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1972-11-10 第70回国会 参議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十一月十日(金曜日)    午前十一時五十一分開会     —————————————    委員異動  十一月十日     辞任         補欠選任      剱木 亨弘君     片山 正英君      林  虎雄君     須原 昭二君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         佐田 一郎君     理 事                 川上 為治君                 矢野  登君                 竹田 現照君                 藤井 恒男君     委 員                 赤間 文三君                 植木 光教君                 小笠 公韶君                 大谷藤之助君                 片山 正英君                 林田悠紀夫君                 細川 護煕君                 山本敬三郎君                 阿具根 登君                 小野  明君                 大矢  正君                 須原 昭二君                 中尾 辰義君                 原田  立君                柴田利右エ門君                 須藤 五郎君    国務大臣        通商産業大臣   中曽根康弘君        国 務 大 臣  有田 喜一君    政府委員        経済企画政務次        官        木野 晴夫君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        通商産業政務次        官        安田 隆明君        通商産業通商局        長        小松勇五郎君        通商産業貿易振        興局長      増田  実君        通商産業企業局        長        山下 英明君        通商産業繊維雑        貨局長      斎藤 英雄君        中小企業庁長官  莊   清君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        外務省アジア局        外務参事官    中江 要介君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○委員派遣承認要求に関する件 ○派遣委員報告に関する件 ○海外経済協力基金法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、剱木享弘君が委員を辞任され、その補欠として片山正英君が選任されました。     —————————————
  3. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 委員派遣承認要求に関する件についておはかりいたします。  石狩炭鉱における災害の実情調査のため、委員派遣を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 御異議ないと認めまして、派遣委員派遣地派遣期間等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) この際、派遣委員報告に関する件についておはかりいたします。  先般、当委員会が行ないました委員派遣については、各班からそれぞれ報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  8. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 次に、海外経済協力基金法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。有田経済企画庁長官
  9. 有田喜一

    国務大臣有田喜一君) ただいま議題となりました海外経済協力基金法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  海外経済協力基金は、東南アジア等開発途上地域における産業開発及び経済の安定に寄与するため、その開発または安定に必要な資金を供給する等の業務を行ない、わが国経済協力推進に重要な役割りを果たしてまいりましたことは御承知のとおりであります。  海外経済協力基金業務のうち、開発途上地域がその経済の安定に資するため緊要な物資輸入を行なう場合、当該輸入に必要な資金を貸し付けるいわゆる商品援助につきましては、開発途上地域わが国から物資輸入する場合のみに限る、いわゆるタイド援助方式となっております。  しかしながら、このような援助供与国からの輸入との結びつき条件とするタイド援助方式につきましては、これをできる限り早期に廃止し、援助効率化を促進すべしということが、最近、強い国際的要請となっているところであります。  一方、最近の経済情勢にかんがみ、政府としては、去る十月二十日、対外経済関係調整するための諸施策を決定しましたが、この施策一環として、援助が直ちにわが国輸出に結びつくことのない、いわゆるアンタイド援助を供与し得るよう所要の措置を講ずることとしたのであります。  このように、当面の対外経済関係調整に資するとともに国際的な要請にも対応し、わが国経済協力政策の一そうの推進をはかるため、海外経済協力基金による商品援助アンタイイング化が可能となるよう、この法律案を作成し、国会の御審議をお願いすることとした次第であります。  次に、この法律案内容について御説明申し上げます。  改正内容は、開発途上地域がその経済の安定のため緊要と認められる物資輸入を行なう場合に、わが国以外の地域からの輸入についても、海外経済協力基金は、当該輸入に必要な資金を貸し付けることができるようその業務を拡充することであります。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  10. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 速記をとめて。   〔速記中止
  11. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 速記をつけてください。  これから質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 大矢正

    大矢正君 海外経済協力基金法の一部改正関連をしてお尋ねをいたしますが、今回のこの基金法改正のねらいとするところの一つは、俗に言われる南北問題、経済協力関連したわが国の融資に対する規制緩和を通して、もちろん、この程度のもので国際的に認められるというような処分じゃありませんけれども、まあいずれにしても、そのようにして南北問題に対処しようとするわが国態度をあらわそうという意味だろうと思いますし、いま一つは、当面最大の課題であります円対策一環としてこの基金法改正を企図しているのだと私は思います。そこで、主として円対策関連をして、先般も大臣と私、切り上げ問題にからみいろいろ議論をいたしましたが、その続きというわけではありませんが、重ねて円対策問題で意見を承りたいと思うのであります。  通産省は、田中総理の指示もこれあり、貿管令によって輸出規制を、最悪の事態においてはかろうと、もちろんその前の段階では、業界内部における自主的な輸出規制ということをやり、もしそれができない段階においては貿管令によって政府の権力による輸出規制、こういう一つ段階を経て貿易収支改善をしようということだと思うのでありますが、私は、その結論から申し上げますと、貿管令発動それ自身に問題がありはしないかと。今日貿管令発動して輸出規制しようとする考え方それ自身が、法律的にも現実的にも問題点がありはしないかということを感ずるのであります。  私は、実は先般来、この外国為替及び外国貿易管理法昭和二十四年制定、その後一回改正をいたしておりますが、この法律が制定された当時の速記録検討をしてみました。特にこの中で私は感じましたことは、この法律の第一条の目的と、それから第二条に再検討項目というのがございます。これは私は読み上げるまでもなく、この再検討条項というものは、まあ言ってみれば、本来、この金の面においても物の面においても、対外的な取引の関係というものは法律によって規制をするのではなくて、やはり自由を基調としなければならないのだと、その目的達成のためにという前提で再検討条項というものがあり、逐次この制限的な条項は、これを廃止もしくは緩和をしていく努力をしなさいということが法律の中にうたわれておるわけですね。と同時に、政府がよりどころとしておりまするこの貿管令それ自身は、本来的にこの種の国際収支黒字基調というような段階輸出を押える意味で、これを使用するというところに主眼が置かれた内容のものではないということを、私は、速記録の中を通して実は感じ取っておるわけであります。でありますから、まずお尋ねをいたしますことは、私は、根本的に貿管令発動などというようなことは、これはやはり考えるべきことではないんではないかという一つ考え方を持っております。  それから、第二点目といたしましては、現状、この貿管令発動輸出制限をしようとしても、事実上、非常に業界の完全な協力がなければ困難で、これは大臣御存じかどうかわかりませんが、繊維輸出規制をやるにあたりまして、現実にはもう政府輸出規制をしようとしてもできない。やっぱり業界が自主的にやらない限りはできないということが、実際問題として対米折衝過程の中から明らかになっていったというような事実を見ましても、これはもう貿管令があるからこの最後の切り札としてこれを使うんだから、お前らどうだというおどかしで使っている意味では、ある意味においてはそれは有効かもしらぬが、実際に法律輸出を制限しようとしても、非常に実際上無理があるということになるのじゃないかという感じがいたしますね。そこで、私は、円対策一環として貿管令発動を最終的には考慮してまでも輸出を制限しようという考え方それ自身に問題があると思われますので、まずお尋ねをしたいと思います。  その前に、基本的にはこの大きな問題をあとから申し上げるようでなんですが、本年度は当初七十億ドルから八十億ドルと言われていたやつが、九十億ドル以上になるのではないかと、すなわち、貿易収支黒字というものがですね。そのようにして最近、輸入は若干増加の傾向にあるとは言いながらも、九十億ドル以上もの貿易収支アンバランスというものは、国際的にその全貌が明らかになってくれば、急速にこの円に対する圧力がいま以上に加わってくることは明瞭でありまするし、時期的に見ますれば、年明けにはかなりアメリカはもちろん、ヨーロッパ諸国その他の国々から日本に対する圧力が及んでくる危険性もありますし、一体その七十億、八十億、九十億ドルというような膨大な貿易収支上のアンバランス貿管令をやって、まあ通産省は、私が聞き及んでいる限りでは、十億ドル程度輸出を引き締めるという考え方でもって円問題が解決できるなどというような、もちろん、それは大蔵省大蔵省なりで別な意味においてやっている面もありますし、この法律本来の基金対外経済協力をするということ、もちろんいろいろあるにいたしましても、やっぱり基調となるのは、貿易収支アンバランスなところに、この外国からの非常な攻撃があるわけですね。ですから、この問題をどうやって解決するのかという基本的な態度なり考え方がなけりゃ、小手先細工でもって貿管令発動して一時的に輸出を制限してみたところで問題の解決にはならぬし、円対策には私はならぬと思う。いま一時的に逃げるのはいいかもしらぬけれども、年明けまでの対策としてはもつようなしろものではない。極端な表現をすれば、貿管令発動してもやるんだということは、言うだけの話であって、実際に実行しないうちに円切り上げに追い込まれてしまうというような危険がありはしないかという感じが私はするわけですね。  それから、まあ三十分しか私に時間がないそうですから、もうまとめて申し上げてしまいますと、去年の十二月、御存じのとおり、ちょうど一年になりますか、切り上げ率一六・八八%ですか、約一七%、それに変動幅二・二五%を加えますとほぼ二〇%近い円切り上げ、二割に及ぶ円の切り上げというものがたいへんなショックを与えた。これは大臣がこの間も言っていたとおり、中小企業対策を考えれば軽々に円の切り上げはできない、それは当然のことだと思うのです。中小企業問題を考えれば、私は、中小企業にとっては重大な問題だと思うのですね。その貿管令をちょこちょことやってみるとか、まあ対外経済協力を少し拡大してみるとか、条件緩和してみるとか、輸入関税を下げてやってみるとかというようなことをちょこちょこやって、そのような程度で結局は円切り上げにまた追い込んで、しかも、追い込まれても、わずかな三%とか四%変動幅を若干上回るような切り上げ幅程度ならばいざ知らず、一〇%、一五%というような円の切り上げがまた行なわれるような事態が発生をいたしますれば、それこそ中小企業をめためたにしてしまうことになるのであって、どうも中小企業心配するのはあなたも私も同じことなんだが、その心配をする過程の論議がどうもあなたと私とかみ合わないのですね。まあとりあえず、私が申し上げたことについてのあなたの所見をお願いしたいと思う。
  13. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大矢さんの御発言は、一々ごもっともであるというように私も考える点も多うございます。ただ、貿管令だけで足りようとは思っておりません。やはり総合的な仕事の一環として、また政治姿勢を示すという要素も確かにございます。そういう一環としてこれを有効にその部分においては働かせながら、一部を負担しよう、こういう意味もあります。で、やはりこれは関税引き下げとか、あるいは輸出金利の引き上げとか、輸入金利引き下げとか、そういう総合政策一環としてこれは行なわるべきもので、貿管令というような水ぎわだけでとうていこれが解決できるものではないと思います。  それから第二に、やはりこれはある程度お説のとおり、業界協力なくしてはなかなかできにくうございます。それで、輸出組合をつくって自主調整をやってもらう。それで自主調整がどうしてもできないもの、あるいはアウトサイダーが非常にはびこるもの、そういうものについては、必要やむを得ざる緊急避難的性格をもって貿管令発動させる。ですから、これも期限をつけて一年、そういうふうにいまのところ考えておるわけでございます。それで、これはそういう意味緊急避難的措置を出ない。これが恒常化するということは適当でない。輸出課徴金というものを防ぐという意味もわれわれのほうから見るとございます。そういうさまざまな意味を込めてやりたいと思っているわけでございます。  それからもう一つは、どの程度有効かという御質問がございましたが、これを数量的にあらわすことはかなりむずかしいようでございますが、まあ一年ぐらいを単位に考えてみますと、品目でカバーするものが全品目中の約三〇%程度、対米関係について見ると四〇%をこします。そういう意味において、総合的に網をかける。で、特定品目をねらい打ちにするというのでなくして、ある一定の基準、すなわち三つの基準をつくりまして、輸出依存度が一%とか、あるいは一億ドル以上のものとか、あるいは金額にして増が二〇%以上、そういう一律の網をかけまして、そして全般的にならしていこう、そういう思想に基づいてやっておるものでございます。それで、基本的には私は、こういう水ぎわ作戦というものでできるものではない。そういう意味においては、為替相場による調整というものも一種の水ぎわ作戦だろうと私は思います。それで、やはり経済構造的改革というものが長期的な望ましい方向なのでございまして、そういう意味においては、やはりある程度大型予算を編成して——その予算内容が問題でございますけれども、日本福祉水準を思い切って上げる、あるいは社会資本投下を思い切って行なう。そういう形でかなり大型予算を組んで、経済構造的改革を行なって、そして欧米並み社会経費というものが生産構造の中に入ってくる。そういう形のほうが現在の日本にとっては好ましい。私は、少なくともそういう考え方に基づいて経済政策を進めていくべきであると考えております。
  14. 大矢正

    大矢正君 この間の委員会では、私は野党らしからぬ、小幅な円の切り上げを考えたほうがむしろ将来を展望する際にいいんではないかという議論を展開して、いろんな人から、おまえさんは野党なのか与党なのかということまで言われましたけれども、私はいまでもその考え方は変わっておりません。私は、一〇%とか一五%なんという大幅な切り上げに追い込まれる以前に、小幅に、やはりどうしても国際収支改善をしなければならぬものならばやっていって、影響を少ない形で、それは二度か三度か受ける事態があるかもしらぬが、そういう形において、根本は産業体質改善をしなければならないのじゃないかと思うのですがね。その点は、大臣がいま言われたことは私も非常に一致する面があるんですよ。為替面からやったり、あるいは貿易面からやったり、いろんなことをやっても、これはあくまでも一時的な、応急的な処置であって、基本的には、七十億ドル、九十億ドルというような貿易収支アンバランスというのがなぜ生まれるのか。それで、それをどうすれば是正できるのかというところに焦点がないと、まただらだらと、来年の二月なり三月なり四月になれば一五%、一八%というような円の切り上げに追い込まれてしまう心配があるが、大臣、あなたのいまの答弁は全く私も同感な面がずいぶんあるんですよ。基本的にはあるんだが、具体的に、それじゃ通産省がそういう将来の大きな展望に向かってどういうことをするのかというのをあまり聞いたことがない。  たとえば、なぜ貿易上それだけの大幅な黒字が出るのか。これは日本売り込みが激しいから出るのか。売り込みが激しいなら売り込みをもっとコントロールするようなことをやれば直るはずだけれども、そんなもんじゃない。それももちろんあるだろうけれども、そんなもんじゃない。もっと、日本産業構造それ自体が——わが国の国内の景気の上昇問題とももちろんからむけれども、日本の現在の産業構造それ自身が、外国に物をとにかくどんどん売らなきゃならぬ、売ろうというような体制でここ長い間やってきたというところにいま七十億——九十億ドルというような大幅な黒字の出る原因があるわけでしょう。そうすると、ここでとにかく転換を打ち出さなきゃならぬのだが、それをどういうふうに転換をしていくのかということになると、どうもあまりはっきりしたものはいままで私、耳にしたことはないわけですがね。ですから、貿管令がいいとか悪いとか、いや、こんなことよりはウイスキーを三本持ってくるやつを五本にしたほうがいいというけちな話ばっかり出てくるけれども、そういうものは出てくるけれども、根本的な話がどうも出てこないんです。  時間もありませんから、もう一回ひとつお尋ねしますが、貿易収支が大幅な黒字を出すそのよって来たる原因は何なのか、そしてそれに対して具体的にどう対処するのか。貿管令その他の問題はもうこれ以上議論してもしようがありませんから、私は申し上げません。その本質論でもう一回大臣にこの際お答え願いたいと思う。また年が明ければ、これは国会が正規に開かれますれば、当然、通産省提出の法案も出てまいりますから、その時点でまた日本産業構造改善問題等について十分な議論を私自身もしたいと思いますが、とりあえず、通産省は、そういうような大幅な黒字基調に対しての産業政策として何か変わったことをやろうとされるのか、お答えいただきたい。
  15. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これを過去俯瞰して見ますと、一九六〇年代の後半から最近まで、近代化投資、特に民間設備投資による近代化投資が非常に進んで、それが欧米水準以上にその蓄積効果が出てきた、そういう面があるだろうと思います。日本があれだけの近代化投資をやっているときに、欧米民間設備投資やあるいは国家資本投資という面が非常に少なくて、むしろ、消費とかそういう方向に向いておったわけでございます。その力がいま出てきて、それで日本競争力外国に比べて非常に大きくなっている。  それからもう一つは、日本労働者経営者が非常に勤勉であって、週休二日制もまだやらない。そういう意味において、労務あるいは経営という面からも、ある意味における生産性経済的生産性というものが非常に高い、そういう面もあると思います。  で、そこで、いまはそういう考え方をある程度是正して、そして欧米並みにそういういろんなエレメントを近づけていくと。そういう意味においてたとえば福祉向上をもっとやる、あるいは週休二日制も欧米並みに早く実施すべきである、年金制度も早く欧米並みに追いつくように思い切ってやるべきである、あるいは下水道とか公園とか都市改造をもっと思い切ってやるべきである。そういう社会的経費というものを予算面あるいは経営面においてももっと投下させるようにしなければいけないと思います。その中の尤なるものの一つは、公害防除対策環境整備費というようなものであると思います。今日の公害問題というものは、やっぱり六〇年代のそういうあまりにも経済的な資本投下というものの弊害が出てきた要素もございます。そういう面からしますと、今度の予算で約六千億の補正予算でございますが、実需で一兆五千億ぐらい、来年度は思い切って、まあ総理も言っておりますけれども、年金予算にしたい、福祉型予算を徹底的にやって、いまのような構造変換を行なうべき最も重要な年である。私の試算では、十四兆前後の予算を組んだほうがいい、さもないとやっぱりドルの蓄積というものがやまないという危険性もあります。その十四兆近くの予算の大きな部分社会福祉費というもののウエートを占めさせてやるべき段階である、そう考えます。そういう形によって日本の大きい意味社会構造あるいは経済構造転換を開始すべきである、そう認識しております。
  16. 大矢正

