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1973-06-01 第71回国会 衆議院 運輸委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月一日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 井原 岸高君    理事 江藤 隆美君 理事 加藤 六月君    理事 佐藤 孝行君 理事 佐藤 守良君    理事 細田 吉藏君 理事 兒玉 末男君    理事 梅田  勝君       愛野興一郎君    上田 茂行君      小此木彦三郎君    大竹 太郎君       唐沢俊二郎君    瓦   力君       國場 幸昌君    關谷 勝利君       戸井田三郎君    徳安 實藏君       羽田  孜君    宮崎 茂一君       山村新治郎君    綿貫 民輔君       井岡 大治君    金瀬 俊雄君       久保 三郎君    神門至馬夫君       紺野与次郎君    三浦  久君       石田幸四郎君    松本 忠助君       河村  勝君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君  出席政府委員         人事院事務総局         職員局長    中村  博君         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         運輸大臣官房長 薗村 泰彦君         運輸大臣官房審         議官      原田昇左右君         運輸省港湾局長 岡部  保君         運輸省鉄道監督         局長      秋富 公正君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 住田 正二君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部防犯少年課         長       奥秋 為公君         経済企画庁長官         官房参事官   喜多村治雄君         外務省アメリカ         局外務参事官  角谷  清君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 三浦 大助君         労働省労働基準         局安全衛生部安         全課長     中西 正雄君         日本国有鉄道総         裁       磯崎  叡君         日本国有鉄道常         務理事     内田 隆滋君         日本国有鉄道常         務理事     小林 正知君         日本国有鉄道常         務理事     原岡 幸吉君         日本国有鉄道常         務理事     加賀谷徳治君         日本国有鉄道常         務理事     速水 信一君         日本国有鉄道施         設局長     篠原 良男君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 委員の異動 五月三十一日  辞任         補欠選任   井岡 大治君     石橋 政嗣君 同日  辞任         補欠選任   石橋 政嗣君     井岡 大治君 六月一日  辞任         補欠選任   阿部 喜元君     羽田  孜君   大竹 太郎君     瓦   力君   關谷 勝利君     愛野興一郎君   西村 英一君     戸井田三郎君 同日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     關谷 勝利君   瓦   力君     大竹 太郎君   戸井田三郎君     西村 英一君   羽田  孜君     上田 茂行君 同日  辞任         補欠選任   上田 茂行君     阿部 喜元君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進  特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出  第一七号)      ————◇—————
  2. 井原岸高

    井原委員長 これより会議を開きます。  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  本法律案について参考人出席を求め、意見聴取をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井原岸高

    井原委員長 御異議なきものと認めます。よって、さよう決しました。  参考人出頭日時及び人選等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 井原岸高

    井原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの意見聴取連合審査会において行ないたいと存じますので、御了承ください。     —————————————
  5. 井原岸高

    井原委員長 この際、日本国有鉄道総裁から発言を求められておりますので、これを許します。磯崎日本国有鉄道総裁
  6. 磯崎叡

    磯崎説明員 前回、五月十一日の運輸委員会におきまして、斉藤先生から、今後建設予定新幹線収支見通しにつきまして御質問がございましたが、それに対する私の答弁に不正確な点がございましたので、おわびを申し上げるとともに、この際正確な御答弁を申し上げさせていただきたいと思います。  今後建設いたします新幹線収支見通しでございますが、まず第一に東北新幹線東京盛岡間、上越新幹線及び成田新幹線のいわゆる工事線グループ、これは五十二年度の開業当初から償却前では黒になりますが、償却後で黒になるのは開業二年後の五十四年ごろと見込まれます。  第二に、北海道新幹線盛岡から先の東北新幹線北陸新幹線及び九州新幹線のいわゆる調査線グループは、償却前黒になるのが昭和六十年度以降、償却後黒になりますのは昭和六十九年度以降と見込まれます。  最後に、これら工事線及び調査線グループ全体の収支は、昭和五十二年度の開業当初からは償却前黒、昭和六十一年度以降は償却後で黒になるものと見込まれます。  以上でございます。つつしんで御訂正申し上げます。     —————————————
  7. 井原岸高

    井原委員長 これより質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。松本忠助君。
  8. 松本忠助

    松本(忠)委員 われわれ野党四党は、五月の十一日の政府自民党の多年にわたる野望、小選挙区制法案、この国会提出を断念するまで私たちは断固戦おうということで立ち上がりました。この間自民党は会期の大幅延長単独採決をいたしました。その後、中村議長議長としてあるまじき発言をいたしまして野党を侮辱いたしました。   〔発言する者あり〕
  9. 井原岸高

    井原委員長 御静粛に願います。
  10. 松本忠助

    松本(忠)委員 これが原因となりまして議長を辞職いたしたわけでございます。そして前尾議長の就任を見たわけでございますが、議会は完全に正常化されたわけではない、このように私たちは認識をいたしておりますが、きょうは一応審議に入ることになりました。この間約三週間国会空白状態におとしいれた責任は、あげて政府自民党にその責めは帰すべきでございます。議会制民主主義の上からも大きな汚点を残したものと私は思うものでございます。  さて、この法案審議も余すところ公明党一名、社会党三名、共産党一名、こうなったわけでございます。五月十一日以前のあのルールに従いまして慎重審議を重ね、決して無暴な行動に出ることをお互いに戒め、十分審議を行なうことをあらためて要請するものでございます。  なお、審議過程におきまして、当方の要求に合致した答弁、誠意ある答弁と認められない場合には、再三再四くどくどしく答弁要求をいたします。また答弁のいかんによりましては資料要求もいたします。あらかじめ答弁者側は御了承願いたいと思います。これらの点についても委員長に十分御了承のほどお願いいたしたいと思うものでございます。  さて、ここで法案審議に入るに先立ちまして運輸大臣お尋ねをいたしたいことがございます。大臣は去る五月二十四日、私が見たのは朝日新聞でございますが、この朝日新聞に掲載されました第二東海道新幹線の問題でございますが、この第二東海道新幹線につきまして大臣みずから発表なさいましたものかどうか伺いたいわけでございます。こうした記事が掲載され、運輸省がこれに対して何の意思の表示もしなかったということを見ましたときに、この計画を認めたものと私どもは受け取るわけでございます。こういう重大問題が再建計画審議中に突如として出てくる、こういうことは大臣として再建計画責任を持たないということをみずから表明なさったものではないかと思うものでありまして、この記事によれば大臣は第二東海道新幹線建設意欲を燃やしているというふうな報道でございます。事実大臣がこの第二東海道新幹線に対して意欲をお示しになっていらっしゃるのかどうか、この点についてまずお確かめをいたしたいものであります。
  11. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 この問題につきましては、新聞に出まして、私もその新聞を読んだのでありますが、事実は私の全然関知しないところでございます。当時、ある記者の方が参りまして、この新幹線進行状況、それから今後の計画等についてお話があったことは事実でございますけれども、私のほうといたしましては、これはもうすでに御承知のように、ただいま調査五線について鋭意調査を進めておりまして、その結果がおそらくことしの秋ぐらいには出てくると思います。出てきました場合には、それをもとにいたしまして、どういうルートでどういうふうにこの調査五線を具体的に決定するかということが目前の問題でございます。その次の問題は、鉄道建設審議会でも要望がありましたように、昭和六十年をめどにいたしまして、それから先の新幹線、これはこの十年の長期計画の中にも載っておるわけですが、七千キロに達しますまでの新幹線をどこにどういうルートでつくるかということを、早く調査にかかったほうがいいというような要望が出ておりますことは御承知のとおりでありまして、今後、そういう当面の作業が済みますと、そういった問題に取り組む必要があるということを話したのでございます。それ以外のことは私からは話しておりません。新聞に私の写真が載っておりましたから、私が談話をしたように誤解をされる向きがあるかもしれませんが、内容を私も見ましたが、私の談話として発表したものではありません。そういう記事でもないと私は考えております。
  12. 松本忠助

    松本(忠)委員 大臣は全面的に事実無根だとおっしゃるわけですね。それならば私はあえて、こういうふうな再建論議がいまやられている段階においては大きな疑惑を持たれるようなことなんですから、やはり堂々と、こういう記事が出たけれども、これは私の本意ではないから取り消すべきであるというふうになさるのが一番よかったのじゃなかろうかと思うわけでございます。そういう線を全然お考えにならないでこの記事をそのまま捨ておかれたということは、私は大臣にその下心があり、この再建期間中にあわよくば第二東海道新幹線もやろうというようなお考えがあるのではなかろうかと思うわけでございまして、事実無根であるならば、当然その時点において正々堂々と取り消しを迫るべきではなかったか、こう思いますので、この点はひとつ大臣にあらためて伺っておきたい。
  13. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 私の意見であり、私の談話として出ました場合には事実無根でございますから、当然私はそういう措置をとらなければならぬと思います。ただそういう計画があるというような推測記事でございますから、今後そういう計画がどういうふうに進みますか、私はまだ、運輸省といたしましても、政府といたしましてもきめておりません。でありますから、そういった推測記事が出ましても、それを一々私のほうで、それは絶対にそうじゃないんだということを申しましても、今後の計画に関する問題でございますから、いまのところそれはいずれとも決定しがたい問題でございまして、今後の研究に待つ問題でございますから、一々そういった問題につきまして取り消し措置要求することは穏当ではないと考えておった次第でございます。
  14. 松本忠助

    松本(忠)委員 国民はやはり、大臣のはっきりしたお答えがない限り、みんな第二東海道新幹線ができるのか、また山間部を通ってやるというような話だけれども、われわれ父祖伝来の土地をまた奪われるのか、こういうことで非常に危険視している考えが多いわけでございます。こういう時点でございますから、よくよく責任ある大臣として、かりそめにもそういう問題に対して誤解を招くようなことについては十分にお慎みになるべきではなかろうかと思うわけでございます。  国鉄総裁お尋ねします。昨年の五月の二日に開催されました鉄道建設審議会におきまして、西村委員が第二東海道新幹線について計画すべきではないかというようなことをただしたことがございましょうか、どうでしょうか。このとき総裁は御出席になっていてどうお答えになったか、この点をひとつ私、確認をいたしたい。
  15. 磯崎叡

    磯崎説明員 突然のお話で、あまり正確に覚えておらないかもしれませんけれども、いわゆる第二東海道線、その問題はむしろ私のほうとしては現在勉強中のリニアモーターの問題と関連するわけでございまして、あの節もし申し上げたといたしますれば、そのリニアモーター研究問題を含めて、いずれ現在の東海道線行き詰まり状態を見た上で検討すべき問題であるというふうに申したのではないかと思っております。ちょっと正確にあのときの発言を覚えておりませんが、大体そういう趣旨のことを申し上げたというふうに思っております。
  16. 松本忠助

    松本(忠)委員 鉄監局長、あなたはその席に、当時国鉄部長と思いますが、お出になっていたように思います。そのときのお話のぐあいを覚えていらっしゃいますか。
  17. 秋富公正

    秋富政府委員 私、ただいまちょっと記憶にございませんです。
  18. 松本忠助

    松本(忠)委員 それではやむを得ません。いま国鉄総裁からお話がありました、国鉄としては第二東海道はむしろリニアモーターカーをやろう、こういう構想考えていたことはわれわれも承知をいたしておりますし、また万博などにもその模型が出たこともございまして、これは国民皆さんがそういう点については一つの新しい様相で第二東海道が敷かれるというような期待をしていることも事実でございましょう。しかしこういう問題に対して今回の——大臣発言でないとおっしゃいますけれども、大臣の意向といいますか、あの新聞に出たものは全くこれとは様相を異にしております。現在の車両を改良して新しいやり方でやりたいのだ、こういうふうにあの記事にはございます。東京大阪間を二時間十分ないし四十分で飛ばす。路線は現東海道新幹線より内陸部分山岳地帯を通って、名古屋以西は伊賀の山中を通って、東京大阪間を直行最短ルートで結びたいと、かなり具体的に書かれてある。こういうことはやはり大臣がお漏らしにならなければ、ほかにお漏らしになる者がないと私は思うわけです。こういう点で、重ねて大臣お話を承っておきたいわけです。
  19. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、そういう具体的なことは、私もまだ考えたことはありませんし、先ほど申し上げたように、これから研究をし調査をした上でしかるべき機関にかけて決定すべき問題であると思っております。
  20. 松本忠助

    松本(忠)委員 そういたしますと、朝日新聞に書かれた記事は全く推測である、このように言われるわけでございますか。
  21. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 そのとおりでございます。
  22. 松本忠助

    松本(忠)委員 私は、少なくとも新聞社とすれば責任をもって書かれた記事だと思います。ましてや、この記事を見まして非常に驚いている人もあります。そういう点考えまして、新幹線建設計画というものは、地域住民にとりましていま重大な関心になっておるわけです。こういう点から、私は特に都市部の通過について新幹線が非常な問題をはらんでおります関係上、慎重の上にも慎重に事を運んでいただかなければならない、このように思うものでございます。  そこで次に移りますけれども、少なくともこれは大臣今度は御存じないとは言えないだろうと思うわけでございますが、ちょっとさかのぼりまして五月十八日——五月十一日に国会空白状態になりまして、それから約一週間後でございます。朝日、読売、日経等に掲載されました第二山手線建設計画でございます。この記事は、大臣構想総理のお考え等がかなり克明に書かれております。御承知のように現在再建計画審議中でございますが、この再建計画とかかわりなく進め、四十九年度の予算に織り込みたいというふうに大臣が述べられております。このことは事実かどうかお答えを願いたい。
  23. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 ただいま御提案申し上げております国鉄運賃法及び再建法、この審議過程におきまして、各委員からいろいろこの大都市の通勤輸送について御意見があり、御指摘があったのでありまして、私もそれを拝聴しながら、私なりに研究もし、考えもしてきたのでございますが、その際に、とにかく一番緊急を要する問題としましては、首都圏通勤通学輸送、これをもう少し何か考えていかなければならぬということは、これはもう皆さんと一緒にそういう感じを持って、われわれも対処しなければならぬということを考えたのでございます。したがいまして、それをどういうふうに扱うかということにつきましては、皆さんのアドバイスも得ながら私も考えてまいりましたが、やはり何か方法を考えたほうがいいのじゃないかと思いまして、これはいま当面すぐに実行しようとか、あるいは具体的な計画を持ってこうしようというものではありませんが、そういった方向でこの首都圏通勤通学輸送というものについては、もう少し前向きに検討をしなければならぬという意味——第二山手線ということばを使ってございましたが、そういったことばを私は使ったことはございませんが、先般お尋ねがありまして、国鉄総裁からも具体的に御説明いたしました武蔵野線のごとき、これは首都圏をかりに半径五十キロ圏というふうに考えますと、いまの山手線循環線だけでは不足ではないかというような考えを持つのはあたりまえのことだと思いまして、そういう武蔵野線のようなものができた、しかしこれは貨物が主でございまして、通勤通学のほうにはあまり影響がないというような運営のしかたのようでございまして、こういったものについて首都圏旅客の混雑を緩和する意味で、もう少し何か考えようがないだろうかというようなことを考えるのは当然だろうと思います。  そういったことにつきまして、一方には南武線もあります。あるいは鉄建公団でやろうとしております貨物路線もあります。いろいろな路線がございますけれども、そういったものをもう少し総合的に考えたら一体どういうふうな構想が生まれるだろうかというようなことを考えておったのでございまして、これにつきまして私のほうの事務当局に対しまして、そういうふうな考えをもって、今後の問題としてひとつ検討をしてくれないかということを申したことは、事実でございます。これはどこまでも検討をしてくれという検討の問題でございまして、計画をきめたり——私がかってに一人で計画をきめられるはずはありませんし、それだけの資料を持っておりません。そういうわけでございますから、これに対する研究検討をしてくれということを言ったことは事実でございますが、それがいまの新聞記事になってあらわれたということでございまして、私は全然関係ないとは申しません。しかし、そういうふうなことを考えたらどうだろうということを申したことは、事実でございます。
  24. 松本忠助

    松本(忠)委員 大臣がこの計画をお考えになったのは、いまの御答弁を伺っておりますと、皆さん質問を通じてお考えになった。そうなりますと、この新しい、いわゆる第二山手線と言っておりますこの計画は、やはり再建計画一環として取り上げるというお考えなのか、それとも再建計画とは全然別のものなのか。こういう点を私は伺いたいわけです。もし再建計画の中の一環としてやるのだとしたならば、これは私はいままでやった論議が一切無になってしまうと思うのです。再建計画の中にはこういうものはいままで含まれていなかったように私は思います。何か大臣が急に思いつかれた。皆さん方質疑を通じまして何か急に思いつかれて第二山手線考えられた、そしてこれはやるべきではないかというように。  新聞によりますと、「新谷運輸相は、再建計画ワク外として進めることで田中首相了解をとりつけた」と書いてある。ここに「ワク外」とある。ところがほかの新聞によりますと、いろいろ書いてございますけれども、このきまりましたときの、大臣がお会いになってお話しになったときのことが、また克明に別の記事には書いてございます。実際問題として、大臣は四十九年度の予算に組み入れなさいという指示をしたというふうにも新聞に書いてございますが、この四十九年度予算に組み入れてやるということになれば、これは当然再建計画一環になってくるわけです。そういう御指示だ、こういうふうにいわれております。またそのことについて田中総理大臣了解を与えておるようなことを書かれた新聞もございます。いずれにしても、田中総理に私は直接伺ってみたいと思っておる一つの問題でございますが、この問題について、実際問題、この再建計画の中の一環としてやるのか、それとも再建計画とは切り離したものとしてやるのか。その点についていかがですか。
  25. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 いま十カ年間の再建計画を出しております。もちろんそういったことがかりに現実的な計画になり、また実行されますといたしますと、この十カ年間の再建計画の中で処理する問題であることは当然だと思います。私の了承しておるところによりますと、来年度の予算は、いまこの国会提案をいたしまして御了承を得ております。四十九年度以降の各年度の予算につきましては、これは今後毎年毎年提案をいたしまして、御審議を経ることになるわけでございまして、十カ年間における具体的な計画というものは、まだ皆さま方にお示しをする段取りになっていないと考えております。したがいまして、ある新聞に「ワク外」と書いてございましたので、その次の記者会見のときに私は明瞭に申しました。「ワク外」と言った覚えはありません、私は、もちろんこれは十カ年間の再建計画の中において処理をせられるべきものだと考えておりますということをそのあとで申し上げたのでございますが、もちろんこれはワク外である必要はありません。ワク内で処理すべき問題でございます。しかもいろいろな憶測が出まして、これは私の不注意であったかもしれませんが、新しくそういう路線をどこかにつくるのだというような印象を与えるような書き方もございますけれども、先ほども申し上げましたように、いまそういうふうに旅客の運送に利用できるような路線が相当ございます。十分その機能を発揮しておるかどうかは別といたしまして、そういった方向考えれば考えられるような路線が現にあります。そういったものについて、たとえば一番著しい例は武蔵野線のようなものでございますが、これは貨物が主でございまして、若干旅客サービスもいたしております。こういったものについて、実情の調査と同時に、それに必要な旅客サービスを充実していくということは考えなければならぬことでもありますし、可能なことでもあると思います。したがって、それについては、特別な用地費あるいは施設費というものはきわめて僅少で済むわけでございまして、十カ年計画の中で十分まかなえる問題でございます。そういったものをもう少し有機的に結合いたしまして、そうしていまの首都圏旅客輸送の緩和に役立てることはできないだろうか、こういう考え方をもちまして、私は事務当局検討を指示しておるのでございまして、調査ができ、計画ができました場合には、これを予算化するのにいつごろできるだろうか、どういうふうな段取りで、したらいいだろうかということは今後の問題でございまして、まだ計画も確定しておりませんし、私の考え方を事務当局が受けまして、いま検討しておる最中でございますから、いずれも今後の問題だというふうにお考えをいただきたいと思います。  それから総理の話が出ましたので申し上げますが、特別にこの問題について総理了承を得るとか、総理了解を得るとかという意味お話ししたわけではございませんで、いろいろ報告事項がたくさんございましたので、そのときに、報告に参りました際に、総理に、この首都圏通勤通学の輸送の問題については、もう少し角度を変えて、いろいろな方向から検討して、よい案であればそれを実行に移すような努力をしなければなりませんと言いましたところが、それは非常にけっこうだというお話をされたのでございまして、特別に総理指示により、総理了解によってスタートしたというものとは違うのでございまして、これは私がそういう話を持ち出しまして、話の間にそういった総理のおことばが出たということでございますから、それも誤解のないようにお願いしたいと思います。
  26. 松本忠助

    松本(忠)委員 大臣のそのお話は十兆五千億のワクの中とおっしゃる、そうですね。十兆五千億については計画が、もう一応大体大筋の筋はできていたと私は思うのです。その中には第二山手線というような問題は全然出てこなかったわけです。それがなぜこうしてワクの中でおやりになる、こうおっしゃるのですか。ワクの中だったらワクの中で当然いままでにその話はこの審議が始まるときに出てくるべきだと思う。それが出てこないというところに私はおかしいものがあると思うのです。それと同時に、これは四十八年五月十八日の読売新聞でございますが、先ほどもちょっと引用いたしましたが、「新谷運輸相は、再建計画ワク外として進めることで田中首相了解をとりつけた」こういうふうに五月十八日の読売新聞にはっきりワク外と書いてある。いまの大臣お答えワク内だ。一体どちらがほんとうなのか。読売新聞が間違っているのか、大臣の言っているのが間違っているのか、どっちかだと思うのです。この点どうでしょう。
  27. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 ただいまも申し上げましたように、これは特にワク外にする必要はありませんで、ワク内で消化すべき問題であります。いまも御説明申し上げましたように、そういうワク外というような記事が一部にあったものですから、私は記者会見の際に、ワク外と書いてありますが、そんなことを私は言ったことはありません、これはもちろんワク内で処理する問題ですよということを念を押してございます。私の考えといたしましては、もちろんこれはワク内で処理できる問題であり、ワク内で処理したいと思っておるのでございます。しかもいま申し上げましたように、これは新幹線のようにそういう路線東京首都圏の周囲に新しく設定しようということとは違いまして、いろいろな関係路線がたくさんございますから、それをさっき申し上げたように有機的に結合いたしまして、必要に応じて路線サービスを強化するというようなことは、もうこれはワク外であろうとワク内であろうとだれも考えなければならぬ問題である。しかもそういったものにつきましては、具体的な問題は別といたしまして、首都圏通勤通学輸送の方法についてもっと積極的に考えなければならぬじゃないかということは各委員からも御指摘をいただいているところでございますから、そういう方向に従いまして私もこの再建計画の中でできるだけそういったよい方法があれば、それを実行に移すための努力をしなければならぬということを考えた次第でございます。
  28. 松本忠助

    松本(忠)委員 一応大臣がそうおっしゃるのですからワク内ということであって、それに対してワク外というふうな記事を書いたのは新聞のほうが間違いである、大臣はそれに対して訂正を求めておいた、こうおっしゃるわけでございますから、私は一応それを受けておきます。しかし十兆五千億のワクの中でおやりになるとして、十兆五千億のほうの大体の構想というものは私は伺っているわけでありますが、その中にはこれは全然出てこなかった。しかしいまのお話によりますと、既設のものを結合してうまくやるのだ。あまり金がかからないようなお考えのように承るわけでございますけれども、実際問題としてそういうことができるかどうか。これはいま運輸当局に大臣検討を求めているということでございますから、それが出てこないことには何ともいえないと思います。しかしこの首都圏にこういう新しい幹線を引くということになれば、当然鉄道建設審議会にもこれははからなければならぬ問題じゃなかろうかと私は思います。そういうことを考えてみましたときに、新しいこの幹線をつくるということがいま非常に話題になり、しかもそれが論議を呼んでいる。しかもこの再建計画の中でそれがやられるとかやられないとかということで非常な論議を呼んでいるものでありますからあえてお尋ね申し上げたわけでございますが、今後やはりこういうものについて、いま再建計画検討を進めている段階において、私は大臣のおことばとしてはちょっと軽率ではなかったろうか、もう少し慎重に事を運ぶべきではなかったろうか、このように思います。それはそれといたしまして、それでは次の質問に入ります。  大臣にまずお尋ね申し上げたいことでございます。この国有鉄道運賃法並びに日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案の実質審議が開始されましてから約五十日たったわけでございます。この間に与野党の各委員からあらゆる問題について質疑がなされました。しかし、この質疑を私聞いておりまして、この両法案が全く無理のない法案、当然過ぎるほど当然の法案である、国民各階層がひとしくこの法案を支持しているというふうには受け取ることはできませんでした。四月二十五日に行なわれました地方公聴会、私は高松市に行ってまいりました。その方面で参加された方々の御意見も十分拝聴いたしましたけれども、賛成意見を述べられた方、しかしその賛成意見もずばり賛成と言われた方は全く見当たりませんで、条件つきであったり、基本的には賛成とか、何かすっきりしない言い方でございました。それから仙台のほうにおきましても、やはり同様ではなかったかと私は思います。さらにまた四月二十七日本院におきまして行なわれました中央公聴会におきましても同様の傾向でございました。この値上げ案に賛成するのにはよほど勇気が要るだろうと私は思うのです。  あの四月二十七日の公聴会に御婦人の公述人が出ておられました。御婦人の公述人の言われるのに、国鉄は安くて早いから上げてもいい、他の物価の値上がりに比べて国電は上がっていない、御婦人の御主人の通勤定期はつとめ先の会社が負担する、上がっても平気だ、子供二人の通学定期は負担が四千四百円程度だから家計には影響がない。こういうふうな人ばかりはおらぬのですよ。これは全く珍しい存在だと思って私は聞いていたわけです。国民の大多数は物価高に悩んでいるわけです。このことは大臣ももう御承知だと思うのです。去る五月一日の朝日新聞発表の全国世論調査を引くまでもございませんけれども、「この一年間の国民の暮し向きはどうだったか」という問いに対しまして、「楽になった」と答えた人はわずかに七%です。「変わらない」が三九、「苦しくなった」と答えた人が五一%ある。これは大臣もごらんになっておると思います。また田中内閣を支持するというのが昨年七月成立直後の六二%から一挙に二七%と三五%も低下をしております。反面、支持しないのは昨年七月には一〇%だったものが四四%と三四%も上昇しております。全く逆転をしております。この支持しない理由の中に、昨年七月にはなかった物価高、生活不安、これが二割近くございます。また田中内閣に対し国民がいま一番望んでいるものは何かという問いを見ても、物価対策が五〇%を占めております。  こういう点から考えまして、国民の期待にこたえて物価高に真剣に取り組むというのは政治家として当然の責務であろうと私は思います。この点については大臣といたしましても、国務大臣として当然物価対策について慎重な配慮がなければならないと私は思います。このようなときにあたりまして、この国鉄運賃の値上げというもの、言うならば公共料金の横綱格でございます。これを値上げすることは一切の物価に影響するということはいままでの各委員方の質問を通じても明瞭白々でございます。物価高に悩む国民に何とかして物価の安定をはかってやろうという気持ちが少しでもあるならば、私はこの国鉄運賃値上げの法案は撤回をして、そうして大臣としてもその要望にこたえられるのが当然ではなかろうか、こう思うわけでございます。それにもかかわらずこの値上げ案を強行するということは全く民意を大臣が踏みにじっておるものといわざるを得ません。  そこで大臣に伺いたい点は、この値上げ案を実施した場合、国民に対していい影響を与えるか悪い影響を与えるか、二つに一つでございます、お答えを願いたい。
  29. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 公共料金の取り扱いにつきましては、われわれももちろんこれを慎重に扱わなければならぬということはお話しのとおりでございまして、私もそれを守っていかなければならぬと思っております。しかしながら、何度もお答えを申し上げましたように、いかに公共料金といいましても、その公共料金だけを長い間据え置いてしまいますと、これはやはり全体の大きな物価体系の中の料金でございますから、非常にアンバランスが起こってまいりまして、かえって物価体系を乱して国民生活に悪い影響を与える場合もあるということを考えなければなりません。  国鉄の今度の運賃改定のわれわれの提案は、御承知のように、まず赤字を解消するということ、赤字を解消するために値上げするのだというふうに単純に考えられる方もあるかもしれませんが、一体その目標はどこにあるのだ、赤字を解消して一体どうするのだということを考えなければならぬと思います。国鉄昭和三十九年以来赤字になりまして、本来全国の交通ネットワークの中で一番中核的な存在である国鉄が、その機能を十分に発揮し得なくなってきた。設備も十分ではないし、サービスも十分ではない。でありますから、どんどん自動車に押されてしまって、旅客面におきましても貨物面におきましても毎年シェアが減少してきているということは、その機能を十分に発揮していないということを物語っておるのでございます。そういう機能を回復させることはなぜ必要か。かりに、国鉄がほんとうにその機能を麻痺してしまって機能を失ってしまった場合に、国民経済、国民生活がどうなるのだろうかということを考えてみますと、やはり全国のネットワークの中心である国鉄というものが、これはやはりどうしてもその機能を回復させて、総合交通体系の審議会等におきましてもいろいろ御議論がございましたように、国鉄が本来の他の交通機関では持てないような特色のある国鉄の輸送機関としての使命を果たせるような体制をつくってやらなければいかぬ。そうしないと、国民経済や国民生活に非常に悪い影響を及ぼすだろう、こういうことでございました。もちろん運賃の引き上げということは、調べてみますと、消費者物価指数からいきますと大体〇・四%、家計からいきますと〇・二%くらいの影響があるということが、これは関係の統計から出ておるのでございますが、それだけの影響がもちろんあると思います。あると思いますけれども、それだからといってこのままで放置いたしますと、さっき申し上げましたように、国民経済や国民生活に非常に大きな影響を及ぼしまして、これは取り返しのつかないようなことになる。それをこの際に改めまして、国鉄の機能を十分に発揮させるような体制を整備させたいというので、今度のこの提案をしているわけでございまして、その面におきましては、私はこれは必要なことであり、これがないと非常に大きな悪い影響が出てくるのじゃないかということを心配するのでございまして、その意味においては今度の案は必要やむを得ない、むしろいまの社会から見ますと、これは適当な案であるというふうに考えておる次第でございます。
  30. 松本忠助

    松本(忠)委員 大臣の御懇切な御答弁を拝聴いたしまして、私も二十数項目の質問がございますので、たいへん御丁寧な御答弁で感謝をいたしますけれども、簡略にひとつあとお願いいたしたいと思うわけでございます。  いま私二つに一つと申し上げましたが、要するに国民生活に対してプラスになるかマイナスになるか、いい影響を与えるか悪い影響を与えるかということなんです。大臣の見解と私は全く逆なのでございます。そういう点考えまして、大臣は、決してこれは悪い影響を与えるものではない、やむにやまれずやるものだ、こうおっしゃいますけれども、それは大臣としてのお考えでございまして、国民全体は決してそういうふうには考えておらない。この点は十分御認識をいただきたいと思うわけでございます。私どもといたしますと、値上げをやりましたためにいろいろ物価に影響する。そのために国民生活はさらにさらに一そう窮迫の度を加えるであろう、こういうふうに私ども思っております。したがいまして、私に言わせれば、国鉄の経営も大事であろう。大事であろうけれども、国民生活も大事なんだ、このところもひとつ考えてもらいたい、私はこう申し上げたいわけでございます。  そこで、田中内閣といたしましても、いままで経済成長第一、この線でやってきたわけでございます。しかしながら、最近の国民の声と申しますか、に押されまして、国民福祉という問題を優先的に考えましょうというような態勢に変わってきた。こういう点を考えてみれば、私は、やはり国民福祉優先という方針に置きかえた田中内閣としては、この問題は慎重に取り扱うべきではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。  再建案のほうでございますけれども、国鉄の再建につきましても、地方公聴会、中央の公聴会を通じましていろいろの公述人から述べられましたことを総合的に見ますと、抜本的な体質改善を行なう必要がある、あるいはまた福祉に逆行する数字を並べただけで再建計画というならば何もいうことはない、金をつぎ込んでも再建できない、再建のかぎは労使の協調だ、この労使の協調がすぐできるとは思わない等々の内容がございました。これらの点から考えまして、国鉄の再建ははたしてできるのか。再建しなければならない、そのことは私もわかります。認めます。しかし、はたして現在の状態で再建ができるのか、こういうことでございます。大臣に、再建がはたしてできる御確信があるかないか、この点についてお答えをいただきたいと思います。簡単でけっこうでございます。
  31. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 結論だけお答え申し上げます。  再建可能であると信じまして今度の提案をいたしておる次第でございます。
  32. 松本忠助

    松本(忠)委員 労使の問題については、私はあとで触れてみたいと思っておりますが、現在の労使の状態を考えてみました場合に、私は再建不可能だ、こう断じるわけであります。要するに、たくさんの公述人の方々が言われましたその中にあることばを申し上げました。再度繰り返して申し上げなければならないと思いますが、再建のかぎは労使の協調だということばが非常に強かったわけです。この労使の協調はいますぐにできるとは思えない、こういう御発言が公述人からもありました。私もこういう点については賛意を表するものでございます。現在の状態でほんとうに再建ができるか。一番のかぎは人間だと思うのです。その人間がいまの状態では再建不可能だと私は断じるわけでございます。国鉄総裁、いかがでしょうか、この点について。
  33. 磯崎叡

    磯崎説明員 確かに再建のかぎが人間の問題であることは私も事実だと思います。そういう問題につきましても全力をあげて財政的な面と並んで人間問題を今後全力をあげてやってまいらなければならないというふうに考えております。
  34. 松本忠助

    松本(忠)委員 大臣、いま国鉄総裁は人間の問題を認められました。大臣、人間の問題、この労使の協調という問題を抜きにして私は再建は考えられないと思います。大臣は二つに一つの答えを簡単に明瞭に再建できるとおっしゃいました。しかしほんとうに労使の問題の解決というのはたいへんな問題である。この根深い労使の不信を解決する問題として、いま大臣が打とうとしている手もわかっておりますけれども、まず国鉄総裁が言われましたように、労使の問題が一番大事な問題なんだ、この問題を解決しなければ国鉄の再建はおぼつかないといういまの国鉄総裁のお考え、これは私は是とするわけであります。大臣はどうでしょう、この問題。
  35. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 国鉄再建につきましては、労使の関係を正常化することは非常に重要な問題であるということにつきましては全く同感でございます。
  36. 松本忠助

    松本(忠)委員 私は今日国鉄財政が重大な危機にあることは認めます。再建しなければならないということもわかります。当然過ぎることと思うのです。しかし、ほんとうにこの国鉄財政が今日こうして悪化してしまったことについて、運輸当局としても国鉄当局としても十分検討したかどうか。ほんとうに検討し尽くしてこうなったのだろうか、こういう点について疑問に思うわけです。  それというのも、第一次の五カ年計画から現行の財政再建計画に至るまでに実に四回計画が練られ、実行に移されてきたことは御承知のとおりと思います。ところがいつもこれがしり切れトンボになって終わっておるわけです。第一次五カ年計画は三十一年から三十六年まででございますが、これも三十五年で打ち切りになりましたことは御承知のとおり、その打ち切りの理由は何であったかといいますと、昭和三十五年度の国鉄監査報告書にはこのように書かれております。  「国鉄の主要幹線は、従来、主として部分的な増強に力が注がれてきたため、その大部分はほとんど能力の限界に達し、恒常的輸送力不足の状態を呈している。このような状態を打開すべく昭和三十二年度から第一次五箇年計画が実施されたが、資金事情その他の情勢により、老朽資産の取替えなど緊急度の高い設備投資に限定され、また計画規模自体が過小であつたこと等のため、年々増大する輸送需要に対応する輸送力を増強することができなかった。ここにおいて、国鉄では、昭和三十六年度を初年度として設備、輸送、要員、収支、投資等の諸計画を総合した新五箇年計画を樹立し、年平均約二千億円に及ぶ投資額により、主要幹線の複線化を主眼として輸送力の増強と輸送方式の近代化をすすめ、経営の革新をはかることとした。」  これは要するにできなかった言いわけですよ。こういう言いわけがいわれまして、そうして二千億に及ぶところの新しい投資を行なっていくのだ、こうなったわけでございます。その後でございますね、第二次の五カ年計画、三十六年から四十年まで、それから第三次五カ年計画に移行した。これも言いわけが出ているわけです。  これも三十八年度の国鉄監査報告書に書かれております。これも要点を読んでみますと、やはり一番としては、「第二次五箇年計画の資金上からみた進ちよく率は、昭和三十九年度の実行計画を含めて六九%であり、東海道新幹線工事を除いた一般改良工事については五八%に過ぎない現状である。」「国鉄に対する輸送需要は、国民経済の急速な成長を反映して、逐年計画をはるかに上回る伸びを示しており、この輸送需要を充足し、国民経済の伸長に対応していくためには、現行第二次五箇年計画の輸送目標値はもはや改訂の時期に立ち至つている。」これがもう四年目、「国鉄は、戦後における投資不足のため、」ここではっきりと戦後における投資不足ということをみずから白状しているわけです。「現有の輸送施設を極限まで利用し、輸送の弾力性を極度に圧縮して、いわゆる「過密ダイヤ」と呼ばれる列車増発を余儀なくされたのであるが、このような状態は鶴見事故の発生にみるごとく、国鉄の基本的使命である安全の確保に対する重大な脅威となるものであつて、一日も早くこれを解消する必要に迫られている。」これは言いわけでございます。こうした言いわけがあって、いまも申し上げましたけれども、この中で注目すべき点は、やはりこの三十九年度の実行計画を含めた六九%、一般改良工事の五八%、こういう点をいい、さらにその投資不足という面、投資の不十分だったという点を認めているわけでございます。このことは三十九年十一月の「日本国有鉄道基本問題懇談会意見書」の中にも盛られていますし、この中にはこういうふうにいっている。「国鉄昭和三十二年度から老朽資産の取替えを主眼とする第一次五箇年計画、さらに昭和三十六年度から輸送力増強、近代化及び保安対策を主眼とする第二次五箇年計画によつて、輸送力の増強に努めてきたが、投資資金が過少であったことに加えて、」云々と書いてあります。こういうふうに、投資資金が過少というものがいままでも何べんかいわれたわけでございます。しかしながら、実際問題として増資が行なわれたというか、資本が投入されたということはこの間ずっとなかったわけでございます。全く借り入れ金によってやらなければならなかったという国鉄の問題、こういうふうな問題はやはり重大な問題だと私は思うのです。この当時なぜ具眼の士がいなかったのか、私はこう言いたいわけです。国鉄に多額の借金を背負わせて、そして何でもやれ、何でもやれとやらせてきたところに大きな問題があったと思う。  こういう点を考えまして、私これらの前のいわゆる言いわけのようなこのお話をるる申し上げましたけれども、やはりこういう点を改善すべく慎重な計画がなされなければならなかった。しかし、いずれもいままでのものが全部四年でしり切れトンボ、五年計画のものも四年、こういう点を考えまして、次々とこの計画が移行した。ところがこの計画が移行していくについて、できなかったという責任をだれかとろうとした人が一人もいないという点、こういう点は私は非常にふしぎに思うわけです。これはいわゆるお役所一流の責任回避といいますか、自分がその職にあるときだけは一生懸命やると思います。しかしいつもいつもどんどん役職がかわっていってしまう。ですから結局ほんとうに真剣に国鉄の再建というものに取り組んだという人がなかった、こういうところに私は問題があると思うのです。ですからこの間に年々赤字が増大したことは、もう御承知のとおりでございます。この赤字の問題を考えてみましても、一般の法人会社だったらとうてい考えられないような赤字でございますよね。当然株主総会を開いて、社長、専務、これはもう即刻退陣せざるるを得ないだろうと思うわけであります。ところがそうしたことは国鉄としては全くなかった。また監督官庁であるところの運輸大臣としても、そのことに対してやはりほっぽっておいたのではなかろうか、あまり気にとめないできたのではなかろうか、こういうふうに歴代の運輸大臣考え方を見るわけです。運輸大臣は、国鉄法の五十二条によって国鉄を監督する立場に置かれているわけです。御承知のとおりでございます。この監督という立場は責任をとれ、こういうことではないと思いますけれども、歴代の運輸大臣が監督したが、結果はこうなってしまった。少しも道義的な責任を感じていないのではないかと思うのですね。自分がその職にある間は運輸大臣としてやったんだ、国鉄の監督はしたんだ。だから国鉄がこうなったのについては、これはしようがないんだ、こうして運輸大臣として責任をとろうとしなかった、こういう点が今日国鉄がこうした状態になってしまったと思うのです。国民の足、国鉄をよく国民の足といいます。国民の足であるとするならば、国民は全部株主だと思うのです。株主は総反撃です。こういうことに対して、国鉄総裁としてもあるいは監督の立場にある運輸大臣としても、十分責任をとるべきではなかろうかと私は思うのです。いままで一つ計画を立てて、それを完遂したことがなかった。四年目四年目に次から次へと計画を変えている。そうしてしり切れトンボで何かお茶を濁してしまった。そうして国鉄を今日このような窮地におとしいれてしまった、こういう点について、私は大きな問題があるだろうと思うわけです。この点について、大臣並びに国鉄総裁の御意見をひとつ伺いたいと思うわけであります。
  37. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 何回か年次計画を立てて国鉄再建計画を進めてまいりました。いまお話しのように、初めの第一次、第二次の計画当時におきましては輸送力が足りませんので、輸送力増強というのが主であったと思いますが、第三次以後におきましては、社会の個々の経済事情が非常に急激に変わってまいりました。それからお話しのように、三十九年以来国鉄が赤字に悩むようになりまして、本来やるべき設備投資もできなくなってきたというようなことで、ますます国鉄の機能発揮ができなくなってきたような事情がございましたので、私どもは責任を回避する意味じゃもちろんございませんで、われわれは、運輸省といたしましても国鉄といたしましても、とるべき責任はとらなければならぬと思いますけれども、そういった過去の何回かの年次計画における国鉄が露呈をいたしました設備投資の不足、あるいは政府の援助の不足、そういったものにつきまして十分反省をいたしましたからこそ、今度再建計画提案をいたしておる次第でございまして、これによりまして、いまのわれわれの考えでまいりますと、お話しのような点は今度のこの関係法律案が通過いたしました場合には、十カ年をもちまして国鉄の体質の改善ができて、国民の御期待に沿えるような国鉄になり得るということを信じまして御説明もし、皆さんにお願いをしている次第でございますから、どうぞこの点は御了承いただきたいと思います。
  38. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまのお話どおり、第一次計画、第二次計画はどちらかと申しますと設備投資計画でございます。それが日本の経済の発展に追いつかないで、投資が少なかったということの問題でございまして、むしろ財政的には、御承知のとおり第二次計画の末尾には、累積黒字が千五百億あったわけでありまして、一応財政的にはやってまいりましたけれども、設備投資に要する利子の支払い、これが非常に大きくなってまいったわけでございます。第三次以降につきましては情勢一変いたしまして、むしろ国鉄の経営自体の問題、輸送の伸びがなくなったということに非常に大きな問題がきたわけでございます。したがって、第三次計画は初め設備投資計画であったものが、途中から財政再建的な見地に変わってきた。それが第四次と申しますか、現在やっております財政再建の計画に変わった、こういう情勢でございます。したがってこの十五年間というものは、むしろ鉄道を中心とした非常に大きな社会の変革に上半期はついていったけれども、下半期はついていけなかった。そして、設備投資問題から財政問題に変わってきた、こういう非常な変転の多い時代でございました。  私も、実は当初から関係いたしておりましたけれども、こういう事態まで見抜けなかったことは確かに私どもの不明のいたすところでございますから、十分今後いろいろの問題を各方面から考えまして、そしてやっていかなければいけないと思っております。ただ、民間ならば倒産だとよくいわれますが、民間ならばやはりもう少し自由に仕事ができるということは、私はあると思うのです。相当大きな制約のもとに企業を経営していく、しかし経営の帳じりは国鉄総裁が負うというこの問題、これは冒頭にも先生への御答弁で申し上げましたが、やはりその点でもう少しお考えいただく問題があったのじゃないか。最近はずいぶん変わってまいりましたけれども、その問題とそれから政府の出資あるいは政府のめんどうの見方ということにつきましても、三十年代におきましては、国鉄はとにかく財政的には黒字なんだからやっていけるというふうなことで、出資もなくまた財政援助もなかったわけでございますが、四十年度以降徐々に出資につきましても、また財政の援助につきましてもやっていただいたわけでありまして、これによって何とか歯を食いしばっても、この十年間やっていくという立ち上がり以外にないと思います。それが私の多年の責めを果たす方法であるというふうに考えております。
  39. 松本忠助

    松本(忠)委員 国鉄総裁は率直に国鉄としてのいままでの問題に対して反省をされております。私も総裁の気持ちはよくわかるわけであります。一方、大臣は確かにいままでまずかったと思いますから今度出したのだ、今度出したことによって、五十七年度以降は好転してくるのだ、こうなるのだ、だからいま体質改善ができて、五十七年度以降は財政が好転しますよ、こういうふうな御趣旨と私は受け取りました。ほんとうに五十七年度以降もよくなるのかというと、これは私は全く疑問じゃないかと思っておるのです。  こまかい数字まで大臣をわずらわすことはないと思います。そこで、鉄監局長もおられますので伺ってみたいと思います。新再建計画の長期収支試算、これによりますと、四十八年から五十七年までの十年間に、四回値上がりすることになっております。そこで、五十七年度がいわゆる三千七百九十二億という黒字になるというふうに出ているわけであります。要するに、昭和三十九年から赤字になって、昭和五十六年までは償却後損益は全く赤の連続であります。十八年間の連続赤字であります。これは非常に驚いたものだと私は思うわけであります。しかし、四十八年度以降はやってみなければわからぬ、こう逃げるかもしれませんけれども、一つの試算として出てきているもの、それからまた過去のものについて見ても、これは全く赤字の連続だ。ただ、それが五十七年度になりますと、こつ然として三千七百九十二億円という償却後の黒が出ることになっております。中間の五十四年のところを見ましても九百十三億の赤字でございますが、これは前年の五十三年から見ますと非常に赤字が減っている。しかしこれは値上げをした結果なんだ。こういう中間のものも見まして、結論的には膨大な赤字、この試算表の面でも一兆四千四百三十五億、それから四十六年、四十七年のものを加えますとおそらく二兆六千七十五億という、こういった推算が出ているわけでございますし、十一兆にもなんなんとするところの長期債務を抱え、その支払い利息がこれにもございますように、六千四百十七億だ。こうなりますと、一日当たり十七億六千万円も利息の支払いをしなければならない、こういう状態で、はたして再建ができたといえるのかということです。五十八年度以降については一体どうなるのか。いま大臣は五十七年度以降は非常によくなる、好転する、こう言われております。しかし、ここに書かれた数字は一つの試算、これは単なる数字の羅列だ、こう私はきめつけております。五十八年度以降ほんとうに黒字になるのだろうか。大臣はいま財政は好転するのだ、こうおっしゃいました。確かにこの再建計画をやれば好転するのだと言われておりますけれども、私は大臣ことばをそのまま信用できない。  そこで、こまかい数字の問題ですから鉄監局長にひとつ答えていただきたいと思いますが、五十八年度以降一体どうなるかということ、この見通し、これをひとつ伺っておきたい。
  40. 秋富公正

    秋富政府委員 ただいま大臣から申しましたように、過去におきますいわゆる一次計画以来のいろいろな反省、こういうところから、いわゆる財政助成の強化、出資の増大あるいは工事費利子補給の拡大、こういうことをやっていくわけでございますが、ただいま御指摘の五十七年度以降どうなるかということにつきまして、まず一つの大きな問題は人件費の問題でございまして、国鉄の現在の特異な年齢構成でございます、いわゆる四十歳以上の人が大体五〇%を占めている、こういった構成でございまして、四十七年度におきましては人件費が収入の大体七五%を占めておるわけでございますが、これが今後五十七年度におきましては、ただいまの推計によりますと収入に対しまして人件費の比率が大体四九%になる予定でございます。また、この再建期間中におきましては、設備投資というものを十兆五千億いたしまして国鉄の体質の改善ということをやるわけでございますが、五十八年度以降におきましてはこういった投資というものの大体の仕上がりができるわけでございまして、五十八年度以降におきましては、いわゆる新しい設備投資というものは、再建期間中に比べましてぐっと落としてもいい、こういう予定でございまして、そういった意味におきまして、現在の出資の増大あるいは利子補給の拡大ということと相まちまして、いわゆる資本費の圧迫というものも、再建期間後におきましては縮小される、こういったことがございます。  また一方におきまして、収入面におきましては、いわゆる輸送力の拡大に伴いまして、新幹線あるいは複線電化に伴います旅客輸送量の増大、また貨物につきましても、いわゆるシステムチェンジによりまして、陸上輸送におきましても、現在は約一八%でございますが、今後輸送量の伸びを考えますと貨物輸送量というものが増大化しまして、こういった面におきましても収入の好転ということを確信しておるわけでございまして、ただいまの御指摘でございますが、再建期間後は国鉄は必ず再建できると確信いたしております。
  41. 松本忠助

