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1972-11-08 第70回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年十一月八日(水曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 小澤 太郎君 理事 久野 忠治君    理事 倉成  正君 理事 小平 久雄君    理事 田中 正巳君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 鈴切 康雄君    理事 小平  忠君       相川 勝六君    愛知 揆一君       赤澤 正道君    荒木萬壽夫君      稻村佐四郎君    江崎 真澄君       小川 半次君   小此木彦三郎君       大坪 保雄君    大野 市郎君       奥野 誠亮君    川崎 秀二君       北澤 直吉君    草野一郎平君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       辻  寛一君    中野 四郎君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       羽田  孜君    浜田 幸一君       藤田 義光君    松野 頼三君       森  喜郎君    森田重次郎君       安宅 常彦君    小林  進君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       原   茂君    細谷 治嘉君       安井 吉典君    有島 重武君       田中 昭二君    正木 良明君       矢野 絢也君    西田 八郎君       和田 春生君    谷口善太郎君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣 三木 武夫君         法 務 大 臣 郡  祐一君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 植木庚子郎君         文 部 大 臣 稻葉  修君         厚 生 大 臣 塩見 俊二君         農 林 大 臣 足立 篤郎君         通商産業大臣         科学技術庁長官 中曽根康弘君         運 輸 大 臣 佐々木秀世君         郵 政 大 臣 三池  信君         労 働 大 臣 田村  元君         建 設 大 臣         国家公安委員会         委員長     木村 武雄君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      本名  武君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      濱野 清吾君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      有田 喜一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小山 長規君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣総理大臣官         房審議室長   亘理  彰君         総理府人事局長 宮崎 清文君         青少年対策本部         次長      吉里 邦夫君         警察庁長官官房         長       丸山  昂君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       田代 一正君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 黒部  穰君         防衛施設庁長官 高松 敬治君         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁自然保護         局長      首尾木 一君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省証券局長 坂野 常和君         国税庁長官   近藤 道生君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省管理局長 安嶋  彌君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省児童家庭         局長      穴山 徳夫君         厚生省保険局長 北川 力夫君         厚生省年金局長 横田 陽吉君         農林省農政局長 荒勝  巖君         林野庁長官   福田 省一君         通商産業省鉱山         石炭局長    外山  弘君         通商産業省公益         事業局長    井上  保君         運輸省海運局長 佐原  亨君         運輸省鉄道監督         局長      秋富 公正君         海上保安庁長官 野村 一彦君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         建設大臣官房長 大津留 温君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 吉田 泰夫君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 十一月八日  辞任         補欠選任   相川 勝六君    稻村佐四郎君   小川 半次君     羽田  孜君   田中 龍夫君     浜田 幸一君   丹羽喬四郎君     森  喜郎君   松浦周太郎君    小此木彦三郎君同日  辞任         補欠選任  稻村佐四郎君     相川 勝六君  小此木彦三郎君     松浦周太郎君   羽田  孜君     小川 半次君   浜田 幸一君     田中 龍夫君   森  喜郎君     丹羽喬四郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十七年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十七年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和四十七年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十七年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十七年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  この際、去る二日の矢野君の質疑に関し、政府より発言を求められております。これを許します。大平外務大臣
  3. 大平正芳

    大平国務大臣 今月二日の矢野委員の御質問は、台湾条項存在中国に対する内政干渉にならないかというとでございました。  ここにいう台湾条項でございますが、これは、一九六九年当時の両国首脳台湾地域情勢に対する認識を述べたものでありますが、その後情勢は大きな変化を遂げており、すでに申し上げましたとおり、この地域をめぐる武力紛争現実に発生する可能性はなくなったと考えられますので、かかる背景に照らし、右の認識が変化したというのが政府見解でございます。  矢野委員の、しかし、その条項存在内政干渉にならないかということにつきまして、この際、政府見解を申し上げたいと思います。  わが国は、台湾中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの中華人民共和国政府立場を十分理解し、尊重するとの立場をとっております。したがって、中華人民共和国政府台湾との間の対立の問題は、基本的には、中国の国内問題であると考えます。わが国としては、この問題が当事者間で平和的に解決されることを希望するものであり、かつ、この問題が武力紛争に発展する現実可能性はないと考えております。  なお、安保条約運用につきましては、わが国としては、今後の日中両国間の友好関係をも念頭に置いて慎重に配慮する所存でございます。
  4. 坪川信三

    坪川委員長 矢野君の保留分質疑を、十分程度許します。矢野絢也君
  5. 矢野絢也

    矢野委員 いま外務大臣から、先日の私の保留質問につきましての政府統一見解の御説明があったわけでございますが、なお若干の疑問点がございますので、質問を続けさせていただきたいと思います。  いま外務大臣がお話しなさいました表現の中で、万が一紛争が起こったときに、安保条約運用につきましては慎重に配慮したいという表現がございましたけれども、その前段に、台湾中国の国内問題であるという認識をお述べになっておるわけでございます。したがいまして、万が一紛争が発生いたしましたときの安保条約事前協議運用について慎重に配慮するとは、この前段の、国内問題であるという認識に基づきまして、いやしくも内政干渉疑いを招くようなそのような判断をしない、こういうことであると理解してよろしゅうございますか。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 台湾地域現状認識は、いま申し上げたとおりでございまして、そういう認識に立っておりまする政府といたしまして、いま、万一紛争が起こった場合という仮定の場合の議論をいたしますことは、国際的に政府としては望ましくないと考えておりますが、いま政府見解として御答弁申し上げましたように、「今後の日中両国友好関係をも念頭に置いて慎重に配慮する」ということを申し上げてございますが、そのお答えによりまして御理解をいただきたいと思います。
  7. 矢野絢也

    矢野委員 どうしてもこちらの質問に、まともにお答えが、どうもいやだということのようでございますけれども、私の質問の真意は、本来は二段階に分かれておるのでございまして、いま外務大臣がお述べになった一九六九年の日米共同声明、この共同声明発表の前後にプレスクラブその他で、万が一紛争が起これば、事前協議運用については前向きにしかも弾力的に考える、こういう意味背景説明があったわけでございます。したがって、前向き、弾力的という表現が、少なくとも慎重に配慮という表現に変わったということは、ほんのちょっぴり前進であると評価は一応できるかとは思いますけれども、私どもの申し上げていることは、そのような事前協議があった場合にはノーと答えるべきである、これがまず第一点の問題であります。  もう一つは、本来、この台湾地域事前協議対象地域にするべきではない、つまり安保条約極東地域からはずすべきである、これが私ども主張でございまして、議論がまだ、その極東の範囲からはずすかいなかという問題までいっておらないわけでございまして、あくまでもこの事前協議検討対象地域にするということ自体内政干渉である、こういう時点での御質問をしておるわけでございますが、それに対して、「慎重に配慮する」こういうお答えであります。くどいようでありますけれども、この「慎重に配慮する」ということは、内政干渉疑いを招くことはやらないという意味なのかどうなのか、その点だけひとつお答えを願いたいと思います。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどお答え申し上げましたとおり、日中両国友好親善関係をも念頭に置いて慎重に配慮してまいるというくだりから、御理解をいただきたいと思います。
  9. 矢野絢也

    矢野委員 この問題、時間もありませんからくどくは聞かないことにいたします。  そこで、総理あるいは外務大臣に私の意見を総括的に申し上げて、最後に見解を承りたいのでありますけれども政府日中国交回復を実現されたということは、これはせんだっても申し上げたとおり、国民の力であるとともに、政府の功績であると私たち評価をいたしております。  しかし、その後の田中政府のおとりになっている姿勢は、四次防の強行決定であるとか、あるいは相模の補給廠の問題に関連して道路交通法を改悪されるとか、とにかく従来の安保体制の大ワクというものを一歩も出ておらない姿勢というものを、強く感ずるわけでございます。いずれにしても、過去二十数年間にわたって、わが国サンフランシスコ平和条約あるいは日台条約とか安保条約とか日韓条約、こういった条約によってわが国外交路線というものの方向が拘束されておったわけでございますが、日中国交回復が実現した、そういうことで、いまこそわが国アジアにおける平和日本の位置づけを積極的に行なうべき時期である。おそらく田中政権は、そういう方向で日中以後対処するであろうという国民の期待を、残念ながらその後の動きというものは裏切っておるわけでございますが、今回のこの事前協議の問題につきましても、どうも政府見解は、私たちの納得のできないものでございます。  そこで、今後いかにこの事前協議運用について慎重に配慮するという言い方をされようとも、あくまでも台湾地域事前協議対象地域であるという意味においては、安保条約とこの日中国交回復とは、明らかに矛盾しておる要素を含んでおります。本来安保は、アメリカ中国封じ込め極東戦略の一環として、わが国にいろいろな義務づけがアメリカより押しつけられたものでありますから、そういう認識でいく限り、こういう無理な問題が生じてくるわけであります。前回の質問、私いろいろな角度から伺いましたけれども、どう考えましても不自然であり、無理な理屈のつじつま合わせである、こういう印象を受けざるを得ないのでありますけれども、今後この問題に関して、総理がいかなるお考えで対処されるか。  確かに、この台湾問題については、これはもう百歩譲った言い方をすれば、日米関係その他の問題で、政府としてもものの言い方がむずかしいという事情はわからないでもありません、あるいは台湾との関係におきまして。しかし、論理的に台湾中国の内政問題であると認識し、これはきょうの統一見解でも明らかにそれが述べられておるわけでありますが、内政問題であるという認識を持ちながら、その台湾で問題が起こったときには、安保条約極東対象地域内にあるという前提で事前協議対象になる。その運用については、慎重に配慮するということでありましょうけれども、論理的にどう考えても、これは問題が起ころうと起こるまいと、その考え方自身がこれは内政干渉であります。事前協議対象にするということ、そのこと自体がこれは内政干渉であります。こういうことについて今後の——きょうはもうこまかい問題は、詰めをやろうとしても時間がございません。政府の基本的な考え方について、総理よりお考えを承りたいと思います。
  10. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 あなたが御発言になられた、言うておる内容、よく理解できます。現実と論理的な面が完全に一致をしない面もございます。  しかし、現実を踏まえて平和に向かって前進をしようという、そういう努力日中国交正常化というものになってあらわれたわけでございますから、これは中国ももとより、日本中国に対して平和友好善隣友好を貫こう、貫かなければならない、言うなれば、未来永劫にというかたい決意を持っておるわけでございます。そういう事実を踏まえて、いま御指摘の安保条約運用等に対しても、十分慎重に配慮してまいらなければならぬことは言うをまちませんし、慎重に配慮いたします。これが政府考え方でございます。
  11. 矢野絢也

    矢野委員 終わります。
  12. 坪川信三

    坪川委員長 これにて矢野君の保留分質疑は終了いたしました。  次に、鈴切康雄君。
  13. 鈴切康雄

    鈴切委員 政府は、さきの六十八通常国会で、防衛予算のうち航空機三機種分の約二十七億円を削除し、そして国庫債務負担行為を凍結いたしました。私も、六十八通常国会において予算委員会理事をさせていただいた経緯から、その内容についてはよくわかっておりますが、それはしょせんは、四次防の決定が行なわれない段階で四十七年度に組み込まれたためであり、言うならば、いわゆる予算の先取り問題が大きくクローズアップされたからであります。しかも、自衛隊沖繩へのもぐり物資移送の問題、立川の強行移駐の問題など、自衛隊におけるシビリアンコントロールの機能が完全に果たされていない実態があったからであります。その結果、国会は二十二日の間空転をいたしました。この事態を収拾するために、船田議長あっせん案項目を示して、国会正常化されたことは周知のとおりであります。  その船田議長あっせん案における五項目内容、これはシビリアンコントロール強化の上においてたいへんに重要な問題だと私は思うのでありますが、そういう五項目について、政府は今日どのように努力し、シビリアンコントロールの実が示される状態になっているかということについて、まずお伺いを申し上げる次第でございます。
  14. 二階堂進

    二階堂国務大臣 いまお述べになりました問題につきましては、過ぐる国会の末期におきましても、御承知のような論議がなされたわけでございまして、それを受けまして議長あっせん案が出たことは、お述べになったとおりでございます。その趣旨を受けまして、国防議員懇談会あるいは国防会議を開きまして、最終的に四次防の内容決定いたしました。私は、それを文書にいたしたものを両院の議長報告をいたしたわけであります。  その報告を受けた議長は、私のほうに、内容の確認をいたしましたという報告をされたのでありますが、その後、四党の国対委員長申し合わせがありまして、凍結された部分については、先ほどお述べになりましたような事情もこれあり、国会議論を十分尽くして慎重に処置されたいという申し入れがございました。私は、その四党の国対委員長申し入れをそのまま受けまして、十分尊重をいたしますということを四党の国対委員長に御報告を申し上げておるわけでございまして、この申し合わせ十分尊重いたさなければならない、かように考えております。
  15. 鈴切康雄

    鈴切委員 四党の申し合わせによって、政府はそのことを尊重するという立場をとっておられるのでありますから、内容については私、多くを触れないつもりでおりますが、やはり何といってもこの議長あっせん案の五項目内容の中に、政府がやらなければならない重大な問題がたくさんあるわけであります。  それを具体的に申し上げますと、第三項目の「政府は、今後防衛予算編成にあたり防衛力整備主要項目については「重要事項」として国防会議にはかることとする。」という内容と、四番目の「政府は、今回の経緯に鑑み文民統制の実をあげるため適切な措置を講ずる。」という、政府がやらなければならない問題が明記されているのであります。そのことについて具体的にどのようにされようとしておるのか、そのことによって文民統制の実があがるかどうかということが、実は大きな問題だと思うのでありますが、その点についてお伺いいたします。
  16. 二階堂進

    二階堂国務大臣 文民統制の実をあげろという御主張はもっともなことでございまして、私どもは、国防会議の正式のメンバーも、いろいろ議論はございますが、国家公安委員長、それから科学技術庁長官官房長官、これは従来もオブザーバーとして出ておりましたが、そういう方々をさらに正式のメンバーとして追加いたしました心これも文民統制の実をあげるための一つの理由だと思っておりますが、私は、一番の問題は、党首会談のときも総理から御提案になりましたとおり、やはり国会の場が一番文民統制の実をあげる場所である。こういうことからいたしまして、国会の中に安全保障に関する特別委員会なり、あるいは専門に国防議論をするような委員会というものを、ぜひ常置していただきたいということを、国会のほうにも党を通じてお願いをいたしておるわけでございますから、そういうこともぜひひとつ実現を見るように、私どもお願いをいたしております。  この文民統制の実をあげるということにつきましては、従来も努力してまいりましたが、先ほどお述べになりましたような議論もございますので、十分実をあげるように、今後ともさらに一そうの努力を重ねてまいりたい、こういう考えでございます。
  17. 鈴切康雄

    鈴切委員 いま官房長官が言われました、いわゆる文民統制強化措置のために、政府としては通産大臣科学技術庁長官内閣官房長官国家公安委員長議員とするというふうにお考えになっておられるわけでありますけれども、何もあらためてそういう者を議員として出す必要はないと私は思うのです。  それは、例の国防会議構成等に関する法律の中に、第六条、「議長は、」これは総理大臣でありますが、「必要があると認めるときは、関係国務大臣統合幕僚会議議長その他の関係者会議に出席させ、意見を述べさせることができる。」というふうに書いてあるわけであります。私ども考え方でいきますと、通産大臣というのは防衛産業との結びつきも非常に強いわけでありまして、そういう点から考えると決して適当ではない。すなわち、議長が必要であるというときに呼べばいいのではないか。また科学技術庁長官の場合においては、やはり平和利用に軍事的な要素を加えるというような危険も出てくるわけでありますし、また国家公安委員長の場合においては治安出動というような、そういう言うならば三軍に依存するような傾向への議員というものをきめるべきではない、少なくともこの国防会議構成等に関する法律で十分に用は足りる、そう私のほうは思うわけであります。その点について、もう一度お伺いします。
  18. 二階堂進

    二階堂国務大臣 そういう議論も私どもはいままで承っておりましたが、従来はオブザーバーという立場において、ただ意見を聞いておくという程度の資格で参加しておった者が、今度は正式なメンバーとして参加いたしまして、文民統制立場からこれらの問題について意見を申し述べるということは、私は適切な方法ではなかろうかと思っております。  なお、いろんな民間の方々等も入れて、広く国防に関する意見を求めるために、国防に関するメンバーにそういう者も含めたらどうかという意見もございますが、いやしくも国防というものにつきましては、政府責任を持って対処しなければならぬ。その具体的な国防に関する方針なりあるいは内容というものは、私は、政府自体責任を持ってきめるべきものであるというような見地からいたしまして、広く一般の人も入れてはどうかという議論に対しましては、やはり政府責任を持つべきものだという考えのもとに、今回はそういう考え方は見送ることにいたしたわけでございます。
  19. 鈴切康雄

    鈴切委員 重要事項の中で、技術研究開発の種類及び数量を入れるべきではないか、そういうふうに私は思うわけであります。その点を、あとで聞かしていただきたいわけであります。  さらに、重要事項の中に、治安出動の場合にはどうするのか、あるいは自衛隊の防衛出動の場合にはどうするのかということについて、私は、やはりこれはシビリアンコントロールという立場からいうならば、そういう問題にも触れるべきではないかというふうに思うのですが、その点についてお伺いいたします。
  20. 二階堂進

    二階堂国務大臣 この治安の確保につきましては、警察当局が第一義的に責任を持つべきことは当然でございますが、想定されるような最悪の事態、もしかりに侵略を受けて国内が非常な危険にさらされた場合は、やはり自衛隊というものと警察というものが一体となって——これは最悪の場合でありますよ。いっでもそういうことを想定して考えているわけではございませんが、そういう場合には、やはり一致して国内における治安、秩序の確保というものに当たらなければならないというたてまえからいたしまして、国家公安委員長というものが入って意見を述べるということは、至当であると私は考えております。
  21. 鈴切康雄

    鈴切委員 治安出動の場合には、少なくとも国民に銃を向けるような事態が起こるわけであります。そういう状態になりますと、私は、これは慎重の上にも慎重を期さなくてはならないと思います。  そういう観点から考えるならば、やはり私は、こういう治安出動とかあるいは防衛出動等についても、慎重な上の計らいという意味、また文民統制の実をあげるという意味において、私は、少なくともそういうものを付議事項か何かにする必要があるのではないか、そのように思うのです。もう一度……。
  22. 二階堂進

    二階堂国務大臣 法制局長官から……。
  23. 吉國一郎

    吉國政府委員 お答え申し上げます。  従来、国防会議の付議事項として、第六十二条の第二項第五号に、「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」というものがございますので、治安出動の問題も、内閣総理大臣がそのように認定をすれば、その事項としてかけられるということでございました。  ただ、ただいまのような御議論も、確かに傾聴に値すると思いますので、なおよく検討してみたいと思います。
  24. 鈴切康雄

    鈴切委員 議長あっせん案による第四項、「政府は、今回の経緯に鑑み文民統制の実をあげるため適切な措置を講ずる。」というところがありますが、それに対していま官房長官が、国会も要するに委員会を持って、広く国会の場所におけるところのシビリアンコントロールの実をあげてもらうようにというお話でございます。それは国会がやることでございますから、ここに書いてあることは、「政府は、今回の経緯に鑑み」ということでございますから、政府は何をやらなくてはならないかということは大きな問題だと思うのです。政府は、この問題について、国防会議のあり方について現況のままでいいとお思いになっておられるか。たとえていうならば、さきに問題になりました、国防会議の事務局長である海原さんを、中曽根さんがお茶くみ小僧だというような、そういうふうなことで何もわからないというような発言があったというように聞いておりますけれども、私は、やはり防衛庁の中におけるところの国防会議という状態であっては、しょせんはそういうふうな発言も出てくるのではないかと思うのです。だから、もう少し権威ある立場から国防会議というものを、少なくとも設置法をつくって、そして独立した機関にして、もっと大きな観点からそれを監視する必要があるのではないか、そういう観点でなければ文民統制の実はあがらない、私はこういうように思うのですけれども総理大臣、どうお考えになりますか。
  25. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国防会議法という単独法にすべきか、現在のまま防衛庁設置法の中で規定をしておったままでいいのかということは、これはそんなに重要な問題ではないと思うのです。ですから、政府でもこの問題を検討いたしましたが、自衛隊法成立の当時から設けられておるこの制度はこのまま踏襲したほうがいい、現在の段階においてはそういう結論を出しております。
  26. 鈴切康雄

    鈴切委員 総理大臣がそのようなお考えでは、ほんとうに文民統制の実をあげることができないと私は思うのです。すなわち、この防衛庁設置法の中に国防会議というものを設けるという状態であっては、これは当然、先ほどの国防会議メンバーを軽視するような発言がおのずと出てくるような状態である。少なくともこういう問題については独立法として、そしてむしろシビリアンコントロールの実をあげるようにやるということは、私は、ほんとのシビリアンコントロールを強化するという、そういう考えにつながると思うのですが、依然としていまのような状態であれば、政府ははたして、それではこの議長がいうところの、「今回の経緯に鑑み文民統制の実をあげる」ということに対して、真剣に検討されたかどうかということが疑わしくなると思うのですが、その点についてもう一度お伺いいたします。
  27. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 シビリアンコントロールの実をあげるということは、ていさいや法律の体系の問題ではないと思うのです。このシビリアンコントロールというのは各国でも例があるわけです。各国でも問題になっております。この例は、一番効果のあるものはどこか、これは国会であります。ですから、ある国では国会でもって任命するというような措置までとっておるのでございまして、国会安全保障委員会のごときものがつくられ、絶えず国防や自衛というものに対して討議が加えられる、国民の前面にこの問題が押し出されて、国民、衆人環視の中で議論をされるということが、最も効果的なシビリアンコントロールであるということばもう言うをまちません。これが一つあります。ですから、国会に長いことこれが委員会を設けていただきたい、こう言っているわけであります。あなたがいまその意味で御発言になっておるのも、これはシビリアンコントロールというためには非常に大きな効果があることは、もう私が言うまでもないわけでございます。  それから、この間の議長あっせんもございましたので、政府としては、いま国防会議議員をふやそうという問題が一つございます。  それから、技術的な問題に対しては、国防会議の中に部会のごときものを設けて、われわれは何マッハといっても全然わからぬことでございますし、そういう意味で、これがわかるような実際の技術的なスタッフというものを、これはあまり大きくなっては、屋上屋を重ねても実があげられないわけでありますから、そういうものの部会を考えようということでございます。  それから、国防会議にかける議題というものは、これは当然整理をして追加すべきものは追加しよう。その他は、ひとつこれから各国の例も十分勉強しながら、シビリアンコントロールが名実ともに充実をしていくためにどうあるべきかということは、在野の声も十分聞きながら考えてまいります、こういうのが結論でございます。
  28. 鈴切康雄

    鈴切委員 総理大臣が言われたように、確かに国会が一番大きなシビリアンコントロールの実をあげるということは、これは当然のことであります。ゆえに四次防の問題についても、この場所においてチェックができたわけでありますから、当然それはあたりまえだと私は思うのですけれども、それは国会国会でやらなくてはならない問題だと私は思うのです。政府自体も、やはり文民統制の実をあげて、機構の改革とか、そういう点に万遺漏なきょう総点検をして、その上においていろいろやらなくてはならない点についての努力をしなくちゃならない、私はそう思うのです。  たとえて言うならば、主要項目についてその見解があいまいであったがゆえにいろいろ問題化されてきたわけであり、主要項目についても、こういうものとこういうものは主要項目に入れるというふうに、政府のほうでも提案があったわけであります。ゆえに、そういう観点から考えるならば、やはりもう少し政府としてもやらなくてはならない問題、文民統制の実をあげる問題が私はあると思うのです。だから、そういう点について総理大臣としてもう一度検討して、そして文民統制の実があげられる、そういう問題があったならば、さらに努力をするという御決意があるかどうか、お伺いいたします。
  29. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 シビリアンコントロールの実をあげるための施策で付加すべきものがあれば、これはもう取り入れるにやぶさかでございませんし、積極的に勉強してまいります。
  30. 鈴切康雄

    鈴切委員 では、先般来いろいろと問題になっておりますところのT2及びFST2改の問題について、一兵器の国産化がいま非常に問題になっておりますが、まず私、防衛庁のほうにお伺いをしたいと思うのです。  現在、防衛庁が発注をしている上位十社の社名と金額を示していただきたいわけであります。防衛産業の市場に対するシェアをやはり金額でお示しを願いたい。これは何も十年という長い必要はございませんので、過去五年間のデータで御答弁を願いたいと思う次第であります。
  31. 黒部穰

    ○黒部政府委員 上位十社につきまして申し上げます。  最初に、四十六年度の上位十社でございますが、第一位が三菱重工業、第二位が三菱電機、第三位が川崎重工業、第四位が石川島播磨重工業、第五位が東京芝浦電気、第六位が日本電気、第七位が新明和工業、第八位が日本製鋼所、第九位が小松製作所、第十位が日立製作所となっております。この十社は、四十二年度から四十五年度の間若干の出入りはございますが、御必要があれば、また後ほどその点は御説明いたします。  なお、四十二年度におきますところの上位十社の契約額の総調達額の中に占める比率の御質問であったかと思いますが、四十二年度におきましては、十社の占める比率は五〇・四%でございます。四十三年度は六〇・一%、四十四年度が六四・二%、四十五年度が五〇・二%、四十六年度が六四・六%となっております。
  32. 鈴切康雄

    鈴切委員 各社の発注している金額について、五年間のデータを申し述べていただきたい、こういうことでございます。それから、それに対するシェアですね、金額のシェアでございますけれども……。
  33. 黒部穰

    ○黒部政府委員 四十六年度につきまして調達実施本部から支払いました金額で申し上げたいと思いますが、第一位の三菱重工業は四百十七億九千方円でございます。第二位の三菱電機は百九十五億四千万円でございます。第三位の川崎重工業は百八十七億円、第四位石川島播磨は百七十八億九千万円、第五位東京芝浦電気は七十八億四千万円、第六位日本電気は五十二億六千万円、第七位新明和工業は五十一億七千万円、第八位日本製鋼所は五十億円、第九位小松製作所は四十億円、第十位日立製作所は三十七億一千万円でございます。  比率は、売り上げに対する比率というふうに理解いたしましたが、総売り上げに対する比率で、防衛庁が支払った金額で計算いたしますと、三菱重工業は六%、三菱電機は四・五%、川崎重工業は六・四%、石川島播磨重工業は四・四%、東京芝浦電気は一・三%、日本電気は二・二%、新明和工業は一五・六%、日本製鋼所は六…四%、小松製作所は一・九%、日立製作所は〇・五%、かように相なっております。
  34. 鈴切康雄

    鈴切委員 いまの御答弁では納得いかないわけでありますけれども、たとえば三菱重工の四百十七億九千万円と第二位の三菱電機は百九十五億四千万円ということになっているわけですが、それがわずか六%、四・五%というのはちょっとふに落ちないわけであります。そういう点で、何かお考え違いになっておるのではないか、このように思うわけでありますが……。
  35. 黒部穰

    ○黒部政府委員 たいへんどうも……。売り上げの中に占める比率と思いました。調達額……(発言する者あり)わかりました。
  36. 坪川信三

    坪川委員長 質疑者以外の発言は御注意願います。
  37. 黒部穰

    ○黒部政府委員 第一位の三菱重工業は二六.七%でございます。それから三菱電機は七・三%……(「しっかりせい」「どうなんだ」と呼ぶ者あり)はい。先ほどの数字は支出額で出しました。今度のは契約額で出しております。支出額の計算ございませんので……。十社の分につきまして申し上げますと、三菱重工業は二六.七%、石川島播磨重工業が九・六%、川崎重工業が九・二%、三菱電機が七・三%、東京芝浦電気が三・二%、新明和工業が二・六%、日立製作所が一・六%、日本電気が一・五%、小松製作所が一・三%、島津製作所が一・二%、かようになっております。
  38. 鈴切康雄

    鈴切委員 それでは、いま御答弁になりましたところから考えますと、三菱重工と三菱電機、いわゆる三菱系は、いま頭に出ているところでは三四%になりますね。大体市場占有率の三分の一というふうに考えていいわけですね。もう一度……。
  39. 黒部穰

    ○黒部政府委員 防衛庁の契約額の中で占める比率はさようになっております。
  40. 鈴切康雄

    鈴切委員 次に、自衛隊の天下りの実態についてお伺いをしたいわけでありますが、先ほど申し上げました企業への過去五年間の将補、将官クラス、この就職状況についてお答え願いたいわけであります。
  41. 高瀬忠雄

    ○高瀬政府委員 過去五年間、つまり四十三年からことしの九月末日までにおける、先ほどの会社につきましての将及び将補の就職状況について申し上げます。  三菱重工につきましては、四十三年に将一名、それから四十四年に将が一名、それから四十六年に将一名でございます。それから将補は、四十四年に一名、四十五年に一名、四十六年に一名でございます。それから石川島播磨につきましては、四十四年に将一名、四十五年に将補一名。それから川崎重工業につきましては、四十三年に将二名、四十四年に将補二名、四十五年に将二名、将補一名、それから四十六年に将一名、四十七年に将一名。それから三菱電機につきましては、四十三年に将一名、将補一名、それから四十五年に将補一名、四十六年に将一名、将補二名。それから東京芝浦電気につきましては、四十三年に将補一名、四十四年に将一名、将補二名、四十五年に将一名、将補一名、四十六年に将一名、将補一名。それから新明和につきましては、四十三年に将補一名。それから日立製作所につきましては、四十三年に将補二名、四十五年に将一名、四十七年に将補一名。それから日本電気につきましては、四十三年に将補二名、四十七年に将二名。それから小松製作所につきましては、四十三年に将一名、それから四十四年に将一名、四十五年に将補一名、四十六年に将一名。島津製作所につきましては、四十六年に将補一名。合計四十五名でございます。
  42. 鈴切康雄

    鈴切委員 いま国民は、兵器の国産化をめぐって産軍癒着体制とかあるいは産軍の複合体制について、きわめて強い不安感と不信感を持っております。昨日の楢崎氏の指摘の部品価格の水増しも、業者との癒着以外の何ものでもないという実態が暴露されたわけであります。兵器の国産というものは、必ず産軍癒着体制の弊害が出てくるといわれておりますけれども総理大臣、その問題に対してどのようにあなたはチェックをされていくつもりでおられますか、お聞きしたいと思います。
  43. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本において産軍癒着というような状態はないと、こう考えていただきたいと思います。  これは、先ほどもちょっとあなたの御質問の趣旨を取り違えて、その会社の製品とそれから防衛庁発注の金額との比率を述べたわけでありますが、この比率を見てもわかりますとおり、日本では、防衛庁の発注でもって発注が五〇%こしておるというようなものは飛行機だけでございます。これは民間に飛行機がないということであります。あとはもう六%、四%というようなことでございまして、この防衛庁の発注から——防衛庁の発注がすべてなくなっても、その事業が継続は十分していくわけでございます。ですから全く一〇%以下——一〇%以下というよりも六%、四%というような状態でありまして、産軍複合、産軍癒着というような問題は考えられないと思います。  ただ、産軍癒着という問題に対して、いまの防衛庁の将官とか技術官が行っているじゃないかという問題、これは行かない、そういう人が関係会社になるべく関係を持たないことが望ましい、こう思います。まあしかし、そのためには、やはり将官でも、停年前とか停年を過ぎてもちゃんと生きていけるような体制ということでなければならないと思うのです。いま防衛庁の停年が非常に若い停年であります。特に尉官などでは、四十ぐらいでもう去らなければいかぬというような状態ですと、やはり第二の人生を歩まなければならない。そういう意味で、天下りということでもってもう無条件に、発注するんだから発注に人がついていくんだというような考えですと、これは産軍複合ではなく癒着という問題でもって究明されてもやむを得ないわけでございます。しかし、軍の仕事というのはそれほど、外で見るほど利益はないものでございます。これは非常に精度が高いということで、絶えず改良改良でもって追われていって一もう一定の技術的に定着をしたワクでもって多量生産を発注されれば利益があるわけです。ところが、もう絶えず改良改良、追いつけ追い越せ、こういうような技術的なものを持っておる場合は、必ずしも利益としてはないのですが、ただ四%、六%というようなウエートの仕事をしておっても、それが高い技術でありますから、そういう意味で他の分野に波及する効果が非常に大きい。これは飛行機をやっておると、高速の船舶とか車両とかいうものにも直ちに転化していくわけでありますから、そんな意味で効果はあるということでありますが、産軍癒着、産軍複合という問題でいま指摘されるような実態、これは各国に比べてみてもないのではないか。ただいまここで述べましたとおり、各発注先にみんな将官が行っておる、それは天下りだ、発注について行っているんだというような感じ、これをぬぐい去るためには、やはりいろいろ考えていかなければならないと思います。
  44. 鈴切康雄

    鈴切委員 やはり自衛隊というのは、一つは規律と階級というものを非常に重んずるわけであります。ゆえに将官あるいはそれ以上の方々が天下りをしますと、これは民間へ行きますと、どうしても防衛庁の内部においては後輩の方々が多いわけでありまして、そういうところからの圧力というものが、おのずと産軍癒着へとつながっていく危険性というものは十分考えられるわけであります。  私は、それを長く論ずるわけではございませんが、実は中曽根長官のときに、国産化に対するところのいわゆるいろいろな方針が出されたわけでありますが、その中において、「装備の生産および開発に関する基本方針」これはいまも変わっていないと判断してよろしゅうございましょうか。
  45. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 現在もその方針のもとにやっております。
  46. 鈴切康雄

    鈴切委員 それでは念を押しておきますけれども防衛産業の整備方針の中に、「適正な競争原理の導入」ということが書いてありますが、これも全く同じ考えですか。
  47. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 その方針でございます。
  48. 鈴切康雄

    鈴切委員 過日、総理大臣は、円対策のため緊急にエアバスなど航空機の輸入をきめまして、それに伴い、十四億円の戦闘支援機を国産化するよりも、九億円の安いF5Eの輸入を考えたときもあったというように御答弁がありました。であるにかかわらず、なぜFST2改の国産化に踏み切ったかということが、私どうしてもまだ納得がいかない点でございます。いかなる理由から防衛庁の決定に従ったのか、国民にわかるように御説明を願いたいと思います。
  49. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日米間の貿易収支の不均衡を是正するということは、日本としてはたいへんなことでございますから、緊急輸入できるものはすべてやりたい、こういうことで私から各省に連絡をしまして、できるだけ緊急輸入できるものはそろえてくれ、こういうことで要請をしたことは事実でございます。その中で、安いものがあれば兵器等も買ったらどうかということは、当然大蔵省と通産省、それから防衛庁との間に議論がされておったことも事実でございます。  ところが、最終的な段階になりまして、T2という練習機はもうすでに二十機つくることになっております。ですから、練習をしたものと同じ系統のT2改というものをどうしても国産でやりたい。練習機が国産でありますから、本物も同じルートで同じ型式を採用したい、こういうことでございます。フランス式で調教を受けたらフランス式の銃を使ったほうがいい、こういうことであります。  しかし、それは何とかアメリカ製のものでできないのかということでございましたが、これは私はしろうとでありますし、防衛庁はこれを使って国防の任に、防衛の任に任じておるわけでありますから、これはまだ手をつけない、練習をしておらないもの、哨戒機その他は別でございますが、いまのT2改は、その前段である練習機T2をすでに四十七年度の予算で計上して御審議をお願いしたのでありますから、これはどうしても国産が望ましい、こういう強い要請でございます。  これはやはり使う人が、そのほうがいいということでございます。それだけではなく、これを入れる場合に、どのような緊急輸入に対してメリットがあるのかということでもって年次別計算をしてみましたら、いますぐ金を払うものではない、これから何年かかかって金を払うので、次のものを輸入するということでも実態は変わらないのですというような専門家の意見でございますので、防衛庁原案を認めざるを得なかった、こういうことであります。  こまかいことが必要であれば、防衛庁長官から答えます。
  50. 鈴切康雄

    鈴切委員 このFST2改には電子機器が積まれるというふうになっているわけでありますが、航空主要電子機器の中に慣性航法装置というものがつくことになっておりますけれども、それはどういうものですか、ちょっと御説明願いたいのです。
  51. 岡太直

    岡太政府委員 慣性航法装置でございますが、これはジャイロと計算機から構成されております。それでジャイロをもちまして空間に一定の基準面をつくりまして、それに加速度計をつけまして、加速度をはかりまして、積分しまして自分の速度なり位置を求めます。この計器を使いますと、外部からの援助もなく自分だけで速度なり位置が出ますから、全天候下でも使用できる、そして非常に正確な航法ができるという装置でございます。
  52. 鈴切康雄

    鈴切委員 ところで、その慣性航法装置はどのような方法で購入をされるのか、またメーカーの選択はどのような方法でやられるのか、それについてお伺いいたします。
  53. 黒部穰

    ○黒部政府委員 慣性航法装置はただいまの御説明のとおり、かなり高度の技術のものでございまして、国産で開発したものは、まだできていないわけでございます。一番肝心なジャイロの部分が、国産ではなかなか開発されておりません。  したがいまして、これをライセンス生産して調達するか、完全に輸入にするかという問題があるわけでございますが、将来の維持、補給の面から見ますと、やはり国内調達するのがよろしかろう、そのためには外国の技術を導入して生産するということがよろしいのではないかということで、現在検討中でございます。
  54. 鈴切康雄

    鈴切委員 実は、私もいろいろと調査をしてまいったわけでありますけれども、きょうの東京新聞にも、このFST2改の、しかも慣性航法装置の発注についての疑惑があるということで、しかもその見積もり等について、特定業者へ情報が流れたというふうなことが、ここに伝えられているわけであります。私これを読ましていただいたわけでありますけれども、私の調査と幾ぶんか違う点はありますけれども、大かたにおいては、この内容になっているわけでありますけれども、そういう事実があったかどうか。
  55. 黒部穰

    ○黒部政府委員 結論から申せば、そういう事実はないわけでございます。  その点、やや詳しく申し上げれば、かようなことになると思いますが、第一に、当方でプロポーザルをとりました相手は四社でございます。それはアメリカの技術を使用いたしますところの国内の会社が三社、それからイギリスの技術を利用するものが一社、フランスの技術のものが一社というわけでございます。現在、技術的並びに価格上の審査をいたして検討している段階で、まだきめてはございません。  新聞に、何か特定の会社に情報が流れたというようなことが書いてあるようでございますが、実はこの慣性航法装置を使いまして、ファイア・コントロール・システム、火器管制装置というものをつくるわけでございます。火器管制装置のプライムメーカーとしては三菱電機に発注いたす予定になっております。三菱電機は、プライムとして当方から技術的にどういうものが望ましいかということの問い合わせをいたしたことはございますけれども、これがある特定の業者に情報が流れているという記事になってあらわれたものではなかろうかと思います。
  56. 鈴切康雄

    鈴切委員 いま四社の名前をあげられたわけでありますけれども、その四社がライセンス生産をしようとしている、そういういわゆる航法装置、これをもう少し詳しく具体的にお話を願いたいと思います。
  57. 黒部穰

