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1972-03-21 第68回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十一日(火曜日)    午前十時十二分開会     —————————————    委員の異動  三月十六日     辞任         補欠選任      矢山 有作君     藤原 道子君  三月十八日     辞任         補欠選任      藤原 道子君     矢山 有作君  三月二十一日     辞任         補欠選任      野坂 参三君     岩間 正男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         阿部 憲一君     理 事                 後藤 義隆君                 原 文兵衛君                 佐々木静子君     委 員                 木島 義夫君                 林田悠紀夫君                 星野 重次君                 加瀬  完君                 鶴園 哲夫君                 野々山一三君                 岩間 正男君    国務大臣        法 務 大 臣  前尾繁三郎君    政府委員        法務省人権擁護        局長       影山  勇君        公安調査庁長官  川口光太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        警察庁刑事局防        犯少年課長    川崎 幸司君        警察庁警備局参        事官       斉藤 一郎君        法務省刑事局公        安課長      近松 昌三君        公安調査庁調査        第一部長     島田純一郎君        労働省労政局労        働法規課長    岸  良明君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (人権擁護に関する件)  (石川地方公安調査局事件に関する件)     —————————————
  2. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 佐々木静子

    佐々木静子君 第六十八回の国会、法務委員会における法務大臣所信表明について質問をさしていただきたいと思います。  まず、大臣所信表明を伺いまして、実は最も気になりましたことは、治安対策について大臣が非常にウエートを置いておられるというところでございます。もちろん大臣所信にもお述べになっておられましたように、過激派集団をめぐる問題がさまざまな形であらわれてきており、一般市民の生命や平和な生活を守るために、治安維持に当たって日夜御努力いただいております当局の御苦労に敬意を表するわけでございます。特に、最近の連合赤軍事件、凄惨なリンチ事件などで私どもの想像の範囲をはるかに越えた問題なども起こりまして、捜査当局の御苦労も一方ならぬものと存ずるわけでございますが、この無軌道な連合赤軍行動どもとより糾弾されるべきでございますが、ただこの凶悪事件過激派集団取り締まりということに名をかりて、その行き過ぎが今後起こるおそれがあるのではないか、治安維持ということのみに重点が置かれて、最も大切な国民人権尊重する、人権を守るということがなおざりにされては、とんでもないことになるということが案ぜられるわけでございます。  このたびの大臣所信表明を伺いましても、治安対策の強調、あるいは法と秩序の尊重ということが述べられているにもかかわりませず、人権尊重ということは一言も触れておられない。申すまでもなく、わが国の憲法は、その基本権利の第一に、基本的人権尊重ということをうたっており、その人権擁護を直接担当されるのがこの法務省であると私ども考えているわけでございますが、この人権擁護人権尊重ということについて法務大臣はどのように考えておられるのか、その所信を述べていただきたいと思います。
  4. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 人権擁護についてはこれはもういまさら申し上げるまでもありません。当然、これは法務当局として、人権擁護について考えていかなきゃならぬことは現実でありますが、最近の問題をとらえて私の考えを申し上げたわけで、すべてにわたって強調しますと、どこに重点があるかわからない。また、現在のいろんな情勢から申しまして、私が、幾らこの過激派集団行動に対して強調しましても強調し足りない。一体、法務当局なり警察当局、いわゆる治安当局は、どうしているんだというような声が非常に高いわけであります。人権擁護についてお考え下すったなら、今回の警察官の二人の殉職で、一人の罪のない御婦人を救助するというような点で、よくおわかり願っておると思います。そういうような意味合いからいたしまして、人権擁護については触れなかったわけでありますが、いずれにしましても、人権擁護について考えるべきは、これは当然のことでありますし、したがって、そういうふうにお考え願いたいと思います。
  5. 佐々木静子

    佐々木静子君 大臣は、人権擁護ということは、もちろん十分に頭に置いて取り組んでおられるということを伺いまして、たいへんに心強く思っているわけでございますが、この治安維持人権尊重ということについて、この捜査の第一線におられる警察庁におかれましても、いろいろと御苦労していらっしゃることと思います。  これに関連いたしまして、去る三月一日に、東京国鉄本社前で、総評のデモ隊右翼学生自動車が突入して、大阪からこの日のデモに参加して参りました、全国金属組合員田辺さんが重傷を負われたわけであります。この加害自動車はマイクロバスであって、機動隊装甲車とそっくりで、そうして、学純同宣撫隊と書いたたれ幕が張ってあった。そうして突如このバスデモ隊に突入したというのではなくて、このデモの行進しているところに、このバスが何度もいやがらせにここへ入り込んで、その際、もうすでに組合員の中には、デモ隊員の中には、軽傷を負った者すらいたのに、それに対して、重装備の機動隊が、このデモの周辺を警備しておったにもかかわらず、それでもとめる人がなかった。そうして結局、最終的には、このデモ隊の中にこのバスが突入し、そうして田辺さんが、一たん、この車にはね飛ばされて倒れている上を、また、この右翼の車と思われる装甲車に、ひき倒されたというような状態であったということを、この当時、現場にいた人たちから聞いているわけでございます。にもかかわらず、この装甲車を結局とめたのは——装甲車がそのまま逃げてしまうのに対して、結局とめたのは、デモ隊員であって、機動隊員は、このときに一緒になってその車から逃げてしまった。そうしてそれをとめてくれなかったというようなことも聞いているわけでございますが、この治安維持ということが、どうも一部の者にとっては非常に強く働いている。また一部の者に対しては非常になまぬるい、あるいはほとんど治安当局がその職務を行使していただけない。そういうふうな不平等な状態が出ているわけでございます。この暴力右翼に対して捜査当局はどのような処置をとられたか、また、今後どのような態度で臨んでいこうとお思いになっておられるか、それを法務大臣並びに警察責任者の方からお伺いしたいと思います。
  6. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 暴力集団につきましては、右派も左派もないと私は確信しておりますし、また検察当局にしましても、また警察当局におきましても、それを差別的な見方をするというようなことは絶対にないと確信をいたしております。ただ、事件法務当局としましては、ただいま東京地方検察庁で取り扱っております。もちろん結論的には何らの差別なしに、暴力行為に対してはあくまで厳正な立場に立って臨むはずでありますが、その結果については、あるいはまた内容の詳しい点につきましては、ただいまのところ、私、存じませんので、この点はお許し願いたいと思います。
  7. 斉藤一郎

    説明員斉藤一郎君) ただいま御指摘の三月一日の事件大阪田辺さんが重傷負われた事件についていろいろお尋ねがございましたので、まず事案の概要を簡単に申し上げますと、いまも御質問の中にお触れになったのでございますが、三月一日、東京駅の国鉄本社前のところで、春闘共闘委員会デモというのが行なわれまして、参加人員が約千六百人ぐらいのデモ隊がございました。これに対して、当日たまたま先ほどお話のございました、右翼系学生青年純正同盟宣伝カーというものが、同じ時刻に同じところへ参りまして、そしてデモ隊の中に突っ込んでいって田辺さんをけがをさした。たいへん重傷を負われたということでございまして、こういう事件が起きたことについて、警察としてもまことに遺憾に存じております。で、この宣伝カーはその時間にその場所に行ったわけでございますが、実は早くから政策宣伝ということで許可をとっておりまして、それまで当日二月一日だけじゃなくて、ずっと毎日毎日宣伝をやってまいっておったのでございます。事件が起きたのは三月一日でございましたが、二月十一日から三月十日まで毎日午前八時から午後七時までの間宣伝放送やるんだということで、早い時点で中野警察署長許可を得て、そうして毎日宣伝をやっておった。私ども警察のほうでは、こういう性質のものでありますので、目を離さないようにしておって、当日も、新宿の事務所からこの宣伝カーが出発したのを、警察の係の者がずっと、あと不測事態が起きないようにということで、つけてまいったのでありますが、東京駅の南口のところで交通混雑のために、つけてきたのが離れた。そしてどこへ行ったかわからなくなった。それからあと、ほんの時間にしまして数分の間のできごとでございまして、混乱の中に、デモ隊で非常に大ぜいの人がいる中に、この宣伝カーが入って、そしていざこざが起きて、終局的には、田辺さんが重傷負われたということでございます。  こまかくいきさつを申し上げると、たいへん長くなるので、大筋申し上げると、そういうことなんでございますが、この間で、デモ隊を警備しておった機動隊員が、まだデモ隊に対しては、機動隊員というものは、表に出ないほうがいいということで、丸の内の工業ビルのそばのところで待機しておったのでございます。そして交通巡査けが幾らか出ておった。そうした目の離れたごくわずかの間にけがをさしたということで、警察現場における措置も数少ない者が精一ぱいやったのでございますが、なお至らなかった点は多々あるということを反省しておるのでございます。  私どものこういう事案に対する基本的な態度としましては、さきも法務大臣からお話がございましたが、警察がその責務を果たすために、不法行為に対しては、どういう人であろうと、どういう立場のものであろうと区別なく、これを放置しないという態度で臨んでおります。また、右翼的な言動をなす行為に対しても、そのつど十分な警告をし、必要に応じて取り締まるということで、法に照らして厳重な取り締まりをやりたいと考えております。そういった意味で、私ども結果的にまことに遺憾なことになりましたが、だれがやったからということで、決して区別をせずに、あるいはまた逮捕したものについて、当日犯行を行なったものをその場で、先ほど機動隊員が何もしないというようにおっしゃったのでございますが、工業クラブの横に待機しておった機動隊員が出ていって、そして車をとめるウマというものでもって、前後をはさんでとめて、四人を逮捕しております。逮捕したものについて、厳重取り調べをし、いまなお捜査中でございますが、決して行為者によって区別をするということのないような厳正な取り締まりを行ないたいと思っております。
  8. 佐々木静子

