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1972-11-06 第70回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十七年十月二十七日)(金 曜日)(午前零時現在)における本委員は、次の 通りである。    委員長 福田 篤泰君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 坂本三十次君 理事 西銘 順治君    理事 山田 久就君 理事 松本 七郎君    理事 西中  清君 理事 曽祢  益君       池田正之輔君    宇都宮徳馬君       越智 伊平君    大西 正男君       木村 俊夫君    北澤 直吉君       小坂徳三郎君    櫻内 義雄君       正示啓次郎君    田川 誠一君       永田 亮一君    福永 一臣君       豊永  光君    勝間田清一君       黒田 寿男君    堂森 芳夫君       三宅 正一君    中川 嘉美君       渡部 一郎君    不破 哲三君 ————————————————————— 昭和四十七年十一月六日(月曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 山田 久就君 理事 松本 七郎君    理事 曾祢  益君       安倍晋太郎君    海部 俊樹君       坂村 吉正君    櫻内 義雄君       正示啓次郎君    中村 弘海君       松澤 雄藏君    三原 朝雄君       三宅 正一君    中川 嘉美君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         防衛庁参事官  長坂  強君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君         通商産業省鉱山         石炭局長    外山  弘君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君  委員外出席者         運輸省船舶局造         船課長     神津 信男君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 十月二十八日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     高橋清一郎君 同日  辞任         補欠選任   高橋清一郎君     三原 朝雄君 同月三十一日  辞任         補欠選任   北澤 直吉君     保利  茂君 十一月六日  辞任         補欠選任   池田正之輔君     海部 俊樹君   大西 正男君     坂村 吉正君   永田 亮一君     中村 弘海君   福永 一臣君     松澤 雄藏君   豊  永光君     安倍晋太郎君   不破 哲三君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   安倍晋太郎君     豊  永光君   海部 俊樹君     池田正之輔君   坂村 吉正君     大西 正男君   中村 弘海君     永田 亮一君   松澤 雄藏君     福永 一臣君   松本 善明君     不破 哲三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  本委員会といたしましては、国際情勢に関する事項について調査をいたしたいと存じますので、この旨議長承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 福田篤泰

    福田委員長 国際情勢に関する件について調査に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  5. 石井一

    石井(一)委員 御就任以来、多極外交ということで、外務大臣非常に活発に行動されておるわけでございますが、久方ぶりの外務委員会でございますので、非常に総花的に、総括的になりますが、多極外交についてお伺いをさしていただきたいと思います。非常に時間が限られておるようでございますので、簡潔に御回答いただければ幸いでございます。  そこで、まず最初に日中共同声明第四項で「できるだけすみやかに大使を交換することを決定した。」こういうふうにうたわれておるわけでございますけれども、また新聞報道では、年内に大使館を設置する、こういうふうなこともいわれておるわけでございますが、いろいろと国内法上の問題など、私、問題もあるのじゃないかと思っておるわけでございますが、いつ大使館を設定し、大使を交換するというふうにお考えになっておるのか。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 われわれとしてはできるだけすみやかに大使館を設置いたしまして、大使の交換をやりたいと思っておりますが、そのために私どもの係官を中国に派遣いたしておりまして、先方政府打ち合わせをさせております。その打ち合わせの結果を伺いまして段取りをきめたいと思っておりますが、いまのところいつになるかという具体的な日取り、時限を申し上げるまでに至っておりません。しかし、本年度内に設置するといたしますと、予算上の問題があるわけでございまして、私といたしましては、既定予算範囲内で、予備費支出等措置で、とりあえず設置いたしたいと考えておりまして、通常国会におきまして、予算上あるいは設置法上の本格的な措置を講じさせていただきたいと考えています。
  7. 石井一

    石井(一)委員 それじゃ次に、いま台湾にある大使館は閉鎖されるということになると思うのでございますが、最近、日台交流協会といわれる、いろいろの交流の場を非公式ながら窓口業務としてつくろう、こういうお考えのようでございますけれども、この構想についてどうなのかということ、また、この構想中華人民共和国側が了承しておるかどうかという点、この点についていかがでございますか。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 日本台湾の間は過去において濃密な関係がございましたし、至近距離にある関係上、今後も人の交流、貿易その他の実態関係が続いていくものと思いますので、したがいまして、民間レベルにおきまして、これを先方の当局とお話し合いができるような機関をつくるということにつきましては、日台双方の間に一応の了解があるわけでございます。しかし、どういう姿のものにするかということにつきまして細部に至るまでまだ詰まっておりませんので、いま鋭意お話し合いを続けておる段階でございます。
  9. 石井一

    石井(一)委員 中国側との了承という面は、これは日台間の関係として自主的に進めておられる、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 新しくできました日中関係、日中の信頼関係というものをそこねない範囲日本政府といたしまして自主的にやってまいりたいと考えております。
  11. 石井一

    石井(一)委員 中国に対する最後質問でございますが、共同声明の八項で平和友好条約締結に関して述べておられるわけでございますけれども、これはどういう内容のものを考えておられるのか。たとえば平和条約のような戦後処理というふうなことを焦点に合わされるのか、あるいはまた、友好不可侵条約というふうな形での安全保障的な、そういうふうな問題になるのか、ここでいわれておる条約というのは大体どういうことを想定しておられて、いつごろ締結されるということをお考えになっておられるのか、この点はいかがでございますか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 日中両国の間に平和友好条約締結について交渉をしようじゃないかということについては、共同声明でも明らかなように、両政府の間で合意を見ておるわけでございます。  それから、その平和友好条約は、石井さん御指摘のように過去の処理のものでない、過去の処理は一切共同声明をもって処理済みである、したがいまして、いま考えておりまする平和友好条約は、これから先、日中間善隣友好関係を律する指針を考えようじゃないかという点についても了解があるわけでございます。いまの段階におきましてはそれだけの了解があるわけでございまして、その内容といたしましていかなるものを考えてまいるかというところまではまだ話し合いがないわけでございまして、いずれ大使館が設置されて大使が交換されたあと、外交ルートを通じまして、そういう問題について整理いたしまして双方交渉に入るつもりでございまして、いつごろからその仕事に取りかかれるかということにつきましては、まだ具体的な段取りを申し上げるまでにはなっておりません。
  13. 石井一

    石井(一)委員 日中以後いわゆる東南アジアに対する外交というものを積極的に進める時期が来ておる、こう考えるわけでございますが、いろいろ特使を派遣されたり御努力の点に対しては敬意を表するわけでございますけれども一つ具体的な問題としてASPACの問題でございますが、台湾代表一つの国として代表しておるこの機関日本が参加しておることに、日中以後問題があるのじゃなかろうか、あるいは、これはこのままで中国理解のもとにアジア一つ機関として推進をされていかれようとしておるのか、ASPACに対する外務大臣の御見解はいかがでございますか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 お尋ねのASPACという機関は自発的な機関でございまして、国連関係があるものでもない、国連下部機関でもないわけでございます。したがいまして今度の日中国交正常化ASPACとは一応別な、一応関係がない性質のものじゃないかと考えております。したがって、私どもといたしましては、中国ASPACとの問題について御相談をいたしたこともございません。今後これをどうやってまいるかは、やはりASPAC加盟国がそれぞれ考えていかなければならぬことであると思います。日本といたしましては、いまにわかにこの機構から脱退するというような考えもございません。今後この種の機構をどのように考えたらいいかにつきましては、今後の情勢を見ながら、また加盟国の意向をいろいろ伺いながら考えていきたいと思っておりますので、いま確たる展望を持っているわけではございません。
  15. 石井一

    石井(一)委員 東南アジア外交に関しまして、日中正常化以降いろいろとこれらの国々におきましてはこれを一方では高く評価する反面、また片一方では日中の正常化というものが彼らを政治的、経済的に非常に圧迫するのではなかろうか、こういうような心配も一部には出ておる、こういうふうなことでございますけれども、何か日本として東南アジア外交に対する政策転換というふうなものを多少お考えになっておるのかどうか、この点いかがでありますか。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 日中国交正常化日中間の問題でございまして、日中双方が真剣に検討して取り結んだことでございまするし、今後の運営につきましても日中双方それぞれ慎重に対処していかなければいけない問題であると思います。しかし仰せのように、このことが第三国、とりわけ東南アジア諸国にいささかでも心配がある、危惧の念を隠しきれないというようなことがあってはと心配いたしまして、共同声明自体におきましては、これが第三国に向けたものでないということ、さらにアジアにおいて覇権を求めるものでもない、日中双方はそういうことを明らかにいたしておるわけでございます。また正常化後におきましても、私自身出回って御説明いたしたり、特使をわずらわしてその間の心配を一掃するように努力してまいったわけでございます。  日中正常化に関してとりました措置はそういうことでございまして、このことのために日本東南アジア政策を一ぺん考え直すというような性質のものではないのでありまして、従来から維持し、培養してまいりました東南アジア諸国との友好関係は今後とも一そう緊密にしていかなければならぬと考えております。
  17. 石井一

    石井(一)委員 次に、ベトナムに和平が訪れるというきざしが非常に強くなっておるわけでございますが、その暁にはやはり国際監視委員会というふうなものが設置されるということが報道されております。わが国はこれに積極的に参加する意思がおありなのかどうか。私は、やはりベトナムに対しても極東の一つの国として大いに関心を持つべきだという感じを持っておるわけでございますが、その場合には、いわゆる海外派兵というふうな問題についての関連で問題があるのではなかろうかと思っておるわけでございます。このベトナム問題に関して、これらの問題をも含めて外務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 ベトナム停戦交渉がいま最終の山に差しかかっておるように思われます。この停戦交渉が妥結いたしましたならば、それを保障する意味でどういう国際機関が設けられるか、それから今後のインドシナ半島の復興につきましてどういう国際的な話し合いが行なわれるかにつきましては、はっきりとしたことが当事国をはじめ関係国の間でまだきまっていないようでございます。しかし石井議員仰せのとおり、わが国といたしましては重大な関心を持っておるばかりでなく、アジア先進国といたしまして応分貢献をなすべき性質のものだと考えておるのでありますけれども、そういった諸般の停戦後の状況を見ながら、国の内外から十分理解される態度をとっていかなければならぬと考えております。  海外派兵の御質問でございますけれども、いま申しましたように、停戦妥結後どういう機関が設けられるか、まだはっきりしていない段階でございますので、いまからいろいろ論議するのはやや尚早でないかと考えております。
  19. 石井一