    松本(忠)委員 私伺いたいのは、五十七年度がここに書かれたような三千七百九十二億の黒だ、では五十八年度は具体的にいったら幾らの黒になるのだ、五十八年、五十九年、さらには六十年——さっき国鉄総裁新幹線収支見通しの中でも言われておりますけれども、六十一年度以降になると、新幹線が出てくると償却後も黒になるというようなことも言っておりますけれども、まず当面五十八年、五十九年、六十年あたりはどうなるのですか。具体的な数字であなたの見込みをひとつお答え願いたい。
  42. 磯崎叡

    磯崎説明員 長期の収支でございますが、五十七年度までは一応お目にかけた数字であります。五十八年度以降いつまで見通すかという問題でございますが、私どもの能力といたしましては、六十年度くらいまでが一応われわれの将来を見通せる能力だというふうに考えまして、六十年度までを推計いたしますと、大体五十七年度程度の三千億程度の償却後の黒ということで持続するという計画数字になっております。ただこれは、一番の問題は、五十八年度以降の輸送量の伸びの問題でございます。したがいまして非常に仮定の数字が多うございますけれども、一応私ども六十年度までいろいろ計算いたしてみますと、大体五十七年度の償却後の三千億を少しオーバーした数字で償却後いくんではないかというような見通しでございます。
  43. 松本忠助

    松本(忠)委員 そうしますと、総裁、具体的に言うと、収益は五十八年度三千七百億よりも下がるんでしょう。一体五十八年は具体的に言ったらどういう数字になるかという見通しですよ。それを再々私伺いたい。
  44. 小林正知

    ○小林説明員 お答えいたしますが、ただいま総裁から申し上げましたように、申し上げるまでもなく五十八年以降の収支の想定をいたしますことは、前提として考えますところのいろいろのファクターというものが非常に不明確なのでございます。またよるべき確たるものがございませんので、これは一つの前提をおきまして計算したものということで、ほんとうのためし算でございます。そういう意味で御理解を賜わりたい、かように思います。  前提といたしましては、ただいま総裁が申し上げましたように、一番問題になりますのはやはり輸送量の伸びかと存じますが、これにつきましては四八から五七までのおおむね平均輸送量の伸び率、こういうものの延長として一応考えるということと、それから四八から五九まで、あと残った新幹線、工事中の新幹線、六十年までに七千キロという予定は一つ構想として政府のほうでお持ちでございますけれども、そういった新幹線開業は一応六十年までないものという前提で考えます。  それから工事費の補助金、いわゆる政府助成等につきましては、これは現在御審議をいただいております法律の趣旨にのっとりまして、工事費補助は六十七年度まで継続いたします。五十七年分の工事費まで補助は対象になっております。十年間ということになっておりますので、補助期間は六十七年まで続きます。それから、あとの補助は、これは再建期間を終了いたしますので五十七年で打ち切るというかっこうで、人件費もこれまた想定は非常にむずかしいわけでございます。人件費の単価アップという問題がございますので、非常にむずかしいわけでございますが、これも後半の一〇・三%ということで一応想定をいたしました。  さらに、工事部門につきましては、各新幹線それから在来線合わせまして約一兆円程度の投資を考えるというような前提を持ちまして計算をいたしますと、五十八年におきまして、これはほんとうのためし算でございますが、数字は二千八百六十六億と出ておりますが、約二千九百億足らずの黒字になる。もちろんこの場合には再建債として政府のほうから拝借いたしております十年据え置き後二十年償還という再建債はルールどおり返却をするという前提にいたしております。  六十年までの推移は——六十年に運賃改定をいま申し上げましたような前提で計算をいたしますと、ためし算としてでございますが、おおむね三年間で約九千五百億程度の償却後の黒になる、かような計算に相なるわけでございます。御参考に申し上げた次第です。
  45. 松本忠助

    松本(忠)委員 いろいろと前提条件がございますから、これはそのように運ばれるかどうか、まことに疑問だと思います。またその間に、いずれにしましても値上げということがまたまた出てくるわけでございます。値上げをしなければとうていこのような黒字は出てこないということは、私は言えるものだと思います。そういう点からいま小林常務理事からいろいろお話がございましたけれども、私どもはどうも、この再建計画なるものがいわゆるためし算だ、これは単なる数字なんだということで、実際問題として、さっき大臣も言われましたように、四十九年度以降のものについては全く予算のとおりの措置ができてないわけですから、そのときそのときの状態によって予算を組むわけですが、四十八年度だけは一応予算の金額と一致しているものと受け取ってよろしいわけですね。そうなってきたときに、これから十年先、二十年先の国鉄が一体どうなるかということです。  これはいまのお話を私はそのまま真に受けて受け取るわけにはいかないわけです。ほんとうにそのように国鉄がよくなるんだったら、過去にももっとこれだけ努力してきたんだからよくなってよさそうだ。それがなかった。いま国鉄総裁も率直に認められたわけでありますけれども、民間ならばもっと自由にやれたところが、いろいろな制約を受けてできなかったということもわかります。しかし今後の十年間、二十年間も同じような状態が続いていくと、これはほんとうにここに書かれたような三千七百九十二億というような五十七年度の黒、あるいはいま小林常務の答弁にあったような、そういった五十八年度が二千九百億、こうなりますと、すでにここでも八百億からの利益が低下しておるわけです。こういう点を考えまして、これから六十二年、あるいは六十七年は一体どうなるのかということ、そんな先のことをまだ考える必要がないと言われるかもしれませんけれども、とにかくいまの国鉄の状態、再建状態、そう急速に解決できないとしたならば、私はこの問題はまだ安心はできない。こういう数字だけをもって国鉄の再建成れりというふうな考え方は非常に危険だと思うわけでございます。  そういった点につきまして確信があるとおっしゃるのですけれども、この確信がそのとおりほんとうにいくかどうか。これはこれから歴史が証明すると思います。実際問題としてこれはなかなか現在の国鉄がこれからいかにどうがんばったとしても、十年先、二十年先でこの膨大な借金を返し、そしてほんとうに一本立ちした、自立の国鉄としての経営ができるようになるかというと、これはほんとうに疑問だと思うのです。そういう点できるとおっしゃると思いますけれども、これは事実が証明するかどうか、歴史を待つ以外にないと私は思います。しかし、ほんとうに私ども国鉄の問題に対しては大きな心配をしておるわけでございます。そういう点で私はあえて申し上げたわけでございます。   〔発言する者あり〕
  46. 井原岸高

    井原委員長 御静粛に願います。
  47. 松本忠助

    松本(忠)委員 そこで小林常務からいろいろございました。人件費の問題、それから物件費の問題、こういう問題についても私はこまかく申し上げたいと思います。いままで私の質問の中にもずいぶんいろいろ無理を承知の、十年先、二十年先はどうなんだということ自体、これは無理だと思います。  しかしもう一つ私ここで伺いたい点は、現行法が四十四年に強行採決されたわけです。そして法律として施行されました。この法律の第八条の規定によりまして再建計画の実施状況を毎事業年度に提出することになっております。すでに四十四年から四十六年まで三回の報告書が提出されたわけでございますが、この三カ年間はいずれも赤字を計上したわけです。こういう点を考えまして、私はいままでの人件費、物件費の内容についてこれから先が見積もったものでいくかどうかという疑問がある。ですからこれから十年先、二十先はどうなるかというと、いまおっしゃったようなうまいぐあいにはいかないぞということを私は言うわけでございます。試みに四十四年度が千三百十六億、四十五年が千五百十七億、四十六年が二千三百四十二億の赤字が出たわけでございますけれども、この赤字が出たというその理由の中で、いろいろ問題があると思いますけれども、最も顕著なものは何か、ひとつ簡単にお答え願いたいわけでございます。予算に対して人件費がどうだったか、あるいはまた物件費がどうだったか、こういう点を、ひとつ簡単でけっこうでございますが、三カ年間にわたって、過去の要するに実績を、私も私なりの考えがございますので、伺ってみたいわけでございます。
  48. 小林正知

    ○小林説明員 お尋ね再建計画に入りましてからの計画と実績との対比で申し上げますと、事業費を大きく分けまして人件費と物件費ということになるわけでございますが、四十四年度におきましてはこれは策定の時期の関係もございまして、人件費、物件費ともそう計画に対して差異はございません。それから四十五年度におきましては人件費におきまして約三百二十億ふえております。それから四十六年度は同じく人件費で申し上げますと四百七十億、四十七年度は、これはまだ決算を終了いたしておりませんので、一応予算の数字で申し上げますが、千六十億ばかりふえております。四十四年から四十七年の見込みまで累計いたしまして、人件費におきまして千八百四十億程度計画より上回っております。  これに対しまして物件費でございますが、物件費はこの四年間ではしょって恐縮でございますが九十数億、おおむね計画にフィットいたしております。大体〇・九%程度の差になっております。これは四年間の累計でございます。
  49. 松本忠助

    松本(忠)委員 これはなかなか微妙な問題があると思うのですが、四十四年度も収入の面で見ますと五百二十一億マイナスになっていると思いますね。四十五年度は収入の面が百四十五億マイナス、四十六年度は予算に比して差し引き九十億プラスはしておりますけれども、こういった収入がいずれも見積もったよりも少なくなっているという事実ですね。四十七年度は正確なものがあと一カ月たたなければ出てこないわけでございますから、私もとやかくは申し上げませんけれども、やはりこのいままでの人件費にしても、物件費にしてみてもあるいは収入の面にしてみても、見積もったもののとおりにいかないということはこれはまあ当然だろうと思います。しかし、やはり見積もりそのものに大きな狂いがないのかということを私は申し上げておきたいのです。たとえていいますと、いま過去のものについてこういってずっと出てきました。この過去のものをずっと人件費の問題を見てみましても、過去の実績を見るとどうなっているかといいますと、四十四年度が一三・四、四十五年度が一五・一七、四十六年度が一四・四、四十七年度が一二・九というふうに、これは非常に短い期間ですから単純計算で四で割りましても、要するに四年平均で一三・八七という人件費のアップがある、そういう点を考えまして、いままで過去のものにおいてそういうものがあった。今後人件費がやはり自分たちで算定した中でおさまるかどうか、これは非常に疑問があると思うのです。四十八年度の問題につきましても、仲裁裁定の問題についてあとでお話を伺いたいと思っておるわけでございますけれども、とにかく現在まで過去のこれらの実績から比べて、要するにこの再建計画の中に盛られた金額というものの算定の基礎になっている人件費というもの、あるいはまた物件費というものがその思ったとおりの数字でこれから行くかどうか、これを私は非常に疑問に思う。現に立てた数字に対して過去四年間は全部オーバーしているという事実。これから先、長期収支計画の中でもそういった傾向は生まれないか。つくっただけの要するに一二・三%なら一二・三%というもので、盛っただけのものでいくかというと、これは明らかにいかないだろうと私は思うのです。そうしてくると根本的に計画なんというものはくずれてしまうと思うのです。物件費においてもそうだろうと思うのです。いま小林常務が、これからの問題についても過去において三%です。大体三%でいくんだ、こういうふうに言われていると思います。しかし、実際問題として最近の物価、卸売りの指数を見ましても、とうていこれでは済まないだろうと思います。そうした点を見たときに、いまあげられましたように五十七、五十八年以降だんだん黒字になっていくんだ。それもしかし、値上げをしなければ黒字にならないわけであります。実際問題として、この事業費の中で占めるところの人件費、物件費の割合というものを見たときに、そしてまたその算定の基礎になっているものが、はたしてその算定の基礎になった数字で済むかどうか疑問が私は大いにあるわけです。ほんとうにこの点について、いくとお思いでしょうか。
  50. 磯崎叡

    磯崎説明員 確かに人件費の問題は、非常に長期計画としまして大きな問題だと思います。ただ全体として見ますと、いま先生のおっしゃった一二・三%、それからそれを落としまして一〇・三というふうにいたしましても、十カ年間の人件費アップの七兆五千億、それはちょうど四回運賃を上げていただきまして増収します七兆九千億、運賃値上げとほとんど同額のものが人件費にいく、これは非常に大きな問題でございます。したがいまして、今後の人件費の見通し、これは場合によっては運賃の値上げの率と非常に密接に関係してくるといえないこともないと考えますが、一応現在の政府計画、いわゆる将来の人件費のアップにつきましては、なかなかわれわれもガイドポストがございません。したがって、一応現在考えられる政府のいろいろな知識を集めてつくられました将来の人件費の伸び、これを参考にする以外にないのであって、たとえばことしの率が高くてもいずれ十年間における平均としてはこうなるだろうという推定以外にはできないというふうに考えます。  それからたとえば全体の収入の見通しでございますが、四年間で二%、民間の方に聞きましても二%くらいの誤差はこれは民間でもあるのだ。しかし君のところは悪いほうの誤差でもって、民間の場合には大体予定よりも一、二%いい収入なんだということをよく言っておられますが、全体としての誤差の二%の程度のものはこれは長期計画を実施していく中で当然修正されていかなければならない問題だと思います。しかし、いまおっしゃった人件費の問題は、一応過去の例から見ましても五%の誤差があるという意味で、これは十分今後の政府長期計画の中における日本全体の人件費の伸びを参考にする以外にない。したがって、たとえばことし非常に高くても十年間としてはロングランで見れば大体政府計画におさまるだろうというふうな見方以外に、私どもといたしましては長期計画をつくる際の人件費の見通しが不可能であるというふうに申し上げざるを得ないと思います。
  51. 松本忠助

    松本(忠)委員 総裁そのように確信を持っておられるようでありますけれども、過去の実績というものは私は重視しなければならぬと思うのです。過去の実績がいま申し上げましたようなパーセンテージであるわけですね。すでにインフレといいますか、物価高、当然のことこれから賃金も上昇するだろうと思う。こういうことを考えますと、いま再建計画に盛られている金額というものは聞くところによりますと一二・三%で一応組んであるのだ、物件費は三%で組んであるのだと言われているわけですが、ほんとうにこれで済むという確信はだれもないだろうと思うのです。十カ年間にならしてみればどうにかなるだろうというようなところであって、全くこれに対して確信を持っている人は一人もないだろうと思うのです。まず足らないというのがほんとうじゃなかろうか。余るという人は一人もないだろう。それでおさまると考える人は全くないだろうと思うのです。そこでどうですか、この点ほんとうに十カ年にならしてみれば余るんだということは確信をもって言えるわけですか。これからもっと人件費がどんどん高くなっていく。単なるアップと見ている一二・三%で済むかどうかという問題、それから物件費にしてみても最近の卸売り物価指数というものが非常な高騰を示していることは事実です。四十八年度の予算がどだいもう大きくくずれてしまっていると私は思うのですね。御承知のように四月一日から運賃収入を見てあるわけですが、四、五、六月と、これから参議院に行ってあと一カ月くらいかかるでしょう。そうなれば当然四カ月くらいの収入減ということです。しかも、一方人件費はことしは膨大な、いままで初めての記録ともいえるような三公社五現業の一七・四九%できめられたというところから考えてみたときに、総裁がいかに強弁されてもこの十カ年間が見込みの数字の中でおさまるのだとは私は言い切れないと思うのですよ。
  52. 磯崎叡

    磯崎説明員 確かにそういうごらんになり方もあると思います。ただ私どもといたしましては、長期計画を策定する際に、やはりなるべく根拠のある、権威のある数字をたよりにする以外にないというふうに思います。したがいまして、輸送量の伸びにつきましてもあるいは人件費の伸びあるいは物件費の伸びにつきましても、現実とかけ離れているとおっしゃればそうでございますけれども、政府なり学識経験者が集まってきめた長期計画に盛られた数字を根拠とするという以外に、国鉄だけの十年間の経済見通し、これはもうほとんど不可能でございます。したがいまして非常に高い視野に立った方々のつくられたそういう原単位を基礎にして計算するという以外に長期計画の立て方の方法はないというふうに私は考えます。
  53. 松本忠助

    松本(忠)委員 これは結局は水かけ論です。私のほうはとても不可能だろうと言う、当局のほうはできると言う、見通しがありますと言う、これは全く水かけ論であろうと思うのです。これは非常にむずかしい問題でございますし、見込みがそのとおりいくかいかないか、これは全く後日になってみなければわからないと思いますが、非常に危険な状態であるということが言えると私は思います。物件費の問題についてもこまかく詰めたいわけでございますけれども、時間の関係もございますので次に移ります。  いわゆる要員数ですが、現在の国鉄の要員数、長期収支試算の前提条件になっているのには、要員数が第九番に書いてあります。五十三年度末までに、四十四年に対して十一万人削減ということが書いてあります。こうなりますと当然このいわゆる四十四年からの十一万人の削減というものが五十三年度末までで完成するものだというふうな受け取り方を私はしたわけでございますが、これはそのとおりでございましょうか。
  54. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 十一万人の要員の削減は五十三年までに行ないまして、五十四年度当初の予算定員が三十六万七千人になるということでございます。
  55. 松本忠助

    松本(忠)委員 要するに四十四年から始まって五十三年度末までに十一万人削減するというわけですね。そうしますと、いままで四十四年から四十七年度までに一体どういう実際の削減が行なわれたのでしょうか。具体的な数字でひとつお示し願いたいわけです。
  56. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 四十四年度から始まりまして四十七年までの間に約三万三千の実際の要員の削減が行なわれております。それから以後十一万の計画でございますから、あと約八万足らずというものの削減が計画に見込まれなければいかぬということになるわけでございますが、要員の合理化の問題は、御承知のようにそのときの合理化のこなし方と申しますか、そのときによって多少波を打つといったような面もございますし、実際の人間の需給の面からいきましてもある程度波を打つということで、年度別にはっきりした——一応計画目標は持っておりますが、数字はいま現在はっきり申し上げられないというような感じでございますが、前半三年において大体三万五千くらいの計画を持っておりますし、五十三年までの後半において約四万くらいの削減をするというような計画でいま考えております。
  57. 松本忠助

    松本(忠)委員 常務理事にちょっと伺いますが、四十四年度以降の実績を私は先に聞きたいのです。それからなおさらにあとの六年間の問題をお聞きいたします。
  58. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 四十四年以降の年度別の実際に縮減した人員の実績を申し上げますと、四十四年千二百人、四十五年六千人、四十六年一万三千人、四十七年は大体一万三千人ということでございます。
  59. 松本忠助

    松本(忠)委員 伺いました。そういたしますと三万三千二百人程度のものが一応削減された。そうなりますと十一万でございますから、先ほどお話のあったように八万という数字が残るわけですね。正確な数字で言えば三万三千二百ですから七万六千八百という数字になると思いますが、これはいまの御答弁にありましたように、四十八年からは前半は三カ年間で三万五千、後半が三カ年間で四万人、こういうふうにいまお話があったと思いますが、実際これが四十八年から五十年までに三万五千、あるいは残る三年間で四万人、この削減ができるかどうかという問題です。これはもちろんできるとおっしゃるのだろうと思いますけれども、いろいろ問題があるだろうと私は思うのです。年度別の計画等も伺いたいわけでありますけれども、前半、後半というような一つの目安が出てきたので、私はその線で一応理解をいたしますが、実際問題としてこの間に新規採用はどれくらいあるものか、こういったことも考えましたときに、ほんとうに七万五千なり七万六千というものが削減できるのかどうか。この点はどうでしょうか。確信がございますか。相手のあってやることですよ。
  60. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 今後の計画につきまして、結局実際の要員の縮減は、退職する者の見込みと、ただいま先生がおっしゃいました新規採用との差額によって縮減が可能になるということでございますが、今後五十三年まで見込まれます退職の数は約九万五、六千であります。それに対していろいろな業務量増それから時短の問題、そういったようなことも見返りとしてやらなければいかぬわけでございますから、そういったものをすべてまかなっていきますと、私どもの見込としては新規採用としては二万程度の採用があればいい。あとは生み出されたもののいろいろな配置転換によってまかなっていけるというふうに考えております。
  61. 松本忠助

    松本(忠)委員 そういったことを含んだ上でこの長期収支試算はできておると理解していいのですね。そうですね。そうすると、いま常務理事が前半、後半で言われましたけれども、具体的にここに乗っかってきた数字というもの、人件費というものの積算の基礎は、やはりそういった削減というものが大きく影響があってここに数字がのぼってきておる。何年には幾ら、何年には幾らということがほんとうならば具体的に出てこなければいけないと私は思うのですよ。いま常務理事答弁で、四十八年から五十年までの前半とそれ以降の後半というふうに述べられましたけれども、本来ならば一年一年、この期間にはこうなります、この期間にはこうなりますということがなければ、私はこの数字は出てこないのだと思うのです。積算の基礎というものがやはりあるのではなかろうかと思うのです。その辺はもう少しはっきりさせてはどうですか。   〔委員長退席、細田委員長代理着席〕
  62. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 ちょっとことば足らずだったと思いますが、積算の基礎としましては、今後の数年間の平均でとっておりますから、年々大体一万三千程度の縮減だという計画になっております。
  63. 松本忠助

    松本(忠)委員 過去の前例も一万三千という数字が出ておりますので、今後の計画についても一万三千程度のものだということで私も一応理解いたしますけれども、とにかく相手のあってやる問題でございますし、なかなかこの問題は大きく根を引く問題でございますし、国鉄再建の問題は一にかかって人の問題にあるというふうに先ほど総裁が言われました。こういう問題から申しまして、この要員数というものはここに十一万とばく然とあげ、しかもそれをいままでの過去の例からいって三万三千やっておるから、残りは八万だ、こういうふうなことであらかじめ一万三千程度のものが盛り込まれておるというふうなお答えが出たわけでございますけれども、なかなかこれが実際問題としてそのとおりいくとは思われません。相手のあってやることでございますから、非常にむずかしい問題があろうと思いますが、とりあえずそういうことであるならばそのように私は承っておきます。いずれにいたしましても人間の問題というものはたいへんな問題でございますので、国鉄といたしましても、十分この点について配慮をしてやっていただかなければならぬと思うわけでございます。  そこで、ことしのいわゆる春闘の賃上げの問題、これも三公社五現業の賃上げが一七・四九というところできまりまして、そして仲裁裁定の交付を待っていたわけでございますけれども、これも先般二十五日の日に仲裁裁定書を国鉄当局としても入手されたわけだと思います。  そこで、この問題についていろいろ伺ってみたいわけでございますが、これが実施されたときには、国鉄としては大体どのくらい足らなくなるのか。ことし計上されている人件費だけではおそらく、この仲裁裁定をそのままのむとするなら、足らなくなってくると私は思います。こうした場合に、この国鉄の賃上げの所要額が幾らであって、そしてどういうものをこれに流用する、そういうときにどれくらい足らなくなる、この足らなくなるものは一体幾らなんだという金額、そしてまたそれをどうやったら生むことができるのかということ、こういう点についてひとつ御答弁を願いたいと思います。
  64. 小林正知

    ○小林説明員 お尋ねの今回の仲裁の実施に伴います所要額は、国鉄は勘定が二つございますが、全部合わせまして千二百八十六億円というふうに計算をいたしております。そのうち、財源でどうやってこれをまかなうのかというお尋ねかと存じますが、先生御承知のとおり、予算におきましてすでに四月から基準内給与の五%というものが給与改善費として予算に組み込まれております。それが四百六十三億でございます。そのほかに予備費が二百五十億計上されておることも御承知のとおりでございます。年初でございますので、今後の災害等のこともございますので、これを全部引き当てるということはもちろん不可能でございます。そのうちおおむね二百億ないし二百十億程度は予備費からの充当が可能である。そういたしますと、合わせまして約六百七十億程度は計上予算内で処理が可能である、かような数字になろうかと思いますが、ただいま申し上げました千二百八十六億との差をとりますと、六百十三億ということになりますが、これにつきましては、国鉄の中におきます各般の経費の見直し、また実行上のこまかい運用をすることにいたしまして、経費の移流用というような措置等を加えまして、これを充当する、かような処置になろうかと存じますが、これは先刻伺うところによりますと、——国会に参りましてから、私、耳にいたしましたので、政府御当局のほうとも、十分その辺の予算の実行方の問題については詰めたお話を申し上げておりませんので、見当としてかような結果になるということで御答弁申し上げたいと思います。
  65. 松本忠助

    松本(忠)委員 わかりました。大体六百七十億ということでございますね。  そこで、大臣お尋ねいたしたいわけでありますけれども、この五月の二十五日に公労委から出ました、三公社五現業の両代表に手渡されましたところの四十八年度の賃金紛争に対する公労委の仲裁裁定、これは当然完全実施すべきだというふうに私は思っておるわけでございますが、聞くところによりますと、けさの閣議でもきまったという話を聞いておりますが、この点について、大臣、どのようにお考えか。また事実けさの閣議できまったものかどうか。この点ひとつ確認をいたしておきたいわけでございます。
  66. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 この問題につきましては、閣内でもいろいろ議論がございまして、閣僚協議会を何回か開きまして、慎重に協議をいたしましたが、本日の閣僚協議会及びその後において開かれました閣議におきまして、この国鉄も含めまして三公社五現業の仲裁裁定は、これを完全に実施をしようということに決定をいたしました。
  67. 松本忠助

    松本(忠)委員 完全実施は当然のことと私は思うわけでございます。  いずれにしましても、そうなりますと、いま小林常務理事からお話がありました六百七十億というものが不足するわけでございますけれども、これに対しては、総裁、どのようにお考えでございますか。
  68. 小林正知

    ○小林説明員 先生に向かってはなはだ失礼でございますが、先ほど申し上げました数字でちょっとお取り違えのようでございますので、御訂正をいたしたいと思いますが、予算内で、予備費と五%の給与改善費で措置し得る額が六百七十三億でございまして、不足額のほうは六百十三億でございます。
  69. 松本忠助

    松本(忠)委員 それに対してどういうふうになさるかということについて、これはいろいろ問題もあろうと思います。  いずれにしましても、その人件費の問題というのは、たいへんなことでございますし、これからいわゆる週休二日制というような問題も出てまいりますと、なかなか人間の使い方というものもむずかしくなってくると思うわけでございます。  そこで人事院の中村職員局長、見えているでしょうか。——伺いたいわけでございますが、現在国鉄労使間の情勢、協調ムードになり得ないところの情勢下におきまして、なかなかこの削減なるものも、先ほど御答弁がございましたけれども、スムーズに進行できるものとは思えません。そうした中において、今度は週休二日制という問題がここで出てくるわけでございます。この問題につきましては、すでに同僚の議員からも質問があったわけでございますけれども、昨年は民間企業で実施率が一七%といわれておりました。ことしは二〇%をこえるものと想定されておりましたところ、五月の二十六日の人事院の発表では二一・九だ、こういうこともいわれております。人事院として、国家公務員に対して週休二日制を実施するということを勧告する考えはあるのかないのかを、まず先に聞きたいのであります。
  70. 中村博

    中村(博)政府委員 先生御指摘のように、私どもで調査いたしました結果、二一・九%、昨年の十月現在で相なっておるわけでございまして、相当進捗しておる状況にございます。私どものほうとしましては、週休二日制を国家公務員についてどうするか。この問題は、一つは公務サービスの確保——国民に御迷惑をかけてはいけませんので、公務サービスの確保が一つの重要な問題であろうと存じます。いま一つは、やはり職員の勤務条件の改善向上、これまた重要でございます。さらに、そのような事態に対応して第三のファクターとして、国民感情がいかがなるか。この三つの柱を考えておるわけでございます。  したがいまして、私どもとしましては、そのような点をいろいろな調査によって詳細に承知しながら、この三つの要請が一致したときに実施をいたしたい、かように考えておるわけでございまして、昨年の勧告と比べて、本年の勧告は、私どもこれは申し上げる立場にはございませんけれども、相当進歩したものになるのではないか、そのような感じを持っておるわけでございます。
  71. 松本忠助

    松本(忠)委員 まあ国家公務員に対しては、そういうふうにお考えでございましょう。当然のことだと思います。で、三公社五現業に対しては勧告する何ものもないと思いますけれども、国家公務員がそうなった場合に、これらの三公社五現業も同一歩調をとる日が来るとお思いになりますか。それとも三公社五現業についてはまだそこまでいくのに当分時間がかかるとお思いでしょうか。この点、職員局長お答えを聞きたいわけです。
  72. 中村博

    中村(博)政府委員 国家公務員の場合でもいろいろな職種があるわけでございまして、まあ私どもがやっておりますような机にすわっております職務と、それから交代制勤務者の方々、こういうような大きく分類すればそのような場合があるわけでございまして、仕事の内容、合理化可能の程度、それから要員のぐあい、そのようないろいろなファクターを十分考え合わせてこれは個別にきめらるべきことでございまして、一般的にどうこうという御意見を申し上げることは差し控えさせていただきたい、かように考えます。
  73. 松本忠助

    松本(忠)委員 いまの人事院の見解は私もわからないわけではございませんが、国鉄当局としてはどのようにお考えでございましょう。
  74. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 時間短縮の問題は国鉄としましてもこれまでに一次、二次というようなことで漸進的にやってきております。しかし全体の情勢が、ただいま人事院からもお話ありましたようなこともいろいろあるわけでございまして、さらにできれば一歩前進したいというふうに考えております。しかし、ただ、国鉄の仕事の性質から申しまして、御承知のように一昼夜交代勤務といったようなもの、夜の勤務を含んだ勤務が非常に大部分を占めておりまして、一般の日勤勤務なんかと違いまして、二日休むというような形はなかなかとれない。したがっていわゆる週休二日制に当たるものとしましては、一週間の勤務時間を四十時間というふうに考えられると思うのですが、現在四十五時間でございますが、これは他の三公社五現業、そういったものとの均衡からいってそう劣るものではないのですが、さらにそれを二時間短縮しようという計画はいま持って組合と話を進めておるということでございます。
  75. 松本忠助

    松本(忠)委員 それではその問題はその程度にしておきまして、あといわゆる新幹線開業されるについての要員の問題なんであります。  御承知のように現行の工事三線あるいは調査五線というものが先ほども総裁から答弁がございました。訂正された答弁がございましたように逐次でき上がっておるわけでございますが、こういったものに対して工事三線の五十二年度末でどれくらいの人がここに投入されるようになるのか、あるいはまた調査五線が五十四年度で完成したときにはどれくらいの人間がここに配置転換されていくのか、こういう点についてはいかがでございましょうか。
  76. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 新幹線の要員につきましては今後の問題でございますので、列車の計画その他いろいろ配置のしかたといったようなことできまってまいりますし、もちろん組合という相手もあるわけでございまして、今後の問題としてまだはっきりした数字は得ておらぬというのが実情でございます。  それからなお、その先に開業を予定されますものにつきましては、御質問があったと思うのですが、この計画でいきますといわゆる五十四年以降になることでございますが、かなり大きな投資計画も含んでいる。それからいろいろな技術革新といったようなものも期待できるというようなことでございますので、そういったようなもの等の進め方と見合って、それからまた在来線の要員配置なんかとの見合いもあるわけでございまして、そういったものを検討しながらまかなっていけるというふうに考えております。
  77. 松本忠助

    松本(忠)委員 そうしますと、確定的な数字というものはまだ掌握していない、こういうふうに理解していいわけですね。
  78. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 現在の三線につきましてはもちろん十カ年計画の中には見込んでございますが、はっきりした数字はいままだつかんでおりませんということでございます。
  79. 松本忠助

    松本(忠)委員 それはそれでいいでしょう。  総裁、私去年の会議録をいろいろずっと検討しておりましたら、去年の四月十九日の会議録にこういうくだりがあるのですよ。私の質問に答えられまして、年齢構成を五十六年度では四十歳以上が四八%、五十九年度になると三六%に減る、六十年ごろになると三〇%に減って、やっとピラミッドのような形になってまいります、こういうふうな御答弁があるのですが、覚えていらっしゃいますか。これは年齢構成として理想の形だというふうにおっしゃったのですけれども、この点はどうでしょう。私は年齢構成としてはやはり円筒形の構成が正しいのじゃなかろうかというふうに考えておるわけですが、総裁、昨年の御答弁はピラミッド型になるのだ、こういうようなお話なんですが、これはどういうふうに理解したらいいのでしょうか。
  80. 磯崎叡

    磯崎説明員 企業の年齢構成はいろいろ見方があるようにいわれております。私のほうのずっと過去の例をとってみますと、平常時には年齢的に大体ピラミッドになっておるということの一つの理由は、鉄道のようにわりあい労働集約産業になりますと、どうしても一人のボースンを中心としてそれに数名の人がつくという形の仕事のやり方になると思います。したがって大体ボースンが中年以上でその下につく人が若い人ということになりますので、仕事のやり方自身が大体ピラミッドで仕事をしていくという形になっていくと思います。もちろん管理部門のようにそうでないところもございますが、大体現業は一人の中心があって、それに数名つく。ですから年齢的に中心の人が高年齢で、それのまわりにいる人が若いということで、その業務をこまかく分けますと、大体みんなピラミッドで仕事をやっておるという形でございます。これが労働集約産業でなしに装置産業になってまいりますとだいぶ変わってまいりますけれども、一応いまの近代化、合理化のテンポでまいりますと、やはりピラミッド型の人員構成は五年、十年の間にはそう根本的に変わらないのじゃないかというふうに考えられます。たとえば同じ産業でも、キーパンチャーをたくさん使うところはいま先生おっしゃった円筒が一番いい。しかし私のほうはいま労働集約をいたしまして、人をたくさん使うところでは中心の人がいてそれにぶら下がるというかっこうになりますので、自然的に仕事のやり方自体がピラミッドでやっておるというために年齢構成もピラミッドになってくるということで、過去の例から申しましてもやはりピラミッド型というのは減耗の面から考えましても姿としては一番いいんじゃないかというふうに考えております。絶対的なものではないと思いますが、そういう考え方もあるということでございます。
  81. 松本忠助

    松本(忠)委員 一つの職場とすれば当然そういう形がとられることはあたりまえであろうと私も思うのですけれども、ちょっとその点についての理解が足らなかったので伺ったわけであります。  そこで五十八年度以降になりまして、それからさらに六十年度ごろになってまいりますと、現場で働くいわゆる高校卒業生というものを国鉄が採用することがなかなかむずかしくなる時代が来るのじゃなかろうかと私は思うのです。だんだん教育の程度が高くなっておりまして、ネコもしゃくしも大学大学ということになってまいりますし、なかなか高校卒業そのままずばり国鉄に就職されるという人が少なくなってくるのではないか。ほんとうに国鉄考えておるような募集が完全にできるか。若い人を募集できなくなってくる。現場で働く人たちを募集できなくなってくると、国鉄としてもたいへん困る時代が来るのじゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。こういう点に対しまして、たいへん人減らしに苦労しておる一方では、今度は人を集めるほうで次の若い時代、これを集めることがたいへん困難になるのじゃなかろうか。こういう時代が私は必ず来ると思うのです。特に現場仕事というものについてはいまの若い人たちはあまり好ましく思いません。かつておじいさんの代から国鉄につとめたから私も当然国鉄にいくのだ、こういう人はなくなっているわけですね。そういうことを考えますと、これから先国鉄がほんとうにそういう若い人たちの募集が完全にできるかどうか。これが充足できなかったときにはまた国鉄としては新しい大きな問題をかかえることになると思うのです。こういう点についてどうでしょうか。
  82. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 将来どうなるかという問題でございますが、いま現在でも国鉄の最下級職と申しますか、非常に単純な労務作業に従事している職なんかにつきましては非常に問題があるわけでございます。だから、先生のおっしゃるように、将来ますますそういうことになるだろうということは当然私どもも予想しておるわけでございます。したがって、ただいま総裁申しましたように、労働集約型からできるだけ機械化、そういったことをやりまして、底辺の仕事をできるだけ除いていく、人のいやがる仕事を除いていくという形をとっていくのが私どものいまの合理化計画の中にかなり含まれておるということでございまして、そういう姿をとりながら、底辺の仕事よりやや高度な仕事に人をどんどん当てはめていけるというような形にするということが私どもの理想だというふうに考えておる次第でございます。
  83. 松本忠助

    松本(忠)委員 人間の問題については、当初より申し上げましたように、いろいろ問題をはらんでおりますし、常務といたしましてもずいぶんと御苦心のあろうこともよくわかるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、国鉄再建のかぎというものが人間の問題にあるということはもうさっきから何べんも申し上げているわけでございますので、この点について十分今後の国鉄再建のための配慮がなければならないと私は思うわけでございます。  そこで、実はいろいろと新幹線の問題あるいは長期収支の問題についてもう少しお尋ねしたいと思っておりましたけれども、若干ここで——警察庁いらっしゃいますか。お約束の時間もございますので、問題を間にはさみましてひとつお答えを願いたいと思っております。  実は、この問題は当今ちまたにおきましても非常に問題になったコインロッカーの問題でございますが、この問題について警察庁からおいでいただいているわけでございます。ほかの問題のほうはまだちょっと関連がございますが、この問題についてのみ、奥秋防犯少年課長見えておりますし、約束の時間も迫っておりますので、先にこの問題を取り上げてみたいと思います。  これは私どもがかねがねからよく言っているサービスの問題でございます。私どもは、国鉄がほんとうに国民の足としてサービス精神に徹するならば、こういう問題は何の制約も受けないで国鉄自身の努力によって解決できる問題だから、どうしても早くやらなければいけないのじゃないかということで、しばしば申し上げてまいりました。コインロッカーの問題についてもそうでございまして、この問題については、私ども四十六年以来言い続けてまいったことでございまして、こうして今日事故が続発してまいりますと、国鉄がほんとうに誠意をもってやっていてくれたならば、これほどまで事故は起きないで済んだのではなかろうかというように悔やまれる次第でございます。  御承知のように、最近新聞紙上にコインロッカーが赤ちゃんの死体の捨て場になっているというような記事がひんぴんと載りました。先般関西、中国、九州方面に秘書を出張させまして調べて見ましたので、その内容について少し触れてみたいわけでございますが、一般的に直営のロッカーというものは、管理運営を国鉄が業者に委託しているものより悪いという事実が出てまいりました。これは広島駅におけるところの直営分について申し上げてみますと、コインロッカーの使用約款がロッカーの中にあります、こういうふうに明示されてございます。ところが、どの箱にも、そのコインロッカーには入っておりませんし、また付近に一枚も張ってないわけでございます。中に使用約款を持ち帰りできるようなボックスがありまして、昔はおそらくそこに入っておったのではなかろうか、使う人がそこから一枚ずつ約款を引き出して、持ち帰って十分検討できるという設備になっていたのではなかろうかと思うのでございますけれども、実は私どもが調査いたしました時点におきましては、こういうものは全然入っておらない。しかも、約款そのものは付近にも張ってない。これは広島駅の直営の問題でございます。これは事実ここに写真をとってきてございますので、ごらんをいただければわかるわけでございますが、昭和四十五年五月に広島駅ではこれを設置しております。しかし、ここにも書いてございますように、使用約款はこの中に書いてある、約款はロッカーの中に入っておりますというようなことがはっきり明示してあるけれども、何もそれはないということですね。こういう問題が直営の部分に出てきているわけでございまして、これは事実四十五年五月に設置した。その後全くこれに対して何の手も加えていなかったのじゃなかろうか、こういうふうな気がいたします。  それから小倉の日本交通観光社のロッカーについていいますと、事故のあった場合の連絡先が戸畑駅の北口の日本交通観光社、こういうふうに書いてございます。これも写真をとってございますので、見ていただけばわかるのでございますが、そうなりますと、小倉にありまして事故があったときには、戸畑の北口の日本交通観光社に来いということなんですよ。あと何も書いてない。事故が起きなければいいですけれども、事故が起きますと、汽車に乗ってわざわざ戸畑まで行かなければならないということになる。住所も電話も全然明示されていないわけです。これはどうも少し利用者を愚弄しているのじゃなかろうかと私は思うのです。具体例は幾らもございますけれども、使用の方法がわからないとかいう例も非常に多うございます。使い方がわからない。門鉄管内の資料では、これは四十八年の四月二十三日のものをいただいてまいりましたが、四十七年度の実績でございます。これによりますと、博多の駅ではジャパンエキスプレスが営業しておりまして、日食の横、南コンコース、それから北口の一時預かり所の三カ所に五百五十六個のコインロッカーが設置されております。ところが四十七年度中に旅客からの申告によって係員が取り扱い方について説明または指導した件数が二千五百二十件、一日七回平均、こういうふうな数字が出てくるわけで、この実績をちょうだいしてまいったわけでございます。二千五百二十件博多においてはございます。こうなりますと、やはり使い方というものに対しての徹底を欠いているのじゃなかろうか。使い方のわかった人ばかりはいないわけですね。使い方のわからない人もいる。そういうわからない人に対してどうしてわからせることができるかという問題がある。それから誤扱い、機械等の故障等によってとびらを締めることができないとかあけることができないとかいうような問題が千四百四十件あった。そうして十四万四千円の払い戻しをしておるというような事実もございました。  そこで、こういうことを防ぐためには監視体制といいますか、見回りでもいい、あるいは使用方法を教える人でも何でもけっこうでありますが、とにかくコインロッカーの周辺に特定の人が立っている、あるいは回っているということになりますと、これはずっとずっと防げるのじゃなかろうか、こう思うわけでございます。博多の場合はジャパンエキスプレスが担当しておりますが、ここは三交代で見回りしている、これは非常にいいほうでございます。しかし岡山駅では岡山鉄道荷物株式会社の事務員が昼間だけときどき巡回している。それから小倉の駅におきましても広島におきましても小荷物一時預かり所の職員が業務の合い間を見て見回られておる程度でございます。あとは全く皆無といっても差しつかえない。これはやるべきものか、やらなくてもいいものかという疑問が出てきたわけでございます。こんな状態でございますから、小倉駅の北口のコインロッカーにつきましては、弘済会の売店からも改札口からも見えるところにありながら、二十個のうち五個も破壊されておるという現状でございます。そうなりますと、これは安心して格納することができない。こういうふうなことが一わたり見てまいりまして出てきた結果でございます。  そこで、お尋ねいたしたいのでございますが、国鉄の直営のコインロッカー、あるいはまた弘済会等々に場所を貸しておるもの等について一体どのくらいの数があるのかということでございます。日本全国でどのくらいの数がコインロッカーとして国鉄の管理下に置かれておるのかということでございます。
  84. 速水信一

    ○速水説明員 お答えいたします。  直営で現在行なわれておりますロッカーが二千五百五十二個、それから構内営業として部外業者に行なわせておりますのが二万八千二百八十一個でございます。以上でございます。
  85. 松本忠助

    松本(忠)委員 直営が二千五百五十二、構内営業が二万八千二百八十一、そうしますと三万八百三十三個ということになりますね、全体で。そういう数が国鉄の管理下におかれているもの、すなわち、国鉄の駅の構内に置かれている、こういうわけでございますね。この間毎日新聞の五月の六日の報道によりますと全国で六百五十九カ所で、六万八百六十個、五月二十一日、NHK、夜の九時半のニュース特集では六万一千二十五個、いずれも六万台です。そうしますと、この差額というものは国鉄以外の場所というふうに理解しておるのでありますけれども、この確認の方法がないわけでございますけれども、局長、この差額の約三万個というもの、これは私鉄のものでございますか、それともまた、警察庁のほうで何かこの資料を握っておられますか。
  86. 奥秋為公

    ○奥秋説明員 お答えいたします。  先生おっしゃいました全国で六万というものは、内訳を申しますと、私のほうでもってこれを調査するときに、国鉄と私鉄とそれからさらに地下街において、国鉄私鉄に連結しているような商店街、それからバスターミナル、そういう個所を一応含めて調査いたしました数が約六万という数字になっていますので、以外は大体私鉄というふうにお考えになっていただいてけっこうだと思います。
  87. 松本忠助

    松本(忠)委員 わかりました。日本全国で私鉄あるいは地下街とか、そういうところにあるものまでを含んだ六万個ということでございますね。しかし、全体の中で約五割これを占めているのが国鉄でございますし、国鉄がこの問題に対しては十分いろいろの対策が練られなければならないものだろうと私は思うわけでございます。そういった点から伺いたいわけでございますけれども、この三万八百三十三個の国鉄の管轄にあるもので収入は一体どれくらいあがるものなんでしょうか。
  88. 速水信一

    ○速水説明員 営業者の収入が十七億六千万で、そのうち国鉄へ入っておりますのが十億七千万、それからそのほかに直営になっておりますのがございますが、これが約一億三千万でございます。
  89. 松本忠助

    松本(忠)委員 ちょっと速水さんに伺いますが、私はいまうっかり書き漏らしましたが、直営が幾らですか、一億三千万とか言いましたね。
  90. 速水信一

    ○速水説明員 さようでございます。一億三千万、それから部外にやらしておりますものが、部外の収入が十七億六千万で、そのうち国鉄へ入っておりますのが十億七千万。構内営業用として国鉄が所得しておりますものが十億七千万、したがって、国鉄の収入といたしましてはいまの十億七千万と一億三千万足したもの、十二億でございますね、これが国鉄収入である。こういうふうに御理解願いたいと思います。
  91. 松本忠助

    松本(忠)委員 わかりました。いずれにいたしましても、そうしますと十二億からの収入があるというわけですね。コインロッカーによって十二億の年収がある。十二億のうち構内営業の十億七千万ですか、十億七千万というのは要するに国鉄で場所を貸しておくわけですね。そこであがる収入ですね。それはいろいろいなかの駅もあれば都心部の駅もあると思います。相当活用されているところと、あまり活用されていないところとあると思いますが、そういったものの十億七千万というものはどういうランクといいますか、それによって収入が国鉄に入ってくるようになっているのですか。直営のほうはわかります。直接国鉄が経営しているもの、機械を設備し、そして直接お金が入ってくる。一方、構内営業のほうの十億七千万、これのほうの収入はどういうふうな形によって国鉄へ入ってくるのですか。
  92. 速水信一

    ○速水説明員 お答えします。料金の取り方の計算の基礎を申し上げることだと思いますが、現在のルールといたしまして、やはりロッカーの関係業者の経費というものは一カ所に相当まとまっているところと、それから少数の口数しかないところと当然経費の率が違いますので、これはあるルールでもって何個以上まとまっている場合とまとまっていないところと段階をつけまして、一つの経費の段階をつけておる。それから基本的に利潤あるいは管理費というもの、これを一律で引きます、これを差し引いて、国鉄が所得するものをきめております。こういうやり方をしております。
  93. 松本忠助

    松本(忠)委員 そうしますと、もう少し具体的にいうと、駅に設置されている数あるいは使用の回数等々によって、一応駅別にでもランクがきめてあるというわけですか。
  94. 速水信一

    ○速水説明員 現在、駅別まではきめておりませんが、一カ所の個数のまとまり方、これによってルールをきめておる、こういうことでございます。将来、回転率——駅によって相当回転が違いますから、そういうほうにさらにこまかくランクをつける必要があるかと思っておりますが、現状はまだそこまでいっておりません。まとまり方によってやっておる、こういうことでございます。
  95. 松本忠助

    松本(忠)委員 わかりました。構内営業のほうの金の取り方についてはいろいろ問題があろうと思いますけれども、このコインロッカーそのもので国鉄が直営でやっているものはもうかっているか、損しているかということです。これはどうですか。
  96. 速水信一

    ○速水説明員 これは現在人件費の関係が、先ほど先生からもお話がありましたように、いろんなかけ持ちでやっているという面もございまして、正確にはまだ把握しておりませんが、やはりもうかっておる。ですから委託しておるものももちろんもうかっておるわけでございます。直営のものももうかっている、こういうふうに申し上げられると思います。
  97. 松本忠助

    松本(忠)委員 私の調査によりますと、コインロッカーの機械そのものが十万見当だということなんです。これはいろいろあるだろうと思いますけれども、そういう話を聞きました。これは駅の回転率というものが一日に二回ないし三回回転される。そうすると一台について四個ついておりますので、一日に千円あがるという計算をしておるのですね。百日で十万円ですよ。そうすると大体三カ月ないし四カ月でもとが出てしまうという計算なんですね。コインロッカーは非常にもうかるものだ、こういうことです。いまも速水常務理事お話にも、もうかるというふうなお話でございます。それほどもうかるものを、直営にしたほうがいいのではないか。全面的に直営にして、国鉄がやるべきじゃなかろうかとも私は思うのです。その点どうですか。
  98. 速水信一

    ○速水説明員 いま二、三回転というお話がありましたが、これは東京駅とかその他大都会の大きい駅は、確かにそのぐらい回転しておりますが、現状、全国平均しますと、地方はそんなに回転よくありません。全国で平均いたしますと、二回転弱という感じでございます。  それから将来、全部直営にしたらどうかという御意見も確かにあると思います。国鉄部内でもいろいろ議論しておるのでございますけれども、やはり現状ではこういう仕事、将来のことも考え国鉄の人を減らしていく。やはり退職者が、第一線をやめてからこういうものの見回りその他をするのは適当な仕事である。それからいま一つ、料率からいっても、確かに二、三年前までは利用率が低くて——利用率が低かったのは、これは一つはこれを普及しようということで安くしてあったわけであります。いまや利用率六割ぐらいになってきたわけです。これをさらに今後上げようという感じもしております。そうすると、そこに適正な利潤はあがるにしても、そんなにもうかるものではない、こういう段階にいまや入ってきたとわれわれは考えております。  以上でございます。
  99. 松本忠助

