○阿
具根登君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
佐藤総理の
施政方針演説に対し質問をいたしたいと思います。
昨年は、
日本政府の頭越しに
ニクソン大統領の
訪中計画が発表され、続いて
国連総会では、中国が
国連代表権を回復し、
国民政府を追放する
アルバニア決議案が圧倒的多数で可決成立し、
国際情勢が大きく変化した年であります。この間、明らかになったことは、米国の
中国封じ込め政策に追従して
中国敵視を続け、中国の
国連代表権回復を最後まで妨害しようとした
佐藤内閣の
中国政策が完全に行き詰まり、世界の大勢から取り残されようとしているということであります。また、一九六九年の佐藤・
ニクソン共同声明は、
日中関係の打開を困難にした上、
沖繩返還協定は、この
日米共同声明を基礎にするとうたっておりますが、
特殊部隊まで含めた膨大な
米軍基地をほとんどそのまま存続させ、さらに、本土よりも強力な自衛隊を配備するという
沖繩返還方式が、いまや
アジアと極東の
緊張緩和にそぐわないものであることも明らかであります。総理は、
新春早々、
サンクレメンテにおいて二日間にわたって
ニクソン大統領と会談されたが、総理がこの会談でなすべきことは、最小限一九六九年の佐藤・
ニクソン共同声明での韓国及び
台湾条項を削除して、極東の
緊張緩和に努力することを明らかにすること、また、沖繩の核基地の
即時撤去はもちろんのこと、
沖繩米軍基地の
全面撤去を目ざした
基地縮小計画の実現に努力することであったと思います。そして
佐藤内閣の最後の仕事として、国民のために、
佐藤内閣が
外交政策上の見通しを誤った点を修正して、引退の道を考えるべきであったと思うのであります。だが、
サンクレメンテ会談後の
共同声明からは、新たな
国際情勢に対応した
日本外交の自主性は見出されず、旧態依然たる対
米追随の姿勢しか感じられません。私は、まず総理に対して、世界が
緊張緩和の方向へ大きく
歩み出し、多極化しているこのときに、一体、
日本外交は
米国追随の従来の
外交路線をどう修正されようとするのか、これからの外交の
基本姿勢をただしたいのであります。
次に、去る一月二十七日発表された日
ソ共同声明による双方の
友好関係の増進が
アジア・世界の
平和強化に貢献し、一歩前進であることは認めますが、何よりも北方領土問題を根本的に解決する条件を早急に整えるべきであり、そのためにも、
日米安保体制強化の態度を改めるべきであると思います。
さらに、総理は
サンクレメンテにおいて北方領土問題の解決を
ニクソン大統領に依頼したともいわれておりますが、あまりにも自主性のない対
米追随の態度には、ソ連からも非難を受けているではありませんか。これについて総理の考え方をお伺いいたします。
第二に、総理は、「沖繩が返らなければ戦後は終わらない」と言っていたが、今度は、「北方領土が返って初めて戦後は終わるのだ」と言い始めております。が、
総理自身、最も大切なことを忘れておられるのではないかと思います。それは
日中関係であります。日本と中国との間の
戦争状態は正式には終わっておりません。これが終わらない限り、戦後は終わったなどとは言えないはずであります。わが国は、戦後二十六年間も放置してきた中国との
戦争状態をまず終結させるべきであります。そして中国が
国連代表権を回復し、
台湾政府が国連から追放された以上、すみやかに中華人民共和国が中国を代表する唯一の政府であることを認め、
日華条約を廃棄して、
日中国交回復を実現すべきであります。
さらに、今度の
藤山処分につきまして、衆議院のきのうの答弁によれば、それは党内の問題だと答えられております。総理の考えは一体どうなのか。もしもそれが正しいとすれば、口で
日中国交回復を叫びながら超党派の
日中国交回復促進議員連盟の会長を処分することは、片手で握手を求めて足げにするようなものだと思いますが、
佐藤内閣は真剣に
日中国交の回復を実現しようとする意思があるのかどうか。おそらく
佐藤内閣ではこれはできないことでありましょう。できないならば、
佐藤総理はすみやかに退陣すべきであります。なぜならば、
佐藤総理が退陣することこそ、
日本国民の大多数が熱望しておる
