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渡辺武君 私は、初めに
総理大臣に伺いたいと思います。
現在、報道関係者の間で
総理大臣の言論弾圧事件が大きな問題になっております。その内容の一端は、「文藝春秋」十一月特別号、「週刊文春」九月十四日号、これらに載っております。また、十一月四日付の民放労連の「労連情報」や、十一月七日のマスコミ関連
産業労組共闘会議の抗議声明書にも、またさらに、十一月十日の
日本共産党機関紙「赤旗」紙上にも載せられております。
その概要は、「文藝春秋」によりますと、
総理大臣は、八月二十日、軽井沢の料亭「ゆうぎり」で
総理大臣付の新聞記者、いわゆる角番記者九人と懇談された。「そのおり首相はブランデーをのみながら、おそらく軽い気持でしゃべったらしいが、 “放言”というにはあまりに重大な
意味を含んでいる。」というふうにこの雑誌は書き出しておりまして、キッシンジャーとの会談や日中問題などについて語ったあとで、次のように言っておられる。以下、この記事を読みますが、「自分が郵政大臣から
大蔵大臣のときにかけて、放送免許や国有地の払い下げで、いかに各社の面倒をみたかをいちいち社名をあげて力説したあげく、」
——次が引用句の中です。「オレは各社ぜんぶの内容を知っている。その気になればこれ」
——カッコしまして
——「(クビをはねる手つき)だってできるし、弾圧だってできる」、これで引用句
一つ終わりまして、もう
一つ引用句がすぐ次に続いて、「「オレがこわいのは角番のキミたちだ。社長も部長もどうにでもなる」という発言がつづく」。
〔理事米田正文君退席、
委員長着席〕
さらにまた次が、「オレは佐藤のように」
——その下にカッコでもって「(新聞社に)」というのが入っておりますが、「電話なんかしないよ」というかと思うと、また「「つまらんことは追いかけず、ちゃんとすればオレも助かるし、キミたちも助かる。わかったな」とも言ったらしい」。さらに続けて読みましょう。「首相がこの席でいちばんいいたかったのは、角番記者の仕組みについてだったようだ。こういっている」。次が引用句です。「「
田中番が四交代というのはいかん。顔も名前もおぼえられん。社長にいって、二交代にして名簿を出させる」、「そうしなけりゃ安心してしゃべれん」と角番体制の改革を提言し、「東京に帰ったらすぐやろう」という調子だったというのである。」、これが文藝春秋に出ている記事の一部でございます。
この
総理大臣の発言の内容は、それは私的な懇談会の席上で、一ぱい飲んで、酒の上のことであるとはいえ、これがもし事実であったならば、これはあまりに重大なことだと思います。一国の
総理大臣が、かつて御自身が郵政大臣、
大蔵大臣在任中に、その地位を利用して報道機関に利益を供与した、それを利用して、天下の公器である報道機関を圧迫、統制し、さらには、このことを圧力として、新聞記者に取材内容の制限、さらには取材記者の
総理による選択、すなわち事実上の登録制を要求する。一国の
総理の権力による明白な言論弾圧、言論統制であり、重大問題だと言わなければなりません。
私、申し上げるまでもなく、
総理、よく御存じだと思いますけれども、憲法第二十一条の第一項一には次のように書かれております。「集曽、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」、こう書かれておりますように、言論の自由、報道の自由、これは民主
主義の根幹をなすものであります。もしこの「文藝春秋」に書かれているこのことが事実であるならば、これは、一国の
総理大臣自身の手による憲法違反、民主
主義の根幹に対する著しいじゅうりんだと言わなけりゃなりません。このような事実のあったことを
総理はお認めになりますかどうか。