    ○黒部政府委員 米国のシンガーの技術というものを利用するのが三菱プレシジョンの提案でございます。それから英国のフェランティの技術を利用するというのが日本航空電子という会社でございます。それから米国のリットンの技術を利用するのが東京芝浦でございます。フランスのサジェムの技術、これは国内の会社がありませんで、直接サジェムの会社が輸入するという形になっております。
  58. 鈴切康雄

    鈴切委員 いま四社の名前があがったわけでありますが、フランスのサジェムになりますと、直接の輸入ということになるから、国産化をするということ、ライセンスでつくるということになれば、当然しぼられてくるのが三菱プレであり、また東芝であり、日航電子工業ということになろうかと私は思うのです。  そこで、私はリットン社の慣性航法装置のアメリカにおける使用状況というものは、どういうふうになっておるか、どのように調査されておるか、お伺いをいたします。
  59. 黒部穰

    ○黒部政府委員 リットンの慣性航法装置はファントム、それからいま最もアメリカで新しいといわれておりますFM、それから民間機ではボーイング747などに使用されておると聞いております。
  60. 鈴切康雄

    鈴切委員 それで、その慣性航法装置はアメリカでどれくらいの使用状況というか、シェアがあるのか、その点について。私はたしか八〇%、それくらいもうアメリカでは使われているという優秀な航法装置であるというふうに聞いておるが、その点について……。
  61. 黒部穰

    ○黒部政府委員 リットンのほうの申し立てによれば、さような数字が出ておりますが、この点については、十分に調べてまいりたいと思っております。
  62. 鈴切康雄

    鈴切委員 GPI、すなわちシンガーミシン糸のゼネラル・プレシジョンですが、この製品は古い形の航空機、たとえば攻撃機のA7とか、あるいは対潜哨戒機のP3オライオンなどに使用されておるように聞いておるのですが、その点についてお伺いします。
  63. 黒部穰

    ○黒部政府委員 大体そのとおりでございますが、ただいま先生おっしゃった古いというのに、ちょっとひっかかりを感じております。技術的には防衛庁の要求する性能は、ほぼ満足し得るものであろうという見当をつけております。
  64. 鈴切康雄

    鈴切委員 リットン社の、いわゆるアメリカの航空技術の中においてシェアを八〇%も占める、そういう航法装置であるリットン社の慣性装置、これは現在ファントム、開発中のF14、それからF15、こういうものにも使われるというふうにいわれておるわけであります。片一方のGPIの場合において、これはいわゆる三菱系でありますけれども、私がいま申し上げた機種にしか使われていないという状態を考えてみたときに——少なくともこの機器発注については百億円内外の国民の税金を使うわけであります。そういう観点から考えるならば、より以上性能のすぐれたものを使うべきが当然だと私は思うのですが、その点について、もう一度お伺いいたします。
  65. 黒部穰

    ○黒部政府委員 先ほども申し上げましたように、P3あるいはA7に使っておりますシンガーの技術は決して古いものではないと思いますし、防衛庁の要求するものでは、ほぼ、リットンのものもあるいはシンガーのものも、満足し得るのではなかろうかと思います。リットンのものが非常にすぐれていて、したがって八〇%のシェアを占めているのかどうかということも、もちろん検討もいたします。  いずれにいたしましても、百億円にはならない見込みでございますけれども、かなりの買いものにはなるわけでございますので、十分技術、見積もり価格ということも検討いたしまして、安くてしかもいい技術のものを選定してまいりたいということに考えております。
  66. 鈴切康雄

    鈴切委員 初め防衛庁においては、ファントムに積む分もFST2改に積む分も、当然制服も内局もリットンというふうに、そのようにきめられたと伝えられております。ところが、三菱とライセンス生産を契約しているGPIに急に話が進んだというのは、何か意図的な圧力があったのではないかというふうに疑惑が持たれるわけであります。しかも、リットン社の航法装置とGPIという状態になってくれば、当然リットン社のほうが優秀であるということはもう目に見えて明らかであります。それが急に三菱のGPIのほうに話が持っていかれるような傾向にある、内定をしたとまでいわれているわけでありますが、どうしても納得がいかないので、その点についてもう一度……。
  67. 黒部穰

    ○黒部政府委員 現在、ファントムを国産いたしておりまして、そのファントムに積みまする慣性航法装置は、やはりライセンス生産で現在やっているわけでございます。ただ、この慣性航法装置はやや旧式の型と聞いておりますので——現在は、これは同じリットンの技術のものでございます。ただ、同じリットンのものでも、FST2改に積もうとするものは、これよりも安価で、しかも技術的に最新のものということを提案されているわけでございます。部品としての共通性が少のうございますから、現在のリットンのものをそのまま採用するメリットがあるかどうかということも、一つ検討の対象になるわけでございます。  先ほど先生御指摘のように、もともとリットンときめてあったものを何かの圧力で三菱のほうに、ブレシジョンのほうへ傾いているのではないかという御指摘がありましたが、全くさようなことはございません。フェランティの技術も、リットンの技術も、それからシンガーの技術も、平等にいま検討している最中でございます。
  68. 鈴切康雄

    鈴切委員 実は、この三社のほうから日本のほうが、見積もりを十月の下旬ごろとっているというふうに聞いているわけでありますけれども、その点について……。
  69. 黒部穰

    ○黒部政府委員 先ほど私、四社からプロポーザルをとりましたというふうに申し上げましたが、七月にこの四社からプロポーザルをとりました。そのプロポーザルにはそれぞれの、どういうような技術を使ってどのようにして国産してまいるか、その場合に、量産価格は大体このくらいと見積もるということについてのプロポーザルを技術研究本部でとりました。十月ではございません、七月でございます。
  70. 鈴切康雄

    鈴切委員 その契約はもちろんなされていないわけでありますけれども、見積もりの状況について少々詳しくお聞きをしたいわけであります。  何月何日にそういう状態の見積もりをとったのか、そして、いわゆる四社からどういうふうな順序に見積もりをおとりになったのか、その点についてお伺いいたします。
  71. 黒部穰

    ○黒部政府委員 正確な日付は、いまちょっと手元にございませんので、すぐ調べまして後ほどお答えいたします。  四社から、たしか七月末日付で提案をとったというふうに記憶いたしております。
  72. 鈴切康雄

    鈴切委員 末日にいわゆる出したわけでありますけれども、その四社の中で一番おそく提出されたのは、どの会社でしょうか。
  73. 黒部穰

    ○黒部政府委員 末日に四社そろってプロポーザルを受け取ったというふうに聞いております。
  74. 鈴切康雄

    鈴切委員 その末日に受け取った状態に、私は大きな問題があるわけであります。結局、一番最後に防衛庁が受け取ったのは、三菱のほうから受け取ったと、私はそのように調査をしているのですが、その点について……。
  75. 黒部穰

    ○黒部政府委員 そういうおくれて入ったのかどうか、これから確かめてお答えいたします。
  76. 鈴切康雄

    鈴切委員 要するに、三菱が一番おそくそれを提出したと、私の調査はなっているわけでありますが、その間に、先に出されたいわゆる見積もりを、情報を流したという、そういう事実があるわけでありますけれども、それについて、あなたは御承知でありましょうか。
  77. 黒部穰

    ○黒部政府委員 そういうことはないと思います。  ただ、一番最初に私が申し上げましたように、プライムの三菱電機に書面をもって照会をいたしております、技術的にいかに考えるかということを。で、三菱電機の子会社が実は三菱プレシジョンであるわけでございます。そういう点で、先ほども申し上げましたように、情報が競争会社のほうへ筒抜けになるではないかという疑いが持たれたわけでございます。
  78. 鈴切康雄

    鈴切委員 私は、その情報を流した人の名前はあえて伏せておくつもりでありますけれども、某一佐が三菱に有利な情報を提供したということが取りざたされているわけでありますけれども、あなたは、そのことについて御存じないでしょうか。
  79. 黒部穰

    ○黒部政府委員 先ほども申し上げましたように、プライムにその意見を求めるということで、実はそれが子会社のほうに情報が流れるではないかということで、競争会社からクレームといいますか、不満の声は私も聞きました。その点につきましては私も聞いております。しかし、某一佐がどうのこうのというようなことについては、何ら苦情も聞いておりません。
  80. 鈴切康雄

    鈴切委員 私は、その某一佐が三菱に内示して、その価格を教えたというふうに聞いているわけでありますけれども、そのことについて調査をしなさい。そしてその某一佐は、T2も三菱、FST2改もおそらく三菱になるだろう、それに関連したものは、やはり三菱の製品を買ったほうがよいというふうに、そのように言っているということでありますが、これは私は全く間違った考え方だと思います。  なぜならば、先ほど申し上げましたように、この「適正な競争原理の導入」という観点から考えるならば、これは明らかに三菱自体を関連さして全部つくらせるということになれば、しょせんは大きな弊害が出てくると私は思います。そればかりでなしに、いわゆる巷間伝えられるところによりますと、三菱軍需廠というふうにまでいわれている状態であり、競争相手は防衛庁に入札をしても、いつの間にか入札が他に漏れてしまうということをよくいわれるわけでありますけれども、そういう点について、あなたはさっそく調査をしていただきたいと私は思いますが、委員長、その点についてお取り計らいを願いたい。
  81. 坪川信三

    坪川委員長 黒部局長
  82. 黒部穰

    ○黒部政府委員 某一佐が特別の情報を、三菱プレシジョンに内密に情報を流したというお疑いがあるようでございますので、さっそくにこれは調査をいたします。  後段の点につきましては、私やや考えが違うものでございますから、答弁を留保させていただきます。
  83. 鈴切康雄

    鈴切委員 留保するということになれば、それではその答弁はいついただけるのですか。(「留保するならやめるぞ」と呼ぶ者あり)
  84. 黒部穰

    ○黒部政府委員 それじゃ、やめます。——答弁いたしませんという意味です。答弁できませんという……。
  85. 坪川信三

    坪川委員長 黒部君に申しますが、見解としての所信を御答弁願います。
  86. 黒部穰

    ○黒部政府委員 たいへん失礼しました。先生の御指摘で、何か三菱にだけ特別に防衛庁が発注しているというような御指摘でございましたが、私どもは何べんも申し上げますように、技術的にまた価格的に最も妥当なものを選びたいというふうに考えておりますので、三菱兵器廠というようなおことばもございましたけれども、さような考えはございません、こういう意味でございます。
  87. 鈴切康雄

    鈴切委員 ではなぜ航法装置について、三菱に取りまとめの役をさせたのですか。
  88. 黒部穰

    ○黒部政府委員 火器管制装置というものは大事な装置でございまして、火器管制装置の一つの部門に慣性航法装置というものが要るわけでございます。これはシステムとして組み込まなければならないわけでございます。実はT2につきましては三菱に試作させまして、現在それが試作機として成功しているわけでございます。したがいまして、これを改良、発展させるということで、火器管制装置を三菱に発注するという考えでおります。
  89. 鈴切康雄

    鈴切委員 いわゆる慣性航法装置、これは独自の装置になるわけであります。しかも、独自な装置であるがゆえに、三社に対してあなたのほうとしては見積もりをとっているわけであります。そういうことについて、あなたの言われる火器管制装置の部分を三菱にやるから、だから三菱自体が航法装置の部分も全部取りまとめの役目をするというのは、それは行き過ぎじゃないですか。
  90. 黒部穰

    ○黒部政府委員 火器管制装置のほうを試作させておりますのは三菱電機でございます。それから慣性航法装置は三菱プレシジョン、東京芝浦電気、日本航空電子、そういう三社がいま申請をして、申請といいますか提案をしているわけでございます。
  91. 鈴切康雄

    鈴切委員 三菱プレシジョンというのは、五四%の資本が三菱から入っているのです。完全に三菱の子会社になっているわけであります。しかも、三菱の重役が社長になっているということであれば、当然その間において航法装置等の見積もりも、全部そういうところに流れるのはあたりまえじゃないですか。三菱に取りまとめをさせるなんということは、これは軽率な行為だと私は思います。
  92. 黒部穰

    ○黒部政府委員 取りまとめをさせるのは、つくる試作を取りまとめさせるということでございまして、本件についての決定は防衛庁がいたすわけでございます。その際に、取りまとめを、システムを設計する三菱電機はどう考えるかということの意見を聞くわけでございます。もちろん、何らかの情報は子会社の三菱プレシジョンに入るかもしれませんが、それはわがほうとしては、かりに入ったにしても、私どもの防衛庁のほうの判断には何ら差しつかえないというふうに考えております。
  93. 鈴切康雄

    鈴切委員 先ほど私が、某一佐というふうに申し上げたわけでありますけれども、某一佐からのいわゆるそういう情報が三菱に流れて、そして三菱が有利な価格で見積もりを出したというふうに聞いております。ちなみにあなた、ここで言えるならば、その価格についてはっきりしてください。四社の価格を、それじゃはっきり言ってください。
  94. 黒部穰

    ○黒部政府委員 これは入札価格ではございませんで、いわゆる将来の国産した場合の推定価格というものを取り寄せたわけでございます。まだ審査中でございますので、その詳細を一々申し上げかねるわけでございます。あるいは先生御指摘のような疑いがあるということでございますので、先ほど申し上げましたように、調べさせていただきます。
  95. 鈴切康雄

    鈴切委員 それでは私もう一度あらためてお尋ねをいたしますけれども、このFST2改の言うならば慣性航法装置、これは現在三菱に、GPIに内定をしているというふうに巷間いわれているわけでありますが、それは全くそういう考え方はない、このようにとってよろしゅうございますか。
  96. 黒部穰

    ○黒部政府委員 ただいま私どもがこの慣性航法装置について、いかなる技術がいいか、あるいはどの程度の国産が一番望ましいかというようなことも含めて、三社について平等に検討いたしておるところでございます。
  97. 鈴切康雄

    鈴切委員 巷間伝えられるところによりますと、この決定については解散の、いわゆるどさくさにまぎれて決定をするというふうに防衛庁のほうではいわれているわけでありますけれども、全くそんなことはないですね。
  98. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 決定段階は、私のところで決定をいたすわけでございまして、まだ途中の経過も詳しいことは聞いていない状況でございます。内定、あるいはこの解散の際にきめるというようなことは毛頭ございません。
  99. 鈴切康雄

    鈴切委員 総理大臣にお伺いいたします。  いま私、産軍癒着の問題について、国産化ということについては産軍癒着という、そういう傾向になる弊害があるというふうに私は申し上げました。ところが総理大臣は、全く産軍癒着なんということはないんだ、こういうふうなお話でございましたけれども、先ほど私が申し上げたように、某一佐が三菱に情報を提供をしているということ、しかも見本が防衛庁に送られたという、そういう内容等も巷間伝えられているわけであります。そういう問題を起こして、見本が防衛庁のほうに送られている、そういうことを私は聞いているわけでありますが、その産軍癒着という問題について、私は全くこれが、きのうも楢崎さんが言われたような、部品の価格等においても業者とつながりがあってあのような状態になったということを考えるときに、産軍癒着のいい前例ではないか、私はそのように思うのです。今日まで産軍癒着があるというふうにいわれておったわけでありますが、なかなか具体的な事実というものはつかめないでおったわけでありまして、その危険性は常にいわれておったわけであります。しかし、現在このような状態で、某一佐というのは——私は名前を秘しておきますが、某一佐というのはそういう状態で三菱に情報を提供して、そうして三菱に有利な方向に持っていくという状態、しかも三菱がT2並びにFST2改もやるから、しょせんはそのすべてを三菱のほうにやろうというようなそういう考え方、全く何のシビリアンコントロールがあるかというふうに私は思うのであります。結局は、業者の言いなりになっているのが現実の状態ではないでしょうか。業者の思うような状態になっているのがいまの防衛庁の内情であります。これが産軍癒着でなくて何でありましょうか。それについて総理大臣はどのように思いますか。
  100. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 産軍癒着は、あってはなりません。また現在、ないと思います。確信をいたしております。  しかし、御指摘のようなことが一部においても起こるということは、御指摘があるわけでございますから、こういう実態は究明しなければならないと思います。少なくとも防衛生産というものに対して、国産化をやることによってそれなりのメリットはあるわけであります。先ほど申し上げましたように、ほかのものに波及する効果というものが考えられるわけでございますが、あくまでも国民理解が得られるように、いささかでも産軍癒着や産軍複合というようなそしりを受けないように、以後も心してまいりたいと存じます。
  101. 鈴切康雄

    鈴切委員 次に私は、不発爆弾の処理についてちょっとお伺いいたしますけれども、不発爆弾が都市並びに戦災を受けたところに存在して、その不発爆弾の処理がまだ行き届いていないという状態にあろうかと思います。しかも、沖繩が返還をされましたが、今後沖繩におけるところの不発爆弾の処理というものも、大きな問題になってこようかと思うのでありますが、まず、不発爆弾についての見解が非常にまちまちであります。  そこで、法制局長官にお聞きしたいわけでありますけれども、不発爆弾の所有権者はだれでしょうか。
  102. 吉國一郎

    吉國政府委員 お答え申し上げます。  不発爆弾は、いわば放置せられたものでございまして、所有権はどこにもないということでございます。
  103. 鈴切康雄

    鈴切委員 放棄されたものであるから所有権はどこにもないということであれば、それでは不発爆弾があったら、国民の人たちがそれを保有してもよろしゅうございますか。
  104. 吉國一郎

    吉國政府委員 もしも埋蔵せられておるものでございまするならば、埋蔵物として取り扱われるべきでございましょうし、遺失物になることはたぶんあるまいと思います。
  105. 鈴切康雄

    鈴切委員 不発爆弾が、言うならばどこの所有のものでもない、こういう見解があるはずはないじゃないですか。少なくともヘーグ陸戦協定においては、その処理についての明記がうたわれております。そのヘーグ陸戦協定を受けて、言うならば魚雷とかあるいは機雷とか、そういうものについての処理がなされているわけじゃないですか。それじゃ、昭和三十四年前はどうして通産省でこれを取り扱ったのですか。所有権者がないなんてことがありますか。
  106. 吉國一郎

    吉國政府委員 この問題については、御承知のように、担当省庁がどこであるかということについて、昭和二十年代から非常に問題がございました。まあいわば消極的な権限争議がございまして、最終的にはどこの所管にも属しない事項であれば、総理府ではないかという問題がございましたけれども、通商産業省が所管であるということは、通商産業省で火薬類取締法あるいは高圧ガス取締法というもの——問題が起こりました当時は、現在の火薬類取締法なりあるいは高圧ガス取締法がまだできておりません。古い火薬類取締法なりあるいは圧縮瓦斯及液化瓦斯取締法という名前であったと思いますが、そういう時代でございましたが、そういうものに関連があるということで、当時の通商産業省が所管をすべきであるということで、たしか処理が進められたと思います。  そのほか、防衛庁が当然そういうものについての科学的、技術的知識を有するということで防衛庁も関係をさせられ、また、公共の安全の保持と申しますか、生命、身体あるいは財産に対する危険、危害の防止という見地から警察庁も所管があるというようなことで、そのような三省庁が事案を担当いたしましたというようなことに記憶いたしております。
  107. 鈴切康雄

    鈴切委員 総理大臣、もう時間があまりありませんのでお聞きしますけれども、まず所有権者は、これはもう国にきまっているんです。不発爆弾の所有権者がわからなくて、そんなものを国民方々がかってに持って歩けるような状態じゃ困るじゃないですか。当然不発爆弾のそういうあれは、国が所有権者にきまっている。そのために通商産業省は、昭和三十四年以前にはその処理について国から金も出しているし、爆発物の処理のために、物品に対する需要の歳入歳出については全部国が受け持って、不発爆弾等の中において使えるものは、これは全部国が歳入として受け入れているじゃないですか。となると、これはもう国が責任を持ってやらなくちゃならぬ問題です。だから私は、あまり時間はありませんけれども、これについて、地方自治体のほうにその責任を負わして金を支払わしているというような状態ではいけません。だから、この不発爆弾については何か法律的な処置を講じて、国が責任を持ってやるというような方向に改めるべきであると思うのですが、その点について……。
  108. 本名武

    ○本名国務大臣 国の所有であるとか、その所在とかについては、私は申し上げるわけにはまいりませんけれども、御指摘のように、最近の傾向からいたしますと、一年間に約二千件、そして百トン前後の不発弾が処理されております。  その処理の過程は、従来はわりあい簡易にできましたので、昭和三十三年に関係四省が共同の通達をいたしまして、不発弾そのものの処理につきましては自衛隊、それからそれに付帯する諸経費については、金がさがあまり多くなかった関係もありまして市町村が負担をして、関係各省連絡のもとに処置をしてきたわけでありますが、最近はその所在の個所も多く、あるいは処置、方法等に非常に大きな経費がかかりまして、地方財政の負担は不可能であるというような意見もいろいろとありますので、私どものほうでは、関係省庁と、その所管及び財政措置等について、いま盛んに検討をいたしているところでございます。
  109. 鈴切康雄

    鈴切委員 総理大臣、いま私が申し上げましたように、不発爆弾の処理についてはやはり法律的な処置が必要である、そのように思うのですが、総理大臣ひとつ……。
  110. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私も、この所有権がだれなのかという問題に対しては、いまちょっとはっきりいたしません。東京湾に沈没しておるアメリカの軍艦があれば、これは一体だれのものかということをいまちょっと考えてみたのですが、これは法制局長官の言ったことが法律的には正しいのかもしれません。  ただ、戦争の結果の現状でございますし、最近は二千件、百トンも掘り起こさなきゃならぬということであります。いま総務長官述べましたとおり、だれが責任を負うというような問題ではなく、これはもう当然処理しなきゃならない問題でございますし、地方だけがこれを負担してやっていくことはできないという実態であれば、政府もしかるべく考えて、可能な限り合理的な処理をやってまいりたい、こう思います。
  111. 鈴切康雄

    鈴切委員 それでは最後に、補正予算に関して諸点をちょっとお聞きしたいわけでありますけれども政府は景気を刺激して国際収支の黒字幅を縮小するという考え方できておられるわけでありますけれども、七月から九月の景気は、政府の見通しの年間七・七%を大幅に上回り、最近の経企庁の試算では、実質成長率一〇%台に乗る可能性があるというようにいわれております。  ところが、輸出の伸びが相変わらず衰えず、輸入は期待どおりになっていないのが現状ではないかと思うのです。むしろ大蔵省、日銀、経企庁は、上昇過程に入った景気を、大型補正によってさらに刺激するのは財政インフレの心配さえあるとまで、そのようにいっております。で、佐々木日銀総裁は補正予算の編成方針に対して、物価上昇で生活基盤をゆるがせて何が福祉向上だと、手きびしい政府批判をしていると報ぜられているわけでありますけれども、この超大型補正が、黒字縮小になるという論理的な説明をしていただきたいのであります。
  112. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 今回の補正予算に伴いまして、これに伴う需要の関係、それが一般の景気等に及ぼす影響等についての御質問でございます。  私は、今回のこの補正予算内容を、かねてこの委員会にも御説明いたしてございますが、今回のこの補正予算内容から考えますると、いわゆる国内におきましての、現在の国の内外を通じての外貨事情、貿易事情等々から考えますると、本来の目的でありますところの、できるだけ輸出を減らして、あるいは輸入につきましてはできるだけふやしてまいって、そして貿易の収支がなるべく調整がとれるようにという大きな目標を定めて、今回の各省間の対外施策が決定せられたのであります。  この決定せられました結果によりますというと、だんだん内容について詳しく入ってみればみるほど、最近における貿易事情も、大勢といたしましては、なるほど数字的に黒字がなお大幅に続いておりますが、しかし、それが昨年末以来の政府の手当て、あるいはことしの五月におきましてのいわゆる七項目内容の実行、それに今回の十月二十日のあの決定に伴う実行、これらによってだんだんと、ようやく問題が数字の上に、パーセンテージに——後ほど必要ならば御説明申し上げますが、いわゆる輸入、輸出の調整がだんだんと行なわれて、それが数字の上に、パーセンテージにあらわれてまいっております。  もともと、円の切り上げ等に伴うこうした通貨改定の場合における状況は、半年、一年ではなかなか実際問題としてあらわれない。たくさんの例はございませんけれども、各国の例に顧みましても、これがやはり数年を要するのではないかというのが国際間の常識になっているようであります。私は、この点についても最初は十分な知識がありませんでしたが、いろいろ説明を聞いてみまして、また実際の実績を知ってみますと、なるほどその傾向がわが国においても今度ようやくあらわれかかってきておる。そこへ持ってきて、この際さらに十月の国際間における施策でございますから、これが必ずそこにプラスするに違いない、プラスするとすればどれくらいのプラスをするであろうか、こういう問題についても研究を進めてまいっておるのであります。  この総体の中身を、結論を申し上げますと、ようやくこれがわが国の国際収支、貿易に影響をしてきて、それがだんだんと効果をあげつつあるということがはっきりとわかってまいったのであります。しかも、今回の予算は、部分的にはなるほど国内の需要を喚起するものもございます。しかしながら、これらの点は、いわゆるここ数年来のわが国の景気の沈滞の状況から考えまして、なおこれらについては、需要に応ずるだけの資材がまだ余裕があるという数字もわかってまいったのでございます。これらによりますと、このために物価騰貴になるということも、大きな影響——全然ないとは言えませんでしょうが、大きな影響が起こってくるとは思えないというようなことが私たちの結論になりましたので、いまの御質問に対するお答えに、やや抽象的ではございますが、相なろうかと思うのであります。
  113. 鈴切康雄

    鈴切委員 では最後に、これは答弁は要りません。  大蔵省のほうから予算書が提出されましたけれども、この予算書を見ますと、もうわからないところが一ぱいあるわけであります。たとえば自然公園等の施設整備費がどうして国際収支の均衡回復に資するのか、そういうことになりますと、結局はこの効率はそれでは幾らだということについて、私も言いたくなるわけであります。全部そういうふうに、予算書の中で赤くチェックしているところは、国際収支の均衡を回復するためということの理由になっておる。こんな予算書は、私はいまだ見たことがない。  そういうことから考えますと、初め大蔵省が、補正は必要最小限にとどめたいというふうにいわれたわけでありますが、結局、最終的には自民党主導型の、解散総選挙型のいわゆる補正予算になってしまったと言う以外にないと私は思うのであります。これについては、私は別段に答弁を必要といたしませんから、以上をもって終わります。
  114. 坪川信三

    坪川委員長 以上で鈴切君の質疑は終了いたしました。  この際、昨日の楢崎君の質疑に関し、政府より発言を求められております。これを許します。増原防衛庁長官
  115. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 東京螺子に関する御指摘の件、重大なことと思いまするので、今後なお十分調査を進めてまいることといたしまするが、ただいままでのところ、調査の結果は次のとおりでございます。  一、防衛庁は、航空機用螺子の調達にあたりましては、登録された六社の指名競争入札によることを原則としておりまして、東京螺子製作所についても、大部分は指名競争の結果落札をしておるものであります。  二、指名競争に先立ち、防衛庁では予定価格を算定しますが、これは螺子関係六社の原価調査を行ない、最低の価格をもって予定価格としておりますので、東京螺子が不当に利益を得ることはないと考えております。  三、楢崎委員御提示の過去の決算期の原価表は、東京螺子製作所経理部原価計算課において、社内資料の一部として作成されたものでありまして、同社の航空機用螺子、車両用螺子その他工具類等の部門別決算の最終的のものではございません。これら部門別原価の最終的数字は、同資料の数字を基礎に各部門間の原価振りかえを行ない、さらに販売費及び一般管理費に含まれる借り入れ金の支払い利息及び割引料について割りかけを加える等によって、初めて最終的な部門別の純利益が算出されるものであります。このようにして算出された同社の部門別の最終原価を見ますると、航空機用螺子の利益率は約六%前後となり、楢崎委員の御指摘のような高率とはなっておらないのでございます。  四、最近の東京螺子製作所に対する原価調査は、四十六年七月に行なっておりまするが、その際、伝票類、原価元帳等詳細に調査をいたしており、御指摘の伝票類の改ざんなどは、技術的に不可能ではないかと思われます。  五、四十六年七月に行なった調査は、同社千代田区丸の内一の二の一東京海上ビル新館内の会議室で実施をしており、供応を受けた事実はなかったと聞いております。  以上でございます。
  116. 坪川信三

    坪川委員長 本件に関する楢崎君の保留分質疑を許しますが、楢崎君の持ち時間は経過しておりますので、簡潔に願います。楢崎弥之助君。
  117. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まず、私が提出しました損益表は、会社側の資料であるという点は確認されました。どういう方法で調査なさいましたか、昨日から今日までにかけて。
  118. 黒部穰

    ○黒部政府委員 私どもの調本の担当者から会社のほうに連絡して、この資料が会社で出た資料であるかどうかを確かめたわけでございます。
  119. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が昨日来問題にしておるのは、いまのような防衛庁のやり方そのものを問題にしているのですよ。全部会社の言いなりでしょう。いいですか、いまの報告について私は反論をしたいと思います。  まず、ネジ類は指名競争入札という点ですが、いいですか、私はこれは立証できます。実際は、東京螺子がつくったプライスリストを、全部ほかの五社も用いているのです。いいですか、それぞれがプライスリストを出しているのじゃないのです。東京螺子のプライスリストが基準になっているのです、言いたくはないですけれども。だから、東京螺子が一生懸命つくったプライスリストを、銭払って買っているのです、ほかの五社が。それから、たとえばタツミ製作所、ここの加工費一時間当たり六百円のときに、東京螺子では一時間当たり三千円であった。だからタツミは東京螺子に合わしている。そうすると、タツミは五、六、三十で五倍もうかるのですよ。いいですか、実情はそうなんです。  それから、競争入札するから指名メーカー六社の中で一番安いものを購入しておる、だから高いものは買わされていないとおっしゃいましたが、だからといって、じゃ六%クローズという制限額が無視されていいことにはならぬのですよね。  それから、この私が出した損益表の中で、いまおっしゃいました支払い利子、営業外損益、これはこの項目の管理費の中に全部入っています。それから輸送費、梱包費等はこの表の売り上げ原価の中に全部入っています。だからおっしゃったようなことはないのです。だから、この私が出した損益表の営業損益という項に出ておる数字は完全なる純利なんだ。いいですか、完全なる純利。そしてこれは部分的な原価表じゃないのですよ、会社はそんなことを言っているかもしれないが。これは修正決定をした最終的な利益率です。  それから、これは念のために。新聞に載っているあの装備局長の談話の中で、大蔵省の調査結果を見た上でとか、あるいは大蔵省の調査結果は、きのう大蔵大臣があんな報告したから、だから間違いないのだ。あの大蔵省へ出された調査申請と、私が問題にしておる改ざん問題と関係ないのですよ。関係ないですよ。いいですか、大蔵省が調査して問題なかったから、だから改ざんの事実はないというふうには結びつかないのです。これははっきり申し上げておきますから。  それから機械振興会館で——特異なところですからね、機械振興会館で監査をしたのはいつですか。わかっていますか。電話のない部屋でやっている。いっかわかっていますか。お答えがないようだったら、あとでまとめて答えてください。
  120. 黒部穰

    ○黒部政府委員 一番最後の点の機械振興会館で監査は、私のほう、防衛庁ではいたしておりません。防衛庁でいたしたのは、四十六年七月、本社の会議室で行ないました。  それから大蔵省の調査のほうは、いつからいつまでの期間について監査されているのか存じませんので、もしそれがちょうどこの期間に合致するのであるならば、それを参考にいたして検討いたしたいと思っております。  それから、支払い利子が入るか入らぬかという問題でございますが、これは、昨日私はこれを見たときは、実は支払い利子が含まれた形でのグロスの利益が二五%とか一五%になるのではなかろうかと思ったわけですが、その後担当者からいろいろ数字を洗ってもらいましたところ、やはりそれはもれなく計上されておりまして、問題は、やはり部門間の振りかえがまだなされる以前の資料である。先生御提示のものは、部門間の振りかえがなされる前のものである。もちろん社内的な資料ではありますが、正式の部門別の利益率を出すためには、その後の計算を行なわなければならない。したがいまして、行ないますと、ちょうど六%程度の利益率になる、こういう計算になっておるわけでございます。
  121. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 全部違うんですよ。あなたは会社から言われたとおりのことをここでオウム返ししておる。そういう態度を問題にしておる、私は最初から。  それから、あの振興会館でやったのは去年じゃないのです。四十四年六月ごろのはずです。それは調べたらすぐわかる。私が供応の事実があると言ったのは、昨年七月一日の監査のときにその事実があると言ったのじゃないのです。いいですか、間違いのないように。振興会館でやった日に行っている。行った料理屋はわかっています。西浜の舞網荘というところです。いまないです、四十四年だから。全部わかっています。行かれた人もわかっています。私はあえてここで言いませんけれども……。  それから、去年の七月一日に監査されたと言いましたが、ちょうどやっと間に合ったのですね。五月、六月かけて改ざんしてやっと七月一日に間に合って、あなた方は七月一日に改ざんされたプライスリストを見せられて、そうですか、になっているのですよ。  それから、大蔵省が元帳や有価証券報告書、これを監査して、これは改ざんされていないとおっしゃったが、これは改ざんされたと言ってないのです。元帳は改ざんできません、あれほど膨大なものを。それに基づいて改ざんプライスリストをつくっているんだから。私が言っているのは、その元帳とプライスリストを突き合わせればすぐわかると言っているのですよ。間違いのないように。  それから、会社側からの新聞発表を見ましたが、新聞ですからよくわかりませんけれども、思うということばが多いですね。それからこれも注意しておってもらいたいのですが、住友商事は不当な利益を得ていない。不当な利益を得ているからその利益を返済さしたんでしょう、防衛庁は。いまだにその不当な利益を得てないなんということを言うのは、防衛庁がなめられているんですよ。しっかりしなきゃだめですよ。そうでしょう、不当な利益だから返させたんじゃないですか。そういうことをやはり言わしちゃいけませんよ、防衛産業に。  そこで、念のためにちょっと見てもらいたい。この写真は改ざん現場の写真です。六月十六日のものです。それから、私がきのう申し上げたのは、改ざんは昨年の五月八日から始まった。改ざんは航機事業部がやったのですよ。だからその資料を原価課に要求しておる、こういう資料を出してくれと。そしてこういうようにちゃんと——ここはやはり改ざんとは書いてないですね。改定と書いてある。そしてどういう書類を出してくれ。これに対して、原価課としてはこういう資料しかありませんと、ちゃんとここに出ています。これもちょっと防衛庁長官でもいいから見せておってください。  そして、最後に申し上げておきますが、これは原価の中心的な人物であった元原価課長が、全部私が言った事実を認めているのです。念のために言っておきます。一番中心になって仕事をしていた人がそれを認めているのですから。私はいつでも証人に立ててもよろしゅうございます、必要があれば。だから、私は徹底的に調べてもらいたいと言ったのです。それできのう、これらの詐欺的な行為が含まれているんだから、これは犯罪行為だということで、国家公安委員長と法務大臣に、告発は口頭でもいいのですが、やったわけです。国家公安委員長と法務大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  122. 郡祐一

    ○郡国務大臣 告訴、告発のありました事件については、厳正な捜査をいたします。
  123. 坪川信三

    坪川委員長 楢崎君に申し上げますが、時間ももうすでに十五分を経過いたしておりますので、簡潔に結論をお急ぎ願います。
  124. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 最後にします。指摘だけしておきます。  政府防衛産業は保護産業と考えているのじゃないか、そう思わざるを得ないのは、支払い利子を原価に入れている点です。防衛庁は昭和四十五年に、装備品等調達に伴う原価と価格に関する基本問題について、調査研究を財団法人の産業経理協会に出していますね。そしてその結果が出ていますね。その中で指摘されていることを知っていますか、支払い利子の点。いいですか、「財務費用は財務活動によって発生したものであるから、原則として原価を構成しないとされている。したがって、支払い利子は非原価項目とされる。また支払い利子を原価項目とすると、借り入れ資本の多い企業は多くの支払い利子を原価に算入することができる。支払い利子を含む総原価に一定の利益率が乗ぜられるので、他の費用に変化がないとすれば、支払い利子の多い企業ほど利益額はふえることになる。」そのとおりです。つまり、「支払い利子を全額保証したり、それに見合って利益額がふえる方式ば望ましいとは言いがたい。」防衛庁だけですよ、こんなことをやっているのは。支払い利子を原価の中へ入れるなんといってやっているのは。これも保護のあれですね。  それから、総理大臣がさっき鈴切委員質問に対して、波及効果のことを言われましたね。(「あなたの問題じゃないじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、これは産軍癒着の問題だから言っているのです。昨年OECDから、科学政策の新概念に関する報告書というのが出されていますね。この中でわが国のその点について触れておる。波及効果はないと言っているのですよ。だからああいう答弁はなさらぬほうがいいと思います、国際的にはそうなっているのですから。  したがって私は、これらの問題が明らかにならない限り、犯罪行為が含まれておるんだから、やはり四次防の予算というものはもう一ぺんまじめに洗い直すべきである。したがって、契約はこの事態が明白になるまでやるべきではない、私はこういう要求をしておきます。
  125. 郡祐一

    ○郡国務大臣 先ほどの私の答弁で、厳正な捜査をいたすと申しましたが、御承知のとおり、告訴、告発は検察官または警察官吏に対するお申し出を必要といたしますから、念のため申しておきます。法務大臣はこれを受ける立場にございません。
  126. 坪川信三

    坪川委員長 以上で楢崎君の保留分質疑は終了いたしました。  次に、阪上安太郎君。
  127. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私は、現在における土地問題、まあ地価の上昇は諸悪のもとだといわれておりますが、たとえば住宅問題、これは直ちに土地問題であると言っても過言ではありません。また生産用地費の上昇、これはやはり物価高の原因になります。それから公共用地の入手難、これは公共施設の拡充が困難となります。それから土地利用の混乱と生活環境の悪化、これはやはり都市問題であり、同時にこれは土地問題であります。   〔発言する者あり〕
  128. 坪川信三

    坪川委員長 静粛に願います。
  129. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それから、信用膨張とインフレ、これはやはり有効需要面からのインフレ圧力となります。こういうようにいたしまして、現代における土地問題、これはきわめて重大な問題だと思います。私は、これらの土地問題について、きょうは特に、最近の地価急騰の原因、あるいはその実態、それから土地利用計画、地価の抑制策、こういったことについてお伺いいたしたいと思います。  なお、いまたいへん評判になっております日本列島改造論、これは自民あるいは政府によってオーソライズされた政策ではないので、まあ参考文献として扱いますので、その点ひとつよろしくお願いいたします。  そこで、まず第一番に法人の土地買い占めの実態と規制、こういうことで御質問申し上げます。  これらの点について政府側から、まず法人の土地買い占めの実態、これをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  130. 木村武雄

