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1973-06-12 第71回国会 衆議院 運輸委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十二日(火曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 井原 岸高君    理事 江藤 隆美君 理事 加藤 六月君    理事 佐藤 孝行君 理事 佐藤 守良君    理事 細田 吉藏君 理事 兒玉 末男君    理事 斉藤 正男君 理事 梅田  勝君       阿部 喜元君   小此木彦三郎君       大竹 太郎君    唐沢俊二郎君       國場 幸昌君    關谷 勝利君       徳安 實藏君    西村 英一君       羽田  孜君    宮崎 茂一君       山村新治郎君    綿貫 民輔君       井岡 大治君    太田 一夫君       金瀬 俊雄君    久保 三郎君       神門至馬夫君    紺野与次郎君       三浦  久君    石田幸四郎君       松本 忠助君    河村  勝君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君  出席政府委員         内閣官房長官 山下 元利君         内閣法制局第四         部長      別府 正夫君         運輸大臣官房審         議官      原田昇左右君         運輸省鉄道監督         局長      秋富 公正君         気象庁長官   高橋浩一郎君         建設省道路局長 菊池 三男君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      岡島 和男君         厚生省児童家庭         局障害福祉課長 金田 伸二君         建設省計画局建         設業課長    井上 孝夫君         建設省計画局宅         地部宅地開発課         長       吉田 公二君         建設省都市局都         市政策課長   豊蔵  一君         会計検査院第五         局長      中村 祐三君         日本国有鉄道総         裁       磯崎  叡君         日本国有鉄道常         務理事     内田 隆滋君         日本国有鉄道常         務理事     小林 正知君         日本国有鉄道常         務理事     原岡 幸吉君         日本国有鉄道常         務理事     加賀谷徳治君         日本国有鉄道常         務理事     速水 信一君         日本国有鉄道常         務理事     阪田 貞之君         日本国有鉄道運         転局長     関川 行雄君         日本国有鉄道施         設局長     篠原 良男君         日本国有鉄道電         気局長     尾関 雅則君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 委員の異動 六月十二日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     羽田  孜君 同日  辞任         補欠選任   羽田  孜君     小此木彦三郎君     ————————————— 六月十一日  国鉄運賃値上げ反対等に関する請願(川俣健二  郎君紹介)(第六七四四号)  同(河上民雄紹介)(第六七四五号)  同外一件(木島喜兵衞紹介)(第六七四六  号)  同(小林政子紹介)(第六七四七号)  同外二件(上坂昇紹介)(第六七四八号)  同(佐藤敬治紹介)(第六七四九号)  同(斉藤正男紹介)(第六七五〇号)  同(坂本恭一紹介)(第六七五一号)  同(田中美智子紹介)(第六七五二号)  同外一件(辻原弘市君紹介)(第六七五三号)  同(野坂浩賢紹介)(第六七五四号)  同(芳賀貢紹介)(第六七五五号)  同(長谷川正三紹介)(第六七五六号)  同(原茂紹介)(第六七五七号)  同(古川喜一紹介)(第六七五八号)  同(堀昌雄紹介)(第六七五九号)  同(松浦利尚君紹介)(第六七六〇号)  同(松本善明紹介)(第六七六一号)  同(三宅正一紹介)(第六七六二号)  同(美濃政市紹介)(第六七六三号)  同(八木一男紹介)(第六七六四号)  同外一件(安井吉典紹介)(第六七六五号)  同(米内山義一郎紹介)(第六七六六号)  同(石橋政嗣君紹介)(第六八三七号)  同(岡田哲児紹介)(第六八三八号)  同(佐野進紹介)(第六八三九号)  同(下平正一紹介)(第六八四〇号)  同外一件(中村茂紹介)(第六八四一号)  同(東中光雄紹介)(第六八四二号)  同(大野潔紹介)(第六九四八号)  同(中村重光紹介)(第六九四九号)  同(成田知巳紹介)(第六九五〇号)  同(馬場昇紹介)(第六九五一号)  同(原茂紹介)(第六九五二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進  特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出  第一七号)      ————◇—————
  2. 井原岸高

    井原委員長 これより会議を開きます。  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。金瀬俊雄君。
  3. 金瀬俊雄

    金瀬委員 私は、最初成田空港に対する交通対策について御質問申し上げます。  新幹線を含むいろいろな交通対策はあろうと思いますが、その点について御説明をお願いいたします。
  4. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 成田空港が開港いたしました場合のアクセスの問題についてお尋ねでございますが、ただいま成田空港都心を結ぶ新幹線の問題これは先般も御説明申し上げましたように、地元反対の空気がございまして、まだ工事にはかかっておりません。その路線をどういうふうにするか、あるいは高架でいくか地下にするか、そういった問題全般にわたりまして調査を進めておりまして、なお地元方々との合意を得るための努力を鉄建公団がいたしておるのでございます。  その他の問題につきましては、京成電車国鉄在来線それからバス輸送等が主でございますが、大体大ざっぱに申し上げまして、成田空港が完全な姿で開港されます場合には、従業員通勤を含めまして、一日平均三万人の輸送が必要であるということが推定されるのでございまして、これをどう処理するかということにつきましては、新幹線は今日の状態では空港の開港には間に合いかねますので、いま申し上げたような各交通機関を動員いたしまして、この三万人の輸送についていま具体的な対策を練りつつある際でございます。大ざっぱに申し上げまして、どんなことがありましてもこれらの機関を動員いたしまして成田空港都心を結ぶ交通路は確保し、これを完全に輸送するような体制をつくり上げるために、いま具体的に検討を進め、具体的な手を打っておるという状況でございます。
  5. 金瀬俊雄

    金瀬委員 新幹線通過地域である東京都あるいは千葉県の各区あるいは市町村、また住民が、騒音障害振動障害電波障害都市計画破壊——いままで都市計画を組んでおったものかためになる、そういうことから強く反対をしております。そうした中で新幹線を強行するのか、あるいは中止をするのか、あるいはルートを変更するとかいろいろと問題があると思いますが、そういうものに対する対策が現在どうなっておるのか、御説明をお願いいたします。
  6. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 ただいま申し上げましたように、成田新幹線につきましては、一応東京成田を結ぶということはきめておりますけれども、その詳しいことにつきましては、地元との関係がございますので、整備計画はきめておりますが、建設のほうの具体的なこまかい計画はきまっていないということでございます。しかし、この成田新幹線成田空港を完全な姿で開設いたしました場合にはどうしても必要だと考えておりますので、地元方々とも十分連絡をとり、理解を深めまして、いろいろの考慮をしながら地元合意を得てこの新幹線を開通さしたいというようにいま考えながら検討をし、折衝を進めておるという段階でございます。
  7. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いまの国鉄技術では七十五から八十ホンの騒音は避けられない、それ以上騒音を弱めることは困難である、そういうふうにいわれていますが、これは事実ですか。
  8. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 技術的な方面政府委員ないし説明員から御説明をさせますが、東海道線それから山陽線等におきまして非常に経験を得ました。でございますから、レールから、車両から、騒音の原因になりますようないろいろの設備につきまして改良を加えておることは事実でございます。したがいまして、御承知よう東海道線よりも山陽線のほうがはるかに騒音公害が少なくなってきておることも、これは実証されておるわけでございます。  成田新幹線につきましても、さらにより以上の技術開発によりまして、この騒音対策には十分役に立て得るような程度まで持っていけるのじゃないかという希望を、私は持っておるのでございます。環境庁からは一応八十ホンという指針値が出ておりますけれども、もちろんこれで満足しているわけじゃございません。ことに都市まん中通過いたします場合には、いずれの方法によりましても、この騒音最小限度にするという努力は、最後までしなければならぬと考えておるのでございます。住民の方にもこういう点は十分御理解を願いまして、新幹線建設を早急に進めたいということを考えておる次第でございます。  技術的な方面は、説明員なり政府委員から御答弁させます。
  9. 磯崎叡

    磯崎説明員 今後の新幹線騒音の問題と関連いたしましていまの成田新幹線の御質問でございますが、いま大臣のおっしゃいましたとおりに、私どものほうも、一応環境庁基準が八十ホンとなっておりますけれども、やはり今後車両の改造あるいは構造物そのものの根本的な設計、あるいは防音、消音等の具体的な方法等によりまして、極力騒音を減らす、あるいは振動を減らすという方向に進まなければいけないというふうにかたく思っております。したがって、わずかでも八十ホン——八十ホンよりは絶対こえませんか、なるべくその八十ホン以内で低くするということについてのあらゆる土木、車両、電気その他の各方面技術を総合いたしまして、極力今後騒音を減らすという技術的な努力を続けてまいりたいというふうに思っております。
  10. 金瀬俊雄

    金瀬委員 この問題で、新幹線関門トンネル完成させた島田隆夫さんという工事局長がおりますね。その人の談話で、国鉄では技術を総動員して対策を立てているが、七十五から八十ホンの騒音は避けられないということをはっきり発表していますね。そうすると、いまの国鉄技術では八十以下にすることはできないというふうに考えてよろしゅうございますか。
  11. 内田隆滋

    内田説明員 ただいままでの研究開発の結果、八十ホン以下にすることにつきましては大体のめどがついております。さらに八十ホン以下何ホンに下げられるかということについては、目下開発をしておる最中でございます。
  12. 金瀬俊雄

    金瀬委員 そうすると、この島田という局長さんが発表したのは、五月六日に発表しておりますが、その後の研究でその八十を割ることができるという技術的な基準に達した、こういうことですね。そう解釈してよろしゅうございますか。
  13. 内田隆滋

    内田説明員 そのとおりでございます。
  14. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それでは続いてもう一つ質問いたしますが、その新幹線沿線住民のために最低幅員六メートルくらいの緩衝地帯をつくって、植林するとか公道を建設するとか、そうしたことによって騒音を防ぐとかあるいは地元とのいろいろな争いを緩和するとか、そうしたことを考えたことはございますか。
  15. 磯崎叡

    磯崎説明員 新幹線騒音はいま先生のおっしゃったとおり距離が離れれば非常に小さくなるということでございますので、実は今度岡山以西につきましても、建設省の非常な御協力を得まして、大体五カ所くらいにおきまして、場所によって違いますが、一番ひどいところは両側十一メートル、あるいは片側五メートル片側十メートルというふうに緩衝地帯を設け、その緩衝地帯をなるべく都市計画道路あるいは府県道というふうなものにやっていただいて、そして道路緩衝地帯にいたしまして、その道路まん中新幹線を載せるということによって相当騒音か減るということも考えられます。具体的にいま五カ所ほどそういう工事をいたしております。どうしても片側工事用でもってなければいけませんので、今後それを地方自治体と御協議いたしまして、自治体の道路としてもう片側つくっていただくというふうなことによりまして、いまおっしゃったように自然に新幹線両側緩衝地帯ができるよう方向でもってまいりたいというふうに考えておりますが、やはりこれには建設省また地元の御協力が非常に要りますので、実施いたしました岡山以西の実績を見まして、今後できるだけ都市計画あるいは区画整理等と関連させてそういう仕事をしてまいりたいというふうに思う次第でございます。
  16. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いま成田新幹線が通るところの住民がいろいろ連動をやっております。その中でこういうことばが出ています。新幹線が通ることによって住民は何を失うかそれから何を得するか、この二つについて検討をやっております。そのことについて国鉄ではどういうふうに考えているか。通過するところの住民は何を失うか、何を得するかということについて、国鉄で何か資料があったら率直にこの場所で発表していただきたい、さように考えます。
  17. 内田隆滋

    内田説明員 成田新幹線につきましては建設公団工事を施行しております。したがって、現地の詳しい事情はわかりませんけれども計画によりますと、東京駅のいわゆる鍛冶橋を出てそれから隅田川を抜けて西船橋付近を通って現在のニュータウン、そして成田空港に至るということになっております。この間、いわゆる東京空港を結ぶということで駅はニュータウンに一カ所というふうに考えられております。したがってニュータウン開発につきましては非常な利益がある。もちろん成田空港につきましても、これは日本の国の玄関でございますので、これと都心を結ぶことによる利益は非常にあると思います。  それ以外の点につきましては、いわゆる騒音振動の問題、これは鉄道が通れば何らかのいわゆる騒音あるいは振動というのは避けられないわけでございますが、これらの問題につきましては、本委員会でもるる御説明いたしましたように、できるだけ環境とマッチして住民の皆さまの御迷惑にならないようなことで今後御協議を進めてまいりたいと思っております。
  18. 金瀬俊雄

    金瀬委員 新幹線をつくる場合にどこの場所でも、国鉄が全力をあげても仕事量の大体九〇%ぐらいが用地買収にかかる、つくる仕事はあと一〇%ぐらいだ、だから用地買収というのが最大の難点だ、そういうふうにいわれています。用地買収が非常に難点だということは、住民新幹線をつくる場合に通過する、要するに駅のある場所はとにかくとして、通過する場所沿線住民というのは非常に強い反対を持っておるという一つのあらわれになるわけです。そうしたものに対して国鉄が適切な処置をとらなかったような場合は、成田ような場合では成田空港を使う人とそれから東京都心に来る人だけの利便であって、途中の人のプラスになるということはほとんど考えられないし、また先ほど途中の千葉ニュータウンに駅をつくるといっても、その千葉ニュータウンの中に入る人というのはほとんどが空港関係した人じゃないか、そういうふうに私ども理解しておりますが、それに対して国鉄とすれば、ほんとうに昔から住んでいると申しますか、いまの通過する沿線住民に対する対策というのは、たとえば騒音とか電波障害とか、先ほど申し上げました幾つかの問題があります。そのほか交通量も問題でございまいましょうし、住民がほとんど利用できないということもあるわけです。そういうことに対する対策について、国鉄が現在この新幹線をつくる場合に、たとえば東海道線に「こだま」と「ひかり」が走っているように、とまる駅を相当直すとか何カ所かふやすとか、何かそういう考えがあるかどうか、その点についてお伺いします。
  19. 磯崎叡

    磯崎説明員 新幹線ができますことによりまして、通過だけの沿線方々にはいろいろな意味先生おっしゃったように御迷惑がかかります。これを積極的に減らさなければならない、これはもう当然でございまして、さっき申しました騒音とか振動とか、あるいは電波障害とか、いろいろな角度から検討しておるわけでございますが、そのほかにいま先生おっしゃったように極力地域の方が利用できるよう新幹線をつくるべきだ、これは当然なことだと私は考えます。  今度の成田新幹線は、中間にニュータウン一駅というふうに考えておりましてニュータウン一駅でいま計画いたしておりますが、ただ全体として非常に距離が短いために、もう一駅つくったらどうかというお話がございましたけれども、三分か五分足らずで行ってしまうというふうなところでございまして、ニュータウン以外にあまり大きな駅をつくると申しますか、大きな利用者がある駅は考えられないということで、現在ニュータウン一駅というふうに考えております。たとえば成田線とのジャンクションをつくるかどうかというふうなお話もございました。しかしいまのところはニュータウン一駅というふうに考えております。
  20. 金瀬俊雄

    金瀬委員 この成田新幹線につきましてはまた空港の問題のときに質問申し上げますので、続きまして、通勤線として重要な路線一つになっております総武線のことについてお伺いします。  これは津田沼まで複々線になっておりますね。これから先千葉駅まで複々線工事をやるわけですが、これはいつごろが完成の見込みであるか。それからもう一つは、新日鉄が出てきました君津駅まではいま複線になっております。それから地元から、館山まで複々線にしてくれというような強い要望が出ておりますが、その計画はあるかどうか。それからもう一つ蘇我駅から外房線の一ノ宮駅まで、これは沿線複線工事の問題ですが、用地買収がすでに終わっておるはずです。これはいつごろ着工するか。その点について御説明をお願いいたします。
  21. 磯崎叡

    磯崎説明員 千葉県の交通につきましては、実は非常に東京に近いのにいままで立ちおくれておりましたことは事実でございます。二、三年前から思い切って金を入れて、おかげさまで東京地下駅もできまして、東京まん中から千葉へ直通できるようになったわけでございます。それだけでは足りなくなって、総武線あるいはそのほか千葉全体の交通を便利にするということで、各線別に具体的な計画を相当つくっておりますので、いま私のほうで計画しておりますものにつきまして概略関係者から申し上げます。
  22. 内田隆滋

    内田説明員 津田沼千葉間につきましては現在工事に着工中でございまして、地元との設計協議も終わりました。完成は五十二年というふうに考えております。それから木更津館山間でございますが、この間は、先生承知ように昨年の七月に千葉総武線以外の全線の電化が終わりまして、いわゆる非常に近い区間でございますが、特急を入れたということで画期的な輸送改善が行なわれたところでございます。それで現在は君津までが複線化でございますが、今後の予定につきましては、いわゆる木更津以遠列車回数というものが線路容量に対して非常に余裕がございますので、今後地域開発に合わせまして線路の隘路区間から複線化を進めてまいりたいというふうに考えております。それから蘇我一ノ宮間でございますが、蘇我−土気の間は来年の夏に複線化完成する予定でございます。それから一ノ宮までの間につきましては引き続き複線化をやってまいりたいというふうに考えております。
  23. 金瀬俊雄

    金瀬委員 続いて御質問申し上げますが、千葉県からいま運輸省のほうに対しまして県営鉄道の認可の申請が出ておるわけですが、これはいつごろ認可する予定になっておるか、それが第一点。  それから第二点は、いま国鉄京葉線というのがございますが、これは御存じのよう貨物専用線として計画されたもので、五十一年が完成予定になっていますが、この沿線には五十五年までに人口十八万をこす千葉海岸ニュータウン計画ができ上がっております。これはほとんどの人が東京通勤する人によって占められるわけですが、この京葉線旅客に使うことができれば、貨物線旅客に併用することができれば第二の通勤鉄道ということになるわけで、地元ではこれは相当強く要望しておりますが、その点について国鉄なり運輸省はどう考えておるか。
  24. 秋富公正

    秋富政府委員 まず第一点の千葉県が申請いたしております県営鉄道でございますが、これは本年の二月に千葉ニュータウン周辺都市とを有機的に結合させる、こういう目的をもちまして、一つには本八幡印旛松虫間二十九キロでございます。それとさらにその路線延長といたしまして印旛松虫成田間十・二キロ、この二つ免許申請が出されております。この計画は、四十九年秋に小室千葉ニュータウン中央間、これを完成いたしまして、同時にこれは現在免許申請中でございます北総開発鉄道、これが北初富−小室間の免許申請をしておりまして、これと既設の新京成線、これをあわせまして直通運転する予定でございます。それから、さらに五十三年春には本八幡小室間及び千葉ニュータウン中央印旛松虫間、これを完成することによりまして、現在やはり免許申請中でございます東京都営十号線東大島−本八幡間、これとの直通運転をはかりまして、千葉東京直通運転をはかろうとする計画でございます。これにつきましては、ただいま申しましたように北総開発鉄道並びに東京都営十号線、これとの関連を考慮しつつ、現在輸送量あるいは収支採算運営計画、こういった問題につきまして検討中でございます。この審査が終わり次第、関係機関とも協議いたしまして、できるだけ早い機会に処理いたしたい、かように考えております。  それから第二の京葉線の問題でございますが、これは鉄道建設公団か現在建設中のものでございます。これは本来は貨物専用線として計画しておったものでございますが、最近東京湾埋め立て地利用方法、これが最初臨海工業中心ということから、かなりな部分を住宅地あるいは緑地、こういったものに変わってきておる状態でございまして、そういう意味におきまして再検討する必要があるか、かように考えております。
  25. 金瀬俊雄

    金瀬委員 この京葉線については、できる限り早い機会に、貨物だけでなくて併用線になるようにひとつ御配慮のほどをお願いしたい、さように考えております。  それから次に、東京湾横断道路のことについてお伺いします。  この東京湾横断道路には鉄道を通す計画があるのかあるいはないのか、あるいは東京湾横断道路というのは道路だけで鉄道は別に東京湾横断のことを考えておるのか、地元では鉄道を通すというような話もあるし、鉄道は別だというような話も出ております。こうしたものに対して国鉄ではどういうふうに考えておるか。御説明をお願いします。
  26. 秋富公正

    秋富政府委員 ただいま御指摘東京湾横断道路でございますが、これは所管といたしましては運輸省でございませんので、ちょっと正確に申し上げる権限もございませんが、いわゆるこの横断道路建設につきましては、東京湾におきます船舶の安全航行あるいは東京国際空港におきます航行保安施設の運用あるいは東京湾環境保全、こういったいろいろな面におきまして今後さらに検討が重ねられていくよう承知いたしております。これにつきまして御指摘のいわゆる鉄道の併設の問題でございますが、これはいま申しました横断道路、これとの一環として今後さらに慎重に検討していきたいと思っております。
  27. 金瀬俊雄

    金瀬委員 この問題については、すでに東京湾横断道路鉄道というので、鉄道が入らなければ横断道路というのはそう価値がない、鉄道を入れるのだ、そうしてその鉄道が内房線を横切って外房まで出て九十九里浜のほうを回って成田新幹線とつなぐようになっておる、将来はそういう大きな構想があるというようなことをたびたび会合で聞かされますが、そうした計画はまだ固まっていないということなんですか、あるいは計画しておるのですか。何かございましたら……。
  28. 秋富公正

    秋富政府委員 ただいま申しましたように、現在なおいろいろと各面から検討中でございます。
  29. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それでは内湾のことについてちょっとお伺いしますか、御存じのように、千葉県の海岸の工業化か非常に進んできました。今度また東京湾横断道路ができるということで、千葉県の房総半島の山の中の開発ということで非常に住宅開発が進んできております。そうした中で、久留里線あるいは木原線を接続する問題が起きてきておりますが、宅地開発とか住宅開発とかいろいろな開発の中で、この木原線と久留里線が持つ使命というのがだんだん大きくなってくるということは考えられますが、将来、わずかの間ですがそれを接続する計画国鉄にあるかどうか、ないとすれば何かその間をほかの方法でつなぐようなことを考えているかどうか、その点についてお伺いします。
  30. 内田隆滋

    内田説明員 久留里線と木原線の間は現在予定線になっておるわけでございます。今後これを鉄道建設するかどうかということは、先生も御承知ように、建設審議会で調査線あるいは工事線に繰り入れるということがなされないと、われわれのほうとしては工事ができないということでございます。漏れ承るところによりますと、運輸省のほうで今後国鉄鉄道網の整備ということでこれらのものを検討されるというように聞いております。
  31. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それでは、千葉県内の問題で最後に二つだけ御質問いたします。  それは総武線の場合、東京から千葉までの間に非常に乗り越しのお客が多い。乗っておる客の半分くらいが乗り越しのお客だ。私も国会へ来るときにそれで通ってきますが、車掌さんに話を聞きますと、ほとんど車掌さんが一人で、場合によると五十万以上の大金を持っています。乗り越しの人の金をとるわけです。とても数が足らない。それから不正でおりてしまう人もいるというような状況だ。これに対して、国鉄で車掌の増員を頼んでもそう増員してくれないというような状況が出ておるようですが、それに対する通勤対策の一環としてこういうものをどう処理していくかということが一つ。  もう一つは、勝浦方面線路が非常に老朽しているのと地盤が悪いのと二つで、全国的に見ても一番危険な個所じゃないかといわれていますが、この線路を改造する計画があるかどうか、その点についてお伺いします。
  32. 磯崎叡

    磯崎説明員 初めの御質問でございますが、昨年七月に東京地下駅から千葉へ直通するようになりまして、総武線のお客が非常にふえてまいりました。便利になりましたために、いまおっしゃったように切符を買わないでそのまま行かれるという方が非常にふえてきたことは事実でございます。できれば切符を買っていただくようにしたいのでございますが、なかなか設備その他の関係で、お乗り越しになったほうが便利なものですから、そういう方が多いのでございますが、車掌が相当な大金を持って非常に困っているというふうに私も聞いております。ことにこれから夏になりますとますます多くなりますので、具体的な列車をきめまして、そしてできるだけそういったロードの過重にならないように、また私のほうとしても運賃を逋脱されることがないようにしなければならないというふうに考えまして、具体的に取り上げてまいりたいというふうに思っています。  また、外房の線路につきましては責任者から申し上げます。
  33. 内田隆滋

    内田説明員 先生指摘のとおり、勝浦付近の線路は、安全には支障がございませんが、乗りごこちがやや悪いということで見劣りがいたします。この理由は二つございまして、一つは、先生承知ように、昨年、四十七年の九月と十二月に異常な災害がありまして、二十日間の不通の事故を起こした。それの応急復旧をやっておりますために線路保守のほうにやや手が回らなかったというのが直接の原因でございます。間接的には千葉輸送量がふえてまいりましたので、内房、外房とも千葉方から軌道強化をやっておりますけれども、それがまだ勝浦のほうまではいってないということが二つ目の理由でございます。  御指摘があるまでもなく、われわれもこれを承知しておりますので、ことしの初めから約六千万円の特別修繕費をかけまして道床更換をやっております。それから五十キロ化も逐次やっておりますし、ことに勝浦には中編成の機械軌道班もできまして整備できましたので、年内には見劣りのしないよう線路に修繕を完了する予定でございます。
  34. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それでは貨物の問題につきまして御質問申し上げます。  この三月六日に国鉄当局が、長い間隠してきたというか、伏せてきたと申しますか、旅客貨物別の経営実績を初めて公表いたしました。この問題につきましてはいままで何回か質問が出たわけでございますが、四十六年度の経営の実績を見ると、国鉄の赤字の元凶が貨物であるということがいわれてきたわけでございますが、その推定を完全に裏づけておるわけです。なぜ国鉄は、貨物が赤字の最大の原因であるということを隠してきたか、長い間伏せてきたその理由は何か、その点についてお伺いします。
  35. 磯崎叡

    磯崎説明員 私、何べんも御答弁いたしておりますけれども、いわゆる鉄道内部における客貨別の収支というのは計算のしかたにいろいろやり方がございまして、また部内的な前提をたくさん置いて計算いたしませんと、なかなか新幹線在来線というふうに簡単に割り切って計算するわけにはまいらないわけでございます。と申しますことは、一つ線路上を旅客列車と貨物列車が走るということでございますので、この費用の分担、いわゆる共通部分の費用をどう分担さすかということが非常に大きな問題でございます。  それから、もう一つ前提といたしまして根本的な営業方針の問題がございます。その営業方針によって、旅客を中心の営業にするか貨物を中心の営業にするかというふうなことによりましても相当原価に響いてまいります。  そういう二つ、三つの非常に大きな前提を置きまして、一応客貨別の収支を分けましたのは、これは私のほうといたしまして内部的に時系列的に見まして、たとえば投資の問題あるいは部内管理の問題等の資料にするため、内部的な資料として昭和三十年代の中ごろからつくっておったものでございますが、これをぜひ発表しろというお話でもって発表したわけでございますが、外に発表するためにつくった数字ではございません。外へ発表するためにつくった原価計算と申しますのは、いわゆる線区別の原価計算と申しまして、線路ごとにこの線はどうだ、この線はどうだという原価計算、これは決算報告書の財務諸表にもつけてお出ししているわけでございます。したがって、旅客貨物の今後の問題は、いままでのいろいろな前提を置いた原価計算を基磯にいたしまして、そうして今後の投資問題あるいは今後の営業施策の問題等をいろいろ考えていかなくちゃいけないと思います。その意味で、別に隠したわけじゃございませんで、部内資料でございますのでいままでお出ししなかったというわけでございます。  しからば、いま先生の御質問で一体何が原因なのだということでございますが、これにはいろいろ原因がございまして、日本貨物輸送というものは、船の問題あるいは自動車の問題、競争機関の競争が非常に激甚である。ことに昭和四十年代になりまして道路輸送が非常に急激に発展いたしまして、自動車の活動距離が非常に伸びてきたということが直接の原因でございますが、最近はいわゆるカーフェリー等によります相当な挾撃がございます。そういう意味で、今後の貨物輸送につきましては、私どもといたしましては、何と申しましても正確であるということが一番大事だ、その正確さがない、鉄道貨物輸送というのは非常に不正確である、いつ着くかわからないということが実は利用者方々から出ます一番大きな不平でございます。そういう意味で、いままでのなるべくたくさん集めて輸送するという方式から、なるべく直行方式と申しますか、旅客列車と同じような方式でもって輸送するというふうなやり方にいま考え方を変えると同時に、鉄道と申しますのは、駅から駅の輸送しかできないわけでございまして、トラックの持っているドア・ツー・ドアの輸送という、輸送にとって一番大事な手足の部分がないわけでございます。これを補充する意味におきまして、コンテナを用いてドアからドアへ運ぶというドア・ツー・ドアの輸送をぜひ鉄道でもってやらなければいけないということで、ここ数年間相当思い切ったコンテナ化をやっております。コンテナ化をいたしますと、とにかく荷主のドアでもって積んで、そして着のドアまで持っていくということになりまして、荷運びも少なければ速度も速いという意味で、ぜひ今後コンテナ化も進めてまいりたいと思いますが、そういう意味で、鉄道貨物の不正確さというのが一番の問題点であったと思います。
  36. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いま総裁の答弁によりますと、この資料は部内に発表した資料である。そういうことですが、部内というのはほとんど専門家ですわね。専門家に見せるのだから絶対数字に間違いない、そういうふうに判断できるわけであって、線路がどうのこうのとか、そういういまのよう説明は部内の専門家でない人に説明することであって、部内にはっきりこれだけの数字を出すということは、相当確信を持って正確なものとして出した、そういうふうに考えるほかない。そうなってくると、貨物の大赤字の原因がどこにあったかということを徹底的に明確にしないで、貨物の赤字を穴埋めするために旅客の運賃を上げるというふうに、あの数字を見れば一般の利用者は考えるわけです、少なくとも旅客は黒字なんだから。それで部内に発表したということは、しろうとに見せるのじゃなくて、専門家に見せるのだから正確なものであると考えざるを得ない。そうなってくると、赤字のしわ寄せを旅客に持ってきたというふうに一般の利用者は考えるわけですが、そういう一般の利用者国鉄はどういうふうにして納得させるかということについて御説明願いたいと思います。
  37. 磯崎叡

    磯崎説明員 あの客貨別の資料と申しますのは、先ほど申しましたとおり、部内の、時系列的に見て仕事をやる上についての資料でございますが、私ども部内におりますと、この資料はそういう前提だということははっきりわかっておるわけでございます。営業方針の問題あるいは具体的な共通費の分割問題そういうものが前提となってああいう数字が出ているということがわかりますので、それを前提として、むしろあれは時系列として見る、貨物なら貨物のずっと過去の趨勢を見るあるいは旅客の趨勢を見るというには役に立ちますが、客貨を一緒にして、しかもそれを運賃に直結するということには使えないわけでございます。  そういう意味で、部内的には使い方が明白になっておりますので、そういうものをつくっておりますが、しからば運賃といわゆるいままで出ている原価との関係でございますが、これは先ほど申しましたとおり、その前提が計量化できない、計算数字にならない前提でございますが、いかにしても計量化することができないという意味で、運賃と直結させるには、国鉄全体としてのコストが幾らかかる、したがって収入が幾らほしいというような、全体的な総合的な原価という見方をして運賃を決定せざるを得ません。  それから運賃そのものといたしましては、これは競争機関でございますから、ほかの競争機関との比較の問題あるいは過去のいきさつの問題等、運賃そのものの問題はいろいろございますが、客貨別の運賃問題と申しますのは、これは全体として国鉄の収支を償うかどうかという角度から見まして、それの客貨別の配分の問題は旅客旅客貨物貨物として、ほかの競争運賃でございますから、競争運賃としてのたてまえできめる、こういう考え方でございます。
  38. 金瀬俊雄

    金瀬委員 今度公表されたもの、先ほど部内のものだというわけですが、それを見ますと、四十六年度は旅客部門で十億円の黒字、貨物部門が二千百五十三億円の大赤字、貨物部門が赤字に転落したのが昭和三十九年度からであります。四十六年度までの赤字を、貨物部門を通算いたしますと九千二十八億円になります。この数字は間違いございませんね。——それからもう一つは、昭和四十六年度までの国鉄の累積赤字が七千九百九十六億円、そうなってくると千三十二億円金が余ることになりますね。その千三十二億円というのは旅客が払った金ですね。そういうことになりますね。そうなってくると、いままでの間に旅客が千三十二億の黒字を出しておるということになるわけです。これが事実だと総裁が認めるとすれば、一般利用者はいままでも高い運賃で乗っていたという計算になるわけです。千三十二億円国鉄に貢献したことになるわけです。そうすると、ことしになってから急に旅客運賃を値上げするということは一般の利用者に対して非常に過酷なことであって、これは了承できないことじゃないか。どういうふうにそれを説明するか。とにかく千三十二億、貨物が赤字に転落したときからも国鉄旅客でそれを補っておることになる。さらに今度の値上げで旅客に非常な過重な負担をさせるということなんですが、それに対する国鉄当局の考えを明確にしてもらいたい。
  39. 磯崎叡

    磯崎説明員 先ほども申し上げましたとおり、先生のいまお話しの計算の基礎になっております客貨別の黒字、赤字の問題は、鉄道内部における計量化のむずかしい問題を全部省いて計算いたしております。したがいまして、それは客貨別の運賃に直結するものではございません。すなわち時系列的に見て貨物の趨勢、旅客の趨勢を見るには役に立ちますけれども、それを客貨と比較いたしまして運賃に直結する性格のための原価計算ではございません。したがいまして、これによりまして一番はっきりいたしますのは、たとえば新幹線でございます。新幹線と申しますのは在来線と全く違った線路を使い、全く違った車両を使っておる。したがいまして、これはきわめて明白に原価計算が出てまいります。したがいまして、いまおっしゃいました数字の中で約三千億ないし四千億は新幹線から出てきておる数字であります。  そういう意味で、鉄道と申しますのは、原価計算をする場合にはコストと原価とそれの収入というものを合わせますけれども、なかなか合わない面がたくさんあるわけでございます。東海道線ようにあるいは各線のように、貨物列車と旅客列車か同じ線路を走っておるという場合には非常に分けにくい、そういう一つの前提を置いて計算しておるものでございまして、それが即客貨別の運賃に直結する意味の原価ではない、こういうことでございます。したがいまして、運賃を計算いたします場合には運賃法にきまっておりますとおり、国鉄全体としての収支を償うという意味で総合原価をきめる、その旅客運賃、貨物運賃のおのおのの内容はほかの交通機関との比較あるいは過去のいきさつ等、いろいろな角度から検討いたしましてきめるわけでございまして、必ずしもそこに出ました原価と直結する問題ではございません。
  40. 金瀬俊雄

    金瀬委員 総裁の答弁ですと、計算方式がきわめてむずかしいということですが、いまコンピューターとか、いろいろ計算方式というのが発達しています。そういう中で、国鉄だけがそういうものを使ってもなお計算方式がわからない、はっきりしないということはないと思います。簡単に言えば、貨物の大赤字に対する世論の反撃とかそういうものが非常に強いので、国鉄はそれを押えるために、いま総裁が言うような詭弁というか、そういうことでごまかそうとしているのじゃないかというふうに一般の利用者は考えるわけです。なぜかというと、出している数字がはっきりと国鉄の赤字は貨物に原因があるということを明確にしているわけです。その貨物の赤字を絶対直せるのだというふうな形を出さずに、ただことばだけでそれの計算方式がむずかしいとか、分離がむずかしいとかいろいろなことを言っても、これは納得できないのじゃないかと思うのですよ。その点については国鉄はもう少し国民の納得のいくような資料をきちんと出して説明する必要がある、私はさように考えます。  時間がございませんので前に進みますが、三十六年度から四十六年度までの十カ年間に、国内の全貨物輸送量に対するトラックを主体とする自動車の分野というのは一七%から四二・九%、二倍以上急増しています。これは認めますか。——そうですね。それから、国鉄貨物のシェアは三六・四%から一八・四%の半分に落ち込んでいます。これはトラックの輸送というのとちょうど逆になっていますが、この事実を総裁は、そうなっているということを認められますか。
  41. 磯崎叡

    磯崎説明員 おっしゃったことは事実でございます。
  42. 金瀬俊雄

    金瀬委員 そうなってきますと、国鉄貨物輸送量は三十六年度の五百七十五億トンから四十六年度の六百十三億トンとわずかしかふえておりません。この間に急増した貨物輸送量の伸びを見ると、国鉄貨物というのは、停滞しておったというよりもむしろ大幅に落ち込んできたということが考えられるわけです。横すべりじゃなくて落ちているのだ。現に、昭和四十六年度の国鉄貨物の収入はその前の年よりも二%減っていますね。こうした現象が起きてきた最大の原因はどこにあるのか、それからまたその間に食いとめることができなかったかどうか、その点について御説明を願います。
  43. 磯崎叡

    磯崎説明員 いま先生のおっしゃったとおり、過去十年間を見ますと全交通機関における国鉄のシェアはずっと減ってきております。これはいろいろな見方がございますが、国鉄サイドだけから見ますと、まず第一に日本の石炭の生産量が三十九年をピークにしてずっと減ってきております。私のほうの一番最盛期は国鉄貨物輸送の中で石炭が約四分の一でございます。その石炭が現在は一千万トンちょっとしかないということで、石炭の減ったものを雑貨で埋めてやっと現状を維持しているというのがいまの横ばいの原因でございまして、日本経済がこれほど伸びているのに国鉄輸送が伸びていないのは石炭の減ったものをやっと雑貨で埋めて横ばいになってきた、こういうふうに考えなければいけないと考えます、ただ、それを外から見ますと、やはり自動車の発展、ことに国鉄の運賃制度が非常に古い、いわゆる従価等級制度で、値段か高い貨物ほど運賃が高いということになりますと、値段の高い貨物は自然にトラックに流れます。値段の安い貨物だけ国鉄に残るということでございまして、運賃制度の古さというものがトラックへの転移、いわゆる等級の上の貨物が非常にトラックへ移りやすいということでございます。そういう意味におきまして、鉄道貨物輸送というものは、量的に見ましても、質的に見ましても横ばいないし横ばい以下であるという現状になっているわけでございます。  しからばこれをいままでどういうふうな対策で防いできたかということになりますと、たとえば石炭の減少、これは国鉄としてはいかんとも防ぎようのない問題でございまして、これは出炭の減、エネルギー革命の転換ということに順応さぜるを得ない。石炭のかわりに油という問題かございますが、石炭の輸送量に比べますと油の輸送量はごく微量でございます。ほとんど海岸回りで小さいタンカーで行くということになりますので、なかなか石炭の穴は埋められない。結局われわれとしましては、雑貨類あるいは生鮮食料品をどうやって国鉄に引きつけるかという方法しかないわけでございます。  それの方法といたしましてまず考えられるのは、コンテナ化あるいはフレートライナーということによりまして、ドア・ツー・ドアの輸送、早い正確な輸送をするという方法によりましていままでここ数年間やってきたわけでございますが、この方向には私は間違いないというふうに考えております。今後いままでのような古い鉄道、いわゆる宿場送り的な鉄道輸送を改めて、そうして直行輸送体系に変える、そうして中身はコンテナ化して、ドア・ツー・ドアの輸送をする。こういう方式によって貨物輸送を今後よくすると同時に、いま幹線輸送力はほとんど旅客優先に使っております。したがいまして、かりに新幹線ができますれば、新幹線在来線が並んでおるところにつきましては、在来線の優等列車を全部新幹線に持っていってしまう。そうして在来線通勤輸送とそれから貨物輸送に使うということによって、貨物輸送輸送力全体をふやすというふうな方法によりまして、今後の貨物輸送の改善をやってまいりたいというふうに思っている次第であります。
  44. 金瀬俊雄

    金瀬委員 先ほどから総裁が説明していますように、旅客の列車優先ダイヤを組んでおる、そういうものによってある程度貨物にしわ寄せがきておる。それからこの十年間に石炭とか砂利とか生産物資とかあるいは木材とか、そうした第一次産物の荷が減った、そういうことは一応認めるにしても、その間に高度成長下の産業やあるいは社会構造の変化に対応して貨物輸送体系というのを合わさなかった、また合わせる努力をしなかったということは、これは国鉄の幹部の経営責任がきわめて大きいと私は考えます。そうした責任に対して、考え方によるとこれは経営者失格であるというふうに考えざるを得ないわけですが、大臣はこういう国鉄の運営に対してどう考えておるか、御答弁をお願いします。
  45. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 内容については総裁から詳しく御説明したとおりでございますが、今日このよう貨物輸送の現状、これは決していい姿ではないと私も思っております。でございますから、今度の十カ年計画におきましては、国鉄の今後の経営の基本方針の一つといたしまして、貨物輸送体制を整備いたしまして、そうして利用される荷主の方々の利便をもっと上げる、つまり一言でいいますとサービスを向上させる、そういうことによりまして、いまこのままでまいりますとますます道路輸送、自動車のほうに持っていかれそうな貨物輸送国鉄のほうに引き戻す、できるならばシェアをもっとふやしていくという方向努力させなければならぬということはおっしゃるとおりだと考えております。  これについては長い間の国鉄の経営方針が、先ほど総裁か申しましたように、どうしても資力が足りなくて設備投資のほうも旅客に集中しがちであったものですから、貨物のほうが第二義的になったということも、これはやむを得なかったかもしれませんが、運輸省国鉄ともにこの点については非常に反省をいたしておりまして、今度の再建計画の中におきましては、先ほど申し上げましたように、一つの柱として利用者の便宜をはかり、サービスを向上させまして、国鉄貨物のシェアをもっとふやしていくということに一つの焦点を向けて努力をさせたいと思っておる次第でございます。
  46. 金瀬俊雄

    金瀬委員 これが普通の会社だとしたならば、その場合は経営者はほとんど引責して辞職しなければならないよう状態です。国鉄幹部は自分の経営怠慢による責任をたな上げして、赤字だから運賃を値上げしてくれということは、これは非常に無責任である、さように考えます。だから国あるいは政府は国鉄幹部の経営責任というものに全く触れなくて、運賃の値上げだけをしろということなんですよ。大臣国鉄幹部の責任をどのように考えておるのか。あるいは国鉄を監督してきた運輸省、あるいは監督したり指導したりしてきた人たちの赤字を出した責任について、どういうような責任をとらしたか。これは国民だけに運賃値上げによって責任をとらせる、そういうことでしょう。国民だけに責任をとらせて、自分たちは親方日の丸で知らない顔しておる。そういうばかな経営というのは民間では絶対許されないことだと思う。それに対して大臣の明確な考えをお聞きします。
  47. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 この問題も再三お答えを申し上げたとおりでございますが、運輸省といたしましても、国鉄といたしましても、先ほども申し上げたように、過去の貨物輸送のあり方につきまして反省をいたしておるのであります。幸いにしてこの再建計画が両院で御承認をいただきました場合には、心を新たにしてこの当面の重要な問題に取り組んでいかなければならぬと思っておる次第でございます。  この再建計画をつくりますときにも、これは国鉄総裁からは言いにくいでありましょうが、過去のそういったことに対しまして十分に反省をいたしまして、今後はこういう貨物輸送の体制を整備して、国鉄の営業成績をあげていこうということを決心いたしておるわけでございますから、今後私どももこの方向に向かいまして国鉄を督励し、また運輸省関係部局を督励いたしまして、御期待に沿えるような体制でもって貨物輸送の重責を果たすように指導してまいりたいと思っております。
  48. 金瀬俊雄

    金瀬委員 総裁から先ほど、いまの国鉄は荷物がいつ着くかわからないというような話がありました。そのことに関連して——こういうことを私はきょう申し上げるつもりではありませんでしたが、国鉄総裁からそういう話がございましたのでちょっと申し上げます。  これは讀賣新聞の三月十一日の投書欄に書かれた記事ですが、総裁がいま言ったことと同じことが出ています。それは国鉄の「貨物の赤字は当然ズサンな管理、輸送」という題で書かれています。   国鉄貨物部門で二千百五十三億円の赤字が  出たとの発表がありましたが、それは出るべく  して出たものだと思います。   昨年の暮れ、田舎からミカンやイモと一緒に  初孫の一歳になる娘に綿入れの着物を送ったと  のことで首を長くして待っておりましたが、い  つまでたっても音さたなし。とうとうしびれを  切らし、もよりの駅に電話しましたが、駅まで  来るようにと言われました。そこで荷物の置い  てある部屋に通されましたが、果物の腐ったに  おいが立ちこめ、荷札が取れたり、ひもが緩ん  だりした荷物が山積みされていました。   このようなズサンな管理、輸送する無計画さ  では、赤字になるのは当然です。またこのため  に賠償金を払っていれば赤字はふえるばかりで  す。国鉄はこうしたムダをなくし、赤字を減ら  す努力をしてほしい。こういうことが投書欄に載っております。  この投書の体験から指摘した事実は、結局国鉄は親方日の丸だということをはっきり出しておる。こうしたことは国鉄全体の貨物の経営の中にあるのじゃないかということがあるわけですが、これに対してこうしたものをどういうふうに改善していったらいいかということについて、総裁の見解を聞かしていただきたい。
  49. 磯崎叡

    磯崎説明員 私もその投書を拝見いたしました。確かにそういう事実はあっただろうと思います。結局いまの国鉄貨物輸送のやり方、あるいは小荷物も含めましての貨物輸送のやり方が、何と申しますか、なるべくまとめて、そして量がまとまったところで送るというふうな感じの輸送のしかたをいたしております。ことに最近いろいろ改善する前は、先ほど申しましたとおり非常に到着日時が不明確だった。それをどうしても明確にしなければいけないということで、先ほど申しましたとおり最近は全体の三割くらいのものはきちっと到着時日が明確になっております。それには私どもといたしましては、どうしてもこれをもっと単純な、簡単な輸送体系にしなければいけない。百キロに一回ずつ操車場に入っていたのではなかなか到着時日は明確にならない。あるいは災害がある、あるいはストライキまがいのものがあるということで輸送障害が出てまいります。そういうふうなこともありまして、きちっとした輸送体系をつくる。将来われわれのほうといたしましては七割ないし八割をきちっとした到着日時にしたいというふうに考えております。  今後の問題といたしましては、やはり全体のうちの相当部分がいつ送れば何時何分に相手方に着くということがわかるようにする。そういうことの必要ないものもございます。必要ないものはいたしませんが、ことに生活必需品等につきましては、たとえば市場に入る時間でも非常に大事でございますし、一般の方々のドアに着く時間も非常に大事でございます。そういう意味で、なるべく到着日時の明確化されている分量をふやしていくという方向に持っていかなければならないというふうに考えておりますが、いま御指摘の新聞の投書のような事実は私は確かにあったというふうに感じまして、非常に申しわけないというふうに思っております。
  50. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いま総裁から話がございましたが、そういう国鉄の現状であれば、運賃が国鉄よりは高くても確実に正確に届けてくれる一般の民間の通運業者のところに荷物がふえていく、回っていってしまう。それから、国鉄がどうしても貨物を再建するということであれば、いまのサービスを徹底的に改善しなければならないということは、これはだれも認めるところです。それから値上げだけで解決できるということは考えられません。結局逆に貨物の値上げをしたらもっと荷物が一般のほうに逃げるのじゃないかということも考えられるというのが現実になってきます。そうなってくると、運賃も値上げすればお客はふえるということはとても考えられない。減ると思うのですね。貨物も減るということになってくると減収になりませんか。これはどうなんですか、確実に増収になるという確信がございますか。これは大きな問題だと思うのですよ。民間業者は非常にサービスの徹底につとめる。少しでもいいからというところで利益をあげているのですよ。国鉄は頼まれたら運んでやろうというような殿さま営業のようなことをいまやっておるわけですよ。これは昔もいまもほとんど変わらないじゃないかと考えられるわけです。  こういうことについて国鉄は、三浦議員からも話がございましたが、大企業については非常に徹底してサービスをやっている、民間一般の人に対してはサービスが徹底してないということでは、これは赤字がだんだん累積していくということが考えられますが、それに対して国鉄総裁は自信を持って解決できるという考えがあったらここで披露していただきたい。
  51. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 経済原則だけからまいりますと、運賃を値上げすれば利用率は減る、収入は全体として減るのがあたりまえじゃないか、これはもうそのとおりでございます。ただ国鉄の現状をごらんくださいますと、先ほど御質問がありましたように、非常に貨物部門の設備投資もおくれている、したがってシステムの開発も近代化されてない、だんだんサービスが低下するものですから——どもからいいますと中距離、長距離貨物輸送というのは国鉄が担当して、これは経済的に利用者のほうからいいまして、つまり運賃の関係からいっても当然だろうと思います。ところがその単なる経済原則だけで動いてないということは、おっしゃるようにサービスが近代化されてない、したがって利用者国鉄を利用するよりもトラックを利用するという傾向がひどくなったものですからこういう結果になっておるのでございますが、今度の再建案ではそういう点に特に着目いたしまして、まず第一に貨物輸送についての設備を近代化し、利用者の納得が得られるような、利用者が十分これを利用されて効果があるというようなところまで持っていきたいということによりまして、失われた国鉄のシェアというものは取り返せるというような考えを持ちまして、ここで思い切って設備も近代化するし、サービスの内容についても考慮をいたしまして、できるだけ利用者が御満足を得るよう方向へ進めたい、こういうことでございますから、おっしゃるように経済原則からだけ見ますと、運賃が上がると減るじゃないか、これはもうそのとおりでございますが、若干の運賃を上げることによりまして、いま申し上げたよう貨物輸送の近代化をはかって、システムを開発して、そして利用者方々にそれを提供するということによって、総体的には貨物輸送量もふえるし運賃もふえるようにしなければならないということを考えておる次第でございます。  あとの問題につきましては国鉄総裁から御答弁いたします。
  52. 磯崎叡

    磯崎説明員 いま大臣が言われましたとおり、やはり運賃を上げれば輸送量は減ってまいります。これはもう当然のことだと思いますが、その辺はいろいろ計算いたしまして限界運賃と申しますか、それに近いものをきめて今度お願いしているわけでございますが、それと同時に、やはり先生から先ほどから御指摘のございました輸送の内容をよくしなければだめだというふうに考えます。そして輸送内容をよくするためには、やはりさっき申しましたとおりに運賃だけの問題ではなくて、正確な輸送をするということが一番大事だというふうに考えます。したがいまして、今度の設備投資の中では相当そういう意味の一般的な輸送内容を正確にするというふうな投資をだいぶたくさん含んでおります。今後やはりそういう新しい貨物輸送をしない限り、古いやり方の貨物輸送では先生指摘のとおり荷主は逃げてしまうと思います。利用者は逃げてしまうと思いますので、今後極力利用者国鉄へ引きとめる、あるいは新しく利用者に戻ってきてもらうという意味におきましても貨物関係の設備投資をして、そして全体の輸送能率があがるようにしなければいけないというふうに考えておる次第でございます。
  53. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いままでの大臣あるいは総裁の答弁によると、いままでの国鉄の運営そのものが非常に怠慢であったということになるわけで、これから先改善をして直していくということです。そうなってくるといままで国鉄の経営してきた無能な政策というか怠慢によって、国鉄は繰り越し欠損が一兆千八百億円という額になっております。これは非常にばく大な額ですが、こういう赤字を出したことについて経営責任をとることもなくて、運賃の値上げをもって利用者にこの負担を転嫁しておるのが今回の法案である、さように考えてよろしゅうございますか。
  54. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 いまのお話の御意見はそのまま賛成するわけにはまいりません。そういうようなことでございますから、今度は運賃の若干の値上げをさせていただいて、そしていま国鉄の非常な窮迫している財政を救い、これは財政を救うだけが目的ではありませんで、現在の社会情勢に応じた旅客貨物両方通じましての設備を整えまして、そして国鉄が国民の皆さんに納得をしていただけるようなそういう近代的な体制を整えようというのが目的でございますが、それと同時に、政府におきましても従来と違いまして今度は相当思い切って助成をすることにいたしておることも御承知のとおりでございます。そういったものと国鉄の内部の節約というようなものを合わせまして、この三者が一体となって国鉄の再建をはかっていこうという趣旨でございますから、この点は何回も御答弁をしたとおりでございますが、われわれの意図するところを御了承をいただきたいと思います。
  55. 金瀬俊雄