日中国交回復の実現に道を開くことにつながるからであります。(拍手)
第三は、沖繩の
核兵器撤去の問題であります。
今回の
日米共同声明では、「沖繩における核兵器に関する
米国政府の確約が完全に履行された旨の確認を返還の際行なうとの
米国政府の意向を大統領が明らかにした」と言いますが、その確認の方法は具体的にはどういう方法なのは、お伺いをいたします。
われわれは、
日本政府の調査、点検によって核兵器がないということを確認せよと主張してきましたが、そのようにするのかどうか。核兵器はない、しかし調査、点検はさせないというのでは、やはり、あるのではないか、隠しているのではないかという疑問が起こるのは当然であります。調査、点検もせずに、政府の言うことを信頼しろと言っても、それは無理であります。戦争中、
日本国民は
大本営発表でだまされ続けてきました。かつて悲惨な戦争に敗れたとき
日本国民は、二度と再び
大本営発表にはだまされないぞと思ったはずであります。この国民の気持ちこそが平和を守る基礎であります。特に核兵器については、さきの
臨時国会でわが党議員が明らかにしたように、沖繩だけでなく本土の
岩国基地にも持ち込まれた疑いが濃厚であります。沖繩をはじめ本土の
米軍基地を含めて、政府の責任において核兵器の調査、点検を実施すべきであります。総理の明快な御答弁をお願いいたします。
第四に、今回の
サンクレメンテ会談で、一九六九年の
日米共同声明にある、韓国及び台湾の安全がわが国の安全にとっても重要だという認識ははっきり消滅したのかどうかを、この際明らかにしてほしいのであります。この条項は、さきにも触れたように、
日中関係打開の障害となり、
アジアと極東の
緊張緩和に逆行することは明らかであります。今回の
日米共同声明は、一応「流動しつつある現下の
世界情勢において、
緊張緩和へ向かう動きがみられることを認める」と述べており、総理は
記者会見で、
台湾条項は事実上なくなっていると言っていいと答えておりますが、なおあいまいであります。特に総理の
記者会見後、
福田外務大臣が、この総理の
記者会見での答弁を訂正するがごとき発言をしておられるのであります。いやしくも一国の総理の公式の
記者会見での発言が、
外務大臣にあとから訂正されるというのは不見識であります。しかも、これはきわめて重要な発言であると思います。総理が間違ったのか、
外務大臣が間違っておるのか、この際明らかにしてほしいのであります。総理は「現下の
世界情勢において
緊張緩和へ向かう動きがみられる」と言うが、この
緊張緩和への動きを促進しようとするのか、それとも、これに逆行しようとするのか。
緊張緩和を促進しようとするのであれば、いかなる努力をしようとするのか、それを明らかにすべきであります。
さらにまた、
朝鮮人民との
平和友好関係が確立されない限り戦前からの
朝鮮人民圧迫の悲しい歴史は終わらないということも、この際はっきりと認識しなければなりません。そのためには、
朝鮮人民の
自主的統一を阻害する一切の政治的、
経済的行動を中止すべきであります。
朝鮮民主主義人民共和国との経済、文化の交流を促進するとともに、
在日朝鮮人に対する一切の
差別政策をやめ、その民族的、
民主的権利を守るべきであります。
また、先般の
超党派議員団の
朝鮮民主主義人民共和国への渡航に際しては、自民党が
幹事長名で
自民党議員を阻止したことなどは、まさに逆行であると思うがいかがでしょうか。
なお、一月十八日、
通産大臣は、中国への
輸銀使用については申請があれば認可すると表明されましたが、これは従来の
うしろ向きの態度を改めたものと解釈していいかどうか。さらに、総理も
通産大臣と同じ考えかどうか、それを承りたい。
しかし、問題は、
輸銀資金の使用をなしくずしに認めればよいというものではないという点にあります。中国は
吉田書簡の廃棄を求めております。これなくしては
輸銀資金使用の問題は実際のところ解決できないのではないでしょうか。政府としては、これまでのようにその
法的性格を云々して逃げるのでなく、
政治的発言としてその無効を声明すべきであります。総理は、先般の私の
緊急質問に対して、
吉田書簡は個人的のものであり廃棄はできないと言われたが、この書簡のため、
