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1972-09-28 第69回国会 参議院 法務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年九月二十八日(木曜日)    午後一時六分開会     —————————————    委員異動  七月十二日     辞任         補欠選任      岩動 道行君     渡辺一太郎君  七月二十六日     辞任         補欠選任      平泉  渉君     小枝 一雄君  八月十四日     辞任         補欠選任      船田  譲君     安田 隆明君  八月二十二日     辞任         補欠選任      松下 正寿君     中村 利次君  八月三十日     辞任         補欠選任      中村 利次君     松下 正寿君  九月八日     委員斎藤昇君は逝去された。  九月二十七日     辞任         補欠選任      中村 英男君     辻  一彦君  九月二十八日     辞任         補欠選任      鶴園 哲夫君     西村 関一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         阿部 憲一君     理 事                 後藤 義隆君                 原 文兵衛君                 佐々木静子君     委 員                 木島 義夫君                 安田 隆明君                 吉武 恵市君                 渡辺一太郎君                 加瀬  完君                 辻  一彦君                 西村 関一君                 野々山一三君                 松下 正寿君    国務大臣        法 務 大 臣  郡  祐一君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   長井  澄君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        内閣官房長官  山下 元利君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        法務省入国管理        局長       吉岡  章君        外務省アジア局        参事官      中江 要介君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        海上保安庁長官  野村 一彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (派遣委員報告)  (未承認国船舶及び乗員出入国取り扱いに  関する件)  (相模原補給廠の米軍戦車輸送問題に関する  件)  (沖繩県における在日米軍人殺人事件に関す  る件)  (地方裁判所における審理に判事補の参与を認  める規則に関する件)     —————————————
  2. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十七日、中村英男君が委員辞任され、その補欠として辻一彦君が選任されました。  また本日、鶴園哲夫君が委員辞任され、その補欠として西村関一君が選任されました。     —————————————
  3. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  先般当委員会が行ないました、最近における裁判所及び法務省関係庁舎施設営繕状況並びに矯正法規及び更生保護法規運用に関する調査のための委員派遣について、派遣委員から報告を聴取いたします。原君。
  4. 原文兵衛

    原文兵衛君 派遣委員代表して、第一班の調査の結果を報告いたします。  去る八月二十一日から同二十六日までの六日間、阿部委員長中村委員と私、原の三名が鳥取県及び島根県において、最近における裁判所及び法務省関係庁舎施設営繕状況並びに矯正法規及び更生保護法規運用に関する事項について調査いたしてまいりました。  まず、裁判所及び法務省関係について、八月二十二日午前鳥取地方裁判所、同二十四日松江地方裁判所において、それぞれ関係当局から説明を聴取、懇談の後、庁舎施設状況を視察いたしました。  次に、矯正法規及び更生保護法規運用に関する事項等については、八月二十二日午後鳥取刑務所、同二十五日松江刑務所において、それぞれ関係当局及び保護司代表から、同二十三日には美保少年院において同院長から説明を聴取した後、各施設運営状況を視察してまいりました。  以下調査内容の要約を申し上げます。  調査項目第一、裁判所及び法務省関係庁舎施設営繕状況について申し上げます。  全体的に申しますと、両県下における関係庁舎施設は逐次新営、改築増築等により整備されてきており、その管理維持関係当局職員熱意努力により成果をあげていると思われます。ただ二、三留意しなければならない点をあげますと、第一に、松江地方法務局管内出張所のうち、木造建築後四十年以上経過したものが十七庁あり、これは管内の支局、出張所全体の四三・六%にも及んでおります。管内積雪地帯でもあり、これについては早急な新営、整備が望まれるところであります。  第二に、両県を通じて一般職員宿舎が不足しており、その結果、不安定な住宅事情及び高額家賃負担は、職員の執務にも影響を及ぼし、また、人事管理の上からもその影響は大でありますので、なお一そう宿舎確保整備が望まれます。現在、国家公務員宿舎は、原則として合同宿舎中心主義をとり、省庁別職員宿舎は建設しないという財政当局方針により、合同宿舎設置計画のない地方中小都市にあっては、職員宿舎確保がきわめて困難になっております。財政当局方針原則を一律に適用することなく、合同宿舎設置計画のない中小都市においては現地に適した配慮が望まれるところであります。  第三に、戦後間もなく新営された木造建物は、すでに二十年以上を経過しており、また建築資材が之しく、かつ粗悪な時期に建築された関係もあって、これらの中には老朽化が進んでいるものもあるので、順次改築が必要になってくると思われます。  なお、鳥取地方検察庁ほか二庁が入居している鳥取法務合同庁舎は、鳥取大火あと昭和二十八年応急的に建設された鉄筋コンクリートづくりでありますが、設備が悪く、しかも現行の庁舎営基準面積の約半分にすぎない状況にあり、平常時の検察事務にも支障を来たしているので、早急に整備拡充が望まれるところであります。  ところで、本年七月の集中豪雨による島根県下の湖水、河川のはんらんにより、裁判所及び法務省関係庁舎施設も損傷を受けておりますが、現地関係庁職員の尽力により被害が最小限度に食いとめられたことは不幸中の幸いであります。被災した庁舎及び職員宿舎の修復、整備が望まれます。  なお、ここに付言しておきたいことは、事務量増大に応じた職員増要請であります。特に法務局職員については、本委員会においても従来より取り上げられてきた問題であります。たとえば鳥取管内を見ますと、法務局所掌事務のうち最大の事務量を持つ登記事務は、昭和四十六年度十二万件であり、これは昭和二十六年の件数の約四倍でありますが、職員は逆に減員されております。松江管内についても同様の傾向であります。今後、地域開発が進み、さらに登記事務等増大が予測されますので、これに応じた増員要望が強く出されたことを申し上げておきます。  調査項目第二は、矯正法規運用に関する事項についてであります。  まず、各矯正施設収容状況を見ますと、鳥取刑務所収容定員五百十五名、現員四百二十五名、収容率八二・五%であります。松江刑務所定員四百五十二名、現員二百三十名、収容率五〇・九%であります。  受刑者の罪名を見ますと、鳥取刑務所受刑者総数三百九十名のうち、窃盗が百八十一名と半数近くを占め、詐欺、恐喝がこれに次いでおります。次に松江刑務所を見ますと、受刑者総数二百十二名のうち窃盗が六十五名、強姦五十八名、強盗二十五名等となっております。  次に、鳥取少年鑑別所収容定員二十二名、現員六名、松江少年鑑別所収容定員二十六名、現員四名であります。次に、美保少年院収容定員九十二名、現員二十六名であります。以上は、調査当日における数字でありますが、いずれも収容されている現員数は、収容定員をはるかに下回っております。  矯正関係について、以下若干気づいたことを申し上げます。刑務所関係では、第一に、鳥取刑務所は一部明治時代建物を含む古い施設であります。現在別に問題はありませんが、施設が古くなると管理に一段と気をつかうなど職員負担も増加しますし、進んで矯正のなお一そうの成果をあげますためにも、新しい施設の早急な建設が望まれるところであります。  第二に、松江刑務所は従来収容分類G級受刑者、すなわち二十五歳未満成人男子のうち、性格がおおむね正常で改善容易と思われる者を収容しておりましたが、本年四月一日新たに受刑者分類規程が定められたことに伴い、去る七月一日からYB級受刑者、すなわち二十六歳未満成人犯罪傾向の進んでいる者を収容することになりました。このため受け入れ態勢づくり、特に刑務官教育、訓練を中心に万全を期しております。なお収容分類変更等事情により、本年六月をもって廃止のやむなきに至りましたが、当刑務所のバスを改造したキャンピングカー二台による農村巡回作業班は、地域の好評を得また受刑者処遇上多大の成果をおさめております。  次に少年鑑別所についてであります。近年、収容少年が減少しておりますが、一方社会複雑化とともにきめこまかい少年指導要請され、関係官庁及び一般からの鑑別依頼が増加しております。これに対し少年鑑別所では、余力があればできるだけ外部からの鑑別にも応じ、地域鑑別センターたり得る活動が行なわれつつあることは、時代要請にこたえた好ましいことであります。モータリゼーションの発達とともに、交通鑑別等要請が今後ますます高まると考えられますので、今後その機能が十分活用されることが期待されます。  次に、美保少年院についてであります。私どもが視察いたしました日は、晴天に恵まれ、少年たちは緑の芝生のグランドで伸び伸びと体育の実習に励んでおりました。その一画では、教室、体育館、寮舎等整備が本年十二月の竣工を目ざし進んでおります。これが完成しますならば、地域協力院長はじめ関係職員熱意と恵まれた環境のもと、少年に対するすばらしい教育の場が生まれるものと思われます。  調査項目第三は、更生保護関係法規運用に関する事項についてであります。  まず、鳥取及び松江保護観察所管内更生保護行政実情について概略申しますと、組織関係では、保護観察所職員数は、鳥取観察官八名、事務官三名、松江観察官六名、事務官五名で、とも一に職員数十一名の庁であります。保護司定員は、鳥取県内保護区三百九十名、現員三百六十七名、島根県内保護区五百三十八名、現員五百五名で、ともに大きな欠員はございません。ただ、保護司の任務が奉仕的なものであることに加えて、最近の社会経済情勢の変化は、全国的傾向として保護司補充を困難ならしめておりますが、両県とも保護司補充には苦心し、かつ後継者の養成に努力が払われております。そのほか民間の更生保護団体協力組織として鳥取県給産会、島根更生保護会があり、また両県ともそれぞれ更生保護観察協会更生保護婦人会BBS会があり、官民の協力態勢のもとに、保護観察及び更生保護事業が行なわれております。  次に、更生保護行政のおもな業務内容の概況を申し上げます。第一に、保護観察事件についてでありますが、最初鳥取管内について見ますと、昭和四十六年度受理人員総数千百六十七人、うち新規受理人員四百三十七人で、この三年間受理人員総数及び新規受理人員数ともほぼ平均しております。本年八月一日現在、保護観察事件総数は五百九十五件であります。次に松江管内について見ますと、昭和四十七年一月以降半年間の新規受理人員は百十八人で、旧受四百十四人等と合わせて、総数は五百六十六人であります。昭和四十七年六月末日現在の保護観察中の総人員は三百八十六人であります。  第二に、環境調査調整事件についてでありますが、鳥取管内昭和四十六年度受理件数は二百二十七件、初回の報告を受けた数は二百十三件、そのほか環境報告延べ件数が三百六件、本年八月一日現在担当中のもの二百五十一件であります。松江管内は、本年六月末日現在担当中のもの百九十二件であります。以上のことから、保護司一人当たりの平均負担件数を見ますと、鳥取県では保護観察事件が一・六二件、環境調査調整事件が〇・六八件、島根県では保護観察事件が〇・七七件、環境調査調整事件が〇・三二件となっております。両管内とも、保護観察を実施するにあたっては、処遇分類制をとり、処遇が困難であると予測される者については観察官が重点的に処遇活動を行ない、また観察所所在地以外の地域における処遇活動を活発にし、観察官保護司との協働態勢を強化するため観察官定期駐在を行なうなど、限られた人的、物的制約の中で保護観察の実効を高めることにつとめております。また、近年増加している道路交通事件により保護観察に付された少年については集団処遇を行なう等、警察及び鑑別所協力を得て処遇の効果があがるようにしております。  第三に、保護観察所は、一時的なものについてはみずから救護、援護及び緊急保護の措置を実施しておりますが、継続的なものについては更生保護会等に委託して行なっております。両県の更生保護会による収容保護状況を見ますと、昭利四十六年度鳥取県給産会が保護を委託された実人員五十一名、延べ二千五百二十人日、任意保護も合わせると延べ二千五百六十七人日、島根更生保護会の場合は収容人員三十五名、委託、任意合わせて延べ千七百六十八人日であります。  次に、更生保護関係について現地から出された意見要望等は、第一に保護司経済的負担の問題であります。保護司活動を行なうにあたっての必要経費の上昇とともに、実費弁償金を今後も増額し、保渡司経済的負担を軽減していく必要性はもちろんのことでありますが、実情を見ますと、相当経済的負担保護司にかけております。これは実費弁償金の額が低いということばかりでなく、実費弁償金対象となる経費以外の支出が保護司活動を行なっていく上に必要になってきているからであります。地区保護司会あるいは県単位保護司連盟保護司連合会は、法的に自主的な団体にすぎませんが、保護司法にうたわれている使命を全うしその活動を充実強化する上において必要欠くべからざる存在であり、その維持、発展は地域の浄化に直接つながるものであり、国及び地方公共団体犯罪予防活動の上において重要な位置を占めるものと思われます。ところが現実には、自主的任意団体であるということから、その経費の大半は保護司負担でまかなわれております。たとえば島根保護司連合会の本年度予算を見ますと、総額百七万円のうち助成金島根保護観察協会からの十三万円だけであって、あと保護司負担となっており、費用捻出方法として、会費のほか保護司の受ける実費弁償金の一部さえ充てているのが実情であります。犯罪者予防更生法の精神からいっても、保護司経済的に大きな負担をかけることはこの際考えなければならない問題であると思います。なお参加委員から、保護司に対する金銭の支給体系についても検討の必要があるという意見が出されました。  第二は、保護観察官増員であります。特に少人数庁では、更生保護団体指導等一般事務に追われ、対象者に対する処遇の多くは保護司に依存しているのが実情でありますが、保護観察官の持つ専門的知識処遇技術を生かし、処遇分類制を真に効果あるものにするためにも観察官増員はぜひとも必要であると思われます。なお全国的には増員されても、鳥取県及び島根県のような過疎地域には配分されていないので、登記所職員増員とともに考慮していただきたい問題であると思います。  そのほか、観察官定期駐在を円滑にするためにも駐在官事務所設置等海岸線の長い島根県にあっては特に望まれるところであります。  以上で調査内容報告を終わりますが、最後に、今回の調査にあたり、現地関係機関並びに最高裁判所及び法務省から終始懇切な御協力をいただきましたことに対し厚く御礼申し上げます。  以上で終わります。
  5. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 以上で派遣委員報告は終了いたしました。  なお、東北班につきましては次回委員会において報告させることにいたします。  ただいまの報告も含め、これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 辻一彦

    辻一彦君 私、きょうは未承認国船舶並びに乗員取り扱いについて若干質問を行ないたいと思います。  第一に、すでにこれはもう十分われわれが承知しておるところでありますが、日中の国交回復がきょうにも共同声明が発表されよう、こういう中で、これはもうだれも支持するところでありますし、喜ばしいことであります。しかし国交が回復しましても、日中のほんとうの友好ということはこれからであろうと思います。したがって、経済人事、いろんな面における交流をこれから拡大をしていかなくてはならない。そのいろんな障壁、障害というものを一つ一つ取り除いていかなくてはならぬと思います。そこで従来未承認国の、特に中国あるいは朝鮮民主主義人民共和国、ここらの船舶並びに乗員取り扱いについてきわめて差別的な、非友好的な取り扱いがいままでなされておった、こういうことを聞いております。そういうような事実がいままであったか、二、三私は具体的な事実の経過としてまずお伺いをいたしたいと思います。  一つは、ことしの四月四日でありますが、新潟西港に入りました中国貨物船海寧号に対してでありますが、これは初めて入港したと、こういうことで、船員手帳一括提出要求をして、それがそういうことはないじゃないかということで拒否をした。ところが、どこの国の船にもやっているのだ、こういうことでやむなく提出をしたということを私どもはいろんなところで聞いております。一つは、こういう実事があったのか、そしてあったとするなら、どういうようにこれは行なったかということ。二つ目は、初入港の場合は中国船に対して船員手帳のこういう一括要求を常にやっておるのか。三つ目は、承認国外交関係のある国に対しては一体どういう取り扱いをしているか、こういう事実の問題についてまず伺いたいと思います。これは入管局長から。
  7. 吉岡章

    説明員吉岡章君) ただいま御指摘になりました四月四日新潟港において海寧号入港審査にあたって船員手帳提出を求めたということは事実でございますが、これは全員についてでございませんで、すでに中国船日本の港に入り出しましてもう相当の年月がたっておりますから、この際は新規乗員だけ四名分につきまして提出を求めたわけでございます。それで、船長は一たん拒否の態度に出ましたが、新規の者だけということで船長も了承いたしまして、その審査に応じた次第でございます。  それから、過去におきましてこの通達が行なわれておったことは事実でございますが、もちろん中国の船がわが国に入りましたのは七年ぐらい前からでございまして、その初期においては、初めて入港する船員ということでございますから、船員手帳提出を求めて審査を行なったわけでございますが、その後、再三入ってくるものにつきましては、すでに前に日本に来ておるものにつきましては、船員手帳提出を求めて審査をするということはやっておりません。
  8. 辻一彦

    辻一彦君 次に、じゃ普通の承認国、まあ国交関係がある国については、これはそういう船員手帳提出を求めて審査をすることはないわけですね。
  9. 吉岡章

    説明員吉岡章君) 承認関係にある国の場合にも審査をいたします。
  10. 辻一彦

    辻一彦君 現地のいろいろな話を聞きますと、船員手帳を出させて、そうして写真をとると、こういうことが行なわれておるというのですね。そういうことを聞いたんですが、こういうことはほかの国に対しても行なっておるのか、あるいは、未承認国だけであるとすれば、どうして一括出させて写真をとるのか、そこらのことはどうか、その点伺いたい。
  11. 吉岡章

    説明員吉岡章君) 承認関係にない国の船舶につきまして特別な取り扱いをいたしました理由といたしましては、これは最初この通達が起案されましたのは約七年前でございますから、そのときの状況、現在つまびらかでない点もございますが、御承知のとおり、承認関係にない国におきましては、相互に外交代表あるいは領事機関というものがございませんので、そういった船舶にひそんで密入国をしてくる人たち、あるいは船員の中で日本に上陸いたしましてそのまま不法残留する人たち、あるいはまた、その船が出かけます際に日本からその船に入り込んでまた密出国をする人たち、こういった人たちが出ました場合に、相手国との外交関係がございませんので、こういった人たちを向こうに引き取ってもらうというようなときに非常に不便を感ずるのでございまして、できるならばそういったことを未然に防ごうという意味で、この未承認国船舶に対しまして特別の取り扱いをしてきた次第であろうと思うのでございます。  それから写真撮影につきましては、もちろん承認国の場合には、これはたとえば脱船、逃亡いたしましても、その人の属する国の外交機関なりあるいは領事機関身元確認とか、本人同一性を確認する方法もございますし、また本人を引き取ってもらうということもできますので、これはやっておりませんで、未承認国だけについてやっております。  それから、御指摘取り扱い要領につきましては、国際情勢も一非常に変わってまいりましたので、昨日——九月二十七日の段階でこの取り扱い規則廃止いたしました。
  12. 辻一彦

    辻一彦君 私、質問通告をして、きのう電話で、きょう大体そういう取り扱いをしたということは伺いました。しかしあとの、私は、朝鮮民主主義人民共和国の船の取り扱いの点もありますから、あえて事実の関係として二、三だけは伺っておきたい、こういうふうに思っております。  それから、この撮影されて保管された写真——通達によればすみやかに写真をとると、こういうふうになっていますね。それからそれは入管局にそれぞれ保管しなくちゃならないと、こういうふうになっていますが、まあ当然いろんなむずかしい問題が起きるから、だからそのために写真をとっておくことが必要であるというならば、提出させてすみやかに写真をとれというような、そういう表現でなくてもいいように思うのですが、すみやかに写真をとってというような点はどういうことを一体意味しておったのか、その点をちょっと念のために聞きたいと思います。
  13. 吉岡章

