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1972-11-09 第70回国会 参議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十一月九日(木曜日)    午前十時七分開会     —————————————    委員の異動  十一月八日     辞任         補欠選任      長屋  茂君     初村瀧一郎君  十一月九日     辞任         補欠選任      小笠 公韶君     竹内 藤男君      和田 静夫君    茜ケ久保重光君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大竹平八郎君     理 事                 高橋 邦雄君                 西村 尚治君                 丸茂 重貞君                 山本敬三郎君                 米田 正文君                 杉原 一雄君                 西村 関一君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 梶木 又三君                 川上 為治君                 木村 睦男君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 白井  勇君                 竹内 藤男君                 徳永 正利君                 中村 禎二君                 初村瀧一郎君                 林田悠紀夫君                 矢野  登君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                茜ケ久保重光君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 工藤 良平君                 小林  武君                 小柳  勇君                 須原 昭二君                 竹田 四郎君                 羽生 三七君                 横川 正市君                 塩出 啓典君                 三木 忠雄君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 岩間 正男君                 渡辺  武君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        法 務 大 臣  郡  祐一君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  植木庚子郎君        文 部 大 臣  稻葉  修君        厚 生 大 臣  塩見 俊二君        農 林 大 臣  足立 篤郎君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  佐々木秀世君        郵 政 大 臣  三池  信君        労 働 大 臣  田村  元君        建 設 大 臣  木村 武雄君        自 治 大 臣  福田  一君        国 務 大 臣  有田 喜一君        国 務 大 臣  小山 長規君        国 務 大 臣  二階堂 進君        国 務 大 臣  濱野 清吾君        国 務 大 臣  本名  武君        国 務 大 臣  増原 恵吉君        国 務 大 臣  三木 武夫君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   亘理  彰君        内閣法制局長官  吉國 一郎君        警察庁警備局長  山本 鎮彦君        防衛庁参事官   大西誠一郎君        防衛庁人事教育        局長       高瀬 忠雄君        防衛庁衛生局長  鈴木 一男君        防衛庁経理局長  小田村四郎君        防衛庁装備局長  黒部  穣君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        経済企画庁総合        開発局長     下河辺 淳君        経済企画庁調査        局長       宮崎  勇君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁大気保全        局長       山形 操六君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省条約局長  高島 益郎君        大蔵政務次官   山崎 五郎君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省理財局長  橋口  收君        大蔵省国際金融        局長       林  大造君        大蔵省国際金融        局次長      松川 道哉君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        厚生省社会局長  加藤 威二君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        厚生省援護局長  高木  玄君        通商産業省貿易        振興局長     増田  実君        通商産業省公害        保安局長     青木 慎三君        通商産業省鉱山        石炭局長     外山  弘君        運輸省鉄道監督        局長       秋富 公正君        運輸省航空局長  内村 信行君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        労働省職業安定        局長       道正 邦彦君        建設大臣官房長  大津留 温君        建設省道路局長  高橋国一郎君        自治省行政局長  皆川 迪夫君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和四十七年度一般会計補正予算(第1号)  (内閣提出衆議送付) ○昭和四十七年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和四十七年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  先刻、理事会におきまして、補正予算三案に対する質疑順位につきましては、お手元に配付いたしました質疑通告書順位とすることに協議決定いたしました。そのように取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  補正予算案審査中、必要に応じ、日本銀行総裁及びその役職員参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 昭和四十七年度一般会計補正予算  昭和四十七年度特別会計補正予算  昭和四十七年度政府関係機関補正予算  以上三案を一括して議題といたします。  これより質疑を行ないます。小林武君。
  7. 小林武

    小林武君 最初に、石狩炭鉱爆発事故北陸トンネル列車事故、日航飛行機乗っ取り事件等について質問いたします。  石狩炭鉱爆発事故につきましては、けさのニュースによりますと遺体一つ発見できたそうであります。この点については詳しく申し上げませんけれども、石狩炭鉱爆発事故というものをわれわれが見る場合、斜陽化した炭鉱、企業として成り立たない、いわば閉山を目の前に控えたようなそういう炭鉱労働者が、きわめて条件の悪い労働の中で、すでに幾多事故を起こして犠牲者を出しているわけであります。  私は、このことを考えますと、なくなられた方々はもちろんのこと、その家族方々が哀れでならないわけであります。こういう事故を一体単なる事故と見ていいかどうかということについて、国会は、政府に大きな責任があると思うわけであります。そういうたてまえで、この問題をいま非常に深刻に考えているわけであります。  北陸トンネルにつきましては、技術の進歩というようなもののおごれる気持ちということを指摘しておった新聞がございますけれども、事故が起こった場合に対する幾多の注意があったにもかかわらず、私は、技術に対して過信を持ち、おごれる気持ちでもってその技術に対する疑問を忘れるようなことでは、これは科学でも技術でもないと思うわけであります。そういう意味で、今度の北陸トンネル事故というものは、犠牲者に対して何と言っておわびをしていいのか。あるいは、今後さらに考えられる北海道と本州との間のトンネルの問題、そういうことを考えました場合に、この事故もわれわれはきびしく反省する必要があると思う。  日航の飛行機乗っ取り事件は、これはもうまことに困ったことでございますけれども、これについても、私は、羽田の現況というものを考えてみましたときに、犯人を発見するのに、犯罪を犯さない以前にこれを発見するということがきわめて困難な状態にあるということを、これはもう率直に認めなければいかぬと思うんであります。それに対する対策なしにいるばかりか、ますます羽田を混雑せしめるような状況において、国際空港の中でも、諸外国においてもこれは有数なものの一つでないかと私は判断するわけでありますが、この点についての関係者の一体今後の対策、この事件に対する反省というものがあるのかどうかというようなことを非常に私は疑っているわけであります。これについては、科学的な方法で、今後これらの誤った行動を起こす者に対する警戒はもちろんやってもらわなければなりませんけれども、前に述べたことについても、私は、謙虚な気持ち関係者はこれに対処しなければならぬと思うわけであります。  これらの三つの点について、一応の関係大臣の報告、並びに事後問題について、意見がございましたらお述べいただきたいと思います。
  8. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 去る十一月二日午後五時四十八分ごろ、石狩炭鉱株式会社石狩炭鉱におきまして、ガス爆発によると思われる災害が発生いたしましたことは、まことに遺憾でございます。  十一月九日六時三十九分、一人の御遺体坑外に収容されましたが、残る三十名は依然としてまだ安否不明でございます。  石炭鉱山保安につきましては、近年災害事故減少等相当の改善を見たところでございますが、今回のような事故が発生したことはまことに申しわけない次第でございます。  今回の事故は、予想以上にメタンガスが多く充満しておりまして、かつ崩落の個所が多く、救助作業はきわめて難渋をいたしました。それで、悪くすると第二次ガス爆発を起こす危険がございますことと、坑道が非常に狭いために大ぜいの人を入れることができなかった、そういうような事情から、四カ所の方面から現場に近づくように鋭意努力したのでございますが、千七百メーターぐらいまで進みますと、後方の落盤の危険がまた発生したりいたしまして、難渋をきわめたのでございました。  通産省といたしましては、さっそく政務次官及び担当局長を派遣し、現地局長及び各関係官署の御協力を得まして対策本部を設置し、全力を尽くしたところでございますけれども、いまだに御遺体の収容は一名であり、安否不明であるということは、まことに御家族皆さま方に対しても申しわけないと思う次第でございます。  ほかの炭鉱の問題につきましては、御心配している向きもあると思われますが、第五次石炭政策をわれわれはやはり強力に推進するつもりでございます。そうして保安関係につきましては厳重なる措置をとりたいと思っております。  この事故にかんがみまして、さっそく全国鉱山監督関係につきまして、もう一回再点検をして保安に万全を期するように指示し、現に実施中でございます。
  9. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) このたびの列車火災事故並びにハイジャック問題につきましては、たいへんな御迷惑をおかけもし、たくさんの方々犠牲者並び負傷者を出しましたことにつきましては、心からおわびを申し上げ、犠牲者になられた方々には心から御冥福をお祈り申し上げる次第でございます。  御質問にありました北陸トンネル事故から御説明を申し上げます。  十一月六日一時十分ころ、北陸本線北陸トンネル内において、急行旅客列車「きたぐに」、十五両編成でありますが、食堂車から出火し、多数の乗客死傷者を出しましたことはまことに遺憾であります。  事故原因につきましては、警察及び消防当局協力し、鋭意調査をさせておりますが、ただいままでに判明いたしました乗客等の被害は、死者二十九名、負傷者六百五十二名を生じました。  旅客救出にあたりましては、警察消防、自衛隊の協力を得て極力救出に努力いたしましたが、トンネル内に充満した煙のため救出作業は困難をきわめたのであります。十一時三十五分にようやく救出作業を終了いたしました。その後、復旧作業警察当局現場検証等を終えまして、二十二時四十五分開通いたした次第であります。  なお、この事故重大性にかんがみまして、私は、昨日、国鉄総裁に対し、再びこのような事故を繰り返すことのないよう厳重な警告を発するとともに、国鉄監査委員会に対しましても、特別監査をお願いした次第でございます。  また、ハイジャック内容について御説明を申し上げます。  日本航空三百五十一便の不法奪取についてでございますが、十一月六日七時三十六分、東京国際空港を離陸し福岡へ向け飛行中の日本航空三百五十一便が、名古屋上空において不法奪取され、犯人は現金二百万ドルを要求するとともに、東京国際空港におりて、航空機をDC8機に転便してキューバへ向かうように命ずるとともに、これが飛行機に乗り移ろうとした事件でございます。  政府運輸省は、外務省、警視庁及び日本航空責任者からなる羽田ハイジャック事故対策合同委員会東京国際空港に設置し、乗客、乗員の人命の安全の確保を最優先に対策を講じたところであります。乗客全員及びスチュワーデスが無事に救出され、その後、十六時五分、犯人は逮捕されました。乗務員全員救出された次第でございます。  以上がハイジャック内容でございます。  お話のありました、今後、こうしたトンネル内の事故に対しての対策問題でありますが、最近増加の傾向にありますこうした長大トンネルにつきましては、まず今回の事故原因を究明し、トンネルの総点検をいたす決意でございます。また、トンネル内の構造あり方等につきまして、この総点検を機会に鋭意研究し、再びこのような事故のないように、国鉄を指導してまいっております。  地下鉄トンネル状況につきましても、不燃化対策等について、従来から車両、駅の隧道等についても、不燃材料使用発熱器具の防護、いずれも道内照明及び消火器設置等事故対策を進めておりますが、今回の事故に照らしまして、これら対策を一そう強力に推進してまいる所存でございます。  また、ハイジャック防止につきましては、諸般の対策を講じながらも、なおかつ今回のような事件が起こったのでございますので、ハイジャックー航空関係不法行為防止するための方策といたしましては、旅客ボディチェック持ち込み荷物検査等、すでに考えられているもろもろの手段を、なお一そう徹底していくことが最も適切であると考えられます。今回の事件教訓といたしまして、これらの対策を総点検し、関係各省庁と緊密な連絡をとりながら、再発防止に万全を期する所存でございます。
  10. 杉原一雄

    杉原一雄君 関連。  たびたび改造論で今国会では議論が出てくるわけですが、特に今度の北陸トンネルあるいはハイジャック問題等を通じて、田中総理改造論の中で、あるいは高速自動車道路全国新幹線の網を張るとか、そうした提起が具体的に出ているわけです。それであるだけに、今度の北陸トンネル等についての教訓、これは非常にきびしいものでなければならないと思います。で、いま運輸大臣の答弁をお聞きしましても、原因が何であったか、経過処置はどうされたか、今後どうなければならないか、そうした具体的な提起がほとんどありません。磯崎総裁は一〇〇%国鉄ミスであると、はっきり確認しているとおり、私たちも、国鉄の大きなミスだ、このように考えるわけでありますが、ただ、それがどういう形でミスが出たか、つまり、D51がなくなり、蒸気機関車がなくなり、電化になり、北陸全線が電化したというようなことなどは、地域住民に、——私も地域住民の一人でありますが、これは近代化、スピードアップ、かなり歓迎された向きがあったと思います。ところが、十四キロメートル内外のこのトンネルの中に今日のようなおそるべき事故が起こるような、いわゆる設備保全保安措置、その他においての不完全性、不完全なことが明らかになって、実はびっくりしております。私もたびたび利用いたしますが、あのトンネルに入るときには、車掌さんは必ず、最初は、「これから間もなく北陸トンネルに入ります。一万三千何がし、日本一のトンネルであります。」、最近では「六甲ができましたので、日本第二のトンネルであります」——このマイク放送をする車掌気持ちの中には、いささかの誇りがあったかと思います。そのあとは「トイレの使用……」ということになるわけですが、いずれにしろ、長いから、速いからそれはいいんだと、こういうことにならないと思います。とりわけ、列島改造論等の主張を続けていくならば、これからも、あるいは東京−大阪を一時間で第二新幹線が突っ走るということになりますと、われわれ漏れ承るところによると、六〇%がトンネルである。そのあと四〇%は、かまぼこでおおいをするということになりますと、客観的には、今日のような長大トンネルの起こすような事故発生の要因が一ぱい存在しております。ただ、今度の中で、特に煙抜き、そうした点がわずか三カ所しがなかったとか、あるいは防毒マスクの備えが不十分であったとか、そういったような・指摘がたくさん行なわれております。でありますから、運輸大臣はいま総点検をやると言いましたが、非常におそいのであります。しかも、これは相当の経費と時間がかかると思います。でありますから、その点について運輸大臣からおよそのめどを明らかにしてほしい。と同時に、現在すでに着工している長大トンネル、少なくとも十キロ以上のトンネルは九本あるはずであります。これらにつきましても、北陸トンネルのような同一構造方式になっているのかどうか。その点も、これは設計を見ればすぐわかるわけでありますから、運輸大臣から、いま建設中のトンネルはだいじょうぶですならだいじょうぶと言ってほしい。だいじょうぶでなければ、直ちに設計変更をして、今日のようなミスが起こらないような体制をとる、そのことをも言明をしていただきたいと思います。  なお現在、北陸トンネルを含めて十キロ以上のトンネルは四本あります。これらにつきましても、総点検ということでなしに、もうすでに、わかり切っていることですから、煙抜きがどうなっているか、防毒マスクがどう設置されているか、こうしたこと等について、運輸大臣から、もっと具体的に、はっきり明示してほしいと思います。  もう一つは、きわめて小さい問題のようでありますが、北陸トンネルをつくるにあたりまして、敦賀の消防署から三つの提案がされていることは、運輸大臣は御承知だと思います。その一つは、トンネル内を一定区間ごとに仕切り、ブロックシャッターを設けてもらいたい。第二点は、乗客避難や誘導のための警報装置をつけてほしい。三点は、自動消火用のスプリンクラーや強制排煙装置をつけてほしい。消防署からこういう要望があったのでありますけれども、今日の事故等から判断して、この三つ条件は全部満たされていない、このように思いますが、運輸大臣はその辺のところをキャッチしているかどうか。  そこで、最後に田中総理から、いまあなたが改造論を非常に熱を傾けて推進されようとする中における新幹線あるいは高速自動車道路問題等をめぐって、この問題に対する総理としての、やはり国民に向けての重大な決意表明を実はいただきたい、このように思います。
  11. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) 私も現地に参りまして、トンネル内の現状を視察してまいりました。お話のように、消火設備の問題、あるいは排煙装置個所の問題と、いろいろ現地説明を承ってまいりましたが、これら技術的な部面につきましては、早急に検討させまして、時期につきましては、見通しを言えということでございますが、一日も早くということで御了承願いたいと存じます。  また、新しくつくりまする各地のトンネルにつきましても、今日のこの状態参考といたしまして、設計変更もしなくてはならぬ点については早急に設計変更等処置をとりまして、万全を期する覚悟でございます。
  12. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今度の北陸トンネル——全く予想もできないような大事故でございまして、この犠牲者には心からおわびをいたしたいと存じます。これは、これからも高速になりますと、どうしても隧道が多くなります。そういう意味で、隧道内における災害というものに対しては、車両不燃化、それから火災が起こった場合、災害が起こった場合の車両消火設備避難設備その他万全な対策を行なわなければならぬわけでありますが、これは非常に技術的な面で解決をしなければならない問題がたくさんあるわけです。これは鉄道長大トンネルだけではなく、これから都市交通はほとんど地下鉄になるわけです。地下鉄等はすべてが長大トンネルであります。こういう事故が間々起こるということになると、地下鉄はだめだということにもなるわけでありまして、これはたいへんな問題であります。私は、かかる問題が起こるということは全く希有なことであると、こういう考えでございます。少なくとも、隧道口から四キロのところでとまらなければならなかった、とめなければならない火災が起こった。それならば当然四キロの手前で起こり得た、十分確認できたはずではないかとも思います、その前に駅があったわけですから。この問題、非常にむずかしい問題でありまして、とにかくいま捜査中でございますし、原因糾明ということに対しては、これは徹底的に原因糾明が行なわれ、万全な体制がとられない限り、これはもう都市における主要な交通網さえもたいへんな影響を受けるという問題でございますし、これからの長大隧道等の、特に高速自動車道路による長大隧道、これは三キロ、四キロというものがあるわけでございます。五キロ、十キロというようなものもこれから出てまいります。そういう意味で、技術的にもこの事件の解明を十分やりまして、人命保護のためには万全の体制をとるということでなければならないと思います。  もう一つ、念のために申し上げておきますが、これは隧道がある限り、高速でなくとも問題があるんです。普通の、電化でなく普通の蒸気機関車、いままで明治からずっと走っておる蒸気機関車においても、トンネルの中において事故が起こったら、これと同じことになるわけでございまして、そういう意味で、この問題は技術的に徹底的に解明をされ、原因探求を行ない、人命尊重のためには万全な体制をとりたい、こう思います。
  13. 西村関一

    西村関一君 関連。
  14. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 関連ですね。西村関一君。
  15. 西村関一

    西村関一君 いま中曽根、佐々木大臣、また田中総理から御報告になり、御答弁があったわけですが、私は、これらの一連の事件を通じまして、田中内閣に対する頂門の一針ではないかと思うんです。ということは、事故は思いがけないときに突然やってくると、これは過去においてもあったんです。炭鉱爆発事件もあったし、ハイジャックも「よど号」の事件があったし、いろんな問題がありました。また、列車火災事件のごときも、昨日また起こっておる。幸いにして人命には支障がなかったわけでありますけれども。しかし、そういうことを考えますというと、私は単なる技術上の問題だけでなしに、やはり精神のゆるみ、そういうものがこういう事故を引き起こす根本の原因になっていると思うんであります。私は田中総理以下各大臣が一生懸命やっておられるということを信じたいのでありますが、また、そうだと思いますが、しかし、このことを通しまして、さらにゆるみを引き締めて、これを頂門の一針として、災いを転じて幸いにすると、そういう重大な決意が私は必要じゃないかと思うんであります。  こまかいことは申し上げません。その一点について、総理から明確に御決意のほどをお伺いしておきたいと思います。
  16. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘の問題は非常に重要な御指摘でございます。そのとおりだと思います。特に機械化が行なわれ、コンピュータ化が行なわれてまいりますと、機械がすべてのものを解決してくれるんだというような安心感、そういうものが配慮を欠くということで大きな事故を起こす原因になると思います。私も政治をあずかる身といたしまして、ほんとうにこの短い間に三つの大きな問題にぶつかりました。天の啓示だと思います。この事実に対処して、政治に対しては責任を明らかにしていかなければならない、ほんとうに緊張をして責めを果たさなければならないと、こう考えまして、政府末端まで御指摘のような状態を確保するために努力を続けてまいりたいと存じます。
  17. 小柳勇

    ○小柳勇君 関連。
  18. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 関連ですか、簡単に願います。
  19. 小柳勇

    ○小柳勇君 運輸大臣の発言の中に重要な問題を三つ含んでおるんでありますが、一つ特別監査ということば、もう一つは総点検ということば、もう一つは新聞で発表されました、国鉄に対する勧告書を出しておられます。この三つの問題を含んで一いま委員長からも注意がありましたから簡単に質問いたしますが、事件発生以来特別監査ということばが出ました。さっそく特別監査をやって、一切今後はこういう事件がないようにするという決意の表明をされました。口では特別監査と言われますが、一体どういうことをやろうとされるのか、そのようなシステムがあるのかどうかでrね。特別監査をやるということで、国民がもうこれで一切この種の事故はないものだというような錯覚を起こします。一体どういうことを考えて、特別監査、具体的にどういうことをされようとするのか、これが第一点。  第二点は、総点検と言われました。いまの関連質問でも、なるべく早くとおっしゃいます。いま合理化が進みまして日常の作業をするのでも精一ぱいです。総点検をして一体どういうことを摘出されようとするのか、また、具体的にどういう対策をされようとするのか。具体的に、さっき、杉原君の話でも、ガスマスクの話がありました。それ一つとりましてもたいへんな問題です。予算の問題にもあります。時期的な問題にもあります。あるいは技術的な問題にもあります。総点検ということばで一切の責任をのがれようとされる。あるいは、それでもう一切この種の事故がなくなるような錯覚を国民にばらまく、そういう危険を感じます。したがって、総点検というのは一体どういうことを意味するか、内容を御説明願いたい。  第三は、今回、いままでになく国鉄に勧告書を出された。しかも、その背景にある運輸大臣の腹の中には、総裁以下職員がたるんでおるから——たるんでおるからということが新聞に書いてある。私はその場に立ち会っておりませんから、そう言われたかどうかわかりません。勧告書を出して、一切この種の事故はもう発生させませんと言われるからには、そのような気持ちがあるかもしれぬ。あの直後、日田彦山線でガソリンカーが燃焼を起こした。その原因はエンジンの過熱のようです。どっかに、パイプにごみが詰まってエンジンが過熱したようです。それは不可抗力——職員にとっては点検の問題もありますけれども、不可抗力の面もありましょう。あの北陸トンネル事故でも、われわれがいま聞いた範囲では、現場の第一線の職員は最善の処置をやっています。しかも、その処置の途中で指導機関士は殉職しています。あの停電がなかったならば、犠牲者はもっと少なくて済んだと思う。停電は不可抗力です。そのようなものを総裁以下−もちろん総裁には責任があります。施設その他合理化の問題−行き過ぎた合理化もありましょう。それはあとでまた論及いたしますけれども、職員がたるんでおるから勧告書を出したというのならば、その勧告書の始末をどうされるのか。いままでにない勧告書でありますから、その勧告書の始末をどうしようとされるのか。いま総理大臣責任を明らかにするとおっしゃいました。したがって、勧告書の目ざすところは、一体どこに責任をとらせようとされるのか、運輸大臣の御意見を聞いておきたいと思います。
  20. 佐々木秀世

    国務大臣佐々木秀世君) 特別監査は過去三回ほど出しております。監査委員方々はそれぞれの学識経験者であり、国鉄に対しては特別な知識を持たれる方々でございますから、この方々によって大所高所から今後かような事故の起きないような対策を講じていただきたいという考えでごございます。  また、総点検ということにつきましては、先ほどから御質問の中にありますような排煙の問題とか、消火設備の問題とか、具体的な問題に対しまして、技術的な問題について早急に原因を究明しながら、この処置を講じなくてならぬという考えを持っております。  また、警告を発しましたことにつきましては、私を含めまして、国鉄の事業に携わる一同が、ほんとうにこれからはこんなことを断じて起こさないんだと、精神的な部面もお互いにここで決意をする必要がある、こういう考えを持っております。
  21. 小林武

    小林武君 答弁は要りませんけれども、通産大臣に一言だけ。委員会等でひとつお取り上げ願いたいと思うんです。それは、いろいろ炭鉱事故に対して、何べんも今後起こさないように努力するということは言われた。しかし、なかなか事故あとは絶えない。そのことは、原因はいろいろたくさんあるでしょうけれども、私はやはりそのとらえ方の中に、いまの石炭産業というものをどう見るかということによっていかなければ解決しない問題だと思うんです。大手なら大手の三菱かなんかも今度全部炭鉱を放すというような話がある。そうすると、そこに小さい会社ができるわけです。そして将来性というと非常にないわけです。いつ炭鉱は全部なくなるかというようなのが、炭鉱労働者のいつも心にかかっていることなんです。そういう状態の中で一体どうするかというようなことをお考え願いたい。この点の答弁は要りません。  総理にお尋ねをするわけでございますが、政治的な基本姿勢というようなことを言いますと、たいへん大げさなようでございますけれども、私は総理の演説というようなものをずっと見せていただいたり、あるいはいろいろな談話などを拝見いたしまして、新しい時代の新しい政治というものを非常に強調なさっておるようです。そして、そのことが少なくとも施政方針演説の中にも随所にそういうことがことばとしてあらわれ、気持ちとしてあらわれているように考えるわけです。私は、大臣の戦後における議会生活というものをずっと、この間、どういうあれか、調べたんですけれども、これはもう岸内閣から佐藤内閣に至るまで、その間の池田さんの内閣等において、非常に重要な党の役員並びに閣僚としてやってこられた方である。そういういわば経歴を経て総理になられた田中総理が、新しい時代の新しい政治ということを言われるからには、これはよほどのお考えがあるのではないか、そういう気持ちを持ったわけであります。そういう意味で、それについての総理大臣の御見解を承りたい。
  22. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 新しいということは、日々これ新しくなっておるわけでございますが、戦後一つの区切りを迎えておると思います。明治百年、戦後四半世紀、一つの節目を迎えておると、こう考えられるわけであります。そうすると、明治百年を終わると二百年展望に立った新しいスタート、こういうふうに表現をしておるし、われわれの心がまえもそうでなければならない。政治を行なう場合、明治の先賢がわれわれのためによかれかしと考えて政治を行なったように、われわれもやはり明治百年を迎えたときには二百年展望、それができなくても百五十年展望というような新しい視野と、立場と、角度からものを考えなければならないという考え方を述べたわけでございます。  現実的には世界も、外交的な面から考えても二国の外の問題としても変わっておると思います。いままでは東西の問題ということでございましたが、平和維持のためには南北問題が一番重要であるということでございます。そうすると、われわれ日本も南北問題の中で重要な地位を占めておりますので、日本の持てるもの、日本もこれから南北問題の中心的な役割りをなして世界の平和維持に協力をし、また国際的なレベルアップをはからなければならない。そのためには応分の寄与をしなければならないという新しい国際的な日本に対する要請、また日本から見れば責務が生まれてくるわけでございます。ですから、これも一つの国際的な流れとしては新しい流れだと思います。  国内的でもそうであります。新しい問題が起こっております。それはいままで成長第一主義であった、生産第一主義であったというようなものから、国民福祉、生活を重点的なものにしなければならない。物を中心に考えてきたわれわれも、ここで心の豊かさをほんとうに取り戻すためにどうしなければならないかという一つの転機を迎えておる。そういう意味で国内的にも、私は、流れを変えなければならないというような新しい問題がございます。そういう意味で事態に対処して常に新しくという考えをすなおに述べたわけでございます。
  23. 小林武

    小林武君 たいへん抽象的なお話でございますから、歴史の研究家の所見を聞いているような感じがするわけですけれども、そういう政治の現実に立って、佐藤さんからあなたが受け継いだ、佐藤さんの持ち込んだ政策、佐藤さんの政策に対するさまざまな野党の批判、あるいはそれに対する国際的ないろいろな反響、そういうものに対して具体的に自分が総理になったら、なったのだからこう変えるのだというような——流れを変えるというのは、少なくとも自民党の一つの政策なら政策をどう変えるというようなそういう具体的な感じはあまりお持ちになっておらない。そういうことなのか。それから、大きな展望に立った、いわゆる歴史的展望に立った歴史学者のような考えなのか、そこらをちょっとお話し願いたい。
  24. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、自由民主党の所属議員でございますし、また歴代内閣で閣僚の地位も占めてまいりましたし、今日までの政策的効果のプラス、マイナス両面においてその一半の責任を負わなければならない立場にございます。私も自由民主党の政策綱領の上に立って新しい政策を進めておるわけでありますから、継続しておる自由民主党の内閣と本質的には同じでございます。これはもう自民党の政策綱領が変わらない限り、これは私の政策がうんと変わるということはないわけでございます。ですから、気負い立って、人が変わったから全部流れを変えるのだというような気ではないのです。それは民主政治、議会政治、政党政治というものの範疇から脱する話になりますから、そういうことはないのですが、ただ、新しい地位を得て、新しい責任を負荷されたときには、やはり決意を示さなければならない。そういう意味で、私も内閣の首班であるとともに自由民主党の総裁でもございますので、政党と内閣を一体にしながら、事態に対処する新しい政策、新しい考え方で、新しい気持ち——こういう考え方でございます。これはもう今度お互いが一あなたも参議院議員をずっと続けておられますが、もう一ぺん新しく当選されると、今度の当選を機に新しい気持ちでやろうと、こういうことは当然考えるのでございまして、私もそういう意味で、また先ほど申し上げた国の外でも内でも流れを変えなければならないような問題も現実的にございます。そういうものをすなおにとらえて、これに対応し、対処しようと、こういう基本的な姿勢を述べたのでございます。
  25. 小林武

