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1972-08-29 第69回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第2号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和四十七年八月二十九日(火曜日)    午後一時六分開会     —————————————    委員異動  八月十一日     辞任         補欠選任      塩出 啓典君     柏原 ヤス君  八月十四日     辞任         補欠選任      安田 隆明君     山崎 五郎君  八月二十九日     辞任         補欠選任      上原 正吉君     土屋 義彦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         矢山 有作君     理 事                 丸茂 重貞君                 小平 芳平君     委 員                 石本  茂君                 川野辺 静君                 高橋文五郎君                 土屋 義彦君                 山崎 五郎君                 藤原 道子君                 高山 恒雄君                 小笠原貞子君    国務大臣        厚 生 大 臣  塩見 俊二君        労 働 大 臣  田村  元君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        外務省アメリカ        局長事務代理   橘  正忠君        厚生省公衆衛生        局長       加倉井駿一君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        厚生省社会局庶        務課長      藤森 昭一君        厚生省社会局更        生課長      角田 耕一君        厚生省児童家庭        局長       穴山 徳夫君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        水産庁長官官房        調査官      前田  優君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度等に関する調査及び労働問題に関  する調査  (派遣委員報告)  (米国原爆傷害調査委員会問題及び原爆被爆者  援護問題に関する件)  (同和鉱業棚原病院廃止問題等に関する件)  (食品中毒及び薬品による健康被害者救済制  度に関する件)  (難病対策に関する件)  (心身障害児対策に関する件)  (簡易水道整備等に関する件)  (老人福祉対策に関する件)  (リハビリテーションに関する件)  (沖繩における米軍への給水契約問題に関する  件)     —————————————
  2. 矢山有作

    委員長矢山有作君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る八月十一日、塩出啓典君が委員辞任され、その補欠として柏原ヤス君が、また、八月十四日、安田隆明君が委員辞任され、その補欠として山崎五郎君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 社会保障制度等に関する調査及び労働問題に関する調査を議題とし、派遣委員報告を聴取いたします。  まず第一班、岡山広島班の御報告を願います。藤原道子君。
  4. 藤原道子

    藤原道子君 第一班は、去る八月一日より四日までの四日間、矢山委員長石本委員高山委員、それに私、藤原の編成によりまして、岡山広島両県下の厚生、労働行政実情調査をしてまいりました。  両県における調査項目は、離島医療対策心身障害児者施設状況同和鉱業株式会社棚原鉱業所の合理化問題、スモン病対策原爆被爆者対策勤労者福祉施設整備保健所運営福山地域水質汚濁状況等の諸問題でありました。  以下、日程と調査項目について概要を御報告いたします。  まず、瀬戸内海離島における医療対策について申し上げます。現在、瀬戸内海には、大小六百余の島々が点在しておりますが、住民がいるのに医療機関が存在しない島が、広島岡山、愛媛、香川の四県で七十六を数え、人口は約五万人に及んでいます。これら医療の谷間に置かれた地域住民に対して、現在、社会福祉法人済生会昭和三十六年五月から巡回診療船済生丸による巡回診療を今日まで約十年間行なっております。  そして、診療開始以来、四十六年度までに診療を取り扱つた島民は延べ九万五百七十二人を数え、また、過去五カ年間の各科別延べ人員四万六千六百四人の診療のうち約八・九%に当たる要精密検診者四千百五十一人が発見され それぞれの処置がなされたとの報告がありました。ところがその巡回診療の中核となる診療船機能が低下し、巡航速度の低下、さらに潮風によってレントゲン等精密機械装備の損耗が意外に早く、ひんぱんに故障が生じております。診療船耐用年数は、十二年が限度だといわれ、時代に即応する診療需要にこたえる意味からも新造船の必要性に迫られ、これに要する予算金額は諸装備を含め約一億円と計算されております。  わが国は、昭和三十六年以来形の上では、国民皆保険制度がとられ、これによってこれらの島々にも国保の恩恵が行き渡っていたはずであります。保険料は徴収されているのに、十分な国保の恩恵に浴することが薄いのが、これら離島を含む過疎地域であり、この島民たちの切実な要求にこたえるためにも、済生丸再建問題で、国が大きな視点から対策を立てる必要があると考えられるのであります。  心身障害児者施設問題では、津山市内にある社会福祉法人津山みのり学園と、岡山市にある総合社会福祉施設旭川荘の二つの施設を視察しました。津山みのり学園は、津山市の中心部から離れた小高い静かな丘陵にあり、精神薄弱児通園施設精神薄弱者授産施設を併設しております。この施設の特質は、年齢、能力、家庭経済の制約を取り払い、自分の力で生きる喜びを与える点にあり、現在、四歳から五十四歳までの幅広い年齢層精神薄弱児者五十七人が入園しております。入園者は、一、団体生活を通して社会生活に適応する。二、健康習慣の実践、三、徹底した訓練により職業人としての自覚を持つ、四、余暇の利用の学習等をモットーに、牧野園長をはじめ職員の献身的な努力に、父母の会、津山市等の強力なバックアップが結合して、授産施設農作業にいそしんでおります。現在、二百頭の肥育牛、年間百五十頭の肥育豚を飼育し、年間二百五十キログラムの養蚕を生産するなど畜産を中心農作業に従事しており、これら生産物を商品として市場に出荷しております。そして、年間五百万円の純益をあげ、入園者に対して、太陽の下で、土に親しませ、健康増進をはかりながら、生産の喜びを与えるとともに、学園の債務が返済される来年以降より一人当たり月額一万三千円前後の賃金を支払い、物を買う喜びをも与えたいと関係者は言っておりました。  こうした状況のもとで、現在、この学園に入園を希望する人が多いといわれておりますが、定員が一ぱいのため断わり続けているとの話で、これら切実な希望を満たすためにも血の通った民間福祉施設充足対策を盛り込んでもらいたいとの要望がありました。総合社会福祉施設旭川荘は、敬天愛人人間尊重社会の実現を目ざして、昭和三十一年六月に設立され、三十二年四月に、肢体不自由児精神薄弱児乳児等を収容する最も先駆的、効率的な子どもから老人までの総合施設を志向して発足しました。その後、四十二年重症心身障害児、翌四十三年には特別養護老人ホーム施設を増設し、さらに四十六年に社会福祉職員養成施設を開設し、現在、その規模は、収容児者約七百人、職員三百五十人、学生約百八十人となっております。そして、今後の旭川荘の課題は、民間社会事業の特質を発揮して、変容する社会要望にこたえながら一そう内容の充実をはかり心身障害児者中心とした新しい村づくりにおかれているということでした。  しかし、こうした意欲的なプランを持った当施設も幾多の問題点をかかえております。どの民間施設にも共通する問題ですが、施設職員地方公務員並み給与水準の確保など待遇問題、職員不足から労働条件労働基準法の最低の線にも到達できず、オーバー・ワークと休日休暇が思うようにとれないとの訴えがありました。また、職員不足の問題は、資質向上のための研修にさく時間がとれないという問題にもつながるので、働きながら常時研修ができるような旭川荘に併設された研修施設の拡充に特別の援助を願いたいと強く要望されました。  次に、同和鉱業株式会社柵原鉱業所の合理化問題について、会社側労働組合、さらに柵原町の各関係者からそれぞれ事情を聴取いたしました。  去る六月三十日に、会社側から労働組合柵原町に示された合理化案は、すでに委員各位のお手元に配付された資料のとおりでありますが、簡単にその内容について御説明申し上げます。  この鉱業所は、東洋一の硫化鉱脈を有するところで、月産六万トンの鉱石採掘能力を有する施設であります。ところが、一方において、公害対策としての脱硫設備から回収される硫黄、硫酸等の増加、他方において、米の減反政策による肥料の需要減、昨年の円切り上げを含むドルショック等による生産コスト高が原因で、本年四月より二万トンの大幅減産に迫られ、現在、三万五千トンの生産体制規模を縮小せざるを得なくなったと会社側は説明していました。その結果、今後は、一、柵原鉱業所硫化鉄鉱を月産三万五千トンに減産縮小する。二、減産縮小によって千三百七人の従業員のうち八百一人を整理し、五百六人で今後の生産活動を継続する。三、柵原鉱業所片上鉄道部門柵原の減産を主体とする輸送量減に対応して縮小する。四、柵原鉱業所付属病院診療所形態規模を縮小する。五、鉱業所工作部門を廃止して、これを主体として新会社である同和工営会社を発足させ、整理した従業員の一部を吸収させる等によって事業を継続するというものであります。この合理化計画が実際に実施されると、整理の対象となる従業員生活権の問題をはじめ、地元柵原町の財政、さらに鉄道病院など地域住民に直結する日常生活の諸問題等その及ぼす影響は大きいものがあります。  私たちが当地を訪れたときには、まだ、この合理化計画について、会社側組合側との本格的な交渉は行なう段階ではありませんでした。まず、組合側では、この合理化案に対して、まっ向から反対の態度を示しております。その理由として、従業員の多くが中高年齢者であり、現在、国が強力に雇用政策を進めている中にあって、なおかつ、中高年齢者労働市場は逼迫しており、このさなかに全従業員の半数以上にも及ぶ大量の人員整理を断行することは、長年まじめに働いて会社のために貢献してきた中高年齢労働者に対する非情なスクラップ政策であって、雇用と生活を守る観点から容認できないとしております。  一方、柵原町や地域住民の側からの問題点を整理いたしますと、柵原町の財政問題では、町税収入における柵原鉱業所の占める割合が大きく昭和四十七年度の場合、昨年よりその比重がやや低下したとはいえ、全体で約一億二千万円のうち、鉱業所の割合は、鉱産税固定資産税など約五千万円にも達しており、今後の町財政逼迫が懸念されるところであります。  次に、地域の公共機関化した柵原病院片上鉄道の問題に触れたいと思います。柵原病院利用状況は、昭和四十六年には八千百五十九人が利用し、そのうち四百四十五人が入院しましたが、このうち五〇%強が鉱業所関係者で、他は一般町民となっております。したがって、町民の病院に対する依存度は強くなっており、こうした中で、柵原町の過疎化現象が進行しています。病院規模縮小は、過疎化の中で、地域住民の大きな問題となっていることがわかりました。一方、片上鉄道は、一日十二往復の運行を行なっており、これに一日約五千人の人々が通勤通学に利用しているとのことで、この問題についても、今後の成り行き次第では住民の足が奪われるのではないかと心配されており、鉄道の縮小廃止問題は柵原町の過疎化を一そう促進される要因が含まれております。  このように、柵原町は鉱業所の存在によって発展してまいり、鉱業所抜きにしては考えられない状態になっております。今回の合理化計画が推し進められますと、柵原町のみでなく、直接、間接的に影響を受けるのは三市十二町村にも及ぶといわれ、これは岡山県下の全市町村の四分の一にも達するとまでいわれております。したがって、今回の合理化問題は、ただ単に会社経営採算のみで割り切れるかどうか、企業の社会的責任、さらに地域社会と企業の関係にまで問題が広がっていることを知った次第であります。  次に、スモン病対策を尋ねて井原市を訪れました。井原市を中心岡山県全域にスモン病患者が発生しており、昭和四十七年六月末現在、県下の累積スモン病患者は、九百九十四人を数え、そのうち六十五人の方々が死亡いたしております。スモン病患者発生状況は、昭和三十二年に一人が初発してから、四十三年二百七十四人、四十四年二百三十二人をピークに、その後減少傾向をたどり、四十六年十九人でありましたが、四十七年に至っては、いまだ発生を見ておりません。  スモン病の原因については、厚生省スモン調査研究協議会がキノホルムであるという結論が出されましたが、その完全な治療方法が確立されていないのは御承知のとおりであります。岡山県では、四十五年度から全治療患者対象に、薬品を配布し、さらに四十六年度から入院、通院患者を問わず、治療費自己負担がある者に対して、自己負担額の八割を支給し、残余の二割を市町村において負担するように指導してまいりました。また、治療対策については、岡山大学が中心になって原因究明治療法研究が進められております。  井原市及び市民病院において、治療法早期開発、はり、きゆう、指圧、マッサージの活用、通院及び介護にかわるすべての費用の公費負担スモン専門病院リハビリテーション施設の設置、スモン手帳の交付、スモンに基づく生活困窮者生活保障の実施など十項目に及び要望が出されております。  次に、雇用促進事業団委託倉敷勤労総合福祉センター山陽ハイツ」及び福山勤労総合福祉センター備後ハイツ」を視察してまいりましたが、勤労者のいこいの場として今後の発展が注目されます。  広島県の視察は原爆被爆者対策中心であります。  まず、私たち一行は、原爆慰霊碑に参拝した後、財団法人広島原爆被爆者援護事業団運営する広島原爆被爆者養護ホームを訪れました。昭和四十五年に開所したこのホームは、被爆者で居宅において養護を受けることが困難な老人たちを、一般と特別養護の二つに分けております。そして、現在、所長以下三十七人の職員でもって一般養護百人、特別養護五十人の合計百五十人が入所し、平均年齢七十五歳、最高九十三歳となっております。  これら老人たちはほとんど全員が主ないし四種類の疾病を持っており、特に健康管理の面に大きな注意を払う必要があり、疾病の種類は、循環器系疾病が圧倒的に多く、次いで整形外科系造血機能系じん臓機能系の順に多くなっています。この治療には、ホーム医務室のほか隣接の市立病院等を利用し、同時に、機能回復訓練も実施して健康管理を行なっております。  施設運営費は、四十六年度六千三百万円で、そのうち五千八百万円が国庫補助、五百万円が県・市の負担となっています。入所者の一人一カ月当たり必要経費は、一般養護が約二万八千円、特別養護約五万円で四十七年度は総額七千三百万円の予算が見込まれております。  施設不足はここでも問題となり、入所を待って、自宅や病院等で待期している被爆老人が多くいるといわれておりますが、退所のおもな理由は死亡によってであり、毎月一人の割合でなくなられておるといわれてます。そこで、さらに、百人を新たに収容できる増築工事が行なわれており、来年四月に完成する予定であります。看護婦不足から寮母がかわりにつとめるといった実態と、老人のプライバシーを守るため個室が少なくとも全室の三分の一ないし四分の一は必要であることの指摘がありました。  五十床のベッドを持つ原爆被爆者検診センターは、人間ドック方式による被爆者健康検診を行なっております。検診は二泊三日を原則としており、これに要する経費について、国から一人当たり一万八千百四十八円の委託費の増額が要望されました。  昭和三十一年九月に開院した日本赤十字広島原爆病院は、百七十床のベッドを持ち、一日平均百五十四人の被爆者が入院し、百六十四人が通院しております。この病院経営状況は、昭和四十六年の場合、経常収入二億九千百九十三万六千円、支出は三億三千三百八十九万三千円で赤字経営が続いております。  現在、この病院治療が受けられるのは、原爆被爆者手帳を持った人々に限られ、被爆者二世に対して治療対象からはずされているところに大きな問題点があります。この十二年間に、四歳から二十二歳の被爆者二世のうち、男五人、女七人の合計十二人が、広島市内とその周辺で、典型的な原爆症といわれる白血病で若い命を落としております。原爆放射線遺伝的影響はないということの判定ができない限りは、わが国で唯一の原爆治療専門病院において、これら被爆二世、三世の健康管理が行なわれ得るよう、措置がなされる必要があると考えられるのであります。  次に、当病院で、昭和三十一年から四十六年までの入院患者悪性腫瘍の分類を見ると、胃ガンの三百三十五人を筆頭に肺ガンの百十五人、白血病九十一人、腸ガンと乳ガンのおのおの八十四人となっており、胃ガン入院患者が圧倒的に多くなっております。胃ガンについても原爆症認定の範囲の拡大を希望する意見がありました。  昭和二十三年、米国学士院学術会議と、わが国国立予防衛生研究所によって設立された原爆傷害調査委員会−以下ABCCといいます−は、被爆者と非被爆者の寿命の比較調査原爆放射能が人体に及ぼす影響調査、さらにこの両調査対象者十万人の中の死亡者に対する病理学調査中心に、遺伝、白血病、悪性新生物調査を行なっています。現在、ABCC職員ダーリング所長以下米国人三十人、日本人六百六十四人、七一年度会計年度米国側十三億千六百万円、日本側六千七百万円の予算でもって調査研究活動を行なっております。  私どもは、ダーリング所長を交え、清水医科社会学部長和田顧問(前広島大教授)らと懇談して、1 研究成果を国民に知らせる努力が足りないの  ではないか。  2 すべての資料が日本に返還されているのか。  3 運営問題に関する日米間の話し合いがどこま  で進んでいるのか。  4 他の医療機関との協力体制が十分に組まれて  いるのか。  5 研究だけでなく治療にも力を入れて被爆者と  の直結をはかるべきではないか。 等の諸点について意見の交換をいたしました。  なお、ABCCに関する今後の問題点につきましては、すでに当委員会において論議が行われたところでありますから、詳しく摘示することは省かせていただきますが、運営の主体性を日本側が持つよう改革されること。調査研究医療福祉が総合された運営に転換されること。他の研究機関との協力関係が再検討され、放射能影響治療に関する研究が一元化されること、等について、早急に解決策が見出されることを期待してやまない次第であります。  以上で、岡山広島両県の報告を終わりますが、両県及び施設等から提出されました要望事項会議録の末尾に掲載方委員長においてお取りはからいくださるようお願いいたしまして、報告を終わらしていただきます。
  5. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 次に、第二班、北海道班の御報告を願います。小笠原貞子君。
  6. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 第二班は、大橋理事上田委員柏原委員、私とが参加いたしまして、七月二十五日から二十八日まで、北海道における過疎地域医療対策リハビリテーション実情調査を行ないました。  その際、視察いたしました施設道立札幌肢体不自由児総合療育センター道立身体障害者更生指導所重度身体障害者更生指導所身体障害者更生相談所労働福祉事業団美唄労災病院道立太陽の園、厚生年金登別整形外科病院等であります。  まず、過疎地域医療対策について御報告申し上げます。  初めに、北海道の概況を見ますと、人口は、昭和四十五年の国政調査では、約五百十八万人で、四国四県と福岡、大分両県を除く九州五県の合計よりもやや多いのであります。また、面積は七万八千五百十二平方キロメートルで四国、九州の各県及び広島、山口、島根の十四県の合計よりもやや広く、実に国土の二一%を占める広大な地域であります。  北海道では二百十五の市町村のうち、過疎地域緊急措置法による過疎地域の指定を受けている市町村は百三十八で市が九つも含まれております。全国市町村の三分の一が過疎地域であるのに対して、北海道では三分の二近い六割五分の多くに達しており、また、過疎人口全国八・五%であるのに対して北海道では二五・七%と三倍にもなっている状況でございます。  次に、北海道における医療施設の現状を見ますと、昭和四十五年十二月末で病院四百九十八、病院病床数六万七千八百六十、一般診療所二千五百五十九、診療所病床数一万六千百七十四でございます。病院とその病床数全国平均よりかなり多いようですが、診療所とその病床数平均より少ないのでございます。現在、基幹病院としましては、中央病院二、地方病院十一、地区病院五十二のほか、救急医療センター六、がんセンター六、ガンの外来精密検査センター一、リハビリテーションセンター十、僻地医療親元病院である地域センター病院三が整備済みで、保健所は五十二であります。道内二百十三市町村のうち、病院のない町村は六十六、公的病院のない市町村は八十九であり、常勤医師の一人もいないのは釧路村だけでありますが、保健婦の全くいない市町村は十五であり、市で保健婦のいないのは登別市であります。無医地区は昨年一月末で三百五十七の地区のうち、僻地診療所設置五十一、患者輸送地区二百二十九、巡回診療地区百十、その他の対策地区七であり、無医地区数は、全国第一位で、第二位は新潟県二百二十二、第三位は岩手県の百九十三であります。医師は、札幌市とその周辺に六六%も集中し、人口十万対九十九、歯科医師は二十九でいずれも全国平均より二割少なく、看護婦は二百八十五、保健婦は十六で全国平均より多いのですが、助産婦は、全国二十七・一に対して二十・六とやや低い状況にあります。  医療確保の問題としましては、医師看護婦の養成、充足など重要かつ基本的な問題がありますが、地域医療システムに重点を置いてみると、まず、市部の問題としては、第一に、病院間及び病院診療所間の連携の改善、第二に、専門医療施設整備、第三に、在宅医療——ホーム・ケアの強化、第四に、病院による公衆衛生活動の推進などがあります。また、郡部における問題としては、第一に、広域医療圏計画の推進、第二に、親元病院整備、第三には地域保健婦の増員などがあげられております。  全国第一の無医地域を有し、かつ広大なる過疎地域を持っている状況から見ても地域医療対策そのもの過疎医療対策といっても過言ではない状態でありました。  地域医療対策計画としては、第三期北海道総合開発計画に基づき、本年は第二年目にあたり、その緒についたばかりであります。市部においては、特殊な専門医療施設整備を促進することとしており、具体的には、小児総合保健センター計画が総工費二十億円で目下進められており、昭和五十年に完成の予定であります。また、老人医療センターについても国の方針をまって整備する予定であり、さらに今後救急医療センター六カ所、がんセンター四カ所、リハビリテーションセンター五カ所等について昭和五十五年までに整備する予定といわれています。僻地医療親元病院である地域センター病院については、あと十六カ所を整備する計画であり、これは新設でなく既存の道立、町立、日赤、厚生連などの特殊法人立の病院の中から、人口約三十万人に二ないし三の保健所のブロックに一つの病院を選んで医師の増員、施設設備の拡充、検査研究機能の強化をはかり、親元病院の使命を果たさせようとする計画であります。  一方郡部の将来としては、地域保健婦は現在四百十四名いますが、大幅の増員が必要であり、巡回診療車、輸送車、雪上車の整備を進め、ヘリコプターは防衛庁、海上保安庁のものを大いに活用し、電話、高速ファクシミリ、有線テレビなど通信連絡施設、道路、特に林道、農道の整備などを促進する必要があるということであります。また保健所については二十カ所の基幹保健所整備し、公害、食品衛生などの環境保健と母子、老人などの対人保健の強化をはかる構想であります。  さらに、医師確保対策としては、昭和四十五年から実施している医学生に一人月額三万円を支給する医学修学資金制度により現在三十八名が支給を受けているが、これをさらに拡充し、一方、一昨年町村会が設立した医師確保の事業を行なう医師対策協議会によりすでに三十七名を確保し、実績をあげていることは注目すべき点であります。これらを強化するとともに明年度から旭川市に定員百名の国立医大を開校し、さらに昭和五十五年までに道東に医大を一校新設し、あわせて現在の北大、札幌医大の医学部、歯学部入学定員の増加を急いでいるという状況であります。  特に不足している看護婦の養成については、昭和五十五年までに需給が均衡するように一千名程度定員を増加し、また、リハビリテーションを担当する理学療法士、作業療法士をはじめ視能、言語、聴能の訓練士の養成にも着手し、その際特に札幌圏に片寄らないブロック制にバランスのよくとれた養成計画を推進することとしているようであります。国の対策としては、格調高い実質の伴う医療基本法の制定、医療対策に対する補助金、地方債交付税、医療費など諸制度の改善、国立病院、療養所の近代化、医大、歯大など国立教育機関の整備促進などを強く要望されたのであります。北海道医療のうち、古いものでは急性伝染病、結核、精神障害、新しいものでは母子保健、ガン、食品衛生、献血などの分野で占めた輝かしい業績は、全国的に見てもトップクラスのものであり、常にパイオニア的立場を維持してきた歴史があります。過疎医療対策についても長期計画に基づいて遂行されており、この場合でも、パイオニア的な立場に立って理想的地域医療システムを開発し、実施に移していくものと思われます。  次に、リハビリテーションの実情について御報告申し上げます。北海道衛生部を経由した理学療法士及び作業療法士の免許申請件数は、本年六月現在では前者七十名、後者二百五十名となっております。これに対し昨年から実施された北海道総合開発計画では十年間における必要数としては理学療法士七百五十七名、作業療法士八百七十七名という大幅な増員計画が示されております。また、外傷のリハビリテーションセンター、脳卒中リハビリテーションセンター人口百万に一カ所が必要といわれており、外傷リハビリテーションセンター六カ所、脳卒中リハビリテーションセンター四カ所があり、さらに今後、新設計画としてはそれぞれ三カ所、二カ所を五十五年までに整備する予定となっております。老人等のリハビリテーション施設における理学療法、作業療法従事職員状況を見ると、有資格者はきわめて少なく理学療法士十二名、作業療法士はわずかに二名という貧弱な内容であり、今後における養成確保が望まれております。しかしながら、北海道にはこれらの養成施設を欠き、全国的に見てもその養成定数はきわめて少ないため充足は困難であるので目下養成所の設置について着々と準備を進めている段階であります。ちなみに、全国におけるリハビリテーション養成所は、理学療法士五カ所、作業療法士三カ所、視能訓練士一カ所があります。言語聴能士としては、まだ身分法ができていないが、国立の聴能言語専門職員養成所が一カ所だけであり、本年すでに二十二名の卒業生を送り出しており、また、施設においては、せっかく専門職員でありながら一般職員として処遇を受けている現状であることから、早急に身分法を制定すべきものであると思います。また、国の理学療法士の養成計画では昭和五十二年までに理学療法士、作業療法士の養成所設置は四十名定員で、国・公・私立合わせて二十カ所、視能訓練士養成所は同様四十名定員八カ所を整備する予定となっております。しかし、国の十カ年養成計画によると、昭和五十七年における充足率は理学療法士で六五・五%、作業療法士では四六・七%と需要を満たすまでに至らず、視能訓練士がようやく九七・五%となっているにすぎない状態であります。言語聴能士については必要性を認めながらも養成計画もないという状況であります。おくれているリハビリテーションについてもこの際、国は再検討を行ない積極的に対策を講ずべきであると考えられます。また、視察施設は主としてリハビリテーション中心とした調査をしておりますが、いずれも医師看護婦の確保に苦慮しておりましたが、なかんづく、理学療法士、作業療法上等の職員も著しい不足を示しております。北海道では最も早くからリハビリテーション整備されているといわれていた美唄市の労災病院を見ても、理学療法を受けている患者二百名に対し理学療法の職員六名中三名が有資格者であり、作業療法では患者約六十名に対し職員四名のうち有資格者はわずかに一名、言語療法は患者八名に対し言語聴能士一名という状況でありました。同じ美唄市にある身体障害者更生指導所においては理学療法士、作業療法士の資格のある者は一人もおらず、医師については、労災病院より派遣して診療に当たっているという状態で専門職員が皆無という点はかかる施設としては問題があると思います。視能訓練士についてはほとんどのリハビリテーションセンター施設に置かれておらず、道立札幌肢体不自由児総合療育センターでは院長はポリオによる脚延長手術を開発されたことで有名であるが、ここでさえも、札幌医大より一週間に二、三回出張してもらって視能訓練を行なっているというような実態でありました。また、厚生年金登別整形外科病院においては、財団法人厚生団の委託経営により、独立採算制であり、運営費についての予算が十分でないということでありました。したがって、作業療法における材料費についても計上されていないために、たとえば粘土によってせっかく作品をつくってもそれをこわして再び粘土として利用するという状態でありました。また、作業療法は現在、社会保険の点数表の中に出ていないので認知してもらいたいという要望がありましたが、これは早急に改善すべきであると思います。財団法人厚生団に福祉施設を委託経営していることについてはかねてから、国会においても、しばしば論議になっていたところであり、いまだに改善されていませんが、今回の視察によって法律に規定されてあるとおり、年金福祉事業団で行なわしめるべきであることを確信を深めたのであります。  なお、来年一月から老人医療の無料化が実施されることになりますが、労災病院及び厚生年金病院の両院長から老人入院患者が多くなり、家庭でも引き取らない者が増加するのではないかと憂慮されて、特別老人ホームの増設と医師看護婦の確保を強く要望されてまいりました。  また、老人リハビリテーションは、病院施設などでは効果をあげても家庭に復帰してからのケアが十分でないために逆戻りになるというケースが多く、居宅福祉サービスにおけるケースワーカーとの連携協力が望まれました。  次に、施設における医師看護婦の確保とは別に職員の定数増員と措置費の増額が要望されております。  中でも、道立太陽の園は精神薄弱者総合援護施設でありますが、措置費については、費用負担は国八、道二の割合となっておりますが、国の予算が十分でないために、たとえば収容児の理髪代にもことを欠き、道よりの持ち出しが多く、したがって、国立、道五の負担割合となっており実額に似合った大幅な増額が要望されていました。また、この施設は精薄児者ともに収容しており、医療費については精薄児のほうは児童福祉法により知事の権限で無料となっていますが、精神薄弱者福祉法の場合には社会保険における自己負担分について父兄負担となっているので、精薄児者の法の一元化が望まれておりました。  以上が施設における要望問題点の概要でありますが、リハビリテーションもまだ新しい分野であるために、北海道に限らず全国的に言えることでありますが、専門的技術職員不足していることが特に、指摘されます。国としても今後リハビリテーションを十分に受ける体制を確立するためには、その研究開発、情報交換、リハビリテーションセンター施設の指導等に当たる専門機関のないことが大きな障害となっており、かつ、リハビリテーション技術は今後も急速に進歩することが予測されるところであって、将来を展望して早急に基幹施設を新設する必要があります。また、在宅サービスを充実するため、リハビリテーション体系を軸としたチームワークである地域的な各種機関の連絡組織を一段と強化する必要があります。  なお、その他、厚生行政及び労働行政に対する要望事項については、資料として会議録掲載方をお取りはからい願いたいと思います。  以上をもって第二班の報告を終わらせていただきます。
  7. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 別に御発言もなければ、派遣委員報告はこれをもって終了いたしました。  ただいまの両君の報告中御要望のございました資料会議録掲載につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  9. 矢山有作

