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1972-04-05 第68回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月五日(水曜日)    午前十時十八分開会     —————————————    委員の異動  四月五日     辞任         補欠選任      石原慎太郎君     古賀雷四郎君      三木 忠雄君     内田 善利君      喜屋武眞榮君     野末 和彦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 白井  勇君                 玉置 和郎君                 西田 信一君                 初村滝一郎君                 若林 正武君                 松永 忠二君                 矢山 有作君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 青木 一男君                 小笠 公韶君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 川上 為治君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 内藤誉三郎君                 長屋  茂君                 平島 敏夫君                 細川 護煕君                 矢野  登君                 山崎 竜男君                 山本敬三郎君                 山本 利壽君                 山内 一郎君                 上田  哲君                 大橋 和孝君                 工藤 良平君                 須原 昭二君                 杉原 一雄君                 竹田 四郎君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 松井  誠君                 和田 静夫君                 塩出 啓典君                 内田 善利君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 岩間 正男君                 渡辺  武君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  高見 三郎君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   田中 角榮君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        郵 政 大 臣  廣瀬 正雄君        労 働 大 臣  塚原 俊郎君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  木内 四郎君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣  中村 寅太君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁経理局長  田代 一正君        防衛施設庁長官  島田  豊君        防衛施設庁総務        部長       長坂  強君        防衛施設庁総務        部調停官     銅崎 富司君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     宮崎  仁君        経済企画庁総合        計画局長     矢野 智雄君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省条約局長  高島 益郎君        大蔵大臣官房審        議官       中橋敬次郎君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省理財局長  橋口  收君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君        厚生省年金局長  北川 力夫君        農林大臣官房長  中野 和仁君        通商産業省貿易        振興局長     外山  弘君        通商産業省企業        局長       本田 早苗君        運輸大臣官房会        計課長      高橋 全吉君        運輸省港湾局長  栗栖 義明君        労働省労政局長  石黒 拓爾君        建設大臣官房長  大津留 温君        建設省河川局長  川崎 精一君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和四十七年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十七年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○公聴会開会承認要求に関する件     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会開会いたします。  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 公聴会開会承認要求に関する件につきましておはかりいたします。  公聴会は来たる四月十二日及び十三日の二日間開会することとし、公聴会の問題、公述人の数及び選定につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、質疑順位につきましておはかりいたします。  数次にわたる理事会を開きましたが、議がまとまりませんので、委員長先例に従い、従来の順位のとおり行なうことといたしたいと存じます。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  6. 向井長年

    向井長年君 議事進行。  ただいま委員長から提案されました質疑順序につきましては、本日の総括質疑順序については理事会においてその決定を見ない案件であります。したがって、委員長の職権において提出されたものと私は解釈をいたします。私は、この委員長提案に対しまして賛成するわけにはまいりません。よって、民社党公明共産党と共同いたしまして、その順序についての提案をいたします。  本日二日目の質疑者は、まず公明代表鈴木一弘君、民社代表田渕哲也君、共産代表岩間正男君、社会党代表矢山有作君の順で行なわれるように提案をいたしたいと存じます。  その提案理由を私は申し上げたいと思います。  わが国の政治政党政治であるにかんがみ、各政党には大小があるが、国民に対して責任政党として、外交防衛内政全般についてそれぞれの政策を持って国民に訴え続けておるのがただいまの現状であります。この政策をひっさげて政府のそれぞれの政策に対して論議を行ない、政府に対しても十分なる回答を要求すると同時に、国民批判を受けるというので今日までの予算委員会の意義があると思うのであります。このような角度から考えるならば、総括質疑の第一陣に対しては各党代表がまず一巡することが当然のことではありませんか。近来の現状社会党が三人の総括の後において、公明党の第一陣を出さなければならない。民社党社会党総括六人のあとでやらなければならぬ。共産党の場合は十二人のあとになっておる。こういうことでは、全く不合理と言わなければなりません。  一部では順序に対しても委員数によって割り当てを出すべきであるという意見がありますが、この点に対しては、昨日委員長提案されたように、総括質疑時間について、十分なる決定を見ておると私は思うのであります。したがって、いま述べました順によって、本日からのこの二日目の質疑は、この順によって、委員長は取り計らっていただきたいことを私は提案をいたします。
  7. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は、ただいまの向井君の提案のほうに賛成いたし、委員長提案には反対をするものであります。  その理由は、参議院というのは良識の府として運営をされてきた、その運営がなされる予算委員会におきましても、昭和三十九年までその長きにわたって、総括の第一回目はきちっと各党代表がなされてきたわけであります。それを行なってきた。これこそ良識の府として民主政治の模範と私はなってきたと思うのであります。それも昭和四十年から数の論理という暴力で、現行のだれが見ても納得でないような、ただいま向井委員からも発言がありましたような、そういう不合理な方式がなされるようになったわけであります。その点から見ても、また本院の民主化正常化が叫ばれ、いま進められているというときに、この予算委員会順序をまず正常化にすることが、一番大事だと思う。国会の花といわれているこの予算委員会が、正常化を実行することが、絶対私はその点で必要であると思います。数の暴力、こう言うべきいままでの慣行をそのまま続けようとする委員長提案には反対であり、向井君の提案に私は賛成をするものであります。
  8. 岩間正男

    岩間正男君 私は、共産党代表して向井君のただいまの提案賛成し、委員長提案反対するものであります。  反対の要点は次の四つであります。  第一は、わが党はかねがね民主主義を尊重し、国会民主的運営をかちとることを、わが党の基本的政策一つとして掲げております。こういう中で少数意見の尊重こそは、いまの民主主義にとってきわめて重要な、基本的な問題であります。  第二に、いままでの運営を見ますと、ただいまも話がありましたように、七年前までは、各党代表が初めに一回りして、そして質問しておりました。それはまさに参議院良識であろうと思います。ところが、数の論理とか何とか算数平均的なやり方で、このよい習慣を、長い十数年にわたるよい慣行を打ち破って、現行慣行を立てました。こういうことは、これは民主主義原則に反するものであります。  第三には、当然国民の知る権利、憲法に保障されたこの権利を、われわれ議員国会運営の中で、これを保障することが重大だと思います。各党主義主張政策を公平に発表する、そうしてこれに対して、主権者国民批判、検討が十分にできるような、そういう体制をこそ確立することが最も望ましいと思うのであります。その点からいえば、各党代表がまず一巡するということが最も正しい時宜に適したやり方だと思います。  第四には、参議院民主的改革がいま大きな国民世論の中で問題になっております。つい一週間ほど前の各派の会合におきまして、今後ともその実現のために努力するという申し合わせがなされたそのやさきであります。われわれはそういう点から向井提案が正しい、この提案を支持して即刻委員長においても、これを取り上げて運営されることを切望して、私の意見を開陳する次第です。
  9. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私は、今回の質問順位につきまして、理事会において数度にわたって意見調整をしたのでありまするが、いまだに完全な意見の一致をみておりません。この段階におきましては、従来の慣例を尊重して、すみやかに委員長において進行するようにお願いをいたします。よって向井委員から提案されたことに私ども反対をせざるを得ません。よって委員長に一任をいたします。
  10. 松永忠二

    松永忠二君 私は、委員長提案賛成をいたします。  いまお話がありましたが、数の暴力というお話でありますけれども、数の合理であります。数の原理であります。これは、この参議院における先例集にも二二一に「質疑又は討論発言者数発言順序及び発言時間は、議事協議会において協定する」、「質疑又は討論発言者数発言順序及び発言時間は、議事協議会において、各会派の所属議員数を考慮してこれを協定する。」と、こういうふうなことになっておるのであります。こういうふうな原則に基づいて、昭和四十一年以来この質疑順序質疑の時間等がきめられて、実施をされてきたのであります。そのつどいろいろ議論もありましたけれども、最終的には、やはり一つの基準というものが必要だというところから、この数の合理に基づいて順序決定をされてきたのであります。  また、私たち社会党は、本会議における質問については、やはり各委員会質問とは相違をして、各党代表であるというような考え方もとに基づいて、単に従来の数の合理だけでなしに、政治的な配意も必要だということから、前回実は本会議質問代表という形にかえたのであります。その際、こういうことが行なわれると、直ちに予算委員会とか委員会に波及をしてくることであるから、したがって、このことについての歯どめを明確にして、本会議順序協議をするということをはかり、それが了承されて、本会議順序がこういうふうになってきたのであります。しかし、そうだからといって、私たちはいまお話のありました政党主張を無視をするということはできないと、私たちも考えるのであります。  したがいまして、私たちはこれはいまお話もありましたように、参議院改革あるいはまたそこまでいかないにいたしましても、予算委員会の終了直後に、文書をもって各党要求をして、会議を開いて相当長時間をかけて問題を詰めて決定をすべきであるということを主張してきたのであります。そういう措置をとることによって、今後この問題のやはり合意に達するというような、こういう順序を踏むべきであって、今回の予算質問の際に、直ちにそれを主張してそれがいれられるという筋合いではないということを御了承いただきたいのであります。  最後に、もう一つ申し上げたいことは、私はこういうふうに各党主張を繰り返して、これが合意に達しないという場合に、どうするかということも先例にまた明らかであります。二二二に「発言順序につき議事協議会において協定できなかったときは、議長がこれを決定する」、(「それは本会議だ」と呼ぶ者あり)発言順序について、そういう本会議議事原則がある。委員会のこうしたものに決定のない場合には、それが先例として適用できることはすでに御承知のことだと思うのであります。したがいまして、この段階において、やはりこの予算委員長が処置をする措置としては、やはりそういう措置をするよりほかにないと私たちも思うのであります。これが万全であり、最善であるということを私たち主張しているのではありません。しかし、ものには順序、時間的な経過も必要であるのでありますから、そういう面から私たちは、この際この委員長提案どおり協議が成立をしていない段階において議長考え方で進めるということは当然なことだと私たちは考えて、いまの委員長提案賛成をするところであります。
  11. 徳永正利

    委員長徳永正利君) まず、先刻委員長提案いたしました質疑順序は、先例に従い、従来の順位のとおりとすることに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  12. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 多数と認めます。  よって、委員長提案のとおり決定いたしました。     —————————————
  13. 徳永正利

    委員長徳永正利君) それでは前回に引き続き、質疑を行ないます。矢山有作君。
  14. 矢山有作

    矢山有作君 まず最初に、先日来問題になっております外務省極秘電報の漏洩の問題について、なお重ねてお尋ねを申し上げたいと思います。  きのうの論議の中で、私は、衆議院の昨年の暮れの沖繩国会における政府側答弁では、軍用地復元補償、まあ四百万ドルと言われているわけですが、この問題が非常にたびたび論議になっておるのに、そのときには明白に、これはアメリカ側が払うものだ、軍用地復元補償の四百万ドルはこちらが出すのではないということが、私は実はきのう会議録を全部調べましたが、明確になっております。特に、吉野局長発言の中にはそれが明確に言われておりますし、なお外務大臣発言の中にも、そのことは明確になっておると思います。これは発言者のほうで御記憶だろうと思うのです。ところが、この極秘電報なるものが漏れてきまして、そして衆議院で問題になったときには、外務大臣答弁は非常に微妙な変化を見せております。それは、アメリカ軍用地復元補償支払いをやる場合に、その金がどこから出るかは日本側の知ったことではないんだと、まあ、かいつまんで言えばこういうことになっているわけです。そうすると、これは私は何としても、沖繩国会においては徹底的な国会での追及にもかかわらず明白に事実を否定しておいて、そしてこの電報外部に漏れて、それが照合されて、逃げ道がなくなった段階であいまいな答弁をして、そして逃げておると、こういうふうに解釈せざるを得ないわけです。そうなると、電報外部に漏れたことを追及なさる前に、政府国会論議の場面で、それもかなり正確な資料をもって追及されながら、全面的に否定してきた、事実無根であるといってきた、その責任、そういうふうに外交あり方というものを全然国民の目から隠してきた、徹底した秘密外交あり方というのは、この責任はどうなるのでしょうか。私は、このことに反省がなしに、電報を漏らした責任だけを、国家公務員秘密を守る責任というのはこれは別個の問題だから追及するんだとおっしゃるのは、あまりにも私は納得ができないのです。どうなんですか。
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず第一に、私どもが先国会主張したことと、また今国会で申し上げていることには、もう一点の差異もありませんです。つまり、私どもは三億二千万ドルの支払いをいたします、と。しかし別に財源を提供して、復元補償をしてくださいと、こういうようなことは言っておらないんです。つまり、三億二千万ドル支払います、一方においてアメリカ復元補償の責めに任じますと、こういうことでございまして、わがほうからわざわざ四百万ドル提供いたしますから復元補償いたしてくださいと、こういうようなことは毛頭言っておらぬ。これは前国会も今国会も、一貫してそう申し上げている。そのことを御理解願いたいと存じます。  それから、そういう事情でありまするから、われわれが外交秘密だといってこれを追跡される、そういう理由は私はないと思います。ただ問題は、それとは別でありますが、国家公務員公務員法においてきめられたその秘密を漏らす、これじゃ外交はできませんです。これは国家公務員法に照らして厳重に調査し、再びこれが反復されることがないようにという保証を取りつける必要がある。そのほうこそが私どもがいま当面しているところの責任であると、そういう理解をいたしております。
  16. 矢山有作

    矢山有作君 私は、実はけさ、先回の沖繩国会議事録を全部そろえて、一々ここのところはこうおっしゃっていますということを実証してみようと思ったのですが、残念ながら議事録を持ってきておりませんから、これはまたあとで私はどうしても明らかにしたいと思うのです。  これは議事録を読んでみると、四百万ドル、つまり四百万ドルというのは軍用地復元補償に見合う金ですよ。これの問題については、吉野局長は完全に否定をされておりますよ。そんな問題一つも問題になっていない、それを示すような文書は何もないと、それを否定されておりますよ。それで外務大臣も、その吉野局長答弁には同調しておられますよ。それと、先般の衆議院における、外電が漏れてからの答弁は、これはあなたのような優秀な頭ですからね、自分答弁をもう一ぺん議事録引っぱり出して読み比べてみてください。これは明らかに食い違っていますよ。ばれたから、どちらでも言える、逃げられるような答弁に変わってきておるということです。これは私は、そういうふうに自分国会でしゃべったことを、私がここに議事録持っておらぬからといって、この場を強弁で切り抜けようとするのは、私はそういう態度納得できません。  それからもう一つは、なるほど外交秘密はある程度あるだろうということは、われわれもうなずけます。したがって、その交渉経過について逐一明らかにするということは、それを成功に導く場合にあるいは障害になることがあるかもしれません。だから、そういう場合には、私どもは百歩下がって、これは万やむを得ないことがあるだろうと思うことはあります。しかし、まとまってしまって、その成文が国会にかけられて論議の対象になったときに、こういう事実はなかったのかといって、正確なと言えるような資料——私はあの議事録を読んでみて、あの極秘電報と同じような形でその資料もとにして追及されたと受け取っておりますが、それほど正確な追及が行なわれておるのに、それに対して知らぬ存ぜぬで押し通したというのは、これはやはり国民の知る権利というものを頭から押えつけたと、こう言う以外には私はないと思うのです。それは秘密外交以外の何ものでもない。佐藤総理はきのう、秘密外交はいかぬという意味のことを言われたと思いますが、これは徹底した秘密外交じゃないですか。私は、国会追及されぬのならまた黙っておるということもあり得るかもしれません。しかし、正確な資料もとにして具体的に——あの電報が私はもとになっておると思うのですよ、そういう文言がずっと出ていますから。それだけの追及を受けながら、それを知らぬ存ぜぬというて押し通した態度というのは、これは私はうなずけませんね。こういうことをやっておると、政府のやっておることは何をやっておるかわからぬ、結果が出てみなければ信用できない、こういうことを国民に深く印象づけることになるのじゃありませんか。たとえば核の問題にしてもその他の問題にしても、いろいろあなた方がおっしゃっておる。これは今度のこの沖繩返還交渉と同じように、まるで政府はうそを言っておるのだと、こういうふうに国民は理解しますよ。こういうことは私はやめていただきたい。この責任は、私どもはあくまでも追及せざるを得ないと思います。  それからもう一つ。どうもけさ方新聞を見ますというと、新聞記者が逮捕されておるようであります。私は、新聞記者取材活動の自由があると思うのです。民主主義というものは知る権利ですからね。また、一方から言わせるならば、政府のほうは民主主義を貫こうとすれば、知らせる義務がある。そして知る権利を守るために、新聞記者というものは取材の自由という立場から、取材活動をやっておるわけでしょう。それを、こういうものが漏れたからこれは国家公務員法違反だ、逮捕だというのでは、これは新聞記者取材活動の自由に対する強権力による抑圧じゃありませんか。こういうことが高じていくと、やがて、何か政府に都合の悪いことが漏れたら、全部これは責任追及される、国家公務員法が発動されてくる、こういう形になりますよ。これは明白な言論の弾圧じゃありませんか。それは、私はたいへんな問題だと思いますよ。こういうことが積み重なっていくと、やがて戦前の日本の報道に見られたように、新聞に出るのは政府がつくり上げたものだけ、記者の自由な取材活動を一切封殺される、こういうことになりますよ。その点、どう考えておるのですか。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、今日のわが国における言論自由、これはたいへんけっこうなことだ、言論自由の中において正しい世論というものが出てくる、こういうふうに理解をし、これを歓迎しております。ただ、その言論も無制限というわけじゃない。やはり言論は、言論機関というものは、非常な影響力、力を持っておる。それにはそれ相応の責任というものがつきまとうと思うのです。私は、自由というものは非常にその背後に責任がある、そういうふうに考えておるわけなんです。私は、今回の事件につきましても、新聞記者諸君が熱意を持ってこの外交経過をフォローする、これはたいへんな努力をしておる、それに対しましてはもうほんとに敬意を表しておるんです。しかし、国家公務員という別の立場がある。国家公務員秘密を厳守しなければならぬ。これは国家公務員法の命ずるところであります。この国会において御審議をいただき、成立をいたしました国家公務員法である。その国家公務員法の命ずるところの機密を厳守する、これはもう当然のことであり、それが厳守されないというようなことになりますることは、これはもう、私どもの大きな責任問題にもなるわけなんであります。  そういうようなことから考えまするときに、非常にこの言論の自由と、また国家公務員法に基づくところの秘密厳取、この問題との間には非常にむずかしい問題があると、これは私も承知しておりまするけれども、とにかく国家公務員法におきましては、秘密の漏洩を幇助をした者に対しましての責任も問うようになっておる。そういうことから西山記者の責任がいま問われんとしておる、こういうことと理解をしております。
  18. 矢山有作

    矢山有作君 しかしね、あの記者がどういう形で事務官から受け取ったのか、それは私は知りませんが、いずれにしても記者が、政府に都合の悪い情報を得たから、それを記事にした。たまたま調べてみたら、それがどこかの公務員から流れておった。それで全部教唆だといってやったら、これは新聞記者取材活動ができなくなるのじゃないですか。そんな私は拡大解釈はないと思いますよ。やはり新聞記者取材活動というものはこれは認めておかぬと、これは報道を権力によって統制することになりはしませんか。この点、私はあなたの考え方はどうしても納得できない。  それからもう一つ国家公務員法国家公務員法とおっしゃるけれども、あの秘密を守る義務というのは、どういう立場からつくられてるというのですか。要するに、国益を害することがあってはいけないからという立場ですね、そういう立場でつくられておるわけでしょう。
  19. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、抽象的にいうとそういうことだろうと思います。しかし、それを具体的に象徴するために、これは極秘だといって判こまで押すわけです。あるいは判こを押さない場合においても、これは秘密なんですよと、こういうような口頭の表示ということもあり得る。そういうことに対して違反をするということじゃあるまいか。そういうふうに思うのです。とにかく、国家がその意思といたしまして、これは秘密の事項である、こういうことを明らかにした。それを漏らすということは国家公務員法に違反するのじゃあるまいか。私は、法制のほうの知識はそう権威ではありませんけれども、一応そう考えております。
  20. 矢山有作

    矢山有作君 あなたの論法でいくと、どの文書でもいいから極秘の判こさえ押しておけば、これは、それを外で発表したやつはみんな国家公務員法違反だといって刑事訴追できることになりますね。(「ファシズムだ」と呼ぶ者あり)これはファシズムですよ、いま声が出ましたが。そんなばかげた話があるものですか。そうしたらあなた、外務省のくる電報くる電報みんな極秘の判を押して、ちょっとでも漏れたら今度は責任追及ですわ。そんなばかなことはないでしょう。大体、私は、国家公務員法秘密を守る義務というのは、やはり国益の立場から、あると思うのです、あなたも肯定されたように。その国益というのは何なんですか。今度のような軍用地の復元補償の問題について、アメリカの言う無理を聞いて、国民の税金の中から、国民に真相を知らせないまま、国会でうそを言いながら、これをアメリカにやってアメリカから払った形をとらせることが、これが国益なんですか。これくらい国益を害するものはありませんよ。あなた方の立場にすれば、たとえそういうふうに多少国益を害しても、沖繩返還という大目的のためにはやむをえぬのだと、こうおっしゃるんでしょう、あなた方は。それならそれで、問題の決着がついた段階追及されたら、実ばこういうことでどうしてもやむを得なかったと、何でほんとうのことを言わないのです。それも隠しておるのでしょう。こんな国益の守り方ってあるのですか。これは要は、あなた方は秘密を守る義務を何に活用したかというと、国会追及をのがれるため、都合の悪いことを国会で言われるとぐあいが悪いから、そのために秘密を守る義務というのを最大限に活用しておるのでしょう。これは法律を党利党略に利用することですよ。こんなでたらめな法律の運用は許されませんね。その点どうお考えなんですか。
  21. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) どうも矢山さんのお話を聞いておりますと、財源を提供するから復元補償してくださいと、こういうことを日本政府がやっておると、こういうようなことですが、そういうことはないということを、これはるる申し上げておるわけなんです。三億二千万ドル支払いますよ、しかし別途、自発的にアメリカから復元補償の責めに任じてくださいと、こういうふうに申し上げ、協定にも、ちゃんとはっきりとそう書いてあるんですから、ただその途中の経過でいろんなことがある。その途中の経過が一々これが漏れるというようなことになると、交渉はできない、こういうようなことでございますので、これは秘密ですよ、これは漏らしちゃ困るのですよと、こういうことになっておる。ところがそれは、起案というか発電の途中において漏らされておる。これが何で機密漏洩に当たらないといえるか。これをしも当然のことだといったら、外交交渉なんかできません、これは。私は、せっかくのお話でございまするけれども、どうも矢山さんは、スタートにおいて誤解があられるようだとお答えせざるを得ないのであります。
  22. 矢山有作

    矢山有作君 スタートにおいての誤解は、あなたですよ。
  23. 上田哲

    ○上田哲君 関連して御質問します。  私は、西山記者の逮捕について、これが、報道の自由に対する公権力の乱用であると考えます。そこで総理にお伺いをいたします。きちっと項目でお伺いしますから、総理、ひとつ項目別にきちっとお答えをいただきたい。  第一に、外交活動を含む政府政治行為の内容について、国民の知る権利は憲法レベルの保障を持つものであって、犯されてはならないと思います。これについて御同意でありましょうか。  第二点、報道関係も、もとより絶対権は有してはおりません。しかし、国民の知る権利代表する社会的存在として、報道の使命に由来する活動の自由は、公共の利益に反しない限り保障されなければならない。いやしくも国家公務員法によって、百十一条などという国家公務員法によって取材活動の自由が拘束されることは、きわめて不当であると思います。これが第二点。この際、守られなければならないものとしての国益と政府の利害とは、どういう関係に立つかも明快に御見解を承りたい。これが第三点。  第四点、かりに百歩を譲って、行政機能を保全する法規に照らして若干の違法性を生じたとしても、それは第一に問題にしましたように、憲法レベルの利益を追求するための利益としては、阻却されなければならないものと考えます。この点はいかがでありましようか。  第五に、よって政府は、西山記者の違法性の阻却について、政府がたびたび口にされる高度の政治判断を示すべきでありまして、この際、政府は司直の判断にゆだねるなどという態度を示すことは、行政が司法の手にゆだねた形で言論の自由を圧迫すること以外のものではないと思いますが、いかがでございますか。  最後に六番目に、本日逮捕者を出した毎日新聞は、一面のまん中に、中谷編集局長の署名をもちまして、「国民の「知る権利」はどうなる」、正当な取材活動に権力介入は言論への挑戦である、という態度を表明しておりますが、これについて総理はどのようにお考えでありましようか。  六項目について申し上げたので、各項目について明確に御見解を承りたいと思います。
  24. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 各点に分けての基本的な法理論でもありますから、私が答えるよりも、法制局長官から答えさせます。お聞きとりをいただきたい。そのうちで、最後の問題などは私からあとでお答えをいたします。
  25. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 上田さんの御質疑には、憲法の基本に関連する問題点がございますので、その点に関して私が一応お答えを申し上げます。  まず、知る権利というのが憲法レベルの問題であるかという御質疑が最初にございました。これは、言うまでもなく、御承知のように、わが憲法は知る権利というものを直接に保障しているという規定はございません。しかし、これまた御承知のように、表現の自由を保障している関係上、その表現を受け取る自由もまた保障されているのではないかということで、受け取る自由、すなわち知る権利だというようなことで、これを名づけて「知る権利」として、これも憲法上の関連を持つ。これは明らかなことだと思います。ところで、そういう意味の知る権利というのは、やはり当然の帰結として、表現の自由と表裏一体の関係をなすものでありますので、やはり表現の自由の限界といいますか、これがまた、知る権利の限界にもなるわけであります。  ところで、表現の自由というものについては、これは、しばしばいろんなケースで問題になりますように、やはりこれは絶対無制限なものではないというのも、これも定説であります。何がゆえに、どういう場合に制限をされるかというのは、憲法十二条、十三条あたりの規定が根拠になるわけでありますが、およそ国民は、自由を乱用してはならないのであって、常に公共の福祉のために利用する責任を負うという規定の関係から申しまして、国民が公共の福祉のために利用する責任に反してこれを乱用するというようことになれば、表現の自由も制限されることもやむを得ない、こういう判例もございますし、現にそういう法律の規定は各所に、各所にというと大げさでありますが、ところどころに散見されるわけであります。そういう意味合いからいって、表現の自由の表裏一体の自由であるところの知る自由、あるいは知る権利、これもまた制限を受けることも、もとがそうでありますから、これまたやむを得ないところがあろう。  問題は、具体的なケースで、はたしてそれがそういうものにぶつかるかどうかというのが、まさに問われる問題だと思いますが、国家公務員法の規定によりますと、およそ職員つまり公務員は秘密を漏らしてはならない、この秘密はやはり公共の福祉上これは保全する必要がある、これを漏らさないようにしておく必要がある、これはそれ自体、この法律の意味が問われることもあるかもしれませんが、そういう前提で国家公務員法はできております。で、国家公務員法の規定によりますと、漏らす場合だけでなしに、これを漏らすことをそそのかす、あるいは幇助する、それについてもまた罰則の規定があるわけでありますが、それらは、いままでのお話からおわかりいただけると思いますが、憲法上の説明としては、いま言ったような関連における実定法上の規定である、こういうふうに考えております。要するに、知る権利というのは憲法上のレベルの問題であろう、同時にそれはまた、表現の自由が憲法上のレベルにおける問題として無制限ではないということから、同じように、知る権利もまたその影響を受けるというのが、まあともかくも私がこの問題について考える基本点でございます。さしあたり、それだけ申し上げたいと思います。
  26. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 西山記者の逮捕の件でございますが、これは国家公務員法違反容疑が濃厚であるという考え方に立ちまして、捜査をしておるものでございます。捜査の方法としては、任意出頭で聞く場合もありますし、あるいは逮捕の必要がある場合は、逮捕をするための手続を済まして、そして逮捕した上でいろいろ捜査するという方法もございます。西山記者の場合は、逮捕の必要があるという捜査上の観点から逮捕してやっておるものでございます。
  27. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国民が知る権利、これは先ほど法制局長官からお答えしたとおりだと思っております。私は、こういう事柄が、ただ報道関係者のみが知る、それだけの権利だと、かようには私は思いません。だから、われわれもやっぱりこの事件については真相をはっきりさせたいと、かように思っております。報道関係の人はちゃんと、これ、関係があるんですから、司直で取り調べられたら、そのとき話しすればいいじゃないですか。それをどうして極秘にしているんですか。片一方的に、知る権利がある、政府はないしょにしておると、こう言われるわけでしょう。どうもその点が私はふに落ちないのです。皆さん方の御協力を得て、公務員の秘密を守る義務、これはちゃんとあるんです、だからそれを守っておる。だがしかし、そういうものが途中で抜かれる、こういうことになると、その関係を取り調べる、これはあたりまえのことでしょう。また、それが表現の自由に、私は別に圧力ではないと思っております。最終的には国民が判断するのだ、このことが最も大事なことだと私思います。したがって、西山記者にいたしましても、取り調べられたら、恥ずるところがなければ堂々と答えたらどうですか。これをないしょにしているから問題なんです。そこらにも問題がある。私はそういうふうに思うんです。だから、それはもう少しはっきりさしたらいい。これは基本的な問題ですから、私はもっとはっきりさすべきだ、かように思います。
  28. 上田哲

