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1972-05-18 第68回国会 参議院 内閣委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十八日(木曜日)    午前十時三十八分開会     —————————————   委員の異動  五月十六日     辞任         補欠選任      沢田  実君     藤原 房雄君      峯山 昭範君     浅井  亨君  五月十七日     辞任         補欠選任      藤原 房雄君     沢田  実君      中村 利次君     向井 長年君  五月十八日     辞任         補欠選任      浅井  亨君     峯山 昭範君      向井 長年君     中村 利次君     —————————————  出席者は左のとおり。     委員長         柳田桃太郎君     理 事                 町村 金五君                 安田 隆明君                 鈴木  力君                 水口 宏三君     委 員                 黒住 忠行君                 源田  実君                 世耕 政隆君                 田口長治郎君                 長屋  茂君                 山本茂一郎君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 山崎  昇君                 沢田  実君                 峯山 昭範君                 向井 長年君                 岩間 正男君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        国 務 大 臣  江崎 真澄君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        防衛庁参事官   高瀬 忠雄君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛庁参事官   岡太  直君        防衛庁長官官房        長        宍戸 基男君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁人事教育        局長       江藤 淳雄君        防衛庁衛生局長  鈴木 一男君        防衛庁経理局長  田代 一正君        防衛庁装備局長  黒部  穰君        防衛施設庁長官  島田  豊君        防衛施設庁総務        部長       長坂  強君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省条約局長  高島 益郎君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君     ————————————— 本日の会議に付した案件 ○国の防衛に関する調査  (国の防衛問題に関する件)     —————————————
  2. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  国の防衛問題に関する件を議題といたします。  御質疑のある方は順次発言を願います。
  3. 水口宏三

    水口宏三君 実は先日の当委員会で、憲法第九条と国連憲章五十一条の集団的自衛権並びに海外派兵関係につきまして、江崎防衛庁長官外務省条約局長、それから法制局の第一部長がお見えになって御質問したんですが、どうもその関連が明らかでございませんので、きょうは特に佐藤総理のお考え方を伺いたいと思うのでありますけれども、まず初めに、先日、江崎防衛庁長官から、海外派兵を行なえないのは憲法禁止されているからであるということのお答えがあったわけです。もちろん海外派兵の問題、これまで国会論議の中にも一応ございますし、私自身伺ったのも、単に儀礼的な訪問、あるいは国連の要請による医療班の派遣とか、そういうものではなしに、もちろん相手国軍事行動をとる目的海外派兵をするというようなつもりで伺いましたし、おそらく江崎長官もそういうふうにお受け取りになって、憲法上できない、禁止されているというお答えだったろうと思うのでございますけれども、その点に関しまして、まず総理の御見解を伺いたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、わが国憲法、これは自衛権そのものは否定しておらない。しかし海外派兵は、自衛権という範囲からいってそこまで、禁止ということばは使っておらないにしても、その趣旨は、そこまではいかないものだ、これが憲法条章規定されているのか、自衛権本来の使命であるのか、そこは法律的にいろんな議論があろうと思います。それは法制局長官から答えていただきます。  ただいま申し上げましたように、われわれの持っているのはどこまでも自衛権、さように理解しております。
  5. 水口宏三

    水口宏三君 その自衛権の問題でございますけれども、もちろん憲法には自衛権があるとも禁止されておるとも書いてございませんが、本来自衛権というものが制限的なものである以上、憲法禁止条項がなければこれがあるということについては、私どもも了解いたします。  それはさておき、総理お答えの中で、そういう憲法のたてまえからいって、特に九条を考えるなら、軍事行動目的とする海外派兵憲法上できない、そう了解してよろしゅうごさいますか。
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はさように考えます。
  7. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、それとは全然別に、この前実は、国連憲章五十一条の「個別的又は集団的自衛固有権利」につきまして伺ったわけでございますが、この五十一条の規定は、私から申し上げるまでもなく、これは国連憲章そのものによれば、日本国連に加盟しておるわけでございますが、この五十一条の規定につきましては、御承知のようにいわゆるサンフランシスコ講和条約の中で、その第五条(c)項に「連合国としては、日本国主権国として国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛固有権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する。」と、これはいわば連合国国連憲章五十一条の個別的または集団的な固有自衛権利を認めたということだと思うんです。それからもう一つ問題になりますのは、例の日ソの共同宣言の中の、これは第三項の(b)のあとに「日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、それぞれ他方の国が国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛固有権利を有することを確認する。」、相互に持っていることを確認するということをいっているわけですね。ところが、日米安保条約になりますと、御承知のように、その前文の中で「両国」——ですからこれは日本国アメリカです。——「両国国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛固有権利を有していることを確認し、」、以下、条約を結ぶというふうになっているのですね。この「両国」というのはもちろん日本国アメリカ国であり、両国が有していることを両国が確認したということを、これを明確にしている。とすると、ニュアンスこそ違いますけれども日米安保条約前文におきましては、日本自身国連憲章五十一条の個別的または集団的な固有自衛権利を有していることを確認したということがいえると思うのでございますけれども、その点につきまして、先日のどうも御答弁、明らかでなかったので、総理のお考えを伺いたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ちょっとテレビがジャージャーいうので聞こえませんが、もっと明確にお願いします。
  9. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) テレビの諸君に申し上げます。  もうこれで終わりにしていただきたい。非常に重要な問題で、会議運営ができませんから、退場願います。
  10. 水口宏三

    水口宏三君 それじゃもうちょっと声を大きくいたしましょう。  国連憲章五十一条にございます集団的または個別的な自衛固有権利に対する規定について、日本が他の国と結んだ条約の中にあらわれておりますのは、一つサンフランシスコ講和条約の中の第五条(C)項ですね。そこには、むしろ連合国側が、日本がこの固有権利を持っていることを承認している。それからソビエトと日本との間の共同宣言の中では、相互にこれを有することを確認し合い、日米安保条約では、前文で、両国がこの固有権利を有していることを確認したわけです。そうしますと、それぞれニュアンスは違いますが、特に日米安保条約の中では、日本がみずからの意思によって、日本国国連憲章五十一条にいう集団的自衛権を持っていることを確認したと理解してよろしゅうございますか。
  11. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのような確認でよろしいと私も理解しております。
  12. 水口宏三

    水口宏三君 そこで、今度は集団的自衛権なるものの考え方でございますけれども、これは私から申し上げるまでもなく、サンフランシスコ会議でこの国連憲章がつくられますときに、むしろアメリカ側から出された案の中に出てきているのであって、いわば戦前はこういう概念はなかった。自衛権一般で済まされていたものが、個別的または集団的固有自衛権、むしろ自衛権そのものに二つあるのではなしに、自衛権そのもの概念を拡大したというように解釈するのが普通だと思うんです。そうなりますと、この前の条約局長のこの集団的自衛権に対する考え方、これはたまたま一致しておるのでございますけれども、一国が武力攻撃を受けた場合、これと密接な関係にある他国が、その武力攻撃を、自国の安全を脅かすものとして、集団的自衛権の名において被攻撃国を援助し共同して防衛に当たること、その国自体に対して現実の武力攻撃があることを必要としない、これが大体国連憲章五十一条にいう集団的自衛権考え方であるという点については、実はたまたま条約局長の御意見と一致したのでございますけれども集団的自衛権をそういうように考えてよろしいかどうかということをお尋ねいたします。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおり、私も条約局長答弁どおり考えております。
  14. 水口宏三

    水口宏三君 そういたしますと、佐藤総理が一九六九年の十一月にアメリカニクソン大統領と会見なさって共同宣言をお出しになった、その四項に例の問題になります韓国条項台湾条項があるわけでございますけれども台湾条項はその後の国会論議の中で多分に総理考え方が変わったというように新聞を通じて知っておりますけれども、それはさておき、特に韓国の問題につきましては、「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要であると述べた。」総理がお述べになっているわけです。韓国の安全が日本の安全にとって非常に緊要であるということは、言いかえれば、韓国武力攻撃を受け、韓国がその安全を脅かされた場合、これは即日本の安全が脅かされたものと考えるというふうにわれわれ常識的には受け取るわけです。そうなりますと、当然これは集団的自衛権発動ということがあり得るのではないかというふうに理解いたしますが、その点はいかがですか。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうもちょっと論理的飛躍がありはしないか、私かように考えます。韓国侵略された、あるいはとにかく韓国事変が起きた、それが直ちに日本侵略あるいは日本事変と、かように考える、これは行き過ぎだと私は思っております。しかし、私は、隣の国でそういう事態が起きたとき、いわゆる近火論をしばしば申し上げますが、類焼しないようにみずから防火につとめると、こういうことはあり得る、かような意味注意を喚起している、かように御理解をいただきたい。
  16. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ちょっと申し上げます。  新聞報道機関皆さま方注意を喚起いたしまして一応退場していただきましたが、秘密会議ではありませんので、報道して、テレビあるいはカメラでとっても、それを許可をいたしております。したがいまして、御協力を願います。お静かにして会議運営に御協力願って、報道していただくことはもちろん許しておりますので、前の退場の件は取り消します。
  17. 水口宏三

    水口宏三君 いまの総理の御答弁は、これはまあ、なるべくそういう事態の起きないことを自分としては希望し、そのために努力をするという限りにおいては理解できるんでございますけれども、私の言っておりますのは、総理が常日ごろおっしゃっておるように、国の安全保障については何といっても国民合意が必要である、合意にささえられたものでなければ国の安全保障の力は出てこないということを言っておいでになる。とすると、いま私の申し上げました文章についてやはり国民全体の納得するような御説明をいただかないとこれは合意が得られないのではないか。先ほど申し上げましたように、日本集団的自衛権を持っている、集団的自衛権そのもの発動は、これはもちろん、たとえば日本韓国関係で言いますならば、日本集団的自衛権発動するかどうかはまさに日本国意思にかかわることだと思うんです。その場合に、ここにございます、先ほど申し上げましたように、一国が武力攻撃を受けた場合、それと密接な関係にある他国がその武力攻撃自国の安全を脅かすものと考えた場合、これはもう明らかに日米共同声明で言われておりますように、韓国の安全と日本の安全が密接であるということを前提にするならば、韓国武力攻撃を受け、そうして韓国自身が安全を脅かされている状況、これは即日本の安全に大きな脅威を与えられていると、こう考えるのが私は常識論だと思うんです。そうなりますと、そのときの事態によって、集団的自衛権発動するかどうかは別として、集団的自衛権発動し得る状態にあるということは言えると思うのでございますが、その点はいかがでございましょう。
  18. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうでしょうか、いまの問題は、いわゆる日本が直接脅威を感じたと、あるいは侵略心配、おそれありと考えた場合、そこらに問題があるんじゃないでしょうか。私はとにかくさっき申しましたように、近火論から申すと、やはり類焼するおそれありと、そのほうをとるのです。侵略を受けるような心配がある、かような意味を持ちますので、その範囲において私どもが必要な処置はとる。本来から申しまして、自衛権そのものからいえば、急迫不正の侵略がなければ、また最小限度処置として許されるものでございます。幾ら集団自衛権があると申しましても、それを拡大するつもりはございません。でありますから、韓国事変が起きたと、こういうこと自身は直接日本に対する侵略だと、かように考える必要はないと存じます。私はそのおそれがあると、かような段階だと、かように私考えますので、その点では十分区別ができる。そうしてまた事前協議対象になれば、そういう際に私どもははっきり日本がそういう事態に巻き込まれないように処置をとる、これまた当然でございます。私はそこらであまり問題が、心配しないでも済むんじゃないか、かように思っております。
  19. 水口宏三

    水口宏三君 どうも佐藤総理と私、多少食い違いがあると思うんでございますけれども集団的自衛権につきましては、これは必ずしも、たとえば韓国武力攻撃を受けたと、それはそのまま日本に対する直接的な武力攻撃になるということを前提にして発動するのではなくて、先ほども申し上げましたように、韓国に対する武力攻撃自国の安全を脅かすものというふうに考えた場合に発動されるわけでございますね。したがって、何も直接日本武力攻撃を受けるかどうかということは、これは集団的自衛権発動要件ではないということについては、先ほどまあ佐藤総理合意に達したと思うんでございます。その次にでございますね、いまお話しの日本国憲法の問題にいたしましても、日本国憲法自体自衛権については何ら規定をいたしておりません。言いかえますならば、規定をしていないから、憲法九条があるにもかかわらず、と申しますのは、われわれは憲法九条というのは自衛権そのものは否定していないが、自衛権行使の形態として武力を用いることを禁止しているという解釈に立っているわけです。このことは何回か論議されておりますので、ここで繰り返しても並行論になるので差し控えます。しかし少なくともこの憲法の中では、個別的自衛権集団的自衛権とを分けて何ら規定いたしておりません。したがって、九条というものは自衛権規定していないということでございますね。したがって、自衛権に基づいて武力行動はとれるという解釈をおとりになっている以上、これはそれが個別的であれ、集団的であれ、自衛権発動としてそういう武力行動をとり得るということがこれまでの私はまあ自民党の解釈ではないかと思いますが、そうなりますと総理のおっしゃった韓国における武力攻撃、そういうものが直接日本に対する武力攻撃になるかならないかという判定よりは、日米共同声明総理のおっしゃった、まさに韓国の安全と日本の安全が非常に緊密な関係にある、韓国が直接的な武力攻撃によって安全を脅かされているということは、これはすなわち日本の安全が非常に危殆に瀕していることである、これはまさに集団的自衛権発動のむしろ必要かつ十分な条件ではないかというふうに私は理解するのであります。
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどお話があり、いわゆる海外派兵と、こういう問題がございました。ただいま自衛権と、こう申します限りにおいて、私どもはそれが個別の自衛権であろうが集団自衛権であろうが、その範囲にとどまることはもう誤解はないと思っております。ただ米軍自身は、日本に駐留してもやっぱりアジアの平和、極東の安全と、こういうことを一つ目的といたしておりますから、そういう意味で、日本国内に関する限りは集団自衛権範囲行動いたしますけれども、その他の地域については、これは極東の平和と安全、こういう立場に立つだろうと、かように考えますので、それを一緒にして、ただいま米軍行動は全部日本は支持する、これは共同自衛権範囲であると、かように言われるとやや筋道が少し違ってくるんじゃないか、かように私思いますので、日本はどこまでも日本自衛、その自衛権発動はありますけれども日米安保条約範囲内におきましても、その範囲事柄については、これは米軍協力を得ますけれども、いわゆる米軍自身の持つ範囲日本自衛隊の果たす任務はおのずからこれは区別して考えるべきだ、かように思いますので、この点がやや国民の一部からも理解されておらない、かように思いますので、ただいまのようなお尋ねはたいへん国民理解を得る上からも必要なことだと思っております。  それからもう一つ私つけ加えて申し上げたいんですが、この共同声明、これはいわゆる条約ではございません。しかしそのときの情勢について私どもの感覚、感じを率直に訴えたものでございますから、これがいかにも条約的効果があるように言われますとこれはよほど誤解を受ける、かように思いますので、その点は誤解はないだろう、かように思います。よろしくお願いします。
  21. 水口宏三

    水口宏三君 私もいま米軍の問題は全然触れておりません。あえて問題があるとすれば、あとで触れたいと思いますが、時間がないので触れられないかもわかりませんけれども、私が申し上げておるのは、佐藤総理の、まさにこれは共同声明でございますから、おっしゃるとおり条約的効果はございませんね。また自衛権発動するかどうかということも、これは条約はなしにそのときの情勢判断によってまさに佐藤総理がおきめになることでございますね。だからこそ問題だと思うのです。むしろ条約であってある拘束を受けるものであるならば、その拘束拘束力に該当するかどうかという判断が必要でございますけれども、むしろ自衛権発動するかどうかということはまさに総理情勢判断に基づいて行なわれる、その情勢判断日米共同声明の中で明確に出されているからわれわれは心配をしておるのであって、これは決して米軍との関係ではないと思う。もちろんこういう情勢判断に立って、日米共同声明の運用についても総理のお考えはございましょう。と同時に、こういう情勢判断に立って集団的自衛権を保有し、なおかつ相当強力な自衛隊を持つ日本が、この集団的自衛権発動をしないという何らの保障もなければ、むしろ集団的安全保障権発動をする条件が、先ほど申し上げたように、十分整っている。その場合に歯どめをするのは何であるかということを逆に伺いたいくらいなんです。私は決して米軍のことを申し上げているのでもなければ、また共同声明条約であるとも考えておりません。情勢判断であればこそ、非常に重要だと思う。
  22. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの点で非常にはっきりいたしたと思います。私と水口君の間にそう差異があるようには思いません。そこで私が申し上げたいのは、日本自衛隊、その行動する範囲、これはいわゆる自衛権範囲にとどまる。この自衛権はたいへん窮屈に解釈されております。いわゆる急迫不正にして、またわが国の安全を確保するのに必要最小限度のもの、こういうような事柄でいままで説明されております。したがって、ただいま申し上げるようなことがまず第一の大きな歯どめではないかと思います。具体的には、海外派兵をしないという、これまた憲法条章から見て、その精神から申してこれは当然だ、かように思いますので、これまた可能な、いわゆるわれわれが考えられる歯どめだ、かように思っております。また、国内における集団自衛相手方アメリカ、これ自身軍事行動を起こす場合に、事前協議対象として日本に相談する。これは米軍のことでございますが、やはり事前協議が歯どめになる。かように考えてくると、私は十分の歯どめができておる、さように思っておりますし、また、ただいまの状態は、一部でいわれるような軍国主義では絶対にないと、実は自信を持って答えておるような次第でございます。
  23. 水口宏三

    水口宏三君 いま別に韓国軍事行動が起こっているわけでもございませんので、これをどう扱うかという具体的な政策論、あるいは政治論を申し上げたのではなしに、先ほど申し上げましたように、国の安全保障について国民合意というものをつくるには、事、憲法あるいは国連憲章、こういうものについてのやはり統一した解釈が必要ではないか。そういう関係で伺っているのであって、いまの総理の御答弁によりますと、自衛隊法云々というお話がございますけれども自衛隊法の中に一体海外派兵禁止している条項はございますか。これはございません。また逆に、憲法の中に自衛権発動についての規定はございますか。これはございません。これはただ自然権であるから持っているのだということを前提にして、自衛隊法をおつくりになっている。ところが普通これは不戦条約のときから、大体侵略戦争禁止する。国際紛争解決手段としての戦争はお互いにやらないということは成り立っているわけですね。憲法九条でむしろこういう規定をしている。にもかかわらず、もし自衛権によって軍事行動がとり得るとするならば、当然やはりそれに関する、普通の憲法にあるような編制あるいは指揮権、あるいは、これはいままでの国会答弁を見ますと、日本戦争を放棄しているのだから、交戦権がないのだから宣戦布告はしないという法制局長官お答えもございますから、宣戦布告はしないにしても、戦争状態に入り、相手国宣戦布告をした場合、当然講和ということが問題になる。そうしますと、軍の編制指揮講和、これらの権限についての何らの規定憲法にはないわけですね。にもかかわらず、自衛隊法をおつくりになって、自衛隊の実際の戦争行動というものを具体的におつくりになる。同じように自衛隊法の中にも、これは海外派兵禁止している条項はございません。特に自衛隊法の七十六条等を見ますと、総理も御承知のように、(防衛出動)のところに、「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)に際して」として、むしろカッコの中では、おそれのある場合、こういう場合の防衛出動すら規定しているわけですね。また、前の(自衛隊の任務)のところでも、決して海外派兵をしないという条項はないわけです。そうなりますと、憲法そのものが別に自衛権に対する何ら規定がなくても、自然権である自衛権に基づいて自衛隊法をおつくりになっている。自衛隊法の中には海外出動あるいは海外派兵集団的自衛権に関する何らの規定がないわけですから、当然自衛権としての集団的自衛権発動として、現在の自衛隊法においても、日本自衛隊韓国に出ていく可能性というものは十分あり得るわけですね。だからこそわれわれは心配もし、その点に対する明確な法的規制なり何なりをつくるべきであるということを申し上げておるわけです。
  24. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いまの水口君がいろいろ疑問点があると、明確を欠くと、こう言われることは、もしそのとおりであるならば、これは憲法の不備を指摘された、かように解釈すべきじゃないかと思います。私は、しかしいまの憲法自身はいろいろの改正の議論がございますけれども、そういうことはまた別といたしまして、ただいまのような、あるいは自衛隊編制権だとか、あるいは指揮権だとか等々についてあまりとやかくの議論をしなくても済むようになっている、かように理解しております。ただいま私は派兵が簡単にできるとは思っておりません。したがってこの自衛隊法の第三条、これはどちらかというと、はっきり自衛隊の任務を規定しております。「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保っため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」こういう書き方がしてございまして、私は自衛隊法の面からみまして、積極的に、海外派兵はできない、こういう書き方はしておりませんけれども、使命から申しまして当然外国へ出ていくものでない、かように確信をしているのでございまして、私はおそらく水口君もその点は同じではないだろうかと思っております。私がいま非常に心配している、水口君が御心配のように、もしもわが国の一部におけるような拡張解釈をするものがあると、ただいま言われるような危険があるのだ、こういうことが御指摘になりたいのだろうと思いますから、私はあえてこの議論はいたしませんけれども、ただいまの状態で十分ではないだろうか、かように私は思っております。
  25. 水口宏三

    水口宏三君 いま、はしなくも佐藤総理から、現在の憲法が不備な点を私が指摘したというお話でございますけれども、それは最初私が申し上げておりますように、私どもは現在の憲法第九条は自衛権そのものを否定しているものではなしに、自衛権行使の形態として武力を用いることを禁止している、そういう解釈に立つならば、これは私は、もうあらゆることがすっきりするのだ、これはもう集団的自衛権の問題であろうと個別的自衛権の問題であろうと、これはすべてすっきりするわけでございますね。またわが国国連に加盟したことも、それによって補強こそされ、何ら五十一条によって問題は起きないわけです。ただ問題は、これで自民党さんが、この九条の規定があるにもかかわらず自然権としての自衛権というものを前提にして無理に自衛隊法をおつくりになり、また無理にさまざまな軍備をお持ちになるから、憲法との矛盾が出てくるのでございます。そのことを実は御指摘したかったわけでございます。憲法論そのものをあえて私は避けると申し上げたのは、これはもう平行線になりますから、いずれゆっくりやりたいと思うのでございますけれども、むしろ総理自身も矛盾をお感じになっているとするならば、これはむしろ憲法に矛盾があるのではなくて、憲法に対する自民党の解釈に矛盾があるわけです。同じように、憲法をそのように解釈なさる自民党さんが、それじゃいま総理も御指摘になった自衛隊法三条の任務の問題についても、「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序」云々とありますけれども、これはまさに先ほど集団的自衛権というものを前提にする限りにおいて、これはむしろ海外派兵を何らはばむ規定にはなりません。つまりその集団安全保障に対するもし考え方が、最初私どもが申し上げたことを総理も一応御同意なさっておるわけですから、もし集団的な自衛権というものに対する考え方を、私が申し上げたようなことを御同意なさるならば、まさにこの三条の場合には、わが国の安全を守るために当然自衛隊はこれは出動し得るわけですね。だからそこら辺に、むしろ私が申し上げたいのは憲法九条の解釈を自民党さん流になさっていると、その上に立ってつくられた現在の自衛隊法、並びに自衛隊法に基づいてつくられた日本の現在のいわゆる軍事的な防衛体制というものに、さまざまな矛盾があるではないか。しかもこれは単なる国内論争だけではなしに、外国がこれを見ている。外国から見ました場合にはですよ、いま私から申し上げたような自衛権の問題などは、これは特に国際的な概念だと思います。そうなると、戦前の自衛権はなしに、国連憲章五十一条に基づく個別的または集団的な固有自衛権というものを日本がはっきり確認をする、しかもその自然権に基づいて日本武力行動をとれるんだという立場をとっている。しかも一九六九年の日米共同声明で、佐藤総理はこういう情勢認識をなさった。いまだにそういう情勢認識をなさっておる。しかも自衛隊はますます増強する。こういうものを外国からながめた場合に、佐藤総理が幾らそういうふうに弁解をなさろうとも、客観的なつながりとして、日本韓国へ出て行くかもわからない、台湾へ出て行くかもわからないというおそれを生ずるのは当然だと思いますね。そこのところを私は指摘をしているのであって、憲法九条そのものの解釈に初めから無理があるから出てくる無理なんで、これは当然総理の責任において明確にしていただかないと、われわれは納得できないわけです。
  26. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも私、水口君の言われること、どの辺についてお答えしていいかちょっとわかりかねておりますが、もう一つ見方を変えて申しますと、これはもう派兵はいたしませんから、そういう意味憲法上のいわゆる自衛権は否定しておられないでしょう。私どもと同じような立場だろうと思う。そうすると、いわゆる日本の、これからが問題なんですよ、自衛力の限界というものは一体どこなのか、これが一つの問題になる。また自衛活動というのはどこまで可能なのか、そういうことが問題になる。それが集団自衛権の場合と憲法規定による自衛権範囲、これがやはり広狭があるんじゃないか。しかしわれわれは日本人ですから、条約上の権利、義務もありますけれども、しかしやっぱり憲法、その範囲にとどまることは当然であります。したがって私は、集団自衛権はこれが広くってもですよ、それに歯どめになるような条項がいわゆる事前協議の問題であるから、そこら心配はないんだと、こういうことを実は申し上げている。またただいまの自衛権の、自衛力の限界ということ、これはたいへんむずかしい問題であります。一体いま陸上、海上さらにまた航空自衛隊等のこの限度が一体どうなのか。しかしこれは政府が単独には実はきめておりません。いわゆる国民意思によってきまるという。だから、国民の総意を代表しておられる国会においてそういうものがきまる。こういうことで、私はわが国自衛権というものは、これはやはり国民意思に従ってきめられている。かように実は理解しておりますので、あまりそこらで議論する余地がないように実は思っております。ただ、この国会そのものが、いわゆる多数決原理でやりますから、どうもいつも多数の言い分が通る、そういうようなことで、少数の方々が不平不満があろうかと思いますけれども、私はしかしやはり少数の方でも、われわれの考え方がもし間違っておれば、われわれは少数の意見に従うことにやぶさかでございません。そういうことはやはり国民がこのやりとりを十分聞いて、そうして国民理解したところに初めて真の自衛力の限界がきまるんじゃないかと、かように考えますので、私はあまり心配はいたしておらぬ。まあひとつどうぞよろしくその辺で御了承いただきます。
  27. 水口宏三

    水口宏三君 どうも佐藤総理お話、少し主観的で、私には納得できない点があるんでございますけれども、これは憲法調査会でもこの問題はずいぶん論議されたことは御承知のとおりでございますね。これにはいろいろの角度からの議論がございます。たとえば自衛権そのものについての問題もございますし、九条の解釈の問題もございますし、むしろ自衛力を持てという方で、現在の憲法の第九条では自衛力を持てないんだと言う方もございます。しかし少なくとも自衛権というこの自然権、これは個人の正当防衛権的なもの、これはわれわれも否定をいたしておりません。しかし権利というものは、それを行使するということによって初めて具体化されるわけですね。しかも行使の形態があると思うのです。だから正当防衛の場合でも、これは過剰正当防衛の場合にはこれは当然問題になるわけですね。したがって現在の憲法第九条というものが私は自衛権を否定していないというのは、自然権としての自衛権を否定をしていない。また自衛権の行使をも否定をしていない。行使の形態として武力を用いることを禁止しているのだというふうに、われわれ社会党は常々主張しておるわけです。このことは総理も御承知のとおりだと思う。それをまず踏まえていただかないと、これはもう全然話がまた平行線になってしまうので、そういう立場に立って、あえてきょうはその論争は避けます。で、むしろ自民党さんのおっしゃるようにですよ、現在の第九条は決して自衛権をもちろん否定していないし、自衛権の行使の形態として武力を用いることも禁止していないのだと、単に国際紛争の解決の手段として用いることを禁止しているのであって、自衛のためならばいいんだという立場にお立ちになっている。その自衛権なる今度は概念の問題として、国連憲章五十一条によって、これまでの一般的な通念としての自衛権、これはむしろ佐藤総理は、われわれは日本国民なんだから、憲法に基づいて自衛権を唱えるとおっしゃいますけれども自衛権というのはこれは私は国際的概念だと思うのです。もしですよ、自衛権が勝手に各国の個別的な考え方によってつくられるものとするなら、これはいまさら例を引くまでもなく、戦前の中国大陸に対する侵略ですら、当時、日本政府が自衛権行使と称したのは御承知のとおりでございますね。これはむしろ国際的概念である。しかもそれをある程度明確にしたのが国連憲章五十一条である。しかも五十一条の中でも、集団的自衛権については必ずしもこれはかたまっていなかったけれども先ほど私がお読みいたしましたような考え方、これはたまたま政府の当時者と私と意見が一致したわけでございますね。  そこで私が申し上げたいのは、自民党さんが、現在の憲法自衛権そのものはもちろん否定していない。自衛権の行使の形態としての武力の行使を承認しているとすれば、これは明らかに集団的自衛権発動によって、韓国への出動、あるいは情勢のいかんによっては、たとえばこれは先日は十二日の本会議で、佐藤総理アメリカのベトナムに対する封鎖も、五十一条の自衛権発動だとおっしゃる。これはかつてダレスのドミノ理論によって、あの共産化はアメリカの安全を脅かすから、五十一条の集団的自衛権だと説明している。それなら極論すれば、マラッカ海狭は日本の生命線だというようなことを財界の人が言っておる。あそこでもってシンガポールとマレーシアとインドネシアのこの三国が、それぞれ利害を異にして相争って、いろいろな論議が出ていることも御存じのとおりだと思う。じゃあ、あそこでもってもし武力抗争が起こったら、これは日本の安全に非常な危険を及ぼすから、これは先ほどの先日の十二日の佐藤総理答弁をもってするなら、これは五十一条の集団自衛権発動によって、自衛隊がマラッカ海狭へ行って、戦闘行動へ参加することも十分あり得るわけです。そういうふうに筋道を追っていきますと、現在の憲法というものを自民党さんのような解釈に立ちますと、このような矛盾が出てくるので、これらの矛盾について国民の疑念を明確にはらしていただきたい。これは少なくともきょうの佐藤総理の御答弁では、矛盾が拡大こそすれ、どうも納得できない点が多いということを最後に申し上げまして、これはもう御答弁いただく必要はございません。私の意見として申します。  こまかい点で、特に日米安保条約の問題につきまして、時間がございませんので、これはあらためてまた御質問いたしたいと思います。以上で一応私の質問を終わりたいと思います。
  28. 峯山昭範

