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1973-06-27 第71回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十七日(水曜日)     午後一時二十分開議  出席委員    委員長 石野 久男君    理事 木野 晴夫君 理事 粟山 ひで君    理事 嶋崎  譲君 理事 原   茂君    理事 瀬崎 博義君       加藤 陽三君    羽田  孜君       湊  徹郎君    清水 徳松君       北側 義一君    渡部 一郎君       内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         科学技術政務次         官       伊藤宗一郎君         科学技術庁長官         官房長     進   淳君         科学技術庁研究         調整局長    千葉  博君  委員外出席者         参  考  人         (水産庁東海区         水産研究所資源         部資源第一研究         室長)     川崎  健君         参  考  人         (東京水産大学         教授)     佐々木忠義君         参  考  人         (海上保安庁水         路部海図課補佐         官)      佐藤 任弘君         参  考  人         (東海大学教授星野 通平君         参  考  人         (一橋大学教授皆川  洸君         参  考  人         (東京大学教授吉田 耕造君     ————————————— 委員の異動 六月二十七日  辞任         補欠選任   近江巳記夫君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     近江巳記夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件(海洋開発に関す  る問題)      ————◇—————
  2. 石野久男

    石野委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  海洋開発に関する問題調査のため、本日、水産庁東海水産研究所資源部資源第一研究室長川崎健君、東京水産大学教授佐々木忠義君、海上保安庁水路部海図課補佐官佐藤任弘君、東海大学教授星野通平君、一橋大学教授皆川洸君及び東京大学教授吉田耕造君、以上六名の方々参考人として御出席願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席くださいましてありがとうございます。どうかそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。  なお、参考人の御意見の開陳は、お一人十五分程度にお願いすることとし、後刻各委員からの質疑の際十分お答えくださるようお願いいたします。  それでは最初に、川崎参考人よりお願いいたします。
  3. 川崎健

    川崎参考人 ただいま御紹介いただきました川崎でございます。  諸国間の海洋に対する関心が特に強まってきましたのは、第二次世界大戦後でございます。この間の経緯につきましては、いろいろあるのでございますけれども、本日は時間もございませんのでそれは省略させていただきまして、特にその中でも、近年海洋に関する関心が強まってきた一つ契機になりましたのは、一九六七年十一月に行なわれました佐藤ジョンソン会談共同コミュニケが出されまして、この共同コミュニケの中で、増大する世界人口のための食糧源として、また鉱物源として、海洋開発分野日米協力を進めるという意味のことが述べられたわけであります。これがわが国にとっては一つの大きな契機になりまして、この共同コミュニケを受けたような形で、それ以前からあったわけでございますけれども、海洋科学技術審議会海洋開発科学技術的な側面をいろいろ検討されて、そうしていまから四年前の一九六九年の七月四日に、海洋科学技術審議会、現在は海洋開発審議会になっておりますけれども、当時の海洋科学技術審議会の第三号答申が出されたわけであります。  この第三号答申にはおもなプロジェクトが出され、さらに付随的な四つプロジェクトが出されたわけでございます。この海洋審の三号答申一つの大きな基調になりまして、そうしてその後のわが国海洋における科学技術研究が展開されてきたわけでございます。そういった意味でこの答申一つの時期を画したという点で大きな意義を持つものだと思います。  ただ問題は、いまからいろいろ考えてみますと、この海洋審の三号答申にはやはりいろいろ問題があったのではないだろうかと思います。特にこの五つプロジェクト、これは日本周辺大陸棚海底総合的基礎調査海洋環境調査研究および海洋情報管理海中栽培実験漁場による栽培漁業技術開発、大深度遠隔操作掘さく装置等に関する技術開発海洋開発に必要な先行的、共通的技術研究開発、こういう五つ主要プロジェクトになっていたわけでありますけれども、こういう五つプロジェクトの全体を包括するようなフィロソフィといいますか、そういう包括的な考え方が不十分であったのではないかというふうに思います。  このプロジェクトの中には、現在非常に問題になっておりますところの海洋汚染の問題についての指摘は、全くと言っていいほどないわけでございます。そういった問題とか、それからまた、この水産生物開発の問題にしましても、沿岸における栽培実験漁場の問題は述べられておって、それからまた、先ほど申しました四つの付随的なプロジェクトの中に、未開発、未利用資源開発の問題は述べられておるわけでございますけれども、しかし、現在一つの大きな問題になっておりますところの過剰努力の問題、つまり、たとえば昨年の国連人間環境会議で問題になりましたような、鯨の資源が非常に枯渇してきておるというような問題、こういう人為的な資源の枯渇といった問題についてはここでは述べられていない。つまり、こういったいわば人間が海を総合的に利用するという場合の基本的な観点はどこに置けばよろしいのか、そういう点が必ずしも明確でなかった。ここのところに非常に大きな問題点があったのではなかろうかというふうに思います。たとえばこの前文の中でこの海中生物資源の問題につきましては「最近における世界人口の増大は、将来、食料とくにたん白食料の著しい不足を招く恐れがあるが、陸上たん白資源の増産にはおのずから限度があり、これらの膨大なたん白食料需要の増加をまかなうには、海洋生物資源開発利用を推進し、たん白資源の確保を図る」こういったことが述べられているわけであります。  これ自身は別に問題はないわけでございますけれども、これは私が言うまでもなく、最近、海における、特に近海における汚染がたいへんな勢いで広がりまして、そうして魚の漁を制限するというようなことが日程にのぼってこざるを得ない状況になっております。つまり、こういったことを考えますと、海にたん白資源を求めるんだという、こういう大前提が現在くずれつつある。つまり海を利用する、そういう総合的な観点がなく、ばらばらに海の利用が進められたために、海から食料を得るという海洋開発一つの大きな前提がくずれてきつつある。こういう非常に深刻な事態になってきているのではないかと思います。  特に現在、この五つ主要プロジェクトにおきまして柱になっている、つまり実質的に柱になっていると考えられますのは、むしろ水産資源開発というよりも、海底鉱物資源開発と、それから海底スペース利用だと思われます。一応この答申の中では海洋開発必要性現状の中で、海底鉱物資源開発海洋生物資源開発、それから沿岸海域空間的利用、つまりスペース利用、この三つの柱があげられておりますけれども、実質的には鉱物資源とそれからスペース利用二つに重点を置いて、つまり海底の諸資源利用するあるいは海岸沿岸域スペース工業のために利用していく、こういう観点が優先していたのではないかというふうに思われます。特にこのスペース利用の問題が、最近の海洋環境破壊には最も大きな関係があるわけであります。  その点につきまして、たとえば昨年の三月に経済団体連合会経団連から「わが国沿岸開発の展望」というパンフレットが出ております。これを通読いたしましても、わが国産業界沿岸利用の中心的な基点がやはりスペース利用にあるということがはっきりいたすわけであります。  たとえばこの中で、いままで、つまり昭和四十五年までの間に日本沿岸域においては五万ヘクタールの工業用地を造成した。これをさらに昭和四十六年から昭和六十年までの間に八・五万ヘクタール開発造成するのだ、こういうことを書いています。そして、こういう大量の工業用地を造成することが国の沿岸開発の最大の課題であるというふうに、この経団連パンフレットでは書いておるわけであります。  私はこういう沿岸を埋め立てる、あるいはまた構造物をつくる、あるいはまたそこに、たとえば沖合い出島方式で飛行場をつくる、こういうふうな形で沿岸地帯を物理的に形状変更し、またその結果廃棄物流入が起こる、このような工業優先海洋スペース利用、こういうわが国海洋開発のあり方というものが、結果的に今日の非常に深刻な事態を招いているというふうに思うわけであります。  そういった意味で、やはりわれわれは、現在のこの非常に深刻な事態の前に立って、人間が海を利用するという基本的な立場はどうあるのか、こういうことが根源的にいま問われているのではないかというふうに思います。  たとえば瀬戸内海を見ましても、非常にたくさんの海域が埋め立てられている。生物生産にとって、沿岸域というのはきわめて重要なところであります。たとえ廃棄物流入というようなものが全くないとしても、沿岸域というものはモ場とか干がたとかいったものがあって、つまり干がた、モ場というのは単に沿岸だけではなくて、ある程度の沖合い生物資源にとっても重要な場所であります。つまり沿岸域というのは、そこに住んでいる生物だけにとって重要なのではなくて、そういうかなり広い範囲の生物資源の生まれる、あるいはまたそこで育つ、そういう肝要な場所になっているわけであります。それがこのモ場であり、干がたであるわけであります。ですから、そういう重要な場所を物理的になくしていくということは、沿岸における生物生産というものをどんどん弱めていく、こういったことになるわけであります。  そこで私は、先ほど申しましたように、この経団連パンフレットにおきまして、さらに現在の五万ヘクタールから八・五万ヘクタールを造成しよう、こういうのは非常に問題だというふうに思います。現状でももうすでに沿岸における生物生産限度を割ってしまっている、こういう状況のもとで、さらに沿岸域形状変更していけば、わが国沿岸域はもはやそういう生物を生産する場ではなくなってしまう、しかもそういう環境変更というものは、将来の時点において回復が不可能なわけであります。回復可能な変更であればともかく、回復が不可能な状況変更なわけであります。そういった意味で、この沿岸域というものをどういうふうに利用していくか、こういったことが一つの大きな今後の問題になると思います。  それから、沖合い域の問題にしましても、四年前の海洋審答申におきましては、もっぱら開発可能性の問題が強調されております。つまり現在の漁獲の何倍という漁獲世界の海からとることができるのだという立場に立って書かれているわけでありますけれども、しかし御承知のように、現在、特に一つ海洋における国際関係が非常にきびしくなってきたということ、それからまた、方々におきまして過剰努力、つまり乱獲現象というものが、鯨のみならず、マグロとか底魚とかいったものにどんどん起こってきているという実態、こういったものからいって、その何倍もいまからとれるといったような保証ははなはだ疑わしいと思うわけであります。  そういった意味から、やはりそういうことを全体的に考慮して、海の単なる開発ではなくて、管理をしながら開発する。もちろん水産資源は当然利用すべき対象ではありますけれども、それを管理するという観点を入れながら開発していく、こういう方向に今後の海洋開発方向を考えていかないと、この過剰努力によって海の生産力はますます下がっていくのではないかというふうな気がします。  そういったような全体的な観点から、現在、先ほどの操り返しになりますけれども、海に対する人間の介入のしかた、その根本的な問題を十分に明らかにして、そしてそういった観点から海というものを、工業優先ではなくて、人類の福祉のために利用する、そういう方策を立てていくことが現在最も大切なことではないかというふうに考えております。  以上で私の意見を終わります。
  4. 石野久男

    石野委員長 ありがとうございました。  次に、佐々木参考人にお願いいたします。
  5. 佐々木忠義

    佐々木参考人 御紹介を受けました佐々木でございます。  海洋開発ということばがよく使われますけれども、海洋開発ということは一体どういうことか、諸先生を目の前にまことに恐縮でございますが、私は海洋開発ということを端的に申しますと、人類が永遠に生存をしていくために海洋を創造することである、つまり、いま川崎先生お話にもありましたけれども、創造していくことであるということばの中には、十分なる調和を持たなければ創造ができないわけでございますから、一口で言うとそういうものが海洋開発であると思います。  ところで、現在世界に三十六億人の人が住んでおりますが、その人たち海洋から年間どれほどの恩恵を受けておるか、大ざっぱに三つのカテゴリーに分けて考えますと、第一は石油、天然ガス等を含む鉱物資源が四兆五千億円、海水の中に大体六十種類ぐらいの元素が溶け込んでおりますが、それをどれほど回収しておるかというと、まず塩です。これは厳密には元素じゃございませんが、世界の塩の年産は九千万トンで、三分の一の三千万トンは海水からの恩恵に依存しておる。不幸にしてわが国は、世界四十カ国から塩を輸入しております。年間需要量が五百万トン、一年に一割、五十万トンずつ伸びております。それから化学工業医薬品等に欠かせない臭素、沃素、軽金属工業で欠かせないマグネシウム、これは圧倒的に海水から恩恵を受けておる。それから肥料源として欠かせないカリ塩、これも海水からたいへんな恩恵を受けておりまして、いま申しましたのが大体五種類でございますから、まだ五十数種は手がつけてない。その五種類だけで年間どれくらいかと申しますと大体二兆一千億円くらい。それから何といっても一番大きいのは水産動物たん白海洋生物資源と申しますか、これは大体六兆七千五百億円で、この三つを足しますと大体十数兆円、この数字が三年をピリオドとして倍増しております。  以上がごくありふれた三つの範疇について申したわけでございますが、皆さん方すでに御承知のように、海洋自然が持っておるエネルギー源、すでに人類の役に立てておるものは、潮の満ち干を利用した潮汐発電、フランスでは現に年間五億キロワットアワーの電力を、二十四基の一万キロワットの発電機海底十メートルに並べて利用しております。  それから、海面には波がございますから、波というものは海水上下運動で、これを回転運動に直すしかけを持ったブイ海面に浮かべれば、一つブイから六十ワット出せる。現在、日本じゅう航路標識二百は、もう海底ケーブル電気をとっておるのではございませんで、波のエネルギーで灯をともしておる。函館、東京湾、鹿児島の灯台の灯も、波のエネルギーで実は灯台の灯をともしておるわけです。  それから、海水は大きな水のかたまりで、そこに熱のエネルギーがございますから、これをうまくくふうして取り出しますと電気を起こすことができる。これは温度差発電という形で研究がすっかり完成をして、西アフリカの象牙海岸のアビジャンでは、七千キロワットの発電機を設置しておる。そういったような、すでに三つの全く公害を伴わない、きれいなエネルギー源として実用化をされておるという問題がございます。  ところで、現在、年間七つの海からどれぐらいな水産動物をとっておるかと申しますと、大ざっぱにいって、若干人によって数字が違いいますが、六千数百万トン、これを三十六億人で割りますと一人一日平均値として五十グラムのたん白になります。人間基準量は八十グラムでございますから、はるかに及ばない。その上摂取するアンバランスがございまして、世界じゅうで潤沢にとっておるのは大体十億人といわれております。あとの二十億人はたん白欠乏症、残ったものの中の数百万人は、たん白欠乏症が高じまして脳神経障害末梢神経障害、あすの命が保証できない、こういうような現状でございます。  われわれはと申しますと、だいぶ食生活が向上いたしまして、現在平均七十五・七グラム、その中で動物たん白はどれほどとっておるかというと二十九・五グラム、その二十九・五グラムの中の七五%は水産動物日本人世界で一番たくさんお魚を食べます。昭和四十五年には、七十万トンの輸入量を加えまして一年間日本人は九百四十万トンの魚を食べましたが、四年後の昭和五十二年には千二百三十四万トン要るといわれております。供給の見通しが九百四十五万トンでございますから、二百八十九万トンというおそるべき不足を来たすわけであります。  では、この動物たん白不足を一体どうして切り抜けるか。世界的にすでに畜産はとっくの昔頭打ちでございまして、これは幾らくふういたしましても、三々五々小さなやり方でやればできますけれども、一つの国の施策として打ち立てるというようなことは、原理的にできないものでありまして、内容は御質問があればあとで御説明をいたしますが、海洋汚染されなくても、大体日に日に魚の姿が薄れ行きつつありますから、あと十年が限界であろう。一生懸命深海漁場開発するとか、未利用資源利用するとか、いろいろ大きな問題が残っておりますけれども、現状のままでは大体あと十年。そこへ持ってきて、いまのように汚染がどんどん進行いたしますので、われわれは今後一体どうしたらいいかという、非常に深刻な問題をかかえておるわけでございます。  最近、新聞でちょいちょい海底マンガン団塊をとるというような話がございますが、こういった世界的な動き。マンガンに限定いたしませんが、海底に眠っておる鉱物資源の採取については、先進諸国は一刻を競ってその技術開発を進めております。何となれば、今後の海洋開発は強いものがち、早いものがちということは絶対許されなくて、国連の中で討議をしていく。これも世界的な一つのルールであります。したがいまして、将来は、海底マンガン団塊を発見した、そこへ行ってかってにとるというわけにいきませんので、国連資料を提出し、国連の中のコミッティーが、各国の資料を比較検討されて、なるほど日本のものは一番よくやっておるといったことになれば、そこの鉱区権日本に与えるといったような形になるのではなかろうか、そういうようなことがございますので、先進諸国は競って海底鉱物資源調査、探査を進めております。  それから、真水が非常に足りませんので、雨とか雪という形で天与真水は来る年も来る年も一定でございます。人間はどんどんふえてまいります。昨年、国連が発表いたしました七一年年鑑を見ますならば、二〇〇〇年になりますと世界人口が六十五億、こういうふうに国連が発表しておりますから、これはおそるべき数字だと思うのですが、真水がそういうわけで足りません。お互いのぜいたくは進んでまいりますので、この真水を一体どうして十分にサプライするか。いろいろなことが考えられ、研究されておりますけれども、現段階では海水淡水化以外に方法がない。そういったような淡水化という問題も、これはやはり海洋開発の中の大きな分野であろう。  それから、何と申しましても、だんだん週休二日制になりますけれども、世界人たちが健全なるレジャーをやる場所は、いまのところもう海しか残っておりません。山もおかも満ぱいでございます。その海も、プラスチックのヨットで走るとか水上スキーを楽しむといったような、平面二次元の海ではなくて、もうすでに海の中、海の底、すなわち三次元の立体の海が今後の健全レジャーの場になる。そこで、すでにアメリカは、一つの国の政策として今後健全レジャーとして海洋レジャー産業という新たな産業を興して、これはビッグビジネスであり、ビッグサイエンスであり、ビッグインダストリーであるということで強力に進めておりますが、ただ、その場合に非常に感心いたしますことは、すでにケネディ時代でございますけれども、六五年の時点海水を絶対よごしてはいかぬ、よごしたのではレジャーも何もできない、六五年の時点アメリカ世界に公表いたしましたが、海水汚染防止研究、いろいろなレジャーを行なうためには、人工海岸が要りますので、人工海岸技術開発の問題、この二つの大きなテーマのために、六五年の時点研究費も二百億ドル出す、当時のレートでまいりますと七兆二千億円という膨大な金を投入する、そういうことを申しておるようなわけで、決して海をよごしてはならないわけでございます。  ところが、問題が非常に複雑でございまして、一ころ新聞でたいへん騒がれました自動車の排気ガスによるところの鉛、最近はジャーナリズムではあまりお目にかかりませんけれども、世界じゅう人たちが一生懸命お仕事のために車を使います。その排気ガス上昇気流に乗りまして世界じゅうに広がっていく。時間がたちますと、その中の鉛が世界の上に落っこってくる。どのくらい落っこってくるかというと、二十五万トン落っこっている。水銀が大体二十万トン。タンカーあるいは造船所に入る船が修理をするために海水で船を洗ってくる。そういったことで、年間五百万トンから一千万トンの油が世界の海に毎年毎年捨てられておる。こういうような身の毛のよだつような問題がございます。したがいまして、最近海洋汚染問題が非常にやかましくいわれておりますけれども、この汚染の防除、これは徹底的に取り組んでやらなければわれわれは長く生命を保つことはできないのではないか。  ただ、そこで問題になりますのは、国際会議等でもいろいろ議論をしておりますが、人間一人一人がおかします生活公害というものが非常に大きいのです。非常に俗っぽいことばで言いますと、たれ流しでございます。厳重な法規をつくり、厳重な監督をして、元凶を押えられるものは押えなくちゃいかぬ。しかし、人間一人一人を監視することは不可能でございますから、そういう形でおかしておる生活公害については、やはり人間の意識の改造、倫理観の高揚ということまであわせ考えませんと、口を開けば汚染を議論いたしますけれども、私ども大学の学生を相手にしておりますとそういうことを言うのですが、自分たち観光に行くと、目に余る観光公害を平気でやってくる。そういった意味の、社会科教育ということが適当なことばかどうか知りませんけれども、そういったこともあわせ考えて、あらゆる分野から今後絶対に海洋汚染させてはいけない、いまもお話がございましたが、湛水、湖水のようなものは、一回よごしますともとに返りません。海洋自浄作用が行なわれておる限りにおいては、急いで手をつければ自然ときれいな海水になる天与の力を持っております。そういうことを十分勘案をして、あらゆる角度から汚染は徹底的に防除して、そうして資源生物現状をさらにプラスするごとくいろいろな分野研究技術総合開発をして、施策のよろしきを得て、私が冒頭申しました、海洋人類生存のために創造するんだ、環境と一体になって生きていくんだ、こういうことが一番肝心ではなかろうか。  申し上げたいことはたくさんございますが、もし御質問ございましたならば、あとで私の存じております限り申しますので、御質問でどうぞお尋ねをいただきたいと思います。
  6. 石野久男

