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1972-06-08 第68回国会 参議院 内閣委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月八日(木曜日)    午前十時四十七分開会     —————————————    委員の異動  六月八日     辞任         補欠選任      中村 利次君     向井 長年君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         柳田桃太郎君     理 事                 町村 金五君                 安田 隆明君                 鈴木  力君                 水口 宏三君     委 員                 黒住 忠行君                 源田  実君                 世耕 政隆君                 田口長治郎君                 土屋 義彦君                 長屋  茂君                 細川 護煕君                 山本茂一郎君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 山崎  昇君                 沢田  実君                 峯山 昭範君                 岩間 正男君    国務大臣        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        人事院事務総局        職員局長     島 四男雄君        総理府人事局長  宮崎 清文君        警察庁長官官房        長        土金 賢三君        防衛庁参事官   高瀬 忠雄君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛庁参事官   岡本  直君        防衛庁長官官房        長        宍戸 基男君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁人事教育        局長       江藤 淳雄君        防衛庁衛生局長  鈴木 一男君        防衛庁経理局長  田代 一正君        防衛庁装備局長  黒部  穰君        防衛施設庁総務        部長       長坂  強君        防衛施設庁労務        部長       安斉 正邦君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        文部大臣官房審        議官       奥田 真丈君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案(第六十七回国会内閣提出、第六十八回国  会衆議院送付) ○国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  御質疑のある方は順次発言を願います。
  3. 鈴木力

    鈴木力君 最初に伺いますが、先週の何日でしたか、ちょっと新聞で見たんですけれども久保防衛局長衆議院のどこかの委員会で、第四次防では足りないので第五次防を考えておると、こういう趣旨の御発言があったことを新聞記事で伺いましたけれども、その内容を少し具体的にまず御答弁いただきたいと思います。
  4. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 先週でしたか、衆議院外務委員会で自民党の石井委員の御質問に応じまして——質問内容は、防衛庁では三次防、あるいは四次防で防衛力増強は終わるのかという御質問でございました。それに対しまして私の答弁は、不十分であれば補足いたしますけれども答弁内容といたしましては、三次防、四次防でとまるものではありません、四次防から五次防にかけてさらに足らざるところを補強、整備していかなければなりません、しかし大体五次防程度かっこうがつくでしょうという趣旨のことを申し上げました。これはわれわれとしましては、五次防であれ、六次防であれ、いずれ長期計画をつくる以上は、そういった何次防といったものがあるのが適当であろう、しかし、それはイコール増強ということとは、必ずしも同じものではないので、長期計画は常に持つべきであるという趣旨のもとに申し述べたことであるし、それからまた六次防、七次防といつまでも増強を続けるほどのことばないのではなかろうかという感じを私持っておるものですから、ついそういうかっこうが大体できるでしょうという趣旨のことを申し述べたわけであります。
  5. 鈴木力

    鈴木力君 そこで、いまわれわれが防衛問題を議論をしているわけですけれども、その三次防、四次防、五次防という、五次防ということばがいよいよ出てきたわけで、そこで三次防、四次防、五次防というのは、数字で人為的に区切ることはできますけれども、これはもうずっと続いていなければいけないわけです。ですから、久保局長の御発言はそういう御意思だと理解申し上げますけれども、ただそのときになったらこうするのだということで、五次防という名前だけあげておいて、いま議論するというのはどうも不適当なような気がするのです。そこで、まだ四次防もいろいろのいきさつがあって正式的にきまらないんですけれども、私は、きょうは、国防会議にかかったかかからないかというような、そんな手続問題は抜きにして、一体、いまの防衛庁——防衛庁というより日本政府が、防衛計画に対しての将来の展望を具体的にどう持っておるのか、これをやっぱりはっきりしたいと思うし、はっきりしないと、正直言いまして、いま審議しているこの法案だって、簡単だとかいろんな説がありますけれども、これは五次防まで必ずつながっていくんですから、そういう点をきょうこの委員会で私は明らかにしてもらいたいと、こう思うんです。  で、まず最初に、防衛庁から、抽象的でなしに、五次防までを含んだはっきりした数字で、最終的には飛行機が何というやつが幾らという数字はもちろん出せないと思いますから、そこまで出せとは申し上げませんけれども構想をひとつ述べていただきたいと思います。
  6. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 防衛庁原案が昨年の四月に出まして、その際の内容につきましては、従来からるる御説明しておったところであります。ところで、その場合に、八〇年代初期、つまり今日から言えばほぼ十年後の脅威の対象を目標にしながら、それにある程度意味で対応し得るもの、それを一応長期目標として出したわけであります。その内容については、具体的な数字について中曽根長官が私見として申されたことがあります。そのいわば前段階としての四次防として意義づけたわけでありますが、そういったような発想が、はたして今後の国際情勢の中で、特に日本の置かれている立場で適当であろうかということを私自身はいまのところ考え直しているわけでありまして、そうすると、今日置かれている情勢のもとに、四次防の——というよりも将来の防衛力性格を描いて、そういったことを背景にして四次防というものを考えてみるということであります。  私自身、いろいろのことを考えながら構想をまとめようとしておるんですけれども、まだまとまっておりませんので、ここで具体的に防衛庁政府委員として申し述べるのは少し適当ではない。しかしながら、やはりこの国際情勢の緩和されたという背景、それから、国民が平和を望み、また今日緊張感というものがない、あるいは対外的な友好関係、これは日米はもとよりでありますが、日ソ、日中あるいはその他のアジアの諸国との平和状況、そういったようなものを背景にして、諸国民及び日本国民に受け入れられるような防衛構想があるべきであろう。それを背景にして四次防というものをつくってまいりたい、こういう構想を持っております。
  7. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) ちょっと、誤解があるといけませんから、私補足しておきたいと思います。  四次防で要するに自衛隊武器更新とか補備、充実とか、そういった面は終わるのかと、こういう質問に対して、久保局長が、四次防で十分な形とはまいりませんと、要するに五次防ということもあり得るということをまあ言うた。これはさっき本人からお答えをしたとおりでございます。  私は、ものの考え方として、たとえばこれが六次防であり七次防であり八次防であるということであってまあ差しつかえないということを、この委員会でも申し上げた記憶がございます。それで、それは、たとえば防衛力を充実するのがいわゆる第何次防衛計画というのではなくて、防衛力が全く武器更新だけ、あるいは逆に防衛力を減らすという場合も、これは第何次防衛計画というもので表示していいのではなかろうか。将来日本の武装が一応のめどに到達したと、でこれをもっと減らしていいんだと、世界の情勢等から見て。そういう場合に、やはり兵力量を減らす計画も何次防という中に含めて、国民にわかりやすく説明していくべきではないか、こういう説明をしたことがございます。  それで、いま久保防衛局長が申しておりまするのは、これは衆参両院を通じまして、一体防衛力防衛力というが防衛力限界は何かと。これが、従来は、GNPの一%以下で、〇・八七ぐらいというようなことで来ておったわけですが、このGNP自体が伸びたりあるいはスローダウンしたりするということになれば、これだけでもいけない。大筋ではもう、鈴木議員承知のとおり、海外派兵はしないとか、徴兵制はとらないとか、いろんな制約があります。政策的には非核三原則があるとか、こう言っておりますが、もう少し、防衛局長という責任の立場においてこの限界等について詰められるものなら詰めてみたい、これが久保局長の従来の主張でありまして、これは私、ひとつ旺盛にねばり強く努力をして、結論を得ることが必要だと言っておるわけでございます。まだいま結論には至っていない。申したとおりでありまするが、そういうことは、やはり今後に向かって一生懸命ひとつ検討をしていく、なるべく結論を得るようにし、国民にもわかりやすく、自衛隊限界というのは大体この程度だということが言えるようになることが望ましいというふうに私も思っております。
  8. 鈴木力

    鈴木力君 私は、久保局長がそういう発言をしたのがけしからぬなんということを申し上げているつもりは全然ございません。担当として、そういうことを考えておれば考えておると発言なさることが当然でありますから、私はそういうことを申し上げているわけじゃない。  ただ、これはあまりいい例じゃないと思いますけれども、私はどうも木いじりが好きで、いろんな木をいじりますが、そのときに、この木は将来どういう形の木にするかということで、小さいときの枝の切り方が違うんです、最初から。先はともあれ、そのときの情勢によって、西風が吹いてきたらこっちの枝はあとで詰めることもあるからまずこの枝を伸ばしておけというような、そんな木いじりはしない。大体ぼくは、すべてそういうもんだと思うんですね。そして、この防衛力といいますか、防衛計画につきましても、基本方針はちゃんとできているわけです。この前の委員会でもいろいろと議論がありましたので蒸し返しませんけれども、そういう基本方針に乗って防衛計画を立てていくときに、もちろんそれは減らすこともあればふやすこともある。減らすこともあればふやすこともあるが、将来のでき上がり図というものを想定しないで、そうしていまの部分的なところだけを法案で毎年毎年いじらしていくという行き方は、私は適当でない、そういう考え方を持っているものですから、少なくとも、これは多少は情勢によって動くことがあるというのは当然でありますが、そういう一つの将来の絵というものを示されないとこの法案審議のしようがないじゃないかと、そういう立場で聞いている。
  9. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) いまの点は、おっしゃるとおりであります。したがいまして、私どももそういう方向で考えているわけでありますが、四十六年度までの予算及び法律については三次防までの考え方、それから四十七年度につきましては四次防の考え方でありますが、四次防の考え方と申しましても、国防会議で示されたものは三次防の延長である。それからまた、四次防の大綱というものの大ワクがあるわけであります。ところで、三次防の延長あるいは四次防の大綱の中で示されているものが、はたして、いま先生の言まれたような御要望からすると、それに応じ得るものであるかどうか私自身は疑問に、まあ私から言うのはおかしいんですけれども、まだ不十分であるというふうに考えるものでありますので、四次防の主要項目を策定する過程の中で、防衛庁として具体的な四次防計画ができれば、それの背景というものはどういうものであるかということを具体的に説明されねばならないというふうに考えております。したがって従来の考え方から申せば、これは何べんも申し上げているとおりでありますのであまり詳しくは申し上げませんが、相手方脅威に対応するものとしてわがほうの兵力算定をする。それが二次防であり三次防でありまた従来の四次防の考え方であったわけです。そこで、その考え方というものが四次防原案まででありまして、そこで白紙に還元されて、それを現在検討しておるということでありますので、今後の四次防の性格としましては、やはりおっしゃるような考え方でいっていかねばなるまいというふうに考えます。
  10. 鈴木力

    鈴木力君 そこで、どうもわかったようなわからないような、私の設問も妥当なのか妥当でないのかわからぬみたいなことでありますけれども、やはりいま局長お答えになられたことが私は重要なポイントだと思うんですね。三次防、四次防までは相手脅威に対抗するものとして設定されなければいけないと、そこで、いままでのところどうも私はこの相手脅威というものが明確になっていないんで、何となく相手というものはあるかないかのごとくにしておいて、これだけなければ専守防衛ができませんとか、いろんな形で論議をされてきた。そのことがわかったようなわからないような形で今日までのこの防衛論というものが行なわれてきたように思うんです。そこで、三次防が相手方脅威に対抗するものとして出てきておるわけですから、この法案が通ればおおよそ三次防は完成するわけです。しかし、四十七年度予算は四次防の構想でいくんですから、ほんとうはこの法案は要らないことなんですけれども、まあそれはそうは言わないで一応質問いたしますが、いままさに三次防が終わろうとして四次防に移ろうとしておるときに、この時期になっても相手脅威ということが明確にならないで、議論することがむずかしいんです。したがってこの相手脅威という、まずこれをひとつ明確にしていただきたいと、こう思うんです。
  11. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) いまおっしゃいます問題点日本国会での終始問題になっているところでありまして、なかなか具体的な答弁ができないわけでありますが、ただわれわれが申しておりますることは、万一の事態を考えるわけであります。そこで、その場合に、日本に対する脅威というのは一体何であるかと申しますると、日本周辺にある国、これはソ連から朝鮮半島の二国から台湾、中国、米国もありましょう、そういったような諸国の軍事的な能力計算をいたします。これは具体的な数字が出ておりますが、それらの数字の中で日本に振り向けられるであろう兵力というもの、これは米側の知識もかり、われわれも勉強しまして、大体これぐらいであろうというふうに算定をいたします。そうして、そういった算定されたところで、周辺諸国軍事能力の中で航空機がどれくらい、潜水艦がどれくらいといったようなものが日本に振り向けられるであろうと、それにある程度意味で対応できる、たとえば一年も二年も日本が戦争することには耐えられない、なるべく短い期間でがんばっておって、その間に米国の協力やら国際世論の介入を待ちたいという意味で、限定された範囲内でそれに対応できる程度でよろしい、そういったものの兵力はどれだけであろうという数字算定をいたします。そういう数字に対して、従来はそれに向けて段階的に整備している、これが二次防であり三次防であり、また四次防の原案であったということであります。
  12. 鈴木力

    鈴木力君 どうも私が研究していないのでちょっと時間をかけて申しわけありませんけれども、いまの相手国兵力をこれだけこれだけとおっしゃらないで、ちょっと早口に言われるとわからないんですけれども、できるだけ早く表にして出していただきましょう。
  13. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 数字を差し上げるのはあとでまた差し上げますが、簡単に数字をちょっと口で申してみますと、極東ソ連軍というのが陸上で十七個師団の二十四万人、海上艦艇が九十万トンで七百五十隻、それから航空機、主として空軍を申しますると約二千五百機、それから中共軍が、——これはもちろん全部が日本に向けられるというような意味で申しているわけじゃございませんで、数字的な兵力量を申しておるわけでありますけれども中共軍が二百五十五万、艦艇で三十万トン、それから空軍が三千二百機、それから北鮮軍は二十二個師団、三十七万人、艦艇が二万五千トン、空軍が約七百機、韓国軍は十九個師団で五十七万人、艦艇が八万トン、空軍が約四百機、それから国府軍が二十二個師団、約三十九万人、艦艇が十四万五千トン、航空機が約六百機、それから極東米軍は陸軍が一個師団の約五万人、七艦隊が約五十万トン、約百隻、それから空軍は約三百機、これはもっともベトナム戦争関係で少し変わっておると思いますが、そういったものの中で具体的に日本に振り向け得るものが何であるかという数字を、これは米側協議をしながら、いろいろ研究した数字をはじき出すわけでありますが、この点については遺憾ながら米側との関係もありますので国会で申し述べておらない。そういうことを申し述べないところにいろいろ問題があるということは私たちも思うのですけれども、やはり諸国関係もありますので、必ずしも公開の席で適当ではないんじゃなかろうかというふうに思っております。
  14. 鈴木力

    鈴木力君 ここらあたりにいまの防衛論争基本があるような気が私はするんです。米側協議をして、いまのソ連なり中共なりあるいは朝鮮民主主義人民共和国なり、それらの兵力算定をして、このうち日本に侵略といいますか脅威を与え得るものがどれだけかということを米側協議してきめておる、そうすると明らかに、まさに米側協議してきめる場合には台湾から来る脅威ということは計算はしないわけでしょう。それから韓国から来るというのは計算していないでしょう。そこは計算しておりますか、どうですか。
  15. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) この辺が国会論議でどういうふうにすればよろしいかむしろ教えていただきたいところであるのですけれども、なかなか特定の国の名前を出すことが、いろいろ外交上その他で適当でないという面もございますので、これは個人的に申し上げることはもちろん可能でありますが、なかなかそういうことは言いにくい。しかし常識的に、韓国とか国府がそうだというふうにはまいりますまいと思います。
  16. 鈴木力

    鈴木力君 したがって、もちろんこれは日本のいまの政府なり与党の性格といいますか、本質的には自由主義国と、こうなっていますから、そちらの側に立つということは常識的にみんなわかっていることですから、それをどうこう言うつもりはありませんけれども、しかし私は、やっぱりいまの国際情勢動きですね、これは、少なくとも第三次防を設定した時期と今日の国際情勢、特にこの極東情勢動きというものが非常に大きく変わっていると思うんですね。そういう時期に、あらためて社会主義諸国のほうがまあいわば仮設敵として、仮想敵として日本防衛計画基本的につくられている、これがまず一ついま明らかになったと思うんですね。そういたしますと、この第四次防衛計画というのが——三次防はそういう立場でずっと進んできていると思いますから、これはまあしようがないといえばしようがない。そうしますと、第四次防衛計画というのは、これはその情勢に見合ったもので検討されなければいけないわけです。そうすると、先ほど防衛庁長官がおっしゃった減らす場合もあるというのは、まさに第四次防でこそ「減らす場合」に私は相当していると思う。それが逆に、いまのところまだ四次防という確定したものはないにしても、これはまあ、あるないは手続論でありまして、どうせこれはあるんですから、それは増強という立場でいまきているわけです。この辺がどうも私には納得できないんですね。そうして、しかも、そういう日本防衛計画が直接具体的に相手側脅威というものに対置をしておる。相手側脅威に対しては、米国と相談をしていることであるから国会で言うことができない。そうしてただ対応する兵力はこれだけが必要だから国会で認めろと、こういうことになりますと、どうも私はこの国会審議それ巨体が無意味になるような気がしてならない。きょうはひとつ私は、軍艦の数が多過ぎるとか少な過ぎるとかという問題ではなしに、日本防衛に対する国会の取り組み方がどうあればいいかという基本問題についてもう少しはっきりしないといけないではないか、そういう意味なんです。そこで、私が先ほどからしつこく申し上げているように、仕上がり図というものを示せ、こら申し上げておるわけなんです。何かそっちの主体的な、これがあるんでこれが出てくる、こいつは隠しておいて、見せるわけにはまいりません、これだけを何とかしてくれ、こういう審議のしかたでしょう。どうしても私は納得できない。
  17. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 四次防のみならず、今後の防衛力整備あり方については、冒頭に申し上げましたように、やはり周辺諸国の軍事的な能力あるいは脅威というものが、今日直ちに一本に向けられているものではないという前提に立ちますると、そういった潜在的な脅威といったものを基準にして考えることはどうも適当ではないんではないかというふうに私は考え始めているわけで、そういう意味で、四次防の背景、あるいは今後の防衛力整備あり方について検討しておるということで、私の頭の中にはある程度の姿はまとまりつつありまするけれども、庁内で審議をしておりませんので、これは今日申し上げるのは不適当であろう。ただ、現在お願い申し上げておるこの四十六年度からきておる人員増などについては、これは三次防におきましてできておる——まあ批判はあるかもしれませんが、よかれあしかれ、とにかくできております艦艇とか航空機とか、そういうものができてくるにつれて、三次防の考え方でそれに乗っける人員をお願いをしておる、こういうことでありますので、一応切り離して、今後の四次防あるいはそれ以降の防衛力整備あり方について、われわれが意見がまとまったところでひとつ大いに御議論いただきたいと思っております。
  18. 鈴木力

    鈴木力君 それではその意見がまとまるまで議論を保留しておきます。
  19. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは鈴木先生の御指摘になる意味は私どももわかるつもりでおりますが、今度の四次防というものが、御承知のとおり、中曽根私案といいますか、原案という形で一応世の中に発表されたわけであります。で、それを、同じ増強、同じ武器更新といいながら、全体計画においては相当額やはり減額しようと。で、そのことは、日本の経済の伸び率の問題もございます。それから、やはりいま御指摘になっておる周辺緊張緩和方向というようなものも考えながら、十年を視点として計画されたかねての防衛構想というものを後退させた。まあここらあたりに、御指摘の線に、私、沿った点もあるように思えるんです。いや、そうじゃなくて、それは三次防の足踏みでいいではないかと。四次防という段階で依然としてやはり防衛庁増強をしようとしておるのだろうと。まあこのあたりは、そういうふうに詰められるというと見解の分かれるところでありまするが、同じ自民党政府でありましても、やはりある程度の後退をそこに認めた、これはひとつお認めをいただきたいと思う。それから、いま久保局長が申しましたように、今回の法案につきましては三次防の要員である、これば御承知のとおりでございますから、くどい話は差し控えますが、やはり同じ補備、充実、更新といいながらも、弾力的に今後も対処していくことが望ましい、こういうことを防衛局長も申しておるわけでありまするが、私どもとしましても今後ともそういう姿勢で、この防衛問題、特に自衛力の漸増の問題というものはとらえてまいりたいと考えております。
  20. 鈴木力

    鈴木力君 第四次防を、中曽根私案として発表されたものをだんだん少しは縮小する、そういう姿勢であろうということはよく私もわかっているつまりです。ただ、そういういじり方の議論でなしに、もっと基本的な議論をしなければこの防衛問題の方向ということが出てこないだろうと私は思う。さっき、相手方脅威という局長の御答弁ですが、これは私はそのとおりだろうと思います、そうでないと防衛という議論が出て二ないわけでありますから。その相手方脅威ということばで表現をされている中身は、要するに相手方というのは社会主義諸国をさしているわけです。ところが、いま現実はどうかといいますと、たとえば、日中問題にしても、福田外務大臣も日中問題については非常に熱を入れていらっしゃる。政権構想の中でも発表されていらっしゃる刀いま、日中問題の解決ということが日本の国をあげての大きな政治課題の一つになっているわけですね。あるいは朝鮮民主主義人民共和国でも同じです。この朝鮮半島と日本との関係というのも、従来の関係と大幅に変わっていかなければいけない時期に来ておる。だから、私は、そういう情勢を認めるとすると、逆に四次防というのは、先ほど長官もおっしゃいましたような三次防を少し減らすような姿勢を持ってきて、そこで初めていま言ったような諸外国と日本との関係が調整できるであろう。ところが逆にそういう一方では、日中国交回復とかあるいは朝鮮との間の友好とか、いろいろなことが政治的に動いている時点で、なお、防衛だけは、相手はおまえさんの国ですよ、そして私のほうはアメリカとの協議事項だからはっきりは言えないけれども、軍備は三次よりは増強されていくでしょうと、こういう意味でしょう。そうすると、三次防よりもふえる部分というのは、相手側に言わせれば相手側脅威を与える部分になってくるわけです。この考え方でいいのかどうかということを私はいま非常に心配している一人です。ほんとうを申しますと、たとえば、私がこの三次防の設定のときからいけないと思ったのは、だいぶ前でありますが、私が中国に参りましたときに、ベトナムの北爆が、前の北爆が盛んにやられているときであります。私もハノイに行って爆弾をかぶったのでありますけれども、そのときに、当時生きておられた、いまなくなられましたけれども、陳毅外務大臣がこういうことをわれわれに言われました。ベトナムの北爆というのも、これはもちろん北京をねらっておるという一連のものでおる。それから日本防衛力は、軍備は中国をねらっておる。これはもうよくわかっておる。いつかあるいはやってくるかもしれない。しかし、中国はいまだかつて自分の領土以外に軍に出したという歴史がない。だから、かりに中国の領土内に日本の軍が来ても、それは領土内で戦う。領土内から追い払うということはするけれども、東京に飛行機を派遣するというつもりはさらさらない。そういうことをはっきり言われにたことがある。私は、金日成首相にもおととしお会いしました。そこでも、朝鮮側だってそういう話です。決して日本側にどうこうというようなことは、前の歴史はともかくとして、もう社会主義諸国はそういう態度をきちっと打ち出しているわけです。にもかかわらず、日本の軍備は相手側をそこに視点を置いておいて、仮想敵ということばを使うといやがると思いますけれども、結局いまの説明の筋をはっきり言えば、ただ歯に衣を着せて適当にごまかしたってしょうがない話です。そうすると、そういう状況をなお持ち続けて、カーブが急であろうと下であろうと、これはいまのアジアの情勢の進展といいますか、進んでいく方向にはまさに逆方向日本防衛が動いておる、こう見ざるを得ないと思うんです。その辺についての御見解はいかがですか。
  21. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 非常に重要な御指摘だと思います。私は、やはり日本自衛隊というのは海外派兵はしない。従来は、それこそ人の領土に行って、王道楽土といって満州国をつくってみたり、非常に侵略的な性格を持っておったわけでありまするが、戦争後の自衛隊というのはそういう性格のものではない。これは憲法上の問題ももちろんありまするが、いわゆる政めもするが守りもするという従来の軍隊とは違って、侵略を受けたときにだけ守りに立っと、このことはずっと一貫して自衛隊性格ということで、国民的にもだんだん認識をされておると思います。私は、もっと国連の場などにおいても、外務大臣なり首相なりが出てまいりまして大いにそのことを喧伝したらいいと思うんです。やっぱり日本のかつての侵略性というものはまだ世界の年長者の頭から去らないのですから、若い者には歴史としてやはり残っておるわけですから、日本の平和方途というものをもっと強く打ち出していく、そしてほんとうに自分の国に侵略があったときにのみ立つ自衛隊であるということを徹底する外交が必要だということは私まさに痛感いたしております。いま申し上げておる点は、要するに自衛力の整備ということと、それから善隣友好の外交を展開するということとは別だと思うんです。日本はもっと今後とも善隣友好の外交を推進し、平和主義を大いに世界に認識してもらうべく主張をすべきだと思います。しかし局地戦とか小ぜり合いとか、御承知のとおり地球上においてはいろんなトラブルがあります。いやそんな雰囲気はいまアジアにはない、非常に私その点は望ましいことだと思っております。したがいまして、いま久保局長も申し上げますように、自衛隊防衛力限界というものをどこに置くのか、これは今後の研究題、これはやはり重要な問題だと思います。これは私ども防衛庁においてももとより十分の検討をいたしてまいりますが、いわゆるシビルコントロールというたてまえからいって、こういう質問戦等を通じ、あるいはまたそれぞれの党政策という形で、防衛力限界について率直にお互いが検討し合うというようなことに持ってくことは全く同感であります。どうぞこれにはもうしばらく日をかしていただきたいわけです。いま現状において君たちは伸ばそうと言う、むしろそれは減らすべきだ、これも一方の意見としてわかりますが、これは見解の分かれるところでありまするが、極端にこれを伸ばそうというかまえでは、自民党政府としてもそういう考えはないわけでありまして、その証拠が、さっき申し上げたように中曽根案からだいぶん後退をしたものをいま考えておるということに見ていただけるかと思います。なお、今後この防衛力限界については私ほんとうに研究しなければならぬと思っております。ひとつこれにはしばらく時間をおかし願いたいと思います。
  22. 鈴木力

    鈴木力君 これはどうも、議論が進まないのは見解の相違ということになってしまうと、質問をやめて帰ったほうがいいといま考えるのですけれども、そういうわけにもいきませんでしょうが、そうじゃなしに、やはり大事なことは、私は米国協議をした——それは協議するなんということは、安保条約がありますから、私は安保反対論者ですけれども、私が反対しても、あるのだからしようが、ないけれども、それに基づいて協議をした。手続的には間違いはないのだ。しかしアメリカと協議をして、相手国脅威というものはこう定めておるのです、その相手国脅威というものの限界といいますか、限度といいますか、脅威そのものが国民には一切これは知らせるわけにはまいらない、国会にも言うことができないのです、言うことができない、どんなものかわからぬものに対する対応策としてこれなんだから、これを認めてくれ、こういう議論ですから、これはいつまでたったって、見解の相違じゃなくて、議論のしょうがないわけなんです、ここのところが。ほんとうを言いますと、もし必要であれば秘密会議をするなり何かして、ほんとうは一体第三次防の、たとえば戦車が七百両要るのだと。その七百両というのはどこに対して、何に対して七百両だということが出てこないと、七百が適当なのか、五百でいいのか、あるいはもっと、千なければいけないのか、全然ものさしがないわけです。このものさしを示さないで、適当だからと、こう言う。これが今日まで繰り返されてきたことなんです。それが日本防衛というものに対する国民の疑惑を非常に招いてきた一つの根源ではなかろうか。そういう気持ちで、私は三次防なら三次防の問題を見ていっても結局はわからずじまいだ、そういうことになるだろうと思います。  それから、さっき長官がおっしゃいました、自衛力の整備というものと外交とは別だと、こうおっしゃいますけれども、それはなるほど相手の国、相手国というとことばが悪いのですけれども、先ほどから言われました相手と目される、たとえば中国なら中国も、それは一応はそういうたてまえはとると思います。たとえば私は昨年十一月に周恩来首相にお目にかかっていろいろと政治的な分析もする会談にも加わりました。そのときにも、周恩来首相ははっきりとそれは言います。日本で軍備をどれだけつくるかどうかということは日本の問題であって、けしからぬけしからぬと言えば内政干渉になる。したがってそういうことを言うつもりはさらさらないという意味のことは、周恩来首相もそうおっしゃった。しかし軍備が中国を相手にするということになってくると、いい気持ちがしないことだけはわかるだろうと、こういう言い方ですね。そのとおりだと思う。そうしてしかも、海外派兵をしないのだからそれでいいじゃないか、こう言うのです。海外派兵をしないのだからそれでいいじゃないかということは、相手国に対しては、たとえば仮想敵国とこう言っていいかどうかわからないけれども、そういう種類の国側のほうは、おまえさんのほうは私のほうは信用していないぞという表現になるのです。そういうことはどうしても私は外交とは別だということにはならぬ。ならないで、むしろ積極的に日中問題を解決しようとする政治的な動きに対しては、まあ妨害とまで言うとことばが少し過ぎるかもしれませんけれども、ブレーキ役になることだけは間違いがない。だから、そういう情勢の変化というものとそれから日本防衛計画というものとが相当敏感に対応していくということが必要なのではないか。長官はさっき、減らすことも何次計画一つだとこうおっしゃった。これはまさにそうだと思うんですけれども、その減らす時期がいまじゃないか、そういうことをしつこくいま申し上げたわけなんです。しかし見解の相違ということになってしまうと話がおしまいですけれども、私はあくまでもこの点はどうも納得いきません。したがってあと局長さんのほうから、さっきのやつを数字でもう一度お示しをいただきまして、さらにその秘密の部分については秘密の部分なりにもお伺いすることにしまして、そのあとにひとつこの議論をもう少し私は続けてまいりたいと、こう思います。したがって、まあこの点についてはこれで終わっておきますが、ただもう一つだけはっきり、もう一つの観点から伺いたいのは、この防衛計画がこれからずっと続けられていく場合に、米軍との関係ですね。言わば日本にある在日米軍の規模とそれから日本自衛隊の整備計画との相関関係はどういうことになっておりますか。
  23. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 非常に大ざっぱな言い方を申しますると、過去における自衛隊の整備とそれから米軍の撤退の状況というものはこれはある種の関係があったと申せようと思います。というのは、たとえば陸上自衛隊の整備に伴って——過去においては二万、一万というような大幅な増強もありましたが、そういった整備に伴いまして、かつては二十数万ありました米軍はほとんど撤退をいたしております。それからまた、航空自衛隊の成長に伴いまして、防空関係、たとえばレーダーサイトがまず最初にありましたし、次いで防空関係の要撃機、米軍の航空機が漸次撤退をいたしまして、今日はほとんど残っておらないというようなことでは、ある種の相関関係というものはあったろうと思います。ところで、今日置かれている米陸軍と今後の問題というと、必ずしもそれほど密接ではない。と申しますのは、たとえば第七艦隊にかわるような海上自衛隊が整備されるはずはございませんし、補給その他の能力は、これは米軍のためのものであって、それを日本側が引き受けるほどのものはない。ただ部分的に申せば、たとえば佐世保がそうでありましたが、横須賀についても、米軍の海上艦艇の修理を日本側、これは自衛隊か民間かは問いませんけれども日本側が担当するというようなことはあろうと思います。したがいまして、部分的にはまだ米軍の撤退に伴って日本側が引き受けるというようなものはあろうと思いますけれども、きわめて顕著な代替をするような対象が今日はほとんどなくなってきたというふうには言えるんではないだろうか。
  24. 鈴木力