    小林武君 もう少し何かあるのかと思ったら、ないですね。しかし、政策そのものは一つの歴史的な意味を持つわけです。自民党の政策、自民党の綱領というものは一つの歴史的な意味を持つわけですから、それに対する論争をここでやるつもりもございません。  その新しい政治の中身はわかりましたが、あと二つのことだけちょっと簡単に御説明願いたいのですが、七〇年代の政治というのは、いわば私は新しい時代の新しい政治というふうに総理はおとりになっているんじゃないかと、こう思っておるのです。その七〇年代の政治が何を求めていると言ったら、強力なリーダーシップだと。リーダーシップなんというのは、これは日常語でございますから、いろんなとり方があると思いますが、総理として、七〇年代の求めている強力なリーダーシップというのは何なのか。  それから、いま選挙の前でございますから、いろいろビラもたくさん張っているが、その中にも決断の政治ということが盛んに言われている。総理のその政治的決断とか、決断の政治とかという・のは、何か特別の意味があったらひとつお聞かせをいただきたい。
  26. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 民主政治の中でリーダーシップというものがほんとうに求められるのかというと、なかなかめんどうな問題でございます。しかし、民主政治の美名に隠れて何もしない。話はし、盛り上がりを待っており、そして国民的な、また党全体でもそうですし、内閣の機構で十分研究しております、結論を待っておりますと、こういうことでは民主政治の名に隠れた責任回避でもあろうと思います。いま私が申し上げましたように、いままでの考えとは全然別な現象が起こってき、これに対する処方せんを書き、これを実行しなければならないときであります。  外交的には、いままでは貿易を大いに伸ばそうと言っておったのを、今度は両三年以内にGNPの一%以内に経常収支幅を押えようと。こういうことでございますし、しかも国民総生産の一%は開発途上国に援助として回そう。こういうことでございまして、その中で、やはり単年度主義でもって予算がつくられておりますの、そのときそのときの情勢でもって考え、実行いたしますということではだめなんで、やはり七〇年代末までにはGNPに対して〇・七%。それは国内において自衛隊をつくると同じような膨大な金額でございますが、これを開発途上国に援助として出しますと、こういう決定をせざるを得ないわけです。だから、それを議論ばかりしておって、いつまでもということでは困るので、お互いセクション、セクションで、やはりリーダーシップというか、リーダーシップということばよりも責任を十分果たすということでいかなければならないだろうと、こういうことでありまして、やはりいまの国鉄の問題でも、国鉄のあの事故が起きたらだれが責任を負うのか。まあこれは研究いたして十分やりますというときに、国鉄の総裁が負うのか、それから運輸大臣が負うのか、総理大の私がやはり職を辞さなければならぬのかということは、真剣な問題として考えなければならないことなんです。そういう意味でリーダーシップを必要とする。まあリーダーシップというよりも、やはり責任を果たすためにはということで、ひとつ責任を明らかにするということの裏表で御理解をいただければけっこうだと思います。決断と実行もそのようにお考えいただきたい。これももう毎度いっでも、必ずここで五分後か十分後に出ると思いますが、検討中でございますと、これは審議会に答申を求めておりますから答申を待ちますと、これじゃもうずっといきますから、私は少なくとも、これらの問題に対しては判断をいたしますというようなことを、どうしても政治としてはタイムリーにものを片づける、少なくとも私がやっておる限りにおいて、その時代にはこういたしますというようなことを言わなければいかぬのじゃないかという考え方、政治に対する不満というようなものにこたえるには決断と実行が必要であると、こう述べたわけでございます。
  27. 小林武

    小林武君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、商社、金融機関等について立ち入り検査をやったという日本経済新聞の記事がございますが、これについて具体的にどういうことがあって、どういう目的でどのくらいのところを立ち入り検査やったのかというようなことについて御説明をいただきたいと思います。
  28. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) お答え申し上げます。  商社、金融機関等についての調べをしたそうだが、これについての状況を答えろというお話でございます。いま私承りますと、特に最近特別な目的で調べたのではなく、定例的に調べたものが最近あるそうでございます。それについての内容等については、私まだ承知しておりませんので、政府委員をして答弁させていただきます。
  29. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 先ほど御引用になりました新聞記事は、ただいま大臣が御説明申しましたように、定例的にやっておりますものが誤り伝えられてそのような記事になったのかと思います。  その検査につきましては、私ども外国為替管理法をあずかっております立場から、これに対する違反の事実がないかどうか、これをチェックいたしておる次第でございます。
  30. 小林武

    小林武君 定例的に何を調査しているか、そのことを話してください。
  31. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 外国為替の取引につきましては、いろいろな種類のもの、いろいろな形態のものが行なわれております。これにつきまして必要に応じて私どもいわゆる外国為替の規制をいたしておるわけでございます。これらの大蔵省の通達ないし法令に対する違反事実がないかどうか、この検査をいたしておるのでございます。
  32. 小林武

    小林武君 外国為替の問題については、いまのような状況の中ではかなりいろいろ普通のときとは違ったものがあるように思うが、その立ち入り検査の結果について何か特徴的なものがあったら述べてもらいたい。
  33. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 検査の性質上、その内容を具体的にこまかく御説明するのはいかがかと思いますが、私どもいままで調べました限りでは、為替管理法に対する違反の事実はないと、このように了解いたしております。
  34. 小林武

    小林武君 何かはっきり説明しないことがあたりまえのような話なんだけどね、そんなことでいかぬですよ。おまえらに聞かせることないというような、その話はいかぬのだ。そういう態度はいかぬ。どういう検査——言われないことがあるなら、言われないと言ってよろしい。また秘密漏らしたなんて、君、やられても困るからな。しかしながら、いまは、一体、大蔵省は主管の省として非常に重大な問題をかかえて、しかもドル売りがかなり問題になっている時期でしょう。そこに定例検査にぶつかったとする。どういうことに注意を払って、あんたたちが立ち入り調査をやったかどうか。結果的には、こういうことで何も不安な状態はないとか、問題点はないとかというようなことは、この国会の中でやる場合には、はっきり言ってもらわなければ困るんです。いいですか。どうせわからぬだろうと思って、いいかげんなことを言っちゃいかぬよ。
  35. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 先ほど、ことばが足りませんで若干誤解を招いたかとも存じますが、定例の検査でございますから、全体の銀行を一時に一斉に検査しておるわけではございません。ごく少数のものを順繰りにやっておるのでございます。  検査の内容につきましては、たとえて申しますと、最近の貿易収支のアンバランスを助長するような可能性のある取引といたしましては、たとえば前受け金というものを非常にたくさん受け取ることがないかどうか、こういったのがございます。これは御案内と存じますが、過日、一万ドルをこえるものは前受け金を受け取ってはいけないというものを低くいたしまして、五千ドル以上のものは取ってはいけないと、そういう規制をいたしております。これらの規制が守られておるかどうか、これは一つの例でございますが、そういったことを調べておるのでございます。
  36. 小林武

    小林武君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、私は、この記事は、まあほかの全部の新聞に出たわけではないわけですから、いまのような答弁もあり得ると思います。あり得ると思いますけれども、相当関心を持っていい。政治をやっている者は、自分がそれに対して非常に知識を持っているとか持っていないとかということは別にして、関心を持っていい問題だと思うんです。そういうふうに考えているんですが、その点について、十分ひとつ今後も厳重な態度で見守ってもらいたいというような気がするわけであります。  次いで、質問に入りますけれども、大臣は、今度のこの補正予算について、どうでしょうか、大型でないと思っていらっしゃるような発言があるわけですけども、大型ではございませんか、どうですか。
  37. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 今回の補正予算、私といたしましては、なるべくあまり大きくならぬようにということを最初は考えておりました。それは、私が九月の下旬に近く、アメリカへ例のIMFの総合等のために参りまして、そして現場でいろいろ関係の国の方の意見も聞いたり、お話し合いも若干いたしました。それらによって感じたところから、われわれが当面しておるところの日本の通貨問題、これについては特に慎重に、しかも十分気を張って善処しなければならない、対処しなければならないということを痛感したのであります。  そこで、帰ってまいりましてから、その後の貿易収支の問題、さらにそれから及んで、結論として出まする外貨の準備高の問題の進行模様等々を見ておりますと、われわれとしてでき得る限りのことをやらなきゃならない、少しでもこの状況改善に役立つものは全力をあげてやらなきゃならぬと、こういうふうにだんだんと気を、意思を強くしてまいったのであります。したがって、最初考えておりましたような、でき得るならば、補正予算は組まにゃならぬにしましても、たとえば公務員の給与のベースアップに伴う義務費的な大事な人件費の増加でありますとか、ことしの災害は相当大きゅうございましたから、これに対処すべき経費の問題でありますとか、あるいは米の買い入れ価格の決定に伴いましての所要額の追加の必要でありますとか、最小限度のものでいきたいと私は考えておりましたが、どうも、この問題は、この通貨問題の改善に、調整に資するためには、小さいことであっても、でき得る限り、これを間接であっても、役に立つものは利用してまいりたいと、こういうふうに考えまして、そうして今回の予算をそれぞれ関係の省とよく相談をいたしまして、そうしてこの外貨の蓄積高に対しての善処方法を相談いたした結果が、十月二十日の例の通貨に関するあの決定になりまして、それを計上いたしてまいりましたところ、ごらんくださいましたような金額になりました。  それじゃ、非常に小さいと思っているのか、大きいと思っているのかとおっしゃいますと、私としては、最初の出がそんな感じで、できるならば、へたにこの際、景気に悪い刺激を与えてもいかぬと思いましたから、あまり大きくないことを私は希望しておりましたが、私の最初の考えからいきますと、相当額に達したものと、いまとしては感じております。しかし、これは私として必要最小限度のものであろうというふうに理解をしておるのでございます。
  38. 小林武

    小林武君 大臣のこれに関する演説におきましても、今度の予算は通貨対策、円対策であるという、そういうことが大きな目標の一つになっておるわけであります。円対策といえば、結局、あれですか、円の切り上げを避けるという、そういうことになりますか。それとも、もっと広い意味の円対策というようなことをお考えなんですか。
  39. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 当面の問題といたしましては、通貨問題、対外的に考えられるこの通貨問題になりますが、広い意味でいきますと、やはり物価に対する影響の問題でありますとか、あるいはその他景気の刺激にどういう影響を及ぼすだろうとか、というような問題等も広く考えながら善処しなければならないものだと思っております。
  40. 小林武

    小林武君 総理大臣にお尋ねいたしますが、総理大臣はこの円の切り上げは絶対やらぬというようなお考えだと、こう聞いているわけですが、円対策というのはそういうことが主たる目的でありますか。
  41. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一つには、貿易構造の問題がございます。これはいま主要工業国の中で国際収支の大幅な黒字を続けておるのは日本だけである、こういうことでございますと、国際的に日本の地位を容認されないということになりますから、これはやっぱり国際経済の中で日本が長くおつき合いができるような体制をとらなければならないことは言うを待ちません。そういうことからいうと、貿易収支が大幅な黒字を続けておりますが、これをとにかくバランスをとるようにしなければならないということで、国際収支の問題の最終的な詰めとしては、両一二年以内にGNPの一%以内に経常収支の黒字幅を押えよう、これは日米会談でもみなそう述べておるわけでございます。  でございますが、去年の通貨調整という、多国間調整としては例のないことが成功したわけでございますが、その後、アメリカの経済は比較的によくなりましたけれども、どうも日本の国際収支は、大まかな数字で言うと、輸出が減り、輸入が伸びております。ですから、通貨調整のメリットというものが、通貨調整というものが、ほんとうに実際にあらわれるのには一年半も二年も三年もかかるんだという面から見れば、それよりもうしようがないんだということにもなると思いますが、それでは日米間が解決もしないし、日本とヨーロッパの間も解決しないということでございます。  そういう意味で、日米間の貿易収支、また、対世界全体の日本の貿易収支をもっと黒字幅を縮めたい、縮めなければ円の切り上げに追い込まれるかもしらぬ、こういうんですが、日本は円の再切り上げに応じられるような体制にない。日本は中小企業、零細企業という特殊な状態もございますし、中小企業、零細企業だけでなくとも、とてもいまの日本の経済が再切り上げに耐えられるような状態にないので、やはり円が切り上げられないように、切り上げられないためには貿易収支の黒字幅が縮まるように、そのためには各般の施策をやらなければならない、こういうことであります。
  42. 小林武

    小林武君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、大体、お二人の答弁でわかったわけですけれども、これ、いろいろなものを見ますと、政府としての態度は、もうこれは円切り上げはやりたくないというお考えのようですけれども、情勢はなかなか、そんなことは許されないというようなことが、日本以外の国の……。アメリカをはじめとして、その情勢は非常にきつい。で、国内においても、金融機関あるいは企業それぞれが切り上げを大体予想して、そうして次の対策を立てているというような、そういう記事が相当に多いわけです。そういたしますと、内外ともに呼応した状況の中において、どうなんですか、絶対だいじょうぶだなんというようなことを言える状況なのかどうか。  田中総理も、結局、最後には、切り上げの決断をするのは選挙が終わってからでないかというような、うがったことを言うのもあるわけなんです。そういうんならば、これは私はまずいと思うんです。切り上げない、切り上げないと言っておいて、ある時期まできたら、わっとやる、思い切ってやる、決断の政治がやられる。そういうやり方というのは政治不信を買うわけですがね。田中総理にそういうことをやってもらいたくないという気持ちもあります。  そう考えますと、これ、大体、はんとうにやらぬのか、やるのかということは、ここの中でははっきりしてもらいたい。どんなことがあったって、やらないということなのかどうかですね。
  43. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いまの状態で、中小企業や零細企業は円の再切り上げには耐えられない。中小企業や零細企業だけでなく、産業界の混乱が起こります。混乱が起こるということを前提にして、円の再切り上げを避けるというのが政治の大前提であることは当然であります。  避けるためには、ただでは避けられない。だから、そのためにはどうするのかということで、あなたがいま御指摘になったように、大幅じゃないかと言うけれども、この大幅なものでもってなお内需が喚起され、輸出が内需に回り、貿易収支が抑制されるような状態でなければ、四十八年度の予算はもっと大きな予算を組まなければならない、財政主導型の予算を組まなければならないということになるんです。  しかし、そういうことをやらないと、もう一つには、では国際収支をどうするかというと、いま積み重ねておる外貨をどこかへ寄付をしてしまえばいいじゃないかというような荒っぽい議論さえも行なわれております。しかし、寄付をする、低開発国のために全部やってしまうということも、それはある意味で必要かもしれません。相当な援助も必要かもしれませんが、日本の国内においてもまだ社会資本が不足である、生活環境を整備しなければならない、そうして厚生省関係の難病対策の病院もつくらなければならぬという問題があるんですから、そういうことで、内需を喚起するということでやっていくことが国際収支対策−外に金を出すのと、それから内部でもって金を使うのが同じ政策効果をあげるとしたならば、切り上げ排除のためにあらゆる努力をしなければならない。こういうので今度の予算をお願いしておるわけです。そういうわけですから、これからまだまだ再切り上げを排除するためになさなければならない政策は、皆さまにも御相談申し上げ、知恵もおかりして、どんどんとやってまいらなければいかぬ、こういうことであります。
  44. 小林武

    小林武君 いまの、この時点ということは、政治家がこの時点というのは、この時点だと思うんですね。しかし、どうですか、これは。予想は、大体年が明けてからであるとか、選挙が終わってから新たな内閣のころになったらやるとか、いろいろな情報が出ている。しかし、そのことがあると、ぼくは先ほど来言っているとおり、これはやっぱり、やらない、やらないと言っても、結局、やられるような状況になる。  それから、これは総理大臣決意によってきまるものかどうか知らぬけれども、日本ががんばっても、一体、国際社会の中においてそのことが通用するかどうかということですね。日本の国の問題だから、日本だけこれはがんばりますというようなことをやれるのかどうかということ、このことは、やはりはっきりしておかにゃいかぬ。そういう情勢が出ても断固としてがんばるということなのかどうか、それはどうですか。
  45. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはもう、外国からの圧力で日本がどうにもならなくなる、日本に対する、一切の商品に対する不買同盟が行なわれるというようなことになれば、これはもう避けがたいものになります。そうならないようにしなければいかぬということで、貿管令の発動をいま考えておるわけです。輸出をしない、輸出を制限します、こういうことをやっているわけです。輸出を制限しますではなく、輸入のためには、輸出よりもはるかに安い金利でもって今度やりますから、外貨も直接貸せますから、それで一切の為替リスクはその機関が負います。もっとはっきり言ったら、政府が負います。だから外貨を直接使ってくださいと、こういう犠牲まで払って貿易収支をもう少しいまよりもいい状態にしたいと、こういうことを考えておるわけでございまして、これは、この間、アメリカで、日本が日米の貿易のバランスをとらない限り、もう一切日本商品の輸入はストップだ、こんなことはあるわけはありません、あるわけはありませんが、そんな事態になれば、それはもう、いまの円の切り上げなどという問題だけでは済まなくなるわけでございますので、そういう意味で、日米間のまず貿易バランスをとろう。  だから、日本人が切り上げるんだ、切り上げるんだと言っていることは、どうも国益を守るゆえんではないわけですから、そういう意味で、日本人が切り上げをしないんだと、しないためには——しては困るんだと、困らないためにはどういうことをやるのか、そうしてほんとうにうんと大きな予算を組んでうまくいくというならやってごらんなさいと、それでだめだったらやめなさいと、このぐらいなことでないと、どうも日本の円の問題を論議するというのはよほどマイナス面が多いような気がいたします。しかし、これはいかなる場合でも再切り上げが行なわれないように万全の一まあ最善の努力をいたします。
  46. 小林武

    小林武君 いまの御答弁によりますというと、外圧にやっぱり対抗し切れないような場合には、これは決意決意としてあっても、これはやむを得ないというような意味が含まれておったと私は聞きました、これについては。そういうことになりますと、今度はこの補正予算にどれだけのきき目があるのかということが問題になる。きき目のないものならがんばることはないわけですよ、これにかけているわけですから。大蔵大臣、そうですか。あなたとにかくIMFに出られて、そのIMFの空気のことを何か参議院の予算委員会でお述べになった、その速記録を読んだんですが、それを見ると、春風駘蕩、まことになごやかで、私の耳には何にもそんな空気はありませんと、こういう御答弁であったけれども、大蔵省か通産省か知りませんけれども、その説明員のあれだというと、なかなかやっぱり大臣とは違ったきびしさを感じているような、大臣のあれを否定するような——同じところでやっているんですから、答弁ではありませんでしたけれども、なかなかきびしいものがあるような受け取り方ができるようなあれだったですね。  そこであなたにお尋ねしたいんですが、IMFその他における国際間の空気というようなものはどうですか。どんな空気と思われますか。はたしてほんとうにがんばっていけるのかどうか。これはわれわれがここで議論をするのは、どういう情勢の中でどう対処すること炉一番いいのかということを見つけるあれですからね、厳格にものを判断しなきゃいかぬと思うんですよ。そういう意味で申し上げているんです。
  47. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 小林君、ただいま小林君の発言の中に、参議院予算委員会とありますが、これは大蔵委員会の間違いでしょう。参議院の大蔵委員会。
  48. 小林武

    小林武君 大蔵委員会。間違いました。
  49. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) お答え申し上げます。  あのときの私のこちらの参議院の大蔵委員会でお答えしたときには、私の受け取った感じをそのまま申し上げておりました。それは会議の進行模様、それからその会議におけるアメリカをはじめ有力なる国々の代表の発言の内容等々、これは私、実は率直に申しますが、きわめて横文字は不敏でございますから、みな係から翻訳をしていただいたりして得た知識でございますが、どうしてもこの際通貨改正を国際間においてやらなきゃならぬ、やろうという意気込みが去年のあの年末においてのスミソニアンにおける会議のときよりは非常に各国ともその話し合いがスムーズになってまいりました。そうして、やろうと、あくまでもやろうということについての空気がすっかり盛り上がっておるということでございます。それはなるほど演説を聞いていましても、それから二、三の国々、あるいは十ヵ国の代表、二十ヵ国の代表等々も会議を持ちましたが、そういう場合における姿は、いずれの国もこの通貨体制のぜひとも必要なことをみな言っているんであります。最初の、去年のときにはまだ幾らかそれぞれの国の間で主張がだいぶ違っている点があらわれておったそうであります。また書類の上でもそんな点がございます。ところが今度はそれがなかった。そこで私は、これならばそうそんな、にわかにということはないじゃないかという印象も持ちました。しかしながら、帰国してみますと、中身のことは別として、新聞その他の報道の中にもいろいろな変わった御意見が出ております。あるいは情報が出ております。私にはむしろちょっと感じがキツネにつままれたみたいな感じもいたしました。しかしそれは大事な問題ですから、また将来に対していろいろな心配を先憂後楽でやっていてくださる、またそれを、警告をわれわれ当局に与えてくださるという意味にとれば、それはなるほど小さいことでも気をつけにやなりませんから、そういう問題もだんだんとしみじみ自分にも感ずるようになりました。しかもその後また外国からの通信の中にも、やはり問題は容易じゃないのだと言わんばかりのことがやはり報道もされる。そうすると私としては、十二分にこれはこういうような状況だと、はたして私がほんとうの真相をつかめておるのかどうか、これはよほど気をつけにゃいかぬと思いまして、ますますこの問題を深く考えるようになりました。そしていろいろと係からも説明を聞き、研究もしてもらい、調査もしていただいて、そうしてだんだんと結論を得て、今日これはあくまでもこの問題は、再切り上げは回避しなければならない、そのためには、役立つことならばできるだけのことをやってみにゃいかぬという決意をだんだん持つようになって、そしていまの調子ならばやれるだろうというところに自分としてはいま信念を持っておるのであります。
  50. 小林武

    小林武君 信念、わかりました。  ただ、どうでしょうか、国内にも専門家、研究家といわれる人たちの中にも、それについては政府とは違った考え方の人が相当あるし、このごろはそういうことについて自分の説を盛んにいろいろなもので述べている。そういう状況でございますし、またアメリカの場合どういうことになりますか、ニクソンが今度は新しい任期につく一月ですか、一月以降に向かっていった場合に、日本のこの問題についてどういう対策をとるのかというような、まあ外部の状況も私はあると思います。そこでどうなんですか、この予算を見て、日本は非常な誠意を持って対処しているというふうに大蔵大臣としてはお考えになりますか。
  51. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 私といたしましては、全力をあげて出た結論でございます。私の微力のために不十分な点もないことはありませんけれども、しかし、一緒に相談の上で、政府でもって、閣議でもってきめた問題でございます。またその前に関係閣僚の懇談会もございました。そうしたところでやった仕事でございますから、私はこれでもってこの際は満足していく、しかしながらその中にはなお将来慎重に検討しようじゃないかという事項もございます。これもやはりあわせ考えまして、この際はこれでぜひお願いをして、そしてさらにそれ以上のことも研究しながらあらゆる努力をしてまいろう、こういう決心のもとに確信を持っているのであります。
  52. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。  外貨減らしのためにあらゆる手段をとらなければならない、これは言うまでもないと思います。だから円の再切り上げをやるようなことを避けるという努力は、あらゆる手段を払わなければならない、これも当然であると思います。そこで、いま政府が考えておるような外貨減らし政策で、その円の再切り上げを避けることが一体できるのかできないのか、その見通しに確信があるのかどうか。それを具体的に言っていただくことと、もう一つは、いま総理大臣はあくまでそれを避けると言われましたが、もし避けることができなかった場合に、円の再切り上げが現実に起こるような事態が起こった場合には、それは総理がよく言われる政治的責任の中に入るのか入らないのか、これはぜひお聞きをしておきたいと思います。これは従来のいろんないきさつ、また最初の三百六十円が三百八円に切り上げられるときの総理のいろんな場合における発言と関連して、非常に私たちに参考になる問題を含んでおりますので、いまの施策が円の再切り上げを避けられる確信を持って何項目かの問題を提起しておるのかどうか。それがだめだった場合には、そのことは政治的責任に入るのか入らないのか。この点だけをお伺いしておきたい。
  53. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今度もお願いをしておりますように、自由化の促進、それから関税の引き下げ、それから外貨の活用、それから輸入の促進のために輸銀法の改正等いろんなことをやっております。こういうことを実行するとともに、内需を振興し、輸出が内需に振り向けられるということを目途とした公共投資等を中心にした大型補正予算の審議をお願いしておりますから、これで円の再切り上げというものを避けてまいりたいという決意であるということはもうそのとおりでございます。そうして、まあこれだけでもってということではなく、引き続いて四十八年度総予算の問題もございますし、通常国会で御審議をいただくもろもろの——今度この通常国会ではあらゆる施策をまとめて御審議をお願いしなけりゃならぬと思います。そういうことによって、少なくとも円の切り上げは避けるという決意でございます。しかしそう言っても避けられなかった場合どうするか。それは相当な政治責任が生ずる、こう思います。相当なものである、こう思います。
  54. 小林武

    小林武君 ぼくの質問は、大蔵大臣ね、いまあなたのやった案のよしあしというようなことを言いだしたわけではない、いまの段階では。ただ、あなたがIMF等に行かれて、そういう空気の中から、この予算の程度のことの努力をしたということになれば、相手方は納得して日本に理解を持つような状況なのか。これは今度、現実のこの予算、出ているわけですから、日本も非常に努力しているなと、それに四十八年度予算もやったら、内容もこれは全然わからぬわけじゃないんでしょうから、そういうことからいって、これは日本の円対策について理解を示す、いわゆる円の切り上げを絶対やりませんというような皆さんの意気込みに同調してくれるのかどうか。そういうことをとにかくいま聞いているわけですから。
  55. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) その御質問は私は御無理だと思います。と申しますのは、相手がどう思うかという問題について、私はこう思ってやっておるんですと……。相手がどう思うだろうという問題になりますと、これは私は希望的観測から・かもしれませんけれども、私としては……。
  56. 小林武

    小林武君 希望的観測じゃわからぬよ。
  57. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) だけれども、そう私は率直に思いますことを申し上げているんです。  そこで私は考えてみまするに、この問題は、いままでの外国にありました通貨の切り上げ等の問題における状況、その結果がどういうふうにして貿易の上にあらわれてくるだろうか、外貨の蓄積にどういうふうにあらわれてくるだろうかという、過去に幾つかの例が−そうたくさんはないそうでございます。これは私も事務的に教わったんでございますが、その場合におけるそれぞれの手当てが実際に効果を発揮するのには、少なくとも二年や三年近くはかかるのが普通だそうでございます。そこで、日本では、昨年の暮れのあのいわゆるスミソニアンにおける会議の結果でございますが、これがほんとうに効果をあらわすのには——だんだん効果が現に出かかってきていることが数字の上にも出ておるのであります。そして、それにいわんやことしの五月の、春の第二次の対策、そして今回の十月の第三次の対策、さらにただいま総理も仰せになりましたように、次の予算の際にはやはりこれも十分心してかからなければなりません。そういう場合に、それまでに起こる状況をしさいに、やはり関係者みんなで研究をしながらできるだけの手当てをやっていけば、まずやれるんだろうというのが私の見込みでございますから、だからやれるんだろう、やらなければならぬという決心で臨んでいるのであります。それで、それを相手がどうするだろうと言われましても、どう思うかと言われましても、ちょっとこれは私には、相手の判断をおまえ想像して言ってみろとおっしゃっても私にはできかねるんです。
  58. 小林武

    小林武君 それはちょっとおかしいんですわ。大体外交においても、そういう経済上の問題についても、いろんな国際的な会議をやる。それらの会議を通し、外交を通して理解を深めることですわ。理解を深める中で日本の努力というものが認められて、これはまあ静かに見守っておりても大体いくというような確信を相手に持たせる、理解を持たせるということ、このことが必要じゃないですか。私はもうきわめてあたりまえだと思う。相手が何を考えるかわからぬというようなことで、人間と人間との話し合いだとか、それから国と国とのあれを言ったら話にならぬですわ。相手が何と考えようが、こっちでやりますわというようなことを言うなら、これはもう話にならぬ。特にこの予算は、先ほど来総理大臣も言っているしわれわれもそうだと思う。この予算を実施に移すといっても、いろいろな問題点もあるわけです。そうすると、実効のあらわれるのは、すぐやったところで二年なり三年なりということを言っているわけです。二年なり三年なりのことを、いま火がついたように必要性を感じている関係の諸国が、それは実績を見なければだめだ、現実的にそれを見なければだめだというなら、これはとても待てないから、切り上げをやれということになりますよ。そうでしょう。しかしながら、あなたたちの考えの中に、予算というものを通して判断すれば日本の努力は買ってやれるというような印象があるなら、これはまた考え直すかもわからぬということを私は言っている。だからそれだけのあれがあるのかないのかということを聞いている。それも全然わからぬというなら大蔵大臣、それはいかぬですよ。
  59. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 私のあるいは表現が、お答えのしかたが悪いのかもしれません。私はこう申し上げたいのであります。それはIMFの総会、さらにそれに関連する十ヵ国、二十ヵ国のそれぞれの会議の場所における状況を申し上げたのは、今回のあのときの会議の模様は、いわゆる世界のこれに参加しておりますところの百数十ヵ国の人たちが、長期的にお互いの通貨問題を相談し合って、そしてきめようじゃないかというのがこの間の総会における話題でございます。そしてこれから、そのために、十ヵ国のほかにさらに二十ヵ国の会議もこしらえ、そしてそれがこれから討議をしようと、こういうことになっておるんです。だからそこのところには間違いがない。しかしその間において私たちが考えなければなりませんのは、現在の状況がどうやらあまり好ましくないという批評もございますし、その批評に対してこたえるのには、やはり目的は、お互いの間の通貨が、日本としてはことに現在の割合でもって継続していきたいという気持ちがありますから、それに対するあらゆる備えを小さいことでもやっていこう、苦しいことでも忍んでいただきたいという気持ちでいろいろ検討をしておるのであります。こういうことでございますから、各国の状況は積極的にとにかくやろうじゃないかということを言っておるんです。そしてまた雰囲気は非常に落ちついておった、あるいは非常に協調的でございました。こういう姿があるものですから、私はこれでもって、日本の姿がこうなっておるのならこうしようじゃないか、ああしようじゃないかというようなことは、その基本的ないろいろ話題はたくさん各国の希望なり主張なりが出ておりますが、一国がこういうことをやったときにはこういうことをやろうというような押しつけがましいようなことをはっきりは書いておらない。これははっきりは書いておらないけれども、起こるかもしれぬことはわれわれ用心をしてかかっておらにゃならぬ、こういうのが私の気持ちでございます。そしてこれならばやっていけるだろうという自信をようやく持ち得るようになっておりますということを申し上げているのであります。
  60. 小林武