    金瀬委員 私は、国鉄が過去赤字に転落してから今日まで最善の努力をしなくてきたということを考えるわけですが、四十三年から財政再建整備計画によって政府から補助金を受けておるわけですが、政府から補助金を受けておるということは、民間の会社でいえば会社更生法の適用を受けておると同様な事態に落ち込んできたということになるわけです。そうした時点で、国鉄はだれか、こういうふうに赤字にしてしまって悪かったということで国鉄をやめた人がいるかどうか、責任を持って、申しわけなかった、私はやめますという人がいたかどうか。これは民間の会社ですと、こんな大赤字の連続しておる場合にはだれかかわるわけですよ。そういう申しわけなかったということでやめた人がいるかどうか。もしいたら、その人の名前をここで発表していただきたい。
  56. 磯崎叡

    磯崎説明員 たいへんむずかしい御質問でございます。私のほうといたしましては、私の前の総裁の石田礼助氏は一期半で途中でやめました。これはある程度、そういう問題を感じてやめられたことというふうに考える次第でございます。
  57. 金瀬俊雄

    金瀬委員 石田さんがやめた理由は責任を感じてやめたというふうに私どもは考えません。むしろ国鉄そのものが官僚組織と申しますか、そうしたものによって自分の考えを国鉄の中に生かすことができないということでやめたのじゃないか、さように考えております。  私は責任を感じてやめるということよりも、むしろ、それどころではなくて、適当な時期が来ると天下って関連会社へ就職するというのがほとんどである、そういうふうに考えております。いま四十二年度から四十六年度までに五カ年間にわたって国鉄の幹部なり——最高幹部ですね、常務理事及び局長で退職した者が六十九名おります。その九〇%が国鉄関係の深い企業に再就職しておる。これは責任を感じておるということは考えられない。たとえば国鉄工事を請負っておる建設会社に十一名行っております。その人たちはその建設会社の重役とか相当重要な役職について、国鉄から仕事を獲得するために営業活動というのをやっておる。そうした場合に、国から多額の工事補助金をもらって工事を進めておる国鉄、その国鉄出身者の幹部が、国鉄から大量な工事を受注しておる建設会社の重役に天下っておる。そのことについて大臣はどう思いますか。普通なら責任を感じてやめなければならない人が、感ずるどころか定年が来るとやめて国鉄にいた当時よりももっと収入の多い民間会社に入っておる。そうして国鉄から仕事を取るために活躍しておる。これは責任を感じておるのかどうなのか。そのことについて大臣はどういうふうに考えるか。
  58. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 一人一人の人が責任を感じておるかどうかについては確かめておりませんから、私から答えができませんけれども、しかし長い間国鉄の事業に従事してきた人たちが、いつでも一自分の面だけ考えて、国鉄はどうなってもいい、自分さえ将来よくなればいいのだという考え方で関連の事業に再就職しておるとは考えられません。国鉄も、場合によりましては運輸省も、そういった方向ではおそらく同意をしないだろうと思います。今日出資事業といい、付帯事業といい、たくさんございますが、それらに国鉄の経歴を持った人が就職しておりますことは、申すまでもありませんが、出資事業でも、付帯事業におきましても、いずれもその事業の内容が、国鉄の事業がよりよくなるために、あるいは利用者方々がより便利になるようにというような事業でございますから、やはり国鉄の事業に相当の経験を持ち、どうしたら国鉄の事業がよくなるか、あるいは利用者の便宜をよりよくはかれるだろうかという観点に立った事業に就職しておるものと考えるのでありまして、適任者を選んでおるものと考えるのでございます。  具体的な問題につきましては、だれがどこに行っておりますか、私まだ十分に調査をいたしておりませんので、この点につきましては国鉄の総裁から御答弁をいたさせます。
  59. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いまのような現状では、国鉄工事のあり方というのが公正に行なわれているかどうかについて、これは世間の人が非常に疑いの目を持っています。国鉄の先輩であって、現在どこかの建設会社につとめておる人が、営業活動という名前で、もとの職場にたずねてきて、いろいろなことを頼み込まれた場合に、前に世話になった上司のいうことであるから、断わることはなかなか困難だ。そうしたところに情実が生まれてくるということは、十分考えられます。そのことについて国民は非常に不快の念を持っていることが考えられますが、国鉄総裁はそうした国鉄のいまの工事のやり方、発注方式とかいうものについて、どう考えているか。
  60. 磯崎叡

    磯崎説明員 私のほうでもいろいろな工事を発注し、それには私ども自身の工事能力はございませんから、民間の工事能力を使うのは当然だと存じます。その際に、工事をする会社の中に私のほうにいた人がいるかいないかということは、全く関係ございません。あくまでも私のほうの公正な見積もり価格によりまして、そして入札その他の方法によってやっているわけでございまして、いわゆる人がいるからどうこうということは、一切ないということをはっきり申し上げます。
  61. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それでは国鉄当局に御質問しますが、四月の二十一日の朝日新聞に掲載されました国鉄の電気関係工事のことですが、電気工事が進められているうちに、工事に不届きなことがあって、労務者との間に争いが起きて、一たん埋設したものを掘り起こしたということがありましす。そのことについて、その後どう処理し、どうなったかについて、私も大体承知していますが、国鉄ではそのことについてどう始末したか、その点についてお伺いします。
  62. 内田隆滋

    内田説明員 先生指摘ように、下請間にトラブルがございまして、それによりまして世間をお騒がせいたしましたことにつきましては、深くおわびをいたします。  この事件は、その後会社及び下請間で話し合いが成立いたしまして、仕事が一時中止しておりましたが、無事仕事を完了いたしました。竣工は六月六日ということで、成果物、いわゆるケーブルの敷設その他の工事でございますが、滞りなく終わっております。
  63. 金瀬俊雄

    金瀬委員 この事件は元請が千代田工事という会社ですが、この会社が国鉄からまず工事を受けて、すぐ下の友電気という電気会社に下請に出した。その友電気というのがピンはねをして神山組に出して、その神山組というのがその下の湯本とか小松とかそうした人たちに仕事を請け負わせています。  そうしたことを考えてみると、元請から下請まで三段階ある。全部、その間でピンはねしながら下に出している。その中で友電気というのはその当時は、あとであわてて登録をとったらしいですけれども、この事件を起こしたときは登録もとっていない業者だということになっております。こうしたやり方を見ると、はたして国鉄工事そのものがりっぱに行なわれているかということについて疑問を持つ人が多いわけですよ。こうした電気工事のやり方を見ると、新幹線を含むすべての国鉄工事そのものがこうしたやり方じゃないか。元請があって、下請があって、だんだん下におろしていく。途中でピンはねをしている。その元請の会社には国鉄出身者が入っていて営業活動をやって、国鉄仕事をとっている。これは明白なことなんですよ。こうした国鉄工事のやり方、国鉄の予算の使い方については、一般の国民は非常に不信感を持つと思うのですよ。このことについて工事関係者なり国鉄総裁から明確な答弁をしていただきたい。
  64. 内田隆滋

    内田説明員 先ほど申し落としましたが、千代田工事の下請の管理が非常に悪かったわけでございまして、いわゆる建設業法の登録をしていない業者を使ったという点、あるいは工事の推進に支障を来たしたというような点につきまして、私のほうとしては、一カ月間の確認書効力停止をいたしました。なお、これに基づきまして、これは東京第一電気工事局に対してでございますが、全国的に一カ月間の指名停止という処分をいたしました。なお監督のほうにもこれらのことの管理に不備があったという点で厳重注意をいたした次第でございます。  請負工事の現状につきましては先生承知のとおりでございまして、いわゆる元請会社がある程度専門、専門に従って下請業者を使ってやるというのが現状でございます。私のほうといたしましては、契約書あるいは仕様書、あるいはそれに添付してある図面に従いまして、所定の建造物なり成果物を得るという点につきましては、これは元請、下請を問わず、厳重な監督をいたしております。したがって、できた成果物につきましては私のほうとしては自信がございます。ただその工事のやり方についてどういう方法でやるかということにつきましては、会社の企業努力その他を尊重するという意味で、あまり深くは突っ込んでおらないということでございます。
  65. 金瀬俊雄

    金瀬委員 建設省の人が来ておりますので、建設省に御質問いたしますが、業者の登録とか監督とかそうしたことについては最終的に建設省が責任を持つものかどうかは、私どもはっきりわかりませんが、下請工事のこうしたやり方、元請があって、ピンはねして、だんだん下におろす、三段階も下へおろす、そうしたやり方を建設省は認めて  いるのかどうか。
  66. 井上孝夫

    ○井上説明員 お答え申し上げます。  建設業法では、発注者を保護するために建設業者が工事を適正に施工するというよう意味から、登録を受けるないしは現改正法におきましてはそれを許可制に切りかえております。建設工事が発注者の利益のためにも、国民の全体の福祉のためにも適正に工事をやっていかれるというためには、第一元請がすべて工事完成については十分な責任を持てという仕組みになっているわけでございますが、現在四十六年から改正を見ました建設業法におきましては、下請業者という面があらゆる意味で、工事の適正な施工の上でもあるいは労働福祉の上でも十分な観点を持っております。したがいまして、下請の保護規定というのも改正建設業法の精神で十分な規定が盛られたわけでございますが、いまお示しのいわば重層的な下請については、不必要な重層下請というものはあってはいけないというのが私どもの指導方針でございます。もちろん元請が工事完成責任を持ちましても、いわゆる一式工事におきましては専門工事は必要的に下請に出さなければなりません。これは法律上そういうことになっておりますし、そうでない場合におきましても、民間同士の工事の請負ではございますけれども、不必要な重層下請はできるだけ避けろというような指導をいたしておるような次第でございます。
  67. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いまと同じ内容でございますが、会計検査院はこうしたものに対してどういうふうに会計検査をして、こういうことを認めているのかどうか、会計検査院の意見をお伺いします。
  68. 中村祐三

    中村会計検査院説明員 国鉄工事の検査につきましては、これは国鉄に限らず工事一般について言えることかと思いますが、工事設計、それから工事費の積算、そして工事の出来高というような各段階についての検査を施行しておるわけでございます。特に請負業者との関係におきましては、最後の段階の工事の出来高の検査が関係があるかと思いますが、これにつきましては私ども工事のできぐあいということがまず第一の検査の眼目でございまして、ただいまお話しになっておりますように、その工事を元請がやったか下請がやったかということは、その工事のできぐあいによりまして、かりに工事のできぐあいが非常に悪かった、その原因は下請にやらしたことにあったということがありますれば、それについての指摘はいたすということになるかと思います。現段階におきまして、国鉄工事の検査につきましては、特に下請によるそういうふぐあいというようなことは私どもとしては発見しておりませんので、もし将来そういう問題が非常に多くなるということがあれば、国鉄当局に対してその契約の方法その他について考え直していただくというようなことになろうかと思います。
  69. 金瀬俊雄

    金瀬委員 元請があって、三段階にも分けてピンはねして下請に出すということがよろしいのか悪いのか、それだけでけっこうです。建設省と両方そういうことを認めるということであれば、それは全国的に認めるということになる。そういうことはいけないということであればいけない、三段階も四段階も下請に出すということは当然のことであってけっこうだということなのか、だめだということなのか、イエスかノーかだけでいいです、そんなむずかしいことを言わないで。
  70. 井上孝夫

    ○井上説明員 お答え申し上げます。  一括して建設業者が請け負った工事を一括して他人に下請させるということは、発注者の承認がない限りはいけないということになっております。
  71. 中村祐三

    中村会計検査院説明員 ただいま建設省当局からお話しございましたように、国鉄の場合も、その工事の請負契約の条項の中で、一括下請にする場合には報告をしなければならないという条項がございますので、そういう条項に該当した場合には、国鉄としてもどこに下請を出しているかということを承知して監督ができるかと思いますが、下請の実情というのが、下請ということばによりましても、建設業上の業界における俗語で言いますれば切り投げといったようなことで、単に一部だけ出しているというような場合にはいまの条項には該当しない。そういう場合には報告を徴す義務もございませんので、国鉄当局においても、そういう状況がわからないということになっているのじゃないかというふうに思います。
  72. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いまの話で、一括で下請に出す場合には元請の承認が必要だ、ただしそうでない部分請負の場合には、たとえば一〇〇のうち一〇%くらいを下請に出すという場合には承認を必要としないということですね。そうなってきますと、この千代田工事の場合は友電気に渡し、神山組に渡し、その下に渡っているいう段階になっているわけです。しかも友電気というのは登録をとってない業者である。この事件が起きてから、あわてて国鉄が指導して登録をとらせたという事実がある。これは国鉄も認めている。こうした場合に、この工事そのもののこういうやり方が正しいことであるか正しくないか、いいことであるかどうかということは、会計検査院も建設省もわかると思う。その当時は友電気というのは登録をとってないんだ。登録をとってない人にやらせている。こういう国鉄工事のやらせ方を会計検査院はやむを得ないというふうに考えるのか、まずいと考えるのか、あるいは建設省はどう考えるのか、その点をはっきり言ってください。
  73. 井上孝夫

    ○井上説明員 お答えいたします。  お示しの具体的な事案におきましては、元請業者がその下請に未登録業者を使ったという点において、元請の業者がはなはだ遺憾だというふうに考えるわけでございます。私どものほうとしましても十分な調査をしたいと思います。
  74. 中村祐三

    中村会計検査院説明員 ただいまの東金線のお話、お示しの事実で、未登録の業者に下請させたという事実がはっきりわかっておりますれば、これは好ましい状態ではないというふうにお答え申し上げます。
  75. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いま建設省と会計検査院、大体同じような意見だと思いますが、こうした事態が国鉄の中に起きておるということは、ほかの新幹線工事あるいはその他の工事についてもある程度問題があるというふうに考えられるわけです。  ここで国鉄の電気工事を主として請け負っている日本電設工業あるいは新生電業あるいは千代田工事、この三社にどの程度の国鉄出身者が行っておるか、それを国鉄総裁、知っておったら言ってください。
  76. 内田隆滋

    内田説明員 日本電設でございますが、これは職員の約一六%が国鉄の退職者でございます。新生電業が二二%、千代田工事が二七%ということになっております。
  77. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それはずっと下の工事をやっている人まで入れてですよ。重役、役員は何%行っているか。
  78. 内田隆滋

    内田説明員 日本電設が役員二十一名でございまして、そのうち国鉄の退職者が十五名、それから新生電業が十三名のうち八名でございます。千代田工事が十八名のうち十四名でございます。
  79. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いま説明があったよう国鉄の出身者が大体七割以上その会社の役員になっているのですよ。その会社が国鉄仕事を請け負って、しかも不正工事をやっておる。そうしたことが国鉄の信用を非常に低下させるということは事実です。それからもう一つはそういう業界と国鉄との間でくされ縁ができる、これはだれが考えてもうなづけることです。こうしたことが望ましい姿であるかどうかということは、国鉄総裁どう思いますか。こういう工事の発注方式、七割も国鉄の出身者が重役をやっておる、そういうところに工事を発注して——あなたは国鉄出身者かいたほうが技術を生かしたりいろいろなことで仕事がうまくいくというふうに考えているかもしれませんが、こうした事実を考えてみて総裁はどう思うか、総裁の考え方を……。
  80. 磯崎叡

    磯崎説明員 いまその三社の御指摘がございましたが、先ほど御指摘のいわゆる下請の問題、それが重畳的になっていることは決して好ましいことではないと思います。ことに無登録業者を使っているということは非常にけしからぬわけで、その意味の処罰はしたわけでございます。  また、いまの電気関係の三社につきましては、これはあくまでも指定業者として、そして個々の工事につきましてはいわゆる指名競争入札ということをやりまして入札さしておるわけでございまして、冒頭にも申し上げましたとおり、私のほうは私のほうの先輩が何人いようと、そんなことは関係ございません。あくまでも電気のプロパーの仕事として、電気技術者として適性なりやいなや——そういう重役がいるかどうかということは判断の基準にはなりますけれども、よけい人がいるからどうこうということは一切ございません。
  81. 金瀬俊雄

    金瀬委員 こういう国鉄出身者が七割も重役を占めている会社が三つある。国鉄の電気工事はこの三つでほとんど独占しているということも事実ですよ。もし国鉄出身者がいない電気会社が仕事をやっているとすればどういう会社がやっているか、その事実をここに出してください。そういう会社があるとすれば、国鉄の電気工事の資料を全部出してください。そうすればあなたの言っていることがほんとうかうそかわかる。そんなことは絶対ない。もし国鉄出身者かいないところで国鉄の電気工事をやっている業者があったら何社かあげてみてください。それからいま言った三社が国鉄の電気工事の何%をやっているか、これは資料を出してください。非常に重大問題なんですよ。
  82. 磯崎叡

    磯崎説明員 鉄道プロパーの問題につきましてはいま御指摘の三社、これは主として鉄道の電気工事に非常に経験の深い業者でございます。しかしその他一般につきましては一般の業者を使っていることはあると思います。私はいまここで正確な数字を持っておりませんが、あると思います。しかしいまの電気業界と申しますのは、鉄道の電化とかあるいは通信工事とか相当専門化されていることはもう先生承知のとおりでございます。したがいまして、私どもといたしましては、今後の問題といたしましてそういう点を十分留意した上で今後の運営をはかっていかなくてはいかぬというふうに思っております。
  83. 金瀬俊雄

    金瀬委員 電気関係工事につきましては、総裁、これは国鉄出身者がいる会社で独占しているということは事実なんですよ。私も調べました。資料がありますが、ここでは発表することを控えますけれども、やはり国鉄としては厳正に仕事をやっているのだということを国民に示すべきであると思うのです。そのためには、国鉄出身者がいないとか少ない会社でも、電気工事技術的に優秀であると認めれば使うべきであると私思うのです。国鉄出身者がいない会社というのはほとんど使っていませんよ。これは総裁が調べてみればよくわかります。  それからその次に電気関係の会社以外で建設会社に、国鉄の高級官僚と申しますか、そういう人が就職している例をあげますと、東鉄工業というのに二百四十七名、鉄道建設に百八十八名、鹿島建設に三十九名、それから奥村組に三十九名、飛島に三十四名、こうした人たちが国鉄を出てそうした会社に就職しています。これらの会社が国鉄の受注量が非常に多い会社です、新幹線にしてもどこにしても。そうなってくると、世間でこういうことを言っているのですよ。国鉄の幹部を受け入れた量によって仕事の量がきまっている、それに比例して仕事を取っているということを世間の人は言っていますよ。これについて、これは、どういう説明をしても説明だけではわかりませんので、そうした国鉄の幹部が行っている会社がどういうふうな仕事を受注しているかということを、これは全部出すことは困難だろうけれども、一億以上とかあるいは三千万以上とか、そうしたものについて国鉄で資料を出していただきたい。この資料は出すべきである。三カ年くらいでけっこうですから、出してもらいたい。その資料に基づいてさらに——この問題についてはいろいろ世間でうわさされている問題、あるいは私が調査した問題でもいろいろな問題が出てきています。その点についてこれから先の委員会で追及していきたい、さように考えておりますので、その資料はぜひとも出していただきたい、さように要望いたします。委員長、よろしゅうございますか。
  84. 井原岸高

    井原委員長 理事会にはかって決定いたします。理事会にはかってお答えいたします。
  85. 金瀬俊雄

    金瀬委員 この資料については、出さなければ私のほうで調査して公表することになると思いますが、国鉄はほんとうに良心があるなら出すべきだと思うのですよ。国鉄に良心があって、われわれは絶対だいじょうぶだという確信があるなら、私は資料を出すべきだと思うのですよ。では、この資料を出してくれますか、総裁。
  86. 磯崎叡

    磯崎説明員 その点は数回前の当委員会におきましていろいろ御検討のあったことでございまして、一応理事会の御決定に従っております。ただ、私のほうの出身者が非常に多いところは仕事が多いというふうな御発言でございましたけれども、あくまでも私のほうは工事件名ごとにそれに能力のある業者を数社指名いたしまして、その中で競争入札をやらしているのでございまして、特にどの社はどうということは私のほうの入札の数字以外には何ものもないわけでございます。その意味で個別の会社が国鉄仕事を幾らしているということは申し上げるわけにまいりません。
  87. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それでは国鉄工事のやり方について御質問いたします。これは総裁でなくて工事関係者でけっこうです。  国鉄の入札の方法は、いま総裁は指名競争入札でやるというふうに答えましたが、それは間違いございませんか。
  88. 磯崎叡

    磯崎説明員 もとだけ申し上げますと、日本国有鉄道法並びにそれの施行令、それによってきまった方法によっております。原則は公開入札。緊急の場合、政令に定める場合、あるいは不利な場合、これは指名競争入札あるいは見積もり合わせ競争入札という方法が認められております。これは政令に根拠がございます。
  89. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それでは、これは今度は工事担当の理事の方でけっこうですが、いま総裁から話がございましたように、指名競争入札をやる場合に、業者の選定方式というのはどういう方法でやっておるか御質問いたします。
  90. 内田隆滋

    内田説明員 国鉄工事をやる場合には業者に資格がないといけないわけでございます。これは御承知ように、国鉄工事は国民の生命、財産を預かる重要な建造物をつくる、あるいは生きた運行中の列車の合い間あるいはそばで仕事をするということで、一たび間違いますとたいへんな事故になる。したがって技術力、経験その他十分な資格を有するということが必要な条件でございます。この条件につきましては、請負業者資格及び指名中央審議会という、これは国鉄総裁の諮問機関でございますが、ここで答申を得まして、その内容につきまして運輸大臣に許可をいただきまして公告をしておるわけでございます。  したがって、その資格業者の中から、いわゆる工事の性格あるいは場所、業者の資力、信用、工事能力、そういうようなものを勘案いたしまして適格者を厳正に選んでおります。選ぶやり方といたしましては、発注者、発注局所である工事局あるいは管理局というところで指名委員会というものを設けまして、その委員会でもって各件名ごとにきめておるわけでございます。
  91. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いま国鉄は一定の基準があっていろいろと登録業者を選んで国鉄の中できめるということでございますが、先ほども話しましたが、天下り役員がいない会社で一億以上の国鉄工事をとっている会社がもしあったら一つでけっこうですからあげてみてください。一つでけっこうです、そういう会社があったら。
  92. 内田隆滋

    内田説明員 いま御説明いたしましたように、国鉄工事というのは技術的に非常に特殊な工事が多いわけでございまして、そういう意味ではやはり多年の経験を有する退職者を相当かかえるということが工事の遂行上に非常に必要なことであるということで大体の業者には国鉄のOBが何らかの形で入っております。ただ竹中工務店はいわゆる高級幹部というものは入っておりません。しかもなおかつ一億以上の仕事をやっております。
  93. 金瀬俊雄

    金瀬委員 私が聞いておるのはほとんど土木の関係のことなんです。竹中というのは建築専門の会社なんです。そこへもおたくの幹部ではないけれども、人が入っておりますよ。竹中というのは、土木は竹中土木でやっておる。そっちへは国鉄の人が入っておるのです。  時間がだいぶ過ぎましたのでなにですが、その問題については、国鉄の退職者というかやめた人が入っていないで仕事をとっているという会社はほとんど皆無に近い状態なんです。だから何らかの形で国鉄の退職者が入っている会社が順に仕事をとっておるのが、いまの国鉄の現状ですよ。これは常識になっておりますよ。  それからその次に、国鉄仕事を出す場合に予定価格というものがあるわけですが、予定価格というのを最終的に決定するのはだれですか。
  94. 内田隆滋

    内田説明員 契約担当役でございます。たとえば管理局長あるいは工事局長、これを契約をする場合は契約担当役といいます。
  95. 金瀬俊雄

    金瀬委員 この予定価格については、四十六年度の会計検査でちょっと指摘されていますが、この予定価格の決定というのはいつやるのですか。その決定というのは、たとえば工事のずっと前にやるのか、直前にやるのか、あるいは入札業者を集めてどこかの部屋に入れて、隣の部屋できめてから、そこの部屋に行って出すのか。国鉄ではどういう方法をとっているのか。
  96. 内田隆滋

    内田説明員 入札前に契約担当役か決定いたしまして、封印しておきます。
  97. 金瀬俊雄

    金瀬委員 落札した価格と予定価格との関係がどうなっておるかということについて、会計検査院は国鉄の場合調査したことがあるかどうかお伺いします。
  98. 中村祐三

    中村会計検査院説明員 ただいま御指摘ございました四十六年度の検査報告に一九五号として大阪工事局の件が掲記してございますが、この場合に具体的に申し上げますと、予定価格と実際の請負業者の落札額との間に六十万円の差額がございます。当初の契約額がこの場合は二億一千二百万円でございます。
  99. 金瀬俊雄

    金瀬委員 会計検査院に聞きたいのは、予定価格と落礼価格について、国鉄工事を調べたことがあるかと聞いておるのです。予定価格と落札価格がどうなっておるかということを会計検査院で調べたことがあるかと聞いておるのです。調べたか調べなかったか、それだけでけっこうですよ。
  100. 中村祐三

    中村会計検査院説明員 その点は常に調べております。
  101. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それを調べていれば、予定価格と落礼価格は非常に近いのが多いということがはっきりすると思うのです。何百億という仕事をやるのに、そんなにぴたり出るわけがない。ところがほとんど近い値段が出ておるわけです。この点について国鉄にこれは資料を出してもらいたいと思うのです。どういう入礼をやって、どういうふうに予定価格と落札価格を出させるか。おそらく予定価格はわからぬというか、そのつど捨ててしまうとか何か方法を講ずると思うけれども、出せたらこれは出してもらいたいと思う。  それからその次に、これはまた出せないと言うかもわかりませんけれども一つ工事について入札というのは何回やりますか。これは国鉄さん。
  102. 内田隆滋

    内田説明員 工事によって違いますが、三回ないし五回の間だと思います。
  103. 金瀬俊雄

    金瀬委員 三回ないし五回で落札者がなかった場合にはどういう処置をとっていますか。
  104. 内田隆滋

    内田説明員 公正協議によって価格を決定いたします。協議をいたしまして……
  105. 金瀬俊雄

    金瀬委員 三回から五回やると言ったでしょう。三回やっても落ちない——初め、三回やるとか五回やるとかいうことを入札をやる前に業者に言うんでしょう。自分かってにやっているんですか。落ちなければ何回でもやってやるんですか。それとも、きょうは三回で打ちどめとか五回で打ちどめとか入札をやる前に言うんでしょう、言わないんですか。
  106. 内田隆滋

    内田説明員 これは何回やっても別にかまわないわけでございます。ただ、入札した価格が予定価格と非常に開いている、何回やっても落ちそうもないという場合には、最低の価格の業者と協議をいたしまして、どこがどう違うのかを、積算の中身がどう違うのかというようなことを突き合わせまして、公正な価格をきめて、それで契約をいたすということでございます。
  107. 金瀬俊雄

    金瀬委員 これは、国鉄工事関係者の考え方は私、非常におかしいと思うのですよ。三回やるんでしょう。三回やって落ちなければ何回もやってやるということは、それならそういうことをやっていれば、業者はなるべく高い値段で取りたいから、小刻みにだんだん入れてきて、何十回やってきて最後にはぶつかるということがはっきりしている。そういう入札方式をやっているのは、そんなばかなことをやっているのは国鉄だけだ。一般の県とかほかで、三回やってだめだったら、業者は全部やり直しですよ。三回やってだめだったら全部指名がえしますよ。それが普通のやり方だよ。三回やってみて落ちなかったら、最低の人と話し合ってやるというのは、それは談合じゃないか。そういうようなばかな入札のしかたというのは、国鉄として、国民の大事な金を使うのに、そういう金の使い方というのは改めなければならないと思うのですよ。大臣、その点についてどう思いますか。
  108. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 建設の問題につきまして、実は私は詳しいことは存じませんが、先ほど来、建設省当局、それから会計検査院等からいろいろ意見をお述べになりました。私は、国鉄当局も、国有鉄道法及び建設業法、そういったワクの中で仕事を進めておると信じておるのでございますが、しかし、いろいろ御指摘になりましたように、法律上差しつかえがなくても、何かこの国鉄建設業につきましては、おっしゃるように行き過ぎた点があるかもしれませんので、こういった問題につきましては、私も具体的に十分調査をいたしまして、将来に対しましてできるだけ国民の方々が安心してまかせられるように、御安心をいただくよう意味において、私も考慮をしたいと考えております。
  109. 金瀬俊雄

    金瀬委員 大臣から今後適切な処置をしたいということでございますが、国鉄総裁は、国鉄幹部の天下りと、それから、これから先、建設業者との関係について、国鉄がいま受けている不信とかあるいは疑惑とか、そうしたものを解くためにどういうような処置をとるつもりであるか、その煮について総裁の率直な意見をお聞きします。
  110. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいま先生のおっしゃったようないろいろな話があると、これは非常に私どもとしても遺憾千万なことでございます。したがいまして、建設業界とのいろいろな関係につきましても、十分慎重審議して、そして間違いのないように、公正に法律で定めるとおりやっていきたいというふうに考えております。
  111. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それでは建設関係の問題につきましては、先ほど大臣からも、また総裁からもお話がございましたが、今後この問題については、まだ工事設計の発注方式とかいろいろなことで問題があるようです。問題の資料についてはいろいろ準備しておりますが、また別の機会にこの点については御質問します。  時間がございませんので先に進みます。
  112. 井原岸高

    井原委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  113. 井原岸高

    井原委員長 速記を始めてください。
  114. 金瀬俊雄

    金瀬委員 委員長からきわめて適切な話がございまして、ありがとうございます。  いままでは建設業界のことにつきまして例をあげて質問いたしましたが、そのほか、国鉄ではたくさんの人がそれぞれの関連会社に天下っております。車両メーカーとか信号メーカーに五人、日本旅行とか近畿日本ツーリストとか国鉄の乗車券を売っている会社に七名、日本通運、全国通運、日本運輸倉庫とか東京鉄道荷物とか、いろいろな会社へ天下っております。そのほか、鉄道弘済会とか鉄道建設協会とか国鉄厚生事業協会とかいろいろなところにたくさん天下っております。考え方によりますと、在職当時、国鉄の経営の再建にあまり努力しなかった、あまり努力せずに国鉄を赤字に追い込んだ、そうした高級官僚が、退職後、国鉄ときわめて利害関係の深い事業に再就職して、国鉄にいたときよりもたくさんの俸給をもらってわが世の春をきめ込んでいる、このことは何を意味するか。国民はこうしたことの中で運賃の値上げというのを納得しないのですよ。こうした幹部の姿勢というのが結局国鉄の赤字を出すんですよ。なぜかといえば、赤字を出したって、自分は定年が来れば関連会社へ行って、国鉄にいるときよりももっといい俸給がもらえる、もっといい生活ができるということを考えているから赤字を平気で出すのです。そういうことを考えると、国鉄というのはよほど考え直してもらわなければならないと思いますが、その点についての大臣の今後の方針についてお伺いします。
  115. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 先般もこの問題についてはお答えしたのでございますが、国鉄の外郭機関といいますか、あるいは運輸省にも認可法人などがたくさんございます。非常に多いものですから、先般も申し上げましたが、私はいまその一つ一つについて調査を自分ながらいたしておるのでございます。こういった外郭団体あるいは認可法人というのが、国鉄仕事にマイナスになっておるかプラスになっておるかといいますと、おそらくすべての外郭団体というものは、やはりその設立当初におきましては、国鉄の陸上交通というものについての非常に大きな使命を持っておりますから、その使命を達成する上にプラスになっていることは事実だと思います。でありますから、そういう国鉄の経験、知識を持っている人が、そこに自然に数多く流れていっているということは、そういう外郭団体の性格上、やむを得ないことだと思うのでございます。  ただ、私がこの前も申し上げましたが、設立当時は非常な働きをしておりましても、相当長い期間たって、現在におきましては、その使命が大体遂行されて、そんなに必要性はなくなっているものも、惰性でもって今日まで存続しているというようなものがあるかないか、私はそういう点に重点を置きまして、いろいろ調べもし、考えもしておるわけでございます。いずれにいたしましても、悪く言いますと、人を売り込むために何か団体をつくっているというようなことは、これは絶対いけません。そういったことのないように、やはり外郭団体——これだけ大きな国鉄でございますから、国鉄だけでもって、自分の力で、自分の組織で何もかもやろうといったってやれるものじゃないと思います。ほかの公共企業体でも、大企業でもそうだと思いますが、しかし、それはおのずから限度もあることでありますし、また仕事の内容もだんだん変化してくる。でありますから、いつでも設立した当時の状況が今日まで依然として続いているということは、これは考えられないのでありまして、ですからそういった点に重点を置いて調べもいたしますし、考えもいたします。しかし結論的には、人を売り込むためにわざわざ団体をつくっているというようなことは、万ないように、私としては努力をするつもりでございます。
  116. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いま大臣から、人を売り込むために関連会社をつくっているのじゃないようにするという話でございますが、国鉄は赤字でも、国鉄についている関連会社というのは、国鉄を食って自分たちのほうは黒字なんですよ。そのことをどう考えるかということが大事な問題ですが、一つの例をあげて申しますと、国鉄の乗車券の販売を許されている会社なり、あるいは団体は、現在幾つくらいございますか。
  117. 磯崎叡

    磯崎説明員 乗車券の委託販売をさしているのは二社でございます。その他、団体取り扱い業者は数社ございまして、正確な数字は、いますぐ調べますが、団体関係は数社ございます。
  118. 金瀬俊雄

    金瀬委員 これは正しいあれを出していただきたいと思います、数社ということでなくて。  これは許可の条件や何かでございますか。やはりこの許可というのは、国鉄の天下りの人がいないところで乗車券の販売は許可されていないはずですよ。ほとんどが国鉄の大下りの人か経営している会社なり公社なり団体なんですよ。それでそういう会社は、みんな黒字になっているのですよ。その点についてちょっとお伺いしますが、どんな基準で許可していますか。
  119. 磯崎叡

    磯崎説明員 乗車券の委託販売をさしておりますのは、たとえば日本交通公社、日本旅行等でございます。まず何と申しましても、資力、信用がなければいけません。それから国内に相等数の店舗を持っていなければいけません。また、そういった旅客のあっせん、あるいは旅行の販売等について相等な経験のある職員を多数かかえていなければいけない、こういうような条件でございまして、私のほうは、あまり乗車券の委託販売の数はふやしておりません。たとえば交通公社で申しますと、これは明治何年にできた会社でございまして、そうしてこれはわれわれ国鉄のほうの仕事は大体半分でございます。あとは飛行機会社あるいは旅館等の一般の旅行業から、いろいろなあっせんをして手数料をもらう。日本旅行にいたしましても、たしか六割ぐらいがうちのシェアでもって、あとは一般産業をやっております。したがいまして、今後旅行が多面化し、非常に多様化してまいりますと、単に国鉄の切符だけを売るというのは、これは意味がないわけでございまして、そしてやはり極力守備範囲を広くして、国鉄の切符とそれからほかの旅行と一緒にして、セットにして売るというふうな方向で進めないと、国鉄の営業は開発されない、こういうふうに考えております。
  120. 金瀬俊雄

    金瀬委員 新しい問題でちょっとお尋ねしますが、新しい料金の入った、いわゆるこの再建法案が通過したものと見て、切符を各駅へ配られていますね。配られているでしょう。その点をお伺いいたします。
  121. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 配られておりません。
  122. 金瀬俊雄

    金瀬委員 この前の切符は配られておりませんか。
  123. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 配られておりません。
  124. 金瀬俊雄

    金瀬委員 絶対ありませんか。
  125. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 この間のとき云々とお話しになりますのは、回収いたしております。
  126. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いつ回収したのですか。
  127. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 この間のあと、すぐ回収いたしました。
  128. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それは総裁、配られたものが出てきたらどうしますか。どこかに保管してあった、各駅に保管してあって、出てきたらどうしますか、いま言ったような会社で。
  129. 磯崎叡

    磯崎説明員 昨年の御審議が、衆議院を通りまして、参議院段階で準備をすることは、私は当然と思います。旧券で高く売るということは、なるべくしたくない。これは間違いが起こるもとでございますので、なるべく新しい切符を準備して、そして運賃改定が実施された場合には、新しい切符の新しい料金で売るというのは、これはたてまえでございます。したがいまして、衆議院を通った段階で、ある程度の準備をするということは、これは私どものほうとしてはあたりまえなことだというふうに考えております。しかしながら、六月の幾日かに廃案になりましたので、極力回収したつもりでございます。しかし少しぐらい残ったかもしれませんが、これは使えるわけではございません。したがって、これは全部回収したと思っておりますが、私のほうでは、あるいは若干どこかに回収し忘れて、会社の物置きに入っておるかもしれません。しかしこれは使っておるわけではございません。使えない切符でございます。したがいまして、私どものほうといたしましては、今年度の改正につきまして、あるいは昨年と同じものを使えば——これはむだになりますので、なるべく昨年と同じものを使うというよう方向で参りますが、回収したというふうに申しましたけれども、若干の、それは何十万枚、何百万枚というものでございますから、少しの落ちこぼれがあるかもしれませんが、回収したというふうに私は思っております。
  130. 金瀬俊雄

    金瀬委員 総裁、この点については、もう少し——先ほど理事の方ですか、全部回収したと言っておりますが、総裁の答弁のほうが、理事の答弁よりも正しいと思っておるのですよ。理事はうそを言っておる。だから、総裁の言うことがほんとうだと思うのですよ。これについては、考え方によれば国会軽視ともなるし、あるいは考え方によれば、今度の再建案が、その印刷してある切符の値段に合わせたということも考えられないこともないので、十分こういうものの取り扱いについては、今後慎重にやっていただきたい、さように考えます。  それから国鉄の施設あるいは所有地あるいは高架下とか、いろいろ国鉄にあるわけですが、そうした会社がたくさんあるわけですが、利用しておる会社、そうしたところへ再就職しておる人たち、これは国鉄が赤字でも、赤字の国鉄を食って、大体こういう会社は黒字になっているのですよ。たとえば、先ほど総裁から話がございました日本交通観光社という会社がある。これは株の構成は、ほとんどの株を鉄道弘済会が持っておるわけですから、鉄道弘済会と同じものだと見て差しつかえないわけです。これは本家の国鉄のOB——ほとんど国鉄のOBで経営されているのです。この本家の国鉄が赤字でも、この会社は、ここに定款がありますけれども、この定款だけ見ても、年六分の配当をやっているのですよ。それなりに営業努力をしたと思いますが、国鉄におるときには努力しないで赤字にして、今度自分が行っているところでは黒字にする、そういう考え方がやはり国鉄そのものがよくならない最大の原因じゃないかと思うのですよ、正直なところ言って。それに対して総裁はどう考えているか、ちょっと答弁を……。
  131. 磯崎叡

    磯崎説明員 私のほうの関係で出資してつくる会社、これは根拠は国鉄法の第六条にございますが、これにつきましては、やはり資金効率から申しまして極力ある一定の配当をすべきだというふうに考えております。しかしながら、私のほうのそういった会社は、それによって国鉄に対する配当をするよりも、むしろそれによる国鉄旅客収入、貨物収入の増収に対して寄与しようということに重点を置かしております。たとえば、臨海鉄道のごときは、もし臨海鉄道をつくらなければあの荷物は全部トラックへ行ってしまうというふうなものにつきまして臨海鉄道をつくって、そうしてその荷物を国鉄に持ってくるというような機能を持っております。また交通公社に対しましても、なるべく窓口をふやして、市内のいろいろなところに窓口をふやして、そうしてお客さんに切符を買っていただこうというよう方向にさしておりますので、私のほうに対する配当よりも、むしろ国鉄の営業収入に対する直接の寄与、これに重点を置いております。たとえば、駅の構内を貸しておるような場合は構内営業料——実は昨年も運賃改定があるものと思いまして、運賃改正以上の増収をいたしております。そういう意味で、できれば配当をさせたいのでございますけれども、まあ配当したとしてもせいぜい六分、定期預金の金利かあるいは普通の公定歩合前後というような程度の配当。これは国鉄以外の資金が入っている場合にはせざるを得ないと考えます。したがって、私のほうといたしましては、配当そのものよりも、やはり国鉄の企業に対する寄与度、貢献度、これを主にして今後とも会社の指導、育成にあたってまいりたいというふうに考えております。
  132. 金瀬俊雄

    金瀬委員 国鉄の経理担当の理事の人にお伺いしますが、いま言ったような会社で切符売りますな。国鉄から委託販売を受けますね。売った切符の金というのはどういう経路で何カ月くらいで入ってくるのですか。売ったらすぐ入るのですか、どうなっているのですか、その点。
  133. 小林正知

    小林説明員 切符と申しましてもいろいろ種類がございますが、先ほど国鉄側のほうから御答弁申し上げましたいわゆる交通公社等で売っております一般乗車券、これは旬の翌旬払いという形になっております。それから団体等の乗車券、これにつきましては翌日の概算払いということで、翌月の、約一カ月後に清算払い、かようなかっこうになっております。
  134. 金瀬俊雄

    金瀬委員 その場合に、それは確実に実行されていますか。
  135. 小林正知

    小林説明員 これは、公社と団体あるいは乗車券の代売の相手方会社との契約によりまして、また各管理局、駅の窓口等におきまして確実に実施をされております。
  136. 金瀬俊雄

    金瀬委員 会計検査院はこれは確実に実施されているかどうか、検査をしたことがございますか。
  137. 中村祐三

    中村会計検査院説明員 私の記憶では、数年前にその関係につきまして重点的に検査を実施いたしまして、その結果特に不当と認めたような事項はございませんでした。
  138. 金瀬俊雄

    金瀬委員 私は切符の売り上げ金が、国鉄の配慮とか、あるいはどういうことかわかりませんがなるべく納入期間を延ばすことによって金利その他をこういう会社か取得できるようにして利益をはかっているという話を聞いていますが、その点については、これは金利の問題でございますが、国鉄の赤字を多少でもよくするという意味において、そういう点についてはひとつ十分注意してほしい、さように考えています。  それから、これは先ほど運輸大臣から話がございましたので途中省きますが、いま国鉄か新しく計画して実行しようとしている事業の中で、駅前にホテルを建てるとかあるいは高架下を利用するとかあるいはストアーをつくるとかいうことで、特に新幹線のビルとかいろいろあると思いますか、そういうものについてどういうことをやろうとしているかということについての資料を出すことができますか。
  139. 磯崎叡

    磯崎説明員 いまの御質問は業種でございますか、こういう種類の仕事をしたいという……。
  140. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いや、おたくのほうで事業局というのがあるわけですね。そこでホテルをやるとか駅の売店をつくるとかいろいろありますね。そうしたもので、新しい計画でどの程度収入があるとか、どういうことをやるとか、赤字解決のためにどういうふうにするとかいうあれはございますか。その事業計画の資料をもらいたいということであります。
  141. 磯崎叡

    磯崎説明員 現在ここに持っておりますので、何ならここで御説明申し上げてよろしゅうございますか。
  142. 金瀬俊雄

    金瀬委員 はい。
  143. 磯崎叡

    磯崎説明員 さしあたり具体的なもの数件ございますから……。
  144. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それでけっこうです。
  145. 速水信一

    ○速水説明員 最近もうすでに始めておるのでございますが、重点をあげて事業局としてやっておりますのは、旅客駅一帯の土地を有効活用する、立体活用して収益をあげようということで、そこに店舗あるいはホテル、その場所場所によって効用が違いますから、その場所にふさわしいものを開発しなければ、その駅を単なる駅として平面的に使っておるわけです。立体的に使って収益をあげていくということを重点にこれをやっていきたい、こう思っております。
  146. 金瀬俊雄

    金瀬委員 なぜ私がそういう質問をしたかというと、こういうことがあるのですよ。平塚市は駅ビル問題で二十三年も続いて全国的に有名だった七夕祭りをことし中止した、それは御存じですね。そうでしょう。それは駅ビル問題がもとになっておる、こういうことになっておる。こういうことが起きたということは、駅ビルの運営とか何かそうしたことが地元の人たちとの間にうまくいってないということになるわけです。そうしてことしあなた方が計画している仕事が平塚の駅と同じよう状態になった場合には、ますます国民から国鉄そのものが見放されるということになるわけですよ。そこであなた方がどういうことを考えておるか、新しい駅ビルをどういうふうに使おうとしているのか、また新しい施設をどういうふうに活用しようとしているのか。これが国鉄の赤字の対策でなくて、天下りの対策のためにこういうことを続けてやっていくとすれば、平塚の駅と同じよう状態方々で起きてくるわけです。そういうことがあるので、慎重にやってもらうと同時に、資料があったらはっきり出してもらいたい。たとえば、広島駅をどうするとか何かあると思う。いまあなたたくさん持っておると言うから出してください。
  147. 速水信一

    ○速水説明員 ただいま手をつけております場所は、いまお話がありました平塚、それから新宿、それから岡山、名古屋、こういうようなところにいま手をつけております。  それから、ただいま平塚のお話がありましたけれども、一部地元の商店に反対があったことは事実でございます。しかし商工会議所並びに市民の皆さんからは非常に声援を受けておるものとわれわれ理解しております。  以上でございます。
  148. 金瀬俊雄

    金瀬委員 支持を受けているということですが、あなたはこれは新聞見ましたか。
  149. 速水信一

    ○速水説明員 見ております。
  150. 金瀬俊雄

    金瀬委員 これを見ると——ことし七夕祭りはやるわけだな、やりますか。
  151. 速水信一

    ○速水説明員 やりません。
  152. 金瀬俊雄

    金瀬委員 ではおかしいじゃないか。平塚がやるかやらないか、それをはっきりしてください。
  153. 速水信一

    ○速水説明員 中止になったということを新聞紙上で拝見いたしております。
  154. 金瀬俊雄

    金瀬委員 中止になったのは駅ビル問題でもめて中止になったんですよ。これは仙台と並んで二十三年続いて有名な行事なんですがね。それは駅ビルの問題でもめたということは知っているでしょう。それではあなたうまくいっているというのはうそじゃないか。そういううそを言ってはいかぬよ。中止になっているのだからはっきり。しかも駅ビルが原因で中止になっているのだ。それで円満にいっていますというようなばかなことを答弁しているようではだめだよ。おかしいじゃないか。あなたはうまくいっているということだろう。あなたはうまくいっているということじゃないか。地元反対じゃないか。
  155. 速水信一

    ○速水説明員 全部うまくいっているとは申しません。反対もございます。しかし、仲よくやっていきたいとわれわれは念願いたしております。
  156. 金瀬俊雄

    金瀬委員 仲よくやっていきたいと念願しておるということと、うまくいっているということは別なのですよ。だからそれはあなたのほうが運営いかんによっては今後ますます悪化してくる、そうした問題が方々に起きてくるということなんですよ。だから、こうした民衆駅とかあるいはホテルとか、いろいろなものをつくる場合に、ほんとうにその地元開発にもなるし、また、国鉄のためにもなるしということでやっていかないと、初めから国鉄の天下り役人を配置するためにそういう計画をするということではうまくいかないと思うのですよ。先ほど大臣からそういうことにならないように厳重に注意するということでございますので、あなたのいまの答弁のおかしい点については追及しませんが、これは平塚駅のことを考えてみると、そういうことが今後各所に起きるという一つの前触れにもなると思いますので、厳重に注意していただきたい。さように要望いたします。  それからひとつ続いてたいへんくどい質問になりますが、貨物が赤字なんだからこの赤字の原因を徹底的に究明して、そしてこの運賃をどうするかということについての審議ならわかるわけだけれども、黒字の旅客の運賃を値上げすることによって解決しようとはかることは、貨物の赤字を旅客が負担しなければならないということになるわけです。そうしたものに対する根拠というのはないわけですが、ここで会計検査院に、先ほどからお気の毒ですが質問しますか、国鉄の赤字の原因は貨物にあるという点について、しかも将来貨物をどうすれば赤字を解消できるかということについて会計検査院が今後メスを入れる気があるかどうか。いままでもある程度大きな問題なので軽く触れてきたようだけれども、これは会計検査院がメスを入れる使命があるかどうかという問題も含めて、検査院の方の答弁をお願いします。
  157. 中村祐三

    中村会計検査院説明員 国鉄の赤字につきましては、四十六年度の決算の検査報告に赤字が生じているという事実を申し述べまして、このよう旅客収入の伸び悩み、貨物収入の減少、人件費の増加などのために、日本国有鉄道発足以来初めていわゆる償却前赤字を生じ、四十六年度末の繰り越し欠損金は七千九百九十六億余円になったという記述がいたしてございます。このような記述をいたしましたのは、私どもの会計検査という立場といたしましては、この赤字の対策につきまして、具体的にどのようなことをしろというようなことは、それが国の重要な政策に関係する問題であるということから、会計検査の立場上意見を申し述べるということは適当ではないという立場で、ただ、と申しましてもこの国鉄が赤字を生じているということは厳然たる事実でございますので、こういう事実を申し述べまして、会計検査院といたしましてもそういう事態に重大な関心を持っておるという、そういう気持ちでこういう記述をしたわけでございます。  そこでただいま御質問のございました貨物についてでございますが、この赤字の原因が貨物であるということにつきましては、現象的には確かに貨物が相当部分を占めているということはわれわれ以前から承知いたしておりまするけれども、ただこれも会計検査という立場上、正確な数字として、それではどれだけ貨物から赤字が生じているかということになりますと、これは正確な数字が計上できない。そういう関係で、ただばく然と貨物から赤字を生じているというようなことは、われわれの立場上できないということでそういう記述を特にいたしていなかったわけでございます。  それで会計検査の立場としてこの問題をどうするかということにつきましては、これは貨物の収入をふやす。これにつきましては国鉄当局もいろいろと施策を講じておりまして、いわゆる収入をあげるための施設の設備投資をやっております。こういう点につきまして、私どももそういったいろいろ設備投資をした効果につきまして、はたしてそれが収入に結びつくかどうかという点の検査は現在鋭意努力しておりまするけれども、まだ現在の段階におきましては御報告を申し上げるという段階には至っておらないのが現状でございます。
  158. 金瀬俊雄

    金瀬委員 先ほど総裁の答弁の中で、今後貨物の運送体系を改善していくという中でいろいろと話がございましたが、いま東京と大阪の間の五トンのコンテナの運賃の場合、国鉄運賃は一万九千五百円ですね。ところが民間のトラックは四万四千八百三十円となっているのですよ。そうすると、トラックの運賃は国鉄の運賃よりも二、三倍も高いわけですよ。ところが高いのに、トラックのほうに荷物が行ってしまって、国鉄のほうに荷物が来ないということについて、これは先ほど総裁から話があったような改善だけで、荷物は国鉄に集まりますか、その点。
  159. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 最初の運賃の比較は、大体先生の御指摘のとおりの数字だと思います。ただ運賃はそのように安いけれども、トラックのほうに行くではないか、いまのようなやり方では鉄道になかなか来ないじゃないか。その点の一つの問題点といたしまして、国鉄に出荷をさせるための一つの何といいますか、販売体制といいますか、通運業者が国鉄に荷物を持ってくるようにするというような方式でございますか、そういうものも含めてやらないと、いわゆるハードウェアの面だけの整備では十分でない、このように思うわけでございます。
  160. 金瀬俊雄