    佐々木静子君 このデモに対する規制の問題、取り締まりの問題について、私はさらにもっと伺いたいのでございますが、法務大臣のお時間の都合があるようですので、警察庁の方にあとでまたこの問題をお伺いさせていただきたいと思います。  そして問題、次に移りますが、いま申し上げましたみたいに、捜査機関による捜査権行使が、私どもの目から見ると、必ずしも公正に行なわれておらないのではないかというふうなことが感ぜられるわけでございます。とりわけ、同和対策特別措置法が現在施行されているにもかかわらず、まだ捜査官憲による部落差別に対する問題が、実は全くあとを断っておらないわけでございます。昭和四十六年の五月に、福岡県の川崎署において、また六月には、兵庫県の尼崎署において、七月には、高知県の土佐署において、それぞれ部落差別による不当な捜査が行なわれております。また、四十六年七月二十八日には、大阪府の国鉄八尾駅派出所に中学生が三人呼びとめられて、その住所を聞かれ、おまえらのところのやつらはとか、あのあたりでは自転車を取って、分解しているやつがいるだろうとかいうふうな、これは未解放部落の地名を指摘して差別的な発言をした。この方々に対しては、八尾警察署長は、その後、非常に態度を変えて、十分に部下に対して同和教育を行なうということを表明して謝意を表しているわけでございますが、また、昨年の年末には、京都府の田辺警察において、無免許運転で逮捕されたTさんという人が、たまたま部落民であったのに対して、現職の警官が、おまえらは非人なんや、おまえらは死んでもええというような差別的な発言をしている。このような事柄について、この人権擁護担当されている法務大臣あるいは法務当局について、お考えをお伺いしたいと思います。
  9. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) われわれ法務当局としましては、ことに人権擁護局としましては、部落に対して特別な差別待遇なり、あるいは差別的な表現ということは厳に慎んでおるのでありまして、そういうことは絶対ないと確信はいたしておるのでありますが、ただいまのいろいろお話のような事件については、私も承知いたしておりませんので、局長から御答弁させます。
  10. 影山勇

    政府委員影山勇君) 法務省におきましては、人権擁護局所管といたしまして、啓発活動人権侵犯事件調査等の面から、同和問題の解消のために、できる限りの努力をしているわけでございます。そのために、同和対策事業特別措置法及び閣議了解による同和対策長期計画というものにのっとりまして、法務省所管といたしましては、人心の啓発、啓蒙ということに力を注ぎまして、同和問題に対する、官民を問わず全体の理解認識を一そう深めるために研修講習等を実施し、同和問題に関する人権侵犯事件調査及び人権相談充実強化をはかり、さらに一般国民に対する啓発活動を行なって、差別が許しがたい社会悪であるということを周知徹底させるという努力を続けているわけでございますが、ただ何ぶんにも人の心にひそむこういう社会悪でございますので、なかなか効果があがらない面もございますけれども、引き続き努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  11. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま法務当局としては御努力なさっているということでございますけれども、これは各地人権擁護委員などに対しましても、同和問題に対して非常に理解が薄い、認識担当者に不足しているということが非常に全国各地から大きな声となって起こっているわけでございます。大臣局長はそのような姿勢でおられるとしても、現実に、現場におられる方々が、やはり差別的な意識を持っている限り、この問題は解決しない。そういう意味におきまして、ただ平等に取り扱っているというだけではいまの現場職員の頭を十分に教化することができない。この同和問題に対する教育を、積極的に法務省としては取り組んでいただかなければ、これはなかなか解決する問題ではないと思うのでございますが、具体的にどのように、その担当職員を、今後指導していこうというお考えなのか、具体的な方法をお示しいただきたいと思います。
  12. 影山勇

    政府委員影山勇君) 御指摘のとおり、同和問題に当たります法務省出先機関といたしましては、この問題に取り組む職員の心がまえと申しますか、同和問題に対する理解が、非常に重要であるという点は、御指摘のとおりでございまして、そういう意味で、法務局の職員をあるいは課長会同、その他に集めましたり、あるいは人権擁護委員研修の機会を多くいたしまして、少しでも理解を深めていくようにという努力を続けておりまして、そういう関係方法を現に実施しております。たとえば人権擁護委員研修会ども、同和問題についての研修を特に力を入れてやるという方向で、いままでもまいりましたし、今後も一そうそういう方向でまいりたいと思っております。
  13. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま積極的な姿勢で取り組んでいただくということで、ありがたいと思うのでございますが、特にその研修会における講師選任などにつきましても、ただばく然と形だけの同和教育ではなしに、同和問題について非常に造詣の深い人とか、そういう講師自身の人選についても十分に法務当局は今後御配慮いただいて、そういう面に積極的に取り組んでいただきたいと思うわけでございます。  さて、この治安当局の、国家権力の圧力がどうしてもいま申し上げましたように、私ども国民の目から見ると、この部落民に強く当たっている、あるいはまた不当に当たっているというふうなことは一これはだいぶ前のことでございますが、昭和三十年の四月にも、例の京都五番事件というのが起こっているわけでございます。何もしておらない少年が、部落民であったということで、警察から疑いを受けて、殺人犯人に仕立て上げられて、警察では、本人が否認しているのに、後ろ手錠をはめられて、投げ飛ばされたり、こづかれたりして、やむを得ず殺人の自供をした。公判でもそれを否認した。ところが、その実際のことを知っている証人が、二人あらわれて、真相を供述したところ、それがまた検察当局で偽証罪で逮捕された。そういうふうな深刻な事態になって、その後真犯人が自首して出たために、この部落少年たちが、何らこの事件関係がなかったということが、はっきりしたわけです。  このように、これは十年余り前のことですが、このようなやはり部落民に対する偏見から行なわれた捜査が一またこれは大阪吹田市で、やはり部落解放同盟代表者が、交通費生活費の補償の要求を吹田当局に行なっているときに、それが対市交渉が集団的脅迫的暴力行為であるということで捜査当局に検挙された。これも二人の部落民青年たちです。ところが、これは裁判の後に、大阪地方裁判所が、これは全く正当な権利行使であるから罪に当たらないし、暴力的な行動も、脅迫的な行動も何もないということで無罪判決が出ているわけです。そういうふうな事柄が、いまなおあとを断たないということは、いま人権擁護局長もおっしゃいましたように、もっともっと積極的にこの部落対策ということを法務当局としても考えていただきたいと思うわけでございます。  まあこういう事案が起こっておりますことについて、これは人権擁護局長、あるいは法務大臣のほうでこの事実を御存じでございましょうか。御存じであるかないか先にお伺いしたいと思います。
  14. 影山勇

    政府委員影山勇君) いまのお話のような事件が、十年前にあったというお話は聞いておりますけれども、その詳細は存じておりません。
  15. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは人権擁護の一番の責任者でいらっしゃるわけですから、この五番事件のほうは、もうこれは真犯人が名のり出たために、形の上では一応終結を遂げたわけですけれども、さらにこういうふうな問題を、積極的に、担当局長はじめ指導者方々は十分に御検討いただきたいと思うわけです。また、このような事柄を二度と繰り返さないように、部下方々職員方々を御督励いただきたいと思うわけです。また、いま申し上げました吹田車友会事件などは、これは無罪判決が出ているにもかかわらず、これは検察庁のほうがやはり有罪だということで控訴しているわけでございますが、むろんこれは検察当局の、といえば結局法務当局の御責任になると思うのでございますが、これは部落問題、人権問題に関係することでございますので、ぜひとも積極的に御調査の上、適宜御処置をいただきたい。不当な、乱用にわたる控訴であるならば、即刻控訴の取り下げということも御検討いただきたいと思うわけでございます。これはあとまだ続きまして、部落問題につきまして大臣に伺いたいわけでございますが、時間があまりございませんので、さらにもう一つ、次の問題に入りたいと思います。  これは昭和三十八年の五月一日に埼玉県の狭山市で川越高校の一年生の中田善枝さんという女子高校生が殺害された事件でございます。これは五月一日の午後六時半ごろに、善枝さんが帰宅しないで、二十万円を持ってこいという脅迫状がかわりに届けられた。埼玉県警営利誘拐事件として対策を協議し、二日の夜には金を受け取りに指定の場所犯人があらわれたところを、十数名の刑事が、そこに張り込んで、十分間ほど犯人と同じ場所にいながら、結局取り逃がしてしまったというふうな、これは警察庁にとって大きな問題を起こした事件でございます。そして特に五月四日に、善枝さんが死体となって発見され、警察上層部に大きな責任問題を生じ、当時の警察庁長官国家公安委員長に辞表を提出するに至ったという事件でございますが、  その後五月二十三日に、部落民石川一雄という青年狭山警察によって逮捕されておりますが、新聞報道によりますと、これは犯人があがったということで逮捕しているにもかかわりませず、この逮捕状を見ると、善枝さん殺しの逮捕状ではなく、全くつまらない——つまらないといいますか、ささいな自動車接触事故であるとか、あるいは友人の作業衣をトラックの運転台から盗んだ、というような容疑で逮捕されているわけでございます。このように別の容疑事実で逮捕して、しかも、あたかも本人がもう殺人犯人凶悪犯人に間違いないというふうなことが、捜査当局において、往々、発表されているわけでございます。このあと実は質問を続けたいと思うわけでございますが、大臣のお時間の御都合関係があるようでございますので、私はこのあたりで一応質問を打ち切らないといけないと思うのでございますが、この別件逮捕、ほんとうに捜査当局が発表しているような殺人犯人であるならば、その殺人被疑事実で逮捕すればいいのに、別の被疑事実で逮捕する。そうして新聞報道によれば、あたかもその凶悪事件真犯人であるというふうな報道がなされておる。これは新聞社も、でたらめを書いているのじゃなくて、おそらく捜査当局の情報に基づいて新聞に発表していると思うのでございますが、こうした事柄について、捜査当局責任者として、御答弁をいただきたいと思うわけです。これは問題があとずっとまだあるわけでございますが、お時間の関係都合別件逮捕の問題につきまして法務大臣としての御見解を伺いたいと思います。
  16. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 別件逮捕について、これは率直に言いまして、いろいろ訴訟上の技術的な問題だと思います。私は逸脱しない範囲においては、これはやむを得ない方法であるんじゃないかと考えておりますが、その場合に——ただいまお話の際の、それが行き過ぎであるかどうかということについては、私は事実をよく承知いたしておりませんし、率直に東京高等裁判所で係属中の事件でありますが、私ども全然事情を存じないにもかかわりませず、いろいろな宣伝がされ、またビラが配られたりして、私はむしろ迷惑をしておるというふうな状況であります。いずれにしましても、別件逮捕については、行き過ぎのないようにということは考えなければなりませんが、これが全然いかぬというようなものではないように思います。
  17. 佐々木静子

