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1973-02-23 第71回国会 衆議院 運輸委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二十三日(金曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 井原 岸高君    理事 江藤 隆美君 理事 加藤 六月君    理事 佐藤 孝行君 理事 佐藤 守良君    理事 細田 吉藏君 理事 兒玉 末男君    理事 斉藤 正男君 理事 梅田  勝君       阿部 喜元君   小此木彦三郎君       大竹 太郎君    唐沢俊二郎君       國場 幸昌君    關谷 勝利君       渡海元三郎君    徳安 實藏君       綿貫 民輔君    井岡 大治君       太田 一夫君    金瀬 俊雄君       久保 三郎君    神門至馬夫君       紺野与次郎君    田代 文久君       石田幸四郎君    松本 忠助君       河村  勝君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君  出席政府委員         運輸大臣官房長 薗村 泰彦君         運輸大臣官房審         議官      原田昇左右君         運輸大臣官房観         光部長     中村 大造君         運輸省海運局長 佐原  亨君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君         運輸省船員局長 丸君 幹一君         運輸省港湾局長 岡部  保君         運輸省鉄道監督         局長      秋富 公正君         運輸省自動車局         長       小林 正興君         運輸省航空局長 内村 信行君         運輸省航空局技         術部長     金井  洋君         海上保安庁長官 野村 一彦君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       磯崎  叡君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 二月二十一日  港湾法等の一部を改正する法律案内閣提出第  七三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  陸運海運航空及び日本国有鉄道経営に関  する件等運輸行政基本施策)      ————◇—————
  2. 井原岸高

    井原委員長 これより会議を開きます。  陸運海運航空及び日本国有鉄道経営に関する件等について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。國場幸昌君。
  3. 國場幸昌

    國場委員 本日の委員会において質疑機会をお許しなされた委員長並びに委員皆さま方に感謝の意を表します。  大臣所信表明演説において述べられましたとおり、言うまでもなく、運輸行政国土の全般にわたり均衡ある発展に資するため、総合的交通体系を整備するとともに、国民に便利で快適な交通サービスを提供し、国民生活を充実させ、経済社会発展に寄与することであるということは、私もそれに対しては全面的に賛同するものでございます。  ここでお尋ねいたしますことは、総合交通体系実現のためには総合交通輸送計画策定が絶対に必要条件だとのことでございます。政府においては、将来の見通しの上に立って総合交通輸送計画策定がどのようになされておりますか、お伺いいたします。
  4. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 お答えいたします。  御承知のように、一昨年閣僚協議会におきましても総合交通体系について一応の考え方を各関係閣僚の間で相談をいたしましてきめたのでございますが、私どもは各省と協力いたしまして、その閣僚協議会の線に沿いまして案を練り、その方針に従って実現し得るものから順次実現に移しておるという段階でございまして、一言で申し上げますと、各交通機関それぞれに特殊性がございまして、それらの交通機関に対して果たしてもらう役割りというものを考えまして、できるだけ望ましい分担責任をとってもらって、いまお話しのように、過密地帯過疎地帯はもちろんのこと、全国に強い交通ネットワークを整備して、そうして国民の福祉の実現に役立てようということで進んでおるのでございますが、具体的な問題につきまして、この航空海運陸上交通自動車というようなものにつきまして、もし具体的にいまとらんとしております政策について御入用でございましたならば、政府委員からでも御説明させてもけっこうでございますが、大体の方向はそういうことで、いませっかくその方向に向かって努力をしておるというところでございます。
  5. 國場幸昌

    國場委員 詳しい各分野にわたる策定もなされておるということで喜んでおります。  きょうは時間の制限がございますので、国鉄にちょっと触れたいと思います。  国鉄わが国の総合的な交通体系において中核的な役割りを果たしておる機関でありますことは御承知のとおりでございます。その役割りの重要さは変わることはないと解しますが、しかしながら、近年道路交通及び海上、航空輸送等発展により基調とする輸送構造多様化により経営面において非常な困難を来たしておるということを承っております。この窮迫した国鉄財政再建をはかり、将来の総合交通体系においてその役割りを十分発揮させ、安全で能率的かつ近代的経営体制を確立し、国民の要望するサービス改善と安全の確保を達成せしめるためには抜本的な国の助成策が必要であると思いますが、今回の国鉄財政再建計画において国の助成策はどのようにお考え——資料も得ておりまするが、いま一応大臣のほうからそれに対する見解をお願いいたします。
  6. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 国鉄財政再建につきましてはいずれ具体的に法律案を御審議いただきます際に詳しく申し述べたいと存じますけれども、もとより国鉄日本交通ネットワークの中核をなすものでございまして、いまのような財政状態ではその役割りを十分果たし得ないと考えまして、今度の予算編成にあたりましては特にその点に留意をいたしまして、昨年御審議をお願いいたしました当時と比べまして各方面にわたりまして政府助成、援助というものを非常に強化してまいっておるのでございます。  抽象的に申し上げますると、国鉄の果たすそういう役割りの中で、いろいろございますけれども、一番国鉄にとってこれは大事であるという問題を申し上げますると、申し上げるまでもなく新幹線のように都市の間の交通路、これを確保させるということ、それから大都市の周辺におきまして御承知のように非常に通勤通学輸送状態が混雑をいたしておりますので、国鉄にもその一面を担当させまして、大都市中心とした通勤通学輸送解決に対しまして特に努力をさせること、そういったことが大事でございますし、また各地方地方都市間における交通というものも重要でございまして、日本全国土にわたりまして豊かな発展を遂げさせるためにはこういう都市間の交通というものも非常に大事でございますから、そういったものも国鉄に担当してもらわなければならぬと思いますし、また貨物方面におきましても、中距離、長距離輸送というものは、これは海運もございますけれども国鉄に関しましても相当部分を担当させるのが適当であると思います。そういうことに対しまして、従来国鉄設備投資が結果的に見ますると不足な点があったように考えられます。今度はその点を改善いたしますために、国民の要望しておられます中長距離貨物輸送に対しまして、速度が速いということ、それからいつ一体その貨物が到着するだろうかという定時性を確保すること、そういったところに重点を置きまして設備改善をいたしまして、近代的な、能率的な貨物輸送実現さしたいというようなことが主眼でございます。  その助成の内容を簡単に申し上げますると、今後十カ年間におきまして、いわゆる再建期間におきまして、第一に工事費補助金につきましては一兆五千二百億円の補助をいたします。財政再建債の利子を補給いたしますために、この十年間に五千三百億の政府補助をいたします。これは国鉄に対する政府出資でございますが、この再建期間十年間におきまして、一兆五千七百億の出資をする予定でございます。このほか鉄道建設公団というのがございますが、鉄道建設公団に対しましても出資と合わせまして一兆円の助成をいたしまして、これによって公団国鉄に対する貸し付け量再建期間中には従来よりも二千五百億程度軽減をすることにいたしておりまして、国鉄財政再建に役立てるようにしておるのでございます。これらの助成額を合計いたしますと、昨年提案いたしました案では二兆一千三百億程度になるかと思いますが、今度はこれを合計いたしまして四兆六千二百億程度助成額になるわけでございます。  こういった方策を合わせまして、何とかして国鉄財政再建させまして、財政健全性を回復さして、国鉄の本来果たすべき役割りをこの機会に果たせるような力を国鉄に回復さしたいということを念願をしておる次第でございます。
  7. 國場幸昌

    國場委員 赤字の累積によって、過疎化する地方線廃線問題が二、三年前からずいぶん出ておりますが、それに対して地方としましては、ますます過疎化をあおるようなことで廃線してくれるなという陳情も、最近に至って福井県からも出ております。今日まで地方線に対しての廃線はどこどこが行なわれたものであるか、また計画は今後どういうようなお考えを持っておられるものであるか、その点に対してお聞きいたします。
  8. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 大体の方針について申し上げまして、具体的なことは政府委員からお答えさしたいと思います。  昨年、国鉄の問題につきまして当委員会においていろいろ御審議をいただきました際にも、地方赤字線ローカル線であまり営業成績のよくないものは漸次これを廃止するという方向考えようということに対しまして、非常に各委員方々から強い要望がございまして、また御意見がございまして、そういうことでは国鉄の使命を達成することにならないじゃないかということで御議論があったことを承知しております。  今度の計画では、もちろん他に輸送手段交通手段のあります場合に、地方路線によりましては非常に赤字が多くなりまして、鉄道として利用する価値がだんだんなくなってきておるというようなもの、それに対しましては、他に交通手段があって、地方関係住民方々の合意を得られますようなものもないことはないのでありまして、そういったものにつきましては地方住民方々とよく相談をした上で、今後廃止の方向で検討するということにいたしておりますが、そうでないところは、やはり将来を考えまして、他に交通手段のないものはこれを一方的に廃止するようなことはやめよう、何とかサービスも向上して、営業成績をあげるような方向で検討いたしまして、これには昨年申し上げましたような方針とは違って、今度はそれをできるだけ維持するようにしていこうということで、これはもちろん具体的な路線一つ一つについて検討しなければならないと思いますけれども方向といたしましてはそういう方向で対処したいと考えておる次第でございます。  今日までそういう路線が幾つあったか、どこだったかということにつきましては、政府委員からお答えさせるようにしたいと思います。
  9. 秋富公正

    秋富政府委員 昭和四十四年に現在の再建計画が始まったわけでございますが、それ以後今日まで廃止いたしました線区並びにキロ数について申し上げます。  昭和四十四年度におきましては五線、十七・三キロ廃止いたしました。四十五年度におきましては五線、二十四・四キロ、四十六年度におきましては八線、五十七・七キロ、四十七年度におきましては五線、五十四・五キロでございまして、これを合計いたしますと二十三線、百五十四キロ廃止いたしております。
  10. 國場幸昌

    國場委員 突っ込んでいろいろお聞きしたいのでありますが、時間がございませんのであと一点だけ聞いておきたいと思います。  国鉄稼働率ですね。赤字が出る出るというが、むだな稼働率平均何%くらいにあるのか。国鉄の本線、新幹線地方引き込み線、その二つにしか分けられないと思いますが、この稼働率によって大体運営計画が立てられるのは御承知のとおりでございます。そのものについてもし数字的にありましたら、参考までにお聞かせいただきたいと思います。
  11. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまの御質問にぴったりした御答弁になるかどうかわかりませんが、稼働率と申しますか、私のほうで運営いたしております鉄道全国で約二万キロございます。二万キロをごく大ざっぱに二つに分けますと、いわゆる日本のバックボーンをなすような幹線系線区とそれから地方交通、これは単純なる県内のローカル交通という意味でなしに、もう少し広い意味地方交通でございますが、その地方交通をやっておる線区は約一万キロございます。大ざっぱに分けまして、一万キロと一万キロというふうに分けておりますが、その幹線系の一万キロで約九二%ないし九三%の輸送をいたしております。残りの一万キロでもってわずか八%くらいの輸送をいたしております。したがいまして国鉄の半分でもって約九十数%の輸送をし、残りの半分は七、八%の輸送しかしていないということになるわけでございます。したがいまして幹線系のほうは四十六年度は多少成績が悪くなりましたけれども、四十四年、四十五年は幹線系につきましては大体収支とんとんでございます。ところが地方交通線のほうが相当赤を出しておるということで、四十四年度、四十五年度の国鉄赤字と申しますものはおおむねほとんど大部分がその地方交通線から出ておるものでございます。なぜかと申しますと、幹線系におきましては何と申しましても輸送量が非常に大きい。旅客におきましても貨物におきましても相当単位の大きい輸送をいたしております。大体鉄道と申しますのは御承知のとおり初期投資が非常に大きいものでございますので、やはりある程度輸送単位がございませんと収支計算すれば成り立たないものでございます。幹線系は、たとえば旅客列車ならば大体五、六百人以上のお客さんを一度に運ぶ、貨物ならばやはり五、六百トン以上のものを一度に運ぶ、はなはだしいものは一回に二千トン、三千トンの貨物を運んでおるというような非常に能率のいい輸送幹線系ではできます。しかしながら地方交通線のほうは、人も少ないし、また荷物も少ないということで、たとえば極端な例を申しますと、旅客列車におきましては一個列車平均五十人以下である、あるいは貨物につきましてもせいぜい百トン以内であるということで、いまおっしゃったような鉄道利用効率が非常に悪いわけでございます。したがいまして、全体から申しますと、全体の半分でほとんど全部の赤字を出してしまっておるというような勘定でございます。純粋に経理的な面から申しますれば、そのあとのほうの能率の悪い一万キロをどうするかということが一番問題でございますし、その中には先ほど先生のおっしゃったいわゆる純粋なローカル線もございますれば、もう少し範囲の広い地方交通をやっておる線もございますが、いずれにいたしましても非常に能率が悪い。能率が悪いのは結局人と物がないためである。お客さんも貨物もないために非常に単位の小さい輸送能率の悪い輸送をせざるを得なくなっておるということが原因でございます。もしそれをどうしても国家的に残さなければいけないということになれば、それから出る赤字をどうするかというのが、形はともかくといたしましても、やはり国鉄経営の中で負担することは非常にむずかしい。したがって、いろいろな形でもって国から補助をしていただくということになると思うわけでございます。したがいましてもう一ぺん端的に申しますと、全体の中で約半分はまあまあ近代交通としての能率をあげている。あとの半分は残念ながら能率をあげていない。あげていないのはやはりその地域の旅客なり貨物がないからだということだと思います。しかし、それをやめる、やめないはまた次の問題別の問題でございますが、ただ経営能率から申しますと、ごく大ざっぱに分けて二つに分けて考えておるわけでございます。
  12. 國場幸昌

    國場委員 廃線するのと、それから稼働率が低いにしましてもこれは絶対必要だというような赤字線に対しては、所属するところの地方県にこれを移管する、こういうようなこともいわれておりましたが、県で運営を移管されたのがありますかどうか。
  13. 磯崎叡

    磯崎説明員 実は三年ほど前に、いまおっしゃったように、まあ純粋ローカル交通であって地方でやってやろうというものがもしあれば、いわば共同経営のような形でもってやりたいということで、二、三、実は具体的に線名をあげまして検討いたしましたけれども、いずれも非常に能率の悪いところでございまして、それを地方公共団体が引き受けてもはたして能率がよくなるかどうか自信がないということで、いまは全然計画も中断いたしておりますし、そういういままでやった実績もございません。
  14. 國場幸昌

    國場委員 時間がございませんので急ぎます。  成田空港、これはもう政府も、運輸省のほうでは担当でずいぶん苦労されていることはよくわかっております。ところがこれをいつまでも開港しないわけにはいかないのですが、大体いつごろめどがついて開港ができるでしょうか。言うまでもなく羽田空港渋滞ぶりというのは、国内のみならず他外国からも、これに対しては、早く成田国際空港開港をというような声もずいぶん上がっておるわけでございますが、その見通しはいかがなものでしょうか。
  15. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 成田空港開港がおくれまして御期待に沿い得ませんで非常に申しわけないと思っております。空港公団が直接いろいろその仕事に当たっておるわけでございますが、運輸省といたしましても空港公団を督励し、あるいは運輸省、自分でいろいろの交渉に当たりまして、いまその開港を急ぐように準備を進めておる段階でございます。  一言で申し上げますと、成田空港の問題で一番障害になっておりますのは燃料輸送するパイプラインの問題でございまして、当初計画しておりましたパイプライン路線は地元との交渉が非常に難航いたしておりまして、これはなかなか打開ができません。といって空港関係のいろいろな設備は大体本年度内にターミナルビルその他でき上がる予定になっておるわけでございまして、何とかしてこの空港を早く使用できるようにしたいということで、御承知のことかと存じますけれども、昨年来暫定的な燃料輸送計画を立てておりまして、これはだんだん問題が、いわば煮詰まってきております。ごく近いうちに暫定的な石油輸送の問題が結論が出せる段階になるのではないかと期待をしておるのでございます。しかしこれにつきましてもなお残された二、三の問題がございまして、いま鋭意そのほうの交渉を進め、政府部内におきましても協議をいたしておる際でございます。それがかりにうまく運びますと、そんなに遠くなく開港めどがつけられるかと存じます。私どもといたしましては、いまここで何月から開港できるでしょうということを言うのにはまだちょっと時期が早うございまして、その確信は持てませんが、しかし一日でも早く開港したいという熱意を持っておりますので、いま申し上げましたような準備を進めながら各方面の御了解を得て暫定パイプライン設備を完成いたしました暁に、大体いつごろになるであろうというめどがつきますから、その際には御報告を申し上げることにしたいと思います。いまのところ何月からということを申し上げる段階までまだいっておりませんということは非常に残念でございますが、御了承をいただきたいと思います。
  16. 國場幸昌

    國場委員 要望いたします。やはり成り立ちからむずかしい問題が山積しておりまして、ずいぶん御苦労されておること、その御苦労に対しては察しますが、しかし膨大なる予算のもとでこれだけやってきておるわけでございますので、その設備が一日も早く生きるように、そして諸外国はもちろんのこと、国民期待するりっぱなる空港役割りを果たすべく一日も早く努力されんことを希望いたします。  時間があと半分しか残っておりませんので、沖繩問題にしぼってお聞きしたいと思います。  御承知のとおり沖繩は戦後長期にわたり国の施策から離れていたために本土とは別の経済圏を形成してきました。七二年に復帰したことにより沖繩経済日本経済の一環として組み込まれたわけでありますが、これからは長期的には新全国総合開発計画の一ブロックとして、また沖繩振興開発計画によって、県土開発のため基盤を整備するとともに、産業の振興をはかり、基地経済より脱却して平和経済への移行を早急にはからなければなりません。運輸省所轄港湾海運航空、観光、陸上交通海岸事業等はその中心となる重要なものでございます。大臣をはじめ各位の深い御理解をお願いするわけでございます。  以上の点を前提にしてお伺いいたします。  まず、那覇空港民間移行に対しての問題でございますが、御案内のとおりあと二カ年しますと海洋博が国際的に沖繩の地にありて開催されるわけでございます。いまの那覇空港状況から見ますと、ターミナルもあのようではいけない。また利用度にしましても、軍の利用度民間利用度と大体フィフティー・フィフティーの線だということを承っております。現在にしましてもかようなる状況下にあって、自衛隊もまた混用しておるわけであります。完全民間空港として復帰の目玉商品としてずいぶん期待したわけではございますが、いまのような状況においては期待する民間空港としての役割りを果たすことはできないのは御承知のとおりであります。  そこで、運輸省はまあ執行機関でございますが、日米関係においてこの交渉が成り立たなければこれはできないということもよく存じております。そこで運輸省としまして、防衛庁並びに外務省、そういうような三省においての対米折衝はどうなっておりますものであるか。また防衛庁使用そのものは今後長くこれを——永久といいますと語弊があるかしれませんので、いつごろにそういうような分野にわたっての解決がされるものであるか。このことに対して大臣の御所見を承りたいわけでございます。
  17. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 この那覇空港の問題につきましては、従来いろいろ経緯がございました。これは大体御了承のことと思いますので繰り返しませんが、私どもといたしましては、沖繩返還時におきまして、那覇空港お話しのように完全に返還されることを期待しておったのでございますが、いろいろの事情によりましてP3機の移転実現しなかったというためであろうと思いますが、完全な形で返還されなかったことにつきましてはまことに残念に思っておるのでございます。ただ、御承知のとおりに本年の一月二十三日の日米安保協議委員会におきまして、このP3が嘉手納飛行場移転することが日米間で合意されておるのでございまして、いまはその移転を現実にいつどうして行なうかということでございます。われわれといたしましては、沖繩空港わが国の最南端の民間基幹空港でございますし、また沖繩では海洋博というような催しもあることをよく承知しておりますので、何とかしてそれまでに整備をしたいと念願しておりましたが、海洋博のほうは開催の日がきまっておりまして、いまから手をつけましても完全な姿で沖繩空港を整備するだけの時間がないのでございます。でございますから、沖繩空港に対しましては、とりあえず北側の埋め立て地を利用いたしまして、仮設のターミナルをこしらえまして駐車場その他の設備をそこでしよう。今後沖繩空港が完全に返還されました場合には、中央の東側の部分に本格的なターミナルビルをこしらえて、そこを中心にして整備しようという計画をもっていま進めておるのでございます。  なお、自衛隊との関係について御質問がございましたが、自衛隊との関係わが国におきまして他にも相当たくさんの例がございまして共同使用しておるのでございますが、いまのところ沖繩におきましては、この那覇空港以外に自衛隊が使うような飛行場はないようでございますので、これは両方でもって十分相談をいたしまして、民間航空に支障のないような方法によりまして、当分の間共同使用をする以外にないのじゃないかという見通しを持っておる次第でございます。
  18. 國場幸昌

    國場委員 よくわかりました。  次に那覇空港を第一種空港にすること、これをお願いしたいわけでございます。御案内のとおり東南アジアにおいての今後の——日本においての最南端である那覇空港、これはアメリカに三年前に行政視察で行きました場合にアメリカのほうの指摘しておりましたことは空港においては沖繩那覇空港あるいは嘉手納空港、船舶においては三十万トン、四十万トンにしろ容易に発着できるのは沖繩の東海岸あるいはまたシンガポールだ、こういうことを指摘されました。千二百名乗りの大型ジャンボがもし沖繩のほうに発着するということであれば、飛行場の整備は容易である御案内のとおり、糸満のあの潟原を埋め立てすることによって何キロでも拡張できるわけでございます。そこで千二百名のジャンボ機が発着することができれば、いまハワイからアメリカが運賃が二百五十ドルであるようでございますが、それが沖繩まで千二百名乗りが航行することができれば八十ドルでできますよ、そうすると本土においてはそういう規模を持つ飛行場は簡単ではないので一応大型で沖繩に来まして、それから東南アジアあるいは本土のほうはローカルにおいていまの小型ジェット機に分乗するのが理想的な計画ではないか、こういうことを言われたことがございます。私は、この南の玄関としての沖繩においての使命は、やはり東南アジアにおける経済、文化の交流の基地として、まあ軍基地においてそれだけの重要性を持つのであれば、また経済面においても文化的面においてもそれだけの役割りを果たすことが可能な地理的条件を持っておる、こういうようなことを考えるわけでございますが、大臣、将来において第一種空港として、それで大いに国のために、また期待する沖繩県民のために、ひとつそのほうをお考えになられることはございませんか。御意向を承りたいわけでございます。
  19. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 ただいま御意見の点はよく了承いたしております。今後この那覇空港が最南端の基幹になる空港であるということは了承しておるのでありますが、これを一種空港にするかどうかということにつきましては、今後の推移を見まして十分慎重に検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  20. 國場幸昌

    國場委員 それじゃ、ぜひそれを実現さしていただきたいことを希望します。  次に、二年後における海洋博覧会に対して六百万人の動員をするんだ、こういうような計画になっておるのは御案内のとおりでございます。受け入れ体制というのがいま一番いわれておりますが、運輸省においての、この沖繩において六百万人の輸送計画というのが、もちろんその他の設備もいろいろあるわけでございますが、交通体系、海上輸送港湾整備、飛行場整備、そういうようなことを考えました場合に、あの伊江島の飛行場、あれを使用することによって幾らかその目的に対して役割りが果たせるのじゃないか。もちろん海上においては運天港のしゅんせつ、あるいは渡口港の拡張ということがいろいろ計画もあることはよく承知しておりますが、六百万人というとこれはちょっと膨大な数字でございまして、輸送計画そのものは、二年後に迫ってきておるわけでございますから、いかような御計画をお持ちであるか、それに対しての御所見を賜わりたい。
  21. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 海洋博にどのくらいの人が参加するであろうかということにつきましては、担当省であります通産省とも十分に打ち合わせを遂げております。一応の計画といたしましては、いま六百万人というお話でございますが、それが一日に参るわけではないのでありまして、期間中に逐次参加をされるということになると思います。そこで船の関係で来られる方も相当あると思いますし、また航空機を利用して来られる方も相当多いだろうと思いますが、私どものほうで通産省と打ち合わせをいたしました結果は、現段階におきましては、いまの那覇空港、現在のような形でまいりましても、大体一日百三十便余りの増加をいたしますると、それが十分航空機でも間に合うというような数字が出ておるのであります。でありますから、今後さらに外国の人たち、あるいは内地からの人たちがどういうふうに海洋博に行かれるかというようなことをさらにもっともっと具体的に各関係機関でもって詰めていくでしょうから、それに応じましてさらに確実な輸送計画を立てていかなければならぬと思っておりますが、現在のところは運び切れないというようなものではないように考えておりますので、その点はいまの段階で申し上げますと、どうぞ御安心いただいてけっこうだと思います。  なお、数字について御要求がございますれば、政府委員から御答弁をさせていただきます。
  22. 國場幸昌

