○佐々木(良)
委員 いま
アメリカの事情も言われました。ヨーロッパのインフレも原因になっておることば事実だと思います。外国のそのような事情よりも
ほんとうはこの一年間、このための対策を何にもやっちゃおらぬですよ。それに対する反省があるかということを私は
ほんとうは言っているわけなんだ。そして正直言って私自身も、いま
考えられておるような、ただ、いまたまっておる外貨準備を何とか消そうというそれだけの小手先細工では、これほど大きな貿易収支の不均衡を是正することは不可能だ。むしろその辺に官僚の知恵を集めて、そしてその上に乗っかって、ああでもない、こうでもないと言って、しかもおのおののセクトの中で、自分の従来の既得権益を侵されまいとするこのなわ張り根性の中で、対策なんかやっちゃおらぬ。むしろ外圧という意味は、その意味の外圧だ。
日本の政治は本気になってこれをやろうとしておらないではないかという外圧、それが黒字国責任論から制裁論にまで変わろうとしておることだ。
それから、あなたが
先ほど言われましたように、外に向かって、どこの国とも平和を維持して仲よくしよう、国際協調を保とうとしているいまのような姿勢ならば、
ほんとうにこの国際均衡を保とうという、国際均衡に行こうという方向は出ませんよ。そして、幾ら政策論をぶったところで、その方向の中でどうしても私は逆の意味で外圧というものが、別の意味の外圧がかかってきて、そしてしかたなしに追い込まれてくるという危険性を感じておるわけです。
私の直観を、正直なことを申し上げますと、一番最初に私は、これまでの政治の流れを変えるために、言うならば経済成長オンリーの方向に行こうとしておる、これにあなたがブレーキをかけて、そして福祉路線に方向を向けると言った。その同じ方向に向けようという
努力をせずに、従来の方向の中にずぶっとつかっておられる限り、
先ほどのように、私は
ほんとうの福祉路線にもいけないし、そしていまの円対策も打てないし、したがって、世間にいうような政治の流れを変えることはできない。だからそこから飛び出しなさい。いま一番、従来の
日本政治の体質が国際的にも国内的にも問題になっているのは、いわゆるエコノミックアニマルでしょう。いわゆる
日本株式会社論ですよ。この体質をぶち破らなければ
ほんとうのものはできない。だから、この体質をぶち破ろうという気魄の中でなければ、この国際収支の均衡を保つための施策はできない。
私は、正直言って、今度のこの冬から来年の春にかけまして、この円対策に取り組む姿勢、確かにいまのようなお話がありまして、その姿勢を本気にするならば、効果がすぐ出なくても、私はまだ国際的には余裕があり得ると思う、その姿勢をはっきり打ち出すならば。そういう姿勢を打ち出すことによって
ほんとうに円対策に取り組む、円切り上げなどはしないという方向に取り組まれるか。あるいは逆に、もうそろそろあきらめムードもあって、この際に円再切り上げをやって、円切り上げに踏み切って、そのメリット、これは当然メリットもあります。いまのように物価
問題等を中心として円切り上げに結びつくメリットもありますよ、政策論として。それに立って今度は新しい政策を展開されるか。三番目には、いまのようにやる、やると言って何にもやらずにじりじりっとして、そして最後には、国際的に済まなくなったからどうしようもないということで切り上げに引きずり込まれるか。この三つの路線の、完全にあなたはいま選択の焦点に立っておられると私は思う。その意味じゃ解散する余裕はないかもしれぬ。
しかしながら、その
ほんとうの
立場の苦悩が
日本の政治の中ににじみ出ておるであろうか。私は正直言いましてね、
先ほどの輸出税というものもそれほど賛成ではありません。しかしながら、あの輸出税のやりとりを聞いてみても、
先ほどの輸入自由化の問題に対する中曽根さんの発言を聞いてみても、おのおの一つずつ
考え方はごりっぱですよ。ちょうど公共料金を抑制すると言っておきながらも、しかしながらその利用者負担という
考え方もあるなんという
考え方も同じことで、
先ほどの物価対策と同じことで、これまでやろうと言ってやれなかったことに対してはおのおのの理由があるわけだ。その理由をいま同じように使っておるならば、これは、何も政治を繰り返すことであって、政治の流れを変えることでも何でもない。物価対策にも取り組めないし、本格的な福祉充実の方向にもいけないし、円対策もできない。そこに、あなたは本気になってやられるかどうかというところに中心があるわけです。
それからこの際に、その意味で私ははっきりとしておきたいと思いますことは、円切り上げの外圧ということは、いま言いましたようなエコノミックアニマル、
日本の姿勢を改善するための外国からの要求です。そう受け取っていいと思います。そしてその一つは、あなたの得意な農業や中小企業等の低生産性部門の体質改善によって
日本の二重構造の経済体制、体質を直すということでしょう。それからもう一つは、
日本の
国民生活と生活環境の水準を引き上げることでしょう。この二つに対するむしろ国際的な要求が、私は円切り上げというこの形をとってきている、こう見ていい。外圧を単なるいやがらせと見てはいけない。私は、そのように外圧を見るならば、この外圧はそのまま
日本国民の庶民全体の内圧でもある、同じことだ、こう思うのです。
ここであなたは今度きっと、それだから列島改造論にとこう持っていかれるのだと思う。よろしいか。私はその意味はよくわかる。しかしながら、列島改造論を提起されている理由はよくわかるけれども、その列島改造論自身にやはり別の意味の問題があるわけだ。したがって、
先ほどの矢野さんのお話のように、列島改造論もいいが、いまの問題に対して本気の姿勢を示せという、私はその
主張が当然に出てくる、こう思うわけであります。
少し先ばしるようでありますけれども、ついでにお伺いをしておきましょう。もし切り上げといち
事態になるならば、もしですよ、もし切り上げという
事態になるならば、また大きなしわ寄せがいろいろなところに出ます。その場合のしわ寄せの最大のものは、いま改善をしなければならぬと称せられておるところの低生産性部門にまずしわが寄ってきますよ。中小企業だ。中小企業の中でも、いま輸出にだけたよっておる中小企業は、昨年の切り上げだけでもう合理化の限界がはっきりしてきておりますよ。そいつをもう一ぺんゆすぶられるから、もう転業以外にありませんぞ。それから今度は逆向きに、発展途上国から競争的な品物を輸入される、その発展途上国から入ってくる品物と競争
状態になるものをつくっておるところの中小企業、これを一ぺんに圧迫しますよ、安く入ってくるのだから。この中小企業に目に見えるしわ寄せに対しては、この連中はいま対策はありません。大企業は、いま、
先ほど言いましたように、対策をちゃんと立てながらもう先物取引をやっておりますよ。しかし、中小企業のいまの連中は、もうこれ、なりそうだ、なりそうだと見ているけれども、対策はありませんぜ。そのような場合に救済措置をはっきりと
考えておられますか。私はまさに重大だと思う。
政府がみずからの政治でもって政策を失敗した、その失敗した損害を
国民に押しつけるだけであって、それに対策なしとするならば、私はこれは政治ではないと思う。その場合に救済措置は、いまは出すべきものではありません。机の引き出しにしまっておきなさい。だけれども、あると断言できますか。