    佐々木静子君 実は、私、質問あとまだいろいろあるわけでございますが、大臣のお時間もあるようでございますので、私はこうした部落差別の問題につきまして、あと人権擁護局あるいは刑事局長にお伺いさせていただくことにいたしまして、私の質問は一時、これで十五分ほど休憩さしていただきます。     —————————————
  18. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) この際、委員の異動について報告いたします。本日、野坂参三君が委員辞任され、その補欠として、岩間正男君が選任されました。     —————————————
  19. 岩間正男

    岩間正男君 大臣のお時間がないようですから、私は実は連合赤軍の問題についていろいろお聞きしたがったのでありますが、きょうはそれとの関連でまずお伺いしたいと思います。  最近、金沢市における石川地方公安調査局の思想調査の秘密文書が大きな問題になっていることは御存じだと思います。これは県会でも質問され、また、衆議院予算委員会でもきびしく追及された問題であります。ところで、この秘密文書は、先月二十三日夜、公安局から盗み出されたもので、そうしてそれが社会党の県議の自動車の中に投げ込まれたもので、その後、石川県警金沢、中署ではこの捜査をやってきた、その経過が公表されたと思うのです。それは、盗み出した者はだれなのか、それから盗み出さした者があるはずですが、これは公安調査庁のほうでお調べになっていると思いますが、簡単に名前だけお聞きしたいと思います。
  20. 島田純一郎

    説明員島田純一郎君) お答えいたします。  私どもが伺っておるところでは、二十三日の……。
  21. 岩間正男

    岩間正男君 名前だけでいいです。大臣にお聞きするのですから……。名前はだれです、身分と名前を簡単に言ってください、前後の何は要りません、時間がありませんから。あとで詳しく聞きますから。
  22. 島田純一郎

    説明員島田純一郎君) 調査官の名前は、村本という調査官でございます。
  23. 岩間正男

    岩間正男君 名前を言ってください。
  24. 島田純一郎

    説明員島田純一郎君) 村本——ちょっと私はここに正確な資料を持っていないので、調査官の……。それから侵入した者は鈴木という学生だと聞いております。
  25. 岩間正男

    岩間正男君 これは金沢大学法学部三年生。そして中核派に属するトロツキスト学生であり、三年前からそういう活動をしておったということが中署の調査によって明らかになっておるのですが、そのとおりでございますか。
  26. 島田純一郎

    説明員島田純一郎君) 三年前から活動しておったかどうかは存じませんが、金沢大学の学生であるというふうに聞いております。
  27. 岩間正男

    岩間正男君 一体あなたたち調査第一部というのは、こういうのを調べるのが任務じゃないですか。一番当面の任務としているのに、いま言ったようなあいまいな何でやっているのですか、こういうのはほったらかしにしているのですか。いまのような答弁をあなたここで……。ちゃんと案件を指定したわけですよ。そうしてあなたの出席を求めたわけです。いま言ったような名前も知らない、それから、この学生は三年前から何をやっていたかわからなかった、そんなことでいいのですか。  時間がありませんから大臣にお伺いしますが、これはどうなんです。こういう学生1こんなトロツキストの中核派、札つきの学生です。そうして、しかもこれはいま非常に連合赤軍との問題で大きく問題になっている政府・自民党と、それから、これは暴力学生のなれ合い問題は、これは枚挙にいとまがない。これはこの次詳しくお聞きする、たくさんの資料は私たちは持っております。大学問題当時からも私は予算委員会、その他でやってきた問題です。これは政府機関の、しかもれっきとした公安調査官、この調査官の依頼によって盗みに入って、そうして、秘密文書を盗み出した。これはまぎれもない癒着をはっきり証明している。結びつきというのはこんなに一体深いものだということを、実態をこれは明らかにしたものだということは言えると思う。  それで、大臣にお伺いしますが、こういうことは、これは法務省の方針なのかということが第一点。第二点は、このような事態を、これはやることについて差しつかえないのか。この二点についてお伺いしたい。
  28. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 第一点の法務省の方針であるかどうかというお話でありますが、その方針は全然とっておりません。  第二点につきましては、具体的にそういう事例があったやに伺いますが、全く遺憾な事件だと思います。
  29. 岩間正男

    岩間正男君 これは非常に重大な問題ですよ。公安調査庁というのは何ものか。アメリカのCICとの癒着の問題を、いままで何十回となく、この国会でわれわれやってきました。そうして、そのたんびにこの正体を非常に隠しておる。しかもたくさんそういう問題あります。つまりもう、逮捕した学生の弱みにつけ込んでこれをいつの間にかスパイに仕立て上げる。これも三年前に——鈴木俊一というトロツキストは逮捕されている。そういうところで、今度は逆に、そういう学生を自分たちのほうの手先——スパイ、協力者にして、あなたたちの名前で協力したこの協力費が出されているわけです、捜査費、あるいは調査費という名前で。これもしばしば決算委員会なんかで問題にしてきた問題でありますが、たくさん出されている。いわば培養している。培養しておって方針でないと、こう言って逃げたとしても、こういうことは成り立たないと思うのでありますが、これは法務大臣として、このような問題をどのように処理されるのですか。これは重大な、簡単な問題でありません。体質に関する問題、公安調査庁の体質に関する問題、そうして、このような秘密警察的存在こういうものが、かって気ままな行動をやる。そうして、その調査官は、盗みを協力者に依頼する。それから今度は盗みをする。こういうことを奨励していないんだというのでありますけれども、一体、これはどういうふうに措置するお考えでありますか。これは法務大臣の御見解を伺いたい。
  30. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) あくまで絶対にそういう方針をとっていないことは、もうはっきり申し上げておきます。  この事件につきまして、どういう措置をするかと——われわれもかなり量大に考えておりますので、相当の処分をしなければならぬ、かように考えており、また、それに対する監督機関につきましても、その監督の責任は免れないと、かように考えておるわけであります。
  31. 岩間正男

    岩間正男君 こういう問題は、いままで指摘されてきたわけです。ところが、ほとんどこの体質をどう改善するかという問題は、何一つやっていない。むしろ、それが体質なんだね。そのようなスパイ、秘密、そうしてこのようなやり方、隠密なやり方、これが本質なんだ。だから、ほんとうにメスを入れて、私はこれを明らかにしなきゃならぬ。政府機関ですよ、いやしくも政府機関が——暴力学生の中核派というのは、これは今度の連合赤軍なんかとも関係がありますよ、前身ですよ。この前の「よど」号の事件のときの田宮何がし、これは隊長、指揮官でありますが、これなんかもみな中核派の赤軍でしょう。だから深い関係がある、こういうものを実際は雇って、協力させ、盗みまでさせておいて、そうして今日、これとの癒着がないとか、国会答弁をやっておったとしても、これは、私は問題にならぬと思う。そういう点からいえば、これは厳重にこのような問題を明らかにし、この正体を国民の前に明確にし、これに対する責任の所在を明らかにし、同時に、このような体質に対して一これを許すことはできないことでありますから、日本の民主主義の名において許すことはできないのでありますから、これは当然法務大臣として処理される問題だと思いますが、そう考えてよろしゅうございますか。
  32. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまそれが体質だとおっしゃるのでありますが、絶対に、そんな体質を持った機関であるはずもありませんし、してはなりません。そういう観点から、この問題は厳重に処理したいと、かように考えておるわけです。
  33. 岩間正男

    岩間正男君 まあこの論議は、きょうは、非常に時間が限定されておりますので、佐々木さんにも申しわけないから、私はもっと具体的にやりますけれども、では次にお聞きします。  それなら、このとき盗まれたこの書類というものは、これはどういうものなんです。これは部長にお聞きします。どういう書類なんですか。
  34. 島田純一郎

    説明員島田純一郎君) 手元に問題を持っておりませんけれども、当地方局におきます調査官が、若干未整理等で所管しておりました書類関係六十数件であったと聞いております。
  35. 岩間正男

    岩間正男君 この中身を言ってくださいよ。ここで必要なのはこの中身なんだから。どういうものなんです、どういうものです。これは、あなたたちは、一体こんなことを調べもしないんですか。この問題は、国会で追求されてから何日になりますか。この問題が起こってから何日になりますか。二十三日だ、先月の。そうして、これは、石川県会でも追及され、それから衆議院の予算委員会で追及されたのはもう十日も前でしょう。これは、あなたたち、調べていないんですか。  こう聞いておりますが、これは間違いがないかどうか。一つは、石川公安局の諸田調査官というのが、珠洲市の選挙管理委員会に要請して、共産党員の四井清三氏の市議立候補の際の党派証明書、この写しを出してほしいと、このような強い要請があったのでしょう。結局、この写しを出しておるのであります。もう一つは、荒井という調査官が、金沢市教育委員会の奥清管理主事に面会をして、金沢市内の共産党員、またはその同調者と見られる小学校教員の名簿を出してもらいたいと、で、結局、市内二十四校、四十一人の名簿を提出した。これでしょう。これが問題になったのだ。国会でも問題になっておる。それをあなたたちまだはっきりここで言えないのですか。事実として言ってください。
  36. 島田純一郎