    松本(忠)委員 もうかる、もうからないにしましても、国鉄の大きな収入から見ればそれは微々たるものかもわかりませんけれども、やはり私は、そういったことで国鉄自身がやって、そしてもうかる、しかもまた喜んでもらえることであったら、こういうものに対しても手をそめていいだろうと思うのです。いわゆる構内営業にだけやらせておく、そして構内営業のほうが十億七千万ですか、実に九倍、十倍に近い数字をあげているわけでございますから、全体で十二億の収入をあげることができるという点を考えてみれば、やはりもう一くふうあっていいのじゃなかろうかと思うわけでございます。  そこで、実は大阪へ参りまして大阪鉄道管理局の事業課に管内の分を調べてもらったのです。それによりますと、こういう数字が出てきたのです。二十二駅で千五百七十一台、六千二百八十四個だというのですが、その収入が直営分で二億五千四百十九万八千二百円、こういうわけです。先ほど常務理事が答えられたのは、直営分が一億三千万というが、大阪の分が、直営分の収入が二億五千四百万だ、なおそのほかに鉄道弘済会、ジャパンエキスプレス、鉄道荷物等に貸しているのは、これはわずかでございますけれども六千八百万、それからリース会社の分が七千五百万、その他合計すると四億二百四十八万、こういうふうな数字になっているのです。いま申し上げましたようなこの大鉄管内の二億五千四百十九万八千二百円というのは、駅別の数字ももらってきましたので、それと引き合わせても間違いないわけですが、速水常務理事が言われました一億三千万と大鉄の関係の直営分の収入の二億五千四百万というのは、これはどういう関係なんでしょう。
  100. 速水信一

    ○速水説明員 大阪鉄道局管内は全部部外にやらしております。大阪鉄道局管内は、直営はございません。
  101. 松本忠助

    松本(忠)委員 そうしますと、この大鉄局でよこしましたこの数字は、直営分としてあるのですけれども、これは違うのですか。直営ではないのですか。
  102. 速水信一

    ○速水説明員 それは後刻調査してお答えさしていただきます。大鉄のほうを調査いたします。われわれの調査では、大鉄は全部部外ということになっております。
  103. 松本忠助

    松本(忠)委員 後刻調査をされるというのでしたらその御意見も承っておきますけれども、少なくとも、この大阪鉄道管理局ではここにはっきりと書いてよこしてあるのですよ。それでは一応後刻調査してください。私のほうの言い間違いか、あるいは大阪鉄道管理局の二億五千四百万という数字が直営じゃないのか。この辺のところの違いはひとつ調べてみた上でお答えを願いたいと思います。  それでは、私どもかつて駅構内のサービス問題をやりましたときにも、四十六年九月十四日の第二回の会合のときにも、コインロッカーの使用方が不案内だ。だから改善しなさいと御注意をしたわけでございます。その当時の事業局の長谷川次長から御返事をいただいたわけでございます。ここに回答書がございますけれども、この回答書によりますと「コインロッカーの取扱方についての案内(1)東京大阪ともに、ロッカーの上から二段目の扉の表面に「カギのないのが使用中です」という表示をしました。」それまでは実はなかったわけです。「(2)そのほか大阪、新大阪及び京都駅のロッカーについては、使用していないときは扉を外側に約二・五センチメートル開いているように改良しました。」こういったことを長谷川次長がやってくれたわけでございます。しかし、その回答を持ってこられたときに、私はこういうことを言ったのです。これははっきり私も覚えておりますけれども、いわゆる国鉄の構内というものは道路と同じだろう、道路の延長のようなものだ、これが悪の温床になっては困るから、それを防止する意味からも使用方を表示してくれ。と同時に、わからぬ人もいるだろうから、指導員というか巡回員というか、そういう者を置いてはどうだ。こういうことを私言ったわけです。言ったわけでございますけれども、なかなか実施が完全ではなかったと思う。そうしているうちに今回いろいろと事故が起きてきたわけでございます。  事実コインロッカーのかぎというもの、これは時間をかけてこのかぎをつくれば、あけることの可能なこともあるということを聞いております。ただ安っぽいかぎではできません。しかし自分でかりに百円入れて、そうして何か品物を入れておいて、自分がかぎを持ってくる。そうしてかぎの職人に頼みますと、十分この完全な、精巧な合いかぎができるということですね。最近のコインロッカーは、やってもなかなかあかないようになっている、普通の安い、三分間ぐらいでできるようなかぎではあかないのだそうでありますけれども、精巧なかぎならば十分あくという。ですからそれは、自分がかりに百円入れて持ってきて、十分時間をかけてつくればそのかぎであけることが可能なんです。こういうことがいえるわけです。そうなりますと、今度は自分がそういうかぎをつくっておいて、何番、何番ということは自分でちゃんと覚えている。そうして、そこへ何か金目のものでも入れたというようなことがわかったときには、自分がその周辺におるわけです、立ち去ったのを見てよしといってあけて持ってくるという盗難が、これも当然可能なわけですね。こういう点を考えまして、どうしてもこの巡視員というか監視員というのかを置かないと、やはりそれが置いてあれば気がとがめるといいますか、そういう人も少なくなるだろうと思う。しかし、そういうふうな合いかぎをつくるということも可能であるとするならば、私は盗難防止のためにやはり監視員を置くべきではなかろうか、こういうふうなことをたびたび言ってきたわけでございます。先月末の九州方面あるいは中国方面を見ました結果でもこのことが十分いえるわけで、非常にずさんな管理があるということは先ほども申し上げたわけでございます。  そこで駅の構内、特に私知っておりますのは、赤羽駅の構内のごときは、全く外へ一晩じゅう出しっぱなしですね。コインロッカーそのものが、要するに駅のコンコースの中で、外のとびらが締まってしまうならいいのですけれども、赤羽駅のごときは全く路上にあるのと同じです。小荷物一時預かり所のそばにございます。そこは全面的に戸が締まらない、外に置いてある。こういうものはいつ何どきそれをやられないとも限らぬわけであります。そういうことを考えますと、このコインロッカーの事故というもの、国鉄の構内に置いてあるから、国鉄がやってくれているのだからわれわれは安心して頼んでいるのだ、百円を投入し、そうして使わせてもらっているのだ、ところがそれがいつの間にか合いかぎをもってあけられてしまうということもあり得るわけですね。こういうことを考えましたときに、責任問題というものを考えてみたときに、一体これはどこに責任があるのだろうか、こういうことになるわけであります。直営にいたしましてもあるいは委託にいたしましても、駅の構内に置いてあるというところから、一般の方々はずいぶん信用をして使わせてもらっているわけです。そういう点を考えてみたときに、この責任問題はどういうふうにお考えになりますか。まず国鉄側から、そうしてあとで警察庁のほうから伺いたいと思います。
  104. 速水信一

    ○速水説明員 約款上では貴重品について業者が責任を持つ、こういうことを明示しておりますから、法律上はあるいはないかもしれません。しかし心理的、道義的にはやはり国鉄も十分それは責任を感じ、注意しなければいかぬ、こう思っております。
  105. 奥秋為公

    ○奥秋説明員 一応他人のものを預かるのですから、やはり責任問題としましては、道義的に考えれば、いまお話しになったように当然預かったほうが責任を負うべきだと思います。さらにその責任を確立するために、当然必要な措置はとるべきだ、こう思います。
  106. 松本忠助

    松本(忠)委員 当然金は先に取っておるのですから、その責任が全然ございませんということではないと思いますけれども、確かに約款を見る限りにおいては責任はないといっているのですね。しかしやはり国民とすれば、国鉄というある一つの大きな土台を持った公共機関、国鉄の構内にあるからということで安心して頼むわけだ。もちろん道義的な責任がおありになるといまおっしゃったわけですが、約款の面では確かにないわけです。そこで広島の場合のように約款を見ることができなかった場合に、事故が起きたときに一体どうなるんだろうかということですね。もし広島で事故が起きたとすれば、おれは約款のあることは知らないよと言われましたら困るわけですよ。これは一体どうなるのですか。
  107. 速水信一

    ○速水説明員 ただいま広島で約款があるべきところになかった、これは私存じませんが、かりに先生がおっしゃったとおりだとすれば、これはないのですから、それを置くべき責任を持った業者がやはり責任をとらざるを得ない、こういうふうに考えます。
  108. 松本忠助

    松本(忠)委員 業者が責任をとらざるを得ない、こうなるわけですね。直営の約款とそれからいわゆる構内営業の方にやらせている約款は同じですか。それとも違うのですか。また、あるいはこの約款をきめたきめ方といいますか、これはどういう経過をたどってこの約款をきめたのでしょうか。
  109. 速水信一

    ○速水説明員 ただいまお話しの約款をきめた経緯ということは、私ちょっと過去のことでいきさつをよく存じません。しかし今回いろいろのことが起きましたので、徹底的に国鉄も警察庁の御指導を仰ぎましていろいろ審議し、国鉄関係の全般を通じる約款を今度新しく定めることにいたしたい、こう思っております。
  110. 松本忠助

    松本(忠)委員 そういたしますと、いままでの約款をきめたときの経過は知らないけれども、約款に不備があるということがわかった、だから今後警察庁のほうと十分検討して新しい約款をきめるんだ、こういうことですね。そうしますと、いままではこの約款については全く一方的にきめられていたわけですよね、そのきめた経過を常務理事も知らなかったというわけですから。これはちょっとどうも私はけしからぬことじゃないかと思うのですよ。やはり事業局長として当然のこと、そういう約款がどういう経過をもってきめられたのかということくらいはわかっておらなければならぬと思うのです。全国に三万台くらいのものがあって、それによって十二億からの収入をあげている。それにもかかわらず約款がきめられた経過がわからない。こういうことではどうも私は残念に思います。しかしながら、今後これを直していこう、そのために努力しよう、こういうことでございますから一応私は了といたしますけれども、これはどうも少し不見識であると思うのです。  そこで、自分が預けてかぎをなくしてしまった、こういう場合直ちに届け出ることができなかった。そうするとそのおっことしたかぎを拾った悪い人が、かぎを届けるどころか中身まで持っていってしまったときの損害賠償の問題はどうなるのでしょうか。
  111. 速水信一

    ○速水説明員 それも約款上損害賠償の責めを負わないということになっております。
  112. 松本忠助

    松本(忠)委員 約款上は負わないということでありますけれども、なくしたのが悪いといえばそれまでの話です。かぎを自分がおっことした、これは不注意です。しかしそれによって盗まれてしまった、これは盗まれ損、こういうことですね。では、それをしめし合わせてかぎをなくして、他人が盗み、正当な使用者が損害賠償を求めるということも考えられるのですけれども、その場合でも損害賠償には絶対に応じないわけですね。
  113. 速水信一

    ○速水説明員 それもやはり同様に、損害賠償の責めに応じないと思います。
  114. 松本忠助

    松本(忠)委員 とにかく約款上は絶対に国鉄側で損をしないようになっておるわけですね。絶対責任を負わない。道義的には責任を感じますけれども、責任は負いません、こういうことですね。そうするならば、合いかぎを使用しても絶対あかないロッカーというものがあるというのです。それがあるならば、私はすべからくそういうものに統一すべきじゃないかと思うのです。それをしないと、これは全く盗まれ損です。国鉄では何の責任も負わない。おまえさんたちはかってにおれたちがここに設置したロッカーから、自分が入れ、自分が持っていったんだ。だから責任を負えない。当然だと思うのです。それも言い分です。たとえば格納する場合にだれも立ち会っていないわけです。中に三億円入れておいたんだ、なくなった、どうしてくれるんだと言われても、これには責任を負えないという意味もわかります。しかし合いかぎを使用しても絶対あかないロッカーがあるんだ。このかぎはなかなか精巧なものだ。こういうものがあるとしたならば、私はそういうものに統一すべきじゃないか、こう思うのですけれども、その点常務理事どう思いますか。
  115. 速水信一

    ○速水説明員 現在国鉄関係のコインロッカーの機器は国鉄が直接買うのではなくて、国鉄の直営のものは国鉄で買っておりますが、関係業界でやっておりますものは、それぞれの会社が買っておるわけでございます。私、業界の方からまた聞きでございますのであるいは不正確かもしれませんが、小さい会社、一、二の微々たるものは別として、大勢は二社でございます。それぞれ日進月歩のそういう機構の進歩、それぞれ応じて進歩してきておるわけでございます。現状において確かに差が片一方あるようでございますが、やはりそれは将来十分な競争によってその技術を進歩させていったほうがいいんじゃないか、こういうふうにわれわれ考えておる次第でございます。
  116. 松本忠助

    松本(忠)委員 これは昨今非常に事故が起きますだけに、私はいろいろな角度から検討してみましてお伺いしておくわけであります。やはりこれを使っている人は、国鉄の構内にあるからということで安心をして使っておるわけです。それがたいへんに不幸な状態を生んでおることも事実でございます。そうしたことから私はいろいろな面で質問するわけでございますけれども、五月八日の時点で見てまいったのですが、京都駅のコインロッカーには貴重品は入れないでください、こう書いてある。それまでなかった。今度帰りに見ると貴重品は入れないでくださいと京都駅だけ大きな掲示が出ておるのですけれども、これは京都駅の独断でやったことでしょうか、それとも上級局からの指示によってやったことでしょうか。
  117. 速水信一

    ○速水説明員 それは京都駅の判断だと思います。
  118. 松本忠助

    松本(忠)委員 ちょっと伺いますけれども、貴重品というのは一体何ですか。貴重品といっても、なかなか所有者の感覚によりまして非常にむずかしい表現だと思うのです。責任回避の一方法として、貴重品は、こういうことになっておると思うのです。との貴重品の定義というものはどうなんです。
  119. 速水信一

    ○速水説明員 これは別に定義というわけにいかないので、やはり社会的な一般的常識、こういうふうに御理解願いたいと思っております。
  120. 松本忠助

    松本(忠)委員 とにかくこの京都駅がこういうことを書いたということは、一つ責任のがれともとれますし、また同時にコインロッカーの有効な使用法ということについてもいろいろ研究した結果、京都駅としてもこれをやられたと思うのです。これがいいとするならば、やはり全国的にこういうふうに貴重品は入れないでくださいというのも一つの方法じゃないかと思うのです。  そこで問題は使用期間でございますが、使用期間というのはロッカーによりますと、ロッカーの使用期間は使用開始の日から四日以内とする、こうあります。先般、五月二十一日の夜のNHKのいわゆるニュース特集では四日というのもあります。それからあるいは十五日間あるいは三十日間、無制限というふうにまちまちな使用期間がございました。こういうふうに話を伺いました。事故防止の観点からいいますと、また事故を早く発見するためには、使用期間を短縮すべきじゃないかと私は思うのです。全国的に国鉄のものは大体四日のようでございますけれども、それ以外のものにはいま申し上げましたような無制限のものもあるようでございまして、こういうことは非常にこれから事故を未然に防ぐためにはどうしても使用期間というものを最低限にしばってしまう、こういう必要があると思いますが、この点について国鉄並びに警察庁としてどうお考えになるか、使用期間の点についてお答えを願いたいと思います。
  121. 奥秋為公

    ○奥秋説明員 使用日数制限につきましてはまさに先生の御指摘のとおりだと思います。  それで国鉄さんのほうにつきましても、現在四日と五日というのが二通りあるわけですけれども、できるだけこれを極力縮めるようにできないかということで御相談申し上げておるわけです。  それから先ほど先生が申されました十五日あるいは無制限というような点につきましては、これは私鉄が大体一日から十五日間までのものを使用制限として定めておるというふうな実情です。それで私のほうは各県の本部長に、実態がわかりましたその時点で一応通達を出しまして、この使用日数制限につきましては、ひとつ関係者とよく話をして極力二日程度に縮めるよう御努力願いたいということでいまやっておりますので、おそらく短縮になると思います。
  122. 速水信一

    ○速水説明員 確かに事故防止上日限を短縮するということは一つの効果ある方法だと思います。しかし、一方では現在国鉄関係のコインロッカーを使っているお客さんというのは、延べで約千八百万人に及ぶ。大部分の方は善良なお客さんであって、やはり便利なものが使えるということで爆発的に需要が伸びておるということでございます。また現在の使用状況を見ても、ある程度四日ぐらい使っておられる方もけっこうある。その方々の便宜も考えねばいけないということで、いろいろ警察庁とも御相談し、結論を申し上げますと、四日ないし五日を今回三日にする、こういうことにいたすことにいたしました。
  123. 松本忠助

    松本(忠)委員 国鉄のほうは三日にするということですね。私鉄のほうがまだ十分できないわけでございますけれども、私鉄に対して警察のほうで国鉄にならって三日にするというようなことで言う御意思はございましょうか。
  124. 奥秋為公

    ○奥秋説明員 先ほど私が申し上げましたように、この使用日数制限につきましてはできるだけ短縮するのがベターだと思います。それで国鉄さんと相談しましたときにも結局これはあといろいろ人の問題がからみまして、現段階においては一応三日ということであるけれども、極力これも短縮するというふうに実はお願いしているわけなので、私のほうとしては私鉄につきましては当初私が考えておりましたように二日でもってやはり交渉していただく、そういう線は変えたくない、こう思っております。
  125. 松本忠助

    松本(忠)委員 それから約款の10に「使用期間経過後の処理」というのがございまして、「使用期間を経過しても使用者がロッカーを返還しないときは、当会社は収納品を引き出して他の保管設備に移すものとする。この場合、保管中の料金は、当会社所定の料金に保管日数を乗じた金額とする。保管後二ケ月を経過しても引取りのないときは、当会社は保管品を処分してその代金をもって保管料金その他に充当することができる。」要するに二カ月を経過した、こういうふうになっているわけでございますけれども、二カ月もたちますと、なかなか相当のものが出てくると思うのですね。しかし、二カ月というと、やはりこれを二カ月ほんとうに預かっておいていいものか、大体あらわれてこないときには二カ月間預かっていいものか、あるいはまたこれを期間を短縮したほうがいいものか、こういうところに対する検討はなさったんでございますか。
  126. 速水信一

    ○速水説明員 今回この点も警察庁のほうに御相談いたしまして、二カ月を三十日にいたしますことにいたしました。  それからいま一つ。先ほど大阪の御報告の点でございますが、これはやはり全部直営はございません。もし大阪のほうでそういう報告を万一いたしたといたしますれば、それはたいへん間違いでございまして、申しわけないと思っております。
  127. 松本忠助

    松本(忠)委員 二カ月のものを一カ月にするというような答弁でございますし、警察庁のほうもこれは了承しているわけですね。——わかりました。いずれにいたしましても、このコインロッカーの問題、私どもが最初に手がけたときよりだいぶん日がたちました。しかし、どうしてもこのコインロッカーの事故というものを防止するためには監視員というか常置員というか、そういう見回りの体制というものがないと、これはどうしても事故が起きやすいのじゃなかろうかと思いますが、こういう点に対してはどのようにお考えでございましょうか。
  128. 速水信一

    ○速水説明員 いままで常置員がいないわけではございません。おりますが、見回ってないということは事実でございます。この点につきましては現代の人がコインロッカーに入れるというのは人にあまり見てもらいたくない、こういう気持ちが非常にあるわけでございます。これは現代人の心理状況でございます。そしてやはりコインロッカーの現代的性格からいえば、本来置かないほうが好まれる。全員ではございません。また人によっては教えてもらうためにおったほうがいいという方もあります。しかしそういう傾向があったわけであります。しかしこのように悪用する人が出てこられるのでは、そうは言っておられません。しかし今回一方において関係業界においても見回りを強化せよ、こういうことになりまして、それから国鉄の職員の中においても公安職員とか駅関係職員も注意して見回るように、こういう点、二点変えることにいたしました。
  129. 松本忠助

    松本(忠)委員 見張りを置くこと、巡回をすることたいへんけっこうだと思いますが、いまの御答弁の中で公安官をも使うのですか。
  130. 速水信一

    ○速水説明員 公安職員が現在でも駅内を巡回しておるわけでございますね。これは巡回しない駅もございますけれども、大きな駅では巡回しておる。そのときコインロッカーのあたりも注意して見るようにという指導をいたすわけでございます。こういうことでございます。
  131. 松本忠助

    松本(忠)委員 いずれにしましても、公安官には公安官のまた特殊な任務もありますし、大きな駅で駅の構内を巡回することも当然あろうと思います。そういった場合にも気をつけることは当然のことと思いますけれども、これを要するに義務づけする考えなんですかどうなんですか。たとえばコインロッカー百個につき何人置くのだというような、そこまでは考えてはいないわけでありますか。
  132. 速水信一

    ○速水説明員 これは本社といたしまして何個につき何人ということはいたさないつもりです。私どもの地方の関係部長に指示いたしまして、現地の実情に応じて巡回させる、こういうふうにいたしたいと思っております。
  133. 松本忠助

    松本(忠)委員 とにかくコインロッカーというものが、文明の利器ということばが当てはまるかどうかわかりませんけれども、使いなれて、みんな非常に安心して使っている。これも国鉄の構内にあるからだ、こういう国鉄の看板というものが私は非常にあると思います。そこで安全管理、当然盗難事故防止、こういう点から十分これに対する配慮がなされなければならぬと思います。いまさらどうもコインロッカーを全廃してしまうわけにはいかぬと思いますし、やはり一時預かりの代行とし、そしてまた預けるということについても自分がだれの制約も受けないで自由にそういうところへ持っていって入れることができるという点、こういう点も一つの新しい時代に合っているといいますか、そういう点もあるということをこの間のテレビの放送でも見ました。そういう点も見ますと、そういうコインロッカーというものが非常に使いやすくなっているということはけっこうなんでありますけれども、最近高校生あるいは中学の年齢の高い人たち、こういう人たちがそういうところで着がえをして町の中へ出ていくという話もある。こういうことは非常にまずいことじゃないかと思う。それというものも、コインロッカーの置かれてあるところというのが非常に狭いところ、そしてまたあまりはっきりしてないようなすみっこのほう、こういうのがこの間もテレビで指摘されておりましたが、そういうことをなくすためにも、常置員といいますか、見張り員といいますか、そういう方法がわからない人には教えるというか、そういったものを十分置くことを義務づけてしかるべきではないか、こういうふうに思うわけでございます。いずれにしましても、この問題については国鉄自身が努力さえすればできる問題だと思う。先ほどから私がいろいろと申し上げましたいわゆる国鉄再建の論議というようなもの、こういったものはいまの国鉄には全くどうも自分でやりたいと思ってもできないんだ、こういう話がございました。確かに再建の問題については、政府自民党の、それから運輸省のとにかくいろいろなワクにはめられてしまって、自分たちでできない。やりたくてもできないのだ、こういう点があるのだ、これもわかります。しかしこういうコインロッカーの問題等については自分でやろうとさえすれば、努力しようとさえすれば幾らでもできる問題じゃないかと思うのですね。こういう問題についていままで事故が起こるまでおっぽっておいたという点について、非常に私は残念に思います。私たちは、かつてこれを指摘したときから、こういう問題に対しての研究があったならばこういう事故も防げたのじゃなかろうかと残念でならぬわけでありますが、とにかく企業努力ということ、収入を増すということ、こういうためにいま国鉄は一生懸命になってやらなければならないわけです。こういった時期にたとえば十二億であっても金が入ってくればこれは大きなプラスだと思います。そういう意味から、企業努力の面について、もう一歩ももう二歩も、このコインロッカーを一つの契機として国鉄は取り組んでもらいたい、私はこう思うわけでございますけれども、その点について国鉄の当面の責任者でございます総裁から御意見を承りたいと思います。
  134. 磯崎叡

    磯崎説明員 私自身実はあまり関心がなかった問題で、いま伺って非常によくわかりました。いま担当者が申しましたとおり、国民の利益になるように、しかもまた国鉄が収入があがるように、そういう方向でいきたいと思っております。
  135. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは奥秋防犯少年課長さん、退席していただいてけっこうでございます。  それで次の問題でございますが、先ほどから再建計画の長期収支試算、人件費、物件費、要員数、こういう問題についていろいろとお尋ねしたわけでございます。この問題について私は全面的に否定とは言いませんけれども、非常にあいまいなものもあるように伺いました。昨年もこの問題については長時間にわたりまして……。   〔発言する者あり〕
  136. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 御静粛に願います。
  137. 松本忠助

    松本(忠)委員 人件費、物件費について質疑応答をいたしました。数字をあげてやったわけでございます。ことしは——もう以上でやめるわけでございますが、いずれにいたしましても私どもはこのプランというものは机上のプランではないかというふうな、その感じはどうしてもぬぐうことができません。どうしてもこれはつくり上げたものだ。要するに五十七年という時点においてこうなるのだということをひとつ考えて、この五十七年の三千七百九十二億という黒字を出さなければならないのだ。そこに一つの問題を置いて、そこから逆算してきてこれをつくっているのだとしか思えないわけです。こういう点は全く意見の相違でございまして、そして自分たちはそうではないと言うかもしれません。しかし私どもはあくまでもこれはペーパープランだ、こういうふうに言っておるわけです。四月二十二日の放送討論会のときにも私は申し上げました。きょうもまた当局の御説明を聞きましたけれども、私の見解は変わっておりません。そうなりますと、帰するところ平行線でございまして、そして意見の相違ということ、これは運輸省国鉄もみずから提案したものを、これを間違いだとは、こういうことは絶対言うわけがございませんし、また私どもがペーパープランだときめつけても、どうしてもそうじゃありませんと言うにきまっているわけです。この問題については平行線で、なかなか交わるところがないと思うわけです。もうすでに同僚の野党議員からもこの問題につきましていろいろとございました。たとえて申しますと、鉄道と他の交通手段との役割りの分担、いわゆる総合交通政策の問題、あるいはまた運賃値上げの他の物価への影響の問題、あるいはまた貨物旅客の負担の不公平の問題、あるいはまた旅客の黒字、貨物の赤字の問題、ほぼ八人の野党議員の手によっていろいろ論議は出尽くした感がございます。しかしこの論議は常に平行線でございまして、全く見解の相違でございまして交わるところがございません。いままでこの五月十一日までに八人の議員で質疑応答が繰り返しなされました。しかし全くわれわれを満足させてくれる回答はございませんでした。  以下、そこで私は、ここで先ほども触れましたが、いわゆるサービス問題の一環としてのこのコインロッカーの問題と同じような問題について幾つかの問題点をまたこれから取り上げましてお伺いしてみたいと思っておるわけです。要するに国鉄がほんとうにやる気があればできる問題、しかもそれをみずからやろうとしないでいる問題がたくさんございますが、再建の論議の問題はいま申し上げたようなことでいろいろの問題がございましたけれども、私一つだけ問題点をしぼりまして、運賃の問題について触れておきたいと思うのです。私どもは運賃そのものについて値上げを全面的に認めておりませんし、この問題についても昨年出ました運賃法の改正と内容については全く同じだ、こういう点から考えまして、私は、運賃の問題について、これを徹底的に詰めようとはさらさら思いませんけれども、ただ一つこういう問題がございます。  それは通勤定期を一つの例にとりますと、具体的な例で申し上げまして、Aなる人は西荻窪から東京、丸ビルに通っておる。これは乗る区間が二十一キロでございます。現在二千五百二十円、これが千八十円アップいたしまして、改定後三千六百円になるわけです。これは四二・九%の値上げでございます。Bなる人は松戸から同じ職場の東京駅下車の丸ビルに通っておる。これは二十二キロで現在二千六百四十円、九百六十円のアップで三千六百円、三六・三%上げです。Cなる人は船橋から丸ビルに通っておる。二十四キロ、現在二千八百八十円でございます。これが七百二十円上がって三千六百円になる。二五%値上げです。そうしますと、三人はいずれも現在のものよりも値上げをいたしまして、改定後はどこでも三千六百円になるわけです。いままで一番安かったAさんが一番割高になる、こういうことでございます。要するに、この二十一キロの線というものが割高になったということは今回だけのことであって前例はなかったのか。この点をひとつ伺いたい。
  138. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 通勤定期運賃の改定の案でございますけれども、現在考えておりますのは、一キロから二十キロまでの区間に加えまして、今度二十一キロから二十五キロ区間の割引率を法定限度の五〇%まで引き下げる、こういうことを考えておるのであります。それから二十六キロ以上につきましては一般の改定率二二%にプラス八%の改定率ということで公共負担を一部是正しよう、こういう考え方になっておるわけであります。そういう考え方でありまして、御質問の最後のほうにお答えいたしますけれども、現在二十一キロのところにつきましては、御指摘のように一カ月定期二千五百二十円でありまして、割引率は五八%になっております。それから二十二キロにつきましては二千六百四十円、割引率は五六%になっております。御指摘の二十四キロのところにつきましては割引率が五二%になっておる。その現在の割引率に対しまして、先ほど申し上げましたように改定で考えておりますのは割引率を五〇%に引き下げる、こういうことによりまして、ただいま御指摘のようにこの間が三千六百円になるということでございまして、このような事例は、いままでも五キロ刻みあるいは公共負担の是正をある刻みにおいてやったときにいつでも起こる問題でございます。すなわち五キロ刻みの階段が従来の沿革的な一キロ刻みとのつなぎのところではいつもこういう改定をすると起こるわけでありまして、前例があるかという御質問に対しては前例はございます。
  139. 松本忠助

    松本(忠)委員 いままでもそういう問題についてしばしば論議の的になっておりましたけれども、とにかく西荻の人が一番高くなるということは事実でございますよ。西荻に住んでいたということは自分の好きのことでございますけれどもとにかく西荻の人だけが高くなるということですね、今回のことについて一つの例でいいますと。そこで、西荻の人が大挙して国鉄に、われわれの運賃は高過ぎる、何とかよそ並みにしろ、こういうふうに押しかけてきたとすれば国鉄はどうされますか。
  140. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 西荻の人とおっしゃいますけれども、たまたま西荻と東京の間が二十一キロ、こういうことでございますけれども、その二十一キロの人の問題でございますが、これにつきましては、国鉄の公共負担の現状あるいはまた公共負担を是正しなければならない事情、こういうものを御説明申し上げて御理解を得たい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  141. 松本忠助

    松本(忠)委員 別に西荻に限ったことではありませんが、西荻の人、この二十一キロ線というものがとにかく割高になるという問題があるわけですね。こういう問題に対して、その実情を説明してお引き取り願う以外にないのだ、こういうふうに出てくると思いましたけれども、案の定でござございます。  そこで、私は、私鉄のほうを調べてみますと、非常に違いがあるわけですね。品川と横浜の間が、国鉄では現行が二千六百四十円、私鉄は二千五百九十円。国鉄は、九百六十円値上げして三千六百円になるわけです。そうなりますと、現在の私鉄の二千五百九十円に比べますと、国鉄の改定後の額は一・四倍になるわけです。もう一つ同じような例として、荻窪−東京間、これも国鉄で来ることもできるし、地下鉄で来ることもできます。先ほど申し上げましたのは京浜急行と国電です。これも現在国鉄が二千四百円、地下鉄のほうは千九百四十五円ですから、四百五十五円安いわけです。これがやはり国鉄が六百円アップすると三千円になる。そうなりますと、現在の地下鉄で来るよりは一・五倍になる。こういうふうに私鉄の現在のものよりも、改定いたしますと一・四倍ないし一・五倍という線が続々と出てくるわけです。こういう点を考えますと、国鉄と私鉄のサービスの問題は、どちらがいいかというと、まず、国鉄よりも私鉄のほうがサービスがいいということは定評でございます。そうなりますと、国鉄サービスの面ではもう絶対競争には勝てない、しかも今度は運賃が高くなる、こういうことになりますと、ほんとうに国鉄に乗るのはいやになっちゃうということになりましょう。こういう点を考えてみたときに、この国鉄運賃の値上げというものが次には、やはり私鉄の値上げを誘発をしてくるということが言えると思うのです。国鉄は上げっぱなしで、現在の私鉄よりも上げるならば、なおさらに高くなって一…四倍ないし一・五倍になるということです。そうなれば、私鉄がまたさらに次に値上げを申請してくるということになると思います。こうした悪循環の繰り返しが次から次へと行なわれるということになる。どうしてもわれわれはこういうものを避けなければならぬと思っておるわけでございます。こういう点を考えましても、今回の値上げ案については、いろいろの点について私はどうしても考えてもらわなければならない点、これがあると思います。国鉄と私鉄の問題あるいはいまの三千六百円という同じような結果が出てくる、これはやむを得ないのだ、これは今回に限ったことではないと言われるかもしれませんけれども、やはり零細なお金を取って、そしてかせいでいらっしゃる方々にとってみればたいへんな問題であると思います。  こういう問題についての再考を私はわずらわしたいと思うわけでございまして、値上げ案はすべからく撤回すべきだと思っておるわけでございますが、この点についての国鉄総裁並びに大臣お答えを聞いておきたいわけでございます。
  142. 磯崎叡

    磯崎説明員 私鉄との間にアンバランスがあることは事実だと思いますが、私鉄の運賃と国鉄運賃の立て方がいろいろ根本的に違いますし、また私鉄の中でも、東京付近の大手私鉄と、それから地方の中小私鉄ではおのおの違うと思います。全般の問題は、交通政策で運輸大臣の御所管でございますが、私どもとしては、このアンバランスは当分の間いたし方ないというように思っております。
  143. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 私鉄の運賃について、将来の方針をお聞きになったと思いますが、昨年来、私鉄大手十四社からは、経営上非常に困難であるということで、値上げの申請があることは事実でございます。運輸省といたしましては、やはり認可料金の一種でございますので、慎重に対処したいと思っております。ただいま各私鉄の経営状況、収支の状況、将来の見通しというようなものにつきまして、詳細に検討をしておる際でございまして、まだ今日その結論を得るに至っておりません。
  144. 松本忠助

    松本(忠)委員 大臣の御答弁にございましたように、私鉄の問題については、いま値上げの考えはないとおっしゃるわけですか。やはり私鉄とすれば、いろいろの問題で値上げの申請をしておるわけですね。それに対して、大臣は、いまのところは、私鉄については値上げを考えていない、こういうふうに言われるわけですか。
  145. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 申請をどう取り扱うかについて検討中でございまして、その結論を得ていないということを申し上げておるわけです。
  146. 松本忠助

    松本(忠)委員 まあいずれにしましても、私たちは、運賃値上げというものはまっこうから反対でございますので、私鉄に限らず、国鉄に限らず、運賃値上げというものに対しては、慎重に取り扱ってもらいたいということを重ねて申し上げておくわけでございます。  それからこれは一つ実例の問題でもございますけれども、いわゆる中小荷主に対するサービスの問題でございます。いろいろと過去の質疑を聞いておりますと、大口の荷主に対するところのサービスの問題は、かなりいろいろの面で運賃を低減する、一定量を一定の期間中に運搬すれば、これに対して三割近い割引があった。こういう実例も私は、去年の質疑の中で展開をいたしました。しかし小口の荷主の中においても、国鉄に対してかなりの運賃を支払っておる者、こういうものに対して一体どうなんだろうかということをひとつ伺ってみたいわけでございます。  これは北区の滝野川三の十八の十五というところに住む土肥さんという人です。この人は、いわゆるままごと玩具の問屋さんでございまして、非常に商売熱心の方でございます。全国的な取引をしておりまして、国電の大塚駅から小荷物の扱いをもって毎日全国に荷物を発送しております。これは照会すればすぐにわかるような荷主さんでございます。国税局で大塚駅に調査に行ったところが、全く一件もごまかしていないということがわかって、びっくりしたというぐらいのかたい人ですし、正直者です。この方が年間に大体三百万以上の運賃を払っているわけです。国鉄に対して三百万以上——個人でございますよ。なかなかこの三百万の運賃というのはたいへんでございます。また運賃値上げになると実に困るのだということを言っております。国鉄さんのほうでは、かってに運賃が上がりましたといって、きまればあしたから運賃を値上げをする、ところが中小企業ではそうはいかない、商品を値上げをするにしても、二年に一回ぐらいがやっとだ、それも五%程度の値上げだ、国鉄は二十何%も一挙に値上げをする、こういうことを言うわけでございます。しかもその五%程度の値上げにしてみても、印刷費を五万円もかけて、全国的に値上げをやるということを通知をする。しかもそれが通知してから一カ月後ないし一カ月半たたなければ値上げはできない。こういう実情にもかかわらず、国鉄は全くかってだということを言っているわけですよ。そこで大塚の駅のほうも、いろいろ聞いてみますと、非常によくやってくれている。感心するぐらいこの荷主さんに対してはすごくサービスをやっていることも私は聞きまして、これは現場としても非常にりっぱな姿だと思います。毎日毎日同じような時間に、同じような荷物を何十個と持ち込まれるわけですから、たまにはもういやになっちゃうだろうと思うのですけれども、大塚の駅の人は非常によくやってくれている、こういう点を聞きます。たいへんけっこうなんです。ところが、この土肥さんという方の言うのに、一日二十個なり三十個なり、年間三百万の運賃を払っているのだ。大体普通、物の売り買いをしても、三百万も払えば、特級酒の一本も持ってあいさつに来るところです。ところが国鉄は何もしないというわけですよ。これは国鉄はそういうものをする必要もないと言われればそれまでのことでございますが、荷主さんのほうでは、国鉄に対しては、一生懸命、自分のほうでも時間をきめて持っていく、あるいはいろいろな面でサービスもはかっているようです。その荷主さんの言うのには、せめて国鉄は、いわゆる学割というものがある——この学割というのは学生さん特有の割引でございますよ。その学生さんが何か国鉄に対してプラスになることをやったかというと、別に国鉄に対して直接プラスは何もないわけです。その学割という制度があるわけです。そういう点から考えてみて、われわれ中小企業については、十日間ぐらいの全国の無料パスでも支給してもいいのじゃないか。要するに顔写真の入った、絶対他人が使えないような、そういうようなものをつくって、そして九十九人乗るのも百人乗るのも同じじゃないか。だからそれぐらいのサービスをしてもいいのじゃなかろうか、こういうことを私に言っておりました。私、これを率直にお伝えするのですが、この三百万と一口に申しますけれども、なかなかたいへんなことでございます。そうしたものを払って、国鉄に対して一生懸命協力しておる人に対して——大口の荷主に対しては大口の割引をする。三割も割引をする。しかしこういう中途はんぱといえばそれまでかもしれませんけれども、こういう人に対する割引というものが一体あるのかないのかということです。こういう点についての御見解をひとつ聞かせていただきたいと思うわけでございます。
  147. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 お話しの筋は非常に小荷物の荷物の輸送需要が多い場合に割引をする方法がないのか、こういうことじゃないかと私は思います。割引に関する考え方といたしましては、輸送力を活用して、とにかく大口の輸送需要といいますか、それがある場合、その両方が合致する場合に国鉄としては割引するということでございまして、小荷物につきましても当然同じような考え方でございます。したがって国鉄といたしましては、小荷物関係の規則ではっきりと一定の託送区間あるいは託送量あるいは品名、こういうものを限定いたしまして、先ほど申し上げましたように輸送力を活用してその輸送を確保し、輸送の減量を防止するという観点から合致するということでありますれば、その輸送需要に対して割引するかどうかを検討さしていただく、こういう考え方、システムになっているわけでございます。したがいまして具体的な問題につきましてはぜひそういう点から御検討さしていただきたい、かように考えるわけでございます。
  148. 松本忠助

    松本(忠)委員 わかりました。とにかく小荷物についても大口の貨物についても貨車輸送についても、やはり国鉄は当然同じような考え方でなければならないと私は思いますので伺ったわけでございます。  いろいろと伺いたいことがございますが、とにかくいままでのこういう問題、具体的な問題については国鉄も当然前向きの答えが出てこなければならぬわけでございますし、コインロッカーの問題についてもいろいろと先ほど速水常務理事からも話がありました。しかしこういう問題以外の問題については全く平行線だったということがいえるわけですね。これはもう非常に私残念でございますけれども、やむを得ないだろうと思っております。一方はとにかく賛成し、是が非でも通すんだ、われわれはもう反対だ、こういうことでございますから、これは交わるわけがないのでございますけれども、このままでおきますと自民党の多数で通ってしまうおそれが多分にございます。私たちはこの悪法を通したくない。そういうためにももっともっと国鉄自身でひとつやってもらわなければならない問題について、企業努力の面について国鉄考え方を私はもう一ぺん問いただしておきたい。  いままでいろいろと八人の委員さん方が申し上げましたことについては常に平行線であったし、きょう私が申し上げた問題についても、いわゆる人件費の問題あるいは物件費の問題あるいはまた要員の問題、こういうものについてもほんとうに答えとしてはわれわれを満足してくれるものはございませんでした。残念でならないわけでありますけれども、とにかく私どもはこの悪法だけは是が非でも通したくない、こう思っております。そしてまた国鉄自身がもっと国鉄自身の力でやれるものをなぜもっとやらないのかという点についての問題に私はこれから触れてみたいと思うわけです。  その第一は、こういうことでございます。これは先般神門委員もこの字句を引用したことがございますが、国鉄自身の企業努力、こういう問題に対して三月一日の朝日新聞にはこういうことが載っておるわけですね。「それよりも不思議なのは、国鉄自身の再建計画らしきものは、いつも明らかにされないことである。われわれの前に出てくるのは、まず自民党の部会案であり、党案であり、政府案である。」   〔発言する者あり〕
  149. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 御静粛に願います。
  150. 松本忠助

    松本(忠)委員 「国鉄にいわせると「その段階で常に国鉄意見はいっているし、国鉄考え方はかなり反映されている」という。しかし、当の国鉄が赤字線問題や貨物問題、運賃などについてどう考え、どうしようとしているのか、自民党運輸省という“フィルター”越しでは、もうひとつはっきりしないのだ。もっとも、赤字転落以来、国鉄政府の意にさからうことを極端におそれ、とても自身の意見をいう立場にはない、ときめつける向きもある。国鉄幹部の一人も「くやしいけれど、そういう意味での当事者能力は、今の国鉄にはありませんな」と自嘲気味。」こういう記事が載っております。私は、国鉄はこういうことをやりたいんだといって、そのやりたいことをほんとうに運輸省にぶつけたか、自民党にぶつけたか。それが国民の多数に共感を得ることであったならば、国鉄は堂々と発表すべきじゃないかと思う。何でも国鉄運輸省の言いなり、自民党の言いなりになっておったんじゃいかぬと思う。国鉄自身にできることがたくさんあるでしょう。国鉄自身にできること、そしてまた国鉄はこういうことをやりたいんですということを徹底的に言って、そうしてそれがかりに通らなかったならば、通らなかった時点において、それを国民の前に発表する、こういうことを国鉄は言いました、こういうことをやってもらいたいと頼みましたけれどもやってくれませんということを国鉄がみずから進んで発表すべきじゃないかと私は思う。そういうことをしないから、国鉄はいつもこの新聞記事にあるように言いなりになっているとしか言われないと思うのです。私は国鉄のために惜しむのです。国鉄としても国鉄考え方があろうと思います。その国鉄考え方を徹底的に言って、そうしてそれが国民の共感を得るものならば、国民はそれに応援するだろう、拍手を送るだろうと思うのです。それがいつも国鉄運輸省自民党の言いなりになっておったのじゃいけない、こう私は言いたいわけでございます。そうした意味からいって、国鉄が自分自身の力で解決できるものは是が非でも解決してもらわなければならぬのです。ところが一こうに解決されない問題がここに一つあるのです。この問題について私は大臣にぜひとも聞いてもらいたいと思うのです。
  151. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 松本君、理事会で協議いたしました時間がだいぶ経過いたしておりますので、結論をお急ぎ下さい。   〔発言する者多し〕
  152. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 御静粛に願います。——御静粛に願います。  松本君、質疑を続けてください。
  153. 松本忠助

    松本(忠)委員 質問を続けます。続けますけれども、見受けるところ、自民党何人いるかということですよ。(発言する者あり)野党側とほぼ同じじゃございませんか。私はこういうことじゃいかぬと思います。もう少し自民党は、再開されたらもっと真剣な気持ちでここへ集まってきてやるべきです。私は質問は続けます。続けますけれども、この状態は私はまことに残念だと思いますよ。
  154. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 松本君、質疑を続けてください。
  155. 松本忠助

    松本(忠)委員 こういうことじゃ本来ならば私は質問を続けたくないわけでありますけれども、時間がございませんから質問は続けます。ですけれども、重大な問題ですから聞いてもらいたいと思います。   〔発言する者多し〕
  156. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 御静粛に願います。(発言する者多し)いま質疑をしているのですから、御静粛に願います。
  157. 松本忠助

    松本(忠)委員 国鉄総裁大臣に伺いたいのです。  山陽新幹線が岡山まで開通いたしました。この岡山開通は便利になったか不便になったかということであります。お答えはどう返ってくるか、国鉄側にしてもおそらく便利になったと言うでしょう。運輸省にしてもおそらく便利になったと言うと思います。しかし現実には不便になっているということの事実がございます。それで私は、この問題についてどう思いますかということの質問は、どうせ返ってくることばがきまっていますからあえて聞きませんけれども、こういう事実を私は申し上げておきたいのです。国鉄新幹線が岡山まで延長した、さぞ便利になっておると思っておるのだろうと思いますけれども、事実は違いますよ。岡山にお降りになる人あるいは岡山から乗る人、少なくともこの人たちは確かに便利になったと思います。しかし岡山の先から来る人、この人たちがほんとうにどれぐらい不便になったかということを理解してもらいたいと私は思う。私はかつて、地方の単線区間が定時運行されていないことについて地方の人がどれぐらい不安に思っているか、何とか定時運行しろ、そうしなければ事故につながるということについて地方の人も非常に心配しておるわけです。私自身も心配しております。そこで地方の単線区間であっても——昔は国鉄というと時間どおりに来たものです。もう時計を見なくても、汽車が入ってくる、ああ何時になったということがわかるぐらいに国鉄の運行というものは正確だ、そういうふうにいわれておりました。ところが現実にはそうでないということがはっきりしているわけです。たとえて申し上げますと、これは具体例で申し上げませんとわかりませんから私、申し上げるわけでございますけれども、山陽新幹線に岡山接続でございます。これがどれくらい延着をしておるかということでございます。これは四十七年十一月から四十八年四月まで、六カ月間にわたりまして、順法闘争の期間を除いてこれを調査をいたしました。この間におきまして、五分以内の遅延、これが実に二千九百九十八本ございます。一カ月五百本平均おくれているわけでございます。さらにこれによりまして、新幹線をおくらせて収容したのが二百八十七本もあるという事実でございます。  ちなみに申し上げますと、山陽本線のほうは岡山到着の五分以内のおくれというのが十一月が二百六十一本、十二月が三百十七本、一月が四百六十五本、二月が三百七十五本、三月が二百九十二本、四月が四百四十三本、合計二千百五十三本もこの半年間におくれているわけであります。宇野線におきましては、六カ月間に四百五十一本、伯備線においては三百九十四本、合計いたしますと二千九百九十八本という列車が五分以内おくれて到着しております。  ところが、五分一秒から十分以内のおくれはどうかと申しますと、山陽本線においては十一月百五十一本、十二月百五十九本、一月百四本、二月八十本、三月百二十九本、四月百本で、合計が七百二十三本。宇野線全体で九十二本、これは五分一秒から十分以内のおくれでありますが、伯備線では二百八本、合計千二十三本のおくれです。新幹線のほうはこれに従って百六十二本も遅発させているという事実です。  さらに、十分一秒から十五分以内のおくれというものはどのくらいあるのかというと、山陽本線におきましては、月別に申し上げるのは省略いたしますが、合計二百七十六本、宇野線が二十四本、伯備線が八十本で、合計三百八十本。  十五分一秒以上六十分以内のおくれというものが、山陽本線は六カ月間で三百二十本、そして宇野線が三十八本、伯備線が六十五本で、合計四百二十三本であります。  六十分以上のおくれに対しては、山陽本線で百本ございます。これは十一月において二十六本、十二月は七本、一月は二十五本、二月が十一本、三月が十二本、四月が十九本、合計百本もおくれているわけでございます。  どうしてこういうふうにおくれているかということでございます。これはこのまま見過ごしておくわけにはいかないと思うのです。これは明らかに国鉄職員の精神の弛緩であるということを私は申し上げたいのです。これは何とかならないか。  さらに、この問題に対して特殊な例がございます。宇野線におきましては三一三二Mというものが、十一月以降三月までの五カ月間でございますけれども、実に百五十一回の中で七十四回おくれを出している。それからさらに、三一三六Mという列車は百五十一回のうちで八十八回、五八%、三一四四Mという列車は百五十一回のうち七十一回、四七%のおくれを出しておる。宇野線は一日十七本あるわけでございます。これらの中でいずれの列車も遅刻しておる、遅延しておるということであります。  伯備線に至りましては、二〇三八Dという列車です。これは岡山に着くのが十時二十二分という列車です。この列車のごときは、「やくも1号」は五カ月間に百五十一回運転しておるうち、百二十三回到着がおくれているわけです。それから二〇三四Dという「やくも3号」は、百五十一回のうち百三十三回おくれているわけです。二〇三二Dというのは、百五十一回のうち百三十七回もおくれているということです。
  158. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 松本君、結論をお急ぎください。
  159. 松本忠助