    小林武君 それでは、ここにとどまっておっても困りますから次に入りますけれども、社会資本の整備、特に公共事業費がたいへん大幅にあれしたのですが、効果の問題とからんで、これの消化がはたしてできるのか。これは大蔵大臣は消化ができるという見通しかもしらぬ。それから、関係の省庁に一体消化できるだけの余裕があるのかどうか。たとえば建設委員会で議論されたところによると、住宅とか道路とかの問題で用地の取得というような問題で行き詰まってしまって、それでなかなか進んでおらない、消化が不可能だというようなこともある。今度の場合、ちょうどいまは十一月ですから、これが直ちに国会できまっておろされたといたしましても、全然冬期間の工事のできないようなところだってこれは相当東のほうに行くとありますから、そういう問題もありましょうし、それから技術者の不足の問題だってあると思うのです。こういうことを考えますと、消化の問題がどうなっているか、このことについて大蔵大臣は各閣僚の発言から判断してだいじょうぶなのか、また、公共事業関係のことをやる各大臣においては十分これを消化できるのか、この点について御質問いたします。
  61. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 今回の御審議をお願いしております程度の予算額でございますと、私は、これが非常に問題としてはむずかしい点がところによっては起こるかもしれません。というのは、最近のやはり物価その他の動き、地価そのものの動き等もありますから、期待のとおりにすべてやれるということは、絶対にないとは申し上げかねるかと思いますけれども、それは各省でも十分その点御審査願って、そうしてそれを御要求になり、それは十分こちらからも確かめた上ででき上がった予算でございますからであります。なお、しかしこれが、じゃこれだけのものをやればどういうふうに一体ほんとうに貢献できるのだろう、金額的に見積もれるのだろうかという問題になりますと、これはいろいろの見方がございますが、私はちょっとつまびらかにせぬ点もございますから、事務当局から御参考までに——これはやはり御参考にしかならぬと思いますが、御参考までにちょっと説明さしてみたいと思います。
  62. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 今度の公共事業についての追加をいたします際に、私どもも、補正予算でございますから、特に年度内において事業が消化をできるということを一つの事業費計上の場合の制約と考えまして、前提と考えまして計上をいたしているわけであります。ことしの公共事業の上半期における契約状況は、総体の金額の七三・九%契約が済んでおります。これは公共事業の施行促進をことしの上半期の目標といたしまして七二・四%という目標を掲げてございましたが、それを若干オーバーしているという状況でございます。したがいまして、本予算の公共事業の施行もそういう状況でございますので、それを前提にいたしまして、年度内に消化の可能なものということに限って補正において事業費を計上いたしておりますので、その点については私は十分にやれるというふうに考えております。ことしの上半期の施行状況を見ますと若干、たとえば国鉄あるいは住宅公団の事業において当初の予定目標に達しておりませんが、これはいずれも、運賃法が通らなかったこと、あるいは用地の取得が困難であるといったような特殊な事情に基づくものでございまして、全体としての公共事業は大体において円滑に施行されておるし、また今後もそういうものというふうに思っております。
  63. 小林武

    小林武君 見込みが十分であるというようなあれで、少し数字をあげて、七二%ですか、現在の状況で。
  64. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 七三・九。
  65. 小林武

    小林武君 七三・九、まあそこらはいいですが、七〇%をこしていると、こう言う。これはあれですかね、事実、工事の進捗状況がそうなっているということですか。建設省の一体いろいろな諸事業というのを見るというと、たとえばそれがすでに契約ができて工事が始められるような前段の状況にいっているというようなところは七十何%か知らないけれども、一例を建設省にとれば、一体そういう状況ですか。工事がすでにもう七二%進捗しているというようなことにはわれわれは考えないんですが、建設関係はどうですか、建設大臣
  66. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 建設関係で申し上げますると、非常に順調以上に進んでおります。それは災害がありました関係上、一生懸命で力こぶを入れさしたものですから、やっぱりその技術の能力は、やろうと思いますると、もっと、以上やれるものなんですよ。それですから、建設省に関する限りは万全であります。
  67. 小林武

    小林武君 まあ建設大臣ね、(「一言ずつ多いぞ」と呼ぶ者あり)まあ一口ぐらい多いのはお互いだからいいけれども、問題はそういうことじゃなくて、やっぱりこういう問題になったらかなり正確なことをお互いが詰めなければいかぬと思うんです。私は建設委員を全くのしろうとで一年ぐらいやっている。たとえば一年やっている間にどういう問題を見たかというと、公団住宅が全部できて、公団付属の学校もできた、全部できたけれども人間が入り出したのは一年後である、それでどういうことになるのだということで私が言ったことあるわけです。そういうのはできたうちへ入らないわけだ、これはね。そういう水のことについては全然考慮になかったような——初めは考慮になかったのでないか知らぬけれども、事実考慮になかったような状況になったというのがある。それから、この間の質疑を私は聞いておっても、わが党の田中一議員のあれを聞いても、たとえば道路に対する土地の取得の問題については、建設省の考え方と田中一議員の調べたあれとはだいぶ違いがある。そういうことを見ますと、ちょっとやっぱりずさんじゃないかという気持ちもするんです。だから七二%というのは、この予算をつくってみてそのくらい言わなきゃぐあいが悪いからという話ならば、これはたいへんうまくないと思うんですよ。たとえばどうですか、この予算の中に、住宅の関係は、住宅対策費というのは百五十億ですわ。一体この予算の性格からいったら、住宅対策というのはものすごく力を入れなければならぬ。百五十億であっていいわけがないんです、これ。なぜですか、これ。なぜかということね。私は少なくともこれについては土地の問題があると思うんですよ。そうでしょう。近県からみんなこれ、ごめんごめん食うからやれないんでしょう。だから、そういう一事を見てもうまくいっていない。たとえば下水道だってどんと出している。六百十六億出した。その六百十六億の下水道だってどうでrか。建設委員会でとにかく初めからその下水道の問題を議論したときに何が出たかというと、技術者の不足である。その対策として一つの法律をつくって対策を立てた。しかし、それはまだ実効をあらわす状況になってない。そこに六百十六億やっても、これは技術者の不足で、最も緊急な下水道問題というのはおそらく遅々たる運び方をしているのじゃないかと私は想像している。だから、十二分以上だか十分以上だというようなことを言うのは、ちょっとあなた、一口多いくらいじゃない、二口も三口も多いように思うのです。(笑声)どのくらいの根拠があって、あなた、それ、言ってますか。
  68. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 多いこともあるし少ないこともあるのですよ。(笑声)少ないときには失言と、こう言われるのでありまして、多いときには多言と言う人はおりませんけれども、しかしほんとうに御心配なさることはないと思います。そうでありまするから、詳しいこと、ほんとうに正確なこと、詳しいことはあなたのところに全部書いて差し上げますよ。ここで読みまして、(「ほかの人だってみんな聞いてるのだよ。」と呼ぶ者あり)皆さまに全部差し上げます、詳しいこと。ここで説明させますると長くなりまするから、(笑声)どうか書類でかんべんしてください。(笑声)
  69. 小林武

    小林武君 これは困った人だね。(笑声)私も少しあせり出した、あとがあれしてくるのだから……。  これについてどうですか。この膨大な補正を組んだ。大蔵大臣も言われたが、初めはとにかく小さく考えたということは、私はいろいろな点、配慮したと思う。インフレを促進させるというようなおそれはこの問題についてないですか。インフレ促進というようなものと、それから大蔵大臣の言われるこの予算の持っている福祉対策、人間尊重の田中内閣の中で人間尊重の政策をやらなきゃならぬということ、この二本の大きな目標があるわけです。インフレがどんどんいったのではこれは成り立たないわけですから、そこらの心配というのはどういうことになりますか。
  70. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) お答え申し上げます。  今回御審議をお願いしております程度の規模でございますと、私は十分これはやれると思うのであります。それはなぜかと申しますと、長い間景気は沈滞しておりました。沈滞しておって、ようやくいま上向きのレールに乗ろうとしておるのであります。そしてその間において、従来の方針よりは、いわゆる設備投資型、民間のいわゆる設備投資主導型の予算から、今回は国民全体のほんとうに希望しておるところの福祉型の予算に持っていこうと、一番希望している点を、お互いの生活環境をよくしたり、あるいはその他の社会福祉に貢献するところの仕事に持っていこうと、こういうことになっております。で、そういう方面が、日本の社会資本の充実がいままで一方的におくれておった。その点がございますので、そういう方面に対しての力を尽くす方針になっておりますから、私はこれでやれるのであるというふうに考えておるのであります。
  71. 小林武

    小林武君 その判断——判断というより、そのあれは、私が見た限りにおいては、大蔵委員会の中での議論はそうじゃなかったのじゃないですか、いろいろな政府委員説明員の発言の中にもですね。いま大蔵大臣は専門家でいらっしゃるからこういうことを言うのは何ですけれども、そういうふうにようやく景気が上向きになったという程度ですか。この景気の状況について、どういう状況であるか、説明をひとつ。これは経企庁ですか、経企庁の長官にお尋ねしたいのですが、これはようやく上向きになったということと、もうすでにわれわれが見ているものの中では、企業がもう上昇軌道へ足並みをそろえた、一番落ち込んだところでさえもそうなったという判断が出ている。そういうことは、日銀の総裁の発言の中にも、新聞その他見てもあって、やはりインフレになるおそれがあるのではないかという心配も持っておられるようにわれわれは見ているのです。これ、どうですか。
  72. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) 日本の景気は昨年末をもって底をつきました。本年に入りましてから堅実な歩みを持ちながら回復基調にあります。そこで今度の様相は、従来と違いまして−従来は御承知のとおり、いわゆる民間設備投資といいますか、大型の重化学工業が牽引力となり、また輸出関連産業が牽引力になってぐっと景気を戻した。がから、そういう関係で、いままではわりあい回復が早かったのです。今回は民間個人消費あるいは民間住宅建設、あるいは財政の面から、そういう方面から見た景気の回復基調を歩んでおります。したがいまして、従来のように数カ月でぐうっと伸びるようなことはありませんが、非常に堅実な歩みで景気が回復しているということは、これは間違いありません。  そこで、先ほど来問題になっておる輸出入の問題もいろいろな手が打たれて、そして輸出の伸びが鈍化していることは間違いないんですよ、いわゆる率ですね。前年同期と比べたその輸出の伸び方というものが鈍化して、そして輸入のほうが伸びが大きいということは間違いないんですよ。ししか、何ぶん、この輸入と輸出のいままでの差が大きかったものですから、伸びはそういう傾向をたどっておりますけれども、依然としていわゆる外貨の輸出入の黒字はまだ大幅を保っておる。そこに円対策の必要というものをさらに痛感しまして、先ほど来大蔵大臣説明しておるような対策が講じられたのです。  そこで、いまインフレになるかどうかという問題でございますが、いままだいわゆる需給ギャップといいますか、供給力の余力のあることは事実なんですよ。全部がフルに動く。そういう関係からよほど警戒はしていかなくちゃなりませんけれども、いわゆる予算の面から、いまの補正予算で考えておるような面から、ここにインフレが起こるというような私はおそれはないものだと、しかし物価の問題とかいろいろありますから、十分注意をしながら歩まなくちゃならぬと、かように考えております。
  73. 小林武

    小林武君 企画庁長官にもう一つお尋ねいたしますが、いまのようなお話で、需給ギャップというのがまあ五、六兆円ある、これはあなたのほうの調査ですね。で、公共投資による需要増がインフレを起こすおそれがないのだということをパイロットモデルによる効果測定というものがあって、言われておる。この中身というのがさっぱりわからないのですがね。これはあれですか、門外不出ということになりますか、どうなんですか。このパイロットモデルというやつはほんとうに信頼性を置けるのかと言ったらおこるかもしれませんけれども、一体こういう見通しというのはいままで当たったことはないのだ、あまりね。でありますから、当たったことがないというのは、何も当たったことがないことをどうこう言うんじゃなくて、重要な問題だから言うのですけれども、このパイロットモデルについて、この中身をもっと、きょうここで長々と説明しなくてもいいですけれども、資料を出すというようなことくらいはやらなくちゃならぬと思うのですよ。門外不出のあれはいかぬと思う。それから、このパイロットモデルというようなものが、経済見通しというようなものに確信を持てる内容であるかどうかということね。これはあなた、どうですか、そういう確信を持てますか。
  74. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) 最近、いわゆる計量経済モデル、この利用が非常に重要性を帯びておるということは御案内のとおり、まあ識者間で盛んに——周知のとおりであります。そこで政府も、われわれの経済企画庁で経済の見通しをやる場合も、このいわゆるパイロットモデルというものを使うんですけれども、その試算が貴重な情報の一つとして、これは参考としておるのですね。また、このモデルによる推定結果をそれをそのまま用いるのには、現在のところではまだそれほどの技術水準にはなっていない、不十分な点があると思います。そこで、経済企画庁としましては、これまでに開発した計量経済モデルの改良を行ないまして、もっと信頼度を高めて、経済の見通しなどに十分利用できるということを目標として、いま鋭意その改良の研究をやっておる段階です。その中身につきましては、事務当局もおりますが、いずれ皆さんに書類なりそういうものにして御参考に供したいと、かように考えております。
  75. 小林武

    小林武君 先ほど来、新しい政治というところで、総理大臣から、高度経済成長政策から福祉重点の政治にやはり移らなきゃならぬということを言われております。しかし、こういう大きな予算を組んで、少なくとも景気を盛り上げる。まあインフレのおそれはないというようなことをおっしゃるけれども、インフレのおそれありというわれわれの考え、並びにそれを支持するたくさんの専門家の考えもある。この点についてはもう財界が二つに割れておるという実情があるでしょう。財界のいわゆるそうそうたる人たちがこれについて二つの見方をしている。財界だって混乱している。日銀だって、それに対して心配ございませんというようなことはよう言えないという状況です。そういたしますと、これは結局もう高度成長の路線にそのまま入っていくということになる。こう見るということはいかがですか、経済企画庁長官。
  76. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) 小林さん御承知のとおり、いま私のほうで、いわゆる長期計画ですね、これが総理の諮問を受けまして、検討しておるところですが、その長期計画のもとは福祉充実と国際協調と、この二つを大きな旗じるしとして、その上に立っていま長期計画の変更をやっておる。その長期計画は本年の十二月半ばまでには完成すると、こういうまあ見通しでやっておるわけです。来年度の予算の編成にも役立つようにと、こういう考えでいま進めておるところでありますが、先ほど言いましたように、十分警戒はしなくちゃなりませんけれども、いまの程度で、これが需給ギャップがこれだけあるのに、これですぐインフレが来るということを私は考える必要もないと。警戒はそれは十分しなくちゃなりません。経済というものは勢いですからね、警戒しなくちゃならぬけれども、これをもっていまインフレが来るのだというようなことは私は差し控えるべきだと、かように考えております。
  77. 小林武

    小林武君 ここで見解がこれは対立していますけれども、しかしこの対立は私とあなたの対立ばかりじゃない。先ほども言ったとおり、日銀総裁の警戒論もございますし、それから財界の産業問題研究会でも、卸売り物価の急上昇に対しては悪性インフレの誘発となるおそれがあるという見解をとっておる。一方には財界も二つにやっぱり分かれる。こういうことになりますと、この補正予算、さらに受けた四十八年度予算というものの中からインフレを引き起こすということは十分考えられる。そのことは、非常に強調している田中内閣の福祉政策というものが結局影も形もなくなってしまうということになると私は思うのです。そうなりますというと、これ、私はきわめて効果のない予算であるというふうに考えるわけでございますけれども、この点についての総理の見解はどうですか。
  78. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ国際収支を、先ほど申し上げたように、両三年の間にGNPの一%以内に経常収支の黒字幅を押えるということは、これはたいへんな仕事なんです。しかし、これ、やらなければだめなんです。そうすると、そういう意味で、これに対していろんな施策をやっているわけです。自由化をやる。これはまあ自由化も相当進めておりますが、農産物などでも、これはもう非常に自由化はむずかしい状態まで自由化をしておりますが、これは全部自由化をしたとして考えて、国際収支に影響する面は幾らかというと五、六億ドルでございます。年間八十億ドルの貿易収支の黒字があるところへ五億ドルではどうにもならないわけであります。でございますから、輸出を押えなきゃいかぬということであります。輸出を押えるのは貿管令を適用する。貿管令だけでもってだめなら課徴金も考えなきゃいかぬと。まあこれは輸出のためには奨励金を出しておったものが、今度輸出には罰則を設けると、こういう状態でございます。そうしなければ出るのさえ押えられないということでございます。輸入は拡大をするということになれば、原材料を使うようにしなきゃならない。使うとすればどうなるのかというと、これは国内の需要を喚起しなければならないわけであります。で、国内需要を喚起すれば、輸出力も国内需要のほうに向けられるという、輸入の拡大と輸出をセーブするという二つの問題が起こるわけでございますから、国内の需要を喚起しなければならないということは、もうこれどうにもならぬ問題だと思うんです。ただ、国内需要を喚起するのには、あなたがいま言ったとおり、物価が上がってはどうにもならないので、物価を上げないようにということでございます。まあいままでは国内需要喚起という、まあ景気が上昇する過程においては、政府が考えた倍ぐらいのスピードでもって民間の設備投資が行なわれた場合がございます。今度は七・二%の予定の経済成長率が一〇%になるかもしらぬといいながら、民間の設備投資は一向伸びておらないのでございます。そうすると、これから考えなければならない相当長期間の問題として考えるのは、内需、まあ景気の中心になるもの、投資の中心になるものは財政主導型の投資でなければならないと、こういうことになるわけです。財政主導型の投資というものがいいのか悪いのかというと、財政主導型の投資は、量から質への転換をはかるものであると。都市に集中しているものを、新幹線をつくってやることによって地方に分散させようとかいろいろな問題の効果がございます。  それだけではなく、いま考えられるのは、日本の社会資本の蓄積率が非常に少ない。だから東京からでも、地下鉄でも道路でも関東の北まで全部そういうものが整備されれば、何も東京に住居を持たなくとも十分通える圏内でございます。そういう意味で、社会資本の蓄積率はアメリカに比べて四対一、四分の一であるというようなことから考えてみると、これからの政府主導型の、しかも社会資本の蓄積をしなければならない面を計画的に蓄積をしていく投資というものは一石二鳥とも言えるわけでございいます。でございますから、その意味で、あなたの言う物価を押える——物価がそのまま都市インフレというようなものにならないようにやってさえいけるならば、これは国際収支対策としては有力な武器である。今度の予算で、まあ一兆円程度のもの、これがたいへんなものになるということであるならば、これからの社会資本の蓄積ということはなかなかむずかしくなるわけでありますから、私はそれほどの問題ではないと、こう考えられるわけであります。また、社会福祉を拡大していく場合にも、社会資本の蓄積率も上げていかなければならない、生活環境の整備に結びつかないわけでございますから。そういう意味で、今度の予算というものは、物価を上げないで押えながら、国際収支対策にもなり、不足の社会資本の蓄積、すなわち社会保障の拡充の前段を進めるものであるとこう理解をしております。
  79. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連。  いまのインフレ問題に関連をして、成長率の問題ですが、これをお尋ねしたいと思いますけれども、従来、高度成長といわれた時代に、実質成長率の場合、八%ないし九%はノーマルと言う方もあったし——これは政府部内でですよ。あるいは一〇%程度と、これなら安定成長、高度成長でないという議論があったわけですね。ところが現在は、経済の改定見通しでもわかるように、まさに一〇%に迫ろうとしておる。まあ、それをこすような事態になるかもしれぬですね。そこで、外貨調整ということや、あるいは経済や政治の流れを変えるためにいろいろな、財政主導型であろうとなかろうと、そういう投資が行なわれた場合に、成長率がどんどん上がっていく場合ですね、それは従来の高度成長と似た、同じようなことになってしまうんですが、その成長率にはとらわれないのかどうか。つまり一〇%をこすような場合は高度成長と見て、ある適当な線で、安定成長という形で成長率を押えるのかどうか、セーブしてですね。たとえば財政をセーブする場合もあるし、あるいは国際経済関係のセーブもあるでしょう。そういう意味での調整をやるのかやらないのか。あるいは無制限に、外貨調整との関連あるいは国内の福祉対策との関連もあって、それは成長率とは何ら関係なしに問題を想定するのか、あるいは一〇%以内——八、九%程度に押えようという、従来いわれた安定成長路線をとられようというのか、その辺はどうなのか。これは、大蔵大臣や企画庁長官でなしに、総理大臣からひとつお答えをいただきたいと思います。
  80. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) GNPの伸びは無制限でいいんだというような感じは持っておりません。これはもう全然持たないわけでございますし、その意味で長期経済計画を諮問をいたしておるわけでございます。十二月半ばまでには答申が得られると思います。その中には、いままでのようなものだけではなく、国民福祉水準というものや、いろいろな問題に対しても位置づけをしてもらえると、こう考えておるわけでございますから、これは目的のためには手段を選ばないというわけにはまいりません。これは適当に調整せられるべきことは言うをまちません。ただ、いままでの、ずっと昭和二十九年から三十九年までの一〇・四%、三十五年から四十五年までの二・一%というような計算そのままの国民総生産ではなくなってくるわけです。これは今度内容が違ってまいりますから、量から質へ転化していくわけでございまして、これはまあ釈迦に説法でございますが、これは投資をしても、生産を上げるための投資というよりも、公害投資であり、いろんな社会資本蓄積のものであり、環境整備の投資であり、いろいろ内容が量から質への転化をしてまいりますので、これはいろいろ影響する効果というものは別に専門的にはじき出されるわけでございます。そういう問題は当然ございますが、無制限でいいんだということではございませんので、今度一兆円の計画、これは一兆円でもって——一兆円もたいへんだが、しかし一兆円でほんとうに国際収支対策になるのかと先ほども御質問があったわけです。これは両面でございます。実際、もろ刃のとも言えるようなもので御議論をいただいておるわけでございますが、しかし無制限、どこまででもいいんだということではなく、この予算は御審議をいただいて成立をさせていただく、十二月の半ばまでには長期経済計画の御答申をいただくということで御理解をいただきたい。
  81. 小林武

    小林武君 まあ、大蔵大臣にお尋ねして、もうこの問題についての終わりにしたいのですけれども、政府のとっている、予算を公共投資につぎ込む、膨大な大ワクの補正予算をやる、さらには昭和四十八年度の予算も非常に大きいと、これはとにかくイタチごっこみたような気がするわけですね。それで一体ほんとうに望んでいるような円対策になるのか、貿易収支の黒字をどうするということができるのかといったら、私はもう悲観的な考えであります。なぜかというと、これはどうも私は、やり方としては少し奇道だと、ちょっと別な道である、正攻法でいく考えというのがなければならぬと思う。そういうもののあれについては、円対策とかいうようなものが何回も出されているわけですね。円対策八項目、新円対策七項目というようなものがあったり、あるいはいまも話が出ましたけれども、経済体質を変えるには、やはり日本の労働、企業に対するいろんな責任、公害に対する責任もそうでしょうし、日本の経済体質そのものを変えるような、田中内閣でいえば、自民党政府の流れを変えるようなそういうやり方というものが根本になければ、私はそれはもう解決策にはならない、そう思うのです。ところが、そういういわゆる正攻法でいくほうは、どうも各省間の問題があったり、あるいは大企業に非常に遠慮をしたりというようなことで効果をおくらしている。インフレになれば、とにかくそのとばっちりはどこにいくかというと、これは大企業は絶対インフレでは損しませんから、労働者のところにそれがもろにかかってくる。こういうふうに私は判断をしているわけですが、この点について、大蔵大臣の御所見はいかがですか。
  82. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) これは私のかねて非常に考えをめぐらしておるところでありまして、来年度の予算のたとえばワクでありますとか、あるいは経済成長の率をどういうふうに見るとかというような問題については、慎重そのもので、やはり気をつけていかなければならぬ問題だと思うのであります。それにつきましても、やはり大事な問題は、ただいま企画庁長官からも長期の見通し、いわゆる作成作業中であるということを御答弁なさいましたが、御当局の御意見も十分参考にさせていただいて、そして私は、その上で各省からの御要求の問題、あるいはわが党としてこの際やりたいと思うことがたくさんございますから、これらの問題についても、財政をあずかる者としては、でき得る限り慎重な態度で、厳正な態度で臨まなければならないというふうに考えております。しかし、一つの大きな仕事をするために、ある場合においては、やはり思い切ってやらなければならぬ問題もときには出ると思います。そうした問題については、おのずから今度引っ込んで遠慮してもらうところもなければならぬ、彼此相補って、そうして中庸を得たところでわれわれの考えておる政策が成功するようにという努力をするのが私の当然の義務であろうと、私は考えておる次第でございます。
  83. 小林武

    小林武君 総理大臣にちょっとお伺いいたしますが、きょうの新聞に、トラック諸島の野戦病院で旧日本軍が病気で苦しんでおる重傷兵を生き埋めにした、十数名も上官の命令で埋められたという、こういう記事が出ているわけでありますが、そういうことについて大岡昇平氏は、何だか起こり得ることだというようなことを意見として述べている。こういう問題を見て総理はどうお考えになりますか。これについて、事実を明らかにしていくというお考えがございますかどうか、それを承りたい。
  84. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) もうやがて三十年にもなろうとする過去の戦争、あまり思い出したくもないものでございます。再びあのような状態を起こしてはならないということを前提にしまして、ほんとうに日本人全体が記憶のかなたに忘れ去ってしまいたい、こういうような戦争だと思います。私も、自身、苛烈な戦争ということではありませんが、あのころ二年余にわたって兵隊の生活もやってみました。友人もたくさんなくなりました。そういう意味で、再びあのようなことは絶対に避けなければならない。特に、政治に身を置いてからはほんとうに堅い決意でございます。まあいろいろな問題が起こります。「暁に祈る」という問題もございましたし、この間の沖繩の島の果てで起こった、全く物語にもないような悲惨な問題もございました。  きょうの新聞、私はまだ答弁書の作成その他でもってよくつまびらかに読んでおりません。なかなか時間もないのでございますが、タイトルだけは朝、さあっと短い間に見ました。ただ、それを全部読む気がしないものでございました。そんなことがあったのか。私は絶対に、どんなに追い詰められた日本人でも、そんなばかなことというものがあるものか。南ベトナムやいろいろなところでもって、天井を格子にした牢屋などが報道されておりますが、そんなことがあり得るのかという感じでございます。また、アイヒマンのいろいろな物語などで報道された幾多の事例もございますし、ナチの問題もありますが、どうも日本人にそんなことがあったのかどうか信じがたいのであります。これを一体いつ調べるのか、そういうことが一体できるのか。私もいま突然の御質問でございますので、ちょっと的確なお答えはできません。とにかく公の席上で御発言がございましたから、政府部内でも相談をいたします。まあ、非常に遺憾な−遺憾なというよりも、どうもその記事そのものも読めないというのが実態でございまして、しかし公の立場にございますから、真相の究明ということが必要なのかもしれません。まあ、そういう問題、御発言になられた問題・.ちょっとひとつ考えさしてください。
  85. 小林武

