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政府委員(
笛吹亨三君) それでは、私から十五日に出されました
復権令と
沖繩の
復帰にあたり行なう
特別恩赦基準の
内容を御
説明申し上げます。
沖繩復帰がわが国にとって非常に画期的なものであり、また失われた領土を平和的なうちに回復できたということは、世界の歴史の中でも非常にめでたいことであるといったようなことで、
国民あげてこれを喜ばねばならないという国家的な行事と考えて
内閣が
恩赦をされることになったわけであります。
復権令の
内容を申し上げますと、第一条で一または二以上の
罰金——これは
沖繩で
沖繩の
刑罰法令によって
罰金に処せられた人も含むわけでありますが、一または二以上の
罰金に処せられた者で、
昭和四十七年、ことしの五月十五日をそれを
基準日といっておりますが、この
基準日である五月十五日の前日十四日までにその全部の
執行を終わり
——罰金を全部納めまたは
執行の
免除——罰金を納めなくてもいいという
法律的な
免除——を受けた者、こういった人は
罰金に処せられたためにいろんな
法律上の
資格の剥奪といいますか喪失とかあるいは停止をされておる者がございます。そういった喪失しまたは停止されている
資格を回復する。ただこの場合に、ほかに
禁錮以上の刑に処せられておったときにはこれは
資格を回復しない、これが第一条であります。
それから第二条で、
基準日の前日五月十四日までにただいま申し上げましたように、全部の
罰金の
執行を終わっていない者で、前日十四日までに
略式命令の送達とか
即決裁判の
宣告、あるいは
有罪、無罪もしくは免訴の
判決の
宣告、これは多少語弊はありますけれ
ども、簡単に申し上げますと、第一
審判決ですが、第一
審判決の
言い渡しを受けて、そして
基準日の前日までに、または
基準日以後にその
裁判にかかわる罪の一部または全部について
罰金に処せられた者、これは結局
基準日の前に第一審の
判決の
言い渡しがあった者でございますが、そういった者で、
基準日から起算して三カ月以内にその全部の
執行を終わり
——罰金でございますから
罰金を納めるという全部の
執行を終わり
——または
執行の
免除を得たものは、その
執行を終わりまたは
執行の
免除を得た日の翌日
——六月の一日に
罰金を納めたのであればその翌日の二日ということになりますが、その翌日
——において、
先ほどと同じような
罰金に処せられておったために
資格を喪失し停止されていたのを回復する。ただしこの場合も、他に
罰金以上の刑に処せられているときは除外されるわけであります。これが
復権令の
内容でございます。
それから次に、
閣議の
決定できまりました
沖繩の
復帰にあたり行なう
特別恩赦基準でございます。これは
特赦、
特別減刑、刑の
執行の
免除及び
特別復権、こういう四種類の
特別恩赦基準を定められたのでありますが、これはその
対象といたしましては、原則といたしまして五月十五日この
基準日の前日までに
有罪の
裁判が確定している者でありますが、さらに、その第二項でただし書きといたしまして、
基準日の前日までに、
先ほどの
復権令と同じように、
略式命令その他いわゆる第一審の
判決の
言い渡しを受けて、
基準日から起算して三カ月以内にその
裁判にかかる罪で
有罪が確定したといった者に対しましても、その
基準による
恩赦を行なうことができる。こういうまず原則的な現定でございます。
それから
あと出願の
基準がございますが、これは
手続だけの問題ですから省略させていただきまして、
特赦の
基準を申し上げます。ただいま申し上げました四つの
特別恩赦の中でまず
特赦の
基準でございます。
特赦といたしまして、冒頭の要件が、
特赦は、次に掲げる者のうち、
——犯罪の情状でございますが
——犯情、
——その人のいろいろな
——行状、それから
犯罪後の
状況などにかんがみ、特に赦免する
——赦免するというのは
特赦でございます、罪を許してしまうことでございますが、将来に向かって全部許すということでございますが、
——赦免することが
相当であると認められるものについて行なうわけでございまして、その一つといたしましては、
沖繩の
復帰に伴いまして
特別措置法がつくられておりますが、その
特別措置法の二十五条第一項で、
復帰前に
沖繩で
効力のあった
刑罰法令の中で
復帰後は
効力を有しないという
刑罰法令を政令で定めておりますが、結局
復帰後は日本の
法令としては
効力を有しないという
刑罰法令にきめられた
規定によって
復帰前に
沖繩で刑に処せられた人、これを第一に
復権で取り上げていこうというわけであります。
それから二番目に、硫黄鳥島その他の島と書いてありますが、いわゆる
沖繩地域でございますが、その
沖繩の
地域とその他の
本邦の
地域と、
復帰前
本土と称しておりました
沖繩以外の、現在からいえば