    鈴木力君 そうするとあれですか。今後は、在日の米軍が撤退をして軍事基地がなくなる場合には、それに肩がわりして日本自衛隊がそれに入るということはまずない、そう伺ってよろしいんですか。
  25. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 全般的な意味で申し上げたわけですけれども、個々の場合には、全部ないとは申し上げません。部分的にはございます。たとえば横須賀においてSRFの一部を海上自衛隊が整備をしたい。それを米軍が使う場合には海上自衛隊が支援するわけではありませんけれども、米軍が使用することはあり得る、共同使用の形であり得るということ、あるいはその他の機能でもって何らかのわがほうの自衛上非常に重要であるというような機能が残っておれば、それをかわるということはあろうと思いますけれども、大きな意味で、米軍が撤退につれて同時にわがほうがそれを引き受けるということはないと思います。
  26. 鈴木力

    鈴木力君 その辺もどうもはっきりしないわけですね。全体はそうではないが、個々の場合は——個々が集まって全体になるわけですから、そうすると、いまのところは個々というのは全体のうちの大体どの程度の個々なんです。
  27. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) これは具体的にはなかなか今後の検討にまたなければならないわけでありまして、明確にしにくい。しにくいというよりも具体的な見通しがなかなか立たないということでありますが、たとえば三沢とか厚木とかいう飛行場は昨年返還されまして、まあ共同使用の形は残っておりまするけれども、それは海上自衛隊あるいは航空自衛隊が引き継いでおる。たとえば将来横田などが返還された場合にどうなるかというような問題はありましょう。それから、あるいはいま稚内の問題が新聞に出ておりましたが、ああいったような機能は自衛隊としては非常に重要だという場合に、これはできれば、自衛隊側の希望としては引き継ぎたいといったような問題は出てまいろうと思います。
  28. 鈴木力

    鈴木力君 どうもお先まっ暗でして、将来どうなるというやつが全然わからないで、いまのことを議論しようとするものですから、どうも私は議論をする気持がだんだん薄くなってくる。議論というよりももう少し詰めていこうとする気持ちも薄くなってくる。ことし一年なら一年ということについても全然見通しがつきませんか。
  29. 長坂強

    政府委員(長坂強君) 突然のお尋ねでございますので十分なお答えができるかどうかと懸念いたしておりますが、お問い合せは、この米軍の基地の動向が今後一年間を限って見た場合にどのようになるだろうかというようなお問い合せと解してよろしゅうございましょうか。その場合、これはしばしばこの委員会におきましても上司の方々から御発言がございますように、近く基地、いわゆる防衛施設に関する検討の本部を設けまして、そうしてそこで従来の基地のあり方、今後における米軍の基地のあり方自衛隊の基地のあり方を含めまして、地方の都市計画等との関連におきましても検討を加えて一つの案を出して、こう、こういうことでございまして、まだそれらの着手段階でございますので、確たることは申し上げかねるわけでございます。
  30. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、たとえば先ほど局長から出ました、けさの新聞にも稚内のレーダーの返還の問題がありましたね。こういうものは日本側の自衛隊のほうは全然いままでも計画なしに、米軍のほうからぽかっとこれは返還される、これはいいことだとすぐ飛びつく、こういう形のものをいま繰り返しているわけですか。
  31. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 必ずしもそうではありませんで、米側が持っておってわがほうが持ってない機能もありますけれども、地域的に米側が担当しておって、他の地域は自衛隊側で担当しているというようなものもございます。それからまた、米側の持っている機能で、われわれとしては四次防の中で整備をしてまいりたいというふうに考えてあったものもあります。
  32. 鈴木力

    鈴木力君 だから、そうすると、この一年間に全然そのことはもうわからぬとこうおっしゃる。出てくればそれぞれの計画でやった、こういう答弁に変わるわけでしょう。どの辺がほんとうなのかさっぱりわからなくなってしまうのですね。
  33. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) その点は確かにおっしゃるとおりでありまして、米軍の現地、つまり在日米軍司令部も、実はなかなかどういう基地が日本側に返還される予定になっているのかつかめておらないのが現状であります。と言いますのは、これはアメリカ国内の事情になりまするけれども、国防省とおそらく財務当局の関係予算がしぼられてくる。そうして国防省と今度は陸海空軍省とそれぞれ協議をして急にきまってくるというような事態が実を申せば比較的多いということで、半年なら半年前にわかるものもあります。数ヵ月、それ以内のものもあります。長いのもあると思いますけれども、比較的、実を申せば短い期間に米側から申し入れてくる。したがって、かりに自衛隊側で引き継ぎたいと思っても、予算的な措置がなされてないし、自衛隊側としても意思決定ができないというような問題もございます。
  34. 鈴木力

    鈴木力君 わからないとおっしゃるとしようがありませんが、これもやはり、私はこの点についてもきょうはここまでにしておきますけれども、この次の委員会あたりまでに、全然ないならない、あればどことどこぐらいは年内にはできそうだ、そういう点については、もう少し点検をしてみていただきたいと思います。それで、それも一応残しておきます。  あと、いまの米軍との相関関係についてもう一つ伺いたいのは、前にこの委員会久保局長から、米軍と日本自衛隊は身分が違んだ、そういう御答弁があったですね。これはいわば関係ないんだという御答弁があって、私は関係ないことはあるかといったやりとりをしたこともあります。それは関係ないとおっしゃった意味は、任務が違うという意味だと思います。これは米軍は極東であるし、日本はわが国の防衛ということである。範囲から身分から違うという意味だと思いますから、したがって、あのときのあの御答弁はそのとおりだと思いますが、ところがそういう立場に立って、いまの米軍が撤退したあとに、自衛隊がそこに行って任務を果たすときに、それは一体どういうことになるのかということです。たとえば今度の、さっき聞きました稚内なら稚内の情報収集機関といいますか、それが米軍が撤退して自衛隊が入ってあのあとを受ける、その場合は、一体任務はどういう関係になるのですか。
  35. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) もちろん一般的に申しますれば、米軍は極東日本の安全に寄与することになりますが、個々の施設を見ますると、それは日本だけのものに使われる場合もありましょうし、極東の安全というところにウエートの高い基地もあろうと思います。たとえば日本のレーダーサイトも、かつては米側が運用しておりましたけれども、これはあくまでも日本防衛以上の何ものでもない。そうしますと、いまの稚内などにつきましても、これは日本防衛、ほとんど主として日本防衛といわざるを得ないというふうになっております。
  36. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、米側でいままで必要としてきた情報提供の任務は、今度の自衛隊の、稚内でやるここの自衛隊にはその任務は持たないわけですか。
  37. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 米側がやっておりました機能の全部を実は引き継ぐわけではございません。ただ、米側がやっておった機能についても、ややあるいは広い範囲があったかもしれませんが、少なくともわがほうが引き受ける機能といいまするものは、日本の安全、日本防衛に役に立う範囲のものであります。
  38. 鈴木力

    鈴木力君 これも、稚内の今度のレーダーの米軍からの引き継ぎですね、その状況もひとつ具体的な資料として私に出してくれませんか。それをちょうだいしまして、この次にいまの問題もさらに御質問申し上げてみたいと思います。私はどうも新聞を読んだ限りにおいては、米軍の肩がわりを自衛隊がやるように見えてならないんです。そうすると、日本自衛隊の任務と、米軍の任務がそれぞれおのずから違った性格のものが、きわめてあいまいに、肩がわりになってしまう、同一になってしまう。その辺がたてまえがどうもひとつ私は疑問なんです。と同時に、もう一つは、たとえば、米軍が極東の戦略的な配慮から、稚内なら稚内にレーダーを置いて情報収集をやっておった。これは明らかにねらっているところははっきりしているわけです。さっき相手方脅威ということで、ほぼアメリカと協議してきめた事項であれば一致すると思いますけれども、そうすると日本自衛隊の任務も、またそちらのほうに濃度が濃くなるのかという疑問も持ちます。これらの点については、どうも新聞を読んだ限りでどうこう議論してもいけませんから、稚内のレーダー基地の引き継ぎ、配置、それらのものを資料としてちょうだいいたしまして、この次にもう少し伺ってみたい、こう思います。いまの将来の防衛計画構想、これがわからないと、どうも私はいま三次防それ自体の議論がしにくいということをさっき申し上げましたが、それから米軍と日本自衛隊との将来の相関関係、これらの点につきましては、きょうはこの程度にいたしまして、この次になお御質問申し上げたいと思います。  きょうはちょっともう一つ違ったことをお伺いいたしますけれども、自衛官の退職後の処理についての状況をひとつ伺いたい。これは率直に申し上げますと、天下りの状況がどうなっておるのかですね。
  39. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 先般国会へ資料として提供をいたしましたが、昭和三十八年度から四十六年度までの一佐以上の退職者は二千百十二名おりますが、そのうち自衛隊の調達実施本部関係で登録しております会社に就職しておる者が六百七十一名、それ以外の会社に就職しておる者が八百五十四名ということになっております。
  40. 鈴木力

    鈴木力君 ちょうだいした資料は、一佐以上になっているんですね。それ以下の人たちはどういう扱いになっておりますか。
  41. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 一佐以上と二佐以下、これは一般職で申しますと、三等級以上と四等級以下という関係になります。四等級以下につきましては、比較的承認関係その他の手続が非常に簡略化しておりまして、したがいまして、二佐以下につきましては、私のほうに特に報告も参っておりませんし、またその在職中の職務権限能力というものとの関係から見まして、さしてそれほど真剣に関連会社との問題を考えなければならないというほどのことでもございませんので、したがいまして、これは幕僚監部以下でその承認関係をいたしております。内局にまいります案件はすべて一佐以上となっておりますので、統計上は一佐以上になっております。
  42. 鈴木力

    鈴木力君 承認という事務の立場から見れば、そういうことになるだろうと思いますが、事実上の、一佐以上の自衛官の就職する場合には、ただ単なる承認だけしかやっていなんですか。
  43. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) これはまず陸海空自衛隊関係で、おのおのこの就職先の会社のポスト並びにその雇用条件というものと、在職中にその自衛官がどういう仕事をやっておったか、その会社との関係はどういうことであったかというようなことをいろいろ十分調査しまして、各幕僚監部の以下の段階でこの審査をいたしております。それから、きわめてデリケートな問題で、これはさらに慎重審議を要するというものが長官あてに参りまして、その補佐機関であるわれわれが具体的な審査をいたしておるということになっております。二重審査というかっこうになっております。
  44. 鈴木力

    鈴木力君 私が聞いていますのは、審査以前のことです。そうしますと、何ですか、就職する人が自分で就職口を見つけてその審査に乗ってくるわけですか。
  45. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) たいへん毎年退職者が多いので、防衛庁として一々全員について就職のお世話をするということはなかなか困難でありまして、実際にはやはり、在職中、停年前の段階になりまして、自衛官が具体的にいろんな広告を見て、そのほうに行って会社の状況を調査するとか、あるいは在職中にいろいろ勉強した結果、どういう会社がいいであろうかということをかねがね思っておって、みずから就職口をさがすということが大部分でございまして、その意味におきましては必ずしも——いわゆる登録会社以外の会社に入っている者が全体の六割を占めておりますが、したがってこれらの者はほとんど個人の縁故による就職というふうに御理解願って差しつかえないと思います。
  46. 鈴木力

    鈴木力君 登録会社に就職する者も、個人が就職口を交渉をして、あと審査に出すんですか。
  47. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 登録会社につきましても、みずからその会社へいろいろ就職のお願いに参ることはもちろんたくさんございます。その場合といえども、この法令にありますように、過去五年間の本人の勤務の内容がその会社と非常に関連があるという場合におきましては、自分一人で判断するわけにもまいりませんで、すべてそれは上司に申し出て、あるいは人事当局の審査を経て判断を決定するということになっておりまして、自分かってに決定するというわけにはまいりません。
  48. 鈴木力

    鈴木力君 どうもその辺をはっきりしてもらいたいわけですよ。私にはわからぬですね。私はその就職口をさがすのは自分がやるのかと言ったらそうだとおっしゃるわけでしょう。そこで、登録会社の就職口も個人がさがして、そしてそれからあと、いいかどうかの審査を受けるのか、さがす以前にだれかに聞いてから就職口をさがすのか、どっちですか。
  49. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 登録会社関係で自分で就職口をさがす場合もあり、また各幕僚監部その他現地の総監部等におきまして援護係というものがございますが、この援護係のほうで世話をする場合もございます。第一次的には、自分でさがし得る者はなるべく自分でさがしていく、どうしてもその糸口のない人は何とか国のほうでも少しめんどうを見ようということでやっております。その際に、現在の法令の規定並びにその審査条件等につきまして十分人事係のほうに協議し、そしてその就職が可能であるかどうかということを十分協議の上で就職口を決定していくという手順になっております。
  50. 鈴木力

    鈴木力君 それでは、ちょうだいした資料のうちの三十八年から四十七年四月十五日までという名簿がありますね、これはほうとうは私は個人に触れたくありませんで、名前でなくて番号でもいいですけれども、ここにあるうち、御自分でさがして審査を受けたのはどれとどれで、それからさっきの援護係ですか、そちらで就職口をさがした方はどれとどれとどれ、それを教えてください。
  51. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 私も三十八年度からずっと人事をやっているわけではございませんので、個々のことにつきまして逐一どれがどうであるということはわかりませんけれども、これらの者はおおむね役所のほうに会社から申し出があってそういう地位についた者、あるいは役所のほうからお願いしてそういう地位についた者ということになっておりまして、おそらくこれは個人でさがしたものというよりも、いろいろ縁故関係があって、特にそのほうから個人に申し出があって、役所のほうでその中に立ってあっせんをしたというものが大部分だろうというふうに考えます。
  52. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、さっきの御答弁はどういうことなんですか。どうも具体的に聞くと全部こちらで世話をしたということになり、具体的に聞かなければ個人がやってあとで審査していると答える。どれか一つ答弁でいかないと私のような頭の悪い者はわからぬですよ。
  53. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 一佐以上は毎年たいへんたくさん退職者がございますので、それらについて一々われわれのほうで世話をしておるというわけではございませんが、いろいろ個人個人で縁故で行っている者、あるいは個人で就職口をさがして行く者等はたくさんございます。ただ、ここに出ている表のものはすべてこれは、すべてと申しますか、大体最高幹部クラスの者であり、しかも就職先の地位が役員であるというような非常に有利な条件と申しますか、比較的恵まれた再就職をいたしておる者でございまして、これらの者につきましては、大体向こうのほうから特に指名をしてこの人に来てほしいという申し出があった者、あるいはこちらからその会社に、こういうりっぱな人がいるが、役員にどうであろうかと申し出た者等のものがここにある十九名という数字になっておるというふうに考えます。
  54. 鈴木力

    鈴木力君 やっぱりはっきりしてください。この十九名のうち、会社側から指名のあった者はどなたとどなたとどなた、名前でもいいし、番号でもいい。それから会社側からの指名ではなしに、防衛庁の側から会社側にこういう人を使ってくれといったのはだれとだれとだれか。
  55. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 私の関係した範囲で記憶をたどって申し上げますと、おそらく永盛空将とかあるいは一番最後の大中一佐とかいうようなところは、向こうからその人の特別の技術を活用いたしたいということで申し出たものであると記憶しております。こちらのほうから特にお願いいたしたというようなものは、一番上の天野良英、それから三番目の池田海将、それから五番目の相生海将、その次の佐藤空将のような方は、私のほうから会社と話しましてそういう地位についたということ、私の記憶で申しますとそのような状況でございます。
  56. 鈴木力

    鈴木力君 会社側から指名があったのはわかったんですが、防衛庁側から会社のほうに持ち込んだ方、持ち込まない方があるというが、持ち込まない方は、それぞれの個人がみずから就職口を見つける能力があった。いまおっしゃった天野さん、池田さん、この四人の方は就職口が見つからなかったので防衛庁側が世話をした、こういうことですか。
  57. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) すべての者を全部これはやっていたわけではございませんので……。
  58. 鈴木力

    鈴木力君 いや、あなたのやった部分だけ聞いている。
  59. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 断定することはできませんが、私の記憶では、先ほど申し上げたようなこういう最高の地位までつかれた方々で、私のほうである程度お世話したというものでございまして、その人は特にこの中で技術屋さんですね、技術的な才能が特に高い人はむしろ会社のほうからその技術を生かして会社のほうで活用いたしたいというふうに申し出があって、私のほうで就職を承認したというものでございます。
  60. 鈴木力

    鈴木力君 だから会社側から技術がほしくて申し出があったという人はわかった。それ以外の方のうち、いま四人あげられたでしょう。あなたのほうから会社側に持ち込んで就職を頼んだ。頼まない方と頼んだ方の相違はどこかと聞いたんです。最高の地位にあったら頼んだというふうに、あなたの答弁ではそういうふうに聞こえるが、私はそうではなしに、ほかの人は就職口が自分で見つかったが、この人たちは見つからなかったから頼んだ、それなら話はわかるが、最高の地位にあったから頼んだ。そうすると、最高以外の人は頼まなかったのか、こうなってくると問題が出てきますね。
  61. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 一般的に申しますと、非常に……。
  62. 鈴木力

    鈴木力君 あなたの答弁はわからなくなってしまうから、そこで名前で言っているんですから。
  63. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 特別の電子関係とかあるいは機械関係の技術を持っておって上の地位にまでなった人、こういう方はやはり会社がそういう技術能力、管理能力において……。
  64. 鈴木力

    鈴木力君 そこはわかった。
  65. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) ですからそういうものでない、いわゆる昔の歩兵、砲兵とかいうようなもので上のほうの地位までなった方、先ほど申しましたような方につきましては、やはり就職の問題についてこちらからある程度お願いしてこのような就職先を見つけたということが言えると思います。一般的に、いわゆる昔の軍人で特殊な機械とか電気の技術能力のない人、一般管理能力しかない人、そういう方は、どちらかといえばこちらのほうが会社のほうにお願いいたしておるというふうに申せると思います。
  66. 鈴木力

    鈴木力君 どうも、もう少し簡単に答えていただくとわかるのですがね。技術能力のある人は会社側から頼んできて、これは承認したと、これはもうそれで、あとでまあいい悪いは出てくるかもしれませんけれども、それははっきりするわけでしょう。それから最高の地位の方は頼んだ。それ以外の頼まない方があるでしょう。会社側からも要望されない、それから防衛庁側からも頼まない、その方がここに数人いるわけですよ。だからそういう人たちはどういう事情だったんだということを聞いている。
  67. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 大体これらの方は非常に就職した時期が古いのでございまして、ちょっとこの表にあるものにつきましては一々どの人がどうであったであろうということを私は特に断定できないのでございますが、   〔委員長退席、理事町村金五君着席〕 まあ先ほど申しましたように、特殊な技術があり、しかも上のほうまで昇進して管理能力もあるという方は、どちらかといえば会社が非常に希望して求める。そうでない方につきましては、私のほうも——もちろん本人が役所のほうの世話にならなくてもみずから就職をさがしていく人もあります。ありますし、どうしても個人では就職口をさがし得ない人だけにつきまして私のほうであっせんしておるということでございまして、この役員の個々のものにつきましては、私もすべてつまびらかにいたしておりません。
  68. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) この御指摘になりまする点は非常にわかりやすいことですが、古いからどうもちょっと一々わからないと言っておりますが、私ども防衛庁に参りましてやはり痛感しますことは、停年でやめたあと、全く第二の人生を歩む道、門が狭いと、こういうことで、特殊な技術を持っておる者はいま申しますように解決しますが、あまりそういう特徴のない者、特質のない者という者を一体どうするのか、これはやっぱり防衛庁側が平素の兵器生産業者に向かって、お得いであるからということから押しつける、これはもう率直なところだと思います。まあ非常にこれはつらいことでありまして、押しつけざるを得ぬと、これはたまたま人事局長も言いますように、重役になっております。これはまあもともと防衛庁でも指導者であり、能力もあった人たちですが、ほかのほとんどはわずかの給料で顧問とか相談役というようなことで、あまり特定の仕事も与えられないというような事情にあるということも、私ども聞いております。で、まあ全くそういうことが一体いいか悪いか、これは私好ましいことではないと思いますが、そうかといって、あとのまだお互いの生命力が延び、生活力が旺盛であるというのに、就職もできないということでは、全く子女の教育にも差しつかえるというようなこと等がありまして、多少のここに無理があるということは、ひとつお察し願いたいと思うんです。そこで問題は、私、あとの問題になろうかと思いまするが、やはりそういう押しつけがひいては産軍癒着式の弊害を生むのではないか、これはやはり重要な点だと思います。そこで、私はまあ今度赴任しましてまだ日は浅いわけでありまするが、そういうことはやはり極力世の中の誤解を避け、正しくいく必要があるということで、今後とも兵器の能力、性能等々の追跡調査といいますか、ときどきこういう委員会でも問題になりまするが、どうも思ったほど兵器自体の性能がよくないとか、あるいはこわれやすいとか、そういうことがあるならば、徹底的に追跡調査をして疑惑のないようにしていく、こういうことに十分配意をするように部内に言うておるわけでありまするが、まあ結論的に言いまして、全く二度のつとめの就職の門は狭い実情でございます。   〔理事町村金五君退席、委員長着席〕 そのために関係をたどって無理にそれをのませなければならぬという非常に苦しい立場にあることも事実でございます。
  69. 鈴木力

    鈴木力君 その気持ちはよくわかるのですけれども、これはもう天下りということになりますと、別に自衛官だけを責めるわけにもいかないので、まあ日本政府全体がそういうことをおやりになっていらっしゃる。それ全体がどうかというほんとうは議論のうちの自衛官の部分だと、私はそう思っております。だが、やはりいままで伺ってみただけでも、一佐以上の方は非常に内局でも扱っていらっしゃるが、その下のほうはそれぞれのまあ担当のセクションがあるだろうとは思いますけれども、あまり関心を持っていらっしゃらない。大体にね、特にこのことばじりをつかむわけじゃないけれども、いまの局長答弁でも、最高の地位についた方だから世話しなければいけない——最高の地位までいった人がどっかに就職をしなければならないほどかわいそうな立場なんだろうかどうかということも一般の国民からいえば納得できる話じゃないだろうと思うのですよ。  話はちょっと横道にそれますけれども、これはむしろ長官の御心境を伺いたいわけですけれども、たとえば私の県の雫石の上空で、去年ですか、全日空機の墜落事故があった。あのときに責任をとられた空幕長は上田さんですか、上田空幕長が責任をとられてやめられたわけです。ところが、現地ではもう一周年もくるということで、被害者といいますか、遭難者の遺族と現地とで合同の慰霊祭をやろうというようなそういう動きが一方にあるわけですね。そういう時期に上田空幕長は伊藤忠に就職をした。これは伊藤忠にいったことがいい悪いという問題じゃないのです。現地の感情から言うと、やはり防衛庁さまさまだと言う。すっきりした気持ちでは見ていない。しかも、ある週刊誌なんかですと、長官みずからがお世話をした、そういうことも出ておる。この自衛官の就職といいますか、再就職ということが、なるほどその人たちのめんどうをみてやるという気持ちはよくわかりますけれども、しかし、全体的にいいますと、そういうことが国民感情を配慮した場合に妥当なのかどうかということですね。というのは、私はこの上田さんの場合は極端な例だと思います。ああいう方もまだ慰霊祭も済んでいないうちにもうすでに就職口もきまるのだ、そうなってきますと、自衛隊の中のといいますか、自衛官の中の相互協力の美風はよくわかるけれども、国の機関としては一体どうなんだ、そういう見方がある。これはひとつ長官のこの辺についての所感を伺ってからもう少し伺いたい。
  70. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 先に、二佐以下はどうしておるのかと、関心が薄いのじゃないかということをお答え申し上げたいと思いまするが、要するに、一佐以上については防衛庁の内局において取り扱うわけでありまするが、二佐以下については現地部隊で、就職のあっせん等についてはやはり事こまかに相談に乗るわけであります。比較的まあ地位が低いといいますか、階級の低い層はわりあい就職率がよろしい。特に士とか曹のクラスというのは、やはり工場等の需要が非常に多うございまして、これは心配しなくとも、ああいう指揮命令に従って規律の厳正なところで訓練されたということを条件に採用してくださる雇用主というものは非常に多いわけです。ですからこれらはいまのところ、むしろ需給の原則からいいまするならば需要のほうが多い。で、二佐以下の中堅幹部、これなどは現地部隊であっせんをして大体事が足りておる、こういうふうに私ども承知をいたしております。一佐以上は、さっき申したように、人事教育局長等々内輪が相談に乗っておるというわけでありまして、階級の低い者をなおざりにしておるということはございません。むしろこれらの就職のほうに重点を置いておることは、これはもう今後の募集業務推進の上からいっても大切なことでありまするので、その点は御了解を願いたいと思います。  それから上田元空幕長でありまするが、これは私、前、防衛庁長官をしばらくやったことがございますが、そんなころから、その人物の評価等についてはいろいろ耳にしておりました。それからまたその後赴任をいたしますと、これは本来統合幕僚会議議長にまでなるだけのりっぱな男であるというわけで、口をきわめてみんながほめるのですね。それから私、実はそこにおられる源田議員にもいろいろ話を聞いてみましたところ、源田議員等も、全く彼は無過失責任といいますか、一つの最上長としての責任をとってやめた、またそして一軒一軒遺族のところを歴訪して、お悔みを言うと同時に、お参りをして歩いた。これは全国行脚をやったもののようです。それから私、実は直接会ったわけです。どういうふうにするのだと言ったら、本人は、実は自分はまだ育ち盛りの子供もいるし、二度のつとめをしなければなりません。けれどもできるならば自分は防衛庁出入りの業者とか、そういうところへは行きたくない。自分は中国語が実はできます。どの程度通用するかはわかりませんが、中国語には多少自信があります。それからまた英語も、へたですけれども、どうやら商社マンとしても何をやってもできるように思います。だから私は防衛庁の出入り業者というような立場でなしに、できれば今後いわれるところの中国との貿易とかあるいは東南アジア、こういったところを舞台にして少し働いてみたい、こんな希望がございました。それはまことにけっこうじゃないかと、そういう能力があるということならそういう能力があるように、ひとつ私も一、二近づきがないわけじゃないから口をききましょうと言っておりまするうちに、まあ内局のほうで話があって、伊藤忠にきまったということを聞いたわけです。私はちょうど中部地区で、あの糸へんの盛んなところであります。私の選挙区自体も非常に織物の盛んなところで、たまたま伊藤忠の社長というのが、その糸へんの関係で私、常務当時からよく知っておりましたので、この男は自衛隊防衛庁へ出入りというようなことにしてくれるな、本人は中国大陸でも東南アジアでもバックにして、まだ年も若いから大いに働きたいと言っておるということを私率直に申したわけです。いまそういう大体含みで、彼の場合は会社側も使おうということを言っておってくれます。まあ今後どういうことになりますか、私どもあまり事こまかにはわかりませんが、本人の意思は私は率直に実は伝えてあるわけでありまして、まあこれは一周忌も済まないうちに、本人だけが適当な職について困るではないか、一つの社会道義の上から御指摘になる意味はわかりますが、本人もずっと遺族のところを歩きましたあと、まだ育ち盛りの子供が数人あるということになりますと、そういつまでも無禄のままで遊んでもおられないというような事情もあったわけでございます。まあその辺についてはひとつ御了察を願いたいと思います。
  71. 鈴木力

    鈴木力君 経緯はわかりましたけれども、せっかくそういうりっぱな人が一番最後の就職でみそをつける、という言い方が悪いかもしれませんけれども、せっかく遺族を回って、遺族からほめられるような行為をやった人が、その就職の時期と言ってもいいと思うのですがね、選び方や発表のしかたによって全部それをひっくり返してしまったといったような、そういう失敗は認めざるを得ないだろうと思うのです。と同時に、育ち盛りの子供があるから就職のお世話をなさる、その気持ちもよくわかるのですけれども、これは公務員制度全体の議論をしなければいけない問題で、別に自衛官だけどうこうというわけにはまいらない問題ですけれども、どうもやはり最高の地位にまでいった人が、子供があるから食えないのだという、はたしてそうだろうかということなんですね。これは年金制度とか退職金制度とか、それらのものがあるわけです。もしそうなら、そういう面でもう少し検討していかなければいけないのであって、再就職の問題、天下りと通称いわれておる、そういうことがいわば必要悪ということで通っているんじゃないかと思いますけれども、そういう形でいつまでもまかり通っておる。これは私は、やはり従来こうしてきたから、ずるずるこういくべきだという論理に立つべきではないという感じがいたしますし、特に関連産業といいますか、出入りの産業に、そういう企業に平気で就職をしていく、それはもちろんそのことによって直接どうした、こうしたという事件が、これは起こっているか起こっていないかだけの話なんです。しかし、いずれにしても、そういう縁故というものが結びついていることは間違いないわけです。大体公務員の立場として、そういう業務と縁故のある企業とが結びついてはいけないというのが、これは正しい姿勢なわけです。それがあたりまえになってしまって、みなにこうやってしまっておる。そういうことについてはどうしても私は納得できない。これは審査したからどうだとかいうわけにはまいらないだろうと思います。この法案にも審議機関ですか、審査機関を提案しておる。しかしほんとう言ったら、長官が審査をして認可をする制度があるのでありますから、まず防衛庁みずからがこれを自粛できるという気持ちがあれば、よそさまにたよる必要はないし、よそさまにたよるとするならば、自分のところで長官が任命した、そこでつくった、こしらえた機関で審査したからというようなことでは、ますますこういう傾向に拍車をかけるだろうし、道をつくるだけだと、こう思います。この辺について、私は十分に再検討する必要があると思います。直接この出入り業者、産軍協同になるのかどうか、そういう点から見ても、統計を見ただけでもこれはよほど説明をしないと、軍と企業とが癒着しているというふうにしか見えません。何といっても、何年度の統計を見ましても、役員にはなっていないけれども、顧問とか何とかということになっておる。閑職だからいいと言う方もあります。一方から見れば、しようがないから、自衛隊の仕事をしているのだから閑職のところに置いて、言うことを聞いて月給を払おうかと、こういうことにもなるのですね。そうして三菱重工業とか、川崎重工とか、東京芝浦とか、こういうところから順序に全部並んでいる。そういう点ではどうも私は、いまのこの行き方というものは、これは自衛隊ことばかりではない。私は他の全体の公務員の、しかも上級公務員の天下り問題については、同時に議論すべき問題だろうとは思いますけれども、特に自衛隊の性質上、この点については再検討するべきだ。それから直接関係があるかないかと、こういうことなんですがね。まあ伊藤忠ということばが出たんで、その特定のところを名指して言うことはあまり好きじゃありませんからそういうことは申し上げませんけれども、きわめていまの企業は間接に結びついていることは皆さん御承知でしょう。そこで、一つの例として若干伺いますけれども、いま何億円以上というランクに、あまり統計には出ておりませんが、自衛隊の食糧品を納入している会社にどういう会社がありますか。
  72. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 自衛隊の食糧は、大体は原則といたしまして地方調達でございまして、各現地の部隊で調達するというのが大体のたてまえになっております。ただし非常用食糧のかん詰め類は一手に調達いたしまして各部隊に配置いたしております。
  73. 鈴木力

