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1972-06-09 第68回国会 参議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月九日(金曜日)    午前十一時一分開会     —————————————    委員異動  六月九日     辞任         補欠選任      古賀雷四郎君     小林 国司君      中村 禎二君     小枝 一雄君      濱田 幸雄君     河口 陽一君      吉武 恵市君     鈴木 省吾君      山本敬三郎君     梶木 又三君      山田 徹一君     塩出 啓典君      中村 利次君     向井 長年君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高橋雄之助君     理 事                 亀井 善彰君                 中村 波男君                 前川  旦君     委 員                 梶木 又三君                久次米健太郎君                 小林 国司君                 鈴木 省吾君                 温水 三郎君                 初村滝一郎君                 星野 重次君                 堀本 宜実君                 川村 清一君                 工藤 良平君                 辻  一彦君                 戸叶  武君                 村田 秀三君                 塩出 啓典君                 向井 長年君                 塚田 大願君    国務大臣       農 林 大 臣   赤城 宗徳君    政府委員        農林政務次官   佐藤  隆君        農林省畜産局長  増田  久君        林野庁長官    福田 省一君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        厚生省環境衛生        局乳肉衛生課長  神林 三男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (国有林経営に関する件)  (飲用牛乳に関する件)     —————————————
  2. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨八日鈴木省吾君、梶木又三君、塩出啓典君が委員を辞任され、その補欠として吉武恵市君、山本敬三郎君、山田徹一君が委員に選任されました。  また、本日中村利次君、古賀雷四郎君、中村禎二君、濱田幸雄君、吉武恵市君、山本敬三郎君が委員を辞任され、その補欠として向井長年君、小林国司君、小枝一雄君、河口陽一君、鈴木省吾君、梶木又三君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 国有林経営に関する件を議題とし、これより質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  4. 中村波男

    中村波男君 先般の当委員会におきまして、鹿児島県の川内営林署一八林班混合契約の契約不履行問題、さらに造林の手抜き問題、続きまして同じく川内営林署五三よ林小班の間伐払い下げに関する盗伐疑いがありとして指摘をいたしました事項について、林野庁として至急に調査をしてその実態を明らかにし、報告をするという御答弁があったわけでありますが、御調査が終わったようでありますので、その内容について御報告を承り、続いて質問に移ってまいりたい、こういうふうに考えるわけであります。
  5. 福田省一

    政府委員福田省一君) お答えいたします。  川内営林署調査の結果でございますが、この営林署の五三よ林小班の間伐の実行、その他いま御指摘苗木植栽不足等の問題につきまして、監査官ほか二名を本庁から派遣し、また営林局職員も加えまして、約四十名でもって四日間、延べ百六十人で調査をしたのでございます。  五三林班の杉の問題でございますが、杉は売り払い物件に対しまして本数では五十一本不足でございます。材積では約二四%逆に多くなっておるのでございますが、誤盗伐疑いがあるものでございます。  次に、ヒノキにつきましては、売り払い物件に対しまして、本数で百七十六本多くなっておりまして、これも誤盗伐疑いがございます。  広葉樹につきましては、売り払い物件に対しまして胸高直径二十センチ上の用材、これは用材に適するものが約二十センチ上でございますが、用材適木で百五十二本に誤盗伐疑いがあるものでございます。  そこで、なおこまかく申し上げますと、この杉につきましては、極印確認のできなかったものが百六十九本ございます。このうち二十九本は誤盗伐疑いがあるものでございます。  それから、ヒノキにつきましては、極印確認ができなかったものが五百四十五本でございます。このうち二百二十本は誤盗伐疑いがございます。なお、この二百二十本の内訳は、枯損いたしました木が百三十三本、それ以外のものが八十七本でございます。  広葉樹につきましては、胸高直径二十センチ上の用材適木では、極印確認ができなかったものが百七十七本ございます。このうち百五十二本は誤盗伐疑いがございます。胸高直径十八センチ下のものは、千三百四十八本でございまして、極印確認ができなかったものがこのうち八百九十七本、これについては誤盗伐疑いがあるものでございます。この細いものは大部分が林内に放置されておったものでございます。  次に、一八林班苗木本数の問題でございます。昭和四十七年五月三十日から六月一日まで三日間、十二名から十四名の調査員をもって全本数調査いたしました結果から申しますと、四千七百五十五本が不足になっております。しかし、この中には、肥薩林業技術株式会社が購入した民苗を五月に入ってから補植したものが千五百十三本ございまして、官給した苗木のうちこれを加えますと、六千二百六十八本が不足しているということになるわけでございます。これには仮植が二月九日と二月十六日で、植えつけが三月十五日に始まっており、この期間に枯損が生じたものがあると考えられること、あるいは架線集材のために引き抜けて枯損し変色したものが、末木枝条の中に埋没し発見できなかったものがあると考えられることなど、いろいろの原因は考えられますけれども、いずれも立証はきわめて困難でございます。しかし、いずれにしましても本数不足していることは事実でございます。  概要御報告申し上げました。
  6. 中村波男

    中村波男君 いま御報告いただいたのにつきまして、若干質問をしておきたいと思うのでありますが、長官が「誤盗伐疑い」という、こういう用語をもって御説明があったわけでありますが、誤盗伐というのは内容的にどういうことを言うのか明らかにしていただきたいと思うのです。
  7. 福田省一

    政府委員福田省一君) 杉をあるいはヒノキ間伐して、その間伐した木を相手方に販売するという場合には、ちゃんとこれは調査いたしまして売り払っていいという極印を打っておくわけでございます。それ以外の木を伐採した場合には、売り払い物件以外のものでございますので、これは間違って切ったのか、あるいは盗伐したのか、どちらかになるわけでございます。
  8. 中村波男

    中村波男君 そこで、あやまって切るということがあり得ないとは私は思いません。しかし、あやまって切った場合には、直ちにその旨を申し出て承認を得るといいますか、届け出をしなければならぬということになっているわけであります。したがって、いま、おっしゃったあやまって切ったという本数の中に、そういう手続あとからされたものがあるのかないのか、ないとするならば、私たちが現地で聞きましたところによると、そういう手続をされたものは全くなかったというふうに聞いてきたわけでありますが、だとするならば、それはあやまって切ったものではなくて、結果的には盗伐という取り扱いを私はすべきではないと思うわけであります。何となくあやまって切ったということによって、盗伐という印象を薄めようとする、あるいは本数を少なくしようとする、そういう意図的なことから、こういう誤盗伐というような表現をもって一括して報告をされておるきらいがあるんじゃないか、そう思うんでありますが、いかがでありますか。
  9. 福田省一

    政府委員福田省一君) 御指摘のとおりでございます。ただ、買い受けした者が、切ってそれを搬出しました際に、自分で悪意がなくて、切って最後までそれを知らずにおったという場合もあり得ると思うわけでございます。そこで、買い受け人が搬出しましたあとは、役所の側で必ずあと地調査いたしまして、こちらが調査した木であるかないかということを確認しなければならないことになっておるわけでございます。
  10. 中村波男

    中村波男君 それは手続としてはそういうことになっておるようでありますが、したがって、ここへ御提示いただきました報告書にありますヒノキに例をとりますならば、極印確認ができなかったものが五百四十五本あるわけでありますが、その中に三百二十五本というのはいわゆる誤伐であると、こういうことになるのか、二百二十本だけがあやまって切った、あるいは明らかに犯意を持って、悪いことをするということの意思の上に切ったかということが明らかにならないわけでありますが、私は少なくとも極印の押されておらないものというのは、これは盗伐である、こういうふうに断定をしてもいいのではないか、こういうふうに考えるわけであります。したがって、杉におきましても、極印確認できなかったものが百六十九本であるわけでありますが、百六十九本の中で誤伐、盗伐疑いがあるものがわずか二十九本であるという、こういう報告でありまするけれども、これは私はいま申し上げましたような状況の中にあって、すなおに承認することはできないという、そういうことを明らかに申し上げておきたいというふうに思うわけであります。このことをあまり時間をかけて議論をしておりましても、私たちがこの問題を取り上げた本意というのは、盗伐も問題でありますが、こういう盗伐が明らかに行なわれたといううわさが、地元では前々から相当出ており、署内においてもそういう声があったにもかかわらず、これを国会で取り上げるまで営林署自体調査をしなかった。その前にさらに問題にいたさなければならぬのは、そういう大きな誤盗伐が行なわれておるにかかわらず、あと地検査において異状なしという検査報告をして済ましていたという、こういういわゆる行政上のあるいは監督官としての責任上の怠慢さ、これが私は一番問題であり、そういう姿勢からこういう問題が必然的に起きてきたということが指摘をされなければならぬというふうに考えて提起をいたしたわけであります。いかがですか。
  11. 福田省一

    政府委員福田省一君) この百六十九本のうち二十九本と、いかにも数量が少ないではないかとおっしゃるわけでございます。これは現地調査したものの中で、四十名入ったわけでございますが、これを調べた者の報告によりますというと、極印が明らかでないものの中から誤盗伐疑いのあるものを選んだのは、極印の打ち癖とか調査木の配列のナンバーテープ調査番号の、そういったものの関係を考慮して判定したものと、こういうことでございます。しかし、私は誤盗伐についてなるべく数を少なくここで申し上げようという考えのものではございません。御指摘のように調査あるいは売り渡しをしました際の引き渡しの問題、あるいはその後におけるあと地検査問題等について監督上の責任ある者が非常にその点についてゆるみがあったということは、御指摘のとおりでございまして、この点につきましては私もまことに申しわけないものだと、かように思っており次第でございます。
  12. 中村波男

    中村波男君 そこで、長官も率直に営林署における監督の不十分さ、私たちから言うならば全くなれ合い的な官僚報告というものを出して、それをもとにして金を支払ってきたと、こういうふうに見ざるを得ないのでありますが、したがって、ただいま御指摘をしたように、こういうずさんな林野行政というものを、この機会に根本的に私は正す必要がある。そのためには、私の本意ではありませんけれども、やはり林野庁職員として正当に職務を遂行しなかった者に対する、いわゆる処置といいますか、それはやっぱりやるべきものについては、厳に私は、やらるべきではないかというふうに思うわけであります。そういう点について長官は今後どう対処されようとしておるのか、明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  13. 福田省一

    政府委員福田省一君) 関係しました監督の仕事を担当しておった者、これらにつきましては、責任の所在を明らかにしまして、厳正に処置しますとともに、今後の指導の徹底をはかってまいりたいと、かように考えております。
  14. 中村波男

    中村波男君 そこで、御承知のように、林野庁には森林司法権というのが検察庁から委託されており、森林警察権をお持ちになっておるわけでありますが、いま御報告があったように、誤盗伐疑いがあるという結果になったわけでありますから、したがって、森林警察権に基づいて調書をつくり、これを検察庁へ送付されるのか。この問題をいわゆる司法的な立場で、さらに徹底的に究明をするという、そういう方針があるやに聞いておるわけでありますが、それはどういうふうにされようといたしていますのか、お伺いいたします。
  15. 福田省一

    政府委員福田省一君) この間伐事業につきましては、今回調査を行なった結果は、相当数量の区域について盗伐疑いがございます。まことに遺憾でございます。この事案解決のために、御指摘ございましたように、検察当局と相談いたしまして、司法警察権の発動を考えております。また、国損を受けました相当部分につきましては、捜査の結果をまって、損害賠償請求などの必要な措置をとりたいと、かように考えております。
  16. 中村波男

    中村波男君 私は、もう一つさらにこの機会にお尋ねをしておきたいと思うんでありますが、当該問題を引き起こした五三よ林小班の間伐払い下げを行なったのでありますが、これは明らかに四十五年ないし五十年の主伐林分である。四十年、五十年の樹齢を持つ山でありますから、主伐林分であることには間違いないというふうに思うのであります。したがって、指定をされておらない林分について急遽間伐を行なったという理由は、先般もお尋ねいたしたととろでありますが、何としても解明されておらないわけであります。なぜ計画にない伐採を、急遽間伐計画を立てたか、とのことをひとつ具体的にわれわれが納得いくように御説明をしていただきたいと思うわけです。
  17. 福田省一

    政府委員福田省一君) これは川内営林署と限ったものではございませんけれども、主伐いたします場合におきましても、また、間伐いたします場合におきましても、森林法に基づきまして、これは全国を八十に分けてございますが、地域施業計画の中で、間伐すべき林分、主伐すべき林分というものを明らかにきめておるものでございます。ただし、この計画は十カ年計画でございまして、五カ年ごとにつくりかえるものでございます。いわゆるローリングシステムになっておるものでございます。この地域施業計画の中で、さらにまた業務計画というものをつくるわけでございます。これは全国営林局業務計画、それから営林署業務計画というふうになるわけでございます。この営林署業務計画は五カ年計画でございまして、毎年つくるものでございます。やはりこれもローリングシステムになっているものでございます。で、先ほどお話しました地域施業計画の中で、どの林分を十年間にどれだけ切るのか、どれだけ間伐するのかという一つの基本的な計画もございまして、それをもとにして、ただいま申し上げた営林署業務計画の中で、毎年切るべき林分を定めてまいります。ただ、この業務計画営林署長限りでやるものではございませんで、すべて営林局林野庁承認を得ておるものでございます。で、この計画は、一年一回きめると、あとは変わらぬというものではございませんで、そのときどきのいろいろな情勢によって、一回あるいは二回変わる場合もございます。ただし、地域施業計画の中できめていない林分につきましては、これは切るわけにもまいりません。で、それ以外の林分を切ります場合には、必ず林野庁に上申して計画を変更しなければならない手続になっているものでございますから、この場合は計画の中には入っておったものでございます。ただ、そういう意味では、決して無計画営林署がかってに切ったものであるというふうにはお考えいただかないようにお願いしたいと思うわけであります。
  18. 中村波男

    中村波男君 われわれも調査して、おぼろげながらその経過というものはわかっておるわけでありますが、これは申し上げますまでもなく、署で単独でやれることではないのでありまして、熊本営林局で急遽繰り上げ伐採をやることに四十五年の十月十五日にきまったというふうに、われわれは報告を得ておるわけであります。したがって、局あるいは署が毎年業務計画を立てるわけでありますから、四十五年でありますと、四十五年の四月から新しい年度に基づいて業務計画が立てられるわけでありますが、それが十月になってこれを急遽繰り上げたということは、当初の計画にはなかったわけでありますから、何らかの私は理由があって繰り上げたとしか考えられないわけであります。  もちろん、十年間の計画でありますから、その中にあるものであれば切ってはならぬということにはならぬという、そういういわゆる説明では納得のいかないものが私はあるわけです。したがって、ここで幾ら議論をいたしましても、かくかくこのような理由、事態が起きたから切ることにしたという説明をしていただければ幸いでありますが、できないのじゃないかと思うのであります。できないのは全く業務上の理由でなかったという、こういうことが言えるのではないかというふうに思うわけであります。  そこで、こういう間伐をされる場合には、ほとんど一般的にでありますが、随契で行なわれておるようでありますね。したがって、間伐払い下げについては、随契ではなくて、公売で入札をするというようなのもあるのかないのか。あるとするならば、そちらに資料がありますか。どういう比率になって入札が行なわれておるのか明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  19. 福田省一

    政府委員福田省一君) その前にひとついまの間伐計画の問題、もう少し説明させていただきたいと思うんでございますけれども、九月の二十日に当初予定分の中で一括見込み計上しておりました営林署間伐計画を五三林班と、それから八二林班、面積と材積と針葉樹、広葉樹別伐採計画をきめまして、営林署長承認しているわけでございます。ただ、やはり間伐そのもの計画はいいんですけれども、先ほど御報告しましたように間伐計画はしていながら、また実行しながら、結果を見ると間伐すべき木を切らずに、間伐すべきでない木を切ったというところに問題があるので、間伐計画し、間伐を実行したということは、これは私はさしつかえない、こう思っておるわけであります。  もう一つ間伐につきましては、一番いい木を切るのが本筋なのか悪い木を切るのが本筋なのか、そこにこの前も先生指摘があったわけでざいますが、本来の間伐は、若いときにはできるだけ悪い木を切っていきます。だんだん主伐に近くなってきますと二級木といいますか、一番いいのは少し残しておいて二番目ぐらいにいいものを除くわけであります。いい木は最後に残しておく、それを切るのが主伐でございます。五十年ぐらいでほんとうは主伐したらいいんじゃないかと先生おっしゃいますが、そういう木の数というものは、全国で一割ぐらいしかないわけであります、造林地の中で。戦争中植えていませんので、あと二十年ぐらいしなければ……。いま、それを全部切りますと、あとが続かなくなって、外材でも買わなければ続かなくなるという、こういう結果でありますから困るのであります。四十年生、五十年生というのはなるべくいま切り延ばして切るという計画全国的にやっているというところがあるわけでございます。それでいま申し上げました二級木を切ればいいのを、実は結果を見ると一級木を切っているというところに問題がある、これが一つ盗伐の結果であると、こう私たちは判断しております。  それから、随契の問題でございますが、間伐は御承知のようにいい木を残して悪い木を切るわけでありますから、信用確実なものにやらせなければ非常に心配があるわけでございます。結果的には、この会社は信用確実であったかどうかということについては、もちろん問題ございますけれども、原則としましては、間伐なりあるいは択伐、天然林抜き切りでございます。これは非常に、一ぺん間違ったらあと皆伐と違って悪い結果を残しますので、相手方を厳重に選んで売るというふうにしませんと間違いを起こしますので、随契をやるという実は考え方に立っているわけでございます。  根拠法規は、特別会計法施行令の第二十七条四の第一号でございます。
  20. 中村波男

    中村波男君 私の発言が誤解されるといけませんから、私の発言の趣旨を申し上げておきたいと思うんですが、私は五十年たった山は、主伐でどんどん木を切るべきだと、そういう意見を言っておるのではないわけです。財政的な理由等もあるでありましょうから間伐を、五十年、四十五年というような主伐をすべき山といいますか、主伐をしてもよい山で間伐をすべきでないと。間伐目的というのは、これは私が先般も指摘したのでございますが、残存林分価値成長を期待して行なうのが間伐事業だというふうに考えておるわけですが、五十年のような山を、残存林分価値成長の期待は全然ないとは言いませんけれども、これはきわめて効果の薄いものであります。したがって、あの山の実態を見まして、あの山でも大きい木もありますし、小径木もありますし大径木もありますが、小径木を切ったのではなくて、大径木が半分以上切られておるというこの間伐のやり方が問題だ、こういうふうに考えておるわけです。  それから、この山における間伐実態等から考えると、これはただ単に経済上と申しますか財政上の理由で切ったと言えないものがあるんじゃないか、と申しますのは、あれだけの盗伐が行なわれておるのに、それを異常なしという報告をしたということ、これは何かその裏に目的があったんじゃないか。これがいま地元うわさとして、昨年の参議院選挙に百万円の金をつくるために急拠あの山を切らせたんだ、こういううわさがあるわけでありますが、私はそのうわさもとにして議論をいたそうとはいたしませんけれども、何か不明朗なものがある。したがって、できたことはやむを得ないとして見過ごすわけにはまいらぬかもしれませんけれども、今後の間伐のあり方については、十分私は検討をされまして、少なくとも主伐林分である山の間伐というのは、厳にやめられるべきではないか。財政的な理由があるならば、一千立米の木を必要とするならば一千立米を主伐して、直ちに木を植えることが望ましいのではないか、こういうふうに私は考えるわけでありますが、大臣もこの点については一度ひとつ林野庁間伐計画等実態をひとつ十分お聞き下さって考えをただしていただきたいというふうに思うわけです。これはほかの営林署におきましても、盗伐が行なわれたといううわさが流れ、あるいは誤伐が行なわれたということがないということだけであって、間伐実態というのは四十年、五十年、六十年という山がいわゆる間伐が行なわれて金をつくっておる、こういう実態はまだこのほかにもたくさんあるわけでありますから、その点ひとつ今後の方針というものを長官から明らかにしていただきたいと思うわけです。
  21. 福田省一

    政府委員福田省一君) まことに先生の御指摘のとおりでございます。  間伐の問題につきましては、私、二点簡単に申し上げたいと思うのですが、一つ間伐いたしました、これは川内の問題を離れて全国的な問題としてでございますけれども、先ほどお話ししましたように、四十年以上の造林木、これは一割しかございません。そこで、あと二十年待たなければ次の木が出てこない。その間はどうしても外材か何かでつながなければならぬと、こういう問題がございます。  そこで、この間伐、いまあります四十年生以上の木を全部主伐いたしますると資金の点からだけ考えますと、それも一つ考え方でございますし、やはりあと二十年、四十年の木でしたら六十年まで、五十年の木でしたら七十年まで延ばしておくということになりますと、次の木が育ってくるまで補いがつくということで、間伐のしかたにしましても、先ほどお話しした二級木と場合によっては、一級木まぜたらどうかというような意見もあるようでございますが、そういうふうな間伐をしながら長伐期の林分もひとつ残しておく、それは次の後継者につなぐための手段でございます。それが一つでございます。もう一つは、たとえば箱根の山の造林地というようなのが一つの例でございますけれども、せっかく木を植えたんだけれども、だんだん間伐をし、主伐をしたいのだけれども、やはりああいう地帯は自然保護の関係から、やはり切らんでくれという要望が非常に強いわけでございます。秋田の杉とか、木曾のヒノキ、御承知のようにあれは藩制時代に木を植えてようやくそろった。その間、それこそ二百年ないし三百年たっている木でございますけれども、やはり造林木でございます。そこで、いまある四十年伐期で早く回転するのがいいのか、二百年、三百年の伐期に持っていったらいいのか、つまり自然保護のことを考えまして、そういうふうに造林地というものを考えていったらどうかといった意見も相当あるわけであります。いま申し上げた二つの問題、間伐の中にかかえているわけでありまして、御指摘のようにいろいろと間伐の問題につきましては、私たちも検討中ではございますけれども、先生の貴重な御意見でございますから、十分尊重して、また今後ひとつ御指導をお願いしたいと思うわけであります。
  22. 中村波男

    中村波男君 主伐すれば山はなくなってしまうという御説明ですけれどもね。さっきも私、例をあげたように、一千立米の規模の木を切るんだというときに、全山から一本ずつ切り出すのも、ほんのわずかの地域を全体に切って、そこへ木を植えるということと内容的にはあまり変わらないと思うわけですね。だから、私は残せるならもう四十年、五十年という山を切らずに残すべきだ。といっても財政その他の理由もあって切らなきゃならぬ、こういう場合もあろうと思いますから、そういうときにはやはり間伐というのはあとの成長を高めるという立場で、ゆがんだ木とか、込んでいる木を切ることによって、残った木の成長を高めるとか、そういう本来の間伐をやるべきであって、したがって主伐林分地帯における間伐というのはやるべきでない、こういうことを申し上げておるわけです。  そこで、あの山を実地に見まして、この泊野林産に随意契約で処分をされておりますが、あの木を切ったあとを見まして、いわゆる木を切り出すためにいたんでおる木というのはたくさんあるわけですね。それから、いま御報告のあったように、全く誤盗伐というやり方で、隣あわせて四十、五十という木が切られておるというやり方ですね。誤盗伐は抜きにしても、あの切り方を私は目のあたりにしまして、この泊野林産が随意契約に値するような技術があるいわゆる会社ではないというふうに見たわけです。したがって、随意契約という趣旨からいいましても、泊野林産に払いさげたということは適切でなかったということは、これは私は反論の余地がないと思うわけです。したがって、こういう間伐というものは高度の技術が要りますし、もうけ主義では結局木を切ればよいということになりますから、できるだけこれは直営で切り出すようにすべきだ。全部直営でやるということについては、これはやはり人員、能力その他の関係からできないかもわかりませんけれども、こういう仕事こそ直営を拡大していく道があるし、やはりその時点では切り出す単価が高くつくかもわかりませんけれども、小径木を多く切り出すということになれば、結果的には林野庁が損をするという結果になるわけでありますから、そういう点を考えるならば、こういう高度な技術、あとの大切な山を考えます場合には、やはり営林署が直営でやるべきではないかというふうに思いますが、その点いかがですか。
  23. 福田省一

    政府委員福田省一君) 率直に申し上げまして私の考えは、この技術の問題につきましては、直営であるか、請負であるかという点も、これは御意見もございましょうけれども、やはり契約の相手方責任感、義務感と申しますか、そういう点と、指導監督上の問題だと思います。直営生産事業におきましても、内部監査等におきましては、これに類したようなことがないということは、絶対にないということは、これは申し上げられません。私も実は戦争中、終戦後、山にも、いろいろ仕事をしております場所を、直営生産事業なんかの監督に行ったことがございますけれども、あの当時は非常に戦争目的遂行のためにいろいろと、一切を投げて努力したときでございましたから、択伐とはいいながら、やたらにいい木だけを切り出して、航空機用材のプロペラをつくるんだということで、どんどんと切ったことを見たこともございます。したがいまして、これは直営か請負かの本質論ではなくて、指導監督上の問題、契約履行者の義務と責任の問題であるというふうに私は考えております。
  24. 中村波男

    中村波男君 次に、造林関係の問題についてお尋ねしたいと思うのでありますが、これは熊本営林局の管内で、三方界国有林一九八い外三林小班で三十二・六十二ヘクタールの植林が行なわれているわけでありますが、この内容について簡単に御説明をお願いしたいと思うわけです。
  25. 福田省一