    金瀬委員 ここでひとつある学者の意見を引用しまして大臣にお伺いしますが、国鉄の赤字の原因は貨物である。また諸外国でも、大体鉄道の赤字は貨物であって、しかも外国では貨物の赤字を国が補償することによって黒字にしているという例がございます。そのことを言っているわけですが、自動車輸送の時代でも中、長距離輸送鉄道輸送の政策をとっているから外国では貨物は黒字なんだ。日本は逆にトラック輸送の比率が高い。トラックは騒音公害を振りまく。西ドイツでは長距離トラックの時代に日本の十倍の税金をかけ、はっきり輸送分野の誘導調整をはかっている。これをやれば国鉄貨物はふえ、黒字になる。政府、国鉄は自動車時代には鉄道新幹線を除いてどうせ赤字になる。コンテナ輸送体系の確立のために投資を怠ってきた、輸送効果を三倍にふやせる複線化をさぼってきたことも大きな欠点だといっていますが、これについて総裁はどう思いますか、
  161. 磯崎叡

    磯崎説明員 いまのお読み上げになった意見は、一部分私は納得できます。ただ、実際外国でも外国はほとんど貨物でもうけているというように聞いております。国によって多少——アメリカなんかはほとんど旅客輸送はやっておりません。またヨーロッパにおきましても、ほとんど旅客輸送というのは全体の収入の三割弱ということでございます。いろいろあるうちでどちらがもうかっているかというのは、日本と同じように非常にむずかしい問題だと思います。しかしおっしゃったように、貨物輸送が、非常に世の中の物資流動が近代的になっているのに鉄道貨物輸送が近代化されていないことは事実でございます。その意味におきまして、非常に便利なトラックにいってしまったわけでございますので、その鉄道貨物輸送の近代化、これを早くしなければいけないということはいまお読み上げになった文章のとおりだというふうに考えます。
  162. 金瀬俊雄

    金瀬委員 国鉄の四十七年度の赤字の見込みは約三千六百億円になるといわれておりますが、それは事実ですか。
  163. 磯崎叡

    磯崎説明員 事実でございます。大体そういうところだと思います。
  164. 金瀬俊雄

    金瀬委員 そうすると、一九六九年の西ドイツの国鉄は四千五百億の赤字を出している。それからフランスの国鉄が三千八百億の赤字を出しておる。この場合、両方の国とも政府が補償してその年のうちに赤字を埋めているわけです。このことについて運輸大臣国鉄に対して国の援助とかそうしたもの、補助対策とかそうしたことについて、いまの国のやり方は不十分であるというふうに考えますがそれはどうですか。
  165. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 これも何度もお答えいたしましたように、貨物の問題も、それから今後ふえてまいります設備投資の問題も閑散線の問題も、一切含めまして外国のいまお読み上げになりましたような例とは少しやり方が違いますけれども、そういったものを包括いたしまして、そうしてわれわれは十カ年間におきましてただいま提案しておりますような政府の助成、それから運賃の改定、国鉄の企業努力というようなものを合わせまして再建計画が達成されるということをるる申し上げておるのでございます。外国の例をお引きになりましたが、外国にもいろいろな例があると思います。個々の問題につきまして、非常に赤字線だからこれに対しては補助をしようというようなのもございます。しかしこういったのははたして政策的に適当かどうか、これは考えなければならぬと思います。そういう路線別にやりますと、毎年毎年営業成績が変わってくるわけです。それに応じて、何といいますか、決算補助みたいなかっこうでやらないと間に合わないということにもなりまして、これは方法論の問題でございまして、基本的な問題ではない。政策の基本じゃないと思っておるのでございます。  それから、総体的に考えまして、西ドイツとかフランス、イギリス、アメリカ、その他私も一応各国の鉄道に対する助成策というものを見てみました。結論的に申し上げましてある部分においては各国それぞれ助成を強くしておる部分がございますけれども、全体としてみますると、われわれの提案している今度の案というものは、現在各国で行なっておりまする助成策と比べましてそう遜色があるものだとは考えません。数字でもって答える必要がございますれば政府委員から御答弁させますが、総体的には私は日本——いままでは少のうございました。しかし、今度の案によりますと、外国に比べまして非常に少なくて遜色があるというふうには考えないのでございます。しかし、おっしゃるように、いままでの助成のしかたが足りなかったということは、これは事実でございまして、そういったものが累積して今日に至ったのですから、今後におきましては、いま許されております十カ年計画に基づきまして、適時適切な助成をいたしまして、国鉄の機能を再建させるよう努力しなければならぬと思っております。
  166. 金瀬俊雄

    金瀬委員 国鉄輸送ときわめて密接なつながりのある自動車の輸送、その基礎となっている道路建設計画は、今度の国鉄の再建計画とは別の立場できめられたといわれておりますが、そうなんですか。鉄道輸送道路輸送ということは検討しながらきめられたものですか、別にきめられたものですか。
  167. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 経済社会基本計画の問題かと存じますが、経済社会基本計画におきましては、総合交通体系というようなものを一応頭に置きまして、その斉合性をできるだけはかろうという基本的な考え方で出発しておると思います。  その中でいまお示しの道路鉄道輸送でございますが、これにつきましては、全体の旅客輸送量、それから貨物輸送量というものを一応想定いたしまして経済社会基本計画におきましては、五カ年間の事業でございますから、われわれの提案いたしておりまする十カ年計画とはその点違うところがございますけれども、五カ年間に関しましてはお互いに連絡をし合い、協議をし合いまして大体斉合性を得た数字を出しているものと考えております。
  168. 金瀬俊雄

    金瀬委員 昭和四十五年から五カ年間に道路建設計画では約十九兆五千億円を支出するということがきまっています。そうなってくると、国鉄の十年間の投資額の約二倍近い金額になる。しかも道路貨物だけでなくて自家用車も通るし、高速バスもいろいろ通って、そういうものに利用されます。しかし、道路鉄道の投資額というのは、日本全体の輸送問題の解決のために総合的に行なわれなければだめだというふうに考えますが、その問題について、建設省あるいは大蔵省の人たちがもし来ておりましたら、道路鉄道の投資額、輸送計画とか、そういうものについてどういうふうに調節しながらこの計画というものがつくられたか、その点について御質問します。
  169. 菊池三男

    ○菊池政府委員 ただいまの十九兆五千億という、今度五カ年計画を改定したいということでただいま道路整備に関する緊急措置法をお願いしておるところでございます。もし緊急措置法が通りますと、それに伴いまして五カ年計画を改定するわけでございます。その場合に十九兆五千億円という数字は、先ほど運輸大臣が答弁されましたように、経済社会基本計画というものを踏まえまして、ちょうど私どもの五カ年計画とそれから経済企画庁の出しました経済社会基本計画も同じ年度でございます。そこで、その道路の受持つシェア、また鉄道の受持つシェア、海運の受け持つシェアというものの斉合性をはかりましてきめておるわけでございます。ただ、十九兆五千億円という非常に大きな数字でございますけれども、まだ道路は国道がやっと九〇%舗装になったわけでございます。県道にいたしますと六〇%でございます。市町村道になりますと一六%しかまだ舗装が行き届いておりません。したがいまして、今度の五カ年計画もそういう一般道路を主体に考えております。十九兆五千億のうちの十五兆円ぐらいはそういうものに対する投資でございます。あと残りが約五兆円ほど、これは高速道路であり、あるいは都市高速道路であり、それから一般の国道のバイパスになっております有料道路事業ということに投資になるわけでありますけれども、いずれにいたしましても運送貨物の大半、約九〇%、量でいきますと九〇%は近距離輸送でございますので、海運あるいは鉄道輸送の端末輸送というものと相まってそういう近距離輸送道路のほうで受け持ち、そうしてただいま先生おっしゃいましたように、中距離あるいは長距離輸送という大量的な定常的な輸送道路以外の交通機関で受け持つというようなことが基本になって、いろいろ打ち合わせをしながら計画をつくっているところでございます。
  170. 金瀬俊雄

    金瀬委員 国のほうでいま言ったような方針で確実に道路鉄道の間の調節と申しますか、そうしたことをしっかりやっていただくことを希望しますが、交通麻痺とか自動車公害とか、世界的にもう石油が足らないということで地下資源の問題とかいろいろあるわけですよ。これ以上自動車による輸送が多くなることを押える時代が来ているんじゃないかと思うのです。自動車輸送をこれ以上ふやすことを押える時代が来ている。そうした場合に運輸大臣鉄道道路の投資のあり方ということについて総合的に考え直して建設省といろいろ話し合う時期が来ているんじゃないか。道路計画は、いまの計画どおり進むと、全国の主要の都市の間は新幹線と高速道路が並行して走るようになるわけです。大体新幹線と高速道路が並行して走る。そうすると、交通公害がますます激しくなるし、それからもう一つ、重複投資になるわけですよ。だからそうしたものは避けるべきだ、そういうふうに考えていますが、その重複投資の問題について、大蔵省の人が来ていると思いますが、大蔵省の考えをはっきり言ってみてください。
  171. 岡島和男

    ○岡島説明員 先生のおっしゃいましたことは、総合交通体系に関連するような問題だと思いますけれども交通需要と申しますのは経済規模の拡大につれまして今後もどんどん大きくなっていく、こういうふうに思われるわけでございます。それからまた質的に見ましても非常にその需要が多様化していく、こういうことでございまして、将来の需要に対処するため道路鉄道、それからその他いろんな交通機関があるわけでございますけれども、それぞれの交通機関交通特性を発揮していくということで、総合的に分担していかなければならない、こういう考え方で企画庁のほうも総合交通体系を立てられたと思いますけれども、大蔵省もそうした考え方に従いまして査定を行なっているわけでございます。  概して申しますと、先ほど建設省のほうからも御答弁ございましたように、高速道路は中距離、長距離旅客及び貨物輸送新幹線は中、長距離旅客輸送というふうに特性を発揮する交通手段だ、こういうことでございまして、両者が相まって国土の均衡ある発展が促進されるわけでございまして、そういうことで大蔵省といたしましては、両者の調整をとりながら積極的に投資を進めてまいりたい、このように考えているわけでございます。
  172. 金瀬俊雄

    金瀬委員 先ほどから、いまの人の前の話がございましたが、私は高速道路建設というのは一時中止するというよりも、とめて県道とか町村道とか、生活関連道路を充実していけば少なくともいままでよりも国鉄の高速大量輸送という特性が生かされると思うのですよ。それで自動車輸送との組み合わせもきわめて有効になって、調和のとれた国土の開発ということになると思うのですよ。貨物の赤字も解決される、そういうふうに考えていますが、それに対する大臣の考え方はどうですか。
  173. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 道路建設省の所管でございますから、運輸大臣として道路をどうしたほうがいいということは差し控えたいと思いますが、しかしながら道路、つまり自動車輸送鉄道との関係につきましては先般来申し上げているとおりでございまして、われわれといたしましては国鉄が本来総合交通体系の中で担当すべき部分、そういったものまで——現在は運賃が、先ほどお示しになりましたよう東京−大阪間でも何倍というような運賃を取られておるにかかわらず、トラックのほうに行く部分が相当ある、こういう現状でございますから、これを打開するための方策というものは当然運輸省が考えなければならぬということでございます。そのためには、それはあるいは御質問じゃなかったですけれども、いつもお述べになりますような西独のレーバープランのようなものもやってみたらどうかとか、あるいは自動車の重量税をふやしてみたらどうかとか、いろいろの案がやはりお考えの中にはあるかもしれません。しかしそういう誘導政策というようなものは、これは一面においてなかなかプラスになる面もありますけれども、一面においては弊害もございますから、よほどこれは慎重にやらないとかえって逆効果になるということもございまして、われわれは検討はいたしておりますけれども、いまのところはまだそれを実行するという決意までは至っておりません。それよりも先ほど来申し上げておりますように、国鉄貨物輸送に対する機能が低下いたしまして本来やるべきことさえもやれないという状況でございますから、その体質を変え、設備を変えましてそういったものに対応できるよう国鉄貨物輸送体制というものをこの際整備をしていこうということで全力をあげておるということでございまして、そのように御了解をいただきたい。
  174. 金瀬俊雄

    金瀬委員 大臣、高速道路建設鉄道建設の費用と比べてみると、道路建設の費用は鉄道建設よりも約四倍よけいかかるというのです。費用が四倍かかる。それから自動車で一トンの荷物を運ぶのに必要なエネルギーは鉄道の約六倍かかるといわれているのです。そういうことを計算してみると、運輸省はもっと真剣に建設省と話し合って総合調整をして、重複投資というのは避けるというのがやはりいまの国鉄にとっては一番大事なんですよ。そうすることによって国鉄は赤字を解消する方向に向かっていくと思うのですよ。運賃値上げ、そればかり考えて、こうした国鉄の総合体制というか総合政策というか、そういうことを考えないということは、これは非常にまずいことになると思うのですよ。だから建設省ともう少しこうしたことについて話し合う用意があるのか、また話し合うつもりがあるのかどうか、その点について大臣の率直な意見と、また国鉄総裁の、私がいま提案したことについての考え方と、建設省の意見をちょっとお聞きします。
  175. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 陸上輸送の問題になりますと、建設省道路政策が主でございましょうが、輸送面になってまいりますと、他の官庁、たとえば警察当局等も関連があると思います。そういった方面とはわれわれいつも連絡をとりながらこの総合交通体系に向かって進んでおるということは事実でございますが、先ほど申し上げましたように、そういった方面につきまして今後ともさらに努力をしなければならぬと思っております。ただ結論的な数字だけで、道路は十九兆じゃないか、国鉄は十カ年で十兆じゃないか、こういうことだけの比較ではいかがかと私は思うのでありまして、先ほど建設省からお述べになりましたような内容でございますから、これはお互いに斉合性を維持しながらそれぞれの交通機関がそれぞれ特色を発揮した輸送に従事するというような体制を早くつくり上げるのが先決問題だと私は考えております。
  176. 磯崎叡

    磯崎説明員 国鉄といたしましては、やはりいま先生のおっしゃったようなことを、いわゆる総合交通体系の実現に政府が勇敢に進んでいただきたいということを切にお願いいたします。
  177. 菊池三男

    ○菊池政府委員 総合交通の問題につきましては一昨年十二月に臨時総合交通問題閣僚協議会というのがございまして、そこで一つの方策が出ております。私どもそれに従いまして進めておるわけで、高速道路は必ずしも新幹線とは競合せずに、それぞれのシェアがございますので、こまかい数字を申し上げますとまた時間がかかりますが、そういう一つの基本的な総合交通問題という大きな方策のもとに運輸省と十分話をしながら進めていきたいと思っております。
  178. 金瀬俊雄

    金瀬委員 時間が全くないようでございますが、せっかく気象庁の関係者が来ておりますので、地震の問題について簡単に質問いたします。  近ごろ日本沈没というようなことばが話題に出できて、地震のことが非常に問題になってきています。アメリカの学者がどう言ったとかあるいは人工衛星でどういう資料がとれたとかいろいろな問題がございます。きのう千葉県では、御存じのように房総半島が隆起したということで東大の名誉教授の人が行っていろいろと説明しております。そうしたことを総合してみますと、関東の南部に将来地震が絶対ないということは言えない。ある程度の予感のようなものがあるというふうに世間で言われています。これに対して気象庁の関係者にお伺いしますが、いまの地震予知の関係予算は全部で七億六千万円、非常にわずかでございます。ところかこの三倍、約二十億円——二十億円といっても国の予算あるいは国鉄の予算全体から見るとわずかですが、これを出せばある程度の地震予知というのができるというふうに学者の間で言われていますが、これは事実ですか。(「地震と国鉄の再建計画とどういう関係があるんだ」と呼ぶ者あり)
  179. 高橋浩一郎

    ○高橋(浩)政府委員 地震予知の問題は非常に重要な問題でございまして、この面につきましておもに学者関係でいろいろ議論しております。そしていま先生おっしゃったようなことを言われる方もあることも事実でございます。
  180. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それではひとつ地震の予算が増額できるよう大臣努力していただきたい、さように考えております。  いま自民党のほうから、地震と再建計画関係ないというような話がございましたので、大いに関係のあることをいまから申し上げます。  それは国鉄のパイプラインの建設の問題でございます。国鉄でパイプラインの計画をしておりますが、このパイプラインの計画国鉄の再建計画の中でどんな位置を占められるかということです。国鉄のパイプライン建設によって国鉄の財源が増加するかどうか。いわゆるパイプラインをつくるということは国鉄のためにプラスになるか、赤字解消にプラスになるかどうか。第二点は、プラスにならないけれども、社会的な要請によって国鉄は赤字を覚悟でこれを実施しようとするのか。あるいは増大する油の輸送量の確保のために業界から強い要請があってこういうことをするのか。その三つのうちどれか、ひとつ国鉄関係者の答弁をお願いします。
  181. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 国鉄がやろうとするパイプラインの事業は運輸省でも慎重に審議いたしました結果、工事を認可したものでございまして、あとで数字的に政府委員のほうから御説明させますが、パイプラインの設置によりまして石油の輸送費というものにつきましては非常に設備投資のほうで倹約されることは事実でございます。そういったことを踏まえまして、今後そういう輸送がもっともっとふえるであろうということを考えまして、必要な場所には国鉄にパイプラインの事業をあわせて行なわせるのが適当である、こういうふうに考えておりますので、経営しこれが非常に赤字になって国鉄を苦しめるというようなことはないと思います。
  182. 金瀬俊雄

    金瀬委員 私はパイプラインというのをやれば必ず赤字になると思う。それからまた安全性というのもまだ明確でないということが考えられます。そういうことについて、国鉄がいま計画中の京浜−南埼玉間のパイプラインに関連してお尋ねしますが、国鉄では四十七年の六月付でパンフレットを配っています。そういう事実がございますか。
  183. 内田隆滋

    内田説明員 工事について説明書を配ったことがございます。
  184. 金瀬俊雄

    金瀬委員 ございますね。——その説明会で提示をされた資料に重大な間違いがあったことを国鉄自身で知っておりますか。
  185. 内田隆滋

    内田説明員 具体的なことは存じておりません。
  186. 金瀬俊雄

    金瀬委員 これは将来の安全性という問題について、非常に問題を含んだことなんですよ。いろいろなことに関連してきますが——皆さん方か配ったこの資料だよ。これは非常に時間がかかりますが、この中に関東大震災よりも大きな地震に対しても十分な設計になっている。なお、新潟地震、十勝沖地震及びロサンゼルス地震においても被害がなかったということが書いてある。ところが新潟地震ではパイプが切れている。それから十勝沖地震でも切れている。そういうことを東大の生産技術研究所でもどこでもはっきり発表している。ところがこれには全然書いてない。こういう間違った資料で説明するということについては、これは重大な責任があると思うのです。私は時間があれば、この資料は間違っているということを詳しく説明しますが、東大の実験の結果もみんな資料を持っている。これは間違いなんですよ。住民からもその席上でおかしいと言われているはずだ。その点について……。
  187. 内田隆滋

    内田説明員 パイプラインにつきましては、良質な鋼管を使い、厳重な溶接に対して一々全数検査をいたしてつくりますので、その設計につきましては関東大地震よりも相当大きな地震に対しても耐え得るというふうにわれわれは考えております。新潟地震その他につきましてパイプラインが切れた例はございますけれども、これらのパイプラインにつきましてはいわゆる高圧パイプではございませんので、われわれがつくろうとするパイプラインにつきましては、あの地震ではまず間違いはないと思います。
  188. 金瀬俊雄

    金瀬委員 そうでないんだよ。ここに書いてあることはうそが書いてあるということだよ。そういういいかげんな答弁をしてはだめだ。配ったパンフレットにうそが書いてある。うそで国民をだますという考え方が間違っている。これから先はだいじょうぶだ、そんなばかなことじゃない。そういう人をだますような答弁をしちゃいけないよ。ここに書いてあることは間違っていると言っているんだよ。東大でもどこでも認めている。私のほうでは調べたんだ。間違っていると言っている。——それはおかしいじゃないの。正しいと思っているのか。それをはっきりしてもらいたい。こんなばかなことはない。
  189. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 国鉄がやっておりますパイプラインの事業、これは私のほうで成田空港にもパイプラインを敷設しようと思っておりますので、関連がございますので私の知っている範囲でお答えを申しますと、これはパイプライン事業法に基づくものでございまして、安全基準を明確にきめております。これは日本の権威者を集めてきめておるものでございまして、私の受けました報告によりますと、大体この基準というものは先年の関東大震災以上の地震がありましても安全上だいじょうぶであるというよう基準を出しておるのでございまして、これに基づきましていまの国鉄のパイプライン及び新国際空港のパイプラインというものは建設するようにわれわれは指導をいたしておるということだけ申し上げておきます。
  190. 内田隆滋

    内田説明員 その資料の中身を読ましていただきたいのですが(金瀬委員「読ましてといったって、これはあなたのほうで出したものだ」と呼ぶ)それは東京第二工事局で説明資料として出したわけですけれども、私のほうといたしましては、その中に書いてございますことは、近代化されたパイプラインについては、関東大地震よりも大きなものに十分耐え得るというふうに書いてあると思います。
  191. 金瀬俊雄

    金瀬委員 そうじゃないのだよ。あなたのほうはこういうふうに、パイプラインというのが絶対だいじょうぶだということを説明してあるのだ。その説明の中に、新潟地震でも十勝沖地震でもだいじょうぶだった、だからだいじょうぶだということを説明してあるのだよ。ところが新潟県の地震のときには、東京ガスの関係もみなこわれたのだよ。ここに書いてある。ここに、東大の生産技術研究所で全部発表してある。
  192. 内田隆滋

    内田説明員 先生のお持ちの資料はこれだと思いますけれども、「なお、新潟地震、十勝沖地震及びロスアンゼルス地震等に於て、アーク溶接を行なった近代的パイプラインは被害がなく、地震に強いことが証明されています。」。
  193. 金瀬俊雄

    金瀬委員 被害がないと書いてあるでしょう。被害があったのだよ、事実。これは東大の新潟を視察した資料だよ。  それから、これは事実あなた方は説明会場で住民に言われて訂正しているわけだ。そこで、あなた方は隠す必要はない。間違ったら間違ったと率直に言うべきだよ。この資料は間違ったのを説明した。いかに言いのがれをしようとも、間違ったのは間違っているのだ。  それからもう一つは、石油パイプラインのことで大臣から答弁があったけれども、石油パイプラインの技術専門委員会というのがいまやっている。それが権威者ですよ。その中でいま討議していて、告示案、工事のやり方というのはまだ出していないはずだ。その中で問題になっているのは、地震対策については、地震が起きた場合に、ゆれた場合にもとに戻る振れ戻しということについては検討しているのですよ。確かに検討している。だけど地割れとか段差とかズレというようなあとに残るような重大な問題については討議していないのですよ。していると思いますか。ところが、地震というのは地割れができたり段差ができたら、必ずパイプは切断されるわけです。そうした重要な問題について全然討議されていないわけだ。討議せずにいま答えている。十分終わったと言っている。終わってないはずです。まだ告示されていないのだから。そういうことでは答弁にならないと思うのですよ。それで関東大震災では地割れが起きているのです。だから変形しているということになるわけです。そうなってくると、国鉄がつくってパイプラインのことでみんなに配っている資料はみんなごまかしだ。いまの話も委員会でやってないはずだよ、地割れのことについては。
  194. 原田昇左右

    ○原田政府委員 お答え申し上げます。  いま御指摘の地震の際の段差、地割れの場合についての安全基準については目下告示案を作成する段階におきまして検討中でございます。
  195. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いま大臣は大体検討したと言っているけれども検討していないのだ。検討するということなんでしょう。はっきり言えば、検討していないのでしょう。
  196. 原田昇左右

    ○原田政府委員 パイプライン事業法によります技術上の基準というものについては省令がもうすでに出ております。これは大まかな安全基準をきめております。さらに詳細について告示案を出すことになっておりまして、近日中に出すことになりますが、これについてはすでに先ほどから申し上げておりますように、地割れ、段差等の際に十分安全を確保できる材質、構造を検討しておるわけでございます。
  197. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いまの審議官の答弁、専門委員会で地割れとかズレとか段差については検討していないのだよ。明らかに検討していないし、いまのパイプではそういうものを防ぐことはできない。いまのパイプで何メートルか段差が起きた場合にそれを防ぐことができるということは全然考えられない。カナダからアメリカへパイプを敷いたでしょう。そのパイプだってあなた方が一番信用している日本鋼管のパイプは通らなかったじゃないか。一番信用している日本鋼管のパイプは入れることを拒否されたじゃないか。そういうことを考えてみても、あなた方が考えていることは段差とかそういうことについても十分検討が加えられていないということは事実ですよ。  その中で、最後に一点だけ国鉄総裁に聞きます。  東関東自動車道路に沿って成田空港にパイプがつながるわけですね。その中で、総武鉄道の本線と二カ所だけ一緒になるわけですよ。それを認可しましたか。その鉄道の下をパイプが通ることをあなた方は認可したかどうか、そういうことをちょっとお尋ねします。
  198. 磯崎叡

    磯崎説明員 私自身は存じませんが、いま聞きましたら認可してないそうでございます。
  199. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それは認可してないということで了解いたしますが、パイプを敷設する場合に、これはよほどしっかりした基準、告示案ができてから認可するということになると、いま言った国鉄自身の出している基準というのも間違ったパンフレットを出している。これについては十分検討してもらいたい。さように考えます。
  200. 磯崎叡

    磯崎説明員 いまちょっと不正確でございましたが、通るということは承知しているそうでございますが、通り方については全然まだ話しておりません。
  201. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それでは、最後に、私はこれで国鉄に対する質問を一応終わります。国鉄が過去百年にわたりまして国民の足を守るために非常な努力をしてきたことについては敬意を表します。しかし、世界各国の鉄道が国の適切な政策によって再建されて、赤字になっておるという国はほとんどないということも考えなければならないと思うのですよ。そうしたときに、日本の国だけがいつまでも何回も再建案を出しながら再建できずに現在に至っているということについては考えなければならない点が十分あると思うのです。その点については、国鉄でなくて運輸省は一日も早く抜本的な解決をすべきであって、交通行政を真剣に検討して総合的な交通対策を立てて国民の期待に沿うよう国鉄を再建していただきたい。そのことは汽車賃を値上げするということとは別の問題であって、先ほど申し上げましたように、建設省その他と真剣に相談してやるべきだ、かように考えておりまして、その点を要望いたしまして質問を終わります。ありがとうございました。
  202. 井原岸高

    井原委員長 本会議終了後再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時三十分休憩      ————◇—————    午後二時三十七分開議
  203. 井原岸高

    井原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。兒玉末男君。
  204. 兒玉末男

    ○兒玉委員 まず運輸大臣にお伺いをいたします。  本日は、先輩、同僚議員がおもな点はほとんど質疑を尽くしておりますが、まず基本的な点につきまして、私は去る三月八日でありましたか、本会議における代表質問の際、今次の再建計画はその構想においては了とするも、内容的に総合交通体系の問題あるいは鉄道輸送の分野、さらには今日の赤字要因というものがいわゆる貨物によって生じ、しかもその赤字の穴埋めが旅客貨物のほとんど同率の値上げによってそれを補てんすることは当を欠く、同時に、昨年の国会においても廃案となったこの再建案か、内容においてほとんど変わらないまま提案されることは納得できない、一年間これを置いて、十分国民的な合意を得た後に再提案すべきである旨を主張しましたけれども、政府当局からそれに同意する答弁を得られませんでした。  そこで、私はここで一つの問題として提起をしたいことは、この再建案の中の貨物輸送に対する問題というものはきわめて重大じゃないかと考えます。経済社会基本計画の指標によりますと、昭和五十二年度における貨物の総輸送量は約九十五億トンでございます。これはこの九十五億トンの中に各輸送分野が占める比率は、鉄道の場合が三・一%、自動車輸送が九〇・一%、海連が六・八%でございます。そういたしますと、今後の国鉄再建の中から、やはり国鉄の今後十年間における貨物輸送総量なりあるいはその収益等から見た場合において、一体五十二年度におけるこの九十五億トンの九〇%を自動車輸送でほんとうにまかなえるかどうか。これは総合交通体系の中においても、私は要員の供給体制、あるいは今日の自動車の公害問題、あるいは激増するマイカー等の状況から判断した場合に、はたして自動車部門におけるこの九十五億トンの九〇%の輸送を、十分自動車部門において消化できる可能性があるのかどうか、これは国鉄輸送等の分野においても私はきわめて重大な比重を占める問題として、この際、大臣の御所見を承りたい。
  205. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 経済社会基本計画におきましては、いまお示しのような数字を出しておることは事実でございますが、これにつきましては国鉄それから海運、トラック輸送等を考え合わせまして、お互いに調整のとれた輸送をしなければならぬという観点から、経企庁におきましてはそういう数字を関係各省庁と協議の上でまとめたものでございまして、この数字は実行できないものではないと思っております。ただ、私どもこの十カ年計画を提案いたしますについて、先般来申し上げておりますように、このままの形ではそれさえもできないということでございまして、私どもは総合交通体系の中において国鉄が本来受け持つべき貨物輸送、それを達成するのにはどうしたらいいかということにつきまして、先生はいま昨年とあまり変わっていないじゃないかとおっしゃいますけれども、昨年の衆議院の委員会においていろいろ御意見もあり、御注意もありましたので、そういった点を十分しんしゃくしながら、具体的には国鉄がそういう機能を発揮するために必要な対策というものを立てながら、いまおっしゃったよう輸送を達成するようにということに主眼を置いて今度は考えておるわけでございまして、形は同じようでございますけれども、るる申し上げましたようにその内容におきましては、昨年の提案とは非常に違ったところが多くなっておることは事実でございまして、そういう考え方をもちまして、この十カ年計画を提案をいたしておるのでありまして、それができますと、少なくともこの経済社会基本計画において予定せられております国鉄輸送分野というものはこれは当然守っていけるし守らなければならぬ、こういう考え方で臨んでおるわけでございます。
  206. 兒玉末男

    ○兒玉委員 同じく貨物輸送に関する基本的な点で、午前の部で同僚の金瀬委員の質問を聞いておりましたが、たとえば西ドイツにおきましては、あるいはフランスにおいても貨物輸送というものが赤字である個所はないと言っておるわけですね。しかも日本の場合は、赤字である上に、今日まで野党の全議員が指摘したように、大企業の貨物は非常に割引率が高い。そして一般市民の貨物は非常に比率面においても高い。そういうふうな不合理な運賃政策をとっておって、しかもその赤字が非常に大きい。だとするならば、貨物輸送体系そのものを根本的な改善をはかるべきではないのか。それから西欧先進国は、このような黒字の輸送体系をとっているその要因は一体どこにあるのか。こういうことについて大臣並びに国鉄総裁としては、このような黒字を出す先進国の形態というものは、どういう形でこのような要因をなしているとお考えになるのか。西ドイツの場合においてもやはり同じ国有鉄道でございます。しかも、私も四年前行きましたが、いわゆる鉄道輸送の分野と自動車輸送の分野あるいは船舶輸送の分野というものをきちんと整とんをして、同じ国内における物資の移動についてロスのないように、いわゆるむだのないような、そういうふうな国民の需給に対応する計画的な輸送システムかこういう結果をもたらしているものと思うわけでございますが、これに対する大臣並びに総裁の見解を承りたい。
  207. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 諸外国の例を見ますと、御承知よう鉄道貨物輸送の面におきましてはいずれも赤字であると思います。それで国が、方法は違いますけれども、いろいろの目標を掲げまして助成をしておるのだと思うのでございます。私のほうで今度提案しておりますのは、もちろんそういうふうなやり方も一つ方法であると思います。線路別にとかあるいは貨物の種類別にとか、貨物輸送態様別にとか、いろいろ考え方はあると思います。しかし、私ども、将来は別といたしまして現在考えておりますのは、これは何度も申し上げてたいへん失礼なんですけれども、そういったあらゆるウイークポイントというものを総合いたしまして、それに対して全体として、この十年間に国鉄が財政を再建しその機能を回復し得るようなそういう政府の助成をしようということで今度の案を出しておるわけでございまして、個々にやりましたほうが端的に結果が出ますから、その部分においては明瞭だということになるかもしれません。しかし、先ほど金瀬議員に対しましても申し上げましたように、そういう路線別の営業成績というものはおそらく毎年変わってくると思います。そういう点を考えますと、やはりこれは長期に見てまいりませんと毎年毎年補助率が変わったり、やり方が変わったりするのでは不安でございますから、いまの日本国鉄はそういう単年度で回復するような力を持っておりません。したがいまして、どうしてもこれは長期の視野でもって見ないと結果が期待できないということで、いまのような助成の方法をとっておるのでございまして、結論としても、各国の国鉄に対する補助の割合、内容と比べまして今度出しております案が非常に低位であって、各国に対して非常に劣っておるとは思わないのでありまして、この点は、いままでの何回かの長期計画は別といたしまして、今度出しております長期計画を比較していただきますと、やっとここで欧米並みの補助の程度に達してきた、あるいは若干それを上回っているというようなことかいえるのじゃないかと思うのでございます。この点につきましては、もし御必要でございましたら政府委員から数字的に御説明をさせてもけっこうでございますが、大体われわれのねらっておるのはそういうところでございまして、また、これはいまのよう方法をとりますことによって効果をあげ得るだろうということを確信しておるのでございます。
  208. 磯崎叡

    磯崎説明員 諸外国の鉄道貨物輸送がどうなんだというお尋ねでございますが、英米独仏多少違っておりますが、ごく簡単に申し上げますと、アメリカの鉄道はもうほとんど現在貨物鉄道でございます。旅客収入は全体の収入の二、三%にすぎませんで、ほとんど貨物鉄道でございます。一番大きな特徴は、一個列車の輸送単位が非常に大きいということでございまして、一万トンないし一万五千トンのちょうど船一ぱい分の荷物を引っぱっているという非常に大きな輸送単位の輸送をいたしております。したがって、陸上輸送してもそれほどコストが高くないということになるわけでございまして、この点は、アメリカの鉄道輸送の単位は、ほかとは全然違った格段の大きさでございます。それから英独仏、ヨーロッパにおきましては、まず運賃制度が全然自由になっておるということでございます。いわゆる顧客運賃でございまして、ほとんど公示運賃ではない。そうしてちょうどトラックのように、一つ基準はあっても全部相対運賃できまっておる。日本ように古い自由な等級制度をとってないということでございます。さらにイギリスにおきましては、御承知ようにまだ石炭あるいは製鉄事業がほとんど山の中にございまして、その石炭業、製鉄業の輸送のシェアが、鉄道の分野があまり変わっておりません。それからドイツにおきましてもまだ相当石炭の生産がございまして、日本ほど急激に落ちてないというふうなことで、わりあいに英独仏とも——旅客輸送は全体の収入の大体三割弱でございますが、貨物輸送は一応旅客よりもよくなっておる。しかしながら、それには運賃の問題あるいは輸送体系の問題、ことに先生の御質問の陸上交通、ほかのトラック、船との競争でございますが、ドイツにおきましては、トラック輸送との輸送分野が相当はっきりしておるように聞いております。すなわちレーバープラン以来相当思い切ってトラックに対する制限を加えまして、人為的に鉄道貨物輸送がいくようにというふうな政策をとっておるようでございます。いずれにいたしましても、それだけ政策をとりましてもやはり鉄道企業としては全体は赤字でございまして、いま大臣が言われましたように、相当大幅な政府の助成を英独仏とももらい、またアメリカにおいては、二、三の有力会社を除いてはほとんど全部破産いたしております。そういう意味で、世界各国の近代国家はほとんど全部、鉄道プロパーの面といたしましてはかりに貨物鉄道でありましてもそれは赤字鉄道になって、それをいろいろな形で政府から援助しておる、こういうことがいまの実情でございます。
  209. 兒玉末男

    ○兒玉委員 再度大臣にお伺いしますが、いまも総裁から御説明がありましたけれども、経済社会基本計画の中におけるそれぞれの貨物輸送の分野という点について、やはりきちんとした総合交通体系というものが確立をせられなければ、この昭和五十二年度時点における九十五億トンの中の鉄道ないし自動車輸送部門の構成比というものも、なかなかこのように達成できないのではないか。いたずらに輸送部門というものが混乱をし、しかもトラック輸送等の、中長距離を問わず全く制限ない、こういうふうなことがひいては交通災害なりあるいは交通公害の発生の大きな要因にもなるし、また輸送分野の混乱ということが、それぞれの、たとえば自動車輸送においてもその企業性というものの経営形体に重大な危機をもたらすのではないか、こういう懸念なしとしないわけです。この輸送分野の早急な確立体制ということはきわめて必要であろうかと存じますが、これについての見解を再度お伺いしたい。
  210. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 総合交通体系の中で、ことに現実に経済社会基本計画というのが出ておりますから、その中において調整のとれた各交通機関輸送分野を確立するよう努力しなければだめじゃないか、こういうことでございます。そのとおりだと思います。ただ、これをどういうふうに達成するかということでございますが、これは国鉄国鉄、自動車は自動車、海運は海運、それぞれ具体的な計画を立てていかなければならぬとは思いますが、他の国にも見られますように、日本のいまの経済政策から申しますと、この輸送分野というものを頭から数字をきめまして、これは自動車、これは国鉄というわけにはまいりません。いろいろな交通機関の調整のとれた、望ましい輸送分野を確立するための努力というものは政策面でも実行していかなければならぬところでございますが、そういう意味におきまして、国鉄に対しましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、いまのままの状態でほっておきますと、なかなか輸送分野も担当し切れないということでございます。でございますから、これは御承知ように、貨物のほうに例をとりますと、貨物輸送の面でいろいろの近代的な新しい需要に応じ得るような施設を整備すると同時に、国鉄が今日まで非常に足りなかったと思われます貨物輸送面におけるいわゆるサービスの向上をいたしまして、自動車に奪われてきたシェアというものを国鉄のほうに回復さしていくというようなことを政策的にも考えながら、それをプッシュしていくというようなことが一番必要じゃないかと考えておるわけでございまして、自動車の面におきましては、これはお話にありましたよう道路というものにも限りがございますから、これ以上自動車の混雑がふえまして公害をまき散らすような結果になっては困りますので、これにつきましては、私のほうだけじゃございませんが、関係省庁とも連絡をとりながら、そういった結果を招かないように、たとえば過積みの問題でございますとかいろいろあるのでございますが、そういった問題にはもっと積極的に取り組んでいきまして、そういう輸送分野の確立ということを目ざしながらいろいろな政策を総合的にやっていきたいと思っておるのでございまして、非常に端的に申し上げると、一つ一つの政策について、たとえば制度をこしらえるとか新しい法律を出すとかいうことは考えておりませんけれども、結果といたしまして、そういった各省の政策を総合して結論をそこに持っていくよう努力をしたい、こういうふうに考えて努力をしておるのでございます。
  211. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に、十カ年計画の中で一番基調をなし、しかも四兆六千億という巨大な資金を使う新幹線関係でございますが、いま私の手元にも南は鹿児島、北は北海道から、新幹線の予想されるルートについてはなばなしい陳情合戦が行なわれているわけであります。これは今後の新幹線計画工事を着工する上においてもきわめて重要な要因をなすものでございますが、運輸大臣として、この路線の最終的な確定というものと、これに基づくところの実施計画というものは、この七千キロの中に、いわゆる四兆六千億の何割かわかりませんが、これの実行面においてもその通す路線地域における地形なりその基礎工事の点からも予算の基本的な変更というものが相当予想されるのでございますが、このような本格的に通すルートの決定ということはきわめて重要な問題でございますが、大体路線決定についてはどういうふうな作業、見通しをお持ちなのか、第一点にお伺いしたいと思います。
  212. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 路線決定ということばの中には二つあると思いますが、いまお尋ねの問題は、いま調査いたしております。具体的な調査五線について現実的にどういうふうな路線を選ぶようにするのか、どんな方法なのか、こういうお尋ねだと思いますから、その点についてお答え申し上げますが、これは新幹線に関する促進法がございますが、その法律の規定によりまして、建設線を定める基本計画をまずきめるのが第一順序でございまして、その基本計画に基づきまして、建設線の建設に関して必要な調査を運輸大臣から指示をすることになっておりまして、国鉄及び鉄建公団は、ただいまその調査をいたしておる段階でございます。その調査結果が出ました場合に、建設線の建設についての整備計画というものをきめなければなりません。もちろんこういったものをやりますのについては、諮問機関であります鉄道建設審議会に諮問をいたしまして、皆さんの御意見を聞くことにはなっておりますが、とにかくそういう手続を経まして整備計画をきめていくということになると思います。その整備計画をきめました上で、整備計画に基づく具体的な建設の指示をすることになりまして、ここで工事の実施計画ができ上がってくるわけでございます。  今度のこの調査五線については、御承知ように、今日までの新幹線というものは、何といいますか対立するよう路線がございませんで、きわめて円滑に路線決定が行なわれたのでありますが、今度の五つの調査路線につきましては、それぞれ二つないし三つのルートが提案されておりまして、各方面からこの路線がいい、この路線がいいということで、それぞれの立場からの御意見の開陳が多いことも事実でございます。それをどこでどうきめるか、これは非常にむずかしい問題でございますが、いずれこれはこの法律に基づきまして整備計画をきめることになりますから、その段階におきましては、われわれの運輸省の大体の考え方というものは決定をいたしまして、鉄道建設審議会の皆さん方と十分に御相談をいたしました上で、最終的にきめるということになると思っておるのでございます。これは前に経験のない問題でございますから、今度初めてこういった問題が起こりますので、運輸省といたしましては、きわめて慎重に、そうしてその効果が——せっかく新幹線をつけるのでありますから、国民から喜んでいただけるような効果のある新幹線にしようということで、鋭意いまやり方についても検討を加えておるのでありますが、具体的にはまだ調査結果が出ませんので、いまのところは、どの線を通すかということについてはまだ白紙の状態でございます。
  213. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私は一番懸念することは、この新幹線路線の決定ということと、それからいま調査結果を待ってということでありますが、私は、やはりこれに要する用地買収、こういうことが今後の新幹線網の設定にあたって大きな障害になることは必然じゃないかと思うのです。そういう点等から、私は、これらの路線の決定については、相当運輸省当局がきちんとした基本方針といいますか基準といいますか、というふうなものを持っていなければ、やはりその地域の政治的ないろいろな背景、そういうものによってゆがめられたようなところが行なわれるのじゃないか、こういう一つの懸念があり、これは今後の十カ年計画の中における重大な政治課題として、この計画遂行に重大な障害をもたらすのじゃないか、こういう懸念をするがゆえであります。答弁を求めません。  次に、私は、今後の国鉄の経営の基本的な問題として、去る五月の十三日であったかと思いますが、ある新聞で、こういうことが報道をされておったわけであります。これは政府並びに国鉄当局の一部にもということで、今後の国鉄経営の重大な問題として、黒字線と赤字線を分割する経営をやるべきだ、それから黒字線を民営でやり、赤字線を国がやる、それからいわゆる営業部門と保守運行部門の分割論ということが真剣に論議をされている、こういう報道を私はメモにとってあるわけですが、これはきわめて重大な問題である。これは単なるうわさであればいいわけでありますが、この前、朝日新聞等に出ました第二東海道新幹線論と同じような形で、これは国鉄の将来についても重大な問題でありますので、私も真偽のほどはわかりませんが、こういうことが新聞の活字となることはきわめて重大な問題でありますが、大臣としてはどういうふうな御見解をお持ちか、お伺いしたいと思います。
  214. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 お答えいたします。  その赤字線と黒字線と分けるとか、そういったことは、私に関する限り全然関知しておりませんし、考えたこともございません。それよりも、やはり国鉄というものは、全国にネットワークを持っておる唯一の公共的な大量交通機関でございますから、いまのような形が一番適当であるという考え方で、今度提案いたしておりまする案も、そういう考え方をもとにいたしまして提案しておるのでございますから、これはいま運輸省に関する限りは全然存じませんということで、御了承をいただきたい。
  215. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまの大臣の御答弁をちょっと補足さしていただきます。  いま先生二つの案をおっしゃいましたが、あとのほうの案は全くございません。営業部門とほかを分ける、これは全然ございません。  ただ、前のほうの、国鉄全体を黒字の部分と申しますか、いわゆる幹線系の部分と、それから地方交通線の部分と二つに分けた——これは観念的な分け方でございますが、実は一昨年の当委員会国鉄問題調査の小委員会に私のほうの一つのたたき台の案として、こういう考え方もありますということを御提案したことがございます。小委員会でいろいろ御検討をなすった結果、それはまずいということで、たたき台も出さないことになりましたが、考え方といたしましては、鉄道企業として収支のとれるいわゆる幹線系の部分と、そうじゃなくて、鉄道企業として全く赤字であろうと何であろうと、公共の福祉維持のためにやらなければならない部分がある。この部分と二つに分けて、そしてむしろ財政援助の一つの形として、前のほうの部分は何とか収支が成り立つようにやっていく。しかしあとのほうの部分は、これは本質的に、経営として成り立たない部分であってもやらなければいけないのだから、この部分については、政府の赤字補助なり何なりの問題に発展していくのだ、大体こういうふうな結論であったと思いますが、その形がいわゆる赤字補助の問題として昨年の当委員会に提案された、ごくそれが一部の形でございまして、そういう意味では、おととしの衆議院の運輸委員会の小委員会国鉄一つのたたき台として、そういう考え方をお示ししたことはございますが、それ以後全くその問題は具体的な方向には進んでおりません。
  216. 兒玉末男

    ○兒玉委員 あと安全対策、それから踏切関係、財産管理の問題等御質問しますけれども、その前に建設省、お見えでございますか。——この国鉄輸送といわゆる建設省の住宅政策、あるいは宅地関係あるいは住宅公団など住宅政策と国鉄輸送との関係についてお伺いしたいわけであります。  建設省は、地域の市町村の公営住宅なりあるいは供給公社なり、または公団住宅等の行なう宅地造成なりあるいは住宅建設には全面的な行政上の指導責任者であると思いますが、そうでございますか。
  217. 吉田公二

    ○吉田説明員 お答え申し上げます。  建設省といたしましては、特に大都市地域におきます住宅の供給また宅地の開発、こういったものについて全面的な指導の体制にございます。住宅公団につきましてはその予算の全体の監理、それから公営住宅の建設につきましては予算の補助等を行なっておりますが、ただ公営住宅につきましては、その土地の選定につきましてはそれぞれの建設主体でございます府県、市町村、こういったものが主として指導に当たっております。
  218. 兒玉末男

    ○兒玉委員 きわめて事務的な答弁をしておられるようでありますが、この前、いわゆる上尾駅におけるいろいろな事件が起きておるわけでございますが、私たちが聞くところによりますと、供給公社による住宅あるいは公団住宅などがきわめて無計画的にといいますか、公団なり供給公社が住宅を建設すれば、これは人が住むために家をつくるわけですから、当然そこに居住する人は何らかの生業を営み、あるいは何らかの目的で国鉄なりバスなり輸送機関を利用する人がおそらく大半ではないかと思うわけであります。かつて私は、船橋の高根台団地を建設する場合も当時の河野建設大臣にやかましく言ったことがあるわけですけれども、団地を造成し、住宅を建設するならば、当然これに関連するいわゆる診療所施設なり保育所、学校あるいは最も肝心な輸送機関というものが並行的に建設をされなければ、これはほんとうの住民の要求にこたえる住宅行政のあり方ではないのじゃないか、こういうことを指摘したことがございますが、この上尾の場合におきましても相当の密集した住宅形態がとられているように聞くわけでありますけれども、この住宅建設の際において、運輸省なり国鉄なり輸送関係を受け持つ機関との間において一体どういうふうな事前の協議がなされているのかどうか。今日においても輸送問題が大きな政治課題として先般来野党の議員の諸君がこのことを真剣に追及し、国鉄もかなりの努力をする旨答弁されておるようでございますが、このよう輸送力というものといわゆる団地造成、住宅計画というものはやはり車の両輪のよう関係にあるわけでございますが、これに対する建設省——この上尾地域における住宅建設の経過並びに今後各地域において団地造成なりいわゆる住宅計画が立てられているわけでございますが、これらの関連についてどういうよう検討ないし処置をされているのか、お伺いしたいと思います。
  219. 吉田公二

    ○吉田説明員 新たに宅地の開発でございますとか住宅団地を建設いたします場合に、もちろんいろいろな公共施設、公益施設があるわけでございますが、特に鉄道等の輸送施設は、通勤交通等の非常に重要な役割りを持つ最も重要な施設でございます。したがいまして、従来からも、大規模な開発を行ないます場合におきましては、政府部内におきまして、また公団でございますとか、そうした開発事業主体と鉄道事業者との間におきまして絶えず連絡はとってまいっているわけでございます。  そういった具体的な例といたしましては、開発に関連します鉄道建設といたしまして、多摩ニュータウンにおきます小田急、京王電車との共同の実施、それから千葉ニュータウンでありますとか、根岸線の沿線にございます洋光台、港南台、また関西のほうでは千里、泉北というようなもの、あるいは最近計画段階にございます北摂、北神地区におきます鉄道、こういったような例におきましては新しい線を引くということで調整されたものでございますし、また鉄道の駅の新設または既存の駅の拡張、拡充、こういったケースも具体的な例は多々ございます。  ただいま先生指摘になられました上尾の件でございますが、これは御指摘ように、あの周辺におきまして住宅公団の団地が二つ、約六千戸の団地がございますし、そのほか公社でございますとか民間の開発、また個別の宅地造成、住宅建設というものがございまして、かなりの住宅の建設が行なわれておるようでございまして、そうした関係上乗客の数が非常にふえているというのが事実でございまして、こういう点が一つの原因であったというふうな御指摘もあるわけでございます。この上尾の件につきまして私ども、その公共団体あるいは民間の事業の主体そのものに直接的指導体制にございませんので、その辺のところの詳細はいま現在ちょっと存じておらないわけでございます。基本的に、ニュータウン開発交通のバランスというものは十分考えなければならない点でございまして、今後の大規模な開発を行なっていく場合に、そうした、不均衡なために非常にマイナスになるという事態が起こりませんように、私ども政府部内におきましては運輸当局と十分調整いたし、また開発主体におきましてもそれぞれの鉄道事業者と密接に連絡をとるように指導してまいりまして、両者のバランスのとれた開発を進め、円滑な実施が進められますように今後鋭意努力してまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  220. 兒玉末男