    小林武君 私、このことを申し上げたのは、悲惨きわまる話ですね。人間としてやることかどうかということになるわけですね。しかし、私はもとは教師ですから、そういう点では教育の責任というものはずいぶん戦後考えました。そして昭和三十年に中国の戦犯収容所に無理を言って会いに行ったわけです。その日本人戦犯収容所にいた人たちを見たが、みんな年齢的にいえば、ぼくらが大体ほんとうに若いころに教えた年齢層の者ばかり。ほとんどそうです。戦争というものに対する教育者の態度、教師の態度というものを、わが身を標準にして考えて、大きな影響を与えたし、一つの政策としてそういう教育もやった、反省点はここだと思う。しかし、それはどこを恨むというよりも、やはりみずからの責任ということが一番先にこなければならないということを非常に痛感した。私は、いまこういうことを出してかれこれ言うということは、一つは、戦争というものに対して、われわれがもっとやはり真剣に考えなければならぬということを感ずるわけです。これは総理は自民党の総理ですから特に言いたい。わが党は、また別なそういう問題についての立場をとっていますから。  そこで私は、戦車輸送が九十五日ぶりに再開されて、かなりの大きなニュースになった。私は、ベトナムの人間であろうとどこの人間であろうと、戦争というものの惨禍の中に巻き込まれたその悲惨さというもの、それからその戦場の中に立った人間の荒廃した気持ちというものを考えたときに、やはり近代の政治家というものの頭の中には、戦争に対する真剣な反省なり突き詰めた追及なりがなければならぬと、こう思うのです。そこで私は、これについて政府の態度そのものについて、総理大臣に聞かないで、たとえばこの問題に非常に関係のある建設大臣が、飛鳥田横浜市長に対して何か文書をもって出された、対決の姿勢を示したような記事があったが、ここらあたりも、国内法というようなものが一体簡単に、安保条約だのを結んだら、アメリカのあれでやらなければならぬという義務があるというような、先方のあれをそのまま受けて、そして無抵抗の一般民衆を殺すような戦場に行く、それを阻止するという考え方、そういう考え方が通用しなくなるということはこれはどういうことだろう。そのことに一体、地方自治体の権限まで侵してこれを追求していくというような考え方−私は飛鳥田さんとその問題で話したことも何もない。あまり私は会わないですから。面会していませんからよく知りませんけれども、大体いままでのとってきた政府の態度というものは、それについての考え方が非常にないのだ。建設大臣は一体あれはどう思っていますか。アメリカの軍隊でさえもアメリカの国内で、そんなにああいうものの運搬が自由にできるようになっているとお考えになりますか。そうではないはずですわね。今度は、もう日本の場合においては、国内でもどこでも、日本の自衛隊でも、そういうことを不便があろうが、一般民衆がどうしようが、どんどんやろうとするのかどうか。そういう問題もあるのですが、建設大臣は戦車輸送の九十五日ぶり再開に対する抵抗に対して一役買っているわけですから、大臣として、ひとつお考えを承りたい。
  86. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 小林さんの戦争に対する考え方、私全く同じなんです、それは。戦争というものはほんとうに人間の条件を変えてしまう。戦争状態になると、数多く人を殺した者がほめられる。殺さない者はほめられない。全く人間を気違いにするのですから。そのために戦争というものはこの地上から追放しなきゃならないというのが人間の悲願だっと私は思っています。そうしてそういうようなものが、そういう人間をつくるということが一つの政策として強行されたと、その戦場に自分もおったのだと、そして自分みずから非常に大きく反省しておると、そういう点で自分が何をなすべきであったかということについて非常に大きく反省しておるという小林さんのおことばは、私は身にしみて涙のこぼれる思いがいたしますよ、そいつは。そうですから、私はその点で非常に悩んでおるのです。考えたのですよ、そいつは。そうですから、建設省としては道路を守る立場から、重車両交通については届け出制じゃだめだと、やはり道路管理者の許可制にしなきゃならないと思いまして、そいつを改めて実行したのが四月なんです。そうして、そいつを実行して半年も出ないでそいつを変更しなきゃならないということについては非常に真剣に考えたのですよ。そうですから、許可線上において何とか話し合いができないもんだろうか、人間の聡明さを発揮して何とか方法がつかないものだろうかということは、ほんとうに真剣に私自身としても考えたのです。しかし、考えあぐんだ結果、やっぱりこの際は緊急車両というものは除外例に置くということ以外にないんだと、こういう結論に達して、そして、まあそういうような方針をとったんでありまして、そいつは何にも悩まないでそういう方針をとったんじゃありませんです。非常に悩んだ結果そういう態度をとったんであります。そしてその結果、いままでの大きな問題でありまする、たとえば基地の返還であるとか、それから相模補給廠の縮小であるとかと、そういうようなものがぐんぐんと行なわれていったならば、そういうようないろいろないざこざというものはなくなるだろうと、そいつを早く解決するためにはそういうような処置をとって、そういうようなものが日本国内に早くなくなることが一番大切なことであると、そういうように考えて、私はそいつを振り切ってそういうようにやったのでありまして、そいつは何にもむぞうさに考えてやったのではありませんです。そして、私は飛鳥田市長には、こういうような状態になりましたから何とかまあ了承してもらいたいと言いましたけれども、市長には市長の立場があります。市長には市長の立場がありまするから、とても了承するなんていうわけにはいかないでしょう、そいつは。こちらにはこちらの立場もあるのです。そうでありまするから、立場の相違ですれ違いましたけれども、やっぱりお互いの立場を了承しておるという点においては私は同じものがあるんじゃないかと、こういうように考えております。やむを得ずやったのでありまして、早くこういうようなことをなくしてみたいというのが私の念願なんです。
  87. 小林武

    小林武君 それは論理がおかしいですよ。戦争というものに対する反省、しかも、その場合に、戦争に対する反省があったら、ベトナムの一体人間がどうだということを考えにゃいかぬですわね。そこへ送り込むあれをどうするかということを考えることが一つあるでしょう。それにもう一つあるでしょう。日本の国内にそんなことが、国内法を改めてまで、一体アメリカのあれであろうが何であろうが、動かすというようなこと自体が問題でないですか。だから、何ぼ悩んだと言っても、悩んだということは、あなた、まともなことやってないから悩んだということになるんだと私は考えるのですけれどもね。しかし、まあ立場上のことをいま議論してもしょうがありませんが、これは大きな一つの誤りであるということは、まあ御自分で認められているようでありますから、きょうはもう時間もなくなりましたし、やりません。やりませんけれどもね、あなた、一つ考え違いしておられるのは、安保条約の上に立って、アメリカの言いなりになってどんどんそういうことを広く広げていけば、日本国にそういう問題は起きないなんていう考え方は、これはやっぱりおかしいですわ。そういう考えに立ったら、これは重大なことだと思うのです。実は、私、別にもう一つあったんでございますけれども、きょう前半が非常に時間を食ったものですから、残念ながらこれはやることできませんでしたけれども、それでしっぽのほうだけで、あなたに十分御理解いただけないのは残念ですけれども、あなたのとった態度、並びにそれをきめられた政府の態度はきわめて遺憾であるということを申し上げておきたいと思います。  質問はこれで終わります。
  88. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて小林君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十五分まで休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      —————・—————    午後一時四十二分開会
  89. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、補正予算三案に対し質疑を行ないます。米田正文君。
  90. 米田正文

    ○米田正文君 私は、自由民主党を代表して、当面の問題についてお伺いをいたそうと思っておりますが、まず、最近起こりました列車の事故、あるいは北海道の炭鉱事故、あるいはハイジャック等についてお伺いをしようと思っておりましたが、先ほどの小林議員のときにお話がありましたから、これは省略をいたします。  まず、日中国交正常化についてお伺いをいたそうと思いますが、日中国交正常化は、田中総理一行の訪中によってついに解決を見るに至りました。このことは、両国民の長い間の願望の達成でありましたので、いままでにない全国民的な支持を得ておる次第であります。日本全体の表情が急に明るくなったような感じであります。この際、田中総理はじめ、大平外務大臣その他関係者の御苦労に対しまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。かくて日中の新時代の幕があいたのでございます。これから両国間に真の平和友好の実を一歩一歩積み上げていかなければならぬのでございます。それによって、アジアの平和、ひいては世界の平和と繁栄に大きく貢献できるのでありまして、両国民の期待もここにあると存じます。  そこで、私は次の五点についてお伺いをいたしたいと思います。  第一は、総理にお伺いすることですが、日中関係の正常化は、全般的な国際情勢の緊張緩和の一環をなすものであって、特に、アジアにおける緊張の緩和に貢献することが大であることは言うまでもございません。しかしながら、それによって日米安保条約は効果が薄くなったとか、ないものになったとか、あるいはそれは空洞化したとかいうように考えたり、四次防は国際情勢に逆行するからこれは要らないのではないか、いや自衛隊そのものもあまり必要がないのではないかというような主張をする向きもないとは言えないような状態であります。これは緊張緩和の過大評価であり、理想論にすぎないのみならず、わが国の平和と安全に対する無責任な発言だとも考えられます。新聞の解説記事の中でも安保空洞化論が見受けられるような次第で、国民の中にも何となしに、世の中は平和になっていくのだから安保なんか要らないじゃないかというような非常に安易な気持ちになっておる者もなしとしないのでございます。どんな平和な時代になりましても、国の安全を守るための、その時代時代に応ずる自衛上の最小限の備えだけは絶対に必要であるという国民の考え方をこの際新たにすべき時期ではないかと思います。この際、国防に関する政府の確固たる方針を総理からひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  91. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘がございましたように、長いこと不正常な状態でございました日中両国の間に国交の正常化がなし遂げられたことは、アジアの平和というよりも、世界の平和にも寄与するものだと考えております。間々申し上げるのでございますが、八億の人口を擁する中国、一億の人口を擁し、これだけの工業生産をあげ得る日本、この両国を合わせれば、数の上でも、地球上の人類の総数三十六億というわけでありますから、ちょうど四分の一であります。この四分の一の中国と日本というものが、話もできない、意思の疎通もできない、正式な交渉のルートもないというようなことがいかに不安定なものであるかは、もう言うまでもないわけでございます。その意味で、日中正常化ができた、このできたというのは、いろいろ北京で話し合いをしましたときも話し合ったわけでありますが、これで、いろんな問題がございましたら、アメリカと中国の間でもお話しになれるじゃありませんかと、私とアメリカの間はよく話ができますと、ここへ来る前も話をしてまいったわけですと、それはハワイ会談でございますと。ですから今度は、われわれよりも先にアメリカも北京を訪問しているんですから、アメリカと中国の間で何でも話していただいたらどうですかと、中国と日本はまた正三角形で何でも話をいたしますと、そうすることが平和に寄与することでございますと、こういう話し合いをしたわけでございますから、その意味でも非常に、封じ込め政策などということをやったときから考えると一これは日本がやったわけでなく、アメリカが考えたことですが、今昔の感にたえないぐらい緊張緩和ということだと思います。そういう意味で、朝鮮半島においても話し合いムード、それから南北ベトナムの間においてもそう、日中の間においてもそうということになれば、これは、お互いが群をなすことによって、力でもって均衡を保とうというような考えと比べていかに平和的であるかということは、もう申すまでもないことであります。私は、そういう意味で、日中の国交の正常化は世界の雪解けムードに同調するものであり、その流れの中にあるものだと、こう考えて、平和的であると、こう考えます。  であるからといって、自衛隊も要らない、日米安全保障条約も要らない、四次防も要らない、これはもう全然そうは考えておりません。これはバランス・オブ・パワーというような冷戦構造の中にあった無制限な軍備の拡張ということではありません。しかし、東西間の問題が緊張緩和ムードになってきた一つのきっかけに、やるだけやってみたと、そして核兵器も持ったと、原水爆も山ほど貯蔵したと、しかし、これが一体使えるだろうかと。使ったら、どこの国が勝ってどこの国が負けるというのではなく、人類全部が死滅をするおそれがある。でありますから、原水爆というような核兵器は、持つことに意義があって、抑止力という意義があって、これは使えないんだと、使ったらもうその国というものは人類破滅の責任を負わなきゃいかぬのだという考え方から緊張の緩和が生まれてきていることは、歴史的に明らかでございます。ですから、そういう意味で、バランス・オブ・パワー万能という考えを持つ者はもうどこの国もないと思うんです。お互いに話し合いでやらなければいけない、人類の英知を発揮しなければならない、それは話し合いだということは、これはよくわかりますが、しかし、その背景に、全くいま直ちに全部が無防備になれないんだということは、もうこれは何人も認めておるわけでございます。  ですから、いままで世界で評価されているのは、ヨーロッパが非常にあれだけの混乱を——過密なヨーロッパで、ベルリンの壁がありながら、東西の接点でありながら、平和な状態を維持してきたのは、やはり一つはワルシャワ条約機構、一つはNATO機構というような、非常に完備した、そういう体制の中に平和が維持されたとみんな理解をしているわけであります。私はそれだけじゃないと思いますよ、いろんな理由があると思いますが、そういうことは、これは全然無視できない事実であることは間違いありません。けれども、そこへくると、アジアは、宗教的な問題もございますし、分裂国家の問題もあるし、東西の接点でもあるし、いろいろな状態で、ヨーロッパに比してまだまだほんとうに平和な、安全なという状態でないということは、どこの国の人でもみなそういうふうに報道し、そういうふうに理解をしておるわけでございますから、その中で、最終的には国連の安全保障機構ということができるように努力をすべきでありますし、お互いが、いつ起こるかわからない、起こってはならない、そういう事態のために相当部分の出費をするということを考えることは、私はりこうなことじゃないと思うんです。ですから、そういう理想的な姿の達成のために全精力を傾けるべきでありますが、しかし、そういう努力と、自分たちは自分たちを守るために、安全のために応分の努力をし、応分の備えをするということは、これはやはり区別をしてかからないと、公の立場で独立国家としての責任を果たし、国民の生命財産を守ることはできないわけでございまして、そういう意味では、憲法の求める範囲内で最小限、最も合理的な防衛体制ということが必要であることは、これはもう申すまでもない。合理的に最小限というと、自分だけではなく、日米安全保障条約というものとあわせておることが最も合理的なのではないか。これはほかの国の状態と比べてみれば非常によく理解ができると思うわけであります。
  92. 米田正文

    ○米田正文君 次に、外務大臣にお伺いしますが、日中両国の国交正常化は、いまやその具体的計画を立てなければならぬ時期だと思います。すなわち、大使館の開設だとか、あるいは日中平和友好条約を結ぶような準備だとか、あるいは航空協定とか、貿易協定だとか、いろいろ具体的な計画が今後あろうかと思いますが、政府の考えておられる、外務省で考えておられるこれからのスケジュール、そういうものを、大きい問題だけでも、今後のスケジュールをひとつお示しを願いたいと思います。
  93. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 大使館の設置でございますが、これは双方、相互主義に基づきまして、北京と東京に大使館を設置すべくいま準備を進めておるわけでございます。わがほうといたしましても、係官を北京に派遣いたしまして、準備の調査並びに先方との打ち合わせを遂げて帰りました。したがいまして、いまのめどといたしましては、明年早々には大使館の開設に至るものと思います。しかし、それを最終的にどのぐらいの陣容にするか、それから恒久的な公館の規模等につきましては、まだきまっていないわけでございまして、とりあえず仕事ができる状態に明年の早々には持っていかなければならぬと考えておりまして、とりあえずの人数といたしましては、約二十名内外の要員を考えております。  それから第二の問題は実務協定でございますが、一番急ぐのは航空協定でございます。これは何ら民間レベルにおける協定もない分野でございますので、できるだけ早く交渉を、大使館の開設の前からでも交渉をやらなければならぬと存じまして、先方に対してそういう申し入れをいたしておるわけでございます。貿易、漁業等は、御案内のように、民間レベルの協定が一応ございまして、当面支障なく動くわけでございますが、いずれこれは政府レベルにおきましてしっかりした協定に仕上げなければなりませんので、いま政府関係各省の間で準備作業をいたしておる段階でございます。  日中平和友好条約につきましては、いま日中双方で了解いたしております点は二点あるわけでございまして、一つは、共同声明に明らかなように、これを締結すべく交渉をしようという合意ができておるということが一つでございます。これはどういう内容を盛り込むべきかという点については、まだ話し合いが行なわれていないのでありますけれども、この日中平和友好条約というのは、日中関係の暗い過去の清算ということではない。そのことは、九月二十九日の共同声明で一切がっさい済んだという了解でございまして、この条約に盛り込むべき内容は、これから先、日中両国で、米田委員御指摘のように、将来末長く友好親善関係を保っていくにはどういう指針によってやるかというようなものを考えようじゃないかということでございまして、具体的に項目ごとにまだ話し合っていない、そういう原則的なことだけがいま了解されておるということでございます。
  94. 米田正文

    ○米田正文君 次に、これは総理にお伺いしたほうがいいと思いますが、政府は、日中国交正常化に至る経緯とわが国の立場を説明をし、正しい理解を得るために米国、ソ連に大平外務大臣、韓国と東南アジア諸国にそれぞれ特派大使を派遣をされました。いずれもその目的を達成して、諸国の了解をつけてきたとのお話でございますが、しかしながら、了解は得られたにいたしましても、それは心からのほんとうの全幅的な支持と協力があったであろうかという私どもには多少の懸念がございます。そういう情勢もあり、なおかつ、昨日、アメリカの大統領選挙の結果は、ニクソン氏の圧勝で再選が実現をいたしました。これによってどういうようにこれが影響してくるかということも考えなきゃならぬと思うのですが、ベトナム問題の解決はこれによって早まるんではないかというような観測もできましょうし、また、日本への経済的な要求と申しましょうか、そういうものも少し強くなってくるんではないかというような私には感じもいたします。で、こういう新しい情勢のもとで日中国交正常化後の日本としては、アジアの自由主義国との間に私は新しい外交を進めるべきであると思います。特に自由主義国との間には、いままで以上の援助計画——と申しますか、協力計画と申しますか、そういうものを軸にするというような新しい外交が展開をされるべきだと私は思いますが、総理の御見解を承りたいと思います。外務大臣でもけっこうです。
  95. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 共同声明で明らかなように、今度の日中国交正常化は、第三国に対するものではないという点が明らかに示されておりまするし、また、日中両国ともアジアにおいて覇権を求めるものではないという精神も明らかにされておるわけでございますから、それでいいようなものでございますけれども、日本と中国が和解するということになりますと、先ほど総理からお話がありましたように強大な、八億の民を持つ中国と、一方、経済大国としての日本との取り組みでございますから、一体これをどう評価すべきかという点につきまして、世界に大きく今度その評価をめぐって論議があることは御案内のとおりでございまするし、また、二十何年もかかってなかなかできなかったことが意外にすらすらできたことは一体どういうわけなんだろうか、何かそこに裏の取り引きがあるんではなかろうかというような危惧がないとは限らないわけでございまするので、政府といたしましては、いち早く関係各国を歴訪いたしまして、日中正常化の交渉の経緯、内容、それからその結果、さらには、今後、日中両国の関係を維持していく上において日本はどういう決意でおるかというようなことを前広に御説明申し上げておくことが必要であると判断して、仰せのような措置をいたしますと同時に、全世界の日本の外交機関に対しまして訓令をいたしまして、国交を持っておる全部の国々に対しまして同様な説明をいたしたわけでございます。  で、そのことば、第一に、そういう説明に接した国々といたしまして、まず政府の労をたいへん多としておるということは全部一致したことでございます。第二に、日中国交正常化自体はたいへんけっこうなことである、これは困ったことであるという意見はどこからも聞きませんでした。すべての国にとりましてそれはたいへんけっこうなことであるということでございました。第三点といたしまして、日中双方が今後どのように政治あるいは経済の分野におきまして提携していくのかということに対しまして、これは私どものほうから互恵平等の立場に立ちまして、共同声明にうたわれた精神に従いまして、経済の交流、それから政治的な意見の交換、そういったことについては、十分気をつけていくわけでございまして、二国が、日中両国が組んで何かをする、何かをしない、そういったことで危惧を招くようなことは一切やるつもりでないという趣旨のものは、るる御説明申し上げて、私としては御了解が得られたのではないかと思いますけれども、なお、仰せのように、今後日中関係を慎重に運営してまいりまして、われわれの行ないをもって各国にそういった危惧のないようにするためには、かけらも危惧のないようにするためには、周到な配慮を不断に続けていかなければならないと考えております。
  96. 米田正文

    ○米田正文君 次の問題は、外務大臣と法務大臣にお伺いをいたしますが、日中問題は台湾問題であるとさえ言われてきたものであります。日中正常化にとって最も困難な問題は、台湾政府との間に結ばれていた平和条約をどうするかであったと思います。国民の間では、できればこの条約には手を触れないでおきたいという気持ちがあったのは事実でございます。それについて、多くの苦心が払われたにもかかわらず、台湾政府との外交関係はなくなるという結果になって、これはまあきわめて残念なことでございましたが、これはもうしかたがないと思います。  そこで、次の問題としては、台湾におる邦人の生命あるいは財産というようなものの保護は確保できるのか、そういう自信はあるのかということを外務大臣にはお尋ねを申し上げます。また、逆に在日台湾人の処遇については、いままでと変わりなくやっていけるのかどうかということは、法務大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  97. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 日中国交正常化の結果、台湾との外交関係が維持できなくなったわけでございまして、したがいまして、私ども日本政府が台湾に在住する同胞に対しまして外交権を行使する足場が失われたわけでございます。しかしながら、われわれといたしましては、かの地で在住されておる方々の生命財産の保全ということにつきましては、日夜頭から離れていないわけでございまして、最善を尽くさなければならないと考えて、日台関係の今後のあり方につきましては、外交関係は維持できないけれども、従来の関係をできるだけ維持していくということについて、日本政府としては、先方の政府がお許しになるならば、そして新しい日中関係の根幹に触れるようなことのないように考慮しながら、できるだけ維持していくべく配慮するという方針のもとに今日まで実行してまいったわけでございまして、幸いに、台湾における官民の御配慮によりまして、今日に至るまで事なきを得ておることに対しまして、私は台湾の官民に対しまして心から感謝を申し上げておるわけでございます。今後、日台関係の実務的関係の保持につきまして、いろいろ施策をいたしておるわけでございますが、それの周到な運営を通じまして、万が一にもそういう事態が発生しないよう、政府としては、可能な限りの努力を精力的に続けてまいる所存でございます。
  98. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 台湾の方々につきましては、その従来の非常に長い在留の実績、いろいろな歴史的な関係等もございます。したがいまして、急激な変化が起こらないように、平穏に事態は推移いたしております。ことに、日本に在留されます台湾の方は、その半ばは、法一二六号と申しまして、戦前からわが国に在留しておられる方であります。したがいまして、これは当然そのまま永住していくことのできる方であります。それ以外の方につきましては、法務大臣の発行いたします在留資格証明書、これによりまして、在留の期間を更新する必要のあります場合には、いたしておりますし、それらの点で現に平穏に推移いたしております。今後もそのように進めてまいりたいと思っております。
  99. 米田正文

    ○米田正文君 次の第五点は、中国からの未帰還者の問題であります。  戦争終結当時、中国におりました一般邦人は百九十万といわれ、軍人が百七十九万人といわれ、合計三百六十九万人おったといわれております。その大部分の約三百三十三万人は引き揚げてきたのでありますが、なお数字上は三十六万人をこえる未帰還者があるわけでございます。それらの人々は、まあいろいろな事情があって、もうすでになくなられた方もありましょうが、いまなお残留をしておる人もかなりの数に、いまのぼっておることと思います。最近、新聞にも終戦時に藩陽で六千体の遺体を埋葬した人の思い出などというのが報じられておりました。日中関係が、かくなりました以上は、政府としては、まず遺骨の収集、受け取りというような問題に、まず積極的に着手をすべきときであると思います。また、生きて残っておる方々については、向こうで苦しい生活をされておるような方々もございましょうし、あるいはまた、ぜひ日本に帰りたいという希望の方もおられましょう。そういう方について、政府としては、帰国を望む人にはすみやかにそれが実現をできるように、また、墓参のために一時帰国を希望するという者には、その道が開かれるように、この際具体策をきめていただいて、折衝の上、処置を講じていただきたい。また、それについて予算が必要であるならば、その予算はひとつ、予備費からなり、あるいは来年度予算に本格的に計上するなりして、その実現をはかっていただきたいと思いますが、これは厚生大臣ですか。
  100. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) お答えいたします。  中国の本土につきましては、引き揚げ部隊によりまして相当の遺骨が日本のほうに帰還をしておるのでございまするが、しかしながら、満州地区あるいは雲南地区、その他各地におきまして相当の遺骨がなお未処置のままになっておることはまことに残念に思う次第でございます。幸い、日中正常化もここにできました今日におきまして、遺族の心情を思うにつけましても、すみやかな収集の措置を講じなければならぬと思うわけでございます。それにいたしましても、これが効果的に行なわれるというためには、中国側のよき理解のもとにこれができると思う次第でありまして、外務省、外交のルートを通じまして、それが早く実現をするようにお願いを申し上げたいと思っておるところでございます。
  101. 米田正文

    ○米田正文君 次に、日本列島改造問題についてお伺いをいたしたいと思います。  田中総理提案の日本列島改造論が発表されますや、国民の大きな興味と関心を呼び、大きな拍手をもって迎えられておるような状態であります。さらには、世界的な関心まで呼び起こしておる状況でありますが、また、それだけに一面反対論もありまして、いまや百家争鳴というような状況であることは御承知のとおりであります。わが国の現状は、お説のように、東京、大阪、名古屋地域の巨大都市に産業と人口の過度集中が起こって、その住民は公害の被害を受け健康をおかされておるというような実情にあり、また反面、過疎地域を生じまして、そこには人手不足による自然の荒廃も進んでおるというような状況であります。そこで、産業、人口の地方分散をはかって人口の適正配置を実行することは今後とるべき根本政策であると私も確信をしておりますし、改造論賛成者の一人でもあります。近く行なわれるであろう衆議院選挙のあとには、もういまから言ってもあれですから、その選挙後には、ひとつさっそく、さらに衆知を集め、計画を練り上げ、決断と実行によって推進をしなければならぬ私は大問題だと思っております。  以下三点について質問をいたしたいと思います。  まず、経済成長論でありますが、日本列島改造論に対する総論的な批判として注目をされますのは、依然として今後もやはり高度成長主義ではないかという批判があります。改造論は今後における成長要因を社会資本の拡大と個人消費の増加に求め、これまでの民間設備投資主導型、輸出第一主義の経済運営を転換して、公共部門主導型による福祉重点型の路線を政策の根幹に据えて、その実現につとめるならば、日本経済はまだまだ高い成長を維持していくことが可能であると、こう言っておられます。このやはり高い成長を福祉に役立てる成長活用型の経済運営をやっていくのだとも述べられております。すなわち、改造論は高成長を主軸としておるように考えられます。およそ経済の成長があるためには生産性の向上がなければならず、生産性の向上があるためには技術革新がなければならないという関係があります。わが国の経済が過去十数年間に驚異的な成長を遂げたのは、敗戦国日本が欧米先進工業国よりも非常におくれた技術水準から出発をして、そして海外ででき上がった優秀な技術を導入することによって目ざましい生産性の向上が達成をされたと私は見ております。しかるに、わが国と先進工業国との間の技術ギャップは今日ではもうほとんど埋め尽くされたのではないか、将来におけるわが国の経済成長は主としてわが国における自主的な技術開発に待つよりほかはない。これは、外国の優秀な技術を導入するのに比べれば、はるかに今度は困難な事業だと思います。しかも、これから先、民間設備投資主導型、輸出第一主義の経済運営を転換して、公共部門主導による福祉重点型の路線に移すならば、産業の主役は生産性の向上が期待しやすかった重化学工業から知識集約型工業、流通、建設、サービス業等の部門に移っていくものと思います。これらの部門では重化学工業におけるほど生産性の向上が容易でないとすれば、公共部門主導による福祉重点型の経済運営に移れば移るほど、経済の高い成長率を、いままでのような高い成長率を維持していくことがむずかしいと考えなければならぬと私は思っております。このように、日本経済の成長率が、これからある程度低下をするということはやむを得ない宿命にあるとするならば、一九六〇年代の年平均実質成長率二・一%というようなものに対して、昭和六十年目標ですから六十年代までの、いまから十四、五年の間に、年平均実質成長率一〇%の成長を期待するということは、少し多過ぎるのではないかとも思います。というのは、総理も、一〇%は何も自分は固定的に考えておるものではないということは、かねてからおっしゃっておられるとおりでありますから、もちろん一〇%とお考えになっているとは思いませんが、しかし計画をこれから策定をしていこうと、特に長期経済計画を経済企画庁において進めていかれるとすれば、まずやはり一定の成長率の予想を立てなければならぬと思うのです。そうしてまた、これが計画の中心にもなるものでありましょうし、非常に重要な一つ条件であります。政府は、いまもちょっとお話がありましたが、長期経済計画を立てる中において、大体どの程度のものを考えていかれようという心組みなのか。そして、これは十二月の半ばごろにはでき上がるというようなお話をいま承りましたが、この点はいいんですが、これと非常に関連の深い新全総、これは、いままでの例で言うと、なかなか時間をかけ過ぎておると思うのですが、あんなにかけてはもう意味ないと思うのです。で、この新全総の総点検をやると言われておりますが、総点検を至急にやって、案を立てて、この経済計画と合わして今後の中心にしていくべきである、こう私は思います。  経済企画庁長官にお伺いするのは、大体まあ経済成長率というものは、いまの高成長から大体安定成長にいくという程度の御説明でいいんですが、そういう感じなものなのかどうか。  それから新全総を早くやる——少なくとも来年の夏ごろまでにできないものでしょうか。私は、希望としては、少なくともそのぐらいなうちに、ひとつ立ててやっていただきたいということを希望するのですが、その点、お伺いをいたすわけであります。
  102. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) 新しい長期計画は、きょう午前の御質問にもお答えしましたように、福祉充実、国際協調、この二つの大きな柱を立てて、目下、総理の諮問によりまして経済審議会で策定中でございます。まだ結論は——十二月半ばに最後の結論を得るのですが、いままでの検討の模様からいいますと、成長率は、最低非常に少なく見て七%、それから多く見て——多く見てというのは最高ですから一〇%、大体七%ないし一〇%の間に成長率がおさまるものだと、こういう見通しでやっております。したがいまして、先ほどの御質問のとおり、福祉充実でいくんですから、どうしても財政主導型になりまして、いままでのような民間設備主導型というのとは方向が変わってきますから、大体そういう線でおさまると、安定成長の線でいくと、かように思っております。  一方、新全総の問題は、御承知のとおり、非常に公害問題をはじめ環境問題が重大になりまして、したがいまして、いま総点検をやりつつあるのですが、しかしなかなか大きな問題でありまして、ひとり委員会ばかりじゃなくて、やはり、いま日本列島改造懇談会がありますが、あの委員なんかの御意向も一方で承り、また、地方庁とも非常に関係が深うございますから、地方庁の意見なんかも承り、そうしていわゆる八項目にわたりましていま点検をやりつつあるわけですが、そこで一日も早く急ぐ必要があるというので、先般も国土開発審議会を開きまして、とにかく八項目にわたってそれぞれ早くまとめて、少なくとも中間報告といいますか、それを本年度じゅう、この三月までの間に中間報告を得たいと、その中間報告というのは相当念の入ったものでありますので、おおよその見通しはつくものでありますが、とにかく公害問題などに今度真剣に深く取り組んでいくものですから、相当時日のかかることはこれはしかたがないわけでございますが、いま申したような中間報告によって体制をきめて、そうして同時に、最後の締めくくりをやる、一日も早くその完成を見たい、こういう考えのもとにいま進んでおることを御報告申し上げます。
  103. 米田正文