    石野委員長 ありがとうございました。  次に、佐藤参考人にお願いいたします。
  7. 佐藤任弘

    佐藤参考人 佐藤です。  私は海上保安庁の水路部というところにおりまして、海図をつくるという仕事を通じましていろいろ海底の地質学の研究をしております。きょうは海底の地質学の一研究者として大陸だなの問題につきまして御説明したいと思います。  大陸だなとは何かという問題でありますが、海をだんだん沖のほうに行きますと、大陸のまわりには非常に平坦な地域があります。それがある程度沖合いに行きますと急に傾斜が急になるところがありまして、その傾斜の変わるところまで、これを大陸だなといっております。  この大陸だなの深さは普通二百メートルということをいっておりますが、正確にそれを見ますと、百三十メートルから百四十メートルのところであります。それを二百メートルで代表さしておるわけでありますが、普通、陸上の等高線と同じように、海底では等深線といいまして、地形を等深線で表現するわけですが、そのちょうど切りのいい二百メートルというところで代表さしておるわけであります。この傾斜の急変転を大陸だなの外縁というふうに言っております。これが世界中どこでも百三十から百四十くらいが普通の深さであるということは、これは非常に奇妙なことでありまして、その成因は何であるかということがかなり問題になっておったわけでありますが、これは海面が海の水が少なくなって百三十から百四十メートルくらい下がったときに、その海岸線で浸食されたり堆積されたりしてできたのが大陸だなであるというふうな結論になっております。  それは、そういうようにぐあいよく海面が下がってまた上がるかという問題でありますが、これは地質学的に見ますと、何百万年も昔には南極大陸とかグリーンランド、あの辺には氷はなかったというふうにいわれておりまして、約二百万年以後に地球は大氷河時代に入りまして、そのために海水が氷となって陸上に固定されたために海面が下がったわけであります。それがまた高くなりますと解けて海面が上がるというような形でできたのが大陸だなであります。このために大陸だなの上には海面が下がったときの特徴がいろいろ残されております。  その特徴を一々申し上げることはありませんが、要するにそういう大陸だなを成因から考えますと、大陸だなというのはいま海の底に沈んではおりますけれども陸地の延長であるというふうに結論してよろしいかと思います。単に大陸のへりを海水におおわれた部分であるというふうに考えてよろしいのではないか。そういう観点から見ますと、大陸だなの地下資源の問題、これは陸上と同じような程度に期待してよろしいのではないかと思われます。  しかし、それはことばのあやでありまして、逆に陸上で現在わかっておるそういう地下資源より以上のものを期待することはまた夢ではないか、そういうふうに思います。つまり、たとえば中近東であるとかアメリカであるとか、陸上に非常に大きな油田のあるようなところでは、海底でもかなり大きな油田を期待することはできますけれども、そういうものがないところでは必ずしも期待できないというふうに私は考えます。  しかしながら、陸上で期待できる程度の地下資源というのはこれは開発すべきであると私は考えます。先ほどからのいろいろ先生お話にもありますように、海洋というのはわれわれ人類にとって残された最後の空間であり最後の大陸であるわけでありまして、これを地下資源に限らず開発して人間の発展と幸福のために利用するということは必要だと思います。  ただ、繰り返しませんが、その開発が単に自然を破壊するということでは何にもならないのでありまして、自然と調和して自然をじょうずに利用していくということが、大陸だなの開発にとって一番重要なことだと思います。そのためには、意味をよく知る、大陸だなをよく知るということが必要でありまして、そういう基礎知識があってこそはじめて開発が可能ではないかと思います。  たとえば、一つの例でありますが、関東大震災のあったときに東京の建物の被害が場所によって非常に違っておったということから、いろいろ地盤調査をいたしましたところが、東京の下町には昔の谷がありまして、その谷を埋めている沖積層が非常に軟弱地盤であったということがわかってきております。大陸だなが陸の延長だといたしますと、そういうものが当然海の中にも期待されるわけであります。事実、大陸だなを調べていきますと、そういう軟弱地盤の続きが大陸だなの上には存在しておりまして、東京湾でも伊勢湾でも大阪湾でも、そういうことはすでに確認されております。こういうような地盤の弱いところ強いところがあるといたしますと、そういうところに建築物を建てる、あるいは石油の掘さくを行なうというような場合でも、いろいろ地盤の違いというものが重要になってくるんじゃないかと思います。つまり、こういうふうに基礎的な調査を非常によくして、そしてこの基礎的な知識を持って大陸だなの開発を行なうということが肝要であると考えるわけであります。  実は海上保安庁の水路部では、昭和四十二年から大陸だなの基礎調査と大陸だなの海底地形図の作製という作業を行なっておりまして、地形とか地質、地磁気、重力というような、現在考えられる総合的なすべての調査を行ないまして、大陸だなの地図づくり、海の地図づくりという仕事を行なっておりますが、これはこういう科学的な基礎調査をもとにして、調和ある海洋開発、大陸だなの開発というものに役立てたいと考えているからであります。  以上です。
  8. 石野久男

    石野委員長 ありがとうございました。  次に、星野参考人にお願いいたします。
  9. 星野通平

    星野参考人 御紹介にあずかりました星野です。多少抽象的なことでありますけれども、きょうのことに関連して三つのことを話してみたいと思います。  一つは、海洋政策というか、そういう問題に関連したことであります。日本列島が海洋日本とか海国日本というようなことばで呼ばれておりますけれども、そういった自然的な位置というものと比べまして、政策というものが非常に重要な問題だというふうにふだん考えております。御存じのように、徳川の鎖国というようなことがありまして、日本海洋の問題はいろいろな意味で非常におくれをとっております。日本の自然的な位置というものはずっと昔から変わらないわけでありますから、そういうような政策というようなものが非常に大きな影響力を持つということの意味において、海洋日本の姿というものはどうあるべきかというようなことを十分考えないといけないんじゃないかというふうに考えます。  たまたま最近ある会社のPR誌を見ますと、自民党に海洋議員連盟というようなものができたのだそうでありますけれども、その設立趣意書を見ますと、「日本は「海洋国家」の原点に立ち、」云々というような文章がございます。そういう場合の海洋日本というものはどういう姿なのかというようなことをいろいろ考えないといけないんじゃないかというふうに考えます。  先ほど申しましたように、ただ自然地理的に日本が海に囲まれているということだけではあまり意味がないことだろうというふうに思います。いまの自民党のあれを見ますと、その中に多少ぼくにはひっかかる文章がございます。たとえば「国家の安全保障の基本に海洋の問題があり、その延長に政治、経済、外交があり」云々というような文章がございます。われわれが知っている限り、海洋というのが非常に大きく取り上げられたのは、昭和の二けた、いわゆる大東亜戦争の始まる前のころだろうと思います。非常にたくさんの海洋に関する本などが出版されております。いわゆる南進政策というふうなことばで代表されるような時代であります。そういうような考え方は必ずしも正しくないんじゃないかというふうに私は考えます。やはり経済的あるいは文化的な国民生活の向上に海がどれほど適切に利用されているかというような立場からの海洋日本というようなことを考えないといけないんじゃないかというふうに考えます。  最近、東京ふるさと計画というようなことばもございますけれども、われわれは、人類の発生、あるいは生物の発生というようなところまでさかのぼっても同様でありますけれども、日本では特に海はふるさとというようなことを、これはスローガンだけでなくて、われわれの日常の信条的なものにまで高めないといけないんじゃないかというふうに感じております。そういう意味において、われわれは政策的なものとして、やはり世界に共通し、しかも非常に日本的なものを考えないといけないんじゃないか。たとえば佐藤さんから大陸だなの問題が出ましたけれども、大陸だなというような問題も、やはり日本の大陸だなはどうなっているのかというような立場からわれわれは考えないといけないだろうと思います。  日本海洋開発というような場合に、やはり非常に狭い大陸だなとあわせて深海の開発というようなものをすぐ考えないといけないんじゃないかというふうに考えます。こういう深海の問題に目を向けているのは、たとえば最近はやりの石油開発というような観点から見れば、日本の資本の会社というよりはむしろ外国の会社、たとえばシェルと三菱が一緒にやっている西日本石油というようなところが非常に深いところまで目をつけて、多分鉱区の問題を云々しているというようなことは非常に参考にしないといけない問題じゃないかというふうに考えます。  それから、最近では海洋資源というとすぐ石油ということばでいうわけですけれども、日本海底資源を考える場合に、やはり石炭の問題を十分考慮する必要があるだろう。ぼくはいまの日本の石炭の問題というのは、あたかも米のような問題じゃないか、エネルギー資源の問題として特に非常にカロリーのいい、埋蔵量の多い海底炭田の問題というのは、われわれは将来十分考えないといけないんじゃないかというふうに考えます。  それから二番目は、組織の問題でありますけれども、これは自民党の海洋議員連盟の案で見ますと、海洋省を設立するのだというようなことが書かれてあります。これはいずれそういうようなことが施行されるのかもしれませんけれども、少なくとも現在の時点で考えると、非常にいろいろなむだが多い、いろんなところが同じような仕事をやっている。これは皆さん十分お気づきだろうと思いますけれども、そういうような点を十分調整する必要があるんじゃないかというようなことを考えます。  それからもう一つは、科学と技術の問題、この委員会科学技術委員会でありますけれども、科学と技術というのは非常に異質なものだ。科学というものを行政で縛るということは非常に無理があるだろう。海洋開発の場合にも、科学の重要性、独自性、そういうようなものを十分考慮してやらないと、なかなか基本的なところで進まないんじゃないかというふうに感じます。いろいろ学問あるいは技術の発達が未分化の時代には、そういうものがかなり一緒でもやれただろうと思います。たとえば気象庁なんかの古い昔の時代はそういうものだっただろうと感じますけれども、少なくともこういうふうに進歩してくると、そういうものが非常にむずかしくなって、現業官庁の仕事のやり方がいろいろと問題になってくるんじゃないかというふうに考えます。そういう研究所あるいは研究機関の姿はどうあるべきかというようなことを十分考慮しないと、能率ある海洋開発というものはできないだろうと感じます。  それから三番目は、これはここの委員会のテーマでないかもしれませんけれども、やはり根本になるのは人づくりだろうというふうに感じます。海洋に関する教育というのは、おそるべき程度の低いものだとぼくは思っております。一つは、学校教育におきましても、いままで海洋というのは地学という分野で、特に高校で多少まとめて教えていたわけでありますけれども、本年度から地学というものは選択になりまして、ぼくの知っておる教科書の例で申しますと、いままで地学の教科書十万部くらい出していた会社が六千部くらいしか採用にならない。つまり選択になって、地学というような非常にややこしいものはやる必要がない、あるいはやれないというようなところで、各学校ともそういうものを選ばないというような現状になっております。  この教育の問題は、かつてアメリカがスプートニクショックのとき、そのあと非常に本気で取り組んで、数学の問題とか理科の問題、いろいろなことをやって、カリキュラムの編成というようなことで努力した結果がありますけれども、やはり海洋の問題に関連してもアメリカではいろいろ考慮しているようであります。これは大学の構造の問題、そういうようなことを別としても、特に底辺といいますか基礎というか、そういうようなところで、もう少し海洋の教育というものが十分行なわれないといけないだろう。現在、地学の教科書なんかでも、海洋のことが書いてなければないほどいい教科書である。何となれば、海洋というのは全く教える手段のない教科だ。天文とかあるいは地質というようなことであれば、天文を観測したり山へ行って地質を調べたりというようなことでありますけれども、海洋というのは、実際に海に行って海を観察するというようなことは、現状ではほとんど不可能なことでありまして、この辺の問題を十分考えないと、海洋開発というものは、お題目を並べることになるだろうというふうに考えます。  もう一つは、学校教育に対応した社会教育の問題であります。たとえば、たまたま最近行ってきた伊豆の新島なんかでも、いま子供が水泳を覚えるのは学校のプールだというようなことで、かつては、かってにふんどしを締めて海へ行ってひとりでに泳ぎを覚えたというようなことでありますけれども、いまは子供の安全とかそういうようなことが主体になるだろうと思いますけれども、プールであの島の子供たちが泳ぎを教わっておるというような現状であります。相変らず、板子一枚下は地獄だというような通念が広くはびこっているだろうと思います。こういうようなものを打破しない限り、ほんとうの海洋開発というものはできないだろうとぼくは思います。  よくいわれることですけれども、日本の文学あるいは芸術、そういうようなものにほんとうの海洋の名を冠したものが少ないというようなことが古くからいわれております。こういうような一番もとになるところから、われわれは海というものに親しんでいかないと本物にならないのではないかというようなことを感じます。  以上であります。
  10. 石野久男

    石野委員長 ありがとうございました。  次に、皆川参考人にお願いいたします。
  11. 皆川洸

    皆川参考人 御紹介にあずかりました皆川でございます。  私、専門は国際法でございまして、海洋開発に関する諸問題が論議されるに関連いたしまして、国際法の立場から二、三の事柄を述べさせていただきたいと思います。  国々の海洋開発、それに関連いたします諸活動を支配します国際法の原則あるいは規則は、御承知のように一九五八年のジュネーブ会議におきまして採択されました海洋法に関する諸条約の中に盛り込まれ、表現されておるわけでございます。公海条約、領海条約、漁業保存条約、大陸棚条約がそれでございます。いろいろ新しい問題が出てきておりまして、それを審議し、また、これらの諸条約がすでに取り扱っておりまする広範囲のいろいろな問題をあらためて再検討するということで、第三次の海洋会議の開催が予定されておるわけでございますが、この席で、それに関係するいろいろな問題をくまなく洗うことはとうていできませんので、二、三の事柄についてお話し申し上げたいと思います。  一つは、国際法上、国々は十二海里をこえまして何らかの主権的な、あるいは排他的な権利というものを一方的に行使することが認められているのかどうかという問題でございます。もう一つは、先ほどから問題になっておりますが、大陸だなというものの境界線を一体どのようにして引くのかという問題でございます。第三番目には、海底開発可能な限り国際法上どこまでもその国が管轄権を及ぼすことができるかどうかという問題でございます。  第一の問題でございますが、十二海里というものを加えまして、何らか国が一方的に排他的な管轄権を行使する。たとえば漁業専管水域というようなものを設定するというふうなことでございます。これは本年の二月に国際司法裁判所が漁業管轄権に関する事件を取り上げました。これは御承知のようにイギリス対アイスランド、西ドイツ対アイスランドの事件でございます。これはアイスランドが従来十二海里の排他的な漁業水域から、さらに五十海里まで一方的にそれを広げたということにつきまして、イギリス並びに西ドイツとの間に紛争が生じたのでございまして、この紛争が国際司法裁判所にかけられたわけでございます。国際司法裁判所は、そうしたアイスランドの一方的な拡張措置というものが、国際法上有効であるとかないとかいうことにつきまして、中身に立ち至った決定はいたしておりません。単にそういった事件を取り上げて、管轄権を有するという判断を示しただけでございます。現在の段階ではそうでございます。  しかし、この事件におきまして、たった一人反対意見を述べましたメキシコの判事と結論におきまして裁判所の見解に同意いたしましたが、個別の意見をしたためましたイギリスの判事が、多少ともこの点で内容に触れました。結果的には全く正反対の見解を述べているのでございます。イギリスの判事の見解によりますと、国々は海岸から十二海里をこえて何らか排他的な権利というものを主張した例はあるけれども、しかし、そういった主張が一般的な承認を受けておるわけではない数世紀間にわたりまして発達してまいりました海洋国際法というものは、依然として領海、公海の区別というこういう基本的な前提に立脚しているのであって、このような区別は決して否定されておらない。そして、領海の幅をどの程度にするかということにつきましては、御承知のとおりいろいろ意見の相違があるわけでございます。いろいろ意見の相違があるわけでございますが、沿岸国が領海というところで主権を持っておる。したがって、また漁業の権利を含むような排他的権利を行使することができるのに対しまして、領海外の区域、定義の上で公海ということになるわけでございますが、ここでは主権を持っておらない。したがって、どんな種類の排他的な管轄権も持たないものだ。これはジュネーブの公海条約などにおきまして、はっきりと認められているところである。そして、同じくジュネーブの領海条約の中で接続水域という制度が認められておりますが、この接続水域ということは、排他的な漁業管轄権は全く関係のないことであるということをイギリスの判事は指摘しております。これは、きわめて限定された目的のために、領海に隣り合う公海上の水域で一定の管轄規制の権利を行使することが認められている場合でございます。これは漁業とは関係がない。ところが、ジュネーブの条約によりますと、接続水域というのは十二海里をこえてはならないということになっているのでございまして、したがって限定的な管轄権を行使する接続水域が十二海里をこえてはならないのですから、そこからもっと包括的な権利を行使する領海というものが十二海里をこえるべきでないということは論理上当然に引き出せるというふうなことをいっております。また、大陸棚条約というのがございまして、沿岸国が大陸だなに対しましてある目的のために主権的な権利を行使することが認められておりますが、この大陸だなの制度も直接には漁業とは関係がない。そこに見出される天然資源開発というふうなことのために沿岸国は何がしかの権利を行使できるわけでございますが、そこにいう天然資源というのは、生物資源に関する限りスイミングフィッシュといいますか、泳ぐ魚は含んでいないんだ、これははっきりと、大陸棚条約を結ぶときに了解されたことである。したがって、大陸だながその上部の水域にあるからといって、その上部の水域で漁業を規制すると申しますか、管轄権を行使するということの理由とすることはできないんだ、こういうことをいっておるわけでございます。  そういたしますと、少なくとも現行の国際法上排他的な漁業の管轄権を有効に主張するためには、どうしても領海を広げるという形をとるよりしかたがなくなってくるわけでございます。これは領海を拡張するということについて、ほかの事柄ではほとんど利害関係を感じていない国がなお領海の幅を広げようとする措置をとってきたというのは、実はこうした国際法の状態というものを前提としてである、こういうことをいっておるわけでございます。ところが、領海と申しますと、英語ではテリトリアルシーと申しまして領土という陸地と何らかの関係がある。つまり領土に付属いたしまして、それを洗う一定の範囲の海の部分だというふうに考えられております。ところが、どんどん陸のほうから離れまして広いところまで領海というふうに主張するということは、実はこの領土とのつながりが非常に薄くなるわけでございまして、そういう自然の限界と申しますか、そうしたものをこえる非常に不合理な主張ということになってくる。  そこで、領海の権利というものと漁業の権利というものと切り離すというふうな考え方が出てくるのでございまして、これが一九六〇年の第二次のジュネーブ会議におきましてこういう提案がなされたのでございます。つまり領海と、それに加えてもう一つ排他的漁業権が行使される水域とを沿岸国に認めるという考え方です。しかしながらこの提案は受諾されなかったのであります。したがいまして、この点で従来の国際法というものにおける変更は起こっておらないというふうにイギリスの判事は主張したのでございます。これは、現在の国際法では十二海里というものをこえまして一方的に沿岸国が排他的権利を行使するということは認められないだろう、こういう結論でございます。  ところが、これに対しましてメキシコの判事が反対の意見を述べました。過去におきまして漁業水域の限界というのは、沿岸国の持っておりまする利益を考慮しないで設定された。遠洋漁業国の支配的な影響力のもとで押しつけられたものである。そういった国はほかの国の沖合いのできるだけ近いところまで来て漁業をしてしばしばその区域を荒らし、それから他の区域に移っていく、こういうことである。だから漁業水域の限界というものは、領海についてどうこうするというふうなことは一応無関係沿岸国の国民の保護とか利用とかいうそういう利益を考えてもう一度検討し直さなければならない、こういうことを主張しておるのでございます。そうして、国際がだんだんと発達していく中で、パトリモーニアルシー——父祖伝来の海というように訳されておりますが、父祖伝来の海というそういう考え方ができたということを主張しております。  父祖伝来の海というのは一体どういうのかと申しますと、沿岸国が領海からその主権的権利を行使いたしまして、その経済発展とその国民の生計が依存する資源を保護するために一方的にきめたその範囲までの海である、こういうのでございます。今日におきましてメキシコの判事の主張するところによりますと、領海を十二海里まで拡張する権利というものは、もうすでに一般的に承認されておる。しかしながら、これよりもっと大切なことがある。それは領海をこえて何らか沿岸国が漁業について排他的なあるいは優先的な権利を持つ水域といたしまして、ラテンアメリカなどの国々が二百海里まで管轄権を行使しているという事実、これに注目してほしいというふうなことをメキシコの判事は申しました。こうしてこの判事の見方によりますと、古い慣行と不公平な伝統的状態はやがて消滅するであろう、優越した力の主張によってかちとられた不当な特権は清算されなければならない。それはどういう形で清算されるか。十二海里まで領海と二百海里をこえないいわゆるパトリモーニアルシーというものを沿岸国にひとしく認めるという形でこれが実現されるのだ、こういうことを主張したわけでございます。  これは前のイギリス判事とは全く違った結論でございまして、十二海里というものをこえまして、二百海里までを限度といたしまして漁業のために排他的な優先的な権利を行使する水域というものが、それぞれの沿岸国に認められるのだ、国際法がだんだんに発展していく中でそういったことがすでに認められている、こういう主張でございます。  このような二人の判事の見解は、あたかも現在、国際社会におきましてこういった考え方が二つ対立しているわけで、それをこの二人の判事がこの裁判所で何か代弁したような形になっておるわけでございます。  いろいろむずかしい問題がございまして、コメントはつけ加えませんが、一つにはやはりこういうことだろうと思います。イギリスとノルウェーの漁業事件のときに国際司法裁判所が申したのでございますけれども、海の限界を画定するということは常に国際的な面を持っている。その行為は沿岸国がやるわけですから一方行為になるわけですが、しかしほかの国に対する関係において、その効力というものは国際法に依存しなければならないということを、国際司法裁判所は最近のイギリスとノルウェーの漁業事件で述べておるのでございます。  ここでは何も国際法がないところに新しい国際法をつくるということじゃないのです。国際法があるのであって、それを変えるということが問題なのであります。変えるということは一方的にはできないのであって、やはり世界諸国民の間の合意というものを体して行なわれなければならないというこの原則はやはりくずされてはならないというふうに思います。  第二には、現代における諸国民の海洋利益、これはさまざまな利益として考えられているのでありましょうが、それを実際的に調整するための一つの指標として持ち上がっておりますのは、やはり十二海里という数字であるということでございます。  第三番目に、それをさらにこえた水域において、国々の排他的な利益の浸透というものを認めるのか、それとも一九五八年、漁業保存条約におきまして確立されたような、ああいう文字どおり国際的に漁業と申しますか、海の生物資源を保存するための国際的な強力なワク組みというものにもう一度血を通わせるかという、そういう選択が問題になっていくだろうと思います。  なお、大陸だなの境界をどういうふうにして引くかというふうなことは、御承知かもしれませんが、北海大陸棚事件という国際司法裁判所におきまして扱われた事件がございます。これはいろいろ問題があると思いますが、なおその裁判所の見解にも盛られていることでございますけれども、開発可能な限りしばしば、先ほどからも言っておりますが、深海底と申しますか、オーシャンデプスという、そんなところまで国々が管轄権を及ぼしまして、文字どおり海底を分割してしまうというふうなことが現在の国際法で認められるだろうかという問題がありますが、時間の関係もあるようでございまして、一応この点でまた触れるような機会があれば、そのときにお話し申し上げたいと思います。  終わります。
  12. 石野久男

