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1973-04-27 第71回国会 衆議院 運輸委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月二十七日(金曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 井原 岸高君    理事 江藤 隆美君 理事 加藤 六月君    理事 佐藤 孝行君 理事 佐藤 守良君    理事 細田 吉藏君 理事 兒玉 末男君    理事 斉藤 正男君 理事 梅田  勝君       愛野興一郎君   小此木彦三郎君       大竹 太郎君    唐沢俊二郎君       國場 幸昌君    關谷 勝利君       徳安 實藏君    宮崎 茂一君       綿貫 民輔君    井岡 大治君       太田 一夫君    金瀬 俊雄君       久保 三郎君    神門至馬夫君       紺野与次郎君    三浦  久君       石田幸四郎君    松本 忠助君       河村  勝君  出席公述人         東京工業大学教         授       菅原  操君         経済評論家   木村禧八郎君         一橋大学名誉教         授       田上 穣治君         交通評論家   村木 啓介君         流通経済大学教         授       中島 勇次君         法政大学教授  広岡 治哉君         主     婦 竹森 澄江君         主     婦 都丸 泰江君  委員外出席者         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 委員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   阿部 喜元君     愛野興一郎君   石田幸四郎君     田中 昭二君 同日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     阿部 喜元君   田中 昭二君     石田幸四郎君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進  特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出  第一七号)      ————◇—————
  2. 井原岸高

    井原委員長 これより会議を開きます。  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案について、公聴会に入ります。  本日御出席願いました公述人は、東京工業大学教授菅原操君、経済評論家木村禧八郎君、一橋大学名誉教授田上穣治君、交通評論家村木啓介君、流通経済大学教授中島勇次君、法政大学教授広岡治哉君竹森澄江君、都丸泰江君、以上八名の方々でございます。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  申すまでもなく、本案は重要な法律案でありまして、本委員会といたしましても、慎重なる審議を続けているところであります。  この機会に、広く各界からの御意見を拝聴いたしまして、審査の参考にいたしたいと存ずる次第でございます。何とぞ、公述人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  議事の順序について申し上げます。  まず、公述人各位からお一人十五分程度意見を順次お述べいただきまして、その後、委員から公述人各位に対して質疑を行なうことになっております。  なお、念のため申し上げますが、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、公述人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。  御意見を述べていただく順序は、菅原公述人木村公述人田上公述人村木公述人中島公述人広岡公述人竹森公述人都丸公述人の順でお願いをいたしたいと存じます。  それでは、まず菅原公述人お願いいたしたいと存じます。菅原公述人
  3. 菅原操

    菅原公述人 東京工業大学菅原でございます。  今回御提案のございました国鉄運賃法及び国鉄財政再建促進特別措置法の一部改正法案は、国鉄経営の現状あるいは今後の国民経済あるいは国民福祉国鉄の果たすべき役割りというものを考えますと、当然必要なものと考えまして、私はこの法律案賛成でございます。  国鉄が現在まで国の大動脈としてその役割りを果たしてきたわけでございますが、経済社会の変動あるいは輸送構造変化、そういうものによりまして、昭和三十九年以降赤字に転じ、昭和四十七年度で三千六百億円に達するであろうという赤字を発生するという憂慮すべき事態に至ったものでございますけれども、この国鉄をして今後とも国の大動脈として、国民経済あるいは国民福祉向上発展貢献させる、そのためにはここで抜本的な体質の改善を行なわなければならないものと思います。  この赤字を四十八年から五十七年までの十年間に解消して、昭和五十七年度減価償却後の黒字に持っていくというためには、収入増加をはかり、あるいは経費の節減をはかっていくということが必要でございますが、まず第一に、交通施設建設及び維持に要する費用利用者負担をするのが原則であると思います。したがいまして、人件費上昇あるいは物価上昇に対しまして、適正な運賃水準上昇というものは容認されなければならないものと思います。  第二に、しかしながらこの交通市場は必ずしも一般市場機構に乗らない面がございます。たとえて申しますならば、第一には、非常に波動性の高い都市通勤通学輸送を担当するというようなものがございます。あるいは第二に、国の分散政策というような場合に先行的な投資をしなければならない。効果があがってくるまでに相当な懐妊期間があるということがございます。あるいは第三には、ローカル交通維持というようなシビルミニマム的な役割りも果たさなければならない面がございます。そういった場合につきましては、必ずしも利用者がそれを負担をするというものではございませんで、その目的を達成するために、適正な国の財政援助あるいは補償というようなものがなければならないわけでございます。  それで、国鉄再建促進措置を伺いますと、次の三つのものから成り立っているということで、私はそれが当を得ているものと考えますが、第一に、国の財政援助として約五兆円のものが盛り込まれておる。第二に、国鉄企業努力として約五兆円が計画をされていると伺っております。これに対しまして、運賃値上げによる増収分が約八兆円を見込んでいる。そういたしまして、この再建期間中に人件費が上がるわけでございますが、人件費上昇分だけで七兆四千億、これに基準物件費上昇八千億を加えますと約八兆というものがこれは資本費を除く純経常的な経費として上昇していくわけでございます。そういったものをカバーするために、八兆円程度運賃値上げというものは、これは必要最小限でやむを得ない運賃レベルのアップであろうと私は考えます。そういう意味でこの国鉄再建計画及び運賃値上げ運賃法の一部改正法律案に私は賛成をするわけでございます。  なお、この再建実施にあたりましては、私は、現在の再建計画実施状況その他から考えまして、ひとつお願いをしたいことがあるわけでございますけれども、まず、現行計画が挫折をした原因を十分に反省をして進めていっていただきたいと思います。  第一に、その原因人件費の予想以上の増と収入の伸び悩みというものが原因で、ここに改定をしなければならないということにもなっているわけでございますが、今回の計画は本年二月に閣議決定をされました経済社会基本計画というものにのっとって、経済指標等を想定しておるわけでございます。言うなれば、国の経済社会基本計画と斉合した計画であるということがいえると思います。そういった意味で、相当精度の高い予測がなされているというふうに私は判断いたします。しかし、国鉄分担輸送量というものは、これは国鉄のほうできめられるものではないわけでございます。つまり、利用者が自由に交通機関を選択していくわけでございます。そういう意味で、国鉄予測をしております収入をあげていく、あるいは輸送量を確保していく、そのためには常に国鉄としては輸送構造変化に対応していかなければならない。そうしないと予想された収入が得られないのではないか、こういうふうに考えます。交通部門をめぐっております社会的な、あるいは経済的な環境は常に変動しております。流動しております。この流動するニーズというものを常に的確に把握をして、また一方では急速に発展していきます技術革新というものに即応した体制をとっていかなければならない、そういうふうにやっていっていただきたいと考えるわけでございます。  たとえば、旅客輸送につきましては、新幹線網整備建設促進でございます。全国に住む大多数の国民が、容易に新幹線網を利用するという恩恵に浴せるというためには、強力な新幹線網建設促進措置をとっていただきたいと思います。また貨物輸送が伸びないということをよくいわれるわけでございますけれども、貨物輸送について申しますならば、現在全国に二千以上の貨物駅が散らばっているわけでございますが、そういうところから出てまいります非常に少量の貨物を集めて運んでいく、一カ所に集めて、それを一つの列車にして運んでいくというような輸送体系をとっておったのでは、生産性においてほかの社会構造に十分に追いついていけないということになるわけでございまして、これを全国数百程度以内の拠点駅に整備をいたしまして拠点間の輸送をやる。そうして貨物ターミナルはほかの交通機関、言うなれば、トラックとかあるいは海運、そういうものと共同して利用できるというような複合的な性格あるいはターミナルにあわせて補完の機能を持たせるというような複合的な機能を持ったターミナル整備していくということによりまして、自動車鉄道との協同体制あるいはその他の交通機関との協同体制を完成させる。そういうことによってこそ初めて利用者ニーズに対応できていくというふうに考えるわけでございます。また同時にコストの逓減がはかれるということでございます。そういうふうなシステムの変換を勇敢に進めていっていただきたいと思います。  それからまた一方、大都市におきましては、交通空間の制約というものがございます。したがいまして、そういう場合には国鉄がおのずと通勤通学というような短時間に大量に集まってくる交通を担当しなければならないわけでございます。したがいまして、どういった輸送が最も国民経済あるいは国民福祉向上貢献をするかということから、強力な質的な向上あるいは量的な拡大というものを、通勤対策にも力を入れていただきたいというふうに思います。  それから最後にもう一つお願いいたしたいことは、この交通施策地域との関係でございます。具体的な例をあげて申しますならば、第一に、都市開発との一体的な計画でございます。従来、都市計画とあるいは地域計画交通計画とが遊離をしておる、あるいは交通計画都市計画に追随をしていく、こういうことでは真の貢献はできないわけでございます。それから都市交通との計画一体性と同時に、その実施にあたっての協同的な開発というふうな組織面あるいは実行面一体化をしていくということが必要ではないかと思います。またそういうことが、結局は非常にローカル交通網の生かし方、地方におけるレクリエーション基地開発といったようなものと一体となりますローカル交通の活用のしかたというものにもつながってくるのではないかというふうに考えます。  また、逆に交通施設建設にあたりまして、常に生じてまいります地域の逆に抵抗というもの、これがどういうところに原因があるかということも十分に把握をしなければ、この大きなプランを立てただけで、それが実行できないということになってくるわけでございます。そういった意味で、この交通施設整備あるいは交通施策の推進というものにあたりましては、地域との関連というものを常に考慮に入れて進めていただきたい。  以上、四点、再建計画実行にあたりましてお願いいたしまして、全面的にこの両法案改正賛成であるという私の意見を終わりたいと思います。(拍手
  4. 井原岸高

    井原委員長 ありがとうございました。  次に、木村公述人お願いをいたします。
  5. 木村禧八郎

    木村公述人 御要請によりまして、国鉄財政赤字解消と、運賃値上げを内容とするこの法律案改正につきまして、簡潔に意見を開陳いたしたいと思います。  まず、結論から申し上げますと、本案福祉に逆行する再建案であり、運賃値上げ案であるといわざるを得ません。その理由にはいろいろございますが、おもなる点として二つをあげることができると思います。  その第一点は、国鉄財政再建及び運賃値上げ問題を取り上げる今回の基本的姿勢福祉に逆行しているということであります。  過去何回かの国鉄長期計画は、常に運賃値上げワンセットの形をとってまいりました。今回も計画最終年次昭和五十七年には三千五百キロの高速新幹線国民が利用できる、さらにまた、昨年大問題となりました地方赤字路線の廃止を取りやめるという二つ国民に対するサービスと、十年間に四回の運賃引き上げを行なうという利用者負担強化をセットした、従来と全く同じスタイルで登場しているわけであります。  国鉄財政再建体質強化のための資金獲得企業努力によってだけでは期待できませんので、その解決策をこれまで運賃値上げに求めてまいりましたが、昭和四十一年、四十三年、四十四年度運賃値上げの結果がそうでありましたように、今回の場合も、たとえ運賃値上げを予定どおり行なったといたしましても、投下資本借り入れ返済、巨額の借金利子支払いなど、費用増加負担できる見通しは立っておりません。今回の国鉄再建計画では、昭和四十八年、五十一年、五十四年の各年度に平均一五%、五十七年度に一〇%の運賃値上げを予定しておりまして、計画最終年次の五十七年度には、それまでずっと続いている赤字が一挙に三千七百九十二億円の黒字転換するというバラ色見通しが描かれております。しかしこの間の借金は、四十七年度の三兆七千六百七十六億円の三倍近く十兆九千八百十九億円にふくれ上がります。さらに累積赤字も一兆四千四百三十五億円から純一・五倍の二兆六千七十五億円にふえることになっております。現在でも借金に追われ、苦しんでいる国鉄が、十年後にいまより三倍も大きくなる借金の重圧にどうして耐えることができるのか、全く理解に苦しむところであります。  現在の国鉄財政再建にとって大きな問題は、過去のワンセット方式を見直しまして、総点検をいたし、従来のワンセット方式とは根本的に異なる立場から、国民の足と物資の輸送とをどうして確保するか、福祉経済への転換といわれておりますもとで、国鉄運営企業性採算性重視の従来の方式からどういう方法で脱却するかということだと思います。  そうした新たな観点に立った国鉄再建計画が、政府国鉄から明らかにされておりませんために、公共企業体としての国鉄は、救いようのない欠陥経営を今後十年間も続けざるを得なくなるといわざるを得ません。  四十八年度福祉経済転換初年度とするということが福祉元年という言いあらわし方で表現されております。これは昨年末の衆議院選挙を通じまして、与党、野党が国民に公約したことであります。今回の国鉄運賃値上げを見ますと、こうした発想転換がなされていないことは明瞭であります。  どうしてそうなったかと申しますと、政府与党には福祉経済への転換を従来の公共事業政策量的拡大程度にしか考えておらない、質的な転換福祉経済原理原則というものが明らかにされ、あるいは確立されてない、そういう点にあるのではないかと思います。福祉経済とは現代経済学的な発想によりますと、少なくとも三つ原則に基づく必要があるといわれております。  その第一は、憲法二十五条に基づく生活権の保障であります。  第二番目は、交通とか保健、食糧管理のために政府国民に提供する義務がある財貨サービスのための財政支出は、教育費と同じように赤字と見るべきではないということです。したがって公共的サービス機関独立採算制は、福祉原則から見ますと誤りであるということであります。第三番目は、公害のような、企業企業外に与えるマイナス経済防止費用企業負担させるという、いわゆる社会的費用内部化であります。  今回の国鉄運賃値上げは、第二の福祉原則とまっ正面から衝突するものであります。十年一日のごとく、赤字解消利用者負担にたよろうとする運賃値上げは、福祉経済への転換ないし福祉型財政運営とは無縁のものといわざるを得ません。こういう点、政府が深く認識すべきであると思います。  理由の第二点は、総合交通体系の裏づけがなくなってしまったことであります。昨年の運賃値上げの際は、将来のわが国の交通政策基本鳴りもの入りで騒がれました例の総合交通体系がありました。それが今回の運賃値上げにあたって、一年足らずして吹き飛んでしまっておるのであります。将来の輸送需要を推計いたし、それぞれの輸送機関が受け持つべき分野を定め、それに従った交通政策貨物旅客を問わず必要なはずであります。事柄の是非はともかく、昨年一たんできかけた総合交通体系考え方を今回の運賃値上げでぶちこわしてしまって、国鉄、バス、トラック船舶等輸送分野担当区分長期構想がないまま、ばらばらかっての投資運輸政策が推進されることは、将来に大きな禍根を残すこととなります。たとえば、昭和四十八年度初年度といたします第七次道路整備五カ年計画が、国鉄十カ年計画投資額の二倍近い十九兆五千億をわずか五カ年間に投資することにして、四十八年度からこれをスタートしようとしておるわけであります。こういうことからもわかりますように、交通政策総合調整がはかられることなく、予算分取りが行なわれたわけであります。このまま進みますならば、全国主要都市輸送国鉄新幹線自動車用高速道路が並行して走ることになりまして、総合交通体系どころの話ではなく、輸送体系の混乱と重複投資が行なわれ、結果的には資源のむだ使いと、これまで以上に国鉄の斜陽化が進むことになるでありましょう。  今回の再建案借金拡大による投資拡大と、それによる収益増を通じての再建という、四十七年度を除いたこれまで国鉄が歩いてまいりましたパターンでありまして、その結果は、これまでのように減価償却さえも満足に行なえないような経営悪化に呻吟させられることになると思うのであります。  特に新幹線につきましては、昨年の案では、山陽、東北、上越、成田の四線を整備ずることになっなっておりましたのを、今回は北海道東北、これは盛岡−青森間でありますが、北陸、九州、博多−鹿児島、博多−長崎の五つの新幹線を追加いたし、その建設投資額は、昨年案の二兆円から今回は三兆九千億円にふやしまして、そうして収益増加し、再建をはかろうとしております。この変更が田中首相提唱列島改造論によってもたらされたことは、これはもう間違いないわけであります。しかし東海道以外の新幹線東海道のような収益を期待することは航空とか海運などとの競争から困難であります。新幹線拡大による再建は望み得ないでありましょう。  最後に、福祉原則に基づく国鉄財政再建策といたしまして次の三点を提案いたしまして、私の公述を終わりたいと思います。  その第一は、道路建設に向ける予算の一部を国鉄出資に振り向け、国鉄財政金利負担を軽減するとともに、トラック貨物輸送との競争力強化すること。政府国鉄への出資は四十八年度千五百八十億で、資産六兆一千七百二十二億に対し〇・二五%であります。道路公団首都高速あるいは阪神高速の三公団出資比率と比べまして著しく低い。今回の案で十年間に一兆五千七百億出資いたしますけれども、今度は十兆円の投資が行なわれますから、大体国鉄資産は十六兆、あるいはもっと物価が上がりますから二十兆くらいになるかもしれません。そうしますればその比率は非常に少ないです。そのために、金利のつかない出資が少ないものですから金利負担が高くなる。これを改めなければいけないと思います。  第二に、国鉄通勤輸送政策的割引によりまして利益を得ている大企業国鉄再建費を課税あるいは国鉄債券保有等を通じまして負担させる。  第三に、独立採算制度を廃止して、経理の不足分輸送確保歳出といたしまして一般会計より補てんするということであります。  この三点を提案いたしまして私の公述を終わりたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手
  6. 井原岸高

