○松本(忠)
委員 そこで、私いろいろ
考えてみますのに、やはり一番大事な問題はパイロットの問題じゃないかと思うのです。いま見ましたように、機長会の問題あるいはまたいわゆる報告書に対してけちをつけるという言い方は悪いかもしれませんけれ
ども、そういうふうな造反の記事、あるいはこの補完
調査をしたいなどというこういう
考え方、これをまず根本的に直さなくちャいけない。
そこで、私はパイロットの問題をもう少し掘り下げて
考えてみなければいけないのじゃないかと思うのです。現在の日航のパイロットというものが、確かにあのジャンボジェットを導入した
関係上、相当の操縦時間を持っている人たちがそっちのほうへ移ってしまって、そのために三十歳代のパイロットがやるようになった、こういうことを聞いておるわけであります。この三十歳代のパイロット、確かに
航空飛行時間というものが少ないように思います。そういう人たちが緊急事態、異常事態が起きたときに適切な対応措置、これが沈着冷静にとれているかどうか、ここが問題だと思うのです。あのモスクワの事故の副操縦士のボイスレコーダーに残った声、これは明らかに、日ソ合同
委員会の解明によりますと、間違いを発見した後の叱責と謝罪のことば、こうしか受け取れない。基本的なこと、これすら確実にやっていない。先ほ
どもお話がありましたように、
運輸省から行って検査をしていて一緒に乗っていても、やるべきことをやっていないというようなことがあると言われましたけれ
ども、事実こういったふうな数々のパイロットの基本的な訓練ができていない。ここに私は今日日航が大きな事故を引き続いて起こした大きな原因があるんじゃないかと思うのです。パイロットの精神の弛緩、これには数々の実例がございます。モスクワの事故で発見されている例でございます。たとえて言いますと、離陸直後に引き上げるべき車輪を引き上げていなかった、あるいは離陸時に操作してはならないスポイラーレバーを車輪レバーと間違えて操作した、こういう可能性がある。あるいはエンジン圧力比の測定装置の氷結防止装置を入れていなかったために、この測定装置が正常に働かなかった。パイロットが異常があったものと勘違いして、パワーをカットして失速した、こういうことも
考えられるというようなことが、この日ソ事故合同
調査委員会の最終報告には書いてある。それを私は新聞で知ったわけであります。一体乗客の人命を損かっているという自覚が日航のパイロットにあったんだろうか、こういうふうに私は疑問に思うのです。人命尊重という観念がほんとうにあのパイロットにあったんだろうか。パイロットは当然のこととして慎重に、冷静に、かつ綿密にエンジンの操作をし、そしてまた乗るというのが、先ほ
ども大臣が言われました当然のことだと思うのです。自分自身の命もその飛行機に託しているのですからあたりまえのことであると思うのですけれ
ども、実際あのボイスレコーダーに残っておる声というものは、全く私たちは理解に苦しむことばなんです。それを読まれた御遺族の
方々がどのような気持ちでおられたか、これは私はほんとうに
考えてみたいわけであります。
こうした精神の弛緩、この問題を何としても日航が一日も早く
改善しなければ、引き続いてこのような事故が起こるであろう。これは日航ばかりでなく全日空にも東亜国内
航空にも起こる事故かもしれません。いずれにしても事故は起きてはならない。事故はゼロでなければならない。事故の確率が少ないなんて
航空大学校の校長さんが言っておりましたけれ
ども、私は確率とかパーセンテージというのは大きらいなんです。そのパーセンテージにひっかかった。要するに確率が少ないというけれ
ども、そのときにその中に含まれてしまった人は死んでしまう。乗員も死ぬ場合もあるかもしれませんけれ
ども、とにかく命をかけて乗ってもらわなければならぬのに、それにもかかわらず、どうもあの日航のパイロット、あのボイスレコーダーに残っておるところのあの音声から判断しますと、非常に精神的な弛緩があると思うのです。私はこういうものをぜひとも改めてもらわなければいかぬと思うのです。
私は原さんに直接伺った話でございますけれ
ども、これはパイロットばかりの問題じゃないと思うのです。日航の幹部にもこういう精神の弛緩があるんじゃないかと私は思うのです。私はその例を一つ
大臣にも申し上げてみたい。あるいは
大臣も原さんから伺っているかもしれませんけれ
ども、お嬢さんの遺骨を持って羽田に帰着されて、疲れて、そして御自宅に原さんがお帰りになる車の中で、日航のある重要な立場にいる人と対話をした。これはお名前は原さんは申しませんでした。私も聞きませんでした。それはあくまでもあのモスクワの事故につきまして、飛行機が離陸のために滑走しているときに、がたんがたんという音を生存している人から聞いた。原さんはモスクワに行って、生存したわずかの
方々、その人たちにも会って聞いたところが、離陸のときにもうすでにがたんがたんという音がしていた。おかしいなというふうに感じた人もあったというのです。それでそのことを
自動車の中で日航のえらい立場にある人に話したそうです。ところがその日航の人はどう言ったかといいますと、モスクワのシェレメチェボ
空港はいなかの
空港で滑走路が穴だらけだ、そのせいでしょうという
意味のことを言った。原さんはあ然とした。私もあのモスクワのシェレメチェボ
空港におり、また飛び立った経験も持っておりますけれ
ども、国際
空港ですよ。モスクワの代表的
空港だと私は思うのです。それに対して日航のえらい人があまりといえば無神経なことばを吐いているのじゃなかろうかと思うのです。ですから私はパイロットばかり責めるのでなく、日航の
経営陣の中にもこういうことばを、無神経といいますか、全くお話にならない。こういう日航の体質というものを
経営陣の中に私は見るのです。これでは
交通運輸事業に携わる者としては失格だと私は思うのです。念頭から離れてはならないこと、それは事故ゼロということだと思うのです。日航が長い間築き上げてきたあのほんとうに事故のなかった日航、それがここでどうしてあのように事故が連続して起こるようになったんだろうか。松尾社長が朝田さんにかわってからどうしてあんなに違ったんだろうか、こういう疑問を私は持つわけでございます。この日航の重役陣の体質について
大臣はどのように受けとめられるか。この点について承っておきたいわけであります。