    石井(一)委員 基本的なお考えはわかりましたが、もう一点……。  昨日あたりニクソン大統領、もし停戦という状態に入った場合には相当の経済援助、たとえば南に五十億ドルとか北に二十億ドルとかという具体的な数字も出ておったようでございますが、そういうことを経済協力としてやろうというふうな姿勢が出ておるようでございますが、やはり私、軍事的な問題は別といたしましても、経済的な問題では日本はやはり貢献をするということを考えるべきであり、アメリカの後塵を拝すというふうなこともある意味では問題であるというふうにも考えるわけでございますけれども、戦後の経済協力復興というものに対して積極的な意思があるかどうか、この点について、先ほど応分協力というふうなおことばもございましたけれども、それはそういう意味をさしておられるのかどうか、この点は外務大臣いかがでございますか。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカにおきまして、ポストベトナム復興につきまして提言があるようでございますが、それは一体どこまで固まったものなのか、そしていわれるところの金額がアメリカ独自で負担するつもりなのか、それともほかの国々協力を得て考えておるのか、そのあたりはまだはっきりしないのであります。私ども日本といたしましては、先ほどお答え申し上げましたように、われわれの立場ポストベトナムに対して応分のことを考えなければいけないのじゃないかという気持ちは持っております。  それからそれをやるにつきましては、日本国内において、また他の国々が一応理解ができるようなことを考えなければならぬと思っておるのでございまして、今後のポストベトナムに、当事国ばかりでなく関係各国がどのように取り組んでいくか、その仕組みもまだはっきりしませんので、それを見ながら日本としての態度をきめていきたいと思っております。  いま申し上げられることは、内外十分理解がいただけるようなことを考えなければならぬということ以上に、まだ私として申し上げることはないわけでございます。
  21. 石井一

    石井(一)委員 それではもう時間が参りまして、最後に一問だけでございますが、対ソ外交について、福田委員長を団長といたしました私たちのミッションが日中正常化直前に訪ソいたしました。いろいろな面で、領土問題その他感触が比較的いいというふうに私たち感じ取ったわけでございますが、何かその後の経過というものはソ連が硬化してきたという感じがするわけでございます。一体これはどこに起因しておるのか、日中の接近ということが起因しておるというふうな説もあるし、あるいは領土問題であるという考え方もありますが、この当面のソ連外交について一言御所見をお伺いいたしまして、きょう私、非常に総花的な質問になりまして、それぞれ非常に重要な問題を含んでおりますが、こういう限られた時間でございますので、私の質問を終わらせていただきたいと、こう思うわけでございます。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 ソ連態度が硬化したのかどうかということでございますが、私は別に大きな変化があるようには考えておりません。日ソ両国の問、変わらない信頼関係をもって、出てくる問題につきまして誠心誠意話し合っていくべきであるし、先方もまたそれに応ずる姿勢をとっていただいておるわけでございまして、特にいまにわかに硬化したとかものわかりがよくなったとか、そういう感じを私別に持っておりませんで、終始真摯な率直な話し合いを続けてまいるということでございます。
  23. 福田篤泰

  24. 松本七郎

    松本(七)委員 旧中の国交回復ができて、引き続き諸外国に歴訪されてまことに御苦労さまでした。以来初めての外務委員会ですから、本会議における所信表明日中国交回復経過報告をめぐって数点質問したいと思います。  長い間の懸案が国交回復にこぎつけたということでたいへんこれは歴史的に意義が深いと思うのですけれども、それだけに日本国民の側からすれば、一体これから緊張緩和に応じて日本外交がどういうふうに変わっていき、また充実していくかというところが、一番知りたいところだろうと思うのです。しかし、そういう点からいうと、本会議所信表明なり、それから質問に対する答弁でも、そこのところがきわめてあいまいで、いままでもたもたして解決をすべき日中関係というものがこれほど延びて、むしろ世界情勢から立ちおくれぎみだった。世界情勢、特に中華人民共和国国連代表権を獲得するという事態になってやっとみこしを上げたという感じなんですが、これが今後の日本外交にどう影響してくるだろうかということが当面の国民の知りたいところだ、感じ取りたいところだったと私は思います。ところが、私も本会議答弁その他を聞いて、これは国交回復はやったが依然として日本外交アメリカに気がねし、あるいは台湾に気がねし、そういう、いままでと基本的にあまり変わらないのではないか。世界情勢に押されて国交回復をやってみたが、それがより以上、アジア世界緊張緩和日本が積極的な役割りを果たす一つのきっかけにすべきだと私は思うのですが、そういう点にどうも割り切れないというかむしろ停滞、全般の外交からいうと依然として右顧左べんしながらのろのろと歩いていくのではないかという不安を禁じ得ないわけです。そういう立場から少しきょうは質問したいと思うのです。  しきりに、安保は変わらない、これは堅持すると言われるし、アジア緊張緩和、大きく緊張緩和方向には向かっておるが、なおベトナムも完全には戦争が終わってないとか、朝鮮の問題も触れられる、こういうことで、一体緊張緩和に大きくは向かいながらも、それを促進する手は一体日本政府としてはないのだろうか。もう少し日本政府としても緊張緩和を積極的に促進する手だてというものが、この国交回復後あり得るのではないだろうか。この点が第一の質問で、外務大臣としての率直な意見を具体的にひとつ述べてもらいたい。
  25. 大平正芳

    大平国務大臣 外交をやる者といたしましては、アメリカその他関係国との間の友好関係をそこなわないようにやりたいというのはごくあたりまえのことだと思うのであります。また、そういう状況をつくってやらないと、日中国交正常化というような大事業はなかなか押し切れるものではないと判断いたしまして、私どもといたしましては、関係各国の十分の理解を背景に、国内の世論の高まりと相まちまして、このことをやらしていただいたわけでございます。  今後、それではアジア緊張緩和にどのような積極的な手を考えていくかということでございますが、私はまず日中両国正常化をなし遂げたということ自体がすでに大きな緊張緩和への礎石を築いたものと考えておるわけでございまして、日中の間に今後安定した関係が相互の信頼理解の上に立って継続してまいるということは、アジア緊張緩和にとりまして非常に決定的なモメントであると考えておるわけでございまして、この今後の日中関係運営について真剣にまず対処しなければならぬと考えております。
  26. 松本七郎

    松本(七)委員 いままでが中国封じ込め政策だとか、いまの御答弁によれば日中国交回復そのもの緊張緩和に大きなモメントだ。そのことを今度裏返しますと、いままでとられてきたこの中国封じ込め政策その他が一つ緊張激化の大きなモメントになっておったわけですから、それを緊張緩和方向に切りかえたという。この日中国交回復をなし遂げるためには、各国の、アメリカその他の理解を得ながらやらなければならなかった、これはよくわかるのです。それはよくわかるし、今後この国交回復後の、このこと自体緊張緩和モメントであるが、それを十分に緊張緩和方向に生かしていく、総合的な外交政策の面でこれを生かしていくという面でも短兵急にはいかないだろう。それは台湾の処置一つとっても、これは国交回復をやることが大転換なんですから、このこと自体が大転換なんですから、各国理解のもとにやらなければならなかったという御苦労もあったでしょう。しかし、これをなし遂げたからといってこれが今度は一挙に、すべてを一刀両断のもとに解決するわけにもいかないでしょう。ですからアメリカとの関係も急激に悪化しないように配慮する、そういう配慮されることは、私は、必要でもあるし、よくわかるのです。けれども、基本的にやはりこの国交回復というものは緊張緩和モメントである以上は、これをやはり基礎にしながら、従来と全く反対なんですから、以前は中国封じ込めその他の政策緊張激化要素だったのが、今度は緊張緩和要素に質的に変わったのですから、これを全体の総合的な外交政策に生かしていくということが必要だろうと思うのです。この点は大臣といえども同意だと思うのです。ただ具体的にそれではどういう手だてとそれから速度をもってやるかということがこれからの一つ問題点だろうと思うのです。私どもからいえば、この緊張緩和の大きなモメントであるこのことがなされた以上は、当然、これは単なる外交面ばかりではなしに、四次防その他のこととも関係するし、国内政治にも大きな影響があるし、また緊張緩和という大きなこの要素をめぐって当然そういう国内政治との関連においてもこれは取り扱うべきものだと思いますが、ここまでいくとなかなか意見平行線をたどるようですから、きょうはそういうことではなしに外交面に限って少し質問したいのです。  第一は、中国に行かれていろいろ話をされた。もちろん中国側は、この際、相当な譲歩をしてでもとにかく国交回復というものをやろうという、このことはちょうど日本政府が、これがアジア緊張緩和の大きなモメントだという立場から慎重ながらもこれをなし遂げたと同じように、中国側もやはり言いたいことも言わなかった面があるのじゃないかと思うのです。これがしきりに、いわゆる安保条約そのものをここで直ちに廃棄というような、そういう提起のされ方はしなかったという問題となって出てきているのだろうと思いますし、いろいろあると思いますが、私はここで伺いたいのは、やはりアメリカ中国と接近してきた、これができたという大きな一つの問題はやはり第七艦隊の今後の方針その他が一つの大きな要素になっていたと思うのです。台湾をめぐる問題というのがやはり大きな要素です。  そこで、国交回復前から中国側がしきりに気をもむというか、強調しておりましたのは、一つ日本の新しい軍国主義復活の問題であり、また直接中国関係する問題としては台湾の独立運動だったと思うのです。こういうことについての話し合い、特に台湾の独立運動についての話し合いというものは、政府間の話し合いで話題になったかどうか、なったとすればどのような話がなされたのか、伺っておきたい。
  27. 大平正芳

