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1972-04-26 第68回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月二十六日(水曜日)    午前十時十四分開会     —————————————    委員異動  四月二十五日     辞任         補欠選任      星野  力君     須藤 五郎君  四月二十六日     辞任         補欠選任      片岡 勝治君     竹田 四郎君      辻  一彦君     松井  誠君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         内藤誉三郎君     副主査         矢山 有作君     委 員                 小笠 公韶君                 川上 為治君                 熊谷太三郎君                 山本敬三郎君                 竹田 四郎君                 辻  一彦君                 松井  誠君                 矢追 秀彦君                 須藤 五郎君    国務大臣        通商産業大臣   田中 角榮君    政府委員        通商産業政務次        官        林田悠紀夫君        通商産業大臣官        房長       小松勇五郎君        通商産業大臣官        房参事官     増田  実君        通商産業大臣官        房会計課長    北村 昌敏君        通商産業省通商        局長       山下 英明君        通商産業省貿易        振興局長     外山  弘君        通商産業省企業        局長       本田 早苗君        通商産業省化学        工業局長     山形 栄治君        通商産業省繊維        雑貨局長     佐々木 敏君        通商産業省公益        事業局長     三宅 幸夫君    説明員        外務省アメリカ        局外務参事官   伊達 邦美君        大蔵省国際金融        局投資第三課長  大場 智満君        通商産業省貿易        振興局経済協力        部長       山口 衛一君        通商産業省重工        業局次長     和田 敏信君        工業技術院標準        部長       佐伯 博蔵君        労働大臣官房国        際労働課長    森川 幹夫君        建設大臣官房設        備課長      鈴木 茂男君        建設省計画局建        設業課長     吉田 公二君        建設省道路局国        道第一課長    菊池 三男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十七年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 内藤誉三郎

    主査内藤誉三郎君) ただいまから予算委員会第二分科会を開会いたします。  まず、分科担当委員異動について御報告いたします。  昨日、星野力君が委員辞任され、その補欠として須藤五郎君が、また、本日、片岡勝治君が委員辞任され、その補欠として竹田四郎君が、それぞれ選任されました。     —————————————
  3. 内藤誉三郎

    主査内藤誉三郎君) 昭和四十七年度総予算中、通商産業省所管を議題といたします。  昨日の会議と同様、政府からの説明を省略して、本日の会議録の末尾に掲載いたすことにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 内藤誉三郎

    主査内藤誉三郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それでは、質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 竹田四郎

    竹田四郎君 最近、アメリカの、日本に対するダンピングの問題というのがたいへんきびしくなってきているわけでありますが、最近、アメリカがその規則運用強化しようとしているという話でありますけれども、だいぶガット国際コードとははずれた方向にこれを改正しようとしているように思うのですが、おもな改正点というのはどういう点なんですか。アメリカガット運用規則強化、改正するという話でありますが、その改正点のおもなるものはどういう点ですか。
  6. 山下英明

    政府委員山下英明君) アメリカ反対ダンピング運用強化しておりますのは去年からでございまして、去年の五月にも規則改正強化をいたしましたが、最近の事例を申し上げますと、一つは、ロシデスという財務省の次官補が、去年の通貨調整の結果一ドル三百八円になったけれども、この新レートを反対ダンピング強化の際にそのまま適用したい、ただし、十二月十八日以前の既契約については適用しない、こういう声明を出しました。これが一つの大きな問題点でございます。  それから、ごく最近でございますが、アメリカ財務省反対ダンピングの提訴を受けまして調査を開始しますが、その期間を原則九カ月にしたい。これは早期に手続を進めたいという趣旨でございまして、もちろんそのこと自体は、問題が白になる場合もあるし、黒になる場合もあるんですが、私どもとしては、現在のアメリカの保護主義的な風潮に影響されて反対ダンピング運用しようとする空気からいいまして、早く調査を打ち切って、そして黒という結論を出すおそれがあるんじゃないか、こういう心配をいたしております。また、日本国内価格を算定して、アメリカに着きました入着価格と比べるわけですが、その国内価格の算定に際しまして、日本で行なわれておる広告費あるいは積み立て金等を控除しないという方針をはっきりいたしました。この点も私どもとしては改悪と考えております。したがいまして、今週二十七、二十八と両日、サンクレメンテコナリー財務長官田中通産大臣が話し合われました専門家会議、これの第一回を開きますので、通産省中心に、外務省大蔵省協力を得て専門家を派遣いたしましたので、そこでいま申し上げたような懸念を十分討議する方針でございます。
  7. 竹田四郎

    竹田四郎君 最近、きのうは例の陶磁器の問題について、ダンピングだということで、この規則適用をするという大統領の署名があったわけですが、その前は大型変圧器がやはり同じようにやられておるのですが、私、そのほかあまりよく知らないのですが、いま言われた通貨調整後アンチダンピング法適用を受けたものというのは、その二つですか、ほかにも何かありますか。
  8. 山下英明

    政府委員山下英明君) 私どもが承知しております通貨調整後はその二つ陶磁器大型変圧器です。
  9. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは国際コードによりまして、当然なぜそうしたことになったのか。要するにダンピング・マージンが具体的にどうあり、かつまた、それがアメリカ国内産業にどう被害を及ぼしたかということが立証される必要があるし、その立証というものは、当然日本政府にも、あるいは日本関係業界ですか、こういうものにも当然明らかにされなければならないと思うわけでありますが、これは具体的にきのうのものはまだ明らかにされたかどうか知りませんけれども大型変圧器の問題では、それが明らかにされたのかどうなのか、その辺はどうですか。
  10. 山下英明

    政府委員山下英明君) 御指摘のとおりに二つ問題がありまして、一つは、財務省自身調査段階で、どういう評価財務省がするか、もう一つは、関税委員会において、米国内において被害があったという認定をするわけですが、その認定基準がどうなって被害ありと認めたかと、この二点でございますが、私どもは、国際コードでは、そういう基準なり認定事情を当事者にできるだけ知らせるようにという規定になっておるにもかかわらず、最近の米国運用では、直接公表もいたしませんければ、第三者に知らせない実情でございます。したがいまして、その関係業界で弁護士その他のコンサルタントを雇って、財務省に接触しながら、大体の内情を知るということでございますが、私どもとしては、実際に被害があったかどうかという点についても、十分議論を戦わしていきたいと、こう思っております。まだ陶磁器大型変圧器について、その事情は入手しておりません。
  11. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、これは陶磁器の問題についてはきのう決定されたばかりですから、あるいは事務的にいうことがあるかもしれませんけれども変圧器の場合には、これは当然アメリカ向こうから知らしてくるのがあたりまえだと思うんですよ、向こう産業被害を及ぼしたということを言っておるわけですから。ですから、向こうが当然日本政府にこれは言ってくるべきだと思うんですが、そういうことを政府は、私は堂々と要求していいと思うんですけれども、どうなんですか、その点。
  12. 山下英明

    政府委員山下英明君) 従来とも要求してきた点でございます。御承知と思いますが、繊維の場合にも長い期間この被害立証について両国で争ってきた点でございますし、今回の大型変圧器についても、被害立証について、わがほうとしては十分主張を続けていきたいと思っております。ただ、先ほど申し上げましたように、先方は公然とは通知してきておりません。この制度は、ガット上は日本側対抗措置の権利を認めておりますので、私どもとしては、アメリカ側措置自体について争っていくとともに、どうしてもその措置を撤回しないとなれば、わがほうも対抗措置を考えていかなければならぬ。両面で考えております。
  13. 竹田四郎

    竹田四郎君 いままでもダンピング裁定をされたものがいろいろあると思うんですが、いままでそういうものはどうしてきたのですか。向こうが知らしてくれないというから、それじゃ二、三回話してきたんだけれども、しようがないということでそのままにしてきているんですか。一体どうなんですか。いままでだってあるんでしょう、実際ダンピング裁定を受けたものは。どうなんですか。私はもっと国民に明らかにすべきだと思うんですよ。それでないと、どうもアメリカがいま国際収支が赤字になってきつつあるから、何かしっぺ返しに、日本が黒字だから、うらやんで、というと非常な通俗的なことばになりますが、そういう形でこれをやってきたんだというような形になれば、これは日米のほんとうの外交のあり方というものでは私はないと思う。ただ、そういうものをやっぱりガット規定でも関係国政府利害関係者には明らかにすることになっておるわけですから、当然アメリカとして、こちらが請求すれば、それを明らかにしなければならぬ問題だと思うんですよ。いままでそういうことをやってきていないんじゃないですか。どうなんですか。こういう際に、私は強く要求していいと思うんですよ。
  14. 山下英明

    政府委員山下英明君) 毎回実はやっております。たとえば去年も、板ガラス等について、関税委員会とも激しい交渉してきたわけでございます。提訴され、調査を開始すれば、日本側にも資料提出のチャンスがございますし、わがほうから考えることは言っておるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、アメリカ側は自分の評価基準を示さない、それから、関税委員会に移りましてからインジャリーの制定は極秘裏にやりまして、あとで公表することがありましても、それが大統領に勧告されて、大統領が決定をいたしますと、まずくつがえすことはできないという事情でございます。ですから、私どもとしては、むしろ財務省調査を開始した段階で、その公正価格評価の際に、日本側主張を十分入れていきたい、こう思って、そのつどやっております。  そして一つ申しつけ加えますと、実は従来は、そういう日本側から資料を提出し、向こうと議論する過程で、向こうが実はあなたのほうは一割ダンピングですよということを交渉過程で言いましたときに、こちら側が、それではわかったから、今後一割値段を上げて輸出しましょうと言えば、その誓約書を出せば、それで調査を打ち切る手続がございました。これは価格保証制度と申しますが、それが実際にはきわめて有効に活用されまして、事前に、話し合いの結果問題を処理しておったわけでございますが、去年の五月の制度改正から、アメリカ側は、プライス・アシュアランスはやらない、こういうぐあいに改悪いたしまして、現在ではきわめて一方的にやっております。こういう事態が、専門家会議を提唱し、始めた一つの大きな理由でございまして、専門家会議で大所高所から交渉をする、こう考えておる次第でございます。
  15. 竹田四郎

    竹田四郎君 大臣、あなたはサンクレメンテ会談にも出たんですし、これからも閣僚間の話し合いという機会があろうと思うんですが、アメリカ日本とのパートナーシップというものを続けていくという場合には、はなはだ私はこういうあり方というのはけしからぬと思うんです。そうして当然こういう問題については、日本政府として、そうしたアメリカの情報について閲覧をして、これについて意見を述べるという機会はあるはずなんですよ、国際コードからいけば。それがいつの法律だか知らないですけれども、ずいぶん昔のアメリカでつくった法律が、ガットの協定よりずっと下の水準のでいつまでもやっておるということは、これは私は日本のためにももちろんなりませんし、日米関係にも大きなマイナス点を与えるものだと思うので、この辺は専門家会議ぐらいで問題が解決するとは、局長、私は思いません。最終的な結論はもう専門家会議ぐらいじゃ私は終わらないと思うんです。しかし、アメリカ側のほうのアンチダンピング税の課税というものは、もうこの陶磁器でも、まあ、ある程度はわかっていたにしても、かなり時期的に早いような感じを私ども受けているわけです。で、今後、その他いろいろな電気製品、電卓なんかにいたしましても問題になっておりますし、そうしますと、かなりこれは早急に私はやらなくちゃならぬことだと。それでないと、私は国民はこれでは納得できないと思うんですよ。かってに税金をかけて、そしてその理由も明らかにしないというようなことでは、これはただ単に日米関係だけでなしに、こういう形が今後進んでいくということになりますれば、やっぱりこの保護貿易傾向というのは一そう世界じゅうに蔓延してくると思うんですよ。で、おそらく、こういうことをどしどしアメリカがやってくれば、あるいは通産省のほうでも、これに対する対抗措置の、不当廉売等規定等適用して、これはアメリカ日本に対する輸入品でそういうものがあるかどうか私詳しく知りませんけれども、これはやらざるを得ないという国民的なムードに私はなっていくと思うんですよ。そういう形になっていくことは私はまことにおそろしいことだ。そういう点で、大臣、この点はもう少し解決のめどを、これは田中通産大臣政治力で切り開いてもらわなければしようがないことだと思うんですが、大臣、どうです、その点。
  16. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いろいろ御指摘がございましたように、このアンチダンピング制度というものは、どうもまあ非難さるべき——ダンピング輸出調整ということよりも、アメリカ側はどうも保護貿易主義手段としてこれを使っているというふうに見られる節が多分にある。もう非常に矢つぎばやにやってきているのです。こういうことで、私も一月のサンクレメンテ会談で、かかることをやることは、とにかく保護貿易主義台頭を押えるというような状態から、だんだんそれを助長するようになって、ひいては縮小均衡の道をたどるということになるので、この運用に対しては慎重であるべきであると主張しました。もう一つは、やっぱり日米間でもって問題を起こすことは実に望ましくないんだと。何だかんだ言っても、輸出の三〇%というウエートを持っておるもの、転換するにしても右から左へ転換できないんです。そういう意味では、日米間では事前調整をして、少なくともこんな問題が頻発することによって日米間の感情悪化に導くようなことは避けなければならない。そういうことで専門家会談の提唱ということをやったわけです。ことしのこの二十七日からまたその問題で、変圧器の問題や陶磁器の問題を取り扱うわけであります。まあ、変圧器の問題なども、ウエスチングハウスが提起をしたのは四十五年の三月でありますから、約二年ちょっとかかっておるわけです。二年ちょっとかかっていますが、その間にまだ日本側の意思を表明したり、事前調整できるじゃないか。こういう問題を政府間でもって調整できないはずはないので、まあ専門家会談という名前ではありますが、しかしこれは専門的な問題だけをやるというのではなく、調整できるものは事前調整する機関にしようということで、専門家会議の設置をお互いで認めたわけでございます。ですから、まあそういうことがあるにもかかわらずまた陶磁器や何かをぼんぼんやってくることは、ますますこれを手段として使っているような気がしてなりませんので、私もこんなことなら一年間閣僚ベースの話の休戦と言わないで、こんなときこそやらなければ、これは専門家会議にまかしておけないじゃないかということで、私もきのうそういう発言もしたわけであります。そうしないと、こういうものにすぐ対抗処置をとるといっても、そう簡単にやるべきものじゃありません。だから政治的に十分解決ができる問題でありますから、一年間政治休戦をしたからといっておって、その間にこんな問題がどんどん積み重ねられることは、日米首脳が意図しておるものとは逆になりますから、こういうものに対してはひとつ大臣ベースで話をするということも必要であると、こういうことで、きのうから省内でそういうことについて意見を交換をしておるわけでございますし、専門家会議に出張する諸君に託して——閣僚ベース会談というには、どうもまだ、一方的になると困りますので、書簡を託しているわけです。「やあ今日は」というところから「仲よくやろう」ということを言っているのです。そういうことをやっていかないとこれはなかなか解決できない。ますます深淵に入るという感じがしますので、やはり一つずつ未然にものを解決して、ということのほうがメリットがあるということで、いま考えております。
  17. 竹田四郎

    竹田四郎君 大臣はきわめて前向きといいますか、景気がいいですから、けさの新聞を見て、私も、いよいよこれは日米貿易戦争かという感じを強く抱いたわけですがね。私は、この発言は、何か、こっちもやるぞというような感じを逆に与えていると思うんです。すぐいま、この問題についての日米閣僚会議を開くということは、それはやっぱり一応の順序もあろうと思いますが、しかし、二十七、八日に開かれる日米専門家会議では、一応詰められる点は詰められるだろうと私も思います。そうしますと、そのあと——内閣の交代がいつになるか私はわかりませんし、あなたが通産大臣として向こうに行かれるようになるかどうか、それもわかりませんけれども、しかし、この問題は、そうした政局の問題とは必ずしも私は一致しないだろうと思うんです。かなり緊急を要する問題がある。もし、これが次から次へ出てくるということになりますと、——ECの諸国もやはり日本円の進出に対してかなり警戒的な態度をとっているということが、新聞、雑誌あるいは向こうから帰ってきた人の談話でもそういう面が見られます。さらにオーストラリアあたりでも、電気扇風機が安値でものすごく入っている、これもダンピングじゃないかと、こういうような批判がきわめて強く出ているわけです。そうした意味では、あんまり成り行きを待っていてやっているようなことになりますと、日本輸出というものに対して各国から攻撃のやいばがかなり来るんじゃないだろうかという私は気がするんです。それは私も、閣僚ベースの話もあまり長く待たれちゃ困ると思うんですが、その辺はひとつ、日米専門家会議の詰めのあとぐらいにやってもらいたいと思うんですが、どうですか。
  18. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 全く御指摘のとおりでございます。こんなことをしておりますと、——私もいま慎重に答えているんです。慎重に答えていますが、どうも、非難さるべきダンピング輸出というものを調整するということよりも保護貿易手段としてこれをとっているような気がしてなりませんと、こう非常に慎重に、刺激をしないように答えているんですが、これがずっと重なってきますと、日本は、日米間の貿易バランスをとるべきであるというところまで現実的に追い込まれるおそれもございます。しかしこれは、アメリカは、日本だけではなくECに対しても必ずやるはずであります。EC日本にもやりますから、そうすると日本アメリカEC、両方にやられる。こういうことになりますと非常に困ることでございますから、そういう意味で、まず、この問題はこの問題でもって事前調整をしたり——お互い対抗関税をやったり対抗措置をやるなんということは、これは一つ経済戦争ですから、こんなことをやりますといって景気よく言っておっても、やるようでは困るんです。やらないようにして、事前両国の間でもって話を詰めていかなければ、だんだんだんだんと話が大きくなりまして、いろいろなものを相手にしてやらなければならないようになりますから、日米間というものは相当早い機会に話をしなければならない。だから閣僚ベースの話と言ったのは、ちゃんちゃんばらばらやるというのじゃないんです。そうではなくて、なるべく対抗関税などをやらないようにして、お互い事前に話をしましょうと。その話し合いの中では、日本のたまった外貨をなるべく使うようにしますし、オーダリー・マーケッティングもやりますけれども、いよいよ間に合わなければ、手持ちの外貨を少しはアメリカにまとめて預託をしてもいいですというような相互的な話が出てきませんと、この問題はそう簡単に片づかない。ねらっているところが別であるということになれば、その方面のアメリカ側の考え方も理解をしながら、ノーマルな日米間の経済情勢というものを築くべくお互いが歩み寄らないと、この問題は解決できない問題である。これはダンピング問題だけでもって狭められた技術論をやるなら私はそんなにむずかしい問題じゃないと思いますし、これは片づく問題だと思いますが、そうではなく、保護貿易一つ手段としてこれが採用されるような状態になってくると、世界的にびまんしたり、そういう傾向に進むおそれがたぶんにございますので、やはり意見の疎通をはかりながら、事態に即応した体制を早くつくるように努力しなきゃならぬ、そのために、私は、きのう、そういうことを予期しながら一年休戦なんて言って対岸の火事視しておれない、これは日米間の一番緊急の問題であると、こうきのう述べたのは、あなたがいま指摘されたような立場に立って、そういう認識のもとに述べたわけでございます。
  19. 竹田四郎

    竹田四郎君 確かにそういう意味で私も調整しなくちゃならぬし、保護貿易主義台頭というものは何とか防いでいかなくちゃ将来がおそろしいという感じで、私は全く同感なんです。ただ、もう一つは、アメリカに対して要求すべきことはやはり要求して、先ほどの資料などについてもこれはやはりはっきりと出させるというようなことは必要でありますが、もう一つは、私は内部的にも、これは通産大臣もこの間の予算委員会業界にもっと価格を上げろということを盛んに私は言っているんだというお話がありましたけれども、私は国内でも、必ずしもダンピングとは言えないにいたしましても、やはり国内価格輸出価格の差というものがあり過ぎる面、こういうものは、先のテレビの問題と同じように、私はかなりあると思うんです。ですから、もしも業界チェックプライスを設けてそれを守らせるのになかなか困難だと、こういうように、実際上のダンピングをやるというようなことがあるならば、ぼくはこれは通産省としては当然の、国内価格を引き下げる、そして経済の成長を国民の福祉に還元をする、こういうやり方も指導してもらわなくちゃならない。そして実際上は、業界の内部から末端までずっと見ていくと、必ずしも、賃金なんかにいたしましても、下請、あるいはパートなんかの問題を考えてみますと、必ずしも正当な賃金が払われておるかどうかということになりますと、この辺も私は一つの安値輸出への根源というものは断ち切れていないと思うんですよ。そういう意味で、通産大臣のこの前の予算委員会発言は私もそのとおりだと、こう思って聞きましたんですが、実際はオーダリー・マーケッティングにいたしましても、そうした通産省の値上げ指導にいたしましても、ある部分ではなかなか抵抗があるようです。これはどのくらい、通産省も私一生懸命やっていると思うんですが、どのくらい浸透しておりますか。これはやっぱり早く浸透する必要があると私は思うんですが……。
  20. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 円の調整が行なわれましたから、その調整部分だけをすぐ輸出価格にスライドすれば、これは一番理想的でございます。アメリカ自身はそう言っておるわけです。ところが、そんなに簡単に円の切り上げ部分をそのまま価格に反映させるというわけにはまいりません。これは商習慣もあるし、いままでの契約もございます。これは逆にアメリカ国内においても、アメリカ政府のやり方というものに対して逆に業者が提訴をしておるような面もありますから、急にはいきませんが、やっぱりある期間を経ればおのずから現在より高い価格水準に落ちつくということでなければならないということでございます。  もう一つは、この間からアメリカのこちらへ来る相当な人たちとも話をしておるのですが、どうも簡単に、国内でもって売っている価格よりもアメリカで売っている価格が非常に安いじゃないか、だからダンピングなんだ。これに対して、そんなダンピング論は世界のどこにあるのかと、こう私は非常に積極的に反論しておるわけです。お互いが二人してスイスへ旅行をして時計を買えば、スイスの国民よりも物品税等、消費税が安いから二割も安いものを買うのだ、あたりまえな話だ。日本にも、かつて、日本の農民には高い肥料を使わして安いものを輸出するのだという議論があったけれども、それは制度上違うのである。だからアメリカでもって売るものは日本の本土で売るものよりかずっと安いにきまっておるのです。しかしそれもうんと下がればおかしいので、あなたがいまいみじくも言われたように、やはりオーダリー・マーケッティングという面から考えれば、輸出価格というものは上げなければいかぬ。上げた部分を日本内地の製品の販売価格を引き下げるというような、消費者価格に反映せしめるということこそ望ましいのであって、通産省もそういうことをやっております。だから具体的に輸出価格をどれだけ上げられるのか、また、どうも日本の業者同士がシェアを確保しろというので、やはりたくましい輸出競争という面もあるので、そういう面ではチェックプライスで六十一件、テレビとか真珠とか陶磁器とか、これみんなアメリカ向け対象のものはカルテルを結ばしてやっておるわけです。そういうものもあわせながら、いろいろな制度でまず輸出価格を引き上げるように努力しております、こう答えておるわけです。このごろ一五%、多いのは二〇%上がっているものもあります。一〇%以上大体上がっている。十七、八%上がれば一番いい。だからそれよりも上がれば——二〇%上がれば理想的である。一〇%、半分のものもあるということですから、おいおいアメリカ向けのものは価格の上では調整されておる。しかし安かろう、よかろう、特に内需がどうも伸びませんので、どうしても輸出に集中するというところに問題が一番あるわけであります。このままでいくと、ほんとうに私は、アメリカ向けにもヨーロッパ向けにも年間を通じて輸出入を全部バランスをせしめるというわけにいきませんから、少なくとも上下一〇%とか上下一五%とかというようなもので、幅のある調整、すなわち国内産業に与える影響を極力小さくするつもりである。これはもう日本景気がそれまでに浮揚しない限り、国内産業というものは相当な打撃を受けるわけでありますので、そういう問題も見ながら、アメリカなどとの間にはこうぎくしゃくしたダンピングの提起等に対しては、なるべくお互いの意思の疎通をはかりながら、国内産業に影響を起こさないような状態でもって調整をしてまいろう、こう考えております。
  21. 竹田四郎

