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説明員(安尾俊君)
先ほど総務
長官から概要の御
説明がございましたので、若干重複するかと思いますが、お
手元に提出いたしました
報告書に基づきまして、総論的に御
報告申し上げます。
対策本部の御決定に基づきまして
科学技術庁が
中心になりまして、
農林省、通産省、
建設省、自治省の
関係の試験
研究機関の専門家二十四名をもちまして、三班に分かれまして、
報告書の五ページにございます九州、中国、四国、中部、関東の三十六の地区、個所数にいたしまして七十九地点でございますが、この
災害地に、八月十五日から八月二十三日の九日間参りまして、今回の山くずれ、がけくずれの
原因と発生
機構の解明並びに今後の
対策についての
技術的検討をしてまいりました。
今回の
災害は、直接の
原因といたしましては、六月末から七月中旬にかけまして発達した
梅雨前線による
集中豪雨がございましたが、直接の
原因はこれでございまして、たとえて申しますと、高知県の繁藤におきましては、一日七百四十二ミリというような
集中豪雨がございました。
各地とも
災害地では短期間に希有の
集中豪雨が起こっております。で、この
集中豪雨によりまして、山くずれ、がけくずれ等の
山地崩壊が起こりまして、人的あるいは物的な大きな
被害を生じたわけでございます。で、
山地崩壊の
原因につきましては、
気象条件だけではございませんで、地形、
地質あるいは
植生等いろいろな素因、要因が複雑にからみ合っておりますので、これらにつきまして総合的な判断をいたさなければならないのでございますが、
各地区につきましては、各論においてそれぞれ御
報告申し上げておりますので、これをお読みいただきたいと思います。
で、
先ほど総務
長官から御
報告ございましたように、総論的に申しますと、今回の
崩壊は三つのタイプに分かれておりまして、
一つは地下水による地すべり型の
崩壊、これは
宮崎県のえびのあるいは高知の繁藤等でございます。それからもう
一つは、
集中豪雨によりまして山腹がスプーン状に
崩壊するという
山腹崩壊型の
崩壊が起こっています。これは主として中国地区、あるいは北三河等の地帯に起こっております。それからもう
一つといたしましては、堆積物が
集中豪雨で一気に流れます山津波、あるいは土石流というものが天草あるいは島根県の柿木村等において見られます。
で、
先ほどもお話が出ましたが、これらの地区におきましてある
程度治山、あるいは砂防の工事が行なわれておりますところを見ますと、これらの工事の効果が非常に再確認されるわけでございますが、ただ、これは結果論的になりますが、もう少し支流と申しますか、そういうところに工事が行なわれておれば、さらに
被害を軽減できたであろう、こういう地点もございます。特にこれは、従来、
災害が全然起こらなかったような地区等にそういうことが考えられます。それから山林につきましては、
山腹崩壊防止あるいは土砂の流出防止に非常に効果的でございまして、なお一部に、えびのなどでは数十年の樹齢の木が倒れておりますが、こういうところでは森林のいわゆる
山腹崩壊防止機能を越えたものだと、こういうふうに判断されまして、むしろ、
地質あるいは地形的な要因が
崩壊に関与しておるものと、こういうふうに思われます。
それから、今回被災を受けました個所の今後の見通しでございますが、なお
各地で周辺に亀裂が存在したり、あるいは
崩壊面に多量の土砂、あるいは岩塊が不安定な
状況で残っておるところがございます。したがいまして、これらのところでは今後ある
程度の降雨があると、さらに再
崩壊するおそれがございますので、こういうところでは特に実態
調査を至急に行なって、十分な警戒が必要と思われます。また天草等では、今回
被害を受けましたのは、主として上島でございますが、これと同様の地形、
地質をしております下島等がございます。こういうところは今回、幸いにして
集中豪雨を受けておりません。こういうところにつきましても、もし今後
集中豪雨があると同様の
被害を受けるおそれがございますので、これらの地区につきましても、十分な
調査と今後警戒が必要であろう、こういうふうに思われます。
それから、今後の
対策についてでございますが、
危険個所の
調査、
点検をまず至急にやる必要があろう。これは特に、人家の裏山を
中心といたしまして、
人命尊重を第一としたこまかい
調査が必要であろう、こういうように思われます。
それから、
先ほど申しましたように、治山
砂防工事が非常に効果がございますので、周辺の地形に順応しました工事を今後も促進する必要があろうと思います。それから森林につきましても、
崩壊の拡大防止、あるいは土石の流出防止に大きな効果を持っておりますので、地形あるいは
地質等に順応した森林の育成と保護が大切だと、こういうふうに思います。
それから四番目といたしまして、
災害を受けた住宅地の復旧でございますが、今回の
災害を十分考慮した上で、その復旧をする必要があろうと思います。なお、今回
災害地を見て回りますと、次男、三男の方の新しい家がかなり
災害を受けております。こういう点からしますと、今後、いなかにおきましても、宅地造成をする場合に十分指導が必要であろう、こういうふうに考えます。
それから、なお今回の
調査地区で、たとえて申しますと、天草等では従来水害というものが全然なく、むしろ、
災害といえば海からの
台風の害、そういうふうなところでございまして、こういうところではやや
避難訓練等が従来抜けておったのではなかろうかと思います。で、そういうところで特に
人的被害が多く出ておりますので、今後
避難態勢の確立と自主的
防災意識の高揚ということが、各種の
対策と同時にぜひ必要と思います。
で、その一点といたしましては、今回の
災害がかなり局地的な
集中豪雨によって行なわれておりますので、必要な個所につきましては、大容量の自記雨量計等をつとめて設置いたしまして、
気象の条件をよく
把握するとともに、
自然災害の発生することに対しまして農民みずからが自主的に意識を高める必要があろうかと思います。
それから、安全な
避難場所をあらかじめ十分きめておきまして、常時
避難訓練等をして、極力
人的被害の阻止をするような努力をする必要があろう。
それから、
情報網の整備につきましては、中国のある県では、よく無線等によりまして
避難あるいは救急の
措置を迅速にとっております。こういうふうなことを見ますと、特に
災害に対しましては
情報網の整備が必要であろう、こういうふうに考えられます。
なお、今回の
調査によりまして、今後
研究すべき課題を九ページのところに掲げておりますが、
防災計画に必要な表層
地質図等の作成の手法の開発をして、できるだけ
危険地の判定
基準を簡易に向上させるということ。また三番目の、
崩壊現象と降雨との
関係を
研究し、その判定
基準の向上に資するようにすること。それから繁藤等では、むしろ、風化岩及び破砕帯におきます
崩壊でございまして、これらの
機構が現在よくわかっておりませんので、こういうことも十分解明いたして今後の
危険地の判定
基準を向上させる
研究が必要だと思います。
以上でございます。