    説明員吉岡章君) 当時の通達の、すみやかに写真をとるということの意味でございますが、これはおそらくやはり相手側にあまり不便をかけないようにという意味ではないかと存じます。  それから、わが国船舶が未承認国に行った場合の取り扱い、これはそれぞれの国においてまちまちでございますが、やはり船員手帳提出して数時間後にそれを返してもらうという事例もあるやに聞いております。
  14. 辻一彦

    辻一彦君 まあ廃止になった通達のことをあまりこまかくやってもどうかと思いますから、いまの問題はその程度にして、もう一つ舷門監視の問題について事実をお聞きしたいのです。  六月二日に新潟西港に入った中国の船、九江号に対して入管当局泊り込み要求して、これは不当な要求だというので拒否をされた。そこで九江号の周辺に監視をずっと船を置いてしてきた、こういうことを聞いておりますが、その事実があったのか。  それからもう一つは、いままで入港する船に対して訪問者がありますね。これの規制のために船舶代理店が訪船券——船を訪問する券を発行している。そこでその被発行者の名簿、そういうものを事前もしくは事後に舷門立哨官に提出をさせていたと、こういうことが行なわれておったというように聞いておりますが、こういうことがいままで行なわれておったのか。  それから舷門監視官が訪問者の名前、所属団体、会社の名前、まあそういうものを一々チェックをし、聞いておったというが、そういう必要はなぜあるのかということ、こういうことについて二、三伺いたい。
  15. 吉岡章

    説明員吉岡章君) ただいま御指摘の六月二日の新潟港の件につきましては、入管職員の勤務者の待機室用として一室の提供を求めたところ、それに対しての協力を求めましたところ、適当な部屋がないということで断わられた経緯はございます。  それから訪船者に対しまして整理券を発行しておるということは事実でございますが、先ほど申し上げましたように、非常に多数の訪船者が出まして、あるいはその中にまぎれ込んでわが国から不法出国するという人たちが出ることを防ぐ意味におきまして訪船整理券を発行させております。
  16. 辻一彦

    辻一彦君 もう一つだけ経過として聞いておきたい。それは、入港から出港までの間のこの未承認国の船の船員の政治的な言動があれば入管局に直ちに電信で報告するようにと、こういうことがうたってありますね。いままでどういうことが政治的な活動となって、どういうことがそういう意味の政治的言動となっておったのか、またどうしてこういう言動を一々入管局に電信で報告をしなくてはならなかったのか、その点を伺いたい。
  17. 吉岡章

    説明員吉岡章君) この通達の原案がつくられましたのは、先ほど申し上げましたように約七年前でございまして、初めて中国からの船が日本に入るという状況だったと思いますが、中国から入ります船の状況が現実にどういうものであるかということにつきましては実態がわからずに、いろいろな場合を想定した上でこの原案がつくられたものと存じますが、政治的言動につきましては、本局に通報された件は一件もございません。
  18. 辻一彦

    辻一彦君 いま局長説明によって、ある面においては未承認国の場合にいろんな手続の点で必要なこともあろうと思います。しかし、私もこれはまあ七月の上旬に実はこの問題を委員会で取り上げる準備をしておりましたが、委員会が流れて今日になりましたが、神戸に入港した中国の船に乗って、そして夜いろいろ聞いてみましたが、こういう取り扱いを受けるほうでは、非常に非友好的な取り扱いであると、こういうような受けとめを非常に強くしておりましたし、また、こういう貿易であるとか、あるいは友好関係に当たられる皆さんもそういう受けとめをしておられますが、私はあまり友好的でなかった取り扱いでなかったかと、こう思いますが、その点はどうでしょうか。
  19. 吉岡章

    説明員吉岡章君) この通達最初につくられまして以来、国際情勢の変化がございまして、日本側の取り扱いも漸次変わってきたと思います。その間におきまして、われわれといたしましては、やはり国際情勢の変化に応じた取り扱いをいたしたいというつもりはございますが、いずれにいたしましても、港々の出先におきましては、一応通達が生きておる限りその通達を忠実に守ろうということのために、ある程度不快な感情を相手に与えたということが絶無ではなかったと思っております。その意味におきましても、去る七月に、写真撮影等も取りやめ、それから船内サーチ、舷門立哨も船長の同意を得て行なうというふうに通達を変更いたしまして、それで、昨二十七日にこれを全面的に廃止いたしました。
  20. 辻一彦

    辻一彦君 四十四年の四月に出された通達によってそういう取り扱いがされてきたということはまあわかります。  そこで、七月に、十日でしたか、私が資料要求を行ないました、その通達を出していただきたいと。そのあくる日、部外秘であった通達が解除をされて、そして部外秘のところが消されて私のところに出されたんですが、それまで部外秘であった通達が資料要求によってその晩に部外秘をはずされた。そこらのことはいまの答弁から推察はできますが、いま一度いきさつを伺いたいと思います。
  21. 吉岡章

    説明員吉岡章君) 通達取り扱いに関しましては、秘のままでは部外に出すということは一応われわれとしては慎まねばならぬことでございますが、その内容につきましてはすでに大部分の方に知られておるという点もございましたので、先生の御要求がありました際にこれを秘を消して、それで先生の御要望に応じた次第でございます。
  22. 辻一彦

    辻一彦君 まああまりこれにこだわる時間はありませんが、多くの人に知られればマル秘を解除するし、知られなければ解除しないということですか。
  23. 吉岡章

    説明員吉岡章君) いまの点、多少説明が舌足らずであったかと存じますが、国際情勢の変化に伴いまして、この通達それ自体を厳格に守ってやる客観的な情勢もなくなりつつあるということも勘案いたしまして、秘を解除し、それからさらに、昨日これを廃止いたしました。
  24. 辻一彦

    辻一彦君 そこで、まあこの通達が九月の二十七日、きのうをもって廃止をされたということはわかりました。そこで、私は朝鮮民主主義人民共和国、この船の取り扱いの問題について若干伺ってみたいと思うんです。  で、中国との関係は、もうすでにきょうあたり共同声明が出るでしょうし、急速に変化していると、こういう中で、これは自然的にも変わってくるのは当然であろうと思います。そこで、通達の見出しの中に、中共・東独等未承認国船舶乗員云々とありますね。そこでその「東独等」の「等」の中にどういう国が大体含まれているか、まあ未承認国といえばそれまでですが、おもな国としてどういう国ですか。これをひとつ伺いたい。
  25. 吉岡章

    説明員吉岡章君) 論理的に申し上げますと、朝鮮民主主義人民共和国、それから北ベトナム共和国、それからアルバニア等がその以外にあるかと存じますが、現実に船を持って日本の港に来るものは、そのうちアルバニアはおそらくないと思いますし、それから北ベトナムも非常に少ないのじゃないか。それから朝鮮民主主義人民共和国につきましては、貿易船として日本に入り出しましたのは本年になってからでございまして、過去、昨年までは全然その例がございません。
  26. 辻一彦

    辻一彦君 いまの答弁によって、朝鮮民主主義人民共和国が含まれているということはまあ確認をされます。それがことしから何回か、三回ほど貿易船が入っておりますね。そこで、この取扱要領を撤廃した、廃止をしたということは、今後朝鮮民主主義人民共和国船舶並びに乗員に対する取り扱いという意味において、どういう扱いを廃止をするということになるのか、その点をもう一ぺん念のために聞きたい。
  27. 吉岡章

    説明員吉岡章君) この通達廃止いたしましたのは、未承認国船舶は一律にこういう取り扱いをするということはやめたわけでございますが、先ほど来申し上げましたように、未承認国であるために外交機関が双方にない、あるいは領事機関もないということで、やはり密入国者あるいは船員の不法残留、あるいは日本からの密出国等が出ます場合に、これの処理について非常にめんどうなことが起こるので、やはりそういった問題につきましては、いわば予防措置を講じるということでございますから、その必要性に応じまして、個々のケースとして判断いたしまして取り扱いをきめていくということにいたす所存でございます。
  28. 辻一彦

    辻一彦君 それでは、中国のことははずしたけれども、ほかの国についてはこれは個々に検討すると、こういうことになるわけですか。
  29. 吉岡章

    説明員吉岡章君) いまの原則は、結局承認国、未承認国という分け方をやめまして、いずれの国につきましても、そういう必要性が感じられる場合にはそういった取り扱いをしたいということでございます。
  30. 辻一彦

    辻一彦君 大臣にお伺いをしたい。  それは、九月の二十四日に、法務省朝鮮民主主義人民共和国の国際貿易促進委員会の金錫鎮副委員長以下の経済使節団に対して入国審査を許可していますね。入国を認めております。それからまたわが国経済界の代表団も近く訪朝しようという動きになっていると、こういうことは非常にいいことだと思います。で、経済関係、こう言うならば、経済のためには貿易船、船が動く、船舶取り扱い船員取り扱いということが大事になってきますが、これからひんぱんにそういう交流というものは行なわれていく、その中で、この個々の国についてそれぞれひとつ検討すると、こういうことでありますので、こういう国際的にもアジアの状況ということが非常に緊張緩和に大きく動きつつある、こういう状況の中に立って、朝鮮民主主義人民共和国に対してどういう取り扱いをされるか、大臣のお考えをひとつお伺いいたしたい。
  31. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 必要度に応じまして、経済関係の人間の交流の行なわれますことは今後も起こってくると思います。その場合に船が動く、その場合に必然的につながることじゃございませんけれども船舶についても、おっしゃるような北から参ることが起こってまいりましょう。それに対しては、先ほど局長が申しましたように、不法残留等で後に不要なトラブルが起こりませんように、そのケースに応じて適切な処置をとるということは、これは両国の関係においても必要なことだと思います。したがいまして、そういう措置については、十分事務当局において検討もいたしておりまするし、今後も、先ほど来お話がございましたように、不必要な迷惑をかけたり、不必要な反感をそそったりするようなことがないように、十分ケース・バイ・ケースに処理をするように指示をしてまいりたいと思います。
  32. 辻一彦

    辻一彦君 じゃあもう少し、二、三の現に行なわれている具体的な事実の中で、それをどう弁解されるかということをお伺いいたしたいと思います。  ことしの六月の末に、北海道函館に朝鮮民主主義人民共和国の貿易船、マン・ギョン・ボン号が入っております。これは帰還船に使われておりますが、帰還船に使ってないときには貿易船として扱っている、こういうふうに伝えられております。そのときに、やはり、船員手帳提出要求して——これは上陸を申請をしたときに、そのときに、船員手帳の持参を要求して、コピーをとろうとした。一緒について行った朝・日輸出入商社の方が、担当官がコピー室に入ろうとするので、それを目撃して、どうしたのだ、こういうことを聞いたときに、はっきりした答えが得られなかったといいますが、現に朝鮮民主主義人民共和国のこの貨物船に対しても同様な取り扱いがなされております。こういう事実が私はあると思うんですが、こういうことに対して、これからどうされるつもりなのか。それをひとつ具体的に伺いたい。中国のように、そういうものに対しては、写真を全部出さしてとろうと、こういうことはやめられるのか、あるいはいままでと同じようなことをやられるのか、具体的にひとつ伺いたいと思います。
  33. 吉岡章

    説明員吉岡章君) 本年七月以降はそのようなことは全然やっておりません。それから、今後もやりません。
  34. 辻一彦

    辻一彦君 それから、やらないということは、そういう写真をとるというようなことはやらないということですね。
  35. 吉岡章

    説明員吉岡章君) 写真をとるというのは、この問題の取扱要領、この通達によってやっておりましたが、この通達のその部分は七月にもう落としてございます。それから通達それ自体が全部なくなりましたので、今後はそれは行なわないことになります。
  36. 辻一彦

    辻一彦君 新しい通達一つ一つのケースによって検討される場合にも、そういうことはないということと理解していいですか。
  37. 吉岡章

    説明員吉岡章君) 船員手帳のコピーをとるということに関しましては、そのとおり御理解いただいてけっこうでございます。
  38. 辻一彦

    辻一彦君 第二に、ことしの六月末にやはり横浜港にこの貨物船、船舶が入っております。これに対しては正面にテントを張って、全部訪船者をチェックした、こういうことですが、これについては、これからこういうことはやられるか、やられないか、その点どうです。
  39. 吉岡章

    説明員吉岡章君) 訪船者のチェックと申しますか、規制と申しますか、これに関しましては、先ほど来申し上げましたように、非常に多数の訪船者がある場合に、密出国あるいは密入国者がまぎれるということを防ぐ意味におきまして、今後とも訪船君の数が非常に多い場合にはそういった取り扱いは今後も続けていくことになると思います。
  40. 辻一彦

    辻一彦君 非常に多数の場合ということですね。
  41. 吉岡章

    説明員吉岡章君) はい。
  42. 辻一彦

    辻一彦君 次に、三つ目に、八戸港にことしの四月にやはり船が入っていますが、このときに七十二時間の、普通国際的な慣行では船員は七十二時間は大体上陸の許可がされておるわけですが、その七十二時間の時間についての制限があったり、あるいは八戸の市長はじめ各界各層の人が開いた歓迎のパーティーに、午後五時半以降は中央との連絡がとれない、こういうことで歓迎パーティーに出るということを拒んだという、しかも、入管当局の係官が現地にそのために出張していながら、そういう拒もうとした、こういうことがいわれておりますが、このようなことは今後ないのかどうか、この点もひとつ伺いたい。
  43. 吉岡章

    説明員吉岡章君) 八戸の場合、具体的なことはいまちょっとつまびらかでございませんが、原則といたしまして、地方公共団体の長が公式の歓迎等をやる場合には許可をするということを原則といたしております。  それから七十二時間のショアパスにつきましては、これもそのときどきの状況によって異なるということはあり得るかもしれませんが、これもなるべくその要望に沿うように努力しております。
  44. 辻一彦

    辻一彦君 次に、やはり八戸の場合、これはどこから電話が入ったか確認がちょっとできないんですが、そういう役所の筋から検疫員に対して、朝鮮の場合には特に徹底的にやれ、こういうような電話があって、検疫さんは、法できめた以外のことはできない、こう言って断わったということを聞いております。あるいは兵庫の播磨の港に入った場合にも、朝・日商社の関係の方が現地の各機関に、船が入ったときにあいさつに回ったそのあとに、代理店に対して、朝鮮とのそういう取引をあまりするなとかあるいは扱うな、こういう電話が入っておる。しかし、その電話がどこから入ったかということについては、私もいろいろ調べましたが確認がまだされておりません。だからどこからとは言いませんが、しかし、そういうようなことは、これから少なくも役所、入管当局においてはあり得ないと思いますが、その点ひとつ確認できますか。
  45. 吉岡章

    説明員吉岡章君) 八戸の検疫の点に関しましては、私のほうの管轄外のことでございますから、どういうことでどういう人がやったかということにつきましては、われわれも見当がつかないわけでございます。  それから後者、神戸の場合も、おそらくあるいは民間の人がそういったことを言ったのかもわかりませんが、入管の方針といたしましては、先ほど大臣から申し上げましたように、今後経済交流もますます深まっていくことでございましょうし、いわれのないいわゆる阻止でございますか妨害、そういったことはやるつもりはございません。
  46. 辻一彦

    辻一彦君 まあ具体的な三、四点についてかなり昨日の通達廃止に伴って、朝鮮民主主義人民共和国の船に対しても、船員に対しても、ほぼ中国に準じた取り扱いをされるような大体御答弁があったと思います。で、先ほどもお話がありましたが、未端のほうの出先機関では、従来のような慣例といいますか、感覚がまだかなり強く私は残っておると思います。だから、これをひとつ十分徹底してもらって、未端におきまして、少なくもいま御発言のあったような趣旨にたがうことのないようなやり方をぜひやってもらうように、これを徹底していただきたいと思います。  そこで、何か私二時までとかいうお話になっているんで、時間がなくなってきたんですが、最後に一つ、これは大臣にもお伺いしたいんですが、南北の朝鮮の平和的な統一というものが非常に大きな気運として動きつつあるように思います。私も八月の下旬から九月の半ばにかけて、北京経由で北朝鮮のほうに参って、その動きをからだで若干感じてまいりました。そこで、少なくも南北朝鮮が平和的に統一をしていくという、そういう方向をわが国は妨げることがないように、あるいはさらには一つでも二つでもプラスになるように、そしてそのためには南北を平等にこれから扱っていく、そういう方向に進んでいくということが私は大事だと思いますが、こういう大きな方向について、ひとつこれからの取り扱いの中で法務省当局としてはどういうようにお考えになるか、これはひとつ大臣から御答弁を願いたいと思います。
  47. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 赤十字会談が行なわれますような状況からいいましても、半島における平和が促進されるということはまことに望ましいことでございまして、これに対して私ども十分そういう情勢を感知しながら、それぞれの情勢の処理に当たってまいりたいと思います。
  48. 辻一彦

    辻一彦君 外務省の中江参事官に来ておっていただいたんですが、時間がなくなって十分ではないんですが、外務省のほうからも出てきておられるので、参事官から一言見解を聞きたいと思います。
  49. 中江要介

    説明員(中江要介君) 南北朝鮮の統一をわが国としても望むものであるし、またこれを、したがって妨げてはならないし、それに役に立つ、それに貢献することは大いに考えていくべきだというただいまの辻先生の御意見は、全く私ども事務当局といたしましても、そのとおり考えておるわけでございます。  ただ、赤十字会談からいまは政治会談まで進んでまいりましたけれども、これもただ朝鮮半島だけの問題ではなくて、アジア、極東の国際情勢一般の中から生まれてきた一つの動き、芽ばえでございまして、これはやはり全般的な国際情勢の推移を勘案しながら、注意深く見守っていくべきだ、こういう考えでございます。先般国際連合の総会におきましても、朝鮮問題についてもう一年様子を待とうではないか、せっかく南北で自主的に話し合いが始まったんだから、もう少し様子を見て、国際連合が直接介入していくというのは待とうという決議案が相当数の多数で可決されましたのも、世界の多くの国が、やはりいま動き出したばかりの両当事者の話し合いというものをもう少し静かに見守っていこう、こういうことだと思います。で、日本政府といたしましても、これがいい方向に、つまり緊張緩和から、究極の目的である、朝鮮半島に住んでおられる皆さんの念願といいますか、悲願である南北朝鮮の統一に向かって、いい方向に動いていくように、これをいつも願いながら、状況に応じて大韓民国政府とも、また北の政権とも友好な関係を持ち、またそれを発展さしていきたい、こういうふうに基本的には考えている次第であります。
  50. 辻一彦