    井原委員長 ありがとうございました。  次に田上公述人お願いします。
  7. 田上穣治

    田上公述人 私は、今回御提案になっております法律案につきましては大体賛成でございますが、しかし若干異論もございまして、そういうところを簡単に申し上げてみたいと思います。  つまり、先ほど木村公述人からちょっと触れられましたが、私はやはり、現在の日本国有鉄道法では独立採算制をとっている、それがよいか悪いか私も疑問を持っておりますけれども、とにかく現行法、それを改正しない限りは——結論はある程度明確に出ると思うのでございます。  つまり第一点としましては、運賃値上げがしばしば国民生活を脅かすものであるという非難がございます。これは従来からございます。あるいは物価にはね返ってきて悪影響が非常にあるというふうなことも申します。ところで運賃法の第一条をごらんになりますと、そこには御承知のように運賃のあり方としまして原価を償うということが一つ出ております。と同時に、まさに今回においては矛盾するようでございますが、賃金、物価の安定に寄与するということも入っております。そこで常識論としまして運賃値上げ物価に、どの程度かは若干問題でございますが、ある程度の影響があるということもわかるし、しかしまた原価を償うという意味におきましては運賃値上げが必要である。はなはだ矛盾したような立場で、かなり私どもも迷うのでございますが、しかし独立採算制日本国有鉄道法第四十一条でとっております限りは、原価を償うということはきわめて重要であり、その意味原価は、個別的に線区別赤字を埋めていく、つまり営業係数の悪いところだけを埋めていくということでは足りない。御承知のように国鉄予算は全体として、一体として毎事業年度収入支出について編成されておりますから、ある部分赤字であれば、ほかのほうが黒字でありましても、相殺されます。全体として考えなければならないのでございますが、そういう意味におきまして、やはり総原価、全体としての原価というものが償うことが必要である。北海道あたりに特に赤字線の極端なものがあるように伺っておりますが、そういうものだけを解消するということでは済まないのでございます。さて、そうなりますと、また国鉄収支予算を分割いたしまして、ある部分について原価が償うかどうかということを考えるわけにもいかない。そして御承知のように、独立採算制は、利益損失補てんに充てる、残余があれば積み立てておくかわりに、損失のほうはすべて繰り越し欠損金として整理することになりまして、先ほども御指摘がありましたが、当然に国のほうから赤字補てんするということにはなっていないのでございます。ところで今回は財政再建のほうから考えて政府出資がかなり認められております。その意味で、これは運賃法とは別に運賃値上げが相当に、抑制と申しますか、必要が減るのではないかというような考え方もございます。しかしながら、これはもうおわかりのように、もしそのように赤字補てんあるいは欠損を減らすことが、運賃値上げによらないで主として政府出資額を増額するということで解決するということでありますと、先ほどからのお話のように独立採算制をはずさなければならない。独立採算制は、国鉄みずからの企業努力あるいは利用者負担を若干増加することによってともかく利益をあげて赤字解消につとめなければならないという一つの宿命的な結論があるのでございます。そういう意味において、今回政府出資を相当、ある程度ふやしたということは私は敬意を払うのであります。しかし実をいいますと、初めにお断わりしたように、私も必ずしも満足していないのでございます。  特に今日国鉄の経営の赤字についての問題は、一つは、しばしば言われます赤字線があるためでありまして、これはもういろいろよくおわかりのところでございますが、その解消は容易でない。地元の反対があるのみならず国会の中でもかなり困難なところのように伺っております。しかし私の申し上げたいのは、単に現在あります赤字線解消、廃止ということだけでなくて、実は鉄道敷設法をごらんになりますと、第一条に基づく別表という表がございまして、建設予定の路線でございますが、ちょっと見ましたところ、約二百本ほどあがっております。これを伺いますと、ほとんどがみな赤字である。こうなりますと、鉄建公団を通して建設されます赤字線が将来どれくらい続くか、どれくらいふえてくるかわからない、こういう状況で、むしろ私は現在の赤字線よりもこれから建設されて国鉄のほうに移管されて、その財政の重大な負担となる新線の建設のほうに非常な心配を持つのであります。そういうふうに考えますと、これはまさに経営の合理化に反対であり、また独立採算制の趣旨をむしろ破るものでありまして、今回幸いにして政府出資がかなり認められましたから、こういうものは、私どもの頭の中では、まず運賃を下げることよりもそういうもっと急を要する問題があり、むしろこれの欠損に充てるべきではないかというふうに思うのでございます。  またもう一つは、御承知の公共負担の問題がございます。私どもしろうとにも一番わかるのは定期の割引率でございまして、運賃法では五〇%になっておりますが、実際には御承知のように、通学に至っては八十何%の割引であり、通勤の場合にも、これはほとんど法律のとおりでございますが、五十数%あるいは五五%くらいの平均だということでございますが、こういう問題につきましては、国鉄のやはり公共性ということを考えると、当然ではないかという御議論もあるかと思います。しかし、私は公共性があるからむしろ経済性のほうを無視してよいとは考えないのでありまして、独立採算制という点は、やはり経済性をある程度、つまり公共性と著しく矛盾しない限りにおいて経済性を考えるという必要があるのではないか、そういたしますと、結局経済的に見て、たとえば定期でありますと、切符の販売、乗車券の販売の手間が省ける、人件費その他の経費が節約されるといたしますと、その程度は経営の上からいっても割り引くのは当然である。たとえば、私どもの伺っているところでは二〇%ぐらいならば、当然国鉄が割引率を認めなければならない。しかしそれを上回って五〇%、八〇%というふうになりますと、これは明らかにそこに矛盾がございます。この矛盾の解消独立採算制とは別に、国のほうで負担すべきではないかと思うのでございます。外国にも、ドイツその他にもそういう例があるようでございますが、この点はひとつ今回の改正とは一応別のようでございますが、実は表面に出ておりませんけれども、定期の割引率なども幾ぶんこれを下げる、つまり定期の値段が上がるということを伺っておりますが、今回の法案の表面には直接あらわれておりませんけれども、そういう点をもっと掘り下げて考えませんと、ほんとうの財政再建は困難であるというふうに思うのでございます。たとえば、いまの公共割引に関連しまして、貨物運賃についてもある程度の割引がある。これはもう一つの問題でございますが、貨物の車扱いの運賃の等級制につきまして、現在の四等級を三等級に改める、その点で若干議論になっておると伺っておりますが、一等級、二等級を一本にして、言いかえれば一級の運賃というものを二級並みに扱う、そして他方では四級あるいは三級、特に四級のような生活必需物資のほうの運賃は多少引き上げるというようなことになりますと、一般の庶民の負担において、貨物の車扱いの運賃が改悪されるような感じもするのでございますが、しかしこういう場合もやはり割引ということも考えられる。これは一つの政策的な意味が入ると思うのでございますが、そういう割引が、公共割引という名称からわかりますように、社会国家的な、少し大きく言えば社会政策的な、そういう新憲法二十五条、先ほどもお引きになったようでございますが、そういう社会国家的な原理が戦後に公に入ってきておる。その立場からいえば当然だという感じがするのでございます。しかし、そういう場合にもやはりそれは経済性から見ると必ずしもそのまま受け取ることがむずかしいわけでありまして、その調整はやはり国の財政のほうで国庫が負担すべきではないかと思うのでございます。  そういう意味で今回政府出資再建法の関係で認められましたことは賛成でございますけれども、しかしまだ十分とはいえない。そのことがしばしば運賃の問題にも影響してくると考えるのでございます。基本的には、独立採算制から見まして、国鉄自体の赤字解消政府出資に依存すべきではない、これは現行の国鉄法のたてまえをとりますとそういうふうに私は考えるのであります。したがって、まずその点、もし抜本的な解決が必要ということでありましたら、日本国有鉄道法の四十一条、これに立法的に手をつけないと無理であって、私は、現在国鉄法の改正が御提案になっておりませんから、現行法の解釈としては、かなり苦しくはあっても、赤字解消国鉄みずからの収入によって解決をすべきであり、そういたしますと、ある程度利用者負担旅客のほうにあるいは貨物の送り主、荷主のほうの負担になってもやむを得ないと考えるのでございます。  さて、当面は、運賃値上げということについて、国鉄運賃法改正はどうかという問題をいただいたのでございますが、これにつきましては、いろいろこまかい点もございます。  基本賃率につきまして、第一地帯と俗に申します従来の五百キロまでの基本賃率、これが六百キロまでに延長されたということは、遠距離逓減の法則というものがある程度の修正を受けている、つまり距離が遠くなりましても原則として賃率は変わらないというたてまえがある程度見られると思うのでございます。私どもがしばしば外国旅行で経験いたしますのは、たしかオーストリーであったかがちょっとそういう感じがするのですが、日本の場合は遠距離になると非常に運賃が安くなる。しかし、考えてみますと、国鉄のほうの輸送経費から申しますと、遠距離だから安くなるということもちょっと受け取れないのでございます。むしろ多くの国が採用しているように、距離に比例する運賃ということもかなり合理的ではないかと思います。しかし、これはいろいろ交通学のほうの学者の御意見もあるでありましょうから、私がそういう意味で軽率なことは申し上げるつもりはございませんけれども、しかし今回の基本賃率の改正によりまして、ある程度その点の手直しがあったということに私は賛成するものでございます。  それから旅客運賃に対しまして貨物運賃がどうかという点が、これもひとつ御指摘があるようでございますが、確かにわれわれから見ますと、国によってかなり違うようでございまして、アメリカなどは旅客貨物の比較をいたしますとかなり極端なようでございます。旅客のほうは、もう長距離の——輸送の実情、利用者はほとんどゼロに近いものであって、大多数が航空機であり、また自家用車のようなものでございまして、バスもかなり長距離のが利用されているようでございますが、旅客収入は実に惨たんたるものでございます。貨物のほうはとにかくやっていけるというか、そういう悲観的な見方はないと思いますけれども、国によってかなり、これは国の広さあるいは地形などによっても違うのではないかと思いますが、わが国の場合には道路が最近非常に整備されてきたということが一つの大きな理由であり、その他いろいろあるようでございますが、道路がよくなれば当然トラック輸送も容易になる。そこでトラックが急速に伸びていることは明瞭でございまして、いろいろの資料によりますと、最近十カ年に一五%から四三%のトラックのシェアといいますか、利用する範囲が広がってきた。反対に国鉄貨物のほうでありますと、非常に逆比例でございまして、十年前が三九%であったのが、今日は一八%という非常に衰微しておる状況でございます。こういう問題はなかなか一挙に解決することは困難であり、先ほども、ある意味におきまして道路の建設が進み過ぎているのじゃないか、それが逆に国鉄貨物運賃収入にはね返ってきて非常な赤字にあえいでいるのではないかというふうな感じもするのでございます。しかし、むろんこれについては十分に国鉄企業努力によって解決をしなければならない。特にいわれますように、最近のコンテナを中心として大規模なフレートライナーといいますか、そういう貨物列車の、ことにスピードを上げた急行の列車を用意してコンテナの輸送強化していくということが私どもの大いに期待するところでございます。こまかいことはもう御承知のところで申し上げる必要はありませんが、現在の貨物列車のスピードなどにつきましても、その構造上大いに改良すべき点があって、従来の状況でありますと、トラックのスピードにはとても及ばないという状況でございますが、なおサービスの改善、施設の改良などについて大いに努力を期待するところでございます。  そして、時間もございませんが、具体的な運賃値上げについて、おまえはどう考えるかということになりますと、先ほど申しましたように、確かに一般国民、庶民につきましては相当負担でございます。かなり生活が圧迫される。けれども、よくいわれますように、物価上昇率と比較いたしますと、まだ運賃、これは貨物旅客のほうも含めまして、その上昇率は非常に低いということがいえるわけであります。一々の数字は申し上げませんが、御承知のとおりでございます。さらに、外国の鉄道運賃と比較いたしましても、ちょっと申し上げますと、ごく大ざっぱな数値で、日本が比較的に運賃は少ない、安いということでございますが、大体私の見るところでは、フランスが日本の一・五倍ぐらい、それからアメリカが一・六倍、イギリスが一・七倍、西独に至っては二倍以上、二・二倍ぐらいの運賃になっているように聞いております。そういうことを考えると、常識的に、特に日本のこの運賃値上げが不当なものであるとは言いかねる。それから、そのほかに、もちろん値上げをする以上はサービスの改善につとめなければならないわけでございまして、国民としては、値上げになっても一向サービスが改善されないということでは非常な不満でございます。負担の公平ということからいえば、受益者として利用者の受ける利益がさらに従来以上に引き上げられなければならないと思うのでございます。そういう意味におきましては、いろいろこの財政再建のほうの、これから今後十年間の再建期間における計画をわれわれが見ておりますと、かなりのものがある。むろん、これも十年たってみないと正確なことはいえないかもわかりませんが、今日の計画でありますと、先ほども御指摘がありましたが、四兆八千億円というものを使って、三千五百キロの新幹線建設を行なうということでございます。これによって、たとえば北海道と九州とを結ぶ時間が非常に短縮されるわけでありまして、さらに大都市圏の輸送を考えましても、私どもが東京で郊外から毎日のように都心に出てくるのでございますが、このラッシュアワーのすし詰めの苦しみというものも解消されるのではないか。御承知のように、定員の三倍詰め込まれますと、ほとんど、これはけがをする、生命の安全も保障されないというのが真実でございますが、私の聞いておりますのでは、中央線から青梅線のほうに直通電車がございますが、これが従来からどうも三倍をこえているような状況でございまして、非常に危険である印そういうことがだんだん、二倍幾ら、あるいは二倍より下がるような、一九〇%ぐらいの定員になってまいりますと、かなり、立っておりましても、よくいわれますように、週刊誌ぐらいは楽に読めるとかいうふうなたとえをいわれますが、とにかく、そういう問題は、私どもの日常の生活における、大げさにいえば生命の問題である。通勤によって死ぬかもしれない、あばら骨を折るかもしれないというような状況はすみやかに解消すべきであり、そういうことがもし実行されるならば、これはサービスの改善という、かなり程度の低い問題でございますけれども、ぜひやっていただきたい。これは大いに私どもも期待するものでございます。  そのほかに、鉄道の公害、今日起こる公害はいろいろございますが、特に自動車の排気ガス、騒音などの公害というものがたいへんなものでございまして、その場合、一つは電化する。国鉄が非常に電化を進めたということは、これは偶然かもしれませんが、非常なけっこうなことでありまして、これはまだ騒音のほうは残っておりますから、御承知の、先ほど環境庁、運輸大臣を通して国鉄に勧告があったように、新幹線の騒音については特別な配慮が必要であると思いますが、これも八十ホン、八十五ホン以上の場合に、あるいは防音工事を行ない、さらに補償するというふうな計画がございまして、これもしかし、私はただ聞いただけでございますが、十分とはいえないかもわかりませんけれども、現在の技術陣を十分動員して、できるだけ徹底したものをやっていただきたい、いろいろこう私どもには注文がございます。複線化もむろん必要でございますし、踏切事故をなくすための立体交差も徹底しなければならないし、信号については、これもいろいろ御意見が分かれておりますが、自動信号についてのできるだけ安全、事故防止の対策を徹底していただきたいと思うのでございます。かようなことを含めまして、すべてを踏まえて運賃値上げは今回の程度ならば私はやむを得ない。ですから、さらにこれ以上ということになりますと、先ほど独立採算制に手をつけなければならなくなるのではないかというふうに思いますが、これは今回の法案には入っておりませんから、意見を申し上げることは差し控えます。  あと二、三議論があるわけですけれども、こういう問題については、再建計画のほうからいえば国の努力、国の出資というか、そういうものあるいは利子補給とかあるいは補助とかいうふうな問題につきまして、さらに一そう国庫のほうから支出していただきたいという点も一つございますし、これも伺えば約五兆円という、それから国鉄自体の企業努力の問題もございます。これも約五兆円、そしてさらに運賃によって八兆円ということになると、だいぶ利用者負担が比較して大きいではないか、バランスがとれないではないかというふうな感じもするのでございますが、私としてはやはり国のほうでさらにもう一奮発して、十分国鉄に対して財政的に援助をすべきである、かように思うのでございます。  時間もございませんから、最後に私の希望を申し上げますと、現在の法案では、私は一応これで賛成でございます。しかし、しいて申しますと、いまの独立採算制という点も問題がございますが、もう一つは、運賃法第一条の改正ということを私は考慮をしていただきたいと思うのでございます。どうもはっきりしない。四つの項目がありまして、特にその中の二本の柱というふうに申しますか、先ほど言った原価を償うということが一方にあり、他方では物価、賃金などの安定をはかるという問題がございます。これは明らかに、矛盾というと少し言い過ぎでございますが、調和しかねる問題でございまして、しかもそれを運賃法では順位をつけてない。そうすると、同じような原則二つ衝突したときにどうなるのかといわれると、私どものほうの解釈としてにわかに結論が出ないのでございます。しかし、それが先ほど言った運賃法では、実は私もわからないというふうに申すべきでありますが、しかし国鉄法のほうで独立採算制があるので、そこにやはり原価を償うということにかなり重きを置かなければならないというふうに考えて意見を申したのでございますが、こういう意味において、運賃法の規定はかなりあいまいであり、しかしまた実際考えてみると、運賃法一条ははずしてしまってもかまわない。というのは、あとで、二条以下、特に基本賃率の三条とかあるいは公共割引の五条とか、あとのほうの条文ですべて具体的に明示されておりますから、何のために第一条で原則、抽象的な規定を設けたのか、要らないということも言えるのでございます。その原則をつくっても、それを適用する具体的な答えがすべてあとの条文に出ているためにどうも無用な感じもいたしますが、もし教科書的にその根本の精神を出すとすれば、一条ははなはだ明確を欠く規定であるということでございます。  それからもう一つは、蛇足になりますが、先ほど申しました不経済線というか赤字線の問題でありまして、これはやはり政治的な議論もございますから、そう簡単に私どもが経理の面で結論を出すことは困難でありますが、一つの考えは、やはり地域によって地元住民の非常な熱意があれば、ある程度自治体との話し合いによって解決ができるんではないか。ざっくばらんに申しますと、地元の自治体のほうである程度負担する、と同時に国鉄のほうも若干の負担は覚悟するというふうな話し合いにいく。もしどうしても地元で負担にたえないというのであれば、やはり地元の自治体が住民を説得して廃止に踏み切る。むろん廃止することは、逆に自動車、バス、トラック輸送などを十分考え、道路を整備して地元住民に不便をかけないようにすべきでございますが、その問題は、やはり今後も真剣にお考えいただきたいというふうに思うのでございます。  時間が参りましたので、以上をもって私の公述を終わります。(拍手
  8. 井原岸高

    井原委員長 ありがとうございました。  次に村木公述人お願いいたします。
  9. 村木啓介

    村木公述人 村木啓介でございます。  私は三つのことを申し上げさせていただきます。  一つは運賃値上げをしないで、もっぱら国の資金援助で事態を処理していただきたいということ。二つ目には、再建計画は問題が多いから撤回していただいて、これをつくり直していただきたいということ。三つ目には、運賃制度の再編成をめぐって国会軽視の傾向が見られる点を最後に申し上げたいわけでございます。  それでは順を追って申し上げます。  私が運賃値上げに反対しますのは、第一には、一般国民負担が大きくなるからでございます。第二には、間接的に物価値上げを誘発して生活が苦しくなるからでございます。第三には、値上げ理由が納得できないということと、運賃負担が不公平だということでございます。  ところで、いま国民国鉄に対してたくさんの要望を持っておりますが、この要望にこたえるのには膨大な金が要るわけですが、これは当然なことですが、国鉄の現状では、この金を生み出すことができないのは御承知のとおりでございます。そこで、政府運賃値上げをしたい、そういう御提案でございますが、いま運賃値上げをするのは、先ほど申し上げました第一、第二の反対理由だけではなくて、そのほかにいろいろな理由がありまして、よくないと私は考えるわけでございます。しかしながら、国民の要望にはこたえなければなりませんから、さしあたりこうすべきだと思います。  まず第一には、国鉄の営業収支決算を、だれでも納得できるようなルールで、まずこれをきちんとしていただきたいということです。特に減価償却制度であります。修繕費についても問題がございます。修繕費は、施設が使える間の機能維持費でございますが、減価償却費は施設が使える間に取得額を回収されれば十分でありますから、その範囲で決算すべきだと思います。国鉄では新旧さまざまな施設が膨大な量にのぼっておりますので、たとえば、貨車は新旧さまざまありますが、十四万両もこれがあるわけでございますから、他の施設を含めまして全部取りかえ法でやるのが合理的なように私は思います。このような償却方法によれば、いまの減価償却費は七、八百億は減るわけでありまして、それだけ赤字は減る勘定になるのは、これは当然でございます。  こうして決算をきちんとした上で、第二には、政府からの借入金は本来出資金と考えられるものでありますから、その支払い利子は全額たな上げにするのが当然だと考えます。  第三には、民間からの借入金の利率を引き下げるとともに、一般会計からの利子補給を増額することであります。  そうすると赤字はほとんど消えますが、赤字が残れば一般会計から欠損補助とすることでございます。  これらの措置をとらないでいて、国鉄に公共の福祉を求めることは、これはもう無理なことでございます。こうした措置は、程度の差はございますが、ヨーロッパ諸国の国鉄ではそれぞれの政府がやっていることでございまして、そうでなければ福祉国家が泣くと私は思うのです。  以上は損益勘定についてでありますが、工事勘定と資金計画におきましては、第一に、償還期限の来た借入金の期限をまず延長すること、第二には、政府出資と工事計画について再検討することが必要だと思います。国鉄が創業以来今日まで、国有鉄道でありながら、国が出資しないで、他人資本にだけたよってきた政策は、ここで思い切って変えるべきだと思います。思い切らないから、十年間に借入金が六兆六千億ふえまして、その間の支払い利子の合計が四兆五千億になるそうで、これでは、ふえた借入金の七割が国鉄の払った利子がまた舞い戻っただけでございましょう。そういう勘定でございますね。国鉄は創業以来、昭和二十五年に四十億円、四十六年に三十五億円、合計七十五億円、たったこれしか国が出資していない。国鉄の自己資本は実態としては十数兆円といわれますが、帳簿価額はともかくとして、こんなに払い込み資本の少ない企業一体どこにあるか。近ごろになって、六百五十六億、八百億と出資することになっているようでございますが、これでは不十分でございましょう。借金政策は基本的には変わっていませんから、これでは再建のつじつまは合わない、こういうふうに私は思います。  第二の問題、運賃法案の撤回を求める理由と、それに関連した意見を述べさせていただきます。  政府と自民党の説明によりますと、赤字のおもな原因として、運輸収入の伸び悩み、人件費の膨張、利子負担の増大の三つをあげておられる。そして再建案はこの原因にメスを入れてつくったと、そうおっしゃっております。ところで、運輸収入の伸び悩み、人件費の膨張、利子負担の増大というのは、これは政策の結果であります。問題は、なぜ運輸収入が伸び悩むのか、その中身としてどういう旅客、どういう貨物が伸び悩んでいるかということが私は問題だと思うのです。大口貨物はどんどんふえておるわけでございます。中小零細企業貨物は減っておるわけでございましょう。それはどういうわけなのか。あるいは、なぜ人件費が膨張するのか、あれだけひどい合理化をやっていてどうして人件費が膨張するのか。また、なぜ利子負担が増大するのか、その根本原因が問題だと私は思うのです。こうした突き詰めた根本原因が、今回提案運賃法案によって取り除かれているかというと、そうはなっておりません。メスを入れたとおっしゃいますが、十分な手術とは思えません。  自民党の加藤先生のお話では、人件費の膨張について、経済企画庁の経済社会基本計画に織り込まれている一人当たり雇用者所得の年平均伸び率一二・三%を国鉄職員のペースアップに織り込んで、十年間に人件費が七兆五千億ふえる、これは運賃値上げによる増収分の七兆九千億とほぼ見合っている。つまり運賃値上げ国鉄職員のベースアップに大かた食われているというお話でございますが、これではどうにもならぬと私は思うのでございます。  誤解のないように補足しておきますが、私は国鉄職員のベースアップを非難しているものではございません。いまの賃金はひどい重労働の長時間労働に加えて、だれでもよく理解していただくような低賃金でございますから、その上、年々の物価上昇ですから、今日のような物価高の生活不安のもとでは一二・三%のベースアップでおさまるものではありますまい。現にことしそうなりましょう。政府物価政策を私は問題にしているのです。物価というのは一つ一つの商品の価格、料金の集まりでございますから、国鉄運賃だけを別扱いのようにして上げることに私は反対するわけであります。三年ごとに二〇%以上の運賃値上げをする、五年以内に国鉄職員を二四%も減らすというひどいことがやられたとしても、政府がインフレ含みの物価政策を続けておいでになる限り、国鉄の経営収支が、営業収支がよくなって赤字がなくなるというようなことがどうして考えられますか。これで国鉄財政再建計画といえるかどうか。私はこれは根本的な問題だと思うのでございますが、いかがでございましょうか。  経済社会基本計画には消費者物価は四・九%、卸売り物価は二・三%の年平均の上昇を織り込んでいます。いままでの物価政策とその実績をこれからの物価政策と比べてみますと、計画の範囲に物価を抑制できるといえましょうか。これはどう見てもあやしゅうございましょう。現に四十八年度の消費者物価は五・五%上昇と予想した政策で予算を編成しておいでになるし、国鉄運賃を上げれば、上がるのを待っているのは私鉄の運賃だけじゃありません。全日空でも、二十一日の新聞によりますと、国鉄運賃値上げの成り行きを見て八月ごろ申請すると伝えられております。航空運賃ばかりじゃありません。次から次へと波及していく気配が強く見られるではございませんか。  十カ年計画の工事費十兆五千億の予定も、その見積もりの基礎があいまいでございます。どこへどういう設備をするのかはさておきまして、工事単価の予想が大幅に狂うし、積算できるわけはございますまい。また長期収支試算はただ数字を並べただけでありまして、つじつまが合うとは私には考えられません。これが国鉄財政再建計画というものだとおっしゃるならば、もう何も言うことはございません。しかし、第一次五カ年計画から始まって今回の国鉄財政十カ年計画まで、計画期間は五年から七年、十年とだんだん長くなっております。この計画がくずれる期間は四年から三年から一年とだんだんテンポが短くなっておるじゃありませんか。これは一体どういうわけだろうか。くずれるテンポが早くなっているのに計画のほうは長くなっていっている。こんな計画が中身として納得できるか、そういうふうに私は理解するわけでございます。  このようなずさんな計画を示しておいて、当面運賃値上げを認めてくれといわれても、計画の内容を知れば納得できるわけはありますまい。計画がくずれた失敗の解明をしないでおいて、前に失敗した計画の失敗の原因を十分に解明しないでいて、新しい提案が審議されるせいだろうかと私は思いますが、こういう話がございます。これは国鉄部内の話でございますが、運賃値上げ理由をどう説明するかということで、国鉄財政再建のためということではサービスの改善が宣伝できないので、利用者の説得がむずかしいという意見があったそうで、むしろこの際は率直に、諸物価値上がりにつき、でいいじゃないか、いや、それではそば屋の値上げ口上みたいで芸がないというような国民をばかにした議論が話題になったと新聞が伝えておりますけれども、それだというのに審議に必要な資料が十分に提供されないからこんなことになりかねないじゃございませんか。  運賃法案というものは日本列島改造計画の先兵の役割りをになって、その資金調達のための運賃値上げにすぎないとしか私には理解できないのです。それでは国民はただ負担を重くされるだけで納得できるものではございますまい。  磯崎総裁は二月二日に運賃法案を国会に提出されるにあたって、交通新聞を通じてこう言っておられます。「いまやっている四十四年度からの計画は、失敗したといってしかられていますけれど、」——これは原文のままでございます。「財政再建はうまくいっていないけれども、設備投資はきちっといっているんです。ですから、その意味で、今度は設備投資もよくやるし、財政再建もうまくやるというふうにできると思いますがね」とおっしゃっているのです。確かに政府もその金の出し方を多くされるそうですし、四年ごとに一〇%の増収のための運賃値上げを三年ごとに一五%になさるおつもりだし、国鉄職員を六万人減らす予定をさらにもう五万人追加して十一万人減らすことにした。しかし、これだけでは荒っぽ過ぎる説明で、特に五年以内に二四%も国鉄職員を減らしてやれる確信が一体当局にあるだろうか。私の理解では、現場の労働者はとってもそんなことを納得するわけがない、こう思います。失敗したといわれる再建計画と今回提案再建計画とがどこがどう違うのか。失敗の経験を率直に出して、この失敗はこうすれば克服できるというように提案すべきだと私は思います。  最後に、四十五年二月に国鉄部内に設けられました貨物経営改善委員会国鉄貨物経営改善の方向としてまとめられた報告書について申し上げます。詳しいことは報告書をごらんいただくことにして、運賃制度の部分でこう述べておられます。「車扱貨物賃率は、国有鉄道運賃法によって、表定賃率が定められているが、これを廃止、国有鉄道運賃法上は、標準賃率を定め、貨物取引の実態、運輸情勢の変化に対応して機動的に運賃を適応できるように改める。また小量物品については、この種輸送サービス維持、確保に必要なコストを勘案した運賃制度とする」。つまり、ここでは徹底した原価主義をとる。この方針によって、具体的には特殊取り扱い、弾力的な運賃の設定、特約運賃に触れられて、最後に公共政策に基づく運賃割引は国鉄財政の現状から見て廃止するという内容でございますが、この方針はすでに包括運送契約という制度や小口混載車扱い貨物賃率制度などによってなしくずしにすでに実施されているわけであります。この方針が徹底してくると、国鉄鉄道営業法の趣旨や公共の福祉を軽視することになると私は思います。現に、小口扱いの編成がえは中長距離の大量貨物輸送第一の方針から、運賃サービスの面から国鉄は小量貨物荷主を自然に追い出すことになっているわけです。高くてサービスが悪くてばかばかしくて国鉄には持っていけぬ、こういう政策をとっておられるように私は思うし、今回の提案もそうなっておるわけです。持ってこなくてもよろしい。これらの例でわかりますとおり、国会が国鉄に対して、民主的なチェック機能を持っているのをきらって、この機能を弱めようとするあらわれだと私は思うのです。国鉄が日鉄法の定めを逸脱して、資本の論理のおもむくままに企業活動を行なわれるならば、一般国民にとっては困ったことが起こると私は思うのです。  これらのことを運賃法案の審議の中で十分に解明していただくように希望して、私の陳述を終わります。(拍手
  10. 井原岸高

