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1972-08-22 第69回国会 参議院 外務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年八月二十二日(火曜日)    午後二時五分開会     —————————————    委員異動  七月十二日     辞任         補欠選任      増原 恵吉君     平島 敏夫君      佐藤  隆君     岩動 道行君     —————————————    委員長異動 七月十二日八木一郎委員長辞任につき、その補 欠として平島敏夫君を議院において委員長選任 した。     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 石原慎太郎君                 佐藤 一郎君                 山本 利壽君                 森 元治郎君     委 員                 木内 四郎君                 杉原 荒太君                 塚田十一郎君                 八木 一郎君                 加藤シヅエ君                 田  英夫君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 渋谷 邦彦君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    事務局側        常任委員会専門        員        小倉  満君    説明員        外務政務次官   青木 正久君        外務省アメリカ        局長事務代理   橘  正忠君        外務省条約局長  高島 益郎君     —————————————   本日の会議に付した案件国際情勢等に関する調査  (米軍の車両等搬送問題に関する件)  (ベトナム問題に関する件)  (日中国交回復に関する件)  (日ソ平和条約締結交渉に関する件)  (沖繩県における基地及び米軍との水道料金問  題に関する件)  (朝鮮統一問題に関する件)  (キッシンジャー米大統領補佐官の来日に関す  る件)  (ハワイにおける日米首脳会談に関する件)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  この際、一言あいさつを申し上げます。  私、このたびはからずも八木委員長あとを受けまして委員長選任されました。はなはだ微力でございますが、皆さま方の御指導、御協力を賜わりましてその職責を全うしたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) この際、青木外務政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。青木外務政務次官
  4. 青木正久

    説明員青木正久君) 田中新内閣の誕生にあたりまして、私、外務政務次官を拝命いたしました。外交は日中問題をはじめといたしまして重大なる案件山積をしているわけであります。未熟な私がはたして職をつとめられるかどうか、みずから危ぶんでいる次第でございますけれども、一生懸命やりたいと思いますので、どうぞよろしく御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げまして、一言あいさつを申し上げます。(拍手)     —————————————
  5. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 国際情勢等に関する調査議題といたします。  これより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 羽生三七

    羽生三七君 外交案件としては、当面、日中問題をはじめ各種の重要な案件山積をいたしておりますが、きょうは、主として米軍ベトナム向け戦車輸送問題についてお尋ねをしたいと思います。この問題が今日国民の大きな関心事となっていることは、これは政府も御存じのことと思いますが、これに政府がどのように対処しようというのか、これからお尋ねをいたしたいと思います。  現在のこの米軍戦車の阻止のいろんな住民等動きは、いま主として自治体やあるいは住民が、法の定めに従って米軍も行動すべきである、そういう立場でいま住民闘争が行なわれております。これに対して、米軍の場合だけ特別扱いをするような、いわゆる特権は絶対に認めるべきではないと思います。米軍であるがゆえに日本国内で定められておる法律を無視してもいい、あるいは軽視してもいいということはあり得ないことと思いますので、まずこの点について、政府が法の命ずるところに従って、たとえ米軍であっても国内法の適用を十分厳格に実施すべきであると考えますが、この点についての大臣のお考えを承りたいと思います。
  7. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) さよう心得ております。
  8. 羽生三七

    羽生三七君 そうなると、次のことを私お伺いしたいんですが、米軍ベトナム向け戦車輸送を援助するようなことは、ベトナム戦争日本が手をかすということにはなりはしませんか。今後絶対そういう意味で、いま現に神奈川県で行なわれておる戦車輸送の問題のみならず、この種の、ことに法に違反するような場合には絶対に認めないということをここで御確約願います。
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ベトナム戦争に対する態度をどうするかという問題につきましては、各党各派いろいろお考えがあるように拝承いたしておるわけでありますが、安保条約に基づきまして日本国内に駐留を認められております米軍基地間の移動につきましてこういう問題が起こったわけでございます。私ども立場は、地位協定に基づきまして米軍がいま持っておりまする権能を保障してまいる立場にあるわけでございます。行政当局といたしましては、この立場におきまして厳正に事に当たらなければならないと心得ておるわけでございます。ただ、御指摘のように、それだからといって国内法を軽視または無視していいなどと考えては毛頭いないのでございまして、米軍といえども国内法を順守し、国内法の手続を踏んでいただきまして、関係当局の許可を得て基地間の移動をやってもらうというようにいたしたいと、せっかくいま苦心いたしておるところでございます。
  10. 羽生三七

    羽生三七君 この問題についての内容のこまかい点については、他の委員の方も御発言があろうかと思いますので、さらにこの問題について、引き続いて大局的な立場から二、三お尋ねをしたいと思います。  おそらく日中国交正常化に伴って、形式はどうなるか未定であるにいたしましても、実質的にはこれは日米安保条約極東範囲から台湾が落とされるのは時間の問題であろうかと思います。日本に近い台湾がそういうことになり、またもう一つ朝鮮半島につきましても南北朝鮮間に新しい動きが起こり、また国連においても、早ければことしの秋には南北朝鮮同時無条件招聘ということも起こりかねない、その可能性もあるわけであります。そうなれば韓国もまた極東範囲から除外されるべきであろうと思います。近い台湾朝鮮がこういう状態にあるときに、遠いベトナムでの戦争日本が平和の役割りを果たすならとにかく、逆に人民を苦しめるような戦争に手をかす結果となるような日本にある米軍基地使用のあり方というものは、根本的に考え直すべきではないかと思う。だから、そういう意味で、大局的な点からこれからさらに続けてお尋ねしたいのでございますが、そういう面からも、戦車輸送問題を根本的にもう一度考え直される必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  11. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま羽生先生のおっしゃった問題は、最も高次な政治問題といたしまして、ベトナム戦争に対して日本政府がどういう態度をとるかという問題が一つと、それから現にある安保条約に従いましてその運営をどうするかという問題と、二つあると思うのでございまして、私が申し上げておりますのは、後段の、現にある安保条約のもとで保障された権利の行使を円滑にして差し上げるという、そういう立場を私どもが持っておるということを申し上げたわけでございます。高次元の政治問題になりますと、安保条約の存廃という問題にかかるわけでございまするので、その問題は、別に政治問題として私はないとは申しませんけれども、いま私の立場でお答えできる限界は、現にある安保条約運営につきまして御答弁申し上げるということで御了承をいただきたいと思います。
  12. 羽生三七

    羽生三七君 たとえ米軍といえども国内法に照らして厳重に処置する。特別な特権は認めない。これはわかりました。これははっきりされておると思います。  それから続いて、いま私が申し上げたような安保運営に関する基本的な問題に関しては、さらに引き続いてお尋ねするわけですが、近く行なわれる日米ハワイ会談の際、この際に、ベトナム戦争日本基地を使うべきではないということをアメリカにぜひ私要求していただきたいと思います。これは、その理由はまたこれからあとだんだん申し上げますけれども、要するに、ハワイ会談の際に、ニクソン大統領に対して田中首相なり大平外務大臣から、少なくとも極東範囲周辺といわれる遠いベトナム——これもこじつけですが、周辺であるということは。そういうベトナムに送るような戦車等について——戦車に限りません。とにかく日本基地ベトナム戦争に利用すべきではないということを私はぜひ強くアメリカに申し入れをしていただきたいと、これ外務大臣要請をしたいのですが、いかがでしょうか。
  13. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 羽生先生も御高承のことと思いますが、米国自体も、ベトナム戦争をいかに円滑に、しかも早く終息に導きたいかということで苦吟を重ねておるように私も承知いたしておるわけでございます。私どもも、この不幸な戦争が一日も早く終息をみまして、アジアの天地に平和が返ってくることを希求しておるわけでございます。いま、ことしの春から今日にかけて、ベトナムの雲行きがやや緊張を増したように印象を受けておりますけれども、全体として五十数万の兵員をかの半島に送っておりました当時から比べまして、現在、陸上、インドシナ半島に駐とんする米軍は三万九千人と承知いたしておりまして、非常に急速な終息の過程をたどっておるように思うわけでございまして、したがってアメリカ当局も、平和への願いというものは不動なものがあると思うのであります。もし、それアメリカが、そうではなくて、ベトナム戦争の拡大を企図しておるというようなことでございますならば、いま先生の御提言にありますように、われわれといたしましてアメリカ自省を求めるのが適当、適切ではないかと考えるのでありますが、いませっかく終息を急いでおることでございますので、アメリカの計画に寄り添いまして、一日も早く平和が回復してまいるように、期待をしておる次第でございます。  それからハワイ会談におきまして、そのことをこちらから提案する用意があるかどうかということでございますが、この会談は、日本に新しい政権ができまして、その政権首脳意見交換を持ちたいという先方要請によって開かれるものでございまして、どういう問題を議題として取り上げるかという点は、まだ最終的には打ち合わせは終わっていないわけでございまして、いま鋭意詰めておるところでございます。私どもといたしましては、今日の日米友好関係が今後も十分な理解をもって進展してまいるということを希求しておるわけでございまして、個々の案件につきまして具体的な御提言を申し上げるというよりは、全体のアジア情勢につきまして、隔意のない意見交換を遂げたいというような希望をいま一応持っておるわけでございます。そういう問題を取り上げるべきかどうかということにつきましては、にわかに私から御返事ができないことは残念でございますが、いま申し上げたような気持ちから御推測いただければしあわせと思います。
  14. 羽生三七

