○高杉参考人 御質問に応じまして
お答え申し上げます。
御
承知のように、この
海外経済協力基金の仕事というものは二つに分かれておりまして、その一つは、政府対政府の直接借款でございます。もう一つの分野は、
日本の民間
企業が
発展途上国の
経済発展に
協力する場合に
日本の
企業に対して融資を与える、この二つに分かれております。
実際の状況を申し上げますと、基金の仕事がだんだんと政府対政府の借款のほうに重きを置かれるようになりまして、現在におきましては二千四百五十二億円という総体の貸し出し残高になっておりますが、この中で、政府対政府の借款が千九百九億円、これは九月末の残高でありますが、それから一般のほうが五百四十二億円、こういう額になっております。
将来の展望を申し上げますると、この政府対政府の借款が非常にふえてくるのではないか、こう思うのであります。これは御
承知のとおり、
海外経済協力の
基本が国民総生産の一%ということになっておりまするから、近いうちには一%になるだろうと思いますが、その中でやはり政府対政府のソフトな貸し出しというものが七割ということが一つの目標になっておりまして、
日本もその線に沿うてひとつ前向きにやりましょうということになっておりますので、こういう点から
考えますると、将来、政府対政府の借款が大幅に伸びていくのじゃないか、こういうふうに
考えられます。
そこで問題が二つ三つあるのでありますが、その一つは地域の問題であります。ただいまにおきましては、この
経済協力の地域的の重点というものがアジア、特に東南アジアに置かれております。政府対政府の借款におきましても一〇〇%アジア地域に限っております。アフリカとか中南米とか中近東のようなところにはまだ政府対政府の借款はやっておりません。しかし、この地域的の制限もだんだんと広がってくる傾向にあると思います。たとえばアフリカ、中南米、そういう方面におきましても将来この直接借款の分野が広まっていく、こういうふうに
考えられます。もちろん民間の
経済協力の活動もこの方面にだんだんふえていく、こういう傾向にあると思います。
ところで、地域の問題はそうでありまするが、ここにわれわれ
経済協力の上において非常に注意しなければならぬことが二、三ございます。
その一つは、
相手国の国情に応じて適切な
経済協力をやっていくのにはどうしたらいいか、こういう問題であります。特に、最近
日本に対する
経済協力について、いろいろ批判が起こっております。たとえば、エコノミックアニマルとかあるいは
経済的の進出、資本の支配とか、あるいは資源の簒奪であるとか、そういう非常にきびしい批判も起こっております。しかし、こういう批判に対してわれわれはこたえていかなければならない、こういう重要な任務がございます。
ところで、
経済進出に対するいろいろな批判でありますが、一つの例を申し上げますと、
インドネシアの
経済協力でありまするが、これが非常に大きな額にのぼっております。直接借款千九百億一円というもののうちの半分以上、千億円以上というものが
インドネシアにまいっております。また、民間の
企業進出における資金の裏づけも一番多くなっております。そういうわけでありまして、
インドネシアに対する
経済協力に対して、いろいろ
インドネシアでも批判が起こっております。それは、やはり
日本が金をもうけ過ぎるとか、あるいは資源をむだに持っていくとか、そういうような批判が起こっておるのであります。
これにつきまして、先般私が
インドネシアに参りましたときに、向こうの大統領との話がこういう話になりました。大統領のほうからは、
日本の進出をもっとやってくれ、まだ足らない、こういうような要望があるのでありますので、私は大統領に対しまして、それは非常にけっこうでありまするが、
インドネシアにおいては
日本の
経済協力について相当ひどい批判があります、あるいは
経済の主導権を
日本が持っているとか、資本の進出が強過ぎるとか、あるいはどうも資源をただ持っていくだけで、
インドネシアの
経済、産業の発達にあまり寄与していないというような批判がありますので、われわれも実はどうして
協力しようかということで迷っておるのです、こう申し上げたところが、大統領は、それはそういう批判もありましょう、しかし、
