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1972-11-11 第70回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十一月十一日(土曜日)    午前十時六分開会     —————————————    委員の異動  十一月十一日     辞任         補欠選任      玉置 和郎君     小笠 公韶君     茜ケ久保重光君     和田 静夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大竹平八郎君     理 事                 高橋 邦雄君                 西村 尚治君                 丸茂 重貞君                 山本敬三郎君                 米田 正文君                 杉原 一雄君                 西村 関一君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 小笠 公韶君                 梶木 又三君                 川上 為治君                 木村 睦男君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 白井  勇君                 竹内 藤男君                 徳永 正利君                 中村 禎二君                 長屋  茂君                 林田悠紀夫君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 工藤 良平君                 小林  武君                 小柳  勇君                 須原 昭二君                 竹田 四郎君                 羽生 三七君                 横川 正市君                 和田 静夫君                 塩出 啓典君                 三木 忠雄君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 岩間 正男君                 渡辺  武君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        法 務 大 臣  郡  祐一君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  植木庚子郎君        文 部 大 臣  稻葉  修君        厚 生 大 臣  塩見 俊二君        農 林 大 臣  足立 篤郎君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  佐々木秀世君        郵 政 大 臣  三池  信君        労 働 大 臣  田村  元君        建 設 大 臣  木村 武雄君        自 治 大 臣  福田  一君        国 務 大 臣  有田 喜一君        国 務 大 臣  小山 長規君        国 務 大 臣  二階堂 進君        国 務 大 臣  濱野 清吾君        国 務 大 臣  本名  武君        国 務 大 臣  増原 恵吉君        国 務 大 臣  三木 武夫君    政府委員        内閣官房長官  後藤田正晴君        内閣法制局長官  吉國 一郎君        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        公正取引委員会        事務局経済部長 三代川敏三郎君        防衛庁長官官房        長        田代 一正君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     小島 英敏君        経済企画庁総合        開発局長     下河辺 淳君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁大気保全        局長       山形 操六君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  高島 益郎君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省理財局長  橋口  收君        大蔵省国際金融        局長       林  大造君        文部省大学学術        局長       木田  宏君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        厚生省社会局長  加藤 威二君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        食糧庁長官    中野 和仁君        林野庁長官    福田 省一君        通商産業省貿易        振興局長     増田  実君        通商産業省重工        業局長      山形 栄治君        通商産業省鉱山        石炭局長     外山  弘君        運輸省港湾局長  岡部  保君        運輸省鉄道監督        局長       秋富 公正君        運輸省航空局長  内村 信行君        郵政大臣官房電        気通信監理官   舘野  繁君        郵政省電波監理        局長       齋藤 義郎君        労働省労政局長  石黒 拓爾君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        労働省職業安定        局長       道正 邦彦君        建設大臣官房長  大津留 温君        建設省計画局長  高橋 弘篤君        建設省道路局長  高橋国一郎君        建設省住宅局長  沢田 光英君        自治省税務局長 佐々木喜久治君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        総理府統計局長  加藤 泰守君        日本国有鉄道総        裁        磯崎  叡君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君        日本銀行理事   渡辺 孝友君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十七年度一般会計補正予算(第1号)(内  閣提出、衆議院送付) ○昭和四十七年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和四十七年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  本日の理事会協議の件を御報告申し上げます。  昨日質問のございました三木忠雄君の、昭和四十九年度四次防単価積算基礎質疑に対する取り扱いにつきまして協議をいたしました結果、防衛庁当局より御本人に直接お話をすることで協議決定いたしました。  右御報告申し上げます。     —————————————
  3. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 昭和四十七年度一般会計補正予算  昭和四十七年度特別会計補正予算  昭和四十七年度政府関係機関補正予算  以上三案を一括して議題といたします。  これより質疑を行ないます。向井長年君。
  4. 向井長年

    向井長年君 私は、まず総理に、総理施政方針並びに政治基本についてお伺いいたしたいと思います。  田中総理は、熾烈な総裁選挙を争われて当選せられ、総裁となり、総理になったわけでありますが、ただいまこの総理に対する国民期待というものは、ほのかにあるのではなかろうか。これは、長年官僚総理にかわりまして、庶民総裁として、しかも身近な総理であるという、そういう立場から、国民ほのか期待を持っておると思います。しかしながら、いま総理が一番最初打ち出した問題は日本列島改造論なるものであり、これに対しまして、国民は何かやってくれるんだろうと、こういう期待があるわけでありますけれども、これを分析するならば、過去の罪悪が蓄積されて、それを何とか考えなければならぬということになっておると思います。そういうことを考えますならば、総理歴代内閣の重要な地位を占めてこられた、池田内閣大蔵大臣、あるいはまた自民党幹事長をあわせ、あるいは通産大臣というふうに、重要な役割りを持ってこられて、過去の誤りを何ら反省する意図がないようにわれわれ考える。したがって、新しく日本列島改造論なり、あるいはまた、その他福祉政策なり打ち立てるためには、過去においてこういうことをやったためにこういう国民に対して非常に不安を与えてきた、こういう問題を率直に、まず反省の上から、今後どうするかという問題を出すのがあたりまえじゃないか。この点について総理は心から反省し、どういうところが悪かったか、経済あり方が悪かったか、この点を明確に、まずお聞きしたいと思います。
  5. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 世界的な傾向でございますが、一次産業から二次、三次へ人口が移動する過程において、国民総生産国民所得が増大をいたしております。しかし、その状態の中には、避けがたいものとして都市化現象というものが起こっておるわけでございます。明治から戦争が終わるまでも、都市に集中をする状態が続いておったわけでございます。しかし、戦後特にこれが激しくなりました。終戦直後、農村に帰っておった都市からの疎開者、それから、大陸から引き揚げてきて焼け野が原である都市に対し就職ができなかったので、ほとんどが農山漁村に居ついたわけでございますが、しかし、就職の場所がないので、都市職場が復活すると同時に都市へまた戻ってきたわけでございます。そうして、政治の上で一番大切な問題として政策的に求められたものは、まず国民に職を与えるということであります。もう一つは、国民総生産を上げると同時に、国民所得を上げなければならないということでございました。でございましたので、四十五年を展望しますると、国民所得西欧諸国と大体比肩するところまでに至ったわけでございますから、それなりに政策成功はしておるわけでございます。  成功はしておるのでありますが、そこに物価の問題、公害の問題、いろんな問題が起こってまいりましたので、これを処理をしなければ国民の合理的な生活と、より以上な幸福を追求することができないということで、新しい立場視野と角度から新しい政策を実行しなければならないという、その一つとして列島改造というものを国民皆さまの前に提示をしたわけでございます。まあ、その前にも、国土総合開発という意味で、地方開発、東北、北海道開発法とか九州、四国開発法とか、いろんなものがございましたが、そういうものとか、新産業都市建設法とか、それから離島振興法とか、山村振興法とか、いろんなもので国土総合開発は行なわれてはきたわけでございますが、これからは列島改造という大きな一つ計画というものを進めなければ、あらゆる問題が解決できないのではないかということで、一つのビジョンとして、国民にたたき台として私案を提示をしたわけでございますので、各位のひとつ御批判を賜わりたいと、こう考えておるわけでございます。
  6. 向井長年

    向井長年君 あなたは、大体、世界的傾向であるとか、あるいはまた、それに伴う工業化等過密過疎の問題とか、こういうことで、何かこれ、はぐらかしておるんですよね。それより根本的な問題があるのじゃないですか。たとえば、経済成長、そういう中から経済成長優先、そういうことをまず考えて、人間尊重とか、あるいはまた国民福祉、こういう立場に対しましては従のものの考え方を、今日、してきたと思うのですよ。それに対してあなたは何ら反省をすることなく、ただこれはあたりまえだというものの考え方が、こういう日本列島改造論をやらなきゃならぬという事態になっておるのじゃないですか。この点、どうですか。
  7. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 必ずしもそうじゃないんです。戦後お互いに議席を得たわけでございますから、これはもう、私もあなたも同じことを議論してきたわけであります。まず次・三男対策をやろう、とにかく月給を上げよう、就職の場を確保しようということ、それが第一の目標だったんです。その中で、社会保障制度を取り入れ、短い間ではございますが、制度としては西欧に比肩するところまでいったわけでございます。ですから、われわれが考えなければならぬのは三つあるんです。一つは、まず職場を得て堅実な国民所得を得たい。生活環境整備を行なうために社会資本を拡充したいということであります。第三は、社会保障を完備してこの世に生まれたよさを感じながら生活できるようなものにしたい。こういうことでございますが、まず第一の、月給を取れるようになった。しかも国民所得平均西欧諸国並みに、まずまずという第一の段階を迎えました。しかし、第二の社会資本蓄積率については、アメリカに比べればまだ四分の一でございます。ですから、下水もない、道路も狭い、公害も起こる、こういうことでございまして、まだまだ生活環境整備されておりません。全く都市における緑地などを考えれば、環境整備されておるなどとは思われないのでございます。それから第三の社会保障というものも、制度はできました。しかし、西欧諸国の二分の一ないし三分の一の給付の状態であるということでありますから、これからひとつ第二、第三の問題と取り組まなきゃならない。こういうことでありまして、公害をつくらないように、もう少し列島改造を早く出せばよかったじゃないかという考えは確かにあります、これは。しかし、それは年率、三十五年から四十五年の一一・一%平均という高い成長率というものが、政府考えたよりも三、四%も高かったというところに問題があることは事実でございまして、それをコントロールできなかった政府自民党政策に対してはよろしくないと、こう言われれば、万全でなかったということは認めます。
  8. 向井長年

    向井長年君 やや反省したような答弁です、いわゆる万全じゃなかったと。たとえば、成長することによって福祉も充実するという、しかも、これは池田内閣当時に高度経済成長政策を出して、これが、言うならば、順次山ろくに水が流れるようにと、こういうことを言われましたね。しかし、水が流れたのは何だと言えば、汚水であり汚濁であり公害であると、こういう形になってきておるんですから、これを、まず国民福祉というものを基本考えて、経済というものを、国民に対する分配、これを重点的に考えていくのが私は正しい今後のあり方ではないかと、こう思うんですよ。この点についてどうですか。
  9. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いまも申し上げておりますとおり、生産第一主義ではなく、生活第一主義に切りかえるときを迎えておる、こう思います。
  10. 向井長年

    向井長年君 なかなか総理、私の思っておるようなことを言われるからこれはいいと思いますが、あなた、日本列島改造論を出しましたね。これ、私は、毎日新聞の何か、読者世論調査ですか、これを見たときに、本年度のベストセラーに入っておるのですよ。百万部突破。これは、有吉佐和子の「恍惚の人」、そして「日本列島改造論」これは一、二を争っている。これを読んだ読者は、国民は、これに対して感銘は受けてないんですよ、日本列島改造論には。四十二番目、これは世論調査で。そういう点は、やはり日本列島改造論というものは、必ずしもすべてが悪いとは言いませんけれども、国民は直接に福祉にどうつながるだろうという疑問を多く持っておるということですよ。この点、総理、知っておられますか。
  11. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは一つの方向を国民皆さまの前に提起をしたんです。しかし、これから公害はどういうふうにして除去をしていくのか、公害除去——公害の絶対にない日本産業をつくりながら、また知識集約的な産業に転化しながら、国民所得はコンスタントにまたこれからも上がってまいります、上げなければなりません、世界でもって十三、四番目だということではなく、一、二番目にならなくとも、まあとにかく四、五番目になりたいとか、十番目以下に入りたいとか、こういう理想というのは実現しなきゃならないと思うんです。そういうことを考えてまいります。それで、経済規模が大きくなると水の使い方が非常に多くなります。これは全部、農村においても水洗を使うことになりますから、そうすれば個人当たりの水の使用量は非常に多くなります。そういう、生活を合理化し、生活を高度なものにしていくためにはどうするのかというと、なるほど日本列島が合理的に使用されないと理想は実現しないんだなあということがよくおわかりになると思うんです。これは、東京や大阪のまん中にリハビリテーション施設をつくったり、あるいは身体障害者施設をつくったりするよりも、山紫水明のところにつくらなきゃならないということに、もうすぐ気がつくんです。ですから、もう少しいろんな各論ができてまいりますと、列島改造と言わなくてもいいんです。国土総合開発でも何でもけっこうなんです。与えられておる日本国土全体を俯瞰的、鳥瞰的に見ながら、これをこれから五百年、千年も後にも後代の日本人が使えるようにということを考えると、やはり列島改造国土総合開発というものが必要だなあということは、これは理解が得られる、こう思います。
  12. 向井長年

    向井長年君 いま総理が、産業優先ではない、福祉優先だということを明言されましたが、しからば、分配を先行的に計画することが大切だと思うんですよね。したがって、成長はその計画内において調整していくということでなけりゃならぬと思います。そうすれば——この福祉政策年次計画というものを持っておられますか。持っておれば示していただきたいと思うんですよ。
  13. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 具体的な問題、厚生大臣からお答えをいたしますが、いろいろな社会福祉の問題に対する年次計画はいま持っております。持っておりますだけではなく、新しい長期経済計画の中には社会保障がどう位置するかということも、ひとつ答申をいただこうと思っております。
  14. 塩見俊二

    国務大臣塩見俊二君) 社会福祉年次計画はどうかというお尋ねでございまするが、これからさらに社会福祉を向上さしていくという観点から申しますと、どうしても国内資源の配分というものを変えていかなければならぬと思うわけであります。そういったような意味合いからいたしまして、今回、国際協調社会保障ということを二つの大きな柱として五年計画がつくられることになっておるわけでございまするが、そういったものを背景にして年次的に進めてまいりたいと思うのでございまするが、社会福祉そのものにつきましては、この年次計画を総体的に立てることはなかなかむずかしいわけでありまして、たとえば、年金は年の経過によって増加をしてまいりますし、あるいは、生活保護のごときは毎年毎年策定するのが適当であると考えますので、そういったようなものを総合いたしまして、この企画庁でつくる年次計画背景にして、全体として飛躍的な福祉の向上をはかっていくということで努力をしてまいりたいと思います。
  15. 向井長年

    向井長年君 これまたあとで具体的に質問いたしますが、特に総理、今後の経済運営財政主導型にするという政府方針には基本的に私たちは反対しません。賛成であります。しかし、田中内閣のように従来の民間設備投資主導型を改める制度的な措置というもの、これを講じなければ、財政主導型にはならぬと思います。この点はどう考えておられますか。
  16. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いままでは、政府経済計画も、経済運営財政運営も合理的なものとして進めてきたわけでございますが、どうも政府考えておるよりも民間設備投資が非常に多く行なわれてまいりました。ところが、これからは重化学工業中心というわけにはまいりませんし、知識集約型の産業にだんだんと変わっていかなければならないということでもございますし、それから公害防除公害除去というものを非常に強く要請をいたしてまいります。特に複合公害や総排出量の規制ということも行なわれてまいりますので、民間設備主導型ということは望めなくなっております。それで、先ほど申し上げましたとおり、社会資本の不足な現状でございますし、それからもう一つは、これからの新しい投資というものは全国的な視野に立って計画的に誘導されなければならない、こういうことであります。そういう意味で、財政主導型ということにならざるを得ないということでございます。まあこれからは当分の間、財政主導型の経済運営が行なわれるということであります。
  17. 向井長年

    向井長年君 いま景気が回復しつつあるからそういうことを言うけれども、景気が、またこれが後退するようなことがあれば、また逆な面が出てくるのじゃないかと、こういうことが一つ考えられる。それからもう一つは、財政主導型に名をかりた、いわゆる追加支出等がなされて、これがインフレにつながると、こういう問題もあわせて出てくるようなおそれがあると思いますが、この点についてはいかがですか。
  18. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国際的にもインフレ傾向もございますし、日本インフレを押えなければならないということは、もう当然でございます。しかし、これからが社会福祉等中心にした非常にウエートの高い財政投資が行なわれていくわけでございますから、私は非常にこまかい配慮のもとに慎重な経済運営財政運営を進めてまいります。まいりますから、原則として消費者物価卸売り物価を上げないように十分配慮をしていかなければならないということはもちろんでございますが、これから、今後の補正予算物価が上昇するという考えは持っておりません。
  19. 向井長年

    向井長年君 この実態経済が、これが十分その財政支出を消化するようにするためには、やはり国民生活関係公共投資と申しますか、こういう問題、あるいは福祉、ここに支出の大幅な増加を見なければ、これは財政主導型の本旨に合わぬと思うのですよ。この点、やはりそういう形で進んでいかれる予定ですか。
  20. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 社会資本整備生活環境整備社会福祉等ウエートが相当移っていくということは御指摘のとおりであります。
  21. 向井長年

    向井長年君 第二には、昭和四十年の不況から回復するためには、四十一年度、四十二年度と若干財政主導型の予算を編成したと思います、過去におきまして。その後は民間設備投資主導型にすぐ戻ってしまった。つまり、自民党政府のやり方は、景気後退したときには産業の大企業等に対して見舞われる財政支出というものをふやしてきておる、そうして景気が回復すれば民間設備投資にバトンを渡すことを繰り返しておる、こういうことが過去の実例なんですよ。今後、いま田中総理が言われたけれども、やはりそういう形になっていくのじゃないですか。この点、どうなんですか。
  22. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) 先ほども総理が言っておりますように、大きくいままでと方針を変えまして、福祉充実型、福祉優先生活中心経済の変革をやるわけですよ。したがいまして、いままでのように、いわゆる民間設備投資主導型といいますか、輸出主導型、こういうのがパターンが変わってくるのですね。現在の、いま回復しつつある景気も、個人消費なり住宅建設、財政が主となって景気を回復しておるのですね。そこにパターンが変わる。したがって、資源配分もそこに変革を受けまして、産業構造の変革というのはどうしても出てくるのですよ。だから、従来とは相当思い切った転換が行なわれまして、そういう意味から申しましても、福祉優先ですから、おくれた公共投資を重視していく、そうするとだいぶ違うのですね。しかも、現在は民間設備におきまして、まだ需給ギャップといいますか、供給力の余力があるのですね。したがいまして、私は、公共投資なり、また福祉優先のそういう財政をふやしましても、インフレが起こるというような懸念は少なくとも現段階においてはないと、かように考えております。
  23. 向井長年

    向井長年君 非常にこれは矛盾すると思うのですよ。総理、あなたが日本列島改造論政策化するためには、これは昭和六十年度には鉱工業生産は現在の四倍になる、四倍増。それから輸出も四倍増である、あるいはGNPも四倍である、まあこんなことを言っておられるのですよ。そうすると、現在八十二兆円ですか、これが三百兆以上になりますね。こういうことをやるとするならば、民間設備投資を拡大しなければならないのですよ。これはおそらく民間設備投資の主導型をより強化する、こういう形になってくると思います。総理が現在言ってるような財政主導型とは、一体、この関係の問題が非常に矛盾すると思う。この点、どう考えておられるのですか、いわゆる日本列島改造からくる四倍増から、この経済あり方
  24. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは四倍増にしようというのではなく、常に申し上げておりますとおり、一〇%ずつコンスタントに経済成長すれば三百四兆円になりますと、八・五%ずつ成長すれば二百四十八兆円になりますという、一つのめど、いわゆる潜在的な成長——これだけの力はあるのです。力はあるのです。ですが、一〇%にしたほうがいいのか、八%にしたほうがいいのか、七%にしたほうがいいのかは、これはこれから考えていかなければならぬ問題で、経済審議会に答申を求めておるわけでございまして、十二月中には答申をいただけると。これは七%になるのか八%になるのかわかりません。わかりませんが、将来のもの、どうあるべきかという答申をいただけるはずでございます。
  25. 向井長年

    向井長年君 いま総理考えていることは、大体年々一〇%程度を意図してこういうものを言われたと思うのですよ、改造論の中で。そうでしょう。そうなると、民間設備投資のこの主導型というものは変えていくのだと言っても変えられない状態が生まれてくるのじゃないかと言うのですよ。
  26. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いままでは、不景気のときなど見ておりますと、財政が先行すると、そのあとから民間設備投資が興ってくるのです。そうすると輸入が急増してまいります。これはそういうパターンを繰り返してまいりました。ところが、今度はそうじゃないのです。今度は、景気は七・二%と言っておったのが、今年度、年度間を通じては一〇%をこすかもしらぬというような状態であっても、一向設備投資というものが過去のように急速には興ってきておらぬのであります。これ、設備投資をやるとすればどうするか、まず公害投資をやらなきゃいかぬです。公害投資をやらなきゃいかぬ。そういう意味で、公害投資をするか、どこか移転してしまうかということをやるのが一番先でありまして、もうこれ以上設備を拡充するような状態にない。いま経済企画庁長官から述べましたとおり、設備の余力は十分まだございます。生産余力はありますので、これだけ景気が浮揚しておるといいながら、民間設備投資を押し上げるような状態じゃないんです。ですから、これから将来的な問題を考えてみても、やっぱり設備をするにしても都会でやれば非常に高いものをやらなければいかぬし、まあとにかく脱硫装置を一つつけるにしても相当な負担でございます。そういう意味で、これからは公害の出ない企業ということでございします、全国的に分散をした合理的な状態をつくらなけりゃいかぬ。そうすれば、その前提として、鉄道や、それから港湾や道路や、そういうものの整備ということは当然必要でございますし、そこにまた託児所を必要とするとか、老人ホームを必要とするとか、学校をつくるとかということは当然必要でございまして、いままでのような民間設備投資主導型ということは、これからは起きないと私は思います。
  27. 向井長年

    向井長年君 これは、幾ら総理がどう言おうと矛盾してきますよ。まあ見ていなさい。しかし時間がないから、私はこれだけいつまでも言っておるわけにいきませんが、しかしながら、総理は常に、日本列島改造論はこれはテーマとして投げかけたのだと、したがって、それをこれから具体的に消化するのだと、こう言っておるけれども、テーマじゃない、もう実際本予算もそれに従って組んできておるでしょう。来年度の予算もそれに従って組もうとしておるのですよ。したがって、こういう問題は、やはりテーマというならばまことに権威がなくなりますよ。現在もうそれで組んできておるじゃありませんか。それに従った来年度の予算も組もうとしておるでしょう。したがって、そういうまやかしはやめたほうがいい、はっきり言って。したがって、いまも、経済主導型の問題につきましても民間投資はやらぬ、民間投資は増大しないということは言えないでしょう。変えるというわけにはいかないでしょう。やっぱり並行してやるということでしょう。だから、さっき言う経済主導型に移行するのだと言いながらも、そういう問題の矛盾が必ず起きてくる。これは私は、総理が幾ら言おうとも、そういう状態が今日までの経緯であり、自由民主党内閣の政策であるのだから、その点は答弁要りませんが、そういう点をはっきり私は申し上げておきます。  そこで、続いて私は安保問題について質問したいと思います。外務大臣。  実は、この安保に対しましては、御承知のごとく、私はもう端的に申し上げますが、防衛庁内部におきましても久保防衛局長、あるいはまた先般衆議院において増原防衛庁長官等が発言せられ、あるいはまた自民党の一方の旗がしらであり、しかも先般まで外務大臣をやっておられた福田赳夫氏も、安保の再検討が必要だと、こう言っておる。アメリカの重要な国防筋におきましてもそれを言っておる。国民世論、いわゆる世論調査の中でもそう言っておる。こういう状態の中で、安保の再検討というものがなされなければならぬと思いますが、この点、どう考えておられますか。私は具体的にいま申し上げませんが、そういう形が各所で言われておるわけです。防衛庁長官がそう言ったでしょう。その主軸である久保防衛局長が言っているのだ。アメリカ筋がそうだ。世論がそうだ。そして、いま総理なり外務大臣は、これに対してどういう態度をとろうとするのか。再検討ですよ。どうですか、外務大臣。
  28. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま向井さんの言われる再検討は、二つに分けて考えにゃいかぬと思うのです。現在の安保条約の運営、運用を再検討するということなのか、それから安保条約の仕組みそのものを再検討しようというものなのか、私にはわかりませんけれども、第一の運用の再検討は不断にやっておるわけでございまして、安保条約が締結されて以来二十年余になりまするけれども、実態はたいへんな変貌を遂げておるわけでございまして、今後もわれわれは、基地の整理縮小等をはじめといたしまして、鋭意改善を加えていくつもりでございます。しかしながら、安保体制のワク組みそのものについて再検討を加えようということになりますと、事は重大でございます。国民の大多数の方がそういうことでなければならないのだというように、国民的確信が結晶してまいりますればともかく、政府としてはそういう問題について軽々に再検討論をもてあそぶことは不謹慎だと考えております。
  29. 向井長年

    向井長年君 防衛局長久保氏が、これ、はっきり言っておるんですよ。基地の縮小、有事駐留方式への移行を提唱して、将来はこの条約を友好的に改めなきゃならぬということを言っておるんですね。これを受けて増原長官もそう言ったでしょう、増原長官も有事駐留の方向に向かっていくであろうと。これは運用上の問題じゃないんですよ。これを言っておるんですよ。それから福田前外務大臣も、米軍の有事駐留が望ましいと、こう言っているんですよ。そういう形でどんどん変わってきておる。アメリカもその方向になりつつある。これに対して世論調査においても三〇%以上のそういう支持者が出ておる。こういう状態。私は運用上の問題を言っているんじゃない、いま言っているのは。再検討というのは、根本的に安保の改定という立場から、これをどう考えますか。外務大臣、そう言っても、防衛庁の所管が全部そう言ってきているんじゃないですか。
  30. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 私の答えをしましたのは、衆議院の内閣委員会で和田委員の質問に対して答えたのでありまするが、いま御引用になりましたところは、「有事駐留というふうなことばで意味される方向にだんだん向かっていくのじゃないかというふうな考え方もされるわけであります。」という答えをしたわけであります。ことばの意味が少し明確でなかったかもしれませんが、いま外務大臣が言われましたように、運用の問題についての意見として私はこのことを申し述べたのであります。安保条約を堅持するというたてまえについての——これ、まあニクソン・ドクトリンその他の進展等を考え合わせまして、私どもが安保条約の基本を堅持するという点についての考え方が変わるということではございませんで、運用についての事実上の進展、変化が見られるであろうと、こういうふうなことで申し上げたわけであります。
  31. 向井長年

    向井長年君 久保局長、どう言ったの。ちょっとそれを答弁してください。
  32. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) おそらく、私がこの春ごろに書きました論文のことを言われているのだろうと思います。詳細は省きまするけれども、結論的に申せば、長期的にものごとを考える場合に、米側といえども政策は常に変更するわけで、そのために日本側で対応策がないのではいけないから、あらかじめ常に不断の検討、研究が必要であろうと、そういう前提に立っておるわけであります。そして日米安保条約についてメリットもデメリットもある、そういったデメリットをなるべく薄くするというような方向での研究が必要なのではないかということであります。したがって、長期的なものごととしては日米安保条約についていろいろ内容的にも研究をする必要があるであろう、しかし、それをどういうふうに手をつけるか、これは政治の問題でありまして、アメリカの国内情勢、あるいは日本の情勢、そういうものに応じて勉強あるいはそれに対応した策が講じられるであろうということであります。  それから有事駐留あるいは駐留なき安保、あるいは基地というような問題も、これまたことばの定義が明確でございません。かつて民社党の方々と福田前外務大臣との応酬の中でも出ておりまするけれども、実体的にはあまり変わっておらないので、要するに、日米安保条約が日本の、あるいは極東の安全と平和に寄与する、そういった抑止力を果たす上において必要な基地機能は何であるか、それを勉強する必要がある、単にアメリカ予算が足りないからといって、この基地は日本に返しますと、そういういった無目的な返還のしかたじゃなくて、アメリカにとっても、また日本にとっても必要な基地はどれであるか、基地機能は何であるか、そういうことを検討した上で減らすべきである——ちょうどレアード国防長官がこの二月に国防白書を議会に出しておりまするけれども、その中で言っておりますることは、日本本土と沖繩にある米軍の基地は合理化をすべきである、そうして日本アメリカの安全保障と両立する範囲内において最小限にしたいと思うということを白書の中で申しております。私の立場もそれと同じであります。
  33. 向井長年