    井原委員長 ありがとうございました。  次に中島公述人お願いいたします。
  11. 中島勇次

    中島公述人 流通経済大学の中島でございます。  私はこの国鉄財政再建するための法律案基本的に賛成立場に立って意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、国鉄財政が今日いわゆる慢性的な赤字体質になったその背後には、いろいろな複雑な問題があろうかと思います。私はこれを私なりに整理いたしまして、大体大きな三つの問題点に焦点を当てて、そして国鉄の財政を立て直し、健全な姿に国鉄運営されるためには、どうしてもこの三つの問題点の中にある病原に早急に何らかの手当てをしなければいけないというふうに考えているわけであります。  そこで、この三つの問題点といいますのは、まず第一点は、長期借り入れ金の問題であります。それから第二点は、運賃水準の問題であります。それから第三点は、貨物輸送収入の伸びの問題であります。この三つの問題点について考えなければいけない。言いかえますと、国鉄赤字体質から脱却するためには、この三つの病原に対して確実な効果のある治療手段を施さなければいけない。私は冒頭にこの法律案基本的に賛成だという態度を表明いたしましたのは、その際の、治療手段を講ずる際の処方せんとしてこの法律案の内容が適切なものだというふうに判断したからでございます。   〔委員長退席、細田委員長代理着席〕  そこで、まず第一の長期借り入れ金の問題でございますが、これはいまほかの公述人の方からも指摘されておりますように、国鉄はとにかく長期借り入れ金が多すぎる、したがってそこから発生する利子負担国鉄財政を圧迫しているんだ、こういうように指摘されている点でございます。数字の上から見ますと、まさに算術としてはそのとおりでございますが、私はこの問題についてはちょっと別の角度から問題をとらえているのであります。別の角度といいますのは、額が多い少ないということよりも、その借り入れ金によって行なわれた投資の内容を考えなければいけないというふうに考えているわけであります。と申しますのは、国鉄と同じような経営形態をとっております電電の場合にも、国鉄よりも若干少ないわけですけれども、かなり大きな長期借り入れ金をかかえております。また民間企業でも、日本は特に金融事情の関係から企業の長期借り入れ金が多い。外国に比べて自己資本よりもどうしても借り入れ金のほうが有利だというような傾向でそれが多いわけです。よしんば民間企業で自己資本によったとしても、配当だとかあるいは法人税などを考えますと、実質的には一般金利あるいはそれ以上に高い資金のコストというものが土台になって民間企業運営されているわけです。そういう点からいきますと、つまり一般企業では長期借り入れ金で利子を払ってもそれで成り立っているのに、なぜ国鉄だけがそれが払えないのか、利子が負担できないのか。民間企業ではもっと高いコストを払っても事業が成り立っているのに国鉄は払えないのかというところに問題がある。これは常識的にどなたでもおわかりだと思いますが、民間企業の場合には元本の保証はもちろんのこと、利払いができるという見込みがなければ投資はしないというのが常識であろうと思うのです。またしようとしてもそんなのに金を貸す人もないし、金を出資する人もいない。結局そういうのができないのですけれども、国鉄の場合にはではどうでしょうか。工事をするときに一つ一つ、これは利子が払えないからだめだ、これは利子が払えるからやろうということでは、国鉄はもたないわけです。したがいまして、御承知のように国鉄の場合には単年度ごとに国鉄全体の財政の中で資金のやりくりをして、その中で工事資金のワクをきめる、ワクがきまったならばその中で今度は工事件名ごとにそれをチェックして、そうして必要性、条件、効果その他を判断してやる、そういうことを前提として国鉄借金ができる仕組みになっているわけです。これはある一面からいえば非常に幸いなことですけれども、見方をかえれば、そういうような仕組みが結局終戦直後のあの廃退した国鉄が今日のりっぱな姿になるという土台には、そういう仕組みのささえがあったわけですけれども、反面においてはやはりどうしても無理をして、利払いというものが二の次になった投資に追われるということは、これは現実的にやむを得ないことだろうと思っております。  そこで、いままで国鉄で行なわれてきた投資を振り返ってみますと、その中には確かに収益性の増加に結びつかない、利払いなどとは初めから無縁の投資もあります。たとえば、安全対策投資のようなものはまさにそのとおりですが、しかしそれはたてまえとして自己資金でやってきている。つまり採算を考える必要のないものは自己資金でやっている。そういうことからいきますと、いま累積されて三兆幾らになっているという借り入れ金の中身が対象とされた工事は、いずれ時期が来れば必ずそれが収益性を生む、もちろん利子支払いの能力があるということを前提に投資されておりますし、また投資にあたっては、その場限りで利子支払い云々は言いませんけれども、やはり技術的選択あるいは投資順位の選択等において経済計算をした結果、そういう方法に基づいて技術選択をして実施されておりますから、これは生産投資として当然長い目で見ればやはり国民経済の中で生産的効果のある投資であるというふうに考えなければいけないし、またそういうふうにやっていかなければいけないのがたてまえであろう。ただここで一つ非常に弱点は、鉄道投資というものはいわゆる先行投資あるいは継続投資というように非常に先を見て投資をする。いまはたとえば輸送量が少ないけれども、将来は非常に大きく伸びるということを前提に、それがたてまえ、またぼちぼち継続してやることによって、たとえば武蔵野線にしましても長いこと工事をやっておりますけれども、いま開業したといっても途中まで。ほんとうの効果はまだまだこれからであります。そういうように、これをわれわれは投資懐妊期間、効果を発揮するまでの——懐妊期間というのは、胎児が母親のおなかの中にいる期間、これが国鉄の場合には非常に長い。しかし、それが一たん完全に働けば十分な能力を発揮する。したがってそういう工事が比較的少ないうちは、まだ財政力で負担ができる、あるいは財政力自体が非常に強い場合には、そういう懐妊期間の長い工事をたくさんやっても、それほど財政にはこたえない。ちょうどいまこの時点に来ますと、そういうような懐妊期間の長い工事、投資がたくさん積み重なったところに、一方いろいろベースアップその他による財政の弱味が出てきた。そこで、財政の危機というものが非常に顕在化してきた、こういうふうに私は考えておるわけです。したがいまして、この懐妊期間の長い工事で利子負担が非常に過重しているものについては、これは胎児に自分で栄養をとれといわないで、母親がその間は補給してやるように、そういうような意味で、これは政府が助けてやるべきである。またこういう苦しい間は、さらに新しく利払いを生むような工事はなるべく避けなければいけないけれども、どうしてもやらなければならないものについては、政府出資の形で金を出して、そして利子負担の財政の圧力を軽くしてやる。そしてその間に効果を発揮して力がつけば、あとは自力で十分にやっていける。こういうような見方からの今回の対策に対して、私は全く同感でございます。  それから、この問題は、もう一つ次の運賃水準の問題にももちろん関係するのですが、ここで今度、運賃水準の問題について意見を述べたいと思うのです。これは公共料金一般に通ずる問題ですけれども、鉄道運賃などは、一般物価上昇期にあるときにはどうしてもおくれがちになる。まあどれだけおくれているかということについてはいろいろな意見もありましょうけれども、むしろ、政策的に公共料金はやはり物価よりおくらすのが原則であるというようにまで考えられている。私は、このこと自体は、それに一種の政策的な目的もあり、意義もあり、あるいは効果もあると思いますから、いまここでそれを批判したり、非難したり、議論しようとは決して思っておりません。ただ、その事実が国鉄の財政に現実に赤字をもたらしておる、あるいは赤字といわないでも、少なくとも収入にそれだけの弱さを直接的に与えている、この事実はどなたでも否定できないだろう、事のよしあしは別として、私はそこを問題にしているわけであります。ですから、国鉄の財政を立ち直らせるということには、やはり栄養をとらせなければいけない。栄養をやらないで栄養失調になるのは、これはあたりまえなんです。これには、またあとで述べますように、いろいろな問題ありましょうけれども、そこでただ一般物価に対して運賃がどれだけおくれているかということは、これは観念論、水かけ論ですからここで言ってもわかりませんが、私は私なりにその事実を御理解していただくのに、私の考え方を申し上げたい。  私は、事業の損益計算書を分析することによってその点を示したい。損益計算書は、皆さん御承知のことと思いますけれども、大きく分けまして、三つの段階に分けて損益の発生状態、発生経過を説明することになっている。損益計算書というのはそうなる。第一段階というのは、売り上げ収益、つまり商品を売って売り上げた収入、それと売り上げ原価、その商品をつくる場合の製造原価とを比べて、ここでまず第一段階の損益の発生計算、そのときの差益を売り上げ総利益といっております。それから第二段階は、その総利益の中から販売費とか一般管理費とかいうように生産と直接関係のない産業諸経費を吸収する。それから今度第三段階目では、そのほかに利子その他の財務関係の経費を吸収して、そして最後に純利益を出す、こういうふうになっております。  そこで、物価と価格と比べると何か同じことのようですけれども、原価というものと価格というもの、これは見方をかえますと、そういう賃金とか物価とかその混合されたものが原価ですから、生産要素基準とそれの商品基準というものを比べる場合には、その第一段階でこれをきめるわけです。  そういう角度から、日銀調査の四十六年度の日本の全産業、これは資本金十億円以上の会社数百社のトータルですけれども、売り上げ高をトータルしてみますと、六十兆九千三百五億円、これは売り上げ高、それに対する製造原価が五十二兆九千八百二十七億円、差し引き七兆九千四百七十八億円という売り上げ総利益が出て、これは一三%に当たる。この一三%があとの一般管理費とか販売費とか利子とかこういうものを全部吸収して、そうして配当も払い、税金も払い、売り上げ高の三%に相当する純利益を——この純利益から配当金を払うわけですが、そういうようなことをした配当金の基礎が三%出ておる、こういうわけです。  そこで、これと国鉄のものとを対比してみますと、国鉄の場合には売り上げ高に相当するものは一兆一千六百七十億円、これに対して売り上げ原価、つまり製造原価に相当するもの、営業原価が一兆二千三百六十七億円、つまり第一段階で六百九十七億円、つまり収入の六%に当たる赤字が出ておるわけです。本来ならその売り上げ総利益で利子も払え、あるいは本社その他の管理費も払え、あるいは技研その他の研究費も払いなさい、こういうのですけれども、それを払う以前の原価さえも割って六%——私はその内容について詳しくは議論するひまもありませんけれども、程度はこの程度だ。ですから、運賃水準というものをどうしてもここで考えなければいかぬ、こういうふうに考えているわけです。  私も、運賃というものは個人的には安いほうがいい。特にいま物価高に悩んでおりますおりに、また国鉄運賃を上げるということはインフレを刺激するのではないかという点について皆さん心配しておられますが、私もその点は全く同感であります。しかし、私は、国民が、おそらく全部の国民鉄道利用者という立場から見ますと、そういう気持ちだろうと思う。これはそういう利用者立場になると、鉄道国民のげただという感覚でものを考える。しかし、私は、国鉄国民のげたではない、国民の足だ。足というのはつまり自分のからだの一部だ、血の通っている一部だ、こういうふうに見なければいけない。ですから、げたならやはり安ければ安いのもよく、まあこれははき捨てができますけれども、自分の足なら使い捨てというわけにはいかない。ですから、やはり健全な足を育てるには、それに必要な費用はやはり国民負担しなければいかぬ。  これについていろいろな意見もあります。そういう国鉄運賃ベースが低いという事実は認めても、それは物価対策の上からやはり税金でやるべきではないかという先ほど来の意見もありますが、しかしツケは結局国民全部のところに回っていくのです。それは運賃という形でいくか、月給袋から税金として取られるか、みんな税金でやれば、政府に金のなる木があれば国民負担にならないでいくと思いますけれども、ただ配分のしかたが違うだけ。ですから、私が言いたいのは、その配分のしかたを利用者負担という形でいくのが最も公平であり、合理的である。もしこれを税負担でいけば、合理化の歯どめがなくなってしまう。どこからどこまで赤字だか、わからなくなってしまう。つまり、国鉄が経営を合理化しろとかなんとかいっても、一体経費をどれだけにして収入をどれだけにするのが合理化か、経済の比較基準がなくなってしまうじゃないか。無限にやったら——ソビエトが革命直後やったように、全部ただにしていって、半年余りでそれをやめてしまった。つまり経済秩序が混乱してしまう。私はそこまで極端なことは考えませんけれども、やはり健全なる経済秩序のためには、プライベートの行動として鉄道利用を選択するにはそれ相応の費用負担するという考え方はどうしても貫かなければならないという信念を持っておりますので、ここにあえてそれを強調するわけであります。最後に、貨物収入収益性の問題ですが、国鉄の営業実績を検討いたしますと、国鉄全体としての経費の伸びに比べて、貨物収入の伸びが低調であるということは、これは明瞭であります。もし貨物収入旅客収人並みに伸びているならば、国鉄の財政はもう少し健全であるのだろう。つまり、私が三つ赤字原因の一つにこれをあげたゆえんもそこにあるわけです。  この問題については、いろいろな見方があります。一般的にいわれるように、貨物輸送については近代化がおくれている、これは一般論であります。これは、国鉄再建の初期に設備資金が足らないときに、どうしても緊迫性が強いというか、目につきやすいとかあるいは人命尊重という意味旅客優先になるということはやむを得ないし、また当然の措置であったろう。その意味では旅客近代化は貨物に一歩ないし、あるいは数歩進んでいるかもしれません。しかし、この一般論よりも私が強調したいのは、旅客輸送貨物輸送の近代化の質と意味であります。近代化というのは、これはいろいろな、人によって見方がありますけれども、私は、輸送パターンというものは需要側できめるんだ。つまり需要側がいろいろなパターンを要求して、あるわけです。たとえば自動車があり、飛行機があったら、そういうことを前提に、鉄道に対する需要のパターンというものは、旅客があるいは荷主側がつくってくるわけだ。それで鉄道は、その需要のパターンにいかにして輸送力を合わせるか、サービスを合わせるか。そこで、そのパターンに合ったものは金になる、パターンに合わないサービス改善の近代化は、幾ら近代化しても金にならないのです。これは一つの抽象論ですから、時間をかけて詳しくお話ししないとわかりませんけれども、要するにこれはサービスの属性の問題であって、ポリシーの問題ではない。  そこで一例を申しますと、たとえばスピードアップというサービス改善の近代化があります。旅客の場合ですと、ある一つの列車にきれいないい車を配置して、そうして途中駅を少し飛ばして、終着駅へ行く時間を短縮する。そうすると、これを特急列車と称して特急料金を取れる。事実これはサービスがよくなったのですから、利用者のほうもそれを納得し、むしろ喜んで、たくさん乗っていることは、皆さん御承知のとおりであります。旅客サービスは一元的サービスだから、そういうふうに、一カ所やればすぐにそれが速効性があるのですね。ところが貨物のほうは、東海道線に非常に速い貨物列車を走らして、この列車につけてやるからあなた特急貨物輸送運賃出しなさいといっても、荷主は出しません。なぜかといえば、荷主の時間というのは、ドア・ツー・ドアで時間をはかっているのですから、末端でもたもたしていたり、あるいは東海道線だけ速くたって、ほかの枝線に入ったときにおそくなれば、何にもならない。あるいは適合貨車輸送といいましても、少しばかり適合貨車つくったって、こういう便利な輸送方法をつくりましたから運賃を上げますよといったって、それは北陸や北海道の利用できない人に同じ運賃を適用するわけにいかない。ですから、貨物輸送については、抜本的な、全面的なシステムチェンジが完成しなければ近代化の効果が金に結びつかない。だから私は、今回のこの改善計画の中で、貨物輸送に抜本的な投資をして、全面システムチェンジをして、そうしてそれによって金になるサービス、お客が国鉄のほうにたよってくる、これは総合交通体系で、将来性から考えても、どうしても国鉄貨物輸送にもっと本腰を入れて責任を感じなければいけませんが、それに備えてやってもらいたい。  そういう意味で、いま現時点で、貨物運賃赤字だからもっと運賃を高く上げなさいというような意見もあるようですけれども、私はいまの時点ではとてもそんなことを言える状態ではない、まあ旅客と同じようなレベルで、せいぜい一般物価とのバランスをとる程度運賃値上げでやむを得ない。ただこれで満足しないで、今後の近代化に合わして、もっと合理的な、需要パターンに合ったサービスをして、そうしてサービスに合った運賃体系で大いに貨物輸送でかせいでもらいたい。これが国鉄財政を健全にする基本的な三要素であるというふうに考えている次第であります。  以上で私の中心的な意見は終わりですが、一言私に希望を述べさしていただきますならば、申し上げたいのですが、国鉄財政再建あるいは国鉄全体の合理的な運営については、幾ら議論しても議論しきれない問題が山ほどあるように私ども見ております。しかし一方、国民は、私も国民の一人として同感ですけれども、やはり国鉄がほんとうに健全な姿になってほしい。まあ今日の、この二十七日の、一歩国会の外へ出た状態を、皆さんこれは十分おわかりのはずです。やはり国鉄がちょっともたつけばどういうことになるか。これは国民が、自分たちのげただと思っていたら大間違いです。足を自分が折ったときの痛さというものを痛感したならば、議論は議論して大いにけっこうですけれども、踏みとどまって議論ばかりしていても始まらぬ、やはり一日も早く再建に向かって踏み出していただきたい。そういうことを国民の一人として切に希望いたしまして、私の意見を終わります。(拍手
  12. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 ありがとうございました。  次に、広岡公述人お願いいたします。
  13. 広岡治哉

    広岡公述人 限られた時間でございますので、要点にしぼって申し上げたいと思うのですが、最初に申し上げたいことは、現在の国鉄の直面している状況、私は、これは危篤状態、普通ならば死んでしまうようなそういう状態にあると思うのですけれども、そういう状態にある国鉄を考えますと、現在のやり方では、まず再建が不可能であろうというふうに見ているわけです。   〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 なぜかといいますと、国鉄をささえている労働者が、何のために、だれのために国鉄再建するかということについて一つの思想を持っていない。そういう思想を持ち得るような状況に置かれていない。次に利用者はどうか。利用者は現在の国鉄に対していろいろな不満、疎外感を持っている。それに対してこたえるような回答が再建計画の中に何もない。納税者の立場からいっても、現在の国鉄に対して大幅に税金を投入すべきだというふうな結論を出し得るようなそういう一つのプランが、再建計画の中に出てきていない。こういった国鉄再建すべき肝心の人たちが、どうやって国鉄再建すべきか。先ほど中島さんのことばによれば、自分自身の足の痛さとして国鉄を考えられないような状況で、どうやって国鉄再建できるか。何も、金をつぎ込んだからといって国鉄再建できるわけではないわけです。国鉄再建するのは人間であるわけですから、その再建すべき人たちが、国鉄をやはりわが身だと考えてそれを再建できるような、そういうプランをわれわれは用意する必要があるのじゃないか。これが最初に申し上げたいことです。  そういった現在の危機の深刻さ、そういった現在の人心を失った状態というものを考えますと、現在の国鉄体制が、直面している課題に対応していないということを示しているのだと思うのです。ではどういう方向でこれを対応させるのか。これは単に国鉄の問題だけではないのですが、現在の異常に巨大企業に生産力が集中して、そして一般に市民が疎外感を持っているような状態、これを解決していく、あるいは現在日本が全体として直面している物価問題あるいは環境問題、こういったものに大胆に挑戦して解決していく、こういう姿勢のもとに国鉄再建を考える必要があるだろうと思う。そういうことを考えるためにはどういう機構が必要なのか。それは国民がそれぞれ国鉄を利用するときには、地域社会において地域社会の一員として利用しているわけですから、その地域社会の実態に合った、そういう利用を確保できるような、そういうサービス国鉄がやれるような、そういうことに対して人々が発言できるような、そういう機構をつくっていかなければならない。国鉄に働いている人が、国鉄運営は自分たちが参加しているのだという自覚を持てるような、そういう仕組みをつくっていかなければならない。ですから、それぞれの地域の単位において、できるだけ国鉄が現在中央集権的に意思を決定しているものを分権化していく。そういう分権化の仕組みと、それに対して利用者、労働者が発言できるような、決定に参加できるような機構をつくっていく、そういうものの上に中央に機構をつくる。たとえば、運賃問題についていえば、現在の運輸審議会というのは非常に形骸化していると思うのですね。あれは国鉄と運輸省のOBしか入っておりません。そして全く形式的な審査を繰り返しているにすぎないわけです。あれでもって国民が審査しているというふうに感じ取れないのは当然であるわけです。ですからそういうものに対しても、地方と中央に人々が参加しているというような自覚を持てるようなそういう構成、これはやはり国鉄に働いている労働者の代表あるいは利用している住民の代表、あるいは関係する他の交通機関の代表、こういったものを参加させて、そこで客観的な資料に基づいて審議する。そこから出てくる結論というものが一つの審判機能を持てるような、そういうものにしていく。しかし、その審判の結論は当然国鉄に即したものになるでしょうから、そこから出てきた処方せんが、政府が責任を持つ全体的な経済社会運営の目標と矛盾する場合があるでしょう。その場合に、たとえばその運輸審議会の決定と違った方針を行なう場合には、当然それに対して代替的な方法、つまり見返りになる方法を政府の責任で講ずるというふうなルールをはっきりと確立する必要があると思う。現在の国鉄を見ておりますと、非常に筋の通らないことがいっぱいあるわけです。これは一つ一つ筋を通していくということが、国民の支持を得る方法だと思います。たとえば一つの例を申し上げますと赤字線の撤去ということがやられます。ところが一方で赤字線建設がやられています。こういうことでどうやって国民の納得が得られるでしょうか。私は最初に申し上げたいのは、そういう国鉄をめぐる制度的な変革、国鉄国民のものだというような自覚を持てるような、そういう変革を今日用意することなしに、財政再建について国民全体の同意を得るということは不可能であろう。その点が一番肝心の問題なのだということを申し上げたいと思う。  次に、私は運賃の問題に限定して幾つかの問題点について申し上げたいと思うのですが、現在国民が求めているものは物価の安定です。しかし、従来の経済政策は物価の安定に失敗してきました。今後についても物価を安定させるという確信に欠けております。物価を安定させなければならない、物価の安定が何よりも重要であるという認識を政府が持っていない。たとえば国鉄財政再建計画にしても、三年ごとに運賃値上げするということが再建計画の中ではっきりとうたわれているわけです。これでどうして物価の安定を求めている国民の同意が得られるでしょうか。私はそれはむずかしいと思います。しかしながら、現在の経済全般を通じて進行をしているインフレーション、それについての政策転換なしに、国鉄運賃だけを安定させようというのは、これは経済の論理からいって無理です。ですから、国鉄運賃をほんとうに安定させようと思うならば、これは当然政府の財政金融政策、貿易産業政策全般にわたって、物価安定のための経済計画を緊急につくる必要があるというふうに私は考えるわけです。それについて若干の事実を申し上げておきます。これは皆さんが御討議なさる際にやはり共通の客観的な基礎として、ひとつ役立てていただきたいということで申し上げるわけです。  戦後国鉄運賃は非常にしばしば引き上げられました。戦前は十数年間にわたって国鉄運賃は安定しておったわけです。第一次大戦後の引き上げ以来第二次大戦までずっと賃率の変更は基本的になかった。それでやっていけたわけです。ところが戦後は非常にしばしば運賃が改定されています。なぜか、それは一口にいってインフレーションのせいであったというふうにいえるわけです。ところで戦後非常に破局的なインフレのときには、国鉄はまさに破産状態になりましたけれども、しかし同時に借金が、インフレーションの結果非常に負担が少なくなったというような整理の作用もございました。ともかく昭和三十二年に第一次長期計画が始まるときに運賃の改定が行なわれましたが、この昭和三十二年の運賃水準というのは、ほぼ戦前水準に回復した運賃水準であったわけです。それは付加価値率とか所得率から考えてそう判断できるわけです。それ以後昭和三十年代においては、卸売り物価が比較的安定して、昭和三十五年以降消費者物価が騰貴するという全体の経過をたどったわけです。その過程において国鉄運賃の改定はどういうパターンであったかといいますと、大体消費者物価が年々数%ずつ上がっていきます。それに対して国鉄は、運賃改定した年次はその消費者物価指数の上昇率に追いつきます。しかし国鉄運賃というのは毎年変更するものではありませんから、それ以後固定している間に、消費者物価指数と国鉄運賃との間にさらに開きが出ます。それを三、四年後に追いつかせる、こういうパターンを繰り返してきたわけです。旅客運賃についてはまさにそういうパターンが成立しているわけですが、貨物運賃についてはそういうパターンになっていない。三十年代においてはそういうパターンでしたけれども、四十年代に貨物運賃の改定が抑制されたということによって、全く追いつかなくなったということであります。  他方原価との関係で運賃を見た場合にはどうかといいますと、昭和三十年代においては旅客運賃利益をあげ、貨物運賃運賃改定したときだけどうやら原価を償う。それ以外のときは赤字の年が多い、こういうパターンでございました。ところが昭和三十九年以降運賃値上げしても原価を償えない。つまり旅客運賃収益をもってしては貨物赤字が埋められないような状況になってきているわけです。しかも競争理由にして貨物運賃の改定は抑制されてきたというのが現実の姿でございます。  ここで申し上げたいのは、鉄道というのは非常にインフレーションに弱い体質を持っているということなのでございます。大体この間の国鉄原価上昇原因を見てみますと、原因のほぼ六割は人件費上昇です。ほぼ三割五分は利子及び債務取り扱い費用でございます。これは赤字のための借金ということではなくて、投資のための借り入れ金依存、それが利子を増大させてきた、こういうことでございます。ところで、その人件費がともかく六割もの理由を占めるというのはなぜかと申しますと、製造工業あるいは商業等と違いまして、鉄道輸送というのは非常に原価に占める人件費比率が高いわけでございます。ですから、インフレーションの影響を非常にこうむるわけです。  二番目に申し上げたいことですが、原価運賃との関係、これをどう考えるかということであります。貨物運賃原価に比べて低い水準に長い間置かれてきた。これはかなり歴史的なものでありますけれども、最近において非常に著しい。最近においては運賃原価のほとんど半分になってしまっている、こういう状態であるわけです。伝統的には市場の競争の状態というものが一つあったと思います。もう一つは、戦争中から戦後にかけて非常にはっきりしますように、旅客運賃の改定は浮動購買力を吸収するという目的を持っておった。貨物運賃物価安定あるいは国際競争力強化あるいは経済の再建というようないろいろな名目で、そのときどきの理由はありましたけれども、ともかく流通費を押えるという目的で押えられてきた。しかし結局これは企業の流通費節約、企業の販路拡大に役立ってきたということがいえると思います。運賃が安いということはそれだけ市場への到達距離が増大するということで、これは十九世紀以来、著名な経済学者がしばしばそういってきたわけです。現在においてもそれは変わりがない。  ところで貨物において赤字を出し、旅客利益をあげてそれを補てんするという方式は、長い目で見て国鉄運営を非常にゆがめてきたと思う。ヨーロッパにせよアメリカにせよ、鉄道というものは貨物輸送を主体にして運営されているわけであります。ところが日本においては、海運という存在があるにしても、貨物がもうからないものですから旅客列車で急行を増発して、そこで料金をかせいでいくというパターンになったわけです。  一つには、長い間鉄道基本的な輸送力の増強が押えられてきた。国鉄の幹線輸送力の増強の必要というのは、実は第一次大戦の直後に出てきたわけです。ところがそれをやらないで地方の支線の建設をやった。それが戦争中及び戦後の事情のもとにずっと押えられてきた。これは幹線輸送力の非常な逼迫として現在の国鉄運営を非常に制約しているわけです。ですから貨物運賃原価を割るような、原価の半分にしかならないような運賃であるにもかかわらず、貨物輸送がほとんどふえていない。昭和四十年代の初めから現在までほとんどふえていないわけです。それから旅客輸送も四十年から現在まで六%ぐらいしかふえていないわけです。インフレーションの影響を受けやすい体質を持ちながら、しかもこういうふうに幹線輸送力の逼迫のために輸送量がふえない。これでどうやってやっていけるか。どんな企業でもやっていけないわけですね。製造工業の場合には、現在のベースアップの改定率でもっても原価に響くのはせいぜい一、二%です。それも非常に高成長を遂げておりますから、吸収することは容易であるわけですね。国鉄の場合にはそれができない。しかし、そういう状態に置かれたのはなぜかといいますと、これはこの数十年の間の交通政策、経済政策の失敗の結果である。これを現在国鉄に働いている人に負担させるということはとうていできないわけですね。もしそういうことを要求する人があれば、歴代の政府はもっと重大な責任をとらなければならぬというのが私の考えであります。  それで、そういった事態の間でどういう結果を招いたかといいますと、トラック輸送の非常な伸展です。現在、国鉄輸送力はヨーロッパ諸国に比べた場合に、たとえばフランス、西ドイツと比べますと、フランス、西ドイツは日本に比べて国民経済規模でも工業生産規模でも小さいわけです。ところがフランス、西ドイツは日本の一倍半の鉄道延長を持っているわけであります。しかも複線化率は日本の倍です。日本が東海道新幹線一つつくったぐらいで日本の鉄道がいいように思ったら、これはたいへんな錯覚であります。日本は鉄道については非常な後進国であるわけです。現在の国民経済の規模に比べて鉄道輸送力というものは貧弱きわまりないわけですね。これが基本的にいって国民経済的な要請にこたえられない原因になっているわけなんです。  で、そういったことの結果はトラック輸送がものすごく伸びてしまった。たとえば人口一人当たりのトラックの台数あるいは国土の面積当たりのトラックの台数を西ドイツやフランスと比べてみますと、大体三倍あるいはそれ以上というような数字になっているわけです。しかし、じゃトラック輸送がはたして現在の日本経済、日本の社会の直面している問題に対して適合しているといえるか、これが住民の生活環境なり生活の向上にどれだけ役立っているといえるかといいますと、たとえば、これは代議士の先生方はよく地方へおいでになって御存じだと思いますが、地方の中小都市では、町の中を貫いている国道をひっきりなしに大型トラックが走るためにその国道を人が歩くことができない。こういう状態ができ上がっているわけです。これはどういうことかといいますと、結局道路というものは単に車が通るための道路ではないわけですね。人間が歩いたりあるいはそこで近所の人が話し合いをしたりあるいは火事が起これば消防車が通ったりあるいは何か災害があれば避難したり、いろいろな目的のために使われている道路であるわけです。その道路をほかの用途に対して何の償いもなしに自動車が占領してしまった。歩くことさえもできない。しかも年々貴重な生命がそこで失われていく。こういう状態のもとに自動車輸送量を非常にふやしていっている。これはおかしいわけでございますね。経済がもし入間の福祉のための経済であるならば、これは本末転倒であるといわざるを得ない。当然輸送というものは人間の生活を向上させるためにあるべきだし、トラックはその中での一つのサブシステムとしてあるべきだと思うのです。  この点は、われわれが国土計画あるいは都市計画あるいは地方開発計画というものを立てる場合に、そういう全般的な社会の改善すべき目標に合ったような交通システムをつくっていくという、そういうプランをつくらなきやならぬということであります。現在のところ鉄道のそういった幹線の輸送力がないということのために、トラックを押えるということがすぐにはできないような状況にあるわけです。しかし少なくとも東京等では時間帯を限って車の進入を禁止するというようなことが現在行なわれているわけですけれども、これは非常に過渡的な、現在ヨーロッパやアメリカやあるいはソビエトでやられている計画から見ればきわめてお粗末な状態なんですね。向こうはもっと構造的に、十分共存できるようなそういうパターンの建設をやっているわけです。われわれとしてはそれを目ざさなきゃならないわけですが、当面そういうもので糊塗しているということであるわけであります。  時間がございませんので、運賃の制度の問題について簡単に申し上げます。  現在の国鉄運賃制度というものはきわめて中途はんぱでございまして、鉄道がまだ全国の陸上輸送を独占しておった時代のなごりをずいぶんとどめております。これではやっていけない。それからもう一つ、国鉄が現在のような輸送分野でシェアを失って、財政状態も非常に悪くなっているときに適さないような運賃制度があるわけであります。  一つの問題は、全国一律に運賃をきめている、賃率をきめているということであります。これは当然、ローカル線の赤字がふえてくれば黒字線の利益でもってローカル線の赤字を埋めなきゃならないわけで、黒字線の負担、大都市及び大都市間の負担が非常に大きくなってくるということであります。ところが一方でモータリゼーションがどんどん進められて、鉄道から自動車輸送を移しながら他方でこういう運賃制度を維持するということは、黒字線自体をも危険におとしいれるということになります。  それではどうすればいいのか。線区別原価に応じて違った運賃を採用すればいいのか。これは回答になりません。つまり現在の安い運賃でさえも自動車に逃げていくわけですから、これを高くすれば鉄道におまえは死ねと言うにひとしいわけです。言いかえれば、直接費もまかなえないようなローカル線区をどうやって維持するのかということは、これはその地域全体の経済運営の中で考えていくべき問題だということなんですね。それはたとえ企業的に収支が償わなくても、社会的な費用と便益との関係でもって、公共資金の投入で維持すべきだということ。すでに四十八年度から地方ローカルバスに対しては運行費の半分までは国と県と市町村でもって、公共資金を投入してローカルバスを維持するということになっておりますけれども、鉄道についても鉄道の持っている役割りからいえば、当然そういった根本的な再検討が必要であると思います。  それから大都市についてですが、大都市の場合には、いかにして自家用車をコントロールし、公共交通で用が足りるような交通システムをつくり上げるかということが、世界を通じて問題であるわけです。その中で公共交通機関は全部一緒にして、同じ賃率でもって乗りかえが自由にできるような、そういう便利な制度にしていくべきではないか。これはすでに西ドイツのハンブルグやミュンヘンでやっていることでございますけれども、そういう改革が必要であろうというふうに思っているわけです。ところが、国鉄は以前には大都市の国電区間については特定の運賃制度を持っておったわけですが、それをくずして現在全国一律の運賃制度にしてしまっているわけです。これは結局全体の財政が苦しいものですから、大都市から吸い上げようということでそうしたわけですけれども、これは大都市全般の公共交通施設の改善という点からいえばまずいと思うのですね。新しい視角からやはり再検討しなければならない。そこで、国鉄ローカル交通と幹線交通それぞれについて、やはり実態に即した運営ができるようにしなければならない。たとえば、ダイヤの編成一つにしてもそうです。そのためには地域社会の意向を反映し得るような仕組みをぜひ用意していただきたいというふうに思えるわけです。  では、ちょっと言い足りない点もございますけれども、時間もオーバーしましたので、これで終わります。(拍子)
  14. 井原岸高