    國場委員 国内アンケートによりますと、八百万人から一千万人は希望者がおるというアンケートの答えが出たということも承っておりますが、まあ八百万人、一千万人というのはとうてい受け入れ体制にしてでも、これは不可能だとは思いますが、しかし何としてでも、国際的な行事でありますし、これは沖繩のみならず政府としましても重要なる役割り、責任がある、こう思います。よって、私は万全を期しまして、期待する、りっぱなる海洋博が開催されるように御協力のほどをお願い申し上げます。  それから次でございますが、南西航空、復帰前のアメリカの許可によって沖繩のみに限られたところの航空会社があるのは御案内のとおりでございます。それに就航全日空がローカル線で入りましたとき、一九六一年だと記憶しますが、そのときに鹿児島県議会はもちろんのこと、沖繩の立法院におきましてもあるいはまた各経済界にしましても、沖繩、鹿児島発展のため、また稼働率によっても、鹿児島まで足を伸ばすと、いまの六五%、七〇%という稼働率が補てんされ、運賃も割り安になるという見地からしましても、これは絶対に相互乗り入れが必要であるというようなことで、絶えることなくして今日まで陳情を重ねてきておるわけでございますが、その目鼻をいまだつけることはできないのでございます。そこで、御案内のとおり沖繩の離島は四十六の有人島がございます。そこに転嫁するというわけではございませんが、やはり一般の沖繩ローカル線を強化する意味においても、鹿児島乗り入れによっていまのむだのある三〇%が生きてくるというようなもことでありますと、いまの飛行機そのままでそれだけの収入増になる。そうすると経営面において大きなプラスがくるというような計算になるわけでございますが、その沖繩の南西航空を育成する意味においても、ぜひひとつ乗り入れを認可していただきたいということを希望しておるわけでございます。それに対する御計画または御所見を賜わりたいわけでございます。
  23. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 ただいまの南西航空の鹿児島乗り入れの問題についての御回答を申し上げます。  現在、先生のおっしゃいますように、南西航空のほうから、那覇から奄美を経由いたしまして鹿児島までの区間をYS11型機によって一日一往復運航したいという申請が出ております。そこで、同区間の現状を申し上げますと、全日本空輸がYS11型機をもちまして一日一往復現在やっておりますが、その利用率は四十六年度に五五・二%ほどであります。それからさらに那覇−鹿児島間の直航便をジェット機でやっております。これもやはり一日一往復でございますが、その利用率は四十六年度におきまして六八・五%ということになっております。それからさらに東亜国内航空がございまして、これは鹿児島と奄美だけの間でございますが、これは沖繩まで行っておりません。鹿児島−奄美だけのあれでございますが、これは一日六往復やっております。利用率は四十六年度に八八%、これは相当高いパーセンテージを示しております。  そこで、南西航空の申請につきましては、現在申請中でございますけれども、こういったような需給状況というふうなこと、それから既存業者の運航状況、こういったようなものも十分勘案いたしますと同時に、ただいま先生のおっしゃったような御趣旨も十分尊重いたしまして、さらに運輸審議会その他において検討を続けたいというふうに考えております。
  24. 國場幸昌

    國場委員 御案内のとおり復帰後においての沖繩を往来する観光客はいままでの約四倍にふえております。年間を通じて十八万人といわれたのが、復帰後わずかにして、昨年の統計から見ますと四十八万人という膨大な数字にのぼっております。そうしますと今後ますます沖繩に来る利用度は高くなる、こういうことになりますので、いま御説明を受けましてよく存じております。鹿児島県、沖繩県においては県会でも決議し、鹿児島県の副知事も来島いたしまして、ぜひこれを実現させるべくというような強い要望がございますので、ひとつ今後よろしく御配慮をお願いします。  時間がございませんので、海運関係についてちょっとお伺いいたします。  御案内のとおり、沖繩海運界というのは、二十八年間の断絶によってずいぶん立ちおくれております。復帰対策要綱におきましても、特別なる御配慮を賜わりまして感謝はしておるとはいえども、弱小資本である沖繩海運企業というのが、近代化に備えてまた将来の見通しにおいて、カーフェリーの建造申請が出ておるし、すでに琉球政府時代に一隻は建造したものの、これがいまだに就航することができない。海洋博も迎えておりますので、これに対する就航の許可をひとつ与えていただきたい。これを希望しておるわけでございますが、なかなかこれが進まないというようなことで戸惑っておるわけでございます。一隻は建造、一隻は建造規制に対しての就航の許可を一日も早くというようなことでございます。  もう一点は、復帰経過措置にもありますとおり、沖繩貨物輸送についての貨物船建造近代化計画に対しては、全面的にこれを推進する。政府はそれに対して協力するというような特別措置法もあるわけでございます。これに対しての建造許可も、承りますと約十六万トンのローカル航路に対しての余剰なる船舶が係留されておるということも承っております。ところが、沖繩においての地場企業としまして、海運会社がいま三つございますのは御案内のとおりでございますが、このままに放置しておくと、あとは企業は吸収されるか、もちろん合理化に対して吸収してでもその会社が成り立つようなことであればというようなことでございますが、内容そのものははなはだしく悪化もしておりますし、将来の見通しをきめまして一日も早く建造許可あるいは就航許可、これをお許しいただきたいということでございますが、いかがでございましょうか。担当局長でもようございますので、よろしくお願いします。
  25. 佐原亨

    ○佐原政府委員 お答えいたします。  第一点の沖繩関係のフェリーの問題でございますが、先生おっしゃるとおり琉球海運の船が一ぱい、建造が終了いたしまして、片方の有村産業のほうはまだ建造許可になっておりません。沖繩と本土間のフェリーの申請は、東京航路、大阪航路それから鹿児島航路と三つにわたりまして、申請が競願の形で出ております。特に問題がありますのは大阪航路でございますが、これを一度に許可いたしますと、若干供給過多になるのではないかというような問題点がございます。これはまだ結論が出たわけではございませんが、そういった問題を含めて、東京、鹿児島全部一括案件といたしまして、目下運輸審議会にこれを諮問中でございます。答申が出るまでに若干の日時がかかろうかと思いますが、なるべく御趣旨に沿って善処いたしたい、このように考えております。  それから第二点のほうでありますが、貨物船の近代化、まことに御趣旨ごもっともでございまして、内航海運につきましては、沖繩のみならず、本土一般を含めまして、一昨年以来の不況、船腹過剰という問題が続いております。このために内航総連合の船腹の調整、自主調整でございますけれどもこれを指導いたしまして、需要のございますタンカー、特殊船以外の一般貨物船は、一応原則として建造中止、かたわら係船、解撤というような措置をとってまいったのでございますが、いつまでもそれを放置しておきますと、おっしゃるように船舶の近代化がおくれます。したがいまして、この全面的な建造停止、少なくとも、スクラップ・アンド・ビルドというような手法を交えましてその近代化を進めるべく、目下内航総連合で鋭意検討中でございます。一応三月中をめどにいたしましてその建造要領を固めたい、このような方針で臨んでおりますので、いましばらくごしんぼういただきたいと思います。
  26. 國場幸昌

    國場委員 よくわかりました。  次に、沖繩においてのテレビ放送の問題でございますが、沖繩からも放送を開始するという予算で、ずいぶん感謝の意を申し上げたいと思いますが、しかしながら、いま宮古と八重山、これは晩に「おはようございます」がくるし、朝に「こんばんは」というようなことで、この問題に対しましては、復帰以前においても地域住民の強い熱望があったわけでございますが、予算の都合あるいはまた技術的問題をこれから研究しなければいけないとか、こういうようなことで、いまだ実現しておりません。先島、せめて宮古、八重山、その地域だけは何とかなま放送のテレビ放送ができるように地域住民が今日までお願いしておることでありますが、その点に対しまして、いかような計画をお持ちでありますか、ひとつ承りたいわけでございます。宮古、八重山のなま放送の件でございます。(「テレビは郵政だ」と呼ぶ者あり)——それじゃ、よろしゅうございます。  それじゃ、モノレールの問題を一つ取り上げておきます。  御案内のとおり、近年大都市地域における都市化の急激化によりましていろいろ交通に対しての問題が惹起しております。そこで、モノレールはずいぶん経済的でもあるし、あるいはことに公害問題に対しての解決も容易である。こういうような面から見ました場合には、モノレールの普及は、地下鉄とかその他の車両をふやすとか、こういうようなことよりも最も理想であり、また今後においてもこれはぜひ実現させなければいけない、こういうようなことをよくいわれておりますし、御案内のとおり、次から次に陳情も出まして、議員立法によって基本法はできておりますが、それを実現させるための政令とか受け入れ体制に対しての実施の段階にまだ至らない、こういうようなことでございますが、運輸省としましてこのモノレールの問題に対してはいかような御計画を持ち、いかようなお考えをお持ちでありますか。それに対する御所見を承っておきたいわけでございます。
  27. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 御承知のように、モノレールにつきましては議員立法をもちましてこれを促進しようということに国会においては御決定になっておるわけでございます。私どものほうも、大都市交通考えますと、ただいまお話しのように、これは非常に低公害の交通機関でございますし、それぞれの交通機関にはそれぞれの機能がございまして、それぞれ違った部門でそれぞれの特色を生かして輸送に当たるというのが一番よろしいかと考えます。したがいまして、どこの都市でもモノレールが一番いいのだというわけにはまいりませんが、各都市状況によりまして具体的に検討いたしました上、モノレールがよいという都市におきましては、これを大都市交通機関の一つとして大いにこれに機能を発揮してもらうように運輸省としても大いに援助をするというような前向きの姿勢でもって、ただいま総理府その他関係機関相談をしておる際でございまして、これは議員立法でありますけれども、その趣旨を体しまして積極的な姿勢でもって取り組んでおるということで御了承いただきたいと思います。
  28. 國場幸昌

    國場委員 時間がもうちょっとなんですが、最後に、御承知のとおり那覇へ行かれましたら——政府の方でも行かれた方もあるでしょうが、奇跡の一マイルというこれは車に乗るよりも歩いたほうが速いのだというようなものすごくふくそうした那覇市でございます。海洋博も迎えましてこれはモノレールでなくては、敷地の都合、かようなる問題からしましても、公害問題もあるので、ぜひ実現させていただきたいというようなことで、強い熱望があるわけでございます。何はさておいても、あの那覇で今度海洋博を迎えるというようなことになりますと、那覇市の交通整備が早急に行なわれなければどうにもならないということになるわけでございますが、二カ年あとのことでございますので、何とか最優先していただきまして、あの那覇市におきましての飛行場から首里までということになりますと大体七キロぐらいだと考えられます。試験的にもそこにおいてひとつぜひモノレールの敷設に対して実現させていただきますようお願いを申し上げまして、もしそれに対するお考えがありましたら、お聞かせをしていただいて質問を終わります。
  29. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 那覇市のほうでいろいろ具体的に御計画があるようでございまして、その計画が出ました場合には、いまおっしゃるような具体的な事情を十分参酌いたしまして、積極的に取り組んでいくということで御了承いただきたいと思います。
  30. 國場幸昌

    國場委員 ありがとうございました。
  31. 井原岸高

    井原委員長 久保三郎君。
  32. 久保三郎

    ○久保(三)委員 まず、運輸大臣質問する前に、一昨日でございましたか、新幹線の珍しい事故。この事故に対するその後の調査がどういうふうになっているのか。国鉄総裁お見えでありますから、原因が探求されたかどうか、一言お答えいただきたいと思う。
  33. 磯崎叡

    磯崎説明員 去る二月二十一日の十七時五十三分、東海道新幹線の大阪方の車庫、鳥飼というところでございますが、その車庫から出ました回送電車が本線に入りますところで脱線事故を起こしました。昨日の午前に開通いたしました。  まず、このために多大の輸送の混乱を来たしましたことをまことに遺憾に思い、申しわけなく存じておる次第でございます。  即刻各方面の技術者を現地に派遣いた.しまして、一応昨日の夕方帰京いたさせまして、昨日もほとんど徹宵でいろいろ事故の原因を検討いたしましたが、ただいままで種々な原因を想定しておりますけれども、昨日現地でもって事故の再現試験をやってみましたが、その際にも実は異状を認められませんでした。したがって、現時点におきましてはまだ的確な原因を把握するに至っておりませんが、一応現地から戻りました技術者、電気、機械、土木、各方面の技術者の意見等を総合いたしますと、車上及び地上のATC、いわゆる自動列車制御装置の動作記録その他のいろいろのデータ、ほとんどこれは全部記録に残っております。それから判断いたしますと、事故の原因は、その脱線いたしました地点の非常停止装置に関連して非常にまれな地上の異常現象があったのではないかということが考えられます。ただ、しかしさらに広範囲なまた詳細な調査を行なって、あらゆる面から大事故の原因を徹底的に究明いたしまして、この種事故の絶滅を期する所存でございますが、ただいまの時点ではまだ的確にどういう異常現象が、たとえば迷走電流が流れたとかどういう異常現象であるかということをまだきょうの時点で的確につかんでおらないことを非常に申しわけないと思っておりますが、大体そういう結果でないか。しからばそれに対してどういう対策をとるかということにつきましていろいろ検討中の問題でございます。
  34. 久保三郎

    ○久保(三)委員 原因についてはこれからお調べになる。的確に原因の調査が早急になされることを私は要求するわけでありますが、それと同時に、一つはまだ原因がしっかりつかめないままで従来どおりの運行をやることについて、私はそれでいいのだろうかという反省をしているのです。しかし、たいへんな輸送需要に対しての新幹線でありますから、これを規制することはたいへんむずかしい問題もあろうかと思います。しかし原因が探究されないままに運行するということは、暗やみで運転することと同じだと思うのです。先がわからぬ。そのときはだれがどういう責任を負っても責任を負い切れるものではないと私は思うのです。だからこの際考えていただきたいのは、既設線区のような運転方式を最悪の場合は導入できる新幹線にしてもらったらどうかと思うのであります。言うならば、新幹線は信号機というようなものはないようでありますが、信号機によるところの制御方式、こういうものをひとつあわせて新幹線につけたらどうかということであります。  それから、ただいまの趣旨としては、やはりそれに準ずる運転方式を直ちにとること。そのために輸送力がダウンしても、これは輸送需要の規制で勇気をもってやるというのが正しいのではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  35. 磯崎叡

    磯崎説明員 新幹線につきまして全然別な古い形の保安装置をつくるかどうかという問題が一つございますが、その点につきましては、根本的な構造、線路構造、車両構造等全部違っておりますので、これは現時点においては不可能である。やはりあくまでも電子装置による保安装置という新しいATCスタイル、あるいはこれよりもう一歩進んだ装置というものが絶対必要であるというふうに考えております。  先ほど申しましたとおり、今回の事故につきましての原因及び対策につきましていろいろ検討中でございますが、異常現象、いわゆる迷走電流が流れるというふうなことがはたして今後あるかどうかということについても、いろいろその方面の学者を集め検討中でございますけれども、いまのところATCのシステムによりまして、自動的に進路を制御していくということ自体については誤りはないというふうに思っている次第でございます。したがいまして、いま全然別な、以前のような信号装置をとる、あるいはそれに基づいた保安装置を考えるということは目下考えておりませんが、いまのATCを、開発されて約十年でございますか、さらに保安度の高いものにするということについては絶えず今後とも検討していかなければならないというふうに思っている次第でございます。
  36. 久保三郎

    ○久保(三)委員 私はあなたのおっしゃることわからないわけじゃないですよ。約十年間使ってきた機械でありますから特に私は申し上げるのです。二年や三年ならば、だれもこれはまずいぞということで改良を考えることだと思うのでありますが、足かけ十年も使ったのだからこれは万が一の間違いだろう、こういうふうな考え方が基礎になっていると思うのですね。しかし、安全という問題は、万が一の問題に備えることが安全だと思うのですね。そういう意味で、自動信号装置というか、そういう装置もあわせてできないはずはない。それでこれらの新幹線全部を運用しようということではなくて、そういうものも併設することによって安全を万が一の場合確保するということは必要ではないのかということを私は申し上げているわけであります。それが一つであります。  それからもう一つは、話は前後しますが、いま直ちにやることは、従来どおりの運転方式で輸送することがいいのかどうかという問題、これに対してはどういうふうにお考えでしょうか。私は少なくとも安全を確認できる程度で運転すべきだと思うのです。それはたいへんだと思うのですね。いま十五分ヘッドか何かで走っている、あるいは三十分ヘッドで走っているものを、従来の速度をいわゆる安全を確認しながら運転するということになると、これは十分の一の輸送力になるかもしれないし、その場合の混乱というのがたいへんあると思うのです。しかし私は、人間の命にかえられないから世間もやむを得ず承知してもらいたいと思う。世間が承知しないから、だいじょうぶだろうから運転しよう。大体万が一で原因はわからぬけれども、これだけ調べてもわからぬから、まあそんなにあることじゃないだろうということで運転して、もしも万が一いま直ちにどこかでああいう事故が再び起きたらどうなります。私はこのくらいの心がまえが必要だと思って申し上げているわけなんで、実際になかなかむずかしいかもしれませんが、勇断をもってやることが国鉄の信頼を高める道だと思っているわけです。いかがでしょうか。
  37. 磯崎叡

    磯崎説明員 過般の事故がいわゆるATC全般に起こり得る事故ということではないわけであります。と申しますことは、ATCにつきましては、地上設備におきましても車両設備におきましても、二重系ないし三重系の保安装置でやっているということは御承知のとおりでありまして、先般の場所は先ほど申しましたとおり、車庫から本線に入るところの問題でございまして、とりあえずあの手前で、いわゆるゼロスリーという絶対信号、絶対の停止の電波の出る手前で必ず一たん停止するということを即刻行なっております。したがいまして、ああいう場所は、場所といたしましては鳥飼、品川、三島というふうに局限された場所でございまして、いわゆる側線から本線に上がってくるところでございます。その際には常時必ず一たん停止するというふうなことにしておりますが、それをさらに厳格に、必ずその絶対信号の前で一たんとまるということをとりあえず絶対にやるということにいたしております。  また、本線上においてああいうことが起こり得るかどうかという御疑問だと思います。その点は全然別な問題でございます。何かそこまでああいう可能性があるというふうな御疑問かと思いますが、その点は保安装置の考え方が絶対違っておりまして、さらにゼロツー、ゼロワンというような信号を別につくっておりまして、二重、三重でもって本線上の事故を防ぐということにしております。側線から本線に参るところについてはああいった一重になっていたということについて、とりあえずその前で一たん必ず停止するということにいたしたわけでございます。一応二たん停止することにさしておりますけれども、時間その他の関係であるいは速度が多少、ぴたっととまらないで行ったということがないとも限りませんが、その点はいまいろいろ乗務員について調べております。しかし、必ず一たん停止するということをいたしまして、それをさらに非常信号でとめるという措置でもっていま御心配のようなことは絶対ないということをはっきり申し上げます。
  38. 久保三郎

    ○久保(三)委員 国鉄の最高責任者が心配ないと言うのだから心配ないと見ていいのかもしれませんが、世間はなかなか承知しないと思うのですね。承知しないということと、問題は、私自身も何か不安なんです。  それから、側線から本線に入る場合の事故であって、それと本線上における問題とは別だということでありますが、私もよくわかりません。専門的にわかりませんけれども、やはり本線上においてもそういう分岐があるんですね。たとえばこだまをひかりが追い越していく。停車場構内のまん中の線をひかりが通っていきますね。あるいはその逆があるかもしれませんが、そういうのがある。あれはそういう分岐点における問題だと思うのですね。それとCTC、ATCとの関係だと思うので、そういう意味からいって、もしも一たん停止して確認していくというならば、それはなかなかむずかしいかもしれませんが、いまのひかりがこだまを追い越す場合の構内での通過の場合は、一たん停止なり徐行なりするという心がまえがあってもいいじゃないかと私は思う。いずれにしてもわれわれ門外漢は非常に不安に思っております。原因が探求されないままに運転されるということについてどうかと思っております。  これは運輸大臣にお聞きしましょう。あなたは所信表明において安全についても特段に言及されておりますからお聞きします。
  39. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 私も久保先生お話しのような感触を持っております。ATCの異常な故障によるものだろうということだけではこの問題は解決はしないと思います。国鉄に対しましては、原因の探求が非常にむずかしいかもしれないけれども、これはあくまでも原因を究明してもらいたい、技術陣を総動員して原因の究明に当たってもらいたい、そしてそういう事故が再びどこでも起こらないような対策を講じてもらいたいということを厳重に指示してございまして、実はきょうも閣議でその報告をいたしまして、これは運輸省ももちろん責任がございますから、国鉄に技術陣を総動員して総点検してもらって、原因の探求に全力をあげてもらいたいということを言っておりますから、閣議のほうでもそれを了承してもらいたいということをきょう報告してきたところでございます。  久保先生のおっしゃるような感触を私も持ちまして、私は技術のことはわかりません。わかりませんが、ATCというものは新幹線の生命線と言ってもいいようなものだろうと思います。でありますから、これを異常な状態によって惹起された故障であるということだけでは済まされない問題であるということは深く認識をいたしておりますので、今後ともいま申し上げましたような考え方で、国鉄に対しまして厳重に注意をし指導をしてまいりたいと思っておる次第であります。
  40. 久保三郎

    ○久保(三)委員 時間もありませんから先に参りますが、最後この問題で総裁にもう一ぺんお尋ねしたいのは、いまの安全確認の方式でいけばそんなに心配することはない、ただし、お話しになっておるように、原因はまだ探求されていないからこれを探求していくということでありますか。側線から本線に行く場合に一たん停止をして確認してから行くということだけで、これはそんなに心配はございませんと言い切っていいのかどうか、その点ひとつお答えいただきたいと思います。
  41. 磯崎叡

    磯崎説明員 先ほど申し上げましたとおり、側線から本線に出る際には、乗務員の注意義務と、さらに絶対停止の非常電波と、この二つで押えているわけでございます。また、本線上の場合には、御承知のとおり、閉塞区間かきまっておりまして、その閉塞地区に絶対信号の前の信号が二つございます。したがいまして、本線上におきましては、その二重系のものの一つがかりに、何かミスがありましても、その次の一つで必ずとまるということになっておりますし、ブレーキそのものも二重系になっております。かりに、片方のブレーキが操作しない場合は、もう一つの操作の方法でブレーキがかかるというふうになっております。したがって、今度のように側線から本線に出る際に、その非常制動の手前で一たんとまるということをいたしますれば、当然速度は三十キロ以内ということになります。したがって、かりに非常制動の上でとまりましても、これは容易にとまるというふうに考えられておりまして、いまのところ、私といたしましては、側線から本線に渡る車庫の出入りについて、厳重な一たん停止の規則を守るということをやれば、これは絶対に心配要らないということをはっきり申し上げておきます。
  42. 久保三郎

