○安宅
委員 私は、
日本社会党を代表し、ただいま議題となりました
昭和四十七年度
一般会計補正予算(第1号)、同
特別会計補正予算(特第1号)及び同
政府関係機関補正予算(機第1号)各案に反対し、
日本社会党、公明党、民社党の三党共同で一提案いたしております、右
政府三案を撤回のうえ編成替えを求めるの動議に賛成の討論を行ないます。
まず、初めに申し上げておきたいことは、いま
わが国の経済は、自民党
政府が長い間取り続けてきた大企業中心、生産第一主義、
国民生活軽視、人間そのものを忘れた高度成長政策の矛盾が一ぺんに爆発し、公害、物価高、交通事故、過疎過密、富と所得の不公平の拡大というようなさまざまの問題を引き起こしております。そうして、内には生産過剰による不況と、外には円切り上げに追い込まれる、こういうような、従来のような景気対策では乗り切れなくなってきており、これまでの経済政策を、
国民の生活と福祉優先の政策に根本的に転換しなければならない大きな曲がりかどに来ている、こういうことであります。
言うまでもなく、このような事態を招いたのは、自民党
政府の一枚看板である高度経済成長が、勤労者の低賃金と合理化を土台にして公害をたれ流しにし、西欧各国の三分の一という低い社会保障をそのままこれを放置し、
国民の生活環境整備をあと回しにして、農業や中小企業を押しつぶすなど、まさに
国民生活を犠牲にして進められた結果であり、大企業と一部の金持ちの階層だけが栄えて、その陰に
国民の幸福は踏みにじられてしまっているのであります。
この根本的な矛盾を解決する道は、何よりもまず大企業優先、人間不在の政策を転換し、物価の抑制、公害の追放、住宅、生活環境の整備、老齢年金その他社会保障の充実によって、
国民の命と暮らしを守る経済に切りかえることが先決であるといわなければなりません。
しかるに、今回の
政府の
昭和四十七年度補正
予算案及び第二次財政投融資追加は、福祉優先の政策とは名ばかりであり、福祉の強化や円切り上げ回避には何ら役立たず、かえって三千六百億円に及ぶ大型公債発行の追加増発を軸として、巨額の公共投資を行ない、景気を刺激し、物価値上がりを招く、大企業優先、福祉優先とは縁もゆかりもない、
国民生活無視のインフレ
予算となっているのであります。
このことは、
日本列島をセメントとブルドーザーで踏みにじり、いわゆる高度成長を性こりもなく継続し、公共投資を拡大させて景気刺激を行ない、
日本列島を総公害化しようとする、えたいの知れない
日本列島改造論と軌を一にするものであり、明らかに財政を中心として、大資本のための高成長を続けようとする、きわめて危険なやり方であるといわなければならないのであります。
このような
立場から、まず第一に、すでに景気回復が予想され、本年度の成長率は名目一四・八%もの伸びとなり、しかも消費者物価だけでなく、卸売り物価が大幅に上昇傾向を見せているにもかかわらず、三千六百億円という巨額の実質的な赤字公債の増発によって大型補正
予算を組み、これを財源として巨額の公共投資を行なうことは、言うまでもなく物価高を促進し、インフレを招く危険が十分であるといわなければならないのであります。
本年度の国債発行は、当初
予算においてすでに一兆九千五百億円にのぼっており、これに加えてさらに三千六百億円もの国債の追加増発を行なう根拠も、その必要性も何ら認められないところでありまして、財政法も無視したという
疑いもあるこういうやり方は、円対策に名をかりて、
国会解散を見越しての無計画なものであり、ずさんきわまりない選挙対策
予算といわれても、一言の弁解の余地もないしろものといわなければなりません。
第二に、福祉優先の経済を実現するためにいま必要なことは、何よりも高度成長の過程で生み出されたさまざまなひずみ、格差、不公平を是正することであり、
国民生活と福祉の向上、個人消費支出の増大をはかり、経済白書も指摘しているように、需給ギャップと福祉ギャップをカバーすることであるといわなければなりません。そのため、最も優先的に実施されなければならないのは、社会保障の飛躍的な拡充と大幅な勤労所得減税であります。
しかるに、今回の補正は、相変わらず産業基盤に片寄った公共事業中心の編成を行ない、鉄やセメント、土建業者の利益をふくらませているだけであり、企業奉仕、大土木業者中心の
田中内閣の本性をあらわにしているといわなければなりません。しかも、法人の土地の買いあさりが問題となっており、公共事業費の約三割が用地買収費に食われているという状況のもとで、当面の土地対策には何ら手を打たず、巨額の公共投資を追加することは、地価をべらぼうに押し上げ、用地費を引き上げるだけであり、
予算の効率的な使用を期待することは、とうていできなくなるのであろうということを指摘しなければならないのであります。注目すべきことは、土地の値上がりについていえば、本
委員会の論議を通じて、金融資本までが土地の買い占めにやっきとなっている状態に手を打てないどころか、かえって
政府がこれに加担し、あるいは教唆扇動している、こういう
疑いまでが暴露されたということであります。
特に、従来の公共事業
関係費は、道路、港湾をはじめ産業基盤に片寄ったやり方が批判され、生活環境、社会的消費手段への切りかえが要求されてきたところであります。したがって、今回の大規模公共投資も、本来ならばその全部を生活関連投資に振り向けるべきであるというのが当然のことであります。にもかかわらず、その使い方は依然として従来のあり方から一歩も抜け出ず、生活、福祉