    委員長矢山有作君) それでは、社会保障制度等に関する調査について質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 藤原道子

    藤原道子君 私は、外務省の時間的な影響があるそうで、質問の順位を変えまして、ABCCに関しての御質問をいたしたいと思います。  そこで、四半世紀にわたって広島、長崎で原爆放射線の医学的調査研究を続けてきた米国のABCCのあり方をめぐって、最近大きな問題点として国会でも議論されているので、若干お尋ねしたいと思います。  そこで、昭和二十七年の対日講和条約によって米国の独占行政がはずされてから、もう二十年間ABCCが米国の一方的な運営によって存在している法的根拠はどこにあるのか、この間にABCCの法的地位について日米間で話し合ったことがあるのかどうか、御説明を願いたいと思います。
  11. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) ABCCは、一九四六年の十一月に米国の大統領の命令に基づいて米国政府の機関でございます原子力委員会とそれから米国の学士院との契約に基づいて設定されまして、日本との関係におきましては、一九五二年、昭和二十七年の十月の二十二日、それから二十三日付の在京米国大使館と外務省との間の口上書によりまして、その交換によりまして日本での活動が認められた形となっております。
  12. 藤原道子

    藤原道子君 在日米大使館と外務省との間でABCCに関する口上書というものができていますね、これの効果は、効力はどうなんですか。
  13. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) ABCCはただいま御説明申し上げましたような次第で、米国政府の日本における政府機関に準ずるものと考えられますが、その日本における活動とか、それの持つべき権利というものを政府との間できめたものがこの口上書の性格でございます。
  14. 藤原道子

    藤原道子君 それのちょっと内容を聞かしてください。
  15. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 口上書の内容は公表されております。その内容はこの委員会及び日本に一時的に居住する米国籍の職員についてその研究のために税金あるいは関税上の特権、恩恵が与えられる、それからこの委員会——ABCCとこの職員とは、ただいま申し上げましたような目的につきましては、合衆国の政府機関の性格と、それから大使館に付属する政府機関の職員の性格を有するものとみなします、それからこのABCCはもっぱら米国の資金によって運営されて、日本側の当局との緊密な協力のもとに相互に利益をもたらす学術的な事業に従事しておるものでございます。これに対する日本国政府の厚意的な配慮と理解を感謝しますという趣旨の口上書が米側から出ておりまして、日本側がこの口上書に対しましてそこに述べられている了解を確認しますという口上書をこちらの外務省から米国大使館に送っております。
  16. 藤原道子

    藤原道子君 そこで、この六十二条の、これには「ABCCは「米国学士院——学術会議日本厚生省国立予防衛生研究所との日・米共同調査研究機関」といわれている」のですね。ところがこの契約の中で、六十一条の「国立予防衛生研究所に、支所を置き、その名称及び位置は、次の通りとする。」となっておりますけれども、正式なものには共同調査研究機関ということが入ってないのです。これはどういうことなんでしょう。
  17. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) ただいまのお尋ねの六十一条と申されましたのは、教えていただければ……。
  18. 藤原道子

    藤原道子君 私きょうは時間がないので、あなたも時間がないし、私もないのですけれども、これは口上書です。口上書ってありますね。その中です。在日米大使館と外務省間、これのABCCに関する口上書、これはよく調べてからこの次にじゃあ答弁してください。私はこの点がひとつ納得がいかないのでお伺いしたんです。  そこで、次に私たちが今回ABCCのあり方について調査してきたが、ABCC研究は、表面上は厚生省の予防衛生研究所と共同研究ということになっているけれども、調査研究計画、管理あるいは運営財政、人事の主体米国側にあることがわかった。そして二十七年の独立後、日本での存在するための法的根拠があいまいのまま、占領時代の継続として今日まで放置されております。したがって、ABCCは原爆を投下した加害者であるアメリカが、戦略として次の核戦争に備えて被爆者をモルモットにしていると言っても過言でないのが実態であるように思います。そこで、ABCC調査研究計画、管理、運営財政、人事についてわが国はどの程度タッチしているのか、それぞれについて御説明を願いたい。  さらに、それが共同研究ということになるのかどうか。いやしくも二国間の共同研究と言うからには、五〇%ずつの分担があって言えることだと思うが、どうなっておるか。七部門あるのに部長のうちの六人までがアメリカなんです。米国人の部長。それで日本人が部長といわれているのはたった一人なんですね。これでは共同体制と言えるかどうか。まあ研究財政については加害者のアメリカが全額を持って、運営は被害者のわが国にまかすのが私たちはモラルではないかと、こういうふうに思うのです。ところがほとんどがアメリカが持っているというようなことで、こうしたモルモットにされているのだというような空気が非常に強く流れている。これらについてどのようにお考えになるか。
  19. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) お答えいたします。ABCC研究結果の発表等につきましては、ABCC並びに私どもの予防衛生研究所長の共同の研究結果の発表という形で行なわれております。さらに研究内容等につきまして、ABCC内部に日本側諮問委員会というものが設定されておりまして、十分研究の結果等については検討いたしました上で発表する仕組みになっております。なお、御指摘の資金面につきましては御説のとおり米国側が多額の費用を負担いたしておりまして、その執行等につきましても米国側の一応指導のもとに運営をされるという状態にございます。ただ、今後のABCCの問題につきましては、最近非公式にアメリカ側からその内容等について検討したいという申し出がございまして、関係各省の担当官等と内々今後のあり方等につきましても検討を開始いたしておる次第でございます。
  20. 藤原道子

    藤原道子君 昭和二十七年の十月二十二日付の外務事務次官から厚生事務次官あての覚え書きによりますと、「添付の一九五二年十月二十二日付日米政府間の了解確認書写しによって、広島および長崎に研究施設をもつ米国政府の原爆傷害調査委員会ABCC)は、在日米国大使館の付属機関と認められること、そうして、この委員会ならびに米国籍をもつその上級職員は、米国大使館及びその職員と同様の特権的待遇が与えられることを御参考までに通知する。」と書いてある。これは外務事務次官から厚生事務次官にあてた覚え書きなんです。もちろんこの覚え書きは今日でも生きていると思いますが、ここでいう上級米国職員の特権的待遇の内容は何でしょうか。それから三十六人いるといわれる米国人に全員特権的待遇が認められているのか、一日も早くこのような屈辱的な覚え書きを撤回すべきではないかと私は思いますけれどもいかがでございましょうか。
  21. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 先生御指摘の口上書、一九五二年の十月、約二十年前の口上書でございますが、その口上書におきまして米国籍を有する職員につきましては口上書の上では適当な課税及び関税上の恩恵が与えられるということと、それから軍票の使用を認めるということが書いてございます。現実には軍票の使用はその当時はございましたがなくなりましたので、この点は消えております。現在まで残っておりますのは所得税と関税等の免除という特権が残っております。
  22. 藤原道子

    藤原道子君 この問題については先の衆議院でも問題になっているのですよね。本年五月末のこのときに外務省の高島外務省条約局長ですか、非常に深く反省していると言われているのです。これはどういう意味で反省しているのか今後どうする方針でいられるのかそれを聞きたい。
  23. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) ただいま申し上げました現在残っております関税、所得税上の特権のうち、所得税法につきましては所得税法の第九条第一項八号というもので政府機関の職員というものには認められると思いますが、関税につきましては、口上書の形で特権を認めたということが、ただいまその後の検討に照らしますと必ずしも適当ではなかったのではないかという意味で深く反省をしておる次第でございます。この点はつとに米側に対しましても改正を必要とするということを申し入れてございまして、ただいま検討を進めておるところでございます。
  24. 藤原道子

    藤原道子君 いま検討していらっしゃる、まだあれは出ていないんですね。ところがことしの三月三十日の衆議院の社会労働委員会で超党派で「(ABCC)と国立予防衛生研究所協力関係について再検討するとともに、各省にまたがる研究機関及び民間医療機関放射能影響治療についての研究を一元的に行ないうるよう促進を図ること。」と決議をしておりますが、この決議のあと、政府はどのような検討を行なっておいでになるか。これは三月の三十日の決議なんです。これについてどのような検討をしておいでになるかをお伺いしたい。
  25. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 先ほど御答弁申し上げましたように、口上書の中で関税についての特権を認めた点が不適当であったという点につきましては、つとに米側に申し入れて、米側においても、検討さしてくれということでただいま前向きの検討が続いております。ただ、この問題につきましては、先ほど大臣のほうからもお話がございましたように、全般的なわがほうの協力といいますか協同といいますか、そういう研究の体制の問題もございますので、この二つの問題がこのABCCのあり方についてはあるわけでございます。とりあえず前者のほうにつきましては、そういうわけで米側にこの点の改善をすでに申し入れておる次第でございます。後段につきましては、むしろわがほうにおける直接関係の省庁における日本側の今後のあり方ということの見通し、構想というものが固まりますのを待ちまして、米側との折衝に入るということになると考えております。
  26. 藤原道子

    藤原道子君 わが国内の問題ですから、三月にきまった決議ですから、もう八月も終わりになりますよね。だから、国内的な問題だから、もう相当の結論が出てもいい時期じゃないか。したがって、どういうふうな方向でお進めになったかを伺ったわけですから、これは一日も早くこの対策が確立されることを強く要望いたします。このように、ABCCのあり方をめぐって問題が国会の内外で論議されているさなかに、米国側は今後二十五年間研究が必要と言明している。ABCCの上部機関である米国学士院ABCCの諮問委員会は六月二十六日の会議で、ABCCの重要性を再確認し、年間五百万ドルの予算確保すると発表しており、外務省にABCCの将来について政府間交渉を申し入れていると聞いておりますが、日本政府としてこの米側の申し入れに対してどのように話を進めようとしておいでになるか、お尋ねいたしたい。
  27. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 先ほど厚生大臣から御答弁ございましたように……
  28. 藤原道子

    藤原道子君 まだないわよ。
  29. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) ABCCのあり方につきましては米側からもかねて申し入れがございまして、いわゆるたたき台ということでわがほうにも先方の考え方を言ってきております。ただ、その間米側と若干のやりとりはございますが、この問題につきましては関係省庁における今後の協力のあり方というものが固まりました場合に初めて米側との話し合いができると考えておりますので、その実態につきましては関係省庁のほうにお尋ねいただきたいと存じます。
  30. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 関連してお聞きしたいのですが、外務省のほう、このABCCの問題について十分な認識を持たずに答弁しているのじゃないですか。問題の所在は、これが当初設置されたのは大統領命令によって設置された。しかも日本との間で、まあ何というのか、話し合いができたのは平和条約の成立後でしょう。これは一片の口上書によってやっているわけだ。ここのところに問題があるわけだ。一片の口上書で外交官特権的なものを認めるような機関の存在が許されるのか。一体、平和条約との関係でどう考えているのですか。これは法的地位がきわめてあいまいですよ、ABCCの。その点が第一の問題なんです。しかも口上書でそういったものを、あいまいもことしたものを認めておいて、すでに二十年なんですよ。二十年の間そういったものを放置してきたという、その責任は一体どうなるかという問題を追及しているわけです。この点の認識を持って答弁していただかぬと、いまのような、どこに焦点があるのやらわからぬような答弁になってしまう。もう一ぺん答弁して下さい。——もう一ぺん言いましょうか。大統領命令によって占領下に設置された、そういう機関なんでしょう。それが平和条約が発効して、ことばをかえて言うなら、日本が独立国になったと称せられる時点で、一片の口上書によってこうした外交官特権を許されたようなものの存在を許してきた。しかも、二十年それを放置してきたという、その責任は一体どうなるんだと言っている。法的地位がきわめてあいまいだ。第一点は、それを放置した責任を追及している。これを外務省はどう考えているか。その点をはっきり答弁しないとだめだ。
  31. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) ABCC設置の、米側内部における手続としては、米大統領の命令というものが基礎になって、原子力委員会と学士院との間の契約で設置されたものと思います。これは米側内部の手続でございます。これを受けまして、御指摘のとおり平和条約ができました後に、間もなく口上書の形で、日本におけるABCCの活動、それからそれに伴う特権というものを認めたわけでございます。その口上書の形で特に関税につきましてまで特権を認めたということは、先ほど申し上げましたとおり、適当でない面もあるということを反省して、これについては米側に改善をすでに申し入れてあるという実情でございます。繰り返しになりますが以上が実態でございます。
  32. 矢山有作

    委員長矢山有作君) だから問題は、一片の口上書でそういったものを認めておいて、二十年間放置しておった問題がいま追及されているわけでしょう。それに対していまごろになってアメリカに協議を申し込んでいると言うけれども、ところがアメリカのほうは、先ほどの質問を聞いていると、かなりの大きな予算を組んで、そしてABCC研究主体性を確保しよう、そういう中で、日本に相談を持ちかけてきている。それがいまのアメリカ経済の関係からして、主体性はあくまでもアメリカに握りたいが、金はひとつ日本からも少し出させてやろう、こういうような考え方から交渉を持ち込んできているのだろうと思う。その交渉を受けて立つのに一体どういう態度で受けて立つのか、そこのところが問題だ、こう言うのです、もう一つの問題は。日本は、あなた方が言っているように独立国なんだから、そういう立場に立って問題の解決を急がなければならぬわけでしょう。この問題を二十年間放置してきたということに対して、先ほど政府のほうは委員会の席上で陳謝もしたわけでしょう。陳謝したのならその点を解決するために精力的にやらなければいかぬじゃないですか、もう少し主体性を持った立場で。そのことを強く要求しているわけです。私もそのことを要求しておきます。
  33. 藤原道子

    藤原道子君 とにかく講和条約ができてから今日まで、この長い間がそのままに過ぎている。しかもアメリカ側がまだ今後二十五年間研究が必要だというようなことまで言っている。ところが、日本では、いまの御答弁では私のような者でも何としても納得がいかないのです。もう少し真剣に、独立国としての名誉にかけても真剣に考えてしかるべきじゃないか。しかも議会で、検討いたしますと答弁してからでももう相当に日がたっているのです。それできょうのような御答弁があろうとは私は思っておりませんでした。時間の関係がありますので、この点をよくお考えいただきまして、外務省として真剣に独立国の立場からひとつ新たなる方針を打ち出していただきたい。強く要望いたします。  そこで、今度広島や長崎などの地方自治体やあるいは市民の間では、ABCC日本に移管してもらいたい、そして原爆後障害の研究所とか、あるいは研究資料を受け継ぐばかりでなく治療を行なうこと、研究は自主、公開、民主、平和の四原則に立つこと、加害者としてのアメリカが日本に全面移管した場合、研究費を出さないというならば運営は政府の支出金、寄付金をたよってまかなうという具体的な提案を出しているそうでございますが、これらについて具体的に検討し、自治体や被爆者要望にこたえるお考えがあるかどうか、こういうことについてどうお考えになっているか。
  34. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 後遺症等の研究あるいは治療ABCC移管後の機関にやらすべきであるという御趣旨に解しておりますが、現在の段階におきまして、先ほどいろいろお話がございましたように、ABCCの性格等につきまして問題がございますので、その後の処置についてただいま事務的に詰めたいというふうに考えまして、作業はいたしております。しかしながら、現在の体制といたしまして、治療は原爆病院で実施いたしておりますし、各種の研究結果につきましては日本とアメリカの両方の研究者の名前におきまして全面的に発表をいたしておりますので、そのままの現状におきまして差しつかえないというふうに私どもは理解いたしております。現在の研究発表につきましては両者の責任者の名前のもとに全面的に発表をいたしておりますので、現在の段階におきます体制においては差しつかえないんじゃないかというふうに考えておりますが、ただ、全面的な機関の移管その他につきましてはいろいろ問題がございますので、今後の検討にまちたいと考えておりますが、研究治療体制については現在の体制で一応私どもといたしましては満足すべき状態にあるというふうに理解をいたしております。
  35. 藤原道子

    藤原道子君 費用の面についてはどうですか。
  36. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 費用の面につきましては、やはり現在の研究のための要員の人件費その他あるいは研究方法等につきまして問題がございまして、全面的にこれを受け入れることができるかどうかというような問題もございまして、私どもといたしまして、もし向こうが、アメリカ側が日本側へ全面的に移管すべきであるということにつきまして、やはりこれも問題が多分にございます。したがって、そういう問題も含めまして今後検討すべきことだろうというふうに理解いたしております。
  37. 高山恒雄