    政府委員福田省一君) 一九八い外三林小班植えつけ請負契約の概要を申し上げます。  契約年月日昭和四十五年四月二日、契約方法は随意契約でございます。予算決算及び会計令九十九条二十三号を適用しております。植えつけ面積は三十二・六二ヘクタール、植えつけ本数は九万七千九百本、予定価格が百三十七万三千三百円、契約金額百三十二万円、値開き率九六%、請負人は林業技術株式会社取締役社長緒方乙喜、作業期間は昭和四十五年四月三日から四十五年五月二十三日までの五十一日間、作業に着手しましたのは昭和四十五年四月三日、作業の完了しましたのが昭和四十五年五月二日、検査いたしましたのは四十五年の五月八日。以上でございます。
  26. 中村波男

    中村波男君 この植林の請負について私たち調査したところによりますと、これが下請に出されておる。その下請金額というのは八十四万一千九百三十六円、これは明らかに完全な下請になっておるのであります。こういうやり方が会計法その他から見て適切でないことは言うまでもないわけでありますが、これについて林野庁としてその実態調査されておらないのじゃないかと思いますが、何かこの点について御存じであるならば御報告していただきたいと思うわけです。
  27. 福田省一

    政府委員福田省一君) これはたしか新聞にも出ておりまして、電話連絡ではございますけれども、一応営林局から若干情報をとってございます。先ほどの川内のように、こちらから調査団を派遣して調べたものではございませんから、やや正確を欠くかもしれませんけれども、これは結論から申し上げますというと、林業技術株式会社に下請をさせているというようなことはないと考えておる、こういう判断でございます。  その理由でございますが、一つは、この林業技術株式会社は所定の手続によって使用者としての保険料を支払っているということが第一点。次に、林業技術株式会社は通勤バス借り払い金などで所有しまして、これを現地において使用しておるということのようでございます。その次に、現場代理人には賃金のほかに役づき手当を支給しておる。また、次に林業技術株式会社の当時の日向の出張所長からの聞き取りによって下請の事実はない、本人がこう申しておるそうでございます。  それから、次に、林業技術株式会社の賃金支払いの実態は、この会社と雇用関係にある現場代理人の出役表をもとにしてこの会社の日向出張所長が賃金明細書を作成して支払っておる、こういうような状態でございますので、何もこれは下請に出す必要はないのではないか。たしかこれは下請に出していない、こういう判断をしておるわけでございます。
  28. 中村波男

    中村波男君 保険も適用しておるということでありますが、あれは請負いされるときには、社会保険は労災、失業保険、健保などは請負金額の中に入っておるわけでしょう、どうですか。
  29. 福田省一

    政府委員福田省一君) これは、間接費としまして中に入っているものだと思います。
  30. 中村波男

    中村波男君 しかし、この請負業者、いわゆる作業員には強制加入の労災だけは手続がしてありますが、そのほかは全然手続はしてないわけなんですよ。したがって、保険まで、悪いことばで言えばピンはねをしておるという実態がある、いかがですか。
  31. 福田省一

    政府委員福田省一君) 強制加入の労災だけ入れているものは、そうでございます。ほかのものは任意加入ですから、それは見てないという連絡でございます。
  32. 中村波男

    中村波男君 見てないというのは、請負契約の中には、そういう費用は見てないというのですか。
  33. 福田省一

    政府委員福田省一君) そういう意味でございます。強制加入の分だけを見ておると、こういうことでございます。
  34. 中村波男

    中村波男君 これは全部そういう請負のやり方ですか、労災保険だけを請負金額の中に入れて全部請け負わせておるのですか、林野庁の請負契約は。そういうことはおかしいと思うのですがね。
  35. 福田省一

    政府委員福田省一君) ちょっとただいま至急調べておりますので、しばらくお待ち願います。
  36. 中村波男

    中村波男君 そこで、請負契約でないという、いわゆる作業員を直接雇用の形で仕事を行なわせておるのだという長官の御答弁でありますが、その内容は大体一本幾らということで請け負わせておるわけなんですね、作業員に。したがって、契約される場合の請負単価の中に一日の植えつけ本数ですね、標準作業量というのは、いま林野庁として何本を基準にして計算をされておりますか。
  37. 福田省一

    政府委員福田省一君) 大体百五十本でございます。
  38. 中村波男

    中村波男君 百五十本が標準作業量であるということでありますが、この地域における請負契約の実態というのは、四十五年までは一本が八円五十銭、四十六年度は一本十二円、こういう単価で請け負わせておるわけです。というふうに私たち調査では関係者から聞いておるわけです。これでは、いま大体農山村の労賃というのが三千五百円から四千円でありますから、十二円では少なくとも三百本以上植えなければ引き合わない、こういうことにならざるを得ません。したがって、請負契約にありますような植えつけは行なわれるわけはない。だから、当然営林署から報告があったか知りませんけれども、この実態のひとつ御調査をいただきたいというふうに思うわけです、いかがですか。
  39. 福田省一

    政府委員福田省一君) これは急に連絡した報告でございますので、正確を欠いているかもしれませんけれども、相手方に聞いたところでは、一人一日二百本程度だったというような報告があったそうでございます。ただいま御指摘のように、この件につきましては、たしか一本八円とか十二円ということになりますと、御指摘のようにたいへんな問題がある点でございます。十分調査さしていただきたいと思います。
  40. 中村波男

    中村波男君 したがって、まあ何といっても単価が安いものですから、一日の植えつけ本数を多くやらなければならない。ですから、規定の植えつけはなされておらない。いわゆる一くわ植えですね。したがって、百三十二万円の請負金額の中で東臼杵郡椎葉村尾前の尾川源という人が下請人の代表でありますが、この人に払った金額は八十四万一千九百三十六円、したがって、四十七万八千六十四円というのが請負業者の手に残る。この金額全部私はピンはねとは言いません。まだそのほかの諸掛かりも多少あると思いますけれども、こういうことになりますと、三六%が請負業者の利益になって残っておる。これくらいの請負がいい悪いは別にして、これくらいの請負業者の利潤というのは適正であるというふうに考えておられるのかどうか。そういうものを織り込んだ請負金額というのを、請負をさせます単価を構成する上においてお考えになっておるのかどうか、そういう点はどういうことになっているんですか。
  41. 福田省一

    政府委員福田省一君) まあ常識としまして、もしかりに三六%というのがいわゆるピンはねという形で、何も仕事をしないでピンはねで三六%だと、これは問題だと思います。ただいま申し上げたのは、まあ一応連絡した情報でございますので、御指摘のように直ちに十分調査いたしまして、検討したいと思っております。
  42. 中村波男

    中村波男君 私たち調査は、当該請負人から仕切り書を見せていただいて、おそらく間違っておらぬと、こういう自信を持ってこの問題を指摘をいたしておるわけでありますが、幾つか例はあるわけでありますが、もう一つ例を引いて、下請の実態を明らかにしてみたいと思うんでありますが、同じく三方界国有林の一八〇い外五林小班下刈りを昭和四十五年六月十五日の契約で、さいぜんの植林の請負をいたしております林業技術KKの緒方乙喜に契約が行なわれておるわけでありますが、この内容の概要の御報告をいただきます。
  43. 福田省一

    政府委員福田省一君) 契約年月日は昭和四十五年六月十五日、契約の方法は予決令の九十九条二十三号の随意契約でございます。下刈り面積が百六十二ヘクタール七五、予定価格が三百六十万四千百十九円、契約金額は三百四十五万円、値開き率が九六%、請負人が林業技術株式会社取締役社長緒方乙喜、作業期間昭和四十五年六月十六日から四十五年八月十日までの五十六日間、作業着手年月日は昭和四十五年六月十六日、作業完了年月日は昭和四十五年七月三十一日、検査年月日は四十五年七月十六日、これは部分検査でございまして、完成検査は四十五年八月五日、以上でございます。
  44. 中村波男

    中村波男君 三百四十五万円で請け負ったのでありますが、これも前記の植林を請け負いました尾川源という人が二百五十一万二千五百十九円、その差は九十三万七千四百八十一円、ピンはねということばが適切かどうか別にいたしまして、二七%手ぬらかさずに計算上ではもうけておる、こういう実態報告されてきております。したがって、請負でありますから、かん木は地上から三十センチぐらいのところで刈り払っておりますために、造林木を圧迫して成長を妨げておる。その結果二〇%程度は成木見込みはない、こういうことがあとから調査をいたしました結果出てきているわけであります。この問題も直接調査されておらないのでありますから、林野庁としてもその実態をこの席で御報告をいただくことはできないのではないかというふうに思っておりますが、地元営林署から何らかの報告があればその報告を承っておくことにはやぶさかではありませんけれども、私たちうわさもとにして質問をいたしておるのではないのでありまして、全くこういうやり方が各所に行なわれておるというほんの例にすぎないんじゃないかというふうに思いますだけに、こういうやり方を許しておられる林野庁行政指導、これはひとつその実態調査を願って、十分こういう下請に出すような請負契約というのはやめてもらいたい、やめるべきである、こう考えるのですがいかがですか。
  45. 福田省一

    政府委員福田省一君) この点につきましては、営林局からの若干の電話連絡がございます。一九八林班におきまして、杉の樹高約一メーターで、成長は普通で、ヒノキは五十から七十センチで普通の成績であるが、保護樹帯に近い約一ヘクタールは——保護樹帯というのは上のほうでございます——これは気象の害、つまり凍霜害、乾燥害、これは四十五年は乾燥害がひどかったのですが、またウサギの害のために生育の見込みが薄いと判断されるものがある。それから一八〇林班、一八四林班の中で、樹高は杉が〇・九から一・三メーター、ヒノキは〇・五ないし一メーターで良好のようであるが、一部にやはり同じような気象の害とウサギの害が見られる。この程度の報告しかございません。御指摘のようにこの点につきましても、さっそく調査しておくようにいたします。  御指摘のように下請の問題でございますけれども、これは請負が、いま単純なピンはねをするような下請けということは、まことに不当なことでございまして、こういう場合には契約を解除して、その後しばらくは契約させないというふうなこともあるわけでございます。十分それは厳重に調査したいと思います。
  46. 中村波男

    中村波男君 したがって、造林に例をとりましても、下請けに出しておりまして、三千本いわゆる苗木が官給されておると、しかし、請負い人には二千九百本植えてくれればいいと、こういうようなことが言われておる。したがって、私のほうで、必要であればお見せをしてもよいのでありますが、標準地実測調査をやりまして、そしてその植林の実態を把握したわけでありますが、それによりますと、一八林小班で約千本、一八二林班で千三百本、一九八林班におきまして七十三本、二千四百本は、これは植えられておらない。こういうことが調査の結果出てきておるわけであります。その他これはまだ私のほうで実態調査をしておりませんから、確信を持って追及はできないわけでありますが、四十六年度の造林地区で一万三千本を廃棄または埋没したとの情報があるわけであります。したがって、その写真もここに送ってきておるのでありますが、十一カ所にいわゆる植え残しの杉苗が捨ててある。これはまだ現地を見ておりませんから、断定的には申し上げるわけにはまいりませんけれども、事ほどさように造林に例をとりましても、全くずさんと申しますか、指定どおりの作業が行なわれておらない。こういうことが一カ所や二カ所であるならば、監督上の不注意ということで済まされるかもわかりませんけれども、各地にそういう問題が出てきておるわけであります。この根源がどこにあるかということを、これは早急に検討をして対策を立てるべきでありますし、立てなければならぬというふうに思うわけであります。  それから、また黒いうわさとしては日向営林署における混合契約の請負い問題があるわけです。従来十五製材所をもって日向地区国有林組合というのがつくられておりまして、椎葉の混合造林の契約に参加したい強い希望がありまして、四十三年には一部を営林署も一般競争入札に付して、この人たちが請負ったことも、入札を、落札したいきさつがあったようでありますが、その後九州林業技術、九州緑化、日向造林、この三社によって持ち回り随意契約が行なわれておる。したがって、この三社がこの日向地区の国有林組合を押さえるためであろうかと思いますが、一年に五十万円ずつこの組合に寄付しておる。こういう金が営林署長等の病気とか、あるいは異動等のせんべつに使われておる。こういうことが、私のほうへきちっと名前を書いて情報の提供があったわけであります。したがって、ただ、だれからかわからぬ情報ではないわけでありますから、私たちも全く荒唐無稽な中傷や利害関係に基づくものではないというふうに一応調査をいたしまして、現地を見ておりませんから、断定的にこうだとは申し上げませんけれども、まことにおそるべきことが取引されておる。時間がありませんから詳しくは申し上げませんけれども、まことに遺憾だと思うのですね。こういうなれ合いの行政が行なわれる理由としては、まだ九州には造林会社が五つ、このほかに二つあるようでありますが、そのほとんどが営林署の部長とか署長とかが会社をつくっておる。この会社には営林署のかつての職員が再就職をしておる。さいぜん指摘いたしました林業技術KK緒方乙喜という人は、元熊本営林局の総務部長さんである。その中に前署長さん、その他五、六人が営林署職員の幹部が入っておる。こういうことがいわゆる営林署とその癒着の原因になっておる。先般の当委員会川内営林署の植林問題にも触れたわけでありますが、その報告をお聞きいたしましても、われわれが植林の完了時、すなわち四十六年の三月末には約十町歩近いもののいわゆる伐採木の未搬出があったのではないか、こういうふうに指摘をしたのでありますが、報告によると三町歩あった。十町歩と三町歩には大きな違いがありますが、三ヘクタールもの材木が搬出未済であるにもかかわらず、完全に契約どおり材木は全部切り離して地ごしらえは完了しました、植林も契約どおり行なわれました、こういう報告がなされて金が払われておる。もってのほかだと私は思うわけであります。したがって、こういう実態あとからあとから出てきたことについて、これは林野庁長官としても痛く責任を感じておられるところでありますが、責任を感じておるだけでは解決になりませんので、これはどういう形において姿勢を正すのか、このことが最も私は、大切になってきたんじゃないかというふうに思うわけであります。したがって、さいぜんこれらの問題については、あまり詳しい今後の対処のしかたについて御報告がなかったわけでありますが、やはり私は信賞必罰を明らかにすべきだと思うのです。われわれは何も国会で罪人をつくるために議論をしておるのではありませんけれども、しかし、そういういままでくさいものにはふたをやる式に人事を扱ってきたことも大きなこういう事態を引き起こした原因になっておるんじゃないかということも考えるわけであります。この点について長官の今後の対処の方針を明らかにしていただくと同時に、大臣からもこういう問題についての御所見を承らなければならないのではないかと思います。
  47. 福田省一

    政府委員福田省一君) 御指摘のとおりたいへん申しわけないと思っておるわけでございます。川内、ほかの署にもございますけれども、この点につきましては、先ほどお答えしましたとおり川内につきましては、事実がはっきりいたしております。検察の当局と打ち合わせをしまして、司法警察権の発動を願う、こういうことにいたしたいと思っております。なお、また営林署側——営林局を含めてでございますけれども、指導監督上非常にゆるんでおったということは、私も十分御指摘のように考えておるわけでございまして、この点につきましては、早急に行政処分等につきましての検討をいたしたいと、かように思っております。
  48. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) たいてい官庁なんかでは官庁と利害関係の深い人などは、請負などを指名しないということになっておると思いましたが、林野関係では何かそういういまのような事態あるようですから……。たいへんどうも遺憾の話を再々聞いております。こういう事態につきましては、厳正な措置をとるということも必要でございますが、根本的にいえば職員の綱紀が弛緩しているといいますか、こういうことからこういうことが出てきておると思いますので、業務の適正な執行と綱紀の粛正について十分厳重に対処していきたいと、こう思います。
  49. 中村波男

    中村波男君 もう一つ大臣にこの機会確認の意味でお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、先般、社会党が要請した国有林を含めまして林業の振興について申し入れを申し上げた中で、直営直用を拡大するという坂田農林大臣の言明を踏まえまして、それを基本にして今後林野行政を進めてまいる意味の御答弁をいただいたわけでありますが、私はさいぜんからいろいろ例を取り上げて指摘をいたしたように、植林にいたしましても、あるいは間伐にいたしましても、全くその事業内容というものは契約書の内容とはほど遠いと申しまするか、実行されておらないものばかりであります。したがって、やはり五十年、六十年をもって収穫をする山でありますから、造林事業等についてはできるだけやはり直営でやる。また、直営でやれないものについては、十分監督官が毎日山に行って、規定どおり作業が行なわれておるかどうかを監督指導するという、そういう体制をつくり上げていただかないと、こういう問題というのはあとを断たないのではないか。端的な言い方をしますれば、林野庁には切る山はなくなったのだ、しかし、植える山は幾らでもあるわけであります。山に木を植えなければやはり森林の持つ公益性からいっても機能を高めるということにはならないのでありますから、したがって、造林等にさらに積極的に力を入れなければならないことは指摘するまでもないことでありますが、その山をつくるもとである造林等については、できるだけ私はやはり直営でやっていくという基本に立って今後考えていただかなければいけないのじゃないか、こう思うのでありますが、いかがですか。
  50. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 結論を申し上げる前に、お話しのような経過もございますし、国有林労働者の雇用の安定をはかるため、直営直用による植林の事業の拡大と各種事業の組み合わせ等によりまして四十一年以降約一万一千人の常用化をはかってきた、こういうことは御承知だと思います、そういうことをしてまいりました。また、一方、いまのお話しのように、最近のわが国森林資源の状況、自然環境の保全、その他森林の公益的機能に対する国民的要請の高まり等、国有林を取り巻く諸情勢を勘案し、そうしてそういうことから目下林政全般につきまして種々検討を行なっておるところであります。  そこで、このような経過の上で、いまお話しのようにこれから木を植えるということが非常に大事なことでございます。そこで、直営直用の方向については、地域性等を考慮しまして、組合の意向も十分に聞いて措置することとしております。なお、労使間の信義を尊重して、現実を踏まえて実態に即して対処していく方針でございます。でございますので、この間申し上げましたように、直営直用一本で行くというわけにはまいりませんが、これをやめるというような方向ではございません。そしてまた、直営直用でない地域の地域開発というようなこともございますので、そういうことも考慮していま申し上げたような方針で進みたいと、こう思っておるわけでございます。
  51. 中村波男

    中村波男君 大臣からさらに確認する意味で基本方針をいまお示しいただいたわけでありますが、その方針にのっとってできるだけ実行に移していただく、そういうことを強く要望いたしまして、もう一点だけ質問をして本日は終わりたいと思うんであります。  東京営林局の気田営林署管内の問題でありますが、皆伐を行ないまして、その後植栽不可能ということで植林が全くできないと、こういう林班があるようでありますが、夕べもNHKのテレビでこの問題が指摘されておりましたが、長官からこの内容について御報告を受けたいと思うわけであります。
  52. 福田省一

    政府委員福田省一君) 私もきのうテレビで初めて見たんでありますが、これは二二六林班で四十三年度に二十四・七ヘクタール、四十四年度に九・七ヘクタール、合計しまして三十四・四ヘクタール、これを直営直用で伐採しまして、このうち二十四・二ヘクタールにスギ及びヒノキ植栽して、残りの十・二ヘクタールは天然更新を期待するということにしたものでございます。二二七林班は四十三年度に二・五ヘクタール、四十四年度に十八・七ヘクタール、四十五年度に四・四ヘクタール、合計二十五・六ヘクタールを、これも直営直用で伐採しまして、このうち十五・四ヘクタールにスギ及びヒノキ植栽して、残りの十・二ヘクタールは天然更新を期待する、こういうことにしたものでございます。しかし、——事実関係だけでよろしゅうございますか。
  53. 中村波男

    中村波男君 はい。  もちろん、これは保安林の指定を受けておるわけでありますから、施業要件としては、二年以内に造林をしなきゃならぬという規定があるわけですね。したがって、本来ならば植林が全部完了してよろしいわけでありますが、実際には岩石ばかりの山で、木を植えるわけにもまいらない。したがって、六十ヘクタールのうちで三十九ヘクタールは一応植栽が終わっておりますが、約二十二ヘクタールが未植栽である、こういうことが今日あるということは、私は山を切るときにどういう調査、どういう考えに基づいてやったか全く理解に苦しむわけでありますが、森林法の規定からいきましても、二年以内に木を植えるということは言うまでもないことでありまして、植えるにも植えられないようなところを切ってしまうというこの神経ですね。この無計画さ、これはどういう理由に基づいたか明らかにしていただきたいと思うんです。
  54. 福田省一

    政府委員福田省一君) この場所につきましては、向こうからの申し分でございますが、皆伐を許さないほどの個所ではなく、また伐採あと地は天然更新によって成林が期待できると見込まれたので植栽の指定はしなかったものであるという現地の報告でございます。しかし、これは天然更新と言いましても、テレビにありましたとおり、岩でございます。岩の上に種が落ちて木がはえるということは、当然困難でございます。ドイツでは、岩の上にきちょうめんに土を持っていって植えたという話もありますが、これは笑い話に属するくらいおかしな話であります。大体こういうことを画一的にやったということは、全くこれは問題でございます。これは、率直に私は意見を申し上げますと、皆伐を避けるべきだったと思うのであります。こういったものがちょくちょくありまして、最近、私は非常に問題だと思っておりますので、保安林の指定につきましては、今後、いずれ次には保安林の問題につきまして、特にこういういろんな種類の保安林はもちろんでございますが、関係法がいま出てきました関係もありまして、いろいろな保安林を強化して、指定施業要件につきましても、御指摘のように、これは一段ときつくしてまいりたいと思っております。
  55. 中村波男

    中村波男君 林野庁というのは、山の専門家の集団であって、切ったらあと植えられるか植えられないかというようなことがわからなかったこともないと思うのでありますが、そういうところを無理に切ったというのは、ただ財政的な理由、経済的な理由以外に、何かわれわれに説明のできないような理由があったんじゃないかとさえ疑いたくなるわけですね。したがって、天然下種でやるという地域もあると思うんでありますね。しかし、天然下種なら天然下種で、最初から計画を立てて、保護林を適当に残すべきだったわけですね。保護林を一本も残してない、全部切っちゃった。きのうのテレビでも言っておられたんでありますが、全く険しい山で、チェーンソーを使うのも命がけで木を切らせられたんだと、切ったんだと、そういうところにあと植林もできないことは、はっきりしておるわけでありますが、切ったからしかたがないと、こういう林野庁の今日の時点における姿勢ですか。
  56. 福田省一

    政府委員福田省一君) 御指摘のとおり、これにつきましては、私、一言もございません。今後指導を徹底しまして、かようなことがないようにしてまいりたいと思います。
  57. 中村波男

    中村波男君 できたことはしかたがない、今後姿勢を正すと言う前に、こういう計画を行なった署ですね、その関係者をやはり十分いまから調査をされて、なぜこういうむちゃなことをやったかというようなことを明らかにされると同時に、行政的に何らかのぼくは制裁というものが加えられないと、やったからしかたがないということで済まされないような気がするわけであります。こういう地域は、私の知っておるだけでも、奥秩父の三国高原周辺にも状況の似たのがあるわけであります。したがって、植えられないからほおっておくんだということでなしに、何らかの方法で天然下種にかわるような施業というものも考えられるようなしろうと考えができるわけですね。種を持っていってまくのが可能であるのか不可能であるのか、学問的にも私はわかりませんけれども、できるだけこういうところに木を植えると、木が育つような施業を考える、そういうことをひとつぜひ検討をいただきたいというふうに思うわけであります。  以上、私は時間がたいへん経過しておりますので、予定の質問がまだだいぶ残っておりまするけれども、一応本日は、これで質問を終わりたいと思います。     —————————————
  58. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、山田徹一君が委員を辞任され、その補欠として塩出啓典君が選任されました。  暫時休憩いたします。  午後一時三十分から再開いたします。    午後零時四十一分休憩      —————・—————    午後一時四十分開会
  59. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き国有林経営に関する件の質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  60. 前川旦

    ○前川旦君 先日来、国有林問題につきましては、衆参を通じましていろいろな現状について質問がありましたが、現在私どもの手で調査中のものがかなりあります。その中で順次調査のできたものから質問をしてまいりたいと思うわけですが、私は二、三新しい問題をお尋ねしたいと思います。  そこで、まず第一は、熊本の営林局の管内に菊池営林署というのがあると思います。この菊池営林署の問題でありますが、この菊池営林署昭和四十六年七月二十三日付で製品生産事業請負契約、つまり山から木を切って丸太にするということであると思いますが、こういう契約を穴川保護組合とかわして契約の履行に入った、このことについてお尋ね申し上げたいと思いますが、この契約の内容等について長官は御存じでしょうか。
  61. 福田省一

    政府委員福田省一君) 営林局のほうへ問い合わせまして、ただいまわかっておりますことを申し上げます。  菊池営林署の場所は奥江国有林三四林班め・た小班でございます。この契約の年月日は昭和四十六年七月の二十六日、契約方法は随意契約でございます。数量は二千立方メートル、予定価格は四百三十四万円、契約の価格は三百九十万円、完成しました月日は昭和四十七年三月二十日、検査しました月日は四十七年三月の二十日、検査員は龍門担当区主任奥次男、支払いの年月日は昭和四十七年四月の二十七日、請負人は穴川保護組合長緒方共一、かようになっております。
  62. 前川旦