    ○木村国務大臣 建設省で調べたところを御報告申し上げます。  法人などによる土地買い占めの全体の状況については、まだ明らかになっておりませんが、本年の五月、東京証券取引所一部、二部上場会社の土地保有取得実態調査を行ないました。調査の結果は、取得面積が、昭和四十一年四月から昭和四十七年三月、四万三千七百二十六ヘクタール。年度別取得の割合、昭和四十六年度は昭和四十一年度の二・四倍。引き続き各都道府県を通じて、その実態の把握にいまつとめておる最中であります。  それから、投機的な土地投資を抑制するため、全国土にわたる土地利用計画を確立し、これに基づく土地利用の規制を行なってみたい。そしてその際には届け出制などの措置を講じたい、こういうように考えております。
  131. 阪上安太郎

    ○阪上委員 いまお示しになりましたその資料は、これは政府の資料ではないというふうに思いますが、いかがですか。
  132. 木村武雄

    ○木村国務大臣 これは建設省で調べました調査結果であります。
  133. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ようやく建設省でそういう資料が出たようであります。いままではたいてい民間資料によっておられたように思います。たとえば、不動産研究所であるとか、あるいは先ほど出ました和光証券の資料であるとか、そういったものにのみたよられておるのでありますが、いまのそういう調査は、どういう手続を経て、どういうような経路でお調べになったか、ちょっとお知らせ願いたいと思います。
  134. 木村武雄

    ○木村国務大臣 事務当局から報告いたさせます。
  135. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 ただいま建設大臣から御説明申し上げましたのは、東京証券取引所の一部、二部上場の全企業、約千三百社を対象にいたしまして、昭和四十七年三月三十一日現在の土地保有の状況と、それから昭和四十一年四月一日から四十七年三月三十一日までの六年間の土地の取得、譲渡及び開発の状況を、本年五月にアンケート調査によって調査したものでございます。これは、統計報告調整法という法律がございまして、この法律に基づいて、行政管理庁長官の承認を得てアンケート調査を行なったものでございまして、ついでに申し上げますと、この回答率は五七%でございました。   〔委員長退席、倉成委員長代理着席〕
  136. 阪上安太郎

    ○阪上委員 悉皆調査をやっていないというような点に、やはり問題点があると思います。  私ここで、こういった土地に関するいろんな資料というものが、ほとんど政府の側で持っていない、今度初めてそういったものを、おそらく和光証券の例にならってやったのだろうと思うのでありまして、一体、日本の土地資源というものについて、あるいはその流動等について、政府はどこでそういうものを資料として持っておられるのか、この点、適当に政府側からちょっとお答え願いたい。
  137. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 政府部内に土地関係の資料はいろいろあろうと存じます。法務省の関係の土地台帳の関係の資料もございますし、また経済企画庁関係で、やはり私どもと同じころに、企業関係でそういう土地の関係の調査をいたした資料もございます。その他いろいろあろうと思いますが、私どものほうの建設省も、土地対策を推進する立場からそういういろんな調査をいたしておる次第でございます。その他通産省なり、農地関係では農林省というようなことで、関係各省にまたがっていろんな資料があろうかと存じます。
  138. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これは政府では総合的な資料はつくれないのですか。土地関係だけでも各省でばらばらになっておって、そこでばらばらにそういう統計資料をおつくりになっておるのでありますけれども、いま土地問題が非常に重大な段階に来ているときに、しっかりした公的な資料というものが総括して何も出てこない。総理府なんか一体何をやっているんだか、ちっとも見当がつかない。  こういった点について、やるべき方法があるんじゃないかと私は思うのです。たとえば、これは法改正もあるいは必要であるかもしれませんけれども、例の統計法に基づいて国勢調査が行なわれている。そしてこの国勢調査というものは、大体人口動態を中心としてやられているのであります。しかし、この法改正をやることによって、あるいはまた行政管理庁長官の考え方によって、その第四条第三項にあるような、土地その他についての調査を間々することができるんじゃないかと私は思うのでありまして、あれだけの膨大な組織を動かしてやる国勢調査の中に、そういったものをはめ込んでやるという考え方がどうして出てこないんだろうと非常にふしぎに思っているわけであります。この点、総理いかがでしょうか。
  139. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 御指摘のとおり、土地問題に対しては、一目りょう然ということができなくても、何らかの土地の動きがわかるようなものを考えなければならないということには同感であります。あることはあるのです。これは登記所にありますし、自治省や府県、市町村には税の対象としての台帳がございますし、納税者は全部動いているわけですから、これはすぐわかるわけです。コンピューターにでも入れれば相当な統計数字は出ると思います。  しかしそうではなく、もっと土地全体の動きをどうするのかということを考えると、国土地理院が非常にこまかい地図をつくっております。地図をつくっているのですから、あの地図の実態というものがカードになれば一つの調査になるわけです。一定規模以上といいますか、これは時間を限って移動というものに対しては報告しなければならないということにしておけば、これはコンピューターにかければ自動的に書き込まれていくということは可能なわけですから、今日にならない前にその程度のことは必要だったかもしれません。これは国土省という理論が出るときには必ずこの問題が出るのですが、どうも各省にみんな分かれてばらばらになっているというのが実態じゃないかと思います。
  140. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私は、土地問題を国会で論ずる場合に、常にこのことを主張してきたわけなんであります。   〔倉成委員長代理退席、委員長着席〕 いつまでたってもこれができないということでありまして、やはりこの点は非常に重大な計画上の要素になると思いますので、ぜひ早くそういう体制を整えていただきたい、このように注文いたしておきます。  それから、先ほど御報告をいただいたように、今日企業が買い占めております土地というのは非常に大きな額になっておるわけであります。わが国の総面積は三十七万平方キロでありますが、そのうち可住地面積、これはいろんな見方もありましょうけれども、大体において十一万平方キロということが言えると思います。そのうちから、農地六万平方キロ、あるいは道路とかその他の公共用地は大体二万平方キロぐらいだろうと思いますが、これを差し引くと、純可住地面積というものは大体三万平方キロぐらい。そういたしますと、先ほどの千二百九十三社でありますか、これが占めている面積というものは、その純可住地面積の一二%近くになる、こういうことなんであります。  そこで伺いたいのでありますけれども、こういった膨大な面積、これが一体帳簿価格でどのくらいの価格になっておるか、これをひとつお答え願いたいと思います。
  141. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 これは法人企業統計によります大蔵省の報告統計でございますが、これは四十五年末でございますか、七兆五千億というふうに記憶いたしております。
  142. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それは、いまおっしゃったのは、簿価としては、帳簿価格としてはそこまでいかないでしょう。私が聞いているのは帳簿価格なんです。
  143. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 資本金二百万以上の全産業についての簿価については、法人企業統計では七兆五千億であるというふうに記憶しております。
  144. 阪上安太郎

    ○阪上委員 時価に換算するとそれぐらいになるのじゃないですか。私は、これは和光証券の推定でありますけれども、帳簿価格としてはわずかに二兆六千五百六十二億円、こういうふうに推定できるということになっておりますが、それはどうですか。
  145. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 私の、法人企業統計の関係の、持っておるこの資料によりますと、さっき申し上げましたように、昭和四十五年年度末の残高が、価格で七兆五千七百七十一億ということになっております。
  146. 阪上安太郎

    ○阪上委員 あなたのその資料によりますと、それでは時価の評価額はどのくらいになりますか。
  147. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 これは、この統計の性質上時価はございません。
  148. 阪上安太郎

    ○阪上委員 和光証券の推定によりますところの先ほど言った面積、これを持っているのでありますけれども、時価評価額として大体六十兆円くらいのものが推定できる。それはそうでありましょう。それから先ほど言いました二兆五千億程度のもの、これは帳簿価格、これを差し引きますと五十七兆円以上の差額というものが出てくるわけであります。その含み資産というものは非常に大きなものであります。この評価額が企業の借り入れ金の担保として機能しておりまして、金融膨張の重要な役割りを果たしておる。したがって、企業の土地の買い占めという問題は、きわめてわが国の土地資源利用からいっても大きな位置を占めておるわけなんであります。  そこで伺ってみたいのですが、企業の、先ほど言った土地保有の地域、これは一体どういうところに集まっておるか。もちろん、これは日本列島全域にわたっていると思いますけれども、特にどういうところへ集中しておるか。ことに最近の傾向としてどういう傾向を持っておるか、こういうようなことにつきまして、これは経済企画庁長官ですか、あるいは建設大臣からひとつお答え願います。
  149. 木村武雄

    ○木村国務大臣 はっきりしたことはわかりませんけれども、やっぱり大都会が中心じゃないかと思います。それから将来企業の発展の見込まれるところじゃないか、こういうように思います。
  150. 阪上安太郎

    ○阪上委員 大体そういった方向であります、か、しかし、ここで顕著な問題として考えなくちゃいけないのは、なるほど最近までは大都市とその周辺というところへ集中されておったようでありますけれども、まあ田中総理のお書きになった「日本列島改造論」、こういったものも多少影響しているのでありましょうか、あるいは全総計画、ことに練り直しの計画等が影響しているのでありましょうけれども、最近では、あなたのおっしゃった後段のほうに非常に広がっておる。こういうことになりまして、日本列島総買い占めというような形が実は出てきておるのであります。こうなりますると、これから買い占めがどこまで伸びていくかわからない。大都市とその周辺だけに限られておった段階ではもう限度が出てきますから、そう簡単にはいかないと思いますけれども、全国的にこれが広がっているということになりますると、これはどこまで買い占めが行なわれていくかわからない、こういうことになるわけであります。  したがって、一体こういう買い占めというものが望ましいものであるかどうかという点について、総理はこの間お答えになったのですが、あなたは一体どうお考えになりますか。
  151. 木村武雄

    ○木村国務大臣 自由主義経済のもとでは、やっぱりもうかるところにそれが集中されまするから、やむを得ないことであったとは思いまするけれども、こういうような状態になりますると、それはそのままでは済まされないと考えております。そうでありまするから非常に不愉快なことである。のみならず、日本列島の改造を行なおうといたしますると、全く不愉快以上になってくるのでありまするから、何らかの処置は当然講じなければならないものである。  あなたのおっしゃいまするとおりに、日本列島の改造は都市中心にあらずして地方中心になりまするから、その地方の土地がそのような投機的な値上がりを見ておるということに対しましては、それ相当の処置は講じなければならないものである、こういう考えを持っております。
  152. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで何とかしなければならぬ、こういうことになってきているわけでありますが、どうなさいますか。端的に言いますと、何らかの規制を加えなければいかぬということになるだろうと思いますが、その規制はどういう形で規制をされるか、これを伺っておきたいと思います。
  153. 木村武雄

    ○木村国務大臣 私が建設大臣になりましてから、この問題と真剣に取り組んでみたのです。それで、この委員会でも問題になりましたむつ小川原まで行こうと思いましたけれども、これはまあ行きませんで、青森でむつ小川原の土地買い占めの状態を聞いてきたのであります。それから建設省の中におきましても、いろいろな角度で調査してみましたけれども、結局、建設省として考えられることはこういうことなんでありまするが、やっぱり税でいく以外にはないのじゃないだろうか、原因はいろいろありまするけれども、税でいく以外には建設省としてはないのじゃないだろうか、こういうように考えまして、法人の土地取得に対しては分離課税でいってみよう、そして課税は思い切ってやってみよう、言いかえますると、土地ではもうからないのだというようなところまで課税は持っていってみたい、こういう考えを持っております。  そういう点で考えておりまするけれども、とてもそれだけではいくものじゃない。やっぱりあらゆる角度からこの問題を抑止しないと、とても所期の目的を達成することはできない。そういう点で、一体一撃で目的を達するようなものが何らかないものだろうかということで、実は苦慮しておる状態なんであります。
  154. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そういたしますと、建設省の考えとしては、何はさておいても土地税制、何らかの土地税制を導入して、税金の面でもってこういった規制をやっていきたい。しかしそれだけではいけない、何らかの方法でさらに完ぺきを期したい。何らかの方法って何ですか、それは。
  155. 木村武雄

    ○木村国務大臣 土地投機の原因は、総理もいろいろな点から言われましたとおりに、たくさん原因があるんですよ。それですから、建設省としては現在のところ税による対策を考えておりまするけれども、それだけでは所期の目的は完全に達成されない。何らかのものがないだろうかということで実は苦慮しておるものですから、何らかのことと、こういうことばになったわけであります。その何らかのことをどこかで発見してみよう、こういうように非常に勉強しておる最中なんですよ。  そこで、この国会を通じまして、各党で勉強されました御意見を一々拝聴いたしまして、さすがにやはり政党という団体をつくっておいでになりまするとりっぱな案をおつくりになるものであると、実は敬服いたしておるのであります。そうでありまするから、何らかのものはこの国会を通じて得たものから総合判断してみたい。やはり各議員の御意見を承っておりますると非常にみごとでありまするから、それを集大成して何らかのものをそこから発見してみよう、こういう考えでおります。
  156. 阪上安太郎

    ○阪上委員 おほめをいただいてまことにありがとうございます。
  157. 坪川信三

    坪川委員長 有田経済企画庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。
  158. 有田喜一

    ○有田国務大臣 いま経済企画庁におきましても、各省庁の意向を聞きながら取りまとめつつあるのでございますが、第一に私が考えておりますことは、いままでは大都市周辺から地価の暴騰がありました。昨年あたりの傾向を見ますと、その暴騰というものもちょっと鈍化しております。しかし、農山村方面に全国的にそれが及ぶおそれがある。  そこで、私のほうとしましては、まず全国的にいかにして国土を開発するかという利用計画というものを勘案しつつあるわけです。その全国的の利用計画を受けまして、各府県におきましてそれを具体的な利用計画を立てさす。その間におきまして、利用計画と相まちまして規制の方法ですね、まず届け出をさして、それに対して、いろいろと考えに対していろいろの条件をつけたり規制をする。その規制の具体的内容は目下検討中でございますが、そういう規制をやる。そういうことのまず立法措置を、来たるべき通常国会には提案したい。  そして同時に、一方建設大臣が言いましたように、これは大蔵省なり建設省、自治省で考えてくれると思いますが、税制の措置によってそれを押える、こういうようないろいろな面を考えながらいま計画を練りつつあるところでございまして、通常国会にはその法的措置が提案されるだろう、こういう考えでおります。
  159. 阪上安太郎

    ○阪上委員 いま企画庁長官から、土地利用計画あるいは土地税制とあわせてこれでやっていきたいということでありますが、そのとおりでありましょう。ただ、土地利用計画につきましては、あとでも触れますけれども、もうこれは昭和三十九年ごろから国会の中でも、ことに衆議院で決議されておる問題なんです。一向におやりにならない。ずいぶんたっておりますよ。私はこれはほんとうに怠慢だと思う。今日こういう状態に追い込んだのは、全くそういう土地利用計画がなかったからなんです。  土地利用計画というと、何か税とは別の体系のように考えられておりますけれども、私などの考えておる土地利用計画というのは、税制も織り込んだものであるというところまで実は考えるわけであります。昨日ですか、この点につきまして、土地利用計画が先か土地税制が先かというような論議が行なわれておったのでありますけれども、それに対して、税制が先だというような政府考え方が皆さん方の答弁の中から出てきたように私は伺っておりますが、やはりこれは同時にこの問題を解決しなければいけないのであって、それらの点につきましてはあとでまた伺いますけれども、そういった基本的な態度で、土地利用計画というものは、一つは、いま長官がおっしゃったように土地の効率的な利用という問題と、それから、それをなさしめるための規制が伴わなければならぬ、そういうことだと私は思うのであります。  土地利用計画の面は、一応ここでそのままにいたしておきまして、ここでお伺いいたしたいのは、この信用膨張の問題なんであります。企業が土地を担保にいたしまして銀行から無制限に金を借りるという、いまの地価上昇のメカニズムといいますか、これをどこかで断ち切らぬと、どうにもならぬ問題が出てくるんじゃないか、私はこういうように考えるわけであります。そのためには土地税制が必要でありますが、やはりものの考え方、いかなる種類の土地税制を導入するかということにつきましても、まだ政府のほうではきまってないのでありましょう。  しかし、その前段として地価暴騰のメカニズムというもの、ことに金融との関係におけるもの、これを頭に置いておかないと、たいへんなことになると私は思うわけであります。もしそれを頭に入れないでやるということになれば、あるいは全く効力のない税制になってしまう、こういうことになろうと思うのでありますが、これらの点について、大蔵大臣からひとつお聞きしたいと思います。
  160. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 土地税制の問題につきましては、近ごろそれぞれの利用計画等に関連して、そしてその値段がなるべく不当な上がり方をしないようにという考え方でいろいろにいわれておりますが、まだ不幸にして適当なる対策が、税の面においてなかなかできない。ことに税の面から考えますと、非常に困難がたくさんに伴います。ただいま先生の仰せになりました土地について、利用計画なら利用計画というものがちゃんとあって、そしてその上にいろいろと制度を税の面からはどうする、あるいは法規制の面からはどうするというようなことがありますと、比較的あるいは税の面からも対策が立てやすいのでありますが、それが不幸にして今日まだ十分でない。このために非常にいま困っておるのであります。  ただいまお話の金融機関等が力のある企業等に対して、最近の若干の金融緩和のままに、土地を購入する資金をどんどん貸すということになりますと、そうした企業においては、この際にこそあそこも買ってみようか、ここも買っておこうかというようなことになりまして、それが自然今度は投機的に、この際将来の値上がりを待って自分のものに一応しておこうというような面が出てまいります。その場合に、もしこれを処分をして、相当そこに大きな不当な利益が得られるというようなことがはっきりわかりますと、それに対しては適当な税法上の対策も立てられますけれども、これとてもなかなか完全には回らなんだ。はたしてそれが、そういう不当なもうけをせんがために取得したのか。自分の会社がそこへ移転をしたい、だからいまからあの地域をひとつ買っておこうというわけで買った場合もございましょう。そしてまたそのときの経済上の事情で、その企業では自分が使用しないでこれを第三者にまた売りさばいて、そしてそこでまた大きな利益を得る場合も起きましょう。こうした場合に、はたしてそれがいわゆる不当な利益を得たのかどうか、あるいは不当な利益を得る目的で地面を買って、二年目に売ったのか、三年目に売ったのか、直ちに売ったのかという問題も起きます。そういうふうにして不当にもうけた金はそれを分離して、そして重い税金をかけたらいいじゃないかということがいわれております。われわれも、そういう場合にはそんな不当な利益は得させないようにしたいと思いますけれども、土地も一つの商品でございますから、それによって得た金額に何もかもみんな、非常に大きな重い税金を課するということもできません。  こういう問題が非常に錯雑しておりますので、税制だけでこれをやっていこうということもとてもできないのであります。しかしながら、いまそれぞれ各省においてはそれぞれの立場から、あるいは追い出し税というお名前が出たり、あるいはそれに対応する地域においてはそこに適当な対策を税の面でも考えてやる必要があるのじゃないかというようなことがいわれておりますので、これらもすべて、世上に行なわれております構想を、いま税制調査会の議にいろいろ御相談をおかけしまして、これによって何らか適正な課税方法がないものかということを、いま暗中模索しているのが姿なので、まことに残念でございます。
  161. 阪上安太郎

    ○阪上委員 大蔵大臣、あなたも御承知だと思いますが、地主、農民、これはもちろん土地を持っておる人であります。これを企業が買い取りまして、買い取った金がいろいろな形で預金されていくわけであります。一部は自動車を買ったりあるいはヘリコプターを買った人もありますけれども。しかし、大体において地方の金融機関といいますか、相互銀行だとかあるいは信用金庫だとか、それからさらに農協だとか、こういったところへ預金される。預金されたこれらの地方の金融機関は、それを持っているわけじゃございませんで、コールローンの形で都市銀行あるいは長期信用銀行、こういうようなところへこれを預けるわけであります。そうして企業はその買い取った土地を担保にして、そしてこれらの都銀から融資を受ける。端的にいいますと、企業は地主から土地を買って、そして土地の代金を支払いをして、その金を地主は銀行に預金する、預金した銀行に対して、企業は土地を担保にして銀行から借りてくる、こういうようにして無制限に資金が動いていく。これは特別に日本銀行から借りる必要もないでありましょう。こういった循環を考えてみたときに、これをどこかで断ち切らぬ限りは信用膨張はどんどん続けられていく、こういうことになるわけでありまして、土地利用計画その他は考えなくちゃなりませんけれども、やはりここのところを何とかどこかで遮断するということが必要じゃないか。そこまで思い切った腹をきめない限りは、土地問題は解決しないと私は思う。  そういう意味で、大蔵大臣は、大蔵省は地方銀行その他に対して行政的な指導をしておられるということはありますけれども、そんなものはもう何のつっぱりにもならない。したがって、この前の六十八国会で私は言ったのであります。何とかそこを遮断しなさい、こういうことを言っておるのでありますけれども、一向にこれが行なわれない。一体土地担保の貸し付け、こういったものは昔は——昔といっても戦前は非常に不安定なものだといわれておった。それが現在では、戦後は別な意味において非常に安定している。そういう結果から、最近はこの循環が常に動いておる。だから大蔵省としては、大蔵大臣としてはこういった土地担保の貸し付け、金融というようなものに対して、これはもうけっこうなことであり、別に銀行としては戦前のような不安な状態はないんだから、まことにけっこうだと考えているのですかどうですか。その点ちょっとお伺いしたい。
  162. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 全くその点が、われわれが一番困っておる点であります。したがいまして、土地も商品でございますから、だからこれを買おうとする人が土地そのものをまた担保に、買った土地を担保に供することもできます。そうすると、金融機関は手元に金があって、そしてこうこういう必要のためには金を貸してやれとかやるなというようなことは、われわれは金融機関に命ずるわけにはまいりません。結局徳義的に、あまりこういう際に、いわゆる土地を買い入れるために借金をしたいというような場合には、それがほんとうに必要があって、そしてその必要性を考えれば、金融機関としてもこの際その土地を買おうとする人に貸してあげることはやむを得ぬけれども、そうじゃなしに、どこかそこに、何か過当な利益を得ようとか適当でないことを考えているような場合には、できるだけこれをひとつ貸さないようにしてもらいたいということは勧誘はできますけれども、貸すなとは言えないのであります。そして仰せのとおりの悪循環が起こったり何かしているので、それがいま自然と非常に悪い結果になっている。現在でも、ある大きな会社がある地域において一つの大きな地面をこの際手に入れようとしますときには、その下に多数のいわゆる表に立たない個人のブローカー式のものがたくさんあります。そして甲はそれを所有者から買って、あるいはたくさんの地面をあっちこっち自分のものにいたします。そうするとそこへまた別の個人なら個人、法人の場合もありましょうが、それをまた集めて買う、そのときにもう値段がずっと上がってしまう。こういうようなことが確かに起こっているのであります。  しかし、それをどこで直ちに課税できるかという問題になりますと、税金でもってこの土地の値上がりを押えるというようなことをやろうとするのは、なかなかできないのが実情なのであります。そこで困っているのです。どこで断ち切ったらいいのか、断ち切りたいのです。断ち切りたいけれども、その適当なる場所が、いわゆる金融機関を監督しておる立場から、特別な命令を出してどうこうするという方法がどうしても見つからない。これが実情なのであります。それは大蔵省としても、不当な利益はちゃんと税にして納めて、相当高い税率のもので出してほしい考えは持っておりますけれども、実行に移ることがなかなかできない。それで、それをいま税制調査会でいろいろな案を研究していただいておるというのが姿でございます。
  163. 阪上安太郎

    ○阪上委員 何か非常に弱音を吐いておられるのでありますけれども、別に窓口その他において規制をしたって差しつかえないじゃありませんか。いろいろな面が出てくるかもしれません。デメリットもメリットもあるでしょうけれども、この際ですから、どこかでこれをやはり規制するという形を、あるいは行政指導を強力に行なってでもやる必要があるんじゃないかと私は思うのです。  おそらくそういった規制をする場合に、何が投資であって何が投機であるかというようなことが問題になってくるかもしれません。同時にまた銀行のほうでは、これはあくまでも投資なんだというような言い方をして、何でもかんでも投資に結びつけて、そして実際は投機でないというようなことで主張してくるだろうと思うのでありますけれども、そういった見分けはつきませんか。やれないのですか、そういうことは。
  164. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 新しい税金をつくらなければならぬということになるでしょうが、その場合におきましても、ただいまのような場合に税でもってそれを押えるということは、私はほとんど不可能に近いのじゃあるまいか、こう思うのであります。
  165. 阪上安太郎

    ○阪上委員 税でもってすべてがおさまるわけじゃありませんでしょう。だから私が言っているのは、たとえば銀行法を改正するとか何らかの方法によってでもストレートに、もうダイレクトにそういった信用膨張の原因になるような、しかも投機対象の土地買い占めというようなものに対して、規制を加えることができるんじゃないかと私は言っているのです。どうなんですか。
  166. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 私のただいままでの、いろいろ事務的の意見も徴しながら研究しておりますところでは、その問題は法制上、税として取るならば当然またこれは法律を要しますが、現在の憲法その他の諸法制のもとにおいて税で取ることができるかどうか、非常に困難があると私はそう思っております。  つきましては、私はなお法制局その他の御意見も徴して研究はいたしますが、また研究もしておるのでありますが、私は、あるところで税でもって押えていこうというお考えに対しましては、別に税金がたくさんいただけることだから、大蔵省としてはけっこうなことでしょうけれども、なかなかそれはできないことではあるまいか、かように思っておるのであります。
  167. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それでは、大蔵省とか日銀でもうすでに、投機をもくろんだ行き過ぎ貸し付けが多いという点はちゃんと着目しておられて、それに対して、これまで再三自粛を要望しておられる。これはそうなんでしょう。これは憲法違反じゃないんですか、あなたの理論からいうと。
  168. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 だから、それは日銀がどういうことをやっていらっしゃるか、日銀もいろいろ心配していらっしゃる、われわれも心配しておりますから、われわれとしても管下の金融機関に慫慂はしております。そしていろいろ資料もときには、どんな状況だというような状況を聴取もしておりますが、それは、向こうが聞かぬ場合にはどうにもしようがないのです。法律の力をもってしなければ、税として取るなんということはできません。献金しろといったって、そんなものを献金をするばかはないということになりましょうし、やはりそこを、非常に先生は土地の問題について御研究のようでありますから、もう一歩進んで、ぜひひとつ名案がありましたら教えていただきたい。われわれもいま一生懸命に研究しておるのでございます。
  169. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これはいつまで繰り返しておってもしかたがありません。まあ銀行家にいわせれば、土地を担保にしたところの融資は、これはきわめて安全であり確実である、したがってどんどんやるんだ。また借りるほうからいえば、これもやはり同じような計算をしておる。こういうことなんで、私はやはりこの点を、何らかの方法によって、というよりも、先ほど言ったような行政的な措置によって、押える必要があるということを言っているのでありますが、法律をつくればやれぬことはないでしょう。やれない理由は何なんですか。
  170. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 一方政府は、やはり政府といたしまして道路の問題でありますとか、政府が所要する土地もございます。あるいは一般的に住宅問題、日本の住宅問題の戦後における状況はまだまだ力を尽くさなきゃならぬ問題でございますが、こうした問題にも、政府みずからもつくり、そして府県、市町村等にもつくらしておりますし、個人の場合でも、最近はだんだんとそれをつくる力ができてまいりましたから、これも多くなっております。こうした場合に、自分がそこに家を建てるのだから、あるいはこの県では県営住宅をここにこしらえるんだから必要だという場合には、これはいまの問題のような、必要以上のものはお買いにならない。個人がみずからおやりになる場合でも、ほんとうに敷地として必要な程度、自分に合ったものをこしらえるのですから、これも問題にならない。  ところが、先ほどからの問題は、そういう規制ができるような問題でございましょうか。私は、その点をどうにも方法がないので弱り抜いているというのが姿なんであります。たとえば、登記をしたらうんと高い登記料を取るということも考えられるかもしれませんけれども、これとても、そんな不都合なことは法制上も許されるものじゃないと思う。そうしますと、どうにもこうにも、本人の自覚にまつ、あるいは金融マンの徳義にまつというようなことになってしまいますと、強制はできないのでございますから。税となりますと、強制力で本人がいやだと言っても取り上げなければならない。そういうものを、この際に税でもって押えていけとおっしゃいましても、どうも私はそういう名案が浮かんでまいらないのでございます。
  171. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私が先ほどから言っているのは、大量の土地買い占めの問題を問題として、その信用膨張を言っておるわけなんです。だから、これに対しては利子も払わなければならぬでしょうし、いま住宅の問題をおっしゃいましたけれども住宅自身が高くなっていくんじゃないですか。  まあそれは別といたしまして、私が言っているのは、行政措置でやれないかということを言っているのです。税金でやれと言ってないんですよ。
  172. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 私はただいまのところ、現時点におきましては、行政措置でもってこれをやることは困難である、むしろ不可能に近いとまで思います。
  173. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それじゃ税金も取れないし、それからそういった規制もできない。どうしてやるのですか、これは。地価上昇のメカニズムのこれをどこかで遮断しなければならぬといっているときに、何にも策がないということをいま白状されたようなことになってしまうわけなんでありますが、総理大臣、これはどうなんですか。
  174. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 土地の問題につきましては、間々申し上げておりますとおり、重大な問題として政府も腐心もし対処しなければならない、こう考えております。  一体、どういうふうにしてこのようになっているのかということを申し上げますと、これは大体二百億ドルという外貨の裏づけになる円を、勘定すれば簡単におわかりになるとおり、六兆円余でございます。その程度のものが膨張して市中に流れておることは事実なんです。ですから、それが普通ならば、いままでの状態からいいますと、景気浮揚の過程においては民間の設備投資に吸収されておったわけでございます。民間の設備投資に吸収されるから輸入も拡大をしたわけであります。今度は民間の設備投資が拡大をせられない、そのために、輸入も幾ばくかずつはふえてはおりますが、過去のパターンのようにはふえない、だから市中金融は非常に緩慢である、こういうことであります。  そうすると、適当な投資がないということで何に一体投資をしているかというと、これは私も全くの専門家じゃありませんが、しかし、土地と株式という二つのものが投資の焦点になっておる、こう思わざるを得ません。まあ株に対してはいろいろな規制がございます。外人の投資規制を行ないました。そして掛け目を非常に高くするというような、ほとんど現物取引であるというような状態でございますから、これは制約はあるわけであります。ところが土地の投資というものに対しては、一面において宅地を造成しなければならない、住宅を供給しなければならない。あなたがいみじくも申されたとおり、投資か投機かというものの限界が非常にむずかしいわけであります。それでしかも、いままでは土地というものが、担保価値としては比較的に安く見られておりたものが、このごろは、将来は上がっても下がらないということで、掛け目は目一ばい貸すということになります。そういう意味で、言うなれば金融の悪循環で土地金融が行なわれておるのじゃないかということが考えられるわけです。  ですから、日銀信用という、日銀からの通貨の増発によって土地の投機が行なわれておるとすれば、これはもう貸し出しは禁止するということでできるわけであります。しかし、市中銀行がやっておるというところにめんどうな問題があるわけでございます。だから、かつていろいろな設備投資をしなければならないのに、料亭や待合やいろいろなものに貸し出される、これはどういうことか、こういう議論国会でたくさんありましたときに、それはしかし出す金融機関としては、それ以外に借りる人がないということになれば、そういう道を選ばざるを得ないのだという過去の事例がございましたが、ちょっとそれに似たような問題でございますが、土地の問題は、しかしこのままで放置できるものじゃありません。ですから金融上の問題も、これは非常にめんどうな問題はございますが、これはもう貸し出しを抑制するように政府も大蔵省も日銀も、各金融機関を指導するというたてまえに立っております。で、場合によれば金利を上げなさいということもあるわけでございますし、金利を上げるということに対しては、まだ景気浮揚ということが必要であるというたてまえから反対論もありますが、土地に関してはという指導は、必ずしもできないはずはないわけでございますが、そういう金融の面に対して各般の努力をいたします。  同時に、それだけではなく、きのうまで申し上げておりますように、土地の利用計画とか、それから土地を吐き出させるために保有税ということが一体効果があるかないか。これはもう現に、市街化区域内における農地は宅地並みに課税をするという方向に踏み切っておるわけでありますから、そういう意味で、保有税というものが一体どのように効果があるのか。それから投機というものを分離課税等にできるのかどうか。法人の投機、土地の投資ではなく投機ということで分離課税ができるのかというようなものを、専門的に検討いたしております。これ以上にというと、物価ストップ令、賃金ストップ令と同じようにこれは特例法をもって行なうということになるわけでございますが、国会の会期も短いのでございますし、これは非常的なことになればいろいろなことも考えていかなければならないわけでございますが、現行法のもとで可能な限り最大の努力を続けておるというのが政府の現状でございます。
  175. 阪上安太郎

    ○阪上委員 土地を担保とするわが国の信用制度といいますか、これはもう明治年来からあったものであります。したがって、ここで流れを変えるという考え方を持つならば、そういったものの上に立ってものを考えておってもちっともいい知恵は出てこないのじゃないか。しかし、これはたいへんなことだと私も思います。しかしながら、そこのところを踏み切らぬといけないのじゃないかというような気が私はするわけであります。しかし、いま総理の御答弁を承っておりましても、あらゆる金融上の措置考えると、こういうことでありますけれども、何さまこれはそう簡単なことではない。また大蔵大臣の御答弁を聞いておりましても、そういった保有税的なものは考えられない。それから、いま言ったような行政的な金融に対するところの規制措置考えられない。全くこれは手詰まりじゃないんですか。やるやると言いながら何にもできないということになるんじゃないだろうか、こういうふうに思うわけであります。  そういう点で、金融の面から地価暴騰を押えていこうということは全く不可能だ、こういうことになるといたしますれば、一体他の面でどういうふうにこれをやっていくか。ある程度頭に浮かんでまいりまするのは、土地利用の問題であろうと思います。土地利用計画の問題だと思います。そこで、これはこのままにいたしまして、土地利用計画について伺っておきたいと思います。  何か総理は、きのうの二見君に対する答弁で、いま審議会にはかっているんだからそれを待ってと、こういうような言い方をなさっておりました。しかし、建設大臣どうですか、あるいはこれは企画庁長官ですね、この土地利用計画について何の案も持たないのですか、いま、現段階において。あるいは何らかのものを政府としても持っておられるのかどうか。審議会の答申を得るまでは全く白紙の状態でこれを待っているんだ、こういう考え方なんですか。そこのところをちょっとお聞かせ願いたいのです。
  176. 有田喜一

    ○有田国務大臣 政府としてもいろいろと考えております。しかし、現在いわゆる新長期計画、これが発想の相当大きな転換によりまして、昨日も言いましたように、福祉充実、国際協調という大きな柱を立てまして、それに向かって日本の今後の経済の動き方をどうするか。もちろん、その間にはGNPがどういう行き方になるか、いろいろと考えます。また国土の開発あるいは社会保障をどういう位置づけをするか、いろいろな面がある。それを総合されまして、そうしてそれを基点として、一方におきまして、いま新全総の総点検ということをやっておりますが、これは日本列島改造懇談会の委員意見もいま徴しつつありますが、そういう方面の意見も聞き、また一方国土総合開発審議会の意見も聞き、また地方庁その他国会における皆さんたち意見も聞き、それを総合しながら全国的の利用計画を立てたい、こういうことなんですね。  それに対して、どうしても立法措置が要るであろう。つきましては、来たるべき通常国会にはそういう措置法律を整備して御審議を願いたい、こういうような段取りでいま考えているところです。
  177. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私、先ほども申したのでありますが、昭和三十九年の五月の二十九日、衆議院の本会議におきまして、地価安定施策の強化に関する決議を行なっておるわけです。これはもうたいへんな日月を要しているわけなんでありますが、いまごろ経済企画庁長官がそんなことを言っておられるというのは、私はもうこれは政府の怠慢だと思うのです。そこには明確に、「農地との調整を考慮した土地利用計画を策定し、あわせて地価の公示制度を確立し、土地の有効利用を促進するため、」云々と、こうあるわけなんでありまして、この中でできたのは地価の公示制度、これだけであります。この土地利用計画、これがもう長い間毎国会ごとにいわれておりながら、先ほどおっしゃったような、経済企画庁のいまごろその状態というものは、私は全く解せない、こんな問題は。なぜこの問題をもっと端的に早く手をつけられなかったか。  しかし、いまそんなことを言ってもしかたがありませんが、少なくとも来国会には必ず出す、いまこう言っておられるのですが、ほんとうに出ますか、これは。いま各省の間で、土地利用に関して関係各省でいろいろ意見がまとまらないんじゃないですか。これに対して、それでは、企画庁はいまおっしゃったのでありますが、建設省はやはり土地利用についてどういう考え方を持っておるか、ひとつここで言っていただきたいのであります。
  178. 木村武雄

    ○木村国務大臣 建設省としては、最初に日本全国を大体四つぐらいに区分してみたい、こう思っておったのですよ。一つは自然保護区域、それから一つは農村区域ですか、それから一つは市街化区域、それからもう一つは調整区域、こういうように四つに区画して土地利用計画を立ててみたい、こういう考え方を建設省は持って進めておったのです。各省が決してばらばらになっておるわけではありませんで、土地利用計画は各省相談の上で企画庁がつくる、こういうことに話がまとまっておるものですから、企画庁長官は鋭意そのことで勉強中だ、そして来年度の国会に出すのだ、こういう話をなさったのでありまして、ばらばらにはなっておりません。最初は、百家争鳴でみんないろんな議論を出しましたけれども、今度は全部まとまりまして、この事項は建設省の担当事項、この事項は経済企画庁の担当事項と、こういうように全部分けましたようですから、その点は間違いないと思っております。
  179. 阪上安太郎

    ○阪上委員 自治大臣おられますか。——土地利用に対する発想といいますか、そういった内容をちょっと自治省の考えておられるのをひとつ承りたいのです。
  180. 福田一

    福田国務大臣 土地利用の問題につきましては、政府部内では、先ほど企画庁長官が御答弁申し上げたような趣旨で、各庁の間でいま案を練っておる段階でございます。しかし、土地利用の場合におきましても、やはり都道府県といいますか、自治体が相当程度中核となって、この問題を処理いたしませんと実効があがってまいらない。また同時に、上から押えつけたようなやり方でこの問題を処理しようとしてもなかなかむずかしいと思います。計画自体はすっかり大きく網をかけていかなければなりません。方向はきめなければなりませんが、実際にこれを運用するのは、都道府県知事というものを中心にいたしてまいる。そしてまた都道府県知事は、やはり市町村長の意見も十分参考にしながらこの問題の運用をはかっていく、こういうふうにいたすべきではなかろうか、かように自治省としては考えております。
  181. 阪上安太郎

    ○阪上委員 農林省、農林大臣どうですか。いまの問題について農林省の見解ですよ、どう考えておられるか。
  182. 足立篤郎

    ○足立国務大臣 先ほど建設大臣からお話がありましたように、各省間で打ち合わせをし、企画庁中心でこの利用計画を立てるという方向で進んでおりますので、私どももその方向で協力してまいります。
  183. 阪上安太郎