    鈴木力君 そのいまのかん詰めの話が出ましたから、かん詰めを納入している会社はどういう会社がありますか。
  74. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 非常用食糧のかん詰めば鳥めしかん詰め、白めしかん詰め等でございまして、これは指名競争入札できめてございます。私の記憶では、日本冷蔵株式会社、それから滋賀県にありました何か協同組合が入札になったことがあるように記憶しております。
  75. 鈴木力

    鈴木力君 いまのこの白めしのかん詰めと鳥めしのかん詰めと、まあ椎茸めしもあるでしょう。椎茸めしというのもありますな、かん詰めで。まあ一般的に言うと話が、時間が長くなって恐縮ですから、せっかくいま三つのかん詰めの話が出ましたから、この三つのかん詰めの話で伺いますけれども、指名入札をなさいましたね。それで、指名入札をなさいまして、日本冷蔵とそれから滋賀県の何とか協同組合がきたこともありますと、指名入札というのは一体何社ぐらいを指名して入札をなさるのが常識ですか。
  76. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) まあこの場合には何社であったのか記憶しておりませんが、大体四、五社ぐらいが指名されて、その間で競争入札されるものと思います。
  77. 鈴木力

    鈴木力君 最近ではいつ入札なさいましたか。
  78. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 四十六年度分につきましては、二月か一月ごろではなかったかと記憶いたしております。
  79. 鈴木力

    鈴木力君 二月に入札なさったのに何社かもうお忘れなんですか。
  80. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 私の担当は装備調達の基本全部を担当するわけでございますが、入札自体は調達実施本部というところがやりますので、一々の契約案件については記憶がない、記憶もございませんしまた十分見てもいないわけでございます。
  81. 鈴木力

    鈴木力君 それじゃ、その調達実施本部おりませんか。
  82. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) いまちょっと来ておりませんが……もし御必要があれば午後でも呼びましょうか。
  83. 鈴木力

    鈴木力君 それじゃあと午後にします。
  84. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 本案に対する午前中の審議はこの程度にいたします。  午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      —————・—————    午後一時三十分開会
  85. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  86. 鈴木力

    鈴木力君 あまり話を広げないで、時間を節約するためにさっき出ましたかん詰め、あれに一応限って御答弁ください。  それで、白めしかん詰め、鳥めしかん詰め、椎茸めしかん詰めですね、非常食としてのかん詰め、この三つの指名入札の相手、それはどこどこか、言ってください。
  87. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 白めしかん詰めは九社ございます。鳥めしかん詰めは十六社、椎茸めしかん詰めは八社、肉めしかん詰めというのが別途ございましてこれは八社、それから赤飯かん詰めが四社ということになっております。  この中で四十六年度に限りまして落札いたしましたものを申し上げますと、白めしかん詰めは、滋賀県経済農業協同組合連合会……。
  88. 鈴木力

    鈴木力君 途中ですがね、落札でなくって、指名の対象にした社を全部言ってください。
  89. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 全部でございますか。
  90. 鈴木力

    鈴木力君 はい。
  91. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) それでは、白めしかん詰めにつきまして申し上げますと、九州食糧品工業、土谷食品株式会社、滋賀県経済農業協同組合連合会、日東食品製造株式会社、日東缶詰株式会社、宝幸水産株式会社、岡山県食品株式会社、日本冷蔵株式会社、コープ食品株式会社、山形食品株式会社、鳥めしかん詰めにつきましては、九州食糧品工業株式会社、鳥取缶詰株式会社、堀之内缶詰株式会社、株式会社山政、愛媛県青果農業協同組合連合会、土谷食品株式会社、大洋食品株式会社、滋賀県経済農業協同組合連合会、日東食品製造株式会社、日東缶詰株式会社、宝幸水産株式会社、岡山県食品株式会社、日本冷蔵株式会社、三重長野缶詰興業株式会社、コープ食品株式会社、山形食品株式会社、椎茸めしかん詰めにつきまして申し上げますと、九州食糧品工業株式会社、鳥取缶詰株式会社、株式会社山政、土谷食品株式会社、大洋食品株式会社、滋賀県経済農業協同組合連合会、日東食品製造株式会社、岡山県食品株式会社、以上でございます。
  92. 鈴木力

    鈴木力君 いまあげられました社のうち、自衛隊の幹部の就職している会社がありますか。
  93. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 比較的会社としては小さな会社でございまして、おそらく、二佐以下では就職している人があるかもしれませんけれども、一佐以上に関しましては特に私のほうで就職審査をした事例がございません。ただ、百貨店関係で代行店になっているものもあると思いますが、私の記憶では、伊勢丹に十年ぐらい前にやめた需品補給処長の中西さんが現在でもおられるというふうに記憶しています。
  94. 鈴木力

    鈴木力君 どこがどうしたということを特に伺うつもりもありませんから……。しかし、自衛隊の幹部の今後の就職はぼくはやめるべきだという考え方ですけれども、急にやめるわけにもいかないとすれば、こういう点もやはり調査をしていただきたい。それはどういうことかといいますと、この会社は直接防衛庁取引会社ではありませんと、こうよく表現をして、そういうランクをしている会社がたくさんあるわけです。ところがその背後に——その背後にというか、そのランクをされた会社がいまあげられた会社に原料をつぎ込んでいるんですね。そういう形でつながっているやつがあるはずだ。これは「あるはずだ」と申し上げておいたほうがいいかもしれない。そういう関係でつながっておって、そしてどっかのほうに、関係がないからということで就職しておいて、そちらのほうから原料を通じて、回り回って、政府答弁みたいな順序でつながっていることがよくあるわけですから、これはひとつ調べておいていただきたいと思います。これはあとでまた質問するという意味じゃありませんけれども、しかし将来問題を起こす可能性がありますから。  ついでですからかん詰めについてちょっと伺いますが、非常食としていまかん詰めを調達なさっていらっしゃるわけですが、この調達されておるかん詰めというものは、先ほどは三年と言いましたですか、有効期間は。
  95. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 非常用食糧は毎年調達いたしまして、二年間保存いたしまして、三年目にそれを隊員に——もしその時点までに消費いたさず保存されている場合は、三年目から隊員に食事の一部といたして渡します。
  96. 鈴木力

    鈴木力君 それ以外には処理した事実はありませんか。
  97. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) この件は先般も決算委員会でお尋ねがあったわけでございますが、私のほうで方々わがほうの部隊の中を全部調べましたけれども、横流ししたとか、あるいはそのままの形で処分したということはございません。たまたま、たとえば演習時に非常用食糧を昼食の一部として渡す場合がございまして、ところが隊員が、実はその非常用食糧を食べずに近所のラーメン屋でラーメンを食べてしまって、かん詰めをそのまま自分の背のうに持っていて、家族に会ったときに家族に渡したというような場合などはあるようでございます。
  98. 鈴木力

    鈴木力君 まあそのとおりと伺っておきましょう、決算委員会じゃありませんから。そして、あとのほうの自分の食べる分をだれか知っている人にやったなんということは、これはあたりまえのことですから、それはいいですけれども。  それと、量は一体——毎年これは注文しているわけでしょう。どれくらい毎年購入しておりますか。
  99. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) 非常用糧食は合わせて二十日分ということになっております。かん詰めの御飯で四種類ございまして、そのほかに乾パンが一種類ございます。蛇足でございますけれども、非常用糧食のかん詰め御飯のほうは、非常時、災害時におきましては、きれいな水でない、つまりどろ水とかあるいは細菌の入った水とかいうようなものを使いまして、ともかくお湯さえわかせばその中へかん詰めを入れれば食事ができるというので、災害時の場合には非常に役立つということで、二十日分は常に用意しておくということになっておるわけでございます。
  100. 鈴木力

    鈴木力君 隊員一人で、かりに鳥めしなら鳥めしですね、一食に何個食べる計算なんですか。
  101. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) このかん詰めば全部一食一個分を基準にいたしております。このほかに若干の副食物を添加いたします。
  102. 鈴木力

    鈴木力君 私の聞いたところでは、白めしが十万かん、椎茸めしが六十万かん、それから鳥めしが六十万かん、そのほかに肉めし、それらがあるわけです。一人一かんということから見ますと、いまの隊員の数から割ってみてもどうも二十日分というのは数が合わないんです。私の聞いた八十万かん、六十万かんというのが間違いであれば正しい数字を教えてもらえばいいです。
  103. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) このかん詰めと乾パンを合わせまして二十日分でございます。二十日分でございますから、一種類についておおよそ四日分ということになるわけでございます。四日分でございますからそれの三倍いたしまして十二食分という量になるわけでございます、一種類につきまして。で、先ほど先生おっしゃいましたように、白めしかん詰めは四十四年度は八十三万食購入いたしております。これは陸上自衛隊分だけでございますが。四十六年度は少し、白めしのかん詰めだけでは評判悪いものですから、鳥とか椎茸御飯のほうをふやしまして、白めしかん詰めにつきましては五十七万二千八百食に減らしてございます。  なお、補足申し上げますと、別途海のほうでは、艦船の定員に対して十五日分、陸のほうは二十日分でありますが十五日分、それから空のほうは営内者定員の五日分ということを基準として購入いたすことになっております。
  104. 鈴木力

    鈴木力君 その実績はどうですか。非常食を二十日分なら二十日分確保して、そして長年ずっと見てきて、使われた実績は、非常食として実際には何日分消費しておりますか。
  105. 黒部穰

    政府委員(黒部穰君) いま手持ちの資料にそれはございませんが、実際に災害あるいは非常用にどれだけ現実には消費したかという資料がございますので、後ほど調べまして御報告させていただきたいと思います。
  106. 鈴木力

    鈴木力君 それはあとで調べていただければいいんですがね。いままでのは私も数字がない。数字がありませんけれども、大体自衛隊の糧秣の扱いは、食品あるいはその他の糧秣の扱いについては、毎年その購入した部分の実際にその目的に沿った使用部分というのは非常にパーセンテージが低いと、こういう話を聞いておる。そうして大部分は先ほど平常食にそれを戻した、そういう御答弁でありますからそれはそうとしておきますけれども、そういう実績に基づく発注といいますか、新しい購入計画というものが、これだってどうもきわめて計算の基礎というものがあいまいになっておる。何が何でも八十万食、あるいは全体を合わせると二百五十万かんくらいになるでありましょうか、五種類ですと。あるいはもっと多くなるかもしれない。これが毎年毎年実績、実績で購入してはつぶして平常食にやっておる。そういうようなやり方をなぜしなければいけないのかという見方が、私のようにかんぐってみると、やはり従来の取引関係を維持するという、非常に自衛隊の人は義理がたい、防衛庁関係は。そういうふうにしか見ざるを得ない。これは大体災害発動以外に非常食を使った例はないはずです、どこかに少しくらいはあるかもしれませんが。そうすると、そういう実績に基づいた調達ということがやはり必要になってくる。そういうことはきょうは私ははっきりとは申し上げませんが、御調査願いたいと思いますけれども、それらのことにいたしましても、あるいはさっき自衛官の就職先のランクをされた会社をずっと見てみますと、これまたきわめて義理がたいと思われる節がずいぶんたくさんある。そういう面はもう少し実態に合ったように検討し直してみたらどうか。そういう形で、すべてのものが何となく防衛庁というところ、あるいは自衛隊を含んだここは一つの特権を持った社会なんだというあり方は私は改めるべきだと、こう思います。  きょうは、そういう私の意見だけを申し上げて、あとだれがどうしたの、そんなことを申し上げるつもりはありませんから、あり方として、実績というものと、不要のものと要るものと、そういうものから、これからまた自衛官の諸君の就職などというものも、どこからどう見ても、私のように自衛隊の反対論者なんですけれども、反対論者でも、これならしようがあるまいなというきちんとしたものを出すことが必要だと思う。これは意見として申し上げ、先ほどの残した質問は後日に回しまして、きょうの質問はこれで終わっておきたいと思います。
  107. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  108. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 速記をおこして。
  109. 上田哲

    ○上田哲君 佐藤内閣の中では、留任はされるでありましょうけれども、最後におそらく質疑をかわす機会だろうと思いますから、長官ぜひひとつ食い逃げをしないで、また次にもしかわる大臣がいたら、前の長官は十分に相談をしなかったからなどということではなしに、しっかりひとつきちっと在任中の整理をしていただきたいと思います。そういう意味で伺いますけれども、四次防ですね、四次防原案一体いつごろできるのかということをあらためてしっかり承っておきます。
  110. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 経済の見通しが立ち次第、こういうことであります。それじゃ、それはいつごろか。先ほど四十六年度の経済成長率その他が発表されましたが、あれも重要な一つの基準になりましょう。しかし従来の見通しでは、八月の末ごろと、こういう見通しで来ておったわけであります。これを繰り上げることがあるのかないのか、そこらの話だと思います。これは私、率直に言いまして、佐藤内閣で四次防大綱を策定した。ただし経済の見通しが非常にむずかしいということで、夏過ぎであろうということがいわれておったわけです。四十七年度を初年度としての四次防計画、しかも、国会でいろいろな疑義を生じまして議長裁定になっている。凍結部分がある。一体これをどう始末するのか、これはやはり非常に重要な問題だと思いまするので、私、佐藤さんがいつやめるとか、そういう表明がありました段階で、直ちに国防会議議員懇談会とでもいいまするか、関係議員で、一体これをどうするかということを、経済の見通し等とにらみ合わせながら検討をする、その段階で、進むのか、先送りにするのか、直ちに作業にかかるのか、またこれも、やめると言われる時点、それからまた、もしやめられるとすれば——まあ、あくまでこれは仮定の話ですが、総裁選挙がいつになるか、次の首班指名がどうなるか、この辺もやはり具体的になりませんとちょっとものが言いにくいわけでありまするが、現在の時点では夏過ぎと、こう言ってまいったわけでありまするが、それがにわかに情勢が変化したとは思っておりません。いま申し上げた意味は、もう率直にこの場面の私の考え方を申し上げたわけでございます。
  111. 上田哲

    ○上田哲君 ぜひ責任大臣として締めくくっておこうと、こういう……。
  112. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そうです。
  113. 上田哲

    ○上田哲君 どちらにせよ、こういうお考えは、それはそれで私もけっこうだと思います。そうなりますと、具体的には、在任中に明確な一つの形ができ上がるならば、当然これは長官の責任、また、でき上がらないとしても、それは、次に何を送るかということではしっかりしておかなければならない。いずれにしても、そういうことになるだろうと思います。そこで、八月ということが繰り上がるまいという見通しであったとしても、そういう観点からすればかなり——いまおっしゃるように、総理退陣の表明の時点で議員懇談会にもかけるということでありますから、かけてもみたいということでもありましょうから、そうするとそこでは、八月から逆算して一ヵ月とか、精一ぱい一ヵ月半というような計算の中ではかなり具体的なイメージというものは浮かび上がってこなければならぬだろうと思うんです。そういうふうな段取りですね。
  114. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そのとおりだと思います。それで、実はこういう国会での審議というのは非常に重要でありまするので、これにいま防衛局長をはじめ事務当局も全精力をさいておるわけです。したがいまして、国会が済みます時点で具体的にそういうものをもうちょっと詰めてみたい、こう考えております。
  115. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、八月から逆算しまして、大まかに言って防衛庁の内局を中心にする案ができるのが六月一ぱい、そしてまあ、月で言えば、それが防衛庁全体の討議を経るのが七月一ぱい、八月には原案ができると、こういうような大まかな段取りだと考えていいですか。
  116. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私、具体的には一つの御意見だと拝聴しております。まあそれが一つの常識の線であろう。ただ問題は、ここで国防会議関係議員の間で、四十六年度の経済の決着もついたことであるし、大体それに合わせてあとの想定ができるというような経済閣僚等の意見がありますると、その面では一つの基準が出てこようか。これは七月ごろでもそうそんなに無理なことはないというふうに思います。いずれにしましても、もうちょっとこの問題は検討してからにしたいと思いますが、いま御提示の線はきわめて常識的な御提示だと思っております。   〔委員長退席、理事町村金五君着席〕
  117. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、先ほどお答えになりましたように、佐藤総理大臣の退陣表明の時期には議員懇談会をやりたいということで、そこで討議をしようということになりますと、これはいつになるかなんということをここできめてかかって話をするのもおかしいけれども、六月の二十日とか、いろいろな言い方が出ております。そう変わってこないだろうという常識が一つありますので、そういうことでありますと、そこで議員懇談会にかけるべき内容が白紙であるはずはないので、せめて非常に大局的な問題、大まかなイメージというものは防衛庁長官はお持ちになっていなければならぬということになる。たとえば具体的に金額の総ワクとか、そういうものが一つぜひなければ話にならぬし、またそれが、新経済社会発展計画というものとの関連というものはある程度提示されているわけですから、政治論的にも。それからまた、それは、全部足し算をしてみたら総額幾らになったというふうな統計のしかけでないことはこれまでの防衛力整備計画の過程からいっても明らかでありますから、やはり一方にそういう積算の方法論があるとしても、大方針として、大ワクこれぐらいのところということがなければこういうものはできない。そういう常識からして、もう近々に迫っている国防会議議員懇談会に何かはかられるというのであれば、金額のあたりは胸算用として出されていいのではないか。
  118. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはしばしば申し上げておりますが、中曽根原案が白紙になりましたので、この当時の五千億減という検討をした西村案も白紙ということが言えますが、おおむね総ワクにおいては五兆二、三千億というあたり目標にいたしまして、そして上限、下限をきめて、やはり長期計画らしい姿で事を決定したらどうであろうか。特にこれが、総理の引退表明が早まって次の内閣へ送られるということになれば、これはもっと的確なものが出てくると思います、経済的な面からだけでも。しかし、もし拙速で、この内閣の責任において、やはりいろいろ凍結したりいろんな問題もあるから、解除のためにも、また責任の帰趨を明らかにするためにも計画を立てるべきだ、これは本年度が初年度という位置づけになっておりますから。そういうことになりますと、これはやはり上限、下限というものを相当な幅を見ざるを得ぬのではないかというようなことを部内で話し合っております。まだ成案は得ておりません。
  119. 上田哲

    ○上田哲君 かなり具体的にお話をされようという努力を認めますけれども、上限、下限ということになりますと、五兆二、三千億という数字がある程度常識的に固まってきていて、上限、下限といったところでそう大きなものではない、そういうことですね。
  120. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そうです。
  121. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、大体そのあたりだろうということに理解をするとしまして、いまお話の中にも出ましたけれども、それをできるだけ長期計画として考えようというお話がありました。その長期計画ということの意味は、四次防というものをかつて四次防といわずに新防衛力整備計画ということばで呼んで、これを五年単位じゃなく十年単位のものとして考えようという発想がありましたし、これは完全になくなったというものではないとも思います。この際明らかにしていただきたいが、なるべく長期計画にとおっしゃった意味は、この際、長官の考え方の中には、四次防というものに限定してお考えになるのか、やはり従来あったように十年単位で防衛力のこれがかなめになるべき時期だという判断でお考えになるのか、いかがですか。
  122. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 当然四次防、五ヵ年計画という段階で検討すべきだというふうに思っております。十年は長過ぎます。で、そればかりか、いま防衛局長がいろいろ試論を出しておりまするように、一つのやはり——今朝鈴木議員との間のやりとりもございましたが、日本防衛力限界といいまするか、限度をどのあたりに置くか、これをやはり十分に国民にわかるように説明するためにも、この作業はねばり強く結論を得るために努力を続けなければならぬというふうに考えております。  それから四次防そのものにおいてもよくいわれるところですが、まあ私も、内閣が早くやめますというと私自身もいずれやめることになりましょう、ですから、あまりそういう議論をし過ぎることがどうかとは思いますが、いずれにしろ私ども政党人として、党側において防衛担当の議員ということで責任を分担しなけりゃならぬと思いまするので、率直に言うならば、ほんとうに極東一つの平和的安定というものが明らかになってくれば、前線に向けての正面兵力の整備ということもさることながら、やはりもう少し、いままでなおざりにされてきた自衛隊の環境整備というような後方の充実、こういったことに四次防の金額自体を向けることもできるのではないか。それから、よく君は民生協力を言うという話ですが、私は民生協力ということが自衛隊一つの大きな任務であっていいという、これは昔からそういう主張を持っておるんです。いざというときにもちろんその国の防衛に当たる本務はもとよりでありまするが、自衛隊がそのときだけに備えて訓練おさおさ怠りなし、これもけっこうなことですし、またそうなくちゃなりませんが、しかし、訓練のためにどんどん民生協力をやる、まあ一般業界を圧迫しない程度でというこれは一つの制限がありまするが、私は社会党の言っておられる国土建設隊方式というものは、自衛隊としてそれはどんどん取り入れたらいいものだと思っております。まあその上にわれわれの主張もあるということで、やはりこの建設隊的な性格というものも特に陸上自衛隊などは持って、平素の訓練という面からいっても、国民的にも共鳴感を呼び起こす——共鳴感を持ってもらうというためにも、そういうことをやれるような自衛隊づくりということは今後考えていかなければならぬのではないかと思っております。
  123. 上田哲

    ○上田哲君 少しまあ考え方が出てきましたね、それはそれでわかることでもありますけれども、幾つかの問題、またもう少し区分けして議論したいと思うんですが、論理的に言うと、これまでの国会の審理では、凍結された部分は、凍結を解除することもあるけれども、そのまま凍結し切ってしまうこともあるはずです。で、長官のお考えでは、凍結部分は必ず解除するとおっしゃる……。   〔理事町村金五君退席、委員長着席〕
  124. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはさっきも申し上げましたように、首相引退声明といいますか、その時点のあとのところで関係者と協議をしたいと、こう思っておるわけです。で、八月末という意味も、これはもう御承知のとおり概算要求というものがその時点でなされるわけで、これがおそくとも八月末にはということと重なり合ってそういう時点が出てきておると思うんです。ですから、それが七月半ばではちと未成熟なのかどうなのか、次の内閣で八月末までにやるのかどうするのか、まあここらあたりは相当議論の存するところだと思いますが、これはそういう時点でひとつ具体的に詰めてみたいと思います。
  125. 上田哲

    ○上田哲君 私が伺っているのは、その凍結部分です。凍結部分というのは、長官が在任期間の責任を果たされることの中で、国防会議の議員懇談会にかけられるときの草案なり基本的なお考えの方向の中では、凍結は解除するという基本方針をお持ちになるわけですね。
  126. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはそういうふうに思いましても、四次防の具体的な主要項目や計数が国防会議できまりませんと、あれは解除にならないことに議長裁定がなっております。したがって、さっき申し上げたような方針でさてどうするかということになろうと思います。
  127. 上田哲

    ○上田哲君 手順はそうなんですが、それはまた無責任にあとに送るということではなるまいということでお伺いしているので、区切りをつけるのは佐藤退陣後の国防会議議員懇談会だということとして私も受け取るし、それはそれで政治責任があるだろうと思います。したがって、その一つの大きな眼目になる凍結をそこでどういうふうに判断するのかということをお尋ねしているわけで、この凍結論はそこでは取り扱わない、あるいは凍結ということも、そのまま廃止という方向にもっていくこともあり得るというふうにお考えになるのかどうかです。
  128. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) できれば、これは現実に四次防とは関係なく査定をしたというたてまえでありまするので、訓練上支障を来たしますので、凍結を解除してもらいたいと考えております。考えておりますが、四次防そのものが国防会議の議を経なければこれは解除しないという申し合わせになっておりますので、これはやはり議長の意思は尊重しなければならぬと思います。したがって、次の内閣になりますかどうか、この辺むずかしいところでありまして、佐藤総理自身も何か、ぼくの手でやれるかなということを中曽根総務会長に言ったとか言わぬとか、私ども確かめたわけではありませんが、新聞で見た程度ですが、そういうふうですから、しかし、そういうことは佐藤総理個人できまることじゃありませんから、やはり国防会議員懇談会で決着をつけていくことだというふうに思っております。君はどう思うかとおっしゃるならば、私はできればあとう限りひとつ私の責任において四次防原案というものは決着をつけてやめたいものだというふうに考えとおります。
  129. 上田哲

    ○上田哲君 そこだけしぼってお伺いしますが、凍結部分がそのまま凍結しっぱなしで、なくなるということはあり得ませんか。
  130. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) それはないと思います。ただ、これも仮定の話ですが、新しい内閣ができたとして、その新しい内閣は四次防策定ということに積極的に取り組まなかったというような事態でも起こりますと、これはちょっといま御指摘になるような疑問が出てくる可能性もあろうかと思います。
  131. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、万々一の事態が起こらない限り、四次防の原案の策定は、今内閣の任期中であれ、そうでない場合であれ、凍結部分の解除ということは当然に中に含んで策定をされるということになりますね。そういうことになりますと、そこで伺っておきたいことは、四次防のそれが先取りであるかどうかということは見解が分かれておりますから詰めることはできないとしても、そこで伺いたいことは、国会の決定の中で凍結部分もつくり、原案のつくり直しをする事態にいまある。それは政府における防衛力整備計画策定の反省のはずですね。そうしますと、これまでに出されてきた中曽根案であれ、西村案であれ、これまで政府側からそれが公式であれ、非公式であれ表明されてきた四次防構想なるもののどこが悪かったのであるか、そこをはっきりしていただきたいと思います。
  132. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) この凍結部分というのは、御承知のとおり私が防衛庁長官になってから予算査定を詰めたものでありまして、これはやはり私の責任においてやったものであります。それから同時に、あの機種の選定等においても、これは欠落していくものの更新という、こういう形で、大蔵省は四次防と関係なく査定をしましたと、こう言っておるわけです。しかし、それが違うと、中曽根原案にあったじゃないか、目玉商品じゃないかというところで問題になって疑義を生じたわけですが、それはともかくとしまして、したがって、この四次防というものがあってもなくても、武器更新という形でT2にしろC1にしろ、あれだけのものを計画したわけでありますので、これは当然四次防初年度の予算ということであれだけのものが計上されておるわけですから、当然四次防の中にこれは持って入る。四次防とは関係なく査定されたとは言いながら、それが初年度であるということに位置づけられておる以上、当然これは持って入りますし、その機数等についても相当な、なお追加発注と言いまするか、そういうことも考えられる。これは従来も申し上げてきておるとおりでございます。
  133. 上田哲

    ○上田哲君 それでは質問を変えますけれども、新しくつくられる四次防原案基本的な性格は何なんですか。
  134. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはもうすでに大綱で申し上げておりまするように、三次防の延長として、足りないものを充足させ、また古くなったものを更新する、こういう形でやってまいるわけであります。
  135. 上田哲

    ○上田哲君 これまで四次防原案、あるいは四次防構想として提示されていたものの理解を正確にいたしますと、どうしても政府のおっしゃることがずれてくるわけなんです。で、そういうものとどこか違うところがあり、反省しなければならないところがあったので、凍結も出てきたのであろうし、つくり直しということになっているのだろうと思う。全く三次防の延長であるということになると、ここは見解が分かれるところに踏み込んでしまうと議論になりませんけれども、それがもう一ぺん提示されるということになったときに、受け取るわれわれは、悪いということで修正をされることになったものに返るというだけのことである。それは三次防とは明らかに違うものだと思うのですね。  質問をもう少し変えますけれども、そうしますと、今度でき上がる四次防というものは、それまでの政府から公式にせよ非公式にせよ出てきた四次防構想とどこが違いますか。
  136. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは明らかに違うわけでありまして、十年を目途として、制空、制海に重点を置いた自衛力というものを整備する。そして五ヵ年間でほぼその十年分の目標の七〇%程度ですかを充足させようとするものの考え方とは根本的に変わってくる。やはり三次防の延長の五ヵ年間、で、その途次において今後問題になるのは、午前中鈴木議員の御質問にもありましたように、しからば一体防衛力限界というのをどこに置くのかとか、一体日本脅威を与えておる国々の分析をどう分析するのか、こういった問題も当然やはり考えていかなければならぬと思います。で、アジアの緊張が緩和の方向に向かいつつあることは間違いありません。これはアメリカ自体が中国を封じ込めておると言っておったものが、お互い同士が手を握り合うという形になってきた以上、これが具体的にどうアジアの平和に結びついていくのか、ベトナムは一時的にああいう形でエスカレートしておりまするが、しかしあれもアメリカの本意じゃありますまい。一ときも早く終息を告げさせたいという念願には変わりないと思います。決着がどうなるかは別として、アメリカ側の思惑は変わりはないと思いまするし、したがってそういうものの先行きを見ながら防衛構想というものが打ち立てられていく、これはもう当然なことだと思っております。
  137. 上田哲

    ○上田哲君 ちょっとここでまあ整理しておきますけれども、いずれにせよ、佐藤総理退陣表明の時期に国防会議懇談会で一応の締めくくりをつける、防衛庁長官考え方をお出しになる、これは内容と手続と両方に分かれますね。その内容としては、先ほどおっしゃった五兆二、三千億円ということに大体集約されるだろう。それから性格としては、われわれの見解、分析とは違ってくるけれども、三次防の延長として、若干の武器更新があるのだ、こういうことになりますね。凍結というのはそのとき解くことにはならないけれども、将来解くということを、原案作成のときには解くのだということ以外にはないという見解は盛り込まれるわけですね。
  138. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そうです。
  139. 上田哲

    ○上田哲君 そして時期は八月ごろということ、大体そこでお考えを明らかにされるわけですね。大体、全般としてはそういうことでいいのですか。
  140. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 大体それでよろしゅうございますが、その時期の点が八月末なのか、あるいはもっと繰り上げて七月半ばごろなのか、そこがちょっと重要なところだと思います。そこで、一体経済の見通し等々が七月の末でいけるのか、八月の末でなければどうしてもいけないのか、これはどうしても経済関係閣僚の意見を聞いてみなければならぬと思います。そこでこの内閣で結着をつけるのか、次の内閣へ諸般の情勢等々から申し送らなければならないのか、そこできめることにいたしたいと、そういうことを申し上げておるわけです。
  141. 上田哲

    ○上田哲君 念のために伺いますけれども、その際に長官が提示される考え方というのは、文書のようなものにされますか。
  142. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 文書にはならないと思います。この大綱をきめたわけですから、これに基づいて作業を、いまでも下部組織ではいろいろやっておりますが、しかしやろうということになれば、これはおそらく次の首班者がきまるまで三十日くらいはありましょうが、その間に急拠作業を繰り上げて進めるか、いや、そういう拙速は困る、次の内閣でゆっくりやるべきだろうという意見が出ますか、私はどうかとおっしゃるならば、私はこの内閣で当然決着をつけていくべきだというように思っておるわけです。はたしてその意見が通るかどうか、このあたりが懇談の中心になろうかと思います。
  143. 上田哲

    ○上田哲君 よくわかりました。そうすると、このままいけば八月になるだろう。しかし、まあ佐藤退陣表明の時期に国防会議懇談会をやって、そこで長官の真意を精一ぱい披瀝して、できることならば次期政権が誕生する前までに四次防原案を通そうという意気込みないし計画であるということでよろしいですか。
  144. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そのとおりでございます。
  145. 上田哲

