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黒柳明君 私は、公明党を代表しまして、
米中共同声明、また
日中国交回復の問題につきまして、
総理並びに
関係大臣に
質問したいと思います。
いままでの
総理また
外務大臣の答弁を聞いておりますと、例の軽井沢の若い青年は、私、社会の非難を浴びる一種の
精神錯乱
状態ではなかったかと、こう思います。しかしながら、その
精神錯乱
状態は決してあの軽井沢だけではなくして、失礼ですが、高等
精神錯乱みたいな、こういうような気がします。私は逐次
質問をしていきますが、もっと冷静に、そしてきちっと、これからの
アジア平和を確立する、そういう佐藤内閣の使命を感じて判断をし、そして答弁をしていただきたいと、こう思います。また、すでにこの問題は国会におきまして数日来たびたび答弁されておりますものですから、私はできるだけ重複を避けて
質問したいと思います。そのために、こまかいことにまで
質問が及ぶかと思いますが、明快なる答弁をお願いしたいと思います。
今回の
米中首脳会談の歴史的
成果は、同時に、佐藤内閣の対
中国無策ぶりをまざまざと
国民の前に示したものであると思います。佐藤内閣が存在する限り
日中国交回復は不可能である、こういうことは、
中国側のこれまでの佐藤内閣相手にせずの
発言からも明らかであります。
日中国交回復の早期
実現を口にしながら、この
実現を妨害する
政策をとっている責任はきわめて重大であると思うのであります。しかも、
政府間交渉の用意があるが、
中国側がこれに応じな
いかのごとき態度を示し、
政府みずからの責任を
中国側に転嫁しようとしていることは断じて許されないと思います。
総理は、現実に佐藤内閣では
日中国交回復が困難であるとするならば、その政治責任を
国民の前に率直に明らかにしてもらいたいと思うのですが、この点、どのような御
見解を持っているか、お伺いします。
また、具体的問題について逐次お伺いします。いまも申しましたように、四次防においては二十日間という空転国会、佐藤内閣の無能ぶりを暴露し、また、国会再開とともに、
世界、そして私たち
日本の
国民的課題である
中国問題、なかんずく
台湾の地位についてたびたび
総理と
外務大臣の
見解が異なっております。ネコの目の変わるごとく、きょうとあした、一日のうちでも
見解が変わる。私は
総理のネクタイが毎日変わっているのを見るのは楽しい。しかしながら、この重要な
中国問題、しかも、
台湾の地位の問題についてこう
総理大臣と
外務大臣、また、
総理自身の答弁が何回も変わるが、
国民の皆さんがどうこれを判断し、非難しているか。ぜひともこの緊急重要な参議院の本
会議の
質問場で統一
見解を明らかに示していただきたい。
第二に、
政府は、
台湾が
中国領土の一部であることを認めながら、一方では、日米安保の極東の範囲に含まれているとしている。これは明らかに
矛盾であり、ごまかしであります。
総理の
見解をお伺いいたしたい。
第三に、
米中共同声明においては、
米軍は
台湾はじめ
アジアからの撤退を明記しておりますが、このことは、当然の帰結として日米安保の性格変更につながるものであります。この点をどう理解しているのか、明らかにしてほしいと思います。あるいは従来と変わらないと理解しているのか。また、このような流動的な
国際情勢のもとにあって、これまでのように全面的の米側の支援を期待できる、こう信じているのかどうか、お伺いしたいと思います。
第四に、
政府は、いまも
外務大臣が
お答えになりましたように、最近モンゴルの
承認、ハノイ、朝鮮民主主義人民共和国との接触等々、未
承認の社会主義諸国への接近を行なっているようであります。これは
中国からの何らかの反応を期待していわゆる迂回
外交を行なっているのかどうか、教えていただきたいと思います。
第五には、
日中国交回復の早期
実現をはかるための具体的な行動を
政府みずからがとる用意があるかどうかお伺いします。すなわち、少なくとも
台湾へのオーバー・コミットメントはすべてやめる、あるいは新規借款、民間投資などは見合わせるというような処置を行なうべきであると
考えるのでありますが、
見解をお伺いします。
さらに私は、日中備忘録弁事処員に何らかの
外交特権を与えるなどをもう検討してよいのではな
いか、こう思いますが、
総理のお
考えをお伺いします。
第六に、
政府は、昨日、対
中国輸出に対する輸銀使用を、ケース・バイ・ケースということでなくすべて認めることに決定しましたが、対
中国政府の前向きの
姿勢として一応私は
評価したいと思います。しかし一方、朝鮮民主主義人民共和国に対する輸銀使用は相変わらずケース・バイ・ケースである、こういう態度を保持すると言われておりますが、朝鮮民主主義人民共和国のみを差別する理由は、
アジアの
緊張緩和の潮流からいって、全く理由ないものと言わざるを得ません。この点、明らかにしていただきたいと思います。また、たとえ輸銀使用を認めたとしても、吉田書簡がある限り
中国側の反応が期待できないのではなかろうか。吉田書簡について
政府は、すでに死滅したものである、廃棄すべきであるとかないとかという性格のものではない、こうしております。しかし、
台湾政府は明らかにこれに相反する態度を示しており、また、
中国側もこの廃棄を要求しているのであります。このような種々の問題を提起している吉田書簡に対しまして、
わが国政府が何らかの処置、公式
声明を行なうべきであると思いますが、その
考えがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
第七には、
中国との人的
交流の拡大をはかるべきことは当然でありますが、伝えられております、陸連も
中国招聘を意図していると、こういわれておりますが、
政府はこれを認めるかどうか、教えていただきたいと思います。
第八番目の問題は、
わが国の
軍事力増強
政策についてであります。
日本軍国主義復活との
わが国に対する非難は、
アジア諸国だけではなく