    辻一彦君 前半は私、いいんですが、後半の国連における動きは意見がありますが、きょうはその論議をやる場ではないので差し控えます。そこで、ひとつ前半の考え方を十分生かしていただきたいと思います。  最後に、大臣に一つ御答弁していただいて、終わりたいと思います。  それは、いま外務省のほうの話もありましたし、大臣の御答弁もありましたが、この朝鮮民主主義人民共和国との関係というものがやはりだんだんと進展してきつつあると、どうしても友好を深め、積み上げていくには、人と経済の交流というものがまず大事だろうと思います。そうなりますと、これは平等互恵といいますか、お互いに経済も一人も行き来をしなくてはならない。片方だけ行く、片方だけが受け入れるということでは、これはなかなか進まないと思います。その点で、最近わが国のほうからもかなりな外遊団、いろいろな各層の人が朝鮮民主主義人民共和国のほうにたずねるようになりましたが、これをひとつ大いに拡大をすると同時に、向こうからもこちらに招くとか、あるいはこちらを訪問されるとか、そういう場合に、いろいろな各層の朝鮮の方がわが国に来られるようにすることが大事であると思います。そういう意味で、今後朝鮮民主主義人民共和国からいろいろな各層の代表の方が日本へひとつたずねよう、あるいはこちらからお招きをしよう、こういうことで、入国の申請等があった場合に、これを最大限認めてこういう交流を拡大をしていく、こういう考えをお持ちなのかどうか、これをひとつお伺いいたしたいと思います。
  51. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 近ごろの傾向をごらんくだされば、つとめて人の面でも友好的な進め方をしようとしておる状況をごらんいただけると思います。ただ何ぶんにも、人の問題にしましても、経済の問題にしましても、無秩序に目的が相そごしているような動きというものになりますと、これはかえって両国のためになりません。したがいまして、よく事態をいいほうに、いいほうに向けていくために、そして人の面でも経済の面でも両国の関係をよくしてまいるという方向では、十分御趣旨を体してやってまいりたいと思います。
  52. 辻一彦

    辻一彦君 じゃどうも、時間がまいりましたのでこれで終わりますが、だんだんと友好関係が朝鮮との間にも前進をしつつありますが、これをひとつ、いま御答弁ありましたように、ぜひとも具体的にひとつこれからとも生かしていただく。それから法務省では末端の出先機関に十分ひとつ連絡をしていただいて、そうしてせっかく来られる方が友好的な気持ちでこれを受け入れることができるように、一そうひとつ努力をしていただきたい、このことを要望して、終わります。
  53. 野々山一三

    野々山一三君 入管局長、ちょっと関連して伺いたいのですけれどもね。先ほどの辻君の質問の中で、部外秘の問題がありましたね。おたくにはまだ部外秘があるのでしょうか。そのことをまず聞きたい。  それから第二に、あなたの説明は、国際情勢の変化ということと、だいぶ知られているのでこの際解除したと、こういう理由でしたね。その理由、私の受けとめ方が間違っているかどうか、まずそれを聞いて、あらためて伺います。
  54. 吉岡章

    説明員吉岡章君) 私のほうの局につきましては、もちろん秘扱いの書類はございます。  それからその「未承認国船舶乗員取扱要領」の秘を解除いたしました理由につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございまして、その内容の荒筋が新聞にも出ましたので、それから、これが制定された当時とだいぶん状況も変わっておりますから、これを秘にしておく必要はないということを判断いたしまして解除いたした次第でございます。
  55. 野々山一三

    野々山一三君 官房副長官もいらっしゃっているんでしょう。法務大臣にも聞きたいんです。通常国会が終わったのは六月十六日ですね。秘密問題というのは、関連でまだ継続的に審査することになっておりますことは、委員長もそういうことでこの委員会を運営されている。で、秘密問題の結末の一例ですけれども、あの議論の中で、各省庁大臣、官房長官も全部出て、議論はあるけれども、基準そのものについても意見——案を出したけれども、それについても意見を聞いて直しますということだった。それから、結論からいうと、機密、極秘、秘密、それから部外秘、取り扱い注意、人事秘、六種類ある。そのうちで、もう二つにしますと言ったんです。機密、秘密という二つにしますと。それについてはぼくは意見があるけれどもということだったが、この二つにしますと言った。いま質問に対するあなたの答えによれば、いまでも部外秘がある。で、それは国際情勢の変化と、世の中によく知られているから解除したと。あなた、国会で数多く議論されたことを知っていますか。そのとおりのことをやっていますか。いま存在しているというならば、法務大臣、官房副長官の見解を聞きたいんです。国会からもうすでに何日かたっているのに、それが存在しているから辻君がそういう質問をし、いまになったら別の理由で解除したというんなら、国会無視です。だから私はこの本論に関連して聞いておきたい。あとで官房副長官に根本問題について聞きます。  それから三番目。当時は佐藤内閣だった。田中内閣にかわった。あなた方は新しい閣僚です。しかし、政治は、国会は、という関係において、あなた方はどういうふうな認識を持っていらっしゃるのか。もう田中内閣にかわったんだからいままで国会で議論したことは違うんだと言われるなら、そう答えてください。そうじゃなくて前どおりにやるというならば、前どおりにやると、こういうふうに答えてください。そのことをはっきりして、あとでこの質問についてのものは打ち切ってもいいんですけれども、いまの三つについて見解を聞きたい。要するにあなたの答弁は、全然、国会でいままで議論してきたこと、この委員会で議論してきたこととまるきり違うことを答弁しているでしょう。
  56. 吉岡章

    説明員吉岡章君) いま私が用いました用語があるいは不正確であったかと思いますが、部外秘ということは不正確な表現であったかと思います。これは秘密でございます。ですから、部外秘ということは私の表現が不正確だったということで、訂正さしていただきます。
  57. 野々山一三

    野々山一三君 答えてください。大臣及び官房副長官の見解を聞きたい。
  58. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) いまも局長からも申しましたように、現在、秘というものについての扱いについては、十分、国会の御審議を通じての御趣旨も体しまして、また、内閣全体としての方針に従って、法務省においても整理を検討しているわけでございます。たとえば、先ほど申しました船舶についての秘を解除いたしましたのもその一例でございます。十分、整理はこれからも進めてまいります。
  59. 野々山一三

    野々山一三君 もう一回。ぼくが追加関連質問をしたから全然別な理由に変わってきた、大臣のお答え。入管局長の答えは、全然、部外秘じゃなくてマル秘でしたと。それ見せたって、そのことと何の関係がありますか。それからあなた、審議の経過御存じですか。どんと圧縮しますと言ったわけですよ。そのことの理由が存在しているなら、私はその度合いがいいか悪いかについてはまた議論をするでしょう。全然あなた違うことを答えているんだよ。議事録なんか見てないの。国会なんか見てないの。見解を聞きたいんだ。
  60. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 山下副長官なり局長なりからまた申すと思いますが、野々山さんの非常に御熱心な、また非常に幅の広い御議論、これも私は要点は説明を聞いて承知しておるつもりでございます。また、大幅にこれを圧縮したいことは各省とも考えておることでありまして、私のほうの法務省においてもそれを考えておるということはお答えできると思います。その作業は、現在、それぞれ官房において各省各局を督励していたしておる段階でございます。
  61. 山下元利

    説明員(山下元利君) 御指摘の点につきましては、ただいま法務大臣からも御答弁があったところでございますが、ただいま、内閣におきましても、野々山先生の御趣旨にしたがいまして、各省庁におきますところの秘密文書取扱いに関する規程等につきまして照会いたしておる最中でございます。早急にこれを取りまとめましてあらためてお答えさしていただきたいと思います。本日、十分用意いたしませんで、十分な御答弁ができませんで申しわけないのでございますが、先生の御要請によるところの資料につきましては早急に取りまとめてお答え申し上げたいと思います。
  62. 野々山一三

    野々山一三君 もう一つだけ。入管局長、悪いですがね、取り扱い注意じゃなくて秘密ですというのは比較の話であって、私の耳が悪いのかもしれませんが、部外秘はあるんですかと先ほど聞いたでしょう。あるんですか。あるんなら、これはこの前の委員会で各大臣の言明したことと違いますからね。あるかどうか答えてください。きょうはそれだけで終わります。
  63. 吉岡章

    説明員吉岡章君) さきの国会で御議論いただきまして、内閣のほうからわれわれのほうにも、いわゆる秘密文書をなるべく減らせという御指示がございまして、ただいま仰せられた極秘と秘ということの意味におきましては、われわれのところには秘というものはございます。ただ、従来、慣行的に部外秘としておったものは現在ではございません、厳密にことばづかいをいたしますと。
  64. 野々山一三

    野々山一三君 部外秘はない。
  65. 吉岡章

    説明員吉岡章君) 部外秘はございません。全部秘にしております。
  66. 野々山一三

    野々山一三君 実体がふえたんですか。
  67. 吉岡章

    説明員吉岡章君) もし秘密を要するものは、秘にしております。
  68. 野々山一三

    野々山一三君 名前が変わっただけじゃなくて、実体も圧縮します、そういうことになっているんですよ。ですから、あなた、秘密というものしかありませんと言ったって、実体はどうですかということになりますよ。実体も減ったんだということでなけりゃ、——長官来ておるが——ぼくがこの間から要求している資料を、きょう全部厳密にいいますから……。これは、官房長官なり各大臣に全部実際に見てもらって審議しますと言ってあるんです。審議してもらいます、意に沿うようにいたしますと言ったんですから。その中身のことについて、減っているんですか、ふえているんですか、見解をお聞きしたい。
  69. 吉岡章

    説明員吉岡章君) 実体がふえたか減ったか、あるいは昔のままかという点につきましては、非常に減らしております。
  70. 加瀬完

    ○加瀬完君 質問の前に、いまの点は、前の内閣の竹下官房長官が、内閣の責任において、いろいろ秘密事項は多いけれどもそれを二つに限定をすると。そして野々山委員指摘するように、その数を圧縮すると、こういう約束をしたわけですから、そのとおりに作業が進んでおらないと約束が果たされないことになりますし、いままた新しい内閣になって方針が変わったかという疑問をも持たれるわけでありますので、この点は明確にしていただきたいと思います。  私は、時間が制限されておりますから、ベンジャミン事件と相模補給廠の二つの問題で質問をいたします。端的に伺いますから、お答えも簡潔にお願いをいたします。  第一の問題になりますが、アメリカが被疑者の身柄を引き渡さなかった理由はどういうことですか。どなたでもけっこうです。
  71. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 今回の沖繩で発生いたしました米軍人のベンジャミンにかかります殺人事件につきまして、このベンジャミンの身柄を現在日本側が取っていないという理由はどこにあるかという御指摘でございますが、この点につきましては、いわゆる地位協定の十七条の5項の(c)におきまして、「日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なうものとする。」、こういう条項がございます。これによりまして現在向こうが身柄を拘禁しておるところでございます。
  72. 加瀬完

    ○加瀬完君 第一次裁判権は日本側にあることはお認めになりますね。
  73. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 現在の捜査の過程におきましては、第一次裁判権は日本側にあるというふうに考えております。
  74. 加瀬完

    ○加瀬完君 ただいま御指摘の地位協定の十七条の5項の(a)に援助義務というのがありますね。援助義務というのはどういうふうに解釈なさっていますか。
  75. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 御指摘のとおり地位協定十七条5項の(a)におきましては、逮捕または身柄の引き渡しに関する日米両当局の協力義務が規定されているわけでございますが、これは日米それぞれその国内法によりまして逮捕の権限を持っているということを前提にいたしまして、その場合におけるそれぞれの逮捕及びこれに伴う身柄の引き渡し、こういう点について相互に協力するということをうたった一般的規定でございます。
  76. 加瀬完

    ○加瀬完君 その地位協定十七条5項の(c)は、(a)が前提とならなければ、これは全く効果がないということになりませんか。
  77. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) ただいま申し上げましたように、5項の(a)はそれぞれの当局が逮捕権限を持っているという場合の相互の援助規定でございます。十七条の5項の(c)のほうは、それのいわば別の観点から、これはむしろこの(c)項に当たる場合には、公訴の提起があるまでは米側において身柄の拘禁を続けるという、いわばこの意味におきましては権限規定でございます。この(a)項と(c)項との関係におきましては、(c)項はアメリカ側の実体的な権限規定を書いたものでございまして、(a)項とは規定しておる面が違うわけでございます。
  78. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは(a)項、(b)項、(c)項と見るべきではなくて、5項の中に(a)と(b)と(c)という条件があると解していいでしょう。したがって、5項全体を発効させるためには、(c)だけをあなたのように説明するなら、(a)と(b)は全く意味をなしませんよ。そこで、「その者の身柄が合衆国の手中にあるとき」、こういう文言がありますね。これは(a)の限界をこえても、特別、米国が被疑者の身柄を確保しておく必要がきわめて大きいと、そういうときだけに限定すべきではないですか。そうでなければ、5項の(a)は全くの役に立たない条項となりますね。十七条の5項の(b)にしても、日本側のすみやかな通告をきめておりますね。幾ら通告をしてもアメリカの都合で身柄を引き渡さなくていいという(c)だけを主張をするなら、この(b)は全く無効ですよ。こういう解釈をあなた方が続けていく限りは、アメリカ側がいまのように(c)項を乱用している限り、国民が納得する公正な裁判というものは沖繩においては行なわれませんよ。あるいは基地の中で行なわれた犯罪においては、もう日本の主張というものは何にも通りませんよ。そういうことになりませんか。
  79. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 先ほど来申し上げておりますように、5項の(a)は相互に権限がある場合の協力規定でございます。(c)項はその特殊な場合でございまして、先ほどお読み上げになりましたように、被疑者の「身柄が合衆国の手中にあるときは、」引き続き公訴提起までは合衆国軍のほうで身柄を拘禁するということを言っておるわけでございまして、この「手中」といいますのは、合衆国側におきまして逮捕しておるとか、あるいは禁足をしておるとか、その他合衆国軍の直接の管理下にあって、合衆国軍が身柄の確保につとめておるという状況を言うのでございまして、最も組織的な軍組織というものが自分の軍用員の身柄を確保しておるという事実は、これはやはり軍というものの性質から見てこれを尊重するのが相当であろうということからでき上がった規定であろうと考えておるわけでございまして、同様の規定はNATO協定におきましてもやはり同じような形でこの規定がされておるわけでございます。
  80. 加瀬完

    ○加瀬完君 もし、あなたの御説明のように解釈をするとするなら、どういう日本側の理由があろうとも、身柄を引き渡すか、引き渡さないかは、アメリカの自由裁量ということになりますよね。それではこの5項(a)の裁判についての相互援助というものは成立しないんじゃないですか。日本側の主張は一つも通らない。身柄の引き渡しというのがなければ犯罪捜査は非常に支障を来たしますね。しかし、いかなる支障があろうとも、アメリカ側のOKがなければ身柄は引き渡せないということであれば、これは全く十七条の5項の(a)、(b)、(c)ときめてあったって、(c)だけが優先して、(a)と(b)は全く無効ということになりますよ。もし、そうしか解釈できないとするならば、これは地位協定の条項を改むべきですよ。二つ質問をします。解釈が、間違っていませんか。あなたのとおりの解釈とするなら、これは地位協定は当然改定すべきだ、こう思いますが、御見解をいただきましょう。
  81. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 先ほど来申し上げておりますように、この十七条5項の(c)の「手中にある」という意味は、私が申し上げましたように、合衆国におきまして逮捕であるとか、あるいは禁足であるとか、そういうことを、直接のこの管理下に置いておる場合、これが「手中にある」というときに当たるわけでございます。  ところで、合衆国の軍人、軍属に対する逮捕の問題でございますけれども、これは基地外におきましては、これは日本側が日本側の刑事訴訟法の規定に基づきまして、その要件が備わる限り逮捕できるわけでございます。逆に、米軍側が米軍人、軍属に対しまして基地外で米軍人、軍属を逮捕するという場合は、この地位協定の十七条の10項にございますが、このアメリカ合衆国の軍事警察権の行使の範囲というものが制限されております。基地外におきましては制限されておるわけでございまして、そういう点からまいりますと、この十七条5項の(c)の「手中にある」という状態が実現いたしますのは、原則として基地内においてこの米軍軍人、軍属を米軍側が逮捕する、あるいは禁足にするという場合に実際問題としては当たるわけでございまして、かような特殊な場合には、その軍が拘束したいという事実、これを尊重して、公訴の提起があるまでは単に引き続き身柄を預けておこうというこの趣旨でございます。  その点は、一般には、基地内におきましては自由に——自由といいますか、刑事訴訟法の条項に当たります限り、日本側の権限におきまして米軍人、軍属の逮捕はできるわけでございます。何回も繰り返すようでございますが、「手中にある」というのは、そういう特殊な場合であると考えたわけでございます。
  82. 加瀬完

    ○加瀬完君 私はそういう「手中」に置いたままで日本裁判が成立するかどうかということを指摘しているんですよ。あなたの御説明のように解釈すれば、アメリカの基地には手を触れることもできないということになりましょう。西独では基地の中に捜査権でも何でもドイツが持っているんでしょう。こういうベンジャミンのような場合は直ちに逮捕できる条件にドイツは置かれているんでしょう。なぜ日本が同じアメリカの基地の扱いにおいてドイツとはなはだしく違って、主権をそこなうような、アメリカの基地には手も触れられないという条項をそのまま認めるかというんですよ。慣例としてはそうであったかもしれない。しかし、十七条の5項の(a)、(b)、(c)の解釈はそういう解釈をしなくて済むんじゃないか、なぜ一体正しい、日本に有利な解釈ができ得るものをやらないのか、こういう点を指摘しているわけです。  端的に聞きますが、あのベンジャミンのように逮捕要求をしても向こうが応じないならば、「手中にある」ということの条項は生きているんだからしかたがないということで日本裁判はスムーズに進むということになりますか。犯罪者を、被疑者を相手方のアメリカの手中に置いて、捜査なり取り調べなりが円滑に進むと、アメリカの手中に置いたほうがより進むということになりますか。警察は要求しているでしょう、身柄の引き渡しを。しかし、この(c)項を理由にして、出さない。(c)項なんというものをそういうふうにアメリカが解釈するというのは改むべきですよ。ドイツ並みにすべきです。(c)項があるからしかたがないという解釈はどんなふうに解釈しても成り立ちませんよ。議論になりますから避けます。いまの状態のほうがより日本の捜査権の発動に有利だという御判定ができますか。この点だけ伺いましょう。
  83. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 先ほど申し上げましたように、この十七条5項の(c)の条項は、NATO協定にも全く同様の規定がございます。その意味におきましてNATO諸国と全く同じなのでございます。  ところで、こういうような場合に身柄を合衆国軍隊の手中に置いたままで捜査がりっぱにできるかという御指摘でございますけれども、この捜査につきましては、同じ地位協定の十七条の次の条項でございます6項におきまして、捜査の相互の協力義務というものを規定いたしておるわけでございまして、身柄の確保はこの条項で、この事件に関しましては現段階においてはアメリカが取っておりますが、そのほかの捜査の協力というものは十分いたしておるわけでございます。たとえばこの犯行直後の基地内における検証でありますとか、参考人の取り扱いでありますとか、その他いろいろの協力については十分な協力義務が行なわれておるわけでございまして、捜査は現在日本側の主導のもとに遂行されておるわけでございます。
  84. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは遂行されておらないとは言いませんよ。しかし、日本人の日本の内地でのベンジャミンのような被疑による犯罪が行なわれた場合は、直ちに身柄を拘束するでしょう。身柄拘束によって取り調べるというのは当然の常道じゃないですか。ところが、身柄は拘束できない、こういう規定があなたのおっしゃる(c)項でしょう。しかし、犯罪捜査に相互援助をするというなら、身柄の引き渡しをするという以上に大きな相互援助はありませんよ。(a)項の相互援助というのは別なことだと見ているのか。相互援助というのは、犯罪捜査について相互援助するというなら、身柄の引き渡し以上の相互援助はありませんよ。それを否定をするような条項を残しておくのはおかしいじゃないですか。当然、これは少なくも現実公務によらないところの犯罪ですから、こういう場合身柄を直ちに引き渡すということが相互援助だという主張をしてどこが悪いんですか。主張をできない理由はどこにもないでしょう。これはいかがですか。
  85. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 現在この被疑者でございますベンジャミンは、米海兵隊の本人が所属しておりましたキャンプとは違いまして、米海兵隊のキャンプ・コートニーの拘置所に身柄を留置しておるわけでございます。軍の拘置所に拘束をいたしておりまして、この拘置所から連日那覇地方検察庁に米軍の護送のもとに出頭いたしまして、那覇地方検察庁の取り調べを受けておるわけでございます。問題は、実質的にみまして日本側の拘置所に入っておるか米軍側の拘置所に入っておるかという点の違いになるわけでございまして、検事が調べております状況は、毎日役所に出頭させまして調べておるわけでございまして、実質的にさほど変わりがないわけでございます。かようなことで、先ほど来この十七条5項(c)の持っておる意味につきましては、私御説明いたしたとおりでございますので、そういう観点からいたしますと、現状のもとにおいても捜査において特に支障があるという状況には相なっていないのでございます。
  86. 加瀬完