    ○阪上委員 環境庁はどうですか。
  184. 小山長規

    ○小山国務大臣 大筋は、先ほど企画庁長官、建設大臣が申されたとおりであります。それで環境庁としましては、職住を分離するとかあるいは自然の環境を保持できるような地域を設けるとか、そういったような生活環境に密接な問題をこれに挿入するようにということで、事務次官会議で協議をいたしているところであります。
  185. 阪上安太郎

    ○阪上委員 通産とそれから運輸は来ていませんから質問を控えますが、何か私の考え方では、いままでこういった環境法律の誕生に際して、いろいろと各省間で意見がある。意見のあることはけっこうでありますけれども、もういいかげんなときに調整されて、そしてこれをお出しにならぬといけないのじゃないですか。たとえば、土地利用計画に基づく線引き、それ一つ内容ですら、各省ともまちまちな意見を持っておる。こんなことで来年出るかどうか、私は非常に不安に思うわけであります。これはもう御答弁は要りませんが、総理、ひとつ力を入れて、ほんとうに、各省がくだらぬことでがたがた言い合いしているというような、そういう縦割りの弊害をなくして、やはりこん然一体となってこれを進めていくというふうに持っていっていただかないと、これはいつまでたってもできないだろうと思います。そういう方向でひとつやっていただきたい、このように思います。  そこで、まだ私が望んだ回答は得ていないのでありますけれども、私ども社会党では、もう昭和四十三年の七月十五日に、土地利用基本法要綱なんというものをつくっておるのですよ。一体何を政府はもたもたしているかと私は言いたいと思うのです。この中には非常にこまかいものがたくさん含まれておりますけれども、一体、内容についても、何も持っていないというようなことじゃこれはいけません。そこで私は、こちらからの意見として、これに対してどうかということを一ぺん聞いてみたいと思います。  たとえば、土地利用基本法といいますか、全国総合開発計画法といいますか、そういったものが基本法に相当するかどうかというようなことについて、企画庁長官から伺っておきたいと思います。土地利用の基本法、これがやはり、ああいった全国総合開発計画と同じような位置づけをするのかどうか、これをちょっと伺っておきたいと思います。
  186. 有田喜一

    ○有田国務大臣 私のほうでは、先ほど来全国的の計画を立てる、利用計画を立てると申しましたが、それは現在あります国土開発法、それを改正いたしまして、そして国土の利用の面をやっていくわけですから、あなたのおっしゃる、これを基本法的のものと解釈されてもいいようなものができる、かように考えております。
  187. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それから、内容一つとして、土地の一手買い上げ機関、これは名前は何でもよろしゅうございますけれども、そういったものを構想としてお持ちでございますか。
  188. 有田喜一

    ○有田国務大臣 この問題は、私は全国的の利用計画を立てて、都道府県その他自治体でもって具体的の方向に進むということを申しましたが、そういうようなことは、いま、あるところもあるしないところもありますが、府県ですね、いわゆる開発公社というようなものがありますが、今後そういうものをもっと強化しながら運用していったらどうか、こういうような考えを持っておりますが、それも決定的じゃありませんけれども、私の一つ考え方です。
  189. 阪上安太郎

    ○阪上委員 その場合、それは公共用地だけをそういう機関でもってまとめて買い上げていくのだという構想なんですか。それとも、そうでない、すべての土地の買い上げという問題について、ある一定規模以上のものについては、もうこれしか、ほかには買わさないのだ、買い取らさないのだというような考え方のものでありますかどうか、ちょっと伺っておきたいのです。
  190. 有田喜一

    ○有田国務大臣 現在、地方の府県にありますところの開発公社というものは、おそらく公共用地、そして将来の先行投資的な役割りをやっておると思いますが、それよりもっと幅を広めるかどうかということは、まだ結論を得ておりません。これはまた別の機関によってそういうことを考えるか、そこらはひとつ検討してみたい、かように考えております。
  191. 阪上安太郎

    ○阪上委員 やはり公共用地だけで一手買い上げ機関をつくっても、たいして地価の抑制とかそういった問題を解決する大きな要素にはならぬだろう、私はそう思うわけであります。この際、英国あたりのランドコミッションというような、ああいう制度を頭に置くか、あるいは地方公共団体が一手機関で買い上げたものが、やはり土地の再配分の役割りを果たしていくというような、かなりスケールの大きいものを考える必要があるのではないか。ただ単に公共用地だけを買い上げて、それで事足れりというようなことではいけないだろう、こういうふうに思います。そういった点について、さらにこれは考えておいていただきたい問題ではなかろうかと思います。  それからいま一つは、開発許可制の問題なんであります。いま一部にこれが適用されております。しかし、一切の開発に対して許可制を用いる、こういう考え方が出てこないかどうか、こういうことなんであります。せっかくいま検討中でありましょうから、これらの問題も検討されておることと思いますけれども、英国のように、土地問題についてはほんとうに長い期間取り組んできたところなんでありますが、やはり開発許可制度というものはきわめて有効な役割りを果たす。地価抑制の役割りもするし、そして生活環境等を保全していくための役割りも十分に果たす。それから、いま盛んに伸びておりますスプロール現象というようなものも解決することができると思うのでありまして、この開発許可制度というものを日本列島全体に及ぼしていく、そういう考え方を持たないとだめなんであります。先ほども、税制の問題、いろいろな金融の問題等も出ておりますけれども、こいつを一発やらかすだけでも、かなり大きな土地利用の二つの面を果たすことができる。有効利用の面と、それから地価抑制の面、これを果たすことができるのじゃないかと思うのであります。そういう意味において、開発許可制度を全面的に日本列島に及ぼしていくという考え方をお持ちかどうか、これは総理大臣にひとつ伺います。
  192. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いま、経済企画庁ともそういう線で話し合いをしているわけです。ですから、土地の利用計画というのは、知事や市町村長を主体にはしますが、全国土に網をかぶせたい、こういうことであります。それで、一定規模以上の宅地の移動についても届け出を必要とする。開発に対しては、当然都市における都市計画法及び建築基準法が、形の変わった土地利用法という名において全国土に網がかぶせられる、こういうことでいま研究を続けておるわけであります。
  193. 阪上安太郎

    ○阪上委員 次に私は、先ほどから問題になっております、非常にむずかしい問題であるけれどもという前提のもとに答弁をいただいております、この土地税制の問題でありますが、これについて具体的に伺っていきたいと思います。  土地税制は、大きく分けて、譲渡所得課税の問題と、それから保有税の問題と二つに分けられると思うのですが、いまどうですか、どういうものを導入しようという考え方をお持ちなんですか、これをちょっと伺っておきたいのです。
  194. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 現在、国税として、土地の税制について検討されております検討方式は、一つは、主として法人について、分離重課の方式をとることができるかどうかということが一つでございます。第二は、分離重課をとりますと、今度は逆に供給を押えるというマイナス面が出てくるのではないかということに関連いたしまして、一種の保有税を考えてはどうか。ただいま金融のお話がございましたが、法人が金融を受けて土地を持ちます場合に、その金利負担は、しばらくの間、他にたとえば所得があります場合には、その所得計算上経費として損金として落ちることになりますので、個人の場合に比べまして法人の場合は、比較的低い金利負担で土地が持てるという現状にあります。これとの関連上、何らかの意味において保有課税を考えたらどうか。  いま問題になっております焦点は、一つは、そういう税制を立てるのは、投機抑制のためにはプラスに働きますと思いますが、結果的には、やはりそれがコストになりまして、むしろ地価を押し上げるほうに働く心配はないかどうかという点が一点でございます。第二点は、先ほど来お話がございますように、投機的なものと投資的なものとをうまく区分できるかどうか、それが第二点でございます。それから第三点は、現在、税で処理いたします場合には、何らかの形で、現実に保有なり譲渡なりの事実が把握できなければいけませんが、土地取引の場合には、他の取引と違いまして、いわゆるブローカーといいますか、いろいろな方が土地取引に関与して、隠微のうちに土地の取引が行なわれておる。最初に売った方と最終取得者との間でどういう取引があったのか、なかなか表へ出てきませんものですから、その関係で課税の不公平が起こらないか。  この三点を、技術的に何とか解決する方法を考えるべく、したがって、その三点との関連上どういう課税方式がいいかということが検討されております。
  195. 阪上安太郎

    ○阪上委員 いまあなたの答弁の中で、大体保有税を考えていると、こういうふうに言われたように記憶しておるのですが、その点間違いありませんか。
  196. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 法人税の、他の所得と分離をしまして、そして譲渡の時点で課税をする方式と、それから保有時点で課税をする方式と、その二つのいずれがいいか、あるいは両方組み合わしたほうがいいかということでございまして、保有の点も考えておるわけでございます。
  197. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そういたしますと、この譲渡所得課税あるいは増価税というようなものが、譲渡所得の課税として考えられるわけなんですが、そういったもの、それから保有税として、一般的な土地の保有税というものと、それから空閑税といいますか、空閑地税といいますか、あるいは未利用地税といいますか、そういったものについて考えられるわけなんでありますが、あなたはいろいろなものを組み合わせてと、こう言っておられるわけなんですが、どういう組み合わせを考えておられるわけですか。
  198. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいま申しました保有税と申しますのは、私ども頭の中にありますのは、やはりいま委員がおっしゃいました未利用地税といいますか、空閑税といいますか、従来からそういう議論がございましたが、ややそれに近いものでございまして、要するに、投機的なものをどういう形で外形的に押えるかという場合に、やはり利用効率の悪い土地という形で押えられるのではないかというふうに考えております。前に、空閑地税の議論が四、五年前からありました時分には、何が空閑地であるかという判定が非常に困難だという結論で、答えは消極ということになったわけでございますが、空閑地であるか空閑地でないかという議論を別な形で一方においてしながら、形式的には、譲渡課税に対応する意味での保有課税形式をとり得るのではないかということを研究しておるわけでございます。
  199. 阪上安太郎

    ○阪上委員 建設大臣に伺いますが、建設省としては、大体譲渡課税というものに何らかのくふうをこらしていきたいという考え方であろうと思うのでありますが、大蔵省では、いま言ったように、保有税に重点を置いてものを考えていく、こういうことになっております。だいぶ食い違いがございますが、どうですか。
  200. 木村武雄

    ○木村国務大臣 最初からそれは食い違いを覚悟しておったんですよ。建設省の意見を何とかして大蔵省にのみ込んでもらいたいと思いまして、一生懸命になって努力しているのです。どこで調和するかが問題なんで、これから一生懸命になって自分たち意見を通してみたい、こう思っておりますが、私は、そういう点で国会を通していろいろな話をしてもらいますことは、私のほうにとりまして非常に有利であると思っておるものですから、実は喜んでおりますよ。
  201. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ここに「開発ジャーナル」という冊子があるのですが、そこの中にこういう記事が出ております。「木村建設大臣は、さきほど日本列島改造論について講演し、「法人の土地売却益に対しては一般の所得から分離して、九〇パーセント課税できるようにすべきだ」と述べ、反響を呼んだ。」こういうことなんですが、あなたの発言は至るところで反響を呼ぶのですが、この考え方は間違いないのですか。
  202. 木村武雄

    ○木村国務大臣 間違いありませんし、保有課税も考えておって、それも主張しておるのですよ。それは譲渡しないなんといって困るものですから、投げ出させることも考えなければならない、こう思いまして、保有課税も主張しておるのです。  至るところで反響を呼んでおりますが、やはりそらぞらしくなくていいでしょう、そのほうがはっきりしておって。
  203. 阪上安太郎

    ○阪上委員 全く木村さんらしい答弁をちょうだいいたしておりますが、ここで、売却利益に対して、分離して九〇%課税といっておられるが、何か木村さんらしくないように私は思うのです。一〇〇%課税をなぜやらないのですか。そういう発想を持てないのですか。
  204. 木村武雄

    ○木村国務大臣 一割ぐらいもうけさせたっていいじゃないか、こう思ったのですよ、率直に言いますと。どんな商売でも、商売しておって一割ぐらいはもうけさせてもいいじゃないか、こういう気持ちで九〇%と、こういって計算したところが九二%になったのであります。
  205. 阪上安太郎

    ○阪上委員 木村さん、いま一つ伺いますが、あなたのところに非常に関係の深い問題でありますけれども、どうですか、思い切って増価税で一〇〇%に持っていくというような考え方はどうしても出てこないですか。
  206. 木村武雄

    ○木村国務大臣 これは、建設省の中で私一人が独走したって始まらないのです。やはり建設省全体の意見で進まないと私が討ち死にしてしまうのですよ。そうですから、そういうことです。
  207. 阪上安太郎

    ○阪上委員 最後に一つ、自治大臣に伺いますが、公有地の拡大法が幸いできまして、その結果どうですか、この実施の状態は。
  208. 福田一

    福田国務大臣 ただいま熊本、香川、埼玉、静岡で公社ができまして、そうしていま、ほかの地域でもそういう動きが出てまいっております。そうして、大体この活動をいたしますのは、実際に買い上げの段階は十二月一日からということになっておりますが、できるだけこれがうまく運営、運用されるように、活用されるように、われわれとしては期待をしておるわけでございます。
  209. 阪上安太郎

    ○阪上委員 当時から問題になっておった一つの問題として、その場合、この資金のほうはどうですか。資金の手当てといいますか、これはうまくいっているのですか。取得財源ですよ。
  210. 福田一

    福田国務大臣 その財源のほうは、いろいろの、それを議決いたしました県会その他の関係から見ましても、またそれは公的な機関でもありますから、金融関係からも相当な融資ができるものと私は信じております。もしそれができないようであれば、法律をつくった意味がありませんから、これはそういう意味では、十分に金融機関にも協力を求めるつもりでおります。
  211. 阪上安太郎

    ○阪上委員 自治大臣、この実施後わずかな期間ですからはっきりは言えないですが、土地は手放しますか。はっきり言いまして、これは知事との協議をやっていくわけなんですが、協議のととのわない場合というようなものは、現実に出てきておりますか。
  212. 福田一

    福田国務大臣 私、まだ具体的にその調査をいたしておりませんので、つまびらかにはいたしておりませんが、実際をいいますと、税制といいますか、この税制問題をもう少し緩和するようなくふうをしませんと、なかなか取得が困難ではなかろうか。こういう意味で、大蔵省方面にも、何かそういう措置を今後考えてもらいたいと考えておるところであります。
  213. 阪上安太郎

    ○阪上委員 最後に、総理大臣に伺っておきたいと思いますが、先ほど言いましたような法人の土地買い占め、これが好ましくない方向だということはもうみな認めておるのでありますが、これに対して思い切った規制の措置を講じていくということでありますけれども、その場合、私はやはりたいへんな金融混乱が起こってくるのじゃないかと思います。しかし、それを押してでも、内閣総理一大臣はやはり思い切った土地税制を導入してやっていくんだという決意があるかどうか。この一言だけ伺っておきたいと思うのです。
  214. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 土地投機の抑制については、政府部内をあげて精力的に取り組んでまいりたい、こう考えます。
  215. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これで終わります。
  216. 坪川信三

    坪川委員長 以上で阪上君の質疑は終了いたしました。  この際、三十分間休憩いたします。    午後一時四十七分休憩      ————◇—————    午後二時三十五分開議
  217. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西田八郎君。
  218. 西田八郎

    ○西田委員 まず最初に、総理にお伺いをいたします。  これはもうすでに多数の方の質問で、あるいはお答えになっておることかもわかりませんが、総理が発行されました「日本列島改造論」は、要するに総理の個人的見解として表明されたものなのか、あるいは政府もおよそそのことを了承の上で、現在そういう姿勢でとらまえておられるのか、そこら辺のところについて、総理見解をお尋ねいたします。
  219. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 「日本列島改造論」という書物は、私の個人的な発行にかかるものでございます。しかし、これは自由民主党の党議にかかっております都市政策大綱という名の政策を詳述したものでございますから、言うなれば自由民主党の党議決定の政策と同種のものである、こう理解をいただきたい。  なお、その後、私が内閣の首班として内閣を組織した後閣議にはかりまして、日本列島改造という方向は正しいし、この方向によっていろいろな施策を検討しようということになったわけであります。そして、公的な機関として内閣に懇談会を設け、懇談会の委員を委嘱し、前後二回にわたって会議を開いておりますので、「日本列島改造論」なる著書は私個人のものでございますが、この方向に沿って政策を進めてまいりたいというのは、内閣の姿勢でございます。
  220. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、あらためて確認いたしますが、著書は首相個人の発行によるもの、そしてその中身は内閣としてすでに閣議で了承を得て、政府の政策として今後その方向で進めていく基礎となるものである、こういう理解でいいわけですか。
  221. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 世に公にされております「日本列島改造論」なるものは、私の個人的著書でございますが、日本列島の改造という方向はこれから採用していかなければならないということで、内閣もこれを了とし、私が総理大臣としての国会に対する所信に関する演説の中で、列島改造の方向を進めるということでございますが、ただ内容は、私の著書において、自民党の決定せられた政策を土台として新しい数字を加味したものでありますから、もちろん、あれが万全なものとは考えておりません。  毎度申し上げておりますとおり、あれはたたき台であって、方向は正しいと思いますが、具体的な問題については、流れを変えることであって、たいへん困難な仕事でもやらなければならぬ仕事でございますので、国民の英智集めて施策に遺憾なきを期したい、こういう考えでございます。
  222. 西田八郎

    ○西田委員 それであるとするならば、もっと具体的に各論にわたって詳しい政策を含めて作成をして、いわゆる全国総合開発計画になるような形で発表すべきものであると私は思う。それをせずして、ただ著作として発表したけれども意外な反響を呼んだ、だから今度はその反響に便乗してひとつこれでいこう、そういうような形にいま私どもには受け取れるわけです。  したがって、そういうことであるとするなら、その責任はきわめて重大だと私は思うのです。やはり閣議において決定をし、これが今後の内閣の姿勢であるとするなら、もう少し具体的に、もっと緻密に、しかも長期にわたっての年次計画を添えて出すべきであろうと私は思う。それが出されていないということは非常にいかぬと思うのですが、いかがですか。
  223. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 行き詰まっております庶政の一新をはかるためには、日本列島改造という施策を踏まえて各論を進めなければならないという基本的な考え方は、これはもう正しいことでございますし、それをこの内閣が進めていこうとしておるわけでございますので、所信に関する演説で述べたわけでございます。  しかし、政府として日本列島改造という具体的な問題をどうするのか。これは、いままで新全総の改定を行なうということで、いま経済企画庁が中心となって政府はあげて作業を行なっております。私は、それと同一な路線をたどるべきものとして長期経済計画、経済見通しに対して諮問をいたしておるわけでございます。これは私の新内閣になってから諮問をいたしております。ですから、この諮問と新全総計画が閣議の決定になるというような事態で、具体的な列島改造というものが浮き彫りにされるし、手続的な段階に入る、こう理解していただければいいと思います。
  224. 西田八郎

    ○西田委員 そういうふうに理解をいたしますと、結局、首相の言われる改造論の中身というものは、これから練りに練って、そして内閣の責任において提出してこられる、こういうふうに理解していいんですね。それだとすれば、これはきわめて無責任なことになるのではないか。ということは、もうすでに何人かの委員によって論議をされましたように、この改造論が一種のブームを呼んで、そして、先ほども阪上委員から非常に詳しい質問がありましたように、土地の買い占めあるいは地価の高騰といったような情勢が生まれてきておるし、さらにこの列島改造をされるとするならば、もしかしたらおらが村にもと、こういうことで、いわゆる大きな期待を寄せられておる農村もあるわけです。  そういう点を考えますと、やはりそういうような世論の喚起といいますか、一つのブームを呼び、しかもそれが物価の値上がりを呼び、かつまたその他の生活環境にも影響するというようなことになれば、こうしたものはもっと時間をかけ、緻密に、しかもいま総理みずからもお答えになりましたように、列島改造論に対するいわゆる特別の諮問委員会も設けられたわけでありますから、それらの答申を待って、そして私は正式に政府見解として発表されるべきが至当ではなかったかというふうに考えるわけですが、その見解についていかがですか。
  225. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 流れを変えるという大きな仕事でございますから、まず流れを変えることの可否を問うということは、これはもう重大なことだと思います。いままでは、百年間にわたって大都会に集中をする、集中のメリットが国民総生産を拡大し、国民所得を増大してまいったわけでございますが、今度は、実質的な国民総生産、国民所得を確保しながら、しかも成長活用型の新しい時代をつくり、社会保障を拡充していくためには、流れは全く逆にしなければなりません。こういうことでございますから、発想の転換というよりも、流れを全く逆にするという話でございます。ですから、こういうことは国民の皆さまに方向を訴えて御審判をいただく、いろいろな御議論をちょうだいするということは、これはもう当然のことでございまして、これらの日本列島改造、これは社会党でも、民社党の方々でも、公明党の方々でも、いわば政策というものを出して、それでこの政策がいいか悪いかということを、やはり国民の皆さんから審判をしていただく、こういうことでありまして、黙っておって一切のものをつくり上げてしまってぽんとやるんだ、そういうのが民主政治じゃないわけでございますから、方向としては正しい、こういうふうに理解していただきたいと思います。
  226. 西田八郎

    ○西田委員 それは方向が正しいか正しくないかは、これからおいおいと施策を出してこられる中で討議する問題なんで、ひとりよがりにこれだけが正しいんだという言い方は、少し言い過ぎであるように私は思うわけなんです。そういうふうに流れを変えるんだということは、確かにそういう方向に来ておることは事実です。しかし、それはそれなりのみんな各人各様の考え方の相違があるわけです。  そこで、日本列島改造論が今日国民的話題になってきておるわけですよ。したがって、そういうことを政府の公式見解として発表するのなら——首相個人で出されるのなら、やはり首相という立場に立って、しかもそれが与える影響というものを考慮の上に入れてやるべきであるし、政府がやるとするならば、当然それに対する責任を負わなければならぬわけですよ。しかし、この改造論批判をする書籍も相当多数出ておるわけでありますけれども、それらの書籍の中には、相当な不安と恐怖が入りまじっておるわけです。したがって、そうした方向を出すについては、もっと慎重でなければならなかったのではないかという点を私は指摘したいわけです。それについてどう考えられますか。
  227. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 慎重ということよりも、これは焦眉の急でありますから、これはもう出さなければならないのです。私がさっき、慎重を要しますと税制の問題で申し上げたら、勇断をもってきめよということであって、内容は別にして、やるということを述べろ、こういうことでございます。やはり必要なものは方向を早くきめて、そうして判断を仰ぐということが正しいのであって、これはおそ過ぎたという議論が正しいのでございます。  自民党内閣を長く続けておりながら、新全総、新全総というようなことをいいながら——確かに離島振興法とか、山村振興法とか、新産業都市建設法とか、農村工業導入促進法とか、それから北海道、東北というような地域開発法とか、産炭地振興法、工業再配置法、一ばいあるのです。こういうものをやりながら、これはばらばらであって、これを一まとめにする列島改造論をなぜ出さなかったかというのは……(「あんたの責任だよ」と呼ぶ者あり)確かにそういう面があります。そういう面がございますので、おそまきながら出したわけでございまして、これでもなお早いというのは、どうもちょっと間違いのようでございますから、御理解のほどをお願いいたします。
  228. 西田八郎

    ○西田委員 私は、早いおそいの問題じゃないんですよ。もっとその波及する影響というものを考えて、そうして慎重に扱うべきであるし、出すとするならば、いわゆる個人的見解で出したものをそのまま閣議の了解を得るという形をとらずに、首相も、民主的な国家においては民主的な方向によってとおっしゃるのだから、それならそれなりに、いままでいろいろな委員会があるわけですよ。しかも、そうした委員会が出されてきておる答申というものは、ほとんどこれは無視されている場合が多いわけですよ。それにもかかわらずこういうものを発表するというについては、それなりの責任を持たなければならぬわけですよ。  ところが、たとえばこの改造論の中で、何か工場再配置をすれば農村は近代化が直ちにできるような錯覚を及ぼすような一文があるわけですよ。はたしてそれでは工場再配置をすれば農村が近代化できるのかどうか、私はそこに一つの問題があると思うのです。したがって、そうした問題も含めて、これはもっと親切丁寧、しかも可能な限りにおいてきめこまかにやるというのが、政府姿勢でなければならぬのじゃないかということを言うておるわけですよ。ですからその点について、総理は今後そうした計画を出すについては、もっと慎重に扱うつもりがあるかどうか。
  229. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 列島改造というものが必要であるということは、自民党の党議になっておるのです。政党政治でございますし、私たちは自民党の所属党員でございますし、そういう意味で、自由民主党の政策を実行しなければならないという立場にございます。  そういう意味で、列島改造というものは、名前は都市政策大綱——あのときは、列島改造といえば国土総合開発法と読みかえられてしまう時期でございました。あの時点において一番国民理解をする表題は何かというと、都市政策であります。しかも、一番重要な問題は何かというと、過密の解消だったのです。都市政策だったのです。ですから、都市政策という一番国民理解が得やすく、そして最も政治の上で早く手を打たなければならないものを表題として、その中に政策を盛ったわけです。  ところが、都市政策は単独に遂行できない。列島改造という背景とあわせて行なわなければ都市政策はできません。都市だけをよくしてごらんなさい、いまでさえも、どんなに環境が悪くても都市に人が流れてくるものを、都市が環境がよくなって、都市で青空が十分に見れるようになれば、日本じゅうの連中は全部東京へ集まってくるということになるのです。(発言する者あり)いや、そうなります。これは事実そうなります。これはもうそうなることは、明治から百年間の歴史が事実これを証明しているじゃありませんか。全世界の状態が都市化が促進されているということと例外たり得ないのです。  ですから、それは東京でも大阪でも名古屋でも、県庁の所在地でも、理想的に改造するならば、都市の中でなくともいいようなものは外へ出てもらわなければいかぬし、これ以上に大都市に流入をしないような状態をつくらなければならないし、そのためには、まっ暗い山の中で住んでおりなさい、そんなことできるわけがありません。だからそこで、住み得る規格都市をつくらなければいかぬ、基準都市をつくらなければいかぬ。それが中核都市であり、二十五万であり、二十万であり、十五万だろう。そして東京や大阪が改造されたと同じような状態の中核都市をつくってやり、自分のいまある農村や漁村との、一次産業との労働調整やそういうものが可能であるということが現実化せば、大都会に流れてこなくてもいい、こういうことになるのであって、これはもう政党を越えてだれが考えても、東京だけでもって都市改造ができるなんて考える人はないのです。ですから、そういう意味で列島改造というのを私は出したわけでございまして、これは方角として間違っておらぬと思います。  ただ、列島改造のやり方に対しては、お互いこれが先だ、あれが先だ、いや、もっとこういうやり方のほうがいいという各論に対しては、いろいろ御検討いただかなければならぬと思いますが、列島改造ということを全然考えないで、寄るものは全部寄ってきていいといったら、十年間で大都会というものは爆発してしまう。それは空気中に占める亜硫酸ガスは人間の生存許容量を越すという数字が、明らかにこれを証明しているわけであります。だから、車を東京では運行を禁止するのか、しないで済むためには列島改造しなければならぬということは、もう十年間でございますから、これらの列島改造の方向は是認をしていただくべきだと思うのです。  そういう意味で、私は、これから具体的な政策をきめるときには諮問もいたしますし、皆さんの御意見も承ります。国民的英知も集めます。そういう意味で万全の体制をとっていきたい、こう思います。
  230. 西田八郎

    ○西田委員 総理のうんちくのある改造論に対する基礎演説というものを聞かしていただきました。しかし、どうもそれを聞いておりましても十分納得し得られないのは、総理も言われるように、やはり都会には都会に住む条件が具備されておるわけです。だから、空がきたのうても、かりに交通が停滞しても、やはり都会へ都会へと出てくるわけでありまして、学者はそういったものについて、一つの人間の習癖といいますか、都に向かって集まるというそういう習癖を持っておるといわれておるわけです。したがって、かりにその付近に二十五万都市をこしらえたからといって、完全にそれが、机の上で、鉛筆で配分するようには配分できないと思うのです。しかし、それにはそれなりに、農村に対して、あるいは小規模の都市に対して、住む条件というものをつくっていかなければならないと思うのです。  たとえば、私どものくにへ、出身地へ帰りますと、いなかは六十軒くらいの字でありますならば、何のだれ兵衛がどこへ行っておって、どこへ嫁にいっていつ子供を産んだくらいみんな知っておるわけです。そうして年寄りと顔を合わしても、あれはどこどこの孫でどこどこの子供だということも知っておるわけです。そういう中で若い者は住みにくいわけです。新しい時代というものがそう住みにくくしてしまっているのです。だから、そういうことをどういうふうにして解消していくかということのほうが大切なんですよ。  だから、いま話を聞いておると、東京の空は、何か住みにくくするためにあまりきれいにしないんだという発言に聞こえるわけですけれども、そういう無責任発言では困るのであって、私は列島全体が、もっと人間の生息条件を備えた住みよい場所にするということでなければならぬと思うのです。  しかも、総理の話を聞いておると、現在の公害も交通難も住宅難も、すべて過密がその悪の根源であるかのごとき発想でものを言われるわけですけれども、私は、単なるそういうものではないと思うのです。やはり農村には住みにくい条件があるわけです。その住みにくい条件というものを  帰巣本能によって人間はもとのところへ帰るというのですけれども、しかし、そうではない場合があるわけです。UターンをせずにJターンをするということも起こり得るわけです。ですから、そんなことを考えますならば、やはり自分の生まれた土地、育ってきた土地を住みよいところにするということのほうが、私は大切ではなかろうかというふうに思うわけで、総理の言われるような、工場を再配置したからといって、必ずそこに労働者が定着するということは起こり得ない、むしろ逆の現象が起こるのではないか。その工場へ働きにくるのは、よそから働きにきて、その町の人はほかのところへ働きにいくというような現象がすでに起こっておるわけであります。ですから、そういう点をとらまえても、そう簡単に行なわれるものではないと思うのです。特に私が心配するのは、そういうことによって農業の近代化はおくれはしないかということを非常に懸念をするわけであります。  そこで、私は農林大臣に伺いたいのですが、今後のいわゆる農村政策というか、農業のあり方というものをどのように考えておられるのか、ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  231. 足立篤郎

    ○足立国務大臣 農業の使命は申すまでもなく、国民の食糧を安定的に供給する基地でございます。私は就任以来、高能率高生産の農業を実現したい、また適地適作を徹底していきたいということを申しているわけでございます。  ただいま西田委員御指摘の工業再配置の問題、少し申し上げてよろしゅうございますか。
  232. 西田八郎

    ○西田委員 いいです。
  233. 足立篤郎

    ○足立国務大臣 工業再配置の問題と農業の改善の問題が相反しはしないかという御説でございますが、実は私、決して総理におべっかを使うわけでも何でもない。やはり工業の再配置、これはすでに国会で通していただいた農村工業導入促進法がその趣旨でございますので、この導入促進法の線に沿って計画的に工業が農村に入ってくるということは、今日の農業問題を解決するには非常に有力な武器になるというふうに私は考えております。  一例を申し上げるとよく御理解いただけると思うのでありますが、私の郷里のすぐ近くに、選挙区が違いますけれども、大浜町という町がございまして、十年くらい前に町長が先に立って、自分らの町づくりとして、根本的にその土地利用から始まりまして計画をやり直したのです。それで、町民全部、特に農民については毎晩のように各部落で会合を開いて、おまえはこういう工場が来ればそこで働くかどうか、なお農業をやりたいというならば、果樹で生きるか畜産で生きるか畑作で生きるか、それぞれの希望を聞きまして、その家族構成の労働力も全部調べあげて、そして町づくりの計画を立てたわけですね。この地域は商業地帯、この地域は住宅地帯、この地域は工業導入地帯、この地域はいわゆる水田地帯、それから畑作地帯、果樹地帯、こういうふうに計画を分けまして、その線に沿って進めてまいりました結果、非常に目ざましい成果があらわれているわけでございまして、たとえば水田などは構造改善をやりまして、機械を導入して、いままで百二十人丸くらいでつくっておった水田を団地化しまして、そして五、六人のオペレーターが全部引き受けて耕作をやっておる。その土地を供出した農民は、まあ地主でございますが、同時に組合員でもあるわけでございまして、その代表が全部取りしきって、幾ら経費がかかった、そこで収穫から差し引きまして配当をやる、こういうシステムになっておりまして、非常に高能率な農業ができたわけです。また工場へ通う者は、自分の農地を提供することによって飯米は確保できる。そして工場から賃金を取ることによって生活はより安定する。また農業専業で生きる人間は、果樹なり畜産なり畑作なり施設園芸なり、そういう方面に伸びていって、そこで所得を得て、一番手間ひまのかかる、どろんこになってやらなければならない水田は機械にまかせて構造改善ができた、こういう実例がございましてい全国の一つのモデル地区になっております。  私はやはり、北海道のように広漠たる開墾の余地のあるところは別として、内地におきましては、これからこうした考え方で農村の環境整備というものを根本的にやり直さなければならぬ。これが私は日本列島改造の農村版だというふうに信じております。   〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕  したがって、こういう政策を進めていきたいと思う際に、果樹とか畜産とか、そういう特殊な専業だけではなかなか労力の配分がつきませんので、やはり工業を計画的に持ってきて、そこに働く道をつくるということによって、いま申し上げた、水田農業を機械化し合理化することができる、こういうふうに考えておりますので、これをうまく計画的に持っていけば、工場再配置というのは農業問題を解決する一つの大きな武器になる、こういうふうに考えておりますことを申し上げたいと思います。
  234. 西田八郎

    ○西田委員 農林大臣の大演説を聞かしていただきました。しかし農林大臣、それは特殊なケースですよ。まだやはり農民というのは土地に執着しているわけです。ですから、自分の農地をなかなか放そうとしないし、自分の持っている田畑を人に耕してもらうということに対する不安感を持っているわけです。それは、長い間小作人としてその生活をしいたげられてきた農民には、何年かかかって、この土地がせめてわが土地になったらという執念があったわけですよ。その土地が農地解放によって自分のものになったわけです。ですから、なかなかそれを手放すということは簡単にはいかないのです。  それは構造改善について私も、私のほうは最近工業生産のほうが多くなりましたけれども、まだやはり農村地帯なんです。そこへ行って説明すれば、おれのたんぼは一反八俵とれるのに、六俵しかとれぬやつと一緒にできるかというのが偽らざる農民の感情だと私は思うのです。ですから、そうした農民の感情を無視してやれない。まず基盤をつくって、そういう体制をとろうということができてからそこに工場を持っていけば別ですよ。ところが、工場を持っていけば、工場で小づかいはもらえるわ、そして片一方で飯米はとるわということになって、半農半工というのがますます助長されることになるわけです。その辺のところ、農業政策がおくれているのを工業の再配置でカバーしようということは無理ですよ。まず農業政策を進めて、そこで必要な計画のマスタープランをつくって、そこで工場を誘致するなり、工業再配置に基づいて工場を持ってくるということになれば、それは私は、いまおっしゃるような点ができると思うのです。しかし私は、今日の形ではそれができないと思う。しかも、工場を設置するということになれば、やはり町の中心部をとられるわけです。これは農村への中央突破ということになるわけです。農林大臣がおっしゃるようなケースは特殊ケース、なかなかそうはいかないと思うのですが、どうですか。
  235. 足立篤郎

    ○足立国務大臣 農民には先祖伝来の土地に対する異常な執着のあることもよく存じておりますし、また西田委員が御指摘のような点も確かにございます。しかし現実は、やはり耕地面積が日本はあまりにも零細でございまして、かりに協業化をやって機械化をやりましても、一人頭の所得というものはふえるわけではないのであります。むしろ機械など入れれば償却なんかがかかりまして、金がかかるという不平さえもあるわけでございまして、問題は、工業なり、あるいはいま申し上げた畜産とか果樹とか施設園芸とか、そういう専業方面に伸びていく道のあるところと、東北、北陸方面のように、なかなかいままで、それこそ日本列島改造でもやらなければ工場が来てくれなかったというようなところと、非常に条件が違うわけでございまして、私は静岡県でございますし、いわゆる東海ベルト地帯で工場がどんどん参っておりますので、そういう自然的な条件がどんどん整備されてまいっております。したがいまして、昔では大農といわれた一町五反ぐらいつくっている農家でも、いまは日曜百姓になってしまっているわけですね。そして農協に頼んで、大きなトラクターで耕作してもらって、一種の作業請負をしてもらって、収穫だけは自分がとる、こういう仕組みになっていますから、そういうところでは圃場整備をやって機械が入るような条件、基盤整備をやってやれば、わりあい協業化が進みやすいわけでございまして、農民の頭も進んでまいりますので、わりあいとわれわれの言うことがよくわかってもらえる。  そういう基礎的な条件を整えていくということがなかなかたいへんでございますから、それは日本列島改造のような大きな構想でもっていけば、いままでそういうチャンスに恵まれなかったところでも、だんだん農民が啓発されてくる。私は、機械化こそ将来の農業に夢を持たせるものだ、それでなければ、とても国際競争も何もできないというふうに考えております。
  236. 西田八郎