    竹田四郎君 その努力は大いに努力しなくちゃいかぬと思うのですけれども、どうも海外からの日本に対する警戒心というのですか、こういうものはかなりきびしい。だからあまり甘くのんびりは考えられない。おそらくこの問題で保護貿易主義になるか、あるいは再び円の再切り上げという形で、国が、おそらくこれ吉野さんあたりの報告を見ても、ヨーロッパの空気はそうだ、こういうふうに日銀の理事をやっている方すら報告をせざるを得ないほどの情勢だと思うのですけれども、それにもう一つ、私はこの際、そういう貿易面だけでなくて、日本ダンピングというものに対してもう一つ大きな攻撃がかかってきそうな点は、やはりILOが、最近、公正競争ということがはたして行なわれているかどうなのか、こういうことで、近く加盟国に対しまして労働条件としてはどうなんだということで、たとえば一号、十四号、二十六号ですか、こういうようなものの各国の比較をすると、こういうようなこともILOで考えておられるようでありますけれども、このILOの一号条約というのは最も基本的な労働条件の問題だろうと思うんです。一日八時間、一週四十八時間の労働制というものをきめているわけであります。ですから、こうしたものについてもし調査が行なわれるということになって、その結果が出るということになりますと、私はかなりの日本に対する、日本ダンピングをやっているという一番わかりやすい私は標準になるような気がするんです。一方、そういう方面から日本ダンピングというものに対する世界の批判というものがあらわれようとしているわけです。このことも私はたいへん心配する一つの問題なわけでありますが、労働省お見えになっておると思うんですが、どうして第一号条約とか十四号条約というようなものは批准されないのか。私はいま週休二日制とか何とかいわれている時代でございますから、当然自由世界第二番目の生産国を誇っておる国の労働者として、一号条約、十四号条約ぐらいは、これは当然批准してしかるべきである。こういうものは早く批准しなければますます、一方通産のほうでそういう努力をされても、案外そういうものは消えてしまう可能性が私は非常に強い。労働省はどういうふうなお考えですか、これについて。
  22. 森川幹夫

    説明員(森川幹夫君) ただいま御質問の点でございますが、ILOにつきましては、いわゆる公正労働基準という問題が発展途上国の雇用促進の見地からひとつ今後検討をしていこうではないか、こういう問題が出ていることは事実でございます。その中で、いろいろ公正労働基準の問題につきましては、技術的内容の問題、あるいは発展途上国の問題、それから先進諸国の間の意見の食い違いや、労使の間でも意見がいろいろございますので、ILOの事務当局といたしましては、いわゆるすでにILOで採択をいたしました条約のうち一定の条約を取り出しまして、たとえばILO等では結社の自由、団結権、最賃、監督権というような条約の種類をあげまして、今後これを適用状況を監視をして公正労働基準にかえようではないかというような意見があるわけでございます。ただ具体的には、ILO事務当局の中に、先生が御指摘のように一号とか十四号という具体的な名前はあげておりませんけれども、いま申し上げましたように大まかに結社の自由、団結権、最賃、監督というような条約というものは取り上げておるわけでございます。今後この問題は実はいろいろ関係国内意見がございますので、次の十一月のILOの理事会で検討される予定でございます。それから、先生御指摘の第一号、第十四号の関係でございますが、わが国の労働基準法は一日八時間、一週四十八時間で原則的にはなっておるわけでございますが、ただ超過勤務の取り扱い等は、わが国では三六協定で超勤ができることになっておりまして、第一号の趣旨とはやや違うわけでございます。したがいまして、今後私どもといたしましては、いま申し上げましたようなILO条約の一号なり十四号との相違点につきまして十分慎重に検討いたしまして、今後一号あるいは十四号等々の労働基準に関します条件については慎重に検討をいたしたいと、かように考えておるわけであります。
  23. 竹田四郎

    竹田四郎君 通産大臣、ひとつあなたは通産大臣としてでなしに、やっぱり政府閣僚の一員、しかも有力な閣僚の一員として、いまのILOの問題はやっぱり聞いておいていただきたいと思うんです。そしてその方面からやはりそういうダンピングというような評価を受けないように処置する必要があると思うんです、いまの立場の場合。ひとつその点は特に、労働大臣いらっしゃらないのですけれども通産大臣のほうにその点お願いしておきたいと思います。  時間があとわずかしかございませんので、その他聞きたいことがたくさんあったわけですけれども、最後に、陶磁器のきのうのニクソン大統領の決定ですね。これに対して、アメリカ向けの日本陶磁器というものはかなり陶磁器輸出の中でも多いと思います。そうしますと、しかも陶磁器というのはそうえらい大工場で、やっているのもあるでしょうけれども、比較的小さな規模の企業のほうが多いだろう。そういう意味ではかなり影響を受けると思います。ひとつ陶磁器業界に対しての——業界の人たちもこの点をたいへん心配しているだろうと思うのですよ。やはりそういう意味で、陶磁器業界に対する政府の対策というものをやはり早く明示をしてやる必要が私はあろうと思います。ひとつこの席で、陶磁器業界に対する対策というものをお示しいただければ幸いだと思います。
  24. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この問題が起こります前から、私も岐阜、愛知両県の代表の意見は十分徴してございます。徴してあるだけではなく、ちょうど繊維交渉にワシントンに通産省の代表が出張中でありましたから、こちらから私の意向を通じましてアメリカ政府側にも、この問題に対して再考を促したりいろいろな調整をしておるわけでございます。これはアメリカ向けに出しております陶磁器のうち、特に中小企業関係が非常に影響があるということで、その実態を調査をすると同時に、業界からの様子も聞いてもおります。金融、その他いろいろな問題もございますし、対米折衝もありますから、そういう問題に対しては配慮してまいろうという考えでおります。
  25. 辻一彦

    ○辻一彦君 まず、きょうは、最近問題になっております大型の原子力発電所、この問題について二、三質問を行ないたいと思います。  まず第一に、大臣に伺いたいと思いますが、全般的なこれからの電力需要の見通し、それからその中で発電計画、それから原子力発電がどういうウエートを占めるような計画を持っておられるか、見通しを簡単に伺いたいと思います。
  26. 三宅幸夫

    政府委員(三宅幸夫君) わが国のエネルギーの需要は非常な増大の一途をたどっておりまして、昭和五十年度では大体現在の一倍半、六十年度では三倍前後に達すると、いま想定されております。その中で、電力でございますが、昭和四十五年度末では大体七千万キロワット台の能力でございます。その中で原子力は二%ぐらいのウエートでございます。六十年度にはこれが少なくとも二億三千万キロワット前後になるんではないかと、かように考えております。その中でいま御質問の原子力のウエートは六千万キロワット、約二五%前後になるのではないか、かように想定しております。
  27. 辻一彦

    ○辻一彦君 この電力需要の計画はされておるのですが、これはGNPのいままでの伸びというのをそれをそのまま延長して考えておるのか、あるいは、最近において経済成長というのはかなりダウンしておるのだが、そこらを考えてその計画は立てられておるのか、そこらの見通しはどうですか。
  28. 三宅幸夫

    政府委員(三宅幸夫君) これはかつて通産省の総合エネルギー調査会でまとめられた数字でございます。御指摘のとおり、最近のドルショックといいますか、不況で、若干現在電力は停滞ぎみでございますが、それは主としてキロワットアワーが落ちておるのでございまして、冷房需要を中心としましたピーク時の需要は必ずしも一般に伝えられておるほど落ちておりません。したがいまして供給責任を果たす電力量といたしましては、キロワットアワーの問題もございますが、ピーク時における能力を確保するという意味では、先ほど申し上げた数字が大きく狂うとは考えておりません。ただ、現在経済企画庁で新しい経済計画の策定作業が行なわれておりますので、その数字によりましてさらに再検討は加える必要があると思いますが、あくまでもいま落ちておりますのはキロワットアワーが中心でございます。夏を中心としましたピーク時の需要はさほど、伝えられているほどは落ちていないというのが現状でございます。
  29. 辻一彦

    ○辻一彦君 経企庁でいまそういう新しい策定をやっているということですが、従来の電力需要の線の上に延長をして、その数字で原子力発電の量をはじき出すとかなりの量になるんですが、わが国の原子力発電の開発について、大型原子炉の研究実験であるとか、こういうものが非常におくれている。これは私、東海村の日本原子力研究所を見てきましたが、アメリカで問題になっている緊急冷却装置等が来年の七月ごろから実験をやる。こういうように実験段階というのは非常におくれておるんですが、その中で非常に大規模に原子力発電の、しかも集中していくこういう方向はかなり問題があると思うんですが、そこらの実験等のおくれを見たときに、あまり無理な開発計画を立てるということは、環境上非常に日本の状況では無理があると思うんですが、そこらは局長、どうですか。
  30. 三宅幸夫

    政府委員(三宅幸夫君) 将来の日本の発電形態、これはおそらくエネルギー源の多様化あるいは分散化という観点から現在の原子力のウエートは高めるべきであろうと私どもは考えておりまして、御指摘の安全性の問題につきましては、原子力委員会の下部組織としての安全性の審査委員会が慎重に検討を加えておりまして、約二十数名の各界の権威者が集まって検討された結果でございますので、私どもとしてはその安全性の確認について十分な自信を持てる、かように考えております。
  31. 辻一彦

    ○辻一彦君 その問題はここで安全性を私、論議する場でもないと思いますので、若干あとで触れてみたいと思います。  そこで、原子力発電に入る前に、火力にしても原子力にしても、発電所というのは公害と関係する問題がどこでも出てくるわけですが、火力発電の場合に、脱硫装置ですね、こういうものにどういう見通しがあるのか。聞くところでは、十五、六万キロワットぐらいまでは現在可能だとか、それ以上はなかなかむずかしい、こういうことも聞いておりますが、脱硫装置は将来どのくらい可能性があるか。  それからもう一つは、公害が一番少ないというものでは天然液化ガス、これを使った発電所というのは非常にに公害が少ないといわれるんですが、こういう資源確保の見通し、あるいはこれによる発電の見通し、こういうものを、時間が非常に限られておりますので、簡単でけっこうですからちょっと伺いたい。
  32. 三宅幸夫

    政府委員(三宅幸夫君) まず排煙脱硫でございますが、大型プロジェクト計画によりまして、通産省としての所要のデータを確保いたしまして、現在東電、中部、関西がそれぞれ試作機の運転ないしは建設中でございます。ただ一般にいわれておりますように、ほかの化学工業等におきましては副産物の処理等が非常に楽でございますが、原子力の場合には、その問題並びに連続運転の保障についてまだ確たる実験データが出ておりませんので、この三基の稼動の結果、連続運転並びに負荷の追従性についての技術的な確認ができますれば、この問題はさらに一歩前進するんではないか、かように考えております。ただ、ただいま申し上げましたのは主として乾式法でございまして、最近湿式の方式も出てまいりましたので、関西電力は海南でこれをやりたい、十電力も現在その構想を進めておりますので、逐次そういった方向で排ガスの問題も前進するんではないかと考えております。それから天然ガスの問題につきましては、現在アラスカ、続きましてブルネイからの天然ガスが入ってまいりますが、その次に続きます液化天然ガスのソースがまだ十分確定しておりません。一つイランにございますが、その問題を踏まえまして、関西電力並びに大阪瓦斯が将来の計画としてそれを考えております。その次に続きます新しい計画は、現在試掘段階でございまして、まだ確たる見通しは立っておりません。
  33. 辻一彦

    ○辻一彦君 この公害の少ない発電として液化天然ガスの問題が私はかなりこれからの問題であろうと思うのですが、時間の点でこれにはきょうは触れませんが、ぜひひとつ検討を十分してもらいたいと思うのです。  そこで、原子力発電開発の問題についてですが、いまの答弁によれば、五十年後半は原子力発電にかなりな非常に大きなウエートがかかると、こういうような内容でありますが、これはやはり環境、それから公害廃棄物とかいろいろな問題でずいぶんと問題がまだまだあるわけです。その中で二、三の問題を私はただしたいと思うのです。  一つは、わが国の原子力発電の方向というものをずっと見てみますと、非常に最近大型化をし、しかも集中化していく、そういう方向をたどっておる。その典型的な例が、私は福井県の若狭湾の出身ですが、あの若狭湾に現在九基、もし、安全審査をパスをし、原子力委員会が認められるならば、認可があるとするならば、九基六百二十万キロワット程度のすでに計画が具体的に動き、また動こうとしている。それから、これは昭和五十五年の見通しでは、いわゆる千二百万キロワット、それから六十年、六千万キロワットになったときには、この若狭湾は千五百万キロワットの計画が企業のほうにあるように私は承知をしております。また福島にも現在四基目ができておりますが、ここにも八百万キロワット程度の計画が現在考えられている。それから、これは大臣の地元になりますが、新潟の柏崎も大体敷地が確保されて八基、百二十万でいけば一千万キロワット程度の計画が電力側によってなされておる。こういうように、全国各地にこれからこういう基地化が計画されると思いますが、さしあたって典型的な例として、まず若狭湾がすでに六百二十万キロワット段階に入るか入らないかというところにある。そこで、これをモデルというか、問題にして伺ってみたいと思うのです。  実は一昨日運輸省の分科会で、経企庁からも出てもらって、若狭湾をどういうように開発するかということについての考え方を聞いたわけです。これによりますと、新全総において、東は九十九里浜、西は若狭湾というように、一大規模のレクリエーション基地を建設したい、こういう調査と、それから、すでに一部はヨットハーバー等の建設が進んでいる、こういう実態であります。若狭湾は昨年でも大体七百万の観光人口があったわけですが、これが夏五百万、海水浴場に三百五十万から入っている、こういう状況になっております。新全総、運輸省の計画によると、この観光人口を年間千五百万にまで拡大できるレクリエーションの需要がある。こういう調査がかなりはっきり出ておるわけです。  そこで私は大臣にお伺いしたいのでありますが、こういう地域に、日本全体のいろいろな経済あるいは国民的な見地に立っていわゆるこういう一大観光レクリエーション基地、いうなれば国民の、単に遊び場でなしにあすの英気を家族とともに養う保養基地をつくろうというようなそういう方向の中に、また大型原子炉がこういうように集中する計画があるわけなんですが、ここらの原子炉、原子力発電所の開発の方向というか、あり方とか、こういうものについてどういうようにお考えになるか、このことをお伺いいたしたいと思います。
  34. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 発電所が必要であることは、これはもう当然のことでございますし、また経済が拡大する過程において国民保養ということも考えなければならぬことは言うまでもありません。いままで申し上げておりましたように、生産第一主義から環境保全、人間生活の向上ということを考えなければならないという新しい行き方でありますから、働くだけではなくて、生産を上げるだけではなくて、当然、これから新全総の中に、いままでは小さな面であった国民保養とか観光とかまた国土保全とか環境保全とか、いろんな問題が大きなウエートを占めなきゃならぬことは当然でございます。ただ、まあこの観光地というのは、日本は至るところあるんです。ところが、大きな原子力発電所とか産業の基地というものは、必ずしも全国的に見てそう大きな基地が、たくさん得られるわけはありません。私も、二十年近く全国の各地を検討しておるのでございますが、手をあげて十カ所ぐらいあげられればすぐあげられるわけでございますが、まあそういうところと保養地、観光センターというようなものとを必ずしも一致せしめなくても調整をとることはできると思います。いまのように、若狭湾というのは福井県が非常に原子力発電所というものに対して研究もされ、われわれ新潟県などは、福井県に行って見てきて、福井県の方々の意見に沿おう、その御経験を指標となしておるわけでございます。したがって、こういう問題に対しては、非常に理解があったということと、自然的な条件が非常に恵まれておったということで、関西電力を中心にして、あそこが原子力発電所のメッカのようになったわけでございますが、たくさん寄れば公害問題その他も、いろんな問題も起こるわけでありますし、東京、大阪、名古屋のように、過密地帯でありますと、複合公害という思わざるものも起こってまいりますから、集中するメリットは確かにあります。あるかわりに、温排水でもって海水の温度上がることだって、複合すれば非常に大きく上がるわけでありますから、影響もあるわけであります。そういう意味で、集中されるところの環境保全とか公害予防の基準は特に厳密にしなければならない。しかし、いまあなたが指摘されたように、観光地、保養地ということはもっと国土全体の中から新幹線をちょっと伸ばせば片づく問題でもありますし、やっぱりそういう問題は専門的にこれから検討、調整を行なうべきだと思います。私自身も日本海岸でございまして、若狭湾が風光真に明媚なるところであるし、非常に条件のいいところであるということは十分承知しております。かつてあの朝鮮との、朝鮮牛を揚げる基地でもあったというあれは、商港としても非常に中心的なところでございますし、そういう意味でまあ保養センターと原子力を全部一緒にしなきゃならぬということよりも、できるだけ分けるような調整が必要であろうと、こう思います。
  35. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、現に若狭湾に五百万かの人が来て、そして夏ですね、海水浴にも去年の七月一日から八月下旬でも三百五十二万の人が海に入っている。そういう実態があるという上に基づいて、いま経済企画庁や運輸省で進めておられる観光開発の方向は、これはどうしてもあそこで非常にそういうふうな自然に恵まれているわけですから、これは力を入れてやってもらわなきゃならぬと思うのですよ。ただ安全とかいろいろなことを考えますと、環境考えると、あまりそういうところに大型原子炉が集中するということについては非常に問題があるんじゃないか。こういうふうにいっておるわけなんです。そこでどういう事情で、まあいまの大臣だと非常に誘致に熱心だというお話しでありますが、それはそういう動きもありました。特に、貧弱な地方財政ではどうしても固定資産税が、財源がないので財源がほしいとか、それから非常に離れたところではやっぱり橋や道がほしいとかそういう点から、ほかの要件ということは考えずにこれを誘致したいという、こういう動きも声もあることは事実です。しかしまた、あまりにも集中への方向に対して最近急速に住民の中にこれに対する批判と、それから集中を避けようという運動が実際として動いておる、大きくなっておるということも事実なので、このこともひとつ頭に十分入れておいていただきたいと思う。それで、私はなぜこういう形でそれじゃ若狭湾に集中をするのか、これはいろいろな条件とかいろいろなことがあろうと思うのでありますが、私は、こういう中に、一つは企業側があまり環境等を考えずにかなり集中化を無理にでもいろいろな形で、これは力ずくという意味ではないのですが、かなり経済的な力によって無理に集中をはかっていくという、そういう私は動きもかなりあるように思うのです。たとえば、こういう点がありますが、まあ高浜という原子力発電所があります。それから大飯、美浜、それから敦賀、四つの場所があるのですが、高浜を見ますと、第一期、一つの一号炉は六百八十億、それから二号目は五百三十億、そして二つ目つくるときには百五十億安くできる。これは敷地が共有できるし、岸壁であるとかいろいろな条件が共有できる、こういうことで安くつくわけですね。そこで一つの敷地を確保すると企業は何でもかんでも二つ三つたくさんそこにつくっていくということが安くできるということですね。必ず私はそういう方向へ進めているのではないかと思う。これは美浜の原子力発電所は一、二、三とあるのですが、この一号炉が三百億、二号炉が三百五十億、三号炉が六百十億、これは大きさが五十から八十と大きくなっておりますね。これをもし新しい敷地を求めるとすると、二号炉四百二十億、三号炉七百億ぐらい、そうしてここにも三つ集中することによって百五十億程度のえらい安くあげることができる。大飯原電、これはまあ百十七万五千キロワットですから一千億かかりますね。二号基になれば八百億、二つ目は二百億ぐらい安くできる、こういうことで、一つの敷地が確保されると、そこにたくさんつくることが非常に企業の側から言えば安くつくからということで、かなり経済的な力を十分に駆使するということによって無理な開発を進めていこうとしているのじゃないか、こういうふうに思うのですが、そういうことについてどうでしょうか。
  36. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 集中することのメリットというものは追求しなければいかぬ。それが東京や大阪や名古屋に集中した一つの例でございますが、しかし、ある集中は過度集中ならデメリットのほうが大きくなって、そこの集中のメリットよりもデメリットのほうが大きくなるということは、高度の成長をやっても、名目成長になってしまうということになるわけであります。それと同じことが言えるわけであります。これは集中することによって安くできるし、同時に、公害排除とかそういうところも複合というような学問的な研究等も集中的に行えるし、データもよく確保することができる、そういうメリットは非常にあるのであります。ところが、複合というようなことで思わざる公害等が起こったり、事故が起こったりするということを考えると、集中にはおのずから限界を持たなければいかぬ、こういうことになるわけでございまして、私の選挙区というか、私の生まれた柏崎は日本で最大の一千万キロというものをやろうということで、もうすでにボーリングやっておるようでございます。ボーリングやっておるか準備をやっておるか、いずれにしてもこのような状態でございます。だから集中することによって、それに付随して、集中することによる悪い面、マイナスの面、デメリットということがなければ集中ということは、これは考えられるわけであります。しかし、原子力というものに対して、まだ学問的にもいろいろ未知なところもある、ほんとうに解明されておらないところがある。解明はすでにされておっても、証明されておっても、政府がPRをしないために人心に動揺を与えておるというような、いろんな、新しいものにはつきものでございますが、そういうことで、初めは若狭湾などは誘致をされて非常に成功をおさめた。しかし、まあこのごろは少し大きくなり過ぎたので、何か事故が起こったらというので、大飯発電所のように、どうも町村議会は全部賛成という決議をしたけれども、村長さんは——町長さんでありますか、しばし待てということで、町長さんの意向だけでもって事業は進められない、こういうようなものもありますが、これはやっぱり集中というもののメリットとデメリットとの間に起こる問題だと思います。まあ集中することによって事故が起こるというようなことがあるなら、これはもう集中は絶対に排除さるべきだ、これはもう経済力集中排除と同じことで、かかるものの排除というものは当然排除さるべきである。日本も経済力が集中し過ぎて、財閥ができて戦争が起こったということで、経済力集中排除法によって経済力の集中を排除しなきゃならなかったのですから、これはもう当然私はそういうことを考えなきゃいかぬと思いますが、集中することによってメリットがある。そういういろいろ指摘されるようなものがないということになれば、やっぱり集中してそこに完ぺきな状態をつくるということになるんじゃないか。私は原子力というものを、ちょうどまあまきから石油に、石油から電気に変わったというほどではなく、電気と原子力というものは、いわゆる火力と原子力発電との間には相当やっぱりめんどうな問題があると思います。あると思いますが、やっぱり人類の将来を考えますと、エネルギーというものの相当大きな部分が原子力にゆだねられなきゃならない、それをもってまかなわなきゃならないことだけは、これは実態であって、これは認めざるを得ない。それに対して、マイナス面を除去するためにやっぱり精力的に施策を行なうということにしぼっていくべきではないのか、そういう意味で、まあ柏崎などでは賛否半ばでございますが、原子力の一千万キロ発電は地元は賛成することがしかるべしだと、こう言っておるわけであります。
  37. 辻一彦

    ○辻一彦君 この集中のメリット、デメリットですね。この問題は論議を実はしたいんですけれども、三十五分というメモがきているので、残念ながらこれは十分できぬのです。ただ、大飯の場合にも、町長一人が反対しているというお話ですけれども、有権者四千おって、工事中止を求めて署名捺印した数は三千三百と八割をこえているということは、まあ議会の議決はさることながら、やっぱり住民の意思というものがかなり大きく変わりつつあるということを一つ指摘しておきたいと思います。  それから、集中した場合に、私は、複合汚染の問題、あるいは柏崎にしても、一千万キロワットとなれば信濃川の約一本半ぐらいの温排水がずっと秒速であそこに流れ出す、若狭湾もその大きさに応じてかなりな温排水が出ますから、こういう問題があるんですが、これはまあきょうの時間の中では十分できないと思いますから、あと私二、三どうしても聞きたいことがありますので、そちらに移りたいと思います。別の機会に、この集中の問題については論議したいと思うんです。  そこで、実は各原子力発電に予定されているところにいろいろと工事が行なわれているんですが、過日東海村の——これは四月十四日の毎日に出ておりましたが、国の安全審議委員会で審査をやっているその中に、もう東海三号炉の工事に着手したと。で、開発側はこれは着工じゃなしに着手だと、こう言っているんですが、すでにボーリングや、あるいはいろいろ原子炉に予定される整地、そういうことに入ったといわれておりますが、そういう例があるんですが、私は、法的にいっても、国の安全審査専門会でこれが審議をされて、それがパスする。それから通産省がこの電気事業の工作物の変更についての許可を与える、こういう段階を経なければそういうことをやるということはいけないんじゃないかと思うんですが、この点の見解はどうでしょうか。
  38. 三宅幸夫