    ○上田哲君 日ごろ早口でありましてお聞き取りにくいと思いまして、きょうは紙に書いてまいりました。できるだけゆっくり読んだつもりです。いまのお答えは、まるっきり私がつくりました論理構成に論理的には答えておりません。たいへん感覚的に、ないしは感情的なお答えでありまして、そのような形で一国の総理が言論問題について意見を表明されることはきわめて危険であるという感じがいたします。時間が、関連質問でありますから、たくさん取ることができませんので、しっかりした御見解、いまのような御見解が、たとえば毎日新聞の冒頭にある編集局長の署名入りの記事に対する見解も、これはやっぱり公器の表明でありますから、堂々と総理から御見解を表明さるべきでありまして、そういう部分が欠落をしているということは、御答弁としては完結性を欠いております。時間がもったいないので、私はもう一ぺん読んでおきますから、統一見解なり何なり、しっかりして御答弁いただければ、それでもけっこうです。  第一に申し上げたのは、外交活動を含む政府政治行為の内容について国民の知る権利は憲法レベルの保障を持つものであり、侵されてはならない。これは法制局長官が認められました。  二番目に、報道機関も、もとより絶対権限を有するものではないが、国民の知る権利代表する社会的存在として、報道機関は、報道の使命に由来する活動の自由は、公共の利益に反しない限り保障されなければならない。国家公安委員長も全然御答弁になっておりませんが、いやしくも国家公務員法百十一条などによって取材活動の自由を拘束されることは不当ではないか。  さらに、三番目に、この際守らるべき法益として国益と称するものと政府の利害との区別は何か。  四番目に、かりに百歩を譲って、行政機能を保全する——こういうことは法律用語としていまも法制局長官が使われた。行政機能を保全する法規に照らして若干の違法性を生じたとしても、第一項に申し述べたような憲法レベルの保障を前提とするならば、それは憲法レベルの利益を追求するための行為として阻却されなければならないはずである。  五番目に、よって、政府は、西山記者の違法性の阻却について高度の政治判断を示すべきであって、この際、政府が司直の判断にゆだねるという態度を示されることは、行政が司法の手にゆだねる形で言論の自由を圧迫する以外の何ものでもない。  六番目、毎日新聞のこの意見表明についての御見解を求めたのであります。ひとつ正確にお答えをいただきたいと思いますが、関連質問でありますから、簡単にへひとつ、次の問題もあわせて申し上げておきたい。  先ほど来矢山委員から発言されたところでありますが、私も前回の暫定予算委員会で申し上げた。いま政府態度として問題になるのは、秘密があったこと、すっぱ抜かれたことが、たいへんぐあいが悪いというようなことだけに集約をされております。問題は、国家公務員法違反で事務職員その他が逮捕される、記者まで逮捕されるというようなレベルから考えるならば、一体、政府が機密をひた隠しにしてきた、しかも、国会では、その事実を追及されたときに、事実と違った答弁を繰り返してきたということはどういうことになるのか、こういうことになろうと思います。  そこで、時間がありませんから、私は単に事実の指摘にとどめますから、矢山委員質問時間の終わるまででもけっこうですから、きちっとひとつ具体的に御答弁をいただきたいと思う点を、まず、数点だけあげておきます。  十二月七日の衆議院の沖特で横路委員が、十九世紀のアメリカの法律、一八九六年二月制定のディスポジション・オブ・トラストファンド・レシーブド・フロム・フォーリンガバメンツ・フォー・シティズンズ・オブ・ユナイテッド・ステーツというのがあります。これに基づいて、これは六月九日の井川・スナイダー会談、東京で行なわれた井川・スナイダー会談で、このことによって日本側からの財源補償というものを受け取ることができるようになりました。そこで、四百万ドルをいただきましょうというような趣旨の話し合いがあったという事実確認に基づいて、一体それはどうなっているのかと問いただしたところが、井川局長が、私は存じませんと答えております。それから吉野局長も、私も全く存じませんというふうに答えております。それから同じ十二月七日、横路委員が愛知・マイヤー会談のメモがあるではないかと言ったところが、吉野局長は、メモは一切とらず口頭で行なっておりますと答えております。また、福田外務大臣は、日本側にしても、アメリカからこういう要求があり、これに対してこういう答弁があったということを一々記録していない、アメリカ局長の頭の中にあるのだ、こういうふうに答えております。十二月十三日の沖特では、吉野局長は、口頭で先方と話し合い、かつ口頭で関係者に伝えた、パリ会談にしても、あらゆる重要なことは全部電話で本省と連絡をした、福田外務大臣は、六日に質問されて以来調べたが、そのようなメモその他の記述はなかった、こういうふうに答えておられます。  また、内容の問題でありますが、十二月十三日の沖特では、井川局長は、三億一千六百万ドルという数字はいかなる交渉過程でも出なかった、四条三項について四百万ドルというような取りきめは一切ありません、吉野局長は、愛知・マイヤー会談の中身として、財源のめんどうを見てくれたことを多とするという発言はありません、また、パリ会談の中で、文書化することの要求アメリカ側から出て、愛知外相から秘密が守られるかというやりとりがあったこと、交渉の過程で出たことも一切ありません、こういうふうに具体的に答えておられます。これは全く事実と異なるところであります。  そこで、最後に、問題の中で、四百万ドルが別になっておらないという説明をいろいろされております。しかし、そちらに向けて明らかにはいたしませんが、日本国政府は沖繩返還に関連し財政問題の一括決済として第七条に同意する、日本国政府は、アメリカ合衆国政府が第四条三項に従って慰謝料を支払うため、この一括決済の中から四百万ドルを留保することを了解事項とする外務大臣からの秘密書簡が出ているというふうに私たちは了知しておる事実があるんでありますが、これまで外務大臣が述べられてまいりました御説明は、こういう形で決着をしていると私たちは理解をしているんですが、これはいかがでありましょうか。つまり、交渉過程ではない結論がここに出ていると理解をしております。この点について、あわせてひとつ御答弁をいただきますが、前段については、字句を一つ一つ御検討いただいて、その上で一括して後ほど御答弁いただいてもけっこうであります。  一番初めの総理にお尋ねいたしました問題も答弁は終わっておりませんから、今回であれ、次の機会であれ、きちんと御答弁をいただくことを留保いたします。
  29. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、申し上げますが、結論において、裏取引、そういうものは一切ありませんです。三億二千万ドルという一括支払い、これが決定いたしました。それと並行いたしましてわが方は復元補償要求をしておったわけなんです。その額が幾らになるか、これは、沖繩当局は四百三十万ドルぐらいになる、その額をまた、めぐりましていろいろ論議があった、これは事実であります。交渉の過程においてであります。その論議の過程のことにつきまして、沖特におきましていろいろの御質問があったわけであります。それに対しまして、いまお話がありましたように、数個の問題につきまして、吉野局長、井川局長、まあ知らぬ存ぜぬと、こういう御答弁もいたした。それは、総理も私も衆議院予算委員会におきまして釈明をいたしておるわけでございます。そういうことばを使うべきじゃなかったと……。
  30. 上田哲

    ○上田哲君 悪かったということですか。
  31. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 悪かったんじゃないんです。そうじゃなくて、これは、その当時の状態におきましては、それはお答えすることができませんと、こういうふうに言うべきであった。それが、当時の状態、委員会の状態なんかを考えまして、政府委員のほうでは、知らぬと、あるいは記憶にないとか、そういう答弁になった。そういうことにつきましてはこれを遺憾といたしますと、こういうふうにお答えをいたしておるんです。まあ、そういうことまで含めまして総理は先般の衆議院予算委員会におきまして所信の表明までいたしておる次第でございまして、この点は御了承を願っておると、こういうふうに考えておる次第でございます。いずれにいたしましても、裏取引は一切いたしておりませんから、この点は一点の御疑念もないようにお願いいたします。
  32. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 上田君にお答えいたしますが、最初の憲法論議、これはもう法制局長官がお答えいたしましたとおりでございます。  その次の第二の問題、秘密はあるがと、こういう条件はつけられたが、取材の自由、こういうことに特に力を入れてお話しでございます。私は、取材の自由、これを尊重するにやぶさかじゃございませんが、私どものないしょにしているものを無理やりにとって、それが取材の自由だと言われても困るんです。ここらはおのずから限度があってしかるべきじゃないかと、かように私は思います。そして、その取材の自由、これが一体何で守られるのか——まあ先ほど、「極秘」とペタペタ判が押してあればみんな極秘かと、こういう極端なお話がございましたが、これはもう明らかに、国益、そういう観点に立って秘密は守る、やはり記者の諸君にもそういう意味で御協力を願っておるはずであります。したがいまして、私は、先ほども申しますように、取材の自由を唱えられる限りにおいて、そのいきさつを全部明白にされてもいいじゃないか、なぜそれが明白にできないのか、そこらに、どうしても国民からは疑惑を持たれるんじゃないか、取材の自由という名前のもとに、どうも、やっておることは必ずしもそうでないんじゃないか、かような点があるように思います。私は、この点だけは、取材の自由ということに特に上田君も経験のある方ですから、たいへん関心も深いと思うので、一言私どもの見方を申し上げておきます。さらにまた、こういう問題が警察の手に渡る、司直の手に渡ると、こういうことですが、こういう事柄について、そのあり方等については、これはまあいろいろ批判があるだろうと思います。私は、警察が、いわゆる警察権で非常な乱暴なことをしているとは、かようには思っておりません。したがって、私は、この点では冷静に問題は処理さるべきだろうと思いますし、また事柄が、ただいまのように、国益に関する問題、国民の知る権利だと、こういう立場に立つと、やはり取材された方も御協力を願って、事態を明らかにしていく、そのことが望ましいことではないだろうかと思います。  私はまた、編集局長のいろいろのお話、これは、ただいままだ私が精査、精読いたしておりませんから、これはいずれ精読いたした上でお答えをいたすことにいたします。  先ほどのお話のうちで、取材の自由と、こういうことを特に言われるが、同時に、そのことは、やはり秩序を破壊しない範囲だと、こういうように理解されてもいいんじゃないかと、かように思いますので、その点を……。
  33. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、質問の都合もありますから、法律論争については、またあらためて私どもも機会を持ってやりたいと思いますが、総理ね、いまあなた、外務大臣答弁を聞いておられたと思うんですが、国会審議で、事実をあげて、こういう事実があったかなかったかと、こういう追及のしかたをやっておるわけですね、いま上田君が言ったように。たとえば、請求権に関する電文がここにありますが、漏れた電文がね。あの十一月、十二月ごろの国会議事録を全部読んでみますと、この漏れた電文そのままを引用しながら質問しているわけです。こういうことの文書がありますかと言うと、それはない、全然そんなものはない、こういうやり方をやっているわけですね。そういうふうなことをやることが正しいことなのかどうか。そういうことをやっておいて、それを全面否定したというやり方はまずかった、答えられないと言っておけばよかったと、こう言うて逃げるやり方責任ある内閣としていいのか悪いのか、その点、御見解を伺いたいんですよ。そういうことで、答えられないと言っておけばよかったんだ、悪いとは思ってない、これじゃ、政治責任というのはどこにもなくなっちまいますね。あなたも、福田さんと同じ御意見ですか。私は、総理ともあれば、そんなに無責任考え方はしておらぬと思いますが、どうですか、同じですか。
  34. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 信頼しておる外務大臣のさっきの発言と、私、同じ考え方をいたしております。ことに、この問題は衆議院段階でずいぶん御議論をされました。政府との間にやりとりがございました。そうして、政府は一貫して、そういう問題に、ただいまの三億二千万ドル、これが災いされたとは、かように思っておりませんということを明確に答えておりますので、私は信頼する外務大臣答弁同様、私はいま問題を……
  35. 矢山有作

    矢山有作君 そんなものはないと言ったこと、これは明らかにうそでしょう。
  36. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、先ほど来からいろいろ御議論がありますが、総体としてその問題が影響しているか、していないかと、かように申すと、影響はない、こういうことをはっきり申しておる。また、そういう事柄を一々言わなきゃならないか、それは言えなかったということ、これは言えないものがある、こういうことをはっきり言うことが望ましかったと、かような答弁をしております。
  37. 矢山有作

    矢山有作君 これでやめます。いまの答弁を聞いておりまして、またあらためていろいろ聞かしていただきますが、結論として言えることは、佐藤内閣というのはいよいよもって無責任で、秘密外交主義に徹底した内閣だということを暴露されたと思います。  次の質問に入りますが、最長不倒を誇った、さしもの佐藤内閣も、いま問題になったような事態を含めて、相次ぐ失態の中でやがて命脈も尽きるんだろうと思いますが、私は、この際、あなたがとってきた財政経済政策についてただしておくことは、今後の政策展開を考える上に必要不可欠なことだと思いますので、基本的な問題について質疑をしたいと思います。  きのう、わが党の松永委員からこの問題に関連をして質疑がありました。あなたも、自分のやってきたことを振り返って、まるでよかったとは言えないと、いささか自分の言ったことに比べて不十分なところもあったということは、まあ認められておいでになるようです。しかし、私は、みずからきびしく批判をし反省していくことが今後の政策展開でどうしても必要だろうと思いますから、二、三事実を指摘しながらお尋ねをいたします。  まず、経済政策として、あなたが政権を担当するにあたって掲げられた旗じるし、これは、池田前内閣の高度成長政策、これをやめて、安定成長、それを達成するんだと、こういうふうに言われたわけです。ところが、佐藤内閣のもとで、四十一年度から四十四年度までは実質一二、三%という高度成長、四十六年度は四%台、四十七年度は七%という停滞を示しております。こういう経済運営の形をみると、池田内閣の時代とあまり変わっていないんですよね。あなたが言う安定成長というのは実現したとお考えになっているんですか。
  38. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 文字どおりには、安定したと、かようには思っておりません。しかし、景気が停滞したその状態を上向きにし、そうしてそれから成長させたことは、私は胸を張って国民の皆さんにも御理解いただけると、かように思っております。
  39. 矢山有作

    矢山有作君 胸が張れるか張れぬか、これから次に話を進めてまいります。  佐藤内閣の経済政策の主柱であった経済社会発展計画、これは四十二年の三月に閣議決定された分ですが、この経済成長率見込みと実績、そしてこの計画が破綻をして、四十五年の五月、閣議決定された新経済社会発展計画の成長率見込みと実績、これがどうなっておりますか。また、この新経済社会発展計画もわずか二年足らずで破棄されることになるようですが、そういうふうに立ち至った原因は何か。これは総理のほうからお答えいただきます。
  40. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 数字の問題ですから、後ほど経済企画庁長官あるいはその他適当な担当大臣から答えますが、ただいま私は、悪い方向へ行ったのなら大いに責められるべきだと、かように思っておりますが、幸いにしていいほうに私は向いていったと、かように考えておりますので、その辺はお許しがいただけるんじゃないだろうか。そのいわゆる予定どおりではなかったと、しかしながら、それがやはり目標は上こしたというか、いい方向にいったと、かように私は考えておりますので、これは許されるべきではないかと、かように思っております。
  41. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) まず、数字でのお尋ねでございますから数字を申し上げます。  先ほど池田内閣と佐藤内閣当時の比較をお触れになりましたが、いま私の手元にあります数字をちょっと申し上げておきます。  昭和三十五年から三十九年まで……。
  42. 矢山有作

    矢山有作君 言うたことに対して答えてください。経済社会発展計画の成長率見込みと実績を言っているわけです。余分なことはまた聞きますから。
  43. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) じゃ、その点をお答えいたします。  旧経済社会発展計画、その当時の昭和四十二年から四十六年まで、計画成長率は平均八・二%、これは実質でございます。名目で一一・三%。それに対して実績は、昭和四十二年が一三・五、四十三年が一三・七、四十四年が一二・三、四十五年が九・五、四十六年が、実績見込みでございますが四・三と、こういうことになっております。
  44. 矢山有作

    矢山有作君 それで、その四十二年度、三年度、四年度で、それぞれ経済見通しを立てられましたね。その数字もあわせて……。
  45. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 経済見通しは、四十二年が、これも実質ですが、九・〇、四十三年が七・六、四十四年が九・八、四十五年が一一・一、四十六年が一〇・一と、こういう数字になっております。  それから次に、新経済社会発展計画を同じような順序で申し上げますと、計画成長率が平均実質で一〇・六、それに対して政府見通し、当初ですが、四十五年度が一一・一、四十六年度が一〇・一、それから四十七年、これは見通しですが、これからの計画ですが、七・二と、こういうことになっております。それに対して、まだ実績が出ましたのは四十五年度だけですが、実績は九・五と、こういうことになっております。
  46. 矢山有作

    矢山有作君 佐藤さん、せっかく、きのうの答弁では、自分のやってきた経済財政政策を多少反省したようなことを言われましたが、きょうは、とたんに開き直って、よい方向に向かっているのだからいいじゃないかと、こういうお話ですが、いまの状態は私どもは決していいとは思っておりませんので、この点ははっきりさしておいたほうがよかろうと思います。  次に、いま経企庁の長官の話を聞いておりますと、この二つの経済計画と実績の乖離は相当大きいですね。さらに問題なのは、経済社会発展計画で八・二%と計画したときには、計画を五%ぐらいオーバーして経済成長をやったわけです。それから新経済社会発展計画をつくって計画数字自体を年度平均約二%引き上げましたね。とたんに、発足の初年度の四十五年度からつまずいて、計画を今度は下回ってしまった。さらに四十六年度になると、その乖離は一そう大きくなって、六・三%も下回るという状況であります。いま聞いておいでになっておわかりと思いますが。四十七年度も、政府の見通しどおりにいっても、新経済社会発展計画の数字を三%以上下回る成長になります。佐藤福田安定成長論は、こういうふうに、かつては八%成長を安定成長と言った。それが失敗すると、今度は成長率自体を一〇%台に引き上げて、これでもやっぱり安定成長だと言った。今度は、見られるようなひどい停滞であります。これでは、あなたは一体何をさして安定成長と言ったのか。この数字だけを見ても、いわゆる佐藤福田安定成長論というのは実現しなかったと、これはもう正直に認めていただかなければならぬのじゃないかと思いますが、どうですか。
  47. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最近の状態は、政府の考えたとおりでもございません。それは御指摘のとおりでございます。私は、先ほど目標の数字を上こしたんだからいいことじゃないかと、こういうことを申しました。しかし、最近は上こしじゃないです。くぐるというか、それに達しないと、こういうような状態でございますから、こういうことは、やはり見通しといたしましては、これは政府の見通しはなっていない、こういうおしかりを受けても当然だろうと、かように思っております。
  48. 矢山有作

    矢山有作君 最近、政府がしきりに外圧を強調して、経済政策の転換が必要になったということを国民にPRしようとしていますね。これは、私は、自分がやってきた経済政策の失敗をたな上げをして、外圧を最大限に利用して宣伝しているのだと、こういうふうに思います。これは議論じゃありませんから……。  さて、新経済社会発展計画で年平均一〇・六%の成長を五十年度まで見込んだわけです。したがって、四十五、六、七の三カ年度の計画との乖離を、四十八、四十九、五十年度の残り三カ年で取り戻そうとすれば、当然、前期三カ年の落ち込み分の大体一〇%余りを取り戻す必要があるわけです。そうすると、年度平均三%以上程度。そうなると、新経済社会発展計画の後半では大体年率一四%見ていかなけりゃならぬ、こういうことになりますね。これはものすごい高度成長になる。私は、とうていそんなことはできぬと思うのですよ。こうした計画の破綻と経済運営の失敗の責任をあなたば全然とろうとなさらない。前回の経済社会発展計画のときと同様に、計画数字を改訂をすることと、新経済社会発展計画を廃棄することで済まそうとしておられるようです。私は、それはけしからぬと思うのです。いやしくも池田内閣の高度成長を批判してあなたは政権の座についたんですから、したがって、それが失敗をしてしまえば、当然、そこのところで政治責任を感じて責任をとらなけりゃならぬと、私はこう思うのですがね。あなた、池田内閣のときにも、池田内閣の仕事はもうこれで終わったんだといって、それぐらいきびしく池田内閣の高度成長政策批判された御記憶はおありでしょう。
  49. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、確かに池田内閣の政策批判いたしました。また、現状が、先ほど来私も率直に認めておるように、なかなか計画どおりにいっていないこと、これも申し上げているとおりでございます。しかし、わが国の富と申しますか、そういうものはよほど状態が変わっておりますから、そういう意味で、これはある程度お許しを得たいと、かように思っておる。しかし、私自身の責任をこれで安閑として、そうして涼しい顔をしているというものではございません。私は、やはり何と申しましても、経済の発展そのものは安定成長が望ましいのだし、また、国民福祉の向上こそ真に経済発展がもたらす効果だと、かように考えますから、そういう意味においての是正というか、力の入れ方、これを十分尽くして、そうして責任を果たしていきたい、これが私の考え方でございます。
  50. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、過去のことで気にさわることを言っているわけですから、あなたの御心中もわかりますけれども、しかし、これはやはり真剣な反省の中から将来の展望も生まれるのですから、しんぼうして論議をやっていただかなけりゃいけませんよ。  あなたは、政権をとった当時、自分がやればうまくやる、安定成長と社会開発を進めて暮らしよい社会をつくるのだ、こう言っておるのですね。ところが、成長率という入口のところで、つまずいてしまった。安定成長が実現できなかった。その最大の原因は何だと考えていらっしゃいますか。この原因がわかっていないと、これからうまくやると言っても、やりようがないんです。
  51. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、いろいろ御批判があるところだと思います。それらの点は経済学者に任せておけばいいと、かように思いますが、私は、政治家といたしまして、やはり、総理になって以来、これは長期にわたってあの不況を克服して、それから後、持ち直してきた経済の状態、それはそれなりに評価していただきたいように思います。そうして最近の状態が気に食わないと、こういう状態だから、ここらでいろいろの御議論が出ておると思います。しかし、ただいまの状態について、私も満足はいたしておりませんから、そこで発想の転換をし、いわゆる貿易主義第一というものはもう一度修正すべきじゃないか、やはり内需に向かってわれわれは真の福祉向上の方向に経済運営をすべきじゃないかと、かように考えております。しかし、もちろん、日本経済は本質的に資源に乏しい日本経済でございますから、貿易——やはり外国から原材料を輸入し、その貿易拡大はいたさなければならないと思っております。しかし、その使い方は、やはりもっと内需、国民福祉の向上につとめるべきじゃないかと、こういうことを先ほど来反省しておると、かように申しておるわけです。
  52. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、あなたは、これまでの経済政策やり方を改めて、貿易第一主義を修正をしていき、内需拡大に向かって運営すべきだと思うと、こうおっしゃったんですが、それが具体的に、どう今度の予算で実現されつつあるのかということについては、これは他の同僚から追及があるだろうと思います。私は私の立場でもう少し話を進めます。  私はいま、どうして、あなた、安定成長が達成できなかったのかと言ったら、そういうことは経済学者にまかしておけばいいんだというんだが、経済学者にまかしておいたんでは、あなた自身が、何で安定成長が達成できなかったのかという原因がわからないのに、その誤りを正すことはできなくなりますからね。これはことばじりをとらえるわけじゃありませんが、そういう軽はずみなことはおっしゃらぬほうがいい。自分で、なぜできなかったのか、その原因の一つぐらいはやはりあげて、私は、御答弁が願いたかったと思います。  私は、いろいろの原因がありますが、こういうふうに考えております。池田内閣時代の高度成長も、それからひずみも、その原因の大きな部分が民間設備投資の動きであったということは、私は、通説だろうと思うんです。あなたが高度成長を批判し、安定成長を主張するからには、この民間設備投資に対処する施策がなくてはならぬはずなんです、これは。問題の一つです。しかるに、四十一年度から四十五年度までの民間設備投資の動きを見ますと、池田内閣時代は年平均伸び率が一〇・五%です。ところが、これに対して、私が調べたところでは、あなたのときは二四・一%になっているわけですね。二倍以上になっているわけです。これじゃ、安定成長どころじゃないんですよね。これはやっぱり超高度成長になるというのはあたりまえの話なんです。この点の認識が、私は、なくっては困ると、問題点の一つとしてね。だから、認識があるなら、今度必要なのは、この民間設備投資の行き過ぎを抑制する有効な手段、方法というものをやっぱり考えなきゃならぬのじゃないか。このことが、私は、安定成長を今後も考えていく上にやっぱり必要なことなんじゃないかと、こう思うんですが、どうでしょう。大蔵大臣でもいいですよ。
  53. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 安定成長を目途としていながら、なかなかできなかった原因の一つに、私は、日本の国際収支の問題があると思います。これに災いされて、常に景気不景気の波を経済の上に打たさざるを得なかったという事情がございます。そのために、不況になったあとの回復というためには、どうしてもこの民間設備投資を中心にした輸出中心主義の政策をとって、大急ぎに経済の復興をはかるという政策をとらざるを得なかったということも、私は、原因であろうと思います。ところが、この昭和四十一年以降、幸いにして日本に好況が約五年間続くということになりましたので、そうなりますというと、そこで従来の政策がある程度反省されて、この国際収支の問題から開放されたという時点から、やはり経済政策の軌道修正というようなものが行なわれるべきであったと私は考えます。これが一、二年おくれたような気がいたすことは率直に私は認めるものでございますが、この国際収支のゆとりのあるというときに、国民福祉の向上という方向へ財政政策を切りかえる、そうして、それを国民生活を中心にした公共投資、社会資本の充実というようなことに振りかえていきますというと、それらは直接生産能力を増して経済成長率にはそう多く寄与しないという形で、経済成長がなだらかにいくんじゃないか。きのう、羽生議員から御質問がございましたが、そうしますと、そういう方向をとるというと、今後の経済成長率がいままでのような大きい率を期待した経済計画を立てるということも、これは間違いになってくるでございましょうし、当然、その修正もしなければならぬということから、いま企画庁でもこの問題と取り組んでおるところでございますので、要するに、今後、やはり国民福祉の向上という方向への財政方針の切りかえということをやることが安定成長の路線へ日本経済を復帰させるということになることだろうと思います。
  54. 矢山有作

    矢山有作君 なるべく私が問題にしたことに合わせて話を進めてもらわぬと議論がかみ合わないわけです。あなたのおっしゃるのも一つの問題ですよ。ところが、私が言っておる民間設備投資というものが非常に重要な影響を持っておるということも否定できない事実でしょう。国際収支との関連というもの、これも民間設備投資と切り離して論議はできないでしょう。その民間設備投資を私は対象に問題にしたわけだから、そうすれば、それに対して、かみ合う議論をするのが政府の立場じゃないですか。痛いことを言われたら、この次に民間設備投資に何か言われるだろうから、それについての答弁は避けて、全然無関係じゃないが、違う方向からの答弁をやるというのは政府の悪い癖ですよ。いつもそれをやっている。その問題で議論をしておると、これは私の時間がなくなっちゃうから、あなたの答弁はそれで聞いておきます。  この民間設備投資は、資本主義というか、利潤追求の経済運営もとでは、私は、そう容易にコントロールしたり、逆に伸ばしたりというようなことはできるもんじゃないと思う。もうかるから、投資し設備を拡大するという、それをやめさせるということは、私は、あなた方の政権じゃできぬだろうと思う。できぬから、民間設備投資をどんどんやって、池田内閣時代の倍以上になっちゃった。こんなイロハもわからないで、佐藤福田安定成長論というのを言われておるんですか。とにかく、民間設備投資がコントロールできなかったことは、これはまぎれもない事実です、これは。一体、どういう方法で、この民間設備投資の問題を避けて通って、安定成長ができると考えておるんですか。民間設備投資を私は問題にしておるんですから、それを対象にして答えてください。
  55. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 先ほど大蔵大臣がお答えした中にございますが、民間設備投資、これがたいへん伸び過ぎて、いまのような景気循環を来たしたと、これは当然経済現象でございます。しかしながら、それのもとになりますのは、やはり資源配分の問題になると思います。この資源配分を、今後、先ほど総理が申し上げましたようなふうに、切りかえていくことによって、当然、この民間設備投資の伸びのテンポがおくれる、現に昭和四十六年には一七%ぐらいに鈍化しております。したがいまして、民間設備投資のGNPに対する割合というものは、今後非常に鈍化いたしまして、それに対比して国の社会資本、そういうものが伸びていくということは当然の経路であると思います。
  56. 矢山有作

    矢山有作君 次に話を進めます。  佐藤さん、あんたね、池田前総理との総裁選挙を通じ、またその後も一貫して人間尊重の政治ということを主張されてきたわけです。これが十分にできなかったということは、七年間を振り返ってみて、あなたも一応は認められた。そこで、それがどういう実態になっておるかということをこれからやってみたいと思うのです。  まず厚生大臣から、四十六年に調査された国民生活実態調査、この結果を報告してください、私が要求しておる点については、すでに事前に言ってあるはずですから。
  57. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 国民の生活状態の調査の結果は、四十年のときに比べまして、生活の内容が向上したと考える者のパーセントが多くなっております。ことに低所得層においてはその感じを持つ者が多い、しかし高い所得層、また高年齢層あるいは母子福祉家庭等におきましては、その感じが比較的薄いというのが総括的な答えでございます。
  58. 矢山有作

    矢山有作君 厚生大臣、あんた、いいかげんな答弁しないでね、私のほうから答弁する個所を言ってあるはずだから、それをそこへ持ってきて読んでください。いまのようなのはけしからん、答弁になってない。いいかげんな答弁をしたら、話は前に行かぬよ。私がちゃんと指摘してあるんだから、そこのところを言って答弁すりゃいい。
  59. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) もう少し詳しく申し上げますると、四十六年六月一日現在において全国の約一万七千世帯及びその世帯員約六万人を調査の対象として実施したものでございます。なお、老後生活に関する意識調査は、五十歳以上の男の世帯員約五千六百人を調査客体としております。世帯の暮らし向きに関する意識につきましては、昭和四十年にも同様の調査を行なっておりますが、四十年と今回とを比較いたしますると、所得の低い階層では、暮らし向きが普通よりよいと感じている者が多く、これは私が前に述べたとおりであります。逆に所得の高い階層では、かえって暮らし向きが普通よりよくないと感じている者がやや多くなっている。これも前に述べたとおりであります。  次に、五十歳以上の男の老後生活に関する意識につきましては、これから先、子供や他の人の収入を当てにしないで、自分の収入や財産だけで生活できると思いますかという質問に対しまして、半数以上の者が、生活できそうにないと答えており、そのうち七三・六%は、将来子供を当てにしている。そうして生活できそうもないという層は農工世帯に多く、そのうちの大多数もやはり将来子供を当てにしているということになっております。また、老後の経済生活につきましては、年金を普及充実させて社会的に保障されるべきだという意見が最も多くて四一・八%、子供がめんどう見るのが当然だというのが三一・六%でそれに次いでおります。子供がめんどうを見るのが当然という意見は年齢の高い者ほど多いということでございます。
  60. 矢山有作