    ○西田委員 それに対して、いままでどういう手を打ってきたかといえば、いま一番困っておるのは農村じゃないですか。しかも米作だけで、ほとんど米作一辺倒で押されてきた日本の農業ですよ。米をとることを奨励された農民が、今度は米をとらざることを奨励されておるというような実態になっているんじゃないですか。先にそれをやるということのほうが肝心ではなかったんですか。農業基本法ができてから今日までもう数年たっわけですよ。その間に幾つの改造ができておるのですか。構造改善はほとんど進んでいないですよ。それで、付近の一番いい、特殊なケースだけを発表して、農業政策は進んでおるんだというようなものの言い方は、私は農林大臣としては不謹慎だと思うのです。もっとほんとうに総合農政、いわゆる新しい農業の近代化に取り組むとするならば——私はもう工業はピークにきておると思うのです。工業生産を上げるという点についてはもうピークにきておるのではないか。公害もそうです。第一日本の一平方キロ当たりの工業生産額というものは、アメリカに比べてもすでに数十倍になってきておるわけですよ。だから私は、やはり農業が、あなたのおっしゃるとおり国の基幹産業であるとするならば、もっと力を入れておくべきだったと思うのです。  それを、いま日本列島改造論に鶏口して、改造論をやれば農村もよくなるんだというような言い方は、私は少しふに落ちざるところがあります。それならそれで、私は農業政策についてもっと積極的な姿勢を望みたい。今回は臨時国会でありますから、その点について、通常国会における政府の農業政策のお手並みを拝見いたしたいというふうに思うわけであります。  そして、少なくとも食糧自給率を、政府は八〇%とおっしゃいますが、もっと高めるということが必要ではなかろうか。今日米は余っておるというけれども、もしも小麦が入ってこないということになって、パン食その他がなくなった場合、一体どうなるか。私は、そういうことになれば米は足りなくなると思うのです。ただそうしたことを前提に置いてものごとを考えるということは、私は危険だと思う。そういう点で、食糧の自給率、特に農業は食糧を生産する産業であるという立場に立って、もっと手厚い、しかもきめこまかい政策というものが早くから推進しておかれるべきだったと思うわけであります。ひとつ農林大臣の、今後の手腕を期待をいたしたいと思います。  そこで、首相に伺うわけですが、資本主義というものはやはり集中的に生産するのが一つの原理だといわれておるわけです。それを改造論でずたずたにしてしまうと、効果がはたしてあがるかどうかということと、もう一つは、公害という面があると思うのですね。これは現在、東京もあるいは神奈川も、そして四日市も水島も鹿島も、公害で非常に困っておるわけで、それをいろいろと手をかえ品をかえて規制をしてこられたわけですが、一向よくならぬ。そこで、一つや二つの工場を間引きしたからといって、それがいかほど公害防除というものに役に立つのかという問題がありますし、さらに、それらのものを移されたほうでは、今度は無公害地域が多少なりの公害を受けるわけであります。そして、新たにむつ小川原等の開発も進んでおりますが、そうしたところで新しい工業基地が開発されるということになれば、当然そこにまた公害というものが起こってくる。  それを、首相が無公害基地にするとおっしゃるけれども、しかし、今日の科学技術をもってしてはどうにもならない脱硫の問題や、あるいは水の第三次処理の問題等があるわけです。したがって、この問題は、その集中の原理に反すると同時に、公害を拡散するということになると思うが、これに対して首相は、そういうことに絶対しないという約束がしてもらえるかどうか。
  237. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 公害の拡散には絶対にしません。それからもう一つは、これから工業というのは、幾ばくかずつでもやはり大きくなっていきます。一〇%伸びなくても五%、五%伸びなくても〇.五%でも、とにかく幾らかずつでも大きくなっていくということは事実でございます。いまでさえも公害が起こっておるのでございますから、幾ばくかでも大きくなっていく生産施設というものから公害を排出しないように、万全な体制を整えなければならぬことは言うまでもない。それだから、大気汚染防止法、水の汚濁防止法、それから工場法等の成立を要求されておるわけです。また、工場の立地制限とか、それから廃棄物の総量制限とか、東京湾上に流されておる、毎日毎日空気中に放出されておる公害物質、これはおそるべきトン数になっておるわけであります。  そういう意味から考えてみても、これをなくさなければならぬ。いま現に東京でもって百万トンというようなものが、あとから数字を申し上げますが、おそるべきものが空気中に排出をされているわけです。これをなくさなければならぬ。そのためには排出基準をきびしくする、総量規制を行なう、工場を間引きしなければならぬ、場合によっては重油をたくのを全部やめさせなければならぬ。だから、東京や大阪においては、もう重油を発電のためにたくことができなくてナフサをたかなければならぬ、こういっておるわけですから、これはナフサをたけば、重油とナフサとの差額だけはコストが上がるのですから、物価にはね返るにきまっております。物価にはね返るよりも生命を危険から守らなければならない、公害基準をきびしくしなければならぬ、これはもう当然のことなんです。ですから、生産第一主義というものから成長活用型の社会環境を整備し、生活第一主義に転換をしなければなりません、こう言っておるわけです。  それで、事業そのもの、産業そのものの内容も重化学工業中心であって、原料を持ってきて、それを精製するためには膨大もない空気汚染や水の汚染をやる、社会環境を破壊するというのじゃ困るから、知識集約的な産業にいかなければならぬと思います。知識集約産業とは何か。これは重工業ですと、やはりデルタ地帯とか湾とか河口でないとなかなかだめなんです、材料を持ってきますから。今度内陸工業にだんだん移っていくとどうなるかというと、原材料が少なくて付加価値の高い商品を生産する。これは知識集約的な産業といえばそうであります。そうすれば、そんな例はあるのか。あります。同じヨーロッパでも、重化学工業というのはロンドンを中心にする。イギリスは重化学工業中心でございますし、それからスイスは知識集約的産業であります。だからスイスの空は青い。こういうようなものを内陸的産業として転換をしていかなければならぬ、こういうのでありまして、荒唐無稽なことを言っているわけじゃないのです。そうせざるを得ないのであります。  ですからこれから、いまの工場さえも全部やめてもいいんだ、工場は一切もう増設はしないのだということではわれわれの生活がよくなるわけがないのでございまして、賃金も上がっていかなければいかぬし、社会保障も拡充をしなければいかぬしということになれば、どうしてもコンスタントに、ある意味の成長をしなければいかぬ。しかし、成長というものは一切公害をなくするような産業形態でなければいかぬし、またそういうようにきびしい基準でなければなりません。これは、いまのままでも、公害を出さないようにびしびしと公害基準をきびしくしていかなければならないのでありますから、これから全国的な二次産業比率を上げるということが公害の拡散だということは、これは間違いなんです。これは党派を越えて、拡散になるようなことはもう絶対にだめなんです。拡散になるようなことはだめなんです。そういうことをひとつ十分御理解の上、御理解をいただきたい。
  238. 西田八郎

    ○西田委員 どうもみずからお答えを出されたようで、拡散ではだめだ、こういうことらしいですが、全くそのとおりで、拡散はしていただきたくないと思うのです。ただ私は、それならば、いま開発途上、しかも石油コンビナートの有力な新しい基地として開発されておるむつ小川原、あるいはその開発予定地となっておる志布志湾、周防灘、あるいは秋田の海岸ですね、こういうところの開発は今後やめますか。
  239. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そういう極端な話でもって片づくと思ったら間違いです。人間というのは悠久な生命を持って今日あるのでしょう。そんな極端な話をしては、これはあなたもそんなことは百も承知をしておられるのでありますから、私もそう腹が立つわけじゃありませんが、しかし、明治百年ずっとやりますと、東京、大阪、名古屋というのが一番いい例でありますから申し上げわるけです。四つ目には福岡だったのです。福岡とか北九州であります。五つ目というと、各県における県庁の所在地。これはそれなりの集まる理由があったのです。経済的にも、経済原則からいっても、集まれば有利だったということで集まってきたわけです。  それで、今度第二の段階、近代的なコンビナート、石油コンビナートのようなものは、ただ東京や大阪に集まるというようなものではだめなんです。この近代的なコンビナートとして必要であるということで考えられたのが、北海道の苫小牧であり、鹿島であり、それから四日市であり、水島であり、大分湾であります。ですからこれは、明治からずっとやってきたものよりもはるかに近代的であり、合理的だった。しかし、少し近代性もあるし、いろいろな面からも検討したものではあるが、確かに複合公害というような問題には、無知であったというのじゃないですが、まだ公害問題がそれほどやかましくなかったので、総排出量の規制とか、複合公害とか、無過失賠償責任というものを全然前提にしない一つのコンビナート計画をやられたので、四日市が出てきた。第二は、今度水島をもう少し拡大しようというと、四日市と同じ問題が出ないかという問題が出てきた。もう一つは、今度、いまの洞海湾の問題とか、それから大分の問題とかが出てきておるわけです。それに今度付随して行なわれておるのが、いまの志布志湾であり、橘湾であり、陸奥湾であります。  そういうことで、八十年、七十五年ぐらいかかったものを、戦後の二十五年、二十年、逆算してちょうどこの十年ぐらいの間でもってできているものに、それなりの合理性があります。合理性がありますが、新しい日本の産業と公害を考える場合、まだ非常に調整を必要とする状態である。だから、いい例がたくさん出たわけですから、今度はかかるものを全部前提として、それで公害を起こさない将来の日本、これは昭和六十年展望などというのですが、われわれの子供や孫の時代から考えると、まだ何百年も何千年も続くのです。ですから、十年や十五年のことで工場法をつくっていったら、工場ができなくなる。そんな考え考えておったら、日本の経営ができるはずがありません。そんなことはないのです。いまよりももっともっと大きくなって、生産も国民所得ももっと大きくなります。なりますが、マイナス面は全部除去しなければいかぬ。この除去する手段はどうか。これはお互いにひとつ知恵を出し合いましょう、こう言っているのですから、ひとつ知恵をお貸しください。
  240. 西田八郎

    ○西田委員 どうも首相の得意の、おまえ提案出せ、おまえ対案出せということで、何か人を煙に巻くような答弁のように思うのです。先ほどの、経済成長が一〇%の場合もあるし、五%の場合もあるし、〇・五%の場合もある、人間が成長すると同じように、やはり経済も成長しないと社会は発展しないんだ。その論理は、私は否定しようとは思いません。しかし、いま考えておられるのは高成長、その利用法ということで高福祉ということを訴えておられるわけでしょう。  そこで、はたしてどれだけの成長率というものを見込んでおられるのかという点が非常に大きな疑問になってくるわけですよ。一体どれくらいの成長率を見込んでこの日本列島を改造しようとしておられるのか。
  241. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私が「日本列島改造論」をものするときに、これは都市政策大綱のときもそうでございましたが、やはり七%から一〇%というものを下ることは、六十年まではないんじゃないかというおおよその感じだったのです。それはいままで十五、六年間の実績を前提にして考えたわけであります。昭和二十九年から三十九年までは平均一〇・四%成長であります。それから三十五年から四十五年の十カ年間をとると一一・一%であります。そうすると、二十九年から四十五年までの間に一〇・五%以上の高度成長を続けたわけですから、世界に類例のない高度成長だった、こう御指摘を受けるのはやむを得ません。それですから、去年は六%であっても、ことしはもうすぐ、七・二%というたが一〇%になるかもしらぬ、こういうのでありますから、まあ二次、三次産業まで全部含めての国民総生産計算をやっておる現状において、七%以下ということになると非常にむずかしい。不況感とかいろんな問題が起こるだろう。だから一〇%ということで、私は、一〇%成長を続けると三百四兆円、八・五%成長を続けると二百四十八兆円、こういうふうにしてずっと出したわけです。  政府は、ことしは七・二%といっておりますが、これは非常に国会議論を呼ぶと思いますけれども、長期経済見通し、長期経済計画というものが出てくる。私は諮問しておるのですから、何が出てくるかわからぬわけです。わからないのですが、七%以下というものが出てくるような気はどうしてもいたしません。ですから、まあ一〇%成長を六十年まで続けると、二次産業、いわゆる鉱工業生産は二百七十三兆円、こういうふうに出しておりますが、それは大きいでしょう。それは、二次産業と三次産業との区分がどう違うか、これは、いろいろ今度の公害問題とかいろんな問題が起こってまいりますから、調整をしていかなければならぬ問題だと思いますが、いまの計算のしかたでまいりますと、国民総生産七%以下ということでは、われわれの生活自体が合理的な状態で維持していけないんじゃないか、こういわれます。これは、この間中国へ渡りましたときに、日中の間でもって議論しましたときも、中国は、三次産業成長というものを落として、二次産業だけの成長率でもって比較をしておりますが、日本はそういうわけにいかぬと思うのです。いまの状態で計算をすると、七%成長を落とすということで一体やっていけるのかな、私は現在の状態ではそう感じます。
  242. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、七%以上ということですね。そうしますと、現在の総生産額よりも大体少なくても二倍近くになるわけですね。そうですね、六十年までですから。しかし、そう品物をたくさんつくって、一体どこでそれを売りさばくつもりをしておられるわけですか。そうでなくてさえ、日本の製品に対して相当いろいろな批判が出てきておるわけですよ。一体それに対して、どこへどういうふうにして売りさばくつもりをしておられるのか。
  243. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いま申し上げた七%ないし一〇%、いまの形態そのままを延ばして申し上げたわけです。そこに、今度の国際収支問題を根本的に議論すると、そういう問題が起こってまいります。  両三年以内に国民総生産の一%以内に経常収支の黒字幅を押え切れるかどうかという問題になりますと、いままでのような状態だけを考えて国際社会の中で日本の地位が保てるかどうか、こういう問題があります。まあ説をなす人は、それはいまどうにもならないから、いまある外貨を国際機関に寄付をすればいいんだ、こういう荒っぽい考え方を出す人もあります。これは一つの見識だと思います、私も。非常事態、非常な体制で考えれば、私はそういうこともあり得ると思います。しかし、何にしてもよそに出すことよりも、いま毎日論じておる社会保障やいろいろなことを考えてみて、まだわれわれがやらなければならない問題が山積しておるじゃありませんか。そういう意味から考えると、あんまり学者の言うように、すぱっと割り切って政治家はできない。特に国民の生命、財産を預かっておる政府の主管者としては、そう簡単に右左にはいけないわけです。  そうすると、可能な限りどう考えるのかというと、いままではまあ議論の上ではやっておりました国際協調とか国際分業とかは、日本の農村、さっきあなたが述べられた農村の状態を考えて、国際分業はできるはずはない。自由化ができないといっておれば、これはもう経常収支をGNPの一%の中に押えられるはずはありません。そういう問題もあります。そうすると、もう一つは資源国と日本との間をどうするかという問題が第二段目に浮かぶわけです。そうすると、原材料全部入れてきて公害をばらまく——ばらまくじゃないが、あなた方にあまり言われるものですから、私までつり込まれてそう言うわけでありますが、公害、公害とかくもいわれておる中で、なおこの上に公害を起こすのか。これはそういう意味からいうと、いままで現地から要求されておる、二次製品として入れなさい、こういうこと。現地製錬を行なえ。これは価格が下がるということでできなかったのです、人件費が非常にアンバランスでありますから。どうにもできなかったのですが、しかし、本質的な問題とすれば、そのような問題も考えざるを得ない、特に先ほど申し上げたように、知識集約的な産業、二次製品を入れて三次加工をするというような、とにかくいままでよりも全く正面を変えるという問題になりますと、まあ、そこまで考えなければいかぬのかなと、私はそこまでは考えてはおります。  ただこれは、日本の産業の構造改善にもつながりますし、失業問題や労働問題にも全部密着した問題なんで、この問題、私だけの考えをここで述べるわけにはまいらない。それこそ確定した原案を持たずして言って、労働界を混乱さしたら責任をどうするか、こういう問題になるのでして、それはなかなかできません。それこそ社会党や民社党の皆さんとよく相談をして、それはやむを得ぬ、やむを得ぬ、こういう状態にやはり国論がそこへいかなければならないのです。  そういう意味で、今度の長期経済見通しを答申されるときには、私がいま述べたようなものも含んで答申があるんじゃないか、またそういうものが望ましい、こういうふうに考えております。
  244. 西田八郎

    ○西田委員 これ以上首相とやりとりしておっても、どうも平行線をたどってどうにもならぬし、最後になると、一体、高度成長を唱えておられるのか、安定成長ということを言うておられるのか、どちらか、どうなるのか、さっぱり判断に迷うような答弁が出た。そこで、最後におっしゃったように、これからやるんだ、こういうことですから、これからやられるなら、これからやられる点を十分拝見さしていただいて、その上で私はまたその機会にひとつ質問をし、討論をしたいと思います。  ただ問題は、やはり私どもの、しかも国民の受けておるそのイメージというのは、日本列島改造論でとてつもない日本ができ上がるのだというイメージが強いということだけは、首相は心しておいてほしいと思う。いわゆるコンクリート、鉄筋で固められてしまった列島になるのではないかという心配をみなが持っておるわけですから、そういう点のないように、ひとつ今後のいろいろな施策の上で、具体的にいま首相のおっしゃったような点を事実でもって証明をしていただくように希望をいたしておきまして、私は福祉問題に触れたいと思います。  いま言われましたように、われわれの生活の中で重要なものは何かといえば、それはやはり自分たちの生活を守っていくことであり、そしてしあわせを守ることだと思うのです。これは人類が何千年という長い歴史にわたって積み重ねてきたまた一つの歴史でもあるわけであります。   〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、その人間がより豊かに、より快適に住むためには一体どうしたらいいかということで、いろいろなものに改良、改善が加えられて今日の文明というものがつくり上げられてきたように思うわけであります。生産もそれのらち外ではないと思うのです。それであるにもかかわらず、生産だけが重点に置かれてきて、今日、人間の生活というものが非常にないがしろにしてこられた。公害一つとってみても、これは初めからわかっていることなんです。硫黄分の多い——日本はとにかく石油戦争では立ちおくれているわけですから、その硫黄分の多い石油を持ってきて精製すれば、亜硫酸ガスが出るのはきまっている。その亜硫酸ガスは人体にきわめて悪い影響を及ぼすことは、こんなこと、いまになってわかったことではなくして昔からわかっていることなんです。それにもかかわらず生産を続けてきて、今日四日市等ではぜんそく患者が何百人と出ている。それで最終的にはああした四日市判決というような形になって企業の責任を問われてきておるわけでありますけれども、それは私は、そういうことを無理をしいて、国民の生命や財産にまで悪い影響を及ぼすような生産は、ほんとうの意味の生産ではないと思うのです。やはり生産は、人間がよりしあわせになるために、より豊かな生活をするために、そのために行なわれなければならないと思うのです。  したがって、その首相の論法からいけば、高生産でなければ高福祉は守れぬじゃないかとおっしゃるけれども、私は、福祉を守るために生産は行なわれなければならないという、発想の転換というものを求めるわけでありますが、それについて総理は、やはり高成長高福祉と言われるのか、高福祉を実現するために生産は必要だというふうに理解されるか。
  245. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 学問的な問題を述べたわけでございまして、高福祉高負担、それから成長を活用していかなければ福祉の完成はできないし、福祉と成長は両立ができる、これは学問的に私は述べたつもりです。  しかし、それがいままでのように、重化学工業中心の十六、七年間も続いた平均成長率一〇%以上、これは高度成長だと思います。私はそう考えておりません。私は池田内閣、高度成長内閣の大蔵大臣でもございましたし、それから安定成長内閣の通産大臣でもございましたが、今度はやはり、成長という一段階が過ぎたわけです。いつも申し上げておりますように、国民所得においては西欧諸国と比肩するようになりました。それから国民福祉の問題も、制度においては西欧諸国と比肩するようになりました。内容は二分の一ないし三分の一でありますから、これを今度は福祉重点、生活中心ということにしなければなりません。公害は出しませんと言ったって、それはいまあるものをなくするために全力をあげ、新しいものは公害の拡散には絶対にしない、こう言っているわけでありますから、その限りにおいて安定成長、いままでの考えからいうと真に安定成長、こう見るのが正しいと思います。  去年は不景気だといいましたが、六%だったでしょう。今度もまた、不景気感を脱しないといっても一〇%だというのでありますが、しかし、付加価値の高い知識集約産業に移った過程における成長、安定成長というものは、私はおのずからはじき出して出し得るものだと思います。これはもう言うなれば真に安定成長であって、高度成長というたぐいのものではないというふうにひとつ……。  特に私は、自民党の都市政策大綱を書きましたときと、私が列島改造の執筆をし始めたときといまとの段階では、公害問題とか福祉問題とか、いろいろな問題に対しても非常に変わってきておりますし、特に長期経済見通しも新しく諮問をしなければならない状態にあるということですから、やはり字句は読み直しということでひとつ御理解を賜わりたい。
  246. 西田八郎

    ○西田委員 福祉問題について触れたわけですが、その前に、やはりそういう御答弁をいただくと一言申し上げておかなければならぬと思うのは、知識集約産業、知識集約産業ということで、非常に論点をそこに置いて、重要な論点としておられるようですが、知識集約産業が、はたしておっしゃるような形において成長をもたらすほどの大きな生産に寄与できるかどうか、非常に私は疑問だと思うのです。それはおっしゃるように、確かに付加価値の高いものをつくるということですけれども、いずれにしても日本の場合は資源に乏しいわけでありまして、資源は全部外国に仰がなければならぬということであります。したがって、そうしたところでメリットが出てくれば、必ず資源高というデメリットも出てくるわけですよ。ですから、そう簡単に私はいかないと思うのです。  ただ問題は、ある程度そうした方向へ転換をしていかなければならないものだと思うのです。たとえば、その知識集約産業というのは、簡単にいえば数人の人の頭脳をもって、数十万あるいは数百万の国民の所得と匹敵するくらいのものをあげるということでなければならぬと思うのです。いわゆる新しい商品の開発であるとか、技術の開発といったような点に重点を置いて、そこに非常に付加価値の高いものを求めていくという形をとらなければならぬと思うのですが、私は、なかなかそうしたものは、首相のおっしゃるように簡単にできるものではないと思うのです。したがって、やはり一億という国民が何らかの形において職についていかなければならぬわけですから、そうなれば、やはり日本の産業構造の特質といわれておる中小企業問題等もあるわけですよ。特に今日、これは首相とも前国会でだいぶんやりとりした繊維の問題等もあるわけですね。そうしたものが、労働集約的な産業というものが、そう簡単に装置化されてできるものではないわけです。かなりな省力投資をされておっても、それが効果を発揮するまでにはかなりの年限が必要となるわけでありまして、そうしたものを一体どうするかという問題も当然発生してくるわけでありますから、そう簡単にできるものではない。すでに特繊法が制定されてから六年目に入っておるし、近促法ができてからも数年を経ておるわけです。それでもまだ中小企業の近代化はそう進んでいないし、繊維の構造改善も進んでいないというような現実の状態の中から、そう一足飛びに私はいけるものではないと思うわけであります。したがって、そうした点はやはり真剣に考えつつやっていかなければならない問題だというふうに私は考えます。したがって、これは答弁を必要としませんが、私はそういう考え方だ。それよりももっと重要なのは、一億国民のしあわせをどう守っていくかという問題だと思うのです。  だいぶん時間をとりまして、ほとんど質問時間がなくなってまいりましたから、個条的にお伺いをいたしたいと思いますが、まず老人対策であります。  この日本の人口の老齢化というのは、欧米が百年かかってたどってきた道を二十五年という短い期間で達成をしてしまったわけであります。しかも、私どもが兵隊から帰ってきて荒廃たる日本の土地を踏んだときには、まだ人生五十年だった。二十五年前には人生五十年であったのが、いまは人生七十年。しかも、世の中の仕組みというものは、人生五十年を一つの基礎としたパターンになっておるわけです。それを早急に人生七十年のパターンに変えていかなければならないわけであります。したがって、ここにはかなりなやはり集中した政策が実行されなければならないと思うのです。ところが現在、老人の老齢福祉年金はわずか三千三百円。私は前首相の佐藤さんにもこのことで質問をしたわけでありますけれども、二千三百円であったのが千円上げた。それが千円上がったからといって四十何%の上昇率だと、率だけで言われるけれども、今日一体三千三百円で何が買えるか。ネクタイ一本買ったって三千円するのです。高いネクタイなら五千円も六千円もする。そういう時代に、七十歳を過ぎた老人に対して月々支給される金がわずか三千三百円で、それでいいのかどうか。私はここに大きな問題をかかえておると思うのです。  また、拠出制の年金にそれぞれ加入しておられる人たちも、国家公務員、地方公務員、さらには産業労働者、あるいはまたそうした労働者職場に入っていない人、いわゆる国民年金の適格者等、たくさんあるわけですけれども、それらの年金の額が非常に大きな開きがあるわけです。しかも、その年金をもらって老後を安心して暮らすというような体制にはなっていない。私は、これに早急に対策を立て、それこそ首相のおっしゃる英断と実行をしなければならない時期に来ておると思うのですが、首相、これについてどうお考えになるか。
  247. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ただいま冒頭から御指摘がありましたとおり、わずか二十五年で平均寿命が二十何年延長したというのは事実でございまして、したがって今後老人対策、老人全般に対する対策につきまして、飛躍的な向上をはかっていかなければならぬということ、全く私も同感でございます。  年金制度につきましては、御指摘がございましたが、いろいろ問題をかかえておるわけでございます。いずれお尋ねがあるかと思いまするが、私どもは、大体年金の給付水準を大幅に引き上げなければならぬということで、かねがね審議会にも意見を求めておったわけでございまするが、こういう意見も出まして、明年度は、ぜひとも各種年金等につきまして大幅な改善をいたしたいということで、目下鋭意これが対策をつくるべく努力中でございます。
  248. 西田八郎

    ○西田委員 そこで厚生大臣、もうちょっと具体的に聞きたいのですが、その老齢福祉年金を少なくとも一万円くらいまで引き上げるという気持ちをお持ちですか。
  249. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 金額につきましては、まだ政府部内の調整を要することは御承知のとおりでございまするが、かねて自民党におきましては一万円を目標にして、さしあたり五千円にするというような政策を発表されておるわけでございまして、私ども自民党の一員でございますし、こういった目標の実現に向かって努力をいたしたいと思います。
  250. 西田八郎

    ○西田委員 厚生大臣ではなかなかお答えしにくいと思うのです。厚生省自身はできるだけ高いほうがいいのですから、高くしたいという希望があるでしょうけれども、財政の担当のほうでこれに対する締めつけもございましょう。たとえば、今度の厚生年金の基金の還元についても、還元融資について普通の金利と同じように利率を下げておられる。そしてその減収が大体五十億近くになっておるというようなことから考えると、大蔵省非常にきびしいようでありますけれども、大蔵大臣どうですか、いまの厚生大臣の、できるだけ一万円にしたいという希望なんですけれども、それに対して御努力願えるかどうか。
  251. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいまのところ、まだ来年度の収入その他についての十分なる検討をまとめておりませんので、そのために、この際に確実な具体的数字を申し上げることは困難でありますが、将来計画としてはどうしても考えていきたい問題である、かようには考えております。
  252. 西田八郎

    ○西田委員 将来というとずいぶん長いのですがね。大臣、ちょっとおすわりになる前に、大体どれくらいのめどを立てておられるか。いま厚生大臣は最初五千円、そして一万円、こうおっしゃるわけだ。しかし、それを私は一万円に一足飛びに飛んでくれと、こう言うておるわけですよ。ですからその辺のところ、いつごろか。
  253. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいまの私の見通しといたしましては、五千円の問題はぜひとも実現したいと思いますが、一万円まで飛び越すことは困難かと考えております。しかし、十二分に検討をいたすつもりでおります。
  254. 西田八郎

    ○西田委員 首相、いまお聞きのとおりです。とにかく老齢福祉年金を一万円にすることさえこういう状態なんですよね。こんなことで、先ほどおっしゃるように福祉という問題がはたしてとらえられるかどうか。今日の六十歳以上というと、ちょうど明治の末期、四十四年生まれですかの人以上ということになって、明治時代の人が全部ということになる。そうすると明治時代の人は、いわゆるシベリア出兵から始まって満州事変、支那事変、そうして太平洋戦争、非常に日本の起伏の激しい時代に日本をかかえ、ささえられ、しかも終戦というとてつもない、予想もしなかった大きなショック、それによってめちゃくちゃになった経済、それをちょうど三十五歳、年いっている人で四十五歳、人間の働き盛りにショックを受けて、二十七年間営々として働いてきた人たちであります。その人たちがあって、今日のわれわれのいまの高度経済成長というものの基盤ができたわけであります。  そうだとするならば、その成長の還元は、現在の老齢福祉年金の受給者に対して与えてあたりまえだと私は思うのです。それに対して、一体総理は英断をもって最低一万円の支給をするのかどうか、ひとつお聞かせいただきたい。
  255. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 来年は年金の年にしたいということで、鋭意いま検討を続けておるわけでございます。厚生年金、国民年金等の問題もございますが、特にその中で老人福祉年金という問題に対しては、これは何とかしたいということで、ことしは二千三百円から三千三百円に上げたわけでございますが、それで千二百六十四億円の財源を必要としておるのであります。来年度とにかくどのようにかかるのかということで、いまちょっとそこで計算をしてみたのでありますが、五千円にして十月からやる、ことし十月からでありますから、十月からちょうど一年ずらして五千円に上げると二千九十三億円かかる。これを一万円にすると幾らかかるのかというと五千六百七十二億円ということでございます。これは先の短い老人の皆さまに対することでございますから、これはほんとうに第一にやらなければならぬことである、私もそう思っております。人のことではありません。われわれだってもうすでにお互いに老境に入りつつある、こういうことでありますから、それは当然そうしなければならぬと思っておりますが、老人の施設の増強の問題もありますし、他の年金の拡充の問題もありますので、四十八年度総予算の編成時期において十分配慮の上、最大な努力を続けてまいりたいということで御了承いただきたい。
  256. 西田八郎

    ○西田委員 総理としては、それでは私の主張というものは一応納得した、だからひとつ努力をする、こういうことですね。  そこで老人問題については、まだ生きがいの問題とか施設の問題、たくさんあるわけでありますが、それらはいずれまた引き続き通常国会も必ず開かれるわけでありますから、その時点で論議するとして、いま問題になっておるのには、一つはミセスパワーの問題があるわけであります。いわゆる高度経済成長ということで、結局家庭の主婦がどんどんと職場に進出してくるというような形で、今日婦人労働者は全産業の就労人口の、雇用労働者の三分の一に達するというようなことになってきておりまして、経済成長の非常な力になっておるわけでありますが、これに対する福祉が十分ではない。  そこで、去る六十八通常国会で勤労婦人福祉法というものができたわけでありますけれども、しかし、それは多くが宣言規定であって、具体的に事業主に義務を負わしたりあるいは政府が義務を負うというような状態にはなっていないわけであります。勤労婦人でさえこういうことでありますから、農業に従事する婦人あるいは自営で自分のうちで商売をしている人、こういう人についてはほとんど福祉というものはないがしろにされておるわけであります。しかし、憲法において男女は同権だというふうにいわれておるわけで、これはあくまでも同権でなければなりませんが、同時に、女性に対しては母権というプラスアルファの権利があるのではないか。したがって子供を産むという、そうした国民的なあるいは人類的な義務を負わされておるものだと私は思うのです。したがって母権を保障するということは、これはきわめて重要な問題ではなかろうか。そしていまある母子福祉法であるとかあるいは労働基準法の中に定めておる婦人条項であるとか、そうしたものを網羅して総括的に母性を保障するという単独立法もあっていいのではないか。そしてすこやかに子供を産み、その子供をすこやかに育て、いわゆる児童憲章にいわれているところの児童に対するこの任務を果たす、こういう意味からも、きわめて重要な問題であるというふうに思うわけでありますが、ひとつ総理から、その母性の保障についての考え方をお聞かせいただきたいと思うのです。
  257. 田村元

    田村国務大臣 勤労婦人福祉法では、母性は尊重さるべきものであるとはっきりうたっておるわけであります。勤労婦人の勤労形態がいかようでありましょうとも、それは尊重されなければならぬことは当然であります。でありますから、その趣旨に沿って今後も一段と進めていきたいと思っております。  御承知のごとく、総理府と共同で、四十七年度、八年度両年度にわたって、婦人問題、特に今日的な問題を調査することになって、現在調査しておるわけであります。調査は正確を期さなければなりませんし、いろいろな問題を示唆してくれると思いますから、これを参考にし、尊重しながら、万全の措置をとっていきたいと思っております。
  258. 西田八郎

    ○西田委員 労働大臣、いまおっしゃった万全の措置というのはどういうことなんですか。いわゆる単独立法ということを私は言っておるわけですよね。それに対して、万全の措置というのはどういうことなんですか。いわゆる立法化するということなのかどうなのか。
  259. 田村元

    田村国務大臣 それは、調査の結果立法化しなければならぬということになれば立法化しなければならぬでしょうし、また、行政措置で十分だということであれば、きめこまかい行政措置をしなければならぬでしょうし、いずれにしても調査結果を見なければ、私からいま何とも言えない。ただ、非常に前向きでこれと取り組んでいくということだけは、明確に申し上げておきたいと思います。
  260. 西田八郎

    ○西田委員 そこで厚生大臣、いまのような御答弁です。しかしこれは、厚生省にも婦人に関するなにがあるわけですけれども、私は一番重要なのは、子供の費用、お産の費用、こうしたものを——自分のために産むと同時に、子供は社会の宝だといわれてきているわけですから、人類のためでもあるわけです。それを個々に負担するということに若干問題があると思うのですが、私どもは早くからお産の費用の国庫負担ということを叫んできたわけであります。大臣、これについてどう考えられるか。
  261. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 お産の費用を全部国費で負担をするということにつきましては、まだ私どものほうで考えが熟しておるわけではございません。  ただ、妊産婦につきましては、特にその生まれてくる子供の健康にも重大な関係がございますので、御承知のとおり、保健所で無料で健康診断をするとか、あるいは低所得者層につきましては、一般の開業医でもこれをやる、あるいは三歳児についてもやるというようなこと、あるいはミルクの配給というような特定のものにつきましてはこの範囲を拡大して、ただいまのところ努力をしていきたいと思っております。
  262. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、する意思はないということですか。
  263. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 意思がないということを申し上げておるわけではございませんが、慎重に検討さしていただきたいと思います。
  264. 西田八郎

    ○西田委員 その慎重に検討というのが、もう非常にあいまいなおことばであって、検討した結果だめだと言われても、これはしかたがないというようなことになってしまうわけです。  それじゃ、健康保険の適用というのはどうお考えになりますか。お産を健康保険に適用するということ。
  265. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 この分べんというのは疾病と認められておりませんので、健康保険の適用外でございます。
  266. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、何だかんだと言っていろいろ説明されたけれども、その説明はいまやっていることを説明しているだけの話であって、将来への展望については全く希望がないのですか。そうした点について、お産の費用は将来やはり国庫で負担するということを原則に踏まえて、そういう方向へひとつ漸進的にでも進みたい、こう言うのなら別ですけれどもね。どうなんですか。
  267. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 分べんの費用等につきましては、すでに各方面から御意見がございまして、これに対して、国費で負担すべきじゃないかというような貴重な意見も出ておるところでございます。ただ、全般的にこれを行なうか、低所得者について順次行なっていくかというような点等もございますので、慎重に検討さしていただきたいということを申し上げたわけでございます。   〔委員長退席、久野委員長代理着席〕
  268. 西田八郎

    ○西田委員 慎重に検討して、いい結論を出してもらいたい。これは数年かかって、全国の妊産婦というか婦人が大きな期待を寄せて、政府に対して訴えていることなんです。いろいろな署名運動もありますけれども、百万近い人の署名を集めたというのは、私はおそらくこれが初めてではなかろうかというふうに思うわけでありまして、そういう点、特に前向きで慎重に検討をしていただきたいと思うわけであります。  次に、労働関係について二、三お伺いをいたしたいと思うのですが、昨日、わが党の和田委員質問に答えて、週休二日制の問題が議論になりました。そこで、週休二日制はいわゆる公務員から先にやるべきではないかという質問に対して、国会の発議によって公務員のその条件は定められる、したがって国会の発議があればと、こういうことでありました。あらためてお伺いするわけでありますが、多数を持っておられる自由民主党の総裁として、また総理として、そうした方向で週休二日制を現実のものとしていくために、具体的な方策を持っておられるかどうか。
  269. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 週休二日制というものについては、きのうも申し上げましたが、先進工業国、世界の一つの流れだと思います。そういう意味で、日本も福祉を充実さしていくということを述べておるわけでございますので、この方面からも週休二日制の実現と前向きに取り組むべきであろうということは申し述べております。  ただ、日本には中小企業、零細企業という特殊なものがございますから、これと全く無関係に週休二日制を進めていくわけにはまいらぬわけです。そういう意味で、日本の実情に合うような方向で週休二日制を実現すべく積極的に努力を続けてまいりますと、こう言っておるわけです。きのう私は、それ以外にもう一言申したわけです。せめて日曜日ぐらいは完全に休養したい、こう申し上げたわけでございます。
  270. 西田八郎

    ○西田委員 では、公務員のほうはそういう形で、総理、なるべく早い時期に、これは野党全部賛成ですから。問題は自民党だけですからね。ですから、その点は早急に提案をしていただくように希望しておきたいと思います。  ついでに、公務員のそういう週休二日制実現ということができてくるならば、当然やはり産業労働者の週休二日制も実施しなければなりませんが、現在労働基準法では、一週四十八時間、週一日、こういう規定が厳然として最低基準として残されておるわけです。労働基準法は昭和二十二年につくられました法律であって、もう二十五年が経過しておるわけであります。当時の日本の産業事情、社会事情と比べて今日の産業事情、社会事情はずいぶん変革をいたしておりますし、また国際的地位もかなり高まっております。先ほど首相は、週休二日制は欧米先進国における一つの流れだとおっしゃったけれども、こんなものはもうすでに済んでおるところであって、いまアメリカでは週休三日制が要求されておる、こういう時代に来ておる。そういうことをひとつ——ほかのことには非常に認識が深いのですけれども、こういう点には非常に認識が浅いようでありますが、ひとつ認識をしていただいて、労働基準法の見直しということについてどうかという点をお伺いしたい。  もう一つは、国家公務員、地方公務員等はストライキの禁止がされておるし、特に電気産業と石炭産業についてのストが規制をされております。   〔久野委員長代理退席、委員長着席〕 これはきわめて今日的ではないと思うわけであります。石炭等につきましては、はたしていわゆる公共的要務を持っておるかどうかという問題もありましょう。そしてまた今日の労働運動からして、保安要員総引き揚げで、重大な危険をそのままさらしてやるというようなことはないと思うのです。むしろ経営者の保安管理の悪さから、先日も石狩で大きな爆発事故が起こっておりますけれども、そういう問題はあったとしても、労働争議がそうしたことを起こし得ることは、今日もうなくなってきております。そうした労働者の意識の向上といいますか、労働組合の質の転換というものはかられておるし、労使関係というものもそういう意味では安定をしてきておるときに、当然憲法で保障されておるところの労働者の団結権を一つ法律によってこれを規制しておくということは、私は、許されざることだと思うのです。憲法違反だという議論もあるわけでありますが、そうしたスト規制ということについて、あわせてこれを排除するというか、改定する意思ありやいなや、お伺いをいたしたいと思います。
  271. 田村元

    田村国務大臣 まず、前段の労働基準法の問題からお答えをいたします。  労働基準法ができましてから仰せのとおり二十五年たっております。でありますから、いろいろと問題点を指摘されておることも事実であります。しかしながら、一体どのような点をどのように扱うか、改正するかということにつきましては、即断を許しませんから、労働基準法研究会という正規の機関がありまして、そこにいま御検討を願っておるというわけであります。  そこで、週休二日の問題でありますけれども、先ほど総理が申しましたように、日本には中小企業、とりわけ零細企業という存在がありますから、法でいきなり縛りつけてしまうということによって経済混乱が起こる、社会不安が起こるということも、現実問題としてわれわれはおそれなければなりません。でありますから、むしろそれよりも、よき労働慣行として定着させるためにこれを行政指導で行なっていく、こういう考え方であります。労働者生活ビジョン懇談会の中間報告にもその点はきわめて明白にうたわれております。非常によい報告でありまして、現実問題をとらえ、しかも理想を追っております。非常にきめこまかいものでありまして、私は感心しておりますが、その報告を尊重しながら強力に進めていきたい、このように思っております。  後段のスト規制法でありますが、これは当初三年の時限立法でつくられたものが、三十一年でありましたか、これが恒久立法になったといういきさつがあります。そうして、その後これといって大きな事件も起こっていないこともまた事実でございます。しかしながら、電気の場合を取り上げて考えてみましても、電気がもし全国的に停電をする、一つの大きなエリアで停電をするということになりますと、国民大衆は、一体何事が起こるのだろうという非常な不安感を持つと思うのです。これは社会不安に通じます。また石炭問題一つとりましても、いまそういう保安問題までほうりっぱなすようなことはしないよとおっしゃいますけれども、事は人命に関する問題であって、われわれは、だろうだけで、地球の全体より重いといわれておる人間の生命を扱うわけにはまいりません。でありますから、目下のところスト規制法につきましては、なお慎重にこれをながめていく。いま早急にスト規制法を廃止する考えは持っておりません。
  272. 西田八郎

