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1972-05-26 第68回国会 参議院 本会議 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月二十六日(金曜日)    午前十時八分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第十七号   昭和四十七年五月二十六日    午前十時開議  第一 昭和四十五年度一般会計国庫債務負担行   為総調書(その2)  第二 昭和四十五年度一般会計予備費使用総調   書及び各省庁所管使用調書(その2)(衆   議院送付)  第三 昭和四十五年度特別会計予備費使用総調   書及び各省庁所管使用調書(その2)(衆   議院送付)  第四 昭和四十五年度特別会計予算総則第十条   に基づく経費増額調書及び経費増額調書   (衆議院送付)  第五 昭和四十五年度特別会計予算総則第十一   条に基づく経費増額調書及び各省庁所管   経費増額調書(その2)(衆議院送付)  第六 昭和四十六年度一般会計予備費使用総調   書及び各省庁所管使用調書(その一)(衆   議院送付)  第七 昭和四十六年度特別会計予備費使用総調   書及び各省庁所管使用調書(その一)(衆   議院送付)  第八 昭和四十六年度特別会計予算総則第十一   条に基づく経費増額調書及び各省庁所管   経費増額調書(その一)(衆議院送付)  第九 昭和四十四年度一般会計歳入歳出決算、   昭和四十四年度特別会計歳入歳出決算昭和   四十四年度国税収納金整理資金受払計算書、   昭和四十四年度政府関係機関決算書  第一〇 昭和四十四年度国有財産増減及び現在   額総計算書  第一一 昭和四十四年度国有財産無償貸付状況   総計算書  第一二 日本鉄道建設公団法の一部を改正する   法律案内閣提出衆議院送付)  第一三 特殊鳥類譲渡等規制に関する法律   案(内閣提出衆議院送付)  第一四 国際交流基金法案内閣提出衆議院   送付)  第一五 河川法の一部を改正する法律案内閣   提出衆議院送付)  第一六 日本勤労者住宅協会法の一部を改正す   る法律案衆議院提出)  第一七 日本開発銀行法の一部を改正する法律   案(内閣提出衆議院送付)  第一八 公害等調整委員会設置法案内閣提   出、衆議院送付)  第一九 郵便切手類模造等取締法案内閣提   出、衆議院送付)  第二〇 恩給共済年金受給者処遇改善に関   する請願(二件)  第二一 元満鉄職員恩給共済年金通算等に   関する請願(七件)  第二二 従軍日赤看護婦に対する恩給法適用   に関する請願(二件)  第二三 旧財団法人満州農産物検査所恩給法   並びに国家公務員共済組合法上の外国特殊法   人として指定することに関する請願(三件)  第二四 岐阜県益田郡馬瀬村の寒冷地手当改定   に関する請願  第二五 兵庫県生野町の寒冷地手当改定に関す   る請願(五件)  第二六 兵庫県山東町の寒冷地手当改定に関す   る請願(四件)  第二七 兵庫県和田山町の寒冷地手当改定に関   する請願(五件)  第二八 兵庫県朝来町の寒冷地手当改定に関す   る請願(五件)  第二九 兵庫県山崎町の寒冷地手当改定に関す   る請願(二件)  第三〇 兵庫県村岡町及び美方町の寒冷地手当   改定に関する請願  第三一 兵庫県豊岡市の寒冷地手当改定に関す   る請願  第三二 兵庫県佐用町の寒冷地手当改定に関す   る請願  第三三 兵庫県加美町の寒冷地手当改定に関す   る請願  第三四 兵庫県神崎町の寒冷地手当改定に関す   る請願  第三五 兵庫県八千代町の寒冷地手当改定に関   する請願  第三六 兵庫県中町の寒冷地手当改定に関する   請願  第三七 新潟県の寒冷地手当改定に関する請願   (十三件)  第三八 長野県の寒冷地手当改定に関する請願   (三件)  第三九 石川県七尾市、羽咋市、鹿島郡及び羽   咋郡の寒冷地手当改定に関する請願(三件)  第四〇 長野県小海町等の寒冷地手当改定に関   する請願  第四一 岐阜県上石津町の寒冷地手当改定に関   する請願  第四二 岐阜県美山町の寒冷地手当改定に関す   る請願  第四三 岐阜県武儀郡板取村の寒冷地手当改定   に関する請願  第四四 岐阜県八幡町の寒冷地手当改定に関す   る請願  第四五 岐阜県山岡町の寒冷地手当改定に関す   る請願  第四六 岐阜県金山町の寒冷地手当改定に関す   る請願  第四七 岐阜県上矢作町の寒冷地手当改定に関   する請願  第四八 岐阜県明智町の寒冷地手当改定に関す   る請願  第四九 岐阜県萩原町の寒冷地手当改定に関す   る請願  第五〇 岐阜県白鳥町の寒冷地手当改定に関す   る請願  第五一 岐阜郡上郡高鷲村の寒冷地手当改定   に関する請願  第五二 岐阜郡上郡和良村の寒冷地手当改定   に関する請願  第五三 岐阜県恵那郡串原村の寒冷地手当改定   に関する請願  第五四 岐阜郡上郡大和村の寒冷地手当改定   に関する請願  第五五 軍人恩給等改善に関する請願(二   件)  第五六 山梨県の寒冷地手当改定に関する請願  第五七 甲府市御岳町及び黒平町の寒冷地手当   改定に関する請願  第五八 山梨県富沢町の寒冷地手当改定に関す   る請願  第五九 富山県の寒冷地手当改定に関する請願   (四件)  第六〇 両眼失明重度戦傷病者に対する恩給等   改善に関する請願(二件)  第六一 国家公務員たる看護婦等給与改善に   関する請願(三十九件)  第六二 米軍北富士演習場賃貸借契約終了に   関する請願  第六三 元満鉄社員に対し恩給法適用に関す   る請願  第六四 郵便貯金預金者貸付制度法制化に   関する請願  第六五 国産材振興対策等に関する請願(四   件)  第六六 山村開発次期対策早期実現に関する   請願(二件)  第六七 農林年金農林漁業団体職員共済組   合)制度改善に関する請願(三件)  第六八 国内林業抜本的振興対策に関する請   願  第六九 さけ、ますはえなわ漁業の転換に関す   る請願  第七〇 米の検査規格五等米の存続に関する請   願  第七一 国際海洋法制定促進に関する請願  第七二 家畜共済制度改正に関する請願  第七三 農林年金制度改善に関する請願(六   件)  第七四 中小漁業経営改善資金対象範囲の拡大   に関する請願  第七五 特別被害米(黒しよく米)の発生防止   対策等に関する請願(十件)  第七六 外国産生糸の輸入規制に関する請願   (二件)  第七七 加工原料乳保証価格引上げに関する   請願(三件)  第七八 「林業振興に関する決議」の早期実施   に関する請願(三件)  第七九 てん菜の最低生産者価格引上げに関す   る請願(二件)  第八〇 農政の基本方向確立に関する請願  第八一 林業災害補償法(仮称)の制定促進に   関する請願  第八二 森林法改正促進に関する請願  第八三 ソ連漁船団操業水域調整及び被害   補償等措置に関する請願  第八四 北上山系総合開発事業実施促進のた   めの特別法制定に関する請願  第八五 森林組合(単独)法及び森林災害補償   法の制定に関する請願  第八六 昭和四十七年産生産者米価値上げに関   する請願     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を  改正する法律案趣旨説明)  以下 議事日程のとおり      —————・—————
  2. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより会議を開きます。  この際、日程に追加して、  健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案について、提出者趣旨説明を求めたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。斎藤厚生大臣。    〔国務大臣斎藤昇登壇拍手
  4. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  医療保険制度抜本改正につきましては、つとにその必要性が指摘されてきたところでありまして、政府といたしましては、先般そのための所要の法案提出いたしたところでございまして、昭和四十八年度からこれが実施をはかりたいと考えておるところでございます。  一方、かねてより問題とされてまいりました政府管掌健康保険財政状況は、昨年提案いたしました改正法案が成立を見なかったこともありまして、依然として悪化を続け、昭和四十六年度末の借り入れ金は二千億円をこえる見通しであり、さらに、本年二月から実施されました二二・七%の医療費の引き上げ影響等を考慮いたしますと、このまま放置する限り、昭和四十七年度には約千三百億円の単年度収支不足が見込まれるところであります。この結果、昭和四十七年度中に、年間給付費の約二分の一にも及ぶ三千数百億円の巨額の借り入れ金をかかえるという破局的状況を招き、その借り入れにも限度があるところから、医療費支払い遅延等の不測の事態さえも憂慮されるところであります。  わが国被用者保険の中核であります政府管掌健康保険財政がこのように安定を欠いたままでは、抜本改正実現にも重大な支障を来たすところから、昭和四十七年度においては、何よりもまずこのような事態解決をはかった上で、昭和四十八年度からの抜本改正への円滑な移行をはかりたいと考えております。  政府といたしましては、このような観点に立って、次に述べますような内容健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案提出いたした次第であります。  以下その内容の概略を御説明申し上げます。  第一は、保険料及び傷病手当金等基礎となる標準報酬の区分について、最近の賃金実態に即して、その上限を二十万円に、下限を一万二千円に改めるものであります。  第二は、政府管掌健康保険保険料率を千分の七十から千分の七十三に改めるものであります。  第三は、当面の措置として、現在保険料の算定の基礎とされていない賞与等について、支給のつどその千分の十を労使折半により特別保険料として徴収するものであります。これにつきましては、衆議院における修正により、報酬月額が五万円未満の被保険者からは徴収しないこととされております。  なお、健康保険組合につきましては、その自主性を尊重して、特別保険料徴収は任意といたしております。  第四は、政府管掌健康保険に対するこれまでの定額国庫補助を根本的に改め、定率制国庫補助を導入するものであります。その率につきましては、原案では百分の五といたしたのでありますが、衆議院において、昭和四十七年度は百分の七、昭和四十八年度以降は百分の十とする旨の修正が行なわれたところであります。  第五は、政府管掌健康保険保険料率についてはこれを弾力的に調整できることとし、これにあわせて国庫補助調整規定も設けていたのでありますが、衆議院における修正により、これらの規定は削除されることとなり、また、この保険料率弾力調整規定が削除されたことに対応して、昭和四十七年度末における累積損失を補てんするための一般会計からの繰り入れ権限新規借り入れ限定等のための厚生保険特別会計法改正は行なわないこととされたところであります。  なお、この法律実施時期につきましては、衆議院における修正により、昭和四十七年七月一日からとされております。  以上が、健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案趣旨でございます。  何とぞ御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いを申し上げます。(拍手
  5. 河野謙三

    議長河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。須原昭二君。    〔須原昭二登壇拍手
  6. 須原昭二

    須原昭二君 私は、日本社会党を代表し、ただいま提案説明のありました健康保険法等の一部を改正する法律案について、佐藤総理並びに関係大臣お尋ねをいたすものであります。  今法案は、いわゆる累積赤字を処理しようとする単なる財政対策にすぎないものであります。  言うに及ばず、医療保険制度は、保険の原理を軸とした公共的な機構であって、給付保険料のバランスをはかるという保険財政収支の問題がまず表面に出てきますが、しかし、その根底には、国民医療需要実態を考慮して、医療とは何か、保険とは何か、保険保障との関係はいかにあるべきか、という基本的な問題点が常に追求されなければならないのであります。しかるに、政府は、今回が初めてというならばいざ知らず、ここ十年間、幾たびか帳じり合わせという算術上の問題として受けとめ、同時に解決すべき懸案の医療保険制度抜本改正などは、常にお茶をにごし、手をつけなかったのはいかなる理由によるものか、ばく大な赤字を累積させてきた政府責任をどのように感じておられるのか、まず冒頭にお尋ねをいたしたいと思うのであります。(拍手)  今回、その反省のないままに、政府は、あつかましくも、再び累積した赤字をこの際きれいに清算した上で、抜本改正など医療制度の改革は、四十八年度から順次軌道に乗せていくと言われておりますが、総理、あなたが内閣を組織されて以来、ときあるごとに、医療保険抜本改正医療保障制度の充実を国民の前に公約されてきたことは、よもやお忘れにならないことでありましょう。残念なことに、事、医療についての七年半にわたる佐藤内閣の考課表は、全く点のつけようのない白紙の答案であったと言っても、決して過言ではないと思うのであります。  しかも、総理の公約は、もはやあなたの在任中にはとうてい実現不可能な段階にあります。すなわち、あなたが四十八年度まで総理の座にあるということは、いまや一億国民だれ一人として考えていないのであります。総理政治責任はことのほか重大であります。直ちに責任をとって退陣を明らかにされることが、憲政の常道と言わざるを得ないのであります。この際、今法案をいさぎよく撤回され、新政権のもと、当然、同一線上で討議すべき健保関連法案をそろえて再提案されることが、最も責任ある行政府の態度であると思うのでありますが、総理の所信をあえてお尋ねをいたすものであります。(拍手)  第二には、赤字実態についてであります。  去る四十二年八月、特例法を強行採決された当時、政府は、なお単年度において三百二十億の赤字が出ると言いました。しかし、決算の結果においては、わずかに五十八億であります。四十三年度では、当初百四億の赤字見込みに対して、実際には、これまたわずかに二十四億円、四十四年度は、当初九十一億円に対して五十六億円、いずれも、当初の赤字見込みに対してきわめて激減をいたしておるのであります。