    向井長年君 あなたたちは、防衛庁長官も、局長もですよ、もっと明確にやらなければいかぬですよ。はっきりそういうように移行するであろうということを言っているのだから、現に。国民はみなそうとっておるのですよ。幾らあなたたちが言いわけをしようと、今後安保は有事駐留方向に向かっていくであろうということを言っているじゃないか、現に。はっきり言っていますよ。そういう考え方はあるんじゃない、そういうように向かっていくであろうということを言っているのだ。久保防衛局長もそうでしょう、そういうことを言っているじゃないか、現に。それで、アメリカ自身も、安保というものはやはりそういう方向で、アジアにおいての方向が緊張緩和を伴って——もちろんドル防衛問題もありましょう、しかしながら、日本との友好を保ちたい、軍事面じゃなくて、そういう立場に変えていかなければならぬということが各所にあらわれておるじゃないか、出ておるじゃないか。だから、そういう方向をあなたたちが言ってきて、外務大臣が、そういうことは、再検討という問題はそういう立場ではしないのだと、こう言ったら大きな矛盾を来たすじゃないか。その点、どうですか。
  34. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 決して矛盾しないわけでございます。アメリカにおきましても、日本におきましても、学者、評論家はもとよりでございますけれども、政府部内におきましても、そういう検討がなされ、研究が積まれることは一向差しつかえないし、ある意味において望ましいことと私も考えておるのであります。私が申し上げておるのは、そういった論議が国民的な確信にまでなってこないと、政府として制度の改変ということに踏み切るわけにはいかないということを言っておるわけでございます。いみじくもあなたは、日米友好関係の保持という形で安保条約の機能というものを言われたわけでございますが、安保条約というのは、たびたび申し上げますように、安全保障の面もございますれば、経済協力の面もございますが、その根底には、やはり日米間の信頼を具象化した仕組みであるわけでございますから、かりに一部の改定が合理的であるという判断が出ましても、全一体としての安保体制に手を染めるということが日米信頼関係をそこねるというようなことになった場合には、これまたよほど考えなければならぬ問題でございますので、私どもといたしましては、そういう論議、研究が行なわれることはけっこうでございますけれども、責任ある政府制度全体の改変ということについてどうだと問われたならば、それはもう、よほど国民的確信が定着してこない限りは、にわかに賛成できないということにつきましては御了解をいただきたいと思います。
  35. 向井長年

    向井長年君 そうすると、久保防衛局長の発言並びに増原長官の発言は、国民世論をそういうように向けようとしての発言ですか。ここではっきりこういうことを言われているのだ。有事駐留方式への移行を提唱している。そうして将来は、「この条約の本質を友好協力条約の性格に改め、軍事面はその中に包摂させるか、あるいは全般的な友好関係の必然的な結果として、有事の場合の軍事協力が生まれるものであるというふうに考えていくのが適当」である、こういうことを久保防衛局長は言っているんだよ。これは雑誌に出したんだよ、「国防」という雑誌に。そうでしょう。それから増原長官もこれにこたえて、有事駐留の方向に向かっていくであろうというような発言をしておるわけだ。これは、そうすると、いま外務大臣の言われることは、われわれはこう考える、国民はどうですかといって問いをかけているのですか。そうなんですか。そういう形でこういうものを言われているのか。前の福田外務大臣も、そういう方向に行かざるを得ないであろうということを明確に言っているんだよ、新聞記者会見で。そういうようにして、政府部内でそれが出ておるにもかかわらず、国民がまだまだ定着していないからという外務大臣のこの答弁は非常に矛盾するんじゃないか。合わないですよ、どうなんですか。
  36. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 久保防衛局長、軍事問題の専門家として私も尊敬いたしております。で、久保君がその立場におきまして、いろいろ検討を重ねて御自分の意見として公表されること、それは私は一向差しつかえないと思います。それから、その他の方々が御意見として持たれておること、それをはばむことはできないわけでございますが、私が申し上げておるのは、政府は、制度の改正ということに踏み切るにはよほど考えておかなけりゃならぬということを申し上げたわけでございます。知識、情報の交流は不断に、もう無限に行なわれておるわけでございまして、それはけっこうなことなんでございまして、久保君の論文が国民的な論議を呼んで、国民が防衛問題を、それを契機として考えていただけるということは、私はけっこうなことだと思うんでございまして、私が申し上げているのは、そういうことをはばむわけではないんでございまして、政府は一体、有事駐留に踏み切るつもりかどうかというようなことを聞かれた場合に、いや、にわかにそれはそういうわけにはまいりませんで、国民的な確信が定着してきた状況を見まして政府は判断すべきものだと考えておるというのが私の見解でございます。  それから、もう一つつけ加えて申し上げますならば、ただいままでアメリカ政府から公式に有事駐留の方式について御提案はございませんわけでございまして、アメリカにおきましても、同様にいろんな論議が行なわれておりますけれども、政府としては、まだ踏み切るに至っていないということだと思います。
  37. 向井長年

    向井長年君 私はここで、質問の中で、有事駐留に踏み切れというようなことを一言もまだ言っていませんよ。再検討をする時期がそろそろ来ておるんじゃないかと——検討ですよ。いまもう検討を始めておるでしょう。防衛庁長官がそういうことを言ったり、久保防衛局長がそういうことを言っているのは検討でしょう、もうそろそろと、部内で。だから、検討する必要がないのかと、検討の時期が来ておるんじゃないかということを私はいま言っておるのであって、踏み切れというようなことをいま言ったことはないんですよ。だから、外務大臣はそれに答えて検討——まあアメリカも正式に有事駐留やりますって、だれも言っていません。しかし、アメリカ部内のそういう関係者が、そういう方向が望ましいというようなことを各所で言っておるわけだ、同じようにね。そうすれば、そろそろもう検討が始まっておる、実質的に。したがって、政府自体も検討しなけりゃならぬ時期がそろそろ来ておるんじゃないかということを聞いておるんです。どうなんですか、検討しなけりゃならぬでしょう。
  38. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いままだ第一の運用面の改善を鋭意やっておるわけでございまして、それを限界まで詰めて一生懸命にやってまいるということが当面の私どもの大事な仕事だと思われるわけでございまして、その過程の中におきまして、条約並びにそれに関連した取りきめというような点につきまして、再検討すべき時期がまいりますならば、これは検討するにやぶさかでございませんけれども、当面のアクセントは、あくまでも運用面のぎりぎりの改善を精力的に続けてまいるというようにすべきであると私は考えております。
  39. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) さっき明瞭に申し上げたと思うんですが、私は速記録をさっき読み上げたんです。「有事駐留というふうなことばで意味される方向にだんだん向かっていくのじゃないかというふうな考え方もされるわけであります。」という言い方を私はしておるわけでございます。その前の応答では、安保を堅持する、安保を基調とするということは変わりませんということを明瞭に申し上げてある。で、この有事駐留というふうなことばで言いあらわせる方向というのは、私は、これはもういままでも議論がありました基地の整理縮小という問題が主たるものでございます。で、基地の整理縮小ということは、ニクソン・ドクトリンというようなものでアメリカが各与国に対して、自分でできることは自分でやってくれという、そういう方向で日本でも防衛力の整備に従いまして、安保が初めできましたような時期よりは、日本でできることをだんだんやっていくということが出てまいります、その段階で基地の整理縮小ということが議論になる。私どもも、基地の整理縮小ということは、できる限り必要最小限度のものにしていかなければならぬというつもりでございまして、さっき申し上げましたように、基本としては、安保の運用ということについての考え方を私はさして申し上げたということでございます。
  40. 向井長年

    向井長年君 防衛庁長官がそれは言いわけしようと——そういうような考え方も、移行するような考え方も、というような言いわけしておるけれども、事実これはそういうように国民全般はとっておりますから、久保防衛局長と同じ考え方でとっておるのだから、現に。もうそろそろ部内ではそういう検討が始まっておると。アメリカ自体でもそういう意見がどんどん出てきておると。これは実質的にもう、外務大臣がどう言おうと、部内で検討が始まっておるんですよ。したがって、あなた自身が、そういう基地の問題とか見直しの問題じゃなくて、本来そういう検討をしなければならぬ。何もすぐ変えよと私は言っていないです。そういうことが現在もう状態としてあらわれておる以上は——一番あなた、自民党の中で右だといわれた、皆さんのライバルであった福田赳夫前外務大臣がそういうことをはっきり言っているじゃないの。記者会見で言っておるのですよ、正式な。そういうふうにして、自民党内部でもどんどん出ておるじゃないの、派閥の親分が。そういう中で、いや現在直ちにやれということを私は言っいない、検討しなければならぬ時期が来ておるんじゃないですかということを聞いておるのでね。そうですと、あなた答えればいいじゃないの。いますぐやれと言ってないじゃないの。それはどうでございますか。
  41. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 有事駐留をテーマにいたしまして、政府が正式に検討に入るということまでは、私まだ決心がつきませんけれども、この運用面の改善をぎりぎり続けてまいる過程におきまして、今後の条約はどのような仕組みであっていいかというようなことは、その過程を通じまして掘り下げて勉強いたしてみたいと思います。
  42. 向井長年

    向井長年君 総理もよく聞いていただきたいんですがね。大体、外交問題とか、そういう問題については政府はいつも手おくれですよ。そうでしょう。あるいは自民党は手おくれ。はっきり言いますよ。沖繩返還はどうだったですか。沖繩返還のときに、いろいろ各党はそれぞれの意見を持ちました。わが民社党は、当時から核抜き本土並みだということを出したんですよ。そのとき、自民党なり政府はどう言った。核抜き本土並み、そんなことはできないと、アメリカさんが返してくれるんだから、好意で返してくれるんだから、そんなことはできないんだということを自民党なり政府は言っておったんですよ。しかし、最後は国民世論、こういう中から明確に核抜き本土並みになったじゃありませんか、まだ問題点はありますけれども。少なくとも政府自身、担当の人は、先見の明をもってそういうものの検討はそろそろやらなきゃならぬ時期ですよ。沖繩問題がそうですよ。わが党の言うことが、みなそうなってきたじゃないですか。日中問題もそうですよ。田中さん、あなた日中問題、一番早く出かけて、これは非常にけっこうでした。しかし、日中問題のときに、国民外交、あるいは各政党が中国に参りまして、周恩来総理と会った。私も参りました。このときに、台湾問題、日華条約に対してどうだったか。入口論、出口論でもんだ。そのとき、私たちは私たちの立場で、周恩来総理にも、あるいは王国権氏にも言ったことは、出口論あるいは入口論という論議があるが、これは出口論しかいけないんですかと、こう私が聞いたときに、周恩来総理は、そんなもんじゃない。まず五原則、三原則を認めることが前提だ、それさえ認めればそんな問題は問題じゃないんだということを言ったというので、私は帰ってきて、さきの予算委員会でこれを主張したはずだ、佐藤内閣時代に。これも同じように出口論になったでしょう。入口論ではないでしょう。三原則、五原則を総理が認めたから、政府が認めたから、日華条約は自然に解消するということになったでしょう。われわれの言うことはこれくらい先見をもって言っておるんですよ。安保もそうですよ。なぜそういうことが言えない。私は、沖繩問題、日中問題、あるいは現在の、いま言う安保も同じことだと思う。わが党が有事駐留をずっと言ってきた。当初、安保ができては、段階的解消ということをわれわれは打ち出した。公明党もそれを打ち出されました。それも、有事駐留だ、駐留なき安保だということを言ってきたやつが、いま現にそうなってきたではありませんか。これをまだ、いまだに政府は、いや、まだその再検討の時期じゃない——現に部内は検討しているじゃありませんか。総理、これに対してどう考えられますか。ぼくは、少なくとも、もう事実上検討が始まっている以上は、部内で、正式でなくとも、もうそろそろ再検討しなければならぬ時期だというぐらいのことは、あなたたち考えてもいいのではないか。いま直ちに破棄せいとか、あるいはこれを変えよというようなことを私は主張しているんじゃない。この点、どうですか。
  43. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 外交上いつも手おくれじゃないかというお話でございますが、問題は、手おくれであるか早目にやるかということではなくて、どうして国益を守るかということなんでございます。私どもは、たいへん政府が手おくれであるとか、腰が弱いとか、優柔不断であるとか、弱気であるとか、いろんな非難を受けるのでありますが、甘んじて受けます。そういうことではなくて、国の安全を保ち、国益を守るにはどうしたらいいかということが、時の政府の最大の責任であろうと思うのでございます。いままでの日本の外交の歴史を顧みるまでもなく、非常に政府が早目に勇敢な外交を展開したときは、不幸にいたしまして、日本は悲惨な運命を経験いたしておるわけでございます。外交というものは、もうあなたからさんざんおしかりを受けるぐらいに慎重でなければならぬと私は考えています。
  44. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日本の安全を完ぺきにするためにはどのようなものがいいのかということを勉強しなければならないことは、単に政府だけではありません、日本人は全部勉強しておるはずでございます。しかし、そういう勉強をしておる——勉強はあらゆる角度で、いつでも時代は動いておるわけでありますから、動いておる、流動する国際情勢に対処して、どんな状態が来ても日本の安全は守れる、そのための最も合理的な状態はどうかという勉強は、だれでもしておるわけです。その中に有事駐留問題があるかないかと、こういうことでありますから——これはあなた方はやっております、こちらも有事駐留ということが一体できるのかどうかということは、もうちゃんと勉強しております。おりますが、有事駐留は、いまの日本、日米安保条約では、有事駐留というところまで踏み切るような状態でない。これはやはりアメリカ軍が日本に基地を持っておって、そして、戦後二十年余の歴史に徴してみても、これはちゃんとした抑止力になっておるし、日本の安全も守られておる。今日の段階で、これを有事駐留に切りかえるというような議論は世の中にございますが、政府はそのような状態はとりませんと。とりません、こうはっきりしているんです。
  45. 向井長年

    向井長年君 とれなんて、だれもそんなこと言っていないじゃないですか。
  46. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、勉強もしたんですって。勉強したから有事駐留はだめなんですよと、こう言っている、はっきり私のほうは。ちゃんとしているんです、それは。ですから、それは有事駐留論はありますが、政府だって全然検討もしないで有事駐留はだめですなんて言っているわけはないんです。だから、有事駐留論はいろいろございますが、しかし政府としては有事駐留の議論はとりません、採用いたしません、こういたしておるわけですから、残るのはどうかというと基地の問題ですから、基地の統合その他やっておりますと、こういうことで御理解いただきたい。
  47. 向井長年

    向井長年君 総理ね、あなたそんなおかしいこと言っちゃいかぬですよ、あなた。ものわかりのいい総理がそんなこと言ってはだめですよ。こちらが有事駐留とるかとらぬかというような質問なら、そう言えばいい、そういう答弁は。そんなこと、だれも言っていない。検討しておると言うなら——いまあなたは検討してきたけれどもとらぬと言ったけれども、検討しておるんですか。またこれからも検討しますか。検討するかと、研究するかということだ。そういうことはいろいろ世の中で出てきておるから検討するのかということを言っておるのだから、とるかとらぬかは、それは検討のあとの問題ですよ。それを言わぬで、とりませんと。そんなこと、あなたおかしいじゃないの。とれとだれも言っていない。
  48. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは国防、防衛の問題でありますから、検討しますと言うと、政府が検討いたしますと、こう言うと、やりますというふうにとられるんです。いままでみんなそうなんです。慎重に検討いたしております——検討内閣だなどと言われますけれども、慎重に検討いたします、積極的に検討いたします、前向きに検討いたしますと、こう言うと、これは妙に国民に、もうそちらに移行していくんだというようなニュアンスにとられるおそれがございますから、やはりこれは皆さんが勉強なさっておるように、政府でも勉強して、もう日本が最も合理的な、最も安全な防衛体制はどうあるべきかということは、絶えず、過去も現在も将来も勉強いたしておりますと、勉強いたしておりますと、こういうことでもって、ものわかりがいいあなたですから、まあひとつおわかりください。これは国益のためにも、検討すると言うわけにまいらないんです。政府が検討と言うと、そっちにもういってしまうということにとられるような、そういうやはり影響のある表現というのは、遺憾ながらお答えできない。
  49. 向井長年

    向井長年君 まあ、総理のいまの発言を聞きますと、そういうことを言わすな、実際は検討しているのだと、(笑声)こういうことで私は解釈しますが、よろしいですな。検討しますということをここで言わすなと、しかし、実際は検討しているんだと、こういうように、私、解釈しますから、それでよろしいですな。——よければもうそれで。いいですな、そういうことで。外務大臣、いいでしょう、いま総理がそう言ったから。あなた、総理がそう言ったんだ。そういうことを言わすなと。ここで言うたらそういうように動くようになるから、まだそこまで機が熟していないのだと。しかし、実際は検討し勉強しているのだと、こう言っているのですから、それでいいじゃないですか。
  50. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 国防とか安全保障の問題につきましては、総理の仰せのとおり、絶えず研究いたしております。
  51. 向井長年

    向井長年君 次に、総理にお伺いしますが、あなたは日本列島改造論を出して、一番日本列島の改造の根幹は土地問題ですよ。この土地問題に対して、最近は御承知のごとく非常に土地の暴騰を来たしておる。これに対して何ら明確な結論を出していないんですよ、これは、今日。少なくとも、これは土地の今後の運用の問題から取得の問題、あるいはまた、これに対するところの税制問題とか、もろもろの問題がかさんできますが、これを処理せずして日本列島改造論もくそもないはずなんです。みなこれがここに根幹をなす問題ですが、これに対して何ら明確な方向性を出していない。これに対して国民は非常に不満を感じ、あるいは疑惑を感じている。この点について、どう総理考えられますか。
  52. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 土地問題につきましては各省ごとでいま検討を進めております。その中の一つには、土地の利用計画を定めなければならないような法律を立案しなければならないと、こういうことが一つございます。もう一つは、将来の値上がり等をもくろんで投機的な投資がありとせば、その投機に対して、これを押えるために税制上の措置ができないかということで、税の問題も検討しております。それから、企業の土地保有に対して、これを吐き出させるために何らかの措置ができないかということで、保有課税など意義があるかどうか、実効をあげることができるかどうかというような問題を、現に具体的に検討いたしております。
  53. 向井長年

    向井長年君 総理、土地は、これ商品と見るんですか。
  54. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、過去は土地は商品であったわけでありますが、これはもう、これからは土地を商品としてはならない。土地というものは、やはり公益のために合理的に利用さるべきものであると。ですから、憲法の定めにある、私有権を侵してはならないというけれども、土地に関しては、国民大衆がこれを利用できるためには、利用の上で公の制限を受けることばもう当然だと思います。
  55. 向井長年

    向井長年君 この私権の制限も必要だけれどもね、公共優先が原則だと、こういうことだと思います。しかし、総理は、前からこの主張は需給の調整で地価を安定させるということを言っておりますけれども、これはちょっと一貫しないと思うんですが、この点、どうですか。
  56. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはいろんな政策をたくさんやらなきゃだめなんです。その中に、一つは、地価というのはやっぱり売買は需給関係で起こるわけでございますから、限られたところだけでもって片づけようとすると、なかなかたいへんな問題が起きます。そういう意味で、需給関係に手をつけて、やはり供給を多くしなければならないと思いますと、こう申し上げておるんです。結局、まあ都市の中では、いままで東京ばかりではなく、大都市はいまこんなに混雑をしておりながら、まだ二階平均でしかないわけです。まあ、これは日本が温暖多湿でございますから、平屋建て、木造平屋建てというようなものが一番理想的だということはわかります。わかりますけれども、これだけ地価が上がって人が困っているときに、やはり私は、先祖伝来でございますから平屋を絶対に守るんですということでは、多くの人々の利益を守ってやることはできないと思うんです。そういう意味から言うと、二階建てのものが十階になれば五倍になるわけでございます。五倍になります。そうすれば、土地の価格の住宅面積に反映する部分というものは五分の一になるわけでございますが、しかし、そういってもですな、立体化や地下や海底都市をつくろうという構想もありますが、これはやっぱり全部が全部海底や地下に入れるということは、それはできません。そうすればどうするかというと、東京、名古屋、大阪という三つの地点が一番わかりやすいから申し上げておるんですが、この駅を中心にして半径五十キロで円を書いた三つの円の合計は、国土面積の一%でございます。百分の一ですと。百分の一の中に三割二分の、三二%の人が住んでおる。三千二百万人住んでおると、こういうことよりも、一%の土地が二%になり、三%になり、四%になり、五%になれば、供給力がふえれば、地価というものは原則的に上がるのではなく下げられるじゃありませんかと。これは東京だけを——あなた奈良ですから、大阪だけで片づけるということになったら、これは地価は下がりません。だから、奈良県へ行ったり、それから和歌山県にだんだんと住宅地域が伸びておるということで、大阪の地価というものが押えられておる。ですから、日本列島が全部使えるということになれば供給力がふえるわけでありますから、地価の抑制という大きな面にはなりますと。これが全部だと言っておるのではありません。やはり供給をふやすということを考えませんと……。やっぱり生産を上げて、洋服地が上がってしようがないから生産を上げて洋服地をうんと供給をするということと同じことで……。
  57. 向井長年

    向井長年君 やはり商品ですか。
  58. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、商品という……。だから、いままでは商品であったが、今度、商品的な考えではなく、いろいろな抑制が考えらるべきでありましょうと、こう申し上げておるんです。
  59. 向井長年

    向井長年君 簡単に言うと、土地資源は、まさにこれは国民の共有の資源だと、こう考えていいんじゃないですか。この点、どうですか。
  60. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、そういう考え方をとるべきだと思います。ただ、憲法でいう私権、私権は侵してはならないという、財産権は侵してはならないというものがございますから、これとの調和はございますが、考え方というものは、それはもう国土国民のものだという考え方でございます。
  61. 向井長年

    向井長年君 憲法では、私権はこれはもちろん保障されておりますけれども、やっぱりそれに対しては、その裏には義務がつくんでしょう。公共の福祉という立場の義務があるんでしょう。したがって、そういう立場から考えるならば、共有の資源であると、こう考えていいのではないですか。
  62. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 共有の資源であるというふうにまで断定をすることが法律的な用語として妥当であるかどうか、私はわかりません。わかりませんが、憲法でいうものは、個人の財産権を侵してはならないと、こう規定しておるわけでございますが、土地が社会公共のために利用されるときには、これは制限は受ける。だから、土地利用計画を定めようと、こう言っているわけです。だから、都市においては都市計画法があります。それから建築基準法もございます。だから、われわれが自分で土地を持っておっても、法律は、その土地は緑地帯であって、公共のためには緑地帯が心要である、緑地帯は延べ一割しか建てさせない、一〇%以上は建ててはならない、住居専用地区は軒高十メートルをこしてはならない、こういう制限を行なっておるわけでございます。そういう意味で、社会の環境を保持するために利用制限というものは当然行なわれる、こう思います。
  63. 向井長年

    向井長年君 時間がございませんから、ぼくは簡単に要点を申し上げますが、総理の言う需給調整主義では、どんな緊急な土地供給施策ができるのか、具体的な案がありますか。
  64. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 需給調整ということば、そうめんどうなことを私は言っているわけじゃないんです。まあ、東京の二十三区内でもって住宅地を得ようとすれば、これはもう地価の値上がりに拍車をかけるわけであります。そういう意味では、都心から通えるような交通機関を、背後地である隣接府県まで交通網を整備する。そうすれば、東京だけではなく、埼玉県にも、茨城県にも、千葉県からも東京に通っておる。ですから、東京は千百万でございますが、実際は首都圏三千百万人ぐらいの中から東京に通っておるということでございまして、これは東京よりも関東全域ということで、供給力がふえているわけです。しかし、もっと高速鉄道、高速道路が走るということになれば、今度は、現時点においては熱海からも、それから高崎からも水戸からも通えるようになります。もっと新幹線ができれば、これは東北地方からも東京との距離が一時間以内になります。そういうことになると、だんだんと供給力がふえていくということでございまして、何も東京とか県庁の所在地とかいうものに局限されなくて、未利用の土地資源が国民に利用されるということで供給力がふえると、こう考えておるのでございます。
  65. 向井長年

    向井長年君 この総理の言う需給調整では土地問題は解決できないとわれわれ思うんですよ。それとあわせて、土地の価格の暴騰も避けられない、こういうことをわれわれは言わざるを得ないと思います。そこで、投機的な土地所有に対する——法人の買い上げ、法人の土地あさりと申しますか、これに対しては抑制をする努力をしておるようですが、税制の強化という問題について、これ、前進したり後退したりしておりますね。建設省では、これに対しまして少なくとも九〇%以上の分離課税を課したいというようなことを言いましたね。これがぼけてしまいましたね、いま、大蔵省が何か言って。どうなってますか、これ。
  66. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 土地の値上がりする原因はたくさんあるものですから、その対策は多面的に考えなきゃならないと、そういうことから、建設省では、やっぱり税制の面から土地の投機を抑制してみようと、こういう考えを持っておりまして、一、法人の土地譲渡益に対しては他の所得と分離して課税して、税率は百分の四十、地方税を合算した税負担率約五二%とすること、それから二、市街地開発事業その他の開発予定地内の土地を取得の日から五年以内に譲渡する場合は税率を百分の八十、地方税を合算した税負担率約九二%とすること、こういうような点で大蔵省と折衝中でありまして、まだ後退はいたしておりませんです。目下折衝中であります。
  67. 向井長年

  68. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) お答え申し上げます。  土地課税の問題につきましては、われわれ大蔵省といたしましては、いまそれぞれ幾つかの案が世上にも流れておりますし、あるいはどういう方法でやるのが一番適切であろうかということで、税制調査会にもおはかりをしております。  二つの考え方がございまして、法人等が土地取得をいたしまして、そしてこれが処分に際して不当のもうけをするというようなことは、何としてもこれは国民感情としてもいかがかと思われるのであります。したがって、こういう場合については、やはりよほど十二分に研究をした上でやらなきゃなりませんが、先ほど来総理あるいは建設大臣からもお話しのとおり、こうした問題については、はたしてそれが過当な利益であるかどうかということの問題もございますし、そして、それが当然の成り行きとして看過されては、これまた国民感情から見てもいけませんし、実際の利用計画からいってもいかがかと思う。そこで、われわれのいま検討しておりますところは、十二分に、できるならば土地の利用計画というものがはっきりできると一番ありがたいんだがなあというのが第一にあります。しかしながら、いま言ったような不当なもうけと思われるようなものが出てきた場合には、これに対して課税すべきかすべからざるか、すべからずとすればなぜか、そうして、すべきとすればどの程度の課税が適切であるかという問題を、各方面の御意見も承りながら税制調査会でいませっかく検討中でございます。それから、それと別に今度は、土地を保有したということによってこれに保有課税式に考えたらどうかと、こういう問題もございます。この問題についてもいま熱心にあわせて研究中でございます。結論としましては、何らかのかっこうで、やはり課税をするように前向きに検討しなければいけまい、こういう考え方でおりますので、いまの考え方は、結局、保有課税と、それから部分的の、その部分だけを抜き出して相当高率の税金を課するのがいいのかという問題と、さらに、あるいは両者をあわせ考えた名案ができないだろうかと、こういうようなことを、いませっかく考究中でございます。
  69. 向井長年

    向井長年君 建設省と大蔵省とは若干意見が違うのですが、いまのところ。いま研究していると言っているが、総理は、これはどちらの方向をとろうとしているか。建設省はそれを中心にして具体的に大蔵省に対して折衝していると、大蔵省はそれに対してまだ研究中だと、こう言っている。基本的にどういう方向をとられますか。
  70. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これ、私がどっちときめられるような問題じゃありません。私が申し上げるまでもなく、税というのは、税体系は非常にむずかしい問題でありまして、そのために税制調査会という専門家がおるわけでございますから、税体系の中になじむかどうか、いろいろな技術的な問題もありますので、そういう問題は大蔵大臣が最終的には税制調査会の答申をまって決定をするということになります。
  71. 向井長年

    向井長年君 それは、検討はいいし、慎重でなければならぬかもしれませんが、そういうことをもたもたしておる間に土地がどんどん上がっていっておるじゃないですか。したがって、これを抑制をするためには、早くそういうものをきめる、そうすれば明確に国民は、むだな土地を買う必要はない。あるいは法人もそうでしょう。そういう点、総理はあまりにも、ほかのほうは指導性を持っているが、これに対しては、日本列島と言いながら、こういう根本的な問題については非常に消極的であり、あるいは時間をかけているという、ここに私は問題があると思う。その点、どうですか。
  72. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) できるだけ早く諮問案を決定をすると、こう考えております。
  73. 向井長年

    向井長年君 私は、少なくともこれはやはり一日も早く土地利用基本法というものはつくり、そういう中で、土地は五十年間は売買できないと、こういう規制もし、それから、やはり今後みだりに土地の売買はできないと、土地は先ほど総理が言われたように国民共有の資源であると、そういう基本線から考えて、土地利用公社等をつくって、それを通じなければできないという方向に一日も早くやるべきだと思う。この点、どうでしょう。
  74. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 土地利用公社をつくれるかどうかは別にして、土地問題に対しては早急に具体案をつくらなければならないと思います。
  75. 向井長年

    向井長年君 土地基本法です。
  76. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 土地基本法ということではなく、土地の利用に関して——いま基本法は考えておりません。土地利用計画を定めなければならないというようなものが、いまの国土総合開発法の改正でできるのか、別な単行法を必要とするのか、いま各省の間で検討しております。
  77. 向井長年

    向井長年君 いわゆる公共的土地利用計画ですか、言われていることは。
  78. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 土地の利用計画なんです。土地の利用計画。いわゆる東京とか大阪とか、県庁所在地の例を見ればわかるのですが、全部多数の人の利益を守るために都市計画法とか建築基準法とかというのがあるわけです。そういうものでもって土地の利用計画が定められております。同じように、全国的にそういう制度をつくろうと、つくらなければならないと、こう考えております。
  79. 向井長年

