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国務大臣(
福田一君) 非常に広範な範囲にわたっての御
質問でございますが、私はまず
日本列島改造ということを
考えなければいけない、またそれが適切であると思っておりますことは、
日本がいままでつくりました
設備投資これはまあそれぞれの会社においていろいろありますけれ
ども、その
設備投資というものをフルに動かしていきますというと、ますます輸出が増加して
海外からの圧迫を受けるということになります。この
設備投資を十分に使わないということは不景気に通ずることになります。不景気に通ずるということは
縮小均衡をするようになりまして、私は
福祉政策とかその他のいわゆる対策を
考えてみた場合においてもこれはむしろ逆の
方向に行ってしまうと思うのであります。そこで
日本のいま持っておる力を
公共投資の面に投ずるか、とにかく過密、
過疎の問題を解決するほうに
転換をして、いわゆるうまく利用するという
考え方が
日本列島改造論の
考え方である、この
段階においてそれが必要である。かように思っておるわけでございまして、そういう
意味合いにおきましては、しからばこれからどういうことを
考えていったらいいかといえば、何といっても現
段階においては、その
設備投資をした結果においては
公害の問題が出てきておる、こういう
公害問題をまず重点的に取り上げなければいけない。また、いまお話がございましたように、これだけ
日本の国が力がついてまいったのでございますからして、その力で
福祉政策をもっと充実していかなければならない、これもごもっともなお
考えであると思っておるわけであります。
しかし、このようにしていきましても、一方においては
過疎地域がどうしても出てくる。ただいま御指摘がございましたように、
産炭地等におきましては非常に市の
人口が減っておる。
美唄は私も
視察をしてまいりました。たいへんなこれは
人口が少なくなっておる好適例であります。しかもこれは
エネルギー革命からきた
一つの
現象であるわけでございますが、このようなものに対して今後どういうふうに処置していったらいいか。また、いままでは市といえば五万といったのを今度は三万に切り下げた、そして三万になった市がたくさんできたときには、その三万が今度は三万を切るような
状態になってきておる。これも実は過密、
過疎といいますか、
日本の
生活の
流れが大きく変わっていっておる
一つの
現象でございます。こういうような点から
考えてみますというと、これらに対しても適当な措置をとるべきである。国としても適当な措置をとるべきであるということでございまして、
美唄あたりにおきましては工業団地をつくるとか、あるいはその他の水道
施設を充実してやるとかいろいろのことも
考えておりますけれ
ども、これで決して十分と言えるかどうか問題だと思います。特に
北海道のような
地域においては、もう少し
石炭を使うくふうを、国が
援助をしてもよいから
石炭火力というものを実現してはどうかということは私は
一つの命題として今後
考えていい問題ではないかと思うのであります。同時にまた、三万
都市がだんだん
人口が減っていくというようなことも、
一つはやはりいまの
生活環境といいますか、職場を求める気持ち、あるいはまた人間が持っておりますところの
都市へのあこがれ等々が
一つの大きな
原因になっておると思うのでありますが、これがひっきょうするに
過疎地帯をだんだん引き起こしてきております。
そこで私は、
日本列島改造論というのは決して二十五万
都市をつくるのが目的だと思っておりません。それからもう
一つ考えなければいけないことは、確かに二十五万という
数字は
日本列島改造論には出ておりますけれ
ども、しかし御
案内のようにこれは論でございまして、決してこれは
政策を決定した
計画ではございません。いわゆる
日本列島改造懇談会で
総理が常に言っておりますように、これは私が
一つの
提案をしたのである、こういうことを
考えたらいいのではないかという
提案をしたのであって、皆さんの御意見も聞いて十分にこれを練り直す気持ちがあります、いい案があったらどうぞ教えてもらいたいというのが私は田中
総理の
考え方であり、またわれわれとしてもそうだと思っておるのでございます。あれは
一つの
提案でございまして、
日本の国内において全部二十五万
都市にするなどということは、これは地勢の
関係からいってもとうていできるものではないと思われます。そういうような
意味もありまして、この
日本列島改造論というのは、これを要するに、過密地帯すなわち太平洋ベルト地帯に張りつけられておるところの工場、工業がますますこの
地域においてふえるということは困る。新しいものは、できることなら
北海道とかその他の適地へ持っていくようにしなければならないということを述べておると思うのでありまして、もちろんここにあまり人がたくさんおりますからして、どうも
