○原田立君 私は、公明党を代表いたしまして、
政府提案になる
沖繩の
復帰に伴う
特別措置に関する
法律案外三
法案、一
承認案件に対し、
反対の
討論を行なうものであります。(
拍手)
政府は、かねてより、核抜き・
本土並み・一九七二年
返還の三本柱を立てて、その
実現を公約いたしてまいりました。しかるに、いままでの審議過程で明らかになったことは、全くのごまかしであるということであります。
沖繩県民はもとより、
国民全体が最大の
関心を持って注目していた核抜き
返還について、
政府は、撤去費の七千万ドルを入れてあるからなくなるとか、米高官が
復帰時にはないようにすると言明しているから信用する以外ないと主張しておりますが、全くナンセンスなことであります。たとえば、核は、いつどのような方法で運搬されるのか、撤去後の点検確認はできるのか、
返還された後再び核持ち込みはないのか等については明確にされないままにされているのであります。また、
本土並み返還ということも、
本土と同じような規模にまで
米軍基地を縮小されなければならないはずでありますが、わずか一八%の
返還は、
沖繩本島に実に
本土の二百八十倍もの
基地機能を残すことになっております。中でも、
沖繩本島中央部にある知花弾薬庫、嘉手納飛行場の
返還がなされないことは、
沖繩復興のために最大の障害となっております。このような状況にしておいて何で
本土並み返還かと言いたいのであります。核抜き・
本土並みになっての
返還こそ真実の
県民希望であります。私は言いたい。ものごとは
返還に臨んでの
出発点が大事だということであります。
沖繩県民の多くの方々は、今度の
返還を喜ぶべきか、悲しむべきか、不安と不満に迷っておるのであります。
去る六月に行なった琉球新報による
世論調査によると、「
復帰不安を感じる者」実に六四・八%、不満とする者四七・六%。不満の
理由として、「核抜き・
本土並みになるとは思えない」が三四・九%、「
基地の縮小・撤去の見通しがない」と言った者二三・五%。さらに、「
協定調印で平和で豊かな時代へ第一歩を踏み出せるか」との問いに対しては、「
沖繩は今後も苦難の道を歩む」とした者四三・二%、「これですべてよくなる道が開けた」とする者はわずか一〇・二%であります。また、「
本土政府の
復帰対策をどう思うか」との問いに対しては、「もっと調整が必要である」とした者が四四・八%、「要望が全く取り入れられず一方的に処理されている」というのが一九・二%と、不満を感じる者が実に六四%にもなっているのであります。「
沖繩の要望が全部受け入れられている」と答えたのはわずかに一・二%であります。どれをとってみても、不安と不満とを持っているのが
沖繩県民全体の偽らざる心境であります。
終戦後二十六年、やっと
沖繩の同胞が心待ちにしてきた
本土復帰が
実現しようといたしております。長い間の異
民族支配下の
屈辱、
軍事基地という恐怖におびえながらの毎日の
生活、働く場所もなく、やむなく
基地労務者として働かなければならないつらさ、また、特殊な第三次産業の発達等々、これらの御苦労は言語に絶するものがあったでありましょう。一日も早く
本土に
復帰し、平和で豊かな
沖繩に明るい楽しい
生活を築こうと願ってきたのに、
現実はあまりにも
沖繩県民の心を踏みにじっているということであります。米
軍事基地の存続、
VOAの継続使用、銃剣を突きつけて取り上げた
土地を、返すどころか、
法律をもって合法化し、そのまま使おうとするがごときは、病人をむち打つやり方であります。
政府の意図する
返還は、見せかけの
返還であり、その
内容はあまりにも欺瞞的なものと言わざるを得ないのであります。
沖繩県民が真に望むものは、平和で豊かな島としての
返還であり、
基地のない、だれにも抑圧されない島としての
返還であります。ところが、
政府・
自民党は、
沖繩を極東軍事戦略の重要
基地として機能を強化させようとしており、戦争の恐怖、原爆のおそれを与えようとし、あまつさえ、
復帰後は
自衛隊六千八百人を
沖繩に派遣しようとしているのであります。