    松本(忠)委員 これを見てみますと、遅刻、遅延という問題が今後国鉄の事故につながる、それを私は非常に危惧するわけです。こうしたものを取り除いてやらなければ、現在岡山の駅においてどのくらい苦しんでいるか。要するに、山陽本線で上がってきた人が新幹線に乗りかえるためには一応十五分という乗りかえ時間が見てあるわけです。そういうふうにダイヤは組んであるわけです。普通の人があれしましても八分かかるわけです。ところが、実際問題としまして、三月三十日に博多を六時二十七分に出た列車のごときは、広島十時三十八分、岡山に着いたのが十二時四十四分、新幹線のほうは十二時四十五分発です。したがいまして、六分おくらせて五十一分の発車にした。五十一分の発車にしましたけれども、実質七分しか余裕がないということでございます。  こうしたことのために岡山の駅の構内は非常にいまたいへんな状態になっている。これは岡山の駅員さんに聞いてもらえばよくわかるわけでありますし、また加藤理事もここにいらっしゃるからわかると思うのですけれども、駅員が山陽本線の到着のたびごとに声をからして整理をしている。ほんとうに気の毒なくらい努力しておる。この岡山駅の実情というものをほんとうに国鉄として知っておるのか、あるいはまた運輸省自体としてこういう事態を知っておるのか。このことは、将来博多まで新幹線ができました場合に、博多においても同じことが起きる。あるいは盛岡まで新幹線ができた場合に、盛岡から先、北海道から上がってくる人がまた同じ問題で非常に苦しまなければならない、こういうことが言えると思います。新潟においてもしかりでございます。  こういうことを考えてみたときに、この遅刻をただゆるがせにしておくわけにはいかない。この遅刻の結果がどうなるかというと、必ずや事故につながってくると思うのです。決してこういう問題が解決できないわけはないと私は思う。何とか運転士諸君が努力をいたすならば、一人分でも三十秒でも解決できると思うのでありますけれども、その解決をしようとしない。これは国鉄の基本的な使命であるところの安全の確保という面に対して重大な脅威である。これを一日も早く是正しなければいけないと思うのです。  そういう点から考えまして、国鉄総裁としてこのようなおくれを知っていたか。知っていたとするならば、これに対する手が打たれていなければならないわけでございますが、何ら手が打たれていないのではなかろうかと思うわけであります。また運輸大臣といたしましても、こういうおくれがあることを部下から報告があったかなかったかわかりませんけれども、こういうおくれをこのままの状態で見のがしておくことは断然いかぬことだと私は思うのであります。そういう面について注意を喚起するわけであります。答えは簡単でけっこうでございます。どうかひとつ両者の御答弁を伺っておきたいのであります。
  160. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 列車の遅延が乗客に非常に迷惑をかけておることは事実でございます。原因は、物的な原因もございましょうし、あるいは人的な原因もあると思います。そういった原因を探求いたしまして、そういう事態が起こらないように国鉄に対しまして最大限の努力をさせたいと思います。  しかし、お話しのようにこの問題は国鉄自身……   〔発言する者あり〕
  161. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 御静粛に願います。
  162. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 岡山まで開通したことと因果関係はないと私は考えております。今後も新幹線はなるべく早く博多まで予定どおり貫通させていただきたいと思います。
  163. 磯崎叡

    磯崎説明員 確かに、国鉄の業務運営の際の一番大事なことは定時運転でございます。最近の職員が、定時運転に対する感覚が鈍くなったとは決して私は思っておりませんが、現実にそういう傾向があることは残念でございます。常日ごろ定時運転を非常にやかましく言っておりますが、あるいは踏切事故、あるいは通勤の混雑等でそういう事態がたまたまございます。いまおっしゃった中でもいわば非常に札つきの列車がございますので、これにつきましては具体的に列車別に検討いたしまして、たとえば博多付近で通勤列車と競合しておくれるとか、原因がさまざまでございますが、一々につきまして極力原因を追求いたしまして、具体的な対策をとりたいと思っております。   〔発言する者あり〕
  164. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 御静粛に願います。  松本君に申し上げますが、理事会の協議のお約束を三十分近くも過ぎておりますので、結論をお急ぎください。もう一問だけでお願いします。
  165. 松本忠助

    松本(忠)委員 私も質問を故意に延ばしておる気持ちは決してございません。あとお伺いしなければならない問題がまだ多数ございます。たとえば昨年もお伺いいたしました新宿駅の構内の問題室蘭の問題、あるいは多治見の問題、あるいはまた北千住駅の問題、あるいはまた警笛吹鳴の問題、夜間作業の照明の問題、それから公害の問題、いろいろございます。こういった問題について私短時間に一生懸命にがんばりますので、もうしばらくの間委員長も御協力を願いたいと思うわけでございます。答えは簡単でけっこうでございますからひとつ……。  昨年の運輸委員会におきましても、また予算委員会におきましても私がお伺いいたしました中の一つに企業努力ということがございますが、新宿駅の南口のいわゆる西新宿一丁目一番地、ここに二千三百五十平米の用地がある。この用地が放置されたままになっておった。これを私が御指摘申し上げたのが縁となったかどうかわかりませんが、とにかく前向きに取り組んでくれたのは事実でございまして、ここに新宿ターミナルビル株式会社ができることになりまして、これはたいへんけっこうなことだと思うのです。そして名古屋のターミナルビルあるいは岡山ステーションセンター、いわきの中央ステーションビル、沼津のステーションビルあるいは秋田のステーションビル、それから岡山のターミナルビル、博多のターミナルビル等々八つのこうした新しい方向国鉄が踏み出したということについては私もいいことだと思います。しかしこの問題を一つ取り上げてみましてもなかなか計画どおりにいくものではないと思いますので、一そうこれは総裁以下全員が努力してもらわなければならぬ問題だと思っております。  そこで、そのときにも申し上げたわけでございますけれども、現在はターミナルビルというものについて、ことしの三月ですね、新しい着工をするという掲示が出ているわけであります。この掲示を見ましても、私も実際に町の人たちが非常に関心を持ってながめていることも知っているわけでありますが、現在その場所をやはり大林組とかあるいはまた鹿島建設でございますか、そういうところが使っているわけでございます。しかしこれも次の問題にかかるための一つの準備動作とも考えられますのでやむを得ないこととは思っておりますけれども、いずれにしましても、このときも御指摘申し上げました国鉄の用地の使用の方法、そしてこのときもいわゆる車庫としてこういうものを活用しろ、こういうことを言ったわけでございます。それに対して国鉄総裁も六十カ所の用地がいま貸し車庫としてやっている、こういうことを言われたわけでございますが、これらに対しては年間どれくらいの収益が上がったものか、この点をひとつ伺っておきたいわけであります。
  166. 速水信一

    ○速水説明員 四十七年度一年間で約三千四百万でございます。
  167. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは一応その数字をそのまま私いただいておきます。  なお、昨年私が御要求申し上げました資料の中でもとうとう最後まで出なかったのがこの国鉄の不用地の問題。七百五十四カ所という用地について、その内容を知らせてほしいと言ったけれども、依然としてそれが出ないままに一年を経過してしまったわけでございます。その中でも特に出ました問題について私伺っておきたいのは、両国駅の構内の二万三千五百平米あるいは錦糸町駅の二万七千五百平米あるいは吉祥寺北町の三万一千五百五十五平米、こういったものに対してこの一年間にどのような経過があったものか、この点についてひとつ総裁から簡単に説明いただきたいと思います。
  168. 磯崎叡

    磯崎説明員 昨年御指摘のあったのは、亀一尺亀有、それから須賀線ということで、錦糸町その他具体的には御質問がなかったのではないかと思います。亀戸、亀有については検討いたしております。   〔発言する者あり〕
  169. 松本忠助

    松本(忠)委員 ちょっとよく聞き取れませんでしたが……。
  170. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 御静粛に願います。
  171. 磯崎叡

    磯崎説明員 いま御指摘の錦糸町その他具体的に私調べてまいりませんでしたが、去年御指摘があったと私の記憶いたしておりますのは、亀尺それから亀有、それから赤羽の須賀線と申しますかそのあと、それから室蘭、そういうことを具体的に御指摘になったというふうに覚えております。
  172. 松本忠助

    松本(忠)委員 その結果どうなったのですか。簡単でけっこうです。
  173. 磯崎叡

    磯崎説明員 その点につきましては、亀戸は御承知のように東武鉄道との交換のいま準備を進めております。東武鉄道と土地を交換する。  それから亀有は、これはいずれ住宅公団に提供することをいま検討している最中でございます。  それから須賀線あとは東京都にお譲りいたしました。  室蘭は、現在室蘭市がこの再開発を考えておりますのでしばらく待ってくれということで、具体的に話を進めたいというふうに思っております。  以上でございます。   〔発言する者あり〕
  174. 松本忠助

    松本(忠)委員 だいぶ騒音がありまして十分聞き取れない点がありますので残念でございます。  室蘭の問題でございますが、この室蘭の問題についても、この一年間でどれくらい国鉄が努力をしたかということについて、私伺っておきたいわけです。  御承知のように室蘭は、私が見てまいりましてこの問題を取り上げましたのが四十五年です。御承知のように六万坪の土地が何の活用もされないでほうりっぱなしになっているわけでございます。坪約三万円としても十八億円、国民の財産というものが四十二年の十一月以降ずっと活用されないままに、何の利益も生み出さないままに今日まであるわけでございます。こうしたものを私が質問で取り上げましたときに、国鉄総裁は、「全国で、いま御指摘の室蘭のほかに小樽あるいは九州の若松、戸畑というところが石炭積み出しの関係で遊休施設になっておる。よく私は存じております。」というような御答弁がありました。室蘭をはじめとして小樽、若松、戸畑、こういったところについては、国鉄は一体何をこの一年間にやったのだろうかというように私思うわけでございますが、とにかく私が一番よく知っている室蘭について申し上げてみましても、四十二年の十一月以来用途廃止をしていたわけです。四十六年の暮れに泉貨物局長が小名浜港との間に定期航路を開設するために折衝中という話を聞きました。その後の状況については、港湾管理者であるところの室蘭市の鈴木港湾部長と連絡をとってみますと、四十七年の夏には国鉄としては計画なしという返事であったが、四十七年暮れになりますと検討中と変わってきた。本年二月には国鉄の北海道総局の施設部長が室蘭市長をたずねてその使用方について港湾管理者のほうで考えてもらいたいというさじを投げた形で申し入れがあったそうであります。こういうことを国鉄側に一応確認をしたいわけでございます。時間の関係がありますので、確認はあとにします。  室蘭市としては、この申し入れを聞きまして、日本港湾協会に依頼して、四月の二十五日から港湾診断をしている。まだ結論が出ていないけれども、青函連絡船のコンテナ輸送基地にしてはどうか、その背後のほうは工業団地としてはどうか。これには五億円ばかりかけて道路をつくらなければならぬ、こういったことが一つ案として出てきているわけでございます。御承知のように四十二年十一月以来ずっとこれが放置されっぱなしであるということから考えてみても、国鉄がもう少し努力するならば何とかなったのじゃなかろうかと思うわけです。港湾管理者が昨年の暮れに申し入れを受けて、そしてすでに今日までにこれだけのことを港湾協会に依頼をして一つの案の骨というものをつくっておるわけです。国鉄は実に何にもしないできた、こういう経緯だといえると私は思います。小樽や若松、戸畑についても同じことがいえるのじゃないかと思って心配するわけです。  ここでいま鉄監局長一つ聞いておきたいのは、こういう国鉄の不用地、未利用地の活用、こういうものについてあなたは知っていたかどうか、国鉄の不用地、未利用地の活用方、こういうものに対して鉄監局長としては指示したことがあるかないかということでございます。
  175. 秋富公正

    秋富政府委員 昨年の国会でも審議がございまして、よく承知いたしております。
  176. 松本忠助

    松本(忠)委員 知っているとするならば、鉄監局長として港湾局長に対して、遊休中の国鉄埠頭の活用方について相談したことがございますか。
  177. 秋富公正

    秋富政府委員 この問題は国鉄におきまして現地の市当局と折衝中でございます。私のほうといたしましては、いわゆる不要財産の処分ということで、あるいは資産充当、本年度百億の予算をいたしておりまして、極力国鉄のほうには、各部面にわたりまして資産の充当、処分ということにつきましては絶えずいろいろと相談いたしております。
  178. 松本忠助

    松本(忠)委員 要するに、鉄監局長としてそういう遊休施設があることは知っているわけですよ。これは知っていて、港湾のことなんですから、港湾局長にどうなんだ、何か活用方法はないかというようなことを、同じ運輸省の中にいる者として——現場のほうでは音をあげてしまっているのです。そういうことがわかったならば、それに対して、港湾局長に対して鉄監局長から何かいい知恵はないかというようなことを言ったことがあるかないかということを私は聞いているのです。
  179. 秋富公正

    秋富政府委員 現在まで私が港湾局長にその問題について相談したことはございません。
  180. 松本忠助

    松本(忠)委員 一問だけです。  要するに大臣、私はこういう問題に対して鉄監局長——国鉄の中の問題でありましょう。しかし国鉄のいまの赤字を幾らかでも直すためには、やはりこういう問題に対して、鉄監局長が部内の港湾局長に相談してもいいと思うのです。そういう頭がないということを私は非常に残念に思うのです。国鉄のことは真剣に運輸省として考えるのが当然のことですね。こういう問題に対して鉄監局長が港湾局長に対して相談をするというのがあたりまえじゃないか、こう思うわけでございます。その事実について、いま鉄監局長は相談したことがないとおっしゃるわけでございます。大臣としてどのようにお考えになるか、簡単でけっこうでございます、お答え願います。
  181. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 連絡を十分によくするように努力をいたします。
  182. 松本忠助

    松本(忠)委員 それではもう非常に皆さん方もあれでございますので、私一問だけ最後に伺いまして終わりにいたしたいと思います。おいでいただいている方がございまして、御答弁のために待っていただいておりますので、たいへんどうもおそくなりましたことを恐縮に思うわけでございます。  四月末の交通ゼネストのときのテレビ放送を見ておりまして、私が感じたことでございます。また私以外の人が感じたことを私に話してくれた、そういったものを見ましても、やはり国鉄の中の動労とその他の職場との考え方の違いというもの、こういうものをテレビを見ておった人が私に話してくれたし、私もそういうふうにもいわれてみると、そうだなと思われる節がございます。ということは、あのゼネストの問題にいたしましても、国労のほうは一応ゼネストを中止する、ところが、動労のほうは、中止の時間が若干おくれてくる、こういうことがあったようでございます。そうしたことを見た人が私に言ったわけですけれども、結局、動労のほうが、貨車を動かしているのはおれたちなんだ、貨車を動かしているおれたちの力によって今回のストライキは成功したんだ。効果があったストライキだったのだ、こういうふうなことをいいたいわけです、そのために、わざわざ、国労と同じ時間にやめてもいいのをやめないのだというようなことをいうわけでございます。そのとおりかどうかわかりませんけれども、とにかく国鉄の部内にも、動労と国労、あるいはまた職場の関係によりまして非常にこの考え方に差があるということ、これが当初申し上げましたいわゆる国鉄問題の解決のかぎの一つではないかと私思いますので、あえて申し上げるわけでございます。  要するに、これからの問題について運転局長に聞いてもらいたいわけでございますが、貨車やあるいは客車の最先端に立って牽引するのが機関車でございます、運転士でございます。一番高いところから、自分たちはこういうところにいるのだ、こういうことを誇っている、これはいえると思います。——関川運転局長いらっしゃらないそうでございますから担当の常務理事でけっこうでございますが、国鉄の部内に花の運転涙の保線ということばがございます。これほど保線を見下していることばはないと私は思うのです。同じ国鉄の職場の中であって、保線という問題がなければ国鉄は生きられないのじゃないか。まず線路があって汽車が走るわけであります。線路がなければ汽車が走らない、こんなことはあたりまえの話であります。ところがほんとうに保線に努力している人たちに対して、従業員諸君が何か侮べつしたことばを投げかけている。花の運転涙の保線、こういうことばはそれを端的にあらわしたものじゃないかと思うわけでございます。  そこで問題をしぼりますけれども、要するに運転して保線をしているところに差しかかってくる、こうした場合に、当然のこと、人道上からいっても警笛を鳴らし、そうして列車が近づいていること、電車が近づいていることを保線の人たちに知らせる義務があると私は思う。そうすることが当然人道上からあたりまえのことじゃないかと思うわけでございますけれども、これを伺ってみますと、吹鳴しなければならないというふうになっていない、こういうことで現実には汽笛の吹鳴がなされていない。何にもやらないでそのまま保線の人たちのところをずっと通っていってしまう。保線のほうでは見張りを立ててやっていますから、列車が近づくことがわかっておりますから、当然待避をしております。昔はそうではなかったと思う。最近はそういう点に対して、何か保線のほうの人たちと機関車を運転している人たち、この人たちの間に大きな大きなみぞができてしまったと思う。国鉄一家というものはそういうものでなかったと私は思う。ところがその義務づけがされてないからやらないのだというようなことで、汽笛を一つも鳴らさないで通っていく、こういうあり方ですね。私はこんなぎすぎすしたことではいわゆる国鉄の再建というものはできないのじゃないか。国鉄の再建は人の問題にあるということを総裁がさっき言われました。そのとおりだと思います。同じ労働者でございます、国鉄一家の中でございます。そうなってくれば、お互いの安全作業を確保するためには、私は当然汽笛を鳴らしていくべきじゃなかろうかと思うわけでございますけれども、この点についていかがでございましょうか。
  183. 内田隆滋

    ○内田説明員 保線の作業中に対しましては、いわゆる作業表示標というものを作業現場から約五百メートルぐらいのところに立てて、運転士に汽笛吹鳴を協力することを指導しております。しかし地上信号機と違いまして、保線作業というのは非常に場所が不定でございます。したがってこれを義務づけるということは非常にむずかしく、いろいろと問題がございますので、作業表示標を認めたならば吹くようにということで指導をしております。
  184. 松本忠助

    松本(忠)委員 規則にはそうなっているからそれでよろしいのだといえばそれまでの話だと思いますけれども、ほんとうにぎすぎすと、何かお互いに責任問題といいますか、それを言っているだけでは解決がつかないような問題、これは何とか私は解決をしたい。その現場に近づいてきたならば吹鳴をする、一方はそれに対して待避していくということは当然でございますけれども、事故を未然に防ぐためにも、当然これは私は吹鳴すべきではないかというふうに思うわけでございます。  それから次に夜間作業の問題でございますが、この夜間作業のことについて私伺っておきたいことは、最初に労働省の中西安全課長、おいでいただいておりますので伺うわけでございますけれども、労働安全衛生規則の六百四条に三種類の基準が定められております。精密な作業、普通の作業、それから粗な作業、これがいずれも三百ルクス、百五十ルクス、七十ルクスとこういうふうにきめられております。これは「常時就業させる場所」となっておりますので、この問題がそのまま当てはまるとは限らないとは思いますけれども、やはり六百四条というものが一つこういうふうにきめられており、しかもまた五百五十五条には「保線作業等における照度の保持」ということで、こういう問題について「事業者は、軌道の保線の作業又は軌道を運行する車両の入れ換え、連結若しくは解放の作業を行なうときは、当該作業を安全に行なうため必要な照度を保持しなければならない。」こういうふうにございます。こういう点から考えて、私はやはり屋外作業についても照度をはっきりさせるべきではないかと思うわけでございますが、この点についての労働省の見解をまず先に伺いたいわけです。お答えは簡単でけっこうでございます。
  185. 中西正雄

    ○中西説明員 夜間作業の安全を期するために必要な照度基準をきめるべきではないかという先生のおことばはごもっともでございまして、私どもも急速に具体的な基準を定めるべく現在検討中でございます。
  186. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 松本君に申し上げますが、結論をお急ぎください。
  187. 松本忠助

    松本(忠)委員 これ一問で終わります。  いまの労働省の見解に対して国鉄側はどのように思われますか。
  188. 内田隆滋

    ○内田説明員 五百五十五条は四十七年九月に制定されまして、これを受けまして国鉄といたしましては、労働科学研究所でもって基準を四十八年度につくるべく勉強いたしております。
  189. 松本忠助

    松本(忠)委員 問題はこの五百五十五条のほうは、いわゆるヤードのようなところの問題、「軌道の保線の作業又は軌道を運行する車両の入れ換え、連結若しくは解放の作業」こうなっておりますから、おそらくこれはいわゆる操作場の関係だと思うのです。そういうところの作業でなくて駅から駅の中間の作業、こういうものは全くむずかしい問題があろうと思うのです。そういうところにおけるところの照度の基準をきめる考えはないか、私の聞きたいところはこういうことなんです。駅の構内であって、高いところから照らされているようなところでは比較的作業がしやすいと思うのです。しかし、そうならないたいへんなところがあるわけです。そういうものに対しては照度をきめる必要があるんではなかろうか。またきめてやらなければ、完全な作業ができないんではなかろうか、こう思うわけであります。
  190. 内田隆滋

    ○内田説明員 ヤード等につきましてはすでに照明がございますけれども、私が申し上げましたのも中間における線路作業その他の作業における照度の基準につきまして四十八年度からということで勉強をいたしておるということでございます。
  191. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 松本君、あなたの一問は複数ですか。もう一問で願います。
  192. 松本忠助

    松本(忠)委員 厚生省の三浦食品衛生課長、これだけで私の要求した方が全部終わるわけでございます。おいでいただいた方に失礼申し上げてはと思いまして、急いでやっております。  三浦食品衛生課長にお伺いしますが、国鉄の黄害の問題でございます。この問題に対しては常にわれわれも関心を持っておるわけでございますけれども、この黄害の問題について厚生省としてはどのような対策をとられ、どのようなことをいままでやってこられたか、この点についてひとつお答えを願いたいと思います。
  193. 三浦大助

    三浦説明員 黄害の問題につきましては、産業廃棄物処理法におきまして、便所が設けられている列車を運行している者に処理が義務づけられておるわけでございまして、このときに、昭和四十五年の十二月ですが、運輸省国鉄のほうに処理の適正方を申し入れておるわけでございます。
  194. 松本忠助

    松本(忠)委員 運輸省としても、国鉄としても、いまの厚生省からの申し入れについてそれぞれ具体策を練られたことと思うのですが、運輸省については私鉄に対してはこの問題に対して何かしておりますか。
  195. 秋富公正

    秋富政府委員 私鉄は国鉄と違いまして大体駅の距離間が短うございますので、特殊な場合を除きましてはそういった設備はしてございません。
  196. 松本忠助

    松本(忠)委員 国鉄のほうはどうでしょうか。
  197. 篠原良男

    ○篠原説明員 先生の御指摘の黄色いほうの害につきましては、抜本的には車の中にタンクをつけるのが一番望ましいわけでございます。したがって、便所の使用頻度の高い優等列車から優先的に実施しておりまして、車両設備のほうで約二割、四十七年度末ですが、これをくみ取って浄化して流す地上設備のほうで約二五%施設済みでございます。またこの工事が完了するまでの間は都心を通るときには便所の使用を禁止し、お客さんに使っていただかないように車内でPRするあるいは排便管を線路の外に出ないようにゲージの中に落ちるように設備を改良して処置しております。
  198. 松本忠助

    松本(忠)委員 たいへんどうも長時間にわたりまして質問をいたしてまいりました。これらの問題について私もう少し徹底して詰めたかったわけでございますけれども、残念でございました。  ここで最後に申し上げたいことは、先ほど冒頭にも申し上げましたように、国鉄の再建という問題について、決してわれわれもこの再建をおくらせることを喜んでおるわけではございません。当然再建がなされなければならないことはわかっております。しかし現在のような国鉄の人間のあり方、国鉄につとめておる人たち考え方というものは、非常に私はふに落ちない点がたくさんございます。その一つの例として、先ほどの機関車の吹鳴の問題もございます。こういったものを考えましたときに、私はほんとうに国鉄の再建をするためには国鉄の労使というものが一体になってやってもらわなければできないんだ。この問題に対して私は声を大きくして言うわけでございます。国鉄にはいい意味国鉄一家、こういうことばがございました。しかしいま国鉄一家ということばは全く別の意味において使われているようでございます。そうしたことを考えましたときに、是が非でも国民から見捨てられない国鉄になってもらわなければいけないし、そして国鉄に対して国民がほんとうにかっさいを送って、そして国鉄がんばれというような国鉄にならなければいけないと思います。いまのような国鉄であっては、ほんとうに再建ができるかどうか。要するに運賃値上げさえすればいいんだ、運賃値上げをするための一つ考え方としての再建だ、こういうことであってはならないと思うわけでございます。いずれにいたしましても、この大きな問題、われわれは絶対的にこの問題を容認するわけにはまいりません。そしてまた質問の中におきましていろいろな問題点で不十分な御答弁もありましたけれども、時間の関係上やむを得ないので私これで終わりにするわけでございます。どうかひとつ今後の国鉄再建のための前提条件となる人間の問題、この労使の紛争を少しでもなくして、そして一体になって国鉄の再建に取り組んでいく、こういう姿勢について最後に国鉄総裁から決意を聞かせていただきたいと思います。
  199. 磯崎叡

    磯崎説明員 十分肝に銘じましてがんばります。
  200. 松本忠助

    松本(忠)委員 以上をもって終わります。
  201. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 午後二時五十分から再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後二時二十九分休憩      ————◇—————    午後三時五分開議
  202. 井原岸高

    井原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。久保三郎君。
  203. 久保三郎

    ○久保(三)委員 経済企画庁長官、御用があるそうでありますから、企画庁長官に対する御質問を先にさせていただきたいと思います。  今回のこの運賃値上げの問題と物価の問題について一つはお伺いしたいのであります。最近の物価の高騰は、もう私から御説明申し上げる必要のないほどだと思うのですね。そこで、政府においてもいろいろ公定歩合の引き上げ、あるいは準備率の引き上げその他等々をおやりのようでありますが、最近のこの消費者物価の値上がりは、東京都区部においての前年度対比は御承知のように一一・六%の値上がりだそうでありますね。これは二十年ぶりの高騰だといわれているわけであります。  そこで、この消費者物価の高騰に対していま何をなすべきか。いろいろあると思うのです。先ほど申し上げたように物価全体の安定のために政府で施策をめぐらすことも当然でありますが、もう一つは、やはり個別的な物価対策というか、これをきめこまかにやる時期だとてまえどもは考えているわけです。ところが、こういうさなかで御承知のように提案されている国鉄運賃値上げは、実質的に一五、三%の実収をあげようということで旅客では二三%何がし、貨物で二四・一%ですか、そういう値上げであります。二割以上の値上げということは、これはかなりの値上げになるわけであります。そうなりますと、特に午前中の質問でも物価に対する問題が出まして、運輸大臣から、まあ影響力としては〇・四二九ぐらいだ、たいしたことはないのだというお話でありますが、なるほど計算上はそうかもしれません。しかし、現実にいま国鉄運賃が値上げされるということになりますと物価にどう影響するかといったら、もう私から多言を述べる必要はないほどでありますね。結局、公共料金を押えるということはだれにもできないし、政府自体にできることであります。固有のいわゆる権能、権限を持っているわけです。そういう権限を持っているものを、手放しでといっては語弊がありますが、上げること自体に私どもはたいへん疑問を感じているのです。これが一番問題だと思うんですね。国鉄の経営についても、もちろんいろいろな問題があります。運賃も見ようによっては提案どおり上げなければならぬかもしれません。しかしながら、いま一番大事なのは何だろうかといったら物価安定だろうと思うんですね。そういうさなかに、くどいようでありますが、二割以上も値上げされることはたいへんだということですね。結局、公共料金の目玉商品とでもいうような国鉄の運賃値上げが実現しますれば、続々メジロ押しに並んでいる公共料金の値上げをせざるを得なくなってくる。そうなれば一般物価に当然のごとく、心理的な影響ばかりでなく、実質的な影響も与えてくる事態を予想することは、これはだれでもおわかりだろうと思うんですね。そういうさなかに、強行するのじゃなくて、いまや国鉄の問題というのは運賃値上げだけじゃなくて、あとからも御質問申し上げますが、その構造的な問題について深いメスと対策をまず第一に先行させることが先だと思うのです。そういう意味からいっても、この際物価に対してはもう少し慎重に考えていくべきだと思うのでありまして、特に政府を責めるわけじゃありませんが、昨年はこの法案審議未了、廃案になりました。廃案になったから何もしなかったでは通らない。なるほど途中で政権交代がございました。しかしながら、この一年間値上げを押えたと同じでありますから、当然その間において公共料金のあり方、あるいは国鉄の再建の方途について新たな方策が出るはずだと思うのです。ところが出てこない。だから、私は繰り返して申し上げますが、物価の安定のためにはこの際、国鉄の再建は別途考慮することにして、運賃値上げを取りやめて、そしてこの一年間なり何なり公共料金全体をストップして、その中で再建策を考えていく、こういうのが当然ではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  204. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 実は今朝も公共企業体の関係閣僚が寄りまして、御承知の先般の裁定をどうすべきかということを話し合ったのでございますが、御承知のように、ことに三公社五現業の中でも国鉄予算上支払い能力がない、したがって、公労法十六条の規定によりまして、これはそのことを国会に諮問するということになっておるのでございます。これをどうするかということでございまして、結論は御承知かと存じますが、どうしても国鉄運賃の値上げの問題を解決していただくという前提で、この問題は国会に諮問することなしに、政府としては賃金引き上げを認めようということになったわけでございます。  ただいま物価との関連でいろいろ御質問がございましたわけでございますが、われわれとしては、国家の重要な機関である国民の輸送機関としての大動脈である国鉄が、今日のような状況にありますことは一日もゆるがせにできない問題であって、何としてもここに御審議をいただいておる再建法を通していただく、運賃値上げ法を通していただくということをお願いせねばならぬと考えておるわけでございまして、その点を特に御理解をいただきたいと思っておる次第でございます。  ただいまお話しの中に、昨年廃案になったのだから、それでやっておるのだからことしもそのようにということがございましたが、実は昨年廃案になりましたので、本年これはもっと大きな値上げをすべきである、ここにございます旅客運賃名目二三・二、貨物運賃名目二四・一ではこれは足りないという意見が非常に強かったわけでございますが、これは諸物価の高騰ということとも関連させて、何とかそれを押えようということでこれにして、ぎりぎりの線にいたしましてここに出しておるわけでございます。物価の関係で実は幾たびか値上げがなされておるわけでございますが、過去の例で申し上げますと、たとえば昭和三十六年、四十一年、四十三年、四十四年、それぞれ旅客運賃あるいは貨物運賃が値上げになった年がございますが、その年必ずしも総合物価の上昇率が非常に高くなっておるとも申せませんわけでございまして、これは非常に平面的に言いますと、いまお話しのように〇・三四%とか、旅客でそんなものであるとか、貨物運賃は間接に見て〇・〇九%であるとかいうような議論がございますけれども、ある面では消費購買力の吸収という点もあるということが、いろいろ学者の説等ではいわれておるわけでございまして、過去の例に徴しまして、今回のこの運賃値上げ、必ずしもそのまま直接物価に響いてくるものではないということも言えるかと存じます。  その問題もございますが、国民輸送の大動脈である国鉄の今日の状況を、何とかして、国も金を出す、そして国鉄関係者においても努力をする、しこうして利用者の方も負担をしていただくということをお願いせねばならぬ、これをお願いせねば国鉄のあすはどうなるかというふうに、非常に切迫した気持ちでお願いをしておる次第でございます。
  205. 久保三郎

    ○久保(三)委員 いま私が申し上げた中で誤解されているようでありますが、去年も廃案になってやったんだからことしもやってくれるだろう、こういう質問ではないのであります。一年間何をしていらっしゃったのか、こうお聞きしている。本来ならば、この過去一年間にもう少し芸のある——芸のあるというのはたいへん語弊がありますが、もう少しきめこまかな再建案というものを考えてくるべきではなかったか。  もう一つは、経済企画庁長官に特にお尋ねしたのは、物価の安定のためにいろいろな施策をめぐらしていらっしゃるさなかに、公共料金の先頭を切って二割国鉄運賃を上げることは、これは矛盾じゃなかろうかということを言っているわけなんです。そうではないというお話でありますが、大半の御説明は、国鉄再建のためにはぜひ必要だという理由をお述べになっているようでありますが、てまえがお聞きしておるのはそうではなくて、物価上昇にドライブをかけるような運賃値上げになりはしませんかということです。しかも公共事業の繰り延べは再度はなさらぬで見送っておるようでありますが、この十カ年計画に見ます限り投資もたいへんですね。それから国鉄ばかりではなくて、経済社会基本計画に基づくところのたとえば道路計画一つとっても、これは五カ年間で十九兆円ですから、この投資をまっとうにやっていくということがあるから、民間設備投資がどんどん先を見越してふえているのじゃないか。それにまたドライブをかけてやるということは、物価対策として何か矛盾がありはしませんか。しかも国鉄の設備投資を要求されるゆえんのものは何かといったら、民間設備投資に追っつかなかったということで、そういうパターンでいま設備投資をやろうというんですね。  今度の基本計画や何かば、産業構造の転換というかそういうものを考えているようでありますが、根底を流れるものは、列島改造論によっていままでの成り行きにまかせて、成長を基調にしていろいろやっていこうというのでしょう。そこに矛盾があるのだから、そういう矛盾を押えることをまず一つはすることと、もう一つは、そういう設備投資が、民間の設備投資がちっとも鎮静しない、ますます大きくなっていく、そういうさなかにドライブをかけるようなことがあってはいけないのじゃないかというふうにてまえどもは思うわけです。  特に運賃の値上げというもの——個別的な対策として政府がやるものは、公共料金の値上げを押えるとかそれを操作するということがまず直接的にできる手段だと思うのです。大豆の値上がりを押えることもできるかもしれませんが、これは間接的ですね。輸入を増していくとかあるいは監視していくということでございますが、今度法律が通りますれば別な方法があるかもしれませんが、直接的に個別的に物価を安定させるという方法は、何といっても政府の手によってサインしなければできないという一つのものを押えていくということ、押えるだけではいけないのでありまして、御承知のように今度の運賃値上げをしますれば、並行線におけるところの私鉄の運賃とかなり格差が出てまいります。これは去年も議論したとおりであります。  たとえば、横浜−品川間では京浜急行が並行して走っております。あそこの定期を例にとりますと、いまでも差がある。今度国鉄の値上げで三倍くらいになる。そうなったら、結局総合交通体系ということで、四十六年の暮れに経済企画庁が中心になってまとめた体系もどこへ行くかわからなくなってくるんです。  そういうことを考えますと、この際は、単純に国鉄の赤字を解消するためにという理由だけで運賃の値上げをやるべきじゃないのじゃないか。もっと総合的に考えて、その上でなるほどこの程度はやむを得ぬということで、万全の策が講ぜられたあとで初めて運賃値上げが提案されるならば別でありますが、言うなら、成り行きに従って、去年廃案になったのだから文句はないだろう、去年と同じだというようなことでは通らぬのじゃなかろうかというふうに私は思っておるのです。くどいようでありますが、物価対策として個別対策は企画庁長官何をお持ちでありますか、お尋ねします。
  206. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 運輸交通問題に非常に造詣の深い久保委員お話、私その限りにおいて非常に傾聴いたしましたが、どうも私どものこの法案を御審議いただいている態度もまた御理解をいただきたいと思うのでございます。  なるほど公共料金は安いほどいいということは言えると思いますし、これは政府は押える権限があるのだから、できるだけ押えろという御主張も理解することはできます。しかしながら、どうも公共料金といえどもやはり公共企業体そのものが運営していくいろいろな経済的な仕組みの結果出てくるものでございまして、やはり運賃をどうしても上げてはいけないのだということでただただ押えれば、その結果はやはりサービスに出てくるのでございまして、かりに押えたとしても無理な押え方をしておればそこに必ず破綻が来るわけでございまして、現に国鉄関係ではすでに破綻が来ておる。問題は将来のこともございますけれども、やはり過去の累積した、積年の国鉄の弊害というものを何とかしてここで立て直さなければならぬというところから来ていると思うのでございます。私もいま物価のことを担当せよということで、今日の物価高の問題についてはまことに心をいためておる一人でございまして、日夜非常に苦悩しておるのでございますけれども、しかし今日の物価高というものはこの国鉄の運賃が値上げになった上で出てきているものではなくて、これと無関係——全く無関係とは言えないかもしれませんが、一応関係なく出てきている問題でございます。そこで私は、やはり過去のこの問題についてはここでケリをつけていただいて、そしてさらに総合的な物価対策として今後の交通運賃の問題も考えていきたいと思っておるのでございます。  実は都営あるいは市営の交通の問題については、先般関係の市長会からもいろいろお話がございまして、これは御承知のように値上げをしておるわけでございます。横浜にしましても名古屋にしましても、それぞれ値上げをしておるわけでございまして、どうも国鉄なるがゆえに、何としても無理を承知政府がゴリ押しにこれを押え込むということが一体できるものだろうかということをむしろ私は考えたいのでございます。その結果、過去の例を見ますと、過去にも国鉄運賃を値上げいたしましたが、そのことがすぐに物価高になってきていない。やはりそこに利用者と価格との関連がございまして、国鉄の利用者が減ったり、あるいは他の交通に流れたりする面はございますけれども、そのことがいきなり物価にもろにはね返ってくるという関係ではございませんので、これは公共料金を上げないほうがいいにきまっているとは思いますけれども、この問題は何としても解決していただかなければならない問題である、私はかように考えておる次第でございます。
  207. 久保三郎

    ○久保(三)委員 私は運賃について安ければ安いほどいいというようにいま言っているわけではありませんが、これは実際に安いほどいいのですよ。それからもう一つ、運賃に関係なくいまの物価は上がっているんだ、そういうお話でございますが、そうですね。いまはそうです。しかし、それにドライブをかけるようなことが物価安定政策だろうかということになるわけでありまして、国民はやはりそういう点で非常な刺激を受けると思うのですね。それをやわらげていくというのが、たいへん口幅ったいようでございますが、政治ではなかろうかと思うのですね。  それからもう一つは、何か上げないでいけば国鉄がどうにかなってしまうということでございますが、私はこれから、長官がお帰りになってから別な角度からまたその点では議論しますが、たとえば道路は料金を取っていませんね。高速道路では、これは料金を取っています。しかし、料金だけで五カ年計画の資金投入というのはやっていないですね。五カ年計画は料金ではやっていない。港湾のごときもそうですね。港湾の設備投資もそうなんです。だから運賃が上がらぬければうまいぐあいにサービスができないというものではないのですね。そうですね。運賃や料金に関係なく、社会資本というのは国鉄以外のものでは大体蓄積されておる、投下されておる。そういうことを考えると、この際はいろいろ議論があります。  これはこれから別な角度からお話し申し上げますが、私としては企画庁長官にお尋ねしたいのは、さっきから繰り返し申し上げているとおり、それじゃ物価対策について個別対策は何かございますか。これは運輸委員会でございますから、単に国鉄問題にしぼって国鉄の運賃を議論しているようにお考えになるかもしれませんが、——もちろんそれはそのとおりです。しかし、そればかりで議論しているのじゃなくて、いま一番国民の関心のあるのは——国鉄に対しても関心があるだろう、しかしもっと関心があるのは物価対策だと思うのです。いろいろ過去の例で影響はあまりなかった、なるほど先般も企画庁にお尋ねしたら、あまり影響のない数字を並べてきました。しかし、これは数字の上で出てきたことでありまして、現実にこの数字の取り方が、はたして庶民生活というか国民生活に密着したものであるかどうかということについては幾多の議論があるところですね。そういう議論をいましようとはしませんが、何といっても世論は、この際は物価の安定を望む世論が一番多い。だからひとつ考えていただくのは、政府でやれる公共料金の値上げというものをこの一年間なり二年間押えていって、そして別な対策を立てていく、そういうことのほうが一番賢明じゃなかろうかというので申し上げているわけなんです。  いつまでたっても平行線かもしれませんけれども、最後にもう一ぺんお尋ねしますか、国鉄の運賃を含めて物価安定の個別対策というのは、それじゃ何と何をいまお持ちでしょうか。総合的なものはわかりました。たとえば先ほど申し上げたように、公定歩合の引き上げとか預金準備率の引き上げとか公共事業の繰り延べ——再繰り延べはしないようでありますからドライブをかけると思うのでありますが、民間設備投資については、先般企画庁長官は、自動車について、最初頭金を少し多くしたらどうかというお話がありましたが、われわれも考えていたように設備投資を押えるというようなことにひとつ行ったようでありますが、これも一つの方法だと思うのです。しかし、そういうことだけではやはりうまくいかないと私は思うのです。だから、公共料金などは政府直接の問題でありますし、その他の公共料金についてはメジロ押しに並んでおりますから、そういうものに対してのこれからの扱いの御方針はいかがでございましょうか。このとおり国鉄が通りますれば、私鉄も来るだろう、バスも来るだろう、飛行機も来るだろう、こういうことなんですね。これに対する御方針はいかがなんですか。
  208. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 総合的な物価対策についてはただいまお示しのようなことでございますが、私は物価の問題は、結局は需要と供給の問題であると考えておりまして、何としましても供給をふやす。たとえば、いま物価の一番大きな原動力になっております生鮮食料品、これ等についても供給対策、産地と消費地との間の関係、これを円滑にすること、あるいは国内で足らざるものについては輸入をふやすとか、そのためには特恵関税のシーリングワクを拡大するとか、さようないろんな技術的なことを含めましてその点が非常に重要だと考えておる次第でございまして、その点に触れて申し上げますと、やはり国鉄関係も、国鉄の財政を再建して、そして国鉄の輸送力をふやすということが真の意味の恒久的な対策であるというふうに考えておる次第でございます。  なお、御質問にございました、国鉄の運賃値上げができましたら、そのあとメジロ押しにいろいろな公共料金関係のものが出てきて、たとえば私鉄はどうなる、いろいろそういうお話がございましたが、私どもの方針といたしましては、経済企画庁に持ってくる前にそれぞれ原局を通してくることは御承知のとおりでございまして、いまのような関係のものは運輸省からあがってくるわけでございますが、そのあがってまいりました時点において、十分その経営の内容であるとか収益の状況であるとか、また一般の物価に与える影響、そういうものを精査いたしましてきめたいと思いますが、公共料金は真にやむを得ざるものに限って厳にその値上がりを抑制するという方針でまいりたいと考えておる次第でございます。
  209. 久保三郎

    ○久保(三)委員 企画庁長官は約束の時間でありますから、これ以上おいでいただいても悪いと思うので、いずれあらためて申し上げたいと思うのですが、最後に承服したわけではありませんよ。あなたのおっしゃることは、立場上、それはいろいろおっしゃっているんだし、わきに運輸大臣おりますから、そうおっしゃるのも当然です。しかし政治ですからね、長官。もう少し考えていく時代だろうと、はっきり言って私は思っています。われわれは形式的に運賃値上げに反対しているのじゃないのです。運賃値上げで再建をやっていけるのかといったら、十カ年間に四回やったって赤字なんですよ。十一兆円も長期債務がたまってくる。累積赤字は現状の倍になるわけです。それで財政再建だろうかといって、さっきからだれも何回も質問しているのです。そういうものにぴたっとした答えが出ない限り、これは再建にも何にもならない。しかもいまやどっちを向いて経済政策というものを進めていくのか、はっきり言って私はわかりません。産業構造の転換だと片方でいうと、片方ではいやそうじゃない、均衡ある発展だというから、過密から過疎のほうへ物を持っていけばいいんだということで、いままでの成長政策を持続していこう、そういうものも一つの矛盾だと私は思っているのです。いまや大きな矛盾がたくさん出てきているんだから、この際は過去の手法でやられていくべきじゃないだろう。もっとも、政権が安定してないようでありますから無理かもしれませんが、いずれにしてもこの一年間ぐらいはもう少し真剣に考えたらどうかというので、私はわざわざおいでをいただいてお尋ねしているわけです。なるほどあなたのおっしゃるとおり、上げても差しつかえないというなら、とっくにこの法案は通っているのじゃなかろうかとてまえどもは思うのでありますが、通らぬところを見ると、やはり一番ガンだと思っているわけであります。  いずれにしても約束の時間でございますから、あなたに対する質問はこれで一応打ち切っておきます。  それで運輸大臣、あなたに本論に入る前にお伺いしたいのは、さっき松本君の質問に対して、いわゆる第二山手線といいますか、外山手線というか、武蔵野線の延長の計画構想というか、あるいは第二東海道新幹線の問題、これはいろいろ御答弁がありまして、そうだろうと思います。そうだろうというのは、大体これを考えないで十カ年計画というものを立ててきたこと自体が誤りではなかろうかと実は思っているわけなんです。これは当然だと思うのです。いまのまま追随していく形の、輸送需要に追いついていこうという形のやり方でいくならば、第二東海道新幹線も必要でしょう。新幹線そのものは別にして、別途輸送力増強をはからなければいかぬだろうというのは、しろうとでもわかりますね。  それからもう一つは、東京都を中心にする通勤輸送ですね。これには幸い、最初は貨物を追い出そうということでつくった武蔵野線だが、うまいぐあいにこれをぐるっと回せば外環状線になる。これで旅客輸送をやろうというのはだれでも考えることである。ただし、これをつくっても、もっとも話は横へそれますが、都心部に対するところの京浜東北線とか中央線の増強が伴わぬ限りは、これは絵にかいたもちですね。いまのままではこれはどうにもならぬですね。それを含めて、ああいう新聞に出たような結論で、田中総理ともお話が出たんだろうと思うのでありますが、それはそれでいい。しかし、十カ年計画にこれから入れるというんですね。単年度で、四十九年度になったらば四十九年度の予算に入れて御審議をいただきますから、それでいいじゃないですかという答弁がさっきの答弁の結論だと思って私は聞きました。これはずいぶん人を食った——と言ったらたいへん失礼かもしれませんが、食った答弁だと思うのです。予算案は、もちろん単年度の予算でこれを審議していくのが当然であります。しかし、いまや提案されているものは、国鉄財政再建十カ年計画というものを御提示になっているわけですね。公式であろうが非公式であろうが、たとえば期間内において三千五百キロの新幹線開業させる、六十年までには合計七千キロをやる、通勤輸送はどうする、こういう大ざっぱな、つかみ金であっても何でも、計画をお立てになって提案されて説明されているわけですね。その中には、いま言った第二東海道線の話は出てまいりません。本来ならばそういうものを織り込み済みでやるのが当然だと思うのです。どこかいなかの短い、十キロか五キロの線路を敷くというような話じゃこれはありません、はっきり言って。なるほど、鉄建公団に全部やらせるんだから、十カ年計画の答申の中には入れないということはあるかもしれない。しかし、新聞で知る限りは、再建期間中の十カ年以内に開業しようということで話を詰めようということだそうでありますから、そうなるというと、財政再建十カ年計画というものに当然そういうそろばんが入ってこなければならぬはずだと思うのですね。私から言わせれば、人をばかにした話だなと思ってさっき午前中聞いてたんです。ばかにしている話ではないのでしょうけれども、そういうふうに聞きました。これはいずれにしても、そういう御計画があるならば、織り込んで計算をすべきではないですか。どうなんでしょう。最も大事なことをなぜ入れなかったのですか。それで新幹線を新たに鉄道建設審議会にかけて五線の調査をしている。それよりはもっと先にこういうものが必要であるということは、あなたが説明をされていたかどうかは別にして、世の中のだれもそう思っているのですね。目の前のパンクしそうな輸送をどうするか、東京通勤輸送をどうするか。ところが、いつになったら完成するかわからぬような五線の調査が先になるということは、だれが聞いても計画とはいえませんよ。私ははっきり申し上げますが、これはひとつ計画のそろばんをはじき直して出し直していただけないだろうかというように思うのですが、いかがでしょう。
  210. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 問題を二つに分けてお答えいたします。  新聞に書かれておりますが、先ほど申し上げましたように、私は東海道第二新幹線ということを言ったことはございません。新幹線建設は、御承知のとおりに、現在までに調査五線がございまして、それにつきましては国鉄及び鉄建公団におきまして具体的な路線調査をいたしております。これについての答申といいますか調査の結果が報告されました場合に、おそらくことしの秋ごろになると思いますが、そのときに運輸省におきましては初めて、この東北から北海道に参ります線、それから北陸を回ります線、それから九州の鹿児島と長崎に参ります線、これにつきましては具体的な路線決定をするという段階になっておるのでございます。  それからあとを一体どうするかということにつきましては、これは先般鉄道建設審議会におきましてもそういうアドバイスがあったようでございます。どういう路線を選ぶかということについて研究を始めたほうがいいだろう、こういうような御意見があったようでございますので、いま申し上げた現在調査中の五線に引き続きまして今後どういう新幹線を選んでいくかということについては、これは六十年度までに完成させようという計画が、一応いままで計画されておるということを聞いておりますので、それには追っかけてどこを選ぶか、どういう路線を選ぶかということについて、やはり調査研究をさせなきやなりませんので、そういった段階でだんだんこれが具体化していくと思います。しかし、いま政府部内におきましてもだれも、その問題についてここの線が必要であるとか、ここの線を先にすべきであるとかいう域に達しておる意見はまだございません。私のほうもそうでございます。これはいま調査中の五線のあとでそういった問題について考えていこうという段階でございますから、第二東海道線というものにつきましては、私もそういったことを具体的にまだ考える段階ではないということを先ほど申し上げたのであります。  それから第二山手線というふうに新聞に書いておりました線、これはそういう表現を私はしなかったつもりなんですけれども、皆さんの御質疑を通じまして、やはり大都市を中心にいたしましての通勤通学の輸送関係が非常に混雑をいたしまして、いろいろの問題を起こしたことも事実でございますから、これを何とかしろ、何かいい発想はないのかというようなことをおっしゃいまして、非常にこれは参考になりましたし、また激励も受けたと私は思っておるのであります。  そこで、首都圏のそういう通勤通学輸送の問題でございますが、首都圏も半径五十キロというふうに広がってきておりまして、その間に相当人口が集まってきておることも事実でございます。そういった者をどうして運ぶかということでございますが、これには、先ほども申し上げましたように、いままでの計画はそれは実行してもらってけっこうなんでありますけれども、しかし観点を変えて考えますると、いまお述べになりましたような武蔵野線でありますとか、あるいは古い線でありますが南武線でありますとか、これから建設に着手しようとしております京葉線でございますとか、貨物を主体にしあるいは旅客を主体にしたような線があちらこちらにございます。そういったようなものをもう少し有機的につなぎ合わせますと、首都圏のもう一つ外側を回るような線になり得るだろうということを考えまして、それについて何かよい方法はないだろうか、それはどういうふうにすれば実現ができるであろうかというようなことにつきまして、事務当局検討をさしておるということでございます。先生はいま、十カ年計画を出しておって、何かそういう計画がいままで述べられなくていかにもばかにしたような話じゃないかというようなお説でございましたが、そういう気持ちは毛頭ございませんので、十カ年の中におきましても、これは広く皆さんの御意見も聞き、われわれの内部でも真剣に検討いたしまして、よりよい案がございますればそれを採用していくのは当然のことだろうと思います。ことに十カ年計画につきましても投資規模は大体きまっております。また政府の助成といいますか、補助といいますか、政府の財政的な援助の総額というものもきまっております。そういう範囲におきまして具体的な計画を策定いたします場合に、最もこれが効率的であり、最もこれが国民のために利益になるというような案があれば、やはりその範囲内においてそれを採用していくということを考えますことは当然のことだろうと思うのでございます。いま御審議を経て通りました四十八年度の予算でそれを無理やりに入れようとしますと、相当無理がくることは言うまでもございませんけれども、今後検討いたしましてそういったいい構想が実を結ぶようになりますと、四十九年度以降の計画といたしましてそういったものを取り上げていくのが可能であり、それがいいだろうというように先ほども申し上げたのでありまして、皆さんで御審議を願っておるこの国鉄再建計画に対しまして、特にそれを無視してかってな構想を振り回しているわけではないということを御理解いただきたいと思います。
  211. 久保三郎