    向井長年君 時間がございませんから、この問題まだまだあるのですが、一応次に進みます。  通産大臣、ちょっと通告しておりませんが、けさのニュースで聞いたんですが、貿易管理令ですね、貿管令。特に自動車、オートバイ、こういう問題については輸出調整と、こういう形で貿管令を適用すると。こういうことが言われておりますが、これは実際、まあ大きな業界はいいにしても、その中で組み立て下請というものが中心でしょう。ここらが相当大きな犠牲をこうむるんじゃないですか。これに対してどう考えておられますか。
  80. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 貿易の均衡を回復するということは現下の急務でございますから、そのために先般十月二十日に政府の総合政策をきめまして、関税率の引き下げそのほか、各省全力をあげてやっているところでございます。その一環として、通産省としては、いわゆる輸出課徴金というものは適当でないと考えて、貿易管理令という緊急避難的措置を実行しておるわけでございます。大体すでに二品目発動いたしまして、あと約十八品目を検討して、いまその関係業界と話し合いを進めております。その中に自動車や鉄鋼等も入っておるわけでございます。しかし、それをやるにつきましては一定の客観的な基準が必要でございます。昨年のある一定期間を基準にいたしまして、それに対していわゆる輸出の寄与率が一%以上になっていることとか、あるいは金額にして二〇%以上ふえている業種であるとか、あるいは総額にして一億ドル以上の輸出を行なっておるものとか、そういう客観的な基準をきめまして、そういう客観的基準をもってかけないというと業界によって非常に苦情が出てまいりまして、できないというのが実情でございます。また、業界のほうもそういう御意見でございました。そういう話し合いによって、協力をしていただくという話し合いがきまりまして、そこで、いま各論的に各業界と詰めをやっております。で、その中に、いま申されたところも入っております。しかし、これは貿易均衡を確保するという至上命令に基づいて、非常に強い決意をもって通産省は当たっておりましていよいよそれを実際的に発動する場合には、中小企業とか、下請企業とか、そういうところに重圧が加わらないように十分配慮をして、業界と話し合ってやるつもりでおります。
  81. 向井長年

    向井長年君 この貿管令の発動のめどは那辺にあるのか。特にこれは輸出増加率全体が特定の国に対する輸出急増であるのか、その尺度はどこに求めておられるか。
  82. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、昨年の一定期間を基準にして、日本の輸出総量、各品種別に総量について一応基準をとっております。
  83. 向井長年

    向井長年君 この下請等の問題については、相当これによってしわ寄せされてくると思いますが、政府はそれに対する助成策というか、具体的に何かありますか。
  84. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり基本的な方向は、内需を振興して——自動車なんかも非常に顕著でございますが、輸出に回すよりも、内需が旺盛になったために国内市場に消化される部分がかなりふえてきておるわけです。鉄鋼なんかも同様でございます。この調子で内需のほうに相当方向を転換させるという方向は、あまり下請その他に重圧はまいっておりません。それから、いまきめた総量の規制というものは、各業界別にそれほどきついものではないのです。しかし、とりあえずこれで方向をはっきりきめて、そうして、まずやってみる、そうして業界の御協力を仰ぐ、そういうことで、まずやってみるということが非常に重要性を持っておりますので、この第一回のいまのやり方というものは、それほど下請その他に重圧がいくとは思いませんけれども、しかし、万一にもそういうことがないように、われわれが各品目の実施につきましては業界と話し合って、よく監視の目も光らせ、中小企業その他を保護するように努力いたします。
  85. 向井長年

    向井長年君 次に、総理、わが国の社会福祉事業は民間の慈善事業として出発して、現在もやはり民間中心になっておるわけです。国なり地方公共団体は従の形で、若干の助成をしていると、こういう状態ですけれども、これは少なくともやはり民間の事業には国がその必要な費用を全額出す、こういう方向で進まなければならぬと思うのですが、この点、どうでしょうか。
  86. 塩見俊二

    国務大臣塩見俊二君) 社会福祉につきましては、原則的には、私は国、公共団体あるいは民間等が一種の連帯観念を持ってこれに努力していくということで効果をあげると思うのでございますが、ただいまお話しのこの福祉の各施設等につきましては、私はいまの向井先生の御意見に賛成でございます。こういうような施設につきましては、社会福祉事業法におきましても、国、公共団体が原則として持つべきだという趣旨が明確に規定をされておりますし、また現実に、これらの施設につきましては国、公共団体で運営費その他を持つというたてまえになっておるわけであります。ただ、従来沿革的に、各種の法人でございますとか個人の施設がございまするが、こういったようなものにつきましても、その施設の建てかえ、あるいは新しい施設の建設というようなものにつきましては、国のほうで十分な助成の措置を講じなければならぬと思っておりますし、また、そういう方向でまいっております。
  87. 向井長年

    向井長年君 特別養護老人ホームですね、こういうところ、一般の養護老人ホームと心身障害者施設、こういうところの完備はもちろんでありますけれども、大体これは四千百億程度費用があればできるというのでしょう。だからこれは、少なくともそれくらいをまず政府考えると同時に、従業員の確保、これも三カ年ぐらいで整備しなければならぬと思いますが、これはやる意思ありますか。
  88. 塩見俊二

    国務大臣塩見俊二君) ただいまお話のございました寝たきり老人の施設等につきましては、大体収容しなければならない数を推定いたしまして、昭和四十六年から五年計画、保育所を含めまして約三千五百億の予算で、ただいま整備中でございます。なお、その要員につきましては、なかなか確保が困難な事情等もございますので、これが処遇の改善等をはかりながら鋭意努力をいたしておるところでございます。
  89. 向井長年

    向井長年君 厚生大臣、それから労働大臣にお聞きしますが、こういうことを努力しておると、こう言っているけれども、実際は従業員そのものの確保もたいへんなんですね。それはたいへんなはずですよ。こんな労働条件でだれが来るのですか。いま従業員は、四十三歳で妻あるいは子供二人かかえて、わずか本給が三万七千円ですよ。こんなことでは来るはずがない。だから、この給与の改善もしなければならぬし、あるいはまた、先ほど言った施設の改善もしなければならぬ。こういうところに、やはりいま総理が言われたように、社会福祉に重点を置くと言っているのだから、これぐらいのことを私は改善のために厚生大臣なり労働大臣はやらなければならぬと思いますが、その点、どうです。
  90. 塩見俊二

    国務大臣塩見俊二君) 御意見のとおりだと思うのでありまして、こういったような施設につきましては、昭和四十四年から三年計画をもちまして、とりあえずこういった方々に公務員並みの給与を差し上げるようにしたいということで、いまほぼそういうふうな段階になってまいっておるわけであります。これにつきましても、要員確保の意味からいいましても、あるいは激しい勤務条件に報いるためにも、さらに処遇の改善については努力をしていかなければならぬと思うわけであります。ただいま具体的に三万七千円というお話がございましたが、四十数歳で妻、子供が二人もあるという男子につきましては、大体私どもの現在行なっている基準からいたしますと、そういった方は大体六万四、五千円程度ではないかと思うのでございまするが、ただ、こういったものは予算の配賦というようなことになっておりまして、具体的に各施設者におきまして、あるいはその経費が他の方面に流用されるというようなことも間々聞いておるわけでございまして、したがって、給与水準を確保するように、今後ともそういった点につきましては適正な指導を重ねていかなければならぬと考えております。
  91. 田村元

    国務大臣(田村元君) 社会福祉施設の労働者につきましては、これはもう処遇の改善、労働条件の改善は当然のことでございまして、私ども監督指導は十分に行なっておるつもりでございますし、同時にまた、厚生省にも具体的にお願いをいたしております。  先ほど数字が出ましたので、ちょっと私のほうでいま持っております資料を申しますと、そういうような場合もあるのかもしれませんが、これは社会福祉施設等で働く保母さんの月間給与額——四十五年の労働省の調査でございますが、四万四百円。参考までに申しますと、サービス業の女子平均では四万四千九百円、全産業の女子平均では三万四千七百円ということになっております。これは労働省の四十五年の調査でございます。いずれにいたしましても、相当水準までまいっておりますと申しますものの、なお不十分の点は多々あるわけでございまして、われわれも思いを新たにして監督指導をなお強化し、厚生省とも十分の連絡をとって万遺憾なきを期してまいりたいと思っております。
  92. 向井長年

    向井長年君 大蔵大臣厚生大臣にお聞きしますが、特に老人対策で緊急を要するいま一つは、六十五歳以上の老人で日常生活が満足にできない、介護が必要だと、こういう人たちが約三十四万人おるようですよね、日本で。こういう家庭、老人のいる世帯、これの扶養控除、これが現在十六万円ですね。これでは私は非常に控除額が低いと思うのですよ。少なくとも最低二十五万円ぐらいまでは上げなけりゃならぬじゃないかと思う。これ、どうですか。
  93. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいまの十六万円というお話は、別途にまた十四万円というものがつく制度もございます。近年だんだんと、この問題につきましても努力をしておりますが、今回も、それぞれ各省からの御要求の内容も聞いております。だんだんと、この問題については十二分に力を尽くしてみたいという所存でございます。
  94. 向井長年

    向井長年君 来年度からやりますか。——そんな抽象的じゃだめだ。
  95. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 来年度の予算編成に臨んでの考え方でございます。
  96. 向井長年

    向井長年君 ほんとうは、われわれは六十万円ぐらいまでは控除しなさいと、こう主張しておるわけですよ。差し当たり二十五万円、こういう形で来年度から組み入れると、こういうことで大蔵大臣厚生大臣、よろしいですか、そう解釈して。
  97. 塩見俊二

    国務大臣塩見俊二君) 現在、老人のアンケートをとりましても、やはり家族と一緒に住みたいというのが私は年寄りの切なる願いだと思うわけでありまして、したがって、やはり老人が家庭で生活ができるということについて支援をしなければならぬと思うわけでありますし、そういった老人の控除につきましては、厚生省としては、ぜひこれを引き上げるように大蔵大臣にもお願いを申し上げたいと存じております。
  98. 向井長年

    向井長年君 来年度それでやるのですか。
  99. 塩見俊二

    国務大臣塩見俊二君) 私、決定権はないわけでございまして、まあお願いを申し上げたいと思います。
  100. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 先ほど申しました、私のほうで十二分に気をつけてまいりたいと申し上げている趣旨は、抽象的ではございますが、私のほうも財政当局として、関係省の御要望を体して、そして、でき得る限り税法の面におきましても留意してまいりたいと、こういうことなんであります。で、それは、たとえば税制の他の方面に及びまするところの影響を考えつつ、しかも、でき得るだけ前向きに、しかも、できるだけよく改善をしていこうと、こういう方針でございます。
  101. 向井長年

    向井長年君 総理が先般、来年は年金の年だと、こう言われましたですね。したがって、年金問題について若干お聞きいたしますが、まず、来年度特に年金の水準をどれくらいに考えていこうとするのか、それの制度の取り組み構想をどう考えておるのか、この点についてお伺いいたします。
  102. 塩見俊二

    国務大臣塩見俊二君) 年金の給付水準をどの程度に考えるのかというお尋ねでございまするが、政府では、この水準を大幅に引き上げたいということで、かねがね関係の審議会に意見を求めておったのでございまするが、これらの意見も出まして、標準報酬の六割というものを年金水準にするのが適当であろうというような御意見もありましたので、こういった点を重要な参考として、ただいま具体的にどうきめるかということを鋭意検討中でございます。  そこで、この年金の財政をどういうふうにしてまかなうかということにつきましては、いろいろ御議論もあるようでございまするが、私ども、いま現在の状況におきましては、たとえば厚生年金を例にとりますると、被保険者に対する受給者の割合が、現在におきましてはまだ百分の三、百人に三人程度でございます。これが今後は百人に対しまして三十人程度まで、わりあい短い期間に激増してまいるような状況でございます。したがいまして、私どもは、現在の受給者のことを考えてみまするなれば、やはり現在採用しておる修正積み立て方式というような方式でやっていけますし、またあるいは、今後負担が急増しますので、その負担の急増を緩和していく、あるいは世代間における負担の均衡を、できるだけこれを均衡をはかりつつやっていくというふうなたてまえから、とりあえず現在におきましては、現在の方式をそのまま実行してまいりたいと考えております。
  103. 向井長年

    向井長年君 来年度五万円にするということ、はっきり言い得ますか。
  104. 塩見俊二

    国務大臣塩見俊二君) 標準報酬の六割をめどにして、そしてこれを参考として計算をしておるわけでございまして、具体的に明確に五万円になるかどうかということについては差し控えさしていただきたいと思いまするが、まあ、それに近いような数字が実現するように努力をしたいと思っております。
  105. 向井長年

    向井長年君 総理、どうです。
  106. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま厚生大臣が述べたとおりでございます。
  107. 向井長年

    向井長年君 やるんでしょう、来年。
  108. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 来年度は新しい年金のスタートの年にしたいと、こう思っております。
  109. 向井長年

    向井長年君 年金の積み立て方式をとりながら五万円年金となれば、保険料率を相当大幅に上げなきゃならぬですね。そういうことになってまいりますが、これは不可能ですよね。したがって、私たちは、近い将来に完全な賦課方式に切りかえるとして、現状は、やはりまず厚生年金は、五年間の間相当部分の積み立てを切りくずしていく、この方向をとるべきだと思うんですが、この点、どうですか。
  110. 塩見俊二

    国務大臣塩見俊二君) ただいまも申し上げましたとおり、現在の受給者は現在のところ非常に少ないわけでございまして、かりに私どもが考えておるような年金水準を実現するといたしましても、積み立て金をくずしてこれに充てるというようなことは、現実的にその必要がないわけでございます。
  111. 向井長年

    向井長年君 これはやはり、今後の負担の問題もありますから十分検討してもらいたいと思います。  それとあわせて、老齢福祉年金の問題について三千三百円、これは来年度五千円やるということを衆議院で答えましたね。答えましたね。どうですか。われわれは一万円をまず主張しておりますけれども、五千円ということで答えたと思うのですが、その点、どうですか。——厚生大臣、老齢福祉年金三千三百円のやつを。
  112. 塩見俊二

    国務大臣塩見俊二君) 私どもは一万円程度の年金を実現をしたいと考えておるわけでございまするが、しかしながら、これは一万円にいたしますると、財政事情の点等もあり、いろんな点を考慮しまして、そういうめどで、とりあえず明年は五千円を実現をしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  113. 向井長年

    向井長年君 労働大臣にお聞きしますが、この間、衆議院でまことにけしからぬ答弁をされておったので、この問題に私はちょっと触れざるを得ないんで、言いますが、いま電力と石炭に対する争議行為の問題がありますね、スト規制法と言っておりますが、俗に。これに対して、論理的にこれができないというほうをちょっと答弁していただきたいと思います。
  114. 田村元

    国務大臣(田村元君) スト規制法は、二十八年に時限立法でできて、三十一年に国会の意思によって恒久立法になったわけであります。私ども、自来今日まで、スト規制法に著しく違反するような事例は幸いにして存じません。でありますから、その点では非常に円満、平和裏に推移してまいったことは事実でございます。これは高く評価してよいと思います。ただ、電気とか石炭、とりわけ電気の場合でございますと、瞬時たりといえども全国停電ということになりますと、人心は動揺し、一体何事が起こるんだろうというような社会不安が激化いたします。でありますから、いままで平和裏に推移してまいったことは高く評価はいたしますけれども、なおいましばらく、われわれは冷静にこれを見つめて慎重に検討をしていかなければならぬ。そういう意味で、評価は評価でありますが、同時に、その影響の甚大なことを考えれば、われわれは軽々にスト規制法をいま廃止するわけにはまいらない、こういうふうに私は考えております。
  115. 向井長年

    向井長年君 時限立法の概念を答弁してください、二十八年にやった時限立法。
  116. 田村元

    国務大臣(田村元君) 私は当時代議士でありませんでしたから、審議の経緯は存じませんけれども、一応三年間やって、それによって経緯を見ようということであったのじゃないかと思いますが、当時の経緯に関しましては事務当局から答弁をいたさせたいと思います。
  117. 向井長年

    向井長年君 そんなことを言っていない。時限立法の概念を言いなさいと言っている。事務当局じゃない。大臣が言うべきだ、そんなことは。時限立法というのはどういうことだ。
  118. 田村元

    国務大臣(田村元君) 時限立法というのは、私も突然の御質問でありますので、それこそ論理的にお答えができないかもしれませんが、一定の期間を区切ってその適用をはかるという意味に解釈しております。
  119. 向井長年

    向井長年君 憲法二十八条と労調法三十八条、三十七条の関係をちょっと言ってください。労働大臣、あなたがわからぬと答弁するのはおかしい。憲法二十八条、労調法の三十八条、三十七条、その関係。
  120. 田村元

    国務大臣(田村元君) たいへん憲法上の問題でありますから、私からここで思いつきの答弁をいたしますより、法制局長官にお願いをしたいと思います。
  121. 向井長年

    向井長年君 そんなこと、法制局長官の問題じゃないよ。労働大臣、何を言っているのかね。法制局長官、よろしいよ、そんなこと。労働大臣、そんなことを研究せずして答弁しているのかい。この間衆議院で答弁したでしょう、西田君の質問に対して。そういう研究をせずして答弁したの。
  122. 田村元

    国務大臣(田村元君) 的確なお答えになるかどうかわかりませんが、労働基本権等について、いわゆる国民の自由というものの明記と、それの適用の法律、ただそれは、あくまでもスト規制法に関しましては公共の福祉の問題とのからみでございますから、私はそのように解釈をしております。
  123. 向井長年

    向井長年君 そんなことを私は聞いておるのじゃないのですよ。少なくとも憲法二十八条では——時間がないから私は言いたくないんだ、これはあとの問題があるから。憲法二十八条というものは労働基本権でしょう、あなたいま言われた。団体行動権があるのですよ、ここに。憲法で保障されているんだ。しかし、二十八年には緊急の問題として、時限立法としてこの問題が起きたわけです。時限立法というのは恒久立法じゃなくて、その時限に問題があるからというので、三年間を切ってやったはずですよ。そうでしょう。労調法の三十八条においては、あるいはまた三十七条は、もしそういうストライキがあるとするならば、予告期間十日間必要だ。それから調整期間がなおまだ五十日必要だ。六十日、この期間があるのですよ。平和的にものを解決するためにはこれだけの期間をとればいいということで、その法律がつくられているのだ。ストをやるという立場ではなくて、労働基本権という立場において、しかも対等の立場で、各企業というものは資本と労働と経営者の三者で成り立っているんだ。その三つの中にいわゆる均衡のとれたものごとの平和的解決をしようとするのでこの法律ができたのでしょう。したがって、概念を私が言えというのは、それなんです。実態から出てくるので三年間の時限立法ができたはずだ。その実態がないというなら、恒久立法にするのはおかしいですよ、これは論理的に。どうなんです。
  124. 田村元

    国務大臣(田村元君) 時限立法で出発はいたしましたが、国権の最高機関である国会において三十一年に恒久立法に議決しておるのでございますから、でありますから、私どもは国会の意思としてこれを受け取ることは当然と思います。
  125. 向井長年

    向井長年君 あなた、そんなことをぼくは言っているんじゃない。この憲法と労調法の解釈はどういうことかと言っているんだ。
  126. 田村元

    国務大臣(田村元君) 憲法においては、労働基本権を含む個人の自由は保障されております。団体の自由も保障されております。それを受けて労調法と労働法規がその権利を擁護しておるわけであります。しかしながら、憲法十三条であったと思いますが、公共の福祉ということをここにいっておるのでありますから、でありますから、私は、その意味で、スト規制法が、公共の福祉面からとらえて国民にはかり知れない被害を与えるおそれがある、公共の福祉を害するおそれがあるという意味で、憲法違反であると思っておりません。
  127. 向井長年

    向井長年君 あなた、わからないのだよ、あなたは。大体労調法というのはね、そういう公共の問題であるからというのでこれを労働法の保護から規制をしたのですよ、労調法というのは。そうでしょう。規制というのは、平和的にものごとを解決さすために、五十日間与えたのですよ。これは対等の立場で平和的に解決しようということで与えたものだ。それだから現状が現状認識の中でそういう事態でなければ、三年間の時限立法というものはその当時はできたが、いまはなくてもいいはずなんですよ、これ。違いますか。ちょっと見なさい。法理的に私はあなたに聞きたいのだ。公共公共というけれども、あなた、現にそうじゃないじゃないか。
  128. 田村元

    国務大臣(田村元君) 労調法は規制でありますが、私さっき保護と言ったかもしれませんが、いずれにいたしましても、たいへんむずかしい法理論でございます。これは一応へ労政局長の意見もお聞きを願いたいと思います。
  129. 石黒拓爾

    政府委員(石黒拓爾君) お答え申し上げます。  労調法につきましては、労調法の三十八条の緊急調整の場合の五十日の争議行為の禁止というような規定は、一般通常の争議行為であるけれども、これが著しく広範囲にわたり、または著しく長期にわたる等におきまして、国民の日常生活を著しく害する場合に、内閣総理大臣の決定によって、緊急調整で争議行為がストップする。労調法はそういう趣旨でございますが、スト規制法のほうは、そういう長期、広範囲でなくても、電気事業の停電ストあるいは石炭における保安放棄というような行為は、その長期とか何とかいう問題以前の、争議行為の手段そのものとしてこれは法益の均衡を失するということで制限をしておりまして、労調法の緊急調整の目的とスト規制法との関係は、そのように考えております。
  130. 向井長年

    向井長年君 時限立法の解明は……。
  131. 石黒拓爾

    政府委員(石黒拓爾君) 時限立法は、一定の期間を切って法律の適用有効期間を定めるものであると考えております。
  132. 向井長年

    向井長年君 なぜ時限立法をやったのか。
  133. 石黒拓爾

    政府委員(石黒拓爾君) 当時、スト規制法制定当時の国会の御意思を私正確には存じておりませんけれども、スト規制法につきましては、ともかくとりあえずこういう方法で、争議行為の方法を規制する法律によってしばらく推移を見ようという御趣旨であったのではなかろうかと存じます。
  134. 向井長年

    向井長年君 推移を見た後、二十年たっているが、今日どうなんですか。
  135. 石黒拓爾

    政府委員(石黒拓爾君) 二十八年にスト規制法が制定されまして、三十一年まで三年間、その推移を国会でごらんになりまして、そして、なおかつ国民の不安というのが解消されないという御判断であったと存じますが、三十一年に、先ほど大臣から申し上げましたように、恒久立法になったわけでございます。その国民の不安感というものは、今日スト規制法を直ちに廃止しても少しも問題ないほど国民の不安感が解消されておるかどうかということにつきましては、非常に慎重な検討を要するものと考えております。
  136. 向井長年

    向井長年君 あのね、国民の不安感よりも、現実にその実態が二十年間にどうなっているかと聞いている。時限立法をやったときと、現在どうなっているのか、二十年間たった今日。
  137. 石黒拓爾

    政府委員(石黒拓爾君) スト規制法制定以来、先ほど大臣が申し上げましたように、停電ストとかあるいは炭鉱の保安放棄というような、現実にスト規制法に反する事態は起こっておりません。それからまた、そのバックグラウンドをなす国民経済なり何なりといったものも、相当な変化はあると存じます。
  138. 向井長年

    向井長年君 労働大臣、その後の二十年間の、その対象になる労働組合はどういう実態ですか、あなたは知っていますか。
  139. 田村元

    国務大臣(田村元君) 電力・石炭等において、労働組合はたいへん穏健に現実的に、りっぱな態度できておられると思っております。
  140. 向井長年

    向井長年君 それならば、その法律は必要ですか。憲法に触れるような法律、必要ですか。
  141. 田村元

    国務大臣(田村元君) たいへん、先ほど申し上げましたように、これという問題もなしに今日に至っておることは、高く評価いたしますが、しかしながら、いま直ちにこれをやめるかどうかということにつきましては、慎重な検討を要する問題——国民の不安感ということはやはり念頭から去りませんし、慎重な検討を要する問題だと思っております。
  142. 向井長年

    向井長年君 あのね、あなたたち、そういう何というか、公式的なものを言ったってだめなんだよ。そんなことは通らないのだよ。少なくとも現実が、二十八年には行き過ぎがあったからといって規制したんだ。その後二十年間の間に、その当該組合というものは健全にして公共福祉という立場考えて、すべて企業にも取り組み、今日あらゆる行動をやっておるのですよ。そういう中で、少なくとも私が言うのは、対等の立場で平和的解決をするためには、憲法に触れるようなことは、時限立法というのはそういうところから生まれたのだから、現実から生まれた問題だから、現実がなければ解消するのはあたりまえなんだ、これは。そうでしょう。労働大臣どう考えているんだ。ストライキやったら停電するって、だれが停電するのだ。そんな、停電するというきめ方があなた方おかしいのだ、私は。どうですか。
  143. 田村元

    国務大臣(田村元君) ストライキということは万々あり得ないと思いますが、電力がストライキをやったら停電するのじゃないですか。(笑声)  いずれにしてもたいへんいい御意見を承ったわけでありますから、いまの向井さんの御意見を十二分にわれわれ体しまして、これから鋭意慎重に検討いたします。
  144. 向井長年

    向井長年君 そんな答弁、だめ。とにかく、もうちょっと労働大臣勉強しなさい。少なくとも労働基本権というものは別の問題。ストライキ権を持ったらストライキをやるという意味ではない。ものごとは平和的に解決しようというのが、ただいまの健全な組合のあり方ですよ。その指導をしなければだめだ、あなた。はそうでしょう。それだから今日、いまそれよりも電力の場合を言うならば、田中総理にも私は聞きたいのだが、電力不足で、発電は立地条件の問題でなかなか進まない。そのためにどうするかということで組合みずからが電力開発に対する提言までしてやっている時代じゃないか。ストライキ問題じゃないよ、これは。あなたの認識を改めなさい。
  145. 田村元

    国務大臣(田村元君) 答弁を求められておるのかどうか、ちょっとおことばの判断に迷ったのですが、いずれにいたしましても、私は労働問題を担当いたしておりますだけに、労働者にはもちろんその保護者とならなければならぬと同時に、労働問題の影響ということも十分に考えなければなりませんから、いま向井さんが私に言わそうと思っておられるお気持ちはわかりますけれども、これ以上の答弁の域を脱しないわけです。これは、ひとつ立場もお考えを願いたいと思います。
  146. 向井長年

    向井長年君 立場といってね、私はいまここでこれを廃止しなさいというようなことを言っておるのではないのだ。あなたの感覚がおかしいから、これを明確にしなさいと言っておるのだ、憲法と労調法の関係で。その点を衆議院でああいう答弁をしているから、私はこれを取り上げざるを得なくなったのだ。いまこの中に入れてないのだけれども、労働大臣の感覚がおかしいから言っている。労政局長も十分これは今後検討してもらいたいと思う。  そこでもう一つ、時間がございませんが、これは自治大臣、この間も私直接お話しましたが、これは歴代通産大臣、自治大臣、総理大臣、全部悪税だと言っている電気ガス税の問題について、今後どうするか。悪税だとみんな言っている。池田内閣から悪税だと言っておる。この悪税をなぜ撤廃しないのか。
  147. 福田一

    国務大臣福田一君) お説のとおり、電気ガス税の問題は多年の懸案でありまして、いままでも順次下げてきたことはありますが、この数年間は、確かにおっしゃるとおり、それは実行されておりません。ただ、私たちとしては、電気ガス税のような一般消費者に影響があるものについては、できるならばこれを下げるようにしたいという要請はよくわかります。おっしゃるとおりです。  しかしまた、私は、自治体というものが今後自治を十分にやっていく場合においては、自治体が十分なやはり自分の財源を持つ必要があると考えております。その意味におきましては、電気ガス税というのは、ある意味では一つの重要な部面になっておりますので、そこで、これをどう調和させていくかということが、今後の政策の問題であると思っておるのであります。私といたしましては、できるならば何とか財源を見つけて、そうしてこれを軽減するような施策を講じてまいりたい。そういう意味で大蔵省に対しても要望をいたしておるところであります。
  148. 向井長年

    向井長年君 自治大臣、総理大臣にお聞きしますが、一ぺんに撤廃というのは、これは地方財源ですから、非常に困難だと思いますよ。しかしながら、これは徐々にでも軽減するという方向をとらなければならぬ。そのためには、これは自然増収があるんですよ、自然増収が。自然増収分だけをパーセンテージで軽減してきておるのが、池田内閣当時なんですよ。それを、ことしもあるはずだ、自然増収は。これをなぜ軽減しようとしないのか、私は聞きたい。
  149. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 電気ガス税をやめようということで、池田内閣のときにそういう方向でやってみたんです。私がちょうど大蔵省におりましたときでありますので、一%ずつ三年間だけ逓減をいたしてまいりました。それで現行税率になったわけですが、そのときに、有力な地方財源であるということであって、地方自治の関係から、この問題がそのままになってしまったわけです。私のときに三%、年率で一%ずつ三年間下げたきり、現行になって据え置きになっているわけです。  あまりいい税でないということは、もう御指摘のとおりです。いい税でない。しかし、これにかわる地方税はなかなかないということで、財源確保ということでもって現行になっておるんですが、ただ、私が去年通商産業大臣のころから、この電気の、いまもあなたから御指摘がありましたが、発電所が非常に困っているわけです。そういう意味で発電の市町村だけではなく、周辺の市町村にも利益を与えるということでないと、なかなかできないんです。このままでもっていくと、関西電力などはほんとうに困るという状態でございます。  そういう意味で、この悪税だといわれている電気ガス税と、発電税というものと何か調和できないか、そういうものに切りかえるようなことができないかということを、一つの提案として検討はいたしておるわけであります。この前の国会で、一応発電所をつくる市町村に対する固定資産税の振りかえ等を一部やったわけでございますが、あの程度のことで万全の体制はできないので、電気ガス税と合わせてこの発電税とか、それからガスの場合もそうですし電気の場合もそうですが、ナフサをたかなきゃならないというような状態もございますので、そういう税制との調整で勉強しようということであって、いますぐこれを来年から一%ずつでも下げますというようなことを言える段階にないということは、はなはだ遺憾でございますが、しかし、勉強の課題であることは十数年来の懸案の税でございますから、十分勉強してもらおうと思っております。
  150. 向井長年