    ○加瀬完君 あなたのおっしゃる支障がないというなら、何で身柄の引き渡しというものを最初要求したんですか。身柄の引き渡しを要求したでしょう、日本の警察は。ところが(c)項によって断わられた。身柄の引き渡しを要求するのは当然のことであるし、身柄を拘束しなければ犯罪捜査というものは十分にいかないのは当然なんです。何度も言うようですけれども、十七条5項(a)項は身柄の引き渡しを当然日本側が主張してもいい要件を含んでおる。それを(c)項だけをたてにとって相変わらずアメリカの手中に被疑者を置く、それを許容しなければならない日本側の態度はどう考えてもおかしい。いずれこの問題は時間をあらためてゆっくりやります。あなた方の解釈はおかしい。それが当然の姿なんという考え方はおかしい。  これは外務省に伺います。そのように5項は解釈できますか。解釈できるとすれば、相互援助というものをたてにとって、私的犯罪は明らかです、身柄を日本側に引き渡しを日本の警察は要求しておる。警察の要求に応じられるように主張する根拠が5項にある。また、こういう犯罪者というものは、国民感情も非常に激怒しており、沖繩の県議会では決議案をきめて政府並びに関係者に要求しておるでしょう。問題は、(c)項の解釈がどうこうではない、公正な裁判というものは、特に国際間における公正な裁判というものは、占領は終わりましたけれども身柄は一切アメリカです。私どもは手は出せません、そんなばかな条項を残しておいていいんですか。国辱的な規定ですよ。そうはお考えになりませんか。
  87. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 十七条の5項の(a)、(b)、(c)それにつきまして先ほど刑事局長から御答弁ございましたけれども、私どもは地位協定の解釈上十七条5項(a)は一般的な規定であり、(c)は特殊な事態における具体的な取り扱いをきめた義務的な規定である、こういうように解釈いたしております。したがいまして(c)項につきましては、米軍が逮捕し、身柄が現に米軍の手中にあるときは、日本側によって公訴が提起されるまでの間は米側が引き続いてその身柄を拘束しなければいけない、こういう規定になっておりますので、米側としてはこの規定に縛られる以上、日本側の要求はさることながら、身柄を公訴の時期までは引き渡すことができない。しかしながら、この規定に基づきまして、しかも(a)項には協力という規定がうたってありますから、日本側において公訴が提起されますならば直ちに日本側に身柄を引き渡す用意あり、こういうことを申しておるわけでございます。  それから、国辱的な規定であるという御指摘がございましたけれども、旧行政協定第十七条におきましては、確かに、公務といなとにかかわらず、施設・区域内におきまして米側が専属的な裁判権を行使いたしております。これはまさに非常にぐあいの悪い規定でございますので、現在の地位協定の規定に改正いたしたものでございます。これはまさにNATOの協定と全く同文でございます。
  88. 加瀬完

    ○加瀬完君 NATOの協定と同一であるから屈辱的でないという理由にはなりませんよ。この前の行政協定と内容的にどこが違いますか。同じじゃないですか。それが日本の本土の中で行なわれた外国人の犯罪に対して日本の人権を守ることになるか、日本の主権を主張することになるかということを私は言っているんです。これは議論になりますからあとに問題を残しますけれども、おかしいです。行政協定の延長を地位協定でやったというにすぎない。なぜ堂々と主張しないんですか、日本の主権を。これは私の主張じゃない。現地の沖繩がそう言っているんじゃないですか、政府に対して。時間が制限されておりますから、外務省にはほかのことでも聞くことがありますから、少なくも巨木の主権が回復したならば、日本の主権を主張するような、もっと外交姿勢というものをとってもらわないと困ります。注文を申し上げておきます。  次に第二の問題でありますが、「相模総合補給廠について」の閣議了解事項というものが先般発表されました。「相模総合補給廠における戦車修理機能については、その縮小ないし停止を検討するものとする。」、これは間違いございませんね。
  89. 山下元利

    説明員(山下元利君) 間違いございません。
  90. 加瀬完

    ○加瀬完君 すると、政府のそれぞれからいろいろな見解が出されておりましたが、原則的には、戦車修理機能については縮小ないし停止を目的として検討される、そういうことには何らの変更もないと解してよろしゅうございますね。
  91. 山下元利

    説明員(山下元利君) 仰せのとおりでございます。
  92. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは、地位協定第十六条は義務と解してよろしゅうございますか。アメリカ軍の、アメリカ側の義務と解してよろしゅうございますか。
  93. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 地位協定十六条にうたっておりますのは、米軍の構成員並びに軍属、家族に対しまして、わが国の法令の尊重の義務を課しておることでございます。尊重するということを義務づけているわけでございます。
  94. 加瀬完

    ○加瀬完君 ですから、日本国において、日本国の法令を尊重し、この協定の精神に反する活動を慎むことを義務としておるわけですね。
  95. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 一般の国際法上、条約に基づいて駐留を認められております外国軍隊に対しましては、接受国の国内法令は直ちには適用はございませんが、外国軍隊は、接受国の公の秩序と国民の生活に悪影響を与えないようにするために、その接受国の国内法令を尊重する義務を負うこととされておりますが、この規定におきましても、この一般国際法上の原則を踏まえまして、いま申し上げましたような義務を負わしておるわけでございます。
  96. 加瀬完

    ○加瀬完君 簡潔にお答えをいただきますが、私は国際法を論じているわけではない。一般の第三の外国の軍隊の義務を論じておるわけではない。日本におるアメリカ軍が、第十六条によれば、当然日本の法律あるいはこの協定の精神に反する活動を慎む、こういうことを義務づけているのではないかと、こう言っている。これは第十六条の内容でありますから、そのとおりでしょう。  そこで伺いますが、じゃあいままでアメリカはこの義務を十分に、万全に履行しておったと外務省は認めるのか。
  97. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 政府といたしましては、従来から米側に対しまして、わが国において活動を行なうにあたってはわが国の国内法令を十分尊重するように、絶えず申し入れているところでございます。
  98. 加瀬完

    ○加瀬完君 そんなことは聞いていませんよ。そのとおりやっておったと認定するかどうか、政府は。アメリカはこの十六条の義務を確実に履行しておったかどうかと聞いている。
  99. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 十六条は日米の合意のもとにでき上がっている規定でございますから、米軍といたしましては、十分、この規定に従って、またこの規定を尊重して行動することを義務づけられております。
  100. 加瀬完

    ○加瀬完君 あなた、頭どうかしていないか。義務づけているかどうかを言っているのじゃない。そのとおりやっていたかやっていないか聞いているのだ。端的に答えなさいよ。そういう態度だから、注文すべきものも、こちらからアメリカに要求すべきものも要求しないでずるずるずるずる、地位協定になっても行政協定と同じことをやっていると言わざるを得ない。はっきり答えてください。
  101. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 個々の基地、施設・区域の使用につきまして、そのときどきにいろいろな問題がありますことは私どもも承知いたしております。しかしながらこの点につきましては、もし万が一米側におきまして国内法の尊重義務を怠っているような場合には、十分これを注意してまいるということで来ております。
  102. 加瀬完

    ○加瀬完君 問題を進めますがね。外務省は安保条約の解釈を従前とは違えて解釈をするようにいたしましたか。従前と同じですか。
  103. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 地位協定に基づきます施設・区域の使用につきまして、経済環境社会環境、そういうものの変化に伴いまして、従来行なわれたことと環境が変わってまいっておるという事態があることは確かにあると承知いたします。
  104. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは、岸安保のころ、極東の範囲ということが問題になりましたけれども、現在外務省は、安保条約の適用範囲は極東とは限らないという新しい解釈をなさっていらっしゃいますか。
  105. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 昭和三十五年の国会におきまして、政府が極東の範囲に関する統一見解を出しておりますけれども、極東の範囲につきましては、政府として引き続き同じ見解をとっております。
  106. 加瀬完

    ○加瀬完君 あなたのほうの「相模総合補給廠における米軍戦車等の修理について」、「昭和四十七年九月十九日、外務省」という条文によりますとね、極東の平和に関係があればすべて安保の範囲と、こういう解釈をしていますね。違いますか。
  107. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 安全保障条約は、日本の安全、それから並びに極東の平和と安全のために、米軍に対しまして施設・区域の使用を認めておりますけれども、九月十九日の統一見解におきまして外務大臣が答弁いたしておりますのは、その紛争が極東の平和と安全と関係のあるものにつきましては、施設・区域の使用の目的に照らして許されることである、こういうことを言っておるわけでございます。
  108. 加瀬完

    ○加瀬完君 ですから、極東の範囲というのは一応押えられておっても、さらに、安保条約の適用の範囲というのは、極東の範囲からはるかに越えていますね。極東の安全なり平和なりに関係があるということになれば、それは極東の地域の中のものでなくとも、安保条約のワクの中として日本は義務を負う、こういう解釈をしているわけでしょう。
  109. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 安保条約にあります極東の範囲につきましては、昭和三十五年の国会以来この十数年にわたりまして、絶えず国会で御議論をいただいている点でございますけれども、その間におきまして、政府側は、三十五年に明らかにいたしました統一見解に基づき、いま私が御答弁申し上げましたようなことをそのつど御答弁いたしてきているわけでございます。
  110. 加瀬完

    ○加瀬完君 こう言っていますね。「ヴィエトナム紛争については、従来から明らかにしているとおり、わが国はその当事者ではなく、かつ、その話合いによる解決を希求するものであるが、この紛争が極東の平和と安全と無関係とはいえない以上、」云々とありますね。少なくとも安保の適用の範囲というものをベトナムまで広げているということは明らかでしょう。  そこで伺いますがね、この外務省の公式発表の中にあります中から二、三伺いますと、米軍の所有にかからない戦車などは安保の義務範囲と見るのか、義務外と見るのか。  第二点は、米軍関係部隊というのは一体何をさすのか。アメリカと連合戦線を張っている南ベトナム軍も米軍関係部隊と見るのか。  それから、ベトナム軍の所有戦車は相模補給廠で修理の対象とするのかしないのか。三点、お答えいただきます。
  111. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 御質問の点につきまして、まず、米軍関係部隊ということの御指摘がございましたけれども、これはNATO軍等のことを念頭に置きましてこういうことを申し上げましたけれども、米軍に輸送するというふうにお読みいただきたいわけでございます。  それから、南ベトナム軍の戦車と、こういう御指摘がございましたけれども、現在私ども考えておりますのは、米軍が使っております戦車の修理と、こういうふうに考えております。
  112. 加瀬完

    ○加瀬完君 そうすると、米軍関係部隊という中にはベトナム軍は含まない、こう解していいですね。それから、ベトナム軍所有の戦車というものは相模補給廠の修理の対象には考えておらない、こう解していいですね。
  113. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 米軍関係部隊には、ベトナム軍は私どもは考えておりません。それから、相模補給廠において修理をされております戦車等は、これは米軍所有のものでございます。
  114. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは米軍所有のものか所有でないかは、いずれの機会、また現地の人から明らかにいたします。  その二点は、これは確認をしていただきます。  そこで問題は、日本の基地で修理した米軍の戦車などをベトナム軍に使用させても安保条約上問題はない、こういう解釈をなさっていらっしゃるわけですね、いまは。
  115. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) ベトナム紛争が極東の平和と安全と無関係とは言えないと、こういう認識に立ちまして、米軍がベトナム紛争に対処するための措置ということの関連で、先ほど来問題になっております機能をわが国施設・区域を使って行なうことは差しつかえないと、こういうふうに考えております。
  116. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは外務委員会等でいずれ問題にするはずでありますが、極東の範囲というものを政府は限定しておって、その範囲を拡大しておらない。ところが、ベトナムの現在の戦争までをも、日本なりアメリカなり、いわゆる安保条約による極東の範囲に影響があるものは、極東の範囲という地域のワクの限定は除くんだということになると、安保条約の解釈は違ってくる。いずれこれは外務委員会で明らかにしていただきたいと思いますが、政府がいつからそういういままでの統一見解を変えたのか、伺わなければなりません。これは他の委員会でそれぞれ専門の方にじっくりやってもらいます。  そこで、時間が制約されておりますから、次にもう一つの問題を伺います。これは港則法の四条は行き先の明示、二十三条は搭載危険物の申告というものを要件にしておりますね。
  117. 野村一彦

    説明員(野村一彦君) 港則法四条及び二十三条は、一般船舶について先生御指摘のような規定でございます。
  118. 加瀬完

    ○加瀬完君 じゃあアメリカ側は四条、二十三条の義務をいままで順守しておりましたか。
  119. 野村一彦

    説明員(野村一彦君) アメリカ側という御質問でございますが、地位協定及びそれに基づく日米合同委員会の合意議事録によりまして、米軍の支配下にあります艦船につきましては、港則法の四条及び二十三条ではなくて、地位協定のそれぞれの関係の条項によって手続をとっております。
  120. 加瀬完

    ○加瀬完君 そこでさらに伺いますが、地位協定の第五条では、米国の船舶日本に入る場合は、ある条件で拘束されておりますね。
  121. 野村一彦

    説明員(野村一彦君) 所定の手続で通告をしなければならないということでございます。
  122. 加瀬完

    ○加瀬完君 ただし、出港の場合は拘束規定はありませんね。アメリカの船が日本から出港する場合は拘束規定はない。これはどういうふうに解釈しますか。
  123. 野村一彦

    説明員(野村一彦君) これは米軍が、先ほど申し上げました地位協定第五条三項によって、入港のときに通告をいたします。そうして、その通告をすべき内容については、合同委員会の合意書の議事録によって、こういうことを通告しなければならないと書いてございますが、その中に、その船舶の名称、トン数、長さ、喫水及び出入港の日時と書いてございます。したがいまして、入ってきた船がいつ出るかということは、その入港のときの通告の中に含まれて、出港の日時を明瞭にするという規定になっておりまして、そういうふうに行なわれております。
  124. 加瀬完

    ○加瀬完君 しかし、船が出るとき、出港期日だけで、船の出ることに対して無条件に他の拘束を省くということではないでしょう。先ほど言ったように、国内法であれば、四条なり、二十三条なりという拘束はあるでしょう。結局、出港の場合何も規定がないというのは、これは国内法に準ずべきだと解釈するのが当然でしょう。中に入ってくる、日本に入ってくる場合は規定があるけれども日本から外に出るときは規定しないのは、それは当然地位協定五条の前提としては、国内法の拘束規定を守るべきだ、こういう含みがあると解釈するのが当然じゃないですか。
  125. 野村一彦

    説明員(野村一彦君) 船が、米国の軍艦等が日本の港に入ってきます場合には、先ほど申し上げましたように、通告をして入港するわけですが、そのときには出港の日時も通告に入っているわけでございます。そこで、先生の御質問でございますが、港則法におきましても、入港のときに届けをする、一般船舶は。それから出港のときにも届けをするというたてまえになっておりますが、実際には港則法の施行規則におきまして、入港のときにあわせて出港の届けもするという規定がございます。それと同じように、この何といいますか、米軍関係船舶につきましても、入港のときにあわせて出港の日時も通告をするということでもって、所定の手続はとられているわけでございますから、その点は一般の船との平仄は合っているわけでございます。
  126. 加瀬完

    ○加瀬完君 先ほど外務省の局長説明したように、地位協定十六条では、日本の国内法を尊重するということになっているでしょう、たてまえとしては。そこで、日本の国内法の港則法の二十三条には、出る船が危険物を搭載しているような場合は申告しなければならないということになっているでしょう。ただ、出る期日だけを申告すればいいということではない。そうなれば、地位協定の五条では、入るときの規定はあるけれども、出るときの規定がないということは、これは当然普通の、日本から出ていく船ならば、日本の国内法を適用するわけだから、アメリカの船といえども、規定がないなら国内法を適用するのはあたりまえのことだ。それくらいのことがわからないばかな話はないでしょう。船の出ることばかり考えていて、出るだけではないでしょう。搭載しているものも申告しなければならないことになっている。そうでしょう。だから、そこで国内法を適用して悪いということはどこにもない。何にも規定がなければ国内法を適用するということは十六条できまっているのだから。ところが、あなた方は出る船についてどういうふうにいままでチェックをしたか。当然政府においてチェックできるものをチェックしてなかった。そうでしょう。チェックできるでしょう、これは。ところが、チェックしていたか。ひとつもしていない。何を積んで出ようが、どんなものを持って出ようが、アメリカの船ならおかまいなし。国内法を役所が順守してないですよ。そういうことにはなりませんか。
  127. 野村一彦

    説明員(野村一彦君) 先生の御質問は二つの問題があると思います。一つは、一般的にその出港のチェックを国内法に基づいてやるべきではないかという御意見でございますが、これは先ほどからお答え申し上げましたように、入港についても、出港についても、その地位協定に基づく通告の中に、あわせて同時に、入港時に出港の日にちも通告をするという方式をとっておりまして、したがって、そういう面で入出港そのもののチェックはやっておるわけでございます。  それからもう一つの御質問の危険物の問題でございますが、これは地位協定第三条第三項に規定されておりますように、「公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」とありますように、米軍に提供されました地域、岸壁なら岸壁、そういうところにおいて、いまのような通告を行なって入ってきた船が、そこで荷役を行なう、危険物を含めましてでございますが、そういう場合には、これはやはり地位協定によって処理されるものであって、港則法の二十三条ではない。つまり、米軍の船が、米軍に提供されている地域におきまして、そこに入ってきて、そうしてそこで作業をして出ていくという場合は、港則法ではなくて地位協定、具体的には、それに基づきますいま言いました議事録等があるわけでございますが、そういうものに基づいて処理をされているということでございますので、そういうふうに御了解いただきたいと思います。
  128. 加瀬完

