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大矢正君
海外経済協力基金法の一部
改正に
関連をして
お尋ねをいたしますが、今回のこの
基金法の
改正のねらいとするところの
一つは、俗に言われる南北問題、
経済協力に
関連した
わが国の融資に対する
規制の
緩和を通して、もちろん、この
程度のもので国際的に認められるというような処分じゃありませんけれども、まあいずれにしても、そのようにして南北問題に対処しようとする
わが国の
態度をあらわそうという
意味だろうと思いますし、いま
一つは、当面最大の課題であります
円対策の
一環としてこの
基金法の
改正を企図しているのだと私は思います。そこで、主として
円対策に
関連をして、先般も
大臣と私、
切り上げ問題にからみいろいろ
議論をいたしましたが、その続きというわけではありませんが、重ねて
円対策問題で意見を承りたいと思うのであります。
通産省は、
田中総理の指示もこれあり、
貿管令によって
輸出の
規制を、最悪の
事態においてはかろうと、もちろんその前の
段階では、
業界内部における自主的な
輸出の
規制ということをやり、もしそれができない
段階においては
貿管令によって
政府の権力による
輸出の
規制、こういう
一つの
段階を経て
貿易収支の
改善をしようということだと思うのでありますが、私は、その結論から申し上げますと、
貿管令の
発動それ
自身に問題がありはしないかと。今日
貿管令を
発動して
輸出を
規制しようとする
考え方それ
自身が、
法律的にも現実的にも
問題点がありはしないかということを感ずるのであります。
私は、実は先般来、この
外国為替及び
外国貿易管理法、
昭和二十四年制定、その後一回
改正をいたしておりますが、この
法律が制定された当時の
速記録を
検討をしてみました。特にこの中で私は
感じましたことは、この
法律の第一条の
目的と、それから第二条に再
検討項目というのがございます。これは私は読み上げるまでもなく、この再
検討条項というものは、まあ言ってみれば、本来、この金の面においても物の面においても、対外的な取引の
関係というものは
法律によって
規制をするのではなくて、やはり自由を
基調としなければならないのだと、その
目的達成のためにという前提で再
検討条項というものがあり、逐次この制限的な
条項は、これを廃止もしくは
緩和をしていく努力をしなさいということが
法律の中にうたわれておるわけですね。と同時に、
政府がよりどころとしておりまするこの
貿管令それ
自身は、本来的にこの種の
国際収支の
黒字基調というような
段階で
輸出を押える
意味で、これを使用するというところに主眼が置かれた
内容のものではないということを、私は、
速記録の中を通して実は
感じ取っておるわけであります。でありますから、まず
お尋ねをいたしますことは、私は、根本的に
貿管令の
発動などというようなことは、これはやはり考えるべきことではないんではないかという
一つの
考え方を持っております。
それから、第二点目といたしましては、現状、この
貿管令を
発動し
輸出制限をしようとしても、事実上、非常に
業界の完全な
協力がなければ困難で、これは
大臣も
御存じかどうかわかりませんが、
繊維の
輸出規制をやるにあたりまして、現実にはもう
政府が
輸出規制をしようとしてもできない。やっぱり
業界が自主的にやらない限りはできないということが、実際問題として対
米折衝の
過程の中から明らかになっていったというような事実を見ましても、これはもう
貿管令があるからこの最後の切り札としてこれを使うんだから、お前らどうだというおどかしで使っている
意味では、ある
意味においてはそれは有効かもしらぬが、実際に
法律で
輸出を制限しようとしても、非常に実際上無理があるということになるのじゃないかという
感じがいたしますね。そこで、私は、
円対策の
一環として
貿管令の
発動を最終的には考慮してまでも
輸出を制限しようという
考え方それ
自身に問題があると思われますので、まず
お尋ねをしたいと思います。
その前に、基本的にはこの大きな問題をあとから申し上げるようでなんですが、本年度は当初七十億ドルから八十億ドルと言われていたやつが、九十億ドル以上になるのではないかと、すなわち、
貿易収支の
黒字というものがですね。そのようにして最近、
輸入は若干増加の傾向にあるとは言いながらも、九十億ドル以上もの
貿易収支の
アンバランスというものは、国際的にその全貌が明らかになってくれば、急速にこの円に対する
圧力がいま以上に加わってくることは明瞭でありまするし、時期的に見ますれば、
年明けにはかなりアメリカはもちろん、
ヨーロッパ諸国その他の国々から
日本に対する
圧力が及んでくる
危険性もありますし、一体その七十億、八十億、九十億ドルというような膨大な
貿易収支上の
アンバランスを
貿管令をやって、まあ
通産省は、私が聞き及んでいる限りでは、十億ドル
程度の
輸出を引き締めるという
考え方でもって円問題が解決できるなどというような、もちろん、それは
大蔵省は
大蔵省なりで別な
意味においてやっている面もありますし、この
法律本来の
基金で
対外経済協力をするということ、もちろんいろいろあるにいたしましても、やっぱり
基調となるのは、
貿易収支が
アンバランスなところに、この
外国からの非常な攻撃があるわけですね。ですから、この問題をどうやって解決するのかという基本的な
態度なり
考え方がなけりゃ、
小手先細工でもって
貿管令を
発動して一時的に
輸出を制限してみたところで問題の解決にはならぬし、
円対策には私はならぬと思う。いま一時的に逃げるのはいいかもしらぬけれども、
年明けまでの
対策としてはもつようなしろものではない。極端な表現をすれば、
貿管令を
発動してもやるんだということは、言うだけの話であって、実際に実行しないうちに
円切り上げに追い込まれてしまうというような危険がありはしないかという
感じが私はするわけですね。
それから、まあ三十分しか私に時間がないそうですから、もうまとめて申し上げてしまいますと、去年の十二月、
御存じのとおり、ちょうど一年になりますか、
切り上げ率一六・八八%ですか、約一七%、それに
変動幅二・二五%を加えますとほぼ二〇%近い
円切り上げ、二割に及ぶ円の
切り上げというものがたいへんなショックを与えた。これは
大臣がこの間も言っていたとおり、
中小企業対策を考えれば軽々に円の
切り上げはできない、それは当然のことだと思うのです。
中小企業問題を考えれば、私は、
中小企業にとっては重大な問題だと思うのですね。その
貿管令をちょこちょことやってみるとか、まあ
対外経済協力を少し拡大してみるとか、
条件を
緩和してみるとか、
輸入の
関税を下げてやってみるとかというようなことをちょこちょこやって、そのような
程度で結局は
円切り上げにまた追い込んで、しかも、追い込まれても、わずかな三%とか四%
変動幅を若干上回るような
切り上げ幅程度ならばいざ知らず、一〇%、一五%というような円の
切り上げがまた行なわれるような
事態が発生をいたしますれば、それこそ
中小企業をめためたにしてしまうことになるのであって、どうも
中小企業を
心配するのはあなたも私も同じことなんだが、その
心配をする
過程の論議がどうもあなたと私とかみ合わないのですね。まあとりあえず、私が申し上げたことについてのあなたの所見をお願いしたいと思う。