沖繩の出発は、あの忌まわしい戦争につながるものであっては断じてならない、反戦平和の出発でなければならないと思うのは私ばかりではあるまいと思うのであります。
私は、この基本的な姿勢において、
政府提案になる四
法律案、一
承認案件に対し、失望と
怒りの思いをもって、以下五点にしぼり
反対の
理由を述べるものであります。
まず、
反対理由の第一点は、公
用地暫定使用に関する件であります。
先ほども申し述べたとおり、終戦後銃剣でおどし取った
土地を、今回再び地主の許可を取りつけられない状況のもとで、強制的に五年間にわたって使おうとすることであります。
政府は、三万五千余の地主と交渉するのが困難だという
理由で、一方的に
憲法違反の
軍用地確保
法案を押しつけたのであります。これは全くのごまかしであり、不法であり、断じて認めるわけにはまいりません。一日も早く
土地を返してくれと叫んでいるのが
沖繩県民の心からの
願いであります。第二条第一項では、
土地の
所有者や
関係者の意向とは全く無
関係に、
本土政府が強制使用の対象となる
土地、
施設などをきめれば、
返還協定発効と同時に、自動的に一方的にその
土地などの使用権は国に取り上げられることになっているのであります。また、同じく第二条第二項では、通知、公示がきめられているが、これも通知もしくは公示してから
土地などを収用するというのではなく、あらかじめ使用すべき
土地などを
法律によって強制的に確保し、
基地として使用することを前提としていることも納得のいかないところであります。これはまさしく
憲法第二十九条で保障された
財産権を侵すものであり、また、法のもとに平等を
規定した
憲法第十四条違反であります。
反対理由の第二点は、
沖繩復帰特別措置法案についてであります。この中には、
VOAの
設置がきめられておりますが、これは明らかに
米軍の反共謀略宣伝
放送であるとの
疑いが濃厚であります。そのため、中国や北朝鮮を刺激し、極東の緊張を高めるようなことになれば、これこそ国益に反することになるのであります。ニクソン大統領の来年二月訪中により新たな緊張緩和を示し、刻々とアジアの情勢は流動しております。このようなときに何で
VOAを存続させる必要があるのか、その
理由を全く見出すことができません。いわんや、
日本国内においては、電波法により外国の
放送を禁止いたしております。それをあえて踏みにじろうとすることは断じて許すわけにはまいらないのであります。
反対理由の第三点は裁判権の問題であります。民事裁判はさておいて、
刑事裁判についていえば、これは国家主権の直接の発動により国の法秩序を維持することに目的があるのでありますから、外国の裁判の効力をそのまま承継するということは、
わが国の主権と独立を著しく侵害するものであります。その姿勢は、
わが国の司法権の基本理念の崩壊を招き、また、
米軍の植民地的不当
支配をできるだけ合理化して
承認しようとするものであり、さらに
沖繩県民の人権を否定し、一方的に不利益を押しつけるものであると言わざるを得ません。
沖繩の
刑事裁判の
実態は、それは一種の軍事裁判であり、
支配者の利益のみが貫徹され、被
支配者たる
沖繩県民の人権が全く無視されており、
手続的にも、
内容的にも、
日本国憲法下の裁判に比して劣悪であり、とうてい民主
主義国家の裁判の名に値しないしろものであります。その
意味で、法のもとの平等を
規定した
憲法第十四条違反であり、みずからの手で人権擁護の堅塁を破壊することになり、断じて容認しがたいものであります。この観点からも、奄美大島が
復帰してきたときの奄美方式を先例とすべきであります。この再認識があってこそ、
沖繩県民が長い人権闘争の過程で最終目的として指向してきた
日本国憲法下の
復帰がなるのであります。
次に、対米請求権の放棄についてであります。対米請求権は当然
県民の有するものであって、
政府のかってな判断にゆだねられるべきものではありません。これも、
日本国政府がこれまでの
米軍の不法の占領
支配を合法化し、