    ○久保(三)委員 それでは心配要らないということでありますから、そのとおりとっていいと思うのですが、ただ一たん停止しなければならぬ、いわゆる本線上では二重装置になっているというお話がありましたが、側線では二重装置になっていないということですね。その辺のこともやはりこれから考えてもらいたいと思うのですね。しょっちゅう使うものではないから大体簡単でいいだろうというようなことかもしれませんね。しかし、それは今度の事故一つを見ても誤りであるというふうに思っているわけです。  それからもう一つは、分岐点の操作はCTCでおやりになるだろうと思うのです。そうなるとCTCのほうの操作の問題はどうなのかという問題もございますから、後ほど事故等については広範な質問をいたす予定でわれわれのほうではおりますから、そのときに取り上げますが、そういう問題も含めて、やはり原因の探求はなされているとは思いますが、徹底的にこの際、足かけ十年使ったのだから心配はなかった、何だろう、ふしぎだなという感じではなくて、これはどこにあるのだという真摯な気持ちで、事故を一刻も早く探求して世間に対して安心感を与えると同時に、絶対の安全を確保してもらいたいと私は思っております。  そこで、運輸大臣にお尋ねしたいのは、先般の所信表明のごあいさつの中では、大体三つぐらいの点を重点としておあげになっております。それは、総合交通体系により整備をしていくのだというようなこと、それから公害あるいは安全、そういう問題についてやはり考えていきたい、こういうことであります。  そこで、いまの事故の問題にも関係いたしますが、交通用役の提供、総合交通体系というものは、列島改造論に見られるような日本の国内を距離的、時間的に短縮するということだけがねらいではないと思うのですね。それはもちろん速いにこしたことはない、快適にこしたことはないのでありますが、それらがうまく組み合わされて最も良質の輸送用役というものが国民に提供される体系が交通体系である、これに異存はもちろんないのでありますが、ただ、それだけを追求すればいいのかどうかという問題ですね。きのうでありましたかあるいはおとといでありましたか、運輸大臣は、東海道新幹線の騒音に対して国民から陳情があった際に、何か、八十にすれば七十といい、七十にすれば六十というのじゃ、これはと言って、不届きとは言ったかどうかわかりませんが、あなたの御趣旨には沿わないような発言をなさったという新聞記事を拝見して、これは所信表明とはだいぶ違うなという感じがしたのであります。総合交通体系というものの土俵は何かというと、あなたがおあげになった公害と交通事故という土俵の中で、この土俵を越えちゃいけない、土俵の中で最も良質なものを提供するということでやっていくことだとわれわれは考えているのです。そういう観点からするならば、いま運輸行政の中で一番大事にやっていかなければならぬのは何かというと、この土俵をつくることが一番大事だというふうにも考えますね、いかがでしょうか。  それと、いま私が不的確でありますがあげました新幹線の騒音について、私は、ゼロと言ったらたいへん語弊がありますが、騒音とか公害とか事故というのはゼロまで追求しなければならぬ、ゼロを追求する態度だと思うのですね。ところが、ある程度やむを得ぬということが列島改造論にあらわれた思想でありまして、われわれは反対であります。御所見はいかがでしょう。
  43. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 総合交通体系の問題につきましては、久保先生いま御指摘のとおりでありまして、ただ速ければいいというものではないことはもちろんのことでございまして、全土にわたりまして過疎地帯過疎地帯過密地帯過密地帯で、国民全体が豊かでそうして便利なサービスを提供されるような、そういう交通体系をつくらなければならぬということは言うまでもございません。ただ、これには御案内のように一昨年の関係閣僚協議会におきましても、一応の方針といいますか、一応の線はきめたわけでございますけれども、これには運輸省だけではなく、関係各省がやはり同じ方向を向いて協力をしてくれないとできない問題が相当たくさんございますので、いま私ども考えておりますのは、その総合交通体系で示されましたような方向に向かいましてあらゆる施策を練っておる、また実行できるものから逐次実行しておるということでございまして、そういうふうに御理解いただきたいと思います。  それから、東海道新幹線と限りませんが、新幹線の騒音問題でございますが、これは多少事実と違ったようにお考えになっておると思います。先般そういう問題についていろいろ話が出ましたときに、私はこういうことを言ったのであります。騒音というものは、新幹線で、特に各地で非常にやかましくいわれてきた、しかしこれにつきましては御承知のように中央公害対策審議会におきまして、権威のある先生方が集まって、この新幹線の騒音については大体こういう指針でいってもらいたいというので、具体的に指針値を出しておられます。それを受けて環境庁長官から私のところに勧告が参りまして、その勧告を背景にいたしまして、これは権威のある機関がきめたことであるから少なくとも守ってもらいたいということで、直ちに国鉄に対しましてその旨を移牒いたしました。国鉄もその方針新幹線における騒音被害をなくすためにあらゆる努力をするという返事が来ておるのでございまして、その八十ホンといいますのは、これは環境庁長官から参りました勧告の標準でございまして、私たちもそれ以上になったら困ると思いまして、ただいま申し上げたように国鉄に対しましてその点を指示した次第でございます。  しかし、そのときにも申し上げたのですが、各地で七十とか七十以下とかいうような御意見がありますけれども、なかなかこれは困難でございますから、いまのところは一応私たちとしては八十ホンというものを環境庁長官の勧告どおりにとにかくそれを守るような設備をしてもらいたいということで進んでおるのでありまして、そのときにも申し上げたと思うのですが、なお車両自体の改良もございますし、技術の開発ということもございますし、いろいろな点からいいまして、なるべく八十ホン以下に押えるような努力は今後ともいたしますということを申しておるのであります。それがいまお話しのような形でもって報道されまして、これは私の言い方が足りなかったのか、あるいは聞き方が私の言った真意を伝えてないか、いずれかでございまして、いま私はあらためて申しますが、八十ホン以下にはしないのだなんということを申し上げているわけではございませんで、環境庁長官の言いますように八十ホンという、権威のある機関がきめたそれを守ってもらいたいということを国鉄に対して指示しておるわけでございます。それ以下になるならば今後とも継続をして技術開発をやり、機器の改良、設備の改良もいたしまして、それ以下になるべく押えるようにあらゆる努力をしていこうという趣旨で申したわけでございます。その点御了承をいただきたいと思います。
  44. 久保三郎

    ○久保(三)委員 交通と公害あるいは事故については、先ほど申し上げたようにいずれ別な議論をしたいと思うので、先に進ませてもらいます。  次には、変動相場制移行、いわゆるフロートに関係しての問題で二点ほどお伺いしたいのでありますが、一つは海運関係あるいは造船、そういう関係でありますが、時間もあまりありませんから長い話は必要ないかと思うのであります。この変動相場制が、これは二回目でありますが、この打撃というのは運輸省ではどんなふうに見ておられるのか。われわれの聞く範囲では、大体今後一五%切り上げということにでもなれば、海運だけでも八百四十億くらいの損害であろうというような話も聞いております。もちろんこれは計算でありますから、しかも前回の場合は荷主の協調によって解消してきた、あるいは今度は二十九次船、三十次船も海運政策を中間的に修正して、助成も二十八次船並みに持っていこうというようなこともあるようでありますが、絶対的ではないようですね。そこでたとえばそういう施策が行なわれても、中小の会社はなかなか簡単にいかない状況にあるようでありますが、これらのいわゆる中型、小型の船の対策についてはどういうふうに考えられるか。大きい船の場合はもちろん問題はないようでありますが——問題はないというか、あるにはありますが、一応片づく見通しもあるかもしれない。しかし、中小の船の競争力というのはなくなってきますから、これの対策をどうするのかというのが一つあると思います。  それからもう一つは、運賃はドル建てでありましょうから——しかし外国の船主は大体一五%くらいですね。あとは大体日本内部における荷主なんです。だからこの際運賃を円建てに切りかえる指導というか、そういうものをとる必要はないのかどうか、こういう問題に対して運輸大臣はどんなふうに考えているか。  それからあわせて造船の問題です。これは前回も大騒ぎをしまして何がしかの税制上の手当てをいたしておったようであります。それで現在、いままでの債権の残高は一兆二千億といわれています。一割切り上げがあっても御承知のように千二百億ということです。そこで前から造船界ではかようなことがあっては困るので、その場合の対応策として変動相場制へ移行したときのいわゆる損害をカバーするための準備金制度あるいは保険制度というか、そういうものを政府に要請していたそうであります。もちろん政府はもう円切りはなしということで一切受け付けなかったという話でありますが、これはほんとうなのか。ほんとうだとするならば、いかなる対策でこれを切り抜けようとするのか。それから、もしも何らかの対策をしようとするならば、これに伴うところの予算の積算基礎が変わってくると思うのですね。だから予算委員会でも議論したように、この予算案は組みかえ、修正を要する予算であるというふうにも考えるが、どうか。全然それはございませんということならば何の施策もやらぬということに通ずるが、それでいいのかどうか、いかがでしょう。
  45. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 いろいろな問題についての御質問でございますから、包括的にまずお答えを申し上げますと、為替相場の変動によりまして海運、造船とも相当に影響のあることは事実でございます。造船方面は、いまお述べになりましたように、現在大体一兆二千億ぐらいの外貨建ての長期債権を持っておりまして、これに影響が集中するわけでございます。しかし今日、一昨年の問題以来造船業者に対して指導いたしまして、船価は円建てということを原則にいたしております。したがいまして、それ以後の造船契約につきましてはほとんどこの為替相場の変動によりまして影響はないものと考えておりますが、さっき申し上げました、前から続いております一兆二千億の長期債権、これについての影響をどうするかということであろうと思います。  この前の為替の問題が起こりまして円の切り上げがありました際にとりました方策でありますが、これは御承知のことと思いますけれども、税制面と財政面、両方からできるだけの措置をいたしまして、これがまだ十分とは申せないことはもちろんでありますけれども、とにかく造船業界も息をついたというような状況でございます。どういう措置をとったかにつきましては非常に詳しい説明が要りますので、必要であれば政府委員からお答えをさせたいと思います。  それから、これに関連いたしまして、先ほどお述べになりました為替変動の準備金というような制度、これは造船業界も運輸省もそれの実現を希望しておったことは事実でございます。しかし関係各省の協議の結果は、その当時これは実現を見なかったのでございます。しかし、こういった問題を含めまして、今後こういう為替変動に対応いたしまして、外国に対して非常に大きな長期債権を持っておる事業に対してどうするかということは当然考えなければなりませんので、この事態がもう少し進展をし落ちついた場合には何らかの措置を講じてもらう必要があるのじゃないかと考えておるのでございまして、いまの変動準備金のような問題も、これは予算措置といいますよりも、そういう準備金制度をどういうふうな仲立ちでもって実現するかということで考えていかなければならぬと思っております。  海運に関しましては、これは御承知のことと思いますけれども、この前の円の問題が起こりまして以来、極力運賃のドル建てをやめまして、円建てにこれも切りかえております。今日ほとんどすべてといっていいくらい不定期船方面においては円建てになっておることは御承知のとおりでありますが、ただその定期船方面で荷主が外国の人で、しかも同盟があるというような航路におきましてはなかなか円建てになりません。今日でもドル建ての運賃が続いておることは御承知のとおりでございます。それにつきましては影響はございます。この為替の変動によって影響があることは事実でございます。いまそういった問題につきまして外国関係ではどのようにこれに対応するか、どのくらいの影響があるかということについては、船主協会も計算をいたしますし、私どものほうも調べておりますが、これは前と比べますと非常に少なくなっておることは事実でございまして、この点を数字的には政府委員から説明をさせます。  それから、おそらく近海方面のことをおっしゃったと思うのですけれども、中小の船主はどうかということでございますが、これは荷主との話し合いによりまして、先般来極力これは円建ての運賃になっておりますので、この点は外航船のように外国の船会社と一緒になって同盟をつくっておるというようなものと違いまして、このほうは影響はきわめて少ないというふうに御了解をいただきたいと思います。
  46. 久保三郎

    ○久保(三)委員 関係局長からお話を聞く時間がございませんので、あらためてお聞きすることにします。  ただ中小の、近海ですね。これは私はあなたの見方とはちょっと違っているのです。国際競争力は近海のほうはかえってなくなりはしないか。同盟で守られているかといえば、同盟で守られていないわけなんです、今度の場合は、変動相場制に移行した場合は。同盟があるからうまくいくというばかりじゃないと思うのですね。いずれにしてもこれはあとで議論したいと思っております。  それから、外国の問題で関連して先ほどもちょっと申し上げたように、説明がありましたように、今年度の予算要求にあたっては海運政策を諮問しておりましたが、中間答申という形で出たものを土台にして、二十九次船あるいは三十次船は本来ならば助成を減らしていくはずでありました。ところが、今度は減らさぬで前年度並み、二十八次並みになるといいますか、そういうところで助成をやっていこうということであるようですね。それと同時に船腹というか計画造船量は四十八年いわゆる二十九次船が二百万総トン、それから三十次船が三百万トンでありますか、二百五十万トンですね。そういうことに減らしてきた。そうしますと、これは海運政策の再々変更かということですね。再び変更か、いわゆる漸減していこうというのは。大体計画造船を中心にした政府海運政策は、御承知のように国際収支を改善するという大義名分が一つあったわけですね。もう一つは積み取り比率を改善していく。積み取り比率を改善するということは国際収支を改善することにもつながるわけですね。一方これは物資の安定輸送ということです。もはやUNCTADの会議を一つ見ても、先進国の海洋自由あるいは発展途上国の海運の平等というような二つの問題が、言うなら大きな問題になっておるわけなんです。日本はいずれの側につくのかという問題が問われておるわけですね。そういうところにおいてまた海運政策というのが固定してないのですね。計画造船のメリットというのは何がメリットなんだろうかというふうにとれるわけですね。そういうさなかに、しかもコンテナ船にはたいへん優遇した政策をやっておるのだが、コンテナ船は船腹過剰だといっておるのですよ。アメリカとのこの間の——海運局長いらっしゃったようだが、問題の点も一つはコンテナ船の問題のようでありますね。そうなると、何かどうも問題が解決しない前にかって政策をちっょぴり修正してみてやっていく。私はこれではどうかと思うのですね。しかも発展計画というか、新しい経済社会計画というか、そういうもので今度は置き直していこう。これはいわゆる経済発展のパターンを変えていこうということですね。そういうものが固定してその上に立って初めて海運政策というものができるだろうと思うのですね。ところが、そういうものを待たずして、ともかく何となくどうも景気が悪いから助成をもとへ戻そうというだけで、しかも船腹量は、もう船は余ってきたようだから減らそうということですよ。こういうことではたして、予算審議するのにどっちを向いておるのかわからぬような形で予算審議ができるだろうかという疑問が出てくるわけであります。  時間もありませんから、簡単に結論をお尋ねしたいのですが、政府海運政策というのはどっちを向いていらっしゃるのですか、これからどういう方向をとろうとしておるのですか。私ども計画造船を中心にした海運政策というのはもはや過去のものであろうというふうに思っておる。  それからもう一つは、中核六社を中核にしたいわゆる集約体制というものにも問題が出てきた。というのは六中核体がそれぞれ格差ができてまいった。そればかりではなくて、非集約船に、ジャパンラインの例に見るように、これは問題が出てきた。集約必ずしもいい姿ではない。いろいろな問題があるかもしれませんが、六中核体に集約する計画造船を柱とする海運政策というのはもはや修正の時期である。前提はもうくずれてきた。くずれてきたのに昔ながらの計画造船を中心にした船腹増強、そして集約体制を堅持しようとするところに日本海運政策の誤りがあると私は思うのです。諮問をなさっておるが、答申はまだ出てないはずであります。出てきますか。今月末、来月あたりにあわてて答申を求めることはないと私は思うのでありますが、もしあわてて求めて三月に来たらば、いまの予算はちょっと修正されねばならぬ運命にあろうかと思うのですね。いかがでしょう。
  47. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 海運政策の基本に関する問題について非常にありがたい御質問がございました。計画造船のほうは、これは終戦後といってもいいかと思いますが、終戦前からもあったのですが、終戦後一つの方式が編み出されて今日まで続いておることは御承知のとおりでございます。おっしゃるように、日本の船腹をなぜふやすのだということになりますと、ある時期には仰せのように海運の運賃収入をふやして外貨をふやそうというようなことを考えた時期ももちろんあると思いますけれども、今日のこの日本の船腹をふやそうという方向は、これは海運収入をふやして外貨をかせごうというようなことではございませんで、御承知のように現在日本中心として非常に大きな海上荷動きがございます。その中で一体日本船がどのくらい日本の輸出入物資を運んでおるかといいますと、輸出方面でいきまして全体の三四%でございます。輸入で四五%でございます。まだ半分にも足りないわけでございます。こういう状態で、はたしてこれで日本の商船隊が安全だといえるだろうかということについては、私たちは疑問を持っておるのでございます。日本国民生活を安定させ、日本国民経済を安定させる意味からいいましても、いろいろ海運界の変動があります場合でも、少なくとも半分程度の船腹を持っていないと安定した国民生活、安定した国民経済は維持できないのじゃないかというようなことを考えまして、船腹の問題につきましては、そういう意味で最小限度五〇%くらいは運べるような船腹を持つのが適当であろう、こういうことで今日まで計画造船は続いておるものだと私は考えておるのでございます。  同時に、こういった海運に対する直接、間接の助成ないし補助の政策というものは、わが国はむしろ少ないほうでございまして、ほかの主要海運国はいずれも直接補助あるいは間接助成というものを、もっと大幅にやっておることも御承知のとおりでございます。こういったことはいいことではないと思います。もっと自由濶達に競争させたほうがいいとは思いますけれども、自分の国の海運競争力を強めるという意味で、各国ともそういうふうな方針をとっておるのが現実の姿でございまして、そういう場合に、日本海運海運競争力というものを弱めるような方法をとることは、ながなかむずかしいと思います。  しかし、結論的に私の所見を申し上げますると、久保先生のおっしゃったようなことは私もよく理解ができるのでございます。今日のような方法において、計画造船の政策を中核とした海運政策というもので、はたしていいのであろうかということにつきましては、私自身も個人的にはいろいろの意見を持っておるのでございまして、いまそういう問題を含めまして、海運造船合理化審議会のほうに、今後の海運政策のあり方について忌憚のない御意見を聞かしていただきたいということで、諮問をいたしておるところでございます。そういうふうに衆知を集めまして、ことばは悪うございますけれども、ある意味においては曲がりかどに来ておる日本海運政策に一転機を与えて、日本海運外国海運と協調しながら、日本国民生活及び日本国民経済を維持する上に、最小限度必要とするような要件を備えた商船隊がつくれるようにということを目標にいたしまして、さらに検討したいと考えておる次第でございます。この点につきましては、いろいろ該博な知識を持っていらっしゃいます久保先生のことでありますから、どうぞその問題につきましていい御所見をいただけましたらありがたいと思います。
  48. 久保三郎

    ○久保(三)委員 いまのお話だと、結局これから海運政策というものはつくられるわけですね。私が言っているのは、おそくても何でもこれからつくらにゃいかぬと思うのでありますが、ただ今度の予算に見るように、いままでの既定コースの政策を変更して、もとへ戻って予算要求をしてまいっておるわけでありますね。こういうこと自体、何か一貫性がない。諮問しているなら諮問待ちで、従来の方針を御踏襲なさるのがあたりまえではないかというふうに私はとるのです。基本的な問題はもちろんいろいろありますが、そういうものを考えますれば、ことしの海運予算は当然あとで修正しなければならぬというようなことも出てきやしないかというふうに思っているわけであります。  海運の問題はたいへん国際的で複雑でございますから、一がいにとやかくは言いませんけれども日本経済力からいきまして、海外との経済協力というかそういうものを考えますれば、日本自体の積み取り比率を云々する前に、原料供給国であるところの発展途上国の海運をどうするかという問題もあわせて考える時期だと私は思っています。そういうものを考えてこれからやっていったらどうかと思う。いずれにしても、私が言いたいことは、予算審議中に海運政策が固定しないで行ったり来たりしている、おかしいじゃないか。しかもいま、大方針については諮問中である、答申が出ればまた別だというのではおかしいじゃないかということを言いたいのであります。時間がありませんから、先に行きましょう。  もう一つ、フロートによる航空運賃の問題でお尋ねしたい。これも長い説明が要るかと思うのですね、航空局長、にやにやしておりますが。結論からいうと、変動相場制になってIATAは指令してきて、特に日本から出る航空機の運賃は日本円で凍結するということになるのですね。よく調べてみると、それじャ外国ではどうなのかというと、日本に来る場合、これは従来どおり、何の変動もなくてドル建てで、ドルで売ってくれる。しろうとがわかるような話をしますと、たとえばパリへ行くのに、往復を買うと損する。だから、やむを得ず片道買う。出るときは、従来どおりの日本円でなくちゃ売ってくれませんから、日本円の建て値で買っていく。帰りは基本はドル建てでありますから、ドルで買ってくる。片道だけ、大体現行の金の値打ちに相当する運賃で運んでもらえる。行きは、そうではなくて、二月十二日までの運賃で運んでもらうということになるわけですね。これは、IATAの協定がどうあろうとも、利用者にとっては不公正であるという考えを私は持っている。だから、くどい説明は要らない。しかも日本国内でとりた円の運賃の決済は円でやるのかというと、これはドル建てでやるわけですね。そうしますと、極端な言い方でありますが、円で航空運賃をとった会社は、全部不労所得、労せずして所得をもらうことになる。不当な収入ですね。これは公正を欠いている。IATAという協定のかさの中で考えれば合理的かもしれませんが、こういうものをいつまでもやらせておく手はないだろうというふうに思うので、運輸大臣、どうでしょう。これはIATAが最高の権威者ではなさそうでありまして、構成メンバーであるところの日本の声もやっぱり聞かせなければいけませんね。いかがでしょう。
  49. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 御承知のようにIATAの凍結期間は大体一カ月ということでございまして、これは各国が協定をした線に沿ってそういう凍結をしておると聞いております。いまお述べになりました、航空運賃をどういうふうに買ったら得か損かというようなことにつきましては、これは非常にむずかしい計算が必要のようでございまして、私どもにも正確にそれを把握することはなかなか困難でございますから、この点は政府委員から答弁をすることにし、ていただきたいと思います。
  50. 久保三郎

    ○久保(三)委員 時間がたくさんないのですよ。だから、どんなに説明を受けても納得しないのです。簡単に了解できるように説明できる自信があれば、どうぞ御答弁いただきたいと思う。いかがでしょう。
  51. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 どうも非常にむずかしい問題でございますが、簡単に申し上げますと、航空路というものは各国の航空会社が世界全体に網を張ってる。それで、同じ路線をいろいろな航空会社が競合しておる。しかも、その運賃は一本にしなければならぬ、こういうふうな基本的なたてまえがあるわけでございます。そこでIATAにつきましては、この問題についてはすでにずいぶん前から議論されている問題でございます。したがいまして、今般の変動の問題あるいは先般の変動の問題によって始まった問題ではなくしまして、昭和三十三年にIATAの協定をつくりまして、それによって通貨変動があった場合にはこうしようではないかということをきめたわけでございます。それで、その際にいろいろな議論がされましたけれども、それでまた先生のおっしゃるような不合理は確かにあると思います。思いますけれども、暫定的にはその国の通貨でもって一時的にフリーにする。そして、できるだけ早く運賃調整をやって、そうして統一的な運賃をつくるということでございますので、三十日以内——今月の二十八日ごろからかと思いますが——にロンドンのほうで会議を開きまして、それで新しい調整運賃をつくろうということになっております。先生のおっしゃるような不合理は確かにあると思いますが、それがどうしても解決できないというのがいろいろ議論した上の現状でございますので、その辺はあしからず御了承いただきたいと思います。
  52. 久保三郎

    ○久保(三)委員 航空局長はまるでIATAの代表みたいな話をしていますがね。あなたはどっち向きで行政をやってるのです。乗客がいるから飛行機が飛ぶのですよ。飛行機があるから乗るのではなくて、乗客がいるから飛行機が飛ぶのですよ。そうだとすれば、乗る人の立場というものを考えないでそういうふうな議論をして、だめですなんという話はないでしょう。これ一ぺん日本政府として考えるべきだと思う。消費者保護の立場にあるのは観光部長だな。観光部長いらっしゃるかな。観光部長いらっしゃれば、あなたはどう思うか、答弁してください。
  53. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 日本からの旅行者の立場から申し上げますれば、当然円の価値が上がったことについて航空運賃が下がるであろう、そういう期待を持つことは当然でございますので、できるだけ早く航空運賃が改定されるということを希望するのは当然でございまして、私の立場といたしましても、こういう状態が長期間続くということは日本からの旅行者の立場に立ちますと望ましくないというふうに考えるわけでございます。
  54. 久保三郎