    大矢正君 大臣のいまの御発言は、まあ私ども野党といえども一致する面が非常に多いと思います。そういう意味で、私もすなおにそのとおり承っておきたいと思います。ただ、これは皮肉を申し上げるわけじゃないのですが、この間ある人が私にこういうことを言ったのです。いままで通産大臣たくさんおなりになって、いろいろな人がいろいろな発言をされておる中で、毎日のように新聞に大臣の談話が出るのは、中曽根通産大臣が一番多いというのですね、就任以来。なるほど、私も田中通産大臣をはじめ——私もここの委員会だけで十年くらいおりますから、ずいぶん長い間大臣を見てきておりますが、なるほどそう言われてみると、これは中曽根大臣になってからずいぶん、通産大臣はこう言ったとかいうような記事がもう毎日のように出ている、このごろ少し減っているようですけれども。まあそれ自身は非常にけっこうなことなんだが、どうも出るわりには何かしらぬが、それが実行に移される部面というのかな、それなりの効果というものがあがっておらぬのじゃないかというようなことを言う人がおりまして、私も言われてみれば、これはまあ全部全くそのとおりだと言うと大臣に失礼にあたるからそこまでは申し上げませんが、やっぱりそういう議論も、これは確かに議論としては成り立つかもしらぬなあという感じは実はしているのですよ。  そこで、今度のこの円問題は、予算委員会でずいぶん衆参それぞれやられておりますが、私の時間も二、三分しかないですから、希望意見として私が申し上げておきたいと思うのは、やっぱり貿管令発動というものは、あくまでもこれは強権でありますし、先ほど大臣みずから言っておるように、業界協力しない限りは、これは通産省のいまの力でもって輸出規制なんというのは、現実的にはもう実行ができないのです。実際実行が困難なわけですね。ですからそういう面で、極力やっぱり輸出に対する調整というものは、部分的にはやらなければならない部分があるけれども、それはやはり話し合いをして、特に、むしろそういう面でも、たとえば自動車なら自動車の輸出制限をかりに大幅にやったと——これあたりが一番金額的にも多いということで、かりにやったと仮定しますと、これは私が申し上げるまでもなく、自動車ぐらい下請、俗にいわれる中小企業のウエートの高い産業はないわけですからね。そうなってくると、それがもろにかぶってきますね。ですから円切り上げの問題とは別に、輸出調整の問題で中小企業がまたかぶってくるという面だって出てきます。これは少なくとも七割以上は、私の認識に間違いがなければ下請ですからね。中小企業を中心とした下請で自動車というものはたしか成り立っているはずですから。そうなってまいりますと、輸出調整それ自身が、あなたが望んでおられる中小企業を救わなければならぬということと全くこれは反することにもなるわけで、私は、自動車を何もかばう意味で言うのじゃなくて、一つの例を申し上げますとそういうことになるわけで、やっぱり小手先のことだけではなくて、その本質を十分ひとつ踏まえて、特に中小企業に対する被害を極力回避する意味において円対策問題とは取り組んでもらいたい。田中総理も、通産大臣をやっておる間は非常に慎重だったんだが、総理大臣になったとたんに貿管令をやるぞとか、やれ輸出税を設けるとかいうようなことを言って、だいぶ通産大臣時代とは違うことを盛んにのろしをあげておるようで、まあ苦しい立場はわかるけれども、やっぱりもっと大きな全体的な視野に立って円対策問題をとくと考え、特に通産省の場合には、やはりいろんな意味で中心的な役割りを果たさなきゃならぬ責任のある役所であるという立場もありますから、私は、ひとつここでやってもらいたいということを希望意見として申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  17. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 中曽根通産大臣、何かありますか。
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御意見よく私たちも理解できますし、また、われわれとして検討をしなければならぬと思われる問題も御提議をいただきましたので、私たちも御趣旨に沿って努力してまいりたいと思っております。
  19. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 第三次の円対策が十月二十日に発表になったわけですが、この五項目の中で、特に第一次、第二次円対策から目新しいというものは、関税の一律引き下げ二〇%、あるいはまた輸入割り当てワクの拡大、これは対前年度比三〇%増に拡大する、なお、輸出貿易管理令の機動的運用、こういったところがまあ新しく感じられるわけですが、そこで、はたしてこれで円の切り上げを回避できるのかどうか、私どもは疑問に思うわけであります。ところが、それと符合を合わせたように、十月二十日の東京の外為市場が、御存じでしょうが、これは一億ドルを上回るドル売りがあった。そのあくる日は、さらにそれを上回るドル売りが殺到しておる。こういうようなことで、これはもう明らかに外為市場がこの三次円対策に対し不信を表明しておるようなものである、私はこう思うのです。またいろんな論調だとか、いろいろと財界等の意見を聞きましても、今度の円対策というのは、円の再切り上げ防止対策じゃなしに、再々切り上げの防止対策と違うかと、そういうような極論まで吐くような意見も出ておる。  そういうことでお伺いをするんですけれども、きのうはきのうで、また総理大臣予算委員会において、円の切り上げは回避する、回避ができなければ相当な責任問題である、ここまで強力に言っておるし、言明をされておるわけですが、はたして今回の円対策で、政府は円の再切り上げを回避できるかどうか、その辺お答えを聞いておきたい。それはやるとおっしゃるだろうけれども、一応その確信のほどを私はお伺いをしておきます。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全力をふるってやったらできると思います。わりあいに日本のジャーナリズムは円の問題に鋭敏過ぎるという気がいたします。IMFにおけるシュルツ演説等も、非常に日本に対して円再切り上げを要望するような内容であったように一時報ぜられましたけれども、実はそうではない。国際経済における一般理論を述べておるので、いままで言ってきているようなことを集大成しているので、何も日本をねらい撃ちにやった演説ではないようです。それで、各国はスミソニアン体系を維持していこうという熱意においては少しも変わっていない。一国がそれがくずれるというと、一波万波を生んで、非常な影響と被害を他の国も受ける、そういうところから、でき得べくんば各国の協力によって現状で推移していこうと。ですから、ポンドがあぶない、リラがあぶないとなると、みんなが助け合ってその場を補充すると、そういう態度をとっておるところであります。で、いま外国で、早く円を再切り上げせよと日本に強く言ってきている国はないと私は思っております。やはりスミソニアン体系を維持して、そして安定していこうと、そういう考えが強いので、日本が必死の努力をして、そしてその傾向がある程度出てくれば、外国も努力がわかってくれるだろう、それには多少時間が要ります。それで、今度補正予算を組んだり、あるいは十月二十日の円対策をやったのはみんなそういう努力のあらわれで、最近の模様を見ますと、輸出輸入に非常な乱調子が出てきておる。輸出が一時減りかけておったのが、ぽこっと急にまた出てきたり、また輸入が増大しておったのが少し減ってきたら、また輸入がぽこっと二十一億ドルにもなるというふうになってきた。なかなか乱調子のところが出てきているわけであります。これは、やはり日本の努力というものがある程度少しずつ出始めたという形ではないかと私思うんです。  それで、この十月二十日にやりましたものはかなり思い切った線を今度は出して、関税の二〇%一律引き下げであるとか、あるいは輸出金利を上げるとか、いままでなかったようなことをやっております。貿管令にしても、これは臨時緊急避難措置ではございますけれども、貿管令発動するようなことは、八月ごろだれも考えていなかっただろうと思うんです。しかし、私は、そのころからその検討を命じておりまして、いつでも発動できるだけの態勢は整えて研究しておけと、そういうことも言いまして、それから、ともかく、田中総理がニクソン大統領やその他とうまく三年以内にバランスをとるということを言っておるんですから、やはりこの国際的に言ったことばは日本の政治家が守らぬというと、この前の繊維問題みたいに国際的不信感を持つと、それが一番おそろしいことであると実は思うんです。そういう面からも通産省当局に命じまして、そして、自分の省のことではないけれども、いまの関税引き下げ以下一連にわたる基礎研究を命じておったのでございます。それで、総理が向こうから帰ってくる間に各省の調整をやろうと総理と打ち合わせして、そして二十日に決定したと、そういうことなので、内輸を申し上げますと、通産省の諸君が非常に努力をして各省と折衝して促進したと、そういうことがあったのであります。今後もそういう意味におきまして、通産省が率先していまの貿易バランスを回復するように努力していきまするならば、私は、いままでの総合効果が漸次出始めて、そしてかりに選挙でもありましたら、選挙が終わったらかなり大型予算の全貌が出てくると、それがまた影響してくるだろうと思います。大型予算の様相が出てくると、それ自体がまた輸入の増大という方向に導いてまいりますから、私は、そういういろんな総合効果は出てくるので、これらの努力を必死にやりましたら円の再切り上げは回避できると、そう考えております。
  21. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ、いま大臣がおっしゃった答弁として一応私も理解しますけれども、大体いつごろまでに、あなたのいまおっしゃったような答弁からしてこの効力は出るというふうに判断されますか。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 円の切り上げ効果が出るのは大体二年ぐらいであると、こう言われております。で、そういう意味で、円のこの前の切り上げ効果は、一年たったばかりでございますが、これからいよいよ出始めると、しかし、これらの今度の十月二十日のものはかなり即効的なものもございますから、そろそろもう順次出てくるだろうと、そう私思います。来年の正月以降にはある程度顕著に出てくるんではないかと、そう思います。
  23. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあ、それまでに諸外国の円再切り上げ圧力がかかってくるかもしれないし、あなたはかかってこないようなことをおっしゃったけれども、今後のこれは展開を見てみないことにはわからぬことです。そこで、政府が円再切りをどうしても避けるという方針であるならば、今度の円対策の場合にも問題になりました例の大蔵省輸出税との関係ですね、むしろ、この輸出税をかけたほうが公平に、しかも効果的じゃないかと、こういうかなりの意見もあるようです。あなたのほうは貿管令で踏み切ったことになるわけですが、輸出税と比較してどういう点が貿管令のほうにメリットがあるのか、一ぺん対比してひとつお答えを願いたいと思うんです。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 貿管令のほうが非常に機動的に、それから業界の意向をある程度尊重しつつ業界協力を得てやりやすい、そういう関係にあると思います。輸出税の場合は、税法改正をしてやったりいたしますから、一たんきめられますと、それが固着して、それがまた円再切り上げへの口実となる危険性も非常に多いのでございます。現に西ドイツの場合はそうでありました。しかし、貿管令の場合は、法律によるそういうものでなくして、行政措置として、政府施策としてやっているものでありますから、取ったりつけたり自由であります。そういう意味で緊急避難的な要素がかなりあると思うのであります。それから業界に対して行政指導をいたしまして、内面的な協力を得て実行する、そういう意味において効果性がある、そう私は考えております。
  25. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ、反論しておったのでは時間がかかるのですが、輸出税のほうは、一定の税金を払いさえすればそれから先は幾らでも輸出ができるわけですね。こういうメリットもあるわけですよ。貿管令のほうはどっちかというと官僚統制になってくる。そこで不公平な面も出てくるし、いろいろ政治的に事務的な問題があってはたしてできるのかどうか。しかも、これをこまかくやっていったら、業界別に、各社別に、輸出の仕向け地に対しての品目別にこまかい規定までしなければならない。そこまできちっとできればいいかもしれませんが、その辺のところ、これからどうおやりになるのか、もう少し貿管令はこれからこういうような方向でやるという、そういう点を明確にしていただきたい。それが一点。  それから、貿管令が出た場合、ある品目、業種によっては、特に中小企業等におきましては犠牲者が出るかもしれないが、そういうところに対して、ちょうど昨年の日米繊維協定のときに過剰繊維の買い上げとか、ああいうのがありましたが、救済措置というものをどういうように考えていらっしゃるのか。それで終わります。
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 貿管令及び現在の行政措置によります場合は、輸出組合をつくらせまして、そうして業界全体の割り当てが何ぼ下がる、あるいは何ぼになる、それを業界内部でどの分野は何ぼ、どの分野は何ぼというようにそれを各社別にまた配当して、それを業界内部でやってもらいます。そうでないと実際はわかりません。で、業界の自主性を尊重してやるということが一番賢明なやり方ではないかと思うのです。こまかいことは局長に答弁させます。
  27. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 二番目の救済措置はどうですか。
  28. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 貿管令発動する場合も、中小企業に対してもいろいろな特別のこまかい配慮をやろうと思っております。この点も局長から答弁させます。
  29. 増田実

    政府委員(増田実君) ただいま中尾先生の御質問に対しまして大臣のお答えいたしましたのに、若干補足させていただきます。  まず、割り当ての方法、確かに先生御指摘のように、企業別にこれは輸出の割り当てをやらなければならないわけでございまして、御指摘のように、業界協力がなければこれは非常にむずかしいという内容でございます。現在、私ども各業界と個別的に話をしておりまして、そうして業界協力を得て、また業界が十分納得し、理解して、そしてこういう制度をやっていこうということでお話し合いをしております。円の再切り上げを避けるためにこの方法が、やはり緊急やむを得ざる方法であるということについては御理解いただいていると思いますが、ただ現実に、じゃ、各企業どういう割り当てをするかのこまかい点、また企業によりましては後発、先発といろいろありまして、単に実績の伸ばしだけではなかなかその基準にならないという点がございますので、そういうことをこまかくきめてやっております。  それから第二点、中小企業にいろいろ問題があった場合どうするかということでございますが、私どもも今回対象にいたします品目は、むしろ日本輸出に強い品目でございます。また、将来こういう品種がむしろ日本輸出をになっていく業種であると、こういうふうに思いますので、それらの業界に非常な打撃を与えて将来の輸出のにない手である業界に対して重大な影響を及ぼさないという配慮をいろいろしておるつもりでございます。ただ、いかんせん、非常に最近、これらの品目の伸び率が急増いたしておりますので、それを若干下げていただくということで、具体的に申しますと、従来の伸び率を、もう少し詳しく申さなければなりませんが、簡単に言いますと、数量べースで従来の伸び率を半分にしていくということでやっております。ですから、決して現在輸出されているものをいまより減らして、そしてそういう業界、ことに先ほど大矢先生からお話ありましたように、下請になる中小企業業界に致命的な打撃を与えるというような措置はいたさないつもりでございます。また、この貿管令がかかりまして、仕掛かり品その他いろんな問題出ましたときには、これは当然輸出保険の対象になる、こういうことでその分の救済措置をやろうというふうに考えております。
  30. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 時間もございませんし、大体一時までということだというふうに承知をいたしておりますので、私、簡潔に御質問を申し上げたいというふうに思います。  政府のほうとしては、円の再切り上げの問題については、いま審議の対象になっておりました貿管令の問題、あるいはきょうの午後審議がされるいろんな一連の法案の問題、さらには今回上程をされております補正予算の問題、いろいろな面からせっかく御努力をいただいておるように見ておりますし、それぞれ総理はじめ、円の再切り上げの問題については絶対回避をするんだと、こういうふうに言っておられます。しかし、まあ私ども見ておりますと、メーカーなり商社なりのいろんな動き、そういう面から輸出の決済を急ぐと同時に、輸入の決済は延ばすように自衛手段も講ぜられておると、したがって、せっかく御努力をいただいておりますのにこういう前提で御質問を申し上げるのもどうかと思いますけれども、実際、円の切り上げは、いま言いましたような国内でのとか、あるいは海外でのいろんな圧力、そういうものを考えてみますと、政府のほうでおっしゃっておられるような形で進むであろうかどうかという点について危惧の念を持たざるを得ませんし、あるいは避けることができないのではないかというようなことも考えられるわけでありますが、前回の例からいって、何といっても中小企業にとっては、非常に、もし不幸にして円の再切り上げというようなものが起きてくるとすればたいへんなことになるのではないかというふうに思います。したがって、こういう点について考え方をひとつお聞かせを願いたいと、こう思います。
  31. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 円の再切り上げを回避するために内閣全体をあげて努力しておるということは、いままで申し上げたとおりでございます。しかし、これがためには一省だけの仕事でなるものではなくして、輸出面、輸入面、それから国内経済政策面、全般にわたって総合的な対策を持続的にやっていく必要があると思います。それから、政府がそういうき然たる政治姿勢を示して、不動の信念と方策を持っているということを示すことも、また心理的に非常に重要であると思います。先般来、ドル売りが少しございましたけれども、内閣のほうの態度がそういう強い信念を堅持して、あくまでその線でいくという形でございますから、最近はそれも鎮静したようでございます。ともかく、政府がそういう非常にかたい決心を持ってそれを貫く、そうして貫き通すということが一番今日大事であると思いまして、内閣一体になってやっていくつもりであります。
  32. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 いま大臣からたいへん力強い、内閣全体としてのこの問題に取り組む決意の表明があったわけでありますが、よく書きもので見ますとおりに、国際通貨、平価の問題については、なかなかやはり政策立案者としての考え方、その立場というようなことを考えながらいろいろなことが言われておるわけであります。したがって、先回の切り上げのときの経緯を見ましても、なかなかそのまますなおに聞き取りにくい。もちろんわれわれ自身、円の切り上げは避けなければならぬというふうに考えておりますので、そういう点についてはわれわれ自身も努力をしていかなければならぬというように思いますが、しかし、一方においては、それが回避し切れなかった場合のこと等もやはり考えざるを得ないようなこの前の例もあるわけであります。  したがって、この円の切り上げをした場合には、もし不幸にしてそういう状態になった場合に、先回の例を見ても、必ずしも産業全体として同じような形で影響を受けるということではないのではないかというふうに思います。したがって、これはアンバランス——跛行的な形になってまいります。これによって為替差損が多額に出るところ、あるいはそれの反対に為替差益が出るところ、こういう問題を考えてみますと、やはりこれを調整するような考え方もひとつ考えられなければならぬのではないかというふうに思うわけでありますが、それと関連をいたしまして為替変動保険制度の創設というようなこと、これはお互いにとにかく避けなければならぬわけでありますので、こういうことに言及をすることは、先ほど言ったような考え方ではありますけれども、この機会にこういうものに対する当局の考え方もひとつお示しをいただいておきたいと、このように考えます。
  33. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 為替変動に関する保険制度は、次の国会を目ざして各省間を調整して法案を提出していきたいと考えております。
  34. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 全部一緒に、時間がないので御質問申し上げますので、一括お答えをいただきたいと思います。  一つは、貿管令が功を奏した場合、要するに、所期の目的を達し得た場合に、この種のいわゆる統制的な体質というものが固定化するおそれがある。これは先ほど大臣がおっしゃったように、本質的な体質の改正をしなければならないのだということとうらはらの関係になるが、その辺をどう見ておるかということ。  第二点は、次官がせんだって、これが成功せずに円の切り上げが行なわれた場合には、貿管令は当然停止するという発言をなさっておるわけだけれども、それはそのような考えであるかいなか。  それから、ドル売りの現状と先物取引の現状から見て、すでに力強くという表現がありますが、再切り上げを絶対回避するという政府の説得力が実態に即していない。このことについてどのように反省しておるのか。先ほど大矢さんの質問にもありましたようにすでに政府は、絶対回避ということをしきりに叫んでおるものの、実際の動きというものは絶対回避じゃないという形ですでにすべっておるという現状ですね、これをどのように考えて対処するかという問題についてお聞きしたいわけです。  それから、この際、大臣となかなかお出会いできぬので、この席を利用して繊維の問題、今日的な問題で二つだけお聞きします。  八月三十一日の商工委員会で、私は、アメリカの毛とポリエステルのダンピング問題について私の考え方を申し上げました。大臣からも全く同感だ、したがって、この問題は、ちょうどそのおり、田中総理がハワイに立たれる直前であったために、田中総理にも話して、ニクソンさんにもこのことを強く主張するようにお願いしてあるということであったわけです。その後、ハワイ会談が行なわれたわけだけど、田中総理は、ニクソンにわがほうの態度を鮮明にしたか、いなか。  さらに、この問題がすでに公聴会を終えておる段階で、もう旬日を経ずして結論を導く段階にきておるわけだけど、こちらの考えどおりに事が運ぶのかいなか。  いま一つ、ガットの繊維作業部会でも、化合繊の多国間協定への移行について、たいへん危惧される向きがあるわけです。この現状と今後の見通し並びにこの作業部会の、多少作業が遅延しておる動きと関連して、ECの委員会わが国に対する規制を行なおうとしている動きも現にあるわけです。そうした場合に、これをどのようにカバーしていくのか、以上の点を一括して。
  35. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず第一点の、貿管令が恒久化、体質化するという問題でございますが、これはあくまで緊急避難の措置として発動する場合には、一年の暫定的な期限、期間を設けてやるつもりでございます。それでその実績の動向を見まして、この運用については弾力的に措置していくべきものと考えます。  第二番目に、もし万一再切り上げが行なわれた場合には、これは廃止するのかという御質問でございますが、もちろん、当然そのときから直ちに廃止すべきものであると考えます。  それから、ドル売り先物に関する政府態度でございますが、これは先ほど申し上げましたように、いろいろな総合政策をやり始めたところでございまして、特に来年度予算の編成ということは非常に大きく経済構造関係することでございますので、これは政府は確信を持って再切り上げせず、こういう形で進むつもりでございます。  それから、毛のダンピング調査の問題につきましては、田中総理に、行く前にそういうことをお話いたしましたが、ニクソン大統領とこのことを話したかどうか、その報告を私まだ受けて聞いておりません。私は、しかし、この委員会でそういうお話もございましたから、アメリカの要路に対して直接手紙をあの直後出しまして、それに対する回答ももらいました。その回答は、関税委員会というのは独立の機関であるけれども、自分のほうは極力努力をしてみると、こういう返事でございました。  なお、この間ケンドール氏が参りましたときに、この件に関する弁明めいた話を私のところに言いに来ました。こちらのほうは、弁明については耳をかしましたけれども、わがほうの態度については、さらにきびしく言っておきまして、あなたは大統領に近いのだから、この際、大統領の力を使って、この日米間の不幸な事態が起こることを避けるようにやってくれと、そういうことを強く言っておいた次第でございます。  それから、ガットの問題でございますが、ガットに対するわれわれの態度は、多国間と一般的協定をするという方向が正しいと思うので、日本とECとかそういう二国間のバイラテラルのやり方で規制するというやり方については、私たちは反対であります。そういう基本的態度を持って関係各国と話し合っていきたいと思っております。
  36. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これでやめますが、さきのアメリカ政府の高官からの文書というのを発表してもらえるかいなか。あるいはそれが私的文書であれば発表はむずかしいとも思うけれども、その概要を私に見せてもらえるかいなか。  それから、最後におっしゃった多国間協定を結ぶ方向へいくということは、これはいままでの一連の政府考え方と私は全然違うと思う。要するに、毛・合繊の問題ですよ。WPの問題ですから、これは多国間協定はやらないという姿勢でいままで政府は進んできたわけなんです。いまのお話ですと、二国間よりも多国間がいいということであれば、政府のいままでの考え方がまるっきり変わったことになるのです。これは重大な問題だと思う。その辺私、調整してお答えいただきたい。
  37. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 返書の問題につきましては、先生のところに持参してお目にかけます。  それから、ガットの問題につきましては、私の思い違いがありましたら、局長から訂正してもらうようにいたします。
  38. 斎藤英雄