このたび、政府は、四十七年度末には、赤字は三千億以上に達すると予告をいたしておりますが、これら過去の実績から見ると、今回の政府赤字見込み額は、過大見積もりであり、過大宣伝であると言わざるを得ないのでありますが、その疑念をはらす明確なる御答弁をいただきたいと思うのであります。  また、四十六年度末には、二千百九十四億円の赤字になると言っておられますが、その中には、固定資産部分、あるいは保険料の未徴収の分、計四百二十八億円が入っておるのであります。これは当然赤字に算入すべきものではないのでありまして、これこそごまかしであると言わざるを得ないのであります。いかがでありましょうか。  さらに、累積赤字の大部分は、国庫からの借り入れ金利子の分が大半であります。たとえば、四十三年度の赤字二十四億円に対して、累積赤字利子六十四億円、四十四年度の赤字五十六億円に対して、累積赤字利子は七十六億円と、利子相当部分が実際の累積赤字の大半を示しておるというこの事実であります。政府は、二千億円のこの赤字をたな上げをする、これは画期的なことであると、従来、自画自賛されてきましたが、管理、運営の責任政府にある以上、政府責任で処理をすることは当然のことであると言わなければならないのであります。しかも、いま厚生大臣からお話がございましたように、衆議院において国庫負担が一〇%に修正されるや、二千億円の累積赤字のたな上げは削除するということであります。全く、私は、これはすりかえではないかと言わざるを得ないのでありますが、いかがでありましょう。  第三は、国の補助国民負担についてであります。  現在、国保に対する国の補助率は、総医療費の四五%であります。これを健保のように給付費に対する補助率に換算をすると、一〇%に相当するのであります。したがって、健保国保並み補助を出すとすれば、健保には二分の一の事業者負担がないのでありまするから、これを加算すると、実に一二%の国庫負担が必要となってくるのであります。しかるに、政府の原案はわずかに五%、衆議院修正が七%ないし一〇%といたしましても、なお国保並みに達していないことはしかと銘記をしていただかなければならないのであります。とりわけ、老齢者やあるいは低所得者の多い健保の構成の実態を考えるときに、わが党が主張いたしてまいりました二〇%まで上げていくという努力は、政府として当然の責務であると言わなければならないのであります。にもかかわらず、国の負担は、この四年間据え置かれたままであります。その間、国民負担は、それに比して五〇%もふえておるのであります。その上、今回の大幅な保険料値上げで、勤労者がせっかくかちえたことしのベースアップの分は、保険料値上げによって完全に帳消しにされたと言っても過言ではないと思うのであります。さらに、ボーナス分まで保険料をかけるというが、ボーナスというものは、企業の期末利潤と違っておるのであります。勤労者にとっては、いわば生活必需投資の性格を持っておるということを忘れてはなりません。これに特別保険料をかけるということは、全く言語道断と言わざるを得ないのであります。明らかに総報酬制への第一歩として、私たちは断じて認めるわけにはまいりません。これこそ、「保険あって保障なし」ということばを完全に裏づけたものであると言わざるを得ないのであります。  はたして政府は、あくまで個人の責任の原理、相互扶助の原則をどこまでも固守されていく方針なのか、この際明らかにされたいと思うと同時に、特に、国民には、皆保険として保険加入を強制しておきながら、医療を受けられないところでも、現に過酷なる、過大なる保険料が集められておるという事実であります。すなわち、医師に見捨てられたところのいわゆる無医地区が全国に三千近くあり、その後さらに増加の一途をたどっております。そこに住む約百万の国民は、常に生命の危機におびえておるという実態御存じでありましょう。まさに「保険あって医療なし」、これほど割り高保険料がどこの世界にあるでありましょう。  さきに政府は、「福祉なくして成長なし」、「人間尊重の政治の実現」という名言を吐かれました。これがもし真意とするならば、国の施策の中で、国民の健康の確保を最優先に取り上げ、そのための財源は優先的に配分するということが、まず確認されなければならない必須の条件であると言わなければならないと思うのであります。  国民の命、国民の健康を守るべき国の責任と、その姿勢について、総理並びに大蔵大臣厚生大臣お尋ねいたしたいと思うのであります。  第四は、支出合理化についてであります。  いま、わが国医療は、多くの患者を短時間でみる、いわゆる三分診療によって、医療の質は医療の量にかわりつつあります。量が多いだけに、診療報酬支払基金チェックは、ほとんど無審査にひとしく、しかも、技術料が安いという医師免罪感もあって、濃厚医療過剰投薬による点数かせぎが横行している事実であります。現に、政管健保における本人一件当たりの平均点数が、家族のそれに比べて約一・六倍であります。約二百点以上の開きがあるという事実を御存じでしょう。このことは、本人が十割給付だから、点数を上げるために必要以上の検査、必要以上の注射、必要以上の投薬をしても、本人のふところは痛まないとする濃厚医療のあらわれと言わなければなりません。いかがでしょう。特に、薬価基準実勢価格とのはなはだしい差益、薬を使えば使うほどもうかるという薬価点数システム、さらに、アリナミンの例にあるごとく、アリナミン請求額がその生産額を上回っているというこの実態、この代替請求実態など……。英国では一三%といわれる薬代が、わが国では世界に類例のない四四・八%の高率、保険医療費の約半分近くが薬代というのは、だれが見ても薬の使い過ぎであると言わなければならないと思うのであります。かかる薬の大量投与が、一方では薬の副作用を呼び、現にキノホルム、サリドマイド、コラルジルに見られるような医原性疾患を発生させ、病気をなおすべき治療が、かえって新しい病気を生み出すという矛盾をいまさらけ出しているのであります。一刻も早く、無限に営利を追求できる現物給付、出来高払い制度を改め、医師など医療担当者技術を適正に再評価するとともに、技術料中心診療報酬体系調剤報酬体系の二本立てのもと、チェック技術としての医薬分業を強力に促進し、少なくとも、薬の多少で利益を得るような薬価点数システムを廃止し、独占薬価を抑制するなど、収入面をはかる前に、まず支出面の改革が先決の問題であると言わなければならないと思うのであります。  なお、今日の治療偏重医療予防先行医療に置きかえ、自然に病をなおす、すなわち自然治癒力の発揚、健康管理の重視という施策が、医療経済の上から見ても、最も支出合理化する道であると思うのでありまするが、はたして厚生大臣は、これらの課題についてどのように対処されようとされておりますか、お尋ねをいたしたいと思うのであります。  最後に、医療保険限界と、その守備範囲についてであります。  いま、国民の多くが一番心配していることは、百歩譲ってこの法案を認めても、赤字の解消は、今回もまた一時的であって、長期の安定策でないという現実は事実であります。そもそも、医療保険というものは、失業保険年金保険と違って、保険サイドに乗らない本質を見のがしてはならないと思うのであります。すなわち、医療保険拠出サイドでは、保険料納付期間負担額のいかんによって受給資格を押えることはできないものであります。一方、給付サイドでは、病気の発生を認定するにあたって客観性が乏しく、被保険者の主観的な判断で診療を受け、給付が始まり、医療行為が開始されなければ判定ができないものであります。特に、医療保険は、病気を完全になおすという医療完遂性という性格を受けて、受給期間を制限すべきでないし、給付内容についても、患者の病状に応じて保険関係上、第三者である医師が主体的に判断して決定するものであるからであります。したがって、医療保険といっても、厳然として保険としての限界が存在するわけでありまして、これを忘れて、ただ保険だから収支の均衡、収支相等の原則に立って保険財政を維持しようとしても、事の解決にはなり得ないということなのであります。この点、政府は、医療保険の、保険としての限界をどのように考えておられるのか、お尋ねいたしたいと存じます。  さらに、現在の現物給付の場合、あまり保険経済収支の面ばかりを強調しますと、往々にして、制限診療におちいりやすく、もし制限診療して給付内容を落とすと、それまでせっかく給付した経済効果をゼロにしてしまう。ここに医療特殊性があるのであります。そして保険のワクに閉じ込めないときに、初めてわれわれが願望するところの医療保障というものが必要となってくるのであります。しかるに政府は、医療保障を忘れ、ただ保険財政の維持のみに狂奔しているところに、政府医療政策の根本的な立ちおくれを痛感するものであります。保険経済を守る道は、現に西欧諸国が実施しておるように、医療保険守備範囲を限定することであります。西欧諸国では、比較的経費のかからない一般医の段階の医療を、保険が受け持つ範囲として、費用のかさむ病院医療やあるいは不採算医療保険のベースに乗らない難病、奇病などはその対象外として、しかも、病院医療の固有の機能を考えて、公費負担、無償とされているのであります。このように、わが国でも、医療保険守備範囲に限度を設け、限度以上のものは公費医療にするという努力、言いかえるならば、医療保険から医療保障へといった積極的な努力がどうしても必要な段階にあるのであります。しかるに、政府は、保険であって保険になり得ない制度をそのままにし、かつ変わりつつある国民の疾病構造の変化に目をつぶり、病気になるのは個人の責任だ、赤字になるのは医者にかかり過ぎるのだ、として、その責任国民に転嫁し、国民負担赤字を埋めようとする考え方は、まさに保障を忘れた無責任政府の態度として、断じて許すわけにはまいらないのであります。はたして社会保障の充実に全力をあげると言った政府のスローガンは、どこへ消えてしまったのでありましょう。はたして人間尊重の政治と言った証左は、今日、どこにあるでありましょう。この際、医療保険のあるべき姿、医療保障への将来について、政府はどのような理念と構想を持ち、どのような段取りで推進されようとしておるのか。総理厚生大臣、この際は、抽象論でなく、はっきりと御明示をいただきたいと思うのであります。  総理、佐藤政権の寿命はもはや時間の問題です。間もなく終わりを告げようとしております。特に医療保険の問題は、あなたが総理に就任当初からの課題です。いま、その根本的な解決をもなされないまま、きょう、この日を迎えておるのであります。有言不実行、しかも、多くの国民の声に耳を傾けず、おそるべき医療の荒廃をそのままにし、このたびのような悪法を最後に、国民に混乱と不安を残したまま政権の座を去られるあなたのうしろ姿を見るときに、何といってもむなしい限りと言わざるを得ないのであります。  総理、「立つ鳥跡を濁さず」、このことばは、いま、あなたのためにあると言っても過言ではないと思うのであります。この国会が、佐藤内閣にとって残された最後の、ただ一つの機会です。重ねて佐藤総理の虚心な態度と勇気ある決意を心から期待いたしながら、私の質問を終わる次第であります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  7. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 須原君にお答えをいたします。  須原君からは、御意見をまじえてきわめて広範な問題についてお尋ねがありましたが、私からは、政府の基本的な考え方についてお答えをいたします。足りない点は厚生大臣及び大蔵大臣から補足をいたしますので、前もって御了承おき願いたいと思います。  ところで、まず、須原君も御指摘のように、ただいま趣旨説明を行なった健康保険法改正は、政府管掌健康保険財政基盤の確立をはかろうとするものであります。須原君は、これだけを切り離してやるのはけしからぬと言われますが、政府管掌健康保険財政状況は極度に悪化しております。このままこれを放置すれば制度崩壊の危険すらあるので、医療保険抜本改正実現するためにも、その中軸をなす政管健保の健全化をはかることが、どうしても必要であります。この対策は私の責任でもありますので、私の在任中にぜひともその方向をきめたいと、かように思いますので、どうか、このような事情を十分御理解されまして、本法案の成立に御協力のほどお願いをいたします。  次に、須原君から、この法案は、健康保険制度抜本改正及び医療制度改革とともに審議すべきだとの御意見が述べられましたが、私も、抜本改正及び医療基本法案の国会提出がおくれたことは、まことに遺憾に思っております。また、おわびもいたします。  ただ、須原君も御承知のように、これらはいずれも国民生活に密接な関連を有し、また、その取り扱うべき内容が複雑多岐にわたっていたり、利害関係が錯綜していたりするため、国民的合意を得られるような成案を得るのに不本意ながら時日を要したものであります。抜本改正につきましては、ようやく成案を得て、先日国会に提出いたしましたし、また、医療基本法案につきましても、近く提出する予定でございますので、十分御審議を願いたいと思います。  最後に、医療制度の将来について、国民保険が達成された今日、医療保険を中核として国民医療の確保をはかってまいるべきものと考えます。私は、今回の老人医療対策のように、社会的な要請に即応しながら、公費負担医療をこれに適切に組み合わせていくことにより、国民に対する医療保険をより充実していくことが望ましいと考えております。  以上私からお答えをいたしました。その他は担当大臣に答えさせます。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  8. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 累積赤字二千百九十四億円のうちに、赤字として算入すべきでないものが含まれているというお話でございましたが、それはそのとおりでございます。といいますのは、政管健保でいう累積赤字とは、年度末における累積の収支不足をさしておるものでありまして、この収支の不足は借り入れ金によってまかなわれております。したがって、四十七年度末におけるこの借り入れ金は、もし政府原案どおり財政対策実施されるものとしますというと、二千百九十四億円に達するという見込みでございますが、この中には、おっしゃいましたような未収入金とか、あるいは福祉施設としての病院等の固定資産というものが入っておりますので、繰り越し損失、純然たる繰り越し損失というものに見合う借り入れ金は千七百六十六億円という数字になろうと思います。  そこで、三千億円のこの赤字見込みは非常に誇大な宣伝ではないかというお尋ねでございましたが、これは本年の二月に医療費の引き上げがあったことでもございますし、いまのまま何らの対策もしないでおいた場合には、本年、昭和四十七年度には単年度赤字として千三百億円が出てくると、これははっきりした見通しでございます。