    羽生三七君 日中打開関連をして、中国側日米安保問題をからませないとの報道も伝えられておるわけですが、これは中国側見解であります。それとは別に、日本は自主的な立場で、安保極東条項というような問題をもう一度考え直したらいいんではないかという気がいたします。私は、もちろん安保解消論者でありますけれども、きょうはそういう基本的立場は全然別にしまして、政府立場から考えましても、安保は、特にこの極東条項については考えられるべきではないか。極東の平和と安全との問題、それから、ここに持っておりますが、極東範囲に関する政府統一見解、先ほど申し上げた台湾韓国等も入っておる極東範囲の問題、こういうような問題も客観的な条件そのものが変わろうとしておるし、しかも、それは間もなく変わることは絶対確実と見通されておるそういう際に、私はいまの問題を根本的にやはり再検討さるべき時期にきておるのではないか。私は解消論者ですが、いまここで解消論を言っているのではない。政府立場からいっても、もう一度考え直す部面がたくさん出てきているんではないか、それを申し上げているわけです。いかがでしょうか。
  15. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま御指摘の問題があることは私も承知しておるわけでございますが、いま私どもが取りかかっておる問題は、日中間におけるいわゆる国交正常化をどうして実現するかという目的を持ちまして、そういう希望を持ちまして基本問題の検討をいたしておるところでございます。で、いま御指摘の問題が、問題性を持たないとは私はあえて申し上げませんけれども、いかにして正常化への道を直くしてまいるかという問題にいま腐心しているわけでございますので、そのことを達成する上におきまして、必要なことはやらなければならぬし、達成をはばむようなことになることは戒めてかからなきゃなりませんし、そういう点でいまいろいろ検討を重ねておるということを御了解いただきたいと思います。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 まあ考えればこれは妙な話で、そういう問題を検討する場合に、日中間打開が優先的に行なわれるという場合に、それをはばむようなことがあってはならぬ、これは当然であります。いまの外交問題の優先順位からいえば最重要課題ですから、これを達成しなければならぬことは当然でありますが、いま私の提言は、中国は賛成するとも反対するはずはない、反対するとすればアメリカですよ。ハワイ会談アメリカがそういう問題に触れるかどうかは別として、もしはばむものがあるとすればアメリカなんです。中国は賛成するとも反対することはない。これは現にいま戦車輸送問題等で、日本国内は、どうして極東の平和と安全におよそかかわりのないと思われるベトナムの問題で、ベトナム向け戦車なんかの輸送になぜ政府がかくもこういう問題を重視しなければならないのかということについて疑惑を持っているわけですね。しかし私は、きょうは時間の関係がありますので、この問題に多くの論議の時間をさこうとは思いません。ただここで申し上げたいことは、たとえば、私、前に愛知外相のときにも、また福田外相のときにも申し上げましたが、遠いベトナム日本軍事的脅威を与えると思うか、両大臣ともそんなことは絶対にないと、軍事的脅威でない場合に、どうしてアメリカ日本基地提供の責任を負わなければならないのか。そういうことから、返還後の沖繩から米軍発進を認めないとか、本土はもちろんです、そういう問題。要するに、日本からのベトナムへの発進は認めないということを再三にわたって佐藤総理大臣、それから愛知外務大臣福田外務大臣、全部再三にわたって確認されているわけですね。それならば、単に飛行機とか戦艦に限らず、戦車についてももっと幅広くこの問題を解釈して、そして今日行なわれておるような、およそ極東の平和と安全どころではない、逆にトラブルを醸成するようないまの米軍基地あるいはその他の動きについて、もっと根本的に考え直すべきではないか、こういうことを申し上げておるんです。特にこれに関連して、福田外相は、近くこの種のトラブルを解決するために、特に事前協議に関して問題を解決するために、少なくともこの秋までには日米協議委員会を開くと言われた、外交折衝を重ねると言われた。再三ここで言明された。この席で再三言われました。いま大臣がかわりましたからこれは話は別かもしれませんけれども、この秋といえばおそくも九月か十月です。それには根本的に事前協議問題を総ざらいして洗い直そうという確約をこの委員会で明確にされておる。外務大臣としても、いま根本的な問題はとにかくとして、そういう運営の問題については、もちろん日中問題も大事です、これはすぐやっていただかなければならぬ。同時に、いま申し上げているような問題も私はきわめて緊切な問題だと思う。いかがでございますか。
  17. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私の前任者事前協議の問題を洗い直してみたいということを国会でお約束されたことは私も承知いたしております。それで、それは私どもも別に異存はございませんで、期日をはっきりまだきめたわけではございませんけれども、そういう措置は考えてよろしいと私は考えております。ただ、たとえばいまのベトナムの戦局の緊張に伴いまして沖繩基地嘉手納基地なんかに、この間からずいぶん国会でもいろいろ御論議をいただきましたB52の飛来の問題などがございますけれども、あれは本来事前協議にかかる問題ではないんでございまして、国民感情県民感情考えまして、米軍自省を求めておる問題なんでございます。したがって、事前協議の問題を、事前協議にかかる事項について、これまで米軍側から事前協議を求められたためしはないわけでございますから、だからこの洗い直しという問題は、結局、現在事前協議対象になっておる事項をもっとふやして、日本側自主性を確立してまいる、拡大してまいるという方向に問題を取り上げないと意味がないと思うんでございますが、そうなりますと、結局安保条約全体のセットアップをここでもう一度見直していくというような、非常に問題が大きくなっていく性質のものじゃないかと思うんでございまして、前大臣が言われた趣旨のものが一体どういう、事前協議にかからないものを事前協議対象にするようにひとつ検討してみようとおっしゃったのか、そこまでは私はおっしゃってないように記憶いたしておるわけでございますので、いまのセットアップの中でもし問題がございますならば、それは十分洗ってみるということについては私も異存がないんでございますけれども、問題をより拡大した姿においてこの機会に大きく取り上げてみるというところまでお約束することは、私はちょっとできないんじゃないかと考えております。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 この問題は、私どもはこの委員会でもう繰り返し繰り返しやった問題でありますので、いま大臣から簡単なお話がありましたが、そういうこととはだいぶ内容的に違うんです。これを申し上げておると私に与えられた時間はなくなってしまいますから、ただ一口に言えば、直接発進しないとアメリカが言えば、永久に事前協議にかかることはないんです、これ。ですから、そんな抜け道だらけの形骸化されたこの安保運営のやり方では承服できないというのが、この委員会のわれわれ関係者の一致した意見で、それに前外務大臣は答えられたわけですか、もうこの問題はこの程度にしておきます。  そこで、時間の関係最後にお伺いいたしたいことは、日中問題で、一部新聞には、共同声明で基本的な問題を合意をして、そして国交正常化して、そしてしかる後に、平和条約についての継続的な交渉を行なうというようなスケジュールと報道されておりますが、大体そういうことなんでしょうか。私は、時間もないし、また非常に問題が微妙なときでありますので、内容の一々についてお伺いしようとは思いませんが、大体そういう方向なのかどうか、あるいはストレートに一回で平和条約なりを片づけるというのか、一般に伝えられておるようないまの二段がまえなのか、その辺はどういうことでしょうか。
  19. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま私どもがやっておる仕事は、日本側として、国交正常化する場合に検討しておかなければならぬ基本問題を洗って勉強しておるところでございます。まだ先方との接触は持っていないわけでございまして、先方との接触政府首脳訪中から始まるわけでございます。そこから交渉が始まって、その交渉をどういう姿で取りまとめてまいるかというところまではまだ考えは及んでいないわけでございまして、いま鋭意基本問題の検討をしておる最中でございますので、日中の交渉を通じまして、最終的にどういう姿でこれが結晶してまいるかというところにつきましては、まだ国会で申し上げるようなところまで考えは進んでいないのでございます。
  20. 羽生三七

    羽生三七君 もう一、二問で終わりますが、その場合の最初の折衝というものは、自民党の訪中議員団がやるんですか、政府のどなたかが行かれるんですか、その辺はどういうことなんですか。
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 田中総理訪中から始まる。
  22. 羽生三七

    羽生三七君 それから始まる、ああそうですか、よくわかりました。  そこで最後に、この間外務大臣は、どこかの外人記者に、日中不可侵条約締結用意があるというように言われたように報道されておりますが、そうなら私たちはもちろん大歓迎なんですが、そういうことはおありなんでしょうか。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あれは通訳の少し行き違いがございまして、私が申し上げたのは、先方の私に対する質問は、日中正常化してどういうメリットがあるかというような意味質問がございましたから、これが幸いに成功いたしてまいりますと、この地域の平和の確立に寄与するようにしたいものですなあと、その場合は、国際紛争を武力に訴えるというようなことのない、平和五原則にも盛られておるように、相互不可侵というようなことも両国の間で誓い合うことは大いに意味があるように私は思うという意味のことを申し上げたのが、何か不可侵条約とかいういかめしい表現になりまして、私もびっくりしたのでございますが、あとAP通信社のほうには訂正をいたしておきました。
  24. 羽生三七

    羽生三七君 いやこれはたいへんですな。日中の国交正常化することは、当面の日本外交の最重要案件で、これはぜひ達成していただきたい。御努力に私たちは敬意を表します。  ところで、それさえ達成できればあとはどうでもいいというわけではないので、その問題がアジアの平和とどういう関連性を持つか、そういう意味で、いま通訳の誤りと言われましたけれども、私はそれが正解であることを実は希望する。日中の間に今後とも平和共存不可侵の取りきめができることを私は期待する。同時に、それは日中だけではいかないと思います。日ソとも平和条約ができれば不可侵条約を取りきめる。これは実は前外務大臣が明確に、平和条約がもし——日中はもちろんですが——日ソ間にできたときには、同時に、平和条約ができたときには不可侵条約を取り結ぶ、もちろん異存はないと、こうはっきり言われておるし、また同時に私たちは、南北朝鮮が平和的に統一されて新しい情勢が出たときには、これもまた加わって、ぜひ太平洋集団安保というようなものが形成されることを期待しておるわけです。そういう問題について、いま日中の問題だけに触れられましたけれども、日中、日ソあるいは朝鮮等を含む、将来は日米安保がなくなれば、あと日米友好条約でもいいと思いますが、幅広いアジアのあるいは太平洋集団安全保障体制というようなものについてはどういうふうにお考えになるのか。そういう構想の一環として、日中の国交正常化するとともに、新しい平和の糸口というものを私は切り開いていくべきである。こういうことを考えるのですが、いかがでしょうか。これをお尋ねして私の質問を終わりたいと思います。
  25. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 平和の創造という問題は、仰せのように外交にとりまして最大の問題でございます。と同時に、非常に不断に、じみちに一つ一つ礎石を据えていかなければならない仕事であると思うのであります。で、日ソ共同宣言にも御承知のようにそういう精神がうたわれてあるわけでございまして、相互に侵すことのない主権国としての立場を鮮明にいたしてあるわけでございまするし、そういうことは、どの国との外交につきましても、基本的姿勢としてとってまいらなければならぬものと考えております。で、それが多角的な大きなワク組みを持った不可侵条約というようなものになることを私ども拒む理由は一つもないわけでございまして、平和への努力はたんねんに、事が小さかろうと大きかろうとたんねんに積み重ねていくように努力していかなければならぬと考えております。
  26. 西村関一

