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国務大臣(
福田赳夫君) 私も実は、けさ
新聞で宇山大使が何か
発言をしている、こういうことを見たわけです。そこで、さっそく外務省をして、宇山大使にその模様を聞かしたのです。で、あそこの台北では、これは非常に特殊事情があるわけなんです。つまり、
わが国の
新聞社の人が一人もおらぬ。会見の
相手は、あるいは国府系の方でありますとか、あるいは第三国の記者でありますとか、そういう方なんです。ですから、もう宇山大使もたいへん困るらしいのです。
日本語で正確に自分の言ったことを伝えてくれないと、まあ嘆いておる、そういう立場の方の会見です。
けさの
新聞に載りましたその情報は、外人記者によって
わが国のほうに伝えられたものでありまして、私はピンときたのは、これはそういう事情があるから、きっと何かその辺でいきさつの間違いがあるんじゃないか、わが信頼するところの宇山大使が、
わが国の
政府の
考え方と違ったことを言うはずがない、こういうふうに考えたわけでありますが、調査してみますると、そのとおりでありまして、こういう
質問があったというのです、
日本のマスコミが中国問題につき偏向した報道をしておるのではないか、そういう
質問、それに対して、
日本の世論調査の結果では、日中国交正常化を希望する声が多数であるが、日華関係を切るべきではないという意見も多いと、こういうことです。これは別に支障のないことを言っておるんじゃないか、そういうふうに思います。つまり
わが国の
政府は、日中国交正常化、これを望んでおるわけです。私などは、日中国交の正常化はこれを歴史の流れだ、われわれが取り組むべき最大の課題である、そう言っているんです。そのことを端的に宇山大使は言っておるわけです。しかし同時に、私
どもは、日華平和条約、これは日中
政府間交渉の過程において解決すべき問題だと、こう言っておるわけでありまするから、この日華関係を切るべきではないという意見も多いという宇山大使の
発言、これは別に支障はない、こういうふうに考えております。
それからもう
一つの論点なんですが、訪中する
日本の政治家は
日本政府を代表して中共側と話し合いをしておるのではないと、こういう
趣旨のことを宇山大使が言っております。これは大体のことを言っておるんじゃないかと思う。
日本政府の、ただいま申し上げましたような私
ども政府の
考え方、これを正確に伝えてくださっておるのかおらないのか、その辺につきましては、行かれる人の
考え方もありましょうから、私は、必ずしも
日本政府の立場に立ってやってくれておるということも少ないんじゃないか、そういうふうに考えまするときに、宇山大使が台北におるという立場においてそういう
発言をされた、これも、そう奇異の感じを私は持っておりませんです。そういう雰囲気からそういう
答弁をする、まあ自然の
答弁であったと、こういうふうに考えております。しかし、とにかく外交官の
発言というものは、置かれておる環境がいかにせよ、これは正しく
日本政府の意向を伝えなきゃならぬ、
日本政府の意向と相反するというようなことがあっては断じて相ならぬわけであります。また、
日本の世論というものにつきましては正しく伝える必要がある、こういうふうに考えますので、この上とも言動には注意をさしたいと、かように考えております。