    政府委員(三宅幸夫君) 私も、その新聞記事を見まして、会社側に実情の調査をいたしましたが、この日本原子力発電株式会社の東海第二号炉は、昨年暮れにすでに電源開発調整審議会の議を経ておりまして、その際は、地元の県のほうも御了承いただいて、国の政策としてこの発電所を進めたいという意思決定は行なわれております。ただ、この炉の設計その他につきまして、十分安全審査をする必要がございますので、目下安全審査につきましては、原子力委員会の機関でこれを行なっております。そこで、いますでに安全審査も通っていないのに着工したではないかという御質問でございますが、これは現在予定されております敷地の中にあります倉庫、あるいは若干の建物を撤去する、あるいは構内の芝の一部をはぎ取るという一種の用地整理の工事でございまして、いわゆる電気事業法等に基づく電気工作物についての許認可を要する本格的工事ではないわけであります。こういうぐあいに、所要の法規制の許可を得る前に準備工事を行なうということは、相当のケースとしてあり得ることであり、また、私どもとしては決しておかしい問題ではないと、かように考えております。
  39. 辻一彦

    ○辻一彦君 東海村の例もそうですが、たとえばまあこの美浜の町の原電三号は、これは許可になったわけですね。安全審査通りましたが、これでも三月六日に安全審査が行なわれた。結論が出た。その以前に私柏崎を全部ずっと見て歩きましたが、見たときに、この整地、土木事業がすでにもう一月段階から進められている、三号炉についても。それから大飯のこれにつきましても、いろんな問題を起こしておりますが、この安全審査の結論が出る三月六日以前に、私が見たときでは、もうその原子炉の本体をそこへ持っていって、掘って据えればいい、周辺の工事というものがずっとつくられている。こういうように、私は——まあ繊維のときには見切り発車がありましたが、見込み発車を企業がどんどんやっているということは、この既成事実をもうつくっちゃって、住民にいろいろな意見があっても、もう安全審査の結論が出る前に既成事実をどんどんつくって、どうもこうもならないというような状況をどんどんつくっているように私感じられるんですが、そういうことは電気事業法云々に全然触れないのか、あるいはそういう行き方というものが住民との間に非常な摩擦を起こして、かえって原子力の開発ということを困難にしている例が非常にあると思うんですが、そこらひとつどうなんでしょうか。
  40. 三宅幸夫

    政府委員(三宅幸夫君) 電気工作物あるいは電気事業法の許可あるいは原子炉の安全性に関する原子炉等規制法の許可以前の段階において所要の準備工事を行なうということは、法令上許されておる問題でございます。特に、いま御指摘になりました発電所は、いずれも、つとに地元の誘致を受け、また、県の御了承を得まして、電源開発調整審議会におきまして国の意思として計画を認めたわけでございます。ただ、それについての安全性の確認というものは十分にやる必要がありますので、大飯、長いケースは一年二カ月、短くても半年以上の審査期間を経て安全審査の確認はいたしておりますけれども、その以前におきまして所要の準備工事を行なうというのは、法令上許されておる問題であろうと考えております。また、電源開発調整審議会という場において、県の御了承を得て国の意思として電源開発計画に組み入れた工事でございます。さよう御了承願います。
  41. 辻一彦

    ○辻一彦君 その場合、安全審査がもう全部通っておるんですね、日本の場合は。まあ全部オーケーになっていますがね。かりに、安全審査に問題があって通らなかった場合に、そういう工事を進めた場合の問題はどうなんですか。
  42. 三宅幸夫

    政府委員(三宅幸夫君) 既成事実があるからといって、安全審査をゆるがせにし、ゆがめることは全然政府として考えておりません。ただ、企業としての総合的な工事のテンポの一環としてある程度の準備工事を進めておられるであろうと考えます。
  43. 辻一彦

    ○辻一彦君 ただね、この安全審査の結論が出れば、そこに原子炉の本体を掘ってもうつくればいいというところまでずっと工事ができてくると、もうそれは既成事実として、できたようなことになるんですよ。そうすると、いろいろ安全審査に問題がある、住民の人もこれだけもう工事がむちゃくちゃに進んだらどうもならぬという、そういう気持ちが一つと、もう一つは、こんな無理押しをすることに対する非常な反発というものが、非常に住民運動の摩擦を私は起こしておると思うんです。その点、大臣、どうお考えになりますか。
  44. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 法律的には問題は全くないと思います。しかし、現実の面に無用の摩擦を起こす、そういうことは現実問題として私も承知しておりますし、何かうまい手はないのか、こういうことでございます。これはちょうど国体の施設をつくるにしても、一つ一つの競技場というのは厳密な許可がなければならないのですが、それはそういうものがきまらないうちに土地は買う、整地は行なう、準備はどんどん進める。そうでなければ期日に間に合わないということでありますから。ですから、これはもう相当短い期間に、一カ月なら一カ月以内にすべての手続を終わるべし——昔、そういうのがありました。戦争中には、三十日以内に許可ない場合には許可ありたるものとみなすという、相当効率的な法律がありました。戦後もそういう法律ありました。ですから、そういうことになれば、時間的にできますが、非常に長くかかるというような問題になれば、技術的な問題は最後に残る。技術的な問題は、いろいろな状況がどう整備されても、許可基準や認可基準や安全基準というものがゆがめられるようなことがあってはたいへんだ、もうこれは絶対にない。しかし、問題は、準備工事を前もってやらなければ五十一年四月の一日の発電はできない、計画は全く立たないということになりますから、膨大もない事業であればあるほど、準備作業はあらかじめやらなければならないということになるわけです。ただ、あなたが言うの私もよくわかるのは、それによって、まとまるものまで、あそこまでいって強引にやるならば命がけで反対してやろうという面も往々私も知っておりますので、そういうのを何かうまくできないか、日本人の中で命がけで反対しようというようなことを何とか調整できないかという問題はわかります。わかりますが、すべての問題を全部、安全基準からなにから全部一〇〇%きまってからでなければ準備作業も行なえないということになると、相当、いま三年間というのが四年間かかるか五年間かかるかということになるわけでありまして、まあ比較論の問題であって、まあやっぱり工事、やる事業が大きければ大きいほど、慎重に、手を打ちながら、慎重に理解を求めながら作業を並行的に進めるということが望ましいことである制度上全部が済まなければ着工できませんというわけにはとてもできないというところに問題があると思います。
  45. 辻一彦

    ○辻一彦君 きょうは実は私は若狭湾の問題に集中して少しいろいろな角度から論議したかったのですが、時間の点もありませんから、これは先ほど言いましたように、別にして、原子力開発を行なう場合に、いわゆる平和利用の三原則——自主、民主、公開という原則があるわけですが、これを守ってやっていくということが非常に大事だと思うんですよ。何とっても一番根本であると思うんですよ。  そこで、三月二十二日、二十三日、大臣御存じのように原産会議がありまして、そしてここに世界の原子力関係の専門学者が見えている。この中に西ドイツのシュバルツァーという方が見えて、こういうことを言っています。これは西独の原子力関係の専門的な代表的な方です。それは、原子力開発に秘密があってはならない。どんな炉をつくり、危険がどの程度あるか公開する必要があるということを指摘をしておりますし、もう一つは、アメリカの原子力委員のダブ氏がやはり発言をして、原子力開発に国民の参加と支持を得ることが、そのための努力は不可欠のことである、こう言っておりますね。  そこで、日本の原子力開発というものを見てみますと、開発を急ぐあまり秘密主義あるいは非公開性、こういうものが非常に多いんじゃないか。そこで資料の公開、あるいは公聴会を開きなさい、こう言っても、こういうものは政府や原子力委員会のほうでなかなか開こうとしていない。私は、こういう巨大な科学の原子力開発は国民的な合意、コンセンサスがないとなかなかうまくいかない、長続きしないと思うんですよ。こういう自主、民主、公開という原則が、どうも秘密性や閉鎖性に閉ざされて非常に不十分であると思いますが、この点大臣どうでしょうか。
  46. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現在は日本は平和的にしか君片しないということでありますから原子力の平和利用ということには一本筋金が通っておるということで、これはりっぱなことだと思います。世界にも私は声を大にして言える姿勢であると、こう思います。しかし、現実的な問題としては、すべてが公開されておらない。これは技術提携を受けたり、技術提携を太いにやっておったり、また、そういう技術を買ってやっておるということで、おのずから、企業秘密として、日本で秘密を守るというんではなく、これを提供を受けている会社側、各国の事情によって制約を受けるということはやむを得ないことだと思います。  将来的な問題はどうかというと、これはもう秘密というものはなくなると思います、将来的には。特に日本の立場では、平和利用以外にはしないというのでありますから、秘密を持っている必要はない。これは原子力というものの機密が漏らされるとすれば、また、最も公開に賛成しているのは、破壊兵器としてこれを使わないという原子力の平和利用に筋を通しておる日本が一番公開主義である。いま日本が公開できないのは、やむを得ざるいろいろの具体的の制約によってできないのであって、公開という原則に踏み切れるのは日本が一番私は積極的だろうと思います。やはり秘密には限度がございまして、こういうものは平和利用される限りにおいて、人類にすべて公開さるべきものだ、私はそういう思想でございます。私も初級技術屋でございますので、発明された技術というものはすべて人類の幸福のためにこそ提供さるべきものである。一部の者に壟断さるべきものでない、こういう考えですから、こんなものはなるべく早く公開さるべきものである。原則的には日本の立場が最も正しいと思います。
  47. 辻一彦

    ○辻一彦君 その正しい日本の立場が貫徹されていないというところに私は問題があると思うんですよ。これは大臣も御存じだろうと思いますけれども、企業が出す申請書、あるいは安全審査専門委員会においていろいろそろえる資料、あるいは内容ですね、私はこういうものは、なるほど商業機密、企業機密という点もあろうと思いますが、それを公開をするということが、そしていろんな立場の専門の学者の批判に十分たえるということが、これが国民にやはり安全だということを確認さすために大事な、国民的合意を、コンセンサスを成立さす大事な条件だと思う。日本の場合だけが秘密じゃなしに、これは、日本の原子力委員会が、安全審査の専門委員会で国会の科学の委員会等に出した資料はこれぐらいですが、国会図書館へ行けば、同じたとえば大飯の百十七万五千キロワットという一番大きな原電ですね、原子力委員会がわれわれに出した資料はこのぐらいの四、五十ページにすぎませんが、一冊五百ページぐらいのが二十五巻からあるんですよね。これはアメリカの百十七万五千キロで、アメリカの原子力委員会が自分の判を押して、そして七〇年に手をつけているその企業の申請書、それからずっと環境に至るまでの討議の内容、そういう一メーター二、三十センチぐらいの高さの資料が国会図書館に公開されておるわけですよ。それを見ると、私は、日本のは出せといえばこの程度しか出してこないということは、これは全く資料の公開という点についてまことに閉鎖的である、こういうように思います。  それから、時間が来ておりますから省略しますが、もう一つは、公聴会を開くということですね。これも、たとえば昭和三十四年の三月十一日のこの国会の決議の中にも、大型原子炉については資料の公開並びに公聴会の開催等によって決定すべきである、こういう決議も国会でしておるわけですよ。しかし、この公聴会もこれを要求してもなかなか政府のほうでは、原子力委員会のほうでは、説明会をやって説明すればいいんだと、こういうことでなかなか開かれていない。私はこういう資料の公開、それから公聴会の開催、こういうことによっていろんな意見をやはり公の場で保障し、発言をさして、そういうことによってその科学的な批判に十分たえるということが、やはり国民の前に立証されるということによって国民の合意が成立していくと、それを避けておる限りにおいては、私はやはり住民の不信というものはいつまでも続くと思うんですよ。そういう点で、私は通産省にもいろいろ聞けば、ああいう専門委員会の会議は科学技術庁や通産省で交互にやっていますし、いろんな資料を持っておられるはずだし、また政府筋のこういう資料の公開、それから公聴会の開催、こういうことを私はやられるべきである、こういうふうに思うんですが、その点について大臣の考えを聞いておきたい。
  48. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 可能な限り最大の公開をすることが最も理解を求められることである、それはもう原則的に賛成です。公聴会をやること大賛成でございます。賛成でございますが、基本的にそうであっても、現実問題との調整というものに対するといろんな議論が起こってくるわけであります。これは企業秘密だとかいろんな問題がございます。時期がくれば当然公開さるべきものであっても、いま相手方から提供を受けておる技術提携という制約のもとでこれが公開できないというものもありますし、日本政府の行政手続の中で制約をしておる部分もございますから、そういうものは時代の要請によってだんだん拡大される方向であって、これは最終的なものは国民の知る権利、これは当然国民の権利が一番大きなことであって、公開さるべきものが原則であることはもう言うまでもない。公聴会というのもよくわかるんですが、公聴会というのもそれはもう実にそこがその、実際において納得をする場所にならないで、かえって紛争を拡大する場所になるということになると、公聴会の真の意義はこれは減殺されるわけでありますから、そういういろいろな意味でこの問題に対してはどういうふうにすることが一番国民や住民の理解をまとめて最終的な結論をまとめられるのかというのがやっぱり時代と過程によって変わってこなきゃならない。これはもう公聴会などの原則というものは、こういうものの制度は住民の意思、住民の納得ということが前提であるんですから、公聴会を開かなければならぬと、それはもう当然のことだと思うんです。ただ、いまなぜ開かぬかというと、いまは手続的にもやっておりますし、公聴会を開かなくても住民の意思は十分聞くことができると思います。また、これらの問題についてその重要性は十分知っていますが、いろいろケース、ケースによって違うんだし、中には公聴会なんか開くと、せっかくまとまってきたものが、わずかの人のためにぶちこわされちまって永久にできなくなりますから、公聴会はおやめになったほうがいいというところもあるんです。だから、ま、それは原則論と、私はそのところ、そのところの状況というものをやはり区別をしながら収拾していくということだと思います。やっぱり私はどこかの先生が一人文句を言うと、それにみんな引っぱられるんであってということではなくて、やっぱり審査機関というものは拡大をし、世界的なものでなければいかぬ。少なくとも日本における最高の技術水準を持つものでなければいかぬ。そこがやっぱりやったら、生命はゆだねても病院にいくんですから、あの先生なら命も預けてそれは心配ないと、こういうことですから、少なくとも技術というものをすべての住民が理解をするということは、新しい技術はむずかしい。そういう意味で、やっぱり原子力というようなものはこれを審査をするようなもの、通産省でもってだめならそれはもっともっと大学も全部入れて、学者を相当入れて万全を期すると、こういうことでなければならないんですが、あすこで成規な手続を得て結論が出たものに対しては、国民はやっぱりこれを認める。それでもなおわしが反対なら最後まで反対するんだということではなく、新しいやっぱり未知のものには確かにマイナス面を伴うものですが、通産省や科学技術庁、そういうことに対しては十分慎重にしなければならぬし、制度運用に対しても確かに慎重でなければいかぬと思いますが、やっぱり形式的なものよりも、実質的に国民の生命が守れる、安全が守れるということに対して制度を完備していくことに重点を置くべきだろうと、ま、あなたの御質問に正面から答えておらないで恐縮でございますが、以上で御理解のほどをお願いいたします。
  49. 辻一彦

    ○辻一彦君 終わりますから、ちょっと要望だけして……。それじゃ時間が、もうちょっとこの問題はやりたいんですけれども終わります。
  50. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あとからひとつ、どうぞ。
  51. 矢山有作

    ○矢山有作君 それじゃ大臣、私すわったままでお聞きしますから、あなたもすわったままでどうぞお答えください。  特にお願いしておきたいのは、私も簡単明瞭に聞きますから、時間が差し迫りましたので、簡単明瞭にお答えをいただきたい。  まず第一は、私は中小企業に対する対策としては金融の面、税制の面、あるいは最近労働者の確保難でありますから、これを確保するための労働者に対する厚生施策を支援してやる面とか、あるいは共同化、協業化とか、こういった組織化の問題等でできるだけ援助するというのが、中小企業対策の一つの行き方であろうと思いますが、そういうふうに理解してようござんすか。
  52. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中小企業は、日本の最大の組織でもございますし、日本にしかない特殊なものでありますので、協業化とか、いま御指摘になったような方向は、これは政策的な大きなものであります。これは税制とか、金融とかという在来のものだけではなく、新しい中小企業に合うようなレベルアップの方法というものの大きなものだと思います。
  53. 矢山有作

    ○矢山有作君 それでは大臣、どうぞおすわりになったままでけっこうですから。  それでは、次にお伺いしたいのは、通産省は最近流通近代化ということで非常に本格的に、熱心に取り組んでおられるようでありますが、これに対して具体的にどういうことをお考えになっておるか、ごく簡明にお答えください。
  54. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) お答えいたします。物的流通部門の全体系を通じて合理化することが必要だという観点から、卸総合センター、あるいは配送センター等の物的流通施設を整備していくということが第一点。  それからもう一つは、輸送のやり方といたしまして、パレットを一貫して使う、ユニットロードシステムと称しておりますが、パレットを一貫的に使う組織を整備してまいりたいということに重点を置いて進めておりますが、そのほか御承知のような、いまの御指摘のありました中小企業の商業についての近代化のための諸施策を進めておる次第でございます。
  55. 矢山有作

    ○矢山有作君 あのパレットシステム化の問題なんですがね、これは何ですね、流通システム化推進会議等の答申をもとにして、これにいま本格的に手をつけられていると思うんですがね、このパレットシステム化のために具体的に通産省がやろうとしておられることは何ですか。
  56. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) まず一つはパレットの規格化でございまして、これは四十五年にJIS規格を定めました。この規格パレットによりまして、パレットの一貫使用が実現されるわけですが、最近の実態では、まだその使用率がわりあい低いわけでございますので、この使用率を引き上げるために最近大阪のほうで規格パレットの使用のための会社がつくられるということに相なりますので、これを大いに推進してまいりたいということで、財投の資金等もこれに引き当てて、規格パレットの生産、流通の使用の拡大のために推進してまいりたいというふうに考えております。
  57. 矢山有作

    ○矢山有作君 そのパレットプールの設立の問題ですが、具体的にはいまどうなっておるんですか。
  58. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 日本パレットプール株式会社というのがいま申し上げた会社でございまして、これの育成をはかりたいということでございますが、このほかに、パレットレンタル株式会社という会社がございまして、これはメーカーの会社でございますが、こちらのほうは規格パレットと同時に、規格外パレットの生産も行なっておりまして、これの使用の何も行ないたいということでございますので、規格パレットにつきましては、規格パレットレンタル会社のほうも、規格パレット会社のほうに出資をしてもらいまして、規格パレットの使用の拡大について協力してもらうということで話し合いがつきまして、この会社に出資して拡大をはかっていこうという態勢に進んでおります。
  59. 矢山有作

    ○矢山有作君 パレットプール社のほうは私が承知しておるところではまだできておりませんね。五月に創立総会をやられる予定と、こういうふうに聞いておりますが、そして発起人なり引き受け人の状況を見ますと、大体これは大手の通運会社、銀行、保険会社、リース会社、その他と、こういうことになっておるようです。で、いまおっしゃった日本パレットレンタルもその他の中の出資者の中に入っておるようですが、これとそれからもう一つ、いまおっしゃったパレットレンタル会社があるということですが、通産省の具体的な、何というんですか、助成というんですか、援助というんですか、それはどういうふうにやろうというんですか。この二社に対して同じように財政的な、財政というか、資金的な援助をやろうというのか、そして、将来どういう方向に持っていこうというのか、そういう点をお話し願えませんか。
  60. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 御指摘のように、パレットメーカーがつくっておりますパレットレンタルが日本パレットプール株式会社の出資を行なうということにつきましては合意を得ております。われわれといたしましては、規格パレットの使用を普及してまいりたいということでございますので、規格パレットの使用につきまして推進してまいるという考え方で金融的な助成をやってまいりたいというふうに考えております。
  61. 矢山有作

    ○矢山有作君 ちょっと話がかみ合わなくなりましたな。これは私のほうがはっきりさしておかなきゃいかぬことがあると思うんですが、パレットレンタルがパレットプール社に出資をしておるということは事実のようですが、しかし、いまおっしゃるように、合併の話が進んでおるとは私は聞いておりませんね。というのは、合併の話は従来いろいろないきさつがあって非常に困難な状態になっておるというふうに聞いております。この点をひとつ、どうなのか確かめたいのと、それからもう一つ、資金援助というのは端的に言ってパレットプール社、パレットレンタル社両方に資金援助をやって、そして将来何らかの方向を打ち出すという考え方があるのかどうか、そこのところをひとつ的確に答えてください。
  62. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) パレットレンタルとの合併というのは、まだまだ事情があって実現できない、ただ出資をしてもらってパレットプールの会社の業務に対して協力してもらうというのが現状でございます。で、われわれのほうとしては、パレットプールの会社の規格パレットの普及につきまして推進してまいりたいということでおるわけでございますので、一応十億の資金をユニット・ロード・システムの強化ということに使うことにいたしておりますが、当面はパレットプール会社の資金需要に充ててまいるということを考えておるわけであります。
  63. 矢山有作

    ○矢山有作君 大臣、御承知かどうかわからぬですが、これからの話をちょっと注意して聞いておいていただきたいんですよ。  パレットレンタル社のほうもJIS規格を採用して、そして通産省の指導の方針に従ってパレットの普及と一貫的なシステム化をはかるということで、これは昨年の十二月の一日に発足をして事業を開始しておりますね。それからプール社のほうは先ほど言いましたように、まだ設立をされておらない。そして、目的は同じような事業目的のように私はずっと調べてみて承知しております。そこで先ほど言いましたように、プール社のほうは大手の通運なり銀行なり保険会社、リース会社等が寄ってつくる会社である。つくる予定の会社である。レンタル社のほうは日本パレット協会所属の中小企業組合員が、中小企業の業者の会員が寄って、そして現在の不況克服と自分たちの経営安定向上を考え、さらに国の物的流通システム化の方針にも沿うということで設立をし、鋭意国の施策の方向に沿いながら努力をしようと、こうやっておるわけです。そこで私は疑問に思うのは現実に設立をされて、通産省が考えておる物流システム化の方向に沿って、JISパレットを採用してやろうとしておるものがあるのに、なぜそれに対しての助成措置というものを一向に考えないで、大手の銀行や保険会社やあるいは通運会社だけを寄せたプール社の積極的な助成を、しかも会社ができてないうちから考えるのですか、私はこれがどうも納得がいかないのです。こういうやり方をしますと、国が財政資金を出して、そして既存の会社をぶっつぶして自分たちが一つの会社をつくり上げると、こういう形に端的に言えばなってしまうわけです。私はそのやり方というのはちょっと問題があると思うのですよ。しかも現実にパレットシステム化の方向に従って事業を開始しておるのは、パレットレンタル社一社でしょう。しかもそれは中小企業者の共同組織としてやられているわけだ。そこらに私は通産省のいわゆる中小企業に対する施策方針との矛盾をもまた感ずるわけです。その点、どうなんですか。
  64. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) ユニット・ロード・システムを普遍化しまして物的流通の合理化効果を上げていくということのためには規格パレットの全国的に流通するという状態を実現することが必要でございます。規格パレットの流通を一体的にやるという構想で、かねてパレットプール会社のほうで設立のためのいろいろの企画がされておったわけでございまして、それに対して当然通運業界その他も協力するということによって全国一体的に使える、こういうことに相なろうと思います。そういう意味ではパレットプール会社のほうは規格パレットに帰ってわれわれとしては助成を一本としてやっていく。現在の状況からいきますと十数%の使用率である、規格パレットの使用率という状況でございます。これを今後上げていくということについて、やはり一本の体制で進める必要があるというふうに考えるわけでございます。もちろんこのパレットレンタルのほうもメーカーの会社でございますから、規格外パレットについてやはり必要なものについて行なわれるということについてはそれぞれの事情で進める必要があろうと思います。またパレットの生産につきましては、このパレットメーカーとの関連というものを生かしていく必要があるというふうに考えるわけでございます。     —————————————
  65. 内藤誉三郎

    主査内藤誉三郎君) この際分科担当委員異動について御報告いたします。  ただいま辻一彦君が委員辞任され、その補欠として松井誠君が選任されました。     —————————————
  66. 矢山有作

    ○矢山有作君 私はパレットシステム化の全国一貫体系をつくることに反対しているのじゃない。つくることを批判しておるわけじゃないのです。あなた方が物流合理化のためにやろうとしておられる努力は私たちも評価いたします。ところが、そういう目的のためにたとえパレットメーカーといえども一つのもう企業ができ上っているわけでしょう。しかも中小企業者が寄ってもらって金を出し合って実際に営業を開始しているわけだ。そうすれば将来の全国一貫のシステム化をねらうにしても、その存在を無視してはやれないはずでしょうと言っているわけですよ。もしその存在を無視して、おまえら中小企業が寄り集まってやっているのだから、もう全国的に広がっていく力も何も持たないのだ、だから君たちどうにもならない、そこでおれたち通産省のほうで通運業者や銀行や保険会社やリース業者に寄ってもらってひとつつくり上げて、それに十億の財投を出してこれでいくのだ、こういうふうなことをやられては、せっかく事業開始をした、しかも通産省方針に従ってやろうと言っているわけです、JIS十一型パレットの普及、それでやります、こう言っているその企業があるのに、それをいわば国家権力によってつぶすことになりはしませんかということを言っている。そういうふうな無法は許されませんぞと言っている。したがって、現実を見てあなた方はこれをどう処置したら一番いいとお考えになっているのか、このことを私は聞いておるわけです。
  67. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) その点おっしゃるとおりでございますので、パレットメーカーのほうの御意向も参酌をしながら、それが今後も活躍できるような余地といいますか、活動分野を考えながら、しかしパレットの一貫使用を実現するために両方とも生きられるような形で協力をできるような方向に持っていきたいということで進めておるわけでございます。決して権力でもってこのパレットレンタルをつぶすとか、そういうことを考えておるわけじゃございません。
  68. 矢山有作