    石野委員長 ありがとうございました。  次に、吉田参考人にお願いいたします。
  13. 吉田耕造

    吉田参考人 私は、理学部の地球物理学教室というところで、海洋物理学と申しまして、たとえば海流であるとか、あるいは波であるとか、そういうものの、それも理論的な研究及び教育に携わっているものでございます。そういう立場から、一、二、きょう意見を申し上げたいと思うのですが、先ほど佐藤さん、それから星野さんのお話にもちょっと出たのですけれども、海そのものをよく知らなくちゃいけない。海のことはよく知られているか、あるいは知られていないかと申しますと、これはそのどちらでもないので、全然わからないわけでもないし、しかも非常によくわかっているわけでもない。その中間をわれわれが基礎研究として少しでも知っていこうという努力を続けているわけでございますけれども、少なくとも基礎的な研究をやっている研究者というのは、必ずしも特定のことに役立てようと思って研究しているのではないのですけれども、その結果が役立つということを知っているし、それから、少しでも知れば知るほど役に立つものである。しかも、知ると  いうことは非常にむずかしいことで、なかなか容易なことじゃない。たとえば非常に具体的な問題で、海洋開発とかあるいは何か汚染を防ぐとか、そういう問題があった場合に、それでは調査をすればいいということを非常に簡単にいわれることがあるのですけれども、非常に困難な、時間も労力もかかる仕事である、そういうことを強く認識してものごとに当たらなくちゃいけないとまず思うわけです。  そこで、海洋開発というものの意味、これはいろいろな考え方があると思うのですけれども、いま申し上げましたような海洋そのものの理解ということに対する正しい認識に立ちますと、われわれが手を加えて人類の福祉のために海を利用するとか、あるいは先ほど言われましたように、海を創造するとか、そういうことをするのは、同時に海そのものを知るということをその計画の中にきちんと入れていかなくちゃいけない、そういうことはわかり切ったことのようでありますけれどもなかなか実行はされてなくて、それも日本の場合、特に、たとえばアメリカあるいはその他の国際的な努力の方向に比べますと、非常に違っている、そういうことを絶えず痛感しておりますので、きょうはあまり抽象的なことを申し上げましても非常にわかりにくいので、少し具体的な話に移りたいと思います。  第一は、一九六六年に国連の総会で資源開発に関する決議が採択されまして、そしてすぐに、それに対して、海を知らなくちゃいけない、そういう海の科学を推進するという方策をつくるために、学術関係委員会に諮問があったわけです。それで六七年、六八年と国際的なそういう研究委員会がございまして、私もその幾つかに出席したのでございますけれども、要するに徹底的に、いままでどういうことがわかってどういうことがわかってないのだ、そして人間の役に立てようというようなことを考える場合に、一体、科学はどういう方法でわからないことをわからせるようにみなで協力して努力しなければいけないかということを非常に慎重に議論いたしまして、何回も会議を繰り返して、そしてその結果、これはユネスコですけれども、国際海洋研究の長期拡大計画というものをつくり上げて、どういう研究を最も優先すべきか、もともとそういう何を優先するかということは非常にむずかしいことでございますけれども、一応そういう人間の福祉ということを頭に置いた上で、どういう研究を基礎的に進めていかなければいけないかというような優先的なものをきめていく、そういうことで計画ができまして、それを実際に実施していく立場で国際海洋研究の十年計画というものが国際的にでき上がりまして、これは非常にアカデミックなものでございますけれども、すでにアメリカが一番進んでおりますものですから、いま一番アメリカが率先してやっておりますが、やがて国際的に協力研究が非常に大きな計画として進むようになると思います。  いま申し上げましたのは、そういう資源開発の問題に対していかに基礎的な科学研究というものを推進するための準備を国際的にやっているかというお話を申し上げたのですけれども、さらにその準備というのがかなりございまして、たとえばこれは一九六六年にアメリカが出しているものですけれども、「海の有効な利用」というレポートがございまして、これなんかには、普通そういうテーマで日本なんかで何かレポートをつくりますと、基礎研究というのは、環境調査が必要であるとか、あるいはいろんな官庁が協力して組織的に調査をすべきであるとか、あるいは測器の開発が必要であるとか、そういうことで済ましかねないところを、非常に基本的な、われわれがどういうむずかしいところに立っているかということから、学問的に申しましても第一線の非常にきちんとした記述がなされております。  さらにその前に、一九六〇年にすでにアメリカでは十年計画というものが立てられておって、その中で基礎研究というものが非常に重視されて、その後六一年にケネディの教書が出て、ますますアメリカでは非常に海洋研究というものが進んで、それがいまとなって非常に日本海洋学との間に差をつけたという結果となってあらわれております。  これに対して日本はどうかというと、確かに海洋開発をいろいろ振興する途中において海洋環境調査というものが必要であるということはうたわれておりますし、それはいつも当然いわれることでありますけれども、実際には基礎研究を推進する方策というものは十分立てられていない。そして、たとえば人材を養成するといっても、大学を考えてみると、海洋工学、テクノロジーあるいはエンジニアリングのことは非常に強く叫ばれますけれども、実際それと一緒に進まなければいけない海洋そのものの理学的な基礎研究であるとか、あるいはバイオロジーであるとか、いろんな基礎研究のことが少し軽視されていることがあると思われます。これはもちろん科学者自体にも責任がございますし、問題はいろいろあるのですけれども、基礎研究というものを、何か日本では、それが実際に結びつかないものであるとか、どうせすぐには役に立たないとか、あるいは非常に理論的なものであるとか、部屋の中でやるものであって、あれは海そのものではないとか、いろんな誤解があってのことだろう、そういう面もあるだろうと思われます。  その次は、いま言ったことは心ずしも海洋開発じゃなくて、一般的にも、基礎研究と、それからそういう具体的な、何か手を加えるというような問題に対して起こることでございますけれども、今度はたとえば海洋開発で、深海に構造物をつくる、そういう問題が起こったといたしますと、どうしても、その深海で一体流れがどうなっておるのだろうかとか、あるいは水温がどのぐらい冷たいのだろうかとか、あるいはそういうものは変動するのだろうかとか、どのぐらいの危険があるのだろうかとか、いろんなそういうことを調べなくてはいけない、そこで調査をしろ、そういうことになるわけであります。  しかし、その調査と申しますのが、先ほど申しましたように、そう簡単なことじゃないので、第一、たとえば流れというのは非常によく変動するものだということがよく知られております。しかも、たとえば海底にものを置くとすると、海底に近い、それこそ一メートルとか十メートルとか、そのぐらいの非常に薄いところに、境界層、つまり非常に海底に接した、その上の水とは違う層があるということが最近発見されておりまして、ともかく機械をそこに長く置いて、そして長く続けて観測する。たとえば日本なんかでは、そういう場合にたいてい一週間とか二週間ぐらいどまりですけれども、いま一番進んでいるところでは、一月とか一年とか、そういう間続けて置いております。それで、たとえば黒潮の底にどういう流れが流れているか、これは、たとえば黒潮が冷水塊が起こる場合に大きな変動をしますけれども、それの機構を知る上に非常に大事なことですけれども、日本ではまだちゃんとはかったものがない。それを最近、一昨年ですけれども、アメリカ海洋学者が来て、そこに大体四カ月、測器をたくさん置いてはかった、そういうことはございます。  これは、そういう意味日本がおくれているということですけれども、先ほど申し上げました海底に接した非常に薄い層というものも、これは海洋開発のためとか、あるいは海流の変動の研究からそういうものが見つかったのではなく、深い海で初めて潮汐の測定をするという別の基礎研究の副産物として見つかったわけで、基礎研究というものはそういうものであろうと思われます。あまり目先のことで役に立たせるために性急にやって、長期的な視野を十分に持たないと、海洋開発についても十分な効果があがらないだろう。これは非常によくいわれることですけれども、実際に計画の上で、そういう組織的な考えに基づいて計画されているかどうか非常に疑問に思われるわけです。  特に、先ほどもちょっとどなたかおっしゃいましたけれども、日本では海洋の場合、かなり特殊の事情があって、大学というものがわりあいに数が少なくて、いろいろな官庁、気象庁とか水路部とか水産研究所とか、そういうところが昔から海洋研究調査を担当してきたわけでございまして、何か国際協力があるとか、あるいは研究プロジェクトがあると、そういうところで調査すればいいということで、いままでほとんどそういうところが引き受けてきて、大学はあまり大きな働きをしていなかった。  ところが最近、だんだんそういう調査と申しますか、研究それ自体が、ただ昔のように海のことを何も知らないで船を出して探険してくるようなそういうものではなくなって、だんだんとはっきりした目的を持って、そのために特殊な方法を使って、それも船だけではなく、いろいろなものを使って調べなければいけない、つまり実験的な要素を持つようになって、これは、ただ定型的な、きまった形の調査をしただけではとうてい間に合わない時代になってきております。  そういう意味で大学——大学に限らないのですけれども、われわれがどういうことをしないとほんとうのことが見つからないか、やはりほんとうのものが見つからないとほんとうは役に立たないので、しばらくの間はいろいろなことに役立てることはできるかもしれませんけれども、結局われわれが海に手を加えて何かしようとした場合に、 ほんとうに成功に導くためには、そういう息の長い基礎の研究というものを常時行なっていないとできない、そういうことを再び申し上げたいと思います。  たとえば、一昨年起こりました異常潮位なんかの場合でも、そういうことでいろいろな問題がございますが、きょうは時間がございませんからお話しいたしませんが、つい先週くらいに、朝日新聞でしたか、地震研究所の上田誠也さんが、これは地球物理をやっておりまして、私たちの仲間ですけれども、非常にりっぱな仕事をしておられる方ですが、基礎研究のことを書いておられまして、海底開発に関連をしての話でしたけれども、アメリカで深海の掘さくのプロジェクトというのがございまして、非常に大きなプロジェクトですけれども、それをやるのに、ただ海底開発をするのだからといっても、海底の起源そのもの、海がどうしてできたか、どこの海がどういうようにできたか、世界の海がどうしてできたかという、そういう海底の起源のことから徹底的に調べていく、そういうフィロソフィを持ってそういうプロジェクトを進めているということで非常に感心したということを書いております。あるいはアメリカの「サイエンス」という雑誌に、日本の非常に大きな発展というのが、自分たちで基礎研究を進めたのではなく、基礎研究をむしろ押えて、そうして開発それ自体も押えて、外国から技術を輸入して、それを使って進めたのである、そういうことを書いて、上田さん自身は、それは事実だから非常に残念に思うということを書いておられましたけれども、私、きょう申し上げましたことは、それに近い、それと同じようなことでございますが、私自身、海洋開発をどうすべきかということを、皆さんのようにあまり具体的なお話を申し上げられないのです。もちろん、これは非常に必要な、大事なことなんでありますけれども、特に私、こういう研究をしている立場から一言申し上げさせていただきました。
  14. 石野久男

    石野委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。     —————————————
  15. 石野久男

    石野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原茂君。
  16. 原茂

    ○原(茂)委員 きょうは多くの先生方の陳述をいただきまして、たいへんありがとうございました。初めて勉強するような分野ばかりですから、ほんとうはしろうとらしく時間をかけてお伺いをしたいわけですが、非常に短い時間でございますので、まことに申しわけありませんが、一括してお尋ねをいたします。  これはと思う問題を、先生の名をあげて質問を申し上げますが、お聞きいたしておりますと、どの先生方もみな同じように、関連してたいへんな勉強をされておいでになりますので、私が名前を申し上げたことは、ただ参考に申し上げただけでありまして、質問全体に、各先生方、どうぞお考えがありましたらお聞かせをいただくという前提でお答えをいただきたいと思います。  たいへん順不同になりますが、最初に川崎先生にお伺いしたいのですが、日本沿岸における石炭、石油中心の鉱物資源、こういうようなものはどのくらいあるというふうにお調べになっておられるか、あるいは日本のどこかの機関で調査がされているのか、予想としてどのくらいあるだろうか、こういうことをお聞きしたいわけであります。  次に、たん白資源を求めていくということは、今後の日本では絶対欠くことのできない問題だと思う。そういう点からいうと、だんだんその面が狭くなり、欠乏していく状況にありますが、一体どうしたらこのたん白資源というものを、従来同様、あるいはそれ以上にわれわれが海洋に求めていくことができるか。抽象的になりますが、そういったことに対して、概要的でもけっこうですから、お知らせをいただきたい。  次いで、汚染の危険がある海岸その他に各企業がたくさんあるわけでありますが、現在の様子を見てみますと、安全基準その他を設けまして、この程度ならだいじょうぶだという一応の基準を設けて許しているわけです。ところが、実際にはそれがどのように蓄積され、生物から人体に入ってどんな影響があるかが、いまようやく一部わかりつつあるわけです。こういうような状況のときには、やはり海を汚染するそれを通じて生物から人体への影響があり得ると考えられるそういう汚染物質を出す企業に対しては、操業を停止させて、しかる後に、これならだいじょうぶ、この程度ならいいということが完全にわかった後に操業を許すことくらいのことをしませんと、この大事な海洋汚染というものを——あらゆる角度から汚染されているこの現状、しかも未知の現状の中で、十分に安全性が確立されない間は、疑わしきは工場の操業を停止するというようなことをしなければ、私は基本的に現段階における海洋汚染対策にはならないのではないかというふうに考えますが、いかがなものでしょうか。  それから海洋エネルギー資源のことをちょっとお伺いしたいのですが、波力エネルギーもあります。それから温度差エネルギーもあります。それから潮の満ち干の差によるエネルギーもあります。温度差によるものは多少研究もされていますが、潮の満ち干によるエネルギー利用に関して、日本にはそれなりの技術があって、韓国の仁川沖における大規模発電の計画を日本の指導によって行なわれようとしているとか、そういうふうになるんだとかいうことを聞いたことがありますが、日本でもたとえば高松徳山、佐世保、三池、三角、門司といったようなところでは三メートルから四・五メートルあるいは小潮差のところでも〇・六、一メートル平均以上あるというような、大潮差、小潮差の違いがあるわけですが、一体、わが国でもこの潮の満ち干による発電計画というものができるのかどうか。これは私重要な問題として、公害などを考えたときには温度差によるエネルギー問題と同じように考えていく必要があると思うのですが、日本では一体そのことができそうなのか、もうある程度の研究が進んでいるのかをちょっとお伺いしたい。  それから、佐々木先生にお伺いしたいのですが、海洋汚染の抜本的な対策というのは一体何だろうということなんです。ずい分乱暴な言い方には違いありませんが、おそらく先生方は先生方なりに、とにかくこれとこれとこれはやるべきだというようなものは、もう相当深刻な問題ですから、おありになると思うのであります。こまかいことをあまりあげつらう必要はないと思いますが、われわれの知っておる範囲なのか、あるいは先生方は、別途にわれわれの気がつかない、せめてこれだけは海洋汚染の防止対策としては急速に考える必要がある、国の施策としてあるいは法律をつくる必要もあるだろうというようなことがあるかどうか、こういう点を端的にお伺いしたい。  二つ目に、いま日本に、二年前ですか、二つの法律を合わせまして水質汚濁防止法という法律ができまして、海洋汚染等を防ぐように一応の法律ができた。あるいは公害対策基本法という法律ができて、これも二年前の四月ですが、それによる環境基準とい短ものができまして、環境基準による海の生物に対するいろいろな問題が規制され始めたというようなものがあるのですが、私どもはいまの公害というようなものを考えたときには、このような水質汚濁防止法とかあるいは環境基準というものは、非常に手ぬるいどころか、非常に科学的に不適確だというふうにすら考えていますが、先生のお立場でどうお考えにおなりになるか。  それから現在、原子力発電所あるいはその他で一番大きな問題になっておりますのは温排水の問題であります。この問題に関して端的にお伺いしたいのは、一つは、いま国の立場であるいは企業の立場で考えている温排水問題というのは、出てきた温排水をどう利用するか、どうプラス面に利用するかというところに力点が置かれている分野が多いのでございます。しかし、現在問題にされているのは、温排水がいかに大きな悪影響を及ぼすか、これの悪さを防止するにはどうしたらいいかというところに力点がなければいけないのでありますが、どうもウェートがそういうほうにあるとは思えない、おくれているというふうに考えますが、先生方のお考えでこのような汚染防止という立場で温排水に対してはこういうことを考えるべきではないか、こういう影響がまず第一にあると考えなければいけないというようなことをお聞かせいただければありがたいと思います。  それから、先ほどマンガン団塊の話がございました。もちろんこれにつれて燐鉱のことも問題になると思うのでありますが、日本沿岸水域にこのマンガン団塊とか燐鉱床みたいなものがあるでしょうか。全然ないとは思わないのですが、先生方の御研究なさったり予想でもけっこうですから、あるだろうかという問題を一つ。  それからその次には、すでに海中の景観地域とか海中公園というものの地域の指定が行なわれておるわけです。この海中公園、先ほどレジャーの問題にちょっとお触れになりましたが、この海中公園という問題が今後どのように生かされていかなければいけないのか。海中公園なんて指定をやっておきながら、これに対する国民的なPRは何もできておりません。したがって、具体的にもう二十カ所ぐらいあるのではないかと思うのですが、この指定をされたものが、どう生かされてどう国民に利用されるように政治の場で考える必要があるのかということを、これもたいへんむずかしい問題だと思いますが、お答えをいただきたいのであります。  それから最後には、変な聞き方をするのですが、佐々木先生など、ほかの先生も一緒でございますが、海洋開発あるいは海洋汚染の問題、この海洋全体のいま取り上げられる問題全体、グローバルな問題に対して、公式に国の施策に反映するような場で発言をなさる機会がおありになるのかどうか。先生方の貴重な意見が、自由に、結局は国の施策に反映するような、そういう機関なりそういう場で発言がどんどんされてくることが非常に大事であると思いますし、それを通じて国民全体にそれが知られるようにならなければいけないと思うのであります。これほど重要な海洋の問題でありながら、国民の側からいいますと、どれも遠い、海のはるかに遠きかなたの問題のような、海洋といってもぴんと来ない。これは一日も早く国民の関心事にしなければいけない観点から、あらゆる機会に公式に先生方の御発言の場があって、その公式の御発言が、結果的には国民のその意味の刺激になり、国のなすべき施策に反映されるということが望ましいと思いますが、そんな機会がおありになるのでしょうか。そんな場はどんな場があるのでしょうか。  それから、佐藤先生にお伺いいたしますが、これは政治的なことがあると思いますが、樺太沿岸における大陸だなというものは一体どうなっているのでしょうか。明瞭に大陸だなに関する研究が進み、いま日本の側からは大陸だなはこうなっている、したがって政治的にもわれわれの立場からいうならこうだ、こう言えるほどに樺太沿岸における大陸だなというものがすでにつかみ得られているのかどうか、こういうことをひとつお伺いをしたいのであります。  それから、先ほどのお話で、大陸だなというものが結局地殻の没入して突っ込んでいったものなんだ、こういうふうに考えていいのじゃないかというようにお聞きしましたが、世界における大陸だな全体に対して、そういうような考え方でいいのかどうかということも二つ目にお伺いをいたしたい。  それから、星野先生にお伺いをしたいのですが、まず地震のほうからちょっとお聞きしたいのですが、最近の北海道、東北、特に根室における、またきのうもありましたああいう地震などの様相からいって、海底の地質学上いわゆる陸上においても地質というものの調査日本では非常におくれておる。この面の研究が非常に粗末にされておる。この面における学者先生方の、いわゆる非常に重要な仕事をなさるのですが、どうも日が当たっていないように私には思える。地質というのは非常に大事だと思うのですが、その意味では海底における地質的な調査を通じて今回の地震との関連を、ある程度地震予知連絡会では予知できていたといわれるのですが、地質学上一体そういうような地震予知連絡会がいわれるようなある程度の予知をされていたんだという、その何かを日本ではつかんでいたのかどうか。関係がおありでなければいいのでありますが、やはり地質という問題からいうなら、いま陸地における地質ばかりでなくて、海底における地質は非常に重要な問題で、これから活断層の問題等いういうありますので、この研究というのは重要視しなければいけませんが、海底における地質の調査の関連で、今回のような地震のある程度の予知的な想像がされていたのかどうか。これは海底の地質という意味でお伺いをします。  それから、先ほどちょっとおっしゃいましたように、海洋教育、もう一つしいて言うなら社会教育の問題が非常に重要だ、私も同感でございますが、これを急速に広げるためにはどうされたらいいんでしょうか。現在確かにおっしゃるように、小中高等学校の問題を見てみましても、取り上げている教科書の内容においても、この面においてはほとんど見るべきものがないということは、私もそう思います。そういう面では、そのほかの手段はいろいろあるでしょうが、どういうことをやったら急速に海洋教育あるいは社会教育の面でも広げることができるだろうか、こういうことをお伺いいたしたいわけであります。  それから皆川先生に、日本というものが海洋開発なり海洋汚染の問題、海洋資源の問題を含めまして、世界全体の一つの大事な海なんだ、この海に対して国際協力上たいへんやり足りない、こういう意味の協力をもっとしなければいけないだろうという面が、われわれの側から言うならたくさんあるわけであります。それを国際法上お考えいただいた中で、やはり日本という国がこういう面でおくれている、こういう面でやはり国際法上の協力をもっと惜しみなくすべきであるという点が、多分先生のお立場でおありになると思いますが、そういうものをお聞かせいただきたい。  それから、先ほど、一九五八年のジュネーブ会議で盛り込まれて今日に至った海洋開発の問題等があるという御説明がありました。今日まで海洋国といわれます日本が、その後の国際会議日本独自の問題として提案をし、それが論議をされて、何か国際的に役立つような取りきめのできたという事例がありますかどうか、こういう点をお伺いしたい。  それから、先ほどちょっと大陸だなのことにもお触れになりましたが、これは時間がありませんのでいま申し上げませんが、海洋汚染に対して国際法的なだんだんきびしいものができてこなければいけないと思うのですが、そういう国際法的な海洋汚染を防止するための今後の動向、いまの動向というようなものは一体どんなものが出ているかという点で、やはりある程度私たちも関心を持ちたい、こう思うわけであります。  それから、先ほどのお話の領海問題に関係して、接続水域の問題をちょっとお触れになりました。これは両方とも私お伺いしたいのですが、日本でいま領海を広げる余地があるでしょうか。たとえば沖縄が復帰いたしました。従来は沖縄中心のこの種の論議はなかったのでありますが、先生方のお立場で、沖縄を中心にしてわが国の領海を拡大する余地があるかというようなことを端的にお伺いしたいわけであります。  接続水域のお話がございましたが、これもついでにお伺いするのは、一体、わが国における接続水域としていま問題になっている、あるいは論議がされている地域がどこかありますでしょうか。接続水域という立場で取り上げて、それが国際法上一国または二国の間に問題になっている接続水域というものが現在あるでしょうか。  それから、吉田先生にお伺いいたしますが、アメリカ中心で国際海洋計画、十五年計画でしたかというようなものがあって、とにかくそれ以後も十年前からアメリカが非常に積極的に研究をして非常に進んでいる、こういうお話がございました。裏を返すと、日本は非常におくれているということになりますが、一体、日本のおくれている原因というものは何でしょうか。いわゆる海洋技術がおくれているのでしょうか。何がおくれているからおくれたのかということを、これはきっぱりとひとつお聞かせをいただきたいのであります。  同時に、二つ目に、基礎研究は確かに大事だと思います。あらゆる問題における基礎研究というものが日本は非常におくれているわけです。ごくわずかの部分進んでいるといわれるのは、金属方面であります。しかし、まだまだ全体的に言うなら、あらゆる分野における基礎研究部門というものが日本においては非常におくれているという点は確かだと思いますし、本件に関しても、基礎研究を推進するということが非常に大事だと思いますし、わが国は不十分だと思います。この基礎研究を進めるために、わが国では何をいま具体的に必要とするでしょうか。これはやはり方向性がはっきりしませんと、われわれが取り上げようがございませんので、そういう意味でお教えをいただきたいのであります。  これは余談みたいに最後にお伺いするのですが、佐藤先生が、お立場上違うし、そういう方面には関係ないとおっしゃるかもしれませんが、日本の教科書の地図を見ますと、国後、択捉が日本の領海にぴしっと入って筋が引いてあります。小中学校の教科書。これは国際法上皆川先生からも御意見があったらお伺いしたいのですが、私はいまのように問題がこういう形になっている限り、いままでの終戦後取りかわしました各種の条約等の経緯からいっても、教科書に国後、択捉を日本の領海にぴしっと線を引くことが正しいのだろうか。私は日本人の一人ですから、当然早く返してもらわなければいけないから引いておいたほうがいいような気がいたします。しかし、こういう点も学者先生のお立場からお考えになって一体どうなんだろうか、それは関係ないというお考えでしたら御答弁は要らないですが、以上、たいへん時間がございませんので、お一人お一人の先生にお伺いしないで恐縮でございますが、お答えいただきたいと思います。
  17. 石野久男