    ○久保(三)委員 十カ年計画がそういう話だと、非常に中身が弾力性があるといったらたいへんことばがいいのでありますが、どうにでもなるという感じですね。ただ外ワクは全部固まっている、そのワクの中でやってもらうのだというお話でありますが、そういうやり方でいいのだろうかどうであろうかということです。大体十カ年計画に対して私は疑問というか、これはナンセンスだと思っているわけですから。むしろ私は、国鉄の再建にとっては計画というのは短いほどいい、短いほどいいといっても、単年度のころがしでもこれも困るだろう、まあ三年では短いだろう、やはり五カ年計画で毎年度フォローアップしていく、そういう前提ならば、いわゆる第二山手線構想もその中へ織り込んでいくことは当然だと思うのですね。ところがもはやこれは、この御提案になっている説明材料を見ますればおよそ見当をつけているわけですよ。おおよそ見当をつけたところがあって、たとえば大都市の輸送は二百八十キロやる、そういうような計算でいるわけですね。新たにやろうとすれば、これは計画の変更にならざるを得ないのではないかと思うのですね。じゃ二百八十キロは何だ、まあこまかく聞くのが当然かもしれませんが、聞いたらば——まあこの話が出ている最中でありますから何とお答えになるか知りませんけれども、実際を言うと私は、この十カ年計画がナンセンスだから、たとえばこの線路二百八十キロ、これをこまかく聞こうとはしないのですよ。これは毎年度フォローアップしていくということが当然の計画じゃないですか。そういうことを考えれば、いまお話がありましたような回答では少し違うだろう。私は、この十カ年計画ワクの中で全部、政府の助成もこれだけ、運賃値上げも四回というようなやり方自体に疑問があるし、これは少し人をばかにしているんじゃないですかというのです。運賃値上げの四回などは、あとからも話しますが、現時点におけるインフレを前提にして承諾をした、その上でのこれは計算でしょう。そうですよ。インフレを前提にした四回に何で同意ができますか。政治はやはり、いまインフレをおさめるということが田中内閣の最大の任務でありましょう。そういう内閣が、片方にはインフレ対策をやっています、物価安定をやっていますということでさっきお話がありましたが、四回の値上げを十カ年間に考えますというんじゃ、何もやってないということと同じですよ。  それから経済社会基本計画でも、さっきから申し上げたように、産業構造の転換をはかれという項目が大きくあがっている。転換をはかるならば、それじゃ十カ年計画の輸送量のいわゆる想定というか予測というものは、どういうものを基礎にしてやっているのかというのです。これは転換をはかっていないのです。だから、さっき申し上げたように、これはひとつ出直したらどうかということで申し上げているわけです。だから単に、申しわけありませんが第二東海道線は何もおっしゃらぬ、こう言うのでありますが、あなたがおっしゃらなくても運輸省では——運輸省というか、国鉄では案外検討しておるのかもしれませんぞ。このままでいくと太平洋ベルト地帯はもうだめだ、とてもじゃないが間に合わぬ。それで輸送分野からいっても、大阪までならばほかのものに勝てる見込みがある。いまの東海道新幹線で実績がありますから自信を持っている。大体そういうパターンになってきた。だから、三百キロぐらいならば、これはリニアモーターですっ飛ばせばという研究をしていることは事実なんですね。そういうものが全然入っていない。考えませんということもこれはおかしな話ですよ。だから、そういう計画はもちろんニュートラルな計画でなければ話ができませんね。そうでしょう。それを固定した十カ年計画で、四回値上げで、政府出資が幾らで、助成が幾らで、財投が幾らで、それで工事規模は十兆五千億だ、そういうことできめたのじゃ、これは国鉄の行く先はどうしたってにっちもさっちもいかなくなる、私はそう思っているのです。  いずれにしても、この問題はあとからまたやることにしますが、そういう構想をお持ちならば、やはり計画は短い期間に縮めてお出しなすったほうがよろしいということですよ。いかがですか。
  212. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 長期計画を十年にしたということについての御意見でございましたが、これはいまの国鉄の財政再建法にも趣旨がうたってございますように、その趣旨に沿いましてもそうでございますし、また実際、先ほど小坂長官から申し上げましたように、国鉄の体質を立て直しまして、もちろん公共料金引き上げということはわれわれも望ましいことではないと思っておりますけれども、それよりは、いまの国鉄の体質を立て直して、そうしてほんとうに国鉄の本来の使命が遂行できるような機能を十分に発揮させるようにすることが、大局的に見ますと、国民経済にも国民生活にもそのほうがプラスになる、どうしてもこの際国鉄の再建をやらなければならぬ、こういう考え方から提案をしているわけでございますが、そういう点から申しますと、五カ年という数字はかりにお示しになったかしりませんが、五カ年間という期間をもとにいたしましては、これならば国鉄が財政の再建もし、したがって、財政の再建の上に立ってその機能を回復して国鉄本来の使命に邁進できるような体制ができるかと申しますと、できません。でございますから、昨年提案いたしましたものにおきましても十年ということを考えておったと思いますし、ことしは昨年よりもなおさら財政的にはマイナスの面が多くなってきております。したがいまして、一生懸命努力をし、政府におきましてもあらゆる方法を講じまして援助措置を講じましても、やはり再建には十カ年かかるということが明らかになりましたのでこの十カ年計画を立てたのでございまして、十カ年間、いま提案いたしておりますような努力をお互いに重ね、利用者の方々にもそれだけの御負担を願うようにいたしまして、国鉄の財政再建、したがってその本来の体質の改善をはかりまして、国鉄がほんとうに本来の機能を発揮できるような程度まで回復できるということをねらっておる趣旨でございます。
  213. 久保三郎

    ○久保(三)委員 十カ年ということが頭にこびりついていらっしゃるんですね。再建ということは十カ年でなくてはいけないんですか。五年でできるものがあれば、五年ですることがいいんじゃないですか。長期計画といってもみなほとんど五カ年ですね。それを、なぜ国鉄の再建だけ十カ年にしなければならないのかというところに私は疑問があるんですよ、去年から。そういう絵にかいたような再建計画ではだれも本気にしないんです。たとえば、三年たったら四年目に運賃値上げしなければならないような計画を本気にしないんですよ。こういうことで再建できるなら、とっくにできたんですよ。経済の情勢も違うだろう、政治情勢も違ってくるだろう、人の考え方も違ってくるだろうというのが、いまの世の中の全体の流れじゃないんですか。しかも、責任をもっておやりになるというのなら、私はやはり短い期間でめどをつけていくということですね。再建できますなんというおこがましいことを言うこと自体、私はおかしいと思うのです。これまでになった国鉄を自力でやっていけるような立場に立てること自体が、これは不可能でありはしないのか、見ようによってはね。そうでしょう。それを無理やり十年に延ばして、さっきも御質問が出たように十年目で初めて償却後の黒字が出ていくなんて、だれが考えてもほんとうにしませんよ、これは。何か逆算してやってきたような計画じゃないんですか。そろばん合わせというか、ごろ合わせと言ったほうがいいですね。そろばん合わせならまだいいけれども、ごろ合わせ、十カ年というごろを合わせてきた。私は、責任ある政治体制ならば、五カ年計画で毎年度フォローアップして再建のめどをさがしていくということが正直な言い方だと思うのですね。御列席の皆さん全体として、十年たったときの保証をすると自信を持って言い切れる方が何人いますか。私はいないと思うんですね。大体あと十年たったら、はっきり言ってこの席においでになる人が何人残りますか。私は真剣に考えているんですよ。十年計画でそういうことなら、五カ年計画で正直に、五年たてばこういうぐらいになりそうだというならば、そこへ向かって、いわゆるハードウエアばかりでなくて、ソフトの面も政策と並行してやっていくことが必要だと思うのです。それが正直なやり方です。そこへいって五年目に、こういう結果になったからどうしようかということをまた考えることは当然だと思うのです。いかにも十年たてば再建できるような、ほらとは言わないが、ごろ合わせですね、そういうものを前提にしてものを考えていくことはもうやめたらどうかということなんです。私は責任を持つといったって、こんな十年では私も責任を持てないかもしれない。いかがです。十年であっても五年であっても、五年でも半年でも同じだというが、それはそうだ。だけれども、短い期間にかけておいて、これをフォローアップしながら手直しをしていくということがいま一番大事なんですよ。目標だけはきちんとしておく。しかも、よそのほうの計画というのはどんなものがありますか、こんな十カ年計画なんというのがよそにありますか。だから、もう一ぺん申し上げますが、なるほど答弁の中で運輸大臣は、そうですが、おまえの言うとおり五カ年計画がいいなということは言えないと思うのです。当然これは去年もどなたも言っているはずです。だからこれはもうほんとうに今度提案するならば、五カ年計画提案して、手直しをやっていくということのほうが私は正直だと思っていたわけなんです。もう一ぺん答弁を求めても同じでしょう。そうですね。それでは十年後の保証は何かお持ちですか。
  214. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 十年というよりも五年、五年というよりも三年でめどがつきましたらば、もちろんその三年あるいは五年の計画で進むのが当然だと思いますけれども、国鉄財政再建臨時措置法でございますかにも書いてございますように、これは昭和四十四年度から五十三年度までになっておりますが、国鉄の現在の財政を再建し、そして国鉄の機能を回復させるというようなことを考えてまいりますと、十年ぐらいはかかるという考え方をもちましてこの現在の再建臨時措置法というものもできておると思います。今度の再建計画を立てるにあたりましても、もちろんこれは前任者もわれわれも同じようなことを考えてきたのでございますけれども、短期間では再建のめどが立たないものでありますから、十年という長期にわたりまして努力することによって、その再建のめどが立つという計画を策定したということでございます。
  215. 久保三郎

    ○久保(三)委員 あとでまた再建計画については聞くことにしましょう。  それじゃ、再建の基礎というか動機になったこの国鉄の赤字というのは何だろうかということです。国鉄の財政悪化というか、その財政悪化というのは赤字ということだと思うのですが、そうでしょうね。いかがですか。
  216. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 赤字ということはいろいろな意味で使われておると思いますが、国鉄の赤字というのをわれわれが言っておりますのは、国鉄収支が償わない、そのために借金も返せないし、年々借り入れをしないと運営ができないというような状態になっておる。これは資本的な方面ですが、資本勘定のほうもございましょうし、損益勘定のほうもあると思います。そういったものを両方含めまして赤字という字を一般的に使っておるものと考えます。
  217. 久保三郎

    ○久保(三)委員 そこで、この赤字の見方でございますが、いまお話がありましたように、損益勘定での赤字という御指摘がありました。これも一つの赤字の見方であるようであります。それからもう一つは、線区別計算というのをやりまして、黒字線、赤字線というものがある。結局赤字線のほうが多いから差し引き赤字であるという計算、それをもって赤字というのもある。それからもう一つは、客貨別の原価計算からいって、いままでも話が出ましたとおり、旅客では大体黒字がある、貨物で赤字だ、だから差し引き赤字になっているという見方もある。そこで損益勘定のほうから申し上げますれば、御指摘のとおり収支のアンバランス、それが赤字だ。アンバランスの原因は何だろうか。いままでお述べになっているところを見ますと、収入が伸びない点が一つ、支出のほうでは人件費と利子が重なってきた。だから結局そこで赤字になった。特に収入の問題についてはあとから申し上げることにしまして、資本というか営業費のほうですね。支出のほうです。人件費は、人を使っていく限りは賃金を払わなければいけませんから払う。もう一つは資本費、経費ですね。これは御承知のとおり、金を借りれば利息を払う。もう一つは、減価償却をしていかなければならぬというようなことだろうと思います。  ところがここで特徴的なものは何かというと、国鉄の減価償却というものは非常に私は特徴的だろうと思います。何が特徴的かというと、減価償却というのは投資に対して回収をしていって、さらにまた再び回転して投資をするわけですね。そうですね。ところが国鉄の減価償却というのは再び回転しないですね。これは借金の返済というか、そのほうに回っていく。そうでしょう。再び回収してそれを投下するというわけにはいかない。昭和二十五年から四十七年までに、長期資金として国鉄が借り入れているのは大体五兆一千億であります。もちろんそのうちから返しましたから、いま四十七年度末で三兆七千億ですか、これが長期債務の残高になるのですが、借りた金の累計は約五兆一千億ですね。それからまとまって投資をしてきたのは、御承知のように昭和三十二年以後、第一次五カ年計画からであります。これは四十七年までの長期計画で累計してみますと、四兆九千幾らで約五兆円。大体とんとんに近い。これを一つ見ても、言うならば減価償却をするということ自体は一般の会社、工場というような形とはずいぶん違うということですね。しかも設備投資は懐妊期間が非常に長い。そこで最近やや長期になりましたが、借り入れ金、特に自己調達資金は返済期限は七年かそこらで短い。そうなりますと、ここで乖離が出てくる。結局そこから赤字というか、いわゆる財政破綻の原因が一つあると思うのです。独占時代には、御承知のとおり運賃で大体カバーできていたから、まあまあこれは多少回転していた。ところが昭和四十年度以降、大幅な借り入れ金にたよるようになってきました。三十九年度の財政悪化以来、金は借金であろうが何であろうが同じだという思想が一時国鉄の中にありました。そういうせいかどうかわかりませんが、これは政府の指導でありますが、大体四十年度以降長期借り入れ金というのが非常に多くなってきた。しかも自己調達資金というものが一時多くなってきたですね。  こういうことに留意せずして財政再建は、私は不可能だろうと思っているのです。いままさにやろうとすることは、なるほど十兆五千億の投資に対して一割五分に相当する一兆五千億の政府の出資があります。これはいい。一割五分の出資ではたしていまのような性格から、構造から脱却できるかというと、私は非常にむずかしいだろうと思うのです。それを直すことがまず一つではないのかということを言いたいのであります。しかも減価償却も、御案内のとおり幾たびかの改正で、これはやはり一般企業と同様なかっこうでやっていこうということであります。もっと近代化を促進するためには、昔どおりのようななまぬるい手段では追いついていけないというので、減価償却を早めにやっていく、定率法というものでやっていく、あるいは使用を開始したらすぐその月から減価償却をやらせるというようなことで、非常にシビアな減価償却をやっていく。そういうものがたまりたまってきて、今度は償却はできなくなって、償却前赤字になってきた。償却前赤字の原因は何かといったら、長期債務に対するところの利子の増高であります。なるほど一般企業にとっては、普通の企業、会社、工場の利息から見れば、もちろん七分何厘だから安いかもしらぬ。ところが仕事の性質、企業の性質からいけば、当然これは高利につきます。そういうことを考えてきてやっと投資ということになったのだろうと思うのでありますが、十兆五千億の投資に対して、出資が一割五分では残念ながら体質改善はできないと思います。運賃値上げという問題もありますが、運賃値上げで四回やれば、まるまるの自己資金でできるからいいじゃないかという話がありますが、これはそう簡単にはいかないと思いますね。政府が総合交通体系に基づいての総合交通政策をいまや何にも打ち出していない。そういう中で、運賃値上げをしていけばどうなるかというと、これはいままで同僚諸君からいろいろお話があったとおりであります。これはそう簡単には体質改善には役に立たない。立たないばかりか、国鉄はゆがんだ姿で持っていかれてしまうのじゃないかという感じがするわけであります。  それからもう一つは、資本費のというか損益勘定のほうは、いま申し上げたようにどうしても出資は必要だ。それが証拠に——きょうは大蔵省は来ていますか。これは言うならば国鉄責任ばかりじゃない。いつも国鉄総裁が表に立って悪者扱いされているようでございますが、経営の責任者だから当然だと思いますけれども、実際は政府自体の責任なんです。運輸省並びに大蔵省、こんなことを言ったらたいへん申しわけないのでありますが、私はあるものに書いておきましたが、実際の責任者は財政当局である。大蔵省の財政当局が今日の国鉄をゆがんだ姿にした元凶ではないか。これに拍車をかけたのは運輸省の官僚である、無力な官僚がそうしたんだ。結局、当事者能力のない国鉄総裁がどうがんばってみても、これは当然どうしようもないんですな。  いままで政府出資を要求しなかったかというと、要求しているんです。四十三年度に九百億の通勤輸送のための出資を政府要求した。そのときに大蔵省は何と言っているか。それは構造的なものであるのか単なる通勤輸送のペイしないものであるのか検討しなければ、金は出すわけにいかぬと言っておる。そこでまた、四十四年ですか、これまたしつこく要求をしたそうでありますが、これもはねられた。はねた理由は何かというと、総合交通体系が確立しない限りは財政硬直化を招くからだめだ、こう言っている。言うならば、無力なんですよ。大蔵省の前には無力なんだ。財政硬直化はだれがつくった。はっきり言って大蔵省がつくった。出すときに金を出さぬで、季節はずれの着物を持ってきても用は立たぬのです。夏になるのに綿入れを持ってきても、これはどうにもなりませんよ。いまやまさに国鉄財政再建のために、一割五分の出資を十カ年間でやる。ところが、初年度は幾ら出すか。四十八年度でたった八百億でしょう。算術計算からいって、一割といったら千五百億でしょう。八百億しか出していない。それ一つ見ても、財政硬直化にこりて、もはや手を出してはいかぬ、足もいかぬ、そろそろ行こうじゃないか、あわてちゃいかぬぞ、そういう態度では出す金も生きてはこないのであります。だから、出すのなら思い切って出すということで、十カ年じゃなくて、五カ年間に圧縮したらどうか。一割五分、一兆五千億出そうというのならば、五カ年間に出していけばいい。圧縮して、濃縮して出すことが国家のためにも、国民大衆のためにもいいのです。そういう思い切った政策をやることが発想の転換というのですよ、はっきりいって。そういうものはちっともやらないで、去年と同じ提案をしてきたんじゃ、これは幾ら政権がかわってもほめたものではないと私は思っているわけです。いかがです、大臣
  218. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 非常に示唆に富んだ御質問をいただきましてありがたいと思っておりますが、そういった点を考えまして、実は運輸省といたしましては、久保先生からおっしゃると非常に力がない、あるいは力がなかったかもしれませんが、最大限努力をいたしまして、今日提案をしておるような計画をつくったわけでございます。昨年の案と比較していただきたいと思いますが、これでもよほど前進したつもりでございます。そういうことのために、昨年より国鉄の財政状況は非常に悪化してきてはおりますけれども、何とかして十年間には、昨年と大体同じような方式でこれを克服できるというめどをつけまして、それに必要な政府の助成、それからいまお話しのような投資規模、それに対する政府の出資、それから利子補給というようなものにつきまして、全般的に、総合的にきめまして、まあこれならば十年間には再建できるであろうというめどをつけたのでございました。いま私ども出しております案は、久保先生からごらんになると、まだこれでは再建はできまいということをおっしゃっているわけですが、私どもは、今度の案を成立さしていただきますと、運輸省国鉄も一体となって努力をいたしまして、この方針で十年間には財政の再建、したがって国鉄の本来の機能回復に、国民が期待しておられたようなところまでいけるのじゃないかという希望を持ちまして、進んでおる次第でございます。
  219. 久保三郎

    ○久保(三)委員 もっとも、大臣から同感であるという答弁は当分出ないだろうと思うのでありますが、私は真剣に申し上げているのですよ。どうせ出すのなら、五年間に圧縮して出す方法を考えなければいかぬ。しかも国鉄は、運賃だけでこれからも回していこうという考えなんですか。どうなんでしょう。いわゆる独立採算というわけで、この間の御答弁でも、そういうようなワクで十年後に独立させるのだとおっしゃいましたが、私はどうも独立採算制で十年後に再建などはできないと思っている。いかがでしょう。
  220. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 国鉄の収入というものは、それは不要な資産の売却とか軽微なものはございますけれども、収入は運賃以外にはないはずでございます。したがいまして、運賃を若干引き上げることによって、政府の助成と相まって再建をしようというのが、申すまでもありませんが、今度の計画の骨子でございます。
  221. 久保三郎

    ○久保(三)委員 運賃と国家の助成、そういうもので再建しようということだそうでありますが、これは独立採算制じゃないですね。
  222. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 公共企業体の本来の性格といたしまして、基本的には独立採算制を捨てておるわけではございません。しかしながら、従来一般的にいわれておりました独立採算制というものは、政府の助成なくして自分の力だけで収支償うようにしようというのが独立採算制であったと思います。今日の電電公社のごときは、政府の補助がありませんので独立採算制を維持している一つの公共企業体であると思います。しかし、国鉄につきましては非常に公共的な要求が多いのでありまして、したがって、それに見合った公共的な施設をしなければならぬ場合が非常に多いわけでございます。それから生じて、収支の採算を度外視してやらなければならぬ場合が多いのでございますから、それに見合ったような助成、補助を国の力でやるのは当然であるという意味におきまして政府の助成を続けております。その意味におきましては純粋の意味で、厳密な意味で、学問的な意味で独立採算制というのとは違うかもしれません。しかし、基本的には、独立採算制を堅持しながら必要な政府の助成を与えておるということだと思います。
  223. 久保三郎

    ○久保(三)委員 先ほどの御答弁で、去年の案より前進したではないかとおっしゃいましたが、そうすると、ことしもつぶしたらば、来年また前進しますか。いかがでしょう。
  224. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 この十カ年間の計画の範囲内におきまして、事態に応じてできるだけ政府の補助もし投資規模もふやしまして、社会の要求に合うような施設を早く完備するように努力をいたします。
  225. 久保三郎

    ○久保(三)委員 前進したというのはうそなんですよ、私のほうから見れば。財政再建というのです。その財政再建ということから見れば、たとえば四十七年度政府出資は六百四十五億ですか、今度は八百億だから前進したじゃないか、利子補給も前進したではないか、こういうことだと思うのでありますが、御承知のように設備投資というか、投資はふくれ上がっているんですね。投資は七兆円から十兆五千億にふくらましてきた。だから結局、政府が助成するものとの比較においてどうなんでしょうか、投資計画の膨張につれてこれは伸展してきたということであって、財政再建のためということにはあまりならないというようにわれわれは見ているんです。くどいようでありますが、だから十年後には償却後の黒字は出るだろう、計算では出ます。それからもう一つは、償却後の黒字でありますが、去年の姿は大体七年目でありますか、五年か六年後には一応黒字になってきているんです。去年の計画では五十三年から大体黒字基調が出てきたんですね。ところが今度はずっと赤字なんです。ずっと赤字でいって、最終年度の五十八年度にぽっこりこれが黒字になってくるんですよ。数字の計算はいかようにもできるんでしょうから、これを土台にしてその信憑性というか、そういうものを議論するつもりはございませんけれども、姿、成り行きとしては何か去年のほうがかっこういい。財政再建という形に説得力が多少ありそうだなという感じなんです。ことしは、これは説得力に大いに欠けるということなんです。そういうふうに思うのですが、いかがでしょう。説得力に欠けることを御提案になっても通過は無理ではないだろうか、こういうふうに思うのです。
  226. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 先ほども申し上げましたように、昨年に比べて財政の悪化状況が非常にひどかったのでありますけれども、それを克服して同じ十年間に財政再建をしようという案を得ますのには、先ほど申しましたように、昨年に比べまして政府の助成も非常に思い切った方法をとったということは事実でございます。  それから、先ほどお話しになりました十年間一兆五千億の出資でございますけれども、これは昨年提案をいたしましたものとはだいぶ内容といいますか程度が違うと思いますし、しかも昨年の衆議院の御審議の際にいろいろ皆さまからお示しになりました借り入れ金に対する利子の補給の問題でありますが、これにつきましては今度は相当思い切った利子の補給をいたすことにしております。少なくとも再建期間中における利子の補給を徹底いたしまして、これはほとんど政府が出資したと同じような効果をおさめるように投資のほうの資金を獲得できるような仕組みにしてございます。この点につきまして、もし御必要でありますれば政府委員のほうから数字をあげて御説明をさせてもけっこうでございます。
  227. 久保三郎

    ○久保(三)委員 政府委員からはあとからまたお願いしましょう。  いまお話がありましたが、私どもの見方というのはいままで申し上げたような見方なんですよ。だから、これについて政府側というか十カ年出してきたんだから、そういう答弁をしなければならぬだろうと思う。冗談のように話しましたが、ことしもつぶれれば来年もっと前進するのか、国民世論として今度は多少でも前進したんじゃなかろうか、そういうふうに考えますよ。もしそうだとするならば、これじゃ承知しないから少し水増ししなければならないだろうというようなことで、大蔵省も、そこにおいでになる主計官が調理したかどうかわかりませんけれども、そういうことになったのじゃないのかな。いずれにしてもこの十カ年計画というのは、どうもたいへん心もとない計画だというふうに考えるわけであります。  話は横道へそれましたが、赤字の次の計算の問題です。線区別の計算でありますが、線区別の計算で赤字線と黒字線があるという。そこで、大体黒字の線区というのは八線から九線だろうということがいわれておりますね。あと大体全部の線は赤字であるという。これはやや正確な計算だというふうに先般も国鉄当局は答弁していました。赤字がなぜ出るのかということです。この赤字が出る原因は何だろうか、そういうものに対する対応策というのはいま何を考えているのか。今度の再建策には何もない。運輸大臣のいままでの御答弁は、損益勘定におけるところの、あるいは資本勘定を中心にしたお話としては、中身は別として、一応対策らしきものは今回提案していますということだと思うのです。これを承諾するわけじゃありませんが、まあ対応策としてはあるというわけですね、中身のいい悪いは別にして……。線区別の計算から出る赤字の対応策というもの、これもなくちゃならぬはずなんだが、これはどうしたということなんですよ。これに対してはどうなんですか。大体これが構造的な一つの赤字の問題でもあるかと思うのですね。これは最初は国鉄の経営管理上の必要から出た計算だろうと思うのでありまして、どこまでも赤字か黒字かというのは損益勘定なり資本勘定その他を入れてやるべきだと思うのですが、かりにもそういう線区別計算というのがあっていままで長いこと赤字線区についての議論はしてきた。これだけ議論してきて、ことしは政府から、赤字線区に対しての話は何も出ないというのはふしぎではないのかということです。その対応策は何だ、何も出てないじゃないか。去年は、これも中身のよしあしは別にして百二十五億でありますか、予算を組んで五年間に撤去するという話も出ました。それからもう一つは、方針として鉄建公団のいわゆるAB線については、これもセレクトする。しかもAB線はたしか二百億ぐらい、ことしは三百三十億組んでいるのですね。気前よくやっている。そういう矛盾を一つも解決しないで何が再建だろうかという気持ちにだれもなるだろうと思うのですよ。赤字線区についていかなる認識といかなる対策をお持ちなのか、いままでの問題は別としてどういうふうにお考えでありますか。これは、お疲れになったならば鉄監局長から先に聞いてもいいですよ。
  228. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 私の答弁で足りない場合は鉄監局長からいたしますが、この赤字線区の問題でありますが、先般国鉄総裁からこの計算、赤だとか黒だとかいうのはこういうことでございますということを詳しく御説明いたしましたので私から申し上げませんが、運輸省といたしまして今度の再建計画を立てまするにあたって、線区別に、ここが赤字だから補助をしようとか、ここは黒字だからどうしようというような線区別の個々の補助対策あるいは対策を講じたわけじゃございませんで、全般として赤字もあり黒字もある、それを全般として国鉄の財政がマイナスであるからそれに対してこういう助成をしようということを考えたわけでございまして、もとより国鉄の仕事は引き合うからやる、引き合わないからやらないというわけにはまいりません。永久に赤字のところもあると思います。したがいまして、そういった赤字路線があります場合には、国鉄当局といたしましてはできるだけその赤字を少なくするための努力というものをしておるはずでございますし、今後ももっとそれを強化していかなければならぬと考えます。しかし今日まで——これは私は言い過ぎかもしれませんが、今日までとにかく赤字に悩まされてきたものでありますから、設備の改善というものが十分にいかなかったことは事実でございまして、これも赤字でありますけれども、こういうふうな設備の改善をし、こういうふうな努力をすれば、あるいは一方においてこういうふうな節減の方法をとっていけば、だんだん赤字が少なくなるというような方法は線区別にあるはずでございます。そういったことをこの際多少経費をかけましても赤字を解消する、赤字を少なくするための努力というものは国鉄はしなければなりませんし、また一方、可能な限り経費の節減につとめなければならぬと思います。そういう方法で、いま赤字でありましても赤字を少なくする、できるならそれを黒字にするような努力というものは絶えずしてもらわなければならぬと思います。私どもといたしましては、個々の問題よりもそういった全体の努力をするための力をつける意味政府の思い切った補助もしようという態度をとっておるわけでございます。
  229. 久保三郎

    ○久保(三)委員 大臣、あなたの答弁は私が尋ねていることとちょっと違うのですね。全般的な意味であなたは対策を抽象的におっしゃっているわけですが、私は、赤字線区の問題はいままで長い間問題になってきました、こう言っているのです。一つ国鉄二分割論というものまで出てきた、そういうものも出てきた。それから八十三線区二千六百キロですか、この撤去の問題もつい去年まで出てきた。そういう問題について、ただ単に抽象的に一般的な対策をお述べになったのでは私に対する回答ではないと思うのです。  もう一ぺん申し上げます。いままで、こういう論争というか議論が何回かにわたってされてきました。あなたのおっしゃるとおり、赤字だから撤去しろとかやめてしまえとかいうようなことは、これは国鉄はそういう任務じゃないと思うのですね、これは国民経済的にいって。当然国鉄でなければならないという線はあるのでありますから、これを撤去しろなんということは暴論だと思うのです。だから、これは維持存続していくという方向でものごとを考えていかなければならぬ。しかし、現実に線区別に計算すれば赤字が出る線がある。これが現実ですよ。差し引きしても黒字にならぬでしょう。そうだとすればどうするかという問題は、いままで何べんも議論してきた。そこで、私は、国鉄二万一千キロあるそうでありますが、国鉄は二万一千キロ一体として運営するところに国鉄の使命、ゆえんがあると思うのですね。これを分割をしたり打ち切ったりして運営することについて、これは意味があるはずがありません。だから、一体として運営するということは当然だが、二万一千キロが国民生活上どうしても必要な線であるならば、これを国家的な立場から維持存続させる方法をとることも当然だと思うわけですね。いまのように旅客の背中で貨物が運ばれたり、あるいは定期の運賃が一般のお客の切符の上に乗っかっていくような内部相互補助の時代はもう過ぎたということですね。というのは、独占性が失われたのだから、いままでやってきたそういう政策は、もはやこの限りにおいてはこれ以上先へは前進できない。しかし、そういう公共負担というか公共的な性格は、やはり政府の政策として存続することが所得の再配分にもひっかかるし、当然これはいいことである。そういうふうに機能することが国鉄一つの使命、側面でもあろう、こういうふうに考えているわけです。だとするならば、これは二分割論じゃありませんけれども、一万キロは幹線、亜幹線と称して、これから将来に向かって展望してみて国鉄の輸送分野であるというならば、これはやはり内部の相互補助でやる。ただし、それ以外の一万キロについては、やはり政府が生活路線としての助成をするなり何なりの方法でやるということにならなければ、これは維持存続は不可能だろうと思うのですね。いまやまさにモータリゼーションも行き詰まってきた。そしてやはり国鉄はここでもう一ぺん見直される時代になってきた。見直される時代になってきたのに、これに対応ができないような国鉄のいわゆる輸送の実態では困るわけですね。これを直すのには、やっぱり国家の手によって多少なりともそういう方向の政策を実行するのがあたりまえの話だと私らは考えておる。いかがでしょう。
  230. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 そういうことがございますので、公共的な方面の国鉄の努力に対しまして政府が補助するということにしておるのでございます。ただ方法論といたしまして、いまお話しのように幹線のほうは大体引き合うだろうから、それはさておいて、引き合わない地方路線のほうに対しまして、それを対象にして何か補助の方法を考えるというような方法はとっておりませんが、内容的に見ますと赤字が出ておる線が多い。そういったものに対しまして、これは公共的な見地から維持をしておるのであるから、政府は当然それに対する補助をしなければならないという考え方でもって、線区別じゃありませんが、全般的な補助をしておるということでございます。
  231. 久保三郎

    ○久保(三)委員 全般的なやり方がいま提案した十カ年計画だと思うのですね。これは先ほどから何べんも申し上げておるのですが、非常にあいまいですよ。何を焦点にしておるかわからぬ。これでは国民も納得しないし、国鉄の職員も納得しません。何を目標にしておるのだろうか。はっきり言って目標をきめてないのだ。私が申し上げておるのは、当然国民の生活に必要な財貨やサービスというものは、政府責任で提供するのが当然だと思うのですね。上下水道から始まって医療、学校教育と同様に考える時代に交通というものがなってきたのじゃないですか。それは御承知のように、過疎地におけるバスにしてもそうだし、先ほど大臣からお話があったように、都市における公営交通に対する助成もそうだと思います。当然そういう財貨サービスというものに対して政府責任を負うという立場になっておるわけです。だから、そういう意味からいけば、線区別計算によるところのいわゆる方策というか施策は明確に打ち出すべきであると私は思うのですね。全体的な助成をやっておるからいいじゃないかというのは、これは目標が違いますからね。なぜ目標が違うか。私は、企業性というものはあまり好きでありません。やはり能率的にやるというのをたてまえとするのは当然だと思うのですね、国家の財産を預かっておるのですからね。ましてや国民から預かった運賃ですから能率的にやることは当然です。そういう意味からいっても、能率的にやらせるのにはそういう明確な線を打ち出さなければならない。あいまいもことした形でやらなければならないというのでは、かわいそうだと思うのです。だから、私はそういう意味で明確に政策を打ち出したらどうかという主張をしておるのでありますが、大臣のお考えは私とちょっと違うようでありますが、これはどうなんです。
  232. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 おっしゃることはわかりますが、しかし、やり方の問題といたしましては、同じことをねらっておりましても方法が違うということに帰するだろうと思います。今日まで国鉄に対しまして、そういう線区別に収支をとらえまして、それに対する特別の補助というものを考えたことはございませんで、国鉄全般として収支が償う線もあり、償わない線もある。また、それは経済事情の変化によって毎年変わっておるのもございます。そういうことでありますから、国鉄といたしましては、非常に公共的な負担もしておりますから、全体として政府が助成をするという方法をとっておるのでありまして、方法が違うだけでねらっておるところは一つだと思います。
  233. 久保三郎

    ○久保(三)委員 おことばですが、それは違いますね。それは違うのですよ。単なる方法が違うというのじゃなくて、目的的じゃないですね。私の言っている目的というのは、いま言った生活路線を維持しなさいというのです。それに対して政府責任を明確にしたらどうかということを申し上げておるのです。あなたが言っているものは、国鉄全体の財政再建というか、そういうことをおっしゃっておる。ばく然としたものであってはもはやこの際はだめだろうということです。だから明確にしたほうがよさそうだと私は思うのでありますが、見解の相違でありますから、これ以上やってもどうにもならぬかもしれませんが、国鉄総裁、あなたも実際はこれに答えにくいだろうと思うのです、いま提案しているのでありますから。しかし、責任の明確というか、ここまでは国の責任ですよ、これは国鉄固有の責任ですよというのがあるはずだと思うのです。むやみやたらに、赤字だから全部補助しろということはどうかと思う。しかし、去年はああいうことで撤去することを前提として補助したんだ。これは施策がさかさまですから、われわれは反対しました。いかがでしょう。あなたは何かこういうことについてお考えをお持ちでしょうか。
  234. 磯崎叡

    磯崎説明員 先ほどから久保先生のお話し承っておりましたが、非常に端的に申しまして、いま国鉄の経営している全体の規模の中で、さしあたり鉄道としての役目が果たせて、そしてそれが当然収支のバランスがとれるという部門と、そうでなく、いわゆる先生のおことばをかりれば生活路線といいますか、国民のソシアルミニマムを維持するために必要な路線というふうに大きく分けることはできると思います。これは一昨年の当委員会の小委員会におきまして、ずいぶん諸先生の間で論議のあったところでございまして、私どもといたしましては、一応そういう試算に基づいた計算をお出ししたことはございます。そうして、当時の考え方として幹線系の約一万キロ、これでもって収支が償わないという状態であれば、鉄道企業というものはもう成り立たないんだという一つの前提に立つ。したがって、それは何とかして鉄道企業として成り立つような努力を積極、消極両面でしなければならないという考え方。それから残りの一万キロのほうは、輸送の量からいっても、また輸送の単位からいいましても鉄道企業としては成り立たない。しかし僻陬地に住む、あるいは過疎地に住む国民の生活の維持のために当然維持しなければならない必要な路線だといういわゆる地方交通線の問題、これは当然本質的に、経営としては成り立たないけれども当然公共企業体としては経営すべきものである。しかし、それからよってくるところの赤字のあと始末というものは、国民全体の問題として税金なら税金という形でもって始末すべきである。これが大体おととしの当委員会の小委員会におきます一番大きな問題になった論議だというふうに私記憶いたしております。  それがずっと参りまして、去年です。国民生活路線のうちの一部について、約三千キロぐらい廃止するんだ、廃止できるまではこれだけの金を補助するのだというところまで来た。それはそれなりに一つの哲学があったというふうに私は考えております。その後いろいろ状況が変わって、政府としてもとにかくほっておけない、ほっておけないけれども、いろいろな名目で金を出す方法もある。たとえばフランスのように非常にこまかく項目を区切って、これで幾ら、これで幾らというふうに非常にこまかい金の出し方、あるいはイギリスのように非常に大ざっぱに出してしまうやり方と、ヨーロッパにおきましてもいろいろな補助のしかたがございましたが、それを非常に政府で勉強されたと思うのでございますけれども、さっき大臣がおっしゃったように、一応日本の国鉄に対しては全体として幾らというふうな補助をするんだというふうに話がきまったわけでございます。したがって、それは一番名目のつきやすい、しかも表面的にきわめてはっきりしている資本費の負担、特に利子負担を軽くする、大体利子負担を半分くらいにするということでもって国鉄全体の経営をよくしてやろう、こういう御趣旨だったと思います。したがって、先生のおっしゃったいわゆる赤字線と申しますか、ソシアルミニマムを維持するために必要な経費を国で補助するという概念、さっき大臣がおっしゃったように形は違いますが、今度の問題の中の資本費の補助、もちろん理論的には一緒になりません。一緒になりませんが、ただ全体として国鉄を補助するという、どっちかというとイギリスの方式に近い方式でやったのだ、こういうお考え方だったと思います。  その結論に至るまでいろいろ論議もございました。当然、フランスのように非常にこまかく分けて、これは幾らこれは幾らというふうなほうが説得力があるし、またいろいろ国民にもお願いしゃすいという議論もございましたけれども、最終的には、予算編成の段階におきまして全体としての補助というふうに変わったわけでございまして、私は、その限度におきまして全体としての補助という方向に賛成したわけでございます。その間には非常に議論がございまして、その発端はおととしの当委員会の小委員会であったということを記憶いたしております。
  235. 久保三郎

    ○久保(三)委員 いま法案を前にして、国鉄総裁からそのとおりという答弁も出ないだろう。しかし、経営の責任からいえば、やはり責任を明確にしてもらうということは当然だと私は思うのです。あなたは大蔵省や財政当局——大蔵省と言ったらおかしいが、運輸省も含めて、何か国鉄に補助してやるという気持ちになっておるのじゃないでしょうか。国鉄もまた助成していただくというような気持ちでやっているのじゃないでしょうか。委員会の答弁や何か聞いても私はそういうふうに思うし、態度自体もそうだと思うのです。国鉄総裁というのは管理者なんですね。経営を委任された形なんで、主導権は結局政府が持っているわけですね。直接的には運輸大臣責任なんです。頭痛はち巻きで何かしなければならぬのは、ほんとうは運輸大臣なんです。国鉄総裁が苦虫かみつぶしたような顔して苦労するのは次の段階だ、はっきり言って。擁護するわけではありませんが、責任のありかは明確にしたほうがいいです。いままで前進しないのは運輸省が、鉄監局長もおられるけれども、資料一つとるにしても、おそらく国鉄の出した資料をもとにしておやりになっておるんでしょう。だからそういう組織の問題にも問題がある。大蔵省は何をよりどころにしておるかというと、諮問機関は財政制度審議会というものを中心にしてものを考え、判断しておる。これはこれでいいんです、立場が違うのだから。しかし、運輸省は何を基準にして判断しておるのかというと、これはわからないんだな、はっきり言って。国鉄の案はあるが、運輸省の案というものは見たことがない。そこらにも、今日こういうふうに明確でないままの十カ年計画というものが出てきたあれがあると私は思うのですが、鉄監局長、悪いけれどもあなたはどういうふうに思いますか。言いっぱなしでは失礼だからお答えいただきたい。
  236. 秋富公正

    秋富政府委員 まさに国有鉄道の職員は四十四万でございます。私のほうの鉄道監督局の全職員が百二十名、国有鉄道部だけでございますと約四十名でございまして、いわゆる鉄道監督部と申しますが、すべてのことにつきまして監督をするというわけにはまいりません。  ただいま先生から御指摘のようにいろいろな資料、こういったものにつきましても国鉄に提示をさせて、それを検討していくということは事実でございます。一々運輸省で全部やるわけにはまいりません。しかし、運輸省といたしましては、日本国有鉄道法という法律に基づきまして各面にわたりまして監督をし指示していくわけでございまして、この点につきましては決して運輸省の案がないというようなものではなくて、運輸省といたしましては、今回の再建計画につきましても、昨年の廃案のときもそうでございますし、また昨年の国会におきます審議、これにつきましても十分に私たちは私たちといたしましてかみしめながら今回の再建案をつくっていった、かように考えております。
  237. 久保三郎

    ○久保(三)委員 そうだとすれば、国鉄と共同責任ですよね。去年も十カ年計画は廃案になっているわけです。ことしも難航しておるんですよ。だから芸がないんです。繰り返して申し上げますが、芸がないことばかりやっているという感じがするんです。これはやむを得ぬかもしれませんけれども、いずれにしても責任のあり場所は運輸大臣であり、政府全体である、そういうふうに私は考えていいと思うのです。もちろんそれで国鉄総裁以下をかばうつもりは毛頭ありません。間違っては困ります。別に悪いことまでいいなんということは言っておりません。しかし、責任の大もとは運輸省であり大蔵省であるということですよ、行政官庁いうならば。そうでしょう。そういうことを考えれば考えるほど、いま申し上げたような線区別の計算にして、赤字線と黒字線がある。これに対する対応策はどうすべきかということはいままで長いこと議論してきたのだから、それに対しての対策をもって出してくるのがあたりまえじゃないですか。しかも運輸大臣の基本線は狂っていないですよね。赤字線だから撤去するということはありません。必要なものはやるという、これは当然です。それがほんとうなんですよ。そこまで明確に、私は、だったらちゃんと政策が出るはずだと思います。いずれにしても線区別計算については、もう少し考えをしなければ明確な政策ではないだろうというふうに思います。  それからもう一つは客貨別の計算ですね。これはいままでも同僚各位からたくさんお話が出ました。貨物が赤字だ、そこでこれは国鉄にお聞きするのですが、原価と運賃とはどう違うのですか。同じでしょうか。
  238. 磯崎叡

    磯崎説明員 運賃と申しますと、運賃法にございますとおり、きわめて具体的な、たとえば旅客運賃、貨物運賃というように非常に具体的な問題になると思います。原価と申しますと、運賃法では、原価を償うという場合の原価は国鉄全体の総括原価であるという意味におきまして、運賃法に使われております原価ということばと、それから運賃法にいいます個別運賃との間には、必ずしも直接的なつながりはないというふうに解釈されております。
  239. 久保三郎

    ○久保(三)委員 客貨別の原価計算ですね。これは出た答えを客貨に割り振ったという形ですね。そういうふうにとってよろしいですか。
  240. 磯崎叡

    磯崎説明員 一年間の総体のコストが出てくるわけでございますから、それを一つの前提を立てまして、それを旅客貨物に割り振るという原価計算のしかたが客貨別の原価計算のしかたでございますので、いわゆる二次原価ということばを使っておるわけでございますが、それに該当するわけでございます。
  241. 久保三郎

    ○久保(三)委員 割り振り方は、この間じゅうもお話がございましたが、共通費というようなものもある。それはそうだ。ところが必ずしもこれは正確でないというお話ですね。しかし、これは正確でなくては原価計算ができないでしょう。本来なら原価計算とは積み上げですね。積み上げですよ。旅客貨物も全部積み上げでいかなければならない。ところがいまお話しのとおり、結論を割り振っていくというかっこうですね。当然いままで長いこと国鉄はこの仕事をやってきたのでありますから、運賃と原価についての研究はとことんまでやっていらっしゃったと思うのですね。その結論から、本来ならば客貨別のいわゆる原価が出てくるはずだと思うのですがね、これはどうなんです。
  242. 磯崎叡

    磯崎説明員 原価の中でも、いわゆる線区別の原価のほうにつきましては、これはほとんど前提なしにその線区でかかったコストをそのまま原始伝票から全部整理いたしまして、それが即その線区の原価ということになるわけでございますので、非常に極端に申しますれば、かりに原価と運賃とを直結させようと思いますならば、線区別の原価と線区別の運賃とこれは直結できるというふうに考えられます。すなわち、この線区で幾ら原価がかかるからこの線区で幾ら収入をあげなければいけない、それを客貨に幾らに振り分けるか。これはすでにヨーロッパでも、たとえばフランスあたりになりますと貨物の運賃というものは同じキロ程で、たとえば千キロなら千キロでございましても、通る線路によって運賃が違ってまいります。これは当然線区別の原価というものを一つ出しまして、それを前提とした計算のしかたをするわけでございます。したがって、もし原価と運賃を直結させようと思えば、いまの原価計算ならば線区別の原価と線区別の運賃と直結することは不可能ではないというように考えまして、これは御承知のとおり、約十年ほど前に建設線の四線につきまして特別運賃をつくったことがございます。これは必ずしも正確な原価計算とは申せませんが、あのとき能登線、越美北線あるいは指宿線あるいは岩目線の四線で特別運賃をつくりましたが、あれは考え方によりましては線区別原価を一つの基準にした線区別運賃ということになるわけでございまして、あの四線につきましては、特に大臣の御承認を得まして特別運賃をつくったということでございます。そういうふうに線区別の原価と線区別運賃を直結させたことはございましたけれども、客貨別の問題になりますと、これはヨーロッパのどこの国の例を見ましても、実際には客貨別原価というものはございません。いろいろ計算しても、結局ちょっとお触れになりました共通費の分け方が非常にむずかしい。と申しますより、前提に切りがない。たとえば同じ線路の上を客貨が走る。そうすると本来ならば、貨物だけならば八十キロのスピードで走る線路でいいのだ、重さもこれこれでいいのだ。ところが旅客を走らせるために百二十キロの線路をつくらなければならぬ。そうしますと、貨物列車といたしましては、その線路のうちの八十キロ分のコストを貨物列車にかけるということは不可能でございます。したがいまして、その線路を走る列車の客貨のパンタグラフのキロか何かで分けますので、前提が非常に複雑になってくるということで、客貨別の原価は運賃に直結しないというのが、これは全世界の考え方の実例でございます。そういう意味で、客貨別原価と客貨別の運賃というものは結びつかないという御説明をしたわけでございます。
  243. 久保三郎