    ○矢山有作君 私がわざわざこういう問題を持ち出したのは、私はこのパレットレンタル社に何らの関係もありませんよ。しかし、通産省がやっておられることを見て、調べてみたんです。あまりにもやり方がおかしいから聞いているわけですよ。こういうやり方というのはないでしょう。しかもさらに言いますと、この国内のパレット業社、これは三十九年四月の八日に日本パレット協会を設立しておりますね。それ以来、平原という会長がおるそうですが、その会長のもとで、わが国でのパレットプール制の実現をめざして共同研究を続けてきた。そして四十六年に入って、国においても物的流通のシステム化に取り組んで、パレットシステム化のために積極的に資金的な援助の手も差し伸べるんだということを聞いて、これはわれわれも研究をしてきたが、いよいよ国が積極的にこういうわれわれの研究したことを推進する、しかも資金援助までやってくれるというなら、これは心強いと、ひとつやりましょうということで踏み切ったわけですよ。そしていろいろな準備をやってきて四十六年のたしか十月の六日だったと思いますが、この日本パレット協会の臨時総会において企業局の商務第一課の富田事務官ですか、を招いて講演会をパレット協会側がやっていますね。そのときに富田事務官はどういうことを言っているか、ひとつ御紹介しておきましょう。ちょっと長くなりますが、読んでみます、肝心なところだけにしますが。富田事務官が言っているのは「日本パレット協会の方で日本パレットレンタル株式会社という会社を作る動きがあるやに聞いております。もう一方、大阪方面で物流懇話会のメンバーで、日本パレットプール株式会社という会社をつくるという動き、この二つの動きが主なものであると考えられますが、このようなことであるならば、私ども従来よりやっておりました物流の合理化と申します通商産業政策の大問題の解決のために有力な手助けとなっていただけるのではないかと考えるわけです。  もちろん民間会社ですから営利会社であることには間違いないと思いますが、その中にパレットの規格化とか、わが国における物流の合理化という、どちらかといえば公共的な、公益的な色彩がありますれば、いろいろな面で支援してゆきたいと考えております。  具体的に申しますと、通産省としては昭和四十七年度の施策として、仮りにそういう会社ができた場合に、なんらかの形で資金繰り等について援助できるような態勢をつくりたいということで、昭和四十七年度の財政投融資で大蔵省理財局の資金運用部資金を活用する金融政策が開かれておりますが、その中で、もしパレットのリース会社ができた場合に、なんらかの形で資金繰りについて、ある程度の優遇措置が講ぜられないかということで、もっか大蔵省理財局に要求しております。」こういって援助資金の捻出方法を詳しく説明をして、その上で、「できると想定されるパレットプール会社、あるいはパレットレンタル会社に一般の市中金利よりも低利で貸し出し、微力ではありますが、そういう会社を援助してゆく考えであり、それによって物流の合理化に少しでも役立てていただきたい、という構想をもっております。」こういって講演をしたわけです。そこでパレット協会の諸君は、これはいよいよ自分たちで政府援助を受けてこれはやれるだろうということで、十二月の一日に会社の創立に踏み切った。そして一生懸命やってきた、その踏み切って後も通産省とは密接な連絡をとりながらやっておるはずです。ところが、明けて一月の半ばごろ過ぎになって、だんだん様子が変わってきた。それで通産省に行ってもはなもひっかけてくれない、財投の話をしても取り合ってくれない。ましていわんや富田事務官がこういう講演を協会に来ておやりになったではないかという話をすると、おれはそんなことを言った覚えはないと、全体を読んでみてくれと、そんなことになっていないと、最初からプール社に金を出すというつもりでわれわれは進めてきたのだ、こういうことを事務官がはっきりと公言をしておる。こういうやり方をやっておって、いまの局長の言われるように何とか二つともうまくいってもらいたいから、合併の話を進めてうまくやっておるのだということは私どもは信用できないのです。そういうでたらめな通産行政のあり方というものがありますか。私は局長が直接の責任者だと思うからもう一ぺん聞きたいのです。
  69. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 御指摘のように、片一方の中小企業のメーカーの団体をつぶすというような意図は全然ございませんので、メーカーのほうのパレット協会のほうともよく話を詰めまして、そして両社が今後も存続するのみならず、パレットの使用が飛躍的に増大することによりまして、両社が今後事業を降盛にやっていけるように話し合いを進めさすつもりでおりまして、現在もその仲立ちをいたしておるわけでございます。
  70. 矢山有作

    ○矢山有作君 しかし、その仲立ちをいたしておるのが、私の聞いておるところでは、仲立ちになっておらぬのじゃありませんか。先ほど言ったように、もう金を出すのはプール社しか出さないのだ、レンタル社なんというのは、初めから予定してないのだということをはっきり言っておられるようだし、そして仲介の話にしても、合併のための仲介ですね、話にしても、積極的に取り組んではおられないし、プール社のほうは一方的に十億というばく大な財投資金が得られるということでもうレンタル社なんか、はなもひっかけないという態度でしょう。それで話の仲介ができるのですか。そしてしかも、そういうプール社に対して、十億からの財投をやり、しかも集まっておるのは大手の通運、銀行、保険、リース会社でそれに対抗して、レンタル会社がやれるようにしますといって、あなたは口ではおっしゃるが、やれますか。中小企業者二十五社の集まりですよ。こんなレンタル会社はあなた方が考えておるプール会社の前にいけば一吹きで吹き飛んでしまうのじゃないですか。口先だけでやりますといっても、それをやっておらないから、私は問題にしているのですよ。
  71. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 一元化につきまして、一元化の前提でレンタル会社との話も仲介的な話をしておりまして、レンタル会社のほうからも条件が現在出ておるようでもございますし、その条件を中心にしてさらに話を進めるようにもいたしたい。また、財投の資金が出ました際に、パレットの発注ということが起こってまいりますが、パレットの発注につきましてもパレット協会を形成しておるパレットメーカーとの間のとりなしということも必要であろうというふうに考えておりまして、その点についても仲を持つという考え方でおるわけでございます。
  72. 矢山有作

    ○矢山有作君 さらに言うなら、こういう経過でしょう。昨年の四十六年十一月ごろに、日本パレットレンタルのほうの有住ですか……有住社長のところへパレットプール社の設立世話人の代表の一人である近田末男という人、これは日本鋼管倉庫の相談役のようですが、近田末男さんがお見えになって、何とか出資をまとめて今年中に会社をつくらぬというともうどうにも発足ができなくなる。したがって、何とか出資をしてくれないか、あなたのところは早く出資が集まって、もう創立の目安が立っておるようですが、私のところは困りました、何とか出資してくださいといって御相談に見えた。そしてパレットレンタル社のほうではいろいろ検討した結果、将来の一元的ないわゆるシステム化を目ざしていく、そのためには出資をしてそして将来業務提携が積極的にやれるような余地を残しておこうということで出資に踏み切ったようです。ところがその後の経過が先ほど来言いましたように、合併の話もてんで進まない、先ほどあなたはパレットレンタル会社の傘下に集まっておるメーカーに発注ができるようにということも話し合いを進めておるとおっしゃるが、これも全然歯牙にもかけられないという状況になっておるではありませんか。そこで私はそれらの状況を踏まえて、こういうような一つ存在をしておる企業、しかも中小企業者が生き延びようとして自分たちの努力で共同化して事業に当たっておる企業が存在するのに、しかもそれは国の物流合理化という方針に従って経営をやっておるのに、そいつをほっぽらかして新しいものをつくって、そしてばく大な財政資金を出してやって、そしてこれを育てていってこっちはつぶれてもかまわぬというやり方は私は承知できぬというのです、私は、こういうやり方は。したがって、私は、どう解決するかということを真剣に考えてもらいたい、ほんとうに。両社の間ですでに営業開始しておるレンタル社の立場を尊重して、ほんとうに仲良く一緒にやりましょうということで話し合いがつくんならまだしも、いまその目安が立っていないでしょう。そうすれば、私は将来の一元化を目ざすにしても、当面はパレット自体ですらあまり普及してないんですから、いままだ一生懸命普及せなけりゃならぬ段階ですね。そうしたら、両社を同じように支援をしてやって、そして同じような形で業績を伸ばしていったものが、将来ある一定の段階で業務提携をするなり合併をして一本化できると、そして一元化の全国をおおうパレットシステムの体系ができ上がるというのが、これが私は常識的なやり方だと思う。それをあんた方のやり方を見ておると、あまりにも権力的ですよ。私は何にも関係がないんだ、実際、しつこく言うけれども、このパレットレンタルなんて。しかし、あまり通産行政としてひどいやり方だと思って、だから私はこれを持ち出したわけです。通産大臣、詳しいことは御存じないだろうが、こういうようなやり方をあなたの局の局長なり課長なりあるいは事務官が平気でやっているわけですよ。これは、あなたはどうお考えになるか、御意見を承っておきたい。
  73. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、まことに申しわけないことでございますが、きょう初めてこの問題を知ったわけでございますが、お話を聞いておりまして、これは私が少し勉強しなければならぬなあということでございますので、いままでの事務当局の経緯その他を私が調査いたします。少し勉強いたしますから、あなたが御発言になっておる趣旨もおおむね理解できますし、そういうことでひとつ勉強しましてからこの見解を申し上げることにいたします。
  74. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) ただいま御指摘を受けましたが、御指摘を受けたような考え方でいままでもやっておったわけでございますが、ただ一点、パレットプールの実効をあげるためには複数でやることがいいかどうかという基本的な問題がございますので、その点につきましてわれわれとしては、できるだけこれは単一の会社で全国一円にパレットが流通するという形に持っていくのがいいと、そのためには、御指摘のような弊害が起こっては相ならぬので、その点についての調整の努力はさらに精力的にいたしたいというふうに思っています。
  75. 矢山有作

    ○矢山有作君 私は大臣ね、それから局長にも聞いていてほしいのですが、私は、全国一本化に、先ほども言ったように、反対しているわけでもなんでもないのですよ。全国一本化をはかられるにしても、いま言ったような苦しい中小企業者が寄って、しかも国の施策、方針を聞いて、それに合うように努力をして、現実に合わせて経営をやっておるんだから、一本化を考えるにしても、この経営体の存在を尊重しなければいけないというのです。これを無視して、おまえのところには財政資金はびた一文出せないのだ、出すのはプール社だけだ、前からそういうふうになっているのだという言い方では、私は言語道断だと思う。このことを知ったから、私はけしからぬと思っているのですよ。これでは中小企業者は立ちいきませんよ、どんなに努力しても。努力する端からつぶれていくことになりますね。これが私は大問題だと思いますので、ぜひともこの問題の解決には真剣に取り組んでいただきたい。したがって、私どもは、何とかあなた方でいい案を出していただけるなら、これは申し分ないけれども、おかしな案を出して、レンタル社はもうどうせ資力も知れておるのだからこれは一ひねりだというようなことでむちゃくちゃやらぬように、私は、いままでの経過なんかを全部ながめてみても、少し行き過ぎですよ。通商局長、直接御存じかどうか知りませんけれども、あなたは担当の課長なり事務官を呼んで、少しその言い分だけでなしに、レンタル社のほうの幹部も呼んで、よく話を聞いてごらんなさい。それは義憤を感ずるようなことをやっています。それだけに私はこれを持ち出したのです。どうぞ御善処をお願いいたします。
  76. 松井誠

    松井誠君 現在貿易構造の転換が必要だということ、そしてそれが可能になるような、それに対応する産業構造の転換も必要だということは、もうほとんど国民的な合意といってもいい状態だと思うのですが、問題は、どういう転換を具体的にどうして行なうかという、そのことになると思うのです。  そこで、私は、その一つの例という意味を含めて、対キューバ貿易にしばってお伺いをしたいと思います。   〔主査退席、副主査着席〕  最初に、昨年度の貿易規模、またその内容、対キューバ貿易ですね、これは通商白書には七〇年までは載っておりますが、七一年は載っておりませんので、もしその数字わかりましたらそれを教えていただきたいと思います。
  77. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 七一年日本からの輸出はFOBで申し上げますと五千三百七十六万七千ドル、輸入はCIFで申し上げまして一億二千七百九十八万六千ドル、この差額七千四百二十一万九千ドルが輸入超過である。これは砂糖でございますから、当然こうなるわけでございます。
  78. 松井誠

    松井誠君 その品目別の問題ですが、こまかいことは要りませんから、この通商白書の分類のような分類に従って、もしわかればこの機械機器というこの部分が幾らになっておるか、数字がわかったら教えてください。
  79. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 五千三百七十六万七千ドルの内訳中機械機器は二千八百五万七千ドルです。
  80. 松井誠

    松井誠君 昨年度もはなはだしい片貿易、この片貿易の原因といいますか、砂糖を大量に輸入をしながら、いわばそれに見合う輸出が伸びない。これは普通なら開発途上国から原料を輸入しておる国のように、そこの国に輸出をしたいけれども輸出をするものがないという、そういういわゆる経済上の問題ではなくて、いわば経済外的な理由がこの著しい片貿易の原因になっておるわけでありますけれども、まあ話を早めるために私のほうから申し上げますと、キューバに対する輸出をする、その輸出の品目あるいは態様によっては、アメリカが報復的にそのメーカーなり商社なりとの貿易を禁止をする、そういう報復的な措置をとるということがいわれておりまして、それがこのはなはだしい片貿易の原因、つまり経済的な理由でなくて、経済外的なそういういわば政治的な理由、それが片貿易の原因だといわれておりますが、それはそのとおりですか。
  81. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあそういう面も端的に言うとあります。ありますが、七〇年対比、七一年で二千万ドルばかり輸出がふえておるわけですが、しかし、機械機器にしますと百七十七・六%でありますから、対前年度比約八〇%ぐらい輸出はふえておるわけであります。そのほかに、一般機械も九百八十五万四千ドル、三〇%ふえております。それから輸送機械が七八六%、百万ドルが一千万ドルになったわけでありますから、これは約八倍にふえております。バス・トラック、これも百万ドルが七百五十六万八千ドルでありますから、これも七三九%でありますから七倍半になっておりまして、まあ御指摘のような状態からだんだんと脱却をして、日本からキューバに対する輸出というものはふえておるということはいま申し上げたとおりでございます。
  82. 松井誠

    松井誠君 だんだん脱却をしておることには間違いないのですが、ほんとうに脱却し得るかどうかという最後のいわば局面にいまきつつあるんだと思うのです。その問題をお尋ねをしたいわけですが、その前にもう一つ輸出保険ですね、これは四十五年度分までの数字はもらっておりますが、四十六年度年間のやつがないのですが、もしありましたら、承認の数字、認承額。
  83. 山口衛一

    説明員山口衛一君) 件数が、四十六年度は二件保険にかかっておりますが、実は個別会社の保険額につきましては公表はいままでしておりませんですが、二件で、六百六十四万二千ドルが保険に付保されております。ちなみに、輸出承認は三件いたしております。承認額は全部で九百十九万六千ドルになっております。三件でございます。そのうち一件は、非常に少額なものでございますので、おそらく付保の予定がなかったのかと思います。
  84. 松井誠

    松井誠君 輸出保険のほうもここ二、三年伸びてはきておりますけれども、輸銀の使用という問題は一件もございませんね。輸銀資金の使用の承認というのはない。これはどういう理由ですか。
  85. 山下英明

    政府委員山下英明君) 保険はつけておりますが、輸銀資金をつけたケースはございません。最近、先ほども指摘のように、機械プラント類の取引が活発になってまいっておりますので、政府としても、従来どおり、ケース・バイ・ケースの審査ではございますけれども、必要に応じて輸銀資金の使用等も考えたいと、事務当局間で話をしておる段階でございます。しかし、御承知のように、輸銀資金の使用につきましては、通産省外務省大蔵省、関係省の間で話をまとめてから決定をいたしますのと、特に、これら共産圏諸国について最初に輸銀資金をつけます場合には、最初の例となりますだけに、審議を重ねて決定をしていくと、こういうしきたりでございます。
  86. 松井誠

    松井誠君 そこのところが問題なんですがね。いままで輸銀の使用というのはないというのは、申請があったけれども却下をしたというのではなしに、初めから申請がなかったという、形式的にはそういうことになっていますね。なぜ一体、これだけ延べ払い——延べ払いのことは聞きませんでしたけれども、民間の資金を使っての延べ払いの承認もやっておるわけでしょう、キューバ貿易については。そこまでやっておりながら、輸銀の資金を使うということをやらないというのは、初めから申請がなかったという形式の裏には、申請をしてもだめなんだという、そういうことがもう明らかにあったんじゃないですか。
  87. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 実際、そうです。それはまあ、理屈を言えばいろいろ言うことはありますが、北朝鮮もキューバも、出してきても出さぬぞという雰囲気があるもんだから、実際出してこないと、こういうことです。
  88. 松井誠

    松井誠君 延べ払いの承認を相当やっておりながら、なぜ輸銀の使用についてはだめだという空気が支配的だったんですか、少なくともいままでは。
  89. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、政府部内のことでございまして、あなたもよく承知しておって御質問していられるので答えにくいんですが、山下局長がいま述べましたとおり、通産省は前向きでございますと。これは商売でございますから、もう物を買っておるのであって、砂糖を買っておれば砂糖の代金ぐらい物を売りたい、こういう考えは当然持っておるわけですが、これは外務省、それから大蔵省も入っておりまして、三省協議ということで輸銀ケースがきまるということでありままして、諸般の事情、バイ・ケースということでございますので、まあひとつそういうことで御理解いただきたいと思います。
  90. 松井誠

    松井誠君 ちゃんと議事録に載りますので、まあその辺でというわけにはなかなかいかないんですよ。  そこで、むしろ具体的にお伺いをしたいんですが、もし輸銀の使用ということに今度踏み切るとすると、いま局長のお話ですが、最初のことだから非常に慎重の配慮が必要だというお話でありましたが、いままで、とにもかくにもアメリカの報復という措置がなかったのは、輸銀の使用ということがなかったからですか。あるいは、輸出をする品目にアメリカのげきりんに触れるような品目がなかったからなんですか。あるいは、両方なんですか。どういうことですか。
  91. 山下英明

    政府委員山下英明君) 米側の措置は、前回の御質問でも先生よく御承知の上でなさっておられると思いますが、二通りありまして、一つは、フランスのニッケルのケースで起きましたように、キューバから入れましたニッケルを原料にしてフランスがつくったニッケル製品が、アメリカの港に着いたときに、それを輸入制限する。これのほうは比較的はっきりした措置でございます。  それから、私どもが心配しておりますのは、むしろ、そうでなくて、かりに、いま御提出の問題のように、日本が輸銀の資金を日本からキューバに向ける輸出につける、その輸銀資金をもらった商社が、かりにそれが輸送機械であると仮定しますと、その商社の輸送機械のアメリカにおける販売において、米側が何らか法的な措置をとるかどうか。これは、本来は商社自身の営業方針として検討することでありまして、政府側としてとやかく言うべきことではありませんが、従来までのアメリカの慣行、しきたりを見ておりますと、対敵取引法は、告示によってきわめて裁量的に処置しておりまして、キューバ取引のために云々という告示を五条のB項によって出しておる例もございますので、その点は私どもとして慎重に考えておる一わけでございます。  されば、それでは輸銀資金を与えるということが、商社自身の営業方針はともかくとして、日本政府としてどうであるかという問題になりますと、これは、国際政治情勢全般からの判断で政府関係機関の積極的な行為が初めてあらわれますので、そういう判断を加味した上で結論を下したいと、この三点でございます。
  92. 松井誠

    松井誠君 キューバから輸入をしたニッケルを使った云々というのは、これはまあキューバ資産管理規則によるわけですけれども、しかし、日本はニッケルを輸入していないんですから、そういう問題は起きっこないわけですね。で問題は、あんたの言われるその対敵取引法による規制ということなんですが、それでは、外国の場合、イギリスにしてもフランス、イタリアにしても、あるいはカナダにしても、キューバとの貿易をやっており、いわゆる政府資金を何らかの形で、日本の輸銀と同じような性格かどうか知りませんけれども政府資金を何らかの形で使って延べ払いをやっている。そういうことを聞いておるわけです。それであるにもかかわらず、アメリカがそのことのために報復的な措置をとったということは聞いたことがない。そうじゃないですか。
  93. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 輸銀直接ということじゃなく、シンジケートをつくらしておって、そのシンジケートをうしろからまた国立銀行が関連をつけておると。日本でもかつてそういうことを考えたことがあるんです。民間で、ちょうど中国問題のときにもそういう問題があったわけでありますが、このキューバの問題、あなたもよく御存じであると思いますが、いま、一番の問題は、キューバと北朝鮮の二つであるわけであります、これはもうはっきり申し上げておきます。これはもう、いつまでも上着の上から、かくような話ではどうも御納得いきませんから申し上げると、結局いま一番の問題は、北朝鮮とキューバの問題が一番明確になっておるわけです。これは、アメリカから見ると、中国大陸もそうだったんですが、中国大陸については、ニクソン訪中によってすっかり軟化しており、今回は、非常に高度の電子計算機までみな上海宇宙中継局と一緒にして置いてくるというような状況でございましたので、アメリカとの問題は片づいたんです。だからまあいま残っているのは、キューバの問題と北朝鮮の問題だけは全くアメリカは交流ゼロであるというところに問題があるわけでございまして、日本はしかし、そういう国から一億三千万ドル近い砂糖を買っておりますし、少なくとも年間二千万ドルも輸出が大きくなっている。まあ向こうが一番日本に求めておりますものは輸送機械だったわけですが、輸送機械に対しては、先ほども申し上げましたように、五倍、八倍というような輸出量というものはふえておるということで、あと日本とキューバとの間には——まあキューバは長い外貨不足の国ではございましたが、しかし日本が砂糖の代金払うのでありますから、日本にとってはこれほど外貨がしっかりしておる国はないわけでございます。ですから、まあ一つずつやはり、国際情勢の推移もとは公式には申しますが、まあアメリカとも話をしなきゃいかぬと思いますし、ごたごたしないようにして、キューバとの間にはやっぱり貿易が——現に向こうからトラックとか、その他いろんなものの要請があるのでありますから、そういうものが、軍需品でないという意味からいったら、トラックは戦略物資でもないし、軍需品でもないし、そういう問題全く平和な状態における公益品でありますから、まあだんだん拡大していくだろうと、こう思っております。  それからこの間も、私もまだ事務的には聞いておりませんが、相当大型な商談をもうまとめてしまったという話も仄聞しております。これが出てくれば、さてこの処理は現実的に考えなければならぬ問題でありますから、さあどう処理するかと、こういま考えておるわけでございまして、いままでの隘路はだんだんと私は急速に緩和していくのではないかという見通しでございます。
  94. 松井誠

    松井誠君 私の聞きたいのは、一体ほんとうに隘路があるのかどうかですね。ほんとうにアメリカと紛争を起こす可能性があるのかどうかということが実は少し確かめたいわけです。そういう意味で、よその国では輸銀あるいは輸銀類似のとにかく政府資金というものを使って輸出をキューバに対してやっているじゃないか。したがって、日本のようなそういうはなはだしい片貿易ということはないじゃないか。それなのに日本だけが、なぜ、もしやればアメリカから文句がくるということでこういう片貿易になっておるのか、そのことを聞きたいんです。
  95. 山下英明

    政府委員山下英明君) 輸銀類似の直接的な資金援助というのは、まだ私ども調査では入っておりませんが、御指摘の点は十分調べて参考にしたいと思います。
  96. 松井誠

