておかないで、東京都という立場で現に見ているのですから、現に自分の行政区域にあるのですから、それ対しては、国家のものであろうと、管理区域が違おうと、これはこうし、こうすべきではないかということが、どうせ研究なさるのですから、思い切ってずばりと、あれに別途別冊でおつくりいただいて出していただくようにしなければ、防災会議が別途に地域会議という立場で東京都の意見を聞いてそこからまたやると、その次になってしまいますからね。とにかく河角先生の御説からいったって、プラスマイナス十三というとそろそろあるかもしれませんのですからね。だからあまりのんびりしていちゃいけません。ないかもしれませんけれども……。  したがって、この都民を守るという立場、あるいは国家の中枢機関が一ぱいあるわけですから、国家の機能が麻痺するということを前提にすれば、そんな管理がどうの、セクションが何だなんということをいま考えているんじゃなくて、東京都自体がやはり独自な見解として、こうあってほしいものだ、こうすべきだというものを同時にお出しいただくように、ひとつお願いをしたい。こういうこともあわせて、これはおそらくお答えはむずかしいと思いますので、私の意見としてひとつお聞きおきをいただきたい。  最後に、自動車は何といってもどんどんふえていきますので、これは大問題になりますが、自動車に対してはもういま検討しなければいけない段階に来ていますが、災害時における自動車というものをどのように処置していくのがいいのか、この間の訓練を通じても、何かお考えがあったろうと思うんですけれども、何もなかったことはない、自動車は目の前にありながら、とにかく想定をしての訓練ですから、その訓練、それから防災計画、あわせまして自動車というものをどういうふうに今後対処していくか、お考えになっておることをひとつお伺いしたい。
  103. 鮏川光義

    ○鮏川参考人 先日の訓練におきましては、自動車の問題でございますが、これは非常時の場合でしたらとめることはできますが、訓練の際とめることができないというような警視庁のほうの見解でございましたので、訓練にはその分は想定してございません。図上訓練では、実際非常事態が発生したということになりましたが、一般の各地区におきます訓練におきましては、車の関係は問題外にしてございます。  なお、青梅市におきましては、訓練の際におきましては、なるべく車はとめてくださいということだけ呼びかけましたが、その結果はまだ聞いておりません。
  104. 原茂

    ○原(茂)委員 どうもありがとうございました。もう約束の時間が切れたものですから、これ以上いろいろとお伺いできないのですが、自動車に関しては、やはり訓練のときに想定しなかったと言われますとそのままなんですが、これは別途に自動車というものは計画の中にも考えなければいけませんし、訓練をやるときには、自動車をなまぬるく想定していたのでは、実際の防災訓練にはならないんじゃないかと思うんですね。いまは自動車というものは一番の公害じゃないか、変な公害も出せば、それから災害のときの堤防の役目をしちゃって、火災を起こし、たいへんなことになりますがね。この自動車をどうするかという問題は、もっと真剣に、これから訓練をするときにも計画の中に入れていただくし、防災計画にも入れるということが必要だろう。それは自動車業者は大問題になるかもしれませんが、やはりそのことに触れるまで、自動車に関しては徹底的な検討を加えていく必要があるというふうに考えますので、これも参考東京都の立場でひとつ取り入れてお考えいただきたい。どうもありがとうございました。
  105. 石野久男

    石野委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のためたいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。  次回は、明十三日木曜日午前十時より理事会、十時十五分より委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十七分散会