    ○兒玉委員 運輸大臣にお伺いしますが、この上尾は一つの例でございますけれども、ここのこういうような団地形成が行なわれる際、運輸省並びに国鉄当局にはそういうふうな事前の協議がなされているのかどうか。それからまた、今後多摩ニュータウン等でも問題かありますし、さらに町田市には、聞くところによりますと、約七千世帯くらい一ぺんに居住できるような住宅公団による住宅政策も、すでに基盤整備等が着工されているやに聞いているわけでございますが、これは国鉄、私鉄を問わず、特に住宅計画といわゆる輸送関係というものは密接不可分な関係にあるわけでありまして、このようなおもなる団地形成と国鉄関係輸送体制との関係がどういうふうに協議をされ、そしてこれが計画輸送関係の調整というものの話し合いがなされておるのか、お伺いしたいと思います。
  221. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 いま建設省のほうからある部分答えられましたが、ある程度あのように行なわれていると思います。今日までも全然協議がなかったということじゃなく、おそらく必要な場合に必要な時期に連絡があったのじゃないかと思います。ただ、いまお示しの結果を見まして私も非常に痛切に感じましたことは、上尾のような問題でございます。それで実は建設大臣に対しまして、今後そういう大きな団地をつくられる場合には、輸送機関を考えてもらわないとわれわれのほうでは責任はとれませんから、関係の部局に対してよくお話しください、私のほうも関係の部局に話をいたしまして、今度から事前に相当幅広い連絡をとりながら協議をしてもらわないと、輸送だけが取り残されて団地ができましてもいわゆる足のない団地になりかねないということを申し上げまして、全くそのとおりだということで、それ以来両省は非常に緊密に連絡をしておるのでございます。  この問題は単に住宅団地だけじゃございませんで、たとえば工業再配置等にあらわれますような新しい都市づくり、それからいままでございました新産都市というような場合にも、やはり同じような問題が起こるわけでございます。でございますから、今日まで全然そういう協議が行なわれなかったとは申し上げませんけれども、十分な事前の協議があって、その上に立って、つまり輸送機関の上に立ってそういう都市ができてくる、あるいはそういう工業地ができてくるというようなところまではいってなかったことは認めざるを得ません。でございますから、そういう過去の例からいたしまして、輸送機関を持った都市輸送機関を持った団地ということでないといけないと思いますので、今後は十分注意いたしまして、関係省とも事前に連絡をとりながら、輸送機関を確保しつつそういう都市建設等にお互いに協力をして努力をしようということで、いま各省と話し合いを進めておるわけでございます。私は率直に申しまして、今日までそういった点について若干お互いの連絡が不十分で、欠けるところがあったのじゃないかという気はいたしますけれども、そういったことについて十分反省をいたしまして、今後はそういったことのないように、輸送手段を必ず伴うよう開発というものについてお互いに協力をするつもりでございます。
  222. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいま大臣がおっしゃいましたが、数年前まではやはり非常に連絡が悪くて、住宅ができてしまった、人が入ってしまった、しかし電車が満員で乗れないというような事態が相当ございました。御承知のとおり、その後都市計画法の三十二条でもって、民間の宅地業者はあちかじめ国鉄とかあるいは付近の私鉄とか、そういう輸送機関にここへ宅地をつくるということを協議しろという条文ができました。これは一つの注意規定のようなものでございまして、罰則はございませんが、やはりああいう条文が都市計画法へ入ったというだけで非常に違ってまいりまして、民間の宅造業者からも具体的につい最近もいろいろな話がございまして、輸送力はどうなっているのかというような話もございます。また住宅公団あるいは府県の宅地供給公社等におきましては、これは公の機関同士でわりあいに接触する機会が多うございますから、あらかじめ話はございますが、ただ、公の機関計画と民間の計画と一緒にして、何年度にどこの町村で何戸できるというふうな一つ計画がなかなかまとまりにくいということもございます。したがいまして、私どもといたしましては、やはり住宅は一年たてばできますけれども鉄道輸送力はなかなか一年や二年ではよくならないということも考えていただきまして、今後ともますます両方の連絡をよくする、定期的に会議をして具体的な市町村についてのホールプランを出してもらって、それの足の裏づけをするというふうな方向でいきませんと、どうしても輸送機関のほうが後手を引いてしまうということになると思います。したがいまして、精神としては都市計画法三十二条のような精神で今後とも進まなければいけないというふうに思っております。
  223. 兒玉末男

    ○兒玉委員 建設省にお伺いします。  いま運輸大臣並びに総裁から答弁ありましたが、建設省の直接の指揮下ではないにしましても、供給公社なりあるいは公団住宅の建設にしても、やはり都市計画法というきちんとした法律のもとに地域開発はなされるわけであります。当然そこに生ずる住宅等の建設は、直接間接建設省の指導下にあるというふうに私は確信をいたすわけでございますが、少なくとも百戸や二百戸の住宅では、輸送関係にそんなに重大な影響を与えるものではございません。これからの団地形成というものは、少なくとも二千戸ないし三千戸というような集中的な団地形成が今後の団地形成の常識ではないか。そういう点から考えましても、この際建設省は、そこに居住する住民輸送関係について、ひとつ真剣な姿勢で取り組んでいただきたいということを要望として申し上げます。  次に、国鉄当局にお伺いしたいわけでございます。  これは再建計画に直接関係はないわけでございますけれども、私の手元に全日本精神薄弱者育成会並びに四十七都道府県精薄者育成会、こういう団体から特に精薄病者にも運賃割引の仲間入りをさせてください、こういう切々たる訴えが参り、ぜひひとつ国会でもこれを取り上げてほしい、こういう要請を受けたわけでございます。身体障害者に対しては、本人並びに付き添い一人までは割引の制度があることは私自身も承知しているわけでございますが、精薄者にしましてもその置かれている立場というものは身体障害者並みであり、それ以上の状態にあるのじゃなかろうか。もちろん運賃割引ということは、国鉄の現状からいけばたいへんなことでありましょうが、この陳情によりますと、精薄者手帳というのが現在厚生省の指導下で四十八年に約九万人支給されておりますが、鉄道を利用する比率というものは九万人全部が常時利用するものではないだろうし、また割引金額は全く高度な公共性を持つものじゃないかと思うのです。これに対する国鉄当局の見解を承りたいと思います。
  224. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 身体障害の方に対する割引に対しては、法律または国鉄の規則でもってある程度の割引をしておることは、いま先生お話しのとおりでございます。精神薄弱の方に対する割引でございますけれども国鉄の規則で非常に困窮されている方に対する割引、まあ国鉄の中では被救護者割引と申しておりますが、そういう関係で精神薄弱の方で、児童福祉法の関係でその施設に入っておられる方、この方に対しては本人並びに介護者に対する割引の扱いはいたしております。しかし、この割引をもっと広げるといいますか、一般的な面に広げるということは、先生いまお話しのとおりの現在の国鉄の財政状況あるいは公共負担を是正しなければならない状況にかんがみまして、それにこたえていくということはできないわけでございまして、せめてその点につきましては輸送サービスといいますか輸送設備といいますか、そういう面できめのこまかい、心の通ったサービスによっておこたえしていきたい、かように考えておるわけでございます。そして財政負担の面につきましては国の施策としてやっていただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  225. 兒玉末男

    ○兒玉委員 厚生省お見えでございますか。厚生省のほうにお伺いしたいわけでございますが、国鉄当局の説明は国の政策として検討していただきたい、こういう意向でございます。直接の所管官庁である厚生省としてはどういうふうな見解をお持ちなのか、お伺いしたい。
  226. 金田伸二

    ○金田説明員 先生指摘のとおり、現在身体障害者に対しては運賃割引がございまして、精神薄弱者に対しては、非常に限られた形での割引以外に、一般的な身体障害者と同様の割引制度はございません。そこで私どもといたしましては、心身障害者対策基本法という法律がございまして、その法律の二十三条の第二項で、国鉄が心身障害者に対して運賃割引につとめなければならないという規定がございますし、この趣旨を体しまして、精神薄弱者に対しても身体障害者と同じような運賃割引が行なわれるようにということで、国鉄並びに運輸当局にお願いをしておるところでございまして、今後とも国鉄並びに運輸当局とも御相談申し上げまして、精神薄弱者に対しても身体障害者と同じような運賃割引か行なわれるよう努力してまいりたい、かように考えております。
  227. 兒玉末男

    ○兒玉委員 大臣にお伺いします。  いま国鉄当局と厚生省のほうから答弁があったわけですが、やはり私は、この際、財政的な措置についてもそう多額の金額を要するものではないというふうに理解をするわけでございますが、このような障害者を運ぶのが主として国鉄でございます。それに関連する私鉄等もあるわけでございますか、輸送する比率は国鉄が圧倒的に多いと思うのですが、この点について大臣の御所見を承りたい。
  228. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 仰せのように、そういう方々を運ぶのは国鉄だけではございませんで、私鉄もございますし、バスもございます。私は、先般予算委員会でもこの点についてお答えしたわけでございますけれども、われわれとしてはそういう制度ができました場合には、それに正面から取り組んで御便宜をはかることにはやぶさかではないのでありますけれども、いま、これは非常に喜ばれることでありますから大事なことと思います、国としましては。しかしそれを、今後社会福祉関係で考慮すべき問題を、身体障害者がそうなっているからだということで一切国鉄の財政負担においてやれとおっしゃっても、これは非常に困難であります。できれば、担当の官庁があるわけでありますから、そういうところで一般会計で予算をおとりになって、国鉄にはこうしよう、あるいは私鉄にはこうしよう、バスにはこうしようというふうにおやりくださると、一番これはスムーズにまいるはずでございますということを私見として申し上げました。関係大臣にもその点は申しておきましたが、これは来年度の予算編成にあたりまして、一つの問題として協議をしなければならぬところだと思います。  ただ、つけ加えて申し上げられますことは、そういう身体障害者あるいは目の見えない方、いろいろございますが、そういった方々交通機関を利用されるのに安全で、そうして安心をして便利に利用されるようにするための設備が必要でございますから、この間も問題になりましたが、たとえば身体障害者が車いすで入れるよう——改札口が狭くて入れない、こういうようなこともございましたし、中には何かエレベーターみたいなものがあればいいのだというようお話もございまして、国鉄にはそういったことを指示いたしまして、現在逐次車いすも改札口が通れるように、あるいは場合によりましてエレベーター、エスカレーター等を利用しまして、そういう方が交通機関を利用できるようにという設備面の、これは国鉄または私鉄が本来やるべき問題であろうということで、この点は積極的に指示しております。  ただ、運賃の割引の問題まで一切輸送機関のほうで責任を持ってやれといわれることになりますと、これは単にいまお話しの精薄児の方々だけではございませんで、ある一定年齢以上の老人に対してどうするかとか、いろいろな問題が生じてまいります。これは担当の官庁で十分お考えくださったほうが、この制度が実っていくだろうということを予算委員会でも申し上げたのでございまして、これはまだ関係閣僚との間で話し合いをしておりますので、来年度子算編成にあたりまして、こういった問題を取り上げて積極的に取り組んでいく必要があるだろうと思っておる次第でございます。   〔委員長退席、細田委員長代理着席〕
  229. 兒玉末男

    ○兒玉委員 せっかく問題を提起しましたので、特に厚生省、その点は自分の所管の問題として、これの実現のための予算、そしてまた運輸大臣としては、ひとつ来年度予算編成にあたってこういう要請があったことを十分記憶にとめていただいて、これが実現できるように最善の努力をしていただくことを私は希望として申し上げます。  これは同僚議員からも——特に最近計画の中で、おそらく運輸省国鉄も最大のガンといわれます東京、大阪など、大都市周辺におけるいわゆる通勤輸送関係のラッシュ時の混雑をいかに克服するかということが最大の課題じゃないかと私は思うのです。それで十カ年計画では、大体到達目標が二〇〇%ということを答弁されているわけでございますが、現在の線路の容量あるいはそれこそラッシュ時のいわゆる感覚、ヘッドからいいましても、これは安全運転という立場から見た場合は、まさにこれは危機一髪といいますか、薄氷を踏む思いで今日運転がなされているのではないか。たとえば山手線を一周するのに、現在まではたしか最高時速百二十キロであったかと思いますけれども、これを百キロに落とすにしても、わずか四分程度しか時間の節約ができない。実際通勤する人は一分、二分の問題ではないわけでございます。このようなまさに軽わざ師的な運転を行なっている。特に都市周辺における今後の混雑緩和ということについて、これからの具体的な展望として一体どういうふうな解決策というものが考えられるのか。  それから大臣にお伺いしたいわけですけれども建設省道路整備五カ年計画で十九兆五千億という巨大な資本投下をやって、道路整備をしようとしておる。私は、確かに道路整備必要であります。しかしながら、大都市における混雑緩和ということは、もちろん鉄道に依存する度合いは高いわけでありますが、道路面におけるところの輸送力増強、いわゆる交通客の転移といいますか、そういうもの等を含めた中で、私は、やはり道路整備計画というものを考えてしかるべきではないのかということを考えるわけでございますが、この点についての見解を承りたいと思います。
  230. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 建設省も、いまお示しのような点を考えながら道路整備をやっているものと存じます。今日、通勤通学対策で、特に輸送路を確保しなければならぬということは、だんだん都市の範囲が広がってきておりますけれども、やはり重点的には首都圏それから近畿圏、中京圏、この三つではないかと思います。私のほうとしましては、何といってもやはり国鉄が中心でございますが、たとえて首都圏を例にとりますと、国鉄を中心にいたしまして民鉄それから都営の公営交通企業の地下鉄でございますとか、あるいはバスにつきましても民間経営のバスあるいは都営のバスというようなものをできるだけ調整をいたしまして、それぞれが少なくとも通勤通学の時間帯におきましては、通勤通学のほうに最大限効率を発揮できるような体制をつくろうと思って努力をいたしておるところでございます。新しい交通機関交通路線も必要になってくるかと思います。しかし今日の状況を見ますと、まだいまお話しになりましたように、各交通機関がそれぞれ調整をとって、そうしてフルに能力を発揮しているかというと、なかなかそこまでいっておりません。これは私どもだけじゃなしに関係各省にまたがっておりますので、いわゆる総合交通体系の中において大都市通勤通学輸送体制をどうするかということは、大体考え方は皆さんまとまっておるのですが、それをどうして実行に移すかという問題が残っているわけでございます。一例をあげますと、たとえばバスならバスをとってみましても、バスの専用レーンをこしらえましても、その中に一台、二台のトラックが入ってきておりますとバスは走れないのです。これはやはり十分取り締まりをして、三十キロ、四十キロの速力でバスが走れるようになりますと、これが車を連ねて走ってくれますと相当大きな輸送力になることは確実でございますが、そういった点について、まだ具体的な面におきまして考えるべき点が残されていると私は思っておるのでございます。  それから地下鉄と国鉄あるいは民間の鉄道との連携の問題、あるいは相互乗り入れの問題、そういった問題につきましても、地下鉄とか民間鉄道に対しましても補助を出したりあるいは資金の融通をしたりしておるのでありますから、もう少し積極的な体制をつくるようにこれから大いに馬力をかけて、われわれも積極的に指導をしなければならぬと思っております。考え方はもうだれが考えましても、これはこういうこと、こういうことをやらなければならぬということは大体言えるのでございますが、それをさあ実行しようとなるといろいろな障害がございまして、十分な効果を発揮してないというのが実情だろうと思います。でございますから、今後実情に即して、実効をあげるための対策というものを各省が協力して積極的に進めるというのがまず第一だろうと思います。それでどうしてもいかぬところは新しい計画交通政策を立てて新規の計画で臨まなければならぬ部分も出てくるだろうと思います。大体いまそういうことを考えながら通勤通学対策というものに取り組んでおるわけでございます。
  231. 磯崎叡

    磯崎説明員 いま大臣がおっしゃいましたが、このたびの長期計画におきましては、約七千億の予算を計上して通勤対策ということでいろいろ考えておることは、すでに何回も申し上げました。東京につきましては、御承知のとおり、大体昭和四十年から始めましたいまの通勤計画が着々と実を結んでまいりまして、東海道線以外は一応の目標まできたわけでございますが、これからあとは、どちらかと申しますれば東京を取り巻く五十キロ圏あるいは百キロ圏のところの通勤問題を解決しなければいけない。同時に、東京都区内におきましてはやはり地下鉄の整備等によりまして、帝都高速度交通営団あるいは東京都、あるいは場合によっては私のほう自身がやるというようなことで、都区内はほとんど地下鉄の問題、それから周辺は私のほうの線路複線電化ということをこれからやっていかなければならないと思っております。  ただ、大阪につきましては、いままで非常に私のほうの投資がおくれておりまして、いわばほとんどといってもいいくらい通勤投資をいたしておりませんので、今後の計画では相当大阪にも金を入れなければいけないということで、いますでに始めております。関西線の電化あるいは片町線の複線化あるいは福知山線の問題その他大阪外環状線、いろいろいま計画しておりますが、いままであまり私鉄まかせにしておりました大阪の通勤問題につきましても、今度の十カ年計画では国鉄としても相当既設線の増強をしなければいけないというふうに思っている次第でございます。
  232. 兒玉末男

    ○兒玉委員 国鉄からいただきました資料によりますと、とにかく山手、京浜あるいは赤羽、中央、総武、いずれもこれは、二五〇%から二七七、二九〇あるいは二六八、総武線はこの前の地下東京駅乗り入れで若干減ったように聞いておりますけれども、到達目標のいわゆる二〇〇%程度に緩和するにしても、いま総裁の御説明ではたして可能なのかどうか、私はなかなかわかりましたと言うわけにまいらぬわけであります。  また運輸大臣説明を聞いておりますと、いわゆる善処し、対処するということばの繰り返しでありまして、具体的に各省との間に、この道路輸送とのかね合い、あるいは通勤関係を含めた輸送緩和ということが、もう少し具体的なスケジュールとしてその展望が明らかにされないと、ただ頭の中で考えている表現だけでは、おそらく今日通勤ラッシュに苦しんでいる通勤者、一般客としてもなかなか理解に苦しむであろう。加えて今回の運賃値上げということについて、新聞なりテレビを通じて国鉄旅客運賃のほうでは黒字なんだ、赤字を出しているのは貨物なんだ、こういう考え方が非常に強いわけであります。ですから、山手線の場合のほんとうの輸送力増強あるいは中央線等の場合についてはどういう形で具体的な輸送力増強が可能なのか、再度、くどいようでございますがお伺いしたいと思います。
  233. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 各地の具体的な事情をあまりつまびらかにしないものですから、私どもとしましては抽象的なお答えしかできないわけですが、たとえば首都圏につきまして、いま事務当局及び国鉄に対して検討を指示いたしております問題がございます。これは多少具体的でございますが、先般できました武蔵野線、こういったのは、半径五十キロの首都圏ということを考えますと、いまの山手線の外に何かもう一つ首都圏を取り巻くような、いわゆる環状線のようなものが要るのじゃないか。そうすれば都心交通の混雑というものがもっと緩和されるであろう、こういうことも考えられます。ところがこれを一つやるにいたしましても、いままで貨物線を主として誕生してきたものですから、これを旅客と併用いたしまして、ある時間帯は旅客を主として使うということになりますと、いろいろな設備もしなければなりませんし、他の路線とどうして結合するかというようなことも考えなければなりません。それからいままで予定しておりました貨物輸送というものを、どういうふうに振り向けるかというようなことも考えなければなりません。なかなかむずかしい問題でございますけれども、これは一例として申したのですが、そういったことを考えると、そういったことを具体的にできるだけ実行可能な案に仕上げてもらって、できるなら来年度の計画に織り込むようにしたいというようなことをいま指示しておるわけでございます。  それからさっきちょっと申しましたが、私は、大都市内の交通というものはこれからだんだん地下鉄に移っていくのが一番適当だし、他の国々の大都市を見ましてもやはりそういう傾向にございますから、これは非常に経費のかかる問題でありますけれども、可能な限り都市内の交通というものはそういう地下鉄の充実をしなければならぬと思います。首都圏についても同様に考えておりまして、地下鉄の、いまいろいろ何号線というのでそれぞれ問題はございますけれども、そういったものをでき得れば都市の中心から外へ延ばして、あるいは他の路線と相互乗り入れでもやりまして、乗りかえなしに相当に多くの人が都心に入ってこられるような施設をつくることも必要だろうと思っております。  それからバス専用レーンなど、これは私はあまりくろうとではないのですけれども、実際専用レーンをこしらえてやっていますその実績を見てみますと、専用レーンはできているのですけれども、その間に一、二台のトラックが入っていますとあとからもうずっと通れない。そういうことではいけないと思うのですね。私は、これは交通警察とも関係がございますけれども、やるならば、もう少し徹底してそういったようなものの可能な体制をつくってやらないと、おっしゃるように考え方だけじゃだめだということだと思いますので、実行可能な問題から取り組みまして、一つ一つでもいいから実行に移していこうという考え方をもって進んでおりました。  その他については多少考えもございますけれども、まだ御披露申し上げるような段階にはいっておりません。一生懸命取り組むということだけ申し上げておきます。
  234. 磯崎叡

    磯崎説明員 もう少し具体的に申し上げますと、たとえばいまの中央線なりあるいはいまの山手線なりを、もう一つ複線をふやすということはほとんど不可能でございます。また、いまの線路でも付近の民家が騒音振動でうるさいと言っておられるのに、さらにこれをふやすということは不可能でございますが、たとえばいま新宿を中心にいたしまして京王帝都から入ってまいります線、十号線と申しますが、これが市ヶ谷を通って大島まで参ります。あるいはもう一つ、小田急と常磐線の接続、これが国会の下を通っておりますが、いま代々木でとまっておりますが、これが間もなく小田急と結ばれます。たとえばこの付近、霞ヶ関付近に通われる方はいま国鉄利用者がうんと減っております。かわりに小田急からこの付近に通われる方は、もう直通で小田急から地下鉄で来てしまう。あるいは京王沿線から市ヶ谷、神田方面に通われる方は、いままでは新宿で乗りかえておられた方がまっすぐに行ってしまうというように、結局、都区内における地下鉄の整備によって国鉄輸送力を相当そちらに移すことができるというふうに考えます。これは他力本願のように考えられますが、現実の問題としていま山手線などを増強することは、あれ以上列車をふやすこともできないし、また編成を長くすることもできません。したがいまして、やはりほかの交通機関とのコンビネーションをうまくすることによって、そちらにお客さんを流すという方法によらざるを得ないというように思っております。またいまの中央線でございますが、中央線はまだもう少し緩行は入る余地があるように思います。これは五号線と直通運転しておりますので、こういうものはもう少し余力がございますから、これは余力を使うということによりまして、いまの東京に入ってきます四つの方面は、大体いま以上に根本的に国鉄の線自体をよくすることはほとんど不可能でございますけれども、総合的な交通機関としての東京都内の交通情勢は、地下鉄によって非常によくなっていくというように私は考えております。  ただ、先般も申し上げましたが、東海道だけはまだできておりませんので、いま東京駅の前から品川まで地下鉄を堀っておりますが、これができますれば、東海道の湘南電車と横須賀線が分かれるということによって東海道方面輸送は非常によくなるというふうに考えますが、いずれにいたしましても、もう都区内の輸送は路面の交通機関ではだめなんだ、やはり地下鉄によって——この地下鉄は営団がやる場合もあれば都がやる場合もあるし、場合によっては国鉄がやる場合もあるということで、総合的な交通体制を整備していくということ以外に大都市交通難緩和はないというように考えられます。
  235. 兒玉末男

    ○兒玉委員 そこで、多少趣を変えてお伺いしたいわけでございます。特に大臣にお伺いしたいわけでございますけれども大臣は、当初の所信表明の中におきましても、特に国鉄輸送ということで、安全輸送というきわめて重大な任務を持っているということを特に強調されているわけであります。このことについて、その後も新聞の報道を通じてもおわかりのように、ほんとうに国民がぞっとするような大きな事故を誘発する——これは事前に防がれた問題、あるいは先般の鹿児島本線における土砂くずれ、あるいは競合脱線、そして以前から指摘されておりましたような踏切における紀勢西線、これはついに運転士は死亡し、そして乗客六十五名がけがをするなど、こういうよう国鉄の安全に関連する問題、これを脅かすような事故が次々に発生しているわけでございますが、国鉄輸送の安全性に対する大臣の現在における御心境はいかがでございますか、お伺いしたいと思います。
  236. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 申し上げるまでもないことでございまして、国鉄といわず、あるいは民鉄といわず、自動車といわず、航空、海運、いずれにいたしましても、人命を預かりまして輸送に当たっておる機関でございますから、何をおいても人命安全ということは第一義としてやってもらいたいと思います。私、就任いたしましてから、航空につきましても船につきましても鉄道につきましてもそれぞれ問題がございましたので、非常に強い指示を出しまして、現実にどういうことをやろうとしているか、どんなことをやったのか、一々私もその報告書をいただきまして、検討を具体的にいたしまして必要な指示を続けておるわけでございます。  ただ、航空機は航空機、船は船、足りないところは構造あるいは運営のしかた等で補いまして、現在ではだんだん安全体制というのがはだについてきた、それが一つの体質になってきておるように思いますので、この点は私もありがたいと思っておるのでございますけれども国鉄に関して一番心配なことは、いま最後に御指摘のあった踏切事故でございます。これは皆さんの御協力もございまして、政府も先年来、この点については何回も閣議できめたりあるいは法律を出したりいたしまして踏切事故を防止するための努力は続けておるわけでございますけれども、事故は減りましたけれども今日なお安全施設のない踏切が相当残っておりますことと、また列車あるいは電車に対しまして自動車のほうが、そういった安全意識が欠けておるためでございましょうか、相当無理な運転をして事故を起こすというような例がなお絶えません。これにつきましてはわれわれも非常に責任を感じておるわけでございまして、建設省と相談をしながら踏切の立体化をはじめ安全装置を整備することにつきまして、これからももっと努力をしなければならぬと思っておるのでございます。それは大きなトンネルの事故とかなんとかいうことにつきましては、これは国鉄自身が当然やるべきことでありまして、やりますけれども、踏切の事故につきましては、相手のあることでございまして、非常にこれは困難な問題が包含されておりますので、十分関係省とも相談をして努力しなければならぬと思っておるのでございます。ただいまのところは、予算も十分でないかもしれませんが、建設省と相談をいたしまして、来年度以降さらに前進をするつもりでございます。
  237. 兒玉末男

    ○兒玉委員 国鉄のほうにお伺いしたいわけですけれども、これから具体的な事例を引きながらいろいろとお聞きするわけですが、四十七年度と四十六年度の比較において、列車事故、踏切事故あるいは人身事故等の関係について数字を示していただきたいと思います。
  238. 阪田貞之

    ○阪田説明員 列車事故につきましては、昭和四十六年度が六十件、この六十件と申しますのは、戦前、戦後を通じまして一番件数の少なかった年でございますが、昭和四十七年度に入りまして六件ふえまして六十六件になっております。ふえました原因は、大きなところでは、先ほどもお話のございました踏切事故と妨害によるものが合計で六件ふえております。しかし、十年前の昭和三十八年に比べまして、約二分の一に減ってきております。  それから、踏切事故は、昭和四十六年度が千八百二十三件、四十七年度には十六件減少いたしまして、千八百七件になっております。これも一時三千二百件までふえましたが、毎年毎年減ってまいりまして、千八百件になっておりますが、先ほどから御指摘ように、いろいろ御迷惑をかけている事故も多くて、今後なお一そう注意してまいりたいと存じます。  それから、人身事故につきましては、人身事故と申しましてもこの中には、ただいま申し上げたような列車事故で負傷される方あるいは踏切で負傷される方、また自殺される方、いろいろございますので、その辺、少し分けて申し上げますが、私どものほうの国鉄に直接責任のございます列車事故に関しましては、昭和四十六年度が死者一、負傷者が千二十三名、両方合わせまして千二十四名でございます。四十七年度は死者が三十二名、負傷者が九百二十名、合わせまして九百五十二名、死者が非常にふえておりますのは、御承知の、先般北陸でたいへん申しわけない事故をいたしました結果でございます。合計、死傷者合わせましては七十二名の減になっております。四十六年度がこのように千名近い負傷者を出しましたのは、船橋の事故で約七百六十名、それが大きく響いております。それから、四十七年度、九百二十名の中には、北陸の事故と日暮里の事故とが大きく影響しております。それから、踏切事故とか自殺者、こういうのをすべて含めまして、ともかく国鉄と何らかの関係があってなくなられたり、傷つかれたりした方は、四十六年度で死者が千八百二十五名、負傷者が二千九百三十九名、合計で四千七百六十四名でございます。四十七年度が死者が千八百四十六名、負傷者が二千八百四十九名、合わせまして四千六百九十五名でございます。自殺者が約八百から千近い、年によって変わりますが、その程度含まれております。
  239. 兒玉末男

    ○兒玉委員 鉄監局にお聞きしたいわけですけれども、現在、国鉄のほうの事故関係の数字が発表されましたが、もちろんこれは対比するということについては若干の問題がありますが、同じ交通機関であるバスなり私鉄関係はどういうふうな傾向にあるか、お伺いしたいと思います。
  240. 秋富公正

    秋富政府委員 私鉄につきまして申し上げますと、大体国鉄と同じような傾向を示しておりまして、おかげさまで事故は減少しております。これを四十一年におきます運転事故で見ますと二千二百四十八件でございますが、四十七年におきましては約半数の千二百四十三件になっております。踏切事故について申し上げますと、四十一年が千七百十九件でございます。四十七年におきましては九百九十三件でございます。列車事故件数について申し上げますと、四十一年が八十三件でございまして、四十七年におきましては二十二件でございます。人身事故件数につきましては、四十四年が二百四十八名でございますが、四十七年は二百八十一名、これはいろいろと事情がございましたが、あまり減ってない、こういう状況でございます。  なお、バスについて申し上げますと、四十二年のバスの事故件数でございますが、二千四十二件でございます。これが四十六年におきましては千三百八十九件でございます。それから死亡者は四十二年が三百八十三名でございますが、四十六年が三百八名という数字でございます。
  241. 兒玉末男

    ○兒玉委員 ただいまの御説明を聞いておりますと、やはり踏切に関連する事故というものが全体の九〇%を占めていようかと思うわけでございます。特に踏切改善ということについては地域住民の要請が非常に強いわけでありますが、この踏切関係における改善について、過去の十年間において、おそらく踏切改善というのは国鉄の自前と国からの助成という面で行なわれるのではないかと思うのですが、過去十年間においてどの程度の助成が行なわれておるのか、この踏切改善についての数字をお聞かせいただきたい。
  242. 篠原良男

    ○篠原説明員 お答え申し上げます。  先生の御指摘の十年間というのを、三十七年から四十六年の十年をとってみますと、私たちとしましては鋭意高架化あるいは立体交差で踏切をなくす、どうしてもそういうことができない場合には、整理統合と申しまして、三つある踏切を二つつぶして一つ残して、それを一種化、全遮断する、あるいはどうしてもできないものは車をとめる車禁というよう対策を講じてまいりました。その結果、この十年間に、高架化は二百カ所、立体交差は千三百カ所、整理統合で八千カ所、合計約九千五百カ所の踏切をなくしてまいりました。高架化では約三百三十三億、単独立体交差では三百五十九億、その他警報機の新設、遮断機あるいは踏切の構造改良、交通規制等に、過去十年間で合わせまして千百八十六億の投資をしてまいりました。
  243. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次にお伺いしたいのは、踏切の立体交差ということは、国鉄自体だけの利便ではなくして、その地域住民あるいはそこを通行する各種のトラック、バスなど、こういうふうないわゆる都市計画あるいは都市における交通の緩和、利便、そういう点等から考えた場合、このような立体交差化については、いま施設局長から答弁があり、一万カ所に近い改善がなされているわけでございますが、これについては当然国からの助成措置というのがあってしかるべきではないのか。また今後の踏切関係の保安設備というものは非常に高度の技術が要請され、その改善が要請されるわけでございますが、国からの補助政策というものはどういうふうになっているのか、お伺いしたいと思います。
  244. 秋富公正

    秋富政府委員 踏切につきましてはいわゆる単独立体交差、連続立体交差、二つございますが、いずれもこれは国鉄の保安上、運転事故防止という意味におきましてもきわめて意義がございますが、同時に、御指摘ように自動車輸送の安全性あるいは円滑なる運行という意味におきましてもきわめて大事でございまして、この問題につきましては私たちも鋭意努力しておるわけでございます。単独立体交差につきましては、すでに三十年代に建設省国鉄自身でその費用分担の問題をきめておるわけでございますが、連続立体交差につきまして四十四年に運輸省建設省がこの負担の割合をきめまして、国鉄が一〇%、私鉄におきましては七%、これを負担いたしまして、他の残り九〇%あるいは九三%は道路管理者が負担する、こういうふうにいたしましてこれが国鉄といたしましても連続立体交差の促進に非常に役立ちまして、先ほど御説明いたしましたようにその促進になったわけでございます。なお、そういったいわかる道路管理者の負担の比率の低減ということ以外に、一般に国鉄工事に対しまして、現行の再建計画におきましては四十四年以来六・五%までの工事費の助成をしてきたわけでございますが、ただいま御審議いただいております新しい再建計画におきましては出資を含めまして三%まで利子負担をする、こういうきわめて半額以上も——現在金利が大体七%でございますので、これを三%まで下げて助成をしていく、こういう計画でございます。
  245. 兒玉末男

    ○兒玉委員 ちょっと私答弁を聞き漏らしたわけですけれども、今後の踏切改善なり立体交差なり、こういう点についてはこの前、実は南武線の現地を見たわけですが、ものすごく踏切が多いわけですね。これは、だから単にレール側の必要性ということよりも、むしろ地域住民の利便という比重が高いのじゃないか、こういうためには、当然道路管理する建設省側のほうも、主要地方道なり市道なり県道、いわゆる道路の所管によっても違うわけでございますけれども道路を管理する部門においてもこの負担ということを考慮すべきではないのか。だから道路というと当然これは建設省が所管する、国側の負担ということをもう少し聞きたかったわけでありますが、聞き漏らしがありましたので、再度お答えをお願いしたい。
  246. 秋富公正

    秋富政府委員 単独立体交差におきましては大体国鉄が三〇%、三分の一負担しておるわけでございます。これは昭和三十年代に建設省国鉄とが取りきめたものでございます。しかし、国鉄の現状、財政状況にかんがみまして、一番経費のかかります連続立体交差につきましては、建設省運輸省が協定をいたしまして、国鉄の負担分は一割、残りの九割は道路管理者が負担する、民営の鉄道につきましては七%、道路管理者が残りの九三%を負担する、こういうふうに取りきめたわけでございます。
  247. 兒玉末男

    ○兒玉委員 施設局長の答弁にありましたが、まだまだ今後さらに改善、改良しなければいけない踏切が相当あるわけです。ですから、むしろ三分の一の国鉄の負担でも、今後大きな改善をするためには相当の財政負担になるのじゃないか。しかも結局、これはレールの側においてもスピードアップにも関係するし、地域住民も非常に便利になるという点から考えますならば、いわゆる踏切改善の経費というものは全部国の責任において出すのが至当ではないか。この前の南武線視察の際もそういう意見がたくさん出されているわけでございますが、これらの見解はいかがでありますか。
  248. 秋富公正

    秋富政府委員 この点につきまして一割についても全額国が持つべきではないかという御意見かと思いますが、昭和四十四年以来全工事費につきまして六・五%まで金利負担をしてきたわけでございますが、それを今回の新しい再建計画におきましては、三・五%まで工事費の利子を補給するわけでございます。それと工事費の一五%を出資するわけでございます。合わせますといわゆる金利効果と申しますものは、国鉄で負担いたしますものは三%弱になるわけでございまして、現在の国鉄の負っています平均金利が七%でございますのに比較いたしますと半分以下にいたします、こういった助成をするわけでございます。
  249. 兒玉末男

    ○兒玉委員 これはあとでお聞きするわけでございますけれども、たとえば紀勢西線の場合においても、とにかくいままでの踏切改善について組合側の意見も出され、当局側も早急に改善しなければいけない、こういうことが指摘されているやさきに、あのような事故が発生したわけです。もしこの事故が発生したことによって車両の破損、それから動力車の運転士が死亡——これは人間の命は金にかえられません。ですから、このような踏切改善も、道路との平面交差でありますから積極的な施策によって国鉄が踏切改善をしたいと思うけれども、今日の財政事情から、たとえば警報機をつけるについても二百万ないし二百五十万の金がかかる。こういう財政的要因があのような踏切災害事故を起こしておるわけであります。そういう点から考えますならば、乗っておる客の生命の保障あるいはそのよう車両事故によるところの損害というものを考える場合に、今後そういう重要な踏切における、たとえば一定交通量というものの基準を設けていく意味から、そういう点の踏切改善については当然国がいわゆる全額負担の政策をとってしかるべきではないかと思うのですが、いかがでございますか。
  250. 秋富公正

    秋富政府委員 先ほどからいろいろと諸外国の助成の例も出たわけでございますが、この踏切に対する助成の問題につきましては、西ドイツあるいはフランスにおきまして踏切助成ということをやっておるわけでございます。両方の国におきましてもそれぞれその半額を負担しておるということでございまして、現在私たちの考えております再建計画におきましても、今後の工事を促進する意味におきまして、現在平均金利が七%でございますが、それを三%にするということ、実質上におきましては半分以上助成している、五〇%以上助成している、こう言えるかと思うわけでございます。
  251. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に、またこれから災害の時期に入るわけでございますけれども、過去の新潟地震ですね、それから北海道地方を襲いました、これは三陸沖の地震でしたか、地震によって非常な災害をこうむったわけです。災害が起きますときは、たいがい都市周辺の場合は国道並びにこれに関連する橋梁、それにもちろん鉄道関係も相当な被害をこうむるわけでございますけれども、このような災害時における災害復旧は、もちろん道路関係も緊急な指令によって整備を急ぐわけですけれども、何といっても緊急性については、国鉄の災害復旧に最大の力点が置かれるわけであります。ところが、このような災害復旧については、緩急の度合いを問わず、被害の多少にかかわらず、国鉄の場合には災害復旧は全額自前で行なっているのじゃないかと思います。同じものを輸送し、人を輸送する交通機関でありながら、道路関係は国の負担で全部行なっているわけであります。こういう点から考えます場合に、緊急性については国鉄にその責任が非常に負わされ、しかも災害復旧費については全額国鉄負担ですから、こういう点から考えるならば、道路輸送の分も国鉄輸送するという関係になるわけですが、このような点については、全部の災害とは言いませんけれども、特に大災害、たとえば新潟のあのような地震あるいは北海道周辺なり青函連絡船など、こういうふうな災害復旧については、ある程度の国庫負担を考えてもしかるべきではないのか。この点について運輸省当局の見解を承りたい。
  252. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 自然災害の復旧でございますが、これは不可抗力ではないか。国鉄は公共的な輸送機関だから、当然それは道路と同じように国で全額負担したらいいじゃないか、こういう御論拠のように伺います。過去の災害復旧の例を見ましても、大体予備費でまかないましたり、あるいは若干補正予算を組んだこともあるようでございます。こういったことで、災害復旧をいたしますのに、経費の面であるいは資金の面で支障がありまして、災害復旧がおくれたということはないと思っております。  そこでいまのお話しのように、一体あとをだれが負担してどうぬぐうんだ、こういうことでございましょうが、今度出しておる再建計画では、先ほど来申し上げておりますように、すべてのそういった要因を入れまして財政の補助をしておるということでございまして、毎年毎年起こっておる災害でございますから、そういう長期計画、長期の収支を立てます場合に、積算の基礎に災害復旧は当然入っているものと考えておるのでございます。ですから、その点は最終的には国の負担においてまかなわれているというふうにお考えくださってもけっこうじゃないかと私は思っております。
  253. 兒玉末男

    ○兒玉委員 やはりこれに関連する問題として、踏切事故から派生する災害でございますが、三年ほど前でしたか、鹿児島駅の近くで運転手が居眠りをしまして道路からダンプが落ちて、それに急行のディーゼルがぶつかって八十人くらいけがをしまして、ばく大な損害賠償を国鉄に要求した事件があったわけです。これは完全にダンプ運転手の不心得による原因が、最大の要因でありました。この前の紀勢線でも、警報中にもかかわらず、ダンプ運転手の無謀な踏切横断があのような事故を引き起こしている。たしかこの前の成田線の場合もそうじゃないかと思うのです。こういう場合に、相手がかなりの資本力のある企業であれば、若干の補償に応ずる能力があろうけれども、最近はいわゆる一匹オオカミといって、一人で白ナンバーで砂利トラをやるのが非常に多い。しかも無謀な運転をしている。こういうような踏切における事故によって国鉄はどの程度の損害をこうむっておるのか。これは最近でもけっこうですが、わかっておればひとつお知らせいただきたい。
  254. 篠原良男

    ○篠原説明員 踏切の事故についての損害額を年度別に申し上げますと、四十四年に二億四千八百五十万円の損害を受けております。四十五年が二億三千百二十一万円であります。四十六年度は三億一千五百五十九万円。大体二億ないし三億の損害を受けておるというのが実情でございます。
  255. 兒玉末男

    ○兒玉委員 いまの損害額というのは、車両破損とか人的な死亡関係、そういうもの一切を含めた損害額なのかどうか、あらためてお伺いしたい。
  256. 篠原良男

    ○篠原説明員 車全体の入ったものを申し上げます。私、単位をちょっと間違えまして、約二百五十億でございます。一年間の損害が、全体を含めますと約二百五十億ぐらいになります。
  257. 兒玉末男

    ○兒玉委員 局長、あなたはどうかしていませんか。さっきは、四十四年二億四千万、四十五年二億三千万、四十六年三億一千万、平均二億五千万。いま何と言われましたか。(「二百五十億」と呼ぶ者あり)あまりにも数字がかけ離れているじゃありませんか。しっかりしなさいよ。
  258. 篠原良男

    ○篠原説明員 失礼いたしました。単位を読み違えまして、四十四年度二百四十八億でございます。四十五年度二百三十一億、四十六年度三百十五億でございまして、年間大体二百億ないし三百億の損害を受けておるというのが実際でございます。——失礼いたしました。単位は一番最初申し上げたのが正しい単位でございます。失礼いたしました。
  259. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  260. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 速記を起こして。
  261. 篠原良男

    ○篠原説明員 まことに失礼いたしました。先ほど一番最初申し上げた単位が合っておりました。四十四年度二億四千八百五十万円、四十五年度二億三千百二十一万円、四十六年度三億一千五百五十九万円、これが損害でございます。
  262. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それでは再度確認しますが、この損害額というのは、この中において死傷事故もあるだろうし、それからダンプが飛びおりてきたというか、踏切だけでなくして、これに関連する問題として私は聞いたわけです。これはあとで、補償関係についてお聞きしようと思って聞いたわけですが、当然これには死傷者に対するところの弔慰金なり見舞い金なり国鉄自体の車両の損失あるいは線路の損失ですね。そういうものを含めた全体の総額はこうなっているかということです。その内容について……。
  263. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいま申しました三億前後の数字は踏切事故によって生じました直接の損害だけでございます。したがいまして、まず踏切が事故によって閉鎖されたことによるいわゆる得べかりし利益は一切入っておりません。たとえば、列車がおくれたとかあるいは列車が運休したとか、その損害は一切入っておりません。それから、実害だけでございますので、それ以外に、たとえばうちのほうのお客さんがけがをされるあるいはなくなったという場合のその人身の損害賠償は入っておりません。ただし、たとえばダンプの運転手などがなくなった場合に、ごく気持ちだけの香典等を出す場合がございます。こういうものは入っておりますけれども、うちのほうのお客さんに対する人身の損害賠償はそれに入っておりません。実害だけでございます。
  264. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私の判断では、おそらくこの金額は、発生している踏切の事故件数から類推しても、金額の見積もりがかなり少ないのではないかという感じがしますが、それは当局の説明でありますから……。それでは、このような踏切に関連するダンプ等のもたらした事故の損害というのは、当事者に支払い能力がない場合には、結局これは全部国鉄側の損失として計上されるのかどうか、この辺お伺いしたいと思います。
  265. 篠原良男

    ○篠原説明員 先生のおっしゃるとおりでございます。徴収いたすべく努力いたしまして徴収いたしておりますのは、四十四年度五〇%、四十六年度四九・三%、約半分は損害賠償の徴収ができておりますが、残り五〇%は徴収できない。したがって、国鉄がかぶっているというのが実情でございます。
  266. 兒玉末男

    ○兒玉委員 さらに、今後の国鉄の再建計画の中でも、保安、安全ということはきわめて重要な比重を占めておるということは大臣も再確認されたとおりでありますが、国鉄経営の重点ということが、いわゆる合理化という面やらあるいは営業面の増収、こういう点に重点が置かれて、保安対策ということが、ともすればなおざりにされる傾向にあるのではないか。これはあとで具体的な点もお聞きするわけでございますが、合理化と営業対策、それから保安対策について特にどういうふうな所信をお持ちなのか、国鉄当局にお伺いしたい。
  267. 磯崎叡

    磯崎説明員 安全問題は、私のほうのいわば事業運営の生命とも申すべきものだと考えます。したがって、これはあらゆることに優先し、また労使問題にも優先する問題であるということを信条といたしておりまして、いままでも過去十数年間、いわゆる保安対策につきましてはもうできるだけの物的設備を整えてまいってきたつもりでございますが、ただ、私は事故対策というのは無限であるというふうに考えます。常に限りないものだ、無限に挑戦するのだという気持ちがなければ、これでいいのだという気持ちでは絶対だめだということも部内でよく申しておりまして、無限の保安対策について有限の金をどう使うかということが一番問題であるというふうに考えます。常に私は謙虚に事故を反省し、また謙虚に事故を考えながらこれらの事故対策を進めていく。事故を絶対に起こさないということ、非常にむずかしいことでございますが、その無事故に向かって謙虚な気持ちで進んでいくということが、やはり事故を一つでも減らすという一番大きなポイントではないかというふうに考えてやってまいったつもりでございます。
  268. 兒玉末男

    ○兒玉委員 いまの力強い答弁を聞いたわけでございますが、それでありますならば、今後の保安ということについていろいろ各部門別に聞くわけでありますけれども、今後の保安対策の重点的な施策といいますか、これはどういうことをお考えになっておるのか、お伺いしたいと思います。
  269. 磯崎叡

    磯崎説明員 いままであまり詳しく御答弁いたしておりませんので、ちょっと詳しく申し上げさせていただきます。  今回の再建計画で保安対策全体で一兆三千億、金は申し上げましたけれども、その重点事項としてまとめて申し上げたことはございませんので、以下申し上げますと、まず何と申しましても旅客の死傷あるいは貨物の損傷を招く結果となる列車事故というものを絶対に防がなければいけない。それにはおもに四つございますが、列車運転の取り扱いの誤り、取り扱いの誤りの起きそうな取り扱いをしないということが一番大事だと思います。それから、先ほど来お話しの踏切事故の防止、それから最近非常に多い宅地造成その他の関連で予期せざる災害がございます。災害による事故の防止、それから鉄道プロパーの列車火災あるいは途中脱線等の防止をしなければならない、この四つに重点を置いて、以下もう少し詳しく申し上げますと、まず列車の取り扱いの問題でございますが、乗務員の間違いのないようにする。現在、御承知のとおり全国的に全部いわゆるATSをつけておりますけれども、そのATSをつけて約十年になります。やはり人間でございますので、ATSがついていても事故が起こるということで、現在私鉄などでやっておりますATSよりもさらに進んだATCをつけたいというふうに考えて、いま大体具体的なシステムを確定しつつある段階でございます。それから、その他の、いわゆる非常に密度の高い電車区間はATSをATCに直しますが、その他の主要線につきましては、いまのATCに対する新しい方式を開発、投入してまいりたいということを考えております。  それから、駅その他における間違いの原因になりますポイント、信号の問題でございますが、これは、自動信号はほとんど現在まで間違いがございません。何千万分の一件もございませんので、やはり自動信号の区間をなるべくふやしていくということ。それから駅におけるポイントの切り違え等もございますので、これの間違いをなくするためにCTC、ある数カ所をまとめて一カ所にCTCをつくっていく。あるいは大きな駅の構内におきますポイントの誤りを防ぐためにいわゆる継電連動、全部電気でやってしまう方法、その他いろいろございますが、こまかいものは省略いたしまして、おもなものはそういうことをいたしまして駅における事故の防止につとめるつもりでございます。  それから、次に踏切の問題は、すでに先生御質問がございましたし、また御答弁を申し上げておりますが、私どもいま一番心配になっておりますのは、たとえばこうやって御答弁している最中でも、全国的に人身事故がどこかでないともいえないわけであります。一日に平均大体六、七件踏切事故が発生しております。でき得べくんばいわゆる四種の三万数千ございます踏切を全廃したいという気持ちがございますが、いまの私のほうの金だけではとてもできませんので、これは国の御援助を得てできるだけ踏切の数を減らす、そのかわり残した踏切は安全にするという方向でぜひまいりたい。しからば三万数千という、数は非常に多うございますが、これをきちっと年度計画を立てて、政府の御協力を得て何年間になくするというところまでいかなければいけないというふうに考えております。  それから、その次にいわゆる天災等の災害でございますが、先ほどちょっと申しましたが、非常に最近思わぬところでもって宅地造成その他でもって水が出る、がけがくずれるということがございますが、これは防災工事については徹底的にやってまいりたい。あるいはトンネル、橋梁等の老朽施設の取りかえ、その他さまざまな環境変化の監視体制というものをはっきりさしていって、自動的に警報が出るような監視体制をぜひつくっていかなければならないというふうに考えますと同時に、先ほどちょっと御指摘道路との立体交差の場合における自動車の転落事故、これが決してばかにならないおそろしい事故でございまして、自動車が、極端に申しますと直角に道路から落ちてまいることもございます。そういう意味建設省とも御相談いたしまして、自動車と列車の立体交差の場合にとにかく上から自動車が落ちないようにする。きわめて簡単なことでございますが、それをぜひやってほしいというふうに言っております。  それから火災の問題でございまして、これは先般たいへん申しわけない北陸の事故を起こしましたが、その後日本じゅうのほとんどその方面の大家に寄っていただきまして、現在鉄道火災対策技術委員会というものをつくっております。これによりまして先般も、客車を一両焼いていろいろなテストをいたしました。今後新幹線によりまして長大の、長い大きいトンネルがふえてまいります。その長大トンネル、極端に申しますれば青函トンネルのような非常に大きい長いトンネル、それの防災、ことに防火対策というものは、場合によっては鉄道の将来を決するような重大問題だというふうに考えます。したがいまして、鉄道の火災問題は新しい事態の問題としてこれをどう防ぐのか、トンネルの構造をどうするか、車両の構造をどうするか、非常に大きな問題でございまして、いまこの問題について日本のこの方面の専門家に集まっていただいて、良い知恵を傾けていただいている最中でございます。  最後に、いわゆる途中脱線の事故でございます。先般も鹿児島本線でございましたが、やはり年間に数件途中脱線ということがございます。これは駅と駅との中間で貨車が脱線するということでございますが、これは大体原因がつかめつつございます。これの一番大きな原因は、北海道で狩勝線の線路を実験線にいたしまして実際に貨車なり客車をころがしてみて、そしてどういう線路の状況のもとに、どういう車両の状況のもとに途中脱線が多いかという相当大きい実験をいたしましたのでデータがだいぶとれておりまして、これは外国からもずいぶんこの問題を聞きに来ております。そういう意味で途中脱線の問題につきましては、線路の保守の問題、車両の整備の問題、列車のスピードの問題、この三つを攻めていって大体原因らしい原因がつかめつつございます。したがって、これは最近だいぶ減っておりますけれども、なおなお底の深い問題といたしまして、途中脱線の問題につきましてはやはり委員会をつくって検討している最中でございます。  以上、こまかく申し上げましたが、結局最後は人と機械の調和のいわゆるマン・マシン・システムであるというふうに思います。そういう意味におきまして、いま申し上げましたハードウエアのほかに、もちろんソフトウエアとして職員に対する指導、教養、監督、十分これをきちっとしなければいけないというふうに考えておる次第でございまして、重ねて申し上げますが、私ども何と申しましても保安、安全が第一でございまして、これを中心として今後とも十分考えてまいりたいというように思っております。
  270. 兒玉末男

    ○兒玉委員 いまるる御説明を聞いたわけでございますけれども、やはり国鉄輸送の最大の使命は安全ということでございますから、今後ひとつ一そうの努力を私は要請をいたすわけであります。  次に、先般鹿児島本線におきまして土砂崩壊による列車脱線事故が発生しているわけでございますが、これらの関係については、非常に南九州はシラス地帯でございまして、これからの梅雨期を控えまして、おそらくまたこの種の事故の発生が予想されるわけでございますが、これは一つの例にすぎないわけでありまして、これらの相関関係あるいは今後の対策ということについてはどういうふうな検討をなさっておるのか、また関係機関との連絡はどうなっているのか、お伺いしたいと存じます。
  271. 篠原良男