    政府委員(斎藤英雄君) お答えいたします。  ガットの繊維のWPでございますが、これはすでに数回開かれたわけです。その内容は、事実の調査をするという内容で進んでおります。十二月の上旬にはいまの予定でございますと一応報告書を取りまとめるという、こういうことになっております。したがいまして、現在、事実の調査のみにそのWPの権限が限定をされております。その後の問題につきましては、さらに私どもは慎重に検討いたしたい、こういうように考えております。
  39. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 であれば、この問題は、先ほどの大臣の御答弁はまるっきり間違いであるわけですから、検討委員会、いわゆる勉強会にとどめるがゆえにわれわれは参加する、したがって、その委員会が即多国間協定に結びつくような措置があれば、われわれは脱退する、席をけって出るということを、田中総理大臣も以前から述べておられるわけだから、いまおっしゃったことは全部取り消していただかぬと、これは重大な問題だと私は思います。
  40. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の思い違いでございましたので、取り消します。
  41. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 時間がわずか六分だといいますから、簡単に御質問申しますが、円再切り上げの問題で私もちょっと質問しておきたいと思います。  いま、外貨準備高十月末で約百七十八億ドル、その後さらにふえ続けて、現在ではすでに百八十億ドルをこえておる、こういう情勢の中で円の再切り上げは必至と、こういうふうに世間では言っておるわけです。その点先ほど大臣は、絶対いたしませんと強くおっしゃいましたが、大臣がそういうふうにおっしゃっても、世間ではなかなかそれをそのまま受け取らないというのが現状だと思うのです。そこで、絶対切り上げないというならば、回避するためにどういう対策を立てていらっしゃるか、その点まず伺いたいと思います。
  42. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全内閣の総力を傾けて円再切り上げを回避する、これは不抜の信念として実行する、そういうことでございます。それで、この十月の二十日に円対策をきめまして輸出輸入、それから税制、そのほかの点につきましてきめました各項目をいよいよ発動いたしまして、いま実行に着手したところでございます。  それから、やはり経済構造のべースを上げるということが非常に重要でございますから、補正予算も組んでやっておるわけです。補正予算を組むについて大蔵省は、初め非常に消極的でございましたけれども、大体通産省側の意見をいれまして、われわれが希望する線の補正予算を今度は組んでもらった、そういうことでございます。  それから、来年度予算がまた非常に重要な意味を持ってまいりますが、来年度予算につきましては、先ほど説明したような考えに基づいてやってみたいと思っております。
  43. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いま大臣がおっしゃった個々の問題については、またいろいろ質問があろうかと思いますが、最近の新聞によりますと、日産ディーゼルがソ連との契約によりますと、大体長期取引なんですが、ドル二百五十円というような額で、長期契約がなされたという記事が新聞に出ております。したがいまして、大臣がいろいろそういうようなことをおっしゃっても、こういう事実があるとするならば、やはり業界は大きな不安を持たざるを得ない。円切り上げは必至だという考え方のほうに向くわけです。この事実を大臣は否定されるかどうか、この事実をお認めになるか、それが一つです。  時間がありませんから、もう一点、私、質問しておきたいのですが、先日、私は、国会商工委員会の調査でずっと歩きましたが、中小業者は、円の切り上げに非常に不安を持って、そして燕の例を申しますならば、燕の金属洋食器業界が、こういうことを訴えておりました。せめて、現在契約済みの分だけ、それだけでもいま百八十億ドルから外貨を持っているんだから、先に契約分だけでも貸してもらえぬか、そしてドルが入ったら、そのドルでお返ししますから、それだけ分を先に貸してもらいたい、何とかできないかどうかという相談を受けました。それで、どのくらいあるんだと言ったら、燕だけでは六十億円、二千万ドルと、こういう金額をあげて、これだけでも先に貸してもらえるように、ひとつお骨折り願いたい、こういう訴えがございました。これが可能かどうか、ぜひともそういうふうに取りはからっていただきたい、こう私は思います。  もしも円再切り上げ——あなたは絶対やらぬという信念をお持ちのようですが、これは信念だけじゃ解決しない問題だと思うんです。国際的ないろいろな関係から起こってくる問題ですから、総理大臣通産大臣、大蔵大臣の信念だけでは解決しない問題だと思いますが、万一円再切り上げを行なった場合、中小企業のこうむる損害をどういうふうに救済なさるのか、そこまで話をはっきりと伺っておかないと、中小業者は安心をしないだろうと思いますので、その点を伺っておきたいと思います。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず日産ディーゼルのことでございますが、こういう話は聞いておりません。二百五十円なんというのは、ちょっと去りそうもない話じゃないかと私思います。  それから第二の、燕の二千万ドルの点は、局長から答弁させます。  それから、中小企業の問題につきましては、そういうことはありませんが、もし万一そういうようなことでもあれば、これはわれわれとしてはいままでもあらゆる方策を講じてやりましたけれども、さらに念の入った政策を積み重ねてやっていきたいと思います。
  45. 莊清

    政府委員(莊清君) 燕の洋食器業界は御案内のように、アメリカの関税割り当て制度では数量を制限されたという上に、切り上げということで二重の打撃を受けたのでございます。業界の懸命の努力と、それから当時政府でとりました緊急措置等がささえになりまして、ことしの八月までの一年間の輸出の状況でございますが、アメリカ以外の地域への高級品等の輸出等もございまして、数量で二、三%増、それから輸出単価のほうも何とか苦労をして回復をいたしまして、同じく二、三%増の状況で、八月までの一年というものは経過しております。予想されたような連鎖倒産というような事態は、そういうことで避けておるわけでございますが、私ども、いま先生御指摘のございましたような輸出について、そういう思い切った措置ができぬかという御要望があったことは承知いたしております。現在、先物相場がある程度どうしても下がっておりまするので、円の採算の面では三百八円よりも下で貿易が行なわれておるわけでございます。その輸出契約時の円の相場でドルを借りて、それを銀行に売り上げて、円を取得していくというふうな措置というものは、これはいろいろな問題を伴う非常に大きな問題だと思います。直ちに燕の問題に関して、こういうところまで思い切った措置というものは、なかなか講じにくいんじゃないかと考えまするが、中小企業対策という面から、今度の貿管令等におきましても、こまごました中小企業関係の金属製品というものにつきましては、かりに伸び率が大きいものでも、一億ドル末満のものをはずすというふうな配慮もやってもらっておりますし、今後の推移というものを十分に見まして、必要があれば昨年講じたような思い切った措置というものもやっていくというのが基本方針でございます。
  46. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大臣中小企業の方の中には、こういう気持ちが非常に強いんですね。とにかく、われわれはいろいろな困難を克服してこれまでドルをかせいできた、そのドルが、中小企業だけでかせいだドルだけではありませんけれども、とにかく、百八十億というような金額の手持ちのドルができたんだ、この中には自分たちのかせいだドルもたくさん入っているんだ、ところが、前のときには大企業は自分たちの手持ちのドルがあるから、察知してドルを売って、そうして損失を少なくすることができた。しかし、自分たちはそういうドルの手持ちがなかった、だから売ってどうのこうのというようなことができなかったと言うんです。そのためにまともに損失を受けた。だから、今度はそういうことのないように、今日せめて契約済みの分だけでも、自分たちがかせいだドルだから、一たん自分たちに貸してもらえぬか、何も政府に損失をかけるんじゃないんだ、そして自分たちは借りたドルを早く円にかえて損失を少なくしたい、こういう気持ちなんですね。私は、これは中小企業家として当然考えることだと思うんです。そうしてこういう心配をなくしていくということは、当然私は、政府当局のなすべきことではないか、こういうふうに思うんですね。これは燕だけの問題じゃないと思うんです。日本全国の中小企業家がそういう考えを持っております。大阪へ帰りましてもそういう訴えを受けます。だから、そういう中小企業に万一そういうことがあった場合にも、絶対損失はかけないんだというこの確約をはっきりとなさっておかないと、中小企業家は安心ができない、こういうことだと思うんです。だから、一番早い例は、とにかく、早くドルを貸してあげて、そうしてドルが入ったときに、そのドルで返してもらうという手を打てば、これはみな安心するだろうと思うんですが、それができないとするならば、万一円が切り上げられたときに、政府がはっきりと中小企業家の損失にならないような手を打つ、こういうことをはっきりと中小企業家に私は確約をしておいていただきたい、こう思うんですが、大臣どうですか。
  47. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ドルをお貸しするという構想も首肯できる構想でございますが、しかし、それはある意味においてはドルヘッジという形で再切り上げを促進するような危険性もなきにしもあらずでございます。やはり政府としては、再切り上げ防止に全力を注いでおるところでございまして、もし万々一そういうことがあった場合には、やはり中小企業対策については迷惑をかけないように万全の政策を打つと、こういうことで御了解いただきたいと思います。
  48. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) それでは、午前の質疑はこの程度とし、午後二時二十分まで休憩いたします。    午後一時二十分休憩      —————・—————    午後二時二十六分開会
  49. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  午前に引き続き海外経済協力基金法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  50. 竹田現照

    ○竹田現照君 最初に、非常にばく然としたお尋ねですけれども、この経済協力の結果が一体どういうことになっているのかということが大体問題だろうと思いますけれども、それについてどのように政府側としては把握をされているのか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  51. 木野晴夫

    政府委員(木野晴夫君) 海外経済協力につきまして申し上げますと、わが国が現在、海外協力として幾らやっているかと言いますと、二十一億ドルいたしておるのでございます。この趨勢を見てまいりますと、五年前は六億ドルでございましたから三倍強の増加を示しておりまして、その伸びはどこの国よりも大きいと言えるのでございます。しかしながら、アメリカが七十億ドル、西独が十九億ドルということでございまして、まだ量的にはさらに協力してほしいという要望もございます。  で、問題点一つは、民間協力を入れてでございまして、政府間の援助で申し上げますと五億ドルでございまして、実はDACの平均が国民所得の、GNPの〇・三五%でありますが、わが国の比率が〇・二三という比率でございまして、一つは量的拡大をはかるとともに、質的には政府援助をもっとふやしてほしいという要望がございます。先ほど申しました全体の額といたしましては、GNPの一%をば行なうべしという要請がございまして、それに対しましてはGNPの〇・九六いっておりますが、先ほど申しました政府開発援助では〇・二三、DACの平均の〇・三五よりも少ないと、これをば上げてほしいという要望がございます。それとともに、条件につきまして、たとえば金利を下げてほしい、それから据え置き期間を延ばしてほしい、返済の期間を延ばしてほしい、そういった条件をソフトにしてほしいという要望がございます。それからまた、商品援助につきましては、タイドでなくてアンタイドにしてほしいと、そういう要望がございます。  ただいま先生の御指摘の、海外経済協力はどうなっておるのかということでございますが、わが国も国際協調のもとに伸びていかなきゃならぬ国柄でございます。また、貿易収支が非常に好転いたしておりますので、経済的にも力がついておりますので、開発途上国からのそういった要望にこたえて、今後、ますますこの線をば伸ばしていかなきゃならぬのじゃないかと、このように考えておる次第でございます。そしてまた、有田大臣から提案理由の説明がございましたが、円対策の問題の一環といたしましていろいろ項目ございますが、その一つといたしまして、海外経済協力をば積極的に推進、拡大しようという線がございまして、現在その線を進めておると、こういった状態でございます。
  52. 竹田現照

    ○竹田現照君 私がお聞きしたいのは、経済援助の実効がどういう面でどのようにあがっているかということ、端的に言えばそういうことなんです。四十三年の法律改正のときには、例のインドネシアの商品援助の問題で改正が出されたんですが、たとえばこの商品援助について、四十六年ですから約五年ですね、当初の法律改正目的としたようなものが実効面においてあがっているのかどうかということですね。  それから、商品援助についてあのときの最後の質疑で私から総理お尋ねをしたときも、また、わが党の同僚議員がお尋ねしたときも、その商品援助というものについてはあまり好ましくないという答弁があったんですね。今度も何か衆議院ではそういうようなお答えがあったようですけれども、私がインドネシアの経済企画庁長官にこの経済援助の問題についていろいろとお話を聞いたときには、日本の中でのこの商品援助に対する考え方と現地の考え方は必ずしも同じじゃないですね。ですから、そういうようなもので、まあインドネシアならインドネシアに限定されてもよろしいです、例ですから。わが国が何か目的としたというか、期待をしたというか、そういうような面にこたえ得る実績というものがあがっているのかどうかと、こういう点です。
  53. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 先生御指摘の第一点の、一般的な経済協力効果の問題につきましては、これは基金なり、あるいは輸銀の融資機関が海外に事務所を持っておりまして、それが絶えずそのあとのフォローをやっておるという点、あるいは在外公館が絶えずプロジェクトの進行状況その他を把握しておるという面、さらに昨年、一昨年あたりから外務省が中心となりまして毎年数チームの調査団を派遣しまして、国別に日本経済協力がどのようなパーフォーマンスを持っているかという点についてかなり詳細な調査をして、そしてまあ一応経済協力やりましても、いろんな技術的な問題とか、あるいはその資金面の問題とか、あるいはその原材料の質の問題とか、いろんな関連産業との関係の問題とか、いろんな問題ございますので、そういった点の問題点を把握しまして、自後の技術協力なり資金協力のひとつの重要な参考資料にしていくというふうな扱い方をしているわけでございます。  それから、第二点の商品援助の問題でございます。御指摘のとおり、商品援助の規定は四十三年の基金法改正で、その当時、当面の問題としてインドネシアの問題を取り上げて改正を行なったわけでございますが、その後インドネシア以外にフィリピン、ビルマ、韓国というふうに四カ国を対象にして経済協力基金としての商品援助を行なっているわけでございます。で、インドネシアにつきましては、御承知のように、商品援助そのものはただいまお話ありましたように、やはり援助の本質と申しますのは、経済発展のためのプロジェクト援助というものが援助の本筋だろうと思います。ただ、最近の発展途上国の状態を見ますと、特に七〇年代、まあ六〇年代通じまして、むしろ南北の格差が開いている。特に国際収支とか、あるいはインフレ問題というふうな当面の問題が非常に大きな問題になっておるという点が、おととしの国連の総会でも発展途上国から強く指摘されたわけでございまして、七〇年代の援助のあり方として、やはり発展のためのプロジェクトもさることながら、経済の安定のための援助も強化すべきであるというふうな強い意見も出されておるわけでございます。したがいまして、やはり発展のための足場としましての経済の安定、すなわち国際収支難の打開と、つまりインフレの収束という点が商品援助一つのねらいになるわけでございまして、日本もそうでございますが、国際的に援助の大体四割ぐらいが商品援助に充てられておるというのが現状でございます。  御指摘のインドネシアにつきましては、六八年から商品援助をやっておりますけれども、御承知のように、六六年当時からこれはスカルノ時代の遺産と申すべき経済破綻状態にあったわけでございまして、年間物価騰貴率が八〇%というふうな非常に極端なインフレの状態にあった。国際収支ももちろん悪いと、経済成長率が一%か二%だというふうな非常に極度に悪い状態にあったわけでございますが、その後IGGI——対インドネシアグループという先進国のグループができまして、日本もその一員として参加したのでございますが、IGGIを中心としましてインドネシア経済の再建をいまはかりつつある、国際収支は昨年、一昨年あたりから貿易収支に関する限りは若干の黒字になってきておる、物価も大体五%程度に落ちついておる、経済成長も七%ぐらいの成長になっておるというふうに、かなりのパーフォーマンスをあげておるわけでございますが、一方、国際収支全体としましては、やはり貿易外の赤字が非常に多うございます。しかし、やはり国際収支全体としてはなお五、六億ドルの赤字になっておる状態でございまして、完全に立ちに直ったわけではないのでございますが、そういうことで、インドネシアのこの数年間の動きは非常にいい方向に向かっておるということは言えるんじゃないかと思います。
  54. 竹田現照

    ○竹田現照君 今度の法律改正もそのことを多少は目的にしているかとも思いますけれども、日本経済協力の中身について、御承知のいろいろな批判が国際的にありますし、受ける側からも、先ほどお答えがありましたようにいろいろと注文が多いわけですけれども、たとえば政府ベースの開発援助というものが非常に少ない、一方、延べ払いの信用供与というものが非常に大きい。だから、これはわが国輸出市場の拡大ばかりはかっているというような批判があるわけですけれども、最近の諸般の情勢を考えて、発展途上国に対する日本経済政策というものは、私は、転換期にきていると思います。そういう点で、いままでの中身を全く逆にするような考え方を持ってもいいのではないかと思いますけれども、この経済政策転換、それとそれに対する政府側の考えというものは一体、どういうふうなことをいまお考えになっているのか、この点について……。
  55. 木野晴夫

    政府委員(木野晴夫君) ただいま先生御指摘のとおり、私も、海外経済協力につきましては一つ転換期にきていると申しますか、そういった感じがするのでございます。その一つは、日本の国の外貨が非常にたまりまして、経済的にも強くなってきているわけであります。それからまた、開発途上国の日本に対する要望も非常に強いわけでありまして、これに応ずることが、貿易で立っていこう、国際協力をもとにしてやっていこうという日本の国といたしまして、積極的に進めるべき事柄であり、またそれだけの力を持っておると、このように思うのでございます。  それで、その場合の海外経済協力の形でございますが、商品援助というのでなくして、やはりプロジェクトを中心にやっていくと、これがオーソドックスの線であろうかと思っている次第でございます。それから、基金ができます前に輸銀がございまして、輸銀が中心にやっておりましたが、基金ができました段階におきまして、基金のほうが条件がソフトでございますので、この基金がこれから出てくるのではないかと、このように思ってるわけでございます。  それから、これは当然のことでございますが、海外援助するからには海外援助を受ける国、開発途上国に感謝をしてもらうという形でなければならぬと思うわけでありまして、そういった意味でエコノミックアニマルと言われたり、ないしは何と申しますか、がめついと言われたりということのないように、この点は十分に慎まなければならぬと思っている次第でございます。それとともに、国連がございまして、各国ともにこの南北問題の解決に努力いたしておりますので、こういった線、これは十分に協調いたしまして進めていくべきである、このように考えておる次第であります。
  56. 竹田現照