    向井長年君 それは総理、そんなことはおかしいですよ。全国の消費者にかかっておるんですよ。企業じゃないですよ。消費者にかかっておるのを、発電所つくるって、発電所はあなた、地点みたいな、村とか海辺にちょっとつくるだけでしょう。そこを発電税といって企業にかけて、そこの諸君は固定資産税ふえるかしらんが、東京都内とか一般でなぜふえるのですか、地方財源が。そんなもののすりかえで、絶対できるはずがない。  これを池田内閣当時一%ずつやってきたでしょう、私がこれを取り上げて。非常に私は大蔵大臣、当時やってよかったと思う。たとえ少しでも、たばこ消費税の問題があったけれども、自然増収分だけはなくしようということは、これはいまでもできるのですよ。そうでしょう。そうしたら一%ぐらいできるはずだ。これをやれないというようなものの考え方はおかしい。  もう一つは、税の構成から考えてみなさい。国民に税は平等でなければならぬという立場から考えた場合には、法人企業に対しては特定のところはみな免税だ。そうして一般家庭にかけている。こんなばかげた税金はないですよ。総理も、通産大臣も、自治大臣も、全部過去には悪税でございますと言ってきたのだ。それがいままだ七%そのまま据え置き。これは断じて許せぬ問題ですよ。私は予算委員会のたびにこれは言っているのだ。しかし、なぜ皆さんが悪税だと言うのに、なくしようとしないのですか。少なくとも自然増収ぐらい——おそらく自然増収は二百億ぐらいじゃないですか。これくらいをなくする。もしそれが、どうしても財源が困れば、中央から特別交付金でやればいいじゃないですか、これ。国民福祉考えるなら、これほど全般に及ぶ問題はないのですよ。これをやろうとしませんか、総理。何とか考えたらどうですか。
  151. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま仰せになりましたことで、財源の問題でございますが、実はこの前やりましたときには、たばこ消費税の問題がございました。そこで、いま調査してみますというと、あの当時、もう限界がきまして、たばこ消費税の国税と地方税の限界が五〇、五〇くらいになっておりましたが、いまは、これは国税が五二で、大体地方税のほうが四八ぐらいになっております。そこで、いま向井先生の仰せになるようなものの考えで、たとえば一%減税するというようなことをいたしますというと、大体一・九ぐらい、一・八か九加えればできるわけで、五〇、五〇の線には持っていけるはずでございます。そういうことも踏まえまして、私は、これは絶対に大蔵省がのんでもらえるかどうかもわかりません。しかし、そういうことも踏まえながら、一つはこの問題を解決さしてもらいたいというふうに考えておるわけです。  また自然増収の問題は、やっぱり最低限をだんだん引き上げていかなければなりません。これはどうしても毎年やっているところでございますから、最低課税標準というものはだんだん上げてまいりますから、そういう意味で、順次それほどには、あなたがおっしゃったほどには財源にはなっていかない、こういうことだけは御理解を賜わりたいと思います。
  152. 向井長年

    向井長年君 いま、ぜいたく品じゃなくなっておるのですよ。そうでしょう。大体一般国民生活実態から考えて、免税点の八百円というような家庭は一五%、わずかしかいない、これはいなかで。町において、サラリーマンにしても、公務員にしても、全般は少くともいまぜいたく品じゃなくて、家庭電化されておりますよ。それに対しては、少なくとも最低千五百円か二千円ぐらいのやはり電気料になっておると思う。そうすると、二百円の税金が毎月かかってくる。二百円近く税金がかかってくる。あるいは百七、八十円かかってくる。  こういう国民全般に、生活必需品にかけているというのはどう考えても不合理なんだ。これをなくするということを皆さんが言いっつも、なぜなくしないか。地方財源、地方財源というけれども、地方財源が足らなければ、それだけ国からやればいいじゃないですか。地方で別な個別の財源を求めなければできないのだというようなものの考え方がおかしいので、福祉につながらないでしょう、これでは。幾らほかのことを言っても、これをやらない。皆さんそう言っているじゃないか。言っておってやれんということはどういうことだ。  総理、これはひとつ大いに考えて、来年度の予算で十分そういう点を検討していただきたいと思う。大蔵大臣も含めまして。私はそれを強く要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  153. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて向井君の質疑は終了いたしました。  午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時十九分休憩      —————・—————    午後一時二十八分開会
  154. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、補正予算三案に対して質疑を行ないます。鈴木一弘君。
  155. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 過日の政府の三演説、これを聞きながら、新内閣がどのような日本をつくろうとしているのか、そういう点で注目をしていたわけでありますが、特に佐藤長期政権のあとを受けて、流れを変えようという、そういうことばのもとに出現した新内閣であれば、当然のことであるけれども、内政面、外交面、そのどちらを見ても、継続か変化かということであれば、変化、それを選択するであろう。大胆でかつ新鮮な考え、エネルギー等に基づく政策を示すと、このように私ども期待をしておりました。また、国民田中内閣に対する期待もそれであったと思いますが、そういう点から今回の三演説を聞いたときに、率直に申し上げまして私は失望をしたわけであります。  いま一つは、失望だけではなく、怒りもこみ上げてきた。はっきり申し上げれば、その中に、これからの流動する国際情勢にどう対応していくのか、あるいは内政の重要な柱とした「列島改造論」にしても、都市集中というその奔流を転換して国土の均衡ある利用をはかっていく、そういうプログラムはとうとう見せていただけませんでした。物価公害、農業への解決の道もなく、ただ、はっきり申し上げると、官僚の作文に終わっているんではないか、こういう点からであります。  まあ、一回の演説でもって田中哲学が言い尽くされているとは思わないわけでありますけれども、私は、この内閣がどういうような政治理念のもとに、どういうこれからの日本をつくろうとしているかということを知ることはできなかった。そこで、これから質問を通じて、田中総理が一体どういうふうにこれからの国際情勢あるいは社会状況、こういうものをどうとらえて、どう持っていくかという点について伺っていきたいと思います。  まず、「日中」以降のアジア外交について伺いたいんですが、わが党は、「日中」以後の最大の目標、これは国際情勢の多極化に対応してわが国の外交のいわゆる行動能力、それを最大限に確保していく、この国際的な行動能力をより大きくしておくということが非常に大事だと思います。同時に、日中両国が正常化を通じてアジアの平和に貢献しようという、そういう道しるべを追求していく。こういうことで一致をしている。つまり、日本外交の行動能力を強めながらアジアの平和と安定にどう貢献していくかということが非常に大事でありますが、そういう点でわが党の竹入委員長が東南アジア各国を歴訪した。で、今後のアジア外交の方向を探ってきたわけでありますが、その旅行を通じてわかったことは、アジアの各国が日中復交を歓迎しながらも、同時に一まつの不安と動揺を示している。  そこで、いままでの米ソのイデオロギー対立、そういう中からの勢力圏ができていた。そういう支配された秩序から新しい共存秩序へと動いていく。そういう、アジア諸国にとっての多少の動揺とか混乱はあるのはしかたがないと思うのでありますけれども、そういうことがあればこそ、政府も、はっきり申し上げれば、特使を派遣をされたんだと思います。その特使を派遣された結果、政府としてどういう分析を得てどういう対応策が生まれたのか、まずこれを伺いたいと思います。
  156. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 衆参両院で御答弁申し上げておるとおり、政府の特使の派遣それから私自身の外遊は、日中共同声明が発出されることにつきまして、いま鈴木さん御指摘のように、各国が一応歓迎はしておるとしても、若干の不安、危惧を持っていないとも限らない。したがいまして、なぜこういう日中和解の決意をしたのか、日中会談の成果は何かということにつきましてできるだけ詳細に説明をして理解を求める必要があると感じたからでございます。今後のアジア政策全体につきまして御相談を申し上げるというようなことではなかったわけでございます。さしあたってやりました特使派遣等を通じまして、各国の反応は、きのうも御答弁申し上げましたとおり、一応わざわざ自分の国に特使の来訪をもって事情を説明してくれた労を多とすると。  第二は、いま御指摘のように、日中の国交正常化というのはけっこうなことであると、歓迎すべきことであると、アジアのためにも歓迎すべきことであるということでございました。  第三には、しかし、日中両大国が手を握ったことはいいとしても、アジア並びに太平洋圏全体につきまして、日本に対する期待は大きいし、日本自体は従来と変わらない、あるいはそれ以上の熱意を込めて、われわれ後進国の努力に協力をすることを強く期待するということでございました。  私どもは、近隣並びに東南アジア・太洋平圏諸国の気持ちをよくくみまして、今後、「日中」後のアジア政策に真剣に取り組んでいかなければならぬと思っております。
  157. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そこで「日中」以後のアジア外交に真剣に取り組んでいくといういまの御答弁からして、私どもの党では、アジア地域における地域の協力体制や機構、こういうものをここのところで改革しなければいけないんではないか。一つはASPACの問題、この日中正常化という中で、台湾の国民政府が参加しているそういうASPACという、一面、いわゆる反共集団としてのそういう発足や歴史的経緯から見ても、これを、いままでの答弁では、解消する気はない、抜ける気はないという話がありました。そうではなくて、むしろ発展的に組織がえをすると、こういう感覚はないかどうか。
  158. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) アジアは、御承知のように、人種、宗教もたいへん多彩多様でございまするし、それから経済の発展の段階、それからそれぞれの国が持つ問題——貧困、政治的な不安定、いろんな問題をかかえておるわけでございまして、容易ならぬ地域だと思うのでございます。したがってアジアに明るい平和の展望が開かれてくるのはいつかということを早急に期待することはとても困難なことでございまして、私どもは、相当しんぼう強く、長い展望の中でアジア問題を考えていかなければならぬということでございます。  第二は、それではアジア人がアジア人だけでアジアの開発、復興ができてまいるかというと、そうはいかないのでありまして、やはり欧米各国の協力、これも、従来のようにアジアを分割する、アジアを支配するというものではなくて、文字どおり、アジアの復興ということに対してまじめな意味経済的、技術的な協力を今後取りつけていかなければならぬと思うのでありまして、いま御指摘のアジアの多数国間の協力組織、地域協力の仕組みをどうするかという問題は、そういう中で漸進的にかつ非常に手がたく進めていかなければならぬと思うんです。早急な解決はなかなかむずかしいと思います。  まあ、そういう前提で、ASPACの問題でございますが、これは関係ASPAC加盟国が自主的につくり上げた仕組みでございまして、国連の下部機関でも何でもないわけでございまして、日中が国交が正常化した、あるいは中国が国連に加盟したということのために、直ちにこの仕組みに直接影響がある問題ではないと思っております。われわれとしては、しかし、中国がこういう既存のアジアの地域開発機構というものをどのように評価し、これに対してどういう態度をとるのかもいまさだかじゃございません。したがって、私ども、いまさしあたって言えることは、まずこの自発的につくられた仕組みからにわかにこういう段階がきたから直ちに脱退するというようなことは穏当ではないと考えておるのでありますけれども、将来これをどうしてまいるか、あるいはこれが存在している間どのような機能を期待するかというような点につきましては、ASPAC関係国なんかの意見を徴しながら、それから私ども自身も考えながら進めてまいるつもりでございまして、いまの段階で、これをこのように改組していく、あるいは解消していく、あるいは他の機構に統合していくというようなことを考えていないわけでございまして、いましばらくこの問題につきましては検討したり、それから関係各国といろいろ協議したりする時間的な余裕をお与えいただきたいと思います。
  159. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そういうことになりますと、どう持っていくか、運営の問題そのほかの点があるのでありますけれども、まあ台湾の国民政府が入っているというその一つだけでもわが国としては非常にやりにくい面があるだろうと思う。いまのもうちょっと時間をかしていただきたいということは、はっきり申し上げると、発展的な何か方向をたどると、こういうことで私は理解をしたのですけれども、それでよろしゅうございますか。
  160. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ASPACをそのまま存続するとすればどういう機能をこの機構に期待するか、他に適当な統合する国際機関を考えるべきかどうかというような点、いま申しましたように非常に微妙な段階でございますので、発展させていくというあなたの御質問の意味が、これの存在を前提としてお考えになっておるのか、それの解消を前提として考えられておるのか、そのあたりちょっと私も解しかねるのでございますが、いずれにいたしましても、ここ当分この問題につきましては時間をかしていただきたいということでございます。
  161. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 まあ、私は、はっきり申し上げて、先ほど申し上げたように変革を迫られているとはっきり申し上げたんですから、発展的な解消か組みかえを考える以外にないだろう、私どもの党の言っておりますアジア・太平洋平和会議というようなそういう形には変革はできないかどうかということです、具体的に申し上げれば。その点の感覚はございませんか。
  162. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) この間日中首脳会談で合意ができましたように、共同声明にも明らかになりましたように、アジアでどの国もヘゲモニーをとることを許さないと。で、日本も中国もヘゲモニーを求めないと、こういういわば消極的な、こういうことはしないということだけが一応合意されておるわけです。それでは、積極的に、あなたの言われるように積極的に、それではアジア・太平洋地域の平和を保障するために創造するためにどういうことをやるかということは、これからの課題なんでございます。で、いまあなたの言うアジア太平洋平和会議というのも一つの私は考え方だと思うのでございますが、この種の問題を取り上げるにあたりましては、よほどアジアの全域にある各国それぞれ十分問題をこなした上で、発足した以上は十分機能せにゃなりませんわけでございまするから、十分よく問題をこなした上でやらないといけないのでございまして、はたして日本がそういうことを提唱することがいいのか、適当なのかどうかというようなことも含めて、これからわれわれの勉強の課題として与えておいていただきたいと、そういうことでございます。
  163. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次に、インドシナ問題で伺いたいのですが、先般の特使派遣に際して、アジア諸国の中には、インドシナ和平についてわが国に特定の役割りを果たすような具体的な話が提案や要望があったのではないかと、あったはずだと思うのでありますけれども、その内容を差しつかえなければ言っていただきたいと思います。
  164. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) インドシナ和平は、アメリカと北越との間で交渉が持たれておるわけでございまして、どうやら両当事者の間で近く妥結を見るに至るであろうと、そしてもはやもう後退できないというところにきているというように私どもは伺っておるわけでございまして、その和平達成につきまして日本にどうしてくれこうしてくれという注文は、ただ、南ベトナムから特使が参りまして、この交渉、伝えられる妥結の内容においては若干まだ疑問の点があるので、それをアメリカ側に伝えてほしい、それから自分たちの南ベトナムの立場というものに理解を持ってほしい、そういう意味のアプローチはございましたけれども、アメリカと北越両当事者から直接日本のほうに妥結の内容についての相談という点は、事の性質上、なかったわけでございます。
  165. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 アメリカと北ベトナム以外の各国からはそういう点はなかったですね。
  166. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま申しました南ベトナム政府からだけございました。
  167. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 経済大国ということは、これはよく総理もおわかりなことだと思うのですけれども、今回の北京会談以後は、日本が好むと好まざるとにかかわらず、政治大国というそういう座に押し上げられてきている。そこで、その政治大国としての責任が、当然、これはアジアの平和、また、世界からもアジアからも求められている日本立場だと思うのです。それが、そういった責任を自覚すれば、今度のいわゆるベトナムの停戦の問題に対しての国際会議、そういうものに求めて積極的にこれは乗り出すべきではないのか、それが一つです。  いま一つは、前の内閣のとき以来、政府が停戦監視団への参加を熱意をもって主張してきた。まあ、きのうの答弁では、当事者から言ってこないからというようなことで一転してはなはだ消極的な態度になってきている。結局、すでにアメリカと北ベトナムとの間に九項目の協定案等ができてきている、そういうことでいろいろなそういう参加する国の構成がきまっているというようなことからなのかという理由が一つ。  いま一つは、じゃ、そうなれば、一体今後の復興の問題と財政援助についてはどういうふうに積極的な参加を考えていくのか、その点を伺いたいと思います。
  168. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) きのうお答え申し上げましたように、一つは、今度の和平が達成されてその関係が続いて定着するような軍事的な政治的な問題の解決という問題があるわけでございます。もう一つは、それ以後のインドシナ全体の復興開発という積極的な課題があるわけでございます。で、前者のほうにつきましては、私ども、これにしいて参加しなければならぬという性質のものでもないと思いますけれども、後者のほうにおきましては、日本が参加しないでインドシナ全体の今後の復興計画というようなものを進めていくこと、これはたいへん望ましくないばかりでなく、十分機能を果たし得ないおそれがあるのではないかという意味のことをきのう本委員会で御答弁申し上げておいたわけでございます。そういった国際監視委員会あるいは国際会議のメンバーがどうなのかということは、まだはっきりしておりません。それから国際会議なるものの役割りが、一体、いま言われた、過去のあと始末を監視するものなのか、それから将来の問題を議するものなのか、あるいはその両方なのか、そのあたりがまだはっきりいたしていないのでございます。日本立場といたしましては、これから先、インドシナ半島全体の開発という問題につきましては、日本が参加しないで行なわれるはずはないと思いまするし、また、日本も参加の上応分の協力をしなければならぬ立場にあると考えております。
  169. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 外務大臣の答弁を聞いていて、昨日も当事国の要請云々ということがありました。それがないからという、こういう答弁があった。私はそれを聞いていて思ったのは、そういうことに要請が得られないということ、ほんとうなら要請が得られるような外交努力というものを続けるのがほんとうじゃないか、その辺を怠ったというように思ったわけです。それは政府の怠慢ではないかと。はっきり申し上げて、アジアの中での最大の紛争です、あそこは。その最大の紛争の解決に、アジアで非常に安全にも重要な役割りを持つ、経済大国ともいわれ、政治大国にもなってきたという認識を持つと、わが国がいささかの関与もできないなんということは、これはどう考えても政府自体怠慢ではなかったかと、こういうふうに言わざるを得ないと思うのです。何が一体原因なのか。いろいろ北ベトナムとの関係改善のために政府が努力してきていることも知っています。そのために、わずかながらずっと北ベトナムへの援助が行なわれていることも、二年間続いていることも知っておりますけれども、結局、一方で例のベトナム向けの戦車の搬出問題、それで政令改正を行なうというようなその姿勢にわかるような対米追随というような形があったから、そういう点から、はっきり申し上げると、いわゆるいままで当事国の要請というものが与えられなかったのではないか、こういうふうに思うのでありますが、その辺のことについての政治的な責任といいましょうか、そういう点はどうお考えですか。
  170. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今度紛争解決につきまして一番大事なことは当事国同士が話して話をつけることでございまして、そうしてそれはそのとおり行なわれているわけでございまして、私どもの立場は、両当事国が平和達成のために大局的に精力的にしかも早期に実現していただくということを、これはアメリカに対しましてもそれから南越に対しましてもたびたび機会あるごとに申し入れてきたことでございまして、したがって、そういう両当事国の話し合いにおいて和平が達成されようとしていることは、われわれとしては歓迎しているということを申し上げておるわけでございます。問題は、その達成された了解事項というものを裏書きするというか、それを保証するという監視委員会に日本が入るか入らぬかということでございますが、この点につきましては、鈴木委員が御指摘のように、両当事国といたしまして日本を招くべきか招くべきでないか、これは両当事国にそれぞれの考え方が私はあることを承知いたしておるのであります。しかし、かりに日本に参加を要請されたいといたしましても、いまの日本の国内体制は、軍事的な監視機構に日本の公務員を派遣すること自体、まずたいへんこれは問題——すなおに派遣できる体制にあるかどうかということになりますと、よほど国内的調整が必要であると思います。私は何も自衛隊法でいう海外派兵にそれが該当するものとは思いませんけれども、日本国民感情というのはしかく簡単でございませんで、こういう問題についてはいままでのところ消極的であったわけでございます。しかし、それはともかくといたしまして、達成された和平条件というものの監視に日本がどうしても一枚加わらなければいかぬというように私は思わないのでありまして、向こうが要請しようとしまいと、そういうことよりは、先ほど申しましたように、今後、ベトナムをはじめインドシナ半島全体の復興計画を論ずるということになりますと、これは両当事国とも日本をはずしてやれるはずがない。もしそれでも日本をはずすというのでございましたら、私どもはまた私ども独自のプランをもって臨まなければならぬのじゃないかと思いますけれども、そんなことはよけいなことでございまして、まず、この国際会議の役割り、その構成国、そういったものが漸次明らかになってくると思いますので、その状況に対応して日本の態度をきちんときめていきたいと考えております。
  171. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 九項目に対しての協定、こういうことについて、先ほど日本政府の態度として和平実現については歓迎しているという答弁があったので、それに基づいてひとつ聞きたいのですけれども、これは南ベトナムのチュー政権との間でチュー政権が反対ということで調印がおくれていると、そういうことから和平が遠のいている感じがするのですが、わが国として南ベトナムを説得するという気はないかどうかということが一つ。  いま一つは、先ほどの外務大臣の答弁にも、南ベトナムのラム外相から米国政府に対しての意図を伝達してもらいたいということがあったわけです。それについて、これはアメリカから何か回答があったと思いますが、その回答を聞きたいということと、そういう線から南の政府を説得するということはできないのかどうかということ、いかがでございましょうか。
  172. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 南ベトナムが提示してきた問題は、こうでございます。一つは、南に浸透しているといわれる北の軍隊の撤退が明らかでないということが一点でございます。  それから、停戦後の政治問題として選挙が行なわれるわけでございますが、その場合の南ベトナム政府と、それから解放臨時革命政府と、それからもう一つ中立の三派構成の評議会ができる、国民和解評議会というものができると。で、その場合の中立というものの実体がはっきりしない。これは、そういうものは南ベトナムの現実に照らして、三派構成に入るような実体を持っておるかどうかという点が、自分たちには理解できないということでございました。それはそのまま、仰せのように、アメリカ側にこういう申し入れがあったがということをお伝えいたしたのであります。で、アメリカは、いま南ベトナム政府側と和平条件についていま話し合いを続けておるわけでございますから、私どもを通じて言わなくても、もう先方から直接、南ベトナム政府の関心は、十分聴取しているはずだと思いますが、こちらからもそういう伝達をいたしておいたわけでございまして、そういうことを十分頭に置いて、いま、話し合いが最終の段階において精力的に行なわれておると思います。で、私がアメリカから伺っておりますことは、もうあとずさりができない状況まで来て、必ずこの和平は早期に達成するという不退転の決意で当たっておるということを聞いておるのでございまして、その結果に期待を持っておるわけでございます。
  173. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 先ほどのインドシナの今後の復興の問題でありますが、アメリカは二十五億ドルの援助計画があるというのですが、そういう点については、まだアメリカともこの復興の基金構想そのほかについては話をしていないのかどうかということ。それから、いま一つは、日本独自のいわゆる具体的な構想はお持ちなのかどうか、その二つについて伺いたい。
  174. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) アメリカ政府筋でも、インドシナ復興開発計画というものに対する言及が過去において何回かなされたことがございます。七十五億ドル計画云々というようなことも私どもは聞いたことがございますが、一体、それはアメリカ単独でそれだけの拠出をする用意があるのかどうなのか、それとも、国際的なコンソーシアムをつくって、全体でそういうことを期待しておるのか、それもさだかではございません。したがって、ニクソン再選政府が来たるべき外交教書、一般教書等でそのポリシーを発表されると思うんでございますが、そういう段階になって、どのようにアメリカが、新政府がお出しになるのか、そのあたりを見ないと、私どももアメリカがどう考えているのかよくわからないのでございます。だから、あなたのおっしゃるとおり、いまの段階では、アメリカのほうも、はっきりしてないということでございます。  それから、日本側は日本側で、われわれは、もし和平後、和平が達成されたらどうするか、日本としてどうすべきかということについては、いま検討いたしておるわけでございますけれども、それをいま、日本はこういう構想でおるんであるというようなことを、国会の場で、いま検討中のことを申し上げることは、決して国の内外にわたってあまり賢明なことではございません。ただ、検討をいたしておるとだけ御報告いたします。
  175. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは総理に、インドシナ和平の問題、アジアの平和の問題のわが国の役割りということで、一体この田中内閣の姿勢というのは、いまの外務大臣の答弁から見ていると、どうも相手国によって右にも左にもなっていくという感じであって、わが国としてはとことんまで——はっきり申し上げて、いわゆるASPACについても、はっきりこういう方向にすると、そうして今後の、日中以後のアジア外交をこういう方向に持っていくとか、それからインドシナ和平についても積極的にこれに役割りを果たしていきたい、そういうような点が一歩欠けているような感じがするんでありますけれども、総理御自身としては、その点、どういうふうな考えをお持ちですか。
  176. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 外務大臣がるる申し述べておるとおりでございますが、とにかく長いこと不正常でございました日中間が正常化したということは、アジアの緊張緩和に大きく資するものだと考えております。で、とにかく、いま御指摘ございますように、インドシナ半島の紛争解決にも乗り出したらどうかということもございますが、そうでなくとも、いま、二次大戦で、その後日本というものは、いろいろな見方で見られておるわけでございます。まあ、アジアに対てしは、今度の日中共同声明のように、覇権は求めない、それから第三国との現状というようなものを変更するようなことも考えませんというような、すなおな立場で出ておるわけでございます。ですから、まあ将来の問題としていろいろな問題が起こってもまいりますし、日本は応分の負担をしたり応分なことをしなければならない、平和に寄与したいという考えを持っておりますが、とにかく受け身の態勢をとっております。まあ、日本がすぐ何かやろうとすると、また経済侵略でないか、いろいろな問題が起きますから、いままで戦後やった中で一番効率的なものは、アジア開発銀行構想であります。また、アジアハイウエーの構想等も進めておるわけでございます。  そういう意味で、これから一つずつの国々との間にだんだんと交流は深まってまいります。インドネシア等も長い歴史的ないろいろな問題がございましたが、日本とインドネシアの間もよくなりつつありますし、また、日本とフィリピンの間もなかなかめんどうな状態でございましたが、まあ今度の未帰還軍人の捜索等に対してフィリピン政府やフィリピンの国民日本に寄せられる理解、好意というもの、まあ雪解けというか、ものが解けるような、急速な状態がございます。まあ、そういう意味でバングラデシュの承認も非常に早かった。こういうようなことで、日本がもっとやらなきゃならないじゃないかという反面、失敗をしてはならない、日本は絶えず応分なことをしようという意思があり、また、これからやっていくのでありますから、ということで、まあいまの段階では、あまり指導的なというような、そういう大東亜共栄圏ということでやったわけでありますから、そういうような感じ——いつまでもそんなことでもっていいと考えておるわけじゃありません。しかし、まあ慎重にかまえておる、これだけ具体的なものであり、全く積極性を欠くものでもないわけです。  いま外務大臣が述べたとおり、日本を含まず、まあ監視団に加わって五カ国になるかどうかという問題よりも、ベトナムの民生安定とか、これからのベトナム復興ということで、日本が加わらないで、日本よりもはるか遠い西ドイツやフランスやイギリスがということを主体にしてやれるわけはありませんし、アメリカだけならごめんだということも起こると思いますし、そういう意味で、日本に対して必ず要請もあるのでございますから、そこらを非常に慎重に考えておるということでございますが、アジアの平和に寄与したいという気持ちが非常に強いことは理解をしていただきたいと思います。
  177. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 覇権を求めるのとは違いますから、和平のために貢献していくことは。これは本気になってやっていただきたいと思うんです。  次は、対インドネシア借款の問題ですが、五月に来日したインドネシアのスハルト大統領との間に合意された共同発表、それによると、十年間に五千八百万キロリットルの石油供給を行なうということになっておりますが、それに対して日本が二億ドルの借款を供与する、この用意がある旨を約束しております。一体この約束をいつ履行されるのかという点、それから、借款供与の閣議決定が現在まで結ばれていないんではないかと思いますけれども、もし結ばれてないならば、おくれている理由は何か、この二点を、まず伺いたいと思います。
  178. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ閣議決定はしておりません。具体的な取引、そのほかの開発計画等について、政府関係でいま調査し、両国関係で協議しているという現状でございます。
  179. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの答弁で、いつごろ履行されるかということは、約束が。
  180. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは双方の調査が済み次第、なるたけすみやかにやりたいと思っております。
  181. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 その共同発表によると、ひもつきでないプロジェクト借款ということになっておりますが、ほんとうにこれはひもつきにならないのか。一体どういう金を使うのか、いわゆる基金とか、アンタイイングの、いわゆるひもつきでない金というのは何なのかということ。それから、ほんとうにひもつきにならないかどうか。それから、もう一つは、同じく共同発表の中に、緩和された条件でということがあります。金利などの条件は一体どうなっているのか、まずこの二つを。
  182. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、ひもつきでございません。それから第二に、条件は大体基金から出す予定でございますが、期間二十五年、利率三%、据え置き期間七年を一応考慮しております。
  183. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 インドネシア援助国会議のワク内における日本の援助ではないということが共同発表の中にあるのです。なぜ、わざわざこう断わったか。もともとわが国が多国間べースの対インドネシア援助方式を提唱したわけでしょう。そしてインドネシア債権国会議を通した多国間の援助方式というのが定着してきている。そこを、そのワク外でということで二億ドルというような巨額の借款を与えるというのは、一つは、矛盾してないか、いままでの日本政府の態度と。いま一つは、国際秩序を乱すということになっていかないか、この点はどうなんですか。
  184. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) IGGIの仕事の中に石油開発という項目がございませんので、ワク外になっておるわけでございます。  それから第二に、この点については、オランダで開かれましたIGGIの会議で日本側から報告いたしましたところ、大体大かたの意見は、政府借款という形によって、いままでプルタミナがローンを借りていたのと違って、インドネシア政府が直接日本政府から借款を受ける、そういう形であるので、むしろインドネシアの財政に寄与する。そういう意味では、IGGIの関係諸国はそれなりに評価しているというのが実情のようでございます。
  185. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 当初、インドネシア側は三億ドルの借款を要望していたというんですけれども、それが二億ドルにおさまったという経緯、それから、まだ残り一億ドルが、相手側のインドネシアとの間では足らないわけでありますけれども、その一億ドルについては、民間融資について政府が何かコミットメントを与えたのではないか、こういうふうな話があるんですが、そういった事実はないのかどうか。これについては、当時の通産大臣であられた田中総理から直接御答弁をいただきたいと思います。
  186. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政府レベルでは、三億ドルという要求はなかったのであります。
  187. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 その民間融資について何かの約束を与えたようなことはあるんですか。
  188. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府側から特にコミットしたことはないようです。民間の有志が先方と接触いたしまして、そうして、いろいろな会社の計画等も含めて、一億ドルという話をしたようでございます。
  189. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 六月四日付の全国紙の報道や業界の話によりますと、民間借款と返済方式を具体化する。そのための窓口として、インドネシア産の原油の輸入の専門会社の設立がこれには報道されております。これは通産大臣が担当大臣でありますけれども、この会社設立の動きと、これをめぐって、従来の、いままでインドネシア産の原油の窓口となっていたファー・イースト・オイル・トレーディング、そういう会社との間に、いろいろ既得の権益をめぐっての争いがあったとか、もめごとがあったとか、こういう話があるのでありますけれども、その辺のことはどういうふうにお聞きになっておられますか。
  190. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本側といたしましては、ローサルファの油が多量に入ることは、公害防除の点からも非常に歓迎すべきことでありますから、日本側もそういう話に乗ったわけでございます。それで、いままでのファー・イースト・オイルがやっておった量にプラスアルファとして、これが追加されるということでございますので、もう一つは、先方の意向もございまして新会社でいこう、ただし、いまのファー・イースト・オイルと新しいジャパン・インドネシア・カンパニーとの間で業務協定を結びまして、なるたけ重複を避けて、実務的な仕事は現在のファー・イースト・オイルにやらせる、そういう原則的了解ができまして、目下細目を詰めている最中でございます。
  191. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 経済界の一部の中には、この二億ドル借款が、当時の佐藤総理とスハルト大統領との会談から話が出てきた、こういう点から、何か政治的な取引があったのではないか、こういうふうに見ている向きもあるわけです。そこで、借款供与の交換公文の調印がいまおくれている。先ほどは、いろいろ調整中ということでございましたけれども、調査中ということ、あるいは調整中ということであったんですが、そのほかに政治的な事情というものがあるのかないのかということ、それから、関係者の話し合いがもつれているのか、もつれていないのか、そういう点、何かあるかどうか。その点は、これは関係大臣ですから、通産大臣からひとつ伺いたいと思います。
  192. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政治的な含みとか、そういうものは一切ございません。日本側としては、いま全世界じゅうがローサルファの原油を非常に熱心にさがし求めている最中でもございましたので、非常にこれは好都合な話である、それがプラスアルファとして供与されるということが話にありましたから、非常に歓迎したわけでございます。それで、ファー・イーストと、いまのジャパン・インドネシア・カンパニーとの間の実務協定の話し合いが少し長引きまして、そのために少しまた仕事がおくれているところもございます。それから、現実に向こうの側とわがほうとの間の、そういういろいろな実務的な調整事項がおくれているというのが原因でございまして、政治的なことはございません。
  193. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 こういう開発途上国に対しての民間の直接投資、こういうことで、いろいろ資源確保などということから、どんどんふえてくるという傾向にあるんでありますけれども、まあ、そういう経済的に相互の密接な関係ができることはいいことだと思うのです。ですが、それに対して政府が、いまもはっきり申し上げて、政府間べースというか、借款の二億ドル、片っ方のほうで一億ドルがまとまっているということになると、まあどうしてもこれは協力姿勢のような感じになります。そういう点は用意周到に、今後は慎重にやってもらわないと誤解を招くのではないか。今度の場合も、インドネシアの外資、これのラッシュ状況は御承知のとおりですよ。五年間で十七億ドル以上もすでに入ってきていて、与党からまでも批判が出ているという状況です。そういうことで、自力更生の力さえ失わさせるではないかということが、すでにインドネシアのゴルカールという与党から言われている。そういうところから考えると、その国の経済自立というか、そういうものをほんとうに望んでいくということになると、それに対しての政府借款の供与、これはよほど慎重でなきゃならない。この点で、一体、経済協力と、それから相手国のいわゆる経済自立の問題と、それに対しての世論の反発等もございますので、そういう点についての基本的見解というのが必要だろうと思いますが、総理はどういうふうにお考えですか。
  194. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 経済協力は相手の自立を助けるものでなければならないということは、もう申すまでもありませんし、国民の財産を投資をするわけでありますから、投資という問題に対しても十分理解が得られるような状態でなければならないことは言うをまちません。ただ、異常に事態が変わってまいりましたのは、南北問題がいま世界の一番大きな問題になりつつございます。持てる者と持たざる者、先進工業国と開発途上国の問題でございます。これはもう、人口の数から言えば八対二で、二割の人がその何十倍も総生産をになっておるというようなアンバランス、だから、東西問題から南北問題に焦点は移行しておるといわれておるわけであります。ですから、南北の問題が片づかないで地球上の平和は維持できないということが、このごろみんな言っておることばでございます。だから、そういう意味でも、これはUNCTADの会議でも問題になっておりますように、先進工業国は開発途上国に対してGNPの一%を援助しなければならないということで、日本ももうすでにGNPの〇・九三%ないし〇・九六%と、もうGNPの一%になるようになっております。しかし、それだけでは困るので、アンタイイングを進めたいということで、今度はそういうものももっと大幅にしなければならない、こう言っているわけであります。特に日本は、DACの平均数字〇・三二%に対して日本が〇・二三%であると、これじゃもう日本は何をしてるんだと、こういう要請もあるわけであります。ですから、新国際ラウンドを提唱しておる日本でもございますし、日本はほんとうに自己資源を持たざる国でございますので、そういう意味で、やはり開発途上国、資源保有国、資源の日本に対する提供国というものとの間には、経済交流、これを十分はかっていかなければならぬわけであります。そういう意味で、石油などは、アメリカでさえも、八五年、昭和六十年から石油の輸入国になるということで、たいへんないま騒ぎをしておるわけであります。日本もいま公害問題で、一ローサルファの問題に対しては、ローサルファの石油輸入に対しては、全く最大の問題としておるわけでありまして、イランとかインドネシアとか、シベリアのチュメニ石油とも取り組んでおるわけであります。まだまだペルーの問題とか、いろんな問題がございますが、そういう問題で国民の理解が当然できるように、慎重でなければなりませんが、しかし、国際的要請を受けて援助も続けていかなければならない、こう思います。
  195. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 総理のいまの答弁からすると、よくわかるんですけれども、これは、第十一回のDAC上級会議が行なわれた、その席上で日本が、開発途上国の南の国々に対しての援助条件の緩和のいわゆる七二年勧告というのを賛成したわけですね。採択をしております。それによると、今度は、先ほどの金利三%、期間が二十五年で据え置き七年という、そういうのについても、いわゆる贈与が一〇〇だとすればそれは五四であるというふうな、いわゆる、何というんですか、借款条件を加重平均したグラント・エレメントというのがあります。そういうものが、二五%以下は今後は、はっきり申し上げて援助とはみなさないというふうになってきている。そういうときに、はっきり言えば、むしろ今後は贈与や、そういうかっこうのものをふやさなければいけないんじゃないか、あるいは期間を五十年とか、金利を三%以下にするとか、こういうことを考えていかなければならないと思うんですけれども、いままでのところ約一割ぐらいが二五%以下の、いわゆる借款に値しない借款、援助に値しない借款ということにひっかかっているわけですよ。そういうことから考えても、この点は、条件の改善ということは一体どう考えていますか、これから。
  196. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そこらが非常にむずかしい問題でございます。ひもつきでない融資をできるだけよけいにしなさい、これは、しなさいということはよくわかります。よくわかりますが、日本も〇・六、〇・七というような目標数字に向かって努力をしますといっても、これはなかなかたいへんなことであります。しかし、日本がほんとうにやろうとしても、アメリカや、ほかの先進工業国が一体できるのかというと、今度はなかなかできません。アメリカ自身が〇・七までなどとてもやれない、こう言っておるわけでございます。しかし、国際機関としては、第二世銀のように無利息五十年というものもあります。それと第一世銀の合わせ方によっては、無利息のものと五〇・五〇にすれば三・五%ぐらいにもなるわけでありますし、三%にもなるし、四%にもなるし、二%にもなるということであります。ですから、これからの国際機関を通じて出すもの、直接出すもの、いろいろケースがあるわけでございまして、各国別に日本は利害の深いところに対してはいろいろな条件がきまってくると思います。国際機関そのものや、国際的にもだんだん条件はよくしなければならない。それでやりっ切りという援助、ほんとうの援助というものの量をだんだん大きくしなければならないし、そう求められる状況であるというふうには考えております。
  197. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 総理からは、だんだんと改善していくという話があったんですが、具体的な方針として、贈与をふやすとか、政府開発援助の一割近くがいわゆる援助の名に値しないものに、いま現在なっているわけですから、そういう点は一体いつごろまでにやりかえていくとか、こういったことはまだきまっていないわけですね。
  198. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、相手国はそう言うんです。私が去年日米経済閣僚会議に参りましたときも、日本の援助というのは民間の犠牲においてやっているじゃないか、条件が一体援助なのかというようなことがありましたが、それはいろいろなことを外国からは言われまして、日本日本の国力の増大に比例をして、だんだんと援助の質も量も拡大をしているわけです。ですから、日本がきめなくとも、国際会議でもっていつでも言われるわけですし、言われなければ日本はやらぬのかということではなく、質も量も拡大をしておるということでございますから、日本の開発途上国に対する援助というものに対しては、これは相当なものだというふうに理解をしていただきたい。
  199. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 関連。  いま経済援助の問題が出ておりますが、これに関連して二点お伺いしたいと思うのです。  一つは、昭和四十四年に、愛知外務大臣が、バンコクで開いた、いわゆるマーシャルプランのアジア版ともいわれるものの中で、七〇年代の終わりには日本国民総生産が約五千億ドルに達すると、そのときには一%は援助に充てたい、で、少なくも五年以内には二倍にすると、こういうことをバンコクで言われておるわけでありますが、いまの総理のお話を聞いておりますと具体的な面が出てきておりませんが、こういう具体的な数字まであげられて政府としてはっきり言われておるですから、かなり計画的にやらなければいけないと思うんですが、あの言われた愛知外務大臣の方針は、はたして貫かれていくのかどうか、これが第一点。  もう一つは、中国との関係でありますが、中国は、アメリカの国会で報告された中国の経済の内容の中で、一九五六年から七一年、この間に発展途上国への経済援助の約束総額が二十一億九千六百万ドルになっておりまして、そのうちの三分の一が東南アジア向けであると、こういうふうに報告がされておるわけです。したがって、中国も東南アジアにはこれから相当関心を持って経済面でも出てくる。そういった場合に、華僑の存在も現在あるわけでありますので、日本との間に問題が起きないかどうか。特に日本の場合、先ほど総理が石油のことばかり言われましたが、ただ資源を収奪する、こういうことさえすればいいんだという頭だけでやっていくと非常に問題になるし、そうでなくても反日感情というものが強いわけですから、中国はかなり自主性というものを認めながらの援助をしていく、そういった場合に、そこで日本との間に問題が起きやしないか。その点が心配をされるわけですが、この二点についてお伺いをしておきたい。
  200. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 第一点の愛知発言、これは理想に向かっての決意を述べたものでございます。これはもう、努力を積み重ねてまいるということは当然のことでございます。先ほども申し上げましたように、ほかの国の状態もございますし、とにかく援助、量も質も増大をしてまいりたいということは、もうそのとおりでございます。しかし、先ほどもちょっと申し上げましたように、この数字どおり実際に行なうということになると、これはなかなかのたいへんな問題であるということだけは、これは腹の中に十分入れておかなければならぬ問題でございます。こういうことでございます。  それから第二の問題は、これは中国との間に競合するようなことは絶対にありません。ありませんし、また、しません。その意味では、日中が国交の正常化ができて、トラブルを起こさないようにお互いがいつでも話ができるということは、これはもうアジアの平和のために寄与すると、こう述べたのはそこにあるわけでありまして、中国自体も、たいへんアジア諸地域に対して援助や協力を行なっておるようでございますが、これはぶつかり合うようなことがあるわけはありませんし、そういう問題こそ事前にも十分話し合いができるし、そういう意味で、日中国交正常化のメリットを、そういうところで、ひとつ大いに日中正常化の効果というものによってトラブルを起こさないようにしたいと思います。
  201. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 外交はそのくらいにして、内政に移りたいんですが、まず、四十七年度予算の補正の問題です。  今度、補正が追加約一兆四百七十五億円、結局、調整して六千五百十三億の大型増加ということになっていますが、この大型の理由はどういうわけですか、これは。
  202. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 今回の補正予算は、主として二つの点から計上いたしております。  一つは、最近におきましての通貨問題に関連して、わが国の貿易収支その他についていろいろ気をつけなければならぬ点。第一には、輸入につきましては、輸入し得るものはこの際できるだけ輸入をする、輸出はできるだけ調整の方面に向かうというようなことが大事な問題でございます。そうして、今回の他の一面におきましては、やはり国民の多数の諸君のコンセンサスが、いわゆる福祉国家の建設、すなわち福祉の増強、人間性豊かな社会をつくろうという希望が各方面に盛り上がっておりますので、これについては、従来ややもすれば、ややおくれがちであったこの方面の施設の充実をはかる。その充実をはかる際に、やはりなるべく輸出を調整しまして内需に向ける方法を考えます。あるいは、仕事をやることに関連しまして、当然国内におきましての需要が喚起せられ、そうしてその部分から、おのずから今度は外国から輸入を間接には促進する傾向にある仕事、こういうものを選んでいこうという結果、今回の補正予算をお願いしておるわけであります。その金額等につきましては、見るところによって、あるいは少し大き過ぎやせぬかという御批判もあるようでございますが、われわれとしては、この際この程度のことはぜひともやってみたい、そうしてこれを、今日のむずかしい円対策問題の重要な資源として、円対策——ことしの五月並びにことしの十月と二回にわたり、それに昨年来の施策に加えて、そうしてこの通貨問題の大事な当面の仕事をぜひ間違いなくりっぱにやり遂げたい、これには今回のこれくらいの補正予算がぜひとも必要だという結論に達しましたので、御審議をお願いしておるわけでございます。
  203. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 補正を大型化すれば円の再切り上げが防止できると。つまり、そういう考え方は、国内景気が停滞していれば輸出ドライブがかかって外貨の蓄積が行なわれる、逆に、国内景気が好調だと輸入が増加して外貨蓄積が減ると、そういう昔からの——昔のといいますか、外貨不足時代の一つのパターンがありますけれども、そういうのが現在はすでに変わってきているんじゃないか。すでに四十五年以降からすっかり変わってきているし、昨年の円の切り上げ以後はこういうことが変わってきている。御承知のように、景気がよくても国際収支が大幅に黒字になっていくわけですから、そういう点から見て、今回逆に六千五百億もの大型補正をしたということは、言いかえれば、円の再切り上げがこれで防止できないというふうにしか考えられないわけですけれどもね、その点はいかがなんですか。
  204. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいまの御質問が補正予算の大きさの問題についての御質問でございましたので、その方面を主にしてお答えをいたしました。  昨年の暮れのスミソニアンにおける各国の合意の結果、各国間の通貨の、暫定的といいますか、一応の約束ができて、それが行なわれておりますが、わが国の場合も同様であり、そうしてそれは、わが国の場合には相当大幅な切り上げでございましたが、世界各国における——あまりたくさんの例はないようでありますけれども、通貨切り上げ等の場合における実情は、切り上げの結果その効果があらわれてくるということは相当期間を要するというのが各国専門家等のやはり共通の常識のように承っております。わが国においても、そうした御意見の方もたくさんあると思います。そうして、昨年暮れのあの結果が、だんだんと日本の貿易事情その他に影響が及んでくることを期待しておるのでありますが、何ぶんにも、これがそう早く出てくるものではないということのために、われわれとしましては、一方、日本の輸出が比較的早く、また最近のように伸びてきておりますから、その結果が貿易収支に起こり、通貨に影響が及んでくる。そうすると、これだけではいけないと、何らかの道を考えにゃいかぬというので、ことしの六月に第二次の円対策を実行し、そうしてその後の状況、幸いにして日本景気もだんだんと安定的に上向きになってまいりましたけれども、なおここで、もっとやるべき道はないのかということをいろいろ研究いたしました結果、今回は、十月二十日の日でもって各省間で議のまとまったところをこの際ぜひとも追っかけてやろうと、これが今日の日本の通貨対策として非常に大事な問題であるということの結果がここにあらわれたのであります。そうして、これらの諸施策によりまして、おのずから全体としての態勢が直ってくるのだ。しかも、幸いにして最近——詳しい計数はあるいは政府委員をして御説明させますが、幸い、これが結果的に輸出輸入の上にあらわれ、これがいわゆる通貨対策に資しておるという面が出てまいっておるのであります。しかし、いろいろな事情からまだ完全にはなりません。で、それはあと若干の、かすに日をもってする必要がある。のみならず、われわれといたしましても、十月二十日、今回御審議をお願いしておりまする法律案並びに予算等の施策、これで足りないところがありとすれば、やはりまだこの上にも十分気をつけて、そうして次の施策も場合によっては考えなきゃならないというようなことも考えております。先般のあの閣議の懇談会、あるいは閣僚懇談会もしくは閣議におきまして、たとえば他の措置のごときについてもさらに慎重に研究をしようじゃないかということが一項目加わっておるのも、これもそのゆえんでございます。
  205. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大蔵大臣の話を聞いていると、何となく円の切り上げが防止できるような話のように感じるんですけれども、私は、これは再切り上げは避けられないというような、そういう印象のもとで大蔵大臣は答弁しているような感じを受けてしようがないんです。はっきり申し上げて、いますでにいろいろな対策が国際収支の上にあらわれていると、こういう話がございましたね、いま答弁に。ひとつそれは、事務当局からでけっこうですけれども、言ってもらいたいと思うんですよ。
  206. 林大造