    ○前川旦君 こういう契約は慣例として歩どまりを見てあらかじめ概数で契約をして、あとで精算をするというやり方をとっていらっしゃると思うのです。たとえば、この場合ですと、最初の見積もりで九千九百九十八本、これは杉、ヒノキです。それで二千七百八十五立米、これで歩どまりが二千立米になるという見積もりをされたと思います。こういう見積もりはヤマカンですから、悪いことばかもしれませんけれどもね。経験と勘ですからはずれることはよくあると思います。はずれるということをとかく非難はできないと思うのですが、実際に製品をつくる、丸太にしたところが二千よりはだいぶ多くの数が出た、歩どまりはよかったということなんです。こういう結果になっておる。ところがいまあなたがおっしゃったように、あなたのお答えにありましたように、契約は完了して二千四十八立米、端数がありますけれども、これで契約が完了したわけです。ところが、実際には二千二百立米の木が生産される、丸太にされる。したがって、約百五十立米の丸太が宙に浮いたということになりました。これは私どもの調査なんです。われわれの調査では、そういう結果が出ておる。御存じでしょうか。
  63. 福田省一

    政府委員福田省一君) こちらの調査によりますというと、二千二百ではなく、二千四十八立米と、かようになっております。
  64. 前川旦

    ○前川旦君 長官、これは最初に見積もりをして、そうして二千ということで最初の見込みの契約をする。これはよくやることですね。実際には二千立米というものを売るということだったわけです。それが二千四十八立米で契約完了したわけですから、四十八、わずかな金額、これを問題にしているのではないのです。二千立米を製造したら、丸太にしたら余ったのです。われわれの調査によると余ったわけです。こういうことよくあると思うのです。よくある、決してこのことを非難しているのじゃないのですよ。余った場合に、それでは余った木、それは立ち木でも残っていた、あるいは切り倒した姿でも残っていた、これは普通どういう扱いをそういう場合にしますか。正しい扱いとしてはどういう扱いをするのが順当でしょうか。
  65. 福田省一

    政府委員福田省一君) これは製品生産事業としての請負事業でございますので、余分の出たもの、残ったものにつきましては、さらにそれを処分すればよろしいということになると思います。
  66. 前川旦

    ○前川旦君 そのさらに処分というのは、現実に品物は余った、切ってみたら余った、その作業にかかってみたら余ったと、それはよくあることなんですよ、そういうことは。それは決して悪いことではない。違法じゃないのですよ。その処理は一体どうするのかということを聞いたわけです。で、われわれの調査では、法規その他に照らしてみて、余れば一応帳簿上元へ戻す、これが一つあります。もう一つは、追加契約をするなりして残りも払い出しをする、これは適法にやれると思うのですね。それから、余ったやつは、これはやはり国有財産でしょう、その所有権は国にあるわけですね、余ったやつは。初めの契約で二千立米という契約で取りかかったところが余った。面積の中で余った。この所有権はやはり国にあると思う。そうでしょう。切ってしまったやつは、これはもう物品としての扱いですね。これは動産になります。立ち木は立ち木でこれは扱いが違うと思いますけれども、それぞれに手続を経て帳簿に載せて戻す、これが一つ。もう一つは、さらに新しい契約をするなり変更契約をして残りも全部切って売り渡すか、この二つしかないと思うのですが、どうですか。
  67. 福田省一

    政府委員福田省一君) まあ、当初計画した数量以上に出ました場合には、さらにそれを追加して処分するか、あるいは戻すか、御指摘のとおりであると思います。
  68. 前川旦

    ○前川旦君 実は、われわれの調査では、それができていないのです。おかしいでしょう。それができていない、その手続が。この三月二十日ですか、契約は完了しました。二千四十八、お説のとおり、御報告のとおり二千四十八立米一六九という数字になっていますけれども、これでもう契約完了して済んでいるわけですね。済んでいる。ところが山には、その面積の中に木が残っている、こういうことになりました、われわれの調査では。そうすると、実は国有財産ですから帳簿の処理をして戻すか、あるいは新しい契約あるいは契約更新、これはどうなるかわかりませんが、とにかくまた契約を結んで残りを切り出すか、この二つしかないということを再々言いましたけれども、その新しい契約あるいは変更契約かもしれませんが、何の契約もなしに、無契約状態、それから帳簿にも戻した根跡がなくて、約百五十立米、時価にして四百万円くらいになりましょうか、これが宙に浮いているのです、これはわれわれの調査。しかも契約完了後、完了後にこの穴川保護組合が契約完了後に、三月二十日以後作業をやっているのです。つまり立っている木を切って丸太にする作業をやっているわけです。宙に浮いた木を、無契約でこういう作業をやっている。で、こういう保護組合がかってにやるということはあり得ない、おそらくこれは営林署長の指示でやっているのだろうと思うけれども、それしか考えられないのですけれども、こういうことは許されるでしょうか。これは私たち調査です。あなた方も、それは調査してみなければお答えできないかもしれないけれども、私は、これは許されないことだと思いますけれども、法律上これはいかがですか。
  69. 福田省一

    政府委員福田省一君) これは直営事業、直営生産事業の中の請負事業でございますので、当初、営林署でもって、たとえば千立米生産しようという計画が立った場合に、山に行って木を調査して、これとこれとこれを切るというふうにきめまして、それで材積が二千立米はかるわけでございます。今度はそれを伐採する者に命じて、これを出してくると、最初の貯木場に来ましてから、その材積を測定いたします。当然今度は丸太になりますから、立木よりは材積が正確に出るわけでございます。当然増減が出てまいります。その場合に、ふえた場合と減った場合と両方ございますけれども、、大体千立米計画であっても千五十とか千百とか、あるいは逆にそれが足りなくて、千に百足りないとか、千に五十足りなくなります。これは誤差は当然ございますけれども、それをちゃんとはかって、今度は受け入れいたします。予定は千立方であったけれども、千百であった、千五十というふうにちゃんとそれを受け入れまして、帳簿に記載していく。国有財産でございますから、まだ売る前でございますから、はっきりとこれは計上をしておかなきゃならぬわけでございます。そこで、いま御質問の点につきましては、若干私、ふしぎに思いますのは、切るべき木を全部切っているうちならいいんですけれども、途中で材積がわかったのに、さらにそれを切っておったというのは、ちょっとよくわからないのでございますが——。
  70. 前川旦

    ○前川旦君 よくわからないことが行なわれているから、いま質問になっているのであって、よくわかることではないんです、これは。私が言いましたように、初めの見積もりが狂うことがあるんです。人間ですからありますよ。そのことを言っているのではないんです。狂ったあとの処理ができてない。宙に浮いている。しかも契約をしないままで、契約がもう完了して、新しい契約は、契約書はないんです。われわれの調査では、ないんですよ。さがしてみてもない。しかも丸太にする作業が進められている。五月二十七日段階で、これは写真がありますけれども、作業が進んでいる。無契約で国有財産が製品にされる。しかも戻すという手続、帳簿上の手続が行なわれていない。これ御調査いただきたい。これ事実このとおりであれば、どういうことになりますか。
  71. 福田省一

    政府委員福田省一君) 貯木場に出てから材積を測定して、それでどれくらい増減があったかということが確認された上で、さらにそれを無断で切っておったという事実でありますれば、これはまことにおかしな話でございまして、その点はもしそういう点ございますれば、早急に調査いたします。
  72. 前川旦

    ○前川旦君 三月二十日に契約は完了して、いまあなたの御答弁のように二千四十八立米で契約は完了している。ところが、山には、百五十立米くらいの木が残っている。それを三月二十日以後五月に至るまで作業をして、切って丸太にする作業をやっている。これはわれわれの調査で、そういう事実を実は見てきたわけです。私は直接見たのじゃありません。人に頼んで調べてもらいました。写真も写っております。これはやってはいけないおかしなことをやっているわけですね。協約なしで作業をする、契約なしで作業をする、帳簿上も処理されていない。したがって、不正を働く意思があるのだろうと疑われても、言い開きができないでしょう、これはおそらく。不正をしたかどうかということじゃないですよ。そういうことじゃなくて、突っ込まれたって言いのがれできないような、たいへんずさんな放漫なことをやっているということ、これをひとつ御調査をいただきたい。そうして事実このとおりであれば、林野庁としての態度をはっきりしていただきたい。  この調査は、いつごろまでにやっていただけますか。
  73. 福田省一

    政府委員福田省一君) さっそく調査いたさせます。場所その他についてどの辺ですか、よく連絡をとりまして、さっそくに結果を調べて聞きたいと思っております。
  74. 前川旦

    ○前川旦君 これは丸太にする、何というのですか、製品をつくる、丸太にする作業の請負契約ですね。同時に、もう一つ契約があるのです。これは穴川保護組合との間に部分林契約というのですか、部分林契約、これは保護組合が植林をして木を切るときに、この契約では二対八の割合で分けるという内容になっているようです。したがって、一方では、この植林をしなければいけませんね。木を植えなければいけない。この木を植える契約が、三月末日までに植林を完了するという契約内容になっているはずなんです。ところがそれができていなくて、五月に至っても、まだ植林中であります。これも植林中の資材を運搬している写真があります。契約違反ですね。  もう一つは、植林する適期というのがあるはずなんです。ポット造林というのですか、最近何か開発されたという話も聞いていますけれども、適期というのは三月あるいは二月もかかりますか、三月が適期だといわれているはずなんですね。三月に植えたものは、翌年補植をする。たとえば枯れたやつを補植するにしても、どのくらいのパーセントかよくわかりません。ついでにお聞きしておきますけれども、適期をはずれたら補植率も高くなると思うのです。つまり、むだが多くなるわけですね。そう私どもは聞いているのです。適期をはずれて植林をやっているのですね、五月の段階でまだ。これが事実であるとすれば、御調査いただいて、事実であるとすればどういう責任になりますか。
  75. 福田省一

    政府委員福田省一君) 部分林契約でございますので、国有林の中で民間の人がそこで植樹をして、成林の暁に御指摘のように二官八民ですか、こういう形で分配するわけでございますが、双務契約でございますから、御指摘の点につきましては、もしこの二十日までに完了できなかったならば、契約の変更をするのが筋でございます。  そこで、五月が適期であるかどうか、九州は非常に南のほうでございますから、場所によってはもう一月あるいは二月から造林をいたします。山の上のほうになれば少しおくれましょうけれども、ポット造林ですと、これは夏でもいつでも実は植林ができるというたてまえでございまして、雪がなくても、ポット造林ならばはち植えのまま植えたって同じ原則でございますから、実はそれをねらってポット造林をしておるわけでございまして、五月でもこれはポット造林ならいいのじゃないかと思いますけれども、なお御指摘の点につきましては、よく調査いたしたいと思います。
  76. 前川旦

    ○前川旦君 雇用関係を安定させるために、この三月適期にこだわらないで、植林をやればいいという意見に対して、営林署の方々は、官側の方々ですけれどもね、三月が適期なんだから適期以後はやらないということを非常に強く言っているということをほかの事例で聞いております。したがって、この三月が適期というのは、これはもう常識になっていると思うのですけれども、したがって、契約も三月末日までに、末までに植林を終えるという契約になっていたはずなんです、契約の内容は。しかし、それができてなくて、六月六日段階で植栽完了届けも出ていないというふうに私ども調査しております。ですから、これはもう明らかに契約違反が放置されている、こういうことですね。契約書の内容には、違反した場合にはどうのこうのということを書いてあります。ちゃんと印刷でできていますけれども、たいへんルーズなことが行なわれていますね。  もう一つは、こういう作業に伴って機材の貸し出しをやるでしょう。鋼索とか、ワイヤーロープですか、あるいは集材機といったような機材の貸し出しがありますね。こういうものもしたがって契約完了まで、三月二十日までということで貸し出しているわけですね。それが五月二十七日段階でも、ここに写真があります、山に放置をされている。山に放置されているのです、調査によりますと。ですから、そういうことが非常にルーズに管理をされている。一番最初に申し上げましたのは、これは法律違反ですね。これは施行令になりますかね、帳簿とか原簿とか、こういったようなものをきちっとしなければいけないという規定があるはずなんですね。そういうものに明らかに違反しているのと、無契約で作業を進めているというのは、これもおかしな話ですね、これも違法だと思いますよ。最初のほうは違反。あとのは、これは契約違反を捨てておいてある、こういうことになるのじゃないですか。この点について御調査の上、責任のある回答をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
  77. 福田省一

    政府委員福田省一君) さっそく調査しまして、御回答いたします。
  78. 前川旦

    ○前川旦君 三月二十日の契約以後、木を製品、つまり丸太をつくる作業を現実にやっているということは、これは費用がかかっているはずなんです。費用がかかりますね、これは。労賃にしたってかかりますね。しかし契約もなし、原簿もできてない。これ一体金を支払う根拠がありますか。どこから、どういうふうにしてこれ金を出すでしょうか。実際作業をしているのです。それは作業をしているということを前提にしての話ですけれども。私は根拠がないと思いますが、いかがでしょうか。
  79. 福田省一

    政府委員福田省一君) これは御指摘のように、ちゃんと幾ら出たということを検査して、確認して、その上で費用を支払うべきものでございます。
  80. 前川旦

    ○前川旦君 いえ、私がいまお聞きしましたのは、三月二十日契約完了後、無契約のままで、何の契約も取りかわさないままでこの作業をしているわけですよ。つまり、木を丸太にする作業をね。これは保護組合が自由意思でかってにしているのじゃないと思う、いなかの純朴な人たちが。これは想像にすぎませんけれども、これは営林署長がやれよという指示がなければ、こんなことはやらないと思いますよ、おそらく、これは常識として。しかし、こういう人たちの賃金、労賃ですね、そういうの、やっぱりいつか払わなきゃいけないわけでしょう。しかし、こういう状況では、無契約の状況では、払う根拠はないんじゃありませんかということを聞いているのです。
  81. 福田省一

    政府委員福田省一君) 御指摘のとおりでございます。
  82. 前川旦

    ○前川旦君 ここの署長は、だいぶ常識とははずれているような気がいたしますが、昨日この署長が告発をされたということを聞いていますか。これダイナマイトの問題で、聞いていますか。
  83. 福田省一

    政府委員福田省一君) 六月八日正午過ぎに、全林野労働組合が菊池営林署長を熊本地検に告発した。一つ、所長が除草剤散布を強制しようとしてダイナマイトで脅迫した、これはダイナマイトの違法所持である、菊池営林署長吉野恒夫。こういう問題でございますが、営林局のほうへ実は連絡して調べましたところが、こういうことでございます。  五月の二十三日、一時から四時半の間に深葉国有林において作業員五人を対象に除草剤散布の研修をした。初め経営課長が説明して、次に署長が引き続いて説明したが、そのときたまたまマイター——マイターというのはダイナマイトの模造品だそうでございます。これを近くのスカイライン工事現場から借りてきて使ったが、これは、ダイナマイトは人類の福祉に大いに役立っているが、使い方を間違うと殺戮兵器として人類に不幸をもたらす。除草剤も使い方を間違うとダイナマイトと同じようなもんで、十分注意して使ってくれ、その趣旨で用いたものであり、また、お茶を飲みながらおだやかに話したので脅迫したものではない、まあ、こういうふうな情報でございます。
  84. 前川旦

    ○前川旦君 それは私どもの調査で聞きますと、こういうことなんですよ。除草剤をまくのに、おれの言うとおりにしていれば間違いない、危険はないのだと。ちょっとダイナマイト持ってこい。ダイナマイト持ってこさして、ダイナマイトのようなあぶないものでも、おれの言うとおりしておったらあぶなくはないんだ。見てみろ、あぶなくないだろう。だから、おれの言うとおりしておったら除草剤だいじょうぶなんだ。こういう話をした。これ冗談がちょっと過ぎていると思います。私、冗談とはちょっと思えない。人家が近くにあって、人がいるところで、一体ダイナマイトを扱う資格が、その人はあるのかどうか知らないけれども、たとえあったとしても、非常に非常識。ダイナマイト、爆発物を持ってきて、それはそこにいる人が恐怖心を感ずるのはあたりまえですよ、これは。あたりまえですよ。非常にこれ非常識な署長もいるものだなあと思って、私、この話を聞いて実はちょっとあ然としたのです。これはまあ、告発されましたから、裁判で黒白つくと思いますけれども、そういう刑事上の問題を離れて、行政上の問題として、こういう非常識な行為を許しておくことができるのかどうか。これも事実関係はっきりしないと、責任のあること言えないかもしれませんけれどもですね、たいへんこれはおかしいと思うのです。ですから、事実関係を明らかにしていただきたい。おそらく、告発をするということですから、告発をしたほうも自信があって、証拠、それから証人ぴしっとそろった上でなければ、これは反対にやられますからね、できないでしょう。ちゃんとした証拠あるわけです。ですから、この刑事罰、裁判の推移とは別に、やはりこれは行政上の、指導上の、職員管理上の問題として、私は事実を明らかにして、しかるべき態度を、林野庁としての態度を確定していただきたい、このように思いますが、いかがですか。
  85. 福田省一

    政府委員福田省一君) これは初めから模造品だと言って断ってやるならいいんですけれども、それも言わずにやったんじゃ、本物のダイナマイトだと思って、びっくりするのはあたりまえでございます。もし、これが事実だとすれば、まことにけしからぬ話でございまして、さっそくこれは局から、いま申し上げた情報だけでございますから、よく調べまして、しかるべき処置をしたいと思います。
  86. 前川旦

    ○前川旦君 この契約で木を切って丸太にする対象になった土地ですね。厳密に言うと、何というのか、さっき長官がおっしゃったから省略しますが、この隣接地、これは四十七年度で切る請負契約をする予定になっているそうですけれども、沢向いということを聞いております、沢向いという土地の言い方をしております。六月六日現在すでに丸太の生産を始めているという報告がありました。これは無契約ですね、契約があるのかといって調べてもらいますと、契約はないようだ。少しおかしいという疑いがありますので、この点についても御調査をいただきたいと思います。で、あなた方のほうの調査と照らし合わせた上で、あやまちがありましたら、しかるべき責任のある態度をとっていただきたい、こう思います。  もう一回申し上げましょうか、隣接地、四十七年度に請負契約で丸太を生産するという予定になっているそうなんです。隣接地沢向い、これは写真がありますが、あとでお見せいたします。六月六日に現地に調査に行ってもらいました人の報告によりますと、木切っておりますぞ、こういうことですね、という報告が私の耳に入っているんです。ですから、あなたのほうで事実を調べていただいて、こういう事実がもしありましたら、しかるべき、確固たるあれをしていただきたい、態度をとっていただきたい、こう思います。
  87. 福田省一

    政府委員福田省一君) まだ契約も何もしてない場合を伐採する、これは問題でございます。さっそく調査いたします。
  88. 前川旦

    ○前川旦君 ですから、いまの調査の場合、これは委員長にもお願いしたいと思いますが、契約があるのかないのか、四十七年度、それは大きな問題になると思いますが、契約書があればこれは違法じゃありませんね。しかし、われわれの調査では、契約書がないという話になっておりますので、したがって、契約書があれば契約書の写し、あるいは着手届け、事業計画書、器具、機材の貸し付け申請、あるいは資材払い出しの手続、こういったような一連の手続が要ると思います。この写しを、あれば、ひとつ契約ありました、ちゃんとできています、合法ですということを証拠立てるために、もしあれば、その写しを提出をしていただきたい。委員長にもお願いしておきますが、いかがでしょうか。
  89. 福田省一

    政府委員福田省一君) 早速調査しまして提出いたします。
  90. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) それでは早速それを調査して写しを出して下さい。
  91. 前川旦

    ○前川旦君 次へまいります。  林道をつくるときに、作業線というのを枝みたいに出すことがありますね。これは作業線出さないと実際に木は出せませんが、この作業線をつくる場合に、これは一般論でお伺いしますけれども、この作業線というのは、木を切り出して運搬をして、林道までおろしてくる。それに使うために主としてつくられるのでしょうか。
  92. 福田省一

    政府委員福田省一君) 林道というものは、普通長期間使うものでございまして、固定資産の扱いをいたしております。作業線というのは、それから御指摘のように枝に入っておりまして、おおむね臨時的に三年以内ぐらいでもう使わなくなるというのが普通でございます。これは固定資産扱いはいたしておりません。
  93. 前川旦

    ○前川旦君 木の搬出に作業道を使うんだと思いますね。木は昔と同じように肩でかついで出すのではないでしょう。車でしょう。そうすると、作業道というやつも車が通れるということが、一応前提となるのではないでしょうか。
  94. 福田省一

    政府委員福田省一君) 作業道は、主としてトラック類が通る場合でございますけれども、またトラクターのようなものが通る場合もございます。いまは馬で引くとか、牛で引くとか、そういうものはほとんどございませんで、主としてトラック、続いてトラクター、こういうものが大部分でございます。
  95. 前川旦

    ○前川旦君 これは下屋久営林署、これは鹿児島営林局になるのでしょうか、この下屋久営林署が、昭和四十六年十月五日から四十六年十二月五日ということで、ここに契約書の写しがあります。請負契約書、これは随契でやらした契約書だと思いますが、三百九十七メートル、幅員三・六メートル、これはちゃんと契約書の写しに内訳が書いてあります。あとで必要があればお見せいたします。ここに写しがあります。ある請負人に作業道の工事をやらしたわけです。そうして工事が完了をいたしました。そうして、昭和四十六年十二月十七日の日付で完成検査報告が出されて、そうして、この契約は終了したわけです。で、支払いました金は、最初の概算払いが二百七十万円でしたけれども、あとで直しまして、二百六十四万七千百九十三円、これは完成払いで。支払いを終わって、これはもう契約は終了した。ところがこの道は使い物にならない、車が通らない。車が通れない道だと。したがって、しかたがないから営林署はそのあと砂利を買いました。それから、ブルトーザーを借り上げました。金網を買いました。たいへんな金額を入れて補修をしているわけです。砂利の代金として九十六万円という見積りが出されておるはずです。金網の見積りとして二十五万二千八百円という見積りが出されている。それからブルトーザーの借り上げ、これは十五万円ですか、あるいは薬品代、わかっているだけで百六十万円程度の、これは人件費を除きまして百六十万円ちょっと上回る金が余分に要って、それで道を直して車を通している。こんなずさんなことが許されていいのでしょうか。これはわれわれの調査ですから、あなたのほうも調査していただいて、突き合わせなければいけませんけれども、これは事実とすればたいへん私はずさんなことだと思いますよ。これはいかがでしょう、御意見は。
  96. 福田省一

    政府委員福田省一君) 御指摘のように、これが事実といたしますれば、たいへんずさんなことになるわけです。営林局からの情報では、まだ正確な内容はとってないのでございますけれども、電話連絡でございますから、この点については、補修工事の内容については、砂利が非常に当初計画したよりは足りなかったので、しかも、それは粘土質で非常に悪い土地であったので、砂利をまたあとから入れたと、こういう話なんですけれども、御指摘のように、本来ならば、これは一つは設計のしかたの問題もございましょう、次に、足りなかったならば、ちゃんと契約をし直すべき問題でございます。
  97. 前川旦

    ○前川旦君 これは契約違反ですね、この請け負ったこの会社はね、なすべき義務を怠っているわけです。ですから、それが当初の見積もりに比べてうんと金がかかる、やってみ出したら、地盤が悪いとか、そういうときには、契約の内容を変更したり、いろいろ方法があると思うのです。それをやらないで、もう契約を完了さして、工事請負金完成払いの支払い請求書は、二百六十四万円で、四十六年十二月二十日に出ています。砂利を買ったのは、二月十八日に見積もり書が出ていますから、切り離されて別ですね。これは契約の内容として、いま長官が向こうに電話で聞いた、調査した内容のように、やりかけたら土地の質が悪くて砂利を買い足した、それで高くついたというようなものとは違いますね、日付からいっても違うし、契約完了後ですからね。こういうこれは非常にずさんな話ですね。そうしてこれは、ここに検査報告の写しもあります。ありますが、末端の検査する職員が、これは立ち会い人もおりますから、自分だけの判断で、できてもいないものを、車も通らないものを、できましたというようなことは、私はちょっと考えられない。もし、かりにそういうことがあったとしたら、それが不完全であったという段階で、そこの署長が、おまえどうしたんだ、だめじゃないかという何かがあってしかるべきだったと思う。そういうことが一切何もなしで、そうして砂利を買い、金網を買い、最初の工事の半分以上も余分に金をかけて買って補修をする。これは署長がぐるとしか私は考えられぬですね、常識的に考えて。もっともこれは事実関係は明らかでありません。ですから、誤解のないように、断定しているのじゃありませんが、私はそういう感じがいたします。あるいはその署長の指示でやったか、そうとしか常識で考えられません。また、そういうふうに追及されても言いのがれができることばはないだろうと思いますよ。非常にこれはルーズなやり方です。小さい問題のようですけれども、考えようによっては大きい問題。至るところにこういうのがあるのではなかろうか、私はそういうふうに勘ぐりたくなるのです。ここだけであれば、大きな海の中の一つと言えるかもしれないけれども……。でありますから、この問題をひとつ正確に御調査をしていただいて、長官としての見解を明らかにしていただきたい。できるだけ早急にしていただきたい、このように思います。
  98. 福田省一

    政府委員福田省一君) たいへん疑いをかけたこと申しわけないと思います。さっそく調査しまして報告いたしたい、かように思います。
  99. 前川旦

    ○前川旦君 こういうようなものが随意契約でどんどん行なわれているのですけれども、これはどうなんですか、こういう工事なんかを随意契約で行なわせるというのは、どういう法律上の根拠、どれを根拠にして随契でいまのような工事をやらすんでしょうか。
  100. 福田省一