    矢山有作君 私のほうで一応数字を整理しながら申し上げます。これで見ますと、食べるほうの心配はないという程度以下の人が七〇%を占めておるわけです。これじゃ、私は、総理が国民に財産をつくるんだ、何だと言っていましたけれども、これで、はたして人間尊重の政治と言えるのかどうか。これは明確に数字が示しておると思うのです。これは人間尊重の政治じゃないという証拠ですね。さらに同じ厚生省のこの調査で、五十歳以上のサラリーマンの七四・四%、これが定年後も働かないと生活できない、こう答えている。そうして老後の生活に自信があるサラリーマンはごくわずかで、四一・八%の人が年金制度を充実し、社会的に老後の生活保障をせよと訴えております。こういう実態でありますから、この厚生省が調べた生活実態調査を見ても、あなたが言う人間尊重の政治などというのは口先だけのことであったということが証明できておるわけですね。これはあなたに私は、人間尊重の政治、高福祉社会を築き上げるということを言われる以上は、きびしく反省してもらわなければならないところだと思います。  それから次に移りますが、一般会計の中の社会保障関係費の、これも事前に言ってありますが、三十六年度から四十年度までの平均伸び率と、四十一年から四十七年度までの平均伸び率がどうなっておりますか。それから振替所得の内訳、同じようにいま言った年度別で平均伸び率を出していただきたい。それから分配国民所得についても同じように御説明を願いたいと思います。
  61. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 社会保障関係予算の年度別の伸び率を申し上げますと、三十六年から四十年までの平均の伸び率は二三・七%であります。それから四十一年から四十七年の平均の毎年の伸び率は一七・九%の伸び率でございます。一般会計に占める社会保障関係予算の割合は、昭和三十六年から四十年度の平均は一三%で、四十一年から四十七年の間の平均一年間の伸び率は一四・三%ということでございます。  振替所得の国民所得に対する割合、この点はちょっといま数字をここで持ち合わせておりませんから、後刻調べましてお答えをいたします。
  62. 矢山有作

    矢山有作君 数字をいまここに持ち合わせてないというのはおかしいですね。ちゃんと言ってたんだが、事務当局から聞いてください。あなたのほうかな。
  63. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 振替所得の年平均伸び率、昭和三十六年から四十年は、平均いたしまして一九・六%、四十一年から四十五年度一七%、四十六年度、これは実績見込みですが、一四・九%。それから分配国民所得の中の伸び率を申し上げますと、雇用者所得のうち、賃金、俸給、これは一本になっております。伸び率は三十六年から四十年度までが二八・九%、四十一年から四十五年度までが二八・七%、それから四十六年、これも実績見通し一六・五%、こういう数字になっております。
  64. 矢山有作

    矢山有作君 それからまだ項目言ってあるでしょう。農林水産業と法人留保を言ってください。
  65. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 次に、個人業主所得のうち農林水産業、これをお尋ねになりましたが、三十六年から四十年度、平均八・一%、四十一年から四十五年度、七・八%、それから法人のほうを申し上げましょうか、法人留保、三十六年から四十年度、マイナス〇・三%、四十一年から四十五年度、三七・五%、こういう数字でございます。
  66. 矢山有作

    矢山有作君 まず社会保障関係費を見ますと、いまお聞きになったと思いますが、それ以外にちょっと詳しく私も調べてみましたが、確かに各年度の絶対額はふえております。しかし一般会計予算総額に占める比率は、社会保障関係費の構成比は、四十一年度以降が一四%台で推移しておりますね。だから、特にこの面に財源配分が手厚く行なわれたということにはならぬと思います。  それからさらに、総理が批判された池田内閣時代の社会保障関係費予算の組み方と、比較してみますと、先ほど話があったとおりです。三十六年度は一般会計予算の伸び率が二四・四%であったときに社会保障関係費は三七%伸びております。一般会計の伸び率を一三%もこれは上回っておりますね。それから、三十八、三十九の両年度が一般会計の増加率の五%、そして四十年度は七・五%上回っております。これはそれだけに財源配分が手厚く行なわれたということですね。池田内閣時代のほうがずうっといいということです。しかるに佐藤内閣のもとでは、四十一年度と四十五年度が、一般会計の増加率をわずかに二・四%と二・六%上回っただけです。あとはほとんど一般会計の増加率と同じで、社会保障関係費の増加率が一般会計の増加率を上回っておる場合でも、いずれもコンマ以下、これで見ると、佐藤内閣が池田内閣以上の配慮をしたとは決して言えないわけです。  それから、振替所得の推移について見ますと、多少数字が私の調べたのとは違いますが、いまお聞きのとおりで、振替所得の推移は、生活保護費が〇・一%、恩給が六%、その他が三%伸びた以外は、医療、年金、失業、労災保険、社会福祉、公衆衛生とも、池田内閣時代に比してこれまた大幅に低下をしております。  それから国民所得の分配、これも池田内閣時代に比べると、経済的に弱い立場にある勤労者あるいは産業に対する分配が高まるような政策がとられたとは言えませんね、いまの数字で。ところが、反面法人留保は実に、先ほどお聞きのようにマイナス〇・三%、池田内閣時代は。それがあなたになってから三七・五%、驚異的な伸びを示しております。要するに、人間尊重の政治、福祉国家の実現、貧乏をなくすると言ってあなたは政権の座につかれたわけですが、何一つ実現をしていない。その努力もなされてないということですね。社会保障だとか振替所得だといったような所得再分配機能を使っての暮しよい社会づくりも、池田内閣時代よりは大幅にテンポが落ちた。法人留保だけが大幅に伸びた。これは要するに、一口で言うなら国民犠牲、大企業中心の高度成長政策がとられたということは明らかじゃありませんか。この数字をごらんになって、佐藤さん、どう思われますか。あまりにもあなたが言っておられたこととの開きが大き過ぎるのに驚かれませんか。
  67. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは私が申し上げるまでもなく、矢山君もよく御承知だと思っておりますが、伸び率、これを比較するということははたして適当かどうか。最初小さかったものがそれを倍にすると言ったって、それはずいぶんおかしなことですからね。やはり伸び率だけで比較されるということは私は賛成できません。だから、やっぱりもっと詳細に実情を調べる必要がある。先ほど厚生大臣が申しますように、とにかくかつての食生活にも困るという状態は、これが解消された。こういう事柄が何よりも実際に示しておるのじゃないでしょうか、よくなったことを。そうして、いままで比較的楽をしていた連中が過去に比べて現在は苦しい状態になってきたと、こういうこと、これがやはり平均化されていると、こういうことの証左じゃないかと私は思います。だから、いまの伸び率が幾らになったからこれは大きいとか小さいとか、どうもしろうとだましのことをおっしゃらないほうがいいのじゃないでしょうか。これはもう専門家だからむしろよく御承知だろうと思いますが。
  68. 矢山有作

    矢山有作君 けしからぬ話だな、しろうとだましとは。あなたね、この数字を一々見たら、あなた、そんなことは言えませんよ。冗談じゃない。この伸び率はあなた、前が小さかったから云々言うけれども、三十六年度から四十年度、四十一年度から四十六年度、それぞれ対比して出しているのですよ。この伸び率を見れば、第一、たとえばあなたのことばでありますが、政治の姿勢だけでもわかるでしょうが、はっきり。政治姿勢としてなってないということがわかるでしょう。ましていわんや、私はあなたに検討してもらいたいのは、あなたのほうこそ数字を検討してもらいたい。ぼくは手元に持っているわけですよ。それを一々数字をあげると時間が足らぬから、一目りょう然とわかるようなところを政府から言ってもらって、言っているわけです。取り消しなさいよ、そんなけしからぬことばは。何ですか、それは。
  69. 松永忠二

    松永忠二君 関連して。  とんでも一ない話です。いまだんだんと矢山委員質問をされていることで、伸び率だけのことを言っているのじゃないのです。たとえば、あなたが総理になられてから、産業基盤の公共投資の内訳なども、三十七年−四十年で構成比四五・五%であったものが四五・七%になっているわけです。しかもその前の三十三年から三十六年には、産業基盤が三九・七%になっているわけなんです。こういうふうに構成比のほうでもそうなっている。ではたとえば、それじゃお話のように、いわゆる軌道の修正ができなかったのは、たとえば国民経済計算の上から言って個人への移転というものが大体もう八%程度にならなければできないじゃないか。いま日本の国が四・一%で、諸外国は——中には西ドイツなどは一四・一%だ、これらに比べて非常に少ない。個人への移転が非常に少ない。これが社会保障の関係費の非常に微弱になっている理由だから、少なくも八%程度にこれを高めなければできないじゃないか。あるいは、社会保障審議会が国民所得を大体一四%くらいに伸ばさにゃいかぬといったのに、ちっともこれが実行できない。いまお話のあった一般会計の中の社会保障関係費が一四・一%、ちっとも変動しない。こういうことも指摘をされているわけであります。私はいま議論をしている中で一つだけ、たとえば大蔵大臣が、いわゆる国際収支の天井の壁が非常に低かったので、やろうと思ったけれどもなかなかできなかった面があるということは、一つの根拠を示された一つの点であることは事実です。しかし、そういう中で、一体民間設備投資と政府固定資本形成をどういうふうに変えていくかという施策があれば、狭い天井の中でもやれたはずである。現に、企画庁がその試算をされて、社会保障、社会資本充実のために今後ケースを三つ考えられている。そして社会保障充実のための、これからの長期的な展望の上に立って考えた場合には、民間企業設備投資というものをうんと少なくしなきゃだめだ。それに比べて、いわゆる政府固定資本投資が大幅に伸びなきゃだめだと。たとえば最も福祉型のケースとして、この平均増加率が、民間企業設備が三・七に対して、いわゆる政府固定資本形成が八・二というくらいな差ができなければ、真に福祉型の予算なりあるいは長期計画はできないということを指摘しているわけなんです。だから、いわゆる民間企業設備投資を抑制する具体的な方法を、これからあるいはお話があるのかもしれぬが、これを抑制をしながら、しかも政府固定資本投資を大幅にギャップをつくっていかなければ、これからいわゆる福祉国家などというのはできないということを企画庁自身だって出しているんじゃありませんか。お話を聞いていると、何か増加率ばかりお話をするような幼稚な議論をされたんでは困るというようなお話だけれども、そうじゃないんであって、増加率についてもこうだ、構成比についてもこうだということを言ってるのであって、私たちはこういう資源配分について徹底した理論と政策がないところに、単に高度の経済成長があれば福祉が充実するのではなくて、高度経済成長のときには、政策が伴わなければ福祉の向上はないということを証明したわけだ、いま。だから、これについてはいわゆる政策の足らざることを反省をし、今後そのためには大幅に民間企業設備の抑制もはかっていかなきゃできないだろうということを率直に述べらるべきであって、またその一つ理由として、大蔵大臣が、天井の壁が、いわゆる国際収支が低かったから、どうしてもやろうと思ってもできなかったがというお話がある。しかし、その話の中でも、佐藤内閣になってからは相当ないわゆる経済成長もあったのでということを言っているわけじゃありませんか。そういうことをまじめに、非常に統計に基づいて議論をされるのに、何かばかばかしいことだけを申しているようなことを言われたんでは、われわれはとても納得はできません。われわれは、すでにもう企画庁が試算をしているように、民間設備投資と政府固定資本形成のギャップを大幅につくっていくということや、いままでのような資源配分ではだめだということをこの際強く考えて、そうしていかなきゃできぬということを率直に私は総理から言うべきである。大蔵大臣だってそんなことぐらいをはっきり言うべきであるのに、何かいたずらなる議論をしているようなお話では、今国会予算の性格からいって、とうてい私たちはそんなことを聞いているわけにいきません。
  70. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ごもっともな議論だと思います。そこで、いま総理は、伸び率ということを申しましたのは、全体の構成比では上がっているということを言いたかったんだと私は思います。それが、昭和三十年代は構成比が一三%台だと思いますが、四十年に入ってから一四%台になっておりますが、今度は、沖繩の予算というものを取って、いままでのと違う特別の要素を取って比較しますというと、今年は一五%台にいっておると思いますので、その点は、構成比は今回は確かに上がっておると私は思います。
  71. 矢山有作

    矢山有作君 大蔵大臣、構成比はだから私は下がっておるとは言っておらぬ。一四%程度で推移していると言ったじゃありませんか、社会保障で。
  72. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 矢山君に対する私の答弁が不十分だったようですが、先ほど松永君が御指摘になるように、これはもう私どもも今回の予算は、そういう意味で社会資本の充実に特に力を入れていると、そういうことでございますから、過去の状態それだけを引き合いに出されないで、ことしの予算をひとつ御審議いただくと、そういう立場でもただいまの御批判もいただきたいと、かように思います。
  73. 矢山有作

    矢山有作君 ちょっとすわっておって言うけれども、過去あなたは、同じように、人間尊重だ、社会開発だと言ってきたわけだ。それでやったことが、実際には池田内閣よりももっと極端な高度成長をやってきたわけだ。その結果が今日の経済困難におちいったわけでしょう。そのことをあなたは、数字できちっと調べてみて、その実態を把握して、それでその原因は何かということを追及しなければ、ことしの予算でどうこう言ったところですぐやれるものじゃないでしょう。ことしの予算だって——ことしの予算は先ほど私が言ったように、ほかの質問者がこの問題について、内容については触れると言っているでしょう。私はその前段として、いままであなた方が口先だけで、実はとんでもないあやまちをおかしてきたその実例をあげているわけです。それを踏まえた場合に、ことしの予算も必ずしもそれが基本的に修正されてないと、しかも後年度以後は、それがあと戻りするおそれがあると思う。この議論はこれから展開されるわけです。そのためのあとづけをやっているんだ。これじゃできないよ。しろうとだましというのは取り消しなさいよ。そんなばかな、それでまじめな議論ができますか。
  74. 松永忠二

    松永忠二君 総理、その点について発言をして、休憩をして……。
  75. 徳永正利

  76. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私のことばが不十分、あるいは誤解を受けていると、こういうことがあれば、それは訂正さしていただきます。
  77. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 矢山君の質疑の途中でございますけれども、午後一時まで休憩いたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時七分開会
  78. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和四十七年度総予算三案に対する矢山有作君の質疑を続行いたします。矢山有作君。
  79. 矢山有作

    矢山有作君 実は、午前中の外務省極秘電報の漏洩問題についてのやりとりに対して、ちょうど昼休み中、なかなか反響が多いようです。そこで私は、この際ひとつ総理の真意をただしておきたいのですが、あなたは午前中の答弁の中で、記者の取材活動の問題に関連をいたしまして、正しいことをやっておるなら正々堂々と言ったらいいじゃないか、こういう意味のことをおっしゃったわけですが、これは私は非常に重大な意味を持った発言だと思うのです。そこで私はあなたの真意を重ねてお聞きしておきたいと思うのです。
  80. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、速記に出ているとおりでございます。
  81. 矢山有作

    矢山有作君 もしあなたがそういう考え方を持っておられるとすれば、これは記者の自由な取材活動を完全に拒否した考え方だと思うのです。というのはなぜかというと、やはり報道の自由という立場から記者が取材活動をやる、これは記者の取材活動をやる自由があると思うのですよ。それを何か問題があったときに全部しゃべってしまわなければいけないのだ、取材活動に対しては全部しゃべる義務が新聞記者にあるのだというふうな、私はあなたのお考えだと思うのですがね。そうなると、これは新聞記者取材活動を完全に否定した考え方でしょう、これは。あなたがそういうようなお考えを持たれることは、これはたいへん問題だと思いますがね。
  82. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は取材ソースをはっきりさせろとか、それをしゃべらなきゃならぬと、かようには申しておりません。私はさっき申しましたように、それは堂々たることだろうから、それなら堂々とおしゃべりができる、それを発表されてしかるべきじゃないか、こういうことは言いました。けど私は、取材活動にいろいろのルートがあるということ、その一々をこの際に明確にしろとまでは言ってないと、かように私思っておりますから、なお、そこらの点は速記をよく調べた上で正確なところをひとつ理解していただきたい。
  83. 上田哲

    ○上田哲君 関連。  午前中の質疑に関連してでありますが、私が六項目あげました問題について、総理のお答えが十分でありません。きわめて二、三点にしぼって御見解を承りたいと思いますが、ただいまの問題が一つ。知る権利というものが憲法レベルの国民権利であるということは法制局長官もお認めになり、総理もこれを援用されております。しかし、総理の御答弁では、その知る権利というものも無制限ではない、こういう御見解であります。私もそういうところは一般的にはまず認めてもいい。しかし、私が申し上げたのは、知る権利の中で公共の利益、これを追求するという角度においてはいかなる立場も制限さるべきではない、こういうふうに御見解をただしたのでありますけれども、総理は、一般的な制限があるような御発言でありました。一体私が申し上げた取材の自由、言論の自由、これは公共の利益を追求すること以外に一体どんな制限があるとお考えになるのか、これが一つであります。  もう一つ、私はすでにお認めになった知る権利は憲法レベルの権利であるということからすると、この憲法レベルの権利の行使に関して法律レベル、特にこの際具体的には国家公務員法の百十一条を適用しての西山記者の逮捕というのは、はなはだ順序を逆転させているし、少なくとも百歩を譲ってそこに違法性を認めるとしても、この違法性は憲法レベルの合法性によって阻却さるべきだということを申し上げているのであります。一体そういう法律論を総理はどのようにお考えになるのか。ぎりぎり詰めて言えば、国家公務員法百十一条をもって西山記者を逮捕されたことはまことに正しくないと思います。それが正しいのか正しくないのかということを、憲法レベルの理解において明確に示していただきたい。二点。  さらに第三点でありますけれども、西山記者に関連して総理のお答えではなはだわれわれがふに落ちませんのは、信ずるところがあれば堂々とこれを述べよということを、かなり強い口調で御発言になりました。これは非常に問題であります。総理の言われるところは、逮捕される前に信ずるところがあれば自分のほうから出てこいという意味であったのですか、あるいは逮捕されてから司直の前で堂々と述べるべきだと言われているのでありますか。いずれにしても、この問題は、取材ソースを秘匿してよいという当然な社会慣習上の言論機関の権益と申しましょうか、保障、そうした問題に根本的にかかわるはずであります。一体総理が先ほど言われた、堂々と申し述べるべきである、——速記録を見よと言われたわけでありますが、私どもの耳にしっかり残っている総理のおことばを、そうした面、両面についてきちっと御解明をいただきたいと思います。
  84. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最初の二つは、あるいはさらに法制局長官から補足さすかもわかりませんが、私の知ってる限りにおいては、知る権利はある、これはもうそういう意味において正しい。しかし、事柄の性質上ときには秘密のあるということもやはり報道関係の方も御承知でございます。そういう意味でやはり知る権利はあると言ったからといっておのずから限度がある。これはやはりそういう意味で理解しておるように私は思っております。知る権利があるからといってどんなことをしてでももうこれは知るのだ、これは当然の権利だと、こうは私は言えないと。やはり一つの限度はあるだろう。ましてやただいまも言われるように、公共の利益、そういうものはやはり守られなければならない、こういうことだと思います。だからそういう意味の公共の利益追求と、こういうような立場において知る権利主張されること、これは私はそれなりに評価すると、ただいま申し上げておるので、これは別に議論はございません。  第二点。公務員法、これはしかし憲法違反ではないと私は思っております。憲法に基づいて法律は制定されておる。だから憲法の条章と公務員法とはぶつかっている。そこで公務員法は無視さるべきだ。ここまでは少し言い過ぎじゃないだろうか。私はやはり法律は憲法に違反しないでつくり上げられる、かように思っております。  それから最後の問題でございますが、これは先ほどの午前中のお尋ねにも関係することでございます。私は、新聞記者諸君がみずから取材されたことは、やはり報道されるには新聞紙をもってされることが当然ではないか。私はそういう意味で、新聞紙上に堂々と載せられるならこれは私どもがとやかく言うべきではない。でありますから、編集局長のあのものを読んでみましても、最後のところに、やや新聞報道のモラルを欠いているのではないだろうか、こういう疑問を残してあの記事が結ばれております。私はそういうことを考えると、これはやっぱり記者諸君は、みずから毎日新聞の記者なら毎日新聞紙上に載せることは、これは本来の職務じゃないか、かように私は思っております。そういうことが載せられないで、他にそういうものが出ていく、こういうところに問題があると思う。だから私は、そういう意味のことで報道機関もそれぞれの秩序を守るべきじゃないか、かように私は申したのであります。
  85. 上田哲

    ○上田哲君 一番初めの知る権利については、公共の利益ということに向かっての知る権利は十全であるという御見解をただしたわけですが、総理の御見解はそれでいいのかどうか、はっきり確認をしておきます。つまりそれ以外に政府の利益、政府の利害ということに抵触する場合は制限を受けるのかどうか。たとえ政府の利害と相反しても、たとえばニューヨーク・タイムズの場合のペンタゴンペーパーに見られるように、明らかにニクソン政権の利害とは反しても、それは国民の利益あるいは国益には反しないということでアメリカの裁判所の判決もしっかり出ております。そういう意味で、政府の利害がこの公共の利益ということの中にすっかり含まれてしまうのか、政府の利益と相反しても取材の自由、表現の自由というものがあるのかどうかということを明確にしていただきたいことが一つ。  もう一つは、毎日新聞の編集局長名の見解表明に対してのお答えだと受け取るわけですけれども、たいへん大きいものですからまた後ほど伺いたいと思いますが、この問題も、先ほどの総理のお答えでは、堂々と話をしろ——午前中のお答えと結んでお話をするわけですが、堂々と話せばいいじゃないか。それが司直の前で堂々と言えということになりますと、逮捕された西山記者だけの問題でありません。たとえば具体的に、この編集局長の表明の中には、沖繩の機密文書の問題が明らかになってからの予算委員会の討議では、われわれが知り得ているところとほぼ十分な内容が明らかにされているという表現があります。「ほぼ」という意味は、なおこの上、言論機関によって明らかにさるべきであるということも、たとえば含まれているわけですが、そういうことが表明された場合に、総理はこのことを知る権利の制限だとお考えになるかどうか。この辺のところをしっかりしていただきませんと、これは逮捕された西山記者ないし毎日新聞の問題ではありません。全言論機関と政府との関係ということになってまいります。明確にお答えをいただきたい。
  86. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まず第一点でございます。私は必ずしも公益、これが政府のやっていることは全部内密だと、かように私も申しておるわけではございません。しかし、報道関係の方なら御承知のように、人にはやはりプライバシーがあります。そのプライバシーまで報道の自由だと言い、あるいは表現の自由だと、こういうことで週刊誌等がしばしば論議されていること、これはもう御承知のとおりだと思います。したがいまして、私はこれで多くの議論をする必要はないように思います。ただいまの政府政府としてこれは極秘にしたい、そういうものはございます。しかし、それをあばかれたからといって、これは私はやむを得ないことだと、かように思っております。だから政府政府としてその秘密を守る、そういう意味の公務員法も制定している、かように御理解をいただきたい。  また、最後の問題——西山記者の問題。私は、堂々としゃべったらいいじゃないか。しゃべれないとおっしゃるから、さようなものは、しゃべれないならしゃべれなくてけっこうなんです。ただ、それだけなんです。しゃべって差しつかえないことならしゃべっていただきたい。これは、やっぱり私どももこれは国民としての知る権利があると、かように私は思います。政府じゃございません、国民としてです。私どもも、これだけやかましい問題になっているんですから、その実情はしゃべれるならしゃべってもらう、そうするとはっきりする。さようなことを私は要求する。しかし、それがしゃべれない、仕事上の秘密だと。あるいは仕事上の秘密、あるいはれをしゃべる必要はないと、かようにお考えになれば、それより以上論議する筋のものではございません。
  87. 松永忠二

    松永忠二君 関連。
  88. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 松永君、簡単に願います。
  89. 松永忠二

    松永忠二君 最後の問題についてひとつ、さっきから話が出ておりますが、非常に重大な問題で、はっきりさしておいていただきたい。西山記者が正しいことをやられたなら堂々と言ったらどうだと、何もそんなことは、はばかることはないじゃないかという発言が午前中にある。そこで、そういうことを貫いていくということになれば、正しいことであっても、取材権利を確保していくというためには、話すべきことではないというような問題がある。それが、西山記者がいまいわゆる身柄を拘束されている中でも、そういう権利に触れたものを話す必要はないと言って主張されているわけです。そういう主張は正しいのか、それとも、そういうことは正しくないのかという問題なんです。午前中の質問の中では、正しいことをやられたならどうぞ言ったらどうですかと、言えないわけはないでしょうというお話だったので、それでは、いま西山記者が取材権利を守るという意味から、秘密にしなければできない。周知し、秘密にしなきゃできない問題があるということを強調している、こういうことまでも否認をすることになるのではないか。これは重要な問題だし、これは一般的な問題であって、もしこういうふうなことを言われたんでは、取材をするということは今後できないのではないか。当然取材の中には正しいことであっても、これを秘密にしなきゃできないことがたくさんむしろあるのではないか。今度の問題についても、そういう意味から問題が出てきているということを明らかにしておかなければできないということが、いま矢山委員や、あるいは上田委員の言われたところだと思うので、その核心に触れたところを明確にお答えをいただきたい、これが明確にならないということであればですね。これは、単にこの質問のやりとりではありませんから、これはやはりはっきり今後させなきゃできないので、別個の措置委員長にも提案をしなきゃできぬと私は思うんですが、この点をひとつ明確にしていただきたいというのが両者の質問であり、端的にその問題に触れて、そういうことを言っている西山氏のこの態度には正しいものがあるのかないのか、それは、全然否認をすべき問題なのかどうかということを、端的にひとつお話をいただきたい。
  90. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私もまあきのうきょうの記者諸君とのつき合いではございません。記者諸君からいろいろミスリードしないように、言えないことは言えないとおっしゃってくださいと、しかし、ミスリードされるのは困ると、こういうような取材態度で、しばしば話をされております。したがって、ただいま私が言っている事柄、もしも、取材ルートを明らかにしろと、こういうことのようにおとりになったら、これはまた別であります。また、全然私はそこまで要求しているわけじゃありません。しかし、私の要求することと、検察当局の要求すること、これはおのずから違います。もしもそれが犯罪に該当するなら、これやはり検察当局とすれば当然のことをするんじゃないかと、私かように考えます。私ども自身はですよ、ただいま言えることは、取材として、これはもう取材は御自由ですと、そういうことは言っております。だから、取材のソースはこれは御自由でございます。それを全部明らかにしろと、こういうことを私が要求する、そういうような筋合いのものでないことは、ただいまのことばでおわかりだと、かように思います。
  91. 矢山有作

    矢山有作君 いまの問題はね、またあらためて会議録等調べてやりましょう。ただ、午前中のあなたの発言をそのまま解釈するなら、それはしゃべれと、しゃべるのがあたりまえだというふうに受け取られるわけですよ。だからあなたが発言なさる場合は、一個人佐藤発言じゃないんですから、総理としての発言ですからね。それは、聞く場合には非常に強制力を持って、権力的な響きを持ってくるわけですからね。その点は、あなたの慎重な、総理らしい態度を強く私は要求しておきます。  そこで、午前中私は数字をあげていろいろ申し上げました。数字はことさら作為を加えぬ限りは正直ですからね、それをあげて申し上げると、人間尊重を唱えた佐藤内閣の実体というものが暴露されてまいりますので、いささかあなたのお気にさわったらしくて、感情的にエキサイトされた面もあるようですが、ほかに私はさらにそういったものを数字をあげて実証したいんだが、まああなたがエキサイトされて感情的になられるぐらいだから、これで大体あなたのやってきたことは明白になったと思うのです。したがって、これ以上数字をあげることはもうやめておきましょう。ただ私は申し上げたいのは、あなたが今度新しく打ち出された福祉型の経済ということも、それから人間尊重ということも、おそらく私は同じ意味だと思うんです。そうすると、人間尊重を唱えて七年有余にわたって政権の座にあったあなたが、その人間尊重にふさわしいような政策展開ができなかった。その時点で、今度は福祉型経済だといって、幾ら言ってみても、これはなかなか国民はまたやれるのかなといって疑問を持つぐらいのことで、なかなか信用しないと思うのですよ。特に、その高福祉社会を実現するというためには、私は、どうしても政府が民間の経済活動の分野に介入してくる度合いが非常に高まってくると思う。いままでのように、民間設備投資の増加を主因とした成長率競争は、まさに民間の自由な極大利潤の確保を目ざした経済運営で、政府はただそうした成長率競争の上に乗っかって、さも自分たち政策でこうなったんだというようによそおっておれば済んだんですが、福祉型経済をほんとうにやろうとすれば、私は、あらためてあなたがよほどの決意をし、さらに、それを実際にやっていく具体的な政策というものをお持ちになり、それを積極的に示されねばいかぬと思うのです。この問題については、同僚の議員からあらためて後刻それぞれ追求がなされると思います。そこで、私はただこれだけ言って最後にしておきたいと思います。  私は、遺憾ながら、政府が福祉型予算とか財政主導型による福祉経済の運営とか、ことばとしては、スローガンとしては言えても、それを実際に行なうことは難事中の難事で、失礼ですが、現在の政府与党の方では不可能ではないかと思います。人間尊重を掲げた佐藤内閣のもとで、国民所得の分配でも法人留保が優遇され、勤労者や農民、中小企業者というような人々の分配は高まらなかった。また、個人消費支出のごときは低下の傾向がはっきり読みとれるという、これは佐藤内閣だからそうなったというより、私は保守党の体質として当然の結果であると見たほうが妥当だろうと思います。福祉経済という場合でも、多分にその実行段階では階層間の不公平が強まるような方向にいくのではないか、それが解消はおろか、階層間の不公平の谷が浅くなることも困難ではないか、こういうように私は思います。やはり、ほんとうの意味での福祉社会の実現というのは、発想の転換といって口先で言っておるだけでは私はだめだと思う。やはり体制の変化が伴わないとできないだろうというのが私どもの立場であります。  そこで、私は佐藤内閣七年有余にわたる財政経済政策に対する批判を終えまして、まだあと質問がたくさんありますから、質問の方向を変えてお尋ねをいたします。  大蔵大臣にお伺いしたいんですが、予備費は予算ですか。
  92. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは矢山君から答弁を求められなかったんですが、やや私の先ほどの説明だけでは不十分のようですから、この機会に補足さしていただきます。  御承知のように、三十六年に国民皆年金、国民皆保険を実施してから、四十年以後におきましても、二万円年金の実現、児童手当制度の創設、今年度におきましては、福祉年金の引き上げ、老人医療の無料化などを行なうこととしており、今日におきましては、わが国の社会制度、この中身は西欧並みではございませんけれども、まだまだ不足でありますが、制度といたしましてはそこまできておると、これだけをつけ加えまして、先ほどの御議論ではどうも不十分のようですから、何にもしていないような言い方ですから、それだけ訂正させていただきます。
  93. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 予備費は予算でございます。予備費は、予見しない経費の不足に対するものでございまして、りっぱに予算でございます。
  94. 矢山有作

