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公述人(
鎌倉孝夫君) ただいま紹介されました鎌倉であります。
昭和四十七年度の
予算に関して、その
問題点、あるいはその問題の
意味するところを、以下、基本的な点について申し述べたいと思います。
御承知のように、現在は歴史的な
転換点、転換の時期であるということがいわれているわけでありますが、昨年のニクソン・ショックあるいは円の切り上げ等々という問題が続く中で、従来の、いわば大
企業中心の生産第一主義的な財政の運営のしかたを、
福祉政策あるいは
人間尊重の
政策へと転換しなければならないということがいわれておりますし、そうして四十七年度の
予算については、そういう点が
重点施策となっているということが強調されているわけであります。
では、客観的に見て四十七年度の
予算というのは、はたしてそういった
内容になっているのかどうかということを、以下私の考えを申し述べていきたいと思います。
そこで、四十七年度の
予算に関する問題と思われる点を、まず歳入の面、さらに歳出の面、
経費の
内容にわたって少し御報告したいと思うわけです。
まず歳入の面につきましては、これはもう御承知のように、
公債発行が非常に大規模に拡大しているという点を、何よりも指摘しなければならないと思うわけであります。すなわち、
一般会計からの
公債発行が一兆九千五百億円、歳入の中の一七%に達する。さらにそのほか、
地方財政におきましても、
地方債の
発行が一兆七千二百七十八億円に達し、前年度当初に比べまして、これは五九%もの
増加ということになっているわけであります。
問題なのは、このような
公債発行がいかなる
意味を持っているのか、あるいは
公債発行による問題というのは、一体どういうところにあるのかということを明らかにしなければならないという点だと思うわけであります。
すなわち
公債発行というのは、当然のことながら、現在存在しております生産力過剰に基づくいわゆる商品の供給過剰、それによる
価格の下落を、いわば
公債発行による需要の
増加によって下ざさえしていく、それを通して、いわば
景気不況対策としての
役割りを果たしていこうとするところに、大きな
意味があると言うことができると思うのでありますが、このことは、言うならば、経済の法則からして当然下がるべきはずの
価格を、いわば
政策を通して下げどめさせるという効果が当然働くわけであります。言うまでもなく、このことによって――特に
公債発行を通した
経費の
内容自身がもちろん問題でありますが、その点はあとでお話することにいたしまして、こういう形で
公債発行による支出の
増加が行なわれることによって、
価格の下げどめがされるということは、それはとりもなおさず、いわゆるインフレ的な効果であるというふうに考えなければならない。そのことが同時に、いま、しきりに問題になっております大
企業によるいわゆる
管理価格、
管理価格を維持するところの
一つの大きな条件になるという点を考えなければならないと思うわけであります。このような、
価格をささえる、
インフレ的効果を実現するという点、この点に重要な
一つの問題があるわけであります。
さらに第二点としては、
公債がこのように増発されますと、それによって当然、
租税負担力の大きい、つまり
負担力のある部門あるいは階層における租税の負担がいわば免れてくるという、そういう効果があるわけであります。
公債発行というのは、それ自身は、その
公債発行によって調達される
財政資金というのは、累進課税的な形で調達されるわけでは決してありません。でありますから、つまり
租税負担力のある者が税金を応分に納めていくという形は、むしろとり得なくなってくるわけであります。逆に、
租税負担力のある、あるいは
余裕資金のあるところが
公債をいわば買い取り、それによって利子を獲得するということが実現されてくるということにもなります。
しかも、この利子あるいは
公債償還というものは、結局のところは後の
税金め増大ということを通して行なわれていかなければならないわけでありまして、負担されていかなければならないわけでありまして、そういう
意味では、
国民大衆の
税負担というものを
増加させざるを得ないものということが言えると思うのです。こういう
意味で、
公債発行政策というものは、
税負担という問題からしても大きな問題を引き起こしているのではないだろうかと言うことができます。
で、ついでに申し上げますと、現在でも、
昭和四十五年度におきましても、いわゆる
企業の
交際費は一兆円をこしておりまして、そのうちの二七%が
課税対象になっている、こういう状況になっておりますし、また四十七年度におきましても、
租税特別措置等によって四千三百七十億円の
減免税措置がとられているということであります。もし、
福祉重点あるいは租税の公平という問題を
ほんとうに貫いていくならば、むしろ
公債発行による
財政資金の調達というよりは、このような
公債費の問題なりあるいは
租税特別措置といった問題、ここに
一つの