    政府委員福田省一君) これは随意契約でございますので、適用条項があるはずでございますから、いま問い合わせまして、さっそく報告いたします、しばらくお待ちください。
  101. 前川旦

    ○前川旦君 そんな長い時間かかると思いませんので、この委員会終わるまでに、ひとつお答えをいただきたいと思います。  この営林署は、屋久島の屋久杉を管轄の中に持っているわけです。そう思いますが、この屋久杉について若干お尋ねしますが、屋久杉が名木と言われている由来というのは何なのか。屋久杉はどの点が名木だという特徴なんですか、その質の問題等含めて。
  102. 福田省一

    政府委員福田省一君) 屋久杉は屋久島特有の木でございまして、大体屋久杉という名前をつけているのは、樹齢一千年以上でございます。一千年以下の屋久杉は古杉と称しているわけです。一番古いのは七千年たったという伐根がございます。世界でも七千年というものはないわけです。現在切っております屋久杉は、大体千年から二千年くらいの見当でございます。約十五万本くらいありますけれども、これについては絶対切るなといういろいろな自然保護の立場からの要請もありまして、ごらんになったことあるかもしれませんけれども、風衝地帯に入っておりますので、木のかっこうが非常に悪いわけです、台風の常襲地帯でございますから。したがって、特徴としましては、年輪が非常に密に込んでいるわけです。非常に特有の油がありまして腐りにくいという特徴もございます。これを板にしまして、テーブルにしたりあるいは建築用材にしたり、特にそういう点で、光沢、目、その他で非常な希少的価値があるということで、体積は虎屋のようかんと大体同じくらいの値段だと、こう言われておるものでございます。
  103. 前川旦

    ○前川旦君 私は甘党じゃありませんので、虎屋のようかんの値段ちょっとわかりませんが、しかし、高価なものであろうとは思います。そこで、この屋久杉の、土埋木ということばを使っています、これは風で倒れて土に半分埋もれたような状態になっている木のことを言うのでしょうか、土に埋もれる木と書きます。それから根株、こういうものを切り出して丸太に生産して、そして昭和四十二年ごろまでは、営林署が鹿児島まで船で運んで、鹿児島の名本市というのでしょうか、そこで入札をして売り渡していた。土埋木、立って育っている木じゃなくて、風で倒れて埋まっている木とか、あるいは根株ということを聞いておりますけれども、そういうことをやっていましたが、四十二年までには。営林署が直営で切り出して、鹿児島まで運んでということを。
  104. 福田省一

    政府委員福田省一君) これは非常に油が入っておりまして、腐りにくい木でございまして、御指摘のように、台風なんかで倒れましたものが、だんだん落葉が重なって、半分ぐらいは土に入ってしまう、それでも腐らぬわけでございます。表面部分はちょっと腐りますけれども。これと同じものが青森のヒバなんかにもございます、土埋木と称して。これと根株、この辺は特に根株につきましても、これを切りまして掘り起こすのじゃなくて、根株をさらに伐倒した点から低いところで切りまして、これをいろんな細工にしまして、花びんを置く台であるとか、何かそういう細工をいたします。土埋木もやはりいろいろな細工ものに使うということで、鹿児島までこれを直営で出しておったかどうかは、私、正確には覚えておりません。そういうものでございます。
  105. 前川旦

    ○前川旦君 昭和四十二年までは、私の聞いた範囲では、四十二年までは営林署が直営で土埋木なんかを丸太にして鹿児島に運んで市へ出していた。そこで売っていたという話を聞いているんです。ですから、それをお調べいただきたいと思いますが、そのときにどれぐらいの価格で入札されたか、つまりどれぐらいの価格で売却されていたか、これも御調査いただきたいんですが、いまわかりますかしら。——わかりますか。
  106. 福田省一

    政府委員福田省一君) これはさっそくに調べますけれども、いまちょっとわからぬようでございます。
  107. 前川旦

    ○前川旦君 私の調査によりますと、これは四十六年でこの土埋木、根株全部が、全部というわけじゃないんですけれども、そうではありませんが、しかし、上質なものは四十六年の実績では、鹿児島の名本市で一立米が二十一万円程度の値がついていたというのを調査で聞いております。これもあとでお調べいただけばすぐわかることですから、これは鹿児島の名本市の価格ですから。二十一万円ぐらいというのを四十六年度ですけれども聞いております。ところが四十三年から直営でやらずに請負いで民間の会社に随意契約で、この土埋木と根株をやらせ始めました。その売り渡し価格が四十六年でみると、一立米あたり一万二千円ぐらいで払い下げているんです。二十一万円という価格が全部が全部そうであると思いませんけれども、それにしても、あまりにも市価と食い違いが大きいではないだろうか、これ、お調べいただきたいと思いますが、つき合わしたいと思いますが、事実このとおりであれば、長官どうお考えでしょうか。
  108. 福田省一

    政府委員福田省一君) 名木の値段というのは先ほどお話ししましたように、木目であるとか色であるとか、つやであるとか、いろんな因子が入っておりまして、虎屋のようかんと同じぐらい高いものでございますが、これは立米二十一万とおっしゃいましたけれども、それで非常に値段の違いがございます、安いものから高いものまで。そこで、これは専門家でなければなかなか値段はつけられないので、市に出しましてせり売りいたします、一本、一本。そういう売り方をしているわけです。極印で出ましたものも名木に準ずるものは市場に出しまして、そこで、一本、一本せり売りをしていただくと、こういう売り方をしておるわけでございます。せり売りというと、市の日がさまっておりますので、全国から人が集まってまいります。そういうものでございますので、二十万円とか、一万二万という差はものによってはあるわけですが、ということは同じ根株でも、同じ土埋木でも非常に価値のあるものと価値のないものとございますから、そういう開きはものによってはあると思います。
  109. 前川旦

    ○前川旦君 ものによってはあるという、これはいろいろ変動もあると思いますけれども、私がいま一立米当たり一万二千円と申し上げましたのは、ここに数字がありますが、平均で言いました。ですから平均で言うと、これは売買契約書の写しもここにありますが、これは百二万円という概算金額で屋久島森林開発株式会社、この代理人として屋久島森林開発株式会社の常務取締役五所則光という人とかわした売買契約書がありますが、一・八ヘクタール、樹種屋久杉、これは土埋木と根株ですが、百立方で百二万円、立方当たり一万円ぐらいになりますね、割ってみると。そのほかに、四つの会社に随意契約で売却をしております。武田産業という会社、それから多夫施木材という会社、柳田工芸社という会社、この四社がそれぞれ随意契約で四十三年から売却を受けております。その数量もここに出ておりますが、お調べをいただきたいと思います。随意契約でこの四社に対して四十三年から一体幾ら立方売ったか。幾らの価格で売ったか。平均しましてこの四十三年から四十六年まで一万円以下で売っているのです。それから数量もずいぶん大きな数になっているのです。たとえば、いまの屋久島森林開発株式会社、これに売った量、私どもの調査では四十六年だけを見てみますと五百九十四立方、単価が一万一千五百六十二円、総額で六百八十六万七千九百七十一円という数字がわれわれの調査で出ております。四十三、四十四年、四十五年累積しますと、ずいぶんの量になります。あと三つ会社がありますからかなりな量です。こういう随意契約で、しかも市価よりも常識的に考えて非常に安い。極端に安い。いろいろ品物によって差があるということはわかりますよ。そういうことはあるでしょう。あるけれども、名本市でこの土埋木や根株、根株を含む土埋木は四十六年で二十一万円ぐらいつく、立米当たり。大体この価格に変動がないそうなんです、この三、四年は。その土埋木、根株を一万円から一万二千円ぐらいで、しかも随意契約で払い出す。たいへんこれは不自然だと思います。常識的に考えて不自然です。ですから御調査をいただきたい。あえて言えば、そこに随意契約で売ったその丸太がここに写真があります。あとでお見せしてもけっこうです。たいへんりっぱな屋久杉が土埋木という名目で積まれている写真がありますから、あとでお見せいたしましょう。常識的に考えて異常に安い価格で払い下げられる。疑いを持たざるを得ません。しかも一番最初に言いました屋久島森林開発株式会社、元営林署長の経歴の方が二人重役の中に入っております。常務に一人、取締役に一人、名前言ってもけっこうですけれども。したがって、もし疑いがないなら疑いを晴らすように私は徹底的に調べていただきたい。ほんとうに調べるなら、この払い出した木を追跡調査して、一体幾らでそれがばけるのだということを追跡調査すれば、一番これは簡単でしょう。なかなかそこまでできないでしょうけれども、私は誠意を持った調査をしていただきたい。このように思います。いかがでしょうか。
  110. 福田省一

    政府委員福田省一君) これも販売上の重大な問題でございますので、御指摘のように誠意を持って早速調査いたしまして御報告いたします。
  111. 前川旦

    ○前川旦君 先ほど随契の問題で質問をいたしましたが、私はたとえば一つの例として、屋久島森林開発株式会社、この会社に屋久杉の倒れた木や根株が随意契約で売り渡されるという法律上の根拠を教えていただきたい、明らかにしていただきたい、こう思いますが、できますか、いま。もう間に合いましたか。
  112. 福田省一

    政府委員福田省一君) ただいま報告では、予決令第百二条の四の第三号、これを適用しております。これは「競争を許さない」という条項になっているはずでございますが、その内容——ちょっと失礼しました。いまのは林道の関係ですから、ちょっとお待ちください。早速もう一ぺん調べてすぐ出しますから……。
  113. 前川旦

    ○前川旦君 だいぶん時間がかかるようですので、私は、これは随契のできる法規の根拠がいろいろあると思いますが、まず会計法二十九条の三があると思いますね、会計法二十九条の三の四項、五項。これは随契ができるということがきめられてます。おそらくこれを言いたかったんじゃないですか。もう一つは国有林野事業特別会計法施行令二十七条の四、「伐採に特殊の技術を必要とする場合」、これも随契ができる。それから予決令の九十九条の二十、この辺が根拠であろうと思うんですよ。そのほかに私もさがしてみましたけれども、随契ができるというのがないようなんです。いかがでしょう、まだ時間かかりますか。
  114. 福田省一

    政府委員福田省一君) いま向こうの根拠法規、先ほど実は間違えて林道のほうを出しておりましたんで、販売のほうは、いまさっそく取り調べて御報告いたします。御指摘のように予決令九十九条の二十号は、産業の保護奨励のための販売という考え方でございますし、それから会計法二十九条の三の四項というのは、これは契約の性質が、あるいは目的が競争を許さない場合、あるいは緊急の場合に、競争できない場合に随契によると、こういうふうな適用条項でございますし、もう一つは施行令二十六条の四の一号、これは立木の場合でございます。ですから、土埋木や伐根というようなことになりますというと、素材の範疇に入ってきますので、いま御指摘の二つの場合ではなかろうかと思います。調べまして、また御報告いたします。
  115. 前川旦

    ○前川旦君 私も調べて、たふんそうだろうと思う。そこで、一つ一つこれが一体この会社に適用できるのかどうか私は考えてみたんです。あなたも考えてほしい。会計法二十九条の三の四項ですね、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合、」、これに該当するとは言えませんね、四つの会社にそれぞれ随意契約しているんです。「契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合」、該当するとは思えませんね。「競争に付することが不利と認められる場合」、これははっきり不利なんだという根拠がないでしょう、四つの会社にそれぞれ随意契約している。それから、いまの五、「予定価格が少額である場合」、これもちょっと該当しないと思いますね。ですから、会計法二十九条の三、これにはる随意契約では、この屋久島森林開発株式会社はどうも当たらないと私は思いますが、後ほど御見解を伺いたいと思うんです。  それから、先ほど土埋木は立木ではないと言われましたけれども、これは立木扱いなんでしょうか。やはり土埋木や根株は立木と見ないということが正しいんでしょうか。あとになって御訂正なさるんじゃありませんか。土埋木はやはり立木扱いとして見るというふうになると、国有林野事業特別会計法施行令の第二十七条の四というのがかかってきますね。ところが、これも問題があるのは、「国有林野の所在する地方において製材又は木工を主たる業務とする地元工場」というのがかぶさっていますね。この屋久島森林開発株式会社はチップの工場一つ持っているだけであって、木工あるいは製材をするため設立された会社じゃありません。案内書の写しがここにあります。この中に歴然としております。それからもう一つ、予決令の——予算決算及び会計令ですね、通称予決令の九十九条、これの第二十の中に、「産業又は開拓事業の保護奨励のため、必要な物件を売り払い若しくは貸し付け一又は生産者から直接にその生産に係る物品を買い入れるとき。」、「売り払い」が入っておりますから、これが該当するというのが——いま長官のうしろから、メモで、どなたですか、若い人が一生懸命持ってきた、これを言ってたんだと思う。しかし、これだって問題があるんですよ。この予決令のこの項を一体どう解釈すべきなんだろうか。ここに私は「財政金融法規解説全集」、これは大蔵省の人たちが書いたものから抜き書きしてきましたけれども、その中には「産業または開拓事業の保護奨励のため、必要な物件を売り払いもしくは貸し付け、または生産者から直接にその生産に係る物品を買い入れるとき。産業または開拓事業の保護奨励に資するため、国の所有に属する物件を関係者に対して売り払いもしくは貸し付け、または国の必要とする物品を生産者から直接買い入れるときは随意契約によることができることとしたものである。特に産業の保護奨励の範囲がすこぶる広く、」これは解説書ですが、「その運用についても次号の規定とともに最も問題のある規定である。明治会計法および大正会計規則当時においては、主として農林畜産関係の保護奨励を要した時代であり、国策もその方面に最も力が入れられたが、産業構造の変化および貿易事情の変貌等に伴い、現在わが国は産業の国際競争力の強化に各種の施策が強く要請される時代であるから、本号の解釈いかんは、一般競争の原則を危うくするおそれなしとしない。しばしばふれてきたように、手続法たる会計法において、かかる政治的意図をもった規定があることは特例的なものであって、その運用は最少限度にとどめるべきものである。」、これが大蔵省監修で大蔵省の方たちが書いて各官庁で買い入れている財政金融法規解説全集、現物いまここに持っていませんが、財政金融法規研究委員会編、こういう解釈、これは正しいと思いますね、できるだけ狭く解釈しておる。そこで大蔵省に問い合わせをしました。この産業の奨励、この項で産業または開拓事業の保護奨励にどういうものが該当するのかといって照会をいたしましたところ、国有財産特別措置法施行令の第十四条にずっと一から四十九までその事業が例示されてあります。これは重要産業に属する事業の指定ということで、例示されております。そして大蔵省は、通達でこの予決令のこの項の「産業又は開拓事業の保護奨励のため」に該当する産業とは、国有財産特別措置法施行令、この十四条に例示された四十九の事業がこれに当たるんである、こういう解釈をいただきました。ところが、その四十九ほど並んでいる中に、一番近いものはパルプ製造業というのが入っておりますけれども、パルプ製造業であってチップ製造業とは書いてない。この会社はパルプ製造会社ではありません。パルプ会社は資本を持っていますけれども、チップの製造会社、この会社一体随意契約を受ける資格がないんじゃなかろうか。ただ、重役に二人営林署長の古手がおります。それからこの会社をつくるのに非常に林野庁が要請をして協力をしたといういきさつもある、それはちゃんとここに書いてあります、この会社の案内書の中にも。しかし、それにしても私が自分で一生懸命考えてみて、これ随意契約に資格のある会社のように思えません。ですから、どうかこれもひとつ随意契約になるという法律上の基礎、省令含めて法令上の根拠をお示しいただきたい、と同時に御意見も伺いたい、このように思います。いかがでしょうか。
  116. 福田省一

    政府委員福田省一君) 私、先ほど土埋木、根株は立木じゃないだろうと申し上げましたが、ちょっと自信がございませんので、あとで調べて……。  それから、第二点御指摘のございました適用条項、これはさっそく調べまして御報告いたします。  いずれかの、とにかくいま御指摘の予決令あるいは特別会計法の施行令その他関連する事項でございまして、さっそく調べて御報告いたします。
  117. 前川旦

    ○前川旦君 たとえばこの木を切り出す、運び出す、あるいはあと整備をする、それに非常に特殊な何といいますか作業が要るんだと。そしてその特殊な能力を持ったのは、この会社だけなんだというんであれば、随契のまたさっきのあれは生きるかもしれませんけれども、どう考えてもそうじゃありませんね。そしてそういう会社四つ、そのうち一つは、これは民芸品つくっている会社なんですよ。これはこの地元産業の育成に当たるかもしれないけれども、あとの三つをそれぞれ随意契約して、しかも、こんなに安く、これはあなた方のほうで御調査いただかんと最終的結論出ませんけれども、突き合わせてみなければわからぬけれども、常識的に考えてこんなに安く、しかも膨大な量を出している。そこで計算をしてみますと、四十三年から四十六年まで、もしかりに立米二十一万円で、かりにですよ、売れるものをかりに平均一万円ぐらいで出しているとしたら、その分だけで億のつく国損が計算されると思うんです。私どもの計算では、八億をこえると思うんですが、国損という受べかりし収益が得られなかった。しかし、これは二十一万円というので計算しましたから、正確にはこういう数字じゃないと思います。これは平均するともっと下がるかもしれませんが、かりに半分としても、これはやはり問題があると思うんです、疑わざるを得ない。ですから、これはどうぞひとつあなたのほうで良心的に正確に御調査をいただいて突き合わせをして、そしておかしいところがあれば、私の疑っているような面があれば断固たる態度で御処理をいただきたい、このように思いますがいかがですか。
  118. 福田省一

    政府委員福田省一君) 屋久杉につきましては、先ほど申し上げましたようにいろいろな種類がございまして、値段も非常にむずかしくまちまちでございます。それともう一つ、最近土埋木とか、あるいはそういったものがだんだん少なくなってきておるという事情もございまして、あるいは相当価値の高いものが少なくなってきているのじゃないか、反論するわけじゃございませんけれども、そういう事情も含めて十分調査いたしまして、さっそく御報告いたします。かりに二十一万円と一万円の差二十万円の差があるということになると、同じような質のものであればこれはえらいその販売方法の問題でございます。十分その点については、調査いたします。
  119. 前川旦

    ○前川旦君 これは予決令ですね、予算決算及び会計令の八十条「予定価格は」云々というのがありますね。この第二号「予定価格は、契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない。」その一番最初は「取引の実例価格」ですから、取引の実例価格をはっきり把握した上で、こういう価格決定をやらなければいけないという義務があるのですから、当然この営林署もこういう価格をきめるからには、実勢価格、実例価格を把握しなければいけないはずですね。ですから電話一本かければすぐわかると思う。実例幾らだ、払い出しているやつは鹿児島へ行ったら幾らくらいになっているのですと。ですから、その実例価格からいって、これはおかしくありませんと、正しければこういう反能すぐ出るはずなんですね、だから早急にお返事をいただきたい、こう思います、いかがですか。
  120. 福田省一

    政府委員福田省一君) 随契でありますから、安くということはいたしておりません。  たてまえとしましては、御承知かと思いますけれども、取引の実例というものは、一般の市場の売買価格、それを聞き込み調査をいたします。あるいは営林署の公売の価格を調査するとか、あるいはまた市売りの価格を調査しまして、これらを組み合わせて適正な取引の実例価格をつくるわけでございます。年度の初めに一応営林局が基準価格をきめまして、毎月市況率というものを調査して定めて、毎月市況率を基準価格に乗じて価格を変えております。  そこで、時期的にも場所的にも適正な評価をするようなたてまえにいたしておるのでございます。
  121. 前川旦

    ○前川旦君 そのたてまえはわかるのです。そのたてまえがそのとおり実行されているかどうかというところに問題があって、それを私どもは指摘しているんですから、そこのところを正しく正確に把握して報告をしていただきたい。できることなれば、疑いを晴らしていただきたい。であればいいんですけれども、事実そのとおりおかしいことがあれは、事実のとおりあからさまに出していただきたい、こう思います。  私は、まだ時間がありますので、委員長にお願いして辻委員質問最後に残り時間十分か十五分とっていただきたいと思います。  一応これで途中ですけれどもやめます。
  122. 辻一彦

    ○辻一彦君 私も引き続いて国有林を中心にして二、三の点を質問いたしたいと思います。なお、大臣には、要所、要所見解を伺いたいと申し入れたのですが、出席されないのですか、どうなんですか。
  123. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 来ます。
  124. 辻一彦

    ○辻一彦君 まず、長官にお伺いいたしたいと思いますが、私、特別委員会の関係でほかに出ておって、何回かの審議のときに出なかったことがありますので、若干重複する点があったら御了解をいただきたいと思うのです。  そこで、もうすでに何回も論議をされたことでありますが、まず赤字と言われますが、私はごく簡単に赤字の、なぜ赤字が出たかという要点だけでけっこうですから、ちょっとそれを伺いたい。
  125. 福田省一

    政府委員福田省一君) 国有林の会計制度は、特別会計制度になっておりまして、木材の販売収入が九割以上占めております。それから、支出のほうを見ますというと、人件費が約六割ぐらい占めておるわけであります。木材価格は最近横ばいでございまして、過去においては相当値上がりを示しておったのですが、最近は横ばいないしはダウンという傾向を示しております。人件費は、ほかの他産業並みに仲裁裁定等を受けまして、十数%ずつ毎年上がっていくわけであります。従来は、収入と支出の差額が出まして、これを大蔵省の預金部に積み立てておったわけでありますが、四十六年度三百五十億というのがあったわけであります。それが四十七年度の予算編成時期におきまして、それがゼロになった。で、なおゼロどころか逆に百億マイナスになった。簡単に申し上げますと、赤字の原因はそこにございます。
  126. 辻一彦

    ○辻一彦君 大体記録でその答弁も拝見しました。要するにこの支出のほうから言えば、外材がたくさんパーセントがふえてきたということ、そして価格の煙ばい、値下がりが起こり、その中で環境等の自然保護等の関係もあって、伐採の制限もある、支出の点では一定の人件費がどうしても必要である。さらにもう一つ、私は国土保全あるいは治山治水という、ある面においては国全体で考えなくちゃならない、そういう分野がいわゆる林野庁の経営の中にもかなり含まれていると、そういう点もあろうと思います。  そこで、問題は戦後における森林の全体の成長量、それから全体のずっと蓄積量ですね、伐採造林面積と、こういう四つの関係が私は非常に関係があると思うわけです。   〔委員長退席、理事亀井善彰君着席〕 そういう点でこの全体の日本における森林の蓄積の量というものがどういうようになっているか、成長の量がどういうようになっているか、そういう中で伐採造林面積というものがどうなっているか、ごく大まかな傾向でけっこうですが、ちょっとそれを簡単に伺いたいと思います。
  127. 福田省一

    政府委員福田省一君) 日本の全森林の蓄積、約十九億立方メートルというふうになっております。国有林を取り上げますというと、これは四十五年の統計でございますが、八億四千六百万立方、蓄積におきましては、こういうことでございます。成長量におきましては、今度国有林の分だけについて申し上げますけれども、統計上四十三年までしかちょっと手持ちございませんが、成長量は国有林の場合は、四十三年蓄積が八億七千三百万立米で、成長量は一千一百万立方メートル、伐採量は二千一百万立方、かようになっておりまして、成長量よりも伐採量のほうが二倍近くよけいになっております。
  128. 辻一彦

    ○辻一彦君 これは昨年の十月十九日に林政審議会国有林部会に提出された資料ですがね。これは林野庁から出されておりますが、これもちょっと参考にしてみますと、年次のとり方にもいろいろありますが、昭和三十八年から大体四十六年、十年ぐらいを見ると、蓄積量は九千三百万立方メーター減少している、国有林の場合に。これは人工林とかいろいろありますが、九千三百万立方メーター減少している。さらに昭和二十四年のこの最初の年次から四十六年になりますと、この数字は一億一千五十五万立方メートル蓄積量が減少している。大まかに考えて、成長量というものは三十八年から四十六年をとりましても、それほど大きな変化がないということですね、毎年毎年の成長量は。それから、伐採量も、これはここ十年くらいをとると、それほど大きな変化はありませんが、戦後の初期からはかなり大きな伐採が行なわれている。そうすると、成長がそれほど大きな変化がなくして、蓄積量が大きく減っているということは、ある時期において非常に大きな伐採をやったと、こういうふうに私はこの差し引きからなると思うのですが、その点はどうですか。
  129. 福田省一