    石野委員長 参考人の皆さんに問題が非常に一時にたくさん出ておりますので、それぞれ関係のある問題について、逐次、自分に関係あるところをずっと御答弁いただければよろしいですが……。
  18. 佐々木忠義

    佐々木参考人 ちょっと私の提案でございますが、しゃべりました順序にかなりこまかいあれがありますので、それでこの問題全部を含めて、しゃべりました順序にお答えをして、だんだん問題が整理されて、最後にいくとすべての答えが出てくるというようなことにされたらいかがかと思うのです。
  19. 原茂

    ○原(茂)委員 いいと思います。
  20. 石野久男

    石野委員長 それではそのように……。
  21. 川崎健

    川崎参考人 それでは私が関係あるといいますか、お答えできると思った部分について私の意見を述べさしていただきたいと思います。  まずたん白資源を海からどういうふうに求めるのか、そういった御質問があったと思うのですけれども、これは私がここでくどくど言うまでもなく、海の生物資源というのは鉱物資源と違う特徴を持っているわけです。それはつまり更新可能である、再生産可能である、これが海の生物資源、つまりたん白資源の最も基本的なところであります。鉱物資源はとればとっただけなくなってしまうわけでありますけれども、たん白資源は、太陽エネルギーをその根源としておるわけでありますから、大事に使えば未来永劫に使えるわけです。ですから問題は、海のたん白利用というのは、海をいかにじょうずに大事に使うか、海の生産力をいかに人間が海から最も大きな生産力を引き出す形で利用するか、こういうところが一番基本でございます。  そういう観点で考えますと、先ほど申しましたように、大事なことは二つでありまして、一つは、海をよごさないということ、もう一つは、とり過ぎないということ、乱獲しないということ、この二つをきちんと守るような形で海の資源を最大限に利用する、こういったことだと思います。  まず、汚染の問題に関連して沿岸の問題についていいますと、沿岸においては増養殖によって資源をたくさんふやしていく可能性は当然あるわけでございますけれども、しかし実際問題として、増養殖で人間資源を海からふやせるという範囲は限られております。わが国のこの沿岸の増養殖によって得られるのは、はっきりした数字は覚えておりませんが、百万トン足らずだと思いますが、この沿岸増養殖の数字は海草が非常に多い。たん白ではないわけです。もう一つはカキが多い。カキはからつきでございまして、煮たきをすると八分の一くらいになってしまいます。ですから、沿岸増養殖で数十万トンという数字がありますが、そのうちのたん白の部分というのは数字としては非常に小さいものであります。ですから、沿岸増養殖にたん白を求めるというのは、これは基本はやはり高級品、つまりうまいものをつくる、そして沿岸の漁家の経営向上に役立てる、こういったことが基本で、たん白をふやすために沿岸といいますか、増養殖にあまり期待をかけ過ぎるということは間違いではないかと思います。  それから、沖合いにおきましては、これはやはり乱獲が問題でございまして、たとえば東支那海あたりでは現在非常な乱獲のため、当然とれるだけの魚の量がとれない。つまり現在の漁獲努力を——これはわれわれの計算があるわけでございますけれども、たとえば現在の漁獲努力を減らし、それから網目を大きくする、そして小さい魚をとらない、こういったことをすると、当初は少し漁獲量が減るけれども、そのうちにいまの漁獲量よりもずっと多くなって返ってくる、こういう計算が成り立つわけでござ ます。そういった形で、結局はそういう漁獲を適切にやるということが最終の生産量をふやすことであります。  結論的にいいますと、この問題につきましては、現在、七千万トンの漁獲が地球全体であげられているわけでありますが、これをどこまで伸ばせるかという問題があるわけですが、これについては、いろいろな計算があって、計算自身が、いろいろな仮定に基づいておりますから、むずかしいのでありますけれども、かなり確実と思われるような根拠に基づいてされた計算では、一億トンから一億二千万トンくらいで、とてもいまの七千万トンを倍加するとかなんとかいうことは無理だ、ある程度ふやせることは、まだ未利用資源がありますからふやせると思いますけれども、飛躍的に何倍もというようなことはとても無理だと思います。ですから、そういったことで、たとえば一億トンというのが、海からの最大の可能量であるとすれば、それをいかにうまく取り出すかということを考えていくことが大事だろうと思います。  それからもう一つは、汚染の問題でありますけれども、原先生のほうで、汚染について未知の状況の中で疑わしいものは操業を停止することが必要なんじゃないかといった御質問がございましたけれども、私も全くそのとおりだと思います。ともかく一たん破壊された環境というものは、回復はきわめて困難であります。実は海で問題になりますのは、汚染物質が陸から流れるのをとめたら海がきれいになるかというと、そうではないところに問題があるわけです。問題は、汚染物質が海に流れ出して、それが今度どろに沈着するわけですから、たとえいま一切の汚染のもとを断ち切って陸上からの汚染がゼロだということを仮定しても、相当長期間にわたってどろからじわじわじわじわと、それまでにたまった汚染物質が水の中に下から溶け出すわけでありまして、こういうのが実は一番問題であります。そういった意味で、汚染をとめたらすぐにきれいになるなんていうことではないので、そういう海の特質というものを十分に理解して対策を考える必要があるかと思います。  さらに、この点についてもう一つ言わせていただきますと、ともかく汚染というものが、たとえば水銀とかPCBとか、こういういわゆる有毒物質に限られるわけではございませんので、いま日本近海で非常に問題になっております汚染は、有機汚染でございます。つまり陸から有機物が流れ出す、人間の生活排水も含めまして、そういう有機物が流れ出ます。そして、それによって海の栄養が過栄養化して、そして瀬戸内海の赤潮なんかは、過栄養化——富栄養ということばを普通使いますが、私は富栄養ということばは非常に適切ではなく、何かいいことみたいなことでありますから、過栄養ということがいいと思いますが、海の栄養が過度になって、そして赤潮が起こる。去年はハマチが千百万尾も死んだ、これは記憶に新しいことだと思いますけれども、そういった有機汚染が今後の非常に大きな問題でございまして、それは単に、たとえば下水を処理して出して、有毒物質は出さなくても、やはり有機物は出ていくわけです。ですから、海をよごさない最も根本的な方策というのは、やはり現在の農業の生産方式に問題があるわけで、つまり現在の農業方式というのは、農薬と化学肥料でやる生産方式です。ですから、かつては人間のし尿とか動物のふん尿は全部母なる大地に還元されたわけでありますけれども、現在はそれは還元されないで、全部海に出てしまう。そして海をよごしていく。そして一方では、陸地も化学肥料だけでやっているものですからどんどん地力が低下する。いま地力の低下が非常に問題になっておりますけれども、陸地は地力が低下する、海は過栄養化になる、こういう状況がどんどん進行しているわけでございまして、そういった意味で海の汚染の問題は、単なる水産業の問題だけではなく、実は農業の問題でもあるわけでして、つまり陸で出た廃棄物は陸で処理する、そういう陸の中に循環させて海には出さない、あらゆるものを。こういう生産構造にしなければ、問題は根本的には全然解決しないわけで、将来はそういう方向をとる形でわれわれの研究なり国の施策なりもあるべきではなかろうかと思います。  それから最後に、一つだけ。これは原先生がどなたというふうに示されなくて御質問になったのですが、われわれ科学者のこういう海洋開発についての意見を政府の施策に反映するという場があるのかという御意見だったのですが、実は日本学術会議海洋研究連絡委員会というのがありまして、これは海洋関係の学者のいわば代表機関みたいになっているわけでありますが、この海洋研究連絡委員会海洋開発委員会というのがありまして、私はそこの委員もやっているわけでございますけれども、日本学術会議日本学術会議法によってわが国の科学者の内外の代表機関であるというふうに明確に規定されているわけであります。ですから、やはり科学者の意見を政府の施策に反映する、これの一番オーソドックスなルートは現在あるわけで、つまり日本学術会議に全国の科学者の意見を反映して、日本学術会議意見として政府の施策に反映する、こういう道があるわけです。残念ながら現在、日本学術会議の予算その他が非常に貧弱で、そういった意味では非常に弱体。ですから、やはりいまの原先生の御意見、私も非常にうれしいのですが、学術会議に予算を、ここは科学技術特別委員会でございますから、十分に取っていただいて、そういう方向でしていただいて、そして学術会議がほんとうに本来の使命を果たすことができ、科学者の意見を国の政策に正しく反映することができるという方向でいろいろ御努力いただきたい。実はこれはこっちからのお願いでございます。  以上でございます。
  22. 佐々木忠義

    佐々木参考人 いま幾つかの大事な問題の御指摘がございまして、私の考えておりますことを述べたいと思うのです。  動物たん白の問題は、やはり畜産が世界的に限界にきているという事実がございます。したがって、水産動物たん白の依存以外にまずまず残されていない。いまの川崎先生数字と若干食い違いますけれども、わが国沿岸の大陸だなあたりまでは、世界有数の漁場であったわけですが、現在は汚染が進行しておりまして、なかなかそうはいかない。そこで日本の水産企業の方々は、遠洋に出ていろいろ魚を苦労をしてとってお帰りになるわけですが、この漁業姿勢をもう少し変えますと、まだまだ有効に使えるのじゃないか。と申しますのは、大体日本の水産の関係者が七つの海に行かれて漁業者が非常に勇散に努力して、たいへん貴重な資源をとりますけれども、極端な場合には、尾かしらつきのタイだけを一生懸命冷凍して持って帰りまして、タイ以上にとれるアジ、サバは現場で捨ててくる。日本人世界一りっぱな民族だと思っていた低開発国の人がそれを見て、まことに下劣な民族である……。  アメリカはとっくに肉食の生活様式を魚食に切りかえつつありまして、相当な魚を食べている。アメリカは魚をとる技術がへたである。輸入した歴史も浅い。したがって、日本と同じように七つの海に出かけていって、船が要れば船を貸してやり、網が要れば網を貸してやり、金が要れば金を貸してやる。一つだけの希望条件は、とれた魚を全部アメリカに輸入させてくれ。その中でアメリカ人の好みに合うところだけ食べて、残ったところは頭のてっぺんからしっぽの末端に至るまで完全加工して低開発国にエクスポートをする。そういうことをやりましても、大体動物たん白はまずまずあと十年ぐらいだろうということでございますから、十年たつと一体どうするか。そこで、アメリカは、一生懸命魚を食べるようにしておりますけれども、十年たてば魚も十分食えなくななる。そのときは、アメリカ世界一の大豆のプロダクションの国であり、この大豆たん白利用しようということで、すでにアメリカは大豆たん白からとうふや納豆をどんどんつくっておる。  フランスは、魚はあまり食べない民族ですが、最近国民に政府がどういう呼びかけをしているかというと、国民の皆さん、一週間のうち二日は魚を食べるようにいたしましょう。これは畜肉の限界を明確に示しておるわけです。そのフランスの人だちも、大体十年たつと水産動物たん白恩恵は受けられなくなる。さてわれわれはどうしようかというので、研究開発をして成功いたしましたのは、海藻の陸上における人工培養でございます。現在ドライの形で年間一万トン、ウエットの形ですと大体二十五万トンぐらいの処理になりましょうか、それをやっております。  そういうような状況下でございますけれども、わが国周辺の大陸だなを何とか少しでも栽培漁場に仕立てまして、そしてより多くの漁獲をあげるような努力が要る。そこで私は、一つのナショナル・プロジェクトとして、大至急に大陸だなの清掃、大掃除をやっていただきたい。これは五年、十年かかるかもしれませんけれども、大陸だなのところはヘドロと、最近園芸が非常に奨励をされて、お百姓さんがたいへん金持ちになりましたけれども、ビニールテントはみんな海底に捨てられておる。これは千メートルぐらいの深海からでも、トロールを引きますとひっかかってまいります。大陸だなはヘドロと、ジュースのあきびんと、ビールのあきかんと、園芸で使ったビニールテント、これでおおわれつつあるわけですから、この辺で思い切って大掃除を、相当の金をかけて、ナショナル・プロジェクトとしてやっていただかぬことには、どうしようもないのではなかろうか、そういうような考え方を実は持っておるわけであります。  それから、エネルギーの問題がございまして、御指摘のとおりで、潮汐のエネルギー利用する限りにおきましては、フランスで開発いたしました技術がある。いまフランスがやっているのは、ブルターニュの西のサンマロでやっているわけですが、あの辺は大潮で落差が十三・五メートル、小潮で四・五メートル。日本で一番大きな落差を持っているのは三池です。これが四・五メートル、小潮で一丁五メートル。したがいまして、フランス流をうのみにして日本に持ってまいりましても、これはできない相談でございます。  さて、それではこうした永遠のエネルギー公害を伴わないものをいかにわれわれに役立てようかということになりますと、フランスが開発いたしましたのは、海底に水平のチューブラー・タービンを置きまして、海水の移動でタービンに直結した発電機が回って電気を起こすわけですが、そのチューブラー・タービンが、より低落差で動くようなタービンの開発ということが、その問題を切り抜ける一つの具体的問題でございます。もう一つは、日本の揚水発電は、夜間余った電気で水をくみ上げて、それを落して電気を起こす、この日本の揚水発電の技術は相当高度に進んでおりますので、その揚水発電のやり方と現在のフランス潮汐発電方式とを組み合わせれば可能であろうかと思います。  仁川は、お話がございましたように、大体十メートルぐらいございますから、これであればフランス流をそっくりまねても、できるわけです。私はある席で、日韓経済協力というのですか、何かそういうのがあるようですから、その辺で、その一環として日本で技術をひとつ開発する、レベルを上げるという観点で、仁川に潮汐発電所をつくったらどうか。その技術を生かして——いま潮汐発電の動きは、フランスからアメリカ、オーストラリア、カナダ、イギリス、ソ連——ソ連なんかは、コラ半島にすでに三十五万キロワットをつけてデータをとっておりますが、そういう国際的な動きがございますので、そういう無限のエナジーを使うべきじゃないか。  もう一つは、先ほどちょっと時間がなくて落としましたが、火力発電でございますと——日本沿岸は全部海に囲まれておりまして、一本のパイプラインをおかから海岸を通って海に出しますと、寄せてくる波でパイプの中の空気が圧縮されて、その空気がおかの空気ポンプを回して、空気ポンプがイナーシアで回っていますと次の波がやってくる。そういうことで、一本のパイプで一キロワットが出せるわけですから、要所要所にそういうものを取りつければ、高い資本を投下して中央から延々と送電線で送って、いなかの未端まで電気の灯をつけるということじゃなくて、部落、部落の灯ぐらいは、そういうことをやればできるわけであります。非常にきれいなエネルギー源ですから、そういう自然エネルギー利用も大いにやらなければならないのじゃないか、こういうように考えます。  それから、水質汚濁の問題は、私専門でございませんが、私の感触といたしましては、いろいろな暫定基準をつくり、その暫定基準も、しょっちゅう追いかけられてあとをくっついてゆくというような現状がいま起っているのではなかろうか。さて、新聞に出ますようないろいろなPCBとか水銀とか、これは明瞭でございますが、汚染とは一体内容的にどういうものを含んでいるのか、そういうような抜本的な解明。それから、従来学者は、私も学者の一人でございますけれども、言うならば、この問題に対してきわめて無責任であった。現時点においてはそれは許されませんので、批判をするだけでなくて、学者はどういう姿勢でこの問題に今日取り組むべきかということを痛切に反省すべきであろう。反省だけでは問題は解決いたしません からそういうものを解決するような基本的姿勢をひとつ明らかにしていかなければならぬのじゃないか。  原子力発電の温排水につきましては、イギリス等では、寒い国ですから、エビとかウナギ等の養殖に必要な水温が保てませんので、その温排水を栽培漁業に現に利用しつつあるというようなことがございますので、海域場所によってはそういうような積極的な姿勢でこれをひとつ活用したらどうか。当然のこと、アクチビティを持った水が出てくるなんということになりますと、これはもう論外でございますから、そういうことは一切行なってはならない。  それから海中公園でございますが、海中公園というものはもともとその理念はどういうことかというと、国際的な約束をいたしております基本理念は、そこにある生物あるいは動物層をそのままそっと温存をしておこうではないか、絶対にそこをディスターブしてはいかぬ、もし許されるならば、そこを科学研究の場にしていきましょう、それが国際的にきめた基本の理念でございます。各地に御指摘のように指定がされております。それは一つ観光資源としても非常に大事なことなんですが、いまのような理念が基本でございますから、すぐおかにリッパなビルを建ててレストランをつくるとか、みやげもの屋を設けるということをやりますと、たちまち海水汚染されて、一番大事な生物層、動物層が死滅をする。先進諸国の海中公園でも、いまだにとんでもないところにりっぱなビルをつくって、そこがレストランであり、みやげもの屋でございまして、現場にはきわめて原始的なグラスボートで行く。そういうように非常に大事にその資源を実は扱っておるわけで、そういう形で、これはりっぱな観光資源ですから、私どもは大いに活用すべきだ、そういうように考えるのでございます。  それから、発言の機会ということでございましたが、私はこの委員会に、いろいろな問題、別な問題もございますが、何回かお招きを受けてたいへん光栄に存じておりますが、そのつど声を大にいたしましていろいろなことを申し上げておりますけれども、まことに残念なことには、それがなかなか実を結ばない。ここが非常に大事な公的な発言の機会だと思いますが、ひとつぜひ先生方で御検討の上、ぜひやるべきだということであれば強力な施策を打ち出していただきたい。それから私は、海洋科学技術審議会委員をいたしましたし、現在の海洋審科学技術部会の委員をいたしておりまして、そういう席では私の考えはそのつど申してまいっておるわけでございます。  それから海中教育の問題が出ましたのですが、これはきわめて通俗的な一端的なことをいうならば、海洋人口の基盤を広げることである。海洋人口の基盤を広げないことには、海洋を理解する人がその上に乗っかってこない。したがいまして、中学、一般高校、それから大学の教養課程、そういうところで思い切って海洋の知識を教えるようにひとつ組織をつくるべきではないか。それからもう一つは、アメリカで実施して成功しております海洋奨学金制度を設けたらいいだろう。アメリカでは、将来社会人となって海洋方面で働くという学生には、かなり多額の契学金を出しております。ですから、思い切って予算化をしていただいて、優秀な学生にどんどん契学金を出してやる、将来海に出て働いてもらうというようなことはいかがなものだろうか。そういうように基本的には海洋人口をふやす、これはやはりナショナル・プロジェクトでやりませんとどうしようもないであろうと思います。  それから、あと吉田先生お話にも関連があるのだと思いますが、吉田先生は先ほど海洋科学の基礎研究が軽視をされている傾向があるということで、私も全く同感でございます。ただ、海洋工学とか開発ということばがどんどん出てまいりますので、どっちかというと、そのことばの陰に基礎的なマリーンサイエンスが隠れてくる。私どもが海洋工学ということばを声を大にして申しておりますゆえんは、海洋工学という学問分野はいまだにわが国ではゼロといってもいいくらいと思います。教育機関もございませんし、そういうような状態ですから、おのずとおくれているものをを一生懸命発言をいたしますので、勢い海洋工学ばっかりやるというような誤解を一般の方々にもお与えしているのではないかと思いますが、私は最後の海洋開発につながる科学技術のプロセスは、まずりっぱな海洋科学があって、マリーンサイエンスと申しますか、その上にマリーンエンジニアリング、海洋工学があって、工学だけでは開発はできません。技術が要ります。最後に開発するための技術がマリーンテクノロジーであると思います、サイエンス、エンジニアリング、テクノロジー、こういう科学技術の流れに沿って初めて実際に物をサンプリングしたりすることができる、そういう学問の流れをこの辺でひとつはっきりとさせていくことが必要ではないだろうかと思います。ただ、大学に海洋工学科をかりにつくりましても、学生が出ていくまでに四年もかかるのですから、卒業するまで待っておるというわけにいかないんで、どんどん開発の必要は迫りますから、そこで中間的にいろいろなセミナーを開くとか、いろいろな講習をやるとか、そういうことをどんどん行ないつつ、現有勢力で開発に役立てるような人材をつくりつつ、基本的にはそういう姿勢で長い目で見た基礎を十分やり、それからエンジニアリングをやり、テクノロジーで役立つ、そういう人材養成が必要ではなかろうか。  以上、一応申し上げまして、私の申しておらないところもずいぶんございますので、あとの諸先生方の話を伺いましてもしまた御質問等がございましたら、時間がありましたら申し述べたいと思います。
  23. 石野久男