    矢山有作君 それはおかしいんじゃないですか。私は、形式的には予算の範囲に入らぬと思いますよ。財政法の条文を検討してみてください。それは、なるほど、予算の何でしょう、総体をいう場合には、総体の中に含めて言っているかもしれませんが、財政法の規定を厳格に読んだ場合には、私は形式的には予備費というのは予算じゃないと思いますがね。
  95. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 財政法の第十六条に、「予算は、予算総則、歳入歳出予算、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為とする。」とありまして、同法の第二十四条に、「予見し難い予算の不足に充てるため、内閣は、予備費として相当と認める金額を、歳入歳出予算に計上することができる。」つまり、予備費は歳入歳出予算でございます。歳入歳出予算は、当然これ予算に入るわけであります、十六条によりまして。したがいまして、予備費は予算でございます。
  96. 矢山有作

    矢山有作君 私は、法律解釈からして予備費は予算ではないと、こういう立場を持っております。  この問題で議論しておると、またこれで時間身食いますので、次に移りますが、財政法四条のただし書きで、公共事業費、出資金、貸し付け金は公債でまかなえるとなっておりますね。四十七年度に国債は一兆九千五百億円発行されることになっておりますが、国債対象経費の総額、公共事業費、出資金、貸し付け金、どういう内訳になっておりますか。
  97. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 大体二兆一千四百億ぐらいでございますが、こまかいことは、ちょっとお待ちください。
  98. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 公債発行対象経費の総額は、ただいま大臣が答弁申しましたとおり、二兆一千百三十億円でございます。そのうち、公共事業費が一兆七千五百十四億円、出資金が三千三百五十八億円、貸し付け金が二百五十八億円であります。億単位で申し上げました。
  99. 矢山有作

    矢山有作君 公共事業費のうちで、公共事業関係費はどれだけになっておるのか。公共事業関係費のうちの災害復旧事業費はどのくらいになっておりますか。
  100. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 公共事業費のうち公共事業関係費は一兆四千九百三十八億円でございます。このうち災害復旧等事業費が千三百二十四億円であります。
  101. 矢山有作

    矢山有作君 大蔵省の昭和四十七年度予算説明を見ますと、四十七年度の災害復旧事業費は千三百五十四億となっておるようです。そして、公債対象経費としては千三百二十三億だ。大体三十億円の差があるわけですが、公債対象にできない災害復旧事業費というのがあるんですか。
  102. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 公共事業費の中には地方公共団体等の分担金をもって施行するものがございます。そういう特定財源のあるものは、これを対象から除かねばなりませんので、その差額はそれに相当するものだと思います。
  103. 矢山有作

    矢山有作君 予算説明で見ますと、四十七年度において新たに当年発生災害の復旧事業費として百七十億円を計上しておりますね。この当年発生災害の復旧事業費というのは、四十七年の四月から四十八年の三月中に発生する災害と、こういうふうに解釈していいわけですか。
  104. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 災害復旧費の場合には、通常は歴年で区分いたしておりますので、ここにいう当年債は、四十七年の一月から十二月末までの災害復旧に充てる事業費でございます。
  105. 矢山有作

    矢山有作君 それでは、この百七十億ですね、当年発生災害の復旧事業費の百七十億の省庁別の内訳を言ってみてください。
  106. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 百七十億の内訳は、建設省が百二十八億円、農林省が三十九億円、運輸省が三億円でございます。
  107. 矢山有作

    矢山有作君 この当年発生災害復旧事業費というのを百七十億見込んだという根拠は何でしょう。私は、これはなかなか見込みはむずかしいと思っているのですが。
  108. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 先生御案内のとおり、四十六年度までは当該年度に発生した災害の復旧事業費は、予備費または補正予算をもって処置しておったわけでございますが、四十七年度にはこれを公共事業費予算の中に計上したわけでございます。新たにこれを計上いたしました趣旨は、毎年度発生いたします災害の復旧事業費は、金額の多少はございますが、必ず要るものであります。したがいまして、過去における災害復旧費の、これは今回は五年間をとりましたが、最低の金額をとりまして、この当年の所要額として予算に組んだわけでございます。
  109. 矢山有作

    矢山有作君 当年発生災害の五年間の最低の額を基準にして組んだとおっしゃるんですが、じゃ、その五年間の当年災の額を言ってみてください。
  110. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 四十二年が、これは各省庁通じてでございますが、予備費及び補正予算をもって処置いたしました災害復旧事業費でございますが、四十二年が三百八十七億円、四十三年が二百四十九億円、四十四年が三百三十億円、四十五年が三百二十億円、四十六年が五百五十一億円となっております。
  111. 矢山有作

    矢山有作君 これで見ると、過去五年間の最低のところを基準にして百七十億見込んだと言われましたが、各年度とも百七十億より大体倍ぐらい上回っておりますね。だいぶ私はあなたのおっしゃったことと食い違いがあると思いますが、数字を見間違われたんですか。
  112. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) これは総体の金額で申し上げましたが、過去五年間におきます災害復旧事業費の各省庁別の措置額、その各事項につきまして、その最低額を合計いたしまして、それにさらに八割をかけまして計上したわけであります。
  113. 矢山有作

    矢山有作君 過去の例から見て、これだけじゃとても足らぬだろうと思いますが、不足したときはどうするんですか。
  114. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) それは当面は予備費によって措置するつもりでございます。
  115. 矢山有作

    矢山有作君 どうも珍妙な話ですね。私は当年発生災害の復旧というようなものは、これこそまさに憲法八十七条に規定した予備費ですね、いわゆる「豫見し難い豫算の不足に充てる」、これにぴったり当てはまるものだろうと思うんですね。いままではこれは、ちゃんと当年発生災害復旧事業費は予備費でやってきたのに、何で四十七年度では、これが、予見される経費としてこれを災害復旧事業費に計上したわけですか。どうもちょっと私は納得がいかないんですがね。
  116. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 予備費は、先ほど申し上げましたとおり、予見しがたい経費の不足に充てるため計上することになっております。しかしながら、災害の復旧費は、先ほど申し上げましたとおり金額に多少の増減はございますけれども、過去において毎年度必ず計上して予備費支出または補正予算において措置してまいった事項でございます。したがいまして、過去の実績を基準にしまして、その必要最小限度の金額は、これはまさに予見しがたいというよりも、むしろ予見し得る経費でございますので、予算に組むのが適当ではないかというふうに判断したわけでございます。
  117. 矢山有作

    矢山有作君 口は重宝なものだから何とでも言えますが、しかし予備費といったらこの災害復旧事業費のごときが典型的なものじゃないですか。私は過去の予備費の支出の状況もずっと調べてみましたが、やはり予備費の典型的なものは、この災害復旧事業費のごときものであるとこう思っているのですが、そうすると、この予備費、憲法八十七条や財政法二十四条で言っている予備費というのは一体どんなものがあるのですかね。
  118. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) この予備費は、まさに予見しがたい経費の不足でございますからいろいろあるわけでございます。しかし、過去において支出いたしております経費としては、災害復旧事業費のほか、たとえば給与改定の財源、それから海外におきまして災害があった場合に対する援助費でございますとか、それから義務教育費国庫負担金、生活保護費その他のいわゆる義務的経費の精算に伴う不足額の補てん、そういうような経費がおもなものでございます。
  119. 矢山有作

    矢山有作君 私は、牽強付会もいいかげんにしてもらいたいと思うのですがね。やはり予備費の典型的なものは、私は、当年発生災害復旧事業費のごときものが予備費の典型である。それをあえて当年発生予想の災害復旧事業費を経常経費扱いをしたというのは、私はこれは予算編成上非常に問題だと思いますよ。一体そうなると、予備費による当年発生災害復旧というのは、公共事業関係費の中の災害復旧事業費の当年発生災害復旧事業百七十億というのと性格はどういうふうに違うのですか、それをどう区分するか。これは大臣、あなたから聞いたほうがいいのですがね、どういうふうに区分したらいいだろうか。
  120. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 過年災の復旧事業費は、これはもうあらかじめわかっておる経費でございますのでこれは問題はございませんが、現年災の復旧事業費というものは、これは予見しがたい経費の不足というものから見ますというと、予見しがたいものは事項であるか金額であるか、いずれかの場合がございますが、この災害だけはさっき主計局長が説明しましたように、大体いままでの毎年の例によりましてもう一応事項としては予見できるものである。同時に、金額としても大体全く予見できないものではない、過去の経験で。そういうことになっておりますので、したがってこれをもう一応全額を予備費にまかせるのではなくて、一定の額を予算に計上しておいて、そうしてこの不足分は、これこそほんとに予見できないものでございますので、これはその場合に、予備費によって支出するということをするほうがこれは実際的ではないかというようなことで本年からこういうことにしたものでございますが、従来からいいますというと、公共事業費の対象経費の中には当然過年災の復旧事業費が入っておりますので、そういう点からいいますと、性格が全くいま二つのものは同じでございますから、この百七十億も一応対象経費の中に含めてあるという扱いを今度しているわけでございます。
  121. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、この当年発生災害として見込んだ百七十億というのも、実質的には予備費ですね、これは。お話を聞いていると実質的に予備費ですよ。そうすると、この予備費を、実質的な予備費であるものをこれを災害復旧事業費として見込んで、そうしてこれを予算計上するというのは私はおかしいと思いますよ、これは。これはあなたの言い方というのは、やはり三百代言的な言い方じゃないですかね。大蔵省も大蔵大臣も三百代言になったのかね。私はちょっとおかしいと思うな、理解ができない。幾ら言われても理解できませんね、これは。
  122. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 災害がまだ起こってないわけでありますから、今後発生いたします災害を予定してその復旧費を組むという点において、これは予備費的なものではないかというお話でございますが、しかし予算には、たとえば現在まで組んでおります中にも公務員の給与改定、これはまだ人事院勧告がない段階ではそのパーセンテージ、金額というものは予定できないわけでありますが、しかし、これは数年前から、大体まあ人事院の勧告はあるということを予定いたしまして、その最小限度の金額として五%を各省庁の人件費に組む。あるいは退職金のようなものでございますが、これはまあ退職者は予定されておりません。しかしながら、必ずある程度のものはあるだろうということで組んであるわけであります。したがいまして、その支出する原因がまだ生じてない場合におきましても、当然それに必要と思われる最小限度の金額を予算に計上することは、従来ともやっておりましたことでありますし、これはまあ当然のことではないかというふうに考えております。
  123. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、あなたは正当づけるために公務員給与の問題を引き合いに出されたわけですが、それは、なるほどそういう牽強付会な議論も成り立つだろうが、そう説明するのにあなたよほど無理を感じませんか。公務員給与の引き上げと当年災の問題とは全然性格が違うでしょう。私は、それを同じように、同列に扱って、これはある程度まで見込み得るんだからこれを見込んで、そして公共事業関係費の中にぶち込んで公債発行対象経費にするんだという、これは私は、やはりあなた方の考えておるのは公債対象事業のワクをふやしたいからそうやったんじゃないですか。公債対象事業というのは法律でワクをくくられていますからね、予備費じゃまさか公債対象にするわけにいかぬ。したがって、これをことさら、これからはずして公共事業費の中にぶち込んでやる、そういうことをやったんじゃないですか。
  124. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) その公債対象経費は、今回官庁営繕等にも及ぼすということにいたしておりますから、私どもが現年災を公共事業に組むことにつきまして、いま先生がおっしゃいましたような公債対象経費をふやすというような考え方が全くなかったと申しますと少しあれになると思いますが、しかし、まあ給与につきましてもそういうような措置をいたしておりますし、私どもは災害復旧、現年災の復旧事業費につきましても、これを公共事業費に組むことについては、そう特に無理をするというような気持ちは毛頭ございませんでした。
  125. 矢山有作

    矢山有作君 公債対象事業のワクを広げるという気持ちもあって、従来予備費、性格的にも私は当然予備費にすべきものだと思いますが、そういう性格の当年発生災害を公共事業費に入れてやったと、こういうことなんですがね。こういうでんでいきますと、私は心配なのは、たとえば先ほども言われましたが、施設関係のものを新たに公債対象事業に加えられたですね。そうすると、公債対象の事業というのは今後歯どめがなくなっちゃって幾らでもふくらんでいくんじゃないですか。私はその点が心配なんですよ、こういうやり方をやれば。たとえば軍事的なものについては、これは公債対象にしないということが政府のいままでの方針でしたね。
  126. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあ消費的な行政費としてこれは対象経費にしないことが適当であるということで、一番最初からそういうことになっておりますが、いまでもそういう考えでございます。
  127. 矢山有作

    矢山有作君 ところが、いまのような予備費を公債対象事業に、従来の常識を破り、法律的に見てもきわめて問題だと思うようなそのことをあえてやった。そういうやり方から見て、私は、あなたはそう言われても、なかなかこれは信用できないのです。たとえば、軍事的な経費は消費経費だから公債対象経費にはしないつもりでやってきたと、こうおっしゃったが、では、自衛隊の隊舎であるとかそういったものが、将来、これは消費的経費ではないのだからというようなことで公債対象事業にぶち込まれてくるおそれが出てきたと思うのですが、どうなんですかね。
  128. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昭和四十一年に建設公債を発行しますときに、この対象経費をどの範囲にするかということが政府の中で非常に検討されました。そのときに、まあ当然ここまでは対象経費としていいんじゃないかと討議された問題がございましたが、それを省いて現行の範囲にとどめたといういきさつがございますので、今回の場合は、また再検討した結果、すでに四十一年のときからこれは当然この中へ入れていいじゃないかといわれた範囲、たとえば官庁営繕費のごとき、それに限って、しかもその範囲をさらに縮めて今回対象経費に加えて、これ以上はもう安易に将来ふやさないというような考えから今回の改正をやったわけでございますので、これはもう今後この範囲を放慢にどんどんふやしていくというような運営はいたしません。しないために、今度洗いざらいやって、大体この辺が適当であるということをきめた、その一つのこれは対象になったということでございます。
  129. 矢山有作

    矢山有作君 それでは、ひとつ、はっきりさせておきましょう。防衛関係の経費は一切、今後国債対象にはしないと、消費的であるとか消費的でないとかそういうようなことによって区別をして、将来国債対象経費にするようなことは一切しないと、これは言えますか。はっきり約束できますか。
  130. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) たとえば、建物のごときはというようなことも前に検討されたことがございましたが、しかし、防衛関係費というものは一切やはり消費的な行政費であるということから、これに関した資産は、たとえ国民のためになっておる資産であってももうこの対象にしないことが適当だというふうに方針がきめられておることでございますので、今後もそういう扱いをすることになろうと思います。
  131. 矢山有作

    矢山有作君 なろうじゃない。しないですか。
  132. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、いま私どもはしないつもりでございます。
  133. 矢山有作

    矢山有作君 まあ私どもは、しないつもりということで逃げられました。予備費の扱いを見ておるとこれはきわめて危険な私は徴候が出てまいったと思います。牽強付会な説をやって、国債対象範囲をどんどん無制限に広げていくということだけはこれは絶対に慎んでもらいたい。私どもは、あなたのお約束を、私どもはしないつもりというのではなしに、絶対に今後やりませんということにまで私は確言してもらいたいと思いますよ。そうしなくては、このやり方を見ておったら信用できませんよ。しないつもりじゃなしに、絶対にしないと言えますか。それを言わなければだめだ、こんな予備費の扱いは。
  134. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは外国の例を見ても、やはり各国ともそういう扱いをしておりますから、私もこれは将来いたしません。
  135. 矢山有作

    矢山有作君 自治大臣にお尋ねしたいのですが、四十七年度に新たに発生する災害について地方公共団体から負担金を取るということ、これは妥当でしょうか。  さらに、自治大臣としては、今回四十七年度の国の予算で新しい方式、つまり公共事業関係費の一環として当年発生災害を措置すると、こういうやり方が採用されたことに伴って、当然都道府県や市町村に負担金納付の予算措置を講じられるようにしなくてはいけないのではないかと思います。この四十七年度の地方自治体の予算編成にあたって、そういうことを指示し指導されましたか。
  136. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 地方財政計画で後年度災害に対します分の負担金は、当然地方が負担するものとして組ましていただき、交付税のを形もっていま御審議願っております。
  137. 矢山有作

    矢山有作君 地方自治体にも、あなたは組ましていただいたと言うけれども、その災害というのは全国一律にいままで発生したことはありませんよね。災害の起こった県もある、起こらなかった県もある。災害の起こった市町村もあれば起こらなかった市町村もある。それに対して一律全部割り当てをやって組ましたのですか。つまり、災害はどの都道府県や市町村に起こるか全然わからぬでしょう、起こってみなければ。したがって、口ではあなたは地方負担分はこれを見込んだとおっしゃるけれども、一体その見込むことが可能なのですかということです。当年災ですよ、四十七年度発生災害のことを言っているのですよ、それの地方負担。
  138. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 当年度災害が起きた場合におきましては、地方負担分というものは地方債その他で措置するのが通例になっておりますので、そのような措置をするように地方債を組ましていただいております。
  139. 矢山有作

    矢山有作君 しかし自治大臣、あなたはそう口うらは合わされるんでしょうがね。実際問題として考えてごらんなさい。ことし発生する災害がどこの都道府県や市町村に発生するかわからないのに、地方に対するその負担金が適正に割り当てができますか。これはできぬでしょう。これは不可能でしょう。
  140. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 御承知のとおり、地方債計画におきましては、年度中に数次にわたりまして災害が起きたときにこれを組まして発行さしていただくという姿で許可を与えておりますから、起きた県に対して地方債を発行するようにいまの地方債計画で組ましていただけると。
  141. 矢山有作

    矢山有作君 それでは農林省、建設省、運輸省、それぞれの所管の四十六年度、四十七年度の農業施設災害復旧事業費、河川等災害復旧事業費、港湾災害復旧事業費の額と、これに見合う地方負担金の額、これを示してほしい。また、四十七年度発生予定の右の各災害復旧事業費とこれに見合う地方負担金の見込み額をそれぞれ示していただきたい。
  142. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 災害復旧事業に伴う地方負担額でございますが、四十六年度は農林省が十三億、運輸省が十五億、建設省が三百六十億、合計四百四十九億円でございます。四十七年度は農林省が六十二億円、運輸省が十三億円、約十四億円、建設省が三百三十七億円、合計四百十三億円でございます。
  143. 矢山有作

    矢山有作君 これ、ぼくが言いよることに答弁なってないからもう一ぺん言いますからね。私の言ったのは限定して言っているわけです。農業施設災害復旧事業費、河川等災害復旧事業費、港湾災害復旧事業費について言っているわけです。政府のほうから出してもらった数字と、あなたのいまおっしゃった数字と、たいへんな開きがありますよ。これはそういうふうに限定しておっしゃっていないんじゃないですか。
  144. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 四十六年度の農業施設の復旧費は、国費にしまして二百四十七億一千四百万円、それに伴います地方負担は四十六億二千三百万円、それから四十七年度は国費にいたしまして、農業施設が二百五十四億八千七百万円、それに伴います地方負担が三十七億三千万円。
  145. 栗栖義明

    政府委員(栗栖義明君) 港湾の災害復旧事業につきましては、四十六年度に地方負担額は十五億四千一百万円ございます。それから四十七年度につきましては、地方負担額は十三億八千三百万円でございます。
  146. 川崎精一

    政府委員(川崎精一君) 建設省関係の公共土木施設の……
  147. 矢山有作

    矢山有作君 河川等災害復旧事業費。
  148. 川崎精一

    政府委員(川崎精一君) 災害復旧事業費でございますが、補助関係の国費が、四十六年度が三百二十七億七千万円でございまして、それに対する補助の地方負担額が百三十七億九千万円でございます。それから四十七年度につきましては、国費が九十一億六千万でございますが、それに対する補助の地方負担額が三十六億一千五百万円でございます。
  149. 矢山有作

    矢山有作君 委員長ね、私が予算書で調べた数字とたいへんな相違がありますがね、これはどういう、どこからはじき出した数字を言ってるんですか。ちょっとね、これ、時間の関係があるからもうやめますが、すわったままでちょっと言わしてください。
  150. 徳永正利

    委員長徳永正利君) はいはい、言ってください。
  151. 矢山有作

    矢山有作君 大蔵省のほうから出された予算の内容を明細に説明した資料から全部拾った数字ですがね。農業施設災害復旧事業費、これは四十七年度に見込んでおるのが二百五十三億二千万。これは何だったら、こんな厚いこういうやつがあるから、それを持ってきて見てもらえばいいと思います。それから四十六年度が百八十六億三千万。それで四十七年度のこれに対する負担金が七千三百万、四十六年度が六千四百万。それから河川等災害復旧事業費、これが八百六十九億四千万、それに対する負担金が二十九億二千五百万。それから四十六年度が七百七億八千万、それに対する地方負担金が十一億一千九百万。それから港湾災害復旧事業費、これは四十七年度が三十五億、それに対する負担金、これは五千五百万。それから四十六年度が三十一億八千万、それに対する負担金が一億九百万。これがあなたのほうから、建設省、農林省、それから運輸省から提出していただいた資料、さらに予算書を見て出した数字です。  それからなお四十七年度の当年災についていうならば、農業施設災害復旧事業費で、当年災として四十七年度計上額が三十三億七千万。それから河川等災害復旧事業費は九十一億六千万。それに対する地方負担金として十億一千万が出てきております。それから港湾災害復旧事業費、これが二億五千七百万、それに対する地方負担金として二千二百万を計算したと、こういうことが私のほうに対する当年災に対してのものとしては各省から資料として出され、それから全体の、いま言った各費目に対する災害復旧事業費及び負担金としては私が予算書から拾った数字です。これと比べると非常な大きな差が出ておりますが、この点についてどうなんでしょう。
  152. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) ただいまの数字をまだ詳細に突き合わせる時間がございませんでしたが、直轄事業の負担金の金額を先生がお読みになっているのじゃないかと思います。
  153. 矢山有作

    矢山有作君 そうじゃない。
  154. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) そうですか。直轄事業と補助事業と合わせまして、およそ地方の負担になる数字につきましては、先ほど申し上げたとおりであろうと思いますが、なおその点は突き合わせますが、私は金額の小さいのは直轄事業だけの負担金ではないかというふうに思いますが、ちょっと突き合わせます。
  155. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ちょっと矢山さんに一つお断わりしておきたいと思いますが、さっきの御質問で公債発行対象の経費、これはもう今後範囲をやたらに拡張すべきものでないと、これはもう同感でございまして、政府もその方針で今度もやったわけでございますが、その中で防衛関係施設というものを将来対象に加えないということは、もうこれは政府の方針でございますので、はっきりお答えできると思いますが、ただ、その前の問題で、ちょうど四十一年の、ここにおられます福田外務大臣が大蔵大臣時代に対象経費として適当なものといって検討した中には、まだたとえば農業関係でこれは対象経費にしてもいいではないかと思われるようなものもございましたが、今回はそういうものは全部省いて、さっき申し上げたような特殊なものにしぼったということでございますが、これは将来やはり一つの適格と思われる対象でございますので、これは将来どういうようなことになるかわかりません。いずれ加えることにしましても、この国会を経て御承認願うことで問題ないと思いますが、私がこれ以上一つも将来ふやさないということを言い切って、次のまた内閣をこう縛ったというようなことでもこれはぐあいが悪いと思いますので、私のほうは、もうふやさないという方針で今度は限定したということでございますが、まだこれで将来永久に対象がふえないかと申しますと、一つや二つは今後検討すべき問題がまだ残っていると思います。そのことだけ一つ申し上げて、私は、絶対に一つもと言ってしまうと、またあとで問題になるといけませんので、その点だけ御了承願いたいと思います。
  156. 矢山有作

    矢山有作君 防衛施設は。
  157. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 防衛施設は、もう問題ありません。
  158. 矢山有作

    矢山有作君 いずれにしてもこの数字の問題、かなり食い違いがありますから、これはあらためてはっきりさせなきやならぬでしょう。しかし、私のほうは、いまあそこに持っておられるあれから拾い出した数字ですから間違いないと思います。  そこで一つだけ例をあげます。河川等災害復旧事業費、四十七年度が全体として八百六十九億四千万になっているわけです。で、四十六年度は七百七億八千万になっておるわけです。ところが四十七年度の地方負担金としての計上額が二十九億二千五百万になっております。四十六年度は十一億一千九百万になっております。これで見ると、災害復旧事業費と同負担金を比べて両年度の乖離が、開きがあまりにも大き過ぎる。これは私はやはり地方負担金の計算がきわめてやりにくい、というのはことし発生する災害ですから、とてもじゃないが、そんなもの見通しがつかぬわけです。したがって、そういうところからこういう大きな数字の開きが来たと思うのです。したがって私の言いたいのは、これらで証明されるように、当年発生災害復旧事業費を予備費としないで、これを経常費のように見て公債対象にするというやり方、このやり方は、きわめて、何というのか、不当なやり方だと私は思います。さらにまた、財政法解釈上から予備費は予算ではないという、そういう解釈からするなら、私は今度のやり方はこれは間違いだということを言いたいわけです。しかし、それをはっきりと数字の上で、いかに矛盾があるかということを、きょうは向こうで言った数字と私が出した数字とはかみ合いませんでしたから、得心していただくことはできなかっただろうと思います。しかし、そういうふうに当年災害発生事業費までその予備費からはずした、そうして公債対象にしたという、このことは不当だということだけを私は申し上げて、この四十七年度予算編成には、いわゆる学校授業料を後期から取ることになったということで、当然国立学校の特別会計のこれは修正をやらなければならぬという問題、あるいはまた例の四次防予算の先取りだと言われた、その中で頭金だけは切ったけれども、国庫債務負担行為はそのまま残しておる、こういうような予算編成上の問題点が幾多あります。したがって、こういう点については、私どもは、今度の予算編成の態度というものは欠陥だらけだ。全く違法を含んでおるし、不当なことも含んでおると言わざるを得ないと思います。いささか長くなりましたが、そういう点を指摘しておきまして、きょうの私の質問はこれで一応打ち切ります。(拍手)
  159. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で矢山君の質疑は終了いたしました。  それでは、総理より発言を求められております。佐藤内閣総理大臣
  160. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 上田君にお答えいたします。  いろいろ御議論があるだろうと思いますが、私は先ほど来話をしているように、取材の自由あるいは言論の自由、そういうものに圧迫を加えるとか介入するとか、こういうような政府に意図のないことだけはこの機会にはっきりさしておきたいと思います。そういう意味から、この編集局長の論文を読んでみますると、今回の行為が、これは政治権力の容赦もない介入であり、言論自由に対する挑戦だと、かように見ると、かように書いてあります。冒頭からの書き出しがどうも私ども意見を異にしている。そうして最終的には、もしもこのルートが報道のルートをはずれていると、こういうことであるならば、これは自分たちも十分調査したいと、かように言っておられますので、それらの点は将来明らかになることではないだろうか、かように思いますが、私、その中の問題について、いわゆる外交文書、その真偽についての論戦とは違って、取材の問題、言論の自由、それはどこまでも尊重していかなければならぬ、こういうことだけは申し上げておきます。     —————————————
  161. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に青木一男君の質疑を行ないます。青木一男君。
  162. 青木一男

    ○青木一男君 私は、これから物価に関する質問をいたす予定でありますが、先ほど来質疑応答を伺っておって、わからない点が一つ出てきました川ので、法制局長官に一点だけ質問いたします。  今度の外務省の事件は、報道の自由という題目で書かれておりますが、今度の事件は、新聞紙上ですっぱ抜かれた事件ではないから、私は報道の自由には関係はないと思うのであります。したがって、取材の問題として扱われていることは、これは当然です。この取材の方法が適当かどうかについては、これは別の問題でありますから、私は触れません。私は取材の自由とか権利とかいうことは、もしありとすれば、これは報道の自由のうらはらで、その前提として初めて認められるものじゃないかと私は思うのです。普通の人にないところの取材の自由とか権利というものが新聞記者という職業人にだけ報道の自由と離れて認められておるはずは私は憲法上ないと思うのです。それでありますから、もしその資料新聞報道の形以外に利用されたとすれば、これは自由の乱用であり、権利の乱用であり、法の保護を受くべきものではないと、私はこういうふうに思うのでありますが、報道の自由と離れて取材の自由あるいは権利というものがあり得るかどうかということを法制局長官に一点伺いたいと思います。
  163. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 簡単に申し上げれば、お説のとおりだと思います。お説のとおりに、取材活動の自由というのは報道の自由にかかわりを持つものである、それを離れて取材活動の自由というものはない、このことは最高裁の判例にも実はかつてございまして、およそ新聞が真実を報道することは憲法二十一条で認める表現の自由に属する、また、そのための取材活動も認められなければならないということは、最高裁の判例にもあるところでございまして、やはり取材の自由というものは報道の自由にまつわる自由であるということは、仰せのとおりだと思います。
  164. 青木一男

    ○青木一男君 物価の安定は、現下最重要の政治課題であり、政府も極力その実現につとめてこられたけれども、いまだその目的を達成しておりません。この間の事情並びに対策について関係大臣にお伺いいたします。  まず、経済企画庁長官にお尋ねいたします。  わが国は、世界屈指の工業国であり、工業製品を巨額に外国に輸出しておる。したがって、国内にも製品が豊富に出回り、値段がどんどん下がるべきであるのに、その消費者価格は概して騰貴しております。これは何ゆえであるか。生産費が高くなるためか、流通機構に問題があるのか、それとも、国民の購買力が旺盛であるためであるか、卸売り物価が比較的安定しておる現状と対比して、原因の所在について政府の見るところを伺いたいと思います。
  165. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 特に工業製品という御指摘でございますが、工業製品の中にも、大企業の製造する工業製品と、中小企業の製造する工業製品と、この二つがあることは、御承知のとおりでございます。いま御指摘のように、卸売り物価が、比較的また諸外国に対して非常に安定しておるというのは、日本の物価の一つの特色であろうと思います。その原因は、大企業の生産性が非常に高いということであろうと思いますが、同時に、中小企業の製造する工業製品が、大企業の工業製品の価格の上昇率三%台に比べますと、九%という大きな上昇率を示しております。これはやはり中小企業の持っておる生産性の低いところに大きな原因があろうかと思いますが、すべて物価について言えますことは、生産性上昇に比較いたしましてどうしても賃金その他が上昇率が上回りますと、それが物価に影響があると、こういうことは否定できない事実でございます。その他、消費者の消費動向と申しますか、消費需要の高さというものが物価に全般的に響くということも一つの原因であります。
  166. 青木一男