    ○久保(三)委員 それは観光部長の答弁が一番正しい。航空局長のはIATAの中にみんな入っちゃった形で答弁していらっしゃる。これはもう間違いでありますから、時間がないので運輸大臣に申し上げておきますが、これはやはりIATAに対してわれわれ日本国民として要求すべき点だと思うのですよ。航空会社が損をするのならある程度目をつぶる場合もあっていいのですが、しかしこれは航空会社が損をするのではなくて得をとるということでしょう。こういう不公正はありませんよ。しかも独禁法除外になってるんですね、IATAの場合は。海運同盟の場合もこれは除外になっているが、海運同盟の場合は盟外船というのがありますから、これは消費者や荷主が保護される立場にあるのですよ。航空会社の場合はIATAに加盟しない会社はないわけですね、チャーター便だけですよ。普通の一般の一人一人の個人のお客というのは、これは防ぎようがないのですね。こういうのを考えれば、こんな不公正な取りきめをやめさせるということはこの際やはり天下に公言していいと思うのですが、どうでしょう、運輸大臣
  55. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 この問題について私も研究をしてみたのですが、非常にむずかしい問題が多いように思います。しかし、久保先生のおっしゃること、私もよく理解はできます。今後そういう御趣旨を体しまして十分検討をさせていただきたいと思ます。
  56. 久保三郎

    ○久保(三)委員 それから、これは時間がないから航空局長に言っておきますが、前回のときもそうでありましたが、二十八日に、今回はニュヨークかどこかでIATAの運賃改定の会議があるそうでありますが、それにからんで、この前は円建ての運賃を上げてきた、運賃値上げをした経緯があります。これは本来なら円建ては下がらなきゃいかぬ。それをもともとの運賃を上げてきた。そういう不公正さえあるわけですね。これは今回は厳重に注意をしておいたほうがいいと思うのですね。  それから、もう一つは、消費者を待遇する面も、航空会社には非常にサービスのいい点もあるのです。というのは、たとえば東京−パリ間は大体エコノミーで日本円にして二十二、三万だそうです。ところが二十二、三万で十二日間ホテル付きの往復があるのです。そういう旅行ですね。そういういわゆるパッケージされた旅行があるわけですよ。これは片道での運賃で十二日間泊まってまた帰ってこられるというのですから、これはたいへんばか安いですね。ばか安いといっても安いにこしたことはないのですが、安い裏には普通の運賃に何かありはしないかという疑いを持ちます。  それからもう一つは、あまり安いというと、これは安全の問題にも関係してまいります。そういう問題を含めて、この運賃の適正化、これは観光部長にも関係ありますが、旅行の問題についても考えてもらわなければならぬ時期だと思うのですね。私が言わんとするところはおわかりでしょうか。——合点しておりますからおわかりでしょうな。それでは答弁は要らないかもしれませんね。注意をしますか。安いのを注意する必要はありません。しかしながら、そういうものの裏には安全を無視した運航がありはしないかという疑問に対して、これをはやっぱり十分チェックすべきだと思うのですが、いかがです。
  57. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 問題が二つあると存じます。まず第一の問題は、通貨の変動があった場合に、これに便乗してかえって運賃が上がるようなことでは困るではないかという御質問が一つ。この問題は、航空運賃は現在ドル建てあるいはポンド建てでございまして、それを円に換算するということでございますから、あるいはドル建ての基本運賃というものは上がるにいたしましても、円払いの運賃は必ずしも上がるとは限らない。むしろこれは若干下がることを私ども期待いたしておりますし、IATAで運賃調整をいたします際にもそういう方向で話をいたしたいというふうに考えております。  それから、その次のセット旅行の運賃と一般運賃と違うではないかという御質問、これは私どもも確かに承知しております。それでよく巷間話を承りますと、個々のお客さま、これは高い運賃を払って行っているのです。しかも同じところでもって団体割引のお客さま方が大勢いて、そうして自分は高い運賃を払って小さくなっている、こんなおかしな話はないではないかという御質問もございました。そういうようなことで、やはり航空運賃というものは個々のフェアと団体割引というふうなものが一体となって全体を構成しておりますが、おっしゃるように、その差があまり大き過ぎるのではないかというふうな問題もございます。  それから、チャーター便の場合につきましては、これは定期便とは若干様子が違うと思うのですが、安いから必ずしも不安全ということはないと思います。私どもは安全については万全の措置を講じておるつもりではありますが、そういったいま先生御指摘の運賃の不ぞろいと申しますか、そういった点につきましてはおっしゃるとおりのこともございますので、さらにその方向で検討いたしたい、こう思っております。
  58. 久保三郎

    ○久保(三)委員 航空に関しては、最後に日中の航空協定の問題でありますが、運輸大臣、現段階においての見通しはどんなふうでありますか、お答えをいただきたい。
  59. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 昨年日中国交が正常化いたしまして、その直後といいますか、少し時間がたってからでございますが、昨年の十一月と記憶しますが、これは両国とも国交正常化に伴いまして早く交通路がほしいと考えるのは当然でございまして、そういうようなお話し合いがあったと聞いております。私のほうからは一応日中の航空路を開設することについて何らか機会をつくらなければいけませんので、一応の考え方をまとめまして、外務省を通じて先方にわれわれの意思を伝えたのでございますが、今日までその返事はございませんでした。数日前の外務省からの知らせによりますと、航空協定についてお互いになるべく近い機会に実務者レベルの相談をしようじゃないかというような返事があったようでございます。その際にどういう内容を持った返事でありますか、実は今日のところまだ公文が着いておりませんので、先方がどういう内容のものを返事としてくれたのか、実はわかりません。外務省にもわかっていないと思います。これはしかし、やがて外務省にはそういう公文が着くだろうと思いますが、とにかく感触といたしましては、中国も日本との間に早く航空路を開設しようじゃないかという考え方を持って、具体的な交渉に入ろうという意思を持っておられるということだけはよくわかるのでございまして、私どものほうはその公文の到着を待ちまして、できるだけ早く交渉を実のあるものにしたいということでいま心づもりをし、準備をしている際でございます。
  60. 久保三郎

    ○久保(三)委員 時間がもうないようでありますから、航空機事故その他については次の機会にお尋ねしたいと思うのでありますが、次は自動車のほうにいきまして、一つだけお尋ねしたいのであります。  タクシーのリース制についてでありますが、タクシーのリース制についてはさきに運輸省は、運政審からバス、タクシーのあり方についての答申を求められておりましたが、この答申に基づいておやりになっているのかしれませんけれども、大体タクシーの都市におけるところの交通機関としての性格は、これは公共輸送機関であるというふうに見ておることは相違はないと思うのでありますが、そうだとするならば、参入脱退の自由というようなもので、自由化の方向をとること自体については問題があると私らは思っているのです。  それからもう一つは、最近の運転者なんかの需給の問題もあろうかと思うのですが、リース制と委託運営というか、そういうものと厳重に区別すべきだろうと私は思うのですね。リースとは単に車を貸す、——営業車を貸す、営業を貸すということじゃないと思うのですね。ところが運輸省の内部ではリース制というのは営業まで貸すということと大体混同しておやりになっているんではないか、考えている向きがあるのではないかと思うのです。これはたいへん危険だと思うのです。営業は委託、ちゃんと道路運送法でありますか、によってきちんときめられたとおりおやりになることが輸送秩序を維持するために必要だと思うのですね。だから単に車両、車といわれるものも貸すか、貸さぬかという問題もあろうかと思うのですが、営業車を貸すというようなことは、これはあっていいはずのものではないと私は思うのですね。だから、リース制はこの際やめろという声が非常に運転者の仲間からも多い、また、弊害も出ていますね。オール歩合制でありますから、言うならば。もともと歩合給とかいうようなものは漁船船員の給与の問題から出てまいったわけであります。水揚げがそのとおりでありますね。それからいま諸経費その他差し引く配分方式というか。そういうものは、言うなれば漁船船員の大仲方式、それと同じなんですね。ところが片や漁船船員の給与体系というものは近代的になりつつあるのですね。船員局長おりますが、オール歩合制からいま固定給に移行しつつある。ところがタクシーの問題は逆になってきている。これは大きな問題だと思うのですね。  ついては、時間もありませんのでこれは自動車局長にお尋ねしたほうがいいかもしれませんが、将来リース制についてどういうふうに考えられておるのか。そういうものをオール歩合制その他によってやっているようなものに対しては、適正な運営をしているとはわれわれは思っておりませんから、免許の取り消しを含むところの処分を的確にやって、輸送秩序を維持することが先決だと思うが、いかがでしょう。
  61. 小林正興

    ○小林(正)政府委員 ただいま御質問の二点についてお答えいたします。  第一のタクシーの自由化の方向が運輸政策審議会から答申をされておりますが、これは公共性を否定しているのではないかという御指摘かと思います。この答申で、いわゆる自由化の方向を示唆しておることは事実でございますが、このことは直ちにタクシーの公共輸送機関であるという特性を全般的に否定しているわけではございません。この答申におきましては、大都市において、いわば総合交通体系の観点から各種の交通機関の特性に応じまして全体としての輸送力を整備、配分するという観点から議論がなされたわけでございまして、その際大量交通機関につきましては、鉄道、バスというものを中心輸送力を整備する。タクシーにつきましては、これらの輸送機関に対するいわば補完的な輸送機関であるという特性に着目いたしまして、公共性については特殊な公共輸送機関である、こういう位置づけをしておるわけでございます。したがって一般的に申し上げますれば、鉄道あるいはバスというものについては、その輸送力について国が積極的に助成等整備をはかるということになるわけでございまして、補完的なタクシーについては、利用者の利便と安全という観点から行政が関与するということにいたしまして、いわゆる免許で需給を調整する、こういうようなことはいかがかという考え方に立っておるようでございます。  以上、申し上げましたような考え方に立っておるわけでございますから、運輸省といたしましては、今後大量輸送機関である鉄道、バスというものの増強整備というものを第一義的に行ないまして、それとの関連において、将来のタクシーにつきましてはいわば自由化といいますか、そういった方向考えていく。それは行政が何も関与しないという意味の自由化ではございませんで、先ほど来申し上げましたような安全と利用者の利便というようなものについては一定の条件を課していく、こういう考え方で今後検討していきたい、こう思っておるわけでございます。  それからなおこのタクシーの自由化の方向について、一般にいろいろな疑義が出されておりますが、冒頭に申し上げましたように、大都市輸送のあり方という点からの議論でございまして、全国あらゆる地域においてハイヤー、タクシーを自由化するという考えでは毛頭ないわけでございまして、この点については補足さしていただきます。  それから第二点のタクシー事業の経営の内部におきまして、いわゆるリース制ということばの運営がかなり最近広まってきておるという御指摘でございますが、このリース制という範囲の中には、経営者と雇用労働者との間でいわゆる利益配分方式という名において賃金を決定している場合、それから名義貸しという場合、それから無免許営業というような場合に該当するという場合もいろいろあるわけでございまして、これは個々の実態に応じて、適法かあるいは道路運送法違反であるかということを判断すべき問題でございます。  先ほど先生御指摘の車両の貸し渡しではなくて、その事業そのもの、そういったものが貸し渡されている、借り受けたほうの責任において収入、支出という経理がなされているというようないわゆる名義貸し、あるいは場合によると無免許営業というようなものについては、これは当然法律違反でございますから、御指摘のように相当の処分、厳重な免許取り消し等の処分が考えられるわけでございます。  ただ、現在よくいわれておりますリース制の中に、雇用契約を前提として運転者が特定の車両に乗りまして、そしてその水揚げに応じて給与を決定するというような、利益配分方式と申しますか、そういうような場合には道路運送法上の問題はない、こういう見解でございます。
  62. 久保三郎

    ○久保(三)委員 いまの最後の道路運送法上問題がないとというのが問題なんです。利益配分方式というのは、これはまさに歩合給、水揚げ方式、大仲方式というので、これはもうやるべきでない。  時間が来ましたし、あと会議がありますから、あとにします。
  63. 井原岸高

    井原委員長 本会議終了後に再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時五十二分休憩      ————◇—————    午後二時五十九分開議
  64. 井原岸高

    井原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。久保三郎君。
  65. 久保三郎

    ○久保(三)委員 休憩前に引き続いて、自動車のリース制を中心にしてお尋ねいたします。  先ほど自動車局長の御答弁では、いわゆる所得配分方式といわれる方式ならばこれは違反でない、こういうような御答弁があったのでありますが、これは言うならば、先ほど私が例にあげました漁船船員の昔の古い大仲歩合制度でありまして、労働基準法からいってもこれは否定されなければなりません。労働基準法によって否定されるような雇用形態、賃金形態を持っているものが、それがどうして自動車運送法上は合法的なのか、この点をあわせてひとつ、もう少し詳しく説明してほしい。
  66. 小林正興

    ○小林(正)政府委員 先ほど非常にはしょりまして失礼いたしましたが、雇用労働者を前提として、それの賃金の支払い形態として使われております場合に、利益配分方式ということで人件費——賃金でございますが、それに償却費とかあるいは燃料費とかいうような諸経費を加味いたしまして、そして全体の収入からそういったものを個々の運転手の負担で払うということで、単なる給料だけでなくて、その利益の分配も含めた一つの賃金支払い形態をとっておる場合があるわけでございます。こういった問題について労働基準法のほうで——そういった賃金の支払い形態が労働基準法上いいかどうかということについては労働省関係で判断すべき問題でございまして、その労働基準法上許される賃金形態である場合には、そういう場合のリースといわれている場合には道路運送法上の問題ではないということでございまして、先ほど問題がないと申しましたのは、まず第一義的に労働基準法上それが適法かどうかを判断すべき問題だ、こういう意味で、若干道路運送法との関係について舌足らずでございました。
  67. 久保三郎

    ○久保(三)委員 あなたは、いま御説明になった支払い方式というか、そういう営業形態というか、そういうものが労働基準法は別とすれば、それに関係はないとは言わないようでありますが、それを除いて見れば道路運送法上だけは合法的である、こういうような意味でおっしゃっているのですか。それとも労働基準法二十七条にそういう形態は抵触しないとでもおっしゃっているのですか。どっちなんですか。
  68. 小林正興

    ○小林(正)政府委員 リース制といわれる中に利益配分方式という賃金支払い形態があるわけでございますが、これが道路運送法上問題かどうかという点については、労働基準監督行政上の問題でございまして、そういった関係から違法かどうかということを判断するわけでございまして、往々にしてリース制といわれる問題が、先生も御指摘がありました貸し渡しをしているとかあるいは無免許営業になるとか、こういうような場合には——道路運送法上禁止いたしておりますのは名義貸し、それから無免許営業、こういうような場合に抵触いたす場合には当然道路運送法上の問題でございますから処分の対象になるわけでございます。それが賃金支払い形態として妥当かどうか、歩合給の問題として適当かどうかというような問題については労働基準法の関連で第一義的には判断していただく、こういうことになっておるわけでございます。
  69. 久保三郎

    ○久保(三)委員 わかりました。あなたのおっしゃることを了解したわけじゃなくて、言っていることがわかった、こういう意味でございますから誤解のないようにお願いしたいのでありますが、労働基準法に抵触するような雇用形態、賃金支払い形態にあるものが、少なくとも免許を前提にする道路運送法に全然抵触しないというのも変でありまして、単にこちらはお客と運転手、運転手と雇用主という関係でございまして賃金支払いの関係はその中にも入りませんというのも変だと思うのです。  それからもう一つは、賃金支払いはなるほど労働省の所管でありますから、いかなる賃金の支払い方法をやっているか、それは労働省である、運輸省はタッチしませんというのか知りませんが、賃金支払いは少なくともその営業の中の一部ですね。一部でありますから、これに関心と注意を払わないでそういう制度を運営することは私は誤りであろうというふうに思うのであります。だからあなたがそういうことをおっしゃるのは、少なくとも自動車運送行政の権威ある地位におられるあなたが、そういう立場からいまのような解釈をなさるというと、それじゃもう出来高払い、二十七条に抵触したかっこうでも、これは労働省のほうの管轄であって、てまえどもの道路運送法の関係ではございませんというふうになるわけでありますが、その辺のところはどうなんです。その辺のところも自分のところの所管ではないけれども、これはやはりまずいとかいいとかおっしゃるだろうと思ったのだが、その辺は違いますということで切っているのでありますが、それでいいのだろうかどうだろうか。いかがでしょう。
  70. 小林正興

    ○小林(正)政府委員 事業の主務官庁としての運輸省といたしましては、どういった形態で事業が運営されているかということについては、そういった面からの責任はもちろんございます。したがいまして、現在第一義的には労働基準官署の監督によりまして、これが労働基準法あるいは労働省のいわゆる二・九通達というようなものに抵触するかどうかということについて基準監督署が定期的あるいは随時監査等をやっております。その結果につきまして、これを陸運行政に反映させるために通報制度というものを両省間でとっておりまして、ただいま先生の御指摘のような極端な出来高払い、オール歩合給というような場合、これが労働基準監督にひっかかりまして問題があるというような場合には当然陸運局のほうに通報があるわけでございます。陸運局、運輸省側といたしましては、その通報に基づきまして特別監査をいたしておるわけでございます。その際の監査の重点の事項といたしましては、賃金支払い形態そのものでなくて、やはりそういった労働基準官署で指摘されるような事業者については、安全の面あるいは労働の前提となる極端な労働条件について監査をいたす。具体的には勤務時間の問題あるいは仮眠施設の問題等について立ち入り検査等も実施しておるわけでございます。このように両省間で連絡を密にいたしまして監督をいたしておるわけでございます。
  71. 久保三郎

    ○久保(三)委員 監督するのは当然だと思うのですが、いまの話は、時間もありませんからあとにします。  そこで、いまの雇用形態というよりこれはタクシーの営業形態だと思うのです。ある場合においてはそういう所得配分方式という名前のもとにはあるけれども、車を運転手に貸します。そしてその水揚げに対して、いわゆる漁業でいう大仲に相当するガソリン代あるいは償却費あるいは税金、そういうものを引いて、そのあとは四分六で分割しましょうというような契約のもとに車が貸し渡しされている。このリースは合法的であるかどうかお答えいただきたい。
  72. 小林正興

    ○小林(正)政府委員 事業者と被雇用者との間で賃金形態として許される範囲内の契約というような場合には、その賃金形態として妥当かどうかということについて労働省関係で判断いたすわけでございまして、私どものほうの判断の基礎といたしましては、当該事業を遂行する権利といいますか、そういう事業遂行上の経営の問題を包括して運転者にまかしてしまっているというような場合には、これは名義貸しの疑いが非常に濃いというふうに思われるわけでございます。したがいまして、個々にその契約内容あるいは実態というものを見まして適法かどうかを判断いたすべきものと思います。
  73. 久保三郎

    ○久保(三)委員 いまのお話はちょっと私の申し上げたことに答えておらないようなんでありますが、あなたがおっしゃるところのいわゆる所得配分方式というのは、それじゃどういう形態なんですか、営業の形態は。運転者と事業主との間の関係はどうなるんです。所得配分方式というのはどんなものが道路運送法上合法的なんですか、逆にお尋ねします。
  74. 小林正興

    ○小林(正)政府委員 いろいろな形態で実際には行なわれておりますので、私が、どういう形態のものが合法的かどうかということについては、こういう形態というものを考え出すわけにはまいりません。それぞれの企業が賃金支払い形態を出しておるわけでございまして、その賃金支払い形態が労働基準法違反になるかどうかという判断をすべきものでございまして、通称利益配分方式と一般にいわれておりますものについて見ますと、それは労働基準法違反でないという労働省側の現在の見解がある、こういうことでございます。
  75. 久保三郎

    ○久保(三)委員 私がお尋ねしているのは、あなたがお考えの合法的だという所得配分方式はどんな方式でしょうかというのをお尋ねしているわけなんです。しかし、時間がありませんから次回に譲っていただきたいと思うのでありますが、私は結論的に申し上げますが、車を運転者に貸します、そして貸す条件として、あなたがおっしゃるいわゆる所得配分方式というものがあれば、どんな内容であっても、これははっきり言って道路運送法違反であります。それからもう一つは、さっきから例をあげて申し上げるように、大仲、オール歩合方式というのは当然労働基準法違反でありますから、法律に違反した雇用形態を持って、それで道路運送法は関係ありません、合法的でありますというのは、これは詭弁であるというふうに実は思います。  それからもう一つ、そういう法律論の、いわゆる重箱のすみを突っついたような法律論をこね回す前に、はたしてそういうオール歩合制というものが乗客のためにとっても運転者のためにとっても、タクシー事業をさらに発展させ公共輸送に位置づけるためにも、こういう形はとるべきではないというふうにわれわれは思っているのであります。  最後にお答えいただきたいのは、いかなる形でもリース方式というか、少なくともオール歩合方式のような形は、どう形を変えてもリースでありますから、そういうものをやらせていりたのでは、冒頭御答弁があったようにタクシーが公共輸送の地位を占めていくことは私は不可能だろうと思うのですよ。そういうふうに考えて私はさっきからお尋ねしているわけなんです。最終的にはどうなんでしょう、あなたがおっしゃるように公共輸送として位置づけるならば、どういう法律にも抵触しない、そして刺激給的なものでなくて固定給中心の雇用契約が土台にすわらなければ、いまの乗車拒否その他はなくならぬと私は思うのです、そういう事の本質を考えてあなたはいままで御答弁なさっているのかどうか、最後に一言お伺いして、時間でありますからやめますが、うまくなければこの次またやりますから……。
  76. 小林正興

    ○小林(正)政府委員 一言お答えいたします。  オール歩合というものは、これは先生御指摘のとおり明らかに労働省の出しておる二・九通達に違反しております。そういうような場合には、労働基準法で相当きびしい処罰もあるとともに、運輸省のほうに先ほど申し上げましたように通報がございます。これは対しては私どものほうは道路運送法に照らして監査もし、処分もいたすことは当然でございます。これが望ましくないということはもう当然でございます。ただ一般的に、リース、利益配分方式といわれておるものについては、全部が道路運送法上違反であるということは申せないということでございまして、こういった点については監督行政上厳重な監督をしていきたいと思っております。
  77. 久保三郎

    ○久保(三)委員 終わりますが、局長、道路運送法上違反ではありませんということは詭弁であるということなんですよ。結局違反なんでしょう。どこか違反だからやっていけなくなるんじゃないですか。労働基準法違反ならやっていけなくなるんじゃないですか。だからそういう方法はとるべきでないというふうに私のほうは考えている。自由化というのはそういう形態じゃないと思うのですね。自由化とか、脱退参入の自由なんというものは、やるにしてもそういうものじゃないと思うのですね。だから、あらためて申し上げますが、リース制度はいかなる方式によってもこれはやらせるべきではない。いまかなりやっているようでございますから、厳重に取り締まることを要望して、質問を終わります。ありがとうございました。
  78. 井原岸高