本邦の中の
沖繩以外の
地域との間に
施政権が違ったために規制されておりました
法令がございますが、その中のこういう
施政権が違うために、
本邦との間に
出入国、あるいは
沖繩の
法令でいえば
出入域がありますが、
出入域、
輸出入——これは
本土から
沖繩へ輸出になれば向こうの
沖繩は輸入になりますが
——輸出入の
関係。それから
支払いの
手段を規制する
——外国為替管理令関係など
支払い手段を規制する
法令のこういった
規定に違反いたしまして、
復帰前にその刑に処せられたことが
復帰後現に公共的な
社会生活の
障害となっている者、これは
特赦を
本人から
出願をするということにいたしております。ただし
輸出入、これは大体
密貿易とお考えいただいてけっこうでございますが、そういった
密貿易関係のもので、全部ではございませんで、国際的にこれは禁ぜられております麻薬、大麻、アヘン、
覚せい剤、
爆発物、
銃砲刀剣類そういったものにつきましてはこれは
特赦することができません。これは除いております。こういったものを除きました
出入国もしくは
出入域、
輸出入、
支払い手段を規制する
法令、そういったものによって
復帰前に処罰された者については
特赦をもって救済しようというのが第二番目でございます。
第三番目は、
少年のときに犯した罪によりまして刑に処せられて、その刑を終わったり、
執行の
免除を得た者
——少年時の犯した罪で
執行を終わった者ということでございます。
それから四番目に、五月十五日の
基準日におきまして七十歳以上の人で、すでに
有期懲役に処せられて
基準日の前日までに刑期の三分の一以上を
執行済みの者、それから
無期刑の者では
基準日の前日までに十年以上
執行を終わった者、これを
特赦していこうということでございます。
五番目が、
禁錮以上の刑に処せられてその
執行を終わってから、または
仮釈放を許されてから
基準日の前日の五月十四日までに五年以上経過した者で、その刑に処せられたことが現に
公共的社会生活の
障害となっている者でございます。これは
本人から
出願することにいたしております。
それから
基準日の前日の五月十四日までに刑の
執行猶予期間の一分の一以上を経過いたしました者で、その刑に処せられたことが現に
公共的社会生活の
障害となっている者、これも
出願ということにいたしております。
それから七番目に、
罰金以上の刑に処せられた者、これはもちろん
沖繩を含むわけでございますが、その
罰金以上の刑に処せられた者の中で、ただし、いわゆる
自然犯というか、
刑法と
爆発物取締罰則
——非常に凶悪といいますか、危険な
犯罪を取り締まる
爆発物取締法、こういったものによって刑に処せられた者は除くわけでございますが、それ以外の
罰金以上の刑に処せられている者
——ただし
刑法の中でも
過失犯だけは除きます
——こういった
罰金以上の刑に処せられた者のうちで
社会のために非常に貢献した人でありまして、またこの刑に処せられていることが現に
公共的社会生活の
障害となっている者、これは
出願によって
特赦を検討しようということでございます。
それから八番目は、これはいままで申し上げました七つの各号にそのまま該当しないとしても、それに準ずるような人は、救える者は検討してみようということで、「前各号に準ずる者」という
規定を置いております。
それから次が
特別減刑の
基準でございます。
特別恩赦基準の第五項に基づいて
特別減刑の
基準を
規定いたしております。減刑は、懲役または
禁錮に処せられた次の者のうちで、犯情、行状、
犯罪後の
状況等にかんがみまして減刑が
相当であると認められる者について行なうということでございますので、
対象は懲役または
禁錮に処せられた者でございます。
まず、
先ほど申し上げました
特赦の
基準の各号に掲げておりますもので、犯情その他の理由で
特赦をするということはできないが、減刑ならば考えられるといった者を一応
対象として検討してみようということでございます。
三番目に、去る五月十日、
沖繩の高等弁務官から
沖繩における減刑令が出されたわけでございますが、これは五月十四日に
効力を発生して実施されておるわけであります。その減刑令の中で減刑から除外する者を掲げております。その除外される者に掲げられた者、したがって除外されたことで
沖繩における減刑令による減刑が行なわれなかった者を一応
対象にいたしております。そういった者の中で、
沖繩では減刑にならなかったけれ
ども、
復帰後、
本土の
恩赦法等の
恩赦法令によって
特別減刑を考えられる者は考えていこうということで取り上げておるわけであります。
それから三番目が、
少年法の適用を受けて不定期刑に
——少年法でございますから不定期刑に処せられて、その刑の
執行を終わっていない者で、
基準日の五月十五日の前日までに短期の三分の一以上の
執行を受けた者、ただし、法定刑の短期が一年以上という重い