    ○竹田現照君 重ねてお伺いしますが、端的に、受ける側の国のいかなる点を第一義として経済援助を行なおうとされているのか、この転換期に即応してですね、この点ひとつ。
  57. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) ただいま政務次官からお話申し上げましたように、日本経済協力問題点と申しますか、先ほど先生御指摘のように、やはり経済協力の規模はもう世界第二位というふうになっていますけれども、中身を見ますと、政府開発援助のウエートがこれが二五%、DAC平均は四〇%。反面、輸出信用が三五%、これはDAC平均では二〇%というふうに構成があべこべ、逆になっている点が一番問題でございます。で、この政府開発援助は昨年の実績ですと、GNPに対して〇・二三という非常に低い数字、これはDAc平均では〇・三五という平均でございます。これを発展途上国としましては、一昨年の国連の総会、それからことしの春の第三回UNCTADにおきまして〇・七を即刻達成すべきであるという決議をしておるわけでございます。この点が第一点であります。つまり、日本としましては、ODA——政府開発援助の量をふやすという点が第一であります。  それから第二には、やはりその条件の問題でございまして、このODAの中で贈与の占める比率が日本の場合は二五%でございます。しかし、DAC平均ではそれが約半分になっておる、五〇%を占めているという点で、つまり無償経済協力のウエートが非常に小さいという点が第二でございまして、これが今後、無償部分の供与をできるだけふやしていくという点が一つの課題になっておるわけです。  それから第三としましては、借款の条件の問題でございまして、日本の昨年の平均条件が、金利でいいますと三・五%、そして返済期間が二十二年、据え置きが六・七年というふうになっております。これがDAC平均は二・六%で、それから返済期間が二十九年でございますのでかなりの開きがある。この条件をもっとソフトにすべきであるという点が、これば発展途上国の一般としてだけでなくて、日本の現在置かれている地位、立場から見て、もっとソフトにすべきであるという強い主張が日本にあるわけであります。そういう点、いろいろ政府開発援助をめぐって日本に対する発展途上国の要望が非常に強いものがあるわけでございまして、そういった要望にできるだけこたえていくということが、これからの日本経済協力のあり方の一番重要な点じゃなかろうかと思っております。
  58. 竹田現照

    ○竹田現照君 そこで、いまお答えになりました、たとえば条件緩和あるいは無償援助の拡大、これはまあ先進国との対比からそういう方向に行かなくちゃならぬわけですけれども、その点の具体的な方法なり目標なりというものをどの点に置いてお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  59. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 政府開発援助の〇・七という目標は、確かに現状の〇・二三という数字から見ると非常にかなり高い目標になるわけでございます。ことしの春の第三回UNCTADにおきましては、これは西独も同じでございますけれども、いついつまでに達成するという時点のコミットはしておらなかったのでございますけれども、やはりおそくとも一九八〇年までには達成しなければいけないというふうな考え方一つのコンセンサスになっておるわけでございます。そうしますと、年率で伸ばしますと七五年あたりは〇・四ぐらいになっていなければいけない。ということは、当面DACの平均は〇・三五でございますので、現在のDAC水準に少なくとも七五年くらいまでには達成しなければいけないという一つの目標になるわけでございます。その中における贈与の比率をその過程において引き上げていくわけでございますが、いずれにせよ、具体的には今後の五年なわ十年の経済成長がどういうふうにいくか。もう少し、現在、経済企画庁でも新しい長期計画を策定しておりますけれども、それを見ないと具体的な数字は出てまいりません。しかし、いずれにしても、従来よりも政府資金、その中における政府出資、つまり、財投でない政府出資のウエート、これを従来よりかなり飛躍的にふやさないとやっていけないという問題があるわけでございまして、これは長期計画の策定を待って具体的に検討してみたいと考えておる次第でございます。
  60. 竹田現照

    ○竹田現照君 検討といったって、これはちょっとわからないのですけれども、外務省の試算で政府の円借款の平均金利が三・九、貸し付け期間が二十一年四カ月、これでいくと一九八〇年に元本が三百二十億、利子が七十億になるのですけれども、いまもちょっと一九八〇年に触れられておりましたけれども、こういうようなことが少しく緩和されるには、どういうふうにわが国としてなさろうとされておるのか。たとえば、西独は金利が〇・二五、据え置きが十年、期間三十年、イギリスは無利子の八年の三十年、カナダも大体同じ、カナダは無利子の十年の五十年、こういうような、非常に日本と比べて、実際返さなくてもいいというようなものですね、極端にいえば。無利子で、据え置き十年で、期間が五十年というような条件になれば、実際は無償援助みたいなものなんですね。まあそこまでいかないにしても、こういうものと対比しながら、なおかつ、また日本に対する批判等もくみ上げて、これをどの程度ぐらいまでにはしなくちゃならぬだろうという一つの目安というものは、いままだないのですか。
  61. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 申し落としましたが、七〇年代のおしまいに〇・七に持っていく、あるいは先ほど申し上げませんでしたけれども、借款の条件、この十月にDACの上級会議で採択されました条件の目標というものが、これはグラントエレメント八四と出ております。非常にややこしいのでございますが、贈与の比率と借款条件を組み合わしたものをそうした数字で保証しているわけでございますが、日本の現在のグラントエレメントが六五でございます。それを八四に上げると、日本の現状の贈与比率というものが大体三割になっておりますので、三割という水準で八四というものを見ますと、金利が下五%に返済期間が四十年というくらいなのが借款条件になる計算になるわけでございます。そういった一つの目標が出てくる。こういったものをかりに八〇年、やはり同じように八〇年という目標を立てますと、今後の経済成長に見合ってどういうテンポで全体の経済協力量がふえ、ODAの量がふえて、そしてその中における財政の出資の比率がどのくらいになるかという数字が出るわけでございます。私どもとしましては、関係各省と非公式なそういった検討は絶えずやっておるわけでございますけれども、これも現在改定中の長期計画ができた場合にどういうふうな数字になるかということも、今後、長期計画ができました場合には再検討するということになると思いますが、ただ、その具体的な計画のつくり方、それの扱い方という点につきましては、やはり援助と申しますのは相手のある問題でございますので、その扱い方とか、それから国内的には財政の単年度主義との関連もございますのでどういうふうに扱うかは今後検討しなきゃいけませんが、何らかの形でそういった計画的な実施という点を今後も検討しなきゃならないと思います。  で、具体的には、やはり無償の問題は外務省の海外に対する無償協力予算、それから技術協力につきましては海外技術協力事業団の予算の拡充の問題それから借款につきましては、先ほども政務次官が申し上げましたけれども、やはり最近は条件が非常にソフトになってきておりますので、輸銀と基金両方でやっておりますけれども、基金のウエートが非常に高くなっておりますので、基金予算の拡充、特にその中における出資比率を逐次上げていくということによって条件緩和が逐次やっていけるように基金の支出を考慮していくという点が今後の政策の重点になろうかと思います。
  62. 竹田現照

    ○竹田現照君 まあ、具体的に数字で答えができないわけですけれども、そういういまお答えにあったようなものの、具体的にこうこうこうするんだというようなものを、たとえば来年度なら来年度でもはっきりできるという状況でいま検討は進められているというふうに理解してよろしいですか。それならそれで質問は終えますけれども。
  63. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 何といいますか、そういった毎年の予算、外務省なりあるいはうちでも、私ども、基金予算を組みます場合の一つのものさしとしてのそういった計画と申しましょうか、そういったものは絶えず持っておるわけでございます。ただ、それを具体的に対外的にこういうふうに、経済協力をこういう長期計画でやるんだというふうな計画を、はっきり具体的にきめて対外的に出すということは、これは相手のあることでもございますし、いろんな問題がございますので、その取り扱いについては今後検討したいと思いますが、そういったできるだけ計画的にやっていきたいということは、従来もやっておりますけれども、今後ますます必要性が強まると、そういうふうに考えております。
  64. 竹田現照

    ○竹田現照君 次に、技術援助の問題についてお尋ねをしますけれども、七〇年の実績は前年比一三・六%増ということになっておりますけれども、これはODAの比率でいきますと四・八%、他のDAC加盟の平均一〇%強に比較してもたいへん低いわけですけれども、これはほかの国に比べてわが国がこういう非常に低いのは何かの理由があるんですか。その点と、それから、今後この技術協力を拡充するための具体的な対策というものは何らか考えられておられるのか、御説明願います。
  65. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 技術協力——政府ベースの技術協力は、主として外務省が主管しておりますいわゆる海外技術協力事業団を通じて行なっております。このために、技術協力は御承知のように、すべて原則として無償で供与されるものでございますから、したがいまして、政府予算の規模に直接つながっておるわけでございます。で、外務省といたしましては、年々この海外技術協力事業団で使います技術協力予算の拡充に努力してまいっておりますが、外務省全体の予算のワクがございますし、政府全体としての予算の伸びの問題もございまして、思うようにこれが進んでまいらないのが現状でございます。で、先ほど新田局長から御説明のございましたように、かりに政府直接借款、政府の直接やります開発援助——ODAを一九八〇年ごろに〇・七%というところまで持っていくようにいたしますために、その関連で技術協力予算を考えますと、大体において毎年これから倍増していかなければいけないというような数字になるわけでございます。しかし、とてもそういうようなぐあいになかなかまいりませんで、今年も明年度予算要求で相当がんばって要求を出しておるわけでございますが、これがどういうふうな結果になりますか、によりまして、今後のまたカーブもだいぶ変わってくるということで、非常に心配をしておるというのが現状でございます。
  66. 竹田現照

    ○竹田現照君 あれですか、具体的に留学生だとか研修生の受け入れ、あるいはこちらからの専門家の派遣というのは、大体どのレベルの者をやられるのですか。たとえば留学生は大学のクラスの者とか……。
  67. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 留学生の点につきましては、主として文部省でやっておられますので、私どものほうで必ずしも直接お答えできないかと思いますが、研修生につきましては、要するに、日本で研修を受けまして、その者が研修の結果を、本国に帰って本国の技術者を指導できるような程度というところが主たるねらいでございまして、こちらから専門家を派遣いたしますのもやはりそういったもので、直接、現場でもって技術指導をするということではなかなか間が遠いものですから、先方に参りまして、先方の中級ぐらいの技術者を指導するような専門家を派遣すると、こういうのが主たるねらいでございます。
  68. 竹田現照

    ○竹田現照君 それで、現地の責任者は、たとえばインドネシアあたりの話では、むしろ日本に求めておるのは、たとえば日本の農業にしても何にしても、中級というよりはむしろ初級の段階の技術援助のほうを求めておるというように言われておるんですね、たくさん労働力があるから。これは軍隊にたとえるのはあまりあれじゃないですけれども、言うならば、下士官クラスですね、こういうのをもう少しほしいのだ、そういう意見もあるわけです。確かにその点は不足をしているのですね、こういう国は。ですから、その点で、たとえば教育、学校のレベルで言えば工業高校あるいは農業高校、こういうレベルの留学生あるいは研修生、あるいは専門家ですか、そういう者の派遣というものも考えていいんじゃないかと、こう思うのですけれども、それはどうですか。
  69. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 御指摘のように、確かにそういう点の要請もたくさんございます。しかし、一面また、その国におきまして日本人の専門家の指導を受けたあとで、自分たちがたとえば自分の故郷に帰って、あるいは自分のもとの職場へ帰って指導する立場にある者の養成をも希望してくる場合も非常にございます。先ほど申し上げましたのは、後者の場合を主として申し上げたわけで、もう少し低いレベルのところに対しましては、海外青年協力隊というのがございます。これはもともとはアメリカの平和部隊とか、そういうもののアイデアをならったものではございますが、日本の場合の青年協力隊は、その後、ややどちらかと申しますと、いま先生御指摘のジュニアなエンジニアというような形で、もっと普通の専門家よりも少し低いレベルのところで、現場の人たちの間にまざって働きながら指導するというような形をとっておる場合が非常に多くなっておりまして、そういう点では現地の要請にかなりこたえてきているのではないかと思っています。ただ、国によっては青年協力隊を受け入れておらないところがございまして、インドネシアなんかの場合では協力隊をまだ受け入れておりませんので、その点ちょっとまだ問題が残っております。
  70. 竹田現照

    ○竹田現照君 そういう希望もあるわけですから、積極的におこたえになってあげるように、ひとつ私からも要望いたしておきたいと思います。  それから、経済協力地域別に見ますと東南アジアに集中をされています。そこで、まあひとつその中でベトナムの停戦協定が近いといま言われていますが、そういう場合に、南北ベトナムに差別なく復興のための経済協力というものはすべきであるという声は、決してわれわれの立場ばかりでなくて、国内で識者の中にもそういう意見があるわけですけれども、そういうような点についてはどのようにお考えになっていますか。
  71. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) インドシナ諸国につきましては、さっそく平和がもたらされましたあげくには、復興ということがまず第一の問題になるわけでございますが、これらの諸国が長期にわたって戦火の被害を受けておりますことからかんがみまして、わが国としてはできるだけの——思想とか、そういう社会体制とかいうことに関係なく、できるだけの復興のための協力は行なってまいりたいというふうに考えております。しかしながら、この場合に、それぞれの受け入れ国の考え方、また、その他の援助をやはりやろうと思っております諸国の考え方、また、わが国のすでにございますいろいろな機関の考え方、それからわが国内におきます考え方、そういうものに照らしまして、最も適当な方法を講じてまいりたいというふうに目下検討を進めておるところでございます。
  72. 竹田現照

    ○竹田現照君 あわせてアフリカ、中南米、中近東、こういう方面に対する援助計画をふやしていくとか、拡大していくとか、こういう点についてはどういうことを思っていますか。
  73. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) わが国開発途上国援助の中で、一つの問題として先生御指摘のように、アジア諸国にあまりにも集中し過ぎておる。援助全体の総額で申しますと大体六〇%、それから政府開発援助で申しますともう九〇%ぐらいアジアに集中しておるというのが実情でございます。この援助地域的配分をもっと考えるようにということは、DAC等の機関で常に指摘されてまいっておりますので、私どもといたしましても、現在、地域的配分に大いに心がけておりまして、最近におきましては、アフリカの諸国に対します直接借款の約束がかなりふえてまいっておりますし、中南米に対しましてもいろいろな意味で、たとえば開発のための調査をするとかいうようなケースが非常にふえておりますので、今後、だんだんとそういう地域的配分が均衡のとれたものになっていくということを期待しておる次第でございます。
  74. 竹田現照

    ○竹田現照君 次に、日中国交回復に伴う経済協力のあり方について、先ほど冒頭での、ものの考え方転換をすべきでないかという点とあわせてお尋ねをするんですけれども、このわが国の方針が、借款を与えて日本からの輸入を促進をするんだといういままでのやり方ですね、これが今度、中国の場合というのは、これは国連貿易開発会議で周化民貿易次官が演説をしていますけれども、どんな形の援助にしろ、援助を受ける国の主権は厳格に尊重されるべきだ、独立の民族経済を発展をさせる心からの援助をすべきで、彼らに負担をかけるべきではないと、こういう中国の経済協力に対する考え方との間に、私はかなりの大きな食い違いが出ていると思う。特に中国の海外経済協力の主力も、やはり東南アジアに向けていますね。そうすると、これからのアジアにおける日中両国の経済協力の問題について、いろいろと差が出てくるし、特にこの東南アジアに華僑が多いですからね、華僑と中国との関係。それから、かつての日本の東南アジアの華僑その他に与えたいろんなこと等をも考えた場合、私は、日中国交回復後の、特にこの東南アジアに対する経済援助等については、かなり大きくものの考え方を変えていかないとうまくないんじゃないか、そういう気がいたしますけれども、この日中国交回復に関係をして、そういう点についてはどういうふうにお考えになってますか。
  75. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 中国の対外援助は、御指摘のように、かなりの分量アフリカ諸国等に行なわれておりますが、現在までのところ、直接的にそういう日本と中国の援助が、まあ衝突をしているとかいうような事例はまだ出てまいっておりませんが、御指摘のように、今後事態がだんだん変わってまいりますると、そういう点が非常に目立ってくる可能性もございますので、私どもといたしましても、御指摘のような諸点、十分に踏まえて間違いのないようにやってまいりたいと思っております。
  76. 竹田現照

    ○竹田現照君 次に、台湾との関係についてお尋ねしますが、共同声明で、台湾との国交、これ断絶してしまいましたが、これからの経済関係の進め方ですね。国交がなくなってからいろいろなケースが出ておりますけれども、これからは台湾との関係というものは、どういう方向でどんな形態で進めていかれるつもりなんですか。これはどこですか、経企か通産か、担当のところで伺いましょう。
  77. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 私は、経済協力を担当しております者で、経済協力の面をまずお答えさしていただきたいと思いますが、現在までに、台湾に対しましては、政府のいわゆる円借款が供与されておる。それから、若干の技術協力が行なわれておるというのが現状でございまして、すでに御承知と思いますが、台湾に対します円借款は、昭和四十年に第一次円借款、総額で五百四十億円の約束ができました。その次に、また四十六年に新しい円借款約八十億円の約束ができまして、この第一次、第二次の円借款が行なわれておるということでございます。  技術協力につきましては、職業訓練のセンターを先方に設置いたしまして、そのために専門家が十五名ほど行っておる。それから先方から研修員が約三十人ぐらい来ておるというのが、日中国交正常化の時点におきます現状でございます。で、これらの政府間の関係というものは、日中国交の正常化に伴いまして一応政府間の関係はなくなるというのがたてまえでございますが、技術協力につきましては、いわば残務整理といったような考え方で現在、暫定的にまだそのまま続いておるような次第になっておりますが、民間でできますようなものにつきましては、今後民間に切りかえてやっていかざるを得ないというふうに考えております。  円借款につきましては、円借款の交換公文は政府間の約束でございますから、一応そこで終わったというふうに考えられますが、そのもとにおきまして、いわゆる貸し付け契約というのが輸銀もしくは基金との間にできておりますので、これはどちらかといえばその交換公文の傘の下にはございますが、契約の性質を持ったものでございますので、すでにできておる貸し付け契約につきましては、その後もこの実行が行なわれていくものと、若干のケースにつきましては貸し付け契約がまだできておらないものがございますが、これらはもともとの交換公文が終わったというたてまえから、新たにまた貸し付け契約をつくるということはやらないというようなふうな方針で現在臨んでおるわけでございます。
  78. 竹田現照

    ○竹田現照君 その交換公文のことはあとで私はお聞きしますけれども、経済関係全般ですよ、借款だとかなんとかということばかりじゃなくてですね。これについて国と国とのあれがないわけですから、だから、どういうふうに具体的には関係持っていくのかと、そういうことを聞いているんです。  それから、いまもお答えありましたけれども、国交がないわけだから、接触するとしても、民間ベースですね、これが中心になるんだけれども、その場合でも政府としてはどういう形でそれに関与をしていくのかですね。まあ、いろいろな問題が出てくると思いますけれども、それはどういうことになるんですか。政府はどんなぐあいにかかわり合いを持っていくんですか。
  79. 増田実