    高山恒雄君 関連してひとつ。  この点は、そこに働いておる労働者の意見もわれわれは拝聴したものですから、しつこく質問するんですが、実際問題としてアメリカの経済情勢から見て、非常にアメリカは今日の情勢から見ると無理があると、したがって日本政府に対して経済的な援助をせよと、こう出てきた場合の権限というものはどうなのかと、——こういう危険性があるわけですよ。で、いまあなたの御説明を聞くと、従来のままで運営もよかろうと、こういうふうにおっしゃっておるんだが、金は出したわ、いままでの権限はアメリカがすべて権限を握っておったと、むしろここ数年前までは研究の結果の発表すらしなかったと、独占的にアメリカがやっておったのだと、こういううわさすら出たわけですね。実際に見学してみるとそうでもないという点もわれわれも理解することができましたけれども、実際問題として経済援助をするという態勢を日本がとらざるを得ない場合でもこのままでいこうとお考えになっておるのか、そういう点がお聞きしたいんですよ。
  38. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) ABCC研究組織と申しますか体制、これが日本研究機関研究体制その他と若干違う点がございまして、そのままの形でもし全面的に日本側に移管するということになりますと、やはりここには経済的な問題等もございましていろいろ支障があるのじゃないかというふうに予測されますので、もしそういう事態が予測される場合にはやはり事前に十分なる対処をいたさなければならぬというふうに考えております。ただ資金面におきまして全面的にアメリカ側からの援助によりまして日本側がもしその研究体制に入るということになりますとまた話は別になるかと思いますけれども、そこいらの問題がやはりこのABCCの機関の性格という問題とからんでまいるというふうに考えておりますので、そこいらはやはり私ども実施官庁といたしましては慎重に対処せざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  39. 高山恒雄

    高山恒雄君 あなたも現地を見られたと思うが、膨大な資料ですよ。しかも、いまアメリカの財政力でやっておるわけなんです。それをどうしてもアメリカの財政上いかぬというので日本にある程度の依存をする、たとえば五〇%、八〇%と。そういう場合に日本の姿勢としてはどういう行き方をするのかということが問題であり、将来アメリカ側の資料を持って帰るということもなきにしもあらずだと思うのですね。これは持って帰ったってしようがないんでしょう、あの膨大な資料を。したがって、そういういませとぎわにきておることをそこに働く労働者といえども心配しておるわけなんです。そういう点に対する対策は、現実に起こってくるという事実があるならば、速急にこれは研究して、その姿勢も改めてかからなければいかぬ重要な問題だと私たちは感じてきたのですよ。そういう点があいまいなままの御答弁をされておるものだからわれわれも納得がいかないで関連的な質問に立ったわけですが、もっと掘り下げた検討を速急にやるべきじゃないかという感じすら私はいたしておりますが、その点どうです。
  40. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 実はABCCの先ほどのお話のように機関の性格という問題、したがいまして、そこに持っております資料ということにつきましてもやはり十分検討をいたさなければならないというふうに理解をいたしております。したがいまして、いま、私どもといたしましたならば、できるだけ早くその機関の性格というものをはっきりしていただきまして、その資料等の取り扱い、これは今後厚生省が担当いたすにいたしましても、その取り扱いについて早急にやはり先生の御指摘のような措置を講じなければならぬというふうに考えております。
  41. 藤原道子

    藤原道子君 アメリカで今後二十五年間研究が必要だというようなことを言明しておりますが、日本に対して何らかの申し入れはきているんですか。この件について内容を具体的に……。つまりアメリカ側では今後二十五年間研究が必要だと、いろいろ言われております。これらのことに対して、日本政府に対して何らかの申し入れがきておるんですか、経済面にしろ何にしろ。
  42. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 先ほど申し上げましたが、今年の大体春ごろだと記憶しておりますが、米国側から非公式な向こうの、ほんとうのたたき台といったような考えを日本側には出してきております。したがいまして、これを関係各省のほうにも至急御検討をその後お願いしておる次第でございます。
  43. 矢山有作

    委員長矢山有作君) それじゃ、委員長からも一言申し上げたいんですが、いまのやりとり聞いていると、どうもあなたのほうの答弁、抽象的なんですよ。だから、ひとつアメリカとの間でかわした口上書、これは資料として提出してもらいたい。  それからもう一つは、一番問題になるのは、大統領命令で設置されたものをそのままの形で存在を認めるために口上書を取りかわしている。こんなでたらめなやり方はないと思うんだ、独立した以上は。したがって、今後このABCCの法的位置づけをどうしようとしておるのか、その問題に対して具体的に答えてもらいたい。  それからもう一つ。先ほど藤原君に対する答弁があいまいであるけれども、一体具体的にどういう内容の口上書がきておるのか、何ぼ金を出せと言っているのか、金を出したらどうしようと言っているのか、そこのところをはっきりしてもらいたい。そうせぬと、何のためにここで質疑やっているのかわからない。いまのようなくつの上から足の裏をかくような答弁じゃしようがない。どうなんですか。
  44. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) ABCCの設立に関します口上書の往復はすでに公表されておりますので、この口上書は提出の手続をとります。  それから米側から本年の初めに言ってきましたものは、先方も非常に非公式のもの、たたき台ということで言っておりますので、これはこのまま外へ出していいのかどうか、これは米側とも了解をとらねばならないと思いますので、この点は、その点を留保さしていただきたいと思います。
  45. 藤原道子

    藤原道子君 非公式なものだからといったって、それによって検討しているんでしょう。ことしの春ごろといえば三月ごろ来たんでしょう。それできょうまでいまのような全く——私、簡単な質問で済むと思ったけれども、納得のいかない答弁が続いておるので、困っちゃうのですが、非公式なものなら非公式として私たちはぜひ聞かしてもらいたい。独立国の国会ですよ。こういう点を強く要望いたします。  こうした具体的な要望の陰には、原爆を体験した市民の切実な感情が込められておる。たとえば私たちABCC調査した時点で、被害者の中で死亡者を出した遺族のうちに、二千八百三十二体が解剖に応じたといわれておりますけれども、これは陰に陽に被爆者の死体を強力にあさったハゲタカの行為だ。三千九百九十八体は解剖拒否しているんです。解剖の要求に応じたのは二千八百三十二体、拒否したのは三千九百九十八体なんです。なぜ拒否したか、ABCCに対する疑問が大きいから、信頼ができないから、自分たちはモルモットがわりにされているのだというような気持ちがもう行き渡っておるからですよ。こういうときに政治を担当しているあなた方が、こうした国民の気持ちを考え、アメリカのやり方が正しいと、あなた方は思っておるなら、これまた別です。しかしあなた方にしたってアメリカ側のやり方を全面的に認めるわけにいかない、独立国でありながら二十年もそのままやらせておいて、それでいまになって研究材料全部持っていくかもわからないような状態に置かれている。こういうときにABCCをこのままやっていいかどうか、だからこれに対してのあなた方の考え方を私はここでお伺いしているのです。しっかりしてもらわなければ……。アメリカの一州じゃないのですよ、日本は。独立国なんです。それでありながらアメリカの言うことに少しも反論ができない、こういうことでは将来が案じられてなりません。したがって、きょうはあなたがそういう態度だから答弁ができないかもわかりませんけれども、いま申し上げました、委員長から要求のありましたような資料も何とか討議して委員会に出していただきたいことを要求いたします。  それからとにかくこのABCCをこのままで置くということには私たちは承知はできません。とにかく現在のABCCのあり方は米国に対する屈辱外交の産物であり、独立国日本としてこのおかしな日米関係を一日も早くなくさなければならないことは言うまでもないと思います。この結果、ABCCわが国に全面的に移管をし、日本人の手で大学研究医療機関と交流し得る組織として、データを公開し、アメリカ本国に持っていった資料を全部返還する外交交渉を行なってほしい。被爆者主体の原則に立った調査研究医療福祉が総合する機関でもって運営できるようにすべきことが、政府に負わされた義務だと私は考える。これは一体どうですか。これが始末できないようでは、戦後処理がなされていないことになります。これらについてのお考えを最後にお伺いしたい。
  46. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) ただいまいろいろお尋ねの内容、外務省として細目にわたってはお答えいたしかねるところもございますが、私どもの外務省としての立場にかかわるところを御答弁申し上げます。  ABCC日本で活動を始めたのは確かに占領時代からであったと思います。したがいまして、平和条約ができました直後において、問題はございますが、口上書のかっこうで日本での活動を認めた、その後二十年間活動が行なわれておる。その間における活動はもっぱら科学的な調査ということで、その成果はたしか完全に全部公開されておりまして、日本側関係の科学者においても高く評価されていると承知しております。ただ、そうした形を今後、このまま続けていっていいのかどうかという問題は御指摘のとおりございます。米側においてもいままでの形を続けていいのかという問題があるわけでございます。したがいまして、日本側に今後のやり方について、どうしたらいいかという相談をかねて持ちかけてきておったわけでございます。これにつきましては先ほど厚生省のほうから御答弁ありましたように、日本内部での受け入れ、協力体制のつくり方という問題がございます。したがいまして、私どもといたしましては、こういう問題をこのままではいけないので今後どうするかという共同体制をどうやってやるかという具体的な案を関係省庁のほうでひとつおつくりいただきたいということをかねて申しておったわけでございます。したがいまして、そういう体制ができますれば、米側に対しましても今後はどういうふうにこのABCCというのを運営していくのかという具体的な話に入れると思っております。
  47. 藤原道子

    藤原道子君 厚生省ではどのように検討していますか。
  48. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) いま外務省のほうからお答えがございましたように、その問題につきまして事務的に現在詰めて、早急に結論を出したいと思っております、受け入れ体制につきましては。  それからもう一つ、先ほど資料のお話がございましたが、アメリカに行っておりました資料は、全部日本に返還をされることになっておりまして、これは広島の原子爆弾医療研究所におさめることになっております。
  49. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 厚生大臣にお伺いしたいのですが、いまのやりとりを聞いておられて、大体ABCC問題点というのは明らかになったと思うのです。私は一つは、大統領命令で設置されたものが、そのままの状態で、一片の口上書によって今日まで存続させられておるということに非常に問題がある。これが一つです。したがってこの法的地位を一体どうするのか、これは私はまず明確にしなければならぬと思うので、それについての厚生大臣の見解を伺いたい。  それからもう一つは、それと関連する問題ですが、一体この今後の研究体制というものをどう持っていくのか、この点も明確にしてもらいたい。私は当然、もう独立後二十年からになるのですから、日本主体的な立場でこれを維持するということに踏み切らなければだめなんじゃないか。いまの状態でおりますと、これまでも予防衛生研究所が協力しておるからそれに必要な経費分だけは日本から出させてやれというような形で続いてきておると思います。今後向こうは、先ほどから出ておったように、二十年なり二十五年なりこれに対する研究体制を保持しつつ、しかもいままで以上に日本に経済的負担をさせて、日本に出させてそれをやっていこう、こういう態度に出ておるのじゃないか。そういうことに対して、一体厚生大臣としては、研究体制のあり方ということでどういう態度をもって臨まれるつもりであるのか。これはやはり、先ほど来、国内の受け入れ体制がきまれば外務省がやるのだと、こう言っておるのだから、何といっても厚生省中心になってこの問題は考えなければならぬ問題ですよ。そこで厚生大臣のいまの二点についてのお話を承っておきたいと思います。
  50. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) 先ほどから非常に御熱心な質疑を通じまして、このABCC問題が今後の厚生省にとりましても非常に重大な問題であることを、私もしみじみ痛感をしておったのでございます。いま委員長からのお尋ねは、今日までの歴史的な経過の中においてABCCの地位というものが不明確ではないのか、この問題について、はっきりすべきじゃないかというのが第一点であったように思うわけであります。まあABCCについてのいろいろの評価が私はあろうかと思うのでありまするが、しかしながら今日までこのABCCがいろいろのことを研究をし、そうして、この原爆問題につきましてもいろいろの成果が公表され、それだけのメリットは私は出してまいっておると思うのであります。そういうような経過できましたが、先ほどから伺っておりますと、その地位というものが明確でないというようなお話があったのでありまするが、これは根っこには外交的な折衝の問題等もございますので、われわれとしては外務省の善処を期待するしかないわけでございます。ただ、今後一体どうしていくかという問題でございまするが、いろいろ御意見がありましたとおり、このままでいいのかどうか。私はこの今日までの成果、あるいはまた、このABCCという機関が、いろんな経費もかかっておりまするが、これはやはり人的な構成とそれに伴ういろんな設備等も一緒になって研究が進められてまいったと思うわけでありまして、これを直ちに日本側に全面的に引き継いで、被爆者に対する、あるいはまた原爆の研究について、急激なマイナス点を生じてくるというようなことのないように一面においては配慮していかなければならぬ問題だと思うわけでありますし、同時にまた、日本のそれぞれの機関がこれにかかわるにいたしましても、やはりこういった点に全体としての悪い結果が生まれないようにというような配慮をしながら、万全な体制をとって、今後外交交渉が成立するにいたしましても、この被爆者に対する対策あるいはまた研究、その質的な内容がさらに前進するという方向で、体制の検討、移行の準備を進めていかなければならぬと思うわけでございます。私は外交的な面を十分よく承知しておりませんが、しかしそういう事態になれば、われわれとしては当然日本も独立国であり、われわれもそういう責任を十分果たしていかなければならぬわけでありまして、そういうふうな準備を取りそろえて、これの移行を全うするということで対処してまいりたいと思うわけであります。
  51. 矢山有作

    委員長矢山有作君) これは聞いておりますと、外務省と厚生省の責任のなすり合いだね。こんな話ではしかたがないので、これは引き続いてあらためてはっきりさせてもらいたいと思いますが、先ほど要求した資料の提出、さらに提出の有無についてはできるだけ早い機会に取り計らい方を希望いたします。
  52. 藤原道子

    藤原道子君 私も長年委員会で質問を続けてきましたけれども、きょうくらい納得のいかない答弁を聞いたことは初めてでございます。不満足でございますが、いずれあらためてまた質問するといたしまして、ABCCの問題はこの程度にいたします。委員長からもお話のありましたような、資料その他今後の方針について十分検討をしていただいて一日も早く納得のいく回答を得たいと思います。  次に、原爆の問題について若干御質問いたしますが、きょうはもう時間があまりございませんので、概略をお伺いをしたいと思います。  広島、長崎に原爆が投下されてから二十七年の歳月が経過したけれども、現在でも毎年数多くの犠牲者を出しておる。こうした中で国の原爆被爆者対策のおくれと貧弱さは被爆者をはじめ多くの国民から批判の的となっております。そこで若干の問題点をあげ、政府の姿勢を尋ねたいと思います。  その一つに、原爆二世の問題があります。現在被爆二世たち原爆症がいつ発病するかもしれない不安と、それに伴う世間の偏見と差別におびえているといわれております。こうしたことについて政府は実態をどれだけ把握しているのか。それに対してどんな施策を考えてやってきておるかという点について、まずお伺いをいたします。
  53. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 原爆二世のことにつきましての御質問でございますが、二世、あるいは三世の人員につきましては、まだ私どもといたしまして確実な数を把握いたしておりません。
  54. 藤原道子

    藤原道子君 被爆二世に対してあなたは非常に冷淡なのよ。まだ調査をしていない。それから被爆二世に対しては、何といいますか健康手帳、これらも出さない。被爆二世の中で、もう白内障だ、何だと死んでいる人がたくさんあるのよ。これらに対していまだに研究ができていないというのは、これは何としても納得のいかないことだと思う。今後どうしますか。今度深川宗俊さん監修の「被爆二世」によると、広島、長崎の原爆被爆者の子供たち全国で四十二万人いるといわれる。多くの子供たちが結婚適齢期であり、そろそろ三世もできているといわれているのに、そこで原爆放射線遺伝的影響が大きな問題になっておりますが、この遺伝的影響についての研究がどの程度に進んでおるのか、この点を伺いたい。
  55. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 原爆被爆者の二世あるいは三世に対します遺伝学的な検討につきましては、すでに予防衛生研究所におきまして昭和四十二年に白血病につきましての調査がございます。それによりますと、一応被爆者の二世と被爆者でない人におきます白血病発生につきまして有意の差のないという研究結果が発表されております。引き続きさらに予防衛生研究所を中心にいたしまして、二世につきまして、さらにその追跡調査が現在実施されておる段階でございます。したがいまして、その結果につきましてのまだまとめができておりませんので、申し上げる段階には至っておりませんが、一応現在のところ私どもといたしましては四十二年に発表されましたデータをもとにして施策を考えておる段階でございます。
  56. 藤原道子

    藤原道子君 四十二年の研究結果であって、ところが動物的実験では遺伝的影響が出ておるというけれども、これはどうなんですか。
  57. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 動物の実験結果を直ちに人体に引用するということにつきましては多少疑問がございます。したがいまして私どもといたしまして原爆二世という、いわゆるレッテルを張るということにつきましては、非常にこれは社会的に問題があろうかと思いますので、その研究、あるいは調査、それから二世の方々の取り扱いにつきまして慎重を期さなければならないというふろに考えております。
  58. 藤原道子

    藤原道子君 慎重もけっこうですよ、それは原爆二世の立場も考えるということもわからなくはない。だけど病弱で、いろいろと研究してみると百人のうち三十人ぐらいまでが病弱だというようなことが言われておるんです。そうするならば、被爆二世に対する被爆者手帳を出すと、いま言ったようなことを言うならば、それならばこれらに対して一体どうしたらいいのか、原爆病院へ行っても手帳がなければ、確認された者でなければ診察してくれない。そうしたら、これらの子供は不安のままで放置される、こういうことになるんです。それでいいとお考えですか。だから私はもしそうならば、結論が出るまでというならばこれを親の被爆手帳ですか、この手帳でその二世も診察ができるようなことはできないか。この不安を感じている者の気持ちになってごらんなさいよ、どうですか。
  59. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 二世の方々の不安ということにつきましては十分私どもも理解できると思います。したがいまして、もし病弱等の問題がございまして、これは調査あるいは調査をしなければならぬという事態が生じました場合にはその申し出によりましてしかるべく処置をいたしたいと、かように考えております。
  60. 藤原道子

    藤原道子君 しかるべく処置をしたいように考えていると言うけれども、それは担当機関でそういうことを通達してあるんですか。手帳がなきゃ見てもらえないのでしょう。これは一体どうするのか。だから私から言わせるならば、あなたのような考え方はいま私なりに解釈すれば、公害について長い間因果関係の立証を被害者に押しつけてきた。公害問題、これはずいぶん前から問題になっている。ところが今日まで被害者にすべての犠牲をしいてきて、いまになって公害問題が大きく世論化してきたときに、国はどうとかこうとかいうような意見が出てきた。そういうことでは恥かしい、じゃないですか、官僚的なやり方だと私たちからすれば言わざるを得ない。被爆二世の問題、真剣に考えてもう一回答弁してください。
  61. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 私どものつとめといたしましては二世の不安を除去することが第一だというふうに考えております。したがいまして、一日も早くやはり影響がないという、あるいはあるという、どちらかのはっきりした結論を得た上で措置をしなければならぬというふうに考えておりますが、やはりこれは遺伝的な問題でございまして、やはり世間に対する影響が非常に大きい問題でございまして、慎重に取り扱わなければならぬというふうに考えております。したがいまして、できるだけ早く不安を除去するような体制をつくってまいりたい、研究結果を得たいというふうに考えております。
  62. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 関連。先ほど四十二年からの調査をしているという結果で被爆二世と大差ないというふうに御答弁になりましたけれども、その調査なさったときの被爆二世というのはどういう対象をとって調査なさったんでしょうか。まずその点第一点。
  63. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 原爆被爆者の子孫における白血病死亡標本の約五万三千人を対象にいたしまして、それにさらに昭和三十八年までに出生いたしました十六万三千人について二十一年から三十八年の間に発生いたしました白血病についての調査でございます。
  64. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そのときはその数字でいいと思いますけれども、いままた非常に数もふえてきておりますし、被爆三世という者も出てきております。ことしの八月原水禁世界大会、各地から被爆者の二世の問題が大きく取り上げられたわけです。その中で言われたことは、私たちがこの間も、私も委員会で質問したときに結局被爆二世の問題を明らかにすることは不安を与えるからということで現在被爆二世がどういう状態に置かれているかという実態調査もまだされていないということだったわけなんです。私たちも望み、被爆二世自身が望んでいることは決してそれを隠すのではなくて、おそれるのではなくて、ほんとうの調査をしてほしい。そうすれば結果的には大差がないというほんとうの、広範な調査対象で正確なデータが出れば被爆二世は非常に安心するわけです。特に被爆二世の方が言われていたことは、被爆二世、すなわちいろいろな障害が出るというようなことで、逆に今度は非常に不安をかき立てられている。だから、厚生省が御配慮くだすって不安がないようにというようなことで調査が十分行なわれていないということが逆に不安をかえってつくっているんじゃないか。そういうふうな具体的な立場から考えてごらんになれば、ことしの調査でも被爆二世自身が調査対象として調査をしてほしいというのですが、厚生省は望んでいないのだという御答弁になりましたけれども、被爆二世のうちの七〇%からがきちっとした調査をしてほしい。そうして調査をして、もし異状があれば、いま藤原委員が言われたような原爆手帳、親の手帳でもいいから、自発的にやりたいというときにはやってほしいというような被爆二世自身の希望でもあるわけなんですね。そうすると、厚生省のやっている仕事というのは被爆二世自身の希望とも相当ズレが出てきているというふうに考えざるを得ないわけなんです。その辺のところをもうちょっと真剣に、早急に調査というような問題をはっきりさしていただかなければ、いつまでたっても科学的な調査なくして不安をばらまいていくという結果になると思うので、その辺のところをもうちょっと科学的にどういうふうに進めていくかというところを確信を持った御答弁をいただきたいと思うのです。
  65. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 被爆二世の遺伝的な影響につきましての対象につきましては、御説のように一応選定ができると思いますが、それとやはり調査結果を比較検討いたしますためには同じような集団、全然原爆と影響のない集団を選ばなければならないと思います。その二つの対照によりまして初めて科学的なデータの比較ができると思いますので、その調査方法につきましていろいろ検討いたしておりますが、非常にむずかしい問題があろうかと思います。したがって現在私どもといたしましては、広島あるいは長崎県当局と十分その調査方法等につきまして打ち合わせをいたしまして、やはり一日も早く不安がないような状態にいたすのが私どものつとめであろうというふうに考えておりまして、その調査方法につきまして現在鋭意検討中でございます。
  66. 藤原道子

    藤原道子君 何だか幾ら聞いたって同じような答えでいやになっちゃうのですが、検討中、検討中と言うけれども、スモン病にしても、それからイタイイタイ病にしても、政府は同じようなことを言って今日まで長年うっちゃってきた。もし検討して、ほんとうに二世の立場を考えるならば、とりあえず不安があるなら診察をすると、そうしてその故障がある者に対しての治療は、これは政府が見てやるということがなぜできないのか。今度八月二日に川崎では被爆二世についても、健康診断の結果、異常が認められた場合、治療費を全額市の予算で見ることを決定した。二世の救済措置被爆地の広島、長崎両市でもなく、これが制度化された場合、全国で川崎市が初めてやったことになる。これは公害で悩みに悩んだ川崎市が、長年公害被災者の状況を見てきて、それで今度被爆二世についても市の予算でこれを見ようということになった。それならば、あなた方が研究の結果、出ない、出ないからと、もう戦後何年たっているんですか。そして結論が出るまでといったって結論の出し方はあんた方の自由ですよ。官僚的な考え方ですよ。結論が出る出ないにかかわらず、その不安とそれから心身障害の問題は現にあるんだから、今度公害についても資本家の無過失責任ということが各裁判所で判決されている。ところが、これは資本家の問題、こっちの問題は国の問題、国が率先してそういう不安を解消し、国民のしあわせのために努力するというくらいな考え方があってもいいと思うんだけれども、どうなんですか。私はもう時間がなくなりましたので、全部省略しなきゃならないのは残念でございますけれども、ガンがたいへんたくさん出ているけれども、これは原爆症としては認定されていない。こういう点にも私どもは納得がいかない。それでガン被爆の因果関係、原爆についてのこの問題等も聞きたいことは山ほどありますが、次の機会に譲りたいと思います。  そこで、最近、私がちょっと伺いたいと思っておりましたのは、近距離早期胎内被爆症候群、これで生まれた子供が、小頭症というんですか、頭が小さいんです。これは全国で一体どのくらいありますか。この小頭症の者は精薄というハンディキャップも加わっているといわれますが、この病気を認定した以上、医療法の趣旨にあるようにその健康の保持と向上がはかられ、それが実現されなければならないと思いますが、これらに対して政府はどのように考えて調査をしておいでになるのか。
  67. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 原爆に基づきます小頭症で、現在生存されておられる方は約二十名ございます。これは当然被爆当時胎内におられた方が、その放射能によりまして小頭症が発生したということでございますので、これは原爆医療を適用いたしております。ただし、この小頭症の治療等につきましては、現在の医学、医術をもちましてはいかんともしがたい状態でございます。やはり、まあ正常児に比して弱いということで、その病気になりました場合は、原爆医療医療費をもちまして措置をいたしている現状でございます。
  68. 藤原道子

