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政府委員(辻辰
三郎君) ただいま御
指摘のとおり、
昭和二十年代後半における
火炎びん事件が相当あったわけでございますが、これにつきましてはこの
爆発物取締罰則をもって当時検察は処理をいたしたわけでございますが、それらの
事件は
先ほど御
指摘の
昭和三十一年六月の最高裁大法廷判決によりまして、これは
爆発物取締罰則にいう
爆発物でないということで、全部この
火炎びんについては
爆発物取締罰則の
適用がなかったわけでございます。そして、この判決にも言っておりますように、
火炎びんを
処罰する必要があるならば別途
法律をつくるべきである、かような判示もしてあるわけでございます。ところがこれまた御案内のとおり、この判決が出ましたのは
昭和三十一年でございますけれ
ども、
昭和三十年代は
火炎びん事件そのものが終息しておったわけでございます。そういたしまして、
先ほど申しましたように
昭和四十三年の十月にまたこの
火炎びん事犯が出始めて今日に至っておると、こういう状況でございました。そういうことで、
昭和三十年代におきましては実際の事例がなかったわけでございます。
で、かようなことが
立法の
必要性というものを緊急に感じさせなかったという大きな原因であろうと思うのでございますけれ
ども、当省の
法制審議会で調査
審議をいたしております刑法の全面改正作業がございます。これは
昭和三十八年に法務大臣から諮問がありまして、刑法の全面改正作業をいたしておるわけでございますけれ
ども、この改正作業の参考案としてつくられております改正刑法準備草案というものがございます。これは、その第百八十六条に「
爆発物に類する破壊力を有する物を
使用した者は、十年以下の
懲役又は禁錮に処する。」という、こういう条文をあげておりまして、これがすなわち
火炎びんをいうんだという前提で、この刑法改正作業の一環といたしまして検討はいたしておったわけでございます。ところが、この刑法改正を調査
審議いたしております
法制審議会の刑事法部会におきましては、この「
爆発物に類する破壊力を有する物」というものは、何も
火炎びんに限らないではないかと、
火炎びんだけを
処罰するというのであれば、これは刑法の全体系から見てふさわしくないということで、この条文を刑法の
審議の
対象からは落としてしまったわけでございます。
で、こういう意味におきまして、途中でもちろん
火炎びん立法の
必要性を
考えて、しかも議論はいたしておったのでございますが、この必要がないというのが
昭和四十三年の前半でございまして、前半にそういう決定をいたしまして、その当時はまだ
火炎びんの二回目の
使用事犯が出てこない時期でございました。かようなわけで、一応刑法全面改正のほうは
火炎びんはやめようということになっておりまして、経過いたしてまいったのでございますが、
先ほど来
説明がございましたように、四十三年に始まった
火炎びんが四十四年に至って急激にふえてまいった。そういうことで私
どもは刑法の全面改正とは切り離しまして別途特別法でこれを、この
法律案を作成する必要があるかどうかということを検討してまいりました。そして昨年の
昭和四十六年に至りまして、いわゆる成田闘争であるとか、沖繩闘争であるとか、これについてたいへん多くの
火炎びんが
使用されるに至りましたので、法務省事務当局におきましても、この
火炎びんの
取り締まりに関する立案をいたしておったわけでございます。その際に、国会方面におきましてこういう必要があるからこの
法案を出そうということにきまりましたものでございますから、法務省事務当局としてはまことにこれはけっこうなことであるということで、国会方面の議員
提案の案でお願いをするという形になったわけでございます。