    ○西田委員 いまのその考え方は、私は聞き捨てならぬと思うのです。石炭産業労働者でも電気産業労働者でも、日本の産業の発展と国民生活の安定のために働いておるのですよ。停電だとかいわゆる保安放置ということで、危険を与えることを目的としてストライキをやるのじゃないのです。自分たちの生活を守るためにやるんですよ。それを、何かスト規制法をはずしたら、あしたからでも停電されるようなものの言い方がありますか。そういう思想が今日の労使関係を悪化さしておるんですよ。私は、そういう考え方は厳に変えていただきたいと思う。そしてやはり、憲法で保障された正当な行為を許す中において、私は、労使の合理性を求めて話し合いを進めていくという道を進むことこそ必要ではないかと思うのであります。労働大臣としては少し不見識な発言ではなかったかと私は思うのであります。少し語気は荒くなりましたけれども、注意を与えておきたいと思います。そして私は、一日も早くスト規制法は撤廃すべきであるということを再度主張をいたしておきたいと思います。  時間が参りましたようですが、最後に建設大臣に水質保全のことについてお伺いをしたいわけですが、これはもう非常に重要な問題になってきております。もう瀬戸内海も、本年度の赤潮発生率というものはきわめて濃度が高く、しかも回数がふえてきております。また各地域の河川あるいはまた湖沼、特に、いま私の住んでおるところですが、滋賀県の琵琶湖等も非常によごれてきておる。そこで下水道の推進ということがいわれておるわけでありますが、公共下水道をやろうとすれば市町村の負担になるわけであります。これはもう国庫補助率が非常に低いのですが、水質保全するためにはきわめて重要な問題だというようなことで、地方をあげてやっておるわけです。そうなると起債がどんどんふえるというようなことで、地方自治体は非常に困っておるわけですが、もう水をきれいにするということは、先ほども総理がおっしゃったように、公害を防除する一つの重要な柱ではないかと思うのであります。そういう水をきれいにするための下水工事等に対する補助金をもっと引き上げるということについて、建設大臣はお考えになっておるかどうか、伺いたいと思います。
  273. 木村武雄

    ○木村国務大臣 建設行政の中で一番おくれておるのが、やっぱり下水道処理なんですよ。今度田中内閣ができまして、総理の特別なお声がかりで補正予算で千百四十三億円ちょうだいしたのです。しかし、補助率のアップはもうちょっぴりで、申しわけありません。これは何とかもっと多くしたいと、こう思っておりまするけれども、来年度は残念ながら補助率はきわめて少ない。そうでありまするから、ひとつ再来年度思い切ってがんばってみたいと思っておりまするが、それは少ない、それは少ないという声を、どうかもっと多く出してくださるようにお願い申し上げます。これは大蔵大臣の目の前でそういう声を出してもらいますると、あと非常にやりやすくなると思いますから、どうかよろしくお願い申し上げます。
  274. 坪川信三

    坪川委員長 以上で西田君の質疑は終了いたしました。  この際、昨日の安井君の質疑に関し、政府発言を求めます。大河原アメリカ局長
  275. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 昨日、安井委員から御提示いただきました文書につきまして、在京アメリカ大使館に確認した結果を御報告いたします。  御提示いただきました文書は、米陸軍沖繩基地司令部がキャンプ瑞慶覧所在の第五四九需品部隊の兵員二十四名に対しまして、本年六月二十四日ごろから約六十日間、在ベトナム米軍事援助司令部第二八顧問団に出張を命じたものである。第五四九需品部隊は、物資補給のための空輸の監督並びに援助を行なう中隊でありまして、ベトナムへの出張もこの任務を目的としたものであります。  これが米側と確認いたしたところでございまして、以上のとおり、御提示いただきました文書に記載されております内容は、物資補給のための空輸担当員のベトナム出張に関するものでございまして、事前協議対象というふうなものとは全く関係ございません。
  276. 坪川信三

    坪川委員長 安井君の保留分質疑を五分間程度許します。安井君。
  277. 安井吉典

    ○安井委員 この種の、ベトナムへ兵員を送るということが明らかにされた文書を、政府は手に入れたりあるいは見たことはありますか。
  278. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 私は、初めて見た次第でございます。
  279. 安井吉典

    ○安井委員 その文書の中に、暗号と思われる数字あるいはアルファベットを使った部分があるわけです。そういうようなことで、中身の具体的な内容を明確に知りたいのですが、完全な翻訳、日本語で全文がわかるような形で出していただきたいと思います。どうですか。
  280. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 米国の軍の文書でございますので、いろいろ略字が使われておりますが、この文書自体は秘の文書ではございません。また、略字として使われておりますものあるいは数字として使われておりますのは、普通軍隊用語で使われている略字がありますので、私ども手元の資料で十分すぐわかるものもございますし、数字は多くの場合に兵員の認識番号であるというふうなものもございますし、大体の点はすぐでもわかりますけれども、詳細の点につきましては、米側にさらに確認いたしませんとはっきりいたしません。
  281. 安井吉典

    ○安井委員 初めのほうは認識番号やその他なんですが、二枚目のほうのスペシャルインストラクションズというのがありますね。ここの部分の数字なり、それからレターの中身がわからないのですよね。
  282. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 特別指令ということで、(a)と(b)と二つございますけれども、たとえば第一項にございますのは、陸軍の補給指令に掲げる項目に準拠せよということで、陸軍規則三一〇−一〇番の別添Bというふうにございますが、その中で番号が二一、三八、三九云々と書いてございます。それを当たってみますと、たとえば米陸軍省補給指令所の陸軍規則三一〇−一〇の付録Bの中の、たとえば二一と申しますのは、必要があれば宿舎及び食事が提供される。三八と申しますのは、携行品の限度は六十六ポンドのほか必要な公用文書、装備品とするというふうなことがございますし、最後のところに、たとえば各自が出発に先立って免疫証が有効であるかどうかを確かめるものとする、あるいは分割払いや前払いを希望する者は直ちに申し出るものとするというふうに書いてございまして、本人の任務遂行上の庶務的な事項あるいは本人の一身上の事項、こういうものが記載されてあるわけであります。
  283. 安井吉典

    ○安井委員 それでは、それを具体的な中身も明確にしたものをあとでいただきたいと思います。  そこで、私が特にこの問題をここで取り上げた理由は、これは総理外務大臣に伺いたいわけでありますが、いわゆる事前協議制なるもの、これは網の目が大き過ぎて抜け穴だらけで、現実に日米安保条約ができて以来、ただの一度も事前協議の申し出をアメリカがしてきたということはないわけであります。具体的な事例に応じてアメリカがしてこなければいけないと書いてあるにかかわらず、してきていない。ところが、現実にはB52の着陸だとか、あるいはまたKC価による給油だとか、ベトナムへの戦車等の輸送だとか、こういった数多い事例の中で戦争が国民の身近に持ち込まれ、戦争の強烈なにおいの中に国民がさらされる、そういう事例はたくさんあるわけです。  ですから、私が申し上げたいのは、事前協議制そのものを、福田外務大臣は少し洗い直すという言い方をしたこともありました。また、いままでそういうふうなケースはなかったわけではないのだろうが、ただ現実に向こうがしてこなかったという、それだけではなかったか。つまり事前協議という、協議ということばではありますけれども、向こうの一方的な行為だけであって、こっちから申し入れすることはできないのですから、そういうような仕組みそのものの中から、やはり基本的に洗い直しをすべきではないか。そのことなんですよ。そういうような例として、たまたまこれが手に入ったものですから私は申し上げたのですが、このほかたとえば毒ガスの問題だとか、あるいはまた核兵器は絶対あり得ないというわけでありますけれども、そうではないのではないかというような疑問もどんどん出されるわけです。いつまでたったって国民の疑念が絶えないわけですね。  そういうような現実を踏まえて、私はいま申し上げているような形でもう一度見直し、洗い直しをすべきではないか。この点についてひとつ伺っておきます。
  284. 大平正芳

    大平国務大臣 いまあなたがあげられたような設例は、事前協議にかかる事項ではないと私は判断いたします。  それから、現にあなたが仰せのように、事前協議を先方からいたしてきたことがないことは事実でございます。しかし、これは事前協議制度が働いていないというわけではなくて、そういう規制の中で軍事行動が行なわれておるということでございまして、事前協議制度それ自体は、それだけのオペレーションを規制する力を持っておる制度だと私は思います。  しかし、この制度ができまして十二年間の経過を見ますと、在日米軍、逐次基地も減ってまいりましたし、兵員も減ってまいっておるわけではございますけれども、この十二年間の経過を顧みて、もう一度お互いにいままでやったことを振り返ってみるべきじゃないかということにつきましては、私は賛成でございます。ただその場合、いまの事前協議制度を改めるというようなことにつきましてはにわかに賛成できないのでありまして、今日までの運営の実績をお互いに回顧して、事前協議制度に対する認識をもう一度確かめ合うという意味での洗い直しにつきましては、私は賛成でございますし、近くそういう機会を持ちたいと考えております。
  285. 坪川信三

    坪川委員長 安井君、時間が経過しておりますので……。
  286. 安井吉典

    ○安井委員 時間もありませんから、これできょうのところはやめておきますが、一応洗い直しというそのことばに期待をしたいと思います。そしてそのことが直ちに事前協議制のあり方そのものを変更することには通じないとおっしゃるけれども、私は洗い直しをする中から、やはりわれわれの主張のような前向きの方向をぜひ出していただきたい、そのことを最後に要望として申し上げて終わります。
  287. 坪川信三

    坪川委員長 次に、辻原弘市君。
  288. 辻原弘市

    ○辻原委員 総理にちょっとあらかじめただしておきたいことがあります。  それは、一昨日この席上から、石狩炭鉱の災害に関連して私が緊急質問をいたしました。そのときに、きわめて制限された時間でありましたから、私もあえて再質問をいたしませんでしたけれども、事後じっくり総理の答弁を実は見直してみました。その中にまことに総理としては不謹慎であり、かつ政府の方針と相反するような発言が見られます。簡単に申しますると、事故を起こすようなあぶない、そういう炭鉱はやめてしまったほうがいいんだ、という種類の答弁があったわけであります。私が不謹慎だと言いまするのは、ちょうどそのときはまだ被災者の救済に現地は血まなこになっておられる最中である。そういう中で、あぶない場所はもう炭鉱としては価値がないのだからやめてしまったほうがいいということは、まことにこれは、それらの方々の心情を思えば、総理としては冷ややかなことばだという印象は免れません。同時に、石炭対策としては過ぐる第五次の答申の線に沿って、たしか当時あなたが通産大臣であられたのじゃないかと思うが、この第五次答申の線で炭鉱を守っていくのだという、きわめて鮮明な方針を出されておるわけであります。その立場からこの御発言考えてみれば、これはいささか総理としてはけしからぬ、不謹慎だ、私はこう申し上げざるを得ません。この機会にひとつ、しからざればそういう内容ではなかったのだということの総理の釈明、弁明を明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  289. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、不謹慎だとは思っておりません。明確にいたしておきます。  これは、人命損傷が毎年毎年起こっておる。私も昨年一年間、一昨年から昨年にかけて通産大臣をやっておりまして、大きな炭鉱災害に遭遇しまして、ここで答弁をしておるわけであります。そういう意味で、石炭の炭鉱災害に際しまして、人命が何よりも重いということにウエートを置いて述べたのでございまして、私はいささかも不謹慎な発言をしたとは思っておりません。  それから、二千万トンの答申どおり、これを二千万トン以上、二千万トン程度、二千万トン以内ということでございましたが、私が特にいろいろ話し合いをして二千万トンを下らざるということの答申をいただいたわけでございますが、この答申の尊重ということとはこれは別な問題でございまして、これを見てみますと、少しことばが足らなかったなとは思います。思いますが、これをずっと読んでみましても、これは真情を吐露したものであるということは理解いただきたい。「人命尊重は、あらゆるものに優先すべきであることはもう申すまでもないことでございます。」これがもう一番宣言文になっておるわけでございます。この「炭鉱の問題、北陸線の問題はひとつ徹底的に原因を究明する、そして再びこういうことが起こらないように措置をするということが、一番必要だと思います。特に炭鉱災害というものは、これは毎年、何回も何回も起きておりまして、それでそのたびにこれでいいということでは私は済まされない問題だと思う。」ここまでは何回も私、質問を受けているわけです。これで一体いいと思いますかという質問を、私は通産大臣として何回も受けておりますから、それを引用して申し上げておる。  問題になったところは、その次だと思うのです。「ですから、炭鉱というものがもうだめであるならば、これをやめてしまうということに踏み切るべきだと私は思います。」これは何回も何回も、例の赤平などで、もう絶対だいじょうぶでございますといって合併をしたら大事故になって、移転をした人まで犠牲になったことを思い出して言ったわけでございます。「そうでないと、これは非常にきわどい、これでだいじょうぶであると言いながら、何年かのうちに何回も起こるようなところでもなお採炭をやっておるというようなことは、これは私はもう終止符を打つべきであろうということを、ほんとうに今度の石狩炭鉱の問題でしみじみとそう感じたわけでございます。」ここでございますが、これはみな切り捨てでもってやっていいというのではもちろんない。私はこの国会でもってずっと、二千万トン以上確保のためにこういたしますと、当事者としての答弁をずっと前段述べておるわけでございますから、これで申し上げますと、ですから、炭鉱というものが保安対策の面から見てもうどうにもだめだということであるならばということ、この保安対策の面から見てという問題が抜けておったことで、これはあとから考えて、議事録だけでもって見られると、あぶないのはみなつぶせばいいじゃないかというようにおとりになったとすれば、これは真意を伝えるものではございませんので、この保安対策の面、これは言わずもがなでございますが、そういう重要な問題が落ちておるといえばそうでございますが、これは二千万トン以上確保しょうという石炭に対する私の情熱、政府の情熱というものと、この発言が食い違うものでは絶対ないわけでございますので、これはひとつ御理解をいただきたい、こう思います。
  290. 辻原弘市

    ○辻原委員 釈明がありましたが、確かに総理の言われたように努力もしないで、ただあぶないというだけで全部やめてしまうんじゃ、というのでは、これはいささか乱暴過ぎる、こういう印象を与えたことは事実であります。しかし、後段言われました第五次答申の線に沿って、二千万トン確保のために全力をあげてやるという熱意をここで表明せられたから、私は一応了といたしますけれども、そういう少し省いたような、あまり誤解を与えるようなことは、総理としてはおやりなさらぬほうがよろしいと思うのです。私は誤解を与えるようなことは、これは時が時ですから、慎重にやってもらいたいということを御注意を申し上げておきます。  次に私は、いまちょうど伝えられるところによりますと、きょうから十日にかけて、もめておりました例の相模補給廠からのM48戦車の輸送が開始されるということが報道せられております。私の得ておる情報からいいますと、今晩の十時から明朝六時にかけて二十六台、それから九日から十日にかけて二十五台、都合五十一台を輸送する、こういう事態になって、いますでに現地はたいへんな緊迫状態を迎えているということであります。このことは同僚その他の諸君からも若干の問題の追及がございましたが、いまベトナム戦争が終結への最終段階を迎えて、わが国も世界に平和愛好の国である、ベトナム戦のすみやかなる終結をこいねがうという立場、こういうことをこの時期こそ鮮明にすべきであると私は思うのに、何がゆえに一体いま一これは南ベトナム軍の兵力増強の一環として行なわれる戦車輸送です。   〔委員長退席、倉成委員長代理着席〕 それに無理をして協力をしなければならぬのか、はなはだもって私は疑問といたします。いま緊迫した状態を迎えている中で、この問題についてあらためて私は総理考え方を、あるいは外務大臣考え方を明瞭に聞いておきたいと思う。
  291. 大平正芳

    大平国務大臣 地位協定に基づきまして、辻原委員御案内のように、米軍は基地の間を移動する権利を持っておるわけでございます。そういう約束になっているわけでございます。したがいまして、私ども政府立場といたしましては、それを保障する責任条約上あるわけでございます。  それで、ベトナムの戦争あるいは米軍が関与した戦争というものに対しまして、直接私ども当事者でございませんから、そこで、兵員あるいは兵器の移動等の一々について介入する立場にないわけでございまして、先方からそういう要請がございましたならば、私どもとしては、その搬出入を保障する責任がございますから、それを実行しているにすぎないわけでございます。  しかしながら、いま仰せのように、国民感情といたしまして、そして平和を希求する国民といたしまして、いまこの時期になぜそういうことが行なわれねばならないかということにつきまして、国民が疑問を持たれるのは、私は無理ないと思うのであります。それに対しまして、政府といたしましては、これは単に政府の義務だからやるにすぎないのであるという冷たい回答だけでは済まないと思うのであります。したがいまして、相模補給廠という総合補給廠に千台ばかりの戦闘車両が現にあるわけでございまして、すぐれた修理機能を持った総合補給廠を持っておるものに対して、今後あそこに新しい搬入がむやみに行なわれるとか、あそこの補給廠の機能がそのままの状態でいつまでもあるのかというようなことをそのままにしておいて、われわれが責任を果たすということでは、国民に対して親切でないと存じまして、私どもは、相模補給廠の修理機能の縮小、それから今後の展望というものをはっきりさせまして、そうしてせめても国民に、将来の展望に立って、不安が解消するような方向措置しなければならぬと思いまして、そういう措置を講じたわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  292. 辻原弘市

    ○辻原委員 確かに、おっしゃったように、形式論からいえば、あなたの申されたいわゆる協力義務という立場条約、協定が存しておる以上、あながちそれをも否定することはむずかしいかもしれません。しかし、けさほど来の中国問題に関しても、条約関係の問題と現実の処理ということについては、やはりそれぞれしかるべき配慮があるはずであります。   〔倉成委員長代理退席、委員長着席〕 また配慮をして、あなた方も、たとえば台湾の問題についても処理されようとしておる。われわれもそれを善意に認めておるわけであります。それと同じように、それは地位協定があるにいたしましても、実際問題としての国民感情、また、いま日本が置かれている国際的立場、また、この問題にまつわるいろいろな無理な点等々を考えましたならば、私は、現実的処理があるはずだと思うのであります。それをしないままに、無理に無理を重ねてきたから今日の事態を迎えた。私はそういう事態が起こらないように願っておりますけれども、すでに現地においては、心ある市民あるいはこれに激高する関係者等々が、その周辺にそれぞれ三々五々集まっているという情勢が伝えられている。また一方においては、それを警戒するために機動隊が動員されておる。まことに私は残念千万な事態だと思う。  百歩下がって、そういう基本的なお互いのものの考え方の論争のほかに、横浜市長が在来から主張しておったように、それに至る村雨、千鳥両橋が、いまの道路法、車両制限令によれば、この戦車を通すことはむずかしい。トレーラーを通すことはむずかしい。だから、あくまで国内法にのっとってやってもらいたい。国内法を守らんとする市長の立場として、また市民感情として、一般のものは規制されているのですから、それをなぜベトナムに持っていく戦車だけが無理をして、国内法を無視して、無理無体にそれを通さなければならぬのかと思うのは当然で、これは国民感情、市民感情として許せないところだと思う。この横浜市長の主張を建設省は踏みにじってしまっておるのでしょう。市長はあくまで許可を得てもらいたいと言う。その市長のがんとして立ちはだかっている姿に手をやいて、全く悪質な方法を、木村さん、あなたのほうでは考えたんですよ。ともかく補強すれば何とか合法的になる。そして一夜に、横浜市長には抜き打ちで補強をやらかしたのでしょう。それを知った市長が、これはけしからぬ、補強をやるために資材を置くならば、当然そこに占用許可が道路法の三十二条によって必要だ、だからそれは撤去しなさいと言った。施工する業者は困った。市長からはまことに理路当然な話がされる。普通であれば業者はそうしたでしょう。当然、そこに資材を置いて補強、補修工事をやる場合には、ちゃんと当該市町村の許可を得るというのは常識なんだから。だから、これはどうしても許可を得なければなるまいと思った。まあしかし、命じたのが建設省じきじきなんだから建設省に伺ったところが、いや、そんな許可は要らないんだ、こう答えて、無理無体に業者をしてやらす。そうでしょう、違いますか。簡単に答えてください。
  293. 木村武雄

    ○木村国務大臣 横浜市長とは、私、電話で話をしたのですよ。そうしましたら市長は、右の補強工事については、横浜市側は、道路法第三十二条の占用許可を受けるべきである、こういう話し合いだったのです。それでその話し合いに基づいて、建設省としては、はたしてそうであるかどうかということを研究してみたのです。そうすると、補強工事は、道路法第二十四条ただし書きに定める「道路の維持」で、政令で定める簡易なものである。実際簡易なものなのです。わずか一日くらいで簡単にできる簡易な補強工作なんですよ。それで、同法第三十二条に定める「占用」には該当しないものである、こういうようなわけで通る、こういうことにしたのであります。
  294. 辻原弘市

    ○辻原委員 木村さん、そういう解釈が三百代言的解釈、便宜主義、御都合主義というのです。それじゃ、かりに一般国民がトラックに木材を満載して通る場合、その状態ではこの橋はとうていもたぬ、建設省は一々そんなものは占用許可も何も要らぬから、これは鉄板敷いたらよろしいとやりますか。そういうことを一々国民に便宜をはかりますか。そういった考え方を拡張拡大していったならば、法律も何もあったものじゃないというのですよ。特に私は思うのです。道路法というのは、いまほんとうに無理をして、国民にあらゆる不便を感じさせながら強制して守れと、警察はやっきになってこの法律を守るためにやっているのでしょう。そのときに、ただベトナムへ持っていく戦車だけはそんな占用許可も要らないんだ、ああ鉄板敷けばいいのじゃ、それはただし書きでいけるのだということでは、これを見た国民感情は一体どう反応するかということを私は言っている。あなた方のとった法解釈というのは私も聞いてますよ。しかも、少なくとも地方自治というたてまえにおいて法律をすなおに守ろうとしておる市長でしょう。それを上から、ああその市長の考え方は間違っているのだ、それはその法律じゃなくてこっちのただし書きでちょっぴりいけるんだ、こういう法解釈をしていることは一体どうなのかということですよ。地方自治の侵害もいいところじゃありませんか。私はそれを指摘しているのです。  いまここで、ただし書きが適法であるのか、横浜の飛鳥田市長の言う三十二条が、これが本来のものであるか、その論争をして明らかにすることは、私は、残念ながら時間的にできない。できないが、そういうことをおやりになるということは無理な措置ではありませんか。国民に対してきわめて悪い影響と、きわめて悪いやり方を教えることになる。一歩下がって、私はそのことを考えてみてもまことに遺憾しごくだ。だから現地は激高しているのですよ。もしここで不測の事態が起こったらどうしますか、こういう無理な解釈をやって。それを心配しているのだ。どうされますか。今日この事態をどうされますか。あなた方は、総理のような知恵者もおられるのだ。木村さんだってなかなか知恵者をもって任じておられるのだ。そういう方々がおって、この事態を手をつかねて見ておるのですか。ただし書きでいけますからだいじょうぶですなんて、政治というのはそんなものじゃないでしょう。あなたの持論じゃありませんか。私が冒頭申し上げた現実的処理がなぜできないのかというのです。確かにそれは外務大臣の言われたように、今後の問題についてはそれはけっこうでしょう。補給廠はだんだんこれを縮小していかれる、やがてはそれをなくしてしまうという方向はわれわれも大いに歓迎する。だが、いまの事態はそれでは解決できない。知恵を出しなさいよ、へ理屈を、三百代言を言わずに。
  295. 大平正芳

    大平国務大臣 これは建設大臣をお責めにならぬようにお願いしたいと思うのでございます。実は、私のほうでお願いしておることなんでございます。私どもが負っておる責任を果たすために建設省のほうにお願いをいたしておるわけでございます。  ここでひとつ辻原さんに御理解を得ておきたいのは、米軍の戦車だからといってゴリ押しにやっているわけでは決してないのであります。国内の法令のきめた範囲を踏みにじってまでやるというようなことでなくて、物理的な条件は、道路法にきめられた条件は守りながら、それに対しては十分米軍に理解を求めながらやっておるわけでございまして、ゴリ押しをしているわけではないわけでございます。  ただ問題は、先方の要請が、いついつからいついつまでの間に何台の搬出をお願いしたいという要請を受けたものでございますから、道路法の許す範囲内におきましての御協力をお願いしておるわけでございまして、国内法をじゅうりんいたしましてゴリ押しをしておるというような性質のものでは決してないことだけは、御理解をいただきたいと思います。
  296. 辻原弘市

    ○辻原委員 決してゴリ押しをしていることではないと何回ここで言われましても、私は了解できません。現にゴリ押しをしているからこういう事態が起きてきておるのですから。三十二条によって、あれの時間をかしてくれ、横浜市長はその法律のとおりやりたいからということに対して、なぜ時間をかせないのですか。幾らあなたが法律どおりにやっておるのですと言ったところで、法律をきわめて曲げた異例の解釈のもとにこれをやっているということにしかわれわれは考えられないし、これは私だけがそう受け取るのじゃありません。おそらく国民がそう受け取っておるし、また、現にこれの取材をされた新聞等における解説だって、必ずしもあなたの言うことを支持されておらぬじゃありませんか。  そこでそのことの議論をここで繰り返しておりましても事態は解決いたしませんが、いまだんだんの情報によりますると、もう今晩から明日へかけて、いわばそのゴリ押しがほんとうに二つの橋をまかり通ってしまうのだ。これはけしからぬ、これはたいへんだということで、先ほど申し上げたように、一万人を余る人たちが、いまこの橋を中心に集まってきておるというのであります。その中で強引に戦車を通していくとどういうことになりますか。私は、やはりこの段階においても、当事者である横浜市長と再度現地において政府も話し合いをして、何がしか事態の解決をはかるべきだと思うが、いかがでありますか、外務大臣
  297. 木村武雄

    ○木村国務大臣 外務大臣は私を非常に庇護されましたけれども、私は責められてけっこうだと思っております。道路法を改正いたしましたのは私のほうが改正したのですから。それに基づきまして外務大臣がこういう要求をされたのでありまして、責められるのは私のほうであります。  ただ、御承知のように、道路をつくったり、それから道路を維持管理したりする立場を建設省が持っておりまして、それだけ道路に対して非常な愛着を持っておる。そうでありますから、いま辻原さんが指摘されましたとおりに、重車両の運送に対しましては、道路を維持するために届け出制ではだめだ、こういう考えで管理者の許可制にしたのですよ。そうすると、その結果、半年も出ない間にああいう問題ができてしまった。私は、ああいう問題はあまりいい問題ではない。やむを得ないことであるかもしれませんけれども、いい問題ではない。芳しい問題ではない。特に横浜といいますると、世界環視の中でああいうようなことが起きて、それを何回も繰り返すということは最もいやなことでありまするから、許可制の中で何とか方法がないものかといろいろ考えてみたのですよ。しかし、ほかのことは知恵がありまするけれども、その点では行き詰まってしまいまして、知恵が出なくなったのです。それで、いっそ緊急なるものは除外したほうがよろしい、こういうように道路法の改正をやったのであります。そうしてその改正によりまして、相模補給廠にありまするあのたくさんの車両というものが早く出たほうがよろしい、早く国外に搬出されたほうがよろしい、それだけ外務省のほうも、いろいろな点で向こう側に交渉してくださる結果がよくなってくるのじゃないか、こういうように考えたのでありまするが、全く知恵がなくて申しわけありませんでした。  しかし、こういう点は、外務大臣も言われましたとおりのことであり、私も申し上げましたとおりでありまするから、何とか事態を円満におさめてくださるようにお願いを申し上げますよ。
  298. 辻原弘市

    ○辻原委員 どうもくどくどあれして、だれの責任だかさっぱりわからぬようになりましたけれども、建設大臣が円満な解決を外務大臣お願いするというのでありますが、外務大臣、ひとつ建設大臣の要望に従って、現時点における円満解決をはかってもらいたいと思うのですが、用意がありますか。
  299. 木村武雄

    ○木村国務大臣 私のほうも万策尽きてこうなったのですから、ひとつあなたのほうから向こう側に、どうか何とか円満にしてやれということをおっしゃってください。これはお願い申し上げますよ。
  300. 辻原弘市

    ○辻原委員 だからわれわれも、従来からこの問題の解決には積極的な協力をしておるわけなんです。だから政府は、いまの事態でのほほんと、だれかがやってくれるだろうといったような、そういう無責任な態度じゃなくて、この段階においてもうすでに紛争が起きかけておるわけなんだから、やはり横浜市長との間に話し合いをやるべきだ、私はこう言って提案しておるのですから、おやりなさいよ。
  301. 木村武雄

    ○木村国務大臣 非常にやりたいと思っております。(辻原委員「やりなさい。やってください」と呼ぶ)この委員会を出ていいですか。委員会にいなくてもいいですか。皆さんの御許可を得れば、私、行って、電話ででも何でもほんとうに話し合いをしたい。ほんとうに話をしたい。こういうようなことは話し合いで解決したいですよ。そのためにいままでも努力してきたんです。ほんとうに話し合いで解決したい。この程度のことが話し合いで解決できなければ、日本人の聡明さとか英知なんて誇れませんからね。ほんとうですよ。ほんとうの話、話し合いをしたいですよ。ですから、まずとりあえず市長に電話をかけてきますね。いいですか。(「行っていらっしゃい」と呼ぶ者あり)どうもありがとうございます。
  302. 辻原弘市

    ○辻原委員 まあ私は、木村建設大臣の若干の誠意は認めましょう。ともかく、できるかできぬかは二の次の問題として、あくまでも誠意をもってこの問題の解決をやるということがまず大事だと私は思うのです。そういう意味では、各党も御了解願えるだろうと思うのです。ぜひひとつやってもらいたいと思います。  それじゃ、私は次の問題に移ります。日本列島改造論、だんだんもう言うのもめんどうくさくなったくらいあれいたしましたが、当委員会でも、それぞれの部分についての議論がかなりございました。私も詳細拝見いたしましたので、時間がありますならばかなり詰めた議論もしてみたいのでありまするが、残念ながらその時間がございませんので、私はごく一、二点だけ総理に伺っておきたいと思います。  まず第一に、いままでの議論を通じ、また私が読ましていただいた範囲、またこれに批判を持っている方々の御意見等をあれしましたときに、この日本列島改造計画というものの全体構想、特に経済的側面ですね、これについてなかなか納得ができない点がある。  その一つは、しばしば指摘されておりまするように、一〇%経済成長率というのが、八五年のいわゆる一兆ドル経済へのつながりということになっているようでありますが、一〇%、一〇%を続けていくということは、総理がせんだって施政方針で示されておりまする、しかもわれわれも大いに歓迎をした、国民ももろ手をあげて賛成をしておる、もうGNP時代は終わった、産業優先、産業基盤育成ということにすべてを集中するということはやめなければいかぬ、福祉優先なんだ、緑豊かな日本をつくるんだ、人間性豊かな日本国民をつくるんだ、こういうこととの間にいかさまロジックが合わない。この点であります。一〇%をおやりになる。だから、ことばと文字でおっしゃっている限りにおいては理解できるのです。しかし、それじゃ実際それを具体的にやるということを頭に描いてこれを想定した場合、あなたの施政方針どおり一これはそのとおりなんですからね。あなたはそれをおやりになろうと言うんだから、そういうことの政治をこれから続けていかれる。それと、片やこの日本列島改造の中の一〇%成長率というものは——ほかにも一ぱいありますよ。一ぱいありますが、その骨になっておるものはそれなんだから、そうすると、福祉優先だ、社会保障をやります、それから社会福祉関連事業をうんと力を入れます、それからその他公共関連の事業も一ぱいやります、こうなんでしょう、施政方針の考え方は。社会福祉をやりましょう、保育所もつくりましょう、病院もやりましょう、学校建築もやりましょう、上下水道もいままでと違ってひとつうんと力を入れてやりましょう、こういうのですね。もちろん、産業もそれぞれの設備投資をおやりになる。そういったものをからめてトータルとして、一年間一〇%成長と、こう言われるわけですな。  私はなぜそういうことを言うかというと、本年の通常国会のときに、当時の福田大蔵大臣とも、その辺の問題についていろいろ議論をしました。不況だ、瞬間風速五%以下に下がったなんと言う。そのときに、公共投資を少々やったって、成長率というのは、GNP寄与というのは、そんなに一挙に出てこないとみんなが言っておったのですよ。確かにそのとおりだったと思うのです、ある程度ね。だから、そういうことを頭に置いて考えてみると、その一〇%成長率を達成するためには、そのいろんな要素の中の、従来やってきたパターンである産業投資、産業の基盤育成によるこのGNP寄与率というものは、相当大幅に高めていかぬ限り、平均して一〇%というのはこれは無理だ、私はこう思わざるを得ない。この点は、一体あなたはどう考えておられるのですか。
  303. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは、いつも申し上げておりますとおり、一〇%成長をやろうということを前提にしたものではないのです。二十九年から三十九年まで——ちゃんと中に書いてあります。よくお読みになれば書いてあります……(辻原委員「そういうことを言うからややこしいのです」と呼ぶ)いや、ほんとうなんです。二十九年から三十九年までの十カ年の平均成長率一〇・四%、三十五年から四十五年までの平均成長率一一・一%でありますと。ですからこれを背景にして、いまの一次産業はこれから六十年までに、一六%、一七%から一〇%程度二次産業や三次産業へ移動しなければならないという人口を考えると、過去のように一〇%成長も可能であります、そういうふうに書いてありますよ。  一〇%成長の場合はどうかというと、昭和六十年を展望すれば、国民総生産は三百四兆円になります、八・五%ならば二百四十八兆円ですと……(辻原委員「どれがほんとうなんですか」と呼ぶ)いや、ほんとうじゃないんです、これは一つのテーマなんですから。だから、そこをよくお考えになっていただかなきゃいかぬのですよ。これは政府がきめる長期経済計画じゃないのです。一つのビジョンなんです。政策の方向なんです。いま混乱しておる社会保障を拡充し、われわれの生活をよくし、こういうことをしなければならない。物価を下げ、地価を下げる、いろんなことをしなければならない。その問題を解決する前提の方向は、都市に集中するものを、今度逆に流れを変えて列島改造をしなければなりません。列島改造を踏まえて政策を進めなければなりません。しかし、その根本になるものは国民の成長であります、成長は、過去のように一〇%成長も続けることができます、その場合は国内の貨物はこうなります、こういうことです。  これはいま考えてみまして、ざっくばらんに言って、内容によりまして、一〇%なのか、八%がいいのか、七%がいいのかは、今度、いま政府が正式に諮問をしております。長期経済計画に対して諮問をしております。ですからこれが出てまいります。それは国会に提案をいたします。これが一〇%になるか、七%になるかはわかりませんが、先ほどの御質問に答えた限りで考えると、七%以下にはなりません、どんなに見ても七%から一〇%の間でないかと思います、こう述べておるのです。
  304. 辻原弘市

    ○辻原委員 どうも私どもは、この日本列島改造論というものの受け取り方が、ある意味において少し違ったようです。いま総理が御説明なすった限りにおいては、いろんなロジックがありますが、これは単なる一つの私案であって、こうしたときにはこうなんだ、このときにはこうなんだという、その私案を多少数字であらわしたというものにしかすぎない。いまの御説明はそういうことですね。  というのは、私はなぜそんな質問をしたかといいますと、一〇%というのは根拠があるんですよ、私どものいままでのずうっとしてきた議論の経過から。たとえば、先ほど言いましたように、私が二月に議論をしたときにも、福田さんは少なくとも、瞬間風速は低いけれども安定。私はずうっとこのことを質問してきているんです。これは佐藤内閣成立以来、高度成長と安定成長とどう違うんだと言うと、そうすると、安定成長というのはそんなに高くないんで、大体一〇%程度だと、こう言っている。そういうことを経済計画の中にも述べておるのですよ、一〇%だといってね。これは福田さんもそう言われた。安定成長というのは一〇%なんだから、何とかひとつ一〇%に持っていきたい。だから私どもは、そういう構想というのは、従来のパターンのいわゆる産業投資、これを中軸にした高度成長以外にはあり得ない、こうきめつけておったのです。くしくもあなたは、われわれと同じように、これを転換するんだとおっしゃったから、それならば、同じような一〇%を持ち出すのははなはだおかしいと、こう私は実は疑問を持っていたからいま質問したのです。そうするとあなたはそうじゃなくて、かりに成長率からいうと七%から一〇%くらいの間で、これからの新しい新経済計画をつくるんだとおっしゃった。  それはそれとして私は了解いたしましょう。理解いたしましょう。その新経済計画というのは——もう間もなく選挙ですから、いまそんなことを伺っていては始まらぬかもしれません。内閣がかわるかもしれませんからね。しかし、いまの現状でいって、あなたはいつごろその大体七%成長を踏まえたような新経済計画を策定されますか。いまどんな構想でおられますか。これはやはり目安を立てておかぬと混乱するんですよ。それまで一〇%だ何だといって、百家争鳴じゃ経済が混乱するんです。だから、やはり一つのめどを示したほうがよろしい。
  305. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 長期経済計画はいま審議会に諮問をいたしております。大体十二月の半ばぐらいには答申がいただけるものだと考えております。
  306. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこでもう一点、物価の問題もいろいろ議論がございましたが、これは有田さんですか御担当は。やはり指標には五.三%とありますね。私はこれは変える必要があると思うのだけれども現実にあなたはこのままの数字で確信があるのですか。
  307. 有田喜一

    ○有田国務大臣 先般試算をやりました。その結果、本年度の当初では御承知のとおり成長率は七・二%と考えておりました。ところが、やってみると本年は九・五%、こういう試算が出たわけです。九・五ですね。これは成長率のほうですよ。ところが、消費者物価のほうは、当初一月には五・三%ということを考えておりました。ところが、物価に対していろいろな手も打ってきたことも事実でございますが、ことに生鮮野菜が非常に安定しておりまして、そこで今日の段階では上半期四・五%という数字になっております。そこで、今後あるいは天災地変が起こるとか、あるいは非常な豪雪が起こるとか、そういうことが起こればともかくとしまして、一応の見通しとしては五・三%内におさまる、当初の予想どおりの五・三%におさまる、こういう見通しを持っておるわけです。
  308. 辻原弘市