    政府委員(林大造君) 計数をお答え申し上げます。  昨年の八月に、いわゆるニクソンの新経済政策というのが発表されました。その昨年の七−九月の輸出の対前年同期比を申し上げますと、それは二六・三%の上昇でございました。それが、十−十二月に二三・四%、ことしの一−三月に二二・二%、四−六月に一二・八%、七−九月に一七・八%と相なっております。それで、四−六月と七−九月で、七−九月のほうが輸出が若干伸びておりますのは、六月前後に海員ストが行なわれまして、日本の輸出に非常に支障が生じたのが響いているわけでございます。一方、輸入のほうはと申し上げますと、輸入は、昨年の七−九月にマイナスの二・三%、それが十−十二月にプラスの五・一%、一−三月のプラスの一一・九%、四−六月にプラスの一二・三%、七−九月には二六・二%と上昇しております。それで、貿易差額を申し上げますと、その黒字は、昨年の七−九月には、対前年同期比一二五・二%アップ、約二倍をこえておりましたのが、十−十二月には七四・〇%、一−三月は六〇・二%、四−六月には一二・五%、七−九月には五・二%と、顕著に貿易収支の黒字幅も伸びが鈍化しております。これは、景気回復の効果及びレート調整の効果、さらには昨年の五月以来とられております数次のいわゆる円対策の効果が次第に浸透してきている結果であるというふうに解釈いたしております。
  207. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは、いまのは貿易収支までですね。そうすると、経常収支全体ではどうなるわけですか。
  208. 林大造

    政府委員(林大造君) 経常収支の計数を同じく四−六月について申し上げますと、これも昨年の七−九月には季節調整済みの数字で申し上げますと十八億一千七百万ドルでございました。これが十−十二月には十六億七千八百万ドル、ことしの一−三月には十四億九千四百万ドル、それから四−六月には十三億二千二百万ドル、七−九月には十七億四千八百万ドル。七−九月には、先ほど申し上げましたような事情で若干ふえておりますが、やはりトレンドといたしましては安定した傾向を示しております。
  209. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そういうのを見ていくと、貿易のほうは若干前年の伸び率云々からありますけれども、一方の経常収支全体では黒字幅がずっと続いているということになってくる。私は、そういう点で、昨日は総理大臣が御答弁で、補正でもって国際収支に四十七年は三億ないし五億ドル縮小するという答弁がありました。それは明年には十億ドルから二十二億ドル縮小するだろうと、まあコンピューターによってこう出したと、こういう答弁があったんでありますけれども、今回の五千三百億でこういう十二億ドルという影響が明年あるというならば、今年当初にあの二兆一千五百億もの公共事業費が出ているのです、当初に。それは一体どのぐらいの影響があるということになっていたんですかね、これ。当初予算で二兆一千五百億も公共事業費を出している。それがほとんど、円切り上げのいわゆる国際収支への影響は私どもは聞いておりませんからわかりませんけれども、今回の公共事業費の五千三百六十五億円が明年には十二億ドルになり、本年じゅうには五億ドルも影響する、縮小するというのですから、それじゃ当初の二兆一千五百億の公共事業費は何億ドル影響したんですか、これ。影響する予定だったんですか。
  210. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) これは、あるいは企画庁の事務当局から答弁していただくのが適当かと思いますが、昨日の資料を私のほうの名前で出しておりますものですから申し上げますと、これは、ことしの当初予算におきまして計上しております公共事業約二兆円余り、これの国際収支に対する効果は、当然そのものとして分離して計算すれば出るわけでありますけれども、その計算はいたしておりません。全体としての財政支出というものは、これは四十七年度の経済の見通しを立てる際に、それを要素として織り込みまして経済企画庁が計算をしておりますもんですから、その経済効果というものは当然その中に織り込まれているということになっているわけでございます。ただ、そのものを分離してどういう効果があるはずだろうかということは、計算いたしますれば当然出てまいりますけれども、いま手元にそういう計算はしたものを持っておりません。
  211. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは、当然、昨日の総理の答弁の、補正予算との財投の追加でこれだけの影響がございますと言うからには、当初の公共事業費についてもこれだけの実際は効果があったわけでございますというのが出なければわからぬです、これははっきり申し上げて。その点はあらためて提出をお願いしたいんですが……。
  212. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 計算は企画庁のモデルを使ってやっておりますし、また計算は企画庁でやっておりますが、相談をいたしまして提出するように話してみます。
  213. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) モデルの使い方に関連する問題でございますが、追加的な財政支出をした場合に、それが経済、GNP、それから国際収支にどういう影響を及ぼすかというシミュレーションは可能でございますけれども、年度当初の見通しのつくり方としましては、経済の実勢の上に財政を織り込んで当年度の経済が全体としてどうなるかという点を想定しまして、その経済の動きと、世界経済、貿易の推移との相関をいろいろ積み上げまして国際収支見通しを立てたわけでございまして、モデルから当初の予算の規模を切り離してその効果がどう出るかという数字は、なかなか算出することは困難でございます。
  214. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 じゃ、これはもうはっきり申し上げると、これは出ないということですね、それじゃ。これはちょっと審議できないですね、出ないということでは。はっきり申し上げれば、当初のときに一体二兆一千五百億の公共事業費ならどのぐらい影響するかということは、出そうと思えば出せるわけじゃありませんか、これはぜひ出してもらいたい。
  215. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) モデルには、平常の状態、つまり過去十何年ですか、過去の長い間の変数が織り込まれておりまして、過去の平均的な姿が出てくるわけでございます。したがいまして、財政規模としてどの程度が平常の状態かという点の的確な算定がございませんと、そのプラス分の影響も出てこない。まして、根っこから全体の財政規模をなかった場合とあった場合と比べまして、どの程度の黒字幅の縮小になるかという計算は困難でございます。
  216. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、私も、昨日の、コンピューターを使って云々というのも、一方の基礎的なものも出ないということだと、こっちは信用できないということに、こうなってくるわけです。そういう観点で質問をしたいと思いますけれども、もうはっきり申し上げて、いままでの過去の経済の形とは非常に変わってきていると。総理大臣は、内需をふやせばこれは輸入がふえて輸出が減少するということを前にも言われております。そこで、しかし公共事業費のいわゆるセメントと鉄だけで私は円対策にはなっていかないんじゃないかと、そういうことをほんとうに思うわけですよ。  そこで、先ほどの答弁にも、まだ経常収支についてはかなりの黒字もあることであるし、そうなれば輸入の増加を積極的にはかるか、輸出の制限をするか、これしかないわけです。で、どちらもこれは長期的になんと言ってたんでは間に合わない、短期的に手をつけなければならない。で、今度の補正を見ると、海上保安庁の救難用ヘリコプターがあります。これは七機、約八億円余り。これは輸入するとすれば円対策の直接的効果のあるものでありますけれども、それだけでは話にならないです。はっきりこれは総理に伺いたいんですけれども、具体的に考えてもらいたいんですが、国民生活福祉ということを伸ばしていくことが大事です、これから。それが国が責任をもってやらなければならぬ分野です。その分野でもって直接的に円対策になるものをこれは積極的に考えるべきだと思うんですね。そういう点の外貨使用については総理のほうで考えはございませんか。
  217. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 過去は、民間設備投資が非常に上向いてくるということが景気が上向いたということと同義語になっておったわけでございますが、しかし今度は、民間設備投資がついてこないで景気は浮揚しておるわけであります。でありますから、輸出を内需に向けることはできませんし、そして輸入を必要としないわけであります。そういうわけで、今度は財政主導型ということで、財政で需要を喚起することによって輸出を国内に、それから輸入の増大にということを願っておるわけであります。しかし、根本的に長期的な視野に立って見れば、やはり生産第一主義から生活第一へというふうに全く方向を変えてこなければならないということは申し上げておるわけでございます。そういう意味では、社会保障と、これから量から質へという、国民生活の中でもやっぱり質へという方向を充実していかなければならぬことは言うをまちません。そういう意味で、四十八年度の予算編成という中には年金の年等にしたいと思いますと、それから長期経済計画の中には社会保障の長期計画等もぜひ織り込んでいただくようにしたいと思いますと、こう述べておるわけでございます。
  218. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは直接的な外貨の使用のことを私は申し上げたんですけれども、そのことについてはお答えがないので、私から一つ、二つ申し上げたいんですが、これはたとえば文部大臣に伺いたいんですが、地方大学を見るというと、すでに教授の数が足らない、講師の数も足らないということが言われております。こういうところへ外人教師を大量——大量というのもあれでありますけれども、これはどんどん招聘したらいいんではないかと思う。  それから、これは厚生大臣にも伺いたいんでありますが、いわゆる医療器械の中には二億ドルとか三億ドルとするのがありますけれども、そのワンセットがあるということで日本の医学についてもすごく進展をするということはあります。そういうものを輸入していくような考えはないのかどうか。  それから、外務大臣に伺いたいんですが、日本の在外公館、この在外公館がせっかくありながら借家であったり、あるいはいろいろとこれになると、ろくなアパートに住んでいないという状況であります。しかも、日本の権威にもかかわるような場所もある。ですからこれは、せっかく現在ドルもあることでありますから、積極的に在外公館をお買いになったらどうなのか、日本の所有にしたらどうか、そういうほうへの外貨の使い方を果たしていく。こういうように、これは各省で本気になって考えれば、私は直接的な効果のあるものがかなりあるわけです。そういう点はどうなのか、これは各大臣からお伺いしたいと思います。
  219. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 大学に外国の教授を招聘して、それに月給を払って外貨減らしをしたらいいじゃないかということですが、そういうことでなく、私どものほうでは、学術、文化、教育の国際交流ということで、各大学ともそれぞれやっております。外貨減らしということになりますと、外貨が足りなくなったらまたやめてもらうというようなことで、そういう構想ではなくて、むしろ教育的な見地からやりたいと思っておりまして、一番そのネックになりますのは住宅でみな各大学とも困っているようでございます。今度の筑波新構想大学の教員宿舎等につきましては、その点で建設大臣に、外国人教師等においても決して不平がないように、喜んで来ていただけるような、そういうりっぱなものをつくっていただきたいということをお願いしておるのは、そういう先生おっしゃるような面からも大いに同感であるからやっておるわけでございます。
  220. 塩見俊二