インドネシアの政府はよく心得ております、
日本の
協力というものが
インドネシアにとっては非常に大切である、また
日本が非常によく
インドネシアを
援助してくれるということもよく
承知しておるのであるからして、そういうことを心配なしにひとつもっとどしどし
インドネシアに資金をつぎ込み、
経済協力をやってもらいたい、こういうような要請があったわけであります。
そこで、われわれ
考えますのには、やはり政府の
考えと一般の民間の
考えとは多少違うところがあります。どういう国にも批判勢力というものがありまして、それは開発途上国においては、
日本に対していいことばかりは言っておりません。反日の新聞もございます。そういう新聞なりマスコミというものは、いろいろとまた
日本に対する批判を加える、こういうことがありますので、あまりこれにとらわれておるとほんとうの
経済協力はできないと思うのであります。
そこで、われわれは誠意をもってこの低開発国の
経済協力にはひとつ長い目で見ていく、これが必要ではないかと思うのです。道中においてはいろいろ批判があるかもしれませんけれ
ども、結果において非常にありがたかった、そういう結果が出るように忍耐と努力をもってやる必要があるのではないかと思います。
それにつきましては、われわれはこういう方針でやっております。先ほど申し上げましたように、資源の簒奪とかあるいは
日本が貿易でもうけ過ぎるとかいう
考えを押えるために、ただ単に資源の開発を、非鉄金属でもそうであります、木材でもそうであります、また石油のようなものでもそうでありますが、そのものをそのまま
日本に
輸入するという方法はなるべく避けまして、やはり第一次産業から第二次産業、たとえば木材ならば木材の利用、あるいはチップ工場なり木材工場なりパルプ工場なりをその国に興してやる。ニッケル、銅、そういう非鉄金属の開発におきましても、ただ掘り出したものを金を出して持ってくるというのじゃなく、第二次的の製錬工場でもつくってやる、こういう方法でいけば政府も感謝します。また、向こうの国民もそれによって職も得られる、所得もふえる、また、自然第二次産業の開発にもなる、こういうことです。つまり、そういう方針でやらないと、
日本の
経済協力というものが結局は
発展途上国からあまり感謝されない、こういうことになります。われわれはそういう方針でやっております。これはひとり
インドネシアばかりではありません。
一つの例を申し上げますと、
インドネシアでただいまニッケルの開発をやっております。ハルマヘラでニッケルの開発をやっております。これはニッケル
関係の会社の総力をあげていま
調査中でありますが、
調査の結果非常に有望でありまして、これは二、三年かかってさらによく
調査をして、その上でひとつ開発を始めよう、そうしてそこにニッケルの製錬工場をつくりましょう、こういうところへきておるわけであります。カリマンタンの木材開発にいたしましても、木材をただ持ってくるというのじゃなく、そこへ第二次産業のパルプ工場でもチップ工場でも木材工場でも興してやろう、そうして
インドネシアの民間に職を与え、そうして所得をふやしてやる、そうすれば、政府の方針もそれによって非常に立っていく、民間も喜ぶ、大体こういう方針でやっていくのがいいのじゃないかと
考えております。
向こうに合弁事業を興しましても、ただ単に
日本が過半数の株式を持っていつまでも
企業を支配するのじゃなく、だんだんとこの
企業の経営管理能力が向こうの人にできますれば、向こうの人に経営をゆだねていく、そうして株式も一般に公開して
日本はだんだんとそこから引き下がる、こういうような方針でやるのがいいのじゃないかと思うのであります。そういう方針でやれば、向こうの政府も民間も
日本の
経済協力に感謝する、こういうことになるのじゃないか、こういうふうに
考えて、われわれはそういう方針で努力しております。
大体われわれは共存共栄、いましきりに言われておるところの
日本の資本の侵略とか、資源の簒奪あるいは
経済の独占とかいうことが言われないように、共存共栄の
立場で
実績をもってこれを示していく、こういうような方針でやっておるような次第でございます。
御質問に対してこれだけ
お答え申し上げておきます。