世界に広がりつつあることは、もう言うまでもありません。これは
アジアの
緊張緩和に逆行するものと言わざるを得ません。これを払拭するためにも、いわれなき非難などという
政府の口先だけの弁解だけではなく、事実をもって行なうべきであります。すなわち、無制限な
軍事力増強
政策をやめ、自衛力の限界を明確にするとともに、絶対四次防の中止をすべきだ、私はこう思うものでありますが、所信を承りたいと思います。
また、今回の
米中接近は、これまで、核兵器は攻撃的兵器ではなくむしろ
戦争抑止力になりつつあると言われておりましたが、このことを如実に示したものであると思います。核保有国は、その核保有によって
経済的な負担を余儀なくされ、必ずしも核を保有するがゆえに
大国であるとは言えなくなってきた、こういうことが専門家の間に言われておりますが、この点について
総理は、
わが国も核を持つのではなかろうかという、こういう危惧も
世界から受けておりますが、どう
考えているか、お伺いしたいと思います。
ニクソン大統領は、今回の
訪中に引き続いて、来たる五月には
ソ連を訪問することになっております。そこで、
総理は
アメリカ政府に対しまして、米・中・ソ、さらには英仏を加えた核保有国の核軍縮
会議を開くよう強く要請すべきであると思います。このことは、
さきの国会における非核三
原則をさらに一歩前進させるとともに、核軍縮への積極的な
姿勢を示すことになると思うのでありますが、その
考えがあるかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
また
政府は、日米
安保体制のもとでこれまで
アメリカの核のかさの
論理を強調してまいりましたが、いずれの国の核の脅威に対しこの
論理を展開してきたのでしょう。あるいはこれを展開していくのでしょう。
中国か、
ソ連か、イギリスか、フランスなのか、それとも他にあるのかどうか、説明していただきたいと思います。
さらに、けさの朝刊——一部の新聞に報道されておりましたように、元
米軍の空軍曹長が米本土から横田
基地に核を運んだ、こう証言しております。そのときの状況証拠を具体的に述べた、これが列記されております。これは、私たちが、昨年末の沖繩国会におきまして、ちょうどこの米空軍曹長の証言と同じように、
昭和三十五年から三十八年回時期に横田
基地に核が持ち込まれた、こういう事実資料を入手しました。そして
さきの沖繩国会において
政府の
見解をただし、そのときの答弁は非常にあいまい、むしろ、否定をするようなものでありました。しかしながら、十二月二十九日私が
指摘しましたように、絶対あってはいけない致死性の毒ガスすらすでに横須賀に持ち込まれ、佐世保に行っていることも、まだ
政府の手では解明されておりません。しかも、いままた、核爆弾は横田ないし数カ所に持ち込まれた、こういう証言がなされようとする。しかも、私たちの資料においてこの事実
関係がさらに裏づけされようとしている。
総理は、このような状況をどう判断されているか。また、もしこの客観
情勢というものが具体的に証拠資料として事実
関係が明らかにされたときには、
総理は政治責任をどうとるつもりか。この席で、まず、その判断、
見解をきちっと表明して、やがては、私たちも、これから展開される委員会でこの問題を詰めていきたいと思います。
さらに、一九六九年の佐藤・
ニクソン共同声明におけるいわゆる
台湾条項、韓国条項については、これまでいろいろ論議されてきましたが、何ら
政府は明確な答弁を示しておりません。そこで現在も、
さきの沖繩返還協定の
前提となっているこれら
共同声明の中の
台湾、韓国に対する
認識は変わっていないのかどうか。日米両
政府はともにこの
認識に現在も立っているのかどうか明らかにしていただきたいと思います。もし状況が現在は異なるというならば、
いかなる
認識を持っていられるかもお教えいただきたいと思います。
最後に、今回の
ニクソン訪中によって
アジアの
緊張がすべて
緩和されたわけではありません。今後の
米国の
姿勢によってこれはきまると言えます。しかるに、
日本政府の海外援助の中には、
アジアの平和のために大きな問題を投げかけているものが、いままでの国会においてしばしば
指摘されております。たとえばラオスの問題であります。
政府はビエンチャン市ワッタイ空港の整備に対して、
昭和四十四年から現在に至るまで、三期に分けまして七億九千万円という多額の資金を使って空港整備をしております。すでに
昭和四十四年の時点においてもここにはラオス空軍機T28が活躍しております。現在も活躍しております。完全に常識的には空軍
基地になっております。しかし、
政府がここに無償援助をした時点においてのラオスとの交換公文は、民間ジェット機の乗り入れのためと、こう書いてあります。現在民間のジェット機ではありません。プロペラ機は週一回しか就航しておりません。あとはこのビエンチャン飛行場を
中心に、言うまでもなくホー・チミン・ルートの切断、あるいはジャール平原の爆撃、これが絶えず行なわれておるわけであります。
政府は、こういうやり方の無償援助すなわち軍事援助そのものであるという援助に対して、四十四年の時点、さらに四十五年における国会での答弁では、それを是認するかのような態度でありますが、現時点においてさらにこの援助を続けていく
必然性があるのか。私はそうではないと思います。ある
意味においてはベトナム戦介入を
日本政府が助けた、こういう疑惑を持たれ、
アメリカ政府からの圧力によるのではなかろうかということも、私は一〇〇%肯定したくありません。そういう疑惑を持たれるこういう援助に対しては、すみやかに
政府の賢明なる処置をとっていただきたいと思うとともに、今後は絶対海外に対する軍事援助的なものを一切排除し、そしてこの流動的な
世界情勢に
対処するため、佐藤内閣が自主
外交を力強く展開していただくことを希望して私の
質問にいたしたいと思います。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