関係の対策は全く忘れられているのであります。
第三に、地方財政危機が叫ばれているとき、補正
予算による支出の増大と、国債増発に伴う収入減少に見舞われる地方財政に対しては、そのしわ寄せ分にはほとんど手当てがなされていないのであります。しかも、その一部を地方税の自然増収でまかなうようにするなど、乏しい財源の中から国の公共投資に財源を食われ、独自の事業ができなくなり、地方財政は二重の圧迫を受けているのであります。これは福祉重点に逆行するだけでなく、地方自治体が国の事業の下請機関化する危険を一そう強めるものといわなければならないのであります。
第四に、
国民生活を犠牲にした経済の高度成長は、重化学工業化の進展、輸出優先のびっこな経済構造をつくりあげたのであり、その結果が、国内では生産過剰による不況を、対外的には円切り上げを余儀なくされ、物価値上がり、公害、低福祉など矛盾を拡大したことは明らかであります。こうしたやり方に根本的なメスを入れ、人間優先、福祉中心の政策に思い切って発想を変えない限り、従来の景気政策を中心とした成長刺激策では解決できないことを、あらためて
認識すべきであります。
そのためには、重化学工業型の経済構造を転換し、主要産業の設備投資計画を規制し、同時に、企業の社会的
責任を強化すべきであり、低賃金構造の是正、労働時間の短縮、週休二日制の実施、社会保障の拡充、特に老人や受給者だれもが豊かな暮らしのできる年金、安い費用で真に
国民の命を守る医療制度の確立、あるいは住宅、生活環境施設、公害、環境保全対策の確立、公害汚染原因者負担原則の貫徹などの施策を重点的に
前進させ、同時に、四次防を直ちに中止し、防衛費を削減して経済の軍事化を阻止し、対米べったりの貿易構造を改め、世界の諸国と平和共存、平等互恵の経済を打ち立て、真に人間、福祉優先の経済に転換することが、何より大切であると
考えるもの一であります。
第五に、特に強調しなければならないのは、首相の「
日本列島改造論」に明らかに書かれており、また本
委員会の論議でも明らかになったように、
日本農業の振興については定見も政策もなく、農民を守るわが党の
主張や、
日本農業の将来を憂えている農民の切なる願いには全く耳をかさず、インチキな生産者米価
決定でもわかるとおり、食管制度を崩壊させ、あまつさえ大資本擁護のために、戦後の自作農家の大黒柱である農地法を改廃する意図を明らかにするなど、
わが国の農業を壊滅の道に引きずり込み、ひいては食糧の自給にはほど遠い、自主性のない
日本国をつくりあげるという、民族の独立のためにも暗い影を投げかける
政府の意図は、絶対に許すことができないものであります。
第六に、中小零細企業に対する配慮であります。従来、二階から目薬ほどの対策費しか持たない実態なのに、特に金融において、今度はスズメの涙の半分にも足りないような対策と、税制では一顧だに与えない、そうして大企業の安い法人税はそのままにしておきながら、中小企業の苦痛には目を閉じ、耳をふさいでいると言ってもこれは過言ではありません。
第七には、最も
国民が期待している
日本の平和の問題であります。南北朝鮮の今日の動き、ベトナム
情勢の進展など、
アジアの緊張緩和の
方向が出ているにもかかわらず、
沖繩の基地にはたりた一言も文句も言えず、ベトナムへの爆撃機やあるいは戦闘車両の発進にも、これも一言の文句も言えない、平和にとって最も危険な、従属的な
安保条約の堅持をうつろにただ叫び続け、あまつさえ、三次防を倍増する四兆六千三百億円、実質五兆一千億円の四次防を急いで
決定し、幾多の疑点を残したまま強行しようとすることは、まさに憲法に違反し、時代の潮流に逆行する
田中内閣の軍国主義、侵略的性格を暴露したものといわなければなりません。断固として私
どもは強く反対をいたします。
このような態度を続ける限り、
日中国交回復の将来の正しい発展はもちろん、
アジアの平和にとって、近い将来大きな障害を起こすことになることは必至であります。厳重な警告をしておきます。
いま
国民が切望するものは、長期の防衛計画ではなく、ゆるぎない平和への展望であります。軍事優先ではなく、国際的な経済協力、文化交流、生活福祉などの多角的な非軍事的手段の組み合わせの上に立ってこそ、この国の真の
安全保障は打ち立てられるべきであるということであります。
最後に、今
国会を通じ、
政府は、四次防と大資本擁護のインフレと公害まき散らし政策だけは決断と実行をはっきり表明し、あとは全部すべて検討中、勉強中、
努力中、そうしてほとんどは各種審議会を隠れみのにしてごまかすなど、はては皆さんの声をもとにして今後
考えてみたいなど、歴史上まれに見る無
責任、馬耳東風の内閣であるということだけが、
国民の胸に強く焼きつけられたということを申し述べておきます。したがって、この補正
予算はこうした性格のものであるということを断言してはばかりません。
以上の観点から、今回の
政府補正
予算案は、平和と人間尊重、福祉充実を願う
国民世論に逆行するものであり、断じて容認することができないのであります。
これに対し、三党組替え動議は、まさに現時点における
国民の緊急かつ最低限の要求であり、この程度の編成替えはこれを直ちに実施して、
政府のまぼろしの福祉重点の
予算並びに政策を態度で少しでも示させるためにも、
委員各位の賛成を強く
お願いを申し上げまして、私の討論を終わります。(拍手)