    大平国務大臣 中国側が従来御主張になっておりましたいわゆる復交三原則に対しまして、私どもとしてはこれを十分理解し、かつ尊重するという立場正常化交渉に取り組んで成功いたしたわけでございます。この、理解し、かつ尊重するということの政治的意味は、いま松本先生おっしゃる台湾の独立運動というようなものに対して、日本がこれを使嗾したりあるいは介入したりするようなことはいたしません、それから台湾に対して領土的野心のごときものは毛頭持っていませんという趣旨のものでございまして、そういう、理解し、かつ尊重するという日本側の立場について当方から説明をいたしまして、これに対して先方もわがほうの立場に対して理解を示されたわけでございまして、台湾の独立運動というようなテーマをとらえていろいろ検討したと、そういうことではございません。
  28. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると台湾独立運動ははっきり否定する立場を明らかにした、それが確認されたと、こう理解していいですね、それは。それでは、その上に立って今後の日台関係一つの問題になると思うのですが、政府のいわれるところによると、今度は台湾に対しての政経分離だと、こういわれておるわけですね。そうすると経済的には、いままで台湾と非常に関係は深かったのですから、そのまま維持するという意味でしょうかね。それから今度は政治の面では、いままで日華条約を中心に非常に深い関係にあったんですから、今度は逆に、政経分離ならば、今度は政治的には後退するという、常識的に考えるとこういうことだろうと思うのです、大体台湾の政経分離という意味は、ですね。そうすると、その政治的に後退する度合いといいますか、具体的にはどういうところに落ちつくのか、いま聞くところによりますと、両国、台湾日本も、それぞれ大使館にはもうそれぞれの国旗をおろしたということですが、その後事務的な関係は持続するということがいわれておるし、もう相当の具体的な話し合いが進んでいるということを聞いておるんですが、その構想といいますか、内容について、今後の事務関係をどの程度維持されるおつもりか、明らかにしてもらいたい。
  29. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど石井先生の御質問にもあらましお答えを申し上げておいたんですけれども日本台湾の間に非常に密接な関係が従来ありましたし、現にあるわけでございまして、私どもといたしましては、先方が許容するのであればそういう実務関係は将来とも維持したいという希望を持っております。しかしこれにつきましては二つの条件、すなわち台湾の当局がそれを認めるということが一つ、それから中華人民共和国政府がそれを黙認されるということが必要なわけでございます。で、私ども、こそこそ日台間で秘密に事をやろうとは考えていないわけでございまして、こういう濃密な事務関係があるから、それをできたら維持したいという希望に沿ってできるだけのことをいたしたいと考えておるわけでございます。もとより私どもといたしまして、台湾と貿易がたくさんあるから、そこでまた引き続きうんともうけさしてもらおうというような気持ちは毛頭ないわけでございまして、民間レベルで実際の関係がいろいろございますから、それはできるだけ支障のないように運営の条件をつくって差し上げるのが政府の任務だと考えておるだけでございます。そういう考え方に立ちまして台湾の当局といま話をいたしておるわけでございまして、日台の間に民間の連絡事務所のようなものをつくろうじゃないかという点につきましては、原則的に先方理解も得られております。ですから、そのことについて北京政府はイエスともおっしゃいませんけれども、ノーとも言われていない。しかし、われわれはそういう計画であることはインフォームいたしてあります。それで、この連絡事務所というものをできるだけ早く設立して発足させたいというので、関係各省並びに民間関係方面と協議いたしております。これは日台間に外交関係が維持できなくなりましたあとの日台間の人の往来、貿易、経済、漁業、航空機、船舶の往来等に関する民間レベルでの実務的関係処理するための民間の機関でございます。いまこの設立につきまして、台湾当局との間で相互主義に基づいての話を細目を詰めておる段階でございますが、そのことにつきまして北京政府もノーとはおっしゃっていないということでございます。
  30. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、北京で話されたときには大体もうそういう事務連絡所のようなものを設置することについては、北京側は黙認するということについては暗黙の了解があった、そう理解していいですね。一々これから台湾側と折衝する過程を北京側に知らせて、向こうの反応を見るということをする必要があるのでしょうか。大体台湾了解すればもうできるという見通しを立てていいのでしょうかね。
  31. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもとしては、民間の連絡事務所をそういう趣旨でつくることにつきましては、新しい日中間関係を持ちましても別段支障がないものと判断いたしております。
  32. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、いまの話ですと、もうこれは完全な民間機関。そうすると、台湾側はどういう性格のものになるのですか、これに対応する台湾側の機関は。
  33. 大平正芳

    大平国務大臣 これに対応する台湾側にも民間の機関考えられると思います。
  34. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、その次はベトナムの和平について、アメリカ側から日本政府協力要請があったということを聞いているのですが、その内容がわかりましたらお知らせ願いたい。
  35. 大平正芳

    大平国務大臣 和平につきまして協力要請というような性質のものは、私聞いておりません。
  36. 松本七郎

    松本(七)委員 日本政府から南ベトナム政府に、対して何らかの話し合いをするとか、そういうことは何もないのですか。
  37. 大平正芳

    大平国務大臣 話は逆でございまして、南ベトナム政府から、南ベトナム政府立場について理解を求められて、そしてその趣旨をアメリカに伝達するように頼まれたことはありまして、それはそういう申し入れがあったということはそのままアメリカ側に伝えておいた経緯はございます。
  38. 松本七郎

    松本(七)委員 南ベトナムから日本政府を通じてアメリカに伝えた、その内容はどういうことですか。
  39. 大平正芳

    大平国務大臣 内容は二つあったと思いますが、一つは、北側の軍隊の撤退が今度の停戦交渉においてはっきりしていないということが一つ。それから三派構成でつくられる機関が必ずしも南ベトナムにおける実態を反映していないというようなことであったと記憶いたしております。
  40. 松本七郎

    松本(七)委員 今後の見通しはどういうふうな見通しを立てておられますか、政府は。北側は、北の軍隊はいないという立場をとっておるわけですからね。だから、かりにあっても、公式におれの軍隊を撤退するとは言えないだろうと思うのですよ。北の軍隊はいないという立場をとっているわけですから。そこのところが、これから詰める段階でどういうふうになるか、見通しがあれば伺っておきたい。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 先日、南ベトナムからラム特使が参りまして私どもに会ったわけでございますが、私どもといたしましては当事者ではございませんし、現地の実態を必ずしもつまびらかにいたしておりませんので、日本独自の判断を申し上げる立場にないわけでございますが、私どもの強い希望といたしましては、問題になる点につきましては鋭意アメリカ側と詰めまして、一日も早く平和な将来につきまして全力をあげられるように希望するというように申しておいたわけでございまして、それ以上でも以下でもないというのがいま日本政府立場であろうと思います。
  42. 松本七郎

    松本(七)委員 それからもう一つは朝鮮問題ですが、文化、経済その他の交流をやるが、政治的にはまだこれ以上進める意図はないようなことをしきりに言われるのですが、その真意はどういうところでしょうか。
  43. 大平正芳

    大平国務大臣 御承知のように七月四日、南北朝鮮の間に自主的な統一を目ざして平和的な話し合いをやっていこうという合意がなされたわけで、それは私どもとしては歓迎いたしておるわけでございます。そこにうたわれておりますように、これは南北朝鮮が自主的におやりになることでございまして、その自主的な話し合いの進展というものを注意深く私ども見なければならぬわけで、日本立場でとやかくこれに影響力を与えるようなことはできるだけ慎まなければいけないということでございます。七月四日の合意というのが、現在の状況を踏まえて話し合いに入ったわけでございますので、現在の状況を大きくくずすというようなことはまた新たな緊張を生むことにもなりかねませんので、私どもとして朝鮮半島に対する対処方針といたしましては、非常に用心深くやらなければならないのではないかということでございますので、北鮮に対する態度につきましても、たびたび申し上げておりますように、スポーツ、文化、芸能とか経済というような方面から逐次接触を進めてまいることを考えておるのでありまして、政治的な接触というようなことにつきましては非常に注意深くあらねばならない段階ではないかというように考えておるからでございます。
  44. 松本七郎

    松本(七)委員 南北の話し合いは当事者間のことだから、これに直接日本政府がどうのこうの、いわゆる介入するわけにはいかないでしょう。けれども、こういう南北間の話ができた背景というものを考えてみると、やはりこういうのは国際政治の情勢の大きな動きの中から出てきておると見なければならないですね。その点はどうなんですか。現在の状況で南北の話し合いが生まれてきた、だからあまりこれは関係したくないというふうないまの口ぶりだったのですが、もちろん直接は関係できる立場じゃないですけれども、しかし、これは当然国際情勢の中から生まれてきたものなんですから、その判断のしかたによっては日本政府としては、もっとこの南北の話し合いというものがスムーズに、そしてすみやかに成功するような協力のしかたというのは国際的な面であり得るのじゃないかと私は思うのですけれども、こういう南北の話し合いが生まれてきた背景というものは一体どう理解されておるのか。
  45. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、国際情勢の新しい波が朝鮮半島にもそういう動きを起こさせる大きな力であったということは、松本先生と私も見解を共通にします。私どもは、先ほど申しましたように、その話し合いは自主的にやるということで南北両当局がいま鋭意やっていることなのでございまして、当事国側からいろいろ御相談があればともかく、これはいま自主的におやりになっているわけでございますので、それにいろいろかまけることということは容易にしていけないのじゃないかと考えております。
  46. 松本七郎

    松本(七)委員 同じだといわれますが、ニクソンが訪中したりあるいは訪ソしたり、あるいはベトナムの和平の機運が高まってきたり、アメリカベトナムからの軍隊の撤退の問題も具体的に日程にのぼってくる、こういう具体的な状況の中からこの南北の話し合いというものは出てきたと私どもは見ているわけなんですが、そうなると、たとえば国連でこれから朝鮮民主主義人民共和国の招請問題も具体的に出てくるでしょう。そういう場合に日本政府として、南北の話し合いは当事者のことだから自分のほうはその進展をしばらく見ていこう、これだけでいいかどうか。私は、たとえば国連において北朝鮮を招聘する問題に日本が積極的な努力をするというようなことは、むしろ南北の話し合いを円満に促進する大きな力になると思うのですね。それが南北の話し合いをぶちこわしになるとお考えですか。こういう問題に日本政府が積極的に取り組むことは決して干渉ではない、これは国連という舞台で当然なすべき仕事だと私は思うのです。そういうことがむしろ南北の話し合いを促進し、緊張緩和を促進する一つの大きなモメントになると思うのですが、いかがでしょうか。
  47. 大平正芳

    大平国務大臣 いま開催中の国連総会におきまして朝鮮委員会のことが論議され採決されたわけでございますが、その場合におきましても、せっかく南北朝鮮の間で自主的な話し合いが始まっておるのだからその場を尊重すべきではないか、それを国連に持ち込んでまた話をするというのもいま必ずしも適当でないのではないかという判断で、私どもといたしましては国連に持ち出すことについて賛成できなかったわけですし、世界の大勢もまたそうであったわけでございます。そのことを御理解いただきたいと思います。
  48. 松本七郎