租税源泉というものを求めていく必要があるのではないだろうかというふうに考えられるわけであります。
公債発行についての第三の
問題点は、いわゆる
公債発行は、建設的な
公債が
発行されている、
公共投資の額といわば見合った形での
建設公債であるということがいわれているわけでありますが、この点についても、実は私は問題があるのではないかというふうに考えます。
どういうことかと言いますと、
公債によって調達される
財政資金というのは、目的財源的にそれを通して特定の
経費が支出されるという形にはなっていないわけでありまして、したがって、
公債発行によって調達した
資金も
財政収入として一括されつつ、その一括された中から各
経費が支弁される、こういう形になります。したがいまして、
公債発行収入が建設的な
公共投資にのみ使われるんだという形には、実質的にはならない。まあ形の上ではそうも言えますけれども、実質的には必ずしもそうとは言えないわけであります。したがいまして、そういう
意味では
公債発行というのは、実質的には
赤字公債を
意味するものと考えなければならないと思うわけです。
ところで、問題なのは、われわれが
公債をこの点で問題にしたいのは、一九三〇年代において、この
公債発行の増額が、いわば戦争の費用、軍事が増強のために安易に利用されていき、そうしていわゆる経済の
軍事化、
軍国主義をもたらしてきたという、そういった歴史的な教訓、これを今日の時点において、われわれは十分反省していかなければならないということだと思うわけです。
その点に関連して言いますと、やはり
公債発行の膨張というのは、
公共投資の増大ということばかりでなく、
防衛関係費等をはじめとする軍需的な
経費支出の膨張を安易にもたらしていく、そういった危険な要素を内包しているものととらえなければならないと思うわけであります。
以上三点にわたって、
公債発行というのは種々の重要な問題を持つもの、こう考えなければならないと思います。もちろん、このような
公債発行によって行なわれる
財政収入というのが、一体何に、どういった
経費に使われるかというところに、実はもっと重要な問題があるわけでありまして、したがって、当然、次に
経費の
内容についての
問題点というものを申し述べる必要があります。
そこで、
福祉重点あるいは
物価対策等に
重点を置いているといわれております四十七年度
予算における
経費の
内容について、少し私の意見を申し述べていきたいと思います。
何点かにわたって指摘していきたいと思いますが、まず第一に、
公共事業費の問題についてであります。これは御承知のように、その
一般会計あるいは
財政投融資の中における
増加は、非常に大きい規模に達しております。しかし、従来のようないわゆる道路や
港湾設備等々、いわゆる
産業基盤整備だけではなく、四十七年度
予算におきましては、
住宅や
下水道、公園、あるいは
廃棄物の処理、こういった点にもかなりの
経費がさかれているという特徴が見られるわけであります。こういった点は、非常に重要な点であるということは確認しなければならないと思います。しかしながら、以下、いろいろな問題がやはりその中に含まれていると、こう考えなければならないと思うわけです。
まず、
公共事業費における
重点的な項目というものは、何よりも、たとえば新
全国総合開発計画に乗った大型の
産業基盤整備のためのプロジェクト、これがやはり中心をなしているわけでありまして、
全国新幹線の問題へ特に山陽新幹線あるいは
全国縦貫高速道路の建設、こういった点がやはり
重点的な項目にされております。たとえば、道路においては
一般会計から八千五百億円、これは
公共事業費の四〇%に達する規模でありますし、また、
日本道路公団の
事業費だけでも二千五百五十億円、四十六年度に比べて四六%の上昇という形になっているわけであります。
これは一体どういう
意味を持っているのかということでありますが、当然、新
全国総合開発計画に乗った、いわば全国的な規模での、そういう表現を使うならば
日本列島全体のいわば
総合理化の
政策であるというふうに考えられるわけであります。この点は両面持つわけでありまして、当然、そういった大型の
産業基盤整備によって
運輸交通体系が整備され、それによって
運輸コストの削減がはかられるという問題が
一つと、そして当然もう
一つは、
一つの
不況対策として、需要の
増加、
公共投資関連事業に対する需要の
増加、それをてことしたところの
不況対策、こういう両面の
意味があるという形でとらえていかなければならないと思うわけであります。
この点に関連して言いますと、今年度改組されようとする工業再配置・産
炭地振興公団(仮称)の
意味でありますが、これもやはり
公共事業のいま言いました
意味というものを、特に
過疎地帯への工業の再配置を通して適地への工業の誘導が
政策的に行なわれていく、それを国家的な
資金の融資を通して促進させていく。何よりもこれは、やはり全国的な規模における
合理化の促進ということが重要なねらいとされているといっていいと思います。このような点が、やはり基本的には
