○正木
委員 要するに、いま外務
大臣は非常に正直におっしゃったと思います。いわゆる佐藤政治をがらりと変えるんだということで出現なさった
田中総理の考え方も同じくそうであるとするなら、これはたいへんなことでありまして、これは完全に待ちの政治の継続ですわ。これはほかのところにも端的にあらわれておりまして、要するに日本が、少なくともアジアにおいて平和を確立するために積極的な貢献をしていこうという意欲が全然どこにも出てきていないわけですね。これがいま大平外務
大臣がおっしゃったこととぴたりと合うわけで、したがって、おそらく正直におっしゃったんだろうと思うのです。はたして日本の立場として、そういうことだけでいいのかどうかということです。もちろんそういうことは、平地に波乱を起こすべきではないという考え方なのでしょうが、その奥にあるのは、やはりバランス・オブ・パワーの考え方がどうしても抜け切れないのだろうと思います。バランス・オブ・パワーの考え方というのは、実は冷戦構造ということにも一面通じていく問題でありまして、そういうものを破っていくということ、しかも、そのために日本がアジアにおいて大きな貢献をするということ、これは、私は日本の今後の使命でなければならないと思っているのです。本来、これはもう二、三年も前から
予算委員会で、佐藤総理を相手にしてずいぶんやったのですが、佐藤さんも全然はぐらかして答えてくれなかったのですが、私は、日中国交回復だけを抜き出して考えるというのは、本来反対だったのです。やはり日本は日本の使命として、立場として、独自にアジア構想があっていいと思ったのです。それがなければいけないだろうと思っていたのです。いわゆるアジアをどうしていくのか。どうしていくといったって侵略するのでも何でもありませんが、どういう平和で共存共栄のアジアをつくっていくのかというビジョンがあって、その中で日中国交回復をどう位置づけるかということで考えていかないと、結局おかしいなものができ上がってしまうぞということをよく申しておりましたけれども、この議論はなかなかうまくかみ合いませんで、ついに結論が出ておりません。そのうちに日中国交回復がどんどん進みまして、進んだことは不満ではありません。非常に大きく評価しておりますが、いま大事なことは、もとへ返って、アジアというものをどういうふうに考えていけばいいのか、そこで日本はどんな役割りを果たせばいいのかということを、本気で考えなきゃいけないときが来ていると思います。
私は、ある意味において、
田中総理が日本列島改造論をお出しになったことは、内容はものすごく不満が多いのですけれども、少なくともそれを提案なさった、少なくとも
国民の前に問題提起をなさったという功績は、非常に大きいと認めているのです。あの日本列島改造論は、これからまだまだ議論をしていかなければなりませんけれども、日本列島改造論だけではなくて、いま日本の
国民が議論しなきゃならぬ問題、少なくともわれわれが日本の
国民の前に提起しなければならない問題は、あの日本列島改造というああいう問題と、もう
一つ防衛、外交という問題だと思うのです。これは、やはり
国民の議論の前にさらさなきゃいけません。そのために私たちは、この防衛のための安全保障といいますか、そういうための
委員会を
国会につくるということに積極的に賛成しているわけでありますけれども、こういうことをやらなきゃいかぬのですよ。そうでないと、こういう形で非常に制限された時間の中で、
政府を相手にして、しかもあげ足とりでないとどうしても議論がはでにならないという形でやっておったのでは、
ほんとうのコンセンサスというものは私は生まれないと思うのです。そういう意味においては、むしろ円卓を囲んで、
政府を相手にするのではなくて、
政府は説明員で横に置いておいて、与党と野党との間でやり合うというのでなければ、
ほんとうのコンセンサスは生まれないと私は思うのです。そういうことをいまやらなければいけないのに、こういう形でやっていると、また変なかっこうになってしまうわけです。これは、やはり虚心に聞いてもらわなければならないし、そのことについて私は十分考えてもらわなければならないし、われわれもわれわれで変な独善的な、自説を固執するということではなくて、その議論に応じていかなければならないと私は思うのです。
それにしても、いまの議論はおかしいのであって、そういうためにやはり議論しながら、少なくとも議論の上では積極的にどう貢献していくかということの方途というものがきめられていかなきゃならぬだろうと私は思うのです。それがいまはないのです。大平外務
大臣がくしくも――くしくもというか、実に正直におっしゃったと私は思うのです。ですから、むしろ私たちは、このアジアの諸国の側に入らなきゃならぬだろうと思います。少なくとも核を持っていない日本の国として、また今後将来にわたって核を持たない国としては、経済力からいえば比較にならないかもしれませんが、そういう核非保有国と一緒になって、むしろ核をなくしていくというような方向にいかなければならぬのです。それは総理もお認めになっているのです。もう核戦争の時代ではありません。核を使うなどという戦争をすれば、地球が幾つあっても足りません。人類は全部滅びてしまうのです。こんなばかなことはしないということは明らかに言えると思う。
しからば、そういう中にあって、むしろそういう軍縮していくとか、核をなくしていくとかいうことについて、日本が積極的に働かなければいけないのに、この構想の中では、むしろ核の脅威に
備えるために、アメリカの核にたよらなければならぬという、きわめてうしろ向き、消極的な形になっているのですよ。私は、安保条約は直ちにやめてしまう、そういう短絡的なことを言うのではなくて、むしろそういう中で積極的な貢献をしていかなければならないという一例を申し上げたわけなんですが、そういうことになっていないということなんです。
だから、四次防にしても、しかもこれは
防衛庁長官、あなたは八月十七日、内閣
委員会で、防衛力は緊急
事態の際、五、六年で整備できるものではなく、国力、国情に応じてなお整備する必要がある、五次防もやることになるだろうということをおっしゃっていますね。これはどういうことですか。これはいまでもお考えは変わっていませんか。四次防のあと五次防もやる、こうなってくると無制限に軍備がふえていくということになりますが、どういうことでしょう。