○福田
説明員 実は国有林の改善策につもましては、昨年の九月から国有林部会におきましてすでに十五回にわたっていろいろ検討いたしておるところでござい
ます。
四十八年度の予算は、一部は八月末に民有林
関係を主として編成を終わっており
ますが、民有林
関係の一部、それから国有林の四十八年度の予算につきましては九月中に編成を終わらなければならぬ状態になっておるわけでござい
ます。この国有林部会におき
ます審議の内容等も十分勘案いたしまして、現在すでに四十八年度の予算編成の作業に入っておるわけであり
ますが、大体国有林部会の検討内容を参考にいたしまして、現在私たちが考えており
ますところの概要を申し上げてみたいと思い
ます。
第一点は、基本的な
考え方でござい
ますけれども、従来は国有林の経営の重点目標というのは、もちろん国土保全とか水資源の涵養ということもございましたけれども、主として木材の持続的安定的
供給というところに重点を置いておったのでござい
ます。それを最近の国有林に対するいろいろな要請にこたえまして、公益的な機能をより重視するということに重点を置いて、これを指向して計画を立てるということを基本的な考えといたしており
ます。
これに基づきまして、国有林の経営の新しい方針としまして、この国有林の経営の基本計画に基づきまして
考え方の重点的なことを申し上げ
ますと、
一つは学術参考林とかあるいは保健休養林、こういったものを中心にいたしましたいわゆる保護林というものを今後十分拡大してまいりたいということが
一つ。それから、特に亜高山地帯等における天然林の施業を拡大してまいりたいということ。また次には、従来能率を重点として考えた大面積の皆伐、機械化作業によって能率をあげていくということを指向しておったのであり
ますが、これは伐採面積はできるだけ縮小する、小規模にして、なお伐区はできるだけ分散し、中間には保護樹帯を十分に残していくということが、経営の施業計画としての重点的な
考え方でござい
ます。これらの
考え方に基づき
ますというと、当然伐採量の減少が出てまいり
ます。あるいはまた、これに基づいて施業計画を立て
ますというと、能率の面ではこれは若干落ちる点はござい
ますけれども、私たちは公益的な機能の総合的な発揮という点から見るならば、こういった
考え方をとるべきであると考えておるわけでござい
ます。
次に、特に公益的な機能を重視するということの具体的なことを申し上げ
ますと、
一つは治山事業の拡充でござい
ます。治山事業につきましては、最近の災害の頻発状態にかんがみまして、特に四十七年度から第四次の治山五カ年計画、これは治水計画と並んで新しい計画を立てたわけでござい
ます。これが従来の計画の約倍の規模になっているわけでござい
ます。この
考え方に基づきまして、治山事業、特に崩壊した山腹に対するそういう治山事業ばかりでなくて、予防治山ということに重点を置いてまいりたいということでござい
ます。
それからもう
一つは、最近、森林にレクリエーションの場として、いろいろと、特に国有林にも都市方面から人が大ぜい入ってまいり
ます。それによりまして、たとえばキャンプによって山火事が発生するとか、その他いろいろと森林の保全の仕事が必要になってきており
ます。あるいは病虫害の
問題等、あるいは災害が非常に頻発する、こういったものに対しての保全事業を強化してまいるということが公益的な面での次の大きな重点事項でござい
ます。
そこで、こういった治山事業なりあるいは森林の保全事業ということについては、特に重点的に取り上げてまいりたいと考えるわけでござい
ます。そこで、この事業は伐採なり造林と違いまして、企業的な性格というよりはむしろ公益的な性格の仕事でござい
ますので、これに要する財源については
一般会計の負担をお願いすべきであるというふうに実は考えておるわけでござい
ます。
次に、伐採なり造林なりその他の事業の問題でござい
ますが、この事業につきましては、いろいろと国有林の従来のやり方について
一般からの批判を受けているわけでござい
ます。これは近代化、合理化を徹底的に行ないまして、国民の皆さん方に、なるほど国有林は確かに経営の合理化につとめておるんだということを具体的に示してまいらなければならないということで、近代化、合理化についての計画は特に事業面におきまして重要問題として取り上げてまいりたい、こういうように考えておるわけでござい
ます。そのためには、やはり最近の労働力の流出ということが非常に問題でございまして、特に山林に従事しており
ますところの労働者の処遇の問題であるとかあるいはその社会保障の
問題等含めまして、これらの処遇の改善もあわせて考えていかなければならぬというふうに考えておるところでござい
ます。
次に、国有林の木材の販売の問題でござい
ますが、これにつきましてもいろいろと批判があるわけでござい
ます。この木材の販売につきましては、林産業の構造改善等とあわせまして、特に販売の単位の拡大、販売の拠点の統合あるいは
一般競争契約の拡大というふうに、競争原理の大幅な導入をはかってまいりたいというふうに考えておるわけでござい
ます。
次に、管理部門の改善の問題でござい
ますけれども、管理部門につきましては、事業規模の減少に見合いまして、いろいろと従来の事業面で、これを合理化し集中処理していくために、内部組織の簡素化をはかっていかなければならないと考えておるわけでござい
ます。特に国有林の経営の間接部門の非能率な点についてはいろいろと指摘を受けておるところでござい
ます。たとえば事務能率のもっと簡素化とか能率化とかということを当然はかってまいらなければならないというふうに考えておりまして、これらの点につきましても、組織の問題とあわせて改善の合理化をはかってまいるように検討しておるところでござい
ます。
それから、特に国有林は、従来その事業をやっていき
ます場合において、地元の人たちの協力を得ていかなければならぬということは当然でございまして、その
意味で地元の
振興ということには特に配慮してまいらなければならぬと思っておるところでござい
ます。昨年の六月に通りました国有林の活用法もござい
ます。これもやはり地元対策ということを特に考えた結果出た法律であることは御承知のとおりでござい
ますが、これを中心にいたしまして林業以外の畜産
振興あるいはその他が地元の
振興のためには国有林の活用を積極的にはかってまいりたいというふうに考えて検討しておるところでござい
ます。
以上申し上げまして、大きく分けまして、企業的な活動の部門と公益的な活動の
部分と二つあるわけでござい
ます。要約いたし
ますと、そういう企業的な面における近代化、合理化を徹底的にはかり、その上で公益的な面における
財政負担をお願いするという
考え方に立っておるわけでござい
ます。
治山事業については
先ほど申し上げましたが、造林事業につきましても、一応いまの段階では造林に要する資金については長期の借り入れをお願いする、また造林事業は、木材を生産するばかりでなくて、やはり山を緑化し、いずれはまた公益的な機能を発揮する森林を造成する事業でござい
ますので、その金利についても一定の負担をお願いしたい、利子補給ぐらいはお願いしたいというふうに考えておるところでござい
ます。
それらの問題を含めまして九月中には一応結論を出しまして四十八年度の予算編成を仕上げたい、かように考えておるところでござい
ます。