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国務大臣(
高見三郎君) 私は、今日まで
私学が果たしてまいりました
日本の教育における偉大な功績というものに対しましては、高く評価をいたしております。しかも、その
私学は、それぞれの建学の精神、
理想をお持ちになっているという意味においては、むしろ教育は
私学でやるほうがいい場合もある——場合もという意味で申し上げておるのですが、いい場合もあるという感じがいたしております。ただ、御
承知のように、
私学の経営自体がまことに困難な
状態になっております。
私学全体の
累積赤字は、文部省の調査では三千億円と言っておりまするし、
私学連盟では六千億と言っております。どちらが正しいかということは今後の検討にまたなければならない問題でありまするが、いずれにいたしましても、
私学の経営の
内容がこのよりに困難をきわめておるという事実は、これは認めざるを得ません。が、それじゃ、
私学を野放しに認可することがいいか悪いかということになりまするというと、先ほど御指摘のような浪速医科入学のような問題も起こるのであります。したがいまして、
私学オンリーでその充実をはかるということを私は
考えておりません。国立で定員増のできるところはできるだけ定員を増していくということも
考えなければなりませんし、ことに医学系の
学校におきましては、将来私
どもは二段審査の構えをとりまして、初年度において教授陣容、あるいは用地の場所、資金計画、それらのものを十分に検討いたしまして、これならば
学校をつくってもよかろうと
考えますものにつきまして第二段目の審査を翌年にやる。いままでの私立
大学でばく大の寄付金をとらなければならなかったというのは、認可を受けます前にすでに病院を整備しキャンパスを整備しておかなければ認可が得られない、これに何十億の金を要するというところから、見せ金などをもってする
私学設立の申請書が間々あったのであります。これを防ぐことを
考えなければならないと思います。
私は、一がいに
私学を排撃するものでもありませんし、一がいに国立を賛美するものでもございません。ただ、その経営者の人柄、経営者の経営意欲、同時にこれがまた経済的な能力というものを
考えまして、許すべき
私学は許すというたてまえでまいりたいと思っております。現在七割五分というものが
私学に学んでおる学生であるという事実も
考えます場合に、私は、
日本の教育に果たしてきた
私学の今日までの
努力というものに対しましては敬意を表さなければならぬし、同時にまた、これは当然国がやるべき仕事を私でおやりになっておるのでありまするから、十分の五の人件費
補助が完成するのが再来年度、それで能事終われりという
考えはいたしておりません。同時にまた、現在あります
累積赤字をどうして消していくかということも真剣に
考えなければなりません。低金利時代でありますので、できるだけ低金利の金を出すためには、政府が出資する出資額を逐次ふやしていって、少なくとも将来は年に二分五厘か二分程度の二十年年賦ぐらいの金が借りられる
状態が来ますと、
私学の経営も非常に楽になるであろう。ただ人件費の
補助をするからということで
私学の経営が楽になるとは思いません。この
赤字を消してやることを
考えなければならぬという
考え方でおるのであります。
私学を重視するか国立を重視するかという
矢追先生の御質問に対して、私は、
私学を重視するものでもなければ、国公立を重視するものでもない、どちらも併立する形でいきたいが、ただ、
私学のいままでのあり方では、そう簡単に
私学の認可をぽんぽんぽんぽんやっておったら、
日本の教育をこわすという懸念がある、これに対する規制だけははっきりしたものをしておきたいという
考え方で臨んでいると、かように御
理解をいただきたいと思います。