    ○久保(三)委員 御説明で大体現状はわかりましたが、これは承服しかねる点なんですよ。大体運賃を定めるのに、コストがきまらぬで運賃をきめていくこと自体これは変なんですね、公正妥当ではないのですね。ただ出た結論を適当——適当ではないでしょうが、割り振っていって、そこでこれが原価だ。原価から見れば、これは赤字でこれは黒字だというような見方だけでは、公正妥当なものであるはずはないと思うのですね、原価としては。コストが土台になって、運賃がそこから——運賃は、運賃法第一条第二項でございますか、四号の条件があります。これをミックスして政治的に裁断するということでありますから、出てきた運賃は必ずしも原価と直結していないことは当然なんです。それはそれでいいのです。しかしながら、原価計算というものはやはりはっきりすべきだと私は思うのです。そうでないと、それじゃ貨物は赤字で旅客が黒字だということをどこへでも適用していいのかどうかという問題が出てくるんだと思うのですね。私は別に貨物に肩を持つわけでも旅客に肩を持つわけでもありませんけれども、やはり公正妥当なものとしてつくることが当然だと思うのですね。そういうことがなければ、他輸送機関との関係での運賃のいわゆる決定を、いまのように各企業別にやらざるを得なくなってくる。いまはそうですね。並行している路線バスがあれば、バスの運賃も違う。並行した鉄道も、企業別にこれはいわゆる運賃値上げ——運賃値上げといっては語弊がありますが、運賃をきめているわけですね。こんなことをいつまでもやっていっていいのかどうかという問題が一つあるのですね。これをやっていっていいという人は一人もおらないと思うのですね。同じサービスであるなら同じでなくちゃならぬ、当然だと思うのです。ところが同じサービスで、やや違うかもしれませんが、大体似通ったサービスで運賃が違うなんて——運賃が違うのは何かといえば、原価が違うからだ。だから国鉄の内部だけで見ても、その原価というのは、客貨別に見た場合にはこれは違うのですね。ところがそのはっきりしないということは、私は不明朗、だと思うのです。  その問題は御研究をいただくことにしまして、前提としていまの客貨別の原価計算が正しい——正しいというか、まあまあそういう傾向であるということになりますれば、今度は貨物をどうするかという問題が当然考えられる。ただ、いままでお話を聞いて、去年もそうでありますが、貨物の輸送についてはたいへん力を入れてきているようであります。これまでもそうなんですね。いろいろおやりになっている。今度大きくやるのは、言うならば集結方式から直行方式ということで、ヤードの整理もしよう、それから拠点駅中心で、その他はみんな集約——集約というのはたいへんことばはいいんだが、みんなあとは切り捨てですね。いま貨物の輸送が、輸送量も収入もダウンしているという大きな原因は何だ。去年に比べてことしダウンしているのですね。輸送量もそうです。これはなぜかというと、みんな合理化で集約して、貨物駅の廃止というのをやりました。これは減ってくるのは当然なんです。たとえばいままで三車扱っていた、これは小駅だから切ってしまえ、切ってしまって、あとのこの荷物をどうして拠点駅まで運ぶかというくふうは国鉄責任ではやらないのです。荷主の選好にまかせるということになっているんだな。これでは貨物輸送が減ってくるのは当然の話なんですね。私はしろうとらしい考えで、ごく最近まで、集約というから小さい駅のものまでめんどう見て全部やってくれるのかと思ったら、違うのですね。小さい駅のは切ったら切りっぱなし、責任は負えません、よろしかったら拠点駅まで運んできてください、こういうようなことなんですね。これでは残念ながら国鉄のシェアが伸びるはずはありませんよ。だからそういう点を改善するのかと思ったら、これはハードウエアだけなんだなハードの面だけが一兆六千五百億から、今度は一兆八千五百億投下する。何に投下するのだ。投下する前に政策、方向づけがきちっとしていなければ、これははっきり言って投下してもむだですよ。  たとえば一つの例をお聞きしましょう。いやだけれども例として、混載協会というのがありますね。混載協会というのは、私の持っている資料——古い資料なんでありますが、四十五年の資料であります。四十五年の資料なんだが、これは当初、私の記憶が違いなければあれなんでありますが、小口混載をいわゆるスムーズにやるために何とかあっせんしてやろう、業者も違う、いろいろな業者がいるから、それで協定させて仲間げんかをしないようにうまくやっていこうということで始まったと思うのですね。これはより具体的、より現場的な仕事なんだね。より現場的なんだ。ところが、いまあらためて見ると、この協会はその現場のほうはお留守で、頭のほうだけ残っているんだな。これは何の実績があって、どういうことで要るのか、今後も金を出して存続させるのかどうか。これははっきり言って貨物の悪い癖ですよ。これはいまからどうするつもりですか。しかもこの混載協会というのは目的を達成したのかどうか。はっきり言うとこれでもうかったのか。混載協会を立てたために負担金を出した。その結果としてもうかったのかどうか。もうかったという言い方だとどうもなじみませんけれども、手っとり早く言えばもうかったのか。もうからぬ仕事をやっているんじゃないかという気持ちですから……。いかがですか。
  244. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 混載協会のことでございますけれども、このいきさつにつきましては先生非常に詳しく御存じのことと思います。四十年の十月に発足したわけでございますけれども、ねらいは、非常に技術的で恐縮でございますが、いわゆる少量分散の小口貨物——当時はっきり言いまして小口扱い貨物を鉄道輸送になじんだようなかっこうでやっていこうということが着眼でございまして、そのためにいろいろ技術的な観点から混載協会を設立してやりました。当時その合理化によってどのくらいメナットがあるかということでございますが、国鉄といたしましては、それを計画した時点におきましては、その当時の額として年間十九億くらい収支上よくなるのではないか、これは一つの試算でございますけれども。通運業者もこれによって非常にまとまった仕事ができてメリットがあるじゃないか、あるいはまたそれをうまく実行すれば利用者もより安い、よりスピーディーな輸送サービスが受けられるじゃないか、それからまた国鉄の貨車の使用の数も少なくて済む、したがって線路容量もずっとあいてくるというような近代化のメリットとしては非常に大きなメリットを目的としてやって、その方向で効果が出てきておるわけでございます。当時やっておりました車扱い混載、こういうものの数字がどのようになっておるかといいますと、四十二年三百八十八万トン、四十五年三百三十万トン、四十六年二百七十五万トンと逐次減ってはおります。その内容は、その後のいわゆるコンテナ輸送というものが普及しましたことによりまして、いままで車扱い混載に入ったものが、一品ものがコンテナで行く、それからまた混載ものも一部コンテナで行くというようなことでございますが、いずれにしましてもその眼目を掲げてやりましたことはそれなりの効果は非常に出てきておる。そのためにまた旅客輸送の改善にも大きく寄与するような結果に相なっておる、こう思うわけでございます。  そういう機能を果たすためにできました混載協会でございますけれども、いま多少経緯を申し上げましたが、いわゆる新しいシステムに変えるに伴って一つのやり方を、何といいますか醸成するためにつくりました混載協会は、一つの輸送のパターン化ができたことによって逐次その使命が変わってきて、使命を果たして、もう使命がだんだんなくなりつつあるわけでございます。先生御指摘のように、いわゆる現場的なことにつきましてはもうかなり使命を果たしたわけでございます。中心的な問題、中心的な機能として、いわゆるそれをより前進するための組織機能として、中央において混載協会の働きがあったわけでございます。しかしそれも、先ほどちょっと申し上げましたように、コンテナ化とかいろんな近代化というものが進みまして、現時点におきましてはおおよそ目的が果たし得たのではなかろうか、こういうふうに考えておりまして、一応四十八年度、この時点におきましてこの限りにおいて大体一つの区切りをつけて、小口貨物全体の新しい近代化のために別の発展をしなければいけないということで、従来の混載協会の能力、機能、使命というようなものには一応区切りをつけたい、このように考えておるわけでございます。   〔委員長退席、細田委員長代理着席〕
  245. 久保三郎

    ○久保(三)委員 いまのお話で、混載協会は別な使命で存続するようなことをおっしゃっているようですが、四十五年度の事業計画がここに私の手元にあるのです。これをあらためてことしになってから見て驚いているのです。ちょっとですから読んでみましょうか。「このような情勢を背景として」——いろいろ情勢の変化が書いてあります。「このような情勢を背景として鉄道混載協会は、次のような本年度事業計画を策定し、小口貨物輸送体系のシステムチェンジをはかつて物的流通を促進し、適正サービスの確保をはかるとともに国鉄通運の経営改善に資することとする。」こう書いてあって、ずっと一からたくさんあります。これはあなたのほうでお述べになっているような新しい貨物の扱いなり輸送の施策について言っているのですね。大体国鉄当局の施策というのは、混載協会の事業計画から出てきたのじゃなかろうかというふうに思うわけです。ひとつ言ってみましょう。「コンテナ化の積極的推進」、それからその次の「フレートライナー利用の促進」、「適正運賃制度の確立」——どこにそんなことが混載協会の目的にあるのだろうかと思うのです。それから「集配体制の強化」、混載協会というのはまるで運輸省国鉄当局みたいな話なんですね。これはずっと全部そういうふうに書いてある。あなたのほうでお持ちになっている政策というか対策というのは、混載協会の四十五年度事業計画から出てきたのかというふうに間違うほどであります。こういうものは盲腸的存在じゃないか、はっきり言うと。私は、より現場的であったという話をした。私はあなたのおっしゃるようによく知っているのだ。自分で四十年に荷物を送った。混載で送られた。東京の宿舎から郷里まで寝具を送ったら当時二週間かかった。これはまだできたばかりだ、混載の突っ込み方が悪くてそういうふうになった。そこでその当時混載協会というか、この問題に私は関心を持ったきりで、うまくいっていると思った。ところが、いまお話を聞けばうまくいってないのですね。やることをやらぬで、政策的なことをおっしゃっているのですね。これはどうかと思う。事業計画の中に「適正運賃制度の確立」なんていっている。混載協会は何の権限をお持ちなんでしょう。これは、聞くところによると、会長は政治家だそうですね。会は中央だけ、地方ブロックごとにまだ残っているようですが、より現場的で、一車の貸し切り貨車に小口扱いの貨物を、甲の通運業者、乙の通運業者が持ってきて、全部混載、東京だ。東京まで持っていって汐留でばらせというお世話をするのが混載協会であるからと思った。より現場的であると思っておった。ところがより現場的でなく、駐在員というのはとっくの昔になくなった、残っているのは親のほう、頭のほうだけ残った。これが悪いとは言いませんよ。親睦団体なら親睦団体でやってもらいたい。これは銭がほしいとかなんとかじゃなくて、こういうところにわれわれ自身はやはり貨物に対して疑問を持ちますね。これをどうなさいますか。あなたのおっしゃるように、まだ別の使命で存続するということですか。おやめなさい。これははっきりいってやめるのが当然でしょう。
  246. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 先ほど申し上げましたように、現場的な業務につきましてはほんとうに一つの使命を果たして、もう成果があがっておると思います。したがいまして、四十八年度限りにおいて混載協会の従来の機能は区切りをつける、こういうことで考えております。
  247. 久保三郎

    ○久保(三)委員 だから、区切りをつけるというが、混載協会は残すのですかどうですか。
  248. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 混載協会自体自主的に判断しなければならないと思いますけれども、残すかいなかにつきましては、国鉄といたしましてはいま申し上げましたように、四十八年度限りで区切りをつけるということで、混載協会発足の使命を果たしたもの、こういうふうに考えておるわけでございます。
  249. 久保三郎

    ○久保(三)委員 たいへんおそいですね、四十八年。おそくとも反省しておやめになるということはけっこうでありますが、私自身がこういうものを見ると、何となくいや気がさすのです。使命が終わったら、さっさと店じまいするのがあたりまえじゃないですか。それをいままでこんなことをいって——それはいろいろ研究してもらうことはけっこうですよ。いろいろな政策を研究してもらうのはけっこうです、独断におちいってはいけませんから、それはけっこうです。しかし、混載協会の使命はもう終わったならば、終わった時点でちゃんと整理するのがあたりまえじゃないですか。こういうのがたくさんあるのじゃないかといわれても、何とも言えないでしょう。いずれにしても、おやめになるそうでありますから、これ以上とやかく申し上げませんが、私はどうもこれに対しては、実際はもともとから疑問を持っている。  そこで、話はもとに戻りますが、貨物が一応赤字だ赤字だというのは、原価が償えないから赤字だ、こういうことですね。原価は、さっき話があったとおりでありますが、償えないということは運賃が安いからなのか、輸送量が少ないからなのか、いずれなんでしょう。
  250. 磯崎叡

    磯崎説明員 必ずしも一方とは限らないと思います。やはり運賃の問題もございますれば、輸送の伸びがとまっているということ、これも大きな原因であるというふうに考えまして、両方ともその原因であると思います。
  251. 久保三郎

    ○久保(三)委員 実際は二つじゃないですね。一つは政策が伴わなくなっているのです。この貨物運賃の問題でありますが、運賃はトラックと比較した場合には大体半値ですね。大体二百キロぐらいまでは半値だと思うのです。それ以上になるともっと安いかもしれませんね。そうでしょう。だから、そういう点からいうならば運賃が安いということになる。これは運賃が安いから、では値上げを賛成するかといったら、なかなかそう簡単にはいかない情勢にありますね。というのは、いま荷主というものは、大体大量に送れる者は大企業である。これはコストの中に運賃値上げを吸収できるかというと、彼らは吸収しないで転嫁する方法を考えている。だからその道を遮断する。遮断したあとで適正な運賃にするならするということを、私はくふうとしてしなければならぬと思うのです。  その問題は別として、この間もどなたかが聞いていましたが、貨物運賃の割引の問題です。割引してももうかっていますというのだな。もうかっているというのは何を基準にしてもうかっているのだろうかということ。この間原岡常務から、たしか六十六億割引して何百億とか収入があります、それは割引して収入があったというだけの話で、もうかっているということでないのですね。そうでしょう。もうかっているということじゃない。それから一番問題なのは、現場へ行ってみて駅長さんに、この物資別適合輸送が目の前を通る、これが出ていくが、この列車はもうかっているのですかといったら、それはわからぬという。もうかっているかもうからぬかわからぬ、これでは再建の意欲が出ないのじゃないか。もっと現場のだれもがわかるような仕組みにしてもらいたいと私は思う。一生懸命に貨車の操車をしている人間もいるだろう、貨物掛もいるだろう。しかし、この出ていく列車を見ていて、これはもうかっているのかもうからぬのかどっちかわからぬという形は、国鉄以外にはないのじゃないかと私は思うのですよ。これについて、これは原岡さんからお答えいただいたほうがいいのですか、それは総裁でもかまいませんが、いかがでしょう。
  252. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 一個一個の列車がもうかっているかどうか、これは個別的な経費というものは把握できないので、はっきりわかりません。先般いわゆる営業割引によってもうかっている、こういうふうに申し上げたわけでございますけれども、もうかる、もうかってない、このことばは非常に適切でないと思います。この間も申し上げたつもりでございますけれども、いわゆる輸送のための追加経費といいますか変動費といいますか、輸送しなくても当然かかる経費、固定費といいますか、その関係で、具体的にその営業割引で輸送した場合に、追加経費を補って余りある収入というものがあった場合には単位当たりの固定費が安くなる。そういう意味で、全体の赤、黒は一応別といたしまして、収支改善に寄与する、そういう観点で、営業割引総体で見た場合に、一つの想定を置いて考えた場合に、全体といたしまして現時点で百五億の収支改善になっております、このように申し上げたわけでございます。
  253. 久保三郎

    ○久保(三)委員 私は明治五年以来そういうやり方できたのだろうと思いますけれども、いまやそういう時代ではないと思うのですよ。これはさっき総裁からも答弁がありましたが、たいへんむずかしいことですよ。むずかしいけれども、可変費だけを中心に考えて、それから少しでも出れば、まあ償って余りあればとるのが当然だということは、これはいいです。しかし、それではそれが正しいかといったら、必ずしもこれは正しくない。だからもう少し限界での明確なる基準、少なくとも基準ぐらいは出しておいて、ものさしによってはかっていくという基準がなければ、いま単にトラックにとられるから持ってこようという構想の、いわゆるマーケット機構の中で勝負をしようというだけの話になってしまう。これであっていいのかというと、総合交通体系の中からいえば、そんなもの長もちするはずはありませんよ、はっきり言って。そういうことを考えると、貨物の運賃というものの立て方自体にも私は問題があると思うのですね。これを一つ考えてもらいたいと思うのです。  それから、話はもう少し先へ行きますが、今度は輸送量の問題ですね。いまは輸送力はあるのですか、もっと運べるのですか、現有勢力でもう少し運べますか。非常に大ざっぱな話で恐縮でありますが、もっと輸送力はつければありますか。
  254. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 これは非常にむずかしい御質問と思います。非常に大ざっぱな話で恐縮でございますけれども、現時点における輸送能力からすれば、わりあい一ぱい一ぱいの輸送をやっておる。ただ、具体的には線区あるいは方向等々によって輸送余力がある、こういう状態でございます。
  255. 久保三郎

    ○久保(三)委員 それでは、この貨物輸送で、十カ年計画では一兆八千五百億を投資するというのです。これは単なる貨物だけに限定されているとも思うのだけれども、当然これは線増や電化その他にひっかかってくると思うのですね。総合的にヤードの改善とかコンテナとか貨車とか、そういうものだけに限定しての輸送対策では輸送力増強には私はならぬと思うのですね。しかも長期計画でいく場合に、いま調査線になっておりますが、新幹線一つとっても東北新幹線はいつの予定でしたか、六十年でしたかになって東北新幹線は青森まで、さしあたり盛岡は五十四年ですね。東北縦貫道路は五カ年計画盛岡一つ先まで開通する予定だそうであります。この東北縦貫道とそれから東北新幹線盛岡まで開通したあとにおける貨物輸送との問題ではたして競争に勝てるかどうか、ことばは悪いのでありますが、これは考えていらっしゃると思うのですが、そういうものを考えて一兆八千五百億を投資するのかどうか、一つの例でありますが、私は非常に悲観的に見ているのです。東北縦貫道が開通した場合の東北新幹線並びに東北本線に与える影響というのは、かなり大きなダメージを与えるのじゃないかというふうにも考えます。いや、違いますよ、東名高速道路と名神、それと新幹線ごらんください——これは過密地帯ですよ。さっき言ったように、第二東海道新幹線をつくろうというような過密地帯でありますから影響はないのですよ。多々ますます弁ずなんです。向こうは多々ますます弁ずじゃないのです。そういうようなことを考えると、単純に一兆八千五百億を投資するから貨物輸送の改善になるというふうに私は受け取っておらない。むしろそういう投資よりは、自然にどうして貨物国鉄のレールの上に乗せるかというくふうがまず第一に必要だと私は思うのですね。これは輸送量をはじいておられるようでありますが、輸送量自体を見てもそのとおりいくのだろうかということをまず第一にお聞きしますが、いわゆる国鉄貨物として適格なものは中長距離の大量貨物だ、こういわれておりますね。これが特性を発揮する分野とするならば、いかにしてこれをレールの上に乗せるかというのが、国鉄の体質改善のためにも、総合交通体系のためにも必要だし、財政再建のためにも当然必要だと思うのですね。これは単に国鉄の施策だけじゃなくて政府全体の施策が並行しなければならぬ、あるいは先行しなければならぬ。ところが、この間じゅうから、同僚諸君からの質問に対しても何にもないのですね。何もないと言っては語弊がありますが、ないわけであります。私は一年間、トラックの過積みをひとつ何とか規制しようじゃないかということを国会の内外でやってきたのだが、いまだに何のめどもない。そういうようなことを考えて、一兆八千五百億やったから手放しで貨物輸送は改善されて、さっきの運輸大臣お話じゃないが、大体十年後にはうまく黒字になるかもしれません、それに近いものになりますという御説明だが、これは単なる御説明として聞きますが、信憑性はありませんね。だから、国鉄は大体輸送能力がある、輸送の機能としてはある。しかし、昔から集荷能力とか集荷機能というものはないのですね。はっきり言うとだるまなんです。手と足がない。しかし、だるまはだるまなりに機能しなければならぬということがまず第一なんですよ。だるまが手足を出したら踊りをやる以外にない。そうでしょう、だるま踊りといってあまりほめたものじゃありません。だから手や足はどうして、だれに機能してもらうかということを先に考えるべきだと思うのです。そういう考えを持っていられるのかどうか、これが第一点。  それから、その分野はどうなるのかというと、これは専用線貨物というのが大体六割くらいありますね、専用線発着、両方で。専用線から専用線に行くのはあまりないでしょうけれども、片方専用線、どっちか、そういうのはあるでしょうが、専用線にかかわるものが大体六割。あとは臨港関係ですね。これが一割そこそこでしょう。合わせて大体七割。あとの三割のものが、残念ながら国鉄の直販体制というか、最近よくいわれておりますが、三割のものを国鉄の直販体制というか、そういうものでやろうという考えを持っておられるようだが、これもけっこう。けっこうだが、十分その機能を持っていないのでありますから、当然機能を持っている通運なりその他のものとのいわゆる提携を考えなければならぬというふうに思います。へたに手を出して損することがあってはいけないと思うのですが、どうでしょう。二番目はそういうことです。  それから三番目は、さっきも申し上げましたが、集約合理化、貨物の集約化というのは、集約したあとの始末までつけるのが集約だと思う。切りっぱなしということではないと思うのですね。だからそういうものは、いわゆる新しく輸送体系を変えていくということが私は集約だと思う。その集約、輸送体系を有機的に変えていくというシステムが全然作用しないし、それについて考えていない、そういうところに国鉄の無責任さがある。それからそこに貨物の輸送量がダウンしてくる原因がある、このように思います。  以上三点についてお答えください。
  256. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 第一点、一兆八千五百億というものを投入してハードウエアを整備しても、それにまつわるソフトウエア、これを十分考えていかなければだめじゃないか、別なことばでいえば総合交通体系が必要じゃないか、そういう面でありますが、まさにそのとおりだと思います。そういう点につきましては、これからの総合交通体系の推進、これを非常に期待して、その中でやっていかなければならない、こう思っております。具体的には道路輸送との一貫体制、これはたとえばフレートライナーというものでこれを実行いたしておりますが、ソフトウエアが非常によければ、非常に実績としてもあがっておる、こういう経験があるわけでございまして、今後そういうソフトウエアの面につきまして、十分前進して考えていかなければいけない、運賃制度の面においても考えていかなければならない、こういうふうに思っております。  それから第二番目の直販体制でやっておる、これもけっこうだけれども、もっと通運業者というものを使わなければいけないのではないか、まさにそのとおりと思います。おのずからもちはもち屋といいますが、通運業者の集荷能力といいますか、これがまた集荷能力を意欲を出してそれを発揮するというような施策、これもぜひこの一兆八千五百億の投資を生かすゆえんとしてはやっていかなければならない方向だ、かように考えておるわけでございます。  それから第三点、集約合理化やりっぱなしということでございます。これはやりっぱなしといわれますと、全然そういうことがないことはないと思いますけれども、できるだけそういうことがないように、一つ一つの荷主さんにより便利になるサービスを何とか使える方法はないかということを具体的に御相談して、個々のケースでそれに対応しながらできるだけ合理化に合理化を進めながら、そして荷主さんが切り離しにならないような、気持ちの通った、実情をよくわきまえたやり方、これを進めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  257. 久保三郎

    ○久保(三)委員 三番目の回答でありますが、言われればあれかもしれませんがと言うんじゃなくて、みんなそうなんですよ。集約合理化というのは切り離しなんだ、全部。だから、さっき話に出ましたローカル線の貨物なんというのは、全部トラックに行ってしまう。トラックに行ってしまうというより行かせているのですよ。そこで実際は地域の住民としては困っておるわけです。自家用トラックを買わずに済むものを、貨物の集約で扱いを廃止されたというのでトラックを買って、自分で輸送をしているというのがずいぶん出てきているわけですね。そういうものは国家的な視野から言っても、国民経済的から見てもこれはむだな資源なんですよ。浪費ですよ。そういうのをやはり改めていくというのが国鉄の使命なんですね。ただ単にそろばん勘定だけでやっていくというのでなくて、そういう高い次元に立って見てやる対策が私は必要だと思います。いままであまりにも合理化、近代化というと、はっきり言ってうしろ向きですね。だから、極端なことを言えば、貨物が赤字だから全部やめてしまったらどうか、旅客だけなら黒字じゃないかという話が出るんですね。これは極端な話でありますが、まあ一理はありますよ。赤字だと言うんなら赤字は切って捨てろ。いままでのやり方でいけば全部そうだ。  それからもう一つは、自分で好みの荷物だけ輸送するというのは国鉄の使命ではないだろうと私は思うのです。いまやまさに小さい市民の荷物というのが行き場所がなくなってきたんです。行き場所がない。どこからもはじかれてしまう。今度手小荷物の小口の一元化でも当分は輸送するそうでありますが、これははじかれてしまう。郵便局のほうの小包でもこれはやっていく。トラック業者からもこの小さい荷物ははじかれる。国民生活上からいって、この小さい荷物、小量の荷物、貨物というか、こういうものをだれがやるのかという問題です。これはおそらく国鉄でしょう。中長距離の大量貨物ばかりでなくて、国民生活にとって当然やらなければならない財貨のサービスというか、そういうものは国鉄がやることが一番手っとり早いし、また使命だと私は思っている。そういうものを忘れて、合理化を進めていくことについてわれわれは不信感を持っているんですよ。世間全体に国鉄の赤字についていろいろ批評はあるだろう。しかしながら、近代化や合理化についての批判のほうがもっと多い。だから、国鉄をささえてあげましょうなんという声は、そういう姿勢の中からは、国民大衆の中からは出てこぬと私は思うのですよ。もう一ぺんやはりこれは国鉄の使命に立ち返って考えてもらう必要があるし、運輸省にもこれは全体の輸送からいって、国民生活の上からいって、小量荷物の輸送というのをだれの責任で確保し、どうやるかという問題です。たとえば問屋街一つとっても、問屋街といわゆる小売り商、東京にはたくさんの問屋街がありますね。ところが問屋でも大きいのもあるが、小さいのもたくさんある。そういう人の荷物はだれがいま輸送しているか、運搬しているかというと、自家用車で、小さいトラックでやっているのだな。これはたくさんやっているのです。そうでしょう。何々団地なんというのはみんな自家用車を持ってやっているのですよ。実際は三分の一もいわゆる輸送していない。そこでちまたにはトラックがはんらんしているというわけです。こういうものを集約して、国鉄なら国鉄、それに準ずる公共機関があって、自家用車を運転しないでも自分の荷物が輸送できるような仕組みを考えていくのがシステムチェンジだと私は思うのです。これがまさに総合交通体系からいっても、一つの小量荷物の輸送の手段だと私は思うのです。そういう政策を何も考えないできて、一兆八千五百億も投資します、貨物も大体黒字になりそうだというようなことでは、世間は大体承知しません、はっきり言って。いかがでしょう。運輸大臣、これは大臣の分野かもしれませんから。
  258. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 貨物輸送については、いろいろの計画は御説明したとおり国鉄も持っておると思いますが、おっしゃるようにハードのほうは整ったけれども、ソフトのほうがついてきていないじゃないかという御意見は、私も傾聴すべき御意見だと思っております。そういったものにつきましては、今後の問題といたしましては貨物の集約駅をつくったり、あるいはいまお話しのように、どうして集荷をするかとか、そういった問題を含めましてわれわれのほうも国民本位の、国民が便利に荷物を運んでもらえるような制度というものを確立するための指導をしなければならぬと思っておりますから、この点についてはいまのところ非常にソフト面がついていけないという事実はありますから、その点十分考えて処理をしたいと思います。
  259. 久保三郎

    ○久保(三)委員 大臣からの御答弁では、専門家でないと言ったら失礼ですが、そういうこまかいことまでは大臣としては御答弁ができにくいだろうと思うのでありますけれども、はっきり言って、大綱、私の言わんとするところ御理解になりますか。——そうですが、それならけっこうです。政治家の頂点に立つ大臣でありますから、その原則だけわきまえていただけば、あとはうしろに控えている連中が当然やるはずなんでありますが、総合交通体系というのをつくりましたね。つくったけれども、確立されていないそうですね。どうなんですか。総合交通体系はつくったのでしょう。四十六年の暮れに経済企画庁が中心でこういうものをつくったのだが、これは確立されていないという話だ。確立されていないのですか、どうなんです。
  260. 喜多村治雄

    ○喜多村説明員 四十六年の十二月に、政府一体となりまして「総合交通体系について」という文書をつくりました。これは先生御承知のように考え方を述べたものでございまして、具体的にどの線をどうするとか、どの問題をどういうぐあいに処理するというような具体的なことは書いてございません。それはどうするかということでございますが、この件に関します各省幹事会を持っておりまして、それについては所掌にかかわります省がそれぞれの問題に応じてこの考え方に基づいてやっていくということを了解し、そうなっておるわけでございます。
  261. 久保三郎

    ○久保(三)委員 非常に気楽な御答弁で、質問するほうも、まあゆっくりいたしましょう。そのとおりだと、正直にお話しいただいてけっこうであります。ただ、そういうことでは国民承知しないのですよ。第一、われわれ国会議員も政府に対して言い分があるのです。特に運輸省というか、運輸大臣には、もうおやめになったらいいというものじゃなくて、大臣はずっと引き続いておられるのだから、再建計画というか、これは四十四年に再建法が出まして、出たとたんに、四十五年になるかならぬうちに実はつまずきました。というのは、いままでと同じようなパターンでこの十カ年計画をつくりましたから——そのころは十カ年といっても中身ははっきりしませんでしたが、やり方は大体そういうやり方なんです。だから一年か二年でおかしくなってきた。そこで四十五年にこの再建の問題についていろいろ議論が出ました。四十四年に出発したのだが四十五年にこれは早くもだめだ、どうするんだという話が出ましたときに、時の運輸大臣は徹頭徹尾国会で、総合交通体系をつくりますからそれで再建が可能であります、いましばらくお待ちくださいということでありまして、その当時磯崎総裁の有名な文句があります。私はいま青い鳥よりは焼き鳥がほしいのだという話がある。いままさに青い鳥になってしまって、しかも青い鳥もとまってはいなくて、どこかへ飛んでいってしまったというわけです。青い鳥をつかまえたら、逃げられないように鳥かごをつくるのはあたりまえなんです。かごもつくらぬうちに青い鳥は逃げてしまった。だから今度の十カ年計画にはその片りんもない。あるとすれば、列島改造論に基づくところのいわゆる設備投資増強の一点にしぼられているということです。しかもそのやり方は、言うまでもありませんが、民間設備投資に追いつけ追い越せがいままでの手法であって、これをセーブし、需要も規制するという方向は絶対にないわけだな。いわゆる資源浪費型、設備投資拡張型で、そこには何らソフトの政策もないわけなんです。  これは運輸大臣にお聞きしてもちょっと無理かもしれませんね、当時はあなたの責任ではなかったから。しかし、運輸省自体は何をしているんだろう、大半の運輸機関を持っていながら。陸海空全体はまず第一に運輸省だ。それを何をやっているんです。この総合交通体系なるものの政策への転換は全然講ぜられていない。そこで十カ年計画をどう立てようとも、残念ながらいままでのパターンの繰り返しであるにすぎないというふうに私は思うから、さっきから十カ年計画はナンセンスだと言っている。  過去におけるパターンとは何かというと、さっきも申し上げたと思うのでありますが、三十二年の第一次五カ年計画から今日の長期計画に至るまでの間にどうやってきたか。民間の設備投資に対して社会資本の不足、交通資本の不足、国鉄資本の不足だということで、借金と運賃値上げに依存してやってきた。そこで設備投資はしたが、さっきも冒頭損益勘定の中で減価償却に触れて言ったように、減価償却と懐妊期間との関係が乖離しておりますから、だんだんだめになってきた。しかもそのためになるテンポが早くなってきた。第一次五カ年計画はたしか四年目に変えている。最近は、この長期計画が二年目にだめになってきたのです。四十四年に出したものが四十五年にだめになった。テンポが早くなってきた。だから、この十カ年計画がよしんば参議院を通して成立するにしても、先を言っては悪いけれども、来年だめになります。そして運賃値上げは四年ごとにやるそうでありますが、これは二年ないし三年ごとにやらなければならないことにやられてくる。そういうパターンから抜け出すことが再建なんですよ。それにはやはり総合交通政策というものを樹立しなければならない。この間から同僚諸君からも話があったように、トラック等の問題も、需要なり輸送力の調整というものを真剣にやったためしがあるのかどうか。ないじゃないですか。  そこで国鉄も、こういう激甚化しているところのいわゆる輸送マーケットの中で勝ち抜こうということで、設備投資さえすれば勝ち抜けると思っているかもしれぬし、あるいは物資適合輸送割引すれば来るんだというふうに思っているのかもしれませんが、割引することによって来る荷物は本物じゃないのですよ。本物は割引しなくても来るのです。来なければいけないのだ、はっきり言って。総合交通体系はどこにいったか。青い鳥はどこに飛んでいったのか。いるのかいないのか。さっきの話、だと、飛んでいってしまった、かごはありません、まだつくってはおりませんということだが、まだとまってはいるのですか。運輸大臣いかがでしょうか。
  262. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 いままで何回か年次計画が、いろいろそれぞれの理由はあったと思いますが、四年あるいは三年くらいで変化してまいりました。これはしかし、日本の経済事情が非常に著しい変化を遂げたことも一つでございましょうし、それから輸送構造が非常に変わってきた。さっきお話しのように、モータリゼーションが非常に進んできたというようなことも一つの大きな原因であったと思いますが、変えたほうがいい、変えざるを得ないということで変わってきたのでございます。  今後の問題につきましては、この経済社会基本計画でも述べておりますように、経済成長率というものにつきましては相当政府考えまして、急激な成長はむしろ抑制ぎみで、そして日本全体の福祉国家というようなことを目ざしてやっていこうというのでございますから、この経済成長率というものも、いままでとは相当違った形で進んでくるのじゃないかと考えております。したがいまして、いままで非常に急激な勢いで変化してまいりました経済事情とは、今度はだいぶ違った形で変化してくるのじゃないかと考えるのでありまして、いまお話しのように、ことし立てました案が来年になったらすぐくずれるじゃないかというようなお話でございますが、私たちはそうあってはならないし、そうしないように努力をしなければならぬと思っておる次第でございます。  しかし、別の観点から、いまお述べになりましたこういう総合交通体系の中で一体国鉄はどうするか、あるいは陸海空の交通機関を持っておる運輸省としては何もしてないじゃないかというようなお話でございますが、ある意味においてはそういうおしかりもごもっともだと思います。しかしながら、運輸省といたしましては、総合交通体系の中で書いてありますような方向に向かいまして、実行可能なものから実現をはかっておるという努力もしておるわけでございます。  かりに国鉄について申しますと、設備だけではだめだと思いますが、設備も基本的なものでございますからそれをやると同時に、先ほどお話がありましたようなことも含めてサービス面の強化をいたしまして、そうして一番おくれておる貨物輸送につきまして、もっと積極的な新しい方向を見出していくような努力をしようということで、いまその点について盛んに努力をしている最中でございます。旅客につきましても、これは前々からの計画でございましょうが、世界に例のないような新幹線というものができてまいりまして、それを中心にいたしましてこれがさらに全国に延びてまいるというようなことが前提になりまして、貨物の輸送の問題につきましても、それに対応したような姿で今後サービスを強化していこうとしておるのであります。ことに旅客関係におきましては、先ほども少し触れましたが、鉄道でないとやれない、国鉄でないとやれないというような分野があるわけでございますから、そういう面に力を入れまして、大都市における通勤通学の輸送問題でございますとか、都市間の運送の問題でございますとか、そういった面に特に重点を置いて努力いたしますとともに、これは小さな問題だといえば小さな問題かもしれませんが、いままでのように国民に対するサービスをほったらかしにしてはいけないという意味で、たとえば冷房車をうんと多くしようとか、あるいは駅その他の客の乗降につきましてエレベーターその他の施設をして乗客の便利になるようにしようとか、いろいろこまかい配慮もしておるのでありまして、総合交通体系の線に沿いまして、旅客貨物もできる範囲であらゆる努力を続けておるというのが現状でございます。  ただ、私から申しまして、陸海空の交通機関を監督しているじゃないか、その分担制度をどうするのだということがたぶん御質問の一点だったかと思いますが、この点は非常にむずかしい問題でございます。しかし、競争原理を生かしながら、そういう競争市場の中でそれぞれの機関がそれぞれの特色を持っておるのでありますから、その特色を生かして輸送サービスができるような体制をそれぞれの機関がつくるということが、総合交通体系の中で示しておる方針だと考えまして、それぞれの機関に対しまして、その方向で努力するようにということは指導をいたしておるのでございます。
  263. 久保三郎

    ○久保(三)委員 ちょっとあなたの考えですが、最後に総合交通体系のお話で、競争原理を生かして特色が発揮できるように、そういう方向で政策を進めなさいということで部下を監督指導しているようなお話でございますが、これはたいへんな間違いだろうというふうにてまえどもは思うわけであります。  もちろんそういう説もある。特に運輸省が四十五年の六月に諮問したその内容は、総合交通体系の必要性は何かということになると、諮問の内容から見ると、「全国土の均衡ある発展を図るためには、現在の交通体系を抜本的に再編成し、陸海空の各種交通手段を合理的な輸送分担によって組み合わせて高度にシステム化された交通体系を確立するとともに、これを実現するための方策を推進する必要がある。」からひとつ諮問します、こういうようなことになっているのです。こういう原案をおつくりになった運輸省の高官もおいでになるようでありますが、これは間違いなんだ。経済企画庁が中心になってまとめたほうがまだ真正なんです。一九六〇年代における問題点と七〇年代に対するところの展望に立ってやらなければならぬということで実はやっているわけなんです。そういうことになるというとだいぶ開きがありますので、これは政府部内でも議論したんだろうと思いますが、その結論として、一九六〇年代から引き継いだ主要な問題を三つあげているのです。大都市における交通渋滞あるいは通勤通学難、それから二番目は交通事故、交通公害、それから三番目には公共交通機関の経営難、これにこたえることが総合交通体系の目的の一つでもある。これからの展望として一九七〇年代の新しい主要な課題は次のようなものであるということで、ここでは五つほどあげていますが、そこには当然「国土の均衡ある発展」というのも一項目ありますよ。時間がありませんから、全部を読み上げる必要はありません。みんな手がけた人ばかりうしろに並んでいますからね。  いずれにしても、こういう総合交通体系とは何ぞや、現代において国民要求している総合交通体系なり政策というか体系、そういうものをつくる目的というのは何だろう。要求のもとは何かといったら、いま混乱している輸送秩序をもう少し回復してほしいということ、それには、それぞれの交通機関が特性を発揮でき、そのためにはあるいは補完し、あるいは共同して、よりよい輸送サービスを提供するという目的に立って総合交通体系はつくられなければいかぬ。それに近づくためには、これを基本にした、これをビジョンとしたところの具体的な政策によってアプローチしていくというのが当然の原理です。  ところが、ある学者なんかは、いわゆる輸送分野のシェアというか、そういうものは荷主や旅客の選好にまかせる、競争の原理によって分野が確立していくのが一番好ましいんだ。なるほど自由主義社会ではそうかもしれない。しかし、まさにいまや資本主義社会で矛盾が交通の中で的確に出てきている。自由に選好にまかせたのでは残念ながら特性発揮もむずかしいのが、現代における日本の交通ではないでしょうか。そうだとするならば、さっきから言っている、貨物一つとってもトラックとの間の使命について明確な一線を引く、これに誘導する政策というのが総合交通体系の中から出てくるのが当然じゃないですか。そういうソフトウエアについては何も触れずして、十カ年計画をとってもどうにもならぬというのが私どもの考え方なんです。  だから総合交通体系は、いまのお話だと青い鳥はまだどこかにとまっている。あなたの言っている、しっぽが少し赤いような。かごはどこにもない。これは担当はどなたですか。原田審議官かな。担当のあなたからなり経済企画庁なりから聞かなければいかぬ。具体的な政策はどうしたか、どうなっているのですか。簡単に説明してください。
  264. 原田昇左右

    ○原田政府委員 お答えいたします。  久保先生のような大家から、いろいろ御示唆に富むお話を伺ったわけでございますが、企画庁で決定いたしました政府の総合交通体系の考え方におきましても、やはり競争原理の活用ということは明確にうたっておるわけでございます。しかしながら、空間的制約等の社会的な制約がございますので、競争原理だけで総合交通体系できると考えているわけではもちろんございません。  そこで、何もやっていないではないかというお話でございますが、私どもといたしましては、従来から、また今後も、そういう企画庁で立てられました政府の基本方針にのっとりまして、施設の整備あるいは競争条件の調整、誘導等について着々施策を進めてまいっておるわけでございます。  もちろん十分ではないという御指摘はあるかもわかりませんが、たとえば大都市交通におきましては公共交通機関を主体に整備するという方針のもとに、公共交通機関の整備のための目標といたしまして、たとえば首都圏におきましては、六十年までに大体十三路線程度をつくるという方針のもとに、地下鉄の整備には本年度から実質五〇%の財政補助をいたすことにいたしております。それから民営鉄道の複々線化あるいは地下鉄との相互乗り入れ、それから団地への民鉄線の開設といったようなことにつきまして、鉄建公団を使いまして大幅な助成をいたすというような施策を着々進めてまいっておるわけでございます。またバスにつきましても専用レーンの設定とか、あるいはトラックの時間帯の都内流入の規制といったようなものを着々やってきておるわけでございます。  さらに都市間の輸送につきまして申し上げますと、航空につきましては自己負担を大幅にふやすという意味で航行援助施設使用料とかあるいは燃料税を設定いたしまして、空港特会でできるだけ航空の費用負担を内部化するということにつとめておるわけでございます。それによりまして、空整五カ年計画では一般財源は一六、七%程度の導入で済んでおりまして、あとは全部自己財源ということになっておるわけでございます。  それから貨物輸送等につきましては、いろいろ御批判もあろうかと思いますが、まずは国鉄あるいはフェリー等による施設の整備が必要でございまするので、そういった国鉄につきましては、国鉄財政十カ年計画の線に沿いまして大幅に貨物輸送の施設の増強をやる。それから、もちろんソフトウエアについても今後いろいろ検討を重ねてまいりたい。こういうことでございます。
  265. 久保三郎

    ○久保(三)委員 原田審議官はイコールフッティングの問題などを出されてきましたが、イコールフッティングについてくふうをこらすことも一つの方法ではありますが、これまでにそれぞれがそれぞれの立場で成長してきては、完全なイコールフッティングを考えていくこと自体にも私は問題があろうかと思います、はっきり言って。やらなくちゃいけないということじゃないですよ。むしろ問題なのは原価をどうするかという問題、コストの計算をどうするかを考えることのほうが先だから、御検討なさるならそのほうを御検討なさったほうがいいというふうに申し上げます。  それからもう一つ、総合交通体系についてはソフトウエアばかりじゃないです。ハードウエアについてもそうです。いま政府がやろうとする十カ年計画もそうですが、七千キロなりあるいは将来は九千キロともいっておるのだが、新幹線が一万キロつけば、道路でも高速道路の五カ年計画では十九兆円で、大体一万キロをめどにしていこうというのですね。そうかと思うと、港湾は港湾で、御承知のように拠点流通港湾を中心にして考えようということだ。空港は、いまもお話があったが、どんなローカル空港でもジェット化していこう。この間も話に出ましたが、こういういろいろな問題を含めて、ここで陸海空全体でそんなものを全部やること自体がはたして総合交通体系なのか。たとえば東海道新幹線ならば、名古屋は新幹線のほうが飛行機よりいいというので、大体飛行機はなくなった。そこは大体二百キロかしりませんが、新幹線の分野になっている。三百キロの大阪は、大体航空と新幹線の両方の分野であるということであろうかもしれません。ところが、これから先伸びていく新幹線と自動車、高速道路との関係あるいは空港との関係を見て、はたしてそこに総合性があるのかどうか、あまりないんじゃないですか。しかももう一つは、産業構造の転換、これは言うならば資源浪費型からひとつ転換をしよう、あるいは公害、そういうものから転換しようというのがこれからの目標だというふうにわれわれは考えている。ところが、そういう目標にはこれは全然合致していないのです。貨物輸送でも、産業計画懇談会というのがあって、皆さんのところへも来ていると思うんだが、一つの提言がありますね。この提言が全部正しいというふうに考えるわけじゃありませんが、貨物輸送一つとっても、中長距離の貨物は、政府のつくった経済社会基本計画では五十二年九十五億トン、六十年で大体二百億トン、これは全部大体その四割です。ところがこの産業計画懇談会では、鉄道に乗っかるようなものは、中長距離、五十年で六十四億トン、五十五年で七十七億トン、六十年で八十三億トン、鉄道に乗るなどというのは大体少なくなってくる。中身を見てまいりますと、これも一つの見方だと思うのです。これが絶対にそうだとは言いません。ところが十カ年計画では、御承知のように基本計画を中心にして、いままでの需要に追いつこうというかっこうで輸送量を伸ばしていると思うのです。こういうところからも、このままの姿で経済成長中心のやり方、設備投資中心あるいは資源浪費型の産業中心、こういうものはもはやだめだということになってしまうでしょう。いやでもおうでも転換しなければならぬことは事実なんです。全部転換していくかどうかわかりませんよ。しかし、多少なりとも転換しなければならぬ。そうだとするならば、この産業計画懇談会の提言も、全部うそである、信憑性がないというふうにはとれないだろうと思います。そういう計画があるのなら、基本計画の中で産業構造の転換をうたっているならば、当然輸送量についてもそういうチェックがなくてはならぬ。ところが、産業構造転換をいいながら基本計画の輸送需要というのは、大体現時点を土台にして引っぱって輸送需要を予測しておる。そういうところに問題がある。もっとも基本計画自体の中でもその占めるシェアというのは、国鉄はだんだん低くなっているのです。倍数からいけば、一・四から一・二ぐらいに減ってきている。トラックはふえていくのです。トラックがふえていくという計算は、いまのままだとそういうことになる。ところが、さっきお話し申し上げたように、トラックと国鉄関係をいわゆる政策的に誘導していけば、片方ではそういう数字にはならぬかもしれぬ。そうでしょう。そういう努力をすることが行政じゃないのですか。そういう努力がいままでお話を聞くとあまりない。ソフトウエアばかりじゃなくて、ハードウエアについてもそうですよ。何回も繰り返すが、陸海空全体について、空港はローカルも全部ジェット化する。道路も十九兆円出して五カ年計画で高速道路などやっていく。新幹線も七千キロだ。けっこうな話かもしれませんが、いま国鉄が財政再建で必要な一番の土台は何かというと、これで再建のめどがつきますという保障が必要なんです。その保障とは単に十カ年計画の数字ではない。こうやるんですというソフトのほうの政策がいま必要なんです。その見通しをつけさせる。これは、十カ年計画は紙に書いた数字と言ってはたいへん失礼かもしれません。コンピューターにもかけたでしょう。しかし、与える条件が違えば違った結論が出るのはあたりまえですよ。そういうものがいま必要かというと、必要かもしれぬ。それも一つの目安としては必要だ。しかし、最も必要な、そういうふうになったときでも国鉄はやっていけるという保障がどこにもない。なぜならば今日大きな超過債務をかかえ、利息をうんと払って赤字で困っている。それから抜け出すのには、政府の助成もあるが、結論として、何べんも繰り返し申し上げるように、最終年度では超過債務は十一兆にふえている。累計赤字は倍になってくる。これでは残念ながら再建のめどがあるというふうには私は思えないと思うのです。もう一つ質問がありますから答弁は要りません。同じことであります。  ただ、くれぐれも言っておくのは、総合交通体系なんというのは学者の論文じゃないのです。めしを食うのが政治なんです。そういうものを、体系をつくっておきながら政策にアプローチができないというのは、これは運輸省はじめ関係各省の責任である、政府責任だと私は思うのです。四十五年以来何年たちますか。三年ですよ。何を中心にしてやっているのですか。そういう深い反省がなければ、国鉄を含めて再建なぞできませんよ、はっきり言って。いたずらに投資をさせて、赤字を生じさせて、それで再建だ。とんでもない間違いだと私は思っている。いずれにしても深い反省を促して、この問題はこれで終わりまして、先に行きます。  次に、これは運輸大臣にお伺いする前に、運輸審議会にお伺いしたほうがよかったのだが、審議会の代表が来てないそうでありますから、官房長が答弁するそうですが、官房長は審議会の何になっているのか。
  266. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 先生おっしゃるとおり、御疑問はまことにごもっともだと思うのです。運輸審議会は、御承知のとおり、運輸大臣が許認可の重要な事務を行なうにあたって、公正を期するために諮問する、それに答申するという機関でございまして、独立の機関でございます。その庶務というのは明らかに官房の事務の中に入っております。  ただ、きょうは先生からお尋ねだというので、運輸審議会の審議の内容につきまして、委員さん、それから委員さんを補佐している審理官というところから私が調べてまいりましたので、そういう立場からお答えをさせていただきたいと思います。
  267. 久保三郎