    ○加瀬完君 政府も言明しているように、相模補給廠は、縮小ないしは停止をさせようという方針なんですね。ですから、ベトナムに行く戦車、アメリカがどこかの戦地に使う戦車なりいろいろの兵器が、無制限に日本から補修をされて積み出されるということを、拍手かっさいで協力をしているというわけでもないわけですね、政府は。どこかで何か日本の利益のためにチェックすることができるなら、そのチェックの場所等があったほうがはるかにいいわけです。それならば、二十三条で積載物の種類についてはチェックすることができるというなら、どういう協定があろうとも、これは国内法を適用するというふうな方法をとったほうがいいじゃないか、こういう議論も成り立つと思う。これは法務省に伺いますが、かくのごとく地位協定なり日本の国内法なりというものは、相剋矛盾をする内容を持っているということはお認めになるでしょうな。もう一ぺん言うならば、必ずしも日本の利益がそのままストレートに通るような形になっていない。大きな地位協定なり、かつての行政協定の延長という諸慣行は、日本の法律なり日本の利益なりに対して、相当の制約がまだ残っている。そういう矛盾を蔵しているということはお認めになるでしょうな。法律専門家の立場でどうですか、けっこうでございますということになりますかね。
  129. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) ただいま御論議になっておりますいわゆる地位協定と港則法四条及び同法二十三条との関係につきましては、これは目下所管庁でございます運輸御当局と外務当局で十分御検討の上のことと存じておりますので、法務省としては、この際、答弁を差し控えさせていただくのが相当であろうと考えております。
  130. 加瀬完

    ○加瀬完君 おかしいよ。四条なり二十三条の違反なりという行政訴訟が出たら、これは法務省の管轄だ。いずれにしても、地位協定あるいはかつての行政協定に基づくアメリカの慣行というものは、日本の国内法に必ずしも矛盾をしないという状態では行なわれておらないということを、これは認めざるを得ないと思うのです。  そこで政府に端的に聞きますが、これは副長官に伺います。現行協定あるいは現行規定に不備のある点はお認めになるでしょうな。この点どうでしょう。アメリカと日本の間に取りかわされているもろもろの規定については、まだ不備がたくさんあるということはお認めになるでしょうな。
  131. 山下元利

    説明員(山下元利君) 御質問の御趣旨については的確にお答えできませんのですが、ただいまの御質疑なり答弁を伺っておりました場合に、協定と国内法との関係につきまして、その解釈等も含めて検討すべき余地はあるかと思います。
  132. 加瀬完

    ○加瀬完君 だいぶ御答弁がお骨が折れたような様子でございますだけでも、私は検討する余地が十分あると、こういう御認識だと思う。  そこで、端的に最後に二点伺います。安保並びに地位協定の、ことばが荒いですけれども、洗い直しを政府は政府の立場でお考えにはなれないか、これが一点。  それから、相模補給廠の問題などでは、基地を含む地方自治団体のもう少し円滑な運営ができるような話し合いができていれば、こういう混乱というのはもっと防げていたんじゃないか。そこで政府は、それぞれの関係自治体と協議会等を持って、円滑化をはかるお考えはないかどうか、その二点。これは副長官からひとつ。
  133. 山下元利

    説明員(山下元利君) 御質疑の二点につきまして、特に第一点は非常な重要な問題でございますので、アメリカ局長からお答えいただいて、その後、私の見解を申し上げたいと思いますが、第二の地方団体との円滑の問題につきましては、現在のいろいろの問題につきましても、政府としても十分に注意してまいっておるところでございまして、地方団体にしわ寄せされるようなことがあってはならないというふうな考えで進めてまいっておるわけでございます。今後とも円滑な運営をはかりていくことは、政府としても十分努力いたす所存でございます。ただ、この際におきまして、どのような形でやるかにつきまして、協議会等を設置するというようなことにつきましては、ただいまちょっとそのようには考えておりませんのですけれども、円滑な運営につきましては、今後とも十分努力いたしたいと思っております。
  134. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 安保条約並びに地位協定を洗い直す考えはないかという御質問でございますけれども、日米安全保障条約につきましては、先般のホノルル会談のあとで、田中総理大臣が、日米安保条約は堅持すると、こういうことを申しておられます。したがいまして、政府としましては、日米安保条約堅持という基本的な考えのもとに安保条約に当たってまいりたいと思っておりますけれども、地位協定に基づく施設・区域の提供につきましては、先ほど申し上げましたように、社会環境経済環境の変化に伴いまして、そのときどきの問題が出てくることは、私どもも十分承知いたしておりますので、こういうような問題に対しまして、現実的な解決をはかっていくように努力していきたいとは思っております。
  135. 加瀬完

    ○加瀬完君 少なくも安保条約ということになりますと、政策の問題でありますから、それぞれ与野党は意見を異にしておりますから、これで議論をするのはここではやめましょう。ただし、日本の国内法がストレートにアメリカ基地内あるいはアメリカの軍人軍属にも大幅に通り得るように、地位協定などは、これは日本の主張というものをもっと拡大さすべきじゃないかと思いますが、これは趣旨としてはお認めになるでしょうね。これは内閣の問題だから、ひとつ国務大臣としての郡さんから伺いましょう。
  136. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 私は、自分の所管の事項を通じましても、地位協定がかなりに慣熟をした運用をいたしておる。またNATOでもそういうような例がある。私は、これについては、かなり現在満足すべき運用をしておるのだから、それに応じてそれぞれの場合に善処すれば足りるものと考えております。
  137. 加瀬完

    ○加瀬完君 いまの状態で満足しておるというような判断をくだすような不勉強では問題になりませんよ。もう一度勉強し直してください。もう一回あなたにはあらためて聞きます。
  138. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) どうぞ。
  139. 西村関一

    西村関一君 関連。  先ほど来ベンジャミン事件についていろいろ質疑応答がありました。私は、この問題につきましては外務委員会においてあらためて質問をするつもりでございますが、この際、政府のこの犯罪捜査並びに公安、治安、検察等の姿勢についてお伺いをしたいのであります。具体的に昨日起こりました事例についてお尋ねをいたします。  昨日、滋賀県を訪問しました木村国家公安委員長が、滋賀県警本部において、本部長以下百名余りの幹部を集めて訓示をした中で、重大な発言があったことは政府も御承知のところだと思うんでございます。きょうの朝刊各紙にこの問題が報道されておりますことによりましても、国民がこのことを知って驚いておるのであります。私は、まさかこのようなことが事実だろうかと、自分の耳を疑ったのでありますが、木村大臣は、滋賀県におきまして、社会党、共産党、連合赤軍は人を傷つけたり殺したりする暴力集団である、天下の公党であるところの社会党、共産党——野党第一党であるところの社会党に対して、連合赤軍と並べて、人を傷つけたり殺したりする暴力集団である、こういう発言は聞きのがすことはできません。これは警察の元締めである国家公安委員長としての木村大臣の発言とも思えないものであります。大臣はまだ東京に帰っていないようでありますから、おそらく答弁を求めましても、大臣から聞いてみなければ真相がわからないと、こうお答えになるだろうと思いますけれども、これだけ各紙に報道され、また、私も現地の者たちに電話連絡をとりまして、それを確かめたのであります。山下官房副長官は滋賀県の御出身であり、滋賀県の自由民主党の県連会長をしておられる。こういう重大な発言に対して、その立場からもこれは聞き捨てになすっていらっしゃらないと思うんでございます。私は、たまたま滋賀県の社会党の県本部の委員長でございます。滋賀県において社会党が中傷され誹謗され、連合赤軍と同列に取り扱われたんでは、これは党としてももちろん問題でございますが、滋賀県の社会党の県本部の委員長として、私はきょうのこの委員会において、こういう発言をする大臣、まあ木村さんはときどき放言をするようでありますけれども、この放言はこれは許せない。これはひとつどういうふうに事情を聴取しておられるか。山下官房副長官から、おそらくそのことの真相についての事情を聞いておられると思いますから、これに対する御見解を承りたいし、郡法務大臣からは、やはり大臣のお立場から、もしこれが事実であるといたしますならば——事実でないとは、これだけの報道機関が取り上げておりまする問題、しかも、私もある程度調査をいたしまして真相を確めて、きょうこの委員会で発言をいたします前に、山下官房副長官にも電話でこういう重大なことが起こっているということを御注意申し上げて、私はいまこの関連質問に立っているのであります。こういう考え方では、私は警察庁を統べているところの国家公安委員長としてこれは不適格だと言わざるを得ないのであります。  一体、社会党が人を傷つけたり人を殺したりする、そういう暴力集団であるとは一体何の根拠をもってそういうことを言われるか。私は党の機関にはかって、これは重大な問題にすべきだと、これは大臣の責任にも及ぶ問題だと考えておるのでございますが、私は、何かあとから管区の警察庁長官と県本部長とが警察の記者室にやってきて釈明した。それで大臣もまた、一時間あまりたってから出てきて釈明をした。その釈明の中におきましても、ことばが足りなかったけれどもと言いながら、なお社会党、共産党は人を騒がしたり傷つけたりするところの集団である、連合赤軍は人を殺したり、あやめておる、こういうふうに分けて言ったようでありますけれども、しかし依然としてそういう姿勢を改めてない。社会党が人を騒がしたり人を傷つけたりする政党であるという認識は改まってない。連合赤軍と同じだということは言い直したようでありますけれども、この姿勢は改まっていないのである。  私は、こういう閣僚が田中内閣にいるということは、これではまっとうな民主政治が行なわれないと思うのであります。郡大臣はこれはやっぱり検察の元締めでありますし、国家治安の問題につきましても重大な責任を持っていらっしゃる閣僚の一人であります。また木村大臣は、国家公安委員長というようなものはこれは伴食大臣であって、それで建設大臣を兼ねることになったのだ、——一体国家公安委員長たるものが伴食である、つけたりである、そういうようなことを発言することは、これもきょうの新聞に出ている記事でございますが、これは大津においての発言ではございませんけれども、そういうようなことを放言する。これはけしからぬことだと私は思うのであります。こういうことではアメリカに対してものを言うことができないし、また、まっとうな治安行政を進めることはできないと私は思うんでございますが、これは山下官房副長官、大臣が帰ってないからと言ってお逃げにならないで、ひとつあなたの御見解、政府の御見解——官房副長官は、これは内閣の官房長官の代理として残っておられるんでございますから、内閣の大番頭として、こういうことがまかり通っていいのかどうかということ。それから郡大臣からは、こういう政府の姿勢に対して、若干の反省があっていいんじゃないかということについて、両氏から、官房副長官と郡大臣から私は御見解を伺いたいと思うんでございます。
  140. 山下元利

    説明員(山下元利君) 西村先生のただいまの御指摘の点につきましては、今朝の新聞にも報道せられておるわけでございますが、おことばにもございましたように、まだ木村大臣帰京されておりませんので、直接伺っておりませんが、お触れになりました釈明ということもありましたようで、報道されておるようなことと真意との間柄につきましても、まだお伺いをいたしておりませんが、ただ、何と申しましても国務大臣の発言でございますので、きわめて重大でございますし、それにつきます考え方も慎重を要するわけでございます。ただいま総理大臣、官房長官訪中中でございますから、私、事務的には留守番をいたしておりますけれども、事柄が重大でございますので、御質疑の、御指摘の真意は十分承りまして、慎重に相談いたしまして対処いたしたいと思いますので、今日のところはこの程度でお許しを賜わりたいと思います。
  141. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 私に対してのお尋ねにお答え申し上げます。  ただいまの山下副長官からの御説明でも、おそらく本人の真意は伝えられるようなところになかったんだと思いまするし、また、私自身が本人から説明を聞いておりませんので、意見を申し述べることは差し控えさせていただきまするが、政府として、国民を代表する公党に対して常に十分な敬意と信頼とを表してまいるべきこと、当然のことでございますので、政府としては、また関係の各大臣としては、そのような態度をとるべきものだと存じております。
  142. 西村関一

    西村関一君 私は、関連質問ですから、あまりこれ以上質問することをはばかりますが、ただ、いまの御両所の御答弁だけでは満足ができませんです。いずれこれは地方行政委員会等におきまして、木村大臣の出席を求めて、真相を明らかにしながら、責任を追及したいと考えますが、いずれにいたしましても、この問題は事が重大でございます。このままでは、ただ単なる釈明だけでは終わらないと私は思うんでございます。御承知のとおり、社会党が人を騒がせたり、傷つけたりする暴力集団、こういうことが言われる。共産党——他党のことまで私は申しませんけれども、山下先生御存じのとおり、私は滋賀県におきまして社会党の委員長としていろいろ苦労している。しかも、今度の大津市長選挙で社共が共闘して革新市長を当選さしたそのやさきに、木村大臣がやってきて、社会党、共産党を誹謗なさった。これは私は勘ぐりたくないのです。そういうことは勘ぐりたくはないし、もう選挙は終わっておりましたから、私どものほうの勝利になりましたから、選挙妨害にはもちろんなりませんけれども、そういう感情が、しかも、国務大臣である木村さんのうちにあったものがこの機会に爆発した。こういうことでは私は県民も納得しない、また、国民も納得しないのであります。そういう点につきまして、大臣が留守だからということではこれは済まされない。ただ、いま山下官房副長官が私の質問の趣旨についてはよく体して、これを大臣本人なりまた官房長官なり総理大臣なり、いずれ中国から帰ってみえた上でよく話し合いをいたしましてということでありますから、それ以上のことは私は申し上げませんが、そういうことにつきまして、これは一応党の機関にかけまして問題にするということを含めて、この質疑は後日に譲りたい。他の委員会等におきましてさらに質疑を続けたいということを思いますから、これで私の関連質問を終わることにいたします。
  143. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、だいぶ時間がたっておりますし、先ほど来加瀬委員からベンジャミン上等兵殺人事件についてかなり突っ込んだ御質問がございましたので、私は簡単に数点をお尋ねすることにいたします。  まず、先ほど御答弁いただきました官房副長官に、きょうこの件でお出ましいただいておりますので、簡単に一点お尋ねさしていただきます。  有力紙の報ずるところによりますと、二十一日の日に官房長官が外務省、法務省両省へ早急に身柄の引き渡し対策を指示したということが報ぜられているのでございますけれども、これは一流紙の言うことでございますから間違いはないと思いますが、その事実を確認さしていただきたいということが一点。  それからもう一つ、いま木村国家公安委員長の暴言問題がございまして、これは西村委員の言われましたように、非常に社会党に対しまして重大な許すべからざる侮べつ的な言動であるということで、これは今後も当委員会でも問題として取り上げていきたいと考えているようなわけでございますけれども、この種の発言とは全く次元を異にする発言でございますが、やはり沖繩のこのベンジャミン上等兵の殺人事件に関しまして、木村公安委員長が、地位協定の十七条を早急に改定したいということを述べておられる。これも新聞で発表しておられるわけです。私どもこれはそう簡単にいくかいかぬかはわかりかねますけれども、少なくともこの内閣の大臣であるところの木村さんがそのようにはっきりと国民に新聞を通じておっしゃっているんですから、その事柄について、政府は国民に対して責任をお持ちいただかなければならないと思うわけです。もちろん先ほどの発育とは全く種類を異にする問題でございまして、私どもこの十七条の改定ということが実現するということは、国民として大いに望ましいことでございますが、かりにも同大臣が国民の前にそのように公言されたからには、内閣の内部でどういう問題があろうと、これは国民に対してやはり内閣は責任を負っていただきたい。それをぜひとも私はここに強調しておきたいと思うわけです。お時間の都合があろうと思いますので、官房副長官の御答弁を先にいただきます。
  144. 山下元利

    説明員(山下元利君) 御指摘の第一点の問題につきましては、この事件の問題につきましては、先ほども指摘ございましたように、地位協定により諸般の手続が進められておるわけでございますが、その報道せられたる当時、二階堂官房長官は、本事件につきましての国民感情を考慮いたしまして、地位協定のワク内で、米軍側に対しまして、日本の捜査に対する協力、そしてまた身柄の早期引き渡し等を求めるよう善処するように外務省に指示いたしたものでございます。その事実は、外務省に対する指示はございました。
  145. 佐々木静子

    佐々木静子君 法務省に対する指示です。
  146. 山下元利

    説明員(山下元利君) これは新聞報道では外務、法務となっておりますけれども、外務省に対して指示をいたしておるということでございます。  それから第二点につきましては、ただいま私、十分用意をいたしませんので、十分お答えできませんで申しわけございませんけれども、国務大臣の発言というのはいろいろ影響の及ぶことでございますので、そのことをもっとよく真意を調べさしていただきまして、所管の役所とも十分な調整をとった上で措置させていただきたいと思う次第でございます。御了承賜わりたいと存じます。
  147. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは時間がありませんので先に進みたいと思います。  いま官房長官から、二十一日の日に、米兵の身柄引き渡しのため米側との折衝を、これは外務省に指示されたということの確認がございました。また、この新聞の報ずるところによりますと、この二十一日の午後五時に、きょうお出ましの外務省のアメリカ局長が、シュースミス駐日米公使を外務省に呼ばれて、捜査への協力と身柄の引き渡しについて交渉をされたということが報ぜられているのでございますが、この点はアメリカ局長、間違いありませんか。
  148. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) ただいま官房副長官から御答弁ございましたように、九月二十一日に、その前日に起きましたベンジャミン事件につきましての指令をいただきまして、アメリカ大使館のシュースミス公使を呼びまして、申し入れを行ないました。
  149. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、私はその九月の二十一、二日ぐらいまでの時点における政府のとった態度というものにつきましては、これは非常に国民の側に立ったこの問題に対する態度をお進めいただいたというふうに解釈しているのでございますけれども、その後、先ほど来、法務大臣、法務省の御見解というものを承りまして、私は非常に納得のいかないものを感じているわけです。といいますのは、先ほど来法務省のお考えであると、この十七条の五項(c)によると、これは引き渡しはできないのであるというふうな御見解にいつの間にか立っておられるのでございますが、同じ政府が、官房長官が引き渡しはできるという見解で、そのように外務省へ指示され、また地位協定については、まさに御専門であるところの外務省がその指示を受けて折衝された。最初から法務省の解釈、先ほど御説明のあったような解釈であれば、引き渡しを求めること自体がおかしいのではないかということになるわけでございますが、どうしてそこまで進められてきた話が、いつの間にか話が変わってきたのか。そのあたりを私非常に疑問に思うわけなんでございます。外務省が初めこの捜査の協力、これはけっこうですが、この殺人米兵の身柄の引き渡しを要求したというその根拠は、当時どこに置いて考えておられたのですか。
  150. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 先ほど官房副長官は、官房長官の指示として、地位協定の規定の範囲内で善処を米側に要請しろと、こういうことを指示されたというふうに御答弁になりましたですけれども、私どもも、米側に対しまして申し入れをいたしましたのは、まさに地位協定の規定のもとに、その中で最大限の考慮を払ってもらいたい、こういう趣旨の申し入れをいたしたわけでございます。
  151. 佐々木静子

    佐々木静子君 もちろんいま御答弁にありましたように、地位協定の中での話ですが、その地位協定の中でのその地位協定そのものの解釈が、同じ政府でありながら、外務省はこの地位協定の範囲内で身柄の引き渡しができるという立場に立って当初米側と折衝した。ところが法務省の御見解を伺うと、これは身柄の引き渡しは求められないのだというふうに変わってきている。非常に相矛盾していると思うのですが、そのあたりはどうなんですか。
  152. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 私どもといたしましても、地位協定十七条五項(c)の規定を十分承知いたしております。で、先ほど来法務省のほうから御答弁いただきました解釈と全く同じ法的な解釈に立っておるわけでございますけれども、事件の性質、また現地県民の感情、こういうものを考えました場合に、何とか善処する道はないだろうかと、そこでなるべくすみやかに、かつ慎重に善処してもらいたいと、こういう趣旨の申し入れをしたわけでございます。
  153. 佐々木静子