    藤原道子君 相当死んでいるんですから、それは私はわかっているから聞きませんけれどもね。  そこで、被爆者に対する特別措置の問題でございますけれども、特別手当なんかにも所得制限があるんです。これらに対して支給額は一万円くらい。これは、所得制限をどうしてしなきゃならないのか。被爆者の立場というのはあんた方わかっているんですか。これが私には納得のいかない一つなんですが、これはどうなんですか。
  69. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 所得制限につきましては、撤廃すべく努力をいたしたいと思っております。
  70. 藤原道子

    藤原道子君 いままでずっとやっておって納得がいかないのです。いっしますか。今度の予算に計上してありますか。
  71. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 来年度の予算につきましては、所得制限を要求いたしたいと思っております。
  72. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 所得制限撤廃を、概算要求しているということですね。
  73. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) そういうことです。
  74. 藤原道子

    藤原道子君 今日まで、所得制限を何だかんだと条件をつけて、わずか一万円とか三千円とか出している。あなたたちの気持ちがわからないんです。  私は、そこでもう最後に、日本被爆者の問題は国会でもいろいろ取り上げてまいりましたし、それから沖繩での被爆者の問題も問題になっているので、あなた方は少しは考えてくれると思いますが、最近、韓国の被爆者が問題になっております。その点をちょっとお伺いしたい。  韓国人の被爆者措置はどのように考えてこられたのか。それから、韓国人の被爆者は、その二世の場合、わが国被爆者の問題よりさらに複雑かつ深刻な問題をかかえておると思う。それで相当多数が被爆、被災したけれども、韓国へ帰った人で、帰ってから相当死んでいるんですね。しかも、二重の差別を受けているのです。そこで、わが国はもちろんのこと、韓国にどれだけの被爆者やその二世がいるのか。また、かれらの生活の実態がどのようになっているかというようなことは、当然調査しておられると思いますが、その状況について御説明を願いたいんです。  聞くところによると、まあ一万五千人から二万人ぐらいいるように私は聞いておりますけれども、一体どのようになっているか。——聞いてください。いいですか、もう時間がないから。これが一つ。  それから、もう一つは、私の聞くところによると、韓国に今度原爆診療センターを設立する企画があるということが原水禁世界大会における宣言とあわせて採択されているんですよ。そこで、在日朝鮮人の被爆者に対して、医療生活保障も必要であると思うし、韓国における被爆者と、来年三月から着工するといわれておる韓国の診療施設に対してももちろん、物心両面からわが国が援助する義務があるというふうに思いますが、これらについてどのような援助の手を差し伸べようとしておるのか、具体的に御説明をしていただきたい。  この韓国へ、この間行っていらして、そうして被爆者を訪問された、その人たちの話を聞いて、胸が痛くなるような思いがいたします。いままで国交の関係は別といたしまして、日本で仕事に従事していて、被爆して、そうして向こうに帰った。これが、いろいろな点から非常に二重の苦しみを与えられている。見ていられないような状態に放置されているということを聞きます。それで、韓国に同情されている人たちが、今度、日本で相当寄付金を集めているらしい。ところが、政府も何らかのあれをするようにちょっと聞いておるんでございますが、そういう考えを持っておられるのかどうなのか、その点についてちょっとお伺いしておきたい。
  75. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 韓国におられる原爆被爆者の方の概数につきましては、約二万人おるというふうに聞いております。しかしながら、残念なことには、韓国内におきます援助につきましては、私どもの外交上の問題といたしまして、一応私どもの国内法を適用するというわけにはいかないわけでございまして、いま第二点の御指摘のような診療所の設立等の問題がございまして、これを正式な外交ルートを通じまして私どものほうに申し出がございました場合には、関係各方面と協議いたしまして、できるだけの措置はとりたいと、かように考えております。
  76. 藤原道子

    藤原道子君 私の聞くところによりますと、韓国で今度この施設をつくるのに二億五千万円くらいかかる。で、もしもそれが寄付その他によってできるならば、できた後の運営は韓国政府が見ていこう、こういうのですって。ですから、いま一生懸命国内において寄付を集めていられるというふうに聞きました。何としても、まあ敗戦後の国際的ないろんな問題もございますから、私もその点わからなくはありませんけれども、日本において動員されて働いていた人たちということだから、ちょっときょうお伺いをしたわけでございますが、正式な連絡とか交渉とかというものはないんですね。その点について。
  77. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) まだ正式な外交上のルートで私どものほうへ申し出がございません。
  78. 藤原道子

    藤原道子君 この点はいま非常に韓国で騒いでおられる。これに対して同情して動いていられる人が多いということと、それから日本にも相当責任がある、アメリカにあるか日本にあるかということで、これはちょっと原爆の問題でお伺いしましたが、きょうもっともっとお伺いする予定でございましたが、省略いたしまして、次の機会にお伺いをしたいと思います。  スモン病のことを簡単にお伺いしたいと思います。  原因がキノホルムであるということが厚生省スモン調査研究協議会から出されたんですね。これで厚生省は七月一日に特定疾患対策室を発足させたが、これからどのような方法で、いつごろをめどに治療体制を整備するのか、その方針をまずお伺いしたい。
  79. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) スモンにつきましては、特定疾患ということにいたしまして、従来と同様な治療研究調査研究を進めてまいるつもりでございます。
  80. 藤原道子

    藤原道子君 最近非常に自殺者がふえているんですね。非常な問題になっているんです。スモン病患者全国にあなた方の調査ではどれだけ存在しますか。また病状がどうなっているか。スモン病患者をかかえた家庭の生活実態はどうなっているのか。これをまずお伺いしたい。
  81. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 昭和四十七年の二月二十六日現在におきまして全国で九千百三十一名、うち確実例といたしまして五千七百七十名、容疑例といたしまして三千三百六十一名となっております。患者の養護につきましては、全治経過の者が約七八%、不変の者が一四%、さらに悪化しております者が八%、まあこういう現状でございます。さらにこれらの患者の実態につきましては、本年度も引き続き実態の調査、あるいは治療研究等、研究協議会、さらにその中の疫学部会におきまして実態を把握してまいりたい、かように考えております。
  82. 藤原道子

    藤原道子君 結局ね、今度田中総理が最近各地で人間尊重だと、人間福祉の立場から公害や難病、奇病の患者に対しては全額公費負担をすると言明しているのですね。  で、私はここにいろいろ資料を集めてきているのですけれども、きょうは時間がございませんので、スモン病にどれだけ苦しんでおるか、実態を、病院へもこの間行って見てきたのです。こういう立場から、この総理の言明もあるし、厚生省としての責任もある。ことにキノホルムは劇薬として指定されたことがあるのですね、昭和十一年ですか。それがその後使われたのですね、自由に。こういう点についても私はきょうは追及したかった。けれどもきょうは時間がございませんので、この次の機会に譲るといたしまして、ひとつスモン病の実態、難病の実態、これらについては強く対策を急いでいただきたいということを要求いたします。  そこで、時間がないから足らないところは高山さんに質問していただきますけれども、——私は四時の汽車に乗らなければならない。  いま問題になっておりますのは同和鉱業柵原鉱業所の問題であります。この実態を調査いたしまして、私は非常に問題点があるということを痛感してきた。御案内のように、月産六万トンの生産体制からこれを今度は三万五千トンに減産すると、それによって現在千三百七人の従業員のうち八百一人を整理する。ところが同和鉱業は柵原中心だったのです。都市をあげて——労働省来ていますね。都市をあげてそれに協力してきて、今日まで成果を全国的にあげたのは柵原の諸君の力だと思うのです。ところが……。
  83. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 労働大臣、労働問題の質疑が始まったところですから……。どうぞもう一ぺん、いま労働大臣おらなかったから初めからその問題に入ってください。
  84. 藤原道子

    藤原道子君 聞いてちょうだい。同和鉱業は今度柵原鉱業所で、さきの視察にも、報告書にもあったように、非常にきびしい合理化方針が打ち出されている。それでその一つに、月産六万トンの生産体制から急に三万五千トンに減産縮小するということによって、現在千三百七人の従業員がいる、ところがこのうちの八百一人を整理する。半分以上です。これを整理する。その大部分が中高年齢層という実態なんです。それで労働組合としては、これから大いに会社側と交渉するわけでございますけれども、あなた方は、労働省は、労働者を保護する立場から、これはどうお考えになるか。時間がないから続いてやりますよ、これがまず第一。  それで、その合理化方針に近く会社側労働組合とが交渉を行なうのですけれども、だからきょうはあまり詳細にお聞きすることは省略いたしますけれども、いま大きな柱は定年制の延長とか、あるいは週休二日制とかということを労働省では推進しておいでになる。しかも日経連は七月末の経営トップセミナーで、中高年齢者問題を大きく取り上げている。ところが定年制は延長すべきであるというけれども、こうして会社の一方的なやり方、急速に半分以上首にするようなこのやり方に対して、あなた方は一体どうお考えになり、これをどうしたらいいとお考えるになるかを聞きたい。  それから同和鉱業の合理化案は、現在のままの人員規模で経営を続けていったら数年後に企業の存続が危険になるというけれども、いろいろ私たちが調べますと、まだ相当もうかっている。ここに資料もございますけれども、たいへんもうけが——若干減ったとしても驚くほどまだもうけがあるにもかかわらず、首にした労働者の再就職の面ですね、これらに対してはあまり熱心でないし、それからそこで首切られた中高年齢層生活は一体どうなるだろうかというところに大きな問題があり、不安にかられておるのが労働組合。そこで、この問題に対してまあ大臣としては、この中高年齢層が急速にばっさりと首になるようなことに対してどうお考えになるのか。会社がほんとうに行き詰まっているならまた別です。ところがまだ余裕があるというのが周囲の見通しなんですが、これらに対してちょっとお伺いしたい。
  85. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) この問題、私も報告を受けまして、率直に言えば非常に胸を痛めております。ただ、労使がまだ話し合う段階でございますから、労働省がとかく言うわけにはまいりませんけれども、この労使の話し合いというものを私も注目してまいりたいと思っております。  それから、首を切られるのは中高年齢層であろうというお話でございますが、私の聞き及んでおるところでは、九月三十日に定年になるという人は別問題として、満二十五歳以下の者、これはおそらく私の察するところ、満二十五歳といえば再就職が非常にやりやすいということだろうと思うんですけれども、満二十五歳以下の者を除く全員がこの勧告の対象になるということも聞いております。しかしながら、そういうことにはなっておりましょうけれども、現実に首を切られる者は年寄りが多くなるんじゃないか、これも率直に私どもそう判断をいたしております。でございますから、もちろん労使の、先ほど申し上げたように、話し合いをじっと注目していかなきゃなりませんが、最悪の事態を迎えたときにも、求職手帳の扱いその他でわれわれなりに万全の措置をとっていきたいというふうに思っております。  なお、定年延長、これはもう私が大ぎょうに言えば政治生命をかけるくらい一生懸命になっている問題でございますが、御承知のとおりですが、そういう機運のときに、老齢であるがゆえに首を切られるということが起こりますことは、これはまことに悲しいことでございます。でございますから、そういうことも踏まえて私どもは何としても定年延長というものを実現しなきゃならぬ、そのためにもがんばらなきゃならぬ、こういうふうに思っております。私も、具体的な幾らもうけておるかということまでは存じませんけれども、この問題につきまして私の考えることを申し述べておきたいと思います。
  86. 藤原道子

    藤原道子君 きょうはこの問題について、通産省にも来ていただいたりいろいろしていただいたのですけれども、たいへん失礼いたしましたが、時間がございませんので……。  そういう考え方で、蓄積財産もたいへんあるんです。にもかかわらず、今度は病院も急に診療所に置きかえる。会社がやっている鉄道も半分以下に切り下げる。そうすると結局は通学とか通勤に非常に影響が起こる。それからまた、病院がなくなることも考えられるし、会社をささえてきた労働者の今日の生活の問題が大きな問題になる。余裕がありながらそういうことをするということに納得がいかないのです。資料があるのですけれども、きょうは時間がありませんので、大臣を呼びながらたいへん失礼いたしましたが、そういうことをこれから交渉をするのですから、九月の二十日というのはまだ時がございますので、十分お聞きになって、ぜひ企業側と話し合いをしていただいて、いまの会社をささえてきた労働者が中高年齢層になっているので、したがって、これらの人の生活権を守るような指導をしていただきたいことを強くお願いし、厚生大臣には病院の問題その他でひとつ御協力を願いたいということをお願いして、時間がまいりましたので終わります。
  87. 高山恒雄

    高山恒雄君 ちょっといまのに関連して。  いま藤原委員の言われたことで事は尽きておるのですが、一番大きな問題は、この約半数の人員整理をするということです。したがって、長い間産業として今日まで発展した過程において、少なくともこういう——会社もドルショックの面があるということを強く主張いたしておりました。けれども、合理化というのは一挙にやると一挙に犠牲が出るわけです。合理化の責任というのは経営者にあるわけなのです。先の見通しを立てて、まあドルショックがどのくらいの財政的な問題に響いたのか、これは私も調査をいたしませんでしたけれども、しかし、いま直ちに半数にしなければならぬということではないじゃないか。こういう問題については、私はやはり労働省として失業対策の一環からしてももっと深く指導と考慮を考えてやらすべきだと、こういう点をひとつ要望いたしておきます。  なお、厚生省については、これは現地でも私たち調査に行きましたときに申し上げておいたのですが、この柵原病院というのは、病院という名目のもとに、四十六年度の統計ですけれども、八千百五十九名、そのうちの四百五十五人が入院できるというような大きな施設なのです。こういう施設を今度は何にしようとするかというと、診療所に変更しようというのです。病院診療所——いわゆる半数に減った人の診療所という形で一般にも使用させておったものを今度はこれを封鎖してしまう。これは何といっても社会問題なんです。したがって、これはもう村をあげての重大な問題の一つとなろうと思うのですよ。労使関係の問題以外に、その村の社会問題として起こっておるこの事実をこれは見のがすことができないと私は考えております。したがって、現地においてもわれわれはそういう意見を述べてはおきましたが、非常に重要な問題で、これは労働省、厚生省十分に連絡をとって、どういうふうにして一体継続をさせていくことが正しいかという面について、最小限の犠牲者で食いとめて、そうして将来に備えていくという方針でやっていただくことを強く私は労働省と厚生省要望申し上げておきたいと思うのです。     —————————————
  88. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 委員異動について御報告いたします。  本日、上原正吉君が委員辞任され、その補欠として土屋義彦君が選任されました。     —————————————
  89. 小平芳平

    ○小平芳平君 他の委員会で、私が食品中毒による被害者、あるいは薬品による被害者、こうした被害者を公害に準ずるというか、公害健康被害者の救済法が公害にはできておりますが、こうした食品の被害者、薬品の被害者についても同じような趣旨で救済制度を立ててほしいということを主張したのに対して、塩見厚生大臣が、四十八年の予算の編成期にも当たりますのでその線で編成作業を進めますという答弁があったわけですが、その後の経過について食品と薬品の両方について御説明をいただきたい。
  90. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) ただいま小平委員からお話がありましたとおり、前回他の委員会でございましたが、その席で食品あるいは薬害等による難病に対しまして、ひとつ明年度の予算におきましては、これらについて前進をした対策をとりたいということをお答えを申し上げたわけでございます。それ以来私どもといたしましてはいろいろの難病——難病と申しましても従来厚生省でいわれておりましたスモン、ベーチェット等の難病ということに限らずに、いわば社会的な難病、社会的な関連による難病あるいは治療方法が発見をされていないとか、あるいは非常に長期の療養を要するとか、あるいは高額の患者負担を要するというような、一家がそれによって暗やみになるような、そういったような難病等につきましては、明年度特別に難病対策として前進をした施策を申し上げたいということで、さしたいということでいろいろ検討を加えまして、若干は概算要求の中に織り込みましたが、大蔵省におきましても重点施策につきましては九月一ぱいというようなことにもなっておりますので、ただいま実は各局にまたがるものでございますので、各局を通じまして一つのプロジェクトチームというようなものをこしらえて、これが対策をただいま作業を進めておるわけでございまして、何らかの前進をぜひともはかりたい。これは田中総理の御意見でもございますので、何らかの前進をはかりたいということでせっかく努力をさしていただいておる状況でございます。
  91. 小平芳平

    ○小平芳平君 難病対策全体については後ほどまた私はあらためて質問をいたしますが、厚生省当局として、私がいま問題提起をしている食品中毒による被害それから薬品による健康被害、この救済制度をつくろうとしているかいないか、どういう準備をしているか、その点ひとつ具体的な答弁をいただきたい。
  92. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 食品による事故に対しまする被害者救済の制度と申しますか、どのような形でもって被害者の迅速な救済をするかということにつきましては、御案内のように前国会におきまして食品衛生法の一部改正のときに参議院でも附帯決議がつけられまして、その制度の実現を一両年中にするようにということでございますので、私どもといたしましてはさっそく制度的な問題あるいは実際にいろいろと過去に起こっておりました事故等の内容調査いたしまして、さらに来年度中には先ほど大臣からも御披露ございましたように、概算要求の中にこの関係調査費を要求いたしまして、正式に厚生省としてこの問題を検討して、その実現につとめるようにしてまいりたいということで、現在その概算要求の中身等の検討をしている段階でございます。
  93. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 医薬品の副作用に関する救済制度の検討につきましてお答えいたします。  小平先生ただいま御指摘のように、食品の問題と並びまして医薬品の副作用による事故が最近いろいろと生じておるわけでございます。医薬品につきましては多少通常の公害と違う要素もあるわけでございまして、医薬品は相当強い作用のものを使わざるを得ないというような性格から、副作用が当初からある程度は認められるものであっても、より大きな医療の目的を達するためにその副作用を防止しながらある程度使わなければならないというような場合もあるわけでございますし、また、医薬品が製造された当初におきましてすべての副作用を調査して副作用なきを期するのが理想でございますが、時といたしまして、調査の手の及ばなかった副作用が長期にわたっての服用等においてあらわれるというような例もまれにあるわけでございます。そのようないろいろな医薬品の特殊性等を考えますと、医薬品の副作用の被害者の救済につきましては、やはり特殊な制度がなければならない。ただ、いずれにいたしましても、この副作用にも、たまたまその副作用を受けられた方は何ら自己の責任によらない場合が多いわけでございまして、そういう点からは何らかの救済措置が必要であろうと存じます。  ただ、どんな方法によって、どういうような程度にというような問題、これはいろいろ法律上、技術上むずかしい問題がございまして、実は今年度から局内で専門家の意見も聞きながら勉強会をいたして詰めておりますけれども、なおこれは慎重に検討を要する、しかも早急に実現しなければならない問題でございますので、来年度におきまして、ただいま環境衛生局長からお答え申し上げたのと同様の趣旨の医薬品の事故に関します調査機関と申しますか、調査費を要求いたしまして、もう少し広い範囲の専門家の御意見を聞き、またいろいろな資料等も収集し、外国の制度等も勘考いたしましてできるだけ早く制度化いたしたい、そのように考えて勉強を進めておる次第でございます。
  94. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生省としての概算要求はまだまとまったものはないでしょうけれども、四十八年度の予算要求の重点項目、これを私の部屋へいただいたのですけれども、この中に私が見て非常にがっかりすることは、いまの食品中毒、すでに森永の砒素ミルクは事件発生後十七年、それからカネミ油症で四年、こういう事件発生以来長い間、苦しみ苦しみ抜いて後遺症に悩み苦しみ抜いている被害者、この被害者の方たちにとっては国が食品中毒による救済制度を立てようということで発表がありましたので、いつだ、いつだと待っているわけです。にもかかわらず具体的には二百二万九千円ですか、食品中毒調査費が。こんな調査費では……。もうそういう段階ではないでしょう。それは森永でしたら企業が出せばいいですが、カネミの場合には、実際上企業から現在の公害被害者と同じように毎月金を出せと言っても出せられないわけでしょう。そういう場合、とりあえず国なり県なりがたてかえて被害者救済をやる、そのための予算を要求しなくては、——ようやくいまになって調査費をこれから要求しようというようなことでは、早くても四十九年になってしまうのですね、もっと進んだものができないのですか、いかがですか。
  95. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 確かに非常に急を要する問題でございます。いろいろと制度的にもあるいは技術的にも検討をしなくてはならない点もまたあるのも事実だろうと思います。そこで、調査費、概算要求でまだ固まった段階ではございませんが、調査費として計上いたしてあるとしますれば、それはむしろ制度的な問題についての検討をいたすということで、実態調査をいまから始めるといったような趣旨のものではございません。早く制度的なものについての検討を、もちろん諸外国の例なども参考にしなくちゃいけませんが、そういったことを調査し、結論を出すというための費用を想定いたしておるわけでございます。できるだけ私どもとしては早くこの問題について結論を出したいということで、今後とも努力をしてまいりたい所存でございます。
  96. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう意味の制度の調査なら、何も二百万円程度の調査費がなくてもいまからできるじゃないですか、いまからでも。  そうしてもう一つ伺っておきたいことは、いま私の述べましたようなカネミ油症とか森永砒素ミルクのような、そうした被害者が入るわけですね、その点いかがですか。そうした人たち対象にした制度を考えようということでしょう。
  97. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) もちろん予算が入りましてから初めて調査をし、勉強するということではございません。現在でもやれる範囲でもって研究もし検討もしているつもりでございます。しかしながら、やはり正式に国の事業として、厚生省事業として取り組むというところに一つの意義があろうかと思いますので、概算要求をいたした次第でございます。  それからカネミ、あるいは森永砒素ミルク、これらの点を含めるか含めないかという点も含めまして検討してまいりたいと考えております。
  98. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ局長の答弁はすぐそういうことになってしまうんですが、大臣、その辺はもうきのうやきょう起きた問題じゃないわけですから、また実態調査をするまでもなく、厚生省わかっているというのですが、私はわかってない点を数々これから指摘していきますけれども、とにかく大臣としては四十八年度中においてこうした被害者救済が始まるように御努力願いたいと思うのですがいかがですか。
  99. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) この前も御答弁申し上げたと記憶いたしておるのでございますが、こういったような病気に対しまして、まあ前大臣は公害病に準ずる取り扱いをしたいというようなお話、御答弁も申し上げておったようでございまするが、私も公害病等のこの被害者の方々を懸隔のない、バランスのとれたような救済措置を考えてまいらなければならぬと申し上げたような次第でありまして、したがいまして、こういった問題を考える場合に、あるいは森永の場合とカネミの場合を比べてみましても、必ずしも責任者が、加害者が完全に——加害者の負担能力、あるいは能力等にも若干の差があるようでございますし、あるいはまたその加害者のきまる前の措置の問題がございましょうし、あるいは能力不十分な場合の措置がございましょうし、また各病気につきましてはそれぞれ特別の対策を講じなくちゃならぬというようなこと等も考えられますので、そういったようなものをそれぞれ適切な対策ができるように、そういったようなものを含めたひとつ救済措置をぜひ考えたいということで鋭意これから努力をしてまいりたいと思うわけでございまして、なかなか一つ一つの問題を取り上げますとそれぞれむずかしい技術的な問題もあるようでございますし、そういうようなものを総合して、そうしてこの前も御答弁申し上げましたとおり、こういった非常な難病に対する、この被害者の方々が、やはりバランスのとれたような姿で対処できるというような救済方法を検討してこれを実現するように、真剣に努力をしてまいりたいと思っております。
  100. 小平芳平