  79. 紺野与次郎

    ○紺野委員 最初に私は、運輸大臣に対して総括的な問題でちょっとお聞きしたいと思うのです。  それは田中首相が二月二十日に円の切り上げ問題という非常に大きな問題に追い込まれて、言明した非常に重要なことがあります。それは、とにかくその責任を痛感するということと、日本経済社会構造を福祉中心型の構造へと転換するために努力するということを言明しているわけでありますけれども、これについて、運輸大臣はやはりこれを認めているのかどうか、このことを最初にお聞きしたいと思います。
  80. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 田中総理の申しましたことは、私もそのとおりの方針で臨みたいと考えております。
  81. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そういう大前提のもとに政府の運輸政策、大まかな、大綱としての運輸政策、これは運輸大臣がこの前の所信で説明されたものでありますけれども、あの説明をよく聞きますと、この運輸政策がやはり新幹線万能というような考えなんですね。そしてこの新幹線を七千キロもつくるしか、あるいは在来線を貨物線、しかも中長距離貨物専用の、あるいは大体それを中心にしたところの動脈列車にしていくというふうなことを根幹にしたものを言われているわけでありますけれども、これは結局田中首相が言っておったところの高度成長政策、列島改造論というものの不可分の一部としてこれが計画されていることは明らかであります。そういう点で、つまりいまやそのことが問題になっている。そのことが転換を必要としているということでありますから、この運輸政策そのものを福祉転換という新しい立場から見て、これを変えなければいけないのではないか。根本的にこれは再検討をいまや迫られているものではないかどうかということをお聞きしたいと思います。
  82. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 私も自分の所見を先般申し上げました際に、これは非常にことば足らずであったかもしれませんが、考え方の一端をお聞き願ったと思うのでございますが、私はいま仰せになったような方針のもとに、私もこの運輸行政に取り組んでまいりたいということを申し上げたつもりでございまして、運輸行政は要するに陸海空を通じまして国民の足を預かっておる、そういうことのほかに、やはり日本国土全般にわたりまして均衡のとれた発展をさせようというところに一つのねらいがあるわけでございます。その発展というものは、直ちにこれは国民の福祉につながるようなものでなければならないと思っておるのでございまして、そういう点におきましては、これは国鉄新幹線に重点を置いているとか、あるいはこの都市間の交通の問題に非常に重点を置いているというようにお聞きになったかもしれませんか、全体をごらん願いますとやはり私はそういうことを考えまして国土発展に資するように、そしてその結果は国民全体に対しまして、便利で快適な交通サービスが提供できるような交通政策でないといけないということを申し述べたつもりでございます。そういう点から申しますと、今度のいろいろの交通関係施策にもあらわれておりますように、第一にわれわれが注目したいと思いますことは、この交通の上での安全と公害の防止ということでないかということも申し上げたのでありました。この点は従来でもそうであったと思います。そうであったと思いますけれども、私は特にその点を強調いたしまして、過密地帯は過地密帯、過疎地帯過疎地帯でそれぞれ特色のある交通政策を実施していかなければなりませんが、その場合にもいつも第一に主眼点をどこに置いていくかというと、交通の安全の確保と交通公害の防止である、こういうことを申し上げたつもりでございます。この点は紺野先生の御質問に答えられる一つの問題ではないかと考えます。  そしてそういうことを前提にいたしまして、国土全体にわたりまして豊かな地域社会の建設を推進いたしますために、その手段、方法といたしまして、いまのお話しのような新幹線の建設でありますとか在来線の複線電化でありますとか、あるいは空港あるいは港湾の整備をいたしますとか、そういうものを骨格として幹線の交通ネットワークをつくっていく。そして大都市大都市でいま通勤通学なんかが非常に混雑しておりますので、そういうものを骨格として大都市大都市通勤通学にふさわしい、混雑を緩和するようなあらゆる施策を講じてまいりますということも申し上げております。また過疎地のほうは過疎地のほうで足がなくなって非常に困る。交通の手段がないというような地域もございますから、そういう場所に対しましてはそれにふさわしいような、あるいは離島の航路でありますとか、あるいは航空路でありますとか、あるいは過疎地に対するバス輸送でありますとか、そういったものに対しましてもできるだけの配慮をしていきたいということを申し上げたつもりでございます。  全体を通じますと、政策上どの点を強調しているかといいますと、やはり交通の安全、それから公害の防止ということを骨格といたしまして、そして国土全体といいましても決して産業の成長ばかりを考えているわけではございませんので、その国土の中に住んでおられる国民方々の全体の福祉というものをいつも頭に置いて、そういう交通政策を実施していきたいということを申し上げたつもりでございます。
  83. 紺野与次郎

    ○紺野委員 とすれば、実は安全の問題については新幹線問題等々についてあとでお聞きいたしますけれども、その地域社会のそれぞれの幸福を願うという点がはっきりした方針に入っているとすれば、具体的にお聞きしたいのですけれども、つまり福祉、国民の立場に立っていえば、たとえばここにこれだけ私のところに手紙が来ているのです。これは加古川線とそれから福知山線です。そこの下滝駅と久下村という駅ですね。この村の人たちが四百名くらいでしょう。これをどんどんよこしまして、そうして無人化駅あるいは手荷物、小荷物を扱わないというふうにされるのに対して——三月一日にそうするというふうに言われているのだけれども、これはたいへんだ、自分たちのところは花を栽培したりというようなことを言っているし、いろいろの点でやはりそういうことが三月一日には貨物及び手荷物、小荷物が廃止される、無人化駅にされてしまうということに対して村をあげて反対しているわけですね。ですからこういうことが現実に行なわれるということは、先ほどのわれわれの立場からいえば、やはり大企業中心の運輸政策というものをこの際転換して、これらの福知山線とか加古川線における住民の願いをかなえるべきではないか。あらためてそういうことを率直に意見を聞いて、そして住民の要求にこたえるようにすべきではないかというふうに思いますけれども、これをお聞きしたいと思います。  それからもう一つ、それは東京の通勤列車の問題ですけれども改善計画を立てたパーセントに対して四十六年度の改善後の実態というものを見ますと、これがたいへんよくなったということを磯崎総裁もどこかで言っているのを私見ましたけれども、実際はどうかといいますと、中央快速は改善計画が二七〇%に対して二五四、それから中央線の緩行で、総武が二三九%に対して二五四%、かえってひどくなっている。それから京浜東北一九二の計画に対して現状は二四八%、山手線は外回りが一九一%の計画に対して二三〇%、南武線、これは二五七に対して二〇〇%ですけれども、横須賀線は計画が二〇〇%に対して二九.八%、東海道、東京付近が二〇七%に対して二七七%、東海道、大阪付近は一九八%に対して二二五%、大阪環状線は二四一%に対して二四七%というようにこの通勤の混雑状態が二倍から三倍の間で依然としてやはり解決されておらない。こういうことをこそ大至急に、最大優先的に解決するためにやはり運輸政策をとるべきであると思いますけれども、どうですか。
  84. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 例をあげてお話がございましたので、私もそれに対して具体的にお答えするのが本来でございましょうが、場所につきまして一々具体的にはよくわかりませんので、一応抽象的に答えさせていただきたいと思いますが、いまの初めにお話しの加古川線でございますか、こういう問題につきましては国鉄のほうであとで具体的にお答えすると思いますが、やはりさっき申し上げましたように、その路線あるいは駅の交通に対する需要というものをよく具体的に測定いたしました上で、国鉄のほうではこれを無人化するかどうかというようなことについての案を立てていると思います。私もこの点については国鉄の総裁とも話しておることでありますけれども国鉄のほうでも、住民が非常な反対をしている、それにも理由があるというような場合には、住民の意見をよく聞いた上で最終的な処理をするという方針であるということを聞いておるのでありまして、ただ一方的に省力化するということだけで処理をしているのではないと聞いておるのであります。運輸省といたしましても、現在はあるいはそうかもしれませんが、今後近い将来におきまして何か町のほうでも計画がある、あるいはこれが観光地としてこういうふうな将来計画を持っているというようなものに対しましては、そういったものをよく土地の人たちからも聞いた上で、地方自治体とも十分連絡をして、その上で処理をするのがよかろう、こういうふうに考えておるのでございます。  それからあとのほうでお話しになりました大都市通勤通学の混雑の問題でございますが、現在のところはおっしゃったような混雑率が出ていると思います。これはたいへん申しわけないと思っておるのでありますが、そういう問題がございますので、東京は東京、大阪は大阪、名古屋は名古屋というふうに、各土地土地の具体的な事情がございますから、それに対応したような対策を最大限にとっていこうじゃないかということで、たとえば東京のごとき、これは道路ももっと広めろといってもなかなか交通が広がりません、ほかの機関ももっと入れろといってもなかなかはいれません。やはり今後も都内におきましてはもっと地下鉄のようなものをたくさん入れて、そうして大都市交通の根幹にするような方向考えなければいくまいということも考えますし、国鉄のこと、それから公営事業、あるいは民営の事業、それらを総合いたしまして、それぞれに対しまして実は四十八年度予算にも若干予算を組んでございますが、そういったものに対しまして、いままでよりも以上に厚い財政的な援助を与えまして、何とかして近いうちにお話しのようなこういう混雑率を緩和しようという努力をしておるところでございまして、現状はお話しのようだと思いますが、しかしこれを緩和するためにいろいろな方策を考えておる。これは予算の内容をごらんくださいますとある程度御了察いただけるかと思うのでございますが、そういう方向努力をいたしております。
  85. 紺野与次郎

    ○紺野委員 こういう立場からすれば、当然これからいろいろ経済的にも困難な情勢が出てきてたいへんなときでありますから、やはり運賃を値上げするということはやるべきでないというふうにわれわれ考えます。  これについてはあと財政再建のところでもう一ぺん触れたいと思います。  次の問題に入りまして、安全性の問題ですが、これはやはり一番大きなショッキングな問題としては二月二十一日の新大阪駅付近における新幹線の脱線問題ですね。これについてお聞きしたいことは、つまりATC、CTCですか、これらの自動化装置に対する非常な過信があったんじゃないか。盲信というか過信というか絶対視、そういうものがあった。そしてそれが破綻をしたのではないかというふうに思います。午前中磯崎総裁のほうから、異常現象が見られるというふうに思う、最高の技術陣を動員しているけれども、いまもってその原因がわからない、いろんな新聞を見ると、ATCだけでも理論的には何百ないし何千の解釈ができるというふうな非常に広範囲な可能性を持った事故ということが理論的には言えるということを言っているんですね。ですから、重大な点はこういう絶対視していたものが実はそうではなかったのだ、しかもこの絶対視しているATC、CTCというようなものを、非常に高いスピード、超スピードの列車と過密の列車と、それからそれと結合したところの機械化に対する非常に異常な熱中と、その反対の傾向としては人減らしということに対するこれまた異常な熱中が国鉄及び運輸当局の中にもあって、それが結合しているところに問題があるのじゃないか。もしほんとうにATCその他がわけのわからない危険な可能性を持っているということになれば、これらが結びついた場合に非常に大きな惨事を引き起こす可能性があるということをこれはあらわしたのじゃないかと思うのです。そういう点で国民としてはこれは非常に重大であって、安全性ということについてこれはたいへんなものである。こういうことは、いままでのATC絶対視の上に結びついたこれらのスピード化あるいは過密ダイヤ等々こういったことの全体系を危険なものとして、これは破綻していることを示すのではないかというようにわれわれは考えるわけです。これについてひとつ御説明願いたいと思うのです。
  86. 磯崎叡

    磯崎説明員 けさほど久保先生の御質問にもお答え申し上げましたけれども、現在の列車運転のシステムの中で古くから取り上げられました、いわゆる人間の注意力だけでやる列車運転から徐々にこれを機械化しさらに電気化し電子化する、これは一つの技術の進歩の過程であろうというふうに私は考えます。現在新幹線で採用いたしておりますATC及びCTCにつきましては、その発展過程において最高の技術としていま信頼されておるものでございます。一昨日の事故につきましては、けさほど申し上げましたとおり、いわゆるATC、CTCにつきましても、もちろん一つのシステムだけで完全だというわけにはまいりません。したがって二重系、三重系というふうに二重、三重にそれをガイドするようなシステムでもって運営しているわけでございます。ただ、けさほど申し上げましたように、本線上の運転でない、車庫から出てくる、あるいは工場から出てくる、けさほど一つ落としましたが、ああいう場所は品川と三島と島飼、それから浜松に工場がございます。そういう側線から本線に出てくるところにつきましては、二重系でなしに一重系でもってガイドしていたというところに一つ問題があるかというふうに存じます。したがいまして、その理論的な完全な究明ができるまでとりあえずもう一重系を人の注意力でやるということで、非常信号の手前で一たんとまるという原則を打ち立てて、それによって人力プラス機械力の二重系ということで進んでまいりたいと思っています。  いま先生は、全般的にいまの信号システムあるいは通信システムに非常に疑問があるのではないかという御指摘でございましたが、私どもはやはりいままでの発展過程、いままでの実績等を考えまして、このATCなりCTCを今後生かしていくという方向に進み、将来はATOと申しますオートマチック・トレイン・オペレーション、いわゆる無人運転でございますが、これまでいけるかどうかという問題も一つの深みを持っている問題でございまして、すでに外国でこれをやっているところもございます。そういうような技術の発達の過程に伴いましていろいろな問題が出てまいりますが、その過程におきまして、それが事故につながらないように、あらゆるチェックのシステムをつくっておったわけでございますが、不幸にして一昨日のような、本線上の問題でなかったために二重系にしてなかったということにつきましては、大いに反省の余地があるというふうに考えております。
  87. 紺野与次郎

    ○紺野委員 反省の点で重大な点が抜けていると思います。それはあまりに機械だけを過信している。無人列車をどうどうというようなことをいっておりましたけれども、技術の発展ということはもちろん否定できないけれども、常にそれを運行させるのは人間でありますから、やはり熟練した労働者——国鉄には四十六万のすばらしい労働者たちがいるわけです。こういうものを無視して、できるだけ阻害して、これを除外して、何か機械だけにたよろう。しかも敵対的に労働者に対抗する。マル生運動なんかそうでしたけれども、こういった傾向そのものが危険であるということを私は申し上げたいのです。そしてあらためていまあなたがおっしゃったように、機械だけじゃいけない。だから人間の注意力を一つ合わせて、一たん停止ということをかみ合わせた。これで万全じゃないか、こう言った。そのことの中に、やはり機械万能ではいけない、人間の労働力、そういうもののもっと統一したやり方がなければ、どんなものも絶対安全ということはないということを示していると思うのです。その点をひとつよく考えていただきたいということです。  それからもう一つ重大なことは、今度の問題が孤立的な問題ではない。何か偶然にそこだけで起きたものではない。これは氷山の一角のようなもので、たくさんの事故がすでに新幹線分野においてあったのだ、新幹線は無事故ではなかったんだということを事実によって申し上げたいと思います。  それは、昭和四十七年の二月には東京運転所関係でおもな車両事故が一日十件以上、月三百件も起きている。ATC関係でも月三十二件の故障を発見している。現場の管理者が部内において処理して外に出さなかっただけのことである。事故は非常に多くの内在した故障として存在していた。それがたまたまああいう形で公然たるものになったんだということをわれわれはつかんでいるわけですけれども、このことはどうですか、知っておられましたか。
  88. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまの先生のおっしゃった数字は、私非常に不審にたえない点でございます。いわゆる運転所というものがございまして車両の整備をやるという以上、やはり車両は走っている間に摩滅する、あるいはピンがゆるむということはたくさんございます。そういうものを整備する。そこが運転所というところでございまして、列車が何万キロか走って帰ってきた。そうすると全部点検いたします。点検すべき個所は全部事故であるということは、これは話としては少しおかしい話でございまして、私どもはそういうことを見つけ、それを事前に事故にならないように直すために車両の整備に相当たくさんの人間を使い、また膨大な機械設備を持っているわけでございまして、車庫へ帰ってきた車が悪いところがある、これが全部事故だということにはならない。これは自動車でも同じだと思います。したがって、そうでなしに、私どもといたしましては、そういったものをたとえば見落としたとかあるいは運転中にそういうことが出たということで運転の阻害を来たす。運転事故あるいは運転阻害ということばを使っておりますが、大体私のほうでは、列車がそういった原因によりまして五分以上おくれる場合を運転阻害と申しております。実績によりますと、運転阻害は、月によって多少の前後をいたしますが、現在のところ一カ月に大体十件前後。それはたとえばトンネルの中で行き違いの電車でガラスが割れた、そのガラスでもってお客さんがけがされたので、そこでとまった、そういうものを全部含めまして年間に約百件弱でございます。したがって、これが運転の阻害、列車の遅延になるもとであるということでございます。したがって、いまもおっしゃいましたようなことは運転所、すなわち列車を整備する人たちが車庫へ帰ってきた車を見て、ここが悪い、ここが悪いというところまで事故とおっしゃるのは、少し事故ということばについて範囲が広過ぎるというふうに思います。私どもはそれによって全部直し、直しきれなかった、あるいは直すことを見のがしてしまった、あるいは途中でそういうことが起きた、そのために現実に列車の運転に阻害を来たしたというものを全部リストアップいたしておりますが、それが年間に先ほど申し上げましたような件数でございます。
  89. 紺野与次郎

    ○紺野委員 そうすると、こういうことはどうでしょうか。昭和四十五年度中に東京電気所で、未発生事故件数というふうに言われているものですが、開業以来ずっと増加の傾向を示しておったけれども、電車関係だけで四百三十六件の未発生事故件数ですね。これはそういう故障の一定の規模をあらわすと思いますけれども、ほうっておけば公然たる事故になる可能性を持っているものと思われます。その四百三十六件のうち、地区指令所のほうで示したのは五十八件で、三百七十八件は労働者が自分たちの目や手や足でもってつかんだものであるというふうにいわれているのです。それから、これらのことは団交の中で、労働組合がいろいろ交渉して、早く直せということを言っているけれども、実際には直されておらないというふうにいわれております。  それからもう一つの記録は、非常に経費を節約しているので、保守が不十分なために、機器の老化というか劣化がひどい。特にトランジスタ、電気機器、増幅関係などエネルギーを使う部分の劣化がひどい。これが一そう進行すると、ATC不能が発生することも予想されるものが相当内在的にふえてきておったということがいわれております。そういうことをつかんでいるところがあるわけです。ですから、今度、ATCの不能が発生したということは偶然でない。やはり氷山の一角のように非常に危険な状態が存在しておって、いつか何か起きるぞと労働者は言っている。やはり起きた。こういった事態ですね。これを全然ないのだというふうに考え、そしてもう十年もたっているのだからだいじょうぶということ自体の中に、他の半面を見のがしていると思います。十年近くもやっていれば、どんな精密な機械でも老化し、疲労し、そうしてデリケートであればあるほどそこに多くの危険な状態というものが生まれてくるわけでありますから、一そうそれを発見し、大きな事態にならないように早く最善の補修をやり、労働者たちの力によって万全の安全な事態に至るようにさせることが、私は国鉄のほんとうのあり方じゃないかと思うのです。ところがいわゆる合理化政策によってそういう人たちは要らないのだ、できるだけ縮小したい。昭和五十三年までに十一万人整理するということも入っているわけですけれども、そういうふうにどんどん縮小して、機械万能、機械にまかせておけばだいじょうぶだというふうに考えているところに大きな間違いがあり、大きな危険、不安全、安全を脅かす要因があるということを私は申し上げたい。これについて大臣と総裁と両方から御答弁願いたいと思います。
  90. 磯崎叡

    磯崎説明員 いま電気の関係で数字のお示しがございましたが、そういう電気の、ただいま先生のおっしゃった摩耗とか疲労とか、そういうものがございます。それを保守するために電気所を置き、それを保守するために新幹線総局の人がいるわけでございまして、その人たちがいるということはすなわち保守のための人間でございます。もちろん設備投資も若干いたしますが、大部分は日常の新幹線を動かしていく際のいわばお守をするための人間でございまして、その人間がいるということはすなわち保守を怠っていないという証拠でございます。またいまおっしゃった中に、たとえば電気関係の機械の名前をちょっとおっしゃいましたけれども、そういうものは確かに十年たてば老化いたします。これはわれわれのうちのテレビでもラジオでも同じことでございます。老化すれば取りかえる、これはあたりまえのことでございまして、たとえば電気に限らず、これは車両にいたしましてもあるいは線路にいたしましてもある年数が来れば取りかえるのは当然でございまして、たとえば現在レールにつきましては約二百五十億の予算をもちましてすでに取りかえに着手いたしております。大なり小なりそういうことである一定の年数がたてば老化を防ぎあるいは近代化のものに取りかえるということをするのはあたりまえでございまして、そういった取りかえのための費用は、それがすなわち国鉄の修繕費ということで上がっているわけでございまして、そういった費用は惜しみなく十分使っております。それが国鉄の現在の新幹線が無事に動いておる、それの証拠でございまして、そういった修繕費を節約するというようなことは——不必要な節約、不当な節約は一切いたしておりません。  人につきましても、もちろん十一万人の削減は——これは後ほど御質問があるというふうに承っておりますが、これは近代化し合理化してできる面をする。たとえば電話の交換で申しますと、いわゆる人間がやった交換を機械がすればそれは交換の人が減ります。しかし機械がふえればその分だけ機械をお守をする人がふえるということでございまして、これはどの近代化、合理化でも同じことでございます。しかし手動式の交換機を動かすための人と機械を保守するための人とはおのずから人数に差がある、減ってくるということでございます。
  91. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 具体的には国鉄総裁からお答えをしたことで尽きると思いますが、抽象論でございますけれども、単に国鉄に限りませず、どこの工場でございましても設備を近代化して省力化するという傾向にあることは事実でございまして、私どもも、国鉄から安全性を阻害することなくして省力化できるということでございますので、この計画はけっこうであるということを言っておるのでございまして、そういう傾向に対しましていろいろ具体的には問題があるかもしれませんが、技術的なことは私のほうではよくわかりませんので、全体の持っていき方としましては、いま申し上げたように機械を入れて省力化してそして近代化しようという傾向に対しては運輸省といたしましても賛成である、こういう態度をとっておる次第でございます。
  92. 紺野与次郎

    ○紺野委員 やはり問題をはぐらかしていると思うのです。新幹線の実際の整備、電気関係とか保線関係とか車両関係とかの検修その他は非常に危険な状態にまで人員が削減されているということが一つと、それからもう一つは下請に出している。たとえば保線についてもそうですが、車両その他電気関係の保守にしても、これを下請にどんどん出している。ですから、そういう点でほんとうに統一的に安全を確保するような整備、保守というようなことが著しく阻害されて、そして労働者の数も、実際にこれだけの——営業当時から比べて現在の新幹線の車両、列車の本数は大体四倍になっているそうですけれども、しかも一列車が大きくなっているというふうな状態で、これをほんとうに正しく検修して、これでだいじょうぶだというふうに保守していくことが困難な状態ですね。そういう状態に追い込まれている。そういうところから、今度の事故も早く発見できないというようなことが起きたのじゃないかと思いますけれども、とにかくそういう合理化が、人減らしということが、機械を過信するあまり、安全を保障する限界を越して著しく不安全な状態に導いている、そういうところに落ち込んできているというところに今度の事件が出てきている、そしてその点を反省しなければほんとうの反省にはならないのじゃないかというふうに私は思うのです。  私は特にもう一つの例だけ申し上げておきますけれども、上野の保線区のことでありますが、ここの場合には去年の七月の検査によって徐行しなければいけないというところが百六十カ所あるというのですね、上野の保線区だけで。ところがその百六十カ所の徐行をしなければならないというふうになっているところをちっとも徐行もしない、させようともしないという形で列車がどんどんそこを通過しているというふうな事態が起きている。これは当局と労働者側で団交したり、いろいろ問題になっている問題です。こういうふうな点、安全性というものを無視して営業主義ですべてやっているというその弱点、欠陥を反省しなければ、安全ということばだけじゃなくて、ほんとうに国民のための安全な国鉄にするということはできないのじゃないかと私は思うのです。これについてどうですか。
  93. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまの上野保線区は、これは新幹線の保守をやっておりません。現在線でございます。もしそういうことで線路状態が悪ければ、これはもう労使問題以前の問題でございまして、当然私のほうの責任者が見てあぶないとなれば徐行さすのがあたりまえでございまして、これは労使問題で団体交渉などすべき事柄では全くございません。純粋な技術上の管理運営の問題でございます。したがって、もしそういうような事実があるとすれば非常な大問題でございますが、私は少なくともほんとうに徐行すべきところがあればもちろん徐行しているという確信を持っております。どういうところから出たお話か存じませんが、私は絶対確信を持っております。
  94. 紺野与次郎