    ○篠原説明員 先生の御質問は、鹿児島本線の上伊集院——西鹿児島間で起こった土砂崩壊による線路災害のことだと思いますが、のり面の勾配を安定勾配に切り取り整備いたしました。といいますのは在来、線増いたしましたときののり勾配が下が五分、上が四分、こうなっておりました。今回これを一割ののり勾配に切りくずしました。したがいまして、約六千五百立米の土を取りましてのり勾配をゆるくいたしました。あわせてのり面とそれからこれは格子ワクのコンクリート、ブロックコンクリートを張りまして、約千八百三十平米ブロックを張りました。この間八十メートルの間には土砂崩壊警報装置を新設いたしました。したがいまして、先生指摘ようにシラスでございます。これは鹿児島県と一緒になりましてシラス対策というものは検討されておりますが、まずのり勾配をゆるくし、のり面のブロックコンクリートを張りますとともに、土砂が崩壊いたしますと警報機が鳴るというような装置をあわせて備えつけることによって当面の対策をとっております。今後は鹿児島県と一緒になりまして、シラス対策というものを国として研究事業に取り上げてもらっておりますので、国鉄も参画いたしまして、シラス対策の防災対策設備を進めていきたい、かように考えております。
  272. 兒玉末男

    ○兒玉委員 ついでに鹿児島本線に関係することでございますが、去る六月五日に鹿児島本線の上川内と草道という駅がありますが、この間で、カーブ四百ですから、そんなに急カーブではございません。ここで貨物列車が脱線転覆している事故が起きておりますが、当局は理解されておりますか。この事故についてでありますけれども、新聞の報道では、よく当局のいわれている競合脱線というのですか、というふうな形の新聞報道がなされて、競合脱線とはレールのわずかなゆがみ、車両のすべり方、積み荷のバランスなど、いろいろな要素がかみ合って起こる事故脱線、こういうふうな解釈が載っているわけであります。これについて、その後国鉄当局としてはどういうふうな事故結果を分析し、検討されているのか、お伺いしたいと思います。
  273. 阪田貞之

    ○阪田説明員 途中脱線事故で大きかったのは例の鶴見の事故でございますが、鶴見の事故対策調査委員会というのを設けまして、それがさらに発展解消いたしまして脱線事故技術調査委員会というのを設けて、これは線路車両のその道の専門家に来ていただきまして、こまかい調査並びに先ほど総裁からお答え申し上げましたような狩勝線に試験線を設けまして、いろいろな要素の脱線原因を究明いたしました。  ただいま先生からお話の上川内の事故も、事故が起こりまして、直ちに飛行機で専門家を現地に派しまして、技術研究所並びに本社ともどもこの調査に当たったわけでございますが、競合というかいろいろな悪条件の重なった結果である、最終結論までは出ておりませんが、現在のところそのおそれが多分にございまして、線路の状況、それから速度、そういう一つ一つの要素の中にこれだというのがはっきりわかっておりません。いままだ一両貨車が水の中に入っておりますので、至急引き揚げまして、なかなか引き揚げの困難な場所でございまして、車の調査もいたしたいと思っております。その結果、川内のほうはどうなるか結論つけたいと思います。  しかし、いずれにしましても、こういう線路にも特殊な悪い点がない、車にも悪い点があまりない、速度もそれほど出ていない。しかし現実に脱線が起こっているというものはたいへん技術究明がむずかしくて、ようやく昨年の三月にこの脱線事故技術調査委員会というのが結論を出していただきまして、ただいままでやってまいりましたのは、二段リンクの貨車のN踏面化と申しまして、電車なんかには出ておりません、もっぱら貨車に出る現象でございますが、二段リンクと申しまして貨車が——これは先生御専門だから御承知だと思いますが、貨車の振動が変な振動をしないように二段リンクというのを設けておりますが、今度はさらにそういう貨車のレールと車輪とが接する、そこにいろいろむずかしい設計上の図形がございますが、その図形をN型というものに変えまして、これも狩勝線の実験線その他でいろいろ研究いたしました結果、これならだいじょうぶだろうということをやったわけでありますが、これのN踏面化を終えました。それから、脱線しそうな場所には脱線防止のレールを内側につけまして、万が一外側の車が脱線しそうになりましても内側のレールがそれをとめてくれるような処置をしております。また、速度が正確にわかるように記録式の速度計を取りつけるとか、あるいは同じ貨車の中でもくせのある貨車がいろいろございまして、ボギーのタンク車にもございます、あるいは石炭車もございます、ホッパ車もございます。そういう個々の車が脱線——個性か悪いであろうと思われるものを全部ただいままで直してまいりました。結果的には二、三年前まではこの調査委員会の結果を得るまでは年間二けたの脱線事故が出ておりましたが、昨年、一昨年は三件ずつまで減ってまいりました。ぜひとももう一息、これらの諸施策ともう一度こまかい調査をいたしまして このような途中の脱線事故がなくなるように今後とも努力してまいりたいと存じます。
  274. 兒玉末男

    ○兒玉委員 これは私は氷山の一角にすぎないと思っているのです。私もかつて向こうに勤務した関係でよくわかっておるわけですが、カーブ四百といえばほとんどゆるやかなカーブであります。ですから、事故の状況というものを新聞の報道を見ましても、かなり激しい状態でいわゆる脱線状態が起こっているわけですね。それで線路状態が悪いか、あるいはこの二十三両編成の中の四両の車両の積載状況がどうなのか、あるいは車両構造は異常がなかったのかどうか、同時にスピードは、もちろんこれは表示してありますから、制限スピードを越していたのではないかどうか、そういうふうな当然の調査は終わっていると思うのですよ。それはどうなっているのか。  それから、私が国鉄の労働組合からもらっている資料の中で、この鹿児島の川内保線区といいますけれども、ここで昭和四十二年には、ここは非常に、噴泥というのですね、泥が吹き上げる、この個所が六千カ所指摘されたわけで、これはもちろん保線区自体も知っているわけです。それが昭和四十七年には約一万カ所記録をされているわけです。こういう噴泥個所がふえるということは、きわめて線路の基盤が不安定であるということを如実に示しているわけです。私も長年乗務員をしておりまして、線路のがたが来ていることがわかるわけです。この鹿児島保線区、この付近においては、たとえば食堂車のビールびんが倒れる、あるいはみそ汁がこぼれるとか、そういうふうな、俗な表現ですが、それだけ線路ががたが来ているということが今日まで指摘されているわけです。  このことについては、何といいましても一番基盤である線路の整備といいますか、いわゆる保守回りというものが、最近回数がふえたために十分でないということがいわれているわけですが、その一つのあらわれではないか。スピードもあたりまえだ、線路状態も正常だ、貨車もどうもないということであれば、事故が起こるはずがないわけであります。ですから、これは幸い単線区間であったからいいようなものの、これは国道三号線と並行する路線であり、その並行の多いところでございますが、幸いに三号線との関係のないところの脱線事故でございます。これがもし国道線との並行線であった場合は重大な事故が予想される、あるいは複線区間等であればなおさら大きな事故につながる重大な事故だと見ているわけですが、それの関係について、再度わかっている範囲でいいから御説明をいただきたいと思います。
  275. 阪田貞之

    ○阪田説明員 この線路状態は、大体三カ月、四カ月にマヤチャートと称しまして検測車を走らせまして、レールの水準であるとか幅が狂っているとか、こういうのを全部はかってまいります。去年二月にやりました時点におけるデータがいまございますが、このデータの中には、水準とかレールのわずかな、ほとんど目でわからないくらいのものでございますが、検測車などで、普通三波連続と申しまして、車がこういうふうに三回連続して左右動を与えるような条件がもしございますと、これが一つの脱線原因になるというようなものがありますが、わずかですが、すべて限度内、十分限度内に入っているのでありますが、レールは三波連続の傾向が若干ある。それから、速度は七十キロ制限なんでございますが、速度計はほとんど七十キロぎりぎり、あるいは若干速度計も誤差がありますが、速度計をちょっと出過ぎるくらいである。それから、車自体は積み荷のほうも——ももちろん積み荷はひっくり返ってはわかりませんが、すぐうしろに同じ大豆かすを積んでいる車がありまして、これの状況から類推いたしますと、大豆かすでございますと、ほとんど偏積、積み荷がおかしいことはないだろう。そこで、いままだ結論が出ておりませんが、現在そこの線路は、脱線をした手前は完全にもとのまま残しているわけでございますから、そこのところをもう一度検測いたしますと、もとの形の状態がそこでわかるわけでございます。目下軌道の保守状態、材料の摩耗劣化状態等各種の試験、調査を実施しており、この次の検測が六月二十日にやる予定でございますので、二十日のその結果を見て、それから、先ほど申しました車をできるだけ引き揚げて、両方の条件を見た上で総合的にこれがどうかという結論を出したいと思っております。  それから噴泥状態でありますが、これも私心配いたしまして、行くときに噴泥状態その他もよく見ておけという注意を与えました。噴泥も、付近をずっと見てまいりましたが、この付近でこの時点において噴泥は出ていないという報告を受けております。  それから、保守回りその他一般的な問題につきましては、プロジェクトチームをつくっておりまして、プロジェクトチームによりまして保守のやり方、どの程度の時間内にどういう保守要件をしたらいいかという新しいやり方につきまして、ただいまいろいろ施設局のほうで研究を続けておるような次第でございます。
  276. 兒玉末男

    ○兒玉委員 まだ質問に答えていない点があると思うのですがね。では、線路状態は異常なかったのかどうか、それからスピードはどうであったのか、それからおそらく車両等は引き揚げて工場なんかに持っていっていると思うのです。それから貨物の積載状態はアンバランスではなかったのかどうか、片積みじゃないのか、あるいは前後の関係や盈車、重量物とかあるいは軽量物とか、こっちも専門家だからわかるわけですよ。その辺の事故内容についてどういうよう調査結果が出ているのか、わからなければわからないでいいですよ。だから、その辺の線路状況、スピード、それから貨車のそういうブレーキ関係なり機能はどうであったのか、そういう具体的な点を、これはおたくの当局は専門家なんだから、私の質問に簡潔に答えていただけばけっこうです。
  277. 阪田貞之

    ○阪田説明員 先ほど申し上げましたように、車はまだあがっておりません。それからその他専門家は行っておりますが、まだ結論は出ておりませんので、はっきりわからない現状でございます。
  278. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それではまた引き続き車両関係に入りますけれども、昭和四十六年度から四十七年度における車両故障の実態についてお伺いしたいと思います。特にEC、DCの故障が多いといっておりますけれども、この型式並びにその原因、その対策についてどうしているのか。これはさっきの脱線を含めて、線路保守関係との関連もありますので、まず車両故障について、いま指摘した点についてお答え願いたいと思います。
  279. 阪田貞之

    ○阪田説明員 初めに、車両故障の全般の傾向につきまして少し数字で申し上げます。  これは型式別にいろいろ状況が変わっておりまして、昭和四十六年と四十七年を比較いたしますと、大体減っておりますのが蒸気機関車の件数にして六件、電気機関車の直流で十六件、交流電気機関車が一件、それから客車が十二件、これは減っているほうでございます。それからふえておりますのが電車の直流が七十一件、交流が七十五件、それからディーゼルカーが二十四件、これは両数がふえておるせいもございます。ただいまおっしゃいましたように、電車とディーゼルカーの件数がふえてまいってきております。  その中で、初めに、電車のほうで一番故障の多いのが五八三という車でございまして、これは東北線あるいは鹿児島、山陽、東海の特急用の寝台に使っている車でございますが、これがだいぶ故障がふえておりますので、その対策をずっと昨年来やってまいりまして、逐次よくなっておりますが、その大きな原因はころ軸受けの焼損というのがございます。これが一番多くて、そのほか電気機器が地気してしまうという問題がございます。これに対しましてはいろいろ手を打ってまいりまして、たとえばタイヤにいろいろなフラットができましたときに、その振動の影響でいろいろ軸受けに悪い影響を及ぼしますので、タイヤにフラットが出ないようにタイヤを削正してしまう。それからこれらの玉軸を全部一斉点検をやりまして、油の取りかえその他全部終了しました。また中の油の圧力、これも全部昨年の九月までに終了いたしました。  それから、ただいま軸受けの曲率の半径その他の拡大という、専門的にその道の専門家に、部分的に設計を変えたらよくなるのではないかということで、外輪の曲率半径の拡大をやっておりますが、これは工場に入場しませんとできませんので、ことしの一月から処置をやっております。さらに、ころ軸そのものを全然新しい型式のものはないか、ただいま研究開発中でございまして、ほんとうにいいものができ次第、できれば全部それに取りかえる予定でありますが、ただいまのところ、いま申し上げましたような手を打ちました結果、ことしの春以来事故がずっとなくなってまいりました。数日前また一件出てしまいましたが、いままでこういう事故が月々二件、三件出ておりましたが、ずっとなくなってまいりました。  それから電気関係のほうは、いろいろ部品が地気したり何かいたしますので、全般的に部品の取りかえによってこの対策を処置しております。  それから気動車のほうで非常に故障件数の多いのは、キハの一八一型という車とキハの六五型という車でございまして、大体、キハの一八一というのは急行、特急用、キハの六五は急行用でございますが、これも系列的には同じような部品を使っております。これはシリンダーヘッドにガスケットというのがついておりまして、そのガスケットのところからいろいろな空気が漏れる。それで所要の出力が出なくなるということもございまして、これは改良型にただいま取りかえ中でございます。これに関連いたします過給器とか空気清浄器とか、いろいろなこういう部品がございますが、それも大体八月末に全部改良を終える予定でございます。  それから、同じ車に車輪の表面が剥離する、車輪の外側が剥離してしまうという事故が出ておりますが、これはその後計画的に削正回数をふやしまして計画的に車輪を削正いたしました結果、この方面の事故も逐次なくなってまいりまして、一昨年は非常に出ておりましたが、昨年の後半からずっとよくなってまいりまして、件数もずっと落ちついてまいりました。  ただいま私どもが非常に注意して保守その他しております型式について申し上げました。
  280. 兒玉末男

    ○兒玉委員 再度お伺いしたいわけでございますけれども、これら非常に専門的な知識を必要とする問題でありまして、特に最近のDLあるいはEC等の車は相当構造も改善されておるわけでございますが、私の手元の資料によりますと、現在のこのような貨車を含めて特にECの場合は約一万四千両、DLは千七百両ありますが、これ以外のSしなりあるいはDC、PCを含めて、現在いろんな事故要因をなしている原因別の状況を見ますと、こういう数字が出されているわけであります。  車両構造上の欠陥が百三十件、老朽化による修理不能が十八件、購入部品、材料、材質不良、予備品の不足が百四件、検修設備機器の不足が九十三件、それから検修回帰キロの延長が十三件、作業工程の無理が八十一件、作業人員の不足が理由と見られるもの九十三件、それから検修作業の省略、手抜きが理由とされるものが六百二件、検修が外注されていることが理由と見られるものが十二件、以上千百四十六件。  これは信頼すべき数字の資料でございますが、この総体的な件数から見た場合、先ほど総裁は、合理化、営業成績ということはもちろんだが、特に安全政策については無限の努力が要請されるという点から御説明がありましたが、こういう車両関係の問題点の中で私が懸念することは、検修作業の省略あるいは手抜きが理由と見られるものが六百二件、全体の五〇%以上の比重を占めておるわけであります。もちろん当局としても、これらの関係については十分配慮されていると思うのですが、これらの車両関係の故障の要因をなすものについては、やはり今後特に電車の利用の高くなる時点から考えてみましても、これは十分な配慮が必要と思うのですが、このような数字について、要因についてどういうようなお考えをお持ちなのか、再度お伺いしたいのです。
  281. 阪田貞之

    ○阪田説明員 ただいまの数字を初めて伺ったので細部はわかりませんが、一つの故障の判断というのはたいへんむずかしくて、非常に主観性の強い判断になると思うのでございますが、私どもの検修のいろいろな合理化というものが安全に影響しては、これはたいへんな問題でございますので非常に注意しております。先ほど申し上げましたように、よくなっているものは、いろいろな新しい検査のやり方を、機関車も電車もディーゼルカーも客車もみな大体同じようなやり方をしておりますが、やはり型式によってよくなっているものもあるし、よくなっていないものもある。また電車につきましても、やはり全部が全部悪くなっているわけじゃございませんで、この辺の通勤電車にいたしましても非常に安定している車もございますし、先ほど申し上げましたような五八三系みたいに悪くなっているものもございますし、いろいろな要素がたくさんございますので、総合的に判断してやってまいりたい。一がいに合理化という点ではないと思っておりますし、総合的に、いろいろな設計の問題もございますし、保守のやり方そのものの問題もございますし、材質の問題もございますし、総合的によりよい車をつくるように指導してまいりたいと思っております。
  282. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私は自分が国鉄の出身であり、また工作部門あるいは運転部門あらゆる部門、その職場における関係で、先ほど申し上げた件数というのは私はやや真実に近いものだと思うわけでございます。であればあるほど、今後の安全輸送ということは、こういうふうな車両の欠陥というものがどこに内在するのか、これは謙虚に当局は当たって考えるべきであり、悪い点を率直に正して、そして実際に現場で一緒に働く労働者の意見というものが十分に下意が上達されて、それがやはり現実の問題として処理されるべきではないか、こういうふうに考えるわけであります。  それで、続きまして車両に関する問題でございますが、現在国鉄は相当の私有貨車を使っているわけでございます。私有貨車と国鉄の在籍貨車の場合は、検査規程あるいは運転保安上の問題あるいは定期検修あるいは車両機能、そういう点についても、これは私有貨車を所有する会社にはたいへん失礼な言い方かもわからぬけれども、やはり国鉄の在籍貨車のほうが安全性において相当比重が高い、私はこういうふうな判断をするわけでございますが、現在の私有貨車は、国鉄に登録されているというのですか、それは幾らあるかお知らせいただきたい。
  283. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 一万九千三百両でございます。
  284. 兒玉末男

    ○兒玉委員 国鉄の現在の貨車数は幾らでございますか。
  285. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 全体で約十六万両でございます。
  286. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私有貨車の占める比重というものもかなり多面にわたっているわけでございますが、この私有貨車の中で、現在までに車両の構造なり、特に一番問題となっております制動関係、こういうことを含め、あるいは車両の老朽度など、いままでに欠陥が指摘をされ、あるいはスピード制限あるいはいわゆる定数制限、こういうもの等が指摘をされた貨車がどの程度あるかお聞きしたい。
  287. 阪田貞之

    ○阪田説明員 石灰貨車で六十五キロに最高速度を押えているのが一件ございます。
  288. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それから、現在までにこういうような私有貨車において、運行上非常に問題がある、こういうことで具体的に本社のほうへ指摘なりあるいは要請されている事実があるかどうか、お伺いしたいと思います。
  289. 阪田貞之

    ○阪田説明員 いまのところ聞いておりません。
  290. 兒玉末男

    ○兒玉委員 これは実はわが党の太田議員が本委員会において指摘をなされまして、十分な回答がなされておらないので私が補足的に質問するわけでございますけれども、ホキ四二〇〇型という貨車が現在青梅線の奥多摩から浜川崎まで石灰石を輸送しています。このホキ四二〇〇型というのは、その機能においても、いま本社のほうはこれに関連して——私も固有名詞は避けたわけですが、いままでこれらの運行について何ら要請を受けたことがないと答弁されましたが、ほんとうにないのかどうか。
  291. 関川行雄

    ○関川説明員 ただいまのお話でございますが、先ほどお話し申し上げましたように速度制限をしております。石灰車と申し上げましたのはいま御指摘の車でございまして、六十五キロの速度制限をして安全に運行しておるわけでございます。
  292. 兒玉末男

    ○兒玉委員 何か私もぼろをつくようなことは言いたくないわけでございますけれども、現在南武線を通っておるわけですね。この前現地調査で見ました。しかもあそこは踏切が非常に多い。ところがブレーキの機能があまりよくないので、いま速度制限をしているということは運転局長がお認めになったわけでございますが、これについて私の調べたところによりますと、運転している組合の側からは、もう少しスピードの制限を強くしてもらいたい、それから車両編成の際、安全の高い国鉄のホキ二五〇〇型との混用をしてもらいたい、こういうことを要請しているわけです。しかもこのホキのいままでの傾向を見てみますと、昭和四十二年、それから四十四年の十二月、いわゆる運転速度を五十五キロから四十五キロにダウンして、さらに四十七年四月には、どうもこの貨車はブレーキが言うことを聞かぬということで廃車してもらいたい、さもなくば制動機能がよくなるように改良してもらいたい。さらにまた本年度に入りましてからも、安全運転の立場から抜本的な改良を求めたわけでございますが、先ほど言ましたように三点の、国鉄のホキ二五〇〇型、これは非常に性能がよろしい、これとの混用運行ということだけが認められて、先ほど言いました定数削減の問題あるいはブレーキ部門の改良等については本社当局側の同意を得てない、私はこういうふうにお聞きしているわけです。これはいずれにしましても安全運行上きわめて大事な問題として私は受けとめているわけでございますが、特にこのホキ四二〇〇というのは欠陥車の最たるものじゃないかというふうに、この前の太田議員の質問を通じても理解をしているわけですが、いかがでございますか。
  293. 関川行雄

    ○関川説明員 ただいまのお話の件、なお調査しまして対策、措置したいというふうに考えております。
  294. 兒玉末男

    ○兒玉委員 事は安全運転ということ、非常に踏切の多い南武線を相当回数通っている列車でございますので、ひとつこれは真剣に考えてもらいたい。特にこの点については、東鉄の西局並びに立川機関区においてもこの車両をかなり点検をし、運転上もきわめて危険である、だから不完全な部門については、これはぜひ廃車が望ましい、さらに西局からも、特にブレーキ部門については安全運転の最大のポイントをなすものですから、これを改良されたいという旨の上申がしてあるやに聞いております。これはまだ本社に着いてないのかもしれませんけれども、これらの関係についても、いまここで即答はできないかもしれませんが、こういうふうな事情もお聞きしております。これはきわめて重大な点でございますので、国鉄の安全綱領の第一に、安全は輸送業務の最大の使命だという綱領もあるわけでございますので、この点もひとつ十分な配慮をいただきたい。
  295. 阪田貞之

    ○阪田説明員 これは十分安全を考えまして処置いたします。
  296. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に、これもやはり安全に関連する件でございますが、線路の故障、線路の状況不安、たとえば千葉県の勝浦保線区管内等も、先ほどの川内保線区のように非常に噴泥が多い。このよう線路並びに電気設備関係の故障はかなり多いやに聞いておりまするが、特に最近の電化区間の延長ということと路線の整備ということはきわめて重大であります。四十六年度並びに四十七年度における線路故障と電気設備の関係についてお聞かせをいただきたいと思います。
  297. 阪田貞之

    ○阪田説明員 初めに線路故障について申し上げます。  線路故障は、昭和四十三年と昭和四十七年、五年間を比較いたしますと、昭和四十三年では百七十一件、私どもの部内の保守その他の不良によります件数がございましたが、昭和四十七年には百十八件に減ってまいりました。  それから電気関係設備では、昭和四十三年に九百二十三件ございましたのが、四十七年に五百七十件に減ってきております。  で、線路につきましては、さらに今後こういう面の線路損傷を防止するために、レールの断面を、N型と申しまして、レールの一つの型式でございますが、三十八年に開発されたものにすべてかえるようにしております。それから、毎年十二万トンの新しいレールをつぎ込んでおります。それから、レールを五十キロ以上の重いレールに重量化しております。それから、レールをロングレールに逐次かえております。それから、いろんな検査機器を、たとえば超音波探傷器を投入いたしまして、全般にレールの処置をしておるのでございますが、これによりまして、先ほど申し上げましたように、毎年毎年総体的な故障件数は減ってまいっておりますので、なお今後努力してまいりたいと思います。  それから電気につきましては、全般的には減っておりますが、電車線につきましては逆に若干ふえる傾向にございます。ただ、五年前の昭和四十三年は架線関係が八十二件あったのが、現在では六十二件に減っております。一昨年の昭和四十六年が非常に成績がよくて三十五件になっておりますが、架線故障はだいぶふえております。これは風害であるとか、あるいは架線の金具類が疲労、劣化したことだとか、あるいは工事中に工事に伴って起こるものとか、こういうのが主とした原因で出ておりますので、ただいま第一番目には、検査のときのダブルチェックを必ずやるという方式と、そのほか設備につきましては碍子を二重化いたしましたり金具を新しいものにかえましたり、大体八〇%処置が終わっております。いずれ将来は山陽新幹線で使っておりますような重架線化にするほうがよりよいと考えておりますが、この点今後在来線においてこのような型式をどうするか、さらにじょうぶな架線の開発を進めてまいりたいと考えております。
  298. 兒玉末男

    ○兒玉委員 特に私はこの電気部門というものは、新幹線を含めて、今後重大な要因を含んでいると思うわけであります。電気部門の合理化の状況を見ておりますと、昭和三十二年から四十年に、電気の新保守体制によって五千人、昭和四十三年から四十六年まで、いわゆる電気保守近代化で八千六百人、四十六年から五十二年まで、これは予定でありますが、約七千人、これは近代化といわれておりますが、これだけの人員削減が予定されているやに聞いております。加えまして設備の変遷は、電気通信設備というのが、昭和三十年に五百万回線キロ、私もよく専門的でわからぬのでありますが、それが四十六年には千九百二十八方回線キロ、約四倍、信号設備自働化関係は、昭和三十年に二千八百キロだったものが四十六年には九千五百キロ、約三・五倍、うちCTC化が二千七百キロ、電力の需給量というものは、昭和三十年の十八億五千六百万キロワットアワーから四十六年には七十七億六百万キロワットアワー、約四・二倍、それから電化キロは昭和三十年の二千キロから四十六年には七千キロ、対比三・五倍、こういうふうに近代化あるいは新体制ということで、この十数年の間に約一万七千近い人が削減される反面、国鉄の電気関係の各設備部門なり電気の需給関係というものは三倍から四倍にふえているわけです。いま御説明ありましたが、こういうふうな重要な比重を占める電気部門、新幹線等の増強をする中において、業務量と人員の配置が全く逆比例しておるのではないかと思うのです。ですから、こういう状況の中において、いま説明されたような電気関係なり新幹線等における保守体制において、ほんとうに行き届いた保守体制が堅持できるのかどうか、きわめて疑問を持たざるを得ないわけですが、いかがでございましょうか。   〔細田委員長代理退席、加藤(六)委員長代理着席〕
  299. 尾関雅則

    ○尾関説明員 お答えいたします。  先ほど先生の御指摘のとおり、昭和三十二年から国鉄の電気部門におきましては保守体制の近代化、合理化ということで、御指摘ような要員の合理化を実施し、または今後計画をいたしております。これができ得るようになりました基盤と申しますのは、やはり設備の信頼度が向上してきたということがその基盤でございまして、新しい、じょうぶな設備になりまして、少ない要員でも信頼度を保ち得るということを実証しながら進めてきておるわけでございます。合理化いたしました要員は、先生指摘ような設備の拡充に伴いまして必要となっています区間へ定員をつけかえまして、新しい区間の定員を充足するために充てておる次第でございます。  御参考までに、一つの例ではございますが、設備の実態と故障の発生回数というものを電車線路の架線関係にとってみると、ついこの間開業いたしました奥羽線の秋田から青森の間、これは四十七年度、架線の延長にしまして一千キロメートル当たり事故の件数が一・七件でございます。同様に北陸本線の富山の、だいぶ前に電化をいたしましたところは、その四倍の四・三件の事故が起きております。しかしながら、そこに配置されております人員というのは、新しい区間であります奥羽線については一キロメートル当たり〇・四人、北陸本線の古い区間におきましては一・二人ということで、非常に要員の差はございますけれども、事故は必ずしも要員の配置数とは関係がございませんので、やはり事故を防いでいく根本的と申しますのはいい設備をつくっていく、じょうぶな設備をつくっていくということにあると確信して、そのような施策を進めておるところでございます。
  300. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私はいまの説明には納得できません。特に新幹線関係におきましては、岐阜羽島の区間においてもこれに関連する事故が起きております。また特にこの保守の合理化による架線事故が多発しているということを私聞いているわけでございますが、そういうことがないのかどうか。また特にこの検査周期というものが以前よりも長くなっている。同時に、電気機器等の取りかえの際あるいは検修等の際においても、要員の不足のために十分にこの検査ができない。特に電気部門のいわゆる外注に依存する度合いが高い。でありますから、国鉄従業員であれば、一つの目的の仕事に行っても、せっかくだからそれに関連する状況から見て、ああこれは悪いなということで仕事外のことであっても手をつける。しかし外注等の場合は、自分に与えられたほかに、たとえ故障の個所がわかっておっても手をつけない、こういうことが指摘をされておるわけでございますが、特に新幹線等のこういう架線関係の事故ということは、重大な事故が過去においても発生しておるわけであります。ですから、まず特に、もうすでに新幹線も相当の年月を経ておるので、一番問題の電気部門の保守体制ということは再検討する段階に来ているのではないか、こういうふうに私は考えるわけでございますが、再度ひとつ御答弁願いたい。
  301. 尾関雅則

    ○尾関説明員 御指摘のとおり、新幹線東京−新大阪間につきまして昨年度は非常に多くの架線事故を起こしまして、多くの混乱を出しましたことを厚くおわび申し上げますが、一昨年以前につきましては、そんなに多くの事故は起きておりません。それでその後緊急の総点検をいたしまして、弱点の個所であります金具類を新しい金具類に取りかえをいたしました。それから、若干専門的なことで恐縮でございますが、ハンガー・カバーというものがございますけれども、これがはずれてオキジャリーと申します補助吊架線が切れた事故がございました。これもハンガー・カバーを新しいものに取りかえて、現在取りかえが完了をしております。そのように原因を一つずつ見つけてつぶしておりますので、今後はだいじょうぶだと思っております。  なお、新大阪と岡山間の新幹線につきましては、これは在来の方式と全く違います、線の太い、じょうぶな架線でございますので、開業以来一件の事故も起きておりません。東海道の新幹線につきましても、抜本的には、このような方式に長期の計画を立てまして漸次取りかえていくということをいま検討中でございます。本年度さしあたってその取りかえの工法の試験をするため、あるいは架線の疲労がどの程度進んでおるかということを精密に点検、診断をするために約九キロメートルの区間にわたって取りかえ、張りかえを行ないまして、その結果によって全般的な取りかえ計画を立てていきたい、そのように考えております。
  302. 兒玉末男

    ○兒玉委員 これは総裁にお聞きしたいのです。新幹線の事故ということは全く予測しない、ところが奇跡が起きたわけですね。ですから、いまの電気局長の答弁でございますけれども、いい部品を入れたから絶対安心だ、これは私は過信だと思うのです。ですから私は、先ほど声を少し大きくして言いましたけれども、保守体制ということは、りっぱな部品を使えば使うほど、人のつくった品物には外から見えないところの欠陥があるわけですから、この点については私は、安全には際限ない努力を払う、この前向きの姿勢が必要だということで、保守体制は十分検討しろということを質問したわけですが、局長の答弁では、いい部品を入れたからだいじょうぶだ、これでは答弁にならぬ。総裁、どういうふうに考えますか。
  303. 磯崎叡

    磯崎説明員 いい品物を入れたから絶対だいじょうぶというような簡単なものではないと私は考えます。したがって、ハードウエアのほうについても徹底的によくしていかなくちゃいけないし、同時に、保守体制についてもいたずらに人数が多いということではないと思います。やはり大事なポイントをきちっと逃がさないで見るというような保守体制、もっと能率的な、そして重点的な保守体制ということが一番大切じゃないかと思います。
  304. 兒玉末男

    ○兒玉委員 時間も迫りましたので、少しはしょって聞きたいと思います。  次に保線関係ですが、三浦委員でございましたか、現在特に国鉄の保線関係の職員が約千四百人まだ欠員だと聞いております。私は、これはもちろん要員全体の操作ですからなかなかわからぬ点もあるわけですけれども、当面やはりこの十カ年計画においても、たとえば新幹線部門への転用あるいは在来線なりあるいは普通線の新線建設など、相当の要員を必要とするわけでございます。加えまして新保守体制の結果を見ておりますと、とにかく昭和三十九年から四十一年の間に二千億円を投資して軌道強化対策計画されましたけれども、実際には五百六十億円程度しかこれが使えなかった、こういうふうな具体的事実があります。同時に、これに関連する問題はやはり要員対策というものが十分でなかったのではないか、これが一つの要因であり、さらに新保守体制の中で問題になっておりますことは、一つの例でありますが、外注によった場合、たとえば百六十人必要であるのに実際は作業に従事できる人間はその六〇%しかない。三百キロの区間を外注によって補強さしても、五〇%も作業ができない、こういう具体的な例が起きているわけですよ。しかも外注等による場合は、ほんとうに線路補修という専門的な技術を習得している人間はほとんどない。全部季節季節のいわゆる出かせぎ労働者か大半であるということが、具体的な例としてあげられておるわけであります。こういう状態にするならば、安全を最大視しようとする中でも国鉄の保線の状態というのはどうなのか。これはまあ、よたよたの状態と私は聞いておるわけであります。でありますから、このような新保守体制において、当初の軌道強化対策がわずか全体の四分の一しか実行できなかったというこの具体的な事実に対して、あるいは千四百名も欠員を生じている、この最大の重要な保線関係の要員対策について、なぜこれが補充できないのか、この点についてひとつ見解を承りたい。
  305. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 お答えをいたします。  ただいま軌道強化の面がおくれているということ、これはその二千億のあれに対しましては、ただいま御指摘のとおりだというふうに考えます。しかし、そのためにそれを、そういう施設をやらないで要員を削減するというようなことは私どもやっておりません。  それから労務対策でございますが、国鉄の労務対策は確かに問題がある面でございまして、特に先生指摘の軌道作業をやる一番単純労務をこなすそういう底辺の労働者につきましては、現在でもいろいろ問題がありまして、国鉄の中でも定着性がなかなか少ないというような面がございます。それにつきましては、私ども組合ともいろいろ話しいたしまして、一ぺんにやっていくということはなかなかむずかしいですから、いろいろな段階を設けまして話し合いをきめてやっておる。したがって、そういう単純労務作業につきましては、できるだけ機械化をしてそれに置きかえていく、それが大事でございまして、そういったものが話し合いがなされて、ある程度の協定ができている。それを地方によって、実施に移してないというようなところが遺憾ながら多少あるわけでございます。大部分のところはやっておりますが、あるわけでございます。そういった中に、千四百人の現在労務職についての欠員ができているものがその半分くらい含まれる。あとは私ども今後、なかなか配転のしにくい職務なのでございますが、配転といったことである程度まかなっていく。それで足りない分につきましては、大事な職でございますので、新規採用といったものを運用いたしましてまかなっていくということでやっておりまして、現在新規採用なんかもある程度入っておりますから、もっと実際欠員の状態は減っているというのが実情でございます。
  306. 兒玉末男

    ○兒玉委員 施設局長にお伺いします。  これはまあほんの例でありますけれども、たとえば鹿児島本線の川内保線区の場合でも、わずか四年足らずの間に、線路の保守状況の最も典型的な悪い例ですね、六千カ所が一万カ所噴泥ということは、砂利の入れかえをしていないという証拠なんですよ。私はわずかの間に四千カ所ふえるというこのことは、いかに保安の最大の第一線にある保線関係の要員が足らないかということを如実に示しているものだと思うのです。これは特に保安状況の悪い七十線を含めて同じであります。もしこの点を要員補充という面、重点的な安全対策という面で、いま職員局長はいわゆる機械化等を通じて努力していると言いますけれども、機械化にしましても機械は人が使うのですよ。ですから、まず不足している要員を補充し、その過程で機械の使い方を教育しなければ、使い道もわからぬ機械を持ってきて、これが何人前だからあとは要員を補充するわけにはいかない。それでどうして運転の安全が、線路の補修ができますか。どうですか、局長
  307. 篠原良男

    ○篠原説明員 出水保線区の噴泥個所は、先生のおっしゃるように急速にふえた、若干悪くなったということは聞きましたが、実際の具体的な数字については初耳ですから……。先ほど常務が言いましたように、おそらく道床更換、タンピングのあれがおくれておるのかと思いますが、タンピングは、私のほうとしましてはマルチプルタイタンパーというような非常に高能率の機械を入れまして、ノルマを上げたい。それには鹿児島本線、間合いがないと機械化ができませんので、現在三時間の間合いをとっております。そういう間合いを使いまして、非常に高能率の機械でノルマを上げたい、出来高を上げたい、このように考えております。先生も御承知だと思いますが、線路の保守をする軌道掛というのはなかなかなり手がございません。したがって非常に魅力のある職場にするのには、やはりいい機械を入れまして、能率のいい、かっこうのいい職場にしないと、なかなか来手がないというのがわれわれの悩みでございます。したがいまして、機械を入れて間合いをとって能率をあげるとともに、職場としても魅力のある職場にするよう努力していきたい、かように考えております。
  308. 兒玉末男

    ○兒玉委員 六時という時間が限定されているので延ばせないそうでありますから、次に国鉄バスに関する問題でございますが、昨年の十一月十六日に東名高速道路で追突事故があったわけでございますが、これは運行表の作成あるいは勤務体制関係の問題、特にスピード関係についても最高速度百キロ、夜は八十キロ、それが許容の最大限、平均昼間九十四キロ、夜間七十七キロ、非常にきびしい条件でハンドルをとらなければダイヤどおり走れない、こういう状況が報道されているわけでございます。   〔加藤(六)委員長代理退席、委員長着席〕 これについて、もう少しスピード面においても——もちろんやむを得ない事情もあるわけでございますが、運行表の作成なり労働条件について検討する余地はないのかどうか。さらに宿泊地におけるところのいわゆる体養施設等は、ざこ寝で十分睡眠をとれないということが訴えられているわけでございますが、この国鉄バスの追突事故に関して、当局はそほ後どういうふうな措置をとっているのか、お伺いしたいと思います。
  309. 阪田貞之

    ○阪田説明員 昨年の十一月十六日に東名高速道路で大きな事故を起こしまして、たいへん申しわけなく思っております。  国鉄の高速バスは、そのダイヤ構成にあたりまして、もちろん交通の流れに沿って安全な運転を行なうことを基本としてまいったわけでございますが、ただいまもお話のございましたとおり、さらに安全を期し、また今回の事故を今後の安全のための貴重なる経験といたしまして、次のような措置をとりました。  一つは、ことしの四月一日にダイヤ改正を行ないまして、おおむね五%の速度調整を行ないました。速度制限が百キロのところの運転区間は、ただいままでは昼間は平均九十四キロで考えておったのでございますが、これを五キロダウンいたしまして八十九キロでダイヤを引くようにいたしました。また、夜間につきましても、従来平均七十七キロでやっていたのでございますか、今回これを七十三キロにダウンいたしました。さらに、異常気象がある場合、たとえば風が吹くとか、もやで前方が見えないとかそういう場合には、風については二十五メートル以上になりましたらばとめてしまう、あるいは視界が五十メートル以下になったら運転をやめる、あるいは雨が十ミリ以上降れば速度を落とすというような措置をとってまいっております。  それから休養設備について御質問がございましたが、休養設備につきましては、休憩室とか休養室などはすべて空調の設備づきになっておりますほかに、防音設備をつくりまして極力安眠がとれるようにしております。それで、大阪、静岡、名古屋等の休養室につきましては、九月末までにすべて二人の個室化にいたします。あと、空調その他全部完備しておりますので、九月までにはもう完全に個室化いたしまして、十分な睡眠がとれるような体制にいたします。
  310. 兒玉末男

    ○兒玉委員 答弁がきわめて不十分でありますけれども、あと二、三点残っておりますので次に移ります。  一つは、国鉄の連絡船関係でございますが、すでに船舶関係につきましては、青函トンネルあるいは本州四国連絡橋など、将来国鉄の連絡船輸送というものがこういう形において縮小されるので、他に新航路を開発しなければならない、こういうことで二千数百名の船舶職員の将来について大きな問題が提起されておるわけでございますが、これについて運輸省当局としてはどういうふうな見解を持っておられるか。  それから国鉄当局にお伺いします。船舶関係の要員需給といいますか、例の洞爺丸事件が起きまして一時に多くの船舶職員が死亡したわけでございますが、その後の要員の需給関係を見ておりますと、高級船員職員のほうは百八十五名の補充をしておりますが、一般職員の場合は百十二名で、実務に参加する船舶職員のほうが少ない。このことはきわめて不合理ではないのか。さらにまた、この間陸上関係から船舶のほうに受け入れておるわけでございますが、この点については当然一定期間の教育が必要ではないのか。これを受け入れる側からの受け入れ職員に対する養成関係についてはどう考えておるのか。  それから、これは運輸大臣にお聞きしますけれども国鉄船舶は関釜連絡船など、長年の経験を持っておるわけでございます。青函トンネルあるいは内海の本州−四国間等の関係を含めて将来考えます場合に、これからの沖繩と本土との運航ということはきわめて大きな脚光を浴びておるわけでございますが、この前、沖繩県における国鉄レールの敷設問題を含めて、鹿児島−那覇間の国鉄連絡船の就航については国鉄当局に対して答申があったように聞いておるわけでございます。この鹿児島−那覇間の国鉄連絡船の就航ということも、やはり将来の展望としてきわめて重大な問題でございますが、これらの点について大臣の御所見を承りたい。
  311. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 鹿児島−那覇間の連絡航路のお尋ねでございますが、ただいまの交通の需要から見ますと、いまのところは十分役に立っておりまして、特に連絡船を設ける必要はございません。ただ将来、この航路はさらに交通需要がふえるかとも考えます。でございますから、実際、交通需要に応じました施設をしなければならぬわけでございますが、その場合におきましては、ただいまお示しのような点も十分検討に値する問題であると思いますが、いまのところは、直ちにこれを国鉄の連絡船として就航させるという計画はございません。
  312. 秋富公正

    秋富政府委員 青函隧道あるいは本四架橋公団が貫通後の連絡船がどうなるかという御質問でございますが、いわゆる青函隧道ができましても、在来線の一般車扱い貨物あるいは地元におきます旅客輸送、こういった問題につきましては依然として青函航路にかかる分が残る、こういうふうに考えております。  また、本四架橋公団ができますと、大半の車扱い貨物は橋のほうに渡るわけでございますが、依然として地元におきます旅客輸送、こういった問題は残るわけでございまして、いずれにいたしましても輸送の体制が大きく変わるということは事実でございますので、なお今後慎重にそういった情勢を見きわめつつ、この連絡船の問題についても検討を重ねていきたいと考えております。
  313. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 連絡船の要員の問題の御質問があったわけでございますが、現在連絡船におきましては、桟橋要員に多少欠員がございますけれども、船で仕事をしている者につきましてはむしろ過員になっております。先生の御質問にありましたように、特別の海技職といいますか、そういったようなものは逐次新規採用において補充しておるわけでございます。ただ、将来の需給関係を考えまして、特に海技職という資格要件が要らないもので、船に乗って仕事をするといったものにつきまして、一般職からの配転ということを考えておりまして、先ほどもちょっと教育の問題で御指摘がありましたが、これにつきましては久しぶりにやるわけでございますので、どういうふうにしてやるかということを十分に検討しております。六カ月以上の期間をかけて教育するということを私ども考えておる次第でございます。
  314. 兒玉末男

    ○兒玉委員 総理が見えましたので、あと一点だけお伺いします。  これは国鉄の財産管理のことでございますけれども、今度の再建計画の、約一千三百億程度の用地の売却をやって一つの財源とする、こういうことがいわれておるわけでございます。ところが肝心の台帳、登記、こういうような財産管理の面について、私多くの問題点なり不備の点があるということを聞いております。それは要するに、財産間の関係用地買収、あるいは登記あるいは買収後のそういうふうな関連する財産処理に対するところの台帳整理ということが非常にずさんである。その要因は、やはり昭和三十三年から四十年まで約八年間にわたる当局の調査結果でも、要員、予算の関係が十分でなかったということが指摘をされているわけでございますが、これに関連する二百名前後の用地関係整備の要員を補充してやるならば、二年程度でこの明治以来不完備の状態になっている土地台帳なり登記関係仕事が十分に完備できる、こういうふうに聞いておるわけでございます。国鉄の重要な財産がこういった形で放置されることは許されない、こういう点から、このような財産管理関係の要員対策ということについて早急に的確な措置をとるべきだと私は思うのですか、これについての総裁の答弁をお願いしたいと思います。
  315. 磯崎叡

    磯崎説明員 土地関係の職員が、急にふえるようになりましたので、多少手薄なところがございます。しかし、なるべく早く人員を充足いたしまして、いま御指摘ような点につきましては遺憾なきことを期したいと思います。
  316. 井原岸高

    井原委員長 この際、質疑をなさる委員の各位に申し上げます。  質疑時間は、理事会において申し合わせたとおりでありますので、その時間の範囲内においてお願いを申し上げます。したがって、答弁もなるべく簡潔にお願い申し上げます。  それでは、佐藤孝行君。
  317. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 運賃法、再建法については、これまで当委員会で八十時間余審議され、各党から諸般の意見が出され、論点もほぼ出し尽くされた感がございますが、本日は、それを整理する意味を含めて、総理の御所見をお伺いしたいと思います。  最初に、運賃値上げと物価について質問いたします。  われわれ自由民主党が国鉄再建に情熱を傾けるのは、過去一世紀にわたり、鉄道の発達は日本の近代化と密接な関係にあり、鉄道発展の歩みは即日本の近代化の道につながっているからであります。人の輸送に、荷物の輸送に、国鉄はこの百年間、一日も休むことなく活動を続けてまいりました。それはまさに国民の足であり、生活を運ぶ動脈といっても過言でないと思います。この点については、私は大多数の国民は理解してくれるものと思います。  試みに各国の鉄道運賃と比較してみると、アメリカ、フランス、イギリスの三国は日本の約七割から八割高い運賃であります。西ドイツは約十五割以上高い料金であり、わが国の料金が飛び抜けて安いことが、このことによってもおわかりいただけると思います。また、国内の物価と比較してみると、旅客については、昭和九年から十一年の平均を一とした場合、国鉄は現在が二九六、改定後三二七、はがきが約倍の六六七、入浴——銭湯のことでしょうが、七八四、米でさえ六六六という計算になります。また、各種割引もその特色の一つであります。雑誌は七二・四%、最高は何と新聞の八一%も割り引いております。問題は、国鉄が国民の足であり、生活を運ぶ動脈なるがゆえに、運賃値上げが国民に与える影響をおそれるからであります。  去る六日、愛知大蔵大臣と大蔵省の幹部が、経済団体連合会の幹部との経済政策等についての懇談会の度上、大蔵省側が経済安定法案並びに法人税引き上げ問題について経済界の協力を求めたのに対して、経団連側は、最近の政府の経済政策は場当たり的で長期見通しが立っていないときびしく批判されたと新聞には報道されております。総理も、去る七日、日本貿易会に来賓として出席され、物価安定に協力と良識ある態度を要求したと、これまた報道されております。物価安定に取り組む政府の努力を私はそれなりに評価するものでありますが、しかし、総理、今日の日本経済界に社会的役割りと責任を自覚し、節度ある経営態度を保つよう求めても、わが国の企業体の機構そのものが利益を追求する仕組みになっており、精神訓話だけでは望み薄いと思うのでございます。したがって、物価安定の経済政策を国がタイムリミットを考えて抜本的に手を打つ以外に、方法はないと思うのです。  先を急ぎますから、答弁はまとめていただくことにいたします。  いま世界は、ひとり日本だけでなく、各国も物価高のインフレ傾向に悩み、その防止策に努力をされているのは、総理も御承知のとおりだろうと思います。アメリカでは、先般上院の民主党の議員総会で、賃金、物価の再凍結が決議されました。また、共和党議員からも同様の要求が大統領に出されております。したがって、米国政府周辺では、大統領は近く新しいインフレ抑制策を打ち出すのではないかという観測が強まっております。  これと相前後して、朝日新聞のロンドン特派員が次のようなことを報道されております。ちょっと読んでみましょう。「値上げ続き 英国民もびっくり」「今度は国鉄」「公共料金軒並み」「日本はまだまし?」こういう題をつけて、内容は、公共料金の軒並み値上げの続く英国では、八日、また国鉄料金が一般旅客運賃で五%、貨物運賃で二%、今月十七日にそれぞれ値上げすることが本ぎまりになりました。英国の国鉄の運賃値上げは、一九七一年、一昨年ですが一五%から二五%、こういう大幅の値上げをしておりながら、一九七二年、昨年三月に三%、九月に七・五%上げております。今回またこの値上げに踏み切ったのでございます。  その値上げの理由として、昨年は一年で二千五百万ポンド、約百七十億円、ことしは四千万ポンド、こういう赤字解消のため、国鉄申請はもっと大幅のものだったが、政府は他の物価の影響を考えてこれをカットした。しかし、今回の値上げでも国鉄赤字が解消できないばかりか、国鉄にならえとばかりに、このところから国内交通運賃が平均七・五%、バスが平均五%の値上げを申請している。さらに電気、郵便、石炭と次々に公共料金の値上げが申請されておる。  国鉄は一般物資輸送の動脈となっているだけに、公共料金ばかりか、すべての物価値上げの引き金となっている。それだけに、英国の各新聞も料金値上げの記事を大きく取り上げ、また社説、論調等においても、世界的なインフレとはいえ、抜本的な手を打つべきだと政府に訴えている。  こういう新聞記事が出ているのでございます。  そこで、私はこの記事を見て感じることは、この報道の中で見落としてならないのは、国鉄は一般物資輸送の動脈となっているだけに他の公共料金との関係はどうなるかという点を一番私は問題にしなければならぬと思うのです。今度の運賃値上げは、家庭に与える影響は、そのものだけを考えるときわめて少ないと思います。貨物旅客合わせて〇・四三%程度であります。これだけならば、私は国民生活にほとんど影響ないと言ってもいいような程度だと思いますが、しかしながら、英国同様他の物価への影響なしとは保証できないと思います。総理は、自由主義経済を高く評価されているようでありますが、この際、国民生活を安定させるために、日常生活に関係の深い物価を一時凍結するなり、あるいは時限立法的な、日時を限定した間接凍結などを考え、賃金、物価の抑制策を強化する考えがおありかどうか、まず承りたいのです。  さらに、消費者米価が安定しているのは、ざる法だとか何とか言われながらも食管制度が存在するために今日安定しているんじゃなかろうか。また人によっては、国鉄再建法を成立させた後に、運賃値上げだけ一年間凍結させてはどうかという意見もございますが、私は国鉄だけではいただけない議論だと思います。  政府はいままで自由化の問題でも、常にタイムリミットを失い、多くの混乱の原因をつくってきた点があったのじゃなかろうかと私は思います。この問題はもう行政府にまかせておく問題じゃないのじゃないかと私は思います。  大所高所の観点から総理の所見を承りたいと存じます。
  318. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 物価問題は当面する最大ともいうべき重要な問題であるということは御指摘のとおりでございます。先進工業国、卸売り物価も消費者物価もみな上がっておるわけでございますが、特に先進工業国では、賃金が生産性でまかなえないということが原則になって、卸売り物価が上がっておるわけであります。半年後くらいには消費者物価に反映するということであります。  日本は、消費者物価は上がってはおりますが、しかし卸売り物価は長いこと横ばいでまいったわけでございますが、昨年から卸売り物価が急上昇を続けておるということでありまして、先進工業国並みのインフレ傾向を招いてはならないということで、諸般の施策を講じておることは御承知のとおりであります。  恒常的なインフレ傾向ということになれば、賃金、物価の凍結とか増税とかいうオーソドックスな手段が講じられるわけでございますが、日本においては物価上昇の原因が必ずしも先進工業国と同じものではないわけでございますので、そういうオーソドックスな締め方をする前に、まずまだ減税をやろう、また国内景気を浮揚することによって国際収支の改善をやろうという施策をとっておるわけでございます。また、住宅の不足や社会資本の不足に対して公共投資も大幅にやろうといっておるわけでありますから、その限りにおいては、学問的に見ると物価抑制ということとは逆な政策をとっておるということは言い得るわけでございます。しかし、いろいろな原因を探求しながら、それの対症療法としてはやはりその施策をとっておるわけでございます。  これは土地に対しては、土地に対する融資の引き締めもやっておりますし、公定歩合の引き上げも行なっておりますし、また窓口規制とか準備率の引き上げとか、また売り惜しみ買いだめ法案の提出とか、土地に対する総合開発及び土地に対する税制に対しての御審議をいただいておったり、いろいろなことをやっておるわけであります。  まあ原則的に考えて、物価、賃金の凍結ということを一言に言ってみましても、これは行なうことはなかなかむずかしいし、物価や賃金の凍結をしなければならないという状態を招かないために、万般の施策をやることが先行しなければならないと思っておるわけです。  物価や賃金というもの、すべてのものを一年間でも凍結をするという、いまのアメリカのような政策をとろうとするならば、これはやはり国民的な合意、国民的なコンセンサスが得られて、そういうものがどうしても必要なんだということでなければならないと思うのです。いまの状態でとても賃金の凍結などということが、野党を含めた皆さんの御理解を得られるとは思っておりません。  そういう意味で、私たちは精力的に、賃金の抑制というようなことや増税をしないで、そして物価を押えようということに全力を傾けておるというのが現状でございます。
  319. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 時間の関係で次の問題に入らしてもらいます。  新幹線のいわゆる調査五線のルート選定基準について御質問いたします。これは運輸省に質問いたします。  私は昭和四十六年、運輸政務次官当時、現在工事中の東北、上越、成田の三新幹線のルート決定に携わった経験がございますが、今回の調査五線と前回と大きく異なる点は、二つまたはそれ以上のルートの希望があるということです。地元にとってはたいへんな関心事であり、国鉄鉄道公団の調査の進行とともに、沿線各地の誘致合戦は日一日と白熱化してきております。おのおの期成同盟を結成し、さらに選出国会議員も参加し、このままではどろ仕合いに発展しかねない状態だと思われるのであります。政治路線や政治駅のそしりを防ぐためにも、いままでのよう運輸省国鉄、公団の一方的な決定ではなく、客観的、合理的な選定の基準を国民の前に明らかにし、国民の理解協力を得るという方法が最も肝要だと考えます。かような観点から質問をいたします。  これは運輸大臣にお聞きするのですが、公団に調査を指示した項目は前回はたしか四項目であったと記憶しておりますが、今回は前回同様四項目であるのか、さらに追加してあるのか、その概要だけでけっこうですからお知らせいただきたいと思います。
  320. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 調査項目は新幹線の整備に関する法律に書いてございまして、その項目について調査を指示しておるわけでございます。
  321. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 それでは鉄監局長に聞きましょう。先ほど申し上げたように、今回の調査各線は、すでに着工している東北、上越新幹線と異なり、二つ以上のルートが考えられるということは先ほど申し上げたとおりですが、したがって、調査はこれらの比較に重点を置かなきゃならぬと思います。調査には各ルートごとに比較検討を行ない、どのルートをとるべきかについては、ハード、ソフトの両面から総合的に判断することが私は最も正しいと考えますハード、ソフトのおのおのの面のどんな点を検討しなければならないのか、また検討したのか、この際明らかに願いたいと思います。
  322. 秋富公正