池田内閣の中国との前向きの姿勢にストップがかけられ、それより七年余、現実に
吉田書簡は生きているのであります。もし総理が
日華条約を廃棄できないというのであれば、せめて在任中に
吉田書簡を廃棄して、
日中国交回復への意欲のあかしとすべきであると思いますが、いかがお考えですか。この問題につきましては、
福田外務大臣、
田中通産大臣にもお尋ねいたします。
次に、内政問題についてお尋ねいたします。
第一は
福祉政策についてであります。政府は、昭和四十七年度予算は
福祉優先の予算であると宣伝し、
予算編成の過程では、四次
防計画の延期あるいは
大幅削減の必要性も伝えられました。ところが、最終的にまとまった
政府原案はどうか。
防衛費は
自衛隊発足以来最高の伸びとなり、第四次
防衛力整備計画は閣議の
正式決定さえも行なわれないまま実質的に予算に組み込まれ、四次防の
目玉兵器がずらりと頭を並べております。
防衛予算の伸び率がこのまま続けば、五兆八千億円の四次
防計画は、削減どころか、逆に一千億円程度の超過をするという
軍事優先予算であります。その陰で
福祉予算は一体どのように扱われているか。昭和四十年代における予算額に対する
社会保障費の構成比を見ますと、常に一四%台で推移しております。さらに、
社会保障関係の平均の伸び率で見ましても、三十年代の
池田内閣が二〇%をこえていたのに、四十年代の
佐藤内閣のもとでは一七%に落ち込んでいることを見るならば、国民の福祉を軽視したのは
佐藤内閣自身だと言えるのではないでしょうか。
さらに、福祉の概念を広く考え、
社会資本整備による暮らしよい社会の建設というふうに考えた場合、
公共投資の伸び率は
池田内閣より
佐藤内閣のほうがこれまた落ちております。口では
社会開発や
社会資本整備を唱えられても、実行が伴っておりません。
福祉優先を言わなければならないほど貧しい社会をつくった大きな原因は、実に
佐藤内閣の
政治姿勢そのものにあったと断言できるかと思います。そこで、四十七年度予算を見ますと、
福祉優先予算というキャッチフレーズを掲げておるにもかかわらず、その
社会保障費の構成比は依然として一四・三%であります。何ら前進は見られないのであります。これがはたして
福祉優先の名に値するものでありましょうか。世に「大砲かバターか」ということばがありますが、私の見るところ、大砲の砲身の上にわずか半ポンドのバターがそっと置かれているくらいにしか見えないのであります。そもそも福祉とは何か。
佐藤総理にはそれが全くおわかりになっていないと思われるのであります。これを
福祉優先予算と強弁されるのであるならば、かつて「福祉なくして成長なし」という名言を吐かれた当の
佐藤総理並びに
大蔵大臣の見解をお伺いしたいのであります。
政府が
福祉対策の目玉だと宣伝しておる七十歳以上の
老人医療無料の政策は、すでに全国で三十にも及ぶ地方自治体で実施しておるものをようやく政府が取り上げたものであって、むしろおそきに失するものであります。しかも、わずか九十六億二千九百万円の予算しか組まず、実施は四十八年一月からとされており、きわめて消極的であります。これでは、定年から七十歳までの医療はだれが見るのか、それが問題であります。日本人の
平均寿命は男子六十九歳であります。また、老人の
健康診査は六十五歳からとなっておるではありませんか。七十歳からだとする根拠を
厚生大臣並びに
大蔵大臣に示していただきたい。
そして、一方では
医療費値上げを行なって国民の負担を増大させようとしております。政府が
ほんとうに
国民大衆の立場に立った
福祉政策をとるのであれば、人間の最も大切な命と健康にかかわる医療については、本来無償でかかれるようにすべきであります。しかるに政府は、初診料や入院料の
値上げによって、病気になっても医者にもかかれないような条件をつくり出しております。これが政府の言う
福祉優先の
ほんとうの中身であり、金持ちと
有産階級には福祉が金で買えても、
国民大衆には買えないという、まことにひどい性格の
福祉政策と言わざるを得ません。
また、
軍人恩給を例にとりますと、
物価上昇率を考慮して恩給を一〇・一%
引き上げたと言われるが、
軍人恩給だけはそのベースを上回り、総理府の要求を二十三億も上回る
優遇措置をしております。
軍人恩給は毎年