    政府委員(増田実君) 今後、日本と台湾の間の経済関係一般がどういうようになるかという御質問でございますが、日本と中国の国交が正常化されたのに伴いまして、台湾政府とそれからわが国との間の外交関係は持続し得なくなったということでございます。ただ、今後とも台湾と通常の経済関係あるいは人事交流の問題は、これは引き続き行なわれる、こういう考えでございます。台湾とわが国との地理的な近接性から言いましても、また従来からの日本と台湾との間の友好関係から言いましても、そういうように外交関係はなくなりましたけれども、経済関係あるいは人事交流関係あるいは文化の問題につきましてもそのまま残ると、こういうふうに考えております。ただ、基本的な外交関係がなくなりますと、そこにいろいろなやはりやっかいな問題が出てきておりますので、これらの問題につきましては、できるだけ従来どおり経済関係、人事交流関係が続けられるようにということで、個々の問題につきまして、ただいま外務省の経済協力局長から円借款の問題、技術協力の問題その他御説明ありましたが、それ以外にもたとえば二国間の貿易支払い協定というものがなくなりますし、また大使館もこれはそれぞれ近く引き揚げるということになります。そうなりますと、紛争仲裁のときにどういうようにするかという問題もいろいろございます。  それから延べ払いの取り扱いとか、それから海外投資をどうするとか、あるいは輸出保険について引き続き同じようにやるのかどうかという問題、それから関税の取り扱い、これは従来特恵を与えております。それから、いわゆる協定関税で最恵国待遇を与えておりますが、それを引き続きどうするかといういろいろの問題がございます。これらにつきましては、さしあたりの問題については一応措置をしておりますが、なお、今後生ずる問題につきましては、先ほど言いましたように、外交関係はなくなりましたけれども、引き続き経済関係は持続するということで処理していきたいと、こういうふうに考えております。
  80. 竹田現照

    ○竹田現照君 日中の通商条約というようなものは、これから早急に締結をされる方向に進んでいるのでしょう。これから進めようとされているのでしょうけれども、中国側がいま台湾の問題についてはあまり言及していないから、日本政府もわりあい楽なのかもしれません。けれども、そういう通商条約等の問題を進める上に、台湾の側から日本との経済面での断交というのはやってこないだろうか、そういう見方があるけれども、そのことがはたしてこれから将来にわたってずっと維持できるのかどうかということも、これはなかなか微妙な問題でしょう。しかし、そういうものが全般的にいまのところはっきりした見通しは立てられないということは十分理解いたしますが、これから北京との間のいろいろな外交折衝の中で、最悪の場合、台湾にあるいろいろな資産——台湾との折衝過程の中で、日本側の台湾に対する出方によっては、向こうにある資産だとか債権だとか、そういうものが凍結をされるという場合が予想されますけれども、そういう場合はいま台湾側との間に何らかの合意というものがなされているのか、あるいはまた、これを何らかの形で合意をとりつけようとするのか、最悪の場合、それもだめな場合に政府はそういうものに対してどういう救済措置をなさろうとしているのか、これはいまのところ想定になりますけれども、考えていらっしゃったらお答えをいただきたい。
  81. 中江要介

    説明員(中江要介君) ただいまの御質問の点は、先生も御指摘のように、台湾の将来の地位がどうなっていくかということについては、長期的な見通しが立て得る状況でないということは、私どもも苦慮していることの一つでございますが、今回の日中国交正常化というものが、先ほど来お話がありましたように、日本と中華人民共和国政府との間の関係を正常化するというところに重点があったわけでございまして、台湾という地域日本とのいままでの関係及び将来の関係を無理に断ち切らなければならない、あるいは断ち切ることを目的とするものでなかったことも御承知のとおりでございます。したがいまして、政府といたしましては、できる限りこの台湾という、日本に近い、また歴史的にも文化的にもあらゆる面に関係の深い地域日本との間の民間の交流というものは、でき得ることならば続けていきたいという考えでございますけれども、ただいま御質問にありましたように、その台湾という地域を実際に支配している、管轄している当局というものが、いままでは国民政府ということで、わが国との間に公の関係があったわけですけれども、今回の正常化の結果として、遺憾ながらこの関係が継続できなくなった。したがいまして、そこにおきますいろいろの問題について、公の政府間の話し合いでの解決ということは、事実上できなくなるという事態になるわけでございます。これは日本政府の本意とするところではないのですけれども、日中正常化の結果としてはまことにやむを得ないものとして受け入れざるを得ない。そこで政府としては、そういう困った事態が、困難な状態が起きないようにということで、日中正常化の前後を通じましていろいろの手を打ってきておるわけです。で、したがってあるいはしたがってであるかどうかは必ずしもはっきりいたしませんけれども、現在までのところ、そういった日本の個人または法人の利益、あるいは財産等について、また、日本人の生命、身体について不慮の事故というものは一件も幸いにして起こっておりません。これは台湾の当局の非常な配慮があったというふうに思っておりますし、その点は喜んでいるところであります。  で、先般の総理訪中の場合の北京における話し合いでも、日本と台湾地域との間のいままでの関係というもの、それから、それは早急にどうするというわけにいかないだろうということについても、北京の中華人民共和国政府の首脳からも理解が示されたというふうに聞いておりますし、したがって、近い将来に、いま御指摘のような資産凍結とかなんとかというような激しいことは起こらないであろうという希望と期待を持っておるわけです。  で、にもかかわらず、もしそういうことがあったらどうするのかということについて、何らかの話し合いなり取りきめをしているかという点の御質問ですが、これはもう、もはやいまの段階では、日本政府は国民政府を相手として政府間の約束なり取りきめというものを結ぶ地位にないわけでございますので、台湾の現地当局を拘束するような政府間の約束というのはできないわけでございます。したがって、もっぱら民間のルートといいますか、非公式の接触を通じまして国交正常化後、現在まで示された好意的配慮が続くことと期待していくという手段をとる以外に方法はないと。また、そういう意味での非公式の接触なり、民間の方々の御協力を得ての台湾当局の理解を求める努力は続けておる次第でございます。
  82. 竹田現照

    ○竹田現照君 想定になりますから、これ以上お聞きしませんが、それで先ほど経済協力局長は、例の交換公文はすでに効力を失ったと、そういうお答えがあったんですね。それで、その場合、すでに与えられた借款のワク内でも新しい貸し付け契約を結ぶことはできないんだと、そういう見解があるんですね。そうすると、逆に台湾側が供与済みの借款について、これはまあ、いま台湾は幸いにして返しているそうですから、問題は起きてはいないようですけれども、支払いを拒否した場合でも文句をつけられなくなると、こういう点についてはどういうことになるんでしょうか。
  83. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 先ほども申し上げましたとおり、日中国交正常化に伴って、さきに結ばれました交換公文はその時点で終了したと。しかしながら、それに基づいて行なわれておりましたところの貸し付け契約というのは、これはまだそこでそのまますぐに効力がなくなるというような規定を含んでおるわけでもございませんので、そのまま続いておるし、したがいまして、その後は結局この貸し付け機関である輸銀なり基金なりと、それからそれを借りておりますほうのものとの関係になるわけでございますが、借りておりますほうの側では、債務を忠実に返済ということで忠実に履行するし、こちらの貸します側も、その約束に従って貸し付けをやっておるという形にならざるを得ないと。で、御指摘のように、現在は台湾側も忠実に返済を行なっておりますので、各機関といたしましても、そういうような事態を極力確保していくという努力を続けていくということ以外にはないかと思います。
  84. 竹田現照

    ○竹田現照君 純粋の法律論からいくと、台湾は中国の一部だということを日本が認めたわけですから、国民政府との間にいろいろと取りきめがあったとか、なかったとかということは別として、現に外交上の交換公文なりというものがあって、それに基づいてやられたことで、こういう国交の状態になった場合は、そういう債権債務は北京政府——いまは中華人民共和国政府に継承されるものですか、本来は。
  85. 中江要介

    説明員(中江要介君) ただいまの御質問の大前提になっております、台湾が完全に一〇〇%中華人民共和国の領土であるということを認めた場合には、いろいろ国際法あるいは国際先例に基づいて、その地域の債権債務の継承の問題その他の問題が起きると思うんですが、私どもの認識では、先般の統一見解の際にも示されたと思うんですが、共同声明第三項にありますように、中華人民共和国政府が、台湾は中華人民共和国の不可分の領土の一部であるという主張は、これは理解し、尊重するものですけれども、それをそのまま承認したというところまでは踏み切っていないので、ポツダム宣言第八項の立場を堅持するというところでとまって、それ以上の意見の相違は小異を残したというほうで残っておりますので、ただいまのように、純粋に法律的に最後まで詰めるということは、まだその段階でないというふうに考えておるわけでございます。
  86. 竹田現照

    ○竹田現照君 まあ、これは北京に行かれた大臣に聞かないとわからないかもしれませんが、たぶん、まあ政治的な措置にならざるを得ないと思いますからあれですが、それでは、政府がきめた台湾向けの新規の円借款は認めない、それから輸銀の延べ払い資金使用は原則として許可しない、こういう態度表明が出ていますね。これは十月四日の新聞に出ています。そうすると、原則というのだから例外はあるはずだけれども、その例外というのはどんな場合認められるのかですね。これは通産大臣の答弁として、衆議院の商工委員会でわが党の中村委員の質問に答えているわけですけれども、その答弁の中身について聞きたいんですけれども、どういう場合には例外として認められる場合があるのかですね。
  87. 増田実

    政府委員(増田実君) ただいまの竹田先生御指摘になりました、輸銀の台湾向け使用の問題でございますが、実は、ただいま御指摘になりましたのは、十月三日の衆議院の商工委員会におきまして、中村委員からの御質問で、輸銀使用による延べ払いというものは今後どうなるかという御質問がありまして、これに対して中曽根大臣が答弁いたしておるわけでございますが、そのときにはケース・バイ・ケースでよく検討してやりますということで答弁されておられます。ところが、それに関します記事が非常にまあきつく出まして、ただいま先生がおっしゃられましたように、輸銀の使用は原則としてしないんだというふうに、若干強いトーンで出ておりますが、現在の台湾に向けます延べ払い輸出に対する輸銀融資の方針はこういうことでやっております。台湾向け延べ払い輸出に対する輸銀融資については、具体的案件に即し、延べ払い条件その他諸般の事情を慎重に勘案しつつ処理することとしているということで、この原則禁止、例外許可ということではございませんで、ケース・バイ・ケースに具体的案件に即しまして、そしてその内容をよく勘案して処理する、こういう方針で今後取り扱いたいと、こういうふうに考えております。
  88. 竹田現照

    ○竹田現照君 それから次に、経済協力基金資金供与を与えている曽分ダムだとか高雄第二港口及び南北高速道路、こういうものの建設の状況と、それからこの事業を継続されているわけですけれども、こういうものに対してはどういう扱いになっていますか。
  89. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 御質問の第一次借款で、先ほど外務省からお話がありましたように、借款供与しました五百四十億ですが、その中で経済協力基金から百七十五億のコミットをしているわけでございます。その後八十七億ほど融資をいたしまして、現在、高雄第二港口、これはしゅんせつと工業用地の増設でございますが、これは十四億で、これはすでに完成しております。  それから南北道路、これは五十二億予定しておりますが、これは現在、ローンアグリーメントを結んでおりません。したがいまして、全然工事に入っておらない。  それから曽分水庫ダムでございますが、これが総額百八億予定しておりますが、現在まで融資済みが七十三億でございまして、それからローンアグリーメントをもちろん結んでおりまして、今後融資予定になっておりますのが三十五億円という状態でございます。  で、工事の進捗状況は、曽分水庫ダムにつきましては、ダム工事につきましては九〇%進捗しまして、来年の五月末に湛水を開始するという予定になっております。発電所工事は、やはり来年の五月末に完成する。現在の進捗状況は、取水口が進捗率が六七%、発電機は今月の下旬に据えつけを開始するという予定になっております。土木関係は全部完了しております。  以上でございます。
  90. 竹田現照

    ○竹田現照君 これは引き続いて金は出ていくのですね。いまお話しの三十五億ですか。
  91. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 先ほど外務省からの見解がございましたように、この曽分水庫ダムにつきましては、基金と台湾政府との間にローンアグリーメントを結んでおりまして実施中でございますので、これは今後とも継続する予定でございます。
  92. 竹田現照

    ○竹田現照君 日中関係で最後にひとつお尋ねしますけれども、田中内閣が発足後、急速に日中国交回復ができ上がったわけですけれども、この田中内閣成立から共同声明までの間に、いわゆる直接借款あるいは一般案件で協力基金から台湾に援助を行なったものはありますか。ありましたら、その額、内容
  93. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) ございません。
  94. 竹田現照

    ○竹田現照君 それでは、法改正協力基金の問題についてお尋ねしますが、この法律改正も、諸般の情勢が円の再切り上げがきわめて切迫をしている、それでそれを防がなければならぬという緊急対策一環として出されたわけでありますけれども、そうすれば、この改正に伴って十分即効性というものが円対策の中にあらわれなければならぬと思いますけれども、私が考える限り、いまの一部改正で即効性を有するとはどうも思われません。しかし、出されてきたんですからお伺いしますけれども、むしろこの緊急対策と切り離して検討をされ、あるいは法律改正というものを審議すべき性格のものであるように受け取るんです。それで、緊急対策として出された案ですから、それなりの効果というものを政府側はお考えになっていらっしゃると思うんですけれども、これはどの程度効果がこの法律改正によってもたらされるのか、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  95. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 国際収支対策、いわゆる円対策一環として、やはり貿易収支に並びまして経済協力による資本流出という問題も重要な要素になろうかと思います。経済協力は最近、非常に規模がふえてきておりますけれども、一面、全部これがタイド援助になっておりまして、経済協力をやればやるほど輸出がふえていくというふうな矛盾を持っておるという一面があるわけでございます。反面、発展途上国から、この援助のアンタイイングの問題が条件緩和一環として、特にこの春以来、第三回UNCTADで強く発展途上国の要望として出ておるという両面あるわけでございます。  経済協力につきましては、経済協力基金からプロジェクト援助につきましては現在でもアンタイイングができるようになっておりまして、昨年、ビルマに約一千万ドル石油探鉱資金を供与しまして、これはアンタイイングして供与した実例があるわけでございます。本年に入りましても、インドネシアに対してそういうアンタイイング援助をやっております。ただ、特に最近発展途上国が希望しますのは、商品援助についてのアンタイイングでございます。これにつきまして、この際、アンタイの道を開くということが最近の発展途上国の要望にこたえると同時に、日本のこれからのいわゆる円対策一環にもなるということでこの対策に織り込んだという経緯でございます。  ただ、このアンタイやった場合に、いわゆる狭い意味円対策としてどれだけの具体的な効果があるかという御質問でございますけれども、これはなかなか計数的には把握しにくい問題でございまして、今後、具体的に発展途上国からこの商品援助のアンタイをどの程度の規模で要望してくるかという問題、それから、これはこちらとしても今後運用の問題として検討しなければいけませんけれども、従来はタイドでございますので、日本から供給し得ないものにつきましては、お互いに商品援助の場合には品目の選定をいたします。その選定にあたりまして、日本で供給できないものは除外しておるという運用をしておりますけれども、アンタイイングにした場合には当然これは、日本で生産ができなくとも発展途上国が要望するものを品目として入れなければいけないというふうな運用をするわけでございますが、具体的に発展途上国がアンタイイングの商品援助を求めてきた場合に、この商品選択をどういうふうなかっこうで、つまり、日本輸出に結びつかないような品目選定というものはどの程度の範囲でできるだろうかという問題もかかってきますので、なかなか計数的な把握は困難でございますけれども、ただ言えますことは、従来の日本からの商品援助の大体八割ぐらいが工業用原材料と、それから機械器具でございます。ところが、発展途上国の貿易内容を見ますと、大体四割ぐらいが食糧とか、それから鉱産物その他の素原料の関係輸入の構成になっておるわけでございます。したがいまして、発展途上国の希望をかなりいれます場合には、日本で生産できないそういったもののウエートがかなりふえてくる。そういったものが第三国からの購入に充てられる。ということは、その部分だけ日本からのタイドに、ひもつきにならないというふうなことが言えようかと思いますが、具体的に計数でなかなか申し上げにくいんで恐縮でございますが、そういうかっこうであります。
  96. 竹田現照

    ○竹田現照君 いまのお答えは、別に円の再切り上げ関連をしなくても、いままで要望されてたことなんですね。日本経済協力のあり方についての批判と、同時に受ける側が……。ですから、私は、いま先ほど申し上げましたように、緊急対策としてこの法律改正したところで、それほど即効性が私はないと思う。むしろ、経済協力のあり方そのものについて、六〇年代、七〇年代、さらにこれからの展望の上に立ってものの考え方を変えるんだといったら、その点も含めまして、この基金法の根本に触れた検討をむしろすべきであって、円対策には全然——私は、全然といっちゃ語弊があるかもしれませんけれども、何かあんまり関係ないような気がしてならないんですけれどもね。政府側も、またいまもお答えがあったように、数字で答えにくいというのですけれども、私は、円の再切り上げを防ぐというのは、これは数字で何らかの形が出ないことには納得させられるものではないんじゃないかという気がするんですけれども、それは間違いなんですか。これをやることによってこれだけ減るんだということでないと、これはちょっと私にはわからないんですね。私の理解する頭がおかしいんですか、説明するほうがおかしいんですか、これいかがですか。
  97. 木野晴夫

    政府委員(木野晴夫君) 円対策につきましては、十月の二十日づけで「対外経済政策推進について」ということで、五項目にわたりまして対策を打ち出されたところでございます。御承知のとおり、現在十月末で百七十七億ドルの外貨準備がたまっておりますが、こういった状態をどうするかということであるわけでございます。  それで、その対策といたしまして、輸入を拡大する、輸出の適正化をはかる。そうしてこれでどれだけのドルが減るかということが、直接即効的な話かと思いますが、実は、この問題に取り組みます場合に、御承知のとおり、第五項目で「福祉対策の充実」ということがうたわれておりますとおり、単にドルをどれだけ減らすかということともに、この際、国際的な経済体制を変えていこう、国内的な政策に重点を置くようはかっていこうということも打ち出されておりまして、これを含めてのものが円対策であると私は考えておるのでございます。  それで実は、ただいまの商品援助をばタイドからアンタイにすると、それでどれだけのドルが減るのかという御指摘の点も、当然の御質問でございますが、先ほど申しましたとおり、日本の国といたしまして、国際協調の線を進めていく、そういった点からまいりまして、商品援助の場合にタイドであるということは、国際的な要請もございまして、そしてまた、本邦からの商品に限り援助するということはいかがであろうかということで、この際踏み切ったわけでございます。それで、第四項目に「経済協力の拡充」ということをあげまして、実はそういった意味を含めまして載せておるわけでありまして、私は非常に大きな意義があると、このように理解しておるのでございます。  それで先ほどの、それではドルがどのくらい減るか、それをば数字で言えということでございますが、御承知のとおり、日本から出ております品物は非常に安くていいわけでありまして、これをアンタイにしたからそれじゃほかの国が入ってくるかというものじゃないと思うわけであります。御承知のとおり、原材料、素原材料、それから食料品、そういったものは日本にございませんから、そういった項目も、国際協力の点に取り上げる意味におきまして、数字がふえてくると思いますし、またある国におきまして、たとえば機械が遊んでおる、原料さえあればといった場合に、それに応じられるということがございますので、私は、そういったドルがどれくらいということを申し上げられませんので、先生の御質問に答えたことになりませんが、実は、円対策というものをそういうふうに理解しておるということを申し上げまして、御理解願いたいと思うわけでございます。
  98. 竹田現照