そうしますというと、この四十七年度末においては、借り入れ金の総額は三千数百億円にのぼるということでございますので、これは決して過大な見積もりであるということは言えないと思います。  それから、この健保会計の赤字は、当然これは国の責任で処理すべきものであるというお話でございましたが、やはり保険制度のたてまえ上は、本来は保険会計の自主的努力によって補てんすべきものであって、国庫負担することについては、これは国民の税金でまかなわれることでもございますし、必要と認められる場合に限定されるべきであって、累積損失の補てんを全部当然国が負担するものであるということは適当ではないと考えます。(「利子を入れよと言ったんだ」と呼ぶ者あり)利子は、この赤字について伴ったものでございますので、結局、この赤字責任が全部国の責任というのではないのでございますから、したがって、この利子の全額補てんが国の責任ということは言えないだろうと思います。  これを今度はたな上げしてしまったことは云々というお話でございましたが、最初、政府は、一定の国費の補助を行なう、それによって累積赤字はもう保険負担からはずして別個に一般会計で見ると、そうしてあとは、長期的に収支が償うように弾力条項を置くというような構想でいきましたところが、今回衆議院で大きく修正されました。そうしますというと、これは長期的な対策としての今回の措置を、短期的対策に置きかえられたということで、それに対応して、したがって、この弾力条項が取れると同時に、たな上げに対する国の一般会計の補てんという条項も取れたということでございます。そうして国の補助率が増したということでございますので、会計は相当収入が増額になると思います。したがって、それとの見合い、いろいろなことから、残されたたな上げ債務の償還については、また別途にあらためて再検討しなければならなくなったものというふうに私は考えております。決してすりかえたものではございません。  それから国庫負担が少ないという問題で、一〇%の補助金にからんだ御質問がございましたが、御承知のとおり、社会保障給付に対して国の負担がどうあるべきかということについては、いろいろいままで論議されており、社会保障制度審議会においても議論をいたしておるところでございますが、いままでの結論といたしましては、一般的に社会保険に対する国費の負担は、生活保護のような救貧的な措置、それから防貧的な措置としての社会福祉施策、それから社会防衛の見地からする結核、精神病に対するような公費負担医療費、こういうようなものについては、優先的に国費を支出すると、国費で負担すると、そうでないものについては優先度が低くなって、これは社会保険制度で運営するということに大体なっておりますので、したがって、いま御質問がございましたが、守備範囲をはっきりしたらよかろうという意見は、私も賛成でございます。公費負担の項目をはっきりきめると、そうすれば、これはもう国費の負担になって、保険会計からはずされるということになりますので、はずされたあとのこの保険給付につきましては、これはやはり保険料の範囲内においてその給付をするという、本来の保険制度の運営をやって赤字を防ぐという運営ができるなら、これは理想的でございますので、やはり国が持つべきものというものを保険制度の中でごちゃごちゃにやるんじゃなくて、守備範囲を確定するというようなことが、私は、将来に対する改善の一つの大きいこれは眼目になる問題ではないかというふうに考えます。(拍手)    〔国務大臣斉藤君登壇拍手
  9. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 国民医療保険との関係につきましては、総理からもお答えがございましたとおりでございまして、医療保険国民医療に対処をする制度として、その一部分と申しますか、大部分と申しますか、一部であるということは御意見のとおりでございます。したがって、保険の分野でないところにおいて、国も医療の面で施策を充実させなければならない点が多々あるわけでございます。まず、医療の供給体制もそうでありまするし、また、これは最後におっしゃいましたが、医療保険守備範囲と、その守備範囲外に出るものは、いわゆる医療の公費負担——保険の中における公費負担ということもさることながら、保険以外で、たとえば、社会予防的な疾病あるいは社会の諸事情から起こってくる疾病、公害あるいは、その他これに類するような、個人的な事情によって起こってくる疾病でない、社会の構造の変化その他によって起こってくる疾病というようなものは、これは公費負担でまいらなければなりませんし、また、低所得層の人たちに対しては、公費の医療扶助も充実してまいらなければなりませんし、なすべき施策は、保険以外の点においても非常にたくさん分野があるわけであります。政府といたしましては、いままでも、ニードに応じてこれの拡充をはかってまいりましたが、今後、さらに一そうこれを強化してまいらなければならない、かように考えます。  財政面に対する事柄につきましては、大蔵大臣からお答えのありましたとおりであります。その中で、一つ、単年度赤字の予想は、いつも決算よりも少ないではないかという御意見がございました。これは、当初の予想よりも赤字の少なかった年もありまするし、また、予想外に赤字を出した年もあるわけであります。これは御承知のように、保険料基礎になる給与の上昇の見込みが実際と狂ったという場合、また、総医療費が、国民の受診が予想よりも高まったというような年、これはその年の、あるいは流行性感冒がはやったとか、いろいろな事柄も関係するわけでございますが、過去の実績からその年の状況を推定いたして、間違いのない予算の編成をいたすのでありますが、事実と若干食い違うところができますので、赤字がふえたり、あるいは減ったりするのは、これはやむを得ないと御了承をいただきたいと存じます。  特別保険料として賞与の中から保険料を取るのはどういう趣旨であるか、これには反対であるという御趣旨でございましたが、これはもともと保険料基礎になります標準報酬を定額な給料だけにするか、あるいはまた、総報酬制をとるのが適当であるかという議論があるわけであります。他の社会保険におきましては、総報酬制をとっている保険もあるわけであります。ただ、医療保険におきましては、いままで定額の給与だけを基礎にしておったわけでありますが、このたび千分の三を上げます場合に、定額報酬だけによっておりますると、低所得層の方々にはむしろ実際としては重いという感じを持つ。したがって、総報酬制を加味したような考え方で、賞与から一部保険料をいただくというようにするほうが、低所得層の方には軽くて、そして給与の高い方にはそれ相応に負担をしてもらうという趣旨から適当ではなかろうかと、かように思いまして、当分の間この制度実施をいたしてみたい。そして、保険財政が、収支がバランスをとれるようになれば、これをもとの形にしたい。しかしながら、総報酬制のほうがいいというような意見が多くなってまいれば、そういうようにも将来改正を考えてみてはどうであろうかと考えますが、今日の段階におきましては、総報酬制は暫定的にすべきである。賞与から保険料徴収するのは、これはできるだけすみやかに、短期間の問題にしてもらいたいという御意見も、審議の途中で衆議院の段階ではございました。そういう御趣旨を体して実施をいたしますという答弁をいたしておる次第でございます。  また、無医地区等を例にあげられまして、同一の保険料を、医療の供給体制の整っているところと整っていないところ、これを同一に取るのは不公平ではないかという御意見でございます。もちろん、無医地区をいつまでも存在せしめることは、医療の供給体制の面からまことにぐあいが悪いわけでありまして、これを解消するように、今後もさらにあらゆる手段を尽くしまして努力をいたしますと同時に、今日、無医地区といわれておりますところは主としていわゆる僻陬の地域でありまして、ここらの被保険者はほとんど国民健康保険に入っておられるわけでありまして、健保の被保険者は比較的少ないと、かように考えておるわけであります。したがいまして、健保の被保険者の中におきましては、そうおっしゃるほどの不均衡はない。国保間の、市町村間の健康保険料、それから供給体制、このアンバランスにつきましては、これが調整をする方途を考えてみたいと、抜本改正の中にその規定も入れておるわけでございます。  医療支出面についての考慮が足りないと、かように御指摘がございました。支出面につきましても、いままでずいぶんと過当な請求、あるいは乱診乱療といわれるような事柄の是正につきましては配意をいたしてまいったわけでございますが、今後もさらに一そう努力をしてまいりたいと存じます。  薬の大量投与の問題も、ただいまお答えをいたしました中において御了解をいただきたいと存じます。  医薬分業は、これはぜひ早急に実施をいたしたいと、かように考えまして、抜本改正の中に地域と期日を指定して、そうしてこの医薬分業を促進いたしたいという規定を入れておりますが、規定のみならず、実際そういう方向で少なくともここ三、四年ぐらいの間には、都市における医薬の分業は必ず実現をいたしたい、かように考えております。  なお、薬価の適正につきましては、御承知のように、毎年、薬価の実勢調査をいたしまして、そしてその実勢に応じて薬価基準を下げているわけであります。今後も、現実の薬価の実勢を把握いたしまして、そしてその実勢に沿うように薬価基準を引き下げてまいる努力をいたしてまいりたいと、かように考えます。  医療は、一体、保険に乗り得るのか、保険としての限界があるのでないかというお尋ねがございましたが、先ほど申し上げるとおりでありまして、医療保険のみで国民医療がまかなえるものではございませんが、しかし、その医療費の調達の面といたしまして、今日行なっております趣旨における医療保険は、ますます充実さしてまいる必要がある、かように考えております。  医療保障と公費負担の点につきましても、先ほどお答えを申し上げましたとおりでございます。(拍手)     —————————————
  10. 河野謙三

    議長河野謙三君) 柏原ヤス君。    〔柏原ヤス君登壇拍手
  11. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 私は、公明党を代表して、ただいま趣旨説明のありました二法案につきまして、総理並びに関係大臣に質問いたします。  昨年、日本医師会による保険医総辞退という異常事態に遭遇し、国民は、十年余りにわたる政府医療保険制度に対する無為無策に、心底から憤りを感じたのであります。事態収拾に際し、政府は、医療保険制度抜本改正を今国会に提出することを約束したのでありますが、政府は、その約束を破ったばかりではなく、先国会で廃案になった法案とほとんど同じ法案である、政管健保赤字解消をはかるための単なる財政対策法案をまず提出したのであります。この政管健保赤字問題は、今回初めて出てきた課題ではなく、五年前の四十二年、さらに三年前の四十四年と、再三にわたり論議の的となり、そのたびごとに、政府は、国民や野党の大反対の中で強行採決によって成立させ、一時しのぎをやってきたものであります。したがって、今回また法案提出されたということは、医療制度抜本改正を公約した政府のたび重なる国民への裏切り行為であり、断じて許すべからざる行為であります。しかも、本案を抜本改正案や基本法案と切り離して先行させたということは、どうしても納得できません。  総理は、本年三月の衆議院会議において、「この健康保険法改正案は、医療保険抜本改正のための法案及び医療基本法案と一体をなすものであり、これら一連の法律によって皆保険の名に値する制度改善をはかる」と述べております。ところが、実際はどうですか。国民負担による赤字解消策である本案だけは、何としても成立させたいと、会期最終日である本日、本院に上程し、会期延長をはかろうとまでしているではありませんか。  一方、総理の言うところの、一体をなすものであるはずの抜本改正案は、つい先日の五月十六日に提出され、しかも、中身は、抜本とは名ばかりの改正案であり、政府の考えている抜本とは、本が抜けているということをさすのではないかとさえ言われているものであります。いわんや、基本法案は、ついにいまもって提出されていない実情なのであります。この医療基本法は、本案審議の前提要件であります。医療とは何か、医療保障とはどういうことか、国民保険下における医療保険はどうあらねばならないか、等々を明らかにしてこそ、国民の久しく待望している医療、だれでも、どこでも安心して受けられる医療実現が前進するのではないでしょうか。この基本的な問題を策定せずに、政管健保財政悪化を口実に、当面の赤字解消策のみを先行させることは本末転倒であります。  今国会冒頭の施政方針演説で、総理は、「福祉社会建設への政治指導の機能を高めて、医療保険問題の解決につとめ、国民生活に安定した環境をつくりたい」と述べられましたが、その所信に反し、この改正案を優先したお考えを明らかにしていただきたいのであります。  次に、政管健保赤字解消策についてであります。  四十二年の第一次健保特例法、四十四年の第二次特例法が、その事実を明らかに証明しておりますが、本法案もまた、国民負担増によって赤字財政を糊塗しようとしているのであります。すなわち、毎月の給料から引かれる保険料率を、現行の千分の七十から千分の七十三に引き上げ、新たに特別保険料を創設してボーナスの一%を吸い上げ、また、月収の基準を引き上げる等によって、一千億円に近い負担国民に押しつけようとしているのであります。しかも、支出面のむだはそのままであり、医療給付の向上という福祉面の向上が全く配慮されないにもかかわらず、負担だけを重くするというきわめて片手落ちで、国民を無視した対策と言わねばなりません。いわば、政府の放漫な無責任経営による赤字をそっくり国民に転嫁しているのであります。政府の失政による赤字は、政府みずからが責任を持って解決すべきであることと考えますが、総理並びに厚生大臣責任ある答弁をお伺いいたします。  さらに、国庫補助についてであります。  四十二年に国庫による補助金が六・三%であったのを起点に、年々国庫負担をふやし、そして支出面に対して積極的にメスを入れてきたなら、安定した保険財政を続けてきたことは多分に予想されることであります。それを現状のごとき赤字財政にした責任をとる意味から、そして社会保障の一環として医療保障を行なうという立場から、少なくとも、今年度は、一二%の国庫負担をすべきであり、近い将来は二〇%程度まで引き上げるべきであると思うが、大蔵大臣の見解をただすものであります。  次に、医療制度抜本改正のあり方についてであります。  わが党の医療制度抜本改正の基本理念は、生命の尊重を根本とし、国民の健康を完全に守っていける体制を確立するところにあります。