    ○青木一男君 続いて長官にお尋ねします。  世の中が不景気のときは、物価は下がるのが経済の常道であります。しかるに、ここ二年近く不況が続いておるのに、消費者物価指数は騰貴を続けております。不況下に需要が減退し、値段の下がった生産財が、消費者物価指数構成品目に入っていないことも確かにその一つの原因ではありますが、一般的には不況下でも国民大衆の購買力が衰えていないということによるものと思うが、この点についての所見を伺いたいと思います。
  167. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 不況下で物価が下がらない、いろいろ原因があると思います。   〔委員長退席、理事若林正武君着席〕、  まず、第一に、昭和四十五年の秋ごろからの続いております不況、これはやはり物価に影響をもたらしてくるのは一年ないし一年半のやはりおくれがございます。そういうことから、最近、この不景気が物価上昇に対する影響がじりじりと出ておりますことは、御承知のとおりでございます。  第二は、低生産性——生産性の低い部門、それが消費者価格に大きな影響をもたらしております。先ほど申し上げましたとおり、農産物、中小企業、あるいはサービス業、こういうものの賃金の平準化というものは、これは一つの社会的メリットはございますけれども、それが消費者物価に大きな影響をもたらしておる、これが第二の原因でございます。  第三は、何と申しましても、この経済成長が、これはいろいろデメリットもございますが、わが国の経済力を高め、どうしたって言えることは、わが国の国民の所得水準というもの、生計水準を非常に上げたことは、これはもう現実でございます。そういう面から、消費需要が高くて、それが物価にある程度の影響を及ぼしておると、この三つの原因であろうと思います。
  168. 青木一男

    ○青木一男君 通産大臣にお尋ねします。  昨年のアメリカのドル防衛策発表以来、わが国の為替相場は変動相場制に移り、十二月蔵相会議決定に基づいて、円の為替平価は、ドルに対し一六・八八%引き上げられました。円の対外価値の引き上げは、理論上は、対内価値を高め、物価を下げる方向に作用すべきものであります。ことに、外貨建て輸入品については、為替の引き上げ率だけ、輸入価格が下がり、消費者価格も下がるべきものである。円の切り上げについて国民の最も期待したものは、この物価に及ぼす影響でありました。しかるに、通産省がコーヒーその他の輸入品について調査したところによると、小売り相場はほとんど下がっておりません。その原因と、これからの対策について、お伺いいたします。
  169. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 御指摘のとおり、円平価の切り上げによりまして輸入品の価格が下がらなければならないことはそのとおりでございますが、まだ現実問題としては下がったものは少ないわけでございます。フィルム、万年筆、セーター、コート類、エアコンディショナー等は値下がりを幾ばくか示しております。しかし、円平価切り上げのメリットはというほど下がっておらないということも事実でございます。この原因は、いま追跡調査をやったり、いろいろなことをやっておるわけでございますが、一つには、欧州各国の平価調整と日本の円平価の切り上げとの差額が非常に小さかったという問題も一つございます。それからもう一つは、輸出国におけるFOB価格がその後上がっておるというような問題もございます。まあいろいろございますけれども、自由化を進め、円平価が切り上げられておるのでございますから、そのメリットは消費者物価に反映をせしむるような政策をとらなければならないということで、各品目に対してこまかい追跡調査を行なっております。いま、いままで輸入ワクが実績中心主義になっておりましたので、ある場合には実績中心を離れても輸入ワクの拡大等もはからなければならないということも考えておりますし、なお、一つずつの品目に対して、どうして下がらないのか。一番大きなものは石油等でございますが、これには円平価が切り上げられると同時にOPECの値上げ攻勢ということで、年々定期的に原油価格が引き上げられておるということもございますが、しかし、そこにもまだ差はあるわけでございますから、どうして下がらないのか、下げるためにどうするかという施策を具体的に考究をし、これを実施してまいるということでございます。
  170. 青木一男

    ○青木一男君 次に農林大臣にお伺いします。家庭の主婦たちの物価に対する要望は、まず、野菜、肉類等の台所用品の値段を下げるようにということであります。総理府統計局の消費者物価指数の構成を見ましても、主食以外の食料品の占めるウエートは全体の三分の一をこえております。したがって、物価安定の見地からも、野菜を中心とした生鮮食料品の価格安定に力を入れる必要のあることは明瞭であります。また、佐藤総理は、先日、衆議院で、わが国としてはいまの八割程度の食糧自給度を維持したい旨を述べられました。私も、本年一月の雑誌に同趣旨のことを書きました。いまの程度の農村人口を維持することは、健全な国家構成上も必要であると考えます。それには、他の施策はまず別としても、米作依存度が限界にきて代替作物を求めねばならない今日、野菜、畜産品等の生産に力を入れ、その価格安定の方策を確立することが急務であると思います。いままで、ある種の野菜については、品不足で値段が暴騰するかと思えば、生産過剰で産地で腐らすというようなことを繰り返してきております。また、安いときは一わ二十円で買えたホウレンソウが、いまでは七十円もしておるのです。結局、これは、自由主義経済下で需給調整のむずかしいことを示すものではありますが、この困難性を打開して進むのが物価対策としても農村対策としてもきわめて重要な段階にきておると思います。昭和四十七年度予算にも、生産計画等に対し相当の助成手段を織り込んではおりますが、今後はさらに踏み込んだ対策が必要になってくると思う。農林大臣のお考えを伺いたいと思います。  御承知のとおり、全国高速道路の建設は着々進行し、幹線五道は数年内に全線開通します。その暁には、野菜、畜産品、くだもの、鮮魚等の大消費都市に対する供給圏が拡大し、海外からの緊急輸入などの必要がなくなるけれども、放任すると供給過剰となるおそれもあります。需給の調整に成功するならば、輸送費が軽減されるだけでも消費者価格の安定に大いに貢献するわけであります。当局は、そのときに備え、広域の需給計画について想を練り、業界を指導して、十分の成果をあぐるよう希望するものであります。
  171. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お話のとおり、農林政策も、農業生産物の生産だけにとどまるというわけにはまいりませんで、国民の食糧をまかなっておるのでございまするから、流通それから価格、こういう方面に十分農林政策、農林行政を進めていかなくちゃならぬと思います。でありますので、そういう面から考えますと、農林生産物と消費と、すなわち供給と需要とのバランスをとるということが一番必要だと思います。そういう意味におきまして、米のほうは生産が需要を超過しておりますから、これは米の生産調整をしておるわけでありますが、その他、いま御指摘のように、野菜とか畜産とか果樹とか、こういうものは供給が十分でございません。でございますので、この供給を十分できるような体制を整えるとともに、バランスをとらないと価格が上下いたします。野菜等におきましても、非常に高いと思ったところが非常に安くなると、こういうことでございますので、需給のバランスをとると、こういうところに政策を集中していまやっております。いまお話しのように、ことしは野菜等につきましても、あるいは畜産、あるいは果樹等につきましても、相当需給のバランスをとれるように、また、生産面において価格の高低を少なくするために、あるいは価格の下がったときの価格補償金の調整をしていくというような政策等を相当強く推し進めておるのでございますけれども、まだまだ十分とは思いません。でありますので、その需給の調整をとり、価格の安定をはかるという方面になお一そう力を尽くしていきたいと存じます。
  172. 青木一男

    ○青木一男君 経済企画庁長官と総理にお尋ねします。  国民の日常生活において、副食物の価格に次いで鋭敏に響くのは、公共料金の値上げであります。公共料金は、節約の余地のないことと政府の管理下にあるという点に特徴を持っております。従来、企画庁は、物価政策の見地から、極力公共料金の引き上げを押え、あるいは認可をおくらせる方針をとってきたようであります。しかるに、最近発表された物価安定政策会議第三調査部会の提言は、開発利益の吸い上げ、及び特定の場合の補助を考慮しつつ、事業経営に要する総費用を償うように料金を定め、利用者がこれを負担すべきであるとの基本的方向を定め、労働集約的な交通事業の料金については、合理化によって吸収し得ない人件費等の上昇分は料金の引き上げで処理するという結論を下しております。この提言は、人事費の上昇と料金の引き上げを結びつけ、自然の大勢として受け入れる態度でありますから、これを採択すれば、これからの企画庁の仕事は楽になるのでありましょう。しかし、物価安定政策会議が、料金安定の方策それ自体については、開発利益の吸い上げ等若干の構想以外はもうほとんどさじを投げているような形となっていることも、否定し得ないのであります。産業界では、春闘の季節となったが、賃上げ要求のおもなる理由は、まず依然として物価騰貴であります。ところが、物価騰貴、料金引き上げの主原因は生産費、経営費における人件費の増大である。今日まで、俸給、賃金の上昇幅が物価騰貴の幅を上回っていたため、国民の購買力を増加し、生活向上を可能にしたわけである。これは、福祉政策の見地からもけっこうなことでありましたが、しかし、物価引き上げと賃金引き上げの悪循環がとめどなく進行した場合、最後には日本の産業と国民生活はどうなるでありましょうか。産業界では、合理化によって生産性を高め、増給分を吸収することにつとめておりますけれども、その努力には限界があるので、現状のまま進むと、いつかはその限界を突破して、生産費上昇、卸売り物価騰貴、産業の対外競争力の弱化または喪失という日がくるかもしれません。もちろん、これは、関係国の諸条件との相対的関係に立つ問題でありますが、東のほうには労組勢力のきわめて強い国があると思えば、西のほうには、ILO条約にも加入せず、労働法規もないような国を控えておりまして、わが国の立場はきわめて複雑微妙であります。私は、この悪循環を断つには、関係方面に対する要望は別として、政府としては、卸売り物価の安定が続いておるいまの段階において思い切って物価安定に政治力を集中発揮すべきであると考えますが、企画庁長官及び総理のお考えを伺いたいと思います。
  173. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) まず、私からお答えいたしますが、第一点の公共料金の問題、これはもう先ほどお示しのとおり、政府といたしましては極力これを抑制する。ことしは公共料金が集中的に上がるというので、国民の皆さんからたいへんおしかりをこうむっております。ただ、この二月に入りましてから、もうすでに昨年の国会でおきめ願った郵便料金、電報料が期日をきめて上がりましたのは別といたしまして、そのほかにタクシー料金あるいは医療費が上がりました。これはたいへん心苦しいことですが、やむを得ない事情によるものでございます。  そこで、いま御指摘のように、物価安定のために、確かにその生産費に占める人件費、賃金、それがまた卸売り物価に影響するいろいろ循環的な問題をお示しになりましたが、御参考までに最近の賃金の上昇率と生産性の上昇率を比較して申し上げますと、四十三年までは生産性上昇率が賃金上昇率を上回っておりましたために、卸売り物価その他にはむしろ影響は少なかったといえます。ところが、四十四年からはやや一つの曲がりかどに達しておりまして、四十四年は賃金上昇率が一〇・七%に対して、生産性上昇率が落ちまして一四・三%、四十五年になりますと、賃金上昇率が一七%に対して、生産性上昇率が一三・九%に落ちております。生産性上昇率のほうがダウンしております。四十六年になりますと、賃金上昇率が一四・五%に対して、生産性の上昇率は六・七%。どうも不景気になりますと生産性上昇率が落ちてくる、これはもう当然の経済現象でございます。そうなりますと、これは確かに賃金その他国民所得が上昇することは一つの喜ばしい傾向ではございますが、これが生産性上昇率を上回りますと、いま青木さんが指摘になりましたように、物価に、価格形成そのものに影響を持ってくるということは当然でございます。そこで、今後の問題といたしましては、やはり賃金の上昇率、生産性の上昇率、物価と、この三つが国民経済的に見てバランスのとれた姿で進むことが最も期待されるということだけは、はっきり申し上げられると思います。
  174. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま経済企画庁長官から詳しく答えましたので、私からあまりつけ加えることないように思いますが、公共料金を値上げした場合に、いわゆる物価の問題を政府が先に立って値上げしている、いわゆる政府主導型だと、こういう批判があって、やはりどうもムードとしてよろしくないと。したがって、物価値上げ——たいへんことばは不適当かわかりませんが、いわゆる便乗値上げと、こういうものを誘発しやすいと思います。したがって、公共料金の取り扱い方については、政府が今日までとってきたように、極力これを抑制するというその態度をくずしてはならないと、かように私はまず第一点については思います。これをつけ加えさしていただきます。  そうして、第二の問題、物価と賃金との悪循環、この問題ですが、わが国の場合において、ただいまもうすでにそういう状態が始まっていると見るか、まだ日本の場合はそういう状態ではないと、しかし、これはほうっておくとたいへんな状態になると、かように見るべきか、そこらに一つの問題があるのではないかと思っております。私は、日本の場合は、いわゆる物価と関連のある賃金ではございますけれども、賃金とまた関連のある物価ではありますが、いわゆる物価と賃金の悪循環、それはもうすでにでき上がっていると、かように見ることは、やや事態の認識を欠くのではないだろうかと、かように思います。したがいまして、さような状態を引き起こさないように、われわれは計数の動向その他にも絶えず注意をする必要があるのだと。いわゆる物価と賃金、この悪循環を来たせば、これは実質的賃金上昇につながらないと、そういうことにもなりますので、これは十分実態を把握して、そうしてあやまちなきを期していく、こういうことでありたいと、かように思います。
  175. 青木一男

    ○青木一男君 次に、私は、円のデノミネーションについて質問します。  昨年十二月、大蔵大臣が十カ国蔵相会議に出発直前の大蔵委員会で、私の質問に対し、蔵相は、デノミを行なう考えのないことを表明されました。しかるに、本年になって大蔵大臣の大阪談話に端を発して、デノミ論議は非常な勢いで広がってきております。大蔵大臣は、先ごろの大蔵委員会でこの談話の趣旨を釈明し、わが国は戦後激しいインフレーションを経験したため、現行の通貨単位は国際的な水準と著しくかけ離れており、国際化の趨勢にそぐわないところがあるので、これを変更してしかるべきものと考える。しかし、さきに円の切り上げが行なわれたことであり、この際デノミを行なうことは、国民に無用の誤解と混乱を与えるおそれがあるので、その実施については慎重を期せねばならないと述べられております。この大蔵大臣の国会での釈明にもかかわらず、世上のデノミ論議はますます盛んとなり、新聞、雑誌の記事だけでなしに、著書も続々出版され、デノミの場合に処する財産対策などを競って書いております。株式市場ではデノミ株などということばも用いられ、株式と土地への思惑的投資を誘発しているようであります。それは、世間では、大蔵当局が通貨単位は変更してしかるべしと断言している以上、実施に腹をきめておる、ただ混乱を避けるため時期を見ておるのであると解しておるからであります。大蔵大臣は、自分の談話はデノミ実施の意図を言ったものではないと弁明されましたけれども、同じ通貨単位の変更しかるべしという発言でも、学者や評論家の言った場合と、大蔵当局の言った場合では、国民の受け取り方に差のあることは当然であります。同様のことは、最近の付加価値税の問題でも起きておりますが、私は、デノミ実施の慎重とともに、大蔵大臣の発言の慎重を望むものであります。デノミの問題は、全国民の生活に直結し、大蔵省だけの問題ではない。最近、佐藤総理は、衆議院委員会で、デノミをやる考えはないと答えられたけれども、その理由には触れておられません。私はこれからの質問によってデノミ実施の必要性の有無、実施の影響等を明らかにした上に、政府の明確な統一見解を表明していただき、誤解に基づく先走ったデノミ風潮を鎮静に戻したいと考えております。  まず、大蔵大臣に伺います。  いまの円の貨幣単位は三けたであって、国際的標準から見て低過ぎるというのは、デノミ賛成論者のひとしく指摘する点であります。要するに、円及び国の威信の問題に帰するのであります。一ドル二円の平価時代に大蔵省で貨幣行政、為替行政を担当したことのある私としても、この点で郷愁に似た感情を持つことはあります。しかし、国策決定上は、こういう感情はあまり重きを置くべきではありません。元来、各国の貨幣単位は、沿革の産物であって、その高低が国力を反映するものではない。いま、イギリスの一ポンドはアメリカの二ドル六十セントと平価であるが、イギリスの国力がアメリカの上というわけではありません。日本の三けたは、終戦後のインフレの遺物、経済受難の象徴として考えれば済むことであります。国の威信回復に関連してデノミの行なわれた例は、フランスにあります。一九五八年、ドゴールが政界に復帰したころのフランスは、アルジェリア紛争が長引き、政局は不安動揺をきわめ、財政も国際収支も赤字が累積し、外貨準備は六億ドルに減じ、ドゴールの回想録によると、フランスは破産寸前にあったのであります。ドゴールは、憲法を改正して大統領の権限を強化し、財政経済の一大改革を行なった。その一環として、フランスの為替平価を大幅に引ぎ下げるとともに、百分の一のデノミを行なったのである。すなわち、これによって、国民が自信を失いつつあるフランの信頼を回復し、対外的にはフランスの栄光を回復しょうとしたのであります。私は、わが国の現状では、フランスの試みたような国政の大転換、通貨の威信回復の手段としてデノミを行なう必要などはないと考えますが、大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。  なお、今日は、経済大国としての日本に対する風当たりの強いときである。この際デノミを行なえば、円を高く評価する内外の傾向に輪をかけることになりかねないと思う。この点についても蔵相のお考えを伺いたいと思います。
  176. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) デノミの問題につきましては、前に私が申したとおりでございまして、円の切り上げというようなことをやった直後でございますので、混乱を起こしてはいけませんので、私はデノミネーションはやらないということを申してありますので、それで大体もうこの問題は一応終止符が当分の間打たれているんではないかと思います。やっていいか悪いかというような議論になりますというと、これはまたいろいろございますので、デノミネーションはこの際政府はしないということを申したときでございますので、それでよろしいのじゃないかと思います。経済の実体に本来何ら変化をもたらすものではございませんので、やって悪いということでもないし、どうしてもやらなければならぬというものでもない。いろいろな問題を含んでいることでございますので、いずれにしましても、国民の間でこのデノミというものがどういうものかといろいろ論議されるということは差しつかえないことであって、これが論議されれば国民の正当な理解を得られることでございますので、この点は私はむしろ正しい理解が国民に行き渡ってくれることがいいことと思っております。現に、前に新円の切りかえというようなことを戦後やっておりますので、これと混同しておって、ないしょでためた金が全部今度明るみに出るんだとか、いろんなことが言われておりますし、また、円の切り上げが行なわれた直後でございますから、円自身の価値のやはり変更だろうということでいろんな思惑を刺激しているというようなこともございますし、これらは全部デノミネーションというものの意義について知らないことから起こってくることでございますので、これがデノミ論議によって国民に正しく理解されることは非常にいいことと思いますが、しかし、再三申しましたように、いますぐこれを私どもはやらないということを言っておりますので、この点についてまたあまり言いますというと、またやる意図をもりて論議を大蔵大臣がしているというふうにとられても、青木先生は慎重な発言を望むと言われておりますので、慎重な発言をする意味において、もうこの程度でひとつお願いしたいと思います。
  177. 青木一男

    ○青木一男君 デノミの論議はけっこうです。しかし、いま言ったとおり、大蔵大臣の発言というものは、ほかの第三者の発言と影響力が違うということをよく御留意いただきたい。  それから、デノミの論議によって本質が究明される、いろいろ論議すれば、それじゃデノミを実行し、よくなるかというと、いまの日本の段階では、そう効果がないんです。それでありますから、私は大蔵大臣に要望したのでありますが、大蔵大臣も、特にやらなければならないたとえばフランスのような必要性はないと、これはお認めでしょうね。その点をもう一ぺん確かめます。
  178. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それは、いまお答えに触れたところであろうと思います。
  179. 青木一男

    ○青木一男君 さらに、大蔵大臣に伺います。  計算の簡素化ということがデノミ賛成論の一つの論拠であります。まず、何千億とか何兆という数字が出てきて困るということを言う。これは予算とか貿易とかあるいは金融等の統計に出てくる数字で、国民生活に直接関係はありません。しかし、これらの統計につきましても、予算をはじめ、千円単位、あるいは百万円単位、あるいは億円単位に作成されておりますから、簡素化は事実上できておるわけでございます。民間取引につきましては、万単位以上の高額取引には、百分の一のデノミによって零が二つ節約されるという場合もありますが、これはしかしたいしたことではないんです。それよりも、国民の日常生活では、新たに十銭、五十銭単位の取引が出てまいりますから、全体としては計算の簡素化にはなり得ないのであります。私は、貨幣単位としては、補助貨を使用しない本位貨一本がむしろ簡明でよくはないかと思っておる。各国の採用している貨幣単位が消費生活上高過ぎるから、補助貨を必要とするに至ったものである。わが国では、戦後偶然補助貨を使用しない状況となって、国民の半数は補助貨を見たこともない。国民のなれた円の生活から銭の生活に切りかえる必要はないと思います。世間には、一円玉が道に落ちておっても拾わないではないかと評するものがあるが、デノミ後の一銭補助貨を拾わなければ同じことであります。デノミという制度の改正で、形式的に円の地位を高めるよりも、物価の安定によって実質的に円の価値すなわち購買力を高める方向に、困難ではあるが一円玉で物の買える方向に政策の重点を向けるべきであると私は考える。わが国は各国の苦慮している通貨の対外価値の引き上げに成功したのであるから、対内価値の引き上げができないはずはない。計算の簡素化とデノミとの関係、補助貨との関係について大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。
  180. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 通貨単位を拾わないということと補助貨幣を拾わないということの間には、やはり問題が貨幣単位の問題においてあるんではないかと私は思いますが、これを論議いたしますというと、また別のことになってはいけませんので、私は論議をきょうは避けたいと思います。  計算の簡素化ということは、やはり例が二つなり三つなりはとられるということであって、この簡素化はやはり相当のものであって、私は大きい効果をその点では持つものだろうというふうに思います。まあ、私どもが各国でいろいろ会議をいたしましても、とにかく日本の数字がべらぼうに単位の大きい数字で、各国とも理解に困っておるというのが実情でございまして、このインフレートされた通貨単位というものは害があるというわけではございませんが、国際化の現在、もう日本、イタリアぐらいになっている問題でございますから、これはあくまでこれでいいんだという理屈もやはりむずかしいんだと思いますし、私は、いま言ったような国民が理解して別に混乱がなくて、フランスは便乗値上げというようなことを、フィンランドもそうですが、相当罰則を強化した法律で旧価額と新価額を両方表示する、そうして計算を間違った者は処罰されるというようなことをもってもやったのでございますが、この便乗を防ぐという方法はございましょうし、これはまあもう少し先に研究していい課題であると思います。いますぐ私どもはやるということではございませんので、まあこの程度で……。
  181. 青木一男

    ○青木一男君 計算の簡素化ということは、これは水かけ論になるかもしれません。  さらに、大蔵大臣にお尋ねします。  為替平価の改定は経済政策として処理できたけれども、デノミは立法によらねばなりません。私の考えでは、貨幣法を改正し、新円一円を単位とし、従来の百円と等価であることを定め、既存の円表示債務はその割合で新円で弁済すればよい旨を規定することになると思うが、政府のお考えを伺います。
  182. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) かりにデノミを実施するというようなときには、こういう立法問題もございましょうし、また、硬貨の準備ということに、従来は十年といわれておりましたが、いま実際においては七、八年はかかる問題でございましょうし、そう簡単にできる問題ではございません。立法問題があることも私どもは承知しておりますので、やはりそういう意味でこれは簡単にいかぬ、慎重を期すべき問題であると思っております。
  183. 青木一男

    ○青木一男君 さらに、大蔵大臣にお尋ねをします。  デノミを実施するとなると、政府は新貨幣を、日本銀行は新紙幣を発行して、旧来のものと引きかえねばならない。民間でも、帳簿、伝票、株券、証券等をつくりかえねばならない。自動販売機も改造せねばならない。これらに要する費用は、数千億円にのぼるといわれております。時と場合によっては、経費が幾らかかってもデノミをやらなければならない場合があります。たとえば第一次大戦後のドイツのごとく、従来のマルクが貨幣としての機能を全く喪失した場合に実施した一兆分の一のデノミのごときはその例であります。前述の大きな国家目的達式の手段としてドゴールの実施したデノミのごときも、これに該当するものと思う。しかし、日本の現状では、これだけの経費をかけてデノミを行なう積極的の理由がないように思うのでありますが、この経費の点について大蔵大臣はどういうふうにお考えですか、伺います。
  184. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) かりに実施するというときには、経費の問題が確かにあろうと思います。しかし、これは一部株式界でいわれておりましたように、デノミ関連株というようなことがいわれておったそうですが、これを実施したら従来の帳簿は全部刷り直しをしなければならないし、そういう株券も全部刷り直しになると、そういう経費がたいへんであるし、その関連事業は非常にいんしん事業になるだろうというようなことがいわれておったそうですが、かりにそういうことが実施されるといたしましても、たとえば、五十円の株券が五十銭になるというようなことをするよりも、現在の一株券を百株券と認める、みなすということにするんでしたら、いまの株券を刷り直す必要というものは一切起こらないでございましょうし、かりに実施するというようなときには、これを経費をかけないでやる方法というものは当然考えられるでございましょうし、これはやるという立場からこまかい検討もあるいは必要でございますが、いまそこまでは別に検討しておりません。
  185. 青木一男

    ○青木一男君 次に、大蔵大臣と総理にお尋ねします。  世上のデノミ反対論の主たる根拠は、物価との関係であり、現下のように物価上昇ムードにあるときにデノミを行なえば、便乗値上げによって物価騰貴に拍車をかけるおそれがあるという点であり、私も同意見であります。理論的には、デノミは中立であって、従来百円のものは新円一円で買えるはずである。しかし、物価が理論どおりにいかないことは、先ほど質問した輸入品価格が円切り上げ後も下がっていないことがよくこれを証明しております。物価上昇ムードのときはあらゆる材料が値上げに利用され、ことに流通部門で値上げの利益が吸収されるのであります。また、貨幣の使用者の立場はどうなるか。十万円の月給が千円となってお金を大事に使う気持ちになるという見方もあります。しかし、戦後二十数年にわたって千円札、一万円札の使用になれた国民は、一朝一夕に銭の生活に切りかえがたく、大勢としては浪費となる傾向が強いのではないかという見方もあります。フランスでデノミを実施したときには、便乗値上げを禁止し、違反者には三百万新フラン以下の罰金、五年以下の禁錮という厳罰で臨んだのでありますが、わが国では、デノミの必要性との関係上、かような立法が容易にできるものとは思われません。八百屋では大根一本幾らで売っておりますが、きのうの大根ときょうの大根の同一性を証明することはむずかしく、便乗値上げの禁止は立法技術上も至難のわざと言わなければなりません。サラリーマンは、十万円の月給が千円となり、減俸されたような気持ちを持つ。五十万円の貯金は五千円となって、貯金者は損をしたような気持ちを持つ。これに対して、政府は、新円千円は十万円と同一の購買力を持ち、新円五千円は五十万円と同一の購買力を持つから、減俸でも損でもないことを説明するとともに、法律で強制した関係上これを保障する政治上の責任を伴うことを覚悟しなければなりません。しかし、前述のごとく、物価上昇ムードのときは、事実、便乗値上げを避けがたく、また、便乗値上げと一般の原因による値上げが合流して値上げ風潮を強め、国民の間によけいなことをしたという政府責任追及する声が高まり、賃金、俸給の増額運動は好個の材料を得てますます熾烈となるでありましょう。現下の最重要課題である物価政策に逆行するような施策を絶対的必要性のないときに行なうことは、危険な火遊びであると言わざるを得ません。  そこで、大蔵大臣に対し、デノミと物価との関係をどう考えるか、物価の現状下でデノミを行なう価値についてお伺いします。  また、総理に対しては、衆議院でデノミ否定論を述べられたが、その理由を伺いたいと思います。
  186. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) やはり、デノミを行なうとしますと、物価の上昇過程中は、たとえ法律をつくって便乗値上げを厳罰するということをいたしましても、物価の上昇過程において行なうということはむずかしい問題を起こすというふうに思われますので、これは物価の落ちついたときにやらなければできないことであるというふうに考えます。
  187. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来青木君からデノミ反対の御議論、御意見を述べられました。私もそういう点も考えながら、同時に、私の考えるのは、もう自分たちの時代ではないんだ、戦後生まれた人たちが非常に多数いる。それらの諸君は、いま時分デノミを言ってもなかなかぴんとこないのじゃないのか。ただいまあげられたように、十万円の月給が、これが十万円なら自分たちもぴんとわかっておりますが、安くなった、そういう考え方でどうも受けとめる。こういうことを考えると、デノミをすることによってほんとうのデノミの意義を理解する人、これはやはり年齢でだんだん国民の構成も変わってきているんだ。そういうことを考えると、これはあまり議論すべき点ではないように思う。したがって、そういうことは、私は、むしろ時代の相違というか、そういう点で考えるべきだ、かように考えておるのであります。  ただ、御指摘になりましたように、戦後の第一次大戦後のドイツ、あるいはフランス、ドゴールの制度改正等のような状態は日本にはない。日本の場合は、円が非常に強くなってきている、そういう際でございますから、過去の二つの例は、その国の通貨が弱まった、そうして取り扱いかねた、その結果デノミを考えた、こういうことだと思いますが、日本の場合はそれと違いますから、私は、日本の場合、どうしてもやらなければならない、かように考えるべきではなくて、むしろ国民になじんでいるいまのような制度が現行制度がよろしいのではないか、かように考えておる次第でございます。
  188. 青木一男