    ○上田哲君 わかりました。そこで、それほどの意気込みであれば、こまかいことはともかく、かなり大綱より進んだお考えがあるのだろうと思います。基本的なところから少し伺っておきたいのでありますけれども、まあ社会情勢というと少し大き過ぎるかもしれないが、先ほどからちょいちょい長官が口にされている緊張緩和の問題にしぼって、SALTについていえば、SALTの締結をどういうようにお考えになっておりますか。
  146. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは私、その軍事的な性格ももちろん両国間においてはありまするが、やはり双方の信頼度といいますか、信頼感といいましょうか、そういったことを確かめ合った、これに重点があったように思います。しかしその後の具体的な話し合いにおいて、両国間の戦争の脅威を防ぐために世界の緊張緩和と国際協力を促進していこう、これに努力し合おうじゃないか、あるいは軍縮というような面においても、両国は目をおおうことなく具体的にひとつ話し合いをしていこう、あるいは米ソで従来なかった、特に経済的な問題、文化面においてもひとつ協力体制をとろうじゃないかというような話し合いを前提にして、そうして戦略核兵器の制限であるとか、ABMの制限であるとか、こういうことが具体的に話し合われたことは、世界の平和、特に東西の話し合いというものが具体的になった点において、私はけっこうなことだったと高く評価するものであります。しかし日本防衛というものは、もともと通常兵器による局地防衛の問題でありまするので、この話し合いが直ちに日本自衛隊の充実整備というのに影響をどの程度与えるかということになりますと、比較的それは薄いということが言えるのじゃないかと思います。で、もしあえて言うなれば、日本はアメリカの核のかさに入っておる。これは上田議員ともしばしばここで議論がなされたところでありますが、この核のかさの有効性という点において、私どもはアメリカが保証するように有効であると言いますし、また片や世の中のこういう問題に関心を持つ一部の人々は、きわめてこれは感覚的な問題で、理論的根拠は薄いのではないか、アメリカの本土を犠牲にしてまで一体この核のかさというものをほんとうに約束どおり履行するかどうかというような議論がなされております。そういう面から言うならば、この核保有国の両巨大国が、この核の問題について不使用とまではいかなくとも、おおむね、暫定的にそういう方向を確認し合った、制限をしよう、当分は使うまいということが話し合われたということは、アメリカの核のかさに入っておる日本としては、やはり好ましい一つのメリットがあったというふうに考えます。
  147. 上田哲

    ○上田哲君 米ソ会談によって緊張がどれぐらい緩和されたのかということ自身は、物理的に、定量的に測定不可能なことですから、そのことを議論すれば立場の相違を表明をし合うことになりましょうから、まあそれはいい。一部という表現には私は問題があると思いますよ。これは長官がおそらくいまお話になったのは、かつて核のかさが純軍事技術論的には意味がないということをお認めになった発言があったことを注意深く御訂正になったんだろうと私は思うけれども、一部であるかどうかは問題がありましょう。しかし、ともかくもそこのところを物理的に測定できる性質のものではありませんから、見解の相違をここでたたき合うことはやめにして、少なくとも言えることは、さきの米中会談に比べれば米ソ会談というものが実質的には世界の緊張緩和に具体的な貢献をしていくということは間違いない。あるいは実質的に進んでいる実情を確認したという印象であるということでもいいですけれども、そこだけは間違いがないということだけは言えるのであって、その象徴がSALTという形に結晶をしたんだというところまでは間違いはない。  もう一つの問題は、核ですね。で、局地防衛だからとおっしゃるけれども、局地防衛の上に核のかさの必要を強調されることが明らかなように、明らかに局地防衛というものを全く核の問題と離れて、核レベルの戦略問題と離れて議論するなんということば意味がありませんね。そういう意味で、核というものがどういうふうに世界超大国の中で動いていくかということは非常に大きな関心でなければならない。もう一つは、日本の核武装ということがどういう端摩憶測であるにせよ、議論をされているということが現実であってみれば、そこで私たちはかなりそれに対して、この世界の潮流に対して少なくとも雪解けの方向であるということをお認めにならざるを得ない上では、核の問題についての方向性というものをさらに明らかにしなきゃならぬというところへきたことは、明らかだと思うんですね。そこで私は、四次防というものがたまたま実質的にそういうものにぶつかっている以上は、当然この問題について、原案作成のために、作成者の側では、核問題についてより一そうの見解表明をしておかなきゃならぬのだろうというふうに思うんです。  その意味で言いますと、単に政策としての非核三原則というようなものから一歩進めて、少なくとも防衛庁という部門が引き受けるべきものは、これは軍事戦略といいましょうか、まあ防衛戦略とおっしゃるんでしょうが、そういう軍事技術論的な側面で核武装ということがあり得ないとか、無効であるとかいうことをこれははっきり表明をされるということが、非核三原則を政策としてでも持っておられることの実質的な意味だと思いますね。そういう意味で、これは前回の議論の中でかなり出ておるんです。これはまあ防衛局長からも出ましたけれども日本の地形的な条件から言って、これを使うことが不可能であるとか、あるいは、日本で核を戦術的に使用することはペイしないことであるとか、私はそこにもう一つの条件をつけ加えましたけれども、そういう、少なくとも二点にせよ、三点にせよ、問題はかなり明らかになっているとなれば、そうした問題をこの際、SALTの妥結なり、あるいは米中から米ソに至る世界の超三大国の協調の過程をながめるにつけても、日本防衛政策の中では四次防の中にはっきりこれを明らかにしておくということになるべきだと思うんです。そこの組み込みをできるだけ具体的に御表明いただきたいと思う。
  148. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 重要な御指摘だと思います。で、問題は、私どもがいつも申し上げておりまするように、四次防というものはまだ日本の国力国情に応じた必要最小限の武装というものに足りない。だからこれを補備充実し、更新するのだというたてまえですね。したがいまして、このSALTあるいは米中会談というものが四次防そのものににわかに影響は与えない。しかしこれは五ヵ年計画ですから、少なくとも、さっきも申し上げましたように正面兵力の充実もさることながら、従来なおざりにされてきた面の充実ということに、策定の一つの重点としてそこにこの考慮が払われることは私は当然なことだというふうにも思っております。これは繰り返し申し上げておくわけです。  そこで、さてそのSALT等々の与える影響をどう四次防に表現するかということになりますと、いま申し上げたようなたてまえで四次防を策定するということになりますと、ちょっとそこにむずかしい矛盾が出てくると思うのです。したがいまして、国民に納得してもらうためには、これもこの内閣委員会でしばしば議論になりまするように、間に合えば防衛白書というような形でその記述にそういったものの考え方というものはゆだねていくことができるのではなかろうか。特に非核三原則を裏づける核兵器を持たないというような主張というものはやはり私繰り返し国民にわかりやすく説明をする。久保議論というものも、もうこれは数年前からの議論でありまして、これはただに防衛局長個人のそれはドグマではなくして、われわれ政府与党側においてもそういうものの考え方というものが大体多数の間に理解されておる。中にはいろいろ極端な議論をなす方もありますが、一つのまあ何といいますか、最大公約数というか、標準政策としては、先般久保局長が申しましたものの考え方というものは表に出ておるわけです。したがいまして、そういうものを防衛白書その他の機会をとらえて絶えず国民に表明をする。そればかりか、総理大臣や特に外務大臣が国連の場などに出まするときは、堂々と私は演説したらいいと思う。それからまた日本自衛隊も、守りに徹するというその自衛隊の姿勢というものをもっと強調したらいいと思うのです。そうして、世界の軍隊が軍縮以前に日本自衛隊のようになったらどうだということをしっかり世界各国に徹底させる。同時にそういう監視の中で日本自衛隊というものが生きていくのだということになれば、これも一つの大きな政治的な歯どめでもあるというふうに私は思います。
  149. 上田哲

    ○上田哲君 この防衛白書というものの存在もよくわきまえますけれども、どちらかというと、防衛白書というのはこれまでの防衛庁方針の補足説明というふうな意味しかない。現に毎年出るわけではない。そういう意味では、防衛白書というもののメリットは高くはないと思うのです。具体的に防衛政策がどうやって進められていくかといえば、これは具体的な金額を伴った防衛力整備計画しかないわけなんですね。そしてその防衛力整備計画の一番欠点となることは、長期的な防衛構想が欠落しているということなんです。全く倍々ゲームで、大きいことはいいことだという論理しかない、こういうふうにしか説明のできない整備計画という増強計画が進んでいるということに問題があるのはもうすでにお認めになっておられるだろうと思います。そういうことでいえば、まあどういうものであれ、それは議論の対象にはなりますけれども防衛構想というものを少なくとも議論の対象にはなり得るようなものとして提出さるべき義務は、それをやはり具体的なものとして出すのは四次防のほうだと私は思うのですよ。  で、まあそこの議論はちょっとおきますけれども、そういう防衛構想の欠落ということからしまして、白書で出すのだというようなことがちょっとありましたので、それでお伺いするのだが、原案がいつできるかとか、それが政権との微妙な関係でどうなるかということがあっても、現防衛庁長官の努力としては、たとえばそれとは切り離しても、防衛白書というふうな方法を通じてその核を含む防衛構想というものを明示するということはあるわけですか。
  150. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私は事情が許せばそういうことをはっきりすることがいいと思います。国会でも決議をしておりまするし、従来歴代内閣は非核三原則というものをとってまいりました。で、この非核三原則という政策をとっておる理論的な説明がないですね、実際。で、そこに世界を納得させるだけの、やはり納得させるだけのことにならない。まあ髀肉の嘆をかこつようなところがあるわけです。一たび指導者がかわればどうなるかわからぬじゃないかとか、あるいはアメリカでも、日米安保条約を破棄しようという論者に、いや継続したほうがよかろうという人は、もし日米安保条約をアメリカ側から破棄すれば、日本の経済的現状を守るためにも、日本の不安感を解消するためにも、日本は核保有国になるであろうという議論をなす論者が非常にアメリカにも多いわけですね。いや、そういう場面があってもわれわれは核は持たないんだ、こういう説明が従来ともなされておりません。それからまた、自民党の中にも、いや、核装備は時代の流れに沿って兵器の更新のようにそれは持つべきじゃないかという一部の人もこれはあることは確かです。ですから、やはりこういう問題はもっと積極的に私研究をして、政府として、また防衛庁として責任をもって国民に説明するばかりか、世界に向かって訴えるという必要があると思います。そこで、防衛庁一体それはどこがやるのか。ここにおる防衛局長のセクションでやることはこれはもうもとよりでありまするが、やはりいろんな場面を想定してものを考えるというならば、私は防衛研修所であろうと思うんです。で、この防衛研修所が、いま眠っておるとは思いませんが、比較的不活発です。一部の幹部要員に講習をするという程度にとどまっておりまするが、それをもっと前進させて、いろんな場合を想定して、日本の今後の防衛力の整備計画、また防衛構想基本方針、こういったものを常に詰める必要があるのじゃないか。これはまあ私の任期の問題もありまするので、あまりここでえらそうなことを言ってみましてもはたして実現するかどうかはわかりませんが、幸い人事異動をやることになっておりまするので、その際にそういう構想を生かして、この防衛研修所というものをもうちょっと防衛庁内において重要な部門ということにしていきたい。そこで、いま上田議員がお示しのような問題やら、核の問題やら、それから午前中鈴木議員からこれも議論のありました防衛力限界というようなものについても、思いつきじゃなくて、こういうものですと、こうしたいと思いますということを国民に向かって堂々と言えるやはり理論的根拠、これを積み上げてまいりたいと思います。これはまあいま口で言いましても多少時間のかかることでありまするが、今後防衛長官をやめましても、私はやはり自民党の党員とし、代議士として、そういう構想を実現してくれる防衛庁になってもらうように努力をしてまいりたいと思います。
  151. 上田哲

    ○上田哲君 ボフレーが今度のSALTに関連してものを言っているわけですが、その中で、日本に関連して言っていることばの中に、日本の核装備というのはやっぱり近時点においてあるべきではない、それは、平たく言えば間尺に合わぬことだ、つまらぬことだということを言っているわけですね。で、これはボフレーという人の考え方というのはかなり日本防衛庁にも影響を持っていた経過もありますね。そういうようなことを、まああえて客観的な評価だなどとは言いませんけれども、まあそんなことなどもあり、いままあかなり意欲的な御表明があったと私は受け取っておきますけれども防衛研修所がそれを一生懸命勉強したらよかろうというので、防衛研修所の拡大ということに落ちつくだけじゃこれは意味がないのでありまして、まさに四次防がここで発足をするんですから、その予定されている原案策定の基本方針を問うている立場で言えば、白書でとおっしゃるなら白書を——原案ができなくたって白書をお出しになることはできましょう。退陣表明から次の政権ができるまでの時間もあるというお話もありましたし、その間だって、書こうと思えば徹夜で三日あれば書けるということも、もし中身があるんなら、あるでしょう。そういう面でいって、たとえば白書を出すとおっしゃるなら、それはそれでもいいんです。で、白書を出すんなら出しますか。それからその場でもけっこうですから、非核三原則というような、まさにいま御指摘のとおり、それだけでは空疎な、説明力にならないものであるものを、少なくとも防衛庁のパートとしては軍事戦術的な分析としてはっきり打ち出すべきものをそこに盛るか、そこのところなんです。その二つをきちっとひとつ盛り込んでいただきたい。
  152. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) おっしゃる意味は私ども実現したいと思います。ただ問題は、政権を去るにあたっていろいろな意見を述べる、これは非常に重要なことでありますが、やはりこれはあと始末というような形にならざるを得ぬと思うんです。したがって、防衛白書にしろ、特に核の問題についての理論づけ、哲学的な、何と言いますか説得力を持つ主張というようなものについては、これは拙速でやるべきものではなくって、同じ性格の内閣が続くわけですから、次の内閣に、また防衛庁長官たる人に、重要な引き継ぎ事項という形で私主張してまいりたいと思います。これは四次防の事務的な——これを事務的と一言で言っては言い過ぎでありまするが、この計画を中途にして、しかも凍結という異例の措置があって残していくと、しかも、また八月には概算要求で四十八年度予算の策定にかからなければならぬというような場面で、これはどうであろうかということは大いに考慮に値しますが、後段の核等の問題については、考え方としてはさっき私申し上げたとおりでありまするが、これを具体的にどうあらわすかという点においては、ちょっと、政権末期という形になりますと無理があるように思います。しかし、それは継続さるべきものということで努力してまいりたいと思います。
  153. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、これは重要なことですから食い逃げされちゃ困るんで、そのあと、大臣でない部分まで含めて決意を表明されておりますから、それは乗りましょう。  そこで、まず現職である江崎防衛庁長官は、さっきのおことばを私はそのまま承っておくけれども、標準政策であると、核について核武装をしないということの方向を。これは単に非核三原則を政府レベルで表明するだけではなくて、そのパートである防衛庁の具体的な軍事戦術的な分析を含めて、とるべきではないのだという見解を持つことが標準政策であると言われた。これは私は、単に当時防衛局長が、私見でありますが、というお断りが冒頭にありましたけれども、長官の御表明はこれを標準政策として受け取るんだと、こういうことを強く理解をいたしますのと、もう一つは、これから政権末期だということでなっちまえば議論はできないけれども、かりに大臣がおやめになっても、当然、自民党の国防部会の有力なメンバーにおなりになることを含めて責任の表明がされましたから、それを、その基本的なところから出てくる標準政策として今後はっきりさせていくんだと、そういう立場で申し送りをしていくということでよろしいですね。
  154. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私は、責任を持ってあとにそういう主張を申し送りたいと思います。それは、ただに私の個人的見解というだけでなしに、防衛局長どもそういう方向をいま考えておるわけでありまするから、当分この自民党内閣、あるいはまたその姿がどうなりましょうとも、主張が違うものではない。特に、私が政治家でありまする限りはそういう主張をします。ただ、それだけでは説得力がないので、私はいつも、これは私の完全な個人的な意見ですが、平和利用というようなもので幸い合意がありまするから、先般、木内科学技術庁長官によると二十五ヵ年計画というものが、原子力の平和計画が樹立されておると。したがって、そういうものをもっと粘り強く、旺盛に強力に推進して、やはり平和利用においては世界のナンバー・ツーぐらいの地位にまで進めていきたい。そういう何か一つの裏づけがなければ、これは核兵器を持たないという理由の説得力にも欠けることになりまするので、日本独自の立場をあえて言えというなら、私はそれを一つの主張として今後も研究をしてみたいと思っております。
  155. 上田哲

    ○上田哲君 政府と党の両面からこれをしっかりした標準政策としてとっていくという御見解でありますから、これは非常に重要なものとして私は理解をいたします。したがって、その内容もはっきり確定しておきたいので、これは専門家の久保さんにもう一ぺんこまかくしてお伺いいたしますけれども、先般表明になった、いまや、標準政策としての認証を受けた軍事戦術上の側面からの非核論、あなたは、これは地形上戦術的な意味がない、あるいはペイしない、私はそれに核のかさの無効論というものもあわせて申し上げているわけだが、三点目を含むかどうかも含めて、お伺いしたい。
  156. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 核兵器につきましては、戦略核兵器、戦術核兵器に一応分けて考えます。そして戦略核兵器の場合には、奇襲攻撃あるいは第一撃能力でもって相手をやっつけてもなおかつ報復能力、第二撃能力が残ってないといけません。つまり、戦略核兵器が十分な抑止力であるためには、第二撃能力、報復能力が残ってないといけないわけであります。で、第二撃能力を持ち得るためには、相当膨大な量の戦略核兵器を必要といたします。その場合に、日本では非常に地形が狭小、人口、産業、文化、その他集中いたしております。したがいまして、そういう膨大な陸上基地のICBMを持つことはほとんど不可能に近い。しかも脆弱性がある。近ければ近いほどICEMの精度が高まります。そういうことで、陸上基地のICBMは脆弱性がある。その脆弱性を避けるためには、海中のポラリス型の潜水艦を必要とする。これもいま申し上げたように相当の量を必要とする。たとえば五十の都市を戦略核兵器でやっつける場合に、アメリカですと四〇%の人口が破壊されます。なくなります。ところが、中国の場合は七%になります。日本の場合についていま計算してもらっておりますけれども、おそらくアメリカよりももっとひどいであろうと思います。ということは、この戦略核兵器の交換、お互いにやっつけ合うことについて日本が非常に弱いということを証明するものであろうと思います。  それからまた、戦略核兵器だけを持っては意味がありませんので、この前申し上げましたように、いま核兵器論争が行なわれている中立あるいは非同盟諸国では戦略核兵器は持たない。これは平和を志向しておる国でもあるし、またそれだけの必要はない、持つのは戦術核兵器であるということでありますので、戦略核兵器だけでは意味がない。やはり持つならば戦術核兵器も持たなければいけない。ところが戦術核兵器を持ちまする場合には、それを使用する意思がなければならない。使用する場所も当然なければならない。ところが、使用する場所の点について見ますると、幾つかの潜在核保有国、つまり核をつくる能力もあり、かつ核を持ってもいいではないかというような意見のある国々、それぞれの国についてどういう防衛戦闘、どういう戦闘が行なわれるかという場所を想定してみますると、すべてございます。この前はインドの場合を申し上げましたが、たとえばスイスの例を申し上げますると、スイスというのは四つの国に囲まれておりまして、AからBに移る通過国であります。つまりスイスという国を占領しても意味がないので、AからBに行くために通過するために必要である。そうなると、通過するためにはアルプス山その他高峰を越えていかなければなりません。ですから、一次大戦、二次大戦でも、山中の通路に大砲が据えつけられたり、あるいは地雷が埋められたりして防衛をしたわけでありますが、今日であれば核地雷を据える、あるいは核関係の火砲を持つというようなことは考えられるというふうに、これまた人の住んでおらない山の中で核を使うことができるわけであります。ところが、日本ではそれを使う場所がない。ほとんど、どこで使おうともすぐに、自衛隊だけでなくて一般の住民に影響を与える。非常に個々の戦闘では有利になり得る場合があるかもしれませんけれども、戦争全体というものを失ってしまう、戦争目的を達成し得ないということになります。  また、通常兵器と核戦争を考えれば、通常戦争のほうがもちろん可能性としては多いわけであります。で、可能性の少ない核戦争に備えるために戦術核兵器を準備するということでは、これは通常兵器に対する圧迫が出てましります。大国であるアメリカですらそうでありましたし、フランスも現にそうであります。  それからまた、通常兵器に対する圧迫のみならず、核戦争というものを予想するならば、自衛隊の持つ装備自身に対核装備、対核性——核に対する攻撃を受ける防御の能力を与えねばなりません。そのための金が非常に膨大になってまいります。これはNATO、ワルシャワ条約機構の軍隊がそうであります。それからさらに、自衛隊のみが生き残ってもしようがありませんので、これまた一般の住民に対する防護、つまり民防の関係でこれを防護しなければなりません。その典型的な例はスウェーデンであります。アメリカも何年か前にシェルター論争というものが行なわれまして、結局、住民の全部を保護するだけのシェルターをつくることは、国であれ個人であれ、それは不可能であるということで打ち切られております。そういうようなことで、核装備をするためには、たとえば一兆円だ、二兆円だというような金が例示されまするけれども、それの完全のものを、つまり核戦争に備えるためのいわば全体的なシステムを考えればきわめて膨大な金が要ることになるわけでありまして、そういうことをやるならば、むしろその代替の手段を講ずるほうがはるかに日本としては有利であるというように思います。もちろん、この核関係については、日本がかりに装備するといたしましても、これは後発国でありますから、相手のほうが有利でありましょう。そうすると、相手の有利な兵器をわれみずから選んで、むしろ相手方からより大きな攻撃、破壊を受けるということになるわけであります。  最後に、この前、一つつけ落としましたが、ABMの問題があります。ABMは、米国ソ連とで最近問題になりましたように、日本でも一部の方は、ほかの核兵器はともかくとして、ABMは純粋に防御兵器であるからそれば持つべきではないか、特に中共の核開発に伴って、それを持たないといけないのではないかという意見もあります。しかしながら、ABMといえども十分の精度を持っておりません。少なくとも相手方が膨大な量のものを撃ち込んでくる場合にすべてを撃ち落とすことは不可能であります。しかも、陸上基地にそれを置けば、そういうような場所はありませんし、海中にそれを置こうとすれば精度が非常にまた劣ってくるということで、それからまた、ABMを持つからには、これはICBMを一方に持っておるということによって意味がある。今度のSALTの場合も、都市とICBMの防護と両方に分けられておりまするが、そういうようなことで、ABM単独を持ってみても、これまたたいへん意味合いが薄いというようなことで、どの分野をとってみても日本の場合は核装備をすることはふぐあいである、外国のことはいざ知らず。外国はそれぞれの必要性によって、政治的にはともかく、軍事的に持つ理由はあるのかもしれませんけれども、わが国の場合には軍事的に持つ理由はない。むしろ通常兵器による通常戦に備えるということで十分である。もし、それ以上のことを考えるならば、それは他の手段をもって考えるべきであろう。一般的には、たとえばアメリカの核抑止力もありましょうし、また国連その他の一般の世論に備えるべきでありましょうし、さらにまた、核戦争が起こり得るとすれば、いまのアメリカの核抑止力を別にしまして、起こり得るとするならば、英語では戦略的収拾ということばを使うそうでありますが、どのようにしてそういう戦争を終結するかということを考えたほうがよろしいという問題が出てまいりましょう。  最後に、核のかさでありますが、この問題については、核のかさが信頼するに足るものであるのかどうか、あるいはアメリカの核のかさがあるというものであろうかどうかという点については意見の分かれるところでありますが、私は政府委員でありますので、アメリカの核のかさというものは十分に信頼性があると、米側は再三それを繰り返して申しておるということを申すほかないと思います。
  157. 上田哲

    ○上田哲君 政府委員でありますからそれ以外にないでありましょうが、私は野党でありますから言うのでありませんが、軍事技術論的に第三点については反駁をしておきます。明らかにこれは軍事技術論的にナンセンスのものである、意味のないもの、無意味なものである、軍事技術論的には幻想に属する、心理的なものとしてあるいは政治的なものとして以上の意味を持たないという見解を結論的に申し上げておきます。その部分は、また今後の議論にもなりましょうし、今日分かれるところであるとして、いま専門家としての表明があった部分を政府と党の立場でコンファームするということの御表明があったわけですが、これは私は非常に重要なものとして今後の具体的な政策の中に具現されていくように、念のためにひとつ長官に伺いたい。
  158. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) だいじょうぶでございます。
  159. 上田哲

    ○上田哲君 そうなりますと、もう一つの問題はですね、非常に私は前進したと思いますけれども、今度のSALTの問題で一つ注目しておかなきゃならぬのは、いまも御指摘が一部ありましたけれども、ABMの二百基ずつの制限ということは評価されている。そのままずばり評価してもいいことなんでしょうが、問題は打撃能力が海へ向かって持ち越されたということにあるだろうと思います。そういう観点からすると、しり抜けであるということばを使うのは少なくともその努力に対して不見識だとは思いますけれども、しかし海に対する関心というものは、われわれもまたその観点からいっても非常に重視しなければならないということになる。そこでお伺いをしておきますけれども、原潜を持ちたいという発言が制服の中に出てきたというようなこともあります。この際ひとつ明確に、いまの見解の一部として、原潜というものに対する見解、今後のですね。しっかり出してください。
  160. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 現在は防衛庁において原子力潜水艦を持つということは、希望もありませんし、また検討したこともございません。これははっきり申し上げておきます。私、ただ思いまするのは、少なくとも原子エネルギーというものが、平和裏にどんどん利用されるようになって、あらゆる商船、タンカー、いろんな船というものをひっくるめまして、原子エネルギーで航行ができるようになったという時点においては当然これは防衛庁においても原子動力で動く潜水艦なり何なりというものは検討する余地がある。原子兵器と、その原子エネルギーで推進する、いわゆる運航できる船というものはおのずから別ではないかというふうに思います。ただし、それは少なくとも原子エネルギーによってあらゆる船が動く状況、そういうときに検討されることであろう。現在はさようなことは一切考えておりません。
  161. 上田哲

    ○上田哲君 ロケットを分けて、これを推進する推進力と爆発力は別だというような議論になってくるので、そんな議論はいいですけれどもね。自由な海を原子力動力によって動くようになった場合はなんという前提もはなはだこれはあいまいなことでありまして、そこにそもそももう少し違った側面からの議論がある。だからそういう議論そのものは別の次元のことに属するし、私はやっぱり危険だと思っています。しかしいましぼっている話は、非核三原則というものを軍事技術レベルの問題としてはっきり方向づけた場合に、この原潜というものもはっきり否定の中に入るということを確認をしていただかなきゃならぬということなんです。これはいいですね。
  162. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 現在否定するにやぶさかじゃございません。
  163. 上田哲

    ○上田哲君 さてそこで、先へ進みますけれども、そういう核問題も一つ大きなポイントとして含みながら、やはり四次防というものがわれわれの懸念を少しでも解消する、あるいは防衛庁が少しでもそれらしい議論方向を打ち出すということになりますと、やはり先ほどもお認めになった基本的な、われわれからすれば平和保障論ですけれども、まあ防衛庁のサイドにウエートをかけて言うならば、防衛構想というものがやはり少なくとも議論に値するほどのものが出ていないということになります。そこにそれを構築しようという御努力、意欲があるんだということならば、少しくそこをきちっと議論をしてみたいと思うんですけれども、私は、国土建設隊というようなお話もさっきあったし、それから防衛力限界ということを再三言われております。これは防衛構想がないことの裏返しにちょっとつけているこれも補足説明の部分でありまして、向こう側がどうなっているか、行きどまりがどうなっているかということを議論を先にしたところでながめが生まれるものではないので、ここは私はあまりウエートを置きませんが、しかしまあメルクマールとしては重要であるということで、後ほど議論いたします。しかし基本的な考え方ということで言えば、今後日本が進んでいかなきゃならない——これは防衛庁のサイドで私は土俵をおりて議論していますけれども——防衛庁がこれから持っていかなければならない防衛構想ことばはあまりこだわらずに私は使ってしまいますから、防衛構想ということで言えば、私は少なくとも三つの側面は考えていいんじゃないかという提起をしたいのです。基本的には、三つの基本的にあるものは、専守防衛ということを言われる、防衛庁は。その専守防衛ということが金科玉条になるのだけれども、この専守防衛というものがより立っている柱は何かといえば、日米安保条約ということになる。これはいまのところどういってみたって、片務的であるにせよ何にせよ、軍事同盟であるという認識に立つわけですから、そういう立場で言えば、この軍事同盟の一方に入っているアメリカ側が、明らかに戦力放棄を中にしっかり持っている軍隊あるいは国、そういうものと軍事同盟の橋渡しをしておきながら、こちら側だけは専守防衛であるということに論理的な矛盾が基本的に出てくるのだと思うのです。もし、論理的に進めていけば、専守防衛ということを徹底的に究極させていくならば、そこにはやはり武装を頭にかぶせるにせよ武装中立という形態に入っていかざるを得ないということになる。そういかないところにどうしても問題が出てくるので、事前協議の問題にせよ集団保障論なりというところが矛盾として浮び上がってくることになるんだと思うのです。中立論か軍事同盟論かということを議論すると、これは見解の相違ということになってしまいますから、大して意味がないかもしれないけれども、そこの部分をどうやって理論的にも解消していくのか、各論的にはもう少し、さっき申し上げた三項目というのは後から出しますけれども、その基本的なところで専守防衛ということを究極に進めていけば、どうしても戦略攻撃をもってくると軍事同盟というものは矛盾をしてくるんだと、それをどうするんだと、これはどうしても中立志向ということ——一歩踏み込みますよ——軍事中立でもいいと、私は賛成するのではなくて、軍事中立というならそれですっきりしたものになるんだけれども、そういかないとすると論理的矛盾が出てくるだろうということをどうお考えになりますか。
  164. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私やはり一つの理論的分析をなさっていらっしゃると思うのです。しかし、現在の世界情勢が東西に分かれて、集団安全保障の形で、相互防衛条約というようなものがそれぞれの主義主張、平素の国交等によって結ばれておる。そういう実情から言って、現在のあり方が悪いとは思いません。しかし、理論的に言えば専守防衛という面が、攻撃の面は攻防自在の米軍に依頼しておるのだから専守防衛防衛にならぬじゃないか、しかしこれは相手が理由なく侵略してきたときという前提があるわけです。われわれのほうがトラの威をかりてというか、アメリカの攻撃性を背景に持っておるということで侵略性を持つとか攻撃的に他国を刺激するとか、そういう立場は全然とらないわけですから、ここが重要なところだと思うのです。重要な点だと思うのです。ですから日本立場としては、あくまでも専守防衛である。もし不正の侵略者が日本に危害を加える場合には、攻撃的な面というものはアメリカに分担をしてもらう。これは現在の世界の常識からいってそんなにはずれたことを日本がしておるものと思いません。しかし、中ソ友好同盟条約が空洞化しておる時代です。だから一つの研究課題としては、私たとえばさっき申し上げたような防衛研修所などが武装中立論といったようなことを研究することはあっていいだろう。しかし、現在の段階では、われわれは政治家としてそういうことになるとはまだ思っておりません。
  165. 上田哲