そして、今日の医療行政の欠陥は、国民保険を一方的に強制していながら、国民医療を受けるべき医師医療機関の不足と、不整備を放置してきたところにあると考え、そうした医療制度の全面的な改革を断行し、現行の複雑多岐にわたる医療保険制度を、まず被用者保険、地域保険に統合し、さらには一本化の方向にすべきであると思うが、総理並びに厚生大臣の見解を伺いたい。  次に、健康管理体制についてであります。  公害の脅威はますます広域にわたり、環境破壊はわが国全体に及んでいることは周知のとおりであります。農薬は言うに及ばず、薬品あるいは洗剤、食品添加物等々による人体汚染は、目に見えないところで進行していると考えて間違いありません。こうした状況を考え、国民健康管理の問題について、国は積極的に取り組み、時代に即応した具体策を進めるべきであります。国民の健康を守り、福祉を向上させるには、従来の治療偏重医療から脱皮しなければならないと思うのであります。すなわち、疾病予防、治療、リハビリテーションを通じた一貫した健康管理体制を確立する必要があると思うのでありますが、総理並びに厚生大臣の御所見をお伺いします。  そして疾病予防のための健康診査については、現在のような妊産婦、乳幼児、老人等の特定の階層や、結核、ガン等の特定の疾病のみを対象にするこま切れの施策ではなく、すべての国民を対象に、定期的に受けることができるような体制を整備すべきであると思いますが、この点の総理の御所見を伺いたい。  なお、健康管理に要する費用については、公費負担とすべきであると思いますが、この点、厚生大臣大蔵大臣からお答え願います。  また医療保険における予防給付の導入についてはどのようにお考えか、大蔵大臣並びに厚生大臣の御所見をお伺いいたします。  次に、老人医療についてお尋ねします。  老人福祉法第二条には「健全で安らかな生活を保障」することがうたわれております。すなわち、所得保障医療保障とは老人福祉の重要な柱であります。厚生年金、国民年金の老齢年金支給開始年齢は、それぞれ六十歳、六十五歳であることを考えあわせ、年金支給と同時に、医療についても保障されることが必要であります。かつまた、現在、老人の健康診査は六十五歳からとしており、精密検査の結果、疾病とわかれば、当然医療を受けなければならないのであります。これらのことを考えあわせ、老人医療の公費負担を最低六十五歳からにする必要があると思うのですが、お答えいただきたいと思います。  最後に、母子保健対策についてであります。  わが党としては、母子保健の問題は、産前、産後を通じて一貫した総合施策を講ずべきであるとの考えから、先般、母子保健法の一部を改正する法律案提出しております。出産給付については、正常分べんの場合、疾病ではないという考えから現物給付はなされておりません。しかしながら、医療保険による十割給付は、先進諸国の多くが実施しているところであり、世界の趨勢であります。出産費について全額保険給付を行なうか、あるいは公費負担とするお考えがあるか、厚生大臣の御所見を承りたいと思います。  一九七〇年代は、社会保障全般にわたっての発想の転換をはからなければならないときに入っているのであります。そして今日、長期計画着手の段階に入っていなければならないはずであります。それにもかかわらず、医療保険の抜本対策の前提要件である医療制度を見ても、医療供給体制の整備、診療報酬体系の適正化、医薬分業体制の確立等々、いずれも現在のような圧力団体に右顧左べんし、財政対策にのみきゅうきゅうとして、患者や被保険者にしわ寄せをする佐藤政権のもとでは、解決することはとうてい不可能な問題であります。医療制度の抜本的な改革は、内閣が、総理を先頭に、内閣の命運をかけて取り組むべき問題であることは、すでにわれわれの指摘してきたところであります。それを怠り、積極的な改善に何一つ取り組むことのなかった佐藤内閣政治責任を、私はここにきびしく追及し、このような改悪法案の撤回を強く要求して、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  12. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 柏原君にお答えをいたします。  先ほど、社会党の須原君にもお答えしたとおり、今回の健康保険法改正は、政府管掌健康保険財政基盤の確立をはかろうとするものであります。政府管掌健康保険財政状況はきわめて悪化しており、このような状況では、抜本改正実現にも重大な支障を来たすことともなりますので、ぜひとも早急に成立をはからなければならないのであります。  また、医療保険抜本改正法案につきましては、すでに国会に提出いたしたところであり、医療基本法案につきましても、近く国会に提出いたす予定であります。これらの法案の国会提出がおくれたことは、先ほどもあやまったのでございますが、まことに遺憾に思っております。先ほどお答えしたように、政府といたしましては、しかし、最善を尽くしたつもりでありますので、どうかこの点御了承をいただきたいと思います。  次に、柏原君から、政府赤字をすべて受益者負担によって解決しようとしているとの御批判がありましたが、今回の改正案におきましては、保険料率の引き上げ特別保険料徴収などのほか、新たに定率国庫補助制度を導入して、国も相当の負担を行なうこととしております。この点につきましては誤解のないようにお願いをいたします。  また、最後に、医療保険制度改革にあたりましては、真に皆保険の名に値するように、各制度間の給付負担の両面にわたる格差、不均衡の是正をはかることが必要であります。これを最も完全に実施するためには、柏原君の御指摘のように、各制度を一元的に再編成することが理想でありますが、各制度の沿革等につきましても配慮する必要があります。今回の抜本改正におきましては、このような考えに立って、漸進的、実際的に改革を進めることとしております。また、医療制度改革につきましては、すべての国民がひとしく必要な医療を受ける機会を与えられるよう、医療供給体制の総合的かつ計画的な整備をはかることが必要であり、このための医療基本法案を近く国会に提出することとしております。提出の上は、何とぞ御審議のほど、お願いいたします。  また、その他の点について、たとえば、公害やあるいは疾病予防、あるいはまた、抜本対策がおくれたことについての政治責任、あるいは老人医療の公費負担、あるいは母子保健対策等についての私の意見を徴されましたが、これらの点は厚生大臣に譲りますから御了承願います。(拍手)    〔国務大臣斎藤昇登壇拍手
  13. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 総理のお答えのなかった点だけを申し上げたいと存じます。  健康管理に要する費用は公費で負担すべきではないかという御意見は、特に職場等の健康管理に要するものは、その職場の企業に負担をさせるというのが原則であると思いますが、一般の国民健康管理に要する費用は、公費を原則とするという御意見には賛成でございます。そのつもりで、いままでも施策をやっておりましたし、今後、この施策を充実さしてまいりたい、かように考えます。  老人医療の無料化、これを六十五歳に引き下げるべきではないかという御意見でございますが、先般の、この法案の御審議の際にも、そういう御意見がございましたが、老人医療の無料化は今度初めて実施するわけでございます。政府といたしましては、七十歳が適当であると、かように考えて法案提出いたした次第でございまするし、今後、その実施の状況を見まして、そうして七十歳では無理であるかどうかという点を、この実情を十分判断した上で、またさらに改善すべきであれば改善をいたしたい、かように考えます。  母子保健対策の重要なことは御意見のとおりでありまして、公明党から提案をされました母子保健法の改正案の基本的な考え方には賛成でございますが、現実問題として、いま直ちに実施をすることの困難な問題もございますので、逐次、そういった方針に従って充実をさしてまいりたいと、かように考えます。ことに、分べん給付現物給付にすべきではないかという御意見でございますが、御承知のように、この分べん料を現物給付とするための点数化は非常にむずかしいわけでございますので、現在は、一定額の現金給付にいたしておるわけであります。抜本改正の中におきましては、この現金給付の額をさらに増額をいたす案を御提案を申し上げている次第でございまして、したがって、現物給付にするにつきましては、なおそのやり方について検討を要するものと、かように考えております。  国民健康管理のためには、疾病の予防、治療、リハビリ、それを全部総合的に含めるべきではないかという御意見は全く同感でございまして、医療基本法におきましても、その根底に立って医療の基本的な施策の方針を、この基本法においてきめていただきたい、かように考えております。医療基本法は、医療の供給体制、いまおっしゃいました予防から、健康管理からリハビリに至るまで全部をひっくるめまして、今日の国民医療にふさわしいあり方に持っていく基本的な問題をここに確立をしていただいて、それに基づきまして、国民のすべての方々に対する完全な医療保険制度と相まって完備をさしたいと、こういう考えでございますので、これまた御了承をいただきたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  14. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 私への質問は、いま総理及び厚生大臣がお答えされたとおりでございます。  ただ、そのうちで老人医療の問題でございますが、これは、この制度を決定するときに、政府・与党でいろいろ議論が出まして、やはり六十五歳から実施したいということで骨折りましたが、七十歳から出発しても、初年度千百億円以上の経費を要することでありますので、この平年度化をしばらく見て、実情に応じて目標は、将来六十五歳まで年齢を繰り下げていくという目標を置くということをきめて、とりあえずの出発を七十歳ということにした次第でございますので、私どもも、将来そこまではぜひこの政策を強化したいと考えておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  15. 河野謙三

    議長河野謙三君) 中沢伊登子君。    〔中沢伊登子君登壇拍手
  16. 中沢伊登子

    ○中沢伊登子君 私は、国民が深い関心を持って見詰めております健康保険法改正案について、民社党を代表いたしまして、佐藤総理をはじめ、関係大臣に質問をいたします。    〔議長退席、副議長着席〕  そもそも、このたびの健保改正案は、政管健保財政立て直しをねらいとするものでありますが、政管健保財政赤字が生じ始めたのは昭和三十七年でありました。そのときの赤字額は十六億円であったと記憶いたします。その後、年を重ねるごとに赤字は雪だるま式に増大を続け、十年を経た今日では千三百億円にもなるといわれます。この原因について総理は、三月十七日の衆議院において、わが党の田畑議員の質問に答えられて、「この財政危機は、いままでいろいろ財政対策を行なってきたが、十分な効果があがっていなかったからだ」と述懐されました。国民は、政府責任者から論評を聞きたいのではなくて、今後の対策を、そして、それに取り組む決意と姿勢をつかみ取りたいのであります。  そこで、総理にお伺いいたしますが、あなたが述懐されるように、これまでの財政対策が効を奏しなかったのはなぜですか。そして、その反省が今回の法案のどこに、どのように組み込まれているのですか。医療費支出保険料収入を上回ったから、赤字が生じたから、だから保険料を引き上げて収入をふやすという、単純な算術計算に基づく対策がこの法案の柱であるように、私には受け取れるのです。それは、総理がつい先日、述懐された「十分の効果をあげ得なかった」、その対策の繰り返しではないのですか。私どもは、昭和三十七年以来、そのような責任転嫁対策では、根本的な解決にならないと御忠告申し上げてきたのでありますが、いかがですか。総理の御見解と、今後の見通しを伺いたいと存じます。  医療は、人間の生命に結びついた措置でありますから、幸いに、医学界の進歩、開発に即応して、高度化されたものが給付さるべきであります。低い所得水準の人々に対する医療だからといって、その所得のワク内で処理するということは許されないものであります。特に、中小企業の従業員を対象とした政管健保は、組合健保に比して三つのマイナス要因を持っていることが常識として指摘されています。一つは所得水準の低さ、一つは労働環境の悪さ、一つは年齢構成の老齢化であります。このような構造的なマイナス要因は、政管健保の被保険者責任ではありません。私は、政管健保赤字問題の本質は、低賃金の反映であるととらえてしかるべきものだと思います。昭和四十六年三月現在での標準報酬の差を見てみますと、組合健保の平均六万一千九百十五円に比して、政管健保のそれは、四万九千九百六十円であって、その差は実に一万一千九百五十五円であります。政管健保をして、組合健保と同じ条件での財政運営を可能ならしめるためには、この賃金格差を埋めてやることが根本でなければなりません。そのためにこそ、財政援助をしているのでしょう。だのに、赤字が生じたら、保険料を高くして始末すべきだとする議論が、財政当局を支配しております。元来、保険という技術は、医療保障の手段として使われているのでありまして、究極の目的は、所得水準の低いグループにも、最適の医療保障することにあるのであります。保険原則を貫くことによって、医療保障を後退させる結果を生じさせるような、手段と目的とがひっくり返ってしまうような道をとってはならないのであります。大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。  次に、一部負担に関して、厚生大臣の見解をお伺いいたします。  医療費の増加に対処するには、受診をコントロールするために、一部負担が必要だとする見解があります。それは、受診をコントロールしなければならないほどに、被保険者医療を受け過ぎるという認識を前提としています。受診率は、患者側の判断に依存して変動する要素を持っていますが、だからといって、好き好んで、時間をつぶして、むだな医者通いをする被保険者がいるというのでしょうか。受診のコントロールによって、受診率が低下することは、それだけ早期受診の機会が失われることを意味します。それは、ときとして症状を重くし、かえって医療費を増大させるもとにもなり、さらには、死亡の原因ともなるおそれがあります。ですから、一部負担は本来好ましいものではないのです。やむを得ずそれを取るときは、必要な受診を阻害しない限度を常に考慮することが必要であります。一部負担のゆえに、受診できない人々が多くなった結果、所得の低い人たちと同じように拠出した保険料を使って、一部負担を苦にしない豊かな人たちだけが利用することになっては、医療保険本来の目的を見失うことになってしまいます。  また、薬価一部負担の不合理は、昭和四十二年に実施してみて実証済みです。