    ○西村関一君 ただいま羽生委員の御質問の中に、米軍車両の輸送問題と関連して、これが直接ベトナムに送られるという点から国民の世論が沸騰している、これに対して政府見解はどうなんだという御質問がございました。大平外務大臣は、前段におきましては、国内法を守らせる、また条約及び協定の円滑な運営をはかっていくと、こういう御答弁がございました。しかし、ベトナム戦争が一日も早く終結するようにということは論をまたない、しかも緊張が続いておるけれどもベトナム戦争は少しくまた緊張が増してきておるけれども、しかし漸次緩和されつつあると、五十万からいた地上部隊は三万九千にまで減らされておるじゃないかと、アメリカも一日も早くベトナム戦争を終結したいと、こういうことを願っているんだということがありましたが、私は、ベトナム戦争は、アメリカの地上部隊だけが減ったからといって、それで漸次戦争終結への道をたどっておると言うことは大きな間違いであると思うのであります。それは言うまでもなく地上部隊にかわるところの米空軍の強化、しかもB52のあのみな殺し爆撃、これは地上のありとあらゆるものを、その中にはすべての生物を含むところのものをみな殺しにする、こういう作戦が強行されておる。またさらに、電子兵器をはじめあらゆる化学兵器が投入されて、まことに非人道的な戦争が行なわれておる。これでもってアメリカベトナム戦争終結への道をたどろうとしているんだと言うことは、まことに失礼ですけれども、認識不足と私は言わざるを得ないのであります。何としてもベトナム戦争を終結させるためには、日本がこれに加担しない。少なくとも日本はこれに加担しない。もちろん条約や協定がございますけれども、しかし、これが運営について円滑を期していくんだと言われましたが、その円滑を期していくという面においても、まずベトナム戦争を早期に終結せしめるという立場に立って米側と接触をせられることが望ましいんじゃないかと、それがまたアメリカとパートナーシップをとっているという日本のとるべき道ではないかと思うのであります。  そこで私はお伺いしたいのでございますが、一つ沖繩基地でございます。沖繩は復帰をいたしましたが、二十九年二月十九日の国連地位協定の第五条によりまして、嘉手納基地、普天間基地、ホワイトビーチ基地等には国連の基地としての性格を示しておるのであります。つまり、それらの基地には日章旗と星条旗と国連旗がひるがえっておる。こういう仕様でありまして、国連の名において、これらの基地からアメリカの空軍がベトナムへ飛んでいるし、また、例の空中給油によりましてB52がどんどんベトナムに向かっておる。こういう仕様でありまして、こういうことをこのままにしておいたんでは、私は、日本政府ベトナム戦争に、アメリカベトナム戦争に加担していると言われてもしかたがないんじゃないかと思うのでありまして、その点をまことに遺憾に思うのであります。そういう点につきまして、さっきも羽生委員が触れられましたように、今度のハワイにおけるところの日米首脳会談において、もう少しく突っ込んで、ベトナム和平の問題についてアメリカ自省を促す、反省を促すという態度が、アジアにおける大国であるところの日本としてとるべき態度ではないかと思うのであります。私は、この沖繩の三基地における国連旗がひるがえっておる、米軍旗と日章旗とともにひるがえっておるということは、かつて二十九年二月十九日に、中国が国連に代表権を持っていなかったときに、アメリカの強い発言によりましてこの国連地位協定なるものが結ばれた、今日は情勢が変わっているのであります。当時、これによって朝鮮戦争というものが国連の名のもとに行なわれた。私はそういうことをベトナム戦争に繰り返したくない、これに日本が少なくとも加担したくない。政府は国連外交ということを非常に重視しておられます、私もこれを認めるものであります。国連外交を進めることが平和外交へつながるということを考えるものであります。それゆえにこういう点が見のがすことができないと思うのでございますが、この点につきまして、中国が国連に加盟し、代表権を持っている今日におきまして、こういう状態がそのままにされて、沖繩も、また日本基地も、ベトナム戦争に向かうところのアメリカの戦略に奉仕するという姿は、これは今度の米軍戦車輸送問題について国民の世論が沸騰した。いつになく沸騰したということは、何としてもベトナム戦争日本が加担する姿を取り除かなければいけない、こういう国民感情のあらわれであると私は思うのでございます。そういう点に対して、外務大臣は、高度の政治的判断については自分が言うべき立場でないとおっしゃいますが、総理を除いて外務大臣以外に高度の政治発言をなさる方がないと思うのであります。私は、外務大臣が、この点に対して勇気を持って所信を総理にも言われ、また強くあらゆる機会にベトナム戦争の早期解決のための日本の姿勢を打ち出してもらいたい、こう思うのでございますが、いかがでございますか。
  27. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 安保条約は、西村先生御承知のように、日本の安全を守る部分が一つと、在日米軍基地の使用ないしその出撃のルール、そういうものをきめてあるわけでございまして、それが一つの条約として一体化されたものになっておるわけでございます。で、いま高度の政治判断の問題といたしまして、私どもは現行の安保条約の改廃をいまの段階で考えていないわけでございます。したがって、この安保条約が存在する限り、その条約によりまして米軍がそのルールによって行動しておることを拒む立場ではないということを申し上げておるわけでございます。しかし、その場合といえども、しかしこれは条約論、法律論ばかりを振り回すつもりは毛頭ないのでございまして、十分国民感情考えながら、米軍自省を求むべきものは求めてまいっておるわけでございまするし、米軍もまたそれに対しましてそれなりの反応を示しておるわけでございます。そういう努力がなお足りないからもっとふんばれということでございますならば、私どもそのとおりがんばってまいるつもりでございますが、根本の問題といたしまして、安保条約の存廃にかかるという段階の問題になりますと、ぞんざいな議論はできないという立場におりますことを御了承いただきたいと思います。
  28. 西村関一