    井原委員長 ありがとうございました。  次に、竹森公述人お願いをいたします。
  15. 竹森澄江

    竹森公述人 竹森でございます。  私は、このたびの国鉄運賃改正につきまして、次のような理由でこれに賛成をいたします。  私は、現在都内に住んでおりますが、いつも国電を使っております。この運賃昭和四十四年から全く変わっておりません。この四年間にほかの物価はたいへん上がりましたけれども、国鉄運賃だけは据え置かれましたのでほんとうにありがたいとは思っておりました。しかし、新聞などの報道によりますと、国鉄は財政状態がたいへん悪くて、その財政の再建の方策が国会で検討されていると聞きまして、このたびの運賃改正には私なりにたいへん興味を持ちまして、このとき世論を求められているということでしたので、これに応募いたしまして、きょうの機会を得たわけでございます。  確かに運賃は安ければ安いほどありがたいし助かりますけれども、ほかの物価の動きを無視していまの状態のままでいけば、将来国鉄がどうにもならない状態に追い込まれて、急激に大幅な値上げをされたり、また国鉄の列車の改善が放置されて、危険な状態をそのまま続けられるようなことに万一なりましたらば、何にもならないという不安がございます。  これは、このような席で私のうちの例を引きますのは恐縮でございますけれども、主人は通勤にバスと地下鉄を使っておりまして、この費用は会社が負担しております。主人はときによりまして、会社までタクシーを使いますけれども、タクシー代は以前三百円でございましたのが、近ごろ五百円を支払うようになって、これは五割以上も値上がりをしている、たいへん高くなったと言っております。また、長男はバスと国電と私鉄を使いまして、東横線の日吉まで通学しております。また、長女はバスと国電を使いまして田町まで通学しております。そのうち、バスと私鉄とタクシーはすでに値上げされております。私のところでは、子供たちの通学の定期代は一カ月に約四千四百円ほどでございますが、国鉄の定期代は一カ月千円ほどでございます。正確には千八十円でございます。これはバスや私鉄などと比べますと、私どもの交通費の中ではかなり安い分量になっております。  近ごろの物価は、たとえば、昨年末まで私どもでは、豚肉のこま切れ肉は百グラム七十円ほどで買っておりましたけれども、今日現在では百グラム九十円から百円しております。こま切れ肉というのは御承知のように最低段階の徳用肉でございますけれども、こういう肉がこんなに上がっております。ですから、ほかのものはお話にならないわけでございます。それから、やはり昨年の末まで一巻き五十円でした絹糸が、一月に買いましたときは八十円でございました。それが一週間ほど前に全く同じ色の糸を買いましたらば、何と百五十円になっておりまして、びっくりしたわけでございます。もちろんこのような物価高の中ですから、国鉄がいまの運賃をこのまま据え置いて、ずっと続けてくださるならばほんとうにありがたいわけで、ほかの物価がいまお話ししましたように高いので、何となくそのムードで一緒に上げてもしかたがないなどと言っては決しておりません。しかし、ほかの物価がいつの間にかいま申し上げましたように、どんどん——ずるずるというよりもどんどん値が上がっておりますのに、国鉄だけは公共企業という名前で世論監視にあってパンクしてしまってよいのか、私はそう考えたわけでございます。国鉄運賃改正いたしますと、ただいまも例に引きましたように、ほかの物価も上がるのではないかという不安は確かにございますけれども、このたびの改正の場合は、ほかの物価があまりにも上がり過ぎてしまって、これ以上国鉄だけが別だというのは、これはしろうと考えでも無理なような気がいたします。物価については国のほうで十分な施策を講じていただいて、経済全体を見通した総合的な政策を立てていただかなければ、とても物価の安定は望めないと思っております。それを、国鉄運賃だけを据え置いて、何か物価対策だというような言い方をされるのですと、これはお国の物価対策はなきに等しい、あまりにもお粗末だと思うわけです。  そういうことで、国鉄運賃が据え置かれまして、いつまでも通勤対策とか長距離旅行の輸送対策など、一刻も猶予できない問題が犠牲にされてしまうのではかなわない気がいたします。利用者運賃負担が多少ふえましても、現在のような殺人的な通勤通学電車の混雑の解消を一日も早くしていただきたいと思います。子供がかばんに笛を入れて学校に出かけますと、着いたときには笛がつぶれていることがあります。くつが片方脱げても拾えずに、命からがらのような思いで下車することがございますそうです。朝、のりのきいたワイシャツを着せて出しましても、電車をおりたときには蒸しぶろのような電車にもみくちゃにされて、見るかげもなく汗にぬれそぼったワイシャツになってしまっていると言っております。こういった状態は親として耐えられないと思いますし、御主人を送り出される皆さまも同じことだと思います。こういう状態を一日も早く解消して、冷房や暖房のきいた電車で通勤や通学ができるように切望いたします。  これも私どもの例でまことに恐縮でございますけれども、母や弟が京浜東北線の北浦和駅の付近に住んでおりますので、私どもはたびたびここに参ります。国電の料金は、市ケ谷駅から北浦和駅までが百二十円でございます。この区間の電車所要時間は一時間二十分でございます。駅前からバスに乗りますと、待ち合わせが悪かったりいたしますと、自宅を出まして母のところに着きますのに二時間かかることがしばしばあります。ですから、往復に考えますと四時間費やすことがございます。この四時間近い時間を考えて出ませんと、一日のやりくりにこたえるわけであります。ごくたまに上野駅から高崎線で、浦和駅にとまる高崎線に乗れることがございますと、これが何と上野から浦和駅までが二十分で着いております。私たちは市ケ谷から北浦和までが必ずしも百二十円でなくても、現在の運賃が多少上がりましても、いまより三十分早く着くことを望んでおります。  また弟は、この北浦和から都心の会社に通勤しておりますけれども、国電の定期代は一カ月三千百円だそうでございます。混雑した電車に長時間もまれまして通勤することは非常に心身が消耗するので、できることならば勤務先の近くに引っ越したいといつもこぼしておりますけれども、最近の住宅事情では、便利のよいところでは、とても五千円とか一万円とかいうようなお金では、四畳半のアパート一間借りられないそうでございますので、今日の電車が、単に距離を運ぶばかりでなくて、もしもっとスピードアップして、短時間にいかに長距離を運ぶかという努力をしていただけるならば、もっと電車本数がふえてスピードアップするならば、遠距離の通勤が苦にならなくなるので、遠距離からの通勤客も非常に喜ばれますでしょうし、あわせて住宅問題も解決できるのではないかと思います。  また、最近特急電車に乗りまして、家族で長野から湯田中のほうに旅行いたしましたけれども、この特急電車の運賃は一人当たり千七百円ほどでございました。駅前から、たまの休みですのでタクシーを使いましたら、長野から湯田中までが何と二千五百円もタクシー代をとられました。びっくりいたしました。行きも帰りも電車はスキー客の若い学生さんたちで満員でございましたけれども、この若い人たちがこれほど特急が使えるということは、国鉄運賃が安い、気やすぐ払えるという一つの事実ではないかとながめていたわけでございます。  国鉄は、私たちに特急という形で乗車時間の短縮というサービスをしてくれています。これをさらに今後一そうスピードアップしたり、駅や列車を利用しやすくしてくださるならば、それにふさわしい値段にしていってもよいと考えます。私たち利用者は、適正な運賃を支払うかわりに、それにふさわしい、より高いサービスとより安全な施設の充実を国鉄に求める権利があると思います。  昔のように、国鉄は安ければよい、のんびり乗っていつの間にか目的地に着いていたといった時代で、われわれ利用者は乗りものを考えていません。また国鉄もそのようなお考えで営業をされていないと思いますが、そうであれば困ると思います。  なまいきなようですけれども、交通機関というものが人間の歴史の中にあらわれたのは、おそらくまず重いものを運んだり歩く不便をなくしたりというところから考えられたと思いますし、そういうことから発達したのでしょうけれども、馬車というものが考えられて、それにスピードというメリットがつけ加えられ、それからさらにもっと力を持つ蒸気機関とか内燃機関といったようなものが便利さをもたらしたわけですけれども、もうこのような素朴なものではなくて、技術が進んでいる現在やこれからの交通機関のメリットは、安全と無公害と便利さと長距離輸送の時間短縮にあるのではないかと思います。国鉄新幹線はこの要素をかなり果たしてくれる、かなり満たしてくれる、私たち日本人が世界に誇るべき乗りものだと思います。こういうすぐれた交通機関に対しては、私たち利用者もそれに見合う負担を当然受け持つのも、考えてよいことだと思います。そうしてそのかわりに、サービスとか安全とか、さらに一段と新しい時代に向けた研究を国鉄に提供し続けていただきたいと望みます。  ほかの乗りものの運賃がすべて上がって、国鉄運賃だけは押えておこうというのでは、国鉄自動車とか飛行機というようなほかの競合する相手にはさまれて、その高速で大量輸送するという大事な役割りを完全に果たし続け得るか疑問に思います。大事な人命と人々の時間を預かっている鉄道の任務と使命は、日々に最も新しく最も高度な施設の改善が要求されるわけでございましょうから、ただいまのようにセメントは非常に値上がりして品不足であったり、木材も鋼材もたいへん値上がりしている現状では、これらの施設改善に多額の費用値上がりがあるであろうことは、私たちしろうとにも容易に想像されるところでございます。利用者としても、むしろこの際ある程度負担は認めて、新時代に適合した、また現在の国民生活、たとえばカラーテレビとかルームクーラーなども備えられるようになった国民生活のレベルにも適合した、高度な性能の鉄道にしていただく努力をこの際国鉄に望むべき時代ではないかと考えるわけです。  以上のような理由で、私はこのたびの国鉄運賃改正賛成し、新幹線や通勤冷房車などの高いサービスをさらに積極的に提供してほしいと国鉄当局に希望いたします。  以上で私の公述を終わります。ありがとうございました。(拍手
  16. 井原岸高

    井原委員長 ありがとうございました。  次に、都丸公述人お願いいたします。
  17. 都丸泰江

    都丸公述人 都丸と申します。  私は特に専門的な知識を持たない主婦でございますが、このたびの国鉄運賃値上げに対しては、諸物価の値上がりともあわせて、全く無関心ではいられないもので、新聞やテレビなどから得たごく一般的な知識と生活実感といったことから、値上げについて反対の意見を述べさせていただきます。  政治は私たちの毎日の暮らしと切り離せないものでありますが、市井の片すみに生活する一主婦の希望や意見などなかなか政治の中に生かされないで、いつも大きな壁のようなものを感じておりますけれども、だからといってやっぱり黙っているわけにはいかないという気持ちでここに出席をさせていただきました。  日本が自由経済体制の中にあるとはいえ、昨今のように大豆、繊維、木材の買い占めや、さらに私たちの主食であるお米まで投機の対象にされようとしていることは一種の犯罪行為とまでいわれています。これらの投機による物価の値上がりはいままでになく急激で、値上がり率も高く、私たちの毎日の暮らしを脅かしておりますが、これに追い打ちをかける国鉄運賃値上げや健康保険法の改悪などは田中内閣が唱えている物価の安定とはまさに逆を行くものではないでしょうか。民主主義とか議会主義の政治は国民の代表が国民の声を代弁して国民のための政治を行なうべきはずです。東京都が美濃部知事になってから福祉行政が進み、国でできなかった老人医療や乳幼児医療の無料化、児童手当、福祉手当などを先取りして政策を打ち出したのは、都民参加とか都民との対話により住民本位の政治をしようという姿勢があればこそできたものです。残念ながら国の政治では公害対策、教育、福祉政策など、どれをとってみても国民の要望を十分にくみ上げているとは思えません。企業保護といいますか、大資本優先と申しますか、国民をないがしろにしているかのごとく感じられます。  このたびの国鉄運賃値上げについても、その理由に、国鉄赤字が増大して今後国民生活国民経済において果たすべき使命を全うすることができなくなるおそれが生じたと提案理由の中で申されておりますけれども、この国鉄赤字にしても、その大きなものは設備投資と大口貨物輸送が指摘されています。政府の打ち出した新線の建設や電化、複線化、車両の増備など、独立採算制という制約の中で投資の財源を借り入れ金に求め、その返済と利子の累積が大きな部分を占めているといわれています。四十六年度の客貨の実績は、旅客は十億円の黒字であり、貨物は実に二千百五十三億円の赤字であることが知らされておりますけれども、今回の財政再建計画でも大口貨物運賃値上げ率が一番低いという事実は大企業保護の政策といわざるを得ません。国鉄はいまや国民の足というほどわれわれの生活にとってなくてはならないものになっていますが、それだけに国鉄の公共性は問われなければなりません。  東京都の総合交通対策会議では一月二十九日、公共交通の駅舎、線路、車両など固定設備は公共財政から支払い、運営費だけ料金収入でまかなうのが妥当と、独立採算制をまっこうから否定する答申を出しています。これは公共交通事業の施設は都市生活における必要な公共施設という考え方に立っていると思いますけれども、国鉄に関してもその公共性を認めて、施設費については国の財源から投資をするということを考えるべきで、運賃値上げにたよるべきではないと考えます。  値上げについて反対の理由を申しますと、その第一は、国鉄運賃値上げがインフレを助長するということです。国鉄運賃値上げは私鉄をはじめとする他の交通関係料金に影響を与えていることは過去の実績がこれを実証しています。国鉄が三十六年四月、四十一年三月、四十四年五月に値上げをしたのに対して、大手私鉄は三十七年十一月、四十一年一月、四十五年十月にそれぞれ値上げを行なっています。また、単に交通機関運賃値上げを誘発するばかりでなく、他の公共料金の値上げまでも引き起こしています。米、電気、ガス、水道料、医療費、入浴料、郵便料などの公共料金をはじめ、大学の授業料や牛乳にまで及び、国民の生存に直接かかわる費目が多く、本来政府が低廉に国民に保障すべき性格のものまで値上がりをしてきました。特に現在のように一方では買い占め、投機による値上がりをしているとき、国鉄運賃値上げを行なうことは、まさにインフレに拍車をかけ、便乗値上げなどを引き起こす危険をはらんでいます。通勤定期でおよそ千円ほど、学割り定期で四、五百円の支払い増になるわけですけれども、それに伴う天井知らずの消費者物価の値上がりを思うとき、私たちの家計は維持できるのかと絶望的にもならざるを得ません。  また、その次には、日本国有鉄道の目的は公共の福祉を増進することであり、それは生活上の必要な交通の充足と、快適と安全、運賃の低廉ということにほかなりません。憲法にいう国民の健康にして文化的な生活を営む権利の中の足の確保が低廉に供給されなければならないと思います。現在の国鉄なりそれに準ずる交通機関がはたして国民の必要に応じて快適、安全、低廉に供給されているかということを見るとき、私は大きな疑問を持たざるを得ません。  住宅地の高騰から都内にマイホームを求められないで、近郊都市にささやかな家を建てたサラリーマンは毎朝毎晩一時間半もの時間、満足に立っていられないほどの混雑した電車にゆられて通勤をしなくてはなりません。八時間の勤務のほかに三時間の通勤時間、この疲労度はとても経験をしたことのない方にはおわかりにならないと思います。  また、こんな話がございます。私の知人の老夫婦が定年後ささやかな恩給で小さな家を借りて埼玉県の入間市に住んでいます。入間市に住んだというのも好んでそうしたわけではございません。都内では家賃が高くて住めなかったわけですが、このクリスチャンである老夫婦は、いま唯一の楽しみは毎週一回教会へ通うことで、それが生きがいにもなっているわけです。しかし、二人で月四回教会へ通うためには現在でも合計二千四百円の交通費がかかるわけで、これ以上値上げをされては、食費を削るよりほかないと言っておりました。このように富める者も貧しい者も同一の料金を払って利用する交通機関であるわけですから、より安く供給することが福祉的であると考えます。  また、これは私が経験したことですが、この春休みに久しぶりに二人の子供を郷里へ行かせるために上野駅まで見送りに参りました際、私の郷里は上越線の高崎の近くですから、高崎まで乗っていけばよいのですけれども、近距離の普通列車があまりにも少なくなったのにびっくりいたしました。前には三十分に一本ぐらいの割合で高崎行きとか前橋行きというのが出ておりましたけれども、そのつもりで出かけてまいりましたところ、午前中に二本か三本しかなくて、その倍以上の急行列車が出ておりました。二時間で行くところを一時間半くらいに短縮しただけで急行料金を払い、しかも混雑した列車に乗らなければならないということははたして一般大衆の利益になっているのだろうか。私たちは好むと好まざるとにかかわらず、収奪を余儀なくされていると考えないわけにはいきませんでした。  これと同じようなことで、東京−大阪間に新幹線が走るようになってから、東海道線からは東京−大阪間の直通列車が消えてしまったということです。一方貨物輸送では東京−大阪間を八時間でノンストップで走っているということです。道路が整備され、自動車交通がふえていることは事実ですが、これによる交通事故は一年間に死者が二万人、負傷者が百万人と、ベトナム戦争を上回るほどふえ、日本国じゅうをおおう排気ガス公害を考えるとき、国鉄などの大量輸送交通機関は社会全体の生活維持のために、たとえコスト割れであろうが財政支出を余儀なくされようが、守っていかなければならないのではないでしょうか。  政府は、国鉄赤字理由人件費の増大ということで、向こう十カ年間に十一万人の合理化を実施しようとしています。しかし、安全確保の点から見ればこれはたいへん危険なことで、合理化により一方には過重労働がしいられることになり、乗務員の疲労や注意力の不足で事故が増加されることは考えられることです。昨年十二月以来国労が行なった運転保安確保の点検行動の結果を見ますと、見通し不良の踏み切りや危険なトンネル、老朽した橋などの危険個所が全部で三千三百三十四カ所もあると聞いてびっくりいたしました。そして昨年一年間に乗務員の注意力で事故発生を未然に防止できた件数が四千二百八十三件にものぼっています。これらの事実から見ると、赤字対策として人減らしをすることが快適と安全をモットーとする国鉄サービス精神に逆行していくことは目に見えています。私は国鉄の公共性を認めて設備投資一般財源からすべきで、利子の多い借り入れ金にたよるべきではないということを申し上げましたが、おそらく一般財源からばく大な予算をつくり出すことはむずかしいと言われるかもしれません。しかし、第四次防衛計画には五兆円以上の予算が組まれています。私は婦人の立場で、日本の再軍備は憲法違反であると考えておりますし、現在日本が軍備を持つことの意味を認めないものです。今回の財政再建にあたって、政府も補助を増額しよう、そのかわり国鉄自身も労使協力して収入増加と業務運営の合理化に努力し、利用者もその一部を負担せよという趣旨でありますけれども、四次防予算を全部国民福祉のために振り向け、福祉国家としての面目を施していただきたいと思っております。  最後に、国民の代表の選択の方法が適正でないために、国民の意思が正しく国政に反映されていない面がたくさんあると思います。一億国民の半数の意思も十分におくみ取りくださって、強行採決などの手段に訴えることなく、十分な審議をお願いしたいと思います。もしこの国鉄財政再建案が通った場合には、向こう十カ年間の物価上昇に対して政府の責任を明らかにしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。(拍手
  18. 井原岸高

    井原委員長 ありがとうございました。  以上をもちまして公述人各位の御意見の開陳は終了いたしました。  午後一時三十分から公聴会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後雰時四十三分休憩      ————◇—————    午後一時三十六分開議
  19. 井原岸高

    井原委員長 休憩前に引き続き公聴会を開きます。  公述人に対する質疑を行ないます。  なお、質疑の際は、公述人を御指名の上お願いいたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。  なお、質疑時間については、理事会において申し合わせのとおりお願いいたします。  加藤六月君。
  20. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 公述人の皆さま方には、きょう外ではストライキが行なわれ、それぞれたいへんお忙しい事情をかかえておるにもかかわりませず、それぞれのお立場でたいへん貴重なる御意見をお聞かせいただきまして、私たち今後運賃再建法の問題につきまして非常に教えられるところが多かったことを、この席をかりましてまず厚く御礼申し上げます。  私自身は公述人の先生方、全部お聞きすることができなかった——外のストライキ問題で、いろいろ政府、党の関係で呼び出しを受けまして、一日も早くストが解決するためのいろいろな問題に対しましての運動や意見を聞かれておりまして、全員の皆さま方の御意見を最初から最後まで十分聞かしていただくことができなかったことはたいへん残念に思っておりますが、お聞かせをいただけなかった皆さま方に対しましては、後刻速記録を十分読まさしていただきたい、こう思っておるわけでございます。  多くの公述人の先生方の国鉄再建問題につきましての御意見を承っておりました中に、非常に考えさせられ、あるいはまた反省するところもあったと思います。  私たちがこの国鉄再建法に取り組みました基本的な姿勢は、いろいろありますけれども、特にその中で、多くの公述人の皆さま方もおっしゃっておられましたが、いわゆる国鉄の独算制という問題と公共性という問題についての考え方、また現状認識におきましては、日本国有鉄道旅客のシェアにおいては三〇%である、貨物のシェアにおいては一八%であるという問題、あるいはまた国鉄が過去百年間わが日本の国民生活の上に果たしてきた大きな役割りというものを踏んまえ、そして国鉄に関して今日再建ということばがなぜ使われなくてはならなくなったかという問題、あるいは昭和四十四年の再建法というものがなぜとんざしたかという問題、そういった国鉄の現状に対するきびしい、冷静な反省と分析の上に立ちまして、今回の再建案に取っ組んできた次第でございます。そして民の足として——げたではありません。国民の足として、われわれの今日の国民生活、あるいはわれわれの子孫のためにどういう形で国鉄というものを再建して残していくべきか、こういう観点に立ちましての国鉄再建あるいは運賃に取っ組んでまいった次第でございます。  われわれ自由民主党の大ざっぱな立場を申し上げますと、そういう立場で取っ組んできたわけでございますが、その取っ組み方に対し、あるいは分析のしかたに対し、あるいは姿勢に対し、いろいろな示唆をいただきましたことは先ほど申し上げたとおりでございます。  そこで私たちも考えさせられたことがあるわけでございますが、私一番最初にごく簡単にお伺いをいたしたいと思いますが、それは木村先生、村木先生、広岡先生でございますが、社会主義国家、特に日本に面積その他で比較的似かよっておりますところのユーゴスラビアあるいは日本よりかだいぶ小さくございますが、人口密度が非常に多いチェコスロバキア、ハンガリー、こういった国の鉄道の総収入におけるところの人件費のパーセンテージを御存じならお教えいただきたい。ごく簡単でけっこうでございますから、木村、村木広岡三先生にまずこの問題から承っていきたいと、こう思っております。木村先生からお願いします。
  21. 木村禧八郎