    ○青木一男君 最後に、大蔵大臣及び総理大臣に私の希望を申し上げて、政府のお考えを伺いたいと思います。  いままでの質問によって、大蔵大臣もデノミと物価との関係については私と同じ見解を持っておられることを知りました。したがって、物価の現状下でデノミを行なうべきでないというのが大蔵大臣の真の考えであることを了解いたしました。しかし、前述のとおり、世間には、大蔵省はデノミ実施に腹をきめている、ただ時期を見ているのであるという誤解があまねく広がっております。実施することのないデミノで人心を惑わしておくことは百害あって一利なく、ことに一部の証券や土地への思惑投資を促進することは、市場対策、土地対策の見地からも避くべきであります。この際、政府が、デノミ実施の必要性のないこと、物価の現状下でデノミを行なうべきでないこと、物価が安定し、便乗値上げのおそれのない時期がきたならば、あらためてデノミの可否について検討すればよいのである、こういうような趣旨の政府のお考えを表明されて、誤解に基づくデノミムードを一掃していただきたいと思う。この点について政府のお考えを伺って、私の質問を終わります。   〔理事若林正武君退席、委員長着席〕
  189. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) もう、その点については、しばしば申し上げていることだろうと思います。これはデノミがいいか悪いかということは十分検討していいことでございまして、これは役所においてもいままで検討しております。しかし、いまこれは政府としてやらないということだけはっきり申し上げておることでございまして、これは青木さん自身もおっしゃられておりますように、経済のいろいろな変化その他によって必要となるときもくるでございましょうし、絶対にやらないという必要もございませんし、当分政府政策としてやらぬということだけは申し上げることができようと思います。
  190. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私からもお答えしておきます。  御指摘になりましたように、デノミネーション、その機会に物価が動揺する、しかも、それがいいほうでなくて悪いほうに影響を与えると、そういう危険すらあるんだから、さようなものは避けろと、特にさような主張お話しでございました。私もそのとおりだと思いますし、また、先ほども申しますように、人口構成から見ましても、もうわれわれの過去の時代とは違っている、新しい時代になっている、かように思いますので、ただいまのような危険をはらむもの、それを取り上げるような考え方はございません。はっきり申し上げます。
  191. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上で青木君の質疑は終わりました。     —————————————
  192. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、松井誠君の質疑を行ないます。松井誠君。(拍手)
  193. 松井誠

    ○松井誠君 私は、財政経済政策の重要な点についてお尋ねをいたしたいと思います。  私も、最初に、去って行く者に対して石を投げるということの意味を考えないではございませんでした。しかし、われわれは、そのこと自体を目的にしておるのではございません。七年有余という戦後の議会史の中で、非常に長い足あとを残した。この足あとが大きいか小さいかは、評価のしかたがありましょう。しかし、少なくとも長かったことだけは間違いございません。したがって、この八年間のいわば佐藤内閣の功罪というものをきちんと評価をする、そのことが、国民の立場からそこから教訓を引き出すためにはどうしても必要だと私は思う。そういう意味でこれからお尋ねをするということをまず申し上げておきたいと思います。  そこで、質問の第一は、いままでもたびたび問題になりました例の「発想の転換」ということばであります。これは今度の施政方針演説で多くの大臣が使ったことばで、一種のいわばはやりことばの感を呈しております。総理に至っては、「いまこそ、発想の転換を行動に移すべきとき」だということばを使われている。八年間の内閣がいま終わろうとするそのときに、「いまこそ行動に移すべきとき」だというのは、一体何を意味しているのだろうかと私は頭をひねったわけであります。そこで、先般の竹田四郎委員質問に対する御答弁の中で、ともすればいままでの社会開発というスローガンが口頭禅になったということばを使われたわけです。私は、このことばじりをつかまえるつもりはございません。しかし、この口頭禅ということばが経済評論家の口から出たのではなくて、まさに党の責任者である佐藤総理の口から出たということに、私は非常に大きな驚きを覚えたわけです。しかし、総理がこの口頭禅ということばを使われたのは、私は時のはずみではなくて、やはりそれなりの理由があったと思う。つまり、しゃべることと実行することとは違うという何か一種の傍観者的な考え方、それが、この社会開発が口頭禅に終わったというよそごとのような表現になって私はあらわれたんじゃないか。この基本的な姿勢が、自分が中心になって責任を持って全力をあげてやるという、そういう気がまえがあったならば、「口頭禅」というようなことばは私は出なかったんではないのかと、実はあのときにびっくりしたわけです。そこで、その口頭禅に終わった理由は一体何なのか、そのことを私はこの質問を通して明らかにするのが目的だと実は自分では考えております。  そこで、「発想の転換」というのは具体的には何なのか。おそらくは経済の成長と国民福祉との関係について発想の転換があるという意味であろうかと思いますけれども、この点からまず総理にお伺いをいたしたいと思います。
  194. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 経済の発展、これは申すまでもなく国民福祉につながらなければならない。そういう意味で、もっと実効のあがる方法を考えようと、これがいわゆる「発想の転換」。同時に、それを実現すべきそのときだと、これが私の信念でございます。私、しばしば皆さんから追及されるのに、人間尊重と言っているが、人間尊重になってないじゃないかと、こういうようなお話でございます。しかし、いまや、人間尊重、そのことばも国民の間に定着してきたと、かように私考えますので、言っていることが全然むだではなかったと、かように思っておるような次第でございます。
  195. 松井誠

    ○松井誠君 まあ、ことばが定着するかどうかよりも、むしろ政策が定着化するかどうかが実は大事、政治の立場からいえば当然そうだと思うんです。そこで、この問題についてもう少しお尋ねをする前に、経済企画庁にお尋ねをしたいのでありますが、経済企画庁の長官の施政方針演説のことばの中にもありましたけれども、成長と福祉の関連を基本的に考える云々ということばがある。そして、それを具体的にあらわしておることばとしては、昨年の予算編成のときの経済見通しに「成長と福祉の調和」ということばがつかわれておる。つまり、「調和」という考え方が、いまでもやはり基本的に福祉と成長との関係だと考えておられるわけですか。
  196. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 私は、福祉ということは、もうあらゆる政治の目的であると思います。しかしながら、それを実行していくためには、やはり福祉だけではできないので、その基礎になるべき経済力、成長というものがなければなりません。したがって、福祉というものは政治の目的であって、「成長と福祉の調和」ということは、それを実行していく面の、実施面の、政策面の考え方である、こういうような分け方をしております。
  197. 松井誠

    ○松井誠君 私はその「調和」という考え方が基本的には間違いじゃないのかと実は思うんです。率直にいえば、福祉と経済成長とは元来相矛盾するもの、どっちかがどっちかを犠牲にしなければ成り立っていかないもの、そういう考え方がきちっといままでできていなかったのではないか。なぜかならば、たとえば、昭和四十五年に公害対策基本法が改正になった。そのときに、あの第一条の二項に書いてあった、国民経済の健全な発展と公害との関係の調和をはかる、ということばがあります。しかし、この環境保全と経済の成長とはどうしても調和はしない。その調和論というものの矛盾が明らかになってあの公害対策基本法が改正になった。つまり、「調和」という考え方はあの段階ですでに破産をしたことがはっきりしたはずなんです。そういうあいまいな、甘いこの「調和」という考え方の上に立っておったからこそ口頭禅に終わったのではないか。率直にいいますけれども、ほんとうに発想を転換するとすれば、まさに福祉優先という、成長を犠牲にしても福祉を優先させるという、当然のことでありますけれども、そこへいかなければ「発想の転換」にはならないのじゃないか。総理の御意見を伺いたいと思います。
  198. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも、松井君のお説を私首をひねりながら聞いていたら、最後に「福祉優先」と、こういうことばが出ましたので、なるほどこれでわかったなあと。とにかく、われわれが幾ら国民生活を充実しよう、さらに福祉社会をつくろうと、かようにいたしましても、それだけの経済力がないとできるものではございません。それだけの経済力を持つということ、これがいわゆる「調和」という形で経済企画庁長官はお答えをいたしたと思っております。しかし、その場合に、一体どういうように考えるのか。いまの経済力が全然滅びてしまうような、経済成長は不要だと、こういうように言われて、福祉だけやれと言われても、これはなかなかできるものじゃない。しかし、福祉優先というところで公害を排除するとか、こういうような意見も出てくると。これがよほど徹底してくると。私どももそれについては異論はございません。福祉優先と申しますか、とにかく、経済力をその方向に使うと、こういうことにわれわれの考え方も徹すべきだと、かように私も思います。
  199. 松井誠

    ○松井誠君 福祉と経済成長とが矛盾をしたときには、必ず福祉のほうを選ぶというのが私は福祉優先の基本的な態度だと思う。そのことをきちっとしておかないと、これからあといろいろな問題が起きてきたときに無原則におちいってしまう。私がなぜこういう抽象的なことを、このもったいない時間をさいて言っているかといえば、御承知のように、「福祉優先」ということばをつかったり、あるいは「重点」ということばをつかったりしますけれども、とにかく、福祉が大事だというのは、もうほとんど国民的な合意になったような形になっておる。資本家の団体でさえも言っておる。それだけに、われわれは、ここでまゆにつばをつけなければならぬと思うのです。つまり、具体的に福祉優先というものが貫き得るのかどうか。資本の利潤というものと福祉というものとが矛盾をしたときに、資本そのものがほんとうに自分の利潤を犠牲にして福祉の優先というものに徹してくれるのかどうか。そういう原則をきちっとしておかないと、これからあとの福祉論というのは全く宙に浮いてしまう。そういう意味もありますからこの抽象的な議論に時間をとったわけでありますが、それでは、いままで、一体なぜ、この福祉優先とは言わなくても福祉重点という政策ができなかったのか。大蔵大臣にお伺いしますけれども、大臣は、口を開けば、いままでは国際収支の天井が低かったためにそれができなかった、今度はできるようになりました、というのが口ぐせであります。しかし、私は、それで一体いままでの福祉なおざりの政策というものが免責をされると考えるべきなんだろうか。私はそうじゃないと思う。いかがですか。
  200. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 御承知のように、国際収支が悪くなってくるというときには、これは経済が好況のときでございますので、好況のときに、たとえば社会資本の充実というようなことを考えて公共投資をふやそうということをやりますというと、これは民間の設備投資が旺盛であり、そこにさらに政府の公経済による投資を旺盛にするということをやりますと、この二つが競合して経済を過熱させてしまうということのために国際収支を悪くしてしまうのですから、この収支を直すというためには、どうしても政府のほうが公共投資を控え目にするという政策をとらざるを得なかったということは過去の事実、これまでの経験であろうと思います。そういう点から、いままでやろうとしてできなかったということでございますが、ようやくこれがいまになって、やろうと思えばできるというふうに、経済の条件と申しますか、環境が変わってきましたので、ここで、いわゆる「発想の転換」と、平たいことばでいえば、頭の切りかえと言ってもいいと思いますが、ここで、そういう政策への切りかえを私どもはしたいということでございまして、いままでにおいては、実際にこれは国際収支の制約のために始終拒まれておりました。ことに昭和四十二年のごときは、せっかく予算で盛っておる公共事業費を、全体として引き締め政策のために三千億円、これを執行を押えるというようなことまでやって国際収支対策をしたという苦い経験を持っておりますが、これもやはり国際収支から来たこの政策への制約であったと思います。
  201. 松井誠

    ○松井誠君 私は、そういうふうな経済的な発想というものがそもそも問題ではないのかと思うのですよ。たとえば、公害で何人かの人が死んでいる。現在、その公害に多くの人たちが苦しめられておる。あの見るもむざんな姿を頭に置いたときに、経済的な理由でいままで福祉政策ができなかったなどということが一体言えるのかということです。今度の福祉優先という考え方も、もともとは円対策、あの八項目の一環として出てきた。今度また、ドル・ショックということで頭をぶっつけて、この福祉対策費優先という声が増幅をされてきた。しかし、そういうことで福祉の問題に転換をするのではほんとうはないはずなんです。そうじゃなくて、いままでの、ほんとうに人間軽視、そのために国民をどこまで追い込んできたかという深い悔恨といいますか、後悔、そういうものが先に立たなければ、私はほんとうの「発想の転換」はあり得ないのじゃないかと思う。そういう意味で、経済的な発想である限りは——あとでまた私は問題にしますけれども、もしこれが経済的に好況になってくれば、今度は予算を組むときには財政硬直化でありますから福祉はあと回しにしますということになりかねないのです。そういう経済的な理由からの発想ではなくて、もっとそれこそ深い次元からの発想でなければ、福祉優先の政策というものの保障がないだろう、そう思って実は申し上げておるわけです。  そういう観点から、さて一体それでは、今度の予算編成でこの福祉優先という考え方が貫かれておるだろうかということを考えてみたいのです。それのためには、まず、一体、現在の景気浮揚対策というものと福祉というものとは一体どういう関係になるだろうかということに議論がいくわけでありますが、その前に、現在の景気の局面——きのう羽生さんからもお話がありましたけれども、景気の局面を一体どう考えるのか。見通しをどう考えるのか。ドル・ショックとの関係をどう考えるのか。つまり、去年の六−七月に一応上向きかけたといったときのあの景気不況の性格は一体何なのか。それとデフレ・ショックとが二重写しになってきた現在の不況の見通しは一体どうなのか。このことをまず経済企画庁にお尋ねをしたいと思います。
  202. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 相当長い間景気後退が続いております。もちろん、それが一つの景気循環というものでもあったかもしれません。しかしながら、羽生さんにお答えしましたとおり、そういう観点のみならず、日本の経済の体質そのものが変わりつつあるという認識も必要であろうかと思いますし、また、わが国を取り巻く国際経済環境が非常に変わってきたということが大きくその原因になっておると思います。そこで、現在の景気の局面をとらえますと、確かに、ずっと長い間の景気の後退——ここに至りまして、政府の財政金融政策その他が、あるいは一つの循環経路かもしれません、生産、出荷あるいは卸売り物価の強含み、いろんな面からようやくにしてやや明るい徴候が見えております。しかしながら、これは昭和四十年の景気回復のあのV字型のような回復ではもちろんないと思います。したがって、いまは底入れというよりは、不況の底を固めつつある、こういうことが適確な表現であろうかと思いますが、その底固めの過程に入りまして、私は昭和四十七年度——もうすでに入っておりますが——前半期は、そう大きな回復のきざしは、不況感はぬぐい切れぬと思いますが、下半期になりまして、いろいろな、いまも出ております徴候が顕在化いたしまして、相当加速的に景気が回復に向かって、昭和四十七年度を通じまして七・二%ぐらいの経済成長は可能であろう、こういうような見通しを立てております。
  203. 松井誠

    ○松井誠君 現在、そのドル・ショックといわれるものは具体的にはどういう姿になってあらわれておりますか。われわれがドル・ショックといわれたときに考えたときには、輸出が激減をするでしょう、輸出関連産業が倒産をするだろう、そういうものがいわばドル・ショックの具体的な現象として考えられた。そういうものが現在あらわれておりますか。
  204. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) ドル・ショックの影響と申しますと、まず、景気局面に対する影響がございます。それは先ほど申し上げましたとおり、昨年六月——七月ごろに景気がやや回復の徴を見せましたときにドル・ショックがございました。そのために、せっかく回復の過程に入りました景気がまたダウンしております。また、国際収支面におきましては、当然、通貨調整その他を通じましてわが国の輸出が非常に急激に伸びておりまして、国際収支の均衡というものが今後とれていくであろう。現在、御承知のとおり通貨調整がありましたけれども、これはOECD事務当局その他、外国のいままでの先例を見ましても、通貨調整後に一年やあるいは一年半はその通貨調整の実際の効果がなかなかあらわれない。また、わが国の景気対策がまだその実効をあらわしてこない今日におきましては、やはり輸出ドライブというものがまだきいておりますし、また、内需不振による輸入の停滞、そういうものから、国際収支面に対する、いまおっしゃったドル・ショックの現実の影響は表面的には出ておりません。しかしながら、当然これは通貨調整後における国際収支のバランスという形で、ここ一年あるいは一年数カ月後には当然出てくる、こういう見方をしております。
  205. 松井誠

    ○松井誠君 このドル・ショックの問題について田中通産大臣にお尋ねをしたいのであります。  大臣は、去年の暮れの通貨調整の直前にNHKで座談会をやった。そのときに、もし、一五%円の切り上げがあれば、対米は四十六億八千万ドルの入超になるだろう、たいへんなことだという発言をされておる。この発言は、その後の経過をごらんになって、どう考えますか。
  206. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 当時通産省、大蔵省等ではいろんな数字を試算しておったわけであります。五%切り上げる場合幾ら、一〇%切り上げる場合幾ら、一五%幾ら——一七・五%ぐらいまで計算をしたと思います。そういう計算で四十五億ドル——四十六億何千万ドルという数字が出たわけでございまして、そういう見通しでございました。しかし、その後は、ドル・ベースによる対米輸出は依然としてふえておりますが、一月、二月、三月、円ベースで計算をしてまいりますと、やはり成約状況も落ち込みつつあります。でありますので、この問題は、もっと経済が上昇すると思っておりましたのに、経済は依然として上昇基調に入らないということで、輸出は伸び、輸入は依然としてふえないということです。当時、昨年九月、日米経済閣僚会議のころには、日米間の貿易のインバランスは約二十億ドルだと考えておったのが、三月末になると、十億ドルふえて三十億ドルになるということでありますので、そういう数字から見ると、あなたがいま御指摘のとおり、大きく見積もり違いじゃないかと、こういうことでございますが、あの当時は、切き上げ幅が大きくならないようにいかにして大幅切り上げを阻止するかという、国益を守るという立場にもありましたので、そういうこともひとつ十分考慮に入れていただきたい。しかし、方向としては、これから景気が上昇過程に入りますと、輸出入のインバランスはいまよりもうんと縮まっていくという傾向は、もうすでに指数に出ているということは事実であります。
  207. 松井誠

    ○松井誠君 あの数字をほんとうに田中さんがあのときに本気で考えておったとすれば、私は経済政策のリーダーとしての資格はないと言わなきゃならぬと思う。しかし、そうじゃなくて、日本の国益を考えての政治的かけ引きの発言であったとすれば、私は今度は、いわば経済次元を越えた、国のリーダーとしての資格が一体どうだろうかと思う。つまり、これからまた再切り上げの問題があり得る。ミスター田中の言うことは当てにならぬということになったのでは、これはどうでしょうね。つまり、そういうことを考えると、ああいう発言というものはどういう意味でも私はプラスの意味は持っちゃいないと思う。そういう反省が必要だと思う。私が現在の景気の局面や性格のことをお尋ねをするのは、いまとられておる景気対策が一体それに的確にマッチをするかどうかということと関連があるわけです。私は、率直に言って、ドル・ショック以前のいわゆる四十五年の不況といいますか、これは明らかにやっぱり設備過剰という性格を持った不況であったと思うのです。それがドル・ショックという形で増幅をされた。いま民間の設備投資の意欲がなかなか冷え切って起きない、これは一体どういう理由なのか、どうお考えですか。
  208. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 私が、四十七年度の年間を通じての景気浮揚というものは非常に困難なので、適切な施策を適時適切に行なう必要があるということを常に申し述べておりますのは、そのことでございます。三十七年、四十年の不況のときには、財政が先行すれば当然それに付随する民間設備投資が起こってまいったわけであります。起こったというよりも、民間の設備投資を一〇%から二二%程度に見積もっておったものが二四%、二五%になったということで、公害問題や社会資本の不足問題を起こしたわけでございますから、そういう意味では政府が当初企図したものよりも実際の設備投資の速度は早かったわけであります。しかし、その結果、いろいろな問題が起こってまいりました。工業立地の問題それから公害問題で、一体このまま公害施設に投資できるのかどうか、また、新しく増設などが可能なのかどうかという問題も出てまいりました。そういう問題で、現時点でもって、ミクロ的な問題でありますが、一体設備状況がどうなっておるのかといって数字を調べてみたのですが、物資の稼働率、これは四十五年、四十七年の対比を申し上げますと、粗鋼は適正稼働率は九五であります。これに対して、四十五年が九四・二であったものが、四十七年当初八六・四に下がっておるわけであります。また、工作機械が一番ひどいのでありますが適正稼働率九五というものに対して、四十五年度が八九・一であったものが、四十七年当初五三・五、稼働率は半分になっておるわけであります。私が間々申し上げておりますように、設備の過大ということになっておるわけでございまして、いまの景気浮揚状況を見ますと、確かに官需は拡大いたしておりますし、これから大きな予算が執行されるわけでありますので、私は四−六、七−九というような第二四半期までには景気は上昇すると思います。しかし、その後、在来のパターンのように公共投資に付随する民間の設備投資というものがこの状態ならばついてこないということになるわけであります。ですから、そういう意味では、景気浮揚というものと、これからの民間設備投資というものは、いままでのパターンではだめだ。そこで、工業再配置とか、公害による工場の移転とか、また、さっきから御指摘のありますように、質の向上ということで国民生活優先というような投資、それに付随する設備投資が行なわれるように誘導政策を行なわない限り、在来のように自発的に民間の設備投資が付随するということは期待できないということで、戦後二十五年、初めて新しい事態にぶつかった、こういう見方をしておるわけであります。
  209. 松井誠

    ○松井誠君 確かにデフレ・ショックというかってないものが二重写しになっただけに、今度の景気の局面というものはなかなかめんどうだ。それこそ化けものみたいで、どこをどうつかんだら的確につかめるのかわからないくらいむずかしいと思うのです。しかし、いま言われたように、設備投資意欲がなかなか冷え切って、起きないという、それはやっぱり一つは相当大きな設備過剰圧力というものがある。しかし、それだけでなしに、やはり世界的な通貨不安というものがその背景にあると思う。あるいは四十年不況のときには、輸出の伸びというものはとにもかくにも景気を興す先導的役割りを果たしてきた。しかし、今度はそういうようには期待をされていない。これも一つはやはり世界的な通貨不安だろうと思うのです。  それからあなたの言われたように、公害の問題、あるいは下村さんの言われているような技術革新の一巡ということもあるでしょう。いまあなたもデフレギャップのことを言われましたけれども、これはつまり今度の景気が非常に複雑でやっかいな問題を持っているというそのことを意味しているわけですが、経済企画庁にお尋ねしたいんですが、いまちょっと田中さんの話にもありましたけれども、需給ギャップ、デフレギャップ、それを一体どれだけと見て、公共事業の乗数効果はどれだけと見て、それで経済見通しはどうだという、そういう数量的なことを、どなたでもけっこうです。
  210. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) ちょっと現実の数字としてまだ私はお答えできませんが、現時点における需給ギャップ、これを額にいたしまして、およそ六兆から六兆五千億、こう踏んでおります。しかしながら、いまいろいろ御指摘のとおり、確かに製造部門は、いま通産大臣も申し上げたように、なかなか企業設備投資のマインドが起きておりませんが、非製造部門、これは相当設備投資の意欲が旺盛になりつつございます。そういたしますと、この製造業、非製造業を通じての需給ギャップと申しますと、これは六兆とか六兆五千億ではなしに、もう少しパーセンティジはだいぶ減るのではないか、こう考えておりますが、いま御指摘のような数字その他につきましてはまた事務当局からお答えいたします。
  211. 矢野智雄

    政府委員矢野智雄君) お答えいたします。  ただいま手元に数字を持ち合わせておりませんので、正確なことをちょっとお答えいたしかねますが、現在、全般的、マクロ的と申しますか、GNPベースでの需給ギャップは、約七、八%程度と考えております。
  212. 松井誠

    ○松井誠君 よく言われるのに、製造業は約二〇%と、しかし非製造業ははるかに少ないと。これは、七、八%というのは、その内訳は一体どういうことですか。
  213. 矢野智雄

    政府委員矢野智雄君) 全体のGNPベースでの需給ギャップが約七、八%かと思います。製造業だけとりますと、おそらく一〇数%になるかと思います。おそらく一六、七%かと思います。
  214. 松井誠

    ○松井誠君 乗数効果は。
  215. 矢野智雄

    政府委員矢野智雄君) 公共事業費の乗数効果のお尋ねでありますが、約二ポイントくらいかと思います。
  216. 松井誠

    ○松井誠君 そうすると、その公共事業で需給ギャップは一体どれくらい埋められるということになるんですか。
  217. 矢野智雄

    政府委員矢野智雄君) 公共事業費が民間の設備の需給ギャップにどの程度のメリットがあるか。公共事業費そのものの内容その他を考えますと、すぐそれが民間設備上の需給ギャップに結びつくということは測定もなかなか困難でございます。しかしながら、それが民間設備投資に対する需要としてあらわれ、一つの乗数効果となってまいりますのは、いま局長が申し上げましたとおり、大体一・八%から二%ぐらいの乗数効果を考えてもしかるべきではないかと思いますが、しかしそれは、たとえば昭和四十七年度の予算上における公共事業がそういう乗数効果をもたらすのは、やはりその大体六〇%から七〇%と見ていいのではないか。したがいまして、その中には土地取得の公共事業の部門もございましょうし、それが二%程度になって実際に効果をあらわすのはやはり昭和四十八年度に入ってからということになりますと、公共事業費の需給ギャップに及ぼす効果というものはやはり限度がある、こういう考えでございます。
  218. 松井誠

    ○松井誠君 需給ギャップそのものの数字もきわめてまちまちで、そしてそれに対する公共事業への景気浮揚効果というのもなかなか計算がしにくい。その中で公共事業がどれだけの景気浮揚効果を持つかということは、なかなか科学的な算定はむずかしい。しかし、私が言いたいのは、もしこれがドルショックというものが相当大きな要因になっておるとすると、この公共事業を伸ばすことによって有効需要を喚起するという従来のいわば大ざっぱなやり方ではたしていいんだろうかということ、たとえばドルショックで一番影響を受けた輸出関連の中小企業——中小企業の製品も確かに伸びてはおりますけれども、しかしこれは競争力があって伸びておるわけではない。下請、そのまた下請というところに犠牲がいってやっと伸びておる。そういうものに対する措置が一体ここから出てくるわけはないでしょう。なるほど、中小企業に対しては何がしかの救助の政策はとられております。しかし、それは中小企業が現に受けておるそういう苦しみかち見ればきわめて微々たるものです。ですから、何か、朕は国家なりじゃありませんけれども、鉄鋼は国家なりみたいで、鉄鋼が不景気になれば国じゅうが不景気になって、不景気対策というのはもっぱら鉄鋼を中心とした依然として重化学工業に向けられる。そうすれば国民全体が楽になるだろうという、そういう発想、きめの荒っぽい発想というものは、やはりこの辺で変えなきゃならぬじゃないか、そういう意味でお尋ねをしておるわけですが、このドルショックを受けた中小企業のために一体景気浮揚対策として具体的に何をされたか、これは通産大臣。
  219. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 中小企業対策は、先国会で法律を提案をいたしまして、制度上、金融上、税制上の措置を行なったわけでございます。まあ中小企業の倒産状況その他を見ますと、確かに、四十五年対比四十六年、四十六年対比四十七年というような見通しから見ますと、数字の上では倒産などは半分以下に減っております。しかし、私はそれが実勢ではないという考えを持っております。それは、輸出がまだことしの一−三月ぐらいまでは依然として伸びておりますが、しかし、それは一部において二百七十円ベースでたたかれている出血輸出だともいわれておりますので、こういう問題に対しては、私も追跡調査を行なうよう指示しており、また、輸出業者に対する輸出割り当てワク等も実績中心主義から改めるというようなことで、いろいろな検討をしておるわけでございます。まあ率直に申し上げると、非常に金融が超緩和の状態でありますので、自転車操業を続けておる状態もあるということは、私自身も認めております。しかし、これをどのように転廃業するのかというときに、知識集約産業ということを一口に言えば簡単でございますが、なかなかこれだけ高度化した中小企業を全面的に再スタートをするということになると、相当な時間もかかるし、めんどうな問題もあるわけでございます。でありますから、審議会等でいろいろな問題を検討してもらっておるわけでありますが、まあ、新潟県の燕のように、一町の二分の一が停止をするということになると、家から人まで動かすわけにはまいりません。そういうものの一体適正な転廃業先を何に求めるのかということは、四十七年の中小企業零細企業対策の中の一番大きな問題だということで、前国会でまあ相当な立法措置等を行なったわけでございますし、繊維などに対して二千億に近い投融資も行なっておりますが、しかしそのような問題だけで解決する問題ではない。中小企業はすべてを洗い直してやはり長期的な見通しを立てて計画的な総合政策を行なう必要がある。実際、ドルショック、円平価の調整というものが一年ないし一年半、長ければ二年かかると、こういう実態であります。したがって、中小企業対策の立案にあたっては、そういう時間的なスケジュールを組み込んでいかなければならないと、このように了解いたしております。
  220. 松井誠

    ○松井誠君 時間がゆっくりありませんからかけ足になりますが、この公共事業の景気浮揚効果というものは、現在のこの日本の置かれておる現実から考えて、まあ土地取得の問題、あるいはその事業を消化する能力の問題、いろいろな意味でフルにそれが期待できないだろうという、そういう議論はもう行なわれ尽くしておりますから、私は申し上げません。しかし、これから先、景気浮揚の指導力を持つものが、輸出でもない、設備投資もむずかしい、政府支出はいまのところで精一ぱい。だとすれば、個人消費支出を伸ばすということをなぜ一体お考えにならなかったのか。大蔵大臣にお伺いをしたいのですが、そのために減税というものは有力な武器であったはずなんです。なぜことしほとんど減税をやらなかったのですか。
  221. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、たびたび申し上げましたとおり、やらないのじゃないので、四十七年度は、二千五百三十億円所得税減税、それに地方税の減税と、この二つをやりましたので、いままでの例年の減税幅に比べて、今年度そう劣った減税幅ではございません。
  222. 松井誠

    ○松井誠君 本年度二千五百三十億所得税減税したのですか。
  223. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、昨年のこの臨時国会のときに申しましたが、四十七年度分に予定しておった減税を繰り上げ実施するというもう御了解を得て、昨年の暮れ、最も消費活動の旺盛なときにこの減税をやって、非常に大きい私は効果を発揮したと思いますが、これが、今年度減税が平年度化してきておりますから、今年二千五百三十億円の減税をしたということでございまして、早くやるかおそくやるかでございますが、少し早くやったということでございます。
  224. 松井誠

    ○松井誠君 冗談じゃないですよ、大臣。去年の減税は去年の減税、減税と減税効果とは明らかに違うでしょう。去年のその補正予算における年内減税が本年度減税効果として二千五百三十億効果がある、それはそうかもしれません。しかし、それは本年度の減税じゃないじゃないか。会計年度はきちっと違っておるじゃないですか。どうしてそんなインチキを言うのですか。
  225. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 当初予算のときに、去年は御承知のとおり減税をいたしました。それからいまいった年内減税をもう一回四十七年度分に予定したものをやった。この二つをもし合わせるのでしたら、今年度のこの減税効果というものは四千八百億円くらいの効果になっておるのですが、この前のほうは、これは去年の減税と見ますから、その分は抜いて、あとのほうは、これは今年度の減税として二千五百三十億円という計算をしておるわけであります。
  226. 松井誠