    ○辻原委員 あなたのように楽観的におさまっていけばけっこうだけれども、私は、これは自分の勘でありますけれども、少なくとも年度当初からこれだけ公共料金が上がってきて、幸いいま低いのは、確かにおっしゃったように現時点における生鮮食料品の影響なんです。こんなものは季節的にいつ爆発するかもしれませんよ。これは去年の傾向を見れば明らかです。大騒ぎしましたね、野菜の問題で。しかし、根本的には解決されてないんです。一時的小康を得ているにすぎない。あなたの答弁はそれにたよっているんですよ。しかし、その他の要素考えてみれば、消費物価の動向というものには予断を許さないものがあります。いま私は、ここでそのことを明言しておきます。  同時にもう一つ、この間どなたかの御答弁に、いや、最近では日本よりアメリカ、イギリスその他の国々のほうが上がっているんですよと言われた。それは指数のとり方が違うんですから、そんなものを比較するような不見識なことはやめてください。日本の場合には地価の騰貴も入っていないんですからね。実勢というものは、日本の場合の消費物価の高騰は、常に一割をオーバーしているのです。すべての物価を入れて計算してごらんなさい。ですから、日本は決してあなた方のおっしゃるように、五・二だとか四・五だとかというような範囲で、年間の上昇率というのはおさまることはあり得ない。だから私は、そういうことを楽観視するのあまり、物価対策、消費者物価対策に対して怠るようなことがあったらたいへんだと思うから、御注意を申し上げておるのであります。
  309. 有田喜一

    ○有田国務大臣 御注意は御注意として承りますが、公共料金はもう本年の初めから、矢つぎばやに次から次と上がってきておることは事実なんです。その公共料金の値上がりを見通しながら、私は五・三%内におさまると言っておるのです。現在、公共料金はもう織り込み済みで四・五%にいま落ちついておるのです。これは、公共料金のすでに上がっておるものは織り込み済みなんです。その上に立ってこういうことを言っておるのですから、私は私ながらの根拠があって申しておるのです。
  310. 辻原弘市

    ○辻原委員 数字におぼれてはいかぬと思うのです。なぜかというと、いわゆる前年度末、一月以来、要するに前年度末の期間における公共料金が集中的に上がっている。物価というものは上がった上に対して何%ですから、去年からことしにどれだけ上がったかという感じは、これは実感として庶民が受ける場合は、年度初めから何ぼ上がったかと、国民はだれも四月から何ぼとはいわないのです。しかし、それは統計上あらわれてくる前年度対比ですから、数字上やや低目にあらわれてくることは事実であります。しかし、実際の感じというものは、やはり前の年よりはうんと公共料金や何かも上がったから上がったなという感じを持っている。そういうことをとらまえて物価対策をやらなければいかぬと私は言っておるのです。単に私は数字の架空論議をやろうとしているんじゃありませんよ。  だから、もし物価担当大臣のあなたが——物価担当か何だかわかりませんが、そのことだけを金科玉条におやりになったとするならばたいへんな誤りをおかす、そういうことを私は申し上げているのです。決してあなたの見識にけちをつけているんじゃありません。けちをつけているんじゃありませんが、私は私なりに物価に対するものの考え方を持っている。おわかりでしょう、私の申し上げることは。年の初めに集中されたことは事実なんですから、そういうことを考慮に入れて、ぜひ物価対策を怠ってはならぬ。  ここで、個々の物価対策について御意見を申し上げる時間がございません。ただ一つ、私はこの機会に、これは総理にもお伺いをしたいのでありまするが、管理価格、公共料金、流通、各般の物価対策を積極的に進めると同時に、一面わが国の消費形態といいまするか、消費のあり方というものに対してもっとわれわれはメスを入れ、もっと消費者の運動というものを育成強化していく必要があるということを痛感いたします。  せんだって、アメリカでたまたま生活した人が帰ってきたのです。私にこんなことを言っておる。アメリカはたいへんにいわゆる物価水準の高い国だ、何もかも高いのかと思ったら、実は違ったよ辻原君と言うのです。ぼくは自分で友だちのうちに行って自分で炊事をして、スーパーで食料品、物を買ってきて一カ月暮らした、そうすると意外に安いんだよと言うのですね。ハムを買ってきたって日本より安いよ、卵を買ってきたって日本より安いよ、自分でやりさえすればアメリカの生活というものは存外便利で安いよとこう言うのです。アメリカの国においてすらそうなんです。私も皆さんもそうであろうと思うが、世界各国でいろいろの生活をなさる。もちろんレストランとか高級ホテルとか、そういうところで生活をすれば話は別なんです。しかし、その家庭に入って生活をした場合に、意外に生鮮食料品、食料品が安い。生活物資、それに加えて光熱料、水道料、そういうものに対してできるだけ低廉にということで努力している。ただ個人が人の手をかりないで生活するとなると日本よりははるかに安い。これは事実なんです。  そういうことを考えたときに、何とかひとつ庶民が、少なくとも生鮮食料品その他生活必需物資を安く買えるというようなことに、もっと積極的に政府が手を打ったらどうか、こう思うのです。  その一つの方法が、私はいわゆる消費生協の育成だと思います。すでにこれはしばしば国会においても議論をされ、政府もその方針を立てられておる。たまたま私はここに第五回の消費者保護会議の各般の御意見というものを、私は詳細にこれを拝見させていただいておる。これはおそらく、総理議長をやって閣僚の皆さんが出席されておる会議でしょう。そういう会議ですね総理、この消費者保護会議というのは。あなたが議長をやっておる会議でしょう。議長はどなたですか。総理じゃないですか。——あなたでしょう。間違っちゃいけませんよ。自分がやっているのに忘れてしまっている。それだから消費者行政がうまくいかぬといわれてもしかたがない。これは総理議長をやっておる会議内容なんです。それを見ますと、ここにちゃんと、読む時間が惜しいから省略いたしますけれども、ちゃんとここにあるのですよ。当面講ずべき諸問題、諸政策、その中に、「消費者団体の実態を調査、把握し、消費者の組織化を促進する方策について検討する。1消費生活協同組合を育成」云々とある。しかもその中には、具体的に消費生活協同組合の今日のネックである地域制限については緩和する方針で、関係方面とのすみやかなる意見の調整をやって、所要の法改正を提出するとあるのです。これは事実ですか。間違いないでしょうね。あなたが議長できめられているものなんですよ。よもやこの方針は違いますとは言わさぬですよ。そうでしょう。お考え方を聞きたい。総理、あなたが議長ですよ。
  311. 有田喜一

    ○有田国務大臣 総理議長でございましたが、たまたまそのときは欠席でありまして、そうして副総理が代理で、官房長官と私とでやっておるのでございますが、その趣旨は総理もよく御存じです。よく報告してあります。なお関係閣僚にもよく話しまして、皆さんの同意を得た上でやったものです。その結論は同意を得ました。  私も、生活協同組合は、灘生協はじめ十分視察いたしました。そういう実情を実際に見てきまして、そしてそういうような提案をやって、関係閣僚の了解を得た上で、鋭意消費者行政のためにつとめる、こういう決心でおります。
  312. 辻原弘市

    ○辻原委員 もう一度私、確かめておきますが、総理は欠席されたそうでありますが、しかしそれは代理を命じて、あなたの了解の上でこの結論を出されたということでありますから、まあ欠席云云についてはそれ以上申しますまい。  そこで、いま有田長官が申されたように、これは関係閣僚、すなわちこれは関係各省の意味でしょう。そこで十分意見を調整した上で決定したものでありますと、私もその必要を痛感しておるので推進いたしますと、こういうお話でありますから、私は了といたします。なぜ私がそういうことをくどく言いますかというと、中には、あれは閣僚だけできめたのでわしは知らぬよというのがあるそうですよ。現に各省の中にあるそうです。これはおそらく関係各省といえば、まず厚生省が主管でしょう。通産省がそうでしょう。経済企画庁がそうでしょう。その他関係の各省が一ぱいあるでしょう。だから、いまあなたが関係閣僚の間で正式決定をしたものであるから、それはそのとおりの方針でございますと言うた限り、今後この法改正について各省がとかくのことを言うばずはあり得ないと私は思いますが、間違いありませんね。
  313. 有田喜一

    ○有田国務大臣 正式に消費者保護会議をやる前には、事務当局においても関係各省庁と打ち合わせした上で、この消費者保護会議に出されておりますから、おそらく関係閣僚が了承してくれた以上は、事務当局に徹底するものと私は理解しております。
  314. 辻原弘市

    ○辻原委員 それでは、この機会に念には念を入れて、厚生大臣、通産大臣からそういう各省の下克上が起きないように、ここで明言していただきましょう。
  315. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 中に書いてあることは守ります。
  316. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ただいま通産大臣からもお話がありましたとおり、大臣間できめたことは必ず守らせるようにいたします。
  317. 辻原弘市

    ○辻原委員 もう一つ生協について問題がございます。これはひとつ所管大臣の厚生大臣、よう頭に入れておいていただきたい。それは特別に法律ができておりますね、融資についての特別法が。御存じですか。
  318. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 承知をいたしております。
  319. 辻原弘市

    ○辻原委員 その法律で、あなたあまりこまかいこと知らぬかもしれませんけれども、私のほうから申し上げましょう。四十七年度のその法律に基づく融資ワクはたしか二千五百万だった。今日の経済趨勢で、たとえば生活協同組合といったって、灘生協なんというのはたいへんな資本力とたいへんなシェアを持っている。これは特異的な存在ですけれども、そういうものを全体ひっくるめて、法律までつくってやった融資が二千五百万円だ。総理、どうですか、二千五百万円でどれだけ役に立ちますか。いま中小企業金融公庫にしたってその他の政府関係金融機関では、一件最低がそのくらいじゃありませんか。こんなことでは、いま有田さん、あなたは、私も知っているから積極的に関心を持ってやりますと言われたが、ちょっと恥ずかしいと思いませんか。厚生省、来年何ぼあなた方は予定をされておりますか、簡単に答えてもらいたい。
  320. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 五千万円でございます。
  321. 辻原弘市

    ○辻原委員 倍にしたと言っていばっているかもしれませんが、全国の生協に対する特別法に基づく融資ワクが五千万円で、恥ずかしいと思いませんか。こんなことで一体どうして日本の消費者運動が推進できるのです。しかも、この融資についてはいろいろな制限が加わっておる。開銀などは利用できますか。生協は、灘生協を除いてその他はみんな弱小資本だ。開銀は一億以下の企業に対して融資を認めますか。国民金融公庫を利用しなさい、あまりにも規模が小さいでしょう。農林中金、ああわしはごめんをこうむります。農林大臣おられますか。——農林中金の期限が来年来ると思うのですが、この法改正をやらなければならぬ。農林中金、金を持て余しておるでしょう。最近相当いろいろなあれが来るという話も聞くのですよ。きょうは本論ではありませんからそれはやりません。やりませんが、その改正のときに、それだけ資金量が豊富になって余っておるのなら、なぜ生協に対しても対象にしてやらぬのです。できますか。これをひとつ農林大臣からここで明言をしていただきましょう。私は全部内容は通告しておるのですよ。全部話してあるのですから。
  322. 足立篤郎

    ○足立国務大臣 生協について、農林中金からの融資問題についての質問取りができていませんでして、用意しておりません。  ただ、おっしゃるとおり、五十年の期限が来ますから、農林中金法そのものの存続を含めて法改正の必要がありますから、おっしゃるとおり、融資先の面についてはこれを拡大する方向で検討いたしております。
  323. 辻原弘市

    ○辻原委員 検討されるということでありますから、大臣のこの発言を私は御理解のある御答弁と受け取っておきます。あとで食言をせぬようにひとつお願いをしますよ。  それでは、生協の問題については時間もございませんから、私は次に労働問題に少し質問を移したいと思います。  先ほど西田さんからも若干の意見がございました。それは、いまジェンクスILQ事務局長から提案をされて、まあ日本の戦後労働運動の中における一つの恥部ともいうべき労働権の問題についての話し合いが始まろうとしておる。私はたいへんにけっこうなことであると思うのでありますけれども、その間、数日来のいきさつを私もいろいろ聞いたり調べたりしてみますると、どうも政府の態度になお釈然としないものがありまするので、この機会にその問題について、要すれば総理からもひとつお答えをいただきたい。  せんだって、まあこれはいろいろ、佐々木さんの御発言やら官房長官の御発言やらでごてごてして、せっかく田中内閣前向いたかなと思って喜んでおったところが、またぞろ引き返してしまったという問題でありますけれども、私は、政府統一見解というものを見ても、少なくとも私ども認識と同じようなことが書いてあるのであります。結論はいけませんがね。それは、「内外情勢も、法制定当時から大きく変化している。」これは公労法だけの問題を述べておるのでありますけれども、あげて全般に関連のある、それぞれの公務員関係、三公社五現業すべてを含む、いわゆる公務員関係及び公益事業として制限を受けておる労働者の、いわゆる労働三権についての取り扱いは、制定当時から大きく情勢が変化しているということは政府も認められておる。変化しておるならば、なぜこの問題に真剣に立ち向かわないのかという疑問が出る。いままでの政府の態度を見ると、あげて公務員制度審議会という便利な機関の中に逃げ込んで、ちっとも首を出してこないのですよ。こういう態度であってはいけないと思う。しかも、たまたま今度はジェンクス提案があったわけでありますから、ぜひこの問題に真剣に取り組んでいただきたい。私はこれをまず要望して、一、二具体的問題を伺いましょう。  まず、ジェンクス提案について、これは双方が受諾をされたわけでありますから、双方が受諾した内容は一致しなければいけない。ところが、新聞に伝えられているところによると、必ずしもそうでもないように見受けるので、はなはだ私は心配になっております。  それでまず、ジェンクス提案のいういわゆるハイレベルというのは、当然に私は、政府としては総理以下、関係労働組合としてはそのトップ以下等も含めて、常時含むというわけじゃありませんが、そういう定期協議を重ねるのだろう、こういうふうに理解をいたしますし、できればそうあってほしいと願います。そのことについて、政府はどういうような態度をきめられているか。  ついでにもう一つ申し上げましょう。いま一つは、春闘のあと始末が若干残っているようでありますから、もちろんそのことも議題にされるが、いま私が申し上げた労働権の問題については、何といってもいまの労働問題の中の中心課題でありますから、トップが話し合うときに、一番肝心なものをよそへおいてというわけにはいきません。だから、当然にその問題は含まれている、私はそういうふうに解釈するのでありますが、これについて政府はどういうふうにおやりになろうとしているか、この二点をひとつ伺いたい。
  324. 田村元

    田村国務大臣 ハイレベルで定期的に会談をせよというサゼスチョンでありますが、率直に申して、組合側と私どもまだ会っておりませんので、市川さんらと会いまして、どういう運びにするかということを相談したいと思います。私自身が非公式に会ってみたいと思います。  それから、どういうテーマを議題にするのかということでありますが、さっきから辻原さんおっしゃっておりますように、公制審にいまかかっておることは現実であります。また政府として、せっかく正規の審議会におはかりをしておる以上、それに対してとかく指図がましいことは言えないし、できない立場にあります。−でありますから、公制審に対して私どもが非常に気を使うということも、どうぞ御理解を願いたいのであります。  それで、総評とわれわれとがハイレベルで、かつ定期的に会談するというジェンクス氏のサゼスチョンを受けて話し合いをすることになりますけれども、そのときに、私どもはあらゆるものを網羅して話し合わなければならぬとは思いますけれども、一面また、公制審にかかっておる問題、公制審で御審議願っておる問題につきましては、公制審を尊重しなければならぬという立場もございます。そういうことも含めまして、総評側とよく相談したい、このように思っております。
  325. 辻原弘市

    ○辻原委員 第一点については了解いたします。精力的に、双方の考え方が一致するよう、それは御努力を願いたいと思います。  第二の点でありますが、田村さん、あなたが非常に努力されているという点は私も認めるし、非常にわれわれも期待しております。ただ、公制審を尊重しなければならぬという意味は抽象的にわかりますよ。しかし、いままでずいぶん尊重してきて、政府はそれに対して何らのサゼスチョン、何らの意思表明というものはちっともやってきていないわけです。私はもうそれくらいでいいんじゃないかと言うのです。具体的にこの問題を解決しようとするならば、これは総理もひとつ考えていただきたい。総理を含めて、政府の決断以外にないと思う。決断をもって公制審に、政府としてはかくかくの決断をいたしました、いかがでございましょうか、この態度がないと公制審は動きませんよ。きのうやきょう諮問したものであるならば、あなたのお考えはああけっこうでしょうと私は申し上げるのですが、もう期間がたっているのです。しかも、外国からやりなさいといって、そういうサゼスチョンまでいただくという不名誉な日本なんです。  しかも、いまや労働問題というのは、過去の労働問題のとらまえ方をしちゃいかぬというのが、もう私たちの常識でしょう。いま、労働権を含めて労働問題というのは、大きくいえば経済問題なんですよ。週休二日制の問題といい、労働権の問題といい、あるいは給与の問題といい、わが国が現下置かれている経済状態、ドル問題、円対策、こういうものときわめて密接に関係している。外国が注視をもってながめておる問題でしょう。ほかっておけない事態なんですよ。そういう意味で私は申し上げておる。ここから先は議論になりますから、政府はすみやかに決断をしなさい。総理、いかがでありますか。
  326. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ILO事務局長からの要請で、双方が受けたわけでございますから、双方で意見の交換をして円満に協力をするということでなければならない、これは言うまでもありません。  ただ一つ、この際申し上げておきたいのは、戦後の労働関係、労使の関係や制度というものは、短い間に先進国並みになったわけでありまして、これは、私たち日本人の歴史の上で非常にいいことをしたと思っている。私も労働者の出身でございますし、特に労働者でございます。そういう意味から考えてみても、ほんとうに労働というのは、実際、いまの労働観念じゃなく、働く者みな労働者です。これは雇用関係のあるなしにかかわらず、労働ということを考えたら、国民の中に占めるウエートというものは大半である、国民すべてである、このような考え方でありますから、私はそういう意味ですなおに申し上げておるのです。労使関係や制度というものは、できてから短い時間にしてはなかなかよく運用されていると思っております。  ですから、これは立場が違いますからですが、ほんとういいますと労使の問題、労働条件の問題や何か、大体いまできまっておるのじゃありませんか。別な問題が入ると、そこでなかなかめんどうな問題が起こる。ですから、労働関係法規が求めておる目的達成ということに対しては、私は、短い二十五年の間にほんとうにお互い、日本人全体の英知だと思いますが、よく完成しつつあると思います。しかし、万全のものであるとも言えないわけでありますから、問題があればお互いが話し合いをする。これはもう話し合いをして解決をするというのが、民主政治の大前提でございます。  特に、今度私が申し上げたいのは、こっちでも一生懸命やりますから、いろいろなところへ持ち出さない、うちの中の話はうちの中でやる、日本の話は日本でやる、ILO事務局長に言われて、私の判断を求める前に、もう一ぺんおやりになっちゃどうですか。まあていのいい差し戻しというようなことでございますから、やはりそういう意味で、日本の労働関係法規というものを完ぺきなものにするためには、お互いにまじめに取り組むべきだ、私はそういうまじめな気持ちでございます。
  327. 辻原弘市

    ○辻原委員 よそに持ち出さないでというお話がありましたが、あなたを言うのじゃありませんよ。あなたを言うのじゃないが、いままでは、一家でいえば総理なんというのはおやじですよ。国民のおやじなんです。そのおやじがしっかりしないから、よそへ訴えに行くのです。おやじがしっかりしておればそういうことはない。だから、今度はひとつしっかりしてもらいたい。  それと、いまあなたがおっしゃった中のいろいろなことについては、私、少し議論もしてみたい気がしますけれども、それはまた他日に譲りましょう。ただ言いたいことは、アメリカだってイギリスだってヨーロッパ各国だって、やはり労働運動というのは近代社会における重大な問題なんですよ。そういう認識を持って、だから紛争が起これば、必ず最終的には大統領も出ばる、首相も出ばる、こういう形で常に、またその間においてそれぞれの労働者のトップとの間の話が行なわれて事態が解決されておる。日本は、最近はやや違ってきたけれども、戦後的風潮の中では、労働運動というのは、何かあぶなっかしいような感じで、力がない、こういう態度ではいかぬ。だから私は、まあそれは、よそからいわれて少し日本人としては恥ずかしいことかもしれぬけれども、しかし、いいことはいいことなんだから、申し上げたように、田村さんがその間の話の取り持ちをおやりになるようだが、それに信をおきまするけれども、ぜひひとつ、トップを含めての戦後の労働運動のネックというものを、この機会に解決をしていただきたいということを、私は強く希望し期待をいたしております。  次に、総理も、私も労働者だと言われたので、少し労働者の問題をこれから具体的に伺ってまいりたいと思いますが、その一つは、総理、たしかきのうだったか、おとといだったか、あなたの御発言の中にたいへんいいことがあって、私も感心したのです。それは言い古されたことばだけれども、人の命は地球よりも重いんだ。涙が出るほど国民は喜んでおると私は思う。しかし、そのように政治をやってもらわなければいかぬ。ことばだけではいかぬ。その一つの例を私は申し上げましょう。  せんだって、浅間山荘事件のときに、警官がお気の毒な最期を遂げられた。みんな国民も、気の毒な気の毒な、何とか遺族の補償をしなくちゃならぬ。国会も、超党派でいろいろ特別補償について気を配った。それ自体私はけっこうだったと思う。そのときに私ふと気がついて、これも公務死だ、そうすると一体、全国各地いろいろな職場で働いている労働者が公務死をされた場合に、どれだけの命の代償を得ておるだろうということを調べてみたのです。労働省にも問い合わしてみた。そうすると労働省では、資料はたいへん少のうございますけれども、四十四年に調査をしたのがたった一つあります。私は詳細にこの一月からこの二冊を読んでみたのです。そういたしますと、驚くべきことが発見された。まあ時間がありませんから、私の結論だけを申し上げておきましょう。  この調査対象はいろいろございます。これは労働省よく御存じですが、その抽出調査をおやりになった結果——その調査は、労働者労働災害遺族の生活実態に関する調査というのです。もう一つある。四十五年やったのが労働者家族の福祉に関する調査。これをずっと調べ上げてみますると、おとうさんがなくなった、夫がなくなったということで、その命の代償として得た一時金、これにはいろいろなものが入っております。いろいろな一時金があります。全部トータルして平均百四十五万と出た。それから労災死、通俗いう労災、いわゆる労働災害で職場でおなくなりになった遺族補償の純粋な金額の平均というのは、何ぼだったかというと百十五万円、年金額は平均にして三十万円、これが夫やおとうさんの命の代償であります。  私はここで申し上げたいことは、いま老人対策の必要上、われわれも声を大にして、いわゆる年金の引き上げを強く政府にも要請し、政府もそれに若干こたえられております。たいへんに私はけっこうなことだと思うのだが、同時にこの問題を忘れちゃいかぬというのです。職場で一生懸命にまじめに働いてなくなった人の命が、総理、平均百十五万円。しかも、私は後日これを詳細に一ぺん労働大臣にも議論を進めてみたいと思うのでありますけれども、ある職場においては、労災があるために労災だけにたよって、使用者としての義務を果たしていない。こういうことも一体どうなのか。公務員であれば国なんだからちゃんといたします。しかし、一般民間に雇用せられている場合は、民間企業ですから、当然にその企業に責任があるでしょう。かなりの企業であっても十分に支払っていないという調査結果が出て、労働省も驚いているというのです。私も驚いた。すみやかに私は、二つの面から、一つは人を雇用している限り、その人が職場で公務でなくなった限り、その企業に責任があるということの行政指導、法律についても明確化する必要がある。もう一つは、現下このように低い労災制度というものを、抜本的に改正する必要があると思うのであります。たまたま今度は厚生年金がアップするわけでありますから、少なくともそれに比例してこれはアップすべきだ、こう私は主張するものでありまして、詳細な内容は、もし疑問があれば私のほうからお答えをいたします。労働大臣の御見解、また総理のお考えを聞きたい。
  328. 田村元

    田村国務大臣 先ほどのお示しになりましたデータは四十四年のものでありまして、四十五年に改正をして幾らか上がっております。特に年金のほうで相当上がっております。  そこで、この労災保険について若干申し上げますと、従来から何回も法律改正をしております。そしてその水準は相当向上してきて、現在ではおおむねILOの百二十一号条約の基準に達して、まあ世界的に見てそう遜色のないものになっておるということは、これはお認めいただけると思うのでございます。しかし、さりとはいえども、なおそれに対する不満が強く、要望が非常に多いところでございます。このような観点から、労働省としましては、近い機会に労災補償制度全般について再検討しよう、こういう考えを持っておりまして、その再検討の過程で、給付その他よりよき方向へ持っていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  329. 辻原弘市

    ○辻原委員 田村さん、事務当局からそういうふうに教わったのだろうと思って、私は別にとがめだてはいたしませんけれども、それは形式的議論というのです、あなたのおっしゃっているのは。なぜかというと、ILO条約の四〇%というものは前提があるのです。それは、その国における給与、最低保障額及び平均給与、そのとり方が違うのです。これは厚生年金でもそうでしょう。厚生年金と労災保険のいわゆる給付すべき基準になる給与額というもののとり方は、労災においても、厚生年金においても違う。かりに厚生年金の遺族補償を例にあげると、その人がいままでつとめておったあらゆる場合における給与の平均額をもって標準報酬額としておる。あしくなるのはあたりまえですよ。だから前提が違うのです、四〇%といいましてもね。これは私はいろいろ議論があります。ありますが、一応はあなたのおっしゃったように、形式的には百分の四十ですか、そういうことを基準にしておりますから、その形式的数字においては同じかもしれぬが、中身が違うのです。  だから、そういうことをあなたがいま抜本的に改正されようと言うから、私はそれはたいへんけっこうだと思うのですが、そういういま私が指摘したようなことを含めて抜本的に改正しないとだめなんです。だから、百分の四十とか百分の三十五というのは幾らさわったってだめなんです。だから、そういう対象になるべき給与の基準、賃金の基準というものからもう一ぺん考え直す。  それから、その際にぜひやってもらいたいと思いますることを、二、三私は提案しておきます。  一つは、一時金の制度をつくりなさい、労災においてきちっと。現在では、前払いとか、あるいは遺族がないときというのは一時金だけがあるわけで、制度として一時金制度というのはありません。しかしこれは、公務員だって退職金と年金というものは両建てでもらえるんですね。退職金は少ないけれども、ちゃんもらえるようになっている。そういう不均衡を起こしちゃいけません。民間、公務員、やはり同じ制度化するということが大切でありますから、だから私は、年金と一時金、この両建て制度をつくるべきである。これが一つです。  それからもう一つは、いま申し上げた平均賃金のとり方及び最低保障額を引き上げないと上がりません。それを考えること。  それから、スライドも考えているけれども、これも制限があります。だからスライドを、もう一度ほんとうにスライドできるように考え直すべきです。この三つの点は十分ひとつ改正のときに御検討いただいておきたいと思います。  それからもう一つ、労災について新たな問題を提起しておきましょう。それは最近、私も、まあ皆さんもそうでありましょうが、よくいなかに帰って農村を回ります。そうすると、農村は非常に機械化されて便利だ、便利だと喜んでおる。その反面、十人おられると必ず一人、二人けがされておるのです。それは機械化なんです。いままでは労災というのは労使関係のある労働者ですから、農民は対象になっておらない。しかし、幸い労働省は親切にも、これを任意加入で認めておることを私は非常にけっこうだと思う。ところが、どんどんふえていく傾向にあるのですね。だから、いま一応労働省では制限を加えて、いわゆる自走式の機械によってけがした場合ということだけを任意加入に認めておる。しかし、けがは必ずしも自走だけじゃありません。いろいろな機械が生まれてきておる。だんだんふえてきますよ。ふえていって、いつまででも任意加入で労働省はかかえますか。この問題なんです。もうすでに日本の農業形態というものはやや変わってきている。一人がやるということよりも、手不足だから人を雇って機械を使ってやってもらっている。機械も専門化していますからね。そうしたときには、やや雇用関係の労働者に相似たそういう農民の労働形態というものがここに生まれる。そうなると、この問題はほっておけないですね。  だから、労働省が今後ともそれを拾い上げて全部やってくださるのか、それとも労働省は、いや、限界がありますよとおっしゃるのか、おっしゃるとすれば、農林省はこれをどうするのか、この点をひとつお答え願っておきたい。
  330. 田村元

    田村国務大臣 いまの問題は、おのずから限界はあると思います。しかしながら、非常に機械化が進んでまいりまして、日進月歩でありますから、その危険性やまた仕事の種類等を十分考えまして、今後さらに検討を続けてまいりたいと思います。私ども検討すると申した以上は、率直にいって、前に答弁いたしましたことも、いまの問題も、私自身決断と実行内閣の労働大臣でございますから、十分にその検討に対しては、現実論で精力的に取り組んでまいりたい、このように思っております。
  331. 足立篤郎

    ○足立国務大臣 おっしゃるとおり、労災保険は雇用関係が前提になっておりますので、農業者の場合は制度上なじまない点がございます。しかし、御指摘のように、最近機械化が進みまして、調査によりますと、千数百人の人がけがをし、一割ぐらいの方がなくなっております。で、労災保険のほうで拾ってもらいまして任意加入の制度をやっておりますが、おっしゃるとおりの制限がございますので、いま労働大臣が言われたように、ひとつ間口を広げていただいて、この農業機械によるけがの場合も労災の対象にしていただくように、私のほうも希望いたしたいと思っております。
  332. 辻原弘市

    ○辻原委員 なお若干議論が残りますけれども、これからの取り扱いを見守った上でもう一度質問をいたします。  それからもう一点、労災で、最近の交通事故の頻発、交通機関の非常な発達から問題となりますのは、通勤途上における事故死というものは公務なりやいなや。私は、いまの現況から見て、当然これは公務に該当すべきものと考えるのでありますが、そういう御用意がありますか。そういう形に取り扱われますか。これが一つ。  それから、時間がありませんのではしょってもう一点。これは労災じゃございませんで、関連する問題でありまするが、今度は失業保険の問題であります。それは、いまわが国では林業危機が高く叫ばれておる。過疎現象、その中から林業危機が高く叫ばれておる。人がいなくなった。人に奥地山村に定着をしていただいて、林業のにない手として十分活躍していただくためには、何らかの保障をしなくちゃいかぬということが前々からいわれ、私自身も十数年前からこのことについて強く要望しておる。それで、昭和四十四年の法改正の際に、当然に昭和五十一年までには、これらの労働者について、いわゆる山林労働者を中心に強制適用に踏み切るんだということの趣旨が明記されている。そのことをすみやかに実現されまするかどうかということが第二点。このことを労働大臣に伺いたい。
  333. 田村元

    田村国務大臣 通勤途上災害につきましては、通勤途上災害調査会が満場一致で、やるべしという答申を出してくれたわけであります。そこで、労災保険の仕組みを利用して、給付水準その他現行の労災保険給付と同程度のものとした通勤途上災害補償制度を創設せよといっておるわけでありまして、労働省としましてもこの報告書の方向でやっていきたい、でき得れば法改正の方向へ進みたい、このように考えております。  それから、さっきの第二番目の問題でございますが、五十一年までに何とかせよということで附則でつけられておるわけでありまして、これはもうすでに調査も始めておりますし、そういう方向に持っていくように、いま努力中でございます。
  334. 辻原弘市

    ○辻原委員 この山林労働の問題に関連して、農林大臣に一つ伺っておきたいと思うのであります。  先ほどのジェンクスの勧告にも関連のある問題でありまするが、全林野の労働者に対するいわゆる春闘処分というものは、私はここに詳細な数字がございますが、これを見まして、いかにも少し不当過ぎるんじゃないか、こういう感じがいたします。従来と違ってきわめて大幅な処分であり、しかも、その対象者がおもに日給労働者ですね。従来は日給労働者というのは、これはどちらかといいますると、一般公務員に準ずるというよりは、一般民間労働者に準じた扱いのほうが多かったんじゃないか。それをしかし、処分のときだけ人事院規則でばっさりやるということも不当でありまするし、また賃金カットをしておりますが、この日給制労働者の賃金カットというのは、労働基準法に照らしてみたって私は少し疑義があると思う。そういういろいろな理由から、この全林野労働組合あるいは労働者に対する処分というのは、これは林野庁なり農林省はもう一度よく考えてみたほうがいい。そうしていまの全体の問題の中で解決するように、これは農林大臣だけじゃありませんが、労働大臣にもそのことをひとつお願いをしておきたいと思います。農林大臣からひとつ御所見を聞いておきたい。
  335. 足立篤郎

    ○足立国務大臣 おっしゃるとおり、私も他人を処分するということはあまり好みませんし、あと味の悪いものであります。ただし、今回の場合は三月から四月にかけてのストライキでございますが、事案は私の着任前の事案でございます。聞きますところによりますと、いままでにない大規模なストライキが行なわれた、しかも六回にわたって拠点あるいは全山ストが行なわれたという事実にかんがみますと、法に基づいて今回の処分を行なうということは、私は不当ではないというふうに考えております。  ただ、林野庁の場合は現業機関でございますが、いわゆる公共企業体全般についての方針がきまりまして、法律でも変われば別でありますが、現行法のもとにおいては、私は決して不当ではないというふうに考えております。
  336. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は、あえて不当と申し上げましたが、その不当の理由は、先ほど申し上げました三つの点に尽きていると思います。しかし、この問題は議論をする時間がありません。いずれにいたしましても大幅のものであり、このままではいわゆる林野行政は危うくなりますよ。そのことだけを申し添えておきます。  きょうはたいへん時間が迫って恐縮でありますが、あと若干問題が残っておりますので、ぜひひとつやらしていただきたいと思います。  厚生大臣、先ほど私は、私に参りましたまことにお気の毒な人の手紙を、あえてあなたにお見せをしておくようにということで申し述べておきましたから、内容は御存じだと思う。いま私がここで提起いたしまするのは、難病対策という問題であります。  わが党のと申しますよりは、今回の補正に対する三党共同提案の中でも、私どもはあえて難病対策を一項あげまして、十億を追加するということを主張しているのでありますが、その中で、まあ難病というのはいるいろございますが、私に手紙をよこし、また私がかねて、もう一、二年前から悲痛な訴えを受けております一つの問題に、慢性じん臓炎というのがあります。これは申し上げるまでもなく、機械を使わなければ人間の命が保っていけないという問題でありまして、その治療費は、驚くなかれ一カ月に百万円を要するのであります。これを私に訴えてまいりました人は、国民健康保険でその給付をどうにか受けておる。すなわち、国保では七割は国が持ってくれるが三割は自己負担。この十月から、その三割のうちの八割は国、二割は地方公共団体、こういうふうになっておるのでありますけれども、ところが実際問題は、予算が少ないためにそれらの自己負担分を給付してもらえないという訴えであります。この点について、私は、一カ月百万円も要る、それがないと命が続かないというような気の毒な患者に対しては、すみやかに全額国費でやる努力をこの際大臣としてはお考え願いたい。
  337. 塩見俊二

    ○塩見国務大臣 ただいまのじん臓の問題につきましては、御存じのとおり人工じん臓によって治療いたしておるのでございまするが、これが非常な高額な経費を要することは御指摘のとおりでございます。それで最近、こういった人工透析につきましては、全額公費負担にするということで、実は国が八割、地方が二割ということで、本年度も三億五千万円の予算を計上して、これに対処することにいたしておるわけであります。
  338. 辻原弘市

    ○辻原委員 お気の毒な実情については、すでにあらかじめ申し上げておりますから、十分ひとつ個人負担については御考慮願いたいと思います。  それから文部大臣に一つ。この委員会を通じて重要な文教政策については、ほとんど文部大臣の出番がございませんでした。そこで私は、いよいよ本国会最後のあれでありますから、ぜひ文部大臣に御登壇願いたいと思います。  それは、田中総理もたいへんに文教に力を入れるということで大ラッパを吹かれております。それを受けて、文部大臣が小ラッパを吹かれておる。その中で教職員の待遇改善をやるんだ、たいへんに私はけっこうなことだと思うのです。きょうは時間があれば、一体、教育の機会均等は今日どうなっておるかということを議論してみたかったのでありますが、時間がありません。  そこで、教職員の待遇を改善し、教職員に真剣に教育に進んでやってもらう、あるいは進んで志願をしてもらうということは、やはり人間でありまする以上待遇改善以外にはない。ぜひこの点について、ラッパだけじゃなくて実現をしていただきたい。大蔵大臣もおられますが、大蔵大臣もいなやを言わず、これはぜひ実現してもらいたい。  なお、一般教員もさることながら、僻地、山村でがんばっていただいている教職員の方々に特別な配慮が必要である。私は一案を提示しておきましょう。それは、かねがねの持論でありまするが、わずかの手当で山奥に行きなさいといったって、これはなかなかむずかしい問題です。そこで私は、勤続加算をやりなさい。今度あなた方の案の中に年功加俸というものを入れておる。それもけっこうだ。しかし、僻地、山村の方々に対して勤続加算をやりなさい。しんぼうして一年山奥で苦労されたならば、それは勤続について加算をいたします、これをやれば大きく問題は解決するし、大いに喜ばれると私は思う。だから、待遇改善の中にそれらのことを入れて、ひとつ僻地の教職員の御苦労を考えて抜本改正を進められるよう、強くこれは文部大臣に要求をいたしておきます。大蔵大臣も、木で鼻をくくらないように、ひとつ頼みます。
  339. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 教員の待遇の改善につきましては、辻原さんおっしゃるとおり、この前の特別調整額支給に関する法律の通ったときに、これは人事院の関係がございますので、人事院に対し、本来教職員には、その特殊性、困難性にかんがみて、給与表は一本別表、一項独立したものがあるべきであると言ったら、人事院でもそのとおりでございますと言うから、それじゃ早くつくってほしい、こう言って、御承知のように、いま作業を進めているところでございますが、これは非常にむずかしい計算があるので時間がかかる。とても待っておれませんから、いまあなた御存じのような、昭和四十八年度予算要求二五%、あとの二五%と合わせて五〇%アップということをやっているのですが、一生懸命にやるつもりでございます。  それから、僻地教育の勤続加俸につきましては、いい御意見でございますから、ぜひやりたい、こう思っております。
  340. 辻原弘市