    松本(七)委員 そこのところがちょっと逆でして、私たちは南北の話し合いができたのはそれぞれの自主的な判断が中心ですけれども、その背景にはやはりアメリカ中国との関係ソ連との関係、あるいはベトナム戦争の動向、そういうものが大きく変わってきたというところに、あの韓国とアメリカ関係にも大きな変化が出てきた。それが南北話し合いを可能にした大きなきっかけだと私は思うのです。そういう観点からしますと、日本政府としても当然国連の舞台とかその他国際情勢をこの南北の話し合いが促進できるような状況を少しでもつくっていくということが私は必要になってくると思うのです。外務大臣考えとちょうど逆なんですね。だから国連でもそういう問題を取り上げることがむしろ南北の話し合いを促進する大きなモメントになるのだという、そういう観点ですから、これは議論するつもりはありません。そういう点についても今後根本的にもう少し検討していただきたい、今後もこれは残る問題ですから。こういう意見もあるのだということを十分ひとつ加味しながら検討していただきたいということを要望して、質問を終わります。
  49. 福田篤泰

  50. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 十一月の三日付の新聞報道によりますと、ソ連外務大臣の訪ソに伴って北方領土の問題に関する見解を発表しておりまして、それによりますと、先ほども石井委員のほうからの御質問にもありましたけれどもソ連が報復的領土要求の再開とうたっておりまして、領土問題に対する姿勢がかなり硬化してきているというふうに受け取れるわけですが、問題はこういった情勢のもとにありながら、総理及び外務大臣の本会議における演説の中身、内容といいますか、これで日ソ関係についての言及がほとんどなかったということ。きょうもこの委員会の部屋に参りまして大臣外交演説を拝見したわけです。もう一度読み直してみたわけですけれども、おそらく日ソ関係云々ということがほとんどうたわれておりません。八ページに全く一行だけ、「中・ソをはじめアジアの近隣諸国との友好関係をますます緊密なものに」云々というところだけなんですね。そういう点で今回の外交演説の中になぜ日ソ関係というものが全くに近いほどうたわれていないか、その理由について一言伺っておきたいと思います。
  51. 大平正芳

    大平国務大臣 今回、臨時国会でございまして、日中共同声明に関しまして国会に御報告を申し上げることを主たる任務と心得まして大部分を日中問題に割愛させていただいたわけでございまして、ことさら日ソ問題その他を避けたわけではないわけでございまして、来たるべき通常国会におきましてはバランスのとれた外交演説にしたいと思っておりますけれども、アクセントの置き方をそのようにさしていただいただけの理由でございます。
  52. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ところで訪ソ議員団がソ連の最高会議、両院の外交委員の議員の方と会談したときに、日ソ平和条約交渉において領土問題はその議題の一つとなるということだったようですが、この議題の一つになるということは、平和条約締結交渉の過程で、単に領土問題を一つの議題として論議するということであるか、それとも領土の返還を前提としてこれを条件として議題にするということであるか、これは非常に重要な問題ですが、外務大臣としてはどのような感触を得られたか、せんだって訪問されたときの感触をありのままにひとつお答えをいただきたいと思います。
  53. 大平正芳

    大平国務大臣 それはもうすでに御承知のとおり、平和条約をつくるとなりますならば、領土条項がはっきりしないとできないわけでございます。その領土問題が議題になるというものは、一体歯舞、色丹というところに線を引いて領土条項を確定したいというものなのか、あなたの御指摘のように国後、択捉の返還も議題になるという意味なのか、その点につきましては必ずしも明確でありません。私はソ連当局は前者の立場にいまなお立たれておるのではないかと判断しております。
  54. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そういう前提もなしに、単に議題にするということだけであるならば、従来の事態から一歩も前進をしていかないのじゃないか、こういうふうに思うわけですが、もしそうであるならば、そのような状況のもとでいまさら交渉を行なう積極的な意味がなくなってくるのじゃないかというふうにも思われるわけですが、この点ひとつ重要な問題ですので、さらに外務省としても向こうまかせというのでしょうか、そういうような感覚でとらえることのないようにひとつ積極的に進めていっていただきたいと思います。  きょうは非常に限られておりますので、流れをもってずっとお聞きしていこうと思ったのですが、ごく重点的な問題だけを取り上げてみたいと思います。  いま大臣から歯舞、色丹あるいは国後、択捉についての御答弁をいただいたわけですが、この辺で政府自体の見解を明らかにしていただきたいわけです。歯舞、色丹、国後、択捉の四島の最終的解決、すなわち、これら四島のわが国への帰属が確認されない以上、政府としては日ソ平和条約締結はあり得ないというのか、それとも歯舞、色丹の返還を確定した上で、他の国後、択捉の二島については将来の議題の主題とすることを確認した上で平和条約締結するということもあり得るというふうに考えておられるか、政府の見解としてひとつお答えをいただきたいと思います。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 歯舞、色丹だけで済んだならば、もう一九五六年に平和条約ができておったはずでありますけれども、それができなかったゆえんのものは、日本国民の確信といたしまして、国後、択捉はわが国の固有の領土であるということでございますので、政府といたしましても、平和条約締結にその条件で踏み切るわけにいかなかった。その状況はいまなお変わっていないと判断しておるわけでございまして、私どもといたしましては、この国民的確信の上に立ちまして、鋭意交渉を続ける以外に分別はないのであります。
  56. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 今日までもいろいろと交渉は進めてこられたと思いますけれども、やはりここまで来ますと、これは一般論としての一般的な推測としてではありますけれども、法律論争のみではもはや事態の発展と打開の方法は望めないのじゃないかというようなことが懸念をされているようですけれども、これは私の見解というよりも一般的な推測としていわれておりますが、もし法律論争で事態の打開が望めないとするならば、これはほかに残された方法というのは政治的解決以外にないのじゃないか、こういうことを意味しているのだと思うんです。政府において、もちろん鋭意努力してまいりますという大臣の御答弁でありますけれども、法律論争で解決し得ないとするならば、政治的に打開をはかる意思があるのかどうか、この点について、先ほどの大臣答弁、非常に積極的な前向きな意欲的なふうに響いたわけですけれども、いま申し上げたように、法律論争のみではもはや事態の発展と打開の方法がないということであった場合、政治的に打開をはかっていこうという、そういう意思はおありかどうか、この点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  57. 大平正芳

    大平国務大臣 政府といたしましては、先ほど申しましたように、鋭意しんぼう強く既定の主張を続けてまいるつもりでございます。
  58. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そこで、これまたあくまでも一般論としてお聞きしたいわけですが、もし政治的解決をかりにはからなければならないということになってくると、そこにはいろいろのバリエーションが可能だと思いますが、たとえばその一つが、先ほど述べたようにこの国後、択捉については将来の交渉の議題とすることを確認させた上で平和条約締結して、さしあたり歯舞、色丹の返還を実現するという、こんなこともいわれておりました。もう一つは、国後、択捉を非武装化するということを条件として二島の返還をはかる、あるいはその三として一部の野党の方々が主張するように、さしあたり歯舞、色丹の返還のみで平和条約締結した上で、将来日米安保条約の解消及び中立政策をとることによって領土問題を解決していこうと、いろいろな考え方があるようですけれども、先ほどの外務大臣の御答弁でとどめておけば、それまでで努力をしていく以外にないということでしょうけれども、やはりここでいろいろそういうような一般的な推測なりあるいは意見等も配慮しながらいろいろと検討していかなければ、政治的に考えをめぐらしておく必要もあるのじゃないか。ですからこれはあくまでも、政府がどういうふうに考えていらっしゃるかということを聞く意味で私は質問するわけですけれども、いま申し上げたようないろいろな方法をもって平和条約締結は可能だと考えておられるかどうか、もう一つこの辺をお聞かせいただきたいと思います。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 ことしの一月グロムイコ外相の御訪日で、平和条約締結交渉を年内に始めようということで、この間私が訪ソいたしまして第一回の交渉に入った、そういう段階であるわけでございます。来年また第二回をやろうということまできめておるわけでございまして、平和条約締結のいわば口火を切った段階なのでございまして、私どもといたしましては既定の立場を堅持して、しんぼう強くソ連当局に第二回以後当たらなければならぬ、そういう決意でおるわけでございまして、いまこの問題につきましてそれ以上の思惑を持っておるわけじゃございません。
  60. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは関連してお聞きしたいと思いますが、北方領土が返還された場合、従来の日米間の経緯から見て、米軍の基地ないしは自衛隊の肩がわりといったことが全然考えられないということは政府として言えないのじゃないかと私は思うわけですけれども、この点について外務大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 もともと日本の固有の領土をお返し願いたいという交渉なのでございまして、それ以上のものでもない、以下のものでもないわけでございまして、そのことについてしんぼう強くいまからやってまいりますということに尽きるわけでございます。
  62. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いま私がお聞きしたのは、北方領土が返還になりますね。なったあとにこのそれぞれの島がこちらのも一のになった場合、これはもう当然従来の日米関係というものが考えられると思いますけれども、その経緯からして、米軍の基地であるとかあるいは自衛隊のその島に対する米軍の肩がわり、こういったことが全然考えられないことはないのじゃないか。こういう立場に立って見た場合に、政府としてやはりそのことについて全く関心がないとか、いままだその島の返還の交渉だけであるとか、いまの御答弁をお聞きするとそういうことですけれども、やはりこういう重大な問題というのは当然将来いろいろな形で議論されていくのじゃないか、こう思うのですが、外務大臣として現在どういうような考えがおありか、その点をいま私は質問しているわけです。返還そのものについては先ほど来ずっと聞いてきたわけですが、この米軍の基地あるいは自衛隊の肩がわりについてどういう考えを持っておられるか、ここを聞きたいわけです。
  63. 大平正芳

    大平国務大臣 それは日ソ交渉の問題でないので、日本自体が自主的にきめることであると承知いたしております。
  64. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうしますと、大臣は返還された後の北方領土に対して、米軍の基地ないし自衛隊のそういった配置、そういったことが考え得る、その可能性が当然考えられる、そのようにお考えか、そういうことは全くないとお考えかどちらか、その点をお答えいただきたいと思います。
  65. 大平正芳

    大平国務大臣 返還を受けた段階におきまして日本政府が自主的にきめるべき性質のものだと思っております。
  66. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 もし米側からその米軍基地そのもの、施設、区域の提供等を求められた場合、日本側としてはどういう態度に出られるか、この点はどうでしょうか。
  67. 大平正芳