    石野委員長 ありがとうございました。
  24. 佐藤任弘

    佐藤参考人 多少関係があると思う点についてお話しいたしますが、日本沿岸で石油などの鉱物資源がどのくらいあるかという問題になりますと、これは石油関係の企業がかなり調べておるようでありますが、その成果というものは企業内だけでありましで、外部に公表されておりませんので、ちょっとつかむことができません。それから石炭関係は最近そういう開発をやっておらぬようでありまして、従前釧路の沖とか三池とかいうところで多少やっておった程度であまりはっきりしたデータをつかむことができません。しかし、大体先ほど申し上げましたように、陸上ではそういう石油、石炭というか鉱物資源のあるところでは、同様にその沖合いでそういう資源が期待されるのでありまして、日本でいいますと、秋田の沖とか、それから新潟の沖、その辺では現に石油それから天然ガスが発見されまして採掘されております。ですから、その陸上と同じ程度というふうに考えていいのではないかと思います。  それから、それに関連いたしまして、資源問題でマンガンノジュール、それから燐酸塩団塊などで日本近海でそういう鉱床があるかどうかというお話ですが、燐酸塩団塊につきましてはあまりそういう話を聞いたことがありませんので、まだ知られていないと思います。  それから、マンガン団魂の問題ですが、これは私の知っている例を申し上げる程度でございますが、北西太平洋、日本の三陸沖の太平洋の底でありますが、そこで昔、日本深海探険というプロジェクトを行ないまして、ここにおられる佐々木先生なんかも中心になってやったわけでございますが、そのときに深海のトロールを行ないまして、そこでいろいろなタイプのマンガンノジュールをとっております。それはマンガンノジュールと一般にいいましても幾つかのタイプがありまして、深海底六、六千メートルの海底マンガンノジュールがあります。それから海底から山のようにそびえている海山ですが、そういうふうな山の上に一面にべったりとおおっているマンガンクラストというタイプのノジュールもあります。このトロールでとりましたのはマンガンノジュールのほうでありますが、日本の沖では非常に軽石がたくさん分布しておりまして、その軽石をおおっておるようなタイプのマンガンであります。これはおそらく黒潮に乗って流されてきた軽石が海底に沈んでその上に沈着したものじゃないかと思いますが、そういうものがあります。  それから仙台の沖の、ちょっと忘れましたけれども、かなり遠くのほうですが、気象庁の凌風丸が発見したので凌風海山という名前がついている海山ですが、ここでは非常に厚いマンガンクラストが存在しまして、多量のノジュールがとれております。  また、このマンガンノジュールの採掘という問題で私はいつも感じるのですが、そういうマンガンノジュールをとりますと、それと一緒にそのまわりにある赤粘土といいますか、非常に微粒の粘土層が深海にはありますが、そういうものを一緒に巻き上げてしまうわけでありまして、大量にマンガンノジュールをとりますと、おそらく深海のそういう非常にこまかいどろをかき回してしまうという結果になるのじゃないかと思います。そうしますと、そういうものが一たん巻き上がって沈積するには非常な時間がかかるのではないか。そういうものの処理を考えないでマンガンノジュールの採掘を考えると、海洋をよごすような結果になるのじゃないかというふうなことを私はおそれるわけでございます。そういう考え方でございます。  それから三番目ですが、樺太沿岸の大陸だなの研究の進捗状況でありますが、樺太の沿岸は、戦前日本がそのあたりの主権を持っていたときに、海軍の水路部で水深の測量をやっておりますが、それはおもりをロープの先につけまして深さをはかる、いわゆる錘測、おもりの測量ですが、錘測という方法でやっておりました。そういう昔の資料しかございません。  それで最近のいろいろな話を聞きますと、非常に情勢も変わっておるようでありまして、樺太沿岸についてはわが国の手持ちの資料というものはほとんどないのじゃないかと思います。ただ北海道のほうにおきましては、大陸だなの調査は相当詳しく行なわれまして、北海道西方は昭和四十五年に調査いたしております。  それから、オホーツク海側の沿岸昭和四十六年に調査しておりますが、それはほぼ東西の測線でございまして、測線の間隔が約二マイルの間隔で調査しておりまして、先ほど申しましたように、地形だけではなく、音波探査による地質調査、それから地磁気調査、それから重力というような調査を行なっておりまして、かなりいろいろなことがわかっております。北海道西方の分につきましては、地図として書いて成果がもう出ておりますが、オホーツク海については現在地図が出版されつつある状態でございます。概要を申し上げますと、北海道をつくっているのは日高山脈でありますが、それと同じような方向の地質構——褶曲であるとか断層であるとかというような構造が発見されまして、それが樺太側のほうに続いておる。樺太と北海道はどうも地続きにつながっているような様子をしているということがわかっております。  それから四番目なんですが、世界全体について、大陸だなというのは大陸の続きであるというふうに一般的にいえるかどうかというお話でございますが、結論としてはそういえるだろう、イエスだろう、と私は思います。ただ、先ほどは省略いたしましたけれども、大陸だなといいましても、実はいろいろな顔つきのものがございまして、大陸だなの外縁の深さといっても、場所によって三十メートルくらいのところから深いところでは六百メートルくらいまで、そういう深さの変化がございます。これはその地域のそれに接する大陸のほうの地質構造の違いによるものでありまして、端的な例で申しますと、非常に新しい火山が海岸付近に起こって、海岸に、海底まで溶岩が流れているというようなところであれば、ほとんど大陸だなは発達していないような状態になります。それから南極とかカナダの沖では、これは昔しの大陸氷河がありまして、これが海底を削っておりますので、非常に深いところまで平らな大陸だなと称するものが続いておるわけであります。そういう個々の違いはございますけれども、一般的にいって大陸だなというのは大陸の延長であるというふうに言っていいんじゃないかと思います。
  25. 石野久男

    石野委員長 ありがとうございました。  質問者の原委員の御了解をいただきまして、参考人の皆さんにひとつお願いいたしますが、あとの質問者もございますのと、時間の関係もございますので、皆さんいろいろと研究が深いのですから御意見はたくさんあると思いますけれども、なるべく要点を披瀝していただきますように、重複は避けていただきますようにお願いいたします。
  26. 星野通平

    星野参考人 資源の問題ですが、海洋資源というのは一つには未来の資源だという観点を持つ必要があるだろうというふうに思います。資源というのは、社会の要請あるいは技術の進歩とともにいろいろ内容の違うものでありますから、中身も違いますし、いま佐藤君から話のあった石油や石炭の問題にしましても、いままでなかった、たとえば東シナ海に石油が出るというようなことになりますと、非常に事態は変わってくるわけでありまして、海洋資源についてはそういう観点を非常に重視する必要があるだろうというようなことを考えます。  それから、先ほどの御質問では、地震予知の問題でありますけれども、これは専門外でありますからよくわかりませんが、地震というのはエネルギーがたまってひずみの解放というようなことでありますけれども、一体どうしてエネルギーがたまるかというような根本問題がいま十分わかっておりません。最近はやりの日本列島沈没みたいなかっこうでエネルギーがたまるのだという考えもありますし、それから前の、東大の先生をなすっていた松沢先生のように、熱の問題でエネルギーがたまるというような考えもありまして、一番根源がわからないというようなことがこの地震予知の根本にあるのだろうと私は思います。そういうようなことからいっても、先ほど来るるお話が出ているように、基本的な科学、そういうようなところに十分重点を置く必要があるというふうに思います。  それから最後に、社会教育における海洋の振興をどうするかというお話でありますが、これは半面から言うと非常に簡単なことでありまして、歴史の教えるところによれば、政治であり、行政であります。ですから、もっと端的に言えば、文部省にうんと金をつければいいというふうに思います。しかし、もちろんそれだけでないのでありましょうけれども、そういうようなことを十分考えていただきたいというふうに思います。
  27. 石野久男

    石野委員長 ありがとうございました。
  28. 皆川洸

    皆川参考人 ただいま御質問を受けたのでございますが、十分な答えができないと思います。  第一に、日本海洋国際法といままでどのような形でかかわり合ってきたかという御質問かと思いますが、御承知のように日本海洋自由の原則のきわめて熱心な、場合によりましてははなはだ非妥協的な、そういう主張者であるというふうなことで、いままで行動してきたと思います。海洋の自由につきましては、なるほど一部の国々にはそれはためになるかもしれないけれども、すべての国と国民のためになるわけじゃないのだというような反発も出ておりまして、その面での利害衝突がかなり先鋭なものになっているわけです。しかし、そういう利害衝突の渦巻きの中で、先ほどからもお話ございますが、将来にわたりまして世界諸国民の海洋利用あるいはその海洋から得られる利益の亨受ということについての公の筋がどうあるべきかという全体的な視点というものはもう一度考えてみなければならないという感じがいたします。単に無制限の自由だけを主張するという時代はもう終わったのではないかというふうに考えております。  第二に、接続水域、それから領海の幅、その設定に関連する問題でございますが、いままでの海洋国際法の解釈がこれで正しいかどうかわかりませんけれども、領土を持つ国には当然一定範囲の海帯というものがついてきたのです。つまり、領土がありますね、一定範囲の——しばしばこれは三海里というようなことがいわれてきたわけですが、その三海里の幅の海というのは、ほしいからそれを主張するとかなんとかということじゃなくて、国際法上当然その国に付属するものだ、こういう考え方であったと思います。それは、そこに主権的な権利を行使するだけでなくて、航行の安全とかなんとか、いろいろなそういったことのために最低限度の秩序というものを維持する責任があるのだ、義務があるのだということであったと思います。ところが、それが非常に広がってまいりますと、権利は行使することはいいのですが、はたして責任がとれるのかどうかという問題が出てくるわけですね。いまかりに十二海里までというふうにいたしますと、おそらくそのことで問題になるのは十二海里までどこの国も領海を持たなければならぬということじゃなくて、十二海里まで国際法上有効に主張できるのかどうかという問題だろうと思うのです。接続水域の場合もそうでございます。どこの国も接続水域を持たなければならないということじゃない、接続水域を設定したいと思う国は設定してもよろしい、こういう趣旨でございます。したがいまして、日本といたしましてこの点でどうするかということは、国際法だけでは解答が出てこない問題でございまして、いろいろ経済的な、あるいは国の安全とかあるいは資源開発上のいろいろな考慮を勘案いたしまして、その点で政策決定をしなければならないということになるだろうと思います。  第三の海洋汚染の問題でございますが、いままでの国際法の取り組みのしかたは、はなはだ断片的で不十分であるといわざるを得ません。たとえば、比較的早くから知られてきているものはオイルによる汚染でございます。若干条約がないわけじゃございません。しかし、これは非常に不十分でございます。そのほか国際法にとりまして特に関心がありますのは放射性廃棄物の投棄による汚染の問題でございまして、原子力船あるいは核実験等をも含めましてその汚染ということが問題になるわけでございますが、従来のこの点に関する取り組み方ははなはだ不十分であるということを認めざるを得ませんので、第三次の海洋会議におきましては、この問題が非常に重要な課題として取り上げられることになるだろうと思います。そういうわけで、先ほど海洋開発の国際法について日本はどう寄与できるのかというふうなお話がございましたが、その点で日本のすぐれた技術面での情報等で貢献できるのじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  不十分でございますが、以上でございます。
  29. 石野久男

    石野委員長 ありがとうございました。
  30. 吉田耕造

    吉田参考人 先ほど、アメリカに対して日本がなぜおくれたかという話で、おくれたと申しましたのは、これは必ずしも海洋学全般という乙とじゃなくて、私は専門としています海洋物理の面で申し上げたのです。その中でも特に、たとえば第二次大戦の前で申しますと、アメリカというのは海洋学の面でそんなに進んだ国ではなくて、むしろヨーロッパのドイツとかあるいは北欧の国がかなり中心であって、日本もそれと並んで非常に活発にやっておった。その当時はいまから比べますと、いわば探検調査に近いようなもので、日本のたとえば水路部とか水産試験場とかあるいは気象庁とか、そういうところの観測網——日本近海の観測網というのは非常に世界に誇るものでありましたし、そういう活動度から申しますと、いまも決しておくれているとは申せないのです。  ただ、さっき申し上げましたように、いまはそういう探検的な調査じゃなくて、もっと学問的な特殊の観測を一ぱいして研究しなければいけない。そういう立場からすると、そういう切りかえがまだ十分できていない。それにはいろいろな理由がもちろんあると思うのですけれども、たとえばアメリカとかあるいはソ連とか、その他の国もそうですけれども、非常に大きな海洋研究所というものがある。いろいろな国際協力をやりますにしても、そういうものは非常に学問的な研究を協力してやるという立場で、船を出したりあるいはその他の施設を使っていろいろな研究をします場合に、日本としては海洋研究所がなかった十年くらい前までは、官庁が、つまり業務目的を持った官庁が船を持っていて、そういうところがおもに協力した。それに対して、たとえばアメリカなんかは、大学に所属する研究所、あるいは大学に付属しなくても、非常に大きなたくさんのスタッフを要する研究所がそれに直接協力をして、彼らなりの非常に詰めた問題を持ってきてそこでやる、そういうところでどうしても開きが出てきます。  それから人材の問題であるとか、あるいは研究費の問題であるとか、そういうことでいろいろなことがございますけれども、たとえばアメリカの場合を申しますと、これは戦後ですけれども、海洋学というのは非常に広く範囲をとりまして、ただ海洋学を大学で勉強した人ばかりでなくて、もっと基礎的な、つまり、たとえばわれわれのほうで申しますと、物理とか数学とかあるいはバイオロジーとか、そういう基礎科学をやった人をどんどん海洋のほうに引き入れる、あっちこっちの大学に海洋学の講座をつくって若い人を引き入れる。それから一般的にですけれども、日本と少し違うのは、若い人が、つまり学位を取るか取らないくらいの人、大学院の学生なんかが助手を兼任して、つまりサラリーをもらってハーフタイムで働いて、そして十分勉強できるときによく勉強できる、そういう研究環境とかいろいろなことで日本としては考えなければいけないことが一ぱいあるし、そういうことが積み重なって、日本の学生なんというものは非常に優秀な人はたくさんいるんですけれども、全体としては、非常に進展の早い時期にアメリカに非常に引き離された。特に、これは測器だけということはないのですけれども、つまりどういうことをやらなければいけないか、それをやるのにはどうしても測器もだんだん変えていかなければならないわけで、そういう意味の近代化というか新しい進展というものが日本では幾らかおくれて、そして昔のままのことからの転換がおくれつつあるということだろうと思います。  第二の質問の、基礎研究を盛んにするのはどういうふうにすればいいかということがいまのことと関連するわけで、これもいろいろな問題が含まれておりまして、研究体制の問題とか研究費の問題、大学——これは海洋学に限りませんけれども、大学の研究というものはもっと自由な基礎的研究が十分できるような環境にすべきであるとか、いろいろな問題がございますけれども、時間もあまりありませんから、そのくらいで……。
  31. 原茂

    ○原(茂)委員 どうもありがとうございました。時間がありませんので、また次の機会にいろいろお教えをいただきます。
  32. 石野久男

    石野委員長 瀬崎博義君。
  33. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間が非常に制約されているようですので、恐縮ながら全員の皆さんに御質問できないかと思います。おわびを最初に申し上げておきたいし、できるだけひとつ簡単に御答弁をお願いしたいと思います。  まず最初に、これは次官のほうにお尋ねしたいわけなんですが、長官の所信表明にあたって、「海洋開発の総合的推進の要請にこたえ、海洋開発審議会において海洋開発推進の基本的方策について審議を進めるとともに、」という説明があったわけなんですが、現在進められているという海洋開発審議会での基本方策についてどういうことが期待されるのか、ひとつ簡潔に説明願いたいと思います。
  34. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 局長から答弁させていただきます。
  35. 千葉博