    ○小平芳平君 ただいまの御趣旨はよくわかりますが、いまここで一番大事な点は、四十八年度は制度調査だけで終わるのか、それとも制度の調査はそんなに一年もかかるわけじゃないと思うのですよ、実態がわかっているというのですから。したがって、まだ大蔵省に概算要求を出したわけではないのですから、大臣としては四十八年度中においてその救済が発足できるような御努力を願いたい、御決意を願いたい、こういうことを申しているのですが、いかがですか。
  101. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) いや、小平委員の言われること、ごもっともでございまして、基本的な問題につきまして若干時間も要するということもあろうかと思いますが、四十八年度でできる施策につきましては、効果がある施策につきましては、これを実現するように努力したいと思います。
  102. 小平芳平

    ○小平芳平君 それからカネミ油症の問題はあとでまたもう少し詳しく質問いたしますが、大臣が発言されると、田中総理は難病は公費で負担すると、あるいはスモンやイタイイタイ病のようなものも公費負担すると発言したわけですから、何かその辺非常にあいまいなんです。したがって、スモンについては、先ほど答弁がありましたが、それじゃだめでしょう。局長は前局長から申し送りを受けていないですか。スモンは四十六年度で調査研究治療研究をやったけれども、実際その治療研究費のほうは余っちゃったわけでしょう。いままでのやり方はだめだったと、新しいやり方をしなければいけない、そういうことになっているでしょう、いかがですか。
  103. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 四十六年度の予算におきましてスモン治療研究費が残額を生じましたのは、一応六百名を予定いたしまして予算を計上いたしましたところ、その六百名のうち約二百名につきましては健康保険法の本人、あるいは生活保護法の対象でございまして、約四百人がその治療研究費の該当になったという事態におきまして、二百名分の治療研究費が残額を生じたと、こういうことでございます。
  104. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、問題は、入院に限ったのが実態を知らないから入院に限ってしまったわけなんですね。実際は入院したくても入院させてくれないのが実情じゃないですか。しかも入院していても治療の方法がない、それが実情でしょう。したがって、重症の入院に限るということが間違いであった。実際上スモンの患者が先ほどのお話では九千人ですか、確定的な患者でも五千人、それだけの患者が発生しているのに、六百人に限る理由がどこにあるのですか。ですから、ただことばだけで人間尊重だとか難病は公費負担だとか、ことばだけで言われてしまいますと、被害者はそんならば自分たちも救われるかと思うのですよ。にもかかわらず実情は九千人のうち六百人に限った、その六百人の中で四百人だった、そんなことじゃ人間尊重にもならなければ難病公費負担も実現したなんて言えないでしょう、どうですか。
  105. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 昨年度の予算執行につきましては、御指摘のような事態が起こっております。しかしながら、私どもの治療研究費の対象といたしますものにつきましては、やはり一応入院した者につきましての治療研究ということにつきまして重点的な施策を考えておった結果だろうというふうに推測いたしております。したがって、いま御指摘の通院患者につきまして治療研究費の対象にすべきではないかというお話もございますが、私どもの予算の性格上、治療研究推進という見地から、それを公費の負担対象にすべきかどうかということにつきまして検討中でございまして、今後の課題と現在のところ考えております。
  106. 小平芳平

    ○小平芳平君 局長、前局長は、筋無力症とかスモンとかベーチェット、そうした難病については治療方法がわからないわけでしょう。入院させてくれといったって入院させてくれないのが実情じゃないですか。したがって、これからの対策としては入院には限りませんというふうに答弁したでしょう。滝沢さん、どうですか。
  107. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 私が担当しておりました当時の考え方につきましては、ただいま先生おっしゃるとおり、入院治療という性格だけに限らず、いわゆる研究という対象で外来も必要であろう。というのは、特にベーチェットあるいは筋無力症については医学的な観点からも、病気の性格からもその点が重要であるというふうに考えまして、確かに国会等におきますお答えの中でもその点をはっきり申し上げております。ただいま現局長がこの点について触れましたのは、外来の事務処理は入院と違いまして新しい方式を導入しますので、各方面との折衝の問題等も含めて検討しておるということであろうと思いまして、私はその方針を引き継いで検討してもらうということでお願いしてございますし、したがって外来患者のうち入院治療に、いわゆる研究治療ということに関連あるものを、どういう対象をどういうふうに取り扱う、あるいは入院と同様定額としたら幾らの金額なり、実態はほぼわかっておりますけれども、それに応じた金額の設定、それから外来に導入することによるベーチェット、筋無力症その他外来治療がむしろ多いというケースに対する対処等も含めて、おそらく関係方面との折衝を含めて検討中ということであろうと思いますので、私のお答えした方向というもので検討してもらっておる、こういうふうに私は考えております。
  108. 小平芳平

    ○小平芳平君 その関係方面というふうなことをいま聞いておるのじゃなくて、大事なことは、この治療研究というもの、これはきわめて、九千人のうち六百人にしぼるということ自体が人間尊重じゃないでしょう。そこで、そういうようなしぼり方をしないで、そしてもう生活困窮、生活が困難の上に長年病気で、どん底にいるわけですので、早く在宅を含めた治療研究費を支出してほしい。四十七年度予算は五億三千万ですか、もうとっくに成立しているんですが、これはいつ、どういう形で開始されますか。
  109. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 本年度の特定疾患の治療研究費につきましては、スモンにつきましては四月からということになっております。残余の三つの疾患につきましては、近く決定をいたしたいと思っております。
  110. 小平芳平

    ○小平芳平君 スモンは四月からということは、在宅を含めてですか。通院を含めてですか。それから、これからの三種類通院を含めてですか。
  111. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 先ほど申し上げましたように、一応原則として入院対象として考えております。在宅の通院治療につきましては、ただいま医務局長からもお話がございましたような線に沿って、現在検討中でございます。ただし、在宅患者の、いわゆる福祉面の措置につきましては、治療研究費の対象にならないと考えておりますので、あくまで治療研究あるいは調査研究主体にした執行ということに相なろうかと思います。
  112. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうすると、ちょっと局長、はっきりしていただきたいことは、主体入院かもしれませんが、通院も含めるということ、これが一つ。それから三疾患については近くというんですがね、これも滝沢さんが局長の当時は九月か十月という目標を言っておられたんですが、いかがですか。
  113. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 第一点のことにつきましては、従来の方針でまいると思います。それから第二点につきましては、一応九月を目標に執行したいというふうに考えております。
  114. 小平芳平

    ○小平芳平君 それじゃ、滝沢局長はおそらく答弁した趣旨で進めるだろうということを言っているんですが、通院を含めないとなったらだめじゃないですか。厚生省の方針ががらっと変わっちゃう。大臣、どうですか。そういうふうに局長意見が食い違ったら大臣が指示していただきたい。
  115. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 答弁がそのときどきで食い違ったんじゃ困りますね。出たとこ勝負の答弁をするところじゃないんだから、委員会は。
  116. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) まあ、いまの答弁、私も聞いておりまして、必ずしも実は食い違っておるようにも感じなかったわけでございまするが、これは意思を、私も責任持って統一をしてやりたいと思います。
  117. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣、統一はけっこうですが、結局筋無力症という病気の方は、入院している人が何人いますか、何人。第一入院させてもらえないわけですよ。それを入院に限ってしまったら対象がほとんどなくなっちゃうわけです。ですから在宅の人を含めなければ、人間尊重、難病公費負担なんて口先だけになっちゃって困るわけですよ。そういう点どうですか、大臣。
  118. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) 本年度の予算がどういう内容であったか、私実はまだ承知していないわけでありまして、この点につきましては、そういう点も十分に明らかにして、そしてどういうふうな予算の執行が適正であるかと、また小平先生の御意見等も承りましたので、そういう点も頭に入れて、予算の正しい執行に当たりたいと思うわけであります。  ただ、私がいろいろ申し上げましたのは、混同されては困ると思いますので、まあ今後来年度の施策につきましていままで御答弁申し上げておったわけでありまして、本年度の予算内容等につきましてはまだつまびらかにしておりませんので、その点もひとつ十分に検討さしていただきたいと思います。
  119. 小平芳平

    ○小平芳平君 それなら四十七年度予算は、滝沢局長の時代に編成された予算ですから、その滝沢局長が筋無力症、ベーチェット病は、当然通院を含めてというふうに、はっきりしばしば答弁をし発言をしていたわけですから、新局長、前局長予算編成、また国会の審議の過程、そのとおり受け継いでやってください。そのとおり受け継いでやるのがあなたの任務でしょう。いかがです。
  120. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 御説のとおり十分検討さしていただきたいと思います。
  121. 小平芳平

    ○小平芳平君 検討じゃないですよ。滝沢局長が——四十七年度予算の中身が問題だというふうに大臣がおっしゃったので、四十七年度予算、五億三千万ですか、特定疾患対策費が。その中身は滝沢局長が、前局長局長時代に編成し、そしてまたスモン等の特定疾患も滝沢さんが局長時代にきめ、そして通院を含めた、在宅を含めた治療研究費を考えておりますと、そういうことにいたしますと言っているのですから、そのとおりやるのが当然でしょう。どうですか。
  122. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 外来治療等につきましても、やはり治療研究対象になるというものにつきまして、たとえば筋無力症、これが御指摘のとおり外来治療が多いという事実もございます。したがいまして、その支払い方法等にも若干問題がございまして、検討すべき事項が残っているということを申し上げると同時に、やはり前局長の意思を継ぐべく努力はいたしたい、かように考えております。
  123. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、まあこれだけやっているわけにいきませんけれどもね。支払い方法の検討をするのはこれはいいですよ。それもそんなに長くかからないでしょう、支払い方法の検討ぐらいに。ですから、大臣いまのような次第なんですから、ひとつ大臣からそういう趣旨の指示をいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  124. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) ただいまも御答弁申し上げましたとおり、この内容等につきまして、実はこの委員会で私も初めて聞いたような次第でございまして、若干時日をかしていただきたいと思います。
  125. 小平芳平

    ○小平芳平君 こうなったらひとつ滝沢局長がんばってください。  それから、次に、先ほどの続きですが、薬品による健康被害ですね、これはいろいろむずかしい問題があるということを代々の局長がおっしゃっているわけですが、たとえばストマイ、あるいはコラルジル、これなどは国自体が因果関係を認めているわけですね。結局、そういう副作用があるということは、ストマイの場合なら難聴あるいは神経障害があるということを認めるいる。コラルジルについても新潟地裁へ出した書類には因果関係はほぼ大局的に認めたように新聞で報道されております。こうした被害者の救済はどこがやるべきか。企業から出させるなら早く企業から出させるように、国に責任があるなら早く国が責任をとって救済をするようにするのが当然ではありませんか。  そこで、ストマイについては特にどういう経緯があって許可になったか、使われるようになったか、その辺をひとつ具体的に御答弁願いたい。
  126. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) ストレプトマイシンの製造許可、あるいはいまの法律で申しますと製造の承認ということになりますが、その経緯でございますが、昭和二十四年の六月にストレプトマイシン研究協議会という厚生大臣の諮問機関が結成されまして、——ストレプトマイシンは御存じのように外国で発明されたものでございます。——技術を導入いたします生産及び応用に関する研究が行なわれまして、その協議会の結論に従いまして同年十二月に薬事法に基づきますストレプトマイシンの製造基準というものが制定されております。この基準に基づきまして製造されるストレプトマイシンにつきまして、昭和二十五年の四月以降各メーカーに対しまして順次当時の法律で申します製造許可が行なわれておる次第でございます。
  127. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで私が他の委員会で、あるいは前国会の委員会でストマイのことを取り上げたときに、三十八年に通知を出したというんでしょう、それ以後は被害者が減っているというんですが、実際は被害者が発生しているんです。現に川崎市で訴訟を起こしている青山さんという方も四十一年から治療を受けた方です。ですから、そういうような被害に対してどこが責任を持つわけですか。
  128. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) これは先ほども全体の被害者の救済の制度化のところでも御答弁申し上げましたように、いろいろな要素が含まれておると思います。ストレプトマイシンにつきまして申しますと、これは御承知のように製造許可されました当初から難聴あるいは平衡機能障害というような副作用がそう多いパーセンテージではございませんけれども若干あるということは知られておりまして、したがって、使用上の注意につきましても副作用に注意しながら使うようにというようなことを書く義務を基準の中で設けておるわけでございます。ただ半面ストレプトマイシンは、製造されました二十四年当初といたしましてはなお結核患者がたしか二百万人をこえておった時分であろうと思います。そういった時期におきまして、結核の化学療法剤といたしましてはほかにかわるもののない非常に大きな効果を持っておったものでございまして、したがって、医師の立場といたしましても、ストレプトマイシンを結核の治療のために副作用に注意しながらも使わなければならないというような事情があったわけでございます。先ほど御指摘の三十八年とおっしゃいましたのは、その後四者併用等の他の化学療法剤の優秀なものが出てまいりまして、ストレプトマイシンのみにたよらなくても結核の治療が進められるという体制が出てまいりまして、そういった段階におきましてストレプトマイシンの使用の基準につきまして副作用に対する注意事項を順次強化していったというような時期を申し上げたんであろうと思いますが、そういうようないろいろな要素がからみ合っておりますために、一つは副作用があるということを知りながら使わざるを得ない、ある程度受認しなければならない立場になる場合もございます。半面、これを使用いたします医師としても、十分そういう副作用を観察しながら適当な投与をしていくというような職業上の立場があるわけでございます。また、メーカーといたしましても、そういった医薬品の開発を通じて、できるだけ副作用の少ないものをつくるとか、あるいは使用上の注意におきまして、そういった点をはっきり書くというような義務を課せられておるわけでございまして、この問題について申しますと、ただいま訴訟も起こっておる段階でございますので、いまだれの責任においてということをここで判断いたしますことは、ちょっと困難ではなかろうかと考えております。
  129. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで、医薬品による被害者救済制度を考えようという場合に、その場合にはいまのストマイ、コラルジルというように因果関係のはっきりしているもの、これは当然入れるということを前提に、そうしたものを対象に検討が始まるわけでしょう。そのように理解してよろしいですか。
  130. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) いま御指摘の医薬品のうちで、コラルジルはもうすでに国内でも販売されておりません。ストレプトマイシンにつきましては、いま申し上げましたように、相当の副作用がございますが、やはり結核には非常に大きな効果を持っておりまして、気をつけながら使っておるというのが実情でございます。御質問の趣旨は、こういったものが制度化された場合に、過去においてそういう副作用の対象になった人たちに対しても適用されるべきかどうかという御趣旨の御質問かと存じますが、そういう御趣旨でございますか。——そういう点につきましては、先ほど申し上げましたように、いろいろな例等から考えまして、いま専門家の意見を聞いており、さらに来年度そういう規模を広げまして、専門家の意見を聞き、外国の制度等も調べて、制度として決定しなければならない問題でございまして、いまどういうふうにするということを申し上げるだけの自信はございませんが、ただ過去の例等から見ますと、たとえばかなり例はこれは違うとは思いますけれども、予防接種の事故による救済制度、これも行政的に一応制度化されておる例がございます。こういったものにつきましては、過去にさかのぼりまして、予防接種法あるいは種痘法に基づく予防接種である限り、証明がつけば対象にするというような措置がとられている例もございますので、やはり私としては、できればさかのぼって適用されることが望ましいのではないかといまの段階では考えております。
  131. 小平芳平

    ○小平芳平君 できれば望ましいというようなことじゃなくて、公害被害者救済制度の場合も、法律ができてから新しく発生した被害者を救済しようというんじゃなかったと思うんですよ。ですから、被害者救済制度ができた場合に、それはある認定委員会ができるか、どういう研究班ができるかわかりませんが、とにかくそういう範囲で認定になったものはその時点で救済するというための制度をつくろうとするわけでしょう。いかがですか。
  132. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) いま申し上げましたように、医薬品の副作用による健康被害というのにはいろいろな形態があるわけでございます。その各形態につきまして、結局これは救済制度と申しますと、究極には経済的な形に化体せざるを得ない要素が多いと思いますが、そういった費用の負担関係をどうすべきかというような問題、それからその際において、いま申し上げたように、副作用の知れておりますもの、それから全然未知の場合、こういったことは、やはり少なくともいままでの民法論によります賠償責任論から言いますと、形が違ってくるというような要素もあろうかと思います。そういうような点を総合いたしまして、いま民法、あるいは訴訟法、行政法、あるいは技術系統、そういった専門家の御意見を取りまとめておる段階でございまして、したがって、私がまだ担当者といたしましてこういうふうにするという結論を出す段階に至っておりませんので、私の気持ちとしての希望といたしまして、さっき申し上げましたような表現をいたしたわけでございまして、そういった方向に向かうことを希望いたしております。
  133. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣、いま局長が説明しているような経過のようです。大臣からも、食品や医薬品による被害者救済制度を検討します、また事務当局に検討させますということで今日に至ったわけであります。したがいまして、そうした被害者救済制度というものは現実の被害者を救済する。カネミ油症とか、あるいは形態はいろいろ違うと思います。ストマイの被害者とか、そういう被害者を救済するための制度を大臣は指示していらっしゃると思うのですね。で、それは私たちが教育を受けた時代は、公の利益とか、国家目的とかということがひどく強調されたのですが、いまはそうであっちゃならぬわけでしょう。個人の幸福、個人の福祉というものが優先して守られなくちゃならない。その場合に、第一ストマイによって何%の被害者がいるかさえわかっていないわけでしょう。そういうものを早く調査し、救済してほしい。そのための制度をこそ大臣が検討さしていると思うのですが、いかがですか。
  134. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) 小平先生の言われたとおりだと思いまするが、先ほど局長からも答弁を申し上げましたとおり、この被害の態様等につきましても、いろいろと責任の所在その他につきまして、必ずしも同じような規格、カテゴリーでくくれない。それぞれの理由がそれぞれ違ったというふうな問題等もあろうかと思いまして、そういうようなことで、これを推進する上に非常に困難があろうかと思いまするが、私はそういう困難を克服して、そうして何とかこの救済制度というものを進めてまいりたいと思うわけでありますが、ただいま局長からお話がありましたとおり、それぞれの問題についてそれぞれの具体的な妥当性を持ったようなことも考えていかなければならぬというわけで、その点は御理解をいただきたいと思います。
  135. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがって、現実の被害者を救済する制度と、このように理解してよろしいですね、大臣。
  136. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) そのとおりでございます。
  137. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから次に、カネミ油症についてもう二、三点お聞きしておきますが、この他の委員会でカネミ油症については認定基準が現実に合わないということ、したがって、すみやかに認定基準を変えなくちゃいけない。PCBの実態がよくわからない四十三年の段階でつくった認定基準、これはもう現実に合わないということが第一点。それを具体的にいつ変えられるか。  それから第二点としては、認定は検診班が行なうとなっておりますね。ところが、検診班というものは法律的な根拠、条例の上の根拠は何もないわけです。ところが、その認定の規則には認定は検診班が行なうとなっている。そこで、検診班に対するいろいろな問題点も、具体的に何回も私が提起しておりますから繰り返しませんが、その検診班についての厚生省の考えをこの段階で改めてもらわなくちゃいけない。それが第二点。  それから第三点としては、研究が進んでいないという事実。現実の問題として研究費が四十七年度六百万ですか、そういう程度では、実際に大学から現地へ行って検診してくるその旅費とか、会議費ぐらいで終わってしまう。新しくPCBの人体に対する影響あるいは奇形児に対する問題、そういう点が全くなされてないということ、そういう点は大きく充実しなければいけないと思いますが、それが第三点。  以上三点についてお願いします。   〔委員長退席、理事丸茂重貞君着席〕
  138. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 油症の診断基準につきましては、近く、大体九月の中旬くらいを目途に研究班の会議を招集いたしまして、そこで新しい知見に基づく、新しい考え方に基づく診断基準についての打ち合わせをいたしたいと思っています。その意見によりましてすみやかに改定いたすように作業を進めてまいりたいと思います。  それから、認定の方式でございますが、これは現地のほうでいろいろと、ことに最も当該患者の多い長崎県あるいは福岡県のほうでいろいろと県として考えているようでございます。私どもはこの県のほうの意見、考え方も十分に考慮いたしまして、実態に合ったようなことでもって、現地の事情に合った方法で行なうように指導してまいりたいと考えております。   〔理事丸茂重貞君退席、委員長着席〕  それから、第三点の研究費並びにその成果でございますが、過去、四十七年度も含めまして約九千余万円、——九千三百六十万円の治療研究費を計上し研究を実施してまいったわけでございますが、PCBの体内におきまする動き方、あるいは対症的な療法等、いろいろと成果はあったのでございますけれども、PCBを体内から無毒化して追い出すといったような、いわば根本的な治療方式というものは残念ながらまだ確立されておりません。四十七年度におきまする調査費は御指摘のように予定として七百万円ほどを充てておりますが、若干いままでの傾向から見て減ってきたではないかといった御指摘かと思います。しかし、私どもは決してこの研究を断念したわけではございませんで、来年度の予算要求には、環境庁を通じまして要求する分も含めまして大幅な要求をいたしたいと。また、PCB全体の問題としても、関連した研究は進めていくように、これも環境庁を通じまして予算要求を考えていきたいと思っております。
  139. 小平芳平