    国務大臣塩見俊二君) 医療器械につきましては、昨年度約五十億円の機械を輸入しておりますし、ことしの前半におきまして、上半期におきまして三十億円の輸入がございます。今回の円対策の一環として、これらの関税が二〇%引き下げられることになっておりまして、私は、この購入数量は、これによりまして若干増大を期待をしておるわけでございます。
  221. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま在外公館百四十一ございまして、公館並びに事務所を含めまして、国有化率が二五・八%、百三億円、それだけはおかげさまで国有化になっております。仰せのように、外貨活用の意味ばかりでなく、私どものほうは、秘密保持の上から申しましても、また、世界的にいま不動産が、日本ばかりじゃございませんで、高くなりつつある傾向でございますので、国費節約の意味からも、仰せのように、国有化の率を高めるようにせっかく財政当局と話し合っていきたいと思います。
  222. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 大蔵大臣、何かありますか。
  223. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいま関係大臣からも御説明くださいましたように、先ほど先生がいろいろヒントを与えてくだすった問題、これはいずれも、今回の補正予算編成に際しても、各省と十二分に打ち合わせをいたして、でき得る限り外国品で間に合うもの、しかも、それがお国のためになるものというものをできるだけこの際計上しようということでやっておるのでございます。しかし、まだ一般会計あるいは特別会計を通じて、年度予算を編成するときには、さらにもっと資金増額ができるかということを考えております。
  224. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 第三次の円対策の中の貿易管理令の発動の問題でありますが、それについて先ほども答弁がありまして伺っておりますけれども、この貿管令発動の際に、政府が補償をするというような、そういうことは起きないかどうか。はっきり申し上げまして、損失補償というようなことがないかどうかということです。財界等がこの貿管令に賛成したというのは——かつての繊維のときの、いわゆる輸出規制、これについての補償があります。そういうようなことが政府に要求できるというようなことがあるんじゃないかという——まあ勘ぐりかもしれませんけれども、そう思う。で、もしそういうことになりますと、特定の事業、特定の企業、こういうところに対して税金を渡さなければならないということになるわけでありますので、そういう点、これは一体どういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。これは、大蔵大臣通産大臣総理に伺いたいと思います。
  225. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 輸出関係に関して補償の問題は起きないものと考えます。これは来年の八月まで徐々に鈍化させようという考えに基づいて行なっておるものでございまして、昨年の円切り上げのように、突如として、また、ある程度政府関係の関与において、ある程度政府も責任を負わなければならぬような情勢があるという点と、若干状況は違うわけでございます。ただし、中小企業等について不当な圧力がいかないように、この点につきましては、もしそういう事象が起きれば、国際経済調整関係に基づく中小企業の措置に関する法律を発動いたしまして、その指定業種に追加して、諸種の保護政策を講じようと考ております。
  226. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 まあ、はっきり申し上げて、輸出だけというか、国際収支だけに限って言えば、輸入をふやして輸出を減らすということが直接的に響いてくるわけですけれども、そういう点で輸出をしている企業あるいは商社、こういうところに対して輸入の義務を課すと、こういうことは考えられないものかということですね。
  227. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それも一案でございますけれども、それにもまた障害があると思います。と申しますのは、中小企業などの場合には、輸出をやっているほうは輸出専門でございまして、輸入を全然やっておりません。そうなりますと、大手の輸出輸入をやっておる大商社に輸入の権限とか、あるいは輸出の利益が出てまいりまして、情勢によると、プレミアムがつくというような可能性も発生しかねないことも予想されます。また、情勢によりますと、業界の内部や輸出輸入の関係に若干の混乱が生ずる危険性もあります。そういう点からそういう考え方をとらない方針でおります。
  228. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次に、税金ですが、今回の補正では税の自然増収が二千八百二十億円と、こういうことになっている。それを見ると、法人税が二千五十億、それから相続税が七百七十億円、この二つしか増加をしていないというようになっているわけです。四十七年度の税の収納のぐあい——これは四十七年八月末の収納のぐあいでありますけれども、そういう収納ぐあいなどから見てみても、どうも政府のいわゆる年度内の税収の見積もりは、今回の補正でいえば過少過ぎるのではないか、少な過ぎるのではないか、大体半分ぐらいではないか、というふうに思わないわけにいかないわけです。大蔵大臣はその税の見積もりについて責任が持てるのですか、いかがですか。
  229. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 御承知のとおり、本年度は四月以降の税収の実績等よく注意して見ておったのでございますが、景気の浮揚が、そう年度初めから数月分はあまりよくございません。したがって、きょうまでのところで、各税についての一応の表が——ただいまようやく最近手に入っておるものには、九月分の収入と、それまでの累計が出ておりますが、これによりますというと、今度財源に用いました法人税と相続税でございますが、この二つは非常に成績が順調に伸びてきておるのでございます。これは確実に財源として見通しても間違いがあるまいというのがこの二税目でございまして、その他のものについては、いわゆる前年度の同月比というもの、並びにそれまでの累計比を対照してみますというと、どうもまだほんとうに安定しているというように考えられない点があるものでございますから、それで、この二税目を選んで、これは確実にこれくらいの伸びは明瞭にあるだろうということが確認できる——確認といいますか、推定できましたので、これを用いることにいたした次第でございます。
  230. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私の手元には八月末の収入額調べまでしかありません。私のところは八月末で、大臣のところは九月末ですから、ちょっと違っているとは思いますけれども、法人税と相続税しかない。いまそれだけをやった理由はわかりました。しかし、いままでの収入ぐあいから見ると、昨日の答弁のように、はっき税目別には出ません、こういう答弁があったんですけれども、どう見ても、石油ガス税、あるいははっきり申し上げて有価証券取引税、あるいはもう一つは酒の税金——酒税、こういうところはもう確実に伸びてきますよ、間違いない。収入ぐあいから見ても進捗してきている。そういうところが全然考えられなかったというのはどういうわけなのか。それはどのぐらいになるのか、まだ試算はできないということなんですが、見通しは。
  231. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) 九月末までの収入が、年間の収入に対してどういう状態であるかと申しますと、今度の補正予算に計上されました数字を除きまして、当初予算に計上されております収入金額と九月末の累計で見ますと、四七・七%という進捗割合になっております。それは、前年度の状況を見ますと四六・一%でございますから、一・六%昨年より順調な状況になっております。ただいま御指摘ありましたように、酒税、有価証券取引税等においても、大臣が御説明いたしました法人税、相続税のほかに順調な項目としてあげることができるわけでございますが、実は、酒税につきましては、月別経過を見ておりますというと、四月、五月、六月と順番に見てきますと、昨年より現在〇・四だけ上がっておりますが、その傾向から見て、はたしてなお当初予算の上にある程度の額を計上できるかどうか、それほどまでに上がってくるかどうかということはちょっとまだ見当がつかなかったのでございます。  有価証券取引税は、非常に株の売買が多量でございますので、たいへん順調でございまして、これは、考えようによりましては、あるいは補正予算に計上できないこともなかったかもしれませんが、金額が、もともとべースが二百三十億ということでございますので、実はそれを計上いたしましてもあまり大きな額にならないということもございまして、特に計上しなかったということでございます。
  232. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 ですから、まあ、はっきり申し上げれば、今回の補正でいう税の自然増収二千八百二十億円、これ以上にあるだろうということは想像できるわけです、はっきり申し上げて。それで、結局、今度は税全体を考えてみれば、この二千八百二十億円というのは、言いかえれば、税金として見ればわれわれは税の取り過ぎということだ。ほんとうならば、昭和四十七年度にこれだけは——二千八百二十億円は、相続税と法人税だけでも税を取り過ぎますよということを言っておるわけでありますから、これは当然納税者に戻すのが当然じゃないか。どうして今回補正でもって年度内減税をやらなかったか。年度内減税をやれば、これが最終需要となり景気を刺激してくるということは、ようわかっていることだと思いますし、その景気刺激が円対策となるということは、はっきり考えられる。場合によれば、公共事業費の二倍あるいは三倍の波及効果以上のものがあるわけでありますから、そういう点では、なぜやらなかったのかという点、この点をひとつどうしても聞きたいと思います。  それから、減税を見送ったということは、税の見積もり額が間違ったのと、二つでもって私は二重の誤りをおかしたんじゃないか、こう考えざるを得ないわけですけれども、減税問題でありますから、総理、どういうお考えでありますか。
  233. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 昨年でも年度内減税をやったわけでございまして、減税がやれることは非常にいいことであるし、やらなければなりませんが、引き続いて四十八年度の年度予算を編成をしなければならない状態でございますし、もう九月からは予算の査定を大蔵省でやっているわけでありますから、また、税目間のいろいろな問題もございまして、税制調査会の御審議も得なければならないということでありますので、今年度におきましては、年度予算のときに減税を考えるということにいたしました。
  234. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) ただいま総理がお答えになりましたとおりでございますが、若干補足をさしていただきます。  年度内減税をこの際やるべしという意見も世上あることも知っておりますし、われわれも、相当額があるものならばやりたいが、しかし、ことしは去年のいわゆる十五カ月予算といいますか、去年の年度内予算を通じて考えますと、ことしの景気のいわゆる安定上昇の空気が、いつになって、どういうふうにあらわれるかということに非常にやっぱり不安が持てたのであります、年度当初以来。ですから、その傾向を十分に知った上で、そうして来年度の、でき得るならば来年度のいわゆる四月以降の予算を編成する際に、そこででき得る限りの財源のやりくりをして、そうして、できるならばそこで減税をやりたいと、こういう考えで、そういたしますというと、それは少なくとも十一月末か、あるいは十二月の半ばまでの状況を十分参酌して、そうして来年度の税収の状況を推定することも非常に確実になりますので、相当この年度は景気の上昇傾向もむずかしい、判定のしにくい年であるから、この際は、ひとつしばらく年度内を忍んでいただいて、そうして来年度においてできるだけのことをやってみようと、そうして、もって世上における減税に対する要望にこたえたいと、かような考え方で、ことしのところは見合わさしていただいたのでございます。
  235. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの大蔵大臣の答弁、ちょっとひっかかるところがあるんですけれどもね。今年の景気の見通しについてもまだはっきりしていないところがあるのでということは、言いかえると、だから減税はできなかったと、こういうお話ですが、ということは、これから先、上向いている景気が何らかの要因で、はっきり申し上げると、それが足を引っぱられてくるときが来る、こういうことを言っているわけですか。
  236. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) お答え申し上げますが、私の表現が悪いのかもしれませんが、そういうつもりで実は考えておるのではないのでございまして、われわれといたしましては、やはり年度内減税もやり得るときにはやりたい、しかしながら、これが十分な見通しが、いわゆることしの、本年度適用の税制全体の収入状況がどういうふうになるかということが、いわゆる経済界の先行きの見通しと同時に、はっきりとそこでわかってくるということで、来年度の減税をどんな幅でやるかということも確定した固い見通しができまするし、かたがた、ことしのところはここしばらく忍んでいただこうと、こういう考え方にしたわけであります。
  237. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 四十七年度がですよ、すでにもう、あと残すところ来年の三月までのほんのわずかですよ。それが当初に見通しを立ててきて、ここで見通しを改定している、それが、いま大蔵大臣の答弁だと、経済の見通しもこれからどうなるか、そういうことも勘案してということは、はっきり申し上げれば、上向いているものが円の再切り上げ等によって再びブレーキをかけられると、こういうことにしかとれないわけですよ、いかがですか。
  238. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) われわれが今回の補正予算を組もうとするにあたりまして、最初のうちは、普通ならば御承知のとおり毎年、ことに年度内の減税をやろうとしますのには十一月一ぱい、十二月に入ってからじゃないと確実にどれくらいの減税が年度内からやれるか、年度明けてからならばどれだけやれるかという問題が常に論ぜられるのが従来の慣例でございます。ことしは、補正予算を組まねばならぬかどうだろうかというむずかしい問題を検討しております時期には、まだ——この税収の状況も、いまでこそ九月末の一応の確実な数字がわかるようになりましたが、これが、この問題を研究しますときにはまだそれだけの見通しがつかない、しかも、減税をやりますときには、単に官僚が、われわれ事務当局がかってにどんどんやるんじゃないのでございまして、いわゆる多数の専門家に委員をお願いしまして、そうして、内閣にこしらえてある税制調査会、そこでどういうふうな——確実な資料を提供し、これによって、どの税をどうしようか、それを年度内からやるか、あるいは翌年度の減税でいくかということを、詳細な、数カ月にわたっての研究をいつもやっていただいておるのであります。今回も、たしか八月中からだったと思いましたが、何回かお寄り願っておりまして、そしてそこに対しても、事務当局の考え、われわれの考えを申し述べ、そうして各委員の方々の御批判あるいは御意見も十分聴取いたして、そうして今回の措置にいたしたのでございます。
  239. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それでは、大蔵大臣、念を押しておきますけれども、円の再切り上げは絶対ない、明年の当初、あるいは、ここのところで予測される来年の半ばぐらいまでは絶対にないと、こういうふうに言い切れますか。   〔委員長退席、理事米田正文君着席〕
  240. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) お答え申し上げます。  かねて総理も、常に、この目標はあくまでも達成しようと強い激励を受けておりまするし、私も、あくまでもこれは貫徹しなきゃならぬ、貫徹できると、かように考えておるのであります。
  241. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 まあ円の切り上げの問題は、前の大蔵大臣のときも、十何回、やらない、やらないと言って、ぽこっとやったんですからね、信用はできないんですけれども、しかし、どうも先ほどの答弁から見て非常な心配があるような感じがいたします。  時間がありませんから、ここでちょっと公債問題で一つだけ伺っておきたいんですが、先ほどの答弁から見ても、景気の伸びからこれだけの自然増収が期待されると、こう言っていながら、三千六百億円もの公債をなぜ今度増発しなきゃならなかったか、その公債を増発する緊急性がどこにあるのかということです。公共投資の効率を悪くしている土地問題が何にも手が打たれてないのに、公共投資をふやす、はっきり申し上げて、これはむだづかいになる可能性もある。地方ではすでに公共投資についての消化能力がないところがあるんです。一ぱいです。はっきり申し上げれば、北海道とか、こういう寒冷地になれば、これは幾らこの補正で認められても、この公共事業費についての消化は困難になってきます。今度は年度初めにあれだけの大きな公共事業費を組んだ。こういうことから、設計についても、あるいは施工についても、間に合わない、人が足らないという問題が起きていることは重々御承知のとおりです。それなのに、ここでどうして公債を大量発行して公共事業を拡大しなきゃならないのか。円対策だけではなくて、私は、これは公債発行をこういうことの形でやるのはおかしいんじゃないかという感じがするんですけれども、その点、いかがでございますか。
  242. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 御承知のように、予算の仕組みといたしまして、一定額の歳出を計上して、これを支弁するのにどういう方法でもって支弁するかという、いわゆる歳入歳出同額で予算を編成しておることは御承知のところだと思います。その場合におきまして、これは例外はないことはありません、一般会計ではその例外はおそらくないと思いますが、特別会計などの場合に、時に例外的な予算を組むことがございますが、だから、その場合から考えまして、この際に、他の税目等で適当に確実な収入を見込み得るというものは計上して、そうして、そうじゃないものを避けまして、そうして、かたい法人税と相続税でもって歳入歳出とんとんにし、そしてそれには公債財源を、どうしても、五千数百億でございましたが、あの数字をやはり見合いの上に立てて御審議を願っているのであります。しかし、実際問題といたしましては、かねて毎年慣例的に行なわれておりますとおり、その年の収入の状況が非常に順調に出てまいりますと、当然、公債発行は差し控えまして、そうして自然増収で得たところのものでもって決算を計上すると、こういうやり方にいたしますので、その御心配は要らないのではあるまいかと、こう考えております。
  243. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは、総理大臣、どうも公共事業費の拡大、先ほど私が申し上げたように消化ができないと。いろいろなことから考えると、今度の補正というのは、ただの選挙向けにおつくりになったんじゃないですか。
  244. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 野党のお立場でございますから、そのくらいの表現をお使いになられても、これは私もあれですが、これは御承知のとおり、円対策というものがたいへんであることと、あなたが先ほどから申されておるとおり、ここで一体切り上げ回避ができるのか、できなかったらたいへんだぞというお含みで御質問いただいておるわけでございます。そういう意味財政主導型の補正を組まざるを得なかったんです、そういうことでないと円対策にならないんですと、こういうことで、四十八年度からは社会保障社会保障施設の拡充、また財政主導で来年度の予算も組まなきゃならぬと思いますと、その前段の予算でございますからこうすることが最も望ましいのでございます、こう言っておるのでございまして、選挙を私はやりたくない、こう言っておるんです。やりたくない。私だけです、やりたくないと、こう言っておるのは。これは、これだけの円の問題に当面しておりまして、私は、ほんとうにそういうまじめな考えで述べてきたわけでございます。しかし、私の考えだけで国会がどうなるわけじゃございませんから、皆さんの御意見も聞かなきゃならぬとは思いますが、しかし、ほんとうに私はまじめな気持ちで今度の予算を組まなきゃならぬし、これを組んで、どうしても国際収支対策の一助にしなければならないんだという考えでございます。北などは仕事ができないかもしらぬということでございましたが、これは各省各庁は出先から積み上げてまいりまして、今度の予算執行にあたっては、用地費にならないように、現に用地に手当てが済んでおって事業が年度内に確実に執行できることという前提で積み重ねたものでございますから、これは必ず消化できる、こういうことであり、これは円対策でございまして、選挙などを考えてつくったものでは全くないということを申し上げておきます。
  245. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 最後に、時間がありませんので、ひとつ、これは国鉄総裁と運輸大臣から答弁をいただきたいんですが、国鉄でつくるといういわゆるパイプラインのターミナル、御承知のように、これは川越市の南古谷という地域に大々的な規模のものができる予定になっている。これについて、現地のほうの空気からは猛烈な反対があります。なぜかと言えば、一つは、見渡す限りの農業地帯、グリーン地帯といって残すのは少ししかないだろうと思われるところでありますが、そこの農業の破壊になるということ、いま一つは、でき上がりますと一日に千五百台以上のトラックが、いわゆるタンクローリーが通るようになるわけです。そうしなければとうてい運び切れないということになるわけです。そういう点からこれは猛烈な反対が現在あるわけです。私どもも、あのような場所は、少なくもきちっと荒川にも沿っておるところであるし残しておかなければならない緑地帯であるというふうに思うんでありますが、その点、ぜひともこれは取りやめるように何とかしてもらいたい。この点は、経過と、それからその点について国鉄総裁並びに運輸大臣から伺いたいと思います。
  246. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) 御質問のパイプラインは、関東内陸に送ります石油の約七〇%が今日まで鉄道によって輸送されていることは御承知のとおりであります。しかし、最近、鉄道の輸送——関東地方における石油の需要が非常に膨大になりまして、もう国鉄の輸送だけでは、見通しが、これ以上輸送の限界に達しているということで、これに対処するにいろいろ考えまして、パイプラインによる輸送が最も効率的で、安全性が保たれると、こういうことでパイプラインを引く決定をいたしたのであります。ちょうど昭和四十六年の六月二十五日に認可をいたしております。しかし、認可はいたしましたけれども、お話のような反対の陳情も強うございますし、どこまでもやはりパイプラインというものは安全性を保たなければなりませんので、運輸省といたしましては、パイプライン技術研究委員会を設けまして、あらゆる方面からその安全性を検討してまいりました。今日、これらの方々の御答申をいただきまして、安全性がこれはだいじょうぶだという確信を得ましたので、認可をいたしましたような次第でございます。  なお、ただいまは用地買収というような現状でございますが、地元の方々の御意見は十分拝聴いたしまして、できるだけ地元の方々の御要望を聞きながら、また御了解をいただいて工事に着工するようにいたしたいと、こういうふうに考えております。
  247. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ただいま運輸大臣がおっしゃいましたとおり、最近非常に石油の輸送量がふえてまいりました。これ以上貨車輸送することはいろいろ問題もあるということで、かねがねパイプライン輸送を勉強いたしておりました。前国会で石油パイプライン事業法の御制定もございまして、そのときにも参議院の議決がございまして、安全の確保についてたいへん強い御決心を伺いました。  私どものほうの計画は御承知かと存じますが、京浜地方から出まして、横浜線、八高線、川越線というのを経由いたしまして、いま先生のおっしゃった埼玉県の南部に至る計画で、約百十キロでございます。大臣の認可をいただきましたから、ことしの四月以降関係の自治体が約十五ございます。自治体の理事者並びに議会のほうには御説明をいたしました。それから、数カ市町につきましては、設計の協議、すなわち、道路管理者あるいは河川管理者としての御協議を、いまいたしておる次第でございますが、いま先生のお話のとおり、埼玉県の南埼玉につきまして非常に地元から強い反対のお話がございます。反対同盟と不売同盟と両方ございまして、昨日、川越市議会でもその陳情を採択をなすったということも伺っております。  で、いまのまま石油輸送をほっておくわけにもどうしてもまいりませんし、関東の内陸部は非常に需要がふえますので、やはりパイプライン輸送をするためにはどこかにターミナルが要るということで、東京都はすでに八王子につくってございます。それから、栃木県は石橋というところにございます。群馬県も倉賀野というところにございまして、規模はいろいろでございますけれども、一応各県に一カ所ずつぐらい基地をつくって、そしてそこを中継の基地及び大体三十キロから五十キロの、県内の一般民需の石油輸送に使いたい、基地として使いたいということでございまして、私どもも、いろいろその安全性その他について問題がございますので、まず、線路にはどうしても沿っていなければいけない、それから、ある程度民家から離れていなければいけない、それから、需要地からもそんなに遠くてもいけない、というふうな立地条件をいろいろ考えまして、あの場所を選んだわけでございますが、いまのお話のとおり、非常に強い反対がございますので、私どもも十分時間をかけ、十分御説明いたしまして、また、御希望に沿うようないろいろなことを考えまして、原案どおり実施いたしたいというふうに思っております。
  248. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これはぜひ別のところを考えてもらいたいですね。それは時間がありませんから、それだけでやめておきますが、別のところをぜひ考えてもらいたいと思うんです。それから、これは通産大臣、円の切り上げの影響で、最近のわが国の非鉄金属の鉱山というのが次々閉山されている。別子、生野、そして足尾。こういう状況のもとで再度円の切り上げがあるとなれば、生き残れる鉱山、銅山、そういうようないろいろな山は一そう少なくなるということは、これは実にはっきりしています。その対策は一体どうなのかということが一つ。それからいま一つは、閉山をしたからといって鉱害がなくなるわけじゃない。足尾は、十分御存じだと思いますけれども、とにかく、きれいな澄んだような水でさえ、口の中に入れれば吐き出したくなるような、ものすごい硫酸銅が溶け込んでいる。そういうのが雨水のたまり水のところにもあるような状況です。ですから、そういう、閉山したとしても鉱害がなくなるわけじゃありません。数十年もかかっていろいろ堆積をされている、蓄積もされている、こういう鉱害の処理は一体どういうふうに今度の対策でなっていくのか。  三番目は、そういうことになりますと、閉山になると、これは管理する者はいないわけでありますから、当然、休廃止の鉱山については、現在の鉱害防止計画だけじゃなくて、地方自治体としてもこれはやりきれないだろう。鉱山採掘は国の責任があるわけでありますから、そういう点で、いままでも臨時石炭鉱害復旧法による石炭鉱害事業団というものがありますが、そういうようなものを考えて立法措置でつくり、そうして鉱害防止のための何か考えなければならないんじゃないか、こういうふうに思うんですが、その点について。
  249. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、金属鉱山の問題でございますが、石炭の場合と違って、重金属その他銅等のそういう問題については、需要量は非常にふえているわけでございます。石炭の場合は需要量がずっと激減しております。そういう意味で、このふえているという現実にかんがみまして、石炭とはやはりおのずから対策は違わざるを得ない。銅その他につきましては、価格変動の波及を下のほうであまり受けないような、関税やその他のいろんな措置を、あるいは国際的にも必要あらば、協調してとっていく必要があると、そのように感じております。  それから、閉山の場合、たとえば足尾のような場合には、大体あれは採掘を中止して、精練は海外鉱を持ってきてやっておるわけで、採掘中止で七百人ぐらいの失業者が出る危険性がございます。これらの手当てにつきましては、会社並びに労働省とも連絡をとりまして、配置転換そのほか万全の措置をとるようにいたしたいと思っております。  それから休廃止鉱山の鉱害につきましては、これは非常に大事な問題でございまして、来年度でき得べくんば、そういう関係の事業団をつくりまして、恒久的な措置を都道府県と連携しながらとりたいと、そのように考えております。
  250. 米田正文

    ○理事(米田正文君) 鈴木君の質疑は終了いたしました。
  251. 米田正文

    ○理事(米田正文君) 渡辺武君。
  252. 渡辺武

    渡辺武君 私は、初めに総理大臣に伺いたいと思います。  現在、報道関係者の間で総理大臣の言論弾圧事件が大きな問題になっております。その内容の一端は、「文藝春秋」十一月特別号、「週刊文春」九月十四日号、これらに載っております。また、十一月四日付の民放労連の「労連情報」や、十一月七日のマスコミ関連産業労組共闘会議の抗議声明書にも、またさらに、十一月十日の日本共産党機関紙「赤旗」紙上にも載せられております。  その概要は、「文藝春秋」によりますと、総理大臣は、八月二十日、軽井沢の料亭「ゆうぎり」で総理大臣付の新聞記者、いわゆる角番記者九人と懇談された。「そのおり首相はブランデーをのみながら、おそらく軽い気持でしゃべったらしいが、 “放言”というにはあまりに重大な意味を含んでいる。」というふうにこの雑誌は書き出しておりまして、キッシンジャーとの会談や日中問題などについて語ったあとで、次のように言っておられる。以下、この記事を読みますが、「自分が郵政大臣から大蔵大臣のときにかけて、放送免許や国有地の払い下げで、いかに各社の面倒をみたかをいちいち社名をあげて力説したあげく、」——次が引用句の中です。「オレは各社ぜんぶの内容を知っている。その気になればこれ」——カッコしまして——「(クビをはねる手つき)だってできるし、弾圧だってできる」、これで引用句一つ終わりまして、もう一つ引用句がすぐ次に続いて、「「オレがこわいのは角番のキミたちだ。社長も部長もどうにでもなる」という発言がつづく」。   〔理事米田正文君退席、委員長着席〕  さらにまた次が、「オレは佐藤のように」——その下にカッコでもって「(新聞社に)」というのが入っておりますが、「電話なんかしないよ」というかと思うと、また「「つまらんことは追いかけず、ちゃんとすればオレも助かるし、キミたちも助かる。わかったな」とも言ったらしい」。さらに続けて読みましょう。「首相がこの席でいちばんいいたかったのは、角番記者の仕組みについてだったようだ。こういっている」。次が引用句です。「「田中番が四交代というのはいかん。顔も名前もおぼえられん。社長にいって、二交代にして名簿を出させる」、「そうしなけりゃ安心してしゃべれん」と角番体制の改革を提言し、「東京に帰ったらすぐやろう」という調子だったというのである。」、これが文藝春秋に出ている記事の一部でございます。  この総理大臣の発言の内容は、それは私的な懇談会の席上で、一ぱい飲んで、酒の上のことであるとはいえ、これがもし事実であったならば、これはあまりに重大なことだと思います。一国の総理大臣が、かつて御自身が郵政大臣、大蔵大臣在任中に、その地位を利用して報道機関に利益を供与した、それを利用して、天下の公器である報道機関を圧迫、統制し、さらには、このことを圧力として、新聞記者に取材内容の制限、さらには取材記者の総理による選択、すなわち事実上の登録制を要求する。一国の総理の権力による明白な言論弾圧、言論統制であり、重大問題だと言わなければなりません。  私、申し上げるまでもなく、総理、よく御存じだと思いますけれども、憲法第二十一条の第一項一には次のように書かれております。「集曽、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」、こう書かれておりますように、言論の自由、報道の自由、これは民主主義の根幹をなすものであります。もしこの「文藝春秋」に書かれているこのことが事実であるならば、これは、一国の総理大臣自身の手による憲法違反、民主主義の根幹に対する著しいじゅうりんだと言わなけりゃなりません。このような事実のあったことを総理はお認めになりますかどうか。
  253. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、あなたからきょう質問があるということで、その記事が存在をしたことを知りました。私は、言論統制や言論弾圧をする意思などは全くありません。全くありません。いやしくも、新しい憲法後初めての議席を得た私でございます。私の国会議員としての二十六年の足跡を見ていただければ、一片の記事が私を言いあらわしておるものかどうかは、よく御理解ができると思うんです。私は確かにその日は、あとから聞いたのでございますが、二時間か三時間、私の番をしておる新聞記者の諸君がわざわざ軽井沢まで来てくれておるということで、一夕、席を同じくして懇談をした事実はございます。しかし、そのような——悪意があるとは申し上げませんが、好意のない文章だと思います、私は。そういう、いまあなたが述べられた活字のようなことを、どんなにめいていしておっても、言うでしょうか。しかも、九人の諸君がおられるそうであります。九社は書いておりません。私はマスコミと対立しようとも考えませんし、あなたが対立させようとしているのかもしれませんが、少なくとも、そういうことを一体言うとお思いに、あなたもなりますか。ならないかもしらぬ。なっておらないけれどもここに書いてあるから聞くんだということかもしれません。それは、あとから言うと、某新聞がちょっと囲いの中に書いたようでございます。書いたそうであります。それが別の週刊誌に引用され、また別の週刊誌に引用され、そのたんびに大きくなっていったということを、けさ聞きました。私はそういうことも、別な問題でもございます。覆面の記者座談会でもって、全く一行——一行書いてある。そうすると、一週間後には別な雑誌に五行になっておる。それが一週間後には、某週刊誌で一ページになっておる。それを「赤旗」では一面全部をつぶされたという事実はあります。私は、例をあげることはたくさんあります。あります。そういう問題がございますが、私は、いかに何でも、御参席の皆さんも全部そうだと思うんです。そういうことを一体言うか言わないか。これはひとつ信じてください。私は、いくら二時間、三時間懇談したとしても、そんなにめいていしておるつもりはありません。しかも、それはそこだけの話ではないような気がいたします。私は、けさそういうことを、その記事を読んでもらって、いろんな雑談の中で、私のうちでずうっと前に雑談をしたものや、いろんなものがつづられればそういうことかもしれません。いや、一つの文章になるかもしれません。しかし、いまあなたがお読みになられたようなことを、いかに何でも、私がそのようなことを言って九人の諸君は許すはずはありません。私は、テレビの免許をしたから、新聞社に土地を払い下げたからどうにもなるんだ、しかも首にすることもできる、そんなことを一体言う国会議員というのは存在するかどうか。私はあえてこれ以上は申し上げませんが、あなたに指摘をされるような意思も、言論統制や、言論圧迫や、地位利用や、そういうものは絶対ありません。
  254. 渡辺武