    ○久保(三)委員 国鉄の運賃改定というか、こういうものを国会提案してくる手続でありますが、私は、これにたいへん今回は疑問があると思うのです。もっとも、うわさ話でありますが、去年かけたから、ことしはかけなくてもいいだろうという話が政府部内にあったそうであります。だけれども、野党から何か言われたら困るから、やれる手続は全部済ましておいたほうが無難であろうというのでやったそうでありますね。その問題を私は追及しようとはしません。しかし、ただ一言言っておく。去年とことしは違うのだという話。一ぺんかけたから、何年たってもいいのだ。それなら運輸審議会は要らない。もしもそういう間違った考えを持っていたとしたならば、これはたいへんなことだと私は思うのです。これがまず第一のあやまり。  第二点目は、運賃値上げというか、運輸大臣を含めて政府自体が運賃改定を決意したのはいつかというと、一月の十四日なんだね。一月の十四日に決意して、予算の決定は翌一月十五日にした。決意したから一月十五日に予算案は、原案はできた。国会に出したのは、御承知のように一月の二十六日に予算案は提案した。おそく言っても一月二十六日には、少なくともわれわれの目の前に運賃改定の決意を示したことになる。ところが、値上げの申請はいつ出てきたかというと、一月の五日に出ておるわけです。この辺はまだ順序としては合いますね。運輸大臣が一月十四日に決意したのだから、五日に申請してから十四日、これは順序が合う。  ところが、これは運輸省設置法第六条に基づいて運輸審議会にかけなければならぬという法律がありますから、これはかけた。かけたのはいつかというと、一月八日にかけた。これは手順としてはまあいいですね。ところが、答申が出たのは二月の一日なんですよ。いまさら私は法律の条文を引っぱり出す必要はないと思うのですが、設置法五条ないし六条によって当然これは運輸審議会に大臣は諮問して、諮問する目的はどういうふうになるかというと、公平かつ合理的な決定をさせるために諮問するわけですね。しかも第六条では、その決定を尊重して運輸大臣はきめるとなっている。決意する前に、第五条、第六条の条文に従った手続が完了しなければならぬはずである。ところが、いま日付その他をずっと読んだように、二月一日に、実を言えば答申になっているのですよ。  私は形式を論じているわけじゃないのです。その精神を論じているのです、いま。いや、国鉄の財政再建措置要綱というのを閣議了解したのは、二月一日の答申を受けてから二月二日、閣議了解事項として決定しましたから、そこにみじんも間違いありませんと答弁するでしょう。それは形式というもの。もしもそういう御答弁をなさるなら、これは詭弁であります。私はそういう手続を踏むところに問題があろうかと思うのです。いまやまさに運輸審議会は民主的なルールの隠れみのだ。無用論さえ出ているのですよ。本来なら権威あるべきものが、法律をつくり、法律を守らねばならぬ政府自体が、じゅうりんしている。そこで提案されたのがこの運賃法では、手続からいってもこれは公正妥当を欠く。しかも結論が出る前にやっている。だから運輸審議会は、結論としては、これはもう十分わかり切ったことでありますが、諮問どおり答申せざるを得なくなったのです。  そればかりじゃなくて、この答申の中にこういうように書いてある。答申の中の、いわゆるこれを認める「理由」の中に、二の3の後段で、「この改定により以降三年間に総額約六、〇〇〇億円の増収が見込まれている。この運賃増収額は、同じ三年間に見込まれるベースアップによる人件費の増加額及び物価騰貴による物件費の増加額の合計約七、〇〇〇億円にも達しないこととなり、前述の利用者負担の原則からみてもこれらの諸経費の増加額のわく内での運賃負担増は過大なものとは言えず、この範囲での利用者負担であればやむを得ないものと認められる。」こういう理由がついているのであります。  この「三年間」というのはどこから出たのか。三年間見越して運輸審議会は答申できるのか。運輸審議会は越権行為だ、かたいことを言うならば。運輸審議会は、現時点においてその答申にイエスかノーかを言えばいいのである。三年後の問題について言及する資格と判断の能力はないものと私は思うが、これは官房長に聞いても無理なんで、しかしあなたが答弁するそうですから、一ぺん聞いてみましょう。
  268. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 役不足で申しわけないのですけれども、まず手続の点につきましては、先ほども申し述べましたように、一月の八日に大臣から諮問が出て、答申を行ないましたのは二月一日、これはそのとおりでございます。運輸審議会は、先ほども申し述べましたように独立の権限を有する諮問機関でございますから、もちろんその間に予算の決定が行なわれたということはそのとおりでございますけれども、独立してその権限を行使したということは事実でございますので、一言お答えをいたします。  それから、理由の三年間という話につきましては、その間、原局からいろいろな説明を受けるというのは運輸審議会の審議の内容として当然でございますので、国鉄から提出されました十年間にわたる再建計画収支予想というようなものも原局から説明を聞きました。その中に、三年間という区切りがございますから、それに基づいて三年間の試算を行なったということでございます。  それから人件費、物件費と運賃値上げ率の関係でございます。先生おっしゃいましたように、内容が主文に盛られているのは事実でございます。これは人件費と物件費の値上がり、それと運賃の値上げ額というものの直接の関連を議論したわけではございません。ただ、先生先ほどおっしゃいましたように、ベースアップによる人件費、それから物件費の高騰で約七千億という数字がございますし、一方、その間における運賃増収率が約六千億という数字もございます。そこで、この七千億という数字、ベースアップによる人件費、それから物価騰貴率によるところの物価の騰貴、この金額は、国鉄の企業努力によっても吸収し得ない性質のものでございますので、今回の運賃の値上げが必要最小限度のものであるかどうか、したがってまた、過大な運賃改定率とはなっていないかという判断の一つにこの数字を考えて、企業努力で吸収できないものにも及ばない値上げ率であるから過大ではないという判断の資料にいたしたいということでございます。
  269. 久保三郎

    ○久保(三)委員 官房長、あなたは審議会のメーンバーじゃないので、ちょっとお話は承っておくというか、そういうことかもしれませんけれども、ただ間違っている点が多少あるように思う。私が言った手続の問題ですね。政府が意思決定してから諮問の答申が出たということは、諮問の答申は無効ですよ。きき目はないのです。政府が意思決定してしまった。だから、それに対して平然としていられるということは、これは私はたいへんだと思うのですよ。これは単に政府部内での手続じゃないのです。国民大衆に対する手続なんです、はっきり言うと。それをやらないうちに政府自体が運賃改定の方針を決定するということは非民主的もはなはだしい。そういうようなことはだれが何といっても不合理というか理不尽な話でありますから、これは運輸大臣にもお尋ねしなければなりません。あなたは実際にも関係することでありますから。  それからもう一つ、いま答弁がありましたが、さっき言ったように、三年間はだいじょうぶくらいの話を運輸審議会が理由の中で述べること自体が、私は不見識だと思うのですよ。そんな能力や権能はないはずだ。いいか悪いのかの判断をすることが一つです、はっきり言って。いいならいいで、それでいいのです。妥当なら妥当でいいのです。だめならばどうするかなんてことは、政治が、政府考える、あるいは国会考えることなんですよ。そうでしょう。三年間見合っていくから、ちょっと不足だけれどもまあ間に合うだろうというようなこと、そういうのは運輸審議会の権限じゃないと私は思うのですよ。これはあなたに言ってもしかたがない。しかし運輸大臣から答弁もらいましょう。手続は踏んだようだが踏んでない、考ればたいへん簡単なことのようでありますが、どうせ機能というか権威を失った運輸審議会だからいいじゃないかといえば、そういうことになるかもしれませんが、少なくとも国民大衆はそうは思っていませんぞ。運輸審議会は何の役にも立たないじゃないか。民主的な機構であるべきものが、政府が決定したあとから答申を出さざるを得ないというようなことはどうなのか。国民に対する手続を省略して独断専行することは、法律をじゅうりんするばかりじゃなくて、国民の権利をじゅうりんするものだと私は思うのです。運輸大臣、いかがですか。
  270. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 運賃の値上げにつきまして国鉄から申請が出ましたので、私としましては、直ちに運輸審議会に、法律の命ずるところに従いまして諮問をしたのでございます。なるほど、その過程におきまして予算の大綱がきまりました。これは国会予算案を早く出す必要がありましたので予算の大綱がきまったのでありますが、運輸大臣といたしましては、運輸審議会の結論を待ちまして、つまり答申を待ちまして、細目にわたって運賃の改定及び財政再建の法律案をきめまして国会提案したのでございます。いろいろおっしゃるような点につきましては、時間の関係で不備な点もあったかもしれませんが、運輸審議会に対しましては、私としましては、できるだけこの法律の精神を生かしまして手続を踏んだつもりでございます。
  271. 久保三郎

    ○久保(三)委員 予算の大綱じゃなくて、予算案を出したのですよ、運輸大臣。運賃の大綱であろうが何であろうが、運賃値上げの改定の微細にわたってのいわゆる意思決定がなければ、予算案というものはできないのです。そうでしょう。だから、これは詭弁だとさっきから言っている。私は、詭弁だなんていうことはあまり言いたくないのでありますが、こういうものが平気でできるようになっては、もはや政治は国民大衆から離れますということです。だから、この案に反対することも当然ではないでしょうかと言いたいのです。野党がうるさいから、大体、閣議了解事項にでもしておいたほうがいいぞというようなことで、この対策要綱も二月二日にやった。それは一日の答申を受けてからやればつじつまが合うじゃないかということで待っていたんだろうと思う。そういうことではいけない。その前に、一月何日かに、与党と運輸大臣並びに大蔵大臣が去年と同じような手続を踏んでいることは事実でありますから、それが悪いというわけじゃありません。それはいいですよ。政党本位の内閣でありますから当然だと思うのです。それを非難しているのじゃない。ところが、国民大衆に対する手続を踏んでないということは、これは言語道断だと思うのです。何か久保三郎、最後になって変なところに力こぶを入れているとお感じのような顔をしておるのがそこら辺におるようでありますが、こういうのが一番問題なんです。民主国家ではちゃんとルールというものがあるし、法律にきめられたことは守るし、しかもこれは国民の生活にとって密接な関係があるのですから、国民のコンセンサスを得る民主的なルールとして運輸審議会という、設置法の第五条、第六条というのができておるのです。それが、意思決定は先にしちゃって、あとから形式的にすまないが答申してくれよということでは、私は話が違うと思うから、これは断じてそういうものは許しがたい。運輸審議会も、三年間を見越しての運賃改定などを考えるようなことはおこがましい、これははっきり言って。もしこの案が通っていってはみたものの、ぼくらが予測しているように、二年後にけつまずいてまた運賃値上げが出たときに、運輸審議会は何の責任を負えるか。負えるはずはないじゃありませんか。官房長ではしようがないですがね。この次の機会に運輸審議会の会長さんでも来てもらって話をしましょう。  いずれにしてもこの案は、運賃値上げの部分だけくらい少なくとも提案から落として、この一年間は公共料金を全体を抑制して、そして別な財政措置を講じて、再建をあらためて考えていく、その裏づけとしては総合交通政策をもっときちっと方向づけをして、再建が可能なような方向を出されることが一番賢明だと思うので、少なくとも最小部分、十カ年計画と運賃値上げの提案については撤回をされることがよろしいのではないかと思うので、一百つけ加えて私の質問を終わります。ありがとうございました。
  272. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 三浦久君。
  273. 三浦久

    三浦委員 たいへんお疲れたと思いますけれども、しばらくごしんほういただきたいと思います。  いままでの日本共産党・革新共同をはじめとする野党委員質疑を通じて明らかになった点は、今度の運賃値上げ法案や財政再建特別措置法案はきわめて不当だということであります。  そこで、私はこれまでの論点を振り返りつつ、値上げをしなくても国鉄の財政の再建をなし得るのだという、日本共産党・革新共同の提案を行ない、あらためて政府国鉄の基本的な態度をただしたいと思います。  政府国鉄国鉄赤字の原因としてあげているのは、一つは、国鉄が自動車輸送との競争に敗れて貨物輸送が伸び悩んでいるということである。二つ目は、人件費が異常にふえたということであります。   〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 そしてここから運賃を値上げしなければならない、こういう結論を導き出され、しかも総合原価主義というたいへん便利な用語を使用することによって、大幅な黒字を出している旅客にその負担の大半を押しつけようとしているわけであります。しかし政府国鉄の主張がいかに虚飾と欺瞞に満ちたものであるかは、紺野委員質問によって明らかになった減価償却の計算一つを取り上げても明白であります。したがって、私は、第一に経理の方法を変えることによって、机の上でつくり出されてきたこのまぼろしの赤字を解消しなければならないというふうに主張するものであります。  昭和三十六年度以降四十六年まで十一年間で、償却の方式を変えることによって増加した減価償却費が、国鉄当局の計算によっても五千六百三十六億円であります。これだけで累積赤字の七割に及ぶものであります。公共企業体である国鉄が、金もうけを目的とした営利会社と同じ償却方法をとるのは全く理由がないことであって、耐用年数を実際の使用年数と一致させる定率をやめて以前の定額法に戻すことは、当面とるべき最小限の措置だと私は考えます。  あわせて、百万円の機械でもまたちり紙や消しゴムでも同じく消耗品扱いにするという大まかな経理を改めて、民間会社ですらやっている五万円以上の品物はすべて固定資産として計上するようにしなければならないと思います。  さらに昭和四十六年度以降実施され、現在も実施されている建設仮勘定にかかる利息の仮勘定への繰り入れを、昭和三十六年度にまでさかのぼって実施するようにしなければならないと思います。当然過ぎるほど当然なこれらの措置を行なうことによって、累積赤字のほとんどが解消され、毎年の費用も大幅に削減されることになると思いますが、この点に関して大臣の所見をまずお伺いいたしたいと思います。
  274. 秋富公正

    秋富政府委員 ただいまいろいろと御指摘がございました。その一つの減価償却の問題でございますが、これは法人税法の準則に従いまして実施いたしております。いわゆる定率法、定額法の問題につきましても、先般にもお答えいたしましたように、他のいわゆる装置産業と同様に国鉄も行なっており、適正なものであると考えます。それ以外のものにつきましてもいま御指摘がございましたが、私たちといたしましては、適正な処置をいたしておる、かように考えております。
  275. 三浦久

    三浦委員 なぜ定額法を改めて定率法にしたのか、その理由はもうはっきりしていると思うのですね。それからまた切符の自動販売機とちり紙や消しゴム、こういうものを全く経理上同一に処理していく、こういうやり方というのは、国民は決して納得しないと思います。こういう態度をとり続ける限り、国鉄の赤字というのはやはり経理操作によってつくられたものだという疑いを、国民はいつまでも持ち続けることは間違いがないと思います。  それで私は第二に、四十六年度だけで二千百五十三億円にのぼる貨物の大赤字の克服が重要である、この点を指摘いたしたいと思います。旅客のほうは、梅田委員資料要求によって、十億円の黒字が公表されました。さらに紺野委員の追及によって、旅客プロパーの黒字は実は三百七十一億円にも達することが明らかになったわけであります。政府国鉄は、貨物の赤字を旅客の負担に肩がわりさせようとしているのであります。すなわち、今回の値上げがもし実施されますと、旅客は今年度千四百八億円の増収となるのに対して、肝心の赤字である貨物のほうは、わずかその四分の一の三百八十五億の増収にしかならないという結果になっております。今日国鉄の運んでいる貨物の大部分が大企業の製品か原材料であることは、年間五万トン以上発送する事業所が総輸送トン数の五五%以上を占めていることからも明白であります。しかもこれらの大企業には、梅田委員が明らかにしたように、種々の割引が実施されているわけであります。そればかりか、紺野委員が指摘したとおり、貨物輸送の近代化と称する手厚い対策によって、あなた方の試算によっても、年間千九百億円も大企業は流通経費を節約し、ぬくぬくともうけているわけであります。トヨタや日産の自動車輸送の際に自動車にかぶせる一枚一万円もするシートがすべて国鉄負担であるということを知って、おこらない国民はいないでしょう。  そこで、大臣、私は次の提案をしたいと思います。少なくとも大企業に対する営業割引の全廃をすること、私有貨車割引の割引率を引き下げること、また荷づくり用品だと称してビールのあきびんまで三割引きしている荷づくり用品割引の適正化は、すぐに実施すべきであること、さらに物資別専用列車など、到着日時が明確な貨物には特別のサービスをしているわけでありますから、料金制度の新設あるいは割り増し運賃の適用を行なうべきであると考えますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  276. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 具体的には国鉄総裁から御答弁をいたしますが、いままでにも私及び国鉄総裁から、この問題についてはるる御説明を申し上げました。国鉄の財政をよりよくするための、収入をふやすための方法であると私も考えておるのでございまして、いまその制度を根本的に変えるという考えは持っておりません。
  277. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいま貨物についていろいろお話がございましたが、貨物の割引につきましては、これを廃止する意思はございません。これによりまして相当の収入をあげ、相当の経営の改善をやっている以上、これを廃止する意思はございません。  次に、私有貨車でございますが、人のものを借りて使えば、それの使用料を払うのは私は当然だと思います。私有貨車割引と申しますのは、何べんも御説明をいたしましたが、利子と償却費でありまして、これは人のものを借りた場合にその使用料を払う。ちょうど旅客輸送の民有車両に対する使用料と同じでございます。これは廃止する意思はございません。  荷づくり用品につきましては、これは輸送機関といたしまして荷づくり用品の改良、割引をするあるいは無料にする、これはトラックでも何でもやっていることでございまして、これは輸送機関としての当然の昔からのオファーのやり方でございます。  最後に、到着日時の明確化の問題につきましては、ちょうど旅客輸送で申しますればいわゆる快速列車と同じようなものでございまして、特に現時点におきましては特別料金を取る気はございませんが、しかしこれはもっと本格化し、もっとスピードが上がれば、これは当然取ってまいります。
  278. 三浦久

    三浦委員 全くいままでの答弁の蒸し返しであります。いままでどおり大企業に対しては出血サービスを行なっていくという政府国鉄当局の新たな宣言だというふうに私は受け取るのでございます。  第三番目に私は、国が当然やらなければならない国鉄への支出について次のとおりにするべきだというふうに要求をいたしたいと思います。国鉄を日鉄法にいう公共の福祉に真に役立たせるためには、まず独立採算制を廃止をするということ、そうして、国民にとって必要な国鉄建設改良費は国家財政で負担すべきであるということであります。また、いままで述べた提案を実施してもなおかつ赤字となる地方ローカル線には、財政援助を行なう必要があるというふうに思います。さらに、社会的に必要な公共政策上の割引は、国庫の負担によって大胆に実施すべきであります。たとえば通勤通学定期、身体障害者、お年寄りなどの旅客運賃、米や野菜、鮮魚など国民生活の必需品等には国庫の負担が緊急に求められていると思います。  これらの諸施策を大臣は実施する意図があるかどうか、この点お伺いをいたしたいと思います。
  279. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 お尋ねの点につきましても何回か御答弁をいたしましたので、繰り返しになるかもしれませんが、そういった公共的な方面のサービス国鉄にはどうしても必要でございますから、政府がそれに対しまして相当大幅の財政援助をしておるところでございまして、設備の部分だけを負担するとか、赤字であるから路線別に負担するということはいたしません。そういったものを総体的に考えまして、国鉄の財政が健全化され、そうして国鉄の機能が十分に発揮されるような再建計画を樹立したいというので、今回の提案を行なっておる次第でございますから、その点はいまの御提案には賛成をいたしかねる次第でございます。
  280. 三浦久

    三浦委員 それでは私は第四番目に、利子負担の軽減と投資額の抑制を行なうべきであるということを主張いたしたいと思います。  多くの質問者が指摘したように、三兆円をこえる借金をかかえているのに対してわずかに利子分だけを貸し付けるという政府の助成方式は、当面を糊塗しながら借金をますますふくらませる以外に何の意味も持っていないと思います。現在の借金のそもそもの原因というのは、政府が出資を怠り、投資をすべて借金と運賃値上げでまかなってきたところにあるのでありますから、長期負債の半分を十カ年計画で一般会計からの出資で置きかえることが必要であると思います。あわせて償還期限の延長も措置すべきだと思います。大臣にその気持ちがあるのかどうかお伺いをいたしたいと思います。
  281. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 細目にわたりましては御意見とは多少違う点がございますけれども、そういったことをやるために政府は相当の助成もし、利子の負担もしよう、また政府の出資もしようということを決意をしておる次第でございます。方向といたしましては同じ方向でありますが、方法が少し違うと考えます。
  282. 三浦久

    三浦委員 しかし十カ年後になって決して長期負債が減っているわけじゃないですね。長期負債を減らさずにこれを大幅にふやして、どうして財政の再建というふうに言うことができるのか。私はそんなことだから、新十カ年計画の末には借金が十一兆円にもなる、利子を一日に十七億円も払わなければならないということになるのだと思います。十年後の国鉄の姿というのは再建とは似ても似つかない、そういう姿になっているということを指摘しておきたいと思います。  最後に私は設備投資の規模を大幅に縮小することを要求いたしたいと思います。  今度の再建計画では投資規模が十兆五千億円、現行計画の約三倍であります。しかもその中身は、新幹線と大企業の貨物輸送力増強がほとんどであります。大都市通勤対策は軽視されておる。小駅に至っては廃止、無人化までやって、地方の住民や中小荷主は大きな打撃を受けておるわけであります。こんな投資のやり方は根本的にやめること、地域住民や中小荷主の日常の足を確保することや、また大都市通勤対策に最大の重点を置くのは、国鉄の当然の責務であると思います。投資のやり方をそういうように変える気があるのかどうか、大臣のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  283. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 投資規模を縮小いたしますと、国民の足を守ることはできないと思います。先般来ここで御質疑がございますように、その投資規模がこれで足りるのかというような御意見が非常に多かったように記憶いたしております。したがって、私は現在の十年間十兆五千億といった規模は最小限度のものではないかと考えております。
  284. 三浦久

    三浦委員 私はいまこれまでのこの委員会での議論を踏まえて、国鉄の財政再建に関して新たな提案をいたしているわけであります。一つは、経理方法の適正化を行なって、経理上の操作によってつくり出されたまぼろしの赤字を克服すること。二番目は貨物の赤字克服の措置をとること。三番目は国の負担を拡大すること。四番目は利子負担の軽減と投資額を大幅に減らすこと。この四点を提起しました。この四点が実行されれば、累積赤字は直ちに解消して、運賃の値上げをせずとも毎年余裕を持って国民のための国鉄の運営と建設が進められるはずであります。大臣は、残念ながら、この提案を受け入れようとはされませんでした。たいへん残念に思います。  しかし考えてみれば、これは当然なことかもしれません。政府国鉄の目ざす国鉄再建というのは、国民からたくさんの金をしぼり上げて大企業の貨物を安く、早く、正確に運ぼう。大規模な工事で大企業に大きなもうけ口をどんどん提供いたしましょう、こういうものであります。われわれが目ざす国鉄の再建というのは、安くて、便利で、安全で、快適な、真に国民の国有鉄道の名にふさわしい公共輸送機関の確立であり、皆さんと私どもとの間には越えがたいみぞがあるからであります。したがって、私は本日の質問で現在の国鉄と今度の法案の反国民的な本質をさらに一歩掘り下げて御質問をいたしたい、かように考えております。  まず私は、大都市通勤対策についてお伺いをいたしたいと思います。  今回の再建計画の投資の中で通勤対策が一体どうなっているのか。通勤問題というのは国民の最も重要な関心事であるということは、先日の公聴会で値上げに賛成した人でも、その理由として、通勤地獄が緩和される、このことを期待しているからだというふうに述べていることによっても明らかであります。大臣も本日の委員会の冒頭で、大都市通勤対策というのは緊急な問題であるというふうに再度確認をなさっておられます。ところが、今回の計画では大都市通勤対策として七千億円の投資が行なわれることになっておりますけれども、これは全投資額のわずか七%足らずの額にしかすぎません。また十年後には二〇〇%の混雑度にすると言っておりますけれども、二〇〇%というのはやっと週刊誌が読める程度でもって、たいへんな混雑ぶりであります。その上、この二〇〇%の混雑率の緩和さえ実現の見通しとなるときわめて不確かだというふうに言わなければなりません。私はもっと大都市通勤対策費をふやし、混雑度を緩和していかなければならないというふうに思っております。  そこで大臣にお伺いいたしますが、七千億円という大都市通勤対策の投資は大臣として責任をお持ちになっていただけるのかどうか、この点いかがでしょう。
  285. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 いまの十カ年計画からまいりまして、もちろん七千億は支出をしなければならぬと思います。これでもって十分かどうかという問題につきましては、今後の大都市の周辺がどうなりますかどうか、そういった状況を見ながらこれは流動的に考えなければならぬ問題もあるかと思います。それに対応いたしました姿勢をもって臨みたいと思っております。
  286. 三浦久

    三浦委員 本委員会で自民党佐藤守良委員が、四十八年度予算の中で貨物対策費が非常に少な過ぎるではないかという質問をしたのに対して、磯崎総裁が、幹線輸送力増強投資の中には貨物輸送に役立つ投資も含まれているのでそんな心配は要らぬのだ、もっともっと実際には多いのだ、こういうことを言っておられるわけでありますが、そうすると、この幹線投資の中には大都市通勤のための投資も幾らかは含まれているというふうに伺っていいのでしょうか。そんなことはないわけでしょう。
  287. 磯崎叡

    磯崎説明員 幹線投資は、何々本線という線を幹線と申しております。したがって、大都市通勤はそれに入っておりません。
  288. 三浦久

    三浦委員 そうすると、大都市通勤対策費は七千億円以上にはならない、七千億円ちょっきりに限られる、こういうふうに伺ってよろしいわけですか。
  289. 磯崎叡

    磯崎説明員 そこで一つ、先日も申し上げましたが、貨物輸送力増強あるいは幹線輸送力増強で何々本線を増強いたしますと、それによって通勤輸送が緩和するという非常に具体的な例を申し上げれば、現在湘南電車と横須賀線が併用いたしております東海道線、この貨物線を回すためにいま横浜に貨物線をつくっております、横浜の北区のほうに。それができますと現在の東海道貨物線は横浜の裏のほうに回りますので、現在の東海道貨物線に……(三浦委員「そんなことを聞いているのじゃないよ」と呼ぶ)いや、いま申しましたのは、輸送力増強と通勤輸送関係があるということを申し上げたのです。  もう少しお聞き願いたいと思います。  湘南電車と横須賀線がいま同じ線路を走っております。いま東京付近で一番問題の多い線は東海道線であります。その東海道線をよくするために東海道線にお金をかけて貨物をはずして、そしてそのはずしたあとに横須賀線を入れる。まさに通勤輸送であります。そういう意味で、輸送力増強という中には間接に通勤輸送に大いに役立つ点があるということを申し上げたわけであります。
  290. 三浦久

    三浦委員 そうすると総裁、大都市通勤対策費として、貨物の新線をつくるということも含まれている、こういうことですか。
  291. 磯崎叡

    磯崎説明員 大都市通勤対策費は純粋の旅客通勤だけでございます。これは何べんも申し上げております。東海道線貨物を横浜に移すというのは幹線輸送力——先ほど私、幹線と申しますのは何々本線だというふうに申し上げましたが、たとえば東海道本線、それの貨物線を横浜の裏のほうに回しますれば、その貨物線のあいたものを増強して、そしてそこに横須賀線を通す。これは通勤輸送ではございますが、幹線輸送力増強の中に入っているということであります。
  292. 三浦久

    三浦委員 そうしますと、七千億円というのはまるまる大都市通勤対策に使われるというふうに理解していいわけですね。
  293. 磯崎叡

    磯崎説明員 全くさようでございます。
  294. 三浦久

    三浦委員 話はちょっとさかのぼりますが、第三次長期計画の大都市通勤対策の投資実績は幾らだったのでしょうか。
  295. 磯崎叡

    磯崎説明員 第三次長期計画というのは昭和四十年度から四十三年度までで、二千二百五十三億でございます。
  296. 三浦久

    三浦委員 そうすると、その二千二百五十三億円も、いま言われたようにまるまる通勤対策投資として使用されたわけなんですね。
  297. 磯崎叡

    磯崎説明員 さようでございます。
  298. 三浦久

    三浦委員 大臣、間違いないですか。
  299. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 政府委員答弁させます。
  300. 秋富公正

    秋富政府委員 そのとおりでございます。
  301. 三浦久

    三浦委員 それじゃ御質問いたしますが、第三次長期計画期間中に完成した田端−隅田川間の通路線の増設、これはどの投資項目でつくられたのか、大臣御存じでしょうか。
  302. 小林正知

    ○小林説明員 お尋ねの田端−隅田川間の線路増設でございますが、これはいわゆる工事のプロジェクト、要するに工事件名といたしましては、大都市通勤対策というものの費目でもってつくったものでございます。
  303. 三浦久

    三浦委員 この田端−隅田川の通路線増設というのは、これは貨物専用であって、旅客は通らないわけでしょう。どうなんですか。
  304. 小林正知

    ○小林説明員 貨物列車が主でございますが、荷物列車も通る。これは田端——隅田川間で荷物を扱っておりますので、荷物列車も通っております。
  305. 三浦久

    三浦委員 人間は乗っているのですか。
  306. 小林正知

    ○小林説明員 荷物列車でございますから、もとより人間は乗っておりません。
  307. 三浦久

    三浦委員 そうすると、貨物と荷物だけが利用するというこの線路を通勤対策費で出すというのはどういうわけなんですか。
  308. 小林正知

    ○小林説明員 ただいま三浦先生の御質問でございますが、要するに工事のプロジェクト、名称のつけ方、区分、こういったものはいろいろな角度からと申しますとことは、原因等の角度、工事をやるに至ります原因の角度等から目的に従いまして工事の分類をいたしております。そういったことで、ただいま東海道の別線線増、いわゆる横浜線のところで貨物の線増をいたしておりますが、通るのは貨物という計画になっておりますけれども、いわゆる工事のプロジェクト、要するに名称といたしましては、これは通勤対策が行き詰まってきておりますので、その結果といたしまして、従来貨物線として、客貨両面で使っておりました線でこれを充足することが十分でないというその結果、通勤対策の目的をもちましてやる工事でございますので、通勤対策というプロジェクトの名称をつけたものでございます。したがいまして、でき上がりました結果は、それが貨物専用であるかあるいは客貨両方使うかということとは別個の問題であろうかと思います。
  309. 三浦久

    三浦委員 そうすると、いまの田端−隅田川線の通路線増設というのは二千二百五十三億円の中から支出されているわけですね。
  310. 小林正知

    ○小林説明員 御指摘のとおりでございます。
  311. 三浦久

    三浦委員 おかしいじゃないですか。大都市の通勤対策費だといい、これは大都市通勤対策プロパーに使うんだというふうにはっきり御答弁なさっておって、その工事費目の中から貨物専用線をつくる。これはどういうことなんですか。田端−隅田川間の通路線増設というのはこれは旅客の輸送力を増強する目的でつくられたんですか。そうじゃないでしょう。
  312. 小林正知

    ○小林説明員 沿革的には田端−隅田川間の線路増設は、これは費目は先生御指摘のとおり、さっきも御答弁申し上げましたが、大都市通勤対策費という工事件名であげてつくったものでございます。しかしながら、その目的は、従来はこれがたしか下り線だったと思いますが、常磐線と平面交差をしておりまして、その結果線路容量がふさがれておった、輸送力が足りないということのためにこの線路を改良し、増設することによりまして、旅客線の輸送力がふえるというような旅客上の効果ももちろんございます。また、そういった意味からと、先ほど申し上げましたような意味で、要するに通勤対策というような、輸送力の増強といったふうな観点から、これを工事件名としては大都市通勤対策費ということで分類整理をしたにすぎないのであります。
  313. 三浦久

    三浦委員 しかし、それはでたらめじゃないですか。結果的にわずかばかり旅客輸送の強化に役に立つといったって、ほんとうの目的は貨物を通す目的でしょうが。貨物線じゃないですか。それを全額大都市通勤対策費として使うというのは、これは全く私は納得いかないと思うのですね。投資額で、新幹線投資とそれから在来線の強化と、その中には客貨共用とか貨物のプロパーの投資とかと分けているわけでしょう。そうであれば大都市通勤対策費だということであれば、これはだれが見たって旅客列車が走る線路をつくるというふうに思うのはあたりまえじゃないですか。貨物の線路をつくった、それが若干旅客輸送力に影響がある。だからそれは大都市通勤対策費でもって工事をやっていいんだなんて、そんなことは国鉄にだけしか通用しない理屈だと思うのですね。これはでたらめじゃないですか。それにこの田端−隅田川の線路の工事というのは、いまあなたがおっしゃったように最初からそういう通勤輸送の強化のためにつくられたというのではないんじゃないですか。どうなんですか、その点。
  314. 磯崎叡

    磯崎説明員 通勤輸送の内容をごらんになるときは、どうかひとつ総合的にごらんになっていただきたいと思うのであります。いまの田端−隅田川につきましては、もとは上野改良ということから発足しております。先生もごらんで御承知と思いますけれども、上野駅には数十億をかけて通勤輸送のために大改良をいたしております。その上野の改良をするために一番大きなじゃまになった−じゃまといっては申しわけないのですが、支障になったのは上野の駅の小荷物の扱いでございます。これはあるいは御存じないかもしれません。上野の小荷物と申しますのは、日本で一番大きな小荷物の扱い所が上野にございました。ちょうどこれが上野の駅の、いまもうすでにホームになってしまいましたけれども、その下にございました。それを上野に置いておいたのでは通勤輸送がよくならないということで、その上野の小荷物の扱いを隅田川に移しました。隅田川の貨物駅の中に小荷物を一緒に扱うところをつくりました。そうすると、それによって上野駅はごらんのとおり、最近相当大きな改良ができまして、多少通勤輸送もよくなっております。それをやるために上野の小荷物を隅田川に移す。その隅田川に移すために、いまの列車では入れません。ことに三河島でもって大事故をやったことがございます。したがって隅田川に行く荷物列車をおもに走らすために一本つくる、と同時に常磐口の輸送力もそれで緩和する、こういうことで一石二鳥の通勤対策でございました。  そういう意味で、分け方は外の人にはなかなかおわかりにくいかと存じますけれども、直接間接に影響するものはございます。そういう意味でございますから、御説明は詳しく申し上げますけれでも、どうか事柄だけで誤解のないようにお願いしたいというふうに思う次第でございます。
  315. 三浦久

    三浦委員 冗談じゃないですよ。この田端−隅田川の工事は最初から貨物の輸送力の増強として計画され、実施されてきたんじゃないですか。たとえば昭和三十八年度はこの工事は幹線輸送という項目で行なわれてきているのですよ。それから三十九年度もそうですよ。四十一年度になって通勤輸送対策というふうに変わってきているのです。最初貨物輸送力の増強ということでもって行なわれていたやつです。それを通勤対策ということが世上やかましくいわれるようになってきた。そしてその通勤対策費をふやしているというような見せかけをつくるためにこういうような水増しをやっているのだと私は思うんですね。この点いかがですか。
  316. 磯崎叡

    磯崎説明員 何べんも申し上げて御理解いただかないのは残念でございますけれども、そもそも常磐線と申しますのは通勤列車も特急列車も貨物列車も同じ線を走っております。これが非常に問題になったわけでございます。常磐口の通勤輸送を幾らよくしようと思っても、貨物が入る、特急が入るということで常磐口はよくならないということで、かたがた昭和三十六年でございましたか、三河島の大事故がございまして、やはり客貨を分けなければいかぬというようなことで、あそこに一本線路をつくりたいという計画が三十八年からお説のとおり始まりました。ところがその後、とても上野口はもたないということで、それに追加してというより、もっと大きな計画としてて上野の小荷物をはずそう。これはほとんど国鉄創始以来の大事業でございました。そしてそれを隅田川へ持っていく。そのためには当然隅田川と田端の間にいままで計画したものを早くつくらなくてはいかぬということでつくったわけでございまして、私は何も貨物輸送が要らないとか要るとか言っているのではなしに事柄について、通勤輸送貨物輸送がからみ合った問題であるということをはっきり申し上げておきます。
  317. 三浦久

    三浦委員 そんなことはわかっているのですよ。しかし何が主たる目的で工事が始められたかというと、主たる目的は何か、何が従かということですよ。そうでしょう。ですからあなたたちは、さっきも言ったけれども、新幹線投資であるとか在来線の輸送力の増強であるとか、また大都市通勤対策だとかいうふうに投資を区分しているわけでしょう。そういう磯崎総裁のようなことが通用するのであるとするならば、新幹線投資も在来線をそれによって貨物輸送力の増強のために利用できるということになる。そうすれば新幹線をつくるのは貨物の近代化の投資区分の金でやっていいということになるんじゃないですか、一応ちゃんと区分をしているわけなんだから。貨物プロパーのそういう路線をつくる場合には大都市通勤対策費からそれを全部出すなんということは、これは常識的に私はおかしいと思う。それは国鉄だけに通用する理屈ですよ。  それじゃお尋ねしますけれども、新幹線のホームを改良するという工事、これがどうして通勤対策費から出されているのですか。
  318. 磯崎叡

    磯崎説明員 そのお答えの前に前のことを申し上げますが、いまの常磐線の入り口の話でございますけれども、貨物線をつくったから即貨物——もちろん貨物の輸送力がふえますし、小荷物がふえます。と同時にそれによって同じ線路の上を走る旅客の通勤列車がふえる、あるいは上野に至っては全く次元の違う小荷物がなくなることによって上野駅の根本的な改良ができるということはまさに旅客輸送の改善でございまして、旅客輸送の改善がなければ何もそう急いでやるほどのことはない。あくまでも常磐口の通勤輸送の改善、上野駅の改善、このことのためにやったことでございます。  あとの話は、いまちょっと調べます。
  319. 内田隆滋

    ○内田説明員 御指摘の件は東京駅の改良のことだと思いますけれども、これは新幹線に伴いまして現在線の通勤設備、その他を全部新しくやり直すわけでございます。そういう意味では、東京駅全体のお客さんから見ますと、これは圧倒的に通勤客が多いので、この際通勤客のサービスのために東京駅を直すということで、主目的がそういうことなので通勤ということで整備をしておるわけでございます。
  320. 三浦久

    三浦委員 でたらめじゃないですか。新幹線のホームを改良するのに新幹線対策費で、新幹線建設費でやらないで大都市通勤対策費を使うというのはどういうわけなんですか。それはいろいろどこかにひっかかりが出てくるでしょう、旅客貨物が両方走っているわけなんだから。しかし投資区分を皆さんは区分けしていらっしゃるのでしょう。新幹線のホームを改良する。それをどうして通勤対策費でやらなければいけないのですか。おかしいじゃないですか。そんなこと国民は納得するわけないですよ。どうなんですか。総裁、そういうことを知っているのですか。大臣に伺いますが、大臣、こういう事実を知っておるのでしょうか。ちょっとお願いします。
  321. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 存じません。存じませんが、私いま事務当局からいろいろ聞いておりますと、予算の款項目を変更する場合はこれは非常に重大な問題でございますけれども、予算として成立したものをどう使用するかという計画はこれは国鉄が立てるわけでございます。大体こういう方面にはこのぐらい使いましょう、この方面にはこのぐらい使いましょうということで区分して一応の計画を立てておるわけでございますが、その間いろいろの事情によりましてそれを流用することもあり得ると思っております。したがいまして、非常におしかりでございますけれども、予算の款項目を変更するようなものではございませんので、これはある程度国鉄総裁が自分の権限の中でやれることではないか、私はそういうふうに考えております。
  322. 三浦久

    三浦委員 ちょっといま重要な発言だと思うのですね。大臣は先ほど、大都市通勤対策費というのは全部通勤対策に使うのだ、使っておるのだ、これははっきりおっしゃったのですよ。それをいまは、国鉄総裁の自由裁量で、款項目のそういう予算上の縛りに、違法にならなければ磯崎総裁の自由裁量でもって貨物線をつくってもいいのだ、また駅のホームの改良をしてもいいのだ、新幹線のホームを改良してもいいのだ、こういうふうなことをおっしゃっておるのですよ。これは全くおかしいですよ。(「それは別なんだ。勘違いだ。」と呼ぶ者あり)別な話じゃないですよ。おかしいじゃないですか、それは。先ほど大臣は、通勤対策費は通勤対策にだけ使っているのだし、使うのだとおっしゃっておるのですよ。
  323. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 私の申し上げているのは七千億の問題の内容を言っておるわけではございませんで、私が途中で聞いておりましたのは、そういったものを一応通勤対策となっておるのを新幹線なんかに使ったり何かすることについてそれはけしからぬというようなおとがめがあったように聞いたものですから、そういうことは、国鉄の中でそういった流用というものはやっておるのですということを申し上げておるだけでございまして、その内容について、通勤対策費を減らしてほかのほうに使うとかなんとかいうことにつきましては問題だと思います。
  324. 三浦久

    三浦委員 現実にいまの国鉄側の答弁によって、新幹線の駅の改良に通勤対策費を使っている、また貨物線の新設に通勤対策費を使っている。はっきりしておるじゃないですか。これはどうなんですか。大臣に伺います。——大臣に聞いておるのですよ。いまの大臣答弁を受けて私は大臣に聞いております。大臣に聞いておるのですよ。磯崎さん、あなた説明員じゃないですか。
  325. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 この問題は国鉄総裁から答弁させます。
  326. 磯崎叡

    磯崎説明員 先ほどから申し上げておりますように、かりに通勤輸送の需要要請がなければ新幹線のホームをいじる必要はない。通勤輸送の要請がなければ東海道もいじる必要もないあるいは常磐もいじる必要はない。これが原因であります。したがいまして、東京駅に例をとって申し上げれば、あの東京駅の下は、大正初期にできたものでございまして、まだほとんど現在どろでございます。あのどろをある部分とってしまって、そして通勤輸送と一般旅客がまじらない、通勤プロパーに、電車から降りてすぐ地下道から外に出られるようにする。通勤輸送のために大コンコースをつくるというのが私どもの考え方でございます。したがってそれがなければあるいは東京駅の通勤輸送がふえなければそれをやる必要はないのでございますけれども、先般来からのお話のとおり東京駅もまだまだ通勤客がふえますので、そのためにいまの地下道の幅あるいはいまの自由通路の幅では間に合わないのです。それはもっぱら通勤客でございます。ほかの一般乗客はそうふえません。もっぱら通勤客でございます。そのために東京駅の地下を全部掘ってしまう、どろを出してしまう、そのためには新幹線のホームをいじらなければいけないということでございまして、一応私のほうでは原因者別にこれを分類する、こういうたてまえでございます。
  327. 三浦久

    三浦委員 たいへん詭弁だと思います。  しかし私はもう一つの問題についてお伺いしたいと思いますが——失礼しました。いまの訂正します。質問を撤回いたします。  常磐線は隅田川−田端間の貨車の線増が行なわれることによって貨物列車は走らなくなったのですか。
  328. 磯崎叡

    磯崎説明員 隅田川の場所は御存じかと思いますが、南千住を過ぎたところにございます。したがいまして、常磐線の遠距離貨物列車は相変わらず走ります。しかし隅田と田端の間の小運転は走りません。
  329. 三浦久

    三浦委員 先ほど田端−隅田川間の工事をやることによって旅客輸送の増強に効果があったと言われています。しかし同時に貨物輸送力の増強にも効果があると言われているでしょう。そうすれば全部都市通勤対策費でもって出すというようなことじゃなくて、少なくとも折半でやるべきじゃないかと思うのですが、いかがです。
  330. 磯崎叡

    磯崎説明員 その区分は私のほうの中の予算の配分の問題でございまして、それを通勤輸送という費目で整理するかあるいは貨物輸送で整理するかの問題ではないんでございます。私のほうでそれをどう配分するかというだけの問題でございます。
  331. 三浦久

    三浦委員 それであれば自由にあなたたちが使えるということでしょう。何に使ってもいいということじゃないですか。投資の区分をちゃんとしているのですよ。大都市通勤対策費はそれだけに使うと言っておきながら、貨物線の増設とか新幹線のホームの改良とかそういうものに使っている。これは私は全くでたらめだと思います。そういうことが新十カ年計画の七千億円の大都市通勤対策費の中にも含まれていると思うのです。たとえば大井埠頭−汐留間、鶴見−塩浜間、この工事は貨物の専用線工事でありますが、これはやはり大都市通勤対策費でもって工事が行なわれているのではありませんか。
  332. 磯崎叡

    磯崎説明員 私のほうでかってにやっているということでございますが、私のほうの予算委員会に提出いたしました四十八年度の政府関係機関予算という予算書をごらんくださいますと、いま私のほうで分類いたしております分類は、いわゆる予算の款項目の分類でないんでございます。予算の款項目の分類はこれをごらんくださいますと工事勘定、そして一から七までございまして、基幹施設増強費、一般施設取替改良費、山陽新幹線東北新幹線というふうな項目でございます。これを通勤輸送とか貨物輸送とか分けますのは、御説明の便宜に分けているのでございまして、たとえば予算区分で申しますれば、基幹施設改良の中に通勤輸送も入りますし、線路増設費、電化費も入る、こういうたてまえでございます。先生は予算のたてまえと一緒にお話のことかと存じますが、予算書をごらんくださいますと、予算書の区分と、私がこういうところで御説明しやすいようになるべく御理解をいただくように一番わかりやすい分け方をしている分け方とはおのずから違っているわけでございます。
  333. 三浦久

    三浦委員 何だ、答えになっていないじゃないですか。質問に答えてください。大井埠頭−汐留、鶴見−塩浜間、この工事は、貨物輸送は東海道線の通勤対策の投資の中に入っているんじゃありませんかと聞いているのですよ。
  334. 内田隆滋

    ○内田説明員 ただいま総裁が御説明いたしましたように、現在の貨物線を通勤線に使う、湘南線と横須賀線に使うわけであります。そのためにはいま貨物専用線がございます。これを別につくらなければ通勤線にはならないわけであります。したがって、本来ならば通勤線路を新しくつくるべきところを、それが非常にいい場所を通っておりますので、その貨物専用線を通勤線にする。したがって、代替設備として鶴見−塩浜−大井埠頭というのが汐留に入る。いままでは貨物の専用線でございます。これが通勤線になるわけでございますから、そのかわりにつくるという意味でこれを通勤輸送でやるのが至当だということでございます。  先ほどの隅田川の貨物駅の場合に、これは御承知のように隅田川の貨物のほとんど大部分は田端操に入るわけでございます。したがって田端操から隅田川に入るためには、現在の通勤電車線の複線を横断しなければ隅田川貨物駅に入れない。これは長い貨物列車が隅田川の駅に入る場合にはいわゆる通勤輸送に非常に支障するわけでございます。これを取り除かなければ常磐線の輸送力増強にはならないのであって、そういう主目的のために特に田端操と隅田川の間を専用線でいまある線路をちょっと伸ばしたということでございます。工事は非常にたいへんな工事でございますが、線路の長さとしては非常に短いわけでございます。そういうようなものは一応大きな目的が通勤輸送の増強でございますので、通勤輸送で整備しておるわけでございます。  以上のように複線化する場合に貨物駅が当たれば、これは通勤輸送でもってその貨物の設備を移転するというようなことで整理いたしませんと、先生のおっしゃるように貨物設備だから全部だめだということになりますと、大きなプロジェクトは非常な細分化をしなければいけないということでございますので、便宜上そうしているわけでございます。しかしこれを整理するときには決算項目に従って整理いたしますので、別に不都合はないと私は信じております。
  335. 三浦久

    三浦委員 そうすると、大井埠頭−汐留、鶴見−塩浜間の工事ですね、これは主たる目的が旅客輸送の強化なんだ、通勤対策なんだ、そういうことなんですか。
  336. 内田隆滋

    ○内田説明員 そのとおりでございます。   〔発言する者あり〕
  337. 井原岸高

    井原委員長 静粛に願います。——静粛に願います。
  338. 三浦久

    三浦委員 しかし、いまの御答弁というのは全く違うと思うのですよ。この汐留−大井それから鶴見−塩浜、この間の工事というのは輸送力の増強というのが主たる目的で計画をされ実行されたものなんじゃないですか。たとえばこの「国有鉄道」のことしの四月号ですけれども、舟田正男さんという国鉄首都圏本部武蔵野線開業準備室長という方が「生まれ変わる首都圏輸送、待望の武蔵野線開業」、こういう論文を書かれています。この中で「ここに首都圏貨物輸送力を飛躍的に増強するため、長期計画として、東海道方面の客貨分離をさらに拡大するための線増と、新鶴見から都心を避けて内陸部を横断して東北・常磐に至る内陸ルート武蔵野線)の建設、ならびに東京湾岸の京浜・京葉大工業地帯と東海道・東北・常磐とを結ぶ湾岸ルート(京葉湾岸線)の建設が決定され、第一段階として昭和四十九年度までに東海道線線増(鶴見−大船間)、内陸ルートの完成および湾岸ルートの一部開業(汐留より大井(貨)・塩浜(操)を経て鶴見に至る区間)を実現し、引き続き、平塚−小田原間の線増を行ない、第二段階として湾岸ルートの全線開業を目指している。」この主たる目的は輸送力の増強を飛躍的にするためだというふうにはっきり書かれている。そうして付随的な効果として、「第一段階の完成によって、現在の貨物輸送上の重要幹線である山手貨物線・品鶴線の使命を武蔵野線に移行することになり、山手貨物線を新しい使命(新幹線・通勤線ルート、その他)のもとに積極的に活用し、また品鶴線を横須賀線用ルートに転用し、東京−品川間の地下旅客線と直通することにより、東海道方面の飽和状態にある通勤輸送を飛躍的に改善する。」ですから、あなたたち旅客輸送の改善が主なんだと、そう言って貨物の専用線をつくっているけれども、こういうあなたたちの仲間がお書きになった論文を読めば逆なんですね。首都圏貨物輸送力を飛躍的に増強するためにこれをやるのだ、そしてその結果は旅客輸送の問題にもいい影響があるだろう、こういう立場なんですよ。そうすると、こういう工事まで大都市通勤対策だということでやられるというのは、私はおかしいと思うのですね。この点いかがです。
  339. 内田隆滋