    佐々木静子君 私はいまの御答弁を伺いまして、外務省がそういう立場に立って、何とか国民の感情、日本の側に立って、日本国民の満足するような解決の方法をということにたいへん努力されたということに対して非常に敬意を表するものなのでございます。といたしますと、同じ政府でありながら、外務省は日本の国民の立場に立ってたいへん努力をし、それじゃあ法務省としてもやはり同じ立場にお立ちになるのが当然ではないか。なぜ外務省のなさることに対して、結果的に法務省は足を引っ張るようなことをなさるか。そのことについて大臣に伺いたいと思います。
  154. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 当時の新聞をごらんくださいますと明らかにしておりますように、起訴の決定を急ぐ、交渉、身柄引き渡し要求に、というぐあいに当時の新聞が、ちょうど外務省が先方にかけ合っておる時分に出ております。そのように私どもは県民感情、したがって国民感情、これは内地と同じ扱いに沖繩もなっておることであり、また、NATO諸国とも同じ扱いになっております。解釈としては、先ほど来両省の事務当局が申しておりますように、全く一致しております。にもかかわらず、やはり従来第一次裁判権もなかった沖繩としては、本土に復帰した直後の事件、これについての感情の盛り上がりはもちろんあった。県民感情、国民感情として、この法律の表からでなく身柄が引き渡してもらえるならば、それは先ほど加瀬さんからもお話にございました、身柄を持っていたほうが捜査は楽じゃないか、これは原則はそういうものでございます。ただ法律的にどうにも読みにくい、まあ新しいケースじゃなくて、何べんも何べんも重ねてきたケースでございますから、そうすると、法務省のすべき役割りとしては、地元の検事正に指示をいたしまして、急速に起訴の段階に、処分の段階に持っていけるように、そうすれば十七条の(c)項で身柄は当然公訴の提起までと書いてあるのでございますから、そこに行きますれば話はきわめてらちがあきやすうございます。そのほうを急ぐようにして、それには米軍側に極力捜査の協力をしてもらう。身柄の点はおっしゃるように、先ほど加瀬さんなりまたいま佐々木さんもおっしゃるとおりなんです。そのことは承知の上でありながら、犯罪に用いました銃器の提供だとか、当時着ておりました衣類だとか、それから現場のさっそくの検証だとか、米側のほうも、犯人に手を洗っちゃいかぬぞというぐあいに言って、反応や何かを全部とりますまですべて協力はいたしました。そういうような一連の手続を極力急がせる、そのことが法務省の立場だ、こういうぐあいに考えていたしたのでありまして、決してその間に矛盾もなく、また、外務省のかけ合ってくれることには、あるいは場合によったら小委員会と申しますか、特別委員会の話にまでくるのかもしれないと、そういう用意もするくらいに呼吸はよく合わせながら、しかし、本来の法務省のなすべきこと、検察のなすべきことを続けておる、こういう状況でございます。
  155. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは実は沖繩の現地の警察あるいは検察庁が非常に熱心にこの捜査に当たっておられるということは、これはいま加瀬委員から沖繩の県民の代表の方の御意見がございましたが、また沖繩におられる法律実務家の方々からいろいろと私もじかにお伺いしているわけです。また、御承知のとおり、日弁連の人権擁護委員会がさっそく沖繩に参りまして現地の視察をし、そうして調査の結果も私お聞きしておりますので、この現地の捜査が非常に熱意を持って進められているということは、これはよく伺っているわけなんです。ところが、沖繩の県警が在沖繩米軍当局に対して二十二日の日に、米海兵隊所属のベンジャミン上等兵により基地従業員が殺されたという正式の通知が出されたということをこれは確認しているわけでございますが、その事柄について、その後これは法務省の中でどのように在日米軍司令部に対する通知が行なわれているのか。本日の新聞を見ますと、まだ正式な通知がなされておらないというようなことも若干お聞きしているのですけれども、どういうわけで現在に至るまで、現地では二十二日にすでに通知を事実上しているにもかかわらず、現在までされておらないのか、その点もお述べいただきたいと思うわけです。
  156. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 本件ベンジャミンにかかります殺人被疑事件につきましては、ただいま御指摘のとおり、本月の二十二日に沖繩県の警察のほうから現地の米軍当局に対しまして犯罪通知をいたしております。これは地位協定に基づきます合意事項に基づいて行なった犯罪通知でございまして、これは現地の取り締まり当局から現地の米軍の関係機関にするように定められておるわけでございまして、これをすれば足るわけでございます。
  157. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの御答弁によりましてよくわかりましたが、そうすると、私ども非常に知りたいと思っておりました日米合同委員会での合意事項、第四十項だと思うのでございますが、その内容によりますと、法務省、法務大臣から在日米軍司令部に通告をしなければならないというようなことをちょっと聞いているのでございますが、それは法的に必要ないというふうに法務省はお考えになるわけですか。
  158. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) ただいまの、法務省から在日米軍司令部の法務部に対しまして行なう通知というのは、裁判権の行使通告でございます。これはただいま申し上げました、最初現地で行ないます犯罪通知をいたしましてから一定の期間内に、これは裁判権が競合する場合の措置でございますから、この間に、一定の期間の間に日本側が第一次裁判権を行使するという通告、これをするわけでございまして、これは法務省から在日米軍の法務部のほうに行なうことになっております。これは最終処分の段階で行なうものでございます。   〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕
  159. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま御説明ございましたこの条文が、いわゆる秘密事項ということでわからなかったのでございますが、その条項に基づく第一次裁判権の手続はなぜ法務大臣からさっそく在日米軍のほうになされないのか。これは現地の法律実務家としても非常にふしぎに思うということであり、かつ、日弁連の人権委員会調査によっても、これは早急になさるべきではないかという結論が出ているわけでございます。その点法務省はどういう御見解からその手続をおとりにならず、いたずらに日本裁判権を主張する時期をおくらせておられるのか、その点をお述べいただきたい。
  160. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 先ほど来申し上げておりますように、通常の場合におきましては、米軍人、軍属の犯罪につきまして、これが公務中の犯罪であるとか、その他もっぱら合衆国の利益に関する犯罪である場合を除きまして、これは日本裁判権とアメリカの裁判権とが競合いたすわけでございます。競合いたしますが、いまの公務中の犯罪——失礼いたしました。大体の場合には日米両国の裁判権が競合いたしまして、競合いたします場合に、公務中の犯罪であるとか、あるいはもっぱら合衆国の利益に関する犯罪、これは第一次裁判権がアメリカ側にある。その他の犯罪については、第一次裁判権が日本側にある。かように地位協定が定められているわけでございます。  そこで、本件の場合は、もちろん殺人事件でございまして、先ほども申し上げましたように、これは日本側において第一次裁判権があるというふうに思われる事件でございます。その場合に、こちら側は第一次裁判権を持っている。アメリカ側は本件について第二次裁判権を持っているということになるわけでございます。その間の調整手続といたしまして、まず、先ほど申しましたように、犯罪を認知いたしました場合に、現地の取り締まり当局がこういう犯罪があったということを相手方に通知するわけでございます。これは沖繩の警察が現地の軍当局にいたしたわけでございます。この通知をいたしましてから一定の期間、本件の場合には二十日間、原則として二十日間になるわけでございますが、この間に日本が第一次裁判権を行使するかどうかをきめるわけでございます。かりに日本が、抽象論でございますが、日本側が第一次裁判権を行使しませんときには、向うが第二次裁判権を行使することがあるかもしれませんので、そういう意味におきまして、この最初の犯罪通知を基礎といたしまして、その時点から一定の期間内に日本側が裁判権を行使するかどうかということを向こうに通知するわけでございます。この裁判権を行使するかどうかという通知は、これは法務省から在日米軍の法務部のほうにいたすわけでございます。これは処分の段階でいたすわけでございます。現在鋭意捜査中でございますので、捜査をいたしました結果、証拠がそろい、起訴する価値があるということになれば、当然日本側は起訴することになるわけでございますが、その段階において、日本側は起訴することによって第一次裁判権を行使しますよという通告をいたすわけでございます。これは捜査が終結した段階において行なうべきものでございます。現在は捜査中でございますから、まだこの裁判権行使通告をいたす時期になっていないということでございます。
  161. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは非常に慎重といいますか、いままでのお話とたいへんに異なった方向への話のように、私は奇異の感じを受けるのです。といいますのは、政府は、この事件が起こって、その翌日にすでにもう身柄引き渡しを官房長官は外務省に指示している。また、外務省もそれにのっとってアメリカ大使に話をしている。交渉している。そういう時点において、これが日米合意書によって公務中の犯罪であるかどうかということについて、ジラード事件の場合のように疑義があるとすると、また多少問題は先ほどおっしゃったように別でございますけれども、そうしてこれが公務執行中の犯罪でないということを米軍が認めているという、この現在の時点において、日本が第一次裁判権を行使するかどうか、いま、まだ熟慮中だというようなことは、何だか話がまるで違うんじゃないですか。それだったらなぜ最初に犯人の引き渡しを要求したり、また、その前提に立ってアメリカ側との交渉が行なわれたか、そういうことがなされているのか、日本が第一次裁判権を持っているということは、これはもう当然の前提に立って先ほど来話が進められていたんじゃないですか。
  162. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 先ほど来申し上げておりますように、法務省から在日米軍法務部に対します通告は、裁判権を行使するという通告でございます。これは第一次裁判権があるということを確認する通告ではございません。第一次裁判権を行使するということは、起訴するということでございます。起訴するということは、佐々木委員十分御承知のとおり、警察、検察において捜査をいたしまして、証拠を収集して、起訴するに足るだけの嫌疑がなければなりません。そしてまた起訴するに足る、それだけの価値がなければなりません。このことをやるのが捜査でございますから、捜査の結果起訴するかどうかがきまるわけでございます。現在その捜査をいたしておるわけでございまして、その段階において、いよいよ起訴するということがきまった段階でこの通告をするように、これはこの地位協定が施行されまして以来約二十年に及ぶ間ずっとそういうことでいたしておるわけでございます。これは決して第一次裁判権があるという確認の通告でも何でもないわけでございます。かりに、起訴方針であるということだけで通告するということも本来の趣旨に合わないのでございまして、通告だけしておいて、かりに、これは抽象論でございますが、本件とは関係ございませんが、先に起訴方針であるというふうに通告する。そして結局捜査してみたら証拠がないとか、あるいは本人が気違いであったとかいうことで起訴できないということになるということも捜査の結果間々あるわけでございまして、そういう制度ではないのでございます。具体的に当該事件について起訴できる段階、この段階で初めてこの通告をいたすわけでございます。したがって、これは成規の従来からの手続に従って行なうものでございまして、現在もその手続に従って鋭意捜査中でございます。起訴に熟す段階になれば、その段階でこの通告をいたすことに相なるわけでございます。
  163. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの通告が起訴するという意思表示というふうにもつながるということ、これはおっしゃるとおりだと思うのでございますけれども、いまさらこれは起訴するつもりはない、あるいはこれは調べてみたけれども、起訴できないというふうな、捜査の過程を私ども国民が新聞報道その他で知る限りにおいては考えられないんじゃないですか。起訴ということがすでに前提になっているからこそ、その公訴が維持できるようにわれわれ国民がみな心配しているんじゃないですか。だからこそ公訴が維持できるだけの証拠を集めておかなければならないというので、そのために、任意捜査ではこれは証拠上弱い面が出てくると困るというので、何とか強制捜査に踏み切るべきだということで国民が一生懸命になっているんじゃないですか。ちょうどいまの御答弁は問題を逆手にとったような御答弁というよりほかないと思うのです。現に、これも先ほど来の御答弁にもありましたし、また、新聞報道によっても報ぜられておりますが、郡法務大臣が早急に起訴すれば身柄は日本側に移るので手続を急いでいるということを官房長官にお話しになっている、これ二十一日の時点でございますか、そういうことも新聞に報ぜられているようなわけです。話はもうすでに起訴するということが前提であって、それを一刻も早く起訴をしようというふうに法務大臣が言われている。しかし、われわれはこれは起訴が済んで事柄が終わるものでない。起訴しても無罪になったらおしまいだ。だから公訴が維持できるためにはどうしてもベンジャミン上等兵の身柄を日本側へ取って置く必要があるのじゃないかということで心配しているのじゃないですか。これはもう刑事局長は捜査の大ベテランであって、百もおわかりになりながら、どうして問題をすりかえたような御答弁をなさるのですか。私どもにもっとわかるように、真摯な態度でお答えいただきたいと思うわけなんです。
  164. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 佐々木委員御承知のとおり、刑事訴訟法によります捜査、これは身柄の——一般事件の場合でございますが、身柄の拘束期間というのは、勾留いたしました場合に、最大まあ二十二日というようなことになっております。一般的に事件を調べます場合にはそれくらいの期間が要るということで、一般の場合も規定があるわけでございます。現在これは本件につきましては九月二十三日に検察庁が事件を受理いたしまして、鋭意証拠の収集をいたしておるわけでございます。現在はその段階でございまして、やはり起訴をするにはその起訴を裏付けるに足る、公訴を遂行するに足る証拠を集めなければなりません。この集める捜査期間というものは、これは佐々木委員十分御承知のとおり、大体一般の事件の場合におきましても十日あるいは二十日という期間は十分必要なんでございます。現在二十三日からまだ数日しかたたないわけでございまして、那覇の地検におきましては、検事七名、検察事務官十名をこの事件に投入いたしまして、鋭意参考人の取り調べ、その他被疑者の取り調べ、鋭意現在この証拠を収集いたしておる段階でございます。
  165. 佐々木静子

    佐々木静子君 法務大臣より在日米軍の司令部に第一次裁判権を行使するという意思表示がなされたときと、その起訴の日時の関係ですね。私のほうの資料では、日米合意書によってその間の日時がもう一つはっきりしないのでございますが、法務省はどのようにお考えになっているわけでございますか。
  166. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 法務省から在日米軍司令部の法務部に対します裁判権行使通告、いわば起訴通告でございますが、これをいたしまして、直ちに、あるいは一日二日おくれで実際の日本裁判所に起訴をするというのが従来の大体の運用のしかたでございます。
  167. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは日米間の合意書か何かで、明文をもってきめられているわけですか。
  168. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) この在日米軍司令部の法務部に対します起訴通告、裁判権行使通告、これは先ほど申し上げましたように、犯罪によって異なりますが、最初の犯罪通知から一定の期間内にこれを行なわねばなりません。これを行なった後に起訴する。起訴するのは全く日本の刑事訴訟法の手続にのっとって起訴するわけでございます。その意味におきまして、犯罪通告、起訴通告と実際の起訴との間の期間、これは別段協定にも何もないわけでございますが、これは受理の当然の条理といたしまして、同日あるいはその翌日、おくれてもこの二、三日という間に実際の起訴をするのが従来のやり方でございます。
  169. 佐々木静子

    佐々木静子君 私は従来のことをお尋ねしているのじゃなくて、今回のことについて、どういうふうにやったら日本側に一番有利であるかということについての御答弁を求めているわけなんです。従来、第一次裁判権の行使の通告をなされて、同日あるいはその前日くらいに通告をなされて、その翌日に起訴をするというお話でしたが、それでは通告をすると同時に起訴までの日数が非常に短いということであれば、それこそ起訴はできたが、公訴を維持するということについて、いろいろな面で困難を生ずるのではないか。やはり第一次裁判権を行使するという意思表示をしてから起訴するまでについて、特別日米間に日程の合意がなければ、やはり早く行使するのだという意思表示を日本政府はなすべきではないか、そのように考えるわけなんですが、どうしてそれをなされないわけなんですか。
  170. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 先ほど来申し上げておりますように、裁判権行使通告というものは、起訴をするという通告でございます。そのためには、日本側としては起訴するに足る証拠が集まり、また、起訴するだけの価値がなければなりません。証拠の収集が終わって初めて起訴するわけでございますから、その証拠を収集し、起訴するに足る時期になれば、その際に裁判権行使通告をいたして、そうして起訴をするわけでございます。起訴見込みでこの裁判権行使通告をいたすべきものではございません。
  171. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは非常に先ほど来の御答弁を伺っておりますと、先ほど加瀬委員質問に対して刑事局長が御答弁なさった日米地位協定の十七条の5項について、法務省がそのような非常に一方的な解釈をなさっている結果、やはり通告と起訴とほとんど同時に行なう、あるいは通告を急いでやらなければならない理由が見当たらないというふうな見解になるのではないかと思うわけなんです。これは法務省においても十分御承知のとおり、法務省のおとりになっておられる地位協定十七条5項(c)項に対する解釈というものは、これは法律家であればだれでもそう解釈するというのでは全然ないわけでございまして、いま日本弁護士連合会では、いまの法務省の解釈とは全く異なった解釈をしているわけでございます。法務省はこの5項(c)項について加瀬委員に御答弁になりましたけれども、その解釈がおかしいから、だからそういうふうな結論が出るのではないか。むしろ第一次裁判権を行使するということを日本政府がすみやかに在日米軍司令部に通告したならば、これでアメリカ軍のほうではベンジャミン上等兵を拘束するだけの理由は、法的根拠はなくなってしまうのじゃないか。これはだれが見てもそのように解釈されるのではないかと思うんです。現に日本弁護士連合会の人権擁護委員会の方々が沖繩を訪問されて、第三海兵師団法務部長のヘンダーソン大佐に出会って尋ねたところが、いまベンジャミン上等兵は基地の中の営倉内に留置されておる、そしてこの留置している根拠は、ユニオン・コード・オブ・ミリタリー・ロウ百十八条、殺人、暴行に関する規定による容疑で逮補しているということを説明されているわけなんです。実は、これは詳しい刑事訴訟手続が私の手元にございませんので、詳しい拘束規則はわからないのでございますが、少なくともヘンダーソン法務部長はそのように述べているわけなんです。といいますのは、いまの拘束は日本政府から第一次裁判権を行使するという意思表示がない限り、アメリカが現在では第一次裁判権を行使する権限を持っている。だからこれはいつアメリカが起訴しなければならないかもわからないという前提に立っていま身柄を拘束しているというふうにこれは私どもも解釈し、アメリカの法務部長もそのように言っておられるわけでございます。でございますから、いま日本政府が第一次裁判権を行使するんだという意思表示を在日米軍司令部にしたならば、アメリカ側はベンジャミン上等兵を拘束する法的根拠がなくなり、そうなれば当然にベンジャミン上等兵は釈放されなければならない。釈放されると同時に、これは日本が第一次裁判権を持つのでございますから、日本裁判官による令状に基づいてこれを拘留すれば問題ないというふうにわれわれは解釈しているわけなんです。これは日本人であればだれでもそのように解釈するんじゃないかというふうに思うわけなんです。いままでの慣習がどうだということを私はお尋ねしているんじゃないんです。当然そういうふうに解釈するのが日本人の立場に立って、日本の政府とすれば当然そのように解釈しなければならないのではないかということを私申し上げているんです。どうして法務省はそのように解釈なさらないのですか。
  172. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) ただいまの佐々木委員の御見解、あるいは同様の御見解が日弁連の人権擁護委員会から出ておるかとも存じますけれども、この点につきまして私ども意見が必ずしも一致いたしてないわけでございます。もちろん本件の場合には、先ほど法務大臣が御答弁になりましたように、起訴を急いで、起訴をしてから身柄をこちらに取り入れるというこの方針のもとに鋭意捜査を進めておるわけでございますが、ただいま御指摘の御見解に対しましては、法務省当局はこれと見解を異にするわけでございます。  その第一点でございますが、第一点は、起訴通告、裁判権行使通告というものを、あらかじめ起訴見込みであるという段階で、起訴方針であるという段階で通告をしろということが第一点でございます。ところが、これは先ほど来御説明申し上げておりますように、そういうものではないのでございます。現実に当該事件について起訴するに足る証拠が収集されて起訴をするということになった場合に通告するものでございます。といいますのは、起訴見込みであるということでこの行使通告をする。もともとこれは行使をするという、起訴をするという通告でございますから、起訴方針だというのではないのでございます。そういたしますと、起訴方針であるということで通告したら、あと結局証拠が集まらなかった、起訴できなかったという場合が、本件の場合は別にいたしまして、一般的にままあり得るわけでございます。これは公正な捜査の結果初めてできることでございまして、見込みでもって通告をするわけにはいかないという点が第一点でございます。  第二点は、起訴通告をすれば、十七条の5項(c)によって身柄が取れるんではないかという御見解でございますが、この5項(c)を見ていただいてもわかりますように、「日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が」身柄の拘禁を継続するということでございまして、起訴通告をしたから身柄がこちらに来るというのではございません。現実に起訴をするということによって、起訴があるまでは向こうのほうが引き続き身柄を拘束するという規定でございまして、この点におきましても、ただいまの日弁連の御見解は私どもとしてはとらないところでございます。
  173. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま起訴するまでは向こうで身柄を拘束するというお話でしたが、第一次裁判権が日本に移ればアメリカ側は拘束する根拠を失うことは明らかじゃありませんか。そうすると、拘束されていない被疑者の引き渡しということになるわけでございまして、そのいわゆる「手中」というものの先ほど来の御説明ともこれは矛盾してくるんじゃないか。これは犯人を引き渡してくれということを日本側が当然アメリカ政府に請求することができると思うわけです。ですからそういう意味で、これは法律論を机上で論じているというわけじゃなくて、現実に日本にとって、最も有利な法解釈をするのは、これは日本法務省の当然のあり方ではないか、なぜ日本にとって有利な解釈をなさらないで、いろいろと持って回ったような解釈をなさるか、それを私非常に遺憾に思うわけです。このことについて議論をしておっても切りがございませんが、大臣に伺いたいのでございますが、大臣のお考えとすると、それではともかく起訴をすればこれで日本に身柄は移って、一応法務省とすれば目的は達するというふうなお考えでございますか。そういう意味で、ともかく起訴にこぎつけたいという御見解でございますか。
  174. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 私どもは、きょうもいろいろ有益な御議論を伺っておりまするが、とにかく従来の例から申しましても、一番確実に、起訴すると同時に裁判権を行使するという通告をいたします。局長が申しておりましたように、ほとんど同時に出すような運びにする。そうすれば当然身柄がこっちに移ってまいります。そうしてそれからさらに補充することがあれば補充をいたします。とにかくいまの段階では、事実上捜査の状況はかなり終末に近づいてきております。ですからこれを急ぐということをいたしております。
  175. 佐々木静子