    ○小平芳平君 時間の関係で私はそのPCBの問題について詳しく質問することができないのが残念なんですが、一つ母乳だけを例にとってみますよ。母乳の場合は、今回の暫定基準に入れなかったわけですね。これは、母乳が実際上汚染が大き過ぎて基準のきめようがないから入れなかったんですか、いかがですか。
  140. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 私どもが今回食品中のPCBの暫定的規制値を設定いたしましたのは、これは食品衛生上の問題として見たわけでございます。まあへ理屈を申すようでございますけれども、母乳はその限りでは食品衛生法の対象ではございません。しかしながら、私どもは母乳の汚染ということについては、これはまた児童家庭局のほうからのお答えがあろうかと思いますが、決してこれを軽視しているわけではさらさらございません。むしろ食品中のPCBを規制することによりまして、母乳中のPCBの濃度を下げさせるということが一つの大きなねらい、目的でございます。  PCBの母乳中におきまする濃度につきましては、これは児童家庭局長のほうから見解をお聞きいただきたいと思いますが、私どもは母乳の中のPCBの濃度というものが非常に高いから、こういったようなことでもって、今回、この食品の暫定基準に加えなかったということではございません。  なお、さらに、妊産婦あるいは幼児の場合のPCBに対する暫定規制値の考え方につきましては、食品衛生調査会に設けられておりますPCB特別部会において引き続き検討いたして、至急に結論を出していただくようにお願いをしてございます。
  141. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは今回の国の暫定規制は一日体重一キロ当たり五マイクログラムということで出したわけでしょう。そうすると乳児の場合三キロから七キロ、そうして一リットルの母乳を飲むとして計算しますと、国の一日体重一キロ当たり五マイクログラム自体にも私はいろいろ問題があるわけですが、それはあとにしまして、今回、国がきめた五マイクログラムで計算しても、母乳は平均〇・〇二五PPMということに計算の上では出る。国の規制値五マイクログラムをそのまま使った場合でも、母乳は〇・〇二五PPMとなる、計算はこれでいいですかどうですか。
  142. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 乳児の体重を五キログラムに想定いたしますと、先生の御指摘のとおり一リットル一日飲むといたしますと、計算上二五マイクログラムになります。
  143. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうすると大阪で発表された〇・七PPMのほうは二十八倍の汚染ということになる。京都で発表された〇・三PPMの母乳は十二倍の汚染ということになる。それから愛知、富山、高知等で発表された〇・一PPMの母乳は四倍の汚染ということになる、これはどうですか。
  144. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 私の立場からは一キログラム当たり五マイクログラムの安全性についての考え方をお答えします。一日体重一キロ当たり五マイクログラムという規制値の根底にありますいわゆる一日最大摂取許容量は、これは百倍の安全率を根もとで見ておるわけでございます。もちろん規制値をこしてこれでいいということはさらさら考えておりませんけれども、直ちにその規制値を上回ったものを若干体内に摂取したといって、すぐに危険であるといった意味合いのものではございません。なお、母乳の衛生上からの関係につきましては、児童家庭局のほうからお聞きをいただきたいと思います。
  145. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから直ちに危険じゃないといいますけれども、その国のきめた五マイクログラムにも問題があるわけですよ、いろいろな問題が。しかし、それで計算しても四倍、十二倍、二十八倍というようなひどいPCB汚染になっているということ、これはゆるがせにできない問題です。それから、大体このPCBの問題が非常に関心を高めることの一つは、人体蓄積ですね。それがまた脂肪分と一緒に母乳から出るということがきわめて大きな問題となっているわけですから、その辺の解決がなくちゃならない。したがって、今回のPCBの安全基準、暫定基準は、弱い者をほったらかした基準になっていますね。胎児、乳児という一番肝心かなめのところが入ってない。  それから水産庁おられますか。——漁業は魚が基準をこしたら廃棄されるわけでしょう。その補償はどのようにしますか。
  146. 前田優

    説明員(前田優君) 水産庁といたしましては、先生御承知のとおり、魚といいますのは大体海からとってまいりまして、朝、せりにかけるわけです。で、せりにかけたところで大体仲買い人が買ってまいりまして、それが魚屋で売られる。そのいわゆる海から揚がりました段階でサンプリングされるわけでございます。で、御承知のとおり、PCBの検査と申しますか、何PPM入っているかということを調べますのには、最低四日なり五日なりかかるわけでございます。そういたしますと、物理的に申しますと、わかったときには人の腹の中に入っちゃっているという問題になりかねないわけでございます。そういうことから、この検査の方法につきましてはいろいろ厚生省とも御相談をいたしまして、できるだけ流通機構に乗る前にチェックすべきではなかろうかということで、とりあえず、汚染されているであろうと思われますところの全国百十四水域につきまして、急いで調査をしているわけでございます。で、現在それは調査中でございますけれども、その中で、たとえば、この間厚生省から発表になりましたガイドライン、それをこえたもの、またはこえないまでも近いものがもしあった場合、その水域につきまして、一水域二百検体からの非常に精密な調査をやってまいる。で、その精密な調査によりましてある程度汚染された魚類が出た場合には、これはもうとらないということしか方法がないではないかということで、これは自主的に、その海域における、ある、そのPCBが検出されました魚について採捕を禁止してまいると、そのような措置によりまして流通経路に乗るのをできるだけ防いでいく。で、たまたま、もし流通経路の段階で発見されましたような場合には、いわゆる廃棄物処理法にありましたような有害物の処理に準じた、二次公害を起こさないような処理の方法で、埋め立て等の方法で処分をしてまいる、そのように指導するつもりでおります。  で、漁業補償の問題につきましては、大体汚染源が、ある程度明確な部分が非常に多かろうと実は、現在のところ判断しているわけでございますが、一義的には、あくまで、その自主規制によりまして損害を受けた漁業者は、汚染源を出しました企業者に対しまして損害賠償を要求することになるわけでございます。現在もすでに要求の申し入れをいたしておるわけでございますが、汚染源の明確でない漁業者の場合もあるかと思いますので、そのような場合には、利子補給とか、いろいろな方法があるわけでございまして、できるだけその漁業者の救済の措置を講じてまいりたいということで水産庁は対処しておるわけでございます。
  147. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、それは利子補給程度じゃ困るわけですよ。実際、養殖ハマチが全然だめになった。これは利子補給程度じゃ補償のうちに入らないですよ。どうですか。
  148. 前田優

    説明員(前田優君) いま、先生おっしゃられました養殖ハマチの問題、現在まで私どもがあちこちでいたしましたいろいろな調査のデータがございますが、ある程度PCBが含まれている海域とわれわれが現在考えております海域につきましては、大体、それぞれ原因企業が存在するわけでございます。養殖ハマチの場合につきましても、やはり養殖ハマチを飼っておりますあたりの企業というものは存在するわけでございます。現実問題といたしましては、企業に対する要求という段階でほとんど解決できるんではなかろうかと考えておりますけれども、あるいは御指摘のように、その責任企業がはっきりしない部分が当然出てくるかと思います。これは、現在、瀬戸内海でいろいろ言われております赤潮の問題があるわけでございまして、赤潮につきましても、とりあえずの問題といたしましては、天災融資法に基づきますところの利子補給で現在対処しておりますけれども、それだけではやはりその損害を補うにははるかにほど遠いという問題等もございまして、何らか別な角度で、別な法律をつくるなり別な考え方で対処していかなければならないことではないかということにいろいろ御指摘を受けているわけでございます。そういう面で、水産庁といたしましても、そのPCBの問題も赤潮と事実問題としては内容的にはほとんど同じようなわけでございますのであわせて考えていきたいということで現在検討しておるわけでございます。
  149. 小平芳平

    ○小平芳平君 最後に児童家庭局長に一言答弁いただきたい。  それは、母乳のことを先ほど来言っておりましたが、カネミ油症の患者でお産をなさった方の母乳にはどの程度PCBが検出されておりますか。
  150. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 油症研究班の一つの研究対象とも考えられますので、私のほうからお答えいたします。  実は、現在までのところ、カネミ油症患者に関しまして、母乳中のPCBの濃度については明らかにされておりません。ただ、現在、油症研究班におきまして、これは例が少ないのでございますけれども、母乳の中のPCBの濃度の分析を進めておりまして、これは近く結果が出るものと思います。いままで行なわれなかったのはまことに残念なことでございますが、一方では、母乳中のPCBの分析法というものが確立してなかったという事実もございます。今日まで明確なデータがそろっていないという状況でございます。
  151. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣、実際、この弱い者がいつも置き去りになっちゃうわけです。母乳のPCB汚染などは、カネミ油症患者——もう四十三年以来のことです。体内で蓄積をして生まれたか、あるいは母乳によって症状が発生したか、現実に認定されている患者もいるわけです。子供さんがいるわけです。先ほど来申しますように、そういう弱い者が置き去りになってしまっているんです。いまの漁業補償についてもそうです。これから制度を考えなくちゃいけないなどと言っているんですが、弱い立場の者にこそ厚生省はまっ先に手を伸ばしていかなければならないと思います。いかがですか、大臣。
  152. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) 御意見のとおりだと思うわけでございまするが、こういうふうに非常に新しい事態がいろいろと各方面に起こってまいりまして、これに対して、私もこういうことに関係してまだ短いわけでございまするが、新しい事態を現在ではむしろ追っかけておるというふうな感じがいたしておるわけでありまして、こういう体制をもって、これに新しい事態が起こりましてもそれに対応できるような体制、こういうふうなものも強化をしてまいらなければならぬというように痛感をいたしておる次第でありまして、いろんな事態に即応できるように、また、いま御意見のありましたとおりに、脆弱な部分といいますか、弱い方々の方面とか、に十分配慮を尽くしていかなくちゃならぬと思っております。
  153. 高山恒雄

    高山恒雄君 私は時間がありませんから簡略して御質問申し上げたいと思いますが、まず厚生大臣に御質問申し上げたいんですが、厚生部門については日本の政策としては非常に立ちおくれておるのではないかと、こういうふうに考えるわけです。  したがって、その点についてはいろいろの考え方もございましょうけれども、急激に伸びた日本の産業の発展に伴い、いろんな問題が起こっております。なお、今後重要視してやらなくちゃいかぬ問題、急速にやらなくちゃいかぬという問題が山積しておると思うんですよ。したがって、従来の大臣、あるいはまた総理にしても看板的には人間尊重という立場で今日までやってきましたけれども、実際面における改善がほんとうに伴ってないと、こういうふうに考えるわけです。  そこで、この立ちおくれを何とか前進させるという意味で私は厚生大臣に多くの期待を寄せておるわけです。ひとつきょうは厚生大臣に初めての私質問でありますから、今後の厚生面における基本的な大臣の考え方、姿勢をひとつお聞かせ願いたいと、こういうふうに考えております。
  154. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) 今後の厚生行政の基本姿勢という御質問であったと思うわけでございますが、確かに先ほどお話が、御指摘がありましたとおり、日本の経済というものは急速に発達を——伸展をしてまいったわけでありまして、これはまた非常に急速なために、いろんなひずみが一面においては出てまいっておりますし、また同時に、この成長の勢いに福祉行政というものが追いついていってないというのも私は事実だと思うわけであります。したがって、私のほうとしては、このいわば資源の公平な分配というふうな意味合いにおきましても、やはり今後国民福祉の分野というものが諸外国等の例を見ましても、あるいは日本の経済の実情から見ましてもこれを伸ばしていかなくちゃならない、これが私は一つの厚生行政の伸展というのみならず、日本の一つの世界的傾向でもあろうかと思うのでございまして、したがって、この厚生行政につきましては、田中総理大臣も、今度の新しい経済審議会の諮問におきましても——もとより日中問題を踏まえてのことかと思いますが、国際協調というのと、国民福祉向上という二つの柱にして新しい五カ年計画を諮問をしたというふうな状況でもございますし、こういったような事態に際会をいたしまして、私はある意味におきましては絶好の機会だと思うわけでございまして、明年度予算等におきましては、できるだけこの厚生行政が伸展をするように努力をいたしてまいりたいと思っております。
  155. 高山恒雄

    高山恒雄君 大体お考え方はわかりましたが、そこで御質問申し上げたいんですが、先ほどわれわれ調査団といたしまして委員長をはじめ岡山広島厚生施設調査をいたしたわけです。私はその中で非常に今後厚生省として考える必要があるんではないかという感じを深くしたわけです。  それは岡山県におけるところのこの心身障害児の問題、また障害者の問題等ですが、旭川荘津山みのり学園ですか、こういうところを二つ対照的に見せてもらいました。そこで、基本的にお聞きしておきたいのは、こうした精神薄弱児並びに身体障害者、重も軽もございますが、また児のほうもございますが、そういう問題に対して、政府は従来とってきた財団法人を中心としてやっていこうと考えておるのか、それを一歩前進して国の責任における国立的な施設を拡大していこうという基本的な考え方があるのか、いずれを目標にして今後進んでいこうというお考えなのか、これをまずお聞きしたんです。
  156. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) 従来は特に、どれは公立でなければというような考え方はとっていなかったわけでございますが、しかし重症心身とか、あるいは筋ジストロフィーというようないろいろむずかしい問題がございますのは、国立療養所にベッドを増設いたしまして、そこに収容をするというような措置をとってまいっておるわけでございまして、今後とも重症心身あるいは筋ジスというようなものにつきましては国立の療養所、いわゆる国立の施設にそういったようなベッドを付設いたしまして、できるだけ収容をしてまいりたい、やはり非常に重症になり、あるいは複雑な病気であるというような手のかかります病気につきましては、なかなか民間の施設では手が回りかねるという面もございますので、そういう点は今後とも私ども十分設置——どういう設置主体でいくべきかということについては配慮をしてまいりたいというように考えております。
  157. 高山恒雄

    高山恒雄君 そこで、大体考え方はわかりましたが、私もいま政府で答弁なされたような考え方にやっぱり重点を置くべきではないか、こういうふうに考えての質問をするわけです。と申しますのは、肢体不自由児にいたしましても軽と重がございます。あるいはまた精神薄弱児にしてもそうでございます。こういう区分をいたしますと、岡山でやっております、ほんとうに父兄——これは篤志家の自主的な経営ともいえると思いますが、みのり学園というようなところは、精神薄弱児中心として授産場の経営的なものをもって、そうして社会に貢献しながら、精神薄弱児のいわゆる技術その他を身につけさしたい、こういうやり方をしておるわけであります。これを対照的に考えますと、私は重症心身障害児に対しては、これだけ孤立をさせてやるということについては、厚生省課長、また担当者の方の意見を聞くと、いわゆる看護の面における手不足でどうにもならぬと、こういうあきらめムードが多分に聞かされます。よしんばそういうことがあるならば、いま通産省が考えておりますように、公害防止の一策として今後の企業施設においては一定の基準あるいはその環境の整備、これでなくては認可しないというような方針をとろうとしておりますが、私はこうした法人の力をかりなくては、現状、身体障害者のこの福祉を見るわけにいかない。現在の厚生省としてはもっとここらを整備する必要があるではないか、こういうふうに考えるわけです。そのためには、私の一つの私案でありますけれども、われわれ医者じゃない、しろうとですから思いつきかもしれませんが、精神薄弱児あるいは肢体不自由児というようなものと、この重症心身障害児というようなものと、同じ地域にあってもいいですけれども、もっと別途の方法で、このいわゆる経営に対する環境の整備等が非常に重要になってくるのじゃないかという感を深くしたわけです。こういう面に対して、この二つの視察をしました結果、私はいまこそこの重症心身障害児あるいはまた精神薄弱児、さらに肢体不自由児というような三つの問題だけではございません。そのほかにもたくさんございますけれども、いまこそ、もっと基本的なものを整備して、法人に認可するにいたしましても、政府がこの重症心身障害児については国立が望ましいという考え方ですから、それとのミックスをする方法の基本的なものをいまつくる必要があるのじゃないかということを痛感しておるわけですが、その点はどうですか。
  158. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) まだその辺までは詳しくと申しますか、きれいな青写真は私どもはまだ率直に言いまして引いてないわけでございますが、やはりちょっと違うかもしれませんけれども、最近の傾向で、たとえば脳性麻痺の原因による収容者が多くなるとか、あるいは非常に年齢が低下するとか、そういったようないろいろな新しい最近の現象もございますので、やはりいわゆる施設の体系と同時に、施設の基準というものも世の中の変化と申しますか、対象者の実態というもの等を考えながら、やはり検討してまいらなければいけない時期にあるのではないかと思うわけでございまして、ただいま先生に示唆していただきましたような問題も含めまして検討していきたいというように思っております。
  159. 高山恒雄

    高山恒雄君 そこで、現在財団法人ではございますけれども、重症心身障害児という人がますますふえつつあるという傾向をお聞きするわけです。現在でもこれらの問題については一般の身体障害者という考え方でなくて、国が特別の処置、法人に対して全額をそれは見てやるとか、こういうことを、いまの現状のままからは、まずその処置を講ずるべきじゃないかと、私はこう思うのですよ。現場を見せてもらいましてわれわれも驚くわけですが、せめてこれだけは政府のこの立ちおくれのこうした面における施策の一つとして、私は全費用は国が持つと、こういう考え方で財団法人にしても強くこれにまた指導をするという立場からやってもらってはどうかと思うのですが、これはひとつ大臣、いま大臣も即答できないかもわかりませんけれども、研究の結果、私は少なくともこれはそうやるべきだという考え方を持つわけですが、この点についてはひとつ検討の結果それがいいとあれば、私は大臣ひとつこの点はぜひ実行してもらいたい、こういうふうに考えているわけです。
  160. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) 重症の子供たちを収容いたしますと、非常にいろいろ問題があるわけでありまして、私どもも来年の予算で、いわゆる措置費の中に重度加算という、これは現在もございますけれども、重度加算という、いわゆる普通よりも特別に加算をする制度があるわけでございますが、やはりこれをもっと大幅に対象者を広げまして、そういった重度を収容しておられる施設について、少しでも前進があるようにというように考えて、来年度の一つの重点項目に考えているわけでございますが、ただいま先生のお話しがございましたとおりでございまして、私どもも、ぜひがんばりたいと思っております。
  161. 高山恒雄

    高山恒雄君 それからもう一つ看護の問題ですが、現場を見ましても、非常につらい仕事だと思うんですよ。もっと近代的な設備に、そうして婦人の方が、中年の婦人の方が多かったのですが、自分たちの一人の力で、相当、四十キロ、五十キロある体重の人をめんどう見るということはたいへんだと思うのであります。こういう面がもっと近代化されてもいいんじゃないか。政府は、なぜ、そういう面に力を入れて、療養のしやすいような、保護のしやすいような手助けの研究をやらないのかということを私は痛感したわけであります。そこで、そういうことを研究しないからこそ、なかなか看護する人が、志願者ももう減る一方だと言っています。ある人の、権威者の話を聞くと、これはもう後進国から人を連れてこなければ、週休二日制になり、しかもレジャーもますます発展するだろうし、だれが好んでいまの給料で行く人があるか、結果的には行き詰まるのじゃないかという悲観論さえ私は聞くわけです。こういう面に対する考え方は一歩前進、厚生省が、いまの高度化された今日の時代には私は簡単にその施設の改善なんかはできるんじゃないかと、こう思うのですが、それをやる意思はありますか、どうですか。
  162. 穴山徳夫

    説明員(穴山徳夫君) 確かに、ああいう施設で働いておられる方の御苦労というのは非常なものでございまして、私も東京のある施設に参りましたときに、ちょうどふろに入れているときに会いまして、二、三人がかりで洗って、流してやったりしたのを見たことがございますけれども、確かに、ああいう人たちに対する一つの問題としては処遇の問題、これは今後できるだけ考えなければいけないと思います。それからまた、できるだけ何と申しますか、そういう扱いの方法を、先生がいまおっしゃいましたように近代化あるいは合理化するということについては、これは私どもも大いに考えなければ、あるいは研究しなければいけない問題でありまして、今後ともこれにつきましては取り組んでまいりたいというように思っております。
  163. 高山恒雄

    高山恒雄君 これは大臣、くれぐれもお願いしておきますが、この研究は簡単にできると思うのです。したがって、私はこの重症心身障害児の取り扱いについては、そういう機械を早く研究してもらう。たいした研究じゃありませんよ、これは。そういう費用は政府が持って、ひとつ実現に努力をしてもらう。政府から支給するというくらいまで私は発展さしてもらいたい、強い要望をここでいたしておきます。  さらにもう一つ、そこに働く待遇の問題ということを局長も言われましたが、そのとおりです。一体、待遇をどうするかという問題は、私は少なくとも三交代にせよ。三交代をやらすべきだと。これはもう労働省の立場からいっても、きょうはもう労働大臣がお帰りになったから、ぼくは主張はできないんですけれども、いま、もう週休二日制を主張しているんですよ。そうして定年制六十歳まで、場合によっては六十五歳まで延長しようというような考え方を持つべきですね。そういう時代に、全快するかしないかもわからないような者を看護をしておる人の立場から考えて見ると、全く同じことを六時間も八時間も繰り返しやっておるということは精神的に耐えられない、こういうふうにわれわれは考えるわけですよ。そういうことであるならば、これを近代化して、そうして三交代制をとらせてやる。三交代制なら、かりに週休二日制がきても完全にこれはやれるんです。二交代制では週休二日制はできません。三交代制にすれば週休二日制が可能なんです。どうしてもそういう方向で早く手を打たなければこれはまた問題中の問題になる、いまやらなければおそい、このことを強く私は感じたわけですが、これは実現してもらえるかどうか、検討してもらえるかどうか、大臣からひとつお聞きしたいんですがね。
  164. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) 重症の身症者につきましては、高山先生からお話しのとおり非常に重大な問題だと考えまして、実は重度身障者あるいは重度の精薄児、こういうふうに家庭にとっても非常な大きな暗い影響を与えて、いま父兄にとりましても非常な難儀をしておるというような状況でございますし、したがって、こういった方々は普通の医学的な見地で難病と称されないかもしれませんが、私はやはり常識的にはこれは難病の中に入るんではないか、したがって、こういうものの施策を充実していかなければいかぬだろうということで、この問題につきましても来年の概算要求のほかになお先ほど申し上げましたようなチームによっての研究を続けておるようなわけでございます。確かにこの看護に当たられる方々の御苦労なりあるいはその実情等から考えまして、なかなか来ていただく方も少ないというような状況でございますので、その仕事の内容について御指摘のとおりこれを合理化していくというような努力をし、また給与等の改善につきましても、どうしても人がいなければ看護はりっぱにできないわけでございますので、これは施設をつくると一緒に人の問題に真剣に取り組んでやっていかなければならぬと考えますので、御趣旨の線に沿って努力をしてまいりたいと思います。
  165. 高山恒雄