    説明員島田純一郎君) 先ほど御指摘のありました資料は、その中に入っておったことは事実でございます。
  37. 岩間正男

    岩間正男君 長官が見えて答えられるそうですから、あとに譲ることにしまして、これは新聞にもうはっきり書かれ、それから衆議院の予算委員会で追及された問題ですよ。こんなもの、無関心なんですか、あなたたちは。これは長官来てから詳しく聞きますが、これは法務大臣、その席におそらくおられたでしょうから御存じでしょう。いまのは事実でございますね。間違いありませんね、その秘密文書の内容。
  38. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 先般予算委員会で私も答弁したわけでありまして、その全般的な思想調査というようなことは、必ずしもとるべき策ではなしに、もっと限定した、現実に即して、必要性に応じて調査をするというのがたてまえであることを明言したわけです。
  39. 岩間正男

    岩間正男君 現実に即して、しぼっていったらどういうことなんです、もっと具体的に。
  40. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 破壊活動に関係のある、具体性を持った関係のある事項なり、あるいはケースについて調べるということであります。
  41. 岩間正男

    岩間正男君 それは共産党だということになるわけですか。あなたと、この前も、この問題を内閣委員会で私は論議をしました。こういうことは一体許されますか。佐藤総理は、十七日の衆議院本会議でこう言っているのです。日本共産党は合法政党であり、ぞれそれ主張は違うが憲法で認められたりっぱな政党だと、こう答えております。法務大臣はどう考えるか、日本共産党を。
  42. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 共産党とか何とかいうのではなしに、破壊活動を現実に行なうなり、そのおそれのあるという場合に調査をすべきであると、かように考えております。
  43. 岩間正男

    岩間正男君 この秘密文書は全部共産党員でしょう、あるいは同調者でしょう。こういうことをやっておって、そうでないと言っても、あなたの意思とは——下のほうではそれをじゅうりんしてやっておるということになるのですね。私はお聞きしますが、佐藤総理がこう言われた、しかもこれは衆議院の本会議で堂々と言われたこういうことについて、あなたも同じですか違いますか、こう聞いておる。
  44. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 共産党については合法的政党であることも認めております。しかし、全然、破壊活動がないという考え方のもとに調査をしないというわけではないと思います。
  45. 岩間正男

    岩間正男君 そういうことを言っておるのだが、あなたたちは、たとえば、わが党の第八回大会で決定されました綱領、これは長い間非常に多くの時間をかけて、そして決定したものでありますが、このような綱領についてお読みになったことないわけですね。この綱領が全面的にいまわれわれ実践の中でこれはあらゆる努力をしておるわけですよ。ところが、いま言ったように何だかおかしい。天下の公党だ、りっぱな公党だと総理は答えておる。あなたの答弁は、煮え切らない。合法政党だと認めておるけれども、しかしこれをどこまでも調べなければならないと、一体こういうふうなあいまいな態度というものがありますか。  私は時間がないから、最後に大臣にぜひ今度の法務委員会に出てもらいたい。これはずいぶん討論する問題がある。あなた自身に関する問題についてもぜひ聞かなければならない問題がある。こういうふうにほんとうに反共的な暴力集団、こういうような過激派に対してあなたたちはどういうことをやっているか。京都の場合、この前の府知事選挙でどういうことをやっているか、この一件だけだって明らかにして釈明する必要がありますからね。この問題との関連で、私は今日この問題をお聞きしているのです。そういうやり方で、何らかあいまいなやり方、そして自分自身はかってにきめて、そして暴力団体とかなんとかきめて、この調査は、調査第一課ですか、こういうところでは全部それをやっているじゃないですか。ここにあなたたちの調査員のほとんど八〇%以上を集結している。一方ではどうか。このトロツキストについての調査なんというものは全く見のがしじゃないですか、甘やかしじゃないですか。この問題をわれわれは言ってるんだ。事実が何より証明しているんであります。御退席になる前に、これに対して御答弁がありましたらお伺いします。まあ時間がきたようでございますから、ぴったりですから、御退席になって、この次お伺いしたいと思います。
  46. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) いろいろ不審の点もありましょう。しかし、全部が全部というようなただいまの表現については、私はあくまで賛成いたしがたいのです。また、京都の地方選挙とか、そういうような問題につきましても、ただいまいろいろお話がありましたが、私どもは何もそんないろいろどうこうとやかく言われるようなことはないと確信をいたしております。
  47. 岩間正男

    岩間正男君 この次に保留します。
  48. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、大臣のお時間の都合もあるようですので、私は、実はこの差別捜査について、この次に大臣にお伺いしたいと思っているのでございますが、これは時間の都合でやむを得ませんから、これは次回の法務委員会で私のほうもぜひ大臣に伺わしていただきたいと思います。その関係で、またさらに問題点を変えて、別の問題について質問を続けたいと思います。  いま申し上げましたように、国家権力、これは治安維持のために捜査権行使しなければならないことはよくわかりますが、どうしてもこの警察権力、国家権力というものが、一部の者にきつく当たるというふうに先ほど来申し上げているわけですが、たとえば昭和四十六年の四月に、賃上げを会社側に要求しておった——これは大阪総評の全国金属事件でございますが、細川鉄工所支部の労働者が会社側の重役やら管理職によって階段から突き飛ばされたり、あるいは組合員らが、会社の事務所の入り口の鉄製ドアに、足やら手をはさまれたりして、組合員重傷を負った事件がございます。これに対して、直ちに組合側から所轄の港警察に告訴したわけですが、すでに告訴以来一年近くたっている、去年の四月のことですから。まあようやく、いま検察当局のほうに事件として送検されているようでございますが、それに対して何ら捜査機関が動かれない。起訴されるというところまでもまだ進んでおられない。重傷を負わされながら、告訴したにもかかわらずに、一向に捜査官が調べてくれない。こうした加害者でもある経営者のもとで働かなければならない労働者の身になってみれば、捜査当局の取り調べがほんとうに一方的であるとしか考えられないわけです。こういう事案が、これはこの細川支部以外にも頻発しているわけでございますが、そういうふうに捜査権力が一部の側にはゆるく、一部の側には、きつく当たっているというふうな事柄について、これは法務省並びに警察責任者の方から、どういうわけでそのようになるのか、またそのようなことを是正する意思があるのかどうか、御答弁をいただきたいと思います。
  49. 斉藤一郎

    説明員斉藤一郎君) ただいま大阪の細川鉄工所の事例をあげて、捜査の方針をお尋ねでございますが、まず大阪の細川鉄工所の事件は私から申し上げるまでもなく御承知のことと思いますが、ずいぶん長いこと、もんでおりまして、まず昨年の春闘の際の賃上げ問題がうまく解決しなかったということで、ずっと争議状態にございます。そうしてその間にただいま御指摘がございましたような傷害事案が起きております。警察としましても、当然そういう傷害事案が一もともと警察としましては、こういう労働争議が適法に行なわれる限り関与するつもりはございませんが、御指摘のような暴力事案が起きたということになれば、これは警察立場で厳正に取り締まりたいという基本的な考え方でございますので、細川鉄工所の事案についてもいろいろと調査をしておりますが、何ぶん混乱の中で、大ぜいの関係者がいるところで起きたことなので、いずれの場合も加害者を特定する——傷をしたという事実があっても、だれがどういう状態でしたかということを明らかにしなければ、事件として取り上げづらいということで、被害者の方々から見れば、たいへんおそくなって、何しているんだという御不満があるかもしれませんが、それぞれ捜査を遂げ、そうして処分をするという方針でやってまいっております。  そのほか細川鉄工所に限らない、いずれの場合であっても、加害者がだれである、あるいは被害者がどういう人であるということで、警察が取り扱いを甲乙にするということは絶対いたしたくない、そういうことをすべきものではない、あくまで憲法のもと、警察として果たすべき責任を、正確に厳正に果たしたいという方針で処理してまいります。
  50. 佐々木静子

    佐々木静子君 労使全く平等に、加害者さえはっきりすれば、すぐにでも捜査権行使する、捜査を進めていくということをいま御答弁になったんですが、これははっきりさえすれば、すぐにでもこの捜査を進めて処分をなさるわけでございますね。
  51. 斉藤一郎

    説明員斉藤一郎君) 事案によって、いろいろ具体的な状況のもとで紆余曲折、一がいにまいらない場合がありますが、基本的にはいまお尋ねのように、加害者がはっきりして、そうして法に照らしてこれは違法であるということになれば、警察はやるべき措置を行なうつもりでおります。
  52. 佐々木静子

    佐々木静子君 ここに、私は、経営者側が労働者に対して暴力をふるっている写真を持っているわけです。また、ここに実はテープもとってきているわけです。これはテープのことですので、その場じゃありませんが、こういうことがあったということを、会社側の人間が、労働組合の人間に話をしているテープもあるわけです。こういう資料がありさえすれば、やはりこれは早急に適切なる処置をとっていただきたい。これは一年間も暴力を受けながら、泣き寝入りさせられて、しかもその経営者のもとで働いている労働者の苦しみというものは、これは想像に余りある。早急にこれは警察庁のほうとしても捜査を進めていただきたいと思うわけです。このことは約束していただけますね。証拠が不十分であるというなら、私はこの写真をいま提供してもいいわけです。はっきりと、犯罪行為をやっているところの写真もあるわけです。約束していただけますか。
  53. 斉藤一郎

    説明員斉藤一郎君) 先ほど来お答え申しておりますように、警察としては、事案を明らかにするために役立つ資料は、どんな資料でも活用して、捜査を進めたいというふうに思っております。
  54. 佐々木静子

    佐々木静子君 また、最近労使間の問題についてガードマンが介入している事件が非常に多いわけでございます。これは報知新聞の争議や、光文社、いまの細川鉄工、ゼネラル石油精製、あるいは教育社の争議などに、これはガードマンが導入されて、労働者の正当なる団体交渉権や団体行動権を、事実上暴力で踏みにじっているというケースが、たいへん多いわけでございますが、そのガードマンの中には、これは非常にこちらで調べたところでは暴力事犯の前科が十数犯ある者もあるという、暴力団まがいの者もあるということでございますが、この労使の紛争の解決に、経営者が、ガードマンを介入させて、労働組合の法律で認められた労働者の権利を行使する権限を、事実上奪ってしまうということは、労働組合法第一条の精神を踏みにじる、労働組合法の目的に反することだと思うのでございますが、こうしたガードマンが労使間の交渉にいま介入することについて、労働省としては、どのようにお考えになっておられますか。
  55. 岸良明