    木村公述人 人件費の割合ですか。
  22. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 鉄道収入に対すると、それから鉄道従業員との、私が申し上げましたユーゴスラビア、チェコスロバキアにおけるところの鉄道における総収入人件費とのパーセンテージがどのようになっておるかお教えいただきたい、こういうことでございます。
  23. 木村禧八郎

    木村公述人 私、いま存じておりませんので、ほかの方に伺ってください。
  24. 村木啓介

    村木公述人 加藤先生もよく御存じのように、人件費の割合というのは、物価体系の中での賃金、料金との割合……。
  25. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 簡単にお願いします。  私が申し上げておるのは、総収入人件費の割合を御存じかどうかということでけっこうです。それは私が申し上げました国の……。
  26. 村木啓介

    村木公述人 各国によっていろいろ違いがございますけれども、おおむね六〇%から七五%くらいの割合になっているように国際運輸統計の中に出ております。
  27. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 村木さん、いまおっしゃったのは、各国というのは、私が申し上げたのはソ連や中国は要りません。日本と比較対象になりません。  そこで私が申し上げましたのは、東欧の社会主義国家の輸送収入人件費との割合であります。各国ということばでは自由主義国家、われわれが問題にしておる再建案の、いわゆる西ドイツやイギリスやフランスやイタリアにおけるところの、あるいはアメリカにおけるところの国家助成という問題が入っておりますから参考になりません。社会主義国家の、いま申し上げました、もう簡単に言いますと、ユーゴスラビアとチェコスロバキア、この問題をお聞きしておるわけであります。
  28. 村木啓介

    村木公述人 それは国際運輸統計の中にその国は載っておりませんので、私も存じません。
  29. 広岡治哉

    広岡公述人 私もこの席ではちょっとお答えできませんが、国際鉄道連合の統計の中にユーゴは載っておりますが、私は覚えておりませんが、大体六、七〇%と考えて、たいして間違いないだろうというふうに思っています。
  30. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 実は私はこういうソ連、中国を除く社会主義国家におけるそれぞれの鉄道の実態というのを相当詳しく調べております。資料も持っておるわけでございますけれども、私がいま申し上げたいと思いますのは、単にいま申し上げましたところの西欧の資本主義国家の問題だけでなしに、私たちは社会主義国家における運輸収入人件費との割合も考案しながら、いわゆる今回われわれがつくりました、政府と自民党が責任を持ってつくりました三本柱というものの裏づけを出したいと、こういう立場でやったわけでございます。たいへんあるいはいまの質問、失礼になったかもわかりませんので、これはおわび申し上げておきます。  その次に木村禧八郎先生にお伺いいたしますが、先生、総合交通体系立場ということも、あるいはまた地域の問題に施策地域、いわゆる都市開発の問題等にもお触れになり、また企業性と独算制の問題、いろいろおっしゃっていただいて、特に総合交通体系の裏づけが今回の案にはなくなった、昨年廃案になった分には若干あった、このようにお話がございました。実は率直に申し上げますと、先生が言われる点は半分正しいと思います。政府は一昨年つくった総合交通体系の中に昭和六十年を目標としての鉄道と道路と海運と航空におけるそれぞれのシェア、パーセンテージを資料としては持っておりましても、具体的数字にようあげなかったわけであります。  われわれ自由民主党は同じく総合交通体系を党内で議論いたしました。大激論をやりました。激しいディスカッションをやりまして、一応の数字を出しました。総合交通体系におけるところの鉄道トラックその他の占めるもののシェアをやったわけですが、はっきり申し上げまして、われわれがそういう点を考えた過程におきまして一つの大きな変化が起こりました。それは昨年の十月からいままでわが国における貨物輸送体系の王座を占めておりました海運トラックに王座を奪われました。昨年の十月であります。この傾向がはたして一時的なものであるか、半永久的に続くものであるかということで悩んだのであります。そうして総合交通体系におけるパーセンテージをやるときに政策的に調整していくべきか、あるいは自由なる競争の過程において政策で若干調整していくべきかという問題で苦しんでおったわけなんです。  そこで、この総合交通体系の問題、非常にむずかしい問題でございまして、一分や二分でわからぬと思いますが、もし先生、昨年の十月に海運トラックが追い越した、この現象についてどうお考えになるかということと、それからこの傾向というものは長く続くものか、ごく短期間の去年の海運ストによる影響という一時的なものであるか、どういうお考えを持っておるか、お聞かせ願いたい。木村先生と広岡先生にこの点についてお教え願いたい、こう思うわけです。
  31. 木村禧八郎

    木村公述人 私は総合交通体系に触れましたのは、この前の運賃値上げ法案のときには、総合交通体系国鉄の業務分野の確立とか、あるいは在来線の選択的整備とか、そういうものが裏づけになっていたわけですね。それが今回変わったということと、もう一つは投資計画がものすごく変わっちゃった、長期計画投資案が。四十七年から五十六年まで、この前の廃案になったやつですね、七兆円でしょう。今度は十兆五千億ですが、四十八年−五十七年。ところが新幹線投資額が二兆円から今回三兆九千億円になっているのですね。そうして大都市圏の輸送のほうは五千三百億が七千百億になっている。とにかく新幹線建設にものすごい重点が置かれているのですよ。ここの点をひとつ私は問題にしたわけです、問題点として。いま具体的に何か海運トラックにとられたというようにお話しございましたけれども、これは私はそういう事実をいま伺ったわけで、しかしそれは国鉄の場合も貨物収入減がやはりモータリゼーションによりまして、そうしてトラックにとられている、そういう大きな経済の変化、変革の過程に起きた問題でございますから、私はただ、いま一時的に起きた現象であるというふうには理解しないのです。やっぱりかなりいま非常に大きく変化している、国鉄貨物において生じていると同じような、そういうものと私は理解しているわけです。  それで、とにかく私に率直に言わせていただきますと、田中さんの日本列島改造的な構想が今度はものすごく強く出ちゃっているのです。そのことと、もう一つは新幹線、今度は新しく五つ加えたでしょう。あれは収益性はあまりないと私は思うのですよ。あんなところに金をつぎ込んで収益をあげようといったって、私はむしろ逆だと思うのです。東海道線のようにあんなに利益があるはずがない。船や航空機と競争して、東海道線のような考えで、多く投資したら収益が多くあがって、それで国鉄赤字解消せよ、そういう発想は間違いだ、私はこういう考えでさっきの意見を述べたわけなんです。
  32. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 先生方、ひとつ簡単にお教え願いたいと思いますが、先ほど村木公述人から私の名前が出たので、私あのとき途中で失礼しましてたいへん申しわけないと思っておるのです。実は国鉄労働者は過重労働と低賃金に悩んでおるというところまでお聞きして出たわけですが、国鉄の労働者の労働時間を御存じでしょうか、これが一点。それから平均賃金は御存じでしょうか、これが二点。そして三点は、国民平均の賃金を御存じでしょうかという、この三つをひとつ承って、それから私の質問をやらせていただきたい、こう思っております。
  33. 村木啓介

    村木公述人 ただいま手元に統計を持ってきておりませんから正確にはお答えできませんけれども、労働時間につきましては、戦後労働基準法がつくられまして、交通労働の特殊性というのは拘束時間内における実働率が低いという理由で特例がたくさんつくられたわけです。特に一昼夜交代勤務というのは労働基準法の例外として、諸外国にも一昼夜交代勤務というような勤務形態はございませんほど過酷なものでございますが、この一昼夜交代勤務を中心に、特殊日勤などといって始発から終列車まで勤務するというような長時間労働がございますので、拘束時間内における実働率が低いといって特例をつくったのでございますけれども、今日、実際は拘束時間内における実働率が非常に高くなっているにもかかわらず例外規定のままであるということで、長時間重労働ということが御理解いただけると思うのです。  具体的な統計が御必要でございましたら、後刻お届けいたします。
  34. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 いや、私は知っております。知っておりますから……。
  35. 村木啓介

    村木公述人 存じておいでならば別にお聞きになることもないし、私も存じておりますが、いま統計的に承知しておらぬだけでございます。  それから平均賃金につきましては、労務構成だとか、いま申し上げました労働時間の問題だとか、福利厚生の問題だとか、さまざまな労働条件ともかかわり合いますので、単に国鉄労働者の平均賃金が九万円であるとか民間の賃金が八万円であるとかということで単純には比較できないというふうに承知しております。
  36. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 そこで先生、私は時間があったら具体的数字をあげて、国鉄労働者の過重労働と低賃金ということばをあまり軽率にお使いいただきたくないということを申し上げたかったのですが、あとあとわが党の議員からいろいろな問題につきまして、具体的な数字、あるいは運賃問題、再建基本方針問題等について申させていただくと思います。  私たちは、国鉄労働者の賃金と労働条件の問題について一番注意しなくてはならないのは、他の二公社五現業に比べて国鉄労働者は命がけの仕事をしておる、非常に生命の危険にさらされておる、そこを特別に加味した賃金体系をつくってさしあげなくてはならないという点はみんな同じであります。しかもそういう精神をもって臨んでおるということを申させていただきまして、いろいろ失礼な質問があったかもわかりませんが、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  37. 井原岸高

    井原委員長 佐藤孝行君。
  38. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 まくらことばをやめてさっそく本論に入りたいと思いますが、いま加藤委員の質問である程度わかったのですが、木村公述人にお伺いいたします。  先ほどのお話で、昨年までは総合交通体系というものが確立しておったが本年度総合交通体系というものが全くなくなったんだ、こういう御趣旨に聞いたのですが、いまのお話を聞くと、ローカル赤字線の問題、それから列島改造に伴う新幹線の新たな五線の追加、そういうものがあるから総合交通体系がくずれたんだ、あるいはなくなったんだ、そういう御趣旨に理解してよろしいわけですか、お伺いいたします。
  39. 木村禧八郎

    木村公述人 そればかりではありません。
  40. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 だとすると、全くなくなったんだという考え方は私はどうも理解に苦しむのですが、いかがなものでしょう。
  41. 木村禧八郎

    木村公述人 それは一番基本的な点について、さっき具体的に公述いたしたのですけれども、たとえば道路整備計画の問題ですね。十五兆九千億ですか、あれを五カ年間でやる。それと今度の国鉄再建の十兆幾ら、ああいうものと比較しまして、道路と国鉄との間のアンバランスはものすごくひどくなってしまっているのじゃないかと思うのですね。それについて総合的な考え方がなされてないのじゃないか、そういうことも含まれておるわけです。
  42. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 われわれから言うと、流動する社会に対応した改革をなされたというふうに判断しているわけですが、まあその話はその程度にして、それから先ほどのお話の中では、十カ年計画の最終年度には赤字が多くなって何ら再建にならないじゃないか、こういう御指摘があったわけです。確かに十カ年計画で完全黒字にならないのは御指摘のとおりでございますが、先ほど中島公述人からお話があったように、貨車等についてはいわゆる懐妊期間が長いのは御承知のとおりでございます。したがって、最終年度になるとそれだけ投資が生きてくるのじゃないか、収入もそれだけふえるのじゃないか、そういう点を何かお忘れになっているような印象を受けるわけですが、いかがでしょうか。
  43. 木村禧八郎

    木村公述人 私は懐妊期間のことを認めてもよろしいのです。いいのですけれども、しかしさっきも公述人のある方が言われましたが、これは広岡先生でしたか、国鉄人件費は六〇%くらいでしょう。これは今後のインフレのことを考えた場合、やはり人件費は相当かさむと思いますし、それから物件費だっていまこの計画で示されている程度のものではないと私は思うのです。ですから、そういうものをやはり頭に置いて考えた場合、これはいまの懐妊期間のことを考慮に入れましても、私は十年後に赤字解消するとも思えませんし、それから特に、私はよくわからないので、これは質問してはいけないことになっておりますが、私がおかしいと思うのは、今度の再建案では赤字がずっと最後まで続いて、一番最終年度の五十七年度になって急に黒字がぱっと出るのですね。そういうような再建のしかたというのは、どうも私は常識としておかしいと思うのです。だんだんに赤字がなくなっていって黒字になるならいいのですけれども、最後年度においてぱっと三千幾らですか黒字になっているという、そういう計算のしかたなんかもずいぶん常識を逸した計算になっているように私は思うのです。特にインフレの問題ですね、この問題が一番大きく考慮されなければいけない、私はこう思っております。
  44. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 木村先生と私のは、だいぶ話が食い違うようですが、時間もあまりございませんから、次の方に質問をかえたいと思います。  村木公述人にお伺いするわけですが、先ほど公述人は、国鉄運賃のきめ方が弾力的に過ぎるじゃないか、したがって公共性に反する。また具体的に小口混載などの例をあげて、その結論を国会軽視である、こういう断定的なことを言われたわけですが、それがどのような理論の組み立てで国会軽視になるのか、具体的にお示しをいただきたいと思います。
  45. 村木啓介

    村木公述人 国有鉄道運賃法では、御承知のように具体的に運賃をきめておるわけでございますね。これは逐次それをはずしていっておられますけれども、この国鉄貨物経営改善の方向という報告書にしるしてありますのは、国会で標準賃率を定めて、他は弾力的にこうやるということになっておりますので、そのきめ方が政策割引的に逐次変わっていくと私は思うのでございます。このことをこの報告書は意図していらっしゃるのだと拝見したのでございますが、政策的に運賃をきめてまいりますと、どうしてもそれは企業的にならざるを得ないわけでございます。国鉄が課せられた公共的な任務を企業的に処理されるということになれば、どうしても公共の福祉というのは軽視されざるを得ない傾向に出ていくというふうに私は従来のやり方から思うわけでございます。  これは私、勉強不足で驚いたわけでございますが、今回小口貨物がコンテナと小荷物に再編成されるということで、あれ、小口混載制度はどこへ行っちゃったのだろうかというふうにたいへん驚いたわけでございます。そしたら、いつの間にか小口混載制度というのは別の賃率がつくってあるわけでございます。いつこんなことになったのだろうかと思って驚いたわけでございますが、逐次こういうようなものがどんどん、国会では標準的にだけ運賃をきめておいて、あとは政策的に幾らでも政策割引運賃制度がつくれるようなことが、これは国鉄経営をどういうふうによくするかというお立場からだけ、国鉄総裁と運輸大臣が御相談しておきめになるということになれば、どうしても公共性の歯どめができなくなっていくのではないだろうか。少なくとも国会というものは、国民利益を守って、いろいろと先生がおやりになっているわけでございますから、そういう点が私は心配だと申し上げたわけでございます。
  46. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 ちょっと論理が理解できないのですが、私は、たいへん失礼な言い方かもしれませんが、いまの論理でそれが国会軽視だという断定のしかたはちょっと独断的に過ぎるのではないか、こんな感じがいたします。あるいは私以外に野党の皆さん何と判断されるかわかりませんが、私はそういう感じがいたします。なるだけ慎重な御発言をお願いしたいと思います。  次に、総花になって恐縮なんですが、広岡公述人にお伺いいたしたいと存じます。  先ほど公述人は、今回の国鉄再建について国鉄労働者は何をなすべきか迷っているのではなかろうか、また何のために再建するのか、そういう自覚なり思想的なものは何もない、具体的な例で申されたと思いますが、労働者なり利用者なり、あるいは他の私企業なりの関係者で、そういう国鉄を考える人たちの組織なり機構ができて、そこで国鉄というものを運営なり再建すべきじゃなかろうか、こういうお話だったと思うわけですが、考え方としては私も賛成です。賛成ですが、理屈の上ではそうなっても、それでは具体的にどういうことをあなたは学者としてお考えになっているのか。現実にそういうあなたのおっしゃる機構が誕生した場合、それがほんとうに国民なり国鉄労働者なり利用者の声というものが反映できるのかどうか、お答えいただきたいと存じます。
  47. 広岡治哉

    広岡公述人 基本的な考え方として、これは日本、外国を問わないわけですが、現代の社会で起こってきている問題はやはり参加の問題だと私は考えております。そういう方向を、われわれが新しい組織形態あるいは管理形態の探求を通じて実現していかないことには、自分たちの生きがいとか働きがいということをよくいいますけれども、そういうものが出てこないわけであります。要するに、病人を回復させるというのはそれだけのエネルギーが要るわけなんでありまして、そういうものをつくらなければならぬ。  私自身が考えておりますのは、前から感じることですが、たとえば国鉄の現場の駅長に権限が非常に少ないというようなことが指摘されております。あるいは現場に近い管理局に権限が少ない。あるいは実際に地元で市町村納付金を受け取っている市町村が、国鉄赤字が非常に大きくなっておって、たとえば五キロなら五キロの路線延長を持っておる市町村、そこの赤字がかりに三千万円なら三千万円かかっておっても、市町村がそれを実感できないような運営の状態にある。これはよくない。国鉄が現在日常的にともかく動脈として役割りを果たしているわけですから、地元の利用者なり地元の自治体なりがそういう国鉄の実態をよく知る。またダイヤの編成一つにしても発言できるというようなものを各地元につくっていく。そこで国鉄をどう運営するかということを考えていく。そういう参加なしには、こういうような東京の一点だけで国鉄の問題を議論しても、これは地についた議論にならないわけです。そういうものの上に、中央で統括して総括的に議論する。そのためには、どうしても国鉄自体ももっと分権化していかなければいけないということであります。
  48. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 たいへん貴重な御意見を拝聴させていただきました。  次に、中島公述人にお伺いするわけですが、たいへん専門的なうんちくを傾けた御意見、たいへん貴重な意見と思って拝聴したわけですが、多くの公述人のお話を承って、ともに公共性ということを非常に皆さん強調されるわけですね。一口に公共性といっても、非常に範囲が広いのではないか。もちろん定義も異なるのではなかろうか。われわれの考え方を申し上げると、たとえば電気なりそこにある水等、われわれは空気と同じようにあまり感じませんけれども、二十四時間われわれの生活にはなくてはならないものですね。この占める公共性のウエートというものは非常に高いと私は思うのです。それからいま論議されている国鉄ですね。いわゆる大量輸送機関、バスとか都電等も含まれるでしょう。この公共性の割合と比率、さらに航空機、タクシーのようにある程度利用者の選択に依存していいと思われる企業あるいは業種の公共性、タクシーとかあるいは航空機というものはこれは絶対われわれの生活になくてはならないというものじゃないのじゃないか。したがって、利用者支払いの原則は私は貫いていいと思うのです。いま論議されている国鉄とかあるいは私鉄、こういう大量輸送機関は、ある程度国民の同意を得て税金を使うことは当然あってしかるべきだ。大別すると、いわゆる公共性というものの私がいま申し上げる三つの中で、国鉄の占める公共性というのは第三位といいますか、ちょうど中間に位するんじゃなかろうか、こう判断するわけですが、私の考えが間違いかどうか、専門家的立場から御批判をいただきたいと存じます。
  49. 中島勇次

    中島公述人 公共性ということばは一般によく使われますけれども、非常に幅広いニュアンスを持っている問題だと思うのです。私の考え方は、ある一つの経済主体の行動のモーチブといいますか、どういうことを基準に行動するか、行動のしかたで公共性というものが認識されてくる。たとえば、私は交通事業というものは、お互いに自分の利益というものを中心に行動する、たとえば電車に乗るかタクシーに乗るかというのは自分の損得で判断する、これが交通事業の——一般の物の売り買いでもそうですけれども、そうだと思うのです。それに対して交通機関のほうは、もともとその行動がパブリックのものである、つまりわれわれの生活する社会条件を構成する一つの要件としてやるから、交通機関交通行動というものは特定個人の私利私欲で行動すべきでなくて、社会全体の立場というものを中心に行動すべきだから、これは公共性が高い、こういうわけです。ただしそれも公共性つまり共同手段であるというその範囲の大きさ、小ささによってその公共性の度合いが違う。たとえば個人タクシーのような場合には、これは庶民の足ではあるけれども、自分でもうかるようなところを選んで行くというような、行動に私的な選択の自由が許されている。しかし、極端な例をいうと、道路のようなものは、ある人が自分のもうけのために道路をつくるということは許されない。社会の環境の一部ですから、空気や土地と同じですから、そういう意味で道路なんかは最も公共性が高い。そこにいくと、国鉄というものは日本全国という国土を基盤にして、国民共同の利益、共通の利益ということを行動のモーチブとして行動しなければならないから、そういう意味では、交通機関の中では非常に公共性の高い部類に属する。したがって、地域的な、非常に小さい範囲の、たとえば観光地目当ての交通機関というものは、観光客の共同の足ではあるけれども、一部の特定の目的を持った特定の地域の人たちのものですから、公共性の度合いは低い。  そういう意味において第何位に属するかというような御質問ですけれども、私は、国鉄というものは——鉄道なくて国鉄全国鉄道網を単一の組織で運営する鉄道というものは 国道、道路と同じような重みを持っている。道路のような効率的な国民の足である、こういうふうで、非常に高度の公共性を持っているという意味はそういう意味から言っているわけです。
  50. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 どうもありがとうございます。(「時間だ」と呼ぶ者あり)何か時間だというようですから、きょうは一般公募の公述人が御婦人の方二人見えているわけで、お二人に聞きたいのですが、時間の関係でお一人にしぼりたいと存じます。  竹森公述人先ほどのお話を聞いて、何か中産階級の非常に典型的な御婦人の考え方をお述べになったようでたいへん参考になったわけです。都丸公述人にお伺いするわけですが、公述人先ほど、当初、私はしろうとです、こういうお話だったのですが、公述内容を聞いていると必ずしもしろうとだという印象を受けないわけです。その中で、私から言うと何か独断的なような感じも受けるわけですが、たとえば貨物運賃値上げが少ないのは大企業への奉仕のあらわれ云々だということを御指摘されたわけです。御婦人を前にしてこういうことを言うのはたいへん恐縮なんですが、大企業に奉仕をしているというのはどういう理論的根拠で大企業に奉仕をされているという断定のしかたをされたのか、簡単でけっこうですからお知らせ願いたいと存じます。
  51. 都丸泰江

    都丸公述人 私、専門家ではないということを申し上げましたとおり、家庭の主婦でございます。実はここに出さしていただくために幾つか新聞やら何やらを見た中での判断でございますけれども、一つだけ覚えていることの中で、——いまこまかいことは覚えておりませんけれども、たとえば個人が車を一台送った場合には一万何千円という運賃がかかるようになる。けれども大量に会社が車を送る場合には、一台の運賃が四千何百円になるというところを読みまして、(「それはうそだ」と呼ぶ者あり)それがすべてに通用するというふうに考えました。それから私たちが送る小荷物というのは、大体十キロとか十五キロ、そういう——うそであるかどうかは私は存じません。確かにそういう書物といいますか、公に出ている印刷物の中から私はそれを見てきたわけですが、そういう小さな小荷物の輸送運賃が上がっているということは事実で、パーセンテージで言うと二十何%上がるわけですけれども、会社の輸送の場合にはそれが十何%に押えられているということを見てまいりましたので、申し上げたのです。
  52. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 そういう知識ならばこれ以上追及はいたしません。いたしませんが、先ほどお話を承って、何か多分に思想的なものが先入感としてあって、再軍備云々あるいは強行採決をするなというようなきめのこまかいことも出たわけですが、私どもは強行採決などみじんも考えていません。お互いに国民の代表ですから、論議を尽くした上で多数決の原理に従って法案の採決をしたいということで、そういう結論的なことを最初からお考えになることは、私は公平な判断を欠くのじゃなかろうか、こんなふうに考えるわけでございます。  もう時間だそうですから、たいへんどうもありがとうございました。
  53. 井原岸高

  54. 神門至馬夫

    ○神門委員 本日おいでになりました公述人の皆さん方からいろいろと貴重な国民立場あるいは専門的な御意見を拝聴いたしましたことをまずお礼を申し上げます。  時間が限られておりますからさっそくお伺いいたしますが、まず木村公述人にお尋ねいたします。  国鉄再建問題なり運賃値上げ論の中に単純に引用されることは、税金かしからずんば運賃値上げか、あるいは納税者国民全体の負担利用者負担か、こういう論理が——論理と申しますか、単純な訴えがよく二者択一論的にいわれるのでありますが、たいへん基本的な問題でありますので、これに対する端的なお考えを承りたいと存じます。
  55. 木村禧八郎

    木村公述人 税金かあるいは運賃、料金かという二者択一という考え方があるというのですけれども、税金の場合は所得税は累進課税です。所得の多い人がたくさん納めるという形であります。ところが、国鉄の場合は累進課税がないのです、さっきもお話がありましたが。これは前にいまのニクソンも言いましたが、公共料金値上げは、実質的な増税であると言っているのですよ。彼はそう言っております。それと同じことで、これはつまり、消費税みたいなものですね。間接税みたいなもので、一種の大衆課税です。そういう違いがあります。大衆課税かあるいは累進課税か、こういう同じ負担関係からいえばニクソンもそう言っています。公共料金の引き上げは一種の増税である、こういうふうに彼は言っております。その違いがはっきりあると思うのですね。  それからもう一つの御質問何でしたかな。
  56. 神門至馬夫

    ○神門委員 いや、そのことです。税金か運賃か、こういうことに対するお答えのみです。  続きまして、同じ問題について村木公述人にお伺いしたいと存じます。
  57. 村木啓介

    村木公述人 税金か運賃かというふうに立てるべき筋合いの問題じゃないと私は思うのです。むしろ、もし税金か運賃かということで公共の福祉ということを論じるのでございましたら、社会保障制度というものは成り立っていかないわけでございます。
  58. 神門至馬夫