投薬医師側が決定する医療内容の問題であって、患者医師投薬を拒むことができない性格のものでありますのに、患者側からブレーキをかけて抑制効果を望むのは少し的がはずれているという理論的な欠陥があります。そして、いたずらに受診を抑制するだけに終わってしまうのであります。不適正な医療投薬の状況があるのならば、むしろ医師側に対して、科学的妥当性を持たない医療チェックし、排除する制度をつくることのほうが、より緊急の課題なのではないでしょうか。  先日も、公害病認定患者に対して、投薬された薬を全部飲んだら死んでしまうほどの処方が出されているという、おそるべき事実が学界で指摘され、人々をおそれおののかせました。そこで、薬価一部負担にかえて、医療行為の有効性、科学性に関する評価をさらにきびしくする制度をつくるべきであると考えますが、いかがでしょうか、お答えをお願いします。  いずれにしても、今回の健保改正で、保険料の引き上げ標準報酬における上下限の引き上げボーナスに対する特別保険料の設定等、一部負担の引き上げという重要な柱は、そのいずれもが利用者負担原則で貫かれているもので、例によって例のごとく、赤字の原因が利用者の過剰な医療需要にあるという認識の上に立って、受益者負担の財源対策のみを優先していることは明らかな事実であります。これは一方的なもののとらえ方であり、医療需要が多面化し高級化すれば、医療給付がふえることは避けられないことでありますし、そのゆえに、むだがあるのなら、当然努力して、むだをなくすべきであります。現に、赤字を出さない組合健保は、そのために疾病の予防、健康管理を含めて医療費のむだの排除につとめ、よって支出の節減、合理化に大きな成果をあげています。その意味から、政府管理責任者として、全くその努力を払わず、怠慢によって生じた赤字を利用者にしわ寄せさせることは本末転倒であります。したがって政府も、当然、行政努力等によってむだの医療費を排除すべきだと考えますが、この点について政府はどう考えられますか、また、いかなる努力を行なおうとしているか、具体的に示していただきたいと思います。  なお、今日までの累積赤字を当初たな上げにするはずでありましたのに、たな上げが廃止されましたが、これでは、幾ら経営を改善する努力をしても、そのかいもなく、赤字がふえることになり、遠からずまたパンクすることになりますが、一体どうするつもりでございますか、当然政府責任で始末をすべきですが、その決意がおありですか、総理大蔵大臣にお伺いいたします。  最後に、医師の養成対策について、文部、厚生両大臣に伺います。  昨年は大阪刑務所をめぐる不正入試事件がありましたが、摘発された二十数名の不正入学者のうち、九五%が医科系の学生でありましたのに驚かされました。その驚きがさめないのに、ことしは早々に浪速医科大学というまぼろしの計画に乗って、二十一億円という膨大な入学予約金がむだ金になりそうだという事実を突きつけられ、世間をあ然とさせました。最近——医師の養成のためには一ころ五百万円の入学金が必要だと言われておりましたが、いつの間にか七百万円になり、最近では一千万円が相場だとさえうわさされておりますが、大臣はお聞き及びでしょうか。これでは国家的医術資源として優秀な子供がいても、庶民、サラリーマンの子弟では意欲があっても医師にはなれません。現在公私立の医大がありますが、門戸は狭いし、これで今後、医師養成が事足りると思われますか。一体、医師の養成はお金が要素なのか、実力が要素なのかを疑わせるに至っています。生命を託することになる医師のことだけに、人々の不安は大きなものがあります。なぜ医学部にこういうことが起こるのでしょうか。一体、原因はどこにあるとお考えでございますか、お答えをいただきたい。  私どもは、医療担当者の養成は、公の責任において遂行されることを前々から要請してまいりました。さらに、病院という医療施設の整備を公の責任で、計画的に行なうべきであるということも強調してまいりました。少なくとも、国民のだれもがいつかは利用する可能性のある社会資本的なものは、私益の対象からはずして、公費でまかなっていくべきであることも主張してまいりました。今回提出される関連法案の中には、医療担当者の養成、医療施設の整備の必要性はうたわれておりますが、それがだれの責任において行なわれるのかには触れられていないようであります。医療施設の整備が私人の責任にゆだねられて、しかも世襲財産として受け継がれ、しかもそこで医療に当たる要員の養成までが私人の責任に放置されている限り、なお、またその費用を私人がかせぐ医療費の中から捻出しなければならない状況が続く限り、明朗な日本の医療の前途は開けていかないと思いますが、明快なお答えを伺わせていただいて、私の質問を終わりますが、本日の質問に対し、各党が三名もの婦人を立てたことは、国民の健康に対し、また、たび重なる赤字対策の健保改正に対し、なみなみならない関心と熱意と怒りのあらわれであることを、政府も十二分に肝に銘じていただくよう強く要望して、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  17. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 中沢君にお答えいたします。  まず、政府管掌健康保険赤字の原因につきまして、私は、最近の医学、薬学の進歩によりまして、わが国医療水準は著しく向上し、これに伴って医療費が急速に増加してきておりますが、政管健保におきましては、収入面でこれに弾力的に対応できなかったことが、最も大きな原因と考えております。このため、今回提案した改正法案におきましては、これに対応するための措置をとるほか、国におきましても、財政安定に寄与するため、思い切って国庫補助の定率化等の対策を講ずることとした次第でございます。  次に、政府原案にあった累積赤字たな上げ規定衆議院修正によりまして取りやめとなりましたが、赤字の処理はどうするかとのお尋ねがありました。今回の改正により、政管健保財政は安定するものと私は考えております。また、過去の累積赤字につきましては、今後さらに処理方針を検討したいと考えておりますが、その詳細は厚生大臣並びに大蔵大臣から、また、その他の問題につきましてはそれぞれ主管大臣からお答えをいたします。どうか、さように御了承をいただきたいと思います。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  18. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 組合健保あるいは政府管掌健保の間においては、被保険者の所得水準とか年齢の問題、その他に幾多の差異がある。したがって、その差異に即して、給付負担が不公平にならないような措置が必要であるということについては、全くそのとおりだと思いますが、それならそれを、どうしてその公平さを期したらいいかと申しますと、一つは、いま出ておりますいわゆる抜本対策の問題でございまして、そういう各種の組合のいわゆる財政調整ということが必要だろうと思いますが、今回は、これが時期尚早ということになりましたので、とりあえず、老人医療について共同で医療事業を行なうというようなことが行なわれますが、これもこの二つの会計を調節することでございまして、政管健保の被保険者負担増を押える一つの方法であろうと思います。  それに対してもう一つは、政府補助金をどれだけ出すかという問題でございますが、今回の場合は、いままでの累積赤字一般会計において全部処理するということを前提として、今後どうすればこの会計から赤字を出さぬかという計算に基づいて、そうして五%の定率負担というものを決定したわけでございますが、これが国会で、この政府案が修正されることになるといたしますと、従来の計算が狂ってまいりますので、修正されたことを基礎にしまして再検討の上、やはり当初政府が考えておったような方向で、被保険者にあまり負担をかけないという方向で、この累積赤字の処理はしたいと思っております。さっき、政府がそれを処理する覚悟があるかというお尋ねでございましたが、これはどうしても処理しなければならぬ問題だと思いますので、政府はその覚悟を持っております。(拍手)    〔国務大臣斎藤昇登壇拍手
  19. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 累積赤字のたな上げと弾力条項によって、政管健保財政の恒久的な安定をはかりたいと、かように考えておったのでありますが、衆議院におきまして、いままでにない慎重な御審議をいただき、健保法案はこれは因縁法案であるとさえ言われておりましたのに、このたびは非常に慎重に審議をしていただいて、そうして平穏に修正をしていただきました。私は、この御意見は尊重しなければならないと、かように考えております。  さて、その累積赤字をそれでは今後どうするかというお尋ねでございますが、大蔵大臣からお答えをいたしましたように、これはいわゆる社会保障制度審議会、社会保険審議会、両審議会におきましても、これはむしろ抜本改正で考えるべきではないか、趣旨には必ずしも反対ではないけれども、四十七年度財政対策ができれば、あとは四十八年度から出発する抜本改正で考えるべきではないかと、こういう御意見がございました。それを、衆議院の段階におきましても、各党とも取り上げられまして、この政管健保財政対策で考えるよりもむしろ向こうで考えるべきである。しかし、抜本改正の場合には賛成だという御意見ではありませんでしたけれども、まあそういうことも踏まえまして、大蔵大臣も答えましたように、累積赤字を今後どう処理するかということを十分検討いたして善処をいたしたいと、かように考えます。  一部負担は受診のコントロールになるのでこれはやめたほうがよろしい、薬価一部負担も同様であるという御意見でございますが、私どもは、抜本改正におきまして、被保険者の、十割負担の被保険者に対しましては、ある程度の一部負担をするということが、これはむしろ適当である、かように考えております。これは受診をコントロールするという意味ではなくて、むしろ医療保険は、高額な医療保険でまかなうというほうがほんとうに国民のためになるのではないだろうか、今日の所得水準から考えますると、抜本改正で考えております程度の一部負担、あるいは薬価の一部負担は受診の抑制になるようなものではないと、かように考えております。むしろ家族の給付を引き上げ、また、高額医療は全部見るというように持ってまいって、そうして、非常な低所得者の方には、保険料の免除の制度もあり、あるいは医療扶助の点もあるわけでありますから、したがって、今日の所得水準、生活水準から考えて、この程度ならばむしろ適当ではないか、そういういわゆる保険給付はいかにあるべきか、これは受診の抑制ということを度外視いたしまして、ほんとうに国民のニードにこたえる給付という面から考えて、一部負担を若干増額をするということを考えた次第でございます。これはまた、抜本改正の中で十分御論議をいただきたいと考えます。  それから政管健保管理運営において、今後むだの排除あるいは健康管理というようなものをさらに強化をし、疾病の予防をはかって、そうして支出面を押えるというか、むだな支出のないようにすべきではないか、御趣旨は全くごもっともでございます。いままで政管健保は、先ほどからも御論議いただきましたように、非常に赤字が続いておりました。したがって、いわゆる健康管理や疾病予防に、その保険の中からさらに相当額を出すということは困難でありましたが、しかし、これはやはり必要なことでもありますから、今後、こういった費用は相当程度見るということと同時に、診療の請求書の中にあやまちがあったり、あるいは過当な請求をしたりするものがなきにしもあらずであります。少なくとも、これは組合健保がしている程度の効率的な監査をする必要がある、かように考えております。私は、組合程度の監査をやれば、少なくとも過誤の修正というものは、年額二十数億にのぼるであろう。しかし、それには今日の人員をもってしてはとうてい不足でございます。ほんの抜き取り検査でありますから。したがって、仕事の能率化、機械化をはかりますとともに、所要の人員を増しまして、所要の人員を増しても二十数億円の人件費を必要とするような人員は要るまいということで、これは大蔵大臣ともすでに特に話を進めております。そういう意味で、そういった効率的な運営というものをはかってまいりたいと、かように考えます。医師の養成対策は、これは全く国の責任だと考えます。医師、歯科医師のみならず、パラメディカルの職員の養成は、看護婦その他を含めまして、国の責任で、そうして公費でやるということを原則とすべきである、かように考えます。文部大臣ともお話を進めております。また、計画的に不足の人員を五カ年の間にどうやっていくかという計画も着々進めているわけであります。詳細はまた委員会等で申し述べたいと存じます。  医療施設を公費で負担をすべきでないかというお尋ねでございますが、私は、この診療に要する施設は、やはりその診療をやる者の負担、そしてこれはやはり診療報酬の中からまかなわれるのが原則だと、かように考えます。特殊な施設、公費で負担すべき施設もなきにしもあらずでありますが、原則といたしましては、これは診療所の負担としてやるのが原則である、かように考えます。(拍手)    〔国務大臣高見三郎君登壇拍手
  20. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答えいたします。  医師の養成につきましては、先ほど厚生大臣がお答えになりましたとおり、私は国公立の大学において医師を養成することが最も大切だと思っております。ただ、当面千二、三百名の定員を増さなければならないという問題を充足いたしますためには、基礎医学の教官にいたしましても、解剖死体の確保にいたしましても、急に間に合わない事情もございますので、今年は皆さまの御賛同を得まして、三校だけ国立で創設準備費をつけました。さらに引き続いて、この問題は国公立を中心に増設をするという方向に進んでまいりたいと存じております。  やみ入学金の問題につきましては、中沢先生御指摘のとおり、私も遺憾ながら事実であると申し上げざるを得ないのであります。これは私立大学等の国庫補助を増額する等の方法によりまして、大学の経営を健全化させることによって、できるだけこれを抑制することに全力をあげるつもりでございます。どうぞ御了承をいただきたいと思います。(拍手)     —————————————
  21. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 小笠原貞子君。    〔小笠原貞子君登壇拍手
  22. 小笠原貞子