    ○上田哲君 侵略してきた場合というのも議論としてはずいぶんラフになってしまうのですよ。侵略とは何かということになってくると、またこれだけで議論をしなければなりません。アメリカがベトナムに侵略しているとは言っていないわけです。相手の侵略の未然の防止という理屈になるわけですね。防止するほうが爆弾をたくさん落とすというような奇妙な形になってくるのも、これは侵略論ということを分析しないで使っていればもちろん使えるということの証左でありますね。そういうことでいえば、向こうが侵略してきた場合だけに限っての専守防衛だという議論は、今日の進んだ兵器体系の中でも、まあこれはちょっとラフ過ぎる議論ですね。だから、そこのところを言っていてもきりがないと思うんだけれども、私が言っているのはもうちょっと、防衛研修所の議論のテーマじゃないんですよ。基本的に防衛構想をお持ちになろうというのならば、その防衛構想の中から防衛力整備計画というものをお出しになろうというのであれば、とりわけいま新しい世界の潮流の中で、何かそこへ向かって適応してつくり出そうという意欲があるんなら、そういうからを破っていく論理を勇敢につかみ出していこうとしなければ論理にならぬです、これは。構想にならぬですよ。そういう意味で、私は非常に突き詰めて言えばそういう議論になるんではないかということを言っているんですがね。それはどうですか、もう一ぺん繰り返しますが。
  166. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私は一つの理論としては、上田さん、筋の通ったことを言っておられると思います。思いますが、日本の現在の政治的立場等々から言えば、日米安保条約を堅持して、現在の自衛隊の専守防衛の姿を推進する、こういうあり方が世界の情勢等を踏まえてみましても適切である、こういうことを申し上げておるわけです。専守防衛というならば、武装中立といった形にならざるを得ないではないか、これは一つの理論だと思います。だから、防衛研修所ではそういうことを過去にもまとめた論文がありまするが、一つの研究題として研究することはあっても差しつかえないと思いまするが、防衛庁長官としては、いまその方向に切りかえていくという意思はございません。
  167. 上田哲

    ○上田哲君 まあ政治課題が先にあるからとおっしゃるのは、翻訳して言えば、アメリカへの関係があるからということになるでしょうが、まあこれはうなずいておられるので、それ以上は言いません。  そこで、もっと、防衛研修所のテーマだと言われるんなら、それでもいいから、まあ久保さんあたりをまじえて議論をしてみたい意味で私は三つの提案をしてみたいんだけれども、それがどうしても踏み切れないという前提でもけっこうだが、私が申し上げたいのは、しからばいろんな論理的な矛盾なりあいまいさはあるにしても、安保の中のせめて武装中立、武装のほうに力があるんじゃなくて、安保の中の中立志向ということをどういうふうに考えていくかということが一つないと、どうしても防衛構想は必ず矛盾しますよ。進んでいけないだろうと思います。  もう一つの問題は、日本自衛隊は終始一貫今日まで戦時編制です。これを平時編制という発想に変えていくということが根本になければならぬ。平時編制論はいままで防衛庁にないんですから、有事即応体制で来ておるわけです。有事即応体制ということが世界の潮流の中ですでに検討点に立っているというところで、防衛構想を考えなければならぬというのをお答えになっている以上、その戦時編制論というものを平時編制論に変えていくというのをどうするのかということを検討しなければならないだろう。  もう一つは外交と軍事の関係ですね。この外交と軍事の関係を、軍事をうしろに立てての外交じゃなくて、完全に外交優先ということじゃなくて、外交に含まれる軍事といいましょうかね、そういう形に、まあうまく言えない部分があるんですけれども、外交と軍事の整理、こういう問題がいま申し上げた前二つの点の関連において検討されていかなければならないだろうと、こういうふうに私は思ってみるんですよ。それは決して防衛研修所の研究テーマなんということじゃなくて、長官が言われる政治的配慮がなければならぬのだから、アメリカに対しての政治的配慮だということをおうなずきになっているところは、これはまあ順当という議論もあるでしょうから、そこのところは議論しますまい。しかし、それを動かしがたい一つの今日の現実だと考えるならば、日米安保条約の中での武装中立の志向ということ、それから平時編制への切りかえの問題、それからその二つの観点に立っての外交と軍事のあり方の問題この三つの側面を根本的に検討して結論を出すんじゃないと、新しい構想というのは出てこないだろうと思うのですよ。その辺は、政治家の見解と、それからまあ専門家の見解と、それぞれひとつじっくり伺いたいと思うんです。
  168. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 安保の中の中立志向、私、議論になる御意見だと思います。で、それはただ日本の現在の立場から申しますると、日米安全保障条約を基調とし、これを堅持していく、これは政府として変わりはございません。しかしアメリカ側からメリットが比較的少ないではないか、ときに破棄がいわれることもしばしばあります。で、そういうことなども想定しながら、日本がやはりこの安保の中において今後どう立っていくべきかということを平素から研究しておくことは必要だと思う。私は、久保君が先ごろ論文を発表しまして、いろいろ議論の対象になりましたが、それもやはり職責上いろいろな場面を想定してものを考えておる一つのあらわれである。まああくまで私見でありまするが、一つのあらわれである。これを防衛庁として、政府段階として、今後どう結論づけていくか。これは大事なことだと思います。そのためには、私さっきから申し上げておるように、防衛局とか、防衛研修所とか、そういうところが相当旺盛なやはり研究と努力を積み重ねることが必要だというふうに思っております。そしてまあ結論づけることが必要でしょう。そのためにはどうぞ時間をおかし願いたいと思うのです。  それから平時編制と戦時編制の問題でありまするが、これは私、やはり重要な御提言だと思うのです。で、いま特に国際間の緊張、特に大国間における緊張が緩和しつつある状況というものを考えてみると、いま——まあいまも定員増の問題で御審議を願っておるわけでありまするが、この確保した定員というものにこだわって常にこれが相当程度の充足率をあげておらなければならないとする従来の考え方というものを再検討する必要はあるんじゃなかろうか。これは大事な点だと思うのです。要するに量より質といいまするか、隊員の質の向上ということにもっと目を向けるべきだと、これは人教局長、ここにおりまするが、常に人教局長もそのことを私は強調しております。私もぜひひとつそういう方途で自衛官の充足を考えようじゃないか。で、相当程度かりに欠員があるとしても、それはいざというときには予備自衛官なりあるいはまた愛国の若人なりという者によって埋められる。だから、定員だけはこれは何が何でも確保させていただきたい。しかし定員を確保したということと、その充足率が十分満たされておるということとは別に考えていいではないか。これはいま御質問に直接答えることになるかどうか存じませんが、十分検討に値する話題としていま防衛庁内で検討をしておる最中と、こういうわけでございます。  それから、この外交に占める軍事、これはもう善隣友好の外交、平和外交というものを日本は国是として推進しております。したがって、軍事力を背景にしたこの外交方途というものは私はあっちゃならぬと思います。あくまで平和を貫くためのあらゆる努力というものをはかっていく、これはもうおっしゃるまでもないことだと思っております。
  169. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 初めに安保の中の中立志向ということを言われたわけでありますが、政府立場で申しますると、中立志向という発想ばやや困難であろと思うのです。しかしながら安保の中の自主性の高揚といいますか、自主性を高めていくという発想であれば、これはあり得るんではないか。最近、アメリカの学者あたりでも、この日米関係を想定しながら、相互依存の中における自主性、相互依存関係の中における自主性という発想をしております。それからニクソンの、ことしでありましたか、外交白書の中では、日本の自主性がだんだんと強くなってくるのは当然であろう、しかしながらその底に日米関係というものがあるということの趣旨発言があったようでありますが、いずれにせよ日米関係というものは、言われるような相互依存はもちろんありますけれども、その中で自主性が高まっていくということ、これはあり得ようと思います。それでは具体的にどうかということは私はなかなかわかりませんけれども、そういったことが具体的に今後議論されることが望しまかろうと思います。  それから自衛隊の平時編制の問題でありますが、これは従来自衛隊の中ではタブーともいうべきものでありまして、言われましたように、有時即応体制を、従来現実にとれておるわけではないのにもかかわらず、それを主張しておるというのが実態であります。そこで、四次防以降の場合に、われわれが考えなければならないのは、脅威の問題でありますとか、あるいは国際緊張を直ちに前提にした編制でなければならないかどうか、そういうような国際情勢に置かれているのかどうかということは、やはり考え直してみる必要はあろうということで、これはいずれ私ども内部で検討した上で、全体的な構想ができれば、御批判をいただきたいと思っております。  それから、外交と軍事の関係、これは抽象的にはわかりまするし、するわけですけれども、アメリカなりソ連、それからヨーロッパたとえばNATOであれ、ワルシャワであれ、それらの国は、平和努力ということと軍事努力ということを車の両輪のごとく考えておるようであります。つまり、両方とも必要なものである、その上において世界の平和が実現し得るというような考え方でありまして、やはり基本的には力というものの存在を非常に高く評価しておる。いい悪いはもちろん主観的判断があろうと思いますけれども、ただ日本の場合には、どうもそういった発想は適当でない。やはり平和外交と申しますか、外交が主たる分野を占めておって、それのどういう分野を軍事力というものが占めるか、これもまた一つ大きな問題でありまして、具体的な問題としては、やはり今後御議論いただきたいところだと思います。
  170. 上田哲

    ○上田哲君 三点のうち二点目のところを先にひとつ抜き出してお話をお聞きしたんです。  戦時編制と平時編制の問題は、いま防衛局長が非常にはっきりものを言われた。私はそのとおりだと思うんです。いままで防衛庁には実質的に戦時編制しかなかったわけですね。防衛庁長官は先ほど質に変えるんだというようなお話をされておる。質に変えるんだということは、今日の実情をかまえて言えば、これは人が集まらないから何とか中身を濃くしようという言いわけ以上には私どもは感じられない。そこのところは、これもまあそれ以上言ってもしようがないからそれぐらいで切り捨てておいて、問題はそういう発想ではない。根本的に平時編制と戦時編制の異なるところは、これは充足率というものをどう見るかということが一つあるわけです。それと装備の問題があります。  先に充足率の問題を言えば、人が集まらないから中身を濃くしようという話ではなくて、本来これは予備自衛官の問題なんかも議論しなければなりませんから、あとにしますけれども、現実の定員のことを先に言うなら、充足率をどいうふうに見ていくのかというところをもう少し根本的な原理として考えなければならないわけですね。これをどうするか。いまは予算がこれだけある、予算がこれだけあるんだけれども人がここまでしか来ないんだということではないんであって、充足率というものを本来この辺と見ておくということも必要になってくる。そこに根本的な違いが出てくるわけですね、戦時編制と平時編制の違いが。だから、それは突き詰めて申し上げるけれども、こういう構想の一番わかりやすいポイントと言えば、戦時編制から平時編制に変わっていかなければならぬということは明らかなんですから、そういう方向に対して努力するということでいいですか。
  171. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) もとよりそういう努力をしたいと思っております。それからまた現在努力しておるわけです。それがさっきの説明になるわけですが、何も充足率にこだわるな——これは上田さんが言われるように、なるほど募集難です。募集難ですが、かつての好況時よりは去年からことしにかけては比較的志望者も多いようです。多いようですが、この時点でやはり質を大事にしょう。そうただ充足率、予算があるから、いま御指摘のように充足率が十分であればいいというものではないと思うんです。ですから、いろいろ人事教育局長のところでいま検討をしておる。私はこの間地連部長会議というので訓辞をしたわけですが、そのときもそれに重点を置いて主張したわけです。ですから、いよいよ戦時というときには、予備自衛官及び国を愛する若人によって充足させればいいじゃないか。だから定員はどうでもいいということにはならぬので、定員だけはやはり確保しなければならぬ。したがって、この法案はすみやかにひとつお通しをいただきたい、こういうお願いにもなるわけでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  172. 上田哲

    ○上田哲君 いじましいところへ話を持っていったんでは……。
  173. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) ちょっとコマーシャルのほうを……。
  174. 上田哲

    ○上田哲君 コマーシャルが出てきては基本的な防衛構想にならぬです。防衛構想議論する有資格ではないです。これはひとつもう少し古今東西のそうした事例とかあり方ということの中で、理論的にものを考えていただきたいんです。  スペシャリストに伺います。防衛局長に伺っておくが——あなたじゃだめだ。一体防衛庁長官は責任者として、戦時編制から平時編制に切りかえることはけっこうだ、こういう方向を打ち出されておりますが、それはそれとして、もっと客観的にいって、戦時編制でない平時編制の、たとえば充足率——じゃないな、人員の問題、装備の問題、これは国際的な視点からいって、あるいは日本の実情からいって——それはくっついちゃぐあいが悪かったら先のほうだけでもいいですが、どういうものと考えなければならないか。
  175. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) これはまあ私の知っている範囲では、やはり国によって非常に違っておるようであります。たとえばソ連を例にとってみますると、ヨーロッパに配置をされておりまする軍隊というものは一〇〇%の充員であり、一〇〇%の装備を持っております。それから第二線、第三線となるにつれて、パーセントは忘れましたけれども、七〇%とか五〇%というふうに、充員は減っております。しかしながら、ソ連の場合は装備は十分に持っておるということであります。  それからNATOのほうにつきましては、これは時期によって若干違いまするけれども、充員の度合いが本来は一〇〇%であるべきところ、当時の情勢によってなかなかそれが充足されていないという嘆きが何べんか報告されていたように思います。  中小国の場合には、これは比較的この充足度が悪い。これはまあ日本でも同じでありましょうが、そういうようなことでありますが、ただこれらの国を補っておりまするものは徴兵制であります。そこで、いま先ほど申し上げましたように、平時編制がタブーであるということを申しておりましたのは、日本では徴兵制背景としない防衛力であるということでありますので、急には防衛力が集まらない。しただって常時持っていなければならないというのが従来の発想であります。  しかし、そういった発想は机上の議論としてはまあもちろん成り立つわけですけれども国際情勢との関連で考えた場合に、そういう情勢にあるかないか、これがまあ一つの判断の分かれるところであろううと思います。したがいまして、今後の当分の間の国際情勢をどう判断するか、それに応じていまの人員の充足、それから装備の充足をどう考えるかということが検討の対象であろう。人員についてはただいま長官も申されたことでありますが、装備については、これはたとえばソ連がとっておるような一〇〇%充足が必要であるのか、あるいは訓練プラス・アルファ程度のもので足りるのか。つまり、あまり装備を充足し過ぎますると、装備の近代化に支障がある。これは防衛費が一定のワク内でありますると、装備のすべてを近代化するわけにいかないということになりますると、一〇〇%の装備を持っている、充員は八五%で一〇〇%の装備というのが従来の考え方からいけば望ましいわけだけれども、しかしそれがほんとうにいいことであろうかという問題は出ます。そうしますると、訓練なりその他部隊運用なんかの関係でどの程度を持てばよろしいのかというのが、いま長官のお示しになったような方向であると、今後われわれとして検討しなければいけない。  もう一つ関連することではありますけれども、人と装備という観点から、まあ常時の編制と申しますか、そういうことを考える以外に、部隊の単位も考えてみる必要がある。これは人と装備をかけたものが部隊にはなりますけれども、実はわれわれの観念からしますると、部隊のほうが重要でありまして、その結果装備なりそれから人員なりがどう出てくるかという問題もあります。まあ完全に同じではありませんが、そういったような部隊、人員、それから装備、そういうようなものを総合的にやはりいま御議論のような方向で検討してみたいと思っております。
  176. 上田哲

    ○上田哲君 部隊のことばあとで触れます。  そこで、長官にもう一つ伺っておきたいのだが、先ほど長官が標準政策という認識を持たれた考え方の中で、あなたの言われた教育訓練部隊ということがありますね。その教育訓練部隊の原理として横たわるものは平時編制だということでなければなりませんね。そういうことでその方向を進めていくということになれば、平時編制というものの人員構想ですね、考え方、これはやっぱり導き出されてこないと議論にならないわけです。部隊のことはあとでちょっと聞きますけれどもね。まず、その点ではどういうふうにお考えですか。
  177. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 人員については、これは陸、海、空に応じまして非常に違っております。で、海と空については、実は技術者集団ともいうべきものが本体になっております。したがいまして、充足度というものは非常に高くあるべきで、大体現在は九七、八%と思いますけれども、九五%程度前後、まあそれを欠けても若干、という程度のものはほしい、陸の場合が現在八七%でありまするが、これが平均値はたとえば八五%なら八五という数字、あるいは八三という数字を出すことは容易でありますけれども、中央の司令部組織、それから各種の技術関係の部隊、それから歩兵である普通科の部隊、そういったそれぞれの部隊の性格に応じて数字が違ってまいります。そこで、いま申し上げたように、いざというときに役に立つようなその母体になるようなものとしてどうあるべきか、各種の部隊はどうあるべきか、そこから検討してまいって、総合して何十何%が適当であるというふうにはじき出してみないといけないんではなかろうか。で、いままでの考え方というものは、もちろんそういう考え方はありましたけれども、比較的予算とか募集減とか、そういうところに左右されて充足率が出ておったということは言えようかと思います。
  178. 上田哲

    ○上田哲君 質問がちょっと無理な面があったかもしれないけれども、含めて伺いますが、部隊編成ということも含めて、そのあたりで初めて限界論というのは出てくるわけですね。私は充足率の問題として考えるのではない、定員の問題としてですね。その定員は集まるか集まらないかまた別の話です。集まるところで定員を作成するなんというのは全く錯綜しているんですから、そういう議論ではない。充足率の問題ではなく、定員の問題として考えた平時編制とは何かということがなければ発想の展開にはならないんですね。そういう問題をどう考えるかということ。
  179. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) その点については、私はこれはまだそれほど多くの人と議論したわけではありませんが、話し合っている事柄としましては、私どものほうで部隊を含めて陸海空の常時の兵力といいますか、部隊の規模はこういうものが望ましかろうというものを想定いたしますると、その場合の人員、たとえば三十万なら三十名というものを定員として定めて、それ以上はもう何年たとうと国際情勢の急激な変化以外はふやさないという一種の自衛隊に課せられた憲法的制約のようなものを置いて、その範囲内で自衛力の整備を考える。しかし毎年の定員はいま言いました数字ですから、実際の実員については、予算なりあるいは政令なりで定めていくということが、実はわれわれからいうと望ましいんではないかというふうに、これは内心思っております。
  180. 上田哲

    ○上田哲君 非常に重要な発言だと思うんです。三十万という数字は今後根本的な原理の発想の転換をした場合の、つまり平時編制に切りかえていく場合の一つの尺度になるという方向へ向かってこれから検討が始まるんだというふうに考えていいですか。
  181. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 三十万と申しましたのは一つの例示でありまして、少ないという人もおりましょうし、多過ぎるという人もおりましょうから、一つの例示でありますが、そういうような形でいけば一応、たとえば毎年予算で自衛力がどんどんふえていくということについての歯どめにもなるし、世界各国の軍事兵力というものは兵員で示されておるとすれば、おおよその、言われましたようなメルクマールにもなり得るんではないか、そういうことが私としては望ましいので、部隊の整備目標とあわせて、そういうことも含めて考えてみたいと思っております。
  182. 上田哲

    ○上田哲君 三十万が多いか少ないかの議論ははずしておきます。はずしておきますが、私見でいいが、防衛局長は三十万ということをおおよその見当として平時編制への発想を考えようということですね。
  183. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 長官にもお話をしてない数字を申し上げるのははなはだ不謹慎だとは思いますが、私自身はそんな程度がいいところかなと思っております。
  184. 上田哲

    ○上田哲君 議論はちょっと別にして、伺っておきますが、その場合の部隊編成ですね、あわせて伺っておくのは、予備自衛官の問題が、これ、くっつけていかないと議論にならないと思いますが、それを含めて、部隊編成の問題をどういうふうにお考えですか。
  185. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) いま三十万と申しました場合に、現在自衛官が二十六万から二十七万になろうとする段階でありますが、これは純粋の自衛官で、予備自衛官はもちろん入っておりません。そこで、予備自衛官を含めてのことになりますると、これは外国のいわば緊急徴兵といいますか、そういうものにかわることになるわけで、有事の場合に、現在の想定される部隊、つまりわれわれが整備目標と考えられる部隊が必ずしも十分の充員をしておりません。たとえば今日の規模で、ある部隊が百人なら百人の定員でありましても、有事になると百二十人要るというようなところに充当するということと、予備自衛官の場合には後方の治安保持の関係の要員に含められるというようなかっこうになります。
  186. 上田哲

    ○上田哲君 三十万ということになりますとね、陸上は十八万を動かさないということはすでに確定している問題ですね。海と空にならざるを得ない。もう一歩踏み込んで、海と空を重点にした場合のプロセスですね、編制、どうなっていくのか、できれば装備も含めて、大体のイメージをひとつ出してください。
  187. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 実はそこまで関連さして検討しておりません。検討しておりませんといいますか、そういうような方向で検討するようにいま局内でやっておる段階でありまして、具体的な部隊の規模、それに応じた人員というふうなところまではまだできておりません。しかしながらその中では、陸が十八万は動かせない、あと海、空にどの程度いくかということであろうと思います。
  188. 上田哲

    ○上田哲君 かなりしかし検討のイメージが出てきましたから、それはそれで意見の何は別にして、そういう方向を含めて、ちょっと予備自衛官の、前から言われている警備連隊ですね、四十一都道府県、これはその後どうなっているのですか。ちょっと聞かして下さい。
  189. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 予備自衛官は実は三次防の場合にも十数個連隊程度——これは計画だけでありまして、現実に運用はいたされておりませんが、計画としては三次防計画の中ではあったわけでありますが、これは四次防原案の中では、約四十でありましたか、五万名ということで計画をしておりました。この点については、総員、四次防末で陸の予備自衛官の六万、海、空がそれぞれ約三千程度のものを計画しておりましたが、陸海空を含めましてこれは検討し直します。その場合に警備連隊という発想がなくなるかどうかについては、検討結果を待ってみないとわからないわけでありますが、私はなくすわけにはいかないのではないか。といいますのは、警備連隊と申しますとすぐ治安出動的な分野のみをお考えいただくわけでありますが、必ずしもそうではありませんで、いま限定的な局地戦というような考え方をとっておりまするし、日本本土にかりに上陸してくる場合に、四方八方から大規模な侵略侵攻があるとは必ずしも考えない。特定の地域に限られてくる、大規模な侵略は。そうすると、他の地域については小規模な空艇による降下でありますとか、あるいは上陸でありますとか、そういうことを想定いたします。そういった場合のいわばコマンド作戦とも申しますけれども、そういうような小規模の外敵からの侵攻に備える、あわせ備えるということ、それからその地域にありました師団がいずれかの戦闘地域に派遣された場合の後詰め部隊にするというような考え方でありますので、これはおそらくなくすわけにはいかないのではないか。しかし規模は、全体の関連もありますけれども、若干縮小せざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  190. 上田哲

    ○上田哲君 警備連隊についてはわかりました。そういう警備連隊構想の検討を含めて三十万という一応のメルクマールを置いて、そこへ向かって部隊編成、装備の問題を含めてこれまでの長い戦時型編制の考え方から、世界の潮流に合わせながら平時編制の方向を志向していくという努力をいまするのである、長官、そういうことでいいわけですね。
  191. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 戦時編制ということばがいまの日本自衛隊に当てはまるかどうか、これはやはり議論の存するところだと思うのです。ただ、いつも定員の目一ぱいを充足する、それは一〇%や一二%の欠落はあっても、そういう形できたものを今後どういうふうに運営するかという点は重要であると思います。で、私はその戦時編制、平時編成ということは私は自衛隊にはなかったのではないか。むしろ日本は何といっても海外派兵をしないということ、それからマンパワーの限界と申しますか、徴兵制をとっていないということ、いろいろ、政策面で戦時的なものはないわけですから、あえてこれをそういう専門語で呼んでいいかどうか、これは自衛隊を軍と言わないのと一緒で、私ちょっと抵抗があるのです。しかしあなたのおっしゃる意味、上田議員のおっしゃる国際緊張緩和方向等々にらみ合わせながら今後の編制というものを考えていく、これは当然あっていいことだというふうに思っております。
  192. 上田哲

    ○上田哲君 大きい切りかえの時点であるということはお認めになったので、けっこうです。  そこで、あまり深く踏み込んでいる時間もなんですから、少し先へ進みますけれども、外交のことを、せっかく吉野局長見えているからひとつ御見解を承っておきたいのですが、いまの二点について考えてみた場合に、軍事と外交のあり方というのは、やっぱりそういう意味で検討する段階にあるということは間違いないわけです、そういう意味では。ことばが熟しないのだけれども、軍事を背中においた外交なんということを言うのは、少しこれは合わない言い方であるとは思いますよ。しかしたとえばさっき久保防衛局長も言われたように、ヨーロッパ諸国あり方というのが、軍事と外交というものが両輪であるというようなことではないだろうと、わがほうは、わが国は。こういう見解というのはあるわけです。これ、ことばを正確に使っておかないと、逆にとられちゃ非常に困るのだけれども、外交と結びついた軍事、軍事と結びついた外交、これはたいへんことばを変なふうにとられたらえらいことになるわけですが、つまり外交と別に軍事が走っていくということはいかぬのだ、あくまでも軍事と外交というものの脈絡を持ちながら、明らかに和平外交というものは軍事をコントロールしながら進んでいく。ほかのことばで言えば、防衛計画におけるフレキシビリティーじゃないかと思うんです。そういう防衛計画上のフレキシビリティーというものを、たとえば五年間なら五年間という防衛力整備計画があったところで、それは五年間の中で情勢の変化や政策の変化に応じて変わっていくということを外交の推移によってなし得ると、こういうことが一つなければいかぬということになるかと思います。そういう点についての時期に来ているということはいかがですか。
  193. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) これはたいへんむずかしい問題でありまして、私は実はその問題について何ら考えたこともないというのが率直な私のあれなんでございますが、根本的には外交がもちろん優先すべきことはこれはもう問題ないわけでございます。しかしながら、そうだからといって、はたして防衛計画にフレキシビリティーを持たせること自体は、これはそれ自身何ら問題はないわけでございますが、すぐに外交と防衛計画が直結するかどうかということになりますと、はなはだ疑問ではないかと思うわけであります。と申しますのは、わが国の外交は、これは御存じのとおりあくまでもいわば自由世界の中の一環としての外交でしかないわけです。少なくとも当面、わが国の自主外交というものはございますが、しかしそれもあくまでも米国ソ連の間のいわゆる恐怖のバランスの中にありまして、われわれはほとんど現在の防衛程度で外交をやっておるわけでございます。したがって自分から、外交をこういうように展開していくから軍備が少なくなっていいとか、あるいは軍備が多くなっていいというような、それほどの大きな外交はいまのところないんじゃないか。もちろんこれは当面だけでございまして、これから長い間の将来におきまして、米・ソ・中国の姿勢も変わってき、あるいは世界平和に対する各国の意向も変わってくれば、軍備をバックにせずに十分いろいろの外交が展開できるだろうと思いますが、いまのところもっぱらいわゆるパクスアメリカーナと称するアメリカの維持しておる平和の中においてわれわれは外交しておるというのが現状ではないかと考えるわけです。
  194. 上田哲

    ○上田哲君 たいへん正直な御答弁であることは評価いたしますけれども、アメリカの許容の中でしか行なわれないというようなことを聞いてもこっちはどきっとするばかりでありますし、それから外交の進展によって、外交努力によって防衛のフレキシビリティーをとても左右できないというのはずいぶん気弱な話であって、これは困る。しかしこれは政治家の答えるべきことでしょうから、長官にそのことを一言伺っておきますけれども、やっぱり今日の日本の財政のあり方から、あるいは予算の編成の実情からいって、防衛力整備計画のみが全くすべてに優先して先取りするという形が事実存在をしておる。それはことばのニュアンスとしては異論がおありだろうけれども、しかし別のことばを使えば、そういう点で他の財政費目とのフレキシビリティーを欠いておるということは間違いがないわけです。そういう意味で、それを欠いている最大の因子が外交努力によるのだ。逆に言えば、外交によって、そうした防衛費なり防衛力増強計画などというもののフレキシビリティーが不断に保有される、そういう方向をいままで以上に強く考えなければならないということは私は間違いないと思いますが、いかがですか。
  195. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) もともと自衛隊そのものは一つの戦争の抑止力ということでもあり、にわかに不正の侵略というものに対応するものであるわけでして、このことはもっと世界に知らされなければならぬ。これはやはり外交手段をもって日本自衛隊の特質というものを徹底する必要がありますね。これが徹底しないというと、何ら他国と変わらない軍隊ということで認識されるし軍国主義呼ばわりということにもなろうかと思います。そういう点で、むしろわれわれのほうが外交に期待するものが非常に多いわけです。  それからまた、外交の面から言えば、善隣友好、平和外交の推進ということがあくまでこれは政府自体の大目標であって、かりそめにも、さっき申し上げるように、軍事力が背景になって外交展開をするとか、推進をするとか、外交推進があるとかいうことば日本の場合、あってはならないと思います。したがって、平和外交が推進されることによって防衛費が少しでも減る形、これは私、望ましいことだと思っております。ただ誤解があってはなりませんのは、現在の四次防段階の整備計画というものは、まだまだ国力国情に応ずるところの必要最小限を満たされていない、これの充実段階である、これが私どもの主張でありまして、これは見解の分かれるところですが、したがって、いまの平和外交の方針はもっともっと力を入れ、いままで以上にこれは徹底しなければなりませんが、そのことと、現在の防衛庁の四次防の五ヵ年計画というものは、直接的には関係がないというわけです。しかし将来においては、この程度でよかろうということは、いずれ国民にも理解してもらい、またわれわれもそれが具体的に説明できる日がくる、またそうしなければならぬというふうに考えております。
  196. 上田哲