    松井誠君 私も実はいろいろ調べてみた、正確にはまだわかりませんけれども。とにかく輸銀類似のものを使って政府資金を使った輸出をやっておるということはもう間違いないんですね。で、私がなぜこんなことを言うかというと、輸出をする品目が戦略物資あるいは戦略的な物質だからということではなしに、輸銀の使用がいけないんだというように、もし通産省が考えておるとすると、よその国がそれに類似なものをやっておるのに、なぜ一体日本だけが神経質にならなきゃならぬのかという問題が出てくるわけです。私はどうも自分でつくった——まあお役人というのは、一応政治的な中立を、私は限界はありますけれども、守るだろうと思うのですよ。そういう意味で、政治的な配慮からの発言じゃないと思う。したがって、善意でもし輸銀の使用を認めればアメリカから報復をされるだろう、したがって、それは業者のためにもならないし、日本のためにもならぬということで、いわば業者に自主的に控えさせておるというのが実情のようですけども、そのこと自体が、何か自分の書いた亡霊に自分でおびえているんじゃないだろうか。あるいは一方から言えば、何か過保護ではないのか。つまり業者が自分のリスクでやろうというそのことを、そうしないほうがあなたのためにいいんだよといって、たいへん親切に言っておったこと自体が、ここまで事態を持ってきたんじゃないだろうか、ほんとうに一体、踏み切ってみてアメリカが文句を言うんだろうか、現在まで言わなかったのは一体どういうわけなんだろうか、その辺に根本的な実は疑問を持つからです。私は、そういう事務当局の非常に行き過ぎた配慮というものを、大臣は、ミスリードしているんじゃないかという、率直に言って気がしてしようがないのですがね。大したことないんじゃないですか、やってみたら。
  97. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、私もあなたと同じ考えを持っておりましてね。いかにアメリカでも、キューバは鼻先であっても、そんなたいしたことはないだろうと、もうあの当時と時代も変わっておると、こういうことで、去年からキューバ貿易だけではなく、いろいろな国別の内容を私も検討しております。それで、こういう片貿易などおかしいじゃないが。しかもキューバの代表が私に面会に参りまして、何とかトラックを輸出してください、帰りのから船にトラックを積んでくださいという要請があるのでありますから、そういう意味で相当検討しておるんです。検討しておりますが、先ほども申し上げましたように、とにかく世界にたくさん相手国はありますが、いま明確に制限をしておるようなものは、残っているのは二つでありまして、その二つのうち一つはキューバであり、一つは北鮮でございますとさえ述べておりますように、この問題、残っておるわけでございます。まあ台湾と貿易していると、中国大陸は全部シャットアウトするという明確な例がお隣にございます。日本とキューバとの場合、そんなことにはならないだろうというんで、私もあなたと同じようなことで私も話をしておるんですが、なかなかやっぱり時間もかかるし、歴史もあるということで、しかし、まあ半年間では少なくともこれだけ大きくなったということは事実でございます。ただ、あとは輸銀をどうするかという問題だけが残っておるわけです、いま。輸銀をどうするか。これはまあアメリカから考えますと、アメリカもあれだけさすが大きい国でございますが、やっぱりキューバに関してだけは非常ベルを押したと、こういう、やっぱり近くだとそういう特殊な状態があるんだなあということを考えておるわけです。遠いことならたいしたことはないんでしょうが、ほんとうに自分の鼻の先であるという特殊なそういう地位が、キューバが持つ戦略的地位といいますか、いずれにしてもなかなか日本が考えるほどの簡単なものではないようでございます。しかし制度もたくさん、がんじがらめの制度がありますから、こういうものはだんだん、だんだんと解ける趨勢にある状態にある。そういう意味で、中国やそういうものに対しても非常に緩和をして、まあほとんどココムの制限も大幅に撤廃をするというような状態になっておるときに、キューバだけ一体どうして例外なのかという問題もございます。しかも戦略物資ではないというところにそのウエートがあるわけでございますので、日本は特に砂糖を買って、から船で帰しているという特殊な状態があるわけでありますから、そういうような状態からも、まあ一つずつ解決をしつつある。あるから、二千万ドルも輸出がふえているんだと、こういうことで、あとはひとつこちらのほうも、まあ率直にいってアメリカとやっぱり意思の疎通をはかって、キューバはひとつこういう民間のリスクで、そのとおりなんです。民間がやるというときに、そういうものを縛ろうとしても、調整をしようとしても、限界がある。それが、そんなことでもって日米間がまずくなることは望ましくないのでという話は、やっぱりこれ当然すべき問題だし、こういう問題こそ閣僚ベースの問題だと思っておるのです。そういう立場で、まあいろいろ解決ができると思いますので、まあ現状はひとつ以上のとおりでございますから、御承知願います。
  98. 松井誠

    松井誠君 どうも大臣結論が早くて困るんですがね。
  99. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どうしようもないですね、いまは、ほんとに。
  100. 松井誠

    松井誠君 持ち時間余るくらいになって困ります。
  101. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いやいや、けっこうです。
  102. 松井誠

    松井誠君 それで、いまも言われましたけれども、最初はやっぱり通産省のお役人、係官というのは、私らのほうから規制しておるのじゃありませんよ、そうじゃなくて、業者が三百台か五百台トラックをキューバに売ったために、何万台というアメリカの市場を失っちゃばからしい、そろばんが合わない、だから、われわれはそういう無理なことはしないのですよ、輸銀の申請もだからしないんですよということで、業者が自主規制をやっているかのごとき最初は説明だった。ところが、キューバ側に聞いてみると、とんでもない、そんなことはありません、業者はもうそういうことをおもんぱかっているのじゃなしに、現に積極的に最近はその車両の買い入れの交渉団が来ていましてね、それはもう日野ともやっているし、日産ともやっているし、あるいは三菱自動車ともやっている。しかも、それはキューバとしては相当の量の買い付けの契約を進めて、もうほとんど、ここ一週間か十日には成約するような段階までいっている。業者の姿勢はむしろ積極的なんです。それの足を引っぱっていたのは通産省であったということが実は私はわかったもんですから、大臣は知っての上でのこの間の御発言だったのか、知ってなかったとすれば、これは明らかにやっぱり事務当局に誤らせられていると実は考えたわけです。その辺の実態を大臣がもし御存じだとすれば、ほんとうにもうとっくの昔に踏み切ってよかったと思うんですよ。それで、今度ある成約ができた業者では輸銀の使用申請を積極的に踏み切ると、そういうことを聞いておりますがね。ですから、やっぱり具体的なそういう情勢変わってきたわけですが、そこで、私はきょう大蔵省外務省に来ていただいておりますが、閣僚ベースの話のもう一つ前に大蔵省外務省に聞きたいんですが、大蔵省に聞きたいのは、いままでは延べ払いの承認というのをやってまいりましたね。この延べ払いの承認というのは、承認するかしないかは、基準は一体どこに置くのか。それから輸銀の使用という問題になったときに、やはり輸銀の使用を認めるか認めないかという問題は基準は一体どこに置くのか。この点はどうですか。
  103. 大場智満

    説明員(大場智満君) まず、延べ払い輸出基準の問題でございますが、通産省のほうから延べ払い輸出の承認につきましては協議案件として大蔵省にまいってくるわけでございます。この際に、一つはプロジェクト自体、その輸出案件自体のフィージビリティーと申しますか、遂行性を見るわけであります。それからもう一点は、相手国自体を検討いたすわけであります。つまり、国際収支が非常に悪くなっていないかどうか。その場合には、たとえばデット・サービス・レシオ——債務負担率でございます。債務をどの程度負っているかという問題、その国がどの程度の債務を負っているか、こういった点を参考にいたしまして検討いたすわけでございます。それから輸銀につきましては、これは輸銀の金融判断にまかせているわけでございます。輸銀としては、いま私が述べました二点を中心にしまして、やはりそのプロジェクト自体の償還可能性、それからその国のクレジット・ワーシネスと申しますか、その国の国際収支の現状がどうか、また、将来見通しがどうかという点を十分判断して、金融判断を行なっているわけでございます。
  104. 松井誠

    松井誠君 つまり経済的な観点から、もっぱらものを考えるということですね。もう当然なことだと思うんです。その点でキューバの場合、多少問題になるのは、いま言ったキューバという国のその国際収支という問題が必ずしもはっきりしないということがある。それがいままでは表面上の理由として言われておったわけです。しかし、大臣から何べんも話がありまするように、大量の砂糖を買い付けておるその代金を事実上引き当てにすることはできるじゃないかと、したがって、そういう意味では回収可能だという判断も当然成り立つと思うんですね。そういうことでもいいわけですね。
  105. 大場智満

    説明員(大場智満君) 国際収支見ます場合には、やはり相手方が返済資金、たとえば延べ払い輸出ですと、長いものもございますので、相手国の通貨で返済を受けるわけではございませんで、御存じのようにドルにかえまして相手国が返済してくるわけでございますが、相手国の国際収支が悪い場合に、ドルという形にならないということを心配するわけでございます。またキューバにつきましては、御指摘のように非常に国際収支統計とか、外貨準備統計というのが古いのでございまして、私どもも苦慮しているわけでございますけれども、現状におきましては債務の累積はかなりあるのではないか、このように考えております。日本との関係では確かに出超になっております、キューバ側から見まして。わが国から見ましては入超でございます。キューバから見まして出超ということになっております。
  106. 松井誠

    松井誠君 ですから、この日本から見て入超だという、そのことは、キューバに対する輸銀の使用を認める場合のいわばそのプラスの面とか、そういうことにはなるんじゃないかと言うんですよ。
  107. 大場智満

    説明員(大場智満君) なると思います。
  108. 松井誠

    松井誠君 外務省おいでになっておると思いますけれども外務省はこれは機構の上では、この延べ払いあるいは輸銀の使用について機構的にこのチェックをするというか、そういうことにはなってはいないんですね。
  109. 伊達邦美

    説明員(伊達邦美君) 機構的にはチェックする仕組みにはなっていないわけでございます。
  110. 松井誠

    松井誠君 そうしますと、また大臣ベースで話をする場合は別として、事務当局間で、たとえばキューバからの輸銀の使用の申請がある。そういうときに外務省に一々伺いを立てるのですか。あるいは外務省のほうからいわばにおいをかぎつけてかけつけていくのですか。どういう仕組みになっているのですか、一体。
  111. 伊達邦美

    説明員(伊達邦美君) それはにおいをかぎつけて出ていくというのではございませんで、それぞれそういう話が出てまいります場合に外務省のルートへ乗ってまいりますことがあるわけでございますから、たとえば出先その他、したがいまして、それぞれの案件を受けまして関係各省とも御連絡をとりながらやっていきます。そういう意味においては、あるいは経済協力局とか、そういう本省の中でそれらを受けとめる役所あるいは機構あるいはわれわれのように地域を担当しておりますところ、それらと随時協議をしながらやっていく仕組みにはなっております。
  112. 松井誠

    松井誠君 機構的に外務省意見を言うという、いわばその制度が確立しておるわけではなしに、まあいろいろな意味で情報が入ってきた場合に、積極的に相談に出て行くと、こういう仕組みですか、仕組みは。どういうことになっておりますか、一体。
  113. 伊達邦美

    説明員(伊達邦美君) いまおっしゃった仕組みと御了解いただいていいと思います。
  114. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) はっきり申し上げておきましょう。これは輸銀資金は政府資金でございますので、制度上は大蔵、通産の両省ということになっておりますが、実際は国際情勢の推移によりと、こういうことをよく答弁するわけです。これは北朝鮮の問題御質問受けますと、国際情勢等も勘案いたしましてと、こういうときに——でございますので、これは制度上の問題として、実際は三省なんです。これはもう自動的に外務省が入るということであります。これはもう大蔵、外務、通産三省でもって話をするということでございますので、これはまあ法律的には二省であるが、制度的にはもう完全に三省で話し合いをすると、こういうことであります。
  115. 松井誠

    松井誠君 まあそういう政治判断になりますと、これ外務省の方にお聞きをしてもしかたがありませんからやめますが、大臣がいま何べんも言われたように、その国際情勢なるものがいま大きく変化をし始めておる。で、中国の場合に頭越しでやられて、それこそ最も先端的な技術までアメリカから輸出をするような形になってしまった。キューバへ私は去年の夏行きましてね、キューバにも第二のキッシンジャーが来たのではないかといううわさがあったわけです。そういう意味では和解ムードというものが一応流れておったわけです。また、ここで日本があらぬ自分のかいた亡霊におびえて遠慮をしている間に、第二か第三のキッシンジャーがあらわれて、キューバとアメリカとが手を握ったなんということになったら目もあてられないと思うのですね。ですから、ひとつその辺は、明敏な大臣のことですから、情勢の先取りをして、現実にもう輸銀の使用の申請が出てくるわけですから、それこそ、ここで発想の転換をして積極的な態度で臨んでもらいたい、このことをひとつ強く要望して、御意見を伺って終わりたいと思います。
  116. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 情勢は非常に変わっております。変わっておりますし、東西の雪解けということは、もうニクソン訪中を待つまでもなく、そういう状態でありますので、特に、また日本アメリカに三〇%もウエートを置いているという集中的な貿易構造というものを多様化していかなきゃならないということになれば、当然東西貿易にもなるわけでありますし、そういう意味で、キューバの問題は、これはもうよその国は別として、外貨事情等が悪いということはよその国からは言えることでありますが、日本は自分で払う金が一億二、三千万ドルもあるわけでございますから、少なくとも、そういう立場はまた別に考えなきゃならぬわけであります。日本に対しては個別な要請はたくさんあるのです。そういう意味で、まあこれからは十分検討してまいります。まあフランスが六八年に六千五百万ドル、英国が二千八百三十万ドル、二千八百万ドル、カナダは保険だと思いますが、そういう意味で、この六千五百万ドルというこのフランスが六九年、七〇年、七一年にどうなっておるかという問題でひとつこれは検討いたします。で、この内容そのものが、何かきっとやっているのです。それでなければこんな大きなもの出るわけありませんから。そういう意味で、どういうふうにこううまく利用しているのか、イングランド銀行が裏でどうしているというようなものは知っておりますが、これはフランスの問題等まだ検討を要します。これは至急取り調べて、日本が、人がやるものなら日本もできるということでもございますし、まあそういう意味で、ひとつ積極的に検討いたしますので、その後こちら側からもこの御質問に対してお答えをいたします。
  117. 松井誠

    松井誠君 それで、ひとつぜひやっていただきたいと思うのです。まあ通産大臣もいつまでも通産大臣じゃないわけですけれども、とにかくここで突破口の第一号をぜひ開いてもらいたいと思うのですね。そうすればあとは楽ですから。  いまの輸銀の話しですけれども、輸銀にかわって第二輸銀で民間資金で延べ払いをやろうとか、あるいは何かそれにかわる変種みたいな発想もあるそうですけれども、それはそれで悪くはないかもしれませんが、しかし、どうしても政府資金を使うような低利というわけにいきません。どうしてもやっぱり割り高になってだめですし、そういうものをつくったために、肝心な政府資金を使う輸銀の使用というものがお留守になったんでは私はマイナスだと思う。ひとつ本来の輸銀使用という正面からの道をひとつ歩き始めていただきたい。  これで終わります。
  118. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 質問通告には特にしてなかったので恐縮なんですが、最初に、昨日の記者会見で通産大臣が、日米間のいわゆる一年間休戦と言われた通商の協議を、一年間休戦をやめて協議をしたい、こういうふうな発言をされたと聞いておりますが、その点の真意はどの辺にあったのですか。
  119. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは正式な記者会見で申し上げたということよりも、まあいろいろ記者会見のあとには私の考えを述べたり、また記者団から御意見を伺ったり、こういうことを一般的にやっているわけです。きのうはまた、そういう意味で、私も懇談でございますよとは申し上げわけですが、まあ懇談といっても話をしたことは事実なんです。それで、その必要性ということをもう少しコンクリートにしてからと思っておりましたけれども、急を要するという感じ——どうもそれは、先ほども御質問もございましたが、アンチダンピングの問題とか、それから矢つぎばやにいろんなものを出してくるという状態。それで、アメリカ自体通貨調整が行なわれてから、実際まあ一年とか一年半とかたたなければ通貨調整のメリットというものは出てこないのだからということを言ってられないような実際の状態、そういうことを考えておりますと、どうもこのまま拱手傍観ということが一体いいのか悪いのかという考え方を当然持たなければならぬわけであります。ですから何かしなければいかぬというような感じも持っておる。であるから——するということでもないんです。ないんですが、これはやっぱり政府部内でどうもこの問題というのはやっぱり意見を交換して結論を引き出すべく努力を必要とする、こういうふうに考えておるわけです。それはまあ一年間——いままでアメリカ側が要求するときには大体みな、電子計算機の自由化をやれとか、農産品、一次産品の自由化をやってくれとか、関税を引き下げてくれとかという要求ばかりでございましたから、牛の五千頭も買うんだから、もうここらでもって一年間要求はやめてくれと、こういうことで大臣ベース交渉は一年間休戦ということにサンクレメンテでいたしました。ところが今度、全然交渉の申し込みもしないでどんどんとダンピング法にひっかける、規制は行なう、関税はかけるということになったら、これはもうたいへんでございます。もうすでに行なわれておるわけでありますので、これはこちらからやっぱりそういう問題を行なうなら事前大臣ベースで話を持ってきてくれと言わなければならない時期になった。このまま黙っておったら一年間のうちに何をやられるか——まあ何をやられるか、そんな不信行為はないと思いますが、それはやっぱり日本の国益を守るゆえんではないと、こういうことで、とにかくひとつ大臣に手紙をやったりしているんです。手紙をやったりしておりますが、これは交渉ではありませんから、その手紙をやっても返事がこないということでは困るのです。やっぱり日米間というものは、もっと意思の疎通をはかって、まだ当分まあ国会でもって答弁をしておりますように景気はよくなります、アメリカヘの輸出は減りますなどということを言ったって、アメリカがとても納得するような状態でないことは事実なんです。それが全部自動的に報復措置のような状態になってきたら、これはもう日米間は破局的になる、そのとき一番困るのは日本だ、こういう考え方で、一年間休戦などということを言っていられないんで、事態の把握につとめなければならない、こういう趣旨の話を、腹の中に考えているものですから率直に申し述べたわけでございます。
  120. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまコンクリートなものにはなっていないというお話でございましたが、大臣としては早い時期をお考えになっておると思いますが、もし会議を開くとすれば、大体時期としてはいつごろを頭に置いておられますか。
  121. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 会議を開くというよりも、こっちは外務、通産、大蔵の間でまず外貨をどうして活用するか、第二外為はどうしてつくるか、それから金利を引き下げて景気を浮揚させなければいかぬ、その景気が浮揚するような状態で低金利政策をやった場合には百七十億ドルの外貨の中で外資が幾ら流れる、流出するであろうというような、いろんなことを相談しなければならないんですよ。それでそういうことを相談し、アメリカが一方的なことを、アメリカの一方的な立場でだけものをやるということになると、やっぱり先ほども述べましたように縮小均衡の方向にいかざるを得ないのです、これは。ですからそういうような状態を阻止するためにも、やはり日本も政策を立てて実行に移しながらアメリカとの間にも、拡大ECの間にも話を進めていく。これも場合によると、私はアメリカ日本だけに要求しないでECにも要求しますから、そうするとEC日本にまた要求する。日本アメリカと拡大ECから、両側から要求をされる。それだけではなく、少しでもある金は全部開発途上国に出しなさいということになると、総攻撃を受ける体制にあるということが実態であるならば、やっぱり三省、経済企画庁を入れても、また農林省も入ってもらったりして、やっぱりもう話は済んでいるんだというようなことではなく、積極的な施策を樹立しなければならぬと思うのです。
  122. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ということは、いま言われたように、いろいろな問題点をこちらで積極的な対策を講じた上で臨む、こう解していいかと思いますが、いま大臣の先ほどの答弁の中で、手紙は出している、こういうお話がございましたが、どういう内容の書簡をどういう時期に出されたか、返事は来たのかどうか、差しつかえない程度で教えていただきたい。
  123. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは専門家会議のために通産省の役人が出張いたしましたので、コナリー長官に対して手紙は書いてあります。しかし、これは一年休戦は廃止するとか、次にどこで会いたいとか、そんなことは全然書いてないんです。それは書いてないんですが、やっぱり日米間には何か意思の疎通というんですか、やっぱり絶えず交流していることが望ましいということで、サンクレメンテ会談以後相当な月日がたちましたが元気かというようなまああいさつ、あいさつのたぐいであります。ほんとうにそういうたぐいであって、これは一切具体的にどうしようというものではありませんが、やっぱりそういう間には絶えず意思の疎通をはかっておく。これはまあ一種のあいさつです。
  124. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 返事は……。
  125. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 返事はまだです。行ったばかりですから。
  126. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまアメリカと折衝するにあたって、いろいろ国内の政策を固めなくちゃいけないと言われまして、第二外為構想を言われましたが、これについては通産、大蔵の間でいろいろ考え方が違うというふうなことが言われておりますが、この点についての調整はどうなっておるのですか。
  127. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ第二外為というものは、いまの外為法の改正を行なわないで、臨時的に外貨を活用する方法をとろうということに対しては基本的に一致をしております。これは大蔵大臣と私との間に一致しておるんです。これはもう去年の七月、内閣改造が行なわれた直後に外務大臣、大蔵大臣と私の間に、国際経済調整に関する立法を行なう必要があると、こういうことで意思の統一できているんです。ところが、その後半年、十カ月とこうなってしまっているわけでございますが、その中の少なくとも外貨の活用という面はどうしても立法を必要とする。これは立法しないではなかなかできないと思うのですが、現段階大蔵省は基本的な問題として円の収縮の伴わない外貨の活用というのはむずかしいという考え方をとっています。それなら外為法の問題であって、第二外為の問題じゃないじゃないかと、こういうことで簡単に話がつくわけでございますが、第二の問題としては、もうことしから、今月から輸出が減っているから、これで長期的に見ればバランスはとれる、そんな状態ではアメリカも、拡大ECも、とても日本に対して了承するような状態でないと、もしそこにぶつかったならば国益が守れるのか、一体どうかという問題にこのポイントがあるわけでございます。大蔵大臣との間には、この国会でというところには基本的に了解をしておるんです。この国会でということであります。大蔵省としては、まあやっぱり外為でということでもって、外貨の活用をするならば、一体円をどういうふうにして収縮せしめるかという具体的な方策もあるでしょう。もう一つは、もっと通産省輸出調整を行なってもらう、まあ規制じゃなく輸出調整を行なってもらうために通産省は何をするのかという通産省に対するきっと要求もあるでしょうから、そういう問題を調整しているのが現在である。予算が通過をしなければとてもこれ二兎も三兎も追っちゃどうにもならぬので、すべては予算が通過したら、予算が成立をしたらそれをめどにしてひとつ結論を出そうということで、いま事務当局でも真剣な討議を進めております。最終段階においては大臣同士でもって話をきめようと、こういう考えでおります。
  128. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ということは、いまの答弁だと、今国会でこの第二外為の構想は実現をすると、こう解していいわけですか。
  129. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 全くそのつもりでおります、そのつもりでおります。
  130. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 で、もう一つの問題は、その輸出——大臣はいま調整ということばをお使いになりましたけれども輸出の規制ということを、第二外為だけではたして——いまのアメリカを納得させるためだというような意向が強いような感じを私は受けたわけですが、おそらくその輸出の規制、要するに日本側としての輸出の規制ということが私はかなり出されてくるんじゃないか。大蔵省からもそういう要望があるというお話でありましたが、この輸出の規制という面については、これはどういうふうにお考えになっていますか。私はあまり何でもかでも規制をするということが、はたしてこれからの——現在自由経済ですし、非常に問題があるんではないかと、むしろその業界の自主規制というか、そのほうをやはり主力にすべきであって、決して法律というようなものはつくるべきではないんじゃないかと私は思うわけなんです。その点はいかがですか。
  131. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 法律でもって規制をする考えは持っておりません。これは輸出入取引法によって調整は可能であります。で、また、これも調整をする場合には通産大臣が一方的に法律を実行するということはありません。そんなことできるわけありません。これは繊維規制であってもすべてが業界との納得のうちでないとこれは実際に運用できない、貿管令だけでもって窓口の整理ができるわけありません。そういう意味で、いろいろなことがあっても、実質的には業界と納得した上でなければ調整はできないわけでありまして、これはもう過去も、現在でも、将来でも現行法でできるという考え方でございます。ただ貿易の規制を簡単にやりますと、いま経済状態を見ますと、ここでもって貿易規制を思い切ってやらなければならないような状態になると、せっかく幾らかその予算の執行を前にして、官需は旺盛であるというようなことで、ことしの上期の景気は浮揚しそうだと言っておるときに、これはとても国内的にはどうにもならないような状態が起こりますので、輸出の規制ということではなく、輸出調整というものには時間もかかるし、やはり合理性というものを貫かなければたいへんなことになる。その意味輸出はそんなにとめられない場合には、六カ月でも、七カ月でもそういう状態は多少続きますよ、その間に輸入を拡大するために備蓄もふやしますし、計画量以上に全部引き取ります、引き取れないやつは現地で対価を払ってストップをいたします、こういうことを言っておるわけですし、援助の質も量もふやします、こう言っていますし、それだけではなく、低金利政策をやることによって日本から流出をするような外貨は、これは、私はもう相当なものが流出すると思っているんです。流出するなら流出してすっきりしたほうがいいと思うんです。それでもなおだめならアメリカの銀行から借りておるもの七、八十億ドルあるんですから、これいますぐ返しますと言ったら、それはけんかになって、今度は必要なときは貸せませんよということになりますから、そうではなく、政府間で、そんなにお困りでしたらどうぞお使いくださいという、いろいろなことをやらなければ輸出規制一本にくるんです。輸出規制一本にくるというような道はどうしても避けなければだめなんです。それは日本産業状態や、今日の状態からいったら、そんなことをして日本はそれこそ混乱してしまう。そういうことは、もうそういう道はとれないので、外貨の活用とか、あらゆる方面から国際的には調整を行なう、そのうちに日本はノーマルな状態、七・二%から七・五%になれば各国からいじめられるようにはなりませんと、こういうことなんです。
  132. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 で、まあこの輸出の規制、調整の問題——規制はすべきじゃないと言われておりますけれども、やはり今後は、もっと大きな、国際的な視野に立って、結局あまり外国の製品と競合するような産業、これはもうただ日本の国だ、アメリカだ何だ言っている時代からもうどんどん変わっていかなくちゃならぬと思うわけですけれども、そういった点でいわゆる国際分業という面、これについてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  133. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国際分業は、理論的にはもう国際分業を進めていくということでなければ、南北問題の解決はできません。これはもう国際分業を始める、進める、そのためには合弁会社でも何でもつくります、投資もいたします、援助もいたします、こういうことでなければもうこの問題は片づきません。が、しかし、現実問題としてどうかというと、論文を書くほど簡単じゃないんです。アメリカ日本との間が何で一体けんかしていんのか。アメリカ日本に対して要求するのは、飛行機もそうだし、電子計算機もそうですが、ほんとうに二、三年間やっているのは、オレンジを自由化せえ、柑子を買ってくれ、こういうことでしょう。一次産品であります。また拡大ECとの間はどうか、同じことをやっておるんです。工業製品でもってやっておるのじゃありません。アメリカとの間はそうであります。そういうことでありますから、なかなか国際分業というのは、論文に書けばもうそれしかないし、それはもう当然そのためには全力をあげて努力をすべきでありますし、とにかく日本などはあらゆる努力をいたします。またほんとうにやるんです。が、しかし国際分業というもののむずかしさというのは、非常にこれから人類の英知で解決しなければならぬ問題であります。これは私は一月——ほんとうに一月も、去年の九月もそうなんですが、電子計算機の自由化をやりなさいというときに、私が言った。電子計算機はアメリカにまかすから、では自動車は日本にまかすか、国際分業をやろう、こう言ったら返事がないんです、返事がない。ビッグスリーがもう日本に入ってきておるのに、自動車まかしてもいいから、テレビや家電製品は全部日本が受けようかとこう言ったら、全然もうノーコメントであります。ですから、それはほんとうに南北問題の中の最大の課題ではございますが、やはりほうっておいて国際分業ができるものではないので、やっぱり地球上の平和の維持というためには、困難な問題ですが、これから国際機関でこれを育てるために努力をしなければならない最大のテーマであろうと、こう思います。
  134. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間もあれですので、円の再切り上げですが、先ほどアメリカといろいろ話し合うという話でありますけれども、やはり最近ダンピングの規制であるとか、あるいは陶磁器の関税は引き上げをやったとか、いろいろな問題が出てきますが、やはり最大の問題は円の再切り上げをぶつける可能性が十分ある、こう思うんです。というのは、これは一部の人の意見でありますから、それがすべてアメリカの考えとは言いませんが、この間もありました日米議員懇談会のある議員などは、六月十五日に必ずやる、かけをしてもいい、こういうことまで言っておるんです。これはたった一人の議員の発言でありますから、それがすべてとは言いませんが、かなりその辺がありますので、やはり最大の問題はここにしぼられてくるんではないかと私は思うんですが、その点についてはどういうふうな見通しを持っておられますか。
  135. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も円の再切り上げというような問題が非常にこわい問題である、それは中小企業や零細企業を持っておる通産省としては非常に深刻な問題であります。そういう意味で、これはたいへんな問題だから、いかにしてもこれを避けなければいかぬと思っておりましたが、このごろ深刻にものを考えてきて、いろんな外国の出方等を総合いたしますと、円平価の調整を外圧によって求められることはないんじゃないかというような感じが出てきました。それはどういうことかといいますと、平価調整というもののメリットを一体アメリカ——まあ普通からいって、常識的にいっても一年か一年半後である、こう言っておりますから、一年か一年半後を待てばいいわけでありますが、これはやっぱり平価調整という困難な、史上初めてというような多国間で調整を行なったんですが、どうもそういうものよりももっと合理的なものがあれば、そういうことに目先が変わってくるとたいへんであると、こう考えておるんです。それは二国間と言わないでいろいろな相手とある時期——制度上ちょうどIMFの十四条国のような特権を与えられなくとも、これはみずからそういう措置をとれば、自然に国際収支の均衡というものはできるわけであります。そのあおりを食う中で一番大きいのはやはり日本であろうということは考えられますので、平価調整ということを再び言ってくるということはないだろう。だからこのごろ大蔵大臣アメリカは平価調整、第二の円切り上げを要求しないといっているじゃありませんかと、こういうお答えをしておりますと、そのままで済めばいいんですが、大蔵大臣のほうはそうであっても、通産大臣のほうは飛び上がるような——年間のバランスをとりましょうということになったら、これは日本の経済というものははかりしれない混乱が起こるわけであります。そういう意味で、平価調整ということよりも、やはり直ちに影響する貿易収支というような問題に一番ウエートが置かれているのではないかという角度から、日本はやっぱり国内政策、貿易政策というものを早急に立てるべきなんだということがきのうの発言にもなっておるわけです。
  136. 矢山有作