    ○西村関一君 政府立場とわれわれの立場が違っておるということは、これは安保条約についての見解が違っておるということは、もう言うまでもございません。それをあらためて外務大臣から伺おうとは私は考えていないんでありますが、条約のワク内におきましても、あるいはこの条約の将来、さっき羽生委員が言われましたところの安保条約でなくて、日米平和条約といったようなものが将来結ばれるという見通しのもとに、どう日本ベトナム戦争に対して対処するか。しかも、これは安保条約だからアメリカが何をやったってどうにもしょうがないんだということじゃなしに、米軍に対して、アメリカ政府に対して、ニクソン政権に対して強く忠言を行なう、あるいは苦言を呈するという姿勢があっていいんじゃないかと思うんであります。  それともう一つは、私がさきに質問をいたしましたように、沖繩における三つの基地、これが国連基地になっているのかどうか。私はそういうことは、沖繩復帰後、国連の基地になったということは聞いてないんであります。しかし、これは一体どうなっているのか。国連旗がひるがえっておるということにつきまして、国連の名においてベトナム戦争が行なわれておるということについては、これは承服できないということをさっき申し上げたんでありますが、これについての御答弁がありませんでしたので、政府の今後ベトナムに対するところの強い姿勢を要求いたしますとともに、こういうことに対して政府アメリカに対してどういうお考えを持っていらっしゃるか。ハワイ日米首脳会談においても、もっと胸襟を開いてニクソン大統領と話し合う、これは地上部隊が減ったからというだけではだめなんであります。これは空軍力も、また海軍力も、あるいはベトナム化政策、アメリカベトナムにおいてとっておるところのベトナム化政策もやめさして、ベトナムの問題はベトナム人自身の手に渡すという姿勢がなければ根本的な解決にならないと思うんでございますが、私はもう時間がございませんから、これ以上お伺いすることをいたしませんが、その点を明確に大臣から御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま与えられた条約のワク組みの中でなお尽くすべき手を尽くしまして、平和への努力をする、あるいは国民の平和への願望を米国側に伝え、理解せしめるというようなことにおきましては、最善の努力を今後ともしてまいるつもりでございます。  それから第二の国連と沖繩基地との関係につきましては、事務当局から説明させます。
  30. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 沖繩におきます国連軍の基地のことについて御答弁申し上げます。  沖繩の復帰に際しまして、五月十五日に国連軍との地位協定、これの第五条の第二項によりまして、沖繩の三カ所の基地、先ほど先生がおっしゃいました三カ所の基地が国連軍の基地として使うという、使用を認めることとなりました。これはいずれも米軍が使用しております基地の中の三カ所でございまして、本土にも国連軍の基地がございます。したがいまして、この結果、日本国内における国連軍の基地というのは合わせまして十二カ所ということになっております。なお、国連軍の関係は、国連の決議に基づきまして、もっぱら朝鮮半島にかかわる問題でございますことを申し添えます。
  31. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 日中問題について二、三お尋ねしたいと思います。  与党の日中問題、日中国交の関係委員会の常任幹事会で、どうも政府与党間にまだいささかのギャップがあるような感じがいたしましたが、たとえば日台条約の無効云々と破棄という問題の、無効と破棄のニュアンスの差が、つまりどの程度の差であるのかという認識について、非常にあいまいな感じがいたしましたし、その点お尋ねしたいのですが、まず政府のこの問題に対する思惑と与党間のギャップを現在お認めになるかどうか。  それからもう一つ、日台条約の無効と破棄のニュアンスの差について、すでに政府統一見解のようなものがおありかどうか、お聞きしたい。
  32. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど羽生委員の御質問にお答え申し上げましたとおり、目下私どもが日中正常化に伴う基本問題を検討いたしておるのでありますが、それが煮詰まりまして、どういう姿になるかということにつきましては、まだ考え及んでいないという御答弁を申し上げたのでございます。したがいまして、いま政府立場でこれ以上のことを申し上げる自由を持っていないのでありますが、与党の内部でいろいろ御論議があったわけでございますけれども国会の場におきまして、いま私からそれについて政府の答弁として申し上げる段階にまで至っていないということを御了承いただきたいと思います。ただし、一般論といたしまして、条約の失効と破棄というようなことのニュアンスの違いというようなこと、これは特定の条約云々ということではなくて、一般論としてのお尋ねに対しましては、条約局長から答弁させます。
  33. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 日華平和条約という特定の問題ではなくて、一般的に条約の失効あるいは条約の破棄という問題だけに限ってお答えいたしますと、通常、条約は条約の中に規定がございまして、その規定に基づいて効力を失うというのが通常でございまして、また、破棄の場合も、これは廃棄と同じことでございますけれども、条約の規定に基づいてこれを条約締結当事国が合意の上で廃棄する。あるいは一方的に廃棄する。いずれにいたしましても、規定に基づいて廃棄するというのがたてまえでございますので、そういう規定に基づかない一方的な廃棄というのは非常にまれな場合でございまして、これはまだ国際的に、こういう場合に一方的に廃棄できるということにつきまして確定した解釈というものはございません。
  34. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 まあそうした原則論、一般論で片がつかないところに日台条約なるもののやっかいさがあると思います。  その問題はおきまして、いかなる外交交渉にも、アプリオリというものがあるということは非常に危険だと思いますが、特にこの日中問題に関しては非常にそれが作為的につくられて、大きな足かぜになっているという感じがいたします。私は、生まれて初めて委員会質問しましたときに、英語を使い過ぎるというおしかりを受けましたのですが、そのときに、どうもその原因になりました英語をあえて使うのですけれども日本人というのは契約観念がはなはだあいまいなものですから、ディプロマティック・オプションということばをいかに訳したらいいか、私自身日本語に戸惑うのですけれども外交問題におけるディプロマティック・オプションと、もう一つバーゲニング・ポイントというのが一体何であるかということを正しく認識しませんと、問題を取り逃がすおそれがあると思います。これは大臣に向かって釈迦に説法だと思いますけれども、ただ日中問題の中で、要するにこの外交的なオプションとバーゲニング・ポイントというものが、実はすでにあるアプリオリによって非常に振り回されて、あいまいな認識になっているという気がいたしますが、インド洋、あるいはインド亜大陸でバングラデシュの問題以降、あそこの各国入り乱れた政略、戦略の一つの鳥瞰図を踏まえましても、あるいはさきの米中共同声明の中の台湾問題に対する二つの声明の裏をとってみても、つまり台湾問題を暫時凍結することが米中両国にとっての国益であるということがはっきりうかがえるわけで、そういったものを踏まえてみまして、つまり日中国交回復という問題の中での台湾の性格も浮かび上がってくると思いますし、その前に基本的につまり米中ソのいろいろな関係、そこに一枚加わった日本の位置からして、日中国交回復というものの中でどちらが外交的なオプションを持っているかということ、私は自明のような気がするのですが、この点、大臣いかがお考えですか。つまり、日中国交回復をする一つ外交交渉の中で、どちらがより多くのオプションを持っているとお考えですか。そういう質問は非常に乱暴かもしれませんが、つまり、この日中国交問題の中での外交的ないわばオプションについて、基本的にこれから政府がこの問題を煮詰めていらっしゃる場合の基本的な姿勢、それもある意味では一つの高度な外交的な秘密に属するかもしれませんが、それについていささかお答え願えればありがたいと思います。
  35. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 外交的オプションについての私の答弁、あるいは石原委員の御質問にぴたっとこういくかいかぬか、ちょっと私も自信ないのですけれども、現状のままいくか、それともいわゆる正常化方向に措置するか、それが一つのオプションの問題であろうと思っております。で、これがなかなかふん切りがつかないで、戦後、御承知のように二十何年間、今日を迎えておるわけでございますが、田中内閣ができまして、私どもとしてはもうそろそろその問題についてけじめをつける時期が来たのではないか、それは政府の手でやるべきじゃないか、そういう判断をいたしたわけでございます。それにはいろいろな御論議があろうと思いますけれども外交的に見ましても、内政的に見ましても、そういういわば選択が政治の責任にこたえる道じゃないかというように考えたわけでございます。
  36. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 もう一つの、この重要な国際交渉の中でのいわばバーゲニング・ポイントというのは、私はやはり日台条約といいますか、台湾の問題だと思いますが、さきに竹入委員長あるいは佐々木更三氏、あるいは与党の川崎秀二氏が向こうに行かれましてどういう話し合いをされたか、私つまびらかにしませんが、おそらくこれは、私の独断といいますか、推測といいますか、たぶんはずれていないと思いますが、中国側の利益を踏まえて推測すれば、さきの米中共同声明の伏線にあったように、つまり、向こうが言っていた国交回復の三原則の日台条約の破棄という問題は、この際やはり明確にしなくてもけっこうであるという譲歩を十分彼らがしなくてはならぬ、またし得る政治状況にあると思うのです。そこで政経分離——台湾に対する政経分離ということばが出てきておりますが、ただ私は、かつての北京に対する政経分離と違って、むしろ一種のキーストーンとしての台湾の位置というものを考えてみると、中国の国際政略に対する抵抗力のない、たとえばフィリピン、インドネシアとか、あるいはマレーシア、シンガポールといった国々に対して与える影響、しかも、それは日本の経済にとって不可欠なマーケットである、そういったものをかね合わしてみても、その台湾との政経分離というものに、国交を断つというような形で一切日本台湾の政治的な意味というものを認めないで済むのかという疑問がありますが、台湾に関する政経分離というものについて、大臣はいまの段階でどのようにお考えになっていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。
  37. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま私が申し上げられることは、中国一つであるということ、そしてその一つ中国日本との国交を正常なものにするという課題に取り組んでおると私は認識しておるわけでございます。で、それは現在の中国政策に対して大きな変改を求めることになるわけでございます。ただそれが、まだそういう問題の検討の最中でございまして、相手方と正式の交渉に入ったわけじゃないわけでございますので、いま国会で申し上げられることは、そういう基本問題を検討いたしておるわけでございますと、鋭意検討中でございますと、こういうこと以上に申し上げられないのはたいへん残念でございますけれども、御了承いただきたいと思います。
  38. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 そこで、中国一つである。一つであるべきであるという一つの認識あるいは願望と、中国一つになるということと、これ、おのずと違う問題ですし、一つであるべきだと望んでいる中国自身にとっても、一つになるということが当面の情勢の中でむしろデメリットにつながるという認識もあるということを、当然政府は御存じでしょうけれども、そういった認識を国民全体が持ってこの問題を考えるべきだと思うのですが、そこでこれから種々政府が直接交渉されて、いろんな調整をされるのでしょうけれども一つは、これはお願いを兼ねて申し上げたいのですが、さっき不可侵条約云々という問題が出ましたけれども、それは大臣が直接そういう表現でされたのではないということはわかりましたが、不可侵条約なんていうのは昔の女郎の起請文みたいなもので、それだけの価値しかないということは国際政治の歴史があかしているわけですが、それより非常に大事な問題があると思うのです。これは実は大平大臣がかつてやはり外務大臣をつとめられたころに誕生した問題なんですが、つまり不可侵条約云々よりも非常に実質的に具体的に重要な効果のある問題であります。それは日中両国間の記者交換の体制の問題であります。で、御記憶にもちろんあると思いますけれども大臣は、かつて外務大臣をしてらっしゃったころ、LT貿易の交渉が始まり、そのためにいらっしゃる松村謙三氏に——これはオフレコかもしれませんが、しかし、大臣もお話しになり、また、当時の当の局長が外務省の意向として、その随員たちにも、記者交換の体制というものはかくあるべきである、それでなければつまり非常に好ましくない。それは相互自由、政治的な干渉を一切排するということで、当初LT貿易間の日中記者交換体制ができたわけでありますが、それが文革のあと、いろんな政治家が介在することで非常に不健全なものに変わってきて、私も国会でやりましたけれども、北京の日本の新聞に対する非常にマニピュレーションが強い、干渉が強いということは周知の事実になって、これは国際的にも日本の新聞が置かれた、非常に政治的な追い詰められた状況に対する同情と懸念が自由国家圏の新聞からも集まっているわけですが、これはぜひ政府がこれから交渉される段階で、政府が行なわれている日中国交回復への努力というものが正常に国民に理解され評価されるためにも、ひとつ新聞にいま加えられている一つの足かせというものを、これはやはり対等の資格でそれを取っ払い、かつて大平大臣が望まれた、そして一時はそうした形で実現した形に、日中記者交換体制が戻るように——それは国交正常化すれば機械的になるかもしれません、あるいはならないかもしれない。われわれと社会体制の全く違う国でありまして、新聞に対する認識、効用というものもおのずと違った考え方があるわけでありまして、まあ違う国が私たちの国の新聞に対してそういう規制をしてくることは、向こうの発想からすれば当然かもしれませんが、しかし、私たち考え方ではそれがこういう形で実現するということは非常にやっかいですし、大きなものを失う可能性になると思うのです。つまり新聞というものの意味に対する認識が非常に違う国と国の交渉だけに、むしろこういった問題が不可侵条約云々よりも大きな意味を持つのではないかという気がします。まあ、私もこの間の上海バレーなるものを見ましたが、一つの芸術についても、社会的な効用に対する認識が明らかに違う。私はどうもああいうキツネつきの政治外交というものを芸術と思いませんし、これに対して政府の要人の三木、中曽根両氏が熱烈に拍手されたようですが、まあジョン・ブレインのことばを借りますと、バレーとかオペラの拍手というものはたいがい白痴的だそうですけれども、たいへんあれも政治的な拍手だったような気がしますが、やはり私も芸術家の一人として、芸術に対する認識がそういうふうに異なる国というものをどうも安心して評価するわけにいかない。ましてこれが新聞になりますと、非常に大きな国益につながる問題だと思いますので、これはたまたま大平大臣がまた外務大臣をつとめられることで、問題がキャッチボールして、戻ってきたわけでございます。ぜひこの問題にひとつ鋭意お取り組み願って、かつて大平大臣が望まれ実現した形にひとつ新聞記者の交換体制が戻るように御努力願いたいと思います。
  39. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今度は国交正常化でございますから、あらゆる分野にわたりまして日中両国の間柄が正常なものになるようにしなければならぬわけでございますので、いまのお話も拝聴いたしまして、心得て対処したいと思います。
  40. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 終わります。
  41. 田英夫

    ○田英夫君 私、大平さんが外務大臣になられて初めてお考えをお聞きするので、何といいますか、大平さんの国際情勢に対する基本的なお考えという意味でお聞きしたいわけでありますが、その前に、それに当然関連をすることでありますが、先ほどから羽生さんあるいは西村さんからも御質問のありました、アメリカ軍の車両の輸送の問題に関連をして、一つだけ御質問したい点があります。  けさの新聞に、いずれも大きく報道しておりましたが、法眼外務次官が昨日の記者会見で、車両制限令をアメリカ軍の場合自衛隊と同じように例外にしたい、こういうことを言われたようでありますが、まあこれは外務次官の正規の記者会見というふうに、一斉に出ているところを見ると、そうだろうと思いますが、そこで言われたこととなれば、これは外務省の考え、こういうふうに考えざるを得ないのですが、それでよろしゅうございますか。
  42. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 法眼君から私は報告を受けておりませんけれども、いま田さんのおっしゃることではないと私は思います。と申しますのは、米軍を例外にするという意味でなくて、いまの国内法の中には、自衛隊の車両とか、あるいは消防車とか救急車とかあるいは葬儀車とかというようなものは例外規定があるというのですね。その場合に、米軍は全然ないというのですね。それは今度の事件が起きましていろいろ調べてみるとなかったというわけですね。ですから、それはどういうわけだろうかということで、事務当局でその当時の立法制定のいきさつにそういうことが問題にならなかったのだろうかというようなことに対して疑問を持っておることは事実でございます。しかし、外務省といたしまして、だから米軍は例外にせよとか、あるいは例外規定を米軍に適用させろとかいうようなことは私考えておりません。現在のままの法令のもとで満たされない条件は輸送側が満たしまして、成規の手順を経て道路管理当局の許可を得て搬送するようにいたしたいと思っておるわけでございまして、法眼次官がどう言われたか存じませんけれども、外務省の責任者といたしましてそのように考えておりますから、御了承いただきます。
  43. 田英夫

    ○田英夫君 その点はたいへんはっきり責任者からのお答えがありましたので、確認をいたしますが、道路法に伴う車両制限令、またその車両制限令に伴う建設省の省令という形で実は例外規定が十六項目出ているようです。その十六項目の中に自衛隊も入っている、こういうようですけれども、それを十七項目にするのだというようなことまで一部新聞に書かれていたものですから、これは先ほどから大臣が言われました基本的な日本国内法を守ってもらう、米軍といえども例外でないのだという基本的な考え方からするとたいへんおかしいことであるというふうに考えましたので、この点だけ一つ確認をしたわけでありますけれども大平さんからはっきりお答えをいただきましたので、この点はひとつあらゆる場面でも守るように指導をしていただきたい。末端の警察あたりにどうもそれが徹底していないのじゃないかと思われる節がたくさんあるわけでありまして、これはひとつ外務省の、外務大臣のお考えというよりも、政府のお考えとして、強く末端まで伝わるようにしていただきたい、こう思います。  まあその問題はそれといたしまして、大臣、基本的な国際情勢に対するお考えということで聞きたいのですけれども、これは抽象的なことでお聞きしてもどうもしかたがありませんから、ひとつ具体的な問題として、日中の問題はすでに各委員からも御質問がありましたので、朝鮮の問題をひとつ具体的な例にとって御質問をしたいと思いますが、七月四日に、御承知のとおり南北統一に関する共同声明というのが出ておる。これについて大平さん、外務大臣としてどういうふうにお考えになるか、いわば御感想ということになりますが、どうお考えになりますか。
  44. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 第一は、南北朝鮮指導者の勇気に対しまして敬意を表します。  それから第二といたしまして、大きな道標は打ち立てられましたけれども、あれを前進さしていくには双方、非常にしんぼう強い努力が要るばかりでなく、周辺の国々も十分の理解をもって差し上げなければいけないんじゃないかと、そういう感じでございます。
  45. 田英夫