    峯山昭範君 私は中国問題について総理並びに外務大臣にお伺いしたいと思います。  公明党の第二次訪中団が向こうへ参りまして、周首相との会談の内容等はもうすでに総理並びに外務大臣は御存じのことと思いますが、それによりますと、まず第一点としまして、日中国交回復の実現は、中国を敵視せず、日中国交回復を妨げない、そして日中国交回復に関する三原則に基づき日中友好を主張し、その実行に努力する新政府の来訪なら歓迎します、こういうふうに言明されたと、こういうぐあいに報じられております。そこで、私はこの問題は非常に重要な問題であろうと思います。すなわちこれは、日中国交回復について少なくとも日本政府の態度が明確になってくれば、そこから日中国交回復のための政府間交渉なりあるいはそういうふうなものが可能になってくるのじゃないか、こういうぐあいに考えるわけでありますが、この問題について総理並びに外務大臣のお考えを初めにお伺いしたいと思います。
  29. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私も今回の公明党の訪中団のこの結果を新聞で報ずるところを見ました。見ましたが、トーンは従来とたいへん違っておる。つまり新聞によりますれば、「中国、「佐藤後」へ前向き」と、こういうようなことで、とにかく前向きである、こういうような印象になっておるわけであります。それから、三原則で努力すれば首相の訪中は歓迎する、こういうことにもなっておる、そういうようなことを考えますと、私は従来の中国側がわが国に示しておった態度に比べまして、微妙な変化があるのではあるまいか、そういうふうに考える。そういう限りにおきましては、これをたいへん私は喜んでおります。ただこまかい問題になりまするが、中国側には中国側の主張があります。わが国にはわが国の立場がある。ですから中国側が言うことを全部わが国において承認しなければこれは日中政府間の接触は始まらないのだというような見解でありますると、これはわが国としてなかなかこれに対処することがむずかしい。しかし私はあらゆる機会、あらゆる道筋を通じまして、わが国の立場が中国側によって理解されるようにというための努力をしております。すなわちわが国といたしましては、中華人民共和国は中国を代表する政府である、この政府との間に日中国交正常化を目ざして政府間接触を始めたい。日中国交正常化、この国交正常化というところに大きな意味があるのであります。国交正常化といえば、これは最終的には国家間の承認を含む、あるいは外交関係の設定まで含むわけであります。そういうような姿勢を示しておるのでありまするから、日中間に横たわるところの諸問題、ことに台湾に関する諸問題、これなんかに関する中国側の主張、私はその主張するところは理解はできまするけれどもわが国の立場もある。そのわが国の立場につきましても、私は中国側においても行く行くは理解するところがあるであろう、こういうふうに思います。とにかく従来の硬直した姿勢から若干弾力的になってきておるという点につきましては、私はこれを歓迎をいたしております。
  30. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今回の公明党の訪中団、これはたいへん両国の国交の改善にいろいろ努力されておる、私はそれを評価するにやぶさかでございません。私はこの中国のやっておる事柄についてとやかく批判することは、正確にそのままずばりと伝わってくれればいいですけれども、やっぱり新聞その他を通じてやはり潤色されるというか、色がつきますと必ずしもそうでもないのだと、かように思います。いま本来から申せば、隣国同士仲よくするのはこれは当然のことであります。過去においてのいろんなできごとなどを考えて、忌まわしい過去を払拭しよう、新しいスタートに出よう、こういう際でありますから、これは十分話し合うことが必要だと思う。そういうたてまえに立ちますと、どうもいついつどう言ったとか、こう言ったとか、こういう批判をすることはこれはどうもよけいなことじゃないだろうか、かように実は思うのです。これはいろいろの言い方がありまして、むしろ大事なことだから十分に批判し尽くして、そうして国交を進めると、こういう方向であってほしいと、こういう議論もあると思う。しかし、その誤りがときに誤解を生ずる。そうするとどうしても強い姿勢にならざるを得ない、かように思っております。私は、日本政府はかねてからこれは隣国同士だ、国交の正常化をはかるべきだ、米国の場合とは違うと、こういう話をしておりました。米国は連合国であって日本は敵国であった、戦争をした相手だと、そういう意味で、十分話し合って国交の正常化をはかるべき段階に来ておる。それについては、ただいま外務大臣が申しますように、日本にも日本の主張があり、もちろん中国には中国の強い主張があるに違いない。しかし、それらの事柄は十分話し合った上でこれは解決する、そういう努力をすべき事柄だと、これは両国が隣同士の国でありますだけにそれを強く感ずる次第であります。私は、それより以上にいろいろ批判ずることはどうも事態を必ずしも前進さすゆえんでないと、かように思っております。まあ、ただいま新聞に報道されたことは、非常に新しい面がいま展開されようとしており、われわれもこれに対してこたえる用意のあること、これだけをはっきりさしておけば、それより以上にはないのではないか。そして、いま言われておりますように、両国の正常化についての基本的な態度については、それぞれ三原則だとか、五原則だとかいわれておりますが、それなどはそれぞれ了承しておると、こういうことでありますから、それらの点を踏まえて前向きで話を進めたいと、かように思います。
  31. 峯山昭範

    峯山昭範君 いま総理並びに外務大臣から答弁がございましたが、確かに中国は国連に復帰いたしましてから、今回の会談の内容等から見ましても、特にアジアの緊張緩和のためには、少なくとも日本と中国との国交回復が緊急な課題であると、こういうぐあいにとっているようであります。私はこの問題は非常に重要な問題であろうと思います。この点について総理はどういうぐあいにお考えか、まずこれが第一点。  それから外務大臣、これは今回の会談で出てきました佐藤後の新政府なんということになりますと、非常にこれはやはり外務大臣、重要な問題でありますので、特にこの問題について外務大臣、三原則に対する考え方もちょっと先ほど述べられましたけれども、特に昨日の新聞報道によりますと、外務省のその見解というようなのが出ております。それによりますと、三原則について努力するという受け取り方ですね、外務省の。これが多少述べられておりますが、この点については外務大臣としてはどういうぐあいにお考えですか。
  32. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいまのわが国の対中国姿勢は、中華人民共和国を中国を代表する政府であると見ております。そういう認識に立ってこの政府との間に日中国交正常化のための政府間接触を行なう、こういうことです。それ以上のことを申し上げる必要もないと思うのですが、これはしばしば国会で申し上げておるとおりでございます。外務当局が何かコメントしたことが新聞に出ておるというお話でございまするが、それはそういう趣旨のことを申し上げておると、こういうふうに御理解願います。
  33. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 分けて私にもお尋ねでございますが、ただいま外務大臣が答えたとおりでございます。
  34. 峯山昭範

    峯山昭範君 それではもう一点お伺いしておきたいと思いますが、今回の言明の中の一つに、周首相が、国交回復後もし訪日するよう招きがあれば、それを断わることはできないと、そういうふうな話をしております。これは少なくとも中国の姿勢の中では今回初めてあらわれてきたことであろうと私は思うんですが、こういうことに対しては、総理なり外務大臣どういうぐあいにお考えか、お尋ねいたします。
  35. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 今回の公明党の訪中使節団の周総理との会談の結果につきましては、私は二つのことが新しい事実であると、こういうふうに思うんです。一つは、明快にこういう条件でありますれば日本の首相の北京訪問を歓迎すると、こういうこと。これは、いままでは雑談的にはいろいろ出ておったようでありまするが、今回は、新聞で見るところにおきましては、かなり明確にそういうふうに言っておるようである。それから全く新しいこと、それは、もし招きがあれば周首相みずからが訪日の用意があると、こういうようなこと。これはいずれもわが国といたしましては歓迎すべきことであると、こういうふうに考えております。
  36. 沢田実

    沢田実君 関連。  ただいまの問題の一番肝心なことは、第三項の私は日台条約の問題だと思います。それで、いままで総理なり外務大臣が答弁していらしたのは、政府間交渉のこの交渉の過程で何とかしたい、こういう考え方が従来の考えでございました。ところが、今度のいまおっしゃった朝日新聞を見ましても、政府間交渉の最初の時点で、要するに交渉が妥結の暁には廃棄するんだと、こういうことがはっきりしていれば、その交渉に入る時点で廃棄するということをしなくともはいれそうな感覚の記事が出ております。そのことについてはどう受け取っていらっしゃるか。これは相当いままでとは違った問題であろうと思いますので、その点について態度をはっきり聞いておきたいと思います。
  37. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そういう記事があるわけでありますが、その辺きわめてデリケートな点で、これは訪中使節団が帰ってきてからよく伺ってみたいと、こういうふうに考えておるんです。私がここで言い得ることは、日華平和条約の問題につきましては、日中国交正常化の過程において結論を出したいと、こういうふうに考えておる、こういうことなんでございます。が、しかし、御指摘のように、もし、いままでは廃棄宣言がなけりゃ話はしないと、こう言っておったのが、そういうことを言わずとも、日中国交正常化が成立したならば日華平和条約は廃棄されるんだということが明らかになれば、それでいいんだということがはっきりするということになると、これは非常に大きな変化であると、こういうふうに考えておりますが、その辺はきわめてデリケートなことでありますので、まだこの段階でお答えを申し上げるのは差し控えさしていただきたいと、かように考えます。
  38. 沢田実

    沢田実君 わがほうの訪中団が帰ってきてから話を聞く、それはわかりました。その結果、いまのようなことがはっきりすれば、その線に沿って日中国交回復を進めようと、こういう御決心でいらっしやるのか、あるいは、わがほうが帰ってこようがこまいが、こういう記事も出ていることだから、政府のルートでそういう接触を当然やるのがまた政府として当然だと思うんですが、まあ総理はいまおやりになる決心はないでしょうから、(笑声)外務大臣はどんな考えか、お伺いいたします。
  39. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) その辺は私はあまり法的に詰めないがよかろうと、こういうふうに思います。  まあ、とにかく先ほども申し上げましたように、中華人民共和国を交渉の相手方とするんだと、その間で国交の正常化について話し合いをしたいんだと、こう言っている。その辺でお互いにまあ腹の中はわかるんじゃないか。それ以上に詰めるということは、私はこの日中国交打開問題について、支障はありましても益するところはない、こういうふうに考えております。
  40. 向井長年

    向井長年君 非常に短時間でございますので、要点だけ申し上げて簡単な答弁をいただきたい。簡便にいただきたいと思います。  新聞の伝えるところによりますと、米国務省高官筋では、この記者会見で、沖繩は、返還されても、極東安全保障に果たす軍事上の役割りで重要な要点である、したがって従来と変わりはないということを言っております。また、沖繩を去ったランパート前高等弁務官も、最後の記者会見で同じことを言っておるわけです。これに対して総理はどう考えられますか。
  41. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は沖繩に軍基地がある限り同じことを言うだろうと思います。
  42. 向井長年

    向井長年君 従来と変わらないという形ですが、日本の基地、日本に帰った沖繩の基地がそういう重要な要点であるということで、こういう同じ考え方ですか。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 従来に変わらないという、そういうところに重点を置くと、これは従来とよほど変わっている。しかしながら、軍基地としての果たす役割りは同じだと、こういうほうに重点を置けば同じことだと、かように思っております。
  44. 向井長年

    向井長年君 先ほど述べた米国務省の高官の見解に、いわゆる台湾条項問題がありますね。したがって、すなわち台湾条項は不可欠であるという見解を明らかにしております。総理考え方はこれに対してどう考えられますか。また、われわれは日中国交回復——いまもお話、ありましたが、この問題を通じて外交の当面する最大の課題であると思います。そういう中で、この条項を否定し、抹消すべきである、こういう感じを持つんですが、この点いかがですか。
  45. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いわゆる私とニクソン大統領とで話し合った共同コミュニケの台湾条項、これは、いわゆるそのときの情勢についての感じ方を率直に声明として出したものでございます。しかし、さような心配はただいまのところございませんから、これはもう明らかにさようなものが書いてありましても、それはその当時の情勢について判断した、いまの情勢は変わっておる、かように御理解をいただきたいと思います。  また、沖繩の基地、これは本土と別に変わりはございません。台湾に対するにらみだけが沖繩の役目のような言い方は、これは誤解だと、かように思います。私は日本に駐留する米軍と何ら変わりはない、かように思っておりますので、その点では心配は要らない。したがって、沖繩からの発進、戦闘行動に出ていくというようなことがあれば、これは事前協議対象になる、その場合に日本日本の国益に照らしてはっきりノーと言うと、こういうことがもういままで言われておりますから、そのとおり御理解をいただきたい。
  46. 向井長年

    向井長年君 先般外務大臣が本会議場で、事前協議の問題についてはこれは基準を明確化したい、すべきであろう、こういうことを言われました。当時総理は十分御意見を承っておきましょう、こういうような御答弁だったと思うんです。これは若干総理の意見——総理は明確に意見を出しておらない。外務大臣は明確に出しておられます。したがって、この事前、協議の問題については、先ほども歯どめが完全である、こう言われておりますけれども国民はいまベトナム戦争等のアメリカ軍事行動の中で非常に疑惑を持っておると思います、現在は。そういう中で、外務大臣も今後事前協議の基準について明確にひとつ話し合いたい、こういう話がございました。総理は、これに対して政府統一見解として、そういう考えを持ちますか。
  47. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はベトナムの事態がたいへん険悪化したと、そこで沖繩がはたして五月十五日に、予定されるとおり、約束したとおり返ってくるかと、実はそこまでも心配してみたも  のでございます。しかしやっぱり心配がなくて予定どおり返ってきた、約束は履行された、かように考えておりますので、私いま向井君からいろいろの点について御疑問を投げかけられますが、私はただいま日米間においてはそういうような疑問をあまり持つような必要はない、いまのような重大なときに問題が解決しておることを考えると、どうもこれは杞憂であると実は思っておるのでございます。したがいまして、ただ、その事前協議の問題というのがずいぶん長く言い古されておりますけれども、どうもこれをやはり時々トレースしないと、皆さんも言われるように空洞化しないかと、こういう心配がございます。したがいまして、事前協議をつくったときのその状態と最近はなかなか戦術等も変わっておりますから、そういうものに合うようなやっぱり話し合いをする必要があると、かように実は思っております。私はすでに沖繩返還にあたって、両国首脳が、いわゆる日米間にできたホットラインを初めて使用いたしました。そういうことなども考えると、新しい時代に即応した事前協議、これをやっぱり、三点にいたしましても、その中身について十分理解し、話し合う必要があるだろうと、かように思いますので、これは外務省においても十分それらの点をトレースしておる、そうして国民に不安なきを期しておる、かように御理解をいただきたいと思います。
  48. 向井長年

    向井長年君 そうしますと、外務大臣の考え方と同一であると、こう解釈してよろしいですね。——しからば、その話し合うとするならば、いつごろからどういうルートを通じて話し合う予定を持っておられますか。また、佐藤内閣の中でこの問題を取り上げてやろうという意図がありますか。この点どうですか。
  49. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、事前協議そのものが、私が申し上げるまでもなく、外交ルートを通じてきまってきている、かように思いますので、ひまになればその外交ルートを通じてそれを決定すると、かように御了承をいただきます。ただいまちょうど国会最中でございますので、なかなか外交ルートと申しましても簡単ではございません。しかし、もうすでに駐米大使などもこちらに来ておりまして、この事情もよく知って向こうに帰りましたので、もうもちろんこういう事柄について外交ルートできまるものだと、かように御理解をいただきます。
  50. 向井長年

    向井長年君 時間がありませんが、外交ルートはわかりました。時期です、時期をいつごろやろうとするのか。言うならば佐藤内閣の中で、一応話し合うのか、新内閣でやられるのか、この点明確にまずお聞きしたい。それと、もしアメリカと協議をする際に、この事前協議の発議権といいますか、私たちは両方にあると思っておるんですよ。そこで実際発議権は両方にあるんですか、この点を再度お聞きいたしたいと思います。
  51. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ新しい政権だとか何とかいろいろ御心配のようですが、大体外交ルートでやるといたしましても、簡単な、会ってすぐ話のきまるような問題ではないと、かように思いますので、やっぱり一、二カ月はどんなにしてもかかるだろう、あるいは数カ月かかるだろう、こういうような見方もございますから、そこらのことをも考えながら、やっぱり早い目にかからないと、こういう大事な事柄がおくれてはたいへんだと、かように思います。それから、事前協議は双方がやるんじゃないかということですが、まあ日本の側からの発議はいわゆる随時協議と、かように御理解をいただきまして、事前協議、これはアメリカ側日本に協議する義務のあるものだと、かように御理解いただきたいと思います。
  52. 向井長年

    向井長年君 最後に。  この事前協議について、かつて岸総理時代に、これは政府の責任においてやることであって、国会で質問が出れば答えるけれども、そうでない限りにおいては答える必要はないと、こういうような発言をされておる。議事録によって明確に出ております。それはいけないと思うんですよ。少なくとも事前協議の問題の点については、結果は明確に国会に報告すべきだと思うんですが、この点いかがですか。
  53. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは御意見として伺っておきます。なお研究の要ありと、かように思っております。と申しますのは、装備の変更を一々国会の承認をとるというようなこともいかがかと思っております。やっぱり事前協議対象になるものは、装備、あるいは配置、あるいは出撃、こういうことでございますから、それらのことも考えて、どういう事柄は国会の承認をとるべきか、こういうような点ももっと検討すべきであると、かように考えております。
  54. 岩間正男

    ○岩間正男君 佐藤総理に主としてお聞きします。  まずお聞きしたいのは、沖繩の返還で核抜きが完全に実施されたと考えておりますか。
  55. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 確信を持ってさように考えております。
  56. 岩間正男

    ○岩間正男君 ロジャーズ書簡が出されたわけですがね、これは国民が信頼していませんよ。政府の最初の事態から考えれば、非常にこれはたよりにならないものだ、こういうふうに思っています。世論調査をお聞きになったと思いますがね。たとえば、復帰時における最近のNHKの調査があります。撤去されたと思う者二五%、撤去されない、核は隠されている、こう思う者が倍以上の五四%になっておる。これは国民との間に非常にギャップがあるわけです、あなたの確信にもかかわらず。世論はそういうことをはっきり言っている。今後このギャップをどう埋める努力をされるか、これは総理にお聞きしたい。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 世論調査は、私もマイクを突きつけてやっておられる努力を高く評価はいたします。しかし、あの聞き方でほんとうにはたして世論調査ができるか、これを私は疑問に思う。まず第一にその一点を指摘しておきます。  それからもう一つは、ただいまのようなお話がございますが、どうも両国首脳者が約束をし、さらにまたそれをトレースして外務大臣に対して書簡がくると、こういう状態でなお疑うという——どうもそういうならば、これは同盟あるいは安保条約自身を結ぶ価値のない国だと、かような判断になるわけでございまして、私はどうも共産党の方も疑いもいいかげんにされたらどうかと思います。先ほど私は、この五月十五日にほんとうによくやってくれたと、こういうお話をいたしました。私自身もいろいろ心配をし、これはやはり疑問を持ちながら、心配をしたものであります。これだけベトナムがむずかしくなってきておる。はたして約束ではあるが五月十五日に返還式典が行なえるかどうか、それを心配したものでございますが、それは実にみごとに行なわれた。それらのことを考えると、ただいまの状況で私は心配すべき筋はないと、まあ疑うにしても適当に取りやめるべきじゃないかと、かように思います。
  58. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ、あなたの根拠はアメリカを信頼するということです。しかしそれだけじゃ国民は信頼していない。一体そういうやり方ではだめだ。ことに、具体的に言えば、これはわが党をはじめ米軍の資料で、たとえば嘉手納における核兵器の問題、あるいは辺野古における核兵器の問題、その他数々あげて具体的にお聞きした。しかしそれを撤去された、そういう形跡というのは全然ない。県民のこれは体験を通じてはっきりこれは県民がそう言っているんですね。協定は締結された、それ以外に、これを運搬されたというそういう痕跡は少しもない。これで信用しろといっても、これは無理じゃないか、こういうことなんです。だから、今後、あなたは、信用しろ信用しろだけじゃこれは話にならぬ。世論調査などと言っておりますけれども、世論は大勢を示しますよね。これはあなたの言い方になると、最近盛んにマスコミに対していろいろ非難を浴びせているようですが、そういう態度だけでは私は率直にほんとうに国民の世論を聞くということにはならぬ。したがってこの世論をどう埋めて、しかも、はっきり非核三原則の立場に立つといっている日本、これはほんとうに国民を安心させることができるかどうか、この手段を講じなければならぬ、こういうふうに思うわけです。どうなんですか。
  59. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの段階では、先ほどお答えしたとおりでございます。しかしこれから、いわゆる権利ではございませんけれども、これから施設を提供するのでございますから、いろいろ非常な不審がある、こういう場合には私もほうっておくつもりはございません。もちろん正面を切って、ただいまの状況で疑問があるからその施設を一々精査するとか、かようなことは申しませんけれども、非常な疑問があればその疑問を解くにやぶさかではございません。そういう際には大いに政府を鞭撻していただきたいと思います。
  60. 岩間正男

    ○岩間正男君 国民が疑問があると言っている。大半が、たとえば沖繩の世論調査では疑問があると言っている。それを信用しろしろだけじゃ話になりません。これはやっぱりあくまでこの点は国民の世論を代表して明らかにする努力をすべきだ。  そこでお聞きしたいのですが、沖繩は返還された、そういうことで当然日本の沖繩における主権は回復されたのですね。そうなれば、アメリカ国内法の適用というのは沖繩には全然あり得ない、そういう点は確認してようございますか。
  61. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は昨日屋良知事に会いました。屋良さんが初めてパスポートなしに日本に来られまして、これで返還の実感が出ております、屋良さんはこう申しております。私はそうだと思っております。したがって、ただいまのような、軍命令の関係はこれは別といたしまして、いわゆるいままであった施政権、これはもう交代して、もう完全に日本の施政権下に移っておる、かように御理解をいただきたいと思います。屋良さん自身もさように申しております。またランパード高等弁務官自身も、もう自分はこの十二時を過ぎては用事がないから帰る、こういうことをはっきり申しております。
  62. 岩間正男

    ○岩間正男君 国内法の適用がないかどうか聞いている。これははっきりしていることなんですね。主権が回復した。国内法の適用は、これはあり得ない。  そういうことになりますと、現在核の所在ということを明らかにすることができないのは、これはマクマホン法でしょう。マクマホン法によってこれは行なわれているのでしょう。こういうものの適用というのは、これはないわけですね。いままでの国会論議を通じまして、アメリカ国内法もあることでございます、マクマホン法の精神からいってこれは明らかにできない、こういうことを言っていたわけです。しかし今度はこういうものの適用がないのですから、次元が変わっているわけですね。この次元の変わったそういう立場に立ってはっきり考えなければならぬ。したがって核の存在そのものをどうこうという問題は、アメリカ国内は、軍部はこれで拘束されるかもしれないが、少なくとも日本国民はこれで拘束されないことは、これははっきりしておると思うんです。したがってその時点で、このような国民の疑問が非常に多いのでありますから、私は当然これに対してやはり核点検をやる、核を全部撤去したのかどうか明確にこれを要求するということが当然の政府のいまやらなければならない任務だと思います。マクマホン法についてはこれは法制局長官、それから総理、答えてください。
  63. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) もちろん、御指摘のとおりマクマホン法は日本には適用ございません。その意味ではマクマホン法に日本政府ないしは日本側が拘束される理由は何にもございません。御存じのとおり、核のあるなしについて米側がはっきり言えないということは、これはマクマホン法とは関係のないアメリカの戦略上の考慮でございます。そしてアメリカ側が核のあるなしについて一般的に言わないというたてまえをとっていること自体は、これはアメリカの政策でございまして、わが国とは全然関係ないわけでございます。それにもかかわらず、今回ロジャーズ長官が福田大臣に対して完全に協定の内容を遂行したということを保障しているわけでございますから、その点から、われわれは核は絶対ないということを信じている次第でございます。
  64. 岩間正男

    ○岩間正男君 最後に一点だけ。  そういうことを言っていますけれども、あなたたち核を全部撤去しろということを要求したはずだ。この書簡そのものはこんな間接的な、これは共同声明の第八項だとか、それから沖繩協定の第七条だとか、こんな間接な表現じゃだめだ。それがうまく入れられなかったんでしょう。それは政策かもしれぬ。しかし日本はいま日米安保体制ということで、これはあくまで対等の条約を結んでいるんだ。それで国民がこれに対して非常な不安と疑惑を持っている。その問題を明らかにするのが、向こうの政策に対して対決をして、当然これは私は自主独立の立場から考えたって、アメリカに対してそのような外交交渉を持つ、ことに沖繩は返った、対等平等だという次元の違った外交交渉をはっきり展開すべきだと思う。いままでの閉じ込められた長い間の習慣でものを考えているからいまのような答弁になる。佐藤総理に最後にはっきりこれに対する見解をお聞きしたい。福田外相も、これはもしもあんたがこの次あるいはそういうような担当をすることになるとすれば、答えてもらいたい。
  65. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この問題は、たびたび申しますように、日米安保条約、これを締結しておるから米軍が来ている。その米軍が来るとやはり核、そういう心配があると。そこで両最高責任者が話し合って、そうして日本としては核のないことを強く要望する、そうしてまた本土並みだ、こういうことでもあるからそこらはどうだということで、ほんとうにひざを交えて話し合った結果、ニクソン大統領日本の行き方を十分理解し、そうしてこれに了承を与えてくれたわけであります。そうしてサンクレメンテにおいて、どうも、最高首脳で相談はしたが、約束はしたが、それだけではなお日本の中の疑惑を持っている連中を説得をすることに不足のようだ、だからさらにもっと念には念を入れて納得するような方法はないか、こういうことを言って、その結果がロジャーズ国務長官から福田外務大臣にあてて書簡が来たということであります。外交で書簡が来るという、これはまことに重大な事柄であります。私は、大事な事柄でありますし、国会において決議をされたことであります非核三原則、これはわが国の国是ともいうべきもの、かように考えますと、ただいまのように念には念を入れる。ことにまた沖繩県民の心情を考える際に、ほんとうに県民を説得する、そういうものがほしい。これも十分アメリカ側も耳をかしてくれまして、ただいまのような手紙がよこされたのであります。私は、これをもってこの問題についてはもう議論の余地なし、かように実は理解しておるのでございます。さらに、私はそれでも不十分だ、かように考えますから、この席を借りまして、もしも具体的にそういうような心配の事例があればこれは点検しよう、こうまで言っておるのであります。私は、それより以上にただいまのような点について疑う——まあ人を見ればどろぼうと思えというようなわけにはいかない、かように私は両国関係から判断をしておる。どうかひとつ御了承いただきたいと思います。委員長柳田桃太郎君) では総理、時間ですから……。
  66. 水口宏三

    水口宏三君 福田外務大臣に少し伺いたいと思いますが、まず初めに、先ほど私から総理に種々伺いましたことについて、福田外務大臣もこれは当然同じ考えでいらっしゃるので、別に異なった御意見はないと思いますけれども、これからの質問との関係もございますので、先ほど私が総理に伺い、総理が御答弁になったことについては、全面的にそのとおりというふうに外相も肯定なさっておられるかどうかを最初に伺いたいと思います。
  67. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 集団自衛権についての総理お答えは、私もそのとおりと存じております。
  68. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、いわゆる日米安保条約の中の前文で、両国集団的自衛権を持っていることを確認している。そうすると、この条約の適用にあたって、この集団的自衛権発動されるような場合はあり得るわけでございますか。
  69. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが国は、わが国憲法並びに国内法、こういうものによって集団的自衛権発動を制限をいたしております。したがいまして、まずこの集団的自衛権、これの発動というケースはなかろうかと、かように考えております。
  70. 水口宏三

    水口宏三君 多少また総理ニュアンスが異なるのでございますけれども集団的自衛権発動はできるわけでございますね。問題は、そのケースが日米安保条約の適用においてはあり得ないであろうという御答弁解釈いたしますが、次のような場合はどうなんでございましょうか。たとえば、実際に日本武力攻撃を受けたと。この武力攻撃に対して——まあ、実際上、国会論議でいままで論議されましたのは、大体第五条の問題でございますね。第五条について、これは日本の施政権下に対する外からの攻撃なんだから、アメリカ集団的自衛権を行使するかもわからないけれども日本は、当然、施政権下なんだから個別的自衛権でいいんだというような論議が何回か繰り返されております。そのことは私触れようとは思いません。そうではなしに、日本武力攻撃を受けた、これに対してアメリカが、第五条の——まあ第五条というふうに私申し上げるのはあとに控えますけれども、いずれにしても、日米安保条約を有効に行使するために、たとえば一定の兵団を輸送船団によって日本に送ってくる、あるいは空母を日本の海域の周辺に航行させるということは、これは十分あり得るわけですね。で、公海上でそういうものが相手国武力攻撃を受けたと。この場合に、日本は、私は個別的自衛権しか発動いたしませんから、領土、領空、領海に対する武力攻撃がないんだから知りません、あなた方かってにおやりなさいと言って突っぱねるのか、それとも、アメリカの要請に基づいて、当然日本も——アメリカとしては、日米安保条約に基づいて、日本に対する武力攻撃に対する一つの支援としてそういう行為をしているわけなんですから、これに対して日本も対潜哨戒機なりあるいは何なりによって一緒に戦うという、そういう態勢をとるのかどうか。ここら辺の問題はどうなんですか。その場合の法的根拠もお伺いしたい。
  71. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが国が攻撃を受けた場合、そういう場合にアメリカ集団自衛権発動を行なう、これはもうあり得るわけであります。おそらくそういう行動をとるであろうと、こういうふうに思います。しかし、わが国集団自衛権発動はしない、わが国は個別の自衛権発動であると、こういうことでございます。
  72. 水口宏三

    水口宏三君 いや、だから、そのことはもう何回かいままで国会で論議をされておりますので、という私は前置きをして、しかし、個別的自衛権で公海上の他国の軍艦なり、あるいは潜水艦なりを日本が攻撃をするということ、このことは、少なくとも日米安保条約に基づくなら、これは集団的自衛権、そういうことになろうと思います。だから、もちろん第五条では、施政権下に対する攻撃だから、いま外相のおっしゃったように、日本個別的自衛権で済むんだという、いままでの、われわれからすれば言いのがれをしておるのであるが、もし、公海上、明らかに日本への武力攻撃に対してアメリカが支援するために一定の兵団を輸送船団で送ってきた。それが相手国の攻撃を受けている。アメリカから日本に対してそれに対する共同作戦の行動の要請があった。その場合に、日本集団的自衛権発動しませんから一切協力できませんとお断わりになるわけですね。
  73. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 条約局長から答弁させます。
  74. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先生の御質問の趣旨は、公海上で米軍に対して第三国から武力攻撃があった場合に、日本集団的自衛権を行使してこれを防衛する義務があるか、ことがあるかという御質問の趣旨だと思いますけれども、これは私どものほうでは、第五条に基づきましてアメリカ日本防衛の責任を負っているのは、日本の施政のもとにある領域に対する武力攻撃相互防衛するということでございまして、日本も、安保条約上そういう日本の施政のもとにある領域に対する武力攻撃だけを対象といたしまして安保条約発動するということになっております。ただ、この結果、戦闘が拡大いたしまして公海にも及ぶということはもちろんあろうかと思います。ただ、最初の自衛権発動する対象といたしまして、公海における米軍に対する攻撃がそのまま安保条約発動になるということはあり得ないというふうに考えております。
  75. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、先ほど私が申し上げたようなケースの場合には、日本政府はお断わりになるわけですね。つまり、安保条約の第五条の適用は、もちろん、だから、私が申し上げたように、——安保条約の第五条の問題はさっき論議されておりますから、この論議をしているわけじゃないんです。——だから、いま条約局長がおっしゃったように、そういう場合には日本はお断わりになるわけですね。日本が攻撃をされている、それに対して、アメリカ自衛のための兵団を送ってきた、公海上で相手国から攻撃を受けたと。そこで、アメリカ日本政府に対してぜひひとつ救援して一緒に戦ってくれと。自分たちは、五千人なら五千人の兵団が沈みそうだと。そういう場合でも、日本はこれに対して集団的自衛権発動しないというふうに理解してよろしいんでございますね。
  76. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) そういう点につきまして、日米安保条約というのは非常に特殊でございまして、世界のいわゆる集団安全保障条約は、相互集団的自衛権を行使してお互いに助け合うというたてまえになっておりますけれども
  77. 水口宏三

    水口宏三君 イエスかノーかだけ言っていただけばいいです。
  78. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) はい。  日本については個別的自衛権発動だけ。アメリカにつきましては個別的自衛権集団的自衛権の両方を考えております。したがいまして、日本の場合は、それの反対給付といたしまして、日本にある施設・区域を米軍に提供するというたてまえになっております。そういう点で非常に特殊な条約でございます。
  79. 水口宏三

    水口宏三君 条約上は、少なくとも、あなたのおっしゃったことは一つも書いてございません。これは、先ほど私が読みましたように、前文では、両国が、国際連合憲章云々といって、個別的または集団的自衛固有権利を有していることを確認し、となっているわけです。そうですね。また本文の中のいかなる条文を見ても、日本集団的自衛権は行使いたしません——権利ですから放棄してもけっこうですよ。それならば、なぜ、条文上はっきりと集団的自衛権の行使を放棄しないのか。放棄をしていないということは使うということじゃないですか。しかも、いま申し上げたような事態の場合に、現実の問題として何ら条約上の規定もないのに、当然、条約上でいうならば、集団的自衛権発動すべきそういうケースにもかかわらず日本政府がこれを断るという根拠はどこにあるんですか。
  80. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先ほど総理の御答弁にもございましたとおり、日本は、憲法集団的自衛権は行使できないということでございます。そういうたてまえ上、安保条約におきましても、前文には、なるほど先生のおっしゃるとおり、集団的自衛権に言及しておりまするけれども日本憲法上この集団的自衛権を行使することはできないということでございます。  なお、当時、安保国会におきまして、政府側が同様な御質問に対しましてお答えをしておる部分に若干触れますと、これは、米国が安保条約を運用するにあたりまして、米国の集団的自衛権が援用できなければこの安保条約を運用できないというたてまえ上、ここに前文に言及したのであるということでございまして、これは米国について個別的自衛権及び集団的自衛権を言及する場合、日本について個別的自衛権だけを言及するというのも非常に片手落ちになりますので、両方に言及したということが理由であるように思います。
  81. 水口宏三