    大平国務大臣 返還を受けた段階日本政府考えたらいいことじゃないでしょうか。日本政府としてその時点でそれをどういうふうに処理するかということを考えたらいいと思っておるのでありまして、いまこれをどうこうするということを申し上げる段階ではないと思います。
  68. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 前のときに、ことしの六月だったと思うのですが、私は福田外務大臣、前外務大臣にこの点について実はちょっと触れたことがあるわけです。福田さんはそのときに、この北方領土が返還されたあと「日米安保条約は自然これらの島々にも適用される、こういうことになるわけです。」とはっきり言っておられます。「ただ現実の問題としますと、それらの島々に自衛隊を駐とんさせるというような必要もなし、またそういうことを考えるということもあり得ないというふうに思いますと同時に、アメリカがあそこに新しく基地を設けるというようなことをわが国に対して要請するということもありそうもありませんし、ありましても、その時点の日本政府はこれを断わるであろう、こういうふうに思います。」ここまで福田さんからも御答弁いただいているわけです。まあどういう引き継ぎがあったか私の知るところではありませんけれども、いまの外務大臣の御答弁によるとだいぶ福田さんの御答弁とは——とはというか、比較するわけではありませんけれども、そのときに考えればいいじゃないかというような御意見であるわけですけれども、この点は私は非常に一これはもうついこの間の、本年の六月です。そういう点で前外務大臣、また今回の大平外務大臣答弁云々をこれ以上したくはありませんけれども、何となく日本政府外交姿勢そのものがこういう答弁にもあらわれてきているのじゃないか。もう間近にいわゆる平和条約締結ということを推進していかなければならないこの日本立場にあって、もう少しこの辺も配慮を加えていただかなければならないのじゃないか。これは一般紙に出たそのときの記事でありますけれども福田さんの答弁に対して「同日の外相答弁は、暮れの日ソ平和条約交渉を控え、わが国が北方領土に軍事的な関心を持っていないことを言明することにより、ソ連を刺激することを避けるとともに、領土交渉の場に引き出すことをねらったものとみられる。」こういった論評もあるわけです。そういうことで、ただそのときにならなければわかりません、そのときに考えましょうというだけでは、ちょっと今回の外務大臣答弁としては、私としては非常に残念じゃないか、こういうふうにも感じるわけですね。ひとつ領土問題、非常に重要なことでもありますので、どうか、佐藤内閣のときと田中内閣のときと領土問題に対する考え方が変わったということはもちろんここでは言えないと思いますけれども、そういうことのないように積極的な姿勢でひとつ臨んでいっていただきたい、こういうふうに思います。  時間も来ているようでございますが、最後一つだけお聞きしておきたいのですが、日米安保条約の地位協定第二十四条の路線権ですね、この路線権について政府の明確な解釈、そして見解といったものをひとつここで明示していただきたい、こう思うわけです。そうしてまた具体的に、現在すでに路線権が実際に日米間に適用されているかどうか、これもひとつ明確にお答えいただきたいと思います。これはもう領土問題から離れますが、そういうことで第二十四条の路線権、この点どうでしょうか。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 地位協定第三条第一項において、米軍の施設、区域への出入の便をはかるため必要な措置日本側によってとられることが定められておることは御承知のとおりでございます。このような措置がとられた結果として、米軍の出入の便のため米側が享有する利益の実体と申しますか、それがあなたの御指摘になられた路線権というものであると私は思います。
  70. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、いまお聞きした最後のほうですが、路線権が実際に日米間に適用されているところがあるかどうか、この点をお答え願いたいと思います。
  71. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定の第三条第一項に基づきまして、施設、区域の近傍においてとられる措置についての日米合同委員会の合意という形で、祖生通信所、富岡倉庫地区、横田飛行場、東富士演習場への出入、通過路並びに米軍飛行場について認められております進入管制業務、こういうものが例としてあげられるかと存じます。
  72. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 この路線権については、いま非常に大きな問題になっているわけですし、こういった用語に対する考え方をもう少しはっきりと私はしていかなければならない、こういうふうに思います。  時間が参りましたので、この問題は将来の地位協定の実施上当然必要であるわけで、別の機会に本件についてもう少し質問を展開させていただきたい、こういうふうに思うわけですが、きょうはこの辺で質問を終わりたいと思います。
  73. 福田篤泰

    福田委員長 曽祢益君。
  74. 曾禰益

    ○曽祢委員 まず最初に、同僚委員からも御質問がありましたソ連関係について伺いたいと思います。  私も福田使節団の一員としてソ連に参りまして、ソ連のいわゆる最高会議外務委員のメンバーと、特にこの問題でも相当思い切った率直な意見を交換したつもりであります。そのときにソ連側の考えているように、日本側は決してこれは報復主義者とか一部の右翼というものが領土問題を言っているんじゃないのだ、これは日本国民の総意として、平和条約締結する場合に領土問題は避けて通れない問題なんだ、その場合に、やはり歯舞、色丹は向こうさんも日本領土だと認めているのだから、問題はとどのつまりは国後、択捉だけの問題に詰まっている。樺太及び北千島については日本側が連合国のために放棄しているのだ、事実まだ帰属はきまっていない。要するに、国後、択捉が日本の固有の領土だということをはっきり承認して、それで返還しても、決してあなた方の言うような、日本の右翼に対する激励になったり、あるいはあなた方がヨーロッパ諸国との間に第二次世界戦争の領土問題でせっかくそれを確定してきたのに、それに悪い影響を及ぼすというものじゃないのだということを特に日本国民の総意として強く訴え、四つの島の返還を伴う平和条約締結にぜひ考えをいたしてくれということを訴えたわけでございます。  そこで、それはそれとして、どうしても私は、日本のバランスのある外交からいって、十六年前に日ソ関係が平和にはなったが、言うならばまだ冷たい平和である。国会議員としての正式の議員団の交換すらなかった。それに一つの新風を吹き込んだものが今回の国会からの派遣団だったと思うのです。そういう意味で、そのあとにいよいよ正式に両外務大臣間の領土問題を含む平和条約交渉が第一回から始まっております。  そこで、私は、困難はあろうけれども平和条約を結ぶ場合に四つの島の返還ということをどうしても実現してほしい。私の得た印象からいえば、先方は領土問題が議題になるということ、それから領土問題が平和条約の構成部分になることがあり得るということまでは理論的には認めていますね。しかし、感情的にむろん向こうの、いわゆる二つの島、領土問題全体に対してまだ非常にかたい態度であることは事実ですけれども、理論的に言えば、領土問題がむろん議題になるし、また平和条約という以上は領土問題がその構成部分になる。これは理論的には向こうも認めている。そういう状態でございますから、ここに明確にもう一ぺん御答弁を願って、いろいろ困難はあろうとも、あくまで平和条約締結の場合に四つの島の返還が実現するように御努力を願いたいと思いますが、明確なる御答弁を願います。
  75. 大平正芳

    大平国務大臣 平和条約締結する場合、曽祢委員が御指摘のように領土問題は避けて通れないことでございます。この平和条約締結に対する熱意は先方も十分お持ちのようでございます。日本との間に安定した関係を末長く続けたいという願望は私は十分先方の意向として読み取ることができると思うのであります。ただ、問題は、そこの避けて通れない領土問題についての認識が先方とこちらと違っておるわけでございまして、先方は一九五六年の共同宣言発出の現実を踏まえてやろうじゃないかという態度をいまなおくずしていないわけでございます。こちらといたしましてはそれでは困るので、国民的な確信として固有の領土はお返しいただかなきゃならぬという前提要件があるのであるということで、双方立場を主張し合ってしたのがこの間の第一回の交渉でございました。  しかし、先ほど申しましたように、先方平和条約締結はやりたいということでございますし、この交渉は来年も続けようということに合意いたしておりまするので、いま御指摘になりましたような態度を堅持いたしまして、これから鋭意当たらなければならぬと考えております。
  76. 曾禰益

    ○曽祢委員 御決意を伺ったと思いまして、御努力をお願いしたいと思います。  それから、私は、日ソ間の友好関係を進める場合に、もう一つシベリア開発に関する日ソ、あるいは事と次第によっては日米ソ三国のシベリア開発に関するプロジェクトを進める、これはやはり大きな観点からいっても非常に望ましいことじゃないか。大きな観点という意味は、むろん平和条約、領土、それから要するに政治的友好、これも非常にけっこうですけれども、ある意味ではその地ならしという意味もありますし、ある意味では、長期計画によるシベリアの共同開発ということが、やはりそういうような日ソ間の親善のムードを裏打ちするという意味からいっても、また日ソがそこまで平和的な経済的協力をするということ自身が持つ日本の多極化時代における平和、安全の外交という意味からいっても、非常に重要だと思うのです。  そこで、私は、特に当局に、ここには通産省——大臣は来られませんけれども、お呼びしているのですが、やはりそういう意味からいっての点が一つと、いま一つは、いま日本の当面非常に必要な無公害あるいは低公害のエネルギー資源として、この点からいっても、この間、今里団長以下の日本の専門家がすでに私らが行く前に行って現実に点検してきたチュメニ油田の日ソ共同開発の問題、これが実現されるならば、日本が一番必要な低硫黄の石油が多量に日本に供給される。このままうまくいけば、おそらく二十年間にわたって毎年四千万トンレベルの合計七億トンから八億トンのきわめて低硫黄の石油が供給される、おそらく日本の所要量の八%くらいになるかと思いますが、これは非常に大きな問題だと思う。  それからもう一つは、御承知の、先般安西ミッションが行きまして、ヤクート天然ガスの開発、これに関する日米ソ三国の協力、これがもし実現されるならば、これから四、五年内に年間百五十億立方メートル、一千八十万トンくらいになると思いますが、これくらいの天然ガスが日本に液化されて送られる。これは非常に大きな、無公害エネルギー資源として電力あるいは鉄鋼産業にはなくてならないものだと思います。そういう問題に手をつけないで、ただ日本列島改造で、鉄鋼生産を二倍にするとか、石油精製、石油化学を二倍にするなんと言うから、列島改造論がたたかれるわけで、私はそういう意味からいっても、今日欠くべからざるエネルギー資源を短期間に相当、多量に供給できる先としてはシベリア以外にないじゃないか、そういう意味で、これはぜひ積極的に取り上げ、またこういうことができたことによる、やはり平和条約に対しても、決して悪いどころじゃない、非常にいいグラウンドができるのではないか。そういう意味でちょっと、外務大臣に御答弁願う前にまず通産省から、このシベリアの問題、さらにサハリンの大陸だなの石油及び天然ガスの問題もありましょうが、現に問題になっているチュメニ油田とヤクート天然ガスに対してどう積極的に気がまえているかを伺いたいと思います。
  77. 外山弘