    政府委員福田省一君) 国有林の蓄積資源の内容でございますけれども、簡単に申し上げますというと、人工林と天然林とに分けまして、天然林は非常に古い林が多うございます。成長がその林分としては、ほとんどとまっていて成長しないという林分が非常に多いわけでございます。それから、人工林のほうは、利用できる四十年以上の林というものは、一割くらいしかございません。逆に、戦後植えた若い林、つまり二十年以下の林が約七割くらいを占めているわけでございます。そういうふうに森林の内容がきわめて不法正と申しますか、法正でないと、不法正と、こう申しておりますけれども、理想的には各齢級の林が全部そろっておればよろしいんですが、そういうアンバランスな状態になっております。それで、いま造林地でない、天然林のほうの成長をしてない林分、これを伐採しまして、切り方は全部皆伐する場合もありますけれども、最近は小面積にしております。あるいは皆伐でなしに、間引きする択伐という方式をとっております。そういう小面積皆伐あるいは択伐をやりまして、そこでこれを成長量の法正の林に切りかえていくわけでございます。そこで、天然林のほうは若返らせる、人工林のほうは、いま申しましたように、非常に四十年生以上の利用できる林と、二十年間の非常に若い林と、間が切れているわけですから、それらを組み合わせて決定するわけでございます。そこで、成長量というのは、これは天然林には簡単に申し上げますとない。造林地のほうは成長量がありますから、成長量のないほうの天然林を切って、そのために成長量以上に切ることになるわけです。先ほど申し上げました二倍、正確に申し上げると一・八倍でございます。成長してない天然林伐採していくために成長量以上に切る。将来は先ほど申し上げました十九億立方メートルという蓄積を五十年くらい先には約二倍近くにふやそうと、こういう、長期計画を持っているわけでございます。
  130. 辻一彦

    ○辻一彦君 人工林と自然林のいろいろな区分けは私はあると思いますが、全体の国有林が持つ森林の蓄積の総体を見れば、戦後一億一千万立方メートルというものが全体として減っているというのは、これは事実ですね。これに比べて、造林はやっているでしょうが、その成長の量というものも、人工林ではかなりな成長はしていると思うのでございますが、しかし、全体としてそれに及ばないという、全体の日本の森林資源というものが蓄積がかなり多く減ってきたと、これが私は、山が荒れていくという、いわゆる言い方はいろいろありますが、また山が荒れていくという一つの表現になるのじゃないか、こういうように思うのですが、この点はどうですか。
  131. 福田省一

    政府委員福田省一君) 確かに御指摘のように蓄積は減っております。しかし、昭和六十年ごろからだんだんにこれはふえていくわけでございます。その理由は先ほど申し上げましたような理由でございます。
  132. 辻一彦

    ○辻一彦君 そこで、六十年からどんどんふえるというお話ですが、蓄積が減って、将来蓄積がふえるためには造林面積を拡大をし、その造林内容というものがよくなって強化しなければいけないと思うのですね。  そこで、私は第二の問題は、それでは現実に今日造林面積はどういうように動いておるか、あるいはその造林の内容というものがどういうようになっているか、この二点について伺っていきたいと思うのです。
  133. 福田省一

    政府委員福田省一君) 確かに御指摘のように伐採したあと造林しませんと、私が申し上げましたような資源内容を倍にするということは、不可能なわけでございます。最近の造林面積の推移でございますが、ただいま手持ちにあります資料で申し上げますと、四十三年からのデータで申し上げます、これはただし、国有林だけを一応拾って申し上げます。皆伐しました面積が八万八千ヘクタール、新植しました面積が七万九千ヘクタール、これは数字少ないのですけれども、この差額というのは林道の敷地とか、あるいは天然更新によるものとか、そういったものでございまして、植えられるところは実は植えているわけでございます。八万八千ヘクタールに対して七万九千ヘクタール、四十四年は九万一千ヘクタールに対して八万五千ヘクタール、四十五年は九万四千ヘクタールに対して八万二千ヘクタール、四十六年は九万一千ヘクタールに対して八万三千ヘクタール、四十七年の予定は、皆伐八万三千ヘクタールに対して新植七万三千ヘクタールと、かようになってきております。この数字の差額は、先ほど申し上げましたように林道敷地とか天然更新等でございます。新植は、伐採しましたあとは必ずいたしております。
  134. 辻一彦

    ○辻一彦君 それは統計上は、いま言われるように私は、そういう数字が出ておると思いますが、具体的に私は、たとえば若干見て回ってきた北陸の実態造林がどのようになっているか、もう少し狭く言えば、福井のいわゆる営林局の管内でどういうようになっているか、このことについて私、若干数字をあげてみたいと思うのです。たとえば伐採造林計画というのが、これはこの間いろいろ聞いてみたのですが、福井の場合に、四十五年は実績で二百九十三ヘクタール、四十六年が二百五十二ヘクタール、四十七年が予定として二百十六ヘクタール、これは伐採ですね、四十八年二百五十六、ずっといって、四十九年二百二十九、五十年二百十五、五十一年二百三十四というふうな、これは若干減っておりますが、あまり大きくは減っていませんね。ところが、造林の面積を見ますと、四十五年の実績は百九十四ヘクタール、去年が百八十二ヘクタール、四十七年、ことしはどんどん落ちて八十四ヘクタール、四十八年が六十二、四十九年六十五、五十年六十五、五十一年六十ヘクタールと、こういう計画が出されているのですが、これを見ると、伐採の量も確かに最近は減少、いろいろな制約の中で減ってはいますが、造林面積は大幅に、三分の一に採来の計画としては、どんどん減っていくのだけれども、これは北陸あるいは福井特有の現象なのかどうなのか、この点はどうですか。
  135. 福田省一

    政府委員福田省一君) 全国的に、御指摘のように伐採が減少いたしたことが一つの原因でございますし、また、最近木材価格の低迷等でいろいろと伐採の意欲がなくなってきている、あるいは造林意欲がなくなったとかあるいは労働力が不足して、また労賃が上がったとか、いろいろの原因で伐採、したがって、また造林の量が減ってまいっておりますけれども、福井県について特に御指摘のように計画が減ってまいっているということは、いま手持ちの資料ではちょっと判断いたしかねますけれども、これは、先生のおっしゃるのは、あるいは全国の平均と比べて特に落ちているというような御指摘でございましょうか。
  136. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、これは五月三十一日に実態を一ぺん知らせてくれというので資料で送ってきておるのですが、伐採造林計画として四十六年度伐採のほうは二百五十二ヘクタールですね、これは実績ですね。四十七年は二百十六ヘクタール、ところが造林のほうは、四十六年が百八十二ヘクタール、四十七年が八十四ヘクタール、こういうように減ってきているのですよ。そして、これは五十一年には、来年からは六十二ヘクタールというようにずっと下がっておりますね、国有林のほうで。福井の、これは一体北陸やああいうところだけなのかどうなのか。
  137. 福田省一

    政府委員福田省一君) その新植面積であるか要更新面積であるか、要更新面積と申しますというと、皆伐して植えるほかに天然更新で抜き切りする場合もございますから、その面積とのかね合いもあろうかと思いますが、これは先生おっしゃるのは皆伐して新植する面積でございましょうか。
  138. 辻一彦

    ○辻一彦君 私もこの文書ですから、その中に、そこの内訳が、いま言われた二点についての内訳がはっきりはしていませんが、わかりますか、そちらのほうで。
  139. 福田省一

    政府委員福田省一君) こちらから差し上げたものに関連があるようですから御説明いたしますけれども、造林面積だけですというと百九十四、百八十二、ずっと、六十と、最後には減ってきております。伐採しました面積は、四十五年二百九十三、四十六年二百五十二、四十七年二百十六、四十八年二百五十六、こういうぐあいになっている。この差額は結局皆伐でなくて択伐と申しますか、そういう天然による更新の面積になるわけでございます。
  140. 辻一彦

    ○辻一彦君 あとは、天然更新というのはあれですか、ほっておけば更新されていく、という、そういう意味ですか。
  141. 福田省一

    政府委員福田省一君) ほっておくわけではございませんで、古い、百年とか二百年たった天然林をそのまま保存しておくということは、非常に、成長がしておりませんし、非常に中が腐ったりなんかして弱い木になっております。で、これをある程度抜き切りするわけでございます、古い弱った木から。そうしますと、自然に種がそこへ落ちて若い木が伸びてくるということになるわけでございます。ほっておくのでなくて、ある程度伐採しまして、種をそこにならせ——日が当たると種がなってきますから、自然に種が落ちて地表でそれが芽が出て林になってくる、これを天然更新と申しております。
  142. 辻一彦

    ○辻一彦君 その説明はそれでいいですが、たとえばその写真にあるように、一千メーター以上に木を植えないというのがありますね、最近、標高一千メーター以上に。だから、この切った上のほうは、いままでは植えられていた木が植えないとか、あるいはなるほどまあ、木が、それは種が落ちて天然にふえるのもあるでしょうが、やはりかなり山の上のほうは、こういう形で切って植林がされていないという状態がいまやっぱりかなりたくさん出ているということは事実なんですね。だから、この一つ一つが私は、これがどういう形の更新であるかということは、全部はまだ詳しくは調べていませんが、しかし、この数字を見ても四十五年が百九十四とすれば五十一年には人工造林が結局六十ヘクタールですね、三分の一に減っていくということだから、これはこれからの、いま山が荒れていると言われ、なるほど造林、これからの木が多くなることによってかなり充実するかもわからないけれども、実際としては、私はこの面積はずっと減っていく、こういう面ももっと一つは強化をすべきでないか、造林面積を拡大すべきでないか、こう思うんですが、どうですか。
  143. 福田省一

    政府委員福田省一君) 福井県におきましては、従来国有林はほとんどございませんで、民有林の保安林を買い上げたものが非常に多くなってきております。したがいまして、この林地に対しまして木を植えなければならぬというところもございます。四十二年度以降この数字を見ましても、新植しました数字は、まあできるだけ予算をつけてふやすようにいたしておりますけれども、保安林の予定地を買い上げたところにつきましては、若干これからも努力していかなきゃならぬ面もある、こういうふうに判断しております。
  144. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ、その保安林の問題は、いま買い上げをやって多少問題がありますが、これはちょっと私、あとに触れたいと思います。  それから、たとえば苗の問題について私は、あとに触れたいんですが、福井県の上庄の苗畑ですね、これは営林署の苗畑ですが、従来百万本苗を育てておったのが、造林面積が大体三分の一近く減ってきたというので、ことしは苗木も四十万本に減っておるわけですね、さし木をしてやっておりますが、減っている。それから、林道につきましても、昭和四十五年がたとえば予算が八千万、四十六年が六千万、四十七年が三千万円というように、この林道にしましても三分の一近く、四十五年、四十六年、四十七年と減っている。私は造林面積がだんだん減っていき、それに従って苗木が減らされ、林道が減らされる。ある面において縮小再生産という方向をたどろうとしておるんじゃないかと思うんですが、その点どうですか。
  145. 福田省一

    政府委員福田省一君) 造林は、先ほど来お話しいたしておりますように、若干ずつ減ってきておりますけれども、林道につきましては、これは基本計画というのがございまして、それに対照いたしますというと、伸び率は少ないんでございますが、これはどんどん伸ばしていかなきゃならぬというふうに考えておるわけでございますが、事実また全国的に見ますれば、程度は低いにしましても伸びてきております。ただ、福井県だけが特に御指摘のように減るということについては、どうも手持ちの資料では、よく十分理解いたしかねますので、なお、詳細に検討をいたしまして、御報告申し上げたいと思います。
  146. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、福井だけの話をしているのじゃないんだけれども、自分で歩いて見た場所は一番よくわかるから例をあげておるんですが、一応念のためにそれは一ぺん調べてみてください。  そこで次に、造林内容がいろいろ手抜き等が行なわれて、いろいろ問題があるんじゃないか、そういう点を感じますので、その点を二つ三つ伺いたいと思うわけです。  で、全体の森林の蓄積量が減る中で、それを回復していくには、一つ造林面積を拡大していくということと、もう一つはせっかく植えた木を十分育つようにしていくという、いわゆる造林内容を向上さすといいますか、保育をよくするというか、こういうことが私は非常に大事だと思うんです。たとえば北海道の例ですが、これは昭和二十三年から四十五年までに、北海道で函館の営林局管内のカラマツ造林実態調査によると、植栽面積が三万三千百七十・二九ヘクタール、四十六年の三月三十一日現在の現存面積が一万九千五十六・二五ヘクタール、差し引き消失面積が一万四千百十四ヘクタールとなっていると、こういうようにこれは函館営林局のほうですね、この資料がありますが、ヘクタール当たりに二千五百本、植えた苗にすると。これは全体では三千五百二十八万五千百本ですか、ということで、苗木代その他を全部計算すると、約十億円の消失が起きているというように計算されていますが、これはどういうようにして起きたのか、あるいはこういうケースが、こういう例がほかにもかなりあるのかどうか、その点はどうですか。
  147. 福田省一

    政府委員福田省一君) 北海道におきましては、天然林、つまりエゾマツ、トドマツの生えておる、あるいは広葉樹林を伐採しまして、この地には一番適当であろうというふうに考えましたカラマツが御指摘のように多いわけでございます。で、カラマツの先枯れ病によって造林地が不成績造林地がありまして、改植——別の木を植える——改植したようなところが非常にございます。最近はいろいろと先枯れ病につきましては、研究いたしまして、これの発生するところは少なくなってきておりますが、なお、またカラマツ一点張りでなくて、やはり従来の郷土樹種であったエゾマツのようなもの、またトドマツのようなものも植栽するということもあわせて、カラマツだけということじゃなしに、そういった樹種もいろいろと対策を講じて、最近は造林地が悪くなったというようなことはだいぶ少なくなってきているわけでございます。その一つの例といたしまして、木を植えたあと、翌年見回りますと幾らか枯れております。枯れておるところへ苗木をまた新しく植えます。これをまあ補植ということで、先生承知かと思いますが、この補植率がちょうど十年ぐらい前を見ますと、昭和三十七年には一二%ぐらい実は補植しておったものでございます、全国で。それが昭和四十五年三・九%、まあ四%、ですから約三分の一ぐらいに減って、非常にそういう枯れるのが少なくなってきたというふうな状態になってきております。
  148. 辻一彦

    ○辻一彦君 その先枯れとか、そういう病気によって、最近新しいやり方に変わってきたとかりにすれば、この安い樹種による、選木といいますか、そういうものを誤ったとか、あるいは植えるときに地ごしらえをやるとかあるいは植えつけをしてから下刈りをやるとか、こういういろいろ作業があるわけですが、そういうものが非常に十分でなかったために、そういう大きな面積の消失が起こった、そういう点はないんですか。それは単なる病気によってやむを得なかったというのか、その点どうです。
  149. 福田省一

    政府委員福田省一君) 御指摘の植えたあとの手入れ、これは刈り払ったりあるいは病気がついたり虫がついたりしたときに、それを薬剤で処理したりというような、そういう保護の仕事、そういう関係の保育の仕事につきましては、昭和四十三年度には六十九億九千九百万、一々申し上げると繁雑ですから、四十七年度には九十九億六千六百万というふうにずっとふえてきております。それから保護の関係の経費につきましては、四十三年が十四億七千五百万、四十六年度は十七億四千四百万、こういうぐあいに、新植面積がそう伸びない割りには保育なり保護の経費がふえてまいっておりますので、その点についての管理は、必ずしも不足だったというふうには考えていないわけでございます。
  150. 辻一彦

    ○辻一彦君 私はいま北海道のそこを歩いたわけではないので、北海道の面についてはそれ以上触れませんが、福井でいろいろ調べた例によると、それほど保育の経費が向上し、十分な保育が、あるいは植えつけ等の準備がなされているというようにはどうも思えない節がある。で、それを二、三申し上げたいと思うんです。これは写真を見ればわかりますけれども、こちらは地ごしらえをせずに大体やっているところ、こちらは、この写真、こちらのほうは地ごしらえやってますね。そこで、最近植えている国有林の中で、地ごしらえ等がなされていない、そういうことで不十分である。こういう点から枯死をしている例というのがかなりあります。たとえば、これは大阪営林局の管内の今庄というところになりますね。ここは四万二千町歩か国有林に買い上げておりますが、そういう地帯でありますが、昭和四十五年に植えつけをしたたとえば一万四千五百本のうちに八千九百九十本が枯れて六二%の枯損率、こういうようになっている。これは十分調査をしたものであるから間違いはないといって、これは知らせてきておりますが、私もこの前行って、聞いた話ではいけないからパーセントをはっきり出して知らせてくれと、こういった数字です。普通ならば大体七%くらいの枯損率だと、こういわれるのが六二%というのはあまりにも大きいと、こういうことでいろいろ聞き合わせてみると、苗がひとつはよくなかったという点もあるし、それから地ごしらえですね、こういうものが非常に不十分であったと、こういうことを私は聞いておるわけです。そこで、いま言われるように保育や植えつけの地ごしらえ、こういう面にいままでにもかなり手が回ってかなりのことがやられているのだということと、現場における実態はどうも食い違うように私は思うのです。たとえば、こういう山で働いている人の職場の新聞ですね、ある女の方がこういう投稿をいたしております。参考にちょっと読んでみます。「″林業危機を救おう″」というので、これは名田庄班のかねこさんという女の方が「みどりの山」というので投稿しておりますね、「さあ、来月より入山だ、希望にふくらんで出発したい……今年の様な暖冬異変の年でも″杉の子″よお前の面倒をみてやれなかった。お前も他なみに成長したいだろう、お前も話せたら黙っていないだろうね。こうつぶやかずにはいられない、今年はぜひ常用を勝ちとりお前の面倒をみてやりたい。林野庁がすすめている機構改革を含む超大型合理化に」は、これは賛成ができない云々とありますが、「森林という自然を扱う産業のくせに今では自然を無視しています。国有林は予算の範囲内で仕事を消化しています。民間の山は手入れがゆき届いて見事に成林しています。私達労働者は苦しい作業条件の中でも一生懸命に山を愛し育ててきたのです。このままでは造林地がダメになってしまいます。山の緑を回復し国民の山が守りたい。私達は誠意を持ち木材不況から立上りたりと念願」しています。がっちりと一緒に力を合わしてがんばりましょうと、こうありますが、私は話も聞きましたが、昔は国有林が一番りっぱでその次が官行林ですね、市町村と一緒にやっているところですね。その三つ目が民有林と、こう言われたのが、いまは順序が逆になって、民有林の手入れがきれいになって、そして国有林が二番目、官行造林は残念ながら一番あとになっていると、こういうことをよく聞きますが、こういう実態を私は現場で聞くと、長官の言われるように保育やあるいは植えつけにかなりな手当てをして向上しているというお話と、この間の実態はかなり食い違うように思うのです。この枯損率を見て、その点いかがですか。
  151. 福田省一

    政府委員福田省一君) これは、私、統計上の数字を申し上げたものでございまして、これで全山すべてがよくいっているというふうに言い切るものじゃございませんけれども、まあ、場所によってはいろいろと施業の方法を誤って活着率が悪くなったりすることもございましょう。たとえば過去におきましては、先ほど補植のお話をいたしましたけれども、比較的被害が大きくて、これを改植したという場所もございまして、先ほどの例をさらに改植の例で申し上げますというと、三十六年度には九・四%、約一割くらいはだめになって、造林地が、改植しておったわけです。それが最近の例を申し上げますと、四十三年には五・九%、四十四年は三・六%、四十五年は三・四%というぐあいに約三分の一ぐらいに改植面積は減ってきております。これは全国の平均値でございますから、御指摘のようなところが局部的にはあるかと思います。ですから、逆にいいところもあるわけです。いいところと悪いところと平均値がいま私がお話した点でございまして、御指摘のような場所については、やはりこれはほっとかずに速急に改植なり、そういった措置を講じてまいりたい、こう思うわけでございます。
  152. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ悪いことばかりさがしてきて申し上げているように受け取れるかもわかりませんが、これは一般的にいま問題になっていることを私は言っているわけですから、何も特別なところを拾い出している話では私はないと思う。  そこで、林野庁のほうで出しておられる広報誌の中に、造林地の再更新にあたって「無地ごしらえのまま、植栽できる所も相当あるのではないか」と、こういうことで現場の切実な声に当局のほうは「地ごしらえの精粗が植付、保育の二種に大きく影響することは少なく、心配はいらない」と、こういってはねつけている。現場の人たちは、地ごしらえをしっかりやらないとどうも心配だと。これに対してそんな心配はないと言う、こういうことが出ておりますが、それが特殊な私は例だというふうには、全国的に見た場合に、必ずしも言い切れない。やはり地ごしらえの精粗というのは、非常に大事じゃないかと思うのですが、こういう見解をいまでもずっと持っておられるのか、その点どうですか。
  153. 福田省一

    政府委員福田省一君) 過去におきましては、この地ごしらえを例にとりますと、いろいろ変遷がございます。全山きれいに皆伐した場所につきましては、生えている雑木とか草類は全部きれいに刈り取りまして、じゅたんのようなかっこうにする、そこに苗木を植えるということが奨励されたこともございます。そういたしますというと、いろいろと被害にかかりやすい。たとえば特に気象の害でございます、干害——乾燥の害にかかるとか、あるいは寒さの害にかかるとかいう気象の害を受けやすいということもございまして、最近ではこの地ごしらえの方法にいろいろな方法を取り入れております。それは現地現地の実態に即応して判断していく、そういうことが一つの技術的な問題でございます。たとえば全面積地ごしらえします場合に、内訳としては、巻き落とし地ごしらえとか、筋置きに地ごしらえをするとか、それから肥料をばらばらと散布しながら地ごしらえをする、あるいは除草剤を使うとか、同じ一つの地ごしらえにしましても、全面積をやる場合にはそういう方法もございます。それから、今度は全面積でなしに、筋刈りにいろいろ地ごしらえをする、あるいは坪刈りに地ごしらえをするとか、あるいは階段状に地ごしらえをするとかいうふうな方法をとったりいたします。やはり場所の地形なり気候なり土壌なりということを総合判断しまして、どういう地ごしらえのしかたが一番よろしいかということをいたすわけであります。なおまた、やり方としましては、木を伐倒する前に地ごしらえをしてしまう、そうしますと伐倒するときには非常に作業がしやすいし、安全であるということで、伐採前に地ごしらえする、あるいはまた伐採と地ごしらえを同時にやる、   〔理事亀井善彰君退席、委員長着席〕 さっき川内の例で問題になりましたそういう混合契約の方式、同時に地ごしらえする、あるいは伐採したあとで地ごしらえをする、これは地ごしらえの例で申し上げましたけれども、一律にきれいにやらず場所場所の実態に応じてそこに適した一番いい方法をとっていく、そのほうがまた経済的である、こういう判断で、やり方につきましては具体的にそれぞれの地区でやっておるわけでございます。
  154. 辻一彦

    ○辻一彦君 非常に技術的になれば私は、なかなか詳しくはわかりません。しかし、どうも現場で私らが実感することは、赤字が出る、だから合理化をやらなければいけない、そうしてそのしわ寄せというものが一定の造林面積はどうしても確保しなきゃいかない。そうなると、なるべく手抜きというか、あるいは手のかからないようにする、こういうことですね。いま御説明のあったような、いろんな理論といいますか、この理由というものがあると思いますが、地ごしらえ等が非常に簡素化、簡略化されてくる、そういう傾向がどうもあるように私は感じたわけなんです。そこで、これは下刈りについても私は、同じようなことが言えるのじゃないかと思うのです。なるほど太陽が、光線の照度七〇%というような、いろいろな論理によって除草下刈りというものがいろいろやられておるようですね。いままで一ヘクタール十人の労力が要ったものが、五人を割るという状況になっている。しかし、こういう状況の中で、現地では七、八月、下刈りの非常に大事な時期に人数が制限されて臨時の人が入れられない、そのために夏のピークがどうしてもまかない切れずに手抜きになって、そういうことが保育の上に大きい影響を与えている。たとえば、そこにあるように、それは地ごしらえの問題もありますが、そういうあとの下刈り等が不十分であったために、手入れができずに、せっかく植えた木が枯れていくという。だから、二分の一経費を節約すれば、二分の一のこの効果、二分の一の効果で済むかというと、二分の一の経費を節約すれば四分の一に結果はなり、あるいはゼロになる場合もあると思うのですが、そういう面の下刈り等において、やはりそういう手抜きというか、あるいは十分な手入れができないために、せっかく植えた木が枯れていって成林に達しない、そういう傾向がかなりあると思うのです。その点はどうですか。
  155. 福田省一

    政府委員福田省一君) なかなかきびしい追及であれですけれども、やはり先生のおっしゃるような見方も出てくると思います。特に四十七年度の予算編成は、先ほど御指摘ございましたように、百億のマイナスになっておる、こういう特別会計の状態でございます。したがって、この経費がかかる仕事はなるべく経費のかからぬように、経費のかからぬようにということは、技術的に検討したのではなくて、おっしゃるように手抜きの状態で安く仕上げるのだということがあったんでは大問題ですし、したがいまして、今後の特別会計の持っていき方としましては、いま林政審議会におきまして検討願っているところでございますが、木材の売り払い代金ですべての仕事をやっていくということは不可能でございます。ただ、この事業の経営というものは、徹底した合理化をした上でなけりゃなりませんけれども、そういう前提の上で造林事業なり、あるいは林道事業なり、治山事業なりというものについては、やはり私から申し上げるのはまだ早いとは思いますけれども、一般会計の負担をお願いしなければならないというふうになると思います。そういう意味で、私は、先生指摘のように手抜きのないような、技術的にほんとうに良心的な意味におきまして、コストのかからぬように、コストのかからぬようにということは、国民の皆さんの財産でございますから、そんな民間の仕事に比べて能率の悪い仕事しているわけにまいりません。やはりそれは労働力の向上とか、あるいは賃金水準とか、そういうことの雇用の安定を考えた上で、やはり特別会計制度だけでは、従来の木材の収入だけで一切まかなうということはむずかしいと思っております。くどいようですが、合理化あるいは近代化を前提として、しかも労働力の安定等を条件にして、限度がございますから、いま申し上げた公益的仕事、治山なり造林なり林道等につきましては、一般会計の負担をお願いすべきじゃなかろうかと、かように考えております。そういう意味で、四十八年度からは抜本的な国有林の、いまおっしゃる特別会計制度のことも含めまして、抜本的な改善案というものを林政審議会で検討していただいておりまして、四十八年度から実施に入らざるを得ない状況で、もうすでに要求案がございますので、そういうことで努力してまいりたいと思います。
  156. 辻一彦