    ○竹田現照君 ぼくはやっぱり、今度の円対策に基づく法改正の提案というのは、私なりに聞いたことについて、やはり具体的に数字なら数字をあげて説明をすることによって納得をする。われわれを納得させられないのに諸外国を説得させるなんというようなことはどう考えても私はおかしいですね。だから、緊急の円対策としてはどうも私は納得がいかないのですね。これはやっぱりこれをやることによって、たとえ一億でドルであろうと五千億ドルであろうと、何らかの形というものが出てくるのだと思うのです。計算はちょっとできないというのじゃ、私は話にならぬと思います。どうしても出ないのですか。出なかったら出ないでもいいんですけれども……。
  99. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 非常に良心的に計算すると非常に出にくいということでございますが、非常にラフな話でございますと、たとえば去年の直接借款、ドルにしまして約三億ドルでございます。これが全部アンタイドになりますと、三億ドルということになりますが、まあかりに半分ということになれば一億五千万というぐらいの数字はございますが、それがどの程度どうなるかということはなかなか試算しにくいということでございます。
  100. 竹田現照

    ○竹田現照君 まあ時間もありませんから、あまりこれについてはこれ以上触れません。  それで、少し早く切り上げ関係であと一、二だけ聞きますが、結局、これでひもつきをやめると、こういうことになる。これは確かにそういう要望にこたえたという意味では私は、円対策と別問題として、いいと思いますけれども、ただ心配なのは、どうも日本の海外経済協力と、日本のいろいろな各界各層のくされ縁というか、いろいろなことが世上いわれていることが、あまりにもきついですね。きついというか、太いですね、ひもが。ですから、それが私は、法律だけひもつきを取ったということだけではたして解消されるのかどうか、この点については私は、まだ非常に疑問を持っています。で、日本の大手の企業が海外にもたくさん進出して合弁会社なんかもつくっていますけれども、日本内地の商品とのひもつきははずしたけれども、そういう海外に進出している関連企業との関係が、実質的に相手側に、買い手先に、いわゆる、ひもつきだなというようなことが絶対に、完全に排除でき得るのかどうか。全く——たとえばタイならタイ、マレーシアならマレーシアが、ここの国から買いたいのだという相手側の意思というものは一〇〇%尊重され得る自信は政府はお持ちですか。
  101. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) やはりタイド援助をアンタイイングに切りかえるわけでございますので、先ほど申し上げましたように品目の選定、それから相手側の意思というもの、これは品目の選定その他にあたりまして十分尊重さるべきものと思います。そうしませんと、やはり従来と同じように日本の商品が出ていってしまうということになりますので、その辺の運用には十分改善を加えたいと思います。
  102. 竹田現照

    ○竹田現照君 改善を加えるというんですけれども、政府とそういう大手の企業なら企業との関係で事実上そういうことは可能なんですか。私、十分尊重するという、一〇〇%尊重することがひもつきを断ち切るということとイコールでなけりゃならぬと思いますけれども。先ほどから私が心配しているということは、現実にあるんです。それとまた、特に東南アジアの諸国の現状からいうとリベートあるいはわいろ、そういうものが何か公公然と行なわれているところでしょう。一般の商取引も何かそれが慣行のようになっているようですね。そういう現状の中で、法律的にはひもつきは排除したけれども、実際は同じようなものだということになると、日本に対する不評というのはむしろ暗い形になって、ますます潜行していくというようなかっこうになっちゃ、私は、日本のためにもよくないですから、その点は政府側は、ほんとうに責任を持ってそういうことのないように日本の企業について十分な行政指導というものを行なうべきであると、行なわなければならないと、そう思うんです。この点。  それから、法律改正によって予想されるメリットというのは、日本側から考えてメリットというのはどんなものがあるんですか。
  103. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 先ほどの第一点の問題ですが、品目選定の問題のほかにアンタイイングの経済協力の場合には、借款資金の相手国政府が使う場合には、競争入札でやるというのがこれは原則になっておりますので、御懸念の問題はないと思います。  それからメリットは、先ほど来申しておりますように、やはり発展途上国の要望にこたえると、同時に、日本の最近置かれている立場から見た対外調整策の一環としてこれを活用していこうという両面を持っているわけでございます。
  104. 原田立

    ○原田立君 いろいろ竹田委員から事こまかな質問があったんでありますが、多少重複する点があるだろうと思いますがお答え願いたいと思います。  まず一番最初に、今回提案されている法案が、円対策を中心に考えての法案か、それとも発展途上国に対しての経済、福祉の向上をさしておるのかという点であります。今回の「対外経済政策推進について」、この中に入っているんだから確かに円対策だろうと思うし、それからことし初めに開発途上国からアンタイイングにしてくれという強い要請もあったこともあるわけですから、どっちが中心でやったのかという、考えたのかということを答弁……。
  105. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 対外経済政策のいわゆる円対策一環として取り上げる、あわせて最近の発展途上国からの要望にこたえるということで、このねらいは両面あるわけでございます。ただ、いわゆる円対策意味でございますけれども、御承知のように、円対策の中には輸入の促進、輸出規制のほかに、たとえば資本の自由化と、つまり、狭い意味円対策から見ますとむしろ外貨の流入になるわけで、逆な方向になるわけでございますけれども、そういった点も含めまして、やはり日本の対外的な地位にかんがみまして、この際、対外的な姿勢をはっきり正すという点も広い意味円対策と考えるわけでございまして、そういう意味では、やはり今度のアンタイイングの問題も対外経済政策のため提案して御審議願っていると、こういうことになるのじゃないかと思います。
  106. 原田立

    ○原田立君 それでいま竹田委員からお聞きした問題になってくるんですね。結局、これによってどれだけの円対策があるのかということですよ。さっき局長は、三億ドルぐらいというようなことを言われておるが、これは現状で三億ドルでしょう。ひもつきで三億ドルであったと、アンタイイングにすれば五割増しとかあるいはもう少しふえるであろうとか、あるいは減るであろうとかという、そこら辺の推測もできないんですか。
  107. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 三億ドルと申し上げましたのは、昨年の直接借款の金額でございます。したがいまして、日本商品援助のアンタイイングに踏み切ることによって商品援助要請が強くなってくると、そういう意味で今後の問題としては金額のふえる要素がございます。反面、全部アンタイイングになって日本の商品が全然出ないということもございませんので、この直接借款のうちのかなりの部分はやはり日本輸出が出ると、したがいまして、第三国から出る分が円対策として輸出に結びつかないという結果になるわけでございまして、プラスの面とマイナスの面と両方あるわけでございます。
  108. 原田立

    ○原田立君 開発途上国がアンタイイングにしてくれという要望は、国際会議で何度もあった。だから本来からいけばこういう今回の「対外経済政策推進について」、この中に入れなくても、日本の海外経済援助というその姿勢からいってもほんとうは入れるべきじゃないんだな、ほんとうは。あえて入れてる。まあ、別にいまここで非難しようとするわけじゃありません。何か黙っていればいつまでもひもつきにするんだけれども、しょうがなくてアンタイイングにしたんだと、こういうような感じを受けてならない。その点はぼくの感想だけ言っておきます。  それで次に、昭和四十七年十月末で外貨準備高が百七十七億ドルにもなったということでありますが、これは第一次、第二次円対策効果が全く見られなかった結論である。だから今回第三次を出したと、こういうことであろうと思うんでありますが、これによって、今回の第三次でやってもなおかつ円の再切り上げがあったならば、日本の企業に対する、特に中小企業に対する影響は非常に大きい。これは通産行政、そちらの面、あるいは経企庁の面でも責任は重大だと思うんです。午前中の中曽根通産大臣に対する質問を、私は席をはずしておったから、円の再切り上げの問題のところを聞いてなかったので、なおここで取り上げてみたいと思うんですが、今回のこの五項目ですね、これぴしゃりやったならば、円の再切り上げはもう絶対に避けられる自信はおありで出したんでしょうね。
  109. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 絶対に避けるつもりでこの対策を決定したものでございます。
  110. 原田立

    ○原田立君 ほんとうにそれ心配ないですか。経企政務次官もおいでだし、通産次官もおいでだし、お答えいただきたい。
  111. 木野晴夫

    政府委員(木野晴夫君) 対外経済政策推進するために、十月二十日付で五項目まとめたのでございます。円の切り上げをば、絶対に避けると、こういった方針で私たち考えられるすべてをばまとめまして、これを強力に進めてまいるつもりでございます。
  112. 安田隆明

    政府委員(安田隆明君) 円、ドルの再調整を回避するための至上命令として、これを決定し推進する決意であります。
  113. 原田立

    ○原田立君 現在、外貨準備高は幾らあるのですか。
  114. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 十月末で百七十七億九千万ドルでございます。
  115. 原田立

    ○原田立君 外貨の隠し分を含めると幾らですか。
  116. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 外貨準備高は百七十七億九千万ドルでございます。
  117. 原田立

    ○原田立君 政府の外貨預託が約三十億ドル、日銀の輸入資金貸し付け約二十五億ドル、日銀による米国輸出入銀行借り入れ金の先払い約九億ドル、これ全部入れると約二百四十二億ドルぐらいになっているでしょう。今年末にいくと、おそらく三百億ドルぐらいいくだろうからなんて、こんなようなことを言っているのだが、例年、年末にかけての輸出が急増する。そうすると、外貨の準備高もよけいそれによってふえるでしょう。いま私、三百億ドルぐらいになるんじゃないかと、ちょっと言いましたけれども、年末の時点で外貨準備高はどのぐらいになる予想を立てていますか。
  118. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 外貨準備の見通しについての数字を私ども持っておりません。
  119. 原田立

    ○原田立君 だれでもいい。貿振局長
  120. 増田実

    政府委員(増田実君) 外貨準備につきましては、これは短資の動きともからみますので、いろんな投機その他の金も動くということで、予測は非常に困難でございます。それで、私どものほうの分野からいきましても、貿易収支のほうの予想は一応立てておりますが、外貨が年末にはたして何億ドルになるか、ほかの要素もいろいろからみますので、はなはだお答えできないのが残念ですが、そういうことです。
  121. 原田立

    ○原田立君 そんなごまかし答弁をしないで、もっとしっかり答えてもらいたい。  私、心配するのは、その前にお聞きしたいのですけれども、去年三百六十円の円ドル交換比率が三百八円になった。あのときは外貨準備高は幾らだったですか。
  122. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 昨年の十二月時点で百五十二億三千六百万ドルでございます。
  123. 原田立

    ○原田立君 百五十億と言ったけれども、たしか百三十億ぐらいだったはずですよ。それで、そのときに三百六十円から三百八円になった。現在、正規な見方をしても百七十七億ドル。外貨隠し分含めれば二百四十二億ドル。年末にかけると三百億ドルと、こうなったなら、よっぽど強力な手を打たなければ、円の再切り上げは当然あるであろうと、これは理の当然だろうと思うのです。それで、そういうような時点になって、またこういう推移で進んだときに、円の再切り上げを阻止するほんとうの自信があるのかどうか。この五項目によって、ほんとうに前の状態よりも非常に悪くなってきておる。円の再切り上げをされる条件がそろっているみたいなんです。そのときに、この五項目だけで円の再切り上げが阻止でき得るという自信はほんとうにあるんですか。心配いりませんか。数字的に示しながら私も言っているんだから、それについての御答弁を願いたい。
  124. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 先ほどの御答弁、ちょっと私、ことばが足りませんでしたけれども、先生御承知のように、国際収支の一応の見通しをつくりますけれども、外貨準備になりますと、いろいろな為替銀行の債権債務のポジションの関係とか、それから政府の公的部門の変動とかいろいろな要素がかみ合って外貨準備が出てまいりますので、なかなか技術的にも推計が困難だという実情でございます。  ただいまの全体の国際収支の動向でございますけれども、昨年の十二月の切り上げ以降、確かにほぼ最近までは非常にいい趨勢にあったと思うのでございます。で、たとえば輸出は三十六年の下期におきましては、前年同期二三%という伸び率、それが四十七年度の上期におきましては、一五%に下がっておるわけでございます。それから輸入につきましては、四十六年度の下期がこれが八%でございます。年度としては五%。それが本年度の上期では一八%に上がっておるということで、輸出の伸びの鈍化とそれから輸入の増勢ということで、かなりの何といいますか、切り上げ効果が出つつある。で、特に外国と比べましても、主要国はほとんど最近は二〇%をこえる輸出の伸びを示しておりまして、日本がことしの四−六で一二、三%というふうにドイツやイギリスあたりの半分の伸び率に落ちておるという点は、やはりかなり切り上げ効果はきいてきているというふうに見ているわけでございます。したがいまして、今後これはまだ一〇〇%切り上げ効果というものは出ておらないわけでございまして、常識としまして、大体一年半か二年くらいそれが尾を引くというふうになっておりますので、今後もこの切り上げ効果というものはさらに出てくるということ。それから、やはり経済の状態というものが本年度の上期、非常に悪かったわけでございますが、最近は非常に着実な景気の上昇過程に入っておる、これが今後も続くというふうに考えますので、こういった景気の動向と、それから今度の対策というものをあわせ講じますと、絶対趨勢的にはいい方向にいく、この一、二カ月少し乱調子のカーブになっておりますけれども、この動向がおさまりますと、輸出の鈍化という傾向は逐次定着してくる、そういうふうに見ているわけでございます。
  125. 原田立

    ○原田立君 円の再切り上げがなければいいのですよ、なければ。あなた方両政務次官は絶対にやらないと、がんばるとこう言っているのだけれども、もしなったら恥ずかしくてここへ出て来られませんよ。それだけは言っておきますがね。  それから、残存品目の三十三は国際的に見て決して多過ぎない、こういうふうな見解を通産大臣は言っておりますけれども、それでは、自由化の計画的推進をはかるというようにこれにはうたわれております。「残存輸入制限品目について、引き続き一層の自由化を進めることとし、その計画的推進をはかる。」、こういうふうになっているのでありますが、では、具体的にどういう進め方をするのか、それとも計画を立てないということなのか、あるいは円の再切り上げを免れるような国際環境をつくり出せる自信がこれによってほんとうに通産当局は持てるのかどうか、この点をお伺いしておきます。
  126. 安田隆明

    政府委員(安田隆明君) 現在、日本の残存輸入制限品目は三十三でございまして、これが国際的に多いか少ないかいろいろ議論のあるところだと思いますが、ただ、現在、アメリカとかイギリスに比べましては、三十三というのは非常に多いわけですが、フランスは七十品目まだ残存輸入制限をやっておりますし、日本より外貨の保有高の多い西ドイツも三十八品目ということで、日本より五品目多いわけでございます。ただ、三十三品目が、これ以上そういうフランスあるいはドイツとの比較でも、もう減らさなくていいかどうかという問題になりますと、私どもは、今回の円対策できまりましたように、なお引き続き減らすべきだと、こういうふうに考えております。ただ、三年前に百二十品目ありましたのを、ようやくにして三十三品目に減らしました。残りの三十三品目は、それぞれ非常に自由化が困難な状況のあるものが最後に、いわゆる核といいますか、コアとして残っておるわけでございます。そういう事情でございますので、今後は、これらの品目について、やはり国内対策というものを並行してやりながら、そうして自由化をさらに数品目続けてやっていく、こういう方針でやりたい、これが今回の円対策にうたいました「計画的推進をはかる。」ということでございまして、通産省、それから農林省所管物資がおのおの、通産省が九物資、農林省は二十四物資残っておるわけでございますが、それぞれの品目につきまして、現在いろいろ対策検討し、できるだけ早く自由化に持っていくという決意でおるわけでございます。
  127. 原田立

    ○原田立君 これはちょっと質問違いになっちゃうかと思うのですけれども、この円対策の第五項目に「福祉対策の充実」というのがあるのですよね。この中で、「福祉指向型経済への転換を」はかるということでありますけれども、これは従来の経済成長第一主義あるいは貿易至上主義を排して、まずおいて、国民福祉を優先するということであろうと思うのでありますが、どのくらいの数値を考えておられるのか。
  128. 増田実

    政府委員(増田実君) ただいま先生の第五項目についてのお考えどおりの考えで、この円対策の第五項目は立てられておるわけでございまして、従来、これは日本が敗戦の瓦れきのあとから復興いたしたわけでありますが、この国民に対する物資の供給ということで、生産の拡充あるいは諸外国に対する国際競争力の強化ということで、そこに集中して、これは私ども通産省もそうでありましたし、また関係各省、財政、金融政策もそうでしたし、すべてそこに集中して政策が行なわれてきたと思います。それがようやく国民の努力によりまして実を結びまして、いまやむしろ設備が多い、あるいは国際競争力が非常に強くて、外貨がたまり過ぎるという結果になったわけでございますが、しかし、他面、やはりこういう集中政策をやりましたために、社会資本の充実とか、福祉の向上とか、あるいは年金の額とか、それから私ども通産省にとりましてもいろいろ御批判を受けております公害投資の絶対額というものについて、やはりおくれが出てきておる、あるいはひずみが出てきておる、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、今回の円対策の第五項目はそういう点につきまして、つまり、従来の生産力拡充あるいは輸出の振興という重点を、むしろ福祉指向型に変えまして、そうして経済を持っていく、それによりまして、従来、輸出が、国内に吸収できなかったものが輸出プレッシャーがかかって外に出ておったわけでございますが、これを国内に向けさせる、また、福祉政策をやりまして国民が富みますことによりまして輸入もふやすということで、これがむしろ、円対策の五項目あります中の私どもは最大の項目だと思っております。この項目に基づきまして、現在の補正予算もそういうことで福祉指向型になっております。また、来年度の予算もそういうふうになるというふうに私ども期待しておるわけでございますが、ただ、この政策は相当時間がかかる。ただいま原田先生のお尋ねの、金額的にどれぐらいドルが、輸出が減って、それから輸入がふえるか、その絶対額がどれくらいになるかということにつきましては、四十七年度にはなかなかそう大きな効果が出ない。むしろ、今後その効果が出て、それから総理がホノルルでニクソン大統領と会われまして言われた、両三年の間に国際収支というものを健全な形に持っていくという政策がこれによってきいてくると、こういうふうに思っておるわけであります。ただ、これがきかない、なかなか動き出すまで若干時間がかかるということで、私ども、たとえば輸出貿易管理令による緊急対策というものをとらざるを得なかったわけでございます。
  129. 原田立

    ○原田立君 別な問題になりますけれども、貿易管理令の発動ということを通産省は考えているようでありますが、貿易管理令の発動によってなし得る効果及び目標はどうなのか、あるいはそれらを数字をもって説明してもらいたい。
  130. 増田実

    政府委員(増田実君) 輸出貿易管理令の実際の発動は、現在、まだ関係業界といろいろ話をいたしておりまして、最終的にどういう形でやるかきまっておりませんが、私どもが目標としているところを数字でお答え申し上げますと、今度対象にいたします品目につきまして、現在の伸び率がそのまま伸びるというのに対しましては、約十億ドルぐらい一年間で減らすと、こういう数字になっております。
  131. 原田立

    ○原田立君 局長は、十億ドルぐらいと計算していると、こういうようなことを新聞で読んだんですけれども、そこいら辺。
  132. 増田実

    政府委員(増田実君) ただいま申し上げましたように、このたび輸出貿易管理令の対象予定にいたしておりますのは大体十八品目なのでございますが、これらは、非常に伸び率が高いわけでございまして、現在の伸び率がそのまま続きます数字と、それから、現在、私どもが各業界輸出調整をお願いしております数字との差は、一年で大体十億ドルぐらいになるということで、十億ドルぐらい年間の貿易収支改善になるということで説明いたしたわけでございます。
  133. 原田立

    ○原田立君 貿易管令の発動以前にカルテルでやると、こういうふうなことを聞いておりますけれども、その点は一体どうなのか。あるいは六日の衆議院予算委員会で経企庁長官は、鉄鋼カルテルは早期解消すべきだと言っております。そういう点はどうなんですか。
  134. 増田実