    ○千葉政府委員 海洋開発審議会におきましては、御案内のとおり、わが国海洋開発につきまして、これの基本的構想と具体的な政策につきまして御審議いただいておりまして、いよいよこれも最終的な段階に相なっております。それであと一、二カ月で答申がいただけるというような審議でいま進んでおるわけでございます。  それで、いままでの審議内容でございますが、基本的には、先般長官から御説明がありましたように、わが国海洋開発につきまして、まだ開発についての基本的な理念も確立しておらぬ。さらに開発についての具体的な進め方にあたりまして、いわゆる環境の問題をどう考えていくかというような点がまだはっきりしておらぬというようなことで、基本的理念あたりから御審議していただいたわけでございます。  最近の取りまとめの状況をごく簡単に申し上げますと、この内容につきまして二、三点申し上げますと、各部会、つまり部会が三つ四つございますが、その中で海洋開発部会あるいは国際部会、それから科学技術部会というような部会で審議していただきまして、それがもう上がってきておりまして、最終的にいまこれを取りまとめる段階に相なっておるわけでございます。  基本的な考え方は、わが国を取り巻く海洋をいかにわが国民に利するように開発していくか。それにあたりましては、環境の破壊を防止して、敢然と環境の保全との一体化をはかりながら行なうべきであるというような考え方、こういったものにのっとりまして、わが国を取り巻く海洋開発していくべきである、これが第一点。  第二点は、いわゆる海洋科学技術の振興がその基本になることであって、この海洋科学技術の振興は、すでに海洋科学技術審議会の第三号諮問に対する答申の中に書いてあるように、先ほど先生方から話が出ておりました五つの主題をベースとしての科学技術の振興をはかっていくべきである。これに必要な体制を整備して、急速にその振興をはかるべきであるというような点が中心となっていままとめられつつあるところでございます。
  36. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私が聞きたかったのは、先ほど川崎先生が説明をされました海洋科学技術審議会の四十四年七月四日の答申に比して、どういう質的な変化が含まれているか、含まれることが期待できるのか、それさえお聞きすればよかったわけです。結局、環境保全との調和という一項目をどうやら入れるということのようですね。しかし、基本的にはまだ海洋開発に関する科学技術行政の進め方について理念をきめる段階だという話でもありますから、いまはそういう点が非常に重要だと思うのです。その点で、まあ先ほどのお話を踏まえて、川崎先生にお尋ねをしたいのですが、政府がとっている海洋開発の目的や意義については、四十七年度の科学技術白書でこのように言っておるわけなんです。「わが国は陸上資源に乏しく、狭小な国土に高密度の社会・経済を営んでいるため、今後需要の増大が見込まれる資源の長期的な確保と生活空間の拡大に果たす海洋の役割はきわめて重要である。」。また、「科学技術庁月報」に出ている「四十八年度海洋開発関連経費予算案の概要」の説明の中でも、「海洋は、生物・鉱物・エネルギー等の無限ともいうべき多種多様の資源を包蔵しているのみならず、人類にとって唯一の広大な未利用空間として残されており、その開発利用わが国の今後の産業経済の発展と国民生活の向上にとって不可決である。」     〔委員長退席、原(茂)委員長代理着席〕 こういうところからうかがわれる限りにおいては、結局産業、経済の発展という見地から海洋開発がとらえられているし、海洋をそのための資源の対象と見ているように私たちは感じられてならないわけなんです。ですから、そういう政府のとっている前提の上に立って、海洋開発科学技術行政の理念を確立しようと政府はしているようなんです。  そこで、ぜひこういう点はその理念の中に入れておかなければ将来あやまちをおかすというふうな点について、ひとつ御指摘をいただけたらと思うのです。お願いいたします。
  37. 川崎健

    川崎参考人 ただいまの御質問につきましては、先ほど申したことの繰り返しになるかとも思いますけれども、要するに、人類が海を利用していく場合も、この根本的な理念、つまり人類の福祉にとってそれが役立つ方向なのか、それとも、それが逆に人間の福祉にとってマイナスの方向なのか、そこのところの基本的な理念が、私は一番大事じゃないかと思います。そういった意味で、私は先ほど三号諮問に対する答申についてもその問題点を指摘したわけでございますけれども、ともかく海底鉱物資源海洋生物資源と、それから空間利用というものが、ただ三本並列的に並べられていて、それを総合的に包括するようなものがない。これがやはり三号答申一つの欠点ではなかったかというふうに思われるわけです。  そういった意味で、これは私の全く個人的な見解でありますけれども、海洋利用というものは、やはり生物資源利用ということを基本にしてほかのことを考える。つまりこの三つの、空間と生物資源とを回復する、鉱物資源を同じウエートで考えるのではなくて、生物資源をどう利用するか、ここに重点を置いて、そうしてほかの開発というものを考える、こういう方向が最も正しい方向ではなかろうかというふうに私は考えております。  以上でございます。
  38. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 さらに、政府のいまの施策を今年度予算で見てみますと、ごく概略で見て、海洋関連予算と政府が称している中身の中に一番大きいのが通産省の二百億円で、二番目に大きいのが農林省の三十八億円で、もうがたんとけた違いに落ちている。三番目が運輸省の十八億円、四番目に科学技術庁の九億円が出てくる。こういうふうな省庁別に見た予算規模になっている。  さらに、その中身で項目別に見ていくと、十億円以上でまとまって目につくのは、大きいのが、沖繩海洋博の百六十八億円、これが通産省の中に含まれている。同じ通産省の中に、海底石油掘さく装置の開発十六億円、この大型プロジェクトは四十六年に六億、四十七年に十三億、すでに消化されているわけですね。それから海水淡水化が十三億。それからあと十億円以上といいますと、農林省の中にある海洋水産資源開発事業のための経費十五億円ぐらいのところなんですね。こういう現実に予算を伴って進められている政府の行政についての御意見なり今後の予算の組み方等に対して、こうあるべきじゃないかという御意見があれば承りたいのですが、ひとつこれは立場を異にされる佐々木先生並びに川崎先生からお伺いしたいと思うのです。
  39. 佐々木忠義

    佐々木参考人 三号答申時点と、局長からお話がありました、現在進めていらっしゃるものと、まあ端的に申しまして、社会的背景がまるきり違ってきているということが一つあると思うのです。三号答申時点で私は委員だったわけですが、環境問題を議論しなかったわけじゃございません。議論をしたのでありますけれども、あの時点ではそういうものが大きく出るような形になっていなかったわけですね。しかし、現在の海洋審でお進めになっている姿を見ますと、まあ環境庁ができまして、そういうようなことで審議会にも向こうの御意見を十分反映するという姿勢でかなり取り組み方が変わってきておるかと思うのです。     〔原(茂)委員長代理退席、委員長着席〕 ただ、具体的に、たとえば石油掘さく装置がどうとかという金額が出ましたのですが、日本でやらなければ先進諸国が一刻を争ってやっておりますので、すでに気がついてみると後塵を拝するということに明らかになるわけで、それが先行技術と申しますか、アドバンスドテクノロジーの開発に最も気をつけなければならないのはそこにあると思います。極端なことを申しますと、日本周辺の大陸だなですら、日本製の純粋なオイルリングがどの程度まで使えるかというときわめて限定されている。外国の特許によらざるを得ないという状況でございます。ですから、先行技術開発はどうしてもやらなければならぬ。ところが、一番簡単なのは、答申を受けて立たせる側がいまの少なくとも四倍程度の予算化をしていただけば、技術開発のあるまとまった金額で進められるし、金額の少ない、一応顔を出しているけれども、これじゃどうしようもないじゃないかといったようなものも、ある程度の潤沢な予算がつけられるでしょうから、そういうような形で、水産資源問題の水産庁についております予算は、ずいぶん努力されてああいう形だと思うのですが、いかにも金額的には少ないと思います。ですから、絶対量をとにかくふやすということが必要だろうと思います。そうでないと、数字の上で比べますと、先行技術開発だとこれは非常に必要な問題で、日本がやらなきゃ外国がやる、特許でがんじがらめに縛られる  ということになるわけですから、いずれもバランスをとった形での予算化と申しますか、施策を打ち立てていただくことが必要ではなかろうか、そのように考えます。
  40. 川崎健

    川崎参考人 先ほど私は、海底鉱物資源生物資源と、それと空間利用が同じウェートで考えられているのではないかというようなことを申しましたけれども、ちょっとその言い方は適当じゃなかったと思うのです。実質的には同じウエートでなくて、鉱物資源、それから空間利用、それも鉱業のためのそういう利用、これがやはり優先して、生物資源利用というものが、先ほど瀬崎先生も触れられたような金額の面にあらわれてきているとおり、やはり事実上は軽視されている、こういう実態だろうと思います。  それで、ともかくわれわれが海というものを考える場合に、そういう空間と食料と、それから、鉱物というものを考える場合に、まずわれわれはともかく生物である、人間自身が生物であるということを考える必要があるし、それからまた、特に日本国民というのは世界で最も海に多くの食料を過去から依存してきたし、最も世界で多くの魚食文化を発展させてきたし、また、将来とも海に最も多く依存しなければならないし、しかも、現在世界一の水産国で、海の生物資源利用については、ほかの国と比べものにならないほどの国民としての責任を持っているというふうに思います。そういう立場から言えば、私はやはり、先ほどの繰り返しになりますけれども、海の生物を、人間が海というものをまず人間食料の場として考える。そういうことを中心に置いてほかのことを考えませんと、結果的には現在起こっているように、ともかく魚が食えない、こういうたいへんなことになってしまう。  私は昨日静岡県の焼津に行ってきたのでありますけれども、あそこら辺でもう非常に漁民は大恐慌状態であります。つまり、日本人が魚を食えないということは、私は、日本人日本人じゃないというふうに極言できるんじゃないか。つまり、最も魚に依存してきた日本人が、世界で最も魚を食べられない民族になってしまう、こういうところを最も深刻に考える心要があると思いますので、先ほど申しましたように、あくまで海というものはもう食料獲得の場であるということを中心に置いてほかのことを考えるという発想形式をいまとっていかないと、将来ほんとうにたいへんなことになる。極端に言うと、日本の国民の衰亡にもつながるようなものになるのじゃないかというふうに思うわけであります。
  41. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 佐藤先生にお伺いしたいのですが、海底石油の掘さくについて、先ほど肯定的なお話があったわけでありますが、そのときも、条件として、基礎調査の先行が必要だというお話がありました。いまの佐々木先生お話も、先行技術開発が必要なんだという御趣旨でもあったと思うのですが、私が心配になるのは、この間も白書問題で通産省にただしたところ、四十六、四十七年度合わせてこの石油掘さく装置の大型プロジェクトに二十億つぎ込まれているうちの、国の関係する研究試験機関の消化した予算はたった一億円で、あと十九億円は全部大企業へ民間委託されている。当然いままでの経過をずっと資料で見ますと、そういう開発された技術は、結局民間企業が利益のために利用する、こういうことがこの環境保全ということと両立するだろうかということをまず私たちは心配するのですね。それから、こういうように現実に予算が年々ウナギ登りにふえて実用化される段階が近づきつつある現状で、結局基礎調査とか基礎研究というものは飛び越えて行っているのじゃないかなという心配を持つわけなんですが、その点、佐藤先生いかがでございましょうか。
  42. 佐藤任弘

    佐藤参考人 私、直接はそういう技術関係の掘さくとかそういうものは専門外でありまして、存じません。ただ、水路部で大陸だなの地図をつくるという面でそういう地質調査をいたしまして、それとその大陸だなの上に石油を集める坑道ですか、そういうものがあるということが非常によくあって、わかってきたという点で多少の知識を持っているだけのことでありますけれども、いま伺いますと、非常にたくさんの費用が掘さく装置のほうに使われておるということと比較しますと、非常に基礎的な、地形調査であるとか地盤調査であるとかという面の金というものは非常に少ないものだということをいま承りまして、感心しているような次第でございます。
  43. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局それと関連するのですが、この科学技術白書の海洋開発のところのいろいろな説明で見ますと、技術進歩の状況を書いてあるわけなんですが、それは結局二つの部門に分かれまして、一つは学術的調査研究と一般的基礎調査の部門、それから一つ開発分野に直接関連する技術というふうに分かれておるように思うのです。その中で、先ほども原先生の御質問にもあって、幾つかお答えが出ているのですが、この白書によれば、「海洋に関する学術的調査研究については、大学が中心となって行なっている。」これは「世界のトップレベルにあるものもある。」こう白書は評価しているわけなんです。これはまあ部分的にはそうでないものもあるというふうなお話なんですね。この点について、もしこの白書の評価に該当することは非常に望ましいことであるし、予算面やあるいは体制の面で、いろいろ大学の研究機関の立場から政府に要望される点があればひとつおっしゃっていただけたらと思うのですが、これは吉田先生にお聞きします。
  44. 吉田耕造

    吉田参考人 まあトップレベルにあるというお話は、もちろんそういうレベルにあるものがあるのでしょうし、まあ工学関係なんかそういうことですが、私が存じておりますところでは、海洋それ自体の基礎研究をするためのいろいろな実力であるとか、あるいはそれに対する政府の補助であるとか、そういうものは非常に貧しいものであろう。このままでほっておけば、やっぱり学問それ自体、海の研究それ自体はどんどんおくれるでしょう。ただ、これはほんとうにその気になって、しかもそれができるような環境になって、そして研究者自身の問題もありますから、研究者自身もそういうあれもあってやれば、日本研究者は非常に優秀な資質を持つた人が多いですから、決して望みが少ないわけでもない。  ただ、どうもいまの海洋開発の——私も若干関係したことがあるのですけれども、研究調査とか、——環境調査とか、非常に安易にそういうふうに書いておられるし、それが大事であるというふうに書いておられるのですけれども、何かその取り組み方というのが非常に甘い。甘いというか、ほんとうの現状世界で進めているような、そしてわれわれがほんとうにしなければいけないような、そういうことを認識してない。非常に浅い。これは全部が全部そうじゃありませんけれども、私自身が自分の周囲のあれを見たところでは思いますので、それらを非常に不満に思って、機会あるごとにそういうことを言っているのですけれども……
  45. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いま一つの柱の開発利用のほうの説明、叙述を見ましても、結局、海底鉱物資源開発海水及びエネルギー資源開発海洋スペース利用海洋生物資源開発というふうなことだとか、それから深海調査、シートピア計画ということが主たる説明内容で、海洋環境保全技術なんというのは八行ほどですか、非常に抽象的に簡単に書いてあるにとどまっているわけなんですね。私も心配になるのですが、では一体ほんとうに政府のどういう機関がこの海洋環境保全技術について指導を進めているのだろうかと思うのですが、これはひとつ科学技術庁、どこでどのようにやっているのですか。説明もないのだね。
  46. 千葉博

    ○千葉政府委員 御案内のとおり、環境の保全の問題につきましては、政府のほうで総合的に受け持つ行政機関は環境庁でございます。それで、これの技術、環境関係研究の推進は、環境庁が一元的に行なうということに相なっておりまして、  一元的という意味は、推進を一元的にということで、環境庁も御案内のとおり研究所もいま整備しつつあるわけでございます。そのほか、いろいろな汚染の問題につきましては、関係官庁でもいろいろ行なっております。  内容を申し上げますと、たとえば船から油を流すというような問題につきましては、これは運輸省が行なっております。これは船舶技術研究所あたりが中心になって行なっております。それから、海の公害の防止の中で、港湾あたりでヘドロの処理をどうするかというような問題につきましては、これは港湾局が行なっております。港湾局は運輸省にありまして……。
  47. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間がないので……。そういうことは白書に抽象的に書いてあるのですよ。環境庁が取り扱う、たとえば沿岸とか河川、湖沼の汚染はいいけれども、いまこの場で問題になっている大きな海洋汚染等について一体どうなっているのかということを私は質問しているのであるし、特に科学技術行政という立場から考えるならば、よごされた結果をどうするかということよりも、なぜよごれてくるのかということが私はたいへんな問題だと思う。そういうことを一体どこで、だれが、どのように研究を進めているのですか、調査を進めているのですか、こういう問いなんですよ。こういうことについてはっきり答えてほしいのです。  この点は私は、佐々木先生に反論申し上げるようで恐縮なんですが、一度大陸だなの大掃除をやったらどうかというお話があった。私は、大掃除しなければならないような大陸だなの状態になったのは一体なぜかということが、もう一つ前に研究として必要じゃないか、検討を加える必要があるのじゃないかと思うのですが、その点も先生にいま一度御意見を承りたいと思います。
  48. 佐々木忠義

    佐々木参考人 大掃除をするのは、これはよごれたという前提ですから、御指摘の問題があるわけです。私が声を大にして申しましたのは、日本周辺の大陸だなからの水産動物たん白依存が日に日にできなくなってきているので、この辺でひとつ徹底的にきれいに掃除をしたらどうかということで、これは一つの始末をするやり方を言っているわけであります。  問題は、原因がある、原因をほっておきますと、イタチごっこみたいになってしまうので、それじゃその原因は、一体どうして、どういう手を打てばうまくいくのかという問題があると思いますが、やはりこれは、徹底的な、汚染とは何ぞや、中身は何か、そういったことを十分検討して、できるだけ早く手を打たなければいかぬ。  ただ、私がいつも痛感いたしますのは、海洋開発汚染というように結んで考えられがちなんです。私ども海洋開発を口にする者で、絶対に海をよごしてはいかぬという前提なくしてそういうことを言っておる人はいないと思うのです。ただ、具体的に最小限度に食いとめるのにはどうすればいいかと言われると、アンノーンファクターがいろいろありますから、それは開発していかなければならない。しかし、海洋開発をすることは必ず汚染をすることであるというように単純に直結をしないで、汚染を防除しつついかに開発をしていくか——開発はしなければならぬわけですから。そういたしますと、特に日本の場合には官庁の関連が非常に複雑でございます。たとえば、かりに私が日本海のどこかですばらしい金の鉱脈を発見したと仮定して、申請をすると、そういう鉱区権は、あれは通産ですか。港を使えば運輸です。しかし、鉱区を持っても、実際何かしょうとすれば漁業権にひっかかるわけです。漁業権は農林じゃないかと思いますが、そういうような多岐にわたる分野がそこに一ぱいありまして、そういう点を少し整理をしていただいて、クリアにする。アメリカなんかでやっているように、一度全部の権利を国にバックして、国の姿勢として、こういうことをこういうようにしようというときに、その許認可の権限をどこに置くかというところぐらいまで掘り下げた深刻な議論が一つ要ると思う。  もう一つはいろいろなあれを見てみましても、研究者はいろいろなテーマで研究費をいただくわけですが、それが文部省にいったり、科学技術庁にいったり、環境庁にいったり、農林にいったりというような形で、せっかくの金を少し重点的にまとめて、リーダーシップはやはり国がおとりいただいて、そして最高度に学者先生の頭脳を活用していくという何かはっきりした方向づけをして、汚染は防除する、よごれたところは掃除をしていくというようなことにいたしませんと、議論をしている間にどんどん汚染が進むのですから、これは何としても急速にそういう体制づくりをぜひしていただきたいと思うのです。
  49. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 将来の問題として、やはり白書から引用いたしますと、鉱物資源の採取が商業的に可能になろうということのほかに、海上空港とか海中貯蔵施設、海上コンビナート等、新しい産業地帯というふうな構想が出ております。それから、海洋牧場で魚が育成されるということが出ております。それから廃棄物については簡単な化合物に分解されて再利用され、有機物の多い廃水も適度に分解され、大洋域の栄養源として逆に肥料とされるようなシステムも可能となるだろうというふうなことなんですが、これはひとつ川崎先生、こういうことまでがいま考えなければならない海洋開発科学技術行政の一つなんでしょうか、どうでしょうか。
  50. 川崎健

    川崎参考人 なかなかお答えのむずかしいことでありますが、私、先ほど申しましたように、いろんなものを羅列して、結果的にはいわばGNPがふえる方向でものごとが進んでいって、そして海がよごされて、魚も食べられなくなる、こういうのが現実だったのではないか。ですからそういった、これもあれもというかっこうで並べるということじゃなくて、繰り返して申しますように、海洋環境を保全して、そしてそこから豊かな食料資源をいつまでも利用するのだということを基本に置いて考えていく、その場合、いまの海洋の栄養化の問題ですけれども、海に何か栄養物を入れて、そして海の生産を高めようという考えは昔からあるわけでありますけれども、しかし、そういう考えが最近の富栄養化、過栄養化によって非常に危険な考えだということが明らかになってきたわけですね。問題は、やはりそういう海洋の栄養化を高めるという可能性は私は全くないとは思いません。そういったことが必要な場合も場合によってはあり得ると思います。  ただ問題は、あくまで人間がそのことを目的意識的に、人間のコントロールのもとにおいてそういう実験が行なわれ、そしてそれが一定のプラスになるようなことも全くないとは思いません。しかし、現実はそうでなくて、海をごみ捨て場として使われた結果、海が富栄養化してさまざまな被害が生じているわけでございますから、これは先ほどの温排水の問題とも関連するわけですけれども、水をあたためて、あたたかいところでは当然成長のいい種類もあるわけですから、そういったことによって生物の増殖をはかるという場合も私は全くないとは思いません。  ただ問題は、温排水が出るからそれを積極的に利用したらいいのではないかと、こういうのはやはり論理としてはさか立ちでございまして、結果的には汚染を助長することになってしまうわけです。そういう論理のさか立ちがあって、そこで何かもろもろのことがごまかされてしまうような感じがしているわけで、その点が非常に、いまの海の中に栄養分を入れるというのは、私実はそこのくだりのところはよく読んでなかったのですけれども、そんな気がしております。  ともかく、先ほど申しましたように、海の利用についての根本的な姿勢をまず確立する、そういう中でものごとを具体的にどう考えるかというそういう考え方で進むことがいま一番大事なのではないか。それは、何べんも申しますように、環境を保全して海から食料を得るということがやはり海洋開発の基本だ、くどいようでございますが、そう思っております。
  51. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは政府にお聞きしたいのですけれども、先ほども佐々木先生から、せっかく声を大にしていろいろ意見を言っても、それが全然行政に反映されていかない、そういう点をひとつ力を入れてほしいというお話があったのですね。そういう点できょうも貴重な御意見があったわけなんですが、ほんとうに政治に反映していくのかどうかということをお答えいただきたいことと、いま一つは、ではこの新しい海洋開発に対する科学技術行政の理念が確立したとして、さっき私ちょっと御紹介したように、通産省が圧倒的に大きな予算を握っておる。科学技術庁のほうは予算的には少ない。しかも、やっていることの内容等々を見ると、主として産業に密着しているような部分は他官庁が握ってすでにやっちゃっている。こういうふうな状況のもとでそういう理念が行政的に貫けるのかどうか、そういう点もひとつ政府の姿勢を伺っておきたいと思うのです。
  52. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 参考人の諸先生お話にもございましたように、確かに後塵を拝している面が多々ありまして、その点は行政の当局者としても大いに反省をするとともに、その反省を生かしながら、また先ほど来御論議のございました、開発環境保全との巧みな調和をも目ざしながら、先ほど事務当局からも御説明申し上げたとおり、間もなく海洋開発審議会答申が出る予定でございますので、その答申を待ち、また、先ほど来の御論議で瀬崎先生が御強調賜わっております海洋開発の基本理念の中に、しっかりとひとつ環境保全というこの大事な理念を据えながら、技術行政は何といいましてもわれわれの科学技術庁が主管官庁でございますから、そのリーダーシップをとりながら、あまりにも多過ぎる関係各省もございますけれども、それらのリーダーシップをとりながら、御趣旨に沿うように開発の理念の確立、さらにまたその推進をはかってまいりたいと思っております。
  53. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 最後に、これは先日白書問題に関して長官に所信をただした際に、現在のところ科学技術白書は日本学術会議の御意見は承っていないということだったのです。私どものほうから、これは法律上からいっても、学術会議に対していろいろと意見を求めるべきではないかというふうに申し上げたわけなんですが、積極的に政府のほうから意見を求めるという答えはなかったのです。逆に私のほうから、では学術会議から何らかの勧告が出た場合にはそれは取り入れるかと言ったら、それは参考にさしていただきたいというふうな答弁だったと思うのです。ちょっといま私は会議録持っておりませんが、幸いきょうは学術会議から海洋関係川崎先生おいでになっているのですが、そういういきさつも踏まえて、どうでしょう、学術会議で一ぺん科学技術行政に対して意見を出してみようというお考えがないでしょうか。これを最後にお聞きをして、私は終わりたいと思います。
  54. 川崎健