    高山恒雄君 それじゃ次に進みますが、もう一つは、これは実は災害委で私は厚生大臣に来てもらって御質問申し上げようと思っておったんですが、この問題だけで大臣を呼ぶのもどうかと思いまして……。これは視察をした結果ではございませんけれども、非常に地方からの強い要望が行った先でございましたのは、地方公共団体がいま一番困っております問題は簡易水道整備費の補助率です。これは非常に安いわけですね、四分の一と三分の一だろうと思うんですが、したがって災害があるたびにこれはもう使用不可能になる、そうして自衛隊から給水隊を動員して給水をするというのが今日の現状です。これは災害のたびに至るところでそういう現実が起こっております。こういう問題は、これもへたをしますと病気の原因にならぬとも限らない問題ばかりです。それを防止するための簡易水道が必要だということになるわけですから、せめてこの問題はいまの地方財政の実態から見て私は六〇%なり、どうしてもそれがいかぬというならばせめて二分の一の五〇%ぐらいはひとつ政府が責任持って各市町村の設備のないところについてはやってやる、こういう姿勢をとってもらいたいと思うんです。  なお、この水道の健全な発展の普及に資するための厚生省に水道の専門の部がないんですよ。したがってこれは厚生省が責任を持ってやろう、今後これを改善しようとするならば、せめて私は大臣、部くらいはつくってもらいたい、部もないくらいで、そうして日本の至るところに簡易水道の問題を整備するということを言ってみたってこれは問題にならない、こういうふうに考えるわけです。どうしても厚生省がこれを持ってやらないというならば、これは建設省なりどこなりに移行したほうが賢明ではないかというくらいまで私自身思うわけです。しかし、厚生省でなければならないという結論ならばこれは厚生省として部に強化をはかり、そうして従来の三分の一補助を今回は五〇%に上げてやる、こういう施策をひとつ講じてもらいたいと申し上げると同時に、この考え方をお聞きしたいんですがどうですか、その点。
  166. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) 順序が不同になって恐縮でございますが、最後の厚生省の機構の問題からお答えをいたしたいと思います。  私も国民生活に密着をし、また生命の保持からいいましても最も重大なこの水道あるいは簡易水道の問題、これは厚生省が主管をしておりますが、これは私はほんとうに命につながる問題でございますので、これは縄張り争いではなくて厚生省が主管すべきものだと考えておるわけであります。建設省の下水道と比べましてもどうも何となく機構的にみましてもやはり充実したものをつくらなければいかぬではないかということ、これは各地方団体からもそういうふうな非常に強い御支援もございましたので、明年度予算ではこれを部に昇格したいということで予算を要求することにしたいと思っておりますのでなお一そうの御支援を賜わりたいと思います。  なお、簡易水道につきましては、確かにおっしゃるとおり補助率は現在低いわけでございます。御承知のとおり簡易水道を布設することについての要求は非常に強いわけでございます。したがって、これにつきましてはまず資金量を確保してあげなければならないというようなことで、起債、特に財投を財源とする起債の充実ということも努力していかなければならぬわけでございまして、そういったような財源の確保、それからやはり御指摘のとおり簡易水道でやっているような地域はおそらく町村といたしましても財政力の弱いところで簡易水道というものが普及しておるということが私は実態だと思うわけであります。そういうことで補助金の問題につきましても補助率の問題につきましても財政力をよく見ましてこれに適応するような対策を講じていかなければならぬと私は考えておるわけでございまして、明年度の予算要求におきましても若干、ここで従来三分の一が最高の補助率でございましたが、これを先ほど五〇%、六〇%というお話がございましたが、財政力に応じて二分の一の国費負担というようなことができる道を開くようにこれも予算要求とともに努力したいと思っておりますので、これも御理解をいただきたいと思う次第であります。
  167. 高山恒雄

    高山恒雄君 やるということはなかなか言いにくいから大臣もそういうふうにおっしゃるでしょうけれども、これは何回も調査に行くのですが、一ぺん事故があって流してしまえばおしまいなんですし、膨大な損害なんですよ。だからそういうことを考えますとせめて六〇%が無理ならば私は半額は責任を持って政府がやる、こういう考え方を踏襲して予算を組んでもらいたい、これを熱望しておきます。  なお、もう一つは、最近非常に問題化しておりますが、これも日本の政府の大きな問題の一つだと私は思うんです。労働省が青少年を中心とし、中小企業中心とするハイツ施設というものをつくっておるわけです。これも備後ハイツ、倉敷ハイツですか、そういうところ二カ所拝見しましたが、これは雇用促進事業団法ですか、これに基づく融資をしておるわけです。もう厚生省がやるようなことを労働省がどんどんやっておるわけです。これは若い者を対象、あるいは中小企業対象としてやっておるわけですね。そういう面から考えてみると、まことに日本老人対策というのは、私は立ちおくれているんじゃないかという感に打たれるわけです。  そこで、この老人クラブに対する助成金を出しておられますが、いま何ぼ出しておられるんですか、老人対策に対する助成金を。
  168. 藤森昭一

    説明員(藤森昭一君) お答えいたします。  老人クラブそのものに対する活動費の助成といたしましては、年額一クラブ二千百円、予算額全体といたしましては六億七千六百万円、こういう現状でございます。
  169. 高山恒雄

    高山恒雄君 いまお聞きのとおり非常に少ないわけですね。これはたいした金じゃない。倍額にしたってたいした金じゃないと思うんですが、大臣、これはひとつ大幅に増額を私はしてもらいたい。もう老人対策ぐらい日本でおくれているところはないと私は思うんです。どうかひとつこの助成金を増額をしてもらいたいと思いますが、この点はどうですか。
  170. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) 老人問題、特に最近非常に国民全体の関心を持たれておる状況でありますし、また現実に老人対策は重大な問題として推進をしていかなければならぬと思っておるわけであります。特にこの老人クラブにつきましては、老人の生きがいということにも直接に関係をするわけでありまして、所得保障なりあるいは病人対策のほかに、こういうクラブの活動等を助成いたしまして、老人が安らかな老後を送るということには力を入れていかなければならぬと思うわけでありまして、明年度におきましては、この老人クラブの活動に対しまして、強化の方法を講ずる予定予算を要求したいと思っておりますが、高山先生の御期待に沿えるかどうかはともかくといたしまして、こういった点もひとつ、大事な老人の生きがいを推進をしていくという観点から積極的に推進をしてまいりたいと思っております。
  171. 高山恒雄

    高山恒雄君 なお先ほど藤原委員でしたかの質問の中でちょっとお答えになったからもうする必要もないと思いますが、この福祉年金の所得制限を撤廃する、これはなおまた、きょうだけじゃなくて新聞発表も一ぺん出ておりましたね。そこでこれは撤廃するということですけれども、広い範囲内の撤廃をするんじゃなくて、一部的な廃止じゃないかという感すら私はしておるんですが、全面的に所得制限というものはもうなしにするんだと、こういう考え方でやっていこうというお考え方か、この点を確認しておきたいと思います。
  172. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) 御承知のとおり、所得制限の撤廃問題は、本人の所得と、それから扶養者の所得という両面あるわけでございまするが、これは両面とも私どもは撤廃をしたいと考えておりますが、まあ正直に申し上げまして、従来から非常に問題のある、なかなか抵抗の強い——抵抗の強いと言ったら語弊があるかもしれませんが、なかなか非常にむずかしい問題でございまするが、これはもう長年の希望であり、要求であり、明年度もこの撤廃に向かって努力をしたいと考えておりますが、特に扶養者の所得制限の問題、これにつきましては、いま一部制限の撤廃というお話がございましたが、だんだん金額が上がってまいりまして、まあ大体二百五十万円程度のところまでは所得金額が伸びておるわけであります。来年はそういうことを言わずに、全額撤廃をするということで予算も要求をいたしたいと思っております。
  173. 高山恒雄

    高山恒雄君 ぜひそういうふうに実現してもらいたいと思います。  それから無拠出福祉年金ですが、併給禁止は撤廃すべきじゃないかという老人からの意見が非常に強いわけです。これは全く福祉年金と他の年金とは大きな違いがあるわけです、基本的に。したがってこの際これをひとつ撤廃すべきじゃないかということを私は考えるわけですが、この点はどうお考えになっておるか。なお、この福祉年金は、きょうもわれわれはスウェーデンの代表といろいろ懇談もしたわけですが、大体調査した結果を見ますと、国民所得のスウェーデンの三分の一ですよ、日本が使っておる社会福祉は。スウェーデンでは一五%強使っておるでしょう。日本では六%以下ですよ。三分の一しか使っていないわけですね。そういう面からいっても、私は老齢福祉年金なんというものは思い切ってこの際、年々老人がふえていくという立場から一万五千円にしてもらうべきじゃないか、こういう強い意見を私は持つわけです。と申しますのは、所得制限にも関連いたしますけれども、日本の政府は核家族は認めておるわけです。何としてもそういうふうに憲法上ならざるを得ないわけです。そうしますと、かりに兄弟が三人おるとしますか、老人になった人の娘なりむすこが三人おるとします。ある程度の年齢になれば結婚する費用を貯蓄しなければなりません。嫁にいく費用を貯蓄しなければなりません。それは所得が、家族であっても親までそれを出すということはなかなか困難なんですね。今度は世帯主がみるかということになるとこれまたたいへんな問題で、今日の物価の値上がりから考えてみたらなかなかそこまで手は伸びない。政府の方針が核家族を認めるという立場にある限りにおいては、所得の制限なんというものは考えること自体が私はおかしいのではないか、理論的ではない。したがって、この際私は撤廃をすべきだ。なお福祉年金と他の年金との併給禁止はこの際撤廃すべきだ、こういう考え方を持つわけですが、さらに福祉年金については大幅な増額をして大体月額一万五千円ぐらいになるような方向で予算要求もしていただいて、実施をしていただくということにできないものかどうか、また当然政府はやるべきだと考えますが、その点についてはどうお考えになっておるのか、ひとつお聞きしたいと思います。
  174. 横田陽吉

    説明員(横田陽吉君) 福祉年金の所得制限の撤廃の問題につきましては、先ほど大臣からお答え申し上げましたとおり、本人の問題についてはいろいろ全額公費負担の年金であるという関係もございまして、なかなかむずかしい問題だと考えております。それから併給の問題でございますが、まあ御承知のように、福祉年金は他のいずれの公的年金制度からも年金を受けられない方、そういった方を対象として設けられておるものでございまして、まあ言うなれば制度的には補足的な、そういった性格のものでございます。したがいまして、他の公的年金から給付を受けておられる方はそちらのほうでまかなっていただいて、そちらのほうの給付水準が低い分につきましてはそちらのほうの給付水準を高める、こういった方向で処理するのが妥当な筋であろうと私どもは考えておりますけれども、ただ恩給等の問題につきまして、現実問題として非常に給付水準の低い方がいらっしゃいますので、先生御承知のように現在では六万円までは併給を認める、そのような措置をいたしておるわけでございます。それで来年度におきましてこれをどの程度まで併給の水準を高めるかという点についてはいろいろの問題もございますけれども、相当程度高めるというふうな方向で予算要求をいたしたいと考えております。  それからもう一つは、老人の核家族化ということにつきまして、その生活の実態から見てできるだけ年金で老人が自活できるような給付レベルの年金を実現するという点につきましては、私どもも先生と全く同意見でございまして、そのような方向で検討いたしておりますが、この際、私ども考えておりますのは、やはり年金制度自体は拠出制の年金というものが年金制度の中核でございますので、できるだけ拠出制の年金の給付レベルを高めるということを考えますと同時に、現在までは拠出制の年金制度それ自体がいわゆる被保険者を受給権に結びつけるというふうな配慮につきまして諸外国と比べていささかそういった配慮が欠けておる面が非常にあるわけでございます。で、そういった観点から専門家は年金制度の成熟化対策というふうなことばで申しておりますが、できるだけ多くの方が拠出制の年金に結びつくようなかっこうで拠出制年金の制度それ自体の改善を考慮いたしておるわけでございます。  それから先ほどスウェーデンのお話が出ましたが、数字の点はともかくといたしまして、日本における年金の給付額というものが国民所得において占める割合が非常に低い、それは事実でございます。これは実は二つ理由がございまして、一つには給付レベルの問題も心ずしも対外的に自慢し得るような水準までは至っておらないことも事実でございますが、さっき申し上げましたように、年金の成熟化という点から見ますと非常におくれております。その一番大きい理由は、御承知のことでございますが、厚生年金制度が始まりましたのが昭和十七年、しかもこの時点では筋肉労働者だけが対象でございまして、いわゆるホワイトカラーが対象になりましたのは昭和十九年でございます。ですから、たとえば諸外国で三十年勤続で六十五歳の方が従前所得の何割、そういったことで年金水準を云々いたしております。たとえばILO条約でもそうでございますけれども、日本の場合は昭和十九年からでございますから、昭和四十九年になって初めて三十年勤続の年金の受給者が出てくる制度自体がそういった発足の歴史が浅いので、したがって、なかなか長年月つとめた方が現実の受給権者となってあらわれておるという数が非常に少ない、その意味で一人一人に対する年金の給付レベルが諸外国と比べて低い、こういうことが一つ言えます。  それからもう一つは、同じく制度の新しいということに直接の関連を持つわけでございますが、一応、年金は御承知のように相当年月拠金をいたしまして、それを財源に、やめたあとの年金の給付を受けるという拠出年金が主体でございますが、その場合に制度が新しいとどうしても年金権に結びついておる方の数が少ない、諸外国は現在被保険者に対しまして受給権者は大体二割程度になっております。それで日本の場合はそれがせいぜい四、五%ないし五、六%と、まあ制度によって違いますが、そういった状況でございますので年金を現実に受けておられる方の頭数が少ない、したがいまして、年金給付額のトータルといたしましては絶対額が低くなりまして、したがって国民所得に対する割合が低い、こういうふうな関係になっております。したがいまして、これからの私どもの作業といたしましては、現在審議会でもって年金制度の改正を精力的に審議願っておりますが、給付レベルを引き上げるという問題と、できるだけ多くの方が現実の受給権を持つような、いわば受給権にできるだけ多くの方を結びつける成熟化対策を急ぐ、この点につきまして可能な限り大幅な改善をいたしたいということで仕事を進めておるような現況でございます。
  175. 高山恒雄

    高山恒雄君 それはあなたの基本的な理念から言えば、拠出によるその厚生年金というものは三十年以上しなければ該当者も出てこぬというのもそうであろうし、それは理念的にはそうですよ。しかしいま日本国民がわずかでも、二十年以上の者については厚生年金も支払われておるというのが現実でしょう。そういう中において、厚生年金が足らぬのかと言えば、余り余ってものすごい社会事業にこれを使っておるわけでしょう、厚生年金を。そういう中で財政が確立するまではやはり該当者が少ないから、諸外国だけの何にならない、こうおっしゃるけれども、しかしそれにはならないだろうけれども、それにしても拠出者でない者については三千三百円のこの何を出しておるわけでしょう。厚生年金かて一つのそのときの退社時の報酬の基準をスライドをしておるわけでもないですよ。われわれはそういう該当者の——スライドしておるわけでもないですよ。そういう立場から言えば、あくまでもすべての年金問題についてはこれはやはり過渡的な処置という問題がここに生まれてくるわけですよ。理念的にはあなたの言われるとおりだ。私、それを曲げようとはしないけれども、しかしこの過渡的な問題にしても、先ほど私が言ったように福祉年金の増額をすべきじゃないかというのが今日の老齢化しておる事態から考えてみて、核家族という事態になっておる現実から見て、そうしてせめて前回の国会で改正になりましたように、この老齢福祉年金については大体二万七千円くらいが三万九千円ぐらいでしょう。そういうふうに改正しておるのだが、無拠出の人であってもせめて一万五千円くらいは出していいじゃないかということを私は申し上げておるわけだ、これは理論じゃないですよ。今日これだけの日本経済が成長しておる中に、しかも老齢者がふえてきておる、核家族の事態が起こっておる、この核家族の事態でももっと政府がほんとに中心にやるならば、私は現在の家族制度の中にたとえば農村あるいは中都市でもいいですが、持ち家制度のものに対して、老人の部屋をつくる。それには無利子で百万円なら百万円、二十年償還で貸してやるという処置をとれば、何もいまの老人ホームをつくらなくても、あせらなくともいいのです。そういう方針を日本政府はとっていない。そういう矛盾が起こっておるから、現実の起こっておるこの事態を、少なくとも月間、老齢年金については一万五千円くらい出してはどうかということを申し上げておるのであって、これを実現してもらいたい。そしてスウェーデンみたいに、スウェーデンも一ぺんになったのではないでしょうけれども、しかしスウェーデン経済と日本経済がどうかというと、日本の経済は出せない経済じゃない、出せる経済だから、私は老人を見るべきじゃないかと思う。そういうことをおっしゃるなら、明治大正の人が日本にどれだけの貢献をしたかあなた知っていますか。貢献度をもっと考えなさい。社会福祉の拠出というものはこれはわれわれがつくろうとしてつくったのであって、厚生年金かてそうですよ。そうじゃなくても、政府は拠出しなくても出そうと思えばこれは出せるのですよ。そういう事態なるがゆえにこそ、私は基本はあなたの理念には間違いはないと思うけれども、現実の起こっておる問題をどう処理するかについては特別の配慮がなければいかぬ。そこから起こってくるのが老人意見であり、また老人に対してはわれわれが、政府がこれに対して深い関心とそれだけの施策をしてやる必要がある、こういう観点で私は質問申し上げておる。そういう観点でひとつ増額をしてもらいたいと、こういう考え方を持つわけです。大臣、ひとつこの点はもう予算もこれは大事なときですから、ぜひ私はことしは増額をして老人のほんとうにいこいができるような生活の基本を立ててもらいたいことを申し上げておきたいと思います。
  176. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) 私は、高山先生の御意見は非常に心強く拝聴をいたしておったのでございます。御承知のとおり、実際問題として考えまして、ことし三千三百円に引き上げることになったのでございまするが、これは実は十月からの実施でございます。御承知のとおりでございます。したがって、これを明年度、平年度化しまして明年度の金額にいたしますると、これは前の施策でございまするが、これが約五百億の新規財源を要するわけであります。さらにこれをかりに五千円に引き上げるということになりますと、これはまず八百億ぐらいの資金を要するというような、非常に巨額な一面におきましては資金を要するというふうな問題もあり、あるいはまた十年年金が御承知のとおり五千円というようなこと等とも関連をいたしまして、われわれとしてはこの年金の充実ということを最も重大な施策の基本として考え、この老人福祉年金につきましても、これは実は私も就任早々から五千円以上というようなことを勇敢に出しましたけれども、まあ大方の皆さん方の御支持をいただいておるような感じを持っておりまして、ぜひともこれは実現をいたしたいと思うわけでございまして、決して一万五千円の構想を私は否定をするという気は毛頭ないわけでございまして、力強い御支援と承っておるわけでございまするが、それにいたしましても、この年金制度の前進、この福祉年金の五千円、あるいは厚生年金、国民年金の今後の増額、私は非常に重大な、社会保障の充実という観点から見ましても、日本の歴史の過程においても重大な時期だと考えておるわけでございまして、一生懸命これが実現に努力をいたしたいと思っておりまするので、どうかその点御了承をいただきたいと思う次第でございます。
  177. 高山恒雄