    水口宏三君 条約局長、もう一つだけ伺うのですが、あなたは勘違いしていらっしやるが、総理が言ったのは、武力行動を伴う海外派兵憲法禁止されていると言っているのであって、集団的自衛権の行使を憲法禁止しているなんていり言っているんですか。大体集団的自衛権の行使というのは武力行使だけでありませんよ。援助ですよ。それをやらないというんですか。いつ総理はそういうことを言いましたか。あなた条約局長なら、もう少し集団的自衛権について明確にしていただきたい。集団的自衛権の行使というのは常に武力行使であるなんてどこにもない。これはむしろ援助である。経済援助の場合もあるだろうし、あるいは医療援助の場合もあるでしょう。総理は一言も言っておりませんよ、そんなことは。だから、私が申し上げるのは、そんなよけいなことを藉口しないで、あなた自身の立場において、そういう場合にも、アメリカの要請があっても日本は要するにアメリカと一緒には戦わないということを答えるかどうかだけを伺っているわけです。
  82. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先ほどお答えしておりますとおり、日本としては憲法上そのようなことはできないということでございます。
  83. 水口宏三

    水口宏三君 憲法上できないということは、これは外務大臣それから防衛庁長官おいでになりますので再確認してよろしゅうございますか。
  84. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そのケース・バイ・ケースというか、ケースによってたいへん態様が変わってくるんじゃないかと思うんです。そのケースによりまして、米軍に対する協力の態様、これが変わってくるんじゃないかと、こういうふうに思うんです。しかし、非常にはっきりいたしておりますのは、海外派兵、こういうような種類のものは、これはわが国憲法のたてまえから、また国内法のたてまえからできない、こういう制約がある、こういうことであります。
  85. 水口宏三

    水口宏三君 外務大臣がおっしゃったケース・バイ・ケースということばが出ると思ったから私はケースを申し上げたわけでございます。このケースの場合にどうなさるのかということを伺っているのであって、その点についての御答弁をお願いします。
  86. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先ほどお答えしたかと思いますけれども、私は憲法上できない。ただ、つけ加えましたのは、日本の領域が武力攻撃を受けて、その延長といたしまして公海に戦闘が及ぶということはあり得ようかと思いますということを申し上げた次第でございます。
  87. 水口宏三

    水口宏三君 じゃその点は、私の申し上げたような、これは外務大臣はケース・バイ・ケースとおっしゃいますけれども日本武力攻撃を受けた、その武力攻撃を行なっている国に対して、アメリカ日本を援助するために兵団を送ってきた、それは公海上でその国から攻撃を受けたけれども、これは安保条約の適用からは除外される、また集団的自衛権の行使も行なわない、これは日本憲法がこれを禁止しているというふうに理解してよろしゅうございますね。
  88. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私はそのケースによってということを申し上げたんですが、日米安全保障条約では、これは補給だとか補修だとか、そういうことは認めておるんです。そういう行為、これなんかできないと、こういうことじゃないんだと、こういうことを申し上げておるんです。いわゆる戦闘に参加する、つまりわが国は、いま一番の的確な例は、派兵をいたしましてそして戦闘作戦行動を共同にする、これはできないんだ、それがいろいろの米軍に対する協力の態様がある、こういうふうに申し上げたゆえんなんであります。その辺をひとつ御理解願いたいと思います。
  89. 水口宏三

    水口宏三君 私も、アメリカの兵団が敵の潜水艦の攻撃を受けて、ちょうど小麦粉のたくさんしまってあった倉庫が水浸しになっちゃった、食うものもないから小麦粉を送ってくれと、それを日本が小麦粉を送ること、そんなことを申し上げているんじゃないのであって、初めから、対潜哨戒機その他によって戦闘行動に参加するかという具体的ケースを申し上げているんですから、その点ははっきり私の言うことを聞いて御答弁願いたいと思うんです。  それでは次に、先日の本会議佐藤総理は、今回のベトナムに対するアメリカの海上封鎖、これは国連憲章五十一条の集団的自衛権発動であるという立場に立ってアメリカが安保理事会に申し入れた、したがって私もそうだと思いこれを支持するという御答弁があったようですね。これは外務大臣はやはりそのとおりお考えでございますか。
  90. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) この問題は二つに分けて考えることが私は妥当であるというふうに見ておるのであります。つまり、アメリカ軍事行動を含めての対ベトナム政策、これは国連憲章五十一条によるところの集団自衛権発動である、こういうふうにアメリカは説明し、また国際的にも多数の国から理解され、わが国もそういうふうに理解いたしておる、こういうことでございます。  第二の問題は、今度機雷敷設をするその行為がどうか、こういうことであります。これはアメリカのベトナムにおける軍事行動の一環でありまするその一つの態様である、こういう意味においては、ベトナム戦争そのものを国連憲章五十一条の自衛権発動である、集団自衛権発動であるという理解をいたしておるわが国といたしましては、またそういう意味において理解をするんですが、国会においてよくこういう質問があるんです。あそこは国際法違反ではないか、あるいは国連憲章違反ではないか、こういうような御質問があります。そういうような御質問に答えるといたしますると、これは一つ集団自衛権発動の態様というふうに一応は理解はされるけれども、その態様が国際戦時法規を越えて、あるいは行き過ぎの行為であるかどうかというような点になりますると、これはいまアメリカは越えておらぬ、五十一条の憲章の条章に従ってこれをやっておるんだという主張をしておる、国連にもそういう通報をしておる、そういうことでありまするから、国連においてこれを判定すべき問題である、こういうふうに理解しております。
  91. 水口宏三

    水口宏三君 これで終わりますけれども、私はどうもいまの外相の御答弁を聞いていて満足しないんですけれども、何も私は外相に裁判官の立場に立ってそれはどうであるとかこうであるとかいう判定を求めたわけではない。日本の外務大臣として、当然、日本アメリカの行為に対してそれを支持するのか、反対するのか、これは非常に重要な問題なんです、政治問題なんです。したがって当然外相はそれの判断をお下しになる場合の重要な根拠として、国連憲章五十一条の問題があるであろう。したがって外相はそれをどう御判断になるか、あるいは佐藤内閣はそれをどう御判断になるかということを伺っておるのであって、これは私から申し上げますと、少なくともアメリカ国連憲章五十一条によって南ベトナムとの相互援助条約つくりましたのは、ダレスのときのドミノ理論ですね。つまりインドシナ半島が共産化されればアジアが共産化されることであり、それは即アメリカの安全にとって非常に危険である。したがって、アメリカとしては南ベトナムとの間の五十一条の集団的自衛権に基づく条約をつくっておるんです。ところが、今回のアメリカの行為のあれを新聞等を通じて見ておりますと、どうも本来の集団的自衛権の問題ではなしに、北ベトナムの正規軍が南ベトナムに入って、南ベトナムのいわば政府に対する戦闘行為を行なっておる。このことは南ベトナムの政府のいわば独立を脅かしておる。したがって南ベトナムを救援をするんだというような、あえていえば残っておる兵隊を引き揚げるとか何とかありましょうが、少なくともかつてのドミノ理論によってつくられた五十一条の集団自衛権による条約の適用からは非常に異なった方向にいま動きつつあるし、またアメリカ自身がそういう立場に立っている。そうなると、今度のベトナムに対する海上封鎖を日本政府として、あるいは外相として、五十一条による集団自衛権の適用とすることが妥当であるかどうかという判断をお持ちなのかどうか、その点を外相の御意見を伺いたいんです。
  92. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) アメリカの北ベトナムに対する戦闘作戦行動、これに対しましてはその理由ありという理解をしております。   〔委員長退席、理事町村金五君着席〕 ただ問題はですね、こういうことが問題なんです。機雷を敷設するあの行為がその妥当な戦闘行動のらちをこえたものであるかどうかと、こういうことがよく言われる。その点になりますると、私どもはなかなか現地の実情もよく承知はいたしておりません。どんな状態で、どういうふうになっているのか、これは知るよすがもない。したがって、これは国連の判定に待つほかはないんじゃないか、そういうことであります。
  93. 水口宏三

    水口宏三君 それは私は一国の外相、特にアメリカ日米安保条約を結んでいる日本の外相としては非常に不見識なことで、当然あらゆるルートを通じて情報を的確につかんで一日も早く的確に判断を下すことこそ私は外相の任務だと思うんですね。それがどうもわかりませんから判断できませんでは答弁になっていないと思いますし、あえてわからない方にこれ以上御答弁を求めません。午前中は質問を終わります。
  94. 上田哲

    ○上田哲君 先ほど総理は、ベトナム条項に関連して、沖繩返還が予定どおりいくかどうかたいへん心配しておったということを強調されましたね。これもよくわからないんです。批准書の交換をされてからは、福田大臣が言われたように、これはもうあと戻りのできないタイムテーブルの上に載ったのだとごあいさつもなさいましたね。批准書を交換されたらこれは心配もくそもありませんね。そうすると、総理心配しておられたというのはいつのことですか。
  95. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは総理にお聞き願うほかございませんけれども、まあおそらく、私もここで聞いておりまして、沖繩返還がうまくいくかどうか、それを非常に心配しておったということを抽象的な意味において申し上げておるのだと、法律論を申し上げておるわけじゃないと、こういうふうに存じます。
  96. 上田哲

    ○上田哲君 それは御答弁にならないんです。総理の心中、沖繩返還にかけた政治生命だということならば、   〔理事町村金五君退席、委員長着席〕 いろいろとお考えになることは総理でなければわからぬということでけっこうですよ。日本アメリカの外交関係あるいは条約上の問題としては、これは総理が一国の代表者としてどう考えるべきかということを外務大臣としてお考えになるべきでありますから、その分をひとつ分けてお答えをいただきたいんだが、詰めて言えば、批准書交換後はそんなことを心配する必要がないでしょう。あったんですか。
  97. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 批准書交換式において、私はそのあいさつの中で、もうこの問題はあと戻りはないと、こういうことをはっきり申し上げております。ですから、総理が言っているのはそういうことじゃないと思うんです。返還そのものが順調にいくのかいかないのかと、そういうことを言っておるんじゃないか。まあ非常な執念と申すべき沖繩返還問題、これを順調にやらせたいというのが私はまさに総理の心情だったと思いますが、それがその心情のとおりいくかいかないかについて危惧を持っておったと、こういうことであったんじゃないか、さように存じます。
  98. 上田哲

    ○上田哲君 だから、総理の心情はいいんですよ。総理の心情は、もうこれから聞いてもあまり意味のない人ですから、むしろ福田さんにお伺いしたほうが意味があるでしょうから、条約上お聞きしているんです。三月十五日以降、批准書交換以降はそんなことを、政治家の心情として不安を持つのは別として、これは条約上あり得ないですね。言うまでもありませんね。そうすると、心配すべきものだったというのはそれ以前だったということになりますね。
  99. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ、あるいはそういう三月以前のこと、つまりさらにさかのぼりますれば、六九年のあの共同声明でああ言ったものの、さてまあベトナム状況が穏やかであってくれればいいなあと常に念願しておったというようなこともあるかもしれませんけれども、私はいまここで聞いておる私自身の印象は、最近ベトナム問題が非常にエスカレートしておる、そこではたして沖繩返還が順調にいくのかいかないのか、こういうようなことにあったんじゃないか、私はそういうふうな印象を受けました。
  100. 上田哲

    ○上田哲君 当然あと戻りすることのない沖繩返還が、なお心配しなければならぬという総理大臣が心証を持っていたということは、実は佐藤総理の政治家の心情というよりも、沖繩の軍事基地というものがどういう意味を持つかという関連において重要だと思いますから、これはひとつ後ほど詰めましよう。  私がここで言いたいのは、もし議論ができるとするならば三月十五日前なんだから、三月十五日前の段階でベトナムエスカレーションというような問題が日米間で話し合われていたようなことがあるんですか。
  101. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 一九六九年共同声明のあの時点では、まさにあるいはそういう事態があるかもしらぬということは一まつの、一まつですこれは。一まつの不安を両首脳は持ったかと思います。さればこそベトナム条項というものがそこに挿入されておる、こういうふうに思うのです。しかしその後事態は非常に平静に推移いたしまして、もうそういう事態はなかろうと、こういう時期が続いたと思うのです。ところが、最近になってベトナム問題がエスカレートしてきた、そういうようなことからまたその心配が出てきた、そういう経過があると、かように考えます。
  102. 上田哲

    ○上田哲君 ずばっと聞きたいんですよ。共同声明、ベトナム条項をつくったときには一般的な懸念であった、それはそうでしょう。それから、いまおっしゃったように最近になってそういう不安が出てきたというのは、三月十五日以降は問題ないんですから、条約上は、議論の場所はないんですから、三月十五日直前ぐらいのところでそういう不安が出てきたというには、ベトナム情勢というのはそのときまだ熱していないんですよ。だからその段階で日米間にその話があったのかと言っているのです。
  103. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日米間にはそういう話は全然ございませんです。
  104. 上田哲

    ○上田哲君 それでわかりました。日米間にこういう問題の議論がないわけですね。日米間にそういう外交交渉がほとんどないというところで問題が推移していることを、私はそういうところから聞いてみたかったわけです。非常に不満があるわけです、そこに。そこで、飛ばしながら聞きますけれども、たとえばサンクレメンテでベトナム問題というのはどれぐらい議論されたんですか。
  105. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ベトナム問題もこれは話に出ました。出ましたが、その前途について非常に心配があるんだというような雰囲気の話じゃございません。まあアメリカの撤兵計画の話とか、そういう種類のもの、むしろあの時点におきましてはベトナムがだんだんと平静化していくであろうというような方向の雰囲気の中でいろいろ情報交換が行なわれたと、こういうことでございます。
  106. 上田哲

    ○上田哲君 グリーンが北京会談のあと日本に寄って説明をして行きましたね。そのときはどういうふうに触れておりますか。
  107. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) グリーン氏の話ですねこれはベトナム問題には全然触れておりません。ただ私のほうから触れたんです、これはどんなものだろうと。米中会談についてはソビエトロシアがかなり関心を持っておる、このソビエトロシアのリアクションというものはこれがどういうふうになっているか、こういうことについてどういうふうに考えるかという質問をしたことはあります。それに対しましてはわりあいにグリーン氏の話は、まあ楽観というと言い過ぎかもしれませんけれども、さほどのリアクションはありますまいというような調子の答えがあったことを記憶しております。
  108. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、サンクレメンテにおいて、あるいはグリーン次官補の説明なり、それらの期間を通じて、日米間にはベトナムエスカレーションについては話し合いはなかったし、向こうからのインフォメーションがなかったと、こういうふうに考えていいわけですね。寝耳に水であったと。
  109. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そのとおり考えてよろしゅうございます。
  110. 上田哲

    ○上田哲君 そこのところまではそれでいいです。そうしますと、いろいろわからぬことが出てくるんで、ひとつ——まあ、内閣委員会にいますと外務大臣に具体的にお伺いすることができぬので、仄聞をしておる限りでは、台湾条項についての政府の見解が実によくわからないんですよ。総理は、台湾条項が消滅したんだというニュアンスの御答弁をさる日の予算委員会でなさった。それからその後、そういう認識と共通するような御発言を最近外務大臣からもなされているように聞いています。ひとつシンプルに答えていただきたいんだが、先ほどのその総理の御答弁もたいへんよくわからないんです。どうでしょうか。台湾条項は消滅したと考えるんですか。
  111. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 台湾条項台湾条項とおっしゃいますが、これは一九六九年の共同声明の中の一項目なんです。これはどこまでも共同声明でありまして、条約でも協定でもありませんから、それが消滅いたしました、生きております、そういうような議論をする、それ自体が私はおかしいと思う。ただ申し上げられることは、あの当時はプエブロ事件のあとなんです。そこで、この朝鮮半島につきましてもアメリカは非常に緊張した気持ちであった。またそれがさらに波及いたしまして、台湾海峡につきましても、アメリカも関心を持つ、わが国も関心を持つ、そういう状態であったわけであります。そういう時点の両首脳の台湾海峡にあるいは朝鮮半島に対する認識を述べ合った、こういう種類のものでありまして、協定でも条約でもないんです、これは。それを、取り消したんだ、生きておるんだ、そういう議論、まことに私はおかしいと思う。が、しかし、そういう両首脳の認識ではありましたけれども、米中会談が行なわれた、そうしてこの結果、多年にわたって取り続けてきた中国封じ込め政策、これが対話という場面に転換をいたしたわけです。そういうことから考えまして、台湾に対する安保条約上の認識、これは当時とは全く変わってきておると、こういうことだけは申し上げられます。
  112. 上田哲

    ○上田哲君 そんなことを言ってもらっちゃたいへん困りますよ。共同声明条約じゃないから問題にする必要がないとか、消滅というのがおかしいとかなんということは、これは全く何といいますかな、詭弁ということばは当たらぬかもしれないけれども、やっぱりまっこうからの答弁ではないと思うんです。両国首脳が国際場裏、環視の中で堂々とその共同声明を発したことが持っている意味というのは、これは形式上の問題を越えて非常に実効的な意味を持っているわけです。私どもは非常に重要な関心を寄せています。事実いろんなインフルエンスが出てきているからです。国際的にも反応があるわけです。ですから、それが条約でないという区分をつけることがテクニックであるならそれでもけっこうだが、持っている意味の大きさにおいてきちっとお答えをいただきたいんだが、台湾条項というのはこの共同声明の中にはっきり出ているわけですから、その台湾条項が一体消えたのか消えないのかということをわれわれは関心を持って聞いているんです。条約上の意味を持っているか持っていないかという問題に変えないで、台湾条項というものは、いま、しからば日本国政府がこれをあのときと同じように重視しているのか、重視しなくなったのか、はっきり言ってください。
  113. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そういう御質問だとよくわかるんですが、当時両首脳が台湾海峡に、台湾について持っておった認識、特にわが国の首相が台湾について持っておった認識、これは全く変わっておる、こうはっきり申し上げておきます。
  114. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、二つに分けてお伺いしますけれども台湾条項は、あのときの共同声明考えていたのに比べると今日は変わった、もはやそれを触れる意味がないのだ、そういうふうに考えるのか。もう一つは、すでにそうした台湾条項ないしは韓国条項も含めてだが、そうした問題はすでに触れなくてもいいほどに定着をした了解事項になっている、こういうことなのか。これはどっちですか。
  115. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ、どっちかと言えば前のほうの意味だと思います。いまの台湾における、特に台湾海峡の情勢は非常に当時と変化してきておる、安保条約の適用上の問題としては変質をしておる、こういうふうな理解であると、こういうことであります。
  116. 上田哲

    ○上田哲君 念のために申し上げるが、当時表現された、韓国、台湾の安全は日本の安全にとって重大な関心を払うべき対象である、ということはもはや薄れたのである、そういう認識を持たないのであるということでいいですね。
  117. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 台湾についてはそのとおりです。しかし、韓国についてはまだ国会で何も触れてもおりませんし、ニクソン訪中の結果、極東全体として緊張緩和のムードが出てきておる、そういうふうに考えますが、その程度におきましては、韓国についても微妙な見方の変化というものはあってしかるべきだと、こういうふうに思いますけれども、これは台湾の事態とはまた違うと、こういうふうに御理解願います。
  118. 上田哲

    ○上田哲君 かなりはっきりしてきましたから、もう一つ伺いますが、それは、たとえば俗にいうところの雪解け状況というものが大きくあるわけですね。
  119. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 何状況……。
  120. 上田哲

    ○上田哲君 雪解け状況というのがあるわけですね。雪解けを期待する、歓迎するというようないままで御表現でありましたけれども、その雪解けが完全に雪解けしたと、もうよろしいという状況というのはいつくるんですか。
  121. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これはなかなかむずかしい御質問でありますが、私は、雪解けというか緊張緩和のムードが出てきておると、こういうふうに見ておるわけです。しかし、まだ、これが定着しておるかというと、まださほどにもいっておらぬ、ことにわが国から見ますると、日中国交正常化、これも行なわれておらぬと、こういうような状態ですから、緊張——したがって、いろいろ日中問に間接ではありまするけれども議論がある。そういう状態ですから、緊張が完全に消え去ったと、こういうふうには私は言い切れないと思う。しかしムードは出てきておる。しかし、それじゃ、いま御質問のように完全に消え去るのはいつかと、こういうと、これはいろんな情勢判断してみないとそういうことについてのお答えはいたしがたいと、こういうふうに考えております。
  122. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、雪解けムードが出てきた、完全な雪解けというのは、しばらく見通しはつかぬかもしれないと、こういう基礎認識を持ちながら、六九年の共同声明に言うところの台湾条項というものはもはや完全に変わったと、こういうことでいいわけですね。
  123. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そう端的にも言えないと思うが、もし私から言いますると、別なことばでいいますと、つまり台湾海峡をはさんで北京政府と国民政府との間に武力によって事がかまえられるというような情勢は予見できないと、こういう判断であります。
  124. 上田哲

    ○上田哲君 日本の姿勢を聞いておるわけですから、日本の姿勢はどうなんですか。
  125. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そういう判断を持ち、それをまた期待をいたしておると、こういうことでございます。
  126. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、それはかなりよくわかりましたよ。よくわかりました。これはぜひそのとおりしてもらいたいのです。かりにも台湾条項というものが全然変わらないんだと、基礎認識は変わらないし、むしろ強化しなければならぬという要請があるんだけれども日本国内世論にそういうことを言うとぐあいが悪いから、もう触れずに置こうなんという政治的配慮ではなかったんだ、はっきりした国際情勢、あるいは日本の方針としても態度がきまったからその方向を確認したんだということはけっこうですから、これはしっかり、そう聞いておきます。そうなりますと、この台湾条項について、たとえば沖繩返還直後の五月十五日のアメリカ国務省の高官の説明というのはどういうことになるのか。これは台湾条項は不可欠であるということを相手方は非常に強調をしておるわけです。これは明らかに日米外交筋の方針が、見解が違っているということになるんです。これはどうですか。
  127. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) おそらくアメリカ当局は、台湾の事態、これは大事であると、こういうふうには考えておる、こういう基本的な姿勢を示しておるんじゃないかと、そういうふうに思います。私のほうは、そうじゃなくて、そういう基本的なことじゃない。情勢判断——情勢判断からいたしまして、まず台湾海峡には武力によるところの紛争はあるまい、こういうふうに考えておる。そういう見方の違いなんです。別に思想が違っておる、そういうようなことじゃなくて、見る、言うところの立場が、違った立場から言っておると、こういうことかと思います。したがってわが国台湾条項を安保条約対象区域からはずすというようなことは考えておりませんけれども、そのことがアメリカの言っていること、それに相通ずるものがあると、こういうふうに御理解願います。
  128. 上田哲

    ○上田哲君 何が相通ずるのか全然わからないじゃないですか。基礎認識だと何べんも強調をし、了承をされているじゃありませんか。台湾条項というのは、もう消滅しているということばがおきらいであればいいですけれども、もはや変わったんだと、留意しなくていいんだと、これは基礎認識である。雪解けは完了してないけれども、この状態でももういいのだと、それは情勢分析ではなくて、わが国の、あなた方のおっしゃる日米安全保障体制の中の役割りとして台湾問題というものについての認識はそうなったんだ、こっち側の姿勢なんだということを私はくどく強調をして結論を得ているわけです。基礎認識である。それに対してアメリカ側の基礎認識は、台湾条項は依然として不可欠である、これは明らかに基礎認識の違いではありませんか。もし違いでないと言うんなら、いまおっしゃったことは全部否定されて、アメリカはやはり台湾の緊張があると、この緊張に対して日本の、軍事的とは言わずとも、防衛的な任務があるではないかということになったら、きん然としてその方針の中で一定の行動がとられなければならぬ、こういうことになってしまうじゃないですか。どっちですか。
  129. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) それだから私はまだ定着をしていないと、こう言うんです。定着しちゃえば、これは安保条約対象地域から台湾を除外したらいい。私どもはそこまでは考えていない。しかしただいまの情勢判断として、ただいまの見方といたしますると、まず台湾海峡に武力紛争が起こるまいと、こういうふうに考えておる。そういう考え方は一九六九年当時と非常に変わっておる、こういうことを申し上げておるわけです。
  130. 上田哲

    ○上田哲君 時間がないということでありますから、外務大臣がおられなくなってしまうとどうしようもないんで、いまのお話はたいへん食い違いがある。先ほどおっしゃったことと、十五分前におっしゃったことといまおっしゃったこととはかなり食い違っているので、これはたいへん問題であるということを指摘しておきます。依然として台湾条項は不可欠であるというアメリカ側の認識に従うのだということなんだと私は理解せざるを得ないというふうに最後のところはなったと思いますが、さて時間がないということですから詰めてお伺いするよりしかたありませんが、沖繩の復帰後の戦略的意義というものはそこで浮かび上がってくる、どうしても。私は三点あると思うんですけれども、第一にはこれは先ほど来の話の中で、やっぱりいろいろことばは左右されるけれどもアメリカ側の基礎認識に同じ立場をとられる意味で日米合同ないし了解の立場で、台湾条項は不可欠だと、こういうことをひとつしっかり踏まえておられるのだろうと思います。二つ目には、やっぱりベトナムを含む極東地域にニクソン・ドクトリン体制というものを敷いていくことを、沖繩をやはり軸にして進めていくと、こういうことになるんだろう。第三に、沖繩の軍事的機能というものがこのまま維持、強化されていく。これが今後の復帰後の沖繩の戦略的ポイントなんだろうと思います。いかがですか。
  131. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) どうも上田さん、私の言っていることあまりよく理解してくれないのか、あるいはくれる意図がないのか、その辺がはっきりしないのですが、アメリカが言っているのは、おそらく一九六九年のあの緊張した状態、これが今日台湾海峡に存在すると、こういうふうに私は、アメリカ考えておらぬと思うんです。しかし安保条約の適用対象としての台湾海峡、あるいは台湾、これは重要な問題だと、こういうことだと。私が申し上げておりますのは全くそのとおりなんでありまして、台湾海峡に緊張がある、そしてこれが武力紛争に発展する、そういうふうには考えておらぬ。これは一九六九年とまるきりもう情勢が変わってきておる、こういうことを申し上げておるのです。しかし第二の問題、つまり安保条約対象としての地域として台湾がどうなるかということにつきましては、これを排除するというまだ段階になっておらぬ、こういうことなんです。もう非常にはっきり申し上げているのです。前とあととちっとも矛盾も何もありはしない。  それから第二の、ニクソン・ドクトリンが、これが沖繩基地の増強の犠牲において行なわれるんじゃないか、こういうようなお話でございますが、私はそうは見ておりませんです。アメリカのこのニクソン・ドクトリンというものがどこから出てきておるかというと、これはもう財政上の理由、これが非常に大きな背景となっておる、こういうように見ておるのです。しかしアメリカ極東に対するにらみ、軍事的にらみ、これを減殺することなく財政負担を軽減をいたしたい、こういう考え方、これが私はニクソン・ドクトリンの主軸をなしておる、こういうふうに見ておるわけでございますが、それじゃ沖繩に兵を集中する、そうすれば財政上の負担が免れるか、こういうと、私はそうはならぬだろうと思う。そういうようなことから考えましても、沖繩の基地が強化される、その犠牲において他の諸地域の基地が整理されるのだ、そういうようなことには私はな?てこないんじゃないか。また現実に、私どもよく見ておりまするけれども、さような動きはないように考えております。
  132. 上田哲

    ○上田哲君 一言で終わります。  それじゃ、私は議論を長くできなくて残念ですが、三点がこれからの沖繩の戦略的意義としてポイントになるだろうと思うので、これはひとつぜひ議論をしたいと思いますが、そういうことから考えて、事前協議の問題だけ一点取り出してしぼっておきますけれども、ベトナム問題が起きてから、岩国海兵航空部隊の南ベトナムへの移駐をやるとか、日本に待機している第七艦隊を出動させるとか、あるいは沖繩の海兵師団の一部を海上待機させるとかというのは、これはどう話をしていってみましても事前協議対象にならぬという話は詭弁だというふうにだれでも感ずると思うのですよ。これはいろいろおやりになるそうですから、いまの短い時間じゃ何とも言いようがありませんから、ひとつしぼっておきますが、B52が沖繩に来るということは、これは再三言われておりますけれども、向こうが来たら断わるみたいな話じゃなくて、いまの軍事情勢からすれば当然沖繩の嘉手納を使いたいというのはだれでも考えることなんで、B52が来るなよということ、それだけ言われるのであればアメリカに向かってしっかり意思表示をするのはどうなんだろう、ひとつその辺が出ないのかということ。  それから、少なくとも事前協議の根本的な交渉をこれからお始めになるそうだが、少なくとも仕向け地にならぬために、今日出動命令がどう出るというようなことでなくても、ベトナムへ、戦争状態であるベトナム地域へ行くということは困るのだ、こういうことをひとつはっきり打ち出すことはできませんか。この二つにしぼります。
  133. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) B52につきましてはこれが沖繩にまた移駐してくるということは予想をしておりませんです。万一そういう事態がある、そうして沖繩基地からベトナム爆撃の目的をもって発進をするという事前協議を受けました場合におきましては、当方といたしましてはこれに応諾を与えない。こういうことで、これで御安心願いたい。
  134. 上田哲

    ○上田哲君 こっちからやらないかという……。
  135. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これはもう日本が希望しないことは言わぬでもよく承知しておる、これまた御安心のほどをお願いします。  それから事前協議制度というもの、これの本質をよく理解していただきたい。
  136. 上田哲

    ○上田哲君 不見識ですよ、そんな言い方は。
  137. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日米安全保障条約は、これはわが国としては必要とする、こういうたてまえをとっております。
  138. 上田哲

    ○上田哲君 理解しろとは何ですか。不見識ですよ。
  139. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いやいや……。
  140. 上田哲

    ○上田哲君 そういうことは不見識ですよ。こういうことをやらなければ仕向け地になるんじゃないかということです。何という答弁ですか。
  141. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そこで、日米安全保障条約を堅持していくためには、日米安全保障条約わが国戦争に巻き込むというようなことになると困る。そこでその事前協議がある。そのことを理解してもらいたいと、こう言っているわけですから、何もそういきり立つ必要はないんです。そこで事前協議、これは、わが国の基地が戦闘作戦行動の基地になっちゃ困るんです。そういうことにつきましては、これは絶対に阻止します、これは。ベトナム戦争につきましては阻止します。基地になる、そういう戦争に巻き込まれる、これじゃ困るのです。ですから、それはそういうふうに考えておりますが、しかしこの制度が始まってから十二年になり、たいへんいろいろ国会でも論議があり、われわれがあいまいな答弁をしているところもあるんです。そういう点を一切クリアーにしておきたい、こういうふうに思います。戦闘作戦行動のためにベトナムに行くということにつきましては、これは阻止する。これははっきりした方針を持っておる。そう御理解をお願いしたいと思います。
  142. 沢田実