予算の中での
公共事業費の
重点とされている点を何よりも確認しなければならないだろうと、こういうふうに思うわけであります。
さらに本年度、四十七年度の
予算におきましては、いわゆる
不況対策としての
資本救済的な
経費というものが、非常にきめこまかく行なわれている点を指摘しなければならないと思うわけであります。
たとえば
繊維産業に対しては、その
対策費として二百四十六億円が支出されますし、
為替差損補てんについては、
業界試算の
為替差損の六六%を政府が補償するという形になる。このような形で
為替差損は大きく補償されるわけでありますが、逆に、為替の利益を受けた
企業からは、いわば
為替益に対する課税というような形での利益の吸い上げというのは、何ら考慮されていないわけであります。さらに、
不況対策としての
資本救済政策、この中には石炭・
石油特別会計の新設、こういう問題がありますし、あるいは
電算機業界も、資本の
自由化、
電算機輸入自由化に対処する
電算機業界への
体制整備資金として、四十七年から四十九年度にかけて三百四十一億円の
補助金が出される。以上見ますように、
公共事業費につきましても、あるいはその他いまこまかい項目を指摘してきましたが、それを見ますと、
不況対策という形で、
資本救済についてはかなりきめこまかい
対策が行なわれているということが指摘できる
とい事ふうに思われます。
福祉予算については後ほどお話しいたしますが、さらに第三番目の問題として、
経費の問題において当然ここで指摘しておかなければならないのは、いわゆる
防衛関係費の問題であります。
御承知のように、これにつきましては
政府修正二十七億円、二十七億九千方円の
減額修正が行なわれたわけでありますが、やはり、ここで私は指摘したいのは、
国防会議による四次
防計画というものの確定以前に、実質的に、いわば四次防以降の主要な
装備品あるいは
研究開発投資というものが行なわれているということ、その点が、現在における
軍事費、
防衛関係費の持つ重要な問題として指摘しなければならないと思うわけです。特に問題なのは、
国産兵器の拡大ということが目標とされて、そのための、新しい
軍事技術の
開発のための
研究開発投資が、非常に
重点的に行なわれている点だと言っていいと思います。つまり、
不況対策としての
防衛関係費の増額、つまり絶対額の
増加という点ばかりでなく、問題なのは、
防衛関係費の比率は
一般会計予算の七%という形で低いとしても、その質的な側面、質的な
内容を私は非常に問題としなければならないと思うわけです。
この
質的内容というのは何かといえば、言うまでもなく
防衛関係費の中における
研究開発投資で、その
研究開発投資を国が負担することによって、
技術開発が行なわれる。この
技術開発によって
企業の
合理化、
生産性向上というものが果たされていく。あるいは
開発した技術が
企業に独占的に利用されていく。こういった形で
防衛関係費が使われているということ、このことが非常に重要な問題ではないかということであります。四次防の計画の中において、三次
防段階よりも、いわゆる新たな兵器の
開発のための
研究開発投資というものが約三・八倍も見込まれているわけでありまして、こういった点から考えまして、
研究開発費を国が負担するということを通して、いわば
合理化、
生産性向上あるいは
技術独占という形で
企業の利益がはかられてしまうのだ、この点が何よりも重要な問題として指摘しなければならないというふうに、私は考えるわけであります。
こういった、
公共事業費あるいはその他の
不況対策、そしてまた
防衛関係費、いずれも、
不況対策、需要の
増加というものをはかりながら資本の
蓄積促進をはかろうとしているという
内容が、やはり依然として基本的な
内容にされているということを確認しなければならない。
では、
福祉政策ということは一体どういう形で行なわれ、どの程度の
内容になっているのか。次にその面も問題にしなければならないと思います。
四十七年度の
予算におきましては、
福祉重点とい多ことが言われているわけで、種々の面で
福祉予算が増額されたことは確かだと思います。たとえば
住宅、
下水道、公園あるいは
ごみ処理といった問題についても、従来よりはかなり
経費の支出が増額されたことは、非常に重要なことだと言っていいと思うのです。しかし、問題なのは、たとえば
住宅建設について見ましても、
住宅投資が
増加しますと、
地価対策というものが十分行なわれていなければ、当然のことながら地価の上昇というのを引き起こさざるを得ない。そうしてまた、
住宅建設が
資金の借り入れを通して行なわれることから、当然、
建築費が
増加してくる。そのために、
住宅が
増加していったとしても家賃がかなり高くなってしまう。たとえば、月々三万円や四万円の家賃を払わなければ
公団住宅にも入れない。こういう
住宅を建設していっても、一体だれのための
住宅なのかというふうに、
ほんとうに言いたくなってしまうわけであります。ですから、どうもねらいとして、私たちが考えたいのは、
住宅建設というものが