    ○米田正文君 次に、土地問題でございますが、列島改造論の成否は、土地問題をうまく解決できるかどうかにかかっておるといわれておるところで、私どももそう思っております。工場再配置にいたしましても、土地利用計画にいたしましても、日本列島全体から見た総合計画と、それから個々の地域の利害とが、常に必ずしも一致しないところに問題が今後出てくると思います。もちろん、地元の納得しないものを実行するわけにもまいりませんから、事前の話し合いを十分していくということが必要であると思いますが、日本列島改造というような壮大な事業を実行するからには、何よりもやはり私は、国家的見地からの計画というものが優先をしていかなければならぬと思いますが、総理はどうお考えでしょうか。
  104. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 列島改造を必要とするという理由について、国民の理解を求めるようにしなければならないと思います。そのためには、日本は、明治から百年間都市集中によって国民総生産と国民所得を増大してまいりましたと、しかし現在は、都市集中のメリット、デメリットが相半ばする。公害問題等を抜本的に解決をしたり、都市居住者に住宅を与える等のことを考えたりすると、これ以上過密の過度集中を是認することは、かえってデメリットが大きくなるのだということを十分述べなければならないわけであります。そうすると国民は理解をいたします。それで、現在の上になおコンスタントに何%かの成長を続ける、この成長を活用して高い福祉社会をつくろうということの青写真を国民に提示をしなければならないときだと思います。また、従来のように、公害問題が起こっておりますから、いままでのように、重化学工業中心であったり、生産第一主義ではならないわけでございます。公害を起こさないような、公害を伴わない生産ということでなければなりませんから、知識集約的なものにもなりますし、また、その成長を活用するような成長活用型、言うなれば、生産第一主義から生活主義への転換をはかっていかなければなりません。そうすると、土地とか、緑とか、水とか、これから生産に必要な労働力とか、一次産業との労働調整というような問題を考えると、局限された地域に、これ以上生産を積み重ねることはできないということになりますので、どうしても、列島の可能な部分を合理的に活用していく。そしてまた、六十年くらいの問題をいま問題にしておるわけですが、これから十三年や十五年で日本がなくなるわけじゃないのです。まだまだ百年も千年もこの日本列島というものに、われわれ民族は住みついて、豊かな生活をたどっていくわけでございますから、後代の人がじゃまにならないように、後代の人にじゃまをしないように、計画的に列島改造というものをこれからも計画的に進めていかなきゃならないときだと思います。でありますから、そういうことは国が立案をして、そして国民皆さまの理解を求めなきゃなりませんが、これは列島改造というのは、言うなれば、いままで未利用であった地方を利用していかなければならないということでございますし、都市との関連性を十分つけながら開発をするということでありますから、開発方式の主体はこれは知事であり、市町村長であり、また、その住民が理解をするようなものでなければならないと、こういうふうに分けて列島改造ということは考えていかなきゃならないと思います。
  105. 米田正文

    ○米田正文君 いまのように、私は、やはり国家的な見地からの計画というものがまず優先をしていって、それはもちろん国民の合意を得たものであるという形をとるべきであると思っております。同じようなことが計画のみならず、土地利用の問題についても同じことだと思います。土地の問題のうちの地価については、どうも各地方で非常に先走って、そのために地価がどんどん高騰しておるという実情もあるやに聞いております。列島改造論が発表されるやいなや、もう土地が上がっておるというような実情も聞いております。で、こういうことは非常に悪い傾向ですけれども、どうもある程度やむを得ず起きておるというのが現状ですから、これがあまり進むと、地価が壁になって、この計画自体が進展しないというようなことになるおそれもないと言えません。そこで、私は、いまの地価対策について、税制でやるという案やいろいろ案があるようですが、それもたいへん私はけっこうだと思います。土地課税をすることによって規制をしていこうという考え方はけっこうですが、もう一つ前に私は問題があるような気がいたします。というのは、私の提案ですけれども、これは個々の土地問題とか、いまの計画の問題とか、いろいろありますが、そういうものの前に、この日本列島改造論という、改造計画というものを総体としてやるぞという国民的合意、そういうものがあって、そうしてその次にいろんな土地の税制もいいでしょう、土地利用法もいいでしょう、そういうものもこしらえていくという姿であるべきであって、個々に初めっから土地税制をやるとかなんとかいうのは、私は順序が逆だというような気がしております。まず、この日本列島改造をやるぞという大きな命題を国民に与えて、国民のそれの合意を求める、そうして国民が、それならそういう方針でやっていこうじゃないかという合意ができれば、私はもうそれからは次の各論ですから、税制にしても、土地利用法にしても、それは比較的簡単な問題として処理できるではないかという感じがしております。ただ、まあその合意を求める国民的運動を展開をするというようなことになると、いろいろ案があるとは思いますが、ちょっとまだいま私はここで具体的な案を発表するという意思は持っておりませんが、そういうようなお考えはどうだろうかということを総理にこれはお伺いをしてみたい。
  106. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あなたは土地の専門家でございますから、あなたの言うのは筋が通っておるんです。ですから、ほんとうならば、おくればせながら、そうしようとも考えておるのです。ただ、列島改造の案が——これから今度は長期経済見通しができます。そうして、これから日本の産業がどういうふうなものになるということだから、時間がかかるわけです。そういうものができてきますと、それを今度工業立地はどういうふうにするかということになりまして、国土の利用がどういうふうになるだろうということで、今度新全総の計画がかかるというのはそれなんです。まず長期経済見通しができて、そうして知識集約的な産業の内容がどういうふうになって、全国的に労働需給の問題とか、水の問題とか、公害調整の問題とか、いろんなものとのバランスを全部とると、とってみると、そのトータルはどうなるかというと、新全総計画にできるわけであります。ですから、そういう中でもって土地の利用計画とかあらゆるものができてくるということはもう当然のことであります。ただ、いま言われておるのは、そういうものができない前に、もうどんどんどんどんと土地の買いあさりをしているじゃないかという感じ、私は、日本の土地というもの、まだ未利用の土地はたくさんございます。いま昭和六十年を展望しても、いまの宅地の倍も要らないわけですから、これは全国の未利用の地域から考えれば、そんな大きな地域じゃないんです。農地の一割ということをバランスに——比較すれば大した問題じゃないのです。ですから、いまほんとうに値上がりするだろうと思って買っていますと、その人たちの利益は必ず確保されるかと思うと、私はそうだとは思わないのです。全然別な計画がつくられることもあります。そういう意味では、もうかると思って買っておった人が大損をする——大損をしなくとも、利益は得られないという場合も確かに起こってまいります。これは確かにそうなります。ただ、国民所得がうんと上がりまして、セカンドハウスを必要とするというようなことになりますと、またいまのように単純計算ではなくなりますけれども、必ずしもいま投資をしている人が全部もうかるような状態——じゃ、日本じゅうを全部買っておれば……。これから百年もかかってようやく利用する土地をいま買っておって、必ずそこが利用されるかどうかわからないのです。そういう意味では、私は必ずしも利益が確保されるとは思いません。ただ、やっぱり総体的に見ますと、地価がつり上げられておる、不当利得というものが得られるような状態ではよろしくないので、不当な投機的な投資をして、投機による利益というものは何で押えられないか。押えるとすれば税制しかないと。これは法人でやっているのは分離課税だと、いま個人でやっているわけじゃありません。法人のように、金が借りられる——また金融は非常に超緩慢であって、株と土地にしか投資先がないというときは、金を借りられる大企業は投資をするということになりますから、企業の持つ土地の譲渡利益というものを分離課税にできないかということで考えられるわけです。しかし、これは投機と正当な投資と、区別の問題もたいへんむずかしい問題があると思いますが、専門的に考えるべきだと思う。もう一つは、土地を買い占めておって吐き出さないと困るから、吐き出させるために市街化区域内の農地は、農地であっても宅地並みの課税をするという、同じ理由によって保有課税をしたらどうかと、吐き出すかどうかと、こういうものを考えられておるのであって、筋としては、あなたが言われるように、当然列島改造計画ができるときにはあらゆる制度が完備しなければなりませんが、それができるまで待っておれないということで、いまの現象に対しても、いますぐ必要な施策は当然とらなければいかぬと、このように理解しております。
  107. 米田正文

    ○米田正文君 次に公害問題についてお伺いをいたします。  日本列島改造は公害拡散になるではないか、公害まき散らしになるではないかという意見があることはもう御承知のとおりであります。したがって、この公害については真剣に強力にこれに取り組んでいかなければならぬ問題だと思っておりますが、公害を生じないようにするには、有害な産業廃棄物を全く出さないようにするか、あるいは出しても完全に無害化することができれば理想であります。そこまでは、望んでもしかし実際には無理であろうから、極力無害化をはかりながら、ある地域の廃棄物の総排出量の最高限度を定めて、その範囲内に規制するというのが現実の公害対策であろうと思っております。そうしてその限度は、自然の浄化能力の範囲内にあるというのが理想でありましょう。ところが、今日定められておる公害基準で、どこの何々は何PPM以下にしろというような基準が、ずっとたくさん定められておるわけです。しかし、それだけでは、それがずっとたまりますと、出ておるときはあまり有害でないんですけれども、それがたまってしまうと有害になるものですから、それもやっぱり総量の限度というものがあるわけです。で、私は、むしろこの総量のほうがこわいと思っておる一人であります。そういうものに対する、公害対策所管庁の環境庁長官の御意見を承りたいと思います。
  108. 小山長規

    国務大臣小山長規君) おっしゃるように、有害な廃棄物あるいは排出物をクローズドシステムによって、その産業内で処理できる、こういう技術がいまいろいろ開発されようとしております。まだ十分な段階にきておりません。  また、排出基準をよりきびしくしようということで、現在その準備も進めておりますが、おっしゃるように、一番こわいのは長い間にたまったところの有害物、これであります。ですから、今後の公害の行政に当たりましては、環境基準——大気なり水なりのこの基準を、人体の健康に影響がないというところで、この排出基準をまずつくらなきゃなりません。同時に、その基準を守らせるための排出規制、これは公害防止技術その他といろいろ関係がありますが、その排出規制をきびしくする。もう一つは、幾らきびしくしましても、抜け穴があっては困りますので、それを監視するための制度、これは人的な制度もありましょうし、それから技術的な制度もありますが、何人も納得できるようなその監視の制度、これを完備していく。この三つのかまえをまずとらなきゃなりません。  そうして、今後、日本列島改造その他によって、新規に、有害なる工場なりと世間が思っておるような、そういったような工場がつくられる際には、事前に、いまおっしゃったような総量規制の方式を用いて、大気なり、その周辺にあります水の許容限度の範囲内でしか有害物の排出は認めない、こういった総量規制の方式を導入して、そうして公害をなくするということを、いま真剣に準備をし、努力をしておるところでございます。
  109. 米田正文

    ○米田正文君 次に、通産大臣にお伺いしますが、イタイイタイ病を契機に、鉱山のカドミウム等、重金属による公害問題が大きくクローズアップされてきております。またことしになってから、宮崎県の登呂久鉱山の例に見られますように、休廃止鉱山にかかる公害問題、それから最近また問題になっております、長い歴史を持つ足尾鉱山の休山問題もあります。で、これらのいわゆる金へん公害−金へん公害の抜本対策が私は急がれると思っておりますが、通産省として、この問題を今後どう対処しようとしておるか、お伺いをいたしたいと思います。
  110. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 休廃止鉱山の処理の問題並びに現在出ている重金属に対する処理の問題、ともに非常に重要な問題でございます。特に休廃止鉱山の中には、徳川時代から採掘しておって、所有権者がもう転々と変わりましたり、また鉱業権が移転して、そしていま持っている人がどこかに行ってしまったというのもございます。そういう無責任なものに至るまで、全面的に目を光らせて、そういう公害が発生しないように処理したいというのが通産省の考え方でございまして、鉱山保安法という法律がございますが、それに基づきまして、いろんな点検とか、あるいは監督とか処理をやらしております。それと同時に、地方公共団体にもいろいろお願いし、協力いたしまして、補助金とか助成金とか融資とか、そのほかいろんな面について、さらに積極的な政策を進めていきたいと思います。しかし、情勢によっては、そういう休廃止鉱山の処理に関して、もっと積極的にやる必要もあるやに感ぜられまして、特別に法律もつくってみて、そして必要あらば規制を厳重にし、またそれに対する公害防除を徹底させよう、こういう考えに立っております。
  111. 米田正文

    ○米田正文君 時間がありませんから、最後、公害についてもう一つお伺いしますが、この公害対策を進めるには、公害の現状、原因、これに対処する方策等について徹底した調査、研究を行なうことが何よりも必要だと思っております。公害は内容が非常に複雑多岐でございますから、そうした調査研究機関をつくって、その調査機関は十分強力で、かつ弾力的な運用のできるようなものでなければならないと思いますが、政府にはいまも公害研究所のようなものが、対策機関がありますが、いまの、私は、政府関係の機関では非常に弾力がないところが問題だと思いますが、優秀な学者を弾力的に幾らでも集められ、必要によって幾らでも研究してもらうというような体制が、そういう機関ができればたいへんいいんじゃないかと、こう思っておりますが、要するに、そういう強力な公害研究機関を別に設けるような御計画はないか、これは総理にお伺いいたします。
  112. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公害問題は、これは経済社会全般にわたる大問題でございますので、国家的な見地で総合的に研究をする機関を設ける必要はあると思います。これはしかし、いろんな案が出ております、出ておりますので、これらの案も研究しながら、早急に結論を出しだいと、こう考えます。
  113. 米田正文

    ○米田正文君 次に、教育問題についてお伺いをいたします。  先だって、新聞ですが、出ておって承知をしたんですが、横須賀の市立久里浜中学校でシンナーに酔った生徒数人が先生に注意をされて、その先生を次々になぐりつけて、先生三人が前歯を折るというような大けがをした事件がありました。それから、たくさん事例があって一々申し上げられませんけれども、学校の卒業式時期になると、三月末ごろになると、各地で生徒が先生に暴行を加えるというような事件が頻発をしておるのも御承知のとおりだと思います。たくさん事例があります。こういう少年の暴行事件、不良化という問題は、社会の風潮や家庭生活のあり方にも大いに関係があることだと思いますが、何といっても、私は、学校教育に大きな責めがあると思います。そこで、私は世界の中の日本人として恥ずかしくない人間形成のために、道徳教育を充実振興していくことの必要を痛感しておりますが、文部大臣の御所見をお伺いをいたしたいと思います。
  114. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) ただいま、道徳が退廃してきているのは学校教育にその責任があるのではないかというお話ですが、学校教育にも、現場においても、また地方教育行政機関においても、それを指導、助言する立場にある文部省においても、大きな責任があると痛感しております。  一般に眺めまして、私はどうも学校教育が知育偏重になっておる。体育、徳育——ことに戦後自由思想を誤解するというのか、とにかく放任主義になりまして、子供を、一方において個性を引き伸ばすという面は非常によくなりましたけれども、個性の悪性を鍛練、矯正によってしつけるという面においては非常に欠くるところがあるように思いますので、昭和三十三年以来、道徳教育の時間を特設いたすように変革したわけでありますが、その指導のあり方を規定している指導要領の書き方なんかも、きわめて、あまり盛りだくさんで、それからむずかしい文言でございまして、現場の教師に徹底しないというような面もありますので、先般、指導要領の改定を行ない、これを次官通達をもって地方教育行政機関に通達をし、それから現場の学校にもこれを通達をして、弾力的な運用をはかるとか、徳育を重視するという方向に力を入れてまいる所存でございます。なお、御質問があればお答えいたします。
  115. 米田正文

    ○米田正文君 学校教育の振興については、施設や設備の充実をはかっていくということはもちろんでありますが、教員の資質の向上をはかるということが一番大事なことだと思います。  で、政府がいまとっております教員の資質向上のための施策をお伺いをしたいと思いますが、まあその一助と思いますが、総理も言われたんですが、教員を十万人ぐらい外国を視察さしたらどうかというようなお話がありましたが、私も行ってきた人の話も聞きましたが、たいへん行ってみてよかったと、やっぱり百聞は一見にしかずということだと思います。たいへん効果があると思います。これについて、ひとつ文部省としてはどうお考えになっておるか、文部省のお考えをお伺いをいたしたいと思います。
  116. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 教員の海外研修は、従来も、ごく数はわずかでございますが、やってまいっております。ことし、昭和四十七年度は九百人の高等学校、中学校、小学校の十年勤続程度のそういう先生方に海外研修をやってもらっておりますが、総理は十万人くらいと言われるんですが、小・中・高等学校全体で六十万人ぐらいですからね。まあ一カ月にしろ、三週間にしろ、あるいは三カ月にしろ、かわるがわるにやるしても、十万人一年に持っていかれた亡きには、やっぱりこっちのほうの教育にも差しつかえがございますものですから、きのうも衆議院で質問を受けて、総理は大ラッパを吹き、文相は小ラッパを吹いているというふうな話がございましたが、ことしは予算要求では一万一千五百人を三種に分かちまして、三カ月行く人はわずか百五十人、これは海外の子女の教育も手伝ってもらうと。それから、従来の一カ月の分は千五百人、あと三ヵ月の。これは事務が非常にむずかしいんですから、外国とあらかじめよく連絡して、学校も定めて行くんですからね、そうよけいには一挙にいきませんから千五百人。それからあと三週間、これは海外に行って見聞を広めて教養を高めてくるというような意味で九千八百五十人、合わせて一万一千五百人という三種類に分かって予算要求をしておるような次第でございまして、伸ばしてまいりたいと、こういうふうに思います。だんだん伸ばしてまいりたい、こういうふうに存じております。
  117. 米田正文

    ○米田正文君 次に、現在学校教育において、国旗を掲揚し、国歌を斉唱する儀式に対して、かなりの抵抗があって、これを拒否するような事例がいろいろとあります。これは、私は、国を愛するという精神を養う意味からも、これは憂うべきことだと思います。国旗や国歌に対する抵抗がどこから起きているかと思いますと、国旗、国歌が法的に明確でない、その根拠が明らかでないというような理由をあげておる向きもございます。で、国旗、国歌は諸外国では、おおむね法律や憲法で定められておるところが多いんですが、わが国でも、これを法律で制定するというようにしたらどうかと思いますが、これは総務長官にお伺いをいたします。
  118. 本名武

    国務大臣(本名武君) 国旗につきましては、御案内のとおり、明治三年太政官布告によりまして、日本の船舶に掲揚する国旗の制式が定められたのでございますが、それ以来、国民の間には広く日の丸が国旗であるということの考え方に立って、今日までその気持ちが定着していると考えております。また、国歌につきましては、別に法令、制度的には何ら措置はなされてなかったのでありますが、これもまた明治時代に、やはり君が代が国歌として国民に親しまれ、また広く国民が君が代を国歌として今日に及んでいるわけであります。したがいまして、このような定着された国民の感情、発意というものを、今後においてもつとめて尊重いたしてまいりたいと考えております。そういうようなことから、しいて政府としては法制化をするという考えは持っておりません。
  119. 米田正文

    ○米田正文君 次に、教育の政治的中立の問題ですが、かつて新聞紙上でも伝えられましたとおり、福岡県の柳川の高等学校伝習館においては、教師が教育の政治的中立性を侵害して、露骨な共産主義の宣伝教育を行なった。県教育委員会が教員組合の反対を押し切って、これらの教師に懲戒免職の処分を行なうという事件がありました。  程度の差はありますが、こうした偏向教育は、福岡県だけでなく、全国各地で行なわれておるということも聞きます。偏向教育を抜本的に排除し、教育の政治的中立性を守るために、文部省としても、断固たる態度をもって進んでいただきたいと思いますが、文部大臣の御所見をお伺いいたします。
  120. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 教育は不当な権力支配を受くることがなく、国民全般のために教員は中正な教育を施すべきは法令の定むるところでございまして、いやしくも法令違反の事実、こういうようなきわめて極端な事例でございますが、この伝習館の事件、したがって、文部省も地方教育行政機関も厳然たる態度をもって臨み、監督者たる校長に対しても教頭に対しても、また、それらの行動を行なった三人の教員に対しては懲戒免職という、きびしい態度で臨んでおる次第でございます。
  121. 米田正文

    ○米田正文君 最後に財政政策について一言お伺いをいたしますが、今回の補正予算の規模は六千五百十二億、国債の増発三千六百億円と、相当大型な補正であります。この補正は、来年度予算とも合わせて十五カ月予算を構成し、十五兆円の規模に達するものではないかと言われております。こうした予算の大型化は、政府の積極財政政策を示すものと一般に理解をされております。  世上には、最近までの不況や貿易収支の大きな黒字は政府が消極的な財政政策をとった結果であるとし、赤字公債も辞することなく、財政の積極化をはかるべきだという主張も見られます。これに反して、日銀筋はすでに警戒論を出しております。景気はもはや本格的な上昇局面に入っておる、財政面からこれ以上景気を刺激するという必要はない、予算の大型化は物価に悪影響を与え、インフレの危険があるということがその要旨であります。  こういう二面の考え方があるのでございますが、将来、高福祉政策や列島改造その他の事業に必要な財源をまかなうために、財政法の改正を行なってでも赤字公債の発行に踏み切るというような考え方が、政府の中にあるであろうか。この赤字公債の発行は悪性インフレを招くと一般に理解をされておる、非常な危険とも考えられているが、政府は基本的に今後どういう財政政策をとるつもりであるか。いままでの健全財政を踏襲して、さらにその大型化を、そういう趣旨の大型化をはかっていく趣旨であるのかという点について、これは大蔵大臣にお願いします。
  122. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) お答え申し上げます。  来年度の予算をどういうふうな規模にするかという問題と非常に密接な関係があります。いま、係において私どもも一緒になって、来年度のそうした規模、すなわち財政需要の問題についていろいろと審査を加えております。そうして、一方におきましては、本年度からもうすでに起こっておるところの、この景気の状況がどういうふうに進んでまいるか、これにも非常に注目をしております。われわれといたしましては、政府がいろいろ考えておりますその問題について、需要を十分にはかり、むだがないように、そうしてでき得るならば、一方におきまして非常に国民的にも希望されておりまする所得税、その他二、三の特殊の税金の減税も、これまた非常に国民の要望が強いものがあるのであります。これも考えてみたい。  ただ、財政の面からは、需要をはかると同時にまた国民の負担も考えなきゃいかぬ。たくさんのいろいろ大事な仕事をする場合に、全部が全部を、ただ税金でまかなうのが能ではないと思います。日本の現在の税金は、諸外国の税負担と比べてみまして、決してそう高いほうじゃございません。むしろ、どちらかといえば、所得税のごときも低目であります。こうしたことを考えますと、福祉予算の充実のために、非常に金があるならば、それにどんどん使ったらいいじゃないかということも考えられますけれども、しかし国民全体の現在の生活環境、生活状況等を見ますと、まだもっと上げていってしかるべきじゃないかと思われる点も各方面にあるのであります。それやこれやと需要が非常に多うございますから、それらを十分にわれわれとしては各省の御意見も聴取して、そして、やるべきことはやりたい。  ただし、ひとつ減税もやりたいわ、ほかの仕事もやりたいわ、しかしどうしてもそのために財源が足りないという場合に、公債に仰ぐということもあり得ると思います。当然あり得ると思います。ただ、この場合に、公債で将来大きな仕事をする場合には、その仕事のほうが先に立ってしまって、そしてその仕事の財源を調達するのに、公債なら幾らでもいいんだという考え方には、私はどうしても賛成しがたい。いわゆる赤字公債はぜひ避けていきたい。やはり健全な財源でもっていろいろな仕事をやっていきたいと、こういうふうに思っているのであります。  今後、年末年始までにはいよいよ予算の編成が始まることになりますが、それまでにわれわれとしては十分その仕事の内容等を検討し、これに対して、なるべくならば減税もやりたい、そして仕事も、非常にたくさん大事な仕事がございますから、これもやりたい、ことに福祉型の予算に方針を変更していこうという大きな御方針を総理も持っておられますし、また、いろいろな面にたくさん仕事がありますから、こうした面については十分気を張りながら、国民の負担−公債もやっぱりまた将来の国民の負担であります。そういうことを考えますと、最も有効なお金の使い方ということを考えて予算編成に当たりたいと、かように思っている次第でございます。
  123. 米田正文

