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国務大臣(
田中角榮君) 都市集中というのは、これは世界的な
傾向でございまして、一次
産業比率が減少する、一次
産業から二次
産業、三次
産業への人口移動という
過程において都市集中というものが起こるわけでございます。これは世界的な
傾向でございます。
日本もその例外ではない。明治初年から九〇%もあったものが一七・四%、百年間にそこまで下がったわけでありますが、それだけに都市集中が行なわれてきた。都市集中というものは、メリットが確かにあるわけであります。製造と消費が密着をしておるということは、これは経済原則から言っても一番効率的でございます。そういう
意味で、
国民所得も
国民総生産も増大してまいりましたが、都市集中のメリットというものが、もう頭打ちになってきたということが大前提になっております。それは東京、大阪、名古屋という三つの五十キロ圏を合わせるならば、全国の国土の一%でしかない。一%の中に三千二百万人が住んでおるということでありますから、一%の中に三二%が住んでいるといったら、過密はもう極限に達しておる。まだしかし、東京や大阪では個人企業、
一つの企業のバランスの上で考えますと、まだ集中のメリットがある。これは確かにあります。ところが、国家全体から考えてみたり、
国民全体から考えてみると、これはもうデメリットのほうが多いのであります。これは全国平均で車が一台増車をされれば道路の維持補修費は五十万円で済むものが、東京、大阪では千五百万円であるということを考えてみれば、もう経済原則などをはるかに越しておるということでございます。
そこで、そこへ公害の問題が起こってくる、公共投資の問題が起こってくるといったら、これから都市における相当な成長が行なわれるとしても、それはもう完全に名目成長になってしまうということでございますから、いまの
状態では、好むと好まざるとにかかわらず、東京都は住宅地域内における工場は禁止をいたしております。増強は禁止をしておる。指定地域内における地下水のくみ上げは禁止をしておる。この上、なお公害に対しては公害投資を必要といたします。複合公害というものには、無過失賠償責任の
制度が追及されてくる。個人企業そのものの集中のメリットも、
法律でもって公害に対する防除施設を完全に義務づけられてきたらペイしません。そういう、明治百年というものは、
一つの限界を示したということでございます。
しかし、これから幾ら考えてみても、いまが四・七、八%から五%台というのでありますから、経済企画庁がどういうものを出すかは別でありますが、いずれにしても新・新全総というものは、自然発生を是認しないで、どうしても政策誘導というものを考える必要があります。これはもう地価の問題、水の問題、住宅の問題、公共投資の問題、こういうものを前提としない成長政策というものは考えられないわけであります。一部の人たちは、憲法の自由の原則で、
国民が全部東京へ集まりたいといったら集めればいいじゃないかというばかな議論をした人がありますが、そんなことはできるわけはない。千百万戸の家をつくって、
あと九百五十万戸つくってなお住宅が足りないというのは、無制限な都市集中を許せばそうなるにきまっておる。そのかわり、水があり、土地があり、自然の浄化作用がある地帯というものは、全く過疎でもって困っておるということを考えてみれば、もうこの狭い
日本を、総合的に合理的な総合開発を行なうという以外には、二次
産業の比率の拡大ということは、いまの拠点中心主義では求られない
状態になっておる。これは東京を例にとりまして、都市面積に対する道路面積というものを三五%にするには、道路を三倍にするか道路を三階にすればいいのでありますから、都市の立体化によって空地を設けることができます。道路をつくることもできます。しかし、それはそういう過度集中を許して、いまの首都圏の人口二千七百五十万人が千万人ふえて三千七百五十万人になった場合はどうなるかというと、東京二十三区内の空気中に占める亜硫酸ガスは人間の生存許容量を越すということは、明確にコンピューターがはじいておるのでありますから、そんなことが可能なわけはないのです。ですから、どうしてもここで分散政策をとらざるを得ない。これは分散政策をとらないとしたならば、いまある工場はそのままにして、これから拡大する生産部門は全然新しい立地を求めて成長するような
状態をつくる以外にはないわけであります。これはもう、そういうことで工業再配置というのを考えたので、何も工業再配置をやらないで済めばこの
法律も必要ありません。しかしやらなかったらどうなるかといったら、成長をとめるか、もしくは……ということになりまして、いまの中小企業白書が、二六%までが中小企業といえ
ども都会から出ることを希望しておる、条件がそろえば
あとの五〇%も分散したいという事実が遺憾なく示しておるわけでありますので、まああなた、一体この程度の
法律でもって、ほんとうの誘導政策が行なえるかどうかというこれはポイントだと思います。私はこの程度じゃなかなかうまくいかぬと思うのです。ですから、そういう
意味ではもっと広範な政策を行なうべきだと思います。そうしなければ都市改造もできないし、これからの成長のメリットを
国民自体が受けるわけにまいりませんし、公害の除去もできないし、これはほんとうにいろんな問題が
解決するのはこの一点にあると思っておりますが、いずれにしてもおそ過ぎたけれ
ども、まあやっぱりどうしてもやらなきゃならぬものである。
そういうことで、今度の産炭地でも、米の減反政策をやるときにこの
法律を一緒にやればよかったのですが、これを一緒にやらなかったところに、産炭地も工場は全然行かない、定着もしない。米を減反すれば農業の余剰人口は全部都会に来て、それが地価をつり上げ、物価をつり上げ、住宅難をかこつような要因になる。社会保障の対象人口だけをふやしてきたというような
事態から見ても、おそまきながらもやはり国土の総合利用開発、これは水とかいろんなことを数字を並べ立てると、これ以外には方法はないと、こういう立場で出したわけでございますが、新しい政策でありますので、なかなかなじまないというか、やっぱり右に行きたいものを左にやろうと、こういうのが政策的な誘導と、こういうことになるわけでありますが、この
法律そのものでは、御
指摘のように、ほんとうに
日本が当面しておるような政策効果を的確にあげるにはもっときびしいものを、東京から出ていったほうが得だということで先を急いで出ていくような恩典を与えるべきだし、残っておる人には過酷な条件を与えれば、それは両々相まってうまくいくのですが、いまなかなかそこまでできないというので、国会で御審議をいただいておったり、まあ商工
委員会などではなまぬるいということで、もっときびしくしろという御
意見もございますが、それは国会の審議中、またこの
法律がスタートしたら、次々と
段階を追ってもっと合理的なものにつくり上げていただく、こういうことで御提案を申し上げているわけです。