    沢田実君 時間の都合がありますので二つほどお尋ねをしたいわけですが、最初に沖繩の核撤去の問題ですが、先ほどだいぶ答弁がございました。しかしその答弁は、繰り返し繰り返し、要するにアメリカで撤去したと言うたから、責任のある立場の者が撤去したと言うのだからそれを信ずる以外にない、こういうお話でありました。繰り返しておりました。ところで、私はアメリカが沖繩から核を撤去するについては、どっかへ運んだのでしょうけれども、いわゆるアメリカ極東防衛体制というものを新しく考え直さなければ、沖繩にある核をどっかへ持っていけばそれで済むというものではないんじゃないかというふうに、しろうとなりに考えます。したがって、アメリカアメリカとして新しい極東防衛体制というものをやはり考えて、沖繩からここへその核を撤去するんだということを考えているんじゃなかろうか。あるいはそれを実行したんじゃなかろうか。そういう問題ですから、あるいはこういう会合で、それはこういうふうにアメリカからきているというようなことを答弁することはおそらくできないと思います。ただ私がお聞きをしたいのは、日本の政府としては、アメリカのそういうような新しい極東防衛体制等も十分話し合った上で、そして沖繩の核は確かにあそこへ撤去されているんだという確信を持っての答弁なのかどうか。あるいはそういうことはもう全然アメリカは言ってくれない、ただ撤去したから信じろ、それだけなのかどうか。その辺をしぼって答弁をいただきたいと思います。
  143. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) アメリカは核というものについて、非常にこれに重大関心を示しておるわけです。私はニクソン大統領佐藤首相とのこの会談を傍聴する、そうしますと、私がつくづく感じますのは、核の扱い、これはもうほんとうに大統領の専管事項であると。こういうふうな感じがひしひしとするくらい慎重な扱いをしておることを見てとってきておるわけです。私は、そういう慎重な態度をとるその理由というものもよくわかります。そういう大事な核が、さあどこにこれから移されますとか、あるいは沖繩にこれがこういう状態であったんだとか、そういうようなことははなはだアメリカ当局としても開示しがたい問題である。私は、アメリカがそういうようなことからわが国に核の問題について話をしない、これもわかる。しかし、一般的な意味におけるところの核というものにつきましてはいろいろ話をしております。沖繩という現実の問題になると、たとえば——これはたとえばの話でございますが、核というものは貯蔵庫が必要である。その貯蔵庫は飛行場のすぐそばに置くものだ。そしてこれの移転、そういうようなものはきわめて簡易にできる性格のものだというような、一般軍事知識としての話は聞いておりますが、しかし私どもはそれはそれといたしまして、とにかく両首脳が約束をした。今度私のところへロジャーズ長官から手紙が来た。その手紙によりますると、その両首脳の約束は実行されました——もう過去形になっているのです。実行されましたとこう言っている。それから、さらにそれに引き続きまして、沖繩の核には関係のないことでありまするけれども、もうこれから、今後日本の核政策につきましては協力していきますと、こういうようなことまでつけ添えておる。そういうことをあわせ考えまするときに、アメリカは、日本本土はもとより沖繩におきましても、これはもう核は今後、いまも持たないが今後においても持たないという非常に明快な方針を打ち出しておるということを私ども理解し得る、こういうふうに考えております。
  144. 沢田実

    沢田実君 いまおっしゃったのは、いままでの繰り返しなんですよ。そこまでは予算委員会等においても答弁していらっしゃるわけですが、私が申し上げたのは、沖繩から核を撤去する以上、アメリカも新しい極東防衛体制というものを考えなければ撤去できないだろう、そういうことに対して日本政府に対して何かの話があるのかと。ここでは具体的にこうしますというようなことは言えないことはよくわかりますから、そういう話をした上であなた方はアメリカの言い分を信用しているのか。あるいはそうじゃなしに、いまおっしゃったのはぎりぎりで、それ以外に何もないとおっしゃるのか。
  145. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいま申し上げたとおりの経過から見まして、核は沖繩、本土を通じまして今日もうこれはないと、また今後もあり得ないということについて確信を持っております。
  146. 沢田実

    沢田実君 形式的には外務大臣としてはそれ以上答弁できないと思いましたので、私はそれ以外についてのことを具体的に申し上げたのですが、防衛庁長官のほうは、いま申し上げたようなアメリカのいわゆる核を沖繩から撤去した場合の極東の新しい防衛体制というようなことについての話というようなものはあるのですか。
  147. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 直接そういうことについて協議があったり通告があったりしたことは全然ございません。ただ、外務大臣が核撤去はもうすでになされた、これは私どもそのとおりであろうという推測をいたしております。で、そのことは御承知かと思いまするが、すでにペンタゴンにおいて沖繩の陸上におけるいわゆる核基地の使命は終わった。こういうことを議論の表に出したのは一九五五年です。そしてそれから一部否定をしまして、その後またこれをぺンタゴンの正式の見解として肯定したのが一九六六年ですね。考えてみればもう七年も前です。したがって、中国との雪解けの問題等もあり、もし核について必要であるならば、それは私は第七艦隊を中心とする海上の力に依存するということもあり得るので、沖繩の島に、基地に核があるということはひとつの軍事常識からいってもあり得ないのではないか。これは外務大臣が答えられるとおりだというふうに確信を持って様子をながめておる次第でございます。
  148. 沢田実

    沢田実君 時間もありませんので、質問のことにはあまり触れてくださいませんので、アメリカの新しい極東防衛体制についてというようなことはもう全然わからないということですから、それまでにしておきます。  次の問題ですが、いわゆるニクソンの強硬政策、その問題についてお尋ねをしたいわけですが、いままでの質問に対する答弁は、いわゆる国連憲章に基づく集団的自衛権の行使だとアメリカが言っていると、アメリカの説明をわが国も了承したというようなことをおっしゃっているように私は受け取っているわけでございますが、そこでお尋ねをしたいのは、国連憲章の五十一条に、国際連合加盟国に対して武力攻撃を発生した場合に、安全保障理事会で決定して何かの措置をする間自衛権の行使ということはできるというふうに書いてあるように私は思うわけですが、要するに国連に加盟していない国に問題が発生したという場合にもこの五十一条が適用されて、それでわが国集団自衛権の行使だと、こう解釈するというのは、どういうわけでそういうふうに解釈してらっしゃるのかお尋ねしたいと思います。
  149. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは、攻撃を受ける当該国が国連に参加しておるかおらないか、これは問題ではないというのが国際慣例でございます。国際慣例に従ってさような解釈をしておると、かように御了承願います。
  150. 沢田実

    沢田実君 五十一条と関係なしに、いわゆる慣例に従ってということですか。五十一条によりますと、国際連合加盟国に対して攻撃があったときと、こういうふうに受け取れるんですが、その点はどう解釈なさるんですか。
  151. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 憲章五十一条は、もちろん先生のおっしゃるとおり国連加盟国に対する武力攻撃があった場合にそのような自衛権の行使が可能であると、例外的措置として可能であるということをきめております。ただ、戦後の国連憲章の運用の面からわれわれ見ておりまして、特に朝鮮動乱がその第一番の先例でございまするけれども、それ以来国際間の慣行、特に国連をめぐっての慣行は、国連加盟国であろうとなかろうと、すべて集団的または個別的自衛権を持っておる、特に固有権利と書いてありますので、これは国連加盟国であろうとなかろうと当然持っておる。先ほどもちょっと御説明しましたとおり、日本はまだ国連加盟国になる前にもすでに平和条約の中でそういう権利があるということを確認されましたけれども、これも一つの実証ではないかというふうに考えております。
  152. 沢田実

    沢田実君 そういう慣行を認めてそういうふうにしているというお話ですが、要するにいままでの例は、アメリカか共産圏の侵略に対して——侵略ということばが適当かどうか知りませんけれども、それに対して自衛権発動だと言って行なった事実をとらえてそういうふうな慣行になっているんだと、こういうふうにおっしゃっていると思うんですが、そういうことで、将来そういう慣行で解釈をし、今後いろんな問題が起きた場合にそれでいいのかどうか。平和を主張している、最も尊重しなくちゃならない日本がそういう解釈ではたしていいのかどうかということが私は疑問なのです。ですから、この封鎖が今後どういうふうな方向に進んでいくのかわかりませんけれども、いろいろな人のいろいろな意見を聞いてみますと、海上封鎖が行なわれても実際的にはあんまり効果をあらわしていないだろうと、だから海上封鎖による直接の戦闘は起こってないじゃないか、ですから二段三段の今後のアメリカの作戦があるに相違ないというふうなことを言っている人もおるわけですが、外務大臣としては、今後のベトナムのアメリカのとる作戦といいますか、そういうものをどんなふうに見通していらっしゃるか、その点承りたいと思います。
  153. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが国は戦闘の当時者じゃございませんものですから、この戦闘がどういうふうにスローダウンしていくのか、あるいはエスカレートしていくのか、その辺について公式に見解を述べる、非常にこれは困難な立場にあるわけです。これは御理解願えると思います。ただ申し上げられることは、南北両当局ともに早く武器を捨ててそしてテーブルに着けと、こういうことかと思います。
  154. 沢田実

    沢田実君 外相が最初っから、そんなことしないで早く武器を捨ててテーブルに着いて平和を実現しろと、こう言っていらっしゃるんだとわかりますけれどもアメリカがやったことが要するに集団自衛権の行使だというふうにアメリカが主張している、それをわが国も了承しているというような日本政府としての態度をとっていらっしゃるので、私はこれで平和が来りゃあけっこうですけれども、これが拡大されて、あるいはアメリカが逆に上陸をしたり核兵器を使用したりするようなことが起これば、これはもうベトナム戦争がどこまで発展していくかわかりませんので、そういう点を考えたときに非常に心配だ、そういうことをおっしゃっている軍事評論家もおりますので、私はやっぱりその辺の見通しをつけて、いまの問題についてもわが国としての考え方をはっきりしなくちゃならぬ、こう思います。アメリカが北爆をやれば、当然これは世界から批判されるのはあたりまえのことです。それをわが国は、北爆賛成だと、よけいなことを言うから、私はそういう態度に対して心配でもあり、反対するわけですので、ですから、その点をひとつお考えをいただいて、アメリカのやっていることは何でもいいみたいな考え方を捨てていただきたいことを私は主張したいのです。それで、要するにいまの国際慣行として、国連に入っていようがいまいが、その国が侵犯された場合に集団自衛権の行使ということができるのだという解釈に立てば、現在は南ベトナムに対してアメリカが応援をして集団自衛権発動をした。逆に北ベトナムに対してかりにソ連ならソ連が応援をして、集団自衛権発動して日本の海上封鎖をしたらどうなりますか。それに対しても国際法の慣例上、慣行上これはやむを得ないのだと、のんきなことを外務大臣は言っておりますか、いかがですか、その辺は。
  155. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 今回のベトナムのエスカレーションは、アメリカ側は北ベトナム軍が中立地帯を越えて南を侵した、こういうことに対する対応の措置であると、こういう説明をいたしておるわけなんです。で、国際的にも大体そういう経過であるということは認められております。そういうのに対しまして、一方的にどっちが悪い、いいという、これを言うこと、これこそは、私はそういうことを言うこと自体が片寄った行き方じゃあるまいかと、これは私は両方に対しまして、戦いをやめてそうしてテーブルに着くべしと、こういう主張をするのが一番正しいのじゃないか、そういうふうに思うのです。私は沢田さんの話を聞いておりまして、ちょっとへんぱな考え方がどうも前提になっておると、こういうふうに思います。で、いま、それからさらにソビエトが報復したらどうだこうだというお話がありますけれども、わが方の立場、これはアメリカの立場を理解をいたしておるわけです。これは集団自衛権発動である、侵略に対する自衛権発動であるという立場でありまするから、よその国がわが国に対して何かするというようなことがあれば、それは侵略のエスカレーションである、こういう立場をとるほかないのです。かように考えます。
  156. 沢田実

    沢田実君 時間がないそうですからこれで終わりますが、私の時間がありませんので説明が十分に御理解をいただけないのだと思いますけれども、外務大臣がおっしゃっているのは、要するにいまおっしゃったように両方武器は捨てろと、そうして早くテーブルに着いて議論をやれと、こういうふうにあなた方が主張しているなら、ぼくはそれで納得するのです。ところが、アメリカが海上封鎖したことに対して、集団自衛権発動だからいいと、こうおっしゃっているでしょう、了解すると、こうおっしゃっているから、もしそういう立場をとれば、あなたは、要するに北側が南に侵略したことに対するそういうことだからいいと、こうおっしゃっている。だけれども、今後アメリカが、これで平和が来ないでさらにエスカレートして、さっき申し上げたように北ベトナムに対する逆上陸があったり、核兵器の使用にまでエスカレートしたら一体どうなるのだろう、そう考えたときに、いま申し上げたような事実が起こったらそんなのんきなことは言っておれないじゃないか。だからわれわれは、あくまで平和という立場に立ってそういう日本政府の姿勢というものをはっきりしておくべきじゃないか、こういう趣旨で申し上げたわけですから、お間違いのないように。
  157. 岩間正男

    ○岩間正男君 最初にお願いしておきますが、聞いたことだけに端的にお答え願いたい、時間はお互いに迫っておりますから。  そこでまずお聞きしますが、ベトナム問題の話し合いによる平和解決を外相は望んでおられますか。
  158. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 望んでおります。
  159. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、当然沖繩を含めた日本の基地が、アメリカのベトナム侵略のための艦船や爆撃機がこれを使っている、こういうことは望ましいことだというふうにはお考えになりませんね。どうですか。
  160. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) さようなことがもしあれば、つまりさようなことというのは、わが国米軍に貸与した基地が米軍の戦闘作戦行動の基地として使われるという事態があれば、これははなはだ遺憾なことである、さようなことはいたさせる考えはございません。
  161. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじゃお聞きします。具体的に。一昨日の衆議院の内閣委員会で、外相はグアム島からベトナムに出撃するB52に対する沖繩からのKC135の空中給油は事前協議対象にならない、そういう答弁をしておりますね。野放しですね。これは間違いありませんか。
  162. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 間違いございません。
  163. 岩間正男

    ○岩間正男君 いつからそういう解釈に変わったのですか。
  164. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これはいつから変わったというようなお話ですが、当初からそういうふうな考え方を持っております。
  165. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたは事実を御存じない。いろいろこれはありますけれども、国会の速記録の中に具体的に載っておる。たとえば四十四年三月十三日、これは私は参議院の予算委員会で、党を代表した総括質問の中で聞いております。要点だけ読んでみましょう。岩間正男君「ベトナム爆撃に向かうB52に空中給油のため、日本の基地を使う場合はどうです。これはどうなりますか。事前協議はどうなりますか。」これに対して国務大臣愛知揆一君——これも要点だけです。「日本の基地から明らかに作戦行動として発進をすると、そういう命令を受けて飛び立つというような場合は、これは従来から政府がしばしば言っておりますように、これは事前協議のもちろん対象になる。」岩間正男君「給油の場合です。」国務大臣愛知揆一君「給油の場合も明らかに発進する飛行機が作戦のために飛び立つという戦闘命令を受けて途中で給油をする場合はその範疇に入ると、かように考えます。」はっきりこう答弁をしておられるのです。したがいまして、これは政府の少なくとも三年前のこれは明確な答弁でございます。私たちはこれを信頼しておる。ところが最近雲行きが変わった。この前の衆議院のこれは予算委員会あたりで、いわゆる政府の統一見解というのは、空中給油の場合はこれは対象にならぬ、事前協議対象にならぬ。そして地上給油の場合はこれは対象になりますという答弁をしている。こんなことでいいですか。これははなはだ私はいままでのそういう政府の責任ある答弁に対する侵犯だと思う。いかがですか。端的に言ってくださいよ。
  166. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま岩間さんから読み上げられた応答が——四十四年のころです。——愛知外務大臣とあなたの間にあったことは、これは私も聞いております。しかし、それは地上給油の場合の話なんです。私どもはもう地上給油の場合はこれは事前協議対象となります、こういうことをはっきり申し上げておりますので、当時と今日とは何ら違いはない、かように御了解願います。
  167. 岩間正男

    ○岩間正男君 まことにでたらめです。これは速記録をよくお読みになっていない。給油の場合はどうですと私は聞いている。これに対して答えている、給油の場合はこれは全部含むわけです。愛知外務大臣の答弁はですよ、はっきりしています。もう一ぺんあの答弁を繰り返してみましょうか。「給油の場合も明らかに発進する飛行機が作戦のために飛び立つという戦闘命令を受けて途中で給油をする場合はその範疇に入ると、かように考えます。」途中の給油というのは、これは空中給油とそれから地上給油、それからもう一つは海上給油があるでしょう。この三つの場合が想定されるが、私は「給油の場合」と聞いたのでありますから、当然これはこの給油が全部入るわけで、これを総括した答弁なんです。いまのような地上給油なんというふうにこれを限定して読むことは、これは明らかに読み違いであり、そうして政府のかってな解釈である。そのかってな解釈が今日行なわれている。安保の十二年前のときにも明確にこれは岸総理答弁しておる。補給の場合についても、戦闘作戦の行動命令を受けている場合にはこれは事前協議対象になります、これを根本からくずすものでしょう。ひっくり返すものです。そういうので今日の事態に合わしていくと、そういうことでは私は非常にいかぬと思うのです。ことにあなたはそういう、吉野局長もここにいるでしょう、これは官僚答弁なんです。いつの間にかこんなことを、こういうはっきりした国会の論議を無視したその上に立ってこんな解釈をかってにして、そしてまかり通っているわけです。それに福田外務大臣は私は影響されちゃいかぬと思う。あなたはこれはへたをするというと次期政権をになう、あるいはになわないかもしれない、(笑声)いま重大なときですよ、重大なときですよ。そういうときに、あなたの一体大きさというものはどういうものだかということは、いま国民は注目の的で見ているのです。そういうときに、いま言ったような国会の論議をも無視したような、そうして官僚答弁にあなた自身が引きずられてそういうような答弁を繰り返しておることは、あなたのためにも私はとらない。また日本の平和のためにはむろんとらない問題です。この点について一体どうお考えなんですか。明らかにこれは読み違いなんです。だめです。
  168. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 御忠告はありがたく存じますが、この空中給油というのは非常にこれはデリケートなケースなんですね。地上給油、これははっきり事前協議対象にしますが、空中においてやったならどうなんだと、こういうお話、これはまさにいろいろ御議論のあるところであろうと、こういうふうに思うのです。私どもはまあとにかく米軍に補給する、あるいは米軍の兵器を補修、修理をする、こういう責任があるわけなんです。そういうことでございまするから、補給行為、これは当然認めなければならぬ、こういう立場にあるわけでありまするが、しかし、この補給行為が戦闘作戦行動と密接不可分のものにつきましては事前協議対象とすると、こういうことを言っておるのです。それが、このケースが一体戦闘作戦行動と密接不可分のものかどうかという判定の問題なんです。この判定が非常にデリケートなものですから、そこでケース・ケース割り切った考え方をしなければならぬ、こういうふうに考えまして、地上の場合は事前協議対象にする、それから空中給油の場合はそういうことはいたさない、そういう結論になったわけです。また、そういう結論にいたすためにはそれだけのまた理由を持っておるわけであります。
  169. 岩間正男

    ○岩間正男君 全くそれは御答弁にならぬと思うのです。私はこういう事態を予想したから三年前にこれははっきり聞いておるのです。それに対して政府の答弁というのは明確にこれは出されておる。はっきり言っておるのです。事前協議対象になりますと、こう言っておる。それに対して情勢が変わって、それに合わせるようないまのような御答弁をなされています。しかしKC135というのはどういうものです。実際これの性能については、あとで詳しく聞きますが、たいへんなものでしょう。これは私も驚いた。もう何ですよ、十一万八千リットルですね、一ぺんに積むのは。タンク車だったら十二台分くらいです。一ぺんに積むんです。これが沖繩で何機出ていますか、KC135もうあしたに五機、夕べに五機というふうにどんどん出ておる。そして七百波、八百波というこのベトナムの補給を全部やっておる。こういうことで、あなたが一番最初にあくまでも平和的解決を望むとか、それから、作戦行動をやることは望ましくないと言っても、こういうことを言ったって全部空言になるんじゃないですか。明らかにこれは行ってベトナムのたくさんの人を殺しておる。そして中には学校まで爆撃をしております。無差別爆撃になっています。こういう事態の中で、あなたこういう問題をとめることができないで、これに対してはっきり事前協議で、そしてアメリカに対して明確にやはりこういうことはやめるべきだと、こういう意思表示もできないでいて、そして口で平和的解決だ、話し合いだと言ったって話になりますか。そしてこれは次期総理がつとまりますか。そういうことです。私はそういう点からはっきりあなたはいま国民に向かって言っておるのですがね。世界に向かってもこれは言っておるんです。あなたの答弁いかんということは国民は見ておるのです。自民党内閣のコップの中だけできめる問題ではないのです。そういうときなんです。私ははっきりこのようなごまかしの答弁を、いつの間にか官僚答弁を仕立て上げて統一見解を出すというやり方に対しては、私は絶対これは了承することができません。これに対して、まあ時間も来たようですから、あなたが答弁ができなければ答弁なさらなくてもよい。もしやられるなら、端的に答弁してください。答弁のいかんでは、また質問しますよ。
  170. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私どもは、岩間さんと違いまして、日米安全保障条約はこれを堅持する、こういうたてまえに立っておるのであります。そういうたてまえです。ところが、岩間さんの党はそうじゃない。反対の立場ですから、その立場によって運用問題に対する見方というものが違ってくるのかと思いますが、私どもは、日米安全保障条約を堅持するというたてまえから申し上げまして、ただいまとっておるわれわれの見解、これろ妥当の見解であると、かように考えます。
  171. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは重大な発言ですよ、立場によって違うとは。解釈じゃない。いま法律のなにを問題にしておるんです。条約に付随して日本国民が戦争に巻き込まれない歯どめとしてのこの事前協議を、あくまであのときあなたたちはこれでもって説明して、それで十二年前に条約を通した。その問題を論議しているときに、立場、安保に対する態度などということでは、全くこれは答弁になりません。これは全然、そんな答弁は、国民だって受け付けませんよ。それだから、もう、御答弁にならなけりゃけっこうです。
  172. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 本件に関する午前中の調査はこの程度にいたしまして、後日また審査いたしたいと思います。午後二時三十分まで休憩いたします。    午後一時二十一分休憩      —————・—————    午後二時三十六分開会
  173. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  国の防衛問題に関する件を議題といたします。  御質疑のある方は順次発言を願います。
  174. 上田哲

    ○上田哲君 午前中の質疑でも非常にわかりにくいことになるのは、政府のアジア情勢についての緊張もしくは雪解けといわれるような基礎的な認識の点であります。このことは、根本的に大きな軸になっているニクソン・ドクトリンというものがどういうふうに把握されているかというところから出発をするだろう。ニクソン・ドクトリンをどう思うかといってみたところで少し大きくなり過ぎると思うので、少しわけ入ってみたいんですが、これはまあ外務大臣も一緒にいろいろお話を承りたいところでありますが、その意味も含めて、私は少しこういう機会ですから基礎的に御見解を問うてみたいと思うので、そういう意味お答えをいただきたいのだが、ニクソン・ドクトリンというのは外交方針であるのか、あるいは軍事防衛方針であるのか、あるいはそういうものをミックスされたとするならば、どういうウェートをそれぞれ持っているものなのか、その辺の受け取りからひとつ御説明願いたい。
  175. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 一口に説明といいますと非常にむずかしくなりますが、私はもともとああいう考え方のよってくる原因は、何といってもアメリカの経済事情、これが大きく作用したことはいなめないと思う。したがって、アジア圏のそれぞれの国々が、従来、アメリカが持っておった防衛責任を自分の力において充実をさせ、アメリカは手を引ける可能性のあるところからはできるだけ計画的に手を引いていこう、まあこういう構想に立つわけでありまするが、もとより中国との関係が、いわゆる封じ込め政策から友好的な関係に入ろうという、大きな、まさに百八十度ともいえる一つの姿勢の転換、それから従来国連の代表が台湾政府であったものが、今回、大陸がその代表権を獲得した。特に封じ込めでアメリカと対決姿勢にあった中国大陸政府が国連の場に登場してきた。このことは、私はやはり東洋の緊張緩和のきざしをもたらしたものとしては否定することのできない大きな現実だと思います。したがって、こういう環境のもとにアメリカ極東の地域及びアジア地域全体にどういう外交を展開するか、これは上田委員が御指摘になりまするように、外交の一つの方途、これはもとより根幹をなす思想でありまするが、現実的にはやはりアジアに対するアメリカの従来の武力介入といいまするか、その姿勢を改めていこうとする方途が率直にあらわれておるものと、こういう理解に立っております。
  176. 上田哲

    ○上田哲君 私のお尋ねしたいのは、まあ総合的な感触をいまお話しになったんで、まあそれはそれでけっこうですけれども、特にお伺いしたいのは、外交方針として受け取っておられるのか、より多くその中に軍事政策というものが盛り込まれているという傾きとして受け取っておられるのか、そういうことなんです。
  177. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) アメリカの国務省にポリティコミリタリーというビューローがあります。あるいは在京のアメリカ大使館にもポリティコミリタリーの担当参事官がおります。つまりここではポリティックス・アンド・ミリタリーではなくてポリティコとミリタリーとをくっつけているところに非常におもしろい表現があろうと思いますが、いまのニクソン・ドクトリンもまさにそういった性格のもので、日本風に言えばおそらく軍事面を多分に含んでいるところの国際政治におけるアメリカの政策である、つまり私からするならばやはり外交的——外交と言うとちょっと範囲が狭いように思うんですけれども、国際政治的な政策の分野のほうがウエートとしては大きいんではないかというふうに感じます。
  178. 上田哲

    ○上田哲君 ちょっと、これもニュアンスですけれども、おっしゃることはわかりますよ。おっしゃることはわかるんですが、たとえばいま役所のセクションでお話があったけれども、そういうカテゴリーで言うなら、アメリカのホワイトハウスがあり、国務省があり、ぺンタゴンがある、それがどういうふうなからみ合いの中で、主務官庁と言うと変ですけれども、どういうふうな作成手順をもってきたかというようなことでお答えいただいても一つの手順にはなるだろうと思うんですが。
  179. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) われわれ米軍の制服の幹部の意見を間接に聞くことがあるんですけれども、このニクソン・ドクトリンについては、やはりホワイトハウスが中心、つまりニクソンそのものの思想であったはずであります。というのは六七年の秋のフォーリン・アフェアーズという雑誌の論文をニクソン大統領が大統領になる前の年に書いておりますが、そういう意味ではホワイトハウスを中心にするスタッフの考え方、それが次いで国務省であり、したがってそれの国の最高政策について国防省は従わされたという感触を持っております。
  180. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、念のためですけれども、グアム・ドクトリンとニクソン・ドクトリンとはどういう関係になりますか。
  181. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 六九年でありましたか、七月にグアムでいわゆるニクソン・ドクトリンの内容をなす記者に対する会見での発表があったと思いますが、その後に、ちょっと正確ではありませんが、本国での何かの演説のときにそれが再び言われて、それ以後ニクソン・ドクトリンといわれたと思います。したがいまして、内容的にはグアムでの説明が最初になったと思います。
  182. 上田哲

    ○上田哲君 そこでニクソン・ドクトリンがホワイトハウス、つまりニクソンの国際政治政策だと、そういうことばを使われましたが、まあ世界政策といいましょうか、世界ポリシーということとして出されてきたという大まかなつかみ方はそれでいいと思うのですけれども、私のどうしてもここで明らかにしてもらいたいと思うことは、色濃く軍事政策というものがその中に含まれているはずでありますし、また逆に言えば、軍事政策を除いてはニクソン・ドクトリンというものは成り立たないということはそういうドクトリンが出てくる経過からいっても明らかだと思うんですね。で、その軍事政策は通常トータル・フォース・コンセプトということばであらわされているわけでしょうけれども、そういう受け取りでいいのかどうか。
  183. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私も大体そういう考え方に立っております。
  184. 上田哲

    ○上田哲君 さらにもう一つ突っ込んでいいますと、ニクソン・ドクトリンを大きく外交政策だというふうにとらえるならば、この外交政策を軍事面にあらわしたものがトータル・フォース・コンセプトであるという考え方と、実はトータル・フォース・コンセプトこそがニクソンドクトリンの中の柱であるという考え方とに分けてもいいと思います。これはどちらをおとりになりますか。
  185. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはやはりどうも分けて考えるということのほうが不自然であって、両面を備えておるというふうに表現することが私は表現としては正しいと思います。
  186. 上田哲

    ○上田哲君 大体それでいいと思います。ただ、私がペンタゴンへ行って話をしたときなどの感触で言えば明快にペンタゴン当局が言っているのは、これは同じものだということですね。これはペンタゴンというのはそういうところですから、そういう表現になるということは割り引きしてとらなければならないかもしれないが、分けて考えることは意味がないとおっしゃる。そしてそれは、もっとアメリカの国防総省の見解でいえば、ニクソン・ドクトリン・イコール・トータル・フォース・コンセプトであると、こういうところまできているわけですよ。それでいいわけですね。
  187. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君)それでいいと私も思います。
  188. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、これは私は考えてみればこういう議論はあまりやらなかったんで、国会も不勉強だと思うし政府もあまり勉強しておらぬと思います。ニクソン・ドクトリンというものが、国会の論議でもそうだし、日本全体の受け取りからしてもそういうふうには受け取られておらぬと思うんですよ。より多く外交方針であり、あるいはアメリカがどうも苦しくなったんで兵隊とドルを外地から引き揚げる方針であるというふうな、つまり撤退方針であるというだけの取り上げ方でしかないところにいろいろ問題が出てきているように思うんですが、その点はいかがですか。
  189. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私は、一つの撤退方針というものが露骨ではないがあらわれておることは、これは否定のしようがないと思います。何となく世界の警察官というようなアメリカ軍隊の性格をここで是正していこう、それには従来の協力態勢の国々の事情に待つということが前面にあらわれておりますね。同時にこのことは、しからば、従来の日米安保条約もそうでありまするが、アジア圏におけるいろいろな各種の自由圏との防衛条約、そういったものをにわかに運用上空洞化するような誤解を与えてはならぬ、そのあたりに外交的な非常なことばの使い方等々においても神経を使った点があろうかと思いまするが、事実上はやはり極東地域に対する過剰介入を是正をしていこう、こういう姿勢があることはいなめないと思います。
  190. 上田哲

    ○上田哲君 それはやはり一面的な理解というか解釈なんではないかと私は言いたいわけで、確かにアメリカの金と兵隊は下がっていくと、こういうことにはなるだろうと思います、これは総体として。しかしもう一つ大きい総体としてはそうではないということがあることが、先ほど来長官もお認めになったような単なる外交方針、後退の外交方針ではなくて、トータル・フォース・コンセプトと同じものであるということになる意味なんですね。そもそもトータル・フォース・コンセプトというのはどういうものか、これをひとつ御説明をいただきたい。
  191. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) トータル・フォース・コンセプトというのは、国際レベルの問題と国内レベルの問題と二つあります。国際レベルの問題では、たとえば地域各国といいますか、アメリカと同盟を結んでいる各国は、その国の防衛、特に人員の提供、したがってこれは地上兵力になるわけでありますが、そういったものについては、できるだけの防衛努力をする。それに対してアメリカは、これを経済的あるいは軍事的に援助をする、並びに背後にあって海、空の兵力、特に核脅威がある場合には、核のたてによってこれを補う。そこで、アメリカのそういった大きな兵力と、それから同盟諸国の、主としてこれは東南アジアになれば、地上兵力は特に問題が大きいわけでありますが、そういった兵力とあわせて、地域の安全保障を維持をしていくということ、それですなわち総合して防衛力がここで全うされるという考え方であります。国内の問題については、御承知のように州兵、あるいは予備兵力、そういったものをなるべく増強して現役兵というものをなるべく縮小する、そうしてそういうものをあわせて国内におけるアメリカ自身防衛力として維持をしていく。アメリカ自身のと申しましたが、対外援助も含めての、アメリカとしての防衛力を維持をしていく。英語ではリソーシズ、こういうことばを使っておりますが、これは、米国及びそれぞれの国のリソーシズをあわせて地域の安全保障を全うしていこうという考え方であります。
  192. 上田哲

    ○上田哲君 もう少しはっきりしていただきたいのですが、国内はいいです。トータルというのは何のトータルですか。
  193. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 同盟国の軍防衛力と、それからアメリカの軍事力、それをあわせたもの、それがトータルということの意味であります。
  194. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、ちょっと話を横にずらしますけれども、安保条約があります。そしていまニクソン・ドクトリン、あるいはトータル・フォース・コンセプト、この場合同義語で使っておりますが、出てきた。これと安保条約との関係はどういうことになりましょうか、長官。
  195. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) トータル・フォース計画と安保条約というものは、やはり米軍日本と結んで、どのように条約上効用を果たしていくか、それも、やはりアメリカ側の見解として意味づけたものというふうに考えております。
  196. 上田哲