    ○米田正文君 最後にもう一つ大蔵大臣にお伺いをして、私の質問終わりたいと思います。  今回の補正におきましても、またもちろん来年度予算においてもそうだと思いますが、円対策が重要な意義を持っておると政府も言っておりますし、私どももそう考えておりますが、大型予算も円対策として一体どれほどの効果ができ得るものであろうか、ちょっと先ほどもお話があったようですが、一体どの程度の期待を政府としては考えておるのか。たとえば、公共事業の拡大というのは円対策としてどの程度の効果があるか、何割ぐらいはあるというようなことがわかっており、そういう考え方でおやりになっておるであろうかということを大蔵大臣にお伺いをして、終わりたいと思います。
  124. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今回の補正予算、財政投融資の追加をやったわけですが、これが一体どのような効果を得るのかと、これは衆議院でも御質問がございました。しかしその後いろいろ試算をしてみたわけでありますし、まあいろいろな国際的なものもございますから、コンピューターを使ったりして試算をさしたものがありますから、これを申し上げます。今度の補正予算を御審議いただいておりますのは、一つは円対策であるということで申し上げるわけでありますが、四十七年度GNPに対しては大体一兆円程度の寄与をするであろう、四十八年度は二兆円前後。これは成長率にしますと、四十七年度に一・二ないし一・三%ぐらい拡大をするだろう。そして、これは国際収支そのものに対しては一体どのぐらいの寄与をするか。四十七年度黒字幅、三億ドルないし五億ドルは縮小するだろう、こういうことであります。五億ドル縮小するということになると、一次産品は全部自由化したと同じような効果があるわけでございます。一次産品の自由化という、全面自由化というのは、それはたいへんなことであります。ですから、それに比べて、この予算、財投の追加でもってその程度のものが影響があるとするならば、これは相当なメリットのあるものだと考えます。四十八年度の黒字幅十億ドルないし十二億ドル縮小する。だから、四十七年度と四十八年度を二年度合わせますと、十三億ドルないし十七億ドル、これはかたく見ても十億ドルないし十五億ドルは影響する、こういうことであります。  これは、いいことばかり申し上げては悪いので、悪い面も申し上げなきゃいかぬと思いますが、いいときには必ず裏があると思いますから。  申し上げますと、卸売り物価は、四十七年度にはほとんど影響がないだろう。ない。四十八年度には〇・一ぐらい上昇する。これは〇・一ないし〇・二ぐらい上昇するかもしれないという問題が一つ出ております。  消費者物価に対しては、要因が複雑なので即答しかねるということでございますが、これは経済企画庁で今後検討をしてもらわなきゃならない。しかし、四十七年度にはほとんど影響はない。四十八年度に何にもないか。何にもないことはないだろうということでいろいろ議論をしてみますと、まあ、あれば〇・二%ぐらいあるかなという感じでございまして、これは新しいコンピューターを使っての数字でございまして、必要があれば事務当局の作成した者から申し上げますが、それほど確率のあるものではないんですが、影響がないということではない、影響はある、こういう一つの証左であるということだけ申し上げておきます。
  125. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて米田君の質疑は終了いたしました。
  126. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 竹田四郎君。  竹田四郎君に申し上げますが、あなたの御要請の参考人日銀総裁佐々木直君が見えておりまするから、どうぞお含みください。
  127. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 官房長官にお尋ねしますが、昨晩、相模補給廠からM48戦車が二十六台搬送されたのですが、これはどこへ向けられるものですか。
  128. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) これは、私が答弁する件かどうかわかりませんが、ベトナムだと承知しております。
  129. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 あなたは、九月十二日でありましたか、衆議院の内閣委員会において、相模補給廠の戦闘車両は、これはベトナムに送らないように善処をする、こういう答弁をされたのです。まあ私が関知しているだけで、いままで戦闘車両約百五、六十両、それにきのうの晩からあしたの朝にかけてのM48四十八両、これが出ていくわけですね。これだけの車両の中で、ベトナムに行かなかった車両は何両ありましたか。
  130. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) 私も正確に米軍に聞いて調べているわけじゃございませんが、ほとんどはベトナムに行っていると承知をいたしております。
  131. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それじゃ、あなたが善処をするということは藤一体これについてどういう責任をお持ちになりますか。
  132. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) いまおっしゃるとおり、この相模総合補給廠において修理された兵員輸送車とか戦車というものがベトナムに行っておるということで、市民感情、国民感情から申しますと、これは阻止すべきだという意見がありましたし、また相模原あるいは横浜市長、あるいは野党の代表者の方々からも、そういう、私にやめさせろという陳情とか意見がずいぶんまいりましたから、私は市民感情として国民感情として、ベトナムに戦車が行くことは好ましいことではない、こういうことで、私はアメリカの大使館を通じて、日本の外務省から強く善処してもらいたいということをこれは申し上げたのであります。これは、政治の姿勢として私は当然のことだと思っております。  しかし、日本は御承知のとおり安保条約、そうして地位協定というものの責任を果たさなければならない義務が一面においてあるわけでありますから、アメリカの軍に対して、この戦車はどこに行けとか行くなとか言う権限もないわけであります。しかし、政治的には私はそういう姿勢をとり続けて、そうして外務省を通じて、あるいは外務大臣、事務次官を通じてアメリカ当局に対して、国民感情からいっても好ましいことではないからぜひ善処してもらいたいということを申し上げたのです。  その結果、外務大臣が十一月の二日ですか、明らかにいたしましたとおり、米軍のほうも五項目にわたる了解事項というものの了解がつきまして、外務大臣から十一月の二日に御報告申し上げたとおりのことがきまったわけであります。  それはすでに御承知のことと思いますが、戦車修理機能を縮小するとかいうことでありましたが、これは戦闘車全部にこの修理機能の縮小検討を及ぼす、徹底的にこの修理機能の縮小をはかります、それから新規に持ってくる戦車は原則としてこれを停止いたします、また修理済みの車両の搬出を終えた段階で、同補給廠の戦闘車の修理機能を大幅に縮小いたします、現在計画されている戦闘車両の搬出が終わりましたならば、原則としてベトナムに向けるような輸送はいたしません、その他、関東地域における米軍施設区域に存在するような基地の整理統合は積極的にこれを進めます、これは十一月の二日に、こういう合意に達したことが発表されたわけであります。  したがって私は、いまおっしゃるとおり、好ましいことでないから、日本の外務省を通じアメリカの大使館を通じて、私は私の立場において抗議と申しますか意見を、日本の国民の感情からいって好ましいことではないから善処してもらいたいということを言い続けてきた。その結果が、十一月の二日に外務大臣が報告されたような、こういう合意に達したのだということでございますから、私は私なりの努力を、いまおっしゃるようなことがありますから、続けてきた。その効果が、結果が外務大臣が御報告申し上げたようなことになったのでありまして、私は善処する努力が無に帰したと思っておりません。当然のことだと思って、一生懸命努力したわけでございます。
  133. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 あなた、そういうペテンを言っちゃいけませんよ。相模補給廠の修理の機能の縮小、停止というのは、閣議の了解事項できまったことなんですよ。あなたは衆議院の内閣委員会で、ベトナムに送らないように対処をすると大出委員に約束したじゃないですか。その問題とこんがらかして、修理縮小がその手柄でございます、こういうようなことは国民に対してあなたは責任を持ってないですよ。いいかげんですよ、それは。
  134. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) 私は、国民に対して責任を持っていないという感じはちっとも持っておりません。私はアメリカの大使館を通じて、強くこの意見外務省を通じて申し入れておるわけでありますから、その結果、善処されたという結果が出てきたわけでありますから、私は私の立場において、政府の立場においても、当然、国民感情からいって、そういうことはあるべきだということを強く申し入れてきたわけであります。閣議了解の事項は事項として、機能の縮小、停止をいたします、努力すると、そして、できるだけベトナムに車が、戦車が行かないように努力しますということを申し上げたのでありまして、その結果は明らかに出てきているということでございますから、私は、国民に対しても十分ではありませんが、私の申し上げた範囲においては努力がなされた、実った、こういうふうに考えております。
  135. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まあ、それはあなたの見解かもしれませんけれども、国民は実はそう考えておりません。ベトナムで人が殺されている、しかも、ベトナムが和平に向かっている、こういうときに、安保条約はあるかもしれない、あるかもしれないけれども、何で南ベトナムにそうした戦闘車両を送らなくちゃならぬですか。これは、国民としてその点については少しも理解ができないわけであります。まあこれは見解が違いますから、この問題はおきます。  次に、建設大臣にお聞きします。  あなたは、横浜市長が、羽沢建設が六日の夜から七日の朝にかけて行なった千鳥橋の橋の修理に対して、市長が原状復帰命令を出したならば、あなたは、その命令は無効だと、撤回しなさいと、撤回しない場合でもそれは無効である、こういうふうなことをやったわけでありますけれども、これはいかなる根拠に基づいてそういうことをやったんですか。
  136. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) ちょっと待ってくださいね。めがねで見るからね。間違ったことを言うといけませんからね。どうかみな聞いてください。こういう書類を見ることがふえてでしてね。(発言する者あり)そのとおりなんですよ。こういうことです。横浜市長は、米軍による今回の千鳥橋と村雨橋の補強作業について、道路法三十二条の占用許可を受けるべきであるのにこれを受けなかったとして、作業を請け負った業者に対し原状回復命令を出しましたが、右補強作業の物件の設置は、そもそも同法第三十二条に定める道路の占用には該当しないものであり、横浜市長の命令は明らかに法の解釈を誤ったものであるので、大臣、私としては、道路法第七十五条第一項の規定に基づき取り消しを命じたものでありまして、妥当と考えております。
  137. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 道路法三十二条の第七号、「前各号に掲げるものを除く外、道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある工作物、物件又は施設で政令で定めるもの」と、こう書いてある。政令はどういう内容ですか。
  138. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 事務当局をして答弁いたさせます。
  139. 高橋国一郎

    政府委員高橋国一郎君) 道路法施行令の第七条にございます「(道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある工作物等)」という題になっておりまして、一項目から八項目あるわけでございますが、それに該当すると思われますのは、二項目、三項目ではなかろうかと思います。「工事用板囲、足場、詰所その他の工事用施設」、三、「土石、竹木、瓦その他の工事用材料」に該当するのじゃないかと思います。
  140. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これがそういうものですか。局長、これがそういうものですか。これがそういうものですか。
  141. 高橋国一郎

    政府委員高橋国一郎君) 横浜市長が、道路法三十二条の占用物件であるというふうに申しておりますのは、おそらくここの項目を指摘したのじゃないかというふうにわれわれは考えたわけでございます。ただし、これは先ほど読みましたように、工事用材料でございまして、ただいまの物件とは全く相違しておりますので、占用物件じゃございません。
  142. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 政令でなくて、その一項の七号ですね、七号の前文のほうとの関連はありませんか。
  143. 高橋国一郎

    政府委員高橋国一郎君) 三十二条には、「(道路の占用の許可)」ということで七項目があがっておりまして、先ほど先生がおっしゃいましたのはそのうちの七項目目、「前各号に掲げるものを除く外、道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある工作物、物件又は施設で政令で定めるもの」と書いてございまして、その政令で定めたものが先ほど申し上げました項目でございます。
  144. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 前のほうと関係ないのかと聞いているのだよ。
  145. 高橋国一郎

    政府委員高橋国一郎君) 前のほうと……。
  146. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 その七項目の、「前各号に掲げるものを除く外、道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある工作物、物件」、関係ないのかと言っているのです。
  147. 高橋国一郎

    政府委員高橋国一郎君) 先ほど申しましたように、「道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある工作物、物件又は施設で政令で定める」、つまり、そういう施設でもって、そのうち政令で定めたものだけが占用物件だということでございます。それで、先ほど申しましたように、政令第七条でもって定めておりますのは明らかに今回の占用物件には該当しないということを申し上げております。
  148. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それでは、私がこういうものを国道の上につくっても、あなたは何とも言わないのですな。——「もう一ぺん言わないとわかりません」と呼ぶ者あり)何回も時間をつぶさせるんじゃないよ。
  149. 高橋国一郎

    政府委員高橋国一郎君) 三十二条につきましては第一から七までございますが、そのうち、私はいま七しか申し上げておりませんが、第一は、「電柱、電線、変圧塔、」その他たくさん書いてあります。結局、道路の交通に支障を及ぼすような施設を占用物件というように申しております。今度の場合は、交通に支障を及ぼすような物件ではございませんので、施設じゃございませんので、したがって、占用物件じゃありません。
  150. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 政府委員に申し上げます。質疑者の質問の要領を十分のみ込んでやってください。
  151. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いまの答え、答弁してないのだよ、聞いてないのだもの。
  152. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 聞いてないとおっしゃいますけれども、向こうに着いてからだと話がわかるので、途中で言われると、背中で聞くわけにいかないので、話がわからないんです。
  153. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 冗談じゃないよ。
  154. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 竹田君、法制局長官から答弁させます。
  155. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 道路局長はいろいろお答え申し上げましたけれども、はっきりしたことは申し上げなかったかと思います。一つは、途中の御質疑で、第三十二条第一項第七号に、「前各号に掲げるものを除く外、」という字句があるではないか。これと前の各号との関係はどうかという御趣旨の御質問であったと思います。その点は、七号では、先ほど道路局長から申し上げましたように、政令でいろんなものをきめておりますが、そのきめる範囲は「道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある工作物」等である。それは前各号に、いろいろ六号まで並んでおりますが、そういうものは全部「道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある」ものとして占用の許可をとらせるわけでございます。そういうものはもちろん各号でいくけれども、それを除いた残りのもので「道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある工作物」等で政令できめたものは全部占用の許可をとりなさいと、そういう趣旨でございます。  それから第二の御質問は、新聞に掲載されましたその鉄板でございますか、そういうものを御提示になりまして、こういうものを、これは米軍ですか、羽沢建設ですか、そういう者が建設したんだけれども、これをほかの者がやっても建設省は文句を言わないかという御趣旨であったと思います。これは、建設省といたしましては、道路法の第二十四条という規定がございます、その道路法の第二十四条で、道路管理者以外の者が「道路に関する工事又は道路の維持を行うことができる。」という規定がございまして、その規定の適用として一定の作業を行なったものであるということで、これを行なうにつきましては、原則としては道路管理者の承認を要することになっております。したがいまして、このようなものということで——私は現物を見ておりませんのでさだかにはわかりませんけれども、今度の、具体の、まさにこれと同じようなものを他の者が設置したといたしましても、これは道路法第二十四条のただし書きで、「道路の維持で政令で定める軽易なものについては、道路管理者の承認を受けることを要しない。」、道路管理者の承認なしに道路の維持の作業ができることになっております。そのできる範囲で今度はやったものとして建設省では認定をしたものでございますから、建設省以外の——建設省と申しますか、今度の具体的な事件の当事者以外の者がそういうものを道路の維持として作業をいたしたといたしましても、承認と申しますか、全く問題はないという解釈に相なると思います。
  156. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それじゃ建設大臣ね、私が、先ほど新聞で提示をした一あなたは知っていると思いますが、こういうものを国道十六号線につくってもいいですね。
  157. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 私がつくってもいいねとおっしゃいましたけれども、つくってもいいか悪いかということは、いま法制局長官の話したとおりであります。
  158. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は法解釈を聞いているんじゃないんです。私がやったら建設省はそれについて文句を言わないねということを聞いているんです。
  159. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) あなたがおつくりになったら文句を言います。(笑声)
  160. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それじゃ、どういうわけですか。法制局長官の見解と建設大臣意見が違うというのはどういうわけですか。
  161. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) つくってもいいそうですよ。(笑声)それはね、間違ったことは間違ったで正直に言います。いいそうですよ。
  162. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 総理、よく聞いていてください。このつくった工作物というのは、車道が九メートル、そこに、六メーター二十のところにH鋼を敷いて、その上に覆工板を置いて、そしてその上をアスファルトで舗装しております。ちょうど、こう、山形になっております。一番高いところが五十センチ、こういう山が二つできているわけです。そうしますと、車道のあとの二メーター八十ですか、これが、通行するときには、ちょうどこことこのくらい高さがある。したがって、神奈川県警はこの二メーター八十の道路については通行を禁止しております。こういうものでも黙ってつくっていいですか、国民は、国道に。これは大臣に聞きます。
  163. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も専門家じゃございませんから、こまかいことは承知をしません。しませんが、いま、すなおに聞いておりますとね、法制局長官の言うとおりだと思うのです。これはつくってはならないという——現行道路法をつくるときには私は議員立法の立法者でございましたので、ちょうど二十年前でございますが、この問題を相当研究、勉強もしたわけでありますが、これは、いま法制局長官の言ったこと、現行の条文を見るとよくわかるんです。これは村道でも国道でも同じことですが、いま四メーターの橋しかかかっておらない、山道で。そこで車を通さなければいかぬという場合、やむを得ませんから補強をして、木を切ってきて橋の両側に添えて、そしてワイヤーで締めてそこを通る、そうして通ってもそれは法律上かまわない、こう言っているわけですから、これは四メーターの橋しかないところを五メーターの車をお互いが通さなければならぬ場合のことがありますから、そういう補強をしてやってもよろしいということは法律にあるわけです。だが今度は、ざっくばらんに言うと、これは横浜の市長がなかなかやってくれないし、そして建設省はなかなか、どうしても目的が達成できない。あれは、初めは、市は橋が落ちて一般の通行人に迷惑をかけちゃ困るから、戦車の通行は許さぬと、こう言ったのです。ですから、では戦車が——橋が落ちないように補強をいたします——補強をしてくれと、こう言っても補強しないから、じゃ今度は建設省が業者に命じてやらせたと、こういうことなんです。それは道路管理者の許可を得てやっておらぬからこれを取りはずせと、こう道路管理者は法律的には言えるわけです。そうすると、そこには、ちょうどいまの道路法の、車の運行を確保するために必要なときは、私人といえども、橋を補強したり道路構造を補強することはよろしいのだという条文があるわけでございますから、建設大臣は横浜市長の、道路管理者の異議を却下したと、こういうことであって、みんな違法性はないわけです。適法だと思います。これは適法なことでなければ、いかに何でも建設大臣が却下するわけはないんでありまして……。
  164. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そんなこと言ったらたいへんですよ。
  165. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は専門家じゃございませんから、あなたの質問に答えていわくということでありますから。そういうことだと思います。ですから、いま法制局長官が述べたことでありまして、まあ、違法なことをやったという、違法なことをやって戦車を通したということは絶対にないと、こう理解しております。  ただ、私、一つだけわからぬのは、道路法を審議しました当時、まあ、まる二十年前の話でありますから、錯覚かもわかりませんが、自分の家の前を舗装してくれと言うがなかなか舗装しない、舗装しないから個人でもって黙って舗装した、これは違法だと言っていろんな問題を起こすだろうという議論をしたことがあります。これは構造物がこの重さに耐えない場合というような、安全性という意味の場合、補強してもいいということになっているのか、そういうこまかい問題はわかりませんが、まあ私に突然問われれば、いま申し上げるだけでございます。
  166. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) いま総理の答弁の中に、最後に、家の前の道路をなかなか舗装してくれない、それを自分で舗装すると問題にされるという話がございましたが、先ほど道路法第二十四条のただし書きと申し上げましたが、ただし書きには、「但し、道路の維持で政令で定める軽易なものについては、道路管理者の承認を受けることを要しない。」とございまして、本来は道路管理者以外の者が道路に関する工事の設計及び実施計画について道路管理者の承認を受けて道路に関する工事または道路の維持を行なうことができるわけでございます。で、例外としては、その政令で定める軽易なものについて、しかも道路の維持については承認なしでよろしいと。で、その政令が道路法の施行令の第三条にございまして、「法第二十四条但書に規定する道路の維持で政令で定める軽易なものは、」ということで、「道路の損傷を防止するために必要な砂利又は土砂の局部的補充その他道路の構造に影響を与えない道路の維持とする。」という文言が書いてございます。それで、砂利または土砂を局部的にまくとか、その他道路の構造そのものには影響を及ぼさない——先ほどの、総理のあげられました例は舗装をするわけでございますから、道路の構造に影響を来たすということでアウトになる——アウトと申しますか、道路管理者の承認を受けなければいけない。で、承認を受ければもちろん可能になります。で、今度の場合は、本件のその道路の構造には影響を及ぼさないと、ただ鉄板をそこに臨時的に置いただけであるということに実際上の認定はされておるようで、私実際見たわけでございませんが、建設省の報告によりますと、いずれの橋についても鉄板を敷きまして、その表面は何かアスファルトかなんかで塗ったというようなことで、その道路の、まあいわば補強をしたと、補強作業であると。しかも、それはすぐ撤去するわけでございます。撤去すれば道路の構造−この場合は橋でございますけれども、その橋の構造には影響を及ぼさないということで、軽易なものとして承認を要しないということで建設省は認定しているものと思います。で、もちろんこれは道路を通行するため、今回の場合にはその村雨橋ともう一つの橋を通行するために、道路管理者以外の者が必要に迫られてやったわけでございまして、道路の維持、管理というような目的でなしにそういうことをほしいままにすることは、もちろん道路法が承認する問題ではないと思います。これはまさに道路の維持として、管理の一部である道路の維持として行なわれる場合のことを言っていることは、これは言うまでもない、当然のことだろうと思います。
  167. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 この政令三条というのは、たとえば道路に大きな穴があったと、そこを埋めるとか、あるいは小さな橋が落ちそうだから下に突っかい棒をするとか、こういうことを軽易な工事と言うわけです。九メートルある車道を六メートル二十にして、しかも車はこういうふうに行かなくちゃならないという、交通の安全上すら問題のあるようなものを道路管理者の許可なしに、かってにつくられたら、日本じゅうの道路どうなりますか、交通麻痺しちゃいますよ。私は、そういう意味では、いま写真でお示ししたその工事は少なくとも軽易な工事ではないと。軽易でなければ市町村長の——道路管理者の許可を受ければいいこと。それを受けずにやるというところに問題がある。総理、そのさっきの答弁を訂正する気持ちはないですか。
  168. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、法律家として争うという、議論を争うということになれば、議論はたくさんあると思うんです、両方ともね。しかし、違法性もないし、妥当性を欠くものではないと思います、私は。これはですな、普通から言ったら、あれだけの戦車が全部黙って運び込まれたんでしょう、どっかから持つてきて。そのときは何にも文句はなかったんです。(「知らなかったんだ」と呼ぶ者あり)そんなことありませんよ。あれだけの、四十八トンの戦車や千台の車が持ち込まれるときに、わからぬはずはないのです。しかし、そうじゃないのです。これは道路管理者が道路の損傷、保全ということ以外の事由に基づいて許可をしなかったというところから、八月から問題が起こったんじゃありませんか。それで、それはしようがない。それで、政府は、これはとにかく出さざるを得ない。しかし、そのかわりに、出さざるを得ないけれども、全部は出さない。千両もあるものを全部は出しません。出しませんだけではない。————————————具体的な話を全部して、そうして、その兵器廠の、とにかく縮小まで現実的には努力をしたのです。私も聞いております。そういうふうにして、最後はやむを得ずこれだけしか出さない、これだけはやむを得ぬと。こういうことを、政府がそこまで追い詰められたときには、これを何とか通すために——黙ってやったわけではない。何とか補強さしてくれと、補強に対して許可をしてくれ、そういうやりとりをさんざんやったけれども、遺憾ながら道路管理者からは許可は受けられないということで、真にやむを得ざる処置−私もそう思います。真にやむを得ざる処置として、政令も改正しました、それで補強もいたしましたと。その補強したということは、それはこまかく言えば、あれだけの工事が−全く穴を埋めるようなもの、あの政令を書いた時代のそういう感覚、全くそれ以内のものであるかというと、それはそうでないと思うのです。いろいろ、あれだけのものをみんなやっていいかと言えば、いけませんと言うくらいのものだと思いますが、この戦車を搬出しなければならないという、ずっと長い、三、四カ月間の経緯を見てくると、これはやはり違法性はなかった、妥当性もあったと、こういうふうにやはり理解をすべきじゃないんですか。これはあなたが私の立場になっても、政府の立場になられれば、やっぱりそうだと思うのですがね。(笑声)争えば、法律的な争いを言うと、それはいろいろなものがあると思う。では私が道路にひっくり返ってもいいのかという議論、それはそういう議論じゃなく、これは政府もこんなことをやりたくってやったのじゃありません。真にやむを得ない、そのかわりに、少しは出してやったけれども、補給廠はとにかくうんと縮めて、あとは持ち込んじゃだめだよと、こう言っておるので、そこまでやったのですから、そういうことで、やはり結果と、ずっと過去からの道行きを考えていただいて、何とかひとつ終止符を打っていただけませんか。
  169. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ————————。  それからもう一つは、先ほどの答弁では、私がそういうものをどこへつくってもいい、国民が、国道でも市道でも県道でも、どこにでもつくっていいというような話だった。そんなことをやってごらんなさいよ、交通も何も麻痺しちゃう。あなたはそれがいいと言った。それは取り消す必要があると言ったのですよ。
  170. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は言いません。
  171. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 あなたはいいと言ったじゃないですか。
  172. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は言いません。私が申し上げたのは、しろうとでございますが、こういうことをやってもいいんですかという質問に対して、それは道路法を制定した当時の考えから言うと、確かにそんなことはありましたと。山の中に橋がある、そこへわれわれは乗用車でもって乗りつけた、しかし、その橋は四メータししかない、どうしてもその幅が少ないので車が通れない、一その場合、材木を持ってきて橋を補強して通るということはあり得ることであります。われわれでもあり得ることであります。だから、そういうふうに橋を補強するというようなことは道路法上は許されておると思います、許されておりますと。ですから、そういうことを引用して、政府は答えておるのでございましょうと言っておるのでありますから、これは間違いありません、全然。
  173. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それじゃ、もう一回聞きますが、私がさっき写真でお示ししたようなことを私が国道十六号線でやったら、そのときにあなたはどうしますか、総理大臣として。
  174. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 委員長
  175. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ちょっと建設大臣、待ってください。
  176. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 先ほど第二十四条のただし書きで承認を受けない範囲について申し上げましたが、もう一ぺん二十四条について申し上げますと、道路の管理というものは本来道路管理者が行なうべきことは、これは当然でございます。道路法の第三章に、「道路の管理」と称して、国道以外について、建設省が管理する場合、都道府県が管理する場合、市町村が管理する場合、それぞれ国道、都道府県道、市町村道についての管理を書いてございます。その一番おしまいのほうに、「道路管理者以外の者の行う工事」として、「道路管理者以外の者は、第十二条、第十二条第三項又は第十九条から第二十二条までの規定による場合の外、」ということで、たとえば兼用工作物についてやる場合だとか、いろいろな規定がございますけれども、そういう場合のほかにも、「道路に関する工事の設計」、それから「実施計画について道路管理者の承認を受けて道路に関する工事又は道路の維持を行うことができる。」ということになっております。これは、本来道路管理者が道路の管理を行なう、道路管理の一部として道路の工事なり維持なりを行なうことは、これはもう道路法の大前提、大原則でございます。その大原則に対する例外として、道路管理者以外の者でもこういう場合に限ってやれるという趣旨でございます。したがって、そのできる範囲というものは、ほんとうに必要最小限度の範囲で、工事設計から実施計画についてまで道路管理者の承認を受けて、工事なり維持なりを行なうことができると。工事を承認なしで行なう場合はあり得ないのであって、「道路の維持で政令で定める軽易なものについては、道路管理者の承認を受けることを要しない。」、道路管理者の承認なしでも道路管理者以外が軽易な道路の維持を行なうことができる、それも必要やむを得ない限度でございます。今度の場合にも、ある特定の車両が特定の道路を通ってどこかへ行かなきゃならない、その特定の道路の部分について通行ができない、強度が耐え得ないので通行できない、その通行するためにはそこに何か補強をしなければならない、その補強をして、補強することによって道路の構造に影響を及ぼすようなことであれば、もちろん道路管理者の承認を受けることを要しますけれども、さしあたりは影響がないということで、承認なしで作業をしまして、そこで通行したわけでございます。その通行をするについては、もちろん道路交通法のほうの許可は所轄の警察署長から受けているわけでございますけれども、そういうふうに、いわば道路の維持としても合理的に必要な限度内において行なうものでございますから、いま御設例のような場合に、これも必要やむを得ない限度において、先ほど総理が例としてあげられましたように、どこかの橋を通る場合に、通れない、通るためにやむを得ず、そこにちょっと道路の構造に影響を及ぼさない範囲で、一つの維持として、ある作業を行なったということは、必要やむを得ない限度、合理的な範囲内において容認されるということに相なると思います。
  177. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そういう理屈を言ってたってしようがないのですよ。問題は、そのいま提示した、工事が簡易な工事でないということにすればいいんだよ。それを簡易な工事であるというふうに、こじつけをする。それだからおかしくなっちゃう。そういうことがいいということになれば、それは簡易な工事ではないと、そういうことになれば、これは話がわかっていくわけです。ああいう工事も簡易な工事であるということになれば、だれだってやっていいということだ。それをとめることはできないということです。そうなったらたいへんじゃないかとぼくは言っている。それでも相変わらず、あれは簡易な工事でございます、だから許可は要らないのです、こういう庶民の常識——あなたは庶民宰相と言われている。庶民の常識から、はずれたことをやるからおかしくなっちゃう。庶民の常識で判断してやっていけば、そのとおりずっといくんだ。その点をぼくは指摘している。だから、ああいうような命令書なんというのは、当然私は撤回すべきだと思う。
  178. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 許可したのは私なんですよ。総理大臣が許可したんじゃないのです。そうですから、私は、あれを見まして、いろいろな話も聞きまして、そうして、わずか一日でもできるような仕事だったものですから、簡易と、こういうように判断したんでありまして、そうして、そういう命令を下したんであります。そうでありまするから、責任はみんな私にあるんですよ。そういう点で、あなたは結局、そういうものの解釈が間違っておるんじゃないかと、こうおっしゃるし、私のほうでは、間違っていないと、こう思って判断したものですから一こいつは将来の大きな問題になると思いますよ、これはですね。しかし、私は、この立場に立って、ほんとうにそこまで踏み切らざるを得なかった。踏み切らざるを得なかったんであります。その踏み切らざるを得なかったということぐらいは私はわかってもらいたい、それだけはですね。どうかそういう点で。ただ、この問題はこれからきりっとしなければならない問題ですよ。やっぱり、いろいろ話を聞いておりますると、その解釈の問題についていろいろあるかもしれませんが、あとあとの問題です。全責任は私がやったんでありまして、そいつは私がどのような問題についても責任は負います−総理がやったんじゃありませんよ、そいつは。
  179. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 責任を負われたって困るんですよ、そんなものは。建設大臣一人がやめるだけで、あとは何ら関係ないのですから。そんなことで日本の道路が通れなくなるような方向が出てくることが私は問題であるわけなんです。だから、そういう解釈は引っ込めて、正しい解釈に基づいて、いわゆる法律を守って手続をちゃんとしてやりなさい。そうすれば問題は解決する。法律を守ってやらないところに市民が憤激を覚えたわけです。国内法をちゃんと守りなさいというのが、この戦車闘争の基本ですよ。常に国内法は守らないで、自分かってに、負けそうになると土俵をどんどんどんどんうしろへ持っていってやる、こういう政治をやっていたのでは、それは庶民総理としての看板が泣きますぞ。そういう点を総理はぴしっと見ていかなくちゃいかぬと私は思うんだ。建設大臣一人の責任じゃないですよ。政治の責任です。
  180. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) これは私の責任ですよ。(笑声)あなた、そうおっしゃいますけれども、私の責任なんですよ。そうでありまするから、そういう疑義の点はあとからひとつ議論して解決しましょう。(「いま議論しなければ……」と呼ぶ者あり)ここで議論すると——いいですか、議論しても。そんなにですよ。そんな、そんなことをおっしゃるなよ、そんな……。(笑声)それは竹田さんも、みんな大政治家なんだからさ、やっぱりこの、よくよく踏み切らざるを得なかったと、その得なかった者もかわいそうであると、そうして、それぐらいの側隠の情というものは、政治家というものは持ってもいいんですよ。そいつが長い語りぐさになりますよ、そういうことは。(笑声)それをだね、たとえば、武蔵坊弁慶が安宅関で勧進帳を読んだときに、それがうそじゃないかなんと言うよりもですよ、そいつを通してみなさいよ、ちゃんと。長い人間の語りぐさになりますよ、そういうことが。政治家として考えなければならないことなんですからね。それをあまり、ああこう言えばですよ、いろいろなことが出ますから、そんなことを言わないで、ここはあとの問題にしてくださいよ、どうか。あとの問題にしてくださいよ、ね。あとの問題にしてくださいよ、そいつは。(「休憩々々」と呼ぶ者あり)
  181. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 十分間休憩いたします。    午後三時五十九分休憩      —————・—————    午後四時二十二分開会
  182. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 休憩前に引き続き、予算委員会を再開いたします。  委員長より一言申し上げます。先ほど来の内閣総理大臣の発言中誤解を招く発言がございまするならば、速記録を調査の上、善処いたしたいと思います。  この際、建設大臣から発言を求められております。木村建設大臣
  183. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 私のことばの中で謹慎を欠く点がありましたので、訂正いたします。
  184. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 高橋道路局長
  185. 高橋国一郎

    政府委員高橋国一郎君) 先ほどの問題につきまして、事務当局からお答え申し上げたいと思います。  米軍によります今回の千鳥橋と村雨橋の補強につきましては、道路の維持であり、軽易なもので、しかも道路の構造には影響を与えない道路の維持に該当するものであるというふうにわれわれ考えますので、道路法二十四条ただし書きの規定によりまして、道路管理者の承認を受けることを要しないというふうに考えたわけでございます。
  186. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 本件に関して関連質問の発言を求められております。杉原君。
  187. 杉原一雄