    ○辻一彦君 それはなかなか重大な御発言ですが、言われるように、私はせっかく木を植える、それが植えるときも手抜きがなされ、それからそれを植えたあとも十分保育ができない。そうすれば、せっかくの国の経費をかけて、それがむだになるということは、これはたいへんなことだし、ましてこれから全体の森林蓄積量が落ちている中で、これをふやしていかなければならぬとすれば、こういう点は手抜かりがあってはならないと思うわけですね。そういう点で、現場にはそういう傾向、現象が非常に私は出ておるわけですが、それを何とか変えなければならぬという長官の御発言ですが、この点について大臣どうお考えか、この点、ひとつお伺いいたしたいと思うのです。  大臣は、木を切らぬばかに植えぬばかと言って、そういうたいへん名言を前に言われたことを聞いておるのですが、そのとおりですが、せっかく植えた木が枯れたりしてだめになっていく、これは私は見捨ててはおけないと思うのですが、この点はひとつ林野庁の全体の日本の林業政策と、こういう観点からもどうお考えになるか、大臣のひとつ御見解を伺いたいと思います。
  157. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 農業全体がそうですが、なかなかいわゆる合理化の線に乗りにくいところがあるわけだと思います。林業などでも、伐木とか伐採とか除草とか、相当機械化するとか、あるいはまた薬でもってやるとか、合理化していかなくてはならないし、そこに非常に進まれて、相当合理化していいのでございますが、何としてでも、これは農業全体が種をまいてそれを育てる、あるいは林業などは苗木を育てていく、こういうことですから、工業政策みたいに簡単にいきません。それを合理化していかなくちゃならぬ。その合理化する財源が、これはやはり伐採した木でもってやっていく、こういう独立採算的なやり方というものは、非常に林野庁当局も苦心していますが、なかなかむずかしい点があって、いろいろ御指摘を受けるようなへまというか、国民の財産の管理に十分でないという点があると思います。そういう点におきまして、私は、この森林というものは公益的機能が主であって、公益優先であると私は思うのです、こういう時代にはなおさら。そういう意味におきますと、独立採算的に森林の伐採の費用をもって極力やるが、しかし、その極力やってもなかなか行き届かない点、こういう点は、やはり一般会計から繰り入れというようなことでやっていきませんと、森林の善良なる管理者としての林野庁当局も、十分その職責を果たし得ない、国民にも申しわけない、こういうふうに私は考えています。だから、みんな一般会計だけに頼るというわけじゃないが、それもいけないと思います。十分独立採算というような面で進めていくべきですが、しかし、これは限度があるといいますか、それだけでやれということでは、ほんとうによく森林の育成、保全というのができないのじゃないか、そういうふうに私は考えています。
  158. 辻一彦

    ○辻一彦君 いまの御発言のように、私は合理化ということをそこに働く労働者や職員ですね、そういう方面にだけ押しつけていくようなやり方はこれは誤りであって、全体の私はこの林業政策というものは、もっとワクをかなり広げた中で考えるべきである。いま大臣の答弁のように、長官のお考えのように、大事な問題をひとつ考えてもらいたいと思うのです。  そこで、先ほど触れました官行造林事業、これも私は、福井の営林署管内で聞いてみると、調べてみると、市町村と約束をして国が一緒に協力をして山に植えて大きくするのですが、十年間にこの管内で二千八百二十一万五千円の予算が要る、少なくも。年間二百八十二万はどうしても必要だという、こういう計算の中で、計画の中で四十六年度は実行予算五十万円、四十七年度は六十一万円、大体これでは二〇%ですね、必要とされるものの二〇%。そこで、この官行造林あとの保育の中で、一緒にやってきた地元の市町村から非常に強い非難を受けている。これは私は、国の信用にも関すると思いますが、一番前は、先ほど言いましたが、順番は、りっぱなものは国有林、その次が官行造林、民有林と、こういう順序が、いまは逆転して、民有林がきれいになっておる、国有林がまあまあかろうじて、その次、官行造林が一番しわ寄せを食って一番被害を受けている、様子がよくない、こう言われておりますが、これはひとつ実態は全般的に見てどうなのか、あるいはこれに対してどういう対策ということを考えているか、時間の点もありますから、簡単でけっこうですが、長官からどうぞ。
  159. 福田省一

    政府委員福田省一君) 造林地につきましては、ただいまのところでは、昭和三十年ぐらいまではありましたけれども、国有林の場合も、民有林の場合も、官行造林につきましても、三十年を契機として大体もう未立木地は、切ったあと植えないということはございません。すべて植えておりますけれども、ただ、先ほど来御指摘のように、手入れが不十分のために、ある程度枯れたとか、つまり補植をしなければならぬ場所、改植をしなければならぬ場所、そういうところも出ておったのでございますけれども、それも説明しましたように、だんだんとその率は下がってきております。全般的に見まして、国有林も、民有林も、あるいは官行造林地につきましても、だんだんとよくなってきておると実は判断しておるのでございますけれども、三つを並べたデータはいまここに持ってきておりませんので、場合によっては調べまして御説明いたします。ただ、私は、国有林の伐採につきましては、従来のような能率第一主義の大面積皆伐、これはもうやめるべきであるということで、この二月以来そういう方向に転向さしております。切ります場合についても、限度は二十ヘクタール、しかも、その周囲には天然林を残す、それから択伐林、禁伐林をそのかわりふやす。特に鉱山地帯は禁伐林にするという方針に切りかえまして、なるべく、また林道をつくる場合にも、従来のように安上がり一点ばりでなくて、土砂の崩壊を起こすような、土捨て等には十分注意するというふうな指導方針も徐々に固めてまいる考えでございます。そういうふうなことで、森林の公益的な機能に対する要請がきわめて強い現状でございますので、これらの要請を受けまして、森林経営は、ただ単に能率一点ばりでなくて、能率も大事ではございますけれども、そういう公益的な機能を重視した森林経営に本来の姿に立ち戻っていくということが一番大事である、かように考えておるわけでございます。
  160. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、幾つか問題がありますが、全体の時間もありますから、最後苗木の問題に触れてみたいと思うのです。ちょっとこれを見てください。国有林における苗木の問題というものが非常に大事だということは、これは論をまたぬと思います。山は五十年とか百年のサイクルと言われますので、ほかの苗なら一、二年で、食べものなら成績が悪ければ、これは変えるということもできますが、一たん山に植えた木は、十年とか十五年たたないとなかなかいい、悪いということがはっきりしない。こういうことで、いかにりっぱな苗をしっかり植えるかということが、たいへん大事だと思います。  そこで、青森の営林局内に三千二百万本の苗の床がえがことし必要なのが、予算が制約されて千二百万本がどうしてもやれない。だから、六百万本は捨てて、あと六百万本は間引きした残りをそのまま育てる、こういうふうにしてせっかくつくられた苗が廃棄をされている、あるいは二千町歩から造林面積が去年より減ったために三百五十万本の苗が要らない、こういうことで、学校やそこらで植林をしてくれ、こういうことでやっている。こういうことを聞きますが、私は、これを見るとこの非常に大事な国のお金というものが、むだに使われているように思いますが、その実態を簡単にまず報告してもらいたいと思います。
  161. 福田省一

    政府委員福田省一君) 先般、新聞紙上等でも、青森の営林局で管内の苗木がだいぶ捨てられた、こういう報道があったのでございますが、調べてみましたところ、杉の一年生苗木、御指摘の三千二百五十三万七千本でございます。これは毛苗でございまして、多年生苗で一年たったばかりの毛苗でございます。毛苗をこのうちから百七万三千本希望者に売っております。それから、残りの三千百四十六万四千本、これは床がえをしましたのが三千一百万のうち二千三十六万三千本、その残りの一千百十万一千本、これは、この内訳は据え置いたものが六百万本でございます。残りの五百万本というものは、間引いたものでございます。つまり従来は、一割とかそこいらくらい種をまいた後に、毛苗は間引くわけでございます。大根とかほかの野菜類を間引くと同じ考え方でございます。あといい苗をつくるために、ちょっと形の悪い、色の悪いそういう毛苗は、抜いて捨てるわけでございます。それが従来は、一割とかちょっとなんですけれども、今回は御指摘のように、造林面積をずっと減らしたわけでございますから、そこで、毛苗の間引き率を少し強くしたわけでございます。ちょっと詭弁に聞こえるかもしれませんですけれども、毛苗でございますから、まあ間引くのは一割以上やっちゃいかぬとか、まあ二割以上やっちゃいかぬということでもありませんので、たまたまそういう考え方で毛苗を少しよけい間引いて、逆に言えばいい苗を少し残したという形になったものでございます。ただ、床がえをしました苗木、つまり山出しの苗木、これは全部翌年春植えとか秋植えに使うということで、これは拾てたものはございません。ただ、緑化事業用としまして、従来学校なりその他公共団体等に苗木を緑化運動の一環として寄贈しております。これは、ことしばかりでなくて、毎年やっておるものでございまして、特に余ったからくれてやったというものではございません。  結論的に申し上げますというと、間引く苗を少し多くやったということがあのように報道されたものでございます。
  162. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ、間引くのも、一割間引くのが普通ならば、一割一分というならわかるけれども、まあ、これ二割ほどの間引きになりますからね。倍も間引いて、間引きをちょっときつくしたというのもどうかと思いますが、大体五、六百万本間引いた場合に起こる損失というのは、たとえば、さし木なんかにすると一本一円ほどのところでそれを買い集めて、で、業者から買うと一円五十銭くらいにつくだろうけれども、無償でやった場合、六百万本ほど間引いた場合に、どのくらいの損失になりますか。
  163. 福田省一

    政府委員福田省一君) ちょっとお待ちください。——毛苗一本大体三十銭だそうでございますから、百万本として三十万円くらい。これをまあ床がえして山へ出したほうがいいのか、あるいは間引いたらいいのか。これは正確に言えば、原価計算等しまして比較して、有利なほうをとるべきだということになるかもしれません。まあ、報告によりますとそういうことで、間引きを少し強くしている、こういうことでございます。
  164. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃあ三百五十万本の山出し苗については、それは全部保管をされて、一部は緑化運動週間等に使っているけれども、あとは全部これは山に出す計画でやっているわけですね。  じゃあ続いて、私はこの苗木についてちょっと具体的な問題になるのですが、そこにいま写真を出したんですが、これは苗木の、私は、質が非常に大事だという問題、そういうものを民苗等にまかしていいかという問題を若干質問したいと思うんです。  実生苗と、杉の場合に、さし木の苗が全国にあります。先ほどちょっと聞いたんでありますが、実生とさし木の割合は、全国で言うと、八割と二割というようにちょっと聞きましたが、いずれにしても、実生のやり方とさし木のやり方、さし木の場合は、これは私は地域的に言うと、かなり雨が多いとか、活着のしやすい、そういう場所でとられておると思うんです。  その写真は、大阪の営林局の福井の上庄の苗畑の、この間私、見てまいりました例ですが、ここではさし木をやっております。毎年百万本苗を育てている。ことしは造林面積が三分の一に大体減ってきたので、四十万本に減ったと、こういうことでありました。そこで、その写真にあるように、りっぱな苗畑が空白で畑のままになってあいている。これは茶色のところでありますから、ごらんになればわかると思います。そのときに、こういうことを現地で働く人が言っておったんです。りっぱな苗をとるためには、やはり非常な苦労があると。そこで、たとえば上庄の苗畑では、北陸三県等におけるりっぱな、いい杉ですね、杉の穂をとって、よく選抜して穂をとって、それを苗床にさして、そこに写真がありますが、全部大きなたなに番号札をつけて、そして悪いやつを全部、それは間引きですよね。意味が違いますが、間引いて厳選したのを番号札をつけて、それを大きくして、最良穂としてこれをずっと植えて、そこから、十年ぐらいたてば、大体百本ぐらいの芽がとれる、一本の木から、種木からですね。それを植えて、百万本の苗をいままでずっと育てておったわけですね。  それから、そこのほうにもう一枚の、何枚かの写真がありますが、これは同じく大野上庄の苗畑で、山のかなり入ったところですね、車で三十分ぐらい入ったところを見ましたが、三ヘクタール採穂園をつくっております。これは北陸じゅうの一番よい杉、石徹白の杉から立山の杉だとか、あるいは福井でいえば池田杉というようにいろいろな杉がありますが、そういうところからとった種を、これを鳥取の関西の育種場に送って、ここでいろいろ育てて、厳選をして、再びそれを送り返して、そして三町歩山を開いたそこに苗を植えて、何十年かたって、いまようやく採穂園として初めてことし七千本のさし木用の穂をとることができたと、こう言っておりますね。これは将来二百五十万本から三百万本の苗をこの三ヘクタールの採穂園からとることができる。そこで、これだけ厳選して育てた木だから、ここからとった穂を、それをさし木にするのは間違いのない苗ができると。こういうことで、自分たちは自信を持っておるんだと。  ところが、最近、林政審議会等においても、造林面積が減る中で苗が減らされていく。そういう中で、将来こういう苗畑あるいは採穂園、こういうものを廃止をして、民苗、民間のほうに移そうというような方向が論議をされている。こういうことを非常にそこで心配をしておりましたが、将来こういう、いままで営林署がやっている苗畑、こういうものを拡充していく方向なのか、あるいはこれを民営といいますか、民間のほうに移していく考えなのか、その点はどうですか。
  165. 福田省一

    政府委員福田省一君) いまお話のございましたそういう優良なさし穂を養成するための採種園のようなもの、これはいま先生はさし木の例をおっしゃいましたけれども、種から育てる苗につきましても同じでございまして、山のいい木から、それを母樹としまして、そこからいい種を一とってきて、やはり苗を育てまして、それを早く実らせまして、それから種をとるというふうなこともやっております。要するに、実生の苗とさし木苗と両方からいい苗をつくっていくということで考えておるわけでございます。そういう仕事をする、育種の仕事については、これは廃止することは考えておりません。
  166. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、苗を育てることですよ、育種……。
  167. 福田省一

    政府委員福田省一君) いまおっしゃったのは、そういう一つの……
  168. 辻一彦

    ○辻一彦君 百万本とか二百万本、苗を育てる——。
  169. 福田省一

    政府委員福田省一君) そういう苗木をつくる育種業務のようなもの、ただ、これは数が非常に分散しておりますので、ある程度まとめたほうがいいじゃないかどうかということについての検討はしております。ただ、単純に廃止してしまうということについては考えておりません。
  170. 辻一彦

    ○辻一彦君 そこで、そういういい苗を育てる場所は、これは充実していかなくちゃならないと、こういうふうな御答弁と伺いました。  そこで、ところが、これは私も一、二の県を歩いてみたんですが、やはりこういうところで民苗をですね、民間で苗をつくっておるところが、それぞれ民間でやっているのがあります。そこで非常に良心的な民間の方は、長年杉苗を育てておると、お得意さんがきまっておって、まあ二万五千本ぐらい毎年苗を育てる。あそこの苗ならば心配がないというんで、もう全国にそういう得意があって、そこから申し入れがあるんで、しかし、そのためには、その信頼にこたえるために十分努力してやっていると、こういうこともあるんですね。しかし、どうも大量にいま苗を育てる場合、一本一円でこのさし木というか、穂を集めて、そうしてそれをさし木をする業者に送って苗を育てるとか、あるいはそこでやるとか、こういうケースがあるようなんです。そこで、その場合に、一日に大体二、三千本の穂を、さし木の穂をとることができ、それを一本一円で買い集めるわけですね。  そこで、どういうところで、そういう苗を、穂をとっておるかということが問題なんですね。山の奥へ行って、非常にりっぱな木から、これは穂をとって、そうして集めてさし木をする、あるいはさし木をする業者に送るというならば、これはけっこうなんですね。しかし、なかなかりっぱな木は、上に上がるんだってたいへんだから、そう簡単にとれないという問題があります。それから、木の樹齢が長くなると、発穂率が、芽が悪くなる危険がありますね。そこで、一番とりやすい、集めやすい方法というのは、極端に言うと、墓場にも杉がある。そういう杉の芽を刈っても一向に変わりはないということになりますし、それから雪で木が折れる、折れたところから芽を吹く。これは自然の摂理で、そういうところから出る芽は再生力が非常に強いから、それをとってさすと、非常に発穂率が高い。こういうことで、いわゆる一本一円という中で、広範なところから杉の苗が、穂が集められて、これがさし木になって、苗になっていく。しかし、その苗はね、その苗だけを見る限りにおいてはわりと生育がよくて、元気がいい。こういう苗が植えられたときに、山は五十年、百年の大計というけれども、普通の農産物ならば、一、二年たって成績が悪ければ、すぐ信用がなくなって、わかりますけれども、これはこういう木が山に植えられて、その成果がわかるのは十年とか十五年たって、しんがとまるとか、いろいろなことができたときになって、これはいい苗であったか悪い苗であったかということがわかると思うんですね。そうなると、私はこういう苗を育てるということは、山五十年、百年の大計の一番根本になると思うんですよ。  だから、そういうような苗を育てるためには、これは民間で良心的な人がやるのなら、それはけっこうだけれども、やはり営林署林野庁が直営直用によってこういうりっぱな苗を育てて、日本の治山治水の百年の大計を立てなければならぬと思うんですが、この点について長官と大臣の見解を伺いたいと思います。
  171. 福田省一

    政府委員福田省一君) これは、御指摘のように、木は五十年なり百年なり長い年月を要してようやく成林するものでございます。ですから、さし木苗であれ、あるいは種子であれ、これを選ぶことが一番大事な問題であることは、御指摘のとおりであると思います。したがいまして、種苗法も改正いたしまして、ここからとりますところの、将来種子なり、あるいはさし木なりにつきましては、必ず母樹林のいいところからとるというたてまえにいたしております。これの販売等につきましても、これは制限しておるわけでございまして、必ずどこからとったもので、どういう種子系統のものであるかということを表示しなければならないというたてまえにしているわけでございます。  一方、国有林のほうにつきましてもやはりそういった趣旨から、古くから母樹林を指定しまして、そこからとった種子あるいはさし木というものを使っておるわけでございますけれども、民間におきますところの有名林用地の中にもやはり国有林にはないいい種子がございますから、そういうものもあわせてやはり経営していかなければならない、見ていかなければならない、たとえばクマ杉とかヨシノ杉とか、そういう系統のはっきりしているものもございますし、そういうものを考えますと、国有林の中だけにいい木があるのではなくて、そういう民有地等にありますところのいい林の種子とあるいはさし木をどう組み合わせていくか、実は育種の事業につきましては、特別会計にしたらいいか、あるいは一般会計にしたらいいか、いろいろと議論のあるところでございまして、先生のおっしゃる点を十分考えまして、いい方向を打ち出していきたい、かように考えております。
  172. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、民間がしっかりやってもらうことを否定するわけじゃないのです、それも大事だと思うのですよ。しかし、苗の重要さを考える場合には、やはり国がしっかりした苗をつくる、まずそれをもとに置いて民間も大いにやってもらう、こういう体制を私はとらなくてはならぬじゃないか。そういう意味で、これだけの苗圃を持ち、苗を育てている、そういうところでやはり直営直用による苗をしっかり育てていく、そういう方向が大事だと、こういうことを私はもう一度強調しているのですが、そういう点、農林大臣御見解いかがですか。私は林業種苗法のたてまえはわかりますよ、たてまえは。しかし、これはなかなかたてまえどおり全部がいけば問題はないけれども、なかなかいかない中で国がやはり大事な役割りをになってもらうということが大事だ、そういう意味における苗における直営直用の重要性を私は指摘しているのですが、この点大臣いかがですか。
  173. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 私もかつて沼津なんかの種苗育成場見ました。なかなかよくやって、技術的というか学問的に研究して実際にやっているところもございました。また、お話のように民間で専門的にそういうことをやっている人もあるわけでございますから、一方的にだけはきめられないのじゃないか、こう思います。造林のためにいい苗、いい種苗などを国としてはつくり、あるいは選択して、そうして造林をしていくということじゃないかと、こう私は考えます。
  174. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ、少なくも苗の育種、育苗ですね、こういうものについてはやはり国がしっかりとやっていきたいと、こういうことですね。  これでもう終わりますが、最後にそこに渡した写真に、その苗畑に二十二人の女の人が働いております写真がありますが、この人たちの声を聞きましたら、ここの苗畑に仕事に出てから、娘さんのときからあるいは嫁さんに行ってから最低十二年、最高三十七年間ここに二十二人の人が働いている。これで、愛情をもってこの苗を自信をもって育ててきたのだ、こういう仕事がぜひひとつ続くようにしたいのだ、こういうように非常に働く人の率直な声がありました。このことをひとつ伝えまして、私は現場で働く人が意欲をもって十分に、がんばってやれるようなそういう条件を国でぜひつくっていただきたい、こういうことをひとつ要望して私の質問を終わります。
  175. 前川旦

    ○前川旦君 先ほど私のお約束しました持ち時間があと十分ほどございますので、最後に大臣にお尋ねをしたり、それについて私の意見を申し上げたりしたいと思います。  この一月間に衆参両院の委員会でこの林野行政のいろいろな問題が出ました。数からいって十七ぐらい出ました。おそらく大臣も林野庁長官もうんざりなさったのじゃないかと思います。実際は、ほんとうに実態を探っていくと、まだまだたくさんの問題があると思うのです、まだまだたくさんの問題があると思いますが、この国有林、特に、山を守ろうというのは今日非常に大きな世論にもなっておりますし、こういう疑いのある事件がたくさん出てくる、まだ調査中のものもあります、その際に、ただくさいものにふたをせよということではなくて、やはり率直にそのまま悪いことがあれば悪いことを認めて、その次にそういうことがないように前向きにいくというそういう姿勢を私は貫いていただきたい、こう思います。これは特に私は要望したいと思います。  それから、林野庁そのものも、山が荒れているということはテレビでも取り上げられ、新聞の投書でもたくさん書かれ、ずいぶんいま世論の大きな問題になっています。こういうところですから、林野庁もどうぞひとつえりを正して、真剣に林野行政というものを、山を守るということに真剣に取り組んでいただきたいということも強く要望をしておきたいと思います。  それから、この審議を通じましてやはり一つの焦点として直営直用ということがいろいろ問題になりました。この問題は、大事な問題ですから、私どももいろいろ問題にしていたわけです。たとえば、民間の請負に出すといっても、それは林野庁にいろいろ、末端ではいろいろ問題があるかもしれないけれども、圧倒的多数の職員は、それこそほんとうに山を愛して自己犠牲でやっておる人がたくさんいるわけです。ですから、そういう点では林野庁の末端の職員に対してわれわれは非常な信頼感を持っている、それを妙なところで妙な、採算だ採算だということで請負にどんどん出していって、いろいろ例をあげました、いままでに。山が荒らされるということを私どもほんとうに真剣にこれは心配をいたします。ですから、特に最近では中小の木材業者の間でも、木はもう丸太にしたやつがほしいと、立ち木で買うのじゃなくて、もう丸太にしたやつがほしいという声が強くなっているということも聞きます。これは労働力の関係やそれから資金の関係で。ですから、造林のような大事なもの、あるいは丸太生産、素材生産のような大事なものはやはりこれは信頼できる林野庁職員の手でやってもらいたい、あなた方しっかり監督してやってもらいたい、これはわれわれの偽らざる強い要望です。  そういうこと、いろいろ申し上げたいことがありますけれども、そういうこと、私の申し上げました意見をお聞きになって大臣として、あるいは林野庁長官としての御見解なり御決意を最後に承りたい、このように思います。
  176. 福田省一

    政府委員福田省一君) 御指摘のございましたように、特に国有林の経営につきましては、長い歴史の背景がございます。特に、いままではこの国有林の事業経営は、外部との接触が非常に少なかったという点が特色でございます。そのために一つの閉鎖的な社会であるというふうな批判も受けておったことは事実でございます。最近は、国民の皆さんのいろいろな公益的な機能に対する、特にそういう要望が強くなってきております。なおまた、閉鎖的な社会と申しますか、そういう形にあったために、販売の問題につきましても、あるいは仕事の経営の形態につきましても新聞紙上、また今回国会でいろいろと御指摘受けました点につきましても十分に反省しなければならぬ点があることを、あらためて私も強く認識したわけでございます。そういう意味で今後は管理指導の体制あるいは販売なり事業の経営の姿勢を一そうきびしくいたしまして国民の財産である国有林がさらにいい姿になっていくということに全力を尽してまいりたいと思うわけでございます。御指摘のありましたような請負と直々の問題あるいは立木の販売の形態あるいは素材生産の形態、いろいろございます。これは、しかしいろいろと長い歴史を持ってこういう形にただいまなっておるところであります。私はこの国有林というものの配置が、北と南その他いろいろ違いもございますし、その地域地域の実情に即して、そして歴史の過程を踏まえて今後どうあるべきかということを、皆さま方の御意見を十分に尊重いたしまして、特に国有林の事業に従事している——最盛期は八万人でございます。これらの雇用の安定なり、あるいは処遇の向上なりということも十分念頭に置き、安心して生活ができるような状態にして、それで初めていい山ができるということになると思うんです。これらの点について私は労使間、腹を割ってよく話し合いながら、労働条件については、それぞれ議論もございましょうけれども、よき信頼感に基づいて話し合っていきたい。山をよくするという意味におきましては、組合も私たちも同じ目標であると考えております。まあ、そういう意味でいろいろと御批判をいただきましたけれども、覚悟を新たにいたしまして、今後御指摘のように努力してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  177. 中村波男