    ○上田哲君 ちょっと抽象的でよくわかりませんがね。トータル・フォース・コンセプトというのはアメリカが出したものではありますが、ことばがひっかかるかどうかわかりませんが、アメリカの世界政策ですね、アメリカの世界政策の中でアメリカのガバメントは、日本との間には安保条約を結んでいるし、いろいろなコミットメントがある。ということになれば、これは相当密着した関係があり、その締約国の一方である日本の場合は、これとどういう関係を持つかということはかなり具体的なことですね。
  197. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは具体的に言いまするというと、日本には、米軍というものは、事実上軍隊以外は目ぼしい部隊というものがない。もし事があったときには、有事即応の形で米軍を配備する、こういう考え方をこのトータル・フォース計画の中では一つ考え方、これはたとえば日本とか、タイとか、ベトナムの場合も含めて、含められないわけではないと思いまするが、そういう考え方をやはりアメリカ側としては示している。したがって日本としては、自主防衛ということがよくいわれまするが、これもなかなか自主防衛の限界というものがむずかしいのであって、私ども今度の四次防計画においても、局地戦に通常兵器でたえられる装備、こういうことを言っております。したがって日本でたえられないときには、有事即応の形でアメリカ側に期待する。そのあたりのことについては、このトータル・フォース計画で触れておる一つのケースというふうに考えております。
  198. 上田哲

    ○上田哲君 私がお伺いしたいのは、もうちょっと違う論理のことなんです。  まず、アメリカ側のことを言いましょう。アメリカ側は、たとえば各国にいろいろなコミットメントをするわけだけれども日本とは安保条約を結んでいる。アメリカ日本と安保条約を結ぶということは、それは時間的にはあと先はありましょうけれども、今日のアメリカの姿勢としていえば、アメリカが世界に向かって出しているトータル・フォース・コンセプトの中で安保条約が結ばれて運用をされるということでいいですね。
  199. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そういうことですね。アメリカ側からいえばそのとおりだと思います。そういうことをさっきから御説明したつもりでありまするが、ことばが足りなかったかもしれません。
  200. 上田哲

    ○上田哲君 そうすると、そのアメリカと結んでいる安保条約の片一方の締結国である日本防衛計画なり自衛隊の体制というものは、安保条約を通してトータル・フォース・コンセプトの中のパートであるということになるわけですね。
  201. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 向こう側からいえば、そういうことでありましょう。
  202. 上田哲

    ○上田哲君 こっち側です。
  203. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) こっち側からいえば、事あるときに来援を依頼する、そのことについては触れられておる、こういうふうに理解しております。
  204. 上田哲

    ○上田哲君 そこの論理を聞いているのですよ。つまり、アメリカに従属しているだろうとは特に言いませんよ。そういうことにいま一生懸命持っていこうと言っているのじゃありませんが、明らかにアメリカの核のかさであります。そうしてアメリカの戦闘行動に対してわれわれの自衛範囲では協力もするのでありますというような、強弱の関係、優劣の関係でいえば、明らかな力関係がある中で、安保条約が必要だと政府かおっしゃるのは、アメリカの来援なかりせばわが国防衛が全きを期さぬという意味でしょう。そういうことになれば、アメリカが各国に向かって行なっているコミットメントの中で、安保条約というものはその中で位置づけられる。先ほどお認めになったように、アメリカの論理としてはトータル・フォース・コンセプトの中でいま安保条約が運用される、組み込まれる、こういうことになるわけですから、そうすると日本側の防衛努力なり、防衛体制というものは、そういうものの中でやっぱり位置づけられているということになるでしょうと私は言っているので、そうでないということがあるのかどうか。
  205. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そういうことになると思います。  それから日本自衛隊からいうと、補完的な部隊協力、これもアメリカ側に求めている補完的部隊の協力計画というものに立って自衛隊というものは運営されている、こういうことはこちら側からは言えると思います。
  206. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、さっきのこっちへおいといた論理に戻りますが、つまり、そうなると、トータルの問題になってくるわけですね。先ほど来政治がついていったように、単なるアメリカの外交政策ではなくて、アメリカの軍事政策がイデオロギーの中に軸となっているのである。それはトータル・フォースというものを考えての話なんだ。そうしてそういう形の中で安保条約もあり、両方の端末をアメリカ日本が握っているのであるという御説明になってまいりますと、このニクソン・ドクトリンは、トータル・フォース・コンセプトは、ひっきょうするところ、アメリカの新しいコンセプト・トータルをひとつ設定をしていく軍事体制の中で、軍事体制ということばがいけなければ、防衛体制でも、同盟体制でも、この場合はあえて私はこだわりませんけれども、そういうことの中で位置づけられていく論理になるのだ、こういうことになりますね。
  207. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 確かにそういうことになりますが、日本には日本独自の見解もありまするし、日本の国策もあります。そういうものを無視してアメリカのトータル・フォース計画というものが立てられたり、遂行されるべきものではありません。したがって、そういう、日本側からいうならば、制約のもとにアメリカ側の計画というものが進められることもあり得る。しかし、これはあくまで日本の主体性を尊重しながらいくところにこの意義があるというふうに考えております。
  208. 上田哲

    ○上田哲君 私はここで日本の軍事的従属性がどれくらいあるかという議論のほうに持っていこうとしませんから、そのところはあまり神経質にならずに議論をしていただきたいのですが、やっぱりいままでの論理からすれば、おっしゃったように、日本国憲法を掲げ、日本の独自の防衛構想があるとするならば、それを掲げて防衛庁当局は、日本政府は、アメリカ側と安保条約を結び、トータル・フォース・コンセプトへの参加を果たしているのだというふうに考えましょうけれども、しかし、それはそれとして、日本の独自性を疑うのでないにしても、全体とすれば、いまやアメリカと同盟体制にある日本防衛力というようなものは必然的に論理的にトータル・フォース・コンセプトの中の一部となっているんだということになるわけでしょう。
  209. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 長官の申されていることと同じことなんですけれどもアメリカ側から見れば、トータル・フォース・コンセプトの一部を日本防衛力がなしているということにもなりましょう。ただしその場合に、日本側から見た場合にそのとおりであるかというと、そうではない。なぜかなれば、アメリカのトータル・フォース・コンセプトであればアメリカの意図するままに動いてくれるかもしれない。でなければトータル・フォースにならないわけでありますが、しかしわが国の立場に立って見ると、わが国防衛力は単純に専守防衛という範囲でしか使われない。そしてわが国の足らざるところだけをアメリカに依存するということでありますから、言うならば、トータル・フォース・コンセプトであるとしても、アメリカにとっては異端児と申しますか、そういうものの性格を持つ。したがって、わが国としては自主的にものごとを考えるものである。  もう一つつけ加えておきたいと思うんですけれども、トータル・フォース・コンセプトがニクソン・ドクトリンのあらわれである、少なくとも軍事面におけるあらわれであるとした場合に、ニクソン・ドクトリンというのは、一国からの要請があった場合にすぐ応援してやろうということを言っておるわけでは実はありませんで、その国の要請があり、かつまたその地域の諸国が共同して責任を持つ、共同して要請をするという求めに応じてアメリカは応援してあげましょうというのがニクソン・ドクトリンの趣旨であります。そこにまたハロラン論文なんかが出てくる根拠もあるわけでありますが、しかしそういった基礎に立って考えてみると、かりにトータル・フォース・コンセプトの一部を日本が果たすであろうと米側は考えるにしても、非常に意のままにならないものであろうし、日本側から言えば、アメリカはどう考えておろうと、専守防衛に徹した防衛力であり、足らないところは日米安保体制でアメリカに依存するという関係が成り立っているということであろうと思います。
  210. 上田哲

    ○上田哲君 そこが明快じゃないですね。専守防衛かどうかはこの際問わぬです。まあ海外派兵のことをいま論及しようとしているんじゃないから、これはしばらく切り離しておきます。  それから、後段に言われた部分の問題は、言うところの肩がわり論であって、われわれからすれば。防衛庁側、政府側から言わせればそれは自主防衛の努力ということになるんでしょうから、それはまあ持っていくところのウエートによってもいろいろ変わってもくるだろうし、主張の立場によって変わるから、それも切り離しておきましょう。したがって、いまここで重要に取り上げるべき御答弁の中の論理は、アメリカはトータル・フォース・コンセプトを持って、まあそのワールドポリシーを持ってきた。それに対して日本はそのトータル・フォース・コンセプトとはいま合致しない部分があるということですか。
  211. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 防衛局長の説明と私の説明と、そうやっぱり違っておりませんですね。要するに日本の立場から言いまするならば、アメリカのトータル・フォース計画の中にもちろん含まれておりましょう。含まれておりましょうが、これは補完的な立場で、日本自衛隊というものが主導いたしておりまするから、やはりいろいろ制約を受ける。これはやはり友好国として相手国の意向を尊重するということはあたりまえですから、アメリカ側にとってさしたる矛盾はないと思います。で、一つの方向として、たとえばNATOだとか韓国だとか、こういう連合部隊計画、全く一体になって立ち働きをするという計画、それから日本、まあタイなんかもこれに含まれるでしょう。補完的な部隊計画、それからインドネシア等のような補足的な部隊の計画、それからアメリカが独自で一方的な部隊計画をしておる、この四つぐらいに分類することができると思います。で、従来は、沖繩はややこの一方的部隊計画に類するものであったというふうに私ども思えないことはないと思います。ところが、これが主権が日本に戻ってきたというこの厳然たる事実に徴しまして、この沖繩も補完的な部隊計画にアメリカとしてはならざるを得ない。まあいろいろ議論をしてまいりまするというと、あのベトナムの問題がエスカレートして、今日和戦両様のかまえとはいいながら、戦闘的には激しくなっておるということのために、いろいろ午前中から疑義を生じたり御質問がなされたわけでありまするが、当然これは日本意思というものを踏まえながらアメリカ行動しなければならぬその一環の中にこれも入ってきたというふうに思います。したがって、トータル・フォース計画というものは、その四つの分類を、まあ。パートナーシップに立って、いままでの条約国それぞれに納得させるような姿で方針が打ち出されておる。アメリカがそういう方針を打ち出すにあたって、日本憲法だとか日本自衛隊はとか、日本のかねてよりの政策はなんというようなことは一々うたっておりませんが、アメリカ独自の計画を打ち出しながらも、当然日本の方針というものがそこに大きく作用することは、いかにアメリカの国軍といえどもこれは当然なことである、そこに友好の友好たるゆえんも存在する、こう考えております。
  212. 上田哲

    ○上田哲君 だから、そういう演説の部分は除きますと、だから、つまりアメリカのトータル・フォース・コンセプトが打ち出してきている論理ですね、ほんとうはもっと作戦計画というようななまなましいことばを使ってもいいですけれども、論理の中に日本防衛庁の構想というものは完全に埋没するのかという考え方一つあるでしょう。
  213. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) それは埋没しないかな。
  214. 上田哲

    ○上田哲君 埋没しないというなら、防衛局長が言われたように、そこには異端児ということばを使われたけれども、合致しない部分が出てくるということにならざるを得ないわけですね。そうですね。それは憲法に合致しないとか合致するとかという話と違いますよ。少なくともそういうことになってくれば、この安保条約を結ぶにあたって、政府当局は憲法と矛盾する条約を結んだんだということになっちゃうわけですよ、あなた方の解釈ですと。そこまで戻ったんじゃこれはたいへんなことになるから、私もあえてそこまでいきませんよ。いきませんが、もしそんな論理をかざされるなら、みずから政府は憲法に違反する条約をおそるおそる結んだということになるんじゃないですか。だから、その議論はちょっとまああえて、けがをするからおやめになっていいし、そこまで私はひっかけようと思っているわけではない。憲法を踏まえた上で、憲法に違反しないものとして政府のほうは結ばれたわけでしょう。
  215. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そうそう。
  216. 上田哲

    ○上田哲君 そういう前提に立っての話をしているんですが、その上で、アメリカのトータル・フォース・コンセプトに埋没をするのか、完全に包含をされる形になるのか、それとも、さっき言われたような異端児として、ことばの意味するところが何であるかはまた逐次明らかにしていきますが、違ったズレが出ているのか、そこのところはどうなんだということをはっきりしていただきたい。
  217. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御質問の趣旨はよくわかりました。それは日本が厳然たる主権を持っておりまする以上、このことは日本側の意向というものが、日本側から言うならば、あくまで優先するわけでありまするから、まあ久保君のことばをかりるならば、アメリカ側から見れば日本自衛隊というものは、従来の諸外国の軍隊とは違いまして、海外派兵もしなければ、その行動面においては非常な制約を受けておるわけですから、もちろん、これはまあ異端児という表現が当たるかどうか存じませんが、いずれにいたしましても、アメリカ側にとっては、韓国の軍隊とか同盟諸国の軍隊とは違った性格を持っておる。まあそういうことはアメリカ側承知の上で計画はしておるものという説明で御納得いきませんかな。
  218. 上田哲

    ○上田哲君 全く納得しないんです。もっとそれじゃ具体的にやってください。どこがずれているんですか。
  219. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) たとえば、午前中に外務大臣との間で議論になりましたように、沖繩の基地、これはまあ従来からいうならばアメリカの基地であったわけですから、ここからベトナムに直接進撃をするというようなことには今後制約を受けるわけですね。事前協議対象になる。KC135の空中給油については、これは事前協議対象としないが、そうでない直接進撃というものは、空であろうと海であろうと、なされるというような場合には事前協議であり、またそれが戦争に巻き込まれる可能性があるというようなときにはわがほうはノーと言う。ということになれば、これは非常に制約を受けるわけですね。ただ、アメリカ側に基地を提供したから、その基地は自由自在に諸外国の基地のように使えるというていのものでないことは、これはもう申し上げるまでもない  ことでございます。
  220. 上田哲

    ○上田哲君 それはおかしいじゃないですか。だったらずれないことになるんじゃないですか。
  221. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) それ、ずれるじゃないですか。
  222. 上田哲

    ○上田哲君 ずれているんですね。ずれているということは、それじゃアメリカは、沖繩からたとえばB52を使って向こうへ行きたいということを申し入れているわけですか。申し入れているにかかわらず、日本側がノーと言っているからずれているというんなら、私は話は非常によくわかる。事前協議は何べんか持ってきたけれども日本がノーと言ったために、アメリカがこれだけやりたいんだけれども、八〇しかできなかった。二〇のノーがあったというんなら、ズレというのは非常によくわかる。事前協議一つもノーになってないじゃないか。事前協議自身がないじゃないか。ということは、アメリカのトータル・フォース・コンセプトと、アメリカの軍事的要求と日本の要求とは合致しておるということ以外にないじゃないですか。どこがずれているんですか。アメリカが要求しましたか。
  223. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) それは巧みにどうも表現なさるともっともらしく……。
  224. 上田哲

    ○上田哲君 何をおっしゃる。あなたがそういうふうにおっしゃったんじゃないですか。
  225. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 聞こえるんですが、私はそうじゃないと思うんです。要するに日本側がノーと言う場合もあるから、アメリカ側は制約を受けて、ズレができてもそういう相談は持ち込めない。持ち込まない。そういう形が現在の現象。いわゆるそういう形で進んできておるというふうに私どもは思っております。
  226. 上田哲

    ○上田哲君 だったらいまのところはずれていないということになるんじゃないですか。何がずれているんですか。ずれているところを言ってください。
  227. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) やはり不便を感ずるでしょうね。
  228. 上田哲

    ○上田哲君 そんなことはズレじゃありませんよ。
  229. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) ですから不便を感じたり、思うようにやれないということは、沖繩の基地が使えなくなってグアムに重点を置くとか、あるいはフィリピンの基地に重点を置くとか、おのずとその重点が変わってくるということをズレと言わないでしょうか。
  230. 上田哲

    ○上田哲君 言いませんな、それは。
  231. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) それがズレでないというんなら、それは今後われわれにいろんな問題を設定して相談してきたときに、こちら側からやはりノーと言うこともあるわけですから、そういうときには明らかにズレになる。これはもうさっきあなたがおっしゃるとおりです。だからそういうことにならないように従来はアメリカ側も神経を使っておった、こういうことは言えないでしょうか。
  232. 上田哲

    ○上田哲君 それはもう全然ことばがぐるぐる回っているだけでまるきり説明になっていませんよ。それじゃお伺いしますけれども、トータルというのは何ですか。まあそれを説明するのはむずかしいから、ことばのあやで追いかけはしません。しかし言えることは、アメリカの要求しているトータルは守られているんですか。
  233. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) トータルということばが、アメリカの兵力はもちろん同盟国の力を合わせてということを申し上げましたが、その力の中に、先ほどちょっと英語で申し上げましたあらゆるリソーシズを動員してと、そうしますると、たとえば東南アジアの諸国ですと、人員がリソーシズになるわけでありますが、日本の場合には、たとえば武器の輸出でありますとか、それからたとえばいま問題になっておりまするようなベトナム軍の物の修理でありますとか、それから今度は兵器生産技術を提供するとかいったようなものは、日本については大きなリソースになります。もっとも一番大きなリソースは、先ほどいま長官が言われたような軍事基地として使い得るということが非常に大きなリソーシズになりますが、そのほかいま私があげたようなことも、アメリカのトータルという観念からいけば、地域各国にせっかくそれだけの能力があるならば、それを発揮して極東なら極東の平和に寄与してほしいと思うのは本来の筋でありましょう。しかしながら、それは憲法上の制約あるいは日本政府の制約でそういうことはやらないという意味においては、ズレということばは適当かどうかは存じませんけれども、ほんとうの意味のトータルにはなっておらない、こういう意味合いであります。
  234. 上田哲

    ○上田哲君 それは違うんです。この場合のトータルというのは、兵員が幾らで航空機が幾らでという説明は適当ではない。しかしこのトータルの基準として少なくとも最低限あることは、アメリカが撤退する以前の全体兵力ですね、非核兵力でもいい。その兵力の総体を落とさないということがトータルの基準になっていることはまぎれもないことだと思うんです。
  235. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) それが中心観念であることは否定いたしません。しかし、それに加えて、さっき申し上げたそれぞれの同盟国のリソーシズを動員するということが非常に大きなまた別の面のファクトになっております。そういう意味では、わが国については相当制約をしておるということは言えようかと思います。
  236. 上田哲

    ○上田哲君 よしわかった。そこでですよ、そこで、はっきりその論理から出てくることは、アメリカはニクソン・ドクトリンなるものが受け取られている間違いのようなものではなくて、アメリカはトータル・フォース・コンセプトにおいて単なる撤退計画ではないのだと、すなわちアメリカに限ってのみ言うならば、それはアメリカの人と金との撤退であるということはあるだろうけれども、それは全体ですね、それ以前、撤退前の数量、総量に対してそのトータルは減らさないということがまさに名のとおりトータル・フォース・コンセプトであるのだと、ことにリソーシズという話を出されていま説明された論理をぴしっとそこに合わせるならば、つまり、トータル・フォース・コンセプトというのは、日本にとっては、あるいはアジア同盟各国にとっては、アメリカにとっても、にとってはですね、これはトータル・フォース・コンセプトそれ以前の装備の上の参加要請だと、こういうことになってこなきゃならぬと思うのです。まさにそれはニクソン・ドクトリンというものは各国の自助ということばを使うけれどもアメリカのコンセプト、トータル・フォース・コンセプトヘの参加要請である。このことはほんとうに論理であるというふうに考えるのですが、いかがでしょうか。
  237. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) たとえば米軍がある地域から十万人減ったから十万人その地域の軍隊をふやさなきゃならぬというそういう算術計算ではないと思いますけれども、少なくともしかしその米軍が果たしていた防衛機能というものにかわるものをその国が持ってほしいということがトータル・フォースということは言えようかと思います。
  238. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、その参加要請であるということをお認めになった、現時点でね。そういうそのアメリカのワールド・ポリシーに対する参加要請がニクソン・ドクトリンであったという理解に立つ場合にですね、ズレとおっしゃるのをあくまでも私は統一したいのだけれども、ズレというのはそのトータルに対して日本の参加要請というのは全くきておらぬと、少なくともアメリカから見れば、という意味ですか。
  239. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 軍というものはですね、自分の力がある程度弱化しても弱くなったということを正直に言えるものじゃないと思います。アメリカが現に同じ経費を使い、しかもアメリカの軍隊を直接配備してですね、そうして思うままにその同盟国の基地を使っておったというときと、このトータル・フォース計画によって相手側に要請をしたからといって、同じ結果が一体得られるかどうか、これは私簡単にわかることだと思うのです。アメリカの軍隊の能力、それからこの同盟国の能力というものとの比較対照からいけばですね、アメリカ側の要請は私はなされておると思います。その点上田さんのおっしゃるとおりだと思いますが、それじゃ同じ効果をあげ得るかどうかという点になると、多分にこれは疑問があると思います。そういう現実に立って考えていくならば、日本にももちろん自助の要請、これはありましょう。しかしですね、日本日本としてのやはり独自の国防政策というものがあるわけですから、アメリカのそう御都合ばかりはうかがっておられない。もちろん同盟国ですから、理解できる範囲において協力態勢に立つことはもとよりですが、やはり先ほどから防衛局長も申し上げておりまするように、日本にとって都合の悪いことはこれはノーと言わなければならない。そうなればですね、アメリカがどういうことを意図しようと、意図するところとそごを来たすことは私はあり得ることだと思う。アメリカの国防省が何と言おうと、アメリカ自身の軍隊で、アメリカ自身の国防総省の指令で動かしておった当時のこの極東における力と、このトータル・フォース計画とでは、われわれ日本の側からいくならば、夢は夢としてわからないわけではないが、現実としては相当減退したものに評価されるのではなかろうか、こんなふうに私は理解しております。
  240. 上田哲

    ○上田哲君 長官のお話はデッド・ロックが多くて、どうも防衛計画論にはなっておらぬですよ。
  241. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そうでしょうか。
  242. 上田哲

    ○上田哲君 だから、気持ちはわかるだとか、向こうはそう思っているだろうとか、なかなか……。
  243. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私は現実論をやっておるつもりですがね、現実論……。
  244. 上田哲

    ○上田哲君 じゃあそのおっしゃるように、アメリカからどういうトータル・フォース・コンセプトヘの参加要請がありますか。
  245. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) たとえばレアードの今年度の国防白書で、日本が四次防を推進して策定を始めたとかというようなことで、米側が日本に対する要請をしておるのではないかという見解が相当多く見られるわけでありますが、しかし、現実に日本政府側に対して防衛努力をもっとしなさいと、もっとしてほしいと、あるいはアメリカ側はトータル・フォース・コンセプトを持っておるので、その一部としてわが国も、日本も相当の防衛努力をやるべきであるといったような要請ないし希望といいますか、そういうものは出ておりません。
  246. 上田哲

    ○上田哲君 四次防としては総体としてそのコンセプトの中の要請だと考えていいんでしょう。全部こたえたのでなくても日本は……。
  247. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 米側はそういうふうに見るであろうと思います。
  248. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) いまのことばで尽きるわけですが、これはもう何べんも言っておりまするように、三次防の延長として、足りないものを補完したり更新したりしていこうというわけですから、アメリカの要請に基づいて今後四次防計画を立案する、そんなことは考えておりません。これはあくまで日本独自のものである。しかし、アメリカ側から見れば、四次防への、この更新、補備の武装充実ということはそういうふうにとれないこともない、こういうふうに考えております。
  249. 上田哲

    ○上田哲君 防衛庁長官が日本防衛庁を代表して、あるいは政府を代表して、おれのほうに独自なものがあるんだという主張をされるのは、先ほど来心情的な御説明が多かったけれども、これも心情としては私はその部分は受けとめておいてもいいです。しかし、それはそれとしまして、ここでまさにそうとする気はともかくとして、やはり大きな全体戦力構想の中でいえば、アメリカにとっては四次防というのは、アメリカの望むべき方向のスタイルに入ってもらいたい、パターンに入ってもらいたい、レベルに達してもらいたいということの中で見られているということは間違いないのでしょう。
  250. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) アメリカ側から見ればそういう願望で見られないことはないと、先ほど申し上げたとおりであります。
  251. 上田哲

    ○上田哲君 しからばそれに対して、心情ではなくて、日本防衛構想というものがアメリカの世界防衛構想というか、軍事構想の中に一〇〇%組み入れられるのではないのだとするならば、あえてそれを独自な防衛構想と唱えられるならば、どういうズレがそこにあるのですか。
  252. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) たとえばまあ条約上基地を提供しておる。しかし、その基地を使う上にはいろいろな日本のこの憲法に制約されたような事柄からいっても制約がある。これはやはり韓国の基地とか台湾の基地とかというものとは違って非常にズレを生じたりするであろう。それを無視されるということを心配されるのであるならば、今後無視をされないように外務大臣なりわれわれなり大いに努力をしていく必要がある、こういうふうに思います。
  253. 上田哲

    ○上田哲君 その焦点になるのは沖繩だと思うのですがね。そうすると、そのズレがないということになると完全に組み込まれることになりますから、さっきのお話で。ズレがあるということになると、たとえばアメリカ日本自衛隊海外派兵だとか、あるいはB52を嘉手納から飛ばしたいとか、そういうことを少なくとも潜在的にも欲求として持っておるということがあるわけですか。
  254. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはあるということを直接聞いたことはありませんが、これもかりにアメリカにあろうとなかろうと、あったとしてもわれわれのほうではそういうことはできませんという大前提に立っておるわけです。これはもう憲法のたてまえからいって、海外派兵もできなければ、また事前協議というものは戦争に巻き込まれないためにあるなら、これはやはり脅威がある場合には活用する大事なことだと思います。
  255. 上田哲

    ○上田哲君 そっちの話じゃないのですよ。あなたはずばりイコールというのはない、同こうが思うままにならぬことがあるじゃないか、それが日本の独自性だとおっしゃっている。そうすると、具体的にいま一番アメリカにとっても血眼になるような時期に、アメリカにとっては、日本が受けられない問題として残っているのは、たとえばB52の沖繩からの発進であったり、日本自衛隊ができれば海外派兵をして助けてもらいたいなあということもあるだろうということを想定するんですかと聞いている。
  256. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そういうことは憲法のたてまえを知っておりまするから言ってきたことはございません。言ってきたことはございませんが、私は素朴にアメリカの軍人の立場に立てば、日本に危機があればわれわれは血を流して守るんだ、だからいまわれわれがベトナムにおいてこういう協力戦争をしておるというなら、日本も、名称はたとえば国連軍ということで、韓国軍が参加するように、参加してもらいたい、こういう素朴な願望はおそらく私はアメリカの兵の中にはあろうかと思っております。
  257. 上田哲

    ○上田哲君 さらにしっぽが出てきましたよ。そのくらいフランクに言ってもらうほうがいいと思いますね。  それを歯どめをするのがわが国の立場だとおっしゃるなら、そこまでは私どもは多くのところに議論があるんだけれども、少なくともそこまでのところは議論にはなりましょう。ただ、しからばそのレベルだけに問題をしぼったとしても、日本防衛庁とあるいは日本の政府とアメリカ当局、少なくともペンタゴンとの間にも、かもしれないというようなお話防衛庁長官がしているようでははなはだ心もとないのであって、わが国にはこういう憲法があるからできないことわかっているから言ってこないだろう程度のことであっては困るのであって、具体的に軍事同盟が結ばれている、防衛同盟が結ばれているということになるならば、これは当然向こうのペンタゴンとこちらの防衛庁の間には、少なくとも最小限そういう議論というものがなければならぬ。そういうものがないままに、そういうものが国会にも議論されないままにいるというところに問題がある。そういう議論はあるんですか。
  258. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはもう当然あるという前提お話を申し上げておるので、ことばの言い回し等々がやわらかかったり強かったりということはこれはありましょうが、当然そういう話し合いはあるわけです。たとえば非核三原則、この政策遂行にあたって、国会で決議がされれば、そのことは直ちにまた新たに日本の政策が変わるものではないが、こういう決議までしてなおなお固くその政策を貫くんだということは、外務省から大使館に通じるでしょうし、あらゆる機会にそういう話し合いはなされておる。話し合いがなされておるからこそ、腹の中では一体韓国日本とどう違うんだというようなことで不満も私はあると思います、あると思うが、それは政治的にはあらわれない。これは話し合いをしておる証拠と、こういうことに受け取っていただきたいと思います。
  259. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、具体的にB52がいま沖繩から飛び立っていく、しようがないでしょうこれは軍事的に言えば。その話し合いについては、あったんですか。
  260. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 現在、直接その話しを交換したということはまだ聞いておりませんが、これは従来の方針がそういうことですから、したがって沖繩の主権が日本に戻ってくればそういうことはできない。これはそういう判断に立って、そういうことも織り込み済みで沖繩返還というものがなされた。したがって、アメリカ側も新たな協議の対象にはしてこない、こういうことだと思います。
  261. 上田哲

    ○上田哲君 繰り返しますが、その議論はないわけですね。
  262. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはまああるとすれば外務省にあるわけで、私がないと言い切ることはどうかと思いまするが、ないように思っております。——ちょっと委員長けさ外務大臣がないとここで言明したそうですから、ないというふうにはっきり申し上げておきます。
  263. 上田哲

    ○上田哲君 外務大臣と防衛庁は違うんだということじゃこれは困るんですよ。また外務大臣呼ばなければ話にならないんで、そこのところを間を通じてどうしようじゃなくて、国務大臣として受けていただきたいんだけれども……。
  264. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) わかりました。
  265. 上田哲

    ○上田哲君 そういう話し合いがなくてもわかっているということではなくて、日本の国会で少なくともこうやって野党が沖繩返還と同時にB52というものを具体的に心配をしているわけですよ。しかも防衛庁長官が言われるのは、ペンタゴンと防衛庁の間にはそういう話がちゃんと行なわれているんだ、ちゃんと行なわれているのであれば、いま最大の関心事の一つであるB52なんというものは当然そういう話し合いの中に入れて、おまえさんのほうはそうは思いはせぬだろうけれども、B52というものは沖繩には絶対に来てもらっちゃ困るんだよということをこっちから一回くらい言ったっていいんじゃないですか。それを言えませんか。
  266. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そのあたりがなかなかむずかしいところだと思うんです。要するに友好関係にあるものですから、お互いに信頼をし合っておるわけです。ですからここへ持ってきたいということを言えば、それは困るとかノーとかと言うわけですが、向こうも日本の立場や日本のかねてからの政策遂行の姿勢というものを知っておって自粛しておるものに対して、いいか、だいじょうぶかと、こんなことをやっちゃいかぬぞというふうに言う必要はないと思います。当然そういう協議があればわれわれのほうはノーと言わなければならぬと考えます。
  267. 上田哲

    ○上田哲君 そんなこと言っておったらだめですよ。何も協議してないじゃないですか。ペンタゴンと防衛庁がどれだけの協議がありますか。何もありゃせぬじゃないですか。そこに問題があるんですよ。あるんなら、そんなことがテーブルの上で言えないはずがないじゃないですか。何が友好関係ですか。向こうが全然そんなことを考えてないだろうといっているのなら、言って困ることはないじゃないですか。防衛庁が言うことは、前の防衛庁長官の中曾根さんが四次防をつくるときに、日本の国会では全然金額も明らかにできない、せいぜい五兆五千億くらいのことを言っておきながら、レアードに会ったときには百六十億ドルだなんということを向こうから発表して、円価に換算すればああいう数字になるというところに問題があるわけですよ。話はそのくらいしかないじゃありませんか。そこに出てくるのが久保・カーチスだなんということになるものだから、久保さんなんか悪玉みたいになってしまう。そういう話し合いがないところに問題がありますよ。あったらいいんだという話になっちゃ、また深みにはまりますけれどもね、宙ぶらりんな話を私のほうもしなければならないけれども、それは、防衛庁長官、あなたは明るい防衛庁長官だという評判があるし、私もそれについては賛成してもいい。フランクにものをおっしゃるのだから、その辺のことはですね、国民がこれだけ心配しているのですよ。野党がこれだけ繰り返し巻き返し一生懸命になって、貴重な時間にポイントをここにしぼって、ひとつB52は来るなよということが、これだけ日本の国会で強いんだということが言えないということは、隷属ですよ、従属ですよ。それは全体計画の中の参加にどのくらいかかるかなんというきれいな話じゃなくて、根本的にあなたはぺンタゴンの防衛次官ですよ。それが腹が立つのだったら、B52は絶対来るなということを野党がうるさく言っているから、言っているんだぐらいのことを一言おっしゃい。それが言えなければあなたは防衛次官ですよ、ペンタゴンの。
  268. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私の言う意味は、持ってこないものを持ってくるなと何も言う必要はないということを申し上げておる。
  269. 上田哲