    川崎参考人 先ほどちょっとことばが足らなくて、その点御説明しなかったのですけれども、学術会議海洋研究連絡委員会海洋開発委員会というのがありまして、私もこの海洋開発委員会委員でございますが、これを設けました目的は、政府の海洋開発政策に対していろいろ科学者の意見を言っていこう、そうして政府の政策に反映さしていこうというのが趣旨でございます。ですから、積極的にやろうということで現在いろいろ検討をしている最中でございます。先日も実は、ここにいらっしゃる海洋開発課長の松原先生にもおいでいただきまして、科学技術庁の御見解も、いろいろなそういう問題に対するお考え、あるいは開発審議会の進行状況などもいろいろお教えいただいて、いまおっしゃった方向で鋭意と言うとちょっと大げさですけれども、やっておることであります。ですから、いつになるかわかりませんけれども、そういうことでなるべく早い機会に学術会議意見をまとめたいと思っておりますので、そのために、ぜひそれを参考にしていただくように私からも強く希望いたしたいと思います。
  55. 石野久男

    石野委員長 次に、渡部一郎君。
  56. 渡部一郎

    渡部(一)委員 まず私は、先ほど諸先生方のお話の中で、皆川先生が大陸だなの問題について御発言になりまして、後ほどチャンスがあればとおっしゃいましたので、大陸だなの問題について先生の御意見を続いて開陳していただきたい、こう思っておるわけであります。ひとつよろしくお願いいたします。
  57. 皆川洸

    皆川参考人 大陸だなの問題につきましては、北海大陸だな事件という事件がございまして、この事件でいろいろ問題になったので、詳しいことは省きますが、そのおりに、大陸だなというのは境界をどうきめるかということがたいへんむずかしい問題になっておりまして、現に日本なども東シナ海の大陸だなをどうするかということで問題になったことがあるのでございますが、大陸棚条約の第六条の中に規則がございます。これはとにかく関係国の合意でやる。それで、もし合意ができない場合には、特別の事情によってほかの境界線が正当と認められない限りは領海からひとしい距離のところ、向かい合う国の場合にはちょうど中間になるわけですが、そこで境界線を引く、こういうことになっております。  実は北海大陸だな事件と申しますのは、ドイツとそれからデンマーク、オランダとの間で北海大陸だなの境界線をどう引くかということでいろいろ問題になったわけでございます。結果的にはひとしい距離のところで引くべきだということを主張いたしましたデンマークとオランダの主張が通らなかったような形になっております。と申しますのは、ひとしい距離で引きますと、あそこの海岸の一般的な形状が、ドイツの側がちょっと引っ込んでおるわけですね。デンマークとオランダのほうが少し出ておりますために、ひとしい距離でやるとどうしてもドイツが不利になるということで、ひとしい距離で引くなんということは一体国際法できまっているのかというふうなことが問題になったわけであります。  国際司法裁判所の判断では、これはあくまでも条約上の規則であって、慣習法の規則として確立されておらない。だから、ドイツはまだ大陸棚条約に加わっていないんだから、そのような引き方はドイツを拘束しないものなんだということで、ドイツが主張しましたように、大体ひとしい海岸線にならしまして、正当に公平にひとつ分けるべきだという主張が通った形になっております。  ただ、この際気になりますことは、先ほども地質学的な側面からお話がございましたが、大陸だなというものにつきまして国際司法裁判所が、それは領土の自然に延長していくもの、海の中に下のほうにずっと広がっていくものだ、こういう認識を非常に中心に置いておるわけでございます。ですから、では一体どうして引くのかということになりますと、裁判所はできるだけ公平の原則によって関係国の合意でやるべきだとは申しましたのですが、そのときにいろいろな事情を考慮いたしまして、海の中、その下のほうへその領土の自然な延長をなす部分というものをほかの同じような部分に食い込まないで、できるだけ両者に多く残すように分けるべきだ、こういう非常に抽象的なことなんですが、それが国際法の原則であるというふうな事を裁判所は申しております。  ただ、これは傍論ということでございまして、裁判所の決定理由ということとはちょっとはずれますが、そのときにこういうことを裁判所は申したのでございます。つまり、何としても大陸だなの主張ということにつきましては、領土の自然な延長をなすという大陸だなを特っている国の主張が優先するんだ、その大陸だなが自分のところに近くとも、自然な領土の広がりできておるところの国の主張のほうがむしろ優先するというふうな考えを出してきたことと、それからもう一つ、公平とかいうけれども、これは自然の不平等まで救済することはできない。つまり海岸を持たない国もあるし海岸を持つ国もある。海岸線が長い国もあれば短い国もある。そういった自然の不平等というのはしかたがないのだ。公平といっても、これは地理をつくり直すというふうなところまでいかないのだということを裁判所はいっておるわけでございます。  で、これはこれでいいといたしまして、ただこういったことの中にある裁判所の考え方、つまり大陸だなというのは領土の自然に延長したものであって、いってみれば海の領土である。海の領土に無制限の主権というものを沿岸国は持つのだ。そういうことで、世界の地形はいろいろ違うでしうけれども、そういったところからくる不平等というのは甘受しなきゃいけない。したがって、そういう不平等に乗っかっている資源の配分もまたがまんしなければならない。こういうふうなところまで——一九五八年に大陸だなの制度というものが条約化されたわけですけれども、そのときの考え方ははたしてそうだったのかどうか、私はその点非常に疑問を持っておるわけでございます。確かに、沿岸国の経済開発上の、あるいは安全ということに関連した具体的な現実的な利益というふうなことを考えていたと思いますが、そこまで拡大して、陸地を支配するものは海を、海を支配するものはまたその大陸だなも全部支配するのだというようなところまで考えていたのではないんじゃないかというふうに私は思って降ります。答えになったかどうかわかりませんけれども……。
  58. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大陸だなの問題については、わが国も尖閣列島の問題等あり、また北方領土の問題とも関連して私たちも関心を持たなきゃならぬ問題であり、また日本の漁業資源の問題も含めて大陸だなの問題が問題となりつつある上に、最近に至って海底におけるマンガン塊の開発など、海底資源の問題について国際的な紛争の原因になろうとしているわけであります。皆川先生でもどの先生でもけっこうでございますが、こうした問題について先生方は、日本関係各省庁なり何なりがどういう態度で臨むのが賢明であるとお思いであるか、大所高所からの御意見を伺いたいと思うのです。
  59. 皆川洸

    皆川参考人 これは大陸だなの制度の中に書いてございますけれども、水深二百メートルまでの海底の部分、これが大陸だなだ。しかしそれをさらに越えて、開発可能なところまで大陸だなの権利というものは延びるんだというふうなことが大陸棚条約の中に書いてございますが、しかし条約に規定されておりまする大陸だなの定義によりますと、その国の海岸に隣接するという限定があるわけでございます。隣接するという限定がございますために、どこまでも開発可能な限りそれが無限に延びていくものじゃないのだ。たとえば深海海底までそれをのみ込むように大陸だなの権利というものが延びていくものではない、そこには一つの限界があるということは、大陸棚条約の解釈からも出てくることであると思いますし、もう一つは、先ほどもちょっと引用いたしました北海大陸だなに関する事件におきましても、裁判所はそういうことを申しております。いかに想像力を働かせても、ある海岸から百海里またはそれよりも近くとも、そこに位置する大陸だな上の地点が、普通に隣接するという意味でその海岸に隣接するというふうにいうことはできないだろう、特に大陸だなが自然的に深海海底に没入するというふうなところでは、なおさらそういったことがいえるであろう、こういうふうに申しております。  ですから、いかにテクノロジーが発展いたしましてたいへんなところまで開発可能ということになりましても、開発可能という条約上の基準が一人歩きしまして、もう開発可能だからそこまで全部おれの分だというふうなことにはならない。現に一九七〇年に国連総会におきまして、国の管轄権の限界を越える海底及びその下を律する原則の宣言というのが採択されております。これは、国の管轄権の限界を越える海底及びその下、そういうものが存在するんだという前提に立っておるわけです。どれもこれもみな国の管轄に入るわけじゃなくて、そういうところがあるんだという認識のもとで、この区域の資源人類の共同の財産とみなされる。この区域内においては、いかなる国も主権的な権利を行使しない、主張しない、そして、そこの区域の資源の探査、開発、それに関連いたしました諸活動は、将来新しくつくる国際的な制度によってきめていくんだ、そういう原則を採択することにつきまして、国連の中で一応コンセンサスができ上がったというのが現状でございます。  ただ、それを具体的にどういうふうに規律していくかと申しますと、やはり条約をつくらなければなりません。この条約をつくるということが、またそのための準備作業をするということが、予定されております第三次の海洋会議の重大な課題になるだろうと思います。
  60. 渡部一郎

    渡部(一)委員 皆川先生は、そうしますと、日本が大陸棚条約に加盟することについては、それは前向きにやるべきだという御意見ですか、どうなんでしょうか。
  61. 皆川洸

    皆川参考人 国際法をやっております者の立場からどうこう申し上げるということよりも、むしろもっと広い視野の方からお話をしていただいたほうがいいかと思います……。裁判所の判決をしばしば引用するようでございますけれども、大陸棚条約のある部分はもう慣習法になっておるということを裁判所は判断しております。ですから、大陸棚条約に加わると加わらないとにかかわらず、慣習法化された部分には日本はやはり拘束されるということになるわけでございます。  ただ、先ほど申しましたように、ドイツなんかの例にもございますように、純然たる条約である部分は、これはもう条約に加わらなければ拘束されないわけですが、私としましては、このジュネーブにおいて採択されました海洋法に関する諸条約は、全く私の個人的な意見でございますけれども、やはり国際社会の現在の一般的なコンセンサスの上でああいう条約が結ばれているのでございまして、国の利害関係はいろいろあると思いますけれども、やはりそういう条約に乗っかって踏まえませんと、なかなか国際会議等でこちらのほうの主張を十分に言うということはできないんじゃないかという気がするのです。これはごく個人的な意見でございます。
  62. 渡部一郎

    渡部(一)委員 少し横のほうに行っちゃったよようですから、今度は話を少し戻しまして、海洋開発の問題に対して、私たちがしろうととして一番心配しておりますことは、行政的に多省庁にわたりまして海洋開発が行なわれており、それぞれの分野においての開発が進められておりますが、非常に調整がとれておらない、また、その海洋開発に対する取り組みが非常に科学的でないというふうに感じておるわけであります。  そこで、私どもの考えといたしましては、海洋開発に関する諸関係省庁あるいはグループ等を行政的にかなり調整をいたしまして、海洋開発に関する抜本的かつ前進的な方向を示したらどうか、う思っておったわけでございますが、こういう考え方について、先生方はどうお考えになっておれるかをお伺いしたいと思うわけであります。  川崎先生佐々木先生佐藤先生、ひとつお願いできませんか。
  63. 川崎健

    川崎参考人 ただいまの、各省庁でばらばらになって結局調整がとれてないということでございますけれども、私も、深いことはよく知りませんが、そんな感じを持っております。やはりそういったところに非常に問題があるわけで、それには、単なる調整とかなんとかいう問題だけでなくて、海洋開発の基本法みたいな法律がやはりきちんとないと、結局ばらばらになってしまう。原子力研究の場合には原子力基本法というものがありまして、平和利用、自主、民主、公開の三原則が確立されておるわけですね。そういうことで行なわれておるわけでございますけれども、海洋開発は原子力の利用にまさるとも劣らぬような非常に重大な問題でございますので、そういう単なる調整という問題でなくて、基本的は理念をやはり法律で体現するという形で、腰を据えて取り組んでいくということが現在非常に大事になっているのじゃないか、そんな感じがしております。
  64. 佐々木忠義

    佐々木参考人 いまの問題でございますが、私のささやかな経験で、何とかうまく調整をして、どこか一カ所に行けば大体話がつくというような形にならぬものかなということは、かねがね考えております。現実の問題はなかなか骨の折れることであろうと私は思いますが……。  海洋開発基本法の話が出ましたけれども、私は、そういうことも必要ですが、もう一つは、海洋開発審議会はございますけれども、海洋開発委員会はないわけです。原子力委員会のように、予算獲得の問題とかそういうようなことを、そこで海洋開発を一本化して、そこが中心になってプランニングをし、予算の獲得まで持っていくというような、まあ適当な名前はどういう名前がいいか知りませんが、仮称海洋開発委員会、せめてとりあえずはそれくらいのことをひとつやっていただくとたいへんいいんじゃないかと思いますね。
  65. 佐藤任弘

    佐藤参考人 私は水路部におりますけれども、この問題の個人としての感想ですが、海洋調査にいたしましても、先ほどからお話しになっておりますように、水路部、気象庁、水産庁というのは同じような海洋観測網を持っておりまして、目的は違うわけですが、調査をやっております。これは仕事の重複を避ける意味で、場所的な調整を三官庁の間で行ないまして、協力して海洋調査をするというような形をとっております。  それから、確かに海は広いので、そういう三官庁があっても足りないくらいの状況でございまして、場所的な調整をやって調査しているというのが現状でございますが、考えてみますと、確かにおっしゃられるように、多少目的が違っても、重複してそういう他の官庁があるというのは望ましくないことじゃないか、私は個人的にはそう考えております。  たとえば水路部で地形調査、地質調査というものが海低について行なわれますと、通産省の地質調査所でも、これは資源を目的としておる調査ではございますが、海底資源調査というものが行なわれておるわけで、それは目的が違って重複してないとは申しますけれども、一緒にすればもっと能率があがるという点はあるように思います、個人的な意見でございますけれども。ですから、その辺は何かもう少し考える必要がありそうな気がしております。
  66. 渡部一郎

    渡部(一)委員 星野先生はどうお考えですか。
  67. 星野通平

    星野参考人 この辺いろいろむずかしい問題だと思います。ただ皮袋を新しくしただけが効果があがるかどうかというのは非常に問題があるので要するに海洋とは何だというような問題を考えますと、海洋というのはほとんどすべてのものに関連しますから、そこに一つの省庁なりそういうものをつくるということになりますと、今度は建設なり運輸なりそういうものとオーバーラップする面が出てくるだろうと思います。そういうような面で、さっき佐々木先生が言われたように、委員会組織というようなものを考えるというのが一つの手じゃないかというようなことも考えます。  というのは、いま佐藤君が言いましたように、古い伝統を持った三官庁のおもに水のほうの調査は、ぼくの経験では、たぶんかなりうまく話し合ってやっていたと思います。ところが、最近になりまして、建設省あるいは通産省が海のほうに乗り出してきたところで、なかなかうまく話が通じない面が出ているんじゃないか。そういうような面で、ただ役所を一つにするだけではなかなかうまくいかないんじゃないか。やはりよほどうまい調整機関、それから各担当者のフランクな話し合いのできる組織、そういうようなものをつくることが効果的じゃないかというふうに思います。
  68. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大臣いないのですか。——じゃ政務次官に伺いますが、いまの関係省庁の間の連絡調整機能は科学技術庁がお持ちですから当然おやりになる。ただ、いまの先生方の御意見を伺っていると、海洋開発審議会以外に海洋開発委員会というような御意見がかなり出ておりますね。私はこれは非常に賢明な対策ではなかろうか。一官庁に統合するというのは、これはもう話にも何にもなりませんが、こういう科学技術庁が持っている連絡調整機能以上にこうした問題が進んでいくというのは研究の要があるのではないか、私はこう思うのですけれども、率直にいっていかがですか。
  69. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 確かに、先ほど来の御論議でも明らかなように、強力な調整機能を持ったそういう機関が必要なことは、私も御論議を通じて痛感しております。ただ、国際的にも領海の問題あるいは大陸だなの問題等ありますので、たぶんに流動的な問題もございますので、慎重に検討いたし、ただいまの建設的な御意見を十分参考にしてこれからの方向に処したいと思っております。
  70. 渡部一郎

    渡部(一)委員 次に、私は先生方にお会いしたらどうしてもこれだけは聞いておきたいと思ったのは、PCBによる漁業資源汚染の問題です。また水銀による汚染の問題です。  私はPCBのことをこの間から国会でかなりいろいろな形で詰めてまいりました。簡単に言うと、先生方も御承知だろうと思いますから私はあえてくどくどしく申し上げるつもりはないのですが、PCBの汚染は、今後人体に対する集積は、DDTの例から見て、おそらくこれから十年間増加する一方であろうと思われます。もちろん魚もそういう形で汚染されていくと思います。また、PCTが同じような現象を持っておりますが、PCTの汚染がいま増加中であります。  これまでの間、取り締まるとかなんとか調子のいいお話関係各省からあったけれども、実際的には野放し。それからPCBのうちの塩素部分を除いた部分が写真感光材料、ノンカーボン等に使われておりますが、これが大気中でPCBに変化することがわかっております。また、BHCが日光によって変化することもわかっております。こうやってPCB汚染はさらに増大の方向に向かおうとしている。そうしますと、海洋開発という基礎的な問題の中で、環境保全というのはたいへん大きな命題になっているわけです。  海洋開発関心を持たれている先生方として、こういう問題にどう対処するべきだとお考えになるか、率直に意見を聞かしていただいたほうがいいんじゃないかと私は思っているのです。というのは、いまちょっとむちゃくちゃな段階ですから、ろくな対策ができていないのが実際のところでありましょうし、法律でどう規制するか、行政指導でどうやるか、いろいろな対策が考えられていて、まだ行動に移らぬ段階であると思います。私は、今後叱吃激励するつもりでありますけれども、叱咤される側の方もここにはいるでしょうけれども、それはさておきまして、一体どこのポイントからやるべきだとお考えになるか、先生方の御関心の点からひとつ率直な御意見をお一人ずつ聞かして  いただきたいと思います。お願いします。
  71. 川崎健

    川崎参考人 私、汚染問題は専門でありませんので、あるいは場違いな、見当違いな発言になるかもしれませんけれども、ともかくそういう汚染のおそれのあるような、外部にそういうPCBを出すおそれのあるようなところをこれ以上進行させないための施策、つまり一時操業ストップも含めて、外に出さないということをまずやらんならぬと思います。  それからさらに、第二には、外に出ている問題につきましては、魚などにつきましては、やはり実際に、渡部先生言われましたように、今後汚染が進行するのでありましょうけれども、その被害を最小限にとどめるためにはどうしたらいいかという方策を考える。これは、こういう魚の汚染調査を、時間、空間を非常にこまかくおいて、そしてたまにちょっとやるというんでなくて、全国的にそういう定型的な魚の汚染状態の調査網を設けて、ずっと継続的に調査していって、そして非常に汚染された魚がその調査にかかれた魚がその調査にかかれば直ちにいろいろな措置をとる、こういったことで水も漏らさないような調査体制をつくる。いま打つべき手はやはりこの二つではないかというふうに思っております。
  72. 佐々木忠義