    中村波男君 さいぜん私が質問した中で、特に造林事業等についても直営をふやすべきだという意見を申し上げたんですね。長官林野庁の直営の中にも問題があったものがあるというようなことを引き合いに出して、必ずしも林野庁は直営にすることが好ましくないような言い方をされたわけでありますが、私はたくさんな今日までの事業の中に監査をした結果、指摘を受けるようなものがあったかもわからぬと思うんです。そういうことは、やはり指導、監督の長である長官、あるいは部内の問題として、そういう直営でやったけれども好ましくないような結果が出たということは、これは私は、少なくともそういうことをこの国会の場でしゃあしゃあと言える感覚といいますか、指導上の責任の上から言いまして、聞き捨てならぬ言動だというふうに聞いておったわけです。次の質問の関係がありまして、そのときに指摘をしなかったわけでありますが、したがって、そういう議論、そういう立場であたかもいままでの直営直用の実態、あるいは請負に出したことが必ずしも間違っておらなかったかのような言い方をされるということは、私としては承服できないわけですね。そういう点もう一度はっきりと、請負に出されたものが全部悪いとは私は断定いたしませんけれども、あまりにも、幾つかを指摘いたしましたように、請負時による造林、植林の実態というのは、全くずさんと申しますか、もうけ主義におちいった事例が多過ぎるということから見ても、そういう事態の上に立って今後、いま前川委員指摘いたしましたような、いわゆる素材生産あるいは間伐の切り払い作業あるいは造林等について請負作業というものの限界というのが大体おわかりいただいたと思いますから、できるだけ直営事業をふやしていく、そういう基本の上に立って検討されていく用意があるのかどうか、もう一度お伺いをしておきます。
  178. 福田省一

    政府委員福田省一君) 私は直営直用にしましても、現在あります請負事業にいたしましても、国民の皆さんから指摘を受けないようないい直営直用であり請負でなければならぬということを申し上げたかったのでございまして、いまやっておりますところの直営直用が、みんないいものではない、若干やっぱり私も考えなければならぬ点があるということを表現したかったのが、ちょっとおしかりを受ける発言になったので、その点はおわび申し上げておきますが、私はどちらの形もいいものは望ましい。ただ、その経営形態というものを、これは原則的に全部直営直用から請負に持っていかなければならぬとか、あるいは逆に全部直営直用にしなければならぬというものではなくて、大臣もおっしゃいましたように、それぞれの現場の実態を踏まえてよく話し合って、それに即して労使間で話し合っていくというところに、一つの原則を置いておるわけでございます。ですから、先ほど発言しました内容についてお気にさわった点につきましては、おわび申し上げておきます。
  179. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 第一の前川さんの御意見、いろいろ林野関係で好ましくない事件が起きました。それに対してくさいものにふたをするという態度であってはいけないんじゃないか、こういう第一点、私も全くそのとおりに思います。この林野関係の面積におきましても、林野に働いておる人におきましても、林野庁職員におきましても、相当の数でございます。そうして御指摘を受けるようなことも出ておりまして、私はまことにこれは遺憾だと思います。しかし、こういうことがあるから、くさいものにふたをしていくという態度でいくべきでないことは、私もそのとおりでございます。むしろ私は国会等におきまして、衆議院においても参議院におきましても、委員各位が現地を視察したりなんかして、実に熱心に事情を調査して質問される、その態度に敬意を表しているわけです。まあことばがあまりいいことじゃないかもしれませんが、まあ愛国といいますか、私は愛国的な気持ちで発言していると思って敬意を表しております。やっぱり国を守ると。ただ、こういうのを契機として、林野の事業に対してそういう気持ちでない人が、おもしろ半分と言うんじゃないんですけれども、何とか、新聞あたりでもう林野庁は悪いことばかりしているんだというようなことを考えての投書などを見ますと、私はまことに残念だと思うんです。しかし、皆さん方の発言やなんかについては敬服しているんですから、くさいものにふたをするということじゃなくて、悪いことは改めてそうしてよく持っていきたいと思います。  それから、直営直用の問題ですが、お話がありました丸太とかあるいは造林、こういうものは直営直用のほうがいいんじゃないか、こういうことでございますが、私は請負というものは、これは全部そうは言いませんが、やっぱりこれは金を取ろうという営利目的、それから直営でやるということは、それはやっぱり木を愛するといいますか、育てていこうという愛情の気持ちでやっているのが多いと思います。そういう意味においては、直営というものもいいわけですが、なかなか、人によると思うのです、従事する人に。それから、請負でも地元の森林組合の労務者とか何とかいう、非常に地元を愛するような人々も、請負の労務者としておると思うんです。そういうものを、これは請負だからというわけにはいかない、やっぱり直営的な、木を愛するとか山を愛する、こういう精神を持っておる人も請負の中にいると思います。そういうものは、やはり直営的なものとして、請負という名前であっても、それは直営的に採用するというか使っていくというようなことがいいんじゃないか。ですから一律一体にはいかない。やはり山を愛し、国土、国のものだという気持ちで協力してもらうようなことのために、一本で直営直用だと、請負だ、こういうようにきめちゃうわけにはいかないと、しかし、どっちかといえば私は、やはり請負というのは営利的なものですからいろいろ事件なども起きますし、そういう意味におきましては、直営直用というような方向は私は、いいことだと思いますが、これ一本でばかりやる、こういうわけにはいかない、こういうように私は考えております。
  180. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 本件に対する質疑は、この程度にとどめます。     —————————————
  181. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 次に、飲用牛乳に関する件を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  182. 村田秀三

    ○村田秀三君 私は飲用牛乳の問題、特に最近厚生省において乳等省令の改正問題が検討されておる、こういうことでございますので、これに中心を置いて質問をいたします。  そこで、時間もございませんので、端的に質問いたしますので端的にお答えをいただきたいと思いますが、大臣には局長等との論議をお聞きいただきまして、その中で判断を求める程度にいたしたいと思いますので、ひとつ御了承いただきたいと思います。  そこで、まず最初にお伺いをいたしますが、資料を見てみますると、最近の酪農、消費の伸び悩み、そしてまた生産の伸び悩みも見受けられるわけでありますが、その原因というのは一体何であるかということであります。
  183. 増田久

    政府委員(増田久君) 消費の停滞につきましては、一次的要因と構造的なものとがあると思います。一次的要因といたしましては、たとえば農薬とか異種脂肪というような形での消費者の不信問題がございます。それから天候が悪かったという問題もございます。それから価格が上がった、価格が上がりますと、大体半年から一年ぐらい需要が停滞いたします。それから、もう一つは景気が悪いと消費の停滞が参ります。そういうことで、そういう一次的要因が昨年度には非常に固まってきたという点が考えられると思います。  それから、第二の構造的なものといたしましては、従来は、特に昭和四十年代に爆発的に牛乳の消費が伸びましたのは、所得が伸びてまいりまして、いままで牛乳をとっておられなかった家庭の方が牛乳を広くとるようになった、そういうことで牛乳の量的な、外延的な拡張があった。そういうものが一巡してきて、今度は一人当たりの消費というものに問題が移ってきておりますけれども、これが昭和四十五年ごろを境にして残念ながら一人当たりの消費が逆に減ってきているという形がございます。  それから、もう一つは、非常に牛乳は栄養完全食品だというようなことでずっとまいりましたけれども、これだけ所得がふえいろいろの食品が出回ってまいりますと、消費者の方も選択の幅が非常に広がってまいりまして、何も牛乳だけからたん白なり脂肪をとらなくてもいいではないか、もっと幅があるというようなことで消費者の選択の幅が広がってきたということでございます。  それから三番目には小売りの、現在の御存じのとおり半分近く以上のものは、宅配で配達されているわけでございますが、これは特に労働問題がありまして、いまの配達形態を続ける限り、その形でふえるということは、非常にむずかしくなったという問題が三番目にございます。  それから四番目に、非常に牛乳というのは政治問題にもなりまして、価格問題等でいろいろと世論から問題視される、そういうようなこともありますし、価格が押えられるというようなことで現在乳業の、特に市乳部門はおそらく一般の食品産業を通してだけじゃなくして、全体の中で最も低利益部門に相なっておると思います。そういうことでメーカーが非常にこれに対する企業家的な意欲を失ってきている、いわゆる脱乳業化ということばが盛んに言われます。一応そういうような問題がございます。  それから、生産の停滞につきましては、これは地帯別に見ていかなければならないと思いますが、実は伸びておる地帯と減っている地帯があるわけでございます、現に北海道におきましては本年度も一〇六%という伸びを示しておりますし、南九州等におきましても、生産の伸びは顕著なものがある。減っておりますのは、一番工業化の進んでまいりました地帯、これは特に私は兼業との関係があろうと思います。牛乳やるよりも兼業所得のほうが有利だということ、それから、特に酪農の場合には、これは草地産業でございまして、規模拡大したくても土地が手に入らない、非常にむずかしくなった。それから、労働力問題もある、こういうようなことで、非常にやめていかれる農家の方が内地の場合には非常に目立ってふえてきておる、そういうことが原因して生産の停滞になってあらわれているものと、かように考えておるわけでございます。
  184. 村田秀三

    ○村田秀三君 実は、この「エコノミスト」ですね、四月十八日の、増田局長が「この人と一時間」、こういうところで書かれておるわけです。これは私も読みました。そこで、いまいろいろ原因言われたわけでありますが、まず消費の伸び悩みの原因、この「エコノミスト」には異種脂肪の問題というのは、実は当初の発言の中には入っておらないのですが、いまは入っております。しかし、私はそれ以外にももっと原因があるのじゃないかということを率直に感じます。というのは、昨年の統計を見ますと、確かに生産量は四百八十二万トンと、一・二%の増、飲料牛乳向け二百六十六万三千七百トン、一・五%増、こうなっておりますが、その飲用牛乳の内容を見ますと、牛乳は九・五%増加をしておって、加工乳が五・五%減少しているわけですね。そうしますと、この五・五%減少する加工乳、つまり加工乳に対する消費者のイメージがきわめて落ちたために、いわゆる消費量の伸びというものが停滞をしておる原因の要素になっておるのではないか、こう実は考えるわけですが、どう思いますか。
  185. 増田久

    政府委員(増田久君) おっしゃるとおり、加工乳につきましては、何かこうまがいもの牛乳であるということが一般に言われたりして、そういう点に消費者に不信が出てきたということも私、あろうかと思います。  しかし、一番大きい理由として二つあげられるのじゃないか。一つは、消費者の最近牛乳に対する知識というものが非常に進んでまいりまして、普通牛乳と加工乳とでは、価格だけ違うだけで内容はむしろ普通牛乳のほうがいいのではないか。したがって、どうせ取るなら安いものを取ったほうがいいではないか、こういう点が私、あろうと思います。これが第一点でございます。  それから、第二点のほうは、最近の加工乳というものは宅配が中心でございます。それに対しまして最近の牛乳の伸びを支えておりますものは、学校給食と、それからもう一つ、スーパーにおける販売でございます。スーパーにおける販売が全体の量を大きく支えておるわけでございますが、これは御存じのとおり安売りするということでございますので、ここはほとんど加工乳は取り扱わない。そういうことでスーパーという売り方の中で宅配を食って普通牛乳が伸びてきているという点と、二つ大きな理由があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  186. 村田秀三

    ○村田秀三君 どうも一部ややその意見と私、若干違うのですが、いかにも加工乳がまがいものである、まがいものであるから飲まないと、こういうことで同じ成分なら安いほうがいいじゃないかというような消費者の動向、こういう言い方をしておりますが、私は若干違うのじゃないかと思うのですね。というのは、最近農協が農協牛乳を販売をいたしております。私もこれは新聞でのみ承知をしておるわけでありますけれども、とにかく評判がよろしい。そして電話で、どこで売っているのか、どこへ行けば買えるのかというそういう照会がもうあとを断たない、こういうことも聞いておるわけであります。そうして消費者の好み、この動向というのは、やはりつまり還元乳であるとか、あるいは加工乳であるとかいうものよりも、せめて牛乳と名のつくものは牛乳は純正そのものを求めておる、こういう結果であろうと私は考えるわけであります。還元乳、確かにそれは成分は同じだというけれども、しかし、口当たりは悪い、さらさらして何か漂白粉に水を入れて飲まされるような感じもする。それが牛乳かと思っておったけれども、しかし、実際は牛乳というのは、ほんとうに脂肪分も相当にあって、しかも口の中に入れると、とろりとするような甘みもあるという、そういうものであったかなと、純正牛乳のほうがよろしいのだという、そういう知識の進歩、これが私は原因だと見るわけですが、どうですか。
  187. 増田久

    政府委員(増田久君) 最近のように異種脂肪問題ですとか、BHC問題等が出てまいりますと、私は牛乳に対していろんな不信が出てくるという、そういうよりも、やはり素朴な消費者の感覚といたしまして、先生のおっしゃいますように、もうなまのままでよろしい、それが一番適切ではないかという声が出てくるのは、私はけだし当然だろうと思います。それで、そういう方向でやはり今後考えて上げるということは、今後の姿勢としては、当然あってしかるべきものと、かように考えております。
  188. 村田秀三

    ○村田秀三君 そうしますと、これは当然の成り行きですね。さらに確認をしないでもいいのでありますけれども、とにかく還元乳、成分は同じかもしれないけれども、味も悪い、そして値段も高い牛乳、まさに純正牛乳というのは値段もわずかであるが安くて、しかもうまい。だとすれば、うまいものに、安いものに消費が動いていくということは、まさに原則である。そのことだけは確認ができると思うのでありますが。
  189. 増田久

    政府委員(増田久君) 大筋といたしまして、私もその先生の説に賛成でございますが、ちょっとおことばを返すようでございまして恐縮でございますけれども、現実に全部純正牛乳であるというような形で貫きますと、これは現実には率直に申し上げて乳価を上げざるを得ない。農協のは安いのは、あれは特殊な売り方をしまして、小売りのマージンというものの中に食い込んだ形で安くなっているわけでございまして、販売形態というものを変えるという前提があるわけでございます。それが大きくそれは変えられないのだという前提に相なりますと、たとえば、あるメーカーで、健康牛乳ということで無調製ということでやりましたけれども、これは若干高い値段で売らざるを得ないという形になっておりますので、その点だけ、やはり価格問題として問題は出てくる点はあるというふうに考えます。
  190. 村田秀三

    ○村田秀三君 これは異なことを伺うわけですが、いままでは還元乳、加工乳、それが幾らか高く売られているということ、まず、これは理屈の上からいえば当然なんですね。とにかく牛乳から一度バターやチーズを製品化して経費をかけて——、そうすると、また経費をかけて水に戻すわけですから、とにかく中間経費というものが多くかかっている加工乳が高いというのはわかる。しかし、純正牛乳がなぜ高く売らなければならないのかということになると、私は、ちょっと理解に苦しむのですね、この点は。現実問題として、牛乳はいま安く売られているのでしょう。
  191. 増田久

    政府委員(増田久君) 私の申し上げたのがちょっと荒っぽい言い方で申しわけなかったのですが、いまのたとえば加工乳をやめて全乳つまり無調製の牛乳にするという前提をもしとったといたしますと、これは当然いままでのところよりも遠いところから牛乳を運んでこなければならない、こういう問題に相なると思います。そういたしますと、どうしても輸送費というものがかかります。現実に、現在でも宮崎あたりから大阪にフェリーボートを使ったり、あるいはタンクローリーで運んできておるわけでございますが、それでやりますとキロ当たり八円から九円の輸送費がかかってしまう、あるいは北海道から大阪まで濃縮乳で運ぶというようなことをいたしますと、現在、大阪付近では大体メーカーは農家から六十一円ぐらいで買っているわけでございますが、輸送費が非常に高くつきます関係で、北海道から運んだ場合に、大阪では六十四円か五円で買わざるを得ない、こういう形に相なってまいります。そういうことを、全体にいま還元乳で調製しているところをなま乳でずっと調製するのだ、こういうことをいたしますれば、その輸送費のコスト部分だけはアップすることにならざるを得ないということを申し上げているわけでございます。
  192. 村田秀三

    ○村田秀三君 わかりました。そうすると、それは供給面の、いまの供給体制がいわゆるコストアップの原因であると、こういうことですね。要は、その供給面を将来検討するならば、これはなま乳でそのまま飲ませたほうがよろしいのだということ、このことには変わりないわけですね。それはひとつ確認をいたします。  そこで、そこまで確認されればよけいなことを申し上げている必要もないのですが、この「エコノミスト」を読んでみまして、つまり気になる発言が載っておるわけです。「そこでまさに牛乳は単調で、ビンにはいった白いものというイメージだけではとてもいけないし、それだけ多様化した消費者の好みに、どうこれから供給を合わせていくかは、やはり大きな問題じゃないでしょうか。生産者団体がフレッシュ牛乳だとかいうんだけれども、牛乳は自然のままで白いもの、そういうイデオロギーで牛乳を飲ませようとする時代は終わったと思います。そういうことでメーカーも、われわれも努力しなきゃいかんじゃないですかね。」という発言があるわけですね。いま引用いたしました、とにかくなま乳で飲んだほうがよろしいのだし、それを消費者も好むのだというその原則からするならば、畜産行政の方向というものは、その方向に行くべきである。その供給体制をいかに確立するかという方向に当然行かなければならないわけでありますが、しかし、いままであなたがおっしゃったそのことと、いま「エコノミスト」に書かれているいわゆる発言の内容というのは、どう関係してくるのかということを考えるわけですが、どうですか。意地の悪いようなことを申し上げるのですが、ひとつ。
  193. 増田久

    政府委員(増田久君) 私ども端的な気持ちを申し上げますと、いまのように牛乳の不信感のある段階において、これからフレッシュ牛乳というものは、非常に魅力のあるものである、そういうことが一つの大きな需要をささえていく要素にはなるであろう、こういうことは私も否定いたしておりませんし、そのとおりであろうと思って、今後それは進めるべきだと思っております。しかし、まだ現実問題といたしまして、それを全面的にやれるだけのまだ体制は実はとれていない。そういうときに、全体の需要を伸ばすという観点から考えたときに、これだけで、牛乳とはこれだけよという形で押しつけることは、はたして全体としての牛乳の消費を伸ばすことになるかどうかという点が第一点でございます。  それから、第二点といたしまして、このごろ消費者のほうの選択というものが非常に進んでまいりまして、いろいろなものを要求してくる。それで牛乳は国民食糧であると、こう言われるわけでございますけれども、消費者の実態をつぶさに分析してみますと、われわれは残念ながらこれが食生活の中に定着したとは言えない、むしろ非常に嗜好品的な性格を実は持っております。特に私たち残念だと思いますのは、学校給食をやりまして、学童に牛乳を飲む習慣を植えつけるということを盛んに政策としてやっているわけでございますが、これを分析していきますと、中学生、高校生、大学生にいくに従って牛乳は飲まなくなってコカコーラを飲むようになる、こういう数字がはっきりと出て、また社会に出ると牛乳を飲まない、こういう形があって、明らかにそういう嗜好飲料との競合関係というものが出てきておるわけでございます。そういうことを考えますと、私たちはやはり国民食糧だというイメージだけでこの牛乳を律していきますと、おのずとふところが狭くなると申しますか、狭くなってしまう。むしろ、そういう青年層の動きというものをわれわれは敏感に考えて、いろいろな形で牛乳を飲ませていくんだと、こういうような考え方もこの際、とらなければいかぬのじゃないだろうか。そういうことが全体としての牛乳の消費の拡大につながっていくのであって、ここのところで、あまりイデオロギー的にこれだこれだというふうに狭めてしまうことは、あまり得策ではないという判断もあり得る。これは一つ考え方だと思いますけれども、という気持ちで私、申し上げているのであって、表現が必ずしも適切であったかどうかという点はあろうかと思いますが、私の気持ちはそういうことでございます。
  194. 村田秀三

    ○村田秀三君 その問題であまり深くは論議するつもりはないんですが、しかし、多様化して、好みに合わせて消費を増大させる、そのこと別に私は否定はいたしません。しかし、先ほど来申し上げましたように、還元乳よりも牛乳が伸びているということ、つまり、これは牛乳というものに対する認識を前提として、牛乳を飲みたいという人の立場におけるこれは要求だと思うのですね。その要求というのはこれは認めざるを得ないし、そのための対応策というものは立てなくちゃならないというのが行政責任としては、一つあると思うのです。これだけは明確にしておかなければならぬと思うのですね。そしてしかる後に、これはやはりコーヒーに牛乳を入れて飲むとか、あるいは牛乳にフルーツを入れて飲むとか、様々な嗜好というのは当然あってもいいし、その消費の拡大も、それこそコカコーラよりもどうやってうまく飲ませるかという研究もやって、消費を拡大させるということは悪いということでもないし、大いにやるべきことなんです。ただ、問題は牛乳か、牛乳をもととして加工して、つまり嗜好に合った生鮮飲料をつくるかという二つに大別して、そして問題を考えていかなければならないと私は思うのです。そういう考え方を私は持っているのですが、局長はどう思いますか。
  195. 増田久

    政府委員(増田久君) その問題につきましては、実は厚生省とこれから折衝に入るということで、まだ結論に達していないということで御了承願いたいと思うのですが、ただその問題として私、持っておることを申し上げますと、先ほどからるる申し上げたことの一つでございますけれども、牛乳は無調製牛乳であると、こういたします場合に、一つの実はこれだけで全部解決しない問題があるわけです。その一、二を申し上げますと、現在残念ながらなま乳というものは時期により地域によって非常になま乳にばらつきがございます。ですから、無調製牛乳であるとこう言いましても、あるときには脂肪分が三・五あっても、次の日は三・一しかない、次の日は三・三、こういうふうに商品としての何と申しますか、均一性というものがなかなか保てない。そういうことが、実は、無調製牛乳というものを、いろいろ農協牛乳の名前で各地で販売しておるわけでございます。それがどうも長続きしていないところが多いわけですけれども、その一つの原因は、そういうふうにたまに非常にいい牛乳だけれども、なんだこれは薄っぽいじゃないかという消費者の不信感をひとつ招いてしまうという点が一つございます。それから、規格の問題で脂肪の問題は、大体乳牛の改良が進みましたので、私は三%以下を切るということはもうよほどの場合以外はないという感じをいたしますけれども、問題は無脂固形分に問題が出てまいります。現在の規格では八%という規格になっておるわけですが、そっちのほうに一つ問題が出てきはしないか。そうすると脂肪三%、無脂固形分八%という規格との関連でどう考えておくべきだろうかという問題があるわけでございます。  それから、先ほど申しました価格の問題、それから四番目に、これはほんとうは規格の問題とは、直に関係はないわけでございますけれども、全体としていまのところ無調製牛乳でやる範囲というものは、そう大きくはできないだろうと私は思います。そうしますと、いまの加工乳と言われましても、日本の場合は七割なり八割が普通の牛乳が入っているわけです。そうすると、何かこっちがほんとうの牛乳で、こっちはまがいものだというような一般の印象を与えてしまいますと、何かそのことでこっちはやや伸びるけれども、こっちの消費は落ちてしまうということになりはしないだろうか、そういう心配はないだろうかという、まあ、これは取り越し苦労なのかもしれませんけれども、そういう心配等もありますので、そういう点がどうなのかということをいま内部で詰めて、亭主省と話し合いしよう、こういう段階でございます。方向としては、先生のおっしゃることは十分心得ておるつもりでございます。
  196. 村田秀三

    ○村田秀三君 まあ、具体的な問題にこれから入るわけでありますが、これはやっぱりいやなことを申し上げるわけじゃございませんが、エコノミストにこだわるわけでありますけれども、先ほどこの消費の伸び悩みの原因、構造的なものの第三番目には、つまり先ほども触れましたが、乳業会社、利潤率が低い産業だ、あるいは農民団体から突き上げられる、積極的に業績をあげようという意欲が乏しいということと、つまり消費者の好みにあった供給をということで、つまり多様化して、そうして白い牛乳にだけこだわっておったんじゃならないんだという、そういう発言と組み合わしてみると、いわゆる畜産行政というものは、一体これはどういう立場で行なわれているのだろうか、業界のために考えておるのか、あるいは生産者のために考えておるのか、そういう疑問なしとしないわけですね。まあ、反論があればお伺いをいたしますが、しかし、畜産局が乳業界のためにのみやっておるというような考えを私は持っていないわけですから、決してそういう意味で言うのじゃありませんけれども、少なくともここで発言されているそれを見る限りにおいては、いわゆる乳業界にのみひとつ気を配っているのじゃないかというふうに見られるということを申し上げるわけですが、そういうことであってはならないと思うのですね。もちろん、それは安心して消費できるようにするとか、あるいはそれを需要に対応して充足をするとかということでは、かかわり合いがあることは当然承知していますけれども、しかし、そうではなくて、やはり酪農振興法に基づいていかに日本の酪農を伸ばすか、乳の消費量を増大させるか。増大させて、もっていわゆる生産も増大させる、酪農家の経営も安定させる、そういうところに力点がなければならないと思うわけでありますから、そういう意味で、私は意見を申し上げておきたいと思います。  そこで、乳等省令の改正問題でありますが、厚生省から乳肉衛生課長に来ていただいております。厚生省のいま検討されている問題等について、ひとつ御意見を伺いたいと思います。
  197. 神林三男