    ○田英夫君 私も実はこの問題について、たとえば今度赤十字会談に行って再入国を認められました朝鮮総連の金炳植第一副議長に意見を求めたことがありますが、金副議長は、即座に、朝鮮の分裂というのは自分たち朝鮮民族の意思によって分離したのではない。外部の圧力によって引き裂かれていたものが、外部の力が弱まったから、引き裂く力が弱まれば、当然の力学としてそれが一つになろうとするのはあたりまえじゃないか。自分たちは同一民族という力学の中で一つになろうと、こういう動きを始めたにすぎない、こういうことを言われて、何でもないことばのようですけれども、よく考えてみると、外部の力によって引き裂かれていたということは、この共同声明の中にもはっきりと自主的な力と、自主的解決ということと、外部勢力に依存したり、外部勢力の干渉を受けることなくということを根気よくうたっているところからみてもうかがわれるわけですけれども、つまり、ここで外部勢力と言っているのは、はたして北朝鮮の人の立場からすればおそらくアメリカをさしているんでしょうが、あるいはソ連も含めて考えてもいいかもしれません。そういう力で引き裂かれたものが外部の力が弱まったので一つになる力学が働き始めたと、こういう解釈は、明らかにアメリカあるいはソ連を含めて大国の力が弱まってきた中で自分たちの自主的解決の場面が生まれてきたんだというふうに考えられるんじゃないか。大平さん、この大きな世界情勢の中でこの見解を支持されるかどうか、アメリカ、いわゆる大国というものの力が世界の動きをすべて支配し、解決していくという時代が去ってきたという考え方に同意されるかどうか。
  46. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう考え方に対しまして、確かに大国の、とりわけ超大国の支配力に限界が出てきたという徴候は、幾つかの事例で把握することができるように思います。けれども、それは去ったわけでなくて、以前よりは幾ぶん弱まったという理解でございまして、歯切れが悪いのですけれども、そんな感じがいたします。
  47. 田英夫

    ○田英夫君 実は、その日中国交回復という問題、当面の最大の問題にしましても、実は同じ自民党内閣の中で大きく転換をされているし、また、自民党の中にいろいろ御意見がある現状の中で、よく考えてみると、それはそうした国際情勢の基本的な判断の違いではないか、こう私は考えるんですけれども、やはりいまこの時点で日中国交回復という動きを急速に田中内閣によって進められるということも、やはりアメリカの力がアジアの中で以前に比べてはるかに弱まってきているという前提があるのではないかと思うのですが、これはやはりそうは言えませんか、いまの問題から。
  48. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは私どもが申さなくても、アメリカの力を象徴するドル自体が衰退の運命をたどってきたわけでございまして、アメリカの力が、これはアジア地域ばかりでなくて、全体として昔日の比でないということは言えるのではないかと思います。ただ、それと日中国交正常化は、だからという、すぐそれに連続するような考え方でわれわれは進めているわけじゃないので、私どもこれを——ずいぶん長い間苦労してきた問題でございまして、内外の状況を吟味いたしまして、そろそろ時期が熟してきたんじゃないかという判断に立っておるわけでございます。
  49. 田英夫

    ○田英夫君 たいへん抽象的な話になって恐縮ですけれども、吉田総理の時代に、サンフランシスコ平和条約を結ばれた。たしかそれから十年たった三十七年に私吉田さんにお目にかかって、新聞記者のころですけれども、回顧の話を伺ったことがありますが、吉田さんは、やはり単独講和か全面講和というあの世論の中で、だれが考えたって全面ができりゃあそれにこしたことはないとおれだって思っていた、こういう回顧談をされたことがありますけれども、いまひるがえってみると、サンフランシスコ平和条約を結んだ時代、そうして同時に結ばれた安保条約、そうして日華平和条約——日台条約というものを結んだ時代、これともう根本的に世界の、いまのような考え方からすれば情勢が変わってきている。事実、日中国交回復平和条約と、こういうふうに田中内閣が進めようとしておられることは、サンフランシスコ平和条約の体制をくずしている。あるいはそういう言い方をするときつければ、あれではできなかったものを完全な形を目ざして補っていく、全面講和と言ってもいいかもしれませんが、ということだというふうに、それがようやくできる情勢アメリカの相対的な低下と日本の国力の増強とが、世界の変化の中でできるようになってきた。とすれば、それに伴って結ばれた日台条約、これも全く現状にそぐわないということがはっきりしてきて、これはやはり消滅する運命にあるということも、田中内閣が進めておられるいまの情勢の中でこれはおのずから明らかです。その後改定されたとはいいながら、そのサンフランシスコ条約体制の中で結ばれた日米安保条約というものも、これまた当然いまの情勢の中で再検討されるべきではないか、これが私は論理の当然の帰結だと思いますけれども、その点についてだけ、先ほども大平さんは安保体制は守るという意味のことを言われましたけれども、なぜそこだけ、これだけ大きく世界情勢が変化しているということを認められ、また、それに伴う施策を日中間で進められようとしている中で、安保条約だけなぜ堅持されるか、ここがどうしても私にはわからないのですが、この点はいかがですか。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど羽生先生の御質問にお答え申し上げたように、私どもがいま企てておる問題は、日中間国交正常化を何とかしてものにしたいということでございます。言いかえれば、いろいろな、まあ、いままで着ておる着物を全部脱ぎ捨てて、新しい衣装にすることが目的ではないわけでございまして、やり遂げなければならぬ問題に焦点をしぼって、用心深いアプローチを試みておるわけでございます。安保条約の改定問題、改廃問題となりますと、これまた全面講和か単独講和かに劣らないたいへん大きな課題になるわけでございまして、まだ、そんなことを論議できる段階に、私はきていないのじゃないかと思うわけでございまして、当面やらなければならぬ仕事に力点を置きまして、より用心深くやってみておるわけでございますので、相変わらず、歯切れは悪うございますけれども、御理解いただければしあわせです。
  51. 田英夫

    ○田英夫君 まあ、全くどうもたいへん苦しいところだと推察はいたしますけれども、今度の、実は車両輸送問題が生まれた背景も、さっき羽生さんも言われましたように、決して、たまたま横浜市長が飛鳥田さんという革新の市長であったとかですね、この飛鳥田さんを中心にして、たいへん法令に詳しいスタッフがいて——そういう要素はありますけれども、その勉強した成果が阻止になったのだと、それだけのことではないと思うのですよ。これは、そういう要素はもちろんありますけれども、その背後にあるものは、やはりいまの安保条約、そしてそれに伴う地位協定というものが、いまの国民感情に合わない。事実、数年前までは、アメリカ軍がふしぎがるように、数年前どころか、ついこの間までは、大手を振って、ほんとうにベトナム人を殺す戦車日本国内を通っていたことを、みんな歯を食いしばって見過ごしているよりしかたがなかった。それを、そういう法令がたまたま四月に改正になったとはいえ、いずれにしてもここまで大きな政治問題になってきているというところに、やはり政治として注目をする必要があるのじゃないかと思うのですが、そこのところをやはり大平さんもたいへん苦慮してお答えになっておられますように、政府の苦しみがあるのじゃないか。ですから、やはり安保条約の再検討安保条約体制というものの再検討ということが、どうしてもこれはせざるを得ない時期になってきた。この点はひとつ田中内閣としても腰を据えて取り組んでいただきたいところだと思うのですが、まあ、先に話を進めますと、朝鮮の問題に関連をして具体的なことで御質問いたしますが、そういういまアジア緊張緩和ということが、これは私ども社会党だけでなくて、政府がやっておられることも、実はまさにその観点から日中国交回復を進めようとしておられるのだと思いますが、その意味から、朝鮮問題もこれは非常に大きな問題。ところが、政府は依然として中国問題に比べると、朝鮮の問題はまだ時期でない、二の次だといってはあれですが、そういう感じを私も持ちます。そこで具体的に九月に日韓閣僚会議がある。昨年の八月の日韓閣僚会議は、当時、木村外務大臣代理でありましたけれども、まあ、これは日韓関係史上でも一つの曲がり角と言われるぐらいのおおばんぶるまいを日本側がやって、いわゆるニクソン・ドクトリン体制下の日韓関係がここで定着をしたというふうに新聞報道も言われたくらい、二億ドルですか、合計——実質的に二億ドルという借款を約束するというような、たいへんな閣僚会議であったわけです。  今度、この新しい一年間大きく展開した情勢の中で、しかも南北共同声明が出ているという情勢の中で、しかも韓国側は一方でそういうことをやりながら、日本に対しては、これも新聞報道ですが、十億ドルの借款を申し込むんだというような動きまであるというふうに聞いておりますが、こういう動きの中で、大平さん自身も行かれるでしょうけれども、これに臨む政府の方針ですね、昨年と同じように経済援助は引き続き進めていくんだと、こういうふうに考えてよろしいですか。
  52. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ、最終的に先方の要望が出そろっているわけじゃございませんし、また、それに対して政府がどのように取り組んでまいるかということについても、政府間できめたわけじゃございません。これからどう対応していくか、関係閣僚の間で相談をしなければならぬわけでございます。  ただ、経済協力は続けるかというと、その御要望がありましたプロジェクトをよく吟味いたしまして、協力すべきものがございますならば協力にやぶさかでないと、一般的に申しますと、そういう気持ちでございます。
  53. 田英夫