公害問題が非常に起きておったりいたしますので、これを何とか処理するという
意味におきまして、われわれ
自治省としては、まだこれは政府の案としてはきまっておりませんけれ
ども、いわゆる
都市整備税というものをつくって、そうしてその半分は取った
都市に落とす、半分はこれから工場が出ていく
地域に持っていこう、こういう
考え方で
地方税としてのものの
考え方をとっておるのでありますが、これはまだきまっておるわけではありません。これはいままだ検討の
段階でございます。政府としてはまだきまっておりません。
いずれにいたしましても、こういうようなことをいたしますけれ
どもが、しかし、それにしても
過疎地帯というものが非常に多く出てまいっておりますので、私は
日本列島改造というのは
日本の国をよくするという
意味だと思っておるのでございまして、そういう
意味から
過疎地帯、
農業地帯、
農業などが非常に悪
影響を受けるという場合には、これは十分にこれからわれわれとしても
施策をしていかなければならない。お説のとおり、これが
海外の
農業と太刀打ちできるようにするためには、その基盤整備とか資本の
関係とかいろいろの面でこれからも十分
考えていかなければなりません。また
過疎の山村とかあるいは海べの辺地の漁村とかいうようなものについても、われわれは決してこれを無視するとか、ほうっておいていいとか
考えておるわけではないのでありまして、私はこの間、九月の二十五日から出かけまして、三日間ほどで岐阜県の
過疎地を見てまいりました。そうして一日村長をやってまいったわけであります。村長を実際やったわけではございませんけれ
ども、つぶさにその村内の事情を調べるということで行ってまいりました。そうしてただいまお話のあった
老人対策等については、
自治省の——これは何も
自治省の自慢を言うわけではございませんけれ
ども、
過疎債によりましていろんな公民館とかそういうものを建てますと、その公民館を建てたときに必ず
老人の部屋というのをつくりまして、そしてそこには
老人の浴場といいますか、ふろに入れるようにふろ場をつくってあります。そういうところへ行きますと、もう年寄りが、家族
制度がなくなったものですから、うちにおっても話し相手がおらない、そこでそういうところへ行きまして、朝からふろに入って、なかなか夜になっても帰らないというようなこと、こういうことは
過疎地域の
老人対策という
意味ではかなり効果をあげておると思うのであります。
したがって、この辺地債、
過疎債というものを大幅にふやそうというので、ことしは昨
年度の四百五十億円に対しまして一千億円の要求をいまやっておるわけでございます。こういうものをつくってあげますというと、よほどそういう
意味での
過疎的な意識が失われていくといいますか、
過疎的なさびしさがなくなってまいるわけであると私は信じておるのでございまして、同時に私は、
過疎地域に行きましても申したのでありますが、よく
日本列島改造論というのは
公害をまき散らすのだというお話がございますが、私がこの山村へ行って言ったことは、皆さん方はこの
土地に合った
産業をもっと
考えてはどうですか。たとえば、まあだんだん小学校等が統合されて小学校の校舎が要らなくなる、そういうときには都会の児童をせめて一カ月でもだんだんと
過疎地へ迎えて、そうしてみんなが自然に親しめるようなくふうをする、そういうことをしてみてはどうか。これは文部
行政の問題に入るから私はそこまでは言いませんけれ
ども、そういうような
考え方もあるわけです。と同時に、またそういう
地域では特殊な魚の養殖だとか、あるいはくだものだとかいろいろそこの
土地にふさわしい
産業があるわけであります。そういうふさわしい
産業というのこそ、やはりほんとうの利益をあげられる
産業であります。そういう辺地のところへいきなり工場を持ってきたらいいじゃないかというような話もありますけれ
ども、そんなことは、工場は行く道理がありません。来いと言ったって行きはしないのであります。その場所に合った
産業をもっとみんなで努力をして
考えられたらいいじゃないか、それが
考えられれば国としてはできるだけの財政的な
援助もまた資金的な
援助も
考えるようにいたしましょうということを言ってきたわけでありますが、私はそういう
立場で、今後もひとつ
日本列島改造という
立場から見ますならば、もちろん太平洋ベルト地帯に張りついたところの工業はある程度疎開する、また新しくこれからつくるというものは、できるだけ北陸とかあるいは東北とか
北海道とか、いわゆるその他の
地域、しかも
住民が反対しないような
地域に持っていくようにしてはどうか。こう
考えておるわけでありまして、同時に、
過疎の対策というものもわれわれ十分
考えて、均衡のとれた政治体制をつくっていくということに努力をいたしたい、かように
考えておるわけでございます。