    渡辺武君 この問題は非常に重大な問題です。そうしてまた、ここは国会の予算委員会の場です。もうこれは、こうして先ほど私、名前をあげた雑誌その他に公表されていることです。私もその公表された事実に基づいて公の立場であなたに質問している。あなたもここで公式にそれを否定するなり肯定するなりされる自由を十分お持ちのことです。そういうことを前提条件として私伺っているんです。はっきりもう一回確認したい。いま私が読み上げた内容、さらにこの「文藝春秋」には、ほかのことも書いてありますが、これは事実無根だとおっしゃるわけですね。
  255. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は軽井沢で田中番の諸君と懇談をし、雑談をしたことはあります。そして、いろんなことをフランクに話したことはあります。ありますが、いまその記事になっておる、御指摘の記事になっておるような考え方で話をしたことはありません。しかも、言論を弾圧したり首にできるというような思い上がった、そういう考えを前提として話をしたことはありません。
  256. 渡辺武

    渡辺武君 いろいろ問題の多い御答弁だったようですけれども、こまかこいことはあと回しにしまして、まず最初に、「文藝春秋」も「週刊文春」も、これ、百万前後の読者を持つ大衆雑誌です。この両誌の読者は、おそらくこの記事を読んで、総理の行動に重大な疑惑と危惧の念を抱いておられると思います。総理は、政府の最高責任者として、もし両誌の記述が事実無根のことであるならば、当然、公式にこれを打ち消すはずだと私は思います。これは一国の総理大臣の名誉に関すること、しかも、重大な民主主義の根本的な問題についての政府政治姿勢に関する問題。総理は公式に打ち消す措置をおとりになりましたか。たとえば、両誌に取り消しを申し入れるとか、あるいはまた、名誉棄損その他で告発でもなさいましたか。その点を伺いたい。
  257. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど述べたとおり、あなたがきょう質問をされるということで、その事実を知ったのであります。私も週刊誌はたまに読むことばありますが、この六、七月以来非常に多忙なんです。この国会開会中はほとんど寝るだけであります。ほとんど。ほんとうに答弁書に対して目を通すということが一ぱいでございまして、そういうものを私は目にしておらなかったんであります。しかし、先ほど申し上げましたように、事情を聞いてみたら、それは何段階かになって大きくされておって、しかも、きのうかおとといの「赤旗」のスペースが一番大きいんだと、こういうことを聞いたんです。これはほかのものもそうなんです。私は言いたいことが一ぱいあります。蒸し返し押し返し十年間も書かれているものもあります。しかし、それは公の立場として取り消しを求める、告訴をしたかということもありますが、それは私は、衆議院で述べましたとおり、早いうちに告訴をすればよかったと思っているものもあります。そのうちにだんだんだんだんと大きくなっていって、十年間連続書かれているものもあります。たえがたい屈辱でもあります。しかし、すべてのものに取り組んで、どろ試合をするということ、それもまた避けなければならないところもあります。私はいまここで、あなたが述べられた——国民の皆さん聞いておられます。私もこの問題に対しては申し上げました。各社の諸君もおられんです。私はそれでいいと思います。
  258. 渡辺武

    渡辺武君 「赤旗」が一番大きく取り上げたのがだいぶお気にさわっているようですけれども、これは重大問題だ。国の政治の根本問題についての大問題。一面のトップに大きく取り上げるのは当然のことですよ。民主主義のために戦う共産党の姿がはっきり出ている。  そこで、いまの総理の御答弁、私、どうも疑問ですね。と申しますのは、この「文藝春秋」には、なおこういうことが書いてある。「ところで、この懇談の内容がある週刊誌にもれたところ、」——おそらく、この「ある週刊誌」というのは、総理も先ほどおっしゃった「週刊文春」のことだと思います。また「週刊文春」にはちゃんと簡単な記事が出ている。「ある週刊誌にもれたところ、カンカンに怒った首相は、角番記者をあつめて、「誰がもらしたんだ」と激しく問いつめたという。さらに、怒りのおさまらない首相は後藤田官房副長官に、外部にもらした犯人の探索を命じたと伝えられている。副長官を警察から人選したのはこういうことだったのか。」、こう書いてある。もしこれが事実無根であったとするならば、私は、「週刊文春」に書かれた当時から、おそらく公式に総理は取り消しの申し入れでもなさったかと思う。しかし、それをなさらないで、後藤田官房副長官を派遣して、そうして犯人の探索を命じた。これは、ここに書かれた内容が事実であって、それがこわいばっかりに、総理大臣はそのもみ消しのために派遣されたとしか私は考えられない。その点、どうですか。そういう事実は。
  259. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も公の立場でこんなことは言いたくないんですが、あなたの全く共産党的な発言、非常に不愉快です。私は、そういう新聞記者を呼んで、どうかつをしたりしたことはありません。後藤田副長官をして、そんなことを、探索を命じる、物語じゃありませんか、それ。物語じゃありませんか。そういうことはありません。
  260. 渡辺武

    渡辺武君 それじゃ、当人の後藤田官房副長官に伺います。副長官は一体田中総理からどんな命令を受けて、どんな措置をおとりになりましたか。犯人なるものが明らかになりましたか。
  261. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) さような事実は全くございません。事実無根でございます。
  262. 渡辺武

    渡辺武君 どうも納得できませんね。と申しますのは、この問題は、先ほど申しましたように、「文藝春秋」や「週刊文春」だけが取り上げているんじゃない。マスコミ関係の九つの労働組合の集まったマスコミ関連産業共闘会議の抗議声明も、それからまた民放労連の「労連情報」も、公式にこれを発表していることです。私は、まあ、「文藝春秋」については最近初めて読んだとおっしゃるけれども、少なくともこの九月十四日に出た「週刊現代」については、総理はそれをごらんになってかんかんにおこったということが、この「文藝春秋」のここに書かれている。公式に取り消さない。ここに私は、そういうことは、つまり客観的には、事実上これを、この内容を認めたということにしか私はならないと思う。現職の総理大臣が、これが報道弾圧をやるということは、何回も申します、これ、重大問題ですよ。民主主義の根幹にかかわる問題です。私は、国会はこれを徹底的に究明する義務があると思っております。日本国民は、あの戦争中の言論弾圧、言論統制、このもとであの侵略戦争に引きずり込まれていった痛切な体験を持っております。現職の総理大臣がここに書かれているようなことをもし新聞記者に語ったということになれば、これは国民、心配しますよ。どういうことになるんだと。当然のことです。この国民の不安にこたえる上でも、これは、総理はこの公式の席上で率直に私は事実を明らかにしていただきたいと思う。重ねて伺います。
  263. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も、いやしくも国会議員であり、内閣の責任者として、言論弾圧をしたり民主政治にもとるようなことは、ごうも考えておりません。
  264. 渡辺武

    渡辺武君 私ね、総理大臣には言論弾圧の前歴があると思う。数年前です。公明党・創価学会の言論弾圧事件があった際に、当時の幹事長田中さんはこの言論弾圧に一役買って、赤坂の料亭「千代新」に「創価学会を斬る」という本を書いた著者の藤原弘達氏を呼んで、そうして竹入公明党委員長の依頼だと言って、この本は初版だけで打ちどめにしてほしい、もう出されていることだから全部やめろというわけにはいかぬけれども、千部くらいは一般に販売して、残りは全部公明党が買い取るのはどうだという交渉をなさったということを藤原弘達氏自身の口から聞いて、わが党の不破議員が昭和四十五年二月二十七日の衆議院の予算委員会でこのことを公表しております。こういう事態が過去にあった。しかも、このマスコミ関連産業共闘会議の抗議声明書の中では、総理大臣はこの八月二十日の「ゆうぎり」の料亭の席上で、あれも——「あれ」というのは西山事件のことだそうでありますが、あれも私が爆弾を落としたほうがいいと言った。爆弾を落とすというのは、逮捕の意かという注がついております。つまり、別なことばで言えば、西山記者の逮捕、これも幹事長のあなたが命じたという趣旨のことがこれに書かれている。もしこれが事実だとすれば、これはもうあなた、明らかに言論弾圧の首謀者だと言って差しつかえない。今回のことも事実ではないですか。また、この西山の問題について、あなたの、事実かどうか、これを伺いたい。
  265. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、いまあなたが読まれたことを聞いて、もう驚いたんです。驚くというより、りつ然といたしました。そんことをですな、そんなことを私が言っておったら、私は責任とります。何にもないものを、どうしてそんなことを書くんですか、それは。そんなことを言うはずはありません。しかし、それはほんとうに私はいま聞いて驚いたんです。それは私の言論弾圧ではなく、言論が持っているんじゃないですか、それは。私も自分の責任ある発言に対しては責任を持ちます。そんなことが一体あり得るはずがありますか。私は、そこまで書いてあるということがあるものなら、そのままでは済まされないかもしれません。私は、西山記者問題に対して、佐藤内閣の閣僚でございましたが、一回も発言もしておりませんし、関与しておりません。各閣僚は一切しておりません。全く見てきたようなことを言っているじゃありませんか。どこかのやり方じゃないんですか、それは、ほんとうに。そうして、書くだけ書いておって、そして、身の潔白をやるなら名誉棄損でも何でもやってくればいいじゃないかと、こんなことがあり得るはずはありません。絶対ありません。
  266. 渡辺武

    渡辺武君 何だか共産党がつくった芝居のような表現をしておられますが、共産党は、そんなみみっちいことはやりませんよ。御心配なく。正々堂々と戦います。いまここでも、客観的に報道されたその事実について正々堂々とあなたに質問している。冷静にお答えいただきたい。現に、創価学会の問題について、当人の藤原弘達氏が、そういうことを事実であったといって語っている。  そこで、私は、時間もたつので、もう少しこの内容について、どうにもこれはもう国民の疑惑を解かなきゃならぬと思う点がありますので、伺いたいと思う。  この中で言われている、総理大臣が郵政大臣、大蔵大臣に就任中に認可や国有財産の払い下げ行為その他をやったと、これは事実ですか。
  267. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私が郵政大臣在職中に、民放テレビ及びNHKテレビも含めまして、テレビの免許は行ないました。それから大蔵大臣在職中に各新聞社にどのようなものを払い下げたかは、さだかに記憶しておりません。
  268. 渡辺武

    渡辺武君 私は事実を正確に確かめたいと思う。総理大臣、郵政大臣に御在任中は何年の何月から何年の何月までか、また、大蔵大臣に御在任中は、これは三回にわたって御在任だと思いますが、その期間、これ、御記憶なら、おっしゃっていただきたい。
  269. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 郵政大臣在任は、三十二年七月から三十三年の六月までだと思います。大蔵大臣の在職期間は、三十七年の七月から四十年の六月までだと思います。
  270. 渡辺武

    渡辺武君 郵政省と大蔵省から、この総理大臣の郵政大臣就任中に放送関係に認可されたのはどういうものか、それから大蔵大臣就任中に放送関係、新聞関係に国有財産を払い下げたケース、これをおっしゃっていただきたい。
  271. 三池信

    国務大臣(三池信君) お答えいたします。  三十二年十月認可になったのは、三十四社三十六局であります。
  272. 渡辺武

    渡辺武君 郵政大臣に就任中ですよ。就任中の期間に、どことどこに認可がおりましたか。
  273. 三池信

    国務大臣(三池信君) その一つ一つですか。
  274. 渡辺武

    渡辺武君 はい。
  275. 三池信

    国務大臣(三池信君) これはたくさんあると思いますから、あとで書類で出しますけれども、三十四社三十六局であります。
  276. 渡辺武

    渡辺武君 大蔵省のほうは。
  277. 橋口收

    政府委員(橋口收君) お答え申し上げます。  三十七年の七月十八日から四十年の六月三日までが大蔵大臣としての在任期間中でございますから、その期間に払い下げられた件数でございますが、十三件でございます。
  278. 渡辺武

    渡辺武君 この「文藝春秋」には——もう一回読みますよ。「自分が郵政大臣から大蔵大臣のときにかけて、放送免許や国有地の払い下げで、いかに各社の面倒をみたかをいちいち社名をあげて力説したあげく、「オレは各社ぜんぶの内容を知っている。その気になれば」——首をはねる手つきだそうでありますが——「これだってできるし、弾圧だってできる」、「オレがこわいのは角番のキミたちだ。社長も部長もどうにでもなる」、こうおっしゃったという。もしこのことが事実ならば、いまの報告でも明らかなように、認可をやり、国有財産の払い下げをマスコミ関係の各社にやっている、そのことを通じて、私は、こうして各社に圧力をかけるということになってくれば、これは明らかに、地位を利用して各社の利益をはかって、そのことを通じて各社を圧迫し弾圧する明白な、これは天下の公器に対する、これはもう弾圧以外の何ものでもないと思う。たいへんなことです。どうですか。こういうことをおっしゃったんじゃないですか。
  279. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) さっき答えております。
  280. 渡辺武

    渡辺武君 大蔵省にですね、NHKに、昭和三十六年の三月十八日から三十八年の十二月の二十三日にかけて、この——いや、失礼いたしました。三十八年の四月十三日から三十九年の十二月二十八日にかけて、放送センター用地を払い下げましたか。
  281. 橋口收

    政府委員(橋口收君) ただいまお尋ねがございましたのは、旧代々木練兵場あと地、戦後はワシントンハイツとして在日米軍に提供されておりましたあと地の一部につきまして、東京でオリンピックを開くという関係等もございまして、米軍から早目に全面的な返還を受けたわけでございます。で、そのあと地の一部につきましてNHKから放送センター用の用地としての払い下げをしてほしいと、そういう希望がございまして、ただいま御質問の中にもございましたが、二回に分けて払い下げをいたしております。ただ、これは、御承知のように、昭和三十八年に閣議決定によりましてワシントンハイツのあと地につきましての方針がきまっておりまして、その中に、NHKに対して二万五千坪の用地を払い下げると、そういう方針が確定されております。その方針に沿ってやった措置でございます。
  282. 渡辺武

    渡辺武君 この土地の一部分が、これが千葉市の稲毛にある、現在公務員住宅の用地になっているところと交換されたというふうに聞いておりますが、それ、事実かどうか。その経過やら、交換にあたっての坪数や金額、これについて伺いたい。
  283. 橋口收

    政府委員(橋口收君) ただいま申し上げましたように、二回にわたって払い下げをいたしておりますが、第二回目の払い下げは、いま御指摘がございました公務員宿舎用の用地と交換渡しをいたしております。したがいまして、政府としては公務員宿舎用地として交換受けをいたしました財産が稲毛町の財産でございます。
  284. 渡辺武

    渡辺武君 面積と価額。
  285. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 交換受けをいたしました財産は、千葉市海岸通り一の七、四万一千五百坪でございます。
  286. 渡辺武

    渡辺武君 評価額。
  287. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 評価額は十二億九千六百四十五万円ちょうどでございます。
  288. 渡辺武

    渡辺武君 私は、これは言論弾圧の問題とは一応別問題でありますけれども、この問題を調べていくうちに重大な疑惑にぶつかった。したがって、これも、ついでと申し上げてはなんですけれども、この国有財産の払い下げにまつわるふしぎな問題として、いまこの場でもって総理大臣の御意見を伺いたいと思って質問しているわけです。  いまの稲毛の土地、これ、最終の所有者はNHKであったことは、これは明らかですが、その前の所有者、これは何名かにかわっていると思いますが、それを全部おっしゃっていただきたい。
  289. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 交換受けをいたしまして国有財産として取得をいたしますので、取得の際には調査をいたします。で、登記簿上でどういう所有権の確認があるかということの調査をいたしておりますが、交換受けの際の調査の結果によりますと、これは登記簿上の事実をそのまま申し上げるわけでございますが、昭和三十九年五月十四日に千葉市の名義で保存登記がなされております。同日付で、売買によりまして朝日土地興業株式会社に移転されております。その後、同年六月六日、売買によりまして日綿実業が所有権を取得いたしておりますが、同年の九月二十八日に、錯誤により所有権の抹消が行なわれております。同年十二月三日、売買により朝日土地興業からNHKに所有権が移ったものであります。
  290. 渡辺武

    渡辺武君 この朝日土地興業というのは、これはわが党の松本議員がこの間衆議院で田中総理大臣の市谷の土地の問題について伺ったときにも顔を出した会社です。そうして、私どもが調べますと、この朝日土地興業からNHKに渡るその間に、やはり同じく市谷の土地の事件のときに顔を出した国際興業という、この社長は、これは総理大臣よく御存じのとおり、かつて国会で総理大臣も無二の親友だと言われた小佐野賢治という人物であります。これが介在をして、そうしてNHKがその土地を買って、そうして一方で、ワシントンハイツの土地、そのうちの一部はすでは大蔵省から直接に払い下げられている。そのほかの部分について千葉の土地との交換という形でもって払い下げが行なわれている。しかも、この朝日興業の社長の——前社長です、当時の——丹沢善利、この人は小佐野賢治という方としょっちゅう一緒になって仕事をされ、虎の門公園あと地国有地払い下げ問題、それから先ほど申しました市谷の総理大臣の土地の問題、こういう問題に顔を並べて出ている方であります。そうして、この土地の交換、これ、ちょうど市谷の土地の問題が起こったと全くほとんど同じ時期に起こっている。この丹沢、小佐野両名は、総理大臣に関しての黒い霧事件と世間で騒がれている新潟市鳥屋野潟の埋め立て地問題、あるいは住宅公団大阪光明ケ池用地売買問題などでも顔を出している方であります。  私は、総理大臣が大蔵大臣に在任中に、その国有財産が、これが、その大蔵大臣の無二の親友といわれ、さまざまの黒い霧と世間で騒がれている事件に顔を出している人たちの手を通じて、そうして国有財産との交換が行なわれた、この点に重大な疑惑を持っております。この売買の結果、売買差額六億七千万、ばく大な利益が、これが国際興業と朝日土地興業のふところに入っている。国際興業は二億九千万円、朝日土地は約十億円、これがこのふところに入っているというふうにいわれております。そうして、この事実を知っている人たちは、この問題にも総理大臣が関係しているんじゃないかとうわさをしております。総理大臣、この問題について、ちょうど市谷の土地のやり方と全く同じ手口です、これは。そういうことでありますので、この席上で、総理大臣、この事件に関係されていたのかどうか、はっきりと御答弁いただきたい。
  291. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 全く関知しておりません。関知しておる事実が判明すれば、責任をとります。
  292. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 先ほど御説明申し上げましたように、交換渡しをし、交換受けをいたしておりますから、評価に関しましては、大蔵省財務局が適正な評価をいたしております。民間精通者の意見とか、あるいは規則で定められた手続によって適正な評価をして、先ほどの数字をはじき出したわけであります。
  293. 渡辺武

    渡辺武君 さて、言論の問題にまた戻りますけれども、とにかく、こういうようなエピソードを交えながら国有財産の払い下げが行なわれ、そうして、それを通じて、この「文藝春秋」の記事によれば、総理大臣は首をはねることだってできるし弾圧だってできる、どうにでもなる、ということをおっしゃっているということになっている。しかも、先ほど申しましたマスコミ共闘会議の抗議声明の中では、さらに大臣はこういうことを言ったことになっております。「記事を止めることもわけない。私は佐藤のように」——これは前首相のことです。「佐藤のように」、これはカッコして説明が入っていますが、「(新聞社、放送局に)」と入って、「電話などしない。ちゃんと」、カッコして「(中止するように)」という注が入っていますが、「なっているのだ」、こういうことを総理大臣が言っております。さらに、「一番こわいのは一線記者の君たちだけだ。各社の内情は全部知っているから、社長も部長もどうにでもなる。」、こういうことを言ったということになっております。私は、これらの発言は事実かどうか、重ねて伺いたい。重大問題ですよ。
  294. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あなたは、何かを目的にしておって、同じことを何回も何回も言われます。これは国民が聞いております。私は明確に答えております。そういうことを言っておりません。それだけではなく、いまあなたが述べたものは、私の目には、あなたが質問をされるというので、事務当局が私に、朝、一部を続み聞かしただけであります。しかも、その最後のほうなどはなかったようであります。ですから私も読みます。公の立場にございまして、公の予算委員会でこれだけの指摘を受けるわけでございますから、私も、ただすべきはただします。
  295. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 渡辺君に申し上げますが、総理大臣がああやって断固として、そういう事実はないという答弁をされているんですから、再三にわたってされているんですから、時間もあまりございませんし、あなたも貴重ないろいろお尋ねしたいことがあると思いますが、御進行願えませんか。決して私は干渉するんじゃございませんよ。
  296. 渡辺武

    渡辺武君 それは何回否定されても、国民が納得いくまで私は事実を明らかにしなきゃならぬと思っております。それはそうです。ここに言われていることは、これは重大問題ですよ。しかも、先ほど総理大臣は、自分の自宅やなんかで、あるいは雑談の中で言ったこともあるかもわからぬというようなことを先ほど答弁の中で言っておられる。もし、そのことが事実だとすれば、これはたいへんなことですよ。一体、もしこの八月二十日の料亭でこういうことを言ったという、その事実がかりになかったとしても、あなたは、マスコミの関係の部長、課長、いつでもこれにもできるような、そういう実情にあるんですか。記事を差しとめることもできるような実情にあるんですか。その実情はどうですか。
  297. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、言論弾圧をするつもりもないし、そういうことを言う意思もないし、言ってもおりません。ただ私は、あなたがその記事を読みながら指摘をしておると、おそろしさを感じておるんです。非常におそろしさを感じておる。それは私は、君たちはとにかくこわいよというようなことは、廊下を歩いてても言います。しかし、それをつなぎ合わせて、よくそういう記事が——私にはその能力ありません。あなたがいま読んだ、指摘をされたような意思もないし、やってもおりません。これからやるつもりもありません。私は、そんな記事の差しとめができるような力はありません。力がありません。あれば、そんな記事は出ません。出ません。
  298. 渡辺武

    渡辺武君 大いにけっこうなことで、その意思がないというのは大いにけっこうなことです。しかし、一国の総理大臣がこういうことを言ったかもわからぬというようなことになると、私はまた、この「文藝春秋」の中に語られていることだけじゃなくて、いま言ったように、マスコミ共闘その他で、ほかのことも言っているわけだから、そのことについてもあなたにたださなきゃならぬ。特にですよ、特に角番記者名簿を出してくれということを言っておられる。あるいは、よけいなこと書くなと。ここの、先ほど読んだ中にも入っている。新聞記者は、これは無冠の帝王などといわれておりますけれども、しかし、これはもうやっぱり一介のサラリーマンであることは、私は変わりはないと思う。一国の首相が、部長や課長いつでも首にもできるんだということを言いながら、よけいなことを書くなというようなことを言われれば、これはたいへんな圧迫に私はなると思う。いいですか。国民には知る権利がある。新聞記者の書いたことを通じて、事実かどうか、それを知るわけであります。もし総理大臣が、記事の統制をやり、あるいはまた角番記者の、総理大臣付の記者を事実上の登録制にするなんというようなことをおやりになれば、これは国民の知る権利に対する重大な侵害だ。いまこういうことを書かれて、これはもうおそろしいというような趣旨のことをおっしゃいましたけれども、私は、もしここに書かれていたようなことで総理大臣が新聞記者の諸君に言われたとしたならば——だれが書いたか知りませんよ、この記事は。しかし、この記事を書かれた人は私は勇気のある人だと思う。国の民主制度に対する重大問題について、はっきりとここに書いている。しかも、この「文藝春秋」の記事にはこういうことが書いてある。「言論の自由は、いうまでもなく民主主義社会の基本である。じつは、このコトバを田中首相に噛みしめてもらいたいのである。」ということを、この記事を書く冒頭に書いている。私は勇気のある人だと思う。それを、まるで共産党が何かたくらんでこういうことをやらしたかのように、まあそんなふうに私には聞こえましたがね。そんなふうにお考えになることは、これは総理大臣、少し事態の判断を誤っているんじゃないですか。事の重大性についての認識をどう思っておられるのか。
  299. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私はさっきから、そんなことをやる意思もないし、力もないしと、こう言っておるんです。私は、その記事を書いた人は、勇気がある、勇気があるとは思っていません。あなたはまた、その記事と、記者と私と対決させようと、こう思っておるのかもしれませんが、あなたの質問を聞いていると、こわくなります、私は。ほんとうにそう思う。それは国民が見ておってくださると思いますよ。私は、いろんなことがある。ありましたよ。だから衆議院でも言ったんです。光明ケ池のときの問題でも、それから虎の門の問題でも、早く告発しておけばよかったんだと、それはもう名誉税だよというような考え方、それがだんだんだんだん積み重なったものがこうなる。私はその例でもって、こういうことを一つ言います。この間やむを得ず通産大臣として告訴をしたものがあります。それは、現職の大臣が帝石の株を数千万株買ったと書いてあったでしょう。私は告訴したんです、「週刊新潮」を。それはどういうことであるか。一番初めは、某新聞記者の覆面座談会の中で、株が上がっておる、現職の閣僚が買っているらしいよ、といううわさがあるよ、こういうたった一行あるんです。新聞も指摘できます。そうしたら、「オール投資」というのが半ページ書いたんです。そうしたら、それを、一週間たったら週刊誌が一ページか二ページにしたんです。そういうのが全部、私は、いままで何回もやっておる。しかし、そういうことが私は片りんでもあり、帝石の株を一株でも買っているなら、それは私は何と言われてもかまいません。帝石の株は、私は新潟県でございますが、持ったこともないし、現に持っていない。一株も買っていない。何かを目標にして書いたにきまっているじゃありませんか。そうじゃないんですか。だから非常にこわくなるんですよ。はあ、おそろしいものだという感じですよ。ほんとうに私はそういう感じです。しかし、いかに私が酒を飲んでおっても、どんな親しい新聞記者との懇談の中でも、そういうことを述べるとお思いになりますか。述べるとお思いになりますか。もしかと思っておるから質問しているんだよと、こう言われるかもしれませんが、私は何回も述べておるんです。何回私が否定しても、ここであなたが指摘すること自体が目にとまるかもしれません。私は日本のいやしくも内閣の首班でありますから、この公の立場の中でこれだけのことが言われるだけでも日本の民主政治を傷つけておると、私はほんとうに腹の中でそう思っています。そう思っておりますが、そういうことを、国内だけではなく、外国にまで売り込んでおる人もあるじゃありませんか。あるそうであります。私は、何を一体考えておるのか、よく私にはわかりません。イメージダウンだ、イメージダウンをはかるんだとか、一太刀浴びせるんだとか、私はほんとうに、事の重大さをほんとうにしみじみと感じております。おりますが、そのようなことで日本政治を、まっこうから竹割りにしようという感じには首肯できません。
  300. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 渡辺君、これは御相談ですが、委員長としてね、あれだけ強く否定しておるんですから、この程度でどうでしょうか。先に進行できませんか。
  301. 渡辺武

    渡辺武君 総理大臣がやってくれと言っているんだから……。ぼくもあとの質問がありますから、もうあと一、二問で終わります。
  302. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) いま一問に。
  303. 渡辺武

    渡辺武君 いやいや、そんなあなた、あなたからそんな……。
  304. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) いやいや、私は、相談だ、相談だ。
  305. 渡辺武

