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最高裁判所長官代理者(
矢口洪一君) それでは、
要 望 書
一昨年、二二期三名の
裁判官志望者が不採用となり、さらに昨年は、二三期七名の
裁判官志望者が不採用となりました。
私達は、
最高裁判所が
理由を明らかにしないなかで、この問題について多くの疑問と不安を抱きながら幾度となく話し合ってきました。しかし現在に至ってもなお納得のいく
理由を見出せません。むしろ思想・信条・団体加入による差別ではないかとの疑いを多くの者がもっています。さらに、
最高裁判所が任官
基準らしきものとしてこれまで表明してきた成績・女性・年齢・身体障害者等についても、まだ納得できない点が少なくありません。
昨年一二月一七日の任官
説明会における
矢口人事局長の
説明によっても、私達の右のような疑問は解消されませんでした。
私達は、修習を終え、
法曹として巣立ってゆく日を間近にひかえ、二四期修習生の中からも
裁判官を志望しながら採用を
拒否される者がでるのではないかとの危惧の念を抱かざるを得ません。同時に研修所において自由な雰囲気が失なわれていくのではないかとの感を禁じえません。
そこで私達は要望書を提出しますので、全修習生の参加のできる公開の場で、私達の疑問に答えて下さるよう要望します。日時は三月二一日を要望します。
記
〈思想・信条等について〉
一、特定の思想をもっていると
裁判官としてふさわしくないのですか。その思想はどういう思想で何故ふさわしくないのですか。ふさわしくないとして、それはモラルの問題ですか。法的
適格の問題ですか。
二、デモに参加することは任官不採用の
理由になるのでしょうか。
検察実務修習での取調修習の
拒否は任官不採用の
理由になるのでしょうか。
クラス
委員や寮
委員になること、クラス討論への参加、公害被害者との交流会へ参加することなどが任官不採用の
理由になるのでしょうか。
三、青法協に加入していることは任官に
あたり不利益な要素となるのでしょうか。なるとすれば何故なのでしょうか。
四、家庭環境等を任官採用に
あたり考慮されるのでしょうか。
五、以上のようなことが採用の
基準になるとすれば、その資料はどこから得られるのでしょうか。
六、従来、
最高裁は
裁判所法五二条一項(積極的政治活動の禁止)の解釈として如何なる思想を持つことも自由であり、政党員になること自体は問題ないとしておられましたが、この
見解は変更されたのでしょうか。もし変更されたのだとしたら、それは何故でしょうか。
七、昨年一二月一七日の任官
説明会で
矢口人事局長が言われた「誰が見てもいい人」「素直な人」とは具体的にはどういうことなのでしょうか。
〈成績について〉
一、
裁判官採用にあたって
基準となる成績は二回試験合格以上のものを要求しているのですか。もしそうだとすれば、
裁判官が
検察官、
弁護士より成績優秀でなければならない
根拠はなんでしょうか。
二、成績は十分斟酌するとされますが、何の成績を
基準とするのですか。二回試験、前期、実務期、後期の各成績の
総合ですか、それともそのうちの一部ですか。またそれらの成績のいずれに重きをおき、かつそれらの割合はどの程度ですか。
三、実務期の
裁判官の
評価(任官するといいというような
意見)はどの程度尊重しているのですか。
四、現行の二回試験の下で
裁判官としての能力を正しく
判断できると
考えておられるのですか。
〈女性任官志望者について〉
一、女性であることが、任官に
あたり不利益となるのでしょうか。なるとしたら何故なのでしょうか。
二、女性の採用に
あたり条件をつけられるのでしょうか。つけるとしたらどのような条件なのでしょうか。
三、夫婦の
裁判官については、同居を当然
配慮すべきではないでしょうか。
四、女性と男性の差異を認めたうえで、
人事管理上も、任地、家事、育児等に
配慮するのが男女の真の平等を
保障することになるのではないでしょうか。
〈年令について〉
一、昨年の任官
説明会で
矢口人事局長は四〇才位を目途にすると述べられましたが、それはどういう
根拠からなのでしょうか。
二、
判事補と簡易
裁判所判事とで年令について差別されるのでしょうか。されるとしたら、それは何故なのでしょうか。
〈身体障害者について〉
一、身体障害者の人に対して普通の身体の人と同等の仕事を要求するのでしょうか。
二、任官に際しマイナス要因となるのでしょうか。
三、以上の点について実質的平等を守れると
考えておられるのでしょうか。
〈
理由不開示について〉
これまで不採用の
理由を明らかにされていないのは何故なのでしょうか。
拒否された
本人が
理由の開示を求めても、何故明らかにされないのでしょうか。
以上のようなものでございます。