    ○紺野委員 いまの点は確実に当局自身の調べです。ですから、あなた、ちゃんとこれを見て、そして直すようにしてください。  それから最後にこの点についてちょっとまとめておきますが、検査基準ですね。これがやはり実際の現場にいるものにとっては非常に危険であるというか問題がある、やはり安全サイドの基準に改めてほしいということが要望されております。  それからいま申し上げましたように労働者側の省力化ということを非常に単純に機械化と対比して、省力化すればそれだけ営業成績があがるという考え、公共性の国鉄として、そういう一面的な考え方をすることは間違いではないか、邪道ではないか。やはりある場合には赤字線に対しても地域社会が必要とするものであればそれを維持するということが公共機関としての国鉄のあり方でありますから、そういう点で、営業面からだけ考えて、あるいは機械化万能の思想で労働者を人減らしする、そして安全について危険な状態をつくり出すということは、公共機関としての国鉄の原点に返ってそれは直さなければいけないことじゃないないかというふうに思います。
  95. 磯崎叡

    磯崎説明員 安全性の問題につきましては午前中の先生からもいろいろお話がございまして、私どももいやしくも鉄道業務を運営する以上、あらゆる面から見て安全性が第一であるということは確かでございます。と同時に、やはり鉄道を取り巻くいろんな環境がございます。たとえば踏切の問題などいろいろございます。鉄道を取り巻く側におきましても、やはり安全についてできるだけの協力もしていただきたいという気持ちでございます。ただ、今後とも仕事を運営していく際には、事故があれば一番困るのは、何と申しましても私ども自身でございます。したがって私ども自身の立場から申しましても、事故が起こるということについては、ありとあらゆる機械を使って起きないような努力をしておるつもりでございます。しかし、今後とも保安対策は無限でございます。全力をあげてその方面に進んでまいりたいと思っております。
  96. 紺野与次郎

    ○紺野委員 大臣はどうですか。
  97. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 ただいま国鉄総裁が申しましたとおりであると私も考えております。  なお、あとのほうで例を引いてお話しになりましたが、先ほど申し上げましたように、地方の閑散線なんかにつきましては地域住民の要望をいれまして、これ以外に交通手段はないというふうなところは、これは前国会においてずいぶんこの委員会でも御議論のあったところであると承知しておりますけれども、そういう御議論を踏まえまして、今度はそういったものにつきましては地域住民の声をよく聞いて、ほかに方法がなければ赤字線でありましてもやはりそれを残していこうというような方向考えておるわけでございまして、その点は先ほど一般的なことばでもってお答えをしたとおりでございますから、その点は御了承をいただきたいと思います。
  98. 紺野与次郎

    ○紺野委員 次に、航空の問題について少しお聞きしますけれども、最近モスクワ空港の事件あるいはニューデリーの事件、ボンベイ事件というようなことがずっと連続しておりますけれども、これを通じて、日本航空関係の安全の問題でありますけれども、やはり似たような傾向ですね。整備ということが非常に短時間で、そうして仕事の量から比較すればいわば非常に人が少ないという状態で、非常に無理な整備をさせられるという状態になっております。特に定時制ですね。スケジュールを、たくさんの便を設定して、そうしてこれを時間どおりに出すことが、これは営業の一番大切なことだということから、つまり非常に無理な整備が短時間でやらされるという状態があって、しかもわずかな人でそれをやるというところから、飛行機自体の安全性は現場の人たち及びパイロット自身が、組合でアンケートをとったものによりますと、パイロットが八六%くらいがとにかく安全について疑問を抱きながらやはり仕事をしているという状態があらわれております。そして整備の人たちも万全を期してやっているわけでありますけれども、時間がそういう点で足りない、人手がないということから非常に憂慮しながらそういう飛行機を飛ばしているという状態が存在しているということです。この点はひとつ十分に航空局、運輸省としても監督を強化していただいて、そうしてやはり万全の飛行機によって安全を保障できるようなそういう整備関係改善をはかっていただきたいと思うのです。特に最近運用基準というものが出されておりまして、それが二つのヘッドライトが要るのを一つだけあればいいとか、あるいは四つの発動機のうちの——モーターですが、本来四つあるべきものが一つ不十分でもかまわない、それでオーライというふうな、つまり運用基準というようなことで非常にゆるめた基準を出して、そのために一そう飛行機自体の整備が不完全な状態になっているんじゃないかというふうにいわれているわけなんです。でありますから、そういう点で整備基準というものが万全なものかどうか。そういう現場のほうからの要望に対してこたえるようにこれを改善してもらいたいということと、整備関係に十分人員を保障するような指導をやってほしい。特に気象官については空港に正式の気象官がおらない。たとえば岡山にいないそうです。そして天候が悪いときに、どうだ、大体よかろうというしろうとの判断によって、結局パイロットは心ならずも飛び立たなければならぬというふうな事態が気象関係でもあるというのです。実際そういう点で、われわれ国民から見ればたいへんな状態になっておる。そういう天候を責任を持って判断できるような気象官が空港に全部配置されておらない。こういったことも私は異常であると思います。そういう点をやはり直してもらいたいということです。そして過密ダイヤによって、この不完全な飛行機によって定時制を強行するというふうなことから事故が起きないようにやってもらいたい。特にそれを基礎づけているものは、国鉄にも当てはまると私は思いますけれども、日航その他が営利主義で、命を大切にする、生命を安全にするという点についてかなり麻痛した現象が起きているのじゃないかということであります。これにつきましては皆さんも知っているでしょう。モスクワの墜落事件でなくなった原さんという方のおとうさんが新谷大臣及び田中総理に対して、自分たちが調べた結果としても、結論としては生命を大切にするという点が麻痺しているんじゃないか、営利第一主義でもって日航その他がやっている、そう考えられてしようがないということで非常に心配して、私たちに対しても陳情しております。そういうことに対して航空界における安全をほんとうにことばだけではなくて実際に保障するために、いま私が言ったようなことについて大きな改善をしてもらいたいということをお願いしたいと思うのですが、どうでしょうか。
  99. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 最近思わざる事故が日航を中心として頻発してまいりました。国民は飛行機はだいじょうぶかなというので非常に不安な気持ちを持ったことは事実でございます。  この事故がどういうふうにして起こったかということにつきましては、ある程度原因が究明された事件もございますし、まだ現在調査中でございまして、事故調査の結果が出ないというのもございます。一つ一つ具体的にはまだ判断する材料はそろっていないわけでございますけれども、ただいまもお話しになりましたように、私ども航空機の事故というものは、これはもう全員の命に関するという問題が大部分でございますから、これについては特に注意をいたしておる次第でございまして、安全第一、いまお話しのように、営業が非常に忙しくて、路線の拡張が忙しかったので安全を忘れたというようなことは絶対にあってはいけないと考えておりまして、そういう方向で指導いたしております。  実は私は昨年の暮れに就任いたしましたが、その事故の内容を聞きまして、すぐに関係の社長を呼びまして、ああいう事件が起こったんだから、皆さんはいまどんな措置をとっておるか、今後どういう措置をおとりになるか、と同時に運輸省航空局に対して地上設備その他において何か注文があれば言ってくださいというようなことを申しまして、安全対策を厳守するのにどういう態度をとるかということについての具体的な報告を求めたのでございます。これは単に日航だけじゃございませんで、日航と同じような事柄が他の航空会社にもあるかと思いましたので、他の航空会社の責任者を呼びまして同じようなことを申したのでありまして、大体、それに対しまして、自分のほうはこういうことをいたしました、今後こういうことをしようと思いますという回答が、航空三社から手元に届いておるのでございます。日航に対しましては、さらにそれをもとにいたしまして、こういう安全対策を講じなさいということで、最終的な回答は二月一ぱいで手元に届けてくれるようになると思っております。  全体を通覧いたしまして感じますことは、個々の事故についていろいろの特殊の原因があったかと思いますが、しかしどうも全体を通じまして感じましたことは、運航に従事する人たち、それからいまお話しの整備に従事する人たち、あるいはそういった人たちを管理していく人事方面の人たち、こういった各部の考え方が一つにまとまりまして、社内全体がこん然一体となって安全確保のためにこうしようというようなことにならないと、操縦士は操縦士、整備員は整備員でばらばらに動いておったのでは、ほんとうに安全確保はできないと考えるのでございまして、そういう社内体制を早くつくり上げてほしいということで、各社に強く要求をいたしたのでございます。  その結果、いろいろ具体的に私のほうは訓練についてはこういうことをいたしております、整備についてはこういうことをいたしますというようなことを私のほうに報告がございました。その後、各社とも非常に緊張をいたしまして、今後そういう航空事故は一切起こすまいという覚悟で、ことばは少し強いかもしれませんが、新たなる決意を持ちまして安全体制に取り組んでくれておるのじゃないかと考えるのでございます。  運輸省航空局において考えるべきこと、地上施設その他につきましては、今度の予算関係もございますので、来年度内にできることは、あらゆる方法を講じまして、安全性の確保のためにわれわれも努力をしなければならぬという考えで進んでおるわけでございます。  なお、具体的な問題について御要求がございますれば、政府委員から各事故の内容とかそれのいまわかっております原因等につきまして具体的に御報告さしてもけっこうでございます。
  100. 紺野与次郎

    ○紺野委員 時間がないので、残念ながらそれはあとでお聞きすることとしまして、特に日航の場合、非常に労働組合、労務政策が陰惨ですね。あそこではたくさんの労働組合が分裂させられたり、あるいは二十件も裁判事件を起こしたり、パイロットを差別したりというようなことがあって、非常にパイロット自身も自分の意見があっても述べられないというような状態の中で運航に従事するというふうなことがあります。こういう点からいっても、やはり安全を確保する上からいって、労務政策ですね、労働者に対する不当な労働行為というような、ちょうど国鉄におけるマル生運動ですね、そういったようなことを航空分野においても一掃するというふうにひとつ当局のほうで指導してもらいたいと思うのです。これをひとつお願いしておきます。それをあとで答弁していただきたいと思います。  あと国鉄財政再建の問題について、まだ法案が出ておりませんから、あまり詳しくは言いませんけれども、ただ二、三点だけ特に重要な点について質問をいたします。  一つは、あの表をわれわれもらっているわけですけれども、十年間の試算だと思いますが、特に一つ聞きたいことは、十年目の数字だけが黒字になっておりますね。その前の年は赤字が七百億か六百億あるのに、十年目だけが三千七百億の黒字にぴょこんと飛び出してきておりますね。そして、これが十年目の黒字である。よってこの計画は条件に合って法案としても出せるというふうなからくりがあまりに明らかに見え透いているように私は思うのです。いろいろのあの数字を計算しても、十年目にあの赤字が黒字にあんなに一躍四千億も飛び上がるということは、なぜかといえば、それは十年目に四回目の運賃値上げをして、そしてそれは一〇%の増収でありますから、ちょうど四千億なんですね。四千億とにかく増収ができるように配慮されて、そして九年かかっても赤字がとれないというものを、十年目にもその経過から見て傾向としてはそれはとれていないわけなんです。われわれの計算では十年目にも五百億ぐらいは少なくとも赤字が残るだろう。ところが十年目の四回目の運賃値上げでばっさりそれを帳消しにするということで、非常にトリッキーで詐術的であるということです。人工的なんですね。だから、全くこういう見え透いたあれをやるということは、この計画全体がやはり大きな矛盾を持ち、破綻を内包し、やはり現実に耐えないというふうにわれわれ考えるということです。この十年目の黒字というのは一体どうしてそういうようになるのかという点について、やはりわれわれはまじめな受け取り方ができないということなんです。最初に、そのことについてもし納得のいく説明があればお聞きしたいと思います。
  101. 磯崎叡

    磯崎説明員 まだ法案の御審議の前に、すでに私のほうが提出いたしました資料を御検討いただきまして、まことにありがとうございました。あの資料は政府の資料ではございませんで、国鉄の試算ということになっておりますか、したがって正式に政府から提出した資料ではございませんが、私のほうの資料をそこまで御検討いただいたことを厚くお礼を申し上げます。  いま先生の御質問の点でございますが、確かにそういう御疑問はあると思います。ただ、もしあの資料について、もう少し時間をいただきますれば御説明申し上げますが、あの資料の傾向をひとつごらん願いたいと思うのでございます。すなわち、昭和五十七年までのうち、初めの六、七年はずっと償却後が赤を続けておりますが、だんだんそれがよくなりまして、そして五十七年の前の五十四年くらいから徐々に償却前の赤が減ってきております。すなわち、たしか九百億台から七百億台、六百億台というふうに減ってきております。それが今度最終年次の一〇%の運賃の改定によりまして黒になるということで、その後の傾向から見ますと、全体としての、こういう大きな財政再建の場合には全体の傾向をぜひ見ていただきたいというふうに思うわけでございまして、単に最終年次の数字だけでなしに、最終年次に至るその間の過程をよくごらんくだされば、徐々に財政再建の姿になりつつある、こういうふうに御了承願えれば非常にしあわせだと思う次第であります。
  102. 紺野与次郎

    ○紺野委員 今度は別の方向からお聞きしたいのですが、それは、財政再建の、赤になるものの性質なわけでありますけれども、特にわれわれが非常に奇異の感を深めるのは、利子負担がちっとも似らないんですね。利子がどんどん上昇していって、二千億から最後は六千億ですか、そうしてこれは全体の総計が四兆五千億くらいの利子支払いを、十年間にそれだけやるわけですね。それは一体どうなんだ。そしていわゆる長期債務、これも四兆円から十兆円にその間に増大し続けるということですね。こういう借金政策、借金によってその利払いが際限なく上昇していくということを中に持っているということです。これはやはり大きな問題だと思うのです。われわれがどれくらいの利子であるかということを見ますと、これは計算いたしますと、一日当たり平均して、最初の四十八年度は毎日六億くらいの利子を支払うのですね。そして十年目には一日十七億の利子を支払うのです。毎日ですよ。一体これは何だ。利払い列車じゃないですか、利子を運ぶ列車じゃないですか。財政的に見ればそういうことなんだ。いや、貨物を運送するために、われわれはこれをつくるためにやったというのだけれども、それは財政的に見ると、赤字列車というか、利子列車。こういう利子は少しも減らないで、どんどん上がっていく。十年目にもそうだ。この傾向は全然変わっておらない。そうしてそういう利子の支払いにこんな巨額なものをやらされている。こういう計画というものは根本的にやはり何か間違っているのじゃないか。公共機関でしょう。それがこういう——おそらくこれは四十六年度の長期債務の内容を見ますと、五七%が銀行その他のいわゆる政府投資じゃないものなのですね。ですから、過半数は銀行その他の鉄道債券というようなものから借りられているわけです。ですから、利子はそういう銀行に運ばれていく。そうしてそのために、つまり運賃値上げでその間に八兆円どうしてもひねり出す。八兆円のうちの四兆五千億円は利子にちょうど取られる形になっております。だからそういうふうな財政再建というものは、根本的にこれは考え直さなきゃならぬ。だから借金をしないで、そして利子のつかない政府の金に置きかえていくというふうに思い切って転換をしなければ、日本国鉄というものはいつまでも永久に赤字。そして大銀行やその他のもとに流れる。財政投融資その他もありますから全部とは言いませんけれども、そういうところに利潤というものが利子の形でどんどん流れていくというふうなことで、やはりこの企業体が公共企業体というよりも、私企業的なそういう性格に変質をしている。企業のやり方自身がそういうものに変わってきているというふうに、われわれはやはり見なければならない。この点での矛盾ですね、これについてどうお考えなのか。そういうやり口が永久に必要なのかどうか、それについてちょっとお聞きしたいと思います。
  103. 磯崎叡

    磯崎説明員 たいへん詳細な御検討を賜わりまして、ありがとうございます。  いまの御説示でございますが、確かに利子は十年間で四兆四千億ぐらいでございます。これは結局、国鉄財政再建の最中に新しい投資をするかどうかという問題が第一点でございます。新しい投資をする必要があるとすれば、そのうち政府からどのくらい無利子の金をもらうか、あとは借金でやるかという次の問題になると思います。今度の案では大体十兆五千億の投資を必要とする。これが必要であるとか必要でないとかいうことは、いずれ御論議を願うと思いますが、私どもは、十兆五千億の投資が必要だと考えております。それに対して私ども政府にお願いいたしまして、そのうちの約一五%を政府から出資していただきたいというふうに申しまして、大体十年間で十兆五千億の出資をきめていただいたわけでございます。そうすると、残りは当然利子は払いますが、その利子が四兆四千億でありますが、あの表をごらんになるときに、ぜひ上から二番目の財政補給金の欄を一緒にごらんを願いたいと思います。この利子額は総体の支払い額を書いてございまして、そのうちの財政援助の点は、収入の欄に計上してございます。したがって、利子の欄をごらんくださるときには、上のほうの財政援助と差し引きでもってごらんをいただきたいと思います。そういたしますと、四兆四千億の利子の中で、私どものほうで身銭を切って払う利子が二兆二千億、半分でございます。そうしまして、それに過去債務もございますので、大体政府出資を入れて計算いたしますと、——あの計算では平均三分で計算しておりますが、いまの日本の金融情勢からいいまして、三分という利子は、私は、相当安い利子じゃないかと考えまして、この点は、政府から援助していただきたいと率直に私は考えておりますが、しかし先生がいまおっしゃったように、利子負担が重いことは、やはり事実でございます。したがって、今度は過去の債務、昭和四十七年度以前の債務につきましては、約半分ぐらいは利子補給になるというかっこうになっております。財政再建の問題は、いずれ御説明申し上げますけれども、したがって、利子の負担、利子の支出の点だけをごらんくださいますと、いまおっしゃったような金額でございますが、そこの裏に、政府財政補給金があるというところをごらんの上、結局問題は、国鉄が十兆五千億の投資をする必要があるかどうかという点にその問題点が帰するというふうに思うわけでございます。
  104. 紺野与次郎

    ○紺野委員 それで十兆五千億は、最初に申し上げましたように、いわゆる日本列島改造論の一翼をになうアイデアから来ているものであって、それ自体について、これは大きな転換を必要とするということですね。そしてフランス等においては、十分知っておられるでしょうけれども赤字に対して政府が全部処理しておるわけです。値上げをしておりません。だから、日本国鉄運営もそういう方向に切りかえないと、やはり国民が値上げをさせられ、そしてそのことによって、また借金経営による膨大な投資に利用されてしまうというような性格のものになって、そして安全というようなことを忘れて、営業主義に徹した、そういう非公共性的な企業にやはり変質していくということですね。そういうことをいまやわれわれは問題にしなければいけないときに来たとわれわれ考えております。  そういうことで、私は、あと時間がありませんから、これで質問を終わります。
  105. 井原岸高