    説明員(岸良明君) ただいまお尋ねの件でございますが、まあ先生御指摘のとおりに、労使関係というものは、これはやはり基本的には使用者、労働者の間の自主的な問題の解決ということがたてまえでございます。したがいまして、できるだけ第三者の介入ということは避けることが至当である。こういうふうに考えるわけでございますけれども、しかし、最近の事例から申しますと、やはり会社の仕事の一部を、ガードマン会社その他に委託するという場合がございまして、やはり事柄によっては、そういうものが介入してくるということは、これから避けられないことだろうと思うのでございます。ただ問題は、そういう第三者が介入いたしますと、長期的な労使関係から見まして、非常に問題がこじれてくる例がありますので、私どもとしましては、やはりそういう問題の扱いについては非常に慎重であるべきである、こういうふうに考えております。
  56. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの労働省側の答弁によりましても、労使間の問題の解決は、できるだけ第三者に介入させずに解決するのが望ましいという御見解、御意見、もっともな御意見と伺ったのでございますが、ガードマンに委託して、警備その他に当たらせるという会社が多くなってきているというお話でございますが、このガードマン、警備保障会社に委託していろいろな会社の業務をやらした場合、ガードマンが起こした事故、刑事事件も含めまして、その責任はどこに所在するのか、その責任が非常に不明瞭になっているわけです。いま私が申し上げた全国金属細川支部の労働争議におきましても、これはガードマンが組合員に暴行を働いている。これに対して、会社当局は、もし刑事事件になるんなら、これはガードマンのやったことでおれは知らぬぞということを、組合員にはっきり言っているわけです。そこら辺に非常に問題があるのではないか。そういう事柄について労働省としてはどのようにお考えになりますか。
  57. 岸良明

    説明員(岸良明君) 先ほど申し上げましたとおりに、ガードマン会社に委託する形というのが出てきておるというのでございますけれども、これはやはり守衛でございますとか、そういうような間接的な部門、特に雇用契約のもとにやらなくてもよろしいような部面については、合理化の形からそういう傾向があるということを指摘したわけでございます。  そこで、問題は、第三者に委託した場合にどういう形になるか。当然、通常の状態においては問題が起きないと思いますけれども、何かそこに非常に労使紛争の過程において、暴力的な行為が行なわれる状態がもしあるとするならば、それはその事態について、使用者がはっきりとそれを指図をしてやらしたということになりまするならば、これは労働法の上から申しましても、不当労働行為責任は免れない、かように存ずるのでございます。  ただ、非常に労使関係というのは、これは御承知のとおりに、いろいろな形の中で流動的にあらわれてまいりますから、その点について、中には、使用者の知らない過程において起こってくる問題もあるだろう、そういう点はございますけれども、はっきりと不当労働行為を指示したという状態になれば、これは明白に不当労働行為の要件が満ちてくる、かように存じております。
  58. 佐々木静子

    佐々木静子君 会社が警備会社との間で、はっきりそういうことを指示したということは、これは会社の中、あるいは警備会社の中で内通する者がない限り、組合員のほうにははっきりとはわからない。しかし、いろいろと争議の動きを見ていれば、これは相通ずるものがある。あるいは、たぶん警備保障会社が——個々のガードマンがやってくれるだろうということを期待して、暗黙のうちに雇い入れているというようなことが非常に多いわけです。これに対して、これは個々のガードマンあるいは警備会社の責任であって、企業者側は知らない、不当労働行為の対象にならぬというのであれば、これでは労働組合法の精神が生かされないのではないですか。結局、企業者側はガードマンを雇うことによって企業者の責任をのがれることになる。そういうふうな傾向が非常に顕著になっているわけです。そういうふうなことについて、労働省としてはもう少し真剣にお考えになる必要があるのではないか。そうしなければ、これは労働組合法の精神が全く骨抜きにされてしまう。そういうふうなことについて、どういうような立場でもって臨んでいこうとされておられるのか、御見解を伺っておきます。   〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕
  59. 岸良明

    説明員(岸良明君) ただいまのお話、確かに具体的な問題については、そういう問題もあり得るだろうと思うわけでございます。私どもはかねがね、国会におきましても、こういうこの種の問題が議論になりますが、たてまえとしては、やはり労使関係は自主的に解決をすべきものである、特に、労使間において何か紛争のあるときには、第三者の介入ということは、なるべく避けるべきであろうということを基本的に考えております。しかしながら、全体の形において、そういうような一部の部門を警備専門家にゆだねるという状態も、これはとても否定をすることができない状態であります。そういうような第三者に委託をした結果、当然何か紛争が生じたという場合については、これは単に契約という問題だけではなくて、全体的のいろいろな運用の状況その他を勘案をいたしまして、これは使用者の責めに帰すべきものであると考えるならば、当然その責任を問うという形にならざるを得ないと、かように考えております。
  60. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういう労働省の御見解を伺って、たいへん心強く思うわけですが、さらにそれがはっきりと明文化できるようにひとつ労働省のほうとしてもお骨折りをいただきたい、これをお願い申し上げる次第です。  いまの問題につきまして、これは警備の責任者である警察庁のほうでは、このガードマンが労働争議に介入して暴力行為を働くことについてどのように考えておられるか、また、労働組合法の一条の精神を踏みにじるようなことが事実上数多く発生しているということについて、警察当局として、今後、どのような態度で取り締まっていこうとお考えになっているか、御見解を述べていただきたいと思います。
  61. 斉藤一郎

    説明員斉藤一郎君) お尋ねの事柄について、ただいま労働担当立場から、労働省の方からお話がございましたが、私ども警察立場からしましても、労働争議そのものは、労使の間の自主的な行動であって、できるだけ警察は関与したくない、すべきものでもないというふうに思っておりますが、これがやはり適法の範囲を、合法の範囲をこえた場合には、警察は、治安立場からどうしても関係しなければならない、警察責任上やらなければならないという場合が出てくるのでございます。特にお尋ねのガードマンに限らず、ガードマンを含めまして、第三者がこの労使紛争に入ってきて、使用者側で、いわゆる自主警備と私ども申しておりますが、警察の力をかりないで、守衛なりあるいは第三者を雇って警備をするという場合は、とかく労働組合側で感情的な対立ができまして、そうして思わない暴力事件に発展するというケースが非常に多いのでありまして、こういう場合には、私どもは事前になるたけ双方に対して暴力そのほか違法な行為に出ないようにということを警告もし、警察立場で限界というものをお話をして、そういうことのないようにする。それからもし不幸にしてそういう違法な事案が出た場合には、先ほど来お答えいたしましたとおり、どっちの側からどういうことがあろうとも、警察立場で厳正に取り締まっていくというふうにいたしたい。  それからなお、ガードマンが最近労働争議その他の場合に雇われていろいろな紛議を起こすことが多いということにかえりみて、当面私の所管でございませんので、あまり詳しいことは存じませんが、ガードマンに関する立法を考えておるようでございます。
  62. 佐々木静子

    佐々木静子君 ガードマンに関する法律が今度つくられるということ、法案が準備されているということを私どももお聞きしておりまして、非常にけっこうなことだと思っているわけでございますが、結局、これは個々のガードマンあるいは警備保障会社だけを取り締まるのであっては何にもならない。そうであれば、企業は、どんどんガードマンなり警備保障会社を雇い入れることによって、企業は、自分の責任をのがれようとする。ですから、これはつくる以上は、企業がともに責任を持つ両罰規定というものを設けるというような必要がどうしてもあるのではないか。また、個々のガードマンあるいは警備会社が不当労働行為に及んだ場合には、事実上労働者の権利を封じ込んでしまう場合には、これは企業側の不当労働行為として地労委に提訴することができるようにしなければ、これは骨抜きになるのではないかということを考えるわけです。その点について警察当局はどのような立法を御用意なすっているのか。また、その点についてどのように御配慮されているのか、お述べいただきたいと思います。
  63. 斉藤一郎

    説明員斉藤一郎君) 先ほどちょっと申し上げたように、このガードマンの立法に直接関係しておりませんので、具体的な点について詳しくお答えができないのが残念でございますが、労働関係は別としまして、刑事責任の点から申しますと、警備保障会社というものについての立法をした場合でも、刑事責任ということになりますと、やはり一般の刑事責任の原則に従って、これをこの立法の場合に、どういうふうに適用していくかというところ辺に、一つの限界があろうかというふうに思っております。
  64. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまのこの警備保障会社に対する規制の法律につきまして、この地労委の提訴、あるいは労働委員会が調査権、あるいは命令権を行使するようにすべきでないかというふうに、また、そうしてもらわなければ、これは実効を期せないのではないかというふうに考えるわけでございますが、それに対しまして警察庁あるいは労働省のほうで、さらにお考えを述べていただきたいと思います。
  65. 岸良明

