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参考人(
一瀬智司君)
国際基督教大学の
一瀬でございます。学識者という
立場で
意見を述べさせていただく
機会を与えられましたことを光栄に感謝するものでございます。
初めに、この
有線テレビジョン法につきまして、
有線テレビジョン放送あるいはこれはCATVというようにいわれるわけですが、これらの定義というか、規定のしかたにつきまして、これは
先ほど尾崎参考人がおっしゃいましたように、現在、郵政省その他におきまして調査会が持たれておりますが、この
有線テレビジョンの有線という、この有線がいわゆる同軸という
技術的に線を用いるわけで、その
同軸ケーブルのその同軸というものの
技術的な性格が、非常に
技術革新というものに伴ってたいへん将来性があるということが次第にわかってきておる。したがいまして、
先ほど来出ましたように、単に
一方向の
テレビによる
放送ということから終局的将来においては、双方向というものに変わる、そういう産業、いわゆる情報産業、俗にわれわれ脱工業化社会、そして情報化社会を迎える、こういうふうにいわれるわけですが、その中の
通信媒体、
技術的な
同軸ケーブル、それをさらに無線と有線をつなぐ、そういうことによる情報化社会というものの
一つのメディアになる、そういう方向性を持ったものである。こういう認識のもとに、その
最初の
段階、現在
時点における
段階として、無線
放送によらざる有線の
放送の再
送信、それの地域内再
送信、それから区域外再
送信、そして
自主放送、
自主放送の次に双方向という
段階がくると、こういうふうに指摘されておるわけでございます。
それに関連しまして、つい最近CCIS
関係の調査団といたしまして、最近アメリカのCATV
事業の状況、それに対する連邦政府あるいは地方自治体等の規制のあり方、そのCATV
事業あるいは双方向をも含めましての実態というようなものを視察してこいと、こういうようなことで参りましたので、それにつきまして申し上げますと、多少日本と事情は違うわけですが、基本的な面で、たとえば非常に既存のこれはCATV
事業、あるいはCCIS
事業というものは全く新しい
一つの産業として、情報産業というか、新規の産業として生まれてきておる。そして育っていくというか、成長していく成長型の産業である。そういう新規の産業、既存の産業でない新規の産業をどういうふうに企業として扱い、あるいは
国民として、国としてもどういうふうにそれを育成していくべきであるか、こういうようなことが問題意識としてあるのじゃないかと思うのですが、その点で
幾つかの印象をまず前提として要約しておきたいと思うのです。
アメリカにおける事情の印象を要約してみますと、まず、非常にアメリカの
都市におきまして、あるいは
都市郊外において、CATV
事業、
有線テレビ放送事業というものが、民間企業としておおむね成立しておる、つまり日本の
東京ケーブルビジョンあるいは阪神
ビジョンのように、私企業でない公益法人というふうな形でなく、ほとんどが、まあすべてと言っていいのですが、株式会社、企業として成立しておる。採算も、
自主番組をやっておるところはまだ少ないが、一応企業として成立し、採算とれる
段階にある。この点が強い
一つの印象でございます。
それから、二番目に、こういったCATV
事業を既存の、特に
放送企業、
放送会社、それから電話電信会社等の、特に
放送事業と電話
事業との競争的併存あるいは共存ということを国の基本方針として、FCC
——連邦
通信委員会あるいは連邦
通信政策局においてアメリカの場合には共存できるようにという
配慮を十分政策上、
法律的にも財政的にもとる、こういうのが基本的方向であるということ。
それから、三番目に、ただに国が、中央政府が強く規制する、そういうことではなくて、むしろCATVの性格から言うと、
ケーブル——有線
ケーブルを使うわけで、それは、
ケーブルはむしろ自治体の道路に
関係ある、道路の電柱、あるいは電話線、電話柱等に添架する、または地下埋設する、道路埋設する。そういう点がありますものですから、特に自治体、市とか州とかいう自治体とCATV企業が非常に密接な
関係にあって、中央政府としては、あまり強く規制するとかそういう形でなく、大きなワクをはめるという
程度にとどめる。
それから、次には、したがいまして基本的には実際そういう企業が成立し、あるいはある
程度サービス内容というものを、
役務の内容というものを
提供すると、そういうようなことが実態としてあがってきてそこにコンフリクト、紛争というか、問題が起こってきた、そういう際にそれを調整する、あるいはそれについて新しい規制なり助成なりを考えていく、そういう試行錯誤的な方向、これは比較的アメリカの場合には、ほかの産業についても、産業規制その他についても同様なことが言えるわけですが、特にこのような情報型の産業については、そういう方針でやるわけで、そういったような新規に起こってくる企業に対する扱い方というものについては、日本においても、
わが国としても
参考になるんじゃないだろうか、こういうふうに考えるわけです。
それからもう
一つとしては、有線と無線の組み合わせを考える、つまりマイクロウェーブを使うことを