    ○外山政府委員 ただいま曽祢先生から御指摘のように、シベリアの石油事情あるいは天然ガスの事情は、私どもにとってはたいへん貴重な存在でございます。通産省におきまして、石油、ことにエネルギー関係の安定供給という立場政策的に推進していかなければならないわけでございまして、その面から見ましてきわめて貴重な存在であるという自覚を持っているわけでございます。  御承知のように、ただいまも御指摘がございましたが、エネルギーの無公害化、公害のないエネルギーをできるだけ確保する。一つは低硫黄の原油でございますし、一つは天然ガスの確保でございます。いずれも非常に重要なことでございます。現在低硫黄の原油につきましては、ここ数年非常にその確保の率を高くしておりますが、しかし、これは御承知のように、世界的に見ましても、これを優先的に確保するというのはなかなかむずかしい事情にございます。これは物理的な事情もございますし、アメリカあたりがさらにこれらの確保に非常に前向きになってくるという二つの事情から見まして、今後はなかなかむずかしいという点が指摘されると思います。現在、輸入される原油の約一割ぐらいが一%以下の非常に低硫黄の原油になっておりますが、それとてここ数年非常にふえてきて、そうなっているわけでございます。今後もますますその率をふやしていかなければならない。しかし、同時になかなかむずかしい問題がある。しかしそれは、やはり新しい地域といたしましてシベリア地区に期待するところは非常に大きいわけでございます。そういう面から見まして、いま御指摘のチュメニの原油、これはいまも数字のお示しがございましたけれども、そのとおりでございまして、かなり多量の原油が長い年月にわたって、しかも一%以下、おそらくは〇・八から〇・九ぐらいの低硫黄の原油が確保できるんじゃないかという点で私どもは非常に期待をしているわけでございます。これにつきましてすでにミッションが何度も現地にたずねておりますし、私どもといたしましては、これの確保の方法、事務的に詰めるべき点はできるだけ詰めるということで、現在各省間で打ち合わせを進めているのでございます。  ヤクートにつきましても、これはもっと時間がかかる問題かと思いますが、やはり有望な地域でございます。私どもといたしましても、これからミッションの報告などをよく聞きまして、私どもとしてできるだけ前向きの姿勢で事務的な詰めを行ないたい、こう考えている次第でございます。
  78. 曾禰益

    ○曽祢委員 外務大臣、お聞きのようなわけで、私はやはり政治的の判断、何もソ連の言うなりに、早くきめないとアメリカに——そうもいかないと思いますから、しかしこれは、私は政治判断の問題が非常に大きいと思うんです。そういう意味で、この問題を積極的にプッシュしていただきたいと思うんです。外務大臣いかがでございますか。
  79. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、わが国といたしましては資源をろくろく保有しない。しかし今後わが国の資源需要はますます多くなってまいるわけでございまして、ひとりソ連ばかりでなく、世界全体にわたりまして安定した供給源を確保していくということは、御指摘のようにわが国にとりまして非常に大事な政策であると判断いたしております。したがいまして、そういう観点から、サイベリアのいわゆる資源開発につきまして日本協力するということはきわめて自然なことであるし、また望ましいことだと考えております。   〔委員長退席、鯨岡委員長代理着席〕 またソ連政府におかれましても首脳から、日ソの協力の推進につきまして強い希望と期待を表明されております。いまこの問題につきまして民間レベル調査が行なわれ、ソ連関係当局との間に折衝が行なわれておるようでございまして、遠からず政府段階に御相談が来るものと思っておるわけでございまして、われわれといたしましては、このことについてわが国の資金的な条件、技術的な条件その他を十分勘案いたしまして、できるだけ実現する方向で検討してみたいと思っております。  それから、一方御指摘にもありましたように、これを日ソばかりでなく、大きなプロジェクトでございますから、アメリカの参加ということも私どもとしては望ましいと考えておりますし、ソ連側にも別に異存もないようでございますので、そういうこともあわせて考えてみたいと考えています。
  80. 曾禰益

    ○曽祢委員 もう一つ具体的な問題で、横須賀の基地の問題に関連して伺いたいのですけれども、時間がもうなくなってしまいましたので、外務大臣は時間どおりでやっていただきまして、あと委員長のお許しを得まして、外務大臣への質問が共産党の松本君の済んだあとで、外務当局、防衛庁当局それから運輸省船舶局当局にお残りを願って詰めたいと思います。概要だけ外務大臣に申し上げて御答弁を願いたい。  横須賀基地の問題で二つありまして、一つは艦船修理部門いわゆるSRF、艦船修理部門の日本への返還の問題が四十五年の十二月以来、日米安保協議委員会で、六号ドックを除いて日本に返還するということになったのが、いろいろございまして延び延びになって、そして御承知の一号から三号は防衛庁が自分用に使う。四号、五号は日米間の話し合いがのき次第日本に返すということで今日まで延び延びになった。いよいよ詰めの段階に入ったようでありまして、防衛庁のほうも早く自分のほうで使いたいですから、いずれもアメリカの基地のままで、一号から三号は自衛隊が、四号、五号は日本の運輸省が中心になってでしょうが、日本政府がこれを共同使用——事実上は民間の船舶造船会社に共同使用させようという方向で進めようとしておられるようであります。それは従来の政府答弁から見ると非常に違っているわけです。四号、五号が返還ということの原則がどうもおかしくなるのじゃないか。そういうことはない、原則はあくまで返還であるというふうにはっきり御証言があると思うのですが、その点はどうであるか。  第二の問題は、続けて伺って一括御回答願いますが、いわゆる横須賀基地のアメリカの空母の母港化の問題です。この点についてもいろいろ話がございましたが、私は、エンタープライズは絶対に来ないのだ。そして通常の航空母艦の乗り組み員の家族やいわゆる住宅がこれも日本政府から金を出してつくってアメリカに提供させる。基地の拡大にはならないのだ。いわゆる民宿という形でもいいからということを言っているやに聞いているのですが、それならそれで母港化ということについての現地の心配もずいぶん変わってくるんじゃないか。そういうことについて外務省がどういうふうにお考えになっているか、これをひとつ明確に御答弁願います。
  81. 大平正芳

    大平国務大臣 横須賀の御指摘の艦船修理部の返還問題でございますが、これは米側並びに国内関係者との間でいろいろ検討を重ねておるわけでございますが、それはもとより返還を実現するという立場から協議を継続いたしております。けれども、中間的措置といたしまして、SRFの一号ないし三号につきましては海上自衛隊、四号、五号につきましてはしかるべき民間業者が、地位協定の二条四項(a)の共同使用を行ない得るようにするのが、実際問題として得策であると考えますので、その方向関係省庁及び地元と協議いたしておるわけでございまして、返還の方針を変えたわけではございません。  それから、横須賀の問題でございますが、米側のほうで、もっぱら経費の節減の見地から、海外におきます艦艇の乗り組み員の家族を、できるだけ当該地域に居住させるという計画を持っておるようでございます。第七艦隊の場合も、通常型の空母一隻の乗り組み員の家族を横須賀付近に居住させたいと考えておるようでございます。これはまだ非公式の希望の段階でございます。これはただそれだけのことでございまして、これが一体母港化につながるかどうかという問題でございますが、普通各国によってそういう実態にあるものをどう呼ぶかというと、たとえば母港と申したりホームポートと申したり、いろいろいわれておるわけでございますが、特にこのことのために横須賀の基地を強化する、軍事的強化をはかるというようなものではないわけでございまして、その点につきましても地元当局ともお話し合いをし、だんだんと理解が得られつつあるように私は伺っております。
  82. 曾禰益

    ○曽祢委員 いずれにつきましても、地元当局と合意の上でやるべきことだと思います。この点は間違いないですね。それでは質問を留保いたしまして、他の方とかわります。
  83. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長代理 松本善明君。
  84. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣に伺いますが、中国との国交回復その他の問題については、いずれ予算委員会でも伺おうと思うのですが、きょうはベトナム民主共和国の偽造紙幣を沖繩の第七心理作戦部隊が使っているという問題をお聞きしようと思います。これは十一月四日の琉球新報にも出ておりましたが、すでに九月までに千五百万枚も使っておる。第七心理作戦部隊の当局は札を印刷をしていることは知っておるけれども、沖繩にはそれを印刷するだけの施設がないのでやってない、こういうことなのですが、これがあることは否定をしなかった。私は、沖繩から手に入れました実際の偽造紙幣をここに持っております。三種類で一ドン、二ドン、五ドンですね、こちら側に宣伝文がついておりまして、この宣伝文を切り離せばもう寸分たがわない。そのまま偽造紙幣として通用するものです。この第七心理作戦部隊が謀略部隊であるということについては、沖繩協定発効前からいろいろ私どもは追及してまいりました。こういうことが一体許されるのか。これはヘーグの陸戦法規でも「文明国ノ間二存在スル慣習、人道ノ法則及公共良心ノ要求ヨリ生スル国際法ノ原則ノ保護」はこの国際法のもとでも当然のことだというふうになっております。それから一九二九年の国際協定にも違反をすることになると思いますし、また国内法でも、外国ニ於イテ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律違反ということになるのではないかと思いますが、こういうこまかい点はいずれまたほかに聞きますけれども外務大臣に伺いたいのは、こういうような国際的にも国内的にも犯罪行為です。戦争をやっておるからということで、何をやってもいいということにはいかない。これはベトナムでのアメリカの軍事行動は集団自衛権の行使だということをいままでアメリカはいってきておりますけれども、一体こういうことまでも集団自衛権の行使ということを認められるか。日本政府は、こういうことを国内で、自分の国土で行なうことを許されるのか、大平外務大臣にその点を伺いたいと思います。
  85. 大平正芳

    大平国務大臣 これは私ども確認していないことでございまして、どのようにお答えしていいのか、全く困ってしまうわけですが、新聞報道等を通じまして御指摘のようなことは読んでおりますけれども日本関係がないことでございますので、御指摘の点につきましては伺っておくよりほかにしかたがないと思います。
  86. 松本善明

    松本(善)委員 確認をしていないと言われますが、いま委員長の手元にいっております、何でしたら外務大臣にお渡しいただきたいのですが、その現物は、私どもは沖繩で入手をしたもので、現に沖繩の第七心理作戦部隊にあるわけです。私はここで発言をする以上、それは責任をもって発言をしておるわけで、ごらんになっても、その疑いがあることはもう明白でしょう。これは日本には関係のないこと、こういうふうに言われますか、外務大臣、もう一度確かめておきたいと思うのです。
  87. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国と直接関係がある事件とは思いません。
  88. 松本善明

    松本(善)委員 私はこれを日本政府がどうするかということを聞いておるわけです。法務省の刑事局長、来ておると思いますので伺いますが、外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律との関係では、これはどういうことになりますか。
  89. 辻辰三郎