    佐々木静子君 大臣に伺いますが、そうすると、ともかく起訴をして、足らぬところがあればそれから取り組んでもおそくはないという御見解でございますね。
  176. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) しかし、ただいまの段階では、おそらくあと補充する必要はないと思います。十分な用意ができて、そうして起訴できる時期はきわめて近くに期待していいと思います。
  177. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま起訴ができないかもわからないというようなお話を刑事局長から伺うと思えば、もう現在で十分起訴できるという確信に満ちた御見解を法務大臣から伺うというようなことで、私ども全くどれを信じていいのか戸惑っているわけでございますけれども、しかし、現在もう起訴できる段階だということで、それに十分な資料が整っているということで、けっこうだと思いますが、このように、いまおっしゃるように、すぐに資料の整わない事件も今後発生する可能性があるわけです。いま私重ねてお伺いしましたのは、先ほど法務大臣が、足らないものは起訴してからあとで補えばいいという御発言があったからです。これは全く私どもは見のがすことのできない御発言だと思うのです。大臣がこの問題についていつ起訴をするか、これをどのように法務省が対処していくかというときに、大臣は法律の実務家じゃございませんので、その点についてお気づきなかったかもしれませんけれども、起訴してからあとで足らずを補うというようなことは、日本の憲法も刑事訴訟法も許しておらないわけです。もしもそのような観点に立って大臣がこの法務行政を行なわれているとすれば、これはこのベンジャミン上等兵の問題だけではなしに、もっと大きな、たいへんな、日本の国民全部にかかわる重大な人権問題なんです。ですから私は、そのようなことを踏まえた上で大臣がこのベンジャミン上等兵の問題を考えてくださらなければ、これはとんでもないことになる。実は私、現地——これは名前を言うと非常に差しさわりがあるから申し上げませんが、検察官が困っておられることを知っておるんです。大臣からは、ともかく早く起訴をしろ、起訴をしろと言うけれども、これは起訴したところで、話はそれで済むんじゃなくって、それで無罪が出た日にゃ話にならないんだから、これを私ども法律実務家が心配しているわけなんです。日弁連が心配しているわけなんです。国民が心配しているのもそれなんです。ですから、大臣はいま——私は御失言とは思わないんです。もしその点についての御認識が少しでも足らないとすれば、これは今後法務行政の頂点にお立ちになる方としてたいへんに重大な問題でございますので、これはベンジャミン上等兵の問題を離れて、私この機会に特に強くお願いをしておきたいと思うわけなんでございます。  それから、この証拠はそろっているというお話でごさいましたので——もう時間がありませんが、要点だけ伺いますと、物的証拠、たとえば凶器とか弾丸——実弾ですね——などは、直接犯罪に関係のあるような証拠物は全部日本側において押収できているわけでございますか。
  178. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 本件につきまして、この犯行に用いました小銃は、もちろん日本側において押収いたしております。それから本人が犯行当時着ておりました着衣、こういうものも押収いたしておりまして、物的証拠で必要なものは現在日本側において押収いたしておるわけでございます。  それからなお先ほどの大臣の御発言につきまして、私、事務当局の立場でちょっと申し上げさせていただきたいんでございますが、佐々木委員御承知のとおり、公訴の提起をいたしましたならば、その後は原則として捜査というものは行なわれないわけでございます。本件の場合も同様でございます。先ほどの大臣の御発言は、私ども事務当局の立場におきましては、身柄の移管の問題であるとか、そういういろんなことが起訴後に行なわれるであろうということをおっしゃったものと私は理解をいたしておるわけでございます。
  179. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま凶器と衣類のことがございましたが、実弾も押収されておりますでしょうか。実は、それを重ねてお尋ねするというのは、これは私確かな筋からお伺いしたところでは、この被害者のからだの中から出てきた実弾というものが、日本の常識の実弾では全然考えられない実弾である。普通のたまであれば、体の中を貫通するか、あるいはどっかの骨なり筋肉に引っかかってとまっているわけでございますが、この実弾は、小さい弾頭がからだの中に入ってからこまかく八つに体内で破裂して、非常に特殊な弾丸であったということを私お聞きしているわけです。ですから、そのたまを日本側において間違いなく押収されているかどうかということを確認させていただきたいと思うわけです。
  180. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) この本件、ベンジャミンが犯行に際しましては、たま一発しか撃っておりません。その意味におきまして、犯行に用いましたたまは被害者の体内にあるわけでございます。そういう意味で、その犯行に用いたたまは押収しようがないわけでございますが、この使ったと思われる同種のたまにつきましては、捜査当局において、米軍側からこういうものだということは、当然これを見ておるところでございます。
  181. 佐々木静子

    佐々木静子君 なぜそのたまを押収できないのですか。被害者の解剖は日本側でやられたのではないですか。
  182. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 被害者の解剖は日本側でいたしました。その意味におきまして、体内に残っておると思われる弾片については、当然これは証拠物として保存をされておるものと考えております。
  183. 佐々木静子

    佐々木静子君 それじゃ押収されたというふうに承っていいわけでございますね。
  184. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) これはいま刑事訴訟法上の手続として押収ということになっているかどうかわかりませんが、何ぶん被害者の死体の中にあったものでございますから、それについて十分な検査をしておることは承知しておりますが、その具体的な弾片について、これは肉体の一部になっておるかもしれませんので、その点について具体的な押収手続というものがとられているかどうかわかりませんけれども日本側におきまして、その弾頭というものについては十分な確保をしておることは間違いございません。
  185. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう時間がだいぶ過ぎましたので、外務省のほうに簡単にお伺いいたします。  このベンジャミン事件が起こっているさなかにまた一流紙の記者が、カメラマンが米兵につかまえられて不当に逮捕されて、うしろ手錠をかけられた、運転手はピストルを頭に突きつけられたというような事件が起こっておりますが、そのことについて外務当局は米軍にどのような措置をされましたか。
  186. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 御質問の事件は、九月二十六日に沖繩で起きました事件だと承知いたしますけれども、この問題につきましては、日本側の警察を通じまして事実関係を目下調査中でございます。
  187. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう時間がありませんから、これは私、最後に外務省に申し上げておきたいと思いますが、これは先日の国会の四月二十一日におけるこの参議院の予算委員会において、私はこの地位協定の十七条について、当時の外務大臣福田さんに、この件についていろいろお尋ねをしているわけなんです。そして地位協定の十七条、これでは十分に日本人の権利が守られないのではないかということを外務大臣にお尋ねしたのに、それに対する御答弁が、私はこの地位協定の十七条について全くいままで考えてみたこともありませんという御答弁だったんです。いまもうおやめになった外務大臣のことをとやかく言ってもしかたがないかもしれませんが、ここら辺にいまの外務省の姿勢があるのではないかと思うのです。このような屈辱的な地位協定十七条について、大臣が一度も、全く考えてみたこともありませんということを二度重ねておっしゃっておられるのですが、そのようないまの外務省の姿勢自体に、今度のような事件が起こる遠因があるのではないかと思うわけです。こういう事件を機会に、外務省としては、ほんとうに日本国民の立場に立って行政を行なっていただきたい。アメリカ側にもそのように対処していただきたいということを特に要望するわけでございます。もう大臣おられませんので、この件について、こうしたこの一連のベンジャミン上等兵の問題につきまして、今後の法務省のお立場、さらにこれに続いてまた起こるかもしれないような不幸なできごとについて、法務大臣として今後どのように対処していかれるか、御見解を最後にお伺いしたいと思います。
  188. 郡祐一

    ○国務大臣(郡祐一君) 法務省といたしましては、現行の協定その他の現行規定の範囲内において、いつも最善の結果をもたらすように努力をいたすという態度でございます。
  189. 加瀬完

    ○加瀬完君 資料ということになりましょうか、いままでいろいろ議論されておりました中に、身柄が合衆国の手中にあるときということがたびたび論議されました。合衆国の手中にあるということはどういうことなんですか、これを文書で明確にしていただきたい。それから、ほかの法律の文言の中に、手中にあるというようなことばが使われておるか、使われておるとすればどういう場合なのか。これを次の委員会にひとつ御提示をいただきたい。
  190. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) この点につきまして、文書にいたすことはやぶさかでございませんが、私先ほど答弁いたしておるとおりのこれは私どもは解釈を明確にいたしておるわけでございます。もしこれで繰り返し申し上げることによってお許しをいただければ幸いだと思いますが。
  191. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは、手中にあるということをもっと具体的にあげてもらいたいと思う。たとえば軍務に服してるとか公務執行中とか、あるいは軍務ではないが特殊な上司の命令に従って行動中であるとか、あるいはまたアメリカの宿舎の中にいることをも手中にあるということになるのか、あるいは銀座を散歩しているけれども身分はアメリカだということも、これも手中という中に入るか。一体その手中にあるという概念といいますか範囲というのは具体的にどういうことをさすのか、これが明確にならないといけませんから、それをひとつ文書で御提示をいただきたい、こういうことです。これは文書でないと困りますから。
  192. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 承知しました。
  193. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから法務省にお願いしたいんですがあるいは外務省になるのかもしれませんが、先ほど来私、わからないと申しておりました日米合同委員会の合意書、それを私ども、これわからないとどうにもこれしかたないわけなんです。ですから、これを委員会に御提出いただきたい。
  194. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 日米合同委員会におきまして合意された事項につきましては、これを要旨というかっこうで国会のほうへ三十五年に提出いたしてございます。それはもし御注文でございますればお届けいたします。
  195. 佐々木静子

    佐々木静子君 じゃ、けっこうですから、法務委員会のほうに、各委員にいただきたいと思うわけです。
  196. 大河原良雄

    説明員大河原良雄君) 承知いたしました。
  197. 佐々木静子

    佐々木静子君 次に、裁判所のほうにお伺いいたしたいと思います。時間がございませんので、裁判所にもう簡単にお伺いいたします。  地方裁判所の審理に判事補の参与を認める規則についてお伺いいたしたいと思っているわけです。  最高裁判所が本年の九月十三日の裁判官会議において右規則を決定され、そして十一月二十日から施行されることになったということをお伺いしておるわけですが、そのとおりですね。
  198. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) そのとおりでございます。
  199. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは実はことしの九月二日に、衆議院の法務委員会で同じく長井総務局長がお答えになっていらっしゃるんでございますが、これは中谷委員質問に対して、これは規則案というものを高等裁判所裁判官諸君は承知しているのかどうかという質問に対して、この案はすでに裁判官にも示し済みであるということ、また、弁護士会のほうにも伝えてあるというふうに御答弁なさっているわけでございますが、現実にこの案を具体的に日弁連にお示しになったのはいつのことでございますか。
  200. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) いまのお尋ねの中で、それは九月十二日の法務委員会と存じますが。
  201. 佐々木静子

    佐々木静子君 さようでございます。
  202. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) 九月七日に最高裁判所吉田事務総長が日弁連の会長に御通知申し上げたところでございます。
  203. 佐々木静子

    佐々木静子君 この件につきましては、これはもう私から申し上げるまでもなく、日弁連に限らず一般の国民、特に日本弁護士連合会で司法の独立を侵すものであるということで従来より強い反対がなされておる。これは今度御決定になった規則とは若干違っている点がございますけれども、そのような事実はむろん最高裁においても、十分にもう知り過ぎているくらい御存じの上であえてなされたことでございますが、特に、この九月の十三日に規則が最高裁の裁判官会議で決定されておりますが、その直前に日弁連の今井会長が最高裁の長官に面会をして、重大な問題であるから慎重に審議をして、延期をしてくれということを、少なくとも延期をするようにという申し入れをされたということ、このことは間違いありませんね。そして、そのような申し入れがあったにもかかわらず、その直後の裁判官会議で全く一方的に最高裁がおきめになったというのは、これはどういうわけなんですか。
  204. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) 日弁連会長が最高裁判所長官にそのような御趣旨のお申し出があったことは私も伝え聞いております。で、その後九月十三日に裁判官会議で審議の上御決定になりましたが、従来の案にいろいろな御意見が各方面から寄せられまして、その意見を十分に参酌して施行されましたような内容になりましたので、十分に御意見を取り入れて、円滑なる運用ができるという考え方に至りましたことと、それから、最高裁判所が司法についての負っております責任を果たすためにはこのような措置が必要であるという観点から御決定になったものと私どもは考えておる次第でございます。
  205. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは全く、いまの御答弁ですね、現に日弁連が非常に強い反対で、前にも、これは絶対に慎重に審議をしてくれ、最悪の場合でもきめることを延期してくれということを申し入れた。各方面からいろいろ意見を聞いて協議した結果と言うけれども、現に日弁連——これは法曹のうちの裁判所法務省と弁護士会との三つの柱の一つである、私が申し上げるまでもなく。その日弁連が強力な反対をしているということを百も承知でありながら、何が十分に意見を聞いたですか。聞くだけ聞いて聞きっぱなしにするというのが、それを聞いたとおっしゃるのですか。実は私この問題が、規則が制定されたということを伺ったときに、これはもう質問をするのは情けなくてやめようかと思ったわけです。というのは、総務局長も御承知のとおりに、これはことしの三月の法務委員会におきましても、これは私だけじゃございませんけれども、衆議院でも再三行なわれておりますが、この三月七日の法務委員会で、この一人制審理について長井局長にるる私のほうから——これは私一人じゃございません、これは全国民の声を代表して、もしこのような規則をおつくりになった日には司法の独立は失われるということで、このような規則を軽率におつくりになってはたいへんなことであるということを重ねてお願い申し上げ、そして、そのたびごとに長井総務局長が、これから先は日弁連とよく話し合うということを、これは一々読み返すと切りがないくらいにお答えになっておられるわけです。ところが、現実にやっておられることは、半年もたつかたたないかの間に、その裁判官会議の直前に、日本弁護士連合会長が正式に日本弁護弁会を代表して、これを決定してもらっては困るということを申し入れているにもかかわらず、それをけ飛ばされた。そうして、その御答弁が、各方面の意見をいろいろとお伺いして慎重にきめたと、そういうそらぞらしいことであれば全くもう何をしてもしかたないんじゃないか。私はもう今度の裁判所のおとりになったこのやり方、国民不在と言おうか独善と言おうか、これくらいむちゃくちゃな話はないと思うのです。私はこれを重ねてまた非常に行き届いた名御答弁をいただいても、これはすぐその足でまた違うことが行なわれる。これがいまの最高裁のあり方のように私は思うのでございますけれども、どういうわけで十分な意見を徴されたとおっしゃるのか。具体的にどことどこと、どこからの意見を徴されて、そしてその聞かれた先がそれぞれどういう返事であったかということを御説明いただかない限り、私は全くそらぞらしいつくりごとの御答弁としかうなづけないわけです。具体的にそれではどことどこと、どこに意見を徴され、そしてそのおのおののところがどう返事してきたかということを具体的にお述べいただきたいと思います。
  206. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) 意見を伺った先を申し上げます前に、実はこの案は、佐々木先生のお尋ねの点につきましては、これは第一次の要綱案でございまして、この案につきまして規則制定諮問委員会で各方面の委員の方々から十分に御審議をいただき、その御意見裁判官会議に報告いたしたわけでございます。それが第一点でございます。  その後、部内の各裁判所裁判官の意見を申し出てもらったわけでございます。また弁護士会の方面からは、日本弁護士連合会、東京弁護士会からも御意見が届きましたので、これらをも参酌いたしまして第二次要綱案というものをつくりまして、それに基づきまして全国の高等裁判所長官地方裁判所長の会同の席で意見を承り、またそれについて裁判官の意見の申し出のあったものを、これにつきましても十分にしんしゃくをいたしまして、その上で、日本弁護士連合会に九月七日にお示しいたしました事務局案というものをまとめたわけでございます。  その過程におきましては、御質問いただきました第一次要綱の中の重要な判事補の発問権に関する事項、除斥、忌避に関する事項、判決書きに氏名を表示する事項、御指摘のありました点は十分に御意見を承って削除いたしました。そのほかに技術的な点もいろいろと勘案いたし、たとえば関与ということばを参与と改めるというような措置もいたしたわけでございます。もちろん参議院、衆議院の各法務委員会の議事録も裁判官会議に資料として提出し、かつ詳細に内容を御説明申し上げまして審議の資料としていただいたわけでございます。参酌いたしました資料というのは、このほかにもいろいろ雑誌等に出ておりますそのようなもの、あるいはそのほか著書にあらわれたもので引用されたもの等も参酌していただいております。これは枚挙にいとまがございませんので省略させていただきたいと思います。承りました意見はただいま申し上げたようなものでございます。
  207. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまその手続的な問題、どことどこの団体にお尋ねになったかというと、結局外部とすると、いまのお話では日本弁護士連合会だけですね。ほかは裁判所内部ばかりではございませんか。慎重にいろんなものの意見、いろんな方面からの意見を聞くというお話だったんですが、日本弁護士連合会のほか、裁判所部外のところのどこの意見を聞かれたんですか。
  208. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) 先ほど東京弁護士会の意見書と申し上げたつもりでございますが、そのほかに弁護士会からいろいろな形で決議等で意見書の提出がございますしたので、そのようなものも資料として裁判官会議に提出いたしまして御参酌を願ったわけでございます。相当の数になっております。
  209. 佐々木静子