    ○上田哲君 持ってきたいと思っている、と言ったじゃないですか。
  270. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 言いたいことを何も言わないわけじゃないんで、中曾根元長官がアメリカの国防省かレアードか、まあそういうところに向かって、四次防はこういうふうですということを言うたか知りませんが、独自の立場で白紙に戻しましたと、大きな声で白紙に戻しちゃったんです。
  271. 上田哲

    ○上田哲君 アメリカじゃ白紙に戻ってないでしよう。
  272. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) ですから、これ、やっぱり権威じゃありませんか、一つの。ですから、少なくともそういうふうにちゃんと言うべきことは言っておるわけで、不必要なことまでことさらに発言をして友好を阻害することは私は望ましくない。しかし、ペンタゴンといろいろ打ち合わせをもっと防衛庁はするべきだというお話ですが、アメリカの制服の機関というものは、日本にも極東地域にも一ぱいあります。したがって、その責任者とわがほうのそれぞれの内局の幹部、また私どもも含めまして、しばしば会っております。だから、意思は十分疎通しておる、こういうつもりでおります。
  273. 上田哲

    ○上田哲君 それじゃ防衛次官補ですよ。
  274. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) まあ言うのはどっちでもいいけれどもね。(笑声)
  275. 上田哲

    ○上田哲君 不必要なことというのは何ですか。B52が来るなということを言うのがどうして不必要ですか。これはたいへん私は重大な発言だと思う。なぜ不必要ですか。繰り返し巻き返し朝日がさめたときに憲法の条文読んだって、不必要だということはありませんよ。まさかそんなことはおっしゃいますまい。しからば、当然B52が来るべきでないということは、これほど——これほど国会でわれわれが言うのであれば、不必要だというような発言を防衛庁長官が言われることは非常に私は不見識だと思う。これは、私は、不必要どころか何べん言っても言い過ぎることではないこととしておっしゃることが正しいと思う。言えないということは、向こうにものが言えないという姿勢だけだというふうにしか思えないわけで、まあ次官でも次官補でも、それはことばのあやでどうでもいいんですけれどもね、そこのところを一体ペンタゴンと防衛庁との間にどういう話し合いがあるのか。これはちょいちょいお話しになっていらっしゃるというけれども、両方が話し合って防衛計画をしっかりつくれ、みたいなことを主張しているのだったらおかしなことになりますが、言うべきことをきちっと言う機関がどういうルートでできているのか、そのことがわからない。ほとんどその話は行なわれていないだろうということを推定するしかないような答弁しか国会に出てこないところに、結果的には防衛庁というものはアメリカ・ペンタゴンの単なる支店じゃないか、出張所じゃないかということになってしまう疑惑もあるわけですよ。最小限、われわれは基本的に事務所をつくったりするような立場であるにしても、現在ある防衛庁の立場を代表される長官として、従属していない、隷属していないということを、私はしっかりしてもらわなければならぬ。不必要なんということばはやっぱり撤回していただかなければならぬし、そして、ペンタゴンとはどういう形で、言おうと思えばこういうルートを通じてすぐ言えるのだというのがあったら、示してください。
  276. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 不必要ということばの表現は不適当だったかもしれません。ただ、私の言った意味は、現在向こうがやっていないものを何もそう、言う必要はないのではないかと、こういうことを言ったのであって、今後B52を持ってきたいのだというような話があったら、先ほどから申し上げておりまするように、これは向こうにとっては気に入らぬかもしれぬが、これはやっぱり防衛庁長官ですから、ノーと言うと。ただし、このノーというノーは防衛庁長官が直接言うんではなくて、日本の仕組みは外務省がこれを行なう。したがって、国会で議論になりました問題にしましても、その他防衛庁側としてこういうことは困るとか、これはひとつ一緒にやりだいとかいう意思の疎通は、外務省を通じたりあるいは制服を通じたり、またそれぞれの米軍の幹部は、交代をすれば、私どものところへも必ず表敬にきますし、いつでも会おうと思えば腰軽くいつでも出てまいりますと、何でも御相談にのります、こういう態勢でおりまするから、御心配の点は十分意思疎通してやっておるつもりですと、これを申し上げたわけです。
  277. 上田哲

    ○上田哲君 江崎さんね、内閣委員会というところは防衛問題を担当するところで、そして防衛問題を一生懸命やっている一人が、それを向こうへ言ったらどうかということが、日本の国の大臣として、どうしてそんなに言いたくない、言いたくないということになるのですか。私はあなたの政治家としてのなまの声を一ぺん聞いてみたい。何でそれを言ったら困るのですか。B52はおれは来ぬと思っているよ、しかし、野党の上田哲なら上田哲が、これだけの青筋立てて絶対B52が来ちゃ困るということを言えと言っておるのだが、それがなぜ言えないのですか。どうしてもそれがわからない。KC135の詭弁はね、これはもう言ってもしようがないですよ。さじを投げますよ、国民が、これは。どう考えたって、地上じゃいけないけれども、空中ならいい——ポイントは、そのことなしでは戦闘行動ができるかできないかの要件が問題なんです。地上であるか空中であるか海上であるかは問題じゃないですよ。それなしには空襲に行けないのですから、それは戦闘行動の重要な要素であることはいうまでもないのであって、それが場所が空であるか、海であるか、地上であるかによって、話し合いをするかしないかが分かれるなんていうことを言っておったのでは、これは後の史家に笑われるでしょうし、子供も笑うことだと私は思うのですが、それはいいですよ。それはいいんですが、まだ起きてない、B52がひょっとして、万々々一でも来るようになったらという危惧が国民にあるならば、あなた方が言われる平和の島を目ざす沖繩返還ということのためにも、一言ぐらいなぜ言えないのかということが出てこないと、ステーツマンというのはこれでいいのだろうか、ステーツマンというのはそれでいいのだろうかということをね、いいならいいでいいですよ。時間がもったいないからそれ以上聞かない。
  278. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そのあたりは相手を信頼するかしないかという、ものの考え方から発するこれは感覚の問題ですね、これも否定できぬと思うのです。ですから、私どもはいまこの場面ではそういうことを考えておりませんが、しかし、何も友好関係にあるんだから、君、そういうことは困るよということは、自然の間に言うことぐらいはこれはできますわ、できます。しかし、現に向こうが自粛してやっていないものを、いま上田哲議員からこういうこともこれあり、絶対やってもらっちゃ困るなんていって、押しかぶせるような言い方は一体どうであろうか。しかし、あなたが言われるように、万々一そういうことがあっちゃならぬのだから、ぜひひとつ向こうにそういう趣を伝えてもらいたい。これは私は、立場の違う上田委員としての主張として、また希望としてよくわかります。したがってその伝え方はいろいろあろうかと思います。ひとつまかせてください。やはり談笑のうちに、委員会ではこういう意見もある、こういう意見もある、こういう意見もあるんだから、まあ自重してくださいよとか、自粛してくださいよとか、いいですか、わかっていますかとか、それは言い方はあろうかと思う。それを真正面から、やりもしない、向こうが自粛しておるものを、君、困るぞだいじょうぶか、いいかといえば、これは疑いになりますね。ですからどうぞひとつその辺はおまかせください。
  279. 上田哲

    ○上田哲君 私はさっきからそのためだけではありませんが、ずうっと話を、論理を詰めてきたのは、あなた自身があの論理の中で、向こうはやりたいと思っておるだろうと言われたんです。それをわれわれがやらせないところにズレが一つ生じていると言い、防衛局長は異端児だという表現を使われたのです。そういうものを踏まえて、全然やらないというのならともかく、面こうの軍人点やりたいだろうというあなたの御答弁があったから、それならばやらぬようにしておけというのが、日本語でいうところの万一とか万々一とかいうことに対する当然のかまえではありませんか。だから、それはにこにこ笑ってさりげないときに何とかうまく言ってみようなんてというようなことを、まるで呉服屋の小僧が、何か向こうにこの反物買いませんかみたいに言わなきゃならぬような、これは友好ではありませんよ、完全な隷属ですよ。だから、そこのところは、それはあなたも日本国民を率いる防衛庁長官でもあられて、やっぱり輿望をになって出られておるのであるならば、やっぱり日本のミニスターとして、向こう側に対してしっかりした場をとらえて堂々と発言されることがしかるべき姿だと私は思うんですよ。防衛庁長官としてもそんなことじゃ困ると思っていらっしゃることでしょう、これは。だから、そのことはやっぱりきちっと言っていただきましよう。
  280. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 言うべきことは言う。これもあくまで厳然としてそういう態度を持っておるつもりです。ですから、あなたの御意見はよく承っておきます。  それから、アメリカの制服がそういう希望を持っておる、願望を持っておる、私、ほんとうにそう思います。しかし、それは制服もよく知っているんです。私ども防衛庁に赴任しまして、たまさかしか制服の諸君、特に責任者と話し合いをする機会がいままで時間的にありませんが、しかし、そういうときに、アメリカ軍の態度はどうかということをしばしば意にとめて聞くわけですが、相手の幹部はよく知っておりますと、日本のわれわれ制服を困らせたり、自衛隊を困らせるような、無理な要求というものにあまり接したことがありませんということを、統幕議長以下責任者はいつも私に言っております。これは近ごろ二度ほどそういう言明を聞いておりまするから、そういう御心配等の点については、ひとつ御放念を願いたいと思います。
  281. 上田哲

    ○上田哲君 それじゃ、まあ防衛庁長官は、もう少しき然とした態度で、B52の基地使用というものを、困るということを発言をしていただくというふうに了解をしておきます。  今日まで、ただいままでの議論で、トータル・フォース・コンセプトというものの、 ニクソン・ドクトリンの中の位置づけというものが明確になったし、そしてその中で、それは一言で言うならば、アメリカのトータルへの参加要請であるという形で位置づけられる。その中でペンタゴンとしては、やはり現在日本アメリカに対して許容している線よりも上を越すいろんな軍事的要求があって、その上でいま四次防というものが考えられつつあるんだというところまできたということで、たまたまB52の沖繩の問題に入ってきましたが、この沖繩について、防衛庁長官は数カ月前に、沖繩の軍事基地機能は下がるんだと、こういうことを言われたことがあります。現実に、午前中の質疑にもありましたように、台湾条項というのは、こちら側の見方のいかんを問わず、アメリカの見方としては、台湾条項は依然として不可欠であるということを言っている。そしてその不可欠であるということの意味するものは、アメリカ日本のほかにフィリッピン、韓国、台湾などと防衛条約を結んでおり、条約を守る任務を持って  いる。沖繩は返還されても、極東安全保障にあたって軍事上の役割りにおいて重要な要点であることに変わりはないと、こういう表現をしているわけですね。こういうことになると、こうした幾つかのコミットメントの、総合基地として沖繩のかなめ石というのはますます重要であり、この沖繩のかなめ石としての軍事的機能というものは基地として低下することはできぬということをはっきり向こう側が言っているわけです。で、アメリカの期待である沖繩の軍事基地機能の低下なしという線と、防衛庁の見解とは違うんですか。
  282. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私先ほども申し上げましたが、これは軍人というものは、基地に対しては、これは低下した、弱化をした、そういう表現をとらないものですね。これは私は一つの軍の通有性のように思います。あの沖繩が返還されて、たとえば日本の核政策に協力をするということで、沖繩の陸上基地としての核基地のもう効果は終わったということは、六年前に言われたことは私さっき申し上げたとおりでありまするが、そうかといって、何か毒ガスもあった、禁止兵器でありながら核兵器も若干は残されておったというふうに承知をいたしておったわけですね。しかし日本に返還するのに先立ってこれは撤去しなければならなかった。これは低下でなくて何でしょう。それはグアムに配置した、あるいはマリアナ諸島のどっかに行った、あるいはフィリピンに持っていったということはありましょう。総合して同じ力を持っておるということはありましょうが、私は沖繩の基地が低下したことはこれはもういなめない。しかもB52自体が普通ならばグアムから飛ばなくても沖繩から飛べた、また現に飛んでおった、これが飛べなくなったということが低下でなくて何ぞや、もう素朴な現実論としてこれくらいわかりやすいことはない、それを低下しないというのは軍の通有性です。ですから、私は相手がそう言っておるからといって、これをそのようには評価いたしておりません。以上申し上げた一、二の例を見ても明らかに低下である、こう考えます。
  283. 上田哲

    ○上田哲君 長官の御説明によると、核や特殊兵器がなくなれば低下するというたいへんシンプルなバロメーターしかお持ちになっていないですな。ここでその議論には私は入りませんが、少なくともアメリカが言っておることは、沖繩の軍事基地機能を低下させてはならぬと言っておるのですよ。日本が言っておるのは、沖繩の軍事基地の機能は低下させてもいいと考えておるのかと聞いておるのです。
  284. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) わかりました。私は、アメリカ軍が言っておるのは、沖繩の基地機能を低下させてはならぬ、そうでしょう、それはきっと、アメリカ側から言うならば。しかし、それは沖繩そのものだけでは明らかに低下になる、それは異端児ですから、さっきの表現がいい悪いは別として。ですからアメリカ側からいえば思うようにならない。したがってそれは沖繩以外の、アメリカの威令の行なわれる地域にこれをカバーするだけの配備はして、全体としては沖繩の基地機能は低下しない、こういう表現ならば私そういうことはあり得るだろう、肯定できます。しかし沖繩そのものをずばりとさして、これが低下したのか低下しないのかというなら、さっきおっしゃるように特殊兵器が取り去られたとか何とかいうことはともかくとしても、事前協議というこのこと、日米安全保障条約の適用が本土並みであるということは、これは低下でなくて何でしょうか。これは基地としてはずいぶん制約を受けるということです。これまた制約なしにアメリカがやるとしたら、これはたいへんな不信行為ですから、今後日本とうまくゆくはずありませんから、これはもう議論になるでしょう。だからB52ももうグアムに配置がえした、これは数年前のことですが、すでにそういうふうになっておる。これは一つ一つ見ていれば、低下をかバーするのはまわりでカバーしておることはあっても、沖繩そのものは私は明らかに低下した、また低下していないということであるならば、これはやはりロジックが合いません。
  285. 上田哲

    ○上田哲君 重要な発言ですけれどもね、沖繩自身は低下しても、まわりでカバーして低下していないかもしれないという、そのまわりというのは何ですか。
  286. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはアメリカの領土ないし基地、同盟国等の基地、たとえばグアムがありましょう、マリアナ諸島のあの信託統治のどっかに何があるか、これは世上いろいろ言われておる。それからフィリピンの基地だってあります。こういうものがアジアにおいて強化されておるかどうか、そのことについてはあるかもしれない、こういうことを申し上げたわけです。
  287. 上田哲

    ○上田哲君 そうすると沖繩基地というのは、いまフィリピンだとか、あるいはグアムだとか、韓国も含むと思いますが、そういうものとの総合戦略態勢の中で位置づけられておるということですね。
  288. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) アメリカ側からいえばそういうことは言えようと思います。しかし当然日米安全保障条約によっていろいろ制限を受けることは、これは当然であります。
  289. 上田哲

    ○上田哲君 これはたいへんなことなんですよ。そういう全体の連携プレーの中で基地機能というものは総合的に保持されておるということになれば、これはたいへんな御意見なんですから、それはそれでいいですよ。後ほどあらためて議論の対象にいたしましょう。それと日本が、日本の独自な立場があるからいろいろの制約があるということになる関係はどうなんですか、これは。
  290. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 別に私そうおかしくないと思うんですがね。さっきのトータル・フォース計画というもの自体がそういうものをさしておるのですから、私いま申し上げたことはそういう点からいってそんなにおかしいことではない。しかし日本の沖繩の基地というものは、アメリカ側からいえばそういうものであろうけれどもが、日本の主権の存するところ当然本土並みの基地態様でなければならぬ、またそういう規制をしていく必要がある、これは申し上げるまでもございません。
  291. 上田哲

    ○上田哲君 沖繩の基地がフィリピンだ、グアムだ、韓国だ、その他の基地との連関の中で、全体的な基地機能の中で運用されることによって基地の機能というものを保持する位置づけにあるんだ、こういうことでいいんですね。
  292. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私は直接的にそういうことを言ったわけじゃありません。低下しました。低下した分はアメリカがどうしても低下させちゃならぬと言うならば、それは沖繩において現状維持をすることは不可能であるから、それはグアムであるとか、アメリカの威令の行なわれる基地においてカバーされたということはあり得ましょう。しかし、沖繩自身は現に低下いたしております、こういうことを申し上げたわけです。
  293. 上田哲

    ○上田哲君 沖繩のことはしばらくいいんです。  あなたがさっき四つの分類で示されたように、アメリカがコミットメントしている各国の防衛体制との協力関係などというものは、日本とはみな同じではないわけですよ。日本の基地というのは、おっしゃるような専守防衛範囲内で、そこで安保条約というものの制限が出てきているわけです。ところが、そういう制限を持たない国との、外国の基地との連関の中で沖繩の基地の低下なるものが保証されているという見解というのは非常に注目すべき見解だと思うんですが、それでいいんですね。
  294. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そうでしょうか。基地というものは、アメリカ側からいえば連関性を持っておるもの、これは当然そうですね。ただし、沖繩の基地には持ち込めないもの、これはB52ばかりでなくて、核兵器は持ち込めませんね。そのほかいろいろありますね。直接発進もできませんね。そういう制約はあるわけですが、アメリカ軍全体からいうならば、それぞれの基地と連関性があることは、これはもとより当然だと考えます。
  295. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、別な原理に基づいて締結されている軍事同盟であるフィリピンなり韓国なり、あるいは直接の基地であるグアムなり、そういうところを使用してアメリカが行なうこの戦闘行動と沖繩との連関が出てきたときに、これを日本憲法範囲なり防衛庁の方針なりということでチェックする、カットするという機能はどういうところで保証されますか。これは事前協議なんということば一つでは逃げられないと思いますよ。
  296. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは日本の基地と同じようにやはり使われていかなければならぬ、これはもう当然なことです。
  297. 上田哲

    ○上田哲君 沖繩がですか。
  298. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) ええ、沖繩が。それがいわゆる本土並みなんですから、これは岩国であろうと横田であろうと、そうならなくちゃならぬ。そこで、それじゃだれが監視するのかという問題だと思います。そういうことは友好国ですから厳重監視という性格のものではない。お互いやはり基地を提供された側からいうならば、当然日本憲法に基づいて、また従来の安保条約の運用の面を十分心得て用いる、こういうことでありませんと、基地使用というものもスムーズにいかないことになるわけですから、そうならなければならぬと思います。それに現在は自衛隊も十分配備はいたしておりませんが、今後だんだん自衛隊の配備が充実していけば、当然友好国のアメリカ軍と自衛隊というものとの間に交流が密接になってくる。密接になれば、言わず語らず基地の態様というものは監視しなくてもわれわれ自衛隊の側には大体わかるようになってくるのではないか、こう思います。
  299. 上田哲

    ○上田哲君 そうすると、五月十五日以降は沖繩と、たとえば岩国だ、三沢だという基地と違いはないわけですね。そうなってくると、いまおっしゃったような韓国だ、フィリピンだというところの軍事基地との関係、軍事的な連携プレーですね、これは岩国にも三沢にも、あるいは横須賀にも出てくるわけですね。そういう形でいいんですか。
  300. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) いまの御質問だけにお答えすれば、観念的にはそういうことでしょうけれども、事実上は実態が非常に少ない。全然ないわけでございませんで、たとえば三沢について言うならば、韓国にいるF4が三沢にきて整備に当たるというような関係からいえば、部分的には三沢もやはりそういうことでありますが、観念的にはやはり同じであろうと思います。
  301. 上田哲

    ○上田哲君 それはもうちょっと私のほうも詰めてやりますがね。ぼくは非常にたいへんな発言が出てきたと思うのですよ。これはやはり五月十五日以降の混乱の一つだと思うのですがね。  ひとつ戻してそこでお伺いしますけれども、ニクソン・ドクトリンというものが有効に作動しなかった場合の三次防と、ニクソン・ドクトリンが構えられてきてからの四次防というものはこれは違ってこなければならぬのではないかとも思うが、そういう中で、先ほど来の御説明を踏まえて、日本防衛構想、四次防と限定しませんが、防衛構想というものに変化が出てまいりましたか。
  302. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 別にニクソン・ドクトリンに基づいてわがほうが防衛計画を改めたという事実はございません。これは繰り返し申し上げておりますから簡単にいたしまするが、あくまで三次防の延長として、まだ不備な建設途上の自衛隊を充実させる、古くなった武器を更新していく、こういうことで五カ年計画を行なおうということであります。それからまた、四次防の基本方針になるものは、昭和三十二年に策定したあの国防の基本方針がもとになっておるというわけで、新たな構想に基づいてこうしよう、ああしようという計画はございません。
  303. 上田哲

    ○上田哲君 脅威論というのが先般から議論になっているわけですね。その脅威論というのは分析が変わってくるだろうと思います、少なくとも。プロバビリティかポシビリティかということはたいへんむずかしくてまだ私にもわかりきらないものがありますけれども、その日本を囲繞する各国の、防衛庁が言うところのポシビリティ、脅威のポシビリティというものの性格が幾つかに分類されていなければならぬと思うのですよ。それをどういうふうに御判断になっておられますか。
  304. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) いま日本に対する顕在的な脅威はない、つまり日本侵略するであろうと予想される国が存在しないというふうに申しております。そういう意味でプロバブルな脅威がないという、ふうに私どもは言っておるわけでありますが、それに対するポシビリティというものが軍事的な能力である。それはいまの各国の意思といりものは他の国を侵略しようという意図はないであろうけれども、そういう力というものを持っておれば、将来急激にそういう方向が変わるかもしれないという意味で可能性がある、ポシビリテイがあるということを申しておるわけでありますが、その中でどういうような分類をしておるかということでありますが、格別分類ということではありませんが、やはり各国の持っておる問題点を分析をしてみる必要がある。そうしてみると、たとえばちょうど戦争前に、持てる国と持たざる国とがあったのと同じように、現状打破の国と現状維持の国とがあるであろう。ところがどの国が現状打破でありどの国が現状維持であるかというのを見るのはある意味では主観的なものでありまして、たとえば一九五〇年代におけるソ連ならソ連という国がアメリカにとってはきわめて現状打破的に映っておったに違いがありません。中共についてもしかりであります。ところが一九五〇年代においてソ連自身が自分が現状打破であると思っておったかどうか、これはなかなか客観的な証明ができないのでわからない。そこでそれぞれの国は現状打破国であろうということで、それに対応する措置をとる。防衛体制をとるというようなことをするわけであります。そういう意味で言いますると、何らかのわれわれはいろいろな点から分析をしてそういうことを考えるわけでありますが、客観的な証拠はなかなかつかめないにしても、たとえばソ連ならソ連という国はおそらく現状維持の国であろう、これはヨーロッパなり今回のはしなくもベトナム封鎖に関連してあらわれた事柄でもありまするし、そういうことから言うと、ソ連というような国が現状打破をすることはあるまい。中共なら中共という国が現状打破であるか維持であるかなかなかむずかしいところでありますが、しかし少なくともたとえばごく最近の米中共同声明の中にありましたように、各国の独立闘争、独立運動というものについては積極的に支援する、従来からの方針の宣明でありまするけれども、そういった点から言うと、これを現状打破と見るかどうか、かりに現状打破と見るとしましても、中共の軍隊自身がかりに力があるとしても、隣の国に侵略するということではなくて、それぞれの独立運動を持っておる国に対する支援をやるのだというような意味でとらえるというようなふうの考え方、あるいはまた、韓国と北鮮というものはもちろん大きな軍事能力を持っておるわけでありまするが、それはそれぞれ朝鮮半島の統一というもの、まあ少なくともまず自分の国の防衛ということ、さらに次いでは統一ということ、そういうために指向される軍事能力であろう。したがってそれぞれの国は兵力を持っておりましても、それがポッシブルであっても、日本なら日本に指向される兵力ではなくて、朝鮮半島に限られたポッシブルな兵力でしかない。周辺について言うならば、当然大陸からの攻撃を防衛するような意味のものであり、それ以外のものに振り向けられるものではないというように、ポッシブルとは申しましても周辺地域のいろいろな事情によってその態様、内容、意味合いというものは異なってくる。そういうものとのかね合いでわが国防衛というものを考えていくべきである、そういうふうに思っておるわけであります。
  305. 上田哲

    ○上田哲君 これはおもしろいと思いますよ。現状維持国、現状打破国というような表現はどうか知りませんけれども、そういう形で脅威論というものを分析してみようという試みは、いままで何もなかったところに比べれば、一歩と言わずとも半歩の前進だというように、ちょっと取り上げてみたいと思うのです。そういうふうになってみると、日本のよくいわれる独自の防衛力構想、あるいは防衛構想ですね。そういう問題が少しあるいは手がかりを得るかもしれないと思うので、お伺いするのですが、この際やはり総合的にいって、日本防衛力の限界というものを、四次防でどこまでいくだろうとか五次防でどこまでいくだろうなんというような全く物質的なものではなくて、少し長期的な構想上の限界というものの設定が私はあってもいいと思うわけですよ。  そこで、まあそれはいいですね。とすると、一つ大きく出てくるのはやはり核ですよ。日本の核装備能力というのがあるのかないのかといえば、あるということになっているわけですが、それを持たないというのがいまのところ核政策ですね、日本政府の。核政策としてのみ論ぜられている。核政策としてのみ論ぜられているということは、政策の変更の中で再び可能性が出てくるということはあるわけです。私はもっと、防衛庁ともあろうならば、防衛政策それ自体の分析として、軍事状況分析として核政策を裏づけなければ——まあ、非核政策ですな、非核政策を裏づけなければおかしいと思うのですよ。いまのところ、全く政府が出している非核政策というのは単なるお経ですよ。これは私たちの立場は、唯一の被爆国としてそういうものは絶対に持ちたくないということはあるけれども、しかしそういうものを単なる観念的な政府の側がお経で出しているのでは非常に心もとない。非核政策——核を持たないということの純軍事状況分析といいましょうか、そういうかちっとした見通しを、論理を持てるのかどうか。ここのところをひとつ、あれば御開陳をいただきたい。
  306. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 先ほど久保局長が申しましたように、防衛局においてはいろいろな場面を想定しながら、日本独自の防衛政策というものを練っておるわけです。しかし防衛局長個人からいうならば、あまりにも時間がなさ過ぎます。これはやはり重要な国会審議ですから、それを私はとやこう言うわけではありませんが、まあ一年のうち半年以上、国会対策という面に防衛局長は非常に精力をさかれます。もちろん防衛課長その他のスタッフが大ぜいおるわけですから、研究は進められておるわけですが、いま言われるようないわゆる脅威論、それから核政策、いまはアメリカの核のかさに包括され、その抑止力に期待するということで割り切っておりますが、これはやはり分析をしていけばいろいろ議論の存するところであることは、世界の共通した軍事議論として表にもあらわれておるところであります。したがいまして、私いま防衛庁内で相談をいたしておりますることは、防衛局が本来の任務に邁進してそういうことを分析していくことはもとよりでありますが、防衛研修所というものをもうちょっと内容を充実して、そしてこの防衛研修所において日本の独自の防衛政策、これは異端児じゃなくて、まさに防衛に徹するのみという従来の軍隊より一次元上の平和愛好の自衛隊というものの理論づけ、そういったものも恒久的に、恒常的に研究をする。そして表に、その防衛局との理論構成などと相まって、こういう日本防衛政策、特に独自の自衛隊というものをかかえている日本としては、やはり裏づけになる理論、それから周辺諸国の情勢分析、これを的確にしながら、やはり日本防衛政策というものを立案、樹立していく必要がある、これは全くその点は同感であります。
  307. 上田哲

    ○上田哲君 それは、いまやってないからこれからやるのだという話だけじゃ困るのですよ。そのことはそれでいいですけれども、もうちょっとやはり進んで考えられなければいかぬ。
  308. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) やってくれ、じゃあ。一生懸命作業した成果をひとつここでやらにゃあいかぬ。
  309. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) その核装備については、いま上田先生御指摘のとおりだと私は実は思っているわけでありますが、そこで防衛白書の中でも非核三原則ということはうたわれてあって、その理由づけが必ずしも明白でない。したがって外国の人たちはそれについて懸念をする。外国の見方からすれば、理論的必然性を持って日本は核装備するであろうというようなことになるわけでありますが、したがって、それに対する答えとしては、一つには、核拡散防止条約というものについての批准を行うということが、核装備をしないということの証明になりますから、いずれはそういった時期も出てまいりましょうが、防衛庁としますれば、軍事的に見てどうかということに答えなければいけないわけであります。そこで、ある程度勉強してみますると、たとえばこの核装備という場合に、戦略核と戦術核と二つに分けて考える必要があります。現在の核を持っている国以外で、戦略核を持とうとする国がまずいまのところないと考えておりますが、かりに戦略核からまいりますと、一つには憲法でこれは完全に否定をされております。憲法の問題をかりに別にいたしましても、日本が戦略核を持つとすれば、ポラリス型の潜水艦の系統でなければ意味がなさそうである。それも、たとえば核大国を相手に考えれば、非常に広大な面積を持っている、国土を持っている国々でありまするから、少なくとも十隻くらいでは足りない。相当数のものを持たなければいけない。戦略核だけで戦術核は要らないかというと、そうでもないわけでありまして、そこで、数十隻のポラリス型の潜水艦を持つというようなことは、これはあとで申し上げるような理由を含めて、とても日本は持ち、維持し得るわけのものではない。憲法上の問題はかりに別にしても、それは日本にとってペイするものではない、こういうことであります。  それから、戦術核について軍事的に見ればどうであるか。戦術核を装備してはどうかという国内意見がありますのは、外国でいいますとスウェーデン、スイス、それからイスラエル、アラブ、インドといったような国々であります。お気づきのとおりいわゆる非同盟あるいは中立というような国で、核のかさのない諸国でありますが、これらの国については核装備の見解が国内ではわりと存在をする。詳細は省きますけれども。ところがそれらの国は、この核を使う場所がある。その戦術核を使っての戦闘を予想される場所があります。一つだけ例をあげれば、たとえばインドの場合には中印国境というようなヒマラヤ山の中、あるいは高原、人家の非常に少ないような、そういう地域が想定をされるわけであります。ところが日本の場合には、戦術核であっても使う場所がない。人口、産業、文化、それぞれ集中しておりまして、そういったものを使えばその影響というものはほかへ波及をしていく。したがってある一つの戦闘、英語で言えばバトルでは勝つ、戦術核を使うことによって勝つことはあり得るかもしれませんけれども、全体の戦争、ウォーというものを失うことになるであろうという意味で、日本では戦術核を使用するのになじまない。軍事的に見てもなじまないというふうに考えられるわけであります。  また、もう一つ、たとえばわが国は核装備をかりにするといたしましても、これは言うならば後進国、核については後進国であります。核についての後進国が、先進国と争うのは非常に不適当なことであります。まず、国そのものが滅亡する可能性を秘めているのみならず、単純に兵器だけをとってみましても、相手の有利な兵器をわがほうがことさら進んで選ぶ必要がない、必要がないというよりもそれは不利である。少なくとも相手とそう劣らない種類の兵器、つまり通常兵器でありますが、そういうものをわがほうが持ってそれで争うほうがよろしいということで、核戦争になったら日本がおしまいだから核装備はしないのだという一般的な平易な意見もそのとおりでありまするし、軍事的に見てもそれは成り立たない。せいぜい言うならば、たとえば海上についてだけは意味があるのではないかという意見もあります。しかしながら海上でかりにこれを使うとするならば、それが海上だけに限定される保障は何もありません。だんだんそれがエスカレートしてくる。そうすると核については先進国のほうが有利な兵器でありますから、わがほうが不利なものを持って戦わなければならないということで、どういう点をとってもこの検討は不利である。のみならず、いま核装備論というのは単純に核だけに注目して意見が戦わされますけれども、実は核装備をするならば、一般のより可能性の多い通常兵力、通常装備についての制約が出てくる。つまり予算的な資源の配分の問題が出てまいります。これはアメリカですらそうでありまするし、フランスなどでもそういう影響が出ております。のみならず、たとえば核戦争考えるならば、通常装備についても非核の対策、つまり核戦争になった場合に生き残れる装備でなければいけない、そういう意味での対策費がかかってまいります。それからまた自衛隊だけが存続してはいけないのであって、国民も生き残らなければならない。そうすると、いわゆる民防の分野で非核対策をやらなければならない。アメリカですらいわゆるシェルター、汚染防止の退避壕ですか、そういうものをつくろうとしたことがあったけれども、膨大な金のためにやめになったというようなことで、結局核装備をするならば、論理的必然性としてより膨大な対策を講じなければならない。そのためには非・常に大きな資源がそこに投じられ、国民の経済、生活その他いろんな分野にあまりにも大きな影響を与え過ぎる。したがって核装備をするならば、それがたとえば何千億である、あるいは二兆円であると、単純にそれだけにしぼられてはいけないので、いわゆるマイナスの波及効果を考えたならば、わが国はそういうことに耐え得るものではないというふうに一応アウトラインを考えておるわけであります。
  310. 上田哲