公共投資として、言うならば
需要増加をはかる
政策というところに大きなねらいがあるというふうに、その点が主目的なのではなかろうかというふうに考えざるを得ないわけであります。
さらに、たとえば
老人対策については、これもいろいろな面で
福祉が進歩したということは言われると思います。しかし、問題なのは、このような
老人対策、たとえば
老人ホームの問題あるいは
老人医療の
無料化と、着実に
福祉が前進した側面があるのですけれども、他方、ここで私が問題にしたいのは、一方で総定員法のワクによって
国家公務員の
定員削減が行なわれているということであります。四十六年度から三年間五%の
定員削減、これが行なわれておりまして、特に
民生関係の
人員不足という点は、非常に深刻なものがあると言わなければならないと思うわけです。でありますから、たとえば
老人ホーム建設のために金を出した、また
介添え人、
介護人を少しふやしていったとしても、たとえば保護すべき老人をさがすために人手が不足する、あるいは
老人ホームにおいて保護すべき人手が決定的に不足するということであるならば、はたして真の
福祉政策というふうに言えるのかどうか、こういう問題があるわけであります。つまり、施設は増大しても、サービスを行なうべき人手がむしろ全体として削減される。こういう形で行なわれている
福祉政策というものは、一体どういうことなんだろうかというふうに考えるわけであります。
われわれの大学におきましても、
定員削減によって、最近では賃金の低い、そして臨時的な職員、権利も十分保障されていない職員が非常に大幅にふえております。それを雇うために
研究費をもさかなければならない。こういう状態が出ているわけであります。こういった形での
定員削減、その上で、いろいろと
福祉予算としていわば施設が増大したといっても、やはり本来、真の
意味での
福祉政策というものにはならないのではなかろうかというところに大きな問題を感ずるわけであります。
で、この点に関連してもう
一つ、
公害対策の問題について、やはりその問題を指摘したいと思います。
公害対策費もやはり、かなり増額された、四十六年度の倍に増大したという点は、きわめて重要な点だと言っていいと思います。しかし、公害によって被害を受けた者に対する
医療手当はあまり増額されないのに対して、公害を防止する施設をつくる
企業に対する
財政投融資、これがいわば
重点的に行なわれているということであります。つまり
公害防止といっても、公害を防止するところの、いろいろな機械をつくる産業・
企業に対する
財政支出というところに
重点が置かれているということ、このことをやはり
一つの問題としてとらえなければならないと思うわけです。ある
意味では、このような
公害防止産業に対する
財政支出の増大は、現在存在しております
機械産業、
機械工業における
過剰生産に対する、
一つの
対策としての
意味を持つと言うことができるのではないかと思うわけです。このように、いわば直接被害を受けた人間に対する補償というよりも、むしろそういった、直接には
企業に対する
経費の支出という点に、どうも
重点が置かれているという点を問題として指摘しなければならないというふうに思うわけであります。
最後に、
経費の問題に関連して、
物価対策についてやはり一言指摘しておく必要があると思うわけです。
この物価の安定という点についても、いわば
重点施策の
一つとして指摘されているわけでありますが、こまかい点は時間の
関係で述べられないと思いますけれども、たとえば
野菜価格安定対策費や、あるいは低
生産性部門における
近代化促進、あるいは
国鉄財政再建のための
助成費の増大、こういった点で
物価対策が行なわれてきていることは確かでありますが、やはり問題は、物価安定についてのいわば根源、その最も重要な根源に触れる
政策が行なわれていないということ、この点を問題にしなければならないと思うわけです。つまり、現在
物価上昇を引き起こしているところの
根本的原因、これは何であるかという点、この点の
対策にメスがふるわれていないということ、この点を指摘しなければならないわけです。
では、どこに原因があるのか。ここで詳しいお話はできないのは残念でありますけれども、結論的に言いますと、やはり
一つは
公債発行の膨張、インフレ的な財政
政策が行なわれているという点が
一つ、そうしてそれを基盤として、特に独占的な大
企業による
管理価格の支配というものが厳然と行なわれているということ、この点が、全体としての
物価上昇をもたらす根本的な原因になっているということだと言っていいと思うのです。この点にメスをふるわない限りにおいて、根本的な
物価対策というものはあり得ないと言わなければならないと思います。
で、さらにこの点について、公共料金の値上げという問題についての考えを少し申し述べておきたいと思います。
すなわち、四十七年度
予算におきましては、非常に多種類の公共料金の値上げが予定されておるわけでありますが、それは結局のところ、政府みずからがインフレ的な財政
政策を行なう、そのことによって、政府