    ○副主査(矢山有作君) 午前の質疑はこの程度とし、午後二時三十分から再開することとして、暫時休憩いたします。    午後一時十四分休憩      —————・—————    午後二時三十一分開会
  137. 内藤誉三郎

    主査内藤誉三郎君) ただいまから予算委員会第二分科会を再開いたします。  休憩前に引き続き、通商産業省所管を議題として質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  138. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 今国会に法案も出されておりますが、工業再配置の問題についてお伺いしたいんですが、今回のこの法案のいろんな趣旨等も言われておりますが、この対象になる企業といいますか、これはどれくらいをお考えになっているんですか。
  139. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 対象になる企業というような考え方よりは、現在の国土の利用状況が太平洋ベルト地帯に集中しておりまして、人口にしても工業生産にしても、人口が五割、工業生産が七割以上というような集中の状況になっておるわけでございますので、これに伴って過密に伴ういろいろの弊害が出てまいって、非効率な状態になっておる。これの反面、遠隔の北海道、東北、裏日本、四国、九州というようなところは、むしろ、国土の開発可能性を残して過疎の状態になっておるという状況になっておりますので、今後の経済成長を持続的に行なうために、地域間においてこれらの国土開発の均衡を回復しよう、こういうことでございまして、特に企業数というような考え方ではなく、むしろ、太平洋ベルト地帯のウエートを下げて、太平洋ベルト地帯以外へ工業の立地を推進してまいる、こういうことでございます。
  140. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それでは、その太平洋ベルト地帯はそのままにしておいて、その他の北海道、東北等のレベルを上げると、こういうことですか。
  141. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) むしろ太平洋ベルト地帯の中で、特に工業の集積度の高い地域につきましては、これらの地域に立地しておる企業をその他の地域のほうに移転することを進めてまいりたいと思います。太平洋ベルト地帯に今後も工業の増加がある程度は考えられますけれども、それよりもさらに遠隔の地のほうに工業の配置を促進してまいりたい、こういう思想で考えておるわけでございます。
  142. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 だから、いまその太平洋ベルト地帯から持っていくものの対象になるのは、どういうことを考えておられるか。要するに、移転できるものとできないものと、いろいろあると思うんですが、もちろん、これはかなり希望等が問題になると思うんですけれども、その辺はどれぐらいの見通しを持っておられるのか、その点をお伺いしたい。
  143. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 特に過密の地域につきましては、首都圏あるいは近畿圏等の既成市街地のような地域が該当するわけでございますが、これらの地域につきましては、現在の工場地域の半分程度まで減らして、半分程度は、誘導地域とわれわれは呼んでおりますが、太平洋ベルト地帯以外の地域に移転をさしたい。  それから、太平洋ベルト地帯の工業生産のシェアとしては、現在七〇%強になっておりますけれども、これを六十年度におきましては全国の工業生産の半分程度にいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  144. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それでは、まあ六十年に五〇%ということは、あと二〇%ダウンさせるということでありますが、はたしてそれだけのことが可能になるのか。まあ今後の景気等の問題もありますけれども、いま四十七年ですから、十三年間ですね。十三年間で二〇%のダウンができるはっきりした見通しがあるのか。というのは、私が申し上げたいのは、こういう、考え方としては一応はいいように見えますが、もっと根本的な問題をきちんとしないで、ただ工場を適当に移せばいいというふうなことではおさまらねい、こう思うわけです。まあ新全総という計画もございますけれども、その辺とのかね合い等がどうなっているのか。もう少し詳しくきちんとした計画の見通しをお伺いしたいと思います。
  145. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 御指摘の新全総につきましては、大都市に、あるいはその周辺の地区に過度に国土利用が偏しておる、これに伴いまして過密の状態が生じておると。したがいまして、これの人口、産業の地方分散を通じて国土利用の再編成をはかりたいというのが基本的な思想で、そのためには、交通通信ネットワークの先行的な整備、あるいは遠隔地の大規模開発の展開、あるいは広域生活圏の形成ということが必要だというふうに指摘されておるわけでございます。指摘のように、交通通信の先行的なネットワークのような基本的な条件の整備が、工業の再配置についてももちろん必要でございますが、工業再配置の計画といたしましては、新全総のその考え方の中の工業の分野についても、サブシステムというような感じで工業の再配置計画をつくるわけでございますので、新全総の計画との調整というものが必要になるということでございまして、その意味では、法律規定のほうにも、新全総との調和を考えねばならないというふうに規定しておるわけでございます。
  146. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 具体的に、大企業と中小企業、零細企業、三つの段階に分けまして、まあ一番その可能性があるのは私は大企業ではないか。中小企業あるいは零細企業というのは、なかなかそちらまで行く力あるいは可能性——幾ら融資等が優遇されてきましても、非常に零細企業あるいは中小企業というのはむずかしい問題をはらんでいると思うんですが、そういった点はどのようにお考えですか。
  147. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 御指摘のように、中小企業が系列その他の関係で単独で移転がしにくいということはあろうと存じます。しかし、非常に片寄ってまいった国土利用を再編成して、均衡ある国土の利用の実現をはかるということになりますと、もちろん、大企業の移転を行なうことが必要でございますが、これとの関連におきまして中小企業の移転ということも起こってまいるということを期待いたしております。
  148. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 だから、そういうことをばらばらにやらないで、結局、日本産業構造自身からまず改めていかないと、この問題もうまくいかないんじゃないか。結局、こういった下請の二重構造ですね、下請、また孫請とか、こういう非常に複雑な問題。それから日本の場合、零細企業というのはかなりまとまりにくいわけです。団地一つつくるにしても非常にむずかしいわけです。経営者が協業するということはなかなかたいへんな問題があるわけでして、それを一挙にこちらへ行けとか、まあ希望をとってやられると思いますけれども、希望だけとっていたのでは、なかなか私は動かないんじゃないかと思うんですけれどもね。かなり現在の通産省としては、こういう希望が出てきておるわけですか。その辺は、市場調査の点がありましたらお答えいただきたいと思います。
  149. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 工場の移転につきまして昨年調査いたしましたところ、三大都市圏の特定の市にある五千万円以上の工場について調査いたしたわけでございます。千三百二十八社について回答を求めましたところ、八百八十九社の回答を得ておりますが、その中の六・六%の五十九社は全面移転をいたしたい、三・四%の三十社は一部移転をいたしたい、それから条件が整えば移転いたしたいと、これは資金の問題その他ありますが、九十九社一一・一%あるという状況で、具体的に移転をしたいというのが五十九と三十の八十九社、条件が整えばやりたいというのが九十九社、合わして二一%ほどの企業から移転が必要だという考え方であるということが報告されております。  それから昨年の十一月の中小企業の工場移転についての調査によりますと、移転を必要とする、これは二六%でございまして、現状のままでいいというのが五五%、増改築をすれば解消するというのが一九%であったというふうに報告をされておりまして、過密都市における企業の移転についての考え方というのが、最近の情勢を反映して、かなり進んでまいっておるというふうに理解いたしておるわけでございます。
  150. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これは人口問題とも——あとで触れますけれども、この回答でかなり高いように言われますが、はたしてこれだけのパーセントで——実際これが進んでくると、またあと追加になって、まあ自分のところも行きたいというのが出てくるかもわかりませんが、これぐらいのパーセントで、はたしていま言われた十三年間で二〇%のシェアをダウンすることは可能という見通しですか。私はちょっと見通しはそんなに甘くないんじゃないかと思いますが。
  151. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 先ほど申し上げましたように、八千ヘクタール程度の工場の移転を必要とする状況でございまして、最近の実績は、年間百ヘクタール程度の実績が出てまいっております。したがいまして、いまのような状況でいきますと、御指摘のとおり、六十年までにそうした大きな移転が実現するということにはなりがたいということでございますが、そういう意味で、今回工業再配置法を出しまして、公団等を実施機関といたしまして、これを大いに推進していくということが必要だというふうに考えるわけでございます。
  152. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの計算でいきますと、確かに十三年間で千三百ですね、八千はいかないと。この法案等がもし通りましたとすれば、ある程度加速はされると思いますが、この希望をとられたのはおそらく経営者のほうからだと思うんですけれども、従業員のほうはどういう意識を持っておるか、その点は調査されましたですか。
  153. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 従業員については、まだとっておりません。
  154. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 やはり、経営者は向こうへ行くと言っても、従業員のほうで都会に近いところのほうがいいというのがかなり私は多いんじゃないかと思いますので、従業員が行かないとなれば、結局移ると言ったってそれは絵にかいたもちで、実際工場を移転することはむずかしいし、またそれを強制するようになればいろんな問題が出てくる、そういう点で非常に私はむずかしい問題が出てくると思いますし、特に工場が移転して、いま過密の問題についても、工場のほうから特に見られておりますけれども、人口の問題ですね、これも合わせて考えないと意味がないと思うわけですけれども、工場が移ったから、それだけ、たとえば東京都から人口が減るかと、人口の過密ダウンまで引き起こすことは可能性があるかというと、私は非常にむずかしいんじゃないかと思う。私はこまかい統計は知りませんけれども、東京都の人口の中で、いわゆる工場労働者がどれだけいるのか、そのうちこういった移転が希望され、あるいはこれから促進されたとしても、はたしてどれだけ動くのか。というのは、最近の工場は御承知のようにオートメ化しつつありまして、人が少ない、また人的資源をたくさん必要とする産業は非常にいま景気繊維のように悪い、アメリカが大量に失業者が出ておるのも、やはりそういうたくさんの人間をかかえておる繊維産業とか、あるいは鉄鋼とか、そういったところの不景気というのがアメリカでは失業者を増加さしておると、こういうことですから、工場が行って、工場がなくなった点で広さがたとえ確保されたとしても、工場がなくなって少しは東京都がすいたとかりにしましても、人口のほうは、そうそれに見合っただけの減りがないんじゃないかと思いますが、その辺でも、私は従業員がどう考えているかを調査されたほうがいいんじゃないかと思うんですが、その点はいかがですか。
  155. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 確かに都市の人口集中が、工場だけが原因で人口の増加がきておるわけではないという点は、御指摘のとおりであると思いますが、しかし工場の集中ということに伴って人口が増加してまいっておるということも、これもまた事実であろうと思います。そういう意味で、やはり都市に所在することが必ずしも必要でない工場等につきましては、これを地方に分散していく。これによって人口の分散がはかられる。またさらに、都市の工場への就職のために地方から出てくるという傾向もあるわけでございますから、これが地元にとどまれるということにも相なるわけで、やはり人口の配置の修正につながるものだと思うわけでございます。
  156. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあ少し話がかわりますけども、経済審議会あるいは同友会のほうで、いろいろこの問題についても、地域開発問題、工業分散あるいは地域開発についての報告、提言等がされておりますが、まあ経済界でもいま非常に真剣にこの問題は検討されておるわけでありますが、この報告等はどういう評価をされておりますか。こういったことが、かなり今回のこの考え方の中には入っておるのかどうか。この点はいかがですか。
  157. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 基本的には、こうした考え方と大体軌を一にした考え方に基づきまして、工業の面を取り上げて法律化しておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  158. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これの促進にあたっては、あくまでもその希望をとる。それから今度は受け入れる側のほうは、そこの住民を参加させるという方向なんですか。あるいは法律で縛って、極端な言い方をすれば追い出していくという形をとられるんですか。その点はいかがですか。
  159. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) この提言にもありますし、報告書にも出ておりますが、やはり今後の工業の再配置については、地元住民との間の理解というものが前提でなければならぬということを特に指摘してございますが、われわれとしても、そうでなければ今後の工業の再配置は円滑に進まないと存じます。そういう意味で、工業の移転計画については認定制度というものを今度設けることにいたしておりますが、認定の要件といたしまして、知事が移転計画について異論がないという意見書をつける。この意見書は地元が受け入れるということを確認することでもありますし、移転の計画に伴う公害防止計画等についても、地元を代表する知事がそれを了解しておるということにも相なるわけで、地元との調整というものを考慮しなければならぬというふうに考えております。
  160. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 経済審議会のほうだったと思いますけれども、過密税とか、あるいは水の供給を制限するとか、そういうような考え方が出てきておりますが、将来こういうふうな考えを通産省もとるお考えですか。特に、水の制限などについてはどうですか。
  161. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 過密税のような、過密地域の工場に対しまして移転を推進するための税制というものにつきましては、本年度についても実は考えたわけでございますが、と申しますのは、法人税の付加税が四月末日で切れることになっておりましたが、これを財源にして、新たに、御指摘のような構想に基づく付加税を課するということを考えたわけでございますが、法人税の付加税が二カ年延びることになったというような事情とからみまして本年度は見送ったわけでございますが、今後におきましては、やはりこうした考え方というものについては検討を続けるということにいたしたいと考えておる次第でございます。  それから水につきましては、現在、工業用水法というものがございまして、供給と需要との問題から、特に地盤沈下の起こるようなところにつきましては、工業用水道を布設しまして水源を転換するということをさしております。現在、地下水あるいは他の水源を用いておりますものをとめるということになりますと、企業の経営に非常に影響いたしますので、その点についてはなお検討を要する問題であるというふうに考えております。
  162. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 検討ということは、こういうことを考えるととっていいんですか。現在の現行法の中で私はやるべきであって、これ以上そういう制限をすると、非常に、地方分散もいいんですけれども、結局先ほどの問題、輸出規制と同じように何でもかんでも縛るということになってくる。水をとめる——もちろん工場だけ水をとめて、じゃあ今度は普通の一般の家庭はとめないというふうであれば、まだ納得できる面もある場合もありますけれども、何でもかんでも、やれ制限だ、やれ出て行けのなんのということでは、要するにこれは基本的な人権という面まで何か侵されてくる。また私権という問題ですね、そういうことまで出てくる可能性があるんじゃないか。要するに、確かにそれは過密も問題です。工場がこうやって集中しているのは確かに大きな問題でありますけれども、だから今度は法律で縛ってどうしていくというやり方は、私はあまり感心をしない。特に、水の供給制限なんということになってくると、非常に問題が出てきやせぬかと、こう思うんですけれども、その点はどういうふうにお考えになっておりますか。
  163. 本田早苗