    ○上田哲君 長官、これは一つの手がかりだと思いますよ。私はいまの話を聞いて簡単に要約すれば、一つは軍事的に効用がない。日本条件、地理的条件その他の条件からいって、軍事的に効用がないのだと、まあ使い道がないということばを久保局長が言われたけれども。もう一つは。核大国に対してペイしない。もう一つは核抑止力、核のかさですね、核のかさもこれにかわるものとして効用がない、この三つだろうと私は思うのです。こういう点をきちっと詰めて、単なる政策としての非核政策じゃなくて、軍事状況分析としてこれは確定をされたらどうか。このことは今後の要らざる批判を招かないためにも、日本の非核政策を遂行する上には非常に重要だと思うのです。この三点いかがですか。
  311. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) きわめて重要な御提言だと思います。で、いまそれを政策として最終的に決定するのにはあまりにもまだ基礎的な検討が足りないような気がいたします。したがっていま防衛局長が申しました一つの方針に沿いながら、深く掘り下げて十分検討してみたいと思います。  それからもう一つドグマを述べることを許してもらうならば、私は日本で核政策で合意しておるのは非核三原則と平和利用だと思うのです。これは各党とも全部合意しておりますね。で、核の平和利用というのはやはり金勘定、これが裏づけになって、日本人の能力からいうならばこれは相当程度までいける可能性があるのですね。原子科学者の数がいまでも一万五千名程度ですか、そういう点等からいいましても、だから政府が一つの方向をきめて、この平和利用——これは武器開発とはオーバーラップした面が非常に多いということでありますが、これを科学技術庁などが中心になって旺盛に粘り強く開発をして、世界のナンバーツーとかスリーとかいうところまでいくことができれば、核兵器は絶対持たないというこの厳然たる政策とあわせて、一方では核エネルギーというものを人類生活に寄与するのだ、征服するのだという意欲を示しながら日本がこれを実行に移していくこと、私はこれは一つの理想として考えておるわけですが、これはあくまで私の私見でありまするが、そういったものをひっくるめて、核政策を、防衛局はもとより、防衛研修所等において徹底的に検討し立論する、こういう作業を今後防衛庁において行なったらどうか、一つの理想として現在強く意識しております。この趣旨を十分体しながら参照して努力してまいりたいと思います。
  312. 上田哲

    ○上田哲君 前向きなお答えでありますから、ぜひひとつ核については、もう一回繰り返しておきますが、日本の地理的環境からいっても軍事的に効用がない、核大国に対してはペイしない、それにかわるものとして核のかさも無意味である、こういうあたりを一つの手がかりとして、おっしゃるようにしっかりした、単なる政策として表示だけではないものとして詰めていただいて、後ほど質疑をしたいと思います。  委員長一つ申し上げたいのだけれども、初めにいただいた時間より、突如として時間の制限が出てまいりまして、これはたいへん運営として不明朗であります。これは質疑をするのに非常に困るのであります。あと一分でやるのは無理でありますから私は抗議をしておきます。しかし二、三分はひとつ許していただかないことには、初めから聞いた筋があるのですから。  そこでもう一つ一もう二つございますけれども、もう一つ防衛力の限界という意味で、陸上十八万というような、あるいは千機、二十五万トンというようなことがありますけれども、人員についていえば、現在の二十五万九千あるいは二十六万、それをどっかで線を引くということはありませんか。たとえば二十六万幾らなら二十六万幾ら、どっかでぴちっとこの辺で線を引いてみよう、これを打ち出されてしかるべきだと思うのですよ。私たちは方針は違いますよ。しかし少なくともそれはそちら側から出されていいのじゃないか。
  313. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) ちょっと正確に記憶はないのですが、国によって、特に陸軍でありますが、兵力の上限として定めているように思いました。いまの自衛隊の、特に陸上自衛隊の十八万もそれに近いものではありますが、ただ海、空がどこまで伸びるかわからない。三十何万トン、あるいは一千機といいましても、中身によってずいぶん違ってまいります。単純に兵器のそういったものだけを取り上げてそれが限度であるといってみても、抜け道があるかもしれないという予測があるかもしれません。したがいまして、また特に人員の獲得が非常にだんだんと困難になっていくというような時期においては、むしろ人員で、たとえば三十万なら三十万といったような限度を設けて、その範囲内で自衛隊の整備は予算でこれを決定をしていく。人員についても予算で決定していく。もう憲法と同じように、特定の何万がいいかは別といたしまして、何万以上はつくらないのだというような設定のしかたもあり得るのではなかろうかというふうに私どもも実は思うわけでありますが、この点はもう少し検討さしていただきたいと思います。
  314. 上田哲

    ○上田哲君 それは長官ひとつ考えてください。まだあしたもあさってもたぶんあるでしょうから。  一つだけどうしてもきょう言っておかなければならぬことがあるので、話がまるっきり変わりますけれども、全部ほかは飛ばしますけれども、熊本県の熊本市清水小学校というところがありましてね。ここでPTAの総会が四月二日に開かれたのですけれども、ここへ驚くべきことに——ここは熊本の北熊本駐屯地区、校区に入っているわけですが、児童数が千百六十五人、PTA会員が八百九十四人、このうち自衛官の会員が約百八十四人だったのですが、ここで規約改正の総会をやったところが、百三十四人が出席をした。百人前後は日ごろ母親ばっかりですが、このときは父親が出てまいりまして、この中でほとんどが自衛隊の人が出てきた。そして全くその会場は数人の発言者と、あとは拍手をする者に分かれておりまして、一方的にPTA側のこれまでの態度をなじって規約改正を葬ってしまった。時間がないからこまかく申し上げられないけれども、こういう事態が発生いたしました。まあいろいろ調べてみると、まっ昼間にこれだけの自衛隊員がそろって、父親が、自衛官がPTAに出かけるというのはどういうことなんだろうかと私は思うのですが、これが突如としてあらわれて、全く発言者と同じ連中が分かれてしゃんしゃんと話を持っていった。調べてみると、どうもこの学校では以前から阿蘇で林間学校というのがありましたが、林間学校を自衛隊の演習場でしてくれということで、一ぺん計画を変更したそうです。ところがPTA側が、まだ知的未発達の児童を自衛隊の施設内へ連れていって林間学校をやるということはどうだろうかということで、これを否定した。そのことが尾を引いて、そういう反自衛隊的なPTAというのは許せぬということで乗り込んだというふうに一般は理解しております。こまかいことは一ぱいありますが、時間の関係がありますのでいまは一応こういうふうに申し上げておきますが、こういう事実を御存じであるか。またこういう事実がこのとおりだとすれば許されないことだと思いますが、いかがでしょうか。
  315. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私もあなたからの提示がありまして、それから知ったわけで、そう一々私全部知っておるわけではありませんが、たまたまその日は日曜日であったというふうに聞いております。それからPTAについては、これはどうも防衛庁、あるいは自衛隊として、縛ったり、意見を申し述べて方向をきめたりよいうことにはならないので、本人たちの良識で自由と、こういうわけです。ただ、自衛隊というのはあくまで制服を着たよき市民であれ、これが従来の方針でございまするから、まあそういう線に沿って賛否をやったものだろうと思いますが、事の詳細については、ちょうど人事教育局長がきょう午前中からここに待機しておりますから申し上げさせます。
  316. 上田哲

    ○上田哲君 私はそういうふうな答弁になるのがいやだったから、言いっぱなしになって答えが返ってこなくちゃしようがないと思ったから私は通告しておいたのですよ。日曜日だから出たのだろうという、そんないいかげんな答弁されるならそれは一回じゃないのだから、そんな答弁をされるのなら、私はこれはどうあろうと少し考え方を聞きますよ。しっかりした答弁をしてほしいと思うから、爆弾というほどの話じゃないからちゃんと私はそのことを言ってあるんです。まじめにお答えなさいと言ったのですよ。そんな答弁をされるなら、もっと一ぱいデータありますよ、ここに。それならもっとやりますか。時間をいただいてやりますか。そんな態度というのはないでしょう。
  317. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) いやいや、それはどうぞ誤解せぬでください。私もそう一々わかるわけじゃないから、たまたま問題になった日は日曜日であったという調査資料がここへ来ておりますから一例として申し上げたので、そんな何べんもあったかどうかということについては詳しくわかりませんから、詳細は政府委員から申し上げさせますと、こう申し上げておるのですから、まあそう一々お怒りにならぬで……。
  318. 上田哲

    ○上田哲君 一々とは何ですか。
  319. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) いや失礼、ひとつよろしくお願いいたします。
  320. 江藤淳雄

    政府委員(江藤淳雄君) この問題は現地の新聞にも出たようでございますので、当時陸上幕僚監部としてはかなり詳しく調べておったようでございます。私はたまたま、別に隊務の問題でもございませんので、特に詳しく調べておりませんが、大体において、一般にわが部隊の官舎をたくさんつくった場合に、その地域の学区におきまして往々にして自衛隊の父兄の子供が多いと、あるいは父兄の数がそのPTAで非常に数を占めるというような場合におきましては、とかくPTAの設置の趣旨がその集団の力で曲げられてはいけないということにつきましては、われわれとしましてはかねがね注意いたしておるところでございますけれども、どうもこういう問題は、隊務の問題でないのでなかなか指導しにくい面も多々あると思います。そういう面におきまして、PTAというものは、いやしくも個人であれ、あるいは集団の力であれ、その地位利用の機関にしてはいけないということは特に注意してまいりたいと思っております。
  321. 上田哲

    ○上田哲君 だめですよ、そういう答弁では。自衛隊が乗り込んだというのは日曜日でありましたとか、さしたることはないでしょうと言われるなら、これはそのときにテープとってあるんです。どういう発言があったか。いいですか。そんないいかげんなことでは質問しませんよ。一々とそうおっしゃったけれども、私は一々と言うなら一々おこりますよ。テープをここでかけましょうか。そのときのテープがとってあるんだ。たとえば自衛.官が立ち上がって、PTAは特定の思想の中にあるではないかというような発言をしておる。林間学校を阿蘇のほうに持っていくと言ったら何が特定の思想ですか。鹿島昭太郎という会長ですがね、これはそんな人ではありませんよ。規約改正というのは格別問題のない改正ですよ。これをつぶさなければならないというようなことは何もない。いやがらせですよ、これは。その程度のことを答弁になると考えて、お茶を濁そうと言われるなら、——私はもうちょっとしっかりした答弁があると思ったし、まじめに答えるだろうと思ったから、きょうは一日でやれると思ったからやったのであります。これは委員長のお許しを受けてテープをかけましょうか。テープをかけたらあなた方どうしますか、処罰しますか、あらかじめ伺っておきたいけれども。具体的に出た発言が明らかに、自衛官の品位を汚し、——あなた方からすれば品位かどうか知らないけれども自衛官という立場をもってPTAになだれ込む。具体的には、うちの主人はきょう隊の命令でPTAに行けと言われているという話は幾らでもとれていますよ。取材もできています。これはテープまでとっていないけれども、そういう談話は全部とっていますよ。そういう中で私は聞いているのですよ。そんないいかげんな、ただPTAに行ったというだけの話でありますというようなことではないのですよ。これはだからあらかじめちゃんと調査をしてきちっとしてくれと言ったのです。ところがいかにも何でもないような形にして話を逃げられようとされるなら、私は委員長にお願いして、そういう形ですっかり資料を提示して聞いていただこうじゃありませんか。
  322. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) まあ人事教育局長も待機をしておりまして、いろいろ調べて資料を私にもこれくれておりますが、そういう意味で申し上げたわけじゃないので、これはそうお怒りにならないで……。
  323. 上田哲

    ○上田哲君 一々ですか。
  324. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) あれはどうもちょっと余分なことはでしたね。——ですからこれはまあひとつどういう実態かということを、まあそういうふうで、そちらのほうにもいろいろ資料がおありだということになれば、よく調査をさせますから、その上で時間をとって、何かこちら側に不適当な点があればどうぞ御指摘を願いたいと思います。もとよりこれは父兄として自衛官が出ていくことでありますから、隊務に直接関係しませんので、それこそ一々防衛庁として指図をする問題ではないと思いますが、不適当なことがあればこれはよく承りたいと思います。
  325. 上田哲

    ○上田哲君 どういう調査のしかたでもけっこうです。資料ありますから、それを出していいということになれば委員長のお許しを得てやりますけれどもね。はっきり聞いておきましょう。いいですか。隊務云々とおっしゃったけれども、隊が、自衛隊が命じてそこへ行かせたということが明らかになったり、そして特定の思想だと言って、そういうほとんど関係のない規約改正を葬った、全部一緒に手をあげているのですから。そういう二つの点が明らかになったら処置をとりますか。そのことをはっきりお約束いただければ、私はこれでやめます。
  326. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは仲間が、きょうはひとつPTAに出ようやと言い合うことはあると思います。これは命令ということになるか、ひとつ行こうじゃないかという話し合いであったのか、そこらが調査の必要なところですし、これはひとつよく調査をいたすことできようは預からせていただきます。
  327. 上田哲

    ○上田哲君 だから、その二点が明らかになったら処置をしますかと言うのです。
  328. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはやっぱり実情をよく調査しませんと、軽々に、これは自衛隊内部のことですと、こうであればこうしますとかこう言えるわけですが……。
  329. 上田哲

    ○上田哲君 自衛隊が指示をして行けということになって行っていれば問題でしょう。そしてまた問題のない規約を一斉にそういった形で葬ったということが明らかになったら問題でしょう。
  330. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) だからそういうことを含めてよく調査いたします。
  331. 上田哲

    ○上田哲君 処置をとりますね、そのときは。
  332. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 防衛庁長官に申し上げますが、本件につきましては事前に連絡があったにもかかわりませず、十分なる解明を与えるまでの時間の余裕がございません。時間の余裕があれば十分両者で審査できると思いますが、本日は時間の節約をさせていただきまして、十分によく調査をして、それが隊の責任になるようなものであるか、あるいはプライベートな問題であるのかということを十分研究されまして、責任ある答弁を次の機会にしていただきたいと思います。
  333. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) よくわかりました。
  334. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは私は米軍基地の実態についてちょっと二、三お伺いしたいと思います。いずれにしましても事前協議の問題とかずいぶんいろんな問題が関連をしてまいりますけれども、きょう私は時間的にも制限がございますので、しぼって話を進めたいと思いますが、いずれにしましても、ベトナム戦争の激化に伴いまして本土の岩国とか横須賀あるいは相模原、そういうふうなところからベトナムのほうに出動しておる、そういうようなことがさんざんいわれているわけです。さらには相模原の補給廠では、米軍の戦車の修理とかあるいは南ベトナムの戦車ですか、そういうようなものの修理が行なわれているんじゃないか。現実に写真等も含めて報道されております。こういうふうになってきますと、私たちはどうしても現在の日本、いわゆる本土、沖繩を含めまして、少なくともこの米軍の基地が一体どういうぐあいになっているのかということを詳細に知る必要があるんじゃないか。この点について大臣どういうぐあいにお考えですか。
  335. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは重要な問題でありまして、私どももしばしば米軍側と接触がある制服が役所へまいりまするというと、いろんな意見を徴しております。それを一口にて申しまするならば、現在在日米軍の態勢というものはそんなに緊張しておりませんと、こういう報告を受けるわけです。それはどの程度に緊張していないのかと申しまするというと、かつてキューバが非常に緊迫情勢になりましたときは、遠隔の地である在日米軍ではあったが、非常に緊張感がみなぎっておった。何か米軍ではそれを分けて数字的にあらわしておるようでありまするが、これは日本側として正式に窺知することはできませんが、おそらく今日の態勢というものは平静そのものですと、一から十ぐらいに分けるとすれば二ぐらいの点、キューバのときはまさに九であり十であったというような表現でものを言っております。したがって、日本の在日米軍というものは現在のところは平静であるという報告がここずっと続いておるのが実情であります。
  336. 峯山昭範

    峯山昭範君 大臣、私は大臣のおっしゃるのもわからぬではないんですけれども、しかしながら具体的に私たちの目の前には相当緊張した様子等があらわれて、新聞とかマスコミのいろんな報道機関等からわれわれ国民の目の前に出てくるわけですね。そういうふうな具体的事実を見ておりますと、大臣おっしゃるように緊張しておりません、一とか二程度だといったって、これはなかなか信用できないんでありますけれども、ここら辺のところは防衛庁としてももう少し具体的に知るべきじゃないでしょうか。
  337. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私は、制服が私どもに説明いたしておりまする在日米軍の状況を率直に申し上げたというわけでありまして、ベトナムが緊迫しておることはこれは否定すべくもありません。したがって相模原の補給廠などではそれこそベトナムの戦場に持ち運ばれると思われる戦車が積み出されるというような指摘も衆議院の内閣委員会でございました。そういうことを否定しようとするものではありません。ただ、あの補給廠で補修をいたしておりまするのは米軍の所有のものである、そしてベトナムの南側に貸与しておるものだ、こういう説明が外務省筋から私どもに返ってまております。
  338. 峯山昭範

    峯山昭範君 いや、大臣、それも私は今回のベトナム戦争の激化に伴いまして、あれは南ベトナムのものじゃないと言いましても、いろいろなことがいわれているわけです。私は実はこの問題をきょうは大臣に詰めようと思っているわけじゃない。この問題についてはすでにそれぞれの委員会等がありましたし、あの戦車は現実にアメリカ軍の戦車じゃなくて南ベトナム軍の戦車だという話もあるわけです。現実に基地の周辺の皆さん方は相当緊迫して見ているわけです。現実にカメラ等をかまえて長い間調査をしている人もいるわけですね。そういうようなところから、確かにわれわれ国民が予想していたように、あるいは日本政府が予想していなかったように、今回のベトナムの問題というのは相当激化しているということは私はわかるわけです。  そこで私が聞きたいことは、要するに、こういうふうに在日米軍基地がたとえばどこどこの基地ではどういうことが行なわれているか、何人くらい米軍がおって、どういう仕事がなされているのか、戦車を修理するところなのか、あるいはファントムという戦闘機がどのくらいおってどうなっているのか、そこではどういう能力があるのか、要するに在日米軍基地の機能というものでしょうかね、こういうふうなものについて少なくとも防衛庁当局がやはりきちっとつかんでおって、そして要するに、ただ精神的に緊張しているとかいないとかいうんじゃなくて、もう少し積極的に物理的に私は具体的にあらわれてくると思うのですよ。それは少なくとも私は思いますのに、沖繩が返ってきた、沖繩が返ってくると同時にこれは在日米軍基地というのは倍以上になったと思うのです。現在沖繩が返ってくる前の米軍基地でさえ国民感情としては米軍基地が多いんじゃないかという考え方は私はあると思うのです。そういうふうな意味からも、これは基地に対する基本的な考え方、基本的な調査というのは私は自衛隊としてもどうしても必要だと思うのですね、その点どうですか。
  339. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 米軍のことでありまするから、わがほうが実情をキャッチしておるつもりでも十分でないということはありましょうが、もちろんこういう特に重要な場面に配慮して注意を払っておるということは、これは当然あります。詳細については防衛局長からお答えをいたさせます。  沖繩の基地、これについては、御承知のとおり、現在行っておりまするのは九十六名、例の自衛隊に譲り受ける施設の管理要員というわけでありまして、いま沖繩の米軍基地がどのように働いておるかということは、これは沖繩県の県知事その他の判断等にまたなければならぬという実情であります。内地の基地については、ある程度把握しておるものというふうに認めております。
  340. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 今回のベトナム戦争に関連をして変動が見受けられるおもなところを取り上げてお答えいたしますと、岩国につきましては、四月の六日ころに、F4の一個中隊が日本を離れまして、フィリピンを経由してダナンに着いておるようであります。  それから、同時に、岩国の部隊であって沖繩などに臨時派遣をされておりましたF4の一個中隊、これもやはり同じころにダナンに到着をいたしております。  それから、これに関連をして、その飛行中隊の支援部隊、機材なども、やはりダナンに空輸されたと言われております。で、この結果、岩国での人員は約千人ばかり減員いたしておるようであります。  それから、四月の二十日過ぎに、いまF4の二個中隊がダナンに参りましたので、その穴埋めといたしまして、ハワイからF4の一個中隊が岩国に移ったといわれております。これに伴う増員分が約三百名であります。  それから、沖繩につきましては、従来、第七艦隊に搭乗しております第三海兵師団の大隊は一個大隊で、約千五百でありますが、現在は、さらに一個大隊が追加されて、二個大隊、約三千名が七艦隊の船に乗っておるはずであります。それと、海兵隊の支援部隊が約二千名これに加わっております。したがいまして、第七艦隊の艦艇に分乗しベトナム沖で待機しておると見られる海兵隊員が、約五千名というふうに思われます。したがいまして、沖繩にありまする第三海兵両用戦部隊、これは従来一万七千名ぐらいでありましたが、現在のところ、たぶん一万三千五百人程度に減っているものと思います。  一応、比較的顕著なものとしてわれわれが知っておるのはその程度でありまして、他の詳細のところは、まだ最近の変化はつかんでおりません。
  341. 峯山昭範

    峯山昭範君 いずれにしましても、大臣、先ほど大臣は、内地の米軍基地についてはある程度把握しておる。しかし沖繩については、九十六名自衛隊員が行っているだけでどうしようもないということでありますけれども米軍基地というのは、これは大臣も御存じのとおり、少なくとも沖繩国会で基地縮小の、国会の意思としても一応決議がされています。その決議に基づいても、少なくとも米軍基地というものがどういうふうに使われているか、どういうふうな機能を持っているか、また、向こうの基地は当然返してもらってもしかるべきじゃないかということは、これは私は、当然、自衛隊が本気になって調査をしてやらないといけないと思うんです。内地の基地につきましても、大臣はある程度把握とおっしゃっていますが、ある程度の把握ぐらいじゃほんとうはいかぬと思うんですよ。私たちもこの米軍基地の問題については相当真剣に取り組んで、その一つ一つについて、この基地についてはこれはゴルフ場だけであって何にもない。あるいは、この基地については当然米軍は何も使ってない、だから返してもらうべきじゃないかとか、一つ一つやっぱり詳細に調査をして、要求すべきは要求していくべきだと、そういうぐあいに思うんですけれどもそこら辺のところについての大臣の考え方をお伺いしたいと思います。
  342. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 在日米軍の動向を的確に把握することはやはり必要なことだと思います。特に、遠隔の地のベトナムとはいいながら、実戦行動に出ておるというときに、日本戦争に巻き込まれるかどうか、これはやはり問題なんですから、十分留意してまいりたいと思っております。  それから、沖繩の基地については、現況ではそういうふうですということを先ほど申し上げたわけですが、ここに施設庁長官おりますが、施設庁の軍用地等を確保する要員も向こうに相当数行っておりまするから、どの程度に基地が使われておるか、特に不要不急の基地というものは、これは早期返還の対象ということで、すでにサンクレメンテに一応のリストを持って交渉に臨んだわけです。ところが、先方が、基地のこれ以上の返還の話し合いについては、返還してからにしてもらいたい、こういうことであったわけですから、今後、外務省を窓口にして、旺盛にひとつこういった問題とは取り組んでまいりたいと思います。
  343. 峯山昭範

    峯山昭範君 それじゃ、大臣、ここでひとつ要望しておきたいんですが、まず一つは、内地における在日米軍基地の、自衛隊が現在までつかんでおるところの基地の態様について、これは資料として一ぺん出していただけますか。
  344. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) いま防衛局長とも相談いたしましたが、わかっておる範囲のものはお出ししましょうと、こう申しておりますから、出すように取り計らいたいと思います。
  345. 峯山昭範

    峯山昭範君 わかっておる範囲は出すということでございますから、それでけっこうですけれどもね、ほんとうに、しようがないものを出していただいたんじゃ困るんですよね。端的に、逆に言いますと、その程度のことしかわかってないのかということになりますからね。ですから、ほんとうに真剣に調査をした、現在までの防衛庁はこれだけしかつかんでいないというがちっとしたものをぜひとも出してもらいたいと思うんですが、これはよろしいですね。
  346. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 自衛隊のことなら何でも申し上げられる範囲のことは申し上げられるわけですが、何せ米軍のことですから、ある程度の制約はあろうかと思います。これは御理解願えると思いますが、誠意をもったものを出したいと思います。
  347. 峯山昭範

    峯山昭範君 それから、重ねてもう一つお伺いしておきますが、沖繩の米軍基地の実態については、これは当然九十六名の自衛隊の皆さんを中心にして調査を進めていらっしゃると思うんですが、少なくとも内地と同程度までの調査というのはいつごろまでに終わるんですか。
  348. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 先ほども申し上げましたように、現在軍用地確保で行っておる施設庁の職員、これはやはり軍用地確保というものが主任務でありまして、米軍の実態を調べるということになりますと、多少これは情報系統の仕事になるわけでありまし又制服が配備されたときに的確に入るようになる。まあ、したがいまして、全然現在でもないわけではありませんが、ことしの夏以降、年末ごろにはある程度のことがだんだん把握できるようになるのではないか。現在でもすでに沖繩米軍の任務その他については把握しておるわけでありまするが、その動きですね、そういうものを的確にとらえることはちょっとできないと、こういう意味に受け取っていただきたいと思います。
  349. 峯山昭範

    峯山昭範君 いずれにしても、早急に正確な調査を行なって、その上でまた、それも資料としていただきたいと思うのです。  それで、重ねて、米軍基地の問題について関連してもう一つお伺いしたいんですが、先般の法務委員会あるいは衆議院の議論の中で、在日米軍基地の再契約の問題について種々議論が行なわれているようでありますけれども、法務大臣が、在日米軍基地の再契約について、民法六百四条の規定によって二十年間の契約期限が満了する、したがって、その満了期限がことしの七月の二十七日に来るわけでありますけれども、これに対して防衛庁長官の見解というのが新聞等に報道されておりますけれども、これはもう少し、もう一回正確に長官からお伺いしておきたいと思います。
  350. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 施設庁長官に詳しく答えさせます。
  351. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 先般の衆議院の法務委員会並びに参議院の予算委員会において、米軍に提供しておりまする施設と民法六百四条の関係についての見解が示されたわけでございます。それによりますと、まあこまかく申し上げませんが、要するに、地位協定を実施するために日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の用に供する目的をもって国が所有者から賃借している土地の賃貸借契約は、その期間を駐留軍が使用する期間とする趣旨の賃貸借と解せられるが、民法第六百四条によれば、期間の定めのある「賃貸借ノ存続期間ハ二十年ヲ超ユルコトヲ得ス」と定めているので、本契約はその成立後二十年を経過したときに期間が満了するものと解する。本契約の始期が昭和二十七年七月二十八日のものについては、本年七月二十七日をもって期間が満了するものと考える。しかして、期間満了後なお引き続いて駐留軍の使用の必要がある土地については、国が契約の更新を求める必要があり、契約が円滑に更新できるよう最善の努力をいたす所存であると、こういう趣旨の見解でございました。
  352. 峯山昭範

    峯山昭範君 これはすでにもう二十年間、そういうふうな非常に何というか、自分の意思に反して土地を提供している人もいるわけですね。そういう点から考えてみまして、防衛庁長官、再契約に応じない地主が出た場合、これはどうですか。
  353. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは従来も一年ごとの更新で話し合いをしてまいった間柄でありまするから、十分御理解をいただけるように督励をいたしまして、話し合いに持ってまいりたい、こういう姿勢で現在おるわけであります。
  354. 峯山昭範

    峯山昭範君 一年ごとの再契約で話はやってきているから、強権発動はしないつもりだということだろうと思うんですが、いずれにしても、二十年間の契約を終わって、少なくともその人たちは一応の役割りを果たしたと言えると思うんですね。そういう点から考えてみましても、やはりその地位協定とかいろんな法律の強権発動というのは、これは当然私は見合わすべきだと思うんですね。そして、少なくともいま大臣もおっしゃったように、これは話し合いで解決すべきだと私は思うんです。少なくとも話し合いで解決ができない場合ですね、その場合には、どうしても強権発動するんだというんじゃなくて、今度は逆に、これは国民の世論としても、米軍基地、あるいは自衛隊の基地も含めましてそうですが、その基地はやっぱり現在の時点で考えても多いんじゃないかという考え方があると思うんですね。やっぱり国民の大多数はそう思っておると思うんです。基地が多いということは、沖繩に至ってはこれはもう基地の中に沖繩があると言われているぐらいだから、これはどうしようもないわけですけれども、いずれにしましても、そういう点から考えてみましても、強権を発動する、そういうふうな前に、その基地はこれは日本側に返してもらえないかということを、少なくとも米軍に対して交渉をすべきだと私は思うんです。そこら辺についての大臣の考えはどうですか。
  355. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) お示しの点はきわめて重要だと思います。そこでこの委員会でも申し上げたかと思いますが、そういう問題をひっくるめて、基地の縮小整理、統合整理といいますか、そういったことを、防衛庁内にプロジェクトチームをつくりまして、十分検討していきたいと思います。これは庁内でも合意いたしておりまするので、間もなく正式に発足して検討いたします。
  356. 峯山昭範

    峯山昭範君 プロジェクトチームをつくって総点検を行なうということでありますけれども、それはどういうふうなメンバーでどういう、プロジェクトチームの構想というのはもうできているんですか。   〔委員長退席、理事町村金五君着席〕
  357. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 責任者は事務次官を充てようと思っております。それで、現在の基地というのは旧陸軍時代から受け継いだものというのがあるわけです。たとえば一例を申し上げますと、町田市の郊外に戦車の試験道路があるわけです。町田市の郊外というのは、戦争前は足柄山の延長のようなところだったと思いますが、現在じゃもう完全な東京のベッドタウンでありまするし、急激な伸びを示しております。一体そういうところに技術研究所があるからというだけで戦車の試験道路があっていいのかどうか、大いに問題がある点だと思います。そういうものをひっくるめ、特に今度関東平野の米軍基地を横田に集約するというような話し合いがあるおりから、すべてをもう一度再検討する。たとえば、いまの富士演習場の問題などもそういう検討対象になってこようかと思います。しかし、これは東富士の前例もありまするので、ああいう線に従って正規の契約を結んで、ぜひ地元側の理解を求めたいと思っておりまするが、とにかく基地を検討する。これは自衛隊理解を持っておってくれる人でも、何となく都市様相が変わってきたところに、既得権だというので蟠踞するというやり方は、これは私は再検討していいものだというふうに考えております。
  358. 峯山昭範

    峯山昭範君 いずれにしましても、その結論が出ましたら、また種々取り上げて質問をしたいと思っております。いずれにしましても、在日米軍基地の問題は、これは一挙にこの基地の整理をやってしまおうということは非常に不可能だと私は思うんですね。したがって、これは事あるたびに、基地の縮小という問題、あるいは基地の問題については、国会の決議の趣旨に基づいても、事あるたびに交渉すべきだと、こういうぐあいに思うんですが、その点はよろしくお願いしたいと思います。
  359. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) はい。
  360. 峯山昭範