    佐々木参考人 専門が違いますので、中身について私わかりませんですが、海洋開発をすることによって海洋汚染されておるというようなことは、現在は端的にいってないわけです。いまの汚染はほとんどそうではない形で日々海洋汚染されている。しかし、そういうことになりますと、これはたいへんなことでございますので、私はある公の席で、わが国周辺沖合い可及的広範な海域にわたって十年計画の海洋汚染モニタリングシステムの確立を急いでください——これは相当金がかかりますけれども、各沿岸、各試験場、そういうところに特殊の船を配置するとか、ヘドロをとる装置をどうするとか、なければ急いで開発する。そういうことで十年ぐらいの、それもナショナルプロジェクトにしましていますぐ手をつけませんと、間に合わないのじゃないかと思うのです。  私事にわたりますけれども、私ども一日水銀とかあるいはPCBとかで、昨晩も家内が、どうも新聞でいろいろなことを言って——私、魚が好きでいつも食べるんですけれども、魚が買えませんできょうは肉にしましたとか言っていますけれども、すべての家庭がそういうような非常に不安な状態に置かれていると私思う。しかし端的に、これが悪いからこうしろという明快なる答案は、いますぐ求めても出ないだろうと思います。やはりいま言ったような全国的なモニタリングシステムを確立して、その防除に最善の努力を払う。防除するだけではいけませんから、さらに進んでは、資源生物の増大に持っていかないと私どもの生命が保持できないのです。鉄鋼生産がおくれても命には別状ございませんけれども、食糧の自前ができない民族くらい悲哀を感ずる民族はないと思う。ところが、日々われわれが食べるべくしてとったものが口に入らないという現状で、といってこれは感情的になったりあるいはうわついたことではどうしようもないので、じっくりした形で、具体的には、一例としてはいま言ったようなことを、国のせめて十年計画くらいでやっていただきたい。いますぐ打つべき手があれば、それは行政、政治の面であって、私ども科学者がいかんともできない問題があるのじゃないか。あればそれは徹底的に御検討いただきたい。しかし、それだけで済むものじゃないでしょうから、十年くらいの計画で、大きなプロジェクトをひとつ立てて、大至急スタートをしていただきたい、こういうように考えます。
  73. 佐藤任弘

    佐藤参考人 私も全く専門外でありまして、見当違いなことを申すかもしれませんが、まずそういう汚染物質を工場から出さないということが大切じゃないかと思います。それから、そういうよごれたものを海に捨てるという考えを改めなければ、この問題は解決しないだろうと思います。  それから、私も佐々木先生のいま言われたことに非常によく似た考えを持っておるのですけれども、日本の近海を幾つかの区域に分けまして、汚染を監視するような機構を地方別につくって、それをどこかが総合するというような監視組織が必要なんじゃないかというふうには考えたことがあるのです。  以上でございます。
  74. 星野通平

    星野参考人 この問題について、ぼくはやはり長期の対策と非常に今日的な二通りの対策を考えないといけないのじゃないかと思います。  ぼくはかつて経済企画庁で、水質の部門が初めてできたとき、一年ほどおりまして、ちょうど水俣の問題が発生したときでありますけれども、あのとき工場が出す水銀というのは無機の水銀であって、水俣病が起こるのは有機の水銀であるというような話で、工場は、だからうちの水銀じゃないのだというような話で、非常に問題がもつれておりました。たぶん、最近聞いたところでも、この問題はまだ解決ついていないのでありまして、どうして無機の水銀が有機の水銀に変わるかというような基礎的なところがおざなりになったままで非常に問題が発展しているというような面があるのじゃないか。やはりこれはそういったグルンドの問題を十分詰めないと、根源の問題を解明しないと、結局問題はいつになってもほんとうの解明にならないのじゃないかというふうに思います。短期的な問題といえば、もちろん工場を閉鎖したり魚をとらないというようなことまで考えられましょうけれども、そういうものと同時に、そういう基礎的な問題を十分対策をたてるということが必要だろうと思います。
  75. 皆川洸

    皆川参考人 私は、述べるべき専門家としての意見を持っておりませんので……。
  76. 吉田耕造

    吉田参考人 私も専門じゃありませんし、いま伺っておりますと、皆さん専門家じゃなくて、あまり責任あることは言えない。先ほど私申しておりますように、こういう問題というのは非常に大事な問題だし、みなそれぞれに考えていること、もちろんあるんですけれども、しかし、もちろんその専門家の意見を組織的に集めて、そして時間をかけてちゃんと検討する。いま星野さんが言われたのですけれども、長期的なものと短期的なものと二段階でいく、これはいつの場合でも必要で、あまり基礎的なことをやっていたら間に合わぬじゃないかとか、それから、基礎的なことをやっても結局は役に立たぬだろうということが、たいてい支配してしまうんですけれども、その点を、先ほどの繰り返しになりますからもう申しませんけれども、十分に二段がまえでこういうときこそやらなければいけないだろうと、非常に関心を持っております。
  77. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いま先生方のお話伺いまして、さすがに専門家としての良心的な御意見を伺いまして、たいへん私は参考になったように思います。先ほどもいみじくもおっしゃいましたけれども、海洋開発に対する基本的な取り組みの姿勢、経済成長に関する基本的な姿勢がよく考えられないうちに、かってに工場ができ、開発が行なわれてきたというところが、いままでのわざわいの根本であったと思います。陸上でおかしたあやまちを海上で再びおかしてはならないというのが、私は海洋問題の基礎でなければいけないとこの間から思っております。その意味先生方が、きょういろいろとお話ししていただきましたことをいろいろな面に生かしまして、今後もがんばっていきたいと私はむしろ決意しているわけでございます。これは質問じゃございません。先生方に心から感謝をいたしまして、私の質問を終わることにいたします。ありがとうございました。
  78. 石野久男

    石野委員長 次に、内海清君。
  79. 内海清

    ○内海(清)委員 参考人の皆さんには、たいへんおそうなって申しわけございません。できるだけ簡単に、少しお伺いいたしたいと思います。  この委員会海洋開発の問題を取り上げたのは、たしか年度は覚えておりませんが、鍋島長官当時であったと思います。それまではこの委員会でほとんど取り上げたことがない。原子力と宇宙のほう、特に原子力はかなり取り上げてきたわけですが、そのときにわれわれ、海洋開発につきまして長官に御質問申し上げた記憶があるわけで、そういうことでその年にたしか長官がアメリカにおいでになって、いろいろ向こうと折衝して帰られたという経緯があると思うのであります。そういうことでありますから、科学技術庁が海洋開発に取り組んだのは、きわめてまだ時間的に浅いということであります。したがって、そういうことでありますから、予算的にも十分のものがいままで獲得できてないということだと思うのであります。  ところが、わが国海洋国でありますから、この海洋開発はいままでに十分取り組んでいっておらなければならぬ問題であったと思うのであります。ことに人類の生活ということからいけば、むしろ宇宙よりも海洋のほうが非常な関係が深いという気がいたします。ことにわが国海洋国でありますから、そういうふうな感じを持つわけであります。もちろん、先ほどもお話ございましたように、わが国海洋に関しましては各省庁にまたがっておりまして、そこではいろいろ研究もされておったと思いますが、ことに動物たん白を魚に求めるというわが国におきましては、この方面はかなり進んでおると思うのであります。  さらにまた、海洋国でありますから、諸外国とのすべての運輸交通は、いまは飛行機でやりますが、以前は船でやりましたから、そういう航路あるいは輸送という面から、また海底の地形とかその他につきましても十分な研究が行なわれておったと思うのであります。しかし、これがばらばらでありまして、まとまったものがないということが、今日の日本の状態になってきたと思うのであります。幸いに科学技術庁にも調整局ができておりますから、今後は、いまもそこでやってもらっておりますが、各省庁を調整されて十分の施策が行なわれること、しかも海洋開発が急速に進むことを、私どもは期待いたすわけであります。  そこで、この海洋開発という問題を取り上げるのには、まず前提としてどうしてもこの海洋の実態というものをはっきり把握しなければならぬ、私はそういうふうに考えるわけです。この海洋の実態を把握するということはなかなか困難なことだと思います。まことに数多くの現象がございますから、これを的確に把握するということは非常に困難な問題であるということは承知いたしております。しかし、この問題につきましては、世界的にもいろいろ努力されていると思うのであります。これは非常にむずかしいことだと思うのです。物理的な面もありましょうし、科学的な面もありましょうし、地質的な面もありましょうし、生物的な面もありましょうし、きわめて多岐にわたっているということであります。しかし、アプローチのしかたということについてはいろいろ道があると思います。ことにまた、それぞれの国でそういうことが進められておると思うのです。またその国の独特のものもございましょう。わが国でもそういう意味世界的に共通な開発への実態把握の面もありましょうし、あるいはわが国独特のアプローチの道もあったと思うのです。これはわれわれしろうとでわかりませんが、そういう面につきまして、これは諸生先にお伺いすればよろしいのでありますが、時間的に問題がありましょうから、ひとつそういう面につきまして佐々木先生にお伺いしたいと思います。
  80. 佐々木忠義

    佐々木参考人 海洋開発するために海洋の実態を把握しなければならないという先生のお考え、全く私も同感で、そういうところまでお考えいただいていることに深い敬意を表するものでございますが、十年も二十年もかかって実態がわかるのではどうしようもないので、できれば実態を迅速かつ正確につかむということだと思うのです。  迅速かつ正確に実態をつかむためにはどうしたらよいかというと、これは何よりもまず、海洋には御指摘のようにいろいろな現象、要素がございますので、それをメジャーしなければいかぬ。まず測定をしていく。調査にもつながりますが、要するに、実態を知るためには、海洋の複雑多岐にわたる現象をメジャーしていく。メジャーするためには計測機器が要る。ほとんどの計測機器は、一〇〇%ではございませんが、エレクトロニクスの応用でございます。電子工業の応用でございますから、日本世界一のエレクトロニクスインダストリーを持っておりますから、やる気でやれば十分やれます。  それで、そういうときにほかの、上で役立つものが即海に持っていけるかというと、持っていけないところに大きな悩みがございます。おかでりっぱな建物ができましても、海にそれを持っていけない。したがいまして海洋土木だとか海洋建築だとか海洋機械ということをわざわざいっているわけですが、そういうように海洋という別の世界でございますので、そこに持っていくための特殊なものが要る。その際メジャーするための機器、装置をつくるためにすぐ出てこなければならないものは新材料ですね。腐食しないとか、圧力に耐えるとか、生物がくっつかないとか、そういうニューマテリアルが必要でございますが、ニューマテリアルがどの辺までいっているかというと、これも先進国で断片的にはかなり進んでおりますけれども、平均値としては今後の開発を待たなければならぬ。といって、急いでやらなければならぬ問題が目前に迫まっている、こういうようなことでございますが、私は、日本海洋開発を推進するために必要な技術を開発することが、日本海洋開発の向かうべき道じゃないか。そうして、そのすばらしい技術、それから生まれた機器、装置を、相手国と平等互恵の精神に立脚して喜んで使っていただく、そういうような姿こそ望ましい姿ではなかろうか。  と申しますのは、わが国周辺の資源と申しましても、あることはございますけれども、全体的に見ればかなり限度がある。そういう技術開発をして日本海洋開発方向づけをすべきじゃないか、そういうように考えますので、前にもちょっと申しました先行技術の開発というのはそういうことでございます。わが国がやらなければ他国が一刻を競ってやっておりますから、そうすると結局、日本の周辺の、私どもの主権の及ぶ大陸だな資源開発にしても向こうの特許の製品を使って行なう、これは十分に考え得る、あり得ることでございます。そうじゃなくて、世界のすみずみに日本の技術が出ていって、しかも全く平等互恵、押しつけるのでも何でもない。そしてみんなが喜んで使っていく。非常にぐあいがいい。むろん大前提としては、繰り返して申しますように、海洋汚染してはならないのですから、そういうことをしないような形で進めていく。そういう中で実態調査の進め方はまずメジャーをすることだと思うのです。そのために必要な機器、装置、技術を大急きで開発していく、こういうことではなかろうかと思います。  すると結局、日本周辺の、私どもの主権の及ぶ大陸だな資源開発にしても向こうの特許の製品を使って行なう、これは十分に考え得る、あり得ることでございます。そうじゃなくて、世界のすみずみに日本の技術が出ていって、しかも全く平等互恵、押しつけるのでも何でもない。そしてみんなが喜んで使っていく。非常にぐあいがいい。むろん大前提としては、繰り返して申しますように、海洋汚染してはならないのですから、そういうことをしないような形で進めていく。そういう中で実態調査の進め方はまずメジャーをすることだと思うのです。そのために必要な機器、装置、技術を大急ぎで開発していく、こういうことではなかろうかと思います。
  81. 内海清

    ○内海(清)委員 ただいまのお話、よくわかりましたが、そうすると、そういうメジャーをするための機器の開発、これはいまお話を聞きますと、非常にむずかしい問題もあるようであります。あるようでありますが、これは世界的にはかなり進んでおる。同時に、日本では世界的な進め方に対してどういう位置にあるのか、これもちょっとお伺いしたい。
  82. 佐々木忠義

    佐々木参考人 平均レベルといたしましてはかなりおくれておる。極端なものは十年くらいおくれておる。中にはピークを脱しているものもありますけれども。それで、そういうおくれを取り戻すと同時に、やがて追い越していくような、いま申しましたような先行技術開発が必要である。ただ、そのときに、世界のすみずみでいま申しましたような形でそれが有効に利用される場合に、わが国には新しく生まれたそういう海洋の機器、装置についての検定をする公的機関がないわけです。したがいまして、このままでいきますと、各企業、各研究者それぞれがばらばらにものを開発し、それでもって測定をしたデータが、どの程度正確であるかといったようなこともかなりアンバランスの形で出てくる。したがって、私の希望といたしましては、国立のそういう海洋開発機器、装置の検定機関を一つつくって、そこで厳重なるスタンダディゼーションをやっていく。それが技術のレベルアップにもなるし、先進諸国に対しても太刀打ちをしていくための非常に大きな要素にもなる、こういうように考えます。
  83. 内海清

    ○内海(清)委員 そういうものがわが国は特におくれているようでありますので、これはどうしても国で考えていただかなければならぬ。きょうは時間の関係がございますから、科学技術庁のほうはまたいろいろ御論議するときがあると思います。いまお聞きのとおりだと思うのです。ことにいま民間では海洋開発がやかましくなりましたから、海洋産業としていろいろ考えておる向きもかなりあるかと思う。そういうふうになりますと、今後出てまいりますから、いまのいわゆる検定機関というものが、いまの段階こそ一番必要である、こういうふうに思うのであります。この点を、論議はまたに譲りますけれども、ひとつ役所のほうも十分お考えいただきたい、これは強く要望しておきたいと思います。  いろいろお聞きしたいことがございますけれども、時間がありませんから簡単にお伺いしたいと思います。  海洋資源、ことにいまいろいろ論議になっておるのは、長持ちせぬだろうということで世界的にやはり資源問題が論議されております。したがって、今後はこの海洋開発が、そういう資源的な面からいって、一そう浮かび上がってくるだろうということは間違いなかろうと思うのであります。  そこで、いろいろの問題がありますけれども、ただ一つ、大陸だなあるいは大陸傾斜、深海もありましょうが、そういう面、これはまだ技術的に相当今後問題があると思うのであります。これの資源調査、これは大陸だなでいえば漁業と海底の地形の問題もございましょうし、あるいは堆積物の中の鉱物資源という問題もありましょうし、あるいは基盤岩の中のそういう資源の問題もありましょう。いろいろな面があると思うのでありますが、そういう調査わが国でどの程度進んでおるか。海洋資源開発は、むしろ日本の周辺よりも、わが国は海外に石油などはかなり進出しておるわけであります。しかし、何というても、日本の主権の及ぶこの大陸だなについて最も関心を持つべきじゃないかというふうに思うわけであります。そういうことからいたしまして、これは先生方の目からごらんになって、日本のそれの開発の実態はどの程度であるか、あるいは将来どの辺までいく見込みであるか、こういうふうなこと、これはまた佐々木先生佐藤先生にお伺いいたしたいと思います。
  84. 佐藤任弘

    佐藤参考人 海洋というのは地球上の表面積の約三分の二を占めているといわれていますが、それをいままで海洋学というようなことばでいっておりますが、それに対応して、三分の一にすぎない大陸のほうに大陸学なんということばがあるかといいますとこれはないのでありまして、海洋学というものの中には非常にたくさんの要素を含んでおります。大陸のほうでは、もはやいろいろと人間に密接な問題でありまして分化しておるわけですが、海洋の場合には、ただ水におおわれているというだけで一括して海洋というふうにいっておりますけれども、その中を考えてみますと、非常にたくさんの調査すべきものが含まれているじゃないか、そういうふうに考えます。  先ほど御指摘ありましたように、私は大きく分けて四つくらいに分けたらどうかと思っておるのです。海洋の入れものといいますか、海底関係調査、それから中に入っている水の物理科学的な調査、それからその中にいる生物調査、それから水と大気との相互作用というような問題、いろいろあると思うのですが、大きく分けて四つくらいに分けて考えていったらどうかと思っております。  その中の一つ一つが専門化してきますと、非常に複雑な項目に分かれましてむずかしのでありますが、私は海底の入れもののほうの調査におもに携わってきたものですから、その辺についていま日本ではどの程度の調査が進んでいるかという話は多少できると思いますが、日本の周辺の大陸だなに中心を置きまして、大陸だな、それから大陸斜面、このあたりまでを含めましていま水路部で調査を行なっております。これは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、昭和四十二年から始まりましてまだその途中でありますけれども、五十二年ぐらいには終了する予定で調査を進めております。その調査は、測線を平行にとりましてほぼ二マイル、三・六キロぐらいの間隔で調べまして、深さをはかって地形を調べる、それから連続式の反射法の地震探査を使いまして海底から下の地質構造を調べる、それとプロトン磁力計を使って地磁気を調べる、それから船上の重力計を使いまして重力異常を調べるというような四つの項目を中心にいたしまして調べておるのであります。これに似たような仕事は外国でも始められておりまして、私の知っております例ではフランスの沿岸で一部、それからアメリカ沿岸、それからカナダもそれをやっております。ですからそういう大陸だなの調査をして海底を調べておるという点では、それほど諸外国にひけをとる状態ではないと思いますが、それが深海の深いほうの問題になってきますと、これは相当おくれておりまして、アメリカあたり、あるいはソ連の状態を見ますと、深海の調査というものは非常に進んでおりまして、ちょっと比べるわけにはいかないという気がします。  以上でございます。
  85. 佐々木忠義

    佐々木参考人 いま御専門の立場でいろいろお話がございましたが、大陸だなの開発は大陸だなの底だけでございますが、その上の海水も含めた意味の大陸だなの開発ということになりますと、私の考えではもうすぐ日本工業用水が年間五百億トンぐらいになります。これは天与真水だけではとうてい間に合わない、そういうことに伴って淡水化しなくちゃならない。淡水化をすれば、淡水化によって水を売って、そこで商売を成立させるような形で多量の海水を処理いたしますから、未利用元素の回収をやるということで、すでにアメリカ海水中からウランの回収を始ております。そういうような意味での未回収の溶剤元素溶剤資源を回収するというような大きな問題が一つあろうかと思います。  それから、断片的にはすでに日本の周辺の大陸だなから石油、石炭——先ほど星野先生のおっしゃった石炭の問題ですが、それから銅、鉄、これは砂鉄としてやっておりますね。それからチタン、金、日本海で有力と見られる油田が六十ぐらいあるという指摘がございますが、日本の石油企業の方々はあまり興味をお持ちでなくて、御指摘がありましたように、海外のほうにかなり興味をお持ちになっているのじゃないか。しかし、この日本海の油田については、アメリカとソ連が非常な興味を持って、たくさんのデータを持っておりますから、たいへんな興味を持っておることは事実でございます。  それから、幸いに国の予算で、これは通産でございましたか、測量船が着々と建造をされている。そういうことで、従来の大まかな海底資源調査が、もうすぐだんだん精査されていく。こまかく調査をされていく。これは目前に迫っておるわけでございますから、そういうものを有効に使って、周辺の大陸だなの資源をさらに精査をして、行く行くは資源分布図と申しますか、そういうものを作成されるようなところにいくだろう。そういうことを踏まえて、十分な技術のポテンシャルを上げておきまして、そして配慮すべきところは配慮して、日本周辺の大陸だな開発、そういう形が出てくるのじゃないか、こういうように考えます。
  86. 内海清

    ○内海(清)委員 時間がないですから、いろいろありますがこの辺でやめたいと思いますが、いずれにしても、特に資源の乏しいわが国におきましては、食料資源にしても、あるいは鉱物資源にしても、あるいはエネルギー資源にしても、今後海洋にまつところがきわめて大きいと思うのであります。したがって、これからまた先生方の御意見を国に反映するのには、さっきいろいろ問題がございましたが、そういう画もお考えいただいて、十分先生方の御意見が政治の上に反映するような仕組みがつくられ、同時に、政府としてもこの面に十分な力を、予算面におきましても、あるいはそのほうの機構の問題にしましても、入れて、そうして早急にこれは進めていかなければならぬ問題だと思います。またいずれこういう問題は、今後だんだんと論議が盛んになってまいると思うのであります。御意見を聞くときがあると思いますので、きょうはたいへんはんぱで申しわけございませんけれども、いろいろ考えておりましたが、時間の関係がございますから、これで終わりたいと思います。
  87. 石野久男

    石野委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のためたいへん参考になりました。  委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。      ————◇—————
  88. 石野久男

    石野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  日本原子力研究所の業務運営に関する問題調査のため、明二十八日、名古屋大学教授長谷川正安君、日本原子力研究理事長宗像英二君、同研究理事山本賢三君及び同研究所労働組合中央執行委員長大杉茂治君に参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 石野久男

    石野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。次回は、明二十八日木曜日午前十時より理事会、十時十五分より委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十四分散会