    秋富政府委員 お説のとおり、今回のルートにつきましてはいろいろと問題がございますので、ハード面、ソフト面両方検討いたしておりますが、まずハード面を申し上げますと、ルートの曲線関係、勾配、積雪、こういった主として運転保安上あるいは線路保守上、こういった技術的な面からの検討をいたしております。また地形、地質あるいは長大トンネル、長大橋梁、こういったいわゆる主として施工上の問題点を検討いたしております。また工期の検討あるいは概算工事費の算出、運転所要時分の検討、こういった面がいわゆるハード面からの検討でございます。  次にソフト面から申し上げますと、これは一つには地域におきます現状あるいは将来の開発計画、こういった面の把握が一つでございます。第二には、新幹線の整備による輸送量、受益人口、時間短縮、こういった効果の検討でございます。第三には、新幹線に関連する在来線あるいは道路、こういったものを総合した輸送体系の面からの検討、こういった面。それ以外にいわゆる新幹線が整備されることによりまして、並行する在来線貨物輸送通勤通学輸送面の改善、こういった面からソフト面といたしましては検討をいたしております。
  323. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 いまの説明のほかに、私は騒音公害新幹線建設にあたっての一つの悩みの種ではなかろうか。したがって、環境問題についての関連にも十分配慮をしていただきたい。  最後に、新幹線について運輸大臣にお聞きいたしますが……(「せっかくだから総理に聞け」と呼び、その他発言する者あり)新聞報道によると、今月の三日に現地調査を終了し、調査報告書を整理中と聞いておりますが、本来ならば一年以内に報告書を提出することになり、それはちょうど今月の月末になるわけですが、国会等との関係もこれあり、おくれていることが予想されますが、いつごろ鉄道建設審議会に諮問され、ルート決定がされるのか。夏ごろか、秋ごろか、暮れなのか。大ざっぱでけっこうですから、お答え願いたいと思います。
  324. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 国鉄及び鉄建公団に対して調査を指示しておりますが、大体今月末で一年になると思います。私どものほうは調査結果が出ました場合に、先ほど申し上げましたようなこと、それから政府委員から申しましたようなことにつきまして十分配慮をしながら、いわゆる整備計画というものを立てまして、それを鉄道建設審議会に諮問をするわけでございます。そのときには、先ほどもちょっと申し上げましたが、大体におきましてどういう路線がいいかということにつきましても大体の意見をきめまして諮問をするという考えでございます。  その時期がいつごろになるかということでございますが、調査結果が出ますればなるべく早く検討を加えまして審議会に諮問をしたいという考えでございますが、いまのところ夏になりますか、もう少しおくれますか、その点は確たる見通しはまだ立っておりません。なるべく急いでやりたいと思っております。
  325. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 総理が居眠りすると困るから総理に聞けという不規則発言がありますから総理にお聞きしますが、しかし関連あるもので必ずしも総理でない場合もあると思います。  昨年の再建案と本年度の再建計画との相違の一つに、三千四百キロのいわゆる赤字ローカル線の問題があります。昨年まではこれは本来自動車やバス輸送に切りかえていくべきものであり、鉄道の持つ特殊性から考えて適当な分野でない、したがって撤退するに際しては、その地域の必要ある場合は地方公共団体が三分の一、国がその一・五倍、全体として四分の三、赤字を補てんし、五カ年間にわたってこれを整理する、こういう計画になっておったわけです。それは総合交通体系の中で鉄道というものの特性を生かして撤退すべき分野と、そうでない、担当する分野を明らかにした発想であり、その是非の批判は別として、私は一つの見識だと思います。  今度はそれがはるかに後退して、実質的には石炭なり地下資源なりその他の輸送の使命の必要がなくなったもの以外は大体存続することに私はなると思うのです。さらにAB線という地方ローカル線の建設には、昨年は二百億、今回は三百三十億を投資されております。この点について当委員会で幾度か論議されましたが、どうも問題の焦点が明らかでございません。あるいは総理の得意の分野かと思いますが、内閣がかわってこのような大きな政策の転換がなされたのですから、この際、何の理由でこのような政策の転換をなされたのか。将来ともこの方針に変わりがないのか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  326. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 地方閑散線の整理ということは多年の問題でございまして、一つの結論が前段に出たわけでございます。しかし議論がなかったわけではない。もっと広範な立場からこの閑散線の問題は議論すべきであるという有力な議論もあったことは事実でございます。しかし国有鉄道という一つの視野から立って赤字解消対策としてまずこの閑散線問題が取り上げられた。しかしその後バスに代替できるものはこれはやりましょうということになったわけですが、時代は国鉄だけの視野で見ることのできないほど鉄道は重要なものでございます。それは日本には四季がございますし、豪雪地帯が四九・五%もございますし、中央を縦断する山脈があるわけでございます。そういう意味で五カ年計画、十カ年計画を進めてきた道路の状況を見たときに、道路鉄道というものの比較を考えなければならない。特に時限法で積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法というのを議員立法でやったわけでございますが、今度は除雪費用までもすべて公費をもって行なうということになったわけであります。そうしますと、道路鉄道というものを比較する必要もあるということが一つございます。それからもう一つは、石炭専用線として敷設せられたものであっても、産炭地振興法というものが出てまいりましたり、山村振興法や地域振興法という新しい法律の分野が出てまいりましたので、産炭地専用線としてつくられたものでも、産炭地が後に振興されるということになると、これは単に廃線するということでは片づかないという新しい政策要求が出てきたわけであります。もう一つは、赤字といっても、この地方閑散線三千四百キロに及ぶ赤字線というものは、国鉄の赤字の中に占めるウエートはわずか四%弱であります。赤字を全部廃止するということになれば、東京地下鉄を廃止しなければならぬわけであります。全くそういうことであります。これはもう鉄道よりもはるかに大きな国費、公費を投入しておりながらも運営は赤字でございます。  そういう状態から考えると、国有鉄道法制定の根本にさかのぼって考えるべきである。これは黒字だけであるならば私鉄でけっこうなんです。そうじゃなく、政策目的達成のために必要であるとしたならば、これは国有鉄道として国がやらなければならぬということで鉄道省であったことは御承知のとおりであります。はがきも同じであります。はがきはいまの価格でもって雪の中、山小屋まで一通のはがきを完全に送達するには何万円もかかるわけであります。しかし、そういうものでも完全に送達をしなければならないものは国有事業であったわけでありますが、その後電力政策を転機として三公社五現業に移されたわけでありますが、民営に移されるほどのものではなかったわけであります。そういう意味から考えますと、赤字だからという面からだけで簡単に廃止ができるならば、国有鉄道法の本義に反するわけであります。そういう意味で、赤字線という閑散線に対しては他の政策目的、その後立法せられた法律の結果等を十分考えながら再検討を必要とする、こういうことになったわけであります。  もう一つは、鉄道だけではなく、これから道路鉄道、港湾、航空という総合的な交通体系の中で考えなければならないという新しい事態を踏まえて、三千四百キロに及ぶ閑散線というものに対しては、これはひとつ再検討しなければならない、こういうことになったわけでありまして、これはもう当然の帰結である、こう考えるわけでございます。
  327. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 たいへん明快な答弁をいただいたわけですが、今度の運賃改定と人件費の関係について質問いたしたいと思います。  今回の再建計画では、十年間に四回の運賃改定を行なうこととしていますが、その増収額は約八兆円であります。一方十年間の人件費のアップは前半一二・三%、後半一〇・三%として、約七兆四千億円になります。また、四十八年度の仲裁裁定所要額は千二百八十六億円で、これに対する運賃改定増収予定額は千八百五十五億円になります。この千八百五十五億円は四月一日運賃改定実施を前提としたものであり、すでに御案内のとおり予定から二カ月以上もおくれておる現状でございます。一日五億円これから差し引かなければなりません。このようにすると、四十八年度の運賃改定増収額はそのほとんどがベースアップに充てられ、十年間で見た場合、八兆円と七兆四千億円の関係になります。運賃法、再建法の審議の過程で、国鉄の投資はすべて国費でやるべきであり、運賃値上げでこれをやるのはおかしいという御意見もございました。しかしながら、実際に運賃改定による増収額のほとんどがベースアップに回され、さらに物件費の上昇を考えれば、運賃改定は経費の上昇分だけでこれを十分にまかなえない程度のものであります。それでも運賃改定はこれをやるべきでないとすると、国鉄はもはや縮小再生産より生きる道はないと思います。このようなことで国鉄はみずからに課せられた使命を達成することがとうていできないと私は思うのですが、また、国鉄をそのような形にすることをほんとうに国民が望んでいるのかどうか、答えは私はきわめて簡単だと思います。国民が望んでいるのは、国鉄を再建し、近代的な輸送機関とし、そこから安全しかも快適、良質のサービスの提供を受けることを国民が望んでいるんじゃなかろうか。  そこで総理にお伺いいたしますが、運賃改定はそのほとんどがベースアップに食われてしまう、私はそれだけでは国民が納得しないのじゃないか。運賃改定の見返りとは——見返りと言っていいのかどうかわかりませんが、運賃改定によってベースアップ財源をまかないながら、政府の助成によって行なう十兆五千億の投資に国民は期待していると思います。この十兆五千億によって国民にもたらされる輸送サービスの改善というのは一体どういうものなのか、御所見を承りたいと思います。
  328. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 ちょうど計算をするとあなたの言うとおりになるんです。四回値上げをして十カ年間に八兆円、そうして十一万人の自然に退職される人があるとそのまま是認をして計算をしても、最低限賃金の引き上げが考えられると七兆四千億になりますし、それに物件費の値上がりを最小限に見ても七千億になりますから、八兆円はすでに食われるということでありますが、それは一つの数字が合うというだけでございまして、そのものはあまり問題にすることはないと思うのです。  ただ、鉄道というものが本質的に考えたときに一体どういうことになっているのだと思って、私もお呼ばれをしておりますからちょっと勉強してきたんです。  鉄道は明治五年につくられたわけでありますが、明治五年の鉄道運賃は非常に高かった。これは電話でもみなそうですが、これを一応調べてみましたら、一キロメートル当たりの運賃率は二銭七毛であります。これが改定後、この運賃改定が行なわれたとして計算をしますと、二百四十六倍であります。明治五年に比べて二百四十六倍である。そうしますと、昭和九年ないし十一年をとってみても三百二十七倍であるということであると、米は安いというんですが、米は石当たり一万九千三百八円でありますから、明治五年の米を一にすると、驚くなかれ四千九百七十六倍であります。五千倍のものと、鉄道運賃が二百四十六倍であるということに、非常に公共料金として押えてきたというのは、これは厳然たる数字の事実でございます。そういう意味鉄道運賃が低位に押えられたというのは、歴代政府が公共料金を押えようという基本的理念に出ているものであるということは、もう申すまでもないことであります。そのために国鉄経営が悪化をして、国鉄もたいへん今日まで私はよくやってきたと思っております。それは国鉄は非常に批判をされている面もありますが、私は国鉄というものがこのよう状態の中でよくぞいままで持ちこたえて公共の使命を果たしてきたその事実というものは、国民は理解をしていただきたい、こう考えております。  今度十年間でこれだけの投資を行なうということでございますが、昭和六十年を展望しますと、国鉄がいまのままだったらたいへんなことになるということは事実であります。これはもういままでは、貨物の問題その他出てくるでしょうからそのときに申し上げますが、これは、国鉄が物を運ばないと日本の経済そのものが立ち行かないという状態が数字的に明確でございます。そういう意味で、国民に利便を供するというようなものよりも、日本人が生活をしていくために、これから相当の高い成長を続けたり、生活をレベルアップするためには、国鉄の投資というものはもう絶対的なものであり、不可欠なものだ。これは道路やほかのものにかえることはできないのです。数字はみんな持っておりますから、あとから幾らでも申し上げられますが、これはもう道路をつくったとしても運転手がないんです。運転手がもう全然、昭和六十年になって三十トン車か五十トン車のトラックにしても、運転手がないのであります。荷物を運ぶだけでも二千四百万台ないし二千七百万台も車が必要なときに、運転手として確保できるものは三百五十万人が限度であります。これから十年、十五年間の国鉄が背負わせられておる公共使命というものは議論の余地のないほど大きなものである、もう端的に申し上げておきます。
  329. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 残念ですが、もう時間は四分よりございません。最後に、国鉄の労使問題について御質問いたします。  私は、政府が今回の再建計画では、十カ年に四兆六千億円、現行計画の二十三倍に及ぶ長期的な助成に踏み切ったことを高く評価いたします。また、十兆五千億円の投資により、新幹線鉄道網の整備、複線電化、貨物輸送の抜本的なシステムのチェンジを行なって、国土の均衡ある発展をはかるとともに、来たるべき福祉社会において、国民の期待にこたえる高度の輸送サービスを提供する国鉄に脱皮させようとすることについては、全面的に賛成を表するものであります。しかしながら、施設が幾ら近代化されても、国鉄を動かすのは人間でございます。国民の期待と信頼にこたえ、愛される国鉄となることが財政再建の基本的な前提であり、そのために何よりも必要なことは、国鉄に携わる職員一人、一人が国鉄に課せられた使命を十分認識し、国民の期待をいやしくも裏切るようなことのないよう、労使が一体となって直剣に再建に取り組むという熱意と姿勢であり、このようなじみちな努力なくして、私は国鉄の再建は不可能だと思います。  この意味において、いわゆる順法闘争の名のもとに違法な争議行為を繰り返し、国民に多大の迷惑をかけている現状から、私は国鉄の職員に対する熱意をうかがい知ることができないのであります。政府は今回の春闘に際して、国鉄財政が未曽有の危機に瀕しておるにもかかわらず、当初から有額回答され、千二百八十六億円という巨額の大幅なベースアップを内容とする公労委の仲裁裁定を完全実施することになりました。これは職員の経済的要求に対して、極力前向きで対処し、もって労使関係を安定させようとする政府の熱意のあらわれと私は評価するのであります。国鉄労組の諸君も政府の意のあるところを十分くみ取り、今後再び三月の上尾事件あるいは四月の首都圏の大混乱というような不祥事の起こることのないよう、みずからに課せられた責任を自覚し、職務に専念し、真剣に再建に取り組むことを強く期待するものでございます。  この際、国鉄の労使関係の改善について、時間がございませんから、総理から一言御意見を承りたいと思います。
  330. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 国鉄運賃の改定は、去年お願いをしておったわけですが、去年はものにならなかったわけでございます。四十七年度ベースアップ分が七百五十二億円、今年度分が千二百八十六億円、合計二千三十八億円ということでございますから、運賃改定分がそのまま実行されても足らなくなるわけでございますから、政府は鉄道運賃の改定ができなくとも誠意をもって対処したということは、事実をもって申し上げられると思うわけでございます。  先ほどから申し上げたとおり、国鉄の公共性という面から見ると、労使だけの問題ではありません、これはやはり政府も相当な責任を負わなければならない問題だ、私はそう理解しております。ですから、政府ももちろん、国鉄を運営しており預かっておる労使がこの公的使命を果たさなければならぬことは言うをまたないことであります。そういう意味で、民間労使ということよりも、なお公的立場における、場合によっては税金をつぎ込む、またつぎ込んでも国有鉄道の精神どおり連行しなければならないという趣旨の企業でございますから、労使はほんとうに国鉄を愛し、国民の負託にこたえなければならないということば、もう申すまでもないことでございます。  ここで一言だけ申し上げますと、私はやはり、先ほども申し上げたように、議論はされませんでしたけれども、戦時中に非常に人をよけいとったり、それから大陸から帰ってきた人を国鉄会計の中にみなかかえ込んだり、また合理化によってどんどん余剰人員ができたというような、そういう事態をかかえながら、国鉄というものはよくやってきたという感じではあるのです。そういう意味では事実はやはり認めなければなりません。この国鉄の膨大な赤字ということで、国鉄に対する不安感というものに対して、労使の労のほうが相当な不安を持ったということも事実でありましょう。しかし、今度は政府の果たさなければならない責任はこうして果たします、そうして最小限利用者に負担をしてもらうのはこのとおりでございます、そうして今度は国鉄労使が真剣になれば公的使命を果たしていけるような体制を整えます、こういうことを責任を明確にしたわけでありますから、やはり親方日の丸だと国民の一部からいわれるような労使関係ということは、望ましくないことはもう言うまでもありません。そういう意味では政府も積極的な援助をいたしたい、一半の責任を負いたい、こう言っておるのでございますから、やはりこれからの再建の道に入った場合、労使は国民の非難を受けないようなりっぱな公共企業体の労使としての慣行を樹立してもらいたい、こう考えます。
  331. 佐藤孝行

    佐藤(孝)委員 総理のおっしゃるとおりを期待申し上げ、私の質問を終わります。
  332. 井原岸高

    井原委員長 次に、久保三郎君。
  333. 久保三郎

    ○久保(三)委員 田中総理は国鉄について、いまも御答弁なさっていて、ほかの歴代の内閣総理大臣よりは理解が深いように思っております。また、詳細に知っておられるようでありますから、短い時間でありますが、多少こまかい点になるかもしれませんが、お尋ねしたいのであります。  先ほども質問がありましたが、物価の問題であります。いわゆる運賃値上げの問題で一番問題になるのは、最近における物価の問題との関係であります。これは本会議で提案説明があり、わが党の兒玉議員が質問されたときの状況とはまた変わってきているんですね。あれはたしか三月でございましたか、最近の物価の上昇というのはたいへんなものですね。これは先ほど総理からもお話があったとおりでありまして、否定し得ない事実なんであります。そこで、いま総理もおっしゃるように、政治の一番緊急にして重要な課題は何かといったら物価だ、あなたもお答えになったとおりであります。それぞれ公定歩合の引き下げとかあるいは預金準備率の引き上げとか、あるいは公共事業の繰り延べについては最近ややたるんできたようでありますが、そういうものも考えておる、その他のことも考えているということでありますが、いまやはり庶民にとって一番わかりやすいのは、物価対策をやっているんだなということは、一つはやはり具体的に毎日の生活に密着したものだと思うのですね。これは言うまでもありませんが、政府がじかに手をつけられるのは公共料金であります。公共料金のうちでもやはり汽車賃というか鉄道の運賃というものが何といっても心理的な影響が一番多いわけですね。これはいなめない事実と思うのですね。その他の公共料金たくさんございますが、汽車賃が上がったのだからということで——これは、いままでの傾向としてはそういう傾向がございます。いろいろな数字でお答えがあろうか知りませんが、役所で統計的にはじいたあるいはコンピューターにかけたような数字は実際に庶民の生活にはあまり関係ないのですね。さっきもお話がありましたが、今回の鉄道の運賃の値上げ、国鉄運賃の値上げで物価に影響するのは大体〇・四二九くらいだという。〇・四二九といったらどの程度かといったら、これはたいへんな影響はありませんね。しかし、これは口すっぱく申し上げる必要はないことでありまして、この際二割以上の汽車賃が上がるのだといったら、やはり庶民としては、受け取り方としてこれは深刻だと思うのですね。特に通学定期の値上がりあるいは一般的な値上がり、そういうものを考えますと、通勤定期は大半が事業主負担ということになりますれば多少軽減というか、当たりは薄いかもしれませんが、一番問題なのは、やはり庶民の生活にとって必要な通学定期の値上がりなどは一番痛切だと思うのですね。いずれにしても昨年同期に比べて消費者物価は一一・六%も上がっておる。これは二十年ぶりの暴騰だ、こういっておるのですね。ここでいろいろ大綱的な物価対策はおやりになっておりますが、いま庶民に必要なのは、くどいようでありますが、具体的な個別の対策が必要なのですね。なるほど従来からの行きがかりもございます。私も国鉄の財政知らぬわけではございません。運賃や料金の立て方についても、私は理解をしておる者の一人だと思っております。しかしながら、いま国民にとって何が一番大事かといったらば、運賃の値上げよりは物価安定だということに私はとらざるを得ないのであります。そういう意味からいって、この際は理屈抜きといったら語弊がありますが、どうでしょうか、少なくとも一年間——これは去年もやったのだから、去年からの引き継ぎだからやむを得ぬ、このくらいのことはやってもらうのだということだけでは、国民的な合意を得られることはむずかしいと私は思うのですよ。そういう意味で、ぜひ運賃値上げというのを見直してもらったらどうかというのが、われわれ長い時間かけて審議しましたが、やはり国民的な合意を得られないという結論から反対をせざるを得ないという一つなんです。これについて、反対はいい、けっこうだ、最後は言うならば多数決の原理でやってしまうんだということであっては、政治は生きていけないですね。  そこで、私は繰り返し申し上げますが、この際は、物価対策という国民的な生活を優先にしてこの一年間少し鎮静させたらどうかということであります。と同時に、これは汽車賃ばかりを据え置くのではなくて、その他の公共料金についても一貫して政府は押えていく。この間、もろもろのその他の施策も考えていく。そうして、その中で、この一年間に——あるいは二年間になるかもしれませんけれども、国民の合意を得られるよう対策を出していくというのが賢明な策ではなかろうか。それが民主政治の一つのルールだと私は思うのですね。去年は佐藤内閣末期でだらだらとなったのでやむを得ずこれは廃案になってしまった、今度は違うのだということでは話は違うと思うのですね。去年とはまた別な意味でこの国鉄運賃の値上げというものは国民生活にとってたいへんな比重になっておるということを考えてみる必要がありはしないかということで——あなたのお考えは変わりはないだろうと思うのだけれども、最後のチャンスでありますから、あえて私は申し上げておるわけであります。  それからもう一つ、運賃については、この長い議論の中で旅客貨物の原価の問題と収入の問題が出てまいりました。これはいままでもそうなんでありますが、日本国鉄は大体において傾向として旅客は黒字で貨物は赤字だというのが、宿命的なような話というか、考えで実は来ておるわけなんです。しかし、それは宿命でも何でもなくて、人為的になされたものであるとわれわれは考えておる。それはそれなりの効果というか貢献をしたものだと思うのですよ。しかし、いままさに国民生活を目の前にして国鉄運賃を値上げするという場合に、国民的な理解からいえば、赤字の貨物のしわ寄せを旅客がどうしてしょわねばならぬかという、簡単なことでありますが、これは理解し得ない、そういうものもあるわけなんです。だから、運賃の値上げの基準も二三・一%とか二四・二%とか、運賃値上げの基準というのは何だろうかという節があるのですね。実収一五%というが、実収一五%というからには一五%上げればいいと思ったら、実際の運賃値上げというのは二三%、二四%、そういうふうな値上げの基準というのはどこから来ておるのだろうかということになると、これはなかなか理解しがたい。結局そうなると、並行して走る私鉄やバスあるいはその他のものもあるかもしれませんが、そういうものとの間の運賃の問題を比べますと、ほぼ似通ったサービスにありながら運賃がだいぶ違う。たいへんですね。それでいまの運賃の決定のルールというか原則はいわゆる総原価主義、個別企業の原価主義に基づいてはじいてきておるから、そういう結果が出てきておる、アンバランスが出ておるのですね。そういうものをほったらかしにしておいて総合交通体系を論じても、これは意味がない話でもあります、一つは。いずれにしても運賃決定の原則、基準、そういうものを一つはつくるべきではないかというのが、大体国民的な気持ちだろうと私は思うのであります。  三番目には運賃決定の機構についてであります。運賃決定はどういうルールと手順を踏んできめるべきか。これは、あなたも最初おっしゃったように、国民的なコンセンサスを得るというのが最終的な結論だと思うのですね。利用者のコンセンサスを得るようなルールが、いまのままでいいのかというと、よくないからこれは反対なんですね。すでに政府はそのあやまちをおかしておるわけですね。現在ある運賃決定機構をじゅうりんして国会に提案してきておることが一つあるわけですね。それは言うまでもありませんが、運輸審議会に諮問をして、答申が出ないうちに政府が意思決定をして予算を積み、そして法案を出しておるという現実ですね。こういうものをそのままにしておいたのでは、残念ながら形骸化した運輸審議会というか、隠れみのだといわれてもやむを得ないのではないですか。やむを得ないと思う。結局これは形だけの法律であり制度である。公正にして妥当な運賃決定をさせるために運輸審議会というのはある。その結論を運輸大臣は尊重して運賃を決定しなければならぬというふうに書いてあるのですよ。そういうものをきめないで、その結論も出ない前に、言うならば政府の意思決定をしてきておる、そういうところにも問題がある。それから長いことこれは審議しました。これから参議院に近く回るでしょう、この問題は。回りますが、長いことやはり審議がなされる。なされた結論はどうなるかということです。これは予測しがたい問題でありますが、結局これは国民的合意を得られないままでいるのじゃなかろうかというふうに私は予想します。これであっては相ならぬ。  そういう意味で、私はいま三つの問題、物価対策上から、これは思いとどまっていただいたらどうだろうか。公共料金についてもやはり基準をひとつきめて、そうしてそのきめる間は抑制をしておくということがいま一番大事ではなかろうか。二番目は運賃を上げる、下げるというか——下げるはありません、上げるですね。そういう決定の基準というものをやはり確立しなければいけないのじゃないか。三番目には、そういう手順を踏む、国民の合意を得るところの手順というもの、いまのままではこれはなかなか合意を得られるような仕組みではなさそうだというふうに思うので、この点についてはどうお考えでしょうかお尋ねしたい。
  334. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 公共料金を抑制をするというのは 歴代内閣の基本姿勢でございました。そういうことで、先ほども申し上げましたように、諸物価に比べてみると鉄道運賃は非常に低く押えられておるということでございます。はがきや米に比べてみても鉄道運賃は半分であるということを考えますと、鉄道運賃というものが非常に低く押えられてきたということは数字の示すとおりでございます。私も、これだけ物価問題等と取り組まなければならないときでありますから、押え切れるものなら押えていいと思ったのです。押えれば国民も確かに理解をしていただけるでしょう。しかし、そういう考え方だけでもって国鉄料金を押え過ぎてきたところに今日のどたんばの問題が起こっておるのであります。これはあなたも国鉄の御出身でありますから釈迦に説法でありますが、これは国鉄側から一体こんな低運賃でやっていくということができるのか、もしこれを押えるというなら政府がお出しなさい、こういう意見があってしかるべきなんです。これは人命を毎日、毎日運んでおるのであります。これはほかのものを運んでいるのじゃありません。明治時代につくった赤レンガの上を——少なくともとにかく四谷と新宿間は朝のラッシュには一時間十万人運んでおるのであります。これは汽車がひっくり返ってからさあさあなどでもって済む問題ではありません。そういう事実を考えて国鉄の、批判はいろいろ受けてはおりますが、労使というものはよく貢献してきたということを私はすなおに認めておるのです。ですから、やはりものには限界があるのです。もう去年とことしの賃金のアップだけでもことしの値上げ分を全部食ってしまって足らないというのじゃありませんか。しかも十年間の増収分はすべて賃金アップの数字とほとんどゼロになるということであります。そのほかにまだ膨大もない安全施設もいたさなければなりません。動労が要求しておる問題もあるじゃありませんか。要求じゃない。人命尊重のために安全施設を増強しなければならぬのは当然のつとめなんです。そういうことも全部やりましょう。それで十年間国民に信頼される国鉄をつくりましょう。政府も税金でこれだけを見ます、こう言っているときに、——政府はいま少なくとも全部料金でまかなうと言っているのではありません。料金で全部まかなうのなら四七%上げなければいかぬのです。これを一五%に押えて、そしてこれだけはどうしてもやらなければ国民自体の理解を得られない、こういう気持ちで私はこの法律案を提案をいたしておるわけでございます。  こまかい問題は別にいたしたいと思いますが、消費者物価への影響は先ほど御指摘になったように〇・四三%、家計支出に及ぼすウエートは〇・二%、これは十年間でございますから、十年間では一〇%ずつとして、月給の引き上げを見ても月給はいまの三倍になるわけでございます。そういう面で考えてみますと、一世帯月額支出増は百四十九円であって、〇・一七%であります。やはり数字というものもあると思うのです。国有鉄道を公社からやめて鉄道省に戻すべきだという議論を前提にしているなら私は何をか言わんやでございますが、国有鉄道という公社の中にちゃんと置いて、そして独立採算制ということを考えながらも、独立採算制などといえば四七%も上げなければいかぬ。そんなことできるものではない。だからその差額は国が見ましょう。国が見るのは別なものが見るのではないのです。国民全体の税金において見るのでありますから、そういう意味でその程度の限界を示さないで国民に対して政府の責めが果たせない、私はそういう立場から申し上げておるのであります。  それからもう一つ貨物の問題がございましたが、貨物はあなたのほうが御専門なんです。これは総合原価主義でいかなければならぬことはあたりまえのことでございまして、これは赤字線の問題と同じことなんです。これは短絡線とかいろいろな閑散線は赤字が普通なんです。ところが、それが培養線となって本線が黒字になるということであって、何も山陽線東海道線がこつ然としてそれ自体で黒字になるはずがない。赤字の培養線から全部人が集まってきて、東京と大阪で乗るから黒字でございます。培養線は全部切ってしまったらこんなものは黒字になりません。あたりまえのことだと私は思うのです。そういう意味貨物というのは、戦後の道路事情と貨物輸送ということでウエートが一八%くらいまで下がったということについて、いま鉄道で運んでおるのは年間六百億トンキロというくらいのものでありますから、このウエートというものは非常に下がりました。下がりましたけれども、そのときには鉄道に対して、明治、大正の歴史を見れば一目瞭然なんです。昭和二十一年から今日まで、わずか一千キロしか鉄道をやっておらぬじゃありませんか。そういう状態でこの膨大な経済に対応できる鉄道になるはずがないのです。そういう意味で結局旅客を優先して夜だけ貨物を走らせる。しかも通勤列車をやるためには全部側線に入れるから、一日で運べるところが三日も四日もかかる。それならば高くてもトラックのほうがいい。これは経済原則であります。こういう状態において旅客の黒字というものは貨物の犠牲という隠れた面があるということで、これは逆に貨物を優先に走らせれば貨物は十分トラックとペイします。その場合には旅客のほうが赤字が出る、それはきまっているはずであります。そういうような問題でありまして、総合原価主義をとらなければならぬことは言うまでもないことであります。民間の私鉄はとにかく安い。これはデパートを許し、土地を許しておるからでありまして、国鉄も幾らか業務を拡大されたけれども、土地の買い占めまでやって赤字を埋めようというような企業ではない。法律がこれを許さない。これは私鉄とは全く違うということでございます。  それからもう一つは料金の公正な決定ということ、私は公正にやられていると思っているのです。これは私たちは占領軍のメモケース時代から知っておりますが、国鉄法によって——国鉄法を審議したときに料金を国会の議決にしなければならぬことはおかしい、こう言ったのです。これはちゃんと議論になっておる。それは米でも水でもガスでも電気でもみな法律事項じゃないのです。代替する機関があるにもかかわらず鉄道だけなぜ法律によらなければならないか。戦後のあの混乱期は鉄道というものはそれは実際において米にも匹敵するほどのものであったということは事実でございます。そういう意味で法律をもって定めるということになっておるのであって、これは米や水やガスや電力というものと比べて、いまの鉄道運賃が国会の議決を経なければきめられないという手段、しかもその前提として審議会の議を経るということでありまして、私は審議会の議がなくとも国会の議決というものが最高のものである、そうでなければ国会そのものを否定することになるのであって、これは最終的には国会であります。議員立法で出せば審議会の議を経ることはないのです。全部国会で直接審議をしなければならない、こういうことでございまして、最終的にはこれは裁判所にも飛躍上告というものがあるのですから、国会というものが最終的なものである、最も権威あるものである、最も公正な場である、こういうことで私は国会の御審議を願っておる。いまの状態鉄道運賃が公正妥当な処置を欠いたものだとは思っておりません。
  335. 久保三郎

    ○久保(三)委員 総理は何か勘違いしていろいろ御答弁いただいている。私は限られた時間でありますから、しかも総理大臣に対する質問でありますから、なるべく失礼にわたらぬようにしているわけなんです。ずいぶんあなたの答弁は失礼な答弁をしておりますね。私がお尋ねしていないことなどもとうとうと答弁されていますが、私は国民の側に立ったつもりでいまお尋ねしているのですよ。物価の問題に対してもお答えはいただけないし——それをお答えになっているのでしょうが、米は何倍とか、過去において幾らであって、いま何倍になって、汽車賃は何倍だから値上げしても差しつかえないのだという理屈は通らぬから議論しているわけですよ。そういうことをまず第一に頭に置いていただいたほうがいいのじゃないかと私は思うのです。もちろん法案を提案したから、直ちにああそうですか、じゃ直しましょうというようなものでないことはわかっていますよ。だけれども、やはり尋ねたことに対しては、正しくお答えいただきたいと思うのです、時間があまりありませんから。  それから、運賃決定機構についても、私は国会でやることについて反対しているわけじゃないのです。運輸審議会という制度がありながら、これを諮問しておきながら、答申も出ないのに意思決定をして予算を国会に出してくるという、あるいはそういうようなことを内部的にきめるというようなことは、これは——運輸大臣がわきから何か言っているようでありますが、これはもし答弁されるなら詭弁です、はっきり言っておきますが。いずれにしてももう少しまじめに、と言ったら誤弊があるかもしれませんが、あるものはやはり尊重して、結論を得て、そして国会に持ち上げるものは持ち上げてきていただきたいと思うのです。私は時間がありませんから、この問題をそんなに長くやっているわけにはいきませんけれども……。  もう一つ貨物の問題についてのお話がありましたが、貨物の問題の前に汽車賃というか、いままでの国鉄の運賃の値上げが抑制されたという話——それはそうですね。結果から見れば、抑制されたという結果になりましょうね。いまそれを議論していることが一つの議論ではありますよ。ありますが、国鉄がいままで蓄積してきた資本というのは、だれがやってきたかというのです。これは政府の手ではないのですよ、はっきり申し上げて。あなたは専門家ぐらいに知っておりますから、もう御理解いただいていると思うのですがね。言うならば、旅客収入というか、運賃と借り入れ金でやってきたのですよ、四十七年まで。四十七年には多少の政府出資がありましたね。多少ですよ。ことしの予算では、出資を八百億やろう、こういうことですね。いままでは長期の借り入れ金というので、全部やってきたのです。これを返してくるのには、汽車賃であがった、収入であがったもので返してきたのですよ。だから、政府からの出資といったって、八十九億、これも歴史をさかのぼれば、八十九億みんな現金じゃありません。帳簿上の、いわゆる差し引き計算ともう一つは、駐留軍からの払い下げのぼろのバスとかトラックを金に換算したものが四十億で合計八十九億、そういうものだけなんです。  もう一つは、税金で足し前するか、それとも運賃値上げで足し前するかという点で考えてもらいたいのですが、国鉄運賃なんというのは、大衆課税と同じですよ。だれが乗っても、金持ちが乗っても貧乏人が乗っても、極端な話でありますが、同じ運賃ですからね。利用者はだれかというと、大衆なんですね。結局税金で出すか運賃で出すか、極端に考えていわゆる利用者が出すのはあたりまえじゃないかという言い方は、これは違うと思うのですね。さっき総理が佐藤君に御答弁なさった、たとえば八十三線区の問題ですね。これにしても、国家的な輸送サービスをそのままやっていかなければならぬという使命があれば、国家的にこれは国民に提供するサービスですよ。国の責任ですよ。だから、これは乗る人の責任で払うものじゃなくて、そういう赤字については、国の責任でこれは補てんするというのは当然じゃないですか。その額が少なくとも——今度は幾らかよけいやるというのですよ。よけいやってませんよ、はっきり言うと。そういう意味で、あなたのおっしゃることは半分ぐらいわかりますが、半分ぐらいはよくわからぬということですよ。  そこで時間もありませんから、先に参りますが、今度というか、去年から出しておるこの案は、国鉄財政再建だと言うが、いままでの議論の中でもそれぞれお話があったように、十年後の国鉄財政というのはどうなるのかといったら、長期債務が十一兆円、それから累積赤字は、いまの場合、大体二兆六千億になるというのですね。それじゃ、十年先の見通しというか、そういうものについて保証があるかといったら、ないのですよ。そこにやはりわれわれは、再建と言っては、少しこれは言い過ぎじゃないだろうかということを言っているのですよ。再建にはならぬということですよ。しかもこの十年間に四回運賃値上げをきめていくなんて予約ですよ。なるほど結果は、十年間やってみて、四回上げなくちゃならぬ結果が出てくるかもしれない、十年後は。だけれども、いまきめてやることであるかどうかと言ったら、たいへん疑問がありますね。(「見通しだよ」と呼ぶ者あり)見通しじゃなくて、ちゃんと閣議決定して、閣議了解事項でそういうものをやっているのですね。そういう計画というのは、おそらく私は、国民の合意を得られるものじゃないだろうと思うのです。三年たったら、また運賃値上げをしますよということですね。そういうものを含めて、再建案だということでは、第二点目として疑問があるわけですね。十年後に、さっき言ったような、長期債務がふえていく、十一兆円。したがって、三兆八千億円ぐらいから三倍、四倍近くなる。そういうものを考えると、これはいずれにしても、たいへんな再建案だということです。しかも財政再建というのは体質改善、ひとつ体質を強化するということですね。これは総理が言うところのいわゆる列島改造論にもこの案は通ずるのかもしれませんが、新幹線七千キロですね。三千五百キロを開業、そういうものが一つ土台になる。それから幹線系線区の改良もありますが、そういうものを含めて、体質を強めていく。それからもう一つ、財政を再建する。不良債務というか長期債務、こういう膨大な借金をしょっているという、いわゆる健全ではない形を改良するということですね。  この二つがあるわけですけれども、なるほども一つ、さっき申し上げた、体質を強化すれば、当然拡大再生産につながるからいいじゃないかというような議論もあるかもしれませんが、国鉄は一般産業と違って、そういうような投資が直ちに見返りとして拡大再生産につながってこないのは、総理自身も御承知のとおりであります。戦後ここまで何兆円かの投資をしていますけれども、見返りがない。国鉄の赤字はふえてきているのですよ。それを忘れて、単なる体質改善で、新幹線を中心とするところの投資十兆五千億やるだけでは、これは残念ながら再建にはつながらぬ。いま国鉄労使——労はいませんけれども、使はこっちにいますが、大体自信を持っていないのじゃないか。これは管理者といえども、おそらく自信は持てないと思うのですよ。これは財政の再建について何らか手が打ってない。カバーしておるのは資本費だけですよ。しかも十兆五千億の投資に対して一割何分といいながら一兆五千億の出資をしましょうというのですね。なるほどいままでから見れば進歩ですよ。しかし、これはたとえば新幹線の七千キロ、三千五百キロ開業して、あと三千五百キロ工事、それに対しては、少なくとも新しく三兆九千億要るわけですね。新幹線全体とすれば四兆七千六百億、こういうものが要るわけですよ。それに対して、少なくとも一兆五千億、新幹線だけ——総理が言うところの列島改造論の骨格である新幹線をつくるだけでも約四兆七千億ですよ。それに対して一兆五千億やるからいいじゃないかと言ったって、これはすぐ効果が出るものではない。しかも新幹線が、いまやっている三線のうち東海、山陽というか、山陽のほうは、大体国鉄から見てもペイするだろう。それから需要というか、輸送力拡大ということで国鉄が始めた仕事だから、当然これはいく。しかしあとの調査線を含めて、五線から七線ありますが、こういうのは、そう簡単に、言うならば、ペイするとはちょっと考えられないのですね、さっき申し上げたように。ところが総理の列島改造論によりますれば、七千キロじゃなくて九千キロ以上必要だというお話でありますが、これも一つの理屈であります。しかしながら、そういうものは必要であっても、それを運営できるかどうかがやはり問題ですね。だから、そういうものに対する保証がなければ、ここにいる管理者というか、経営者ともいうか知りませんけれども、そういう方々が自信を持てないじゃないかと思うのですね。十年後の赤字はだれがしょっていくのか、十年先どうしてこれをやっていくのか。拡大再生産には直ちにつながらぬということでありますから、そういう点の解明が私は必要だと思うのです。  そこで、まあ総理に言うだけ言って、答弁を求めないでは失礼でありますから、答弁を求めるのは、いまの計画新幹線は七千キロといっています。これは去年の計画の倍であります。大体巷間伝えられるところによりますれば、四千キロくらいまでは何とか経営的にいくだろう、ペイするだろう。さっきあなたがおっしゃるとおり、ペイしなくても必要があればつくるんだという観点からするならば、この七千キロに対していかなる保証を与えるかという問題が、将来の運営について一つありますね。  それからもう一つは、七千キロを建設するための建設資金について、どうするのかという問題があります。いままでのような長期借り入れ資金を重点に置いて、あるいはそこに運賃の値上げを入れてやるということがはたしていいのかといったら、悪いからいま財政再建になっていますから、これを改良しなければならぬ。それには一兆五千億の投資では、残念ながらうまくいかない。大体去年から引き続きやってきている再建二法というか、再建のしかたというのは大蔵省的なそろばん勘定から出たものであって、決してこれは運輸サイドから出た再建案ではないですね。これは石田禮助総裁がいるころ、昭和三十九年か四十年、そのころにこの手を打てば、国鉄は再建できた。そのころわれわれはそういうふうに主張した。しかも、四十四年かに、国鉄は九百億の出資を要求したことがありますけれども、大蔵省にけられた。それは総合交通体系をきめたあとでひとつ検討ようじゃないかということで一蹴された、これは四十四年。四十五年には、御承知ように運輸大臣はいまの幹事長の橋本さん、四十五年に逃げ切ったのは有名な話。総合交通体系ができるまでひとつ国鉄の問題はお預かりだというのです。  総合交通体系は四十六年の暮れに、経済企画庁を中心にしてできました。できましたが、その交通体系に基づいた具体的な総合政策は何らないですよ。あなたがおっしゃるように、高速自動車道路を一万キロつくる。十九兆五千億、それもけっこう。空港もローカル空港にはみんなジェット機が飛ぶように、これも五カ年計画をやる。港湾も拠点港湾を入れて大いにやる。けっこうです。また国鉄もそうである。ところが、ここに斉合性があるかといったら、一つもないですよ。総合的なものは何にもないんですよ。さっきあなたがくしくも言ったが、トラックの運転手はそんなにできません。そのとおりです。そればかりでなくて、いまの国鉄の経営からいうならば、中長距離の大量貨物国鉄に乗せろというならば、道路をつくると同時に、もう一つやらなければいけないのは、政策的にこれを誘導する誘導政策が必要なんですよ。いままで聞いていてちっともないんですよ、ありませんよ。それからもう一つは、あなたが幹事長時代につくったと思うのですが、自動車の重量税ですね。これは分配するときには問題がある。あなたはたしか総合交通施設整備特別会計というのを主張されたと思うのですね。その構想はいいのですよ。ところが、いまだにこんなものはできない。できないところにやはり問題があろうかと私は思うのですね。  いずれにしてもそういうものを一まとめにしてこの際は確立することが必要だと思うのですね。そのためにはせっかくあなたが総理になったのでありますから、国鉄問題はいろいろ英知をしぼりながらあらためて再検討して出直すことが、私は一番いいと思うのですよ。時間がありませんから、私の言いたいことを先に言いましたが、言いたいことは大体そういうところなんです。  最後に申し上げますのは、新幹線の問題ですね。   〔発言する者あり〕
  336. 井原岸高

    井原委員長 静かにしてください。
  337. 久保三郎

    ○久保(三)委員 それからもう一つは、言うならば新幹線を中心にした投資はどうするか。十年後のそういう累積赤字はどうするのか。そういうものをそのままにしておいて再建——体質の改善には多少なりますよ、今度の案は。ならぬとは、私は言いません。しかしながら財政再建にはならないということです。そこをあえて無理をして、運賃の値上げもやりながら強行していってみたところで、やはり一年たたないうちにこの再建案はつまづくであろうと私は思っています。運賃値上げをして、四十一年にもすでにそうであったが、運賃値上げ分の増収分も入ってこないのです。見込みがない。だんだんシェアが低下してくる。シェアが低下しないよう方法をとりながら運賃を上げていくというのなら、まだ話はわかりますが、シェアが低下することを目の前にして運賃値上げをする。これではだめです。  そういう意味で、われわれとしてはもう少し総合交通体系に基づくところの具体的、個別的な政策を一刻も早く打ち立てて施策の上にあらわすことだ。やれることは、さっきこの会議で何べんも言っておりますが、たとえばトラックの過積みを一ぺん制限してごらんなさい。そんなものはやらぬ。中長距離貨物をこっちへやるというならば、このトラックの長距離の問題については、重量も十トン以上のものは新免はやらせない。あるいは増車もやらせない。あるいは五百キロ以上は免許はしませんよというふうに、勇断をふるわなければ、総合交通体系というものは何一つできません。道路交通を規制することもそうですよ。決断と実行とは、そういうことだと私は思う。総理が信条とするのは、決断と実行だと思う。決断と実行の前には、やはり世の中の話しも聞いて、じっくり落ちついて、熟慮断行ですよ。熟慮が必要だと思う。どうもせっかちに、去年からやっていることだから運賃値上げはしょうがないじゃないかということでやられたのでは、たまったものではないというふうに私は思うのですが、いかがでしょう。
  338. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 端的にお答えをいたしますが、鉄道に負荷される任務というものは非常に大きくなる。もう好むと好まざるとにかかわらず、一〇%とか九%の成長でなくとも、五%、四%の成長であっても、鉄道が負わなければならない荷物はうんと大きくなるわけでありますし、列島改造の数字を申し上げれば、これは一〇%でございます。いままでの経済成長は、十五年余にわたって一一・一%ずつの高い成長をやってきたわけでありますから、月給は一〇%と計算するときには、成長率もやはりラウンドに一〇%と計算するのはあたりまえであります。一〇%と計算をしますと、貨物の国内輸送量は一兆三千二百億トンキロになるのです。そうしますと、四〇%シェアであるところの内航海運を五〇%にすれば、六千六百億トンキロ残るでしょう。そうすれば、いまの鉄道でもって運べるのは、先ほど言ったとおり、六百億トンキロではありませんか。残りの六千億トンキロのものを陸上で運べば、三十五万キロ道路整備をやったとしても、これは六十兆円、九十兆円でできるものではありません。それにしても、二千七百万台も車が必要であるが、人間は三百五十万しかできないということになれば、その半分にしても、少なくともいまの鉄道の年間六百億トンキロの五倍、八倍というものを鉄道で運ばなければならぬわけであります。そうすれば、新幹線で人を運ぶ。在来線の二万キロは複線電化にして、常時近距離輸送貨物を運ぶ。そして残った大型のものや重いものは海路で運ぶということをしなければなりません。それは西ドイツや先進工業国がやっているとおり、誘導税制をとって、先ほど御指摘があったように、自動車トン税ということで、結局中距離以上のものは鉄道に移します、遠距離のものは船に移しますという制度は、もうすでに発足しているわけであります。ですから、新幹線九千キロと私は計算したのですが、その後成長率を下げましたから、七千キロという最小案で出しているわけでありますが、鉄道というものは、たいへんな重荷をしょわなければならぬと思うのです。そういう意味鉄道というものは計算上は十年間でペイをします、こういう計算になっております。そのためには国も全部の借り入れ金に対する利息が三%で押えるようにしてあります。これは計算上合っているわけです。有料道路が六%であるからその半分ということで押えているということは、鉄道というものを道路以上にウエートをかけて評価しなければならないということになっておるわけです。そうすると、好むと好まざるとにかかわらず、鉄道運賃でやるか、公共負担でやるかは別にしまして、いずれにしても一定規模以上の投資は必要とするわけであります。その中で一〇%ずつでも人件費というものは十年間で七兆四千億かかるのです。それに物件費の値上がりを最小限に見ても七千百億かかるのです。そうすれば八兆円をオーバーしてしまうじゃありませんか。その部分だけはどんなことをしてもこれは運賃でもってぱあぱあにするというくらいなことは国民は理解していただけると思うのです。そうしてこれは国の一般会計の役人さんに給料を払うというのと違うのです、これは三公社なんですから。あなたがおつとめになっていたころは独立採算制で、国は金を出しちゃいかぬと占領軍はいったじゃないか。私は審議をちゃんとしておるのですから、そんなことはちゃんと歴史上明らかな事実でございます。ですから、そういう悪習慣が、占領軍時代の国鉄というものは完全に独立採算制だという考えが頭の中にしみ込んでおったために、大蔵省も金を出さなかったと思うのです。私はさっきあなたが言ったように、やはり十年前にももっと金を出せばよかったと思うのです。鉄道というものは、もっともっと鉄道のウエートは日本の経済に大きく貢献しておると思うのです。しかし、おそまきながら出しましょう。今度は思い切って出しておるわけですから、その一部分を利用者負担をしてもらうということは、三公社の制度を守る限り国民は十分認めていただけると私は思うのです。国鉄にそれ以上金を出すならやはり社会保障をやりなさい、老人対策をやりなさい、こういう問題も出てくるのでございます。減税もやりなさい。いろいろな要請もあるわけでありますから、これは私はそういう意味からいって、米でも先ほど言ったように、十一年の六百倍、七百倍になっているのです。鉄道運賃は二百四十六倍であるというところに、鉄道もよくやってくれた、よくも事故を起こさないでここまで維持してくれたと私は評価をしておるじゃありませんか。ですから私はこれでスタートをしてもらいまして——たった一ついいことがあると思うのですよ。これ以上金がかかるか、これ以上国鉄の財政を健全化するためにもっと手段が必要であるということが起こるかもしれません。小さくはならないと私は思うのです。そのときにどんなことがあっても十年間で値上げをするものはこれだけでございますとこういったから、これよりも一%も上げることはできません。自民党内閣が継続しておる限りにおいては断じてできない。そうすれば、あと安全施設が必要であるとか何であるとか、月給は一〇%でなく一二%上がったという場合の赤字は何でまかなうかといったら、国がまかなう以外にないのです。これだけの筋の通った再建案を御審議いただいておるのであって、無責任なものであるとは考えておりません。そこら辺はよく考えてください。十年間の値上げをきめたというけれども、それで余りがくるというのではありませんよ。それ以上幾ら削られても上がるわけがない。そうすれば、それよりももっと大きな金がかかるときにはだれが出すか、国民の税金でまかなうという措置をとらざるを得ないじゃありませんか。  そういう筋の通ったものですから、すなおに——あなたもよく承知しておられて、よりいい案をという立場で御発言になっていることを私もよく理解できます。あなたの国鉄に対する愛情はもう長いこと知っておりますからよくわかりますが、ものには際限というものがあって、いま考えられる限界一ぱいの案だ、こう私は考えておる。御理解願います。
  339. 久保三郎