    ○神門委員 はい、よくわかりました。  次に田上公述人にお伺いしたいと存じますが、公述人は法律学者として、さっき公述されることに非常にいろいろと心の悩みが端的に出ていたように伺いました。  運賃法の第一条の運賃決定の四つの原則、これは今日衝突している現状の中から、むしろ第一条は廃止すべきではなかろうか、こういうような悩みも訴えになりました。あるいは日鉄法第四十一条、損金に対しては繰り越し欠損金として整理する。これに対する政府の助成というものは認めないというような法体系になっている。こういうような独立採算制というものを前提に私は論ずればということで、この再建法なり運賃値上げ法案賛成であるという大きな前提というものが悩みの中から出されております。  それで私はお伺いしたいと思うのでありますが、この独立採算制そのものについて、日鉄法の第一条等の精神から申しましても、公述人はどのようにお考えになっているのか。いわゆる賛成であるのか反対であるのか、あるいは若干の条件をつけてこの問題については独立採算制そのものを継続すべきであるか、そういういろいろのお考えを持っておいでになるやに響いたのでありますが、お伺いしたいと思います。
  59. 田上穣治

    田上公述人 私はもともといま御指摘のように専門が憲法、行政法学でございまして、十分なお答えができないかと思いますが、一ついま御質問がありました運賃法第一条は要らないのではないか、あるいはそのようなことを申し上げたかと思いますが、これは別に立法論ではないのでありまして、運賃を決定する四つの原則が一条にあがっておりますが、それをその立場から現実に、たとえば国鉄当局のほうで運賃を決定するということならば、大いに役立つわけでございます。しかしその場合に、一つはいまのかなり矛盾する、衝突するようなところがございますので、それが問題になると思いますが、しかし現実には、第二条以下、特に今日の第三条の運賃基本賃率であるとか、あるいは五条の公共割引の点でありますとか、その他規定がありますので、そうなりますと、いわば基本原則を出しても、それを使うほとんど余地がないというか、使う必要がない。個別的にあたかも基本原則を適用した結果のようなものを、国会のほうで法律の形でお出しになっているのでございますから、解釈上実は疑義を生ずる余地もないと申しますか、具体的に答えが出てしまっている。そういう意味で、第一条を無理に引き合いに出して議論しても、だから三条以下が一条違反として非難されるかというと、同じ法律の条文でございますからそういう余地はないという意味で申し上げたのでございます。  それからなお、一条自身の問題といたしましては、先ほども簡単に申し上げましたが、原価を償うということは、いわば経済性とでも申しますか、そういう意味原則でございます。そして、運賃なり、物価に対する安定をはかるということは公共性の問題でございます。この二つ原則は必ずしも一致しないわけでございまして、そういう利益を無視しても公共性のために運賃を低いところで押えなければならないということも考えられますし、あるいは、公共性は若干犠牲にしても経済性のほうを重く見なければならないという考え方もあるわけでございます。  そこで、解釈上は、順位をつけておりませんから、四つと申しましたが、特に問題はいまの二つの基準でございますが、そのどちらに重点を置くかというようなことも、かなりむずかしくなると思うのでありますが、その一つの答えとしては、先ほどの御指摘の日本国有鉄道法の四十一条にあります独立採算制、これを考えますと、どうしても経済性を無視することはできない。明らかに赤字になるような場合であってもなお、物価あるいは賃金に対する影響を考えて運賃をきめなければならないというふうには、ちょっと取れないわけでございます。同じような問題は地方公営企業についてもある。今日、市電、市バス、都バス、あるいはそういったその他の公営企業が軒並みにひどい赤字で困っておることは御承知と思いますが、ここでも法律には経済性と公共性という二つをちゃんと出しておりますが、実際には経済性が非常に軽く見られておる。むろん公営ということから考えても、ある意味で当然でございますが、しかし国鉄のように独立採算制をとった以上は、ある程度、俗にいうそろばんがとれるような経営ということを国会が法律によってお認めになったのではないか。とすれば、そこに趣旨の若干食い違うようなところも見られるわけでございますから、そういう意味で私は、法律を改正しなくても運賃法の第一条はある程度の解釈によって結論が出せると思うのでございます。しかし、条文だけを見ますと、しばしば迷い、また誤解される向きもあるので、あるいは適当にこれをまたわかりやすくと申しますか、立法府としてお考えをいただくことも、私のほうから一応お願いしたわけでございます。  まあそういう意味で、それからあとは、蛇足になって時間も恐縮でございますが、やはり国会でおきめになる場合、どうしても政治から離れることはできない。政治ということになりますとそこに、国鉄運賃のみならず、いまの地方公営企業の特にそういった運賃のようなものにつきまして、使用料についても、同じような悩みというか、むずかしさがあると思っております。それを別に私が特に国会のあり方に対して批判めいたことを申し上げているわけではございませんが、同じように非常にむずかしいところでございます。  また御質問がありましたら、補足して申し上げたいと思います。
  60. 神門至馬夫

    ○神門委員 討論の場ではありませんから御意見のほどは承っておきます。ただそのときに、広岡公述人のほうからお話しになりましたように、いわゆる赤字線地方閑散線といわれるもの、あるいは営業係数が三〇〇以上のものが五千キロ程度もあるわけでありますが、そういうようなものを現在継続して国鉄が経営をする、こういうことになってくると社会的な必要性からこれを継続する以上、これは国なり等がその赤字補てんすべきである。そうして、その総合原価主義の中から多くの黒字線に対してしわ寄せをすることは、むしろ赤字線のしわ寄せを黒字が負って今日の大都会周辺の交通通勤通学の大きなネックになっておるのじゃないだろうか。こういうようないわゆる独立採算制というものと公共性とを加味した独立採算制論と申しますか、こういうようなお話もあったのですが、この点については田上公述人はいかがお考えでございますか。
  61. 田上穣治

    田上公述人 ことばが足りませんでしたが、私は目下考えておりますのは、独算制の否定ではないのでございまして、ただ適用する限界を考えたらどうかというのが真意でございます。限界と申しますのは、いまの公共負担のようなものにつきましては、これは独算制から一応その限度ではずしまして国のほうにおいてお考えいただく、こういうふうにするのがよいのではないか。一がいに独算制を全部取り払ってしまうということになりますと、これは昔の、二十四年以前の国が直接国鉄を経営しておったときとあまり変わりがない。もっともその場合も特別会計ということでくふうの余地はあると思いますが、せっかくあそこで公共企業体をおつくりになったのでありますから、その趣旨を生かしますと、いまの独算制は残して、ただその限界、適用範囲というか国との負担区分をお考えいただいたらよろしいのではないかと考えております。
  62. 神門至馬夫

    ○神門委員 広岡公述人にお伺いいたしますが、いわゆる国民の納得する再建案^そういうものについて非常に力点を置いての公述がございまして、たくさんの参考意見を拝聴いたしましたが、その中で特に日本の鉄道は世界に冠たりという常識論にまっこうから反対されて、フランス、西ドイツ等から比べてみてもきわめて貧弱であるということばをもって批評なさいました。こういう批評の根本にあるものが世界第二位のGNPを土台にしての論理であって、全く同意を得たものというふうに私も感じるわけでありますが、そのようなフランス、西ドイツあるいはイギリス等先進資本主義国家における国鉄の経営のあり方、これは独算と関連する、国の国鉄に対する助成等の関連を要点的に御説明願いたいと思います。
  63. 広岡治哉

    広岡公述人 いまお尋ねの点は短い時間でお答えするのは非常にむずかしいと思うのですが、ともかくヨーロッパの国鉄はここ十数年非常に財政の再建に苦労しておりまして、しかも成功した国はないというふうに私は思っております。ですから、日本はヨーロッパの経験を大いに参考にすべきであるけれども、ヨーロッパのまねをして国鉄再建できると思ったら間違いだ。たとえば、イギリスの国鉄が営業の自主化、自由化というのを進めております。これはトラック国鉄が自由に運賃競争をすれば、いま国鉄貨物に対して運賃の割引なんかやっておりますが、そういうことをやれば再建できるかのように言うのは、これは間違いだと思います。その点ではむしろドイツのレーバーがやったような、トラックをある距離以上についてはもう統制する、制限する、そういう計画的な要素を持ち込むべきだというふうにぼくは思います。それからイギリスは、しかし現在もローカル線の撤去をめぐってものすごい議論をしておりますけれども、ただイギリスはあの経験の中からローカル線についてかなりやはり一定の基準のようなものをつくり上げてきておる。そういうものは見習ってもいい。要するに申し上げたいのは、つまりわれわれはいろんな多様な交通技術、交通機関を持っているわけですけれども、いずれにせよこれをうまく組み合わせて使っていくわけなんです。その際に、やはり利用するのは国民ですから、国民にとって一番プラスになる交通機関をうまく使っていく。ただこれまでの使い方というのは、環境は無視して公害はたれ流しで、その責任はとらないでこの選択をすすめている。これは間違いですね。国民的に見れば、やはりこうむっている犠牲は当然犠牲を発生させたものが負うべきなんであって、そういう要素も加味したコンビネーションということになると、どうしても現在のところ鉄道に比較的重点を置いた使い方、あるいは鉄道についても最近は騒音公害なんか非常に出てきておりますので、そういった点では新しい交通技術も積極的に導入するというようなことまでひつくるめて考えていかなければならないだろう。その際何が国鉄に働いている人の利益になるのか、何が国鉄を利用している人の利益になるのかという判断をやはり地元でつけなければいけない。地元で初めてわかるわけですね。その点を東京で、たとえば乗車密度何人以下あるいは貨物輸送密度何トン以下は鉄道分野じゃないんだという式のあれは非常に危険だ。そうじゃなくて、地元でのみ最終的に判断できるということを申し上げたいわけです。
  64. 神門至馬夫

    ○神門委員 それでは時間が来たようでありますから、たくさんの公述人の皆さんから御高見を賜わりたいと思いますが、以上をもって終わらしていただきます。ありがとうございました。
  65. 井原岸高

    井原委員長 三浦久君。
  66. 三浦久

    ○三浦委員 三浦でございます。  まず最初に田上公述人お願いをいたしたいと思います。  先生は、大都市通勤輸送の改善についてたいへん大きな期待をかけられておられます。この再建十カ年計画によりますと、十年たってようやく混雑率が二〇〇%になる、そういう目標でございます。これで通勤対策は解決されたというふうにお考えになっておられるのかどうか。もっと通勤輸送の改善に力を入れていかなければならないのではないかというふうに私は思いますけれども、その点についての先生のお考えをお尋ねいたしたいと思います。
  67. 田上穣治

    田上公述人 いま御指摘のように、二〇〇%というか、定員の倍でございますが、それではちょっと不十分だと思いますけれども、私は百何十%というところにまで落ちるというか緩和されてくれば非常な進歩ではないか。私どももだんだん年をとっておりますので、ほんとうは座席に腰をかけたいという気持ちがありますけれども、立つのはしんぼうするとしても、どうも近ごろあぶなくて、押されますというと足の置き場もないというか、くの字なりになってあばらを折られるような感じがいたします。すみのほうの柱に押しつけられたりドアのところに押えられまして非常に危険を感ずる。それならむしろ押されて右、左に動いてもまん中にいたほうが安全だというくらいの感じを持っております。そういう意味におきましては、いまおっしゃいましたけれども、大体二〇〇%くらいまでなれば非常に安心感を持つわけでありまして、まあ血圧あるいはその他を考慮いたしましても、私の程度の年配でありまして一応しんぼうできる。決して理想とも思いませんし、できればやはり百何十%というとこまで落ちてゆるくなってもらえば非常にありがたいのですけれども、そういう程度で満足はいたしませんが、まあそれぐらいになればしんぼうできる、こういう程度でございます。
  68. 三浦久

    ○三浦委員 まあ二〇〇%といいますと、やっと週刊誌が読める程度、先生の御本はなかなか読めるような状態じゃないと思いますけれども。  もう一点だけ田上先生にお尋ねいたしたいと思います。  先生は公共割引の点についても強調されておられました。いままで生鮮食料品について政策割引が年間に六十億円程度行なわれておったわけであります。ところが、昨年、また一昨年、運輸大臣の命令によってこれが廃止されました。直ちに国の負担でこの生鮮食料品についての政策割引を復活させるべきだと私は思うのですが、先生のお考えはいかがでございましょうか。
  69. 田上穣治

    田上公述人 私もどうもあまり専門でございませんが、御意見には賛成でございます。  ただし、蛇足を加えますと、根本の問題は、現在私は貨物運賃についての等級制に疑問を持っているのでございまして、御承知のように現在の等級制は価格によっておる。何と申しましたか、従価等級制度とかということでございまして、価格の高いものは、運賃のコストからいえば実はそんなにたいしたものでなくてもそれに応じて上のほうの等級になるということは私は徐々にやはり直していくべきである。むしろわれわれしろうとの考えでありますと、価格よりもやはり重量のほう、その他コストのかかるほうに運賃を多く取るべきではないかという感じを持っております。そしてその意味で御承知のように徐々に等級が簡素化されまして、たしか十五等級が十四等級、それから現在が四等級、そして今回は三等級制度をお考えになっていらっしゃるようでございますが、しかしまたそう簡単に私自身も割り切れないと思いますのは、重量が多いというか、価格がそれほどでもないというほうに案外今度は大衆の生活必需物資のようなものも入っておるのではないか。これも確かめておりませんから、こういう席上で私の考えを申し上げることははなはだ不謹慎かと思いますけれども、もしそういうことであれば、日常の生活に大衆の負担にならないようにという意味においては、必ずしも重量に比例しないという考えが合理的である。そういう意味におきまして、簡単にいままでの等級制度を全部廃止せよというふうには申し上げかねるのでございますが、しかし、徐々に等級を減らしてきたということは私は賛成でございます。どうもお答えにならないかもしれませんけれども……。
  70. 三浦久

    ○三浦委員 どうもありがとうございました。  村木公述人お願いをいたします。  先生は減価償却が過大にされていることが国鉄赤字の一つの原因となっているというふうにお話しされましたけれども、これは具体的にはどういうことなのかお伺いいたしたいと思います。  また、修繕費についても問題があるということですが、同じくこの点についても具体的にお話が伺えたらというふうに思います。
  71. 村木啓介

    村木公述人 具体的にお答えする前に、一般的なことをごく簡単に御理解いただきたいと思いますが、財務諸表作成のもとになっている経営学や会計学というものが、もうけをふやすための学問だということが御理解いただければ、財務諸表というものが表示するのは一定の経営政策から生まれてくるということが言われるわけでございます。そういう意味でいえば、損益計算書の経費がその年度経費であるかどうかということについて、これはかなりいろいろな問題が起こってくるわけでございます。そうした意味で見てまいりますと、国鉄の損益計算のしかたというのもこの一般企業会計の影響と無縁ではなく、そういう法則が貫徹していると思うのです。  そこで具体的に申し上げますと、この減価償却費は、昭和二十三年、二十七年度に税法が改正されたわけでございますが、これは資本充実のための優遇措置としてこの税法が改正されたわけでございまして、三十年までは国鉄独自のものを採用しておったわけでございますが、それから運賃値上げだとか、その他いろいろな背景のもとで政策的にこの減価償却制度が変えられてきたというのが私の理解でございます。  具体的に申し上げますと、三十六年度に車両、船舶、自動車及び機器類を、いままで定額法でやっていたものを定率法に変えた。この背景はどういうことになっていたかということは説明を省略いたしますが、それから三十九年度から従来資産を取得した翌年度から償却していたものを翌月から償却するようになったということでございます。これは新幹線ができまして、新幹線減価償却を早くするという意図から行なわれたものだと聞いております。  それからこの年度に半額法が適用されるようになったわけでございまして、実際にこの減価償却がどのくらいに過大かということを言いますと、電車の例をとってみますと、普通そこらを走っておる電車は十三年が償却年数でございますが、これを定率法でいたしますと四年目に四九%取得価格を償却するわけでございますから、四年たちますと電車は帳簿価格が半分になってくるということでございますから、これはだれが考えても大き過ぎるということが御了解いただける、こういうふうに思います。まだたくさん事実はございますが省略します。  修繕費についても同様なことがいわれまして、修繕費もかなり、いままで修繕費とそれから工事経費との区分というのがあいまいでございましたやつを、それらの条件に応じてこれをきちんとするようになったと私は理解しております。  以上でございます。
  72. 三浦久

    ○三浦委員 再建計画によって十兆五千億円の工事計画実行された場合、十年後の国鉄はどういうような姿になっているのか、お伺いいたしたいと思います。
  73. 村木啓介

    村木公述人 私なりの理解を申し上げます。  国鉄の守備範囲を中長距離大量貨物輸送新幹線網中心に大都市旅客輸送、大都市通勤通学輸送ということにすることを裏返しになさいまして、近距離の中小貨物は関係ない、近距離の旅客は関係ないとは言わないにしても、そういうような政策がとられる傾向が日を経るに従って強くなっているわけでございますから、当然なこととして、いまの再建計画がずっと進みますと一般国民にしてみれば採算のとれない中小貨物国鉄は直接扱わなくなるだろう。それから近距離の旅客は不便になるだろう。これは地域住民が結束して大いにそういうことをしないように戦われることによってあるいは私が言うようにならないと思うのです。たとえば、八十三線区の二千六百キロの線路をはずすというような問題も、これは地域住民が反対したために、今度は政策をお変えになりまして、日本列島改造論などとのかね合いがあるかどうかは存じませんけれども、やはり地域住民が自分たちの権利を守って戦うことから変わってきますから、将来どうなるかということはこういり戦いとのかかわり合いの中で出てくるだろう、こういうふうに私は思います。政策自身は、私ども貧しい者にとってはたいへん都合の悪い国鉄になっていくだろうということでございます。
  74. 三浦久

    ○三浦委員 もう一点だけお尋ねいたします。  いま貨物の問題について触れられたわけですが、十年後の国鉄が中小零細業者の貨物輸送にどういうような影響を与えるか。これは運賃の面並びにサービスの面、両方の面から先生のお考えをお尋ねいたしたいと思います。
  75. 村木啓介

    村木公述人 これは新幹線網ができることとのかかわりあいで申し上げますと、新幹線が三千五百キロできますと、それと並行して在来線が約四千キロ弱、これにあるわけでございますが、この在来線に貨物本位のダイヤが組める。それで貨物の約八割近くが非常にいいサービスを受けるので自然に貨物もふえるだろうというのが、これは国鉄総裁のお話でございます。たぶんこの計画ではそうなるだろうと思うのでございます。それで新幹線をつくることが大都市間の旅客輸送を受け持つだけではなくて、日本列島の再配置に伴う中長距離大量貨物輸送に、陸上交通のうち一番いいサービスを提供することになるというのが、実は総裁のおっしゃっていることのようでございますが、これだけ一つ聞いてみるとたいへんけっこうずくめでございますけれども、そのためには近距離少量貨物、近距離旅客というのは勢いこれは、無視とは申しませんけれども、重点が変わってまいると思うのでございます。事実先ごろの運輸審議会の公聴会で、原岡常務理事がおっしゃっておることばの中に、現在の貨物駅の配置は荷馬車時代のもので、貨物列車は多くの駅に発着するので、四十七年度貨物列車の平均スピードは時速二十七・二キロ、これを五十一年度には四十・三キロにしたい、スピード化してお客に利用してもらうためには集約が必要だ、集約にあたっては具体的にサービス低下にならないように配慮してやっていくというふうにおっしゃっておりますから、私どもはこのしわが寄らないようになさることを期待はいたしますけれども、ほうっておきますとこれはとんでもないことになるのじゃないかと思うのです。先ほどどなたかの公述人の方が、荷主にとってはレールの上だけの輸送時間だけではなしに、ドア・ツー・ドアのスピードが問題だということでございましたけれども、御説のとおりでございますが、中小荷主の場合にはこれがどうしてもしわが寄ってまいると思うのです。実際にいままでの輸送の状態を調べてみますと、大荷主の場合には迅速に確実に何時に着くということまではっきりして、それで荷くずれのしないような形で輸送が行なわれておりますけれども、それが中小貨物の場合にはそういうぐあいになかなかいかない。そのために大企業の荷物はどんどん——サービスがよろしいですから、運賃だけが主じゃなしに、よろしいものですから、どんどん大荷主の荷物はふえるのですけれども、中小企業の荷主はトラックで送ったほうが確実だということで逃げていくというぐあいになりますから、これはこれからの先生方の政策をきちっとやっていただいて、それから一つはやはり実際に地域住民の方が自分のところにしわ寄せされないように、やはり戦う以外には私は手はないのじゃないかと思う。見通しはちょっと言えないと思うのでございますけれども……。  以上でございます。
  76. 三浦久

    ○三浦委員 時間がありませんので、これで質問を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  77. 井原岸高

    井原委員長 松本忠助君。
  78. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 菅原公述人にお伺いいたしたいと思います。  先ほどのお話の中で、再建計画実施にあたりましては、注文として、現行計画が破滅した原因これは人件費の予想以上の伸び、それと収入の伸び悩み、こういうことを先生あげられたように思います。そこで経済の算定については経済社会基本計画にのっとってある程度高い予測がなされたというふうに、こう私お伺いしたわけで、私の聞き間違いでなければそういうふうになるわけでございますが、意味はそうだったと思います。  そこで、先生も御承知のように国有鉄道財政再建促進特別措置法——現行法でございますが、現行法の第八条にある再建期間中の毎事業年度再建計画実施状況を報告することになっております。すでに四十四年、四十五年、四十六年と三カ年にわたりましてその実施報告が出ております。その報告の概要を見ましても、四十四年度の分におきましては、「支出において仲裁裁定に基づく平均一三・四%(定期昇給を含む。)のベースアップによる人件費増加があったことが大きな原因」要するに赤字が出た原因はここにある。   〔委員長退席、加藤(六)委員長代理着席〕 それから、四十五年度の報告におきましてもやはり同様のことがいわれておりまして、「営業経費の増こうは、主として人件費が仲裁裁定の実施等により、前年度に比べ八百七十二億円(一四%)増加したことによるものである。」四十六年度のところは「営業経費の増こうは、主として人件費が仲裁裁定の実施等により、前年度に比べ大幅に増加した」この三年を通じましていわれていることは、同じことがいわれているわけです。人件費が非常にふえた、そのために赤字になった、こういうふうなことが三年共通してこの報告の中にございます。  それで、先生も御承知のように、四十八年から五十七年までのいわゆる長期再建計画の収支の試算でございます。この中におきましても人件費をどのようなアップで見ているかというと、一二・三%ということで試算がなされているわけです。過去三カ年間の平均をとってみましても、一四・三%でございます。いま国鉄自身の報告にもございましたように、こういうふうに人件費が非常に多い、それが赤字原因だ、こういうことがいわれております。そこで過去三カ年間の平均よりも二%も低いもので見積もりがなされておる点が一つ。  もう一つ、物件費のほうでも、先生の先ほど触れられました経済社会基本計画で、これは四十八年から五十二年、この物勝率は四・九%に見ておるわけですが、国鉄側では物謄率を三%しか見ていない。この低い見積もりでは計画倒れになると思います。  そこで人件費の面においても物件費の面においても同じことがいえるわけでございますが、こういう点から考えまして、はたしてこの新しい再建計画なるものがほんとうの再建計画といえるかどうか。これはまた、この三カ年間の報告書にあったような状態の繰り返しにすぎなくなるだろうと私は思いますが、先生の御見解はいかがでございましょうか、お尋ねをいたします。
  79. 菅原操

    菅原公述人 私が申し上げましたのは、まず現在の再建計画がうまくいかなかったという原因が、まず第一に収入の伸び悩みとそれから人件費の増大と、こういうことになるということを申し上げまして、その収入の点につきまして、今回再建計画で見積もられたその手法等を拝見いたしますと、こまかい数字はここに持ち合わせておりませんけれども、相当いい精度で見積もられておる。たとえば旅客につきましては、前回の——ただいま委員もおっしゃっておりましたように、ほとんど前計画でこの数年間押してきておるわけでございます。これはその見積もり方法をどういうふうにしたかということですが、いわば個人消費支出との関連において出しておる。これが非常にいい精度で予測がされておったわけでございまして、今回も同じような予測をとっておると聞いておりますので、私は旅客の伸びにつきまして相当信頼性があるというふうに判断をしておるわけでございます。  第二番目に、収入の減の非常に大きい要素といたしまして貨物の減収がございます。貨物につきましてその減収の内容を見るわけでございますけれども、一般貨物とコンテナというものを考えますと、一般貨物の減収に対しましてコンテナの著しい伸びがあります。これは利用者がいかに交通機関を選ぶかということの非常にいい例でございますけれども、戸口から戸口までの到達時間が速い、あるいは明確化しておる、こういうことで選んでおるわけでございます。そういうことで、今回の輸送量予測の方法を伺うところによりますと、将来コンテナ化が非常に進むということで、七五%程度のものがコンテナ化されるのだ、そういう見積もりでございます。現在の伸びのほうから予測していきますとそういったことになってまいると思いますが、そういった意味で、今後、現在こんなに減っているじゃないかということでこの再建計画の予想はまず合わないじゃないかという御心配に対して、そうではないのだというふうに私は申し上げたいと思うわけでございます。  それから物価のことでございますけれども、一般物価が四・九%上がっている。そうすると国鉄経費もそのくらい上がるのじゃないかという御心配かもしれませんが、国鉄の使っております物品の価格は一般物価の値上がりよりも値上がりがおくれているという実績があるというふうに私は伺っております。そういうものから判断いたしまして、ここに見積もられた数字で大体いいのじゃないか、こういうふうに考えたわけです。  それから人件費につきましてはこれは一二・三%——これは経済社会基本計画ですでに国の計画として相当な御審議の上で決定されたものでございまして、ただいまそれと違う数字を直ちに私に判断しろと言われても、これは判断し切れない。そういう意味で私は一二・三%で見積もられました人件費のアップ率というもので現在としては妥当じゃないか、こう申し上げたわけでございます。
  80. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 御意見を伺っておきます。討論ではございませんから……。  次に、田上公述人にお伺いいたしますが、先生はこの再建計画の中で、先ほどのお話の中で十年たってみないとわからない、こういう意味のことを言われました。いままでの国鉄再建計画というものが、第一次の五カ年計画、要するに三十二年から三十六年までのもの、これも三十五年で打ち切りでございますから、現実には四年間しかなかった。第二次の五カ年計画も三十六年から四十年までの計画が三十九年で打ち切りですから、実際的には四カ年であります。三次の長期計画が四十年から四十七年までの八年間のものは半分の四年間で打ち切りになり、現行の計画にいたしましても、四十四年から五十三年までというこの計画がまずいというところから新しい計画が出てきているわけでございますから、この新再建計画が通ればこれも四十七年で打ち切りということになる結果でございます。そうしたところを見ましたときに、この新しい再建計画というもの、四十八年から五十七年の十カ年というもの、非常に長い十カ年間だと思うのです。経済の変動が非常に多い、インフレ傾向にある、こういうときにこの十カ年の長期の計画というものではたしてどうか、もちろん、国鉄がこのほかに単年度、単年度にそれぞれの計画は立てると思いますけれども、基本的にはこの長期計画によるわけでございますので、こういう十カ年の長期計画というものでなくて、もっと短い計画で立てるべきではないか、私はこういうふうに思っております。その点について一つ。  それから第二点は、長期の収支試算によりますと、御承知のように十カ年間に四回の値上げをするわけです。そして九年間はいずれも連続の赤字であります。最後の一年だけが三千七百九十二億の黒字になっている。十カ年間で一兆四千四百三十五億という赤字が出るわけです。現在までのものと合計いたしますと二兆六千億にも赤字がなるわけであります。こういった赤字を、五十八年度以降は毎年黒字になって解消できるのだというようなばく然とした話は言っておりますけれども、はたして五十八年以降どうなるかわからぬわけであります。こういうことを見ますと、この今回の再建計画というものは、はたしてほんとうの再建計画といえるかどうか、これは簡単でけっこうでございます。お答えをひとつお願いいたします。もう一問ございますので、お答えは簡単でけっこうでございます。
  81. 田上穣治