使い残りになっているということを総理、
大蔵大臣は御存じでしょうか。何ゆえに
軍人恩給だけを特別に優遇するのか。
軍人恩給関係費は総額約三千億円に達し、
軍関係者には数十万円の恩給を出しながら、一方で
老齢福祉年金は、老人の心からなる願いをはるかに下回る月額たった三千三百円であります。これでも
福祉重点予算と言えるものでありましょうか。
医療費引き上げなど、安易な国民への
負担転嫁を避けるべきであると思いますが、総理並びに
厚生大臣の答弁をお聞きしたいのであります。
次に、
社会保障計画でありますが、政府はいまだかつて
社会保障計画を公表したことがありません。このことは全く政府の怠慢と言わざるを得ないのであります。
経済審議会は、昭和四十二年二月、
経済社会発展計画の中で、わが国の
経済社会の実態とその将来の進路に即した適切な
社会保障長期計画を策定し、これに基づく
体系的整備を行なうことが不可欠であると述べておるのでありますが、その後においても依然として
社会保障計画は提出されておりません。思いつきや
びほう策ではとうてい
社会保障の発展はなく、計画なきところに
充実整備はないのであります。
人間尊重の上に立って
福祉国家の繁栄と発展を遂げるためにも、当然、
長期展望を示すことが
重要課題であります。政府はこの際、
社会保障長期計画を策定される意思があるかどうか、お伺いしたいのであります。
さらに、
社会保障の
国際的見地に立って見るとき、ILO第百二号条約、すなわち、
社会保障制度の
最低基準の条約は、すでに一九五二年に採択され、わが国はすでに批准のできる条件を備えておると思いますが、いまだに批准しておりません。さらにその他第百二十一号及び第百二十八号、第百三十号等、
社会保障関係条約が相次いで
ILO総会で採択されておるのであります。わが国の
社会保障水準が先進国に比較して今日十数年おくれておる現状を見るときに、
国際水準に近づけるためにも、早急にこれらの条約を批准し、
社会保障制度の前進に対する政府の決意を示すべきであると思いますが、
総理大臣及び大蔵、
厚生大臣の御所見をお伺いいたします。
内政問題の第二は、
経済政策の
基本姿勢についてであります。
佐藤内閣のもとにおける
高度成長政策は、内においては
全国各地に公害及び自然と人間の破壊を引き起こし、外においては、なりふりかまわぬ輸出第一主義がエコノミック・アニマルの非難を浴び、円の
切り上げと不況の長期化を招いたのであります。この際重要なことは、
経済政策の基本を、大
企業本位の生産第一
主義政策から国民の生活と
福祉優先の政策に切りかえることであります。低賃金と低福祉、
公害たれ流しのままで輸出第一主義を続けるならば、たとえ今度のように予想以上の大幅な
円切り上げを行なっても、やがて再
切り上げに追い込まれることは明らかであります。しかるに、政府の来年度予算案を見れば、依然として
福祉優先は単なる看板で、実は
国民生活軽視の姿勢が明らかなのであります。
その第一は税の面についてであります。政府の
高度成長政策のもとで優遇され、多くの利潤をあげてきた大企業に対して、さらに
円切り上げに伴う
為替差損を補償しようという態度であり、また、大
企業中心の
景気刺激政策をとるために実質的な
赤字国債を大量に発行して
インフレのおそれを増大させ、
国民生活を圧迫しようとする態度であります。
円切り上げによって発生した企業の
長期外貨建て債権の
為替差損は四千億円と見積もられておりますが、そのうち二千八十億円は税金面で優遇し、さらに金融面でも
救済措置をとり、全体の三分の二を救済するというのであります。それなら、一方で
外貨建て債務の
為替差益のほうはどうなるのですか。昨年九月の
衆議院大蔵委員会で
通産大臣は、企業の
外貨建て債務は約一兆一千億円あることを明らかにし、
水田大蔵大臣は、かりに将来
為替差益の出る企業があれば課税を強化すると答えているのでありますが、こちらのほうは一体どうしたのか。一兆一千億円の債務ならば、一六・八八%の
円切り上げによる差益は一千八百億円をこえるはずであり、決して少ない額ではないのであります。いままで
高度成長政策で大きな利潤をあげ続けてきた大企業に対しては、