県民に対する数々の人権侵害を免責し、正当化しようとするものであり、断じて認めるわけにはまいりません。したがって、
政府は対米請求権を放棄した責任をとり、琉球
政府の要望である
沖繩県民の請求権処理に関する特別立法を行なって、国の責任において処理すべきであることを強く主張するものであります。
反対理由の第四点は、
沖繩振興開発特別措置法案における不満足な
沖繩復帰計画には
反対であります。第四条には、
振興開発
計画の決定及び変更についてきめられておりますが、これは
沖繩県知事に
振興開発
計画の原案作成権を持たせながら、
計画の最終決定権は
内閣総理大臣となっている点であります。このことは、
計画原案作成を
沖繩県知事の権限としながらも、最終的には
意見を聞きおく程度のものとなり、大きく
沖繩県民の意思を曲げられるおそれが多分にあるのであります。さらには、この
計画決定に重大な影響を持つ
振興開発審議会の構成についても、当初は過半数を
関係行政機関の職員で占めようとし、この不当性を追及されるや、その
委員数を二十五人より三十人以内と改められておりますが、そのやり方についていえば、まさしく陰険であり、言わなければそのままほっかむりし、
県民の意思や声を聞こうとしないがごとき姿勢は絶対に許せません。結局は
地方自治の権利を大きく制限し、国のかってなやり方を強圧をもって押しつけようとする意図は明瞭であります。
沖繩にはこれまでにも外国資本の導入が無
計画に実施されたため、自然と資源の蚕食が目立ち、
公害はいよいよ深刻化しつつあります。それにもかかわらず、
政府は、住民の
反対運動などで
本土では立地困難となった石油、アルミなどの
公害企業を
沖繩に誘致するかまえであります。緑濃き美しい
沖繩に押しつけようとすることはとうてい忍び得ないものであります。こうしたことは、住民の利益無視、国、大企業主体の開発につながる危険がきわめて大きいのであります。二十六年も放置した
沖繩を
一体十年たったらどれだけのものにするのか、青写真はどうなのか、また、財政的な援助にしても、地盤沈下した
沖繩経済を浮揚させるためにどれだけの抜本的処置をするのか等の重大な問題があまりにも不明であります。このようなずさんな
振興開発法を認めるわけにはまいりません。
反対理由の第五点は、今回の
沖繩関連
国内法案は、根本的に
地方自治を侵害する
憲法違反だと強く主張するものであります。
憲法第九十五条には、「一の
地方公共團體のみに適用される特別法は、
法律の定めるところにより、その
地方公共團體の住民の投票においてその過中数の同意を得なければ、國會は、これを制定することができない。」として
国民の権利を定めております。今回の
沖繩法案は、「一
地方公共團體」の
沖繩県に適用するものであり、そのときには「その
地方公共團體の住民の投票」をする必要があり、「その過牟數の同意」、すなわち住民の
賛成を得なければ「國會は、これを制定することができない」と解釈されるのであります。しかるに
政府は、手厚い処置をしてあるからその必要はないと言って、この
国民の基本権利を踏みにじっているのであります。おそらく住民投票をすれば過半数の
賛成を得られぬことを
政府・
自民党はみずから知っているがゆえに
国会審議のみで終わらせようとたくらんだのでありましょう。このことは明らかに自治
地方の本旨にそむき、
憲法第九十五条の権利を踏みにじる
憲法違反の
悪法であると強く指摘するものであります。
最後に、屋良琉球
政府主席が
本土政府に提出した「復興
措置に関する
建議書」の採用であります。この中には、
沖繩開発のあり方について、
県民福祉の向上、自治権尊重、平和で豊かな県づくりという基本理念に基づいた人間主体の開発でなければならないと強く訴えております。
復帰にのぞむ
沖繩の人々の基本的な
願いが、心がここに集約されていると言えましょう。この切なる
願いを
政府は十分に取り入れるべきであることを強く要望して私の
反対討論を終わります。(
拍手)
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