    ○辻(辰)政府委員 事実関係が私どもはっきりいたしませんので、明確なお答えができないと思いますが、まず第一に、この御指摘の外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律でございますが、これは一つの刑事法でございますので、軍行動といいますか、軍の行動に伴っておる行為についてかような国内法が適用があるかどうか、それ自体がまず問題であろうと思います。
  90. 松本善明

    松本(善)委員 条約局長に聞きたいのですけれども、ヘーグの陸戦法規それから一九二九年の贋金についての国際協定との関係、国際法違反との関係、それから集団自衛権の行使、こういうことまで集団自衛権の行使というふうにいえるかどうか、その点のお答えをいただきたい。
  91. 高島益郎

    ○高島政府委員 ベトナムの事態におきまして、交戦当事者たるアメリカ及び南越、北越それぞれの軍隊が順守すべき国際法規といたしましておそらく適用があると思いますのは、これら三当事者に共通のジュネーブ四条約、これは成文の法規として、傷者、病者の保護、捕虜の待遇それから文民の保護、こういったものに関する条約には適用があると思います。しかし、この四条約におきましては、何らこういった問題に直接触れておりません。それから、一般国際法規として、たとえば先生御指摘のヘーグの陸戦法規、これは、このような武力紛争があった場合に当然条約当事国ではございませんけれども、文明国間の一つの戦時におきます国際法規として、適用が陸戦においてはあるのだろうと思いますが、この陸戦の法規に関する条約におきましても、直接にせ札を規制するというような、該当する規定はないと思います。したがいまして、現在慣習国際法として一般的に、たとえばベトナムの事態において、にせ札に適用があるようなそういう法規はないだろうというふうに考えております。
  92. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長代理 松本先生、いかがでございましょう。十二時ということでございますから、もう少し外務大臣に御質問いただいて、それで外務大臣に退席をしてもらうということで御協力を願います。
  93. 松本善明

    松本(善)委員 陸戦法規には、いま条約局長が言いましたけれども、「文明国ノ間ニ存在スル慣習、人道ノ法則及公共良心ノ要求ヨリ生スル国際法ノ原則」が守られなければならないということが規定をされております。私は、日本政府がこういうことに全く平然としている、いまの条約局長やあるいは法務省の刑事局長答弁でも、こういうことが日本の国土で行なわれることについて、米軍の行動は当然のことのように考えておる、まことに遺憾だと思います。それは、外務大臣姿勢からも出てきておるのではないか。これは、沖繩協定の発効前に謀略部隊について私ども質問をしましたときに、そういうことがいままでと同じようにはやられないというようにするということが再々政府から答弁されました。いま外務大臣、私はものを示して、もしほんとうにベトナムでの平和を望むということであるならば、こういう心理作戦部隊が日本を根拠地にしてこういう謀略活動をするということは遺憾だ、何らかの処置をとるということは答えても当然のことではないかと思います。  私が外務大臣に聞きたいのは、アメリカ側に対して、この問題について何らかの処置をとる考えはないかどうかということが一つ。もう一つは、いまこのことを含めてベトナムの和平を望むということであれば、こういうような協力をやめて、米軍に対する協力、車両制限令の改悪でありますとか、あるいはB52の大挙飛来を認めるとか、こういうような協力をやめて、そして、和平協定にアメリカが調印をするという方向に働きかけるのが当然ではないか、そういうようなことをやる意思がないかどうか、この二点を外務大臣に伺いたいと思います。
  94. 大平正芳

    大平国務大臣 法律的にあるいは条約的に問題を解明してどうこうということよりも、御指摘のように、こういう事件が政治的にも人道的にも好ましい事件でないことは、当然のことと思うのでありまして、したがって、わが国政府といたしまして、伝えられるようなことが事実とすれば、そういう見地から遺憾の意を米側に表明すべきものと思います。   〔鯨岡委員長代理退席、正示委員長代理着席〕 同時に、しかしながら、このベトナムの戦い自体の終息を急いで、一切の禍根を絶つことが、当面の一番急務でございます。私どもといたしましても当事国からお話がございました場合、そういう趣旨に沿って一日も早い終息をこいねがって、善処を強く求めておるわけでございます。
  95. 松本善明

    松本(善)委員 あとのほうの質問にお答えをいただきたいのです。和平協定の案文がベトナム民主共和国側で発表されて、これは調印するばかりになっている。この調印をするようにということをアメリカ側に働きかける意思はないかということであります。
  96. 大平正芳

    大平国務大臣 いま問題は、米側と南ベトナム側との話し合いに移っておるようでございまして、この両当事者に、大局的な立場から終息を急ぐようにということは、再三申し上げておるわけでございます。
  97. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 曽祢益君。
  98. 曾禰益

    ○曽祢委員 それでは続けて横須賀の問題について、外務、それから運輸、防衛庁に伺います。  先ほど外務大臣から概括的なお答えを得たのですけれども、まず第一にSRF、艦船修理部門のことについて大臣からありました。原則は、これはあくまで早期返還である、地位協定二4(a)でやるという。これは全く暫定的の方法であって、必ずしも好ましいわけではないわけです。ことに民間に委託して、そして修理をやってもらうという四号、五号等について、現実には二4(a)で日米共同で使うというのですけれども、現実においてはまだまだ四号、五号はアメリカ側が直接押えて、なかなか使わせないのじゃないか、こういう感じがするわけです。ですから、あくまで四号、五号の返還を急ぐ、この点、政府部内の意思統一はできていると思いますけれども外務大臣がそういう趣旨のことを言われたと思いますけれども、まずこの早期返還の原則をはっきりと、日本政府の各当局が約束してやってもらいたい。この点を外務省、防衛庁——防衛庁から聞きましょうか、直接関係があるから防衛庁から伺います。
  99. 長坂強

    ○長坂政府委員 お答えを申し上げたいと思います。  先生御承知のように、本年三月の外務省からの発表にございますように、一号から三号までの乾ドックは海上自衛隊が返還後において管理運営することを予定している、そしてそれを除く部分については、しかるべき共同使用取りきめないしはしかるべき契約による取りきめについて協議を続けていくというふうな内容のことが、外務省から発表になっているわけでございまして、私どもといたしましては、直接には防衛庁としては一号から三号までのドックを使用したいということで、予算にも計上いたしまして、四十七年度予算に認められまして、その使用を開始いたしたいというふうに考えております。ところが、外務省の発表にもございますように、その残余の部分、つまり四号、五号につきましても関係省庁の間で打ち合わせ、そういう方向でいこう、つまり民間使用でいこうということが合意されてもおりますし、それから、地元のほうの横須賀市の関係のほうからも、自衛隊が一号−三号というものを使用するのを、四号、五号の民間使用よりも先走って行なわないようにというような要請もございましたので、私どもといたしましても、私ども関係は一号−三号にかかるものでございますけれども、しかし、その間の四号、五号の民間使用につきましても、十分協力的な体制と申しますか、そういう事情のあることを承知しながら、それと同じ歩調で進めてまいりたい、このようにしまして、関係省庁と相談をしておるところでございます。
  100. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 曽祢先生から御指摘ございましたとおりに、われわれといたしましては、一号から五号まで全部返還という前提に立ちまして米側と折衝いたしておりますけれども、四号、五号の問題につきまして、技術的な問題がまだしばらく詰められませんので、とりあえず中間的な措置として、先ほど外務大臣から説明がございましたように、共同使用というかっこうで、とりあえず実質的な作業ができるようなことで進めていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  101. 曾禰益

    ○曽祢委員 運輸省に伺いますが、原則としては四号、五号についても早期返還がたてまえだということになっていますけれども、一たん二4(a)で向こうが返還しないままで、そこに民間が入り込むというようなことで、将来の返還にかえってマイナスになるようなことはないのか。現実に具体的にアメリカのほうとの話で、だんだんに民間のほうに仕事を移していくというようなところまで話が進んでいるのかどうか。それから、日本側がアメリカ側と二4(a)でやる場合に、契約といいますか、当事者がきまるわけですね。これはどこになるのか。監督の筋からいえば私は運輸省じゃないかと思うのですけれども、財産の点からいえば国有財産ですから大蔵省という見方もあるかもしれませんが、そういうような、単なる財産だけでなくて、日本の船舶産業がこういう仕事を引き受ける、それをアメリカ側に安心して日本の民間側に移させる、こういう意味からいえば、運輸省がアメリカとの契約の窓口になってもいいように思うのですが、その点を含めて、運輸省の見解をお示し願いたいと思います。
  102. 神津信男

    ○神津説明員 ただいま曽祢先生から御指摘がございましたが、運輸省といたしましてはあくまでもまず返還という前提でございまして、アメリカ側と、特に返還後の問題になります技術的な問題点につきましてなお協議を続行中でございまして、まだ最終的に必ずしも全部がクリアになっていないということで、とりあえず二4(a)の使用をするということで、当面の措置として二4(a)でいくということにしておるわけでございまして、最終的には依然として返還という前提で、今後も技術的な問題を詰めていきたいと考えております。  それから、二4(a)にかけます場合の窓口官庁といたしまして、大蔵省がなるのかあるいは運輸省がなるのかという点につきましては、なお政府部内の検討が詰まっておりませんので、いまここで運輸省が窓口になりますということは、まだ申し上げかねるわけでございますが、今後まだ政府部内でその点はさらに詰めていきたいと考えております。
  103. 曾禰益

    ○曽祢委員 だんだんに日本側に移していくというような積極的な意図をもって、二4(a)という形だけが悪いんじゃなくて、結局いつまでもアメリカが返さないということだけに力点が置かれては困るので、形はそうだけれども、だんだんに——もう一号−三号は実際上は日本の防衛庁に移してしまうのですからね。片方はそれの一種のカムフラージュで、いわゆる見切り発車はいけないということでこういう妥協案が出てきているわけでしょう。だから、形は一号−三号と同じといっても、実態は非常に違うわけでしょう。だから形だけをそろえるのではなくて、実態も、いますぐにはいかないだろうけれども、逐次日本側に実態を移すということを指導していかないと意味ないんじゃないですか。原則だけ返還だといっても、形においてはある意味では譲っているわけでしょう。だから、実態を進めるような積極的な意図をもってやってほしいということを言っているのです。運輸省の見解をもう一ぺん求めます。
  104. 神津信男

    ○神津説明員 ただいま先生の御指摘の点につきましては、技術的な詰めを通じましてかなりアメリカ側も、日本側の技術能力に信用といいますかを加えつつあると私ども考えておりますし、現にこの六月にアメリカの基地で駆逐艦を民間会社に修理をさせたという事実もございますので、アメリカ側の日本の民間企業に対する信用も増しつつあると考えておりますが、さらに一そうその方向で事態が進むように、私どもといたしましては、米軍側との折衝及び民間企業の指導を進めてまいりたいと考えております。
  105. 曾禰益