    ○田英夫君 時間がなくなりましたので、最後一つだけ、やはり朝鮮問題で御質問しておきますが、国連の舞台においてもことしは朝鮮だというふうに、私は、中国の次は朝鮮だというような外交のやり方は、あまりいいことだとは思いませんけれども、いずれにしても実際問題としてそうなるでしょう。  そこで、朝鮮問題に対する政府、外務省の基本的な態度ですね。朝鮮——これは従来のような、アメリカと一緒にたな上げをしていくんだというようなことでは私は済まないんじゃないかと思うんですが、当然、これは社会主義諸国からは国連朝鮮統一復興委員会ですか、この廃止の問題とか、あるいはさっきも問題になっておりました——西村さんから言われました、国連軍という名においてアメリカがあそこに駐留をしているという、あるいは、すでにアメリカが主導権をにぎっていた過去の時代の遺物である北の侵略非難、あるいは南を合法政府だと認めた決議、こういう決議の廃棄というような問題が、具体的な日程に、すでにこれは仮議題にのぼっておりますから、おそらく当然いまの情勢では議題になると思います。  こういうときに、日本がどういう態度をとるかということは、日中国交回復を進めつつある、そして、アジア緊張緩和をもたらそうと政府が努力しておられるとすれば、これは非常に大きな関連を持つ問題であると思う。こういう国連の舞台における朝鮮問題に対して、これはどういうことになりますか。
  54. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、朝鮮問題を従来のようにすんなりとたな上げできるかどうかということにつきましては、しかく楽観的には考えておりません。いま国連をめぐる状況を私どものほうの出先も取材中でございまして、まだ何とも、日本としてどうするかということをきめる段階ではないのでございまして、いろいろ関係のデータを集めておるという状況でございます。
  55. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 初めにお伺いしたいことは、近く予定されております田中さんの訪米、これに関連してキッシンジャーの来日があったわけでありますが、まあ言うなれば、事前の根回しを十分にするという配慮もあったかと判断されるわけであります。おそらく田中さんが訪米されるに当たりまして、まずわれわれが一般的に、というより、常識的に判断できるという問題点は、やはり何といっても日中国交正常化に伴う諸問題、もちろん経済問題もございましょうけれども、力点からいえばやはり日中問題であろう、こういうふうに思えるわけであります。  で、訪米に当たって、まずわれわれなりにその——これは憶測の域を少しも脱しないわけですけれども、何といっても、この台湾問題というのが相当やはり議論の焦点になるのではないだろうか。それは、もう言うまでもなく、日米安保条約極東条項であるとか、あるいは一九六九年の十一月に声明された佐藤ニクソン共同声明、これの、台湾あるいは韓国条項と一口に言われておりますけれども、こういったかね合いを考えますと、アメリカとしてもやはり日本の出方というものについては関心を持たざるを得ない。その関心が、どういう方向に関心を持っているのかですね。しかし、まあ大勢としては、もう日中国交正常化方向というものは、これはだれしも拘束もできないし否定もできない厳粛な事実であります。ただ、いま申し上げたように、先ほど来から問題になっておりますように、台湾問題をめぐって、これをどう取り扱うか、これがやはり大きな焦点であろうか。で、大平さんがもうすでにいろんな機会を通じておっしゃっておられますように、日中のこの正常化が具体化し、それが樹立された暁には、台湾とは事実上これは外交関係は断絶せざるを得ない、論理的に言ってもそうである、こういう発言をなさっていらっしゃいます。まあそうしたことと関連しまして、今回のキッシンジャーとの間にどういう話し合いがなされたのか。そしてまた、田中さんはしきりに、訪米をいたしましても十分な説得力をもって日本立場を理解してもらうことができると、こういう表現をなさっています。いままで、この外務委員会はもとよりでありますけれども、この台湾問題についてはえらい議論が集中しております。それだけにこの取り扱いをめぐってどういう判断と決意をもって日米会談に臨まれるのかというようなことを、このキッシンジャーの来日を通しましてお伺いをしておきたいと、こう思います。
  56. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) キッシンジャー博士の来日は、察するに、いま渋谷さんのお話にあるハワイ会談のまあ地ならしといいますか、予備的な話し合いであったと思います。田中総理とは三時間ばかり、私とは一時間余りのまあ簡単な会談でございまして、話題になりましたことは、ベトナム中国朝鮮それから日米間の経済問題等でございました。  で、中国問題につきましては、いろいろ話し合いをいたしましたが、見解の大きな隔たりはないように私どもは受け取ったわけでございます。もともと中米関係等と日米関係、日中関係はそれぞれ違った関係でございまして、どちらが先とかどちらがあとだとかということに意味があるわけではないと思いまするし、また、日中正常化の問題というのは、どこまでも日本の問題でございますので、アメリカとしてとやかく申すべき問題ではないと。ただ、常時、意見交換だけは続けていきたいということで、私どもも友好国といたしまして当然のこととして、常時緊密な連絡は取りましょうということでございます。
  57. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 その点わかりました。  いま、私、ちょっと触れた中で、大平さんのことばを引用して申し上げたわけですが、この外交関係は断絶する、しかし一方においては経済関係は従来どおりの関係を維持していきたい、まあそれができることを望みたいという、たしか私の記憶に誤りなければそういう表明であったと思います。はたして、そういう問題を通じて、これから台湾との関係がはたして維持できるものかどうか。台湾自体としても、日本政府の今日までとってきた日中国交正常化への考え方に対しては、きわめてきびして評価をしている向きもあるようであります。  こうした問題を通じまして、今後の台湾問題の関係というものを、まあ近く椎名副総裁を派遣されることも伺っております。まあおそらく包括的にこの問題の了解というものが取りつけられるだろうと思いますけれども、外務省として、当然その先行きというものをある程度判断されるか、あるいはいろんな出先の公館からの報告を分析しまして、その可能性というものは十分あり得るという判断に基づいた大平さんの発言であったのかどうなのか、この点を確認をしておきたいと思いましてお伺いをいたします。
  58. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、日中正常化ができ上がりましたあとの形がどういう形になるかということにつきましては、まだ正式の話し合いに入っておりませんのでございますから、とやかくいまから論ずるのは時期尚早でございます。で、台湾問題について私が論理的な帰趨を述べたことも軽率のきらいがあるんでございまして、いろいろ批判をちょうだいいたしておるわけでございます。だから、いませっかくの御質問でございますが、まだきょうの段階でとやかく言わないほうが、私申し上げることは物議をかもしますので、権威のある国会で言明するということは避けたいと思うのでありまして、いままで私どもが述べましたことは、あくまでも私どもの一方的な願望として、そうありたいと願っておるというようにお受け取りをいただきたいと思います。
  59. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私は、大平さんのお考えというのはきわめて明快だと思うんですがね。おそらくその批判があるというのは、むしろ与党内からの批判であろうかと私思うわけでございまして、むしろ、そうした一つの明確な方向というものは、たとえ願望であっても、大平さんのお立場から言えばそれは一つ政府考え方と、こう判断せざるを得ないわけでありまして、むしろ、その前提に立ってこれからお進めになることが必要ではあるまいかと。しかし、いま仮定の問題をとやかく論ずるわけにいかない時期でもありますので、これ以上のことを申し上げることは避けたいと思います。  ただ、若干これに関連いたしまして、つい先ごろでございましたか、クラレがプラント輸出をするにあたりまして輸銀の使用を認めたと。これは事実上、どういう表現がいいのか、なしくずしと言うのか、まあそういうことで、かねがね問題となってきた吉田書簡というものが、もう事実上廃棄されるものだと、こう理解できると思うんです。しかし、台湾側としては、日華条約の補完的な役割りを持つのが吉田書簡であるということを高く評価している、そういうまた受けとめ方をしている、こういうふうに伝えられている。したがいまして、やはりその双方間において、いままで政府の御答弁は、一貫して、この吉田書簡に対する問題についても問題ないんだと、こういうことを繰り返し言明されてきましたけれども、また最近その問題が再燃するということは、やはり台湾政府のそういう考え方等もこれあり、決してやはり無視できないという現状に置かれていることを率直に認めざるを得ないんじゃないかというふうに感ずるわけです。そうした場合に、今後政府としても、せっかくの輸銀使用を認めたこの機会に、明確に吉田書簡廃棄という問題を、あるいはむし返しかもしれませんけれども、明確に宣言する用意があるのかどうなのか。もっとも、中日備忘録貿易弁事処の肖向前首席等の話によれば、これが事実上、まあ事実上ということはどんな形でということを言われているのかわかりませんけれども、破棄されているものであるとするならば、別にあえてこれに触れる必要がないという、そういう言明もなされたように伺っておりますけれども、この辺の真偽と政府のこの問題に対する見解を再度伺っておきたいと、こう思うわけであります。
  60. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国の通商政策の問題といたしましては、原則として人種とか、あるいは政治体制とか、信条とかにかかわりなく、無差別平等におつき合いをしてまいるということが私は日本の通商政策のあり方としては望ましいと思います。何となれば、日本はいま地球至るところから資源を仰がなければなりませんし、地球のすみずみまで市場を開拓せなければならぬ立場でございますので、日本としてはできるだけそういう無差別な通商政策を推進していくべき筋合いのものでないかと思うわけでございまして、したがって、中国をそういう意味で例外扱いにするということはいかがなものかということで、輸銀使用につきましても、方針としてこれを認めていこうというようにいたしたわけでございます。  吉田書簡云々の問題につきましては、これは吉田さんの私信でございまして、政府がとやかく言うべき筋合いのものではないと考えております。
  61. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 念を押しておきたいのですが、いま私、その台湾政府としては、日華条約の補完的な役割りを持つ、そういうものであるということで高く評価をしている。しかし、いまの御答弁では、私信であるからこれは正常な政治関係というか、外交関係によって取りきめをしたものではない。これはいままで一貫した御答弁の繰り返しであるように思うのでありますが、結論から言えば、たとえその台湾政府がどう受けとめていようとも、日本政府としては、あくまでも補完的な役割りを持つものでもないし、単なるそれは私信にすぎないと、こう判断してよろしいわけでございますね。
  62. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本の通商政策というものにつきまして、中国を例外扱いする理由はないから、輸銀の使用につきましても踏み切ったのであると、そのような角度から御理解をいただきたいと思います。
  63. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 では、問題点を変えまして伺いたいのですが、けさでございましたか、報道された記事の中に、沖繩米軍の使用する水道の要するに料金をめぐりまして、卸値か消費者値かということで、米側としては、いままでの契約上の取りきめもあり、要するに、企業局から直接卸値で買うのだと、それ以外は拒否すると、こういう見解が明らかにされて、沖繩県としては米国の総領事に対して強硬な申し入れをした。あくまでもこれは国内法、いわゆる水道法に立脚していわゆる市町村から買うべきであり、市町村から買う際には当然これは小売り値と、こういうことになるだろうと思いますが、小売り値で買うべきであろう、こういうことで、いま沖繩県と米国側でたいへん物議をかもしているというように伝えられております。こうしたことがときどき発生するということは、きわめて好ましくない問題でございまして、先ほど来から米軍の車両輸送問題等に関連するまでもなく、やはり至るところでそういう問題が起こっているということにつきまして、外務省として、やはりこの機会に米国側に対して明確に主張すべき点は主張すべきじゃないか、こう思いますが、今日までの経過と、政府がそれに臨む方針というものをお聞かせいただきたいと思います。
  64. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 沖繩の水道の料金問題につきましては、先生御存じのとおり、沖繩の返還協定自体、第六条に関係の規定がございます。それから返還後の状況につきましては、地位協定の七条に、原則的な取り扱い方針というものがきまっております。これに関連しまして、御案内の水道法の規定もございます。外務省といたしましては、そういう返還協定と地位協定という条約のたてまえ上の問題とそれから立場もございますが、一方国内法関係につきましては、厚生省の立場もございましょうし、沖繩県それから市町村という立場もございましょうし、これを所管しております厚生省のほうにおいて、これらを勘案して円満に話し合いをつけて、実態にも即しながら問題を解決してくれるようにということを願っておる立場でございます。
  65. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 御承知のとおり、沖繩はたいへん水の少ないところであります。米国側が使用する量はきわめてばく大な量にのぼると計算されております。それがたとえ地位協定云々の問題これあり、しかしまた国内法が一方においてある。この辺をもう一ぺん整理して、やはりこの国益を守るというその立場からも、いわゆる国益というよりもむしろ沖繩県民の利益を守るというその立場からも、何らかの方法が講じられてしかるべきではないか。いま答弁では十分その辺を話し合いによってきめていくように指示を与えておる。しかし、問題はいま起こっている問題ですね。もう早急に、時間をかけて云々ということよりも、早急に解決を迫られておる問題である。こうしたときに、やはり率直に、しかも時間をかけずに便法が講じられないものかどうか、沖繩県としてもたいへんその問題に対して苦慮している、いろんな法律が競合しておりますから。大平さんとしてはいかがでしょうか。これは時間的にやはり急ぐ問題については相当、結論がさっそく出るような、そういう方々の接触というものが必要ではあるまいか。
  66. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) せっかくお話を関係者の間で続けておりますので、解決を急ぎたいと思います。
  67. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 願わくば、今後そうした問題を通じて県民と、あるいは米軍との間に絶えず摩擦、対立感情が起こるということは決して好ましい状況ではない。これは言うまでもありませんが、先ほども話が出ましたように、B52の飛来といい、それでなくても沖繩県民としてはたいへん神経を高ぶらせているという事情にもありますし、沖繩返還の前提としては、豊かな平和な沖繩県づくり、これは政府与党としてもそういう発想のもとに沖繩返還というものがなされたはずであることを思えば、全力をあげてそういう問題が起きないことを希望したい、こう思うのであります。  最後にもう一つ、近く日ソ間において平和条約締結への草案が日ソ両国の事務レベルによって具体的に進められるかと思います。すでにその点については一月来日したグロムイコ自身もそのことを表明しておりますし、急速にこの問題も解決へ向かうのではなかろうかと思うのでありますが、この問題は、今日までもやはり議論が繰り返されてきましたように、北方領土の返還というものをめぐりまして、必ずしも容易な前途ではないのではないだろうか。はたして日本としてこいねがうこの北方領土の返還というものを大前提として、希望どおりな方向での日ソ条約締結というものが組み込まれていくのかどうなのか、その前途に対する一つの観測と、それから日ソ条約草案を練るまでの、でき上がるまでの政府としての臨む方針、こうしたものをひとつ総括的にお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  68. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 対ソ方針は、別に従来と変えておりません。固有の領土に対する主張はあくまで主張し続けるつもりでございます。  グロムイコ外相訪日の際、すなわち本年の一月に、本年中に締結交渉をやろうじゃないかという申し合わせが福田大臣との間でできておりますので、それを受けて私どもとしては九月中に予備交渉をやりたい、どういうレベルで、どこでという予備的な打ち合わせをやるべく申し入れてあるわけでございまして、交渉方針には前と全然変わったところはございません。
  69. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は、米軍の車両輸送関連して一、二質問したいと思います。  沖繩県にも車両輸送の制限あるいは重量制限の国内法が適用されることは間違いないと思いますが、返還後米軍から米軍の車両輸送について許可の申請が出たことがあるかどうか、外務省でつかんでいるかどうか。また、米軍の車両輸送について、一時的にもせよ公道を遮断してアメリカ軍の物資を運んでいる、こういう事実があるかどうか、この二点、外務省でつかんでいますでしょうか。
  70. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 先生、前段のお尋ね輸送の許可でございますが、最近いろいろケースがございましたが、ただいまのところ現実に許可申請が出たということは私は聞き及んでおりません。  それから次の、具体的な輸送にあたって、たとえば交通を一時的に遮断するとかそういうことがなかったかという点でございますが、これはその道路管理者等の、わがほうでございますが、日本側のそういう管理者の承知した上で、物理的には、通行にあたって一時交通を整理するというような行為があったことはあり得ると思っております。
  71. 黒柳明