    ○上田哲君 砲艦外交の時代ではありませんけれども、しかし現実にそういうふうに受け取られていることもある。そういうことばを非難として受け取りたくないならば、やはり政府の姿勢そのものの中に、外交努力によって防衛力増強というようなものが不断にフレキシビリティ——という点を保有するという政府の政治姿勢がなければならないということを私は強調しておきます。  第一点に戻りますけれども、この中立志向ということばだけでは、どうも政府立場からものが言いにくいという御答弁もございますけれども、具体的に言いますと、その中立志向を、私はそのことばの矛盾ということは承知しながら、安保の中の中立志向ということを一生懸命提案しているわけですから、これは前向きに受け取ってもらわなければ議論にならないわけですが、さらに、したがってそれを抽象論にしないために、具体論にすれば、二つにしぼって、極東の範囲ということをもう一ぺんしっかり検討し直すのだということ、それから基地問題をしっかり検討し直すのだということ、この二つに限定できると思っている。現に佐藤総理が、六日の参議院の外務委員会でも、この問題はキッシンジャーなんかとも話し合ってみたいということを表明されているわけですね。佐藤さんはもう日にちがないのだから佐藤さんの言うことはあてにならぬという議論ではもう審議は全部無意味になりますから、こういう話に入らないようにしますよ。少なくともいま客観的に言って、そういう問題を洗い直さなきゃならないところにきているということはもう外部情勢がわれわれに迫ってきていると思うわけです。内在的な発意の問題ではない。そういうことからしますと、やっぱり中立志向ということばをとるとらぬはあえて議論をいたしません。実質の問題としてですよ、実質の問題として、新しい構想の基底にあるものの具体的なテーマを、極東の範囲の洗い直しということと、基地問題の整理というところにどれくらい踏み込んでいくか、これが少なくとも最大の課題だということはしっかりお認めいただいていいと思います。
  197. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 重要な点だと思います。当然そういったことを検討しようという姿勢でおります。それから基地自体で言いますならば、これもしばしばここで申し上げておるように、次官を長としまして、基地の洗い直しをする、これは米軍の基地、自衛隊の基地、そしてまた米軍が将来解除するであろうこの基地を自衛隊が利用すべきもの、またすべからざるもの、開放していいのかどうなのか、そういったことはもうすでに事務的に進めておるわけでありまして、これは私の任期のいかんにかかわらず、もう現実の問題としてずばり出しております。具体的におそらく国会が終わったころにはこの内容等々についてももう整備されるというふうで、何か二日ほど前の参事官会議、私ども防衛庁の参事官会議でも具体的な議題として議論したそうでありまするが、これは大急ぎ検討をしてまいりたいと思います。極東の範囲、もとよりであります。
  198. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、長官のそういうお答えもありましたので、久保さん、ひとつ具体的な責任者として、新しい防衛構想をつくっていく中で、極東の範囲の確定、洗い直しということと、基地問題のそういう方向での整理ですね、この問題をぜひ構想構築の中に入れていただきたい、こう思うんです。それがさっき久保さんは、中立志向ということは政府サイドでは言いにくいけれども、しかし安保の中の日本の自主性の向上ということならばわかるのだと言われた。日本の自主防衛努力の向上なんというよりは軍事力の増強であるというほうが全くたいへん困るわけですけれども、しかし実際の行動というものが、少なくとも極東の範囲なり基地問題の整理について、日本側の専守防衛なら専守防衛、あるいは逆に言えばアメリカの戦略攻撃というものに入っていかないのだということの歯どめとして確定をされていかなきゃならぬということは明白だと思います。それも一つ新しい構想の中に大きな項目としてきちっとしていただくということを御見解を賜わりたいと思います。
  199. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) ただいま政治家江崎長官がお答えになったように思うのですけれども、基地問題については、私ども関係がございます日米安保をどういうふうに持っていくかということがありますので、これは防衛庁の中でも、いま申されましたように、委員会を設けて検討してまいるということでありますので、これはただし四次防でだけでなく、防衛政策全般との関連、あるいは日米安保の実施との関連で検討してまいる、これはそういうことばお約束できると思います。ただし極東の範囲の問題については、まさに外務省プロパーの問題でありますので、外務省にお譲りして、外務省から御相談があれば、われわれ軍事的な立場からまた御相談に応ずるということでいきたいと思います。
  200. 上田哲

    ○上田哲君 そこに、だからさっき私が申し上げたすでに外交と防衛の問題に乖離があると言うのですけれども、また吉野さんもう一ぺん出番が回ってきた。極東の範囲というものはどうしてもなきゃいかぬのだということをこっちも言っているわけです。総理もそういうふうに言っているわけですから、キッシンジャーも言っていることだし、いいですね。
  201. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 基地の整理の問題につきましては、われわれも非常に同感でございますが、極東の範囲ということになりますと、おそらくいまいろいろ問題があるのは、ベトナム戦争との関係で、また再びこの問題が極東周辺に起きた事件について、日本の基地がいかに使用されるべきかという問題で問題になっているのだろうと思いますが、これはあくまでも極東周辺でございまして、そこで、極東の範囲自身を明確化するということは、これはまあ少なくとも過去においてはすでにそういう努力がなされたわけでございます。問題は、これを拡大するというようなことがどちらかの方面にあるというならばともかくとしまして、これを縮小するというようなことになりますれば、これはまた御存じのとおりやはり日本防衛自身の問題及び安全の問題に関係してくるのだろうと思います。したがって、今度のキッシンジャーとわが国首脳との会談の内容は、やはり根本的に、あくまでも極東情勢をどのようにアメリカ及びわが国が見ておるかということと、これらに対する米国の政策が今後どういうように展開されていくかということにつきまして、根本的にまず意見の交換を行なうべきではないかとわれわれは考えております。
  202. 上田哲

    ○上田哲君 局長に聞いてもしようがないかもしれませんが、キャッチボールをされては私も迷惑なんだ。  国務大臣に伺います。総理がそうはっきりおっしゃっておることでありますので、極東の範囲をああいうようなことではなくてはっきりひとつ、いまのままでは少なくともどんなに百歩譲っても専守防衛の範囲に入らないという懸念があるわけですから、そこをひとつ明確にしていただくような決意を……。
  203. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 従来安保条約の審議の過程で、極東の範囲というものはこれは明らかにされておることは御承知のとおりであります。ただ、ベトナムが極東周辺であるということから、今度いろいろ議論を呼んでおるわけですから、そういうことをひっくるめて、もっとわかりやすく国民にもなるほどと思えるような結論を出すべく努力すると、こういうことを私、総理も意味は言っていると思います。ですから私も全くそれば同感でして、先ほども申し上げますように、国民にわかりやすく、なるほどと思えるような説得力のある説明、これは大事だと思いますので、努力してまいりたいと思います。
  204. 上田哲

    ○上田哲君 それは明確化ということは縮小化しかないわけですから、そこのところをぜひ強調しておきますが、この項も結論に入るが、その三項ですね、私の提起した三項について、新しい構想というものに意気込みを持つならば、この三項を踏まえて検討してみようということでいいですか。
  205. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 一つの筋の通った理論として、よく承っておきます。
  206. 上田哲

    ○上田哲君 そうなりますと、そういう方向で言えば、いまるる議論してきたことの一つ方向として、日米安保条約という軍事同盟を友好条約の方向に少なくとも改めてみるということがなければ、先ほど来言われている平時編制への努力であるとかその他もろもろの前向きの意欲というものが空虚になるわけです。長官いかがですか。友好条約の方向に、私は千歩も万歩も譲って、これがいま持っている安保条約の性格を全部変えろというような、見解の相違であるという答えしか返ってこないような言い方はしませんから、少なくともこの軍事的性格ということをゼロにするとまでは言えないにしても、友好条約の方向に変えていく努力というものはこの場合なくてはならぬのではないか。そうでなければ少なくとも世界の情勢の推移に応じていくことができないのではないかという観点から、これを一つ伺って、この項は終わりたいと思います。明確に。
  207. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 現在、日米安保条約の運用について、私、格別の変わった方針は持っておりません。現在のこの運用を続けていく、これはどうもそうお答えするより方法はないと思います。ただ、言えることは、第二条にも経済協力ということが非常に強くうたわれております。したがってその経済協力の面においても、いろいろ従来の行きがかりから言うならば、アメリカとの間に疑義も生ずるということもあった。したがってもっと経済的な協力とか文化面の協力とかそういった面をこの安保の運用面において強調する、こういうことなら私はわかります。ただ軍事面をにわかにひっこめてどうこうするということをいまここで私がとやこう御満足のいくような答弁は残念ながらできぬわけですが、従来の運用をそのまま続けていく中においても、わけても経済協力、政治文化面の協力、こういったことを大いに強める、そこにアクセントを置くということには同調できます。
  208. 上田哲

    ○上田哲君 政府立場では、言えない制約なり、考えていても明言できない面もあるだろうというぐらいには考えておきますけれども、少なくとも外部状況の変化というものは、そういうこれまでのようなかたくなな形でいけば、私どもの歓迎する方向であるかどうかは別にしても、日米安保という軍事同盟は実質的にその内容を空虚にしていかざるを得ないだろう、日本がよりかかる実体ともならなくなるであろうということを申し上げなければならぬだろうと思います。そういう意味のことを多少はすくい上げて長官は言われたんだろうと私は解して受け取っておきます。現に防衛庁の中にも、そういう方向でなきゃならぬという見解も相当あるわけで、私はそれに対しては衆議院段階の議論も踏まえて、立場は違うけれども、若干の共感を持ちながら踏み込んでみたいと思ったわけです。  ということのもう一つの側面は、そういう形の中でしっかりした歯どめなり前向きの方向を見出していかないと逆な問題が出てくるだろうということ、これは、たとえばきょう報道もされておりますけれども、稚内の問題なんかが出てくるわけですね。千歳、稚内、三沢、上瀬谷、雁ノ巣と、これがまあ日本にあるアメリカの通信基地であるということでありますが、簡単に言ってこの五基地の性格、きわめて簡単でいい、言ってください。
  209. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 五つの基地の中で稚内だけ私の特に所管でありますので先にやって、残りを他の政府委員から補足説明をいたします。  稚内は、現在米第五空軍の指揮下にあります第六九八六通信保安群がおります。で、ピーク時で軍人が約六百人ぐらいおりまして、これは機能といたしましては、米軍の無線中継、それから通信保全、電子現象に関する研究などをやっておるわけであります。現在要員はほとんどおりませんで、六月末ぐらいに日本側に返還もしくは共同使用という形になる予定であります。
  210. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) キャンプ千歳は御承知のように米軍が通信施設として利用しておったわけでございますが、その大部分が引き揚げまして、現在陸上自衛隊の通信関係の部隊がここに入っております。形としましては地位協定の二条4項(a)に基づく共同使用という形で入っておりまして、管理権は依然として米側にある。それで、現在入っておる米軍は、この地区にあります宿舎とか隊舎とかそういったものを利用しておりまして、通信的な機能としてはすでに失われておる、こういう形になっております。  それから三沢飛行場の一部にございます通信施設、これは極東における米軍の通信網の一つの中枢的な部門になっておるというふうに聞いておりますが、詳細のことは機密に属しておりますので承知しておりません。  それから雁ノ巣空軍施設、これは情報関係の施設でございますが、すでに先生承知のように、近くこれは返還になる、自衛隊においてもこれの利用計画はない、こういうふうに承知をいたしております。  それからもう一つ、上瀬谷は、先ほど申し上げました三沢にその主力が移っておりまして、しかしまあ施設としてはまだ残っておりますし、通信機能の一部は維持しておりますけれども、以前に比べますと非常に機能が縮小しておるというふうに聞いております。
  211. 上田哲

    ○上田哲君 久保さん、稚内の部隊名をもう一ぺん言ってください。
  212. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 第六九八六通信保安群、群は群れであります。
  213. 上田哲

    ○上田哲君 この五つのアメリカの通信基地の中で、千歳と稚内の関係、連携ですか、これはどうなっていますか。
  214. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) いま千歳は米軍がいないそうですが、従来米軍が千歳でやっておりました業務は、ここにありまする同じような無線中継、通信保全をやっております。それに対しまして稚内のほうは、レーダー電波によりまするところの、周辺を航行する航空機あるいは艦艇の運航を見ておるというような機能を持っております。その点が違っております。
  215. 上田哲

    ○上田哲君 私は、通信機能の問題ですね、とりわけ千歳と稚内の問題というのは非常に重要であるということで、私自身も従来から興味を持っていたわけですけれども、いま、はしたなくも出てまいりました稚内基地の機能が通信機能であると同時に偵察機能であるということは、また非常に大きな問題を含んでおると思うのです。偵察機能というのは具体的にどういうようにやっておりますか。
  216. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) アンテナによりまして受信施設を持っておるわけでありますが、それによって、周辺から入ってきます電波、これを収集いたします。それを分析をしまして、どういう種類の艦艇航空機が航行しているか、どういう運動をしているかというようなこと認識するわけであります。
  217. 上田哲

    ○上田哲君 ここでEC欄、RC130というのが飛んでいるわけでしょう。
  218. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) まあ米側立場で考えますると、固定基地は固定基地なりの用途がありましょう。たとえば出力が非常に大きいというような問題、それからEC機の場合には、これは比較的遠方まで飛んで行ける。小回りがきく。特に調べたいところを集中的に調べ得るというような機動性を持っているというようなことで、やはり米側立場から言えば相互補完性があるというように考えられます。
  219. 上田哲

    ○上田哲君 その相互補完性というのは、戦術的な側面と戦略的な側面だというように考えていいですか。
  220. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) この辺になると戦略と戦術の区別がなかなかむずかしいと思うのですけれども、むしろECの場合に、戦術的と言ったほうが当たるのじゃないかと思います。
  221. 上田哲

    ○上田哲君 稚内の場合はそうですね。北辺にあるものですから、あまり注意を引かないというところはありましょうけれども、御説明のように六百人も隊員がいるという施設ですね、非常に膨大なものだということになります。一体千歳、稚内がそれぞれの連携において探るべき情報というのは何を相手にしているのですか。 るのですか。
  222. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 周辺諸国で放送しております、これは通常のラジオ放送でありますが、そういうような放送、それから艦艇やら航空機が行動する場合には、やはり電波を出すわけでありまして、電波も時と所に応じましていろいろ変えているようであります。そういった動きというようなもの、それから、それに応じて艦艇航空機の動向がわかるというようなことであります。
  223. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、千歳というのが持っている機能というのは、まあそういう意味で非常に広いといいますか、戦略的なものであって、ただ、いまおっしゃるような範囲であれば、ECやRCは飛んでいる必要はないわけですね。これは単に通信機能でなくて非常に大きな偵察機能であるということにならなければならぬと思います。戦術的とおっしゃる。それでいいと思うのですが、戦術的機能としての偵察機能、六百人かの隊員が存在をしている偵察機能というのは、もっと具体的に言うと何をしているのですか。
  224. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) これは米側がやっておったわけでありまして、私どもも十分には把握いたしておりません。ただし偵察というのは、いま言いました偵察ということばに当たるのは、電波を調べておる、電波現象を調べておるということであります。   〔委員長退席、理事町村金五君着席〕  それから、基地があればEC機は要らないではないかということでありますけれども、固定基地というのは、やはりおのずから地形その他出力などの関係もありまして、区域が限定されます。したがって、かりに重複する機能でありましても、これは他の区域をカバーし得る、EC機は他の区域をカバーし得るということでありまするし、また固定基地と、それからEC機とのおのずからの性格の相違もあろうと思います。ただ、このEC関係、ELINT関係と申しますか、電子関係のことは米側が具体的にわれわれに教えてくれているわけでもありませんので、大体いま申し上げた程度はわれわれの知識であります。
  225. 上田哲

    ○上田哲君 千歳はトン・ツー通信その他でもって聞いておる、それから稚内は、これだけ膨大な隊員を持って、相手ははっきり樺太なりソビエト領に対する偵察機能、情報収集機能というものを行なっている、果たしているということば、これはまぎれもないことだと思いますよ。——ということは間違いないですね。
  226. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) こちらは受信施設を持っておるわけでありますから、いろんなところから電波が入ってくるということで、それがどこのものであるか、これはやはり分析をおそらくアメリカはしているだろうと思います。
  227. 上田哲

    ○上田哲君 これは明らかにECなりRCなりの飛行機の性能からして、海上のソビエト船その他に対する非常に超低空の偵察行動が行なわれているということはもう周知の事実です。これはアメリカ局長帰しちゃったんですが、私どもが仄聞している限りでも、この超低空の偵察行為というものが非常に危険であるということでさまざまな波紋が起きているということを知っています。聞いていませんか。
  228. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) これは、相手の実態がよくわからないということが不安の原因になります。SALTであれ、あるいは六〇年代に結ばれました成層圏における核実験の問題であれ、常に偵察衛星でもって調べられるということで、相手の実態がわかることによってわがほうも安心し得る、それに応じてまた相互の平和的な環境がつくり得るということにもなるわけでありまして、不審船が日本海に再々来る、飛行機もよく来るということも御承知のとおりでありまして、いい悪いの問題はありましょうけれども、やはり国際環境というものはそういうふうに置かれているというふうに私思います。そして、具体的な問題として提示されたことは私ども承知いたしておりません、米側の問題ではありますけれども
  229. 上田哲

    ○上田哲君 自衛隊としてはこの基地がほしいのですか。
  230. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 予算が成立されておりませんので、これを引き継ぐわけにはいまのところできませんけれども、このうちの部分的な機能は持つことが望しいというふうに考えております。そこで、四次防の中でこれを持つことが適当であるかどうか、検討してみたいと思っております。
  231. 上田哲

    ○上田哲君 何でほしいのですか。
  232. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) わが国の自衛力はウサギでありますから、耳はなるべく高くしたほうがよろしい。キリンも同じであります。そういうようなものの一環をなすのではなかろうかというふうに思います。
  233. 上田哲

    ○上田哲君 できれば防衛庁側は経費その他の面あるいは隊員の問題から言ってもこれは引き受けたくない、引き受けることができないと、そういう意向を持っていたんだけれども、アメリカ側の強い要請によって引き受けることになったんだと、こういう事例はありませんか。
  234. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 実態は、われわれのほうでは引き受けるとしましても来年予算でありまするし、その前提としまして、四次防である、そういったものがきまってない段階においては何らの意見は言えないというので終始まいっております。そして、またわれわれが引き受けるといたしましても、先ほど米軍はピーク時六百人ぐらいでありましたが、とうていそんな人員を出せるわけはない、やはり部分的な機能でしか保持することはできないであろうというふうに思っております。そういうことで、米側からもちろん強要されたということでありませんで、米側としてもある時期あきらめておった時期もあるかと思います。
  235. 上田哲

    ○上田哲君 引き受けた場合の経費、人員はどれくらいと見ておりますか。
  236. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 経費についてはまだ算定をいたしておりません。人員についてはせいぜい百人どまりぐらいではなかろうか、これはまだ具体的に算定いたしておりませんが、感じとしては大体そんな程度であります。
  237. 上田哲

    ○上田哲君 偵察行動はどうなんですか。
  238. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) これはやはり米側の器材について十分の説明を受け、内容についての検討を行なって、どの分野を引き受けるがよろしいか、そういうことば今後の問題であろうと思います。
  239. 上田哲

    ○上田哲君 偵察行動をやらないと言い切れますか。
  240. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 偵察ということばがいいかどうか、いずれにせよ、情報収集の有力な一つの手段でありますので、これはそれをやりたいというふうに思います。
  241. 上田哲

    ○上田哲君 そこで明らかになってきたわけですよ。たいへんおかしいことは、このアメリカの六百人、アメリカのふんだんな器材、施設というほどのものをそのとおり受け取れるかどうかは別問題としても、少ない金や人員で、いわんや引き受けたって来年度にならなければどうにもならない。国会が承認をするかしないかもまあ形式的にはまだわからぬというものを、先取りをしていまここで受け取らなければならない理由は何かというんです。ここに非常に大きな疑惑が出てくる。しかも航空機による偵察行動というのは絶対やるに違いない。これはいまの御答弁でも明らかになった。そういうところに問題があるんですよ。なぜそれをそんなに急いでやらなければならないか、何を期待しているのかということがもう少し言えませんか。
  242. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) これは事実問題といたしまして米側では予算がつかなくなって、六月末には日本側が引き取ろうと引き取るまいと撤退をするということのようでありました。そこで、六月末に一応この使用用途がきまっておりませんので、おそらく大蔵省のほうだと思いますけれども、大蔵省のほうへ返還をすると、しかし部分的には米側としてはまだ使いたいということで共同使用の申し込みがあるということだと思います。
  243. 上田哲

    ○上田哲君 それは手続でありまして、そこが二4(b)になっているというところに非常に大きな問題があるんです。アメリカ側はどうしても持ち切れないというのは、ニクソン・ドクトリンの経費節減の面をここにあらわしているわけですが、同時に、金や人員が十分そろっていないのに、途中の経過がどうであったかはわれわれは手を入れて探ることはできないにしても、こういう形で押しつけてきた形、引き受けなければならない形が出てきているということは、これは明らかにトータル・フォース・コンセプトの参加分担の要請に違いないわけです。そういう経費をどんなようなことばで否定するにしても、ここで日本自衛隊が引き受ける機能は何かといえば、明らかにソビエト向けの最も大きい日本の通信基地をそのとおり、日本自衛隊が自分のできる適用のぎりぎりではあるけれども引き受けようとしているところにあるんですね。これは明らかに長い耳という範囲を逸脱しているということになりませんか。
  244. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) あくまでも日本防衛にとって、また日本の、あるいは国際関係の平和維持にとって私どもとしては重要だというふうに考えます。そういうことで、ここにありまする機能が十分にはわかっておりませんにせよ、過大なものであるというふうには私どもも考えておりません。
  245. 上田哲

    ○上田哲君 日本防衛にとって必要であるということが一つでは、こういう具体的な事例は説明ができないんです。だから私は先ほど来いろいろ議論をしてきたんでありますけれども日本防衛にとって必要だということの中に戦略攻撃、予防攻撃を含むのかどうか、こういう問題が押し詰めていけば出てくるわけです。明らかにソビエト戦の危険を感ずる、ある種の警告を発しなければならないような問題もちらほら仄聞をする、こういう状況になるほどEC、RCが飛んでいる。たとえばこのRCは横田の五五六偵察隊にあったものを一月三十一日で縮小を発表しておりますね、アメリカ側が。アメリカ側はこういう形でアメリカの持っていた戦略戦術通信偵察機能、情報収集機能というものを日本側に肩がわりをさせているという実態はここに明らかでしょう。まさにそういう機能の肩がわりだということがここに出ているじゃありませんか。そればどうなんですか。
  246. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 横田におりましたECあるいはRCというようなものは、先ほど申し上げましたように相当広範囲に動くわけであります。ところが稚内のものは、やはり固定基地でありますから、おのずから区域が限られてまいります。したがって稚内のものがあっても横田のものが必要なのでありまして、横田のものがなくなったのは、稚内のものを将来日本に引き受けさせるからだということと同じ問題にはなりません。これは別個の問題としてお考えいただきたいと思います。
  247. 上田哲

    ○上田哲君 じゃ質問を変えます。  アメリカ軍が稚内——まあ千歳も含みますけれども、稚内で果たしていた機能と違ったことをやるのではないんですね。
  248. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 日本側ですか。
  249. 上田哲

    ○上田哲君 そうです。
  250. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 日本側は米側がやっておったものの部分的なもの、どの範囲がよろしいかは今後検討したいと思いますけれども米側のやっていたもののうちの一部、これは先ほど人員の面でもおわかりだと思いますけれども、そういうものと御認識いただきたいと思います。
  251. 上田哲

    ○上田哲君 アメリカと日本が持っている力の相違からいいまして、たとえば小笠原なら小笠原へ行ったって、アメリカのロラン基地と日本の基地というのは全然雲泥の差がありますよ。六百対百という形だけで説明するのはちょっとそれは無理だ。説明にはならない。そういう点でいいますと、どうしたって、人手の少ないところと金の少ないところでアメリカの機能をできるだけ引き受けたいということと、違うことをやるということは、これは別の話です。いまここで稚内基地の持っていた、大別するならば通信機能ということと航空機偵察機能というものは引き受けるわけですね。これだけは間違いないわけでしょう。
  252. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 稚内でやっておりました無線中継などは、これはおそらくやる必要はないでありましょう。それから通信保全、これは自衛隊関係で必要であれば——必要な分野があるかどうかわかりませんが、この点は検討の対象になりましょう。それから電子現象に関する研究、これはある範囲内においてはやってまいりたい、こういうふうに思います。
  253. 上田哲

    ○上田哲君 飛行機。
  254. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) この航空機艦艇は、先ほどから申しまするように、電波現象をこちらが研究をするということで、電波現象というのは、艦艇やら航空機が出すものということでありますから、艦艇航空機はその中に入ります。
  255. 上田哲

    ○上田哲君 そんなことを言ってもらっては困るんです。私はむしろまさに航空機偵察のことを言っているんですけれども、ぎりぎり船のところまで超低空でやってくる。この飛行機の機能からいってもそうですけれども、そういうものが来るというので、たいへんな国際不安というほどのものをかもし出している現象があるんです。これは御存じないだけの話じゃないですか。お調べになってみればすぐ出てきますよ。そういうトラブルが現実に存在しているような状況が出ているものを引き受けるわけです。肩がわりするわけです。だから、この肩がわりというのは、現にアメリカ側が何と言ったって六百人いたわけです一稚内の六百人というのはたいへんな基地ですよ、通信偵察基地としては。これをとにかく二4(b)という形で、ときどきは日本の持っている情報というものをアメリカ側と共通に使うということを前提として引き受けるんだという形、これはもう全く密着した形での肩がわりだということ以外にはないじゃありませんか。
  256. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) あるいは私が誤解しているかもしれませんが、稚内にある施設は通信施設でありますから、アンテナを中心にする受信施設であります。したがって、飛行機がそこにある、低空のEC機などを飛ばしてやるというものではございません。アンテナを中心にする受信施設を引き受ける。そのうちの機能というものが、飛んでおる相手方航空機なり艦艇の電波状況を視察し得るというものであります。
  257. 上田哲

    ○上田哲君 だから飛行場の話はしておりませんよ。そういう通信偵察機能ということを稚内が握っているということでしょう。いまアメリカはそうしているじゃないですか。そういう形を肩がわりするわけでしょう。日本が使う場合の飛行機は、機種は何ですか。
  258. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) ですから、日本は飛行機は使いません。
  259. 上田哲

    ○上田哲君 RFということはありませんか。
  260. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) これは全然違います。つまり、ことばで見ればすぐわかるわけですが、RF、RCという場合は、リカネッサンスでありますから、これはたとえば赤外線写真でありますとか普通の写真による偵察であります、戦術偵察。ECという場合は、エレクトリックでありますから、電子現象を把握する飛行機ということであります。そうしますと、日本ではEC機はもちろん持っておりませんし、RCをそういうふうに使うためには、あまりにもエレクトリック関係の器材を乗せ得ない。むしろそう言うまでもなく、RFは航空自衛隊あるいは陸上自衛隊の部隊が活動する場合の先駆としての戦術偵察をやる、地形偵察をやるという任務でありますから、おのずから別個のものであります。
  261. 上田哲

    ○上田哲君 じゃ別に伺いますけれども、アメリカがいままで行なってきた機能というものそれ自身は、たいへんはっきりしたソビエト向けの——そういうことばは使えなければ使えないでいいですけれども、北辺に向かっての非常に大がかりな通信偵察の情報収集機能であったということは間違いありませんね。そして、それに対して、日本がそういう形の情報収集機能は受け継がないということを今後ともはっきり言えますか。
  262. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 米側が持っておりました機能の全部を引き継ぐわけではございません。そのうちで日本の自衛上必要な分野について、今後検討して、その分については引き継ぎをしたい、これは防衛庁側の希望であります。
  263. 上田哲

    ○上田哲君 だから、しぼって言えば、さっきから問題にしている超低空の航空機偵察機能というようなものは、今後とも絶対そこに置かない。置かないというのは、具体的に滑走路をつくる、つくらないということだけではありませんけれども、そういうことをはっきり言えますか。
  264. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 日本側でといいますか、自衛隊側で、稚内もしくはその周辺に、EC機、つまりエレクトリック、電子関係の飛行機を置いて偵察をするというようなことは全く考えておりません。
  265. 上田哲

    ○上田哲君 もしそういうことが起こるならば、これはたいへん大きな問題として、アメリカがこれまで大きくソビエト向けに使用していた戦術戦略的な情報収集機能の極点をそのまま日本が引き受けるということになるし、使う予定の飛行機ということは現在凍結中のRFということになってくると、疑義も出てくるし、たいへん大きな問題が生じてくるだろうと思うのです。これは後の経過を見なければなりませんけれども、十分にその辺を考慮していかないと、これはアメリカ側から押しつけられたかどうかは別にしても、わが国の防衛姿勢の問題としてたくさんの問題がこれから出てくるだろうと思う。これはひとつ守っていただきたいと思います。  それから長官、B52ですね、B52が、この前私が、沖繩に来るということは非常にぐあいが悪いじゃないか、ぜひひとつ、たった一人の議員の不安ということでも言い方はけっこうだから、アメリカに向かって、来るな、来てもらっては困るということを言ってもらいたいと言ったところが、不必要である、これは言うことは失礼にも当たるというようなことが、やりとりの中でありました。言っていただいたかどうかは別でありますけれども、それから嘉手納に三機B52が来たのは二日後であります。私はたいへんこれは許せないことだと思うのですよ。で、過去のことは問わずとしても、これから台風シーズンになってB52が大挙して嘉手納に来るという情報がありますね。これについてはどういうふうに処置されますか。絶対に来させないということが言えますか。
  266. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 友好関係にありまするので、戦闘作戦行動でない形で、台風避難ということになりますと、なかなかこれは断わりにくいことだと思います。しかし、沖繩県民にB52が与える影響、これはアメリカ軍当局ももうよく知っておりまするので、外務大臣から現在のアメリカ駐日大使に向かっても、相当強く「困る」ということは何度も言っておるように私、聞いております。これは外務委員会などで一緒に答弁に出ておりますると、しきりにそういう話を聞くわけでありまするが、なお今後ともB52が来ないようにということを強調してまいりたいと思います。  ただ、冒頭申し上げましたように、台風の避難に来るというものまで「だめだ」ということが言えるかどうか、これは問題があるように思います。ですから、とにもかくにも沖繩県民の不安をそそるようなことは困るという態度は、相手側も知っておりますし、われわれ側からもよく説明をしてまいりたい、こう思っております。
  267. 上田哲

    ○上田哲君 それではいけないですよ。来るか来ないかの一点です。いまの御答弁を聞いておりますと、台風避難ならば来るのもしかたがない、台風という理由ならば来てもよろしいということしか言ってないわけですよ。来させないということをお約束になるのでなければ、この前だって、台風や気象条件の悪い現象はグアムにはなかった。なのに沖繩にやって来たということを鈴木委員が中心になって非常に論及をしたわけですよ。しかし、来てしまったものはどうにもならぬというようなところで、まあ半歩譲ってしまった形もあるけれども、今度は大挙来るのだということが正式に向こうから打診されているということになって、これでB52は地元でもいろいろ関心なり要求等があるようだからというようなこと以上に出ないでは困るのでありまして、これは国会軽視ですよ、民意の無視ですよ。絶対に来させないということでなければ、あなたはこの前、来ないことは明らかなんだから、アメリカに対して一言言うことは不必要だと言われたことは、これはまっかな偽りになりますよ、不信行為になりますよ。これはイエスかノーですよ。B52がこわれようとこわれまいと、台風で尾翼が吹っ飛ぼうと、それはわれわれの知ったこっちゃない。B52を守るためにわれわれは沖繩という県を持っているわけではないのです。この辺ははっきりしていただかなければ、防衛庁長官の位置づけはどっちへ向いているのだということになってきますよ。非常に象徴的なことだし、抽象的な防衛論争というようなものの中には出てこないことでしょうけれども、これは切れば血が出る話ですからね。B52は来させないのだということを言ってください。そうでなければ、言えない理由はどこにあるのかということをはっきりしてください。
  268. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) どうもたいへんこれはむずかしい問題でございまして、われわれの側から言いますると、B52が来てもらうことは困る。またアメリカ側も、沖繩の基地は利用いたしませんということで、決着がついておるわけです。ところが先般のように滞空時間が予定より長引いたといいますか、気象状況が悪くて、燃料を使い果たして嘉手納空港におりたというのは、あれは例外中の例外と私ども思っておるわけです。例外中の例外ということは、そのとき直ちにインガソル大使が外務大臣を訪問して、こういうわけでほんとうに遺憾だという了解を求めておるということから見ても、例外であったということは言えると思います。今後、燃料が切れても台風でどうなっても絶対来るなということは、どうもこれは日米安保条約で基地を提供し、友好関係にある日本政府立場としては、なかなか言い切れないものがある。しかし、ちょっとした、了解させることのできないような事情で来てもらっては困る、これは言い得ると思います。それからまた、相手側も十分知っておると思います。この間うち台風で避難してくるんだというようなこともありましたが、あれはうわさで済んだようでありまして、まことにその点ではよかったというふうに考えております。こういう問題については、むしろ私どもよりも外務省側で積極的に話し合いをしてもらうということではなかろうかと思っております。
  269. 上田哲