犯罪につきましては除外いたしますが、それ以外の比較的軽い
犯罪につきましては、短期の二分の一以上の
執行を受けた者については減刑を考えていこうということでございます。
それから四番目に、
少年として
少年法、または
沖繩の
少年法の適用を受けて有期刑に処せられて、その
執行が猶予され、者、
基準日の前日までに
執行猶予の期間の二分の一以上の刑を経過した者で減刑を
出願した者を取り上げております。
五番目に、この
特別減刑につきまして一から四までいま申し上げましたが、それの各号に準ずる者という者でございます。
それから減刑をどの程度減刑をするのかということは、これは減刑は普通
一般に行なわれておりますが、この
特別減刑の場合は、無期懲役は二十年の
有期懲役、無期
禁錮は二十年の有期
禁錮に減刑いたします。ただし、
基準日に七十歳以上の者の場合は、十五年の懲役または
禁錮とするということであります。
それから有期の懲役または
禁錮につきましては、次のように刑期を変更いたします。
基準日に七十歳以上の者の場合は、刑期の二分の一をこえない範囲でその刑を減じます。それからそれ以外の者、七十歳以上の者でない者、そんなに年をとっていない者、そういった者の場合は、刑期の四分の一をこえない範囲の減刑をするということであります。
それから、次に
少年の不定期刑でございますが、不定期刑につきましては、短期及び長期につきまして刑期の四分の一をこえない範囲で減刑するということであります。
それから次に、
執行猶予の期間の問題でございますが、懲役または
禁錮について、
執行猶予を言い渡された人につきまして、その
執行猶予の期間の四分の一をこえない範囲で短縮するというのであります。これが
特別減刑の
内容であります。
それから次に、刑の
執行の
免除の
基準であります。これは
特別恩赦基準の第六項に
規定されております。刑の
執行の
免除は、懲役または
禁錮に処せられて、病気とかその他の事由で
基準日五月十五日までに、長期にわたりその刑の
執行を停止されておって、または
執行に着手されていない者、この中から次のような者については、将来に向かって刑の
執行の
免除を考えてみようということであります。まあ今後長期にわたってなお
執行ができないといったような
——病気その他のことからその
執行ができないと認められる者であります。
それから二番目に、いまこれから
執行することが、かえって
社会感情に合わない。また
本人その他親族に回復しがたい損害を与えるといった者でございます。こういった者について、特別に刑の
執行の
免除を検討しようということであります。
それから、次は
特別復権の
基準であります。これは特別の
恩赦基準の第七項に掲げてあります。
特別復権は、次に申し上げます者の中で、犯情、行状、
犯罪後の
状況等にかんがみ、特に
復権することが
相当であると認められる者について行なうわけでありますが、まず
禁錮以上の刑に処せられ
——禁錮以上でございます。
復権令は
罰金だけでございますが、
禁錮以上の刑に処せられて、その刑の
執行を終わり、またはその
執行の
免除を得た日から
——懲役一年なら一年の刑を終えてからそのあと
——基準日の前日までに四年以上を経過いたしておりまして、その刑に処せられたことが現に
公共的社会生活の
障害となっております者で
出願をした者でございます。
それから二番目に、いま申し上げました四年という期間を経過はいたしておりませんけれ
ども、
社会のために貢献するところがあって、現に
公共的社会生活の
障害となっている者で
出願をした者を掲げております。
それから三番目に、
先ほど申し上げました
特赦基準に掲げております者、ただしその中で、
執行猶予期間の二分の一を経過した者を申し上げましたが、これは
復権ということの性質上、
執行猶予期間中に
復権はできませんので、
復権というのは刑の
執行が終わってからでなければできませんから、その
復権の性質上、
特赦基準の中の第六号に
相当する者は含まれませんが、それ以外の
特赦基準の各号に掲げる者で、犯情その他の理由によりまして
特赦はできないという者の中で、刑の
執行を終わり、または
執行の
免除を得ている者は、
復権については
特別復権を考えて検討しようということでございます。
それから今度出ました
復権令の第一条、第二条、
先ほど申し上げました第一条、第二条本文の要件に該当する者の中で、その制限
規定によりまして
資格を回復しなかったことについて、特に酌量すべき者があれば検討するという、これは
復権の
出願をした者に限っておるわけであります。
特別恩赦基準の第八項に「その他」といたしまして、特に今回の
恩赦につきましては、
沖繩の
裁判所で
裁判を受け、刑に処せられた者につきましては、今回の
沖繩復帰の意義にかんがみまして、第四項から第七項までの適用に関して特に寛大に取り扱うというように
規定されておるのでございます。
以上が今度の
恩赦の
内容でございます。