    ○松井誠君 私が聞いているのは、減税効果ではなく、減税なんです。
  227. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これはもう何度も申しますとおり、今年度のこの国会に提出するか、その前に年内減税として早目に提出するかという問題でございましたが、七年度分を繰り上げて実施するということにつきましては、これは国会各方面も十分御了解の上で、その効果は、特に昨年のああいうドルショックのあとでございますので、早くその効果を期待するために四十七年度分を繰り上げるということを、みなさんの十分御了承を得てやった減税でございますので、四十七年度やらぬやらぬということのほうが少しどうかと思います。
  228. 松井誠

    ○松井誠君 昨年の減税を本年度の減税効果として計算をするというようなやり方は、いままでやりましたか。
  229. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いままでは年内減税ということをやった例はあんまりないと思います。
  230. 松井誠

    ○松井誠君 年内だろうと何だろうと、会計年度できちっと区切られておるんですから、単年度なんですから、その調子でいけば、前々年度の減税は本年度の減税効果何千億という計算にもなるでしょう。そんなことがナンセンスだということは十分おわかりでしょう。総理、私は、こういうことをですね、つまり数字をどっちに並べたところで経済の実態には関係がない。考えてみれば、つまらぬ議論ですけれども、そういうことをやるのは、私は政治の姿勢に関係があると思う。なぜ、減税はできません——減税をやるとすれば赤字公債の発行はやむを得ないんです、ですからできませんでしたと、なぜ率直に言わないんですか。言わないで、二千五百三十億やりもしない減税をやったような、そういう錯覚を与える。これはやっぱり、国民に率直に語りかけるという、そういう姿勢がないからですよ。さっきの問題になっている密約論と同じですわ。そういう意味で問題にしている。総理の御感想を伺いたい。
  231. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それは、私が昨年申しましたように、いわゆる十五カ月予算の構想でいきたい、この不況対策には十五カ月構想でいきたいと言いましたのは、十五カ月間といいますというと、昨年度の補正予算のときから、この四十七年度全部を通じますというと十五カ月になる。その十五カ月の間の財政方針として、公債の発行額は一定のものを考える。それから、減税においては、所得税だけ行なうというと、地方税と課税最低限の開きが多く出てくるので、四十七年度の減税として提案するのには、地方税の減税をやってこの均衡をとりたいということと、もう一つは、いまおっしゃられましたように、振りかえ所得の問題で、社会保障費の増額というようなことによって現金給付というものを多くするということは、これは減税よりも直接効果のある問題でございますので、これを昭和四十七年度においては考えたい。そういうことを考えますというと、今年度、いま実施する減税というものは、四十七年度に充てた減税の先に実施することであって、これを全体として十五カ月予算というような構想でことしの予算編成方針を見ていただきたいということを、あのときにもうあらかじめ御説明して、御了承願ったということでございますから、そうばらばらに、先の見通しなく、かってに去年の減税をやったというわけではございません。ですから、去年は二回やっておりますが、最初のほうは四十六年度減税として扱って、この効果を計算したり何かするようなことは、これはいたしておりません。しかし、十二月のあの減税は、これは四十七年度分の減税というもので、全体計画の中の一つの減税でございますので、大きい関係を持っているものでございます。
  232. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大蔵大臣から詳細に答えたので、私はもうよろしいかと思っておりましたが、どうしても私の答弁を求められております。  いま、大蔵大臣が、当時の減税、これをやるその条件、これは年内減税をやれば、暮れのボーナス時期でもあるし、一そう効果があるだろうと、こういうことで、あれはさかのぼって減税をすると、こういうことを実は考えたのでございます。ところが、いわゆるドルショックはありましたものの、その他の国際経済の影響はなかなかあの程度のことでは片づいておらないと、そういうことでありますので、ことしはたいへんな公債を発行せざるを得ない、そういうような状態になっておりますから、ここら彼此勘案しながら所要の財源を確保しておると、かように御理解をいただきたいと思います。
  233. 松井誠

    ○松井誠君 私が総理から御答弁をいただきたかったのは、政治姿勢の問題だったんです。しかし、それはもういいですよ。  しかし、ともかく、去年は去年で減税してうれしがらせておいて、ことしはその減税をもう一ぺん使うというんですから、一つの数字を走るで二度のつとめをさせておるみたいなものです。  で、せめて調整減税——物価調整の減税だけでも最小限度やるべきだったと思うんですけれども、それさえもしなかった。これはどういう理由ですか。
  234. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、自然増収がそのまま入れば八千億円以上になりますのを、二千五百三十億円の減税ということは三分の一の減税でございまして、例年の減税と比べて決して幅の少ないものではございません。で、物価等の関係を見ましても、これはもう物価分も調整されている減税で、物価調整は十分この減税の中には考えられてあるものでございます。
  235. 松井誠

    ○松井誠君 もう議論はしませんが、一つだけお尋ねをしておきたいのは、税制調査会がこの調整減税に、何といいますか、疑問を出しておる。そういう影響で調整減税はしなかったという意味ではありませんね。税調の意見を取り入れたからではないですね。
  236. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 特にそうではございません。
  237. 松井誠

    ○松井誠君 そうすると、将来とも、少なくとも調整減税はやるべきだという姿勢には変わりはございませんか。
  238. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは将来の問題は当然でございます。これは、将来は当然、物価調整減税ということは——いま、物価減税でございましょう、これは、将来は当然、減税のときには、物価調整の減税ということは考えるべきでございます。
  239. 松井誠

    ○松井誠君 まあ景気浮揚対策として大型予算を組んだ。ただ、されておるものは、大量の、かつてない国債です。そこで、私は、国債の問題についていろいろとお尋ねをしたいんでありますが、その前に、われわれの国債に対する基本的な立場というものをあらかじめ申し上げておきたいと思うんです。  われわれは、いかなる場合にも、この国債を拒否するという意味ではございません。しかし、その発行にはきびしい諸条件が必要だと考えておる。なぜかといえば、財政法四条が均衡財政主義をとっておるのは、あの軍事公債という苦い教訓から生まれたものであって、われわれはこれを平和憲法の経済的な基礎だと実は考えておるわけです。それだけに、この条件はきびしく考えなければなりませんし、したがって、従来の市中消化、日銀の直接引き受けの禁止という二つの原則を守ることはもちろん、償還計画を明示する。さらには、国債発行そのものが安易に流れることのないように、財源の十分な検討が先行しなければならぬ。しかし、率直に言って、これらのいろいろな措置というものは有効な歯どめになり得ない。最大の歯どめというのは、この国債を発行する、言ってみれば、政府権力の性格、信用というものにかかわっておる。基本的には、私たちはこう考える。  そういう立場からお尋ねをいたしたいんでありますが、そういう立場から考えると、今度の国債には問題が非常に多い。で、もっともっと財源というものがあるにかかわらず、この財源の捻出ということに非常に安易に国債の発行に踏み切ったという、そのことそのものも問題であります。あるいはまた、建設国債か赤字国債かということについては、どっちみち、全体がアンバランスで、足りない分を国債でまかなうというんでありますから、その区別そのものを議論するのは、私はあまり意味がないと思う。しかし、少なくとも、この建設国債というのは公共事業というものに縛られるという意味で、それなりの意味がある。このことについては、矢山委員から先ほどいろいろ問題の提起がありましたから、私は省略をします。しかし、少なくとも、この建設国債を発行するときには償還計画というものの明示をしなきゃならない。ところが、この予算と一緒に出されておる償還計画というのは、実は計画の名に値しないものですね。あれが財政法第四条のいわば要求をする償還計画ですか。
  240. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 国債の償還計画については、御承知のように、四十二年に減債制度ができましたので、これによって国債の償還はもう自然に計画的になされるという仕組みになっております。と申しますのは、平均耐用年数を大体六十年と見まして、六十年間にはいかなる公債も必ずこれは最後には償還されるというたてまえに基づいて、年々一・六%の積み立て金をするということ、前々年度の余剰金の二分の一以上を積み立てるということ、それから各年度において必要な金額を一般会計からこの減債基金に繰り入れる、この三つのことによって、公債を発行した場合には、必ずこの平均耐用年数の間には国債は償還されるという積み立て金を行なっておるものでございますので、この償還については、いまは心配はない制度を持っておるということになります。
  241. 松井誠

    ○松井誠君 心配があるかないかを償還計画で明示をすべきだと思うんです。ところが、あの償還計画を見ますと、十年たったら全部返します。それから、いま大臣が言われたような、そういうことが書いてある。これはつまり法律に従って返しますということを言っているだけなんです。これは言わなくてもわかり切った当然のことなんです。国民が知りたいのはそういうことじゃない。具体的にそのワクの中で何年に一体どれだけ償還をし、結局いつなくなるのか、その財源は一体どうするのか、それがまさに文字どおりの償還の計画であるはずです。あれはそうじゃない。借りたものは期限までには返しますというだけの話で、ああいうものをわざわざ財政法が要求している基本計画だと考えること自体がおかしい、そうじゃありませんか。
  242. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この七年債、十年債という、これは全部六十年債を出しておるわけではございませんから、したがって、期限が来たときに現金償還と借りかえということはございますが、借りかえが行なわれても、いずれにしましても、どんな国債でも六十年間には返済されるという立場の積み立て金がなされておるのでございますから、この点は事実上心配のない、これはりっぱな償還計画になっていると思います。
  243. 松井誠

    ○松井誠君 心配がないことはございませんよ。つまり、一ぺん出した公債というのは、六十年寝かしておいてもいいんだ。借りかえ、借りかえで六十年はいってもいいんだというのが、政府の姿勢だということがはっきりするなら、それははっきりさせたほうがいい。そうではなくて、来年からおそらく景気がこうなるであろう、われわれの見通しではこうなる、したがって、この分は償還をしよう、この分はどうしてもだめだから借りかえでいこう、具体的なそういう計画を立てることこそが意味があるのではないですか。そうでなくてもこの償還計画からは国債の発行について、政府が一体どういう姿勢なのか、国民が将来持っている不安が一体これで解消するのかしないのか、ちっともはっきりしないじゃないですか。
  244. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、前年度の余剰金の二分の一とか、そういうものはもうはっきりきまっておりますが、そのほかに、この基金の中に繰り入れる金額、それによって今年度どれくらい返済するか、償還するかという問題は、どうしてもそのときの財政事情によらなければ無理でございますので、これは各年度の財政事情によって、これは繰り入れ額をきめるということ以外には、むずかしい問題で、前もって昭和何年にはどれだけの金額を入れるというような、こういう償還の財源計画というのは、事実上これはできないものであろうと思います。
  245. 松井誠

    ○松井誠君 政府はしかしいろいろな五カ年計画というものを立てているでしょう。新経済社会発展計画で、一体成長率は幾らになるかということもきちんとはじいているわけです。当たるか当たらないかは別です。そういうものがもしあるとすれば、そういうものにあわせて国債の償還はこうあるべきだということは当然出るべきだと思う。もちろん狂うでしょう。狂ったら狂ったなりで、なぜ狂ったのかということを検討する。そこに償還計画を立てる意味があるのではないですか。どうせ狂うものだから意味がないんだというのが大臣の考え方ですけれども、私は逆じゃないかと思う。
  246. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 予算書に掲げてございます償還の計画が、ちょうど満期に返すというだけの簡単なもので、あれは償還の計画というけれども、計画になっていないじゃないかと、こういうような御議論かと思います。実は、これは五十一回国会におきましても、このことが問題になりまして、当時、政府は償還の計画としては現在の形のものしかないと考えるが、なお合理化できるかどうかは、財政制度審議会にもはかって、さらに検討したいという趣旨の答弁をいたしまして、その後財政制度審議会の法制部会及び総会におきまして、数次にわたりこの問題を検討したわけでありますが、やはり結論といたしましては、現在のような形でしか償還の計画としては予算書に掲げることは無理じゃなかろうかと、こういうような御報告もあったわけでございます。したがいまして、償還の計画としてはああいうような形になっているわけであります。  それから、その償還の財源の問題につきましては、先ほど大臣から答弁もございましたが、償還の資金の制度としましては、前年の期首における国債残高の百分の一・六と、これは公債対象となります事業の何と申しますか、経済的な存続期間というものが大体六十年だというので、そこで百分の一・六というものを毎年度繰り入れていけば、ちょうど実質的な償還期限に見合うのではないかということで、そういうような償還制度を設けているわけでございますが、このほか、御案内のとおり、財政法の規定によりまして、毎年度の剰余金の二分の一は、少なくとも、国債の償還に充てるということになっておりますが、その剰余金の二分の一が加わりますので、実際の償還はそれよりも早くなることはあっても、おそくなることはないということで、一応六十年で償還をするための必要な財源というものは確保されていると、かように私どもは考えております。
  247. 松井誠

    ○松井誠君 いま言われたような経過は、私もちゃんと知っております。そして、木村禧八郎先生を中心にしてそういう議論があって、その結果、そういうところにいったということは私も知っている。そういう議論を踏まえての私の質問なんです。時間がありませんから飛ばしますけれども、こういう償還計画というものについて、大蔵大臣のそのときの答弁がそうなんです。どうせ当たらないから意味がないじゃないか。当たらないから私は意味があると思うんです。そのときにほんとうに計画が立たないような国債の発行でいいのかということを真剣に考えるということがなければだめじゃないか、そう思って、償還計画について、いままでのような取り扱いをわれわれは絶対承認しているのではないんだという意思表示をここで申し上げておきたいわけです。  そこで、聞けば聞くほどそうでありますけれども、大体六十年は寝かしておいてもいいだろう。一ぺん出した公債は、根雪のように六十年は解けてこない、そういうような考えが基礎にあると、私はなおさら心配でありますけれども、この大量の国債発行というのが、時期は別として、とにかくインフレにつながる、このことは大蔵大臣お認めでございますね。
  248. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) やはり、いわゆる対象経費内の公債ならともかく、これを越えた公債というようなものは、私は、やはりインフレにつながる心配が非常にあると思いますので、この財政法の範囲内で公債を発行するという節度は守るべきものだと考えております。
  249. 松井誠

    ○松井誠君 企画庁はずいぶん大型発行論者であったようでありますが、企画庁長官いかがでございますか、インフレとの関係。
  250. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 先ほど申し上げましたとおり、いま需給ギャップが相当大きいことですから、その供給力が余っている際に今回の公債の発行、これは私は別にインフレにはつながらないと、こういう見解をとっています。
  251. 松井誠

    ○松井誠君 その議論はもうちょっとあとでいたします。それはいますぐインフレにはあるいはつながらないかもしれません。しかし、多少の——一年といわず、多少のタイムラグを置けばインフレに確実につながり得る、そういう性格を持っておると私は思う。いまはなるほど金融が非常に緩慢です。しかし、この金融が緩慢というのも一つは外為の払い超というものが非常に大きいからで、しかし、そのドルというものは、流れ出ていくということがあり得るわけです。そういう関係から金融が逼迫することもあり得る、あるいは好況になって金融が逼迫するということがあり得る。もし景気対策が有効であるとすれば、そうすれば、銀行は手持ちの古い国債を日銀に持っていくということになる。これは一年——発行して今度の四十七年債がすぐインフレにならなくても、それは銀行の手元にかりにあっても、古い国債が日銀に還流するということによって通貨の増発になる、当然インフレとつながりが出てくる、そういうメカニズムは承認されませんか。
  252. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) まあ、ことしのような大型の国債発行が今後まだ数年続くということであれば別でございますが、そういうような財政政策はおそらく財政当局もとることは考えておりません。そういう意味で、今回の大型国債発行がインフレに今後続くと、これは当然的確な適正な財政金融政策が、これに伴わなければなりませんが、そういう心配は現在のところ考えておりません。
  253. 松井誠

    ○松井誠君 私がわれわれの基本的な態度として、つまり政府あるいは国債を発行する権力の性格なり信用が問題だと言ったのは、そういうことも含めて、つまり、これから先、この大量国債の発行というものは日本の財政の中で定着をしないのか、定着をするという危険性が私は非常に強いと思う。そのときに、ほんとうに適宜適切にこの償還をし、あるいは国債を回収をするという形で収縮をするという、そういう体制になっておれば別ですけれども、一ぺん出したが最後、なかなか財政規模が収縮をしないという、そういう日本の財政の体質、特に来年度どうなるかわかりませんけれども、少なくとも、今度のこの不況というのは設備過剰の圧力がかりにあるとすれば、相当大型な国債を発行しなければなかなか景気浮揚にはならぬでしょう。大型な国債を発行するということになれば、いろいろな理由はありますけれども、やはりインフレということにつながらざるを得ない。つまり、大量の国債の発行が定着をしていくという、そういう可能性が日本の財政の中にはあるのじゃないか。収縮することについては非常に抵抗がある。膨張することについてはみんなが賛成だという、あるいはオペレーションにしても、買いオペと売りオペとで抵抗のあり方が違うといわれている。出したが最後縮まらないという、そういう体質は、実は日本株式会社といわれる私は政界と財界との癒着にあると思う。そういう基本的な体質が変わらない限り、国債を出したが最後なかなか引っ込みがつかないということになる。そういう危険性をわれわれは心配するからこういうことを言っておるわけです。  そこで、大蔵大臣にお聞きをしたいのですが、今度の国債というのは景気浮揚という目的だけなのか。だとすれば、好況になれば、当然これは償還をされるということにならざるを得ぬわけ、収縮をするということにならざるを得ぬわけですが、そのように理解をしてよろしいですか。
  254. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、この国債の発行は、今年度の場合を見ましても、景気浮揚という目的作用と同時に、資源の配分作用をある程度持っておるものだというふうに思っています。したがって、民間資金を吸収して活用するということは、それだけ民間の設備投資というようなものが押えられることになりますし、いまはこれが鎮静化しておるからでございますが、この資源の配分が変わってくることでありますし、しかも、この公共事業のうちで、生活環境整備の投資というようなものに資金を配分するというようなことのためには、この公債の発行というものは相当意味を持っておるということでございますので、私は、二つの意味が公債発行にはあるのじゃないかというふうに思っておるわけでございます。
  255. 松井誠

    ○松井誠君 そういうように景気浮揚という目的だけでなしに、それこそ社会資本の充実、生活関連社会資本の充実というものを目的の一つに置いておくとすれば、この需要は年々歳々伸びていくわけです。したがって、その需要が伸びていく限りは公債は減縮をされないということになる。この社会資本というのはほんとうにその生産力を喪失をするような、そういう社会資本であれば、長期的にはあるいはインフレというものは防げるでしょう。しかし、その間の相当長いタイムラグの間には、当然これはインフレというものになってくる。これは理の当然ですね。それはお認めになりますね。
  256. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その場合、もしいま景気浮揚という作用を持つと言ったんですが、景気浮揚というものができて好況になり、不況が克服されるということになりましたら、それに応じて国債の依存度は引き下げられるべきもので、この弾力的な運営がうまくいくなら、私は心配ないのじゃないかと思います。しかし、その点におきましてはもうすでに政府は経験済みでございます。   〔委員長退席、理事白井勇君着席〕 昭和四十一年度から一六%の依存率から年々これを落として、昨年は四%台まで当初予算ではこの国債の発行を落としたということから見ましても、これはすでに実験済みでございますので、来年度におきましても、これによって不況が回復するという事態が来ましたら、それに応じて自然増も当然ふえてくることでございましょうし、国債の依存度を落とすと、こういう運営をしたいと思っております。
  257. 松井誠

    ○松井誠君 時間がありませんから先に進みますけれども、これから実は私が申し上げることが、一番申し上げたかったことになるわけです。それは、いまみたいに景気浮揚ということに重点を置いて物価が上がる、インフレになる、そういう意味では、福祉が阻害をされるという政策が私は福祉優先では現実にないという証拠だと思うのです。しかし、もう少し具体的にお尋ねをしたいのでありますが、これは政府のどなたでもけっこうですけれども、さっき社会保障関係費の予算の構成比の話が出ました。私はその点は省略をしまして、その社会保障関係費の構成比の国際比較、それから振りかえ所得の話がさっきも出ましたけれども、それの対国民所得比についての国際比較、この数字をまずお示しを願いたいと思います。
  258. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 私からお答えいたします。  社会保障給付費の対国民所得比国際比較、一九五二年から一九六二年までございますが、これはちょっと記録が古うございます。したがって、私の手元にあります一番新しいのは一九六三年の比較でございますけれども、日本が五・六、アメリカが七・六、イギリスが一三・八、西ドイツが二〇・〇、フランスが一九・三、スウェーデンが一五・二、イタリアが一五・一と、こういうことでございます。(「古いよ、八年前のを出して、平気でいちゃ困る。」と呼ぶ者あり)
  259. 松井誠

    ○松井誠君 いまの、何ですか、何の数字ですか。もっと新しいのありますよ、新しいの。もっと新しいの、ありますよ、これ。
  260. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) いま申し上げたのは、実は社会保障給付費、私の手元に非常に古いものしかございません。いま申し上げたのは、ILOの統計から出たものです。振替所得はこれは少し新しいのがございます。国民所得に対比して、日本が一九六八年五・四、アメリカが七・五、イギリスが一一・〇、西ドイツが一八・四、フランスが二二・一、スウェーデンが一二・九、イタリアが一七・三と、いろいろ各国で制度が違いますので、なかなか比較のやりにくいところもあるようでございます。  以上です。
  261. 松井誠

    ○松井誠君 社会保障費の——総理、これは退屈でしょうけれども、この数字は聞いておいてくださいね。  社会保障費の構成比の国際比較、日本が一四・三、アメリカが三六・八、イギリスが二二・三、西ドイツが三〇・四、フランスが一四・六、つまり日本の社会保障費の構成比というのは、これは対GNPですかな、最低だということですね。それから一人当たり振替所得の対国民所得の比、これはいま経済企画庁長官から言われましたけれども、やはり日本が一人当たりの振替所得、つまり社会保障費、これも日英仏独比べて最低、しかもけた違いに最低です。そして、もう時間を節約をするために申し上げますけれども、経済企画庁の国民生活審議会というのがある。そこで生活水準の小委員会というのができておる。その小委員会がつくっておる資料に、いまのままでいけば特段の政策の転換がない限りは、その社会保障関係が先進三カ国の平均に比べて昭和五十年三八%、それから物的環境基準というのが、いまのままでいけば先進三カ国の平均に比べて昭和五十年に五四%、どれをとってみても、社会保障関係の数字というのは驚くべく低いということ、これが総理が八年間社会開発というものを唱え続けてきた、いわば八年間の成果だということです。これで一体いいのかということですね。このことではまたあとでお伺いをしますが、企画庁にお伺いしたいんです。この間企画庁長官は、国民福祉の画期的な拡充を内容とする新しい長期計画を立てるというようなことを言っておられる、これは具体的に何を意味するんです。
  262. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 今回、現在の新経済社会発展計画、これを見直しまして、経済運営の軌道修正という観点に立ちまして、いまその改定作業を進行中でございますが、その中で当然考えられるのは、国民福祉を優先すると、松井さんが冒頭におっしゃいましたような、基本的な考えに立ってこれを修正するわけでございます。当然これには資源配分というものを大きく変えていくということが含まれておりますが、その際には、従来の産業優先あるいは輸出第一より転換をいたしまして、生活関連社会資本、社会保障また社会福祉の充実、こういうものにウエートを置いた資源配分を考えていくということの基本的な考え方をあらわしたものでございます。
  263. 松井誠

    ○松井誠君 国民生活審議会の生活水準小委員会、さっき私が述べましたけれども、その中で国民福祉の指標の新しい開発ということに取り組んでおる。そしていわばナショナルミニマム、これが策定への第一歩だという趣旨のことを言っておる。あるいはこの間の新聞によりますと、経済審議会の国民選好度調査委員会ですか、これが国民選好度の調査をやっておる。そして例のNNWという、そういう国民福祉指標の開発というものが進んでおる。これは現在具体的にどういう進行の状況ですか。
  264. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 現在経済審議会に各部会を設けまして、いま御指摘のNNW、ネット・ナショナル・ウエルフェアということの指標を新しく開発しようという作業を進めておりますが、これは御承知のとおり国民の福祉というものは、確かにいままではパイの大きさを、パイそのものを大きくしよう、こういうことであったんですが、これからそのパイの中身をひとつよくしようということになるわけです。そういう意味におきまして、この国民福祉の内容をどういうふうに考えていくべきか、経済生活の経済の大きさのみにとらわれないで、福祉そのものに着眼した政策運営あり方を考えていこうという観点に立って、いろいろこのNNWの開発作業を進めていただいておるわけでございます。また国民選好度、御承知のとおり国民の価値意識というものは非常に変わってまいりました。そこで国民選好度という一つの調査をいたしまして、それに基づいて国民が一体何を一番希望しておるかという、そういう度合いをある計量モデルにいたしまして、それをいまつくろうとしておる長期経済計画の中に織り込んでいこう、こういう作業でございます。
  265. 松井誠

    ○松井誠君 私はいままで福祉というものがなおざりにされてきたのは、福祉についての長期計画がなかったということが一つの大きな原因だったと思う。いろいろなものには長期計画というものがたいがいある。防衛計画に至っては先の先までできておる。しかしこの福祉についての長期計画というものはない。予算編成のときにいっでもなおざりにされざるを得ない原因ですね。ですから私はやはり具体的なこの福祉計画と長期計画というものを当然立てるべきだ。そういう意味でナショナルミニマムというものを一体つくるつもりはないか、このことをお伺いをしたいんです。これは言ってみれば最低限度の問題でありますから、いまごろこの最低限度の問題——すでにイギリスでは観念が古いといわれておるこのナショナルミニマムというものをわれわれがいまさら取り上げなければならぬというのは非常に残念です。しかしこれは少なくとも期限を切ってナショナルミニマムというものをこの前少なくとも策定をすると。これは最低限度の要求でありますから、われわれは憲法二十五条に基づく一つ権利として要求をしたいと思う。こういうナショナルミニマムというものをきちんとつくらなければ、福祉優先だというあかしには具体的にならないだろうと思う。いまこそ福祉優先だといってみんな口をそろえておりますけれども、状況が変わればいつでもなくなるという、そういうものでないという保証があるとすれば、まずこの福祉優先のナショナルミニマムを、名前はどっちでもいいんですが、具体的な福祉計画というものを長期計画と、それから緊急にやるべき短期計画ときちんと立てる。これは八年間のいわば成果をここで何とか展開をするためにも私は総理必要だと思いますけれども、いかがですか。
  266. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この点がまあ八年間の成果だ、どうなっているかと——かように見ていると、こういうお話です.が、冒頭に申しましたように、制度的には、社会福祉制度は一応欧州先進国並みになった。しかし、中身はまだまだたいへん低い状態であります。だから、これをさらに充実していかなきゃならぬ、かように冒頭に説明したとおりであります。これは政府はたいへん正直に事実をそのまま皆さん方に申し上げておる、こういう状態でございます。
  267. 松井誠

    ○松井誠君 ナショナルミニマム……。
  268. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのような状態でございますから、これをやはり充実していくと、こういうことにわれわれは努力していかなきゃならないと、かように申し上げておる。
  269. 松井誠

    ○松井誠君 これはまあ総理にお聞きをするよりも、むしろ有力な閣僚である外務大臣と通産大臣にお伺いをしたい。  つまり、具体的なこの長期計画を立てなければ、福祉優先というものは、またぞろ口頭禅に終わるだろう。口頭禅に終わらないという保証のためには、ここでやはり、たとえば美濃部さんがシビルミニマムということを言った。これはナショナルミニマムというものが非常になおざりにされておって、せめて東京都でそれをやろうということでやらざるを得なかった。こういうナショナルミニマムという考え方をひとつ復活をさせて、具体的な計画として、具体的な数字として立てるおつもりはないか、二人の大臣にお尋ねをしたいと思います。
  270. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、有力閣僚でないかどうか、ちょっと……。この財政の持つ機能として、御承知のように、景気調整機能というものと、今度は国民資源の配分機能というものと、国民所得の再配分機能と三つが財政の持つ機能でございますが、そのあとの二つはやはり長期計画を要すると、したがって、民間と政府の財源の配分というようなことについては、もう五カ年計画、治山治水にしましても、道路計画にしましても、最近各種の長期計画ができまして、このほうは進んでおりますが、社会保障のほうにいきますと、さっき総理がお答えしましたように、制度自身は一応整備されて西欧先進国並みになっておりますが、まだ年金制度というようなものは成熟しておりませんし、これが成熟してきますというと、国民所得に対する比率も一度に上がってくる問題でございますし、財政から見ても、これはそう簡単に取り扱える問題ではございませんで、何としてもここに一つのものさしを持たないと、今後の福祉政策の充実ということはやっていけないだろうと思います。現に、私は今度の経験で、ことしの予算には二百億とか、わずかの頭しか出ていませんが、もう来年になれば、これが千億、二千億の経費になって出てくるような問題を幾つか今年度の予算でやっておりますので、これは長期計画をやはり持って、一応のめどを持った運用をしないというと、これは実質的に内容を充実するということはできませんので、これはお説のように早急に長期計画を社会保障部門において持つ必要があると思います。
  271. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 所管大臣からお答えするのが妥当であると、かように存じます。
  272. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 社会福祉の長期計画の最低限、ナショナルミニマムの三年ないし五年の長期計画というものを出せということ、これは当然だと思います。これは今度の総理の施政方針演説にもありますとおり、生産中心から国民生活重点へ移行することが発想の転換であり、これからの新政策でございますと、こう述べておるわけでございまして、新しい新全総をつくるとしても、また、これからの経済計画を策定するにしても、その中の重要な部分を占めるのが、国民福祉の長期計画となるわけであります。まあいままでは重化学中心の工業発展をして当初の目的は一応達したわけでありますが、しかし社会資本の不足とか生活環境の問題とか、いろいろ露呈しておりますし、国民の欲望も多岐多様化をしておるわけでありますので、住宅をどうするのか、生活環境をどうするのか、国民総生産の中に占める国民所得、また、その中に占める福祉の長期計画というものは、これはもう必然的に策定をされる、そういう考え方が前提とならない産業政策というものはあり得ない。このように考えております。
  273. 松井誠