    井原委員長 松本忠助君。
  106. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 先般、大臣の所管事項の御説明の中で交通機関の安全確保と公害の防止に全力を傾けて取り組む、こう決意を表明せられております。私は、歴代の運輸大臣がこの決意に徹していたならば何も言うところはないのでございますが、新谷大臣には、ぜひともこの御決意を貫き通していただきたいのでございます。この所信表明の中身が単なる作文に終わらないようにしていただきたい。このことを特に私は熱望するものでございます。  本日、所信表明の中にあげられております第一の項目、いわゆる交通安全の確保、第二の項目、交通公害の防止、これらの点について、時間の許す限り質問をさしていただきます。第三の点、国鉄財政再建の面は、まだお経読みもいたしておりませんので、これは割愛をさしていただきます。第四の点につきましては、時間の許す限りこれもさしていただきたいと思っております。  まず最初にお伺いしたいことでございます。  昨年の十一月二十八日、モスクワ、シェレメチェボ空港に起こりました日航機の墜落事故、この航空事故の痛ましさ、おそろしさというものをまざまざと私は感じたのでございますが、ここで私は、不幸にもこの事故でなくなられました方々の御冥福を祈るとともに、再びこのような事故が起きないように心から願いつつ質疑を進めたいと思います。  この日航機事故の犠牲者の御遺族の一人でございます東京都世田谷区上馬一の六の三にお住まいでございます原勝さんという方から、先日「人命尊重を訴える書」ほか二冊の印刷物の郵送を受けました。人命尊重は、わが公明党の基本的な考えでございます。したがいまして、私は、注意深くこの書を拝見いたしたのでございます。そこには愛するお嬢さんを一瞬にして酷寒のモスクワの地でなくされたおとうさんの悲嘆な心情が書かれてあったのでございます。ちょっと読ませていただきますと、「私は」というのは原さんのことでございますが、   私は、在米留学三年半近くの学業を終えて、帰路、ヨーロッパ経由で帰国の途中、モスクワのシエレメチエボ空港でおこった日航の飛行事故で、遭難死亡した原葵の父であります。   娘、葵はシラキュース大学の大学院でライブラリー・サイエンスを専攻し、修士号を授与されて、帰国後はこの方面分野で活動する若さに溢れた意慾と夢を胸にいっぱいに抱いていたのであります。   それが、これから十時間で東京着と云うモスクワの空港で、あの墜落機に搭乗していて、私の娘は、一瞬にして、酷寒のモスクワで生命を断ったのであります。   あまりにも葵が可哀そうで私達家族の者はみな悲嘆の沼に突き落され、日々暗港たる思いで時をすごしております。 このような書き出しでございます。私は、このお手紙を拝見し、文章を拝見いたしまして、何としてもこのような事故が再び起きないようにしたい。そして、このことについて私は直接原さんからいろいろとお話を伺ったのであります。この「人命尊重を訴える書」というのは、一月十八日、原さん御自身が直接田中内閣総理大臣にお会いをしてその心情を訴えられたときお手渡しをされたそうであります。  そこでお伺いをいたしますが、大臣は、田中総理から原さんとの会見の模様について何かお話をお伺いされましたかどうか。この点をまず第一点としてお伺いするわけでございます。
  107. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 総理からは直接に具体的に伺いませんでしたが、私も原さんには直接にお目にかかりまして、いまお話しのような切々たる遺族の気持ちを伺ったのでございます。
  108. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣も翌一月十九日、原さんにお会いされたと思います。原さんにお会いして人命尊重に関する訴えについて事こまかに伺われているかと思います。大臣も直接御遺族の方々お話しをし、意見を聞き取られたわけでございますが、この所信表明の中にも安全確保という問題をまず第一に大臣が取り上げられておる。この御決意を私は十分理解できるわけでございますけれども、重ねて大臣の所見を伺っておきたいわけであります。
  109. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 先ほどお答えをした点と二重になるかもしれませんが、あらためてお答えを申し上げますると、航空事業におきましては何よりもとにかく安全第一でなければならないと思います。これにはどんな事情がありましても、これを第一義的に関係者が全部で守ってくれないとこの成果は上がらないように考えておるのでございまして、従来もおそらくそういう考え方で関係者はこの航空事業に従事しておったと思いますけれども、それでもああいう事故が起こったのでございますから、そこにどこかに欠けるところがあったのじゃないかということで、先ほども申し上げましたように、私は就任以来そのことに非常に精力的に取り組みまして、関係会社に対しましても、私のほうの航空局の関係者に対しましても、そのことを徹底するように話をいたしまして、これにはもう弁解の余地がないのですから、ほんとうに全力をあげてこの問題には取り組むのだ、これを忘れてはいけないということを常々言っておるのでございまして、その熱意だけは先生も御了承いただきたいと思います。
  110. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 よくわかりました。大臣の御決意のほどを私も十分承知をいたしまして、次に質疑を進めます。  この「人命尊重を訴える書」の二ページ目にこう書かれてあるのです。「私は」というのは原さんのことでありますが、   私は何故、モスクワの飛行事故がおこったかと云う問題を考えるようになり、そして、それを深く考えて行くうちに、この飛行事故の背景には、乗客の生命を預っていると云う点について、日航の配慮に手落ちがあったのではないか、と云う問題に思いを致すようになりました。   私は自分が最愛の娘を亡くした悲しみの中にあるために、感情的になってはならないと、努めて冷静になることに心をくばり、この問題を追求してみました。   “人命尊重”と云うことを第一義にして“安全第一”の運航に、日航が徹底し、慎重であったか、私はまずこの角度から、朝田社長体制下の日航の体質に、自分なりに、疑問のメスをいれてみました。   そして、そこに発見した日航の“人命軽視”の問題は、一日航の問題ではなくて、今日の日本の、ある意味では、世界全体の航空産業界についても、関連する問題として、云えることではないか、と考えさせられるようになりました。   それは、各航空会社が人命を尊重する安全第一の運航よりも、利潤を追求する営業第一主義に重点をおいて、激しい競争を展開している姿勢があまりにも眼に写ってくるからであります。   この点は、現下の日航と全日空の競争の姿をみても云えることでありましょう。   航空会社が営利競争に心を奪われていて、“人命尊重”と云う点について慎重な配慮に欠けているのではないかと云う私の疑問は、さらに広がって、国鉄や私鉄、トラック営業の姿勢の中にも、同じような問題があることにつき当りました。   四十名前後の乗客の人命が、昨年の北陸トンネルにおける国鉄の列車事故では犠牲にされております。そして人命尊重と云う問題は、全く考えられていないのだと思える悲惨な交通事故が、ほとんど毎日のように、日本全国で、おこっております。   これらの事故は、たんなる交通事故や飛行事故であると、私には思えません。 こうして原さんは、これからるる述べられておりますが、私、最後のところをちょっと読んでみたいと思います。   私は、モスクワのシエレメチエボ空港でおこった日航の飛行事故の問題追求から、この様な、今日の日本人全体が考えねばならない“人命尊重”の問題につきあたりましたが、日航そのものの体質については、次のように考えさせられます。   日航は、昨年五月の羽田の飛行事故、六月のニューデリー墜落事故、九月のソウルの暴走事故、ボンベイの誤着事故、そして、十一月二十八日のモスクワでの墜落事故と、一連の飛行事故をおこしております。   これらの連続飛行事故の技術的な原因については、私は門外漢であり、意見をさしはさむ考えはありません。   しかし先にもふれましたように、昨年おこった一連の飛行事故の背景には、日航の営利第一主義と思える体質の問題がありますが、朝田社長が導入したマニュアル中心主義の結果として、日航が科学万能主義に安易に陥つていて、乗客の生命を預るパイロットに対し、精神的な教育の面で欠けるところはなかったか、と云う疑問点があります。   日航はビジアル・エイド・システムで、あらゆる事態に、パイロットが対応処置をとれるように、場合によっては、墜落寸前までの事態に対応する感触も、訓練によって養っていると説明しております。   だが、モスクワで飛行事故をおこしたパイロットは、日ソ合同事故調査委員会の最終報告の内容として、新聞が報道するところによりますと、全く初歩的な飛行操作の基本のポイントを怠っていて、あの六十二名の人命を奪う惨事をひきおこしたのであります。   このことは、いかなる場合でも、人間に精神的な弛緩があれば、いかなる科学的な訓練も意味をなさなくなることを示していると思います。 このように日航の問題について原さんは訴えられているわけでございます。私、この書を読みまして、私も全く同意見なのでございます。こういう点を私読みまして、何としても事故を起こさないためにまずこれで考えなければならないこと——この原さんの提言がここにあるのです。私はこの提言をぜひとも大臣の決断によってやっていただきたい、こう思うわけでございます。それはこういうことです。このことは田中総理にも言ってあるようでありますけれども、人命尊重週間あるいは人命尊重の日、こういうものを設定していただいて、日本全体の国民が一年に一度でも、同時に心を一つにして人命尊重に思いをいたし、ややもすれば荒廃しがちな精神の向上をはかるように指導していただきたい、こうして結ばれているわけですが、この原さんの言われている人命尊重週間、あるいは人命尊重の日、こういったものを設けることについては、だれ一人として反対する方はいないと私は思うのです。そこで、この原さんの提言というものをすなおに聞き入れて、大臣が決断をもってこれをやろうというお気持ちがあるかどうか、これを私はお聞きしたいわけであります。
  111. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 原さんの提言は私も拝見いたしました。ごもっともだと思っております。ただ問題は、それを実現するための具体的な方法にかかっていると思います。今後、関係各省もございますし、関係者と十分協議を遂げまして、そういうことが可能になるように私も努力をしたいということをその当時も考えたのでございます。今後努力をするつもりでございます。
  112. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 御努力されることは、お気持ちはわかりますけれども、私はこれは決断さえあればできると思う。決断と実行の田中内閣の閣僚のお一人であります。ぜひともこれは実行していただきたいと思うのです。ややもすれば、研究しなければいけない、こういう逃げ口上で、私はそれでは大臣の言われたこの所信表明が全く作文になると思うのです。こんなこと一つできないようでは、とてもじゃないけれども大臣の言われているところの「航空につきましては、最近の一連の事故の経験にかんがみ、乗務員養成体制の充実、運航ルールに関する」云々、これからずっと書かれていることは全く作文になっちゃう、こんなこと一つできないようでは。運輸行政をあずかる運輸大臣として、ぜひともこれはやりたい、総理に私は進言する、そしてこれを必ず実現してみせるくらいの御決意をひとつここで示していただきたいと私は重ねてお願いするわけです。
  113. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 あらゆる努力をいたします。
  114. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 もう一つ提言をします。あらゆる努力と言われて逃げられればそれまででございますが、もっと簡単なことです。  うしろに自動車局長もおりますので、自動車局長にも聞いてみたいのでありますが、自動車のフロントガラス、あそこへひとつこれからこういうことを書いてくっつけてはどうかと思うのです。それは「人命尊重 安全第一」あるいは「命を大切にしましょう 安全第一」小さなステッカーでいいんです。何もこれは自動車の運行を阻害するような問題でなく、現にやっておることを私は見てもおります。これをみずから進んでやっている運転手さんもある。こういうことは、ぜひとも運輸大臣がやろうじゃないか、法律できめなくても呼びかけるだけでもいいと思うのです。どうですか、自動車局長、これをひとつやられてみては。まず自動車を手始めにしてやる。確かに一万六千を割った事故死、これはたいへんけっこうでございますけれども、しかしまだまだ事故は少なくなっておりません。そういう点から考えれば、まず陸上の事故、そしてさらに国鉄総裁、機関車の前に全部張らせることを総裁の命令でやらせる。それくらいの決意がなければ私は事故はなくならないと思う。簡単なことですよ。これができないということでは、私は全く田中内閣に失望せざるを得ません。
  115. 小林正興

    ○小林(正)政府委員 フロントガラスばかりじゃなくて、横のガラスあるいは車体の横に許される範囲内でいろいろ安全上いいようなこと、あるいはサービス上いいようなことにつきましてもいままでもいろいろ指導いたしまして、ステッカー等を張っている例が多いわけでございますから、そういったものの一環として今後指導してまいりたいと思います。
  116. 磯崎叡

    磯崎説明員 私のほうも実は管理局ごとに何かそういう形でもって外の方に呼びかけるだけでなしに、やはり中の乗務員が常に心がけるようにということで、何かの形でそういうことをやっております。しかし、たとえばそれは何とか週間というだけのことになるおそれもございますので、そういう点について十分、最近また担当者を集める会議がございますので、各管理局ごとに創意くふうを出してやるようにいたします。
  117. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 運輸大臣は。
  118. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 先ほどあらゆる努力をいたしますと申し上げましたが、これは逃げことばではないと御了解いただきたいと思います。  私はとにかく運輸行政を担当しておりますので、いまお話しのように航空機のみならず、自動車もありますし、国鉄もあるいは民鉄もいろいろな交通機関がございます。そういったものが歩調をそろえて、人の命を預っている交通機関でございますから、そういう方向で少なくとも初心に返って、人命を尊重するような方向でお互いに努力をしよう、国民の中でそういうふうな声が起こるような方法をもちまして、ひとつ十分考えて効果のあがるような方法で実行できるように努力をいたしますというようなことを申し上げたつもりでございますから、御了承をいただきたいと思います。
  119. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣の御答弁に私期待をいたしております。どうか在任中にぜひとも実現をされるように心からお願いをいたしておきます。次の問題でございますが、日航のいわゆる一連の事故でございます。昨年モスクワの事故が起きる前でありますが、昨年の九月二十九日に初めて日航の立ち入り検査を行なっておりますが、その結果、運輸省が出した勧告の内容は、乗員の語学力や発着の訓練ということでございます。これだけで十分だったかどうか反省しているかというのであります。私はその時点においてモスクワの飛行事故を起こすような体質が日航の中にあることを運輸当局が気がつかなかったのじゃなかろうか、こう思うのです。こういういわゆる勧告の内容、乗員の語学力や発着の訓練、単にこれだけでよかったかどうか、こういう点でございます。私は運輸省の手の打ち方がおそかったのではないか、監査が不十分だったのじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。その結果があのモスクワの事故につながったのではないかと思うのです。要するに、モスクワの事故というのはパイロットミスであるということがはっきりしているわけでございます。運輸当局の対策が早急に打たれていれば、少なくともパイロットミスによるところの事故はなかったのじゃなかろうか、未然に防げたのではなかろうかと思うわけでございます。したがいまして、この点についての運輸大臣の責任があるのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  120. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 どうも打ち続く事故でございまして、私ども航空当局といたしまして、たいへん申しわけなく思っております。この席を拝借いたしまして深くおわび申し上げます。  そこで、まず大臣からの答弁をいたします前に、事務的に先般のボンベイ事故の後に私どもがどういうことをしたかということを御説明申し上げたいと思います。  そこで、昨年の九月二十九日から十月二十日まで、乗員の訓練あるいは審査体制あるいは機長に対する審査等につきまして実地に私どもの検査官が乗り込みまして、実際の状況を監査いたしました。その結果出しましたのが十一月十三日付の勧告でございます。この勧告で申し上げていることは、要するに責任観念をもっと徹底してもらいたいということでございますが、特に申しておりますのは、まず「規程類の厳守」でございます。これにつきましては、「規程類の厳守については、安全性確認検査等機会あるごとに指摘してきたところであるが、現状は必ずしも十分徹底されているとは思えない。従ってこの際あらためて全運航乗務員に対し規程類を厳守するよう指導するとともに、特に次の点について周知徹底を図る必要がある。」特に「出発前及び着陸前のブリーフイングの徹底」これは出発する前あるいは着陸する前に相手方空港状況でございますとか気象状況、保安施設の状況その他万般の状況をよくディスパッチャーと相談し、現地の状況を把握するわけであります。こういうことを徹底的にやってほしい。  それから「進入中の高度及び速度のコールアウトの励行」これは飛行機が入ってまいります場合に、現在どのくらいの高度である、スピードはどのくらいであるということを刻々にコーパイロットが報告する。それを機長が聞いてやっているということであります。  それから「離陸及び着陸時の基本操作の厳守」これは離陸をするとすぐ脚をあげるとか、これは当然のことでございます。こういった事柄について特に厳守してもらいたいということを申し上げたわけでございます。  これはなぜかと申しますと、立ち入り検査をした場合に、もちろんあらゆる場合ではございません。主としてこういった基礎的な動作をわれわれの監査官が乗っていた場合にでも励行しておらなかった事実があったわけでございます。したがいまして、この点については特に励行してもらいたいということを申しました。  それから「国際線運航乗務員の技能の保持」「今回の立入検査の結果、着陸時に操作の余裕に乏しい者が見受けられた。これは国際線の場合国内線に比して飛行時間あたりの離着陸回数が少ないためと思われるので、特に経験の浅い機長の場合には離着陸経験の増加、担当路線の限定等技能の保持に有効な措置を講ずる必要がある。」こういうことを申しました。と申しますのは……。
  121. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 監査結果を聞いているのではないのです。ぼくは責任を聞いているのですよ。
  122. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 そこで申し上げるわけですけれども、そういうこととかあるいは語学力の向上をはかれということを申しました。あとはDC8の機長の昇格要件、副操縦士が機長になる場合の要件、そういうことについて申したわけでございます。  そこで、今度のモスクワの問題に入るわけでございますが、モスクワの場合につきましては、やはり今回の結果によりますと操縦ミスということでございます。かりに、私どもの先ほど申し上げましたような勧告、規程類を厳守せよということを申しましたし、離着陸時の操作を厳守せよということを申しましたが、これが確実に履行されておりましたならばああいうミスはおそらくなかっただろうと私は存じます。しかし、残念ながらこの勧告を出しました時点とモスクワの事故の時点が非常に接近しておりまして、はたして私どもがこういうふうなことを言って——これはもちろん文書として出す前にも口頭では言っておったわけでございますが、必ずしも徹底されておらなかったという点に問題があったのではないかというふうに私は考えております。
  123. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 ですから局長、監査結果を私は聞くのじゃないですけれども、とにかく監査の結果を日航へ言った、日航がそれを守っているか、守ってないか、監査官が乗っていてもでたらめをやっていたのだから、非常にそこに疑問があったわけですよ。問題があった。ですから、よくいわれるのは、運輸省から日航に対する監査はなれ合いだ、なれ合いだ、こういわれるのですよ。単に、一片の通牒、作文行政、向こうへ出しておけばそれでいいのだというその感覚なんです。これがあのモスクワの事故につながっておる。ですから、単に監査しました、終わりました、報告を書きました、大臣が判こを押しました、日航の社長に渡した、それで事が終われりとするところの現在の運輸省航空行政の姿に問題があるのではないか、私はそれを申しておる。それをぜひとも今後直したい、こういうことなのですよ、いいですか。運輸省が日航の監査をすることに対して世評ではなれ合いに終わっていると批判する者があるのですよ。それは日航の重役陣に、運輸省その他の官庁から天下り人事がからんでいるからだという人もいるのです。これは事実そのとおりなんですよ。それで私はその批判にこたえるために——現在日航の重役陣がどんな官庁から天下っていっているか、これも知っております。局長がお答えにならなければ、私申し上げますけれども、御存じですか。
  124. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 大体存じております。
  125. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大体御存じだとおっしゃる。少なくとも国策会社、その日航に対してどういう重役陣、重役は何名いるか、この日本航空株式会社にちゃんと規定されている。この人間全部が全部を覚えていろと私は言わないけれども、少なくともお役人さんから天下りが何人いるかぐらいは知っていなければならないのじゃないかと私は思うのです。  はっきり申し上げますと、日航からいただいておる書類ですから間違いないと思うのですよ、少なくともこういうことがいえる。朝田社長、これは御存じの運輸事務次官。それから稲盛繁さん、大蔵省の理財局長。田中鎭雄さん、郵政省の事務次官。それから新井裕さん、警察庁の長官。こういったお歴々が天下りしている。この天下りの事実ということは十分世間でも知っているのです。これはいままで、過去のずっといろいろの例があると思うのですよ。問題は日航の技術陣、運航の責任者、こういったものは少なくとも日航のはえ抜きでなければならないと思うのです。もちろんはえ抜きの人がやっているようでありますけれども、そのはえ抜きの人が、なかなか自分たちの意見が通らないというのが現在の日航の状態のようです。  なぜかといいますと、朝田社長がいわゆる営業第一主義、先ほど原さんも言っておりましたその営業第一主義に徹底しているから、安全第一を技術陣が言ってもそれが取り上げられない、こういうのが日航の中の体質だというふうに私は聞き及んでおります。こういうことが続いておりますとたいへんなことになってしまうのじゃなかろうかと思うのです。少なくとも私は、この日航の体質をまず根本的に改めなければ、今後も事故が続くのじゃなかろうか、こう思うのです。それを心配するのです。  御承知のように、朝田社長はほんとうに航空機に対して知識を持っているかどうか。現に昭和三十八年五月日航の専務になられてから今日までは、確かに飛行機の問題に対しては一生懸命勉強されたと思います。しかし根がどだい、東大を昭和十年四月に出られてから逓信畑をずっとやってきて、海上保安庁の総務部長、そうして運輸省の官房長、海運局長、三十六年に事務次官、そうして三十八年四月退任、それから一カ月後には日航の専務ですよ。ほんとうに飛行機というものに対して熱心にいままで若いときからやってきた人、そういう人が日航の社長になるのならこれは問題はない。ところが何でもかんでも運輸官僚の、要するに順送りにこういう国策会社に入っていくところに私は問題があると思うのです。私はこの点をひとつ是が非でもこれから直していかなければならないと思うのですけれども大臣いかがでしょうか。
  126. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 人事問題についても考えるべき点はあるかと思いますけれども運輸省関係の人が必ずしも不適任であるとは考えません。私は先般朝田社長以下日航の幹部を招致いたしまして、さっき申し上げたような注文を出しました際に言ったことなんですけれども、ちょうど先ほど原さんの手紙をお読みになった、それに相当に近いことを実は申したのです。私は昨年暮れにそれを申したのです。今日の航空機、これは世界的に相当経験も積み、方々で使われている航空機でございますから、この航空機自体に非常な欠陥があって、それが非常な災害のもとになるということは、よほど整備が悪くないと考えられないことだと思います。また整備にいたしましても、これは非常に整備が悪いのだ、こういうことも言っておられますけれども、しかし、その乗員そのものも自分の命を捨てることになるのですから、これは整備が整っているかどうかということは、乗る人たちもこれは命がけの問題ですから、飛行機を動かす前にはそれに対して十分に関心を払うのはあたりまえのことだと思います。今日、日本の飛行機が行っておりますような世界じゅうの大きな国際的な空港におきましては、空港の地上設備というものも安全を害する程度に悪いかということになりますと、一応これも整っていると見なければならぬと思います。でありますから、航空法でも要求しておりますように、あるいは航空法から出まして省令もございます、それから社内規則もございます、そういったものをすべてマスターし、それをいつも必ず緊張して順守しておりますれば、そういう事故とはつながってこないのがあたりまえだと思うのであります。そこにどこかに欠陥があるのじゃないか。それは原さんが言われたように、私はだれがどこで欠陥があったということは言い得ませんけれども、運航する全体の体制におきまして、精神面でどこかに欠けるところがあるのじゃないか、それを直さないとだめですよ。だから単に訓練訓練といいましても、飛行機の動かし方、計器類の処理のしかた、それだけを訓練していたのではだめなんです。自分たちはとうとい人命を預かっているのだ、だからこれはいやしくも事故を起こしてはいけないのだという、パイロットとしての責任感それからそのパイロットを乗せて安全に運航させるための整備員その他関係者のこれに対する意識、そういったものが結集してこないと、ほんとうに安心して飛行機に乗れないのじゃないかということを朝田社長以下に、私は自分の私見でありますけれども、しろうとの意見として聞いてくださいというので懇々と申しました。全く同感ですということでございました。それ以来何度か往復がありました。文書の往復もございますし、私のところに来て話もされたのでありますが、だんだんそういうことで社内体制も固めてきておられるようでございます。単に運航面だけじゃございませんで、整備部門、それから人事管理の面、それから、これはたとえば、私が知ったかぶりをして言うようで恐縮ですけれども、ある空港で、翌日非常に早くたたなければならぬというような場合に、前の日に操縦者が夜ふかしをするようなことがありますと事故につながってくる、そういう人事管理の面、これなんかも大切なことじゃないかと思います。ですから、その空港に出張している人たちは、操縦士がそういうような条件のもとに働かないように、安全第一で気をつけてもらわなければならぬと思います。そういうこと全体を含めまして、とにかく社内全体が安全第一というところにつながっていくように、それを大事にしてみんなが努力をしてくれるような体制を早くつくりなさいということを申したのでございまして、私はこれからもいろいろ改めるべき点は、各社にもあると思います。あると思いますけれども第一にその問題が一番大事だ。それからいろいろなこまかい問題については、お互いの努力によって改善していくという体制が望ましい。いまでもそう思っておりますし、今後もその方針で指導してまいりたいと考えておる次第でございます。
  127. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣のお話、わかります。大臣のお話の中に出てまいりました人事管理の問題、特に日航が国際線に行っている場合、いろんなうわさ話を聞いているのです。そういうことはないと私は思うのでありますけれども、いろいろなうわさが入ってくるのです。日航の操縦士、整備士さん、そういう方々が外地へ行かれて、当然休養をとらなければならない時間に何をしているか。この問題については私はほんとうに厳重な監督、監査を必要とすると思うのです。  もう一点、私は伺いたい点があるのです。それは、私は常々疑問に思っておるのですけれども、日航法の第十七条に「運輸大臣は、前条の規定による監査をするため必要があると認めるときは、会社からその経理に関する報告を徴し、又はその職員に、会社の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、経理の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。」というふうな規定がございます。先ほども局長が述べられましたけれども運輸省の監査官が日航に乗り込んで立ち入り検査する、その際に、書類の検査をするのか飛行機の検査をするのか、どっちが大事なんだろうか。私はしろうとでわかりませんからお伺いするわけでございますが、運輸省の監査官が書類を幾ら見ても安全確保が確認されるとは信じがたい。いまの日航法十七条にある「必要な物件を検査させることができる。」というこの一条です。この「必要な物件」というのは一体何を意味するのだろうか。抜き打ちに整備工場に入っていって、そして機体整備の状況をまず検査する、こういったぐらいの熱意がほしいのです。はたして運輸省の監査官が飛行機のあの複雑なエンジン、特にジャンボのエンジンなどを検査するだけの知識と経験を持っているかどうか。寺井次長、あるいはそこに金井さんもいるようでありますけれども、ほんとうにこういうことをやったんだろうか。やれるんだろうか、こういうふうに疑問が私はあるのです。このいわゆる検査をするという、この十七条にあるところの「その他必要な物件を検査させることができる。」というこのことは一体何を意味しているのかを、まずお伺いしたいわけです。
  128. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 日航法十七条、これは経理監査のための規定で、そのためのものでございまして、別に整備工場へ参るとかそういった場合の立ち入り検査は、航空法の百三十四条のほうでこれをやっております。
  129. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私もその点について非常に疑問に思っているのですが、航空法のほうで、その立ち入り検査をする場合に、やる人は技術はよほど確かな方ですか。
  130. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 確かな者でございます。
  131. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 その確かであるということを検査する人はだれなんですか。
  132. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 技術部長から御答弁申し上げます。
  133. 金井洋

    ○金井政府委員 航空法百三十四条による立ち入り検査は航空局の運航課と検査課の担当官が立ち入り検査をします。これは一応機長路線資格審査官あるいは航空機検査官という職務に日ごろから従事しており、新しい器材その他については絶えず訓練を受けて研修をしておる、要するに能力のある者が立ち入り検査をするというたてまえになっております。
  134. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 たてまえとおっしゃいましたな。たてまえ。たてまえなんですよ。大臣、ここなんですよ。問題は。たてまえになっている。実際上、技術があるかないかなんですよ。これは私はあると信じたい。それでなければ立場もないと思いますから、私は信じたい。しかし実際問題として、その日航へ乗り込んでいって機体の検査をできる人というのは、ほんとうは飛行機の操縦もできなければならぬと思うのです。一体飛行機の操縦ができるんだろうか。自分ができないのに、単にこうだああだ技術的に理論の上から言って、それで済むものだろうかどうだろうか、こういう素朴な疑問が私は出てくる。ほんとうに操縦ができるような人がそういうふうな監査官になっているのかどうか。この点、どうですか。
  135. 金井洋