    ○上田哲君 はっきり台風の避難ということならこれからも来ることを許容するんですか。そこをはっきりしてください、イエスかノーで。
  270. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) イエスかノーかとおっしゃられると、完全ノーとは言い切れないものがあると思います。それば日米安保条約で基地を提供しておるということ、それから友好関係にあるということ、戦闘作戦行動で来るというのならばそれは絶対困る、ノーということがはっきり言い得ます。他の人道上の問題を含んで来るという場合にこれを拒否するということは、これはひとつ友好関係にあるという前提で、御了解を願いたいわけです。まあ、立場の相違はありますが、どうも歯切れよくそれでもノーだとは私、政府のやはり閣僚としては言い切れぬものがございます。
  271. 上田哲

    ○上田哲君 それはイエスであるということをはっきり言われたわけですね、そうですね。
  272. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 人道上の問題を含む場合。
  273. 上田哲

    ○上田哲君 イエスなんですね。
  274. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そうです。
  275. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、それはもうわれわれの見解、われわれの考えとは全く相反するわけですが、そういう場合を好ましいとお考えになりますか、来ることが。
  276. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) B52に対する沖繩県民感情というものがわかりまするだけに、好ましくないと思っております。しかし、そういうことはアメリカ側もよくわかっておるわけですから、よくよくの場合でない限りは、具体的に避難をするとか不時着をするとか、そういうことはなかろうというふうに思っております。
  277. 上田哲

    ○上田哲君 これが最後ですけれども、B52がどういう理由であれ沖繩に来ないように、日本国内の基地に来ないようにということを日本政府としてアメリカ政府にはっきり言うことはできないものですか。
  278. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは現在の状況としてはむずかしい問題だと考えております。
  279. 上田哲

    ○上田哲君 最大の怒りと不信を表明をしておきます。  最後の問題に入ります。先般私が問題にしました熊本の清水小学校の件です。この前申し上げたように、ここにテープがあります。これがそのときの全部のテープであります。   〔理事町村金五君退席、委員長着席〕 これは委員長のお許しを得て、時間があるならここでかけてもいいですし、長官はあれは日曜日のことだったからというようなことを言われたけれども、三月二十三日の木曜日と——木曜日でしたかね、つまりウイークデーと、それから四月の二日の日曜日と二回にわたってこういうことが起こっているわけです。これは三月二十三日の、いままでもう御婦人ばっかりが出席をしているPTAの総会に、ずっと一列目から男性ばかり、自衛隊員の人ばかりが七十名から八十名ぎっしりと詰めかけた。そして四月二日には九十名近い人がぎっしりと詰めかけた、こういう事態が起きている。しかも近所の御婦人方の話では、あしたは自衛隊は全部このPTAに詰めかけろと、こういうふうに主人が言われているのでみんな行きますと、こういうことがたくさん聞かれているわけです。明らかに自衛隊の隊命令であったかどうかは別として、こういう形でPTA総会に押しかける、そして、これはまさにテープを聞いてもらってもいいんですけれども、弁士と称するべきでしょうか、何人かの人と、そしてそのたびごとにあらしのような拍手をする人たちとに分かれて、これがPTAの規約を一方的に葬り去った今日までその規約は葬られたままです。こういう状況になっております、一言で言えば。お調べは十分いただいたと思うんですが、これについてどうお考えですか。
  280. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) まあ自衛官が父兄として学校のPTAに参加をして会議を行なうということは、これは自衛官の任務外の、いわゆる私事にわたるわけであります。しかしそれが好ましくないというのであるならば、これはやはり自衛官らしからざる行動ということになりましょうが、いろいろ調べましたところでは、自衛官は自衛官なりにいろいろ言い分もあるようであります。詳しいことはここに人事教育局長が来ておりまするので、時間を節約する意味で人事教育局長から調査の結果を御報告いたします。
  281. 上田哲

    ○上田哲君 長官はそれば望ましくないことだとは思わないんですか、この経過をお調べになって。
  282. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) まあちょっと一ぺん事情をお聞きください。
  283. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) 私のほうで調査をかなりいたしましたけれども、やはり部隊の本来の任務行動ではございませんし、また部隊を通しての調査でございますので、その点を先生に御満足いただくような調査結果は出ておりませんが、当日と申しますか、三月二十三日に出席しましたのは、自衛官が三十九名、これは代休として三十二名、休暇が七名、家族が二十四名の六十三名、それから四月二日は、自衛官六十一名、家族十四名の合計七十五名、おそらく大体どちらもPTAとしての総会では百三、四十名ぐらい出ておったようでございますが、そのうち自衛官関係がこのような数字でございます。御指摘のように四月二日のほうは日曜日の関係かどうか知りませんが、家族数が減って自衛官の数がふえております。もちろん先生指摘の、部隊から出席を特に命令したということはないということになっております。ただ、PTAの関係で父兄のある者が、自衛官のある者が扇動してこの総会に大挙して出席したかどうかということにつきましては、どうも私どもの調査では十分わかっておりません。それからまた部隊としましては、北熊本は実員として約五千人おります。五千人おりますが、これらの部隊のものは必ずしも同じような職種ではございませんで、普通科連隊をはじめとして戦車大隊、特科連隊、それから施設大隊、通信大隊、業務隊というふうに、約千人前後の数で分かれておりまして、それらのものの間には相互に知り合っていないということの関係上、実際PTAで会いましても、それがほんとうに自衛官であるかどうかということになりますと、せびろでよくわからなかったということがございまして、はたして自衛官である父兄がどの方であってどういう発言をしたかということが私のほうはこの五千人全部を対象にしてアンケートをとり発言内容について意見を求めましたけれども、どうもまとまった資料としては報告が参っておりません。
  284. 上田哲

    ○上田哲君 そういう一方的な報告をされては困りますね。隊の命令であったかどうかということは、これはこの際われわれのほうで明らかにしようもないことだし、かりに隊の命令であったかないかは別にして、明らかに一定の意識を持って行動をしたということなんでありますし、そのことがせびろを着ていたから自衛隊であったかどうかわからなかったなんというのは、これは詭弁ですよ。そんならテープを聞いてもらわなきゃならない。明らかにいままで男子が出席をするなんということは十名にも満たなかったことですよ。それが一挙に、あなたのほうの数字と私のほうの数字とは少し違うけれども、それにしても数十名が一挙に、しかも第一列からずらっと並んで定刻前からいて、一人が発言すれば一斉に拍手するというなら、これで区分ができないとなったらたいへんなことですよ。そういう一方的な報告をされることは私は非常に正しくないと思います。水かけ論になるのを避けるために、そのことをあまり言いませんけれども、そういう報告の態度というのは非常にいけないことだと思います。  問題にしたいのは、そこで何を葬ったのか。PTAの会長を選挙で選ぼうという規約改正ですよ。PTAの会長を選挙で選ぶということに反対をしてこれを葬ったのです。これは正しいことですか。自衛隊員が全部一緒にそろってその規約改正に反対をして、選挙でない方法をとることが——選挙がいいことであるかどうかの問題ではない、規約を通そうとするPTAの執行部というのですか、その方針をくつがえすということに目的が置かれていた。こういうことをするのが正し・いでしょうか、これは。命令があるなしの問題でありましょうか。
  285. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 上田さんのだんだんの御質問でありまするが、まあPTAで自衛官が市民として行動をするという場合に、いわゆる人の子の親として、父兄として行動をするということに防衛庁がいろいろくちばしを差しはさむということは、むしろ私そのことは非常にむずかしいことだというふうに思います。まあ規約改正に関して賛否に分かれた、そして改正をしようという執行部側といいまするか、提案者側の改正案を否決したということは、私、人事教育局長から報告を受けておるわけでありまするが、この内容、まあここにテープがあるわけでありまするが、あくまで私どもは制服を着た良識のある市民であれという方針で自衛官教育をしておるわけでありまするが、あくまでそれにもとるというような顕著な行動があればともかく、そうでなければ、これはひとつPTAのこととしてPTAの良識にまかせるということがまあ世の中の常識的な判断のように思いますが、いかがでございましょう。
  286. 上田哲

    ○上田哲君 PTAの良識にまかせるというならいいですよ。また、おっしゃるように市民感覚に従って行動したというならけっこうですよ。
  287. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) ええ。
  288. 上田哲

    ○上田哲君 全然そうではないですよ。一つの例をあげましょうか。当日ビラが配布された。このビラは、小・中・高校の教職員の数をもっとふやす、憲法できめられたとおり義務教育をただにする、だれもが入れるように幼稚園、保育所の増設をすること、それから中学校、高等学校の予備校化、差別的なクラス編成をやめて、すべての子供の能力を伸ばす教育をすべきである、こういういうことの書かれた紙が配られたのです。文部省来ていますか。この趣旨は教育基本法なり文部省の指導方針に従って間違っていますか、正しいですか。
  289. 奥田真丈

    政府委員(奥田真丈君) ただいま初めて承りましたので、詳細は十分了知しておりませんが、いまお読みくださいましたような事項につきましては別に異常はないと思います。
  290. 上田哲

    ○上田哲君 文部省が言うように、これこそが良識であって、市民感覚でしょう。ところが自衛隊から出た人々は、ここに発言が一ぱい、私意訳してきましたから読んでもいいですが、これは一方的な見解である、一つの傾向を持った思想の発言である、こういうことはけしからぬということをたくさんの人が発言をしていますよ。古賀と名のる人とか、名前がたくさん書いてありますけれども、そういう人たちが、こういう内容は一方的な思想の偏向であると何べんもきめつけています。それに対してあらしのような拍手をしているのです。これ市民感覚で良識ですか、長官。
  291. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) どうも現場におったわけでありませんからよくわかりませんが……。
  292. 上田哲

    ○上田哲君 そんなことはいい。
  293. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そういうことになるとテープということになりましょうが、どうなんでしょう、またPTAの会長さんが多少何と言いますか、自衛官とはものの考え方が違うとか、立場が極端に相違する人がPTAの会長さんだったとか、執行部であったとか、そういう感情のもつれもあるんじゃないですかね。ですからこういう問題というのはとかく理屈だけじゃ解決しないので、よくお互いに選挙でもする立場のものというのはいろいろなトラブルの間をとらされるわけですが、理屈よりも感情が先に走る、そういうことがままありますね。ですからPTAという場面の話は、これはひとつPTA自体の良識と判断にまつということでありませんと、どうも防衛庁としても、親として出席したものがどういう発言をするかという、その一々まで指図をしたり監督するということは事実上ちょっとむずかしいように思うわけです。
  294. 上田哲

    ○上田哲君 そういうことを言っちゃ困るじゃないですか。極端な例を出しちゃ例が正しくないだろうと思いますけれども、隊内でやらなければ外でどろぼうをしても、破廉恥な行為とか、反民主的な行為をしたってそれは自由だということになりますか。
  295. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私は決してそういう極端なことを申し上げているのではなくて、やはり人の子の親として、自衛官もやはりPTAに出るときは親であろうと思うのです。ですから親という立場で判断をしてそのPTAに臨むそのときに、いろいろないきさつもありましょうが、私はやはり自衛官といえども過去のいろいろないきさつから多少感情的になることもあるのではないかということも、これも事実かうそかわかりません、想像して申し上げたわけで、ですから、ただいまそこでお読み上げになった程度のことならば、あえて何も反対するほどのことではないように思います。しかし何かほかにも反対をしたり異議を唱えたりすることがあったのじゃないでしょうかと、こういうふうに思って、お尋ねをしておるわけです。
  296. 上田哲

    ○上田哲君 それがあるならあなたのほうからもっと、十分な時間があったのだから、資料お出しになればいいのです。いま私が質問しているのです。そらさないできちっと答えて下さい。明らかに出されたビラが、出された紙きれがですね、文部省がはっきりこれならば当然な方向ではないかと言っている。市民感覚と良識じゃありませんか。この市民感覚と良識に反する行為を否定することがいいか悪いかを聞いているのです。そのことを別にしてそれ以外の事情があったであろうということは問題のすりかえです。このことはどうなんですか、ほかのことは別ですよ。
  297. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そのことに関する限り、文部省の審議官も申しまするように、私ども聞いておりましてことさらに異を唱えることはあるまいと思います。ですからそういうことに何か特にけばだたしい異論を唱えるというからには、それまでによってくる原因があるのではなかろうか、そうして感情的なものがあるのではなかろうか。よく世の中にあるトラブルというのはそういうことがもとになるのですね、それを私さっきから申し上げておるわけです。
  298. 上田哲

    ○上田哲君 それがあるならば、調査の結果をだからお出しになったらいいじゃないですか。そんな予断に基づいてのそういう言い方は許されませんよ。私は具体的に聞いているのです。そのこと自身をはっきりお認めになればいいのです。はっきり出して下さい。それあるのなら出して下さい。明らかにここに書かれている紙きれの内容というのは、日本の教育のあるべき姿を明らかにしているではありませんか。文部省が——どんなふうに言いつくろうとしたってこれで問題ないじゃありませんか。認めているではありませんか。そうしたらその方向に従ってやることが人の子の親じゃないですか。自衛隊の親は日本国憲法の方向でないところのことをやるのが良識なんですか。そんなばかなことはないでしょう。そのことをきちっとしぼって答えて下さい。それは明らかに人の子の親なら当然考えるべきことではありませんか。そのことに反対することが良識ですか。市民感覚ですか。遺憾であるなら遺憾であるとはっきり言って下さい。
  299. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そのことに関する限りそう大して異を唱えるほどのことではないと思います。しかし、私、そういう問題というのはやはりその場にい合わせたり、そうしてまたそこに横たわる何かいろいろな問題がわかりませんと、いいとか悪いとか言えません。また防衛庁長官が、父兄として親として発言したことについて、十分の事情も知らず——いやそれは調査不行き届きとおっしゃればそのとおり不行き届きです。不行き届きでございますが、ただちにそれは遺憾であるとか悪いというふうには断定できないように思います。ただいまお読み上げになった点については異論を唱えるほどのことはあるまい、こう思います。
  300. 上田哲

    ○上田哲君 異論を唱えるほどのことであるとかないとかの問題じゃないでしょう。異論を唱えてはならぬことでしょう、このことは。ほかのことがあるんならお出しになればいいんだ。そこは別にしましょう。話をすりかえないで下さい。ほかにいろんな事情があったんだとおっしゃるならば、その議論はまたしてもいい。このことに限定しましょう。このことは憲法問題ですよ、教育基本法問題ですよ。このことに反対なさる大臣が佐藤内閣におられるならば、与党の力が強かろうが野党の力が弱かろうが問題なんですよ。憲法に照らしてこれは追及されなければならない責任を持ちますよ。だから、このこと自身にしぼって、反対するほどのことばないとは何ですか。反対すべきではないことではありませんか。はっきりしてください。
  301. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) だから私はこのことについては異論はありませんと申し上げておるわけです。したがって、その自衛官がそのことに何も反対するほどのことはないがどういうことであろうかと、こうまあ思うことを率直に申し上げたわけで、そのことについては私どももおかしいとは思いません。
  302. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、何か執行部がおかしかったんじゃないかという言い方は、調査をなすっていらっしゃるならこれはおっしゃってもいい。これはデータをあげて言っていただければいいですよ。どういう名前であり、どういう職業であり、どういうことであり、それは議論の対象にもなるだろう、やってもいいです。しかしね、長官、たとえばここで父兄会員から十三名、それから教職員から四名、顧問として校長か教頭、こういう形でなされている民主的な運営というもののスタイルが、たとえば会長がどうだとか、だれがどうだとかいうふうな、しかも調査を十分にしてない予断の中で、自衛隊を守らなきゃならぬという意識だけでやられるということは、私は許せないと思うんですよ。これは事実を持っていらっしゃって、どんな顔をしているか、どんな背たけをしているか、少なくともそんなことにはかかわりなくほんとうに実証できて、このPTAはけしからぬのだというお話になるなら別だ。そうでなければ、問題をそっちにすりかえるということは私は許せないと思う。状況がその奥に何かあったんだろうと言われるならば、感情のもつれとか何とかということはあるでしょう。そのことは申し上げてもいいですよ。根本的に何があったのかと言えば、これは言うまでもなく、さっき五千人ということばがありましたけれども、この清水小学校の校区というのは、第八師団のまっすぐおひざ元ですよ。熊本城の第八師団のまっすぐおひざもとですよ。第八師団、精強を誇る第八師団のおひざ元で自衛隊の考えが通らないようなことでは困るという不規則発言はあるんです。この中にあるんですよ。そんなものはそっちの調査には出てこないだろうから、聞きたけりゃこれで聞いてくれと言っているんです。そういうのが根底にある。もっと具体的に申しましょう。そしてこのPTAが子供たちを連れて自衛隊の大矢野原演習場で五年生のキャンプの実習を計画をしたんです。ところがPTAはまだ小学校五年生ぐらいの子供たちをそういうところへ連れていって教育するということが、社会教育上の見地から言って妥当かどうかという議論をした末、これをやめたんですよ。もしもつれがあるとすればこういうことが問題だったと思う。自衛隊に入る、自衛隊にキャンプをする、小学校五年生がキャンプをする。こういうことを自衛隊としては誘導されることが目的かもしれないけれども、PTAがこういうことはまだ小さな小学校の生徒五年生を連れていくにはふさわしくないと判断することもまた自由ではないか。これに対して、第八師団のおひざ元だからというので、そういうことがけしからぬというようなことが不規則発言であれ出てくるような状況の中で、出たこともないような自衛官が、それとわかる形で一列からずらっと並んで二回にわたって代休を取ったと言えば、全部免責されるはずはありませんよ。はっきりそういう発言をする、あるいは教育基本法に抵触しないはっきりした報告をされている紙きれをとらえて、これは偏向の思想であるというようなことを堂々と言い切るようなことを自衛隊は教育をしているんですか、自衛隊員に。こういう形というのは望ましいとお考えになりますか。大矢野原演習場というところへ小学校の五年生をキャンプに連れていかなければいけないのですか。はっきりしてください。
  303. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) まあ上田さんのお話を聞く限りにおいては、決していい態度ではないというふうに思います。人事教育局長において十分の調べがついていないということは、これどうもわれわれのほうから議論の余地がない、おっしゃるとおりだと思います。しかしまあそういう話というのは、とかくいろんないきさつがあってこういうことになるので、私上田さんのいつもの高次元のお話から言うと、これを何も低次元だとかどうとかということを決して申し上げるわけではありませんが、そうここでですな、参議院の内閣委員会でお互いが目くじら立てて、おしかりを受けたり、遺憾であるとか残念であるとかという話ではなしにですね、今後極端な、自衛隊がPTAといえども、集団的にあまり行動したりどうとかということは困ると思います。しかしですね、これはあくまで親としての立場でやることですから、それを防衛庁長官や人事教育局長が事こまかに、あれはいかぬこれはいかぬというようなことになりますと、これは私、多少行き過ぎもあるんではないか。ですから、いまお話を承った範囲においては、私遺憾な点もずいぶんあるように承りますが、もっとこれは詳細に人事教育局長に、あの実情も調べさせますし、せっかくテープもお持ちでございまするので、これはお借りができるものならお借りして、私も時間を取って聞いてみたいと思いますが、まあどうぞひとつこれはこのあたりでおさめていただけたらありがたいと思います。また自衛隊については、今後とも制服を着た市民として、良識をもって動くようにという教育は徹底してまいりたいと思います。
  304. 上田哲

    ○上田哲君 はぐらかしてもらっちゃ困るですね。あなたは高次元の話が向かないと思うから低次元の話をしているだけであって、こういう話を、しかも委員会を二つも飛ばして十分時間を与えてですね、局長に何べんも話をしたのがそれじゃないですか。それをそういう言い方ではぐらかされるのはたいへん私は残念だと思う。自衛隊の中にやっぱりそういうふうな、教養の浸透と言いましょうかね、市民としてのあり方の教育がやっぱりあるべきですよ。五千人を擁する第八師団なんというのがそこにあったら、日ごろ長官が言われるように、市民との交流ということの重要な課題として、そういう誤解をかりそめにも持たれないようにするのが、隊内と言わず隊外と言わず、防衛庁長官の任務ではないですか。長官、私が話しているんですよ。いまごろそんなところで打ち合わせないで、きょうはちゃんと質問通告してあるのだから、答えるべきことがあったら、ちゃんとその前に打ち合わせをするべきじゃありませんか。こんなことにたくさんの時間をかけようとは思わない。思わないけれども、そればいけないですよ。  それじゃ、私は例をもう一つだけ出しておきます。こういう文書があるのです。   謹しんで御栄転をお祝い申し上げます。   かねがね当地方連絡部に賜わりました種々の御高配に対し厚くお礼申し上げますとともに、今後とも隊員の募集につきまして倍旧の御支援・御協力のほど切にお願い申し上げます。   さっそくお祝いに参上致すべきところ取急ぎ書中をもって御祝詞を申し上げますとともに、今後の御活躍と御健勝を心からお祈り申し上げます。   昭和四十七年三月二十九日   自衛隊熊本地方連絡部長               藤 本 健 市 と書いてあります。  これ、どこへ出したと思いますか。中学校の校長ですよ。中学校の校長へ、三月二十九日というのは、この校長が校長として発令された日です。お祝いの手紙ですよ。人が校長になったことにお祝いすることに私は問題があると思いませんよ。しかしですね、自衛隊募集がいかに苦しいかといって、高等学校へのいろいろな働きかけもありましたね。いまは中学まで行っているんですか。はっきりここには「隊員の募集につきまして倍旧の御支援・御協力のほど」云々と書いてあるじゃありませんか。いままで中学に向かっても隊員募集のためにこういう努力をしているんですか。努力をしていることがいけないということだけではありません。しかしこういうものを出しておられることの中に、少なくともいまるる言われた、隊外については関係ないとか、隊外のことは別だと、そういうことかららち外に出るじゃありませんか。こういう問題はやはり基本的に、自衛隊というものが隊員をどのように教育し、市民としての、いま制服を着た市民とおっしゃったけれども、市民としてのあり方をどういうふうに考え、教育しているか。一歩出たら関係ないということはありませんよ。中にあって、市民として外に通用するにはどういうあり方でなければならぬかということの教育がやっぱり足りないということの証左じゃありませんか。これは私は、ここでやめてくれとか、ぜひひとつまあまあどうだとか話をはぐらかさないで、自衛隊が、精強を誇る第八師団のおひざ元で、五千人の隊員というのは絶対の影響力を地域に持っておます。それがどっとばかりに、それこそ力あふれるようなつわものがいっぱい集まってきて、日ごろ鉄砲を持っている力でもってテーブルをたたいて拍手をしてわいわいやられたらこわいですよ、これは。それが市民たる良識だというようなことがぬけぬけと通るというような社会を私はこわいと思う。それに対しては十分に配慮するのだということのほうが、これはやっぱり、もしあり得るならば、市民から自衛隊への理解ということになるんじゃありませんか。まあそれくらいのことは目こぼしをしておけ、目かどを立てて言うことはないじゃないかというような話にしてしまうことでは私はないと思うのですよ。そこのところを胸にしみるようなことをしっかり言っていただかなければ、私もあなたも現場へ行っているわけじゃない。持っているのはテープの違いくらいです。行ってないからわからぬというような言い方では困る。それだったらしっかりお調べになればいい。二週間の時間があって、抜き打ちでやっている話ではないのですから。そこを十分にお調べになって、胸に落ちる御説明をして、やはりこれは遺憾な部分があると、この遺憾な部分というのは、今後たとえばあなたの好きなことばのように、自衛隊が市民に愛されるためにはこういうことのないようにしていかなければならぬのだくらいの反省は、これはきちっと出していただきたい。そのことで私もこの話を打ち切りたいと思いますから、耳を傾けてあなたの御発言を聞きます。
  305. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 自衛隊が制服を着たりっぱな市民であることは大事なことだと思います。今後もそういうことで徹底するように十分ひとつ教育をしてまいりたいと思います。今回のそういうことにおいて、私ども調査も不十分でありまするが、遺憾なことがあったとすればこれは改めるようにさせたいと思います。  それからいまのお読み上げになった問題は、少年自衛官に対する理解を校長さんが持っておられたかというふうに想像されます。それからまた先生個人として、教え子もたくさんあることですから、それが成長してそして自衛官として志望年齢、普通の自衛官としての志望年齢に達したときに、国の防衛は重要だからひとつ君やってみたらどうだいというようなことで、あるいは御勧誘があったかもしれません。そういう平素の交誼に対して申し送ったお祝いとともに地連部長としての手紙というふうに理解されます。
  306. 上田哲

    ○上田哲君 遺憾な点があったということはお認めになりますね。これはやはり自衛隊の隊員を含めて、体質の問題だと、市民性とどう融合できるかできないかという基本にかかわる体質の問題だと私は思うんです。それで、遺憾な点もあったというふうにお考えになるし、今後指導しなきゃならない点があるというふうにお考えになるのであれば、今月の末もう一ぺんここで総会が開かれるわけです。そこで総会が開かれて、同じ規約が議題になり討議されることになっています。そこでほんとうに集団行動をとって、自衛隊員であることが根拠になるような集団行動をとるようなことのない、少なくともまわりからそういうことに見られない、おっしゃるような子供の親として市民の良識のレベルにしっかり立ったような行動をとらせるということを、これは隊外と言わないから隊内でしっかり示していただくというお約束をしていただきたいと思います。
  307. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはどうでしょう。やはり親としての良識にまつ、親としての良識とはまた制服を着た良識ある市民であるということを私どもはよく言うことであって、個々一々の議題について私どもがとやこう口を出す場面ではないと思います。冒頭申し上げましたような趣旨で今後教育をしてまいります。
  308. 上田哲

    ○上田哲君 六月の末に行なわれる総会でまたこれと同じようなことが起きれば、遺憾なことでしょう。そういう遺憾なことが起きないように、あなたのことばで言うならば、そういう誤解を受けないようにでもいいです、そういう誤解を受けないように十分考えたいということくらいは言ったらどうですか。
  309. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) あとから私言いますから、ちょっと先に答えさせて……。
  310. 上田哲

    ○上田哲君 要らない。質問者が要らないというのに要らぬじゃないですか。
  311. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) それでは私からお答えいたします。  まあ、どういう運営になりますかはこれは私はPTAの良識の問題だと思います。これへ私に干渉しろとおっしゃられても、これは上田さん無理ですわ。しかし、さっきのような議題でいろいろ議論されるというときに、集団的な行動をとったり、ここに一つ自衛隊がある、大会社がある、自分たちの思うように権力支配をしようといったような意図で行動をするということであれば、そういうことのないように十分注意をいたします。
  312. 沢田実

    ○沢田実君 私は、昨年でございますか、九州へ内閣委員会として視察に参りましたときに、各陸海空のいろいろな状況の御説明を受けました。現地で若干説明を伺ったのですが、これは現地よりも中央へ持ち返って議論してもらったほうがよろしいというような意見もございましたので、質問を実はやめて帰ってきた問題があります。それをまず最初に承りたいと思います。というのは、第四師団司令部から視察のときの状況説明としていただいた説明書でございますが、その中に「主要装備品の充足状況」と、こういう一覧が出ております。昭和四十六年八月三十一日現在で出ているのですが、小銃、機関銃、迫撃砲、その他ずっと詳細に載っておりますが、そこに「定数」というのと「充足基準数」というのと「充足数」というのが出ておりますが、「充足基準数」というのは一体どういう数なのか、まず承りたいと思います。
  313. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 定数は定員とちょうど同じでありまして、本来あるべき装備の数であります。そこで基準数のほうは、その定数に向けて常時装備をすべきことが適当である、予算その他の関連で適当であるという基準を設けて設定した数字、それと、現実に整備されている数字が充足数であろうと思います。
  314. 沢田実

    ○沢田実君 そうしますと、その充足数が相当高率の充足のもございますが、たとえば戦車等は定数が六十で充足基準数が三十六、六一式の場合ですが、充足数が三十六で、充足率六三%、そんなふうに出ております。するとこの六十というのは部隊編成上必要な数ということなのか、三十六というのは現在の段階において予算上それはやむを得ないのだという数なのか、その辺はいかがですか。
  315. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 定数の六十両はあくまでも師団として本来持つべき数ということで、目標数字になります。そこで、それに対する基準を設けてつくったものは、全体の数量の中で当時においてはその師団にはこれだけを充当いたしましょう、それが基準になるわけです。ところが現実にはそういった部隊によって余分に配分したり、あるいは学校のほうに回ったり、そういうふうなことで、現実にその師団に回されている数字というのが一番最後の充足数になります。
  316. 沢田実

    ○沢田実君 そうしますと、三次防の戦車七百二十両という一つ目標はこの定数の合計ですか、それとも充足基準数のほうですか。
  317. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 定数を合計いたしますと約千両程度になりますから、基準の合計になろうと思います。
  318. 沢田実

    ○沢田実君 そうしますと、この三次防の計画というのはいわゆる部隊の編成にどうしても必要な作戦上の数というのじゃなしに、そのときの予算に応じた数だと、こういうことですか。
  319. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) その辺はなかなかむずかしいわけでありますが、定数の場合には、その数字でもって有事の場合に防衛に当たる数字になります。したがいまして、一つ師団で六十両の戦車がなければ十分の戦闘ができないということになります。ところが何次防何次防という場合の各種装備の数は、これはある種の、やはり一定の考え方に基づいてつくられてはおりますが、どうしてもこの整備計画が最終的にセットされる場合には、予算のワクその他で締めつけられてまいりますので、おおよその考え方はありますが、予算、経費、総体の経費のワクの中、それとほかの装備との関連でおのずからきまってくる数字ということになります。
  320. 沢田実

    ○沢田実君 そうしますと、そういう装備に対するいわゆる定数ですね、それについては何かで発表していただけますか。それはすでに発表したものがありますか。
  321. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 定数で申し上げますと、おもなもので、たとえば小銃が七千八百丁、戦車が六十両、装甲車が二十両、機関銃が二百二十丁、以上のようなものであります。
  322. 沢田実

    ○沢田実君 いまの御答弁は第四師団のですから、その表は私も持っておりますのでそれはわかっておりますが、あなたはいまこの定数を合計しますと、たとえば戦車の六一式の場合には約千両になる、こういうお話です。ところが私どもは三次防なら三次防で七百二十両としか聞いていないわけです。それは予算の上から七百二十両というものを目標にしているのだ。すると、予算関係なしに部隊の作戦上必要な数というものが定数だとおっしゃるならば、その定数というものがあるかということをお聞きしているのです、全体の、第四師団だけじゃなしに。
  323. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 先ほど戦車約千両と申しましたが、千百両であります。それから装甲車が約六百六十両。いま代表的な例を申し上げましたが、具体的な数字はちょっと手元でなかなか出ませんので、別途御連絡申し上げたいと思います。
  324. 沢田実