    ○内田説明員 現在、貨物専用線は、これはもう全然全くの貨物専用線として品鶴線というものがございます。そのかわりにいわゆる汐留−大井、あるいは浜川崎−鶴見間の複線化をつくっているわけでございまして、そういう意味で機能的にこれは全然同じものをつくったので、増強ということではございません。いま先生のお読みになりました論文の中に出てきます湾岸鉄道、これはいわゆる建設公団による新線建設でございまして、われわれの改良工事と密接な関係はございますけれども、全く重複しておらないわけでございまして、浜川崎から大井埠頭を通って千葉県のほうに抜ける湾岸鉄道でございまして、これとは重複しておらないわけでございます。したがって、それが鉄建公団によってできることによってなるほど貨物の輸送増強にはなりますけれども、これは国鉄運輸省——政府の立場からいえば貨物の輸送の増強ということになりますけれども、現在国鉄で施工しておりますいわゆる通勤輸送、これに対しましては全く代替設備をつくったというにすぎないわけでございます。
  340. 三浦久

    三浦委員 鉄建公団がやっているのは大井と塩浜操との間だけじゃないですか。大井−汐留間も国鉄がやっておるのじゃないですか。塩浜操−浜川崎間、また鶴見間、こういうのは全部国鉄がやっておるのじゃないですか。
  341. 内田隆滋

    ○内田説明員 いま申し上げましたように、浜川崎から大井埠頭を通って千葉へ抜ける、これは新線建設によって鉄道建設公団がやっているわけでございます。それで、その大井埠頭と汐留の間は、これは改良工事として私のほうで代替設備をつくらなければ汐留へ入れなくなりますから、これは私のほうでやっておるわけでございます。  それから浜川崎からいわゆる鶴見の間ですね。これは現在線路がございますので新線建設でございませんので、私のほうで複線化をやっておるわけでございまして、これらのものをつなげることによりまして現在の品鶴線の代替のルートが完成するわけでございます。
  342. 三浦久

    三浦委員 しかし、鉄建公団がやろうとあなたたちがやろうと、それは一つのつながった線でしょう。そうして、そのこと自体が旅客輸送力の増強という観点で行なわているんじゃなくて、全体としては貨物輸送力の増強、こういう観点でもって行なわれているというのは間違いのない事実でしょう。どうなんですか。
  343. 内田隆滋

    ○内田説明員 そのかわり汐留へ入る品鶴線ですね、これはなくなるわけですから、その代替設備はどうしてもつくらなければ、これは東京の都民のお台所がなくなるわけでございまして、これは全くそういう意味でございまして、いわゆる増強ではございません。
  344. 三浦久

    三浦委員 何言っておるのですか。私は、そんな、貨物輸送してはいけないなんということを言っているのじゃないですよ。そういう設備投資を、貨物プロパーの設備投資を大都市通勤対策だなどということでやるということ自体が間違っておるのじゃないかということを言っておるのですよ。それだったら、皆さんたち新幹線建設を幹線輸送力の増強という、そういうことでできることになるでしょう。みんな費目、投資区分をしているわけなんだから。そうして主たる目的が貨物輸送力の増強ということがはっきりしているのに、全部が全部この大都市通勤対策費から支出している。こういうやり方はけしからぬと思うのですね。いままで大都市通勤対策費が七千億だ、七千億だと言っておるけれども、実際にはそういう貨物プロパーの投資にかなりの額が行っているんじゃないかと思うのです。私はそういう意味でいままでの国鉄大臣答弁には納得いかぬと思うのですね。もう一回、ほんとうに大都市通勤対策プロパーに使われるものはどのくらいあるんだということをはっきりさして、私は出直してきてもらいたいと思うのです。
  345. 内田隆滋

    ○内田説明員 よく趣旨がわからないのですけれども、要するにいま問題になっておりますのは、先ほど総裁が御説明いたしましたように、湘南電車と横須賀線を分けるためにもう一本通勤線が要るんだ、これをつくるのにいまある貨物線を使って、そのかわりに貨物線を別につくる。これは通勤線のかわりに貨物線をつくるのであって、実質的には通勤線の増強でございますから——これは整理のしかたでございますけれども、われわれとしては新しい通勤線をつくるためのお金であるというふうに解釈して、通勤輸送で整理をしておるわけでございます。  それからもう一つ……
  346. 三浦久

    三浦委員 しかし、主たる目的はどっちなんですか、主たる目的は。貨物輸送力の増強にあることは間違いないじゃないですか、主たる目的は。そんなことを言っちゃいかぬですよ。そういうのは詭弁ですよ。はっきり貨物輸送の増強のためにやるんだ、その結果、その反射的効果といいますか、付随的効果として旅客輸送の増強のために役立つようになるんだとはっきり言っているわけでしょう。それをあなたたちのほうは、逆に旅客輸送力の増強のためにそうやるんだ、その結果、貨物のほうが幾らか恩恵を受けるということなんです。全く逆なことを言っているのです。あなたたちのお出しになった、私さっき言いました「日本国有鉄道R」、これなんかでも、さっき言いましたように、貨物輸送力の増強が主たるねらいだとはっきり言っているのですよ。それから、この「日本国有鉄道R」のことしの四月号ですけれども、改善される通勤輸送、これは対談ですけれども、通勤輸送対策のために「戸塚から鶴見までの間に新しい貨物線をつくらなきやならないんですが……」こういうことを言っているのですね。そうすると、大都市通勤対策でもって貨物専用の路線ばかりつくっている。そしてそれが大都市通勤対策だという、こんなことは国民は全く理解しがたいことですよ。私はもう一回、七千億円の中に実際の純粋な通勤対策費が幾ら入っているのか、はっきり計算し直してもらいたいと思うのです。水増しですよ。これば完全な水増しですよ。こんなことじゃ審議できぬじゃありませんか。
  347. 磯崎叡

    磯崎説明員 何べんも申し上げておりますように、たとえば、いまの東京の南のほうの問題にいたしましても、御存じかと思いますが、品鶴線という貨物線がございます。これを通勤輸送に使うということが事の起こりでございます。もちろん国鉄でございますから、旅客貨物両方ともよくしなければいけない。事の起こりはともかく品鶴線をどうしたら旅客輸送に使えるかということが事の起こりでございますから、これは大都市通勤でもってやる。そして品鶴線がなくなりますと、たとえば新鶴見に入る問題、いろいろございます。図面で詳しく御説明しなければわからないと思いますが、あらゆることにすべて関連してまいります。それが全部旅客輸送をよくしたい、通勤輸送をよくしたいということのために起こった問題でございます。したがって、これを部内的にはワンプロジェクトとして通勤輸送として整備する、これは予算としては別でございます。先ほど申し上げましたように、ワンプロジェクトとしてやはり一つのプロジェクトとして見る。そして、これは通勤輸送なんだ、それで通勤輸送はよくなってくる。反射的に貨物輸送がよくなっても私は差しつかえないと思います。しかし本体はあくまでも通勤輸送をよくしたいというのが本体でございます。これはどこの何の問題にしても、いまの東海道の問題にしても同じことでございます。本体はあくまで通勤輸送をよくするということが目的、その結果反射的に貨物輸送がよくなることは私もそれは非常にけっこうなことでございます。
  348. 三浦久

    三浦委員 さっきから私が何べんも言っているように、本来の目的が旅客輸送の改善のためだということを言っているけれども、しかしあなたたちの実際に書いたものを目で見れば、そうなっていないじゃないですか。おかしいですよ。いいですか、品鶴線を旅客線にするんだ、そのために新しい貨物線をつくるんだ、こういうことを言っておられるが、逆なんですね、あなたたちの書いたものを見れば。もう一回読みますよ。「ここに首都圏貨物輸送力を飛躍的に増強するため、」「第一段階として」云々、「第二段階として」云々、こういうふうになっているのですよ。そしてその結果、「品鶴線の新しい使命達成のためにも」逆ですよ。「大きな役割を果たすことになる。」これはだれが見たってどっちが主でどっちが従であるかということははっきりしているじゃないですか。それをあなたたち旅客輸送の改善のためだ、それが主たる目的であって、その結果貨物輸送力が増強になるのだ。全くここに書かれてあることと逆のことを言われているわけですよ。おかしいですよ。やはり七千億円の大都市通勤対策などというのは全く水増しされたものですよ。もう一回洗い直して、はっきりこの委員会でもって説明すべきだと思うのですがね。
  349. 磯崎叡

    磯崎説明員 何べんでも申し上げますけれども、たとえば東京の南のほうの問題は私が一番よく知っています。事の起こりはどうやったら湘南地帯の通勤をよくできるか。やっと新幹線ができて一息ついたけれども、とてもそれではだめだ。どうやって湘南地帯の通勤をよくするか。そのほかに方法がないじゃないかということで、やはり品鶴線を旅客に使う以外にない、これが事の起こりであります。いまそこに書いたのはだれかよく私は知りませんが、そういう見方をする人があるかもしれませんが、私は責任者として申し上げておきます。私はよくいきさつを知っております。事の起こりはどうやったら横須賀線と湘南線を分けられるかということが事の起こりでございます。それ以外に何もございません。
  350. 三浦久

    三浦委員 そうすると、この「国有鉄道」の四月号に書かれてある舟田正男さんの論文、これは間違いだというのですか。
  351. 磯崎叡

    磯崎説明員 たての両面だと思います。
  352. 三浦久

    三浦委員 どっちが主か従かということですよ。両方ですか。両方ならなぜ大都市通勤対策費だけから出すのですか。
  353. 磯崎叡

    磯崎説明員 何べんも申し上げておりますとおり、事の起こりは旅客輸送でございますけれども、そういう見方をする人もあるということでございまして、したがってたての両面である、表はあくまで旅客輸送でございます。
  354. 三浦久

    三浦委員 そうすると、湾岸ルート建設計画されたのはいつなんですか。   〔発言する者あり〕
  355. 井原岸高

    井原委員長 お静かに願います。——お静かに願います。
  356. 内田隆滋

    ○内田説明員 湾岸鉄道の計画が認可になりましたのは四十二年二月でございます。  それからちょっと先ほど新幹線の工事を通勤輸送でやっているということで、私、あれしましたけれども、問い合わせましたところ、新幹線の工事を通勤輸送でやっていることはございません。ただそれに伴いまして、東京駅の下の通勤関係の仕上げをやっているわけでございます。これは間違いでございますので訂正させていただきます。
  357. 三浦久

    三浦委員 そうすると、品鶴線の廃止を計画したのはいつですか。
  358. 磯崎叡

    磯崎説明員 品鶴線に旅客列車を走らせたいということは、実は戦前からの話でございます。これは地元の方が一番よく御承知でございまして、品鶴線は何とか貨物輸送でなくて旅客列車を走らせてくれという話がずっと前からございます。そして実際に本格的に考えようといったのは実は東海道新幹線ができる前に、何とかして東海道の輸送力を増強したいということで、相当本格的に品鶴線の利用を考えたこともございましたが、非常に貨物の始末がむずかしいということで計画が延び延びになっておりました。一時東海道新幹線開業いたしましたので、それで通勤輸送が楽になりました。しかしその後の増加趨勢から見れば、やはりいまのままではだめだということで、品鶴問題を本格的に取り上げたのでありまして、品鶴線自体はこれは沿線の方にお聞きになりますとおわかりになりますように、ほとんど敷設のときからの要望でございます。
  359. 三浦久

    三浦委員 私は実際にいまの国鉄当局の答弁というのは、原因と結果を明らかに転倒させて、そして主たる原因である貨物輸送力の増強ということを従たる目的なんだ、これは付随的な結果なんだというふうに強弁していると思います。私は、そういう国鉄の態度に強く抗議をして、次の質問に移りたいと思います。  経済企画庁の方、見えておりますか。物価の問題をお聞きいたしたいと思いますが、この物価の問題というのは、まず二つの方向で議論されてきたと思うのです。  一つは、自民党佐藤委員でも不満を述べられましたように、十カ年試算の前提とされている物価上昇率の三%という数字が当てになるものかどうなのか。他の一つは、公共料金の大もとである国鉄運賃の値上げは、その波及効果も含め、国民生活に重大な影響を与えないかということでありました。  そこで経済企画庁にお尋ねいたしたいと思います。  国鉄は物価上昇の見込みを経済社会基本計画に依拠をして算定したのですけれども、昭和四十八年度の政府見込みは、消費者物価が五・五%、卸売り物価が二・〇%であります。これだけ上がっても国民にはたいへんなことであるわけですが、その政府見込みですら、最近の物価騰貴の状況を見るならば、守られるかどうか非常に疑問だと思います。ことしの四月の末で、昨年同月比でもって卸売り物価それから消費者物価がそれぞれどれだけ上がったのかを教えていただきたいと思います。
  360. 小島英敏

    ○小島政府委員 お答え申し上げます。  まず消費者物価の数字でございますけれども、四月の全国の数字では、前年同月に対しまして九・四%の上昇になっております。それから卸売り物価でございますが、本年四月の数字は、前年同月に対しまして一一・四%の上昇になっております。
  361. 三浦久

    三浦委員 非常に異常な物価騰貴だと思います。そうすると、これで四十八年度はすでに何%上がっていることになるのか、これをお尋ねいたしたいと思います。そしてまた、いまの状況が続けば政府見込みは大幅に突破するに違いないと思いますけれども、年度末には一体どのくらいの上昇率になるのか、お尋ねいたしたいと思います。
  362. 小島英敏

    ○小島政府委員 実は四十七年度の後半におきまして、かなり著しい上昇率を示しましたために、四十七年度末現在の水準で横ばいになったといたしましても、消費者物価は五%の予定でございます。それから卸売り物価のほうは、昨年後半の上昇率がさらに高いものですから、約七%、年度末水準で横ばいになりましても、七%程度は上昇になるということでございます。  それから四十八年度の中がどうなるかということは、いまの段階ではなかなか明確に申し上げかねるわけでございまして、私どもといたしましては全力をあげてこの上昇率を最小限にとどめるように努力中でございます。
  363. 三浦久

    三浦委員 経済企画庁としては政府見込みに押えられる自信があるかどうか、これをお尋ねしたい。
  364. 小島英敏

    ○小島政府委員 なかなか客観情勢がむずかしくなりつつあることは事実でございますけれども、全力をあげてそのように努力いたすつもりでございます。
  365. 三浦久

    三浦委員 努力をするというだけで、押えられるという自信がないような御答弁でございますが、そうすると、この十カ年計画の試算の基礎がまた一つくずれたということになると思いますけれども、運輸大臣どういうふうにお考えですか。   〔発言する者あり〕
  366. 井原岸高

    井原委員長 お静かに願います。
  367. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 ただいま経企庁からお答えいたしましたそういう目標で進んでいますので、それに基づきまして十カ年計画は進行させたいと思っております。
  368. 三浦久

    三浦委員 続いて経済企画庁のほうに伺いますが、先日、日本経済新聞社新聞の購読料の値上げを発表いたしました。このときに経済企画庁の長官はすぐ談話を発表して、これに対してストップをかけられたわけですね。この趣旨はどういうことだったのでしょうか。
  369. 小島英敏

    ○小島政府委員 一つは、やはり新聞といいますものは、最近の物価を鎮静するようにいろいろ努力をされておるはずでございますし、そういう意味から申しまして、いまこのように客観情勢がたいへんきびしい事態において新聞が、これはCPIに対しますウエートもかなり高いものでございますから、大幅な値上げをされるということは、はなはだ好ましくないということが第一点でございまして、それからもう一つは、やはりこういう値上げをいたします場合には、各産業ともそれを国民に極力納得してもらうような努力が必要だということが常々いわれておることでございますし、新聞もそのようにいっておるわけでございますけれども、どうも新聞料金の値上げに際しましては、過去の経験からしましても比較的一片の社告で、あまり値上げの必要性というものが国民に納得されないままに値上げが強行されているということもございますので、今回もまさに同じようなやり方でされましたことに対しまして、遺憾の意を表明したわけでございます。
  370. 三浦久

    三浦委員 この談話の中で、いま御答弁がありましたように、現在の物価の動向がきわめて憂慮すべき状態にあり、国民あげて物価の安定を希求し、政府も当面の物価安定対策について、こういうものによって最善の努力を傾注しているさなかにおいて、新聞業界の指導的立場にある日本経済新聞が、大幅な値上げを行なおうとすることは、その与える直接、間接の影響がきわめて大きいといわざるを得ない、こういうふうにいわれていますね。日本経済新聞の値上げと国鉄運賃の値上げとどっちが波及効果が大きいというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  371. 小島英敏

    ○小島政府委員 日本経済新聞だけでございますと、国鉄運賃に比べましてもちろんウエートは少ないわけでございますけれども、いままでの例で申しますと、大体新聞業界は、一社が上がりますと大どころは追随して上がるということが例でございまして、国鉄新聞料金というものは、CPI上のウエートでは非常に近いわけでございますので、いずれもやはり全体として見ますと非常に大きな影響があるということでございます。  それからもう一つは、経営の実態がはなはだしく違うというふうに私思うわけでございまして、日経の場合ですと、過去二カ年にわたって、大体数億の利益をあげ、一割二分の配当が行なわれております。それから、今度の値上げに際しましても……(三浦委員「そんなこと聞いているんじゃないですよ。どっちが波及効果が大きいかと聞いているのですよ」と呼ぶ)   〔発言する者あり〕
  372. 井原岸高

    井原委員長 私語を禁じます。
  373. 三浦久

    三浦委員 国鉄運賃の値上げと日本経済新聞の値上げと、どちらが波及効果が大きいかということを聞いているのです。
  374. 小島英敏

    ○小島政府委員 先ほどお話がございましたように、国鉄のCPIに対する影響といたしましては、直接的な波及率と申しますか寄与率は〇・三四%。これに貨物の値上げに伴いますものを、産業連関表等から、これはなかなかむずかしい計算でございますけれども一応計算いたしますと、〇・〇九%ということになるわけでございます。新聞のほうは、そういう間接的な、つまり産業連関表上の効果というものは計算できません。直接的な効果において、大体国鉄と同じような影響があるということでございまして、そのほかに、やはり心理的な影響というものが両方にあるというように思います。
  375. 三浦久

    三浦委員 だれが見たって、国鉄運賃の値上げのほうが物価値上げに及ぼす影響が大きいというのはわかり切ったことじゃないですか。そんなことまでそういうごまかしの答弁をするというのはけしからぬと思うのです。私は、日本経済新聞の値上げにストップをかけるくらいだったら、国民全部が反対している国鉄運賃の値上げにストップをかけるべきだと思うのですよ。  私は運輸大臣お尋ねいたしたいと思いますが、昨年の夏以来申請が出されている私鉄運賃の値上げの問題、それからまた、最近いろいろいわれている航空運賃の値上げの問題、かりに国鉄運賃が上がったとしても、これらの私鉄運賃や航空運賃は値上げをしないというふうにお約束ができるかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  376. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 関連してお聞きになりましたので、私鉄の問題から申し上げますが、私鉄運賃の問題は昨年来申請が出ております。いま実態につきまして慎重に審査をしておるところでございます。しかしこれは、国鉄の運賃がかりに上がったといたしましても、直ちにそれに関連して上げるものではありません。私鉄の状況、その実態をよく見きわめました上で対策を考えるということでございます。  それから航空運賃の問題でありますが、これは御承知のように、昨年いろいろの経費が上がりましたために、昨年の七月でありましたか、何%かの国内運賃の値上げを認可いたしました。しかし、今度、航空機燃料税の問題でありますとか、あるいは航行援助施設の利用料の徴収というようなものがありますので、これらのものと見合いまして、さらに航空会社では運賃の値上げについて申請をするかに聞いておりますけれども、まだそういった申請は出ておりません。出ました段階におきまして、諸般の状況を考えました上で最終的な結論を出したいと思っております。
  377. 三浦久

    三浦委員 国鉄運賃が上がったとしても直ちに上げるというものではない、こういうお話ですね。しかし、上げないという御答弁はなかった。そうすると、上げるという可能性もあるのかどうかお尋ねしたい。
  378. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 上げるとも上げぬともまだきまっておりません。先ほど申し上げましたように、私鉄の内容につきまして十分審査をいたしました上でいずれかに決定をしようと思っておりますので、いま審査中でございます。
  379. 三浦久

    三浦委員 結局上げないという自信はないということですね。そうすると、この国鉄運賃の値上げというのがどんどんどんどん物価値上げの機関車の役割りを果たして、国民生活をますます苦しめていくということはもうはっきりした事実だと思います。私は、国民生活を苦しめ、そして物価値上げに拍車をかけるこういう運賃の値上げは、やはり運輸大臣としてはやめるべきだというふうに考えております。  次に私は、米軍貨物輸送の問題についてお尋ねいたしたいと思います。  日本とアメリカ合衆国との間には不幸にして日米安保条約が結ばれております。だれの目にも明らかなように、この安保条約が日本の憲法や国内法を踏みにじった占領特権まる出しの屈辱的条約であるということははっきりしていると思います。安保条約や地位協定、それらに基づく無数の特例法によって、いまなお米軍が占領軍そのままの特権をほしいままにしている。そして、われわれとして許せないのは、米軍がこの特権をフルに活用して、日本を足場にして侵略戦争を行なってきたことであります。沖繩を含む日本全土がアメリカのベトナム侵略戦争の基地となることによって、安保条約は日本と極東の安全のためどころか、日本の安全とアジアの平和を破壊する侵略的な軍事同盟であるということが国民の前に一そう暴露されました。   〔発言する者あり〕
  380. 井原岸高

    井原委員長 静かにしてください。
  381. 三浦久

    三浦委員 国鉄も、地位協定七条に基づく米軍貨物輸送によって、アメリカのベトナム侵略戦争に協力をしてきたわけであります。私は安保条約の廃棄を強く望むとともに、米軍貨物輸送の実情を国民の前に明らかにする立場でこの質問をいたしたいと思います。  外務省の方、来ていらっしゃいますか。
  382. 井原岸高

    井原委員長 外務省は、角谷参事官が見えております。
  383. 三浦久

    三浦委員 これは何度も論議になっていることですが、前提としてお尋ねしますけれども、国鉄と米軍との間に締結されている、公務鉄道輸送支払手続設定のための日本国有鉄道とアメリカ合衆国との間の協定というのはいかなる性格を持つものなのでしょうか。
  384. 角谷清

    ○角谷説明員 ただいま御指摘のものにつきましては、一方におきまして国鉄を運送人といたしまして、他方米軍を荷主といたしますところの運送契約でございます。私契約でございます。
  385. 三浦久

    三浦委員 米軍地位協定七条に「合衆国軍隊は、日本国政府の各省その他の機関に当該時に適用されている条件よりも不利でない条件で、日本国政府が有し、管理し、又は規制するすべての公益事業及び公共の役務を利用することができ、並びにその利用における優先権を享有するものとする。」こういうふうにありますけれども、「不利でない条件」並びに「利用における優先権」というのはどのように解釈をしたらいいのでしょうか、お尋ねいたしたいと思います。
  386. 角谷清

    ○角谷説明員 ただいま御引用なさいました地位協定第七条はまさにそのように書いてあるわけでございまして、これは「日本国政府の各省その他の機関に当該時に適用されている条件よりも不利でない条件」要するに、その条件に均てんし得る、しかし別にそれよりも有利な条件を与えるというようなことではございません。
  387. 三浦久

    三浦委員 そうすると、同一の条件というふうに理解してよろしいのですか。
  388. 角谷清

    ○角谷説明員 さようでございます。
  389. 三浦久

    三浦委員 運輸大臣お尋ねいたします。  大臣は鉄道輸送における公平の原則ということを非常に強調されているわけでありますが、特定荷主に対してだけ特別の運送条件を適用することは、この公平の原則に違反することになりますか。また法律違反になりますか。法律違反になるとすればどういう法律に違反するのか、お答えいただきたいと思います。
  390. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 御質問の趣旨がよくわかりませんが、国鉄が締結しております運送契約というものはすべて鉄道営業法に基づいてやっておるものと信じております。
  391. 三浦久

    三浦委員 いや、いま私が聞いているのは、国鉄が法律違反をしているかどうかということじゃないのです。特定の荷主に対して、その人にだけ特別の運送条件を適用するということ、そのことは法律違反になるのかならないのか、なるとすればどういう法律に違反するのかということであります。
  392. 秋富公正

    秋富政府委員 特定の荷主と申しましてもいろいろなケースがあるわけでございまして、いわゆる公平の原則、こういった運賃法の原則、これに照らして処理していくということには間違いございません。
  393. 三浦久

    三浦委員 運輸大臣お尋ねしますが、アメリ九軍の貨物輸送について現在特別な取り扱いはしていないかどうか、お尋ねしたいと思います。
  394. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 政府委員から御答弁させます。
  395. 秋富公正

    秋富政府委員 米軍の貨物につきましては、いわゆる大宗をなしますものは火薬類あるいは石油類でございますが、これにつきましては一般の貨物と全く同様の取り扱いをいたしております。  ただ、雑貨につきましては、これは表示がいわゆる英語で書いてございますことと、それからその品目の表示、これが日本人にはなかなかなれない品目もございまして、いわゆる現場の扱いの混乱を避けますために、結論におきましては同じでございますが、いわゆる運賃早見表といったようなものを使いまして、現場の職場におきまして混乱がないように、また支払いの事務の適正化をはかる。こういう意味で特別の運賃早見表のようなものを雑貨についてはただいま使用いたしていることは承知いたしております。
  396. 三浦久

    三浦委員 米軍貨物輸送については、国内法や規則というものがそのまま適用されるのだというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  397. 秋富公正

    秋富政府委員 そのとおりでございます。
  398. 三浦久

    三浦委員 私どもが国鉄と米軍との輸送協定の提出を求めたのに対して、こういう回答をいただいたわけであります。  「現在、国鉄と駐留軍との間には次の五つの協定が締結されていますが、これらの協定は使用言語等を異にする駐留軍との間における貨物運送の取扱にあたってのそごをさけるため、及び冷凍機付冷蔵車のように駐留軍以外には一般に使用されていないものの取扱の明確を期するために締結しているもので、その内容は取扱の手続に関するものです。」  そうすると、これを読む限り、米軍貨物に対して特別な取り扱いはしていない。いわゆる公平の原則に反するような特別な取り扱いはしていないというふうに伺ってよろしいのでしょうか。
  399. 秋富公正

    秋富政府委員 特別に有利な取り扱いはいたしておりません。
  400. 三浦久

    三浦委員 そうすると、あなた方が提出を拒否された公務鉄道輸送支払手続に関する日本国有鉄道とアメリカ合衆国との協定というものには、先ほど御答弁がありましたように、いわゆる雑貨類と言われたその他貨物、これについては特定賃率表がある。しかしその他の貨物については、一般貨物の賃率表がそのまま適用になっているんだ、こういうことですね。
  401. 秋富公正

    秋富政府委員 そのとおりでございます。
  402. 三浦久

    三浦委員 私どもは過去の協定で米軍に対して特別な取り扱いをしているという例を知っております。それで現在どのようになっているのか、その協定の内容がどうなっているのか。そのことをはっきり判断するためにはその協定を見せてもらわなければならないと思います。  外務省の方にお尋ねしたいと思いますが、五月八日の本委員会で紺野委員が右の協定の提出を求めたのに対しまして、磯崎総裁は外務省が出さぬほうがいいという話でしたから、この協定は提出できません。提出する、しないは外務省の意向であってというふうに答弁されておるので承りたいと思いますが、あなたのほうでこの協定の提出を了解されないのはどういう理由からでしょうか。
  403. 角谷清

    ○角谷説明員 先ほどもお答え申し上げましたとおり、この協定と申しますかこの契約は、米軍と運輸省との間の私契約でございまして、したがいまして、当然、当事者、たとえば米軍の同意が、その公開につきましては、提出につきましては、必要なわけでございます。外務省といたしましては、その米軍の同意というものが必要であるということを運輸省のほうに御説明申し上げておるわけでございまして、ただ私たち了解しておりますところ、アメリカ側はそれに同意しておらないという事実を伺っておる次第でございます。
  404. 三浦久

    三浦委員 しかしこれはいまあなたがおっしゃったように私契約でしょう。
  405. 角谷清

    ○角谷説明員 ただいま私は運輸省と申し上げて失礼いたしました。国鉄という意味でございます。
  406. 三浦久

    三浦委員 そうしますと、あなたのほうではこの協定を提出するかしないかについて、しないほうがいいとか、したほうがいいとか、そういうことを言えるお立場にあるのですか。
  407. 角谷清

    ○角谷説明員 特に、別にそうしたほうがいいとか、しないほうがいいとかという価値判断ではございませんで、要するに、これは契約の形態から申しまして、やはり先方の同意が要る、しこうして先方は同意をしておらぬということを申し上げておるわけでございます。
  408. 三浦久

    三浦委員 そうすると、この協定を提出するかしないかということは、米軍と国鉄との意思できめられることでございますか。
  409. 角谷清

    ○角谷説明員 その御質問に対しましては、要するに理論的に申し上げれば、そういうことになると思います。
  410. 三浦久

    三浦委員 運輸大臣も同じお考えでしょうか。
  411. 秋富公正

    秋富政府委員 これは外務省からのお話にもございましたように、米軍と国鉄の間の話し合いによって、その同意によってきめるべき問題、かように考えております。
  412. 三浦久

    三浦委員 運輸大臣お尋ねしますが、外務省はこの契約は私契約である、そしてこの協定を委員会に提出するかしないか、それは国鉄と米軍との意思によってきまる、こういうふうに言っているわけですね。このことはいま運輸省のほうもお認めになったわけであります。ところが、この前の五月八日の紺野委員質問に対して、磯崎総裁はこう言っているわけでしょう。「七番目の問題」——これは協定の提出の問題です。「これは運輸省を通じまして外務省にいろいろ伺いましたところが、外務省からは、先とのいろいろな話があるので出さぬほうがいいというお話でございまして、これは私のほうの意思でなしに、むしろ外務省のほうの御意向であるというふうに考えております。」こういうふうに述べておるわけですね。これははっきりわれわれの資料要求に対してうその答弁をしたということになるのじゃないですか。大臣、どうでしょうか。
  413. 秋富公正

    秋富政府委員 先ほどの点でございますが、私のほうは、国鉄が外務省を通しまして米軍と折衝しましたり、あるいはいろいろと折衝したい、こういう意向につきましては、あらかじめ連絡も受けておりますし、またその折衝の経過につきましても、そのつど報告を受けておりますので、国鉄総裁答弁いたしましたのは、運輸省にもそういったふうに絶えず連絡をして接触を保ちながらやっている、こういった意味発言したものと考えております。
  414. 三浦久

    三浦委員 そんなことになっていないじゃないですか。ここでは「外務省からは、先とのいろいろな話があるので出さぬほうがいいというお話でございまして、これは私のほうの意思でなしに、むしろ外務省のほうの御意向であるというふうに考えております。」と言っているのですよ。これが、いま外務省の方は何と言われたかというと、私のほうの意向じゃないのだと言っているのでしょう。それは国鉄と米軍との間できめられればそれでいいのだということなんですよ。そのきめたことに対して、外務省が出せとか、出さないほうがいいとか、そういうことを言える立場にはないということは、いまの答弁からはっきりしているじゃないですか。これはこの委員会の審議でもって議員をだましたことになるのですよ。運輸大臣、この点はどうですか。私、運輸大臣のお考えをお聞きしたいと思うのです。こんなでたらめなうその発言をされたら困るのですよ。
  415. 秋富公正

    秋富政府委員 外務省のほうに国鉄がいろいろと相談にいきましたときに、やはり米軍の同意がなくてはできないので、よくその点をさらに詰めていくべきではないか、こういったサゼスチョンがあったということは私も聞いておりますが、総裁答弁がやや説明不十分だったか、かように考えております。
  416. 三浦久

    三浦委員 説明不十分というようなものじゃないでしょう。これはよけいなことを言っているのじゃないですか。「外務省からは、先とのいろいろな話があるので出さぬほうがいいというお話でございまして、」と、はっきり言っているのですよ。そして、「これは私のほうの意思でなしに、むしろ外務省のほうの御意向であるというふうに考えております。」というこの答弁は、外務省が出しちゃいけないと言ったから出さないのだ、こういう答弁ですよ。外務省自身はそんなこと一つも言ってないじゃないですか。これは完全にだました答弁ですよ。国会議員をだまして、そうして資料を出さないで米軍を保護するというようなそういう態度は、私絶対許すことはできないと思うのですよ。大臣もこの答弁のときにはここにおすわりになっていたと思うのですよ。こういう誤った答弁をしたときには、大臣自身もやはり直ちに訂正をするなり何なりする必要があると思うのですね。大臣は、磯崎総裁がこういううその答弁をしたことについて、どういうふうに政治責任考えておられるのか。
  417. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 私は国鉄が結んでおります運送契約のすべてを知っているはずがございません。資料要求につきましては、委員会において、いつもいままで委員長理事の間で、提出すべきかどうかということをおきめになっていると思います。でございますから、そのルールに従っておきめになればよろしいと思います。磯崎総裁が言ったことについても、私はそばにおったかもしれませんが、ただいまのところ記憶がございません。この問題についての運輸省の態度は、先ほど政府委員から申し述べたとおりでございます。
  418. 三浦久

    三浦委員 記憶がないというのはどういう意味でしょうか。それは国会侮辱じゃないですか。あれだけわれわれが書面で要求をし、また委員会、理事会を通じてもいろいろ問題にしている米軍の協定の提出の問題なんですよ。この問題について磯崎総裁が、出せない理由として、外務省の意向でもって出せないのだとはっきり言っているわけですよ。これは運輸大臣、記憶がありませんじゃ済まされないと思うのですね。運輸大臣はそれじゃ眠っておったのですか。審議を十分に聞いてなかったのですか。それはあまりにも無責任じゃないですか。部下が国会議員をだましているのですよ。国会の侮辱ですよ。そういう事態にありながら、運輸大臣自身がそんな記憶はありませんでした、これじゃこのまま審議はできないじゃないですか。何を信用してわれわれは審議を進めていくのですか。運輸省国鉄答弁というのは誠実に行なわれているのだろうという前提の上で審議をしているのですよ。その前提がくずれれば、審議できないじゃないですか。おかしいですよ、これは。   〔「国鉄総裁答弁させなさい」と呼び、その他発言する者あり〕
  419. 井原岸高

  420. 磯崎叡

    磯崎説明員 私のほうは、従来ともこの問題につきましてはいろいろ外務省の御指示を仰いでおります。私契約であるから、契約内容の公表については契約の一方の当事者たる米軍の同意を得る必要があるのは当然であります。先般私のほうから外務省に対しましてこれを伺いましたところが、いま申されたように米軍の同意を得る必要があるというのは当然であるということで、米軍側としては従来から契約内容を部外に公表することはしないたてまえであると承知している、というふうに外務省から私ども伺っております。したがってそれをばく然と「御意向」というふうに表現したわけでございます。以上であります。
  421. 三浦久

    三浦委員 全くうその答弁をしていますよ。これが私契約だということは国鉄当局も認めているわけでしょう。そしてその契約の、当事者とのその契約の内容については一方の当事者の同意がなければ出さないというのは、何も外務省に聞かなくたって、あなた方はずっとわかっていたんじゃないですか。いままで、特定の企業との間にどういう契約を結んでいるのだといったら、いつもそういう、われわれの契約の相手方についてどういう契約をしているかとか、出荷量がどのくらいでありますとか、そういうようなことについては一切公表できないのですということを、国鉄自身の判断でもってやってきているんじゃないですか。米軍との間だって私契約だということをあなた方はいっているわけでしょう。昭和二十八年以来の公的な皆さんたちの見解ですよ。そうであれば、米軍のこの協定について一々外務省にお伺いを立てなければならないというような、そんな筋合いのものじゃないのです。あなたがここで答弁しているごとは、「外務省からは、先とのいろいろな話があるので出さぬほうがいいというお話でございまして、」と言っているのですよ。外務省が出さぬほうがいいというお話でございまして、と言っているのです。だからそれを真に受けて、外務省がそういっているから出せないんですよというのがこの磯崎総裁答弁じゃないですか。うそを言っていることはこれは明瞭じゃないですか。責任とってください。国会侮辱じゃないか。
  422. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいま申し上げましたとおり、先般、外務省に伺うことのよしあし、これは私は伺うべき問題だ、べきというより、伺ったほうがいいと言っております。私契約ということばを先生お使いになりましたけれども、どういう意味か、私あまり学問ございませんでわかりませんが、いわゆる公権の行使でないという意味だと思います。しかしそれにいたしましても、米軍の同意を得る必要があるということは当然であるというふうに外務省もいわれております。したがって、さらに米軍側としては従来から契約内容を部外に公表することはしないたてまえであるというふうにいわれております。そういうことがお話がある以上、私どもは公表はしない、そういうことでございます。
  423. 三浦久

    三浦委員 全くでたらめな答弁なんですよ。わが党の田代文久議員が昭和四十五年の三月に資料要求をしたのです、同じこの協定について。そうしたら、国鉄から返ってきた文書の回答はこういうことなんですよ。「公務鉄道輸送にかかる米軍貨物の輸送契約書については、日米合同委員会において外務省及びアメリカ合衆国の同意を得なければ、提出できません。」と、こういう公式な文書が田代文久議員のところに国鉄から送られてきておるんですよ。これはどういうことなんですか。外務省のほうにお尋ねします。——磯崎さん、あなたに聞いてないんです。
  424. 角谷清

    ○角谷説明員 先ほど来申し上げております……
  425. 三浦久

    三浦委員 いや、まだ質問してないですよ。この協定は、日米合同委員会において外務省とアメリカ合衆国の同意を得なければ提出できないものなのかどうか、これをお尋ねしたいと思います。
  426. 角谷清

    ○角谷説明員 先ほど来申し上げておりますとおり、これは私契約でございまして、その私契約の内容を明らかにするにつきましては相手方の同意が必要でございます。このような米側の同意を得る一つの場として合同委員会を活用するということもあり得ることと考えます。
  427. 三浦久

    三浦委員 この協定、いわゆる私契約である協定を日米合同委員会において必ずかけ、そしてそこで外務省とアメリカ合衆国の同意がなければ絶対に提出できないものなのかどうか、それをお尋ねしているんですよ。問いに対して答えてください。
  428. 角谷清

    ○角谷説明員 これは、たびたび申し上げて恐縮でございますけれども、契約の性質からいたしまして、必ずこの合同委員会にかけなければいかぬというたぐいのものではございません。
  429. 三浦久

    三浦委員 そうすると、日米合同委員会において外務省及びアメリカ合衆国の同意を得なければ提出できないものだということは間違いですね。
  430. 角谷清

    ○角谷説明員 この契約の性質からいたしまして、先方、つまりアメリカ側の同意を得る必要があるということは、まさに御指摘のとおりでございます。
  431. 三浦久

    三浦委員 ちょっと、どなたですかね、あなたは。質問に答えてないじゃないですか、あなたは。
  432. 角谷清

    ○角谷説明員 私の申し上げたいのは、アメリカ側の同意を必要とするということでございます。そこで、その同意を得る方法におきましては、特に合同委員会を経るという必要はないわけでございます。しかしそれを活用してもよろしいわけでございます。
  433. 三浦久

    三浦委員 だから、この協定は、日米合同委員会において外務省及びアメリカ合衆国の同意がなければ提出できないものなのかどうかと。イエスかノーかで答えてください。
  434. 角谷清

    ○角谷説明員 その同意を得るにあたりまして合同委員会というものを経るということにいたしますと、この合同委員会は……
  435. 三浦久

  436. 井原岸高

    井原委員長 答弁中は聞いて質問してください。答弁を聞いてから質問してください。
  437. 角谷清

    ○角谷説明員 形式的には外務省のアメリカ局長というものが日本側の代表ということになっておりまして、形式的には外務省の合意ということになろうかと思います。
  438. 三浦久

    三浦委員 私が聞いたのは、この協定というものは、日米合同委員会において外務省及びアメリカ合衆国の同意を得なければ提出できないものなのかどうかと聞いているんですよ。それを、答弁はこうなんです、合同委員会にかける場合には云々。これは質問に対する答弁になっていないじゃないですか。私が聞いているのは、何べんも言いますけれども、公務鉄道輸送にかかる米軍貨物の輸送契約書については、日米合同委員会において外務省及びアメリカ合衆国の同意を得なければ提出できないものなのかどうか。たとえばアメリカ軍と国鉄との直接的な契約、いわゆる同意ですね。提出することに対する同意、これがあれば提出できるわけでしょう。日米合同委員会において外務省とアメリカ合衆国の同意というものが必要なのか、このことを聞いているのです。
  439. 角谷清

    ○角谷説明員 先ほどもお答えしたと思いますけれども、その合同委員会の合意を得ねばならぬということはございません。
  440. 三浦久

    三浦委員 そうすると運輸大臣磯崎総裁は二度にわたってこの協定の提出について国会議員にうそを言っているということになるのですよ。いいですか。五月八日の委員会では、外務省が出さないほうがいいと言ったから出さないのですと、こう言っている。この田代文久議員に対する文書回答でも、「日米合同委員会において外務省及びアメリカ合衆国の同意を得なければ、提出できません。」こんな必要でもない手続を必要であるかのように言って、ここでもって外務省とアメリカ合衆国の同意がないから提出できないのですと言っているですよ。これは全くうその答弁じゃないですか。これはうその回答じゃないですか。どうなんですか。こういうことについて、運輸大臣、どういうふうにお考えですか。
  441. 秋富公正

    秋富政府委員 最初の日米合同委員会の問題につきましては、それは国鉄のいわゆる公文書で、よく書面を拝見しておりませんが、米軍並びに日米合同委員会、両方の万全を期してそういったお答えをしたのではないかと思います。  それから、この国会におきまして総裁が外務省の……(三浦委員「ちょっと、最初の答弁が、がたがたしていて聞きとれなかったのです。もう一ぺん最初から言ってください」と呼ぶ)田代先生に対しまして、国鉄が米軍並びに日米合同委員会の同意を必要とする、かようでございますか。(三浦委員「もう一ぺん言いましょうか」と呼ぶ)田代文久先生のほうでございましょうね。
  442. 三浦久

    三浦委員 そうです。見せましょうか。   〔三浦委員、書類を示す〕
  443. 秋富公正

    秋富政府委員 外務省及びアメリカ合衆国の同意を得なければ提出できません、こういった意味は、私はいわゆる外務省といたしましてはアメリカの同意を得て提出すべきだ、こういった意向だと思いますし、アメリカ合衆国につきましてはいわゆる契約の相手としての同意を必要とする、かような意味において国鉄が答えたものではないか、かように思っております。
  444. 三浦久

    三浦委員 それはそんな意味にとれますか。これはでたらめですよ。この文書は、外務省の同意がなければ出せないという趣旨でございますとか、そんなふうに受け取れますか。はっきり読みますよ。「日米合同委員会において外務省及びアメリカ合衆国の同意を得なければ、提出できません。」はっきり文書の意向として言われているのですよ。うそじゃないですか、これ。でたらめな答弁を繰り返されたんじゃ私は審議できない。これ以上質問できないと思います。
  445. 磯崎叡

    磯崎説明員 たしか昭和四十五年の文書であったかと存じます、そのいまお手元のものは。従来米軍側は、こういった事柄が起こりました際には、日米合同委員会において解決することを主張しておりますので、私どもといたしましてはその趣を回答した、そういうことでございます。
  446. 三浦久

    三浦委員 そんな趣旨にとれますか、これ。米軍がそう主張しているという意味ですか。——委員長、これはでたらめですよ。間違いなら間違いとはっきりした統一見解を出してきてください。こんなでたらめな、のらりくらりした答弁じゃ、これ以上質問を発展させることはできませんよ。委員長ひとつ統一見解をお願いします。——委員長、統一見解を出さないで審議を進めることはできません。   〔「暫時休憩してください」と呼び、その他発言する者多し〕
  447. 井原岸高

    井原委員長 統一見解を求められておるので、こちらで打ち合わせをしているから、しばらく待ってください。
  448. 三浦久

    三浦委員 もう約束の時間も過ぎておりますので、ここで休憩に入ってもらいたいと思います。休憩に入ってください。
  449. 磯崎叡

    磯崎説明員 昭和四十五年三月の田代先生に対する国鉄からの文書について補足さしていただきます。  協定書の提出につきましては、両者の意見が一致しないような場合におきまして、当時といたしましては米軍はそういった事柄は日米合同委員会において解決することを主張しておりましたので、私どもといたしましてはその背景のもとにさような回答をいたした次第でございます。
  450. 三浦久

    三浦委員 これはこの回答が誤っているということを言われて、そしていまのお話は、米軍がそう主張しているんだ、こういう答弁なら納得できますよ。これを補足する。矛盾するものをどういうふうに補足できるのですか。そんなものが統一見解だなんというのは、とんでもない話だと思うのですよ。これは間違いじゃないですか、明らかに。われわれが協定を出してくださいと言ったら、日米合同委員会において外務省及びアメリカ合衆国の同意を得なければ提出できません、はっきりこう言っておるわけでしょう。これは国鉄の名前入りなんですよ。アメリカ軍の作成した文書じゃないのですよ。アメリカ軍が作成した文書であれば、いまの国鉄総裁答弁で私は了承せざるを得ないでしょう。しかし、国有鉄道の名義でこういう文書が発せられているわけですよ。何です。米軍の見解ですか。国鉄当局の見解じゃないですか。こんな統一見解で私は納得するわけにいきませんよ。だれが聞いたってわかることじゃないですか。   〔発言する者あり〕
  451. 井原岸高

    井原委員長 静かにしてください。  国鉄総裁、同じことだけれども、もう一回……。   〔発言する者あり〕
  452. 井原岸高

    井原委員長 静かにしてください。
  453. 磯崎叡

    磯崎説明員 昭和四十五年三月の国鉄名の田代先生あての回答文について御答弁申し上げます。  協定書の提出につきまして両者の意見が一致しないような場合におきまして、当時といたしましては米軍側はそのような事柄は日米合同委員会において解決することを主張しておりましたので、私どもといたしましてはその背景のもとに御回答いたしました次第でございます。
  454. 三浦久

    三浦委員 そうすると、米軍がそう言っているから、だからこういうふうに回答したんだという。これはおかしいじゃないですか。これだって間違っているのでしょう。  じゃ、国鉄総裁お尋ねしますが、日米合同委員会において外務省及びアメリカ合衆国の同意を得なければ提出できないものなんですか、どうなんですか。
  455. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいま二回にわたって御答弁したとおりでございます。
  456. 三浦久

    三浦委員 当時アメリカ軍がそういうように主張したとしても、これは私契約であり、何も日米合同委員会にかける必要はない、また外務省やアメリカ合衆国の同意が必要でない、そのぐらいの判断は国鉄当局自身ができるはずじゃないですか。そうでしょう。じゃ、アメリカ軍が言ったことはそのままあなたたちは、はいはいと言って聞かなければならないのですか。そんなに屈辱的なんですか。この問題は私契約であって、日米合同委員会の付議事項ではないのだ、このことははっきりしていることでしょう。そして、日米合同委員会でもって外務省やアメリカ合衆国の同意を得なければならないなんということもないのだ、アメリカがそういうことを言ってきたとしても、それは不合理なことなんだ、理由にならないことなんだという判断ぐらい国鉄ができるはずじゃないですか。そういうことをしないで、アメリカの言ったことをそのまま真に受けてこういう回答をした、こんなことは私は詭弁だと思うのです。大体私契約だということは二十八年当時から国会でずっと言われてきていることなんですよ。そして、これは米軍地位協定の第七条に基づく実施細目でもないこともはっきりしているのです。こういう問題を日米合同委員会にかけて、アメリカと外務省の同意がなければ出せない、そういうふうに国鉄が判断したなんということは、全く私は納得ができないのです。国鉄には外務部があるのですよ。そういう答弁じゃ納得できません。私はいまの統一見解に納得できませんので、もっと納得のいく統一見解を出していただくように要求いたしたいと思います。そして、それが出ない限り私はこれ以上質問を続けることはできませんので、休憩に落としてください。私は、統一見解がもう一回出されるまで質問を保留したいと思います。
  457. 井原岸高

    井原委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  458. 井原岸高

    井原委員長 速記を始めて。  本日は、これにて散会いたします。    午後九時二分散会