関係の諸事業においては、当然
経費が膨張してくるということにならざるを得ない。他方、政府
関係事業においては近年特に独立採算制というものが強く要請されてきているわけでありまして、ということになりますと、一方では
経費が上がる、他方では独算制を行なっていかなければならないということになれば、当然、料金の値上げをしていくということにならざるを得ないわけであります。そういうところから料金の値上げが引き起こされているわけでありますが、これはやはり財政
政策のあり方、そしてまた独立採算制という問題、そこに原因があるものと考えなければならない。しかも問題なのは、このような公共料金値上げということによって、
国民大衆が大きな打撃を受けるばかりでなく、独立採算制というものが行なわれなければならぬという点から、政府事業における激しい
合理化が行なわれ、そして労働者の雇用の減少やあるいは労働強化が引き起こされているという点を、われわれは重要な問題として指摘しなければならないというふうに思うわけであります。
以上、四十七年度
予算全体に対する重要だと思われる点を指摘してきたわけでありますが、やはり
福祉政策が
重点だというふうに言われましても、むしろそれは、たとえば物価の問題、
物価上昇の問題や、あるいは
合理化の問題ということによって吸い上げられてしまうというふうにとらえなければならないと思いますし、したがって、本質的には、四十七年度
予算というのは、一方では、インフレによる
物価上昇を、そしてまた実質的な増税ということにならざるを得ない本質を持っているし、他方では、
合理化を財政
政策を通して促進していく。この
合理化というのは、言うまでもなく、今日の資本主義における資本の
合理化であるという
内容を持っているわけでありまして、したがいまして、当然、一方では雇用量の減少、他方では労働強化という形を引き起こさざるを得ない、そういう現実的な
内容を持っているものととらえなければならないと思うわけであります。つまり、インフレと
合理化というものがやはり本質的な
内容となっている
予算であるというところに、われわれは四十七年度
予算における重要な
問題点というものを指摘することができると思います。
そして問題なのは――私は国会の中でさらに明確に議論していただきたいと思うわけでありますけれども、問題なのは、なぜこのような本質的にはインフレと
合理化を遂行していくような
予算が組まれざるを得ないのか。それはどこに問題が、根拠があるのかということ、この点を明確にしなければならないのではなかろうかというふうに思うわけであります。
現在の国際的な経済の関連あるいはその中に置かれた日本の経済の状態というものを見ますと、ある
意味では非常に重要な歴史的な
転換点というところにあると言っていいと思うわけです。ニクソンショックや、あるいは円の切り上げ、この問題は何を
意味するのかと言えば、一面では、国際的な経済の事態は、一九三〇年代におけるような国際的な資本主義国間の対立、経済対立の激化、さらにはブロック化の傾向、ブロック化の危機というものが存在している、こういう現実があると言っていいと思うわけです。このような事態に直面して、やはりいままで遂行されてきたところの大
企業中心の生産第一主義的な成長
政策というものを決定的に転換していかない限りにおいては、事態はきわめて危険な方向へと進んでいかざるを得ないのではないかというふうに考えられます。そして、現在行なわれつつある、行なわれようとしている財政
政策も、実は事態を決定的に転換させるというよりは、むしろ従来まで進めてきたところの
政策をやはり基本的には踏襲し、したがって、国際的な経済の対立
関係をさらに激化させる、あるいは、この対立
関係の中で、たとえば円の切り上げという形で受けた打撃を
国民大衆へと転嫁させていってしまう、こういう形でインフレのもとで一そうの
合理化が進んでいく、こういったやり方が行なわれようとしているわけであります。したがって、それだけ、国内市場のいわば狭さ、狭隘化を引き起こすことにならざるを得ないし、対外的な進出の方向が
増加していかなければならないということにならざるを得ない。国際経済の緊張
関係はさらに拡大していく、あるいはまた、二度三度の円切り上げという事態を引き起こしかねない。そしてまた、それによって再び打撃を受けるのは
国民大衆であると、こういうような事態が繰り返されていくということをわれわれは強く感ぜざるを得ないわけであります。そして、このような形での財政
政策が行なわれているところの
一つの大きな原因に、やはり、日本の経済や政治が日本を支配する巨大な独占的な
企業によって動かされ、規制されているということ、その点に大きな問題がある。この点に根本的なメスをふるっていくという形で大胆な
政策がとられない限りにおいては、
福祉政策というものも真の
福祉政策という形にはなり得ないのではなかろうかということを強調したいと思うわけであります。
私の考えは以上で終わりたいと思います。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)