    ○辻原委員 最後に運輸大臣に伺っておきたいと思います。  これで私は質問を終わりたいと思うのでありますが、それはせんだって和田委員からも、列島改造に関係して海運問題について議論がございました。総理もその点について大いにハッスルされたのを記憶しておりますが、ここで私は、内航と外航について一つずつ問題を提起いたします。  それは外航について、またぞろ利子補給をもとに復してくれという要請がどこいらからか出ておるようであります。この利子補給法は、申すまでもなくいわくつきの法律であります。これが制定された当時、海運再建と外貨獲得という二つの意味合いのもとに法は制定されたことを記憶いたしております。しかし、いまそのいずれを取り上げてみましても、もはやその必要性はないはずである。運輸省として、四十四年から四十七年までですか、漸減をしようといってやっておったところが、いま二十九次造船でしょう。それが再び二十六次造船の利子率まで引き戻してくれなんという要請が出ているということを聞いて、私はまことに時宜に適しないと思う。この点について政府見解はどうか。  それからもう一つは内航海運であります。去年からことしにかけて、不況だからいろいろ対策をやってこられた。しかしいずれも舌足らず。特に内航の対策の中で一番必要なことは何かというと、それはまず自家用船に対する取り扱いである。次は木造船に対する問題である。何回も木造船対策をやってまいりました。私もこの問題について前にも運輸省に聞いたことがある。もう木造船対策は終わりましたという。ところが、またきのう聞いてみると、四十万トン余りが残っているじゃありませんか。なぜそんな違いが出てきたか。  これはこの間和田さんも指摘されておりましたけれども、船の場合に、グロストンとデッドウエート、この大きな違いが、現実に何回洗ってみても幾らでも出てくるという原因になっているのですよ。対策をやる場合にグロストンなんかでやるというのは、しろうとのしろうとなんです。われわれだってそういうことはわかる。あくまでも基準はデッドウエートを中心にしてその総トン数をはかる、その上に対策を進めるということが一つ。  それから自家用船の問題。これはこの間、東京湾ではしけにかなり内航の許可が出たというんでしょう。二百隻ぐらいあるはしけのうち、かなりのものが内航を許可されておるというのであります。いま内航船はがんじがらめで、共同係船だとかやれ解撤だといって絞めあげておるでしょう。そのさなかにどんどん内航に水増しをするようなことをやって、運輸行政の一元化ということがいえますか。すみやかに自家用船に対する対策を樹立すべし。  それから木造船については、自主調整ということで二万トンばかりやっておるようでありますけれども、四十万トンに二万トンで一体どれだけの解決になりますか。だから四十万トンのうち少なくとも何分の幾つに相当するぐらいのことは、国で措置しなければいかぬということなんであります。  以上私は、時間がありませんから意見だけを申し上げて、運輸大臣から、内航、外航について私が指摘した点についての御意見を承りまして、はなはだ残念でありますが、その他の問題は他日に譲りまして、私の質問は以上で終わりたいと思います。
  341. 佐々木秀世

    ○佐々木国務大臣 お答え申し上げます。  外航船に対する利子補給の問題でありますが、御承知のとおり、海国日本といたしまして海運業は非常に重大な問題であります。しかし、戦後、壊滅いたしました船舶、造船関係につきましては、最初計画造船ということで、利子補給を兼ねた国の非常な助成をしなければならないという方針でございました。国と国民との一体となった努力によりまして、今日三千五十万トンという世界一の現状を築きましたことは、御承知のとおりであります。  しかしながら、この情勢に従いまして、お話しのようなもう利子補給は要らないのじゃないか、こういう声が出ていることは承知いたしております。しかしながら、昨年からこの海運関係につきましては、通貨の調整の問題、あるいは海員ストの問題などもございまして、今日は必ずしも非常に好調とは申されないのであります。これからやはり日本としての海運関係を維持するためには、今後ある程度の利子補給というものが必要だと考えております。しかし、お話しのような状態がいろいろ各方面にございますので、目下海運造船合理化審議会に国際経済等をにらみ合わして諮問をいたしておりますので、その答申に基づいて検討いたしたい、こう考えております。  内航の問題につきましては、お話しのとおり、いろいろな問題がございますけれども、これに関しては十分検討いたしたいと考えております。  それから、木造船のことでございますが、木造船のことにつきましては、最近までこれを逐次鋼船に改造いたしておりますことは御承知のとおりであります。しかし、今日の状態で必ずしもこの鋼船化していくことは、御希望のような状態にはなっておりません。しかし今後、せっかくのお話がございましたので、鋭意木造船を鋼船にかえるように十分努力いたします、こういうことで御了解を願いたいと思います。
  342. 坪川信三

    坪川委員長 以上で辻原君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和四十七年度補正予算三案に対する質疑は全部終了いたしました。     —————————————
  343. 坪川信三

    坪川委員長 辻原弘市君外十六名より、日本社会党、公明党及び民社党の三党共同提案にかかる、昭和四十七年度補正予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。
  344. 坪川信三

    坪川委員長 この際、その趣旨弁明を求めます。細谷治嘉君。
  345. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、提案者を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本社会党、公明党、民社党三党共同提案にかかる、昭和四十七年度一般会計補正予算昭和四十七年度特別会計補正予算及び昭和四十七年度政府関係機関補正予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議につき、提案の理由とその概要を御説明申し上げます。  すでに動議の案文につきましては、お手元に配付いたしてありますので、御参照いただきたいと思います。  今回の補正予算は、福祉優先の政策とは名ばかりであり、人間尊重、国民生活、福祉充実を願う国民世論に逆行するものとなっており、国民の期待にこたえることはとうてい不可能であります。  政府の補正予算の根本的欠陥は、すでに国内の景気回復が進み、国民総生産は大幅な伸びを示し、消費者物価のみならず、卸売り物価の高騰が見られるとき、あえて三千六百億円の公債を発行し、これを財源に大型予算を組み、第二次財投追加を行なうことは、景気を一段と刺激し、物価高騰、インフレを招く福祉軽視のインフレ予算だということであります。  いま福祉優先の政策を実施するため必要なことは、高度経済成長の過程で生み出されたひずみや国民生活の犠牲、格差と不公平を是正することであります。しかるに、今回の補正予算は、相変わらず産業基盤投資に偏した公共投資を重点的に行ない、生活福祉関連施設の充実は軽視され、大企業本位、大土木業者中心の田中内閣の姿勢をあらわにしていることであります。  しかも、土地投機の規制や地価対策、あるいは地方財政に何ら手を打つことなく、巨額の公共投資を追加することは、地価暴騰に一そう火をつけ、地方自治を崩壊させ、予算を浪費する以外の何ものでもありません。  すなわち、このような補正予算は、国民福祉に逆行し、景気を一段と刺激するだけであって、政府のいう円対策には何ら役立たず、明らかに総選挙を目当てにした無計画、ずさんなおおばんぶるまいだと申さなければなりません。したがいまして、政府補正予算を容認することは、断じてできないところであります。  以上が、日本社会党、公明党、民社党三党が共同して、政府案を撤回し、この組替え要綱に基づいて、編成替えを強く求める基本的理由であります。  次に、組替えの重点及びその具体的内容を申し上げます。  第一に、補正予算を組替えるにあたっては、人間尊重、福祉優先の政策を実施するため、長い間国民生活を犠牲にしてきた高度成長の経済運営を根本的に切りかえることが前提であります。今日、社会保障の飛躍的な充実、なかんずく老齢年金の拡充と社会福祉関連施設の緊急整備は、何にも増して最優先的に推進さるべきであります。  第二は、日中の恒久的友好関係を確立し、アジアの緊張緩和を推進するため、四次防計画を中止し、防衛費はこの際大幅に削減して、平和財政へと転換をはかるべきであります。  したがいまして、今回の補正予算は、以上の方針に沿い、緊急優先順位に基づいて、最低限次のような要綱に従って組替えを行なうべきであります。  その一つは、社会保障、社会福祉関係費等の増額であります。  まず、老人福祉対策の緊急性にかんがみ、老齢福祉年金については、現在七十歳以上一人月額三千三百円を、昭和四十八年一月から一人月額一万円支給とすることにいたしております。四十七年八月現在の老齢福祉年金の受給者は三百三十一万人余りでありますが、その後の増加を五万人程度見込み、歳出額を六百七十六億円増額いたします。なお、四十八年度からの給付は、六十五歳以上とするよう対処し、厚生、国民両年金については、老齢福祉年金一万円とあわせて、直ちに従来の積み立て方式を賦課方式に改め、同時に大幅増額を実施、支給できるよう、法改正等制度の抜本的改正を行なうものであります。  また、老人福祉関係費については、寝たきり老人、一人暮らし老人対策等の緊急措置として、既定予算計上額の第四・四半期分の予算をほぼ倍増させ、百億円を追加することとし、難病対策では、医療の無料化、施設、調査研究等の拡充を目ざし、当初予算のほぼ倍増、十億円を増額し、さらに社会福祉関連諸施設の充実のため、社会福祉施設整備費、国立病院及び療養所施設費などの経費として、百億円を追加増額することとしております。  以上によりまして、社会福祉充実の緊急対策として、合計八百八十六億円の追加増額と相なるのであります。  その二は、歳出予算の減額であります。  一つは、公共事業関係費の削減であります。すなわち、公共投資追加のうち、景気刺激を招く産業基盤投資に偏した公共事業費その他の施設費は、この際削減することにいたしております。したがって、公共投資の追加五千三百六十五億円のうち、災害復旧事業費、道路整備費中、国民生活に密着した市町村道の改良等、及び住宅対策、生活環境施設整備、その他社会福祉諸施設、文教施設等を除き、三千百四十八億円を削減することといたしております。  二つ目は、国債整理基金特別会計への繰り入れ金については、公債の追加増発を取りやめることにより、これを削減し、緊急を要しないその他の費用と合わせて二十九億円を削減することといたしております。  三つには、既定経費の節減であります。政府補正においても、既定経費につき三百九十四億円の節減を行なっておるのでありますが、内容精査の結果、既定経費の五%に相当する金額を節減し、新たに三百三十六億円を加え、合わせて七百二十九億円を節減することといたしております。  四つには、予備費千八百億円を半減することとし、政府補正と合わせて九百億円を減額することといたします。  五つには、防衛関係費の削減であります。日中国交回復の実現により、アジアの緊張が緩和の方向に向かおうとしているとき、四次防計画に基づく軍備増強政策を改めることは国民的な要求であります。しかるに、巨額の公債を発行する一方で、防衛関係費を既定予算のまま温存することは、国民福祉に逆行するばかりでなく、インフレ、軍事予算の再現につながる危険性をはらんでいるといわなければなりません。防衛関係費のうち、武器、車両、航空機、艦船、施設整備、研究開発等の装備費は三千九十二億円にのぼっております。そこで、このほぼ四分の一を削減し、事業の執行を停止することが、国民の期待にこたえ、平和への道を進むものであり、この際、七百七十三億円を減額しようとするものであります。  以上申し上げました諸施策を実施することにより、公債発行予定額の追加三千六百億円は増発の必要性がなくなり、全額削減することができるのであります。  かくして、一般会計補正予算の歳出追加額の合計は五千三百十五億円になるのでありますが、既定経費の節減、予備費の減額及び防衛費の削減が行なわれるために、この組替え案による歳入、歳出予算の規模増加は二千九百十二億円の純増となり、政府案の六千五百十二億円の規模増に比べて、三千六百億円の規模縮小となるのであります。  以上、日本社会党、公明党、民社党三党共同組替え案の理由及び概要を申し上げましたが、これらは当面緊急を要する最低限度の要求であります。政府はいさぎよく今回の補正予算を撤回し、政治の流れを変えるため、すみやかに組替えを行ない、再提出されるよう強く要求いたしまして、趣旨弁明を終わります。(拍手)
  346. 坪川信三

    坪川委員長 以上をもちまして、編成替えを求めるの動議の趣旨弁明は終わりました。     —————————————
  347. 坪川信三

    坪川委員長 これより討論に入ります。  昭和四十七年度補正予算三案及びこれに対する撤回のうえ編成替えを求めるの動議を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。小澤太郎君。
  348. 小澤太郎

    ○小澤(太)委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和四十七年度一般会計補正予算(第1号)外二案に対し賛成、日本社会党、公明党、民社党の編成替えを求める動議に反対の討論を行ないます。  討論に先立ち、去る九月田中内閣が成立後日いまだ浅いにもかかわらず、第二次世界大戦後の懸案事項の一つであった中華人民共和国との間に国交回復をなし遂げたことは、国民とともにこれを高く評価し、あわせて、田中総理の行動力に対し、深く敬意を表するものであります。  さて、わが国の経済情勢は、昨年末を底とし、年初来、緩慢ながらも順調に景気回復の方向へ進んでおりますが、ここに懸念さるべき問題は、国際収支が予期以上に黒字幅を拡大し、外貨準備も今年末には約二百億ドルに達しようという点であります。  ところで、輸出の増加は国際競争力の強さのあらわれでありますが、今日、わが国の貿易の増大は、遺憾ながら世界市場を撹乱する要因ともなりかねず、一部に黒字国責任論すらもあらわれてきておるのであります。  そこで、わが国の当面とるべき課題は、輸出をあとう限り抑制し、国際的摩擦の解消に努力するとともに、輸入を極力増大することが必要であります。  政府は、昨年六月以来、第一次、第二次、第三次の円対策を決定し、三年以内に経常収支の黒字をGNPの一%以内に押え、長期的展望に立って、内外の均衡をはかることといたしたのであります。このため、今国会においても、円対策についての諸法案の審議を求めていることは、すでに御承知のとおりであります。かかるわが国の経済情勢を踏まえ、今回の補正予算においても、これが対策の一端をになうこととなったことは、まことに適切な編成と考えるものであります。  次に、政府原案の主要な点について、簡単に私の意見を申し述べてみたいと存じます。  まず第一点は、公共事業関係費についてであります。  従来、わが国経済は、民間主導型に運営され、財政はその補完的役割りを果たしてきたのでありますが、経済の急速な発展のため、一方において、公害、過密都市、物価高等の現象が生じ、社会福祉の面にもその立ちおくれが目立ち、これらのひずみの解消は、いまや国民的な強い要望となっておるのであります。  これがため、公共事業による住宅、道路、生活環境施設等の社会資本の充実をはかることといたしておりますことは、まことに適切な措置考えられるのであります。  他方、これらの公共投資は、内需を喚起し、輸入の増加、輸出の抑制という効果を持ち、この補正により国際収支に対しまして、四十八年末までには十億から十五億ドルの効果が発揮されると推定され、国際収支対策上大きく寄与するものと信ずるものでありまして、まさに一石二鳥の効果が期待され、心から賛意を表するものであります。  第二点は、公務員給与改善のための措置についてであります。  公務員給与については、昭和三十五年以来、人事院勧告で五月実施が述べられていましたが、諸般の事情により、昨年ようやく完全実施を行なうことができたのであります。  さらに本年は、四月実施に踏み切ることができたことは、官民給与の格差是正の点から、適切な措置であると考えます。国民の行政に対する要望は、今日ほど切実なものはありません。したがって、今後とも行政機構の改革、行政能率の向上には、一そうの努力が望まれるものであります。  第三点は、今回の補正予算が大型に過ぎ、インフレにつながるものではないかとの議論がありますが、現在、わが国経済が好況に向かっているとは申せ、いまだ需給ギャップがかなり存在している等の実情から考えるならば、この程度の予算規模は、何らインフレの懸念はないものと存ずるのでありまして、公債金を含め歳入の確保をはかったことは、適当な措置であると賛成するものであります。  次に、今後のわが国の経済政策のあり方として、田中総理がかねて主張しております日本列島改造論を世に問い、経済の発展とともに人間優先の福祉社会の建設に努力しようとしていることは、今日の政治の方向としてまことに適切、妥当なことであります。  これが実現のために、総合経済計画の策定、これに基づく土地利用計画、社会福祉計画及び税制度、物価安定等の諸施策が、いま政府関係機関等において着々と検討されておりますことは、心強い限りであります。  国民とともに考え国民とともに歩む決断と実行の政治が、来たるべき昭和四十八年度予算に反映されることを期待するものであります。  最後に、三党共同提案による補正予算の組替え動議について意見を申し上げます。  この動議では、予算の編成替えを求める理由として、政府原案を福祉軽視のインフレ予算、産業優先で選挙目当ての場当たりであるときめつけておりますが、私は、この意見には断じて賛成できないのであります。  また、組替え要綱として、年金の増額、公共事業等の減額、その他の措置を要求しておりますが、私は、現状では政府原案を最善のものと認め、かかる要求に反対するものであります。  以上をもって、私は政府原案に賛成し、三党提出の動議に反対の討論を終わります。(拍手)
  349. 坪川信三

    坪川委員長 次に、安宅常彦君。
  350. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となりました昭和四十七年度一般会計補正予算(第1号)、同特別会計補正予算(特第1号)及び同政府関係機関補正予算(機第1号)各案に反対し、日本社会党、公明党、民社党の三党共同で一提案いたしております、右政府三案を撤回のうえ編成替えを求めるの動議に賛成の討論を行ないます。  まず、初めに申し上げておきたいことは、いまわが国の経済は、自民党政府が長い間取り続けてきた大企業中心、生産第一主義、国民生活軽視、人間そのものを忘れた高度成長政策の矛盾が一ぺんに爆発し、公害、物価高、交通事故、過疎過密、富と所得の不公平の拡大というようなさまざまの問題を引き起こしております。そうして、内には生産過剰による不況と、外には円切り上げに追い込まれる、こういうような、従来のような景気対策では乗り切れなくなってきており、これまでの経済政策を、国民の生活と福祉優先の政策に根本的に転換しなければならない大きな曲がりかどに来ている、こういうことであります。  言うまでもなく、このような事態を招いたのは、自民党政府の一枚看板である高度経済成長が、勤労者の低賃金と合理化を土台にして公害をたれ流しにし、西欧各国の三分の一という低い社会保障をそのままこれを放置し、国民の生活環境整備をあと回しにして、農業や中小企業を押しつぶすなど、まさに国民生活を犠牲にして進められた結果であり、大企業と一部の金持ちの階層だけが栄えて、その陰に国民の幸福は踏みにじられてしまっているのであります。  この根本的な矛盾を解決する道は、何よりもまず大企業優先、人間不在の政策を転換し、物価の抑制、公害の追放、住宅、生活環境の整備、老齢年金その他社会保障の充実によって、国民の命と暮らしを守る経済に切りかえることが先決であるといわなければなりません。  しかるに、今回の政府昭和四十七年度補正予算案及び第二次財政投融資追加は、福祉優先の政策とは名ばかりであり、福祉の強化や円切り上げ回避には何ら役立たず、かえって三千六百億円に及ぶ大型公債発行の追加増発を軸として、巨額の公共投資を行ない、景気を刺激し、物価値上がりを招く、大企業優先、福祉優先とは縁もゆかりもない、国民生活無視のインフレ予算となっているのであります。  このことは、日本列島をセメントとブルドーザーで踏みにじり、いわゆる高度成長を性こりもなく継続し、公共投資を拡大させて景気刺激を行ない、日本列島を総公害化しようとする、えたいの知れない日本列島改造論と軌を一にするものであり、明らかに財政を中心として、大資本のための高成長を続けようとする、きわめて危険なやり方であるといわなければならないのであります。  このような立場から、まず第一に、すでに景気回復が予想され、本年度の成長率は名目一四・八%もの伸びとなり、しかも消費者物価だけでなく、卸売り物価が大幅に上昇傾向を見せているにもかかわらず、三千六百億円という巨額の実質的な赤字公債の増発によって大型補正予算を組み、これを財源として巨額の公共投資を行なうことは、言うまでもなく物価高を促進し、インフレを招く危険が十分であるといわなければならないのであります。  本年度の国債発行は、当初予算においてすでに一兆九千五百億円にのぼっており、これに加えてさらに三千六百億円もの国債の追加増発を行なう根拠も、その必要性も何ら認められないところでありまして、財政法も無視したという疑いもあるこういうやり方は、円対策に名をかりて、国会解散を見越しての無計画なものであり、ずさんきわまりない選挙対策予算といわれても、一言の弁解の余地もないしろものといわなければなりません。  第二に、福祉優先の経済を実現するためにいま必要なことは、何よりも高度成長の過程で生み出されたさまざまなひずみ、格差、不公平を是正することであり、国民生活と福祉の向上、個人消費支出の増大をはかり、経済白書も指摘しているように、需給ギャップと福祉ギャップをカバーすることであるといわなければなりません。そのため、最も優先的に実施されなければならないのは、社会保障の飛躍的な拡充と大幅な勤労所得減税であります。  しかるに、今回の補正は、相変わらず産業基盤に片寄った公共事業中心の編成を行ない、鉄やセメント、土建業者の利益をふくらませているだけであり、企業奉仕、大土木業者中心の田中内閣の本性をあらわにしているといわなければなりません。しかも、法人の土地の買いあさりが問題となっており、公共事業費の約三割が用地買収費に食われているという状況のもとで、当面の土地対策には何ら手を打たず、巨額の公共投資を追加することは、地価をべらぼうに押し上げ、用地費を引き上げるだけであり、予算の効率的な使用を期待することは、とうていできなくなるのであろうということを指摘しなければならないのであります。注目すべきことは、土地の値上がりについていえば、本委員会の論議を通じて、金融資本までが土地の買い占めにやっきとなっている状態に手を打てないどころか、かえって政府がこれに加担し、あるいは教唆扇動している、こういう疑いまでが暴露されたということであります。  特に、従来の公共事業関係費は、道路、港湾をはじめ産業基盤に片寄ったやり方が批判され、生活環境、社会的消費手段への切りかえが要求されてきたところであります。したがって、今回の大規模公共投資も、本来ならばその全部を生活関連投資に振り向けるべきであるというのが当然のことであります。にもかかわらず、その使い方は依然として従来のあり方から一歩も抜け出ず、生活、福祉関係の対策は全く忘れられているのであります。  第三に、地方財政危機が叫ばれているとき、補正予算による支出の増大と、国債増発に伴う収入減少に見舞われる地方財政に対しては、そのしわ寄せ分にはほとんど手当てがなされていないのであります。しかも、その一部を地方税の自然増収でまかなうようにするなど、乏しい財源の中から国の公共投資に財源を食われ、独自の事業ができなくなり、地方財政は二重の圧迫を受けているのであります。これは福祉重点に逆行するだけでなく、地方自治体が国の事業の下請機関化する危険を一そう強めるものといわなければならないのであります。  第四に、国民生活を犠牲にした経済の高度成長は、重化学工業化の進展、輸出優先のびっこな経済構造をつくりあげたのであり、その結果が、国内では生産過剰による不況を、対外的には円切り上げを余儀なくされ、物価値上がり、公害、低福祉など矛盾を拡大したことは明らかであります。こうしたやり方に根本的なメスを入れ、人間優先、福祉中心の政策に思い切って発想を変えない限り、従来の景気政策を中心とした成長刺激策では解決できないことを、あらためて認識すべきであります。  そのためには、重化学工業型の経済構造を転換し、主要産業の設備投資計画を規制し、同時に、企業の社会的責任を強化すべきであり、低賃金構造の是正、労働時間の短縮、週休二日制の実施、社会保障の拡充、特に老人や受給者だれもが豊かな暮らしのできる年金、安い費用で真に国民の命を守る医療制度の確立、あるいは住宅、生活環境施設、公害、環境保全対策の確立、公害汚染原因者負担原則の貫徹などの施策を重点的に前進させ、同時に、四次防を直ちに中止し、防衛費を削減して経済の軍事化を阻止し、対米べったりの貿易構造を改め、世界の諸国と平和共存、平等互恵の経済を打ち立て、真に人間、福祉優先の経済に転換することが、何より大切であると考えるもの一であります。  第五に、特に強調しなければならないのは、首相の「日本列島改造論」に明らかに書かれており、また本委員会の論議でも明らかになったように、日本農業の振興については定見も政策もなく、農民を守るわが党の主張や、日本農業の将来を憂えている農民の切なる願いには全く耳をかさず、インチキな生産者米価決定でもわかるとおり、食管制度を崩壊させ、あまつさえ大資本擁護のために、戦後の自作農家の大黒柱である農地法を改廃する意図を明らかにするなど、わが国の農業を壊滅の道に引きずり込み、ひいては食糧の自給にはほど遠い、自主性のない日本国をつくりあげるという、民族の独立のためにも暗い影を投げかける政府の意図は、絶対に許すことができないものであります。  第六に、中小零細企業に対する配慮であります。従来、二階から目薬ほどの対策費しか持たない実態なのに、特に金融において、今度はスズメの涙の半分にも足りないような対策と、税制では一顧だに与えない、そうして大企業の安い法人税はそのままにしておきながら、中小企業の苦痛には目を閉じ、耳をふさいでいると言ってもこれは過言ではありません。  第七には、最も国民が期待している日本の平和の問題であります。南北朝鮮の今日の動き、ベトナム情勢の進展など、アジアの緊張緩和の方向が出ているにもかかわらず、沖繩の基地にはたりた一言も文句も言えず、ベトナムへの爆撃機やあるいは戦闘車両の発進にも、これも一言の文句も言えない、平和にとって最も危険な、従属的な安保条約の堅持をうつろにただ叫び続け、あまつさえ、三次防を倍増する四兆六千三百億円、実質五兆一千億円の四次防を急いで決定し、幾多の疑点を残したまま強行しようとすることは、まさに憲法に違反し、時代の潮流に逆行する田中内閣の軍国主義、侵略的性格を暴露したものといわなければなりません。断固として私どもは強く反対をいたします。  このような態度を続ける限り、日中国交回復の将来の正しい発展はもちろん、アジアの平和にとって、近い将来大きな障害を起こすことになることは必至であります。厳重な警告をしておきます。  いま国民が切望するものは、長期の防衛計画ではなく、ゆるぎない平和への展望であります。軍事優先ではなく、国際的な経済協力、文化交流、生活福祉などの多角的な非軍事的手段の組み合わせの上に立ってこそ、この国の真の安全保障は打ち立てられるべきであるということであります。  最後に、今国会を通じ、政府は、四次防と大資本擁護のインフレと公害まき散らし政策だけは決断と実行をはっきり表明し、あとは全部すべて検討中、勉強中、努力中、そうしてほとんどは各種審議会を隠れみのにしてごまかすなど、はては皆さんの声をもとにして今後考えてみたいなど、歴史上まれに見る無責任、馬耳東風の内閣であるということだけが、国民の胸に強く焼きつけられたということを申し述べておきます。したがって、この補正予算はこうした性格のものであるということを断言してはばかりません。  以上の観点から、今回の政府補正予算案は、平和と人間尊重、福祉充実を願う国民世論に逆行するものであり、断じて容認することができないのであります。  これに対し、三党組替え動議は、まさに現時点における国民の緊急かつ最低限の要求であり、この程度の編成替えはこれを直ちに実施して、政府のまぼろしの福祉重点の予算並びに政策を態度で少しでも示させるためにも、委員各位の賛成を強くお願いを申し上げまして、私の討論を終わります。(拍手)
  351. 坪川信三

    坪川委員長 次に、田中昭二君。
  352. 田中昭二

    田中(昭)委員 私は、公明党を代表して、政府提出の補正予算三案に反対し、日本社会党、公明党、民社党三党共同提出による組替え動機に賛成するものであります。  以下順を追って、政府案に反対の理由を申し上げます。  われわれは、さきに田中総理が組閣早々に、日中国交正常化の成果をあげられたことに対しては、賛意と敬意を表した次第でありますが、以後の田中内閣の姿勢は、われわれの期待を裏切るものが多く、特に今国会における本会議及び予算委員会質疑応答によって、従来の政治路線と同じく、国民世論に背を向けたものであることが明らかになったと思うものであります。  以下、幾つかの問題について、要約して述べたいと思います。  まず第一は、日米安保条約堅持の姿勢であります。  政府は、日中国交回復以後においても、ことさらに日米安保の堅持を強調し、さきに車両制限令の改正、B52の沖繩飛来の容認等、国内における米軍の行動の自由を大幅に認めるというはなはだ危険な姿勢をとっております。  しかも、本委員会で論議されたように、安保条約極東の範囲に台湾地域を含むとすれば、これは中国に対する内政干渉で、せっかくの日中友好路線をねじ曲げるものであり、新内閣に対する国民の期待を、完全に裏切るものといわざるを得ません。  第二は、アジアの緊張緩和に逆行する総額五兆一千億円にも達する四次防計画の実施であります。  これは三次防に比べて、量的にも膨大なものであるだけでなく、質的にも攻撃的兵器の装備を含むものであることは、本委員会の論議でも明らかになりました。したがって、これは総理の答弁にもかかわらず、アジアの諸国に大きな脅威を与え、国内的には将来の大きな財政負担をもたらすものとして、わが党の容認できないものであります。  第三は、田中総理のにしきの御旗である日本列島改造論であります。  私は、列島改造論に描いているようなバラ色の夢を見ること自体、必ずしも悪いとは言いません。しかし、現在国民が最も願っているのは、公害の防止であり、物価の抑制であり、年金等の社会保障の充実であります。  この際、これまでの経済成長一本やりの政策が、現在のような弊害をもたらしたという深刻な反省を行なわずに、ただ単に列島改造というばく然たる構想によって、国民の悩みを解消できるかのような幻想を与えることは、著しく政治的良心を欠くものというべきであります。  のみならず、過日の本委員会で指摘されたように、列島改造論が今日までもたらしたものは、土地の買い占め、地価の値上がりであります。これが福祉の向上に逆作用するものであること、言うまでもありません。  次に、私は、補正予算政府原案の内容について検討したいと思います。  政府案の一般会計歳出の追加額は、七千六百六億円というかつてないほどの大きさであります。そのうち給与改善費、地方交付税、さらには災害復旧事業費など、義務的経費ないしはこれに準ずるものが約三千百億円で、これはとりたてて論ずる必要もないと思われます。  残りの四千五百億円近いものが、一般の公共事業費その他の施設費の追加計上でありまして、歳入面にはその見返りとして、公債三千六百億円の追加発行を見込んでおります。これらの事業費の中には、福祉施設費とか、環境衛生施設整備費など、国民生活上緊急必要な事業費も含まれておりますが、全体として、景気の回復もほぼ順調と見られる現段階で、物価高騰を誘発する景気刺激的補正予算を提出した政府の意図が問題であります。  公害防止や物価抑制よりも、土木事業を振興させて景気を刺激するという政府姿勢が、この補正予算にはっきりあらわれております。しかも、大蔵当局が予算の執行面から、事業の年度内消化は無理だという状況のもとで、なお膨大な事業費を計上しているのは、選挙対策のおおばんぶるまいのにおいがきわめて強いといわざるを得ません。  かかる補正予算がインフレを招く危険性を強め、地価高騰も推し進め、予算のむだ使いになる中で、福祉の充実向上を願う国民の期待を裏切り、国民生活を一そう苦しめるに至ることは明らかであります。  以上のような理由から、私は、政府提出の補正三案に反対し、三野党共同提案による組替え案に賛成するものであります。(拍手)
  353. 坪川信三

    坪川委員長 次に、和田群生君。
  354. 和田春生

    ○和田(春)委員 私は、民社党を代表いたしまして、昭和四十七年度予算補正の政府三案に反対をし、社会、公明、民社三党提出による組替え動議に賛成をするものであります。  まず、政府案に反対する理由を要点的に述べたいと思います。  その第一は、田中新内閣発足にあたりまして、総理国民に向かって声明をいたしました政治の基本姿勢に関する理念、すなわち、従来の生産第一主義を反省し、生活第一主義に政治の基本を置くという姿勢と、今回の補正予算案編成の態度との間に、思想の一貫性が認められがたいからであります。  総理及び関係閣僚は、しばしば成長が福祉を生む、福祉は成長を活用しなければならないと主張してこられました。確かに、その一面を否定いたしませんけれども昭和四十七年度経済白書がいみじくも指摘いたしておりますように、実はそのようなこれまでの方針が、成長と福祉の乖離を生んできたものではないでしょうか。そういう点を考えてみますと、いままでは経済改革といい、あるいは経済社会発展計画といい、あるいはまた新全総といいましても、これらはすべて物が主眼になっておったわけでございます。しかし、政策の転換をはかる、政治に対する姿勢を変えるという形になれば、物を主眼とするのではなく、人間としての生活を主眼とする、そういう明確な政治姿勢の切りかえがなければならないと考えるわけでございます。  確かに、成長が福祉を生んできた一面を否定するものではございません。また、成長なくして福祉を実現することが困難であるということにも一面の真理があるわけであります。しかし、それは発展段階の低い開発途上にある国々においては、今日においてもなお言い得ますけれども、実は経済的に非常に発展してきた先進産業国、わが国も含めまして、成長が反福祉の要因を生み出しましてプラスマイナスが相殺をされる、あるいはマイナスの要因が累積をされまして、プラスを帳消しにして国民生活を侵害するという事態があらわれてきているとわれわれは考えるわけであります。こういう点について、たとえば十年前には気違い扱いをされておったゼギスト、すなわちゼログロース、成長をゼロにしようとする人々の意見も今日見直されていることは、総理以下御存じだろうと思います。  われわれは、そこまで極端なことを主張するものではございませんけれども、少なくともこれからの財政あるいは経済の計画にあたりましては、まず福祉の目標を定めることが先決であると思います。年金、住宅、物価あるいは環境整備、乳幼児、心身障害児、医療、そして重要な教育などにつきまして具体的な目標をきめ、年次的な水準を定めることによりまして、それを実現するためにいかなる予算を組むべきか、いかなる経済運営をなすべきかということを、真剣に考えるべき時期に来ていると思うわけであります。  しかしながら、今回提案されました政府の補正予算案を見ますと、宣伝は、生活を重視をしたといっておりますけれども、依然として旧来のパターンを出ていないものであるということを、残念ながら指摘せざるを得ないわけでございます。そういう点におきまして、私どもはこの政府の補正予算案に賛成するわけにはまいらないわけでございます。  さらに加えて申しますならば、福祉優先に対する発想の転換ということばがしばしば強調されておりましたけれども、補正予算案の中において最も大きな要素になっているものは、これまで同僚議員からも指摘されましたように、公共事業費を公債の増発によって大幅に追加していることであります。このような状況は、現状を見ました場合に、結局公共事業の消化能力を越えまして、一方において地価を刺激し、財政インフレを引き起こす、はなはだ大きな危険があることを指摘せざるを得ないと思います。  さらにまた、円対策が超大型補正予算を組んだ大きな理由の一つとされております。しかし、あの補正予算案を最初から終わりまで読んでみましても、円対策もまことに不得要領でございまして、その効果は全く期待できません。結局のところ、大型補正予算編成の意義が失われると断ぜざるを得ないわけでございます。  こういう点につきまして、三党共同提出による補正予算に関する組替え動議は、いま述べてまいりましたような政府提案に関する欠点をでき得る限り補正をいたしまして、国民の期待にこたえる良心的な予算案であると考え、全面的に賛成をし、私の討論を終わる次第であります。(拍手)
  355. 坪川信三

    坪川委員長 次に、谷口善太郎君。
  356. 谷口善太郎

    ○谷口委員 私は、日本共産党を代表して、本補正予算三案に反対いたします。  反対の理由は、第一に、本案が三千六百億円にものぼる赤字公債の増発を予定していることであります。  当初予算と合わせて総額二兆三千百億円、一般会計の国債依存率は実に一九%となり、戦前ですらあり得なかった膨大なものとなるのであります。  現在、物価問題は国民を苦しめる最大の問題となっておりますが、円対策に籍口したこの無謀な赤字公債の乱発は、インフレと高物価をさらに激化し、国民生活をより破壊することは必至であり、かつ将来にわたる公債の続発とその償還のための重税を準備するものであって、われわれの断じて許せぬところであります。  第二に、六千五百十三億円という膨大な補正予算のうち、実にその三八%までが、主として大資本奉仕の産業道路、港湾、空港、工業用水等の施設を目ざすいわゆる公共投資に充てられ、しかも、それに千六百三十三億円という債務負担行為まで計上されているにもかかわらず、国民が緊急に要求している公害、物価、社会保障対策などが軽視されているということであります。  本来、補正予算は、財政法に明らかなように、予算作成後に生じた事由に基づき、特に緊要となった経費の支出、こういうのが目的であります。にもかかわらず、政府がこの規定を無視してばく大な公共事業費を組んだのは、田中総理のいわゆる日本列島改造論を、早くも強行するため予算を先取りしたものであり、総選挙目当ての大企業への大奉仕にほかなりません。この党利党略、まことに唾棄すべきものといわざるを得ません。  わが党の試算によれば、たとえば六十歳以上の老人の医療無料化を断行いたしましても、年度内約六百億円で済みます。三歳以下の乳幼児医療無料化、難病対策、消費者米価引き上げ中止、大学授業料値上げ撤回、入場税撤廃、一千万円以下の退職金免税等々、これれらをすべて断行いたしましても、年度内合計約二千四百二十三億円で済むことがわかっております。  これらは、国民の緊急要求の一部を指摘したにすぎませんが、なぜこういう国民福祉優先の補正予算を組まなかったか。わが党はこの一点だけででも、本予算案に断固として反対せざるを得ないのであります。  第三点、地方財政の逼迫をさらに激しくするということであります。  すなわち、今回の大幅な公共投資の拡大は、地方自治体に対し実に二千九百五十四億円にのぼるばく大な地方債の発行を余儀なくさせております。これは地方財政をますます窮地におとしいれるものでありまして、私どもの容認できないところであります。  第四に、政府の円対策についてであります。  本来、円問題の根本的解決策は、ドル危機の根源であるアメリカ帝国主義のベトナム侵略戦争をやめさせることであります。同時に、日本の大企業の輸出増強第一主義を抑制して、経済政策を国民福祉優先に切りかえることであります。  しかるに政府は、アメリカの要請にこたえてヘリコプターやウラン等の緊急輸入を、一般会計のみならず、財政投融資資金まで使って行なうことにいたしました。一方、国内の大企業には、この大型補正予算をもって依然として擁護の政策を進めていることは、すでに見たとおりであります。しかも本予算案には、中小企業対策や農業対策は全くおざなりで、むしろ自由化の拡大など、一そうその犠牲の拡大を押しつけようとしているのであります。  わが党は、赤字公債の発行を直ちにやめることを主張します。大企業から法人税等を適正に取り立てることを要求します。これによって物価安定、社会保障の充実、大衆的減税、中小零細企業の低利の年末融資等の大幅な拡大など、国民生活擁護のための緊急支出ができるのであります。  財政投融資は、これは八月にも政府が一方的に二千六百六十八億円も組み、今回さらに五千三十億円の追加を行なって、次第に膨張しつつありますが、これは、直ちに国会の議決を要することに制度を改め、その運営の民主化をはかることを強く要求いたします。  なお、日本社会党、公明党、民社党、三党共同提案による本予算案組替え案につきましては、個個の改良的項目には見るべきものがありますが、防衛費を認める前提に立つなど、こういう点で、根本的問題でわが党と見解を異にする点がありますので、残念ながら賛成しがたく、採決には棄権の態度をとります。  以上で反対討論を終わります。(拍手)
  357. 坪川信三

    坪川委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、辻原弘市君外十六名提出の昭和四十七年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十七年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和四十七年度政府関係機関補正予算(機第1号)につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議につき採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  358. 坪川信三

    坪川委員長 起立少数。よって、辻原弘市君外十六名提出の動議は否決されました。  これより昭和四十七年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十七年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十七年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  359. 坪川信三

    坪川委員長 起立多数。よって、昭和四十七年度補正予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  おはかりいたします。  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  360. 坪川信三

    坪川委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決定いたしました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  361. 坪川信三

    坪川委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。  去る一日審査に入り、本日ここに審査を終了するに至りましたことは、ひとえに委員各位の御理解ある御協力によるものでありまして、不敏な委員長でありますが、心から感謝の意を表する次第であります。  連日審査に精励されました各位の御労苦に対し、深く敬意を表しまして、ごあいさつといたします。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。    午後七時二分散会