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説明員(植松守雄君) 現在、輸入の自由化がまだ行なわれておらないところの、いわゆる残存輸入制限が四十品目ございます。で、一昨年の初めに、たしか百十八あったわけでございまして、約三分の一になっておるわけでございます。相当な急ピッチで自由化が進められておるわけでございますけれ
ども、現在となりますと、どうしてもやはり自由化をこれ以上進めてまいりますためには、ある
程度の関税措置というものをやっていかないと、なかなかこれが進んでまいらないという状況でございます。そこで、いま御
指摘のハム、ベーコンの話でございますが、これは原料の豚肉
価格というものが全体の
製品価格の中で決定的な要素を占めております。そして、豚肉につきましては、いま田代委員御
指摘のように、昨年の関税改正でいわゆるスライド関税が採用されたわけでございます。そこで、このハム、ベーコンにつきましても、やはり原材料の豚肉に対応する
部分については、それとの斉合性ということを考えまして、やはり一種のスライド関税を採用せざるを得ないという発想でございます。
そこで、それはいまたてまえ論でございまして、もっと具体的に、いまの御
指摘の点についても御
説明をさしていただきたいと思いますが、確かに、いま田代先生おっしゃいましたように、デンマークから入りました去年の三月のこの豚肉のCIF
価格が御
指摘だったと思いますが、三百七十八円、御
指摘のとおりでございます。それに対しましての今度の関税改正をあてはめまして、三百六十五円の関税がかかる、御
指摘のとおりでございます。ただし、このデンマークは、これは、御
承知のように、世界のハムの
輸出の半分以上を引き受けておるという、特に
生産性の高いハム工業を持っておる国でございますが、デンマークの昨年の一−十月の平均の輸入
価格が四百七十七円でございます。三百七十八円という御
指摘の点は、その中では一番低い
価格であろうかと思います。そこで、平均値の四百七十七円をとりますと、今度の関税率をそれに当てはめた場合には関税が三百六円になるわけでございます。そういたしますと、合計で八百三十一円になります。つまり、CIF
価格プラス関税額で、輸入
価格が八百三十一円になるわけでございます。一方におきまして、昨年の
わが国におけるハムの国内の卸売り
価格がキログラム当たり千百円から千二百円でございます。したがいまして、確かに、関税の
部分だけ取り上げて言われますと、いかにも高い関税じゃないかというような御感想をお持ちじゃないかと思うのでございますけれ
ども、その関税を足しましても、デンマークから参りますものが八百三十一円でございますから、国内の千百円ないし千二百円のものよりは、だいぶまだ差があるわけでございます。それからさらに、デンマークの豚肉
価格、特にハムの
価格は低いのでございまして、
アメリカその他の各国のハムの輸入
価格は、総平均いたしますと去年六百九十五円になっております。それで、それに対応する関税率はちょうど二五%でございます。つまり、現在の関税率と結果的には変わらない関税になっておるわけでございます。
それから、もう
一つ、ぜひ申し上げておかなければならないと思いますことは、従来のように数量制限をされておりますと、どうしてもこれは、そのきめられた数量をこえるものは輸入ができないわけでございますから、国内で一種の超過
利潤が生ずるわけでございます。したがいまして、若干関税が上がりましても、その関税は従来の超過
利潤に食い込むということになるわけでございまして、末端のその卸売り段階あるいは小売り段階までは必ずしも波及しないというようにわれわれ考えております。その具体的な例で申し上げますと、去年同じく自由化いたしまして関税を引き上げてジャーナリズムで一番やり玉に上がりましたものに、グレープフルーツがございます。このグレープフルーツは、従来二割の関税を、季節関税と申しまして、ミカンの出回り期には四割、ちょうど倍に上げたわけでございます。しかしながら、このグレープフルーツの輸入量は、それにもかかわらず、去年の七月に自由化をいたしまして、年内に前
年度同期の八・一倍ぐらい入っております。関税が上がりました十二月にも九・七倍ぐらい入っておりまして、御
承知のように、現在店頭でわれわれ見ますところのグレープフルーツの
価格は、自由化前の五分の一ぐらいに下がっておるというような状況でございます。同じく、この今回のベーコンの関税と同じようなやり方をやっておりますところの豚肉につきましても、輸入量は、同じく去年の十月から十二月までに関税は上がったわけでございますけれ
ども、二・五倍にふえているということでございます。
確かに、御
指摘のとおり、
物価政策ということがきわめて重要な今日の情勢でございますから、われわれも極力ストレートの関税の引き上げはしたくない。これは、関税をきめる際には、
経済企画庁と十分連絡をとりまして、われわれつとめておるつもりでございます。ストレートな関税引き上げはできるだけ避けたいというようなつもりでおりまして、今回の措置も、一応とにかく自由化をいたしまして、情勢を見て一年後には再検討するという仕組みで、すべて組み立てられておるわけでございます。