    杉原一雄君 先ほどから竹田委員が質問しているのは、最もきびしい法の原点に触れた質問であったと思います。ただし、いま局長の答弁等でも明らかなように、車両制限令あるいは道路法、それぞれの各条にわたる解説、説明でございますけれども、法それぞれには法の原点がまたあるはずです。だから、たとえば制限令の第一条あるいは道路法の第一条、ここには道路の持っている任務あるいは管理、いろいろな問題等について、あくまでも道路本来の任務を高くうたわれているわけであります。たとえば、車両制限令の第一条によりますと、「道路の構造保全し、又は交通の危険を防止するため、道路との関係において必要とされる車両についての制限」云々と書いてあり、しかも、それは道路法に基づいていることを指摘しているわけです。道路法の第一条においては、この法律の目的をこのようにうたっているわけです。「この法律は、道路網の整備を図るため、道路に関して、路線の指定及び認定、」云々と、そうして、「もって交通の発達に寄与し、」、そこのあとが非常に大事だと思います。「公共の福祉を増進することを目的とする。」、こう書いてあります。でありますから、いま政府がとった処置等について、制限令の第一条ないし道路法の第一条にうたわれている精神が貫かれてはいないという意味では、私は、竹田君の考え方、私たちの考え方は一致しないと思います。  そこで、問題をもう一度原点に返してみたいと思います。  私の本会議における質問で総理もお気づきだと思いますが、六月の八日に、日米合同委員会において文書をもってアメリカに対して、相模補給廠からそうした戦闘的な車を出してもらいたくないという申し入れを厳重にした、七月三日重ねて事務的段階でやった、こういうことを確認しているわけです。だから六月八日から、十月の十七日に車両制限令を改正した、それまでの歴史的経過の中で、何が何でも改正をし、そして車を出さなければならなかったかということを、もう一度考えていただきたいと思います。その歴史的経過という中で目ぼしいものをあげますと、佐藤内閣がつぶれて、田中内閣が登場いたしました。そして、あるときは最高支持率が六四%の支持を得るというような条件まで、国民は田中内閣に大きな期待を寄せた。これが情勢変化の大きな一つであります。第二番目は、九月の上旬、ハワイにおいて、いま当選されたニクソンと田中さんとの会談があった。その中身は安保堅持であります。これはきわめて重要な会議であります。私たちはその中身を十分承知するわけにはいきません。第三番目は九月下旬の日中共同声明であり、両朝鮮の平和的統一への方向の大きな歩みであり、かてて加えて、嬉しいことには、ベトナム戦争が終結の方向に、たとえ忍者外交と名前を言われようとも、キッシンジャーの努力等もあったり、また、ベトナムの人民の戦い等によって平和への方向に前進している。この三つを総合判断したときに、いま二階堂官房長官が、全部ベトナムに行ったんだと、このような確認については、私たちは了解ができないわけです。  なお、本会議の黒柳議員の質問に答えて、総理が、車両問題でこう答えております。「車両制限令の改正は、道路管理者が道路の管理上の理由以外の理由によって」——「理由以外の理由」ということを、後ほど総理から明らかにしてほしいのでありますが、「通行の許可をしないというようなことで、法律の適正な運用が阻害されるような状態がございましたので、真にやむを得ず行なったものだということで御理解を賜わりたいと思います。」、こう言っておられるわけであります。なお、私の車両制限令の問題についての質問の総理の答弁は、速記録ではこう書いてあります。「米軍内部の趣旨の不徹底により、八月上旬の問題発生となったものでございます。」——「米軍内部の趣旨の不徹底により、」というふうに書いてあります。ここらあたりにまいりますと、総理、外務当局の努力の不足というのが逆に出てくるわけであります。そうした事情等について、先ほど、短い時間でありますけれども、この歴史的な経過の中で、建設大臣もやむを得ずと、非常に心配したんだけれども、このような断を下さざるを得なかったという理由、そのことを突き詰めて総理から、ひとつ明らかにしていただきたいということが一つであります。  もう一つは、先ほど予算委員会休憩中に、私は地方行政委員会の委員でございましたので、しばらく出席いたしました。わが党の占部議員の質問があったのであります。その質問の内容は、いま竹田議員の質問の内容とほぼ同じ質問をいたしておりました。そこで木村公安委員長は、今夜、九日です。九日も戦車がノースピアに運ばれるわけで、今夜はいろいろなことも考えられるけれども、今夜以後はそのようなことは絶対にありませんと建設大臣が答弁されたことは間違いないと思います。  そこで、これはだれが——こんな戦車が何であるか、ノースピアにどれくらいあるか、これがどこのほうへ向いて行ったか——この確認する所管大臣はだれか知りませんが、その該当大臣から答えてほしいのだけれども、これは、私の引用していることを明らかにしないと個人発想になりますから、朝日新聞の十一月八日の記事の中で、ノースピアにまだ六台ベトナムから来た戦車があります。M48、いわゆる傷ついた戦車が来ております。そこで今晩からあしたの朝までとにかく運ばれるでしょう。公安委員長の判断はそうですね。そこで、残ったいま陸揚げされてきたやつは今度はもう一度向こうへ入るわけですね。入らないで、すぐ帰りますか。おそらく帰らないと思います。入るわけでしょう。入ったら、直してまた出るわけでしょう。あなたは絶対ないということは、このことだけでもこれはあなたの言っていることは間違ってるのじゃないですか。ただ問題は、私はそれを肯定するのじゃありません。あなたの発言どおりやってもらいたい。その辺のところはどうなっているのか。これは木村さん、厳粛な問題ですから、これが間違っておったら「朝日」に文句を言ってください。ぼくは責任持ちません。朝日新聞の記事です。そういうことで見解を求めます。
  188. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 私はその報告に接して、そのまま話をしたのでありまして、ノースピアに六台の戦車があるとかというようなことは聞いておりませんですが、今度送られるやつだけで私はベトナム行きというものはおしまいだと、こういうように聞いておりましたから、そのとおり話をしたんであります。
  189. 杉原一雄

    杉原一雄君 知っている大臣、だれか言ってください。
  190. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 杉原さんが原点に返っての御質問でございましたので、この問題の原点は実は外務省なんでございまして、道路管理御当局側にたいへん御迷惑をかけておるのはこちらでございます。  で、御承知のように、日米間の地位協定によりまして、米軍は基地と基地の間を移動する権利を本来持っておるわけでございます。そして、それをわれわれは保障する義務を持っておるわけでございます。まあそのいい悪いは別といたしまして、私どもはそういう責任政府として条約上持っておるわけでございます。したがいまして、この条約を御批准に相なりました国会といたしましても、それはぞんざいにしていいとはおっしゃらないはずだと思うんでございまして、政府として精一ぱいその義務の履行はやってしかるべしという御態度であろうと思うんであります。ただ、国会でいろいろ御心配いただいております点は、それはそうだけれども、先ほどからお話がございましたように、ベトナムの戦争というものとなるべくかかわり合いのないようにできないかと、条約上権利は持っておるというものの、そうしてそれを保障する義務があるというものの、そこは何とか日本政府の努力によって国民の願いを可能な限り実現する方法がないかというお話によりまして、先般閣議で御了解になり、竹田委員からも御指摘になりました九月十二日の閣議の了解があったわけでございます。その閣議の了解のあとを受けまして二階堂長官から、ベトナム向けについては、そういうことのないように、できるだけ自分としても外務省を通じて善処したいという新聞に談話が出たわけでございます。私どもはそれを受けまして、再三にわたりまして米大使館当局とお話し合いをその後ずっと続けておったわけでございます。そこで、先ほど二階堂長官からも御報告がありましたように、相模補給廠の修理機能の縮小ないし停止と言っておりましたけれども、停止にまで至らなかったけれども、大幅な縮小という点については、日米両者の間で了解ができたわけでございます。  それからベトナム行きの問題につきましては、いま相模補給廠には戦車が七、八十台あるといわれておりますけれども、そのうち五十一台だけ送らせてもらいたいということ、それを搬出終了後は原則としてベトナム向けの輸送はとめますと、こういうことでございます。この原則としてという点が——原則というのは例外があるわけでございまして、その例外は、たとえば沖繩に海兵隊が若干存在しております。それからベトナム側で今後、いまある戦車の入れかえというようなことが将来あり得ようかと思いますけれども、そういったものが多少入る場合は考えられるけれども、それ以外はないと、こういうことでございます。  それからいまノースピアに六台戦車があるじゃないか、そうしてそれはどうするんだという話でございますけれども、これは沖繩の海兵隊から持ち込まれたものでございまして、五十一台の搬出が終わりましたならば、この六台は相模補給廠のほうに搬入させてもらいたいというのが米軍の希望でございます。したがいまして、私どもといたしましても、ベトナムに送ったらいいの悪いのという立場ではないわけでございます。したがって、政府として、政府がまたベトナムの戦争の当事者でございませんので、どうこうと言うわけにもまいりませんけれども、たびたび政府の申し上げているように、ベトナムの戦争全体の早期終息という点に最大の力点を置いて、アメリカはもとより、南ベトナム当局に対しましても、大局的な見地から戦争の終息を急ぐように慫慂いたしてまいっておるわけでございまして、禍根はそこにあるわけでございますので、そういう和平の到来という点に政治の問題としては全力をあげなければならぬ。そのわれわれが技術的に条約の義務を負っておる立場においてできることは精一ぱいのことをやったつもりでございますので、しかし、そういう条約上の義務を持っておりますけれども、しかし国内法令を無視してごり押しをするというようなことは、毛頭、われわれはもちろんでございますけれども、米軍当局も考えていないわけでございますので、国内法規を順守するということは地位協定の五条にうたわれておるわけでございますから、その点をクリアいたしまして、輸送を完了するということにいたしたいと、早速関係当局にお願いをいたしておる立場でございます。  最後に、しかし竹田さんが言われたように、いまベトナムの戦争がもう終結が近いのになぜいま大量の戦車が動かなければならぬのか、私はこれは素朴な国民等の疑問としてあると思うんでございます。で、私自身も、なぜそんなに動かなければならぬのかは正確にはわかりません。わかりませんけれども、これからは私の推測としてお許しをいただきたいと思うんでございますけれども、ベトナムの停戦後の状況を踏まえて北も南も、いまある武器が全然ベトナムの平原からなくなるわけじゃないので、それぞれ武器をある程度保持した状態において停戦して、そのあと逐次両方の軍備を縮小していくというような姿において停戦の実をあげていく手順をいま非常に慎重に踏まれておるのではないかというように私は判断いたしております。
  191. 羽生三七

    ○羽生三七君 委員長、関連。
  192. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 羽生三七君より関連の発言がございますので、この際許します。羽生君。
  193. 羽生三七

    ○羽生三七君 簡単に申し上げますが、竹田君の質問は国内法に基づいて行なわれたわけであります。私は国際的な視点で一点だけお尋ねをいたします。  それはベトナム戦争に対する認識、きびしさが足りないと思います、政府は。とにかく、あれだけの大ぜいのベトナム人民を殺傷しておるこのベトナム戦争、これに対して、戦車の輸送は明らかにこの戦争に対する協力でありますが、特にこれを極東の範囲について考えるならば非常に大きな問題があります。  一例を申し上げます。佐藤内閣のときに、当時の閣僚の方はお聞き及びくださったと思いますが、私、こういう質問をいたしました。ベトナムが日本に進撃すると思いますかと。いや、そういうことは考えません。そうならばそれは軍事的脅威ではないではありませんかと。軍事的脅威ではありません。軍事的脅威ではないのになぜ日本がこれに対する協力をするんですかと、それは国連に対して紛争の平和的解決を訴えておる日本の外交姿勢の根本と矛盾するのではありませんかと言いましたときに、そのときに初めてB52の沖繩からの発進は今後絶対認めませんという答弁がそこから生まれたわけです、協力はしませんと。それは極東の範囲外の問題でもあるし、あるいはベトナムが日本に対して直接の軍事的脅威ではないからであります。その軍事的脅威の何らないそのベトナムに、しかも、日本が極東の範囲外——これは周辺地域と言っておりますけれども、明らかに範囲外である。それに今度の戦車輸送、車両輸送等についてもすべて安保を優先さして、やむを得ないと、こういうことからすべてを皆さんが答弁され、解決されようとしておる。前提が全然間違っておるわけです。大前提を非常に間違えた解釈をして、そうして安易に問題を処理されようとしておる。私は時間の関係で多くは申し上げませんが、全くそういう意味でこのベトナム戦争に対する政府のきびしさが足りないと思います。特に前の内閣のときに、そういう疑問がいろいろある。本来ならこれはある意味においては事前協議の対象です。直接戦闘に参加するかどうか疑問であるから、ベトナム行きであってもこれは問題ないとされておりますけれども、解釈によっては事前協議の対象である、前内閣では外務大臣はこう言われました。そういうこともあるので、問題を整理して日米間で協議をするためにすみやかに日米間の協議を開きますと、こう言った。ところが、今度の内閣になってから、協議を開くどころか、むしろいいほう、つまり積極的に協力する方面にのみ解釈をしておる。きびしさが足りないと思う。私は非常に残念と思います。ですから、私はこういう質問をするとすれ違いになって具体的な答えが得られないので、むしろ国内法というような形で問題をとらえたほうが問題の性格が明らかになるので、きょうは主として竹田君はそこに重点を置かれたわけです、当面の問題であるからでもありますが。私のような質問のしかたはこれは大いに問題ではあるけれども、いつでもすれ違いの議論になる。だから、私もこれ以上多くは申し上げませんけれども、しかし、いまの内閣はその意味においては、きびしさが足りない。もっと深くベトナム人民に対するこの脅威、いろいろな犠牲に対する、アメリカの攻撃に対する日本の協力というものにきびしい反省をして日米間の外交折衝をすべきではないか。もっとアメリカに対して強く要求すべきことは要求して、チェックすべき機能を十分果たすことを私は強く要求をいたしたいと思います。  関連でありますから、これ以上は多く申し上げません。
  194. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 竹田四郎君。
  195. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、これは答弁してください。
  196. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ベトナムの戦争に対する日本の態度、それはきびしさが足らないではないかというおしかりでございました。仰せの御発言、よく理解できます。しかし同時に、日本といたしましては、日米の協力関係も非常に大事でございます。したがいまして、それぞれの問題につきまして、安保条約の運営におきましてはそういった点を可能な限り調和させるように全力をあげておるわけでございますことを御理解を賜わりたいと思います。
  197. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 先ほどの道路局長の答弁が一つ政府の見解とするならば、これは私は今後の道路行政というのは非常な混乱を起こす。何をやられても文句は言えないと、こういう前例を残したと思うんです。この点は総理に私はきびしく警告しておきます。たいへんなことになります。  それから国家公安委員長にお尋ねしますけれども、ゆうべの戦車搬送で、私どもがとらえただけで重体二人−脳内出血と全身打撲であります。重傷十人、あと軽傷者は数え切れないという状態であります。その中で逮捕者が百名以上出ております。こういうわけのわからないことを進めることによってあえて逮捕者を出す。その中にはたいへんな過剰警備もあります。私もそうした過剰警備で足を傷つけられるおそれがありました。そういうような中で百名余の逮捕者があるわけですが、これは即時釈放すべきだと思うんですが、釈放しますかどうですか。
  198. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 逮捕者は百十八名であります。そして警察官で負傷した者は四十五人です。入院しておる者は一名、ほかは軽傷であります。それから一般は六名でそれぞれ負傷と、こうなっておりまするが、いまあなたのおっしゃったような重傷者が出たという報告は受けておりませんです。それから逮捕者でありまするけれども、やはり逮捕するにはそれ相当の理由があって逮捕いたしておりまするから、それは調査いたしまして、そして調査に基づいて早く釈放する者は早く釈放すると、こういう方針をとりたいと思っております。
  199. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 あなたのほうは一般の市民のけがについてはたいして評価をしないからそういう結果になると思うんですが、これは即刻逮捕者も釈放すべきだと思います。  自治大臣に伺いますが、こういうふうな国内法をかってに解釈しまして、そしてどんどんどんどんと政府がアメリカに押されてかってにやるということになれば、地方自治体の意味というのは、私、なくなっちゃうと思うんですよ。あなたは少なくとも地方自治体の、地方自治を守る立場にある大臣だと思うんです。あなたの所感を聞いておきたいと思います。
  200. 福田一