    ○久保(三)委員 時間でありますから、最後に申し上げておきますが、どうも運賃値上げは大体人件費のベースアップというかそういうものに見合うのだというような表現が質問でも答弁でも出てくるのでありますが、これは国鉄労働者に対する一つの、何といいますか、見方によれば侮辱だと思うのですね。最初答弁されたときに、たまたま符合する、しかし、そういうものはだめだという話なら別ですが、いまはまた同じようなことを、それとは別な意味でおっしゃっているようですけれども、それは少し言い過ぎだと思うのです。四十五万人は飼っておくんじゃないですからね。(田中内閣総理大臣「たまたまということですよ」と呼ぶ)たまたまと言ったにしても、そういう意味のことを話の中に差しはさむことは少しく論旨が飛躍すると私は思うのであります。  それからもう一つ。十年間動かないからいいじゃないかというお話でありますが、十年間動かないからなおさら悪いということです、これは。はっきり言うと、十年後にはさっき申し上げたような膨大な累積赤字が出てくる。あるいは長期債務が出てくる。そういうものに対して財政再建の見通しを立ててもらわなければ安心できないのではないか。将来に対する経営の安定についての保証が何もないじゃないかということを一つは申し上げたいのです。  時間でありますからやめなければいけませんから、その点は別な機会でお答えいただくことにして、少なくとも将来に対する保証をつけてやらなければ、これは労使ともに再建に熱意が出るはずはありませんよ。十年後にやはりこれではたいへんだということになる。もっとも総理は十年ぐらい総理の座におつきになるつもりであるかどうかわかりませんけれども、(「そうはいかないよ」と呼ぶ者あり)なかなかそうはいかないというお話がありますが、(笑声)そうだとすれば、総理をはじめそこにおいでになる方はだれ一人として十年後に対して責任を持てる方はいないじゃないかと私は思うのですね。そういう意味で長期計画にしても五年でありますから、しかも五年間を一年ごとに見直していくというのが計画の常道であります。これを十年間四回値上げはきちっとします、そういうようなことで動かないものだなんということはどうかと思うのです。動くものは一つありますよ。物価やなんかは別にして、この間じゅうも、あなたと総裁が御相談になったそうですが、東海道をリニアモーターで走らせるという計画の第二東海道新幹線の話、あるいは東京のいわゆる第二山手線の問題、これは計画に入っていない。そうすれば計画が変更になっていない。これはあとでわかったんじゃなくて、そういうものを計画に織りまぜていないのでありますから、これは不確定な要素がたくさんあるということです。そこで確定したのは運賃値上げと、いわゆる計算上できるのは長期債務であるということでありますから、これは一ぺんくどいようでありますが、運賃法はどうなるかわかりませんけれども、この問題とは別として、少なくともあなたを中心にして真剣に、運輸省の片手間の仕事ではなくて、政府全体の仕事として国鉄の再建をもう一ぺん検討し直す必要があろうかと思うのです。  どうかそういう意味検討を要望すると同時にこの法案は、運賃値上げはやらずに、再検討の結果国民の合意を得られるようなときにどうぞお出しいただくようにお願いして質問を終わります。
  340. 井原岸高

    井原委員長 梅田勝君。
  341. 梅田勝

    ○梅田委員 私は日本共産党・革新共同を代表いたしまして、国鉄法案につきまして田中総理に質問をいたしたいと思います。  まず第一は、国鉄法審議における政府の政治姿勢の問題であります。国鉄は国民の足であり、輸送の大動脈である、田中総理大臣は本会議でそのように言われたわけでありますが、その国鉄の経営は今日ばく大な赤字をかかえてどうにもならない、政府も国鉄努力をするが追っつかない、だから必要最小限の負担は利用者に求めざるを得ないといって国鉄運賃の値上げを提案されたわけであります。要するに、国鉄は重要なんだが、重い病気にかかっている。重病だ。注射をしてくれ、こういうことだと思います。ところが病気であるならば、その病原を徹底的に調べて診断を正確にすることが必要であります。それがむずかしい病気であればあるほど慎重でなければならないと私は思います。わが党はそういう立場から、今日の国鉄の置かれている状況を徹底的に分析し、科学的な検討を行なってきたわけであります。疑問の点を解明するために……   〔発言する者多し〕
  342. 井原岸高

    井原委員長 静かにしてください。御静粛に願います。
  343. 梅田勝

    ○梅田委員 資料の提出を求めてまいりました。この中で、たとえば昭和三十五年に使われておりましたところの減価償却の方法を変更しなかった場合にはどれだけ累積赤字が減るか、こういう点を調べますと、公式に提出されました資料によりますと五千六百三十六億円、昭和四十六年度末の累積赤字七千九百九十六億円の実に七割に相当して、赤字は大幅に減ってしまうということを発見したのであります。また、旅客部門におきましては赤字ではなくて、新幹線は御承知ように一年間で千八十八億円のぼろもうけをやっている。ところが地方の赤字線を差し引きましても旅客は三百七十一億円、つまり一日当たり一億円見当でもうけておるのであります。やはりこれはもう私どもの資料提出、これを要求してそして出される中で解明ができたのであります。貨物が赤字だというので原因を調べてみますと、土地買収や資材購入はどうなっているか。しかしこういう問題を私どもが調べ始めますと、とたんに国鉄の壁は厚くなるのであります。それはいろいろの理由をつけて出してこないのですね。今後十カ年計画によりますと十兆五千億円もの工事をやられるわけであります。一体どういう企業が請け負う対象になっておるのか、現在までどういう企業がやってきたのか、どういう契約で工事を進めてきたのか。ずっと前に国鉄の発注のものにつきましては一割だか高いという問題もございました。ですから、やはり国鉄財政を再建する上においてそういった問題を解明する必要がある。その資料の提出を求めたのでありますが、出さない。赤字貨物でさらに営業割引をやりまして、いわばどろぼうに追い銭じゃありませんけれども、赤字の上にさらに上塗りをしている、こういうことは問題でありまして、五万トン以上の大口荷主の輸送あるいはその運賃収入の実態、そういうものの資料を求めますと、国鉄当局はこれは企業のプライバシーである、提出できない、こういうことをいわれるわけであります。総理、せっかく私どもは病気の根源に触れようといろいろやりますと、そこはさわってくれるなということでこれを拒否するわけであります。これではいわば病人が診察を拒否するのであります。   〔発言する者多し〕
  344. 井原岸高

    井原委員長 静粛に願います。
  345. 梅田勝

    ○梅田委員 これでは病気はなおらない。こういう資料提出の状態で今日国鉄法案の……   〔発言する者多し〕
  346. 井原岸高

    井原委員長 静粛にしてください。
  347. 梅田勝

    ○梅田委員 審議は十分に尽くされたとはいえないのじゃないか。御承知ように国会の国政調査権は憲法の第六十二条に保障されております。また地方自治法では、地方自治体が一定額以上の工事を発注する場合には議会の承認を得ることになっております。さらに総理は建設業のことは詳しいはずでございますが、建設業法、宅地建物取引業法、建築基準法、こういう法律を見ましても、企業のプライバシー論で請負企業の名前さえ公表できない、これを拒否する。こういうことは結局国民の前に国鉄経営の真の姿を明らかにするという態度ではないと思うわけであります。この点、審議に必要な資料提出は当然だと思いますが、総理の御所見をお伺いしたいと思います。
  348. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 国政審議のために必要な資料はできるだけ提出をしなければならぬことは当然でございます。しかし無制限に他の目的を持って資料を集めたり、それから直接法案と結びつけて関係がない、とはいえないのですが、この法律の審議とは別に、継続して委員会はあるわけでございますし、国政調査権もあるわけでございますから、そういう立場でいろいろ御検討をいただいたり、資料提供を求めたりする機会があるわけであります。すべてのものを全部、御要求になられて、それが全部手を尽くさなければ、出さなければ審議が完ぺきでないというものではないと思うのです。会期制度がちゃんとあるわけでありますから、そういう意味ではおのずから限界があると思います。あなたもいまお触れになりましたが、企業の秘密というのもあります。これは郵便法でも、扱った郵便がだれが出してどこに送達したとか述べてはならないというのもある。同じようにこれはいろいろなものもございます。ただ、それは所定の手続を経て行政府や政府関係機関、公社、公団に求めれば提出しなければならないこれは責務を持つものでございます。それは一々全部委員会の議決を経なければというのではなく、出せるものは妥当なものはいままでは行政府も御説明もしておりますし、資料も提供しております。ですから、そういうことは十分御理解いただいて、ひとつ国会の運営の中で審議の万全を期すためには、政府は故意に出せるものを出さないというような立場は絶対にとっておりませんから御理解をいただきたい。
  349. 梅田勝

    ○梅田委員 私どもは二十二項目の資料要求をしたのですが、そのうちまるまる出していただいたのは三つですよ。それから不十分な形でしか出さなかったのが十四件ですよ。そして五つは全く出さなかった。全く出さない。地方自治法の第九十六条の第一項五号では、契約をする権限を議会へ与えているわけですが、その別表を見ますと、都道府県は一億円以上の工事または製造の請負を契約する場合には議会の承認が必要なんです。だから実際の契約状況というものは議会の中に持ち込まれて、つまり国民の前に明らかにされるわけです。それからすでに建設省は、ここに資料を持っておりますが、公共事業を発注する場合の相手のABCのランク、そういう業者名を公表しておりますよ。これは四十八年五月十五日に出している。それから電信電話公社も業者のランクづけの基準、それから各ランク該当業者の名前、こういうものを資料としてお出しになっている。ところが国鉄だけが資料提出を拒否する。これはやはりおかしいと思います。出された資料の中でいろいろ見ますというと、資材購入の面では、競争入札は一五%、八五%は随意契約なんです。だからやはり何かあるのじゃないか。やはりその企業はどことやっているのだ、国鉄はどこの企業と契約をしたのだということをわれわれは知らなければならぬですよ。国民はその点を疑問に思いますよ。だから、結局出さぬのは都合が悪いから出さぬのではないかと思いますが、どうですか。
  350. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、法律を御審議願っておるのでございますから、必要な資料要求は誠意を持って提出をする、これはもう正確に申し上げておるわけでございます。そして資料要求は所定の手続がございます。これは委員会の決定を議長を経てということでございますが、しかし、そんなことではなく、いろいろお出しできるものに対しては過去の慣例もございますから、できるものはすみやかに出すことに誠意を持っておりますということが第二でございます。第三は、これは公表できないようなもの、公表をするには妥当性を欠くものがあります。これは、それがいろいろ利用されるとか、過去にもいろいろな問題があったわけです。これが散逸された場合に法律的責めを問われるとか、院の許諾がないにもかかわらず提出した者の責任まで問われるというような問題もあったわけでございます。そういう意味で、証人の証言等に関する法律をつくったという経緯もあるわけでございますから、そういう意味で手続が明確なわけでございますので、そこらをひとつ委員会で十分にお話しいただいて、そしてひとつやっていただきたい。政府は出すべきものを出さない、国鉄は出すべきものを故意に出さない、そういう意思は毛頭ないということを明確に申し上げておきます。
  351. 梅田勝

    ○梅田委員 国民の立場から見たら出てぐあいが悪いものは一つもありません。結局自民党が反対をして資料提出をさせなかったのです。こういうことでは審議が進みません。次に行きます。  次に、物価問題と運賃値上げの関係についてお伺いしたいと思います。   〔発言する者多し〕
  352. 井原岸高

    井原委員長 御静粛に願います。
  353. 梅田勝

    ○梅田委員 総理は、施政方針演説におきまして、「物価の安定は、国民が最も求めている政治課題であり、私は、今後とも必要な施策を果断に実施してまいります。」このように言われたわけでありますが、事実はどうか。この事実が大事だと思います。今日、国民はすさまじい物価上昇に苦しんでおります。消費者物価にいたしましても卸売り物価にいたしましても、前の年と比べまして一二%という異常な上昇でございます。二度にわたる公定歩合の引き上げなど、金融引き締めだけではどうにもならないところに来ておると思います。政府も今年度予算の公共投資の支出を繰り延べることを結局きめざるを得ないというところに来ておると思います。予算の算定基礎になっておりました消費者物価の上昇を五・五%に押えるという見通しも、結局大幅に狂ってきておることはだれの目にも明らかだと思います。いつかの参議院の大蔵委員会で佐々木日銀総裁が、国際的に見ましても日本の物価上昇の非常に高いことを認めまして、今日、金融政策だけでは押えられない、物価総合対策が必要であり、公共投資を押え、公共料金の値上げを押えてもらいたいということを政府に向かって言っております。ことしの一月、共産党の野坂議長が、総理、あなたと党首会談を行ないました。このときに、インフレを激しくする大型予算は縮小して、国鉄など公共料金の値上げをやめること、大企業の土地や商品の買い占め、投機を取り締まることなどの物価安定の緊急施策というものを申し入れたと思います。覚えておられると思います。この正しさが今日全く明らかになってきているのじゃないか。政府は私どものこの提案をどれだけまじめに検討してきたかということをまずお伺いしたいと思います。  また、公共料金の中でも最も重要な国鉄運賃を引き上げて、十兆五千億の設備投資を強行しようとする政府のやり方は、国民の側から見ますと、いわばインフレのあらしの中で値上げの火をつけて回る放火魔のようなやり方だときびしい批判が出ております。これはもう当然といわねばならないと思います。  時事通信の調査によりますと、田中内閣の支持率は二一・一%ですね。そして支持しない理由の第一を占めておりますのが物価上昇の問題ですよ。   〔発言する者多し〕
  354. 井原岸高

    井原委員長 お静かに願います。
  355. 梅田勝

    ○梅田委員 ですから、政府は運賃値上げは物価に対して〇・四三%しか影響しないと言っておりますけれども、過去の実際の経験からいきますと、これはもうだれが考えても間違っている。国鉄が上がれば私鉄運賃が上がりますし、電力料金、消費者米価、公共料金の値上げが相次ぐことは明らかでございます。新幹線が通ると言いますと、その周辺は地価がどんどんと上がって大問題になる。さらにセメントなど建設資材も大幅に値上がっておるわけであります。物価高でこのように国民が苦しんでおるのに、政府は先頭を切って国鉄運賃を値上げする、しかも今後十年間に四回連続の値上げで二倍以上にするということは全く許せないことだと思います。ですから公共料金の抑制、公共投資の減額、この二つですね。国鉄運賃値上げをやめて十兆五千億円の設備投資を含む再建計画の再検討が必要だと思いますが、総理の御所見をお伺いしたいと思います。
  356. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 物価対策が焦眉の急の問題であるということは間々申し上げておるとおりでございます。ですから、物価抑制の問題に対しては努力をしております。公共投資の繰り延べも行なっておりますし、それから準備率の引き上げも行なっておりますし、公定歩合の引き上げもやりましたし、土地に対しては分離課税の税もやっておりますし……(発言する者多し)何回もお答えしていることをまた御質問になるわけですから何回でもお答えをいたします。  そういうことで、いまの国会には売り惜しみ買いだめの法律も提案をいたしております。これは成案を得ておりませんが、しかし、その後のいろいろな措置をやったことで木材も下がりました、とうふも下がりました。何もかも、すべてのものが全部下がるというには、やはり政策効果が生ずるにはある程度時間がかかることは、これはだれでも認めるところでございます。だがしかし、ほんとうに物価がどうにもならないときになれば、諸外国でやっているように賃金のストップや増税というものも必要でございます、しかし、そういうものはいまやらないでおるわけでございますと、こう述べておるじゃありませんか。ですから、いまの鉄道運賃も、上げようとすれば四七%上げなければだめなんです。四七%上げたらたいへんでございますから一五%に押えました。ちょうどときあたかも偶然に合った数字ではございますか、四回これから——まあ一回やるにもたいへんでございますが、四回というのはたいへんだと思いますが、十年間で四回上げてもらったとしても……(梅田委員「値上げをするのかせぬのか、やめろということを私は言っているのですよ」と呼ぶ)いま一五%の値上げをするような法律を御審議していただいておるわけでございます。
  357. 梅田勝

    ○梅田委員 値上げをやめてもらいたいというのが国民の要求でございますから、その点を言っているわけです。  それじゃ運賃の中身について質問をしたいと思います。   〔発言する者多し〕
  358. 井原岸高

    井原委員長 御静粛に願います。
  359. 梅田勝

    ○梅田委員 総理は、三月八日の本会議におきまして、国鉄運賃の決定原則である総合原価主義は現在でも妥当性を持つと述べられておりますが、国鉄運賃の決定原則を定めております運賃法第一条には、そんなことは書いてございません。貨物は昭和四十六年度二千百五十三億円のばく大な赤字、旅客のほうは結局旅客で生まれました黒字を貨物の赤字が食いつぶしている。これは今日だれでも知るようになりました。ところで、貨物は昭和十五年以来今日まで黒字になりました年はたった一回しかございません。反対に、旅客のほうが赤字になったのはたったの一度だけです。旅客のほうはずっと黒字でございまして、貨物のほうがずっと赤字、こういうきわめて片ちんばな状態というものが続いておったことは御承知だと思います。私は、総理の言われる総合原価主義というのは、この関係を両方一緒にまとめてごまかしてしまうというのが総合原価主義の理論ではないかと思うのです。貨物が赤字といいながら、大口荷主である大企業に対して運賃の特別割引……。   〔発言する者多し〕
  360. 井原岸高

    井原委員長 御静粛に願います。
  361. 梅田勝

    ○梅田委員 輸送施設用地の無料提供、工場への引き込み線の肩がわりなど二重、三重のサービスをしている。こんなばかなことはないですよ。  私は、この際運賃制度に思い切った改善をはかるべきだと思いまして、次の提案を受け入れられる用意があるかどうか 総理にお伺いしたいと思います。   〔発言する者多し〕
  362. 井原岸高

    井原委員長 御静粛に願います。
  363. 梅田勝

    ○梅田委員 第一は、旅客の値上げは理由がないから、旅客のほうについてはやらない。また、消費者物価に直結し、かつ中小業者にもひどく響くところの小荷物や小口扱い貨物運賃の据え置きをやる。第二は、営業割引など大企業に対する一切の特別割引は、これはやめる。それから旅客の急行座席指定に当たる物資別専用列車、地域間急行などの貨物は新たな料金制度を設ける。最後に、第三には生鮮食料品など国民の生活必需物資の政策割引をこの際国の経費負担で復活させる。これを明快にお答えを願いたい。
  364. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 質問は二つございますから、お答えをいたします。  一つは総合原価主義、これはみんなとっておるのです。これは私鉄が国鉄運賃のように上がらないのは、兼業収入の利益があると押えておるわけでございますから、いま同じ久喜から上野までの国鉄運賃と東武線の運賃と比べると半分だというような極端なものがございますが、これは国鉄にはデパートも土地の買い占めも許しておらないわけでありまして、土地の買い占めではなく、土地を買って造成をし、分譲するようなことは許しておらないわけでございますから、そういう意味で、兼業収入がないわけでございます。もう一つは、バスと私鉄と兼営している場合、バスが黒字である場合は私鉄の料金を押えておるわけでございます。国鉄は兼業収入がないということでございますので、あってもごく微々たるものであって、もう計上するほどではないということであって、鉄道収入だけということでございます。そういうこととすると残るのはどういうのかというと、いまの旅客貨物だけでございますが、これは鉄道の中に入ってちょっと研究していただければばく大もない資料を要求されなくともすぐわかるわけです。同じレールの上を走っておるのでありますから、複線複々線というよう状態であって貨物線と分離をされておる場合は別でございますが、その大宗はすべて同じレールの上を走っておるのです。そうすると、結局人の輸送というものが非常に重要なことでありますので、人はものを言うし、貨物はものを言わないのです。ものを言う人のほうからやはり優先をするのです。これは経済的にもそうなんです。そういう意味で、冬になってきますと、四九・五%の豪雪地帯は、全部貨物は側線に入れて通勤列車を通すのです。そういうことで、旅客にウエートを非常に置いておるので、当然旅客収入が大きくなるというのは、これは鉄道の当然の姿であります。そうしますと、まっすぐに側線に入らないで運べば、大阪−東京間は、晩出したものは明け方着くわけです、いまでも七時間か八時間で着くのですから。ところが途中で全部着けますから、二日も三日もかかるのです。ですから、高いけれども距離トラックで輸送すれば済むということでだんだんだんだんと落ちて、三一%のシェアを持った貨物が一八%まで下がったということであります。ところがいま率直に申し上げて、この状態が十年も続くと思うと大間違いなんです。これは少なくとも長距離トラックの運転手の日給が一日三千円も五千円も上がる、こういう姿でもって一日の日給が八千円、一万円になる長距離トラックのいまの給与の値上がりを考えていくと、五年とたたないうちに鉄道を増強しなければ日本貨物は運べないよう状態になるのです。もう鉄道というものがいかに国民生活に重要であるかということを長期的展望に立って考えていただかないと、鉄道のほんとうの公的使命の評価ができるわけはありません。そういう意味で、いままでは旅客にウエートがかかっておっても旅客はもう新幹線に移さなければだめなんです。そうして在来線複線電化にして二十四時間貨物を運ばなければ日本の経済はとまってしまうという現状にある。ですから、いままでの時点だけではなく、ちょっとあしたに目をはせていただけば十分理解がいただけると思います。
  365. 梅田勝

    ○梅田委員 総理、いまの貨物は非常に近代化が進んできまして、企業に国鉄のコンピューターの端末機器を置いて、そうしてぽんとやれば何月何日にどこに着くかということが出ることになっておるのです。非常にサービスを手厚くやるようになっておるのです。  そこで、最後の将来の貨物はどうなるかという問題に関連をして、また財政再建の問題につきまして総理の御所見を伺っておきたいと思います。  結局赤字赤字という大宣伝をやりながら、実際は何をねらっているか。これははっきりしなければならぬと思うわけです。今後十カ年で御承知ように十兆五千億の設備投資をやり、そうして長期債務は約十一兆円にふくれ上がるというよう計画が出ております。支払い利息を計算いたしますと、現在でも一日当たり約六億円近くになりますが、十年先にはこれが約十八億円に達する。三倍になる。累積赤字は一兆四千億円もふえるわけであります。これはだれが考えても財政再建とはいえない。しかもこのばく大な投資を運賃値上げと国鉄労働者の十一万大削減であくまで強行するというのですから、国民は納得いたしません。  そこで、どこに問題があるかということを私は二つ言いたい。  一つは、政府は国民の足の国鉄と言っておられるわけです。しかし、従来から国鉄への出資というものは、先ほどもありましたように、十分やっていない、渋っているわけです。結局工事費は、運賃値上げと借金政策でやってきたところに今日の国鉄財政を非常に困難にした最大の問題がある。  ですから提案ですが、公共交通機関にふさわしい費用負担の原則から見て、線路や路盤、こういう国鉄の基礎施設の建設、改良、これは国の財産になるわけですから、当然国の出資でまかなうようにすべきではないか。これが第一です。  第二の問題は、なぜ借金政策と運賃値上げ、大合理化、これを国民の反対があるのに押し切ってまでやって、そして巨大な設備投資の計画を強行しようとするのか。この動機ですね。やはり犯罪でも動機というのは重要な問題でありますから、いま大計画をやられるという動機は一体どこにあるかということが重要であります。今回の国鉄財政再建計画は、昨年案と比べて大幅にふくれ上がっております。毎年一兆円をこえる額であります。四年ほど前に国鉄財政再建推進会議ですら、いまの国鉄にとって年間五千億円にのぼる設備投資は大き過ぎ、赤字はふえるばかりである、このように警告をして意見書を出しております。これさえ無視してやる。総理が提唱されておりますところの日本列島改造論、私も買って読ましていただきましたけれども、ここに展開されている高度成長の理論、それからことしの二月に閣議決定された経済社会基本計画、ここでは九十兆円の公共投資の具体化がはかられております。結局大企業の高度成長が六〇年代に行き詰まってきて、さらに七〇年代、八〇年代をどうするか。いまのままでは都会に人口が集中し、工場が集中して、ここで工場を拡大しようとしてもどうにもならぬということで、地方拡散が必要だという総理の理論に基づいて、結局日本経済をさらに、もっというなら大企業が将来に向かって大もうけするためにどういう計画をやるか、交通輸送体制ではどういう計画が必要かという発想からきているこの基調は、私は最も重大な問題だと思うわけです。国民はこのような大企業の大もうけのために、一つは増税、そして片っ方では物価上昇、そしてさらにけさの新聞にも出ておりましたけれども、PCBの食品総汚染、魚の流通もので一割はもう食用には不適だ、こういう公害まで激化して国民が悩まねばならぬということは、何としても納得がいかない。  だから提案でございますが、設備投資は、さしあたり大都市通勤輸送力の増強や地域住民、中小荷主の利用できるよう輸送力の整備、こういう必要なものを最優先的にやるように改めて、規模を大幅に縮小する、これを私どもは提案したいわけであります。このような措置をとるならば、利子補給を含めて年に五千数百億円の国の支出を行なえば、その年から国鉄財政というものは長期負債を減らしながら償却後黒字になって、運賃値上げの必要なしに再建可能になる、かように私は確信をしております。総理、国民が求めておりますのはそのような抜本的な再建策だと思います。この点について明快な御答弁をお願いいたします。
  366. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 国鉄の借り入れがどうして大きくなったか、これは最小限の増強をしておっても、これだけの借り入れが行なわれなければまかなえなかったということが一つございます。赤字はどうして出たかということでございますが、はがき並みに値上げをしておれば赤字は出なかったということでございます。いままで歴代内閣がはがきや米やガスや電気よりも鉄道運賃を低位に押えてきたという結果、国鉄会計が赤字になったということは事実でございます。歴代政府のやったそのよう方法がよかったか悪かったか、これは皆さんの批判は自由でございますが、いずれにしても他の物価と比べてみてこれだけ押えておる。先ほど申し上げたように、明治五年を一として二百七十何倍であるということでありますから、米は五千倍であるということを考えてみると、これはもう小学校の生徒でもわかるくらい鉄道というものはいじめられたなということでございます。  そのときに国民の税金で出せばどうか、こういう問題が残りますが、それは政府の問題であります。鉄道省にするか、三公社としてのいまの国有鉄道公社を守るか、民営にするかという議論はいまでもあるわけでありますから、いずれを選ぶかということであります。鉄道省にしようという議論なら、私たちは遺憾ながら首肯できません。民営にするというのならば、これは全部運賃でまかなっていただくということになります。そうすればいまのまん中の三公社が一番いいじゃないか。三公社のあとの二つは一般会計から金を入れてないのです。鉄道公社に関してだけは金をうんと入れよう。それだけの公共性を持っておるわけでございます。事業費が大きいからこれを今度はやめたらどうか、こういうことでございますが、道路は五カ年間に十九兆五千億でございます。それでもなお車はどうにも動かないというのでありますから、十兆五千億で一体足りるかなというのが、そこはかとない私の危惧なんです。これはもっと大きくならなければいかぬのじゃないかと思うのですが、もっと大きくするといっても、さっきもお答えをしたように十年間で鉄道の運賃はこれしか上げない、こう言っているのですから、そのときには政府が出さなければいかぬな、こう考えておるのです。ですからそういう意味で、これは制度上の問題でございますから、それは鉄道省にしたほうがいいのだ、そういうことになれば、鉄道よりも米をただでやったほうがいいという議論もありますし、ガスに対して一切値上げはしないで、ガスや電力や水を一般会計でまかなえ、これはウエートの違いがあるわけでございますから、そう簡単に結論は出せないわけです。いまお出ししているのがやはり鉄道の再建策としては最善である、こういうことでございます。
  367. 梅田勝

    ○梅田委員 昔は国鉄運賃は高過ぎたのです。その高過ぎたのと現在を比較されたのでは納得いかぬ。現在でも国鉄は、旅客は黒字なんですから、納得いきません。  時間でございますから質問を終わりたいと思います。
  368. 井原岸高

    井原委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  369. 井原岸高

    井原委員長 速記を始めてください。  石田幸四郎君。
  370. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 これから総理に対して若干の質疑をするわけでございますが、私に与えられた時間はわずか二十分でございますので、ごく簡潔にお伺いをいたしますので、簡潔に御答弁をお願い申し上げます。  まず最初に物価対策の立場から、許認可料金、公共料金との関係について若干お伺いをいたします。  今回、国鉄運賃の値上げ案等が出されておりますが、この国鉄の値上げが物価に与える影響は消費者物価指数に〇・四三%、その程度であり、そうたいしたものではない、このように政府はしばしば弁明されているのでありますが、私にはなかなかそうは思えません。この係数は、いわゆる国鉄をあまり利用しない人たちを含めた国民全般の消費生活あるいは経済全体の動き、そういうものを示したものでございまして、国鉄をしばしば利用する人たちあるいは通勤定期を自分で購入する人たちあるいは通学定期を利用する人たちにとっては直接大きな打撃があるわけであります。そしてこの国鉄運賃が値上げになるならば、それが物価高騰の引き金になってきたことは過去の例を見ても明らかであります。まさにちまたの受けとめ方は非常に敏感でございます。そこで、国鉄運賃の値上げが物価の引き上げになっている最も顕著な例を私は、私鉄の値上げに見るわけでございます。こういうような便乗値上げがしばしば行なわれるわけでございますけれども、いまこの問題について先にお伺いしましょう。こういった国鉄運賃の値上げによって、いろいろ御商売をやっている人たちが、運賃が値上げになったんだからといっていわゆる便乗値上げをやるということが巷間いろいろ見られるわけです。こういう便乗値上げに対して政府は一体どう対処してくるか。歴代内閣なかなかこれを食いとめることはできませんでした。その点についてまず伺います。
  371. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 今回の国鉄の料金改定が行なわれたら便乗値上げが行なわれないかということでございますが、便乗値上げというようなことは絶対に認めてまいりません。これを認めざるを得ないときにも、国鉄が上がったから自動的に認めるということはやっておらないわけです。これはやっておれば、同じ区間における——先ほどからいつでも例に出ることでございますが、東北本線の久喜の駅から上野までの私鉄と国鉄の運賃を比べれば一対二でございますから、便乗値上げをやっていれば当然国鉄と同じ運賃になっているのですが、半分ですから、便乗値上げを認めておらないということのよき証左でございます。そういう意味で、他の私鉄等の値上げを認めなければならない場合にはその会社の経営の実態というものを十分精査をいたしまして、審議会の議を経てやむを得ざるもの——申請どおりなんかには認めておりません。そういうことでもって、個々の問題を実情を調べて結論を出しておるわけでございますので、国鉄が認められたら右にならえというような関連性を持っての値上げは全く認めておりません。
  372. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 総理のただいまの御答弁でありますけれども、私はなかなかそうは思えないのでありまして、過去の私鉄の運賃値上げの実態を見ましても、三十六年の四月に国鉄の運賃が値上げになりましたけれども、引き続いて三十七年十一月には私鉄の運賃の値上げが行なわれております。四十一年三月においても同様なことが相前後して行なわれております。四十三年四月においても相前後して行なわれておるのであります。また今回の国鉄運賃の値上げによって、四十七年に廃業にはなりましたけれども、やはりそれと相符合するがごとく、四十七年の七月には私鉄運賃の値上げが申請をされておるのであります。この大手十四社の状況を見てみると、普通運賃で平均して二六・三%、通勤定期が四四・四%、通学定期が二九・五%、あるいはまた中小私鉄の十社の状況を見ますと、普通運賃で三一・七%、通勤定期で三一・四%、通学定期で三六・六%、その中の最高額を見てみますと、大手十四社の中には通勤定期で六二・一%もの高額の運賃値上げを申請したところがあるわけです。さらにまた中小私鉄の例を見ますと、普通の運賃で最高四八・四%、通勤定期で四六・八%、通学定期で四八・五%、約五割にわたるところの値上げを申請しているところがあるわけです。こういう問題に対して、確かにいま総理が言われたように、そのまま認めるわけではない、こういうようお話がございました。どうかこの点についてはひとつ厳重に審査をお願いをしたい、こういうふうに申し上げておきます。  さらにこういった私鉄の運賃値上げに引き続いて、本年には電気、ガス等の値上げ申請が行なわれるであろう、こういうような状況になっているわけでございますが、なぜ私がこの問題をいまここで話題にするかといいますと、結局こういうよう一つ一つの個別料金を許認可する場合、いろいろ考えてみますと、やはり人件費の高騰がございますから全然上げないというわけにはいかないと思います。非常にむずかしい問題です。ただ私がここで申し上げたいのは、今日の物価上昇というのはきわめて異常な状況になっているわけです。昨年度と比較しまして一一・六%の消費者物価の高騰ということが最近報道されました。あるいは物価の委員会におきまして経企庁長官がインフレ状態といわれてもやむを得ないのではないか、こういうような状況を認めております。あるいはまた経企庁の政務次官が、こういう状況下にあっては公共料金等の問題を考えねばならぬ、こういうことを明確に言っております。いままでのいろいろな状況を見てみますと、たとえば四月に行なわれました物価閣僚協議会あるいは五月の物価閣僚協議会、こういうようなところで今日の異常なインフレと公共料金いわゆる許認可料金との関係についてはどういう原則でいくのだということは今日示されておらないのであります。先ほど確かに総理は、いや、運賃値上げと言うけれども、実際はこのまま認めれば相当高額になるのを押えているんだ、こういうようお話がございました。しかしそれはあくまでも個々の国鉄運賃の問題であり、私鉄運賃の問題であるわけなんです。そういったいわゆる公共料金に属するような問題が、物価抑制策という立場から見て何らかの原則がなければならぬ、私はこう思うわけです。その点で、今後こういう異常な物価高の中における公共料金等の許認可についてどういう原則でいくのか、まずこれから伺いたいわけであります。
  373. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 先ほども申し上げましたとおり、三公社五現業というものはおのずから公的な使命がそれだけあるわけでございますから、公共料金というものは押えられておるわけでございます。それから民間企業であっても、公共料金ではないけれども公共事業の料金というものについては、その公益性ということでもって許認可になっておるわけでございますから押えられておる。   〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 押えられておることは事実なんです。これは国会議員の給与が二十一年から幾ら上がっているかということと国鉄運賃が一体幾らで押えられているかを比べればすぐわかるのでございます。それだけ押えられておることは事実なんです。半分以下に押えられておるということは、そういう意味で非常に強く押えられておる。だから、私企業であっても、電気やガスという料金も押えられておる。押えてもそこの給与とか支出は押えられないものがあります。公共料金は押えても給与を押えるわけにいきません。そうすると、給与のウエートがだんだん高くなって、支出が初め三〇%であったものが五〇%になり、このごろは六五%、七〇%までが人件費であるということになれば、どこかで値上げをするか補てんをするかということになります。そういうことにしかならない。そうしますと、三公社五現業の場合は、値上げを押えるかわりに、国でも税制上の問題と一般会計からの補てんとか財投の支出というものでカバーしていく。それにも限界がありますから、できるだけ押える、こういうことであって、これは一つ一つのケース——国鉄はどのよう基準か、というよりも、国鉄は国会の審議を経ておるという一番きびしい態度をとっておるわけでございます。私鉄の料金はどうかというと、私鉄や電気、ガス料金は閣議の了解を得てやっておる。それよりももっと公益性の低いものは所管大臣の認可でやっておる。それよりももっと地方的なものは都道府県知事にまかしておる。こういうことになっておりまして、基準は決定の段階において、そういう制度の中できめられておるということでございます。
  374. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 異常なインフレ下における公共料金との関係性については、残念ながらお答えがなかったわけでありますが、時間がありませんから。  次に、総合交通体系に示された受益者負担の問題についてお伺いします。  その総合交通体系の中には、いわゆる総合交通政策の推進としまして、政府は七つの項目をあげておるわけですが、その中に「費用負担と財源調達の合理化」という問題があります。「交通施設の整備および運営にかかる費用は、受益者が負担するのを原則とする。」、このようにあるわけです。(発言する者あり)委員長、ひとつ静粛にするよう御注意を願いします。
  375. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 御静粛に願います。
  376. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 今回の再建十カ年計画の受益者負担の原則もここからきていると解釈すべきだと思うのでございますが、いわゆるこの交通施設とは、道路、港湾、空港等も当然入ってくるわけでありますから、当然こういうものも、その整備というのは受益者負担が原則でなければならぬ。特に、「受益者負担の一つ方法として、租税を課し、これを特定の施設整備の財源とすることには多くの問題があるので、資源配分上また財政政策上適切であると認められる場合にのみ限定すべきである。」、といって、租税によりますところのいわゆる特定財源というものは原則として排除されておるわけですね。全部とは申しません。そういう方向に行くべきであると示されておるわけであります。  したがって、この総合交通体系からいけば、道路とか港湾とか空港等の整備も受益者負担が原則でなければならぬわけでありますけれども、どうも国鉄運賃のほうは、いわゆる国鉄十カ年計画の全工事費十兆五千億、これに対する受益者負担が、全部じゃないでしょうけれども、八兆円というような数字になります。七五%も受益者が負担するというのは、一つの算定基準でありますけれども、そういうような状況が出ております。  では、道路空港、港湾等については受益者負担というものは一体どうなっておるのか。総理は数字に詳しいわけでありますから、ひとつ明確に、何%ぐらい受益者負担になっておるのか。その辺に不公平はないのか。この点についてお答えいただきます。
  377. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 これは、公益性の度合いによってきまるべき問題でございます。一般公務員は税金をもってまかなわれておる。特別会計、公社、公団は事業費の中からこれを算定して支出をしておる。一般の民間企業は当然営利事業として収入の中でこれをまかなう、こういうことは当然のことであります。同じ公益事業、公共事業という中にも段階があることは言うまでもありません。  道路は二点間を結ぶ単一路線は無料公開が原則である、これは世界的な通則でございます。ですから、二点間を結ぶ単一路線、それは足で歩いて通うということが原則でございましたが、大正八年制定の道路法を昭和二十八年に全面改正をして、現行道路法になったわけであります。そのときに道路三法という——有料道路の制度が初めて採用されました。同時に、ガソリン税を目的税とする道路整備費の財源等に関する法律、俗に言われる道路三法が議員立法、有料道路は最後には名前は閣法になりましたが、各党一致の議員立法でございます。そういうもので、負担能力のあるところ、俗に言うバイパスというようなものは有料をもってしても憲法の精神に反しないという、ちゃんと両院の議決があるわけでございます。しかし道路は二点間を結ぶ、人が通行する、救急の用に供するものは無料公開が原則である。これは全世界の原則でございますから、これはもう無料公開でございます。けれども、その後有料道路制度が採用されたことによって、一般の地方道路譲与税の制度も国会の議決を経て出ましたので、現実的な面からいうと、利用者負担ということが四〇%程度行なわれておるはずでございます。  それから空港というものに対しては、これはもう新しい事業であるということ、時代の要請という度合いによって考えるわけでございますが、これは通行税を減免したというのが一つございます。空港施設は、国もしくは地方公共団体がこれを提供する、こういう公共負担をやっておるわけでございます。  鉄道に対しては、鉄道省であったころ、国民の税金をもって相当なものが投資をされておるということがございます。そして占領軍政策で三公社制度に転換してから、それから独立採算制というものが二十年間余にわたって相当強く要求された。だから、そこに鉄道の労使というものがたいへんな苦労をしたということは、私は事実として認めているわけでございます。これから道路だけではやっていけないということで、結局鉄道に対しても公共負担を行なおうということで、いまこの法律をお願いしておるわけでございます。  もう一つは、海運に関しましては、これは昔は埠頭からすべて港湾施設は、川の工事と同じように、国、地方公共団体が全額負担しておったわけであります。北海道だけは全額負担をしておったわけでございますが、しかし今度は大きなバランスがどうもまずいからというので、外貿埠頭公団法をつくり、利用者負担というものをちゃんとつくっているわけでございます。  ですから、その時代、その時代の要請と公共性の度合いによって、税金でまかなうかどうか——今度の公害問題でもって、都市の火力発電所でもってナフサをたく場合には税制上の減免措置を行なっておるというのと同じでございまして、これは国会の議決を経て、その必要性でもって調整が行なわれておる、こう考えております。
  378. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 しかし、いずれにしても、国鉄に対する受益者負担約八兆円というものと比較いたしますと、私はその負担率というものは、いま総理がおっしゃったように、道路事業に対して約四〇%くらいであろうというようなお答えがあったわけでありますから、若干不公平ではないだろうか、こういうような感じもいたします。  今度は逆の立場からこの問題をお伺いいたしますが、いわゆる総合交通体系というものの中に、国鉄のいわゆる位置づけというものが行なわれております。そういうような位置づけの上からいきまして、この再建計画の十カ年の計画の中の財源措置について、利用者負担だけではなくて、積極的に政府助成の姿勢が今度強く出てきたわけです。そういったものも、結局日本の国土開発という、社会資本の充実を行なうというよう意味で私は理解をしておるわけでございますけれども、今度の国鉄再建措置額に対して国の負担というのは、三兆八千八百億円であります。長期試算による工事費十兆五千億に見合うものとしましては、公団借用料二千五百億円を引いて、三兆六千三百億、こういうぐあいになっております。この国費助成の率を、国鉄の十年間の工事費十兆五千億に対比してみますと、三四・五%。道路、港湾、空港等の五カ年計画、いろいろありますけれども、これに対する財源の措置というものは明確になっておりませんから、単年度で比較する以外ありません。四十八年度で比較しますと、いわゆる道路の、一般道路事業一兆四千億に対して国の助成率というのは一兆四百億、七四・四%です。それから港湾の四十八年度の事業計画のうち、国費負担を考えますと二千八百六億、それに対して一千四百二十五億、五〇・八%です。それから空港の四十八年度の国費負担を見ますと約八百億、これに対する国費助成が七百十二億六千万、約九〇%です。金額の違いはあるにしても、道路事業なんかは明らかに国鉄のいわゆる事業規模と見合っております。そういうようなところから見ますと、道路は七四・四%、国鉄は国の助成がわずかに三四・五%、こういうような状況を見ますと、あまりにも国鉄のほうが冷遇されておるのじゃないか。今日、いわゆる利用者負担だけで国鉄が再建できないことは明白であります。だから今回の案を出されたんだとは思いますけれども、こういうような状況を見ますと、もっともっと国が積極的に国の助成を多くしてもいいのじゃないか。なぜこういうような不公平が出てくるか、これはいろいろ議論の分かれるところでありましょうけれども、やはり道路事業に見合うくらいのそういうような国費助成をやるところに真の国鉄を育てる政府の姿勢がある。そこら辺に私は非常に大きな矛盾を感ずるわけでありますが、これが最後の質問であります。
  379. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 これも石田さんよく御理解いただけると思いますが、明治初年から、太政官布告時代からずっと予算書を見てもおわかりになるとおり、道路とか治水とか港湾とかというものは、原則的に国及び地方公共団体の公共事業費をもって全額まかなわれておったものでございます。それで、先ほど申し上げましたように、北海道開拓のためには、北海道の公共事業は全額国が負担するという太政官布告が九十年の長きにわたって生きておるわけでございます。そういうことで、国民生活の必要なものをランクをつけて、公共事業として公費で全額負担すべきものである、ちょうど税金で月給を払っていると同じ思想で考えられたものでありまして、社会もこれをちゃんと容認をしておったわけでございます。ところが、いまの明治五年からの鉄道は収入をもってまかなうものであるという、そういう企業理念を取り入れられたものであります。郵便事業はそうであります。専売事業はそうであります。電信電話公社もそうであります。これは逓信省から電気通信省に分かれ、郵政省に分かれたものが三公社五現業になっているわけであります。しかし、それは全く私企業ではない。これは公労法の適用を受けておるわけでありますから、そういう意味で、どうしても、公益的な事業の最終的な責任というものはどういうものかといったら、私は国にあると思うのです。ですから、これはどうしても独立採算にも限界があるという場合には、廃止するか国がやるかということになれば、国が責任を負わなければならない問題だと思うのです。大事故が起こってどうにもならなくなった、それを全部利用者に負担させるべきものではなく、そういうものは内容によって公費で負担しても財政法や憲法の精神に反しない、こういうことでございまして、これは公営住宅法によって低所得者に住宅を与えて家賃収入でもってまかなう、こういうことでございまして、これは全然制度が違うものでございますから、いまも鉄道は全体の計画でもって十兆何千億ということでやっておりますが、公共事業はただ、いままで全額負担をしておった滑走路とか飛行場の施設は全部国がやるというのが原則でございましたが、もうそういう時代じゃないから、これは幾ばくかずつ負担をしてもらうというので、一〇%、やがてもっと黒字が出るようになれば二〇%、三〇%負担をするようになりますし、それからまた国が全部やっておった港湾も外貿埠頭公団をつくって、ほんとうに係船が三日になるよりも一日で済むならその二日分を負担したほうがいいじゃないかという制度を国会でつくってもらったわけです。国が必ずやらなければならなかった港湾と水の特別会計というものをつくって、財政法違反であるというので議論がありました。水というものは国が与えるのはあたりまえだということでございましたが、水は最大の財源であるということから有名な水の特別会計法が誕生したということで、だんだんと負担力のある者に対しては税金というものでまかなうウエートを小さくしていって、そのかわりに社会保障の中で、とにかく不具の人とか失明している人とか、今度の公害病などで原因がわからないような人である人とか、奇病、難病の人であるとか、老人というようなみずから働けない人は、お互い社会連帯の思想によって国民が税金で負担しても、それは国民の容認するところであるということであって、一律に全部をまとめて、これとこれとの差があるじゃないかということは時代の要請、社会の要請というものでおのずから限界が定まるものでございまして、そのためにこの率をきめるときには国会で御審議をいただいておるわけでございまして、国会でよろしいということになれば、それが一般の民営事業であるか、公営事業であるか、公共事業であるかという限界は、国会の議決で定まるものだ、こう理解しております。
  380. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 最後に要望しておきますが、しかし確かに、それはたてまえはそのとおりであると思います。しかしそれでも、いわゆる原則論はどうあるべきかということ、国の負担はどう、受益者負担はどうという原則論というものは、現在の数字の上からは政策的には何も明確になっておらぬのです。そういったところに今日の国鉄運賃の値上げに対する不満が出ているわけでありまして、こういった点はもう少し政府としても正確な分析をする態度でもって臨むべきじゃないか、これだけ申し上げておきます。
  381. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 河村勝君。
  382. 河村勝

    ○河村委員 運賃値上げと物価の上昇との関係につきましては、いままでだいぶ質疑が繰り返されておりますけれども、やはり国民全体の関心がここにあるわけでありますから、私も若干お尋ねをしたいと思います。  いま国民の素朴な感情として、運賃を絶対に上げちゃいかぬというようなことではなしに、このインフレのさなかになぜ運賃を上げなければならないんだろう、一体これでインフレの先行きはどうなるだろう、そういう心配なんですね。確かに物価上昇の勢いはどんどん加速されております。まだ進んでいる時期ですね。さっきも話が出ましたが、今月の御売り物価の上昇率は前年比一一%をこえました。消費者物価も東京あたりは一一%をこえました。一般でも九%以上にのぼっております。そこで、そういう状態でありますから、政府も何もしていないとは申しません。金融引き締めを中心とした対策や公共事業費の繰り延べなどをおやりになっておるけれども、それだけで片づくような問題とはとても考えられないのがいまの状態ですね。だから、それを心配するだけでなしに、田中総理、あなたに対する国民の信頼がだんだん簿れてきておるのですね。これはあなた自身にも非常な責任があるのです、このインフレを高進さしたのについて。昨年、あなたが御就任になってから前後して日本列島改造論を発表なさった。日本列島改造論そのものは別として、土地対策というものを何も持たないままにあれを発表された。これは土地投機が起こるのはあたりまえですね。そこにちょうど、すでに過剰流動性、二年間で六千億もたまった、だぶついた金があったわけですから、それが土地投機を誘発して、それがインフレマインドを非常に強くしたという事実は、あなたもお認めにならないわけにいかないと思うのです。ですから、この辺でもってやはり思い切った手を打たないとインフレマイドというのはなかなか鎮静をしません。  そこで、あなたはさっきの質疑の中で、運賃をもしいまここでもって押えるならば、国鉄は非常に困っているんだから、国鉄からいえば、運賃を押えるならその分は政府から出したらよかろうという意見があっても当然だということをあなたはおっしゃいましたね。私もそのとおりだと思うのですよ。ですから、あなたがほんとうにインフレを収束してやろうという決意を示すおつもりがおありなら、この際、とにかくインフレの鎮静するまでの間この運賃値上げは延期をして、その間のそれによって生ずる欠損、これは政府が出す、そういうふうにやれば、国民全体も総理はそこまで決意したかということで、インフレというものは多分に心理的な要素もございます。そういうものに対して非常に大きな効果もあって、私はあなたとしてとるべき最良の手段であろう、そう考えるのですが、総理のお考えを伺いたい。
  383. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 河村さんの御発言よく理解できます。私もこの法律案を出すのは、ただイージーな気持ちで提出をしているのではありません。非常に深刻な立場で考えながら提出に踏み切ったわけでございます。新しく政権を担当する立場になって、批判のあるようなものはなるべく出さないほうが望ましい、私も人の子でございますから、それは十分そう考えたのです。しかし、いろいろ考えてみましたが、公の立場を貫いていくためにはこの程度の国鉄再建策はどうしても成立を期さなければならない、そのためには、私が幾ばくかの批判を受けても、それは覚悟しなければならないという公的な立場での判断を最後にいたしたわけでございます。  それは先ほども申し上げておりますように、実際皆さんの御発言の中にも、インフレである、インフレにしてはならない、物価をやらなければいかぬと言いながら、やはり物価を押えなければいかぬが、賃金を上げなければいけません。物価か上がる分だけ賃金を上げるというのじゃなくて、物価の倍も上げなければいかぬのだ、こういうことでございますし、減税を大幅にしなければならぬのだ。アメリカの次でございますといっても、百五十万円まで夫婦、子二人の標準世帯を上げなければならない。アメリカの百三十四万円に対して十五万円引き上げなさい、こういうことでございましたから、そういうことで検討いたしましょう、こういうことでいま検討を始めたわけでございます。オーソドックスなやり方からいえば、物価対策には賃金の凍結や物価の一年間凍結とか増税とか、こういうものが普通どこでも行なわれておることでございます。しかし、金融の引き締めとか過剰流動性の吸収とか特別措置に対する税金とか分離課税とか、今度売り惜しみ買い占め防止の法律案をお通しいただければ、それによって三十万トンよけいに入っておる豆がどこにあるかすぐ見つけます、こう言っているわけです。ですから、土地に対してもちゃんと農地の宅地並み課税をお願いしたわけです。これは未利用地の利用化、立体化をするか、もっと入ってこないように列島改造するか、これしかないわけであります。これをやれば片づくのです。一つ法律を通していただきましたが、まだ二つは慎重に御審議中であるということで、私は物価対策からいうと一日も早く通していただきたい、そういうことをすることによって、物価に対して寄与し貢献することができるという考え方に立っておるからこそ、来年度はまた減税をいたしましょう、こう言っておるわけであります。  ですから、国鉄に対しても、国鉄法案が通らないうちでも、去年に行なわれておってちょうどよかった値上げがことし行なわれても、去年とことしの分からいえば足りないじゃありませんか。それでもちゃんと十六条でもって国会に対して資金上の措置ができませんなどということはいたしません、こういう立場に立っておるのでございますから、やはり国鉄の問題は正面から取り組んでおるのです。二年や三年考えてしたことではないのです。あなたが国鉄におられるころから私は十分御意見を聞きながら考えてきたのです。そういうことで、ここへ出してきたというのはやむにやまれないことなんです。  国鉄はあなたが御承知のとおり、先ほども申し上げましたが、新宿から四谷まで毎朝人を十万人乗せて電車が赤レンガの上を走っているのです。そういうことを考えて、ただ税金でやればいいんだということで片づく問題じゃありません。私はこれによって国民の理解を得なければならない、国鉄の重要性を認識してもらわなければいかぬ。こうすることによって、このさなかでもってこの法案を通していただくということで労使もぴんとしますよ。私はそういういろいろな立場からものをしさいに考えて、私が、一内閣が批判を受けることによって国鉄百年の計がここでスタートすることができるならば、やはりその道を選ぶべきである。そのかわりにいままでのような体制ではだめだぞ。あなたが国鉄の専門家としておられたころには、国鉄の独立採算制でもってたいへんな御苦労になったわけですから、そういうときの感じではだめなんだ。大蔵省も金を出しなさい、こういうことでここまで踏み切ったわけでありますから、これは国鉄の戦後の状態を知っておられる方なら、今昔の感にたえないというくらいに相当な勢いで踏み切ったものであるということだけは理解していただきたい。
  384. 河村勝