    ○黒柳明君 前段については、確かに私も五月十五日からいま現在一つも申請がない。申請がないということは、いまいわゆる日本で問題になっている重量制限あるいは車両制限にあたるようなものが沖繩輸送されてなかったからそういう申請がなかったということか。  それから後段、いまあったかどうかということで、過去のことですけれども、私は現在のことを聞いているわけでありまして、もし一時的にもせよ交通管理者が公道を遮断しているというのはどこか。
  72. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 前段の件につきましては、国内法令を沖繩におきましても尊重されるべきものでございますので、法令上手続を要する場合については手続がなくてはならない。そういうものがいままでになかったということではないかと思います。  後段の交通の一時的な遮断というような実例につきましては、私ども承知しておるところでは、嘉手納と知花の間で弾薬を輸送する際に、県道で交通を一時遮断したことがあるということを聞いております。
  73. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣ですね、これほど国内——まあ当然沖繩も含めてですね——で米軍の車両輸送の問題が問題になり、さらに尾を引いて、これからも重大問題になる。こういうときに、あまりにも状況掌握が未熟じゃないかと私思います。  まず前段のことについて、申請がなかったからなかったんだと、こう受け取っているわけですか。申請がないからないんだと、事実はそう受け取っておられるわけですか。申請がないことがそういう事実がなかったと受け取っておられるわけですか。
  74. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 先生御存じのとおり、道路法に基づく新しい規則が四月から適用になっております。したがいまして、それ以前におきましては……
  75. 黒柳明

    ○黒柳明君 以後、返還後と私は言っている。五月十五日以後今日まで。
  76. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) その新しい法令の適用になります以後の状態につきましても、今度のいろいろの事例で、特にこういう点が米側の末端にまで徹底していくということになっていると思います。したがいまして、こういう今後につきましては、法令上のそういう必要があるケースについては、当然米側におきましても、どこであっても法令の求むるところを踏んで、手順を踏んで輸送が行なわれるということになると思います。
  77. 黒柳明

    ○黒柳明君 そういうことにつきまして、アメリカ政府を通じて外務省が沖繩の問題について調査なり要請なり、こうすべきだということを言いましたか。外務大臣、いま参事官が答弁しましたですね、今後はそうなるであろう、なるであろうじゃなくて、沖繩県についてはもう米軍基地が多いことは私が言うまでもない。返還後にそういう申請がなかったからそういう事実がなかったと、私は知らないんじゃないかと思うんです、正直言って、そういう事実関係を。だから申請がなかったんだからないんじゃなかろうか。だけど今後こういう問題を踏まえて、向こうも申請するであろうという、非常にあいまいな答弁でしょう。沖繩のことを調べたことありますか、返還後今日まで。ついせんだってまで、いま社会党の同僚議員が質問したように、大手を振ってそういう問題はなかったのです。現に法的には抵触する問題だけど、大手を振って歩いたわけでしょう、米軍のそういう戦車なり重量制限を越えたものが。沖繩ではそういう事実があったかどうか、あったらそれに対してどうするのか、これがいまの外務省としてやるべき一つの施策ではなかろうか。それについて沖繩をどの程度調べ、またそれに対してどうアメリカ政府に申し入れをしたのか。今後の、であろうという仮定のことを私は聞いているのじゃない。どうですか、外務大臣
  78. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 相模原の事件が起こりまして、その収拾にいま全力をあげておりますので、私の記憶では、沖繩に同様の案件について調査を依頼したという事実はまだ聞き及んでおりません。
  79. 黒柳明

    ○黒柳明君 そのとおりだと思います。外務大臣のお答えが正直です。いま参事官がおっしゃったのは、申請がないからなかったんだろうということ。外務大臣、あります。私たち六月からいまもって米軍基地の再総点検やっております。この六、七、八の時点においてもホワイト・ビーチからキャンプ・シールズ、キャンプ・ハンセン、三回にわたって戦車が、しかもトレーラーだけでも二十八トンですよ、トレーラーだけだったって許可申請が要りますよ。当然橋もあります。まあ橋と言ったって、日本みたいにうんとありません。こういう事実がある。だから申請がなかったことが事実がないこととは違います。至急にこの沖繩の問題について外務大臣、しかるべく手を打ってもらいたい。それが一点。  それからその次の問題、嘉手納には過去にあった。私たちが調べておる間にはたしかありません。しかし、横浜にある、横浜に。横須賀に空母が着きますね。いまも空母が着いています。その空母が八月の二日、——すみませんね、空母の名前がちょっとむずかしいもんで——オリスタニカ、オリスタニカがいま着いています、八月の十五日現在停泊しています。いまわかりません。そこからベトナムで戦ってこわれた戦闘機、おもにファントムですね、それが一時間以内で富岡の倉庫地域、これはほとんど返還されていますが、いま現在、若干米軍の地域になっています。そのところに着いて、それからすぐそばの日本飛行機、日飛、これは米軍の飛行機を修理する工場です。今日まで六千機ベトナム戦で故障した飛行機を修理しております。そこの日本飛行機の工場に運ぶ間、県道を遮断しますよ。現に八月二日私たちは、オリスタニカから輸送されたファントム十数機が富岡倉庫地域に着いて、直ちに県道を遮断して日飛に入っていますよ。こういうことがあっていいですか。この事実知りませんですね、参事官。
  80. 橘正忠

    説明員(橘正忠君) 私、存じておりません。
  81. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから外務大臣、私は言うのです。これだけ国内で大きな問題になっておるのに、沖繩に着目しないなんてこんなばかなことがありますか。勇気と決断、けっこうですよ。これだけ問題が提起され、重要な問題として具体的に同僚議員が一生懸命やって、からだを張って戦車の前でやっている。戦っている。政府はそれに対してどう対していているか。肝心な沖繩だって重量制限、車両制限を越えられたものが、起こっている。下から突き上げられてやるのが政府立場ではないじゃないですか。これだけの問題があったら、すぐ沖繩に着目してくださいよ。しかるべく手を打ってくださいよ。国内だって神奈川で行なわれているじゃないですか。間もなくその基地の再総点検の全貌を明らかにしますよ。そうなると驚くべき事実が次々に出てきますよ。こんな問題ではありはしません。私ここに資料を持ってきて、わずかの時間でやるのはもったいない、こんな資料を。ですからこれから次々に出しまして、はたして勇気と決断そしてヒューマンな外務大臣田中内閣か、ひとつそれをためしてみたいと、公明党なり私なり——大それた発言で申しわけありません。大臣も苦笑されておりますけれども、この車両制限だけの問題につきまして私具体的に指摘しました。一つは富岡倉庫から横須賀に空母が着きますと一時間以内に、ベトナムで破損したファントムを中心にした飛行機が日飛に揚げられます。県道を遮断します。これは一時的にせよ、非常に県民、国民感情としては許せない。わずかな距離です、横断するわけですからね。それでもアメリカの車両輸送に特例がないとなるならば、これははっきりした特例であります。嘉手納、知花の弾薬輸送は過去にあった。現在は行なわれているかどうかは、私たちの目には映りませんでした。こういう二つの事実をあげますから、この事実を含めて至急この車両制限だけの問題につきまして、しかるべき手を打つと同時に、調査するとともに、前向きにそういう問題を排除する方向に行ってもらいたい。外務大臣、総括して御答弁を………。
  82. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 承知いたしました。
  83. 黒柳明