    高山恒雄君 まあ大臣、もう質問は私もやめますが、そういう答弁をしていただくとそれ以上言ってもしようがないんですが、ひとつぜひ大臣、私はもう百の理論より実現をどうするかということですよ。私は最初大臣の姿勢をお聞きしましたように非常に期待をいたしておりますので、私はやってもらいたい、ほんとうに。これは私はもう申し上げればたくさんあるわけですが、むしろ、厚生省のお先棒を労働省がとってやるというような、私はそれを促進したいという気持ちを持っておる。厚生省にはできない、私はそんな意見を持っていますよ、きょうは言いませんけれども。たとえば、保育園にいたしましても、託児所を一体どうするのか、託児所を保育園にして労働省に持たしたらいいという考えもないじゃないですよ。それはなぜかというと、実際、議論じゃないです。やれなければやれるところに持たせなくちゃいけませんよ。そういう派閥的な、省的な感覚で国民を扱ってもらっては困る、こういう意見を私は持つわけです。どうか、私は期待していますから、大臣よろしく実現に努力してください。  終わります。
  178. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 先国会の五月三十日の老人福祉法改正のときに、リハビリ問題の全般についてお伺いいたしました。きょうの質疑を聞いておりましても、初めは非常に前向きのいい答弁が出てまいりますが、いよいよ予算編成の時期になりますと処女のごとく後退をいたしまして、失望させられるというようなのが現状でございます。また同じ質問に対しても答弁が非常に後退していくというようなことで、局長がかわり、大臣がかわればそのたんびに一つ一つ押えていかなければどうも安心できないというようなことになってしまうわけで、ほんとならきょうは私も一つずつ押えて、やってくださるのかどうかと確認したいところですが、時間の関係もありますからそんなやぼなことは言いませんが、どうか五月三十日のリハビリの問題、老人問題、そのほか各委員会でどういう質疑がされて、それについてどういう答弁をされたのか、その答弁について幾ら大臣がかわろうと局長がかわろうと国民に対しての厚生省の責任というのは一貫したものでなければならないと思いますので、もう一度どういう答弁をいままでなすってきたか、お読み返しいただきまして、後退されることのないように切望して、私は初めの段は省略をいたします。  それできょうの委員会の冒頭にも北海道調査の問題でリハビリの問題を出しましたが、その中でどうしてもやっぱり重ねて確認しておきたいことがあります。リハビリについては医学的に非常に高くいま位置づけていると、そしてリハビリについては非常に努力をしているというような御答弁が続きましたけれども、ほんとうにリハビリというものをどう考えていらっしゃるだろうか、医学的な面だけではなくて、きょうの報告書にも書かれていましたように、せっかく病院に入って訓練をして機能が回復しても、それが地域に帰り、家庭に帰っていってまたマイナスになってしまうというようなことになっては困るわけなんです。だから、リハビリというのは単に一医学の面から、肉体の面からだけの局面からの対処ではなくて、全人格的な面のほんとうに社会への復帰という点を真剣に考えてほしいと思います。一つの例ですけれども、先ほどの報告書にもありましたけれども、各病院がいま一番心配しているのは、老人医療無料化によって先ほどの報告にもありましただんだんお年寄りが入院してくる、そしてベッドの回転数が少なくなってくる、こういう問題があります。その一人一人のお年寄りや、また倒れられてリハビリ訓練を受けて、もうこれで社会復帰がある程度できるという方たちも、なかなか出るという勇気が出ないんですね。それは社会復帰したときにどういう受け入れ体制があるかということが非常に大きな問題なんです。あるリハビリの病院の事実なんですけれども、本人にお医者さんはもう出てもよろしいと、そういう診断をしました。しかし本人は出て行って社会復帰するというそういう自信がない、それで、どういうわけでそれができないかといえば、やはり麻痺が少し残っている。仕事は何だということを聞いたら、そうしたらその人は石の研摩工なんです。みがくわけです。そうしますと、そういう中小企業の中で、小さい工場の中で、機械の間を縫って歩いて、不自由な手で研摩してもとの生活をささえられるかといったらささえられない。それが非常に不安で退所することができないという問題が明らかになった。そこでお医者さんと地域の方、そうしてケースワーカーの方みんなで相談して、それじゃあその人がその機械の間を心配なく歩けるように、土台がでこぼこしているのを平らにしようじゃないか、そうして、機械が八台あって通路が狭いのを、それじゃあ六台にしようじゃないか、その費用がどのくらいかかるのだというようなことまで検討して、そうして右手が不自由でもだれかがそれを補えば、実際やってみたらできるんじゃないかというような先の見通しを立てたときに、その人は退所するという気持ちになったのですね。そうして退所するというときに、そこの地域の方やいろいろな方が協力して、土間のでこぼこだったところをコンクリートにみんな直してくれた。そうしてみんなが精神的にも物質的にも援助してくれたと、そういう中で、そのおじさんはいま社会にほんとうに復帰して、生きがいを持って生活をしているのだ、これはわずかの例でございます。しかしリハビリに対する考え方というのはそういう立場から考えていただかなければ、幾らベッドをつくっても、幾ら訓練をしても結局それは非常に効果をあげないということになる。だからリハビリに対する医学的な立場と、そうして社会復帰のその問題というような両方の面から常に考えていただきたいということをしっかりと頭に置いて、いろいろな施策をやっていただきたいと、そう思うわけです。事実寝たきり老人といわれるような人たちも、訓練すれば六割程度が歩けるようになったというような具体的な例が出ているわけですから、そういう点をしっかり大臣も考えていただいて、各医務局も社会局もみんな一致してリハビリの問題にしっかりと取り組んでいただきたいと思います。  そこで、非常にしぼって問題をお伺いいたしますけれども、この前も質問をいたしました。いまリハビリの施設の中で一番不足しているのは、医者、看護婦はもちろんでございますけれども、リハビリ特別の問題としては、理学療法士、作業療法士というような訓練のための人たちなんです。ところが理学療法士、作業療法士、視能訓練士というのは、この間も資料をいただいて御答弁いただきました、五年計画、十年計画というのが出ております。これはまことにずさんというか、まことに不十分なもので、たとえば作業療法士にしても、十年たっても四六・七%の充足率、これは自然にやめていく人を加えればどれだけ減るかわからないというような問題になります。だから、こういう五カ年計画、十カ年計画でもまだ半分にも満たないというような、こういう計画というものはこのままでまた来年度も考えていらっしゃるのか。それともここでもう一つ、大きないろいろ困難はあるでしょうが、困難を困難だといわれていれば厚生省の仕事はないわけなんですから、この要請に対してどの程度考えていらっしゃるか、改善して養成をふやしていただけるだろうかということを、きょうの段階でもう一度お伺いしたいと思います。  それから、第二番目の問題としては、いま言いましたような方たちには専門職という立場での身分保障がございます。しかし、いま一番問題になっているのは、言語聴能士——言語士とか聴能士とかいわれておりますけれども、これが国立の聴力言語専門養成所で今年すでに二十二人が卒業しているんです。しかし、先ほども報告書に出されたように、身分法が全くないわけなんですね。だから三年間の専門教育を受けても一般職としての位置づけしかないというところが非常におかしいと思うのです。その点について、身分制度をどういうふうにお考えになるかという点をまずお聞きしたいと思います。
  179. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 先生御指摘の、リハビリテーション全体の考え方についてたいへん適切な御発言があったわけでございますが、確かに医学的な面のみならず、社会的な全体の医療対策というものが、非常に現在の日本の体制では不十分になりがちの状況にございます中で、この問題を解決していくためには、やはり専門家の養成というものが焦眉の急であるわけでございます。私、八月から医務局を担当しまして、予算要求といたしましては、率直に申し上げまして、先生の御存じの資料計画どおりの四十八年の養成でございますが、この点について問題点は、まずその身分法の、養成計画の高校卒という制度そのものにいつまでも——いつまでもと申しますか、それだけを考えるか、前の松尾局長の答弁の中にも、私、きょう勉強させていただきまして、ございますように、大学卒のコースというものを、私はむしろ医療従事者というものが、個人個人で人間が接触し合う医療従事者は、少くとも教養と申しますか、その仕事の中で教育的な活動もなければならぬ。人を納得させていかなければならぬ。また医療従事者全体が、医師だけが大学卒で、ほかの関係が高校卒が多いというシステムそのものも、やはりチームワークとしても必ずしも望ましいものではないということで、全部の制度を全部そうするかは別問題といたしまして、少くともコースとしては外国にございますように、看護婦の場合もそうでございますが、大学コースもあれば、いわゆる養成コースもございますように、私は、OT、PTの問題については、サーティフィケート・コース、いわゆる大学卒の専門教育コースというものを、部会等の御意見もございますので、これを軌道に乗せるというか、これを計画に乗せまして、従来計画を変更し得るならば、私はそれは一つの方策ではなかろうか、こういうふうに考えております。  もう一点は、やはりこれの評価の問題でございます。医療保険制度の中におけるこういう問題の評価については、確かにまだ現状が有資格のほんとうに力のあるOT、PTが少ないために、必ずしも中医協その他の御意見も一致してこれを認め、ないしは高めていくということにまで至っておりませんけれども、まあ、医務局の立場としては、これの評価の問題については、やはり社会的に伸展させるためにはこれを改善してもらうということが一点大事な問題だと思います。  それから第二点のST、ATの、言語療法士あるいは聴能士の問題につきましては、確かにおっしゃるように二十二人の方の卒業等の問題もございまして、これは文部省の系統で、要するに専門教育と申しますか、特殊教育の教員養成の立場からやっておるコースがございますけれども、われわれは医学の面からの医療分野におけるこの問題と取り組まなきゃならぬわけです。そういう点がやや多少率直に申して文部省、厚生省的なそれぞれの立場で必ずしもまだ十分な話し合いができていないことを私承知するようになりましたので、きのうもその問題について関係者と話し合っておりますが、できたら両方を身分を一本化したい、で、どうしてもだめな場合でもメディカルの関係の、ST、ATの関係の身分法は、これはぜひやりたい、こういう考え方に立っております。
  180. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 この前もそういう御答弁ありました。確かに私も三年で十分だとは申しません。もちろん量もたくさん要るけれども、また質的に高められたものでなければならないというのは、これはもう常識的なことでございます。しかし、現実にそれじゃいますぐ大学卒のそういう専門職としての効果を出せる人がいるかといったらいないわけですね。だから私は、いまほんとうに必要としている問題として、改良の面からもいま言ったことをお願いしたいわけなんです。確かにいろいろと評価というのはむずかしいかもしれません。しかし、やはり同じように三年間高校卒業して訓練をした、こちらのほうは身分保障がある、しかしこっちは全然身分法がないということでは、これはもう評価の内容というよりもいかにも不合理だと思うんですよね。私は、その点について中医協でどういうふうな評価でこういうふうなことになったのか存じませんけれども、もし滝沢さん御存じだったら、どういうふうな差があってここに身分法ができなかったのかということを伺いたいと思います。
  181. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) この評価の問題、中医協の評価の問題と身分法とは直接関係ございません。特に身分法がむしろ先行しませんと評価が起こってこないのじゃないかと思いますので、私のほうの身分法をつくるほうが先の責任であるのじゃないか、こう考えております。
  182. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃなお簡単ですよね。おたくのほうでやる気があればできると、こういうことでしょう。そしたら、その身分法はいつごろつくろうというふうに考えていらっしゃいますか。
  183. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) この問題につきましては部会等の検討もかなりしていただいておりますので、私はでき得れば次の通常国会に考えたい。STとATを一本にするかという意見もございます。専門家の一部にはこれは一本でできるのじゃないか、こういう御意見もございますので、その辺のところを十分検討いたしまして、できたら一本でATとSTを両方やりたいと、こういうふうに考えております。
  184. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 先ほどの御答弁ではやっぱり十年後まで非常にまだ充足率の足りないという計画のものままで進められるわけですね。しかし、それは社会的ニードの高まりによっては年々改善していくということは当然やっていただけると思うわけなんです。それはそうですね。絶対これより進まないというわけではないでしょう。
  185. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) この問題については先生からもおしかりが前にあったらしいんですが、たとえば国立の四十七年度の設置計画も本来は四十名、四十名の八十名ぐらいにすべきなのを二十名、二十名でやむを得ない、こういうことがございました。それから根っこにやはり教える立場の人が初めは外人にお願いして来てもらった、やがては日本人が先輩として後輩を教える立場がとれる時代に入ってまいりますので、私はこの計画が相当進められるとは思いますけれども、国立みずからやる場合と公立に補助する場合、それから私学、——大学等を含めまして私立的なところを期待する、こういう一応計画になっておりますので、必ずしも確信を持ってこのとおりやれるということが言えるかどうか、この点はございます、率直に言って。しかしながら、一面さっき申し上げました視能訓練士、私が医務局に前におりましたときに、視能訓練士を国立小児病院につくりました。このときは法律上は高校卒三年コース、大学卒一年コース等をつくりまして、このとき視能訓練士は高卒三年のものと大学卒訓練士がいる形にしたのですが、いまや大学卒の方が非常に幅広く存在することになりまして、むしろ何か専門的なものを身につけたいという意欲がかなりございますので、先ほどのSTなんかも応募者がやはり五倍ぐらいあるということで、視能訓練の場合も、うまく成功して一応大学卒を教育できる。こうなりますと、私はOT、PTの問題も大学卒二年というコースというものが先生のおっしゃるとおり、この計画を変更する大きな要素になり得る期待を持っているわけでございます。
  186. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 量的にも質的にも高めるという意味でどんどん変更をしていただきたいと思うわけです、いまおっしゃいましたように。国でする場合と、また今度北海道へ行きましても、自治体自身で一生懸命これの解決に当たらなければならないというようなことで、今年度北海道にもOT、PTの養成所がつくられるということだったんですけれども、その際にやはり運営費補助というものが非常に困難になってくるわけですね。そういたしますと、国自身ではできないけれども、地方自治体がそれだけ熱意を持ってやるというような場合には、当然重要な医療従事者を養成するという任務を分担してくださるわけですから、だからそれについての補助というものを考えていただいても当然しかるべきことではないか。たとえば看護婦養成所等については、運営費補助、四十七年一カ所百三十万円ですか、わずかの額ですけれども、そういうものが出されているということを伺いますれば、そういうふうに地方でもどんどんやっていこうという場合の補助というものくらいは、せめて国の手を差し伸べていただいてしかるべきだと思うのですけれども、その点はいかがお考えになりますでしょうか。
  187. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) この点につきましては、たまたま先生のおあげになった例が今年北海道につくっていただこうとしておるOT、PTの問題でございますが、この地方自治体に対しては、看護婦の場合も交付税等で自治省からめんどうを見ていただいておりまして、日赤、済生会医師会等の民間——広い意味の民間団体の看護婦養成に対して、厚生省から補助を出しております。どうもこのスタイルを打ち破ることはなかなかむずかしいのではないかと思いますので、OT、PTに限ってだけ自治体にも補助金が出せるかどうか、この点は若干まだ不安がございますけれども、しかしながら自治省その他と、特殊な施設として交付税の計算上、積算をしてもらうということはまず当然のことであろうと思いますが、補助金の問題についてはそういういきさつ等もございますので、今後日赤、済生会その他対象になり得るように拡大すればその問題は私は当然OT、PTの問題ばかりでなくて、エックス線の関係とか衛生検査の関係も私は将来やはり補助の対象にしたいという気持ちもございますので、しかしPT、OTは特に不足しておるという意味を含めて、抜き出してでも民間の団体がやってくだされば補助対象にはなり得る。しかし自治体の場合はちょっと問題がある、こういうことだけを申し上げたいと思います。
  188. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 何ごとも困難は伴うかと思いますけれども、どういう方法かで実質的な援助をしていただくという道を考えていただきたい、それがそちらの仕事なんですから、一生懸命に考えていただきたいと思います。  それから公的医療機関整備費補助金の要望というものが非常に多く出てきておると思うわけなんですが、これは適用対象としては過疎地域の病床不足地域救急、それからガン、小児というようなものが対象になっていたわけですね。それで予算なんかを見ましても四十八年度七億円の予算ですか、要求されているということになっていますけれども、たとえばこういうような公的医療機関にどんどんリハビリ専門家というようなものを設けてもらって、そこに公的医療機関整備費補助金というものを出すというために、いま言ったような過疎地域の病床不足ということや、地域救急、ガン、小児ということに加えて、リハビリというものを入れていただけば、そういうところで財政的な補助という道が開けるのではないか。それは非常に地方においてのリハビリを進める上で大きな力になるのじゃないかと思いますけれども、その辺はどうなんでしょうか。
  189. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) この問題につきましては、結論を申しますと、政策医療と申しますか、こういう特殊な問題点をあげて、それを補助対象にしていくという持っていき方からいけば、これはむしろ四十八年度要求にのせたいくらいに思います。先生の御指摘があって、私もまあ日が浅いものですから気がついたくらいの点でございまして、これはぜひとも政策的な医療の一環として、われわれの関係の事務担当者も将来の可能性があるという意見を持っておりますので、私としてもこれは補助対象にしていきたいと、こういう考え方でございます。
  190. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃリハビリの最後の質問になりますけれども、まあ国立リハビリテーションセンター設立調査費というのが約二千万円要求されているわけですけれども、その計画と見通しというようなものについてはどういうふうに考えていらっしゃいますでしょうか、その要点をお示しいただきたいと思います。
  191. 角田耕一

    説明員(角田耕一君) お答え申し上げます。国立のリハビリテーションセンターについての見通しと構想ということでございます。昨年度、本年度、それぞれ調査費がついております。それで中間報告が本年の六月一日にございました。リハビリテーションというものが非常におくれておる。すみやかに国立の総合的なリハビリテーションセンターをつくって、各都道府県以下、公私立の施設のモデル施設として発足をさせたい。  それからもう一つは、先ほどもお話がございましたように、パラメディカルな職員、それから真に社会的なケースワーカーなり、そういう関係職員養成訓練をいたしたい、こういうようなことが主でございますが、結局来年度は二年の調査結果に基づきましてそのマスタープランを作成をする、こういう要求をいたしております。それで具体的にこれは大臣からもお話がございましたけれども、土地の確保、少し広いりっぱな建物をつくりたいということで、所沢の旧飛行場のあと、これを八万坪確保したいと努力中でございます。
  192. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いまマスタープランをつくって、それで現実に国立のリハビリテーションセンターというものが機能を開始するというのは大体いつごろになるのですか。
  193. 角田耕一

    説明員(角田耕一君) 来年がマスタープランでございますから、マスタープランというのはその八万坪が確保できたとすればどういう施設をどのように配置をするか、組織、人員をどうするか、こういうことでございます。したがいまして、来年はそういう作業がございますので、再来年から、一、二、三年、三年計画ぐらいで最終的に完成を見るのじゃないか、こういうふうに考えております。
  194. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 たいへん気の長くなるような話なんですけれども、まあ、やいやい言ってもできる力しか出せないとおっしゃるだろうと思いますけれども、私もこれを読ませていただきまして、やはり一日も早くこういう中央的なセンターをつくっていただきたいと思います。そのことが結果的にも、これは五十三ページに「リハビリテーションの価値」というところに出ておりますし、各国でも言われておりますけれども、結局倒れてそのまま寝せておいて、そして保障していくというマイナス面よりも、早く訓練して社会復帰させるというのがそろばんはじいたって得なんだ、こういうことがいま世界的に経験されていることなんでございますから、だからぜひそういう立場に立ってでもしっかり考えていただきたい。特に大臣には、予算編成の時期に担当されるわけですから、いままでの答弁をお聞きになって、また議事録などもお読みになって、このリハビリ問題について相当の御決意をいただかないと概算ではかっこうつけたけれども、実際にはつかなかったというようなことでは非常に残念な結果になりますので、その意味で大臣のどの程度御理解いただいて、これからやっていただけるか、一言お答えをいただいてリハビリの問題を終わりたいと思います。
  195. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) このリハビリの問題が重要であるということ、十分に御意見も承りまして拡充しなくちゃならぬと思いまするが、まだどの程度にこれが実現をするかということにつきましては申し上げる段階ではないかもしれませんが、大蔵省との折衝等につきましては私も全力をあげて努力をしたいと思います。
  196. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 たいへん一般的な御答弁しかいただけなくて残念なんですけれども、それじゃ具体的に一つだけ、さっき申し上げましたけれども、公的医療機関整備費補助金というようなものをリハビリもその範疇、対象に入れて出すというような方法は今度の予算では考えられないですか。今度だめだったらせめて来年でもというような、とにかく今後努力しましょうという答弁ばかりでは、もう何かきょうの委員会ちょっと心細くなっちゃうんですよ、私、朝から聞いていて。もうちょっと何とかその辺のところは、ことしやるとか……、目玉商品でしょう、田中内閣の。目玉、さっぱりだめになっちゃうわけですよ。その辺のところ具体的にもうちょっとどの程度ということを考えられるかという問題はないんですか。
  197. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 先ほど少し正直に申し上げ過ぎたかもしれませんが、私は事務的にお答えすればもう一応概算要求のスケジュールが済みましたので、これはちょっとこの程度の問題入れることは非常にむずかしいのですが、実はきょうのお答えの中にも難病対策がプロジェクトチームができて、今度締め切った予算とは別個に検討する問題が一つございます。これは、難病対策リハビリテーションが伴うことが当然の方向でございますので、せめて私に許されるのはその段階でその問題に取り組めるかどうかやってみたいということだけでございます。あとは四十九年度以降にはこれはやりたい、こういうふうに考えております。
  198. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 どうもほんとうに正直なお答えでちょっと困っちゃうわけですけれども、でも、もう手おくれ、概算で手おくれだとおっしゃったけれども、この問題、先月やその前に始まった問題じゃない、当然手おくれだというところに、リハビリの問題はよく理解しますと言ったってさっぱり理解されていない、結局手抜かりしているから。だからいま何とかその辺のところはできます、こういうところだったわけですから、せめてその辺のところで何とかしてもらわないと全然抜けっぱなしになっちゃいますから、しっかりやっていただきたいと思います。  それを要望いたしまして時間もありませんので、簡単に次に沖繩の水道の問題についてお伺いしたいと思いますけれども、沖繩米軍が復帰後も安い料金でなければ払わないというのでがんばっているのですけれども、その問題、大臣、御承知だったでしょうか。
  199. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) 正直に申し上げまして、私はこの経過は承知しておりませんでした。
  200. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういうことでは、新任でお忙しくてたいへんだったかもしれませんけれども、沖繩県民にとりましてはやはり水というのは非常に生活上たいへんな問題ですし、アメリカ軍がいままででも三分の一から使っておりました。そういうような点から質問をするわけですけれども、米軍との関係についてお伺いしたいと思いますけれども、沖繩県においても当然日本に復帰したわけですから、水道法が適用されるということになると思いますが、そのとおりでございましょうか。
  201. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) そのとおりでございます。
  202. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そうしますと、水道法が適用されるとまた地位協定と米軍との協定上水道問題で特別な安い料金で提供しなければならないというような法的な根拠、特権というものが当然ないということに理解されるわけですけれども、そのとおりでしょうか。
  203. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 沖繩におきまする米軍への給水に関しましては、沖繩ゆえの特殊な権益はこれは存在いたしません。
  204. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それでは本土の市町村で、米軍基地への料金で特権扱いをしているというところはありますでしょうか。
  205. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 本土における米軍施設への給水に関しましても、特別な扱いをしている水道事業体はございません。
  206. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それでは、それは当然のお答えだと思います。実はこの沖繩の水道の問題につきましては、沖繩国会といわれた昨年の十二月二十五日に、共産党の春日委員が質問しておりまして、いまと同じような答弁をいただきました。祖国へ復帰するからには当然日本と同じであると、だから水道法が適用になる。しかも米軍だからという特権はないというお答えが出ている。いまおっしゃったとおりになるわけなんです。しからばというところになるわけなんですけれども、いま沖繩でもう復帰しましてから、五月十五日ですから六月、七月、八月三カ月以上たっておりますね。それにもかかわらず、米軍はお金を払ってないわけです。水道料払ってない。それはいまおっしゃった国内法が適用されるとするならば、米軍といえども、県の企業局——市町村から沖繩県民と同じような料金で買わなければならないということは当然の結果になるわけですけれども、米軍はそんな高い水道料は払わないということで、三カ月間払わないでがんばっているということなんですね。三カ月の間こういう問題が起きていたのに、沖繩県当局から事情の報告もされているはずなのに、この問題について何らいままで手をつけられなかったかということが、私は非常に残念に思うんですけれども、その間、厚生省としては、まあ大臣は御存じなかったかもしれませんけれども、厚生省としては報告も受けられていたでしょうが、どういうふうな考え方でいままで放置されてきたんでしょうか。
  207. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) これは復帰前からのことでございますが、復帰後、水道事業者である予定市町村、それから沖繩県、それから米軍の当事者の間で円満かつ合法的に解決ができるものだという見通しのもとに、かねてから具体的な給水方法の検討——技術的な問題も含めまして、それから関係市町村間での調整というものを早急に行なうように、私どもとしては当時の琉球政府あるいはその管下の市町村関係者の方々を指導をしてまいってきたところでございます。  その後、報告によりますと、琉球水道公社と米軍との間に復帰直前に結ばれた何か契約事項があるようでございまして、その辺の取り扱いをめぐって、米軍側としてもいろいろと言い分があるようでございます。それから、もちろん、沖繩県並びに市町村は、国内法に基づきまして、本土のいままで扱っておりましたと同様に、水道事業を行なう。それに基づいて米軍施設が買うということについて主張してきておるわけです。しかし、いろいろとそのようないきさつなどもございまして、いま、まあ米軍といたしましては、むしろ府中のほうの本部のほうに、そのことについての意見を問い合わせる。それから沖繩県といたしましても、まあ、まだ正式ということではございませんけれども、内々厚生省を通じまして、場合によりましては外務省を通じての米軍の本部との交渉に移したいというようなことで経過しているわけでございますが、私ども、実は本日も関係沖繩県の局長に事情をよくお聞きしております。できるだけ早く円満に、かつ合法的に、もちろん対等な立場で話し合いがつくように今後とも指導してまいりたいと思います。
  208. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ほんとうにしっかりしてもらいたいと思うんですよ。円満に解決するのは、当然そのほうが好ましいけれども、大体国内法できちっときめられて、それが本土に復帰したら適用されると。対等、平等の関係にあるにもかかわらず、米軍が根拠としてだだをこねているのは、かけ込み契約ですわね。復帰のもう五日くらい前に、インチキな、それこそ手続もきちっとしていない契約でもって……、それをたてにしていると。しかし、国内法が当然適用されるとするならば、四十七円ですか、トン当たり一般。それが米軍、いまちょっと上がったのですけれども、一トン十八円なんですよね。一トン十八円で、県民の全部使う水の三分の一を使って、しかも三カ月もたっているのにまだ払わないというような相手に、円満に解決しましょう、いかがでございましょうなんて言ったって、向こうは当然占領者としての意識を残して、こういう無謀なことを言っているんだから、やはりそこには、政府としてき然とした態度をとっていただきたいと思うんです。  いま戦車M48のあの戦車の輸送の問題にしても、非常に国内法と——ずっとこまかく調べてみたら、いかに米軍が国内法を無視し、わがもの顔に日本に居すわっていたか、それに対して政府はいかにそれになれ過ぎていたか。全く日本としては独立国としてのプライドというもの何もないのですね。ですから、この水道の問題についても、当然水道法が適用されると、そして米軍に対しても何ら特権がないということであるならば、もっとほんとうに対等の立場なら堂々と、話をうまく進めなさいなんというのじゃなくて、もうきちっとした態度で私は話をつけてもらいたいと思うのです。水道法を見てみれば、もうそういう理由もなくて払わないなんというときには、われわれがもしそんなことをやったら水道とめられちゃうわけですよね。三カ月間そんなことを言っているのにいままでほっといて、そして、これからも円満解決にというような、そんな腰抜けたような態度じゃだめだと思うのですよ。やはりいま私たちにとって大事なのは、アメリカとの立場で対等、平等であるという、この水道法適用が当面されている問題ならば、このとおりの態度でしっかりとした解決をしていただきたい。これは当然厚生省の責任になるわけですし、また自治省との関係にもなるかと思いますけれども、厚生大臣がそこのところはしっかりやっていただかないと、解決の道は困難だと思いますので、厚生大臣にそういう御決意があるかどうか。きっとあると思いますから、しっかりした御答弁をいただいて終わりにしたいと思います。
  209. 塩見俊二

    ○国務大臣(塩見俊二君) 沖繩はもうすでに日本に復帰して沖繩県でございますし、当然水道法は、これの適用ございますので、あくまでも水道法のたてまえを踏んで解決したいと思います。
  210. 矢山有作

    委員長矢山有作君) 本調査に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時十三分散会      —————・—————