    説明員(岸良明君) 先ほどお答えをしたとおりでございますが、私どもの承知しているところでは、現在、警察庁のほうで御検討中のガードマン立法、これは当該事業者に対する規制法であると、かように存じておるわけでございます。当然、その中には、ガードマンが職務の行使あたりまして、あるいはガードマン会社が業務の遂行にあたりまして、当然権利等を侵してはならないという規制の規定がおそらくあるだろうということは承知をしておるのでございますが、ただ問題は、いわゆる労組法上におきまして、使用者が不当な労働行為を行なった。これが不当労働行為の基本的な要件でございます。問題は第三者を介した場合に、そういうような解釈が成り立ち得るかどうかということでございまして、当然、これは委託を受けましても使用者の管理下にあるということならば、実体から考えて、ガードマン会社のほうの不当労働行為というものが、相当にこれは重なってくるということになれば、使用者が、それを容認したという意味において、不当労働行為が成立するであろう、こういう事案も私はあり得ると思っております。ただ、個々の中において、若干いろいろと問題が起きてくるということまで、個々具体的に私どもはどうこうということは申せないと思いますけれども、少なくとも労組法上の規定に該当する場合には、この問題について、不当労働行為の成立が認められ、そして、これに対しては、必要な救済が与えられるものと考えております。
  66. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひそのように前向きの姿勢で労働省としてはお取り上げいただきたいと思うわけでございます。そして、いま、警察庁のほうでガードマン業者を規制する法律をいろいろ御検討になっておられる。その中には、警察官とまぎらわしい服装をするとか、あるいはそのような記章をつけるというようなことも、その取り締まりの対象の一つになっていると思うのでございますが、現に、ここに私、写真もいま持っているわけですが、こういうふうに、これはだれの目から見ても——私もこれだったら間違うわけですけれども、だれが見ても警察の人だと思う。こういう人が、警備保障会社の、そういうかっこうをしているわけです。これはいまの法律でも、軽犯罪法第一条の第十五項ですか、これに抵触すると思うのでございますが、この警察官類似の服装をしているガードマンに対して、いままで捜査当局は、軽犯罪法その他で、その服装が酷似しているということでお摘発になったことがあるかどうか。あったとすれば、全国で何件あるかどうかということをお答えいただきたいと思います。
  67. 斉藤一郎

    説明員斉藤一郎君) いまお尋ねの軽犯罪法等で取り締ったことがあるかということでございますが、まことに残念でございますが、一ぺんも検挙した事例はございません。これは御指摘のように、軽犯罪法の一条の十五項にそのような規定があるのでございますが、警察官の服装というのは、警察法の七十条によって所定の制服がきまっておりますが、これとどの程度類似のものであるかという具体的な事案になりますと、非常にむずかしい。一般の人が見て、まことに誤信をする服装であるということは、私どももはっと思うような場合がございますので、御指摘のとおりでございますが、いよいよ違反として法の適用をやるかということになると、なかなか技術的な問題がございまして、ただいままではそういう事例がないということでございます。
  68. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはいまの御答弁を伺いましても、すでに捜査権力の行使が、一部の者には強く当たっているけれども、一部の者には非常に甘い、ゆるい。行使をされておらない。この写真を見て、これはおそらく十人のうち九人——十へまでもじゃないかと思いますが、この写真を見、この服装を見ると、これは警察官だと。現に、拾いものをして、警察官だと思ってお金を届けたところが、それが警察官ではなくて、ガードマンで、そのままネコババされたという事案も起こっているわけです。もうこれは警察官の指示であれば、これにそむいた場合には——そむくといいますか、それに反抗した場合には、公務執行妨害罪が成立するということをわれわれもよく知っている。だから、これは警察官だからと思ってさからわないでいるということもいろいろあるわけです。どうしてこの警察官に類似しているもの——非常にこれは基準がむずかしいと言われますけれども、一般人が見て、これは警察官だと思う服装であれば、それはまぎらわしいのだから、そういう服装をした場合には、軽犯罪法に触れるというのがこれは当然の軽犯罪法の解釈じゃないかと思うんですが、なぜ、いままで検挙なさらないのか、どういうわけで検挙なさらないのか、その点をお述べいただきたいと思います。
  69. 斉藤一郎

    説明員斉藤一郎君) いまの御指摘の点について、一部の人の味方をして、そして取り締らないのだという御批判でございますが、ガードマンだから、ガードマンの保障会社のためにやらないという意味ではございませんので、全くその法律を、事実に、具体的に適用する法的な技術的な判断の問題で、よう踏み切っておらない。また、その踏み切る実体がなかなか、こまかく見てまいると、ない。そういう意味で非常に困ったものだということは十分認識しておるのでございますが、人によって法律の適用を甲乙しようという考えは絶対ございませんので、御了承いただきたいと思います。
  70. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは困ったものだと思って嘆いているのは国民なんです。警察のほうは権限がおありになるんだし、これは明らかに法律違反なんですから、これはどんどん摘発されたらどうですか、どんどんと。さらに、ガードマンを——はっきりと、こういうふうに警察官類似のかっこうをしているガードマンを摘発されることによって、今後警察官のまねをするガードマンが少なくなるという大きな効果があるのじゃないか。ガードマン会社が何ゆえに警察官とそっくりなかっこうの服装を着せているか。これは言うまでもなく、警察官と間違わせることによって十分に警備が、おどかしがきくということがねらいだということは、これは警察当局も十分わかっていると思うわけなんです。どうしてそこをもっときびしくいままでされなかったのか。そして、されなかったということを私非常にふしぎに思いますとともに、この立法をいま用意していると言われますが、それまでの間にでも、この警察官類似の服装をしているガードマンをどんどん摘発なすったらどうですか。どういう態勢でどういう方針で今後臨んでいくかということを警察当局に伺いたいと思います。
  71. 川崎幸司

    説明員川崎幸司君) ただいまの御質問にお答えいたします。  御案内のように、軽犯罪法におきましては、公務員の制服そのものか、あるいはそれに似せてつくったものを用いてはならないというふうに規定していると思うわけでございます。それで、その似せてあるものというものの立証が事実上非常にむずかしいという面がございまして、現在まで、先ほど斉藤事官が申し上げましたように、検挙した事例はないわけでございまするが、そういうことの起こらないようにいままで指導してまいってきておりまするが、なお十分に目的を達することができないという現状でございます。したがいまして、警備業法案におきましては、そういう警察官の制服などと色、型式あるいは標章等によって明確に識別されるものでなければならないというふうな趣旨の規定を設けて、そういう問題を防止してまいりたいというふうに考えております。
  72. 佐々木静子

    佐々木静子君 警察の服装と似ているかどうかということの識別は、これは一般の国民が見て、どっちが警察官かどうかわからぬというのであれば、それで十分じゃないですか。立法の趣旨から見ても、一般の国民が、これは警察官なのかと、そのガードマンを見て、警察官と間違うという服装をしているということが、これがいけないという取り締まりの趣旨なんですから、そのものでなくたって——これはだれが見てもよく似ていろとお思いになりませんか。かりにこれ警察当局がお思いにならないとしても、この判断の基準は、国民の一般良識によらなければならない。これは警察当局が似ていないと言っていても、国民の大多数がこれは似ていると思っておれば、やはりこれは似ているとして、国民がだまされるんですから、だまされる側の国民立場に立って捜査をお進めにならないといけないと思う。そのものにそっくりでなければいけない——これは私はそっくりだと思うんですが、まあ厳密にいえば、一センチ高いとか低いとかというようなことはあるでしょう。ですが、そういうふうなことを言っておられれば、今度警備業法をきめたところで、やっぱりこれは似ているとか似ていないとかということで、法律できめても取り締まらないというようなことが起こるわけです。  現実当局はこのガードマンを取り締まろうという気持ちがおありにならないんじゃないか、私どもはそう思うわけなんです。ほんとうにこのガードマンを規制しようという気持ちがおありなんですかどうなんですか。このガードマンが、警察官とまぎらわしい行動をして、一般国民がだまされている、また間違わされているということについて、これは何とか取り締まっていかなければならないという積極的な姿勢をお持ちなのかどうか、私はそれをお聞きしたいわけなんです。
  73. 川崎幸司

    説明員川崎幸司君) お答えいたします。  ガードマンにつきましては、一部におきましていろいろの不法事案を発生させておりますので、これに法的な規制を加える必要があろうと存じまして、去る三月十七日警備業法案といたしまして衆議院に提出されております。お尋ねの服装の問題につきましては、お示しになりました写真を私は拝見いたしておりませんが、非常に似通ったものであろうというふうに存じます。ところが、現在の軽犯罪法の規定につきましては、先ほど申し上げましたとおりに、そのものか、あるいはそれに似せてつくったものでなければ取り締まれないという規定になっておりまして、単に似通っておると、類似しておるということだけでは軽犯罪法での取り締まりは困難ではなかろうかと思うわけでございます。したがいまして先ほど申し上げました警備業法案におきましては、そういう警察官の制服と明確に識別したものを用いなければならないというふうに積極的な規定を設けまして、さようなものを積極的に取り締ってまいりたいというふうに存じておるわけでございます。
  74. 佐々木静子

    佐々木静子君 これがいまの御答弁にあった、似せてつくってあるそのものずばりじゃないですか、これが似せてつくってないなどと思う人は、百人が百人思ってないと思います。これは御答弁になっていらっしゃる少年課長さん御自身にしても、これは似せてつくってあるというふうに当然お思いになるんじゃないですか。思わない人はほんとうにないと思う。なぜそれを、たとえばこの警備業者の代弁者、あるいは弁護人のような御答弁を警察がなさるか、これは私はそれなりのわけがあると思うのです。  警備業者、これは現在では大きなのは全国に三百二十一社あって、東京八十二社、大阪五十五社あるというふうに聞いておりますけれども、そのうちにその会社の経営者、その会社の役員がほとんど警察御出身の方というふうに私聞いております。これは特に大きな会社数個あげていただいてもよろしいのですが、私のほうも若干資料がございます。これはもし警察と何らそこに癒着がない、関係がないとおっしゃいますならば、大きな警備業者五社でけっこうでございますから、その役員名簿を法務委員会に出していただきたいと思います。その経歴を私調べさせていただきたいと思います。——そこら辺に私は警察当局警察権を発動されない理由があると思います。その点いかがですか。
  75. 川崎幸司