    ○黒柳明君 もうちょっと何か、承知しただけでは、これだけ一生懸命言っておるのですから、承知しただけではこちらもがくっとしてしまいますよ。
  84. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たいへん重要な御指摘をいただきまして、私どもも御注意をちょうだいいたしましたことを感謝いたします。さっそく御指示のような点につきまして措置いたします。
  85. 黒柳明

    ○黒柳明君 よろしくお願いいたします。
  86. 星野力

    ○星野力君 私、まず日中国交正常化の問題についてお聞きしますが、私の時間は質疑応答合わせて十五分でございます。私、簡単な質問をやりますから、大臣もひとつできるだけ簡明にお答えくださるようにお願いします。  田中総理は九月下旬に中国を訪問されて、日中国交正常化について話し合うことになっておるそうでございますが、国交正常化というのは外交関係の樹立を意味すると思いますが、そうでございますね。
  87. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国交正常化の目的の中には、当然外交関係の設定がございます。
  88. 星野力

    ○星野力君 田中総理訪中による日中会談で、国交樹立のための原則的な問題が解決することになると思います。その点、ニクソン訪中によるところの米中会談とは性質が違うものとなると思いますが、大使の相互交換などのこの外交関係樹立の時期をどの辺に置いておられるか。遠くに置いておられるか、かなり近くに置いておられるか、その辺の見当ですね。
  89. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほどの各委員の御質問にもお答え申し上げましたとおり、まだ正規の折衝が始まっておりませんので、そういった点についてはまだ考え及んでおりません。
  90. 星野力

    ○星野力君 いたしかたありません。日本共産党は一九四九年十月一日に中華人民共和国政府の成立が宣言されました直後から、その政府台湾を含む中国を代表する唯一の合法政府と認めて、日中国交を回復すべきであることを主張してまいりました。二十三年後の今日、なおそれが実現していないことを、私たちは歴代の自民党政府の責任であると考えております。したがって、私たちは、おそきに失っしたとはいえ、日中国交の正常化が一日も早く実現することを希望しております。もちろん、この日中国交の正常化は、日中両国百年の友好の基礎となるような正常化でなければならないし、単に日中両国の友好だけでなしに、アジアの平和、世界の平和に大きく寄与するような、そういう日中の正常化でなければならないと、こう思っております。言いかえますと、筋の通ったものでなければならぬと考えております。その点から、中国側の出しておるいわゆる復交三原則、これは中国側が出しておる条件だからというのではなく、またそれに対する中国側態度が最近変化しておるか変化していないかにかかわりなく、道理の上からもこれは当然のことである。したがって、日本政府はその立場に立たなければならないと私たち思うのでありますが、自民党のあの日中国交正常化協議会への政府の答弁書、あの中において復交三原則に対して大筋において十分理解できると、こう言っておられる。まあ、あいまいな言い方でありますが、大筋においてというのは、立ち入った点では承服しがたいものもあるということではないかと思います。三原則の中の第一の、中華人民共和国政府中国の唯一の合法政府という点については、政府ももちろんその立場に立って話し合いをやられるのだから、これは問題ないと思いますが、二番目の台湾中国の不可分の領土であるという問題、三番目の日華平和条約の問題、この辺について問題があるわけでございますが。
  91. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 目下鋭意検討中なところです。
  92. 星野力

    ○星野力君 三原則の第二項、第三項にひっかかって目下鋭意検討中、こういうお答えだろうと思いますが、この三原則の問題をはっきり踏まえて日中国交の正常化に当たっていただきたいということ。  それから日本政府が自主的立場を持たなければならぬという問題を申し上げるわけであります。自主的というのは、一つアメリカに対して自主的であるということ、それからもう一つ中国に対しても自主的であるということであります。もちろん中国に対して、日本は侵略戦争で、中国人民の生命財産に大きな損害を与えておるのでありますから、まず陳謝しなければならない。が、同時に、あくまでも原則的立場に立って、平和友好の基礎を築いてもらいたいということであります。その意味から、平和五原則をしっかり踏まえて、その上に立って日中の国交正常化をやっていただきたいということであります。御承知のように、平和五原則、あそこには相互不侵略という問題があります。これはもとよりのことでありますが、内政不干渉という項目があります。戦前日本中国に対して極端な内政干渉をやって、あげくは公然たる軍事侵略の道に進んだわけでありますが、そういうことが許されないのはもちろんでありますが、いかなる意味においても内政干渉はやらないし、また、相手にも内政干渉を許してはならない、こういう意味で申し上げておるのでありますが、自主的立場で日中国交の正常化に当たるということ、それから平和五原則を踏まえてやるということ、この点についての外務大臣の所信、方針を承りたいと思います。
  93. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり心得ております。
  94. 星野力

    ○星野力君 どうもまた鋭意検討中というようなことにならぬようにお聞きしたいのでありますが、外交関係の樹立はいつになりましょうか。どういう段階になりましょうか。平和条約の発効後ということになるのでございますか。
  95. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 外交関係の樹立は両国政府が合意しないとできませんので、先ほど申しましたように、両国政府の公式の接触の場をまだ持っていませんので、それに言及する段階ではないということであります。
  96. 星野力

    ○星野力君 そうしますと、日華平和条約、これは当然なくなると思うのでありますが、これはどういう段階でなくなるのでしょうか。たとえば平和条約の締結に先立ってなくなるのか、あるいは新しい平和条約が発効した後になくなるのか、その辺の問題どうですか。
  97. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ田中総理訪中で正規の日中間交渉が開始されるわけでございまして、私どもといたしましては、目下その正常化に伴う基本問題を検討しておるのがいまの姿でございまして、いま御質問のようなところまで的確にお答えする用意はまだございません。
  98. 星野力

    ○星野力君 日中間戦争状態の終結の問題、それから賠償問題、これがどのように処理されるか。中華人民共和国政府は、日華条約を不法無効のものとしておるわけでありますから、当然この政府国交正常化をはかる場合には、戦争状態終結の問題、賠償の問題というのは処理されなければならぬのでありますが、それについての政府の心がまえ、検討というものをお伺いします。
  99. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せの問題も、いわゆる国交正常化に伴う基本問題の一つだと考えておりまして、目下鋭意検討いたしております。
  100. 星野力

    ○星野力君 と申しますことは、田中総理訪中されて会談をされる結果、この戦争状態の終結や賠償問題について結論が出ると、そこで出されると、こういう意味ですか。
  101. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先方との正式の出会いに入るわけでございまして、それの成り行きを見ないと何とも申し上げられません。
  102. 星野力

    ○星野力君 政府はどうですか、日中国交正常化と言われますが、私、先ほどから平和条約ということを言っておるのですが、平和条約を先に延ばすと、こういうお考えもあるんですか。共同宣言とかなんとかという形で当面を処理し、平和条約を先に延ばし、台湾問題の処理を先に延ばす、そういうことを考えておられるのでしょうか。
  103. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 同じ答弁になって恐縮でございますが、いまそういう基本問題を整理いたしまして、先方との会談に臨みまして、そして日中間で幸いに合意が得られたら、それをどういう姿にするかという問題がその次の問題になってくるわけでございます。まだその前段階の仕事をしているわけでございますので、いましばらく御答弁は御猶予をいただきたいと思います。
  104. 星野力

    ○星野力君 先ほど来、他の委員の方からもお話あったんですが、もう一項お聞きしておきたいと思うのですけれども日米安保条約、あそこで極東範囲の中に台湾が入っておる。日中国交の正常化が実現する、外交関係が樹立するという段階で、当然これは変わっていかなきゃならぬと思いますが、その辺はどうなるんですか。
  105. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほどの御答弁にも申し上げたとおり、まあいかにかして正常化の実をあげたいと思いまして、いまいろいろ検討を続けておるところでございまして、問題の力点がそこにあるのであるということを羽生先生その他の御質問に答えておいたわけでございますので、その御答弁の交換からひとつお読み取りをいただきたいと思います。
  106. 星野力

    ○星野力君 じゃもう一つ聞きますですけど、これも先ほどお話がありました一九六九年の日米共同声明の中におけるいわゆる台湾条項、日中国交の正常化が実現した場合にこの効力がどうなるかということは、前内閣時代からきわめてあいまいな政府の意思表明があったわけですが、大臣これはどういうことですか、どうなりますか、効力は。当然なくなる、そう思いますが、いかがですか。
  107. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもが精一ぱい申し上げられることは、万々極東条項の発動を見るような事態は起こらないと、そういう認識でおるんだということでごかんべんをいただきたいと思います。
  108. 星野力

    ○星野力君 それはまあ実体論から言っておられるわけなんです。理論的にどうなりますか。なくなるわけでしょう。その辺はあいまいにして通すというわけにはいかないんじゃないかと思います。
  109. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 実体論を申し上げておるわけでございまして、政治の問題といたしまして理論的な解明にいまの段階において不徹底であるというおしかりはあろうかと思いますけれども、万々そういう事態は起こらないと政府は心得ておるというふうなところで、きょうのところはごしんぼうをいただきたいと思います。
  110. 星野力

    ○星野力君 これは単に理論の問題としてはっきりさせる必要があるということから私は言っておるんじゃないんでして、実体論でそれで割り切れる問題かというと、そうじゃないと思うのです。現在の国際情勢、この将来をどういうふうに見ておられるか、人によって違いもあるでしょうけれども、こういうものが生きておるとしますと、情勢いかんによっては、これは息を吹き返して重大な問題になる、そういうおそれがあるからはっきりさせなければいけないと、こう言っておるわけです。それについてはお答えあればしていただきたいと思います。  もう時間もないようですから私ひとつ申し上げたいのですが、きょうの委員会質疑に対する大臣の御答弁始終をお聞きしておりまして、私なるほどと思ったことがあるんです。と申しますのは、先日自民党の方から、私、今度の外務大臣は野党質問に対して要領を得させないことでは天下一品の外務大臣であるということを言われたのを覚えておるんですが、実際聞きしにまさるものを私感じております。もちろん大臣がわざとやっておられるんだとは私思いたくないのですが、それでいいかどうかということです。外交におけるナショナルコンセンサスの必要ということを政府はよく言われるのですけれども国民に対して、黙って政府のやることについてこいでは、これはナショナルコンセンサスは実現できませんですよ。少なくとも、国会の場を通じて、国民に問題について知らせる、もっと要領を得させる、理解させる、その心がまえが私は必要だと思うんですが、このことだけ申し上げまして、時間もないようですから、大臣意見があったら聞かせていただいてやめたいと思います。
  111. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いずれ時期がまいりますと、いま仰せのとおり、漏れなく国会に御報告申し上げまして、よく国民に理解してもらわなければいかぬことは当然でございますが、いまの段階におきまして、申し上げられることと申し上げられないことがあることは、私の立場に免じて御容赦いただきたいと思います。
  112. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 本調査に対する質問は本日はこの程度といたします。次回の委員会は公報をもってお知らせいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十八分散会