    峯山昭範君 さらに、時間がありませんので、続けてまいりますが、四次防の問題について、もう時間もありませんので、二、三聞いておきたいと思います。  この問題については、先般からこの内閣委員会においてもいろんな面で議論をされております。しかしながら、多少やっぱりいろんな問題が出てきております。この間四月十三日付で「四次防防衛庁原案発表の経緯について」というプリントも読みました。これはやっぱりこういうプリントを出すゆえんは種々あろうと私は思うんですけれども、いずれにしましても、この問題につきましては私たちの内閣委員会でたびたび議論をされてきました。たとえば一次防、二次防、三次防とそれぞれ閣議決定がなされて、ちゃんと国防会議を通って閣議決定がなされて、われわれの目に触れるときには従来から大体国会の閉会中というのが非常に多かった。そのために、そういうことじゃだめだから、どうしても国会の開会中にこの問題を出してもらいたい、そして当然議論をすべきであるというような話が相当出てまいりました。当時中曾根長官等もこの問題については、防衛庁の原案を発表するということについては当然そうだということで、当時この内閣委員会に出席された総理もそのことに賛成をされて出したはずなんです。しかしながら、先回の内閣委員会におけるところの議論を見ておりますと、要するに防衛庁の原案を出したことはやっぱり間違いだと、そういうふうな感じの答弁がたびたび——二、三回にわたってなされております。ということは、防衛庁長官がかわるたびに考え方が変わるのか。また、政府の考えが変わるのか。または、このほんとうのあり方というのはどうあるべきなのか、ここら辺のところはどうですか。
  361. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 総理もどうもあれは防衛庁側が何となくかってに出したんだというふうな表現の答弁がありましたですね。それからいまの経過についての報告書という形になったわけであります。  で、あの経緯は、もう時間もありませんからくどくど申し上げませんが、本来あれだけの計画、要するに主要項目から計数までを入れたものを出すためには、やはり大蔵省側の同意、了解、特に外交、国際情勢というような問題を分析して防衛力が整備されなければならぬというたてまえからいくならば、当然外務大臣、外務省側の了解、こういうものを取りつけなければならぬし、従来はそういうしきたりになっていたわけです。で、それを正式の了解を取りつけないうちに発表をした、まあここに手違いのもとがあったと思います。まあどうしてそういうことになったのか、あのそつのない中曾根防衛庁長官にしてはまことにちょっと当時を想像するにむずかしいのでありますが、そういうことになった、事実上は。で、本来ならば国防会議の議を経てあれが発表される。それでこそ初めて四次防原案、こういうことになるわけですが、原案の素案らしきものが一方的に、大蔵省も外務省も十分の相談を経ないで発表された、そこにまあ間違いがあったわけですし、まあ今日白紙還元といわれてもどうもしようもないような形になったということはいかにも遺憾に思っております。当然こういうものは十分慎重な上にも慎重に、念入りに話し合い、了解の上で発表する、こういうことにしてまいりたいと思います。
  362. 峯山昭範

    峯山昭範君 しかし大臣、やっぱり大臣おっしゃるけれども、私は中曾根長官のやり方というのは、まあそれはそれなりに理由は通っていると思うんですよ。中曾根長官が一人でかってにやったんじゃない、少なくとも事務当局やみんながやっぱりまわりにおってやったことなんですからね。しかもそのことは中曾根長官は、当時の内閣委員会の議事録を読んでみますと、いま大蔵省とかいろんなこともおっしゃいましたけれども、そういうこともちゃんと頭に入れて、そのことも答弁された上で出しているわけですね。当時の議事録を読んでみますと、少なくとも、「今回、国会というものを通じて各党の御批判もいただき、」そして「国民の世論の反映等も見つつ、」そして「防衛庁と大蔵省、あるいは防衛庁と外務省、あるいは防衛庁と国防会議等がこれから折衝を進めていって、そして最終案を迎えていく、そういうやり方が実はいいと思っているわけです。」要するに先に出すという方法が実にいい方法だというんですね。
  363. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 自分が先に出す方法が……。
  364. 峯山昭範

    峯山昭範君 そうそう、防衛庁原案として先に出すということは実にいい方法だという。「このやり方は私が責任を持って自分の方針としてやったやり方で、」というような、非常に自信に満ちた言い方ですね。こういうふうな考え方が、防衛庁長官がかわるたびにくるくると変わっちゃうんじゃどうしようもないわけです。この委員会における発表というのは、あれは慎重な中曾根長官がちょっと行き過ぎたんだなんて、それじゃこれは防衛庁の基本的な考え方ということからいっても、あれは前の大臣が間違ったんだ、また大臣ももうやがてかわるでしょう。あれは前の大臣より前の中曾根長官のほうがよかったんだなんてことになってきたら困ります。ほんとうにこれは。委員会での議論が空転するばかりですよ。そこら辺のところはどうなんですか。
  365. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 前任者のことですから、あまり私批評をしたくないのでありまするが、あの当時党内でも議論がありました。たまたまそこに自民党の国防部会長の源田さんもおられますが、国防の基本方針を変えるという方針を打ち出した。当時、安保調査会の会長は赤城さんで、私はその会長代理みたいな役割りを果たしておりました。変える必要なし、これで防衛庁とまた食い違いが、まあ党と政府とで実際はあったわけです。それからいまの、防衛庁原案を防衛庁が独自の立場で出すべきだ、これも私は一つの意見だと思います。思いますが、これは党側の賛成を得られなかった、結果はそういうことだったと思います。で、まあそういうことが一つの反省となって、いまは自民党の党内においても、政府においても、大蔵省、外務省、こういうところと十分話し合いをして原案をつくり、国防会議の議を経て発表する、まあこういう形にもう一ぺん確認されたわけですから、この確認されたものが正しいわけで、今度防衛庁長官が源田さんにかわろうと、だれにかわろうと、私がいま言っておることを簡単に変えることはできない、これは権威を持って言えると思います。
  366. 峯山昭範

    峯山昭範君 それはやっぱり、私は先般の衆議院における四次防の問題の、これはいろいろなシビリアン・コントロールの問題等が議題になって、やっぱり政府としても反省してその上でだろうと私は考えるんですけれども、しかしこの問題についてはまあこのままおいておきまして、後ほどの法案の審議のときに再度やりたいと思うのですが、もう一点私はお伺いしておきたいと思うのですがね。これも防衛白書の問題ですね、これも私はこの間みたいに総理の言い方をしてみると、あれは防衛庁がかってに出して、われわれ政府としては知らないものだというような感じなんですね。少なくともこの防衛白書については、私は毎年発表すべきだと思うのです、少なくとも。これはかねがねから主張はしてまいりました。しかしながらこれは毎年発表されない。これも私はおかしいと思うのですね。  それからもう一つは、この防衛白書が昭和四十五年の十月に出ました。この防衛白書が出る前に、当時有田長官は、防衛白書を出す、もうほとんどできているという話がありました。ところが、中曾根長官にかわったとたんに、ちょっと待てというのでストップされて、そしてしばらくたってからこれが出た。しかしながら出たこれは政府で閣議決定されて、きちっとした政府の了解のもとで出たのじゃない。これは要するに閣議了解というのですね。閣議決定じゃないわけです。そこら辺非常に微妙な問題が含まれているわけですね。そこら辺のところはやっぱりあれは防衛庁がかってに出しているんだというような考え方が前の問題とからんで出てくるわけです。そうなんじゃなくて、政府としてやっぱりちゃんとしたこの防衛白書というようなものは少なくとも議会に報告すべきじゃないか、こういうぐあいに思うんですが、どうですか。
  367. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 防衛白書は閣議に報告されまして了承を得たものです。したがって、私は防衛白書については毎年出したらいいではないか、賛成であります。できるだけ防衛問題を国民にわかりやすく理解してもらう上からいっても白書を出していく。これはやはり日本防衛姿勢というもの、特に他国の軍隊と違うこの自衛隊の方向というものをしっかり国民理解してもらう上からも望ましいことだと思っております。当然これは閣議の議にして了解を得たものを出していく、そういうしきたりにしてまいりたいと思います。何も同じ閣内ですから、ちょっとやっぱり念には念を入れたら手違いは起こらなかったという感じがいたします。
  368. 峯山昭範

    峯山昭範君 私の持ち時間もないそうでありますので、——まあいずれにしましても、この「日本防衛」という一冊の小さな本がありますね。まあ大臣は毎年出すということについて賛成だそうでありますので、ぜひともそうしてもらいたい。昭和四十五年の十月に出てからというものまだ出ていないのですね。これはもう遺憾だと私は思うのです。そこで、この中の三七ページに、この本では三七ページじゃないですね。かちっと印刷した活字のほうは三七ページ。この本では四九ページです。その中に、「防衛力の限界」の項目の中に、「防衛力整備のための国家資源の配分についても、単に経済力の増大に比例し、国民総生産や国家予算との比率によりきめることは、必ずしも適切ではない。」こういうような表現がありますね。この考え方については、これは非常に私は重要な問題だと思うんですけれども、これは現在でも変わってないのかどうか。これが要するに防衛力整備に対する政府の基本的な考え方と、私たちはこういうように受け取りたいんですが、この点どうですか。
  369. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは当時この起草に当たりました政府委員から、時間を節約する意味で的確にお答えいたさせます。
  370. 高瀬忠雄

    政府委員(高瀬忠雄君) 「防衛力の限界」という項目をつくるにあたりまして、まあいろいろなことを考えたわけでありますが、その中で日本防衛力というものは、経済の面あるいは国民の資源の面、そういった面からいってどういうような地位を占めたらいいかということを、すなわちまあ経済力、財政力、そういった面の中における防衛力の占める割合といいますか、地位といいますか、そういったことに一応の限界を設けるべきじゃないかということで、そういう項目ができたわけでございます。それで、その当時は、経済大国になったけれども軍事大国にはならないというような話がありまして、そういう中における防衛力の地位を明確にするという意味でつくられたわけでございまして、そういった考え方は現在でも必要であり、慎重に考えなくちゃあならない問題であるというふうに私は考えております。   〔理事町村金五君退席、委員長着席〕
  371. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは、現在の国防の基本方針、先ほど大臣申されました、少なくとも中曾根長官のときには、国防の基本方針は改定すべきである、国力国情に応じてというのはやはりまずい、そういうような考え方で統一されておりました、この内閣委員会答弁においては少なくとも。そういう点からいきますと、少なくともこの文言は、国力国情に応じて防衛力を整備するということはいかぬということをいっているわけですね、これは。適切ではないといっているわけですよ。
  372. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) いや、そうでもないでしよう。
  373. 峯山昭範

    峯山昭範君 これはどういう意味ですか。
  374. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは、「国力国情に応じ、自衛のため必要な限度において、社会保障、教育」とか、これは三十二年の国防の基本方針の中にもこういうような方向が出ております。したがって、それをそのままこちらのほうに流用しておるわけですが、私はこういうふうに受け取っておるんですが、いま参事官の説明に徴しましても、「単に経済力の増大に比例し、国民生産や国家予算との比率により」きめていく、これが防衛力の限界である、いわゆる一%以内という三次防以来とっておりまするあの標準というものが絶対のものではありません、こういうことを言っております。で、それは何か。あと続いて、「わが国独特のきびしい限界を持っている。」こういうことで結ばれております。それはいまの海外派兵はしないとか、非核三原則の政策を遂行しておるとか、あるいは徴兵制は絶対とらない、いわゆる志願兵制でいうところのマンパワーの限界、これは非常に大きな限界なんですね、そういうものがあるということで結んでおるのであって、ただ一%だからいいといって、経済がどんどんどんどん伸びていけば、その一%は膨大なものになる。必ずしもこれが絶対の尺度ではない、私はそう思ってそのように答弁をいたしておるような次第でありまするが、そういうことを含んで表現したものだというふうに思っております。
  375. 峯山昭範

    峯山昭範君 ということは、要するに国民総生産の一%というようなきめ方はまずい、これはそういうことをいっているんだ、そういうわけですね。
  376. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) それが絶対ではない——一%が一つの標準である、こういうことで今日まできたわけです。だからその標準に変化があるわけではありませんが、経済の伸びやスローダウンやそういうことによってゆれの大きいパーセンテージというものは限界の絶対のものではありません。いやそれじゃ、時間を節約する意味で申しますると、二%にもしたり、多くするつもりでそういうことを言っておるのじゃないかという御心配も出てきましょう。そんなことは考えておりません。これはどうぞ御安心ください。
  377. 峯山昭範

    峯山昭範君 この問題については、もっともっと議論をしたいわけでありますけれども、もう終わりにしたいと思うのですけれども、いずれにしましても、この問題は国防の基本方針ともからめまして、非常に私は重要な問題だと思うんです。現実の問題として、国力国情に応じて防衛力を整備するというような問題も、これは当時中曾根長官は、それはもう当然現在の時点としては、これは変えるべきだというような話もずいぶん出ておりました。そういう点から考えてみましても、私は、この問題については次回の委員会で詳細に詰めたいと思います。きょうはこの程度で終わりたいと思います。
  378. 岩間正男

    ○岩間正男君 時間の関係から最初に資料要求したいと思うんですが、それは、第一に、アメリカのベトナム侵略によって沖繩が最初、非常にこれは急激に使われておる、基地の体制が激化しているということは予想にかたくない問題です。ことに作戦基地、補給基地、あるいは通信謀略基地としての沖繩の機能というものはせい一ぱい使われているのじゃないか。まあ本土の様子を見ても、このことは推察にかたくないことですから、こういう点から、次の基地の状態を、これは外務省になりますか、あるいは防衛庁、どちらかでもいい、両方からお聞きしたい。  第一に、嘉手納、それから普天間、ホワイトビーチ、牧港の第二兵たん部隊、キャンプ・ハンセン、それから特殊部隊のこれはSR71、それから第七心理作戦部隊、それからいわゆるグリーンベレー、こういうところ、さらに、まだ返還されませんが、那覇、これらの最近の動向をできるだけ、これは全部と言ったってそれはできないかもしれませんが、できるだけ可能な範囲内において、これはこの次まで間に合わしてほしいと思います。これがないというと、この前も十二日に質問をしましたけれども、論議が中途半端になるのであります。この実態をつかまないと、どのような一体今後の安保のいわゆる運用をやっていくのか。ことに事前協議の問題が大きな問題になってくる。事前協議対象になるかどうか、こういう問題については、どうしてもいまの実態をつかむことなしには、これは国民の負託にこたえることにはならないわけであります。  さらに、これと関連しまして、本土では横須賀、横田——横田の問題はこれは二十四日の予算分科会で非常に発着機数の変動が多くなった、これつかんでいるかということでありましたが、平常と変わりはございません、そういうことであります。ところが、これにつきましては、最近C5Aギャラクシーは戦車を三台も積んで、これは直接ベトナム戦線に出撃をするという事態が起こっております。横田、さらに岩国、厚木、大三沢、これだけのこれは本土における基地の態様がベトナム戦の激化によってどうなされているかということ、これをはっきり資料として示してほしい。これは十分な問題でないとしても、とにかくその努力をしておるかどうかという姿勢が私は問題だ、こう考えております。この前のとにかく十二日の委員会では全く失望させられたのです。ああいう体制で三日後に沖繩が返ってくる、このままずるずるべったりいく、こんなことは許されるかどうか。これは日本の政治姿勢として重大な問題ですから、私たちはこの点ではどう言われようが、ひくにひけない。さらに兵器につきましては、C5Aギャラクシー、これはどういう性能を持って、どのような構造なのか、いろいろこれについての塔載量だとかあるいは速度だとか、こういう性能について、さらにKC135、M48戦車、これは大衆的に非常にいまこの問題について関心を持っているところでありますから、この問題については、少なくともこれは国民が知らなければならぬのです。先ほどもちょっとKC135、われわれのうろ覚えの知識でこれは言ったわけであります。とにかく十一万八千リットルという油が一ぺんに吸われる、そういうことになります。こういう実態というものが明らかにされていないということは、どういう一体巨大なものがいまわれわれの頭の上にのしかかっているのかということがはっきりしなければ、防衛論議をしても、ほんとうにだれのための防衛論議だかわからない。これはやっぱり国民のための防衛論議ですから、そういう点では私はいままでのとりあえずこの資料をお願いしたいと思うのです。いかがですか。
  379. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 米軍基地、在日米軍基地を的確に把握する、これは先ほど峯山委員からも御質問があったとおりでありまして、今後私どもあとう限りこの点については十分調査してまいりたいと思います。したがって、いま御提示の点につきましては、わかっておるものについては、資料として御提出をしたいと思います。
  380. 岩間正男

    ○岩間正男君 外務省いかがです。
  381. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 防衛庁長官のおっしゃられたとおり、われわれもできる限りの資料を集めたいと思います。
  382. 岩間正男

    ○岩間正男君 次にお聞きしますが、現在相模原の補給廠で米軍の戦車が、これは南ベトナムのかいらい軍の戦車も入っておるわけでありますがこういうものがどんどん修理されて、そして送り返される、この法的な根拠を明らかにしてほしい。
  383. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 御存じのとおり、安保条約によりまして、われわれは、極東の国際の平和及び安全のため基地を提供することになっております。そしてベトナムにおける戦争極東の平和及び安全に関係ないということは言えない、むしろ密接に関係がある。したがって、ベトナム戦争の補給のために日本の基地が使われるということも、これは日米安保条約のたてまえ上許容されることである、このように考えております。
  384. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは具体的には、安保の第六条、日本国の安全に寄与し、極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため米国は基地を使用する、こうあるわけですね。まあそういうふうな御答弁なんですけれども、どうなんです。先ほどこれは福田外務大臣にお聞きした。外務大臣に、一体今度のベトナム問題は平和的に解決する、そういうことをこれは旨としますか、そう思います、したがって、そのためには、本土、沖繩を含めたこの日本の基地が、米軍の進撃に使われておる、これは望ましくない、これは望ましくございません、こういう御答弁が出されたのです。こういう問題といまの何は違反しませんか。
  385. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 相模原における戦車の補修等は、これは御存じのとおり、米軍のベトナム戦争米軍所有の戦車を補修する、そしてこのような補修補給の義務は、機能は日本の基地が行なうということは、従来も行なわれていたことでございますし、先ほど申し上げましたとおり、これはわれわれとしては安保条約第六条の、いわゆる極東における国際の平和及び安全に関係がある、こういうように認めている次第でございます。
  386. 岩間正男

    ○岩間正男君 安全と平和に関係があるというふうに、独断的にこれはきめているのでありますけれども、安全に反するんだと国民は認めるんです。これは大多数、もうほとんどの世論でしょう。だから横田にしろ、岩国にしろ、横須賀にしろ、これは重大なやはり関心を持ったのであります。ベトナム問題で、私は予算委員会の総括で四月の八日にこれは質問したわけです。このベトナム問題、非常にこれはやっぱり事前協議対象にならないということで、国民は憤激を高めているんですよ。そういう立場でいまのような答弁を、これはアメリカ局長がされておる。そしてしかも、公式の先ほどの私の質問に対して福田外務大臣は、これは戦争にそういう協力をしてくれ、ことに戦闘作戦に直接参加するような基地は、これは絶対認めない、これからそういうことは望ましくないということははっきり言っておる。そうすると、こういうことは食い違いだ、まるでこれは食い違いなんですね。それをとにかく米軍の役に立つんだ、そうして極東の平和に全く役に立つんだという判断、その判断の基準というのはこれはどうなんですか。どう考えていますか。国民の立場から考えなければだめですよ。アメリカの立場に立って考えて、アメリカがこれは必要でございますから、そんなことを言っても、そんなものは通用するものじゃありませんよ。そういう点はもう少しやはり大衆の動きをみなければだめです。国民の動きというものは何を一体考えているのか。平和憲法のもとにある、そして戦後二十数年、ちゃんとやっぱり平和を守るということに結集してきておる。この国民の立場というものにはっきり立たなければ、いまのような答弁というものは、全くこれは月とスッポンだ、こういうことが許されるということはたいへんだと私は思う。  そこで具体的にお聞きします。米軍の相模原補給廠は、現在どのような兵器の修理を行なっているか。この種類、数量を示してほしいのです。そしてまたどのくらいベトナムに送られているか。
  387. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) この点につきまして、われわれは米側に照会した結果、一応次のような回答を得ております。先方は、相模原補給廠において修理しておる車両は重装備車両、すなわち戦車でございます。それから兵員輸送車、これはトラックのようなものでございますが、これは一九六五年から始まりまして一九七二年、現在まで一応重装備車両、すなわちM48、M41戦車につきましてと、それから兵員輸送車につきまして、別個に数字をもらっております。読み上げてよろしゅうございますか。
  388. 岩間正男

    ○岩間正男君 簡単ですか。時間が制限されているんだから、簡単なら読んでください。
  389. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) それじゃ最初は重装備車両につきまして一九六五年はなし、一九六六年三十二台、一九六七年百台、一九六八年百六台、一九六九年七十七台、一九七〇年百二十一台、一九七一年百二十台、一九七二年九十四台。それか兵員輸送車は一九六五年が十四、一九六六年が百六十三、一九六七年が二百九十六、一九六八年は四百八十九、一九六九年は七百八十八、一九七〇年が千六十台、一九七一年が七百二十三台、一九七二年が六百二十台、こういうことになっております。
  390. 岩間正男

    ○岩間正男君 そのほかにM25自走砲、さらにM13自走火炎放射砲、そういうものがあると思うんですが、これらのものももっとお調べを願いたい。これらのものは皆米軍のものばかりですか、どうですか。
  391. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 全部米軍の所有のものであります。
  392. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうふうに言われましたが、全体が暗緑色のままで、マーク、番号のない南ベトナムかいらい軍のものが多数まじっている。これは事実です、まぎれもなく。三年前ごろから送り込まれ、三年間に三百台が修理されて、ベトナムに送られたと見られる。極東最大の相模補給廠の見学も兼ね、この軍用車の修理状況を視察するため、南ベトナムの政府軍の将校が何度か同所をたずねている。これをはっきり日本の労働者が目撃している、こういう事実がありますが、こういう実態はいかがです。
  393. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 南べトナム政府と米軍との間には、いわゆる相互防衛援助条約がございまして、これによって米側は戦車、輸送車その他につきまして、各種類につきまして、一定の台数を常に南ベトナム側に提供する、そしてこれらのものはこわれたり修理を要する場合には、米側が修理をしてまた新たなものを提供する、こういうことになっております。これらを南ベトナム側に渡す場合には、これはあくまでも貸与でございまして、いわゆるタイトルというのか、所有権というものは米側が所持しております。したがってこれらはあくまでも米側の所有、こういうことになっております。
  394. 岩間正男

    ○岩間正男君 どういう協定があるか知らないが、それは日本の関したことですか。日本がそんな南ベトナムの——米側がとにかく南ベトナムとの間に協定がある。したがってそこの戦車を日本に持ってきて補修をする、そういうことをこれはいまのように安保の範囲内でこれは差しつかえないんだと、こういうことなんですか。この問題について、当然これはいまの現状から考えまして、こういうことは許されますか。どう考えます。これは防衛庁長官いかがですか。
  395. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 現在の実情としては許される、こういう見解に立っております。
  396. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはいいと思いますか、こういうことやっておいて。けさほどから論議をしました平和的解決だとか平和共存だとか、日本はこれに介入しないんだと、そういうようなことを言ったって、これは了承できますか。国民感情から判断してもらいたいのですけれどもね。国民の基盤に立ってものを言ってもらいたい。もうどこのやつかわからないような、宙に迷ったような、どこかの手先のような発言じゃ困るわけですね。そういう一体協定が、安保条約でやむを得ないんだというような、そういうことをあなたたち言おうとするのでしょうが、それは何条のどういうあれになりますか、根拠は。それでそういう条約でいいのかどうかという問題がいま問われている。どうなんです。端的に答えてください。
  397. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 先ほど御説明をしたとおり、安保条約第六条によりまして、極東の国際の平和及び安全のためにわが国は基地を提供する。そして地位協定第三条によりまして、基地はアメリカの管理するところであり、基地の目的のためにアメリカはあらゆることができる、こういうように地位協定三条に書いてあります。
  398. 岩間正男

    ○岩間正男君 わかりました。驚くべきことですよ。そうですね。六条が正しく使われているかどうか、全く拡大解釈でしょう。少なくともこういうものを想定して結ばれていないはずですよ。ところが実際はこれを拡大解釈していままでこれは使ってきている。極東の安全だ、平和だ、何が極東の安全と平和だ。ここから送られた戦車で何十人の人が引き殺されているのです。何十万、何千の人がここで爆撃されているのです。ベトナムの爆撃のあと見たですか。乳飲み子がどんな一体地べたにはっている姿見たですか。母親が殺されている姿を。これが平和と安全か。こんなばかな論議が当国会で行なわれているというところに問題がある。何が一体安保条約そのものが安全のための条約ですか。まさに人殺しの条約だと言われたってしようがないじゃないですか。そういうことを答弁しなければならないあなたたちの立場、ここも日本のいまの政治の姿が問われているのです。ここは明確にしておかなければならぬと思います。しかも、この十六日からマークのないかいらい軍戦車に、米軍のものにつけている白い星のマークと、米軍のものと形式が似たシリアルナンバー、いわゆる識別番号を書き込んで戦車標識を塗りかえているが、こういう事実を政府は知っておりますか。
  399. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 先生いま御指摘の点はわれわれはまだ承知しておりません。ただし、先ほども申し上げましたとおり、戦車がかりに南ベトナム軍により使用されるといたしましても、これはあくまでも米軍の所有の戦車である、こういうことで、ございますから、そういう標識の有無にかかわらずやはりその修理はこの基地で行なうこともやむを得ない、こういうことでございます。
  400. 岩間正男

    ○岩間正男君 米軍を弁解する立場に立って御答弁なさる必要はないんですよ。私たちは日本外務省だととにかくまだ思っているのですからね。そしてあなたはやっぱり日本アメリカ局長だと思っているのですから。そういう立場から、米軍の弁解だけすれば事足りる、それであなたアメリカ局長がつとまるんだという、そういう日本政府の姿勢が問題なんだ。そういうふうに言っていますけれども、どうです。こういう中で、実際はこれは国民に非常に問題になってきて、この南ベトナムの標識をつけたんじゃぐあいが悪い、これを今度消したんです。そして今度米軍の標識つけて行っている。このやり方、どうです。ずいぶんこれは補給廠、大きな問題になったわけでしょう、相模原は。ここ数日来国会の内外で激しくこの問題は究明されたわけです。この追及の前にどうしてもこういうことを隠さなければならないので、もう見えすいている、アメリカのやり方は。こういうかっこうで行なわれている。また基地労働者などによると、いままで使っていたUSARV、これは在ベトナム米軍、それからあるいはRVN、ベトナム共和国などとはっきりわかる記号表示は一切これは廃止して、そうして十数けたの数字で車の種類だとか欠損状況、修理状況、修理年号、発注者など数項目を全部表示する方法に切りかえた、こういうふうに言われております。このことを政府は知っておりますか。
  401. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) いまの点はわれわれはまだ承知しておりません。しかしわれわれの態度は、立場は、先ほど申し上げたとおりでございます。
  402. 岩間正男

    ○岩間正男君 私がここで質問しておるのでありますから、この件については至急きょうにも米軍にちゃんと問い合わして、そして責任のある答弁を私はいただきたいと思うのです。そうでしょう。その理由は、私はいままで申し上げました。国民の目をくらます気ですか、一体、日本国民の目を。そうしてベトナム侵略のこのような兵器を大量にここで修理をしている。そうしてぐあいが悪くなるというと、今度はペンキでこれを隠す。こんなばかげたことが一体許されると思うんですか。どこに一体天地に恥じないそういうものがあるんだ。どうしてこれが一体アジアの平和、アジアの一体平和にかかわるということになるんですか。だから私はどうしてもこの姿勢を明確にしてほしいんですよ。こんなことが起こらないというんですか。東京からちょっと一歩出たあの相模原で行なわれている。それを見ているんです、あそこの数万の市民は見ているのです。まぎれもなく見ているのです。そういう中で、国会の論議がまるで違ったそういう空気の中で、そしていまのような答弁が行なわれる。こういうことは私はとてもこれは許されない問題だと思います。きょうの段階では時間がきておりますから、私はまあ以上の問題について、あなたのほうで至急、このようなやり方ではたしていいのかどうか。日本国民を愚弄するもはなはだしいのでありまして、そういう点からはっきり問い合わせをして、それの答弁を最後にこれをここの委員会に報告してもらいたい。至急報告してもらいたい。とにかくわれわれは、こういう問題のある限りどうしてもこれは追及していかなければなりません問題ですからね。きょうは時間の関係から私はこの辺で大体終わっておきますが、最後に御答弁をいただいておきたいと思います。
  403. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 相模原の補給廠の修理その他につきましては、なお目下米側に照会して、さらにできるだけ詳細を調査中でございますが、いま先生の御指摘の点につきましても、調べられましたら調べてお答えいたしたいと思います。
  404. 岩間正男

    ○岩間正男君 調べられましたらじゃなくて、必ずこれは調べてください。要求しなさいよ。そうでしょう。それくらいの権威がなくてどうして一体一億国民の生命を深く守り、そういう負託にこたえることができるんですか。要求すべきですよ。日本の権威にかけて要求しなさいよ。あたりまえでしょう。これが要求できなくて何で一体対等、平等とか言えるんです。そうでしょう。これは国務大臣にお伺いします。こんなの、当然、要求するのはあたりまえ過ぎるでしょう。それが要求できないなんていうことはとても許されないことだ。
  405. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはアメリカ局長お答えしましたように、調べられるものはもちろん調査をいたしまして御要求にこたえたいと思いますが、なにせ、ベトナム戦争という、まあ局地戦争ではありましても直接戦争をしておる国でありまするから、調べられるところも、また調査に相手が応じないところもある、そういう意味を申し上げたと思っております。できるだけ調査をいたします。  ただ、問題は、やはりアメリカ側にも、私どもも、なるべく早く平和のテーブルに着くようにと、これはアメリカもしばしば言っておるんですから、おりあるごとにそういう注意を喚起したいと思いますが、やはりソ連邦等においても北側に積極的に武器援助をされるというようなことで、両方が両方の形で援助戦争が展開されておるということは、どういう見地からいっても残念なことでありまするから、ソ連邦に対しても、やはりあまり積極的援助はなさらぬように、これは日本共産党はソ連邦とは友好関係にあられまするので、注意喚起をしていただければたいへんしあわせだと思います。
  406. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたはいつでもよけいなこと言うから、よけい言わざるを得ないけれども、(笑声)そういうことを、一体、答弁の中で不謹慎に言いなさんな。もう少しやっぱりまじめに——私が言っているのは、はっきり国の権威にかけて、そうしてほんとうに独立したと言っているんだから、それで対等平等だと言っているから、こんなことは当然要求するのはあたりまえですよ。そうでなきゃ、安保というのは全く従属したものだということです。そこのところを答えればいいので、そのほかのことを論議し始めたら、あなた、ほんま、夜になりますよ。いいですか。そんな、あなた、ばかな答弁したらだめですよ。
  407. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) よく承りました。
  408. 鈴木力

    鈴木力君 資料要求をしたいんですが、きょう、防衛問題で審議も始めました。これから自衛隊のあり方等あるいはなお防衛問題をさらに審議しなければいけませんので、その資料として、防衛問題関係の、と言いますか、自衛隊関係と言ったほうが正確かもしれませんけれども、定期的に出版しておる定期出版物。それから教育用に使っておる図書、これは部隊、学校全部。これを、そのものを出せというんじゃなくて、全部の出版物のリストを資料として出していただきたい。それで、そのリストに、もしマル秘のものがあればマル秘として全部のリストを出してもらいたい。そうしますと、各委員がそれぞれによってこれを見たいという場合には、その要求によって現物を出していただけるというために、膨大なものですからその図書を全部出せとは申し上げませんが、ただし、全部のリストはお出しいただきたいと思います。
  409. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 相当膨大なものになると思いますが、極力、御要請に沿うようにいたしたいと思います。
  410. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 本件に関する本日の調査はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十三分散会      —————・—————