    説明員川崎幸司君) 警察と警備会社が癒着いたしておるというふうなことは全くないと信じております。御指摘のように、警備会社の一部におきましては、役員に、警察の出身者が就任いたしておる事例もございますが、そういうことをもって、私どもは、警備会社に対する必要な取り締まりを、ゆるめようというふうなことは毛頭考えておらないところでございます。先ほど来申し上げておりますように、ガードマンが、警察官の制服に似通ったような服装をするということは非常によくないことである。ところが、それについて、現在の軽犯法で、取り締まりをいたしますがためには、必ずしも十分な法文の規定ではないというところから、新たな立法におきまして、そういう警察官の制服と明確に識別できるような服装を用いなければならないというふうな、明確な明文規定を設けまして、必要な取り締まりを行なってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  76. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま申し上げたような、この警備業者の大手五社について、その役員の経歴書を後日提出していただけるように約束していただけますね。
  77. 川崎幸司

    説明員川崎幸司君) 現在の時点におきましては、警察といたしまして、警備会社について、一般的に調査する法的な根拠を持っておりません。したがいまして、そういう趣旨での資料の提出ということになりましては、いささかちょっと問題があろうかと思うわけでございまするが、私どもが承知いたしている限りにおいての、資料の提出要求でございましたならば提出申し上げたいと、かように存じます。
  78. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは警備業法が衆議院に提出されたということでございますので、それが先ほど来私が追及しております、単なる個々のガードマンの責任あるいは警備業者の責任ではなくて、これを雇い入れている企業の側の責任にも、その責任の所在が、はっきりしないことにならないような立法をしていただきたいということを、私の希望として特にお願いしておくわけでございます。  ちなみに申し上げますと、このガードマンがすべて悪いというわけではありません。なるほど人命救助とか、防火、犯罪者の逮捕などにも協力されていることがあるわけですが、四十五年度の資料によりましても、このように人命救助、防火、犯罪者の逮捕にガードマンの協力というのが七十二件、五十二人の犯人を捕えているが、逆にガードマンが犯罪を犯して検挙された数は、四十五年一年間に九十二件、六十五人の刑事犯罪者を出している。捕えるよりも、とらまえられている数のほうが多いということで、非常にこのガードマンの素質が低下して悪質化している、また狂暴化しているというふうなことを十分警察当局——これは次の立法を待つまでもなく、十分にこれは治安対策としてお取り締まりいただきたいと思うわけです。また、この間に対しまして、いま警察のほうで、私どもどうもこれは警備業社と癒着があるのではないかと思われるくらいに、警察は警備業社に対してきわめて寛大だ、こういう事柄に対して、これ捜査担当者である検察庁法務省としても、これは積極的に取り組んでいただきたい。この警備保障業者の違法行為、あるいは暴力事犯などについて法務省としてはどのようにお考えになっているのか、公案課長にお伺いしたい。
  79. 近松昌三

    説明員(近松昌三君) 検察の面におきましては、もとより具体的事案の適正処理ということを常に心がけておりまして、これがガードマンの犯罪行為であれ、その他の犯罪行為であれ、これを差別して取り扱うというような取り扱いは全くいたしておりません。御指摘のガードマンの行為がかりに法に触れるということでありますれば、厳正公平に捜査を行ない、適正な処理をいたしたい、かように考えております。
  80. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは大体警察から検察庁のほうへ送検されてくるという事案が、普通、犯罪捜査に多いわけでございますが、こういうふうな特別な事情など御勘案いただきまして、警察当局としても、積極的に、このような問題に、今後、取り組んでいただきたいということを特にお願い申し上げるわけです。  時間の都合もありますので、あとの私、捜査の不平等という問題について若干問題を残しているわけでございますが、それでは私の質問は一時終わらしていただいて、また次の機会に譲りたいと思います。
  81. 岩間正男

    岩間正男君 これは時間の関係で非常にこま切れになったわけでありますから、この次まとめて時間をいただいて質問したいと思いますので、それとの関連できょうはいろいろ事実関係をお聞きしておきたいと思うんです。  今度の事件、これは御存じだと思いますけれども、金沢の石川公安局の調査官が公安局の中から書類を盗ました。しかもその書類が、非常に思想行政につながるものであった、こういうことで非常に大きな問題になっておるわけですね。この経過については当然公安調査庁としては、重大な問題ですから調べられたと思うのです。この経過をまず概略報告願いたいと思います。
  82. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) お答えいたします。  この事件が表面化しましたのは三月の八日、石川県会で質問がありまして公然化したわけでございますが、私どものほうではその前から、具体的に申しますと、その直前でございますが、盗難にあったらしいということで、内密に、監督機関である中部公安調査局から人を派遣いたしまして、極秘裏にいろいろ調べておったのでございます。問題になりました前日に、正式に盗難がはっきりしましたので、警察捜査をお願いした。その結果、いろいろ外部から侵入したのではないかという見方と、それから内部の事情を非常によく知っているものが犯行を犯したという形跡がありましたので、あるいは内部の何者かではないかと、こういう両面からの見方から、内部につきましては、中部公安調査局の係官をして内部の職員について調査を進めておりました。三月の十七日の夜になりまして、内部の村本という調査官が手引きしたということが判明いたしました。その翌日、石川地方公安調査局長が同道いたしまして、警察へ自首させたというわけでございます。問題の書類は、三月十三日に社会党の方より返還を受けましたが、捜査中であるということで、直ちに石川県警のほうに領置されまして、現在まだ私どものほうには返っておりません。  大体の経過はそのようでございます。
  83. 岩間正男

    岩間正男君 あなたのほうは、警察からの連絡は、受けるのですか、受けないのですか。発表しているでしょう、その内容について。盗ませた者、それはいま言った調査官。盗ませられて盗んだものは、これははっきりしているでしょう。こんなこと知らぬですか。新聞にさえ出ている。明確にしてください。
  84. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) お答えいたします。  村本調査官の手引きを受けまして、石川公安調査局に夜間侵入して、一部の書類を盗み出したのは、金沢大学の学生、法学部の三年鈴木俊一という男だということを報告を受けております。
  85. 岩間正男

    岩間正男君 当然あなたたちは、こういうものについて思想調査をやっておるのだろう。これはどういう種類の、いまの学生は金沢大学の法文学部でしょう、正確にいえば。そうでしょう。そして三年生だな、三年前に入学をしている。しかしこれはいままでの行動の中ではっきりしているでしょう。そういうことは隠す必要はないですよ。公然と言いなさい。そういうところだけ隠すのはどういうわけですか。
  86. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) お答えいたします。  御質問の趣旨がよくわからないのですが、学生との関係でございますか。
  87. 岩間正男

    岩間正男君 学生の団体に入っているでしょう。学生の団体というよりも、いまの暴力団体、あなたたちが最もお得意としなければならないところの。
  88. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) この鈴木という学生は、いわゆる革共同中核派と申しまして、昨年来非常に過激な行動をいたしました一派の過激派学生の同調者、はっきりその盟員かどうかということはわからないそうでございますが、同調者であって、その系統のデモ等に参加して、警察に検挙されたこともある。それが動機になって村本調査官と知り合ったのだという報告を受けております。
  89. 岩間正男

    岩間正男君 なぜそういうことを最初から言わぬのです。聞かれなければ言えないのか。全部を、経過をはっきり言いなさいと言っている。ところが、自分の都合の悪いようなところはみな隠しておいて、どういうわけですか。あなたのような態度そのものが問題なんです、そういうやり方が。なぜ言わぬ、金沢大学の法文学部の三年生、そしてこれはどういう一体団体に属しているかと聞いているのだから、それくらいのことは、はっきりわからぬことはない。あなたのほうからはっきり言わなければならぬ問題だ。警察のほうから聞いているでしょう。中核派に属してこれは活動しておる、逮捕された三年前くらいから、これは月に二、三回ずつ会っているという事実も判明しておる——警察では、それはちゃんと警察の調べとして。これは警察庁長官にあさって出席を求めて、この詳細ななにも受けようと思っているのです。わかっているわけでしょう。なぜそういうところを一体あなたたちはここで、国会で質問されるときに、そういうところは聞かなければ答えられないのですか、どういうわけですか。その態度はひとつ……。
  90. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) お答えいたします。  事件の経過を述べろと言われたので、私どもで把握している経過を申し上げたわけで、学生のことは、ただいま申し上げた程度のことは、報告を受けておりましたが、直接お尋ねがあった経過の中には、そんなに詳しくお尋ねになったと思わないで、お答えしなかったわけで、わざわざ隠したわけではございません。お問いになりましたならば、何でもお答えいたします。
  91. 岩間正男

    岩間正男君 この学生を、あなたたちは、いままで使っておったわけだな、少なくとも村本というこの調査官は使っておった。それで、月に二、三回ずつは会っている。そうして、実際は、こういう者に盗みまでさせるほど使っているのですから、よほど仲のいい間柄だといえる。そうして、これはスパイにもちゃんと養成している。こういう例は枚挙にいとまがありません。いままで何回私ども国会で取り上げたかわからない。それははっきり暴力集団の一人であった、中核派である、三年前からそういう活動をしておった、この事実はもっと明確に言うべきですよ。ところが、どうもそういうことじゃぐあいが悪いのです。  そこで、お聞きしますが、法務大臣は、こういうのは法務省の方針じゃないというのだが、こういう暴力学生などというものを手先にして、そうしてスパイをいままでさせていたに違いない。どういうことをやろかというと、喫茶店とかそういうところで会う、そうしていろいろな情報を買う、それからそれに必ず謝礼を出している。これなんかも調べたのですか、あなたたちは。これは調べなくちゃならぬのです。そうして、実際は協力費という名前の金でこういう者を培養している。それが今度は盗みまでさせた、こういうかっこうになっているわけですね。これは一体法務省の方針かどうかと、さっきお聞きしたのだが、これはもちろん法務大臣は、方針だとはお答えになることはできない。そうすると、こういう問題について、あなたたちはどうお考えになっているか。これはもっと厳重に調べなければならないと思いますが、大臣、調べる意思があるのかどうか。この学生という者をもっと徹底的に調べる必要がある。あなたたちの体質の問題が問われている。公安調査庁というものは何であるのか、伏魔殿の姿というものが問われている。ですから、それに対して答えるだけの何かをやるべきです、はっきり、こういうようなやり方に対して。それで、いつから関係を持ったのか、それから月に何回ぐらい会っているのか、いままでどんな情報の提供を受けておったのか、それからどういうふうに謝礼を出されておったのか。調査庁としては、これらのことは、少なくともあなたたちは、法務大臣がさっき答弁された、それは法務省の方針ではございませんという、そういう政治方針に従えば、当然それをやらなければならないことになっているわけでしょう。やりますか、やりませんか。
  92. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) お答えいたします。  私ども調査の対象団体として指定して、調査しておりまする団体の中に、学生を相当多数含んでいる団体が幾つかございます。この学生の多数加入している団体を調査する必要上、非常にやむを得ず、学生の、いわゆる協力者を使う場合があるのでございます。ただ、本件の場合、この鈴木俊一という学生が、村本の協力者であるかどうか、これはまだ私ども確認しておりません。現に警察検察庁にお願いして捜査しておる段階でございまして、鈴木俊一は、まだ細目を自白していないということでございますし、その警察検察庁刑事事件としての捜査の済んだあとで、私どものほうに身柄を借りまして、そういう協力者であるかどうか、あるいは協力謝礼としてどれくらいの金額を渡しているのか、そういうことを調査したいと考えておる段階でございます。
  93. 岩間正男