    ○小笠原貞子君 私は、日本共産党を代表して、健康保険法等の一部改正案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。  今日、ひどい物価高に加えて、命と健康の問題が国民を深く脅かしております。このことは、厚生省の調査によっても、病気になった人の数が、昭和三十年の二百九十五万人から昭和四十五年の七百二十五万人に、すなわち、十五年間に実に二倍半にもなっていることにはっきりあらわれております。私は、このような深刻な事態責任は、何よりも佐藤総理、あなたの政府と大企業にあることを強く指摘しなければならないと思います。いま、空も海も川も公害によごされ、人の生命の母体である自然が破壊されています。母親のお乳にまでPCBが入り、よごされ、幼子の命がむしばまれているのは、一体なぜなんだろうか、母親として心の底からの怒りを覚えるのです。痛ましい交通事故で年ごとに百万人もの人たちを傷つけ、命を奪うものは何なのか、被害者である国民一人一人の心がまえや努力が足りないとおっしゃるのでしょうか。その上、労働者は労働災害によって毎年百七十万人も死傷し、職業病も日に日に激増しております。それらの原因を正しく見るならば、絶対に個人の責任にすりかえられるものではなく、その原因は、まさに大企業の利潤本位の高度成長と、それを推進してきた政府にあることは議論の余地のないところであります。政府は、国民の命を守る医療制度について、相互扶助、自己責任原理なるものを国民に押しつけようとしております。しかし、今日の事態の最大の責任政府と大企業にある以上、国民の命と健康は、国と企業の責任と費用で守るべきであり、ここにこそ、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と命じた憲法第二十五条の精神があると思うのですが、総理の御見解を伺いたいと思います。  次に、政府管掌健康保険赤字について質問をいたします。  政府は、この赤字責任政府自身にないかのような態度をとっておられますが、これは全くごまかしにすぎません。大幅な赤字の原因の第一は、政府が当然負担すべき補助金を、たとえば昭和四十六年度でさえ、わずか二百七十五億円、すなわち、保険給付費の四%しか負担しなかったところにあります。今日、外国資本主義国でさえ、たとえばイギリスでは、全費用の八五%を国が負担しているときに、GNP第二位を誇る日本では、政府管掌健保でさえ国の負担はわずか四%程度であり、残りを中小企業家と労働者にほぼ半額ずつ負担させているありさまであります。このことは、労働者の負担が重過ぎ、国の負担が軽過ぎるのであり、ここにこそ赤字の根源の一つがあることを明白に示しております。  しかも政府は、今回、赤字解消を口実に、国庫補助のわずかな引き上げと引きかえに、ただでさえ低賃金の中小企業労働者に一そう重い負担を背負わせようとしております。政府は、福祉国家の建設なるものを宣伝しておられますが、もしこのことばが真実であるならば、保険料率の七・三%の引き上げボーナスにかける特別保険料などの措置をやめるべきであり、国の責任で生まれた累積赤字は当然たな上げにし、さらに国の補助率を、さしあたり二〇%に引き上げるべきだと思います。その誠意が一体おありなのかどうか、あらためて承りたいと思います。  さらに、赤字の第二の要因は、政府が大製薬会社の高い薬品価格を野放しにし、健保財政を乱費しているところにあります。今日、十大製薬会社が毎年三百億円に近い広告費を使いながら、五〇%を前後する異常に高い資本金利益率をあげているのは、おもに原価の数倍にも及ぶ高い薬品価格に原因があります。ところが、政府は、この高い価格を、高い薬価基準によって保証し、医師技術料は低く定めるという措置を通じて、大量の薬品が医療保険で使われるように仕向けております。今日、健保医療費の中で薬剤費が実に四割をこえ、健保財政赤字の重要な原因をなしている理由は、以上のところにあると言わなければなりません。政府は、健保財政赤字を真剣に解決しようとするなら、このような措置を改め、大製薬会社の薬品価格を最低二割は引き下げさせるべきだと思いますが、その意思がおありかどうか。また、医師技術を尊重し、診療報酬は適正に引き上げるべきだと思いますが、その意思もおありかどうか、御答弁をお願いしたいと思います。  私は、政府が以上の措置をとりさえするならば、国庫補助二割で千五百五十六億円、独占薬価引き下げで七百四十億円となり、四十七年度千三百億円の赤字は十分に解消できるということを強調いたしたいと思います。  最後に、今後の医療制度の根本についてお伺いしたいと思います。  今日、国民が心から求めているものは、だれもが、いつでも、どこでも、ただでかかれる。行き届いた医療保障制度であります。このような制度を完備することこそ、ほんとうの福祉国家の内容でなければなりません。ところが、政府は、ILO条約も取りきめている正常分べんや予防に医療給付適用しておらず、リハビリテーションへの適用も強く制限しているありさまであります。しかも、政府は、初診料や入院費、薬剤費などの患者負担を大きくする、いわゆる抜本改正案なるものを準備し、病気になっても医者にもかかれないようにしております。総理、これがあなたの「高度福祉国家」でしょうか。  わが党は、政府がILO条約百二号、百三十号を直ちに批准し、正常分べんや健康診断に健保医療給付適用し、リハビリテーションにも制限なしに適用すべきであり、初診料など患者の自己負担は当然全部なくすべきだと思いますが、いかがでしょうか。  また、国と企業の負担をふやし、本人、家族ともに十割給付実現し、病気のときはただで医者にかかれるという、そして行く行くは被保険者の掛け金も全部なくすべきだと思いますが、国民のこの切実な要望におこたえなる誠意がおありかどうか、御答弁をお願いしたいと思います。  また、今日ほど医療従事者や医療施設の不足が痛感されているときはありません。全国二千九百地域にわたる無医地区や貧弱な救急医療体制、「待ち時間三時間、診療三分」といわれる診療内容など、国民医療を受ける権利は著しく制限されております。昭和三十五年から昭和四十四年の十年間に患者数は八〇%も増加していますが、医師はその間にわずかに二〇%、看護婦は二八%ふえただけであります。これでは医療従事者の努力にもかかわらず、医療内容が低下し、医療従事者の苦労が重くならないわけにはいきません。わが党は、政府責任を持って、医療従事者の大量の養成と待遇改善、国公立の医療機関の整備拡充、無医地区の解消、夜間・休日診療保障、救急医療体制の確立などを緊急に実現すべきだと思いますが、そのおつもりがおありかどうか。  以上の諸点を伺って、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  23. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 小笠原君にお答えをいたします。  まず、小笠原君から、国民の健康が破壊されている、こういう御指摘がございました。全体として見れば、戦後、国民の平均寿命は著しく延びております。このことからも明らかなとおり、国民の健康水準は著しく向上していると評価すべきではないでしょうか。これは、全国民に対する医療保険の普及、公衆衛生対策等の大きく寄与したものと考えられますが、政府といたしましては、今後もこれらの面における国の施策——(「公害、交通事故をどうした」と呼ぶ者あり)国の施策を、より積極的に進めていく考えであります。  なお、ただいま声を大きくされました、不規則発言ではありますが、御指摘の公害病の問題につきまして、公害の発生源に対する防止対策、被災者に対する医療救済等、また、職業病につきましても、それぞれの対策を講じまして、国もできるだけのことをしてまいりたい。今後もこの方針を積極的に進めていく考えでございます。  次に、将来の医療制度につきましては、今後も医療保険を中核としてその充実をはかってまいりたいと考えております。  また、小笠原君は、直ちに保険給付の大幅改善をはかれとの御意見のようでありますが、医療保険制度間の均衡を考慮しながら着々と改善をはかっていく、それが実際的だと、かように考えております。今国会に提案している抜本改正法案におきましても、このための所要の措置を講じているところであります。  最後に、医療従事者の確保及び医療施設の整備につきましては、従来から各種の施策を講じているところであります。政府といたしましては、今後とも、すべての国民がひとしく必要な医療を受ける機会を与えられるよう、医師等の確保及び医療施設の体系的整備を総合的かつ計画的に推進してまいります。国としてもできるだけのことをするつもりであります。  以上、私からお答えをいたしましたが、その他の点については、関係大臣から詳細に御説明いたさせます。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  24. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 政管健保の場合、政府補助率は二〇%にしたらどうかというお尋ねでございましたが、いまの、今年度にたとえば当てはめてみますというと、二〇%の政府、国費の負担と申しますと、大体千五百億円ということでございまして、そうしますというと、もう保険会計の自主的努力とかなんとかというものは一切要らないということになりますので、そうなりますというと、保険制度そのものの検討を必要とするということでございますので、この問題は、ひとつゆっくり研究させていただきたいと思います。  それから将来の医療制度についてのお尋ねでございましたが、先ほども申しましたように、公費負担医療をもって補完する形で、この医療保障保険制度によって行なっておるのが実情でございますが、今後ともこのたてまえはくずさないで、維持しながら、実情に応じてこれは拡充していくべきものというふうに考えます。  その場合に、将来、保険料をただにすることを考えないか、ということでございますが、問題は、保険料という社会保険負担によって、保険制度で社会保障給付を求めるか、あるいは租税という形で負担して、ほとんど直営に近いような、国費の負担によって社会保障制度を維持するかという問題でございまして、イギリスの例が出ましたが、その背後には、今度は保険料ではなくて租税の負担というものがうしろにある。租税の負担によらなくて保険制度による場合は、保険料負担というものがあって、欧州の各国におきましても、保険料負担によっておるところは、別に保険制度に国家の補助を求めていないと、こういう運用をしておるところでございますので、しょせん、保険料をゼロにするということはできない。もしそうするなら、それだけを税に置きかえた負担にする以外には方法はないだろうというふうに考えます。(拍手)    〔国務大臣斎藤昇登壇拍手
  25. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 薬価基準を引き下げて、その引き下げた幅を医師その他の技術料等に振り向けるべきであるという御意見は、これは全く同感でございます。その方針でやるようにいたしておるわけであります。今後もやってまいりたいと存じます。ただ、薬価基準は、薬の値段をむしろこれできめているようにおっしゃいますが、そうではなくて、薬価基準は、薬の実勢にあわせて基準をきめているわけであります。  そこで、その実勢を引き下げろという御意見でございますが、今日、薬の価格は自由価格できまっておるわけでありますから、政府といたしまして、根本的に薬の価格の中に介入をしていくという考えはただいま持っておりません。  医療の従事者、施設の充実、この点は、政府といたしましても、あるいは五カ年計画、その他の計画をもって着々と実施中でございますが、さらに、その基本方針につきましては、医療基本法の中でさらに研究をし、検討をしていただき、これによって、従事者なり施設の改善を期してまいりたい、かように考えます。(拍手、「答弁漏れがありますよ、ILOはどうした」「進行」と呼ぶ者あり)
  26. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 斎藤厚生大臣から補足説明がございます。    〔国務大臣斎藤昇登壇
  27. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 分べん給付あるいはリハビリ等を保険の中で見るようにという御意見でございますが、分べん給付は、先ほど中沢議員にお答えをいたしましたように、いま現金給付をいたしております。これを現物給付にいたしますのには、点数の算定に非常にむずかしい点がございまするので、したがって、これは今日の現金給付の額を引き上げたい。これを抜本改正の中に提案をいたしておるわけでございますので、御了承をいただきたいと思います。リハビリ、あるいは疾病の予防等を保険給付の中に入れるかどうかという点は、これは、今後検討さしていただきたい。少なくとも、リハビリをどの程度入れるかという問題は研究に値する問題だと、かように考えます。予防の点につきましては、保険給付の中に入れることは不適当である、かように考えます。  それから保険給付は全部十割にすべきである、ただにすべきであるという御意見でありますが、私は、先ほどお答えをいたしましたように、無料ということは必ずしも適当ではない、やはり一部の軽い経費を負担するということが保険実施の上で適当である、かように考えております。(拍手、「IOLはどうだ」と呼ぶ者あり)  ILO条約につきましては、できるだけ数多く批准をするように努力を続けている次第でございます。(拍手
  28. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これにて質疑は終了いたしました。      —————・—————
  29. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 日程第一 昭和四十五年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)  日程第二 昭和四十五年度一般会計予備費使用総調書及び各省庁所管使用調書(その2)(衆議院送付)  日程第三 昭和四十五年度特別会計予備費使用総調書及び各省庁所管使用調書(その2)(衆議院送付)  日程第四 昭和四十五年度特別会計予算総則第十条に基づく経費増額調書及び経費増額調書衆議院送付)  日程第五 昭和四十五年度特別会計予算総則第第十一条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その2)(衆議院送付)  日程第六 昭和四十六年度一般会計予備費使用総調書及び各省庁所管使用調書(その一)(衆議院送付)  日程第七 昭和四十六年度特別会計予備費使用総調書及び各省庁所管使用調書(その一)(衆議院送付)  日程第八 昭和四十六年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その一)(衆議院送付)  日程第九 昭和四十四年度一般会計歳入歳出決算昭和四十四年度特別会計歳入歳出決算昭和四十四年度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十四年度政府関係機関決算書  日程第一〇 昭和四十四年度国有財産増減及び現在額総計算書  日程第一一 昭和四十四年度国有財産無償貸付状況計算書  以上十一件を一括して議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。決算委員長足鹿覺君。     —————————————    〔足鹿覺君登壇拍手
