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前田国務大臣 近江先生御
承知のように、宇宙の
開発につきましては、
わが国は率直に言いまして相当おくれております。ソ連のスプートニクが打ち上げられましたのは、たしか十七年前だと思っております。また、
アメリカのアポロによる月探検が四年前でございます。
わが国の
宇宙開発委員会が
——それまでももちろん
宇宙開発はやっておりました。しかし、本格的に
宇宙開発委員会が発足いたしましたのは四十三年でございます。
宇宙開発事業団ができたのは四十四年でございます。そして、
宇宙開発計画の最初のものが本格的にできましたのが
昭和四十四年。それが
昭和四十五年に改定されまして、現在の
宇宙開発計画は
昭和四十五年のものが基礎になっております。
しかし、その当時の
宇宙開発計画を読んでみましても、
宇宙開発というものは非常に流動的である、したがって、その流動化する宇宙
利用の情勢にかんがみまして、毎年毎年その
見直しをしなければいけない、
計画の修正をしなければいけないということが書いてございます。したがいまして、その精神に沿いまして、毎年毎年修正といいましょうか、つくろいといいましょうか、それをやっておるわけでございます。
それで、
昭和四十七年におきましても、その修正の
一つとして、いま問題になっております中容量の二百五十キログラムの重さを持っております
通信衛星、
放送衛星を打ち上げてほしいという
要望がございました。実はその
要望につきましても、いろいろ
要望の段階でおくれたり、交渉もおくれまして、実は一般の
宇宙開発関係の
予算の見積もりにちょっとおくれたのです。それで、
予算の要求あるいは手続を早くしなければいかぬというわけで、実は中容量の
通信あるいは
放送衛星についての
予算の見積もり方針につきましては
——一般の見積もり方針は、たしか四十七年十月十三日だったと思いますが、できたのでありますが、中容量の
通信放送衛星につきましては、おくれまして、年が明けてからたしか一月の十二日か十三日にきめたわけでございまして、その間、別にすったもんだしてもめておったわけではございません。いずれも熱意のある人々ばかりでございまして、しかし、もちろん
宇宙開発委員会というのは中立性を持った
委員会でございます。したがって、そういう不当な圧力に対しては屈することはできない、われわれは断固としてやるんだという
姿勢も必要であります。さればといって、ただ中立性ばかり言って、ユーザーの意見といいましょうか、
利用する側の意見というものもよく考えなければいけない。それが
山縣先生が両方を中和するような発言をされたゆえんだろうと思いますけれ
ども、やはりユーザーの意見というものもよく尊重しなければいけない。そして、実は私はその
考え方をもちまして中容量の
通信衛星、
放送衛星の提案というものをよく
検討いたしましたところ、これは私からるる御
説明しなくても
先生御
承知のとおり、確かに電波権益の確保とか、あるいは静止軌道上に一定の場所を確保しなければいけません。赤道の上に三百六十度全部打ち上げるわけにはいきませんから、せいぜい二度に一発ずつ打ち上げましても百八十しか打ち上げることができませんので、そういう点から見ても、なるべく早く打ち上げたい。あるいは難視聴地域の解消であるとか離島
通信であるとか、いろいろな面におきまして早く打ち上げたいという、郵政、電電公社、NHKのユーザー側の御希望もよくわかる。よくわかりますけれ
ども、ただその点はよく意見の分かれるところでありまして、何か
技術庁がじゃましておるんじゃないか、あるいは
宇宙開発委員会は、中立性を金科玉条として、石頭じゃないかというふうな非難もずいぶんございました。また、一方においては、われわれがこれだけ張り切っているのにわからぬのかという意見もございまして、その間、別に悪意はなかったのでありますが、相当の熱意でやりとりがございました。
しかし、私たちは、そのユーザーの意見というものを尊重しつつ、しかもそういう
予算の見積もりにおきましても、
ほんとうに中立性の立場をもって冷静に考えてやらなくちゃいけない。決して五十一年に打ち上げたいという
郵政省等のユーザー側の
要望を無視するものではありません。これは大いにその
要望に沿っていきたいという熱意に燃えております。しかし、ただ
予算をがんがんつけただけでは
意味がないじゃないか。やはり
予算をつける以上は、実は
気象衛星だって四十六年と四十七年、二年かかって
予備設計、
概念設計をやっておるわけですから、
通信衛星だって、相当な
技術はまだ外国にお願いすると思いますけれ
ども、それにしても一年間ぐらいは
開発のための
研究というものに精力的に取り組んで、そして結論は五十一年に上げるようにすればいいんでしょうというのがわれわれの
考え方でありまして、ただステップだけあせっても、まことに堅実に進んでいかなければいかぬということでそういうふうになったわけでございます。八億七千万がついたわけでございまして、
新聞報道では、何か二十億ついたのに
宇宙開発委員会がえらい力で削ったとか、いやその間どういうけんかがあったとか、いきさつがあったとか言うておりますけれ
ども、別にそういう問題ではございませんで、ただ、にぎやかにそういうことは言われましたけれ
ども、私たちの
ほんとうの真意は、いま申し上げたとおりでございますので、どうぞひとつよろしく御理解をいただきたいと思います。