    渡辺武君 総理大臣、いまこわいとおっしゃったけどね、こわいと心の底から思っているのは国民ですよ。現職の総理大臣が、もしかりにこんなことを考え、こんなことを言ったとすれば、これはもうたいへんなことだ。火のないところには煙が立たぬということわざがある。もしこれが事実無根であるならば、一国の総理大臣、権力の座にすわっている方が、何もそんなに恐れることはない。報道機関というのは天下の公器。書く人はそれなりに自覚を持ち責任を持って書いている。いいですか。そういうものなんだ。決して事実無根のデマなどというものは、ためにする人は別としても、書くものじゃない。私ども共産党は、これは保守勢力からたいへん事実無根なデマをあびせかけられ、報道の公正さということがどれほど大事かということを身にしみて味わっている。だから、あなたにしつこいと言われるかもわからぬけれども、この問題は重大だからあなたに聞いている。あなたが一国の総理大臣でなければ、私はこんなに問題にする必要はないと思う。しかし、いやしくも国の政治の責任者、これが、国の民主主義制度の根幹である言論の自由に対して驚くべきことをここで言っていると、ちゃんと書かれているんだ。たいへんなことだ。事実無根でございますと言って済むことじゃない。納得がいくまで伺わなければならぬ。いいですか。  さて、新しい問題があるので、そのことを二、三伺って、そして私、質問をやめたいと思う。いいですか。ここに民放労連教宣部の出した「労連情報」というのがある。この中でこういうことを——やはりこの八月二十日の料亭「ゆうぎり」で総理大臣の語ったことばとして、こういうことを言っている。「オレにできないことはない。オレは法律だ。どんな法律でもつくってみせる」、こういうことを言っている。実際聞いたら、ばかばかしいと思うことだけれども、しかし、これがそのときに総理大臣の語ったことばとしてちゃんと報道されている。いいですか。総理大臣、御存じのとおり、「朕は国家なり」と言ったあのルイ十四世、これは世に聞こえた独裁者です。もし総理大臣がこういうことばを吐かれたとすれば、これは総理大臣のお気持ちの中に、国会を軽視し、独裁政治をやろうというようなお気持ちがあるのじゃなかろうか、そういう疑いが生じます。現に、総理大臣が幹事長のときに、たとえば昭和四十四年の第五十国会、日韓条約、健保法の改悪、防衛二法案、国鉄運賃値上げ法案などがかかったとき、六法案について実に十四回もの強行採決をやっておられる。私どもは、この当時、こういうやり方は国会、議会制民主主義を踏みにじる、まさに国会無視のやり方だと言って厳重に抗議いたしました。そういう経歴があなたにはおありだ。偶然じゃないと思う、こういう発言が出るのは。そういう感じがいたしますが、どうですか、その事実がありますでしょうか。
  306. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 「余は法律である」などということを考えたこともございません。考えたこともない。あなたとも商工委員会で、ずっと一年間もおつき合いしてきたじゃありませんか。私が、「余は法律である」、そんな格調の高い人間かどうかですな、おわかりでしょうよ。(笑声)
  307. 渡辺武

    渡辺武君 最後に一言申します。  何回も申しますけれども、言論報道の自由というのは国の民主主義制度の根幹。私ども戦前派でありますけれども、あの戦時中の言論統制のもとで国がどんな状態に引きずり込まれていったか、国民がどんな悲惨な目にあったかということは、これは深刻な経験として残されております。いま四次防が制定され、アメリカとの軍事同盟のもとで自衛隊が増強され、そうして国の民主主義はどうなるだろうかと、国民みんな心配しております。特に選挙制度審議会では小選挙区制についての答申を出すというような動きもある。とにかく、民主主義の危機を良識ある人たちは、はだ身に感じているというのが現在の実情じゃないでしょうか。こういう時期に、田中総理大臣が、酒席の上ではあるとはいえ、こういうようなことを言ったということが、天下の公器である報道の大衆雑誌にちゃんと載っているのです。たくさんな人たちがこれを見ている。これ、重大問題です。私にはこれは偶然じゃないと考えられる。  ところで、以前の公明党の言論弾圧問題のときに、当時の佐藤総理大臣が、これは時間がないので詳しく読みませんけれども、言論報道の自由はあくまでも守らなきゃならぬということをはっきりと答弁されております。言論の自由についての総理大臣の決意、これをお聞かせいただきたい。
  308. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 言論の自由は、これはあくまで守らなければなりませんし守ります。守りますが、言論はそれだけに真実を報道していただきたい、こう心から思います。
  309. 渡辺武

    渡辺武君 次に、私は、国民生活の問題について幾つかの点を伺います。  戦後長期にわたる——だいぶ頭にきているようですな。(笑声)まあひとつ落ちついて答弁してください。戦後長期にわたる自民党政治、特に大企業本位の高度経済成長政策の結果、国内では物価高、公害社会保障の著しい立ちおくれ、そうしてまた国際的には円問題、とにかく内外の諸困難が累積しているというのが現在の実情だと思う。特に物価問題は国民生活を脅かす重大問題である。国民物価の安定を心から望んでおると思います。そこで、まず、総理大臣は、いまの物価値上がりの原因、そうしてまた、これを押えるための対策、どうお考えか、お答えいただきたい。
  310. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 物価には、いま三つの問題があります。一つ卸売り物価一つ消費者物価、もう一つは地価というものでございます。卸売り物価は各国に比べて非常に安定をしておるというのが日本の強みでございましたが、このところ、卸売り物価は上昇過程をたどっております。まあ、それは海外要因もございますし、また、鉄鋼のように不況カルテル等に起因するものもございますが、これらは十分しさいに検討し、状況把握をしていくことによって、これが消費者物価の高騰を招くようなことのないようにしなければならないと思います。消費者物価というのは、まあ質が変わっておるということもございます。質といえば、簡単に言うと、兄は小学校で、次は高校で、末弟は大学へ出すというようなものは、子供は全部大学まで出したいというようなことにもなりますし、質も変わっておることは事実でございますが、しかし、消費者物価は各国に比べては高い水準を維持しておりますので、消費者物価の上昇を押えるために努力をしなければならぬと思います。それと、土地問題は、もう私が申し上げるまでもないことでございます。  一体、消費者物価というのはどうすれば直るのか。これは、自由化を行なったり、関税の引き下げをやったり、低生産性部門の生産性を上げたり、いろいろなことがございますが、しかし、なぜかということをはっきり言うと、一つには都市化現象都市に集まっておる。これは、まあ労働人口が一人集まることによって、夫婦、子三人といえば四人の扶養家族が集まるわけであります。そうすると、やはり狭いところにおるものでありますから、流通機構の問題その他によって、消費者物価は上昇傾向になるということもいなめないことでございます。  それからもう一つは、都市に集まるのが急激でありましたから、まだパイプが、いわゆる流通機構のパイプが細いままになっておる。東京の例を申し上げると、千百万。千百万だけではなく、三千万人のうちの相当部分が東京を生活圏にしておるという状態にありながら、東京の市場その他は五百万人というものを基礎につくられて、その後変革が行なわれるとしても、必ずしも全面的な変更が行なわれたわけではないわけでございます。  もう一つは、中小企業とか零細企業という特殊なものがございます。それがやはり賃金の平準化ということが行なわれます。そうすると、いままではコストの中に入れなかった——そばでもラーメンでも、家に届けるものはみな流通経費——配達経費が流通経費として、それが先進工業国のようにだんだんと増大をしてまいりますから、どう考えてみても、都市集中を是認しておる限り、消費者物価は幾ばくか上がるということになるわけであります。そういう意味で、列島改造とか、いろいろなことをいま提案をしておるわけでございますが、しかし、この消費者物価の引き下げ、安定ということに対しては、先進工業国がみな消費者物価がいわゆるインフレ傾向にありますので、相当広範な立場物価対策、特に日本においては消費者対策ということをなさなければならないと、こう思います。  地価対策については、もう毎度申し上げておりますから、除外をいたします。
  311. 渡辺武

    渡辺武君 総理大臣の物価問題についての主張の新しい点は、都市の過密が物価値上がりの原因たというところにあるように伺われました。中小企業や流通機構の生産性のおくれ、これはもう佐藤内閣、池田内閣当時から言い古されて、もうそれが効果のない、また、間違った議論だということは、その後の物価値上がりでもう実証されておることでありますから、そこで総理大臣に伺いますけれども、もし、都市の過密が物価の値上がりの原因だとするなら、過疎地では物価が下がっておるはずだ。そこで伺いたいんですけれども、鳥取、島根、高知、鹿児島、秋田などの過疎地の消費者物価指数、これはどうなっておりますか。
  312. 加藤泰守

    説明員加藤泰守君) お答えいたします。  物価指数で申し上げますけれども、過疎地といえるかどうか多少疑問があるかもしれませんけれども、盛岡、これが四十五年基準で、四十六年が一〇六・七でございます。それから、秋田が四十五年基準で一〇五・五でございます。山形一〇六・七、それから鳥取一〇五・四、松江一〇五・一、高知が一〇七・六、鹿児島が一〇四・九。このときの全国の総合指数は一〇六・一でございます。
  313. 渡辺武

    渡辺武君 そうでしょう、過疎地だって消費者物価は上がっているんですよ。都市の過密が消費者物価上昇の原因だなんていうようなことは、これは私は失礼だけれども、総理大臣の珍論だと思う。全然、これは議論に耐えない議論じゃないかと思います。いまの物価値上がりの最大の原因は、大企業の製品の値上げ、われわれはこれを独占価格と呼んでおります。それからまた政府インフレ政策あるいは公共料金の引き上げ、これこそがいまの物価値上がりの最大の根源です。  そこで伺いますけれども、去年、鉄鋼の不況カルテルをつくってから、鉄鋼の値段が上がっております。不況カルテル前と現在とどのくらいの値上がりになっておるのか。また、その値上がりの原因はどこにあるのか、それを伺いたいと思います。
  314. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 鉄鋼の価格につきましては、最近における市況の回復と、景気回復によって生産量が増加してまいっております。それで、大体、前期、昭和四十七年三月期におきましては、これが不況の最中の決算期でありまして、この場合には有価証券とか各種資産の売却、あるいは定率から定額への減価償却の切りかえ等によって、この一番底の段階において連続減配のもとに決算を行ないました。それから、今期になりまして、多少上昇してまいりました。しかし、同様に、今期の決算におきましても、やはり手持ち資産の売却、退職手当引き当て金、各種積み立て金の不足額の減価償却における定率と定額の差額等の控除、こういうことをやりますと、価格は若干上がっておりますけれども、経営の実態においては、依然としてかなりきびしいものがあるようでありまして、不況対象品の採算状況は、いずれもまだ赤字でございます。経営の状況から見ますと、価格と経営の関係はいまのような状態になっております。
  315. 渡辺武

    渡辺武君 値上がりの原因はどこにあるかというんです。
  316. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 値上がりの原因は、一つは、不況カルテルを結びまして生産制限をしたということ。それからもう一つは、最近、景気回復政策が奏功いたしまして、内需がかなり旺盛になりまして、そちらの方向に売れる量が多くなってきた、そして生産制限がある程度きいてきましたので、価格が上がってきたと、こういうことでございます。で、内容を見ますと、問屋筋に流しておるものが上がってきて、業者が直売しておるものはさほど上がっていない、そういう現象でございます。
  317. 渡辺武

    渡辺武君 日本銀行総裁に伺いますが、最近、銀行券及び預金通貨、これが経済成長よりも早く増発されておると思いますけれども、その実情と、そういう事態が起こっている原因、これを伺いたいと思います。
  318. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまお話がございましたように、最近、日本銀行券の前年同期比の増発率が少し上がってきております。十月中の平均残高で約二〇%、昨年の十月の平均残高に比べて上がっております。いま経済成長の名目成長率、それと比較しますとやや高い感じがいたします。それからもう一つ、預金通貨についても一時相当高くなっておりまして、これは非常に大量のドルが入ってまいりまして、そのドルの代金が外為会計から支払れた、そのために一時非常にふえましたので、こちらのほうは最近伸び率がだいぶ落ちてきておりまして、二〇%を割っておるのが実情でございます。  これがどうしてこういうふうに上がってきたかということでございますが、銀行券の増発につきましては、今度の景気回復の型がいつもと違う点が影響しておると思います。それは、いままでは、大体、大企業の設備投資の上昇によりまして景気が上向いてきたと思うのでありますが、今度は国民消費、それから財政支出、それともう一つは、今度の景気回復の特徴といたしまして、中小企業の好転が非常に早く起こった。中小企業は、その性質上、取り引き決済に相当日本銀行券を使うものでありますから、どうしても日本銀行券の増発率が高くなる、こういう特徴があります。  それから、いまの預金通貨につきましては、これは最近の金融緩和の状況を反映いたしまして、企業が手元にある程度ゆとりを置いておく、すなわち、当座預金その他の資金を置いておくという傾向がふだんのときよりも少し強いものですから、そういう影響が出ておると思います。いまの国際収支等を考えますときに、いまの金融緩和状況は、この程度は維持していくことが適当であると思います。しかしながら、これを越しまして緩和しますことは、物価その他にも影響があると考えられますので、われわれとしては、この預金通貨の源になります銀行貸し出しの伸びにつきましてできるだけこれを内輪に抑制するように、具体的に指導いたしておるのが現状でございます。
  319. 渡辺武

    渡辺武君 総理大臣、お聞きのとおりです。いまの鉄鋼価格の値上がり、これはやがて消費者物価にはね返ってくる卸売り物価の上昇を促進している重要な要因、これも都市の過密から起こってきているんじゃないんですよ。また、いま日銀総裁言われましたように、日銀券や預金通貨が経済成長率を余分に出ておる、しかも、これは金と兌換できない銀行券、こんなことになればインフレが激しくなるのは当然です。それも都市の過密から起こってきているんじゃない、別の原因から起こってきている。政府は、この間、消費者米価を上げましたけれども、これだって都市の過密が原因じゃない。この公共料金の値上げは、政府の財政上の理由から上げたでしょう。都市の過密がいまの物価値上がりの原因だなどということは、これは先ほども申しましたけれども、少し珍論に過ぎるんじゃないでしょうか。ですから、総理大臣が、日本列島改造によって物価問題を解決するとおっしゃいますけれども、私は、これは非常に疑問に思っている。むしろ、この日本列島改造によって物価の値上がりは今後激しくなるんじゃないかと思いますけれども、どうですか。
  320. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私はそう思いません。
  321. 渡辺武

    渡辺武君 それでは伺いますけれども、日本列島改造論というのは、もう総理大臣よく御存じのように、昭和六十年までにGNPをいまの四倍にする、全国に工業基地をつくって、そしてそれを全国交通通信ネットワークで結ぶという計画、全く大企業の超高度成長政策と言って差しつかえない。これを財政主導型で積極的に、重点的に財政を通してやっていこう、こういうことがこの日本列島改造論で強調されている。このためには私は、ずいぶんばく大な資金が必要だと思う。  そこで、建設省に伺いますけれども、この日本列島改造論を織り込んでもよろしゅうございますし、織り込まないいまの計画でもいいんですけれども、建設省関係の長期計画、そしてまたそれの所要資金、それからまた財源対策、この点をお聞かせいただきたい。
  322. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) お答えいたします。  道路整備につきまして、第六次道路整備五カ年計画の事業の量は、予備費一千億円を充当するものを除き、おおむね次のとおりであります。  一、一般道路事業五兆二千億円、二、有料道路事業二兆五千億円、三、地方単独事業二兆五千五百億円、所要資金は国費、地方費及び財投資金などを充当することとしております。  このための財源措置については、既定の特定財源収入と一般財源の投入による収入のみによるのでは、かなりの財源不足があるものと見込まれまするので、昭和四十六年十二月、道路その他の社会資本の充実に資することを目的として自動車重量税が創設されたものであります。これによりまして、自動車重量譲与税として市町村の道路財源が拡充される等の対策が講じられております。  なお、諸般の情勢に対処するため、現行の第六次道路整備五カ年計画を改定して、昭和四十八年度から新たな第七次道路整備五カ年計画を発足させるべく、予算要求を行なっており、現在その内容、財源等については鋭意検討中であります。——もっとみんな読みましょうか。(笑声)  海岸事業、海岸事業については、農林省、運輸省及び建設省の三省において事業を実施しておりますが、昭和四十五年度以降五カ年間において、既往の投資分を含め、防護を要する総延長約一万三千八百キロメートルの約三二%を整備し、新たに人口で約七百万人、面積で約三十万ヘクタールを防護することとしております。  所要資金は、昭和四十五年度以降の五カ年間に地方公共団体の行なう単独事業などを含めて総額三千七百億円——予備費二百億円を含みます、を海岸施設の整備投資するものとし、このうち建設省所管の海岸事業費は、九百八十億円であります。  財源措置については、海岸法に定めるところにより、国及び地方公共団体が負担することといたしております。  特定交通安全施設等整備事業、総合交通安全施設等整備事業五カ年計画は、地方単独事業を含め総額六千二百八十一億円、うち、道路管理者分四千五百五十億円、公安委員会分一千七百三十一億円であります。このうち国が負担し、または補助する特定交通安全施設等整備事業五カ年計画は、事業規模二千九百三十億円、うち、道路管理者分二千二百五十億円、公安委員会分六百八十億円となっております。本計画は、昭和四十六年度から発足し、昭和四十七年度でその第二年次目の事業を実施中であります。  また、その財源などについては、道路管理者分については、道路整備五カ年計画の一環として措置されております。  下水道整備について、第三次下水道整備五カ年計画の事業の量は、予備費を充当するものを除き、おおむね次のとおりであります。  一、公共下水道二兆三百億円、二、流域下水道三千六百億円、三、都市下水路八百億円、四、特定公共下水道三百億円、この計画による昭和五十年度末の公共下水道の普及率は、昭和四十五年度末の二二・八%を三八%とする見込みであります。  所要資金は、昭和四十六年度以降の五カ年間に地方公共団体の行なう単独事業を含めて、総額二兆六千億円を下水道整備投資するものとし、財源措置については、下水道法の定めるところにより、国及び地方公共団体が負担することとしております。  住宅建設について申し上げます。  第二次……。
  323. 渡辺武

    渡辺武君 所要資金だけでいいです。あまり詳しくは要らぬです。
  324. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 所要資金だけでいいですか。
  325. 渡辺武

    渡辺武君 もう少しまとめてお答えいただきたいですな。
  326. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) そして、第二次治水事業五カ年計画等の事業の量は、予備費を充当するものの、おおむね次のとおり、河川改修等——金額でいいでしょう、一兆七千九百億円、ダム建設等五千九百億円、砂防等六千百億円、建設機械整備等百億円、それから都市公園等整備総額九千億円、予備費一千億円を含むと、こうなっております。
  327. 渡辺武

    渡辺武君 住宅建設五カ年計画
  328. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) ちょっと待ってください——住宅は戸数の計画でありまするから、九百五十万戸でありまして、金額は出ておりませんです。
  329. 渡辺武

    渡辺武君 郵政省の電信電話拡充五カ年計画、これの所要資金はどれくらいですか。
  330. 三池信

    国務大臣(三池信君) お答えいたします。  電信電話の五カ年計画、四十八年から五十二年までの間、所要資金は八兆三千億であります。
  331. 渡辺武

    渡辺武君 運輸省関係お答えいただきたい。国鉄も含めてお願いします。
  332. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) 運輸省関係では、私のほうは非常に間口が広うございますので、国鉄、それから航空、港湾と、この程度にお分けしてよろしゅうございましょうか。——それから、具体的な問題につきましては、各担当がそろっておりますから御質問願いたいと思います。  国鉄から申し上げます。過密過疎を解消し、公害の少ない……
  333. 渡辺武

    渡辺武君 金額だけで……。
  334. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) 金額ですか。金額は……。
  335. 渡辺武

    渡辺武君 財政再建を……。
  336. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) ですから、これは金額は出ておりません。
  337. 渡辺武

    渡辺武君 所要資金は……。
  338. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) 所要資金は、御承知のとおり、国鉄財政再建法をこれからつくって御審議をちょうだいしようということで、ただいま検討中でございます、国鉄の分は。  港湾五カ年計画は二兆一千億でございます。  空港整備五カ年計画の内容を申し上げます。まず空港使用料等の金額は五百七十六億円、それから一般会計から二千六百億円、うち燃料税が五百九十六億円……。
  339. 渡辺武

    渡辺武君 所要資金の総額。
  340. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) 総額でよろしゅうございますか。総額で五千六百億円になります。——それでよろしゅうございますか。
  341. 渡辺武

    渡辺武君 かなり膨大な資金が必要になってくる。私、各省から郵政、建設、運輸、あらかじめ長期計画を伺って概略の計算をしてみますと、四十兆円から五十兆円がここ四、五年の間に必要だということになる。たいへんな金額です。しかも、それに第四次防、それからまた海外経済協力、これもあると思うのです。  外務省に伺いますけれども、総理大臣は列島改造論の中で、昭和五十五年には経済協力を七十五億ドル以上に拡大するということを言っておられますが、これをもし達成するとして、向こう五年間くらいにはどのくらいの経済協力をやることになるのか、その点、お願いしたい。
  342. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) お答えいたします。  昨年、一九七一年におきまして、援助の総額は二十一億四千万ドルでございまして、それを毎年のGNPの一%という目標に向かって伸ばしていきますと、大体、このGNPの計算のしかたにもよりますが、昭和五十五年までに援助額七十五億ドル以上ぐらいの域に達するかというふうに計算いたされるわけでございます。ちょっとその算術を私いたしておりませんのですが、その率で毎年伸びていくということでございます。
  343. 渡辺武

    渡辺武君 いまのような計算のしかたで私が推算しますと、向こう五年間で七兆円くらいの金が必要になる。第四次防も含めると十兆円をはるかにこえる金です。これにいま言った建設省、運輸省、郵政省、この関係の投資、四十兆から五十兆というべらぼうな投資、たいへんな金がかかるのです。総理大臣は、このための財源をどういうふうになさるおつもりですか。
  344. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) その年度年度の税収、また国債による調達等、検討してまいらなければならないと思います。
  345. 渡辺武

    渡辺武君 この列島改造論の七二ページの二行以下に、総理大臣は、子孫に借金を残してはいかぬという考えは間違っているという趣旨のことが書いてありますが、ちょっとそこをどなたか読んでいただきたい。
  346. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 列島改造論というのは、私の個人的著書でございますから、政府委員は読みません。
  347. 渡辺武

    渡辺武君 そういうことを書いているということは御存じですね。これは、赤字公債を大量に発行して建設資金をまかなっていくということじゃないですか。
  348. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そうは考えておりません。これはただ、われわれの時代にだけ、われわれの時代ですべてを償還をしなければならないということでやっておると、なかなか理想的なものができません。理想的なものをつくり、効率的な状態をつくり出していき、将来、それが後代の日本人のために、よりよい日本をつくることであるとしたならば、後代の負担もまた考えてもいいじゃないかという、どこの国でも考えておることでございまして、そういうことであって、赤字公債でもってみんなやってしまう、こんなことじゃないです。ですから、財政法四条を守っていこうということをいま申し上げておるわけです。
  349. 渡辺武

    渡辺武君 財政法四条はあるが、建設公債はどうです。
  350. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 建設公債は、やはり後代の日本のためには、理想的な日本をつくるためには、建設公債の発行はこれはやっていかなければならないと思います。
  351. 渡辺武

    渡辺武君 現在、公債の発行残高はどのくらいになっておりますか。
  352. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 四十六年度末で、昭和四十年から発行いたしました新規国債の発行残高は三兆九千五百二十一億円でございます。  見通しといたしまして、今回の補正追加分を含めまして、来年の三月末、四十七年度末の見込みは六兆一千八百三十二億円でございます。
  353. 渡辺武

    渡辺武君 このほかに、政府保証債、地方債、ばく大な金額が出ている。こんな公債が累積した上に、今後、建設公債という名の赤字公債を出して建設資金をまかなっていくというようなことになれば、やがてこれは日銀に買われてインフレーションを高進させること、これは明らかだと思うんです。しかも総理大臣、公共料金政策について、公共料金は受益者負担を原則とするというふうに言っておられます。今後、国鉄運賃その他受益者負担を原則として、建設資金を国民のふところから、料金によって吸収するという政策をおとりになるつもりじゃないですか。
  354. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 鉄道でも地下鉄でもそうでございますが、公共企業といえども、これは受益者負担が原則であることは間違いありません。これは鉄道も完全に黒字経営をしたい、ペイをするようにしなきゃならないと言われておると同じことでございまして、これは確かに受益者負担が原則でございます、原則でございますが、公益事業であり、公共事業であるということで、その重要度によって、国が、地方公共団体が負担をしておるということは、これもまた政策的には当然とられてしかるべきことでございます。ですから、明治初年から大正、昭和にかけて多いときには年間千キロ以上も鉄道が敷設をされましたが、これはまあ大体料金でまかなうというような状態でやってまいりましたが、いまから考えると非常に高い料金でございました。だから、そういう状態でもってやるわけにいかないということで、いま都市の地下鉄などは建設費の二分の一は税金でまかなわれておるわけでございます。だから、そういう意味で、一様にすぱっと割り切った議論、あなたの言うように割り切った、右か左かという議論で、中間のない議論ということじゃいかないんです。しかし、地方の地下鉄とか地方のバスとかそういうものの料金が、赤字であるために一般会計から全部補てんをしておったら、他の地方公共団体がやらなきゃならない仕事は何にもできなくなる。そのために、寝たきり老人もできないし、業病や重度心身障害児の収容もできないということであるなら、やはりどちらかウエートを置いて、どうしても寝たきり老人のほうにウエートを置かなきゃならない場合は、地下鉄のほうや電車やバスのほうは、利用者のほうでお持ちいただかなくちゃいけませんというふうになるのであって、これは右か左かどっちかきめるということ、私かあなたかというわけにいかないんです。これはやっぱり一つずつケースによって十分検討して、これが公益企業としての使命を果たせるということで結論を出すべきであります。
  355. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 渡辺君、あと一分です。
  356. 渡辺武

    渡辺武君 公共企業に国が一般会計から金を出して、料金は低料金に据え置いて、安全便利な公共サービスをすると、これはいままでのたてまえだ。ところが、公共料金は受益者負担が原則だなんというのを、はっきり言った総理大臣、私はあなたが初めてだと思う。明らかに、それは一般会計からも多少出すでしょうけれども、しかし公共料金値上げ、これが田中総理大臣が今後の日本列島改造の建設をやるための、まかなう資金源になっているということは、これは明らかなことじゃないですか。
  357. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そんなことはありません。公共料金をどんどん値上げして列島改造をやろうなんと考えておらないのです。どこにも書いてありません。公共料金は極力抑制をするのがたてまえであるし、当然のことでございます。しかし、であるからといって——だから、そういうことだから自民党内閣ずっとやってきたでしょう、昭和九年ないし十一年の平均価格の最低七百五十倍だといっているときに、バス料金や鉄道料金は三百倍以下で押えておるじゃありませんか。ですから、そういうことで、公共料金はどのように押えてきているかということは、私が述べなくても、二十七年間の事績がちゃんと証明しておるじゃありませんか、あなたの言う数字でちゃんと明らかでございます。だから、そうであるが、しかし限られた中で、国民サービスは何が一番やられなければならぬのかという軽重は考えなければだめなんです。そうすれば、あすをも知れない寝たきり老人を、また重度心身障害児をということを考えるときには、限られた中でやるのでしょう、無制限に使えば、あなた、インフレになると言っているじゃありませんか。やはり限られた中でもって取捨選択をしなければならないのです。そういう場合は、ある場合は、押えられる場合は押えます、どうにも押えられない、しかも他に財政需要が非常に多い、それを優先しなければならないということになれば、公共料金も完全に押えるということだけで足りるものではないわけであります。その場合は応益負担の制度があるわけでございますから、ですから、そういう意味ではひと一つ理解がいただけると思います。
  358. 渡辺武

    渡辺武君 総理の論理はわかりました。しかし、その論理から直接に導き出されるものは、田中内閣成立以来、まず決断と実行をやられたのが、これはガスの料金の値上げ、地下鉄の値上げ、消費者米価の値上げ、つまり公共料金の大幅値上げであった。おそらく今後同じような政治が行なわれるであろう。建設公債という名の赤字公債大量増発と累積によって、インフレーションが高進すると同時に、公共料金の値上げがプラスされる。日本列島改造論というのは、ほかならぬ物価値上げ論である、こう言って差しつかえない、結論はそうなると思います。その上に、どうですか、先ほどおっしゃいましたように、税収でまかなうという点も確かにあると思います。付加価値税制、これについてもお考えだろうと思う。物価に織り込まれて、知らないうちに税金を取られる、大企業は一銭も負担にならないけれども、一般の消費者だけがこの税金を負担する、まことに大企業にとっては都合のいい税制です。ヨーロッパでももう採用しているが、こういう税制をおそらく採用されると思います。
  359. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 渡辺君、時間が経過しました。
  360. 渡辺武

    渡辺武君 はい。その点、どうでしょう。
  361. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 遺憾ながら、あなたとは意見が違います。
  362. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 以上をもちまして渡辺君の質疑は終了いたしました。  明後日十三日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十七分散会