    ○曽祢委員 外務省にも同様のことを要求したいのですけれども、ただ一号−三号をいつまでも修理ができないと困るから、それも二4(a)というアメリカの持ったまま、しかし実質的には一号−三号は自衛隊のほうにほとんど移管同様な形になるわけでしょう。ただ四号、五号のほうは実態が進まないで、かっこうだけ共同使用ということになったのでは困るのですね。ですからその点がアメリカ側に誤解のないように、やはり返還が原則であるけれども、逐次、アメリカ保管のまま、実質をなるべく早く移管するようにということを十分念を押してほしいと思うのですが、その点いかがですか、御答弁を願います。
  106. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほど運輸省のほうから御答弁がございましたように、四号、五号につきましては、米側の基本的な問題意識は、日本の民間造船業者に修理を頼むことが技術的にはたして可能かどうか、また米側の必要がそれによって満たされるかどうかということにあるわけでございますから、先ほど運輸省から説明がございましたように、その点に対する理解が深まるにつれ、この点は逐次解決の方向に向かうだろう。しかも、二4(a)のかっこうで共同使用を実際に行ないますれば、日本の造船界の実力というものもその過程において十分評価できるわけでございますから、そのためにも、今回とろうとしております中間措置が最も適当なところであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  107. 曾禰益

    ○曽祢委員 続けて伺いますが、まず運輸省に伺いますけれども、この二4(a)でいくにしろ、四号、五号について日本側の民間がこれからかなりそこに入っていって修理の仕事をするわけですね。その場合に、これは本来ならば、正式な返還であったならば横須賀市と防衛施設庁との話し合いできまる。そして、自衛隊が潜水艦の基地に使おうという岸壁を横須賀市といいますか民間側に移管できるわけです。そうでないと、ドックは使えてもいわゆるバース、岸壁が全然使えないということでは、これはほんとうに修理の作業をまじめにやる場合非常に困るということを私は聞いておるのですけれども、その点について防衛庁側との話はどうなっているのか、岸壁の使用について運輸省の考えと、あとで防衛庁の考えを伺いますが、まず運輸省から伺います。
  108. 神津信男

    ○神津説明員 二4(a)で使用いたします場合も、あくまで返還後の姿も考えた効率使用というたてまえから、ぜひ岸壁も使えるようにしたいということで、いま技術的な詰めを防衛庁としている段階でございます。
  109. 曾禰益

    ○曽祢委員 防衛庁、その点についてお話し願うとともに、これはちょっと変な逆の質問のようですけれども、一方においては民間にどんどん移していくのが国策だと思うのですね。と同時に、いま二4(a)という中間地帯でこの問題が動き出し、防衛庁の修理もできるように現地側と詰めをやっているわけでしょう。その場合に、民間が入り込むということだけでも、基地従業員のほうからの、雇用の安定がどうなるかという心配がないわけじゃないのです。少なくとも、いま新制度といいますか、両方とも二4(a)でやろうじゃないかという合意がかりに中央当局と横須賀市当局との間に前提としてできたとして、その場合に、SRFのアメリカ側に雇われている日本の従業員諸君から、すぐ雇用の不安が起こるということではまずいと思うのです。当面そういったような雇用の不安が起こらないというようなことについて、つまりアメリカ側が、日本側にも一部使わせることになるからすぐ首を切ろう、そういうようなけちな考えを起こさないで、雇用不安を起こさないような話し合いというものができて差しつかえないと思うのですが、両方含めて防衛庁から一これは施設庁を含めてですけれども、お答え願います。
  110. 長坂強

    ○長坂政府委員 お答え申し上げたいと思います。  御質問の点は二点あると思いますが、あとのほうの、このような共同使用の形態を返還を前提として進める場合、当面雇用の不安定といいますか、いわゆる関係の駐留軍労務者の雇用不安というものはどうなるのかという御趣旨だと思いますが、この点につきましては、外務省はじめ関係の省庁、それから米軍のほうにも、この返還までは、艦船修理部に勤務する日本人従業員については、艇船修理部の全体的取り扱いが決定されるまでの間はその解雇は行なわないことが確認されたというのが、本年の三月三十一日の外務省の発表にもございますように、そういうことがあるので、この点はよく気をつけていただくようにお話を申し上げ、関係省庁とも御理解をいただいておるというふうに私ども考えております。  それから第二点の——第二点といいますか、お問い合わせの順序からいいますと第一点の岸壁の使用の点でございますが、これは目下運輸省との間に、友好的な雰囲気のもとに、十分お話をしつつあるところでございます。  以上でございます。
  111. 曾禰益

    ○曽祢委員 外務省、いまの岸壁でないほう、いかがですか。
  112. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほど来御議論いただいております共同使用という形がとられます場合にも、これに基づく人員の整理ということがないように、政府といたしましては最大の努力を払う考えでございますし、私ども承知しております限りでは、米側においてもさしあたり解雇というふうな計画はないということのようでございます。
  113. 曾禰益

    ○曽祢委員 それでは最後に、これは外務省だけから伺えばいいのですけれども、先ほど外務大臣から大筋はお答え願ったのですが、一つ一つ確認したいのです。  これはSRFの問題じゃなくて、いわゆる空母基地化の問題のほうなんですが、第一は、問題になっている空母とはエンタープライズではない、つまり普通型であるし、それが一隻分である、それでイエスかノーかはっきりしていただきたい。  続けて、このいわゆる母港化ということの意味はいろいろございましょうが、向こう側がいっていることは、要するに実体的には、いわゆる基地の機能の強化とかいうようなことではなさそうなんです。向こう側がいっていることは、いま申し上げた普通型空母一隻分の乗り組み員の家族の住宅を横須賀方面に置きたい、ついては、自分のほうでもやるけれども、そういう点のあっせん等をひとつやってほしい。ただし、これは住宅のあっせんであって、いわゆる民宿方式で自分のほうもやる、つまり調達ですね。日本政府が住宅をつくる、それでこれを提供するという義務を伴うものではないかどうか。ないと思うのですけれども、その点。  それからとにかくわれわれが、私自身も含めてですけれども、われわれの考えからいえば、当分の間第七艦隊の一部艦船が横須賀に寄港はするだろうし、そこに休養だとか修理、補給、いろいろなことがあるだろう。特に修理問題についてはSRFもおそらく日本側が管理して、アメリカのほうの修理はやってやる、そういうことは今後とも起こる。したがって、アメリカの艦船が寄港し訪問することはあるだろう。しかし、いわゆる一隻分の家族が横須賀付近に住む、それから六隻の駆逐艦分の家族がやはり住むということになると、寄港の頻度ですね、ひんぱんな度合い、あるいは停泊が非常に長期化するような意味を含むのかどうか。いわゆる母港化といいますか、基地機能そのものの軍事的な拡大でないにせよ、頻度だとか停泊のあれが非常に延びるとか、いわゆる基地的な、外面的な様相が非常に変わってくるのかどうか、この点はどうなのか。  最後にもう一つだけ、アメリカ側は追浜の海軍航空隊の施設を日本側に返還する、しかもその水面の埋め立てを許可して、そのことによって日本の企業がさらにあそこに進出することになる。その問題について話し合いがきまったと思っていたところが、水面の埋め立ての許可がペンディングになったために、この基地返還のプログラムが実際上は停滞しているわけですね。どうも今度はこの点にもひっかけて例の母港化問題を出したのじゃないかという疑いが現地側にもあるわけです。いずれにしても、今回市当局と日本の中央との話で米側の要請にこたえるということにかりになる場合には、少なくとも現地側が熱望している追浜の海軍航空隊のあとを、陸地を返すだけでなく、その水面の使い方で関係者が全部これに非常な関心を持っているわけです。造船会社もあるでしょう、自動車会社もあるでしょう、海洋研究所もあるでしょうけれども、全部水面をほしがっているわけなんですから、水面の許可をいつまでもペンディングにしておいたのじゃ、全く航空隊、陸上部分を返すということは意味をなさないことになるのです。そういうことのないように、少なくともさっき言ったように、空母母港化ということは別として、この問題についてアメリカももう来年からやりたいのでしょうし、いま横須賀市長が間にはさまって非常に苦慮しているのですから、せめてこういったような基地返還にプラスだというメリットを与えてやらないと私は無理だと思う。そういう意味で、この点についての詰めはだいじょうぶなのか。  以上の確認すべき四、五点についてお答え願います。
  114. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 まず最初の、エンタープライズでないかという点は、エンタープライズでない、通常型空母一隻に関しまして家族の居住の希望を米側から非公式に聞いている、こういうことでございます。  第二点の家族の問題につきましては、あるいはいわゆる母港化と申しますのは、むしろこれは実態を正確にあらわしますためには、米海軍艦艇の乗り組み員の家族が在外で居住できるようにしてやる、こういうことでございまして、現在問題になっております点は、横須賀を連絡地としまして、空母の乗り組み員家族がアメリカの公費でこの地域に住まうことができるようになるかどうかという点でございます。  第三のこの家族の宿舎の問題につきまして、米側から私どもが非公式に聞いております限りでは、新たなる調達あるいは日本政府が新たに施設、区域を提供するような義務を一切負うものではなくて、横須賀もしくはその周辺の地域にこれらの家族の宿舎を米側が民宿のような形で探す、こういうことを考えているような状況と承知しております。  それから、四番目の基地化するかどうかという問題については、現在でも米海軍の空母が横須賀にはときどき寄港いたしまして、補給、休養あるいは修理、そういうふうなことをやっておりますけれども、今後とも、かりにいまのような家族を在外居住の形で横須賀周辺に住まわせるような状況になりましても、基本的にはこの形は変わってこないというふうに承知いたしております。もちろん家族がおります関係上、従来に比べますと、若干、滞泊期間は長くなるというふうなことは言えるかと思いますけれども、寄港の形態そのものは従来と基本的には変わってくるものではない、こういうふうなことでございます。  最後に、追浜地先沖合いの制限水域の問題でありますけれども、この問題につきましては、横須賀の市当局からかねて、この地域の発展のために埋め立てをいたしたいということで具体的な計画がございまして、この埋め立てに関連いたしまして、制限水域の点が米海軍との間に調整を要しているわけでありますけれども、この点について先般来、関係者間の話し合いが進んでおりまして、この件に関しましては、横須賀市当局、地元の希望がいれられるようなかっこうでおそらく調整がつくであろう、こういうふうに考えております。
  115. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後零時三十三分散会