有線テレビにも認める、こういうような、つまり無線と有線をシステムとして政策的に考える。まあこれは
通信政策の問題であろうかと思いますが、これらは非常に実際的にアメリカのほうで行なわれておるということからしまして、まあこれは、
有線テレビ放送法だけの問題でなくって、無線、有線を通ずる
一つの
通信政策というものを確立するということで、そういうバックのもとに、この
有線テレビジョン放送法というものを考えることが非常に必要じゃないか、こういうふうに思ったわけです。
そういうような印象を受けたわけですが、まあそういう点から申しますと、
有線テレビジョン放送について、もっと先に行って、双方向であるとか、いろいろ実態が確立してから、
有線テレビジョン放送法というものを設定したらいいじゃないかというような
意見にもなるかと思うんですが、現在のところ、そういった
有線テレビジョン放送事業というものについて、根拠法が不在である。全く
法律的にそういうような根拠法がないという状態、そういう無政府状態というか、そういうことでは困るわけで、そういう趣旨から、まあ私としては、この
有線テレビジョン放送法を拝見いたしまして、特に
施設と
業務を分ける、まあ分けるというか、
施設の面、つまり
ケーブル等は非常に、道路であるとか、その
施設の性格上、非常に、たとえば電気、ガス、水道等の道路
行政に
関係がある。そういう
事業であるわけでして、つまり、
ケーブルを地下埋設するとか、あるいは電話線等に添架するとかというようなことが物理的に必要である。したがいまして、完全にそれを私企業、自由企業として放任する、放任企業ということは、ちょっと物理的性格上できないという面が
施設の面についてあるわけなんです。
そういう点につきまして、大体
施設については現行の公益
事業規制に準ずるようなあるいは類するような形になるかと思うわけで、将来かりにCCIS、情報産業ということになるとしても、
施設面については、そういう物理的な側面があるということは注目しなきゃならない。したがいまして、その点については、これは何らかの規制あるいは
措置、あるいはある
意味ではそれらの
施設を助長するような、
施設が可能なような方向性を持って処理すると、しかし
業務、特に番組その他については、これは完全に自由でなければならない。その
意味でこの
法案のたてまえが
業務と
施設を分け、
業務については
届け出制という形をとっておる。まあ多少、十四条の
役務の
料金については
認可ということがございますけれ
ども、これは多少公共
料金的なものに将来なる
可能性がございますので、この点はできるだけ、自由価格ということも考えられますけれ
ども、
役務の
提供条件についてのこの十四条というのは、他の産業その他との勘案で妥当な価格ということは考えられるかと思うわけです。
それから個々の
条文の問題になりますが、第十三条の再
送信の二項のところ、これは区域外再
送信が多いわけですが、「
放送事業者の
同意」を得るということがございますが、この点著作権法あるいは著作隣接権との問題もあると思うんですが、
同意というのは、
放送事業者の了承を得るというような
意味で、ある番組を区域外再
送信することについて合意というか、了承を得るという
程度の趣旨にして、絶対
同意しないというようなことはちょっと問題があろうかと思います。その点でこれは衆議院における修正がございますが、「あっせんに適しない」不
同意というようなことがないようにする必要があるんじゃないか、そういうふうに思うわけです。
それから三十条の衆議院の修正のところで、
施設の円滑な
設置についての
配慮といたしまして、抽象的ですが、「国及び地方公共団体は、第三条第一項の
許可に係る
有線テレビジョン放送施設の
設置が円滑に行なわれるために必要な
措置が講ぜられるよう
配慮するものとする。」、これはいわゆる
放送施設の道路使用等その他の問題であろうと思うんですが、これは
放送施設の
設置が、できるならば、もう少し具体的に道路使用その他、あるいは道路占用その他というような形、あるいはこの
施設が円滑に
設置せられるように、国及び地方公共団体としてもその新規産業の発達を抑止することにならないように
配慮していく必要があるんじゃないか、そのように思うわけです。
そういうような次第で、こういった生まれてきつつある
有線テレビ放送というものが、下田の例では
自主放送もやっておりますし、多摩ニュータウン、横浜のニュータウンその他におきましても、実験が行なわれつつある。そしてそれが
自主放送等が可能になった場合は、
視聴覚教育、教育用の
放送というようなもの、あるいは自治体の
行政広報用という形で、あきチャンネルを
利用することができる。そういう、いわゆる
都市づくり、あるいは地域開発ということに、非常に有効な
情報媒体になり得るという
可能性を持っておるものであるというふうに考えられますので、これらについて、この
法律面、あるいはほかの
関係法令、税制その他の面からその発達が阻止されることのないように、新規産業を健全な形に育成していただき、あるいはそういうことが、ひいては
受信者の利益になるということを考えるわけで、まあいろいろ注文がございますが、根拠法として一応成立させておいたほうがいいんじゃないかというふうに考えて、賛成いたしたいと思う次第であります。