    説明員(神林三男君) お答え申します。  まだ最終結論を得ているわけではございませんが、乳等省令の改正につきましては、まず一つはビタミンあるいは、ミネラルというような微量栄養素の添加ということが、はたして適当であるかどうかという点につきまして検討をひとつ加えております。  それから、これは表示の問題でございますが、牛乳、加工乳、これは特に現在でもその区別をして表示をさせておるような規制をやっておるわけでございますけれども、キャップの場合、これは五号活字以上ということになっておりますが、商品名である何々牛乳という字のほうがかなり大きく書かれておるので、この点につきましても、もう少し消費者にわかりやすくする必要があるのじゃないか。あるいは近ごろ紙製の容器が非常にふえてまいりましたものですから、必ずしも五号活字ということでなくて、紙製容器にはもっと何か大きな表示を、まあ現在でもかなり大きな表示をしておりますが、何々牛乳というような商品名のほうがむしろ大きいというようなことでございますから、少なくともそれ以上くらいの大きさに表示をする必要があるのじゃないかというふうなこともいま検討しております。  それから、いろいろ加工乳問題で問題が起きまして、特に先ほどから不信感というようなおことばいろいろ出ておるわけでございますが、例の異種脂肪の問題とか、あるいは乳糖カゼインというような問題がいろいろこれはっきまとってきておりまして、現在でも牛乳の省令の中には牛乳そのもの、あるいはなま乳もそうでございますが、なま乳あるいは牛乳そのものには一切他物を混じてはいけないという規定がございます。それから加工乳のほうには、水あるいは微量栄養素あるいはその他の乳製品はいいというようなことで、規制をしてございますが、この辺が加工乳の中に入れていいものが非常にはっきりしない。まあ、解釈で、乳糖カゼインあるいは異種脂肪はいかぬということは私たち言っておりますが、むしろ、そういうことでなくて、今後、加工乳の中に入れていいものはこれとこれであると。たとえば無塩バターであるとか、あるいは練粉乳であるとか、そういうふうにひとつ限定をいたしまして、そうしてはっきり入れていいものをきめる。それ以外のものはいけないんだということで、だれが見てもわかるようにしていきたい。この点につきまして、現在、検討を重ねている最中でございます。
  198. 村田秀三

    ○村田秀三君 畜産局ではどうですか。きのうあたりの話によりますと、近々中にひとつ厚生省と打ち合わせをしていきたい、こういうことを言っておりますが、どういうことを考えておりますか。
  199. 増田久

    政府委員(増田久君) いま神林課長から御説明したような点につきまして、内部で検討を重ねているわけでございますが、私どもとしても、基本的に厚生省とそう距離はないと思っております。ただ、やり方なりしかたについて、われわれとしては、急激に、いろんな需給なり価格に悪影響がないかどうかという点が一番問題でございますので、そういう点にもう一度検討をしていくということで、実はまだ結論を得ていない段階でございます。
  200. 村田秀三

    ○村田秀三君 厚生省として、ここではっきりいたしたいと思いますが、加工乳に微量栄養素等は、これは添加させないようにするんだと、このことは明確ですね。これはあと確認してもらえばいいんですが。  それから、表示商品名と同じくらいの大きさで、明らかに画然と、加工乳なら加工乳、乳飲料なら乳飲料とわかるように、その内容を表示するということ  それから、加工乳の場合、私はやはり相当大きな問題になろうかと思うんですが、確かにさまざまあろうと思うんです。まあ生乳を五〇%入れるとか、あるいはところによっては、ときによっては九〇%ということもあろうと思う。それから、どうも私ら、これはたまに駅頭においてお目にかかる程度でありますけれども、全く還元乳じゃないか、生乳というものが入っておるのかおらないのかわからぬという、そういうものにもお目にかかる場合があるんですね。この際、需給関係ということもありますから、先ほど来の論議からするならば、私の主張というのは、これは牛乳と名のつくものは、まさに全乳でなければならない、こういう主張を私は持っておるわけです。しかし、それにしても、いま直ちにということは無理であろうということも、私は承知をいたしております。少なくとも、やはり還元乳ばかりじゃないかと思われるような、そういう牛乳がさもこれは飲んでもよろしい牛乳でございますよというようなふうに売られている。消費者も知らずに飲まされておる。こういうことであってはならないと、実は考えるわけでありまして、つまり生乳の混入度合い、まあ生乳で、ほんとうは牛乳であるが、多少加工してあるという程度のものにやはりこれは直していく必要があると思うんですね。  そこで、ここで私は知りたいわけでありますけれども、実際問題として、全く純粋な環元乳というのが、実際に出回っているのかどうか。それからあと、実はこれ畜産局でつくりました資料「加工乳における生乳供給率」という、こういう表をちょうだいをいたしました。実際に、加工乳というのはどういう状態で出回っておるのと思っておるんでありますが、そういう点については承知していますか。これは厚生省でもあるいは農林省でもよろしいですが。
  201. 神林三男

    説明員(神林三男君) 私たちのほうでは、環元乳というような区別はつけないで、生乳がある程度入って、それに先ほど申しましたバターあるいは脱脂粉乳も入ったものも加工乳として考えますし、あるいは、先生指摘の、一〇〇%乳製品からつくられたというものも加工乳として把握しておる。これが厚生省令の衛生の立場でございまして、その実態については私たちはさだかにしておりません。もちろん、異種脂肪とか、そういうものが入っておれば、加工乳であっても違反でございますから、取り締まりの対象にはいたしますけれども、還元乳はどの程度かと言われると、ちょっとその点は、私たちのほうでは把握できないわけでございます。  それから、試験方法そのものが、これは生乳をどのくらい入れておるものか、あるいは乳製品からつくったいわゆる加工乳的なものをどのくらい入れておるかというようなことは、現在の試験法ではまだ困難な点がございまして、その辺も試験法そのものに、何ですか、おくれがございまして、はっきりつかめないわけです。
  202. 村田秀三

    ○村田秀三君 農林省もわかりませんか。
  203. 増田久

    政府委員(増田久君) 私のほうも、実はいま厚生省からお答えしたとおりでございまして、加工乳という把握のしかたでございますので、マクロとしては把握はいたしておりますが、ですから、マクロとしての地域、地帯別に、ここは生乳は何%で——これは結果論としての計算でごさいますけれども、その程度の把握でございまして、一〇〇%のものはどれだけ出回ったということについては残念ながら把握していないわけでございます。
  204. 村田秀三

    ○村田秀三君 時間がありませんから、本来、そちらでこれは発表していただきたいとも思っていましたが、私のほうでこれいろいろと申し上げてみたいと思いますが、ほんとうにこの表を見て私は驚いたわけでありますが、これは加工乳にどの程度還元乳が含まっておるか。それは地域別あるいは時期別によって違うことは違うけれども、私、相当量やはり乳製品がこれは還元をされておるということだけの資料は明確なんですね。  そこで、ちょっとお伺いしますが、この資料ですが、また「牛乳乳製品に関する統計」昭和四十六年、これもきのうちょうだいして、いろいろと突き合わしてみたわけです。そうすると、「飲用牛乳等向け生乳処理量」、これは畜産局でお届けいただいた資料と数字は同じでありますが、「飲用牛乳生産量」、この項に入りますと、これと食い違いがあるんですね。これはどういうわけでしょうか。私が見方を間違えておるのかどうか知りませんが。
  205. 増田久

    政府委員(増田久君) 統計のほうの資料は、キロリットルで出ておる数字でございます。こちらはこれをトンに直す場合に比重を掛けて一・〇三で換算をいたしますので、その差がこの数字になるわけでございます。したがって、原典数字は全く同じでございまして、この一・〇三九という比重を掛けて換算をしたところの差が出てくるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  206. 村田秀三

    ○村田秀三君 わかりました。では、この資料でも、トンで数字が出ているのと、キロで数字の出ておるのと、まちまちなんですね。トンで出ておるものとばかり見ましたが、これは統一したほうがいいんじゃないかと思います。よけいなことですが。  そこで、先ほど、供給の問題が解決するならば、できるだけ牛乳を飲みたいという者には牛乳を飲ませるべきじゃないか、そういう意見の統一はあったと思うんですね。供給体制の問題ですが、これまた、この資料では、関東、東海、近畿だけを、これを代表的にとってあるわけでありますが、その地域の生産量あるいはその地域に入ってくるもの出ていくものトータルをいたしますると、これは四十六年の三月、関東の場合は十万一千二百三十九トン、東海の場合が三万五千五百四十九トン、近畿が四万七千二百六十四トン、飲用牛乳等向け生乳処理量から見ると相当多量であります。それから、端境期といわれる九月期、関東において飲用牛乳等向け生乳処理量七万三千四百三十二トンに対して八万八千二百七十七トン、東海は二万五千七十八トンに対して二万七千九百六十二トン、近畿は三万二千二百五十六トンに対して四万五百十五トン、これだけ生乳が入って生産プラス移入マイナス移出、そのトータルが相当多量になっているわけですね。実際に加工用に向けられているものもあるであろう、乳酸飲料であるとかあるいはバターであるとか。しかしながら、この数字を見てまいりますと、つまり牛乳は牛乳で飲ませるという前提があるとするならば、商行為はともかくとして、これは牛乳で飲ませるという、そういうものがあってもいいのじゃないかと私は思うのですね。そうしまして、この資料を見ますと確かに端境期には、加工乳における生乳供給率が九月の場合関東は六三・二%であり、東海は六七・七%、近畿は五〇・四%であるから至難だと、こう言っておりますが、実際にある乳の量とこれを計算のし直しをして見ますると、東海であっても八七・七%は、これは供給できる、近畿であっても八八・七%は供給できるという、そういう数字になるわけなんですね。だから、ここで私は申し上げますけれども、実際にこれはもう少し詰めて研究をして見なくてはわからないのではないかと思うけれども、しかし、こと牛乳を飲ませたいのだ、これは一〇〇%還元乳だというのはとんでもないのだという考え方を前提としているならば、これはいま生産団体が要求をしておりますところの七〇%生乳、これはできる、可能である、こう実は私は考えるのですが、その点はどうですか。それからまた供給が可能であれば、つまり加工乳に対する生乳の混入比率といいますか、それは当然七〇%が理想である、それよりも八〇%が理想であるというような考えに立つものであろうと、こう思うのですが、どうですか。厚生省先に。
  207. 神林三男

    説明員(神林三男君) 私たちもできるだけ生乳の混入率を多くしたいというように考えまして、それぞれメーカー側にもいろいろ指導もしておるところでございますが、ただし、これを何%であるというふうに現在きめるには、やはり先ほどから畜産局長のほうからも申し上げておるとおり、必ずしも日本の生乳の需給状況というようなものが地域あるいは時期によって完全でないというようなこともございますものですから、必ずしもいま七〇%をもって規制するというようなことではございませんが、一応そういう方法でまいりたい、あるいは場所によっては七〇%といわないでも、すでに時期などによっては九〇%あるいは一〇〇%近いものを使っておるところも加工乳としてあるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  208. 増田久

    政府委員(増田久君) 確かに先生おっしゃいますとおり、全体をずっと眺めまして、全体を加工乳という形にすれば八〇%なり九〇%という形も必ずしも近畿でも東海でもあるいは不可能ではないというふうな感じがいたしますけれども、先生も御承知のとおり、学校給食というのは、これは普通牛乳でやるという前提でございますから、これは優先的に生乳を取らざるを得ない。それからスーパー等に出ますものは、これは全部普通牛乳で出ているものが大部分でございますから、それを普通牛乳としてまず取ってしまう。こういうことになりますと、差し引きになってきまして、なかなかむずかしい問題が出てくるわけでございまして、どうしてもその七〇なり八〇にするということになりますと、現在でもたとえば宮崎、鹿児島、熊本から大阪へ入ってきているというようなことを、さらに広げて北海道から持ってくるということを積極的にやらなければいかぬ、こういうことが問題になって出てくると思います。こういう方向でやはりもう地域の北化と申しますか、生産地がどんどん北限地帯に延びてきておりますので、そういう長距離輸送というものは、将来の方向としてこれは大きく考えて、その進捗の度合いに応じてこれは進めていくべき性質のものではないか、かように考えております。
  209. 村田秀三

    ○村田秀三君 これは中身をこまかにわれわれ承知することはできないので抽象論にならざるを得ないのですけれども、もう一度繰り返しますけれども、一番まあ端境期、生乳の供給量が少ないといわれている近畿におきまして三万二千二百五十六トンが生乳処理量となっておるが、しかし、そこに集荷されるもの、その数量は四万五百十五トンである。だから、つまり加工乳であっても生乳の比率を高めるということで何らかの措置をする必要があるのじゃないか。それで、まるまるというのもちょっとおかしいかと思うのでありますが、少なくとも加工乳であっても生乳は七〇%を維持すべきであるということは、この数字の中からは可能なんじゃないかと私は思うのですよ。これなかなか理解できませんかな。もっともこれは四万トン集まってきて、実際に生乳処理されているものは三万二千トン強でありますから、これは残っているものが捨てられておるとは決して思いません。それだけ加工に回さざるを得ない、それは理由もあると思うのですね。だけれどもそれが生乳を、まあ乳酸飲料であるとかというものは、これは当然生乳が原料でありましょうけれども、まあバターだとかチーズというのは、その時期にわざわざつくる必要はないのではないかと思いますね。これは、余っているところでつくればいいのでありますから。そういうことを考えてみると、何かしら手を打って、そして加工乳といえども、つまり生乳の比率を維持する、つまり体制の整い次第によっては七〇を八〇にする、九〇にするということがあってもよろしいけれども、しかし、当面可能な数字というものは七〇ということで押えることができるのではないかというふうに私は思いますよ。その点はどうですか。
  210. 増田久

    政府委員(増田久君) 確かに近畿で四万五百十七トンの生乳処理量があった、こういうことで生産量がかなりできるのではないかということでありますけれども、この数字の中には一切がっさい入っておりまして、たとえば自家消費分というようなものも、そういう数字に入っておりますので、そういう、こまかく分けてみないとこれなかなかいけないので、実際にその際に飲用向けとして処理された分は三万二千二百五十六トンでございます、総体は。ですから、いま直ちになかなか、できるというわけにはいかないと思いますけれども、先ほど申し上げましたとおり、長距離輸送ということで、これ解決していくということで、国といたしまして施設をリースする、長距離輸送機関については四十年からリースして、それでできるだけ長距離輸送をはかるという方向は従来ともとってきているわけでございます。それに対してようやくそのガンと申しますか、その際の一番ネックになりましたことを率直に申し上げますと、たとえば北海道から東京に持ってくると、こういった場合に、地元の生産者が一番反対をするということで、なかなか津軽海峡から越えると外国みたいな感じが率直にあるわけで、そういう生産者側の利害の調整という問題もやりながらいかなきゃいけません。  それから、もう一つ、そういうことをやれるためには、いわゆる指定生産者団体というものが、相当自由にできる牛乳というものを把握していなければいかぬ。ところが、現実にはまだ多くの指定団体と申しませんけれども、かなりの部分ではまだ牛乳に色がついていると申しますか、最初からこれは明治向け、これは森永向けというような形で、そっちに振り向けてくる乳というものがなかなか現実にはないというような問題、そういういろいろの調整上の問題がございまして、これいろいろ急速には私いかない問題があろうと思いますけれども、それは一つ一つ克服いたしまして、生産者団体も漸次そういうふうに北海道から東京に入ってきてもやむを得ないという空気もだんだん醸成されてまいっておりますので、そういうことを根気よく説得しながら、その方向につとめていきたいと思っております。
  211. 村田秀三

    ○村田秀三君 いろいろむずかしい問題もあろうかと思うんですが、濃縮乳の問題、しばしば話にも出てまいりました。地元で反対をしているということでありますが、供給できないのにもかかわらず、北海道から入ってくるのを反対するというのもちょっと理解に苦しむ問題ですね。これはやっぱり結局むしろ大メーカーがシェアを独占をして、そしてそれを守ろうとするような、そういうところから、これはむしろ可能であるけれどもそれを不可能とする条件になっておるとするならば、これは国民、消費者にとっては大きな迷惑ですから、そういう問題は、私は、理由にはならないと思う。そこで、まあ濃縮乳が出てまいりましたから、この濃縮乳をやはり乳等省令の中に位置づけて、そして輸送を可能にする、コストを下げる、こういうことがあれば、つまり端境期におけるところの大消費地の供給をまかなうことができると思うんですよ、これは。そんなむずかしい相談じゃないと思うんですね。これについてどう考えていますか。これは農林省のほうが先ですか。
  212. 増田久

    政府委員(増田久君) 将来なま乳に全部切りかえていく、その過渡期の段階として濃縮乳というものを運んでくるということは、私ぜひやってみたいと、いわゆる水を運ぶんじゃいまの経費ではやはり高くつきますので、経費をできるだけ節約すると申しますか、安くするという意味で濃縮した形で持ってくるということは、段階的な問題として必要ではないか。将来としては、やはり私は、なま乳で持ってくるのが本筋だと思いますけれども、いまの段階ではそういうことで濃縮乳についての一つの規格をつくって、そういうものを消費さしてもらうということで、これは厚生省に強くお願いをいたしている段階でございます。
  213. 村田秀三

    ○村田秀三君 そうすると、農林省も濃縮乳は賛成である。農林省が賛成であるならば、これは厚生省も直ちに賛成をするであろう、このことだけは言えるような気がしますね。厚生省、どうですか。
  214. 神林三男

    説明員(神林三男君) 私たちのほうでは濃縮乳という名前がいいか、実際にはこれは私たちのほうでいまございます乳の省令の中の無糖練乳に該当してしまうわけでございまして、無糖練乳はただいまの規格が細菌数がゼロ、これは無糖練乳はかん詰めにした牛乳でございますから当然のことでございますが、その辺が私たちちょっと、濃縮乳という名前にするのか、あるいは無糖練乳の中で特別にそういうものをつくっていくのか、いま検討もしておりますし、なお、これにつきましては、農林省側とも十分相談をしてやっていきたい、そういうふうに考えております。
  215. 村田秀三

    ○村田秀三君 名前なんか、言ってみればどうでもいいんですね。つまり牛乳そのものから脱水をして、そうして水さえ添加すればもとの牛乳になるという、そういう状態をつくればいいわけですから、これは技術的にも可能なわけですね。で、これは皆さん方もあるいは承知をしておるかもしれませんが、まあ参考までに、生産者団体が努力をして計算をした資料がございますから発表をいたしますが、これは濃縮経費も含めて——これは実は脱水が何%であるかということはないようであります。しかしながら、陸上を輸送して大阪までの経費、これは十三円九十二銭、海上輸送の場合は八円六十四銭だと、こういわれております。それで、これは北海道と大阪では生産者価格が違うわけでありますから、かりに北海道で、大阪の価格で購入したというふうに引き直してみても、これはペイする、採算に合うんだと、そういう結果が出ております。  それからまた、これはきのうきたエコノミストを見ておりましたら、増田局長に反論するということで、これまた一酪農家が投稿をいたしております。この人の計算は、これは東京付近のようですが、東京の団地で二、三千人、一かたまりになって北海道から牛乳を買ってくれば、なまで持ってきても二百CC二十五円で配給できると書いてあるんです。一生懸命この人は計算したんだろうと思う。これは二、三千人ぐらいの一団地の方々がタンクローリーを雇って、そうして計算したという単純計算でありましょうから、これが大都会全部対象にして計算をした場合には、もっとコストが高くなるということもありましょうけれども、やろうとすれば可能である。この濃縮の問題なんというのは、私はもうぞうさないと思う。まことに簡単だと思う。だとすれば、ここで供給体制も整うとするならば、厚生省はやはり、さらし粉のような還元乳などというものは、これは言ってみれば一度バターにする、チーズにする、それをまた還元乳に戻してやるみたいなもので、国家的、社会的に見たって重大な損失だと私は思う。そういうことからして、早い機会にやはりこれは、つまり七〇%なら七〇%という規格化をする。いまの状態の中では還元乳だけであってもよろしい、しかし、努力はします、それからまあ生乳が入ってもこれは三〇%でもよろしい、七〇%でもよろしいというようなことであっては私はならないと思うんですよ、事食品ですから。でありますから、これは七〇%が現在の供給体制の中では適当であるか、あるいは六〇%が適当であるかということは、これはあなた方にまかせる以外にありませんけれども、そういうやはり規格化を乳等省令の中で明確にすべきだと。加工乳の中に、これは一〇〇%還元乳もありますよなどというようなことがあってはならないと思う。大体加工乳なんていうのがあるのがおかしいと思う。牛乳と乳飲料だけでいいと思う、大きく言えば。しかし、なかなかそうもいくまいから、ここで中間段階に加工乳をおくわけであって、その加工乳がつまり一〇〇%還元乳であってはならない。少なくとも生乳は六〇%なり七〇%というものは常に維持されるべきものであるという、そういう考え方を私は前提にしなくてはならぬと思う。厚生省どうですか。
  216. 神林三男

    説明員(神林三男君) 先生の御指摘のとおりだと私も考えておるわけでございますが、まだ需給事情とかいろいろな問題がございますので、私たちはとりあえずこれは指導といたしましてやってまいりまして、そうして先ほどの濃縮乳の問題とか、いろいろの問題が解決され、さらになま乳そのものの供給というものが潤沢になれば、当然そういう方向に変えていきたいというふうに考えているわけでございます。
  217. 村田秀三

    ○村田秀三君 大臣にお伺いしますが、いまの、不十分な議論だけれども、とにかく厚生省としては、理想としては一〇〇%牛乳、しかし供給体制、それをまかない切れないから加工乳というものがある、こういう言い方ですね。加工乳の中には一〇〇%還元乳も実は含まれるわけでありますが、それがいいか悪いかということは、厚生省としては言いにくいでしょう。しかし、つまり理想としては、一〇〇%牛乳であるべきだという思想からするならば、これは供給体制が整えば常に生乳は六〇%維持しなさい、七〇%維持しなさいということがあっていいと思うのです。そうすべきであるわけなんですよ、いままでの論議からおわかりのとおり。そしてしかも、その供給体制というものは、濃縮乳は考えてもいい、そういう方向で検討しているということでありますから、やろうと思えばこんなものぞうさないと私は思うのです。供給体制が整う時期というのは、やろうと思えば二、三カ月だってできなくはないと、こう、しろうと判断するわけでありますが、よしんばこれが半年であり、半年たつとこれは冬場になって供給過多ぎみな時期でありますから問題は別といたしましても、来年の端境期までにはこれはやはり完全に、つまり私がいままで主張しておったような方向で、安心して消費者が牛乳を飲めるようにすべきである、そのことが結局牛乳の消費を拡大して、しかも生産も拡大する、そしてまた先ほど論議がありましたように、つまりコーヒーを入れるとか、あるいはフルーツを入れるとか好みに応じて牛乳を多方面に有効的に活用する、そしてまたプラスして消費の拡大をはかる、こういう原則の上に立つべきであろうと思いますが、大臣はいかがですか。
  218. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 生牛乳で供給することがこれは理想的というか筋だと思いますし、また、その体制を整えるように、整えるのを待てば、それが一番いいと思うのです。いまのところ消費者の嗜好などがありますから、いろいろなものも出ておると思いますが、根本的には、先ほど申し上げたような形で供給体制を整えて、そうして牛乳の価格も生産体制も需要に応ずるようにやっていくということが理想的というか望むべき方向だと思います。
  219. 村田秀三

    ○村田秀三君 その乳等省令の改正の問題、いままで話を出されました多くのことは、これは改正するにはそうめんどうなことはない。ただ、いまのつまり生乳を何%入れるかという、規格化するかという問題、これは供給体制の問題だと、その供給体制の問題にしても、やる気になればここ半年一年で私はできるだろうと、こう思うのです。そういうことで、今回改正するについては、単に業界を指導するなどということではなくて、一年たちましたならばこの規格化をいたしますよという強い態度というものをやはり厚生省は持つべきであろう、こう思いますが、どうですか、時期を切ってやるということ。
  220. 神林三男

    説明員(神林三男君) まことに先生のおっしゃるとおりと私ども考えておるわけでございますが、やはりこれはあくまで供給体制の確立という問題がどうしても条件になるのじゃないか、規格化ということになりますと、これはやはり罰則もつく問題でございまして、非常にある意味では罰則がつくというようなことで簡単に規格化するということに問題がございますから、やはり体制が整った暁には、私のほうでも必ずそれをやっていきたいというふうに考えております。
  221. 村田秀三

    ○村田秀三君 それでは、大臣の考えも、厚生省の考えも、そしてまた畜産局の考えも別に不統一ということじゃありません、やる気があるかないかという問題です。でありますから、これは少なくとも来年の端境期までには、それができるように注文をいたしておきたいと思います。  その他、脂肪調整の問題であるとかいろいろあるわけでありますが、時間もございませんからこれをもって終わります。
  222. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 本件に対する質疑は、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十五分散会