為替差損だけは大幅に救済し、多額の差益については放置するというのでは、国民は納得することができないのであります。このような大企業の圧力に屈したやり方は改めるべきだと思いますが、総理及び大蔵、
通産大臣の答弁を求めます。
そうした大
企業優遇の
租税政策と対照的なのは、四十七年度
所得税減税なしという
勤労者重税の
佐藤内閣の姿勢であります。
所得倍増計画以来、政府の
インフレ政策の罪滅ぼしの意味もあって、過去十七年間
物価調整減税を行なってまいりましたが、四十七年度はやらないというのでは、国民は納得いたしません。さらに、昨年十一月の
ドルショック脱出をねらった四十六年度
補正予算の提出にあたっては、
公共事業の拡大より減税のほうが
景気浮揚効果が大きいとの
佐藤総理のお
声がかりで
所得税減税が行なわれたと伝えられております。四十七年度予算が
景気回復を
最大目標として編成されたという政府の説明とこの減税ゼロの政策は、
景気対策の面でも支離滅裂ということになると思うのですが、総理並びに
大蔵大臣の所見をお伺いいたします。
さらに、今日国民の間に高まっておる、税が重過ぎるとの声は、実は
税そのものが重いということもありましょうが、より重大なことは、課税の不公平と納める税のわりに国からのサービスの提供が少な過ぎるというのが国民の重税感の真の原因ではないかと思うのであります。したがって、税の不公平を是正し、法人税の適正化、
租税特別措置の改廃などを通じて、取るべき税金を取ることによって
租税構造そのものの硬直化を打開するとともに、それらの税の増収分を、物価高の中で
実質増税に苦しむ勤労者の所得の
大幅減税に充てるべきであります。このことによって、本来の意味での
景気浮揚効果も期待し得ると思います。また、土地の
大幅値上げによって、労せずしてばく大な所得を得ておる大
土地所有者からは
土地増価税を取ること、さらに、土地を投機の対象として
大量買い占めを行なっておる大企業に課税すること、また、年間一兆円をこえる企業の交際費に対する課税を強化すること等も行なうべきであると思います。
そして、その第二は、
福祉優先にとって喫緊の課題である物価安定がなおざりにされておることであります。政府みずから
公共料金を一斉に
引き上げて
物価上昇に拍車をかけようとしておるのであります。
国鉄運賃は四十七年度に旅客二三・四%の
引き上げを行なうだけでなく、今後も三年ごとに三回の
値上げを行なうこともきめており、なお、
郵便料金もきめており、医療費一三・七%の
引き上げを本日から行ない、
国立大学の授業料は三倍の
引き上げを行なおうとするほか、
電話料金は三月から
値上げ、さらに
消費者米価の
物価統制令適用を廃止しようとするなど、不景気の中での
物価値上げの大パレードであります。
一体総理は、これだけ
公共料金を
引き上げて、来年度の
消費者物価上昇率が、
政府経済見通しでいう五・三%のワク内にとどまるものと本気で考えておられるのかどうか、お答えを願いたいのであります。
さらに、大規模な
公債発行による
公共事業の拡大によって地価の加速度的な高騰は必至であるといわれております。しかるに、
地価抑制に対して政府は何ら積極的かつ効果的な対策を講じようとしておりません七
地価高騰と
公共料金の一斉
引き上げが
物価上昇に拍車をかけ、
国民生活を圧迫するであろうことは火を見るよりも明らかであります。政府は、
物価抑制のために率先して
公共料金の
値上げを押えるとともに、
不況カルテルなどによる大企業の
独占価格を規制すべきであると思いますが、総理並びに
大蔵大臣の御答弁を願います。
なお、最近
大蔵大臣はデノミネーションの実施を示唆しておるが、
円切り上げが明確でなかった時点においてはデノミの実施の可能性を打ち消しておきながら、
円切り上げを実施した今日、急にまたデノミの必要性をうたい上げているその真意はどこにあるのか。これに対する総理及び
大蔵大臣の見解をお伺いしたいのであります。
次に、
佐藤内閣の
政治姿勢についてお尋ねしたいのであります。いま
アジア諸国の間に、日本が
経済大国から
軍事大国になるのではないかという疑問が起こり、日本の
軍国主義化に対する非難の声が高まりつつあります。これに対し政府は口先だけで
軍国主義化を否定しておりますが、これは口先だけでなく具体的な事実をもって答えなければならない問題であります。