    政府委員(本田早苗君) 現在の工業用水道事業法では、供給の義務を負うということになっておりまして、いま御指摘のように供給を断つということになりますと、法制的にも問題がございますし、実質的にも御指摘のような点がございますので、検討を要する問題であるというふうに申し上げたわけでございます。
  164. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 もう時間があと五分しかありませんので、大臣にお伺いしたいんですが、先ほど来、工業の再配置の問題についてお伺いしておったわけですけれども、いまの調査あるいはいまの実施状況だと非常にむずかしいんじゃないかということ、理想の六十年に八千ヘクタールですか、ここまでもってくるのは非常にむずかしい。それを促進するのは、いま言ったような何でも法律をつくって縛ってやっていく、あるいはそういう水を供給制限するぞなんておどかしたり、過密税取るぞとか、そんなことで何か追い出していくような行き方、今度は受け入れるほうは、いま知事が一応意見書を出すということになっておりますけれども、公害の問題が非常に大きな問題になると思います。はたして現地が受け入れるのかどうか。また今度は従業員が、経営者は動こうとなっても、そこにつとめている従業員が、やっぱり都会の近くのほうが、都会にみんなあこがれて来ているんですから、そういう点で、はたして従業員が、特に若い人なんかの多いところは、たとえば福島県のいなかへ全工場移転ということになってくると、そこへみんな行ってくれるかどうか疑問です。本人がいやだと言ったらやめればいい。しかし、それはやめただけで、あとの就職の問題等出てきますから、非常に困難な問題があると思うわけですけれども、その点をどうお考えになっておるか。  それからもう一つは誘導地域ですけれども、こうやって北海道、東北、北陸、山陰、四国、九州、沖繩と、こういうふうになってきますと、先ほども少し広域ということばが出てまいりましたが、結局、産業界で考えられておる道州制というようなことろへいく方向がとられる一つの一里塚になるんじゃないか。これはうがった見方かもしれませんけれども、その点についてはどういうふうに考えておられるのか。その点をお伺いしたいと思います。
  165. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 都市集中というのは、これは世界的な傾向でございまして、一次産業比率が減少する、一次産業から二次産業、三次産業への人口移動という過程において都市集中というものが起こるわけでございます。これは世界的な傾向でございます。日本もその例外ではない。明治初年から九〇%もあったものが一七・四%、百年間にそこまで下がったわけでありますが、それだけに都市集中が行なわれてきた。都市集中というものは、メリットが確かにあるわけであります。製造と消費が密着をしておるということは、これは経済原則から言っても一番効率的でございます。そういう意味で、国民所得も国民総生産も増大してまいりましたが、都市集中のメリットというものが、もう頭打ちになってきたということが大前提になっております。それは東京、大阪、名古屋という三つの五十キロ圏を合わせるならば、全国の国土の一%でしかない。一%の中に三千二百万人が住んでおるということでありますから、一%の中に三二%が住んでいるといったら、過密はもう極限に達しておる。まだしかし、東京や大阪では個人企業、一つの企業のバランスの上で考えますと、まだ集中のメリットがある。これは確かにあります。ところが、国家全体から考えてみたり、国民全体から考えてみると、これはもうデメリットのほうが多いのであります。これは全国平均で車が一台増車をされれば道路の維持補修費は五十万円で済むものが、東京、大阪では千五百万円であるということを考えてみれば、もう経済原則などをはるかに越しておるということでございます。  そこで、そこへ公害の問題が起こってくる、公共投資の問題が起こってくるといったら、これから都市における相当な成長が行なわれるとしても、それはもう完全に名目成長になってしまうということでございますから、いまの状態では、好むと好まざるとにかかわらず、東京都は住宅地域内における工場は禁止をいたしております。増強は禁止をしておる。指定地域内における地下水のくみ上げは禁止をしておる。この上、なお公害に対しては公害投資を必要といたします。複合公害というものには、無過失賠償責任の制度が追及されてくる。個人企業そのものの集中のメリットも、法律でもって公害に対する防除施設を完全に義務づけられてきたらペイしません。そういう、明治百年というものは、一つの限界を示したということでございます。  しかし、これから幾ら考えてみても、いまが四・七、八%から五%台というのでありますから、経済企画庁がどういうものを出すかは別でありますが、いずれにしても新・新全総というものは、自然発生を是認しないで、どうしても政策誘導というものを考える必要があります。これはもう地価の問題、水の問題、住宅の問題、公共投資の問題、こういうものを前提としない成長政策というものは考えられないわけであります。一部の人たちは、憲法の自由の原則で、国民が全部東京へ集まりたいといったら集めればいいじゃないかというばかな議論をした人がありますが、そんなことはできるわけはない。千百万戸の家をつくって、あと九百五十万戸つくってなお住宅が足りないというのは、無制限な都市集中を許せばそうなるにきまっておる。そのかわり、水があり、土地があり、自然の浄化作用がある地帯というものは、全く過疎でもって困っておるということを考えてみれば、もうこの狭い日本を、総合的に合理的な総合開発を行なうという以外には、二次産業の比率の拡大ということは、いまの拠点中心主義では求られない状態になっておる。これは東京を例にとりまして、都市面積に対する道路面積というものを三五%にするには、道路を三倍にするか道路を三階にすればいいのでありますから、都市の立体化によって空地を設けることができます。道路をつくることもできます。しかし、それはそういう過度集中を許して、いまの首都圏の人口二千七百五十万人が千万人ふえて三千七百五十万人になった場合はどうなるかというと、東京二十三区内の空気中に占める亜硫酸ガスは人間の生存許容量を越すということは、明確にコンピューターがはじいておるのでありますから、そんなことが可能なわけはないのです。ですから、どうしてもここで分散政策をとらざるを得ない。これは分散政策をとらないとしたならば、いまある工場はそのままにして、これから拡大する生産部門は全然新しい立地を求めて成長するような状態をつくる以外にはないわけであります。これはもう、そういうことで工業再配置というのを考えたので、何も工業再配置をやらないで済めばこの法律も必要ありません。しかしやらなかったらどうなるかといったら、成長をとめるか、もしくは……ということになりまして、いまの中小企業白書が、二六%までが中小企業といえども都会から出ることを希望しておる、条件がそろえばあとの五〇%も分散したいという事実が遺憾なく示しておるわけでありますので、まああなた、一体この程度の法律でもって、ほんとうの誘導政策が行なえるかどうかというこれはポイントだと思います。私はこの程度じゃなかなかうまくいかぬと思うのです。ですから、そういう意味ではもっと広範な政策を行なうべきだと思います。そうしなければ都市改造もできないし、これからの成長のメリットを国民自体が受けるわけにまいりませんし、公害の除去もできないし、これはほんとうにいろんな問題が解決するのはこの一点にあると思っておりますが、いずれにしてもおそ過ぎたけれども、まあやっぱりどうしてもやらなきゃならぬものである。  そういうことで、今度の産炭地でも、米の減反政策をやるときにこの法律を一緒にやればよかったのですが、これを一緒にやらなかったところに、産炭地も工場は全然行かない、定着もしない。米を減反すれば農業の余剰人口は全部都会に来て、それが地価をつり上げ、物価をつり上げ、住宅難をかこつような要因になる。社会保障の対象人口だけをふやしてきたというような事態から見ても、おそまきながらもやはり国土の総合利用開発、これは水とかいろんなことを数字を並べ立てると、これ以外には方法はないと、こういう立場で出したわけでございますが、新しい政策でありますので、なかなかなじまないというか、やっぱり右に行きたいものを左にやろうと、こういうのが政策的な誘導と、こういうことになるわけでありますが、この法律そのものでは、御指摘のように、ほんとうに日本が当面しておるような政策効果を的確にあげるにはもっときびしいものを、東京から出ていったほうが得だということで先を急いで出ていくような恩典を与えるべきだし、残っておる人には過酷な条件を与えれば、それは両々相まってうまくいくのですが、いまなかなかそこまでできないというので、国会で御審議をいただいておったり、まあ商工委員会などではなまぬるいということで、もっときびしくしろという御意見もございますが、それは国会の審議中、またこの法律がスタートしたら、次々と段階を追ってもっと合理的なものにつくり上げていただく、こういうことで御提案を申し上げているわけです。
  166. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 道州制はどうです。
  167. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 道州制というのは、私自身はこの前提になるものの中には、府県というものがはたして要るのかということは考えておりますが、しかしこんな情報社会ができてきたときに府県がほんとうに要るのか要らぬのか——明治時代の郡制が廃止になって、いま郡というのがありますが、郵便法上だけであります。だからこれと同じように、中間団体としての府県というのは要るのかという議論をやると、それよりもちょっと大きい道州も要るのかどうかということで、これは地方自治の制度をつくるときに、将来はもっと大きくなった市町村が真の自治体に成長さるべきだという議論がありますが、そこまで掘り下げなければならぬ問題でございまして、いま私は道州制とこの問題とは何の関係もない、全然関連して考えておりません。
  168. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 答弁が長いのでちょっと時間が過ぎまして申しわけないのですけれども、いまいろいろ大臣言われまして、この法律自身の効果ということについては私と同じような考えのようでありますが、私が言いたいことは、いまの日本産業界にしても、都市の問題特に抜本的にやらないとだめだということ、これは私は一つの公約にしかすぎないような気がしてならぬわけです。こういうことを言うとしかられるかもわかりませんけれども、結局、たとえば新幹線がネットワークができていく。岡山まで新幹線が延びた。はたして岡山に人口がふえるかというと、むしろ逆の現象がこれから起こるのではないか。交通が便利になればなるほど東京に集まる可能性が十分あるわけです。道路にしても同じようなことが私は言える。結局そういったような点で、やはり交通網、それから工場の配置、都市のあり方。いま府県の問題言われましたけれども、そういう地域はどうあるべきか。それに伴って行政も改革をしなければならぬ。一番もとは結局中央集権的な、東京になぜ人が集まるのか考えてみたら、もちろん都会に魅力があるからだけでなくて、やはりそういういままでの長い明治百年、もとをただせば徳川三百年も含めた長い年代によって築かれてきた、こういう体制に大きな問題がある。この辺を根本的に変えなければ、幾ら何をやっても結局問題が次々起こるだけであって、私は何にもならないと、こう思うわけです。将来、新幹線がまた新しいものができて、リニアモーターでもできたら、一時間やそこらで大阪にまで行けるようになったら、また東京に人が集まるという、こういう点を、どう地域ということをきちんとするかということが大きな問題になる。その点について、大臣はこれから有望な方ですから、どういうふうなお考えで日本を持っていこうとされているのか。特に都市の問題、地域という問題、これについて御意見をお伺いをして終わりたいと思います。
  169. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これからの日本の政治の内政のほとんどだと私は思います。その問題がこれからの内政のあらゆる問題の根本をなす問題だと思います。これは日本だけでなく世界的にもそうだと思います。これはニューヨークでも、それからいまのワシントンでもローマでも、モスクワでもそうでありますが、どんどん集中する。これは簡単に言うと水は低きに流れる。人間というものは社会的恩恵を受けられるところ、高きに集まる、こういうことであって、どうしても東京に集まるなと言ったって集まります。集まりますが、そこで集まらないように逆な傾斜をつければいいのだというので、今度は東京では事務所税をつくったり公害税をつくったり、普通なら住民税も高くすべきだという議論もありますが、私はそんなことをして集中というものをとめられはしない。それはやっぱり東京と同じような社会環境の整備をされたところというものをつくらなければいかぬということで、必ずしも大都会に集まるというのでなく、都会と同じ社会環境の整備をされたところに集まる。私はここで一言だけ、ほんとうに真剣に申し上げておきます。この間、北海道に行ったとき、ある有名な町長に言われました。こんなことをしていると、いやでもおうでも全部炭鉱がつぶれたら、この町の六割も七割も東京に行きますよ。なぜかといったら北海道でもって冬などは生命の保障はない。テレビを見ておると、東京や大阪でもって酔っぱらって寝ておると消防が迎えに来てくれる。そういう社会的恩恵を受けられるところに集まるのはあたりまえである。こういう政策を是認する限り東京に集まる。集まればどうなるか。それはもう言うまでもなく、集まる人の五分の四は社会保障対象人口になる。その場合はもう好むと好まざるとにかかわらず、生産性に回る金というものは少なくなる。そういうことを政治家はもっていかんとなすということを私は言われましたが、ほんとうにそうだと思うので、やっぱり自然発生ということではなく、によって人間が定着できるように、しかもあまねく恩恵を受けられるという原則だけは確立をしてやらなければ、そこに人が定着をするはずがない。生命の安全というものが保障されないところで定着するわけはないし、それはやっぱり人が集まるところはわしも行こうということになるから、私は狭い日本というものは、ほんとうに発想の転換ということはそれだと思うのです。この国土というものを均衡ある発展——あとにかく東京よりも北海道に定着したほうが貯金はたまるのだというふうになれば、これは必ず北海道に定着する。それはそうしなければだめです。以上です。
  170. 内藤誉三郎

    主査内藤誉三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  171. 内藤誉三郎

    主査内藤誉三郎君) 速記起こして。
  172. 須藤五郎

    須藤五郎君 通産大臣はきょうも田中節を長々とやられるんで、われわれの質問時間が少なくなってしまうんで、簡潔にやってくださいよ。  私は四月十三日の参議院の商工委員会であなたに、閣僚級の会談は一年間は休戦だと、こう言ってらしたが、そのとおり守られるのかどうかという質問を私はいたしました。あなたは胸を張って、そのとおり、閣僚級の会談は一年間行なわれないとはっきりおっしゃったんですが、それからまだ日にちもそれほどたたぬ——一週間そこそこしかたってないきょうの新聞を見まするとですね、やはりあなたが、閣僚会談を再開して話し合うんだという記事が出てるんで、私はびっくりしたんですがね。一体これはどういうことなのか。あなたがアメリカの政策に屈服したのか、また、閣僚会談にどういう態度であなたは臨まれようとしておるのか、その点を私は伺っておきたいんです。
  173. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 表面的に見ると相反する二つのことが行なわれるような感じでございますが、二つは相反するものではないということをまず申し上げておきます。それから、一つ目の一年間休戦は、アメリカ側から絶えず要求を受けておりましたので、サンクレメンテ会談をもって子牛を五千頭買うということにしたんだから、もうここらで一年間休戦にしよう、あとは全部専門家会談を毎月開いて両国の意思の疎通をはかろう、こういうことでございましたから、目的は達したわけです。ですから、二国間の閣僚ベース会談を要求されることはないということを明確に申し上げた。一週間もたたないうちにというのは、相手がある話です。相手は一年間閣僚間ベースの話をしないということだから、何にもこっちへ言ってこない。言ってこないでぼんぼん関税を引き上げる——やってるわけですから、それなら国益を守ることではないから、向こうからは言ってこなくても、今度こっちが一発話をしてやろうと、こういうことであって、その場合は、とても日本アメリカ間の一年間閣僚ベースの話をしませんなどと言っておれないから、そこは今度こちらから要求して話をしようかというところでございまして、それは二つ、両方とも反するようなことですが、国益を守るということに対しては反しない、こういうことです。
  174. 須藤五郎

    須藤五郎君 私たちはね、やがてそういう結果が来るだろうということを予測してあなたにあのとき質問したんです。ところがあなたはそれを否定して、そんなことは考えてない、一年間閣僚会談などは考えてないということをはっきりおっしゃったから私はこういう質問をするわけです。  それじゃ具体的に、あなたはみずから進んでこれを要求したとおっしゃるならば——いまあなたはこちらのほうからということを強くおっしゃったから私は質問するんだが、それならばどんな考えを持って、どういう腹案を持ってこの会談に臨まれるのか、そこをひとつ伺っておかぬと安心ができないですね。
  175. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まだ閣僚会談をやるということをきめておるわけじゃありません。これはまだきめておりません。だから、これはまだ内閣として意見調整しておりませんし、矢つぎばやに毎日、新聞に出るわけです。これも規制、これも規制、これも規制と出てくるから、この状態にもっていかんとなすという質問を受ければ、こんなことをこのままにしてほうってはおけません。このままじんぜん日を過ごさんか、それはもう日本の対米貿易はストップになっちまう、こういうことが看取されますから、そういうことはそのままでもって黙ってるわけにはいかない、しかしそれは、日米間は一年間ストップでありませんかと、それは向こうから言ってくることがストップであって、こちらから言うことはこれはストップではないと、こういう間の事情が報道されておるのであって、そうそのすべてがきまって、あしたスタートするんだというんじゃありませんから、そういうふうにどうぞ御理解のほどを。
  176. 須藤五郎

    須藤五郎君 まことにことばというものは便利なものでございまして、あなたの口をもってするならば、もう何とでも言えるということがはからずも明らかになったと思うのですが、そういうことを私は予測してあなたにああいう質問をしたということだけは聞いておいて、これからそういう態度はおとりにならないほうがよいと思いますよ。そういうことで論議しておりましても時間がたちますから、では次の質問に移りましょう。  私は、きょうはPCBの問題を中心に質問をしたいと思います。まず最初はPCBの生産中止の問題について質問するわけですが、三菱モンサントは三月に生産を中止するということを発表いたしました。それなのになぜ鐘化は六月まで生産を続けるのかという点でございますが、衆議院の連合審査の席上、参考人は、メーカーとしては早くやめたいが、国鉄や官公庁に迷惑をかけてはいけないのでと、こういう意味の答弁をしておりますが、PCB並びにPCB使用の製品の製造、販売及び使用を直ちに禁止するとともに、その回収を行なうこと、これは国民の切実な声であると思います。このような中で、政府はメーカーに六月末までPCBの生産を続けさせるのではなく、生産中止の時期をもっと繰り上げさせるべきであると私は思いますが、大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  177. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 具体的な問題は所管局長からお答え申し上げますが、このPCBはもうすでに三菱モンサントが三月十一日だったと思いますが、これは中止をいたしました。あと鐘淵化学だけが六月と言っておるわけでございますが、製品の残っているものは非常に少ないのであります。これはもうほんとうにあなたの言うとおり、直ちにやめる、六月などを待たなくて直ちにやめるというのが一番いいことでございますし、また会社ももうやめたいのです。ところが、これにかわる代替品というものがどうしても見つからないという——これと同じ性能を持つものがないというのが一つございますし、もう一つは、これは開放性ではなく閉鎖性の中で回収が可能なもので、やはり高性能な物質なものですから、回収可能というものであるというのは、電電公社とか国鉄とか九電力とかいうものでございますが、そういうものは回収を義務づけるということで、まだ当分それにかわるものが、代替品が十分に間に合うということにならなければこのPCBをそのまま使いたい、使わなければならない、こういうことがあるわけであります。そういう意味で製造を続けておるということですが、これはもう業者も確かに、われわれももうできるだけ早く、いっときも早く製造を禁止して別なものにかえたい、こういうことであります。
  178. 須藤五郎

    須藤五郎君 衆議院の参考人の話には、私たちはやめたいと思うが官公庁に迷惑をかけちゃ困ると、こういうことなんですね。官公庁というのは国鉄なども含めてのことだと思いますがね。そこで、一体政府は国鉄や官公庁の必要量をお調べになったことがあるのかどうか。また現在輸出契約の中でどのくらい輸出契約が残っておるのか。何トンぐらい残っておるのかということをちょっとお答え願いたい。
  179. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) いま大臣からお話ございましたように、今後経過的に使われますものは、国鉄、電電等の特殊のものでございます。この特定向けの用途につきましては、四月末までに、今後PCBを使わないでその機器をつくるかという切りかえ計画等につきましても現在提出さしておる段階でございまして、正確な資料はその資料等を待ちませんとわからないわけでございますが、われわれのほうの推測によりますと、特定向けのPCBにつきましてはごく少ない見通しであろうかと存じておる次第でございます。現在、ただいま申し上げましたように調査集計中でございますので、その結果を待ちませんと正確には申し上げにくいのでございますけれども、推定ではごく少ないのではないか、こう思う次第でございます。
  180. 須藤五郎

    須藤五郎君 ごく少ないというのではわからないので、推定ならば大体このくらいだということを言ってもらわなければいけないんですがね。
  181. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) なお御質問の点は、ちょっと後ほど答弁いたしますけれども輸出の契約残につきましては、三月末現在でPCBで換算いたしまして約七百トンが既契約に相なっております次第でございますけれども、この辺につきましても、できる限り契約を解除するような方法で相手国側と折衝中でございます。  それからもう一回同じようなことになりますんですが、国鉄、電電等官公庁需要に対しましては、それぞれの部局に通産省のほうから連絡をいたしまして、これを早急に切りかえるように、先ほど申し上げましたように、いま計画を実施中でございまして、この官公庁以外に航空機等の安全に関するトランス等がございまして、しかしこれも必要量は非常にわずかだと思います。いずれにいたしましても、こういう特定用途向けの量につきましては、先ほどから同じことを申し上げる次第でございますが、今月中ぐらいに調査を完了いたしまして、その量等につきましては確定いたしたい、こう思う次第でございます。
  182. 須藤五郎

    須藤五郎君 まだその調査ができてないという以上、それを追及してもどうにもなりませんが、できるだけ早く調査して報告をしてもらいたい。  私、一つ疑問があるんですがね。それは現在の在庫量につきましては、通産省のほうで、私も調べました、五百トンということであります。ところが衆議院の連合審査では、鐘化、三菱モンサント両参考人とも、注文生産のためストックはありませんと、こう答えておるんですね。ユーザーへ直売するためにストックはないと、こういうことを言っているんですが、ユーザーへ直売のために流通段階にはストックはありませんと、こう重ねて答弁しております。これは一体どういうことなのか、私は説明をしていただきたいのです。五百トンのストックがあると通産省のほうでは言っておるが、メーカーは、三菱モンサントも鐘化も、ユーザーに直売するのだからストックはありません、こう言っているのです。そうすると、この五百トンというのは一体どこにあるのですか。
  183. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) 最初に数字の若干訂正を申し上げますと、先般メーカー段階で五百トンあると言いましたのは、その後の需要減等を通じまして、三月末現在では三百三十トンでございます。  いま先生の御質問の、ユーザー段階に直売しておるので在庫はないといいますのは、PCBメーカーから電機メーカー等にPCBを売りまして、で、電機メーカーではこれをトランス、コンデンサー等に使用するわけでございまして、電機メーカー等ユーザーの段階でPCBという形での在庫はないということを申し上げたんだと思います。全然PCBの在庫そのものがメーカーにないということではございませんで、これをユーザー段階に渡して、そのユーザー段階でPCBというかっこうでの在庫はない、こういうことを申し上げたのだと私は考える次第でございます。
  184. 須藤五郎

    須藤五郎君 それならば、この五百トンは即刻とめるべきですよ。大臣、そうでしょう。ユーザーのほうにまだ行ってないというんだから、それだったら鐘化なりモンサントでそれをもう売るなと、それを売ってはならぬということをやったらいいじゃないですか。何でもないことじゃないですか、これは流通段階で取り締まれば。
  185. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ですから、公害をまき散らすような開放系には絶対使わない、閉鎖系であってもこれはなるべく使わない。しかし先ほど申し上げましたように、航空機用の安全性の問題とかいろいろな問題の中に、回収もしますし、絶対に公害には関係がないもの、ごく少部分でありますが使わざるを得ませんと。それは、それよりも高性能な代替物質が発明されるまではどうしても使わざるを得ません。しかし使うものはもうできるだけしぼって、そして厳重な回収を義務づけるということが大型のトランスであり、コンデンサーであり、飛行機等の製品でございまして、これは航空会社とか電電公社とか国鉄とか九電力でございますから、使わないにしくはないけれども、やむを得ず使うんですが、厳重な制限、条件のもとに使うことになっております、というのに三百三十トン、特殊な用途としていま残っておるものは使わなきゃいけませんし、これから六月一ぱい製造するというそのものも、そういうふうな局限されたものにしか使用しない、こういうことでございます。廃棄をしていくということじゃないわけであります……。
  186. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、これは私まだあなたのお答えでも疑問が残るんですが、それではメーカーの代表は、この間、参考人が、直送しているからわれわれにはストックはありませんと、在庫はありませんと言ったのはうそなのか……。
  187. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そうじゃない、そんなこと……、それはね、非常にはっきりしているんですよ。それは参考人は製造業の代表ですから、製造業は伝票切ってちゃんと送って代金が入ってくれば、私のところには在庫はありませんと言うけれども、送った先は別な形でもってまだ使っておらないんです、また全部が消費されておらない。それを通産省が全部調べると幾らあるか、それは三百三十トンで、鐘化が二百五十二トン、モンサントが七十七トン、合計で三百二十九トン。こまかいところまでちゃんとあるのです。通産省はそんないいかげんなことは、いやしくも国会では申し上げておりません。ですからそれは向こうも、うそ言ったんじゃありません。伝票を切って、もう倉庫は倉庫払いしてますからありませんと、こう言ったんだけれども、最終的な製品として使ってなければ中間段階にはあるわけでありまして、三菱モンサントも鐘淵も、自分の倉庫から出た先を、全部なくなりましたというところまでは調べておらない。そのほうが、通産省のほうが正しいと、こういうことを言っている。
  188. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、まだユーザーのほうで、向こうの……、
  189. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 少しあるんです。
  190. 須藤五郎

    須藤五郎君 そちらに五百トン近いものがあるということなんですね。それならば、やっぱりそこを指導して、そんな危険なものはこれから回収をしていかなきゃならぬ問題ですよ、これは。その回収に骨の折れる問題なんです。ですから、流通段階でちゃんと押えるならばそれを押えるのが適切ではないかということを私は言っておるんですよ。出てしまうというとなかなかむずかしいんですよ。だから流通段階でとめるということ、これが一番よいことであるということを私は申し上げているのです。おそらく大臣もそういうことには御賛成でしょう。賛成ですね。——じゃそういうふうに、これからそういう方針でいっていただきたいと思います。
  191. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ基本的には全く賛成なんです。賛成なんですが、全然使わないというわけにはまいらないんですと、性能の非常に高い物質でございますから、回収を義務づけて、公害を全然起こさないという局限された特殊な分野にだけは、PCBにかわる高性能の物質が、代替品が発見されない限り使わざるを得ませんと、全然使わないんじゃないんです。使うんです。閉鎖性と開放性というものに使われておったんですが、五万五千トンも使ったんですから。開放性は一切使わせません。閉鎖性もできるだけ使いませんが、高性能を要求される分で、しかも絶対に公害等をまき散らすおそれのない、回収を義務づけたものに対しては、やむを得ず、真にやむを得ざる部分に対して使うんです。それは三百三十トンです。こういうことですから、それまで捨ててしまったほうがいいという気持ちには同調しますが、それゆえにあしたから絶対にPCBは使わないんだ、なくなった、使ったらあんたうそ言ったじゃないかというんじゃないんです、ということを申し上げている。
  192. 須藤五郎

    須藤五郎君 政府は、九月一日以降もPCBの使用を特定使用者向け電気機器には認めることとしておりますね。特定使用者の必要とするPCBの量は一体どれだけなのか。また、特定使用者とは一体どこをさすのか、そのために今後どれだけの生産をしていく考えか、簡単にお答え願いますよ。
  193. 和田敏信

    説明員(和田敏信君) 特定の、九月一日以降もPCBを使用いたします機器といたしましては、例示的に申し上げますと、車両搭載用トランスあるいは雷吸収用コンデンサーなど、きわめて特殊な分野に属するものでございます。  また御質問の、使用量はどの程度になろうかという点に関しましては、きわめて微量でございまして、トンのオーダーで勘定できるものではなかろうかと思われます。換言いたしますれば十トン以下になろうかと思われます。
  194. 須藤五郎

    須藤五郎君 PCBの輸入量につきまして、ちょっとお尋ねしますが、昭和二十九年に鐘化がPCBの生産を開始する以前に、松下電器等の電機メーカーでは輸入PCBを使っておったわけです。ところが通産省資料は、昭和四十二年に初めて六十トンのPCBを輸入したということになっておりますが、これは明らかに私は間違っておると思うんですが、輸入PCBの正確な数字は何トンか。何トンだと簡単に答えてください。説明は要らないです。
  195. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 四十二年から四十六年まで五百九十トン、これが正式の輸入量であります。その前二十七年からというのは、これはごく小量でございまして、サンプルのようなものとして、試験するのに使うというサンプルのようなもの、国内製品と一体どのぐらい違うのか、その効力をためすというようなものであって、トン数で把握されていないものですから、やはり五百九十トンというのが輸入の数量である。それ以前、昭和二十九年とか二十七年ごろからというようなものはサンプルのようなものであって、全く小量のようであって量として把握していない、こういうことです。
  196. 須藤五郎