    ○金井政府委員 運航関係で機長路線資格を認定する人は、その当該型式の航空機の操縦をできる人もおればできない人もおります。たとえば727の操縦をするけれどもDC8の操縦技術を見るということもございます。ただこの場合には、一般的な操縦士としての航空保安施設の使い方がどうかとか、着陸、進入のときの操作がどうかとか、その手順を見るわけでございますので、パイロットとしての基本的な知識があれば、そういう操作は見れます。ただ望ましいこととしては、検査をするすべての型式の航空機の操縦ができることが望ましいわけでございますので、その点については、予算の許す範囲内において、逐次研修をしておるわけでございます。
  136. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 また出てくるのは金の問題なんです。予算の許す範囲内とすぐ逃げる。私はもういいです。それじゃ。期待しております。ほんとうに日航に乗り込んで、あるいは全日空に乗り込んで、東亜国内航空に乗り込んで検査ができる人というのは、ほんとうに運輸大臣が技術を見ておいてもらわなければいかぬ、こう私はしろうと考えでありますけれども思うわけであります。  時間もありませんから次へ進めますが、モスクワの日航機墜落事故につきまして、ソ連政府の事故調査委員会の報告書によって、きわめて初歩的なパイロットミスと結論が出されているわけです。政府も日航もこの報告書を了承しているのかどうか伺いたいのであります。
  137. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 了承しております。
  138. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 了承しているそうでありますが、しかし、最近の新聞記事、これは二月十一日あるいは十五日の読売新聞でございます。これによりますと、日航パイロットから不満とする声が高く、会社側としても独自の調査委員会を設けて補完調査を行なうようないきさつも聞いているのです。これは新聞の記事です。大臣としてこのソ連の事故報告書に対して、基本的に、いま航空局長から答えられたように認めた。ところが、日航のほうではこれに対して不満だ、パイロットのほうから不満だということで補完調査を行なう、こういうふうな動きもあるようです。そうなりますと、この日航の補完調査のいかんによりましては、報告書の訂正をソ連側に求める意思があるかどうか。局長どうですか。
  139. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 事故調査委員会と申しますのは、これは国際民間航空条約にきめられまして、各国にそれぞれに設けられます。これは非常に権威のあるものでございます。そこで、日航が別に調査をしたいという声も私は聞いております。これは聞いておりますが、社長はたびたび明言しておりましたが、あくまでこの調査が不服であるからではないのです、そのほかにいろんなことで、もし今後事故防止に参考になることがあればやりたいということでやっておるわけで、この調査に対して不服であるからやっておるわけでは絶対にございません、こういうふうなことを社長が申しております。したがいまして、私どもといたしましては、これに対して不服を申し上げるというふうなことはいたす意思はございません。
  140. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 私は当然のことだと思うのです。事故報告書は受け入れるべきではないかと思います。運輸省からも笠松君が行っているわけでありますし、また日航からも野田整備本部長が行っておりまして、一緒に加わってこの事故報告はなされているわけでありますし、当然権威ある報告書であります。その権威ある報告書を私はすなおに受け入れて、日航がほんとうに今後事故を起こさないようにしようというそのかまえがなければいかぬと思うのです。少なくともソ連の方々が、日本から行った笠松あるいはまた野田、こういう方々を加えて調査したわけです。その結果できたそれを認めることができないというような見解を発表しようとしているところの日航の体質、パイロットの体質というものを私は非常に不満に思うのです。  もう一点伺いたいのですが、日航の機長会の造反という記事があるのです。これは新聞の記事であります。二月十一日の読売でございます。この記事を見まして、あのモスクワの空港で肉親をなくされた方々がどのように思っているかということなんです。私のところにも何件か電話がございました。日航に対して、この日航のいわゆる体質といいますか姿勢といいますか、これを根本的に立て直す必要があるんじゃないか。何を言っているんだ、私たちの肉親はあの極寒の地のモスクワの空港でなくなっているんだ、それにもかかわらずこの日航機長会の記事というもの、二月十一日の読売を読まれた方々が非常に憤慨して私のところにも電話がございました。この記事を大臣がお読みになっているかどうかわかりませんけれども大臣としてどのようにお考えになるか、私は伺っておきたいわけであります。
  141. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 その事実は聞いておりません。その記事も見落としたかもしれませんが、見ておりません。しかしお話しのように、この問題につきましては国際的にも認められた権威のある委員会におきまして結論を得たものでございますから、これは謙虚に尊重して、今後そういう事柄を再び繰り返さないという決意が大切であろうと思います。
  142. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そこで、私いろいろ考えてみますのに、やはり一番大事な問題はパイロットの問題じゃないかと思うのです。いま見ましたように、機長会の問題あるいはまたいわゆる報告書に対してけちをつけるという言い方は悪いかもしれませんけれども、そういうふうな造反の記事、あるいはこの補完調査をしたいなどというこういう考え方、これをまず根本的に直さなくちャいけない。  そこで、私はパイロットの問題をもう少し掘り下げて考えてみなければいけないのじゃないかと思うのです。現在の日航のパイロットというものが、確かにあのジャンボジェットを導入した関係上、相当の操縦時間を持っている人たちがそっちのほうへ移ってしまって、そのために三十歳代のパイロットがやるようになった、こういうことを聞いておるわけであります。この三十歳代のパイロット、確かに航空飛行時間というものが少ないように思います。そういう人たちが緊急事態、異常事態が起きたときに適切な対応措置、これが沈着冷静にとれているかどうか、ここが問題だと思うのです。あのモスクワの事故の副操縦士のボイスレコーダーに残った声、これは明らかに、日ソ合同委員会の解明によりますと、間違いを発見した後の叱責と謝罪のことば、こうしか受け取れない。基本的なこと、これすら確実にやっていない。先ほどもお話がありましたように、運輸省から行って検査をしていて一緒に乗っていても、やるべきことをやっていないというようなことがあると言われましたけれども、事実こういったふうな数々のパイロットの基本的な訓練ができていない。ここに私は今日日航が大きな事故を引き続いて起こした大きな原因があるんじゃないかと思うのです。パイロットの精神の弛緩、これには数々の実例がございます。モスクワの事故で発見されている例でございます。たとえて言いますと、離陸直後に引き上げるべき車輪を引き上げていなかった、あるいは離陸時に操作してはならないスポイラーレバーを車輪レバーと間違えて操作した、こういう可能性がある。あるいはエンジン圧力比の測定装置の氷結防止装置を入れていなかったために、この測定装置が正常に働かなかった。パイロットが異常があったものと勘違いして、パワーをカットして失速した、こういうことも考えられるというようなことが、この日ソ事故合同調査委員会の最終報告には書いてある。それを私は新聞で知ったわけであります。一体乗客の人命を損かっているという自覚が日航のパイロットにあったんだろうか、こういうふうに私は疑問に思うのです。人命尊重という観念がほんとうにあのパイロットにあったんだろうか。パイロットは当然のこととして慎重に、冷静に、かつ綿密にエンジンの操作をし、そしてまた乗るというのが、先ほども大臣が言われました当然のことだと思うのです。自分自身の命もその飛行機に託しているのですからあたりまえのことであると思うのですけれども、実際あのボイスレコーダーに残っておる声というものは、全く私たちは理解に苦しむことばなんです。それを読まれた御遺族の方々がどのような気持ちでおられたか、これは私はほんとうに考えてみたいわけであります。  こうした精神の弛緩、この問題を何としても日航が一日も早く改善しなければ、引き続いてこのような事故が起こるであろう。これは日航ばかりでなく全日空にも東亜国内航空にも起こる事故かもしれません。いずれにしても事故は起きてはならない。事故はゼロでなければならない。事故の確率が少ないなんて航空大学校の校長さんが言っておりましたけれども、私は確率とかパーセンテージというのは大きらいなんです。そのパーセンテージにひっかかった。要するに確率が少ないというけれども、そのときにその中に含まれてしまった人は死んでしまう。乗員も死ぬ場合もあるかもしれませんけれども、とにかく命をかけて乗ってもらわなければならぬのに、それにもかかわらず、どうもあの日航のパイロット、あのボイスレコーダーに残っておるところのあの音声から判断しますと、非常に精神的な弛緩があると思うのです。私はこういうものをぜひとも改めてもらわなければいかぬと思うのです。  私は原さんに直接伺った話でございますけれども、これはパイロットばかりの問題じゃないと思うのです。日航の幹部にもこういう精神の弛緩があるんじゃないかと私は思うのです。私はその例を一つ大臣にも申し上げてみたい。あるいは大臣も原さんから伺っているかもしれませんけれども、お嬢さんの遺骨を持って羽田に帰着されて、疲れて、そして御自宅に原さんがお帰りになる車の中で、日航のある重要な立場にいる人と対話をした。これはお名前は原さんは申しませんでした。私も聞きませんでした。それはあくまでもあのモスクワの事故につきまして、飛行機が離陸のために滑走しているときに、がたんがたんという音を生存している人から聞いた。原さんはモスクワに行って、生存したわずかの方々、その人たちにも会って聞いたところが、離陸のときにもうすでにがたんがたんという音がしていた。おかしいなというふうに感じた人もあったというのです。それでそのことを自動車の中で日航のえらい立場にある人に話したそうです。ところがその日航の人はどう言ったかといいますと、モスクワのシェレメチェボ空港はいなかの空港で滑走路が穴だらけだ、そのせいでしょうという意味のことを言った。原さんはあ然とした。私もあのモスクワのシェレメチェボ空港におり、また飛び立った経験も持っておりますけれども、国際空港ですよ。モスクワの代表的空港だと私は思うのです。それに対して日航のえらい人があまりといえば無神経なことばを吐いているのじゃなかろうかと思うのです。ですから私はパイロットばかり責めるのでなく、日航の経営陣の中にもこういうことばを、無神経といいますか、全くお話にならない。こういう日航の体質というものを経営陣の中に私は見るのです。これでは交通運輸事業に携わる者としては失格だと私は思うのです。念頭から離れてはならないこと、それは事故ゼロということだと思うのです。日航が長い間築き上げてきたあのほんとうに事故のなかった日航、それがここでどうしてあのように事故が連続して起こるようになったんだろうか。松尾社長が朝田さんにかわってからどうしてあんなに違ったんだろうか、こういう疑問を私は持つわけでございます。この日航の重役陣の体質について大臣はどのように受けとめられるか。この点について承っておきたいわけであります。
  143. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 先ほど、具体的ではございませんでしたが、社内の安全体制をもう一ぺん考え直して締め直さなければならぬと申しましたが、これは何も現場をあずかっておる部門だけではございませんで、ことばをかえていいますと、上下左右にわたりまして航空の安全というものに関係しておる人たちはすべて一体になって、先ほど申し上げたような意識に徹して安全を守っていかなければならぬということを申し上げたのでありまして、この点は社長を呼びましたときにもよく話してございます。もちろん重役は別だという意味では毛頭ないのでございます。
  144. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣、もう一つ重ねてお伺いしますが、日航の長野運航本部副部長ですが、モスクワの飛行機事故のあとで新聞記者のインタビューに答えて「とりあえず副操縦士の操縦による離着陸はやめました」、こういう発言をしている。この発言は重要な意味を持っていると私は思うのです。「とりあえず副操縦士の操縦による離着陸はやめました」、これは短いことばでありますけれども、こういうことばが事実長野さんの口から出ているとしたら、私はもう非常に憤慨にたえないのです。事実ボイスレコーダーに残っている声は副操縦士の声なんです。副操縦士に操縦させていた事実を長野さん自身も認めているわけだ。そしてとりあえず副操縦士の操縦による離着陸はやめる——離着陸、これは一番大きな問題です。そのときこそ正操縦士がみずから操縦かんを握るのが私は当然だと思うのです。それをやらせていなかったところに大きな問題があったと私は思う。これでは日航に対して監査を何べんやっても監査は穴だらけだと思うのです。この点はどうですか。
  145. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 機長が自分で操縦すべきかあるいは副操縦士にどの程度において操縦さしていいのか、これは非常にこまかい規定があるようでございますから、この点については政府委員から御説明させます。
  146. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 もう時間がありませんから急ぎます。  私は、この副操縦士の問題をはじめといたしまして、まだまだたくさんのことを伺いたいわけでございます。しかし、まだ聞きたいこともございますので、この問題についてもう少し私、問題だけを指摘しておきたいと思います。  地上整備員とパイロットとの問題、地上整備員の給料とパイロットの給料があまりにも格差があり過ぎる、こういう点についても私は研究を要するのではないかと思う。もちろんこれは仕事の内容が大きく違っていることはわかります。わかりますけれども、そこに何かしら地上整備員とパイロットとの間にしっくりいかないものが起きているのじゃないかという心配があるわけです。  それから先ほども申し上げました、パイロットが交代地でどんな休息をしてそして体調を整えているか、こういう問題も研究しなければならない問題だと思います。これは何も日航に限った問題ではないと思います。全日空にもあると思いますけれども、まず日航は国策会社であり、それがゆえに私は一そうこの点について強く強く指摘をしておきたいわけです。そしてまた、日航の幹部の責任問題、これこそ私は重大な問題ではないかと思うのです。  最後に一つだけ原さんのことばをかりて申し上げてみたい点があるのです。それはほんとうにたいへんな問題だと私は思っているのですけれども、原さんはこういうことを言っているんですよ。   朝田社長は、モスクワのシエレメチエボ空港で遭難者の家族を迎えた挨拶の時も、又、遭難者の追悼法要を築地本願寺でおこなった時の挨拶の時も、遭難者もその家族に対し、“申しわけありません”とは云われましたが、“私は責任を痛感しております”とはついに言葉としては表わしませんでした。   これは何を意味するものでしょうか。   又、私がモスクワや東京で会った日航の重役で責任を痛感していると詫びた人は一人もおりません。   逆に遭難者の父である私の心情を平然とかきむしる様な発言をした人もおります。 先ほど私が申し上げたような自動車の中でのお話です。   もっとも、遭難者の家族としての私達の面倒を見てくれた日航の幹部や一般職員の人達は誠心誠意の人達でした。   私は、日航の重役達との前述の経験から朝田社長とその体制下の重役達がこんどとった“いわゆる対応処置”は、朝田社長及び官界出身の重役達の責任回避とうけとらざるを得ません。   現在の日航が、国際営業路線の拡大主義の下に経営されてきていることは、すでにふれましたが、昨年の一連の日航事故に関する重大な背景が、日航の能力の実体を無視した拡大主義にあることから云えば、官界出身の日航の重役達に責任がなく、ただ運航と整備の担当重役にのみ責任がある、と何人が断定し得るのでしょうか。   私は遭難者の父と云う立ち場で、こんど始めて日航を代表する朝田社長や何人かの重役に会いましたが、その時痛感したことは、この人達が皆一様に官僚特有の責任回避の性格をもち、すべてを事務的に処理しようとして、人間性を全く喪失していて、しかもそのことについてすら自覚していないのではないか、と疑惑の念にかられたことであります。   日航がこの様な人達によって運営されているなら、昨年の一連の日航事故もおこるべくしておこったのであり、又、今後もおこり得るのではないか、と思われます。 このように言われておる。人間性の喪失なんです。人命尊重ということに対して日航の幹部はあまりにも知らな過ぎる、考えがなさ過ぎると私は思う。この問題に対して大臣がどのようにお考えになっておるか、それをお伺いしまして、私はこの日航のモスクワ事故について質問を終わるわけであります。最後に一言だけ大臣にお話を伺いたい。
  147. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 日航の幹部に責任がないなんということは絶対にないと思います。もちろんこういう航空機の事故を起こしたのでありますから、幹部にも責任があることは当然でございます。  私も原さんからその意味のことを承りました。ただ、運輸省といたしましては、運輸省自身もこれはもちろん責任を感じなければならぬことだと思っておるのでございますが、ただ、いま私どもが目の前で一番急ぐことは何かと申しますと、関係者がやめる、あるいはやめさせるというような、そういうことよりも、一番大事なのは、毎日毎日飛行機が何十機何百機と飛んでいるわけでございまして、とにかくいまの何となく不安でしょうがないという航空状況でございますから、これを何とかして早く国民の方が安心して航空機を利用されるようなところまで安全性を高めなければならぬ、これがもうわれわれに与えられた現在の一番急ぐ問題であり、これがもう大前提であると思っておるのであります。私は各社の方に申したのですが、とにかくまず安全体制をつくってもらいたい、絶対にこういうことがないという確信があるまで安全体制を詰めてつくってもらいたいということを主張したのであります。ということは、相当時間がたちますけれども、これで全然日航の方々にも運輸省にも責任がないということは私は言えないと思っております。それはまた別問題といたしまして、とにかく現在のところはこの安全体制を確立するということを第一義にして邁進してくださいということで、いままで話してきたことを御了承いただきたいと思います。
  148. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 航空問題の最後に申し上げておきたいことは、事故原因の究明の問題これは未然に事故を防止するためにも最も必要なことで、大切なことでございます。  大臣も御承知のように、航空事故調査委員会設置法案これが出ております。また、大臣が所信表明の中でも触れられておるわけでございますが、この事故調査委員会、これはさきの通常国会におきまして廃案になりました。私も内閣委員会におきまして、いろいろとこの問題に対して質問もいたしましたし、かなりこの設置法案につきましては、手直しをしていただきました。私たちの意見を非常に取り入れて前向きに直してくだすった。こんなに修正をしたことはないといわれるほどの修正をしていただいたことは、私は非常に了といたしております。一日も早くこの事故調査委員会の設置法案を通して、日本におけるところの航空事故調査委員会というものを設置させ、そして事故を未然に防いでいく。この方向に向かって私も一生懸命に努力したいと思います。大臣もぜひとも在任中に航空事故の絶滅を期し、いや航空事故ばかりでなく一切の交通の事故をなくして、そしてほんとうに無事故の運輸大臣だったといわれるようにしていただきたいことを重ねてお願いしておくわけであります。  それで、先ほども申し上げましたように、安全の問題のほかに公害の問題を聞くと言っておりまして聞かなかったのではいけませんから、二点だけ聞かしていただいて終わりにします。  タクシー行政についてちょっと伺いたいと思います。これは自動車局長もおりますから、三多摩をはじめといたしまして、大都市周辺におけるタクシーの不足は、現在都内に比べまして非常に著しいものがございます。したがいまして、終バスを過ぎますと、国電をおりますとかけ足で駅へおりて、タクシーの乗り場までかけ足でいく、こういう状況でございます。地域によりましては、一台もタクシーがない、こういうこともございます。このように地理的に陸の孤島と化しているような悪条件の中にありまして、何といっても頼みとするのはタクシーではないかと思うわけでございます。こういった住民の不便を解消する意味からも、三多摩地区におけるタクシー行政の充実改善、これを私は訴えたいわけでございます。三多摩地区におけるタクシー不足の現状、これからいって、まず何といっても個人タクシー免許を与えてはどうか、このように私は思うわけでございます。いろいろと免許できない事情もあるのかもしれません。しかし、やはり三多摩に居住する者としては、一番の悩みは、夜おそくなっての足の確保であります。どうしてもこの問題をぜひとも解決してもらいたいと思っております。二十三区で個人タクシーの営業申請ができるならいいのですけれども、三多摩の人にはどうしてもできない。そのために、やむを得ず東京のほうに仮転入というような形——まことにいけないことでありますけれども、事実はやっているわけであります。こうして仮転入して免許申請を行なっている。こういう不明朗な事実があるということを私は承知しております。しかし、これではならないと思うのです。やはり実際三多摩に居住している者が三、多摩において個人タクシーの営業ができる、こうなりますと、足の確保ができるのではなかろうか、こう思いますので、この点についての自動車局長の答弁をひとつお伺いしておきたい。
  149. 小林正興

    ○小林(正)政府委員 個人タクシーは一人一車制と申しまして、非常に特殊な形態でございますので、いわゆる流しタクシーということで、大都市のような業務活動の非常にひんぱんなところで行なわれておるわけでございます。こういった個人タクシーを認める区域につきましては、陸運局長が流し営業によって経営が成り立つと認められるような地域を指定しております。御指摘の地域につきましては、主として住宅地域でございますので、法人タクシーの車庫待ち営業というものが中心となるかと思われますが、三多摩地区につきましては、大都市の周辺であるという特殊性を考慮いたしまして、今後検討してまいりたいと思います。
  150. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 ぜひひとつ早い時期にこの実現をはかっていただきたいことを重ねてお願いをいたしておきます。  時間もございませんので、最後の質問でございますが、大臣も指摘されました第二の点の公害の問題の中で、自動車の排出ガスにつきましては昭和五十年にマスキー法並みの規制を実施することを目標として、さしあたり来年度におきましては段階的に規制の強化を行なうとしております。こういうふうな所信の表明がございます。  私、これでちょっと伺いたいことがございますが、それは日本自動車メーカーでございますところの本田技研工業、これが開発いたしましたCVCCエンジン、それから東洋工業のロータリーエンジン、これがいわゆるマスキー法の本場で世界のビッグスリーを追い越してマスキー法の基準に合格した、こういうことを新聞記事で私読んだわけであります。日本の本田技研工業なり東洋工業の車がいわゆるビッグスリーといわれるフォード、クライスラーあるいはゼネラルモーターズ、これの工場がやってできなかったことを、いま偉業を打ち立てたわけであります。このような偉業を打ち立てた。率直にいって、これに対してわが国政府が評価してしかるべきではないか。高く高く評価すべきではないか。りっぱなことをやったんだ、よくやってくれた、こう言ってほめてやってもいいんじゃないかと私は思うのです。別に私はこの二つの工場に対して何も義理を持っているわけではございません。しかしながら、やはりいいことをやったときにはほめてやる、悪いことをしたときには徹底的に大臣がそれに対してがっちり言うという姿勢がなければいかぬと思うのです。日航に対して大臣がきびしい姿勢でもって臨まれる、そのことはよくわかります。しかし、りっぱな業績をあげたこれらの会社に対して大臣がやはりほめてやるというような度量があってこそ、日本の産業は大きく育つのじゃないかと思うのです。私は、マスキー法の問題に対して、大臣が五十年にマスキー法並みの規制を実施することを目標にしている、こういうことを打ち出されている以上、この三社の業績に対して評価してしかるべきではないかと思うわけでございますが、この点を問いただしまして質問を終わるわけでございます。
  151. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 私も大都市における自動車の排気ガスの問題につきましては、特に重大な関心をもって扱っておるのでありまして、先般東洋工業のルーチェの話が出まして、それからさっそくこの東洋工業の社長さんも私のところへ見えまして御報告がありました。そういうことがございますのでさっそく調べてみたのでありますが、本田技研の問題といい、いまの東洋工業の問題といい、相当にこれは技術の開発が進んでおるエンジンだと思います。ただ技術的に見ますと、排出ガスの種類がいろいろございますけれども、それを詳細に調べてみますとまだマスキー法並みにはなかなかほど遠いというような点もあるようでございます。しかし、そういったのがとにかく開発されておるという事実はこれはもう非常に尊重しなければならぬと思うのでありまして、私のほうにそういう問題を研究する公害研究所という研究所がございまして、そういった問題に取り組んでおるわけでございます。東洋工業の問題のごときは絶えず情報を交換いたしまして、成果をあげるように協力をしておるということでございまして、それはもっと積極的にやりなさいということを言っておいたのですが、いまお話しのそれに対して補助でもするとか、何かそれに力づけるような方法を講じるとかいうような問題があることはもちろんあるのでございますが、私のほうでは実は、これは役所の組織法に書いておるのですけれども、エンジンそのものに対しましてはこれは所管は通産省でございまして、運輸省のほうはでき上がったエンジンについて、排出ガスが非常に多い場合はそれを規制をする、そういう標準をつくるということが私のほうの仕事になっておるようでございまして、そういうことを聞いたものですから、実は先般も通産大臣とこの問題について話し合いました。ひとつ共同で何とかして大都市のスモッグを近いうちになくするようにお互いに協力しようじゃありませんかというので、通産大臣も、非常に賛成です、関係局長の間でもってそういう話をするようにしたらどうでしょうか、私も関係局長に言います、あなたも関係局長に言ってくださいということで、完全にその点は意見が一致しておるのでございます。通産省は通産省でそういうエンジンのメーカーに対しまして、それぞれ通産省の権限の範囲内でこれを助成をしたりそれを保護したりするような方法は持っていると思います。ただいまのところは、そういった問題につきましては、私の知っている範囲では税制面で非常に特別の考慮をしているという事実はあるようでございますが、しかしお話しのように、こういった問題につきましては政府ももっと積極的に、成果のあがりますような方法を考えていかなければならぬ、これはいずれ通産大臣ともよく相談をいたしまして、そういう方向努力をさらに続けたいと思います。
  152. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 終わります。  型式検査の問題は運輸省の所管でもありますし、いずれにしましても、そうしたことから考えまして通産のほうとよく御協議をなさっていただいて、しかるべき処置をとっていただければ幸いでございます。  どうもありがとうございました。
  153. 井原岸高

    井原委員長 次回は、来たる二十七日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十分散会