    ○河村委員 私は運賃値上げをいつまでもしてはいかぬと言っておるわけじゃないのです。いま非常にインフレの高進中です。ですから、インフレマインドを収束するのに国鉄運賃値上げを一時ストップすることによって大きな効果をあげられるのじゃないか。その間くらいの赤字補てんなら、これは臨時のものです、長く続くものではありませんね。ですから、決して政府の過大な負担ではない。だからおやりになるべきじゃないかと言ったのですけれども、そればかり議論しておりますと切りがありませんからやめますが、非常に遺憾でございます。  それから先ほどからこれも議論になっておりますが、赤字線の取り扱いの問題、これが昨年の再建案とことしのそれとの大きく発想が変わった点です。総理はさっき国鉄だけの視野で考えられない、国鉄の重要性が変わってきたのだから当然の帰結だとおっしゃいました。それからもう一つ、これはいつも言っておられることだけれども国鉄なんだからもうかるところだけやっておるわけにはまいらぬ、赤字のところでも政策目的上やらなければならぬところは当然やるべきである、こういう立論ですね。その限りにおいては正しいのです。ところが、それから先があなたのおっしゃることは論理の飛躍があるのです。  それで、あなたが常に例に引かれるのは、北海道の鉄道地下鉄を例にあげられますね。ところが、地下鉄のことなんかわれわれは何も言っていないのです。地下鉄は確かに大きな国の金を投じてやっております。しかし、大都市通勤輸送、こういう大量輸送は総合交通政策から見た輸送分野からいったら、国鉄がやるのがあたりまえです。ですから、そんなことは一つも言っていない。それはよけいなことです。それから北海道の鉄道にいたしましても、過去において北海道開発の使命を達成してきたこと、これは間違いがございません。その中に、先ほどおっしゃったようにこれからもまだ産炭地振興とかなんとかいうことで残さなければならぬものもあるでしょう。しかし、もうすでに歴史的使命を終わって道路輸送に転換すべきものもずいぶんあるのです。そういうものを抜きにしてこの二つを例にあげられるということは、どう考えてもこれは問題のすりかえですね。いわんやことしの予算でも三百三十億の国費を投じていわゆるAB線、赤字ローカル線を建設することになっております。これに至っては、これからつくるという意味ではその三百三十億をどれに充てるか、まだ具体的にきまっておらぬかもしれませんが、まず国民経済的に見て有効だと思われるものはないはずです。その点をどうお考えですか。
  385. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 それは根本論でございまして、私はそこにメスを入れてもらわなければいかぬと思ったのです。これは占領軍政策をそのままずっとやってきて、国鉄の駅の集約作業を実際においてやりました。貨物の集約と駅の集約をやりまして、一つの駅をとめると幾らコストが下がるというかけ合いを占領軍と私たちはしょっちゅう国鉄の本社でもってやったわけですし、それは私も十分知っております。しかし、そのときには国鉄は完全に独立採算制を本義としておったのです。ところがその後事態は変わってきたでしょう。道路を五カ年に十九兆五千億もやらなければならないような事態になってきたのです。二千三百万台の車は十年たたないうちに四千万台をこすという状態になってきた。そうすれば、有料道路制度を採用したにしても、国民の税金をもってまかなう道路というものには限界がある。しかも、日本の国には四九・五%雪が降るのです。山岳地帯がある。これは鉄道でもって長大道路をやるところは排気の問題だって技術的にできても、あなたも御存じのようにたいへん困難な問題があるわけです。鉄道は立山を抜けても道路は抜けないという技術的な制約があるじゃないか。そういう意味で新しい時代の要請として、鉄道のウエートというものがうんと上がってきた。おとといの朝NHKが取り上げておるように、昭和六十年になれば関東平野も中部平野も近畿平野も水が全然足らないで、水洗便所の水も流せなくなると報道しておるじゃありませんか。そういう事態から考えるときにどういう状態であるかというと、国土の総合開発というものが必要である。そこに何があるかといったら国有鉄道法が生きてくるんですよ。ですから独立採算制というような戦後四半世紀やってきたものだけでやれるものではなく、国が公共的な政策目的達成のために行なう部門に対しては、地下鉄に投資をしておると同じような公共負担をやっても独立採算制という本義を逸脱するものではない、こういうふうに解釈して今度大蔵省も踏み切っておるわけであります。  しかも、赤字線といわれる閑散線の国鉄の赤字に対するウエートは先ほど申し上げておるようにわずかに四%じゃありませんか。そういう状態で考えるときに、もう過疎地の鉄道は要らないんだ。これはちょうどむつ製鉄をつぶしたときと同じなんです。十年前にむつ製鉄をつぶしたら、十年後にむつ小川原開発をしなければならなくなる。十倍の投資を必要とすると国会で議論されながらむつ製鉄はついに廃止になったんです。十年たったら十倍以上の千五百万坪のむつ小川原開発を進めなければならない状態になっているじゃありませんか。同じことなんですよ。いまの事態だけでもって鉄道を見れないのです。  そういう意味で、国有鉄道というものをそのままに生かすなら、昔の運輸省ように、国が政策目的のためには一般会計を中心としてやるべきだ。こういうことであるなら鉄道の分離論というのはあるわけです。九電力を分けたように、あなたもよく御存じのよう鉄道分離論を私らも真剣に検討したのです。そのときには大阪、東京だけは分けてくれ、東京、大阪は負担能力があるのだから、担税力があるのだからこれは私企業にすればいいのです。そうしてもうからなくとも国の政策遂行のために必要な地方の鉄道は国有鉄道の名においてやるべきなのです。そうじゃないですか。そういうことを考えればすぐおわかりになるじゃありませんか。私はそういう意味で少なくとも東京というものは国鉄が幾ら赤字を出してもやらなければならぬという考えには首肯できませんし、しかも川にたとえてもわかるように、培養線がなければ、本線だけでは黒字になるわけがありませんよ。培養線がなくて、本線だけでどうして一体黒字になりますか。いろいろな赤字線があるけれども、山奥からずっと集めてきて山陽線になり東海道線になっている。これはあなたは専門家ですから釈迦に説法ですけれども、そういうことを考えれば赤字線というような閑散線は黒字の鉄道と無縁のものじゃないのです。これはそういうために国有鉄道法が厳としてある。こういうことを考えれば、国有鉄道法の持つやはり内容だと思うのですよ。  私はそういう意味で、いま政府が提案しておるようなもの、三千四百キロに及ぶ閑散線というものをもっと道路と比較をしなければならない。そうするとあなたは、第二の問題として道路と比較するなら、道路を負担をするものに対して、全部鉄道の赤字負担は公共負担でやれという第二の問題が出てくるはずなんです。これはそのとおりなんです。だから、鉄道建設公団に対しては十カ年に一兆円の国費を投入することになっているんです。これはこれから十年間にあなたのような御議論をずっとやっていただいて、鉄道のこの部分の赤字に対してはこれは国が持つべきであるという、もっといまの案よりもいい案ができれば、十年の間にはもっと考えると思うのですよ。そういうものはほんとうに統計に出てくる。先ほどもちょっと申し上げましたが、自動車状態がパンクしますと、いまの計画よりも貨物輸送専用線という問題が必ず起こってくるはずです。起こってきたならば、いまよりももっと大きな投資を必要とする。しかし十年間ではこれだけしか運賃値上げをしません、こう答えておる以上、どんな投資が起こっても赤字が出ても、その建設費は国がめんどうを見なければならぬはずであります。そういうことがこれから起こってくるであろうということは想定をされますが、いますべてのものを十カ年で年次割りに割り出して皆さまの前に出すわけにはいかないのです。そういう意味で、いま出せる最善の策を提示をして御審議を願っているのです。あなたのような専門家が、とにかくもう道路はパンクするじゃないか、どうにもならなくなるじゃないかということになって、鉄道にもっとウエートをかけろといえば、鉄道とどう同居しなければならぬかという補整問題が起こってくるのだということでありまして、最後に一言、言わずもがなかもわかりませんが、これは過密のところだから国民の金を出してもいいのだ、過疎のところであるからそういうものは打ち切るべきであるよという考えには首肯できないのです。それは必ず道路を必要とするのだし、そこからは水が出ておるし、人材が出ておるし、野菜の供給地であり、米の供給地であり、お互いは無縁ではないのです。そういうことを考えると、私は、国民に対しては均てんしなければならない、こういう考え方を持っているのです。
  386. 河村勝

    ○河村委員 総理は問題をすりかえる。私はちっとも赤字線なら全部はずせといっておるわけじゃありません。道路輸送に転換できるものは転換しなさい。
  387. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 それはいいです。
  388. 河村勝

    ○河村委員 そうでしょう。政策目的があって、どうしても残さなければならぬものは、プラス・ナショナルミニマムとして、それで国で赤字を補てんしなさい、こういっているわけです。その赤字を補てんするのがことしは抜けてしまったのです。これは一体どういうわけでしょうか。赤字は四%しかないとおっしゃるけれども、四%というものはほんとうの赤字ローカル線だけのことなんです。しかし総合交通体系的に見て、国鉄として将来黒字になる可能性のないところはもっと幅が広くて、その赤字というものは、国鉄の赤字の少なくとも半ば以上にはなるのです。ですから問題はそう簡単じゃないのです。
  389. 新谷寅三郎

    田中内閣総理大臣 ちょっと早とちりでございまして、そういうことはひとつ明確にお答えをいたしておきます。それはさっきお答えをしたわけです。三千四百キロを全部そのままにするというのではない。これは道路でもって代替できるものに対しては転換をしてまいります。あとの問題は、道路の新しい投資よりも鉄道のほうがより合理的であるというのは、用地も少ないし、鉄道なら御承知のとおり五メートルあれば単線はできるわけでございますが、道路は少なくとも今度規格は六メートルになるわけでございますから、それだけで単純に計算しても一メートル違うわけであります。それだけでなく、雪の降るところで除雪費用まで公費負担になったり、隧道技術とかいろんなことを考えて、公害の問題等考えると、鉄道でいいところもありますから、鉄道というものはそういう意味で端的に、赤字だからといってこれを廃止するというのではなく、他の政策目的というものを長期的展望に立って、もっと取捨選択をするのには時間がかかります。  もう一つは、地元の了解を得なければならぬ。鉄道をつくるときだけ地元の了解を得ておいて、とっぱずすときには何も了解を得ないというなら、それは憲法の精神に反する。第一、私鉄は個人の負担にしておりながら、運輸大臣のところに廃止申請をしても、地元の承認がなければ廃止許可しないじゃありませんか。公益性を持っているのですよ。国有鉄道の名において敷設した鉄道が、国がかってに地元の承諾も経ずしてこれを取りはずす、そんなことができるはずはありません。そういうことでいろいろ取捨選択をして時間がかかりますよと、そういうことを申し上げておるので、より合理的にしようというものでございます。それといまの四%というのは、それはほんとうの閑散線だけだというが、これもあなたは承知していて、短い時間だからそう言われると思うのですが、それは総合原価主義であるという立場でいうと、培養線というものに対する——これは私鉄との連帯の運輸の関係見たってわかるじゃありませんか。私鉄は二十キロしかない。国鉄は二百キロ運ぶからといっても十対一じゃないのです。これは私鉄から荷物を培養線として本線に移るからこそ、鉄道の営業が成り立つというのですから、少なくとも培養線と本線との間の連帯勘定を計算するときには四分六、七三、八二で計算しなければならないという新しい計算方法があるわけでありまして、私が言っている閑散線の赤字は総赤字の四%であるという数字は、これはおおむね間違っておりません。私も五年や十年やってきたのではありません。鉄道問題を二十年間みっちりと勉強してきたのでありますから、そういう意味ではそんな算術計算で、培養線じゃない、閑散線だという単純な損益計算では私はこの問題を論ずるわけにはいかない。これはやはりもっとお互いに、道路でやれるものもあるし鉄道でやれるものもあるし、同じことでも雪の中で十二カ月のうち四カ月を除く間はこれだけの計算をしなければならぬということは十分出ているわけでありますから、国民負担というものはいかに少なくて、いかに合理的、効率的であるかということをやはり判断してもらう必要があるように思うのです。これはいますぐ判断できる問題ではないので、御専門であるあなたと、道路の専門家もおりますから、そういうやはりうんとこまかく計算をしてやっていただくということが結論だと思います。
  390. 河村勝

    ○河村委員 どうも総理は私が言いもしないことを言ったようにお考えになっている。閑散線区だけでいえば四%の赤字というのは私は否定してもいない。どうも議論がすれ違いでとてもケリがつきませんので、これでやめますが、しかし総理、今度の再建計画国鉄の長期試算で見ても、四回運賃、値上げをやって、値上げ率でいえば二百数十%、それでもなお十一兆円の累積債務残高、それから二兆六千億の累積赤字が残るのですね。ですから、これでほんとうに国鉄が再建されたという数字ではありません。ですから総理も、運賃問題はともかくとして、とにかく再建はこれからです。総理のおっしゃることはどうも少し独断が多過ぎます。ですから、これからもう少し時間をかけてやっていかれることを最後に要望して私の質問を終わります。(拍手)   〔発言する者あり〕
  391. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  392. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 ただいま、本案に対し、委員長の手元に、江藤隆美君外四名から自民党提出にかかる修正案が提出されております。  修正案はお手元に配付してあるとおりであります。
  393. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 この際、提出者から趣旨の説明を求めます。江藤隆美君。
  394. 江藤隆美

    ○江藤委員 私は自由民主党を代表いたし、本修正案について、その趣旨を御説明申し上げます。  修正案の案文はお手元の印刷物のとおりでございまして、修正の趣旨は、原案附則第一項の本法の施行期日、本年「四月一日」はすでに経過しておりますので、これを「公布の日」に改めることといたしますが、第一条の国有鉄道運賃法の一部改正の規定につきましては、鉄道営業法の公告の関係上、これを「公布の旧の翌日」とし、これに伴い附則第五項の郵便法の一部改正の規定につきましても「公布の日の翌日」に改めるものであります。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  395. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 以上で趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  396. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 これより国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤守良君。
  397. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして本案及び修正案に対し賛成の討論を行なうものであります。   〔細田委員長代理退席、委員長着席〕  国鉄財政の再建につきましては、第六十一回国会において成立した日本国有鉄道財政再建促進特別措置法に基づき昭和四十四年度以降再建対策が講ぜられてきたのでありますが、その後における国鉄財政は、自動車輸送の引き続く伸長等による輸送量の伸び悩み、人件費の大幅な上昇等のためさらに悪化し、昭和四十七年度末には、三千六百億円の欠損を生じ、累積赤字一兆二千億円に及ぶというきわめて憂慮すべき事態に立ち至りましたことは御承知のとおりであります。  国鉄は、過去百年間、国内輸送の大動脈として国民生活の向上と国民経済の発展に寄与してきたのであり、今日において、その役割りは、都市旅客輸送、大都市通勤通学輸送、中長距離大量貨物輸送の各分野においてますます重要性を増しており、過密過疎の解消、国土の総合的開発のための中核的交通機関として、将来にわたってその使命の遂行が強く期待されているのであります。  このような基幹的公共輸送機関としての国鉄の使命にかんがみますとき、危殆に瀕している国鉄財政の再建施策をさらに強力に推進する必要のあることは何人も異論のないところでありまして、今回あらためて昭和四十八年度以降十年間を再建期間とし、政府の財政措置の画期的な大幅拡充と国鉄自身の最大限の企業努力及び国民の協力による必要最小限度の運賃改定を内容とする抜本的な新財政再建対策が策定されたゆえんもここにあるわけであります。  新財政再建対策における政府の財政措置につきましては、政府出資及び工事費補助金による工事費に対する助成と過去債務の処理に対する助成を根幹とし、十年間に、政府出資金一兆五千七百億円、工事費補助金一兆五千二百億円、財政再建債利子補給金五千三百億円、計三兆六千二百億円が一般会計において国鉄に直接助成されるほか、財政投融資において九兆三千億円の財政援助を行なうというきわめて大幅な拡充となっております。  今後十年間における工事費の規模は、新幹線建設等に四兆八千億円、在来線について、大都市交通、幹線の複線電化、貨物輸送、安全、公害等に五兆七千億円、合計十兆五千億円が予定されており、この工事費に対し、政府出資及び工事費補助によりまして国鉄工事費の利子負担は三%というきわめて低率に押えられております。  過去債務につきましては、従来の政管政保債務に新たに民間債務も加え、昭和四十七年度末のすべての長期債務の利子相当額について、実質的なたな上げに相当する十年据え置き二十年償還という財政再建債を発行することとし、その利子の全額を補給することにより国鉄の利子負担は大幅に軽減されており、また、債務の返済につきましては、再建期間中に返済期の到来する債務の借りかえ分を含めて十年間に九兆三千億円の財政投融資が行なわれることとなっており、債務返済のために国鉄の資金繰りに困難が生ずることのないよう十分な配慮が払われておるのであります。  なお、以上の措置に加えまして、日本鉄道建設公団工事費に対し、国鉄に準じて助成を強化することとし、政府出資、補助金等約一兆円の助成を行なうほか、国鉄の同公団に対する借料二千五百億円が軽減されるのであります。  国鉄みずからの合理化、企業努力につきましては、諸経費の節減、機構の合理化及び資産の処分、活用の促進等経営の近代化と生産性の向上について最大限の努力を払うこととし、大規模な設備投資、技術革新の積極的な取り入れ等により輸送施設の近代化を強力に推進し、管理体制のより一そうの合理化と要員規模の縮減、人件費の節減につとめるとともに、旅客貨物両面における増収努力を徹底的に推進することにより、近代的経営体制を確立しつつ、財政の健全化と相まって、国民の輸送需要に適合したより安全、正確にして快適な輸送サービスの提供が強く期待されているのであります。  運賃改定による増収につきましては、十年間に約七兆九千億円を予定しており、国鉄よう利用者及びその利用状況が明確に特定し得る交通サービスについては、利用者負担のたてまえによるのが公平の原則にかなうものでありますが、すべて利用者の負担によることとするときは、国鉄財政の現状からいたしまして、その負担は著しく過重なものとなりますので、政府は公益性の高い分野に対し、国民の税金によってまかなう分と応益者が負担すべき分との調和について十分配慮し、国鉄に対する最大限の助成措置を講ずることによって、運賃改定による利用者の負担を極力軽減しているものと認められますので、この程度の運賃改定はやむを得ないところであり、広く一般国民の理解を得られるところであると思うのであります。  なお、今回の運賃改定は、旅客二三・二%、貨物二四・一%、増収率一五%でありまして、消費者物価及び家計に及ぼす影響は、それぞれ〇・四三%、〇・二%で、いずれも軽微なものとなっているのであります。  以上申し述べました新財政再建対策の実施によりまして、国鉄の合理化と近代的な輸送施設の整備拡充が実現し、国鉄の経営基盤が格段に強化され、その収益力が著しく改善されることとなり、再建期間の最終年度においては償却後の黒字を計上し、自後、財政の健全性を持続するものと見込まれているのであります。  なお、昭和五十七年度末において見込まれる二兆六千億円の累積赤字につきましては、同年度の運輸収入が現在の四倍の五兆円という額に達します国鉄財政にとりましては決して過大な負担とは考えられないものであり、また長期債務残高十一兆円につきましても、営業用資産の増加に見合ったものでありまして、これまた格別の懸念には及ばないものであります。  結論として申し上げますと、今回の新財政再建対策は、国鉄みずからの努力と政府の助成並びに国民の協力による三位一体の施策により、抜本的な国鉄財政の再建をはかり、総合交通体系の視点に立って、国民の足を確保するとともに、国民経済の発展に寄与せしめんとする緊急不可欠にしてきわめて妥当な施策でありますが、国鉄再建の基本は、要するに国鉄自身の努力にまつものであり、労使が十分に相協力して国民に対する責任を果たす決意と実行とが必要なことを特に申し述べまして、本案及び修正案に対する賛成の討論を終わる次第であります。(拍手)
  398. 井原岸高

  399. 神門至馬夫

    ○神門委員 私は日本社会党を代表し、ただいま議題となりました国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案反対の討論を行ないます。  第一の反対理由は、本日までのあらゆる審議を通じて明らかになりましたように、国鉄再建の確立はほとんど保障がないということであります。  借金に苦しむ国鉄が、再建計画の終わる昭和五十七年度には、借金は現在の三倍の十一兆円に、累積赤字は二倍以上の二兆六千億にもなるというしろものであります。しかも、物価の高騰の続く今日、設備投資資材の値上がりを三%程度、賃金上昇率を約一一%ときわめて低く見積もり、最終年度に三千七百九十二億円を無理やりに計上した、いわゆる数字合わせにすぎないからであります。  ただ、再建計画の中で確実なのは、過去四回の長期計画と運賃値上げの関連が物語りますように、十年間四回の運貸値上げと国鉄労働者十一万人を五十三年度までに縮減するということであります。いなむしろ、その二つのねらいが目的であって、そのための国鉄二法案であると断ぜざるを得ないのであります。  国鉄再建計画の変更も中途であり得るとする運輸大臣の答弁や、第二東海道新幹線や第二山手線の構想の審議半ばにおけるアドバルーン等が何よりも雄弁にそのことを物語っているのであります。  だからこそ国民も国鉄利用者も、また国鉄労働者も強く反対するのであり、わが党の断じて国鉄二法案を容認することはできない理由であります。  第二の反対理由は、物価との関係においてであります。  いま内政最大の課題は物価対策であります。田中内閣の評判が非常に悪いのも、物価だけ上げる田中自民党内閣はごめんだという国民の切実な意思表示なのであります。五月の東京都の消費者物価は、前年同期に比べ実に一一・六%、卸売り物価は一一・四%というすごい値上がりを示しています。物価値上がりの激しくなった昨年一年間の消費者物価の上昇率が四・八%というのでありますから、いかにべらぼうな物価高の現状であるかがわかるのであります。  国鉄運賃の値上げは政府主導型の公共料金全体の引き上げを誘発し、諸物価高騰への起爆となるものであるのに、なぜ重要法案だとしてしゃにむに国鉄二法の成立を急がねばならないのか、その政治感覚を疑うものであります。  高物価に苦しみ、低福祉に泣く深刻な国民の生活にさらに追い打ちをかける国鉄二法案に対し、国民の命と暮らしを守る立場から、わが党の断じて反対するところであります。  第三の反対理由は、評判の悪い日本列島改造計画の先導役として、大企業優先の国鉄に仕立てようとしていることであります。  田中首相は本日この委員会において、全国に九千キロメートルの新幹線網を建設して、旅客新幹線に、貨物在来線に振り分け、貨物輸送増強に主眼を置いていることを明らかにしているのであります。七千キロの新幹線建設や通信輸送ネットワーク化を中心とする国鉄再建計画は、この方針に沿ったものであり、原価の半分程度の貨物運賃や、大企業に有利で国民生活に不利な貨物運賃体系の改悪と相まって、大企業本位の輸送改善を中心目的としたものであります。  その陰に国民生活は、料金の高い新幹線の使用を余儀なくされ、大都市通勤輸送緩和はあと回しにされ、地方在来線は駅の廃止や無人化、手小荷物や貨物の取り扱い廃止など、住民の足は奪われ、騒音振動新幹線公害に悩まされなければならないなどの犠牲をしいられるのであります。  列島改造計画は、公害を日本のすみずみまでまき散らす大資本本位の計画であります。国民の国鉄を列島改造計画の先兵にしようとしている国鉄再建計画を許すことはできないのであります。  第四の反対理由は、国鉄の安全輸送と労使関係の正常化に逆行する国鉄二法案であることであります。  安全輸送国鉄の至上命令であります。また労使の正常化は国鉄再建の第一のかぎであります。国鉄当局は、去る九日二河島事故の関係者四名に懲戒免職処分の通告を行ないましたが、人命軽視、収益優先の国鉄経営が今日続発している事故の要因であっても、過酷な懲罰を科せられるのは、常に命の危険をおかし、汗にまみれて働いている現場労働者なのであります。国鉄二法案は、国民には高運賃を押しつけ、国鉄労働者には安全輸送を無視した十一万人の大削減を強制しているのであります。国鉄再建計画の最終年度の五十七年には仕事量は現在の二倍半にもなり、週休二日制が一般化しつつある今日、増員すべき国鉄労働者を逆に四人に一人を減らそうとしているのでありますが、これは国鉄再建の名のもとに行なわれる人身御供が国鉄労働者十一万人削減合理化であり、この数字的根拠はきわめて薄弱であります。政府が仲裁裁定をじゅうりんしたことに端を発し、今日まで解雇された者五百七十一名、不当処分者は無慮二十二万一千名に及び、陰うつにして残酷をきわめたマル生運動による団結権の侵害、低賃金で働く労働者に人件費上昇が国鉄赤字の元凶のごとく宣伝し、首は切るが文句を言わずにしっかり働けでは、労使間の正常化ができ得るはずがないのであります。この際、労働者敵視政策を改め、希望ある明るい職場をつくり、労働者の知恵とエネルギーを結集して、はじめて国鉄の安全輸送と真の再建が結果きれるのであります。そのため、まず十一万人削減合理化計画を中止し、ストライキ権を返して、労使不信の悪循環の根をたつことが政府及び国鉄当局のとるべき急務であります。  第五の反対理由は、独立採算制をたてに、公共性を放棄した国鉄経営のあり方についてであります。もともと国鉄が公共企業体となったのは占領軍による労働政策かちであって、何の経営理念の準備もないまま強制され、発足したものであります。公共性と企業性、独立採算制と公共負担という相矛盾し対立するものを内包しながら、ずるずると三十年代高度経済成長政策を迎え、急速に増加する輸送需要と不況時の景気浮揚対策のため、独立採算制の名のもとに膨大な設備投資を強要し、借金と利子に追いまくられる火の車国鉄にしたのは、ほかでもない歴代自民党内閣であります。  田中首相は、本日の運輸委員会でも、国鉄は大きな使命を持っており、国鉄がもうかるならば、民間企業にまかせればよい、赤字は当然と述べられましたが、国鉄二法は、独立採算制をたてに国民の負担と犠牲によって赤字の解消を最優先にしたものであることは、本法案の提案説明でも明らかであります。また田中総理は、去る三月八日の本院本会議において、わが党の兒玉議員の質問に対し、応益者に応分の負担をお願いしておるのであります、と答弁しているのでありますが、その応分の中身すなわち基準は、ついに今日まで明らかにされていないのであります。公益事業を独立採算制でまかなうことの矛盾、公共性と企業性の合理的基準を明確にしないまま、今回もまた場当たりの応急措置で間に合わせようとしているのであります。先進諸国の多くが国民の納得する制度的、財政的基準を確立し、国鉄経営を改善しているよき例があるにもかかわらず、今日なお抜本的対策に手をつけようとしないばかりか、国鉄財政悪化を助長している政府自民党の態度は、大資本の利益を拡大するために、運賃値上げや人減らし合理化に好都合な慢性赤字の国鉄に仕組んできたものだと疑わざるを得ないのであります。  当面政府のとるべきことは、直ちに国鉄二法案を撤回し、第一に政府の責任でつくった四十七年度末長期債務の全額を国が肩がわりすること、第二に、不平等でばらばらな道路、港湾、空港国鉄、それぞれの輸送計画の総合調整をはかること、第三に真の総合交通体系を確立して国鉄の任務分担を明確にすること、第四に、長期にわたってわが党が主張してきた運営費のみを料金収入でまかなうなど、独立採算制の経営責任の限界を明確にし、国鉄経営を安定させること、第五は、国民の国鉄とするために、民主的な国鉄経営会議の設置と経営の公開、監査制度の民主化をはかることであります。  以上、国有鉄道法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する国鉄二法案に反対するとともにその撤回を求め、占領時代の遺物、不平等な米軍輸送協定を廃棄し、公共優先、国民の国鉄とする抜本的制度の改善をはかって出直すべきであることを強く主張し、私の反対討論を終わります。(拍手)
  400. 井原岸高

  401. 紺野与次郎

    ○紺野委員 私は日本共産党・革新共同を代表して、まず討論にあたって議事進行について細田委員長代理の行なった態度について抗議をしたいと思います。  わが党はかねてから資料提出を要求し、また当局の答弁の不誠意から質問を留保せざるを得なかった分について、補充質問を要求しておりました。ところが理事会においては、わが党の梅田理事反対によって満場の合意のないまま議事進行が行なわれる状況から、審議打ち切りにならないように、あらかじめ文書で議事進行の発言通告をしていたのであります。  しかるに、この最優先しなければならない議事進行の発言通告さえ無視して、細田委員長代理が一方的に質疑打ち切りを宣言したことは、重大な強行採決にひとしい暴挙であり、わが党は厳重に抗議するものである。  このように、審議を尽くさないで強行によって国鉄値上げ法案を押し通そうとするのは、もはや自民党政府がまともに国会で答えられないほど国民から孤立していることをこれは証明している。  さて、国鉄運賃法及び国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案に断固反対する立場から討論を行なうものであります。   〔発言する者多し〕
  402. 井原岸高

    井原委員長 御静粛に願います。
  403. 紺野与次郎

    ○紺野委員 まず第一に、本改正案のねらいは、七十年代から八〇年代を目ざす大資本の高度成長のための日本列島改造計画を、しゃにむに国民の犠牲の上に強行するためのものであるということであります。  すなわち、本法案は、昭和六十年までに工業生産を四倍以上に拡大するための先行投資として大規模な国鉄輸送網をつくり上げ、大企業奉仕の国鉄の大改造を徹底して推し進めるための再建計画であり、このための設備投資資金をつくるために、十年間に四回、八兆円にのぼる大幅な運賃値上げを強行しようという、きわめて反国民的で反動的な法案であります。   〔発言する者多し〕
  404. 井原岸高

    井原委員長 静粛に願います。
  405. 紺野与次郎

    ○紺野委員 特に重大なことは、国鉄は四十六年度決算で旅客は三百七十一億円の黒字、貨物は二千百五十三億円の赤字であり、しかも貨物の大半は大企業の製品、原料、燃料であるという事実であります。この数字と事実を見れば、だれでもわかるように、赤字の大きな原因が、まさに大企業、米軍に対してあらゆる特権的便宜を提供してきた政府と国鉄の経営姿勢にあることは明白であります。  以上のような差別政策を改めることなく、国民に大幅な運賃値上げという犠牲を押しつける政府の政策は、絶対に認めることはできません。  また、今後国鉄の業務量が二、三倍になるといわれているにもかかわらず、政府は徹底した人減らしで国鉄労働者を十一万人も削減して、新たな労働強化と収奪を推し進めようとしております。   〔発言する者多し〕
  406. 井原岸高

    井原委員長 静かにしてください。
  407. 紺野与次郎

    ○紺野委員 これは国鉄にとって最も大切な使命である安全性を無視する結果をもたらすものであります。  さらに許しがたいことは、政府が先頭を切って物価をつり上げようとしていることであります。最近の異常な物価高で国民生活がますます深刻になっております。国民生活は全く深刻な状態である。ところが政府は、物価を安定させるどころか、逆に重要な公共料金である国鉄運賃値上げを強行して、インフレと物価高を一そう促進させようとしております。国鉄運賃値上げが他の公共料金をはじめ諸物価の値上がりに一そう拍車をかけることは、火を見るよりも明らかであって……   〔発言する者多し〕
  408. 井原岸高

    井原委員長 静粛に願います。
  409. 紺野与次郎

    ○紺野委員 国民は二重、三重の重荷を負わされるという結果になるのであります。  このよう国鉄再建計画を、日本共産党・革新共同は断じて認めることはできません。  第二に、私は、本委員会の審議を通じて明らかになったおもな問題に触れ、政府、国鉄当局に強く抗議をしたいと思います。  それは、国鉄が言う赤字なるものが、四十六年度で累計約八千億円の赤字の実に七割が過大な減価償却によって意識的につくり出された水増しの赤字であるということであります。また、初め十億円といわれた旅客の黒字は、われわれの追及によって三百七十一億にものぼることが明らかになったこと、さらに、わずかの通勤対策費の中にさえ新幹線のホーム延長とか貨物線建設費がごまかして入れられているなど、設備投資の中身が大企業本位、国民無視であるということが一そう明らかになったということであります。依然として大企業や米軍の貨物輸送に各種の特権的な割引を続けていることも、国民の前に明らかにされました。  このよう国鉄運賃値上げを合理化しようとしている政府の意図は、本委員会の審議を通じてすべて粉砕されたのであります。  第三に、政府、国鉄当局の言う十年後の財政再建とは全くの偽りであるということであります。  今度の計画によると、四十六年決算で国鉄の長期債務は三兆八百七十一億円であり、五十七年度にそれが十兆九千八百十九億と三倍以上にもふくれ上がるのであります。これが財政再建などと言えないことは明白ではありませんか。  私は、運賃値上げを押えて、同時に国鉄の財政を根本的に改善するためには、いまの国鉄財政のあり方に根本的にメスを入れる必要があると考えるものであります。  第一に、設備投資にあたって、すべての資金を利用者に負担させる方式を根本的に改め、国有の公共交通機関にふさわしい負担原則を確立することであります。   〔発言する者多し〕
  410. 井原岸高

    井原委員長 静粛にしてください。
  411. 紺野与次郎

    ○紺野委員 すなわち、線路、駅、鉄橋、トンネルなど、国鉄の基本建設は、利子のつかない国の資金で建設する、また、公共負担すべきものに政府補償を実行する、また、大企業の流通経費節減のための物資別基地の建設国鉄用地を無償で提供したり線路建設まで行なうなど、大企業に大サービスをしているが、このような大企業奉仕をやめて、企業に当然の負担をさせるべきであります。  第二は、償却制度など経理方法を適正に改めることであります。公共企業体である国鉄が、民間の営利会社と同じ償却方法をとるのは全く必要がないことであって、車両、レール、架線、信号設備などの減価償却は、実際の耐用年数に基づいて適正に改める必要があります。  第三に、毎日平均一億円以上の黒字である旅客運賃の値上げに国民は納得がいかないということであります。いわゆる貨物の赤字なるものが国鉄経営収支悪化の大きな原因であり、しかもその貨物の大部分は、大企業の原料、燃料、製品で、原価を割って輸送されています。   〔発言する者多し〕
  412. 井原岸高

    井原委員長 静粛にしてください。
  413. 紺野与次郎

    ○紺野委員 このよう旅客貨物の運賃が政策的に差別され、大企業には安く、旅客には高い運賃体系を抜本的に改めること……。   〔発言する者多し〕
  414. 井原岸高

    井原委員長 静粛にしてください。
  415. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そのために米、生鮮食料品や小口の貨物などの運賃の値上げをしないで、営業割引など、大企業の貨物運賃割引を一切廃止することであります。また、物資別専用列車……。   〔発言する者多し〕
  416. 井原岸高

    井原委員長 静かにしてください。
  417. 紺野与次郎

    ○紺野委員 地域間急行列車で輸送される大企業の貨物に対して、料金制度を設けるべきです。国内法に違反した米軍貨物輸送に対して一切の便宜供与をやめ、国民本位の運賃体系を確立しなければなりません。  第四に、設備投資規模を適正にすること、投資の優先順位を科学的、民主的に決定することであります。そのために、現在の政府、国鉄当局の列島改造論に基づく大企業本位の新幹線網と貨物輸送力強化を最重点とした投資のやり方を改め、住民本位の国鉄路線網にすべきであります。   〔発言する者多し〕
  418. 井原岸高

    井原委員長 静かにしてください。
  419. 紺野与次郎

    ○紺野委員 第五に、国鉄の長期債務をふやすやり方ではなくて、国の支出によってこれを計画的に減らす措置をとることです。  以上のことを実行すれば国民のための国鉄をつくることができるし、運賃値上げもしないで済むのであります。私はこのことを強調し、政府が本法案を直ちに撤回することを要求して、日本共産党・革新共同を代表しての反対討論を終わるものであります。(拍手)
  420. 井原岸高

    井原委員長 松本忠助君。   〔発言する者多し〕
  421. 井原岸高

    井原委員長 静かにしてください。——静粛に願います。
  422. 松本忠助

    松本(忠)委員 私は公明党を代表して、国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案及び修正案に対し、反対の討論を行なうものであります。  国鉄は、昭和三十二年以来五カ年計画をもって戦後の荒廃した鉄道施設の復旧を行なうべく計画いたしましたが、資金不足のため、その計画はいずれも完遂を見ず、次々と新計画に移行し、昭和四十四年度において現行再建計画の策定を見ましたが、これまた四年を出ずして破局の道をたどることとなり、今回の再建案の提出となったものであります。  これらは国鉄が、高度成長を続けるわが国経済社会に順応する新しい鉄道建設のため、たゆまない努力を払ったとはいうものの、その結果は惨たんたるもので、ついに国鉄をして国民の足としての基盤を築くことは全くできず、加えて昭和三十九年にその徴候を見せ始めた財政危機は、以来ますますどろ沼的様相を呈し、今日もはやいかんともなしがたい最悪の事態に立ち至っていることば周知のとおりであります。  一体、総額で三兆七千六百七十六億円に及ぶ長期債務、一兆一千六百四十億円にのぼる累積赤字、このようなマンネリ化した財政悪化の原因がどこにあったか、それはモータリゼーションの発達をはじめとした各交通機関輸送構造の変化に対処でき得なかった国鉄の放漫経営と政府の交通政策に欠陥があったことは言うまでもありません。特に、貨物輸送の王座を誇っていた鉄道輸送は年々トラック輸送に蚕食せられ、四十六年度には国鉄輸送が一八%、トラック輸送が四〇%とわずか十年の間にその関係は完全に逆転し、これが国鉄赤字経営のガンになったのであります。  このように、貨物輸送一つをとってみても、国鉄と自動車または船舶など他の輸送機関との競争問題が今日まで全く無計画に放置されてきたことによって、国鉄の一方的敗退を招いているのであって、その根本原因は国鉄がこの情勢の変化にうとく、さらに放漫経営に徹し、加えて政府が強力な総合交通体系を確立し推進していこうという姿勢が全く欠除していたことによるものであります。  したがって、われわれが再々指摘したごとく、総合交通政策の確立をはかり、その中に占める国鉄の地位について明確な計画図を確立することが最も肝要なことであったにもかかわらず、政府は今日においてもそれを十分になさず、単に運賃値上げを主とした国鉄再建策で押し切ろうとするのは国民生活を圧迫するものであり、同時に政府の無策を示す以外の何ものでもありません。以上、私がこの法案に反対する第一の理由であります。  反対の第二の理由は、今回の国鉄運賃の値上げが国民生活に悪影響を与えるからであります。しかも、かつてその例を見ない旅客運賃二三・二%の値上げは、物価上昇の引き金となり、国民が最もおそれているインフレにますます拍車をかけることになり、家計へのしわ寄せを一そう大きくすることは間違いがありません。  特に、国鉄運賃値上げによって格差が一そう大きくなる私鉄運賃については、すでに大手十四社より運賃改定の申請が提出され、検討の段階に入っていることから見ても、必然的に国鉄運賃値上げが呼び水となって便乗値上げされることは明らかであります。  さらに、貨物運賃二四・一%にのぼる大幅値上げは、当然生産者の経費負担増加をもたらし、両運賃が消費者物価を〇・四三%も上昇させることになり、これによって四十八年度の物価上昇率五・五%の政府見通しは完全に破壊され、消費者物価上昇率は年間一〇%前後というおそるべきことにならざるを得ません。  特に、米麦、生鮮野菜、大衆鮮魚、新聞、雑誌、手荷物など、一般国民生活に関係の深い生活必需品は平均三〇%に及ぶ大幅な値上げとなるこの値上げ案を認めることは断じてできません。  政府は、物価対策の立場からも国民生活を圧迫する値上げ案を即時撤回し、物価抑制の戦いに積極的姿勢を示すべきであります。しかして政府が今回の国鉄財政再建促進特別措置法を野党の反対を押し切って強行するならば、国民は今後十年間に四回に及ぶ大幅値上げをしいられ、この十年間は絶えずインフレ要因をかかえることにより国民は全く生活の安定を得ることができませんので、公明党は強く反対するものであります。  すなわち、四十八年度から五十四年度まで三年おきに三回、それぞれ実収一五%、最終五十七年度実収一〇%の値上げを行なおうとすることは、現在の運賃を一〇〇として見た場合、五十七年度には何と二二二という高負担となり、国民生活に与える影響は想像に絶するものがあります。  したがって、国民生活の安定、物価抑制の立場から今回の再建案を絶対に認めることはできません。以上、私が反対を主張する第二点目であります。  反対する理由の第三は、ただいま審議中のこの法案は、昨年の第六十八回通常国会において国民世論多数の強力な反対によって廃案となった再建案を再び国民に押しつけてきたものであって、国鉄の財政危険の回避という名のもとに責任を国民に転嫁する以外の何ものでもなく、断じて許さるべきものではありません。  政府の答弁によれば、国鉄財政再建は政府の助成、利用者負担、そして国鉄の企業努力をあげ、これによって国鉄再建をはかっていきたいと見解を示しているのであります。しかしながら政府の助成ははたして十分であったでありましょうか。今日、国鉄財政の危機を招いたのは、政府が将来への見通しを誤って独立採算制に固執し、国鉄に対して大幅な財政援助を積極的に行なわず、その結果膨大な借り入れ金を発生し、その支払い利子の増大が赤字経営の要因となったのであります。  また、経済学上不確定な総合原価主義の名のもとに、政治的運賃を策定し、政府助成の二倍をこえる八兆円にのぼる値上げを行ない、一般利用者に負担を強要することは、国民生活無視の政策と言っても過言ではなく、断じて許すことはできません。  第四の反対理由は、この再建案は見通しが甘く、二、三年を出ずして破局を迎えることは明白ですが、かりに十年間完全実施された場合、国鉄試算によれば、最終年度である五十七年度には二兆六千億円以上にのぼる赤字を計上することになっており、その後は逐次黒字になるとの説明でしたが、このことはまっかなうそで、財政再建十カ年計画はただ単なる数字合わせのペーパープランであると断ぜざるを得ません。  すなわち、過去三カ年の事業費は計画に対し実績が常に超過しており、四十五年度は三百三十五億円、四十六年度は五百二十七億円、四十七年度は一千百五十億円と、毎年支出増となっております。このことは、事業費の算定基礎に大きな誤りをおかしていることであり、四十八年度以降も全く同一過程を踏むものと考えられます。すなわち、長期試算において初期には人件費は一二・三%、物件費は三%とそれぞれ上昇率を見込んでおりますが、これではとうてい今後の経済発展及び賃金体系、労働条件の改善等からいっても計画よりはるかに実績が増加し、赤字の増加は必至であります。  さらに、十一万人の要員削減にしても、五十三年度までに完了することにいたしておりますが、過去四カ年間に三万三千二百人の削減を行なった実績をもって希望的観測を行なっているにすぎず、加えて週休二日制や高卒者の新規採用不能等々の問題をかかえ、その影響が人件費の負担増となってはね返ってくることは間違いのない事実であります。また、最終時点で約十一兆円余にのぼる長期債務が残ることは、再建の名に値しないものであって、ずさんな再建計画といわざるを得ません。ここに示された政府案は、最大の財政危機にある国鉄を救済する抜本的再建案にはほど遠いものであり、負担過重による国民生活圧迫法案と断ぜざるを得ないのであります。  以上、この法案に反対する第四の理由であります。  最後に、国鉄一家といわれるほど強い連帯感をもって、現在まで百年もの間、鉄道輸送に従事してきた伝統は、磯崎体制になって以来、国鉄監査報告書においてもしばしば指摘されたごとく、いまや労使の関係は極度に悪化し、抜き差しならぬところまできた感が深く、このことは国民のひとしく憂うるところであります。  わが党が従来から主張してきたごとく、国鉄再建の根本をなすものは、国鉄独自の企業努力の推進以外にありません。その中心は、何といっても国鉄の労使関係、すなわち人の問題であり、いつまでも親方日の丸ではなく、ほんとうに再建意欲に満ちあふれた国鉄マンとして全員が一体となって企業体質の改善をはかるときでありましょう。  すなわち今回、当委員会の審議でわれわれが指摘したごとく、国鉄の未利用地、不用地の有効利用、国鉄の経理の明確化、その他関連事業の拡大及びその適正なる運営、サービスの改善等々の諸問題を解決せずして抜本的再建への打開策はあり得ません。  これら一連の企業努力こそ、国鉄自身がみずからの決断と労使一体の協力を背景に、力強く政府に要求すべきであります。今後、国民のための国鉄となるためにも、国鉄当局は最善最大の企業努力が必要であり、この企業体質改善の努力がなされない限り、再建の見込みは皆無であることは明白な事実であります。  最後に、政府は国民の犠牲の上に成り立つこの国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案をすみやかに撤回し、国民生活の安定と国鉄再建の抜本策を検討すべきであることを強く要求して、私の反対討論を終了いたします。(拍手)
  423. 井原岸高

    井原委員長 河村勝君。
  424. 河村勝

    ○河村委員 私は……(発言する者あり)よけいなことを言うな。   〔発言する者多し〕
  425. 井原岸高

    井原委員長 静粛にしてください。
  426. 河村勝

    ○河村委員 私は民社党を代表いたしまして、国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案並びに同修正案に対し、反対の理由を申し述べます。  反対の理由の第一は、今回の国鉄運賃値上げが高進しつつあるインフレのさなかに行なわれるということであります。昨年来の物価の上昇はとどまるところを知らず、すでに卸売り物価の上昇は昨年対比一一%をこえ、消費者物価の上昇もまた九%をこえています。  今日、政府のなすべき最大、最優先の責務はインフレの克服にあるはずです。田中総理は、就任と同時に、何ら有効な土地対策を持たないままに日本列島改造論を提唱しました。それが過剰流動性をバックにする土地投機に火をつけ、次いで株式へ、商品へと新たな投機を誘発し、急激にインフレマインドを醸成したことは明らかな事実であります。政府はインフレを収束するかわりに、インフレを加速して今日の事態に至らしめたのであります。もし田中内閣に真にインフレを克服しようという決意があるのならば、何ゆえにこのような時期に国鉄運賃の値上げをあえてしようとするのか。  国鉄財政は完全に崩壊し、再建のための緊急措置を必要としています。また、国鉄運賃値上げの物価上昇に及ぼす直接の影響は必ずしも大きくないかもしれない。しかしながら、国鉄運賃値上げの心理的波及効果として、インフレマインドを助長し、多くの便乗値上げを誘発する危険性はきわめて大きいのであります。  いま政府のとるべき方策は、少なくともインフレが鎮静するまでの間、運賃値上げを見合わせ、それによって生ずる国鉄の財政赤字は国庫において補てんすべきであります。  反対の第二の理由は、今回策定された国鉄財政再建十年計画によっては、国鉄の再建は不可能だということであります。  国鉄の長期収支試算によれば、十年後にはともかく原価償却後黒字を計上していますが、それには十年間に四回、値上げ率でいえば、二百数十%に及ぶ運賃改定と、とうてい予想できない高い貨物輸送量の伸びを前提としています。それでもなお十一兆円の債務と、二兆六千億の累積赤字が残ります。この数字が明瞭にこの計画の結末を証明しています。  この再建対策の欠陥の第一は債務の利子補給のやり方であります。孫利子補給という変則的なやり方であるから、再建債という形で債務がふえていくばかりでなく、償還期限の到来する債務は、また利子補給を伴わない新たな債務と化し、債務は累増していくばかりだということであります。  欠陥の第二は、国の財政援助が工事費補助に限定され、借り入れ金利子を三分程度に押えるということにとどまっているから、国鉄経営の本質的な改善に役立たないということであります。  対策としては次の二つのいずれかしかない。その一は、総合交通政策の見地からいって国鉄の守備範囲外に属する赤字線区について、可能なものは道路輸送に転換し、ナショナルミニマムとして存置するものについては、国または地方公共団体において赤字を補てんすることであります。  それでなければ、工事のための借り入れ金利子を全額国が負担するか、工事費そのものを国の出資とする以外にはない。  要するに、今回の再建案は、国鉄経営破綻の本質的な分析を怠り、抜本的な対策を欠くがゆえに、結局中途はんぱなものに終わっているというほかはないのであります。  以上、主たる反対理由を述べて、私の反対討論を終わります。(拍手)
  427. 井原岸高

    井原委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  まず、江藤隆美君外四名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  428. 井原岸高

    井原委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  429. 井原岸高

    井原委員長 起立多数。よって、国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案は、江藤隆美君外四名提出の修正案のとおり修正すべきものと決しました。(拍手)  おはかりいたします。  ただいま修正議決いたしました本案の委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  430. 井原岸高

    井原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  431. 井原岸高

    井原委員長 この際、新谷運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。新谷運輸大臣
  432. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 ただいまは国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案について、慎重御審議の結果、御採決をいただき、まことにありがとうございました。
  433. 井原岸高

    井原委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後十時九分散会