まず第一に、八千億円をこえる
大型防衛予算を組んで四次
防計画を実質的に発足させた姿勢が問題であります。
第二は、その中身であります。四次防の目玉といわれるRF−4
E偵察機は、
渡洋能力を持つ
遠距離偵察機であり、このほか、超
音速練習機や、一機三十億円もする
大型輸送機をはじめ、戦車、装甲車、潜水艦など、その功撃力は質的にも大きく高められようとしております。すでに、戦前の
帝国陸海軍よりもはるかに強力となり、世界で六、七番目の
戦闘能力を持つといわれる自衛隊がさらに攻撃力を強化して、一体どこへどうやってその戦闘力を使おうとしておるのか、それを明らかにしてほしいのであります。専守防衛を強調する政府が、かくも強力な
攻撃的兵器を装備しなければならない必要性を国民は全く納得できないのであります。さらに、日本の
軍国主義化の危険に対する
アジア諸国民の非難を解消することも不可能であります。われわれは、
アジアと世界の緊張を緩和し、平和を目ざすためには、かかる軍備の増強は不必要であるのみならず有害であるとさえ考えるのであります。
アジアの
緊張緩和の動きを促進するためには、
平和的外交手段による努力を積み重ねるべきであり、四次防を中止し、
防衛費を削減し、
非核武装宣言と沖繩の非
軍事化決議を行なって、
アジア諸国民からの
日本軍国主義化の非難を解消させ、平和・中立の
外交政策を積極的に展開すべきであると思います。
日本国憲法は、
日本国民は、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われわれの安全と生存を保持しようと決意した、と述べております。軍事力にたよって安全を維持しようとはいっていないのであります。総理が真に
世界情勢に
緊張緩和の動きが見られると考えるならば、そしてその動きを促進しようと思うならば、いまこそ
日本国憲法の精神に立ち返るべきだと思うのであります。さらに、
軍国主義化の非難は、単に軍事力の増強に対してだけいわれておるのではないということを指摘したいのであります。
また、昨年の国会において、
沖繩返還協定の成立をはかるために政府・自民党が衆議院で行なった問答無用の強行採決は、まさに議会制民主主義を破壊する暴挙であり、このような憲法に基づく民主主義の制度を骨抜きにしようとする
政治姿勢が、
軍国主義化の危険性を指摘されるゆえんでもあります。
佐藤内閣ぐらい、
総理自身の任命した閣僚が憲法の精神に違反する発言をしたり、国連を誹謗する発言をしたりして問題を引き起こした内閣はないでしょう。これらは
佐藤内閣に憲法を守ろうとする気持ちが欠けているために起こるのだと言わざるを得ません。(拍手)
また、議会制民主主義を守り、国権の最高機関である国会の権威を高めるために、強行採決のごとき暴挙は二度と繰り返さないことを約束すると同時に、国会の審議権を尊重して、いやしくも行政権が国会の立法権を狭め、これを侵すようなことは厳に慎むことを明らかにすべきであります。
特に、昨年、参議院においては、議長、副議長の党籍離脱が実現し、強行採決を行なわず、慎重審議を尽くすという方向を一歩進めております。これを前進させるために、参議院からは大臣、政務次官等を出さず、参議院の権威を高めていくべきだと考えますが、いかがでございますか、御答弁を願います。
最後に、
佐藤総理の
施政方針演説とそれに対する代表質問は、おそらくこの国会が最後になるだろうといわれております。
佐藤総理が掲げた公約は、
人間尊重にせよ、ひずみの是正にせよ、いずれも公約倒れに終わっておりますが、せめて一つだけでも今国会で実現させてほしいと思うのは、政治資金規正法の改正であります。
かつて総理は、審議会答申については、小骨一本抜かないと大みえを切ったはずでありますが、その公約も不履行のまま、沖繩恩赦と称して、悪質な選挙違反者を大量に免罪して、政治に対する国民の不信感を一そう強めて退陣しようとするのか、それとも国民の政治に対する信頼を回復させ、わが国の民主政治を守る道を選ぶか、総理の決意をお伺いして私の質問を終わるものであります。(拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