    須藤五郎君 JISの規格の改正につきましてお尋ねいたしたいと思うのですが、私は四月の二十一日、松下電器の豊中工場へ視察に行って参りました。そのときに聞いたことですが、国家規格であるJIS規格でコンデンサーにPCBを使うことが奨励されているということを聞きまして、これはたいへんなことだと思って帰ったわけです。そして、二十五日の毎日新聞を拝見しますると、「JISの制定方針は、産業の発展と合理化を促進するもの、消費者の利益を保護し、産業公害の防止、産業保安、労働安全、国民生活の安全・衛生に役立つ」こういうふうになっておるわけですね。そこで私は質問するんですが、JIS規格のPCBにつきまして、政府の対策はどうなのかということが第一問です。それから同時に、今後JIS規格の制定時にPCBのような環境汚染問題、安全性の問題をどのように反映させていくのか、専門委員会の構成のあり方を含む方針はどうなのかと、そういうことをまず伺っておきたいと思います。
  197. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 具体的なことは政府委員が答弁しますが、御指摘の問題については、日本工業標準調査会の必要な議決を経まして五月早々これはもう改正する、規格を改正いたします。それで官報で告示をします。
  198. 須藤五郎

    須藤五郎君 五月一日……。
  199. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、五月の初旬、できるだけ早い機会に……。
  200. 佐伯博蔵

    説明員(佐伯博蔵君) いま、大臣が申し上げましたように、PCBの規格は不燃性絶縁油という形で規格になっております。それからそれを引用いたしました関連規格がございますので、それをいま大臣が申し上げましたように、日本工業標準調査会のほうにおはかりいたしまして廃止、それから関連規格のほうは改正ということの決議をいただきましたので、五月早々に、なるべくは五月一日にしたいと思っておりますが、官報に公示をして廃止ないし改正をするということにいたしたいと思います。
  201. 須藤五郎

    須藤五郎君 あの工業標準化法ですね、十五条。ここにありますが、ここにはJISの規格は少なくとも三年ごとに見直しを行なうことが必要だというふうに定められておるんですね。従来、このとおりにやってこられたかどうかということです。
  202. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三年に一度ずつ、三年に一度の見直しについては実施してまいりました。
  203. 須藤五郎

    須藤五郎君 この「毎日」の新聞を引用すれば、「不燃性絶縁油は四十五年に一部改正があっただけ。四十三年、九州を中心に」云々ということがあるんですが、いわゆる四十三年にカネミオイルの事件が起こりましたね、あのときには見直しをすべきではなかったかと思うんですが、そのときにちゃんとやりましたか、どうですか。
  204. 佐伯博蔵

    説明員(佐伯博蔵君) あの不燃性絶縁油のJISは三十二年に制定をいたしまして、先ほどお話ございましたように、四十五年に改正をいたしておりますが、その間に、それを含めまして三回の改正と三回の確認をいたしております。確認と申しますのは、三年ちょうどたちますんですが、そのままでよろしいという意味でございますが、したがいまして、先ほど大臣がお話しましたように、三年に一回以上の改正または確認の行為をいたしております。ただ、その改正は、電気の絶縁性としての規格を整備するという改正でございます。
  205. 須藤五郎

    須藤五郎君 そういうやり方が私は問題だと思うのですがね。実はこの構成委員ですね、専門委員の中に、最も重要な国民の安全という安全性の立場に立つ人が私は入っていないように思いますね。みな業界の人たちばかりですよ。ほんとうに国民の健康の立場に立って、安全の立場に立って、その規格を四年ごとにやるという立場に立っていない人が多いと思う。それなら四十二年にやって四十五年だからそれでいいとおっしゃるんですが、四十二年のときにそういう立場でやったのか、四十三年にカネミの問題が起こっておるんです。そうしたら直ちにそういう立場に立ってもう一ぺん見直しをしなきゃならなかったと私は思うのですが、大臣、それがされてないんです、そのときに。だから、JISのあれが今日までずっと続いて問題になってきたというので五月一日にやろうと、こういうわけでしょう。その間、野放しですね。なぜカネミのときやらなかったのですか、それは怠慢じゃないですか。
  206. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 怠慢ということよりも、とにかくもっとやればよかったということはよくわかります。しかし、まあすなおに申し上げれば、これほどのものというような、そういう観念ということと、それからこのPCBというものをほんとうに、カネミオイルの問題もございましたが、ほんとうに注目をしてきて、これはたいへんなものなんだといってきてからまあ約半年、半歳でございます。そういうことでございまして、おしかりを受ければ以後気をつけますと、こういうことでございますが、どうもそのときにはそれなりの理由があったわけでありまして、まあとにかくこれだけのたいへんなものを万全な措置をとるように将来いたしますということでひとつ御理解いただきたいと思います。
  207. 須藤五郎

    須藤五郎君 まあそれは私は理由がないと思うのですよ。理由は怠慢だったという理由しか私はないと申し上げなきゃならぬと思いますね。今後十分注意をしてやってもらいたい。  それからPCB対策の一本的運営体制ということで、少し私質問したいんですがね。PCB対策につきまして、現在のばらばらな体制を改めて、政府の、一体となった、一元的な体制をつくることが私は必要だと思うんですが、それに対して政府の見解はどうでしょうか。
  208. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) PCBの処理のための政府内部の体制につきましては、昨年末、官房長官通達によりまして、各省間の事務の連絡調整を行なうべきであるということで、各省連絡会が現在設置されております。これは、ことしの一月以来、六回にわたりまして、緊密なる連絡のもとに総合的な推進をはかっておるわけでございますが、最近のPCB問題のより一そうの重要性にかんがみまして、近く、もう少し具体的な推進形態といいますか、形を整えますように、関係各省間で推進対策の母体をつくり直そうということで、現在検討中でございまして、近々そういうかっこうでの機構の確立がはかられる予定に相なっております。
  209. 須藤五郎

    須藤五郎君 せっかく、それを早く発足さして、十分な体制をつくっていってもらいたいということです。  それから、新たな化学品のチェック体制について質問したいんですがね。これは、これまでPCBがあまり問題にされず、ずっと素通りしてしまったところに、こういう問題が起こってきたんですから、今後は、そういう点非常に注意してもらいたいんですが、PCBの苦い教訓から、政府は、新たに開発される化学品の危険性や、急性、慢性の毒性のチェック体制はどうあるべきだと考えていられるか。毒劇法に指定されていない物質であれば自由に生産できるいまのあり方を、どう改めるお考えなのか。というのは、今度新ノーカーボン紙からPCBが検出されたという記事が新聞に出ております。きょうの新聞ですが、川崎市の公害局が住民異動届け用に使っておる紙から、五一〇PPMというPCBが出たということが出ているわけですね。これも、だから新ノーカーボン紙だったら問題はないんだといって、もう無原則的に自由に野放しにしておくということが、こういうことになってくるんですから、だからこういう場合には、前もって、政府のほうで責任を持ってよく検討し、科学的な分析なりいろいろやって、だいじょうぶだという、こういうことにしていただかないと、国民は安心していけないということなんですが、それに対して、政府はどういうふうにお考えになっているか、決意を伺っておきたいということです。
  210. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 毒性の強いものは、毒物・劇物取締法等に指定されて、十分な管理体制のもとにあるわけでございますが、劇物等に指定をされておらないが、大量に使うとたいへんなものである。いままでの様態では問題はないと思われておったものが、新しい製品は思わざる毒性を持っておると、こういうことが間々あるわけでございます。これは、サリドマイドなどは全くそのいい例でございます。そういうものでありますから、やっぱり、こういうものは、政府でいろんなものをやるといってもむずかしいので、通産省としましては、軽工業生産技術審議会というのがございますから、ここだけでというわけじゃございませんが、こういうところを駆使しまして、やはり適切なる基準とか体制とか、法規の整備とかということを抜本的に検討しなきゃならぬと思うんです。外国でもあまり例のないものもあるんです。いまのサリドマイドというものは、西ドイツ、その他でもって初めて出てから、やらなきゃいかぬ、こういう問題もありますし、科学技術の進歩の過程においては、こういう問題がいろいろ出てくるわけであります。特に高能率の、性能のいいものは、場合によって毒性も強いということがありますから、やっぱり通産省も各機関意見も徴しながら、早急に法制を含めた体制整備ということに対して取り組まなきゃいかぬと、こう思っております。
  211. 須藤五郎

    須藤五郎君 今度は、そのPCBの回収問題について、私質問したいと思うのですが、これが一番今後の重要な課題だと思っております。もうすでに五万三千トンもPCBは出てしまったわけですね。出てしまったものを、これをどうして早く、できるだけたくさん回収するかということが、われわれに課せられた問題だと思うのです。この点は、大臣も同様なお考えだろうと思うのですがね。かりに回収に困難はあっても、全力を尽くして回収すること、考えられるあらゆる手段を講ずることが回収の基本的な考え方であると思いますが、この点はいかがでしょうか。回収不可能なPCBを、政府は一万七千トンと推定しておりますが、これは、もっともっと少なく私はできるのではないかと思うのです。——かためて質問します。——かりに、熱媒用の問題ですね。熱媒用は閉鎖系です。一度充填すると半永久的に使用するものでありますから回収可能であるはずです。ところが、政府の推定回収率は七〇%と、こうなっておるわけですが、これは、私はいささか低過ぎるような感じがするわけです。政府の努力で、もっともっとできるはずだと私は思っております。回収不可能とされておる二千五百トンですね、もっと回収が私はできるはずだと、こういうふうに考えております。たとえば、大阪府では、PCBの使用が予想される府下の四百五十四の工場を対象に、PCB使用の有無、使用量、用途等を調査しまして、実態の掌握につとめておるわけですね。この大阪府の、一地方自治体がやっただけの努力を、同じような努力を国がやって、業界に回答の義務をつけて、義務づけをして調査を行なえば、私は、熱媒用PCBの回収率は、もっともっと、七〇%じゃなしに九〇%ぐらいは直ちにできる。回収率が上がると思うのですね。徹底した調査を私はやるべきだと思うのですが、そういう点について、通産大臣どういうふうにお考えになりますか。
  212. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあPCBを、五万トン余も使われたものでございますが、この中で、まあ閉鎖用に使われたもの、電気器具用とか電球とかというものは、これはわかっておるわけでございます。しかし、もう廃棄されたものもあります。これは、実際ラジオの受信機とかテレビの受像機なんかでも、こわれて、もうそのままほうり出して燃やしたものもありますし、まあいろいろなものがあるわけです。しかし、使われておるものというものがわかっておりますから、これをひとつ、できるだけ回収さしてみます。可能な限り最大の努力をするということが一番でございます。残っている中から、そのまま回収が可能であるものということになれば、これはすべてのもの集めればいいことでありますし、そういう意味では、もう全然回収が不可能な状態になってしまって、焼けてしまいまして、土の中へ入ってしまったというものであればだめですが、そうでなければ、形をなしておるものならば、これは回収できるはずでございます。そういうものに対しては、全力をあげようということ。この点は、またあとで申し上げますが、あとは、まあ感圧紙に使われたような四千四、五百トンというものです。これはもうすでに使われて、故紙として再生されてちり紙になっておる。そのちり紙の中から相当なPCBが検出されているのですが、これはまあ、あらゆる再生された紙というものを、日本から——日本から出て行ったものもありますから、日本にある再生紙というものは、すべて検査をして廃棄するかというと、これはなかなかむずかしいことなんです。まあこれは、それをしもやります、やるような姿勢でやりますということを、声を大にしては申し上げられますが、家庭においたって、必ずしも古いやつから使うというわけはないのです。古いのか、きのう買ってきたのかわからない、さだかにすることができないという開放系の中の一部分、これは非常にむずかしいと思うのです、現実問題として。ただ、それは再生紙をつくる段階において、水の中に流れて、いまの駿河湾の一部に沈でんしておるとか、川原に積み込まれておるとか、日本コンデンサの工場でもって、いま沈でん池の中にあるとか——これは固形化してよそへ埋めれば済む話でありますから、そういういろんな問題は全力をあげますが、どうも、全国のちり紙からすべてを検査してやり直すということは、なかなかむずかしいということでございます。まあしかし、ほんとうに全力をあげてやるということだけはひとつ御理解のほどをいただきたいと思います。
  213. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう少し話を詰めたいのですが、時間が切迫してきますから進みますが、感圧紙というものがありますね。その感圧紙の回収対策について、私は聞きたいのですが、感圧紙のためには五千三百五十トン、これが使われておる。それらのPCBが、感圧紙をつくるために。これはすべて回収不能だと、こういうことになっておるわけですね、政府のあれによりますと。ところが、この感圧紙というのは、ほかのものと違いまして、大きな、金属的なコンデンサーのようなものと違いまして、簡単に家庭で処理できるのですね。マッチで火をつければ燃えちゃうのです。それじゃ、燃えたらそれでPCBはなくなっているかというと、そうじゃない。PCBはなくならない。そうすると、五千三百五十トン使った感圧紙を家庭で処理をしてしまえば、結局五千三百五十トンのPCBは大気中なり地中なり水中なり、われわれの生活の中にそういうものが残るということですね。だから、この感圧紙の処理は、よほど私は注意をしてやっていかなければならないと思うのですね。この感圧紙をどういうふうにして処理をしていくのか、政府のほうにお考えがありましたらお答えいただきたいと思います。
  214. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) ただいま先生のおっしゃいました感圧紙に対するPCBの使用量でございますが、五千三百トンは、実は製紙メーカー全体の総使用量でありまして、このうちには自家用トランス等も含まれておるわけであります。したがって、その感圧紙用としては四千五百二十トンでございますが、これの処理でございますけれども、先生がお話しのように、二次公害等焼却段階で出さないように、ただいま、関係各省と技術的の面につきまして現在打ち合わせ中でございます。
  215. 須藤五郎

    須藤五郎君 感圧紙の処理につきましては、感圧紙を使っているのは大商社ですね、あるいは官庁関係が非常に多いと思うのですね。そうすると、そこで処理をするということは、やはり、もう不可能ではなしに処理はできるわけですね、大部分のものが。だから、そういうことを大いにやってもらいたいということです。そういう点を、私は政府に注文しておきたいと思います。感圧紙を軽く見て処理をしないと、こんな点、十分気をつけてやっていってもらいたいということです。  それからもう一つ、PCBの使用中止をしたが、それとともに流通段階で押えることが私は大事だと、それは先ほどもずっと申し上げてきたとおり、たとえば感圧紙の場合、PCB使用中止と同時に、当時の在庫三カ月分を押えておれば、五百トン以上のPCBを回収できたはずなんです。それがなされていないというところに問題があると思います。さらに、そのときユーザーに感圧紙の使用を禁止して、これを回収させれば、もっと多くのPCBが回収できておった、こういうふうに私は思うんです。電気用につきましても、回収不可能と見られておる家庭用電気製品や小型コンデンサー——まあこれも小型コンデンサーの一つなんですがね。——たとえPCBが少量であっても、現在流通段階にある製品は、直ちにメーカーに回収させるべきであるが、回収の措置をメーカーにとらせるのかどうかという点を伺っておきたい。簡単に答えてください。
  216. 和田敏信

    説明員(和田敏信君) すでに出回っております製品のうち、在庫品につきましては、先生御指摘の回収、販売禁止というような方法をとりますことは、事実問題としては非常に困難ではなかろうかと考えております。また、消費者の手元にあります製品につきましては、消費者が不特定多数でございますし、機器が多数にのぼっておりますので、同じく非常に困難ではなかろうかと思っております。また、消費者の場合には、廃棄されるルートが多岐にわたっておりますので、これらに組み込まれましたPCBを回収することは、きわめて困難ではなかろうかと思いますが、まず、大臣からもお答えがありましたように、回収に関しては全力を尽くすということでございますので、消費者の手元にあります機器に関しましては、どのようなルートを通って廃棄されるかということを、十分調査の上検討を講ずることといたしたいと思っております。また、先生御指摘にもございましたが、現在使用されております家電製品中に含まれておりますところのPCBの量は、これまで使用されました総量といたしまして、百三十トン前後と推定をいたされまして、最としては非常に少ないものではなかろうかと考えております。
  217. 須藤五郎

    須藤五郎君 それで、家電関係のものに含まれておるPCBは、廃回品収のときに捨てられるでしょう。もうこれは、テレビは使えないとか、電気冷蔵庫も使えなくなって捨ててしまう。そのときに、気をつけて、廃品回収の段階でそれを回収する、こういうことを積極的にやってもらいたい。そういうことです。  次に、建設省の方見えておりますか。——建設省に伺いたいのですが、ビル工事、特に古いビルを新しく建てかえるときに、電気器具——PCBコンデンサーが含まれておる器具の回収を、建設業者なり電気工事業者に義務づける考えはないかどうかということ。また、建設省の営繕部は、官庁の営繕を行なう場合、古くなった電気器具などをどのように処理をしておるのか。  さらに、建設省所管の国道に照明灯は何万本ついているのか。その中で、日本道路公団なり首都・高速、阪神高速などの公団の管理下にある照明灯は何本あるのか。これらの照明灯のPCBコンデンサーは、耐用年数が過ぎて取りかえるときには回収させるべきではないか、こういうことです。  もう一問、いまの続きですね。地方道その他の照明灯の場合も、方法を考えれば、私は回収できるはずだと思うのです、同じように。回収しようとする姿勢が大事であり、少しでも多く回収しようとする積極的取り組みが政府に一番必要なことだと思いますが、今後の回収に対する措置について所信を伺っておきたいということです。あと一問で終わります。
  218. 吉田公二

    説明員(吉田公二君) 建設省の建設業課長でございますが、ただいま御質問の中で、ビルの解体工事等の場合に出てまいりますPCB使用の器具の問題でございますが、なるほど、従来必ずしも適切でなかったということは考えられますが、通産省その他関係機関と十分相談をいたしまして、的確な措置をとることをきめまして、建設業者に順守するように、十分行政指導の形でやってまいりたいということでいたしております。
  219. 須藤五郎

    須藤五郎君 高速道路に何万本ついているか。数がわかっておったら言ってください。
  220. 鈴木茂男

    説明員(鈴木茂男君) 官庁営繕部で建設いたしました電気設備につきましては、工事が完成すると相手官庁に引き渡します。引き渡した以後の設備の管理は相手官庁で実施されております。それから、改修あるいは解毀などの工事が行なわれる場合には、あらかじめ電気器具類は撤去いたしますので、撤去したものにつきましては、やはり相手官庁に引き渡して、相手官庁のほうで処分をなさるというようなのが実情でございまして、したがいまして、管理のぐあいとか、あるいは処分する場合の実態につきましては、私どもとしてはつまびらかにしておりません。官庁営繕部で、電気設備といたしましては、御存じのように、トランスもあるし螢光灯もある、コンデンサーも使うということで、いままでの、私どものつくりました建物にはPCBの製品が入っておるのが実情でございます。今後の発注に際しましては、いろいろと問題がございますので、関係省あるいは関係団体等ともよく連絡をとりながら、今後のPCBにかわる製品につきまして、調査あるいは検討を現在続行しておるところでございます。
  221. 須藤五郎

    須藤五郎君 これで終わりますが、——ああそうか、まだあるのや。
  222. 菊池三男

    説明員(菊池三男君) 国道に、こういうものを使っている照明は何本あるかということでございますが、国道にはいま五万七千本ございますが、そのうち、このPCBを使っておるのは約二割ぐらいと思います。全部には使っておりません。それから、道路公団が約一万五千本ぐらいあると思います。それで、これにつきましては、不要になったとき、これは全部集めて、この廃棄処分がきまるまではそのまま保存しておくというように、現在通知を出してございます。
  223. 須藤五郎

    須藤五郎君 最後に、被害者に対する補償の問題でちょっと伺っておきたいんですが、これは一番やっかいなことは、PCBというやつは体内に蓄積して出ていかぬという問題ですね。これが一番問題だと思うんですが、千二百度以上の熱処理しないとPCBは分解できないということを伺っています。そうなると、なかなかこれはむずかしいことだと、大気、地中、水中に永久に残っていくという結果が生まれてくると思うんですが、同時に被害の状況も、今後相当長期間にわたって、私はこれが残るんじゃないかと、こういうふうに考えられると思うんです。そこで、その補償の期間をどういうふうに考えていくのか。この間、私、松下電器の豊中工場へ行って副社長に会いまして、この補償の問題をどうするかと聞いたら、副社長は、十分な補償をいたしたいと思っておりますと、こういうふうに答えておりました。あそこは、工場排水を工場内の小さいため池のようなところで、活性炭のようなものを入れて、その油を吸収して、そのあとを外に流していると言うんです。しかし、そのため池は、私たちが若いときに魚を釣りに行った、単なる村の用水にすぎないんですね。周囲も何にも囲いをしてない、土のままなんですね。そして、そこから用水路をつくって、たんぼのまん中を通ってずっと流れていっているわけですね。だから、その間、そこら辺の土地が汚染されちゃっておるわけです。私は、ある一つの農家をたずねました。そうしたら農民が言うんですよ。これまで私は自分のところでつくった米をずっと食べておりました。ところが、これがわかってからもう米を食べることができない、もうその日から私は米を買って食べておりますと、こう言うんですね。その土地にはPCBが相当長くありますからね。この農家は相当長く米を買って食べなきゃならぬという、こういう状態になってくるんです。その農民の損失をどういうふうにして補償していくかということですね。つくった米を松下は全部買うと言っていますよ。しかし、それはことしだけの問題じゃないですね、それは今後ずうっと長く続く問題ですね、これをどういうふうに処理していくのかですね。  それからもう一つは、琵琶湖の汚染の問題がありますよ。琵琶湖の湖にもPCBがあるというのです。私も大阪府に住みまして、琵琶湖から淀川に入った水を水道にして……、それで、私も琵琶湖の水を実は飲んでおるわけなんですね。ところが、あの中にPCBが入っているとなると、私の体内にもPCBが蓄積されておるかわからぬね。それがどの段階で出てくるかはわかりませんが、そういうことなんですね。これは私だけじゃないですよ、全関西の人たちがこういう危険にいまさらされておるわけなんですね。  草津の農村では、五〇〇〇PPMというような、多くのPCBがたんぼの中から出た、米から出たというので、ここは米をつくることができないで、草津の農民は自分でつくった米食わずに買って食べなきゃならぬ。これがいつまで続くのか、相当長期にわたってこういう状態が続いていくということが予測されるわけですね。だから補償も、相当長い期間補償をするということにしないと、草津は日本コンデンサのあれが出たんですが、だからそういうことにならないと補償は十分と言えない、そういうことなんです。で、政府の、補償に対する、どうしたらいいか、どうするかという点を、私は通産大臣に最後に伺っておきたいと思います。
  224. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ公害というような問題、制度上もだんだんと完備しておりますが、このPCBというような問題、実際日本コンデンサとか、そうまとまったところでもってというのはわかりますが、そうでなく、こう、いろんなものに使われてしまった、その結果ということになると、カネミオイルのように明確な症状が出たりすれば、健康被害でありますから、これはもう相互の間でもって、十分話し合いをして、これは片づくと思いますが、しかし、いまの米の問題、これはカドミウムも同じことなんです。これはシアンの問題も同じことなんです。こういう問題は、これはやっぱり、会社で大体土地まで買うということをやっておるんです。これは長くやるといっても、なかなか、とても補償費の限界がつかめないというので、安中工場などはカドミの問題で、汚染されておるたんぼは全部買い上げます、こういうことを言っています。買い上げるだけじゃ困る、あとどうするのか、じゃ代替地を買って交換します、というところまでやっておるわけですが、こういう問題、環境庁を中心に、いま政府部内でも話を詰めて、こういう問題に対して、やはり準拠法を置くのか、法律がなくても制度上どうするのかということを何かしないと、新しい問題でありますから、そういろいろケースもないし、過去の例もないということで、めんどうな問題もありますので、環境庁中心に、しかるべくいま検討中でございます。
  225. 須藤五郎

    須藤五郎君 それじゃね、PCBの中から、PCBの何百倍するという猛毒まで大阪では検出されておるということなんですから、この問題は、そうのんきには扱えない問題だと思うんですよ。ひとつ通産省も本気になって、これまでのような、そんなルーズな考えじゃなしに、しっかりと取り組んで、国民の不安をなくすために、私はやっていってほしいということを最後に申し述べまして、私の質問を終わりますが……。
  226. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) はい、わかりました。
  227. 内藤誉三郎

    主査内藤誉三郎君) 以上をもちまして通商産業省所管に関する質疑は終了いたしました。     —————————————
  228. 内藤誉三郎

    主査内藤誉三郎君) 以上をもちまして、本分科会の担当事項であります昭和四十七年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中防衛庁、経済企画庁、外務省大蔵省及び通商産業省所管に関する質疑は終了いたしました。  これをもちまして本分科会の審査を終了いたします。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを主査に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  229. 内藤誉三郎

    主査内藤誉三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  これにて散会いたします。    午後四時十一分散会