    岩間正男君 とにかくこの問題は、非常に簡単な問題じゃないと思います。日本のこれは、そういうような、何といいますか、全く暗黒なものにつながろ重大な問題を持っている。それで、少なくとも、先ほど法務大臣は、そういう方針をとっていない、こういうことなんですから、そうすると、それに反する行為をあなたたちはとっていたわけだな、これは認めますね。そうでしょう、協力者にこういうものをやっていた、そんなことは、これはどうだと聞いたのです。そういうふうな方針はとっていないと言った。これは認めるでしょう。やむを得ずとか何とかいっても、だれにやむを得ないのですか。学生を初めからそういうふうな疑いの目でもってそれを調査する、その協力者ということでスパイを養成する。ていさいのいいことばを使っているが、これはスパイですよ。どんどん養成している。この養成のしかたについては、これは何というか、もうたくさんあります、こういう例は。最初はとにかくおどかす、逮捕する、痛めつける、それから今度はだんだんこれに対して説得をする。それから協力者に仕立てていく、金をくれる、これがあなたたちの常套手段・じゃないですか。それがここにはしなくも出てきた。それが中核派の学生だった。それがいまの連合赤軍なんかの問題で、非常に大きな問題になっている。この体質が今日問われているのは、ここなんです。だから、あなたたちは調べなければならぬ、少なくとも自分らの内部の調査をやらなければならぬ、内部調査というものはお手のものでしょう。こういうものはやりますか、やりませんか。それから、こういうようなやり方がいいのか悪いのかということ、この二つを端的にお聞きいたします。
  94. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) お答えいたします。  内部調査は、これは徹底してやりたいと思っております。内部からこういう者が出たということは、非常に遺憾なことで、岩間先生の御指摘のように、内部の悪い面の体質が、こういう形にあらわれたんだと、非常に残念なことだと思っております。
  95. 岩間正男

    岩間正男君 それから、こういうことを今後やるのかやらないのかという問題です。こういう学生を使って、スパイに仕立てている。——最初は威圧している。私も知っているのです。これは私の知り合いだってやられたのだから。これは、もとは山形の教員組合の青年部をやっていたのですが、私のスパイに仕立てられてやられたことを、私は、十何年前の決算委員会でこれを明らかにしたことがあるんだが、ひどいやり方だ。手のうちはすっかりわかっている。だから言っている。やるのかやらぬのか、はっきり答えてください。
  96. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) 破壊活動防止法に基づきまして私どもに認められておる調査活動といたしましては、警察あるいは検察庁と違いまして、強制権はございません。全部任意調査でやるようにという規定がございます。したがいまして、対象団体を調査するために、任意調査でございますから、その許される範囲内でいろいろな方法を講じなくちゃいかぬわけでございまして、その対象団体の中から協力を求めていくということも、これは好ましいことではございませんが、やむを得ないことではないかと考えます。
  97. 岩間正男

    岩間正男君 やむを得ずとか、好ましくないとか言っていますが、そういうことをやっているんですね。そういう何なんだな、政府機関なんだな、公安調査庁というのは。はっきり確認したい。やむを得ずとか、そんなことを言ったって話にならぬ。
  98. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) いま先生お尋ねの点でございますが、これにつきましては、すでに盗聴事件等に関しまして何件かの裁判所の判決が出ておりまして、私どもそれを指針にして仕事をしております。結局、私人の人権を侵すということと、それから公共の福祉を守るという調査の必要とか、その両方の法域を検討いたしまして、その私人の人権を害する程度のほうが低い場合には、許されるんだというように、いま判決は持ってきておりませんが、そういう判決が二つばかり、たしか新潟と広島と思いますが、出ておりまして、そういう判決の精神を参考にいたしまして私ども仕事を進めているわけでございます。
  99. 岩間正男

    岩間正男君 まあ時間があまりありませんからあれしますが、とにかくその調査、あなたは、なんとかかんとかいろいろ弁解されたけれども、この問題については、これはやらなければならない、たださなければならぬときがきておるのですから、とにかくその調査をはっきりやって、その結果を出してくださいよ、当委員会に、必ず。何日にできるか、半月かかるか、何日かかるかわからぬが、その上に立ってやりたいということが一つ。  それから、もう一つ聞きたいのだが、大体、市の教育委員会に行って、そうして教員の思想とか、政党の所属関係とか、あるいはそれの同調者とかそういうものを聞いたというのが中身でしょう。いわゆる思想調査ですね。思想調査だ。これはさっきも聞いたのだ。これも法務大臣に聞いている。こういうことは好ましくありません、こういうふうなことはしようとは考えていない、こう言っているわけですね。こういうことを要請する権利があるんですか。たとえば、教育委員会の係のところに行って、公安調査庁にこういうものを出せ、あるいは選挙管理委員会に行って、共産党の市会議員の経歴が出ているはずだ、これの写しを出してくれ、こういうことを要請する、そういうあなたに権限があるのか、また、そういうことをしょっちゅうやっているのですか。はしなくもその一端が暴露されたのだが、教員のそういう思想調査、そして特定の共産党の党員でありあるいは同調者だということで、そういうことを要請したり、これは全く思想の自由の破壊ですね。これは全く憲法違反の行為だと思うけれども、これはあなたたちどうなんですか。いまやっているんじゃないですか。これは単に村本だけじゃないです——問題になったのは村本だけじゃないでしょう。どうなんですか。
  100. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) お答えいたします。  石川地方公安調査局の荒井という調査官が、金沢市教委の管理主事の奥という人に会いまして、金沢市内の教諭の中の共産党員、またはその同調者と思われる者、まあうわさ話というような注がついておりますが、そういう個人的な情報として聞いたのだということを私ども報告を受けております。これを端緒といたしまして、荒井調査官が調査をいたしました結果、中には社会党員であることがはっきりした者もいるし、あるいは単なるうわさにすぎなくて、全然根拠がないということが判明したりして、二十名、半数くらいは共産党員またはその同調者ではなかったということをその後確認した。  先生ただいま思想調査とおっしゃいましたが、私どものほうでは思想調査としてやったのではございません。対象団体である日本共産党員の活動、どういう人が共産党員で、どういう活動をしているかということを調査する目的で、その端緒を奥主事から聞き出した、それをもとにして調査を進めた、こういうふうに聞いております。
  101. 岩間正男

    岩間正男君 どこに思想調査をやりましたという答弁がありますか。やれば憲法違反でこれは明らかに公務員として失格です。これは言わないにきまっていますよ。実際に共産党員・同調者、そういう形でちゃんと一つの目的を持っている。うわさ話というのは、この前もやったね。この前も名古屋の何のとき、裁判官の問題について聞いたあの問題も、うわさ話とか何とか、いつも任意でこういうことをやっている。実際は調査局の記録にちゃんと載っておる。盗まれると大騒ぎで、そうするとそれを調べなければならないような、そういうふうになっているじゃないですか。うわさ話ということは、全くそれは話になりませんよ。  それから思想調査をやるということは、あなたたちは言わぬでしょう。おそらくそんなことはどんなことがあっても言わない。やったと言ったらたいへんだ。実際は思想調査じゃないですか。だからそういうような子供だましみたいなことは答弁になりませんよ。時間がまいりましたので、私は、きょうはこれだけにしておいて、そしてこの次まで、わかるだけの問題は何か記録にして出してくださいよ。何がどうやって、だれとだれとだれが——これはわかるわけだから。それから調査官を調べなくちゃならぬ。むろん調査官調べますな。荒井、村本それからもう一人いましたね——これは調査官については調べなければたいへんなことになりますよ、こういうやり方というのがこのまま通るということは。そうでしょう。諸田、この三名の調査官みなこれはやっていることだ。これはやってもらわなければ困るのです。
  102. 原文兵衛

    ○理事(原文兵衛君) いま岩間委員が言われた記録といいますか、資料というものは、そういうものは出せるものかどうか、これはよく御検討いただきたいと思います。
  103. 岩間正男

    岩間正男君 出せるでしょう、その調査官の名前とかそれから何をやって、その中身の秘密文書というものは何か。そのものを出せないというのだったら——市教委に話していたのはいつだとか、そんなことをあさってまでに出せないとしたら、それはあなたたちは国民の目をくらますやり方ですよ。
  104. 川口光太郎

    政府委員川口光太郎君) この席で口頭でお答えできますが……。
  105. 原文兵衛

    ○理事(原文兵衛君) それでは岩間委員、長官が口頭でお答えできるということですから、あさってひとつ口頭でお答えしていただきましょうか。
  106. 岩間正男

    岩間正男君 これは理事会でひとつお取り上げを願います。
  107. 原文兵衛

    ○理事(原文兵衛君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  108. 原文兵衛

    ○理事(原文兵衛君) 速記を起こして。  本件に関する質疑は本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時六分散会      —————・—————