○
政府委員(
福田省一君)
林野庁といたしまして当初環境
保全法案が出ました際の自然保護についての基本的な
考え方を申し述べますと、第一点は、私
たちは、
森林の保護ということにつきましては、現在日本
国土の約七割近くあります
森林をそのままの原生の
状態にしておくということは、これはほんとうの
意味の保護ではない。現在ありますところの
森林は、中には非常に老齢過熟な
森林もあるわけであります。生長がすでにしていないそういう
状態の
森林は、たとえば北海道の風倒木が出ました際に一斉に倒れる、そのあと始末に数年かかったというような
状態でございます。したがいまして、ある程度の伐採をいたしまして若い健康な
森林に育てていく。しかも、その資源の内容は、現在持っておりますところの
森林の蓄積約二十億立方メートルでございます。これを約倍にふやす、そういう
考え方に立っておったわけです。そういうふうな健全な
森林でございますれば、被害にも強いし、また
森林の蓄積容量もふえるわけです。公益的な面におきましても、それからまた経済的な面におきましても、国民の
要請に十分こたえることができるであろうという
考え方に立っておるわけでございます。ただ、中には、学術参考林のようなものであるとか、文化財の保護に類するようなものであるとか、そういう重要なものにつきましては原生のままの
状態に残しておく。かような
意味におきまして、環境庁のお
考えにはそういう点ではぜひ御協力したいという
考えを持っておったのが第一点でございます。
それから第二点でございますが、たとえば
森林に火災が発生したとする。実は、青森管内に火災が発生しております。去年は広島に大きな火災が発生した。あるいはまた広島の赤松の虫害が入ってきた。あるいは台風の場合に相当立木が流失して
下流の
人たちに被害を与える。こういうふうな
状態が発生した場合に、これを
保全し保護していく仕事は、都会の人よりはむしろ
地元の農山村の
住民の方々の御協力を得まして自然を保護していくということは、第一点に申し上げました
意味と関連しまして非常に重要なことであると
考えておるわけでございます。かつ、また、それによりまして
地元の農山村の
人たちは現金収入の道も得られるわけでございます。したがいまして、自然保護というものは、やはり
地元の農林業に従事する
人たちのために、また、その
人たちのおかけでできるのだ。換言しますと、農林業不在の自然保護というものは
考えられない、これはぜひ重視していただきたい。
それから第三点でございますが、第三点は、自然保護のためにいろいろと伐採規制をいたします。普通の工場の生産の仕事、あるいはまた農業と違いまして、
森林の育成の仕事は、五十年、場合によっては百年以上かかるわけでございます。特に、民有林の場合には、零細な山持ちの方が多いわけでございます。こういう
人たちが造林をします場合には、ことし、来年もうけようと思って植えるわけではございません。必ず子供とか孫のことを
考え、子孫のためを
考えて植えているわけでございます。それがもし伐採の時期に至りましてこれは自然保護のために切ってはだめなんだということになりますと、非常に不安になるわけでございます。これは造林意欲を停滞させる非常に重大な問題になるというふうに
考えておるわけでございます。したがいまして、そういう
森林に対して自然保護の立場から規制を加える場合は、もしその
土地の所有者がそれでは困るからこの
土地を買ってもらいたいということが出た場合には、じゃ買ってあげましょうということを法律の上で約束しておく、いわゆる買取り請求権ということを法定することが必ず必要じゃないだろうかというふうな御
意見を申し上げておったわけであります。
以上が、私
たちが今後のことを
考えまして、自然の保護のためにぜひとっていただきたい
措置でございます。
なお、
保安林の問題につきましては、
先生御
承知と存じますけれども、全
国土の約三割、特に国有林の場合は五割近くでございますが、これが
保安林になっております。
森林法の中におきまして、
保安林と申しましても、約十七種類ございます。
水源涵養保安林、あるいは
土砂が崩壊することを防ぐ
保安林、
土砂が
流出することを防ぐ
保安林、耕地の防風林、あるいは海岸の砂防林、いろいろございます。これらの
保安林につきましては、
森林法の中で、
計画的にこれを組みまして伐採する場合には必ず許可を必要とするというふうに規制しているわけでございます。ただ、この
計画に従ってやらぬ場合には、勧告
制度はございますけれども、環境庁とその点につきましていろいろ協議いたしまして、勧告
制度が非常に甘いという場合にはなお命令権を出す、あるいは罰則を設けるという点につきましても事務的に接衝を重ねてまいっておるわけでございますが、おおよそ環境庁との間では両方の
意見が
調整されている段階にまいっておると、かように
考えておる次第でございます。