    田上公述人 私はどうも専門が憲法学、行政法学でございまして私の一橋の同僚にはまだ経営学なり御指摘のような問題についてのお答えする仲間がいると思いますが、たいへん恐縮でございますが、専門が条文を扱うほうでございますから、本日この席上にもなお御専門の公述人が見えておりますので、どうぞお許しをいただきたい。私のは能力上、将来の見込みのようなことにつきまして、はなはだ勉強が足りませんので、ちょっとお答えができませんので、お許しいただきたいと思います。
  82. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 けっこうでございます。失礼申し上げました。  第三点目でございますが、中島公述人お願いいたしたいわけでございますが、先ほど先生のお話を聞きまして、基本的に先生は賛成だというふうにおっしゃいました。  それから先ほど答えていただきました菅原公述人は冒頭に賛成というふうに言われました。ただいまの田上公述人も大体賛成、若干異論がある、こういうふうな御三方の御意見賛成の度合い、それぞれ厚薄があるように見受けられます。  そこで、先ほど田上公述人のお話の中に、現在の赤字線も心配だけれども、赤字ローカル線の新線建設のほうが一そう心配だ、こういう意味のお話がございました。私も田上公述人の説に同感なんでございます。そこで中島公述人にお伺いするわけでございますけれども、御承知のように四十六年度国鉄の収支決算を見ますと、二千三百四十二億という赤字が出たわけでございます。簡単に申しますと、四十八年のローカル線の建設工事が二千三百六十五億と、四十六年の赤字よりもなお二十三億もよけいに新線建設をしようというふうに計画が立てられています。この二つを対比するということは、はたして適当であるかどうか問題はあると思いますけれども、このローカル線の新線建設、これはさらに赤字を生むものと私どもは考えておることでございます。したがいまして、この赤字線建設について中島公述人はどのようにお考えになられるか。  もう一点は、合理化の一環といたしまして、十一万人の削減、こういうことがいわれております。四十四年から四十七年で三万三千人削減をいたしまして、残り七万七千人でございますが、これは五十三年までに削減できるかどうかということでございます。最近週休二日制あるいは定年制延長、こういう点がございますので、はたしてこの十一万の削減というものができるかどうか、この点に非常に私疑問を持っておるわけでございますが、この点についての先生の御意見を承りたいと思います。
  83. 中島勇次

    中島公述人 まず御質問の第一点、これからの赤字線建設についてどう思うかという御質問のようですが、私はこれからの赤字線建設する必要があるかどうかということは、ただ赤字線だから建設がいけない、赤字線でも建設してもいい、こういう単純なものでもないと思うのです。その赤字線がどういう意味を持った赤字線か、つまり日本国民全体から見てぜひともそれはやってやろうじゃないか、国会でそういうことを御相談して、これは国民負担になっても国民がやはりそれは必要だとお認めになったらそれは必要だ。ただ鉄道でなくとも自動車でも十分にその意図が達せられるというところは、無理に鉄道を敷く必要はない。あるいは道路をつくってそういう方法に変えるということがあるわけですから、その点は国会の先生方が十分に公正に御判断になって、そうしてもしやるときまったならば国鉄の財政力を考えまして、それを賛成いただいたらいいし、あるいはもしもその必要がないということになれば、これは国民の意思ですからいたし方がない、私はこういうふうに考えます。  第二点の十一万人の合理化ができるかどうか。これは私も国鉄の責任者ではありませんから、どういう方法でやるとかどういう方法でやらないというふうな断定的なことは申せませんので、感じとして申し上げたいと思いますが、十年間に十一万人ということは自然退職などを考えますと、数字としては決して無理な数字ではない。私もやはり労働者ですから、なるべく無理な整理ということは避けるべきだということは同感ですが、ただ、これは全般的な文化論ですけれども、やはり人間はできるだけ少ない人間でやれるような、人間が人間のため犠牲寝るということは——昔は一人の人間が一人の人間を引いて幾らでも走ったのですが、そういう労働はだんだん減して、できるだけそういうふうな形の合理化を労使協力して進めれば決して無理でない。また、やらなければいけないことだというふうに考えております。これは経営の財政収支ということでなしに、文化論的に、人間的に、お互いに人間が人間のために労働しないで済むような社会をつくろうということには、協力してぜひ進めていただきたいと思う、そういうふうに考えております。
  84. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 きょうは八人の公述人の方々、お忙しいところ、たいへん貴重な御意見を伺わせていただき、ほんとうにありがとうございました。以上で終わります。
  85. 加藤六月

    ○加藤(六)委員長代理 河村勝君。
  86. 河村勝

    ○河村委員 菅原さんと木村さんにそれぞれ二問ずつお尋ねをいたします。  菅原さんの御意見として、国鉄の場合利用者負担原則であるけれども、市場原理にゆだねるのには限界がある、そこで、通勤先行投資、それからローカル線のようなシビルミニマムともいうべきもの、こういうものに対しては財政援助とそれから政府の補償措置、そういうものが必要だという御説がありました。財政援助の点についてはお触れになりましたけれども、補償の面についてはあとお触れにならなかったのでありますけれども、今度再建計画を進めていくのにあたって、あとで収入面のことをもう一つお尋ねいたしますが、これは収入に関連をいたしますが、先ほどから議論になっておりますローカル線、あなたもお触れになったローカル線ですね、これもただいわゆる赤字ローカル線というようなああいうほんとうの小規模なものばかりではなくて、もう少し幅の広い幹線以外の線区、ほとんどいま国鉄赤字の全部を生み出していっていると言ってもいいわけですが、これを一体どうお考えになるか。現在の再建計画は、政府の援助といっても資本費負担の軽減だけですね。それだけで一体この再建計画ができるであろうかどうかということですね。  それから、もう一つの問題も一緒に申し上げておきます。いまの松本委員の質問にも関連をいたします。今後の計画を進めるにあたっての意見として、輸送構造の変革に対応できるようなシステムチェンジ、技術革新を進めていかなければならないという御説でありました。そのとおりだと思いますが、はたしてそれだけで一体いま見込んであるような収入が得られるかどうか、旅客については精度が高いとおっしゃいましたが、私もそうではないかと思いますが、貨物の面についてはいま菅原さんはコンテナ化その他の近代化を進めていけばいけるのだろうというお話でありましたが、今回の計画を見ますと五十二年度以降くらいからは年率一二%以上の非常な高率な収入の伸びを見ております。そうしますと、自立更生だけでいけるんだろうか、先ほど広岡さんでしたか、レーバープランの例を引いてトラック投資性というような御説も出ましたが、そうした総合交通政策的な見地からの誘導政策がなくてほんとうにこういう収入が得られて、再建可能な数字が出てくるものであろうか、その二つの点についてお伺いをしたいと思います。
  87. 菅原操

    菅原公述人 それでは、最初の利用者負担財政援助か補償かということにつきまして、私は交通工学の専門家でございますから、若干この財政経済面にはうとい面もありますが、私の考えを申し上げますと、この問題は先ほどからも御議論のございました公共性と企業性という問題から来ると思います。  それでまず、国鉄国鉄法の第一条で、能率的な経営をして公共の福祉を増進するというのが目的でありまするから、非常に企業的な手段を使いますが、公共の福祉を増進するということで、目的としては相当公共的な面があろう、こういうふうな考えがございますが運賃法の第一条で原価を償う運賃、こういうことがございます。そこですぐに財政援助運賃値上げか、こういうふうに黒か白かというふうな議論が出てくるのであろうと思いますが、これは独立採算制の中にいわゆる完全な独立採算制と相当な補助を受けつつ実行していく独立採算制とがあって、そう黒か白かとはっきり分けられるものではない、ですから、国なり地方なりの補助といったようなものでもらえる、たとえばコストの安い金とか、あるいはコストの要らない出資の形の金、そういうものを受けつつでも、やはり独立採算制を守っていくというのが、企業的、能率的な運営ができるゆえんであろう、これが日本国有鉄道法のもとになっておるのではないかと私は思います。  それで、それではそれを全部補償でやってしまったらどうか、あるいは補助でやってしまったらどうかということになりますけれども、これは運賃がただだというふうな形になってきまして、こういうものが資源のむだづかいになるということは、われわれよりも先生方のほうが十分に御承知のことだと思いますし、また独立採算制ということで、何とか黒字に持っていこうというのが一つの士気を鼓舞することにもなる、全然これが親方日の丸であるということでは、やはり士気がたるんでしまうということもあろうかと思います。そういう意味で相当額の補助ももらうし、しかも独立採算制を続けていくというのが日本国有鉄道のあり方ではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  それで、利用者負担かどうかというのも、おのずとそこにあらわれまして、先ほど私が個別的に財政補助を受けるべきものは、たとえば通勤輸送のような波動性の高いもの、あるいは先行投資のような投資をしてもすぐに収益があがってこないもの、あるいはローカル線のようなシビルミニマムのもの、そういうふうに例をあげましたのですが、そういった個別的な項目で補助をもらっている国もあります。欧米では英、独、仏、それぞれ歴史的な発展がございまして、補助の形式は違いますけれども、個別的な補償をしているところもありますし、包括的にこれを補償しているところもございます。全体として収支が成り立つというふうに補償しているところもございます。ですから、これは補助のテクニックの議論であろうかと思いますが、現実問題といたしまして、それでは東京付近の線路を通勤にどれだけ使っておる、だから通勤の原価はこれこれである、あるいは貨物が割引をしておるじゃないか、あるいは通勤の割引をしておるじゃないか、その分だけこれだけ補助をしたらいいというふうに計量できるものかどうか、極端にいえばローカル線でさえもそうだと思います。ローカル線も本線とつながっていて初めて役に立っておる、あるいは本線からローカル線が出ていて初めて本線の収益があがっている、こういうことでございますから、そこにおいてさえも切り取ってその収益性を論ずることは相当むずかしいことであろうと思います。現在、わが国内の鉄道——国鉄につきましてそういう計算ができるとすれば、新幹線と在来線というような分け方はある程度できると思います。これなども駅を共用しているというような問題はございます。が、これはある程度分けて考えられますが、実際問題として在来線の中で通勤に幾らというふうに補助をしていくことはできません。これはテクニカルに非常にできないことだと思います。  それで、そういうふうな正確な原価を出すという意味で、そういった原価計算の勉強も十分続けなければならないということは、十分考えますけれども、現在としてはそういうことも含めまして、包括的に補助をしていかなければいけない。つまり今回の十年間の再建計画が、五十七年に減価償却後の黒を出すという目標に合うように最小限の運賃値上げをやり、それで最後は黒になるように資金コストを平均三%まで下げていく、こういう手段によりまして最終目的を達せられるということですから、包括的に補助金が与えられている、こういうふうに考えるわけです。ですから、それはどちらがいいか、こう言われましても私自身、これはむずかしいことだと思います。現在としては包括的にやるよりしようがないんじゃないかと思いますが、そういったことではないかと思います。  それから私、先ほど補償ということばをちょっと申しましたが、今回の再建計画では補償ということばは使われておりませんが、これは私の現在の考え方としてはいま申し上げましたような理由で、それは補助であっても補償であってもかまわない、同じ効果が出るものと思いますが、ただ内容的に財政関係の詳しい方のお話を伺いますと、たとえば、ローカル赤字線というようなものは国鉄としては切りたい線である。ところが、それが地方の要求その他によって存続させられておる。ですから、これは補助をもらうという性質のものではない、財政を援助してもらっているのではないのであって、国の施策実行のために国鉄が担当させられておるのである。そういう意味で補助ではなくてむしろ補償というほうが正しいではないか、そういうような意見を聞いたことがございますので補償ということもあると申し上げたわけでございますけれども、今回の再建計画ではそういうふうな言い方はしておらないわけでございます。  以上が第一番に対するお答えでございます。  それから第二番のローカル線でございますが、ローカル線につきましては、これは赤字ローカル線をつくるのはおかしいではないか、あるいはその考え方……
  88. 河村勝

    ○河村委員 いえ、二番目は貨物輸送のことです。
  89. 菅原操

    菅原公述人 ローカル線の問題はこれでよろしゅうございますか。
  90. 河村勝

    ○河村委員 けっこうです。
  91. 菅原操

    菅原公述人 それでは、次に貨物輸送の問題でございますけれども、貨物につきまして一番のお尋ねのことは、コンテナ化が非常に伸びておるので、コンテナ化が五十七年度の主力になっているこの再建計画ならば私は大体いけるのではないかと申し上げた、それに対しての御疑問であるというふうにおっしゃいますが、貨物はそういったコンテナ化という施策と同時に相当な投資が行なわれると聞いているわけでございます。  まず第一に四十九年度というものを目標にいたしまして大井のフレートライナー・ターミナルあるいは鳥飼のターミナルあるいは名古屋の八田のターミナルあるいは福岡の箱崎のターミナル、そういうような大きなターミナルが相次いで四十九年には完成をします。それから武蔵野線につきましても、ことしの春に一部部分開業したわけですが、これは貨物輸送にはまだ全然役に立っていないわけですが、これがほぼ完成をしてくる。そういうことで現在、先ほどどなたかの公述人の説明にもございましたような懐妊期間の長い投資が行なわれてまいりましてその効果があがりだしてくる、これが第一段階が四十九年度以降であろうと思います。  それから第二段階は、五十一年、二年にかけまして新幹線ができてくる、あるいはさらに北海道、九州までの新幹線も完成をしてくる、そういうことによりまして並行しております在来線では貨物輸送のためのパイプが非常に太くなる、本線の輸送力が相当ついてくる。そういう意味ターミナル投資、在来線の線路容量の増大、そういうものが相まってちょうどこの再建計画の末期に近い五十四、五年以降というものは相当貨物輸送力についての見込みが出てくる、こういうことでございます。  最後に、急に貨物輸送が伸びているではないかということですが、これは貨物輸送は伸びておるという考えではなくて、私は思いますに、貨物は、先ほど申し上げましたように荷主が選択をする場合に早く着くあるいは到着時間が明確である、あるいは荷くずれをしない、包装費が安い、そういったことで貨物の手段が選ばれるというふうに大体考えられますわけですが、そういうことで五十七年度のわが国内の全輸送量、そういうものから考えてきますと相当大きな貨物、千四百億トンキロですか、相当大きな輸送量を考えておるようですが、そのくらいのものは達せられるのではないか、そういうふうな考えでございます。
  92. 河村勝

    ○河村委員 木村さんにお伺いいたします。  一つは、先ほどの御意見の中で通勤輸送などの割引、通勤定期などの割引で非常な利益を得ておる大企業は、あと正確なことばはわかりませんでしたけれども、何か相当負担をしてもいいのではないかという御説でありましたが、具体的にはどういうことをさしておられるのか、それが一つであります。  それからもう一つは、福祉経済転換期であるから利用者、採算性を重視する考えから脱却しろ、こういうお話でございましたが、その御意見は、こういう時期に入ったのだからもう半永久的に運賃というものは凍結をしてそれでその赤字は国で補てんをしろ、こういう意味であるのかどうか、その二点についてお伺いをしたいと思います。
  93. 木村禧八郎

    木村公述人 第一点は、大企業がいわゆる通勤輸送によって非常に大都市なんかでは集積の利益を受けておるわけですね。とにかく大都市に大企業がたくさん集まっておる。それは国鉄輸送によって通勤が可能になるわけですね。それは非常な大企業にとって利益ですよ。受益者負担原則といいますけれども、非常に利益を受けておるのは、そういう大企業が通勤上において非常に利益を受けておると思うのですね。あるいはまた、それで、いろいろ災害が起こりますけれども、公害等は、大企業はいま負担しておりません。みんなこれは地方自治体とか住民の負担になってしまっておるのです。ですから、これは東京都の場合ですが、いわゆる集積の利益と集積の不利益を出しておる大企業に対して課税をせよ、増税をするという考え方から、やはり輸送につきましてもそういう面があると思うのです。それから政策的に、いままでそういう大企業の原材料輸送につきましてはむしろ政策的に割引をしてきたと思うのです。そして、国鉄輸送によってそういう利益を受けておると思うのです。ですから、そういう点については、課税なりあるいは国鉄の債券なりを保有させる、そういうことが必要ではないかということも考えたわけです。  それから、独立採算の廃止の問題ですが、これはこういう発想なんです。公共性の考え方によるわけですけれども、私は、たとえば教育の場合ですね。これは政府が教育につきましては国民に提供する義務があるのでありまして、教育費についてはだれも赤字と言わないですね。一般会計から教育費を出しますけれども、これはだれも赤字と言わないですよ。それと同じように、交通にしましてもそれから健康の保全あるいはまた、(「公共投資ですよ」と呼ぶ者あり)そういう公共性のものにつきましては、これは教育費と同じように赤字と見るべきではない。それは……
  94. 河村勝

    ○河村委員 私は端的に、ですから運賃は半永久的に凍結しろということなのかどうかということをお伺いしたい。
  95. 木村禧八郎

    木村公述人 私は公共料金につきましては——運賃だけじゃないのです。運賃だけじゃなくて、これは食管会計なんかの赤字についても同じ考えです。そういうものは赤字と見るべきじゃないのであって、それはいままでの高度成長的な発想からみんな割り出されておるのですよ。ですから、ここで非常にものの考え方転換しなければならぬ時期にきているのですね。ですから、そういう発想の違いなんですね。従来、国鉄のいままでの再建計画なんといっても、高度成長によって国鉄が無理に、急速に設備投資させられたのですよ。それから鉄鋼とかセメントなんかの需要も、これも大きくするために鉄鋼の設備投資をやった。あるいは独立採算でそれで借金をうんとやった。こういう、みんな高度経済成長的な発想ですよ。それが矛盾が起きてここで大きく転換しなければならぬ時期にきておるのであって、考え方転換ができてないのですよ、発想が。ここに非常に重要な問題があると思うのです。この転換がなされなければ、私はやはり矛盾は続いていく、こういうふうに思っております。
  96. 加藤六月

    ○加藤(六)委員長代理 次に、細田吉藏君。
  97. 細田吉藏

    ○細田委員 諸先生方には御苦労さまでございまして、時間がありませんので、きわめてしぼってお尋ねしますので簡単にお答えいただきたいと思います。  最初に木村先生にお願いしたいのですが、先生、社会党の大先輩で、私ども先生の参議院の御質問を傾聴いたしたものでございます。この際あなたにお尋ねしたいのですが、戦後十回以上にわたって運賃改正がこの国会でやられております。そのつど、あなたいまも所属していらっしゃると思いますが、日本社会党は反対でございます・これは全部反対でございまして、かりにこれが上がらないとしますとたいへんなことになっておりまして、これはとても国鉄財政、どうにもなるものではありません。その反対というのでも、一割五分上げようというときに一割ならばよろしいが一割五分だからいけないとか、ことしの四月からやるのはいかぬが十月からならいいじゃないかとか、こういうお話でもあれば別ですけれども、終始にわたって全面的反対。そのつどわが自由民主党は、国民がきらう値上げはみんなわれわれの責任と政府の責任においてやってきた、こういうことになるのですが……(発言する者あり)ちょっと待ってください。これから聞くのです。  そこで、運賃値上げというのは絶対にいけないのか。経常費をまかなう範囲のことぐらいは——運賃値上げは、これは合理化もやる、増収努力もやる、いろいろやるのだが、経常費をまかなうぐらいの値上げというものも、これもいけませんか、たてまえ論として。絶対にいかぬものですか。私はそうは思わないのですがね。これは、どんな、世界じゅうどこの国でも、それを推し進めていくと運賃がただになるということなんですが、私はそうじゃないので、少なくとも直接経費ぐらいはいいのだということにならないとおかしいのではないかと思うのですが、その辺を伺いたい。  それから、続けて言います。先生のお話の中で、これは私たちは御訂正いただきたいと思うのですが、新幹線を九千キロもというような案が日本列島改造論に書いてありますがね、これはどうか、いろいろ問題もあるでしょう。しかし、九州に新幹線引いたり北海道に引いたり、北陸なんか実にはっきりおっしゃったのですが、あの新幹線、引くな、引いちゃいかぬ、こういうふうに聞こえたのですが、そうおっしゃったのですか。赤字であるからということであったようですけれども、この点非常に重大な関心を持っていますのでね。先生のような方がおっしゃると、これはたいへんな反響があります。私は、これは絶対に必要なんで、九千キロそのものがどうかという問題、それは多少議論があるでしょう。しかし、九州へ引いたり北海道へ引いたり、北陸新幹線もどうもやめてしまえというような話に聞こえたのですが、これは聞き違いでなければけっこうなんですけれども、ちょっと聞かしていただきたい。結論だけでよろしゅうございますから。
  98. 木村禧八郎

    木村公述人 これは先ほども一つ御質問があったのですが、公共料金というものの考え方ですね。さっきもちょっと申しましたが、アメリカのニクソンでさえ公共料金の引き上げはアンフェアタックスと言っているのです。不公平なる税金であるというのですね。アンフェアタックスというのです。ニクソンが言っていますよ。ですから、そういう考え方、これは公共料金と税金は違いますよ。違うけれども、どこが違うかといえば、税金は強制力があるのでしょう。ところが料金は、強制力がないといっても、電気、ガス、水道とか国鉄なんかは、選択しようとしてもできないです。国鉄運賃が上がった場合、所得税を納めることのできない人も、これを税金として納めなければならぬですよ。だから不公平なる税金というのですね。所得税を納めることのできない人も、あるいはお金持ちでも、納めなければならぬ。しかし、上がったから国鉄を利用するのをよそうというわけにいかぬですよ、通勤でも通学でも……。(細田委員「先生、結論だけお願いします、時間がありませんので」と呼ぶ)はい。ですから、そこでそれは一種のアンフェアタックス、増税になるのですよ。そういう考え方ですね。増税と見るか見ないか、所得税の場合累進課税ですけれども、そこの考え方が一つ問題です。それから第二の新幹線につきましては、今度の再建計画でも、たくさん投資をすると、そうしてそれはやがて、——婦人科の話がありましたけれども、それがやがて収益を生む、その収益によって赤字を埋めるという発想は、これは新幹線を、最初のこの前の案ですと四つだったでしょう。今度五つふやすでしょう。ところが今度の新幹線は反対じゃないですけれども、あの新幹線をふやすことによって、東海道のように収益があがるという考え方を持って、それで利益が生むから再建ができるという考え方だったら、それは間違いですよ。こういう考え方なんです。ですから反対しているわけじゃないのです。その収益によって赤字が、東海道線のようなことを考えてやったのでは間違いですよ、こういうことを言っているわけです。
  99. 細田吉藏