  30. 足鹿覺

    ○足鹿覺君 ただいま議題となりました昭和四十五年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)一件、並びに昭和四十五年度一般会計予備費使用総調書及び各省庁所管使用調書(その2)外三件、昭和四十六年度一般会計予備費使用総調書及び各省庁所管使用調書(その一)外二件、合計七件の事後承諾を求めるの件につきまして、決算委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。  当委員会におきましては、以上八件につきまして、去る五月二十四日、大蔵当局から説明を受けた後、質疑に入りました。その詳細は会議録で御承知願いたいと存じます。  同日、質疑を終了し、採決の結果、国庫債務負担行為一件につきましては多数をもって異議がないと議決され、予備費七件に関しましては多数をもって承諾を与うべきものと決しました。  次に、昭和四十四年度決算外二件につきまして、決算委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、昭和四十四年度決算については、昭和四十五年十二月二十六日、国会に提出され、昭和四十六年二月十二日、当委員会に付託されました。  国有財産関係二件については、昭和四十六年一月二十二日国会に提出され、同日委員会に付託されました。  当委員会は、決算外二件の審査にあたり、国会が議決した予算及び関係法律が適正かつ効率的に執行されたかをはじめ、決算全般について審査し、あわせて政策の実績批判を行ない、もって国政と綱紀の振粛をはかる、との観点に立って審査を行なってまいりました。  この間、委員会を開くこと十九回、別に述べるような警告内容のほか、為替変動相場制移行に伴う諸問題、防衛庁の艦船改装、修理並びに航空機調達、各種学園の経営、婦人の労働条件、農産物の自由化、国有地・国鉄用地の管理、海外協力援助のあり方、その他数々の諸問題について熱心な論議が重ねられましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  かくて、委員会は五月二十四日、質疑を終了し、直ちに討論を行ないました。その議決案の第一は、本件決算の是認、第二は、内閣に対する十一項目の警告であります。討論におきましては、社会党、公明党及び共産党を代表した各委員から、本件決算は是認できないが、警告には賛成である旨の意思表示がなされ、自民党及び民社党の委員からは、本件決算を是認するとともに、内閣に対する警告にも賛成である旨が述べられました。  討論を終わり、採決の結果、本件決算は多数をもつて、是認すべきものと議決され、次いで、内閣に対する警告については、全会一致をもって警告すべきものと議決された次第であります。  内閣に対する警告は、次のとおりであります。  (1) 綱紀の厳正は行政の根幹である。本委員会における昭和四十四年度決算審査の過程において、農林省東海農政局、日本道路公団名古屋支社、林野庁秩父営林署等に汚職事件をめぐる綱紀の弛緩がうかがわれたことは遺憾である。  政府は、かかる不祥事のよってきたる原因をなす機構運営上の問題に対し真剣に取り組み、綱紀の引き締めに一層努むべきである。  (2) 各省庁の指導監督の下にある公益法人には、補助金をうけながら事業効果を挙げていないもの、その出版物の買上げ関係省庁に依存しているもの、その委託調査費で政府職員が海外出張を行なっているもの、高級公務員天下りの場となっているもの等世間の非難の的となっている法人が少なくない。政府は、みずからの姿勢を正すとともに、この種公益法人の指導監督に一層厳正を期し、殊に高級公務員の天下り人事の弊に対しては適切な措置を講ずべきである。  (3) 日本体育協会所属の一スポーツ団体が札幌オリンピックに備えての強化合宿において不祥事件をおこしたことは遺憾である。  政府は、とかく経理のずさんになりがちなスポーツ団体の事務体制に改善措置を講じ、経理についての監査機能を強化し、この種事案の再発防止に努むべきである。  (4) 日本私学振興財団が、私立大学等に対する経常費補助事業を実施するにあたり、補助金の交付が適正を欠いていると認められるものが、司直の手の及んでいる「神野学園」を始めとして、会計検査院の調査したものだけでも一億六千万円にのぼっている。  政府は、私学の助成が重要視され、当財団に対する財政支出の必要が年々増大の趨勢にある状況にかんがみ、適正な補助事業が達成されるよう指導監督に一段の努力を払うべきである。  (5) 農林省は最近競馬の過熱状況にかんがみ、そのあり方、競馬環境整備につき再検討を行なうべきである。  また従来行なわれてきた競馬益金の畜産振興ならびに社会福祉事業への還元については、益金増大の趨勢にもかんがみ、今後一層積極的に善処されたい。  (6) 畜産振興事業団ならびに民間貿易による牛肉の輸入の増大にもかかわらず、食肉の流通状況が好転しないことは遺憾である。  政府は、かかる状況にかんがみ、中間的経費の多い流通機構対策に一層力点をおく等、牛肉の生産価格ならびに消費者価格の安定に積極的な施策を講ずるとともに適切な行政指導を行なうべきである。  (7) 自衛官募集について、防衛庁は、利益を強調しすぎる募集を行ない、また、労働省は、公共職業安定所内での自衛官募集について、みずから定めた自衛官募集に関する協力の範囲をこえるが如き便宜供与を行なった事例がみられたことは遺憾である。  政府は、再びこのような事態がおこらぬよう対処すべきである。  (8) カドミウム汚染米は、国民健康上由々しい問題である。  政府は、カドミウム汚染地域の土地改良事業を積極的に推進する等万全の対策を講ずべきである。  また政府が買上げて配給に回さない汚染米も相当の量に達しており、これら汚染米についても政府は早急に処理対策を樹てるべきである。  (9) 日本鉄道建設公団が建設中の新線の中には、日本国有鉄道が合理化計画をすすめているローカル既設線に直結される路線も数多くあり、このためもあって完工までなお長期間を要する路線や開業間近に至って工事を中断している事態さえあることは遺憾である。  政府は、これら工事への巨額な投資を勘案し、存続すべき路線は存続させる等遷延することなく処理方を確定実施せしめ、投資効果の早期発現に努むべきである。  (10) 終戦時アメリカ軍に接収された図書及び公文書は、わが国にとって貴重な歴史的文献であるが、今なおアメリカ議会図書館等に保存されたままになっている。  政府は、これら重要資料の返還が実現し、国民に公開できるよう努むべきである。  (11) 国会の国政調査のための資料要求に対し、各省庁において必ずしも協力的でない態度がみられたことは遺憾である。  今後政府は、資料提出の要求に対して十分その趣旨を体し、すみやかな提出につとめ、国政調査に支障をきたさないようにすべきである。  以上であります。  次に、国有財産関係二件につきましても、採決の結果、昭和四十四年度国有財産増減及び現在額総計算書については多数をもって、また、昭和四十四年度国有財産無償貸付状況計算書についても、同じく多数をもって異議がないと議決された次第であります。  内閣に対する警告につきましては、関係国務大臣から、その趣旨を体して努力する旨の発言がありました。これらの発言が、単なる口頭辞令に終わることなく、予算その他広く国政万般に遺憾なく具現されることを強く要望するものであります。  以上をもって報告を終わります。(拍手
  31. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。  まず、昭和四十五年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)について採決をいたします。  本件は、委員長報告のとおり異議がないと決することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  32. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本件は委員長報告のとおり異議がないと決しました。      —————・—————
  33. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 次に、日程第二より第八までの予備費使用総調書等七件について採決をいたします。  七件を承諾することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  34. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、七件は承諾することに決しました。      —————・—————
  35. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 次に、昭和四十四年度一般会計歳入歳出決算昭和四十四年度特別会計歳入歳出決算昭和四十四年度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十四年度政府関係機関決算書について採決をいたします。  本件の委員長報告は、本件決算を是認すること及び内閣に対し警告することからなっております。  まず、本件決算を委員長報告のとおり是認することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  36. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本件決算は委員長報告のとおり是認することに決しました。      —————・—————
  37. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 次に、委員長報告のとおり内閣に対し警告することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  38. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 総員起立と認めます。よって、全会一致をもって委員長報告のとおり内閣に対し警告することに決しました。      —————・—————
  39. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 次に、昭和四十四年度国有財産増減及び現在額総計算書について採決をいたします。  本件は委員長報告のとおり異議がないと決することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  40. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本件は委員長報告のとおり異議がないと決しました。      —————・—————
  41. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 次に、昭和四十四年度国有財産無償貸付状況計算書について採決をいたします。  本件は委員長報告のとおり異議がないと決することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  42. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本件は委員長報告のとおり異議がないと決しました。      —————・—————
  43. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 日程第一二 日本鉄道建設公団法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長木村睦男君。     —————————————    〔木村睦男君登壇拍手
  44. 木村睦男

    ○木村睦男君 ただいま議題となりました法律案は、最近の大都市における通勤・通学等の輸送需要の増加に対処し、大都市圏における鉄道輸送力を増強するため、日本鉄道建設公団に対し、緊急整備の必要ある複々線化工事、大規模住宅団地に必要な鉄道新線の建設など、地方鉄道にかかる鉄道施設の建設及び改良を行なわせ、完成後その施設を地方鉄道業者に譲渡しようとするものであります。  委員会におきましては、都市計画と都市交通のあり方、資金計画、譲渡価格等について熱心な質疑が行なわれました。その詳細については委員会会議録により御承知願いたいと存じます。  以上で質疑を終了し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  45. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  46. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。      —————・—————
  47. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 日程第一三 特殊鳥類譲渡等規制に関する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。公害対策及び環境保全特別委員長加藤シヅエ君。    〔加藤シヅエ君登壇拍手
  48. 加藤シヅエ

