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滝口参考人 私は
石油連盟の
会長の
滝口でございますが、皆さまもうすでに御存じと思いますけれども、
石油連盟というのは、
石油精製業並びに元売り業の団体でございます。その面から私はこれから御説明申し上げます。
その前に、いま
島田さんからお話がございましたことにつきまして、ちょっとわれわれの
立場として弁解をする必要があると思いますので、簡単にその弁解を聞いていただきたいと思います。なるほどわれわれの
石油連盟というのは片肺会社ばかりの集まりでございます。いかにもかたわの会社のようでございますが、過去、
日本が終戦後二十五年から精製業を始めましてすでにもう二十余年になりますけれども、その間、
日本の
経済のその一番大事な
石油エネルギーを
安定供給したことは、われわれの側のもう一〇〇%の
努力の結果でございます。片肺会社でございますけれども、国の
経済には十分に役に立つんだ、将来も
日本の——二億三千万トンことしは使いますけれども、将来は五億トンとかいろいろ計算がありますけれども、そのうちの少なくとも七〇%以上は、われわれ片肺会社が
供給の安定を責任をもってやるというのが
エネルギー調査会の御方針でもございます。国の
事情によりまして、こういう形態の会社がやはり
安定供給に必要なんだという実例をまざまざとここに示しておるわけでございまして、全部一貫会社で
供給をするということは理想でございますけれども、理想と現実とはあまりにも差があるということを一応御了承願いたいと思います。
前置きはこのぐらいにいたしまして、現在、
石油精製業、販売業が直面しております大事なことを二つ申し上げます。
その
一つは、御
承知のように、市況の不安による
石油精製業の体質の弱体化ということでございます。御
承知のように、昨年の二月にテヘラン協定ができまして、
OPECが
原油を大幅に値上げをいたしました。それがわれわれの
原油高にはね返ってまいったのでございますが、それをカバーするのには、われわれは製品を値上げしなければどうしてもそろばんが合いません。そこで、去年から一生懸命に
努力しておりますが、これは
世界的に全部同じ
事情でございまして、ヨーロッパのほうの先進国の間では、この
OPECとテヘラン協定を結びまして、要するに、五年間値段もきまり
供給の安定も
確保される、こういうことで、それを高く評価しまして、
消費者は、
原油の値上げをしても、それが製品にはね返るのは当然であるといって、製品の値上げについては大かた了承をして実行されている現状でございますが、どうも
日本ではこの
供給安定ということについて
消費者はあまり高く評価いたしませんで、要するに、値段の高くなることだけがどうも頭にあり、われわれの値上げの要求に対してなかなか実行できないというのが現状でございます。
それで、四十六年下期の決算、ことしの三月期の決算でございますが、為替差益が約四百三十億ございましたけれども、
需要の数量がだいぶ減りましたために、利益は前年同期に対しまして三四%の減になりました。この為替差益の四百三十億がないとすると百十億ばかりの純損になってしまう。要するに、商売は完全な赤字になっておる
状況でございます。それで、四十七年の上期、現在につきまして、いろいろと御高承のとおり、ガソリン、重油、その他値上げを実行しておりますが、だんだんと
消費者側の御理解もありまして、いまのところは、今期九月期の決算はどうにかやっていけるのではないかという
見通しを持っております。
こういうわけでございますけれども、この体質の問題につきまして、前にもよく申し上げましたけれども、
石油業界は利益率というものがあまりに少のうございます。総資本、収益率、売り上げ高、利益率並びに自己資本比率等、いずれを見ましても、製造業の平均の二分の一ないし三分の一という低い数字になっております。具体的に言いますと、石炭
業界に次ぐ下から二番目というのが
石油業の現状でございます。
石油精製業並びに元売り業というのは、現在並びにこれから当分の問、国家の
石油の
安定供給に一番大事な仕事をわれわれが責任を持っていくわけでございます。その
業界のこういう体質の脆弱化ということは将来もなかなか心配になる問題でございますので、この点につきましてあらゆる面において、われわれのほうに御同情のほどを願いたいと思います。
それからもう
一つ、当面直面している問題は
公害問題でございますが、御
承知のように、亜硫酸
ガスの問題から、重油を燃すと亜硫酸
ガスが出るというので
石油業界が一番矢面に立っておるわけでございますが、われわれの
業界では、四十二年度においては、
輸入した
原油のサルファ分について平均しますと大体一・九三%でございます。ところが、昨年四十六年度におきましては一・五六%と、要するに
原油のサルファ量を低下させる
努力をいたしました。これはなかなかむずかしい
努力でございまして、よくわれわれの
業界がやったと自分ながらほめたいくらいでございます。
こういうわけで、逐年
原油の含有しておりますサルファ分を減らすことに
努力しておると同時に、今度は重油の脱硫装置をつくって脱硫を実行しているわけでございますが、四十六年度末現在では五十一万バーレル・パーデーの施設をすでに建設しております。これからの計画としましては、五十年度末には約百十六万バーレル・パーデーに増設をする計画でございます。ちょうど倍増する計画でございます。これに要する
資金は約二千六百億に達する見込みであります。こういうばく大な費用を
石油業がみずから負って建設をして、脱硫に
努力しておる実例でございます。
さらに、この建設費のほかにこれを運転する経費でございますが、脱硫経費として本年度だけでも約六百億かかります。こういう問題は、われわれは重油の値段に含めて
消費者側にお願いするわけでございますけれども、なかなか
消費者の御理解を得ておりません。これにつきまして
原油開発の問題がございますけれども、われわれの側からしますと、
原油開発につきましては、なるたけ低
硫黄の
原油の
開発に今後重点を置いていただきたいということを、との機会にぜひお願いしたいと思います。