    政府委員(増田実君) ただいまの前段についてお答え申し上げますと、今度、輸出調整あるいは貿管令発動ということで、一応十八品目を予定いたしておりますが、これらにつきまして、直ちに貿管令品目指定をいたしまして、そして輸出承認と申しますか、輸出割り当ての対象にいたすということではございませんで、まず最初に、いまの十八品目を公表いたしまして、それぞれの業界と私どもいろいろ話し合いをしまして、先ほど申し上げましたように、輸出の数字が非常に伸びておりますので、それを一定の率まで下げてもらえないか、それをできたら自主的にやってもらえないかということで、業界に対しまして納得してもらう。これは円の再切り上げを避けるための非常手段としてそれらの業界にいろいろお話しして協力してもらう。それで、業界のほうで、いまのような伸び率の調整をやるということでございましたら、まず輸出カルテルでやっていただく、その場合は輸出貿易管理令の対象にはいたさない。それで、輸出カルテルで私どもと相談いたしました、減ったほうの伸び率に下げてもらうということになるわけでございます。
  135. 安田隆明

    政府委員(安田隆明君) 原田先生おっしゃいました不況カルテルでありますが、この不況カルテル行為は、これは物価行政に至大の影響を及ぼす、同時にまた経済秩序を維持すると、この両面で、先生おっしゃいますように、慎重にわれわれ扱わなければならない、こう考えておりますが、鉄鋼の不況カルテル、市況はやや安定してまいりましたことは事実でありますけれども、対象品目の大部分はこれがまだ不安定——不況ということで浮揚しておりませんので、われわれは今年一ぱいはこれをまだ続けていきたい、こういうふうに考えております。
  136. 原田立

    ○原田立君 通産省は、輸出課徴金または輸出税について反対の立場をとっておられますが、これにかわるものとして貿管令発動ではたして輸出の伸びを押えることがほんとうにできるのかどうか、また、国民福祉の充実ができるのか。輸出至上主義は今日はもはや転換していくべきだと思うが、その点はどうか。そうでなければ、貿易黒字の外貨準備高はただ伸びるばかりで、外国からきらわれるのみになるおそれがある、そういう点についていかがですか。
  137. 増田実

    政府委員(増田実君) 円の再切り上げを避けるために、輸出税もしくは輸出課徴金でやるべきではないかという議論がいろいろございます。私どももこれらにつきましてその実施、あるいはそのときの問題点というのを相当の期間いろいろ研究もいたしたわけでございますが、結論といたしまして、輸出税、輸出課徴金はむしろ円の再切り上げを招くのではないかということで、通産省として反対いたしたわけでございます。そこで、これは西独ですでにこの輸出税と非常に同じようなものをやっております。その経験から私どもはそういう意見を出したわけでございますが、昭和四十三年に西独も日本と非常に似たような状態にありまして、非常に輸出が出過ぎる、そのときに国境税という形で輸出税をかけた。四十三年の十一月から始めたわけでございますが、これもきょうの昼に中曽根大臣が御説明いたしましたのですが、ちょうど税金をかけるということでその準備——国会にも法律を通さなければなりませんし、そのときに非常なかけ込み輸出が始まりましてかえって弊害を生んだ。それから、その実施に移りましてから一、二カ月は確かに輸出が減りましたのですが、四、五カ月たちますとまたもとに戻ってしまうということで、国境税は四%でございましたのですが、何ら効果が出ない。そのために四十四年の十月、つまり一年以内に切り上げをやらざるを得なくなったわけでございます。それからまた、国境税が四%できかなかったということから、八%以上のマルクの切り上げを実施いたしたわけでございます。その経験からいいますと、こういう輸出税、輸出課徴金は、再切り上げを招くのみならず、再切り上げの幅を大きくするのではないかということが私どもの反対した理由でございます。  それにかわるものとして、輸出貿易管理令というものを今回、円対策の一項目としてきめていただいたわけでございますが、輸出貿易管理令というのは、これは手間からいいましても、現在、各業界とずっと説得工作をやりまして、各業界の御理解を得て、そうしてその上で一つ一つの企業の伸びの数字をきめるわけでございます。非常に手間がかかるわけでございますが、それにもかかわらず、私どもがこれでやろうということは、やはり輸出税というものは、われわれが絶対に避けなければならない円の再切り上げをむしろ早める、そうして輸出貿易管理令でやるべきだ、こういうことでございます。  それから先生から言われました、従来の輸出振興あるいは輸出第一主義というものにつきましては、確かにおっしゃられるように、現在のような状況からいいますと、これは全部見直さなければならない時代になっておると思います。
  138. 原田立

    ○原田立君 局長は、輸出課徴金あるいは輸出税ということはたいへん反対のようなんだけれども、田中総理は、十一月二日の衆議院予算委員会の席上、貿管令発動しても効果がなければ、輸出課徴金または輸出税を考えねばならない、こういう答弁をしているわけでありますが、これは、わが国国際収支がそこまで追い込まれているということを率直に認めたことなんだろうと、こう思うのです。ひるがえって、貿管令だけではたしてこういう円の再切り上げ等を防ぐことがほんとうにできるのかどうかという問題なんです。
  139. 増田実

    政府委員(増田実君) 円の再切り上げを避けるためにこのたびの円対策第五項目がきまったわけでございまして、貿管令だけ一本で円の再切り上げを避けるということは、これは無理だと思います。私どもは、これは関税引き下げあるいは輸入の促進、それから海外経済援助の増加、それから、先ほどお話に出ました第五項目の福祉予算の確立、これら総力をあげてやれば円の再切り上げが避けられるし、また避けなければならない、こういう信念でこういうことをやっておるつもりでございます。
  140. 原田立

    ○原田立君 海外経済協力は、GNPの一%が目標であるのに対して現在は〇・九六%、政府援助はGNPの〇.七%目標に対し〇・二三%、これは先ほど竹田委員がお聞きして聞いた数字であります。また、私も調べてありますが、当然、先進国の一人であるわが日本もこの目標を達成するように努力していく、こういうことは必要だろうと思うのでありますが、先ほどは、政府援助については〇.七%の目標について一九七五年には〇・四%ですか、くらいにまで持っていくということがちょっと話があったのだけれども、一体この〇・七%のところまで持っていくのには、現在、そういう長期的な見通しに立っての計画、あるいは中期的な問題でもけっこうです、これはもう大体腹案はできているのですか。
  141. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 先ほど私が申し上げましたのは、一九八〇年に〇・七にかりに持っていくとした場合に、年率で計算しますと、七五年には〇・四というのが途中の目標になるだろうということ、これが現在のDACの水準の〇・三五に近い水準である。したがいまして、〇・七というのは非常に高い目標でございますので、当面は、DACの平均水準にできるだけ早く到達するというのが具体的な目標になろうかと思います。  で、ただ具体的にそのためにどういうふうなテンポで行くのかという段になりますと、今後の日本経済全体の展望と申しますか、GNPの伸びというものが前提になるわけでございまして、これは現在、新しい長期計画として策定中でございまして、年末には完成、でき上がる予定でございますが、そういったものを参考にして具体的にどういうふうなテンポになるかというものを見まして、毎年度の予算にそれを反映していくというふうな努力をする必要があると思います。で、かりに今後、かりの試算でございますけれども、GNPが今後一三%程度の伸びということで試算しますと、この開発援助の過去五年の伸びというものが大体一二%ぐらいでございまして、それが三〇%ぐらいに伸ばさなきゃいけないというふうな数字も一応ございます。しかし、具体的にどうなるかということは、新しい計画を待って検討してまいりたい、そういうふうに思うわけでございます。
  142. 原田立

    ○原田立君 主要国の政府開発援助条件でありますが、日本の場合は贈与の比率、あるいは金利、返済期間、それから据え置き期間、あるいは二国間ODA借款に占めるアンタイドエードの比率等、これはおたくのほうからもらった表でありますけれども、どれを見ても日本の場合は高かったり、おくれていたり、短かったり、非常に条件が悪いのですね。こういうところで評判があんまりよくないということもうなずけるわけでありますが、第三回国連貿易開発会議における日本態度として、政府開発援助目標は〇・七%の目標達成に努力するということ、援助条件としては無償供与と技術援助等の拡充、政府借款等条件緩和につとめる等々言っているわけであります。アンタイイングについても言っておりますが、今回は、アンタイイングについては実施するのだからまずよしとしても、そのほかの諸条件についてのなおよくする努力ですね。これは一体、先ほどの政府開発援助を〇・七%にする、それを年次別にこうやると、一九七五年ですか、〇・四%にするという、こういう目標をお聞きしたんだけれども、この贈与の比率、金利、返済期間、据え置き期間等これらの条件をなおよくするための計画というものはおありなんですか。
  143. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 四月のUNCTADの会合に引き続きまして、本年十月には御承知のDAC——開発援助委員会、OECDの開発援助委員会というものの上級会議というものがございまして、その席上で、先ほど新田局長からお話し申し上げましたように、援助のグラントエレメントというものを八四%まで高めるようにという勧告がございました。これにつきまして、現在、日本はグラントエレメントというので勘定いたしますと、六五%程度でございますので、そこの目標に到達するにはかなりの困難がありますので、いろいろこれを受諾すべきかどうか検討を続けましたのですが、結局その会合で、この援助条件緩和勧告に賛同いたしました。したがいまして、今後はこのグラントエレメントを八四%にするという目標に向かって努力を続けることになったわけでございますが、これをいつの時期にするかということにつきましては、同じ勧告の中に、いろいろ特殊な条件を持っている国——これはまあ日本も含められるわけでございますが——については、時期は少し長くかかるというのもやむを得ないというようなことも言われておりますが、ほぼやはり、先ほど来出ております、一九八〇年ごろにはそのような目標に到達するようなことを頭に置いて努力すべきではないかというふうに考えております。このためには、まず、政府開発援助の中の無償供与の部分を極力引き上げていくということと、同時にまた、借款の部分につきましては、その条件を極力緩和していくという双方の努力が必要でございますので、その点につきまして、今後やはり同じように予算の伸びを確保していくということが必要かと思っております。
  144. 原田立

    ○原田立君 贈与の比率は、日本は三二・六、DACの場合は五九・五、借款の平均条件、金利は三・五%、日本ですね。それに対して平均は二・六%、これはやっぱりこの三・五%、これを二・六%くらいまで引き下げる努力はなさるんでしょうね。それからまた返済期間、日本の場合は二二・一年、DACの合計は二九・一年、据え置き期間も日本の場合は六・七年、DACの合計は六・四年と、これはもう引き上げていくのであろうと思うのですけれども、その点いかがですか。
  145. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 条件は確かに御指摘のように、昨年三・五%、二十二年。ただ、この五年を振り返ってみますと、六六年の平均金利が五・二%、それから期間が十四年ということから見ますと、この五年間には日本としてはかなりの進歩があったわけでございます。ただ、DACの平均にはなかなか追いつかないわけでございます。で、ODAの量の拡充の問題と、そしてこの条件緩和というもの、いずれも重要でございますけれども、両方ともに一緒に進めるということはなかなか困難な問題でございます。先ほど私が申し上げました一つの試算でも、ODAの比率が上がりますが、さらにその政府資金の中の出資の比率を格段にふやしませんと、この条件緩和はできないという問題があるわけでございまして、そういった点をできるだけこのDACの平均水準に早く到達するように努力してまいりたいと思うわけでございます。     —————————————
  146. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 委員異動について御報告いたします。  本日、林虎雄君が委員を辞任され、その補欠として須原昭二君が選任されました。     —————————————
  147. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 きょうお昼に、通産大臣には基本的な問題についての質問が終わっておりますし、竹田委員、原田委員によってこまかい点の質問がもう終わりましたので、私は重複を一切避けて、持ち時間の半分くらいで質問を終わりたいと思います。  一つは、具体的な問題ですが、十月の輸出が急増しておるわけですが、これは何か原因があるのかどうかですね。午前中もちょっとお伺いしたわけですが、まあ十月の輸出ということになると、ちょうどこの先物の思惑、それからドル売りの状況などがいろいろ困惑しておるし、円の切り上げが取りざたされておった時期にひっかかるのかなと思ったりもしておるのだけれども、何かこれ特に原因があるのかどうか、お調べになっておったらお伺いしたいと思います。  それからいま一つですね、続けて申し上げますが、今度、関税の一律引き下げをやられるわけだけれども、両政務次官それぞれ繊維の産地に選挙基盤を置いておられるわけなんだけれども、繊維産業の場合、現在、貿管令の通用になっておるわけですね。さらにこの輸入関税引き下げということになってくると、そうじゃなくても最近特に開発途上国からの製品輸入が多くて、中小零細企業に恐慌を起こしておるわけなんだけれども、その辺、見ようによっては大きな円対策という意味からは首肯できたとしても、直接的な企業においてはそのことがダブルパンチのような状況を来たすのじゃないかということを、私、懸念しておるわけだけれども、その辺どういう考え方を持っておられるか。また、関税の一律引き下げということ自体も、国内の産業に著しく影響を及ぼすようであれば、その適用品目から除外する例外規定も設けておられるわけなんですけれども、それらとの関連でどのような煮詰め方をしておられるか、この二つを最初にお伺いしたいと思います。
  148. 増田実

    政府委員(増田実君) それでは、最初の御質問の十月の輸出数字でございますが、先生御指摘のように、輸出は九月、十月非常にふえております。去年の十二月十八日に一六・八八の大幅切り上げをやったわけでございますが、その後ことしの一月、二月は既契約、すでにきまったものの引き渡しでございますので、それほど落ちておりませんが、六月になりますと、従来、前年同月比二〇%をこえておりました輸出が、六月は七・二ということで非常に早く為替の切り上げの影響が出てきたんではないかというふうに一部にも言われておったわけでございますが、ところが、七月、八月が一五%前後に戻りまして、それが九月に至りまして前年同月比の二五%、それから十月はまだ正式の数字が出ておりませんが、輸出認証のほうでは約二〇%アップということで、やはり非常に大きな数字になっております。また、先行きを示します信用状のほうも十月が二八%アップとなっております。これらを見ますと、九、十、あるいは信用状の状況から見ましても、十一も相当大きな数字ではないかという状況でございます。  それで、これにつきまして、ただいま藤井先生からどういう原因でこういうふうになるのか、これが続くのかというお話でございますが、私どもは、九月から伸びましたのは、一つは七、八月にありました海運ストで一部船積みがおくれておりますのが、九月に戻っているということでございますが、それよりももっと最近の輸出がふえております原因は、やはりかけ込み輸出と申しますか、いわゆるリーズと申します売り急ぎというものが相当出てきているんではないかと思います。いろいろ経済評論家、新聞記事その他で円の再切り上げが近いということが言われておりますと、やはり商社としても、また輸出業社といたしましても、一日も早く船積みをいたしまして、そのドルを円にかえれば切り上げの損失を免れるということで、実需に比較いたしまして、つまり、ほんとうの輸出力に比較いたしまして、私どもは、輸出がかけ込み輸出で出ているんじゃないか、こういうふうに思うわけです。その傾向がおそらく十月、十一月と続く、十一月も続くんじゃないか、こういうふうに思っておりますが、かけ込み輸出であれば、おそらく、これはしばらくすれば息が切れるということでございまして、円の再切り上げを避ければ、円の再切り上げが遠ざかるということであれば、この趨勢は当然減るというふうに考えています。  それから、私どもも先行きの輸出につきましては、おそらく、来年の一月から相当輸出が減ってくるんではないかというふうに考えております。ですから、その意味で現在、輸出貿易管理令の適用その他いろいろ臨時、緊急の措置をいたしておりますが、ここ数カ月を切り抜ければ円の再切り上げは少なくとも避けられるのではないか、こういうふうに思っております。
  149. 斎藤英雄

    政府委員(斎藤英雄君) 繊維関係の問題につきましてお答えいたします。  いま先生からお話ございましたように、関税の一括引き下げということによりまして、繊維輸入がふえるかどうかという点のお尋ねだったと思いますが、最近、ことに上半期におきましては、たとえば綿糸関係では二番手のものが主でございますけれども、かなり輸入がふえております。総需要の、場合によっては三割ないし三割強ぐらいの場合もあり得るかと思いますが、ふえております。それで、私どものほうはそういうふうな状況も考え、かつ一般的な円対策ということも当然考えまして、したがいまして、一律二〇%引き下げということにつきましては、私どもは方針どおりやるということでございますが、なお、そういう状況でございますので、たとえば精紡機の買い上げの予算を増加をするというふうなことを一応考えまして、そういう予算もお願いをしておるわけでございます。  それからもう一つ、もし非常に急増いたしまして、これが当該産業に非常に大きな影響を及ぼすという場合には、関税率をもとへ戻していただけるような法案も用意しておるように聞いております。そういうふうな対策を講じまして、当該産業について非常に大きな影響が出ないようにいたしたいというふうに考えております。
  150. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 通産省、それから経企庁の方たちにインフォーマルな形でいろいろお話を承ると、大臣がおっしゃるだけじゃなく、それぞれの立場の方が、円の切り上げはやはり絶対避けなければいかぬのだということを強く主張なさるわけですけれども、これはよく皆さん徹底して一生懸命考えておるのだなということをわれわれ常々思うのですが、同時に、目を外に転ずれば、それとは全くうらはらに、はたしていまこの段階において円の切り上げを回避する——円の切り上げをもう悪なりときめつけて、そのことを回避するがゆえに表面を糊塗する施策が本来の日本経済機構というものをそこねていくのじゃないかという危惧が学者の間にもあるし、同時に、それを受けて業界などにおいても、いま十月の急増に見られるごとくかけ込みあるいは先契約というようなことで、みずから円の切り上げ方向へ私は歯車が回っておると思うのです。したがって、外圧よりも内圧から問題が発展して、思惑とは別に一々打っておる手段が逆に回転して、みずからが円の切り上げを導いていくという見方をしても、私は、別にこれは皮肉な見方でないだろうというふうに思うわけです。この辺のところをもう少し的確に、ほんとうにこの切り上げを回避するのだというのであるならば、絶対にやらぬのですと、それは相当の政治責任をかけてやるのだという抽象的なものだけじゃなく、きめのこまかい施策を講ずべきだと思う。これからでもおそくはないのだけれども、そういう施策を考えておるかどうか、お聞かせいただきたい。
  151. 増田実

