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国務大臣(田中
角榮君) 私が申し上げておるのは、
輸出は悪であるということ、勤勉なことは悪であるというようなこと、これは日本としては誤りでございます、かように明確に答えております。しかし、オーダリーマーケティングの問題とはおのずから別でございまして、これに対しては全力をあげて取り組んでおります。毎日のように業者を呼んで、とにかくこの
輸出価格を上げなさいと、こんなときに一〇%引き上げて、その引き上げ分の
相当部分を下請や中小企業に恩恵を与えるようにしなさいということを言っておるのです。そうでなければ、大蔵省は、もう
輸出税を徴収すると言っているじゃありませんかと。(笑声)いや、それは、もう非常にきめ手として言っておるのです。ここで各自が態度を是正しなければ私も賛成するかもしれませんよと。私は、ただ賛成はしません。日本のいまの状態は、各国から
指摘せられるように、社会資本が不足しておりますし、また、国際競争力にたえられるのかといったら、そういう状態でもありません。繊維部門などは、いま機械の更新をしておりますが、西欧の織機に比べたら全部スクラップにならなければならないという状態であります。私は、
輸出税、
輸出課徴金というようなものが万一制定せられるとするなら、いろいろの前提となる条件が満たされなければならない。すなわち、どうしても
輸出価格が上がらない、
輸出は伸びる、
輸入はふえない、国際的にはたたかれるということが続くなら、それはきめ手としては
輸出税、課徴金問題が出てくると思うのです。しかし、それは
一般財源ではなく、特定財源として、これが東京や大阪や名古屋から地方に工業が再配置をされるときの費用とか、公害除去の費用とか中小企業の転職とか廃業に資するものであるというような特定目的に使うのでなければ賛成はできないという
考え方、これは、私は正しいと思うのです。そうしなかったら、十年、十五年後の日本の理想的な姿をつくるわけにはまいりません。
輸出税については、大蔵省がもうすでに新聞でキャンペーンを始めてるんだから、
輸出業者が自分で
価格を上げたらどうだと、こう言っているのです。通常、親企業は、中小企業や下請について、その設備資金の三分の一を供給しています。そういう債権を確保するためにも、また、中小企業、下請を、ほんとうにりっぱな企業として育てるためにも、
輸出価格を一〇%上げて、その分を中小企業等に還元したらどうですか。私の言うことを聞かないと大蔵省の言うとおりになりますよと、ここまで言っておるのであります。私自身は、戦前の自由競争時代に安かろう悪かろうということで、日本が世界じゅうからたたかれたというような事態を二度と繰り返さないために、理想的なやはり道を歩まなきゃならない、こう考えております。それから、賃金問題、これはいつでもソシアルダンピングだと、こう言われておるのですから、賃金を国際水準に引き上げなければならないということは、これはもう当然のことであります。私は、日本人全体を考えてみても、一流企業の社長である何であると言っても、三十年、四十年働いても財産形成もできないというような事態、これは、やっぱり制度に欠陥があると思うのです。ですから、ある
意味においては、私は、十年前大蔵省におりますときから、ある時期には所得税率を半分に下げなければいかぬ。しかし、下げる財源をどこに見つけるのかということで、まあ応益負担の原則というような
意味で、反対をさんざん受けましたが、自動車重量税などを創設したわけであります。私自身は、二十五年の間に、ガソリン税を目的税にした議員立法の立案者であります。今度また、第二の特定財源として、自動車重量税を提唱したわけでございます。やはり、何かに不合理なところがあったら、それを置きかえて、正常なものにするためには、ただ利率を引き下げるとか、ただ
輸出を押えるとかいうことでは、私は悔いを残すと思うのです。私は、働いて、うんと
輸出をして、世界じゅうが困ってもやむを得ぬなどという論者では全くない。ですから、日本の実態というものと将来図というものをかきながら、その中でよりよき道を選ぶということでございまして、そういう
意味では、
大蔵大臣も私もほんとうに同一
意見でございます。閣内不一致はありません。