    ○加藤シヅエ君 ただいま議題となりました特殊鳥類譲渡等規制に関する法律案について、公害対策及び環境保全特別委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。  この法律案は、近年における野鳥の生息環境悪化に照らし、絶滅のおそれがある鳥類の種について、保護繁殖をはかっていくことが緊要となってまいりましたので、別途、日米間に鳥類の保護条約が調印されるのを機として提出されたものでございます。  そのおもな内容は、まず、本邦または本邦以外の地域において絶滅のおそれがある鳥類を特殊鳥類として定め、その特殊鳥類と卵は、環境庁長官が許可した場合のほかは、譲り渡し、譲り受けをしてはならないことといたします。また、国際協力としての学術研究、養殖等の場合を除いては、輸出が禁止され、輸入には、輸出国の許可証明書、適法捕獲証明書の添付を必要とすることといたしております。  委員会におきましては、鳥類保護に関する行政の基本姿勢と組織のあり方、民間団体の協力に対する助成、生育環境保全に必要な措置としての地区買い上げ、森林伐採の規制、猟区狩猟制の検討、アメリカ以外の諸国との鳥類保護条約の締結促進等をめぐって、活発な質疑がかわされました。  質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、五党共同提案にかかる附帯決議を付することにいたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  49. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  50. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。      —————・—————
  51. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 日程第一四 国際交流基金法案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。外務委員長八木一郎君。    〔八木一郎君登壇拍手
  52. 八木一郎

    ○八木一郎君 ただいま議題となりました国際交流基金法案につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。  本案は、わが国に対する諸外国の理解を深め、国際相互理解を増進するとともに、国際友好親善を促進するため、国際文化交流事業を効率的に行なう機関として、新たに特殊法人国際交流基金を設立し、政府からの百億円の出資と民間からの出資を合わせて基金の資本金とし、その運用益等によって、人物の派遣・招聘、日本研究、日本語の普及、文化的催し、文化資料の作成等の業務を行なわせようというものであります。  基金は、外務大臣の監督を受け、理事長、理事等の役員のほか、運営上の重要事項審議のため運営審議会を置くこととなっております。なお、財団法人国際文化振興会は、発展的に解消して、基金に引き継がれることとなります。  委員会におきましては、交流の対象となるべき文化の概念、基金の具体的な活動方針、他省庁の行なう事業との関係、基金の組織及び人事、資金増額の必要性と可能性等の問題について熱心な質疑が行なわれましたが、詳細は会議録で御承知願いたいと存じます。  五月二十五日質疑を終え、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して森委員より、「民間人をもって構成する運営審議会の意見を十分に尊重する」、「基金に引き継がれる国際文化振興会の職員の処遇については、あたたかく善処する」という政府答弁を信頼して、賛成する旨の意見が述べられました。  次いで、採決の結果、本案は、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告いたします。(拍手
  53. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  54. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって本案は可決されました。      —————・—————
  55. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 日程第一五 河川法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)  日程第十六 日本勤労者住宅協会法の一部を改正する法律案衆議院提出)  以上両案を一括して議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。建設委員長小林武君。    〔小林武君登壇拍手
  56. 小林武

    ○小林武君 ただいま議題となりました河川法の一部を改正する法律案並びに日本勤労者住宅協会法の一部を改正する法律案について、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず河川法の一部を改正する法律案についてであります。  本案は、都市地域における水需要の増大と、治水環境の悪化に対処し、河川管理者は、河川の流水の状況を改善するため、二以上の河川を連絡させる河川工事により、新たに流水を占用することとなる特別水利使用者に、その工事等に要する費用の一部を負担させることができること及び一級河川または二級河川の法定外河川についても、その管理の適正を期するため、準用河川制度の拡大をはかったこと等であります。  当委員会においては、きわめて熱心なる質疑が行なわれたのでありますが、その詳細は会議録によって御承知願うことといたします。  質疑を終了、別に討論もなく、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、附帯決議が付されております。     —————————————  次に、日本勤労者住宅協会法の一部を改正する法律案につきまして御報告いたします。  本法律案は、日本勤労者住宅協会の業務の改善をはかるものであり、その内容は、第一に、法令等の違反に対し、建設大臣が必要な措置を命ずることができるよう監督規定を整備すること、第二に、本協会について宅地建物取引業法の規定適用を除外すること、等であります。  委員会における質疑の詳細は会議録で御承知願います。  質疑を終了、討論もなく、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  57. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。  まず、河川法の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案に賛成の諸君の御起立を願います。    〔賛成者起立〕
  58. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。      —————・—————
  59. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 次に、日本勤労者住宅協会法の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  60. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。      —————・—————
  61. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 日程第一七 日本開発銀行法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長前田佳都男君。    〔前田佳都男君登壇拍手
  62. 前田佳都男

    ○前田佳都男君 ただいま議題となりました法律案は、経済社会の進展に即応するため、日本開発銀行の目的のうち、「経済の再建及び産業の開発」を「産業の開発及び経済社会の発展」に改めるとともに、同行の業務の範囲に、既成市街地の整備改善事業にかかわる資金の貸し付け及び産業の振興を促進する必要がある地域において大規模工業基地の建設事業を行なう者に対する出資を追加するほか、同行の借入金等の限度額を引き上げようとするものであります。  なお、本案は、衆議院において、法律の施行期日について修正が行なわれております。  委員会におきましては、日本開発銀行の融資方針、人事問題、借入金等の限度額引き上げの意義等を中心に質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。  質疑を終わり、討論に入りましたところ、嶋崎委員より、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党の四党共同の修正案が提出されるとともに、修正部分を除く原案に賛成する意見が述べられました。  修正案の内容は、日本開発銀行の借入金等の限度額について、原案では自己資本の額の二十倍とあるのを十倍に改めることであります。  次いで、嶋崎委員提出修正案及び修正部分を除く原案を順次採決の結果、いずれも多数をもって可決され、よって、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。  なお、本案に対し、戸田委員より、四党共同の附帯決議案が提出され、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  以上報告を終わります。(拍手
  63. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。  本案の委員長報告は修正議決報告でございます。  本案を委員長報告のとおり修正議決することに昭和四十七年五月二十六日賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  64. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決されました。      —————・—————
  65. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 日程第一八 公害等調整委員会設置法案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長柳田桃太郎君。    〔柳田桃太郎君登壇拍手
  66. 柳田桃太郎

    ○柳田桃太郎君 ただいま議題となりました公害等調整委員会設置法案について、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。  本法案内容は、第一に、中央公害審査委員会と土地調整委員会とを統合し、新たに総理府の外局として、委員長及び委員六人で組織する公害等調整委員会を設置し、公害紛争処理法の定めるところにより、調停、仲裁及び裁定、並びに鉱業等に係る土地利用の調整手続等に関する法律の定めるところにより、鉱区禁止地域の指定、鉱業権の設定に関する不服の裁定等を行なわせること、第二に、公害紛争処理法の一部改正を行ない、公害紛争にかかる裁定制度を設けること、等であります。  なお、本案は、衆議院において施行期日等について所要の修正が行なわれております。  委員会におきましては、公害の現状と本制度の重要性にかんがみ、公害対策及び環境保全特別委員会と連合審査を行なうなど、慎重に審査し、本委員会の性格と機能、委員の人選と委員会及び調査体制の拡充、地方公害審査会の権限強化、裁定制度のあり方、裁定制度と司法権との関係、基地公害の処理体制、責任裁定と原因裁定との関係、等の質疑が行なわれたのでありますが、その詳細は会議録に譲ることといたします。  本法案の質疑を終わり、討論に入りましたところ、水口委員は日本社会党を代表して反対、安田委員は自由民主党を代表して賛成、峯山委員は公明党を、岩間委員は日本共産党を代表して反対の旨を、それぞれ述べられました。  次いで、採決の結果、本法案は、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本法案に対し、自民、社会、公明、民社の四党共同提案にかかる公害紛争処理制度の実効性の確保についての五項目の附帯決議が全会一致をもって付されました。  以上をもって御報告を終わります。(拍手
  67. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  68. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。      —————・—————
  69. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 日程第一九 郵便切手類模造等取締法案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。逓信委員会理事森勝治君。    〔森勝治君登壇拍手
  70. 森勝治

    ○森勝治君 ただいま議題となりました郵便切手類模造等取締法案につきまして、逓信委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。  本法律案は、最近、真正な郵便切手類にまぎらわしい外観を有するものが製造、販売され、広く一般に流布されつつある実情にかんがみ、このようなものの製造、販売等を制限することにより、その行使による郵便切手類の偽造に関する犯罪を未然に防止するとともに、郵便切手類の信用の維持をはかろうとするものであります。  その骨子は、郵政大臣または外国政府の発行する郵便切手類にまぎらわしい外観を有するものの製造、販売等については郵政大臣の許可を要することとし、これに違反した者に対する所要の罰則を設けようとするものであります。  逓信委員会におきましては、本法律案の運用方針、切手ブーム対策等について熱心な質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  71. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  72. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。      —————・—————
  73. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 日程第二〇より第八六までの請願を一括して議題といたします。     —————————————   〔日程第二〇より第八六までの請願審査報   告書は都合により追録に掲載〕     —————————————
  74. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これらの請願は、各委員長の報告を省略して、各委員会決定のとおり採択することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 御異議ないと認めます。  これにて休憩いたします。    午後零時五十八分休憩    〔休憩後開議に至らなかった〕