○
国務大臣(
佐藤榮作君) どうも、
森中君はいろいろ広範にわたってお尋ねだし、結論だけ答えて、私にやめろとおっしゃったと、かように思いますが、それだけ
お答えすればいいのかと思うけれども、そうでもないようです。少し時間をかしてもらって、ただいまの経済における
物価論争に、ひとつまじめに取り組んでみましょう。
実は、昨日も共産党の
渡辺武君から
指摘されました最近の
物価問題の提言、これを十分守っていないのじゃないか、金融の面でこういうものは相当押えることが可能なんじゃないか、こういう話がありますが、私は大いに耳をかすべき御議論だと、かように思って、
渡辺君の御意見を実は清聴したほうです。でありますが、とにかく最近の経済情勢で見て一番大事なことは、この機会に経済の縮まりと申しますか、あるいは不況といいますか、これを脱却して、そして本来のあるべき姿の
方向に持ち直す、そのためにわれわれはいろいろ公債まで発行し、また金融の面でもいろいろ処置をつけておる、こういうことであります。このことが、最近の不況は相当長くなっておりまして、たいへんじりじりしている、いらいらしている、そういうものは見受けますが、私はいま御審議をいただいておる予算そのものは、ただいまは景気浮揚、これをまず第一に考えておる。その際に、
物価問題なりその他、庶民金融についてどういうような効果をあげ得るか、これをひとつ取り組もう、これがただいまの予算の性格の一つであると思っております。この点では、これは水田君からも
お答えをしておるように思います。
ところで、ただいまの、私が
総理就任当時における新井君の評論を例にとられて、そして当時と今日の情勢、これを比較しての御議論がいま展開されました。私は当時の状況から見まして、もっと生産性の低い部門、中小
企業や農業について思いをいたさないと、とんでもないことになるぞと、こういう警告をしたつもりであります。大体産業だけ、大事業、大資本のそれだけに目を向けて、生産性の低い部門に目を向けないと、経済そのものは健全な成長を来たさないんだ、意外な結果を生ずるんだと、かように実は注意したはずであります。したがいまして、私は大
企業についてもいろいろ
努力は重ねてまいりましたが、中小
企業や農業等の生産性の低い部門、これについても生産性を上げるように
努力をしたつもりであります。
最近の
物価そのものを見て、これは卸売り
物価は安定している、かような表現をされております。しかしながら小売りは高くなっていると。その表現は、大
企業のほうの生産性は上がったから卸売りは比較的安定している、中小
企業その他の生産性の低い部門、ことにサービス業の面ではどうしても上げざるを得ない、これが
消費者物価を上げているゆえんだと、かように
指摘されております。私は、サービス部門だけではなしに、やはり中小
企業や農業の生産性の低さ、これにもっと力を入れないと、この状態は続くのではないか、これはまじめに考えなければならない問題だと、かように実は思っておるような次第であります。
いろいろ申し上げたいことがございますが、ただいまの状況は、
物価の問題自身はたいへんな複雑な経済構造の中における一部門、一断面でございますから、それだけを抽出してとやかく言うことはできないと思います。
先ほども
お答えいたしましたように、一方でやっぱり
物価も上がったけれども所得もふえたじゃないか、こういうこともあるんだということを総体として申し上げましたが、これはやっぱり総合的にものごとは判断をしていかなければならぬと思います。私が
総理になった当時と最近の状態とは、これは比較にならないほどの経済成長でございますから、その段階に立って、いまわれわれがどういうような状態でこれに対処しようとしているのか。私が
総理になった当時は、三十億外貨を保有する、これが一つの目標であった、かようにすら思っておりますが、いまは、なんとこれが、おそらく
通産大臣から言えば二百億ドルにもなるんじゃないかといって心配しておる、かように思っております。たいへん経済の状態は変わってきております。そのときに、昔のような考え方で経済に取り組んでも、これは効果をあげるものではない、かように私は思います。問題はやはり財政金融あわせてそのときどきに適応した政策をとること、これが望ましいのではないだろうか。私はこれは昨日の問題をすりかえるわけじゃございませんが、
渡辺君からそういう点を
指摘された、そのことを思い起こしながら、
森中君も昨日のような話にやっぱり疑問を持っておられるのかなと思いながら、ただいまのようなことを
お答えしたわけでございます。これは最も大事なことでございますから、その基本的なことを申し上げた。
また、次の肉の問題等については、これはひとつ農林大臣から答えさせていただきます。私は、私になってから肉まで上がったとか、かような表現はいかがかと思いますが、肉はたいへん大事なものだし、国際的にもだんだん
輸入国がふえている、かように言われておりますし、ずいぶん足らない状況でございますから、国際的にも肉の問題は簡単な問題ではない、かように私は理解しております。