    ○沢田実君 いま御答弁の戦車の千両、まあ第三次防で七百二十両ですから、定数として千両ということは納得できますが、装甲車の場合にはいま六百六十とおっしゃる。ところが三次防は六百七十、四次防はまあ若干減るといたしましても、中曽根私案といいますか、一応あなたのほうから発表なさった数は八百五十になっています。そういうことになりますと、その辺がつじつまが合いませんが、どうですか。
  325. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) いまの装甲車の場合には、新型のものを想定いたしまするとおかしいのでありますが、米側からもらっておりますハーフトラック型M3A1というのをやはり装甲車という名称のもとに整理をいたしております。したがいまして、定数の上で六百六十両しか要らないのですけれども、以前に米側から相当量もらっております。これが三次防から四次防にかけて相当消耗してまいりますが、その消耗の過程で、まだもらったものの数が多かったということで、三次防の保有数のほうが定数よりふえているというのが現状のようであります。
  326. 沢田実

    ○沢田実君 そうしますと、これは陸上だけでなしに、海上にしても航空にしても、要するに予算措置とは別個にこれだけの兵力、装備というものが必要だというものは防衛庁としてはみな出していらっしゃる、こういうように理解してよろしゅうございますか。
  327. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 陸海空の編制の概念が少し違っておりまして、陸上自衛隊の場合には各師団単位、あるいはその他の特殊の部隊単位に考えて、本来持つべき装備は幾らであろうかというのが出てまいります。それを合計いたしますると、定数の合計にいたしますると、定数の合計ということで、たとえば戦車の千百両というのが出るわけでありますが、海の場合には艦艇が中心であります。そうしますと、どういう種類の艦艇をどの程度持つべきかということが出てまいります。そうすると、その艦艇の中には、たとえば五インチ砲、あるいは三インチ砲が何門あるべきものであるかということで、これは数が出てまいります。航空自衛隊の場合また違いまして、部隊単位になります。そこで要撃部隊が十であれば、十を単位にいたしまして、一つの単位で、たとえば二十五機とかあるいは十八機が基準になって、それに予備機を若干つけて一個中隊の機数が出る。それの十隊分、要撃機でいえば十隊分、それから待機支援機でいえば同じような計算をやって三隊分というようなことで、総体のこれは防衛力整備計画上の数字が出てまいります。その場合の防衛力整備計画と実際に整備すべき目標はこの場合には同じ、したがって海空の場合は防衛力整備計画と、これはその当時、そのときの予算で落とされれば別でありますけれども、その年の予算で落とされるものを別にすれば、整備目標とそれから三次防計画なら三次防計画数字が合います。陸の場合だけが編制概念が違いますので、そういうかっこうになっております。
  328. 沢田実

    ○沢田実君 師団の場合、九千名編成の師団と七千名編成の師団があるように聞いておりますが、これはどういう違いでそういう編成をしているのかということが一つ、それから第四師団は何名編成の師団ですか。
  329. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 担当部員がありましてもなかなか数字が出ないこまかい問題でありますが、そもそも七千と九千は本来、昔から申しますと三個連隊編成、つまり三、三編成と四を単位とする編成がどちらがよろしいかということがいわれておったわけでありますが、三、三編成が以前の観念、以前の概念であったのであります。ところが部隊運営上は三つの部隊のほかに予備部隊を一つ設ける。つまり四個の編成が近代的な軍としては望ましいのじゃないかという意見が相当以前に出されまして、そこで九千師団は四個連隊ということになったわけであります。しかしながら全部の部隊を四個部隊、四個連隊にする必要があるかどうかということで検討されまして、主要な部隊については四個連隊にする。そうして七千の三個連隊の部隊も残すということにしたわけであります。片一方では一応十八万という制約があったということもいなめないところであります。そうして第四師団の場合には九千名師団でありますが、七千名と九千名の師団の装備の編成の相違、これがすぐには出てまいりませんが、たとえば戦車で申しますると、九千師団の場合には、先ほどの六十両、それから七千師団の場合には四十六両というふうになっております。人数が違うことによっておのずから各種装備が七千師団の場合には減っております。
  330. 沢田実

    ○沢田実君 先ほど諸外国の師団の数と人数の数とをお聞きしたわけですが、それを見ますと、一万を割っている師団なんというのは先ほどお話の外国の例にはないようですが、そういう小さな人数の師団の編成にしたのはどういうわけですか。
  331. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 旧陸軍はこれも各種各様ありまして、一万数千から二万数千、通常二万数千名という師団がとられております。それから日本以外の各国では大部分が一万数千名台、これか師団の普通の規模であります。当然日本の場合には七千と九千で非常に少なくなっておりますが、なぜかと申しますると、日本の地形に合わせて、つまり山脈で区切られている地形、一つの区域区域の単位をずっと拾っていってみますると、大体十三から十五ぐらいの単位になります。その単位にそれぞれ一つ師団を張りつけてみると、一応十三師団、総体的に十八万ということになった計算がありますが、さらにもう一つ、これもまあ大勢的な見方でありまするけれども日本は山岳地帯が多いのでありまするから、一つの盆地から一つの盆地に夜間に移動を完了し得る、これは人数と装備を含めてでありますが、相手方航空機による攻撃をも避けながら、一つの盆地から他の盆地に一晩のうちに移動し得るということになりますると、ほぼ二千名ぐらいが適当であるという観点、したがいまして二千名というものが大体一つの連隊の規模になっているということであります。そういうものを三つないし四つ持つことによって七千師団あるいは九千師団というものをつくったということであります。さらに言うならば、七千、九千が最も適当であるかどうかはわかりませんが、少なくとも外国の師団よりも適当であろうと思いますのは、日本の場合にはなるべく持久戦闘をする、つまり広い地域で相手方と決戦をいどむ、奉天会戦をいどむというような戦闘は日本防衛上は好ましくない、なるべく相手に損傷を多く与えながらこちらは生きのびていく、そしてできるだけの抵抗を長くする、そしてまたどのような分断攻撃にあってもできるだけ独立性を持っていくという観点からいきますると、できるだけ小部隊のほうがよろしい。ですから、たとえばインドシナ地域のどこでしたか、イギリス系統の国はたしか旅団編成、旅団単位、それから英国も旅団単位でありまして、旅団単位というのも一つの発想だと思います。師団をつくらないで、一応旅団を中心にして考える。いざという場合にはその旅団を合わせて一つの軍なら軍に編成をしていくという考え方があります。したがって日本の場合には七千もしくは九千というのが、そういう観点からいけば多いという場合には、連隊を中心にしまして戦闘団というものをつくります、日本の場合に。そして、その戦闘団が一つの独立をして戦うもの、師団よりもさらに小さなものとして独立して戦い得るもの、そういうような意味で戦闘団という考え方もあります。あれやこれやで大体七千師団あるいは九千師団日本の地形、地勢上は適当ではなかろうかというのがかつての陸上幕僚監部での検討結果であります。
  332. 沢田実

    ○沢田実君 いまの局長の御説明を聞きますと、ちょうど十三に区切れて、七千なり九千にするというとちょうどいいあんばいの十八万になるのだという、最初から十八万が適当だというふうなお話をおっしゃっていますが、これは長官、私は十八万というのをきめる段階で日本がアメリカに交渉した。アメリカは十個師団の二十三万ですか何かを主張したけれども、池田さんが十八万ということで話し合ってきたんだ、それが十八万ということなんで、特別根拠がないんだというふうに聞いておりますが、いま局長答弁したのはあとからつけた理屈じゃないですか。
  333. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 当初私ども三十五万の要求があったという話を聞いたこともございます。それが二十数万になり、それから十八万に落ちついたというわけでありまして、その十八万を日本の地形に合うようにあんばいしたというのが正直なところだと思います。
  334. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) ちょっと付け加えます。  私は第一次防衛力整備計画ができる前にその素案というものを十何次案までつくりましたときの担当者であります。その場合に、池田私案も当然その途中で出ましたけれども、われわれが制服の連中と検討したときには大体十八万から二十二、三万のうちにおさまっておりました、これはいろんな思想がありまして。でありますが、そうおかしくない数字、大体二十万前後というのが日本の地形、地勢に合った数字であろうというふうに思います。
  335. 沢田実

    ○沢田実君 この前いただいた資料では装備品の状況が書いてあるのですが、たとえば小銃、機関銃にしても弾薬はどれだけあるということはないわけですか。そういうものは御発表いただけますか。全国のがだめでしたら、第四師団管轄だけでもけっこうですから、第四師団なら第四師団は小銃弾はこれだけ、機関銃はこれだけ、迫撃砲弾はこれだけ常時保管してあるのだというような状況がわかりましたら、発表してください。
  336. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 弾薬の総量につきましては、三次防末で六万三千トン、これは従来からいっておるところでありますが、弾種別にどういう状況になっているかということは実は申し上げた実例がございません。したがいまして、別途四師団なら四師団について先生に御説明を申し上げるということで御容赦を願いたいと思います。
  337. 沢田実

    ○沢田実君 今度、いまのそういう数字がすぐ出なければ、あとでもけっこうですが、私がお聞きしたいのは、第四師団なら第四師団のところに小銃の弾薬がどのくらいあるのだ、いざという場合に機関銃なら機関銃で一分間どれだけ出るんだ、ここのところ実際にあるのが二百十二ありますから、二百十二でぱあっとやると、何分間撃つだけのたまがあるのかと私は聞きたいのです。そういうことはここで概略発表できますか。
  338. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) たとえば小銃について見ますると、一人が百二十発を携行いたします。ところで、この百二十発、それから何と申しますか、装備定数とでもいいますか、個人が携帯をしているもの以外に、その部隊として基本的に装備をしておらねばならないもの、その数字が四百発であります。ところで、好んで論をなす方はこの四百発に対しまして、たとえば小銃は最大発射弾数が一分間で百発である、こういたしますると、その四百発というのが四分でなくなるわけであります。ところが現実にはそういった最大発射速度でたまを撃つものではないということでありまして、そこで持続的に発射をする速度、小銃の場合に持続的に長く、これは最大発射をしてしまえばおそらく小銃自身がだいぶ悪くなって、継続的に使えなくなるということもありましょう、長く使えば。したがいまして、持続的に発射してやる場合の速度が一分間で十発であります。そうしますると、かりに四百発あるとすれば四十分程度は継続できる。これはしかし算術計算でありまして、こういう議論をするのはあまり適当ではないので、事実上は、たとえば国全体にどの程度の小銃弾なら小銃弾の備蓄があるか、その備蓄をどういうふうに弾庫に入れておるか、それの輸送はどうであるかということによって実効は違ってまいります。そういう観点で申せば、小銃の総体の——小銃だけでありませんが、総体の備蓄も少ないのでありまするし、それからたまの区域的な配分、これも必ずしも適当でない、それから補給の問題にもまあ問題は残されているということで、後方補給関係自衛隊の今後の重要な課題である。ただ問題は、あしたすぐ戦争するという態勢にはなっておらないので、一応やはり訓練を中心にした装備の整備ということに重点が置かれているのが現況であります。
  339. 沢田実

    ○沢田実君 先ほど仮想敵国の話がいろいろ出ました。私は相手の国のことは聞こうと思いません。ただ、いまおっしゃったように十八万なりあるいは日本の各地に配備してこれが適当であろうと考えられるには、九州なら九州にどのくらいの人数上陸することを仮定して、たとえば九千編成なり七千編成なりの師団というものでいまおっしゃる弾薬でこれだけ抵抗できるのだというようなことの計算があってぼくは数字を出していらっしゃるのだと思うんですが、日本に攻めてくると仮定する人数ですね、これはどのぐらいの人数を仮定しているのですか。
  340. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) たまのほうは不十分なのでありますが、相手方の上陸してくるであろう師団数というのはまあ数個師団という感じであります。あまり下のほうでもなりません中辺の数個師団という感じであります。
  341. 沢田実

    ○沢田実君 数個師団が九州なら九州に来たと、そうするとこっちは一万にも足らないような師団で、しかも弾薬も少なくて、それで持つのですか。
  342. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) もちろん部隊運用の問題につきましては、たとえば数個師団がかりに上がってまいりましても、十三個師団を振り向けるわけにはまいりません。そこで部隊運用上は、たとえば北に来た場合にはどうする、西に来た場合にはどういう転用をする、これは当然われわれのほうの防衛計画の中でいろいろな演練がなされております。しかしながら、事実上どの程度振り向けるかといえば、相手方師団の大体一・五倍程度というふうにお考えいただければけっこうかと思います。たとえば三個師団上がってきそうであれば四・五師団は少なくとも振り向けなければいけない。したがってそれだけの事前に情報をキャッチをして国内における転用を考えていかなければいけない、そういうことであります。
  343. 沢田実

    ○沢田実君 そういう場合に、いまの弾薬の配備やなにかこれから検討するというお話ですが、現時点ですと何日ぐらい持ちますか。
  344. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 現在保有をしております弾薬量は先ほども申し上げたように六万三千トンばかり、これは実際の月間の所要に比べて相当低い数字であるということが言えようかと思います。
  345. 沢田実

    ○沢田実君 一分間で持続発射が十発だ、だから四十分程度だというお話を承ったのですが、そんな状況で数個師団来た——三個師団来てこっちは四・五師団なりが九州なら九州に結集してそこでやった場合、四十分やそこらのたましかないわけですから、機関銃やなんかももっと少ないのだろうと思います。   〔委員長退席、理事町村金吾君着席〕 追撃砲弾をお聞きしてもおそらくもっと少ない数だろうと思いますし、戦車は先ほどおっしゃったとおりですから、そういうような状況で、もし日本に数個師団の上陸があったとすれば、現在の自衛隊ではどうしようもない状較じゃないかというふうに私は思うんです。もしそういうことがあれば——万一ですね、あるいは現在の装備、訓練で全然だめじゃないのだ、あるいは何日間は持つんだというような見通しであるのか。こんな小さな数字をここで御説明願ってあれする必要ありませんので、専門的な立場で、何日ぐらいはだいじょうぶなんだ、その間に何とかしなくちゃいけないのだというようなことは、その辺はお考えだと思いますが、その辺のお考えはどうです。
  346. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) さっき小銃弾で四百発と申しましたが、これは部隊に与えられている数字でありますから、たとえば、弾薬庫といいますか、補給処で持っております弾薬庫にはまだ別途ある。したがって、戦闘行為が予想されれば平素から備蓄されている弾薬をそれぞれの部隊に増配をするということは当然でありまするし、たま継続的に補給しなければならないという問題があります。したがって四百発だけでないことは少なくとも言えるわけでありますが、しかしそれにしても不十分である。そこで、六万トンであるということは−実際の所要に比べて、たとえば月間に必要なものに比べて相当低いレベルでしかないということは言えます。そこで、なぜそれではその程度で満足をするのかということでありますが、これは、この辺から議論の分かれるところでありまするけれども、現在の自衛隊というものが有事即応の形でなければならないのか、あるいはごく近い将来にそういった外国からの侵略というものも予想されないのであれば、やはり装備を使っての部隊の演練ということを中心にして一定のワクの経費を使うことが適当であるかどうかというところに分かれるわけでありまして、たとえば有事即応ということで、あしたにもどっかの国が日本に攻めてくるかもしれないという場合には有事即応でなければならないし、弾薬なども相当程度がんばれるだけのものを準備しておかなければいけない。ところが弾薬というものは非常に高いものでありまして、それだけのものを整備するということになりますると、他の訓練あるいは装備の整備などに非常に大きな支障を与える。片一方で、たまというものがおのずから、まあ火器が、装備が旧式化するという口とになりますので、かりに有事即応の形で弾薬を相当量、というよりも必要量準備しておりますると、ある時期において装備が変わりまするとそのたまが不要になってしまう。あるいは、たまは十数年すれば内部の火薬その他がふぐあいになってくるというようなことで、不経済な持ち方でもあるということでもありますので、結局、現在の日本の置かれている情勢がどうであるか、日本に対する脅威の判断がどうであるか、それからまた、同じくたまを持つにしてもその経済的な持ち方はどうであるかということを判断してみますると、大体今日の情勢であればまあ七万トン程度を持てばいいんじゃないか、陸上自衛隊の場合ですね。そして有事の場合に近くなってくれば緊急に生産をしていく。あるいは、同種類の火器であれば外国からその弾薬を輸入をするということによってまかなっていくというのが実は四次防の原案当時の考え方でありまして、その点については、基本的には今後の防衛力整備計画においても弾薬については変わらないのではないか。やはりそこに、有事即応にするかしないかで議論が分かれてくるところであります。
  347. 沢田実

    ○沢田実君 これから海上やいろんなことをお聞きしていきますとその辺がはっきりしてくるわけですが、私の言いたいのは、いろいろ御説明を聞けば聞くほど、先ほどお話しになった諸外国の装備に比べて日本自衛隊というのはいかに貧弱であるか。おそらく実戦なんかできないような私は力しか持っていないだろうと思います。そういう日本自衛隊というものが、戦争ができるようなそういうところまで装備を進めるというのではなしに、いわゆる軍隊を目ざすのではなしに、国土警備隊のような形にして、そして日本の領海、領空等はこれは守らなくちゃなりませんけれども、戦争というようなことは考えないというような考えであると、このくらいの装備でもなるほど納得できるわけですよ。ですから私は、世界に再び戦争がない方向での外交あるいは政府の姿勢というものを最も大事にして、その軍隊を再び力のある軍隊をつくることはしないほうがいいんじゃなかろうか。それをやるにはたいへんなことだということをこの装備の実情から感ずるので、そういう意味でお聞きをしているわけですが、いままでお聞きをした陸上自衛隊の範囲においては、これはもうてんで、万一外国の軍隊が攻めてくるようなことがあれば一たまりもない、こういう現況じゃないかと思います。  ですから、そんな段階なら私は何もこれから先いろんなことを、第四次防だ第五次防だといって装備をしてここで議論しているよりも、そうでない方向に切りかえたほうが一番いいんじゃないか、こういう立場——立場が違うといえばそれまでのことですが、わが党の考えているような国土警備隊という方向にいくほうが、日本の長い将来を考えたほうがいいんじゃないか、まだいまだったら切りかえがききますし、そういった意味でもう少しお聞きをしたいわけですが、時間の関係もありますから陸上のことはそのぐらいにしまして、実際に法案関係のあります海上自衛隊のほうについてお聞きしたいのですが、いわゆる海上自衛隊というのは何をやることが任務であるのか、その辺をひとつ御説明いただきたいと思います。
  348. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 基本的に申せば、海上自衛隊の任務は、海洋を航行するわが商船の安全を確保することであるということになりまするし、具体的に申せば、わが商船に対する水上艦艇あるいは潜水艦からの攻撃を防御するということにあろうと思います。
  349. 沢田実

    ○沢田実君 いま局長答弁のようなことは法律には書いておりませんし、いままで定説になっていないように思うのですが、乏しい私のいろいろな聞いた範囲から申し上げることですから、そういうふうに防衛庁として見解を統一しているのだということならそれでけっこうですが、それはいつごろからそういう解釈になったのですか。
  350. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 国の安全を確保するということの中には、国、国民が生活をできるということでなければならないでありましょうし、国民が生活できるということであれば、国土に外国から持ってくる物資というものが少なくとも必要程度は確保されねばならない。そうでなければ国民はひぼしになってしまうということになりますので、国の安全を確保するということの中には、国に持ってくる、あるいは国が生存するために必要な海上交通の保護ということは当然含まれるべきであるということは、自衛隊当初からの考え方であります。
  351. 沢田実

    ○沢田実君 日本の国土に外国の軍隊が上陸をするというような場合にはこれを防ぎ、上陸した場合には後方基地を遮断ずるというようなことがいわゆる海上において行動するということじゃないんですか。あなたのおっしゃるような解釈に当初からなっているのですか。
  352. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 申し落としました。私がいま申し上げたことと、それから、わが国に対して海上から侵攻する艦艇を、これを防御すると、いうことも当然入っております。
  353. 沢田実

    ○沢田実君 そうしますとね、外国の軍隊がもし攻めてきた場合に、先ほどおっしゃった数個師団が攻めてきた場合に、後方を遮断するとかあるいは上陸したものを逆にせん滅をするためには、そういう戦いのためには大体どのくらいの海軍の兵力というものが必要なんですか。
  354. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) これは、いろんな計算がありまして、必ずしも確定した数字になっておりません。一応、それともう一つは、海上交通の保護と、それから相手方の軍隊が日本に上陸してくるときにそれを阻止するという場合に、その使われる海上兵力というものは、これは海上自衛隊の研究、検討の中では、両方彼此融通し合って使うということで、別々にいたしておりません。  そこで、その両方兼ね備えた機能を持つ海上自衛隊兵力というのは従来からも検討されておりましたし、中曽根前長官が示唆された数字は、十年後ぐらいには三十数万トンぐらいになるだろうということを言われたわけでありますが、まあ大きくはへだたらない数字というふうにお考えいただいてもけっこうであります。
  355. 沢田実

    ○沢田実君 もう一つ、あなたがおっしゃった海上交通の安全の確保ということになりますと、これはもうたいへんなことになるのですが、どの辺までの海上の交通の確保を考えているのか。日本の領海だけ考えているのか、あるいはアメリカからも日本が輸入する、その商船の安全の確保まで考えているのか、いわゆる全世界から物資を輸入しております日本の現状で、おそらく世界じゅうの海上の安全確保なんということは、これはもう不可能なことだと思いますので、あなたのおっしゃるいわゆる海上の交通の安全の確保というものはどの程度の海域をさしていらっしゃるのか。
  356. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 日本は中東からも石油を輸入しておるわけで、非常に遠距離からの海上交通の安全が必要でありますけれども、アメリカですらも、大きな海洋、太平洋とかインド洋とかあるいは大西洋とかを含めて海上交通の保護をアメリカの力だけでやれるとは申しておりません。それらはやはり世界各国が力を合わせて守るべきであろうということを言っております。そこで、わが国もやはりそういうような背景に立ってしか考えられないのであって、海上自衛隊の任務とすれば、江崎長官も再々申しておられまするように、本土から数百マイルぐらい離れた程度、数百マイルが五百がいいのか六百がいいのか、必ずしも数字的には具体的に特定できませんけれども、そのときの情勢あるいはわが自衛隊能力といったようなことも勘案して、大体数百マイル、海マイルでありますから、キロでいえば千キロ前後ぐらいという感じが適当な範囲であろうというふうに思っております。
  357. 沢田実

    ○沢田実君 それは実際問題、海上交通の安全の確保ということは、確保できないわけでしょう。日本の国の近くへ千キロぐらい来たら確保しよう、そこから先はできませんよということは、これはやらなくったって同じことになりませんか。なぜ千キロぐらいだけやろうというふうにお考えになっていらっしゃるのですか。もう商船の海上交通の安全なんていうのはどうしようもない問題じゃありませんか、日本自衛隊では。
  358. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) どうしようもなければ、海上自衛隊で対潜掃討という任務がなくなるわけでありますが、やはり非常にむずかしい問題であるけれどもしなければならないし、ある程度できるということで、世界各国の先進国が潜水艦に対する作戦を考えておるわけでありまして、やはりわが国も対潜哨戒機、それから護衛艦などを結合いたしまして、そしてある程度潜水艦に対する掃討能力といいますか、阻止力及び攻撃力というものを持ち得ます。これは今日十分であるということをもちろん申しておるわけではありませんし、それから潜水艦をどういうふうにして発見するかという方法の検討も行なわれております。ですから十分にそれをなし得るとは限りません。たとえばかりに三十数万トンの艦艇ができたといいましても、日本の商船の撃沈数が非常に少ないというふうにはやはりなるまい。しかしながら、日本国民が生活を維持をしておる、そしてある程度はがんばっている間に、国際社会において平和秩序が確立されるというまでがんばり得る程度のものは何とかなり得るということで、一〇〇%の能力がないからといって、それを、そういう能力を持たないでよろしいということにはやはりならないのではないかというふうに考えております。
  359. 沢田実

    ○沢田実君 軍事上の考え方でそうおっしゃるのでしょうが、長官、実際問題ね、それくらいの海上の力を持つよりも、いっそ持たないほうが、私が申し上げておるのは、海上交通安全確保という問題ですよ。日本の全輸入物資の何%確保できるということを考えてみると、ほんの私は小部分だろうと、いま千キロぐらいだという海上の確保を考えてみれば、それから先は全然できないのですから、そうして見れば、もし仮想敵国が、あるいは敵国ができて、そこから先でやられれば、もうどうしようもない。いまおっしゃる千キロを二千キロに延ばしたところで、これはどうしようもない問題じゃないか。どうしようもないから要らないのだというふうにはいかないのだとおっしゃいますけれども、私はそういうふうな現況であるから、世界に再び戦争を起こさない方向での政治の姿勢、あるいは外交の政策というものが必要であって、そして、私どもは等距離完全中立ということを主張して、戦争をなくしろということを言っておるものはそういうことなんです。ですからつまらないちょっとした艦艇を持った日本は、軍国化の方向をたどっておるなんて世界から非難されるというよりは、どうにもならぬようなそんなものを持つ必要ないのじゃないかという感じを私は持つのですが、それは中立国でも国の予算の三分の一も軍事費に使っておりますスエーデン等もありますから、世界の各国の例を引けばそれは軍備も必要だという議論はあるかもしれません。しかし、世界のどこの国よりも先がけて平和憲法をつくった日本では、そういうものをいまさらちょこちょこつくってもどうしようもないのじゃないか。海上保安庁がやっておるような限度で、それ以上自衛隊がいわゆる商船の護衛をやろうなんていったって、実際問題は無理なことじゃないか、またむだなことじゃないか。そういう方向を改めて別な方向にいくことは考えられないのかどうか。   〔理事町村金五君退席、委員長着席〕 あまりにも力の違う日本が少しぐらい持ってみても、局長はまた国連と、あるいは集団的な方法で云々というその短い期間でも自分の力でというようなことをおっしゃるかもしれませんが、そういう考えも若干あるかもしれませんけれども、新しい憲法を日本はここで宣言しているんですから、世界の国とは違った方向への行き方ができないことないんじゃないか、こう思いますが、政府・自民党はそんなことは考えないんだ、軍艦は足りないけれどもどんどんつくっていくんだ、それから海上と航空のほうは力を入れて、陸上は十八万でよろしいからあとは海上と航空に力を入れて、うんと飛行機と船をつくるんだと、こういう方向なのか。そんなうんとつくるんじゃない、四次防、五次防といっても徐々につくるんだと、こうおっしゃるかもしれませんが、徐々にそんなことしてつくる必要が一体あるのかどうか、世界の将来というものを見渡した場合にですね、これは大きな問題だと思うんですが、長官としてはどんなふうにお考えか。
  360. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私は、やはり海上兵力に限らず自衛隊を持つということ自体は必要だと思っております。それは自衛隊を持っておることによって相手も警戒をする。全然なければ、抵抗がない真空状態に侵入することはきわめて簡単でありまするから、相手の侵略意図というものを誘う。やはり自衛隊の現在の装備というものがもちろん万全であるとは思っておりません。また万全のものを持っておる国というのはこの地球の上に一体どこの国があるかという議論にもなるわけでありまして、したがって、現在の自衛隊装備があるということが一つの侵略の抑止力になっておるという考え方であります。したがって、いまの海上のこの装備をもってしてまさかマラッカ海峡に出ていけるものでもありませんし、そんなことは夢にも考えていないということはもうこれはしばしば申し上げておるとおりであります。そうかといって、それじゃ、なくていいじゃないかということになりますと、これは先般のあの円を沖繩に持っていったりまたドルを本土に持ち返してきたり、あの一つのことをとりましても、何ら装備がなければ、不特定な海賊などの脅威にすらこたえていくことができないというようなわけで、どうしても足りないところは日米安全保障条約によって補っておるというのが実情であります。したがって、抑止力としてやはり現在整備中の兵力量程度のものは持たなければならない、こういう考え方に立っておるわけでございます。
  361. 沢田実

    ○沢田実君 それから、ちょっと話がまた変わりますが、設置法の改正の法律案ですが、これには統合幕僚会議の人数については、抜けるようになっているんですが、引いて計算すれば出ます、この条文の上で。またこれ変わったほうも、引いて計算すればその差が出ますから、これだけが統合幕僚会議の人数なんだなということはわかるようになっていますが、わざわざこれは人数が書いてないのはどういうわけですか。
  362. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) これは統幕の構成員の関係でありまして、陸、海、空——自衛隊はもちろん陸、海、空自衛官のみで構成されておりまするので、それぞれの人員計算できます。ところが統合幕僚会議は陸、海、空の自衛官からなっておりまして、そのときによって陸上あるいは海上、航空といった出身自衛官の数が異ってまいります。したがいまして、総数として統幕の場合に何人ということは言えまするけれども、陸、海、空の区別が分けられないという意味で、統幕には特に総数を出さなかったということのようであります。
  363. 沢田実

    ○沢田実君 そんなことでこうしているんでしょうけれども、航空自衛隊の自衛官何万名とありますが、それに統合幕僚会議会議に所属する何名を加えるといって人数を書いておくとはっきりするわけです。それで引かないとわからないようにしてだんだんだんだんそれをまた多くしているわけですよ。これは多くするに都合がいいように、書いてないのかもしれませんけれども、はっきり統幕の人数も、いまあなたおっしゃるように陸、海、空に分ける必要はないから合計をして法律の上にはっきりしたほうがいいんじゃないかと思いますが、その点はいかがですか。
  364. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 聞いてみますると、一番最初法律をつくったときにこういうような構成をとっただけで、格別の理由はないそうであります。統幕の数字を入れてまずいことは何にもありませんので、機会がありますればそういう方向で検討さしていただきたいと思います。
  365. 沢田実

    ○沢田実君 いろいろお聞きしたいことはございますけれども、きょうはこれで、次の機会に質問いたします。
  366. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 暫時休憩いたします。    午後五時四十八分休憩      —————・—————    午後六時十六分開会
  367. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。山中総理府総務長官。
  368. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) ただいま議題となりました国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  本年三月十六日、人事院から、国家公務員法第二十三条の規定に基づき、最近における犯罪の凶悪化等の状況にかんがみ、国民の生命、身体及び財産の保護その他公共の安全と秩序の維持の任に当たる警察官等に係る災害補償について、特別の措置を講ずる必要がある旨の意見の申し出がありました。政府としましては、その内容を検討した結果、この意見の申し出のとおり国家公務員災害補償法の一部を改正する必要を認め、この法律案を提出した次第であります。  次に、その内容について概要を御説明申し上げます。  この法律案においては、警察官、海上保安官等の職務内容の特殊な職員が、その生命または身体に対して高度の危険が予測される状況下において、犯罪の捜査、被疑者の逮捕、犯罪の制止、天災時における人命の救助等の職務に従事し、そのため公務上の災害を受けた場合における障害補償または遺族補償の金額について、現行の補償の全額にその百分の五十の範囲内の率を乗じて得た全額を加算することとしております。  なお、施行期日については、公布の日から施行することとしておりますが、改正後の規定は、昭和四十七年一月一日から適用することとしております。  以上、この法律案の提案の理由及びその概要を御説明申し上げました。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  369. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 本案の審査は後日に譲りたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時十八分散会      —————・—————