    ○細田委員 いまの新幹線の話は、先ほどのがちょっと表現があれでしたから、わかりました。東海道ほど収益があがるように計算してありませんから、だいじょうぶでございますから……。  それでは次に村木公述人にちょっとお尋ねしたいと思いますが、十カ年計画はやめろというのですか、つくり直さなければいかぬ、こういう話なんですが、十カ年のことでございますから、見通しについての御意見がいろいろあると思いますね。しかしいままで五カ年計画とかいろいろな長期計画で、挫折しましたね。かなり大きなウエートが、人件費の値上がりが見込まれたより高かったということにあるのです。これは御承知だろうと思います。  そこで今度は、かなりいままでよりは大幅に見てあるわけです。しかし政府が一応の見通しとして立てたもので見ているわけです。いま政府がつくろうというときに、それよりもうんと高いものでつくるということは言うべくしてできないのです。またそれより低いものにしたら、これはもちろん問題にならないでしょう。そこでこれをどうしろとおっしゃるのか私どもよくわからない。一般的に、このインフレ傾向をもっと押えろあるいは所得政策をやって、賃金も物価も全部ストップしろとか、そういういろいろなことは御意見としてはあるかもしれませんけれども、少なくとも現実の問題として、いまの状態で政府計画をつくるとすれば、そういう点については人件費物価もこういうもので見ざるを得ないというふうに私ども思うのでございます。  それから、私は長い間運賃の関係のことを、国会に出る前から仕事をしておったものですけれども、どなたか公述人のおっしゃったように、戦後の初期においては、仲裁裁定が出た、ベースアップしなければならない、金が足りないから値上げをするのですということで、公労法十六条との関連で値上げ法案が出て、単年度の問題として値上げ法案が国会を通過したことも、これは数多くずっと初期はあるわけです。しかしながらあなたがおっしゃったように、独算制というものが必ずしももとの形で貫かれないために、ただ赤字が出るからそれは穴埋めするのだというだけではなかなか国会の審議が通らなくなったので、また投資計画的にしなければならぬというので、昭和三十二年のとき以来長期計画というものが始まったわけです。十年がいいか五年がいいかは御議論がございましょう。そこで私は、つくり直せとおっしゃっておるのだが、これはもちろん社会主義国家の社会主義計画じゃございませんからね。これはたとえば、長くおっしゃっていただくことはないのですが、どんなふうにしろとおっしゃっているのか、その辺がわからない。これができるかできないかという問題についてはおれはできないと思うよということはわかります。そうおっしゃるのは御意見ですからわかりますが、つくるとしたらどうして一体つくるのだ、つくるようなことは初めからやめたまえとおっしゃるなら、これもわかりますが、つくれとおっしゃるならどういうものをつくれとおっしゃっているのか、これはわからないということでございます。  それからもう一つ、例のさっきおっしゃった近距離や小口のことでございますが、おっしゃるようにかなり結果的には虐待しておるように見えるし、ある程度そういうこともあると思うのですね。問題は、しかし原因と結果が少し違うのじゃないだろうか、つまり近距離の人の動きや近距離の貨物の動きや少量の荷物の動きというものは、非常に新しく出てきておる自動車にふさわしいものであるから、国有鉄道から逃げていくということが実情なんでございまして、どうしてこれを防げるかというのが、さっきお話しになった混載になったり、いろいろ四苦八苦をしておる実情である。追っ払っておるのじゃなくて逃げるという性格を持っておるからこういう問題になっておる。だからどうするかという問題はありますよ。しかしさっきの話は、少しそういう面もあります、おっしゃるような面もありますが、原因と結果がすりかえられておるのじゃないだろうか。これは先生専門の学者でいらっしゃるので私の言うこともそれはもっともだぞ、こうおっしゃっていただけばよろしいのですが、そういうことでございます。それからまだいろいろありますけれども、ちょっとそれだけひとつ。
  100. 村木啓介

    村木公述人 私は十カ年計画、その先生方おつくりになった十カ年計画がずさんだからつくり直せと言ったのは、十カ年計画ができると言ったわけじゃないのです。これは久保先生もこの前の討論会でおっしゃっておりましたが、大体十カ年計画なんかができるようないま情勢にあるかということでございますね、これは先生方はもうすでに御承知のことで。おまえ、じゃどうするのかということは、ですから私はさっき、国民はたくさん国鉄に対して要望を持っているから、当面今年度はああいうふうにしていただきたいということを意見として申し上げたわけでございますね、単年度について。  それで運賃というものは、私は利用者の方が御納得なさればやはり上げられると思うのでございますよ。この公共性というものは国民の声、国民の要望を聞くということが公共性の基本でございましょう。私はそのように考えております。国民の十分意思が反映された料金、運賃でございましたら、私は何も反対はいたしませんわけです。いまのような運賃制度は、どう考えても国民が納得できるようなしろものではないというような事実からこれは申し上げております。   〔加藤(六)委員長代理退席、委員長着席〕  それから、いまのような、国がインフレ政策をとっておいて、インフレ政策というとおしかりを受けるかもしれませんが、じゃインフレ含みと申してもようございますが、とにかくこういう物価政策をおとりになっていて、国の財政から一千億かそこらお出しになって、でも私は、どうにもなるものじゃないと思うのでございますよ。(「財投を入れるとずいぶん違いますよ」と呼ぶ者あり)はい、そうでございますね。しかしそれは将来に持ち越されまして、また雪だるまのように矛盾を巻き起こすということを先ほど申し上げたわけでございますから、結局運賃物価のつり合いというのはすぐまたくずれるわけでございます。  人件費増加も、それはもう当然なことでございまして、もともと二〇%も賃金が上がるというのは、これはおそろしいことじゃございませんか。そうでございますね。なぜしかし労働者が二〇%の賃金を上げるかということを考えますと、これは当然でございますね。戦後いろいろ物価値上げのもとで労働者の賃金が上がりましたけれども、二〇%も賃金が上がったというようなことはたいへんな情勢のもとでございます。そのような情勢にいま置かれているわけでございましょう。そういう情勢のもとで十カ年計画などというものはつくろうたって、そんなものつくれるわけはない、こういうように私は申し上げたわけです。  それから最後の混載制度の問題、私は小口混載について反対しているわけじゃございません。あれは確かに顧客運賃からいえば小口貨物よりも二割ぐらいたしか安いと思います。今度ちょっと上がりましたから同じぐらいになったと思いますが。それで、ああいう能率的なものをおやりになることに反対しているわけじゃございません。ただ、今度御提案運賃制度を見ますと、いかにも営業法があるから持ってきた荷物は断わるわけにいかぬから、サービスを悪くすることによって、運賃を高くすることによって荷主が持ってこぬようにしようというような意図があるように私には思える。それは勘ぐりでございましたらけっこうでございます。
  101. 細田吉藏

    ○細田委員 たいへん村木公述人いいことをおっしゃっていただいた。国民が納得すれば運賃値上げはしたらいいじゃないか。そのとおりで、どうして納得してもらうかということでございまして、先ほども二人の主婦の方からある意味では両方の意見が出ました。国民の御納得をどうして得るかということにわれわれ努力をしておるわけでございます。したがって、あとからおっしゃった納得が得られるようなしろものではないというのは御意見でございまして、それはおれは反対であれば国民は納得しないというのにひとしいことでございますから、最初おっしゃったように、国民の納得を得るものはやむを得ない、国民の納得は、法律に定められ、そしていろいろなことをやりながら、十分審議の上で国民の多数の納得を得るということでなければいかぬ、これは民主主義ルールである。いみじくもおっしゃったとおりであるとたいへんありがたく承りました。こういうわけであります。  時間がありませんのでもう一点だけちょっと次元の高い問題を。  これは少し別なことですから中島先生にちょっと伺いたいのですが、私は日本の貨物運賃というものが、国有鉄道だけじゃありませんよ、国有鉄道トラックや全部ひつくるめて非常に低いところにあるというふうに考えております。それは沿革的な理由とそれから日本の地勢が持っております人口の配分やら工場の配置やらいろいろなものが持っております特性から考えまして、貨物運賃は非常に低いところにある。これがたとえば他の鉄一トンの値段とかいろいろなセメントの値段とか石灰石の値段、米の値段——米は非常に安いですが、いろいろなものとの比較において、諸外国との比較において低いところにある。しかもその一つの大きな理由が、国有鉄道運賃がいわゆる公共料金として、政府国鉄をやっておった時代から低く低く押えられた。戦争中も戦後も低く押えられた。こういうことのために全体の運賃が低いところにあるのじゃないか。ということは、日本は、これは宿命的に海運との競争関係——非常にほかの地域、アメリカの鉄道やフランスの鉄道と一緒に話してはいけないと思います。そこでいま、鉄道が困っているだけじゃありません。トラックだって繁盛している、しているというけれども、過積みがあったり、これは困っている。内航海運も困っているのです。四苦八苦しているのです。ですからこれについて国有鉄道だけでいま貨物赤字だから貨物を上げろなんていう意見がありますが、あるいは政府から出せという意見がありますが、こんなことでは問題は解決しない、こういうふうに私は思うのです。  そこで総合交通体系の問題で、これは皆さんにお聞きしたいが時間がありませんので、中島先生に伺いたいのですが、ずばり言って、その私が言うことに対する御批判と、ずばり言ってどこから始めるべきだ、たとえば遠距離の自動車はストップすべきだ、法制的に規制すべきだ、あるいは旅客も含めて徹底的に自家用車の征伐というと語弊があるでしょうが、自家用車を押えるべきだとかいろいろあると思うのです。総合交通体系、いろいろ言ってみたって、具体的にやらなければだめなんですね。そこで、先生は何を一体手始めにやるべしというふうにお考えになるか、これをお聞かせをいただきたいと思いますし、この点に関しましては広岡先生にもちょっと御感想があれば、ついでと言ってはたいへん申しわけないのですが、お聞かせいただきたい。  これで、問題は幾らもあるけれども、やめます。   〔発言する者あり〕
  102. 井原岸高

    井原委員長 お静かに願います。
  103. 中島勇次

    中島公述人 お答えいたします。  ただいまの御質問の前段は私全く同感でございます。と申しますのは、たとえばアメリカと比べてみますと、アメリカの場合には西部でできた野菜とかくだものは東部へ持っていかなければ役に立たない。東部の人は西部から七千キロも鉄道で運ばなければ野菜が食えない。あるいは南部から北部、北部から南部、これは非常に大きいですね。それだけに、貨物輸送による要するに付加価値といいますか、それが非常に大きいわけです。運賃負担力が大きい。ところが日本はどこでも同じようなものがとれる。それから港があるからどこからでも原料が入る。つまり末端の消費配給程度しか輸送にかからない。ですから輸送の距離と付加価値というものが非常に少ないから、要するに貨物運賃負担力が少ないというのはこれは日本の伝統的なものなんです。それが一つ。  それから日本が明治開国以来非常に産業開発でやって、当時独占機関ですからとにかくできるだけ安いものをやって、そうしてそこに産業を開こうという政策で歴代長いこと貨物関係の産業開発的な運賃国鉄が利用されてきた。それが途中になりまして非常に情勢が変わってきてから急に貨物を上げなければならないといってみたところが、そういう体制ですでに貨物あるいは一般の経済の体質が固まっちゃっているものですから貨物運賃値上げに対しては非常に抵抗が強い、これが現実である。  そこで第二段の、それならこれをどういうふうに体質改善したらいいかというときに、先ほどの、ドイツあたりでやりましたように遠距離トラックの抑制という方法もありますけれども、私は長期的な総合交通体系からいけば、たとえば経済企画庁あたりで出している数字でもおわかりのように、これから十年もたてば貨物輸送量がいまの五倍にも六倍にもなる。それを一体トラックで運べるか、結局やはり効率のいい国鉄が大きなウエートをかぶるようなことをしなければいけないことはもうわかり切っていると思う。これは人的資源からいっても全部トラックの運転手になっても運び切れないような数量ですね、逆算してみればすぐ出てきます。ですから、それに対していろんなトラック方面の規制も必要ですけれども、その前に国鉄がそれを受け入れる体制を——道をつけないでおいてトラックを押えるというのは私は順序が逆だと思うのです。ですから、私が先ほど貨物の抜本的な体質改善が必要だと言うのは、トラックがどうだ何がどうだといっている前に、まず国鉄が、お客はもとより、パターンに合うような鉄道を提供しなければいけない。サービスを提供しないでおいてトラックを押えて鉄道へよこしてくれというのは非常に一方的な方法であります。ですから、荷主が喜んで国鉄に乗っかってくれたら、そうしたらそれに応じて大いに運賃も上げたらいいでしょう、納得のいく運賃を上げたらいいでしょう。しかしいまの運賃でそういうようなことは——ですから、結論を申しますと、まず一番最初に始めるのは、鉄道輸送、特にレールだけでなしに末端をあわした合理化が絶対必要だ。まあこれは通運問題につながる問題ですけれども、貨物輸送の合理化には絶対に末端がうまくやらなければ、販売業務を人にまかしておいてレールだけ一生懸命走っても、これは汽車の中でかけ足しているのと同じじゃないですか。ですから、私は、今回の再建計画の中にはそういう意図を盛り込んである、フレートライナーなんかそういう意味で効果があがってきたから運賃も高く上げます、それでもお客は乗っけてくれ、けっこうだと思うのですよ。この方向を大いに進めていただきたい。抜本的な貨物の進め方が先決であるというふうに考えます。
  104. 広岡治哉

    広岡公述人 何から始めるべきかということですが、私は、まず第一に始めるべきことは、国鉄国鉄の中でまず再建するという気持ちになれるような、国鉄の労働者が自分の愛する国鉄再建できるような、そういう気持ちになるような、そういう改革からまず出発すべきだと思います。  それからもう一つは、やはり地元で国鉄を残していくためには、われわれが国鉄を利用するんだということがはっきり自覚できるような、末端においてまず国鉄再建のためのそういう機関をつくらなければいけない、これが基本的だと思います。  貨物の問題について言いますと、いま中島さんがおっしゃったように、ともかく現在すでに幹線で筋を引くのに苦労しているような状況でトラックを押えてもどうやって幹線で貨物を運ぶのかということが一番心配であるわけです。ですから、トラックを押えて国鉄へ移すべきだ、そしてそれが日本の経済社会の発展のために望ましいということは多くの人が考えるわけですけれども、現実にその信頼にこたえ得ない、これをどうするのかということをまず考えていただきたい、そう思います。
  105. 細田吉藏

    ○細田委員 これでやめますが、いまお二人からお答えがあった、貨物の近代化の施設を大いにひとつやるべしということで、非常に意を強くいたしております。  どうもありがとうございました。
  106. 井原岸高

    井原委員長 兒玉末男君。
  107. 兒玉末男

    ○兒玉委員 本日は諸先生方の貴重な御意見をいただきましたことを、冒頭感謝申し上げます。  最初に菅原先生にお伺いしたいと存じます。皆さんにもあとでまとめて御質問しますので、それぞれ御答弁いただきたいと思います。  先生の言われた中で、特に貨物制度につきまして、現在の二千以上の小口貨物などのこういうふうな取り扱い関係を重点的な拠点輸送に切りかえるべきだ、こういうことが指摘をされ、同時にまた運賃の問題については受益者負担原則を強く主張されたわけでございますが、資料によりましても、昭和四十年から四十五年までの六年間の傾向を見ますと、貨物赤字がふえ、しかもそのシェアが毎年毎年減少の一途をたどっているわけであります。こういう点から、このような拠点輸送というものにかりに巨大な投資をしたとしましても、国鉄貨物のシェアというものが減少する段階において投資における経済効果というもの、それから先ほども総合的な輸送体系ということの話が出ましたが、たとえば今次の道路整備五カ年計画では五年間に十九兆五千億という巨大な投資がなされるわけでございますが、こういうふうな同じ物資を輸送する道路関係あるいは航路関係また国鉄輸送、この関係におきまして、輸送される物資の総合的な調整なりあるいは輸送する分野というものをある程度総合的にチェックをしなければ、この経済効果なりそういうことは私は期待できないと思うのですが、これに対する御所見を伺いたい。  それから木村先生にお伺いしたいわけでございますけれども、いわゆる受益者負担原則というものについては、国鉄の持つ公共性から考えた場合に、二万一千キロの営業路線の中において、やはり地方におけるローカル線はほとんどが赤字になっておるわけであります。おそらく全体の七〇%以上が赤字でございます。こういう点等から考えた場合、同時に、赤字になりました昭和三十九年以降のいわゆる公共負担通勤通学あるいは木材割引、新聞雑誌、災害物資の無料輸送、こういうふうないわゆる公共運賃政策について先生はどういうふうな御所見をお持ちなのか。  それから中島先生にお伺いしたいわけでございますけれども、先生の特に貨物輸送に対する御所見を承っておりますと、いわゆる輸送体制のシステムチェンジということについて抜本的な改革をはかれということを御指摘されたわけでございますが、今回の国鉄の考えている貨物輸送体制の中で、特にいままで一般の零細企業者が活用しておりましたところの小荷物運賃制度というものが今度変わりまして最低五十キロの小口貨物制度になるわけであります。そうしますと、これは大幅ないわゆるシステムチェンジでございますけれども、ますます中小関係の小口貨物分野というものが運賃制度面におきましては、具体的な例で申し上げますと、五十キロの貨物を東京−名古屋、あるいは東京−大阪、あるいは東京−福岡、特に零細商工業者は五十キロ単位の貨物を送る場合が多いわけであります。そうした場合に平均の貨物運賃のアップ率の二五%に比較した場合に、いま申し上げたこの運賃というものは、東京−名古屋間で一五〇%、それから東京−大阪で七六・三%、東京−福岡間で約六四%、平均賃率の三倍から六倍近いところの高運賃になるわけであります。そういたしますと、やはり私は、このシステムチェンジの効果というものがこのような高運賃に転化することによって消費家の、いわゆる大衆の負担率というものに非常に比重が高くなっておる。こういう点について、このシステムチェンジの考え方というものについてどのようにお考えなのか。  以上三点について、それぞれの先生方から御答弁いただきたいと思います。
  108. 菅原操

    菅原公述人 ただいまの御質問は、一つは受益者負担の問題、それから二番目は貨物輸送における需要調整等をやらなければあんなふうな貨物の量が出ないのじゃないかというようなお話、もう一つはシェアが落ち込んでいるのに将来どうして予想されているような貨物が出るか、こういうふうに考えてよろしいわけでございましょうか。  最初に受益者負担の問題ですが、これにつきましては、先ほど、公共性と企業性の問題ということからお話を申し上げたわけでございますが、同じことになりますので同じことは省略いたしますが、受益者負担あるいは、受益者負担というよりは利用者負担ですね、利用者負担原則が適用されるのはどういう場合か。この総合交通体系分野の中で申しますならば、それは大きな都市間とか全国的な輸送というような場合に、代替的交通手段がある、利用者が自由に選び得るというような場合に利用者負担というような原則が成り立つわけでございます。ですから、これは貨物から離れますが、たとえば大都市の通勤にあるいは地下鉄、そういったふうなものに全額利用者負担ということには現になっておりません。これは都市のようなところは空間的な制約がございます。小さな空間でたくさんのものを運ばなければいけない。だからこそ地下鉄というものに都市交通の大きな役割りがあり、国鉄もまた大都市付近におきましては通勤通学輸送に大きな役割りを持っているわけでございます。ですから、そういうところは、先ほどお話し申し上げたような補助というようなものが入ってくる。が、何回も申し上げますが、それでは通勤分に幾ら、貨物分に幾らというふうに原価が計算できるものでございませんので、再建計画としては総括的な、包括的な補助方式になって、トータルで五十七年に償却後の黒字が出るように持っていく、なるように投資のたとえば資金コストを調整していくというふうな方法になっていると思います。ですから、利用者負担原則というのはそういうような場面に適用され得るものであります。まあ原則的にというか、交通における原則としてはそういうもので、むしろその大都市とかローカルというようなものに地域的な制約があるというふうに考えていただいたらどうかと思います。  それから二番目に、これだけの貨物を運ぶというために、需要の調整、経済的な調整、総合的な調整をする必要があるのではないかということですが、これは総合交通体系考え方といたしまして、一つには長期にわたります投資政策がございます。投資の面でどのような交通機関が最も国民経済的に有利であるか、あるいはそれが選択的に、あるいは重層的に地域によって考えられるわけでございますけれども、そういう意味で長期のものを考えておりますので、投資に主力を置いておる。今度の再建計画も十カ年計画という、経済的な計画としましては相当長期なものになるわけですが、そういう意味でこの投資政策につきまして相当力が入れられておると思います。交通調整、非常な小さな意味で、たとえばレーバープランにございますような長距離の貨物に特定の課税をするというようなものは、短期的に見た場合に一つの総合的な施策であるというふうに私は考えるわけです。そういう意味で、需要調整というようなものも当然この期間中には考えていくべきものでございましょうし、将来におきましても、たとえばレーバープランに相当するような手段、あるいは重量税、車軸税、すでに日本でも取り入れられているわけでございますけれども、そういった面はまた別の場でさらに検討されて進めていかれるべきではないかと思います。これは、この十カ年計画をトータルで見たときの議論としては少し短期的な施策ではないか、こんなふうな考えをしております。  それから三番目に、貨物がこの四十四、五、六の間にどんどんシェアが下がってきたではないか、それで五十七年度にここに計画されておるような大きな貨物国鉄に来るであろうか、こういうふうな御質問だと思いますけれども、先ほどちょっと申し上げましたけれども、いまここの手元にその内容別に、品目別にどういう貨物が減り、どういう貨物がふえたというのはございませんが、大ざっぱに申しますと、一般貨物はへこんできておりますし、コンテナが非常に大きなふえ方をしております。これは量は小さいですから、比率からいうと十倍ぐらいの伸びをしておると思いますが、それはなぜか。これは交通需要予測の一つの手法になるわけですが、貨物におきましても時間価値というものがございます。時間価値が現在幾らになっているかというようなこともありますが、たとえば全部平均すると二十七円・トン・パー時間だというようなこともございますが、こういうものも時代とともにふえていくわけです。要するに、将来は、旅客のほうはもちろんこれは著しいわけですけれども、旅客は現在時間価値で五百円そこそこですけれども、昭和六十年には二千六百円ぐらいになるというようなことが言われておりますが、貨物におきましても同じように速達ということがより重要視されてくるということはございます。貨物の場合にはその本線部分だけの速達ということではございませんで、戸口から戸口までの速達ということでございます。ですから、利用者が五十七年度の時点でどういう観点から交通機関を選択するであろうかというふうに考えますと、戸口から戸口まで早い時間で運んでくれて、しかも値段が安い、そうして荷くずれもなく到着時間が明確だ、こういうものを選ぶであろう、まあそういったふうな考え方から、五十七年の経済指標から考えられますブロック間の貨物の動きというようなものからこの鉄道貨物量を推定しているわけでございますから、相当大きな数字になっておる。現在の趨勢から見ると、一見大きいように見えるわけでございます。  ここで一つ問題がございますのは、現在の貨物がなぜ減ったかということの中に、先ほどからも何回か御説明がございましたように、たとえば大阪あたりで物を送ろうとしても東京の受け口がない、ターミナルがない、どっかで待っていなければいかぬということがあります。それで東京付近では、いま大井のフレートライナー基地というものが鋭意建設されつつあるわけですが、こういった受け口、つまりターミナルが四十九年付近を目標にして相当できてまいりますし、先ほど申しましたような新幹線建設に伴う途中の輸送力というものもうんとついてまいります。そういうものを合わせまして、その受け口のほうもある、それから需要にもマッチをしておる、そういう意味で将来コンテナが非常にふえるであろうということが考えられるわけでございまして、そういうものから割り出して出てきた数字が、現在提案されております再建計画の五十七年の貨物量であるというふうにわれわれは聞いておりますので、そういう意味で、その輸送需要は十分に達成される輸送需要ではないかというふうに考えるわけでございます。
  109. 木村禧八郎

    木村公述人 私は、独算制には反対ですけれども、しかし経営主体の独立化ということは必要だと思うのです、経営効率というものはこれは必要でありますから。ただ、独立採算と経営主体の独立化ということは別に考えておるわけです。その場合、やはり国鉄なら国鉄が、本来の業務による収支とそれから通勤とか通学とかその他、政策的な場合の割引とは、これははっきり区別すべきであって、たとえば通勤の場合はこれは労働省とか、通学の場合は文部省ですね、それが補助を与えるべきだと思うのです。それははっきり区別しまして整理をしませんと、ごっちゃにすると経営の効率化ということ、これは私、反対しているわけじゃない、経営主体の独立化には私は反対じゃないんでありますから、そういう立場でやるべきじゃないか、こう思っております。
  110. 中島勇次

    中島公述人 私に対する御質問は、この小荷物と小口貨物を一本にした制度の御質問のように伺っておりますが、これを先生は、何かシステムチェンジの一環としてというふうにおっしゃいましたが、私が先ほどから申し上げております私のシステムチェンジのイメージというものは、もっとスケールの大きい、根本的なことを言っているわけでして、これはきわめて実務的な制度改正だと私は理解しています。ですから、私はこれをもってシステムチェンジができたというふうには、国鉄の方には申しわけありませんが、まだまだそういうイメージには遠いものだ、こう考えております。  そこで小荷物というのは、これは皆さん御承知のとおり、昔はなかったです。お客が乗るときに手荷物を預ける。客車へ持ち込めないのは、だんだん困って、じゃ託送手荷物という制度ができた。ところが、手荷物だけ運んでいたのではどうも荷物車がもったいない。そこで郵便局に持っていく小包と、それから今度小口の貨物というと貨車の中へ俵や何かと一緒に積み込まれて、そういう性質ではない、要するに中間的なものを、それじゃ手荷物車のあいているところで運んでやったらいいじゃないかというのでできたのが小荷物制度であります。  ところが、これはまあ昔のそういう歴史的なものですが、そういう見地からいきますと・小荷物は客車で運ばれるから、わりと小ぎれいで早く行くものだという印象があるわけなんです。貨物は、運賃は安いけれどもおそいんだ、こういう前提があったわけです。ところが最近は小口貨物というもののスピードアップができまして、それから小口貨物のほうの輸送方法も、そういういままでのような小口貨物とは変わってきたから、そこでこういうふうに一括してやったほうが荷主さんのためにも便利であろう、国鉄のためにも便利であろう。といいますのは、小荷物では、客車に積みますから大きさの制限があるわけです。そうすると、私もこれは事実体験していますけれども、宇野の先のほうで学生服をつくっているところがあります。学生服の大きさからいくと、どうしてもボール箱に入れてやりますと小荷物にはちょっとのことではまらない。しようがないから、貨物でやったらおそいから、しかたなく非常にコストがかかるけれども、うちでは宇野から東京まで全部トラックで運んでいます、これを何とかしてくれないかというような話を私は聞いたことがあります。これはコンサルタントを頼まれまして、合理化のときにそういう話を聞きました。私はさっそく国鉄に、そういうしゃくし定木でやらないで、もっと使える方法はないかということをお話ししたことがありますけれども、そういう意味で、そういうことで、現実に合って、そうしてしかも荷主さん方にも都合のいいような制度にしようというような意図だろうと私は考えております。したがって、先ほど先生がおっしゃったように、ある特定の区間のある特定の荷主の特定の貨物について計算いたしますと、そういう矛盾があるかもしれません。しかしその反面、この制度ができたことによって、中小企業で私のところは非常に助かった、トラックでやっていたやつが今度は国鉄でやってもらえるようになったということで、非常にプラスになっている面もあるんじゃないかと思うのです。片方だけで私にこれを答えろというのは、ちょっと私、お答えようがございませんです。  そういうことですから、どうぞひとつ。お答えになるかどうか……。
  111. 兒玉末男

    ○兒玉委員 もう時間が来ましたので、私もその点もう少し論争したいわけでございますが、これで終わりたいと存じます。
  112. 井原岸高

    井原委員長 これにて公述人各位に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、御多用のところ長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。  以上をもちまして、公聴会は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時十五分散会