    佐々木静子君 これも日本弁護士連合会というところから単位弁護士会もその中に入るわけでございますが、そういうことはともかくとして、そうすると、要するに、外部とすると弁護士会の意.見を聞いたということでございますね。そして弁護士会にお尋ねになったこれに対する意見はどういう意見だったのですか。
  210. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) 日本弁護士連合会の意見書をまず申し上げますと、相当これは長文のものでございまして、朗読いたすと時間がかかりますが、結論としては、本要綱はこれは第一次要綱でございますが、本要綱案による規則の制定に反対するということで、理由として、本制度の本質等について五項目について意見を掲げてございます。それから本制度の違法性ということで、規則の所管に関するものではない、それから裁判官の独立に関する事項。次に、法律をもって制定した場合の判断といたしまして、憲法七十六条第三項の関係、憲法三十二条の関係、憲法三十一条の関係、これらの点について意見が述べられておるわけでございます。また、この制度を実施した場合、予想される現実の問題といたしまして、裁判の構成に関する問題、法廷の混乱に関する問題、裁判の遅延に関する問題、裁判官に上下の従属関係が生ずるというような問題、これらについて問題点の御指摘がございました。最後に対策として、未特例判事補の研修、次に裁判官の負担過重の現状について、というような非常に多くの点にわたってまとめた意見書の御提出がございました。
  211. 佐々木静子

    佐々木静子君 こまかいことはけっこうですが、時間がございません。要するに、反対だったということでざごいましょう、一言で言えば。
  212. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) 第一次要綱案に対して反対であったということでございます。
  213. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、今度決定になりました規則についてはどうでございましたか。
  214. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) 実は、今井日弁連会長が長官をおたずねになった際に私立ち会っておりませんのと、おたずねがあって慎重に審議されたいという御趣旨の申し入れがあったことははっきり承りましたが、その他の点については実は詳細ただいま聞いてまいりませんでしたので、正確な知識に基づいて申し上げることはできないのでございますけれども、慎重に審議してほしいという御趣旨のお申し入れがあったことは事実でございます。
  215. 佐々木静子

    佐々木静子君 局長のいまの話を伺っていますと、聞いた外部の団体というのは弁護士会だけでしょう。そして、そこから返事がきたときに局長が立ち会わなかったというわけでしょう。慎重に審議しておれば、かりに局長がそのときおられなくても、長官にお聞きになっても、どういう返事であったかということくらい局長長官からお聞きにならないで、何がそれで慎重と言えるのですか。それでは日弁連の会長がどういう意見であったか、日弁連がどう考えているかということを局長は全く関心を持ってなかったというわけでございますね。これで百も二百もいろいろな団体から答えがきているというのであれば、それは思い間違いもあれば、忘れるということもあるかわかりませんけれども、先ほどからお話を伺っていると、日弁連だけですね。そこの意見を、日弁連会長が来たときに局長がおられなかった、だから自分は詳しいことは何も知らぬ。そして慎重にきめてくれということであったということだけで、しかも慎重にやったというお話なんですが、全く何が慎重か、日本語の解釈としてもおかしいんじゃないでしょうか。裁判官のように非常に理論を重んぜられるところのベテランの御職業の方が、幼稚園の子供が聞いてもこのことばの矛盾というものははっきりしているのじゃないですか。全く慎重にも何も、もう日弁連の会長の意見というものは局長は問題にしてなかった、全然聞く耳を持たなかった。これは局長がおきめになるわけじゃないですけれども局長によって代表される裁判所の部内に、そういうことじゃございませんか。それじゃこの間うちからの私の——私に限りません、ほかの委員質問に対しても、これから日弁連と十分に協議してやっていこうということを、これも何十度かそういう御答弁をいただいているんです。それは全くそらぞらしい口先だけの返事ということになってしまいますね。どうしてそういうことをなさるのですか。
  216. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) 日弁連会長から最高裁判所長官にそのような御要望といいますか、お申し入れがありまして、その点は十分に念頭においた上で裁判官会議が御審議になり御決定になったことと私は存じております。この規則案は、今年の三月の初めに諮問されましてから九月に至りますまで、各方面の意見を伺いまして、案をまとめ、御審議をいただきましたわけでございまして、相当の時間をかけ、しかもその間決して案の検討、取りまとめ等怠っていたわけではございませんので、時間的にも、国会の会期等に失礼ながら比較いたしましても、かなりの時間をかけたと私の立場からは考えておるわけでございます。
  217. 佐々木静子

    佐々木静子君 もうこれは同じことを言っておってもしかたございませんが、いまも御答弁に、各方面からの御意見を伺って慎重にとまた重ねておっしゃるから、私は各方面はだれかと聞くと、弁護士会しかなかったわけですね、いまの御答弁で。だからそのごりっぱな御答弁は、これ何回伺っても私どもとても納得することできないわけです。しかも慎重にとおっしゃって、十三日に裁判官会議できめるというのに、七日の日に日弁連にお届けになった。御存じのとおり、日弁連というのは全国に単位弁護士会を持つ組織ですから、七日の日にそんなものを持ってこられても、北海道から沖繩までの弁護士会の皆さんの意見というものを徴する時間が常識的にだってないじゃありませんですか。それがどういうわけで慎重にということばと結びつくのか、私は日本語をもうちょっと裁判所は正確におつかいいただきたいということを失礼ながら感ずるわけでございます。しかし、ここで私が憤慨だけしておってもいたしかたございませんので、簡単に要点だけを伺いたいと思います。  いま、最初の案と比べて関与を参与と変えたということで、非常に手直しをされたという一例にお出しくださったのですけれども、私ども関与と参与の違いということ、もうひとつ具体的にわかりかねますが、時間がありませんから、どういう意味で関与するというのを参与すると変えたのがその大きな改革であるのか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  218. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) 大きな修正として申し上げたのではなくて、むしろ法投術的な手当てであるという趣旨で関与の点は申し上げたつもりでございます。諮問委員会及びそのほか法律雑誌等にあらわれましたところの御意見によりまして、関与ということば、これは裁判体の構成員であることを疑わしめる表現である。諮問委員会でもこの点についての多くの御批判があり、また裁判所意見の中にも同趣旨のものがおざいました。関与ということばの意味は、歴史的な展開もいたしておりまして、非常に多義的でございますが、現在の実定法の観念からいたしますと、そのような疑いは除斥、忌避等の規定等も関連いたしまして出てくるというように考えられましたので、その疑いを避けるために参与という表現にいたしたわけでございます。参与の内容といたしましては、審理にあずかり参加する。ただ裁判体の構成員となるものではなくて、その外にあって、研さんにつとめつつ裁判の事務を補助するという意味内容で使っておりまして、この規定の表現からもそのような趣旨におくみ取りいただけるものと考えておる次第でございます。
  219. 佐々木静子

    佐々木静子君 ほかにもいろいろ伺いたいことはございますが、もう二、三にとどめますが、第二条ですね、その参与判事補を「審理に立ち会わせることができる。」、この立ち会わせるということが非常に具体的には私どもわかりにくい規定なんでございますが、裁判所当局とすると、どういうふうに、この立ち会わせるということを具体的には解釈しておるのですか。衆議院の御答弁では、法服は着ないということをおっしゃっておられますが、そのほかに、たとえばどこに、裁判官席にすわるのか、そして立ち会うということは具体的にどういうことなのかということを、これは簡単、明瞭にお答えいただきたいと思います。
  220. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) 審理ということばは、第一条及び第二条に使ってございますが、第二条の審理につきまして立ち会うという表現が出ております。で、この場合の審理というのは、各期日における審理、つまり訴訟関係人が裁判所に一定の期日を約して会合し、訴訟手続を進めるという審理期日をさします。そこに現実に立ち会うという物理的な状態をさすわけでございまして、法廷に出まして、そこで行なわれる審理を実際に見て、その状態を感得する、あるいは公開の法廷でなくとも、保全手続というような場合の審理の手続に立ち会うというようなこともこの内容として行なわれることになるものと考えられます。
  221. 佐々木静子

    佐々木静子君 私がもう少し具体的にお答えいただきたいと言ったのは、局長もおわかりのように、たとえで裁判官席にすわるか、どこにすわるのか、傍聴人として入ってくるのか、具体的に法廷の中のどういう位置を占めるのか、またその人はものを言えるのか、言わないのか。まあそういうふうな具体的な行動について、法廷内における参与判事補の具体的な占めている位置について明確にお答えいただきたいと思います。
  222. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) 規則が制定されましたので、事務局がこの規則の解釈に対しましていろいろな指示的な発言をするとか、リーダーシップをとるということは適当でないと考えられます。この点につきましては、十月の十三日に現実にこの手続の運用に当たる裁判官の会同が予定されておりまして、その裁判官の会同で、解釈と運用についての御意見をおまとめいただくとという方針でおります。したがいまして、この案の立案当局としての立法趣旨の観点からその点を申し上げるよりほかございませんので、何らの拘束的な効果を持つものではございません。考えておりますところは、結局、未特例判事補が研さんをするということが大きな意味となっておりますので、審理が行なわれるところを実際に自分でかたわらにあって体験するという目的に沿うような形をとらなければならないと思います。ただ、現実にどこにすわるか、つまりその事件を処理する判事のすぐ隣にすわるか、そのすわり方も並んですわるか、横にすわるか、うしろにすわるか、このような点につきましては、訴訟指揮に関する部分もございまして、私どもからこうあるべきだという発言は差し控えたいと思っておるわけでございます。ただ、うしろの傍聴席から見るということでは、これは民事で申しますれば弁論の全趣旨というようなものを感得するということも困難かと思いますので、やはり前のほうで現実に立ち会うということが必要であろうかと思います。それから立ち会いの席で何らかの発言をするということは、この規定に根拠がございませんので、おそらく解釈運用の上においても、そのようなことはないものとなるのではないかと考えるわけでございます。で、発問の点につきましては、規則から削ってあるというようなことも御参考になろうかと思います。
  223. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは実は最初の案のときに私そのことを疑問に思いまして伺ったわけで、たとえば立ち会いといっても立ち会うところがなければ、まるで判事補は幽霊のようにしてなければならないのじゃないか。判事補のほうからは訴訟関係人は見えても、訴訟関係人からは判事補は姿があらわれない、透明の衣類でも着て、姿を消す衣類でもまとって裁判所の一隅で目を光らせているというような幽霊のような、気の毒な存在になるのではないかということを伺ったときに、総務局長は、未特例判事補といえども裁判官であるから、裁判官の自負心と独立心を養う意味において、これは裁判官らしく堂々と法廷にすわっていただく、そのようなことは決して御心配は要りませんというふうな御発言であったわけです。まあ今度規則の内容が変わったからといって、いまのようなことであれば、これは局長自身のおっしゃっているように、どこへすわるかもわからない、今後きまるにしても、訴訟関係人としておおっぴらにすわれることでないことだけは明らかですから、そうなると裁判官の自負心、独立心がそこなわれるような法廷の中の位置を占めるということは、これは前回の法務委員会局長自身の言われたおことばからも、今度の規則による未特例判事補はそういう存在になってしまうことは形の上からだけでも明らかだと思うのです。この間から、慎重に審議を重ねた、半年にわたって十分に検討したというお話ですが、それじゃ一体未特例判事補のすわる位置も全くわからないというのでは、何を慎重にお話になっておられたのか、もうどういうことをみなで討論されておられたのか、これは国民は納得しませんよ。話にならないじゃないですか。こういうことぐらいは頭の中になければ、この規則を定めようか定めまいかという話もできないじゃないですか。ある程度の腹案はおありなんでしょう。そのとおりになるかならぬかはともかくとして、局長が御存じのところ、最高裁長官代理者としてこの間伺いますと、これは長官代理人としてこことお越しになっているということでございますから、現在の時点における裁判所の腹案といいますか、腹蔵なくお述べいただきたいと思います。
  224. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) ただいまも申し上げましたように、このような位置であるべきだということをこの目的の点から申し上げたつもりでございます。この法廷で進められている手続につきまして、十分に認識できるような場所であるべきだ、ただそれが現実に段の上であるか横であるか、また裁判官の左であるか右であるかうしろであるかというような点につきましては、裁判長の訴訟指揮にもかかわることでございますし、その点は担当裁判官で最もこの目的を達するのに合理的な場所を選択して、そこで参与の仕事をするというのがよろしいという考えでございます。最高裁判所の事務局で、この位置にすわるべきだということをはっきり申し上げることは、この規則が制定されました今日はやはり差し控えるべきではないかと思います。もちろん個人的な意見がないわけではございませんけれども、この席で申し上げることは必ずしも適当でない、議事録に出ていたためにこうしなければならないというようなことを第一線の裁判官に植えつけるということはやはり慎重にいたしたい、とこのように考えるわけでございます。
  225. 佐々木静子

    佐々木静子君 もうこれはいつまでお話ししていてもとうていお答えになろうという御意見図、御意思がないから、これは幾らお尋ねしても、ただ一方的な発言に終わる以外に何ものもないと思いますので、私ももうあえてお尋ねしようとは思いませんが、総務局長にしても、こういうところで日本語にならない日本語を使い、そうして裁判官のように理論の筋を通した話をしなければならない御職業の方がこれくらい筋の通らない説明をしなければならない。私は総務局長も実はたいへんお気の毒な立場だと思うのです。なぜこんなことばにならないことばを言い、理屈の合わない理屈を言い、説明にならない説明を口先だけしなければならないか。これは言ってしまえば、法律−規則制定権の範囲を逸脱する、あるいはこれは裁判の独立を侵すいろいろな重大な憲法達反の問題を含んでいるから、おっしゃるにおっしゃれないというお立場がきょうの御答弁ではっきりとうかがい知れるわけなんでございます。でございますが、最後にいま一度、どうして訴訟の重大な関係人である、しかも憲法で保障されている裁判を受ける権利、公正な手続における裁判を受ける権利は、これは国民が憲法上与えられている権利である。それを国民にかわって行使する全国の弁護士の意思を無視して、かってな規則をお定めになった。それともう一つ重大なことは、これは新聞の一流紙の報道しているところによっても、今度適用を受ける全国の未特例判事補三百四十三名のうち二百人が堂々とこの規則に反対であるという強い要望を出している。そういうふうな現実を無視して、どうしてこういう変なことをやらなければならないのか。万が一にも司法が危機に瀕するような時代がきたときに、だれが裁判所を守ってくれるのか。それは日本の司法を守るのはこれからの若い裁判官であり、そうして、ほかのいろいろな多くの国民も守ってくれるでしょうけれども、一番の力になるのは、これは兄弟分であるところの日本弁護士連合会じゃないですか。その一番の大事な若い裁判官と、そうして日本弁護士連合会をまっこうから敵に回して、どうして最高裁はそういうことをなさらなければならないのか。私はこの御答弁を伺っても、どのみち理屈の通らない御答弁しか承れないと思いますから、私のほうから意見として述べるだけでけっこうだと思います。  それから、ただあとに私つけ足しておきたいと思いまのすは、実は私つい三、四日前でございますが、これは大阪の司法修習生が私のところへ参りまして、いままで裁判官志望であったけれども、未特例判事補のこの最高裁の規則の内容ももちろんのことだけれども、この過半数の判事補意見を無視して、最高裁当局がこのようなものを一方的に国民の声を無視してきめてしまった。自分はいままで裁判官になるつもりでずっと研修をしてきたけれども、もう裁判官になる夢は捨てよう、そういうことで急いで弁護士になるために法律事務所をさがしてくれというようなことでたずねて来た人もいるくらいなんです。これは最高裁が何とおっしゃろうと、現実にそういうことが起こっているわけです。どうして裁判所を愛する人たちを、裁判所のことを一番心配して、どうして裁判の独立を守っていこうかということで一生懸命になっている人たちを敵に回すことをなぜ最高裁がなさるのか。そのことだけ私はたいへん遺憾に思うわけです。まあ私が一方的にしゃべっただけでは、せっかく出てきていただいた総務局長もおっしゃりたいこともおありだと思いますので、私の述べた意見につきまして、簡単でけっこうでございますから、今後日弁連とこのような対決を続けていくつもりなのか、このような状態を最高裁はかたくなに固持していかれるつもりなのか、その点だけお尋ねいたしたいと思います。
  226. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) 日弁連と対決を続けるというような意図は毛頭ございませんで、三者協議の場をいかにして持とうかということにつきましても、この十月四日に、非公式ではございますが会談を予定いたしております。十分に意見がスムーズに承れるような機会を持ちたいという気持ちを強く持っております。  次に、一点申し上げたいのは、判事補二百人の反対意見ということを御指摘になりましたけれども、これは第二次案に対する意見でございまして、このたび公布されました規則の内容とは非常に変わっておりまして、この点についての誤解はかなり広く出ております。現にある地方の新聞でございますけれども、報道の記事は、このたびの公布された規則について報道しながら、社説の中で論説として、第二次案に基づいての反対論を強く述べられております。このような誤解がございますので、そういう点については、なお御理解と御認識をいただけるように私ども努力したいと、このように考えているわけでございます。
  227. 佐々木静子

    佐々木静子君 最後に私から一言だけ申し上げます。  これは第二次案の意見だというお話でございますが、今度きまった規則は、これはもっと悪いというのが大勢の意見なわけです。これは第一次案、第二次案よりももっと未特例判事補裁判官としての独立を害して、いまの法廷における位置一つ見ても、裁判官としての自負心と独立心を奪い取るものであるということ、今度の案が最も裁判官としての誇りを失わしめる、単なる判決の下請屋にすぎないようなものに追い込めてしまうんだという批判が、これは日弁連の統一見解ではございませんけれども、過半数の意見であるということを重ねて申し上げておきます。  私の質問はこれで終わりたいと思います。
  228. 原文兵衛

    ○理事(原文兵衛君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後五時一分散会