    国務大臣(福田一君) 今回の問題につきましてこの市長がとられました態度並びに政府の見解等等を考えてみますと、要するに、法律の、ある意味においては、解釈の問題が一部相違しておる、こういうことではないかと私は考えております。そこで、そういうような問題が起きましたときには、これは十分その事態を把握しながら問題解決を穏便にはかっていくようにしていくのが私はいい結果が起きると思うのでありまして、そうして今度の場合は、建設大臣とこの市長との法解釈の問題でございますが、私といたしましては、やはりいろいろの観点もありますけれども、しかし、建設省がとられた解釈が私としては正しい、このように考えておるわけでございます。しかし、いろいろいま御意見もございました。御意見も承っております。こういうことはしかし特殊な問題でございまして、まあ、これが一般論として通用してくる、こういう事態は、将来も起きることはもちろんわれわれの好むところでもありませんし、また、そのようなことはないことをわれわれは期待をいたしておりまして、これによって自治が大きく傷つけられたというふうには私は考えておりません。ただ、こういうことがないことは好ましいことだと思っております。
  201. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そういう形でものをお考えになっているということであれば、これからの自治大臣はつとまっていかないだろうと思うんですがね。これは私は自治大臣にひとつ反省を求めます。  戦車問題、たいへん時間をかけてしまいまして、これで一応切り上げておきたいと思いますが、日銀の総裁にはたいへん長い間お待たせして、たいへんお忙しいところをおいでいただきましてたいへん恐縮でございましたが、これから四十七年度それから四十八年度の経済動向、どのようにお考えになっておりますか。特に物価動向、あるいは国際収支の動向、それから景気の動向、こうした点について御説明を承わるとともに、総裁は数回にわたりまして補正予算についての御懸念をたいへんお持ちになっておられたわけですが、そうした御懸念は一体どこにあるのかということもひとつ関連してお聞かせをいただきたいと思います。
  202. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 最初に、今後の景気動向の問題でございますが、御承知のように、この春ぐらいから徐々に景気は回復してまいっておりまして、それがこの夏以来いよいよはっきりしてきておるのが現状でございます。こういう状態はおそらく今後も相当長く続くと思います。四十八年度がどうなるかということにつきましては、まだ私もはっきりした見通しを持つことができないでおりますが、少なくとも四十七年度につきましては、政府の見通しのように、経済の実質成長率が九.五%には十分達する、あるいは多少それをこえるかもしれないと思われるようなのがいまの現状でございます。  そこで、そういう景気の中で、最近物価が少し上がってきております。それは卸売り物価でございます。卸売り物価は、日本では世界で最も安定しておると言える状態でございます。ことに四十六年はマイナスになったという非常に珍しい現象が起こっております。したがって、最近の上昇、相当目立っておりますが、長い目で見ますと、卸売り物価の水準が特に高いということはまだ言えない。ただ八月と九月と十月−十月はまだ確定数がはっきりいたしませんが一この三カ月の上がり方が非常に目立っておりましたので、われわれとしてはそれに対して注目を払う必要があるというふうに申しておるわけでございます。  それから一方貿易のほうでございますけれども、貿易の黒字は、依然としてわりあいに大きい。しかも、最近いろいろ円についてのうわさが飛びますもんですから、輸出は急がれ輸入の決済は延ばされるというような形で、実質的な貿易の黒字の上にそういう特殊な貿易の黒字がのっかっておるということになっております。今後政府においては第三次の円対策その他を実行に移されますから、その効果が逐次出てくるとは思います。しかし、どうもいまの状態では、輸出の伸びから見まして黒字幅が急速に減るということを期待するのはちょっと無理かと思います。したがって、四十七年度全体としての貿易の黒字は、やはり四十六年度と同じぐらいかあるいはそれより少し、場合によっては、上回るかもしれない。問題は、一四十八年度になりましていまのいろいろの措置の効果が具体的に出てくる。そのときの貿易の黒字は逐次縮小するものと、こういうふうに考えております。  それから第二番目の大型予算についての問題でございますが、いま申し上げましたように、経済の成長が予想よりもやや早く、景気も回復しておるということでございますし、それからいまのような物価の問題もあり、したがって、ここで補正予算を組まれることが必要であることはもちろんわかりますけれども、ただ、その運用につきましてはぜひ慎重にしていただきたい。たとえば、公共事業などの実行にあたりましては、その地域におけるそういう建設業の能力の状況、繁忙の度合い、そういうようなものをやはり具体的に頭に置いて予算の実行をやっていただきたい。そういう意味で景気の現状に照らすと、予算の実行には慎重な態度が必要であろうと、そういう趣旨で申した次第でございます。
  203. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうもありがとうございました。いろいろさらにお聞きしたいと思いますけれども、お忙しいところを来ていただきましたので、総裁にはお帰りいただいてけっこうでございます。
  204. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 竹田君に申し上げますが、日銀のほかの理事の方もよろしいですか、日銀関係はいいわけですか。
  205. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 はい。
  206. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 総裁、どうもありがとうございました。どうぞ御退席ください。
  207. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それから経企庁にお聞きしますけれども、いまと同じように、経企庁は経済動向をどうごらんになっておりますか。経済の見通しと同じなら、訂正と全く同じならばお答えいただかなくてけっこうです。
  208. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) 大体日銀総裁が先ほど申したとおりの見通しです。
  209. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵の事務当局、主計局長にお聞きしますけれども、主計局長、大蔵省としては当初補正予算については大体二、三千億ということを言われていたわけです。しかし、結果的には六千五百億という大型補正になり、しかも、財投にいたしましても五千億以上になってしまったわけです。大蔵省として、当初言っていたことがこういう大型予算になった経緯、これを大蔵省の側としてひとつ事務的にお答えをいただきたい。
  210. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) ことしの補正予算の規模につきまして、私どものほうから大体どの程度の規模になるだろうかということを公式の発表として申し上げたことはございません。ただ、与党の政調会等におきまして、義務的な補正の要因としてはどの程度の規模になるだろうかという質問に答えまして、それは災害復旧事業費であるとか、公務員の給与改定であるとか、あるいは米の生産調整関係費の増加、その他義務的経費の追加、また歳入として三税の税収の増加を計上することに伴う地方交付税交付金の追加等、大体二千四、五百億から三千億程度の数字になる、増加要因としてはその程度の規模になるということを申し上げたことはございます。その際に、この公共事業の問題につきましては、これは社会資本の整備を促進する、なおまた国際収支の均衡回復に資するというような観点において若干の追加を考える必要はあるが、その規模等については、本予算の事業の消化状況その他を勘案しなければならないので、現在のところではまだ申し上げられない、そういったような説明をしたことがございます。そういうようなことがございましたので、大蔵省の事務当局は、補正の規模としては二千四、五百とかあるいは三千億ということを考えているんだというふうに伝えられたのではないかというふうに憶測をいたしておりますが、私どものほうから補正の規模はその程度であるということを公式に発表したことはございません。
  211. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 おそらくそのぐらいのことしか答えられないんで、ほんとうの腹は、先ほど日銀総裁が言ったように補正の規模についてはもう少し慎重でなければ景気動向というものが過熱をする心配があるということであろうと思いますけれども、まあ事務当局としておそらくそのぐらいしか言えないと思うのですが、田中総理は補正一兆五千億にしろというようなことを新聞記者に発表したように伺っているわけでありますが、田中総理は、一兆五千億の補正ということは、どういう根拠で一兆五千億ということを言われたのですか。
  212. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一兆五千億の予算を組まなければならないというようなことを公式に数字を入れて話をしたことはありません。
  213. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まあ、いずれにしても、私どもはそのように理解し、結果的には事業費ベースで一兆五千億ということになった、こういうふうに私は理解しております。内部のことは、先ほどの何かの話ではありませんけれども、裏があるでしょうからわかりませんが、そういうことであろうと思うわけであります。  そこで、先ほども日銀総裁が言われましたし、企画庁の長官も言われて、日銀総裁は、企画庁の改定見通しよりさらに上回るだろうと、こういうふうにさえ言われたわけでありますが、私ども、学者からのいろいろな話を聞きますと、今日のGNPの実質伸び率というのは、まあ瞬間風速ということばを使っておりますが、一一%だと、こういうふうに言われております。この勢いでずうっとのぼっていくということになりますと、おそらく再び高度成長という形になっていく。そして、いままでひずみを直そう直そうとしていたのが直らない。財政主導型というのは、何も田中総理が発明したことばではないわけでありまして、これは佐藤総理時代からも財政主導型ということは口では言っておられた。しかし、実際は民間設備主導型になっていた。こういうことを見ますと、私ども、今度は財政主導型になったからいままでのような超高度成長というものは起こらないであろうと、こういうふうに言われても、どうもそれをそのまま信頼するわけにはいかない。また昔の古巣に舞い戻る、そしていろいろな生活上の不安というものを巻き起こすような気がしてならないわけでありますけれども、大蔵大臣は、この間の財政演説の中において、安定的経済成長のもとに、国民生活の質の充実をはかるとともに、対外均衡の回復を達成すると、こういうふうに述べておりますけれども、大蔵大臣、安定的経済成長というのはどういうことを言っているんですか。たとえば、経済の伸び率でいえば一体どのぐらいが安定的だと、安定的なモデルをひとつ国民に示していただきたいと思います。
  214. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 私は、専門家ではございませんから、いわゆる学問的な意味においての安定成長とはどういうことを言うのかということを数字をあげてはお答えすることが困難でございますけれども、しかし、ちょうどことしの六、七月ごろでございますか、あの時分に、私は、もう少し景気が出ていくんじゃないかという希望的観測を持って見ておったことがございます。その時分の上がり方は、きわめて微々たる問題でございましたけれども、一歩一歩と上がりぎみになってきておりました。私は、あの時分の気持ちが、ちょうど私の期待をしておった安定的にだんだんだんだんと上がっていくというかっこうになるのかなあと、もちろん一進一退は物価のことでございますから、あることは申すまでもないと、かように考えております。
  215. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうも、大蔵大臣のその答弁では、たよりなくてしようがないわけですね。一体、いまGMPの伸び率がいろいろいわれているのに、安定的成長が大体どのくらいの見当でなくちゃならぬということは、財政を預かる者としてですね、これが国家公安委員長なら私はそんなことを知らなくてもいいと思うんですけれども、大蔵大臣としては、そのくらいのことはもう少し具体的に国民にわかるように説明してくれなければ、私は、大蔵大臣としての、何といいますか、職務に忠実でないと思うんですがね。  これは田中総理に聞いたほうがむしろ早いかもしれませんけれども、田中総理は、列島改造論には一〇%と書いてありますけれども、一〇%というのを大体安定的成長と、そういうふうにお考えですかどうですか。
  216. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ過去に長いこと一〇%以上の成長が続いたわけでありまして、その意味では高度成長でございました。これは特に高度成長というのはどういうことかというと、バランスのとれない、ある意味においてひずみを生ずるような状態で、二次産業を中心にして鉱工業生産の伸びというものを中心にして非常に伸びてきたわけでございますから、そういう意味では高度成長でございますし、世界一般的に比べてみても、一〇%十六、七年というのは、これはもう高い成長である。高度成長、超高度成長ともいわれたわけでございます。これからの日本の安定成長というものが、過去のような状態そのままの引き伸ばしで安定か高度成長かとはいえないと思うのです。ですから、これは量から質へと転化をしてまいるわけでございますので、まあ中国のように国民総生産、GNPが二次産業だけではかられておるものではありません。日本のGNPは二次産業以外のものも含めてのものでございますので、いままでと同じような感覚で律することはできないと思います。これからの安定成長というものは、内容的に量から質へ転化していく過程におけるもので大体どの程度ということがはかられなければならないと思うのです。そういう意味で、高度成長というわけにはいかないんですから、安定成長ということでどのような長期経済計画が正しいかということをいま諮問しておるわけであります。これは経済審議会に諮問しておるわけでございまして、十二月半ばごろまでには答申をいただけると思います。それは、これから長い長期的な問題で考えますと、先ほども経済企画庁長官が述べたように、七%ないし一〇%の中に位置するものと思いますと、こう述べておるわけでございます。私も大体そうだと思います。私も、きのうもそういう発言をいたしましたが、七%から一〇%の中で、内容も今度長期福祉計画とかいろんなものを位置づけをしまして、そうして逆算をしてくると、大体年率幾らになるかという問題が出るわけでありまして、いままでの考えだけでは——あなたの言うのはわかりますよ。瞬間一一%にもなるものを、高度成長じゃなくて超高度じゃないかということを御指摘になるおつもりと思いますが、私はどうもそういうふうに、あなたと同じようにすぐオウム返しでどれが高度成長でございますとは申し上げられないわけでございます。
  217. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 過去三人の日本の経済力を大きくした大臣、池田総理、佐藤総理田中総理がどうなるかということでありますが、池田総理のときには、七%といいまして、実際上は一〇%ぐらいでしたか、そのくらい伸びたわけです。それから佐藤総理のときには、七ないし八%といいながら、十数%の実質の成長の伸び率だった。そうしますと、今度は、あなたが七ないし一〇だということになりますと、実質一二から一四ぐらいの成長率に経験上はなっていくわけです。そうはなりませんという具体的な計画というものを示さないと、せっかくここでわれわれが、国民全体が、ひとつ高度成長のひずみを直そうじゃないかというふうに、いまその点ではコンセンサスがとれていると思うんです。で、あなたが七ないし一〇%と、こういうふうに言われ、列島改造論には一〇%と書いてある。そうなりますと、どういうふうにしてそうなるんだということですね。それが、私が述べたように、一四%も一五%にもならないという歯どめは、こういう仕組みに変えたからこれはそうはならないんだと、こういうことを示してくれないと、やはりこの追加補正に関連して急激な景気の過熱を招くのではないだろうかと、こういう心配というものは出てくるのは無理ないと思うのですけれどもね。そうならないという、財政の仕組みをこう変えたからこうなりませんという点を、国民にわかるように、ひとつ総理から御説明いただきたいと思うのです。
  218. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 去年度は六%という非常に低いものでございましたから、対前年度比で伸びるということ、これは数字的にも伸びると思います。ただ、内容的に、いままでのように民間の設備投資主導型、あなたも御指摘がございましたが、民間の設備投資がうんと伸びている、そういう状態にはないわけであります。いま民間設備投資を行なうとすればどうするかというと、脱硫装置であるとか公害に関連する設備投資等が行なわれておるわけでございますし、量から質へと転換をしつつあるわけでございますので、GNPの伸びだけをいままでのような状態で律することはないと、このように見ておるわけでございます。  ただ、ことしは、確かに一〇%をこえるかもしれないという、当初の七二一%をはるかに上回るようなものでございますが、長期的な見通しとしてはどのようなものが最もいいのかということをいま衆知を集めて御答申をいただくということにしておりまして、それに合わせてわれわれもこれからの財政金融政策を進めるということになるわけでございますので、いまの状態では、ことしのGNPが当初の七・二%を上回っても、あなたがいま懇念されるような問題はないと、こう考えております。
  219. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まあ、そういうことは、この前の佐藤さんも同じようなことを大体おっしゃっていたわけです。しかし、実際には高度成長ということなんですが、また、あなたのこの間の所信表明演説の中でもどうも私ども懸念することは、成長活用論−成長があるから、その成長を活用しようじゃないか。なるほど論理はそうだと思うのです。しかし、それが、いつの間にか、成長活用論じゃなくて、成長なくして福祉なしというようなことばにすりかえられていってしまう、そういう心配というのは私はあると思うんですよ。あなたが幾ら否定しても、過去の経験がそうなんです。経験主義者で、あってはならないかもしれませんけれども、実際の経験はそうなんです。ですから、私は、この十二月にできるという経済計画ですか、その経済計画の組み立てというのは何がポイントになって組み立てていかれているのか、その辺のお話をちょっと承りたいんです。
  220. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) 前の質問者にも答えたと思いますが、福祉充実、そして国際協調と、この大きな柱のもとにいろいろな関係を勘案しながらいま作業を進めておるところですが、したがいまして、まだ結論は出ておりませんけれども、福祉でございますから、まず社会保障の位置づけというものを相当大きく飛躍的に扱わなくちゃならぬ。また、一方において、環境改善ですね。これは公共事業になる面が多うございますが、そういう面もいろいろな面を勘案しながらいま策定中でございます。
  221. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いままでもそういうことは言われてきたわけです。住宅建設計画だとか下水道整備何年計画というものはいつもできたんですが、結果的には、経済のほかのほうの生産的なほうの勢いでそういうものは実際は吹っ飛んじゃってしまった。だから、いつも、どんな計画を立てたって、その計画が計画どおり福祉が進んだことがない。私は、中心になるのは、財政計画をまずぴしっとつくる、財政計画に他の経済計画なりその他の計画を従属さしていく、こういう仕組みをつくっていかないと、ほかのほうの強い力、民間の設備投資とか何かいうような強い力に巻き込まれて、いつかどこかへ吹っ飛んでしまう。だから、ほんとうに総理が福祉の充実、福祉の長期計画をつくるというならば、その計画に財政計画というのをぴしっとつけて、その計画が国会で承認され、毎年度の支出というものが明確に計画と合わせて出されて承認される、実行が監視されるというような仕組みぐらいはつくらなければ、私は、もとのもくあみになってしまうんじゃないか、こう考えているんですが、どうですか。
  222. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘の方向でやらなければならぬと思います。いままでも確かに長期計画はたくさんあります。ありますが、みんな初年度は違うんです。これはもう治水十ヵ年計画、道路五ヵ年計画、公園整備計画、土地改良の何ヵ年計画、国立学校の何カ年整備計画とあるんですが、年次がみな違っております。ですから、なかなか御質問をされる側でも調査をするのにもめんどうなやり方だと思います。ですから、今度の長期経済計画と、そのあとに来る新全総など、いろいろございますが、こういうものとか、社会発展計画の改定、こういうものが行なわれるときには、やはり全部その中で、まず先ほども経済企画庁長官が述べましたように国際協力が一体どうなる。これはめどだけ出しているんです。GNPの一%やります、それでこの七〇年代の末には政府ベースの援助を〇・七にしますと、これは非常に大きなものを出しているわけです。この計画はほとんどもうできているわけです。それと、社会資本、生活環境整備というものの計画と長期見通しなどを織り込み、それに今度社会福祉計画、長期福祉計画、これにはもう財源の裏づけというものは当然なければならないと思うのであります。ですから、来年を福祉、年金の年にしたいと、こう私はいみじくも述べておりますのは、そういう意味でやはり今度の経済計画の中には福祉計画がちゃんと位置づけをされて、そうして年度割りにこうなりますという、ちょうど四次防のような、四次防よりももっとはっきりしなければいかぬと思うのです。そういうものが含まれた長期経済計画ということにならなければならないと、こうほんとうに思っています。
  223. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いま総理お話を聞いていますと、何か個別的にはなるほどりっぱな計画ができそうです。それで、どうも、総合的な見地が非常に欠けているような気がするんですね。一つ一つの計画は、なるほどそれは年次計画をつくり、財政計画をつけ、財源もつけるだろうけれども、総合的なもの、総合的な財政計画というものも横に組み合わされていかないと、やっぱり力の弱い省は言いたくても言えなくなっちゃう、ついあきらめてしまうと、こういうことになるわけですが、どうもその辺が何か抜けているような気が私はするんです、御説明の中で。
  224. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この内閣で十分勉強してまいります。
  225. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 勉強されるのはけっこうなんですが、勉強するほうは私のほうで勉強をしますから、ひとつあなたのほうは実行をしてください、政府の役割りは実行でございますから。勉強のほうは私どもでうんとしますから、ひとつ実行をしてください。  そこで、私は、田中総理が国民福祉の充実というふうにおっしゃっているんですが、国民福祉というものは、一体どういう概念なのか。国民福祉、簡単に口で言いますよ。これは一体どういうことなんですか。ひとつ庶民宰相としての、最も平均的な庶民的な国民の福祉というものは一体どういうものなのか、ひとつお述べをいただきたい。
  226. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先進国がやっております年金制度その他を完成をするなど、諸般の施策を行なうことによって、この国に生まれ、この国に住み、この国に死ねることの幸福を味わえるような、しみじみと思われるような社会制度をつくる、こういうのが新しい福祉に対する観念だと、こう考えていただけばいいと思います。
  227. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 わかりました。たいへん抽象的でおそらく国民はわからないと思うのですよ。わかる人もあるかもしれませんが、わからない人のほうが私は、多いと思いますが。私は、簡単に言って国民福祉というのは国民生活の安定だと、こういうふうに考えるわけであります。  田中総理は、幾ら貯金があるか私、知りませんけれども、まあ、いま国民平均百六十何万の貯金があるというわけです。で、世界じゅうで一番の貯蓄率の高い国民です。インフレが進めば進むほど貯蓄率も高くなるというのが、また、たいへんな日本的な特徴であります。それが、インフレが進むことによって、昭和三十五年から昭和四十六年で物価の騰貴率はおそらく二〇〇%以上いっているでしょう。三十五年に百万円の価値のあったものは、いま五十万円しか価値がない。国民に一生懸命貯金をさしといて、十年もたてばそれが半分になる。まあ、どこかでどろぼう行為にあっているわけです。そういうことを言わざるを得ないわけです。それには、私は、やはりその一番どろぼうの根源というのはインフレだろうと思うのです。だから、今度の予算でも、私は、インフレになるんではないかという前の小林委員の発言、これはたいへん重要なことだと思うのです。金を借りてるほうは得をするのです。当時、百万円借りた者は、五十万円だけ返せばいいのですから。価値ですね。金を借りている者は、このインフレによって得をする、貯金をする者は損をする、こんな不公平な経済のからくりというのは、私はないと思う。これは日銀が調べたことでありますが、先ほども総裁が八、九、十−八月は〇・七ですか、九月が〇・九、十月が〇・九、まあ大体十一月も〇・九らしいです。これだけ卸売り物価がずっと上がっております。過去の日銀で調査した例によりますと、卸売り物価が上がりますと、それは消費者物価に三・三%の形ではね返ってくる。これ、日銀の調査局が調べたやつで、タイムラグが、大体九カ月から十二ヵ月のタイムラグで来るという。なるほどいまは、消費者物価がおてんとうさまのおかげでたいへん落ちついているわけです。しかし、卸売り物価がこれだけ上がってくるということになりますと、少なくとも来年の九月ごろには、三・三の割合で上がってくるということになると、私は、たいへんな消費者物価の上がり方になると思う。そういうことがあるから、先ほども日銀の総裁が補正予算の運用については慎重であってほしいということは、そういう、内容から私は、言っていると思う。そういう点から見ますと、内需をつけるんだと、こういうふうにおっしゃるけれども、実際は公共事業ですね。約五千億、一般会計で五千億公供事業がついている。しかも、その大部分というのは道路整備費です。決して社会福祉費に大きなウエートがのっているわけじゃないのです。そうしてみれば、この大型な追加補正というものが私は、あなたのおっしゃっているような福祉の充実という方向には向いていかないのではないだろうか、こういうふうに思うのですが、どうですか。
  228. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この補正予算内容をごらんになればおわかりになるとおり、まあ小さい金額でございますが、福祉施設の整備費に対しては、本予算と同額盛っているものもございます。これは補正としては異例なことでございますが、そこにこれからの政府の姿勢というものをお認めいただきたいと思います。やっぱり道路整備とか鉄道の整備とか、交通機関の整備ということは、これは流通機構の問題を解決するための一つの重要な問題でございます。そういう意味で、私は、この補正予算というものは、それなりの理由を持ち、必要をまかなうものであるというふうに考えておりますし、先ほどもちょっと申し上げましたが、この補正予算を執行する過程において、ことしと来年二年度において、最低でも十億ないし十五億ドルぐらい国際収支に寄与できると、こういう見方をしているわけです。これはこまかく説明せよというと、私も専門家じゃありませんからできませんが、これはコンピューターででもひとつ出してごらんなさいと、こういうことでコンピューターがこわれておるといわれればそれっきりでございますが、こわれているとは思いません。しかし、これからはもうそういうものは、必ず予測をしながらやらなければならぬし、そういう考えでございまして、この予算の執行でインフレが助長されるというふうには考えておりません。ただ、御指摘があったように、卸売り物価が上がっております。〇・二、〇・五ですか、〇・七、〇・九ですか、〇・五、〇・九ですか、そういう状態、対前年度同月比というと相当な上がりでございます。ただ、これは中を見ると鉄鋼、それから繊維、木材、あとの二つは、これは海外の要因でございます。海外そのものも、だんだん物が上がってインフレ傾向にございますし、そういう意味で慎重に見なければならぬと思いますが、鉄鋼は不況カルテルの問題ですから、早くやめなさいということを御指示を得ているわけですし、いつまで続くものじゃございません。そういう意味で、これが消費者物価に——とは考えません。考えませんが、せっかくいままで各国と比べて日本でいいのは卸売り物価が横ばいであると、こういう一番よかったところが、このような事態であるということは、そのまま見過せるわけはないのであります。だから、あなたは天気がいいから消費者物価は四%台におさまっているのだと、それもあります、実際。ありますが、はなはだいいことだと思っている。それでも、いずれにしても物価が上がらぬほうがいいと思っているのですが、この予算執行でいま御指摘のあるような状態はこない、また、こさせてはならない、こう思っております。
  229. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私はそういう心配があるわけです。ねえ、総理、あなたコンピューターを持っているからいいわけですから、——その国内的要因だけじゃないと思うんですよ。いまの物価は、輸入インフレの問題というものも、これはやはり考慮しておかなければいけないと思うのです。しかし、庶民の受けるインフレというのは輸入インフレであれ、国内の要因のインフレであれ受けることは同じなんです。  そこで、総理に私お聞きしたいのですが、勤労者の世帯で衣生活と食生活、大体どのくらいの生活をしているとお思いですか。——いや、これは総理に聞きたいんですよ。ぼくは総理の感覚を聞きたいから、総理に聞きたいんですよ。
  230. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 新田調整局長
  231. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 委員長、答弁要らないです。いいです。私は、少なくともこれだけは、いまのアイドルになっている田中総理に答えてもらいたかった。総理がそれはかんべんしてくれというなら、私のほうから言います。  これは昭和四十五年度の総理府の調査です。私の調査じゃないんですよ、総理府の調査ですよ。これによりますと、年収百二十万円、四人家族勤労者世帯の平均は、牛肉が月に五十グラムしか食えないようになっている。一人当たり十グラムですね、月にですよ。ハムが三百五十グラム、約三十枚。これは四人で一ヵ月です。バター、あの小さな箱に入っているバターが、年に四本しか食べられない。一日のカロリーが、欧米では三千二百カロリー、ところが、日本では二千四百カロリーしか使えない。衣料生活については、そこの主人のワイシャツは、年に一枚しか買えない。子供のセーターは、年に一枚半しか買えない。主婦のソックスは年に一・五足しか買えない。主人のケミカルシューズ、安いやつでありますが、二年に一足しか買えない。ネクタイが、あなたは年に何本ネクタイを買われるか知りませんけれども、年に〇・五本しか買えない。せびろが四年に一着しかつくれない。レーンコートが年に〇・〇六着ですか。こういう状態がいま、勤労者の庶民の生活ですよ。まあ、その後二年間たっているから、幾らか違っているかもしれない。しかし、私は、これだけは——総理府の調査ですよ、総理大臣が大体このくらいの程度のことは、私わかってもらわなければ……。
  232. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、わかっています。
  233. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いま、わかったんです、いま、わかった。これでは、私は、国民福祉というものを幾ら口で言っても、私は、わからぬと思うんです。まあ、この数字は、こまかくおっしゃらなくてもけっこうですが、大体このくらいの生活ができているんだということが、総理自体の頭のコンピューターの中にちゃんと仕組まれていなければ、私は、どんな福祉計画をつくろうが、どんなものをつくろうが、私は、その点ではその方向へ行かぬと思うんですよ。いま、あなたのコンピューターに、そのデータ、ちゃんと入れといてください。いいですか。  そういうことでありますだけに、私は、インフレの問題というのを非常におそれるわけです。で、いろいろまだお聞きしたいことはありますけれども、この点については、私は、非常に心配をしております。その防止方法というものは、ひとつ十分考えていただかなくちゃいかぬし、特に私は、いま、ことしは老人問題が問題になっている。だから、ここでほんとうに福祉のことを考えるならば−各党いま老齢年金の金額について、いろいろ選挙前で出しております。おたくの党は、たしか五万円ですな。いつできるかわからぬ五万円と、こういうことでありますけれども、私どものほうも、最低四万円、平均五万円という線を出している。公明党さんのほうも、たしか六万円ぐらいの線を出しておりますけれども、いま、これをあなたは庶民宰相として国民のアイドルになっているならば、いままでの積み立て方式から賦課方式にしていくということぐらい、私は、あなたやるべきだと思うんですが、どうですか。
  234. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、積み立て方式から賦課方式に直ちにいってしまうということになると、将来の負担が急激にふえていくということでございまして、なかなか、いずれをとるかということは、問題があるようでございます。まあ私は、専門家ではございませんが、いまの積み立て方式を運用していくことによっても理想は実現できると、こういうことのようでございます。来年は、年金の年にしたいと各党みな案を出しておりますし、これは私も先ほども述べておりますように、長期経済計画をつくるときには、長期的な福祉計画もその中に位置いたしますと、いたさなければなりませんと、こう言っておるのでありますから、いま御指摘になったように、直ちにここでは申し述べられませんが、来年をスタートの年にしたい、こういうことだけは申し上げられると思います。  その中で、もう一つ老人年金の問題がございますが、これは二千三百円を三千三百円に十月からするということであります。これを一万円にしたい、二万円にしたいという案もありますが、多いにしくはない。しかし、一万円ということでありますが、その前段一万円にして、まず、来年は五千円にするのか、来年すぐ一万円やれるのかというと、一万円にすると、五千数百億円の予算が必要である。それから五千円にしても、二千億余の予算が必要でございますと、こう述べております。勉強はしているんです。勉強はしているんですが、いま取り出してこれだけは来年やります、これだけやりますと言ったら、とても来年度の予算は組めるわけがございませんので、来年度の予算の中で、しかし、年金その他福祉の問題に対しては、積極的な姿勢をとりたい、こういうことで御理解いただきたいと思います。
  235. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 あなた新聞をごらんになっているだろうと思うんですが、前に、精神的な障害のある自分の子供を七十幾つのおとうさんが、もうめんどうみ切れないといって殺した問題があるでしょう。そのほか、夫婦で暮らしていて、片一方が病気になれば、もうこれはほんとうに心中をする、お互いに殺し合う、こんな情ない国家ってないと思うんです。あなたが福祉を論ずるならば、少なくとも四十八年度は、老人に対してはこのくらいにしますと。とにかく、二人で若干病気をしても生活ができる、大体、人並みの生活ができる、このくらいのことにここで論議を出してくれなければ、昭和六十一年に五万円もらっても、これはしようがないです。やはりそういう方々は、来年からもらいたい、いまからもらいたいんです。私は、それを出してもらわなくちゃいかぬと思うんです。  もう一つ申し上げましょう。これだけ福祉を言うならば−私は金はかからないと思うんですが、たとえば、心身障害者。この人たちは役所に来れないでしょう、大体。足の悪い人がいま役所に来れますか。来れないでしょう。だれかに助けられて来なければ、独力では来れないでしょう。少なくとも、役所に車いすで来れるようなことをするくらいのことは、私は、そんなに金のかかることじゃないと思うんですよ。そんなに内需をふやさなければならぬというなら、なぜそういうものを今度の補正予算の中に入れなかったか。口のきけない人がいますよ。これで選挙になる、立ち合い演説会に行って各候補者の演説を聞きたいと思っても、通訳する人がいないんです。手で通訳する人ぐらい各市町村——市町村全部とは言えないでしょうが、そのくらいのところには、私は、配置をしておくべきだと思います。それから盲人の方も同じです。だんだんだんだん自分たちの職域を荒されている。はり、あんま、きゅう、こういう人たちにどうして職域を与えてやらないか。職域開発センターぐらいのものは、厚生省がつくっていいんじゃないか。労働省もそういうものの訓練施設ぐらいつくっていいんじゃないですか。そういうものは、何一つこの補正の中に出てきていないんじゃないですか。私は、こういう姿勢を見ると、どうも福祉の方向じゃないと思うんですが、ひとつ、総理あるいは厚生大臣労働大臣から、こういう点についてやる気があるのかないのか、御答弁いただきたい。
  236. 塩見俊二

    国務大臣(塩見俊二君) ただいま、老人でございますとかあるいは盲人その他の方々に対する施設その他を補正予算でなぜやらなかったかと、こういう御質問のようでございます。私ども、ただいま御指摘のような問題は、もちろん非常に重要なことだと考えておるわけでございますが、そういったきめのこまかい施設につきましては、相当事前に各地方団体その他施設者等とも打ち合わせをいたしまして、そうして実行が可能だというめどをつけなければならぬわけでございまするが、しかし、今回の補正予算の場合におきましては、円対策等を中心にいたしまして、急遽組まれたようなことで、したがいまして、そういうきめのこまかい点には手が届かなかったのでございまするが、病院でございますとか、あるいは老人ホームとかあるいは保育所とか、従来から計画のございました分等につきましては、御承知のとおり、若干補正予算に計上いたしておるような次第でございます。
  237. 田村元

    国務大臣田村元君) 心身障害者の対策が十分であるかどうかということは、とりもなおさず、その国が社会福祉が十分に行なわれておるかどうかというバロメーターであると思います。そういうことで、心身障害者が健常者とともに生きがいのある生活を送る。また、それを政府が送ることのできるようにして差し上げるということは当然のことでありますから、いわゆる職域の確保とか、拡大とかいうような問題、あるいは事業主に対してごあっせん申し上げるということは当然のことであろうと存じます。また、現にそれを相当やっておるわけであります。  そこで、御指摘の盲人でございますけれども、すでにカナタイプその他十五職種ほど公表いたしておりまして、それを進めております。雇用促進事業団に職業研究所というものがございます、御承知と存じます。そういうところを中心として工業用ミシンとか、電話交換等、盲人の方でもできる、そういうものについて鋭意開発をしていくということは、いまも進めておりますし、当然やらなければならない問題であります。  それから、障害者専門の職業センターの増設等によりまして、きめこまかくやらなきゃならぬことは当然でありますが、同時に、雇用奨励金や職場適応訓練等の充実をはかっていくことも当然でございます。  職業訓練所の問題を先ほどおっしゃいましたけれども、心身障害者のための職業訓練校は全国に十三ヵ所、収容収能力は約二千人ございますが、盲人のための独立したものをまだ持っておりません。けれども、心身障害者用の職業訓練校として相当の対策をいたしております。と同時に、官庁においては相当雇用関係が進んでまいりましたが、民間に対しても私どもいま一生懸命お願いをしているところでありまして、先般も表彰したところでありますけれども、心身障害者に対する雇用も非常に理解ある態度で進めていただいておる事業主がふえてまいりました。この点はまことにありがたい話であります。  盲人の訓練につきましても、先ほど申し上げましたような職業訓練校を中心に、また委託制度や、公共職業訓練の実施ということをこれからも鋭意努力をいたしていきたいと思います。  いずれにいたしましても、私ども、この点につきましては最も重要なことであると考えておりますので、率直に申して、異常なまでの熱意を持って、いまこの問題に取り組んでおることを申し上げておきます。
  238. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は個々の問題をどうせよ、こうせよという前に、ほんとうに新しい福祉の国家を建設するというならば、なぜこれだけの大型の補正予算を組む中にそういうものを入れないのか。家をつくる、建物をつくるのが円対策なのか。私はそうじゃないと思う。こうした人間並みに扱われない。ある人はこう言いました。福祉とは人間並みに扱うことだということを言っております。人間並みに扱うのに、なぜ予算出せないのか。なぜそれが円対策にならないのか。衆議院や参議院の設備を改善するところには、長々と国際収支の均衡をはかるためにと、一々書いてある。こういう建物しかつくらなければ、労働者の賃金を直す、上げる、あるいは公害を除去していく、こう設備あるいは建物を建てなければ、これは一体円対策にならないのか。私はそんなことないと思う。そういうふうに考えてくると、どうも今度の予算、福祉ということを言いながら、円対策ということを言いながら、一部の人たちが工事によってもうける、物をつくって売ってもうける、こういう経済成長の方向への予算でしかないということ、これを現実に示している。もう仙台では役所へ行くには車いすで行けるんです。歩道のところの高いへり石はスロープになっているんです。役所へ行けばその役所の中へ入れるようになっているんです、独力で。そういうことのために仕事をやったなら、私は金ももちろんかかるでしょうが、どんなにみんなが喜ぶか。そういうところが、私はきめこまかい福祉の政策がこの中に入っていない、その点を指摘したいと思うんですが、総理、どうですか。
  239. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お話はよくわかりますが、いま厚生大臣労働大臣が述べましたように、毎年の年度予算で積極的にこれと取り組んでおります。しかも、これからはもっともっと積極的に取り組み、少なくとも重度心身障害者でも、寝たきり老人でも、いつになればわれわれが望んでおるものは解決するんだということにめどを与えるような長期的な計画も立てますと、こう言っておるわけであります。  今度のやつは補正予算でありますから、補正予算というのは、先ほども御指摘がございましたように、年度内に消化しなければいかぬ、こういう問題でありますと、各省で積み重ねてくるものは、いままで本予算でもって要求したけれども満たされなかったようなもので、しかもいますぐ行なえる、土地対策ももうできておるので、地価の値上がり等行なわないでそのまま行なえる、こういうようなものに集中しやすいということは、これはもうやむを得ないことだと思います。しかし、制度上の問題、これは年次予算の中で十分考慮をしてまいるつもりでございますし、いま寝たきり老人に対して十万人、これは五十年までには二十万人、二十万床、倍増してこの問題を解決したいというように、研究もし、取り組んでもおるわけでございまするから、この中に新しい制度が発足しておらぬということではなく、あともう少しすれば直ちに四十八年度本予算を御審議いただかなければならないことでございますので、そのときの予算編成の段階においては、いま御指摘になったことも十分覚えておきたいと、こう思います。
  240. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 あといろいろ円対策、あるいは財政投融資と国債発行の問題、いろいろお聞きしたいことがあるんですが、たいへん時間が過ぎてしまいましたから、財政問題として一つの問題をお聞きしておきたいと思うんですが、どうも補正予算の歳入見積もりは少し少な過ぎると思うんです。おそらく年度最後になりますれば今度のを含めて自然増収が四、五千億ぐらいになるんじゃないか、こういうふうに思うわけですが、そこで前の佐藤内閣のときには、佐藤さんはでき得れば四十七年度減税をやりたい、こういうふうに言っておられたんですが、千五百億円ぐらいの減税はできるようにはじき出され得ると思うんですがね。これは大蔵大臣どうですか、千五百億程度の、あるいは二千億程度の年度内減税をできませんか。どうですか。
  241. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) お答え申し上げます。  まだ、いわゆる財政需要の点も、各省から一応お預かりはしておりますし、検討いたしておりますが、自然増収の状況等については、ただいまも御想像に相なりまするとおり、相当悪くないんじゃないかというふうな傾向があらわれつつあります。しかし、まだこれについても十分なる検討が加えられておらないのであります。いまもっぱら税制調査会におきましてこうした点も加えて、そうして研究をいたしておる次第でございます。
  242. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これはひとつ大蔵大臣、今度の補正の中に私はぜひ入れてもらいたい。もし入れてもらうことができなければ、さきにさかのぼって減税をやるというようなこともひとつ考えていただきたいと思います。  最後になりますが、通産大臣にお尋ねいたしますけれども、「通産省公報」というのはどういう雑誌で、どういう目的で、どういうことをやっていらっしゃるもので、配布先はどういうところで、何部ぐらい出ているか、お示しいただきたいと思います。
  243. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 通産省の政策をPRする雑誌であると思いますが、詳細はいま手元にございませんので、あと調査して御報告いたします。
  244. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 通産省という役所は国会を尊重しますか、どうですか。
  245. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 誠心誠意尊重いたします。
  246. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 通産大臣は十月二十四日の「通産省公報」をお読みになったことがございますか。
  247. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ読んでおりません。
  248. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ひとっこれを見てください。間違いがあるかないか。そこにパイプライン事業法という法律が載っていると思いますが、そのパイプライン事業法というのは、それは国会の修正をしてないものを載せてますね。認めますか。
  249. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ詳細に読んでおりませんのでお答えいたしかねますが、もし間違っていたら訂正させます。
  250. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そのナンバー2の第一条、これはこういうふうに国会で修正されました。その最後のほうだけ読みます。「保安に関し必要な規制を行なうことにより、合理的かつ安全な石油の輸送の実現を図るとともに公共の安全を確保し、もって石油の安定的かつ低廉な供給の確保に寄与」「することを目的とする。」と、これが国会で決定になったんです。これは総理大臣も知っているはずです。  そこには何と書いてありますか。
  251. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) うしろにもう少し文章が書いてありますですね。「あわせて石油の輸送に関連する災害の発生の防止と道路等における交通事情の改善に資することを目的とする。」と書いてあります。
  252. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それは「通産省公報」でもって日本のパイプライン事業法はそういう目的、そのほかにも訂正個所−全然訂正してありません。そういうものをあちらこちらにばらまくというのが通産省のお仕事ですか。
  253. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もし間違っていたら訂正いたさせます。
  254. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは訂正するだけじゃ困るんですよ。訂正するだけじゃない。その通産省の方針で、すでに仕事にかかろうとしている人が相当あるわけです。何部配っているか、どこに配っているかということをそれで私は聞いたんです。さっそく引き揚げていただくとともに、ここでそれが間違いだということを弁明してくれなければ私困るんです。−法そのものが、修正前の通産省でつくった法そのものが出ているんですよ。修正したものが出ていないんですよ。
  255. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  256. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 速記をつけて。
  257. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まことに申しわけございませんでした、間違っておるようです。
  258. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 竹田君、時間がきています。
  259. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 あと措置をどうしますか。
  260. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 回収または訂正いたします。
  261. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 保安距離はいつきまるんですか。
  262. 外山弘

    政府委員(外山弘君) パイプラインの技術上の基準につきましては、現在関係各省といろいろ打ち合わせをしている最中でございまして、近く専門家の意見も聞きまして内容を詰めたいと考えておりますが、十二月の下旬までにはぜひともきめたいと、こう考えておるわけでございます。
  263. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 保安距離については十分検討して、一・五メートルなどということのないように、少なくとも十メートル以上をとるようにひとつ要求をしておきます。  終わります。
  264. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 以上をもちまして、竹田君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時開会することにして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十六分散会