そういうわけで、
石油業みずから脱硫問題についてはこういうような
努力をしておりますが、今後の問題につきまして一言申し上げますと、
石油業みずからの
石油の低
硫黄化ということは、
努力はいたしますけれども、今後の
公害規制の問題からしまして、われわれの
努力だけではなかなか達成が困難でございます。やはり今後は
需要家側の排煙脱硫問題、それからこれはわれわれのほうの側になりますけれども、重質油の
ガス化脱硫等の技術を
開発するという問題、それから工場の分散、大きな意味では広域的な都市並びに産業の再配置ということをあわせ実行していただかない限り、大気汚染の問題については
解決がなかなか困難だと思います。
ここで、宣伝のようになりますけれども、
石油精製工場というのは、一般の方はこれを
公害工場のようにみなしておりまして、いま
日本全国どこに行きましても、
石油精製工場を建てようと思うとなかなか土地の反対があります。われわれの側から言いますと、
石油精製工場というのは
公害は出さないのだということをわれわれは信じておるのでございます。ところが、どういうわけか、
石油精製工場を
公害工場とみなしている向きが多いので、まことに残念でございます。
現状で御説明を申し上げますと、
石油精製工場で自家燃料として使っている重油というのは、
昭和四十六年度についていいますと、全国の重油
消費量の八%程度である。ほんのわずかです。それで自家燃料としているのは、大体四〇%はその精製
過程から出ます
ガスでございます。オフ
ガスという廃
ガスのようなものでございます。これはサルファはございませんから、要するに何も
公害がない
ガスを使います。あとの残り分は、御
承知のように、低
硫黄の重油というのが精製工場にございますから、それを選んで燃しておるのでございます。そうしますから、これはまあ亜硫酸
ガスに関しては、もう
公害なんということはわれわれのほうは想像も及ばないというのが現状でございますので、この機会に
先生方にあらためて御認識を願いたいと思っております。よろしくお願いいたします。
現状の説明はこのぐらいにいたしまして、お願いを大きな問題として
一つ二つ申し上げたいと思っております。
それは
石油消費税の問題でございます。最近、
日本列島改造とかいろいろな問題が起きまして、
政府のほうの財源の問題もあるのでございましょう。
石油消費税を増徴するといううわさがあり、そういう空気をわれわれは感ずるのでございますけれども、御
承知のように、
石油消費税というのはガソリン税それから軽油引取税、そのほかにプロパン
ガスの税金とかいろいろございますけれども、総合しますと大体一兆円以上の税金を国家に納めている。これは
世界でおそらくこういう例はないのではないかと実は思っておるのでございます。ことに
OPEC諸国などは、どうも
日本は
政府のほうで
石油について税金をよけい取っておる、大体キロ四千円ぐらい、われわれのほうはキロ二千円ぐらいしか取っていない、だから
消費国の
政府のほうがもうけているじゃないか、これはけしからぬから、そういう
状況ならわれわれのほうでもさらに
原油の値上げをするんだ、こういうことをわれわれに直接、ついこの間参りましたアラビアの
石油省の次官か何かの王子さまが話をしておりまして、やはりわれわれも
石油消費税には困っておるんだと言ったら、これから
通産省へ君と二人で行ってよく陳情しようじゃないかなどと、冗談というんですか、何というんですか、笑い話もありましたけれども、そういうように、要するに、あまりにもわれわれに多額な税金をかけるのはどうかということを実はわれわれは考えておりますので、この機会にぜひ
石油消費税の増徴ということはごかんべんをお願いしたいと思います。
さらに、最近一部でうわさされております重油
消費税の創設の問題、重油
消費税をなぜかけるのかといいますと、おそらくかけるほうの側からいきますと、重油は燃せば
公害の原料になる。だからそれから金を取って
公害対策にしたらいいんじゃないか、こういうのでございますけれども、現在のわれわれの重油というのは、先ほど申し上げましたように、ばく大もない費用を払って脱硫装置をつくりまして、各
石油会社がその重油の中からサルファを取って、
公害のないものをつくって、それで一般の皆さんに
供給している
状況でございます。さらにこれから
努力する、しておるのでございます。それなのに、まるでサルファがあってもいいような感覚で、おまえらのほうが
公害のものを出すから、また税金で取り上げるんだなんというのはどうも逆行しておるような気がしてしようがありません。
それから、われわれ精油所の中では、おかげさまで脱硫装置をつくります場合に、国家のほうから税金をまけていただいております。まけていただいているのにまた取るなんというのはちょっと話がどうも食い違うような気がいたしまして、こういう問題につきましても絶対にひとつごかんべん願いたい、こういう二つのお願いを申し上げます。
最後に、
石油精製業は片肺でございますけれども、われわれの
業界でもみずから
開発をやりたいという気持ちはございます。現にいろいろな会社で、ジョイントベンチャーで海外で一応
開発を実行しております。私、
日本石油でございますけれども、私のほうも
日本石油開発会社というものを持っておりまして、現在東シナ海で
開発をこれからやろうとしておるわけでございます。決して
石油精製業の会社が
開発をおろそかにしているということではございませんで、本来の筋から言えば、われわれ本来の
石油会社が
開発を手がけるということが一番いいわけでございますけれども、それにはばく大もない
資金が要るわけでございます。それには現在のような体質の脆弱では、どうしてもリスクの多い
開発というものは進めていけないというのが現状でございます。ですから、
開発をやりたいのであるから、体質をもう少し強化するということをまず先決的にやらなければいかぬ。これには
政府並びに皆さまの大きな御援助にまつ以外にないというのがわれわれの現在の感想でございます。
まことに簡単でございますが、これをもって私の説明にかえます。ありがとうございました。