    ○松井誠君 私も単なる新全総の修正とか新経済社会発展計画の修正とかいう形でなしに、まさに独立の長期計画、そして緊急の計画というものを立てるべきだと思うのです。  時間が猛烈に足りませんからもう飛ばしますけれども、木村禧八郎先生に言わせると、今度の予算一つは景気浮揚と言い、一つは福祉優先と言う、しかしもう一つ忘れているのがありませんかというのが木村禧八郎先生の言い分。何かと言えば、それは国際収支の問題。このままでいけば円の再切り上げは必至である。それを一体われわれはどう受けとめて、どうそれに対処すべきかという姿勢が全然ないではないかというのが木村禧八郎先生の御意見。私もそのとおりに思う。そこで国際収支の現状についてのこまかいことはお尋ねをするいとまがございませんが、最近依然として輸出が好調だという。この輸出好調の原因はどこにあるとお考えか。まず通産大臣からお伺いをしたい。
  274. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 不景気のときは大体輸出が伸び輸入は減るわけでございます。そういう意味で先ほども経済企画庁長官が述べられましたとおり、当初政府が起草しました四十六年度の国民総生産の目標数字は一〇・一%でございました。そういう状態でありましたし、長いこと一〇%以上の成長を続けてまいりましたので、そのような成長を見込んで原材料の手当てなどを行なっておったわけでございます。それが年間を通じてようやく四・七%程度の見通しになろうということでありますので、当初見通しの半分以下になっておるわけであります。この間約三回改定をしておるわけでございますが、そういう意味で輸出は非常に伸び、輸入は前年度並みにもいかないということで貿易収支は非常に大きな黒字になったということであります。まだ私は四−六、七−九ぐらいまではどうもいまの数字がずっと続いていくような気がいたします。まあ三月になって少し契約状況においては前年度対比〇・六%増しぐらいでございますから、そういう意味では私たちが常に述べておりますように多少景気が上向くことによって、輸出が調整をされつつあるというような感じがいたします。しかしまだ半年くらいは輸出の好調は持続するという見方のほうが正しいと思います。先ほどの一五%円平価が切り上げられたら四十六億ドル余の国際収支に影響があるという数字でございますが、これは当時通産省事務当局の試算の中であのままに推移せんか、約貿易収支は百億ドル近い黒字を計上するであろうという仮定において計算をした数字でございまして、国益を守るという立場で政治的な発言をした数字ではない。日本の経済閣僚が常に国益を前面に出して政治発言をしているという評価が起こると困りますので、念のため訂正いたしておきます。
  275. 松井誠

    ○松井誠君 確かに不況のプレッシャーということもあるでしょうけれども、しかし日本の輸出はもう最近好況であろうと不況であろうとずっと伸び続けですね、多少の波はあっても。ですからいまのこの好況というものの中には一つは不況のプレッシャーというものもあるでしょう。しかしそれだけでなしに、一つはやはりかけ込み輸出的なものがまだあるのじゃないか、再切り上げをいわばねらって。もう一つは、何としてもやはり日本の競争力が強いということにある。佐藤さんは一六・八八%でもまだ足りなかったみたいなことを言って物議をかもしましたけれども、私はあれが案外正直なところであったかもしれぬと思う。そこで、そういう国際競争力というものが非常に高いという原因は一体何なんだろうか。一つは、やはり国際的な低賃金だと思うのです。一つは、いろいろな社会的な費用、当然企業が負担すべき社会的な費用、その典型的なものは公害の費用、これをいわば国に負担をさせておる、住民に負担をさせておるというところにあると思うのです。そこで数字を一つお伺いをしたいのですが、日本の雇用者所得、労働分配率、それから個人消費支出、これの国際的な比較をどなたかお示しを願いたい。
  276. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 賃金と分配率の問題ですか。——それでは私のほうから、労働省の毎日勤労統計調査というものがございますが、それで……。
  277. 松井誠

    ○松井誠君 国際間、国際比較。
  278. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 外国との比較ですか。——賃金については一九七〇年の時点で、昨年末の平価調整後の新レートで換算すると、アメリカの三割強、西ドイツの約六割、フランス、イタリア並みとなっております。労働分配率は、欧米諸国ではおおむね九〇%前後、日本では約七九・四%となっております。   〔理事白井勇君退席、委員長着席〕
  279. 松井誠

    ○松井誠君 労働分配率の国際比較ですよ。
  280. 新田庚一

    政府委員(新田庚一君) 個人消費の国際比較でございますが、一九六九年で申しますと、日本が五三・二、米国六一・八、イギリス六三・三、西独五五・三でございます。  それから国民所得における雇用者所得のウェート、構成比でございますが、六八年の数字で日本五三・四、アメリカ七一・六、イギリス七五・五、西独六四・六、フランス六二・三、イタリア五六・六でございます。
  281. 松井誠

    ○松井誠君 労働分配率は……。労働省から資料を出したでしょう。
  282. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 労働省、何か資料を出しているそうじやないか。
  283. 石黒拓爾

    政府委員(石黒拓爾君) 労働分配率について申し上げます。労働分配率は、御承知のように、マクロベースとそれから製造業ベースとがございます。マクロベースの分配率は、先ほど労働大臣から申し上げましたように、わが国が一九七〇年で七九・四でございまして、欧米諸国は大体九〇前後でございます。それから製造業ベースの分配率で申し上げますと、わが国が一九六九年で三三・一でございます。それに対してアメリカが四六・七、イギリスで五〇・三、西ドイツが三八・〇というような数字でございます。
  284. 松井誠

    ○松井誠君 総理、お聞きになったように、労働分配率も、雇用者所得も、個人消費支出も、日本は非常にやはり低いわけですよ。つまり、日本で働く人たちは、生産力の水準というのは国際的に二位だ、三位だといわれておりながら、そういう低い境遇に甘んじているということです。まさにこれは国際的な低賃金というものを証明して余りあるわけです。とすれば、ここでその不公平な競争条件というものを改めて、公平な競争条件というものにするためにも、ここで賃金を大幅に上げるということが再切り上げを防ぐ一つの、そして最も有効な方法ではないかと私は考えるわけです。何もいま春闘だから言うのじゃありません。そうじゃなくて、こういうのがまさに発想の転換の最大の柱になるべきじゃないかと、こう思うのですけれども、いかがですか。
  285. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この際に賃金をうんと上げて外国並みにすること、これが発想の転換の一つだと、こういう御指摘でございますが、しかし私は、賃金というものはやはり一朝一夕にしてでき上がっておるものではない、今日の状況になるまでにもそれぞれの経過をたどってきておる、このやはり経過をたどっておるところに産業の事態があるのだと、かように見るべきじゃなかろうかと、かように思いますので、私はいま直ちに患い切ってうんと引き上げると、こういう考え方には賛成ができません。
  286. 松井誠

    ○松井誠君 ですから、やはり政策、発想の転換という——福祉優先というのは口頭禅になるという、いままでならざるを得なかったメカニズムというものがここにあると思うのですよ、ほんとうは。そういうものが低く押えられて、民間設備主導型の高度成長に突っ走っていったというその基本的なメカニズムを変えなくて一体どこに発想の転換があって、どこに政策の大転換があるのですか。そういう具体的な問題になるといつでも口頭禅になってしまう。そういう姿勢だから八年間の数字がああいうものになったと私は思うのですよ。  時間がありませんから問題を飛ばして、このことばだけは総理ひとつ聞いておいてください。これはある学者のことばですけれども、日本という国は生産力では先進国、労働条件では中進国、社会資本や社会保障では後進国、そして公害に至っては最先進国、こういう評価があるわけですよ。もしこういう評価が布政八年の結果だとすれば、これは何かの形でここでひとつ直していただかなければならぬと私は思う。少なくとも直すような軌道を何とか引いてもらわなければ私はならぬと思う。  そこで、経済政策の最後の問題をひとつお尋ねをしたいのですが、それはいま開かれようとしておるUNCTADとの関係です。対外経済協力についての基本的な姿勢をこの際はっきりさせていただきたいと思うのです。現在の日本の経済協力の実態、大まかに言ってどういうことになっておりましょうか。これは外務大臣でしょうか、通産大臣でしょうかね。
  287. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国は対外経済協力を非常に重要視しておるわけです。つまり経済的に非常に大きな国なんだ、しかし軍事大国にはならぬ、その余剰をどうするか、こういいますると、ただいまるるお話がありましたが、国内の福祉の増進、これが一つ、それからもう一つは、一半をさいて対外経済協力にこれを使う、こういうことだろうと思います。これは大まかに言っての話です。そこで、わが国の対外経済協力はどういう状況かと申しますと、量的にはかなり進んできておるのです。GNPの〇・九三%である。もう一九七五年までには一%にすべきである、こういう国際的期待、これにもう一歩である、こういうところまでふえてきておる。問題はその内容の問題であります。つまり、その援助の条件がどうかという問題、またもう一つは、援助の中における政府援助です。これがどういう状態であるか、そういうふうなところを考えますと、まだ日本は国際社会の期待にこたえるというような状態ではない。その辺が、わが国がこれから努力をしなければならぬ問題である、課題である、こういうふうに考えております。
  288. 松井誠

    ○松井誠君 昨年の十月にリマで会議が持たれて、いわゆるリマ憲章というものができた。これはずいぶんきびしい先進国に対する要求ですね。そういうものを前にして、日本はいま輸出にあまり期待ができない。とすれば、この辺でひとつ経済協力で海外進出でもやろうかという、いわば経済的に頭をぶっつけて、この対外経済協力というものに非常に熱心になってきておられる節がある。外務大臣は前から、大蔵大臣のときからずいぶん経済協力に熱心でありましたから、これは別かもしれません。しかし、日本の対外経済協力、いま一生懸命やっているのは、いわば外貨減らしの一つとしての経済協力、そういうのは発想がうそだと思うんですね。  そこで、私は、これは産業構造審議会の答申にもありますし、学者の提言でもあるんですけれども、この際ひとつ国際的なそういう日本の評価をぶち破るために国際投資憲章というのが必要じゃないか。さっき私はナショナルミニマムということを言いましたけれども、それがやはりインターナショナルミニマムという形で実を結ぶのが首尾一貫しておると思うんです。つまり、日本の経済協力が基本的な原則としてどうあるべきか。いろいろ非難は受けておる。この非難を受けておる経済協力について、日本は基本的な姿勢としてどうすべきか、どういう形でこたえるべきか。経済的な次元ではなしに、この経済協力白書には、人類共同体の一員としての先進国の当然の責務だというようなことが書いてあるんですね。そう修身の教科書どおりにはいかぬかもしれませんけれども、しかし、やはりそういうことを目ざしていかないと、ほんとうに開発途上国の疑惑というものはぬぐい切れないと思うんです。そういう意味で、担当閣僚でもある通産大臣と双方に御意見を伺いたいと思います。
  289. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 国連加盟国百三十二カ国でございますが、発展途上国は人口のシェアでな五〇%、半分おるわけであります。それで、五〇%の人が生産をするGNPが二二%であります。先進国は、人口のシェアは一八%であって、総生産は六七%というのでありますから、南北問題の解決ということになれば、先進国が開発途上国を援助をしてレベルアップをはかるということ以外にないわけでございますし、そうしなければ平和も保たれないという、非常に大きな問題であることは事実でございます。  第三回のUNCTADの会議が十三日から行なわれるわけでありますが、この会議の中で日本が当面する大きな問題として三つあります。一つは、リマ憲章にもありますとおり、特恵の問題があります。もう一つは、量においてはフランス、イギリスに次ぐ、GNPの〇・九三%ということを達成しておりますが、DACの平均数字、その中に占める政府ベースの援助は、平均数字は〇・三二%でありますが、日本は〇・二三%である。この平均数字まで政府ベースの援助をふやせという問題が当然出てまいります。もう一つは、一九七〇年代にこの数字を〇・七%まで引き上げようという、三つの問題が一番大きな問題になり、日本がその焦点になるということでございます。  これは、この中で政府ベースの問題というのは、アメリカは軍事援助が中心でありますから、これに付随する政府ベースの援助、それから拡大EC十カ国はかつて植民地がありましたので、そういう関係で政府ベースの援助が大きいので、その限りにおいては日本と台湾、日本と韓国というような状態の数字を比べてこそしかるべきものであります。私は、この間ゲレロ事務総長が参りましたから、この間の説明をしましたら、日本の特性は理解できたと、こういうことでございまして、また日本がかつて賠償を支払ったときには、賠償に付随する政府援助が非常に大きかったことは、もう歴史の上で明らかでございます。そういう特性はあるにしても、現在、主要工業国の中で貿易収支の黒字国は日本だけだといわれるようになっている以上、日本はやはりこれらの困難な問題に対してもこたえていかなければならないということが、UNCTADに出席をする基本的な姿勢でなければならないと、こういうことでございまして、具体的な問題は近く政府部内で意思の統一をはかる予定でございます。  それから国際投資憲章というのは、これはもう必要であることは私も認めますし、日本も賛成でございます。しかし、非常に慎重を要するものであるというのは、投資憲章をつくれば、当然援助を受ける開発途上国側の責任も明確に記載をされるわけでございます。そういう意味で、そういう部分を除いた投資をすべきであるということを憲章に書くのはかまわないのです。年率何%ずつやって国民総生産の幾らを出せということをきめることは簡単でありますが、それをやったら、援助を受ける開発途上国そのものの義務が当然規定されるわけであります。そういう意味で、なかなか南北の間に、主要工業国と開発途上国の間に意見が早急にまとまるという情勢にないことも御承知のとおりだろうと思います。しかし、日本はいずれにしても、こういう前向きのもの、必要なものに対しては、協力体制を惜しまず、円満に、UNCTADの一つの目玉商品ともいうべきものでありますので、そういうものに対しては前向きな姿勢、積極的な姿勢でこれにこたえるということでございます。
  290. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) UNCTADが当面する諸問題につきましては、ただいま通産大臣からお答えしたとおりです。しかし、要するにわが国は、開発途上国に対しまして、わが国の利益のために貢献をするんだと、こういう考え方じゃ私はいかぬと思うのです。やっぱりわが国の世界における使命というか、立場、そういう使命感、これが大事じゃないか。つまり、わが国はもう平和国家である、文化国家である、福祉国家である、わが国は軍事力を持たない、そういう国柄といたしまして、世界に貢献する道はどうかというと、やっぱりおくれた国々に対しまして経済的な協力をする、そうして世界を平和にし、繁栄、発展させる、これが世界におけるわが国の価値ある行き方ではないか、こういうようなたてまえ、これを踏んまえて私はこの問題を処理しなきゃならぬと、こういうふうに考えております。具体的な諸問題につきましては、ただいま通産大臣から申し上げたとおりに考えております。
  291. 松井誠

    ○松井誠君 私が国際投資憲章と言ったのは、UNCTADの場における投資憲章のことではなくて、日本がつくり得る海外投資の原則というものをきめるべきだという意味だったのです。しかし、もう時間がありませんから、最後の質問に移ります。  まだまだ問題はたくさんありますけれども、この際どうしても総理から一札いただいておかなければならぬことがありますので、沖繩の問題を申し上げたいと思います。  だんだん復帰が近づいてまいりますと、むしろ私は、その沖繩とわれわれとの間の断絶、意識のズレ、そういうものの深さというものをしみじみ感ずる。この間、あの折り目正しい喜屋武さんがこのテーブルをどんとたたいて、何でやったかということは総理も御承知でしょう。先月の二十七日に、高橋何とかいう九州の施設局長が、山中総務長官は沖繩を甘やかし過ぎた、これでは施設局がこれから米軍の補償を取り扱うのにたいへんだというとんでもない発言をしておるわけですね。それから最近、鹿山という徳島の元軍人が沖繩で二十何名をスパイとして処刑をした、何が悪いかといってむしろ開き直っておると、そういうことで沖繩とわれわれとのズレというものをいやでも感ずる。私は区々たる役人の責任をここで追及しようとは思いません。しかし、防衛庁長官、一体この政治責任をどうするか、高橋何とかいう局長
  292. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) まことにどうも心ないことを言うたもんだと私も思いまして、叱責をしたわけであります。元来、施設庁からは百人程度の者が参りまして、現在土地の契約等に当たっております。これは沖繩に配備するにつきまして、わざわざ出発の式典をいたしまして、私からも懇懇と実は訓示をいたしました。それは、君たちの顔が直ちに本土の顔に見えるぞと、軽々に挙措ふるまいをしてはならぬということを言うたわけでありまするが、たまたまいま御指摘の九州の施設局長がああいう不遜の言辞を弄した、いかにも残念でなりません。これは施設庁自体の雰囲気をわきまえざるもはなはだしいものだと思っております。そこで直ちに呼びつけまして、三月二十九日、これは防衛施設庁の長官が一応責任を持っておりまするので、厳重に訓戒をいたしました。続いて四月一日付で防衛施設庁長官通達ということで、全庁員に二度と再びこういうことがないようにということを厳重に実は訓辞をすると、通達をあらためて徹底させる、こういうことを私命令をいたしまして、そのような措置をいたしたわけであります。全く沖繩県民の心を知らざるもはなはだしいわけでありまして、いかにも残念に思っております。
  293. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 関連。
  294. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 喜屋武君、簡単に願います。
  295. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、先日の質問のときに、いきなりテーブルをたたいて、佐藤総理もびっくりなさったでありましょうし、また委員の皆さんも、なぜあのようにテーブルをたたくのかという真意について十分御理解ができていないのではないかと、こう思いまして、私ただいまから関連質問の中で二つの問題をここに持ち出しまして、その質問の中から皆さんの御納得を求めたい、こういう気持ちでいま関連質問に立っておる次第であります。  まず第一点は、ただいまの防衛庁長官の御答弁にもありましたあの問題に関連してでございまするが、山中総務長官が甘やかしておる、こういうことに対して、沖繩県民は憤激その極に達しておるということであります。私たちは、山中総務長官が沖繩担当大臣として精魂を傾けて努力しておられることを感謝いたしております。ところが、なおそのことに対して十分満足しておるわけではございません。何となれば、なるほど四十七年度予算は、沖繩関係は二千二百億余となっておりますが、これば例年からしますと、大規模予算とも言えるかもしれません。しかし、沖繩県民の側に立って新生沖繩づくりをしていくという立場からすると、まだまだもの足りない、ほど遠いものがあるわけであります。と申しますのは、あの二千二百億の中に県民が要求しておらない軍事的側面を持つ予算も数多い、多分に含まれておるという、いわば基地優先の予算であるということであります。さらに、この甘やかすなという問題の焦点が補償問題、これに関連して言っておることに対してさらに許せないというわけであります。人権に関する当然の補償要求に対して、甘やかすなということは一体何ごとだという、こういう気持ちから、実はあのような行動に出たわけでございますが、沖繩県民はしいられた犠牲、背負わされた苦悩、この中から復帰を求め、そして新生沖繩づくりへと希望をいだいて今日までやってきたわけでありますが、残念ながら、その格差は、いまだ国民生産も六〇%にすぎません。そうして学校教育施設もまた六〇%という、以下このように、まだ格差歴然たるものがあるわけであります。このような状態の中で甘やかすなとは一体どういう所存か。沖繩県民は甘えようとも思っておりません。また甘えていけないとも思っておりません。また、何を甘やかされたかというその事実を、私たちは具体的にもし甘えておるとするならば示してもらいたい。このようなことでがまんならない、こういうことで、実はこのことについて、まず聞き捨てならないこの高橋暴言に対してきびしく糾弾し、そのあやまれる考え方を正すものでありまするが、ただいまの防衛庁長官のあのような訓辞程度のことでは私は、沖繩県民は納得いたしませんし、沖繩県民を甘やかすなということは、やがては官僚独善の国民を甘やかすなということにつながる危険もあるのではないかという、こういうことも私は案ずるものであります。
  296. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 喜屋武君、御意見は……。要点にしぼって質問してください。
  297. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この点について、いま一応はっきりした、ひとつこの問題に対する総理の御見解を承りたい。これが第一点。
  298. 松永忠二

    松永忠二君 関連して。  実は、質問者のほうから内容を読み上げるのもいいわけですが、時間もないし、ルールは守らなければいけないので、一言だけ私のほうで加えておきます。高橋儀一という福岡防衛施設局長が、記者会見でこういうことを言っているわけです。「山中(総務長官)が沖繩を甘やかしたので補償だけでも大変だ。日米地位協定によって沖繩返還後は米軍人による事件、事故の補償問題を公務中、公務外に分けて施設局がやるのだが、アメリカ人になぐられたから補償しろという人が次々と出て、収拾がつかなくなる。」そのあとはここで読めないようなことを言っているのですよ。飛行機が落ちたときにどうだとかいうようなことまで言っているわけです。そうして最後に、「山中総務長官が〃沖繩を甘やかしている〃といったまでだ。例をあげれば、昨年の沖繩国会で長官は沖繩の立場から発言し、一ドル三六〇円レートに固執したが、このさい沖繩の人は三〇八円で我慢すべきだ」こういう話である。これはもう非常な努力をもって、ここのいわゆるその中でやった事柄であり、政府みずからがなお施策をしたいけれども、いま日本の施政権下にないので、為替管理の関係上、実はこれも現在できないのだ、この次の、次手を打てないということを再々話している。その前段階のことまで三百八円でがまんすべきだと言ったり、甘やかしていたなどということを言われたのでは、総理は心魂を注いで沖繩の返還をやったと言い、所信で表明されているでしょう。その防衛庁の役人がこういうことを言っておいて訓告とは何ですか。一体訓告というのは、そういう処罰の一番最低でしょう。自分の履歴書に載るわけでもないし、戒告ならばまあ履歴書に載らなくても、俸給の中で減俸の処置となるのに、訓告などということをやって一体これでいいと思うのですか。しかも、通達はいたしましたなどというようなことを言われたのでは、これはもう喜屋武さんがたたいて言うのはあたりまえです。私たちは本国会にこの処置を明確にして、防衛庁長官からあらためて処分の問題を明確にひとつこの席で発表してください。そんなことをしないでこのままにやっているような甘やかし方をやっているというところに、文民統制の問題が起こってみたり、いろいろな問題に発展すると私は思うのです。現に悪いことをしたときに明確に処分をしないから、結果的には次々と拡大するんだ。こんなはっきりしたことを言われて、こんな国の施策に正面から敵対的な発言をし、心魂注いでやったと、総理がこの沖繩の返還についてわれわれと違った見解といえども、それをやったことに自信と誇りを持っているというときに、しかも、非常な苦労してレートを、事前にこれを三百六十円レートを確保した、その後の措置もやりたいといってサンクレメンテの会談等でも懇談をしたと、こう言っているのに、こういうばかばかしいことを言われてだまっているわけにいきません。こんな軽い訓告をして、そうして平気でそんなところで言うからいまのような質問が出てくると思うんです。私は今国会の中でその処分をあらためてどういうふうにやったということを、明確にひとつ防衛庁の長官のほうから発表する、そういう機会を持つという約束をしっかりしておいてください。
  299. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは決して甘くございません。直ちに呼び寄せました。そうして厳重な訓戒です。これは文書をもって本人に反省を求めるわけでありまして、六カ月間やはり教育人事局においては、はっきり彼の職歴の上に載るわけであります。したがって、十分訓戒をいたしましたばかりか、まさに九仭の功を一管に欠くといいますか、施設庁一人一人に厳重に、特に防衛庁長官である私はもとより、施設庁の長官等もしばしば言っておるときに一体何ごとかというわけで、厳重にこれは訓戒をいたしたわけであります。しかも、全員に対しても服務規律が厳正に保たれるように四月一日付で長官名で注意を喚起する、こういうことで善後措置をとっておりまするので、本人の身上につきましては、これはひとつ私におまかせを願いたいと思います。
  300. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 松井君並びに喜屋武君にお答えいたします。  私は、沖繩がアメリカの施政権下において、戦後長い間たいへん苦しい状況に置かれた。また戦時中は本土防衛の第一線になった、そういうことでこれは筆舌——しゃべれないほんとうの苦悩を体験された方々でございます。こういう方々を本土にお迎えするという祖国復帰、その実現するその寸前において、今日ただいまのような心なき人人のいることを、これをまことにおわびをせざるを得ない、心から私はおわびをして皆さん方のお許しを得たいと思います。  私は、たびたび申し上げたのでございますが、この沖繩県民の方々の戦中戦後を通じての苦悩を考えたら、われわれ本土の一億国民はあたたかくひとつお迎えしようじゃないかと。ことばは簡単でございますが、その間に心のお互いに通ずるものがあるはずだと、かように思うからでございます。私はそれより以上のことは申しませんが、とにかくあたたかくお迎えする。そうして一年で格差が解消するとは思いませんけれども、できるだけ早く本土と沖繩県との格差をなくするようにこの上とも努力してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。ひとつお許しを得たいと思います。
  301. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 喜屋武君、簡単にやってください、質問だけ。
  302. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これで終わります。  もう一点、どうしても皆さんに申し上げて、またその真意をひとつ御理解願いたい。  それは鹿山事件と申しまして、沖繩戦が済んだのが昭和二十年の六月の二十二日であります。ところが、この事件は戦争が済んだ六月の二十六日、三日後を中心としてその後に起こった事件であります。鹿山正という元日本兵が、下士官が、沖繩の離島の久米島で行なった集団虐殺事件であります。そしてその虐殺をした意図は、これは戦争中、沖繩本島にもありましたが、私も沖繩戦の奇跡的な生き残りの一人であります。敗戦の責任を、沖繩県民のスパイ行為によって敗戦に追い込んだと、このようなことが戦争中あちらこちらで流布されたのであります。で、この鹿山下士官もスパイ行為と命令違反という理由で、この理由で四回にわたって二歳になる赤子を、婦女子、家族、それから警防団関係者、合せて二十名を処刑いたしました。これは、はっきりその本人の口からそれを告白いたしております。そのような非人道的な許されない行為に対して何と言っておるかといいますと、反省どころか、日本軍人として正しいことをやったと胸を張っておるということであります。このようなことに対して、いま現地久米島の村議会あるいは村当局、そしてその遺族たち、さらに沖繩本島における民主団体、そしてその郷土出身の郷友会、こういう形でいま燎原の火のようにこれに対するところの抗議をせよ、あるいは極刑に処せよ、こういったいま世論が広がりつつあるわけであります。一例、三月の三十日に……
  303. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 簡単に願います。質問だけ、簡単に願います。
  304. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 北中城村議会で決議されましたこの決議は、総理大臣、衆参両院議長、それから検事総長あてに出されておる決議でありまするが、全文は省きますが、「鹿山らは戦局が困難きわめると、兵士の本分を忘れて強盗、殺人の徒党に堕落し、銃剣をもって住民から食糧を奪いとり、武力をもって住民を退避ごうから追い出して自己の身の安全をはかった。彼らの行動は国のため忠誠心のためではなく、自分の命を一瞬一時でも長らえたいという一心からである。このような戦争犯罪者は極刑をもってあたるべきである」、こうきびしく鹿山元兵曹長のこの残虐行為を糾弾しておる。これが決議文の中に織り込まれておるのであります。
  305. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 喜屋武君、簡単に願います。
  306. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そこで質問をいたします。  一つ、これからの日本の平和確立のためにも、鹿山のとったこの残虐行為はきびしく糾弾されなければならないと私は思っておりますが、総理以下関係者はこれに対してどう対処されますか。  二つ、戦争責任の所在を明らかにされねばならないと私は思います。そのことに対する御見解を。  三、遺族に対して救済措置をどのように考えておられるか、このことに対するお答えを求めます。  最後に、この予算委員会に対して、遺族及び関係者を呼んで、直接真相を確かめることを私は要求いたします。  以上で私の質問を終わります。
  307. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 久米島事件につきましては、この前の暫定予算の審議にあたって、喜屋武君が卓を叩かれて、私まことに意外に思いました。山中君に、たいへん喜屋武君にしかられたが、どうもしかられるようなことのないように思うがどうだろう、こう申しましたら、実はこういうことがございますと、こう言って山中総務長官から報告を聞いております。したがいまして、喜屋武君がおこられたことも、また非常に痛憤しておられることも、これは私理解できないではございません。しかし、ただいまの問題、この場所でどういうふうにしてくれるかと、かように言われましても、私すぐお答えするわけにはまいりません。しかし、当然のことですが、遺家族の方々に対しまして、私ども心からおわびを申し上げるとともに、私ども遺家族の方々を幾らかでもなぐさめる方法があるならば、さらに検討したいと、このことを申し上げておきたいと思います。  また、委員会に久米島の方を呼ばれる、呼ばれない、これは国会のことですから、皆さんで御相談願いたいと思います。
  308. 松井誠

    ○松井誠君 ただいまの、二人の関連質問者のいろいろな要求、私も高橋何がしの処分を再検討するということも含めて、総理と防衛庁長官に善処をお願いしたいと思います。しかし、私が総理から一札いただきたいのは、そのことでは実はなかったわけで、そうではなくて、なぜこのことを持ち出したかと言えば、総理も御存じのように、去年の沖繩国会で請求権の補償の問題を施設庁がやるのはおかしいじゃないか、最も人権価格の欠落している施設庁がやるのはおかしいじゃないか、やはり、総理府にその権限はまかせるべきだ。対策審議室をつくって大がかりな請求権の補償の調査をやるべきだということを質問をしたわけです。そのときの総理の答弁は必ずしもはっきりしなかった。で、いま総理が、この返ってくる沖繩が実は傷だらけになって返ってくると言う。で、総理が政治生命をかけたといわれるこの沖繩の問題がこういう形で返ってくる。その心情を私はわからぬわけではない。それだけにぜひひとつここでせめて請求権の補償の問題について、やはり、総理府に各省から出向した対策審議室というものをきちっと五月の十五日までにつくる、そのことの言明をいただきたいのです。
  309. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの松井君のお話ですが、私もその後の状態がどうなっているか、山中君といま耳打ちをしながら相談をしたのでございますが、私どもももちろん沖繩の問題については積極的に、基本的にならざるを得ないと、かように思いますが、しかし、いまの補償の問題、これになりますと、沖繩だけ本土と別な機関でやると、これはいかがかと思いますから、私はそういう場合におきまして、この実情においては十分われわれも力をかして、そうして特別な措置を講ずるようにいたしますが、ただいまのところでは施設庁が適当ではないだろうかと、かように思っております。まだ、もちろんこれからもあることでございますから、時日がありますから、その間において適切な処置をとることにいたしたいと、かように思います。
  310. 松井誠

    ○松井誠君 たいへん不満でありますが、時間になりましたからこれで終わります。
  311. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 喜屋武君の発言に対しましては、いずれ理事会において協議いたします。  以上で松井君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十三分散会