    政府委員(増田実君) 円の再切り上げを回避するために、今回、円対策がきめられ、それから、それに基づきまして通産省としては、いままで輸出振興につとめた通産省輸出調整をやるという非常な方向転換の緊急措置をやらざるを得ないということになったわけでございますが、これにつきまして藤井先生が御指摘になりますように、日本の現在の産業構造あるいは輸出の実力からいえば、円の再切り上げをこの際むしろ積極的にやったほうがいいんじゃないかという御意見もありますし、また、これを延ばせば切り上げ幅がむしろ高くなって、そのときの影響のほうが大きいのではないかといういろいろの御議論もございます。これに対しまして、私ども通産省のほうで円の再切り上げをどうしても避けたいというのは、大きな理由は二つでございますが、一つは、昨年の十二月十八日にスミソニアンにおきまして、一六・八八という私どもも予想外の大幅な切り上げが行なわれたわけでございます。これがその大幅であるにもかかわらず、現在あまり効果が出てない。むしろ、ほとんど効果が出てなくて、引き続き貿易黒字がたまっているという状況でございます。  ただ、これにつきましては、平価調整の影響というのが一年以内にあらわれるということは、これは普通は出てこないのでございまして、大体、平価調整の影響は一年半、まあ一年八カ月かかる、こういうことにこれは普通言われておるわけでございます。まあ普通に言われておるのみならず、今年の七月の終わりに日米箱根会談というのがございまして、私も政府代表の一員として出席しておりましたですが、米側の代表でありますエバリー大使が言っておりましたのは、これは、まあ彼は、日米の貿易収支を縮めるための議論をしていたわけですが、しかし、それにもかかわらず、エバリー大使は、去年の一六・八八の切り上げの影響がもうすでに出ているということは、これは私は言いませんと。これは英国の例からいっても一年八カ月かかっているし、おそらく日本も一年半以上かからなければその影響が出ないはずだということでございます。それからいいますと、現在の輸出入の状況から判断いたしまして、日本輸出がもう強過ぎるんだということで、円の再切り上げをここに早急に判断するというのは、むしろ間違いではないかということでございます。少なくとも二年あるいは一年八カ月以上待ちましてそこで判断しませんと、やはり一六・八八という大幅切り上げの影響は輸出にも相当響いてきます。それから輸入の増大にも響いてくるはずでございます。その意味で、昨年からまだ一年もたってないときに再切り上げをやるということは、おそらく世界の経済学者からも、日本が早急な判断をし過ぎるんではないかという批判を受けると思います。また、そういう早急な判断をしたために影響をこうむる業界はたまったものではない、こういうふうに思います。それが第一点でございます。  それから第二点は、これは先ほどありました円対策第五項目の福祉対策でございますが、従来の日本輸出は、やはり社会資本の問題、あるいは福祉の問題、あるいは週休二日の問題、その他全部とりましてもほかの欧米先進国と若干違った基礎のもとに輸出をしておる。幸いにして今度の補正予算、あるいは来年度予算でそういう面において重点政策が向けられますわけでございますが、もしここで円の再切り上げをやれば、それらの現在低い社会資本、あるいは社会福祉の水準がそのまま固定してしまうんではないかということで、私ども絶対に避けるべきだという考えでおるわけでございます。  それから、藤井先生が御指摘されましたように、外圧というものがあるかないかという問題でございますが、私どもは外務省からも聞いておりますし、いろいろ聞いておりますが、外圧という、いわゆる正式に日本が円の再切り上げをすべきだという声というのは、これは全くないと言ってもいいんではないかと思います。むしろ、国内での円の再切り上げ必至だという声が上がり、それによって商社あるいはメーカーが輸出の売り急ぎをするということによりまして、国内的にそういうムードが非常に出てきております。それを受けまして、日本にこれはもう百人以上外国記者、外国新聞の特派員がおりますが、これがどんどん電報をロンドン、ニューヨークに打っている。それが向こうの新聞あるいは雑誌に載りまして、そしてあたかも、外国日本の円の再切り上げは必至だというふうにとられているわけでございますが、これはまさに内から出まして、そしてそれが外にはね返って増幅作用で出ていることだと思います。アメリカ政府も、それからヨーロッパ各国の政府も、いまの段階日本に円の再切り上げはやるべきだと言うところは、これは全くないわけでございます。まあそういう理由で、私ども、円の再切り上げは絶対避けるべきであるし、またここで円の再切り上げというものをやれば、中小企業をはじめとして日本経済というものに対して悪い影響というものが出て経済の進路を間違えるということになるんではないか、こういうふうに思っているわけでございます。
  152. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 前回八月三十一日に中曽根通産大臣に質問したわけですが、日本経済協力をやっておるにもかかわらず、それが、もっとも大きな声で言えるほどでかいものじゃないわけですが、東南アジアではうらはらにきわめてわが国に対する風当たりが強いし、まあ言ってみればきらわれておる、一体どうするのだということを私、質問したわけですが、大臣はそのおり、かつて醜いアメリカ人と言われたようなことで再び醜い日本人と言われないように、主としてメーカーに精神的にもう少しはっきりするように注意しなければならぬ、こういうような答弁しか返ってこなかったわけです。大臣おられぬ席でたいへん失礼かと思うけれども、お粗末な私答弁だと思うので、もっと的確な、通産省としてのこれら開発途上国に対する適切な措置を講じなければ、われわれ一生懸命この海外協力というものをまじめに取り組もうじゃないかというのとうらはらに悪口が返ってくるということは、全くつまらないことなんです。この辺はもう少し反省して、行政当局としての指導もさることながら、当該国に対して的確な、私、ものが言えるような立場を切り開くべきではないだろうかということを常々考えておるわけです。われわれ自身東南アジアを回ってみて、そのことをやっぱりはだで感ずるわけです。その辺のところをひとつ聞かせてもらいたい。
  153. 増田実

    政府委員(増田実君) ただいまの先生のおっしゃられました、東南アジア各国で日本の海外進出というものが一部非難を受けているという事実がございますわけですが、これに対しまして、大臣もこの前そういう答弁を申し上げたわけでございますが、私どもとして、やはり海外進出する企業がどういう行動をなすべきかという、いわゆる海外進出にあたりましての行動基準と申しますか、英語でコード・オブ・ビヘービアというものをひとつつくろうということで、現在、日本商工会議所もそういう憲章という形で、海外進出の行動憲章というものをいろいろ検討いたして、近くそれを出そうということでやっております。私どものほうもそういう準備を進めて、いろいろ商工会議所等とも相談いたしております。また外務省のほうともいろいろ相談をして、日本の海外進出企業が外国でいろいろ問題を起こし、あるいは非難の対象になり、それがひいては日本にとっていろいろ今後の外交がやりにくいということを避けていきたいということでございまして、まあ大臣も非常に簡単に申し上げたと思いますが、実際、私どももそういう指示も受けておりますし、一応準備中でございます。
  154. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 関連した問題として、最後にまとめてお伺いいたしたいと思います。  主としてこれは繊維産業にかかわる問題ですが、実は前回の国会で、衆参両院の商工委員会で附帯決議を行ないました。それは、今度の繊維工業構造改善事業協会の中で新しく基金を設定して、政府から十億の金を出しておるわけですが、同時に業界から四十三億円ほどの出指金を仰ぐことになっております。かなり大きな金額であるわけですが、この運用にあたって重点的、効率的に運用するようにということが衆参両院の商工委員会における附帯決議であったわけです。十一月に入ってこの基金政府からの十億円が出資されて、いよいよ動き出したわけなんで、その運用にあたっての基準、あるいは運用についての考え方などがもう設定されておると。この附帯決議に合った形で行なわれておるのかどうか、その辺のところを聞かせていただきたい。  二つ目は、十一月一日からやみ織機の問題が発動したわけです。このやみ織機の問題、五年間に現在かかえておるところのやみ織機を二五%自主廃棄せしめるということが一つの私、ペナルティーとしての骨子であろうと思うわけです。二五%というものが何から割り出されたものか。元来、スクラップ・アンド・ビルドで需給関係を見越して設備の買い上げというものを、縮小買い上げというものをやってきたわけです。そこへやみ織機が出たならば話にならぬわけだけれども、それを第二登録して、五年間に二五%つぶしていこうということ、このことはやはり逆を言えば、残る七五%というものは稼働してくるわけですから、直ちにそのことは需給関係に直接的に響いてくるわけです。こういう意味から、その辺の基準をひとつ聞かしてもらいたいと思います。  最後に、三つ目の問題として、設備買い上げが今度の補正予算でも当初計画を変更して出されておるわけなんです。織機については、やみ織機のペナルティーの問題としての変更もあったやに聞きますが、同時に精紡機については上積みされておるわけなんです。かなりな金額が今度補正されておるわけですが、大体この補正額によって当初目的を達し得るのかどうか、あるいはそれぞれの村別の廃棄希望に大体合うものであるかいなか、そのことが需給を適性な方向へ導いていけるのかどうか、あるいは次年度へさらに持ち越して継続的にこの買い上げというものを積み増していく必要があると私は思うんだけれども、そういう構想のもとに今度の補正が組まれているのかどうか、以上の三点をお聞きしたいと思います。それで私の質問は終わります。
  155. 斎藤英雄

    政府委員(斎藤英雄君) 第一点の、振興基金の運用の問題でございます。振興基金は、いまお話のございましたように、十一月の二日に政府から十億円の出資を仰ぎました。今後業界からおおむね四十三億ないし四十四億程度の拠出を仰ぐことに相なっております。それで、この基金の運用につきましては、現在、まだ拠出がありましたばかりのことでございます。したがいまして、これを運用することは、当然、国会の附帯決議等にもありました御趣旨に沿って運用することはもちろんでございますが、具体的な問題といたしましては、この構造改善事業協会の中に基金運営に関します基金運営の委員会を設けまして、そこでいろいろ基本計画をつくり、さらにそれの実施計画をつくるということで今後運営を進めていきたいと思っております。したがいまして、現在のところ具体的な計画にまで至っていないわけでございます。  それから第二番目の、無籍織機対策の御質問がございました。五年間二五%自主廃棄をするということでございます。それで、これは私どものほうといたしましては、一応現在の需給計画、もちろんこれも頭にございますと同時に、これは一応の基準でございまして、凍結織機というものを設けました趣旨にもありますように、ごく零細な企業の方に、生業として営んでおられる方々に一挙に非常に大きな影響を与えないというふうなことも考慮いたしまして、五年間二五%ということを考えたわけでございますが、なお、これは五年間で一応打ち切りというわけではございません。一応五年間で二五%、したがいまして、今後需給状態等をにらみまして、さらに必要があれば自主廃棄を進めていく、こういうふうに考えている次第でございます。  それから三番目の、設備の買い上げについて御質問がございました。精紡機の買い上げ、総体で今回対象額がふえますのは、おおむね九十五億程度でございます。全部合わせますと、錘数にいたしまして百五十万錘という錘数になるわけでございます。この錘数は、需給状況その他考えました上、あるいは対象になります各企業の状況も十分調査をいたしました上で私どもが決定をいたしました錘数でございます。業界の御要望もございまして、多少これより上回る御希望もございましたが、私どものほうといろいろその実情等についてのお話し合いをいたしました結果、百五十万錘は妥当であるということで、私どももそう思っておりますし、業界もそういうふうに考えておるということでございます。それの裏づけになる予算が今回の補正予算につきまして、おおむね全部で半分程度補正で現在、御審議をお願いしている次第でございます。  なお、四十八年度につきましては、これは来年度の私どもの要求の内容になるわけでございますけれども、昨年の十二月の閣議決定を今回改正をいたしまして、設備買い上げ費としては六十億追加をするというふうに、いわゆる臨時繊維産業特別対策の買い上げ予算のワクを増額をしていただきまして、それによりまして、私ども、来年度過ぎますれば百五十万錘全部の買い上げの予算の裏づけができる、こういうふうに考えております。
  156. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まず最初に、改正案について質問いたしますが、商品援助借款についているひもをはずすということでございますが、今回の改正によりまして、発展途上国は、日本からの借款で日本のライバルであるところのアメリカや西独などから商品を買ってよい、つまりどこから買いつけてもよいということなのかどうか。ひものはずし方について伺いたいと思います。  また、ひものはずし方は、先進国一様に同じはずし方なのかどうか、この二点について伺いたい。
  157. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 商品援助のアンタイイングを具体的にどうするかという問題は、今後関係省と協議しまして、ケース・バイ・ケースに運用してまいりたいと思いますけれども、一応考えておりますことは、やはり最近発展途上国が最も希望しておりますのは、後進国同士、発展途上国同士の貿易交流というものを非常に希望しているわけでございます。その点が商品援助について特に強く出ているわけでございます。したがいまして、第一義的にはやはり発展途上国同士の発展途上国に対するアンタイイングというところから始まるということになるのではないかと思います。それから、もちろん先進国に対するアンタイイングもございますけれども、これは先進国に対しましてはやはり相互主義に基づきまして、お互いにアンタイイングをやっておる同士についてアンタイイングの均てんにあずからしめるということ、そういうふうな運用になろうかと思います。  なお、具体的な運用にあたりましては、お互いに品目の選定その他の交渉があるわけでございますが、やはり発展途上国が希望する品目ということを優先的に考えていきたいということでございます。ただ、アンタイイングになりますると、従来、タイドでございますので、全部日本輸出が出ていること、それをひもを切るわけでございますが、ものによってはそのために急激に国内の中小企業にショックを与えるということもあり得るかと思いますが、その点については十分慎重な配慮が必要かと思います。
  158. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まあ、後進国同士の間でやってもらいたいというのが希望だと、そうするとはっきりひもにはなっていないけれども、そういうひもがついているということに理解していいのですか。  それともう一つは、私の聞くところによりますと、アメリカはひもを全然はずすということにはなっていないというふうに聞いておるのですが、どうなんですか。
  159. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 御指摘のとおり、アメリカは最近の国際収支の状況にかんがみまして、このアンタイイングにつきましては非常に消極的でございます。また、現在やっている程度も、国際的に見てかなり低うございます。したがいまして、日本としまして今後アンタイイングにやっていきます場合に、アメリカをひっくるめまして先進国に対するアンタイイングはやはり相互主義の原則でやっていくべきものと考えます。
  160. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ひもをはずすことはいいと思うのですよ。しかし、アメリカと日本との間で非常な不公平、矛盾があると思うのですよ、そういうことは。アメリカは自分の国に都合のいいことばっかりやって、そしてよその国には都合の悪いことを押しつけるという、こういう形になると思うのですね。それはおかしいんじゃないですか。こういう国際的な問題は、アメリカはどんなことをやってもいいと、そしてわれわれはこういうことを守っていかなきゃならないという、そこに私は、大きな国際的な何といいますか、矛盾があるように思うんです。あなたたちそれをどういうふうに考えていらっしゃるんですか。それでけっこうだというお考えですか。
  161. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) それぞれの国にそれぞれの事情がございます。また、その時期によっていろいろな問題がございます。で、日本について申しますと、先ほど問題になっておりますように借款条件とか、あるいは政府開発援助の比率とか、これは国際的に見て非常に劣っているわけでございまして、そういった点はアメリカなんかはかなりソフトな条件でやっているという点もございます。したがいまして、日本としましては、やり得るものは先進国の中でも先がけてやるというふうな考え方が必要じゃないかと思います。
  162. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これは経済的政策の上におきましても、やっぱり日本がアメリカに引きずり回されて、アメリカの方針に従属しているというふうな批判を受けますよ。こういうやり方をあなたたちは了承して進めていくならば、そういう批判はやはり出ますよ。そういうことを私は申し上げておきたいと思うのですがね。そうでないと言い得ますか。こちらはそういうひもで縛っていくのを放したと、ところがアメリカはやはりひもつきでやっている。これはどうしてもわれわれ日本人としては理解のできない点ですよ。そこをどういうふうにあなたたち理解していらっしゃるのか。
  163. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) この問題は、アメリカと申しますよりも、発展途上国の強い期待にこたえるということではないかと思います。
  164. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 議論したいけれども時間がないから、この議論はこの程度にとどめていきますけれども、何のためにひもをはずすのか。そうでしょう。それは後進国に都合のいいようにひもをはずすということなんでしょう。そうでしょう。それならなぜアメリカもひもをはずさない。それじゃアメリカは後進国の何の役にも立たぬじゃないですか、アメリカのやり方自身日本がひもをはずす理由、それは後進国のためなんじゃないですか。そこなんですよ、私が聞くところは。それはどうも理屈が合いませんよ、そういうことは。そうじゃないですか。私の言うのが間違っているんですか。あなたの言うことが筋が通っているんですか。どうなんですか。
  165. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) やはり日本経済力の向上、対外的な地位の向上に伴いまして、経済協力の面について、従来以上にひとつ進め、一歩出なきゃいけないという、その一環としてアンタイイングをやるという考え方になるわけでございます。
  166. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それはアメリカの経済力に対して——アメリカの経済力が衰えておる。それに対して日本がてこ入れをするということなんですよ。アメリカの利益に日本が従っているということ以外に私はないと思いますよ。  それで、次に質問しますが、日中国交回復が実現しました今日、台湾への新規借款はもうないというふうに理解してよいのか、また、台湾との間で借款を約束して、現在実行中の分の取り扱いは一体どうなさるのかという……。
  167. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 台湾への新規の政府借款はもうやらないのかという点でございまするが、もうやらないということでございます。  それから、現在すでに結ばれております政府借款の点につきましては、先ほど申し上げましたとおり、交換公文は日中国交正常化と同時に終了したと認めざるを得ない。しかしながら、その交換公文に基づきまして、それぞれの貸し付け機関との間に結ばれました貸し付け契約は、これは約束でございまして、その契約の条項に従って実施をされるべきと、ただ、交換公文がありますけれども、貸し付け契約が結ばれていないものについては、今後ももう結ばない状態にいたしたい、こういうことでございます。
  168. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 東欧諸国への借款あるいは延べ払いなどはどのように考えていらっしゃいますか。
  169. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 東欧諸国の中でユーゴにつきましては、すでにユーゴの国際収支の危機にあたりまして要請がございましたので、政府借款を供与しております。そのほかの国につきましては、過去におきまして政府借款を供与した例はございませんが、最近におきまして、二、三の東欧諸国からこれらの国との経済交流の増大に伴いまして、政府借款の要請といったようなものが出てきております。しかしながら、これらにつきましては、その要請内容がまだはっきりしないものもございますので、今後、諸般の事情を勘案しながら、鋭意検討を進めていくという現状でございます。まだはっきり態度をわがほうとしてきめておるわけではございませんで、いろいろの事情がございますので、検討を続けておるというのが現状でございます。
  170. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 じゃ、要求があれば検討して、それに応ずるようにやっていきたい、こういうことに理解していいですね。簡単にどうぞ。
  171. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 御指摘のとおり、要求がありましたら、その要求の内容検討して、検討を続けていきたいということでございます。
  172. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 貿管令発動についてちょっと質問したいのですが、貿管令の対象品目としまして、二十二品目がきまったと報道されておりますが、どのような品々がきまったのか、またどのような選定基準でそれを選ばれたのかという点について。
  173. 増田実

    政府委員(増田実君) 貿管令の対象品目としてまだ数字は、何品目か確定しておりませんが、大体十九ないし十八品目というふうに考えております。  選定基準は三つでございますが、一つ輸出寄与率、それから第二番目には伸び率、それから第三番目には一年間の実績という三つの基準に基づきまして、客観的な基準品目を選定する、こういうことになっております。
  174. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 貿管令対象品目の中には、自転車や機械類の部分品など、中小企業関係の深い商品が含まれていると思っておりますが、貿管令の適用によりまして、中小企業にどのような影響があると考えておられるか。また、中小企業に影響が大きい品目は、貿管令の適用をはずすべきではないかと、こう私は考えますが、政府のお考えを述べていただきたい。
  175. 増田実

    政府委員(増田実君) このたび貿管令対象予定いたしております品目は、大部分は大企業関連業種ということになっております。先ほど申し上げました基準もそういうことで、その品種の輸出金額の非常に大きなものをとらえまして、小さいけれども伸び率が高いというものは一応はずしてございます。それにもかかわらず、いま先生御指摘のように、自転車とか、その他中小企業製品というのは入っております。ただ、貿管令調整いたしますときも、前年度の輸出をさらに切り込んで、そして非常な影響を中小企業に与えてまで調整をするということではございませんで、私どもの考えておりますのは、大体、過去の実績を数量ベースで横ばいにしまして、それ以上伸びておりますのを半分に押えると、こういう形でやっておりますので、中小企業に対しまして非常な打撃を受けるということがないような配慮をいたしております。
  176. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  177. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これから討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  海外経済協力基金法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  178. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 可否同数と認めます。よって、国会法第五十条後段の規定に基づき、委員長において本案に対する可否を決します。  本案については、委員長はこれを可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後五時二十三分散会      —————・—————